特表2021-519942(P2021-519942A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マリーナ・ディ・ドメニコの特許一覧 ▶ マリアロザリア・ボッチェッリーノの特許一覧 ▶ アルフレード・デ・ローザの特許一覧

特表2021-519942口腔腫瘍の初期診断のためのインビトロスクリーニング法及びキット
<>
  • 特表2021519942-口腔腫瘍の初期診断のためのインビトロスクリーニング法及びキット 図000003
  • 特表2021519942-口腔腫瘍の初期診断のためのインビトロスクリーニング法及びキット 図000004
  • 特表2021519942-口腔腫瘍の初期診断のためのインビトロスクリーニング法及びキット 図000005
  • 特表2021519942-口腔腫瘍の初期診断のためのインビトロスクリーニング法及びキット 図000006
  • 特表2021519942-口腔腫瘍の初期診断のためのインビトロスクリーニング法及びキット 図000007
  • 特表2021519942-口腔腫瘍の初期診断のためのインビトロスクリーニング法及びキット 図000008
  • 特表2021519942-口腔腫瘍の初期診断のためのインビトロスクリーニング法及びキット 図000009
  • 特表2021519942-口腔腫瘍の初期診断のためのインビトロスクリーニング法及びキット 図000010
  • 特表2021519942-口腔腫瘍の初期診断のためのインビトロスクリーニング法及びキット 図000011
  • 特表2021519942-口腔腫瘍の初期診断のためのインビトロスクリーニング法及びキット 図000012
  • 特表2021519942-口腔腫瘍の初期診断のためのインビトロスクリーニング法及びキット 図000013
  • 特表2021519942-口腔腫瘍の初期診断のためのインビトロスクリーニング法及びキット 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-519942(P2021-519942A)
(43)【公表日】2021年8月12日
(54)【発明の名称】口腔腫瘍の初期診断のためのインビトロスクリーニング法及びキット
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20210716BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20210716BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20210716BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20210716BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20210716BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20210716BHJP
【FI】
   G01N33/574 A
   G01N33/50 Z
   G01N33/15 Z
   C12M1/34 F
   C12M1/26
   C12Q1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2021-501125(P2021-501125)
(86)(22)【出願日】2019年4月1日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月11日
(86)【国際出願番号】IB2019052662
(87)【国際公開番号】WO2019186521
(87)【国際公開日】20191003
(31)【優先権主張番号】102018000004137
(32)【優先日】2018年3月30日
(33)【優先権主張国】IT
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520378311
【氏名又は名称】マリーナ・ディ・ドメニコ
(71)【出願人】
【識別番号】520378322
【氏名又は名称】マリアロザリア・ボッチェッリーノ
(71)【出願人】
【識別番号】520378333
【氏名又は名称】アルフレード・デ・ローザ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マリーナ・ディ・ドメニコ
(72)【発明者】
【氏名】マリアロザリア・ボッチェッリーノ
(72)【発明者】
【氏名】アルフレード・デ・ローザ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CB02
2G045DA36
2G045FB03
2G045FB11
4B029AA07
4B029AA09
4B029BB15
4B029BB17
4B029FA12
4B029HA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS33
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は口腔の腫瘍の初期診断の分野に入る。特に、本発明は、口腔の腫瘍の発症の診断のための及び/又は口腔の腫瘍を発症するリスクを予測するための方法であって、免疫学的アッセイ、例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)を使用して口腔の腫瘍のある特定のマーカーの細胞抽出物での検出を含む方法に関する。本発明は、口腔の腫瘍の発症の診断のための及び/又は口腔の腫瘍を発症するリスクを予測するための比較キットにも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において口腔の腫瘍を発症するリスクを予測するための及び/又は口腔の腫瘍の診断のための及び/又は口腔の腫瘍の予後のための及び/又は口腔の腫瘍の進行をモニターするための及び/又は口腔の腫瘍の治療的処置のスクリーニングのためのインビトロ方法であって、以下の工程:
a)対象から、好ましくは、対象の口腔から入手した生体試料において少なくともアンドロゲン受容体(AR)及びエストロゲン受容体(ER)を検出する及び/又は定量化する工程;並びに
b)対照試料に対して比較する工程
を含む方法。
【請求項2】
工程a)において、上皮成長因子受容体(EGF-R)が更に検出され及び/又は定量化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
AR及び/若しくはER、及び任意選択的にEGF-Rの存在、並びに/又は対照試料中の量に対してAR及び/若しくはER、及び任意選択的にEGF-Rのより大きな量が、対象が口腔の腫瘍を発症するリスクがある又はこれを患っていることを示す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)が:
AR及びER及び任意選択的にEGF-Rが抗体に結合し、AR及び/又はER及び/又はEGF-Rが存在する場合には抗体-抗原複合体を形成するような条件下で、前記生体試料を少なくとも抗AR抗体及び抗ER抗体及び任意選択的に抗EGF-R抗体に接触させる及びこれらと一緒にインキュベートさせる工程;並びに
好ましくは、前記抗体の検出及び/又は定量化手段を使用して、抗体に結合しているAR及び/又はER及び/又はEGF-Rを検出する及び/又は定量化する工程
を含む、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
AR及び/若しくはER及び任意選択的にEGF-Rの並びに/又は抗AR抗体及び/若しくは抗ER抗体及び任意選択的に抗EGF-R抗体の存在が検出されている及び/又は定量化されている対象が、続いて、口腔の腫瘍の更なる診断方法に晒される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記生体試料が、口腔の炎症を起こした領域に由来する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記生体試料が細胞性であり、好ましくは細胞溶解に晒されており、又は組織試料又は液体、例えば、唾液、血液若しくは血清である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
口腔の前記腫瘍が、口腔粘膜の腫瘍、舌腫瘍、咽頭腫瘍、喉頭腫瘍、口蓋腫瘍、腺上皮の腫瘍、扁平上皮癌(SSC)、口の表皮癌、喉頭癌、舌の癌腫及び唇の癌腫からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
AR及びER及び任意選択的にEGF-Rの検出及び/又は定量化手段;
任意選択的に対照手段
を含むキット。
【請求項10】
(a)少なくとも抗AR抗体及び抗ER抗体;
(b)少なくともAR-抗体複合体及びER-抗体複合体の検出及び/又は定量化手段
を含む、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
抗EGF-R抗体並びにEGF-R-抗体複合体の検出及び/又は定量化手段を更に含む、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
抗AR抗体、抗ER抗体及び任意選択的に抗EGF-R抗体が固体支持体に固定されている、請求項10又は11に記載のキット。
【請求項13】
2つの末端のある装置を含み、第1の末端が抗AR抗体、抗ER抗体及び任意選択的に抗EGF-R抗体を含み、第2の末端が、対象から生体試料を引き寄せるためのブラシを含み、好ましくは、第1の末端が正の対照及び/又は負の対照を更に含む、請求項9から12のいずれか一項に記載のキット。
【請求項14】
少なくともバッファー溶液及び/又は溶解液及び/又は検出システムを含む、請求項9から13のいずれか一項に記載のキット。
【請求項15】
前記バッファー溶液及び/又は溶解液及び/又は検出システムが、異なるウェルに提供され、好ましくは、単一の箱に置かれる、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を実施するための、請求項9から15のいずれか一項に記載のキットの使用。
【請求項17】
以下の工程:
前記生体試料を溶解液に浸漬して、AR及び/又はER及び/又はEGF-Rが、試料中に存在する場合には放出される第1の溶液を得る;
前記抗AR及び抗ER抗体及び任意選択的に抗EGF-Rを前記第1の溶液に浸漬し、第1の抗体-抗原複合体を得る;
前記第1の抗体-抗原複合体を、酵素的検出器システムを備えた二次抗体を含む第2の溶液に浸漬し、第2の抗体-抗原複合体を得る;
前記第2の抗体-抗原複合体を、二次抗体の検出用の基質を含む第3の溶液に浸漬する;
対照試料に対してAR及び/又はER及び/又はEGF-Rを検出する及び/又は定量化すること
を含む、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法において使用するための、請求項9から17のいずれか一項に記載のキット。
【請求項19】
2つの末端を含む装置であって、第1の末端が、抗AR抗体、抗ER抗体及び任意選択的に抗EGF-R抗体を含み、第2の末端が、対象から生体試料を引き寄せるためのブラシを含み、好ましくは、第1の末端が、正の対照及び/又は負の対照を更に含む、装置。
【請求項20】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を実施するための、請求項19に記載の装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口腔の腫瘍の初期診断の分野に入る。特に、本発明は、口腔の腫瘍の発症の診断のための及び/又は口腔の腫瘍を発症するリスクを予測するための方法であって、免疫学的アッセイ、例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)を使用して口腔の腫瘍のある特定のマーカーの細胞抽出物での検出を含む方法に関する。本発明は、口腔の腫瘍の発症の診断のための及び/又は口腔の腫瘍を発症するリスクを予測するための比較キットにも関する。
【背景技術】
【0002】
口腔の癌腫は、世界中で10の最も一般的な腫瘍の形態の1つであり、事実、毎年500,000人を超える新たな患者が診断されている。頭頸区域の腫瘍徴候の中で、種々の組織が、口腔:口部、舌、咽頭、喉頭及び口蓋粘膜並びに腺上皮の悪性腫瘍により冒されうる。口腔の癌腫の80%が扁平上皮癌(SSC)であり、この癌は、今のところ特定のマーカーがないために、診断遅延のせいで予後から5年で高い死亡率を示す。現在、口腔の腫瘍を予防するための化学的に信頼できる非侵襲的スクリーニング法は存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Kristina Subikら、Breast Cancer(Auckl)。2010年; 4: 35〜41頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、組織学的試料採取及び解剖病理学的確証に基づいて、病態を発症するリスクのある対象が確認され確実な診断を受けられる、口腔の腫瘍の初期診断のための方法を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目標は、前駆症状段階での新生物形態を確認する初期診断のスクリーニングに有用な、画期的で、迅速で、経済的で、感度が良い、非侵襲性キットを提供することである。特に、筆者らは、口腔の癌腫の特定のマーカー、すなわち、上皮成長因子受容体(EGFR)並びにステロイド受容体であるアンドロゲン受容体(AR)及びエストロゲン受容体(ER)、すなわち、本発明のキットが、特にELISAアッセイを用いて、評価可能であるタンパク質の発現に焦点を合わせた。
【0006】
本発明の文脈では、EGFR配列は好ましくは、NCBIデータベースにおいて受託番号NM_005228.3で入手可能である配列又はコードされたタンパク質配列に一致する。
【0007】
本発明の文脈では、AR配列は好ましくは、NCBIデータベースにおいて受託番号NM_000044.4で入手可能である配列又はコードされたタンパク質配列に一致する。
【0008】
本発明の文脈では、ER配列は好ましくは、NCBIデータベースにおいて受託番号XP_495993若しくはNP_001428.1で入手可能である配列又はコードヌクレオチド配列に一致する。
【0009】
したがって、本発明は、第三次予防を目指して、口腔の腫瘍の初期診断を支援するのに有用である、前がん病変のありうる存在についてスクリーニングするための非侵襲的診断補助物を提供する。本発明の方法及びキットは、事実、特に、細胞形質転換の前触れとなりうる炎症状態のある対象に向けられる。
【0010】
本発明は、免疫学的アッセイに基づく装置の分野に入り、好ましくは、本発明はELISAを介した細胞抽出物に関するタンパク質分析に基づいている。
【0011】
本発明は、市販もされている半加工製品の組み立てを通じて築かれる画期的製品の実現に更に関する。製品は、潜在的に危険な細胞、及び専門家(歯科医)がその細胞を分析しバイオマーカーの存在を確認して、試験の結果それ自体を解釈できるようにするのに必要なあらゆるものを試料採取するのに有用な器具を含む。製品の使用方法は極めて簡単である。
【0012】
したがって、対象において口腔の腫瘍を発症するリスクを予測するための及び/又は口腔の腫瘍の診断のための及び/又は口腔の腫瘍の予後のための及び/又は口腔の腫瘍の進行をモニターするための及び/又は口腔の腫瘍の治療的処置のスクリーニングのためのインビトロ方法であって、以下の工程:
a)対象から、好ましくは、対象の口腔から入手した生体試料において少なくともアンドロゲン受容体(AR)及びエストロゲン受容体(ER)を検出する及び/又は定量化する工程;並びに
b)対照試料に対して比較する工程
を含む方法が本発明の目的である。
【0013】
好ましくは、対象から入手される試料は対象の口腔から、更に好ましくは、口部、舌、咽頭、喉頭及び口蓋粘膜並びに腺上皮から入手される。好ましくは、対象から入手される試料は舌から入手される。
【0014】
好ましい実施形態では、工程a)において、上皮成長因子受容体(EGF-R)は更に検出され及び/又は定量化される。
【0015】
好ましくは、AR及び/若しくはER及び/若しくはEGF-Rの存在、並びに/又は対照試料中の量に対してAR及び/若しくはER及び/若しくはEGF-Rのより大きな量は、対象が口腔の腫瘍を発症するリスクがある又はこれを患っていることを示す。
【0016】
好ましくは、工程a)は:
- AR及び/又はER及び/又はEGF-Rが抗体に結合し、AR及び/又はER及び/又はEGF-Rが存在する場合には抗体-抗原複合体を形成するような条件下で、前記生体試料を少なくとも抗AR抗体及び/又は抗ER抗体及び/又は抗EGF-R抗体に接触させる及び/又はこれらと一緒にインキュベートさせる工程;並びに
- 好ましくは、前記抗体の検出及び/又は定量化手段を使用して、抗体に結合しているAR及び/又はER及び/又はEGF-Rを検出する及び/又は定量化する工程を含む。
【0017】
更に好ましい実施形態では、AR及び/若しくはER及び/若しくはEGF-Rの並びに/又は上で定義される比較抗体の存在が検出されている及び/又は定量化されている対象は、続いて、例えば、組織学的試料採取及び解剖病理学的確証等の、口腔の腫瘍の更なる診断方法に晒される。現在使用されているそのような診断方法は、高価で侵襲的である。したがって、本発明に従った方法は、潜在的にリスクのある対象の効果的で迅速で非侵襲的である第1のスクリーニングの実施を可能にする。
【0018】
好ましくは、前記生体試料は、口腔の炎症を起こした領域に由来する。その上、好ましくは、前記生体試料は細胞性であり、好ましくは細胞溶解に晒されており、又は組織試料又は液体、例えば、唾液、血液若しくは血清である。
【0019】
好ましくは、口腔の前記腫瘍は、口腔粘膜の腫瘍、舌腫瘍、咽頭腫瘍、喉頭腫瘍、口蓋腫瘍、腺上皮の腫瘍、扁平上皮癌(SSC)、口の表皮癌、喉頭癌、舌の癌腫及び唇の癌腫からなる群から選択される。
【0020】
- AR及びER及び任意選択的にEGF-Rの検出及び/又は定量化手段;
- 任意選択的に対照手段
を含むキットは、本発明の更なる目的である。
【0021】
好ましい実施形態では、キットは
(a)少なくとも抗AR抗体及び抗ER抗体;
(b)少なくともAR-抗体複合体及びER-抗体複合体の検出及び/又は定量化手段
を含む。
【0022】
キットは好ましくは、任意選択的に対照手段を含む。
【0023】
好ましくは、キットは、抗EGF-R抗体並びにEGF-R-抗体複合体の検出及び/又は定量化手段を更に含む。
【0024】
好ましくは、本発明に従ったキットでは、抗AR抗体及び/又は抗ER抗体及び/又は抗EGF-R抗体は固体支持体に固定されている。
【0025】
好ましくは、前記固体支持体は、プラスチックストリップ、好ましくは、PVDF(フッ化ポリビニリデン)である。
【0026】
特に好ましい実施形態では、キットは2つの末端のある装置を含み、第1の末端は抗AR抗体及び/又は抗ER抗体及び/又は抗EGF-R抗体を含み、第2の末端は、対象から生体試料を引き寄せるためのブラシを含む。好ましくは、第1の末端は正の対照及び/又は負の対照を更に含む。
【0027】
更に好ましい実施形態では、キットは少なくともバッファー溶液及び/又は溶解液及び/又は検出システムを含む。好ましくは、前記検出システムは、酵素的検出器システムを備えた二次抗体及び/又は、例えば、比色反応による二次抗体の検出用の基質を含む又はからなる。
【0028】
好ましくは、前記バッファー溶液及び/又は溶解液及び/又は検出システムは、異なるウェルに提供され、好ましくは、単一の箱に置かれる。
【0029】
本発明は、上記の方法を実施するための上記のキットの使用を更に提供する。
【0030】
好ましい実施形態では、前記使用は以下の工程:
- 前記生体試料を溶解液に浸漬して、AR及び/又はER及び/又はEGF-Rが、試料中に存在する場合には放出される第1の溶液を得る;
- 前記抗AR及び/又は抗ER抗体及び任意選択的に抗EGF-Rを前記第1の溶液に浸漬し、第1の抗体-抗原複合体を得ることを含む;
- 前記第1の抗体-抗原複合体を、酵素的検出器システムを備えた二次抗体を含む第2の溶液に浸漬し、第2の抗体-抗原複合体を得る;
- 前記第2の抗体-抗原複合体を、二次抗体の検出用の基質を含む第3の溶液に浸漬する;
- 対照試料に対してAR及び/又はER及び/又はEGF-Rを検出する及び/又は定量化すること
を含む。
【0031】
本発明の更なる目的は、上記の方法において使用するための、上記のキットである。
【0032】
2つの末端を含み、第1の末端は、抗AR抗体及び/又は抗ER抗体及び任意選択的に抗EGF-R抗体を含み、第2の末端は、対象から生体試料を引き寄せるためのブラシを含む装置は、本発明の更なる目的である。好ましくは、第1の末端は、正の対照及び/又は負の対照を更に含む。好ましくは、第1の末端は好ましくは、上で定義される抗体を負荷されたPVDFストリップを含む。
【0033】
本発明は、上記の方法を実施するための上記の装置の使用を更に提供する。
【0034】
本発明の文脈では、マーカー「AR」、「EF」、「EGF-R」は、断片、誘導体、変異体、アイソフォーム、等を含む、それぞれの遺伝子、mRNA、cDNA又はそれらにコードされるタンパク質を含む。好ましくは、前記マーカーは、上に定義されるNCBI受託番号により特徴付けられる。
【0035】
本発明では、語句「タンパク質」とは好ましくは、アンドロゲン受容体、エストロゲン受容体及び/又は上皮成長因子受容体、好ましくは、ヒトのアンドロゲン受容体、エストロゲン受容体及び/又は上皮成長因子受容体のことであり、語句「抗体」とは好ましくは、比較抗AR(例えば、Ab N-20 sc 816; Santa Cruz Biotechnologies Inc.社)、抗ER(例えば、抗ERα抗体sc 543; Santa Cruz Biotechnologies Inc.社)及び/又は抗EGFR(例えば、抗体sc-03-G、Santa Cruz Biotechnologies Inc.社)抗体のことである。
【0036】
語句「タンパク質」は、対応するオルソロガス又は相同遺伝子によりコードされる対応するタンパク質、その機能的突然変異体、機能的誘導体、機能的又は類似断片、アイソフォームも含むと理解されている。
【0037】
本発明の文脈では、用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、
i.全タンパク質、その対立遺伝子変異体及びオルソログ;
ii.任意の合成、組換え又はタンパク質分解性機能的断片;
iii.例えば、合成又は組換え機能的類似物等の任意の機能的等価物
を含む。
【0038】
本発明では、語句「発症するリスクを予測するための方法」、「診断のための方法」、「スクリーニングの方法」及び/又は「スクリーニング」は好ましくは、潜在的に口腔の腫瘍に冒される又はこれを発症するリスクのある対象のスクリーニングを含む。
【0039】
本発明では、「対照試料」及び/又は「対照手段」は、健康な対象から又は別の障害に冒された患者から又は治療的処置に先立って口腔の腫瘍に冒された患者、治療的処置中に口腔の腫瘍に冒された患者、疾患の経過中の異なる時間に口腔の腫瘍に冒された患者から単離された試料が可能である。対照手段を使用すれば、上で定義されたマーカーの存在を適切な対照に対して比較することができる。対照は、例えば、既知の標準を参照して、正常な対象と正常な集団の両方から得ることができる。
【0040】
特に、本発明では、語句「正の対照」とは好ましくは、上で定義されるタンパク質及び/若しくは前記タンパク質をコードする核酸を含有する試料、並びに/又は前記核酸により転写されるメッセンジャーRNA若しくは抗アクチン抗体のことであり、一方、語句「負の対照」とは、例えば、異なる腫瘍由来の細胞等の、上で定義されるタンパク質及び/若しくは前記タンパク質をコードする核酸を含有しない試料のことである。
【0041】
口腔の腫瘍の進行をモニターするための方法の場合には、対照試料は、治療の開始前の種々の時点での、治療の経過中の種々の時点での、等の同じ対象から単離された試料となり得ると考えられる。
【0042】
口腔の腫瘍の治療的処置のためのスクリーニングの方法の場合には、対照試料は、処置を受けていない対象から又はアッセイされる物質で処置された対象から又は参照処置で処置された対象から引き寄せられた試料が可能である。この場合、単離された生体試料中の上で定義されたマーカーの量が対照値未満である又はこれに等しい場合には、試験された物質は腫瘍を処置するのに効果的である可能性がある。
【0043】
本発明に従った方法では、単離された生体試料中の上で定義されたマーカーの量が対照値よりも高い場合、それは対象の予後が好ましくないことを示しうる。
【0044】
ここで使用される場合、用語「対象」は、任意のヒト又は非ヒト、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類、等等の哺乳動物及び非哺乳動物を含む。
【0045】
本発明の文脈では、検出手段又は検出システムは好ましくは、上で定義されるマーカーを検出する及び/又はその量を測定することができる手段を含む。タンパク質が検出される場合、検出手段は、例えば、タンパク質、その機能的類似物又は誘導体に特異的である少なくとも1つの抗体である。抗原-抗体複合体が検出されることになる場合、検出手段は、例えば、酵素にコンジュゲートされた二次抗体、発光基質、捕獲抗体で被覆された磁気ビーズ、個別化された凍結乾燥抗体カクテル並びに/又は次元濾過カートリッジ付きの及び/若しくは特異的抗体フィルター(SAF)と組み合わされたカラムである。好ましくは、前記二次抗体は酵素的検出器システムを備えており、前記検出システムは、例えば、比色反応による二次抗体の検出用の基質を更に含む。
【0046】
本発明に従ったキットは、バッファー、担体、色素、等等の通常の補助成分、及び/又は使用説明書を更に含むことができる。好ましくは、前記キットは、抗体を固定する固体支持体を更に含む。好ましくは、本発明のキットは好ましくは、免疫学的アッセイ用のキット、更に好ましくはELISAキットである。
【0047】
キットは、マーカーの量の増加を適切な対照値と比較するための対照手段を更に含むことができる。対照値は、例えば、既知の標準を参照して、正常な対象と正常な集団の両方から得ることができる。
【0048】
本発明では、タンパク質又は核酸(DNA又はRNA)又はそれぞれの抗体に関して語句「検出する」又は「検出」とは、例えば、試料中のタンパク質の存在を示すシグナル又は試料中の前記標的タンパク質の絶対量若しくは相対量を、例えば、化学発光、蛍光定量、分光光度法、等により観察する、評価する又は定量化する任意の方法のことである。方法は、タンパク質又は核酸標識法と組み合わせれば、シグナル、例えば、免疫組織化学染色、ELISA、細胞浮遊、細胞診、蛍光、放射能、比色分析、重量測定、X線回折又は吸着、磁気、酵素活性及び同類の物を提供することができる。本発明では、核酸により転写されるメッセンジャーRNA又は上で定義される比較タンパク質若しくは抗体の存在の検出は、例えば、ノーザンブロッティング又は適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用する定量的若しくは半定量的RT-PCR法等の、当業者には公知である任意の技法によって実施することができる。
【0049】
上で定義されるマーカーの検出及び/又は定量化は、マーカーの量の測定に又はマーカーの量の変化の測定に、更に具体的には、マーカーの量の増加若しくは減少に対応することができる。増加の検出は障害の悪化に相関でき、減少は障害の改善又は対象の回復に相関できる。
【0050】
好ましい実施形態では、方法は、少なくとも1つの更なるマーカーを検出する及び/又は定量化し、適切な対照試料と比較する工程を更に含む。
【0051】
本発明では、語句「定量化する」又は「定量化」は、前記受容体の又はそれぞれの抗体の量又は濃度の、好ましくは半定量的な又は定量的な測定と理解することができる。用語「量」とは、記述において使用される場合、タンパク質又は抗体の絶対量又は相対量、及びタンパク質若しくは抗体に関連する又はそれに由来することができる他の任意の値又はパラメータのことであるがこれらに限定されない。そのような値又はパラメータは、タンパク質又は抗体の物理的又は化学的特性から得られる、直接測定により得られるシグナルの強度値、例えば、免疫アッセイ、質量分析又は核磁気共鳴における強度値を含む。更に、これらの値又はパラメータは間接測定により得られる値又はパラメータを含む。
【0052】
上で定義される抗体は、ヒト及び動物モノクローナル抗体又はその断片、一本鎖抗体並びにその断片及びミニ抗体、二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、又はそのダイマー、オリゴマー若しくはマルチマーを含む。好ましくは、抗体は、無傷の免疫グロブリン(又は抗体)、Fv、scFv(一本鎖Fv断片)、Fab、F(ab')2、抗体型ドメイン、抗体模倣ドメイン、単一抗体ドメイン、多量体抗体、エピトープ結合領域を含有するペプチド又はタンパク質分解性断片からなる群から選択される。本発明では、用語「抗体」はその最も広い意味で使用され、抗原に対して所望の結合活性を示すという条件で、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト抗体、ヒト化抗体、非免疫化抗体、キメラ抗体、ナノボディ、抗体誘導体、抗体断片、アンチカリン、DARPin、『アフィボディ』、『アフィリン』、アフィマー、アフィチン、『アルファボディ』、アビマー(avimers)、フィノマー(finomers)、ミニボディ及び他の結合ドメインを含むがこれらに限定されない種々の抗体及び抗体模倣構造体を含む。
【0053】
本発明は、以下の図を参照しながら非限定的実施例を通して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】成分:ブラシ(a側)及びプラスチック支持体上のPVDFストリップ(b側)を備えた装置並びに検出箱。
図2】成分:ブラシ(a側)及び一次抗体を装備したプラスチック支持体上のPVDFストリップ(b側)を備えた装置並びに2人の患者に有用であるバッファー、溶解及び検出システムを備えた20ウェルを有する検出箱。
図3】装置の操作模式図:(a)口腔粘膜からブラシで細胞を引き寄せる;(b)ブラシを第1のウェルに浸漬する。
図4】装置の使用の模式図:(a)ブラシの抽出;(b)PVDFストリップの抽出。
図5】第1のウェルにPVDFストリップを浸漬し、続いて4回の洗浄の模式図。
図6】二次抗体との反応のためにウェル6に、洗浄のためにウェル7、8及び9に、並びに基質を用いた検出のためにウェル10にストリップを浸漬する模式図。
図7】結果に対する比色表現。
図8】ストリップを調製する工程。
図9】(a)及び(b)ストリップ形成模式図並びに(c)それに続く展開。
図10】KB及びHEP-2細胞におけるEGFRについてのウェスタンブロット。
図11】KB及びHEP-2細胞におけるARについてのウェスタンブロット。
図12】KB及びHEP-2細胞におけるERについてのウェスタンブロット。
【発明を実施するための形態】
【0055】
材料及び方法
PVDFストリップを調製するためのプロトコル
目的の一次抗体を装備したPVDFストリップを調製するための工程は以下の通りである:
1)メタノールを用いての5分間のPVDFストリップ(ThermoFisher Scientific社カタログ番号LC2002)の水和(図8、パネルA)。
2)水を用いての5分間の洗浄(図8、パネルB)。
3)PBSを用いての5分間の2回の洗浄(図8、パネルB)。
4)PBS中1時間の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来のタンパク質A-ビオチン(Sigma-Aldrich社、10μg/mL)と一緒のインキュベーション。
5)PBSを用いた2回の洗浄(図8、パネルB)。
6)PBS中3% BSA溶液を用いての1時間のブロッキング(図8、パネルB)。
7)PBSを用いての5分間の3回の洗浄(図8、パネルB)。
8)BioRad多重チャンネル装置上にPVDFを乗せる(図8、パネルC、D、E)。
9)攪拌したままでのチャンネルあたり約400μLのウサギ抗体(抗AR抗体: Ab N-20 sc 816; Santa Cruz Biotechnologies Inc.社、Santa Cruz、CA;抗ERα抗体sc 543; Santa Cruz Biotechnologies Inc.社、Santa Cruz、CA;及び抗EGFR抗体sc-03-G、Santa Cruz Biotechnologies Inc.社、Santa Cruz、CA)の溶液と一緒のインキュベーション(図8、パネルF)。
10)すべてのチャンネルでのPBSを用いての5分間の3回の洗浄(図8、パネルF)。
11)PBS TEA 0.2Mを用いたフィルターの2回の洗浄(図8、パネルF)。
12)TEA HCl 0.2M pH8.2中DMP 25mMと一緒のインキュベーション(図8、パネルF、G、H)。
13)TEA 0.2M+20mMエタノールアミンと一緒のインキュベーション(図8、パネルF、G、H)。
14)PBSを用いての5分間の2回の洗浄(図8、パネルF、G、H)。
15)PBS中0.02 NaN3での貯蔵(図8、パネルF、G、H)。
16)一次抗EGFR、抗AR及び抗ER抗体が負荷された(収集された細胞診試料から放出された比較抗原の捕獲のために)チャンネルに垂直にフィルターを切断して(図9a)、装置の支持体の上に乗せられる幅約0.4cmのストリップを得る(図9b)。次に、ストリップは、試験された細胞診試料中に存在する特定の抗原を明らかにするためにELISA法で処置される(図9c)。
【0056】
口腔の粘膜由来の細胞株は上皮成長因子受容体(EGFR)を発現し、したがって、ホルモン受容体の発現の陽性に基づくスクリーニングの負の対照としては適切ではない。
【0057】
負荷された負の対照(CTR-)は、乳がんに由来する腫瘍細胞のクローン(MDA-MB-453、ATCC HTB-131)に由来し、その特定の特徴は下に収載されている:
i)クローン、MDA-MB-453は、上皮腫瘍起源であるにもかかわらず、上皮成長因子受容体(EGF-R)を発現しない;
ii)クローン、MDA-MB-453は、乳房腫瘍細胞起源であるにもかかわらず、アンドロゲン受容体(AR)及びエストロゲン受容体(ER)を発現しない(Kristina Subikら、Breast Cancer(Auckl)。2010年; 4: 35〜41頁)。
【0058】
正の対照(CTR+)は抗アクチン抗体(Sigma-Aldrich社、A2066)である。
【0059】
口腔の細胞におけるPVDFストリップのELISAプロトコル
口の表皮癌由来のKB細胞(ATCC CCL-17)及び喉頭癌由来のHEP-2細胞(ATCC CCL-23)は、溶解バッファー中で溶解され、抽出されたタンパク質はSDS-PAGEにより分離される。電気泳動ランの終了時、タンパク質は室温で2時間PVDFフィルター上に移される。その後、フィルターは、非特異的部位をブロックするためTween-20 pH7.2(PBSTバッファー、PBS Sigma-Aldrich社P5368及び0.02% Tween-20 Sigma-Aldrich社P1379)及び3%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBSバッファー中2時間洗浄する。続いて、フィルターは、少なくとも2時間、特定の抗AR、抗ER及び抗EGFR一次抗体(抗AR抗体: Ab N-20 sc 816; Santa Cruz Biotechnologies Inc.社、Santa Cruz、CA;抗ERα抗体sc 543; Santa Cruz Biotechnologies Inc.社、Santa Cruz、CA;及び抗EGFR抗体sc-03-G、Santa Cruz Biotechnologies Inc.社、Santa Cruz、CA)と一緒にインキュベートする。最後に、PBSTバッファーを用いての3回の10分洗浄後、フィルターは特定の二次抗体と一緒にインキュベートし、シグナルは、化学発光放出キット(ECL、Amersham Pharmacia Inc.社)によって検出する。半定量的濃度測定分析はScan LKB(Amersham Pharmacia Inc.社)によって実行した。
【0060】
装置の説明
分析計測手段及びその構成
1)2つの機能的末端を持つプラスチックペン様の装置、1つの末端にはブラシ及び黄色のキャップが備わっていて(A側)、もう一方の末端には目的の一次抗体が装備されたPVDFストリップ(イモビロン)用の支持体が備わっていて、透明なキャップ付きである(B側);図1及び図2;
2)バッファー並びに溶解及び検出システムを含有するLEDアルミニウムストリップで締め切られた列をなす10ウェルに組織化された箱;図1及び図2
【0061】
使用様式
歯科医は、潜在的にがん性の病変の存在下で、キット中にある特定の収集器具を使用して細胞の試料を引き寄せ、以下の通りに進むことができる:
1)細胞診試料の収集:黄色のキャップが備わった装置の末端(A側)にある特別なブラシを用いて口腔から疑わしい粘膜上の細胞を引き寄せる;図3a
2)溶解バッファーを含有する第1のウェルにブラシを15分間浸漬し、これによりタンパク質、すなわち、口腔の細胞の抽出物中に存在する目的の抗原、EGFR、AR及びERの溶液中での放出が可能になる;図3b
3)装置のA側のキャップは再び閉じる;図4
4)装置のB側のキャップは開かれる;図4b
5)PVDFストリップを持つ支持体の末端(B側)を第1のウェルに5分間浸漬し、免疫複合体(抗AR抗体: Ab N-20 sc 816; Santa Cruz Biotechnologies Inc.社、Santa Cruz、CA;抗ERα抗体sc 543; Santa Cruz Biotechnologies Inc.社、Santa Cruz、CA;及び抗EGFR抗体sc-03-G、Santa Cruz Biotechnologies Inc.社、Santa Cruz、CA)を形成するために、タンパク質(抗原)とPVDFストリップに付着している一次抗体の相互作用を可能にする;図5
6)PBSTバッファーを含有するウェルにおいてPVDFストリップを持つ支持体を洗浄して(3回)、免疫複合体に非特異的に付着しているタンパク質を取り除く;図5
7)酵素的検出器システム(アルカリホスファターゼ、Sigma-Aldrich社A2306)を備えた二次抗体を含有するウェルにPVDFストリップを持つ支持体を10分間浸漬する;図6
8)PBSTバッファーを含有するウェルにおいてPVDFストリップを持つ支持体を洗浄して(2回)、過剰な二次抗体を取り除く;図6
9)比色反応に必要な基質(BCIP/NBT、ROCHE社11681451001)を含有するウェルにPVDFストリップを持つ支持体を浸漬する;図6
10)PBSTバッファーを含有するウェルにおいてストリップを洗浄して(2回)、過剰を取り除く;図6
11)比色反応は目的のタンパク質が存在する場合には記録される;図7
【0062】
結果
提案されている本発明は、上皮腫瘍におけるEGFとエストラジオール(ER)とアンドロゲン(AR)受容体の間の相互応答に関して筆者が実行した科学的研究の成果である。そのような研究は、新生物病態の初期診断に有用である器具の組織立てに欠くことができない橋渡し的必須条件である。そのような使用は結果に健全性を見出し、その結果は、ステロイド受容体の複合体(AR/ER/Src)がEGFの作用に必要であることを実証している(1.2)。筆者の科学論文で報告されたELISA技法の使用により装置の検出器システムが実現可能となった。
【0063】
考えられた器具の確認のために選択される実験室で使用される細胞抽出物は、口の表皮癌由来のKB細胞から及び喉頭癌由来の細胞であるHEP-2から生じる。図9cは、装置のPVDFストリップ上での目的のタンパク質(EGFR、AR及びER)の同時発現に関する結果を示している。装置を用いて得た結果の確証として、細胞抽出物は個々の受容体についてウェスタンブロット分析を受け、結果は図10図11図12に示されている。図10では、KB及びHEP-2細胞でのEGFR受容体に関連するバンドは明らかであり;試料は3通りに負荷させ、受容体は2つの細胞型では特に明白であるが、MDA-MB-453細胞により表される負の対照ではバンドははっきり見えない(Kristina Subikら、Breast Cancer(Auckl)。2010年; 4: 35〜41頁)。図11では、同じ細胞中にAR受容体の存在が見え(試料は2通りに負荷された)、この場合も同様に、バンドは口腔の細胞(KB及びHEP-2)にだけ明らかであり、負の対照(MDA-MB-453)では見えない。最後に、図12はER受容体を示しており(試料は2通りに負荷された)、この場合も同様に、受容体は口腔の細胞(KB及びHEP-2)にだけ明らかされ、負の対照(MDA-MB-453)では見えなかった。
【0064】
提案された試験は、予測性の著しく高い指標を保証している。なぜならば、これら3つの受容体の同時発現は、良性から悪性への細胞表現型の変化と相関しているからである。
【0065】
(参考文献)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】