(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-519800(P2021-519800A)
(43)【公表日】2021年8月12日
(54)【発明の名称】膜タンパク質の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/36 20060101AFI20210716BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20210716BHJP
【FI】
C07K1/36
C12P21/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-554416(P2020-554416)
(86)(22)【出願日】2019年4月5日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月30日
(86)【国際出願番号】EP2019058609
(87)【国際公開番号】WO2019193139
(87)【国際公開日】20191010
(31)【優先権主張番号】PA201870202
(32)【優先日】2018年4月6日
(33)【優先権主張国】DK
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520381805
【氏名又は名称】アクアポーリン アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マイェルス,スコット トレヴァン
(72)【発明者】
【氏名】レゲェイラ,トルステン ホイビー バック
(72)【発明者】
【氏名】エリングスガルド,リーナ マリア サン
(72)【発明者】
【氏名】クラッベ,シモン リンガー
【テーマコード(参考)】
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG20
4B064BJ12
4B064CA01
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE03
4B064CE06
4B064CE10
4H045AA20
4H045CA40
4H045DA50
4H045FA74
4H045GA10
4H045GA15
4H045GA21
(57)【要約】
以下の工程を含む膜タンパク質の製造方法が開示される:
水性媒体中に存在する宿主生物において膜タンパク質を発現させること、
前記宿主生物から前記膜タンパク質を遊離させること、界面活性剤溶液を添加して前記膜タンパク質を可溶化させること、
前記可溶化膜タンパク質の液体フラクションを回収すること、前記液体フラクションをクロマトグラフィーに供して前記膜タンパク質を固定相上に結合または保持すること、
溶出バッファーを用いて前記固定相を溶出して前記膜タンパク質を製造すること。
この方法は、最終製品の品質を損なうことなく、効率的な方法で比較的大量の膜タンパク質を製造し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a.水性媒体中に存在する宿主生物において膜タンパク質を発現させること、
b.前記宿主生物から前記膜タンパク質を遊離させること、
c.界面活性剤溶液を添加して前記膜タンパク質を可溶化させること、
d.前記可溶化膜タンパク質の液体フラクションを遠心分離による上澄みとして回収すること、
e.前記液体フラクションをクロマトグラフィーに供して前記膜タンパク質を固定相上に結合または保持すること、および、
f.溶出バッファーを用いて前記固定相を溶出して前記膜タンパク質を製造すること、
を含み、工程dの遠心分離を500g〜30,000gで行う、膜タンパク質の製造方法。
【請求項2】
工程aの前記宿主生物を含む前記水性媒体を、工程bによる前記宿主生物の遊離の前に濾過する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程aの前記宿主生物を含む前記水性媒体を、0.5μm以下の孔径を有する精密濾過膜を通して濾過する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記宿主生物を、任意に濾過後に、前記宿主生物を含む前記水性媒体の遠心分離によって単離する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記遠心分離を、500g〜30,000g、好ましくは1,000g〜10,000gで行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
単離された前記宿主生物を等張食塩水で洗浄して汚染塩を溶解し、続いて遠心分離して洗浄された前記宿主生物を単離する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
工程bの前に希釈緩衝液を添加する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
水性溶解液を添加して、前記宿主生物から前記膜タンパク質を遊離させる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記水性溶解緩衝液が界面活性剤溶液であり、前記界面活性剤溶液が前記膜タンパク質を同時に可溶化する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記宿主細胞が、攪拌中に前記界面活性剤の作用を受けることができる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記宿主細胞からの前記膜タンパク質の遊離をホモジナイザーを用いて行う、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
遊離した前記膜タンパク質にカチオン性凝集剤を添加して懸濁液を形成する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記カチオン性凝集剤が、Superfloc C581などのポリアミン化合物である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記カチオン性凝集剤が、穏やかに攪拌されている間に再懸濁物の細胞部分と反応してフロックを形成することができる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
工程dの液体フラクションを、フロックを含む懸濁液の遠心分離からの上澄みとして回収する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
工程dの液体フラクションを固体フラクションの再懸濁物から回収し、前記固体フラクションを膜タンパク質を可溶化するための界面活性剤溶液に再懸濁する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
工程dの液体フラクションを遠心分離による上澄みとして回収する、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記界面活性剤が、ラウリルジメチルアミンN−オキシド(LDAO)、オクチルグルコシド(OG)、ドデシルマルトシド(DDM)またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
前記遠心分離を500g〜30,000g、好ましくは1,000g〜10,000gで行う、請求項1〜18のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記膜タンパク質を結合または保持することができる固定相がカラム内に存在する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項21】
前記膜タンパク質が親和性ペアの第1の部分と会合し、前記固定相が前記親和性ペアの第2の部分と会合する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項22】
前記親和性ペアの前記第1の部分がヒスチジンタグである、請求項1〜21のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項23】
前記ヒスチジンタグが8つ以上のヒスチジン分子を含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項24】
前記溶出緩衝液がイミダゾールを含む、請求項1〜23のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項25】
前記溶出緩衝液で溶出する前のカラムを、前記溶出緩衝液中の濃度の40%以下のイミダゾールを含む洗浄緩衝液を用いて洗浄する、請求項1〜24のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項26】
前記溶出緩衝液中のイミダゾールの濃度が400mM以上である、請求項1〜25のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜タンパク質の製造方法に関する。本発明による方法は、大量の膜タンパク質が生産される産業上の利用に適している。したがって、この方法は、少なくともパイロットプラントの生産に適した単位操作を適用することを目的としている。特に、本発明は、超遠心分離装置を回避することを目的としている。
【背景技術】
【0002】
ヒトゲノムの遺伝子の約3分の1は膜タンパク質をコードする。膜タンパク質は、エネルギー変換、細胞シグナル伝達、細胞間相互作用、細胞接着、細胞移動、タンパク質輸送、ウイルス融合、神経シナプス活動、イオンおよび代謝産物の輸送など、多くの重要な細胞活動において影響を与える。膜タンパク質は細胞膜の脂質二重層に埋め込まれており、疎水性部位と親水性部位の両方で構成される。
【0003】
近年、膜タンパク質は、多孔質構造支持層上に移植された薄膜複合層との融合に成功している。さらに、膜タンパク質は、細胞生物学およびタンパク質生化学に関して、重要な製薬ターゲットおよび興味深い研究対象を代表している。したがって、パイロットプラントまたは膜タンパク質の大規模生産の必要性が存在する。
【0004】
WO2017137361(A1)は、アクアポリン水チャネル(AQP)などの膜貫通タンパク質とポリアルキレンイミン(PAI)の間に形成された自己組織化ナノ構造を開示している。自己組織化ナノ構造は、その後、多孔質支持膜に移植された薄膜複合(TFC)膜に組み込まれる。前記多孔質支持膜は、逆浸透または正浸透のための中空繊維、平坦シート、らせん巻き膜などであり得る。
【0005】
WO2013/043118は、アクアポリン水チャネル(AQP)が膜の活性層に組み込まれている薄膜複合(TFC)膜を開示している。さらに、それは、薄膜複合膜を製造する方法、およびナノ濾過および浸透圧濾過方法などの濾過方法におけるそれらの使用を開示している。TFCメンブレンは、TFC活性層に組み込まれた脂質−AQP/コポリマー−AQPベシクルで構成されている。WO2010/146365は、固定化されたAQPを組み込むためのベシクル形成物質として両親媒性トリブロックコポリマーを使用するTFC−アクアポリン−Z(AqpZ)ろ過膜の調製について記載する。
【0006】
WO2014/108827は、アクアポリン水チャネルがTFC層に組み込まれる前に小胞に組み込まれるアクアポリン水チャネルを含む薄膜複合体(TFC)層で修飾された繊維を有する中空繊維(HF)モジュールを開示する。
【0007】
細胞から大量の膜タンパク質を単離するための工業的方法は、通常、当業者には利用し得ない。従来技術では、研究目的のための比較的少量の膜タンパク質の生産に焦点が当てられてきた。したがって、比較的面倒で労働集約的な製造方法が許容されてきた。しかしながら、逆浸透および正浸透のための工業用膜における膜タンパク質に対する最近のより高い要求により、より効率的な製造方法の必要性が明らかになった。本発明の目的は、膜タンパク質を製造するための方法を提供することであり、この方法は、最終製品の品質を損なうことなく、効率的な方法で比較的大量の膜タンパク質を製造し得る。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、膜タンパク質の製造方法に関し、その製造方法は、以下の工程:
a.水性媒体中に存在する宿主生物において膜タンパク質を発現させること、
b.前記宿主生物から前記膜タンパク質を遊離させること、
c.界面活性剤溶液を添加して前記膜タンパク質を可溶化させること、
d.前記可溶化膜タンパク質の液体フラクションを遠心分離による上澄みとして回収すること、
e.クロマトグラフィーによる前記液体フラクションをクロマトグラフィーに供して前記膜タンパク質を固定相上に結合または保持すること、および、
f.溶出バッファーを用いて前記固定相を溶出して前記膜タンパク質を製造すること、
を含み、ここで、工程dの遠心分離を500g〜30,000gで行う。
【0009】
本発明の方法は、前記宿主生物を含む大量の水性媒体を取り扱い得るという利点を有する。したがって、前記方法は、パイロットプラントまたは本格的な生産に適した単位操作を適用して、100L以上などの50L以上の量を処理し得る。さらに、この方法はスケールの拡大が可能であり、前記宿主生物を含む大量の水性媒体に容易に適合させ得る。
【0010】
驚くべきことに、界面活性剤溶液を添加すると、宿主生物によって発現される膜タンパク質が他のタンパク質よりも高度に可溶化されることが本発明者らによって発見された。前記界面活性剤溶液によって形成された小胞中のタンパク質の少なくとも約60%が目的の膜タンパク質であると推定されている。さらに、前記界面活性剤で形成された小胞は、通常よりも大きいサイズ、例えば約0.5μmで観察されており、前記膜タンパク質が、天然で使用される蛍光体脂質よりも界面活性剤とより安定したスーパーフォームを形成することを示唆している。
【0011】
前記宿主生物を含む水性媒体は、方法において直接使用され得る。しかしながら、より純粋な生成物を得て、過剰量の水性媒体の取り扱いを回避するために、通常、工程aの宿主生物を含む水性媒体は、工程bに従って膜タンパク質の遊離の前に濾過される。
【0012】
一般に、宿主生物を含む水性培地は、細胞が保持されている間、細胞破片および培地が通過するのに十分小さい細孔を有するフィルターを通して濾過することによって濃縮される。適切な実施形態では、工程aの宿主生物を含む水性媒体は、0.5マイクロメートル以下の細孔径を有する精密濾過膜を通して濾過される。好ましくは、細孔径は0.1μm以下である。
【0013】
精密濾過によって適切に実行される濾過工程の後、前記宿主生物は、水性媒体の残りから単離され得る。いくつかの可能な分離方法が可能であるが、前記宿主生物を含む水性媒体の遠心分離による濾過後に宿主生物を単離することが一般に好ましい。前記遠心分離方法は通常、適切な時間内にペレットを形成するG力で実行される。したがって、前記遠心分離は、通常、500g以上、例えば1000g以上、好ましくは2000g以上で行われる。前記ペレットの密度は、後の工程での問題を防ぐために過剰に高くてはならない。したがって、遠心分離は通常、20,000gを超えない、適切には15,000gを超えない、好ましくは8000gを超えないなど、30,000gを超えて行われない。
【0014】
前記細胞はペレットとして回収され、前記上澄みは廃棄される。前記単離された宿主生物を等張食塩水で洗浄して汚染塩を溶解し、続いて上記のように遠心分離して前記洗浄された宿主生物を単離することが好ましい。前記上澄みに現れた使用済み洗浄液は廃棄され得る。
【0015】
洗浄した細胞を含むペレットは、−20℃で凍結保存するか、次の工程で直接使用され得る。適切に、工程bの前に希釈緩衝液を加える。希釈緩衝液は、膜タンパク質の分解を防ぐためのプロテアーゼ阻害剤、pH値を所望の範囲内に維持するためのTRISおよびリン酸塩などのpH調節物質、および/またはEDTAなどのイオンスカベンジャーを含み得る。
【0016】
前記膜タンパク質は、いくつかの方法で、好ましくは細胞の化学的または機械的溶解によって、前記宿主生物から遊離され得る。細胞の化学的溶解が適切に行われる場合、溶解水溶液が添加されて、前記宿主生物から前記膜タンパク質を遊離させる。本発明の好ましい態様では、水性溶解緩衝液は、膜タンパク質を同時に可溶化する界面活性剤溶液である。
【0017】
細胞の溶解および膜タンパク質の可溶化が起こるために、一般に、宿主細胞は、攪拌中に界面活性剤の作用を受け得る。一般に、宿主細胞は、少なくとも1時間、例えば2時間、好ましくは少なくとも6時間、界面活性剤と反応し得る。
【0018】
細胞の機械的溶解が使用される場合、一般に、宿主細胞からの膜タンパク質の遊離は、ホモジナイザーによって行われる。牛乳の均質化には、乳業で使用されているのと同じタイプのホモジナイザーを使用するのが適している。適切な例としては、スタンステッド7575ホモジナイザーが挙げられる。ホモジナイザーで処理した後、細胞は壊れて開き、膜タンパク質を遊離する。
【0019】
膜タンパク質の遊離後、カチオン性凝集剤が添加され得る。カチオン性凝集剤は、とりわけ負に帯電した細胞破片と相互作用し、それによってフロックを形成すると考えられている。本発明の好ましい態様では、カチオン性凝集剤は、SuperflocC581などのポリアミン化合物である。
【0020】
フロックの形成は通常、即座には生じない。したがって、カチオン性凝集剤は、穏やかな攪拌中に再懸濁物の細胞部分と反応してフロックを形成することができることが好ましい。通常、カチオン性凝集剤と細胞破片は、室温で攪拌しながら、10分から2時間の間相互作用し得る。
【0021】
細胞の化学的溶解を使用する場合、工程eの液体フラクションは、フロックを含む懸濁液の遠心分離からの上澄みとして回収される。前記膜タンパク質が界面活性剤溶液によって可溶化されると、前記膜タンパク質が上澄みに現れる。
【0022】
細胞の機械的溶解が使用される場合、工程eの液体フラクションは、固体フラクションの再懸濁から回収され、固体フラクションは、膜タンパク質を可溶化するための界面活性剤溶液に再懸濁される。本発明の一実施形態では、膜タンパク質を含む細胞断片が凝集剤と相互作用してフロックを形成し、これを遠心分離によって液体から分離することができるという事実のために、固体フラクションが形成される。本発明の別の実施形態において、驚くべきことに、凝集剤を使用せずに、細胞の機械的溶解が使用された場合、ペレット中の膜タンパク質を収集することが可能であることが見出された。遠心分離によって得られたペレットは、前記膜タンパク質を可溶化するために界面活性剤溶液に再懸濁され得る。この工程では、工程eの液体フラクションは、遠心分離によって上澄みとして回収される。
【0023】
遠心分離方法は通常、適切な時間内にペレットを形成するG力で実行される。したがって、前記遠心分離は、通常、500g以上、例えば1000g以上、好ましくは2000g以上で行われる。前記ペレットの密度は、後の工程での問題を防ぐために過剰に高くてはならない。したがって、遠心分離は通常、20,000gを超えない、適切には10,000gを超えない、好ましくは8,000gを超えないなど、30,000gを超えて行われない。30,000g未満のg力を適用すると、GEA、Tetra Pak、Alfa Laval、SPX Flow Seital Separation Technologyの胞子除去遠心分離機など、乳製品で一般的に使用される清澄剤を使用し得る。本発明において有用な清澄剤はまた、いくつかの製造業者によってバクトフュージと呼ばれ得る。したがって、本発明は、バッチ遠心分離および少量の処理のみが可能である超遠心分離機の適用を省略してもよい。
【0024】
本発明で使用される洗剤としては、n−ドデシル−β−D−マルトピラノシド(DDM)、n−デシル−β−D−マルトピラノシド(DM)、または5−シクロヘキシルペンチルβ−D−マルトシド(Cymal− 5)などの、アルキルマルトピラノシド;n−オクチル−β−D−グルコピラノシド(OG)などのアルキルグルコピラノシド;n−ラウリルジメチルアミンN−オキシド(LDAO)などのアミンオキシド;n−ドデシルホスホコリン(FC−12)、n−テトラデシルホスホコリン(FC−14)、またはn−ヘキサデシルホスホコリン(FC−16)などのホスホコリン;もしくは、ポリオキシエチレングリコールが挙げられる。本発明の適切な実施形態では、前記界面活性剤は、ラウリルジメチルアミンN−オキシド(LDAO)、オクチルグルコシド(OG)、ドデシルマルトシド(DDM)またはそれらの組み合わせからなる群の中から選択される。LDAOは、大きくて安定したベシクルが生成されるため、好ましい界面活性剤であり、界面活性剤が天然に存在するリン脂質を置換できることを示唆している。
【0025】
液体フラクションは、膜タンパク質が固定相に結合または保持されるクロマトグラフィー方法にかけられる。クロマトグラフィーのタイプは、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、置換クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーなどとして選択され得る。通常、クロマトグラフィー方法は、膜タンパク質の精製を形成するための分析クロマトグラフィーとは対照的な分取クロマトグラフィーである。
【0026】
現在好ましい実施形態では、クロマトグラフィー法は、アフィニティークロマトグラフィーとして選択され、それによれば、親和性ペアの第1の部分は膜タンパク質に関連付けられ、親和性ペアの第2の部分は固定相に関連付けられる。固定相の例としては、ビーズやカラム材料が挙げられる。本発明の好ましい実施形態では、親和性ペアの第2の部分に関連する固定相がカラムに存在する。通常、前記親和性ペアの部分は、前記膜タンパク質または前記固定相への共有結合に関連している。しかしながら、ハイブリダイゼーション、抗体−抗原相互作用を介した親和性結合などの他のタイプの会合でもあり得る。
【0027】
本発明に適用可能な多くの親和性ペアが当業者に知られており、ビオチン−ストレプトアビジンペア、抗体−抗原ペア、抗体−ハプテンペア、アプタマー親和性ペア、捕捉タンパク質ペア、Fc受容体−IgGペア、金属キレート脂質ペア、金属キレート脂質−ヒスチジン(HIS)タグ付きタンパク質ペア、またはそれらの組み合わせが挙げられる。現在好ましい実施形態では、前記親和性ペアは、金属キレート脂質−ヒスチジン(HIS)タグ付きタンパク質ペアである。
【0028】
前記金属は通常、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)と呼ばれる技術でカラム材料に固定化される。金属は通常、Cu(II)またはNi(II)、好ましくはNi(II)として選択される。Ni−NTAレジンを使用すると、Hisタグ付きタンパク質を自動または手動で精製され得る。適切な固定相は、GEヘルスケアの「CaptoChelating」、またはGEヘルスケアのHisTrap Gelろ過材料(Ni Sepharose 6 Fast Flow)である。
【0029】
ヒスチジンタグである親和性ペアの第1の部分は、通常、膜タンパク質のC末端に結合されている。前記ヒスチジンタグは、通常6つの連続するヒスチジンアミノ酸を含むが、本発明では、ヒスチジンタグが8つ以上のヒスチジン分子を含むことが好ましい。前記ヒスチジンタグ中のヒスチジンアミノ酸の数が多いため、特異的結合タンパク質と非特異的結合タンパク質を効果的に分離し得る。
【0030】
前記膜タンパク質を含む液体フラクションをカラムに添加した後、液体は重力または圧力によって樹脂に浸透し得る。適切に、前記溶出緩衝液はイミダゾールを含む。前記イミダゾールは、前記樹脂に固定化された前記金属イオンへのHisタグの結合と相互作用する能力を有している。イミダゾールの特定の濃度で、前記Hisタグ付き膜タンパク質が遊離する。
【0031】
非特異的結合膜タンパク質を目的の膜タンパク質から分離するために、一般に、溶出緩衝液で溶出する前のカラムを、溶出緩衝液中の濃度のイミダゾールの40%以下を含む洗浄緩衝液で洗浄する。前記溶出バッファー中のイミダゾールの濃度は、一般に200mMから2000mMのイミダゾールの範囲です。本発明の好ましい実施形態において、溶出緩衝液中のイミダゾールの濃度は、400mM以上である。前記Hisタグ付き膜タンパク質のより効果的な溶出を得るために、バッファー中のイミダゾールの濃度は通常600mMまたは800mM以上である。
【0032】
ほとんどの用途では、Hisタグは一般にタンパク質の構造、機能、免疫原性にほとんど影響を与えない。ただし、特定の用途では、膜分子をカラムに結合する機能を果たした後、Hisタグを削除することが望ましくあり得る。前記Hisタグは、膜タンパク質とHisタグの間に切断可能なリンクを導入することで除去され得る。適切な切断可能なリンクとしては、pH感受性リンカー、ジスルフィドリンカー、プロテアーゼ感受性リンカー、およびベータグルクロニドリンカーが挙げられる。
【0033】
膜タンパク質は、その自然環境において、胆汁膜全体、すなわち細胞の内部から細胞外空間に及ぶ。膜貫通タンパク質の多くは特定の物質のゲートウェイとして機能し、それによって細胞の内部と細胞外液の間でこれらの物質の交換を可能にする。膜貫通タンパク質の特徴は、疎水性領域の存在であり、これにより膜貫通タンパク質が膜に確実に組み込まれる。前記膜貫通タンパク質はさらに、中空繊維領域の両側に親水性セグメントを有し、前記親水性セグメントは、それぞれ、細胞の内部および細胞外液に向けられている。
【0034】
本発明に従って任意の膜タンパク質を生成できると考えられているが、一般に、この方法を使用して、イオン(イオンチャネル)および水(アクアポリン水チャネル)を輸送する膜タンパク質を生成することが望ましい。イオンチャネルとしては、塩化物チャネルと金属イオントランスポーターが挙げられる。塩化物イオンに加えて、特定の塩化物チャネルもHCO
3−、I
−、SCN
−、およびNO
3−を伝導する。前記金属イオン輸送体としては、マグネシウム輸送体、カリウムイオンチャネル、ナトリウムイオンチャネル、カルシウムチャネル、プロトンチャネルなどが挙げられる。本発明の特定の実施形態では、前記膜タンパク質は、外膜タンパク質A(OmpA)である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、前記膜タンパク質はアクアポリン水チャネルである。アクアポリンの水チャネルは、細胞内外への水の輸送を促進する。工業用膜において、前記アクアポリンの水チャネルが浸透によって水の流れを確保するが、溶液中の他の成分は排除される。アクアポリン水チャネルなどの膜タンパク質は、原核生物および真核生物などのさまざまな供給源から発散し得る。アクアポリンの原核生物源としては、E.coli、Kyrpidia spormannii、Methanothermobacter sp.、Novibacillus thermophilus、Saccharomyces cerevisiae、およびHalomonas spが挙げられる。アクアポリンの真核生物源には、Oryza sativa Japonica(日本米)、Eucalyptus grandis、Solanum tuberosum(デンマークのジャガイモ)、およびMilnesium tardigradum(クマムシ)が挙げられる。
【0036】
ソース生物からの膜タンパク質の核配列は、一般に、宿主生物での発現を改善するためにGeneart(Thermo Fischer Scientificの子会社)のサービスを使用してコドン最適化される。得られた遺伝子は、ヒスチジンをコードするコドンをC末端に付加し、隣接する制限部位をN末端およびC末端に付加することで適切に合成される。前記合成遺伝子フラグメントは、制限酵素で消化され、ベクターフラグメントにライゲーションされ得る。得られたライゲーション混合物は、好ましくは、Escherichia coli DH10Bなどの生物に形質転換される。抗生物質耐性形質転換体は、抗生物質を有する培地上で適切に選択される。形質転換体は、遺伝子構築物の配列決定によって確認された。続いて、単離されたベクターDNAを生産宿主に移した。生産宿主は、Escherichia coliおよびSaccharomyces cerevisiaeなどのいくつかの適切な原核生物または真核生物の中から選択され得る。
【0037】
前記宿主生物は一般に、通常よりも大量に天然の膜タンパク質を発現するように、または非天然の膜タンパク質を発現するように操作される。膜タンパク質を発現する1つの方法は、上記のように、膜タンパク質をコードするDNAを含むベクターで宿主生物を形質転換することによるものであり得る。膜タンパク質の過剰発現を得るための他の可能性は、例えば、リプレッサーを弱めるか、または適切なプロモーター領域の挿入によって、天然の膜タンパク質の発現を上方調節することによるであろう。非天然タンパク質の発現を得るためのさらなる可能性は、膜タンパク質をコードする核酸を含むウイルスまたはバクテリオファージで宿主生物を導入することであろう。
【実施例】
【0038】
実施例1
大腸菌株BL21は、C末端でHisタグに連結されたアクアポリンタンパク質を産生するベクターを含むように調製される。前記Hisタグには、アクアポリン膜タンパク質の一次配列に結合した10個の連続したヒスチジン分子が含まれている。
【0039】
前記大腸菌株を標準培地で培養し、総発酵液150Lを得る。前記大腸菌細胞を、0.05μmの細孔径を持つ精密ろ過膜で発酵ブロスをろ過することにより回収した。前記大腸菌細胞を含むろ液を約50Lに減らした後、5300gにて20分間遠心分離する。したがって、前記大腸菌細胞は精密濾過によって高濃度にされ、残りの培地はその後遠心分離によって上澄みとして除去される。
【0040】
遠心分離によって得られたペレットを収集し、1:1容量の0.9%塩化ナトリウムを加えて細胞を洗浄し、汚染塩を溶解する。続いて、洗浄液を5300gにて20分間運転する遠心分離機で除去する。上澄みを廃棄し、洗浄した細胞をペレットとして収集した。ペレットは−20℃で凍結保存するか、次の工程で直接使用し得る。
【0041】
大腸菌細胞を含むペレットを、結合緩衝液として使用される約47LのTRIS緩衝液に可溶化した。約1時間撹拌した後、6.4Lの界面活性剤(5%LDAO)を加えて可溶化し、最終濃度を0.6%とした。混合物を穏やかに攪拌しながら室温で一晩インキュベートした。界面活性剤を含む緩衝液に細胞を再懸濁することにより、細胞溶解が起こった。細胞溶解により、膜タンパク質は細胞の内膜から遊離し、界面活性剤によって可溶化される。
【0042】
負に帯電した細胞材料を除去するために、ポリアミン(Superfloc C581)を427mLの容量で添加した。混合物を室温で撹拌しながら30分間インキュベートして、細胞破片、DNA、RNA、およびある程度のタンパク質などの負に帯電した分子を凝固させた。界面活性剤によって可溶化された膜タンパク質は水相に残存する。混合物を最高速度5300gにて15分間遠心分離する。細胞破片、DNA、RNA、可溶化タンパク質を含むペレットを廃棄し、上澄みを回収する。上澄みを107Lの希釈緩衝液を含む容器に移し、0.2%LDAOの最終濃度で160Lの最終容量を得る。
【0043】
GEヘルスケアのアフィニティーレジン「CaptoChelating」を含むカラムを準備する。レジンには、His10タグに結合するNi
2+が帯電している。カラムに希釈した上澄みをロードし、続いて200mMイミダゾールを含む10カラム容量の洗浄バッファーで洗浄して非特異的結合成分を洗い流した。続いて、水性1000mMイミダゾールの2.5カラム容量の溶出バッファーを使用して、カラムから膜タンパク質を放出した。カラムから溶出したタンパク質をドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)でテストしたところ、主に単一のバンドが示され、純度が80%を超えていた。
【0044】
実施例2
大腸菌株BL21は、C末端でHisタグに連結されたアクアポリンタンパク質を産生するベクターを含むように調製される。前記Hisタグには、アクアポリン膜タンパク質の一次配列に結合した10個の連続したヒスチジン分子が含まれている。
【0045】
前記大腸菌株を標準培地で培養し、総発酵液250Lを得る。前記大腸菌細胞は、0.05μmの孔径を有するPESフラットシートメンブレンを通して発酵ブロスを濾過することによって収集された。前記大腸菌細胞を含む濾液を約50Lに減らし、続いてSorvall 16L遠心分離機を用いて5300gにて20分間遠心分離する。したがって、前記大腸菌細胞は精密濾過によって高濃度にされ、残りの培地はその後遠心分離によって上澄みとして除去される。ペレットは−20℃で凍結保存するか、次の工程で直接使用され得る。
【0046】
前記大腸菌細胞を含むペレットを約50Lのバッファー(プロテアーゼ阻害剤PMSFおよびEDTAの水溶液)に再懸濁し、Stansted nm−GEN7575ホモジナイザーを用いて1000バールにてホモジナイズした。目的の細胞材料を分離するために、ポリアミン(Superfloc C581)を12 ml/Lの濃度で添加する。温度は約10〜15℃に維持された。混合物を室温で撹拌しながら30分間インキュベートした。混合物を最高速度5300gにて30分間遠心分離した。ペレットには膜タンパク質が含まれており、上澄みを廃棄する。
【0047】
ペレットを0.9%塩化ナトリウム溶液に再懸濁して、総タンパク質濃度を約50mg/mlとした。膜タンパク質の可溶化は、28LのTRIS結合バッファーと4.5リットルの5%LDAOを5Lの再懸濁ペレット材料に加えることによって実行した。室温で穏やかに攪拌しながら、混合物を2〜24時間インキュベートした。
【0048】
可溶化方法の後、混合物を2Lの容器内で5300gにて90分間遠心分離した。上澄みを回収し、希釈バッファーを加えてLDAO濃度を0.2%に調整した。
【0049】
GEヘルスケアのアフィニティーレジン「CaptoChelating」を含むカラムを準備する。レジンには、His10タグに結合するNi
2+が帯電している。カラムを、0.2%LDAOを含む結合バッファーをロードすることによって平衡化した。続いて、カラムに希釈した上澄みをロードし、200mMイミダゾールを含む10カラム容量の洗浄バッファーで洗浄して、非特異的結合成分を洗い流した。続いて、水性1000mMイミダゾールの2.5カラム容量の溶出バッファーを使用して、カラムから膜タンパク質を放出する。カラムから溶出されたタンパク質は、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)クロマトグラフィーによってテストされ、95%を超える純度を示す単一のバンドのみが示された。
【0050】
実施例3
大腸菌株BL21は、C末端でHisタグに連結されたアクアポリンタンパク質を産生するベクターを含むように調製される。前記Hisタグには、アクアポリン膜タンパク質の一次配列に結合した10個の連続したヒスチジン分子が含まれている。
【0051】
前記大腸菌株を標準培地で培養して、250Lの総発酵ブロスを得る。前記発酵バッチは、収穫時にOD600 13を有し、42.5時間誘導された。スタンステッドnm−GEN7575ホモジナイザーを用いて100MPaにて2回、材料をホモジナイズした。溶解した材料から10mLを取り出し、15mLのファルコンチューブに添加した。
【0052】
次に5300gにて1時間遠心分離を行い、ペレットを上澄みから分離した。次にペレットを10mLの0.9%NaClに再懸濁した。BCAアッセイを使用して、最初のスピン後に再懸濁したペレットと分離した上澄みの濃度(mg/mL総タンパク質)を決定した。
【0053】
再懸濁したペレットと分離した上澄みを最終的に0.6%LDAOに2時間可溶化し(Carbosynthの5%LDAOストック120μLを1mLの材料に使用)、5300Gにて15分間再度遠心分離した。再度、上澄みをペレットから分離した。LDAOを含まない結合バッファーにペレットを再懸濁した(再び最大1mL)。
【0054】
すべてのサンプルをSDS−gelで分析したところ、上澄み中のタンパク質の約60%がアクアポリン膜タンパク質であることが明らかとなった。
【0055】
実施例4
実施例2のアクアポリンZの精製に続いて、LDAO中の可溶化タンパク質のサイズ分布を測定した。
【0056】
タンパク質を含む場合と含まない場合の同じ溶出バッファー間で比較を行い、粒子サイズ分布がバッファー成分(界面活性剤を含む)または膜タンパク質の影響を受けているかを評価した。
【0057】
前記アクアポリンZタンパク質は、1000mMイミダゾールと0.2%w/vLDAOを含む溶出バッファーを使用してIMACカラムから溶出した。精製されたタンパク質を、アミノ酸分析によってそのタンパク質濃度について測定した。溶出バッファー中の6.44mg/mLの透明な可溶化タンパク質を、3つの異なるキュベット(Sarstedt、4mL、PMMA、ca.no.67.755、ニュームブレヒト、ドイツ)にロードして、(Malvern Instruments Ltd.、Malvern UK)MalvernZetasizerソフトウェアv.7.02を使用してMalvern ZetasizerNano−ZSでサイズ分布を分析した。表1に示されている結果は、3回実行されたサンプルの平均である。
【0058】
【表1】
【0059】
溶出バッファーサンプル(タンパク質なし)には、8.6nm以下のサイズの粒子の97.9%の個体群分布が含まれており、精密ろ過によって保持される大きな界面活性剤ミセルが溶液中に存在しないことを示している。タンパク質を含むサンプル中の粒子の81.4%は108nm以上のサイズを示し、それによってタンパク質と界面活性剤の存在が一緒になって精密ろ過中に保持される大きな可溶性粒子を形成することを示している。驚くべきことに、この実験は、LDAOミセルと膜タンパク質で構成される大きくて安定した粒子が生成されることを示している。
【0060】
実施例5
大腸菌におけるOryza sativa Japonica(日本米)からのヒスチジンタグ付きアクアポリンの発現およびIMACを使用したその精製
Oryza sativa Japonica(UNIPROT:A3C132)のアクアポリンをコードする遺伝子は、大腸菌での発現を改善するためにGeneart(Thermo Fischer Scientificの子会社)サービスを使用してコドン最適化された。得られた遺伝子は、C末端に隣接するNdeI/XhoI制限部位とともに、それぞれN末端およびC末端に隣接する10個のヒスチジンコードコドンを付加して合成された(遺伝子ID:aquaporin_Oryza_sativa_Japonica)。合成遺伝子フラグメントをNdeI/XhoI制限酵素で消化し、NdeI/XhoIで消化および精製したベクターpUP1909フラグメントにライゲーションした。得られたライゲーション混合物をEscherichiacoliDH10Bに形質転換し、カナマイシンを含むLB寒天プレート上でカナマイシン耐性形質転換体を選択した。形質転換体は、遺伝子構築物の配列決定によって確認された。続いて、単離されたベクターDNAを生産宿主であるEscherichia coli BL21に移した。
【0061】
大腸菌においてアクアポリンを異種発現させるために、30g/Lグリセロール、6g/L(NH
4)
2HPO
4、3g/L KH
2PO
4、5g/L NaCl、0.25g/L MgSO
4・7H
2O、0.4g/Lクエン酸鉄(III)および1mL/L滅菌ろ過微量金属溶液からなる最小培地で生産宿主を増殖させた。前記微量金属溶液は、1g/L EDTA、0.8g/L CoCl
2・6H
2O、1.5 MnCl
2・4H
2O、0.4g/L CuCl
2・2H
2O、0.4g/L H
3BO
3、0.8g/L Na
2MoO
4・2H
2O、1.3g/L Zn(CH
3COO)
2・2H
2Oからなる。接種および一晩の増殖後、さらに0.25g/LのMgSO
4・7H
2Oを加えた。
【0062】
大腸菌は、バッチ発酵方法でez−Controlを備えた3L ApplikonBioreactorsで培養された。IPTGを最終濃度0.5mM、光学密度(OD 600nm)約30で添加することによりタンパク質産生を誘導した。培養物を約24時間誘導し、細菌細胞を5300gで20分間の遠心分離で回収した。
【0063】
大腸菌細胞を含むペレットをバッファー(プロテアーゼ阻害剤PMSFおよびEDTAの水溶液)に再懸濁し、Stansted nm−GEN7575ホモジナイザーを用いて1000バールにてホモジナイズした。温度は約10〜15℃に維持した。混合物を最高速度5300gにて30分間遠心分離した。ペレットには膜タンパク質が含まれており、上澄みを廃棄する。
【0064】
ペレットを0.9%塩化ナトリウム溶液に再懸濁して、総タンパク質濃度を約50mg/mLとした。膜タンパク質の可溶化は、28LのTRIS結合バッファーと4.5リットルの5%LDAOを5Lの再懸濁ペレット材料に加えることによって実行した。室温で穏やかに攪拌しながら、混合物を2〜24時間インキュベートした。
【0065】
可溶化方法の後、混合物を2Lの容器内で5300gにて90分間遠心分離した。上澄みを回収し、希釈バッファーを加えてLDAO濃度を0.2%に調整した。
【0066】
可溶化および清澄化後、IMACを使用してタンパク質を捕捉し、1000mMイミダゾールおよび0.2%w/v LDAOを含む溶出バッファーで溶出した。溶出フラクションをSDSPageで分析したところ、27kDaで移動した単一の主要なバンドのみが示された。これは、日本米のアクアポリンのサイズに相当する。さらに、空のベクターで形質転換された大腸菌からのネガティブコントロール精製と比較することにより、結果が確認された。ネガティブコントロールは精製タンパク質を与えなかった。ヒスチジンタグに特異的な抗体(TaKaRa Bio)を用いたウエスタンブロット分析では、予想通り、精製タンパク質からの明確なシグナルが得られ、ヒスチジンタグ付き膜タンパク質としての精製タンパク質の起源を確認するネガティブコントロールからのシグナルはなかった。
【0067】
実施例6
大腸菌におけるユーカリプタスグランディスからのヒスチジンタグ付きアクアポリンの発現およびIMACを使用したその精製
ユーカリプタスグランディスのアクアポリンをコードする遺伝子(UNIPROT:A0A059C9Z4)は、大腸菌における発現を改善するためにGeneart(Thermo Fischer Scientificの子会社)サービスを使用してコドン最適化された。得られた遺伝子は、C末端に隣接するNdeI/XhoI制限部位とともに、それぞれN末端およびC末端に隣接する10個のヒスチジンコードコドンを付加して合成された(遺伝子ID:aquaporin_Eucalyptus_grandis)。実施例5に記載されるように、前記遺伝子をクローン化および発現した。実施例5に記載されるように、前記タンパク質を精製および確認することに成功した。
【0068】
実施例7
大腸菌におけるSolanumtuberosum(デンマークのジャガイモ)からのヒスチジンタグ付きアクアポリンの発現およびIMACを使用したその精製
Solanum tuberosum(UNIPROT:Q38HT6)のアクアポリンをコードする遺伝子は、大腸菌における発現を改善するためにGeneart(Thermo Fischer Scientificの子会社)サービスを使用してコドン最適化された。得られた遺伝子は、C末端に隣接するNdeI/XhoI制限部位とともに、それぞれN末端およびC末端に隣接する10個のヒスチジンコードコドンを付加して合成された(遺伝子ID:aquaporin_Solanum_tuberosum)。実施例5に記載されるように、前記遺伝子をクローン化および発現した。実施例5に記載されるように、前記タンパク質を精製および確認することに成功した。
【0069】
実施例8
大腸菌におけるMilnesium tardigradum(クマムシ)からのヒスチジンタグ付きアクアポリンの発現およびIMACを使用した精製
Milnesium tardigradum(UNIPROT:G5CTG2)のアクアポリンをコードする遺伝子は、大腸菌における発現を改善するためにGeneart(Thermo Fischer Scientificの子会社)サービスを使用してコドン最適化された。得られた遺伝子は、C末端に隣接するNdeI/XhoI制限部位とともに、それぞれN末端およびC末端に隣接する10個のヒスチジンコードコドンを付加して合成された(遺伝子ID:aquaporin_Milnesium_tardigradum)。実施例5に記載されるように、前記遺伝子をクローン化および発現した。実施例5に記載されるように、前記タンパク質を精製および確認することに成功した。
【0070】
実施例9
大腸菌におけるハロモナス属からのヒスチジンタグ付きアクアポリンの発現およびIMACを使用したその精製
ハロモナス属のアクアポリンをコードする遺伝子(UNIPROT:A0A2N0G6U6)は、大腸菌での発現を改善するためにGeneart(Thermo Fischer Scientificの子会社)サービスを使用してコドン最適化された。得られた遺伝子は、C末端に隣接するNdeI/XhoI制限部位とともに、それぞれN末端およびC末端に隣接する10個のヒスチジンコードコドンを付加して合成された(遺伝子ID:aquaporin_Halomonas_sp)。実施例5に記載されるように、前記遺伝子をクローン化および発現した。実施例5に記載されるように、前記タンパク質を精製および確認することに成功した。
【0071】
実施例10
大腸菌におけるKyrpidiaspormanniiからのヒスチジンタグ付きアクアポリンの発現およびIMACを使用したその精製
Kyrpidia属からのアクアポリンをコードする遺伝子(UNIPROT:A0A2K8N5Z5)は、大腸菌における発現を改善するためにGeneart(Thermo Fischer Scientificの子会社)サービスを使用してコドン最適化された。得られた遺伝子は、C末端に隣接するNdeI/XhoI制限部位とともに、それぞれN末端およびC末端に隣接する10個のヒスチジンコードコドンを付加して合成された(遺伝子ID:aquaporin_Kyrpidia_spormannii)。実施例5に記載されるように、前記遺伝子をクローン化および発現した。実施例5に記載されるように、前記タンパク質を精製および確認することに成功した。
【0072】
実施例11
大腸菌におけるMethanothermobacter属からのヒスチジンタグ付きアクアポリンの発現およびIMACを使用したその精製
Methanothermobacter属由来のアクアポリンをコードする遺伝子(UNIPROT:A0A223ZCQ2)は、大腸菌における発現を改善するために、Geneart(Thermo Fischer Scientificの子会社)サービスを使用してコドン最適化された。得られた遺伝子は、C末端に隣接するNdeI/XhoI制限部位とともに、それぞれN末端およびC末端に隣接する10個のヒスチジンコードコドンを付加して合成された(遺伝子ID:aquaporin_Methanothermobacter_sp)。実施例5に記載されるように、前記遺伝子をクローン化および発現した。実施例5に記載されるように、前記タンパク質を精製および確認することに成功した。
【0073】
実施例12
大腸菌におけるNovicabillus thermophilusからのヒスチジンタグ付きアクアポリンの発現およびIMACを使用したその精製
Novibacillus thermophilusのアクアポリンをコードする遺伝子(UNIPROT:A0A1U9K5R2)は、Geneart(Thermo Fischer Scientificの子会社)サービスを使用して大腸菌での発現を改善するためにコドン最適化された。得られた遺伝子は、C末端に隣接するNdeI / XhoI制限部位とともに、それぞれN末端およびC末端に隣接する10個のヒスチジンコードコドンを付加して合成された(遺伝子ID:aquaporin_Novicabillus_thermophilus)。実施例5に記載されるように、前記遺伝子をクローン化および発現した。実施例5に記載されるように、前記タンパク質を精製および確認することに成功した。
【0074】
実施例13
大腸菌におけるEscherichia coliからの外膜プロテインA(OmpA)の発現
大腸菌におけるOmpA(UNIPROT:P0A910)の発現および精製は、大腸菌を空のベクターで形質転換し、可溶化を24時間に延長したことを除いて、本質的に実施例5に記載のように実施した。得られた可溶化タンパク質は、SDS−PAGEによって約30〜50%の純度と推定され、したがって、OmpAを標準的な精製手順に従って膜フラクションで単離することに成功したことを明確に示している。追加のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)工程では、OmpAをさらに精製し得る。
【0075】
実施例14
N末端ヒスチジンタグ付きyEGFPに融合し、タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼ切断部位によって分離された大腸菌からアクアポリン−Z(AqpZ)を発現するSaccharomyces cerevisiae株を構築する。
【0076】
大腸菌由来のAqpZ(UNIPROT ID:P60844)は、S.cerevisiaeでの発現を改善するためのGeneartのサービスを使用して、S.cerevisiaeでの発現用にコドン最適化された。S. cerevisiaeでの発現のために、AqpZを酵母強化緑色蛍光タンパク質(yEGFP)とN末端で融合させ(Brendan P. Cormackら、Microbiology(1997)、143、303−311)、膜タンパク質の視覚的検出と定量化を可能にした。さらに、8つのヒスチジン(His8)がIMAC精製タグとしてyEGFPのN末端に追加された。His8−yEGFPおよびAqpZは、構築中にPCRプライマーによって組み込まれたTEVプロテアーゼ切断部位によって遺伝的に分離された。
【0077】
His8−yEGFP−TEV−AqpZ融合をコードするプラスミドの迅速かつ効率的な構築は、(Scientific Reports 7:16899)に記載されているように、His8−yEGFP−TEV PCRフラグメント、TEV−AqpZ PCRフラグメント、ならびにpEMBLyex4プラスミドのSalI、HindIII、およびBamHI消化に由来する線形化された発現プラスミドの間のS.cerevisiaeのプライマーによって組み込まれた重複領域のインビボ相同組換えによって実行された。前記TEV切断部位は、TEVプロテアーゼによるHis8−yEGFPタンパク質のその後の除去を可能にする。
【0078】
S.cerevisiae形質転換体の選択は、ウラシルが不足しているが、正しく組換えられたDNA断片で細菌細胞の生存を確保するためにロイシンおよびリジンが補充された最小培地プレートで実行された。この実施例で使用された培地組成およびアミノ酸濃度は、実施例15に列挙されたものと同一であった。
【0079】
実施例15
Saccharomyces cerevisiaeを有するHis8−yEGFP−TEV−AqpZの発現
形質転換された酵母細胞の単一コロニーを、60mg/Lのロイシンおよび30mg/Lのリジンを補充した5mLのグルコース最小培地で飽和するまで選択的に増殖させた。続いて、この培養物の200μLを、高いプラスミドコピー数の選択のために、30mg/Lのリジンを補充した5mLのグルコース最小培地で増殖させた。高プラスミドコピー数細胞の凍結ストックを調製した。
【0080】
解凍した凍結ストック200μLを、リジンを添加した最小培地10mLに加え、飽和するまで増殖させた。1mLの培養物を100mLの同じ培地に移した。一晩増殖させた後、0.05の最終OD600に対応するアリコートを、炭素源として20g/Lグルコースの初期濃度および追加のアミノ酸を補充した30g/Lグリセロールを含む1.5リットルの最小培地に移した。Lucullus(登録商標)ソフトウェア(Applikon、オランダ、およびSecureCell、スイス)を実行しているPCに接続されたez−Controlを備えた3LApplikon(商標登録)バイオリアクターで培養物を培養した。
【0081】
発酵の最初の部分は、最小培地で20℃にて実施された。バイオリアクターには、初期量のグルコースが代謝されたときに、最終濃度が3%w/vになるようにグルコースを供給した。増殖培地のpHは、1M NH
4OHのコンピューター制御された添加によって6.0に維持した。グルコースへの接近が制限されていることによりCO
2排気ガスが横ばいとなったら、組換えAQP生産を誘導する前に、バイオリアクターを15℃に冷却した。400mL/L ASD−10、400mL/L過剰なアミノ酸、200g/Lグリセロール、および20g/Lガラクトースからなる50mL/L発現培地の添加により、組換えタンパク質の発現を開始した。酵母細胞を約96時間後に回収した。
【0082】
前記最小培地は、20g/Lグルコース、100mL/L ASD−10、5mL/L V−200、30g/Lグリセロール、0.1g/L CaCl
2から構成された。前記ASD−10は、50g/L(NH
4)
2SO
4、8.75g/L KH
2PO
4、1.25g/L K
2HPO
4、5g/L MgSO
4・7H
2O、1g/L NaCl、5mg/L H
3BO
3、1mg/L KI、4mg/L MnSO
4・1H
2O、4.2mg/L ZnSO
4・7H
2O、0.4mg/L CuSO
4・5H
2O、2mg/L FeCl
3、2mg/L Na
2MoO
4・2H
2Oから構成された。前記V−200は、4mg/Lビオチン、400mg/L D−パントテン酸、0.4mg/L葉酸、2000mg/Lミオイノシトール、80mg/Lナイアシン、40mg/L p−アミノ安息香酸、 80mg/Lピリドキシン、40mg/Lリボフラビン、80mg/Lチアミンから構成された。記載されている場合、前記培地には、600mg/Lアラニン、600mg/Lアルギニン、600mg/Lシステイン、3000mg/Lグルタミン酸、2000mg/Lリジン、600mg/Lメチオニン、1500mg/Lフェニルアラニン、600mg/Lプロリン、10000mg/Lセリン、900mg/Lチロシン、4500mg/Lバリン、2000mg/Lアスパラギン酸、4000mg/Lスレオニン、600mg/Lヒスチジン、600mg/Lトリプトファンからなる追加のアミノ酸が含まれていた。
【0083】
実施例16
Saccharomyces cerevisiaeを含むバイオリアクターでのMilnesium tardigradumからのHis8−yEGFP−TEV−AQP5のクローニング
His8−yEGFP−TEV−AQP5構築物は、実施例14に概説された手順に従って調製された。M.tardigradum由来のAQP5タンパク質(UNIPROT:G5CTG2)は、酵母での発現が必要であるにもかかわらず、大腸菌での発現に最適化されたコドンであった。
【0084】
実施例17
S.cerevisiaeからのHis8−yEGFP−TEV−AqpZおよびHis8−yEGFP−TEV−AQP5の精製
S.cerevisiaeからの異種発現された膜タンパク質の精製は、適用された緩衝液量が減少した培養量に一致するように縮小し、溶解を1800バールにて行ったことを除いて、実施例2に記載されたように実行した。タンパク質の生産と純度は、SDSページとウエスタンブロットの両方の融合タンパク質で正常に確認され、汚染タンパク質は検出し得なかった。
【手続補正書】
【提出日】2020年3月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a.水性媒体中に存在する宿主生物において膜タンパク質を発現させること、
b.前記宿主生物から前記膜タンパク質を遊離させること、
c.界面活性剤溶液を添加して前記膜タンパク質を可溶化させること、
d.前記可溶化膜タンパク質の液体フラクションを遠心分離による上澄みとして回収すること、
e.前記液体フラクションをクロマトグラフィーに供して前記膜タンパク質を固定相上に結合または保持すること、および、
f.溶出バッファーを用いて前記固定相を溶出して前記膜タンパク質を製造すること、
を含み、工程dの遠心分離を500g〜30,000gで行う、膜タンパク質の製造方法。
【請求項2】
工程aの前記宿主生物を含む前記水性媒体を、工程bによる前記宿主生物の遊離の前に濾過する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程aの前記宿主生物を含む前記水性媒体を、0.5μm以下の孔径を有する精密濾過膜を通して濾過する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記宿主生物を、任意に濾過後に、前記宿主生物を含む前記水性媒体の遠心分離によって単離する、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記遠心分離を、500g〜30,000g、好ましくは1,000g〜10,000gで行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
単離された前記宿主生物を等張食塩水で洗浄して汚染塩を溶解し、続いて遠心分離して洗浄された前記宿主生物を単離する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
工程bの前に希釈緩衝液を添加する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
水性溶解液を添加して、前記宿主生物から前記膜タンパク質を遊離させる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記水性溶解緩衝液が界面活性剤溶液であり、前記界面活性剤溶液が前記膜タンパク質を同時に可溶化する、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記宿主細胞が、攪拌中に前記界面活性剤の作用を受けることができる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記宿主細胞からの前記膜タンパク質の遊離をホモジナイザーを用いて行う、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
遊離した前記膜タンパク質にカチオン性凝集剤を添加して懸濁液を形成する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記カチオン性凝集剤が、ポリアミン化合物である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記カチオン性凝集剤が、穏やかに攪拌されている間に再懸濁物の細胞部分と反応してフロックを形成することができる、請求項12または13に記載の製造方法。
【請求項15】
工程dの液体フラクションを、フロックを含む懸濁液の遠心分離からの上澄みとして回収する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
工程dの液体フラクションを固体フラクションの再懸濁物から回収し、前記固体フラクションを膜タンパク質を可溶化するための界面活性剤溶液に再懸濁する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
工程dの液体フラクションを遠心分離による上澄みとして回収する、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記界面活性剤が、ラウリルジメチルアミンN−オキシド(LDAO)、オクチルグルコシド(OG)、ドデシルマルトシド(DDM)またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
前記遠心分離を500g〜30,000g、好ましくは1,000g〜10,000gで行う、請求項1〜18のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記膜タンパク質を結合または保持することができる固定相がカラム内に存在する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項21】
前記膜タンパク質が親和性ペアの第1の部分と会合し、前記固定相が前記親和性ペアの第2の部分と会合する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項22】
前記親和性ペアの前記第1の部分がヒスチジンタグである、請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
前記ヒスチジンタグが8つ以上のヒスチジン分子を含む、請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
前記溶出緩衝液がイミダゾールを含む、請求項1〜23のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項25】
前記溶出緩衝液で溶出する前のカラムを、前記溶出緩衝液中の濃度の40%以下のイミダゾールを含む洗浄緩衝液を用いて洗浄する、請求項24に記載の製造方法。
【請求項26】
前記溶出緩衝液中のイミダゾールの濃度が400mM以上である、請求項24または25に記載の製造方法。
【国際調査報告】