(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-519702(P2021-519702A)
(43)【公表日】2021年8月12日
(54)【発明の名称】作業装置または救助装置の動作方法、および作業装置または救助装置
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20210716BHJP
B26B 15/00 20060101ALI20210716BHJP
A62B 99/00 20090101ALN20210716BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25F5/00 H
B26B15/00
A62B99/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-555173(P2020-555173)
(86)(22)【出願日】2018年4月17日
(85)【翻訳文提出日】2020年10月8日
(86)【国際出願番号】EP2018059715
(87)【国際公開番号】WO2019201424
(87)【国際公開日】20191024
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】599130287
【氏名又は名称】ルーカス ヒュードラウリク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ザウアービアー、カルステン
(72)【発明者】
【氏名】キルヒナー、ウーヴァ
【テーマコード(参考)】
2E184
3C064
3C065
【Fターム(参考)】
2E184JA01
2E184KA11
3C064AA07
3C064AB03
3C064AC02
3C064AC05
3C064AC10
3C064BA13
3C064BA20
3C064BA36
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3C064CB71
3C064DA02
3C064DA23
3C064DA28
3C064DA34
3C064DA59
3C064DA91
3C064DA93
3C064DA94
3C065EA02
3C065EA08
3C065EA26
3C065FA01
(57)【要約】
本発明は、操作者が持ち運ぶことや自律的に用いられることが可能な電気機械式または電気油圧式の作業装置もしくは救助装置(1)の動作方法であって、該作業装置または救助装置(1)が、2つの部分(2aおよび2b)に二分される切断工具(2)であって、該2つの切断工具部分が、互いに接近および離間するよう動き、その動きによって仮想切断面E1を規定し得る、切断工具(2)と、ハウジング(3)と、電気モータ(4)と、工具インサートを作動させるための、電気モータ(4)によって駆動されるポンプ(5)または電気モータ(4)によって駆動される機械式動力伝達装置と、装置側においては作業装置もしくは救助装置(1)内または作業装置もしくは救助装置(1)上に収容され、かつ、自身のハウジング(6a)を有する、交換可能かつ再充電可能な電気エネルギー源(6)と、を備え、作業装置または救助装置(1)の動作中に作業装置または救助装置(1)の向きが検知され、空間における作業装置または救助装置(1)の切断面E1の角位置Wと、切断工具(2)が切断対象(10)に加える力との間の関係を確定し、その関係に応じて作業装置または救助装置(1)を制御する、方法に関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータが装着してもよく独立して用いられてもよい電気機械式または電気油圧式の作業装置もしくは救助装置(1)の動作方法であって、
該作業装置または救助装置(1)が、
2つの部分(2aおよび2b)に二分される切断工具(2)であって、該2つの切断工具部分が、互いに接近および離間するよう動き、その動きによって仮想切断面E1を規定し得る、切断工具(2)と、
ハウジング(3)と、
電気モータ(4)と、
工具インサートを動作させるための、該電気モータ(4)によって駆動されるポンプ(5)または該電気モータ(4)によって駆動される機械式動力伝達装置と、
該作業装置もしくは救助装置(1)内または該作業装置もしくは救助装置(1)上に格納され、好ましくは交換可能である、エネルギー源、好ましくは再充電可能な電気エネルギー源(6)と、を備え、
該作業装置または救助装置(1)の動作中に該作業装置または救助装置(1)の向きが記録される、方法において、
空間における該作業装置または救助装置(1)の切断面E1の角位置Wと、該切断工具(2)が切断対象(10)に加える力とを、相互に関連させて設定し、それらに基づいて該作業装置または救助装置(1)を制御することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記切断対象(10)に加えられる力Pを、前記電気モータ(4)に流れる電流(P1)として確定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記角位置W、および/または、前記力P、および/または、これらから得られるパラメータを、設定値、設定値特性曲線、および/または、設定値特性マップと比較し、それに基づいて動作イベントGを発生させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
空間において、および/または、前記切断対象(10)の位置に対して、前記作業装置または救助装置(1)の切断面E1の角位置Wを、初期化する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記初期化後に、前記角位置Wの変化を測定する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記角位置Wが予め設定された臨界角度ずれW(krit)に達すると、動作イベントを発生させる、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記角度ずれW(krit)が、10〜20°、好ましくは10〜30°である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記動作イベントGが、
警告を発すること、および/または、
過負荷制限が有効になること、および/または、
前記電気モータ(4)を制御すること、である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記初期化を、切断工程の開始により前記力が特定の値に達した時点、および/または、増加している段階で行う、請求項4〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記モータに流れる電流P1の測定値またはその流れを前記初期化のために用いる、請求項4〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記作業装置または救助装置(1)の切断面E1の角位置Wの変化を、切断中に空間において確定する、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記作業装置または救助装置(1)の、長手方向軸周りもしくは平行線周りの回転位置、および/または、回転を、前記角位置Wとして記録する、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
リアルタイムで行われる、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
オペレータが装着してもよく独立して用いられてもよい電気機械式または電気油圧式の作業装置もしくは救助装置(1)であって、
2つの切断工具部分(2aおよび2b)に二分される切断工具(2)であって、該2つの部分が、互いに接近および離間するよう動き、その動きによって仮想切断面E1を規定し得る、切断工具(2)と、
ハウジング(3)と、
電気モータ(4)と、
工具インサートを動作させるための、該電気モータ(4)によって駆動されるポンプ(5)または該電気モータ(4)によって駆動される機械式動力伝達装置と、
該作業装置または救助装置(1)内または該作業装置または救助装置(1)上に格納され、好ましくは交換可能である、エネルギー源、好ましくは再充電可能な電気エネルギー源(6)と、を備え、
該作業装置または救助装置(1)の動作中に該作業装置または救助装置(1)の向きが記録される、装置において、
請求項1〜13のいずれかに記載の方法に従って動作することを特徴とする、作業装置または救助装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に係る作業装置または救助装置の動作方法、および請求項14の前提部に係る作業装置または救助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オペレータが装着し得る、本明細書で述べるタイプの可搬型電動式作業装置または救助装置は、種々の用途に用いられている。例えば、事故に遭った車両から負傷者を救助したり地震の被災者等を救出したりするために救急隊(消防隊)によって用いられる切断装置がある。ここでいう作業装置または救助装置には多くのタイプがある。切断、拡張、または持ち上げ用の工具インサート、好ましくは硬化された工具インサートを備える、電気油圧駆動または電気機械駆動の作業装置もしくは救助装置が存在する。このような装置は、使用時に極めて高い機械的要求が課され、使用場所によって多様な環境的影響(熱、寒さ、湿気)に曝される。
【0003】
自動車産業における技術的進歩の結果、より硬質の材料の使用が増加している。したがって、救助装置は、これらのますます多くなっている要件に合わせて設計する必要がある。
【0004】
非常に硬質の材料を切断する際、切断装置の切断刃または剪断刃は、切断対象(例えば、車両のAピラーまたはBピラー)に食い込み得るものの、その後は、増加し続ける力にもかかわらず、それ以上材料に入り込まない。この増加し続ける力もしくはその結果生じる圧力によって、切断装置は、負荷を受けて、切断対象に対して徐々に回転し始める。そして、このことによって、切断刃または剪断刃がますます開いていき、その結果、切断刃または剪断刃の回動中心となる中心ボルト等の部品がますます大きな歪みを受けることになる場合がある。最悪の場合、このような条件下で部品が破損してしまうことすらある。そして、このことによって、部品が飛び、オペレータが負傷する結果になる場合もある。
【0005】
先行技術文献
国際公開第2017/190799(A1)号は、請求項1の前提部に係る方法を開示している。この方法においては、作業装置または救助装置の動作中に幅広い動作データが記録され、電気エネルギー源に格納されたデータキャリアまたはデータ記憶装置に転送される。電気エネルギー源のデータキャリアまたはデータ記憶装置に蓄積された動作データは、充電器によって読み出され、さらにネットワークに送信され、中央に蓄積される。この手段の目的は、主に、すべての装置の使用に関する動作履歴を生成し、それを中央でドキュメンテーションする(documented)ことである。動作データは、電気モータに流れる電流や空間における作業装置または救助装置の向きを含む種々のパラメータであり得る。すべての作業装置は、ドキュメンテーション内で個別の作業装置を識別するための個別のIDを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、より高い動作安全性を確保する一般的な方法を提供することを目的とする。さらに、対応する作業装置または救助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、一般的な方法においては請求項1の特徴によって達成され、一般的な作業装置または救助装置においては請求項14の特徴によって達成される。
【0008】
本発明の好適な実施形態は、従属請求項に記載される。
【0009】
空間における、あるいは、切断対象の位置/向き、および/または、切断工具が切断対象に加える力に対する、作業装置または救助装置の切断面E1の角位置Wを、相互に関連させて設定し、それらに基づいて作業装置または救助装置を制御するため、負荷を受けて切断対象に対して回転する作業装置または救助装置において、作業工具または救助装置の損傷やオペレータの負傷を有効に防止することができる。この場合、「切断面E1」とは、切断工具が二分された部分のうちの一方が回動する際に当該切断工具部分の刃先によって形成される平面を意味する。上記に鑑みて、従来の作業装置または救助装置と比較して、動作安全性の向上が確保される。
【0010】
切断対象に加えられる力もしくはその結果として生じる圧力は、電気モータに流れる電流P1を確定することによって確定されるか、または、該電流P1から導出されることが好ましい。電気モータに流れる電流が大きいほど、その駆動トルク、つまり、電気モータによって駆動されるポンプによって増加する圧力もしくは力が大きくなる。
【0011】
角位置W、および/または、力P、および/または、電流P1、および/または、これらから得られるパラメータを、設定値、設定値特性曲線、および/または、設定値特性マップ、および/または、ルックアップテーブルと便利に比較し、これに基づいて動作イベントGを発生させる。
【0012】
例えば、角位置Wが予め設定された臨界角度ずれW(krit)に達するか、または、当該臨界角度ずれW(krit)を超えると、動作イベントGを発生させ得る。
【0013】
上記角度ずれW(krit)は、開始位置を基準として、例えば10〜30°、好ましくは10〜20°とし得る。
【0014】
例えば、角位置Wと力Pまたは電流P1とを組み合わせた場合にも、動作イベントGを発生させ得る。例えば、上記のパラメータの組み合わせ(または関係)から新しい制御パラメータを定めてもよい。
【0015】
動作イベントGとしては、特に、下記が挙げられる
−警告を発すること、例えば、警告音、および/または、視覚による警告信号、
−過負荷制限が有効になること、例えば、力もしくは圧力を、例えば特定のモータ制御により、それ以上増加させないこと、および/または、
−電気モータの制御に影響を与える別の方法、および/または、
−角位置W、角度ずれW(krit)、力P、電流P1、および/または、実時間Tに関する動作データを保存すること。
【0016】
切断工程の初めにおいては、例えば事故に遭った車両のAピラーまたはBピラーを切断する場合、作業装置または救助装置が水平に対して不明確な空間位置に配置されることがあるため、空間における、または、切断対象の位置に対する、作業装置または救助装置の切断面E1の角位置Wを判定するために、初期化を実施することが好都合である。この初期化は、切断工程の開始時、すなわち、切断工具部分を負荷無しで動かす段階、すなわち、切断工具部分を単に切断対象に接近させる段階の終了時に、便利に行われる。この段階の終了時には、切断工具部分は、通常、切断対象に対して少なくとも略垂直な角度で位置している。
【0017】
この初期化によれば、少なくとも実質的に、角位置Wの変化を測定する基準となる明確な初期角位置Wが確定される。例えば、これは、切断面が切断対象の長手方向軸または長手延在方向に対して90°の角度で配置された角位置Wである。しかしながら、必ずしもこの通りである必要はない。
【0018】
初期化は、特定の力Pもしくは圧力または電気モータに流れる特定の電流P1に達すると実施されることが好ましい。例えば、これは、切断工程が開始された後の動作段階、すなわち、力Pもしくは圧力または電気モータに流れる電流P1が、増加し始める時、または、特定の値に達した時である。
【0019】
本発明に係る方法は、リアルタイムで、すなわち、実際の時間の条件下で、便利に行われるため、動作イベントGの条件が存在する場合は、動作中に即時に制御介入が行われ得る。
【0020】
本発明は、また、請求項1から13のうちの少なくとも1項に記載の方法に従って動作する、オペレータが装着してもよく独立して用いられてもよい、電磁式または電気油圧式の作業装置もしくは救助装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明に係る方法において用いられる救助装置の平面図である。
【
図3】
図3は、切断工程の開始時の
図1に係る救助装置の斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に係る救助装置の2つの切断工具部分に対する切断対象の位置を示す異なる図の大幅に簡略化した部分図である。
【
図5】
図5は、異なるパラメータの経時的な変化を大幅に簡略化して示した図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る方法において用いられる機能的ハードウェア構成要素を示す大幅に簡略化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について、より詳細に説明する。
【0023】
図1の参照符号1は、オペレータが装着してもよく独立して用いられてもよい作業装置または救助装置の一例を示す。本例においては、これは、事故に遭った車両に閉じ込められた人を救出するための救助装置として消防隊によく用いられる、電気油圧式カッターである。上記装置は、ハンドル14と星形弁(star valve)の形態の手動で作動できる開閉弁12とを有するハウジング3を含む。参照符号7は、ハウジング3上に配置された主スイッチを示す。このハウジング3にシリンダ11が隣接し、該シリンダ11には、同様に、持ち運び用ハンドル13が配置されている。シリンダ11の前部には、切断工具2が配置されており、該切断工具2は、硬化材料製の2つの切断工具部分2aおよび2bからなる工具インサートの形態であり、該2つの切断工具部分は、ボルト(中心ボルト)(
図1では見えない)を中心にして回動可能に取り付けられている。開閉弁12の操作に応じて2つの切断工具部分2aおよび2bを互いに接近または離間させることができる。
【0024】
図2から分かるように、エネルギー源6として、自身のハウジングを有する蓄電池が設けられてもよく、該蓄電池は、ハウジング3の対応する受けシャフト3aに挿入され得る。エネルギー源6をハウジング3の受けシャフト3aに固定するために、エネルギー源6には、保持用クランプ6aが両側に配置されており、該保持用クランプ6aは、エネルギー源6を受けシャフト3aから取り外すことができるようにするために、指で押すことによって操作され得る。ハウジングの内部には、電気モータ(
図1および
図2には図示せず)が、油圧ポンプ(同様に、
図1および
図2には図示せず)を駆動するために設けられている。主スイッチ7が操作されると、電気モータ、ひいてはポンプがオンまたはオフに切り替えられる。開閉弁12によって、オペレータは、装置を待機モード(シリンダ11が印加されず、切断工具インサート2aおよび2bは動かない。)、切断モード(工具インサート2aおよび2bが互いに接近する。)、または開放モード(工具インサート2aおよび2bが互いに離間する。)で動作させ得る。工具インサート2aおよび2bが互いに接近する切断モードでは、切断工具インサート2aおよび2bが切断対象まで近付けられてもよく、材料が切断されてもよい。
【0025】
2つの切断工具部分2aおよび2bは、ボルトを中心にした回動時に、互いに接触する刃先によって、
図2に示す切断面E1を規定する。Aは、作業装置または救助装置1の長手方向軸を示す。
【0026】
図3に、切断の開始時の救助装置1と切断対象10とを示す。2つの切断工具部分2aおよび2bが切断対象10の両側に係合している。
図3において、切断面E1を、点線で表された平面として斜視図で示している。この場合、切断工程の開始時に、切断面E1は、切断対象10の長手方向軸Lに対して、または、切断面E1上にある(仮想の)回転軸D周りの切断対象10の(仮想の)回転によって規定される平面E2に対して、略直角に延びている。
【0027】
図4(b)はこの状況を示しており、大きく簡略化した部分断面図において、2つの切断工具部分2aおよび2bが破線で描かれている。切断対象10を切断面E1上の回転軸D周りに回転させた場合、切断面E1は、切断対象10の長手延在方向もしくは長手方向軸Lに対して略直角のままである。Aは、作業装置または救助装置1の長手方向軸を示す(
図2参照)。
【0028】
図4(a)は、切断対象10の上下に係合する2つの切断工具インサート2aおよび2bのみを示す正面図である。
図4(a)は、切断面E1に沿って見た図である。
【0029】
図4(a)に示す状況は、切断工程の初めを図示しており、2つの切断工具部分2aおよび2bは、切断対象10に接近するよう動いた状態か、または、図示するように、切断対象10に当接している状態である。この段階において、切断面E1は、通常、少なくとも実質的に、切断対象10の長手方向軸Lに対して90°に向いている。切断工具の動作を継続すると、2つの切断工具部分2aおよび2bは切断対象10の材料に徐々に食い込んでいく。
【0030】
図4(c)から分かるように、増加する圧力もしくは増加する力によって、特に、硬質な切断対象10においては、救助工具1が、その長手方向軸A周りに徐々に回転または回動し、したがって、切断対象10の長手方向軸Lまたは平面E2(
図3参照)に対して切断面E1が徐々に回転または回動する。この回転または回動によって、角位置Wが決まる。このように徐々に回転または回動することによって、2つの切断工具インサート2aおよび2bを互いに離れさせようとする力ベクトルが大きくなる。この場合、「角位置W」とは、切断対象10の長手方向もしくは長手方向軸Lまたは平面E2に対する切断面E1の角位置を意味する。これは、最初は、通常、切断面E1に対して略90°であり、圧力もしくは力の増加に伴って変化する。しかしながら、特定の切断対象については、あるいは、特定の条件下では、初期角度が90°以外の角度であってもよい。
【0031】
この目的のために、空間において、および/または、切断対象10の位置に対して、作業装置または救助装置1の切断面E1の角位置Wが、初期化される。初期化後、切断工程中に生じる角位置Wの変化が測定される。
【0032】
初期化は、切断工程の開始により力が特定の値に達した時点、および/または、増加している段階で、便利に行われる。モータに流れる電流P1についての特定の値、または、その特定の流れが、初期化のために特に好都合に用いられ得る。例えば、作業装置または救助装置1の動作を開始させると、2つの刃先が切断対象まで導かれ、切断工程が開始され、力もしくは圧力またはモータに流れる電流P1が増加する。予め設定された力変数もしくは圧力またはモータに流れる電流P1に達すると、角度測定の初期化が行われる。
【0033】
本発明によると、許容される角位置Wは、特定の回動範囲、例えば、上記90°の位置に対して10〜30°、好ましくは10〜20°のずれ範囲のみに限定される。許容範囲の終わりは、超えると動作イベントGを発生させることができる角度ずれW(krit)を規定する。動作イベントGは、警告を発することであってもよく、過負荷制限が有効になることであってもよく、電気モータの制御に影響を与えることであってもよく、および/または、角位置W、角度ずれW(krit)、力P、電流P1、および/または、実時間Tに関する動作データを保存することであってもよい。
【0034】
したがって、本発明は、救助装置または作業装置の動作中に危険な状況を的を絞って検出し、その特定の事例に応じた制御手段をとることを可能にする。
【0035】
2つの切断工具インサート2aおよび2bが切断対象10に加える力もしくは圧力は、電気モータに流れる電流P1から好都合に導出され得る。この点に関して、角位置Wと力Pまたは電流P1とから、当該特定の動作状況を有効に記録することを可能にする新しい制御変数が作成されてもよい。
【0036】
角位置W、および/または、力P、および/または、これらから得られるパラメータは、設定値、設定値特性曲線、および/または、設定値特性マップと比較され得る。これに基づいて少なくとも1つの動作イベントGが発生し得る。動作イベントGは、例えば、警告を発することであってもよく、および/または、過負荷制限が有効になることであってもよく、および/または、電気モータ4への別の制御介入であってもよい。
【0037】
図5のグラフは、電気モータに流れる電流P1の時間Tに対する変化を示している。最初に、主スイッチ7を操作することによって救助装置の動作を開始させる。その結果、電気モータが始動され、アイドル状態となる(段階A)。特定の時間T1の経過後、オペレータが開閉弁12を操作し、それにより、作動液が移送され、2つの切断工具部分2aおよび2bが負荷を受けずに切断対象10に接近するよう動く(無負荷段階B)。時点T2において、2つの切断工具部分2aおよび2bが切断対象10の外側に係合し、徐々に材料に食い込む。この時点または時間領域から、切断対象10にかかる力Pもしくは圧力が、切断対象10の抵抗の結果として、増加する(段階C)。負荷期間Cの間、電気モータに流れる電流が連続的に増加する。力Pもしくは圧力も、それに応じて増加する。
【0038】
角位置Wまたはその変化(
図5における破線)の測定を初期化するために特定の力P(init)(もしくは圧力)または特定の電流P1(init)が好都合に用いられ得る。「初期化」とは、角位置Wの測定がこの時点から開始されることを意味する。したがって、この時点から、力(圧力)と角位置の両方を、相互に関連させて設定して、作業装置または救助装置1の動作を制御するために用い得る。これにより、角位置Wの自動初期化を好都合に実現し得る。
【0039】
硬質材料においては、この力もしくは圧力の増加によって、救助装置の切断面E1が、
図4cに示したように、切断対象10の長手方向軸または長手方向Lに対して徐々に回動する。
図5の2段目にこの回動が示されており、回転角Wの度数が経時的に示されている。角位置W(kri)に達すると、少なくとも1つの動作イベントGが自動的に発生する。例えば、
図5に示すように、動作にもかかわらず、作業装置または救助装置1の構造部品にこれ以上の機械負荷がかからないように、力(圧力)または電気モータに流れる電流が制御装置によって制限されてもよい。同様に、視覚的、および/または、音響的な警告が発せられてもよい。
【0040】
図5から分かるように、本発明によると、切断対象10に対する救助装置1の許容されない回転を記録し、動作イベントGを発生させることによってそれを防止するために、回転角Wおよび力Pもしくは圧力または電気モータに流れる電流P1というパラメータを用いて、2つのパラメータを相互に関連させて設定し得る。
【0041】
図6は、本発明に係る方法を実施するための本発明に係る制御装置の個々の機能的構成要素を示す。作動液を移送するためのポンプ5は、電気モータ4によって駆動され、電気モータ4は、そのエネルギーをエネルギー源6、例えば蓄電池から得る。参照符号8はマイクロプロセッサを示す。マイクロプロセッサは、制御装置の個々の機能タスクを行うものであり、位置センサ15と電流センサ16とに接続される。さらに、マイクロプロセッサ8は、救助装置または作業装置に配置されたディスプレイ9と、記憶装置17と、音響モジュール18とにも接続される。警告は、動作イベントGの形態で、ディスプレイ9に表示され得る。あるいは、またはさらに、音響信号が、この場合は音響モジュール18において生成され得る。さらに、該当するパラメータ、例えば、角位置W、力Pもしくは圧力、および/または、電気モータに流れる電流P1、あるいはこれらの組み合わせが、記憶装置17に蓄積され得る。その結果、特に、動作イベントGがリアルタイム条件T下でドキュメンテーションされ得る。同様に、位置センサ15がマイクロプロセッサ8に接続されている。この位置センサ15は、回転速度センサであってもよく、X、Y、およびZ方向の動きとX、Y、およびZ方向周りの回転とを可能にするジャイロスコープであってもよい。さらに、マイクロプロセッサ8は、モータに流れる電流P1を記録するセンサ16にも接続されている。制御装置は、モータの切り替え可能な電力制限を可能にする手段を備えていてもよい。
【0042】
本発明に係る方法は、リアルタイムで実施されることが好ましい。これにより、危険な動作状況とそれに起因する損害とを回避することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 救助装置
2 切断工具
2a 切断工具部分
2b 切断工具部分
3 ハウジング
3a 受けシャフト
4 電気モータ
5 ポンプ
6 エネルギー源
6a 保持用クランプ
7 主スイッチ
8 マイクロプロセッサ
9 ディスプレイ
10 切断対象
11 シリンダ
12 開閉弁
13 持ち運び用ハンドル
14 ハンドル
15 位置センサ
16 電流センサ
17 記憶装置
18 音響モジュール
D 回転軸
E1 切断面
E2 平面
G 動作イベント
L 長手方向軸
P 力
P1 電流
T 実時間
W 角位置
W(krit) 角度ずれ
A 長手方向軸
【手続補正書】
【提出日】2020年10月8日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータが装着してもよく独立して用いられてもよい電気機械式または電気油圧式の作業装置もしくは救助装置(1)の動作方法であって、
該作業装置または救助装置(1)が、
2つの部分(2aおよび2b)に二分される切断工具(2)であって、該2つの切断工具部分が、互いに接近および離間するよう動き、その動きによって仮想切断面E1を規定し得る、切断工具(2)と、
ハウジング(3)と、
電気モータ(4)と、
工具インサートを動作させるための、該電気モータ(4)によって駆動されるポンプ(5)または該電気モータ(4)によって駆動される機械式動力伝達装置と、
該作業装置もしくは救助装置(1)内または該作業装置もしくは救助装置(1)上に格納され、好ましくは交換可能である、エネルギー源、好ましくは再充電可能な電気エネルギー源(6)と、を備え、
該作業装置または救助装置(1)の動作中に該作業装置または救助装置(1)の向きが記録される、方法において、
切断対象(10)に加えられる力Pを、該電気モータ(4)に流れる電流(P1)として、時間Tに対して確定し、
空間において、且つ/または、該切断対象(10)の位置に対して、該作業装置または救助装置(1)の切断面E1の角位置Wを、初期化し、
空間における該作業装置または救助装置(1)の切断面E1の角位置Wと、該切断工具(2)が切断対象(10)に加える力とを、相互に関連させて設定し、それらに基づいて該作業装置または救助装置(1)を制御し、それに基づいて動作イベントGを発生させることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記角位置W、および/または、前記力P、および/または、これらから得られるパラメータを、設定値、設定値特性曲線、および/または、設定値特性マップと比較し、それに基づいて動作イベントGを発生させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記初期化後に、前記角位置Wの変化を測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記角位置Wが予め設定された臨界角度ずれW(krit)に達すると、動作イベントを発生させる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記角度ずれW(krit)が、10〜20°、好ましくは10〜30°である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記動作イベントGが、
警告を発すること、および/または、
過負荷制限が有効になること、および/または、
前記電気モータ(4)を制御すること、である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記初期化を、切断工程が開始したことにより前記力が特定の値に達した時点、および/または、増加している段階で行う、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記モータに流れる電流P1の測定値またはその流れを前記初期化のために用いる、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記作業装置または救助装置(1)の切断面E1の角位置Wの変化を、切断中に空間において確定する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記作業装置または救助装置(1)の、長手方向軸周りもしくは平行線周りの回転位置、および/または、回転を、前記角位置Wとして記録する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
リアルタイムで行われる、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
オペレータが装着してもよく独立して用いられてもよい電気機械式または電気油圧式の作業装置もしくは救助装置(1)であって、
2つの切断工具部分(2aおよび2b)に二分される切断工具(2)であって、該2つの部分が、互いに接近および離間するよう動き、その動きによって仮想切断面E1を規定し得る、切断工具(2)と、
ハウジング(3)と、
電気モータ(4)と、
工具インサートを動作させるための、該電気モータ(4)によって駆動されるポンプ(5)または該電気モータ(4)によって駆動される機械式動力伝達装置と、
該作業装置または救助装置(1)内または該作業装置または救助装置(1)上に格納され、好ましくは交換可能である、エネルギー源、好ましくは再充電可能な電気エネルギー源(6)と、
位置センサ(15)と、
電流センサ(16)と、
マイクロプロセッサ(8)と、を備え、
該作業装置または救助装置(1)の動作中に該作業装置または救助装置(1)の向きが記録される、装置において、
該マイクロプロセッサ(8)が、
該作業装置または救助装置(1)の動作中に該作業装置または救助装置(1)の向きが記録され、
切断対象(10)に加えられる力Pが、該電気モータ(4)に流れる電流(P1)として、時間Tに対して確定され、
空間において、および/または、該切断対象(10)の位置に対して、該作業装置または救助装置(1)の切断面E1の角位置Wが、初期化され、
空間における該作業装置または救助装置(1)の切断面E1の角位置Wと、該切断工具(2)が切断対象(10)に加える力とが、相互に関連させて設定され、それらに基づいて該作業装置または救助装置(1)が制御され、かつ、
それに基づいて動作イベントGが発生する、ように設計されたことを特徴とする、作業装置または救助装置(1)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に係る作業装置または救助装置の動作方法、および請求項
12の前提部に係る作業装置または救助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オペレータが装着し得る、本明細書で述べるタイプの可搬型電動式作業装置または救助装置は、種々の用途に用いられている。例えば、事故に遭った車両から負傷者を救助したり地震の被災者等を救出したりするために救急隊(消防隊)によって用いられる切断装置がある。ここでいう作業装置または救助装置には多くのタイプがある。切断、拡張、または持ち上げ用の工具インサート、好ましくは硬化された工具インサートを備える、電気油圧駆動または電気機械駆動の作業装置もしくは救助装置が存在する。このような装置は、使用時に極めて高い機械的要求が課され、使用場所によって多様な環境的影響(熱、寒さ、湿気)に曝される。
【0003】
自動車産業における技術的進歩の結果、より硬質の材料の使用が増加している。したがって、救助装置は、これらのますます多くなっている要件に合わせて設計する必要がある。
【0004】
非常に硬質の材料を切断する際、切断装置の切断刃または剪断刃は、切断対象(例えば、車両のAピラーまたはBピラー)に食い込み得るものの、その後は、増加し続ける力にもかかわらず、それ以上材料に入り込まない。この増加し続ける力もしくはその結果生じる圧力によって、切断装置は、負荷を受けて、切断対象に対して徐々に回転し始める。そして、このことによって、切断刃または剪断刃がますます開いていき、その結果、切断刃または剪断刃の回動中心となる中心ボルト等の部品がますます大きな歪みを受けることになる場合がある。最悪の場合、このような条件下で部品が破損してしまうことすらある。そして、このことによって、部品が飛び、オペレータが負傷する結果になる場合もある。
【0005】
先行技術文献
国際公開第2017/190799(A1)号は、請求項1の前提部に係る方法を開示している。この方法においては、作業装置または救助装置の動作中に幅広い動作データが記録され、電気エネルギー源に格納されたデータキャリアまたはデータ記憶装置に転送される。電気エネルギー源のデータキャリアまたはデータ記憶装置に蓄積された動作データは、充電器によって読み出され、さらにネットワークに送信され、中央に蓄積される。この手段の目的は、主に、すべての装置の使用に関する動作履歴を生成し、それを中央でドキュメンテーションする(documented)ことである。動作データは、電気モータに流れる電流や空間における作業装置または救助装置の向きを含む種々のパラメータであり得る。すべての作業装置は、ドキュメンテーション内で個別の作業装置を識別するための個別のIDを有する。
【0006】
独国特許発明第102015108833(B3)号明細書は、構造物を分離するための救助装置と、分離の動きを記録し、分離の動きが停止するかまたは所定の最低速度を下回るとブロッキング信号を発する少なくとも1つのブロッキングセンサを用いて救助装置を制御するための方法とに関する。例えば、例えばひずみゲージの形態の、力センサもしくは圧力センサが、上記ブロッキング信号として設けられ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、より高い動作安全性を確保する一般的な方法を提供することを目的とする。さらに、対応する作業装置または救助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、一般的な方法においては請求項1の特徴によって達成され、一般的な作業装置または救助装置においては請求項
12の特徴によって達成される。
【0009】
本発明の好適な実施形態は、従属請求項に記載される。
【0010】
空間における、あるいは、切断対象の位置/向き、および/または、切断工具が切断対象に加える力に対する、作業装置または救助装置の切断面E1の角位置Wを、相互に関連させて設定し、それらに基づいて作業装置または救助装置を制御するため、負荷を受けて切断対象に対して回転する作業装置または救助装置において、作業工具または救助装置の損傷やオペレータの負傷を有効に防止することができる。この場合、「切断面E1」とは、切断工具が二分された部分のうちの一方が回動する際に当該切断工具部分の刃先によって形成される平面を意味する。上記に鑑みて、従来の作業装置または救助装置と比較して、動作安全性の向上が確保される。
【0011】
本発明によると、切断対象に加えられる力もしくはその結果として生じる圧力は、電気モータに流れる電流P1を確定することによって確定されるか、または、該電流P1から導出され
る。電気モータに流れる電流が大きいほど、その駆動トルク、つまり、電気モータによって駆動されるポンプによって増加する圧力もしくは力が大きくなる。
【0012】
角位置W、および/または、力P、および/または、電流P1、および/または、これらから得られるパラメータを、設定値、設定値特性曲線、および/または、設定値特性マップ、および/または、ルックアップテーブルと便利に比較し、これに基づいて動作イベントGを発生させる。
【0013】
例えば、角位置Wが予め設定された臨界角度ずれW(krit)に達するか、または、当該臨界角度ずれW(krit)を超えると、動作イベントGを発生させ得る。
【0014】
上記角度ずれW(krit)は、開始位置を基準として、例えば10〜30°、好ましくは10〜20°とし得る。
【0015】
例えば、角位置Wと力Pまたは電流P1とを組み合わせた場合にも、動作イベントGを発生させ得る。例えば、上記のパラメータの組み合わせ(または関係)から新しい制御パラメータを定めてもよい。
【0016】
動作イベントGとしては、特に、下記が挙げられる
−警告を発すること、例えば、警告音、および/または、視覚による警告信号、
−過負荷制限が有効になること、例えば、力もしくは圧力を、例えば特定のモータ制御により、それ以上増加させないこと、および/または、
−電気モータの制御に影響を与える別の方法、および/または、
−角位置W、角度ずれW(krit)、力P、電流P1、および/または、実時間Tに関する動作データを保存すること。
【0017】
切断工程の初めにおいては、例えば事故に遭った車両のAピラーまたはBピラーを切断する場合、作業装置または救助装置が水平に対して不明確な空間位置に配置されることがあるため、
本発明によれば、空間における、または、切断対象の位置に対する、作業装置または救助装置の切断面E1の角位置Wを判定するために、初期化
が実施される。この初期化は、切断工程の開始時、すなわち、切断工具部分を負荷無しで動かす段階、すなわち、切断工具部分を単に切断対象に接近させる段階の終了時に、便利に行われる。この段階の終了時には、切断工具部分は、通常、切断対象に対して少なくとも略垂直な角度で位置している。
【0018】
この初期化によれば、少なくとも実質的に、角位置Wの変化を測定する基準となる明確な初期角位置Wが確定される。例えば、これは、切断面が切断対象の長手方向軸または長手延在方向に対して90°の角度で配置された角位置Wである。しかしながら、必ずしもこの通りである必要はない。
【0019】
初期化は、特定の力Pもしくは圧力または電気モータに流れる特定の電流P1に達すると実施されることが好ましい。例えば、これは、切断工程が開始された後の動作段階、すなわち、力Pもしくは圧力または電気モータに流れる電流P1が、増加し始める時、または、特定の値に達した時である。
【0020】
本発明に係る方法は、リアルタイムで、すなわち、実際の時間の条件下で、便利に行われるため、動作イベントGの条件が存在する場合は、動作中に即時に制御介入が行われ得る。
【0021】
本発明は、また、請求項1から
11のうちの少なくとも1項に記載の方法に従って動作する、オペレータが装着してもよく独立して用いられてもよい、電磁式または電気油圧式の作業装置もしくは救助装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明に係る方法において用いられる救助装置の平面図である。
【
図3】
図3は、切断工程の開始時の
図1に係る救助装置の斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に係る救助装置の2つの切断工具部分に対する切断対象の位置を示す異なる図の大幅に簡略化した部分図である。
【
図5】
図5は、異なるパラメータの経時的な変化を大幅に簡略化して示した図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る方法において用いられる機能的ハードウェア構成要素を示す大幅に簡略化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について、より詳細に説明する。
【0024】
図1の参照符号1は、オペレータが装着してもよく独立して用いられてもよい作業装置または救助装置の一例を示す。本例においては、これは、事故に遭った車両に閉じ込められた人を救出するための救助装置として消防隊によく用いられる、電気油圧式カッターである。上記装置は、ハンドル14と星形弁(star valve)の形態の手動で作動できる開閉弁12とを有するハウジング3を含む。参照符号7は、ハウジング3上に配置された主スイッチを示す。このハウジング3にシリンダ11が隣接し、該シリンダ11には、同様に、持ち運び用ハンドル13が配置されている。シリンダ11の前部には、切断工具2が配置されており、該切断工具2は、硬化材料製の2つの切断工具部分2aおよび2bからなる工具インサートの形態であり、該2つの切断工具部分は、ボルト(中心ボルト)(
図1では見えない)を中心にして回動可能に取り付けられている。開閉弁12の操作に応じて2つの切断工具部分2aおよび2bを互いに接近または離間させることができる。
【0025】
図2から分かるように、エネルギー源6として、自身のハウジングを有する蓄電池が設けられてもよく、該蓄電池は、ハウジング3の対応する受けシャフト3aに挿入され得る。エネルギー源6をハウジング3の受けシャフト3aに固定するために、エネルギー源6には、保持用クランプ6aが両側に配置されており、該保持用クランプ6aは、エネルギー源6を受けシャフト3aから取り外すことができるようにするために、指で押すことによって操作され得る。ハウジングの内部には、電気モータ(
図1および
図2には図示せず)が、油圧ポンプ(同様に、
図1および
図2には図示せず)を駆動するために設けられている。主スイッチ7が操作されると、電気モータ、ひいてはポンプがオンまたはオフに切り替えられる。開閉弁12によって、オペレータは、装置を待機モード(シリンダ11が印加されず、切断工具インサート2aおよび2bは動かない。)、切断モード(工具インサート2aおよび2bが互いに接近する。)、または開放モード(工具インサート2aおよび2bが互いに離間する。)で動作させ得る。工具インサート2aおよび2bが互いに接近する切断モードでは、切断工具インサート2aおよび2bが切断対象まで近付けられてもよく、材料が切断されてもよい。
【0026】
2つの切断工具部分2aおよび2bは、ボルトを中心にした回動時に、互いに接触する刃先によって、
図2に示す切断面E1を規定する。Aは、作業装置または救助装置1の長手方向軸を示す。
【0027】
図3に、切断の開始時の救助装置1と切断対象10とを示す。2つの切断工具部分2aおよび2bが切断対象10の両側に係合している。
図3において、切断面E1を、点線で表された平面として斜視図で示している。この場合、切断工程の開始時に、切断面E1は、切断対象10の長手方向軸Lに対して、または、切断面E1上にある(仮想の)回転軸D周りの切断対象10の(仮想の)回転によって規定される平面E2に対して、略直角に延びている。
【0028】
図4(b)はこの状況を示しており、大きく簡略化した部分断面図において、2つの切断工具部分2aおよび2bが破線で描かれている。切断対象10を切断面E1上の回転軸D周りに回転させた場合、切断面E1は、切断対象10の長手延在方向もしくは長手方向軸Lに対して略直角のままである。Aは、作業装置または救助装置1の長手方向軸を示す(
図2参照)。
【0029】
図4(a)は、切断対象10の上下に係合する2つの切断工具インサート2aおよび2bのみを示す正面図である。
図4(a)は、切断面E1に沿って見た図である。
【0030】
図4(a)に示す状況は、切断工程の初めを図示しており、2つの切断工具部分2aおよび2bは、切断対象10に接近するよう動いた状態か、または、図示するように、切断対象10に当接している状態である。この段階において、切断面E1は、通常、少なくとも実質的に、切断対象10の長手方向軸Lに対して90°に向いている。切断工具の動作を継続すると、2つの切断工具部分2aおよび2bは切断対象10の材料に徐々に食い込んでいく。
【0031】
図4(c)から分かるように、増加する圧力もしくは増加する力によって、特に、硬質な切断対象10においては、救助工具1が、その長手方向軸A周りに徐々に回転または回動し、したがって、切断対象10の長手方向軸Lまたは平面E2(
図3参照)に対して切断面E1が徐々に回転または回動する。この回転または回動によって、角位置Wが決まる。このように徐々に回転または回動することによって、2つの切断工具インサート2aおよび2bを互いに離れさせようとする力ベクトルが大きくなる。この場合、「角位置W」とは、切断対象10の長手方向もしくは長手方向軸Lまたは平面E2に対する切断面E1の角位置を意味する。これは、最初は、通常、切断面E1に対して略90°であり、圧力もしくは力の増加に伴って変化する。しかしながら、特定の切断対象については、あるいは、特定の条件下では、初期角度が90°以外の角度であってもよい。
【0032】
この目的のために、空間において、および/または、切断対象10の位置に対して、作業装置または救助装置1の切断面E1の角位置Wが、初期化される。初期化後、切断工程中に生じる角位置Wの変化が測定される。
【0033】
初期化は、切断工程の開始により力が特定の値に達した時点、および/または、増加している段階で、便利に
実施される。モータに流れる電流P1についての特定の値、または、その特定の流れが、初期化のために特に好都合に用いられ得る。例えば、作業装置または救助装置1の動作を開始させると、2つの刃先が切断対象まで導かれ、切断工程が開始され、力もしくは圧力またはモータに流れる電流P1が増加する。予め設定された力変数もしくは圧力またはモータに流れる電流P1に達すると、角度測定の初期化が行われる。
【0034】
本発明によると、許容される角位置Wは、特定の回動範囲、例えば、上記90°の位置に対して10〜30°、好ましくは10〜20°のずれ範囲のみに限定される。許容範囲の終わりは、超えると動作イベントGを発生させることができる角度ずれW(krit)を規定する。動作イベントGは、警告を発することであってもよく、過負荷制限が有効になることであってもよく、電気モータの制御に影響を与えることであってもよく、および/または、角位置W、角度ずれW(krit)、力P、電流P1、および/または、実時間Tに関する動作データを保存することであってもよい。
【0035】
したがって、本発明は、救助装置または作業装置の動作中に危険な状況を的を絞って検出し、その特定の事例に応じた制御手段をとることを可能にする。
【0036】
2つの切断工具インサート2aおよび2bが切断対象10に加える力もしくは圧力は、電気モータに流れる電流P1から好都合に導出され得る。この点に関して、角位置Wと力Pまたは電流P1とから、当該特定の動作状況を有効に記録することを可能にする新しい制御変数が作成されてもよい。
【0037】
角位置W、および/または、力P、および/または、これらから得られるパラメータは、設定値、設定値特性曲線、および/または、設定値特性マップと比較され得る。これに基づいて少なくとも1つの動作イベントGが発生し得る。動作イベントGは、例えば、警告を発することであってもよく、および/または、過負荷制限が有効になることであってもよく、および/または、電気モータ4への別の制御介入であってもよい。
【0038】
図5のグラフは、電気モータに流れる電流P1の時間Tに対する変化を示している。最初に、主スイッチ7を操作することによって救助装置の動作を開始させる。その結果、電気モータが始動され、アイドル状態となる(段階A)。特定の時間T1の経過後、オペレータが開閉弁12を操作し、それにより、作動液が移送され、2つの切断工具部分2aおよび2bが負荷を受けずに切断対象10に接近するよう動く(無負荷段階B)。時点T2において、2つの切断工具部分2aおよび2bが切断対象10の外側に係合し、徐々に材料に食い込む。この時点または時間領域から、切断対象10にかかる力Pもしくは圧力が、切断対象10の抵抗の結果として、増加する(段階C)。負荷期間Cの間、電気モータに流れる電流が連続的に増加する。力Pもしくは圧力も、それに応じて増加する。
【0039】
角位置Wまたはその変化(
図5における破線)の測定を初期化するために特定の力P(init)(もしくは圧力)または特定の電流P1(init)が好都合に用いられ得る。「初期化」とは、角位置Wの測定がこの時点から開始されることを意味する。したがって、この時点から、力(圧力)と角位置の両方を、相互に関連させて設定して、作業装置または救助装置1の動作を制御するために用い得る。これにより、角位置Wの自動初期化を好都合に実現し得る。
【0040】
硬質材料においては、この力もしくは圧力の増加によって、救助装置の切断面E1が、
図4cに示したように、切断対象10の長手方向軸または長手方向Lに対して徐々に回動する。
図5の2段目にこの回動が示されており、回転角Wの度数が経時的に示されている。角位置W(kri)に達すると、少なくとも1つの動作イベントGが自動的に発生する。例えば、
図5に示すように、動作にもかかわらず、作業装置または救助装置1の構造部品にこれ以上の機械負荷がかからないように、力(圧力)または電気モータに流れる電流が制御装置によって制限されてもよい。同様に、視覚的、および/または、音響的な警告が発せられてもよい。
【0041】
図5から分かるように、本発明によると、切断対象10に対する救助装置1の許容されない回転を記録し、動作イベントGを発生させることによってそれを防止するために、回転角Wおよび力Pもしくは圧力または電気モータに流れる電流P1というパラメータを用いて、2つのパラメータを相互に関連させて設定し得る。
【0042】
図6は、本発明に係る方法を実施するための本発明に係る制御装置の個々の機能的構成要素を示す。作動液を移送するためのポンプ5は、電気モータ4によって駆動され、電気モータ4は、そのエネルギーをエネルギー源6、例えば蓄電池から得る。参照符号8はマイクロプロセッサを示す。マイクロプロセッサは、制御装置の個々の機能タスクを行うものであり、位置センサ15と電流センサ16とに接続される。さらに、マイクロプロセッサ8は、救助装置または作業装置に配置されたディスプレイ9と、記憶装置17と、音響モジュール18とにも接続される。警告は、動作イベントGの形態で、ディスプレイ9に表示され得る。あるいは、またはさらに、音響信号が、この場合は音響モジュール18において生成され得る。さらに、該当するパラメータ、例えば、角位置W、力Pもしくは圧力、および/または、電気モータに流れる電流P1、あるいはこれらの組み合わせが、記憶装置17に蓄積され得る。その結果、特に、動作イベントGがリアルタイム条件T下でドキュメンテーションされ得る。同様に、位置センサ15がマイクロプロセッサ8に接続されている。この位置センサ15は、回転速度センサであってもよく、X、Y、およびZ方向の動きとX、Y、およびZ方向周りの回転とを可能にするジャイロスコープであってもよい。さらに、マイクロプロセッサ8は、モータに流れる電流P1を記録するセンサ16にも接続されている。制御装置は、モータの切り替え可能な電力制限を可能にする手段を備えていてもよい。
【0043】
本発明に係る方法は、リアルタイムで実施されることが好ましい。これにより、危険な動作状況とそれに起因する損害とを回避することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 救助装置
2 切断工具
2a 切断工具部分
2b 切断工具部分
3 ハウジング
3a 受けシャフト
4 電気モータ
5 ポンプ
6 エネルギー源
6a 保持用クランプ
7 主スイッチ
8 マイクロプロセッサ
9 ディスプレイ
10 切断対象
11 シリンダ
12 開閉弁
13 持ち運び用ハンドル
14 ハンドル
15 位置センサ
16 電流センサ
17 記憶装置
18 音響モジュール
D 回転軸
E1 切断面
E2 平面
G 動作イベント
L 長手方向軸
P 力
P1 電流
T 実時間
W 角位置
W(krit) 角度ずれ
A 長手方向軸
【国際調査報告】