(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-519929(P2021-519929A)
(43)【公表日】2021年8月12日
(54)【発明の名称】材料特性評価プロセスにおけるゼロ信号による誤差を補正する、パルス磁界を用いた磁気特性測定の方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/72 20060101AFI20210716BHJP
【FI】
G01N27/72
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-553595(P2020-553595)
(86)(22)【出願日】2019年4月1日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月1日
(86)【国際出願番号】GB2019050942
(87)【国際公開番号】WO2019193320
(87)【国際公開日】20191010
(31)【優先権主張番号】1805405.6
(32)【優先日】2018年4月2日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】503175450
【氏名又は名称】ハースト マグネティック インストルメンツ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】クレウェット, ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ダディング, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】コーネリアス, ロビン ネイサン
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA16
2G053BC02
2G053BC05
2G053CA18
2G053CB10
2G053CB11
(57)【要約】
材料特性評価プロセスにおけるゼロ信号による誤差を補正するパルス磁界を用いた磁気特性測定(PFM)の方法及び装置は、最初に、様々な変数パラメータで表される合成されたゼロ信号を構築することを含む。測定サイクルは、特性評価される材料のサンプルに対して行われ、その測定サイクルで取得されたデータが保存される。合成されたゼロ信号は、次に変数パラメータの値を調整しながら保存されたデータに適用され、保存されたデータに対して合成されたゼロ信号を最適にする値が選択される。そして、補正された材料特性データを得るために、選択された値での合成されたゼロ信号は、保存されたデータから除かれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼロ信号による誤差を補正する材料特性評価プロセスを行う方法であって、
−様々な変数パラメータで表される合成されたゼロ信号を構築することと、
−特性評価される材料のサンプルに対して測定サイクルを行い、該測定サイクルで取得されたデータを保存することと、
−前記合成されたゼロ信号を前記保存されたデータに適用し、前記変数パラメータの値を調整することと、
−前記保存されたデータに対して前記合成されたゼロ信号を最適にする前記値を選択することと、
−補正された材料特性データを得るために、前記測定サイクルで取得された前記保存されたデータから、前記選択された値での前記合成されたゼロ信号を除くことと
による方法。
【請求項2】
前記合成されたゼロ信号の前記変数パラメータが、
−周波数
−ゼロ信号のトランジェントの位置
−位相
−振幅
の1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記合成されたゼロ信号が、前記測定サイクルで得られた波形に前記合成されたゼロ信号を重ね合わせることによって、前記保存されたデータに適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記変数パラメータの値が、前記測定サイクルで得られた波形に最小の外乱を生じるように選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記材料特性評価プロセスが、パルス磁界を用いた磁気特性測定(PFM)によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ゼロ信号による誤差を補正する材料特性評価プロセスを行う装置であって、
−様々な変数パラメータで表される合成されたゼロ信号を構築する手段と、
−特性評価される材料のサンプルに対して測定サイクルを行う手段と、
−前記測定サイクルで取得されたデータを保存する手段と、
−前記合成されたゼロ信号を前記保存されたデータに適用する手段及び前記変数パラメータの値を調整する手段と、
−前記保存されたデータに対して前記合成されたゼロ信号を最適にする前記値を選択する手段と、
−補正された材料特性データを得るために、前記測定サイクルで取得された前記保存されたデータから、前記選択された値での前記合成されたゼロ信号を除く手段と
を含む装置。
【請求項7】
前記合成されたゼロ信号の前記変数パラメータが、
−周波数
−ゼロ信号のトランジェントの位置
−位相
−振幅
の1つ以上を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記合成されたゼロ信号を前記保存されたデータに適用する手段が、前記測定サイクルで得られた波形に前記合成されたゼロ信号を重ね合わせるように構成される、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記変数パラメータの値を選択する手段が、前記測定サイクルで得られた波形に最小の外乱を生じる値を選択するように構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
ゼロ信号による誤差を補正する材料特性評価プロセスを行うためのパルス磁界を用いた磁気特性測定(PFM)装置であって、
−様々な変数パラメータで表される合成されたゼロ信号を構築する手段と、
−特性評価される材料のサンプルに対して測定サイクルを行う手段と、
−前記測定サイクルで取得されたデータを保存する手段と、
−前記合成されたゼロ信号を前記保存されたデータに適用する手段及び前記変数パラメータの値を調整する手段と、
−前記保存されたデータに対して前記合成されたゼロ信号を最適にする前記値を選択する手段と、
−補正された材料特性データを得るために、前記測定サイクルで取得された前記保存されたデータから、前記選択された値での前記合成されたゼロ信号を除く手段と
を含むパルス磁界を用いた磁気特性測定(PFM)装置。
【請求項11】
前記合成されたゼロ信号の前記変数パラメータが、
−周波数
−ゼロ信号のトランジェントの位置
−位相
−振幅
の1つ以上を含む、請求項10に記載のパルス磁界を用いた磁気特性測定(PFM)装置。
【請求項12】
前記合成されたゼロ信号を前記保存されたデータに適用する手段が、前記測定サイクルで得られた波形に前記合成されたゼロ信号を重ね合わせるように構成される、請求項10に記載のパルス磁界を用いた磁気特性測定(PFM)装置。
【請求項13】
前記変数パラメータの値を選択する手段が、前記測定サイクルで得られた波形に最小の外乱を生じる値を選択するように構成される、請求項12に記載のパルス磁界を用いた磁気特性測定(PFM)装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料特性評価プロセスにおけるゼロ信号による誤差を補正するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の特性評価に関連する多くの形式の計測では、測定される特性の根底をなす、信号の「特徴的な性質」が存在し得る。この特徴的な性質は、特定の特性評価手法、又は実際には特定の機器に固有のものであり得る。材料のサンプルがない状態で機器が通常の特性評価プロセスで使用された場合でも、その特徴的な性質がやはり得られるため、その特徴的な性質はゼロ信号と呼ばれる。
【0003】
特性測定サイクルのデータからこのゼロ信号を数学的に引いて、それにより生じるより高い完全性を有する特性を得るのが一般的な方法である。ゼロ信号は、サンプリングされた信号に対して小さい場合があるが、サンプルのサイズ/量又は機器の限定により、例えば少数のサンプルや弱い測定データの場合、ゼロ信号は非常に重要になることがある。ゼロ信号は、温度やその他の物理的影響によっても変わることがある。
【0004】
そのような特性評価手法の1つは、パルス磁界を用いた磁気特性測定、すなわちPFMであり、これは典型的には、永久磁石材料の磁気的な特性評価のために使用される。特性評価手法の基礎物理に起因し、測定サンプルなしで測定を行った場合、ゼロ信号が存在する。PFMの場合、ゼロ信号は、周囲の磁気環境の電気的特性、温度、及び機械的要因に依存する。材料特性測定における通常のプロセスは、2つの測定サイクルを行うことであり、1つは材料サンプルありであり(測定)、もう1つは材料サンプルなしである(ゼロ信号)。測定データは、実際には、材料特性と未知のゼロ信号の組み合わせである。そして、ゼロ信号のサイクル測定(サンプルなし)は、測定サイクルでの測定と同じであると仮定されるが、これは常にそうであるとは限らない。磁気環境の構成要素の温度は、2つの測定サイクルで同じでない場合がある。それらの測定サイクルの間に機械的作動が起こることもある。これら及びその他の要因はすべて、ゼロ信号に大きな変化をもたらして、補正されたデータにかなりの不正確さを引き起こし得る。
【0005】
PFMの実際の適用では、機械的配置は、通常は良好な短期安定性について設計されており、磁気環境が測定サイクルと同じ温度の時に、ゼロ信号測定が試みられる。それでもなお、補正された測定の精度に影響を与える未知の誤差が、依然として存在し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
概して、既存の方法の欠点は次のようにまとめられることができる。
1)ゼロ信号を汚染するある程度の系統的ノイズが常に存在するため、ゼロ信号の測定は決して完全ではない。
2)2つの特性評価サイクルの間で、磁気環境の温度が完全に同じになることはない。
3)ゼロ信号を測定する場合、全体的な特性評価プロセスは、各特性評価について2倍の時間が掛かる。
【0007】
すべての測定サイクルに適用されるゼロ信号を保存することにより、特性評価プロセスの長さを短縮することができる。必然的に、長期的には機械的配置は「変形する」であろう。それは本当の基礎となるゼロ信号を変え、全体的な精度を低下させる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載の材料特性評価プロセスを行う方法は、ゼロ信号は測定サイクルの一部として測定されず、保存されたゼロ信号ではなく、代わりに特性評価測定でのデータから推定される手法を使用する。個別のゼロ信号サイクルを必要とすることなしに数学的に取り除かれる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下の説明及びそこで参照される添付の図面は、本発明がどのように実施され得るかを説明するために、非限定的な例として含まれている。
【
図1】材料特性評価プロセスに存在する可能性のある未知のゼロ信号をグラフで表したものである。
【
図2】必要な材料特性データをグラフで表したものである。
【
図3】測定された材料特性データをグラフで表したものであり、不要なゼロ信号が含まれている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の方法は、PFM装置などの材料特性評価装置で実施するのに適している。対象の方法は、最初に、様々な適切な変数パラメータで表される合成されたゼロ信号を構築することを含む。合成されたゼロ信号は1つの特定の特徴的な性質ではなく、可能性のある広範の特徴的な性質により合成された信号を調整するために独立して調節されることができる様々な変数で表される。
【0011】
文書で十分に裏付けられたPFMの物理学により、
a)温度変化
b)機械的作動/磁気結合の変化
c)材料の電気抵抗率の変化
による変数が、ゼロ信号にどのくらい影響を与えるかを判断できることがある。
合成されるゼロ信号関数は、理論物理学の考慮によって決定されることができるか、又は変数を変更しながら大量の既知のゼロ信号のデータを使用して経験的に構築されることができる。
【0012】
特性評価される材料のサンプルに対して測定サイクルを行うと、その結果として保存されるデータは、未知のゼロ信号を含む。実例として、
図1は、
図2に例として示される必要とされる特性測定に加えて存在する可能性のあるゼロ信号の波形を示している。したがって、
図3に示される生じる測定データには、未知のゼロ信号と必要とされるデータの両方が含まれる。
【0013】
合成されたゼロ信号での内在する特徴的な性質は、未知のゼロ信号と関係するが、正確な関係を示す変数の値は不明である。変数の値を確認するために、合成されたゼロ信号が保存された測定データに数学的に重ね合わされ、最適なものが決定されるまで変数が調整される。例として、
図1に示される不要な信号に関する重ね合わされる信号は、
図3の信号について適用された時に、その周波数、位相、及び振幅が調整され得る。値によっては、その合成された波形が不要な信号と干渉して、その波形に対して増大した外乱を生じるが、値が未知の信号の値に近づくと干渉の量が大幅に少なくなり、最適な状態を示す。上記の例では、これらの調整は、上記の未知の変数(a)〜(c)を直接決定することなしにそれらを考慮することができる。ここで、結果として生じる合成されたゼロ信号の変数パラメータを最適な値に固定し、固定されたパラメータ値で合成されたゼロ信号を、従来の方法を使用して保存された測定データから引くことができる。
【0014】
PFMの場合、最初のゼロ信号のトランジェント、全体にわたる振幅及び位相がモデル化され、調整されて、測定サイクルのデータに関して比較される。最適な合成ゼロ信号が決定され、次に測定サイクルのデータから数学的に引かれる。
【0015】
この方法の利点は次の通りである。
i)特性測定は、関連するゼロ信号測定サイクルを必要とせずになされることができる。
ii)合成されたゼロ信号は、理論モデリング又は経験的データから成る予測のいずれかにより、系統的ノイズがなくなり得る。
iii)温度変化、機械的作動/磁気結合の変化、及び材料の電気抵抗率の変化によるゼロ信号の変動はすべて調整されることができ、新しいゼロ信号サイクルの測定を必要としない。
これにより、従来の手法よりも速く材料の特性評価が可能になり、そして変動することのある条件(温度、機械的なものなど)での精度が向上する。
【0016】
上記の説明は、新しいと考えられる部分に重点を置き、認識された特定の問題に対処するが、本明細書に開示される特徴は、当分野において新しい有用な進歩を提供することができるあらゆる組み合わせで使用され得ることが意図される。
【国際調査報告】