特表2021-519781(P2021-519781A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セラニーズ・セールス・ジャーマニー・ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2021-519781不均一反応系における環状アセタールの製造方法
<>
  • 特表2021519781-不均一反応系における環状アセタールの製造方法 図000013
  • 特表2021519781-不均一反応系における環状アセタールの製造方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-519781(P2021-519781A)
(43)【公表日】2021年8月12日
(54)【発明の名称】不均一反応系における環状アセタールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 323/06 20060101AFI20210716BHJP
【FI】
   C07D323/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2020-552835(P2020-552835)
(86)(22)【出願日】2019年3月28日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月26日
(86)【国際出願番号】US2019024604
(87)【国際公開番号】WO2019191445
(87)【国際公開日】20191003
(31)【優先権主張番号】62/649,998
(32)【優先日】2018年3月29日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】516243353
【氏名又は名称】セラニーズ・セールス・ジャーマニー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】シアントゥリ,ジョニ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュックシュテット,ハンノ
(72)【発明者】
【氏名】ゲーリング,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】フェオード,ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】レオナード,スタンリー
【テーマコード(参考)】
4C022
【Fターム(参考)】
4C022PA04
(57)【要約】
環状アセタールの製造方法を開示する。本方法によれば、ホルムアルデヒド源を非プロトン性化合物と混合し、不均一触媒と接触させて、ホルムアルデヒド源をトリオキサンのような環状アセタールに転化させる。触媒には、例えば、イオン交換樹脂のような固体触媒を含ませることができる。一実施形態においては、本方法は、無水ホルムアルデヒドガスをトリオキサンに転化させるために使用される。無水ホルムアルデヒドガスは、抽出蒸留によってホルムアルデヒド水溶液から製造することができる。非プロトン性化合物及びホルムアルデヒド溶液は、反応生成物から抽出して、プロセス中に再循環することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状アセタールの製造方法であって、
約70重量%より多い量のホルムアルデヒドを含むホルムアルデヒド水溶液を、非プロトン性溶媒と混合して反応混合物を形成する工程;
前記反応混合物を、反応器中において、前記ホルムアルデヒドの一部を環状アセタールに転化させる条件下で触媒と接触させて、水、前記環状アセタール、未反応のホルムアルデヒド、及び前記非プロトン性溶媒を含む生成物流を形成する工程;及び
前記生成物流を、環状アセタールに富む気体流及び非プロトン性溶媒に富む液体流を生成する低圧分離装置に供給する工程;
を含む上記方法。
【請求項2】
前記反応器に供給する前記ホルムアルデヒド水溶液が、約80重量%より多い量のホルムアルデヒドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1以上の濃縮装置を通して前記水溶液を供給することによって、前記ホルムアルデヒド水溶液中のホルムアルデヒドの相対量(proportionate amount)を増加させる工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応器が固定床反応器を含み、前記反応器を、約30℃〜約200℃、例えば約80℃〜約120℃の温度で運転し、約0.15bar〜約5bar、例えば約1bar〜約2barの圧力で運転する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記触媒が酸イオン交換材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒が、固体担体上に固定されたルイス酸又はブレンステッド酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒が、固体担体上に固定化された有機溶融塩中に溶解されたルイス酸又はブレンステッド酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が連続的である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記低圧分離装置を断熱的に運転し、前記低圧分離装置を、約50mbarより高く、例えば約150mbarより高く、例えば約350mbarより高く、一般に約600mbar未満、例えば約500mbar未満、例えば約400mbar未満の圧力で運転する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記非プロトン性化合物が、1barにおいて求めて、140℃以上、より好ましくは160℃以上、特に180℃以上の沸点を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ホルムアルデヒド源の20%より多くが、反応中に1種類以上の環状アセタールに転化される、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記非プロトン性化合物が硫黄含有有機化合物を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記非プロトン性化合物が、式(I):
【化1】
(式中、
nは、1〜6の範囲の整数、好ましくは2又は3であり、
環炭素原子は、場合によっては、分岐又は非分岐であってよいC〜Cアルキルから好ましくは選択される、1以上の置換基によって置換されていてよい)
によって表される、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記非プロトン性化合物がスルホランである、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記非プロトン性化合物が、式(II):
【化2】
(式中、
及びRは、独立して、分岐又は非分岐であってよいC〜Cアルキルから選択され、好ましくは、R及びRは、独立してメチル又はエチルを表す)
によって表され、好ましくは前記非プロトン性化合物がジメチルスルホンである、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記非プロトン性化合物が、式(III):
【化3】
(式中、
nは、1〜6の範囲の整数、好ましくは2又は3であり、
環炭素原子は、場合によっては、分岐又は非分岐であってよいC〜Cアルキルから好ましくは選択される、1以上の置換基によって置換されていてよい)
によって表されるか;又は
前記非プロトン性化合物が、式(IV):
【化4】
(式中、
及びRは、独立して、分岐又は非分岐であってよいC〜Cアルキルから選択され、好ましくは、R及びRは、独立してメチル又はエチルを表す)
によって表され;好ましくは前記非プロトン性化合物がジメチルスルホキシドである、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記非プロトン性化合物がジメチルスルホンを含む、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記非プロトン性化合物がジメチルスルホキシドを含む、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記ホルムアルデヒドに富む流れ及び前記非プロトン性溶媒に富む流れを再循環して前記反応器に戻す工程を更に含む、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記環状アセタールに富む気体流をクエンチする工程、及びクエンチされた環状アセタールに富む流れを、未反応のホルムアルデヒドから前記環状アセタールを更に分離するために蒸留カラムに供給し、前記蒸留カラムによって、少なくとも約50重量%の量の環状アセタールを含む環状アセタール生成物流を生成し、前記蒸留カラムによってまた、ホルムアルデヒドに富む流れも生成する工程を含む、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
環状アセタールの製造方法であって、
ホルムアルデヒド水溶液を非プロトン性溶媒と混合して反応混合物を形成する工程;
前記反応混合物を、反応器内において、前記ホルムアルデヒドの一部を環状アセタールに転化させる条件下で不均一触媒と接触させて、水、前記環状アセタール、未反応のホルムアルデヒド、及び前記非プロトン性溶媒を含む生成物流を形成する工程;
前記生成物流を、環状アセタールに富む気体流及び非プロトン性溶媒に富む液体流を生成する低圧分離装置に供給する工程;
前記環状アセタールに富む気体流をクエンチし、クエンチした環状アセタールに富む流れを、未反応のホルムアルデヒドから前記環状アセタールを更に分離するために蒸留カラムに供給し、前記蒸留カラムによって、少なくとも約50重量%の量の環状アセタールを含む環状アセタール生成物流を生成し、前記蒸留カラムによってまた、ホルムアルデヒドに富む流れも生成する工程;及び
前記ホルムアルデヒドに富む流れ及び前記非プロトン性溶媒に富む流れを再循環して前記反応器に戻す工程;
を含む上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2018年3月29日の出願日を有する米国仮出願第62/649,998号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に基づき、その優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]1,3,5−トリオキサン(以下、トリオキサン)は、ホルムアルデヒドの環状三量体である。トリオキサンは、主として、機械的、化学的、及び温度安定性の観点から望ましい優れた特性を有する高性能ポリマーであるポリオキシメチレン(POM)の製造のための出発材料として使用されている。ポリオキシメチレンポリマーは、ホモポリマー及びコポリマーとして入手可能である。
【0003】
[0003]ポリオキシメチレン市場が成長するにつれて、トリオキサン製造者の側では、競争ベースでトリオキサン需要を満足するために彼らの製造能力を拡大する要望が存在する。トリオキサンの製造のための主要な技術的プロセスは、触媒として濃硫酸の存在下でのホルムアルデヒド水溶液の転化である。従来技術において公知のトリオキサンの製造方法は複雑であり、煩雑な溶媒回収工程を必要とする抽出工程を含む。更に、従来技術において慣用的かつ商業的に公知の方法は、時間及びエネルギーがかかり、ホルムアルデヒド源の所望の環状アセタールへの低い転化率をもたらす。更に、この方法によって形成される副生成物の量は多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]上記に鑑みて、トリオキサンのような環状アセタールを製造するための効率的な方法に対する必要性が現在存在する。また、比較的高い転化率を有する環状アセタールの製造方法に対する必要性も存在する。また、異なるホルムアルデヒド源から環状アセタールを製造する方法に対する必要性も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]一般に、本発明は、ホルムアルデヒド源から1種類以上の環状アセタールを製造する方法に関する。本発明の方法は、ホルムアルデヒド水溶液からトリオキサンのような環状アセタールを製造するのに特によく適している。しかしながら、他の実施形態においては、ホルムアルデヒド源は、気体状ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレンホモ及びコポリマー、ホルムアルデヒドとトリオキサンの混合物のようなホルムアルデヒドを含む混合物、及びそれらのブレンドを含み得る。ホルムアルデヒド源を非プロトン性化合物と混合して触媒と接触させる。触媒は不均一触媒であってよい。例えば、触媒はイオン交換材料のような固体触媒を含み得る。
【0006】
[0006]反応混合物は、反応器中において、ホルムアルデヒドの一部を環状アセタールに転化させる条件下で不均一触媒と接触させて、水、環状アセタール、未反応のホルムアルデヒド、及び非プロトン性溶媒を含む生成物流を形成することができる。生成物流は、低圧分離装置に供給することができる。低圧分離装置は、環状アセタールに富む気体流及び非プロトン性溶媒に富む液体流を生成する。その後、環状アセタールに富む気体流をクエンチし、続いて未反応のホルムアルデヒドから環状アセタールを更に分離するために蒸留カラムに供給することができる。蒸留カラムは、環状アセタールを少なくとも約50重量%の量で含む環状アセタール生成物流を生成し、ホルムアルデヒドに富む流れを生成する。ホルムアルデヒドに富む流れ及び非プロトン性溶媒に富む流れは、再循環して反応器に戻すことができる。
【0007】
[0007]ホルムアルデヒド水溶液中のホルムアルデヒドの量は変化し得る。例えば、反応器に供給されるホルムアルデヒド水溶液は、約65重量%より多い量、例えば約70重量%より多い量、例えば約75重量%より多い量、例えば約80重量%より多い量のホルムアルデヒドを含み得る。
【0008】
[0008]場合によっては、上記記載のプロセス中において、ホルムアルデヒド水溶液は、1以上の濃縮装置を通して供給することができる。
[0009]一実施形態においては、反応は固定床反応器内で行う。反応器は、約30℃〜約200℃、例えば約80℃〜約120℃の温度で運転し、約0.15bar〜約5bar、例えば約1bar〜約2barの圧力で運転することができる。
【0009】
[00010]上記記載のプロセスは連続的であってよく、又はバッチ式で運転することができる。
[00011]一実施形態においては、不均一触媒は、固体担体上に固定された酸を含んでいてよく、酸はルイス酸又はブレンステッド酸である。
【0010】
[00012]低圧分離装置は、約50mbarより高く、例えば約150mbarより高く、例えば約350mbarより高く、一般に約600mbar未満、例えば約500mbar未満、例えば約400mbar未満の圧力で運転して、断熱的に運転することができる。
【0011】
[00013]非プロトン性化合物は極性であってよい。例えば、一実施形態においては、非プロトン性化合物は双極性であってよい。一実施形態においては、非プロトン性化合物は、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、又はそれらの混合物のような硫黄含有有機化合物を含む。一実施形態においては、非プロトン性化合物はスルホランを含む。例えば、非プロトン性化合物はジメチルスルホンを含んでいてよい。別の例においては、非プロトン性化合物はジメチルスルホキシドを含む。
【0012】
[00014]非プロトン性化合物はまた、約15より高い比較的高い静的誘電率又は誘電定数を有していてよい。非プロトン性化合物はまた、ニトロ基を含んでいなくてもよい。特に、ニトロ基を有する化合物は、プロセス内で望ましくない副反応を形成する可能性がある。
【0013】
[00015]非プロトン性化合物は、例えば、1barの圧力において約120℃より高く、例えば約140℃より高く、例えば約160℃より高く、例えば約180℃より高い沸点を有していてよい。好ましくは、非プロトン性化合物は環状アセタールと共沸混合物を形成しない。
【0014】
[00016]本発明の他の特徴及び態様を以下においてより詳細に議論する。
[00017]本発明の完全かつ可能な開示を、添付の図面の参照を含む本明細書の残りの部分においてより詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】[00018] 図1は、本発明によるプロセスの一実施形態の概略図である。
図2】[00019]図2は、本発明にしたがって実施される実施例のプロセスの結果を記録するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[00020]本明細書及び図面における参照符号の繰り返しの使用は、本発明の同一又は類似の特徴又は構成要素を表すことを意図している。
[00021]本議論は、代表的な実施形態の記載にすぎず、本発明のより広い態様を限定するものとしては意図しないことが当業者によって理解される。
【0017】
[00022]本発明は、一般に環状アセタールの製造方法に関する。特に有利なことには、全ての異なるタイプのホルムアルデヒド源から環状アセタールを製造することができる。本発明において使用するホルムアルデヒド源は、ホルムアルデヒド、及びホルムアルデヒドから形成されるオリゴマー又はポリマーを包含する。したがって、ホルムアルデヒド源は、パラホルムアルデヒド、オキシメチレンホモポリマー、及びオキシメチレンコポリマーを包含し得る。本発明の方法は、ホルムアルデヒド水溶液から環状アセタールを形成するのに特によく適している。ホルムアルデヒド水溶液は、上記記載のホルムアルデヒド源の1つから形成することができる。
【0018】
[00023]ホルムアルデヒド源を、非プロトン性化合物の存在下で触媒と接触させて環状アセタールを形成する。非プロトン性化合物は、転化率を大きく増加させる形態で環状アセタールの生成を促進する。特に有利なことには、本方法にしたがって製造された環状アセタールを次に非プロトン性化合物から容易に分離することができる。例えば、一実施形態においては、非プロトン性化合物は環状アセタールよりもはるかに高い沸点を有し得るので、環状アセタールを簡単な蒸留プロセスによって非プロトン性化合物から分離又は単離することができる。
【0019】
[00024]ホルムアルデヒドの環状アセタールへの転化中に使用される触媒は、不均一触媒を含み得る。触媒は、例えば、非プロトン性化合物及びホルムアルデヒド源中に非混和性であってよい。一実施形態においては、触媒は固体触媒を含む。本発明において使用する固体触媒は、少なくとも1つの固体成分を含む触媒である。例えば、触媒に、固体担体に吸着されているか、又は別の形態で固定されている酸を含ませることができる。触媒はまた、非プロトン性化合物と非混和性であるか、又は少なくとも部分的に非混和性である液相中に存在させることもできる。
【0020】
[00025]不均一触媒を使用する場合には、種々の有利性及び利点が得られる。例えば、不均一触媒を使用する場合には、触媒は、非プロトン性化合物、ホルムアルデヒド源、及び/又は製造された環状アセタールから容易に分離することができる。更に、一実施形態においては、環状アセタールを製造するために使用される反応器中に残留する固体触媒が使用される。このように、触媒はプロセス中に何度も繰り返し使用することができる。
【0021】
[00026]更に、固体触媒は、それらの環境、例えば容器壁に対して腐食性がより低い傾向がある。
[00027]本発明の方法により、ホルムアルデヒド源を、極めて速い反応時間(例えば数分以内)で1種類以上の環状アセタールに転化させることができる。更に、非常に高い転化率を達成することができる。例えば、一実施形態においては、ホルムアルデヒド源の大部分を1種類以上の環状アセタールに転化させることができる。
【0022】
[00028]一実施形態においては、非プロトン性化合物は、ホルムアルデヒド源と接触する時点で液体である。他方において、ホルムアルデヒド源は液体ホルムアルデヒド溶液を含み得る。ホルムアルデヒド源は、非プロトン性化合物中に溶解させることができ、又は非プロトン性化合物によって吸収して均一相を形成することができる。非プロトン性化合物及び触媒は、一実施形態においては液体反応混合物又は液体媒体を構成し得る。
【0023】
[00029]ホルムアルデヒド源は、触媒の存在下で反応(転化)させる。
[00030]本発明の意義の範囲内での環状アセタールは、ホルムアルデヒドから誘導される環状アセタールを指す。代表例は、次式:
【0024】
【化1】
【0025】
(式中、aは1〜3の範囲の整数である)
で表される。
[00031]好ましくは、本発明の方法によって製造される環状アセタールは、トリオキサン(a=1)及び/又はテトロキサン(a=2)である。トリオキサン及びテトロキサンは、通常は、本発明の方法によって形成される環状アセタールの大部分(少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%)を形成する。
【0026】
[00032]トリオキサンとテトロキサンとの重量比は、使用される不均一触媒によって変化する。通常は、トリオキサンとテトロキサンとの重量比は、約3:1〜約40:1、好ましくは約4:1〜約20:1の範囲である。
【0027】
[00033]本発明の方法は、ホルムアルデヒド源の環状アセタールへの転化のための不均一触媒の存在下で行う。好適な触媒は、ホルムアルデヒド源の環状アセタールへの転化を促進する任意の成分である。触媒は、ホルムアルデヒド源を環状アセタール、好ましくはトリオキサン及び/又はテトロキサンに転化(反応)させるための触媒である。
【0028】
[00034]通常は、カチオン性触媒を本発明の方法のために使用することができる。触媒は、固体触媒又は非混和性液体触媒であってよい。通常の液体非混和性触媒は、液体の酸性イオン交換樹脂である。固体触媒とは、触媒が、反応条件下で少なくとも部分的、好ましくは完全に固体形態であることを意味する。本発明の方法のために使用することができる通常の固体触媒は、固体担体上に固定された酸イオン交換材料、強酸イオン交換材料、ルイス酸及び/又はブレンステッド酸であり、ここで担体はSiOのような無機材料、又は有機ポリマーのような有機材料であってよい。
【0029】
[00035]固体担体に固定することができる好ましい触媒は、ブレンステッド酸及びルイス酸からなる群から選択される。触媒は、トリフルオロメタンスルホン酸のようなトリフルオロアルカンスルホン酸、過塩素酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、及び硫酸、又は無水物若しくはエステルのようなそれらの誘導体、或いは反応条件下で対応する酸を生成する又は任意の他の誘導体からなる群から選択することができる。三フッ化ホウ素、五フッ化ヒ素のようなルイス酸を使用することもできる。タングステンヘテロポリ酸(例えばタングストフォスフェイト)のようなヘテロポリ酸を使用することもできる。上記の個々の触媒の全ての混合物を使用することも可能である。
【0030】
[00036]一実施形態においては、不均一触媒は、無機溶融塩中に溶解したルイス酸種又はブレンステッド酸種を含み得る。溶融塩は、200℃より低く、例えば約100℃未満、例えば約30℃未満の融点を有していてよい。溶融塩は、次に上記記載のような固体担体上に固定化又は固定することができる。固体担体は、例えばポリマー又は固体酸化物であってよい。有機溶融塩の例としては、イオン液体が挙げられる。例えば、イオン液体は、1−n−アルキル−3−メチルイミダゾリウムトリフレートを含み得る。別の例は、1−n−アルキル−3−メチルイミダゾリウムクロリドである。
【0031】
[00037]一実施形態においては、触媒中に存在する酸性化合物は、18℃の温度において水中で測定した場合に0より低く、例えば約−1より低く、例えば約−2より低いpKaを有し得る。pKa値は、酸の強度を表し、水溶液中の酸に関する解離定数を指す。
【0032】
[00038]本発明にしたがって使用することができる不均一触媒の例としては、次のもの:
(1)シリカ、カーボン、シリカ−アルミナの組み合わせ、又はアルミナのような通常の担体材料上に担持することができる酸性金属酸化物の組み合わせによって表される固体触媒。これらの金属酸化物の組み合わせは、そのままか、或いは無機又は有機酸ドーピングを伴って使用することができる。この種類の触媒の好適な例は、アモルファスシリカ−アルミナ、酸クレイ、例えばスメクタイト、無機又は有機酸処理クレイ、柱状クレイ、ゼオライト(通常はそれらのプロトン型)、及び(約1:1モルの組合せの)ZrO−TiOのような金属酸化物、並びに硫酸処理金属酸化物(例えば硫酸処理ZrO)である。金属酸化物の組合せの他の好適な例は、モル比で表して、1:1の比のTiO−SiO;及び1:1の比のZrO−SiOである。
【0033】
(2)酸触媒として幾つかのタイプのカチオン交換樹脂を使用して反応を行うことができる。最も一般的には、かかる樹脂は、SOH基を芳香族基上にグラフトするように官能化されたスチレン、エチルビニルベンゼン、及びジビニルベンゼンのコポリマーを含む。これらの酸性樹脂は、ゲル形態、マクロ網状構造、或いはシリカ又はカーボン若しくはカーボンナノチューブのような担体材料上に担持された形態のような異なる物理的構造で使用することができる。他のタイプの樹脂としては、カルボン酸基若しくはスルホン酸基、又はカルボン酸基及びスルホン酸基の両方を有するペルフッ素化樹脂が挙げられる。かかる樹脂の公知の例は、NAFION(登録商標)及びAMBERLYST樹脂である。フッ素化樹脂は、そのままか、又はシリカ、或いは金属酸化物及び/又はシリカの高度に分散されたネットワーク内に捕捉されたカーボン若しくはカーボンナノチューブのような不活性材料上に担持して使用することができる。
【0034】
(3)通常、シリカ、シリカ−アルミナの組み合わせ、アルミナ、ゼオライト、シリカ、活性炭、砂、及び/又はシリカゲルのような孤立電子対を有する不均一固体を、メタンスルホン酸又はパラトルエンスルホン酸のようなブレンステッド酸触媒のため、又はSbFのようなルイス酸部位を有する化合物のための担体として使用して、相互作用させて強いブレンステッド酸性度を得ることができる。ゼオライト、シリカ、又はメソ多孔質シリカのような不均一固体、又は例えばポリシロキサンのようなポリマーは、ブレンステッド酸基又は前駆体の化学グラフトによって官能化して、これによりスルホン酸及び/又はカルボン酸のような酸性基又はその前駆体を生成させることができる。官能化は、例えばシリカのSiOH基とクロロスルホン酸との反応による固体上への直接グラフトのような当該技術において公知の種々の方法で導入することができ;或いは、例えばペルフルオロアルキルシラン誘導体であってよい有機スペーサーによって固体に結合させることができる。また、ブレンステッド酸官能化シリカをゾルゲル法によって製造して、例えばSi(OR)の共縮合によってチオール官能化シリカ、及び例えば中性又はイオンテンプレート法を使用し、次にチオールを例えばHによって対応するスルホン酸に酸化することによって3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを与えることができる。官能化された固体は、そのまま、即ち粉末形態か、ゼオライト膜の形態か、又は膜中の他のポリマーとの混合物のような多くの他の方法か、又は固体押出物の形態か、又は例えば構造無機担体、例えばコージライトのモノリスの被覆中で使用することができる
(4)最も一般的には式:HPMを有する不均一ヘテロポリ酸。この式において、Pは中心原子、通常はケイ素又はリンを表す。周辺原子は、一般に対称的に中心原子を取り囲む。最も一般的な周辺元素のMは、通常はMo又はWであるが、V、Nb、及びTaもその目的のために好適である。指数x、y、zは、既知の方法で分子中の原子比率を定量化し、慣例的に求めることができる。これらのポリ酸は、周知なように多くの結晶形態で見られるが、不均一種に関する最も一般的な結晶形態はケギン構造と呼ばれる。かかるヘテロポリ酸は、高い熱安定性を示し、非腐食性である。不均一ヘテロポリ酸は、好ましくはシリカゲル、珪藻土、カーボン、カーボンナノチューブ、及びイオン交換樹脂から選択される担体上で使用される。本発明において好ましい不均一ヘテロポリ酸は、式:HPM1240(式中、MはW及び/又はMoを表す)によって表すことができる。好ましいPM部分の例は、PW12、PMo12、PW12/SiO、PW12/カーボン、及びSiW12によって表すことができる。
【0035】
[00039]上記に記載のように、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド源は、ホルムアルデヒド源を非プロトン性化合物及び触媒と接触させることによって環状アセタールに転化される。ホルムアルデヒドを他の成分と組み合わせて含む気体又は液体流を、反応器に供給することができる。例えば、ホルムアルデヒドを、トリオキサン、又はポリオキシメチレンポリマーを製造するのに使用される他のモノマーと共に存在させることができる。更に別の実施形態においては、ホルムアルデヒド源はホルムアルデヒド水溶液を構成し得る。ホルムアルデヒド水溶液は、例えば約10%より多い量、例えば約15%より多い量、例えば約10%〜約50%の量の水を含んでいてよい。
【0036】
[00040]本発明において使用する非プロトン性化合物は、解離することができる実質量の水素原子を含まない化合物である。一実施形態においては、非プロトン性化合物は反応条件下において液体である。したがって、非プロトン性化合物は、約180℃以下、好ましくは約150℃以下、より好ましくは約120℃以下、特に約60℃以下の融点を有し得る。
【0037】
[00041]実用上の理由のために、好ましい順で(融点が低いほどより好ましい)約50℃より低く、約40℃より低く、約30℃より低く、約20℃より低い融点を有する非プロトン性化合物を使用することが有利である。特に、約25℃又は約30℃において液体である非プロトン性化合物は、製造プラント内のポンプによって容易に移送することができるので好適である。
【0038】
[00042]更に、非プロトン性化合物は、1barにおいて測定して約120℃以上、好ましくは約140℃以上、より好ましくは約160℃以上、特に約180℃以上の沸点を有していてよい。更なる実施形態においては、非プロトン性化合物の沸点は、約200℃以上、好ましくは約230℃以上、より好ましくは約240℃以上、更に好ましくは約250℃以上、特に約260℃以上、又は270℃以上である。沸点が高いほど、本発明の方法によって形成される環状アセタール、特にトリオキサン及び/又はテトロキサンは、蒸留によって分離することができる。したがって、本発明の特に好ましい実施形態によれば、非プロトン性化合物の沸点は、形成される環状アセタールの沸点よりも少なくとも約20℃高く、特にトリオキサン及び/又はテトロキサンの沸点よりも少なくとも約20℃高い。
【0039】
[00043]更に、環状アセタールと共沸混合物を形成せず、特にトリオキサンと共沸混合物を形成しない非プロトン性化合物が好ましい。
[00044]本発明の好ましい実施形態においては、反応器中の反応混合物又は液体媒体は、少なくとも約20重量%、好ましくは少なくとも約40重量%、より好ましくは少なくとも約60重量%、最も好ましくは少なくとも約80重量%、特に少なくとも約90重量%の1種類又は複数の非プロトン性化合物を含み、ここで重量は反応混合物の総重量を基準とする。液体媒体又は反応混合物或いは液体混合物(A)に、1種類以上の非プロトン性化合物を含ませることができる。
【0040】
[00045]好ましい実施形態においては、液体媒体は非プロトン性化合物から実質的に構成される。実質的に構成されるとは、液体媒体が、少なくとも約95重量%、好ましくは少なくとも約98重量%、より好ましくは少なくとも約99重量%、特に少なくとも約99.5重量%、特に少なくとも約99.9重量%の1種類又は複数の非プロトン性化合物を含むことを意味する。本発明の更なる実施形態においては、液体媒体は非プロトン性化合物であり、即ち、液体媒体は非プロトン性化合物から構成される。
【0041】
[00046]ホルムアルデヒド源を少なくとも部分的に溶解又は吸収する液体非プロトン性化合物は、ホルムアルデヒド源の所望の環状アセタールへの転化の観点で優れた結果をもたらすことが見出された。
【0042】
[00047]したがって、反応条件下においてホルムアルデヒド源を少なくとも部分的に溶解又は吸収する非プロトン性化合物が好ましい。反応温度において少なくとも約0.1重量%の量のパラホルムアルデヒドを溶解する非プロトン性化合物が好ましく(98重量%ホルムアルデヒド、2重量%水)(Pn=ホルムアルデヒドのモル数/水のモル数=(98/30)/(2/18)=約29]として表すこともできる)、ここで重量は溶液の全重量を基準とする。
【0043】
[00048]この方法において使用される非プロトン性化合物は、極性非プロトン性化合物、特に双極性化合物であってよい。極性非プロトン性溶媒は、ホルムアルデヒド源を溶解するのに非常により好適である。非置換炭化水素(例えば、シクロヘキサンのような環式炭化水素、又はヘキサン、オクタン、デカンなどのような脂環式(alicyclic)炭化水素)、或いは非置換不飽和炭化水素又は非置換芳香族化合物のような非極性非プロトン性化合物は、あまり好適でない。したがって、好ましい実施形態によれば、非プロトン性化合物は、非置換炭化水素又は非置換不飽和炭化水素或いは非置換芳香族化合物ではない。更に、好ましくは、反応混合物は、約50重量%未満、より好ましくは約25重量%未満、更に好ましくは約10重量%未満、特に約5重量%未満、例えば約1重量%未満、又は約0重量%の量の非置換炭化水素及び/又は非置換不飽和炭化水素及び/又は非置換芳香族化合物を含む。
【0044】
[00049]ハロゲン含有化合物は、環境面のため、及びホルムアルデヒド源を溶解するそれらの限られた能力のために、あまり好ましくない。更に、ハロゲン化脂肪族化合物は、プラントの容器又はパイプ内で腐食を引き起こす可能性があり、形成された環状アセタールをハロゲン化化合物から分離することは困難である。
【0045】
[00050]一実施形態によれば、非プロトン性化合物はハロゲンを含まない。更なる好ましい実施形態においては、反応混合物は、約50重量%未満、より好ましくは約25重量%未満、更に好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、特に1重量%未満、又は50ppm未満のハロゲン化化合物を含む。
【0046】
[00051]また、(液体)二酸化硫黄の使用は、許容できないエネルギー使用量を必要とするだけなく、環状アセタールの単離の困難性も引き起こす。したがって、非プロトン性化合物は、好ましくは二酸化硫黄を含まない。更なる好ましい実施形態においては、反応混合物は、約50重量%未満、より好ましくは約25重量%未満、更に好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、特に1重量%未満、又は0重量%の二酸化硫黄を含む。
【0047】
[00052]極性非プロトン性化合物が特に好ましい。本発明の好ましい実施形態によれば、非プロトン性化合物は、25℃で求めて約15より高く、好ましくは約16より高く、又は約17より高く、更に好ましくは約20より高く、より好ましくは約25より高く、特に約30より高い静的比誘電率を有し、又は非プロトン性化合物が25℃より高い融点を有する場合には、比誘電率は非プロトン性化合物の融点において求められる。
【0048】
[00053]静的比誘電率εrは、静電界について次のように測定することができる:まず、試験キャパシタのキャパシタンスCを、そのプレート間で減圧して測定する。次に、同じキャパシタ及びそのプレート間の距離を使用して、非プロトン性化合物に関するキャパシタンスCをプレート間で測定する。次に、次式:
【0049】
【化2】
【0050】
のように比誘電定数を計算することができる。
[00054]本発明の意味の範囲内においては、比誘電率は25℃において求められ、又は非プロトン性化合物が25℃より高い融点を有する場合には、比誘電率は非プロトン性化合物の融点において求められる。
【0051】
[00055]本発明の更なる態様によれば、非プロトン性化合物は双極性非プロトン性化合物である。
[00056]本発明の意味の範囲内の非プロトン性化合物は、一般に、25℃で求めて15より高く、好ましくは25より高く、又は30より高い上記規定の比誘電率を有する双極性の非プロトン供与性化合物であり、又は非プロトン性化合物が25℃より高い融点を有する場合には、比誘電率は非プロトン性化合物の融点において求められる。
【0052】
[00057]本方法は、ホルムアルデヒド源が液体媒体又は反応混合物或いは液体混合物(A)中に完全に溶解又は吸収されるように行うことができる。
[00058]したがって、一実施形態によれば、ホルムアルデヒド源及び非プロトン性化合物は、反応条件下で均一相を形成する。好適な非プロトン性化合物は、有機スルホキシド、有機スルホン、有機スルホネートエステル、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0053】
[00059]好ましい実施形態によれば、非プロトン性化合物は、硫黄含有有機化合物から選択される。硫黄含有有機化合物は、例えば、スルホラン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、又はそれらの混合物を含み得る。
【0054】
[00060]非プロトン性化合物は、好ましくは環式又は脂環式有機スルホキシド、脂環式又は環式スルホン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。下記式(I):
【0055】
【化3】
【0056】
(式中、
nは、1〜6の範囲の整数、好ましくは2又は3であり、
環炭素原子は、場合によっては、好ましくは分岐又は非分岐であってよいC〜Cアルキルから選択される1以上の置換基によって置換されていてよい)
によって表される非プロトン性化合物によって優れた結果を達成することができる。式(I)の好ましい化合物は、スルホラン、メチルスルホラン、ジメチルスルホラン、エチルスルホラン、ジエチルスルホラン、プロピルスルホラン、ジプロピルスルホラン、ブチルスルホラン、ジブチルスルホラン、ペンチルスルホラン、ジペンチルスルホラン、及びヘキシルスルホラン、並びにオクチルスルホランである。
【0057】
[00061]最も好ましい実施形態によれば、非プロトン性化合物はスルホラン(テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド)である。
[00062]スルホランは、ホルムアルデヒド源のための優れた溶媒であり、酸性条件下で安定であり、触媒を失活させず、トリオキサンと共沸混合物を形成しない。更に、それは反応条件下で不活性である溶媒である。
【0058】
[00063]他に示さない限りにおいて、「反応混合物」という表現は、ホルムアルデヒド源を環状アセタールへの反応のために使用される混合物を指す。反応混合物の個々の成分の濃度及び量は、反応の開始時における濃度及び量を指す。言い換えれば、反応混合物は、その出発物質の量、即ち初期成分の量によって規定される。
【0059】
[00064]また、「液体混合物」について規定される量は、反応の開始時、即ち反応前における成分の量を指す。
[00065]ホルムアルデヒド源は反応して環状アセタールになり、その結果、ホルムアルデヒド源の濃度は減少し、一方で環状アセタールの濃度は増加する。
【0060】
[00066]反応の開始時においては、本発明の通常の反応混合物は、スルホラン中に少なくとも部分的、好ましくは完全に溶解又は吸収されているホルムアルデヒド源を含む。
[00067]更に、本発明の特に好ましい実施形態は、触媒の存在下でホルムアルデヒド源を反応させることを含み、反応をスルホラン中で行う環状アセタールの製造方法、或いは触媒及びスルホランの存在下でホルムアルデヒド源から環状アセタールを製造する方法である。
【0061】
[00068]更に好ましい非プロトン性化合物は、式(II):
【0062】
【化4】
【0063】
(式中、R及びRは、独立して、分岐又は非分岐であってよいC〜Cアルキルから選択され、好ましくは、R及びRは、独立してメチル又はエチルを表す)
によって表される。ジメチルスルホンが特に好ましい。
【0064】
[00069]更なる好ましい実施形態によれば、非プロトン性化合物は、式(III):
【0065】
【化5】
【0066】
(式中、
nは、1〜6の範囲の整数、好ましくは2又は3であり、
環炭素原子は、場合によっては、好ましくは分岐又は非分岐であってよいC〜Cアルキルから選択される1以上の置換基によって置換されていてよい)
によって表される。
【0067】
[00070]好適な非プロトン性化合物はまた、式(IV):
【0068】
【化6】
【0069】
によって表される。
[00071]式中、R及びRは、独立して、分岐又は非分岐であってよいC〜Cアルキルから選択され、好ましくは、R及びRは、独立してメチル又はエチルを表す。
【0070】
[00072]ジメチルスルホキシドが特に好ましい。
[00073]好適な非プロトン性化合物は、脂肪族ジニトリル、好ましくはアジポニトリルから選択することができる。
【0071】
[00074]本発明の更なる態様においては、2種類以上の非プロトン性化合物の混合物を使用する。複数の非プロトン性化合物の混合物を使用して、非プロトン性媒体の融点を低下させることができる。好ましい実施形態においては、非プロトン性化合物は、スルホラン及びジメチルスルホキシドの混合物を含むか、又はそれから構成される。
【0072】
[00075]有利には、非プロトン性化合物は触媒を実質的に失活させない。好ましくは、反応条件下において、非プロトン性化合物は本発明の方法において使用される触媒を実質的に失活させない。ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、又はN−メチルピロリドン(NMP)のような非プロトン性溶媒は過度に塩基性であり、したがって触媒を失活させる可能性があり、したがってかかる溶媒はあまり好適でない。本発明の好ましい実施形態によれば、液体反応混合物は、アミドを実質的に含まず、好ましくは非環状又は環状アミドを実質的に含まない。実質的に含まないとは、アミドが、約5重量%未満、好ましくは約2重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、特に約0.01重量%未満、特に0.001重量%未満、又は約0重量%の量で存在し得ることを意味し、ここで、重量は液体反応混合物の総重量を基準とする。
【0073】
[00076]ニトロ基含有化合物は、望ましくない副生成物をもたらすか、又は更にはホルムアルデヒド源に関して不十分な溶解性を示す可能性がある。
[00077]したがって、非プロトン性化合物は、好ましくはニトロ基及び/又は窒素原子を含まない。更に、本発明の好ましい実施形態によれば、非プロトン性化合物は、非芳香族非プロトン性化合物である。特に、非プロトン性化合物は、ニトロベンゼン又は芳香族ニトロ化合物ではない。更に、好ましくは、非プロトン性化合物はエーテルを含まない。
【0074】
[00078]本発明の意味の範囲内においては、非プロトン性化合物は、反応条件下で、使用するブレンステッド酸触媒の約95%未満、好ましくは約50%未満、より好ましくは約10%未満が非プロトン性化合物をプロトン化する場合には、触媒を失活させない。ルイス酸触媒を使用する場合には、非プロトン性化合物は、反応条件下で、ルイス酸触媒の約90重量%未満、好ましくは約50重量%未満、より好ましくは約10重量%未満が非プロトン性化合物と錯体を形成する場合には、触媒を失活させない。
【0075】
[00079]プロトン化及び錯体形成の程度は、H又は13C−NMRのようなNMR分光法によって求めることができる。プロトン化及び錯体形成の程度は、250℃において、好ましくはd−DMSO中で求められる。
【0076】
[00080]触媒の失活はまた、以下のようにして求めることもできる。
[00081]10gの商業的に入手できるパラホルムアルデヒド(95重量%)を、気体状ホルムアルデヒドが散逸しないようにパラホルムアルデヒドを溶解するのに十分な温度で、100gのスルホラン中に溶解する。明澄な溶液を90℃に維持し、0.1重量%のトリフル酸を加える。トリオキサンの形成速度を、(トリオキサンの濃度を時間の関数として測定することによって)測定する。
【0077】
[00082]10gのスルホランを10gの試験する非プロトン性化合物で置き換えることを除いて、同じ実験を繰り返す。トリオキサン形成速度が、更に当初の実験の速度の約1%より速く、好ましくは約5%より速く、より好ましくは約10%より速い場合には、当該の非プロトン性化合物は、触媒を(それがその活性を低下させ得るとしても)失活させないと結論される。
【0078】
[00083]非プロトン性化合物は、触媒の失活を避けるために過度に塩基性であってはならない。他方において、非プロトン性化合物は、好ましくは反応条件下でホルムアルデヒド源と化学的に反応せず、即ち不活性非プロトン性化合物である。
【0079】
[00084]好ましくは、反応条件下において、非プロトン性化合物は、ホルムアルデヒド源又は本発明の方法によって得られる環状アセタールと化学的に反応してはならない。水及びアルコールのような化合物は、ホルムアルデヒドと反応するので好適でない。本発明の意味の範囲内においては、非プロトン性化合物は、以下の試験基準を満足する場合には、ホルムアルデヒド源と化学的に反応しない。
【0080】
[00085]5gの商業的に入手できるパラホルムアルデヒド(95重量%)を、0.1重量%のトリフルオロメタンスルホン酸を含む100gの非プロトン性化合物に加え、気体状ホルムアルデヒドが散逸しないように、密閉容器中で撹拌しながら120℃において1時間加熱する。非プロトン性化合物の約1重量%未満、好ましくは約0.5重量%未満、より好ましくは約0.1重量%未満、最も好ましくは約0.01重量%未満が化学的に反応した場合、非プロトン性化合物はホルムアルデヒド源と反応していないとみなされる。非プロトン性化合物がこの基準を満足する場合には、それは不活性であるとみなされる。
【0081】
[00086]更に、酸性反応条件下において、非プロトン性化合物は実質的に安定でなければならない。したがって、脂肪族エーテル又はアセタールは、非プロトン性化合物としてはあまり好適でない。非プロトン性化合物が以下の試験条件を満足する場合には、非プロトン性化合物は、本発明の意味の範囲内で酸性条件下において安定であるとみなされる。
【0082】
[00087]0.5重量%(wt%)のトリフルオロメタンスルホン酸を含む100gの試験する非プロトン性化合物を、120℃において1時間加熱する。非プロトン性化合物の約0.5重量%未満、好ましくは約0.05重量%未満、より好ましくは約0.01重量%未満、最も好ましくは約0.001重量%未満が化学的に反応した場合、非プロトン性化合物は酸性条件下において安定であるとみなされる。
【0083】
[00088]また、本発明の方法を使用して、ホルムアルデヒドから誘導される環状アセタールの比を変化させることもできる。したがって、ホルムアルデヒド源はまた、トリオキサン、テトロキサン、及びホルムアルデヒドから誘導される環状オリゴマーからなる群から選択される環状アセタールを含み得る。
【0084】
[00089]好ましくは、反応混合物は、反応混合物の総重量を基準として、約0.1〜約60重量%、又は約1重量%乃至約30重量%未満、より好ましくは約5〜約15重量%の範囲、更に好ましくは約7〜約13重量%の範囲、最も好ましくは約8〜約12重量%の範囲、特に30〜60重量%の範囲の量のホルムアルデヒド源を含む。
【0085】
[00090]ホルムアルデヒド源のホルムアルデヒド/水の重量比が4より大きく、好ましくは5より大きく、最も好ましくは5.5より大きい場合に、転化率の観点で特に良好な結果を達成することができることが見出された。
【0086】
[00091]通常は、反応は、約0℃より高く、好ましくは約30℃〜約170℃の範囲、より好ましくは約40℃〜約140℃、更に好ましくは約40℃〜約120℃、最も好ましくは約50℃〜約110℃の範囲の温度において行う。
【0087】
[00092]反応中の圧力は、一般に、約10mbar〜約20bar、例えば約0.5bar〜約10bar、例えば約0.5bar〜約2barであってよい。
[00093]本発明の方法の更なる利点は、環状アセタールを反応混合物から容易に分離することができることである。環状アセタール、特にトリオキサンは、蒸留によって高純度グレードで反応混合物から分離することができる。特に、環状アセタールの沸点より約20℃高い沸点を有する非プロトン性化合物(例えばスルホラン)を使用する場合には、形成された環状アセタールを簡単に留去することができる。非プロトン性化合物としてスルホランを使用する場合には、スルホランとトリオキサンとの共沸混合物を形成することなく、形成されたトリオキサンを留去することができる。
【0088】
[00094]環状アセタールを分離することにより、反応混合物中の未反応の化合物を反応プロセス中に再循環することが可能になる。
[00095]例えば、本発明によれば、反応混合物を、反応器中において、ホルムアルデヒドの一部を環状アセタールに転化させる条件下で不均一触媒と接触させて、水、環状アセタール、未反応のホルムアルデヒド、及び非プロトン性溶媒を含む生成物流を形成することができる。
【0089】
[00096]次に、生成物流をフラッシュドラムのような低圧分離装置に供給することができる。低圧分離装置は、環状アセタールに富む気体流、及び非プロトン性溶媒に富む液体流を生成する。その後、環状アセタールに富む気体流をクエンチし、続いて未反応のホルムアルデヒドから環状アセタールを更に分離するために蒸留カラムに供給することができる。蒸留カラムは、少なくとも約65重量%の量の環状アセタールを含む環状アセタール生成物流を生成する。蒸留カラムはまた、ホルムアルデヒドに富む流れも生成する。ホルムアルデヒドに富む流れ、及び非プロトン性溶媒に富む流れは、再循環して反応器に戻すことができる。
【0090】
[00097]本発明の方法は、バッチ式又は連続プロセスとして実施することができる。
[00098]好ましい実施形態においては、本方法は、ホルムアルデヒド源を、触媒を含む液体媒体に連続的に供給し、環状アセタール、例えばトリオキサンを蒸留のような分離方法によって連続的に分離(単離)する連続プロセスとして実施する。
【0091】
[00099]本発明の方法は、ホルムアルデヒド源の所望の環状アセタールへの極めて高い転化率をもたらす。
[000100]好ましい実施形態によれば、ホルムアルデヒド源の環状アセタールへの最終転化率は、当初のホルムアルデヒド源を基準として10%より高い。
【0092】
[000101]最終転化率とは、液体系におけるホルムアルデヒド源の環状アセタールへの転化率を指す。最終転化率は、液体系において達成される最大転化率に相当する。
[000102]ホルムアルデヒド源の環状アセタールへの最終転化率は、反応終了時における反応混合物中の環状アセタールの量(反応混合物の総重量を基準とする重量%で表される)を、t=0の反応開始時におけるホルムアルデヒド源の量(反応混合物の総重量を基準とする重量%で表される)で割ることによって計算することができる。
【0093】
[000103]例えば、ホルムアルデヒド源のトリオキサンへの最終転化率は、次のようにして計算することができる。
[000104]最終転化率=(反応終了時における重量%で表される反応混合物中のトリオキサンの量)/(t=0における重量%で表される反応混合物中のホルムアルデヒド源の量[反応混合物中のホルムアルデヒド源の当初の量])。
【0094】
[000105]本発明の方法の更に好ましい実施形態によれば、ホルムアルデヒド源の環状アセタール、好ましくはトリオキサン及び/又はテトロキサンへの最終転化率は、12%より高く、好ましくは14%より高く、より好ましくは16%より高く、更に好ましくは20%より高く、特に30%より高く、特に50%より高く、例えば80%より高く、又は90%より高い。
【0095】
[000106]本発明による環状アセタールの製造方法は連続的に行うことができ、又はバッチ式(不連続)で行うことができる。図1を参照すると、本発明にしたがって環状アセタールを製造するための連続プロセスの一実施形態が示されている。図1に示すプロセスは、無水ホルムアルデヒドガスをトリオキサンのような環状アセタールに転化させるのに特によく適している。しかしながら、図1の方法はまた、上記記載の任意のホルムアルデヒド源を処理するために使用することもできることを理解すべきである。
【0096】
[000107]図1において、ホルムアルデヒド水溶液入口流201を、随意的な第1のホルムアルデヒド濃縮器11中に供給し、これは2つの生成流:第1の濃縮ホルムアルデヒド流202及び第1の希釈ホルムアルデヒド流203を与える。第1の濃縮ホルムアルデヒド流202は、随意的な第2のホルムアルデヒド濃縮器12中に通し、これも2つの生成流:第2の濃縮ホルムアルデヒド流204及び第2の希釈ホルムアルデヒド流205を与える。第1及び第2のホルムアルデヒド濃縮器には、補助加熱器及び凝縮器を含ませることができる。希釈流は再処理して、残留ホルムアルデヒドをホルムアルデヒド水溶液入口流201中に戻すことができる。
【0097】
[000108]第2の濃縮ホルムアルデヒド流204は、ホルムアルデヒドに富む再循環流213及び加熱された非プロトン性溶媒に富む再循環流209と混合して反応器入口流206を形成し、これを反応器13中に供給する。
【0098】
[000109]反応器出口流207は、低圧分離装置14中に通し、これは非プロトン性溶媒に富む再循環流208及び環状アセタールに富む気体流210の2つの生成流を与える。
[000110]環状アセタールに富む気体流210は、クエンチカラム15中に供給する。クエンチカラムには、補助加熱器及び凝縮器を含ませることができる。クエンチカラムは、クエンチされた環状アセタールに富む流れ211を反応器カラム16に供給する。反応器カラム16は、クエンチされた環状アセタールに富む流れ211を蒸留して、生成物流212及びホルムアルデヒドに富む再循環流213を与えることができる。
【0099】
[000111]場合により、非プロトン性溶媒に富む再循環流208の少量のフラクションを、安定化の非プロトン性溶媒に富む流れ214中に分流して、反応器カラム16によって処理された濃縮ホルムアルデヒド溶液を安定化することができる。
【0100】
[000112]一実施形態においては、例えば、加熱しておらず、約50℃未満、例えば約40℃未満、例えば約25℃未満の温度である液体非プロトン性化合物を反応器13に供給する。一般に、反応器に供給する液体非プロトン性化合物は、約0℃より高く、例えば約5℃より高く、例えば約10℃より高く、例えば約15℃より高い温度である。
【0101】
[000113]固定床反応器13には、一実施形態においては固体触媒を含ませることができる。触媒床は、固体酸化物、又は複数の固体酸化物の混合物のような不活性材料の上方、下方、又はその間に配置することができる。不活性材料は、気体/液体流の半径方向の分布を向上させ、触媒の損失を回避することができる。しかしながら、不活性材料の使用は随意的である。
【0102】
[000114]一実施形態においては、固定床反応器13は、連続液体トリクルベッド反応器として運転する。例えば、気体及び液体の速度は、脈動流形態又はパルス化形態が達成されるように選択することができる。表面液体速度は、約5m/時〜約20m/時の間、例えば約15m/時〜約100m/時であってよい。反応器入口における液体−気体質量比は、約2kg/kg〜約30kg/kgの間、例えば約5kg/kg〜約10kg/kgであってよい。
【0103】
[000115]反応器入口流206の温度は、約30℃〜約200℃、例えば約80℃〜約120℃であってよい。反応器13内の温度は、約30℃〜約200℃、例えば約80℃〜約120℃であってよい。
【0104】
[000116]反応器13内の圧力は、一般に、約0.15bar〜約5bar(絶対圧)、例えば約1bar〜約2barであってよい。
[000117]固定床反応器13内において、ホルムアルデヒド源は環状アセタールに転化される。
【0105】
[000118]別の実施形態においては、本方法は、懸濁固体触媒材料を含む撹拌タンク反応器13を含む。反応器内の触媒濃度は、約75重量%未満、例えば約50重量%未満、例えば約30重量%未満、例えば約3重量%未満であってよい。しかしながら、一般に、反応器内の懸濁触媒濃度は、0重量%より高く、例えば約0.5重量%より高く、例えば約1重量%より高い。懸濁触媒は、反応器の内部で濾過によって、又は反応器の外部でクロスフロー濾過によって保持される。ホルムアルデヒド源は、入口を通して反応器13に供給する。ホルムアルデヒド源(ホルムアルデヒドガスを含んでいてよい)は、攪拌によって反応器内に分散される。系への攪拌力投入量は、約0.01kW/m〜約20kW/m、例えば約0.1kW/m〜約3kW/mであってよい。
【0106】
[000119]低圧分離装置14は、種々の量の非プロトン性溶媒を非プロトン性溶媒に富む再循環流208中に戻すことができる。例えば、非プロトン性溶媒に富む再循環流208は、少なくとも約20重量%、例えば約30重量%より多く、例えば約40重量%より多く、例えば約50重量%より多く、例えば約60重量%より多い量の非プロトン性溶媒を含み得る。一般に、非プロトン性溶媒に富む再循環流208は、約95重量%未満、例えば約90重量%未満、例えば約80重量%未満、例えば約70重量%未満の量の非プロトン性溶媒を含み得る。
【0107】
[000120]好ましくは、いくつかの実施形態においては、低圧分離装置14は、溶媒及びホルムアルデヒド−水オリゴマーを保持しながら、触媒床上に形成されるトリオキサンをできるだけ多く分離する。低圧分離装置14は、50mbar絶対圧より高く、より良好には150mbar絶対圧より高く、好ましくは350mbar絶対圧の圧力で断熱的に運転されるフラッシュ分離容器であってよい。一般に、運転圧力は、3bar絶対圧より低く、例えば約2bar絶対圧未満、例えば約1bar絶対圧未満である。酸触媒の不在下での急速フラッシュ運転によって、大部分がスルホラン及びホルムアルデヒド−水オリゴマーである高沸点成分の保持を可能にすることができる。
【0108】
[000121]反応器カラム16から排出されるホルムアルデヒドに富む再循環流213は、種々の量のホルムアルデヒドを含み得、好ましくは、少なくとも約50重量%、例えば約55重量%、例えば約60重量%、例えば約65重量%、例えば約70重量%、例えば約80重量%、例えば約95重量%の量のホルムアルデヒドを含む。一般に、ホルムアルデヒドに富む再循環流213は、約99重量%未満、例えば約95重量%未満、例えば約90重量%未満の量のホルムアルデヒドを含む。
【0109】
[000122]低圧分離装置14及び反応器カラム16を使用して環状アセタールを抽出する結果として、図1に示されるプロセスは、元々システム中にある非プロトン性溶媒の多くを保持することができ、いくつかの実施形態においては、数少ない再供給しか必要でない。例えば、非プロトン性溶媒は、一般に0重量%より多い多少の量で生成物流212中に見られ得るが、生成物流212中で失われる非プロトン性溶媒は、約20重量%より少なく、又は約10重量%より少なく、又は約5重量%より少なく、例えば約4重量%、例えば約2重量%、例えば約1重量%、又はそれより少ない量であり得る。
【0110】
[000123]生成物流212は、好ましくは、少なくとも約50重量%、例えば約55重量%、例えば約60重量%、例えば約65重量%、例えば約70重量%、例えば約80重量%、例えば約95重量%、例えば約99重量%の量の環状アセタールを含む。しかしながら、一般に、生成物流212は、約99.9重量%未満、例えば約95重量%未満、例えば約80重量%未満の量の環状アセタールを含む。
【0111】
[000124]図1に示す方法によって、例えば、環状アセタールへのホルムアルデヒドの転化率は、約50%より高く、例えば約70%より高く、例えば約90%より高くすることができる。一実施形態においては、例えば、ホルムアルデヒド源の95%より多く、例えば98%より多く、例えば更に99%より多くを環状アセタールに転化させることができる。しかしながら、一般に、ホルムアルデヒド源の100重量%未満が環状アセタールに転化される。
【0112】
[000125]図2は、1つの実施例のグラフ表示である。特に、図2は、1つの実施例において測定された、反応混合物中のトリオキサンの絶対濃度(重量%で表される)を、反応混合物中の非プロトン性溶媒の絶対濃度(これも重量%で表される)の関数としてグラフにしている。ホルムアルデヒド水溶液中のホルムアルデヒドの種々の濃度について、曲線及び点をプロットしている。
【0113】
[000126]示されるように、トリオキサン濃度は、ホルムアルデヒド水溶液中のホルムアルデヒドの濃度を増加させることによって上昇する。例えば、最も高いトリオキサン濃度は、5.7:1のホルムアルデヒドと水との比に関しては、ホルムアルデヒド水溶液が85重量%のホルムアルデヒドを含む場合に観察された。好ましくは、ホルムアルデヒドは、約30重量%より多く、例えば約60重量%より多く、例えば約70重量%、例えば約80重量%の量でホルムアルデヒド水溶液中に存在する。より好ましくは、ホルムアルデヒドは、約85重量%より多く、例えば約90重量%、例えば約95重量%の量でホルムアルデヒド水溶液中に存在する。しかしながら、一般に、ホルムアルデヒドは、溶液の100重量%未満の量で水溶液中に存在する。
【0114】
[000127]本発明にしたがって製造される環状アセタールは、数多くの多様な用途において使用することができる。一実施形態においては、例えば、本発明によって製造される環状アセタールを使用して、オキシメチレンポリマーを製造することができる。
【0115】
[000128]オキシメチレンポリマー製造プロセスには、オキシメチレンホモポリマー及び/又はコポリマーを製造するための任意の好適なプロセスを含ませることができる。ポリマー製造プロセスには、例えば、アニオン重合プロセス又はカチオン重合プロセスを含ませることができる。オキシメチレンポリマーの製造方法には、ポリマーを液体中で沈殿させる不均一プロセスを含ませることができ、溶融ポリマーを形成する塊状重合プロセスのような均一プロセスを含ませることができ、又は不均一相及び均一相の両方を含むポリマープロセスであってよい。
【0116】
[000129]オキシメチレンポリマーの製造のためには、−CH−O−単位を形成するモノマー又は異なる複数のモノマーの混合物を、開始剤の存在下で反応させる。−CHO−単位を形成するモノマーの例は、ホルムアルデヒド又はその環状オリゴマー、例えば1,3,5−トリオキサン(トリオキサン)、又は1,3,5,7−テトラオキソカンである。
【0117】
[000130]オキシメチレンポリマーは、一般に、一般に少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも90モル%、特に少なくとも95モル%のオキシメチレン単位(−CH−O−)を含む非分岐線状ポリマーである。加えて、オキシメチレンポリマーは、−(CH−O−単位(式中、xは2〜25の値をとり得る)を含む。所望の場合には、少量の分岐剤を使用することができる。使用する分岐剤の例は、その官能価が3以上であるアルコール又はそれらの誘導体、好ましくは3価〜6価のアルコール又はそれらの誘導体である。好ましい誘導体は、それぞれ2つのOH基がホルムアルデヒドと反応した式のものであり、他の分岐剤としては、グリシジルエーテルのような一官能性及び/又は多官能性のグリシジル化合物が挙げられる。分岐剤の量は、通常は、オキシメチレンポリマーの製造のために使用されるモノマーの総量を基準として1重量%以下、好ましくは0.3重量%以下である。
【0118】
[000131]また、オキシメチレンポリマーは、メトキシ末端基と共に、ヒドロキシアルキレン末端基:−O−(CH−OH(式中、xは2〜25の値をとり得る)を含んでいてもよい。これらのポリマーは、一般式:HO−(CH−OH(式中、xは2〜25の値をとり得る)のジオールの存在下で重合を行うことによって製造することができる。ジオールの存在下で重合することによって、連鎖移動を介してヒドロキシアルキレン末端基を有するポリマーがもたらされる。反応混合物中のジオールの濃度は、−O−(CH−OHの形態で存在することが意図される末端基のパーセントによって定まり、10重量ppm〜2重量%である。
【0119】
[000132]体積メルトインデックスMVRによって表されるこれらのポリマーの分子量は、広い範囲内で調節することができる。ポリマーは、通常は、式−(CH−O−)−(式中、nは平均重合度(数平均)を示し、好ましくは100〜10000、特に500〜4000の範囲で変化する)の繰り返し構造単位を有する。
【0120】
[000133]全末端基の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%がアルキルエーテル基、特にメトキシ又はエトキシ基であるオキシメチレンポリマーを製造することができる。
【0121】
[000134]環状エーテル又は環状ホルマールなどのコモノマーを使用してオキシメチレンコポリマーを製造することができる。例としては、例えば、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、エチレンオキシド、プロピレン1,2−オキシド、ブチレン1,2−オキシド、ブチレン1,3−オキシド、1,3−ジオキサン、1,3,6−トリオキソカンなどが挙げられる。一般に、トリオキサンの量を基準として約0.1〜約20モル%、例えば約0.2〜約10モル%の量の上記のコモノマーの1以上を存在させることができる。
【0122】
[000135]得られるホモ及びコポリマーの分子量は、ホルムアルデヒドのアセタール(連鎖移動剤)を使用することによって調節することができる。また、これらによってポリマーのエーテル化末端基の生成がもたらされ、したがってキャッピング剤との別の反応を省略することができる。使用する連鎖移動剤は、ホルムアルデヒドのモノマー又はオリゴマーアセタールである。好ましい連鎖移動剤は、式I:
−(O−CH−O−R (I)
(式中、R及びRは、互いに独立して、一価有機基、好ましくはブチル、プロピル、エチル、及び特にメチルのようなアルキル基であり、qは1〜50の整数である)
の化合物である。
【0123】
[000136]特に好ましい連鎖移動剤は、式I(式中、q=1である)の化合物、非常に特に好ましくはメチラールである。
[000137]連鎖移動剤の使用量は、通常は、モノマー(混合物)を基準として5000ppm以下、好ましくは100〜3000ppmである。
【実施例】
【0124】
[000138]本発明は、下記の実施例を参照してより良好に理解することができる。
実施例1
[000139]本実施例においては、触媒として強酸性イオン交換樹脂(DOW CHEMICALからの湿潤形態のAmberlyst 15(登録商標))を使用した。使用前に、樹脂をスルホランでコンディショニング(スルホランによって樹脂の細孔中の水を交換)した。
【0125】
[000140]約4重量%の含水量を有する9gの商業的に入手できるパラホルムアルデヒドを、撹拌しながら145℃において91gのスルホランに加えた。パラホルムアルデヒドが溶解するにつれて、温度は122℃に低下する。明澄な溶液を100℃に冷却した。この温度において、10gのAmberlyst 15(登録商標)を加えた。100℃において10分後、反応混合物を50℃に冷却したところ、沈殿は形成されず、パラホルムアルデヒドのトリオキサンへの転化が示された。反応混合物中のトリオキサンの濃度は、6重量%より高いと見積もられる。
【0126】
[000141]本発明に対するこれら及び他の修正及び変更は、添付の特許請求の範囲においてより詳細に示される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実施することができる。更に、種々の実施形態の複数の態様は、全体的か又は部分的に交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、上記の記載は単に例示の目的であり、かかる添付の特許請求の範囲において更に記載される発明を限定することを意図しないことを理解する。
図1
図2
【国際調査報告】