(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
眼科的状態の治療および/または予防における使用のための、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、リボグリタゾン、バラグリタゾンまたはミトグリタゾンではないチアゾリジンジオンまたはローダニン化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体。
眼科的状態の治療および/または予防における使用のための、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、リボグリタゾン、バラグリタゾンまたはミトグリタゾンではないチアゾリジンジオンまたはローダニン化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体。
眼科的状態の治療および/または予防における使用のための、分子の両端に、チアゾリジンジオンまたはローダニン基である第1末端基および(i)環中に1個以上の窒素ヘテロ原子を含む5-〜10-員の部分的に不飽和のヘテロシクリル基、または(ii)環中に1個以上の窒素ヘテロ原子を含む5-〜10-員のヘテロアリールではない第2末端基を含むチアゾリジンジオンまたはローダニン化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体。
ネトグリタゾン、シグリタゾン、エングリタゾン、ダルグリタゾンもしくはトログリタゾン、またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
ネトグリタゾン、またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体である、請求項10に記載の使用のための化合物。
タンパク質および/またはペプチドのオリゴマー、原線維、凝集体および/またはプラークの形成、沈着、蓄積、または持続の治療、予防または阻害における使用のための、請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
アミロイドβオリゴマー、原線維、凝集体および/またはプラークの形成、沈着、蓄積、または持続の治療、予防または阻害における使用のための、請求項14に記載の使用のための化合物。
眼科的状態が黄斑変性症、マクラパッカー(macular pucker)、緑内障、網膜色素変性症、脈絡膜血管新生、網膜変性、酸素誘発網膜症、増殖性硝子体網膜症、ブドウ膜炎、未熟児網膜症、後水晶体繊維増殖症、網膜分離症、格子様変性、網膜剥離および/または網膜神経節細胞の変性から選ばれる、請求項16に記載の使用のための化合物。
緑内障および/または萎縮型AMDと診断されたかまたは緑内障および/または萎縮型AMDを発症する危険がある患者の治療における使用のための、請求項1〜22のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
眼科的状態の治療および/または予防における使用のための、請求項1〜11のいずれか1項で定義した化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体を含有する医薬組成物。
請求項1〜11のいずれか1項で定義した化合物および追加の薬学的に活性な剤が、別個の、並行の、同時のまたは連続の投与のために処方される、請求項27または28に記載の使用のための医薬組成物。
眼科的状態の治療および/または予防における使用のための、請求項1〜11のいずれか1項で定義した化合物、もしくはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログもしくは同位体標識した誘導体、または請求項25で定義した組成物を含むキット。
患者に、有効量の請求項1〜11のいずれか1項で定義した化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体を投与することを含む、該患者における眼科的状態の治療および/または予防方法。
眼科的状態の治療および/または予防のための医薬の製造における、請求項1〜11のいずれか1項で定義した化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体の使用。
【発明を実施するための形態】
【0046】
発明の詳細な説明
定義
本明細書中で使用される用語「患者」は、典型的には、ヒト患者をいう。しかし、患者は、哺乳動物などの他の脊椎動物であり得る。用語「被検体」および「患者」は、本明細書中、互いに交換可能で用いられる。
【0047】
本明細書中で使用される単語「治療」および「治療する」は、疾患または状態の症候の治療および/または改善および/または予防あるいは重症化/悪化の低減、ならびに疾患または状態の原因の治療を含むと理解されるべきであり、そして被検体の状態を改善または安定化するように状態の症候、臨床兆候、および原因となる病状の反転、低減、または阻止を含み得る。
【0048】
「予防」および疾患または状態を「予防する」への言及は、疾患または状態の予防および/または阻害を含む。用語「予防する」は、当該分野において承認されており、そしてアルツハイマー病(AD)またはその関連する症候などの状態に関して用いられる場合、当該分野においてよく理解されており、そして薬物または組成物を受けない被検体に対して被検体の医学的状態の症候の頻度を減少させ、または被検体の医学的状態の症候の発病を遅らせる薬物および/または組成物の投与を含む。
【0049】
本明細書中で使用される用語「薬学的に許容可能な」は、本発明の化合物の有効性を妨げず、そして細胞、細胞培養物、組織、または有機体などの生体系と適合可能である物質をいう。好ましくは、生体系は、脊椎動物などの生物である。
【0050】
本明細書中で使用される語句「治療有効量」は、任意の医療に適用可能な合理的な利益/危険比で、タンパク質ミスフォールディング疾患の治療、予防または改善などのいくつかの所望の治療効果を生じ、または折り畳み異常の(misfolded)タンパク質の有病率を低減するのに有効である化合物、物質または組成物の量をいう。1つの実施態様において、治療有効量は、少なくとも1つの症候を低減または除去するのに十分である。治療有効量は、疾患または症候を完全に根絶することなく、疾患または症候を部分的に改善し得る。
【0051】
化合物
本発明における使用のための化合物は、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、リボグリタゾン、バラグリタゾンまたはミトグリタゾンではないチアソリジンジオンまたはローダニン化合物である。
【0052】
特に、本発明の化合物は、分子の両端に、チアゾリジンジオンまたはローダニン基である第1末端基および(i)環中に1個以上の窒素ヘテロ原子を含む5-〜10-員の部分的に不飽和のヘテロシクリル基、または(ii)環中に1個以上の窒素ヘテロ原子を含む5-〜10-員のヘテロアリールではない第2末端基を含むチアゾリジンジオンまたはローダニン化合物であり得る。
【0053】
1つの実施態様において、本発明の化合物は式(I)の化合物である。
【0055】
本発明の化合物において、XはOまたはSを表す。好ましくは、XはOである。
【0056】
本発明の化合物において、Wはさらに置換されていてもよい、ベンゼン、ナフタレン、ベンゾジヒドロピランまたはベンゾピラン環を表し、好ましくは、さらに置換されていてもよい、ベンゼンまたはナフタレン環であり、より好ましくは、無置換のベンゼンまたはナフタレン環である。1つの実施態様において、Wは無置換のナフタレン環を表す。
【0057】
本発明の化合物において、Lは、(i)1個以上のヘテロ原子および/またはカルボニル基;および/または(ii)置換されていてもよい5-〜10-員の飽和または不飽和複素環基を含んでいてもよいアルキレン基を含むリンカー基を表す。特に、Lは、(i)1個以上のヘテロ原子および/またはカルボニル基;および/または(ii)置換されていてもよい5-〜10-員の飽和または不飽和複素環基を含んでいてもよいアルキレン基を表し得る。好ましくは、ヘテロ原子は、例えばC
1〜C
4アルキレン基によってさらに置換されていてもよいオキシエーテル基または2級アミノ基である。1つの実施態様において、Lは、(i)オキシ、アミノおよび/またはカルボニル基;および/または(ii)5-〜10-員の飽和または不飽和複素環基を含むC
1〜C
4アルキレン基を表す。好ましくは、複素環基は、置換されていてもよい、オキサゾール、イソオキサゾール、フラン、ピロール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジンまたはピラジン環である。好ましい実施態様において、Lは:オキシ基、カルボニル基および/またはオキサゾール、イソオキサゾール、フランおよびピロール環から選ばれる5-〜10-員の飽和または不飽和複素環基を含むC
1〜C
4アルキレン基を表す。複素環基の任意の置換基は、例えば、ハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aおよび/または以下でさらに記載されるC
1〜C
4アルキル基であり得、好ましくは、ヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはC
1〜C
4アルキル基である。好ましくは、Lは、オキシおよび/またはカルボニル基を含むC
1〜C
4アルキレン基を表す。
【0058】
本発明の化合物において、R
3は、置換されていてもよいC
6〜C
10アリール基、置換されていてもよいC
5〜C
10カルボシクリル基、置換されていてもよい5-〜10-員の飽和ヘテロシクリル基、置換されていてもよい、環中に窒素ヘテロ原子を含まない5-〜10-員の部分的に不飽和のヘテロシクリル基、または置換されていてもよい、環中に窒素ヘテロ原子を含まない5-〜10-員ヘテロアリール基を表す。好ましくは、R
3は、置換されていてもよいC
6〜C
10アリール基、置換されていてもよいC
5〜C
10カルボシクリル基、または置換されていてもよい、ピラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロイソベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ジヒドロベンゾピラニル、フラニルおよびベンゾフラニルから選ばれるヘテロシクリル基を表す。任意の置換基は、ハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aおよび/または以下でさらに記載されるC
1〜C
4アルキル基であり得る。好ましくは、R
3は、1つ以上のヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよいC
6〜C
10アリール基、1つ以上のヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよいC
5〜C
10カルボシクリル基、または1つ以上のヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよい、ピラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロイソベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ジヒドロベンゾピラニル、フラニルおよびベンゾフラニルから選ばれるヘテロシクリル基を表す。好ましくは、R
3は、1つ以上のヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよい、C
6〜C
10アリール基またはC
5〜C
10カルボシクリル基、特に1つ以上のヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよいC
6〜C
10アリール基を表す。より好ましくは、R
3は、1つ以上のハロゲン基で置換されていてもよいフェニル環、特にフェニルまたはフルオロフェニルを表す。
【0059】
式(I)の化合物の1つの好ましい実施態様において:
XはOを表し;
Wは、ハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aまたは以下でさらに記載されるC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよい、ベンゼンまたはナフタレン環を表し;
Lは、1つ以上のハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aおよび/または以下でさらに記載されるC
1〜C
4アルキル基、好ましくは、ヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよい、オキシ基、カルボニル基および/またはオキサゾール、イソオキサゾール、フランまたはピロール環を含むC
1〜C
4アルキレン基を表し;および
R
3は、1つ以上のハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aおよび/または以下でさらに記載されるC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよいC
6〜C
10アリール基、または1つ以上のハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aおよび/または以下でさらに記載されるC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよいC
5〜C
10カルボシクリル基を表す。
【0060】
好ましくは、式(I)の化合物において:
XはOを表し;
Wは無置換のベンゼンまたはナフタレン環を表し;
Lはオキシおよび/またはカルボニル基を含むC
1〜C
4アルキレン基を表し;および
R
3は1つ以上のヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよいC
6〜C
10アリール基を表す。
【0061】
1つの好ましい実施態様において、本発明の化合物は、X、WおよびR
3が上記で定義した通りである式(IA)の化合物であり得る。
【0063】
特に、式(IA)の化合物において、Wは、さらに置換されていてもよいベンゼンまたはナフタレン環、より好ましくは、無置換のベンゼンまたはナフタレン環を表す。1つの実施態様において、Wは無置換のナフタレン環を表す。
【0064】
特に、式(IA)の化合物において、R
3は、置換されていてもよいC
6〜C
10アリール基、置換されていてもよいC
5〜C
10カルボシクリル基、または置換されていてもよい、ピラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロイソベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ジヒドロベンゾピラニル、フラニルおよびベンゾフラニルから選ばれるヘテロシクリル基を表す。任意の置換基は、ハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aおよび/または以下でさらに記載されるC
1〜C
4アルキル基であり得る。好ましくは、R
3は、1つ以上のヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよいC
6〜C
10アリール基、1つ以上のヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよいC
5〜C
10カルボシクリル基、または1つ以上のヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよい、ピラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロイソベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ジヒドロベンゾピラニル、フラニル、およびベンゾフラニルから選ばれるヘテロシクリル基を表す。好ましくは、R
3は、1つ以上のヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよい、C
6〜C
10アリール基またはC
5〜C
10カルボシクリル基、特に1つ以上のヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよいC
6〜C
10アリール基を表す。より好ましくは、R
3は、1つ以上のハロゲン基で置換されていてもよいフェニル環、特にフェニルまたはフルオロフェニルを表す。
【0065】
式(IA)の化合物において、YはOまたはカルボニルC(O)基を表す。好ましくは、YはOである。
【0066】
式(IA)の化合物において、R
1およびR
2は同一または異なり、そしてそれぞれ独立して水素または置換もしくは無置換C
1〜C
4アルキル基を表すか、またはR
1およびR
2は結合して5〜7員アリール、カルボシクリルまたはヘテロシクリル環を形成し、これはさらに置換されていてもよい。好ましくは、R
1およびR
2はそれぞれ独立して水素を表すか、またはR
1およびR
2は結合して、Wと一緒に、ベンゾピランまたはベンゾジヒドロピラン環を形成する。好ましくは、R
1およびR
2は両方とも水素である。
【0067】
式(IA)の化合物において、nは0〜2の整数である。好ましくは、nは0または1である。より好ましくは、nは0である。
【0068】
式(IA)の化合物において、Zは、結合または置換されていてもよい5-〜10-員の飽和もしくは不飽和複素環基を表す。好ましくは、Zは、結合または置換されていてもよい、オキサゾール、イソオキサゾール、フラン、ピロール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジンまたはピラジン環を表し、ここで任意の置換基は、好ましくは、1つ以上のハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aおよび/または以下でさらに記載されるC
1〜C
4アルキル基、好ましくは、ヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはC
1〜C
4アルキル基である。
【0069】
式(IA)の化合物の1つの好ましい実施態様において:
XはOを表し;
Wは、1つ以上のハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aおよび/または以下でさらに記載されるC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよい、ベンゼンまたはナフタレン環を表し;
YはOを表し;
R
1およびR
2はそれぞれ独立して水素を表し;または
R
1およびR
2は結合して、Wと一緒に、ベンゾピランまたはベンゾジヒドロピラン環を形成し;および
nは0または1であり;
好ましくは、ここでZは結合または置換されていてもよい、オキサゾール、イソオキサゾール、フランまたはピロール環であり、ここで任意の置換基は、好ましくは、1つ以上のハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aおよび/または以下でさらに記載されるC
1〜C
4アルキル基、好ましくは、ヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはC
1〜C
4アルキル基であり;および/またはR
3は、1つ以上のハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aおよび/または以下でさらに記載されるC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよいC
6〜C
10アリール基、1つ以上のハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aおよび/または以下でさらに記載されるC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよいC
5〜C
10カルボシクリル基、または1つ以上のハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aおよび/または以下でさらに記載されるC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよい、ピラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロイソベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ジヒドロベンゾピラニル、フラニルおよびベンゾフラニルから選ばれるヘテロシクリル基を表す。
【0070】
好ましくは、式(IA)の化合物において:
XはOを表し;
Wは無置換のベンゼンまたはナフタレン環を表し;
YはOを表し;
R
1およびR
2はそれぞれ独立して水素を表し;または
R
1およびR
2は結合して、Wと一緒に、ベンゾピランまたはベンゾジヒドロピラン環を形成し;および
nは0または1であり;
好ましくは、ここでZ結合であり、および/またはR
3は1つ以上のヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよいC
6〜C
10アリール基を表す。
【0071】
さらなる実施態様において、本発明の化合物は、X、ZおよびR
3が上記で定義した通りである式(II)または(III)の化合物であり得る。
【0073】
式(II)または(III)の化合物において、nは1または2の整数、好ましくは、1である。
【0074】
好ましくは、式(II)または(III)の化合物において、R
3は、1つ以上のハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aおよび/または以下でさらに記載されるC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよいC
6〜C
10アリール基、または1つ以上のハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aおよび/または以下でさらに記載されるC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよいC
5〜C
10カルボシクリル基、あるいは1つ以上のハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aまたは以下でさらに記載されるC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよい、ピラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロイソベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ジヒドロベンゾピラニル、フラニルおよびベンゾフラニルから選ばれるヘテロシクリル基を表す。
【0075】
式(II)または(III)の化合物の1つの好ましい実施態様において:
XはOを表し;
nは1または2の整数であり;
Zは結合であり;および
R
3は1つ以上のヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはC
1〜C
4アルキル基で置換されていてもよいC
6〜C
10アリール基を表す。
【0076】
別の実施態様において、本発明の化合物は、ネトグリタゾン、シグリタゾン、エングリタゾン、ダルグリタゾンまたはトログリタゾンである。好ましくは、本発明の化合物は、ネトグリタゾン、シグリタゾンまたはエングリタゾンである。1つの実施態様において、ネトグリタゾンは、この化合物について利用可能な後期臨床データがあるという事実を鑑みて、好ましい。
【0077】
本明細書中で使用されるC
6〜C
10アリール基または部分は6〜10個の炭素原子を有するアリール基または部分、例えば、フェニルまたはナフチル、好ましくは、フェニルである。アリール基または部分は、置換され得るかまたは無置換であり得る。適切な置換基は、塩素および/またはフッ素などのハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aならびにメチルおよび/またはエチルなどのC
1〜C
4アルキル基を含み、ここでC
1〜C
4アルキル置換基は、それ自体無置換であるかまたは1〜3個のハロゲン原子で置換されているかのいずれかである。R
aおよびR
bは本明細書中で定義した通りである。
【0078】
本明細書中で使用されるC
5〜C
10カルボシクリル基または部分は、C
5、C
6、C
7、C
8、C
9またはC
10シクロアルキル基であり得、そして好ましくは、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである。典型的には、シクロアルキル基は、3個までの置換基、例えば1個または2個の置換基で置換されているかまたは無置換である。適切な置換基は、塩素および/またはフッ素などのハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aならびにメチルおよび/またはエチルなどのC
1〜C
4アルキル基を含み、ここでC
1〜C
4アルキル置換基は、それ自体無置換であるかまたは1〜3個のハロゲン原子で置換されているかのいずれかである。R
aおよびR
bは本明細書中で定義した通りである。
【0079】
本明細書中で使用される5-〜10-員の飽和ヘテロシクリル基または部分は、特に明記しない限り、環が少なくとも1個のヘテロ原子を含む飽和5-〜10-員環系である。典型的には、環はO、SおよびNから選ばれる3個または4個までのヘテロ原子、例えば、1個または2個のヘテロ原子を含む。従って、5-〜10-員の飽和ヘテロシクリル基または部分は、典型的には、O、SおよびNから選ばれる1個、2個または3個のヘテロ原子を含む5-〜10-員環である。適切なこのようなヘテロシクリル基および部分は、例えば、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、オキサゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、ジオキソラニル、ピペリドニル、アゼパニル、オキセパニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニルおよび1,4-ジアゼパニルなど、より好ましくは、ピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、アゼパニルおよび1,4-ジアゼパニルなどの単環式飽和5-〜8-員環、より好ましくは、5-〜7-員環を含む。
【0080】
本明細書中で使用される5-〜10-員の不飽和複素環基または部分は、特に明記しない限り、環が少なくとも1個の不飽和結合および少なくとも1個のヘテロ原子を含む5-〜10-員環系である。環は、部分的に不飽和であり得るか、または完全に不飽和で芳香族であり得る。典型的には、環はO、SおよびNから選ばれる3個または4個までのヘテロ原子、例えば、1個または2個のヘテロ原子を含む。従って、5-〜10-員の不飽和複素環基または部分は、典型的には、O、SおよびNから選ばれる1個、2個または3個のヘテロ原子を含む5-〜10-員環である。好ましくは、ヘテロ原子はOおよびNから選ばれる。適切なこのようなヘテロシクリル基および部分は、例えば:
ジヒドロフラニル、ピラニル、ジヒドロピラニル、ジオキシニル、ジヒドロオキセピニル、テトラヒドロオキセピニル、ピロリニル、ピラゾリニル、イミダゾリニル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロピリジニル、テトラヒドロピリジニル、ジヒドロピリダジニル、テトラヒドロピリダジニル、ジヒドロピリミジニル、テトラヒドロピリミジニル、ジヒドロピラジニル、テトラジヒドロピラジニル、オキサジニル、ジヒドロオキサジニル、チアジニル、ジヒドロチアジニル、ジヒドロアゼピニル、テトラヒドロアゼピニル、ジヒドロチオフェニル、チオピラニル、ジヒドロチオピラニル、ジヒドロチエピニル、およびテトラヒドロチエピニルなどの単環式部分不飽和5-〜7-員ヘテロシクリル環;
ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロイソベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ジヒドロベンゾピラニル、ベンゾジオキソリル、インドリニル、イソインドリニル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、ベンゾオキサジニル、ジヒドロベンゾチオフェニルおよびベンゾジチオール;好ましくは、ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ジヒドロベンゾピラニル、ベンゾジオキソリル、インドリニル、イソインドリニル、ジヒドロキノリニルおよびテトラヒドロキノリニルなどの二環式部分不飽和8-〜10-員ヘテロシクリル環;
フラニル、オキセピニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピラダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、アゼピニル、チオフェニルオキセピニルおよびチエピニルなどの単環式5-〜7-員ヘテロアリール環;および
ベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、アザインドリル、アザインダゾリル、プリニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キノリジニル、キノキサリニル、フタラジニル、キナゾリニル、シンノリニル、ナフチリジニル、プテリジニルおよびベンゾチオフェニル、好ましくは、ベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、キノリニルおよびイソキノリニルなどの二環式8-〜10-員ヘテロアリール環を含む。
【0081】
好ましくは、5-〜10-員不飽和複素環基は、ジヒドロフラニル、ピラニル、ピロリニルおよびオキサジニルから選ばれる単環式部分不飽和5-〜7-員環またはフラニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジニル、ピラダジニル、ピリミジニルおよびピラジニルから選ばれる単環式5-〜7-員ヘテロアリール環である。
【0082】
本明細書中で使用される環中に窒素ヘテロ原子を含まない5-〜10-員部分不飽和ヘテロシクリル基または部分は、特に明記しない限り、環が少なくとも1個の不飽和結合および少なくとも1個のヘテロ原子を含み、そして窒素ヘテロ原子を含まない5-〜10-員環系である。典型的には、環はO、SおよびNから選ばれる3個または4個までのヘテロ原子、例えば、1個または2個のヘテロ原子を含む。従って、5-〜10-員部分不飽和ヘテロシクリル基または部分は、典型的には、OおよびSから選ばれる1個、2個または3個のヘテロ原子を含む5-〜10-員環である。好ましくは、ヘテロ原子はOである。適切なこのようなヘテロシクリル基および部分は、例えば、ピラニル、チオピラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチオピラニル、ジオキシニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロチオフェニル、ジヒドロオキセピニル、ジヒドロチエピニル、テトラヒドロオキセピニル、テトラヒドロチエピニル、好ましくは、ピラニル、チオピラニル、ジヒドロピラニルおよびジヒドロフラニルなどの単環式部分不飽和5-〜7-員ヘテロシクリル環;およびジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロイソベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ジヒドロベンゾピラニル、ベンゾジオキソリル、ジヒドロベンゾチオフェニル、およびベンゾジチオールなどの二環式部分不飽和8-〜10-員ヘテロシクリル環を含む。好ましくは、5-〜10-員部分不飽和ヘテロシクリル基は、ピラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロイソベンゾフラニル、ベンゾピラニルおよびジヒドロベンゾピラニルから選ばれる。
【0083】
本明細書中で使用される環中に窒素ヘテロ原子を含まない5-〜10-員ヘテロアリール基または部分は、特に明記しない限り、環が完全に不飽和で芳香族であり、少なくとも1個のヘテロ原子を含み、そして窒素ヘテロ原子を含まない5-〜10-員環系である。典型的には、環はOおよびSから選ばれる3個または4個までのヘテロ原子、例えば、1個または2個のヘテロ原子を含む。従って、5-〜10-員ヘテロアリール基または部分は、典型的には、OおよびSから選ばれる1個、2個または3個のヘテロ原子を含む5-〜10-員環である。好ましくは、ヘテロ原子はOである。適切なこのようなヘテロアリール基および部分は、例えば、フラニル、チオフェニル、オキセピニルおよびチエピニルなどの単環式5-〜7-員ヘテロアリール環;およびベンゾフラニルおよびベンゾチオフェニルなどの二環式8-〜10-員ヘテロアリール環を含む。好ましくは、5-〜10-員ヘテロアリール基は、フラニルおよびベンゾフラニルから選ばれる。
【0084】
ヘテロシクリルおよび/またはヘテロアリール基または部分は、置換され得るかまたは無置換であり得る。各環原子は、無置換であり得るかまたは1個または2個の置換基を有し得る。所望であれば、窒素原子は二置換であり得、および硫黄原子は置換され得、荷電ヘテロ原子を提供する。典型的には、ヘテロシクリルまたはアリール基または部分は、3個までの置換基、例えば、1個または2個の置換基を有する。複素環は、その利用可能な環位置のいずれかへの結合によって分子の残部に結合され得る。
【0085】
本明細書中で使用される置換されていてもよい基は、塩素および/またはフッ素などのハロゲン、-OR
a、-SR
a、-NR
aR
b、-C(O)OR
a、-C(O)NR
aR
b、-C(O)R
aならびにメチルおよび/またはエチルなどのC
1〜C
4アルキル基を含み、ここでC
1〜C
4アルキル置換基は、それ自体無置換であるかまたは1〜3個のハロゲン原子で置換されているかのいずれかである適切な置換基で置換され得る。R
aおよびR
bは以下で定義する通りである。任意の置換基は、好ましくは、ヒドロキシル、塩素またはフッ素などのハロゲン、あるいはメチルまたはエチルなどのC
1〜C
4アルキル基である。
【0086】
本明細書中で使用されるハロゲンは、典型的には、塩素、フッ素、臭素またはヨウ素であり、そして好ましくは、塩素、フッ素または臭素であり、より好ましくは、塩素またはフッ素である。
【0087】
C
1〜C
4アルキル基または部分は、直線状、分岐状または環状であり得るが、好ましくは、直線状である。適切なこのようなアルキル基および部分は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルを含む。それは、好ましくは、C
1〜C
3アルキル基、より好ましくはエチルまたはメチルである。アルキル基または部分は、無置換であり得るかまたは1個、2個または3個のハロゲン原子で置換され得る。
【0088】
本明細書中で使用される各R
aおよび各R
bは、独立して水素または無置換C
1〜C
4アルキル基を表す。
【0089】
本発明の化合物は、公知の方法を用いて製造され得る。特に、ネトグリタゾンは公知の化合物であり、そして例えば、JP2009/234930およびWO2000/31055に記載の方法またはそれらに適合する方法に従って製造され得る。
【0090】
1つ以上のキラル中心を含む本発明の化合物は、エナンチオマー的またはジアステレオマー的に純粋な形態で、または異性体の混合物の形態で使用され得る。本発明の化合物は、任意の互変異性体形態で使用され得る。
【0091】
化合物は、薬学的に許容可能な塩の形態で使用され得る。本明細書中で使用される薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能な酸または塩基との塩である。薬学的に許容可能な酸は、塩酸、硫酸、リン酸、二リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸または硝酸などの無機酸およびクエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、サリチル酸、トリクロロ酢酸、ピクリン酸、トリフルオロ酢酸、桂皮酸、パモン酸、マロン酸、マンデル酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、p-アミノ安息香酸またはグルタミン酸などの有機酸の両方、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、グリセロリン酸塩またはケトグルタル酸塩を含む。薬学的に許容可能な無機または有機酸付加塩のさらなる例は、当業者に公知であるJournal of Pharmaceutical Science, 66, 2 (1977)に列挙された薬学的に許容可能な塩を含む。薬学的に許容可能な塩基は、アルカリ金属(例えば、ナトリウムまたはカリウム)およびアルカリ土類金属(例えば、カルシウムまたはマグネシウム)水酸化物およびアルキルアミン、アラルキルアミンおよび複素環アミン、リジン、グアニジン、ジエタノールアミンおよびコリンなどの有機塩基を含む。
【0092】
酸付加塩は、化合物合成の直接的生成物として得られ得る。あるいは、遊離塩基は、適切な酸を含む適切な溶媒中に溶解され得、そして塩は、溶媒をエバポレートすることによって、またはそうでなければ塩と溶媒とを分離することによって単離される。
【0093】
本発明の化合物は、溶媒和物または水和物の形態で使用され得る。化合物は、当業者に公知の方法を用いて標準の低分子量溶媒との溶媒和物を形成し得る。
【0094】
本発明はまた、本発明の化合物のプロドラッグを提供する。プロドラッグは、インビボで所望の活性化合物に変換される化合物のアナログである。適切なプロドラッグの例は、カルボン酸基で修飾されてエステルを形成する化合物、またはヒドロキシル基で修飾されてエステルまたはカルバメートを形成する化合物を含む。さらなる適切なプロドラッグは、化合物の窒素原子がエステルまたはアルキルエステル基の付加によって4級化されているものを含む。例えば、アミン基またはヘテロシクリル環の窒素原子は、-CH
2-O-COR基の付加によって4級化され得、ここでRは典型的にはメチルまたはtert-ブチルである。他の適切な方法は、当業者に公知である。
【0095】
本発明はさらに、本発明の化合物の前駆体を提供する。前駆体は、当業者が所望の活性化合物へと自明に変換し得る化合物である。適切な前駆体の例は、当該分野で公知のプロセスによる保護基の除去によって本発明の化合物へと変換され得る化合物を含む。
【0096】
本発明はまた、本発明の化合物の同位体標識した誘導体(またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体またはアナログ)を提供する。同位体標識した誘導体は、構成元素の1つ以上が天然において最も一般的に見い出される原子質量または原子番号とは異なる原子質量または原子番号を有する原子である化合物である。本発明の化合物に含まれるのに適切な同位体の例は:
2Hおよび
3Hなどの水素;
11C、
13Cおよび
14Cなどの炭素;
13N、
15Nおよび
16Nなどの窒素;
15O、
17Oおよび
18Oなどの酸素;
18Fなどのフッ素;
32Pなどのりん;
35Sなどの硫黄;
36Clなどの塩素;
77Brなどの臭素;および
123Iおよび
125Iなどのヨウ素の同位体を含む。好ましい同位体は、
2H、
3H、
13C、
15N、
18O、
18F、
36Clおよび
77Brである。
【0097】
重水素、
2Hなどのより重い同位体での置換は、インビボ半減期の増加または必要用量の低減などのより大きな代謝安定性から生じるいくらかの治療上の利点を与え得る。従って、このような本発明の同位体標識した化合物は、いくつかの状況において好適であり得る。
【0098】
本発明の同位体標識した化合物は、当業者に公知の従来の技術によって、例えば同位体置換反応を行うことによって、または非標識試薬の代わりに同位体標識した試薬を用いることによって調製され得る。
【0099】
好ましくは、本発明に従う使用のための化合物は、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、立体異性体または同位体標識した誘導体である。より好ましくは、使用のための化合物は、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、立体異性体または同位体標識した誘導体である。
【0100】
治療
折り畳み異常のタンパク質に関連する疾患において、折り畳み異常のタンパク質がそれ自体に結合し、そしてそれゆえタンパク質オリゴマー、凝集体および原線維を形成する傾向の増大を示すことは典型的である。これはしばしば、β-シート二次タンパク質構造の形成の増加に関連する。これらの凝集体は、タンパク質の正常な細胞クリアランスに耐性であり、従って蓄積し、大きな凝集体からなるプラークを潜在的に形成する。これは、細胞死および/または罹患した組織の異常機能を引き起こし得る。これらの凝集体の形成および増殖は、新たな凝集体の発生および現存する凝集体の伝播を含む。従って、折り畳み異常のタンパク質に関連する疾患は、タンパク質および/またはペプチドのこのようなオリゴマー、凝集体、原線維および/またはプラークの形成、蓄積、沈着および持続によって一般的に引き起こされ、兆候を示し、またはそうでなければそれらに関連する。従って、本発明によって提供されるようなタンパク質および/またはペプチドのミスフォールディングに関連する眼科的状態のための治療は、このような凝集した種を標的とし得る。
【0101】
従って、1つの実施態様において、本発明の化合物は、タンパク質および/またはペプチドのオリゴマー、原線維、凝集体および/またはプラークの形成、蓄積、沈着または持続の治療、予防または阻害における使用のためのものであり得る。
【0102】
アミロイド生成性タンパク質は、凝集する傾向を有するタンパク質の例であり、そしてこれらのタンパク質は折り畳み異常を生じ(misfold)、そして凝集し、アミロイド症疾患に至り得る。アミロイド前駆体タンパク質は、たんぱく質分解を受け、緑内障およびAMDを含む種々の眼科的状態に関連するAβペプチドを発生し得る。
【0103】
好ましい実施態様において、本発明の化合物は、アミロイドオリゴマー、原線維、凝集体および/またはプラークの形成、蓄積、沈着または持続の治療、予防または阻害における使用のためのものである。より好ましくは、アミロイドオリゴマー、原線維、凝集体および/またはプラークは、アミロイド-βオリゴマー、原線維、凝集体および/またはプラークである。
【0104】
タンパク質凝集は、非常に複雑かつ多要因のプロセスであり、そして毒性種の発生の根底にある分子メカニズムおよび小分子が凝集経路を妨害するプロセスに関する正確な知識を得ることは非常に困難であることが証明されている。幅広い証拠は、成熟したアミロイドプラークよりもむしろプレ線維(pre-fibrillar)オリゴマー種が最初の病原因子であることを示唆している。これらのオリゴマー種は、それらの一時的性質により特徴付けるのが困難であり、これは創薬を複雑にする。多くの他の証拠の中でもこれは、効果的な治療戦略が、原線維形成プロセスの非特異的抑制からなる可能性が低く、むしろ大いに複雑でかつ不均一な凝集プロセスの間の正確な微視的工程で制御された介入における特定の種の標的化を含むことを示唆する。
【0105】
化学動態における速度則の確立における最近の進歩は、Aβ巨視的動態測定の詳細が微視的レベルで精密に記載されることを可能にした。速度則の確立は、少なくとも3つの異なるクラスの微視的プロセスが区別されることを可能にした。凝集体の発生は、新たな凝集体が可溶性モノマーから形成する一次経路、または二次経路のいずれかを通して起こり得る。二次経路において、新たな凝集体は、モノマー-非依存性である断片化、またはモノマー依存性である表面触媒二次核生成のいずれかを通して増殖する。
【0106】
この進展の結果として、有毒なAβ種の発生の原因となる支配的なメカニズムが凝集プロセスにおける特異的な工程、すなわち表面-触媒二次核生成であることを示す鍵となる発見がなされた。この発見は、凝集測定の以前の非特異的阻害とは異なり、有毒なプロセスが特異的に標的化されることを可能にするので、明らかに重要である。この進歩はまた、Aβ凝集自体の阻害が、潜在する微視的プロセスの正確な知識なしで、毒性に関する予想しない結果を有し得たという結論に至った。実際、それは、それを減少させ得ただけでなく、それを影響を受けないままにし、あるいは間違った微視的工程が標的化される場合に増加させさえする。さらに、化学動態の適用は、病原性種の構造の予備知識を要求せず、そして高いタンパク質-分子結合親和性の必要によって制限されない。従って、Aβ42凝集における特異的微視的工程を混乱させ得る効率的な阻害剤の同定は、病原性を抑制するための効率的な戦略を提供し得た。
【0107】
1つの実施態様において、上記で議論したタンパク質および/またはペプチドオリゴマー、原線維、凝集体および/またはプラークの形成、沈着、蓄積、または持続を治療、予防または阻害することは、このようなオリゴマー、原線維、凝集体および/またはプラークの一次核生成および/または表面触媒二次核生成を阻害することによって達成され得る。好ましくは、これは、オリゴマー、原線維、凝集体および/またはプラークの一次核生成および二次核生成の両方を阻害することによって達成される。オリゴマー、原線維、凝集体および/またはプラークは、好ましくは、上記で議論したように、Aβオリゴマー、原線維、凝集体および/またはプラークである。
【0108】
本発明の化合物は、眼科的状態を患うかまたは眼科的状態にかかりやすい被検体を治療する方法において使用され得、該方法は、有効量の本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体を該患者に投与することを含む。化合物は、所望であれば、追加の治療剤と組み合わせて使用され得る。
【0109】
複数の眼科的状態は重複し得る。眼科的状態がタンパク質ミスフォールディングに関連する場合、複数のタンパク質が含まれ得る。タンパク質凝集の一般的な現象を考慮すると、1つのペプチドのミスフォールディングの治療および/または予防に効果的であると知られている薬物は、他のペプチドのミスフォールディングの治療および/または予防に効果的であるよう修飾され得る。
【0110】
本発明において、眼科的状態は、好ましくは、タンパク質ミスフォールディングに関連する。例えば、眼科的状態は、さらに以下で議論するような網膜疾患、白内障または格子状角膜変性症、顆粒状角膜ジストロフィー(Reis-Bucklers)、Thiel-Behnke、アベリノジストロフィー(Avellino dystrophy)、フックスジストロフィー(Fuchs dystrophy)などの角膜ジストロフィーであり得る。より好ましくは、眼科的状態は、Aβペプチドのミスフォールディングに関連する。従って、例えば、Aβペプチドは、眼科的状態(例えば、緑内障またはAMDなど)を引き起こし得るか、眼科的状態の兆候を示し得るか、および/またはそうでなければ眼科的状態に関連し得る。
【0111】
いくつかの実施態様において、眼科的状態は:黄斑変性症、マクラパッカー(macular pucker)、緑内障、網膜色素変性症、脈絡膜血管新生、網膜変性、酸素誘発網膜症、増殖性硝子体網膜症、ブドウ膜炎、未熟児網膜症、後水晶体繊維増殖症、網膜分離症、格子様変性、網膜剥離および/または網膜神経節細胞の変性から選ばれる網膜疾患である。
【0112】
1つの実施態様において、眼科的状態は緑内障である。緑内障は、例えば、開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、高眼圧緑内障、低眼圧緑内障、正常眼圧緑内障、原発緑内障、色素性緑内障、原発性若年緑内障、発育異常緑内障、炎症性緑内障、手術後緑内障などの外傷性緑内障、薬物誘導性緑内障および/または中毒性緑内障であり得る。
【0113】
1つの実施態様において、眼科的状態は黄斑変性症である。黄斑変性症、例えば、加齢性黄斑変性症(AMD)またはベスト病、ソースビー眼底変性症またはスタルガルト病などの遺伝性疾患であり得る。好ましくは、黄斑変性症はAMDである。AMDは、萎縮型AMDまたは滲出型AMDであり得る。好ましくは、AMDは萎縮型AMDである。さらに、AMDは初期型、中期型または後期型AMDであり得る。好ましくは、AMDは初期型AMDである。より好ましくは、AMDは初期型萎縮型AMDである。
【0114】
好ましい実施態様において、化合物は、緑内障および/または萎縮型AMDと診断された患者の治療における使用のためのものである。従って、1つの好ましい実施態様において、化合物は、緑内障と診断された患者の治療における使用のためのものである。別の好ましい実施態様において、化合物は、萎縮型AMDと診断された患者の治療における使用のためのものである。
【0115】
本発明の1つの実施態様において、化合物は、緑内障および/または萎縮型AMDを発症する危険がある患者の治療における使用のためのものである。さらに、患者は、好ましくは、緑内障および/または萎縮型AMDの家族歴を有する。患者が緑内障および/または萎縮型AMDを発症する危険がある場合、および/または緑内障および/または萎縮型AMDの家族歴を有する場合、初期段階の介入は可能であり、そしてプラークの形成は避けられ得るかまたは減少させ得る。これは、症候の発病を防ぐかまたは遅らせるための効果的な戦略を開発するための機会を提供する。特に、本発明の化合物は、Aβ凝集体の核生成を防ぐのに非常に効果的であり、そしてそれゆえ初期段階の介入として用いられる場合特に効果的であり得る。
【0116】
本発明はさらに、患者における上記のような眼科的状態を治療および/または予防する方法を提供し、当該方法は、有効量の上記の本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体を該患者に投与することを含む。本明細書中で定義した使用のための化合物の好ましい特徴は、本発明の方法の好ましい特徴でもある。
【0117】
本発明はさらに、上記のような眼科的状態の治療および/または予防のための医薬の製造における、上記の本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体の使用を提供する。本明細書中で定義した使用のための化合物の好ましい特徴は、本発明の使用の好ましい特徴でもある。
【0118】
1つの好ましい実施態様において、本発明は、黄斑変性症、マクラパッカー(macular pucker)、緑内障、網膜色素変性症、脈絡膜血管新生、網膜変性、酸素誘発網膜症、増殖性硝子体網膜症、ブドウ膜炎、未熟児網膜症、後水晶体繊維増殖症、網膜分離症、格子様変性、網膜剥離および/または網膜神経節細胞の変性から選ばれる眼科的状態の治療および/または予防における使用のための、上記で議論した式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体に関する。好ましい実施態様において、化合物は、緑内障の治療および/または予防における使用のためのものである。好ましい実施態様において、化合物は、萎縮型AMDの治療および/または予防における使用のためのものである。
【0119】
別の好ましい実施態様において、本発明は、黄斑変性症、マクラパッカー(macular pucker)、緑内障、網膜色素変性症、脈絡膜血管新生、網膜変性、酸素誘発網膜症、増殖性硝子体網膜症、ブドウ膜炎、未熟児網膜症、後水晶体繊維増殖症、網膜分離症、格子様変性、網膜剥離および/または網膜神経節細胞の変性から選ばれる眼科的状態の治療および/または予防における使用のための、上記で議論した式(IA)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体に関する。好ましい実施態様において、化合物は、緑内障の治療および/または予防における使用のためのものである。好ましい実施態様において、化合物は、萎縮型AMDの治療および/または予防における使用のためのものである。
【0120】
別の好ましい実施態様において、本発明は、黄斑変性症、マクラパッカー(macular pucker)、緑内障、網膜色素変性症、脈絡膜血管新生、網膜変性、酸素誘発網膜症、増殖性硝子体網膜症、ブドウ膜炎、未熟児網膜症、後水晶体繊維増殖症、網膜分離症、格子様変性、網膜剥離および/または網膜神経節細胞の変性から選ばれる眼科的状態の治療および/または予防における使用のための、上記で議論した式(II)または(III)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体に関する。好ましい実施態様において、化合物は、緑内障の治療および/または予防における使用のためのものである。好ましい実施態様において、化合物は、萎縮型AMDの治療および/または予防における使用のためのものである。
【0121】
別の好ましい実施態様において、本発明は、黄斑変性症、マクラパッカー(macular pucker)、緑内障、網膜色素変性症、脈絡膜血管新生、網膜変性、酸素誘発網膜症、増殖性硝子体網膜症、ブドウ膜炎、未熟児網膜症、後水晶体繊維増殖症、網膜分離症、格子様変性、網膜剥離および/または網膜神経節細胞の変性から選ばれる眼科的状態の治療および/または予防における使用のための、ネトグリタゾン、シグリタゾン、エングリタゾン、ダルグリタゾンまたはトログリタゾン、好ましくは、ネトグリタゾン、シグリタゾン、またはエングリタゾン、より好ましくは、ネトグリタゾン、またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体に関する。好ましい実施態様において、化合物は、緑内障の治療および/または予防における使用のためのものである。好ましい実施態様において、化合物は、萎縮型AMDの治療および/または予防における使用のためのものである。
【0122】
医薬組成物および投与
本発明はまた、眼科的状態の治療および/または予防における使用のための、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体を含有する医薬組成物を提供する。1つの実施態様において、この組成物はさらに、1つ以上の薬学的に許容可能な担体 希釈剤、賦形剤および/または添加剤を含有する。本明細書中で定義した使用のための化合物の好ましい特徴は、使用のための組成物の好ましい特徴でもある。
【0123】
好ましくは、組成物は、本発明の化合物の液体担体中の溶液である。好ましい医薬組成物は滅菌である。
【0124】
医薬組成物中の本発明の化合物の濃度は、投与される化合物の投薬量を含むいくつかの因子に依存して変化する。
【0125】
1つの実施態様において、本発明の化合物は、単剤療法として投与される。別の実施態様において、本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体と1つ以上の追加の治療剤との薬学的組み合わせを提供し、ここで、追加の治療剤はタンパク質ミスフォールディング疾患の治療および/または予防に適している。従って、本発明の化合物は、1つ以上の追加の治療剤との本発明の組み合わせ、組成物および製品で存在する。
【0126】
1つの実施態様において、本発明は、(i)本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体、(ii)1つ以上の追加の治療剤、該追加の治療剤は本明細書中で定義した通りであり得る、および(iii)1つ以上の薬学的に許容可能な担体および/または賦形剤を含有する医薬組成物を提供する。
【0127】
典型的には、組み合わせは、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体、および追加の治療剤が、別個の、同時のまたは連続の投与のために処方されている組み合わせである。組み合わせはまた、薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含有していてもよい。
【0128】
例えば、本発明の化合物が、別個の、同時のまたは連続の投与のために処方された、本明細書中で定義した組み合わせ(薬学的組み合わせなど)の一部である場合、(a)本発明の薬学的化合物、および(b)追加の治療剤は、同じ投与方法によって、または異なる投与方法によって投与され得る。
【0129】
同時投与について、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体、および追加の治療剤は、例えば単一の組成物で提供され得る。従って、組成物は、例えば、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体、および追加の治療剤、ならびに必要に応じて薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含有し得る。別個のまたは連続の投与について、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体、および追加の治療剤は、例えばキットとして提供され得る。
【0130】
本発明において用いられる追加の治療剤は、当業者が状況において有用であると判断する任意の適切な治療剤であり得る。本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体が緑内障の治療における使用のためのものである場合、特に適切なクラスの治療剤は、眼圧を低下させるのに適切な薬物(例えば、α-アゴニスト、β-ブロッカー、炭酸脱水酵素阻害薬およびプロスタグランジンアナログ)を含む。本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体がAMDの治療における使用のためのものである場合、特に適切なクラスの治療剤は、栄養補助食品(例えば、ビタミンCおよび/またはE、ベータカロテン、亜鉛およびルテイン、好ましくはルテイン)を含み、これらはAMDの進行を遅くすることが示されている。AMDが滲出型AMDである場合、特に適切なクラスの治療剤は、血管内皮増殖因子の阻害剤である。好ましい実施態様において、追加の治療剤は、眼科的状態の治療および/または予防に適している。
【0131】
1つの実施態様において、本発明の組成物は、眼または視神経などの視覚系への局在化を改善するよう処方される。従って、1つの実施態様において、本発明の組成物は、眼内投与のために、例えば目への適用に適切な溶液として処方され得る。1つの実施態様において、本発明の組成物は、点眼薬として投与されるのに適している。別の実施態様において、本発明の組成物は、眼科的注射によって投与されるのに適している。
【0132】
さらなるアプローチは、嗅神経を介して薬物を導入する非侵襲性薬物送達技術である鼻内投与であり、ここで薬物は、細胞間吸収またはエンドサイトーシスによって鼻粘膜から視覚系へと直接送達される。
【0133】
本発明の化合物、組み合わせ、組成物および製品は、種々の剤型で投与され得る。従って、それらは、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性または油性懸濁液、分散性粉末または顆粒として経口投与され得る。本発明の化合物、組み合わせ、組成物および製品はまた、皮下、静脈内、筋肉内、肋骨内、経皮のいずれか、または注入技術によって、非経口投与され得る。
【0134】
本発明の化合物、組み合わせ、組成物および製品はまた、例えば点眼溶液として眼内投与され得る。本発明の化合物、組み合わせ、組成物および製品はまた、例えば鼻腔への噴霧によって鼻腔内投与され得る。
【0135】
使用されるビヒクルおよび濃度に依存して、薬物は、ビヒクル中に懸濁され得るかまたは溶解され得るかのいずれかである。有利には、局所麻酔薬、保存剤および緩衝剤などのアジュバントは、ビヒクル中に溶解され得る。化合物、組み合わせ、組成物および製品はまた、坐剤として投与され得る。化合物、組み合わせ、組成物および製品は、吸入器または噴霧器を介してエアロゾルの形態で吸入によって投与され得る。本発明の薬学的化合物、薬学的組み合わせおよび医薬組成物は、例えば、クリーム、フォーム、ゲル、ローション、または軟膏として局所投与され得る。
【0136】
本発明の化合物、および必要に応じた追加の治療剤は、典型的には、薬学的に許容可能な担体または希釈剤との投与のために処方される。例えば、固体経口形態は、活性化合物とともに、可溶化剤、例えば、シクロデキストリンまたは修飾シクロデキストリン;希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、コーンスターチまたはジャガイモデンプン;潤滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム、および/またはポリエチレングリコール;結合剤;例えば、スターチ、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;崩壊剤、例えば、スターチ、アルギン酸、アルギネートまたはスターチグリコール酸ナトリウム;発泡混合物;染料;甘味料;湿潤剤、例えば、レシチン、ポリソルベート、ラウリルサルフェート;および、一般的に、製剤処方で使用される非毒性で薬理学的に不活性の物質を含み得る。このような医薬製剤は、公知の方法、例えば、混合、顆粒化、錠剤化、糖衣、またはフィルムコーティングプロセスによって製造され得る。
【0137】
経口投与のための液体分散液は、溶液、シロップ、エマルジョンおよび懸濁液であり得る。溶液は、可溶化剤、例えば、シクロデキストリンまたは修飾シクロデキストリンを含み得る。シロップは、担体として、例えば、サッカロースまたはグリセリンおよび/またはマンニトールおよび/またはソルビトールと一緒にサッカロースを含み得る。
【0138】
懸濁液およびエマルジョンは、平均粒径が微粉化またはナノ化テクノロジーによって粒径減少を受けた薬学的に活性な化合物を含み得る。例えば、本発明の化合物の平均粒径は、微粉化またはナノ化テクノロジーによって粒径減少を受けたものであり得る。
【0139】
懸濁液およびエマルジョンは、担体として、例えば、天然ガム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルアルコールを含み得る。筋肉内注入のための懸濁液または溶液は、活性化合物とともに、薬学的に許容可能な担体、例えば、滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール、例えば、プロピレングリコール;可溶化剤、例えば、シクロデキストリンまたは修飾シクロデキストリン、および所望であれば、適切な量のリドカイン塩酸塩を含み得る。
【0140】
静脈内または注入のための溶液は、担体として、例えば、滅菌水および可溶化剤、例えば、シクロデキストリンまたは修飾シクロデキストリンを含み得、あるいは好ましくは、それらは滅菌の水性の等張性の生理食塩水溶液の形態であり得る。皮膚への局所適用のために、化合物は、例えば、クリーム、ローションまたは軟膏にされ得る。薬物のために用いられ得るクリームまたは軟膏処方は、当該分野で周知の、例えば、英国薬局方などの薬剤学の標準的な教科書に記載の従来の処方である。
【0141】
吸入による局所適用について、化合物は、例えば、圧力駆動のジェット噴霧器または超音波噴霧器による、あるいは、好ましくは、推進剤駆動の定量エアロゾルまたは推進剤なしの微粉化粉末の投与、例えば、吸入カプセルまたは他の「乾燥粉末」送達システムによるエアロゾル送達のために処方され得る。例えば、推進剤(例えば、定量エアロゾルの場合のフリゲン(Frigen))、表面活性物質、乳化剤、安定化剤、保存剤、香味料、および充填剤(例えば、粉末吸入器の場合のラクトース)などの賦形剤は、このような吸入処方において存在し得る。吸入の目的のために、多数のアパラータ(apparata)が利用可能であり、患者に適切な吸入技術を用いて最適粒径のエアロゾルが生成され、そして投与され得る。特に、粉末吸入器の場合の定量エアロゾルのためのアダプター(スペーサー、エキスパンダー)および梨型の容器(例えば、Nebulator(登録商標)、Volumatic(登録商標)ならびにパファー(puffer)噴霧を発する自動デバイス(Autohaler(登録商標))の使用に加えて、多数の技術的解決法が利用可能である(例えば、Diskhaler(登録商標)、Rotadisk(登録商標)、Turbohaler(登録商標)または他の吸入器、例えばEuropean Patent Application 欧州特許出願EP 0 505 321に記載のもの)。
【0142】
治療有効量の本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体は、患者に投与される。典型的な1日用量は、例えば、用いられる化合物または特定の治療剤の組み合わせの活性、治療される被検体の年齢、重量および状態、疾患のタイプおよび重篤度ならびに投与の頻度および経路に従って、体重1kg当たり0.1〜25、0.2〜20または0.5〜15 mgである。1つの実施態様において、1日の投薬量レベルは、10〜1500 mg、好ましくは、15〜1000 mg、およびより好ましくは、20〜500 mgである。組み合わせが投与される場合、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体は、典型的には、少なくとも1 mg、好ましくは、少なくとも5 mg、10 mgまたは少なくとも20 mgの量で投与される。投与される本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体の量に対する好ましい上限は、典型的には、200mg、例えば、100 mg、50 mgまたは25 mgである。本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログまたは同位体標識した誘導体は、典型的には、5〜50 mg、好ましくは、10〜40 mgおよびより好ましくは、15〜30 mgの1日2回の投薬量で投与される。任意の追加の治療剤は、典型的には、その薬物に用いられる標準用量でまたはそれ未満で投与される。本発明の化合物、組み合わせまたは組成物は、典型的には、非毒性量で患者に投与される。
【0143】
本発明の実施態様において、本発明の化合物または組成物は、本発明の化合物が0.1 mg/kg〜25 mg/kgの1日用量で投与されるよう、投与される。好ましくは、本発明の化合物は、0.5 mg/kg〜15 mg/kgの1日用量で投与される。
【0144】
別の実施態様において、化合物は、10 mg〜1500 mgの1日用量で投与される。好ましくは、化合物は、20 mg〜500 mgの1日用量で投与される。
【0145】
さらなる実施態様において、化合物は、5 mg〜50 mgの1日2回の用量で、好ましくは、15 mg〜25 mgの1日2回の用量で投与され得る。
【0146】
本発明の実施態様において、本発明の化合物または組成物は、哺乳動物にインビボで送達される。別の実施態様において、哺乳動物はヒトである。特定の実施態様において、ヒトは緑内障と診断されており、緑内障を有すると知られており、緑内障を有すると疑われており、あるいは緑内障を発症する危険がある。実施態様において、ヒトは、緑内障を有すると知られており、そして緑内障のための追加の療法を受けている。特定の実施態様において、ヒトは萎縮型AMDと診断されており、萎縮型AMDを有すると知られており、萎縮型AMDを有すると疑われており、あるいは萎縮型AMDを発症する危険がある。実施態様において、ヒトは、萎縮型AMDを有すると知られており、そして萎縮型AMDのための追加の療法を受けている。
【0147】
本発明はまた、眼科的状態の治療および/または予防における使用のための、本発明の化合物、もしくはその薬学的に許容可能な塩、互変異性体、溶媒和物、水和物、プロドラッグ、誘導体、立体異性体、アナログもしくは同位体標識した誘導体、または本発明の組成物を含むキットを提供する。キットは、必要に応じて、混合物においてまたは別個の容器において、上記の追加の薬学的に活性な剤をさらに含む。本明細書中で定義した使用のための化合物または組成物の好ましい特徴は、本発明のキットの好ましい特徴でもある。
【実施例】
【0148】
実施例
方法 - インビトロ
Aβペプチドの調製
本明細書中Aβ42と呼ぶ組み換えAβ(M1-42)ペプチド(MDAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVG-SNKGAIIGLMVGGVVIA[配列番号1])をE. coli BL21 Gold (DE3)株(Stratagene, CA, U.S.A.)中で発現させ、そして若干の変更を加えて以前に記載したように精製した。簡潔には、精製手順は、E. coli細胞の超音波処理、8 M尿素への封入体の溶解、およびバッチモードでのジエチルアミノエチルセルロース上でのイオン交換ならびに凍結乾燥を含んだ。凍結乾燥した画分を、Superdex 75 HR 26/60カラム(GE Healthcare, Buckinghamshire, U.K.)を用いてさらに精製し、そして溶出物を、SDS-PAGEを用いて所望のタンパク質産物の存在について分析した。組み換えタンパク質を含む画分を合わせ、液体窒素を用いて凍結し、そして再度凍結乾燥した。
【0149】
小分子の調製
GVK BIOによって特別合成したネトグリタゾンを除いて、全ての小分子を99%を超える純度で購入した。小分子を最初に100% DMSOに可溶化して5 mMの濃度にし、次いでペプチド溶液中に希釈して最大1-3%の最終DMSO濃度に達した。本発明者らは、反応混合物へのDMSOの添加がAβ42凝集に対して効果を有しないことを確認した。
【0150】
動態実験のためのサンプルの調製
モノマーペプチドの溶液を、凍結乾燥したAβ42ペプチドを6 M GuHClに溶解することによって調製した。モノマー形態を、潜在的オリゴマー種および塩からSuperdex 75 10 /300 GLカラム(GE Healthcare)を用いて0.5 mL/分の流量で精製し、そして200 μM EDTAおよび0.02% NaN
3を添加した20 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 8中に溶出した。ピークの中央を集め、そしてペプチド濃度をε
280 = 1490 L mol
-1 cm
-1を用いて積算ピーク面積の吸光度から決定した。得られたモノマーを緩衝液で希釈して所望の濃度にし、そして1 mMストックから20 μMチオフラビンT(ThT)を添加した。全てのサンプルを氷上で低結合エッペンドルフチューブ中で調製し、注意深いピペット操作を用いて気泡の導入を防いだ。次いで、各サンプルを96-ウェル半面積低結合透明底およびPEGコーティングプレート(Corning 3881)の複数のウェルに1ウェル当たり80 μLでピペットで入れた。Aβ42動態を、ネトグリタゾン、ミトグリタゾン、ロシグリタゾン、リボグリタゾン、ピオグリタゾン、シグリタゾン、エングリタゾン、ダルグリタゾン、トログリタゾンおよびバラグリタゾンの不在下または存在下で行った。
【0151】
播種実験について、行った原線維を実験直前に調製した。動態実験を、200 μM EDTA、0.02% NaN
3および20 μM ThTを有する20 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 8中、5μM Aβ42サンプルについて上記の通り設定した。ThT蛍光を3時間モニターし、原線維の形成を確認した。次いで、サンプルをウェルから集めて低結合チューブに入れた。熟慮した条件(すなわち、5 μM Aβ42)下、モノマー濃度は平衡で無視できる。モノマー等価体における原線維の最終濃度を、モノマーの初期濃度に等しいと考えた。次いで、原線維を新たに調製したモノマーに加え、ネトグリタゾンの不在下または存在下、種の2%または50%のいずれかの最終濃度に達した。
【0152】
ヒトCSFにおけるAβ42凝集動態の実験について、3 μM Aβ42のモノマー溶液を、緩衝液が150 mM NaClで1 mM CaCl
2を加えた20 mM Hepes、pH 8であったことが唯一の例外で、上記と同様に調製した。得られたモノマーを緩衝液で希釈し、CSFの66%最終濃度に達し、ここでCSFの効果は最大に近い。Aβ42凝集動態を、1.25および5-倍過剰のネトグリタゾンの不在下または存在下で行った。
【0153】
Aβ40凝集動態をモニターする実験について、10 μMのAβ40濃度で、1.25-倍過剰のネトグリタゾンの不在下または存在下、Aβ42について上記したのと同様にして実験を行った。
【0154】
動態アッセイ
96-ウェルプレートを37℃、静止条件下、プレートリーダー(Fluostar Omega, Fluostar OptimaまたはFluostar Galaxy, BMGLabtech, Offenburg, Germany)中に配置することによってアッセイを開始した。ThT蛍光を、440 nm励起フィルターおよび480 nm発光フィルターを用いてプレートの底部を通して測定した。ThT蛍光は、各サンプルの3回の繰り返しに従った。
【0155】
理論的分析
合計の原線維質量濃度の時間発展は、Cohen et al., J Chem Phys 135, 065106, 2011に式(54)によって与えられた積分速度則によって、初期条件および系の速度定数のみの関数として記載する。
【0156】
興味深いことに、Aβ42について完全な集合プロセスを捕獲するために(Cohen et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 110(24), 9758-63, 2013)、速度定数の2つの特定の組み合わせのみが巨視的挙動の多くを定義する。これらは、一次経路
【0157】
【数1】
【0158】
を通した、および二次経路
【0159】
【数2】
【0160】
を通した新たな凝集体の形成速度に関係し、ここで、可溶性モノマーの初期濃度はm(0)で示され、n
cおよびn
2はモノマー濃度(Aβ42についてn
c= n
2 = 2)に対する一次および二次経路の依存性を記載し、そしてk
n、k
+およびk
2はそれぞれ一次核生成、伸長および二次核生成の速度定数である(Cohen et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 110(24), 9758-63, 2013)。Aβ42について、ここで考慮された条件(すなわち、Aβ42のマイクロモル濃度)下、解重合の速度は、反応の時間的経過の間中ずっと(すなわち、モノマーペプチドがほとんど完全に枯渇するまで)、原線維の伸長速度よりも顕著に遅く、それゆえこのプロセスは動態分析において無視され得る。
【0161】
阻害剤は、1つ以上の個々の微視的工程を阻害することによって、凝集プロセスを妨げ得る。本発明者らは、積分速度則(Cohen et al., J Chem Phys 135, 065106における式(54))を巨視的凝集プロファイルに適合させ、そしてネトグリタゾンの不在下および存在下、原線維形成の時間発展を記載するのに必要とされる微視的速度定数(予備形成した種の不在下のk
+k
2およびk
+k
n;予備形成した種の存在下のk
+およびk
2、ここで一次核生成は迂回される)の適合させたセットを比較することによって、化学化合物によって阻害される微視的事象を同定することができる。分析は、Aβ42凝集に対する他の小分子の効果を研究するためにHabchi et al., Proc Natl Acad Sci U S A;114(2):E200-E208, 2017において行われたのと類似している。
【0162】
分子の存在下、速度定数(k
n、k
2またはk
+)を用いて、本発明者らはまた:
【0163】
【数3】
【0164】
としてオリゴマーに対する反応フラックス(r(t))を概算することができる。
【0165】
オリゴマーの発生がピークに達する時間、および経時で発生したオリゴマーの合計数r(t)の時間積分)は、続いて予測することができる。
【0166】
ドットブロットアッセイ
Aβ42原線維-特異的抗体(OC, Millipore)を用いてブロッティングを行った。5-倍過剰のネトグリタゾンの不在下および存在下の2 μM Aβ42の凝集の時間的経過の間、4μL Aβ42アリコートをOCのブロッティングのために異なる時間点で混合物から取り出した。Aβ42アリコートをニトロセルロース膜(0.2 μm, Whatman)上にスポットし、次いで膜を乾燥し、次いで免疫検出前にBlocking One(Nacalai tesque)でブロックした。製造者の指示に従ってOCを用いた。Alexa Fluor(登録商標)488-結合二次抗体(Life technologies)を続いて加え、そして蛍光検出をTyphoon Trio Imager(GE Healthcare)を用いて行った。
【0167】
オリゴマー-特異的抗体のELISA-ベースの結合
20μlのアリコートを、5-倍過剰のネトグリタゾンの不在下および存在下、5μM Aβ42の凝集反応からt
50(すなわち、半時間)で取った。次いで、サンプルを、室温で1 h振盪することなく、96-ウェルMaxisorp ELISAプレート(Nunc, Roskilde, Denmark)上に固定化した。次いで、プレートを20 mM Tris pH 7.4、100 mM NaClで3回洗浄し、そして20 mM Tris pH 7.4、100 mM NaCl、5% BSA中、4℃で一晩の一定の振盪下、インキュベートした。その翌日、プレートを20 mM Tris pH 7.4、100 mM NaClで6回洗浄し、次いで5μMオリゴマー-特異的抗体の30 μl溶液とともに、室温で1時間または一晩のいずれかの一定の振盪下、インキュベートした。このインキュベーションの終わりに、プレートを20 mM Tris pH 7.4、100 mM NaClで6回洗浄し、そして20 mM Tris pH 7.4、100 mM NaCl、5% BSA中1:4000の希釈で6X His tag(登録商標)HRP結合(Abcam, Cambridge, UK)に対してポリクローナルウサギの30 μl溶液とともに、室温で1時間の一定の振盪下、インキュベートした。プレートを20 mM Tris pH 7.4、100 mM NaClで3回洗浄し、次いで20 mM Tris pH 7.4、100 mM NaCl、0.02% Tween-20で2回洗浄し、そして再度20 mM Tris pH 7.4、100 mM NaClで3回洗浄した。最後に、結合したオリゴマー-特異的抗体の量を、製造者の指示に従って、1-Step(登録商標)Ultra TMB-ELISA Substrate Solution(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA, United States)を用いることによって定量し、そしてCLARIOstarプレートリーダー(BMG Labtech, Aylesbury, UK)によって450 nmで吸光度を測定した。
【0168】
Ca
2+流入アッセイ
PLL-PEGコーティングしたホウケイ酸塩ガラスカバースライド(VWR International, 22x22 mm, 製品番号63 1-0122)につないだ単一のベシクルを、倒立Olympus IX-71顕微鏡に取り付けた油浸対物レンズ上に配置した。各カバースライドをFrame-Sealインキュベーションチャンバーに取り付け、そして50 μLのpH 6.5のHEPES緩衝液とともにインキュベートした。画像化の直前に、HEPES緩衝液を50 μLのCa
2+含有緩衝溶液L-15で置き換えた。カバースライドの16(4×4)画像を3つの異なる条件(それぞれバックグランド、Aβ42の存在下、およびイオノマイシン(Cambridge Bioscience Ltd, Cambridge, UK)の添加後)下で記録した。各視野間の距離を100 μmに設定し、そして自動化(ビーンシェル(bean-shell)スクリプト、マイクロマネージャー(Micromanager))していかなる使用者の偏見も回避した。各測定後、スクリプトはステージ(Prior H117, Rockland, MA, USA)が視野を開始位置に戻すことを可能とし、その結果、同一の視野は異なる3つの条件について獲得することができた。バックグランドの画像をL15緩衝液の存在下で獲得した。各視野について、50の画像を50 msの露光時間で取った。その後、目標値の2倍の濃度に希釈した50 μLの凝集反応物を添加し、そして10分間インキュベートした。次いで、1 mg/mLのイノマイシン(Cambridge Bioscience Ltd, Cambridge, UK)を含む溶液の10 μLを加え、そして5分間インキュベートし、そして続いて同じ視野中のCa
2+飽和単一ベシクルの画像を獲得した。記録した画像をImageJを用いて分析し、ネトグリタゾンありおよびなしでインキュベートした凝集混合物の存在下、3つの異なる条件下で各スポットの蛍光強度を決定した。
【0169】
方法-インビボ(C. elegans)
培地調製
C. elegans (S. Brenner, The genetics of Caenorhabditis elegans. Genetics. 77, 71-94 (1974))の増殖のために標準条件を用いた。簡潔には、動物を次亜塩素酸塩漂白によって同期させ、M9緩衝液(3g/l KH
2PO
4、6g/l Na
2HPO
4、5g/l NaCl、1μM MgSO
4)中で一晩孵化させ、そして続いてE. coli株OP50を播種した線虫増殖培地(NGM)(CaCl
21mM、MgSO
4 1mM、コレステロール5μg/mL、PBS緩衝液(250 μM KH
2PO
4、67.5 μM KCl、3.425 mMのNaCl、pH 6)、寒天17g/L、NaCl 3g/l、カゼイン7.5g/l)プレート上、20℃で培養した。OP50の飽和培養物を、50mlのLB培地(トリプトン10g/l、NaCl 10g/l、酵母抽出物5g/l)をOP50で接種し、そして培養物を37℃で16hインキュベートすることによって増殖させた。NGMプレートに、350μlの飽和OP50を各プレートに添加し、そしてプレートを20℃で2-3日放置することによって、細菌を接種した。同期後3日目、動物を5-フルオロ-2’デオキシ-ウリジン(FUDR)(特に明記しない限り75μM)を含むNGMプレート上に配置し、子孫の増殖を阻害した。
【0170】
株
以下の株を用いた:
GMC101 dvIs100[unc-54p::A-beta-1-42::unc-54 3’UTR + mtl-2p::GFP]。mtl-2p::GFPは、腸細胞中でGFPの構成的発現を生じる。unc-54p::A-beta-1-42は、インビボで凝集する体壁筋細胞中で全長ヒトAβ42ペプチドを発現する。20°〜24℃でのL4または若年成人動物の変化は、まひを引き起こす(G. McColl et al., Utility of an improved model of amyloid-beta (Aβ
1-42) toxicity in Caenorhabditis elegans for drug screening for Alzheimer's disease. Mol Neurodegener. 7, 57 (2012));
NL5901 (pkIs2386 [α-シヌクレイン::YFP unc-119(+)])(「α-syn蠕虫」)、ここでYFPに融合したα-シヌクレインは封入体に移転し、これは、孵化後早くも2日目に可視であり、そして動物の老化の間、後期成虫期(17日目)まで数および大きさが増加する(T. J. Van Ham et al., C. elegans model identifies genetic modifiers of α-synuclein inclusion formation during aging. PLoS Genetics. 4(2008));
CL2331; dvIs37 [myo-3p::GFP::A-Beta (3-42) + rol-6(su1006)](Aβ
3-42::GFP
Muscular蠕虫)。16Cで維持する。ローラー。体壁筋中で拡散および凝集したGFP発現。低い腹子数。より高い温度でより病的。(C. D. Link et al., The β amyloid peptide can act as a modular aggregation domain. Neurobiol. Dis. 32, 420-425 (2008));
CL2355 [pCL45 (snb-1::Abeta 1-42::3' UTR(long) + mtl-2::GFP](Aβ
1-42Neur蠕虫)。16Cで維持する。ヒトAbetaペプチドの汎神経発現。マーカー導入遺伝子からのGFPの構成的腸発現。株は、脂質中で走化性、連想的学習およびスラッシング(thrashing)の欠損を示す。株はまた、生殖細胞系列増殖の欠陥および胚性致死性のために不完全な不妊を有する(Y. Wu et al., Amyloid-beta-induced pathological behaviors are suppressed by Ginkgo biloba extract EGb 761 and ginkgolides in transgenic Caenorhabditis elegans. J. Neurosci. 26, 13102-13113 (2006));および
N2 C. elegans var. Bristolをコントロールとして用いた(また「健康」と標識した)。世代時間は、約3日である。腹子数は約350であり、野生型表現型、1973年に継代培養(S. Brenner, The genetics of Caenorhabditis elegans. Genetics. 77, 71-94 (1974))。
【0171】
薬物投与
薬物を以前に示した通り投与した(M. Perni et al., Massively parallel C. elegans tracking provides multi-dimensional fingerprints for phenotypic discovery. J. Neurosci. Methods. 306, 57-67 (2018); J. Habchi et al., An anticancer drug suppresses the primary nucleation reaction that initiates the production of the toxic Aβ42 aggregates linked with Alzheimers disease. Science Advances. 2, e1501244-e1501244 (2016); J. Habchi et al., Systematic development of small molecules to inhibit specific microscopic steps of Aβ42 aggregation in Alzheimer's disease. Proc Natl Acad Sci U S A. 114, E200-E208 (2017); M. Perni et al., Multistep Inhibition of α-Synuclein Aggregation and Toxicity in Vitro and in Vivo by Trodusquemine. ACS Chem Biol, 17;13(8):2308-2319 (2018))。
【0172】
簡潔には、ネトグリタゾンストック(100% DMSO中5 mM)を適切な濃度で用い、9-cm NGMプレートに播種した。次いで、プレートを室温(22℃)で4時間までラミナーフローフード(laminar flow hood)中に配置し、乾燥した。次いで、C. elegans培養物を、後の処置のためにL4ステージとしてまたは3日目に化合物を播種した培地上に移し、そして全体の実験のために24°でインキュベートした。実験を、1% DMSO中0.05〜500 μMの範囲の異なるネトグリタゾン濃度で行った。コントロールとして、1% DMSOのみを播種したプレートを用いた。
【0173】
自動化運動性アッセイ
全てのC. elegans集団を20℃で培養し、そして4 h産卵から発生的に同期した。産卵後64-72 h(時間0)で、個々をFUDRプレートに移し、そして身体運動を示した時間にわたって評価した。異なる年齢で、動物をM9緩衝液を用いてプレートから洗い落とし、そしてOP-50未播種9 cmプレートに広げ、その後、それらの運動を20 fpsで近年開発された顕微鏡手順(M. Perni et al., Massively parallel C. elegans tracking provides multi-dimensional fingerprints for phenotypic discovery. J. Neurosci. Methods. 306, 57-67 (2018))を用いて1分記録した。600匹までの動物を、特に明記しない限り各実験において2回計数した。各一連の実験において測定した3つ以上の代表例である1つの実験を示し、そしてビデオを特注のトラッキングコード(M. Perni et al., Massively parallel C. elegans tracking provides multi-dimensional fingerprints for phenotypic discovery. J. Neurosci. Methods. 306, 57-67 (2018))を用いて分析した。
【0174】
生存C. elegansにおける染色および顕微鏡検査
プラーク染色を以前に記載した通り行った(J. Habchi et al. (2016); M. Perni et al., A natural product inhibits the initiation of α-synuclein aggregation & suppresses its toxicity. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 114, E1009-E1017 (2017))。簡潔には、生存トランスジェニック動物を広範な濃度および時間にわたってNIAD-4とともにインキュベートし、1 μM NIAD-4 (M9緩衝液中0.1% DMSO)では室温で4時間。染色後、動物をNGMプレート上で約24時間回復させ、正常な代謝を介して脱染させた。染色した動物を、画像化のためのガラス顕微鏡スライド上、麻酔薬として40 mM NaN
3を含む2%アガロースパッド上に置いた。画像を、20×対物および49004 ET-CY3/TRITCフィルター(Chroma Technology Corp)を有するZeiss Axio Observer D1蛍光顕微鏡(Carl Zeiss Microscopy GmbH)を用いてキャプチャーした。蛍光強度をImageJソフトウェア(米国国立衛生研究所)を用いて計算し、次いで補正合計細胞蛍光として正規化した。消化管における高いバックグランドシグナルのため、頭部のみを考慮した。全ての実験を3回行い、そして1つの代表的実験からのデータを示す。統計的有意性はt検定を用いて決定した。
【0175】
走化性アッセイ
走化性測定を以前に記載した通り(O. Margie, C. Palmer, I. Chin-Sang, C. elegans Chemotaxis Assay. J Vis Exp, e50069 (2013))および
図6Cに説明した通り行った。簡潔には、成虫の同期したトランスジェニックC. elegans CL2355蠕虫および野生型の健康な蠕虫を5 μMネトグリタゾンとともにまたはなしで24℃で5日間インキュベートした。成虫期の6日目、次いで蠕虫を集め、M9緩衝液で3回洗浄し、そしてそれぞれ誘引物質または試験条件として50 μlのOp50細菌の10X培養物または滅菌水を播種し、そして1 μlの1Mレバミゾールと組み合わせた9cmスクリーニングプレート(1.9%寒天、1 mM CaCl
2、1 mM MgSO
4、および25 mMリン酸緩衝液、pH 6.0)中でアッセイした。約200匹の蠕虫をプレートの中央の四分円に配置し、そして24℃で8 hインキュベートし、その後走化性指標(CI)を採点した。CIは以下のように定義した(O. Margie et al (2013)):
(誘引物質の位置での蠕虫の数−コントロールの位置での蠕虫の数)/プレート上の蠕虫の合計数
【0176】
中央の四分円に残った蠕虫は排除した。
【0177】
ROS産生および測定
ROS-Glo(登録商標)H
2O
2細胞キットアッセイを用い(Promega, Fitchburg, Wisconsin, USA)、そしてC. elegans研究に適合させた。The ROS-Glo(登録商標)H
2O
2アッセイは、反応性酸素種(ROS)であるH
2O
2のレベルを、細胞培養物または組織中あるいは定義した酵素反応中で直接測定する生物発光アッセイである。誘導体化ルシフェリン基質をサンプルとともにインキュベートし、そしてH
2O
2と直接反応してルシフェリン前駆体を発生する。1% DMSO中の5 μMネトグリタゾンまたは1% DMSOのみで処置した蠕虫を、M9緩衝液を用いてNGMプレートから洗い落とした。次いで、緩衝液を3回交換し、過剰の細菌を除去した。次いで、蠕虫ペレットを3つのウェルに分割し、そして80 μlの蠕虫ペレット(約200匹の蠕虫/ウェル)を20 μlのROS基質溶液(Promega, Fitchburg, Wisconsin, USA)とともにRTで6 hインキュベートし;300 rpmでの穏やかな振盪を用いて蠕虫の沈殿を避け;その後、蠕虫を100 μlの検出溶液とともに約20分インキュベートし;次いで、発光をClariostar(BMG Labtech, Aylesbury, UK)を用いて測定した。
【0178】
試験例
試験の抗糖尿病薬ネトグリタゾンは、チアゾリジンジオン群に属するペルオキシソーム増殖剤-活性化受容体(PPAR)アゴニストである。本発明者らは、ヒト脳脊髄液(CSF)における測定を含む広範な生化学、生物物理学ツールを用いて、およびAβ-媒介毒性のインビボモデルであるシノラブディス・エレガンス(C. elegans)を用いて、ネトグリタゾンおよび他のグリタゾンの効果を確認した。その単純な生体構造、短い寿命および確立された遺伝学によって特徴付けられた、線形動物の蠕虫シノラブディス・エレガンスは、生物医学研究における、特に遺伝子研究および薬物スクリーニングのための強力なモデル有機体になった。これらの蠕虫は、小さく(長さが約1 mm)、透明であり、操作しやすく、卵から成虫まで25℃で3日の短い成熟期ならびに2および3週間の寿命を有し、それらの生物学の複数の局面の迅速な研究を容易にする特徴を有する。それにもかかわらず、それらは、細胞の複雑性およびより高度な有機体のそれに匹敵する組織特異的タンパク質発現プロファイルを有する。結果として、C. elegansは、神経変性、特にタンパク質凝集の原因となる分子メカニズムの特性評価のためのモデル有機体として一般に用いられる。
【0179】
C. elegansの健康および適応度は、1分あたりの身体の屈曲の数(BPM)を計数することによって、または蠕虫の運動の速度を測定することによって、液体培地中で通常定量化されている。このような研究における他の鍵となる読み出しは、寿命およびまひであり、これらは、例えば、最近、特定の遺伝子および寿命を調節する化合物の同定、酸化的ストレスとミトコンドリア機能との間の関連性、および神経変性疾患についての要因を含む老化の分野における主要な発見へと至った。
【0180】
最も確固たる方法で治療法の効果をスクリーニングするために、広い視野線虫追跡プラットフォーム(WF-NTP)を用い、これは大きな蠕虫集団に対する複数の表現型読み出しの同時調査を可能とする。WF-NTPは、5000匹までの動物を並行してモニターし、そして表現型の読み出しは複数の平行パラメーターを含む。
【0181】
特にネトグリタゾンを含むいくつかのグリタゾンが、適応度およびROS産生に関して健康なコントロール蠕虫の表現型を復元することができるが、同種のα-シヌクレイン-媒介毒性PDモデルを復元することができず、従ってAβペプチドの凝集に対するそれらの特異性を示唆していることが示されている。最後に、Aβ-媒介毒性モデル蠕虫(「Aβ蠕虫」)の適応度において観察された改善が、それらのライフサイクルの間に蠕虫において形成される凝集体の量の減少に極めてよく相関することが示されている。
【0182】
以下の非限定の実施例は、本発明を説明する。
【0183】
実施例1 - ネトグリタゾンは濃度-依存様式でAβ凝集を阻害する。
Aβ42原線維形成を、ネトグリタゾンの不在下および存在下、2 μM Aβ42サンプルを用いてインビトロでモニターした。Aβ42のみについて、凝集の半時間は、用いた緩衝液条件下、おおよそ2 hであった。Aβ42凝集の実質的な遅延は、濃度-依存様式で観察した。これは、
図1aおよび1bにおいて分かり得る。
【0184】
これらの効果をさらに調査するため、および化合物のAβ42原線維に結合するThTおよび蛍光測定への可能な妨害を排除するために、Aβ42原線維の量を、5-倍過剰のネトグリタゾンの不在下および存在下、原線維-感受性OC一次抗体でのドットブロットアッセイを用いて、凝集反応の間の8つの時間点で精査した。これらの結果は、
図1cにおいて分かり得る。ドットブロットアッセイにおいてネトグリタゾンによって誘起された遅延は、実験誤差内で、ThT-ベースのアッセイにおいて観察されたのと同一であることが見い出された。
【0185】
実施例2 - ネトグリタゾンは一次および二次経路を阻害する。
試験の凝集プロファイルを、原線維形成の時間発展を異なる微視的事象の速度定数に関連付けるマスター方程式から導かれた速度則を用いて計算した速度曲線に適合させることによって、分子の効果について定量分析を行った。このアプローチにおいて、阻害剤の存在下での凝集プロファイルは、阻害剤の不在下で評価した各微視的速度定数に対する適切な摂動を速度則に導入することによって記載される。次いで、異なる濃度の阻害剤の存在下での凝集プロファイルを記載するために要求される速度定数の修正は、ネトグリタゾンの存在によって影響を受ける特定のプロセスを示す。
【0186】
小分子の存在下、データは、一次(k
nk
+)および二次(k
2k
+)経路の両方の速度定数が減少する場合、極めてよく記載され、ここで、k
nは一次核生成の速度定数であり、k
2は表面触媒二次核生成の速度定数であり、およびk
+は伸長の速度定数である。全ての速度曲線を、一次および二次経路の両方が同時に減少し、かつ両方の経路の速度定数が小分子の濃度に対してプロットされたシミュレーションと比較した。これらの結果は、
図1dおよび1eにおいて分かり得る。この分析は、ネトグリタゾンがAβ42凝集における両方の核生成経路に異なる程度で影響を与え得ることを明らかにする。反応の終わりでのThT蛍光の増加を試験し、そして全ての場合において同様の値が見い出された。これらの結果は、ドットブロットアッセイに一致して、同様の原線維質量濃度が、小分子が存在するかしないかどうかに関わらず形成することを示唆する。ペプチドの濃度がインビボでずっと低いと仮定すると、ずっと低い濃度の薬物がAβ42凝集の速度定数に同程度影響を与えるために必要であることが予想される。
【0187】
実施例3 - ネトグリタゾンはAβ凝集の触媒サイクルをブロックする。
凝集反応の異なる工程、特に表面触媒二次核生成および伸長工程に対するネトグリタゾンの効果をさらに探索するために、追加の一連の動態測定を、ネトグリタゾンおよび2%または50%のいずれかの予備形成した原線維種の存在下で行った。ネトグリタゾンの不在下、これらの条件下での正規化した動態プロファイルは、
図1fにおいて分かり得る。50%の予備形成した原線維について、一次および二次核生成工程は、迂回され、そして成熟原線維の形成は、原線維種によって促進される伸長反応によって大きく加速される。これらの条件下、ネトグリタゾンは、ペプチドに対して20-倍過剰の濃度でさえ、2 μM Aβ42の凝集動態に影響を与えなかった。これは、
図1gにおいて分かり得、そしてネトグリタゾンが伸長に対して効果を有しないことを強く示す。
【0188】
Aβ42凝集の二次経路に対するネトグリタゾンの効果についてより完全な評価を得るために、2%原線維種の存在下、2 μM Aβ42サンプルの凝集動態を測定した。これらの結果は
図1hにおいて分かり得る。実験速度曲線に基づくシミュレーションは、最小比(1%)の予備形成した種が溶液中に導入された場合でさえ、一次核生成が完全に迂回されることを示す。対照的に、表面触媒二次核生成および伸長は、異なる方法で全体の動態に寄与し、伸長の寄与は種濃度が増加するにつれてより重大になる。従って、異なる種濃度を用いたAβ42の凝集動態に従うことによって、反応経路の表面触媒二次核生成および伸長工程への分離が可能となる。これは、そうでなければ予備形成した種の不在下での凝集動態から直接検出できないかもしれない単一の微視的工程レベルでの小分子の効果を特徴付けるために極めて重要である。2%種でのデータは、ネトグリタゾンの存在下でのAβ42凝集の二次経路の濃度依存的阻害(すなわち、k
2k
+の減少)を示した。これは、
図1hにおいて分かり得る。この場合において、減少は、20倍過剰で原線維の伸長、すなわちk
+に対する効果が観察されなかったので、表面触媒二次核生成の速度定数、すなわちk
2の減少にのみ起因し得た。これは、
図1gにおいて分かり得る。速度定数は、速度曲線から定量的に導かれ得、そして
図1iに示すように、20-倍過剰のネトグリタゾンの存在下で約80%減少したことが見い出された。
【0189】
実施例4 - ネトグリタゾンは、Aβ42凝集を生体外で遅らせ、そしてAβ、Aβ40の40-残基アイソフォームの凝集を阻害する。
ネトグリタゾンがより生理学的に関連する条件下でAβ42凝集を遅らせるかどうかを探索した。従って、ヒト脳脊髄液(CSF)中のAβ42の凝集動態に対するネトグリタゾンの効果をモニターした。CSFはAβ42凝集の濃度依存的遅延を引き起こし、Aβ42凝集が、以前の結果と一致して、この液中でより遅いことを示唆する。次いで、本発明者らは、CSFの効果が最大、すなわち66%に近い条件下でネトグリタゾンの効果を調査した。
図1jにおいて分かり得るように、これらの条件下、ネトグリタゾンは、緩衝液中で観察されたのと同様の濃度依存様式で凝集動態を顕著に遅らせた。Aβペプチドの凝集に対するネトグリタゾンの効果をさらに調査するために、同様の動態実験を40-残基アイソフォームであるAβ40に対して行った。興味深いことに、
図1kに示すように、ネトグリタゾンが42-残基アイソフォームと同様にAβ40凝集を阻害することができることが見い出された。
【0190】
実施例5 - ネトグリタゾンは、細胞毒性オリゴマーの形成を阻害し、そして脂質膜の破壊におけるそれらの効果を防ぐ。これらの知見をAβ42オリゴマーの毒性形態の発生に対する可能な効果に置き換えるために、シミュレーションおよび実験ツールの組み合わせを用いてAβ42オリゴマーの形成に対するネトグリタゾンの効果を評価した。実際、
図1lに示すように、5-倍過剰のネトグリタゾンの不在下または存在下でのAβ42の2 μMサンプルの凝集速度曲線から、一次および二次プロセスの両方からのオリゴマーの形成の総速度をシミュレーションした。一次および二次核生成の両方の速度の減少は、凝集反応の間に発生する毒性オリゴマーの全負荷を著しく減少させると予想される。この予想に一致して、シミュレーションは、ネトグリタゾンによるAβ42凝集における一次および二次核生成工程の阻害が、オリゴマーの形成の著しい遅延およびそれらの数の減少を伴うことを示す。これらの結果は、
図1mおよび1nにおいて分かり得る。これは、ネトグリタゾンの存在下での凝集反応の間に形成されるAβ種の低下した毒性に至ると予想される。しかし、Aβの凝集プロセスの間に形成される毒性中間種の特性評価および定量は、これらの種の一時的性質のために非常に難易度が高い。この問題に実験的に対処するために、タンパク質凝集体によって破壊される脂質ベシクル中へのCa
2+流入の測定を可能とする最近開発された超高感度アッセイ(Flagmeier, P., De, S., Wirthensohn, D., Lee, S. F., Vincke, C., Muyldermans, S., Knowles, T. P., et al. (2017). Ultrasensitive Measurement of Ca(2+) Influx into Lipid Vesicles Induced by Protein Aggregates.. Angewandte Chemie - International Edition, 56 (27), 7750-7754. https://doi.org/10.1002/anie.201700966)を用いた。実際、広範囲の実験的証拠は、凝集体-誘起細胞傷害の鍵となるメカニズムが、ニューロン細胞において観察されるプロセスである非特異的細胞膜破壊であることを示唆する。興味深いことに、これらの実験に基づいて、速度曲線からのシミュレーションは、脂質破壊アッセイを用いた測定と一致することが見い出された。実際、
図1lにおける動態から導かれた
図1mおよび1nに示すシミュレーションは、5-モル当量でネトグリタゾンの存在によって誘起されるAβ42の凝集における遅延が、オリゴマーの数を減少させると予想されることを示唆する。興味深いことに、時間0hで5-倍過剰のネトグリタゾンを2 μM Aβ42溶液に加えた場合の脂質破壊アッセイから得られた実験データは、シミュレーションと一致して、ネトグリタゾンが細胞毒性種-誘起ベシクル破壊を防いだことを示した。実際、0hおよび2h(ネトグリタゾンの不在下で凝集完了に対する半時間)でのAβ42の凝集反応から取り出したサンプルは、
図1oに示すように、脂質膜の破壊に対する形成した種の効果において著しい差異を示した。これは、オリゴマー種の大部分が凝集反応の半時間付近で形成され、これらの種の形成がネトグリタゾンの添加によって遅らされることを示した核形成速度のシミュレーションと一致する。
【0191】
次に、オリゴマー-特異的抗体を用いてELISAを行い、ネトグリタゾンの不在下および存在下での凝集反応によって形成されるAβ42オリゴマーの濃度の直接測定を可能とした。
図1pに示す結果は、ネトグリタゾンの存在下でのAβ42オリゴマー濃度の著しい減少を実証する。動態研究によって予測されるように、これはさらに、ネトグリタゾンがAβ42の凝集を効果的に抑制することができることを確認する。
【0192】
実施例6 - ネトグリタゾンは、Aβ-媒介毒性のC. elegansモデル(GMC101)において、Aβペプチドの凝集によって誘起される毒性を救援し、そしてプラーク負荷を減少させる。
インビトロで観察されるAβ凝集の阻害をさらに確認するために、ネトグリタゾンの効果をAβ-媒介毒性の周知のモデル(GMC101)を用いて試験した。このモデルにおいて、ヒトAβペプチドの42-残基アイソフォームをC. elegans蠕虫の大きな筋肉細胞において過剰発現させ、そしてこれは年齢依存タンパク質凝集および結果として生じる筋まひに至る。
【0193】
治療計画は、最初、
図2aに示すように最終幼生期L4(すなわち、まひの発症前)でのネトグリタゾンの投与によって定義され、次いで、Aβ蠕虫の運動性をWF-NTPプラットフォームを用いて成虫期の異なる年齢でスクリーニングした。最良の保護効果は、
図2bおよび2cに示すように0.5-5 μMの間の濃度範囲について成虫期のD3で観察されることが見い出された。インビボで観察された効果の特異性をさらに確認するために、同じ濃度範囲のネトグリタゾンをα-シヌクレイン-媒介毒性蠕虫(「α-syn蠕虫」)に投与し、そして両方の場合において、効果は、Aβ蠕虫において観察された効果と比較して無視できることが見い出された。これは、
図2bおよび2cにおいて分かり得る。
【0194】
次の工程として、蠕虫におけるAβペプチドの凝集プロファイルに対するネトグリタゾンの効果を調査した。アミロイド特異的染料NIAD-4を用いることによって、生存Aβ蠕虫におけるプラーク負荷を染色することが可能であった。
図2dおよび2eに示すように、0.5 μMのネトグリタゾンの投与がAβ蠕虫におけるプラーク負荷を著しく減少させることができたことが観察された。
【0195】
蠕虫代謝活性に対するネトグリタゾンの効果を調査した。具体的には、Aβ-媒介毒性を有する動物において上方制御されるROS産生のレベルを、健康なコントロールと比較して測定し、そして
図2fに示すようにネトグリタゾンが酸化性種のレベルを著しく減少させたことが観察された。Aβ蠕虫におけるネトグリタゾンの最大許容用量は、
図2gに示すように50 μM未満であると決定されたことに留意する。
【0196】
L4でのネトグリタゾンの投与は、理論的には、幼生期ではタンパク質凝集体は形成されていないので、予防的治療に相当する。これは、ネトグリタゾンが一次経路を著しく阻害することができたインビトロ研究と極めてよく相関する。ネトグリタゾンがまた表面触媒二次核生成の速度を減少させ、そしてそれゆえ凝集体増殖の触媒サイクルをブロックすることができたと仮定して、インビボでのこの効果の評価を探求した。ネトグリタゾンを、タンパク質凝集体が既に形成され、かつAβ-媒介毒性を有する動物における表現型の機能不全がすでに観察され得る状況である成虫期のD3で投与した。その結果として、薬物の任意の可能な効果は、蠕虫内部の凝集の触媒サイクルをブロックすることによる治療的介入に帰する。興味深いことに、インビトロ研究と一致して、この投与計画はまた、D6でのプラーク負荷の著しい減少ならびに蠕虫の運動性および生存率の増加をもたらし、従ってネトグリタゾンがインビボならびにインビトロでの二次核生成プロセスに影響を与えることを示唆することが見い出された。これらの結果を
図2h、2iおよび2jに示す。
【0197】
実施例7 - Aβ凝集の阻害における他のグリタゾン化合物。
Aβ42原線維形成を、実施例1と同じ方法で、それぞれシグリタゾン、エングリタゾン、ダルグリタゾン、トログリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、リボグリタゾン、バラグリタゾンおよびミトグリタゾンの存在下、2 μM Aβ42サンプルを用い、インビトロで蛍光強度をモニターした。
【0198】
シグリタゾン、エングリタゾン、ダルグリタゾンおよびトログリタゾンを、Aβ42凝集を遅らせるために観察した。特に、シグリタゾンおよびエングリタゾンは凝集を著しく遅らせた。これは、
図3および5において分かり得る。
図4および5に示すように、5x薬物:タンパク質濃度でのピオグリタゾン、ロシグリタゾン、リボグリタゾン、バラグリタゾンおよびミトグリタゾンの存在下、Aβ42凝集の遅延はほとんどまたは全く観察されなかった。
【0199】
実施例8 - Aβ
1-42Neur蠕虫の走化性指標および運動性ならびにAβ
3-42::GFP
Muscular蠕虫の運動性に対するネトグリタゾンの効果。
Aβペプチドの汎ニューロン発現を示すAβ
1-42Neur蠕虫を用いて追加のC. elegansモデルでのさらなる実験を行った。ネトグリタゾンを1% DMSO中0.05〜500 μMの範囲の濃度で投与した。コントロールとして、1% DMSOのみを播種したプレートを用いた。
【0200】
自動化運動性アッセイを行い、そして動物の運動を記録した。
図6Bに示すように、結果は、ネトグリタゾンが未処置蠕虫と比較してAβ
1-42Neur蠕虫の運動性を著しく改善することを実証する。
【0201】
また、走化性アッセイを、
図6Cに示すように、5 μMネトグリタゾンとともにまたはなしでインキュベートしたAβ
1-42Neur蠕虫および野生型の健康な蠕虫を用いて行った。
図6Aに示すように、走化性指標は、未処置蠕虫と比較してネトグリタゾンで処置したAβ
1-42Neur蠕虫において著しく改善された。
【0202】
また、運動性実験をAβ
3-42::GFP
Muscular蠕虫で行った。
図6Dに示すように、結果は、ネトグリタゾンがまた、未処置蠕虫と比較してこの株の運動性を著しく改善することを実証する。