(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-519329(P2021-519329A)
(43)【公表日】2021年8月10日
(54)【発明の名称】新規なサポニンアジュバント及びその評価方法
(51)【国際特許分類】
C07J 63/00 20060101AFI20210712BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20210712BHJP
B01J 20/287 20060101ALI20210712BHJP
B01J 20/286 20060101ALI20210712BHJP
G01N 30/32 20060101ALI20210712BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20210712BHJP
G01N 30/74 20060101ALI20210712BHJP
B01J 20/288 20060101ALI20210712BHJP
A61K 31/704 20060101ALN20210712BHJP
A61K 39/39 20060101ALN20210712BHJP
A61K 36/73 20060101ALN20210712BHJP
A61P 37/02 20060101ALN20210712BHJP
【FI】
C07J63/00CSP
G01N30/88 W
B01J20/287
B01J20/286
G01N30/32 A
G01N30/26 A
G01N30/74 E
B01J20/288
G01N30/88 C
A61K31/704
A61K39/39
A61K36/73
A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2020-552380(P2020-552380)
(86)(22)【出願日】2019年3月27日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月25日
(86)【国際出願番号】US2019024414
(87)【国際公開番号】WO2019191317
(87)【国際公開日】20191003
(31)【優先権主張番号】62/649,091
(32)【優先日】2018年3月28日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】516080655
【氏名又は名称】オービーアイ ファーマ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チェン−ダ・トニー・ユ
(72)【発明者】
【氏名】イ−ファン・シエ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ・ハン・リー
(72)【発明者】
【氏名】ユ・チェン・リン
(72)【発明者】
【氏名】ナン・スアン・ワン
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
4C088
4C091
【Fターム(参考)】
4C085AA38
4C085FF14
4C085FF18
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB07
4C088AB51
4C088AC06
4C088BA08
4C088CA03
4C088NA14
4C088ZB07
4C091AA06
4C091BB02
4C091CC01
4C091DD01
4C091EE06
4C091FF02
4C091FF06
4C091GG03
4C091GG05
4C091HH01
4C091JJ01
4C091QQ05
4C091QQ15
4C091RR13
(57)【要約】
本開示は、単離されたOBI−821アジュバントの6つの異性体構造(OBI−821−1990−V1A、OBI−821−1990−V1B、OBI−821−1990−V2A、OBI−821−1990−V2B、OBI−821−1858−A、及びOBI−821−1858−B)、及びその品質を評価するための方法に関する。本開示の方法は、親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)及び逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を単独で又はタンデムで採用し、結果として生じるクロマトグラフィーにおいてOBI−821アジュバントの異性体を分離することができる。したがって、OBI−821アジュバントの品質をさらに評価することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された下記式(I)の化合物又は医薬として許容可能なその塩:
【化1】
式中、
R
1は、β-D-アピオース、β-D-キシロース、又はHから選択され、かつ、
R
2及びR
3は、H又は
【化2】
から選択される。
【請求項2】
R
1がβ-D-アピオースであり、R
2が
【化3】
であり、R
3がHである、請求項1に記載の単離された化合物。
【請求項3】
R
1がβ-D-アピオースであり、R
2がHであり、R
3が
【化4】
である、請求項1に記載の単離された化合物。
【請求項4】
R
1がβ-D-キシロースであり、R
2が
【化5】
であり、R
3がHである、請求項1に記載の単離された化合物。
【請求項5】
R
1がβ-D-キシロースであり、R
2がHであり、R
3が
【化6】
である、請求項1に記載の単離された化合物。
【請求項6】
R
1がHであり、R
2が
【化7】
であり、R
3がHである、請求項1に記載の単離された化合物。
【請求項7】
R
1がHであり、R
2がHであり、R
3が
【化8】
である、請求項1に記載の単離された化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の単離された化合物の1つ又は複数と、医薬として許容可能な担体を含む、サポニン組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のサポニン組成物であって、サポニン組成物の総質量に対して、
化合物1990の混合物約75〜90質量%、及び
化合物1858の混合物約10〜25質量%
を含み、
化合物1990の混合物が、化合物1990−V1A、化合物1990−V1B、化合物1990−V2A、化合物1990−V2B、又はそれらの混合物を含み;化合物1858が、化合物1858−A、化合物1858−B、又はそれらの混合物を含み;
前記の化合物1990−V1A、化合物1990−V1B、化合物1990−V2A、化合物1990−V2B、化合物1858−A、化合物1858−Bがそれぞれ以下の式で表される、サポニン組成物:
【化9】
化合物1990−V1A:R
1がβ-D-アピオースであり、R
2が
【化10】
であり、R
3がHである;
化合物1990−V1B:R
1がβ-D-アピオースであり、R
2がHであり、R
3が
【化11】
である;
化合物1990−V2A:R
1がβ-D-キシロースであり、R
2が
【化12】
であり、R
3がHである;
化合物1990−V2B:R
1がβ-D-キシロースであり、R
2がHであり、R
3が
【化13】
である;
化合物1858−A:R
1がHであり、R
2が
【化14】
であり、R
3がHである;
化合物1858−B:R
1がHであり、R
2がHであり、R
3が
【化15】
である。
【請求項10】
請求項9に記載のサポニン組成物であって、サポニン組成物の総質量に対して、
約45〜65質量%の化合物1990−V1A;
約19.31〜27.99質量%の化合物1990−V2A;
約0.29〜7.71質量%の化合物1990−V1B;
約0.11〜3.11質量%の化合物1990−V2B;
約11.94〜21.25質量%の化合物1858−A;及び
約0.06〜2.44質量%の化合物1858−B
を含む、サポニン組成物。
【請求項11】
(a)サポニン組成物を親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)カラムに適用するステップ;
(b)前記の親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)カラムを移動相で溶出して、溶出液を得るステップ;及び
(c)前記の溶出液のクロマトグラムを得るステップ
を含み、前記移動相がトリフルオロ酢酸水溶液及びアセトニトリルを含む、サポニン組成物の異性体組成を評価するための方法。
【請求項12】
前記の溶出を0.1〜10mL/分の流速で行う、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記の親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)カラムがアミドカラムである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記クロマトグラムを紫外線検出によって得る、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記サポニン組成物が請求項8〜10のいずれか一項に記載のサポニン組成物である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
(a)サポニン組成物を逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに適用するステップ;
(b)移動相を用いて前記の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムを溶出して溶出液を得るステップ;及び
(c)前記溶出液のクロマトグラムを得るステップ、
を含み、前記移動相がトリフルオロ酢酸−水溶液及びトリフルオロ酢酸−アセトニトリル溶液を含む、サポニン組成物の純度を評価するための方法。
【請求項17】
前記の溶出を0.1〜10mL/分の流速で行う、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムが疎水性カラムである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記の疎水性カラムがC4カラム、C8カラム、又はC18カラムである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記のクロマトグラムを紫外線検出によって得る、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記のサポニン組成物が請求項8〜10のいずれか一項に記載のサポニン組成物である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
(a)サポニン組成物の溶液を親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)カラムに適用するステップ;
(b)第1の移動相で前記の親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)カラムを溶出して、第1の溶出液を収集するステップ;
(c)前記の第1の溶出液の画分を逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに適用するステップ;
(d)第2の移動相で前記の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムを溶出して、第2の溶出液を収集するステップ;及び
(e)前記第2の溶出液のクロマトグラムを取得するステップ
を含み、
前記第1の移動相がトリフルオロ酢酸−水溶液及びアセトニトリルを含み;
前記第2の移動相がトリフルオロ酢酸−水溶液及びトリフルオロ酢酸−アセトニトリル溶液を含む、
サポニン組成物の品質を評価するための方法。
【請求項23】
前記ステップ(b)における溶出を0.1〜10mL/分の流速で行う、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ステップ(d)における溶出を0.1〜10mL/分の流速で行う、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)カラムがアミドカラムである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムが疎水性カラムである、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記疎水性カラムがC4カラム、C8カラム、又はC18カラムである、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2018年3月28日に出願され、「NOVEL SAPONIN ADJUVANT」と題された米国特許仮出願第62/649,091号に基づく優先権を主張し、同特許仮出願は、あらゆる目的のためにその全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、キラヤ・サポナリア・モリナ(Quillaja saponaria Molina)の木の樹皮に由来するサポニンベースのアジュバントを開示している。それは、別のアジュバントであるQS−21について見られる説明と構造的に類似した精製されたサポニンアジュバントである。さらに、ここでの開示は、高速液体クロマトグラフィーによってサポニンの品質を評価するための方法を開示する。
【背景技術】
【0003】
サポニンは、キラヤ・サポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮から抽出された化合物の一種である。以前の研究では、QS−7、QS−17、QS−18、及びQS−21と特定されたいくつかのサポニンが抗体レベルを劇的に高めることができることが示され、このことは、アジュバントとしてのそれらの医薬への応用を意味している(Charlotte R. Kensilら, The Journal of Immunology, Vol. 146, No. 02, 第431-437頁, 1991年)。その中でも、QS−21はワクチンにおいてアジュバントとして実用的かつ広く使用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Charlotte R. Kensilら, The Journal of Immunology, Vol. 146, No. 02, 第431-437頁, 1991年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したことから、ここでの開示の目的は、サポニンベースのアジュバントの6つの異性体、及びそれらの異性体を分離してその純度及び/又は品質をさらに評価することができる方法を開示することである。
【0006】
ここでの開示の別の目的は、サポニンベースのアジュバントから単離されたサポニン化合物を提供することであり、それによって医薬におけるその使用を評価でき且つ満たすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するために、ここでの開示は、式(I):
【化1】
の単離された化合物、又はその医薬として許容可能な塩を提供し、
上記式中、R
1はβ-D-アピオース、β-D-キシロース、又は水素から選択され;R
2及びR
3は水素又は
【化2】
から選択される。
【0008】
好ましくは、前記の単離された化合物は、下の表に示した構造を有する:
【表1】
【0009】
表中、R
1はアピオース、キシロース、又はHであり、
R
2及びR
3は独立に水素又は脂肪アシル(fatty acyl)である。
【0010】
ここでの開示はまた、前述の単離された化合物のうちの1つ以上及び医薬として許容可能な担体を含むサポニン組成物を提供する。
【0011】
ここでの開示は、サポニン組成物の異性体組成物を評価するための方法をさらに提供し、その方法は以下のステップ:(a)サポニン組成物を親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)カラムに適用するステップ;(b)前記親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)カラムを移動相で溶出して溶出液を得るステップ;及び(c)前記溶出液のクロマトグラムを取得するステップ、を含み、
前記移動相は、トリフルオロ酢酸−水溶液及びアセトニトリルを含み;前記移動相中の前記トリフルオロ酢酸−水溶液の量は、0%(v/v)から20%(v/v)まで変化し、一方で前記移動相中の前記アセトニトリルの量は30分で80%(v/v)から100%(v/v)まで変化し;ここで、前記%(v/v)は、前記移動相の総体積に基づく。
【0012】
好ましくは、前記溶出は、0.1から10mL/分の流速で行われる。
【0013】
好ましくは、前記溶出は、2から11のpH範囲で行われる。
【0014】
好ましくは、前記親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)カラムは、アミドカラムである。
【0015】
好ましくは、前記クロマトグラムは、紫外線検出によって得られる。
【0016】
ここでの開示はさらに、サポニン組成物の純度を評価するための方法を提供し、その方法は以下のステップ:(a)サポニン組成物を逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに適用するステップ;(b)移動相を用いて前記逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムを溶出して溶出液を得るステップ;及び(c)前記溶出液のクロマトグラムを取得するステップ、を含み、
前記移動相は、トリフルオロ酢酸−水溶液及びトリフルオロ酢酸−アセトニトリル溶液を含み;前記トリフルオロ酢酸−アセトニトリル溶液は、前記トリフルオロ酢酸−アセトニトリル溶液の総体積に基づいて、20から80%(v/v)のトリフルオロ酢酸を含み、一方で、前記移動相中のアセトニトリルの量は、35分で20%(v/v)から80%(v/v)まで変化し;ここで、前記%(v/v)は、前記移動相の総体積に基づく。
【0017】
好ましくは、前記溶出は、0.1から10mL/分の流速で行われる。
【0018】
好ましくは、前記溶出は、2から7.5のpH範囲で行われる。
【0019】
好ましくは、前記逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムは、逆相カラムである。
【0020】
好ましくは、前記疎水性カラムは、C4カラム、C8カラム、又はC18カラムである。
【0021】
好ましくは、前記クロマトグラムは、紫外線検出によって得られる。
【0022】
ここでの開示は、サポニン組成物の品質を評価するための方法をさらに提供し、その方法は以下のステップ:(a)サポニン組成物を親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)カラムに適用するステップ;(b)第1の移動相で前記親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)カラムを溶出して、第1の溶出液を収集するステップ;(c)前記第1の溶出液の画分(フラクション)を逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに適用するステップ;(d)第2の移動相で前記逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムを溶出して、第2の溶出液を収集するステップ;(e)前記第2の溶出液のクロマトグラムを取得するステップ、 を含み、
ここで、前記第1の移動相は、トリフルオロ酢酸−水溶液及びアセトニトリルを含む。
【0023】
好ましくは、前記第1の移動相中の前記トリフルオロ酢酸−水溶液の量は、30分で、0%(v/v)から20%(v/v)まで変化し、その一方で前記第1の移動相中のアセトニトリルの量は、80%(v/v)から100%(v/v)まで変化し; ここで、前記%(v/v)は、前記第1の移動相の総体積に基づく。
【0024】
好ましくは、前記第2の移動相中のトリフルオロ酢酸−水溶液の量は、35分で、20%(v/v)から80%(v/v)まで変化する一方、前記第2の移動相中のアセトニトリルの量は20%(v/v)から80%(v/v)まで変化し; ここで、前記%(v/v)は、前記第2の移動相の総体積に基づく。
【0025】
好ましくは、前記工程(b)における前記溶出は、0.1から10mL/分の流速で行われる。
【0026】
好ましくは、前記工程(b)における前記溶出は、2から11のpH範囲で行われる。
【0027】
好ましくは、前記工程(d)における前記溶出は、0.1から10mL/分の流速で行われる。
【0028】
好ましくは、前記工程(d)における前記溶出は、2から7.5のpH範囲で行われる。
【0029】
好ましくは、前記親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)カラムは、アミドカラムである。
【0030】
好ましくは、前記逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムは、疎水性カラムである。
【0031】
より好ましくは、前記疎水性カラムは、C4カラム、C8カラム、又はC18カラムである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】OBI−821親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)紫外線(UV)クロマトグラム
【
図2】親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)紫外線(UV)クロマトグラムから集めた、ピーク1画分(1858化合物、上)、ピーク2画分(1990−V1化合物、中)、及びピーク3画分(1990−V2化合物、下)のOBI−821ネガティブESI MSスペクトル
【
図3A】OBI−821からの1858化合物(左)及び1990化合物(右)の構造及びそれらのタンデムMSフラグメントイオン
【
図3B】1990化合物(上)及び1958化合物(下)のMS/MSスペクトル
【
図4】パルス電流検出装置を備えた高速アニオン交換クロマトグラフィー(HPAEC−PAD)による、親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)紫外線(UV)クロマトグラムにより集めたピーク2画分(1990−V1化合物、上)、ピーク3画分(1990−V2化合物、中)、及びピーク1画分(1858化合物、下)の単糖類(モノサッカリド)分析
【
図5】OBI−821逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)のクロマトグラム
【発明を実施するための形態】
【0033】
[詳細な説明]
サポニン組成物の一種であるOBI−821アジュバント物質(AS)は、キラヤ・サポナリア(Quillaja Saponaria)からの植物由来の複雑なサポニンであり、次の式(I)を共有する6つの異性体を含む。
【0034】
【化3】
上記式中、R
1はアピオース、キシロース、又は水素であり;
R
2及びR
3は独立に、水素又は脂肪アシル(fatty acyl)である。
【0035】
これら6つの異性体は、本明細書中での参照名とともに下の表1に列挙してある。これらの6つの異性体のなかで、末端アピオースを有するOBI−821−1990−V1、末端キシロースを有するOBI−821−1990−V2、及びOBI−821−1990異性体類におけるトリサッカリド残基の代わりに、フコシル残基に結合したジサッカリド(二糖)残基(D−キシロシル−(1→4)−O−β−D−L−ラムノシル−(1→4))を有するOBI−821−1858が、その主要な3つの成分である。これら3つの成分はそれぞれ「A型」及び「B型」位置異性体を有する。
【0036】
「1990」という数は、OBI−821−1990−V1A、OBI−821−1990−V1B、OBI−821−1990−V2A、及びOBI−821−1990−V2Bの理論的に推定された分子量である。同様に、「1858」という数は、OBI−821−1858−A及びOBI−821−1858−Bの理論的に推定された分子量である。
【0038】
OBI−821アジュバント物質(AS)中には合計6つの異性体が見いだされる。これらの6つの異性体は、OBI−821−1990−V1、OBI−821−1990−V2、及びOBI−821−1858の3つのグループに分類できる。各グループは、グループA及びBとして識別できる2つの位置異性体を含む。OBI−821アジュバントの命名法及び物理化学的特性を表2にまとめてある。
【0040】
OBI−821ASの製造プロセスには、3つの精製段階(段階I、II、及びIII)が含まれる。主要原材料であるQuil−A中に含まれるOBI−821の初期含有量は、通常3%以下である。段階Iの精製プロセスでは、OBI−821の含有量が約15%に増加し、その中間体は、精製されたQuil−A(PQA)として識別される。段階IIのプロセスにおいて、OBI−821の含有量が塩を伴う約0.2g/g乾燥形態へと増加し(HPLCによるクロマトグラフィー純度で、約50%のメインピークMW1990)、その中間体は粗製OBI−821(Crd−821)として識別される。段階IIIの精製プロセスの後、OBI−821含有量は98%以上まで富化されることができ、これはOBI−821ASとして識別される。
【0041】
Quil−Aは、Brenntag Biosector A/S(Brenntag; Frederikssund, デンマーク国)から商業的に入手し、これは食品添加物としての使用に対してデンマーク国の規制当局によって認定されている(証明書番号32119)。
【0042】
ここでの開示の第1の側面は、サポニンベースのアジュバントからの単離されたサポニン化合物に関する。「単離された」という用語は、サポニン化合物が実質的に純粋であることを記述することを言っている。より具体的には、一実施形態では、単離されたサポニン化合物は、不純物及びその他の異性体を含まない。例えば、一実施形態では、単離物サポニン化合物は、化合物1990−V1Aであり、それは、化合物1990−V2A、化合物1990−V1B、化合物1990−V2B、化合物1858−A、及び化合物1858−Bを含まない。
【0043】
ここでの開示の第2の側面は、前述の単離された化合物のうちの1つ又は複数及び医薬として許容可能な担体を含むサポニン組成物に関する。このサポニン組成物は、アジュバント効果を示すのに適した比率で、前述の単離された化合物の2つ以上を含み得る。医薬として許容可能な担体は、当技術分野において一般的に使用されている任意の担体であることができる。
【0044】
好ましい実施形態では、サポニン組成物は、サポニン組成物の総質量に対し、化合物1990の混合物75〜90質量%及び化合物1858の混合物10〜25重量%を含み、 ここで、化合物1990の混合物は、化合物1990−V1A、化合物1990−V1B、化合物1990−V2A、化合物1990−V2B、又はそれらの混合物を含み、かつ化合物1858の混合物は、化合物1858−A、化合物1858−B、又はそれらの混合物を含む。より好ましい実施形態において、サポニン組成物は、サポニン組成物の総質量に対して、化合物1990の混合物80〜88質量%及び化合物1858の混合物12〜23質量%を含む。
【0045】
別の好ましい実施形態において、サポニン組成物は、サポニン組成物の総質量に対して、化合物1990−V1Aを約45〜65質量%含む。特定の実施形態では、サポニン組成物は、サポニン組成物の総質量に対して、約45〜65質量%の化合物1990−V1A化合物、約19.31〜27.99質量%の化合物1990−V2A、約0.29〜7.71質量%の化合物1990−V1B、及び約0.11〜3.11質量%化合物1990−V2Bを含む。別の特定の実施形態では、サポニン組成物は、サポニン組成物の総質量に対して、約49.26〜63.42質量%の化合物1990−V1A化合物、約19.31〜27.99質量%の化合物1990−V2A、約0.29〜7.71質量%の化合物1990−V1B、及び約0.11〜3.11質量%化合物1990−V2Bを含む。
【0046】
以下にいう「OBI−821の異性体組成を評価する」とは、OBI−821をある方法によって分離し、それによってOBI−821の3つの主成分を分離し、観察できることをいう。これは、対象とするOBI−821が3つの主要な成分の全てを含んでいるかどうかを確認するために不可欠であり、なぜなら、そのことが抗体又は細胞性免疫応答の増強におけるOBI−821の機能のための要因でありうるからである。以下にいう「OBI−821の純度を評価する」とは、対象としているOBI−821中に存在する不純物の含有量を評価することである。好ましくは、不純物の含有量は、対象としているOBI−821中で10質量%未満である。すなわち、OBI−821の純度は90%より高い。以下にいう「OBI−821の品質を評価する」とは、対象としているOBI−821の純度及び3つの主要成分の存在の両方を評価することである。
【0047】
ここでの開示の第3の側面においては、親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)によってサポニン組成物の異性体組成を評価するための方法が提供される。この方法は、以下のステップを含む:(a)サポニン組成物を親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)カラムに適用するステップ;(b)前記親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)カラムを移動相で溶出して溶出液を得るステップ;及び(c)前記溶出液のクロマトグラムを取得するステップ。
【0048】
好ましい実施形態では、上記の移動相は、移動相中のトリフルオロ酢酸−水溶液の量が、30分で、0%(v/v)から20%(v/v)まで変化し、一方で、移動相中のアセトニトリルの量は80%(v/v)から100%(v/v)まで変化する勾配で適用され、ここで、前記%(v/v)は、移動相の総体積に基づく。
【0049】
上記の溶出は、操作の条件に応じて適切な流量で行うことができる。そうではあるが、好ましい実施形態では、溶出は、0.1から10mL/分の流速で行われる。
【0050】
好ましい実施形態では、前記のカラムは、分析が行われる前に緩衝液(バッファー)によって調整(コンディショニング)されなければならない。さらに、好ましい実施形態では、前記のカラムは、分析が完了した後、洗浄緩衝液によって洗浄されなければならない。前記の調整に使用される緩衝液は、トリフルオロ酢酸−水溶液、アセトニトリル、又はそれらの混合物であることができる。前記の洗浄緩衝液は、アセトニトリル、水、又はそれらの混合物であり得る。好ましくは、前記の洗浄緩衝液は、適切な勾配のアセトニトリルと水の混合物である。
【0051】
好ましい実施形態では、前記のクロマトグラムは、それぞれ上記の6つの異性体の3つの主成分を表す3つのピークを含むであろう。実際には、対象としているOBI−821の純度を予め決定するためにその3つのピークのピーク面積を計算することができる。
【0052】
ここでの開示の第4の側面では、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によってサポニン組成物の純度を評価するための方法が提供される。この方法は、以下のステップを含む:(a)サポニン組成物を逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに適用するステップ;(b)移動相を用いて前記の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムを溶出して溶出液を得るステップ;及び(c)前記溶出液のクロマトグラムを取得するステップ。
【0053】
好ましい実施形態において、前記移動相は、前記移動相中のトリフルオロ酢酸−水溶液の量が、35分で、20%(v/v)から80%(v/v)まで変化する一方で、前記移動相中のアセトニトリルの量は、20%(v/v)から80%(v/v)まで変化する勾配で適用され;ここで、前記%(v/v)は、前記移動相の総体積に基づく。
【0054】
前記の溶出は、操作の条件に応じて適切な流量で行うことができる。そうではあるが、好ましい実施形態では、前記の溶出は、0.1から10mL/分の流速で行われる。
【0055】
好ましい実施形態では、前記クロマトグラムは、それぞれ「A型」位置異性体及び「B型」位置異性体を表す2つのピークを含むであろう。具体的には、「A型」位置異性体を表すピークは、OBI−821−1990−V1A、OBI−821−1990−V2A、及びOBI−821−1858−Aの組み合わせになり;「B型」位置異性体を表すピークは、OBI−821−1990−V1B、OBI−821−1990−V2B、及びOBI−821−1858−Bの組み合わせになる。好ましい実施形態では、対象としているOBI−821の純度を決定するために、前記の2つのピークのピーク面積を計算することができる。
【0056】
ここでの開示の第5の側面では、サポニン組成物の品質を評価するための方法が提供される。この方法は、前後(タンデム)に配置したHILICとRP−HPLCによって実施される。基本的に、ここでの開示の第3の側面のサポニン組成物の異性体組成を評価する方法に対してサポニン組成物を適用し、次に、得られた画分を、ここでの開示の第4の側面のOBI−821の純度を評価する方法に適用した。
【0057】
具体的には、この方法は以下のステップを含む:(a)サポニン組成物を親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)カラムに適用するステップ;(b)第1の移動相で前記の親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)カラムを溶出して、第1の溶出液を収集するステップ、(c)前記の第1の溶出液の画分を逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに適用するステップ;(d)第2の移動相で前記の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムを溶出して、第2の溶出液を収集するステップ;及び(e)前記第2の溶出液のクロマトグラムを取得するステップ。
【0058】
好ましくは、親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)及び逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)のカラム、移動相、流速などを含む条件は、これより前の段落に記載されたものと同じである。
【0059】
好ましい実施形態において、6つの異性体の3つの主成分のいずれか1つに相当する前記の第1の溶出液の画分は、前記のステップ(c)において、前記の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムに適用され、それにより、画分の「A型」位置異性体と「B型」位置異性体を分離することができる。
【0060】
好ましい実施形態では、6つの異性体の3つの主成分に対応する3つの画分が、前記ステップ(c)における前記の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)カラムのために収集され、それにより、3つの主成分それぞれの「A型」位置異性体及び「B型」位置異性体を分離することができる。したがって、3つのクロマトグラムを得ることができ、それらのそれぞれは、「A型」位置異性体を示す1つのピークと、「B型」位置異性体を示す1つのピークを有する。得られた3つのクロマトグラムの2つのピークのピーク面積を計算することにより、対象としているOBI−821の6つの異性体それぞれの含有量を得ることができる。
【実施例】
【0061】
<例1:HILICによるOBI-821アジュバントの分離>
この試験は、6つの異性体の3つの主成分を観察できるようにOBI-821アジュバントを分離するために実施した。分析方法及び条件を下の表3及び表4にまとめた。1.0〜2.0 mgのテストサンプルをブランクバッファー(脱イオン水中の80%(v/v)アセトニトリル)に溶解して、OBI-821溶液(500μg/mL)を調製した。次に、そのOBI-821溶液をWATERS XBridgeアミドカラム(Waters Corporation、部品番号186004896)に注入した。HILICの移動相は、溶離液Aと溶離液Bの混合物だった。溶離液Aは脱イオン水(DI水)に溶解した0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸であり、溶離液Bはアセトニトリルだった。移動相の勾配は、表4に示す溶出プログラムとして以下のように設定した。
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
データ処理
1.214 nmでクロマトグラムを処理する。全てのピークを積分し、保持時間、ピーク面積(曲線下面積)、及び全てのピークの面積%を記録する。(注:ブランクからの溶媒ピークの積分は避けてください)。面積%は、質量%(wt/wt)として理解できる。
2.相対的保持時間(リテンションタイム,RRT)の計算
RRTは、ピーク1990-V1の保持時間に対する、そのピークの保持時間の比率である。1990-V1の保持時間は、OBI-821溶液のメインピークの平均保持時間によって定義される。
RRT = RT
peak / RT
1990-Api
3.ピークの識別
3つのOBI-821成分(1858、1990-V1、及び1990-V2)は、表5に示す相対保持時間(RRT)によって次のように識別される。
【0065】
【表6】
【0066】
データ解析
1.システム適合性テスト(SST)
SSTの結果は、OBI-821溶液の注入から得られる。1990-ApiのRTとピーク面積の相対標準偏差(RSD%)を計算する。RTとピーク面積の許容基準は2%未満であるべきである。
2.糖異性体の分布
糖異性体の分布は、ピークのピーク面積によって決定される。
1858(%)= 1858のピーク面積/3つのピーク(1858、1990-V1、及び1990-V2)のピーク面積の合計×100%
1990-V1(%)= 1990-V1のピーク面積/3つのピーク(1858、1990-V1、及び1990-V2)のピーク面積の合計×100%
1990-V2(%)= 1990-V2のピーク面積/3つのピーク(1858、1990-V1、及び1990-V2)のピーク面積の合計×100%
【0067】
結果を平均し、相対標準偏差(%RSD)を計算する。最終結果を平均含有量±標準偏差として表す。
【0068】
図1に示すように、OBI-821のクロマトグラフは、それぞれ9.661分(以下、ピーク1; OBI-821-1858)、10.113分(以下、ピーク2; OBI-821-1990-V1)、及び10.560分(以下、ピーク3; OBI-821-1990-V2)の保持時間に3つの主要なピークを示した。また、6.300分の保持時間に別のピークがあり、これはHILICの溶媒ピークである。
【0069】
前述の3つの主要なピークの溶出液をさらに特定するために、OBI-821の前述の3つのピークの画分(フラクション)を収集し、ネガティブESI MSで調べた。
図2に示すように、m/z 1989が、OBI-821-1990-V1(ピーク2)及び-V2(ピーク3)で観察され、m/z1857が、-1858(ピーク1)で観測された。これらのm/zの結果は、それぞれ理論分子量1990.13192(C
92H
148O
46)及び1858.0173(C
87H
140O
42)と一致している。
【0070】
OBI-821異性体の構造を確認するために、ESI MSのおける3つのピークの溶出液を、直接注入MS/MSおよびMS/MS/MS分析による構造分析にさらに適用した。タンデムMSの構造情報を
図3(A)にまとめてある。MS/MSスペクトルを
図3(B)に示し、図中の印をつけた質量ピークを、MS/MS/MS分析用に選択している。タンデム質量スペクトルは、フラグメントイオンと親イオンの間の対応する構造関係を示していた。
【0071】
次に、パルス電流検出を備えた高性能陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAEC-PAD)単糖分析(Thermo Fisher Scientific, CarboPac PA1カラム(部品番号035391, 4x250 mm)を備えたDionexICS-5000)を実施して、3つの画分(フラクション)の固有性をさらに区別した。OBI-1990-V1、-V2、及び-1858を、HILICから収集し、ロータリーエバポレーターによって濃縮した。濃縮されたOBI-1990-V1、-V2、及び-1858を、4M TFAによって100℃で4時間加水分解し、凍結乾燥した。凍結乾燥後、OBI-1990-V1、-V2、及び-1858をDI(脱イオン)水で再構成し、パルス電流検出を備えた高性能陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAEC-PAD)で分析した。移動相Aとして200 mM水酸化ナトリウムを使用し、移動相BとしてDI(脱イオン)水を使用した。移動相Cとして500 mM酢酸ナトリウムを含む100 mM水酸化ナトリウムを使用した。
【0072】
移動相の初期組成は、91%の移動相A及び9%の移動相Bで10分間保持した。次に、90%の移動相Aと10%の移動相Cに切り替え、その後10分で60%の移動相Aと40%の移動相Cまで直線的に勾配を付けた。次に、100%の移動相Aによる洗浄ステップを20分間実施した。
【0073】
図4と表6に示す結果によると、3つの溶出液は全て、1つのフコース、1つのラムノース、1つのガラクトース、1つのグルクロン酸、及び1つのアラビノースを有していたが、キシロース及びアピオースの数が異なっていた。ピーク1の画分は、2つのキシロースを有していたが、アピオースは有していなかった。ピーク2の画分には、2つのキシロース及び1つのアピオースを有していた。ピーク3の画分は、3つのキシロースと0個のアピオースを有していた。したがって、3つの画分は、それぞれ、OBI-821-1858異性体、OBI-821-1990-V1異性体、及びOBI-821-1990-2異性体として同定された。つまり、この試験で実施されたHILIC分析は、OBI-821の6つの異性体の3つの主成分を分離することができた。言い換えれば、OBI-821の3つの主要な成分は、前述のHILIC分析を通じて明確に観察できる。
【0074】
【表7】
【0075】
<例2:RP-HPLCによるOBI-821アジュバントの位置異性体の同定>
この試験では、OBI-821を、その位置異性体を同定するために逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)で分離した。当技術分野で知られているように、OBI-821は、フコースの4-ヒドロキシル位置に結合したアシル基を有するA型位置異性体、及び3-ヒドロキシル位置にアシル基を有するB型位置異性体を有する。RP-HPLCの条件を次の表7及び表8に示す。簡単に説明すると、テストサンプルを製剤バッファーに溶解(1.25 mg/mL)し、YMC-Pack C4カラム(部品番号BU30S05-2546WT, 5μm, 4.6×250mm)に注入し、カラムを15分で、0.1%TFA水溶液/アセトニトリル勾配からなる移動相によって溶出した。次に、溶出液を214 nmの紫外線で検出した。
【0076】
【表8】
【0077】
【表9】
【0078】
データ処理
1.214 nmでクロマトグラムを処理する。統合パラメーターは以下のとおりである。
(a)ピーク幅:30
(b)しきい値:50.0
(c)最小ピーク高さ:2000
(d)積分時間:6〜17分
【0079】
2.ピーク定義
YMC-Pack C4クロマトグラフィーにおいて、OBI-821はメジャーピークとマイナーピークから構成されている。メジャーピークとマイナーピークの保持時間を記録する。メジャーピークに対するマイナーピークの相対保持時間(RRT)は、0.95〜0.97の範囲内となるはずである。
【0080】
データ解析
1.システムの適合性
平均保持時間及びピーク面積、並びに相対標準偏差(RSD)を計算する。RT及びピーク面積のRSDは2%未満である必要がある。SSTのピークもこの基準を満たす必要がある。
USPテーリング:0.5〜2.0
USPプレート数:≧8000
解像度:≧1.8
【0081】
2.OBI-821の識別:
試験サンプルのピークの保持時間(リテンションタイム)を記録する。試験サンプルの保持時間は、OBI-821参照標準の保持時間に対応している必要がある。その標準との保持時間の差は2%以内である必要がある。
【0082】
3.OBI-821の純度と不純物の測定
純度と不純物は、以下のように、ピーク面積%を記録するピーク面積分析によって決定される。
純度(%)=(A
OBI-821/A
総ピーク)
単一不純物(%)=(A
単一不純物ピーク/A
総ピーク)
総不純物(%)=(A
総不純物ピーク/A
総ピーク)
A
OBI-821 = 試験サンプルのメジャーピークとマイナーピークのピーク面積の合計
A
単一不純物ピーク = 溶媒ピークを除いた単一不純物ピークのピーク面積
A
総不純物ピーク= 溶媒ピークを除いた全ての単一不純物ピークのピーク面積の合計
A
総ピーク= 溶媒ピークを除いた全てのピークのピーク面積
各試験サンプルの純度(%)及び不純物(%)の値を平均する。
【0083】
結果を
図5に示す。9.912分の保持時間にメジャーピークがあり、9.526分にマイナーピークがあった。メジャーピークは、OBI-821-1858-A、OBI-821-1990-V1A、及びOBI-821-1990-V2Aを含むA型位置異性体を表している。マイナーピークは、OBI-821-1858-B、OBI-821-1990-V1B、及びOBI-821-1990-V2Bを含むB型位置異性体を表している。7.104分におけるさらなるピークが不純物として同定された。したがって、この結果は、この試験のRP-HPLCがOBI-821の2つの形態の位置異性体を分離することができるのでその存在と含有量を明確に観察できることを証明した。
【0084】
さらに、前述の不純物ピーク、メジャーピーク、及びマイナーピークの相対保持時間を、メジャーピークの保持時間を標準として用いて計算した(表9)。さらに、純度は約96.72%だった。得られた結果とともに、ここで開示したRP-HPLCは、対象とするOBI-821の純度を決定するのに有用だった。
【0085】
【表10】
【0086】
<例3:HILICとRP-HPLCの縦列組み合わせ(タンデムコンビネーション)によるOBI-821の6つの異性体の同定>
例1に記載した試験は、ここでのHILIC分析がOBI-821の異性体の3つの主要な成分を分離することができるという証拠を提供した。例2の試験は、ここでのRP-HPLC分析がOBI-821の位置異性体を観察するのに有用であることを確認した。したがって、ここでのHILIC分析とRP-HPLC分析を縦列(タンデム)に組み合わせて、HILIC分析において収集されたフラクションを各フラクションのA型位置異性体とB型位置異性体にさらに分割できるようにすることは合理的である。次に、OBI-821の6つの異性体を分離し、それらの含有量を計算することができた。
【0087】
この試験においては、前述の例1に記載されているように、6つのアジュバント物質サンプルをHILIC分析に適用して、3つの主成分に対応する3つの画分を収集した。その後、各画分を、前述の例2に開示されているようにそれぞれRP-HPLC分析にかけて、それらの位置異性体を分離した。したがって、分析の最後には、6つの異性体が各OBI-821サンプルから得られることが予想された。各異性体の含有量を計算するために、各サンプルの6つのピークのピーク面積を決定した。OBI-821 AS(アジュバント物質)及びOBI-821 AP(アジュバント製品)の結果を表10及び表11に示す。
【0088】
【表11】
【0089】
【表12】
【0090】
報告したパーセント割合は正規化されており、HILIC及びRP-HPLCのクロマトグラフィーデータから計算したものである。3つの主要な異性体、OBI-821-1990-V1A、-V2A、及び1858-Aは、クロマトグラフィー組成によりOBI-821アジュバントの90%より多くを占めている。これらの3つの主要な異性体は、フコース残基の4-ヒドロキシル基に結合した脂肪アシル(fatty acyl)置換基から形成されていることが判明している。6つの異性体のうち、OBI-821-1990-V1Aは49〜63%を占め、OBI-821アジュバントの主要な異性体である。
【0091】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語並びに全ての頭字語は、本発明の技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。 本明細書に記載されているものと類似又は同等の情報を伝えるための任意の組成物、方法、キット、及び手段を使用して本発明を実施することができるが、情報を伝えるための好ましい組成物、方法、キット、及び手段が本明細書に記載されている。
【0092】
本明細書において引用されている全ての参考文献は、法律で許可される全範囲を参照することにより本明細書に援用する。これらの参考文献の説明は、単にその著者による主張を要約することを目的としている。参考文献(又は参考文献の一部)が、関連する先行技術であることは認められない。出願人は、引用された参考文献の正確性と適切性に異議を申し立てる権利を留保する。
【国際調査報告】