(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-519736(P2021-519736A)
(43)【公表日】2021年8月12日
(54)【発明の名称】窒化炭素のための触媒溶媒
(51)【国際特許分類】
C01B 21/082 20060101AFI20210716BHJP
B01J 27/24 20060101ALI20210716BHJP
【FI】
C01B21/082 K
B01J27/24 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-541545(P2020-541545)
(86)(22)【出願日】2019年4月25日
(85)【翻訳文提出日】2020年9月18日
(86)【国際出願番号】US2019029120
(87)【国際公開番号】WO2019210058
(87)【国際公開日】20191031
(31)【優先権主張番号】15/962,869
(32)【優先日】2018年4月25日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520274747
【氏名又は名称】モントロス,チャーリー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】モントロス,チャーリー
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169BC09A
4G169BC10A
4G169BC15A
4G169BC20A
4G169BC22B
4G169BC29A
4G169BC31B
4G169BC35A
4G169BC36A
4G169BC41A
4G169BC43B
4G169BC50B
4G169BC62B
4G169BC66B
4G169BC67B
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169BD05B
4G169BD06A
4G169BD06B
(57)【要約】
一実施形態では、sp3結合C
3N
4生成物を製造する方法は、反応容器中で出発材料を触媒溶媒と接触させること、4〜8GPaの圧力下で900℃〜2000℃の温度に反応容器を加熱すること、触媒溶媒の少なくとも一部を融解させること、およびsp2結合C
3N
4の少なくとも一部をsp3混成C
3N
4に変換することを含む。出発材料はsp2結合C
3N
4を含んでもよい。触媒溶媒は室温で固体であってもよい。一例では、触媒溶媒は、化学式A
xB
yN
zを有する第1の化合物および化学式D
qE
rC
sを有する第2の化合物を含む炭窒化物ベースの触媒溶媒である。第2の例では、触媒溶媒は、化学式G
xH
yを有する化合物を含む金属合金ベースの触媒溶媒である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
sp3結合C3N4生成物を製造する方法であって、
反応容器中で出発材料を触媒溶媒と接触させることであり、前記出発材料がsp2結合C3N4を含みかつ前記触媒溶媒が室温で固体であること、
4〜8GPaの圧力下で900℃〜2000℃の温度に前記反応容器を加熱すること、
前記触媒溶媒の少なくとも一部を融解させること、
前記sp2結合C3N4の少なくとも一部をsp3混成C3N4に変換すること
を含み、
前記触媒溶媒が、
化学式:AxByNz
(式中、
Aは、遷移金属、ランタニド金属およびCaからなる群から選択され、
Bは、IIIB族半金属元素、IVB族半金属元素、Mg、Zn、およびCdからなる群から選択され、
Nは窒素であり、
xは2.5〜3.5であり、
yは0.5〜1.5であり、
zは0.5〜1.5である)
を有する第1の化合物、ならびに
化学式:DqErCs
(式中、
Dは、遷移金属、ランタニド金属およびCaからなる群から選択され、
Eは、IIIB族半金属元素、IVB族半金属元素、Mg、Zn、およびCdからなる群から選択され、
Cは炭素であり、
qは2.5〜3.5であり、
rは0.5〜1.5であり、
sは0.5〜1.5である)
を有する第2の化合物
を含む炭窒化物ベースの触媒溶媒であり、
前記触媒溶媒中の前記第1の化合物の窒素のモル数に対する前記第2の化合物の炭素のモル数の化学量論比が2.5:4〜3.9:4である、
方法。
【請求項2】
xが3であり、yが1であり、かつ、zが1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
qが3であり、rが1であり、かつ、sが1である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応容器に結晶種子材料の粒子を種子付けすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記結晶種子材料がダイヤモンドを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記結晶種子材料がsp3結合C3N4を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記結晶種子材料の単一の粒子の表面へのsp3結合C3N4の沈着を介して第1の単結晶を成長させることをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒溶媒が第1の触媒溶媒であり、前記方法が、第2の触媒溶媒を介して前記sp3結合C3N4の少なくとも一部を焼結多結晶成形体に組み込むことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記反応容器が第1の反応容器であり、前記方法が、
前記sp3結合C3N4の少なくとも一部を粉末に加工すること、
前記粉末を第2の反応容器に投入すること、
前記第2の反応容器中で第2の触媒溶媒を含む固体材料の層を並べること、
4〜8GPaの圧力下で900〜2000℃の温度に前記第2の反応容器を加熱すること、
前記第2の触媒溶媒の少なくとも一部を融解させること、
前記粉末化したsp3結合C3N4に前記融解した触媒溶媒を浸潤させること、および
前記第2の反応容器を冷却してsp3結合C3N4を含む焼結多結晶成形体を製造すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記反応容器が第1の反応容器であり、前記方法が、
前記sp3結合C3N4の少なくとも一部を粉末に加工すること、
前記粉末を第2の触媒溶媒と混合して固体混合物を作製することであり、前記触媒溶媒が室温で固体であること、
前記混合物を第2の反応容器に投入すること、
4〜8GPaの圧力下で900〜2000℃の温度に前記第2の反応容器を加熱すること、
前記第2の触媒溶媒の少なくとも一部を融解させること、および
前記第2の反応容器を冷却してsp3結合C3N4を含む焼結多結晶成形体を製造すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記焼結多結晶成形体から前記第2の触媒溶媒の大部分を除去することにより前記焼結多結晶成形体中に孔を作製することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
バインダー相を介して前記焼結多結晶成形体を基材に結合させることであって、前記結合が4〜8GPaの圧力下で900〜2000℃の温度で起こることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記バインダー相が融解温度を有し、かつ、前記第2の触媒溶媒が、前記バインダー相の前記融解温度より低い融解温度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の触媒溶媒がCo3SnCおよびCo3SnNを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記結合ステップの前に前記基材の表面上に勾配層を作製することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記結合ステップの前に前記基材の表面上に粗いきめを作製することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
sp3結合C3N4生成物を製造する方法であって、
反応容器中で出発材料を触媒溶媒と接触させることであり、前記出発材料がsp2結合C3N4を含みかつ前記触媒溶媒が室温で固体であること、
4〜8GPaの圧力下で900℃〜2000℃の温度に前記反応容器を加熱すること、
前記触媒溶媒の少なくとも一部を融解させること、
前記sp2結合C3N4の少なくとも一部をsp3混成C3N4に変換すること
を含み、
前記触媒溶媒が、
化学式:GxHy
(式中、
Gは、遷移金属、ランタニド金属およびCaからなる群から選択され、
Hは、IIIB族半金属元素、IVB族半金属元素、Mg、Zn、およびCdからなる群から選択される)
を有する化合物を含む金属合金ベースの触媒溶媒である、
方法。
【請求項18】
xが2.5〜3.5であり、かつ、yが0.5〜1.5である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
sp3結合C3N4生成物を製造する方法であって、
反応容器中で出発材料を触媒溶媒と接触させることであり、前記出発材料がsp2結合C3N4を含みかつ前記触媒溶媒が室温で固体であること、
4〜8GPaの圧力下で900℃〜2000℃の温度に前記反応容器を加熱すること、
前記触媒溶媒の少なくとも一部を融解させること、
前記sp2結合C3N4の少なくとも一部をsp3混成C3N4に変換すること、および
前記反応容器にダイヤモンドを含む種子材料の粒子を種子付けすること
を含む、方法。
【請求項20】
前記種子材料がsp3結合C3N4をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年4月25日に出願された米国非仮特許出願第15962869号の利益を主張し、その全体的な開示は参照することにより全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、C
3N
4にとって熱力学的に安定なsp3結合性領域内にある温度および圧力条件において加工された場合に、グラファイト状または非晶質窒化炭素などのsp2結合C
3N
4を立方晶系またはスピネルC
3N
4などのsp3結合C
3N
4に変換するためのある種の触媒溶媒およびその使用に関する。本発明はまた、結晶間のsp3結合を用いて形成されたsp3結合C
3N
4粒の多結晶成形体などの、この種の触媒溶媒を用いて製造された生成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ダイヤモンドなどの超砥粒は、1950年代後半の合成ダイヤモンドの開発と共に現代産業の重要な部分となった(例えば、米国特許第2947611号明細書、同2947608号明細書、同2947610号明細書、および同2947609号明細書を参照)。ツールなどのために好適な多結晶ダイヤモンドは、ダイヤモンドが熱力学的に安定な温度および圧力において触媒溶媒を使用してダイヤモンド結晶の結合から製造される(例えば、米国特許第3141746号明細書および同3702573号明細書を参照)。必要とされる高圧力を回避するために、ダイヤモンド粒が反応性ろう材(braze)と共にろう付けされたダイヤモンド成形体が製造された(例えば、米国特許第3293012号明細書を参照)。ダイヤモンド成形体はまた、融解シリコンまたはシリコンベースの合金を浸潤させてダイヤモンドとの反応によりダイヤモンド粒間にSiC結合を形成することにより製造された(例えば、米国特許第4220455号明細書を参照)。
【0004】
Cohenは1985年に、ダイヤモンドより高くないとしてもそれと同等に高い体積弾性率の可能性を有するダイヤモンドまたは閃亜鉛鉱型立方晶系結晶構造を有する、立方晶窒化炭素、C
3N
4として公知の潜在的な超砥粒を同定した(Cohen ML.Calculation of bulk moduli of diamond and zinc−blende solids.Physical Review B 1985;32.DOI:10.1103/PhysRevB.32.7988)。Teterらは、ダイヤモンドについて実験的に測定される体積弾性率より大きい算出されたゼロ圧力体積弾性率に基づいてならびに対応する結晶構造および予測されるバンドギャップおよび原子密度に基づいて立方晶C
3N
4を定義した(Teterらの米国特許第5981094号明細書)。
【0005】
Malkowは、C
3N
4材料の総説において、電子反跳検出分析(ERDA)、フーリエ変換赤外法(FTIR)、電子エネルギー損失分光法(EELS)、核磁気共鳴(NMR)、x線光電子分光法(XPS)、ラマン分光法、およびx線吸収端近傍分光法(XANES)などの、sp3結合C
3N
4からsp2結合を決定する一般的な方法を同定した(Malkow T.Critical observations in the research of carbon nitride.Materials Science and Engineering A 2000;292:13.DOI:S0921−5093(00)00960−6)。回折パターン単独では窒化炭素相、特にナノ結晶相を同定するために好適でないことに彼は気付いた。炭素および窒素の両方は隣接する低原子数元素であるので、蛍光x線(XRF)およびエネルギー分散型分析(EDAX)による元素分析は、粗雑な近似より多くを提供することが難しい。これらの方法の大部分、特にEELS、XPS、およびXANESは、大規模な試料調製を必要とした。
【0006】
ダイヤモンドの熱分解を用いた実験により、レーザーラマン分光法は、ダイヤモンドについてsp2結合ピーク1580cm−1およびsp3結合ピーク1350cm−1を検出するための最も容易かつ最も感度の高い方法であることが見出された(Westraadt JE.Thermal Degradation of Diamond Compacts:A TEM Investigation.Research,Nelson Mandela Metropolitan University,South Africa,2011)。多波長ラマンは、N含有量とのラマンパラメーターの直接的な相関付けを可能とし、UVラマンは、sp3含有量を立方晶C
3N
4において定量化することを可能とする(Ferrari AC,Rodil SE and Robertson J.Interpretation of infrared and Raman spectra of amorphous carbon nitrides.Physical Review B 2003;67:20.DOI:10.1103/PhysRevB.67.155306およびWidany J,Weich F,Hohler T,et al.Dynamic properties and structure formation of boron and carbon nitrides Diamond and Related Materials 1996;5:11.)。
【0007】
Wixomは、有機窒化炭素前駆体に対して衝撃波合成を使用して立方晶または閃亜鉛鉱C
3N
4を合成することを試みたが成功しなかった(Wixom MR.Chemical Preparation and Shock Wave Compression of Carbon Nitride Precursors.Journal of the American Ceramic Society 1990;73:6.DOI:10.1111/j.1151−2916.1990.tb05254.x)。Hallerらは、スパッタリング型プロセスを使用する異なる方策を試みて、生成される窒化炭素においてある程度のsp3型結合を達成した(Hallerらの米国特許第5110679号明細書)。Niuらは、窒素気体を用いるパルスレーザーアブレーションを使用して、sp3結合立方晶C
3N
4について予測されるものに類似した特性を有する窒化炭素材料を製造した(Niu C,Lu YZ and Lieber CM.Experimental Realization of the Covalent Solid Carbon Nitride.Science,1993;261:4.DOI:10.1126/science.261.5119.334)。Lieberらは、高フラックス原子ビームを用いてパルスレーザーアブレーション技術を進展させて、製造されたフィルムにおいてLieberがβ−C
3N
4と呼んだ晶子を発見した(Lieber CM and Zhang ZJ.Synthesis of Covalent Carbon−Nitride Solids:Alternatives to Diamond?Advanced Materials 1994;6:3.DOI:10.1002/adma.19940060614)。Leiberは、「β−C
3N
4は、ダイヤモンドと同等またはそれより高い硬度を有することが予測されたが、それは伝統的な固体状態化学の方法によっては製造できない」と述べている。類似の結果がRiviereらにより見出された(Riviere JP,Texier D,Delafond J,et al.Formation of the crystalline β−C
3N
4 phase by dual ion beam sputtering deposition Materials Letters 1995;22:4.DOI:unk)。1990年代中期にDeVriesにより総説されたように、製造される材料は窒素中でひどく欠損し、非化学量論的であると考えられた(DeVries RC.C
3N
4 or Bust.Diamond and Related Materials 1995;4:2.DOI:unk)。所望の特性を達成するために必要な全てのsp3結合を得るために窒素は不可欠であるとMalkowにより同定された。
【0008】
Nguyenらは、高圧力(30GPa)および高温(2000°+K)を用いて、レーザー加熱されたダイヤモンドアンビルセルにおいて、sp2結合グラファイト状C
3N
4がsp3結合立方晶C
3N
4に変換されたことをx線回折分析に基づいて見出した(Nguyen JH and Jeanloz R.Initial description of a new carbon−nitride phase synthesized at high pressures and temperatures.Materials Science and Engineering A 1996;209:3.DOI:unk)。Stevensらは、彼らの高圧力高温装置を用いて成功せず、sp2結合グラファイト状C
3N
4は分解し、ダイヤモンドのみが製造されたことを見出した(Stevens AJ,Koga T,Agee CB,et al.Stability of Carbon Nitride Materials at High Pressure and Temperature Journal of American Chemical Society 1996;118:2.DOI:unk)。
【0009】
当該技術分野の現状を検討して、Yacamanは、「C
3N
4が大きい結晶として製造できることの充分な証拠はない」と結論付けている(Yacaman MJ,Martin−Gil J,Martin−Gil F,et al.New carbon−nitrogen materials.A likely alternative to diamond Materials Chemistry and Physics 1997;47:9.DOI:IS0254−0584(96)01782−1)。しかし、Hanらは、ダイヤモンドアンビルセルを使用してsp3結合立方晶C
3N
4への相転移を見出した(Han YH,Luo JF,Gao CX,et al.Phase Transition of Graphitic C
3N
4 under High Pressure by In Situ Resistance Measurement in a Diamond Anvil Cell.Chinese Physics Letters 2005;22:3.DOI:unk)。
【0010】
予測される硬度に関するab initio算出からの矛盾する結果にもかかわらず、立方晶系またはスピネル型結晶構造中のC
3N
4はダイヤモンドより熱的に安定であるとSungは考えている(Sung C−M and Sung M.Carbon nitride and other speculative superhard materials.Materials Chemistry and Physics 1996;43:18.DOI:0254−0584(95)01607−V)。Teterらは、sp2結合グラファイト状C
3N
4のsp3結合立方晶C
3N
4への変換についての算出から、それは産業規模の製造のために現代の高体積高圧力プレスで手が届くことに気付いた(Teter DM and Hemley RJ.Low Compressibility Carbon Nitrides.Science 1996;271:3.DOI:10.1126/science.271.5245.53)。
【0011】
この同定された熱安定性および製造の潜在的な容易さにより、sp3結合立方晶C
3N
4は産業上の超砥粒応用のために理想的となり、バルクsp3結合C
3N
4を製造する方法の開発への刺激を提供する。したがって、グラファイト状sp2結合窒化炭素をバルク(立方晶および/またはスピネル)sp3結合C
3N
4に変換するために触媒溶媒を使用する方法は産業にとって大きな価値を持つ。
【0012】
上記に同定された必要性に対処する、sp2結合窒化炭素をsp3結合C
3N
4に変換するように構成された触媒溶媒の特定の例が以下において開示される。上記の参考文献、特許および特許出願の完全な開示は、参照することにより全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第2947611号明細書
【特許文献2】米国特許第2947608号明細書
【特許文献3】米国特許第2947610号明細書
【特許文献4】米国特許第2947609号明細書
【特許文献5】米国特許第3141746号明細書
【特許文献6】米国特許第3702573号明細書
【特許文献7】米国特許第3293012号明細書
【特許文献8】米国特許第4220455号明細書
【特許文献9】米国特許第5981094号明細書
【特許文献10】米国特許第5110679号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Cohen ML.Calculation of bulk moduli of diamond and zinc−blende solids.Physical Review B 1985;32.DOI:10.1103/PhysRevB.32.7988
【非特許文献2】Malkow T.Critical observations in the research of carbon nitride.Materials Science and Engineering A 2000;292:13.DOI:S0921−5093(00)00960−6
【非特許文献3】Westraadt JE.Thermal Degradation of Diamond Compacts:A TEM Investigation.Research,Nelson Mandela Metropolitan University,South Africa,2011
【非特許文献4】Ferrari AC,Rodil SE and Robertson J.Interpretation of infrared and Raman spectra of amorphous carbon nitrides.Physical Review B 2003;67:20.DOI:10.1103/PhysRevB.67.155306
【非特許文献5】Widany J,Weich F,Hohler T,et al.Dynamic properties and structure formation of boron and carbon nitrides Diamond and Related Materials 1996;5:11.
【非特許文献6】Wixom MR.Chemical Preparation and Shock Wave Compression of Carbon Nitride Precursors.Journal of the American Ceramic Society 1990;73:6.DOI:10.1111/j.1151−2916.1990.tb05254.x
【非特許文献7】Niu C,Lu YZ and Lieber CM.Experimental Realization of the Covalent Solid Carbon Nitride.Science,1993;261:4.DOI:10.1126/science.261.5119.334
【非特許文献8】Lieber CM and Zhang ZJ.Synthesis of Covalent Carbon−Nitride Solids:Alternatives to Diamond?Advanced Materials 1994;6:3.DOI:10.1002/adma.19940060614
【非特許文献9】Riviere JP,Texier D,Delafond J,et al.Formation of the crystalline β−C3N4 phase by dual ion beam sputtering deposition Materials Letters 1995;22:4.DOI:unk
【非特許文献10】DeVries RC.C3N4 or Bust.Diamond and Related Materials 1995;4:2.DOI:unk
【非特許文献11】Nguyen JH and Jeanloz R.Initial description of a new carbon−nitride phase synthesized at high pressures and temperatures.Materials Science and Engineering A 1996;209:3.DOI:unk
【非特許文献12】Stevens AJ,Koga T,Agee CB,et al.Stability of Carbon Nitride Materials at High Pressure and Temperature Journal of American Chemical Society 1996;118:2.DOI:unk
【非特許文献13】Yacaman MJ,Martin−Gil J,Martin−Gil F,et al.New carbon−nitrogen materials.A likely alternative to diamond Materials Chemistry and Physics 1997;47:9.DOI:IS0254−0584(96)01782−1
【非特許文献14】Han YH,Luo JF,Gao CX,et al.Phase Transition of Graphitic C3N4 under High Pressure by In Situ Resistance Measurement in a Diamond Anvil Cell.Chinese Physics Letters 2005;22:3.DOI:unk
【非特許文献15】Sung C−M and Sung M.Carbon nitride and other speculative superhard materials.Materials Chemistry and Physics 1996;43:18.DOI:0254−0584(95)01607−V
【非特許文献16】Teter DM and Hemley RJ.Low Compressibility Carbon Nitrides.Science 1996;271:3.DOI:10.1126/science.271.5245.53
【発明の概要】
【0015】
[発明が解決しようとする課題]
[課題を解決するための手段]
本開示は、触媒溶媒およびそれを使用してsp3結合C
3N
4生成物を製造する方法を対象とする。一実施形態では、sp3結合C
3N
4生成物を製造する方法は、反応容器中で出発材料を触媒溶媒と接触させること、4〜8GPaの圧力下で900℃〜2000℃の温度に反応容器を加熱すること、触媒溶媒の少なくとも一部を融解させること、およびsp2結合C
3N
4の少なくとも一部をsp3混成C
3N
4に変換することを含む。出発材料はsp2結合C
3N
4を含んでもよい。触媒溶媒は室温で固体であってもよい。
【0016】
一例では、触媒溶媒は、化学式A
xB
yN
zを有する第1の化合物および化学式D
qE
rC
sを有する第2の化合物を含む炭窒化物ベースの触媒溶媒である。Dは、遷移金属、ランタニド金属およびCaからなる群から選択されてもよい。Eは、IIIB族半金属元素、IVB族半金属元素、Mg、Zn、およびCdからなる群から選択されてもよい。Cは炭素である。
【0017】
第2の例では、触媒溶媒は、化学式G
xH
yを有する化合物を含む金属合金ベースの触媒溶媒である。Gは、遷移金属、ランタニド金属およびCaからなる群から選択されてもよい。Hは、IIIB族半金属元素、IVB族半金属元素、Mg、Zn、およびCdからなる群から選択されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
そのように開示されたものは、以下の詳細な説明の検討を通じてより良好に理解される。詳細な説明は単に、本明細書に記載の様々な発明の例を提供する。当業者は、開示される例は、本明細書に記載の発明の範囲から離れることなく、変化、改変、および変更されてもよいことを理解する。異なる応用および設計的考慮のために多くのバリエーションが想定されるが、簡潔性のために、それぞれのおよびあらゆる想定されるバリエーションは以下の詳細な説明において個々に記載されない。
【0019】
以下の詳細な説明の全体を通じて、様々な触媒溶媒の例が提供される。例における関連する特徴は、異なる例において同一、類似、または非類似であってもよい。簡潔性のために、関連する特徴は各例において重複的に説明されない。代わりに、関連する特徴名の使用は、関連する特徴名を有する特徴は以前に説明された例における関連する特徴に類似していてもよいことを当業者に知らせる。所与の例に特異的な特徴は、その特定の例において記載される。所与の特徴は任意の所与の図または例における関連する特徴の特定の描写と同一または類似する必要はないことを読者は理解するべきである。
【0020】
本明細書において使用される場合、sp3結合C
3N
4としても公知のsp3混成C
3N
4は、各構成元素の1つのsおよび3つのp軌道が混ざって4つの同一の混成sp3起動を形成している化学式C
3N
4を有する窒化炭素を意味する。sp3混成は正四面体混成としても公知である。sp3混成C
3N
4の例としては、立方晶C
3N
4およびスピネルC
3N
4が挙げられる。
【0021】
本明細書において使用される場合、勾配層は、多結晶C3N4成形体および基材の間の層であって、平均熱膨張係数が勾配層の1つの端点における成形体のものから他の端点における基材のものまで変動するものである。sp3結合C
3N
4成形体および基材の間で平均熱膨張係数を変化させる目的は、熱膨張係数の差異に起因する応力を低減することである。
【0022】
本明細書において使用される場合、多結晶sp3結合C
3N
4は、高圧力、高温条件下で結合したsp3結合C
3N
4グリットである。多結晶sp3結合C
3N
4は、高圧力および高温における焼結により結合して一緒になった合成のsp3結合C
3N
4粉末からなる。この結合は、sp3結合C
3N
4の粒子またはグリットの間のsp3結合を結果としてもたらす。
【0023】
驚くべきことに、本発明者は、遷移金属窒化物との融解遷移金属の混合物は、sp2結合C
3N
4材料をsp3結合C
3N
4材料に変換するための非常に効果的な触媒溶媒として作用することを見出した。遷移金属窒化物は、概しては、周期表のVIIIA族からなる融解遷移金属により濡れることも容易に溶解することもないので、これは予想外であった。さらに、仮定的な融解遷移金属がsp2結合C
3N
4を濡らしてそれと反応したとしても、それは反応して窒化物および炭化物を形成することが予期される。それにもかかわらず、本発明者は、以下に記載の触媒溶媒は、事実、sp2結合C
3N
4材料を濡らし、かつ正しい条件下で、それをsp3結合C
3N
4材料に変換することを見出した。
【0024】
追加的に、遷移金属窒化物のみの使用はグラファイトをダイヤモンドに変換するための触媒溶媒として作用することに成功するとは予期されない。そのため、そのような遷移金属窒化物はsp2結合C
3N
4をsp3結合C
3N
4材料に変換するための触媒溶媒として作用するとは予期されない。実際、文献の検索により、鉄、ニッケル、コバルト、またはマンガンなどのダイヤモンド触媒溶媒を使用してsp3結合C
3N
4の製造に成功したという言及は同定されなかった。
【0025】
上記の理論的にありそうもないことにかかわらず、本発明者は、三元金属炭化物は三元金属窒化物と混合された場合にsp2結合グラファイト状C
3N
4をsp3結合立方晶C
3N
4に変換する触媒溶媒として機能することを発見した。これらの三元金属炭化物および三元金属窒化物は抗ペロブスカイトまたは逆ペロブスカイトとしても公知である。三元金属炭化物および三元金属窒化物は、M
3M’Dの式を有する化学量論化合物として記載されており、M対M’対Dのおおよその比は3:1:1である。
【0026】
元素Mは、元素の以下の族(IIIA族[Sc、Y、La]、IVA族[Ti、Zr、Hf]、VA族[V、Nb、Ta]、VIA族[Cr]、VIIA族[Mn]、VIIIA族[Fe、Co、Ni、Pd、Pt]またはランタニド[Ce])に属する遷移金属であると定義される。アルカリ土類金属Caもまた、三元金属炭化物構造を形成することが見出されている。
【0027】
三元金属炭化物または窒化物構造において、元素M’は、元素Mg、ZnおよびCdと共にIIIB族(B、Al、Ga、In)およびIVB族(Si、Ge、Sn、Pb)からの半金属元素の族に属することが見出されている。三元金属化合物構造中の元素DはCまたはNのいずれかであり得る。
【0028】
文献において議論されている全ての三元金属炭化物および窒化物の間の緊密な結晶学的類似性に起因して、固体溶液は予測できない結果と共に形成することができるおよび形成する。例示的Fe
3SnDの三元金属化合物構造中の元素Dは、Fe
3Sn(C,N)を形成するCおよびNの固体溶液であり得る。また、元素Dの化学量論は、実際上変動し、かつその触媒溶媒能力に影響することなくMおよびM’元素に対して厳密に1ではないことが見出されている。同様に、三元金属化合物Mn
3GeCはFe
3GeCと固体溶液を形成し得る。三元金属化合物Fe
3GeCはFe
3SnCと固体溶液を形成し得る。半金属元素M’のため、三元金属炭化物および窒化物は、単純金属炭化物または金属窒化物の融解/分解温度よりはるかに低い温度において融解する。これは、C
3N
4との触媒溶媒としてのその使用のために産業上好都合である。
【0029】
sp2結合C
3N
4のsp3結合C
3N
4への触媒溶媒変換の機序は知られていない。いかなる意味でも限定されないが、半金属元素M’は三元金属炭化物/窒化物が融解した場合に液体を形成し、遷移金属炭化物および窒化物との化学的相互作用に起因する不溶性の金属炭化物および窒化物の形成を防止するという仮説が立てられる。溶解した遷移金属Mと共に半金属元素M’からなる液体は、sp3結合C
3N
4が熱力学的に安定な圧力に系がある場合にsp2結合C
3N
4と相互作用および反応してそれをsp3結合C
3N
4に変換することができる。
【0030】
ダイヤモンド合成において使用される高圧力および高温下、融解したVIIIA族遷移金属がグラファイト材料とどのように反応するのかは知られていない。1つの可能な説明は、炭素原子が融解金属に個々に溶解することであり、他には、炭素原子のクラスターがグラファイトから脱着して融解金属に入った後、ダイヤモンド結晶の表面上に沈着するという仮定が立てられる。
【0031】
sp2結合を有する非ダイヤモンド炭素または炭素質材料は、ダイヤモンドが熱力学的に安定な温度および圧力において触媒溶媒を使用してsp3結合を有するダイヤモンド炭素に変換される。sp3結合C
3N
4の合成のための圧力−温度範囲は、おおよそ1000℃での最小で5GPaから1800℃の温度についての最小で7GPaまでから形成される線より上の領域にある。6GPaの典型的な産業的圧力について、触媒溶媒の使用可能な温度範囲はおおよそ1000℃から最大で1500℃までであり、それにおいてそのような温度はsp2結合C
3N
4領域に近付く。1000℃より低いと、触媒溶媒は概しては融解せず、したがって、sp2結合C
3N
4材料をsp3結合C
3N
4に変換するために使用できない。
【0032】
一実施形態では、触媒溶媒は、Mn、Fe、Co、およびNiなどのVIIIA族金属をCrおよびTaおよびその合金などの炭化物形成体の追加と共に含む。
【0033】
一実施形態では、sp3結合C
3N
4生成物を製造する方法は、反応容器中で出発材料を触媒溶媒と接触させること、4〜8GPaの圧力下で900℃〜2000℃の温度に反応容器を加熱すること、触媒溶媒の少なくとも一部を融解させること、およびsp2結合C
3N
4の少なくとも一部をsp3混成C
3N
4に変換することを含む。出発材料はsp2結合C
3N
4を含んでもよい。触媒溶媒は室温で固体であってもよい。
【0034】
一例では、触媒溶媒は、化学式A
xB
yN
zを有する第1の化合物および化学式D
qE
rC
sを有する第2の化合物を含む炭窒化物ベースの触媒溶媒である。Aは、遷移金属、ランタニド金属およびCaからなる群から選択されてもよい。Bは、IIIB族半金属元素、IVB族半金属元素、Mg、Zn、およびCdからなる群から選択されてもよい。Nは窒素である。xは2.5〜3.5であってもよく、yは0.5〜1.5であってもよく、かつ、zは0.5〜1.5であってもよい。Dは、遷移金属、ランタニド金属およびCaからなる群から選択されてもよい。Eは、IIIB族半金属元素、IVB族半金属元素、Mg、Zn、およびCdからなる群から選択されてもよい。Cは炭素である。qは2.5〜3.5であってもよく、rは0.5〜1.5であり、かつ、sは0.5〜1.5である。触媒溶媒中の第1の化合物の窒素のモル数に対する第2の化合物の炭素のモル数の化学量論比は2.5:4〜3.9:4であってもよい。
【0035】
一実施形態では、化学式A
xB
yN
zにおけるxは3であり、yは1であり、かつ、zは1である。一実施形態では、化学式D
qE
rC
sにおけるqは3であり、rは1であり、かつ、sは1である。
【0036】
別の実施形態では、触媒溶媒は、化学式G
xH
yを有する化合物を含む金属合金ベースの触媒溶媒である。Gは、遷移金属、ランタニド金属およびCaからなる群から選択されてもよい。Hは、IIIB族半金属元素、IVB族半金属元素、Mg、Zn、およびCdからなる群から選択されてもよい。
【0037】
化学式G
xH
yにおける下付き文字xは2〜4の範囲内であってもよい。一実施形態では、xは2.5〜3.5である。一実施形態では、xは3である。化学式G
xH
yにおける下付き文字yは0.2〜2の範囲内であってもよい。一実施形態では、yは0.5〜1.5の範囲内であってもよい。一実施形態では、yは1である。
【0038】
一実施形態では、方法は、反応容器に結晶種子材料の粒を種子付けすることを含む。一例では、結晶種子材料はダイヤモンドを含んでもよい。一実施形態では、結晶種子材料はsp3結合C
3N
4を含む。方法は、結晶種子材料の単一の粒の表面へのsp3結合C
3N
4の沈着を介して第1の単結晶を成長させるステップを含んでもよい。
【0039】
一実施形態では、上記の方法を介して得られるsp3結合C
3N
4材料は、多結晶成形体に組み込まれてもよい。多結晶成形体は、触媒溶媒を介して製造されてもよい。多結晶成形体を製造するために使用される触媒溶媒は前記触媒溶媒と同じであってもよく、または異なる触媒溶媒であってもよい。一実施形態では、sp3結合C
3N
4材料は第1の触媒溶媒系を介して製造され、かつ、多結晶成形体は第2の触媒溶媒系を介して製造される。別の実施形態では、sp3結合C
3N
4材料および多結晶成形体は同じ触媒溶媒系を介して製造される。
【0040】
一実施形態では、多結晶成形体を製造することは、sp3結合C
3N
4の少なくとも一部を粉末に加工することを含んでもよい。粉末は反応容器に投入されてもよい。これは、sp3結合C
3N
4材料を製造するために使用される同じ反応容器であってもよく、または異なる反応容器であってもよい。触媒溶媒を含む固体材料の層が反応容器中に並べられてもよい。第2の反応容器を4〜8GPaの圧力下で900〜2000℃の温度に加熱することにより、触媒溶媒の少なくとも一部を融解させ、かつ粉末化したsp3結合C
3N
4に融解した触媒溶媒を浸潤させてもよい。最後に、反応容器を冷却して、sp3結合C
3N
4を含む焼結多結晶成形体を製造してもよい。
【0041】
別の実施形態では、多結晶成形体を製造することは、sp3結合C
3N
4の少なくとも一部を粉末に加工した後、粉末を触媒溶媒と混合して固体混合物を作製することを含んでもよい。(すなわち、触媒溶媒は室温で固体であってもよい)。混合物は反応容器に投入されてもよい。反応容器を4〜8GPaの圧力下で900〜2000℃の温度に加熱することにより、触媒溶媒の少なくとも一部を融解させてもよい。次に、反応容器を冷却して、sp3結合C
3N
4を含む焼結多結晶成形体を製造してもよい。
【0042】
一実施形態では、方法は、焼結多結晶成形体から第2の触媒溶媒の大部分を除去することにより焼結多結晶成形体中に孔を作製することを含んでもよい。孔は、基材への焼結多結晶成形体の結合を促進するために使用されてもよく、結合は4〜8GPaの圧力下で900〜2000℃の温度で起こる。一実施形態では、基材バインダー相は融解温度を有し、かつ、第2の触媒溶媒は基材バインダー相の融解温度より低い融解温度を有する。
【0043】
多孔性の焼結多結晶成形体は、基材のバインダー相を孔の中に融解させることにより基材に結合されてもよい。結合ステップの前に基材の表面上に勾配層を作製することが有利であり得る。一実施形態では、勾配層は、基材および第2の触媒溶媒の粒子とのsp3結合C
3N
4粒子の混合物であり、それにより、sp3結合C
3N
4焼結多結晶成形体のボディ(またはバルク)の間の熱膨張係数および基材のボディ(またはバルク)の熱膨張係数を有する焼結多結晶成形体が結果としてもたらされる。sp3結合C
3N
4成形体および基材の間で平均熱膨張係数を変化させる目的は、熱膨張係数の差異に起因する応力を低減することである。結合ステップの前に金属基材の表面上に粗いきめを作製することもまた有利であり得る。
【0044】
一実施形態では、焼結多結晶成形体を製造するために使用される触媒溶媒はCo
3SnCおよびCo
3SnNを含む。
【実施例】
【0045】
[実施例1]
Fe
3Sn(C,N)
3:1の正確な原子比のFeおよびSn金属粉末の混合物を調製し、sp2結合窒化炭素材料と混合し、1000℃の不活性雰囲気下で周囲圧力において反応させ、未反応sp2結合窒化炭素材料と共にFe
3Sn(C,N)を形成させた。この反応混合物は、1000℃で約5GPaの最小圧力から1800℃の温度についての約7GPaの最小圧力までの、C
3N
4のsp3結合ポリタイプが熱力学的に安定な圧力および温度に加圧および加熱した場合に、未反応sp2結合窒化炭素材料およびFe
3Sn(C,N)からC
3N
4のsp3結合ポリタイプを生成する。
[実施例2]
Co
3InC+Ce
3InN
3:4の正確なモル比のCo
3InCおよびCe
3InN粉末の混合物を調製し、sp2結合窒化炭素材料と混合した。この混合物は、1000℃で約5GPaの最小圧力から1800℃の温度についての約7GPaの最小圧力までの、C
3N
4のsp3結合ポリタイプが熱力学的に安定な圧力および温度に加圧および加熱した場合に、sp2結合窒化炭素材料からC
3N
4のsp3結合ポリタイプを生成する。
[実施例3]
Fe
3SnC+Mn
3GeN
3:4の正確なモル比のFe
3SnCおよびMn
3GeN粉末の混合物を調製し、sp2結合窒化炭素材料と混合した。この混合物は、1000℃で約5GPaの最小圧力から1800℃の温度についての約7GPaの最小圧力までの、C
3N
4のsp3結合ポリタイプが熱力学的に安定な圧力および温度に加圧および加熱した場合に、sp2結合窒化炭素材料からC
3N
4のsp3結合ポリタイプを生成する。
[実施例4]
3Fe+Sn+C
3N
4
3:1の正確な原子比のFeおよびSn金属粉末の混合物を調製し、sp2およびまたはsp3結合窒化炭素材料と混合し、1000℃で約5GPaの最小圧力から1800℃の温度についての約7GPaの最小圧力までの、C
3N
4のsp3結合ポリタイプが熱力学的に安定な高圧力および高温において反応させた。この反応混合物は、未反応sp2結合窒化炭素材料およびFe
3Sn(C,N)からC
3N
4のsp3結合ポリタイプを生成する。
[実施例5]
sp3結合C
3N
4およびCu+Tiろう材合金の成形体
Cu+Tiろう材合金とのsp3結合C
3N
4の成形体を、六方晶窒化ホウ素でコーティングしたグラファイトモールドにsp3結合C
3N
4グリットを入れることにより製造する。銅金属粉末および15重量%のTi金属粉末の粉末混合物をsp3結合C
3N
4グリットの上に置く。15重量%のチタンは、sp3結合グリットの表面領域を融解銅により濡れさせる必要があるために必要とされる。sp3結合C
3N
4グリットおよびCu+Ti金属粉末を有するモールドを真空炉に入れ、真空化してこれらの成分からの脱気を行う。真空炉を200C/時間において300Cに加熱し、その温度において10Paのアルゴン雰囲気を導入して過圧を提供し、真空炉中での過度の金属蒸発を防止する。真空炉を200C/時間において1120Cにさらに加熱し、この温度において1時間保持する。真空炉を次に室温に冷却し、雰囲気まで加圧した後に開放する。銅とのsp3結合C
3N
4グリットの成形体を次に真空炉およびグラファイトモールドから除去し、洗浄する。
[実施例6]
SiCおよびSi
3N
4結合相を有するsp3結合C
3N
4の成形体
炭酸プロピレンを可塑剤として添加した一時的(fugitive)バインダーポリ炭酸プロピレンと共にsp3結合C
3N
4粒または粒子の成形体を最初にプレスすることによりSiCおよびSi
3N
4結合相を有するsp3結合C
3N
4の成形体を製造する。15重量%のチタン金属粉末と混合したシリコン金属粉末の成形体を、炭酸プロピレンを可塑剤として添加した一時的バインダーポリ炭酸プロピレンと共にプレスする。シリコンおよびチタン金属粉末の成形体を六方晶炭化ホウ素でコーティングしたグラファイトプレート上に置いた後、sp3結合C
3N
4粒または粒子の成形体を上に置く。2つの成形体を有するグラファイトプレートを真空炉に入れ、真空炉を10
−6雰囲気圧に真空化し、50C/時間において300Cに緩徐に加熱して一時的バインダーを除去する。真空炉を次に200C/時間において1300Cに加熱し、この温度において1時間保持する。シリコン−チタン金属成形体は1330Cの共融温度を有する。温度平衡に達した後、真空炉温度を段階的に1500Cにし、その温度において1時間保持した後に室温に冷却し、SiCおよびSi
3N
4結合相を有するsp3結合C
3N
4の成形体をグラファイトプレートから除去する。C
3N
4+6Siの反応はSi
3N
4+3SiCをもたらす。SiC中のSi
3N
4のある程度の溶解性があり、これは、溶解窒素からの導電性SiCを結果としてもたらす。SiCおよびSiC−Si
3N
4結合C
3N
4成形体の電気電導度をさらに増加させるために、ドーパントであるホウ素、リン、およびリチウムを使用することができる。簡便性、コスト、および安全性のために、ホウ素ドープシリコン金属およびリンドープシリコン金属が好ましい。C
3N
4粒または粒子を濡れさせるためのチタン金属の使用もまた、SiCおよびSi
3N
4の電気電導度を向上させる。
[実施例7]
多孔性を有する焼結sp3結合C
3N
4の成形体
sp3結合C
3N
4を含む焼結多結晶成形体を処理して触媒溶媒を除去することにより多孔性ボディを形成させる。Fe
3Sn(C,N)触媒溶媒を用いて製造されたsp3結合C
3N
4を含む焼結多結晶成形体について、10%のHF(フッ化水素)酸を添加して成形体を濃縮王水のビーカーに沈着させる。酸溶液および焼結成形体を含むビーカーを90℃より高いが沸騰温度より低い温度に加熱し、穏やかに撹拌して孔からの溶解元素の除去を補助する。酸溶液および焼結成形体を含むビーカーを2週間90℃において酸で処理して触媒溶媒を除去し、その時点においてそれを冷却させる。多孔性の焼結成形体を回収し、孔中の酸を中和し、成形体を洗浄する。溶媒触媒、Ca
3SnNおよびNi
3MgCの混合物を用いて製造されたsp3結合C
3N
4を含む焼結多結晶成形体は濃縮王水混合物とより反応性であり、HF酸の添加を必要としない。
【0046】
Co−WC超硬合金基材に結合したsp3結合C
3N
4を含む焼結多結晶成形体を電気化学的手段により処理して触媒溶媒を除去し、それにより多孔性ボディを形成させる。Co−WC基材と電気的に接触させ、sp3結合C
3N
4のテーブルを水性HCl溶液と接触させる。酸耐性のo−リングおよびプラスチックカラーを使用することにより酸性水性溶液との接触からCo−WC基材を保護する。sp3結合C
3N
4のテーブルを酸性溶液と接触させることにより、電流がCo−WC基材を通過し、sp3結合C
3N
4のテーブルに入り、酸性水性溶液を通じてビーカー内の酸耐性電極に流れる。電圧を気体発生の閾値より低くに維持して水素気体発生の危険性を最小化し、かつsp3結合C
3N
4のテーブルの孔からの触媒溶媒の除去を最大化する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本出願に記載の発明は、様々な化学的加工技術を含む、様々な産業的方法により製造されてもよい。さらに、本明細書に記載の発明は、研磨剤の製造およびダイヤモンド合成を含む、産業的文脈において使用されてもよい。
【0048】
上記の発明は、以下の非限定的な実施形態にしたがって代替的に記載され得る:
sp3結合C
3N
4生成物を製造する方法の第1の実施形態では、方法は、反応容器中で出発材料を触媒溶媒と接触させることであって、出発材料がsp2結合C
3N
4を含みかつ触媒溶媒が室温で固体である、接触させること、4〜8GPaの圧力下で900℃〜2000℃の温度に反応容器を加熱すること、触媒溶媒の少なくとも一部を融解させること、sp2結合C
3N
4の少なくとも一部をsp3混成C
3N
4に変換することを含んでもよく、触媒溶媒は、化学式A
xB
yN
z(式中、Aは、遷移金属、ランタニド金属およびCaからなる群から選択され、Bは、IIIB族半金属元素、IVB族半金属元素、Mg、Zn、およびCdからなる群から選択され、Nは窒素であり、xは2.5〜3.5であり、yは0.5〜1.5であり、zは0.5〜1.5である)を有する第1の化合物、ならびに化学式:D
qE
rC
s(式中、Dは、遷移金属、ランタニド金属およびCaからなる群から選択され、Eは、IIIB族半金属元素、IVB族半金属元素、Mg、Zn、およびCdからなる群から選択され、Cは炭素であり、qは2.5〜3.5であり、rは0.5〜1.5であり、sは0.5〜1.5である)を有する第2の化合物を含む炭窒化物ベースの触媒溶媒であり、触媒溶媒中の第1の化合物の窒素のモル数に対する第2の化合物の炭素のモル数の化学量論比は2.5:4〜3.9:4である。
【0049】
第1の方法の実施形態のいくつかの例では、xは3であり、yは1であり、かつ、zは1である。追加的または代替的に、ある特定の例では、qは3であり、rは1であり、かつ、sは1である。
【0050】
第1の実施形態の方法は、反応容器に結晶種子材料の粒子を種子付けすることをさらに含んでもよい。いくつかの例では、結晶種子材料はダイヤモンドを含む。他の例では、結晶種子材料はsp3結合C
3N
4を含む。ある特定の事例では、方法は、結晶種子材料の単一の粒子の表面へのsp3結合C3N4の沈着を介して第1の単結晶を成長させることをさらに含む。第1の実施形態の方法の特定の事例では、触媒溶媒は第1の触媒溶媒であり、かつ、方法は、第2の触媒溶媒を介してsp3結合C
3N
4の少なくとも一部を焼結多結晶成形体に組み込むことをさらに含む。
【0051】
第1の実施形態の方法の1つの例では、反応容器は第1の反応容器であり、かつ、方法は、sp3結合C
3N
4の少なくとも一部を粉末に加工すること、粉末を第2の反応容器に投入すること、第2の反応容器中で第2の触媒溶媒を含む固体材料の層を並べること、4〜8GPaの圧力下で900〜2000℃の温度に第2の反応容器を加熱すること、第2の触媒溶媒の少なくとも一部を融解させること、粉末化したsp3結合C
3N
4に融解した触媒溶媒を浸潤させること、および第2の反応容器を冷却してsp3結合C
3N
4を含む焼結多結晶成形体を製造することをさらに含む。
【0052】
反応容器が第1の反応容器である別の例では、方法は、sp3結合C
3N
4の少なくとも一部を粉末に加工すること、粉末を第2の触媒溶媒と混合して固体混合物を作製することであって、触媒溶媒が室温で固体である、作製すること、混合物を第2の反応容器に投入すること、4〜8GPaの圧力下で900〜2000℃の温度に第2の反応容器を加熱すること、第2の触媒溶媒の少なくとも一部を融解させること、および第2の反応容器を冷却してsp3結合C
3N
4を含む焼結多結晶成形体を製造することをさらに含む。そのような例では、方法は、焼結多結晶成形体から第2の触媒溶媒の大部分を除去することにより焼結多結晶成形体中に孔を作製することをさらに含んでもよい。方法は、バインダー相を介して焼結多結晶成形体を基材に結合させることであって、結合が4〜8GPaの圧力下で900〜2000℃の温度で起こる、結合させることをさらに含んでもよい。そのような例では、バインダー相は融解温度を有してもよく、かつ、第2の触媒溶媒は、バインダー相の融解温度より低い融解温度を有してもよい。
【0053】
方法が焼結多結晶成形体中に孔を作製することを含む例では、第2の触媒溶媒はCo
3SnCおよびCo
3SnNを含んでもよい。そのような例では、方法は、結合ステップの前に基材の表面上に勾配層を作製することを含んでもよい。
【0054】
方法がバインダー相を介して焼結多結晶成形体を基材に結合させることを含む例では、方法は、結合ステップの前に基材の表面上に粗いきめを作製することをさらに含んでもよい。
【0055】
sp3結合C
3N
4生成物を製造する方法の第2の実施形態では、方法は、反応容器中で出発材料を触媒溶媒と接触させることであって、出発材料がsp2結合C
3N
4を含みかつ触媒溶媒が室温で固体である、接触させること、4〜8GPaの圧力下で900℃〜2000℃の温度に反応容器を加熱すること、触媒溶媒の少なくとも一部を融解させること、sp2結合C
3N
4の少なくとも一部をsp3混成C
3N
4に変換することを含み、触媒溶媒は、化学式:G
xH
y(式中、Gは、遷移金属、ランタニド金属およびCaからなる群から選択され、Hは、IIIB族半金属元素、IVB族半金属元素、Mg、Zn、およびCdからなる群から選択される)を有する化合物を含む金属合金ベースの触媒溶媒である。第2の実施形態の方法のある特定の例では、xは2.5〜3.5であり、かつ、yは0.5〜1.5である。
【0056】
sp3結合C
3N
4生成物を製造する方法の第3の実施形態では、方法は、反応容器中で出発材料を触媒溶媒と接触させることであって、出発材料がsp2結合C
3N
4を含みかつ触媒溶媒が室温で固体である、接触させること、4〜8GPaの圧力下で900℃〜2000℃の温度に反応容器を加熱すること、触媒溶媒の少なくとも一部を融解させること、sp2結合C
3N
4の少なくとも一部をsp3混成C
3N
4に変換すること、および反応容器にダイヤモンドを含む種子材料の粒子を種子付けすることを含む。第3の実施形態の方法の一部の例では、種子材料はsp3結合C
3N
4をさらに含む。
【0057】
上記の開示は、独立した有用性を有する複数の別個の発明を包含する。これらの発明のそれぞれを特定の形態において開示したが、上記に開示および説明される特定の実施形態は限定的な意味で考えられるべきではなく、数多くのバリエーションが可能である。本発明の主題は、上記に開示されるおよびそのような発明に関する当業者にとって生来的な様々な要素、特徴、機能および/または特性の全ての新規かつ自明でない組合せおよび部分的組合せを含む。本開示またはその後に提出される請求項が「1つの」(a)要素、「第1の」(a first)要素、または任意のそのような同等の用語を記載する場合、本開示または請求項は、2つまたはより多くのそのような要素を必要とすることも除外することもなく、1つまたはより多くのそのような要素を組み込むものと理解されるべきである。
【0058】
出願人は、新規かつ自明でないと考えられる開示される発明の組合せおよび部分的組合せを対象とする請求項を提出する権利を保持する。特徴、機能、要素および/または特性の他の組合せおよび部分的組合せにおいて具現化される発明は、これらの請求項の補正または本出願もしくは関連出願における新たな請求項の提示を通じて特許主張され得る。同じ発明または異なる発明のいずれを対象とするものであれ、そして元々の請求項とは範囲が異なる、より広い、より狭いまたは等しいもののいずれであれ、そのような補正されたまたは新規の請求項は、本明細書に記載の発明の主題の範囲内にあると考えられるべきである。
【国際調査報告】