(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-519859(P2021-519859A)
(43)【公表日】2021年8月12日
(54)【発明の名称】液体およびガス流入を制限するためにマトリックスの透過性を制限するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 17/18 20060101AFI20210716BHJP
G21F 9/34 20060101ALI20210716BHJP
C09K 103/00 20060101ALN20210716BHJP
【FI】
C09K17/18 P
G21F9/34 EZAB
C09K103:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-570596(P2020-570596)
(86)(22)【出願日】2018年3月5日
(85)【翻訳文提出日】2020年10月19日
(86)【国際出願番号】AU2018050198
(87)【国際公開番号】WO2019169423
(87)【国際公開日】20190912
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520341441
【氏名又は名称】レルボーグン ピーティーワイ リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】520341452
【氏名又は名称】トリオンビリ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ダイク,デオン
(72)【発明者】
【氏名】グロブラー,ニコ ヨハン
【テーマコード(参考)】
4H026
【Fターム(参考)】
4H026CB08
4H026CC01
4H026CC06
(57)【要約】
多孔性マトリックスを通る液体および/またはガス流入を制限する、または低減させる方法であって、前記多孔性マトリックスに、少なくとも1つの選択された添加物と接触させるために凝固性ポリマエマルジョンまたはコロイドを送達することであって、少なくとも1つの選択された添加物は前記ポリマエマルジョンまたはコロイドと相互作用し、シーリングバリアが形成され、多孔性マトリックスを通る液体および/またはガス流入が低減されることを含み、前記凝固性ポリマエマルジョンまたはコロイドは、放射線抵抗性を付与する放射線安定剤の1つまたは組み合わせを含む少なくとも1つの選択された添加物を含有し;前記シーリングバリアは、前記ポリマエマルジョンまたはコロイドをさらなる選択された添加物と接触させることにより形成され、前記ポリマエマルジョンまたはコロイドの凝固が引き起こされ、前記シーリングバリアが形成される、方法。シーリング組成物は低い毒性を有し、好ましくは、1〜100MRadの範囲でシーリングバリアのために放射線抵抗性を付与する放射線安定剤としてカーボンブラックを含有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性マトリックスを通る液体および/またはガス流入を制限する、または低減させる方法であって、前記多孔性マトリックスに、少なくとも1つの選択された添加物と接触させるために凝固性ポリマエマルジョンまたはコロイドを送達することであって、少なくとも1つの選択された添加物は前記ポリマエマルジョンまたはコロイドと相互作用し、シーリングバリアが形成され、前記多孔性マトリックスを通る液体および/またはガス流入が低減されることを含み、前記凝固性ポリマエマルジョンまたはコロイドは、放射線抵抗性を付与する放射線安定剤の1つまたは組み合わせを含む少なくとも1つの選択された添加物を含有し;前記シーリングバリアは、前記ポリマエマルジョンまたはコロイドをさらなる選択された添加物と接触させることにより形成され、前記ポリマエマルジョンまたはコロイドの凝固が引き起こされ、前記シーリングバリアが形成される、方法。
【請求項2】
前記シーリング組成物は前記多孔性マトリックスに、前記マトリックス内に削孔された注入穴を介する注入により導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記注入穴はプッシュドリル削孔により削孔される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記注入穴が削孔され、シーリング組成物が注入され、放射性廃棄物のための円筒形封じ込めバリアが形成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記注入穴が削孔され、シーリング組成物が注入され、放射性廃棄物のための円錐封じ込めバリアが形成される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記注入穴が削孔され、シーリング組成物が注入され、放射性廃棄物のための直線封じ込めバリアが形成される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記シーリング組成物は、少なくとも1MRad、好ましくは少なくとも10MRad、より好ましくは100MRadまでに対して機械的に抵抗性である封じ込めバリアを形成する、請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記シーリング組成物は、ラテックスエマルジョンまたはコロイドおよび下記からなる群より選択される放射線安定剤を含む、請求項7に記載の方法:カーボンブラック、酸化亜鉛、どちらも微粒子形態で、本質的に水に不溶性;オルト二置換フェノール、ヒドロキシフェニルプロピオネート(BASF AGからブランドIrganox(登録商標)で供給されるものなど)、ヒドロキシベンジル化合物、芳香族アミン、立体障害アミン、亜リン酸塩および有機硫黄化合物、例えば、チオビスフェノールおよびチオエーテル。
【請求項9】
前記シーリング組成物は放射線安定剤としてカーボンブラックを含有し、好ましくは前記ラテックスエマルジョンまたはコロイド中に、0.1〜3wt%、より好ましくは1wt%未満、最も好ましくは0.5〜0.7wt%の範囲の割合で存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの選択された添加物と接触可能な凝固性ポリマエマルジョンまたはコロイドを含み、少なくとも1つの選択された添加物は前記ポリマエマルジョンまたはコロイドと相互作用し、多孔性マトリックスを通る液体および/またはガス流入に対するシーリングバリアを形成するための凝固塊が形成され、前記ポリマエマルジョンまたはコロイドは、放射線抵抗性を付与する放射線安定剤の1つまたは組み合わせを含む少なくとも1つのさらなる選択された添加物を含有する、シーリング組成物。
【請求項11】
前記シーリング組成物はラテックスエマルジョンまたはコロイド、および、下記からなる群より選択される放射線安定剤を含む、請求項10に記載のシーリング組成物:カーボンブラック、酸化亜鉛、どちらも微粒子形態で、本質的に水に不溶性;オルト二置換フェノール、ヒドロキシフェニルプロピオネート(BASF AGからブランドIrganox(登録商標)で供給されるものなど)、ヒドロキシベンジル化合物、芳香族アミン、立体障害アミン、亜リン酸塩および有機硫黄化合物、例えば、チオビスフェノールおよびチオエーテル。
【請求項12】
放射線安定剤としてカーボンブラックを含有し、好ましくは前記ラテックスエマルジョンまたはコロイド中に、0.1〜3wt%、より好ましくは1wt%未満、例えば0.5〜0.7wt%の範囲の割合で存在する、請求項11に記載のシーリング組成物。
【請求項13】
米国環境保護庁、SW−846、方法1311 毒性指標浸出法により定められている、ヒ素、カドミウム、クロム、鉛、水銀、セレンおよび銀などの金属、ならびに、規制されるVOC、SVOCおよび一般的に使用される有機塩素駆除剤に対する規制限度に合格している、請求項12に記載のシーリング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地層などの層(formation)、ならびに透過性が低減され、または回避されなければならない土木現場および場所などの他の現場において遭遇する空洞、裂け目、空隙、開放特徴および孔隙などの通路中への流入を制限することを含む、液体またはガス流に対するマトリックスの透過性を制限する、または低減させるための方法および組成物に関する。方法および組成物は特に、放射能汚染または電離放射線にさらされる現場で、結界としての適用に好適である。
【背景技術】
【0002】
コンクリート、岩盤または土などのマトリックスを実質的にシールするまたはそうでなければ、その透過性を低減させようとする方法は知られている。例えば、裂け目をシールする、または縦坑の周りの未固結砂または土の透過性を低減させようとするために、レギュラーセメント系懸濁グラウトを縦坑の周りの空隙、開放空間および孔隙中に導入することができ、これにより、縦坑中への液体流入が制限される。
【0003】
典型的には、ある体積のグラウトまたはシーリング組成物製品が処理される現場に輸送され、水の流入を防止するためにシーリングが必要とされる1つまたは複数の通路に適用される。適用は典型的には、1つまたは複数の通路へのグラウトのポンピングを含む。一般に現場への送達前に予混合されるシーリング組成物はしばしば、水の流入を防止する、または低減させる観点から満足のいかない結果を与える。例えば、通路をシールする際に好適な特性を有することが知られているセメント系グラウトの注入または導入は、砂または砂岩などの未固結マトリックスに適用されると、水力破砕を引き起こす可能性がある。これにより、マトリックス内にグラウトの継ぎ目が生成される可能性があり、生成された継ぎ目のどちらの側にも未固結マトリックスのセクションが残る。そのような適用では、水がマトリックスを通過し、よって、マトリックスに沈められている縦坑中に入る可能性の低減への影響はごく限られている。
【0004】
凝結時間を全く、または信頼できる正確度で制御または変更させることができないという点で、予混合されるグラウトの使用にも困難がある。これは、公知の予混合されるグラウトは、一般に、「フリーサイズ」シーリング溶液を提供することのみできるという点で、有害である。液体流入を制限するためにマトリックスの透過性を制限することが求められる場合に経験され得るそのような幅広い条件が存在するので、全ての型の流入問題に対する「ワンサイズ」アプローチは本質的に不適切である。
【0005】
従来の、予混合されるセメントおよびビチューメン系グラウトは、加えて、シールされる1つまたは複数の通路に十分染みこむことができない。この失敗の少なくとも一部はシーリング組成物が単に、要求される深さまでマトリックスに染みこむことができなかったことに起因する可能性がある。シーリング組成物の凝結速度はまた、シーリング組成物が、水の流入を十分防止する、または実際に低減させることができるかどうかに影響する可能性がある。
【0006】
例えば、グラウトを砂層中での透過性を低減させるために適用する場合、グラウトは凝結前に、層を通って好適な距離に染みこむことができることが望ましい。凝結が早まって起こると、グラウトは、マトリックスに十分染みこみ、マトリックス内で粒子の十分な接着を生成し、水の流入に対する有効なシールを形成することができない。
【0007】
出願人は、採掘用途から土木工学用途、例えば、トンネルの修復またはスピルまたは構造(廃棄物貯蔵施設を含み得る)についての結界の形成までの、シーリング適用の範囲において、うまく使用されるラテックス系シーリング組成物を開発した。
【0008】
出願人のオーストラリア特許第739427号(これにより、参照により本明細書に組み込まれる)は、通路中に、ラテックスと下記成分の1つ以上の混合物を、加圧下で送達させることを含む、地層などのボディにおける通路を、シール組成物でシールする方法を開示し:耐摩擦材料、極圧添加物;および可塑剤、これらの成分は合計で、混合物の約1重量%以下の量で存在する。成分は、典型的には、有機および/または無機起源の粘度増強材料、洗浄剤および/またはせっけんを含み得る。
【0009】
出願人のオーストラリア特許第2009253842号(これにより、参照により本明細書に組み込まれる)は、ボディにおける通路を、下記を含むシーリング組成物でシールする方法を開示し:(a)主な割合のラテックスエマルジョンまたはコロイド;および(b)わずかな割合のラウリン酸またはラウリン酸塩化合物;および(c)少なくとも1つのさらに選択された添加物、理想的にはラテックス凝固阻害剤、ここで、シーリング組成物は、通路中にポンピングされ、そこで、それは凝結または凝固され、シーリングバリアが形成される。
【0010】
出願人のオーストラリア特許第2013266018号(これにより、参照により本明細書に組み込まれる)は、マトリックスと関連する1つ以上のパラメータを測定するステップ、および測定したパラメータに関連して、多成分シーリング組成物の1つ以上の成分を選択するステップを含む、液体またはガス流に対するマトリックスの透過性を制限する、または低減させる方法を開示する。
【0011】
加えて、可能性のあるシーリング用途では、シーリング組成物を、その上、電離放射線に曝露する可能性がある。シーリング組成物は、特に、ポリマ性質を有する場合、放射線劣化にさらされる可能性がある。放射線の性質が何であろうと、劣化のプロセスは、連鎖開始、連鎖成長、連鎖分枝および連鎖停止のステップを含む連鎖反応の性質を有する。架橋はこの一連の事象の典型的な例である。
【0012】
よって、本発明の目的は、液体および/またはガス流を制限する、または低減させるためにマトリックスの透過性を制限する、または低減させるためのシーリング方法および組成物を提供することであり、動作中かそうでないかに関係なく、核施設内に存在する放射線を含む、電離放射線による放射能にさらされる現場で適用することができるマトリックス中の通路内のガスおよび/または液体流を制限する、または低減させることが含まれる。
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、多孔性マトリックスを通る液体および/またはガス流を制限する、または低減させる方法が提供され、これは、前記多孔性マトリックスに、少なくとも1つの選択された添加物と接触させるために凝固性ポリマエマルジョンまたはコロイドを送達することを含み、少なくとも1つの選択された添加物は前記ポリマエマルジョンまたはコロイドと相互作用し、シーリングバリアが形成され、多孔性マトリックスを通る液体および/またはガス流入が低減され、前記凝固性ポリマエマルジョンまたはコロイドは放射線抵抗性を付与する放射線安定剤(抗放射線化合物としても知られている)の1つまたは組み合わせを含む少なくとも1つの選択された添加物を含有し、前記シーリングバリアは、前記ポリマエマルジョンまたはコロイドをさらなる選択された添加物と接触させることにより形成され、前記ポリマエマルジョンまたはコロイドの凝固が引き起こされ、前記シーリングバリアが形成される。放射線安定剤は、(これが要求される場合)シーリングバリア上で電離放射線に対する抵抗性を付与する化合物を含む。多孔性マトリックスは、空洞、裂け目、欠陥、通路、細孔または他の空隙を通るかどうかに関係なく、これを通って液体および/またはガスが流れることができるマトリックスである。方法は、液体の漏れまたは漏出の防止、ならびに、一般に、汚染された地下水またはイエローケーキ処理廃液または液体放射性廃棄物などの液体の意図した封じ込めに有効に適用することができる。固体廃棄物では、汚染水および他の液体の流出もまた問題となり得る。シーリング方法はまた、そのような汚染された液体の環境放出のリスクを最小に抑えるために、シーリングバリアを提供することができる。
【0014】
別の実施形態では、本発明は少なくとも1つの選択された添加物と接触可能なシーリング組成物またはコロイドを提供し、少なくとも1つの選択された添加物は前記ポリマエマルジョンまたはコロイドと相互作用し、多孔性マトリックスを通る液体および/またはガス流入に対するシーリングバリアを形成するための凝固塊が形成され、前記ポリマエマルジョンまたはコロイドは、放射線抵抗性を付与する放射線安定剤(抗放射線化合物としても知られている)の1つまたは組み合わせを含む少なくとも1つの選択された添加物を含有する。シーリング組成物は典型的には、それ自体で放射線バリアまたはシールドを形成することを意図しないことが理解されるべきである。むしろ、シーリング組成物は、さらに以下で記載されるように、高い放射線レベルであっても、多孔性マトリックスを通る液体および/またはガス流入に対する有効なシーリングまたは封じ込めバリアを形成することが意図される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、ポリマ系成分またはグラウト成分はラテックスエマルジョン、コロイドまたは水性分散物などのラテックス系である。天然ラテックスが好ましく、好ましくは純度20wt%〜60wt%の天然ラテックスである。望ましくは、グラウト成分は、バリアシールを形成するラテックス系シーリング組成物の凝固または凝結に必要とされる硬化剤の形態のさらなる添加物と容易に混合できるように水性である。便宜的に、かつ望ましくは、ポリマエマルジョンまたはコロイドは、好ましい形態の天然ラテックス系エマルジョンまたはコロイドを含み、ポルトランドセメントよりも小さなサイズ分布を有し、典型的には、98wt%以上の粒子が5〜30ミクロンにあるサイズ分布を有する。
【0016】
放射線安定剤としては、例えば、下記からなる群より選択される添加物の1つまたは組み合わせを含み得る:カーボンブラック、酸化亜鉛、どちらも微粒子形態で、本質的に水に不溶性;オルト二置換フェノール、ヒドロキシフェニルプロピオネート(BASF AGからブランドIrganox(登録商標)で供給されるものなど)、ヒドロキシベンジル化合物、芳香族アミン、立体障害アミン、亜リン酸塩および有機硫黄化合物、例えば、チオビスフェノールおよびチオエーテル。化合物は過剰な架橋および放射線劣化を防止または阻害するために選択されたものである。好ましくは、化合物は、封じ込め適用に対する適当性、ラテックスとの適合性、ならびにコストおよびシーリング現場への輸送特性のために選択される。
【0017】
カーボンブラックは好ましい添加物であり、好ましくはラテックス中に0.1〜3wt%、より好ましくは1wt%未満、例えば0.5〜0.7wt%の範囲の割合で存在する。カーボンブラックは、ファーネスブラックまたはスペシャルブラックとして入手可能である。ファーネスブラックは、典型的には、酸素なしで重質残油を加熱することから生成される、比較的低コストの汎用化学製品である。
【0018】
シーリングバリアは、便宜的に、使用される抗放射線剤によって、1MRad超、好ましくは10MRad超、望ましくは100MRadまでの線量、動作中かそうでないかに関係なく核施設で遭遇する可能性のある線量の電離放射線に抵抗性である。「抵抗性」により、バリアシールは有効なままで、シーリング適用により設定される条件下での障害を防止するのに十分な寸法安定性および機械的特性(例えば、弾性率、ヤング率、引張強さおよびポアソン比により測定されるものなど)を有することが意図される。しかしながら、そのような特性は、相対的に見れば、放射線量が高くなるほど劣化する可能性がある。カーボンブラックが抗放射線剤として使用される場合、バリアシールとして許容される機械的抵抗性および有効性は、現在のところ、出願人により、約100MRadまで期待される。
【0019】
さらなる添加物、または成分としては、輸送中およびバリアを形成するための凝結の開始前に、組成物の凝結を防止し、処理される現場中への流入および浸透を促進するための凝固または凝結阻害剤が挙げられる。ポリマエマルジョンまたはコロイドおよび任意の添加物の好ましく小さな粒子サイズ分布は、より大きな亀裂または空隙のシーリング前に水漏れにさらされることすらあり得ない非常に小さな亀裂を含む処理されるマトリックス中への流入および浸透を助け、より大きな粒子サイズを有し、より高い粘度が一般に、約160ミクロンを超える寸法を有する亀裂のシーリングに制限されるセメントに勝る著しい利点を提供する。阻害添加物の非限定的な例は、カチオン性界面活性剤などの界面活性剤である。界面活性剤は多孔性マトリックス内の通路中への導入での、ラテックスの凝集を防止することができる。通路中に存在する水が高い塩濃度を有する、すなわち、水は実質的にブラインである現場では、シーリング場所に存在する水は、通路内の表面組成物の初期凝固または凝結を防止するために阻害添加物で処理すべきである。
【0020】
さらなる添加物はまた、以上で示唆したように、凝結を開始または促進するための凝固活性剤もしくは硬化剤、またはこれらの混合物を含み得る。これらの添加物の非限定的な例は、アルカリ性化合物(例えば、KOHまたはNH
4OH);可塑剤、カルボン酸、ホウ酸塩、ケイ酸塩、水酸化物ならびにそれらの金属塩である。さらなる添加物としては、減水剤および液化剤が挙げられる。そのような活性剤は望ましくは非発熱性凝結プロセスを開始させ、低減された安全性およびバリアでの、またはその周囲での損害などの熱放出に対する不利点を回避する。単一組成物を通路中に導入する能力を有し、その一方、依然として望ましくは、適用現場に存在する特定のパラメータまたは変数に応じて、組成物の凝結時間を変化または制御する能力を維持することが、より好都合である可能性がある。この場合、さらなる選択された添加物は、便宜上、硬化剤を含み、合わされたポリマエマルジョンまたはコロイドおよび硬化剤が通路に導入され、そこで、それは凝結または凝固され、シールが形成される。次いで、ポリマエマルジョンまたはコロイド、すなわち、グラウト成分の硬化または凝結速度は、グラウト成分の硬化剤に対する比率を改変することにより制御または変化され得る。エマルジョンまたはコロイド内の粒子の粒子密度およびサイズもまた、改変することができ、硬化速度または凝結時間が変化する。粒子が小さなサイズを有する場合、より大きな表面積もまた生成され、これは凝集/凝固速度に影響する。硬化剤は、液体のpHを低下させる効果を有する薬剤;および過マンガン酸塩および三酸化クロムなどの酸化剤からなる群より選択され得る。他の可能性のある硬化剤は出願人のオーストラリア特許第2013266018号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載される。硬化は、場合によっては、選択された機器により誘導することができ、例えば、グラウト成分に照射し、架橋することができる。
【0021】
シーリング組成物は望ましくは低い毒性を有し、望ましくは、例えば、米国環境保護庁、SW−846、方法1311 毒性指標浸出法(その内容はこれにより参照により本明細書に組み込まれる)により定められている、ヒ素、カドミウム、クロム、鉛、水銀、セレンおよび銀などの金属ならびに規制されるVOC、SVOCまたは一般的に使用される有機塩素駆除剤のための規制限度に合格している。
【0022】
本方法は、動作中かそうでないかに関係なく核施設(例えば、放射性廃棄物貯蔵タンクの周りおよび/または下方に封じ込めバリアを形成するため)を含む建造物、地下掘削、廃棄物処理場および基盤などの、放射線劣化に抵抗するように、液体またはガス流入を防止または低減させることが望ましい任意の状況において、特に適用可能である。本方法は、例えば縦坑および他の同様の通路を取り囲む地層、ならびに放射線汚染にさらされる構造(例えば、放射性廃棄物貯蔵施設)において水またはガス流入を制限する、または低減させるのに特に好適である。バリアは砂土および砂を含む土内で、土と集合体を形成するシーリング組成物を用いて形成され得る。バリアは、便宜上、カーテングラウチング技術による構造の構築前、または後に形成され得る。
【0023】
本方法は望ましくは、シーリング組成物の成分の送達前に、処理される現場に、実質的に現場処理時に特異的なパラメータの測定および分析を含む。好ましくは、方法は、シールされる通路(複数可)内に存在する、またはこれを通って流れる液体、通常水の量を測定することを含む。というのも、方法は流れる水が存在する場合に特に有利であるからである。マトリックス内に存在する液体は理想的には収集され、分析され、pH、温度、ミネラル含量および塩分などの特性が決定される。次いで、添加物および阻害剤などのシーリング組成物の成分の選択および濃度が、通路中での組成物の凝結時間を制御するために、これらの現場特異的測定値に関連して決定される。水力および/または空気パラメータが、適切なシーリング組成物選択、ならびに、シーリングに必要とされるシーリング組成物の体積の推定を可能にするために、便宜的に測定され、分析される。手順のさらなる記載が、出願人のオーストラリア特許第2009253842号(その内容はこれにより参照により本明細書に組み込まれる)において提供される。
【0024】
水力および/または空気パラメータが決定されるとすぐに、マトリックスに削孔され、注入口および関連穴または注入穴が提供され、これを通ってシーリング組成物がマトリックス中に、便宜上、カーテングラウチング技術により誘導される。複数の注入口および穴は、典型的には削孔されて使用され、場所は、放射線抵抗性シーリング組成物のバリアまたはカーテンがマトリックスの必要とされる体積の周囲に形成され得るように選択される。バリアは所望の形状、例えば直線、円筒または円錐形状の体積を規定するように形成され得、複数の注入口が円形アレイとして配列されている。封じ込めバリアが円錐である場合、注入口と連絡している注入穴は、交差し、円錐バリアを形成する角度で削孔され、シーリング組成物の広がりが可能になる。封じ込めバリアが円筒形である場合、注入穴は、交差しないように最も便宜的に削孔される。注入穴は、シーリング組成物が分配され、要求されるバリアが形成されるように、間隔を空けられ、および/またはそのようなサイズとされる。高放射線レベル現場では、注入穴の削孔は、削りくずまたは微粉の表面への戻りを回避するために、プッシュロッドを使用するプッシュドリル削孔を含むべきである。プッシュドリル削孔が一般に好ましい可能性がある。
【0025】
好ましい態様では、方法は、シーリング組成物を必要とされる現場(複数可)に、例えば注入により導入するステップを含む。シーリング組成物の成分は、現場に独立して導入され得、そのため、シーリング組成物はその場で効果的に構成される。すなわち、シーリング組成物は、多成分配合物であってもよく、様々な成分は、マトリックス中、その場で、一緒にされ、共に反応する。シーリング組成物が好適な放射線安定剤、例えばカーボンブラックと共に配合される場合、電離放射線に対する抵抗性もまた達成され得る。
【0026】
好ましい態様では、方法は、ポリマエマルジョンおよび添加物混合物を多孔性マトリックスに注入により、可能であれば超高圧で導入するステップを含むが、1MPa未満の注入圧力は、土木構造物適用および様々な型の土中への注入について許容され得る。硬岩適用では、著しく高い圧力、おそらく20MPaまでが必要とされ得る。望ましくは、シーリング組成物の成分は好適なポンプ、好ましくはマルチポートポンプによりマトリックスに導入され、これにより、シーリング組成物の成分は別々のポンプ穴を介して導入されるが、望ましくは注入プロセスを通してよく混合される。好ましくは、ポンプは、ダイヤフラムエアポンプなどの容積式ポンプである。そのようなポンピング装置および組成物の成分を別々に現場中に導入する能力は、便宜的に、組成物のマトリックスへの導入に対してある程度の制御、よって、凝結時間の制御を可能にする。特に、ポンプが可変圧力で、組成物を通路中に注入することができることは有利であり、前記圧力変化は測定された現場特異的水力、空気および化学パラメータにおける変化に応じて選択される。シーリング組成物の成分を多孔性マトリックスに送達するための選択肢のさらなる記載が、出願人のオーストラリア特許第2013266018号(その内容はこれにより参照により本明細書に組み込まれる)において提供される。
【0027】
シーリング方法およびシーリング組成物はグラウチングに依存しない補足的なシーリング方法および装置と組み合わせて使用され得る。セメンテーションおよび本発明の方法により形成されたシーリングバリアと組み合わせたシーリング装置の使用はそのような補足的な方法の例である。シーリング装置は、封じ込めバリアを形成することが要求される空洞に適合するような形状とされ得る。そのような空洞は、核および他の電離放射線適用におけるプロセス容器およびプロセス配管を含み得る。
【0028】
方法は、便宜上、以上で記載されるものなどの現場パラメータをモニタし、シーリング組成物成分を予め決められた場所に送達するために、ポンプおよびバルブなどの機器を作動させる制御ユニットにより制御される。
【0029】
本発明の方法および組成物は、好ましい実施形態および実施例の下記記載から、添付の図面を参照して、よりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】容器中への水の流入を防止する、または最小に抑えるシーリング方法の第1の実施形態による、シーリングを必要とする容器を取り囲むマトリックス中に亀裂または開口を有する液体放射性廃棄物を保持する容器を取り囲む地表層(ground formation)の略断面図である。
【
図2】本発明のシーリング方法が適用されて、第1の直線形状のタンク貯蔵所封じ込めバリアが形成される放射性廃棄物貯蔵施設の略図である。
【
図3】第1の直線形状のタンク貯蔵所封じ込めバリアの1つのセクションを示す
図2の放射性廃棄物貯蔵施設の略図である。
【
図4】本発明のシーリング方法が適用されて、第2の円筒形状のタンク封じ込めバリアが形成される放射性廃棄物貯蔵施設の略図である。
【
図5】本発明のシーリング方法が適用されて、第3の円錐形状のタンク封じ込めバリアが形成される放射性廃棄物貯蔵施設の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1について説明すると、本発明の1つの実施形態のシーリング方法は、容器14を取り囲む地表層である多孔性マトリックス32中に配置された、核施設と関連する水性放射性廃棄物を保持する容器14の処理に適用され、マトリックスを介して汚染水が容器14の壁31内の亀裂30、および表面34を通して染みこみ、亀裂の入った壁31はまた、汚染水の周囲の地表層32中への流出を防止するためにシーリングを必要とする多孔性マトリックスを形成する。
【0032】
多孔性マトリックス32の水力パラメータもまた、決定されなければならない。有効なシーリングが達成される場合、容器14を越える多孔性マトリックス32内の水力場の性質および程度が理解されなければならない。水の流入の連結性、染みこみおよび広がりの水力パラメータを決定するために、容器14および現場に対して明確に対比させるための、水と同じ流動特性を有するが着色されているトレーサー染料などの好適な染料が好適な注入穴(図示せず)を通して導入される。容器14から外へ、多孔性マトリックス32を通る染料の漏出の時間を測定し、視覚的に評価することができ、水の流出ならびにマトリックスを通る任意の他の水流(放射性廃棄物汚染問題を増大させる可能性がある)の浸透が決定され得る。染料の報告はどこで、水流が起きているかを示し、染料の流速は、特定の速度および圧力で導入された場合にマトリックス32内での染料の流動性を決定するために測定される。これにより、シーリング組成物の溶液の流速が示唆され、そのため、好適な添加物をいつ、どの濃度で導入するか決定することができる。
【0033】
パラメータ、容器14内およびその周囲での地表および水温度、水pH、ミネラル含量および塩分レベルならびに水の流動性、マトリックス32の多孔度および現場の温度を参照して、シーリング組成物の成分および前記成分の個々の濃度、ならびに必要とされるシーリング組成物の推定体積は好適に選択することができる。シーリング組成物のさらなる記載が以下で提供される。1つの選択肢は容器14を通る通路38および40を削孔することであり、そのため、シーリング組成物を導入し、亀裂30をシールし、汚染水の流れに対してシーリングバリアを形成することができる。
【0034】
図2〜5を参照して記載されるさらなる実施形態では、シーリング方法は液体放射性廃棄物を保持するために多くのタンク114を有する放射性廃棄物貯蔵施設110、および、例えば、鉛シールドを含む当技術分野で知られている第2の封じ込め方法による放射線抵抗性バリアで構築された側壁および床を有する周囲構造120からの液体またはガス漏れを制限するための結界を形成するために使用することができた。廃棄物は低、中、高レベル放射性廃棄物であり得る。そのような結界は1)廃棄物貯蔵施設110の建設中、2)廃棄物貯蔵施設の建設後、タンク114に水性放射性廃棄物を充填する前、または3)時間と共に劣化した廃棄物貯蔵施設110の修復戦略として、タンク114から周囲の地表150および多孔性マトリックスまたは層170中への可能性のある漏れに対して保護するためのバリアシールを提供するために、構築することができた。
【0035】
封じ込めバリア130は以下で記載されるように多くの形状で形成され得る。
【0036】
図2および3について説明すると、封じ込めバリア130は直線形状を有し、亀裂にさらされる可能性があり、シーリング処理を必要とする周囲の封じ込め構造120内に配列される。
図2では、注入穴135は図面で見られる方形波パターンで平行に配置され、シーリング組成物は、以下で記載されるように、タンク114を取り囲む砂表土125中に削孔された注入穴135中に導入され、横に広がった後、周囲の多孔性マトリックスまたは層170および全ての存在する地下水面ならびに周囲の地表150中への廃棄物漏れを防止するための長方形箱形状の封じ込めバリアが形成される。
図3はどのように直線封じ込めバリア130がセクションで構築され得るかを示し、その1つのセクション130Aが
図3に示される。注入穴135Aが、砂表土125中に削孔されているが、まだ、封じ込めバリアを形成するためのグラウチングには使用されていない。1つの注入穴135が示されており、セクション130Aのためのグラウチングが完了している。
【0037】
封じ込めバリアはまた、
図2および3の周囲の封じ込め構造120の床上で必要とされ得る。そのような封じ込めバリアは封じ込めバリア130の建設前に構築され得る。封じ込めバリア130は周囲の地表150より上の周囲の封じ込め構造120の高さのすぐ下まで延在する。封じ込めバリア130は周囲の層170中まで、周囲の層170の放射性廃棄物に対する透過性に関して計算した深さまで延びる。
図2および3は図示を簡単にするために概略であることが理解されるであろう。周囲の層170が破砕され、または多孔性である場合、さらなるシーリング処理を適用することができ、同様に、周囲の層内に結界が形成され得る。そのような処理は、周囲の層170の地質および水文学によって、廃棄物処理施設110内で封じ込めバリアを形成するために使用されるものより高い注入圧力を必要とし得る。
【0038】
図4について説明すると、個々のタンク114には、円筒形状の封じ込めバリア230が提供され、これは、以下で記載されるように、タンク114について円形配列で配置された注入穴235を通して、シーリング組成物を注入することにより調製される。タンク114を取り囲む砂表土125を通して削孔された注入穴235は平行に配列され、シーリング組成物の注入は、横に広がった後、円筒形状の封じ込めバリアを形成し、周囲の層170および全ての存在する地下水面中への廃棄物漏れが防止される。
図2および3の実施形態と同様に、封じ込め構造120および周囲の層170のさらなるシーリング処理が必要に応じて実施され得る。
【0039】
図5について説明すると、タンク114のための封じ込めバリア330は円錐形状を有し、タンク114からの漏れがリスクとなりつつある劣化している施設のために構築される。そのような封じ込めバリアは注入穴335を周囲の封じ込め構造120および周囲の層170中に、タンク114の周囲で間隔をおいて削孔することにより形成される。マトリックスについての水力パラメータは、以上で記載されるものなどの方法から決定され、または公知である。
図4の実施形態と対照的に、注入穴335は、タンク114を取り囲む砂表土125を通して、各注入穴335が、円錐封じ込めバリア330の頂点332で集結し、交差する角度で削孔される。コストを低減させるために、有効なシーリングを可能にしながら、注入穴335の配置は、必要とされる注入穴335の数を最小に抑えるものでなければならない。この目的を達成するために、注入穴335は、
図5に示されるように、タンク114の周囲に、規則正しい、実質的に等距離間隔で、円形配列で配置される。
【0040】
廃棄物貯蔵施設110は高放射線レベル現場であるので、削孔削りくずまたは微粉は周囲の地表150のレベルに至らせることはできない。注入穴135、135A、235、335は、プッシュロッドを用いたプッシュドリル削孔により削孔され、削孔からの削りくずまたは微粉が地表150の表面に到達するのが防止される。これは、衝撃削孔が使用され得る他の非放射適用と対照的である。
【0041】
様々な注入穴135、135A、235、335への注入による多成分組成物の導入の初期段階中に、シーリング組成物は阻害剤と配合され、延長された凝結時間が提供され、シーリング組成物のマトリックス120、170への最適な広がりおよび染みこみが可能になり、特定的に、結界130、230、330が形成される。シーリング組成物が、注入穴135、135A、235、335に近接しすぎて凝結することは望ましくない。というのも、これにより、次いで、追加のシーリング組成物の導入を可能にするために、費用をかけて、さらなる注入穴の削孔が必要となるからである。
【0042】
シーリング組成物
図1〜5のシールおよび結界を形成するために使用されるシーリング組成物の選択されたグラウト成分は、望ましくはポリマ粒子の100%が2ミクロン未満のサイズを有する粒子サイズ分布を有するポリマ粒子のほぼ均一な分散物を有する、主な割合のラテックスエマルジョンまたはコロイドを含有する。この粒子サイズは、ポルトランドセメントおよびTamcrete(登録商標)製品(無機粒子の58%が2ミクロンを超える粒子サイズを有し、無機粒子の100%が40ミクロン未満の粒子サイズを有する)についての5〜30ミクロンの無機セメント粒子の粒子サイズ範囲に匹敵する。粒子サイジングにおける違いは、選択されたラテックスエマルジョンに基づくシーリング組成物に対して有益である。というのも、それは、より低い圧力で、微細な亀裂に流れ込み、染みこむことができ、セメント系シーリング組成物が示すであろう望ましくない水圧破砕のリスクがないからである。シーリング組成物のわずかな割合のグラウト成分は、ラウリン酸塩、ラウリン酸アンモニウム、ならびに、さらに以下で記載されるさらなる選択された添加物から構成された。
【0043】
「主な割合」のラテックスエマルジョンまたはコロイドにより、十分なラテックスを含有するエマルジョンまたはコロイドが意図され、エマルジョンまたはコロイドが、シールされる通路(ここでは亀裂30)内のその場に存在し、凝結または凝固が開始されるとすぐに、有効なシールが形成される。典型的には、ラテックスは水とのエマルジョンまたはコロイド懸濁液で提供される。好ましいラテックスは、様々なグレードの、多くの起源から容易に入手できるものなどの天然ゴムラテックスである。純度20%超〜60%およびそれ以上のラテックスエマルジョンが例示的なシーリング組成物のグラウト成分には好ましい。好適なラテックスエマルジョンの特性のさらなる記載は、出願人のオーストラリア特許第2009253842号および2013266018号(その内容は、参照により本明細書に組み込まれる)において提供される。
【0044】
放射線安定剤は、例えば、カーボンブラック、酸化亜鉛、オルト二置換フェノール、ヒドロキシフェニルプロピオネート、ヒドロキシベンジル化合物、芳香族アミン、立体障害アミン、亜リン酸塩および有機硫黄化合物、例えば、チオビスフェノールおよびチオエーテルからなる群より選択される添加物の1つまたは組み合わせを含み得る。好ましくは、化合物は、封じ込め適用に対する適当性、ラテックスとの適合性およびコスト、ならびにシーリング現場への輸送特性のために選択される。
【0045】
これらの要求を満たし、カーボンブラックは好ましくは放射線安定剤として含められ、好ましくはラテックス中にシーリング組成物の1wt%未満、例えば0.6wt%の割合で、以上で示される必須粒子サイズで存在する。カーボンブラックは、ファーネスブラックまたはスペシャルブラックとして入手可能であり得る。ファーネスブラックは、典型的には、酸素なしで重質残油を加熱することから生成される、比較的低コストの汎用化学製品である。
【0046】
1つの実施例では、注入前に−以下で記載されるように−およそ1260kg(6−210Kgドラム缶)の、少量のヤシ油(最終シーリング組成物において約0.03wt%のラウリン酸濃度を達成するのに十分)を含むラテックスを、2.5kgの、要求されるサイジングまで粉砕されたKT粉末(凝固阻害剤)、1−5kgのKOHおよび約8kgのカーボンブラックを含む添加物混合物と混合した。シーリング適用のためのシーリング組成物の必要とされる量は、以上で言及される水力パラメータの測定後に決定される。水力パラメータはコンピュータ制御およびデータ取得ユニットを用いてモニタされるので、量は再計算することができ、必要に応じてさらなるシーリング組成物が利用可能である。好適な制御およびデータ取得ユニットは米国特許第6801814号(その内容はこれにより参照により本明細書に組み込まれる)に記載される。
【0047】
シーリング組成物はポンピングされ、タンク114の周りにガス/液体結界130、230、330が提供される。出願人は、大きな亀裂のシーリングを可能にするために、岩層において20MPaまでの圧力でのポンピングを使用したが、そのような圧力は、廃棄物処理施設110において結界130、230、330を形成するためには必要とされない。1MPa未満、例えば約0.6MPaの圧力でのシーリング組成物の注入で十分であり得る。
【0048】
シーリング組成物の凝固または凝結は、例えば、出願人のオーストラリア特許第2009253842号および2013266018号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、多くの方法で、凝固促進剤および硬化剤を使用して実施することができる。酸は好都合な例を提供する。せん断もまた、凝固または凝結を引き起こすことができるが、単独では十分である可能性は低い。
【0049】
放射線抵抗性
以上で記載されるカーボンブラック抗放射線剤を含有するシーリング組成物またはグラウトの試料を、1MRad、10MRadおよび100MRadの線量での
60Co放射線源による照射に供した。未照射対照もまた包含させた。
【0050】
定性的観察に関しては、未照射試料は酢酸臭を有した。不快なつんとする匂いは、より高照射された試料から生じた。わずかに油性の膜が放射線量の増加と共に発達した。試料は放射線量の増加と共に堅くなった。試料グラウトのリップリングが1MRadから100MRadで観察され、この場合、浸食に遭遇した。
【0051】
下記表から明らかなように、試料グラウトでは照射による著しい寸法変化は起こらなかった。
【表1】
しかしながら、0MRadから1MRadで、密度には著しい増加があり、架橋の増加と一致した。密度は10〜100MRadの範囲にわたり減少し、鎖切断の増加と一致した。低レベルの放射線であっても効果的に硬化性であり、グラウトにおいて必須度の架橋および凝結を誘導し、シール有効性を増加させることができる。
【0052】
特に1MRadを超える照射は試料をより弾性に、実に超弾性にし、かつより低い可塑性にした。試料グラウトは1MRad照射で800%伸長で破裂し、100MRad照射では今まで通りの200%伸長を許容できなかった。しかしながら、浸食チャネリングはこの放射線レベルでいくつかの問題を提示する。
【0053】
試験により、試料グラウトは実に100MRadまでの照射に対して有効なシーリング組成物および結界を形成することが示され、5〜20MRad線量範囲におけるポリ(エーテル−ブロック−アミド)熱可塑性エラストマーの特性の著しい変化および2.5MRadでの加硫クロロブチルゴムの機械的特性の実質的な損失を示す研究とくらべて遜色がない。
【0054】
毒性分析
SW−846、方法1311:毒性指標浸出法(TCLP)(本明細書で、参照により組み込まれる)により規定される、多くの汚染物質に対するUS規制レベルの順守を評価するために毒性分析を実施した。試料グラウトに対するTCLP有機物結果により、検出可能な量の規制されるVOC、SVOCまたは一般的に使用される有機塩素駆除剤は示されなかった。As、Cd、Cr、Pb、Hg、SeおよびAgに対するTCLP結果は全て、規制限度未満であり、検出可能な限界未満であった。試料グラウトはTCLP適合であった。
【0055】
本明細書で記載され、当業者に明らかであるシーリング方法および組成物に対する改変および変更はこの発明の範囲内にあると考えられる。
【国際調査報告】