(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-520441(P2021-520441A)
(43)【公表日】2021年8月19日
(54)【発明の名称】反応器カスケードにおけるエチレンコポリマーを製造するための懸濁プロセス
(51)【国際特許分類】
C08F 2/01 20060101AFI20210726BHJP
C08F 2/18 20060101ALI20210726BHJP
【FI】
C08F2/01
C08F2/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-567235(P2020-567235)
(86)(22)【出願日】2019年6月19日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月2日
(86)【国際出願番号】EP2019066121
(87)【国際公開番号】WO2019243384
(87)【国際公開日】20191226
(31)【優先権主張番号】18179141.9
(32)【優先日】2018年6月21日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】500289758
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(74)【代理人】
【識別番号】100196449
【弁理士】
【氏名又は名称】湯澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】ダム、エルケ
(72)【発明者】
【氏名】キュール、ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】カルバハル、ロドリーゴ
【テーマコード(参考)】
4J011
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011AC03
4J011BB09
4J011BB16
4J011DA03
4J011DB12
4J011DB27
4J011DB32
4J011JB13
(57)【要約】
第1の重合反応器及び1つ以上の後続の重合反応器を含む反応器カスケードにおける懸濁液中のマルチモーダルエチレンコポリマーを製造するプロセスであって、反応器カスケードにおける形成された懸濁液をマルチモーダルエチレンコポリマー粒子及び回収された懸濁媒質に分離されるステップ、上記回収された懸濁媒質中の精製された成分を生成するために精製セクションにおいて、上記回収された懸濁媒質の一部を精製するステップ、及び上記回収された懸濁媒質中の精製された成分の少なくとも一部または一部を反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環させるステップを含み、上記希釈剤を含む第1の重合反応器に再循環される回収された懸濁媒質中の精製された成分は、上記第1の重合反応器内に導入される前に触媒水素化を起こす、反応器カスケードにおける懸濁液中のマルチモーダルエチレンコポリマーを製造するプロセス、及び反応器カスケードにおける懸濁液中のオレフィンモノマーを重合するための装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の重合反応器及び1つ以上の後続の重合反応器を含む反応器カスケードにおける懸濁液中のマルチモーダルエチレンコポリマーを製造するプロセスであって、
反応器カスケード内において、重合触媒の存在下で、40〜150℃の温度及び0.1〜20MPaの圧力でエチレン及び1つ以上のC3−C12−1−アルケンを重合し、希釈剤を含む懸濁媒質中でマルチモーダルエチレンコポリマー粒子の懸濁液を形成するステップ、
マルチモーダルエチレンコポリマー粒子の懸濁液を分離機内に移すステップであって、上記懸濁液がマルチモーダルエチレンコポリマー粒子及び回収された懸濁媒質に分離されるステップ、
回収された懸濁媒質中の精製された成分を生成するために、精製セクションにおいて回収された懸濁媒質の一部を精製するステップ、及び
回収された懸濁媒質中の精製された成分の少なくとも一部または一部を反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環させるステップ、を含み、
前記希釈剤を含む第1の重合反応器に再循環される回収された懸濁媒質中の精製された成分は、前記第1の重合反応器内に導入される前に触媒水素化を起こす、プロセス。
【請求項2】
前記第1の重合反応器に再循環される回収された懸濁媒質中の精製された成分は、回収された懸濁媒質の5〜70重量%に達する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
エチレンホモポリマーは、前記第1の重合反応器で製造され、エチレンのコポリマーは、前記後続の重合反応器で製造される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記反応器カスケードに供給されるコモノマーのうちの1つの標準沸点と前記希釈剤の標準沸点との間の差、あるいは希釈剤が成分の混合物である場合、前記反応器カスケードに供給されるコモノマーのうちの1つの標準沸点と前記希釈剤の最初の標準沸点または最終の標準沸点との間の差は15℃以下であり、前記標準沸点は、1013.25hPaでの沸点として定義される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記マルチモーダルエチレンコポリマーは、エチレン−1−ヘキセンコポリマーである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記マルチモーダルエチレンコポリマーは、少なくとも2種のコモノマーを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記マルチモーダルエチレンコポリマーは、コモノマーとして少なくとも1−ヘキセン及び1−ブテンを含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記回収された懸濁媒質の一部は、後続の重合反応器に直接再循環される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記回収された懸濁媒質の精製された部分を生成するためのプロセスは、前記回収された懸濁媒質の一部を蒸発させた後、懸濁媒質中の蒸発された部分を再凝縮させるステップを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記回収された懸濁媒質の精製された部分を生成するためのプロセスは、蒸留ステップを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記回収された懸濁媒質中の精製された成分を生成するためのプロセスは、ワックスの除去ステップを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記反応器カスケードの第1の重合反応器から回収されたポリエチレン粒子の懸濁液は、分離機に供給され、ここで、前記懸濁媒質の一部が懸濁液から分離され、前記反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環され、ポリエチレン粒子の濃縮された懸濁液は、前記反応器カスケードの次の重合反応器に移される、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記反応器カスケードは、少なくとも3つの重合反応器を含み、第2の重合反応器から回収されたポリエチレン粒子の懸濁液は、分離機に供給され、ここで、前記懸濁媒質の一部は、懸濁液から分離され、前記第2の重合反応器に再循環され、ポリエチレン粒子の濃縮された懸濁液は、第3の重合反応器内に移される、請求項1〜12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
反応器カスケードにおける懸濁液中のオレフィンモノマーを重合するための装置であって:
− 反応器カスケードを形成する少なくとも2つの直列に連結された重合反応器、
− ポリオレフィン粒子の懸濁液と回収された懸濁媒質を分離させるための分離機、
− 反応器カスケードのうちの1つの重合反応器から反応器カスケードのうちの次の重合反応器へ、そして反応器カスケードのうちの最終の重合反応器から分離機に懸濁媒質中のポリオレフィン粒子の懸濁液を移すための移送ライン、及び
− 回収された懸濁媒質の一部を反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環させるための再循環ライン;を含み、
前記回収された懸濁媒質の一部を反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環させるための再循環ラインには触媒水素化ユニットが装備される、装置。
【請求項15】
前記反応器カスケードの第1の重合反応器から前記反応器カスケードの次の重合反応器にポリオレフィン粒子の懸濁液を移すための移送ラインには、前記反応器カスケードの第1の重合反応器から反応器カスケードの次の重合反応器に移される懸濁液から懸濁媒質の一部を分離させるための分離機が装備され、前記装置は、反応器カスケードの第1の重合反応器と反応器カスケードの次の重合反応器との間に設置された分離機における懸濁液から分離された懸濁媒質を反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環させるための再循環ラインをさらに含む、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、反応器カスケードにおける懸濁液中のマルチモーダルエチレンコポリマーを製造するプロセスを提供する。特に、本開示は、反応器カスケードにおける形成されたマルチモーダルエチレンコポリマー粒子の懸濁液が分離機に移され、マルチモーダルエチレンコポリマー粒子及び回収された懸濁媒質に分離される反応器カスケードにおける懸濁液中のマルチモーダルエチレンコポリマーを製造するプロセスを提供し、ここで、回収された懸濁媒質の一部は、回収された懸濁媒質中の精製された成分を生成するための精製セクションにおいて精製され、回収された懸濁媒質中の精製された成分の少なくとも一部または一部は反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環される。
【背景技術】
【0002】
反応器カスケードにおける懸濁液中のエチレンコポリマーを製造するプロセスは、エチレンポリマーを生成するために確立された方法であり、例えば、EP0905152A1またはWO2012/028591A1に開示されている。このようなプロセスは、重合反応器における異なる反応条件を設定し、個々の重合反応器における異なるポリマー組成を生成することが可能となる。したがって、生成されたマルチモーダルエチレンコポリマーは、例えば、生成物特性及び加工性の優れた組み合わせを有することを特徴とする。エチレンポリマーを製造するための懸濁プロセスは、一般に炭化水素または炭化水素混合物を希釈剤として使用する。しかしながら、液相または超臨界相の懸濁液を形成する懸濁媒質は、主成分として希釈剤の他にも溶解されたエチレン、コモノマー、アルミニウムアルキル、及び水素などのさらなる成分、ならびにオリゴマー及びワックスなどの溶解された反応生成物を含む。反応器カスケードにおける懸濁液中のマルチモーダルエチレンコポリマーを生成する原理は、例えば、文献[F.AltなどのMacromol.Symp.2001,163,135−143]に開示されている。
【0003】
生成されたエチレンコポリマーの高分子特性は、分子量分布またはコモノマー含量などの媒介変数のみならず、組み込まれたコモノマーによっても異なることがよく知られている。コモノマーの鎖の長さが長くなるにつれ、フィルム性能または環境応力亀裂抵抗性(ESCR)などの生成物特性が一般的に増加する。それにもかかわらず、エチレン/1−ブテンコポリマーなどの比較的に短鎖のコモノマーを有するエチレンコポリマーが依然として商業的に重要な高分子である。
【0004】
エチレン重合プロセスを商業的な側面で成功的に操作させるためには、重合反応器から生成されたポリマーとともに排出される未反応モノマーを重合プロセスに再循環させる必要がある。懸濁重合プロセスにおいては、懸濁媒質中の他の成分も可能な限り経済的に再循環させる必要がある。したがって、成分を分離せずに懸濁媒質を直接再循環させることはオプションである。しかしながら、高いESCRなどの優れた機械的特性を有するマルチモーダルエチレンコポリマーを生成するためには、重合反応器のうちの1つにおける重合の1つがエチレン単独重合であることがしばしば必要とされる。これは、このような重合反応器に供給されるすべてのストリーム(stream)には、コモノマーが欠如されていることを意味する。混合物から液体組成中の不要な成分を除去するための一般的な方法は、蒸留である。しかしながら、蒸留による効果的な分離を経済的な方法で実行するためには、成分の沸点が十分に離れている必要がある。
【0005】
したがって、懸濁液中でエチレンポリマーを製造するための一般的な技術は、コモノマーと希釈剤の特定の組み合わせを使用する。商業的に用いられる組み合わせは、例えば、コモノマーとしての1−ヘキセン及び希釈剤としてのイソ−ブタン、またはコモノマーとしての1−ブテン及び希釈剤としてのヘキサンである。しかしながら、これらの技術は、それぞれ経済的に有利な条件下で、1つのポリエチレン製造設備でエチレンホモポリマー成分を有するエチレンコポリマーを製造するために希釈剤の沸点に非常に類似の沸点を有するコモノマーの組み込みは可能ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、先行技術の短所を克服する必要があり、任意の沸点のコモノマーとともに反応器カスケードにおける生成物特性及び加工性の優れた組み合わせを有するマルチモーダルエチレンコポリマーの生成を可能にし、それにもかかわらず、懸濁媒質中の成分を反応器カスケードの反応器へ経済的に再循環させるようにするプロセスを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、第1の重合反応器及び1つ以上の後続の重合反応器を含む反応器カスケードにおける懸濁液中のマルチモーダルエチレンコポリマーを製造する方法を提供し、本プロセスは、
反応器カスケード内において、重合触媒の存在下で、40〜150℃の温度及び0.1〜20MPaの圧力でエチレン及び1つ以上のC
3−C
12−1−アルケンを重合し、希釈剤を含む懸濁媒質中でマルチモーダルエチレンコポリマー粒子の懸濁液を形成するステップ、
マルチモーダルエチレンコポリマー粒子の懸濁液を分離機内に移すステップであって、上記懸濁液がマルチモーダルエチレンコポリマー粒子及び回収された懸濁媒質に分離されるステップ、
回収された懸濁媒質中の精製された成分を生成するために、精製セクションにおいて回収された懸濁媒質の一部を精製するステップ、及び
回収された懸濁媒質中の精製された成分の少なくとも一部または一部を反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環させるステップ、を含み、
上記希釈剤を含む第1の重合反応器に再循環される回収された懸濁媒質中の精製された成分は、上記第1の重合反応器内に導入される前に触媒水素化を起こす。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記第1の重合反応器に再循環される回収された懸濁媒質中の精製された成分は、回収された懸濁媒質の5〜70重量%に達する。
【0009】
いくつかの実施形態において、エチレンホモポリマーは、第1の重合反応器で製造され、エチレンのコポリマーは、後続の重合反応器で製造される。
【0010】
いくつかの実施形態において、反応器カスケードに供給されるコモノマーのうちの1つの標準沸点と希釈剤の標準沸点との間の差、あるいは希釈剤が成分の混合物である場合、反応器カスケードに供給されるコモノマーのうちの1つの標準沸点と希釈剤の最初の標準沸点または最終の標準沸点との間の差は15℃以下であり、ここで、標準沸点は、1013.25hPaでの沸点として定義される。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記マルチモーダルエチレンコポリマーは、エチレン−1−ヘキセンコポリマーである。
【0012】
いくつかの実施形態において、マルチモーダルエチレンコポリマーは、少なくとも2つのコモノマーを含む。
【0013】
マルチモーダルエチレンコポリマーは、コモノマーとして少なくとも1−ヘキセン及び1−ブテンを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記回収された懸濁媒質の一部は、後続の重合反応器に直接再循環される。
【0015】
いくつかの実施形態において、回収された懸濁媒質の精製された部分を生成するためのプロセスは、上記回収された懸濁媒質の一部を蒸発させた後、懸濁媒質中の蒸発された部分を再凝縮させるステップを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記回収された懸濁媒質の精製された部分を生成するためのプロセスは、蒸留ステップを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、回収された懸濁媒質中の精製された成分を生成するためのプロセスは、ワックスの除去ステップを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、反応器カスケードの第1の重合反応器から回収されたポリエチレン粒子の懸濁液は、分離機に供給され、ここで、懸濁媒質の一部が懸濁液から分離され、反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環され、ポリエチレン粒子の濃縮された懸濁液は、反応器カスケードの次の重合反応器に移される。
【0019】
いくつかの実施形態において、上記反応器カスケードは、少なくとも3つの重合反応器を含み、第2の重合反応器から回収されたポリエチレン粒子の懸濁液は、分離機に供給され、懸濁媒質の一部は、懸濁液から分離され、第2の重合反応器に再循環され、ポリエチレン粒子の濃縮された懸濁液は、第3の重合反応器内に移される。
【0020】
いくつかの実施形態において、本開示は、反応器カスケードにおける懸濁液中のオレフィンモノマーを重合するための装置を提供し、本装置は:
− 反応器カスケードを形成する少なくとも2つの直列に連結された重合反応器、
− ポリオレフィン粒子の懸濁液と回収された懸濁媒質を分離させるための分離機、
− 反応器カスケードのうちの1つの重合反応器から反応器カスケードのうちの次の重合反応器へ、そして反応器カスケードのうちの最終の重合反応器から分離機に懸濁媒質中のポリオレフィン粒子の懸濁液を移すための移送ライン、及び
− 回収された懸濁媒質の一部を反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環させるための再循環ライン;を含み、
上記回収された懸濁媒質の一部を反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環させるための再循環ラインには、触媒水素化ユニットが装備されている。
【0021】
本装置のいくつかの実施形態において、反応器カスケードの第1の重合反応器から反応器カスケードの次の重合反応器にポリオレフィン粒子の懸濁液を移すための移送ラインには、反応器カスケードの第1の重合反応器から反応器カスケードの次の重合反応器に移される懸濁液から懸濁媒質の一部を分離させるための分離機が装備され、本装置は、反応器カスケードの第1の重合反応器と反応器カスケードの次の重合反応器との間に設置された分離機における懸濁液から分離された懸濁媒質を反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環させるための再循環ラインをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示のプロセスにしたがってマルチモーダルエチレンコポリマーを製造するためのセットアップを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、反応器カスケードにおける懸濁液中のマルチモーダルエチレンコポリマーを製造するプロセスを提供する。本明細書にて、用語「マルチモーダル(multimodal)」とは、得られたエチレンコポリマーの様相を指し、このような様相がゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)曲線で分離された最大値として認識され得るか否かにかかわらず、エチレンコポリマーが互いに異なる反応条件下で得られるポリマーの少なくとも2つの分率を含むことを示す。異なる重合条件は、例えば、異なる重合反応器における異なる水素濃度を使用し、及び/または異なるコモノマー濃度を使用することによって達成され得る。本明細書にて使用される用語「マルチモーダル」はまた「バイモーダル(bimodal)」を含む。
【0024】
エチレンコポリマーは、重合触媒の存在下でエチレンと1つ以上のC
3−C
12−1−アルケンを重合して製造される。C
3−C
12−1−アルケンは、線状または分岐状であり得る。好ましいC
3−C
12−1−アルケンは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンまたは1−デセンなどの線状C
3−C
10−1−アルケンであるか、または4−メチル−1−ペンテンなどの分枝状C
2−C
10−1−アルケンである。2種以上のC
3−C
12−1−アルケンの混合物をエチレンと共重合することも可能である。好ましいコモノマーは、C
3−C
8−1−アルケン、特に、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン及び/または1−オクテンである。組み込まれたコモノマーから誘導される製造されたマルチモーダルエチレンコポリマー単位の量は、好ましくは0.01重量%〜25重量%、より好ましくは0.05重量%〜15重量%、特に0.1重量%〜12重量%である。エチレンが0.1重量%〜12重量%の1−ヘキセン及び/または1−ブテンと、そして特に0.1重量%〜12重量%の1−ヘキセンと共重合されるプロセスが特に好ましい。
【0025】
本開示の好ましい実施形態において、マルチモーダルエチレンコポリマーは、エチレン−1−ヘキセンコポリマー、すなわち、主モノマーとしてのエチレンとコモノマーとしての1−ヘキセンを共重合させることによって得られたエチレンコポリマーである。
【0026】
本開示の別の好ましい実施形態において、マルチモーダルエチレンコポリマーは、少なくとも2つのコモノマー、すなわち、2種以上のコモノマーを含む三元コポリマーまたはコポリマーである。特に好ましいエチレンコポリマーは、コモノマーとして少なくとも1−ヘキセン及び1−ブテンを含む。
【0027】
重合は、すべての通常的なオレフィン重合触媒を使用して実施することができる。これは、例えば、酸化クロムベースのフィリップス触媒を使用するか、チタンベースのチーグラーまたはチーグラーナッタ触媒を使用するか、シングルサイト触媒を使用するか、またはこれら触媒の混合物を使用して重合を実施できることを意味する。本開示の目的のために、シングルサイト触媒は、化学的に均一な遷移金属配位化合物に基づく触媒である。さらに、オレフィンの重合のために、これら触媒のうちの2つ以上の混合物を使用することもできる。このような混合触媒は、ハイブリッド触媒と呼ばれることが多い。オレフィン重合用のこれら触媒の製造及び使用は、一般に知られている。
【0028】
好ましい触媒は、チーグラー型であり、好ましくは担体材料としてチタニウムまたはバナジウムの化合物、マグネシウムの化合物及び任意選択で電子供与体化合物及び/または粒子状無機酸化物を含む。
【0029】
チーグラー型の触媒は、通常的に助触媒の存在下で重合される。好ましい助触媒は、元素周期律表の1、2、12、13または14族の金属の有機金属化合物、特に13族の金属の有機金属化合物及び特に有機アルミニウム化合物である。好ましい助触媒は、例えば、有機金属アルキル、有機金属アルコキシド、または有機金属ハライドである。
【0030】
好ましい有機金属化合物は、リチウムアルキル、マグネシウムまたは亜鉛アルキル、マグネシウムアルキルハライド、アルミニウムアルキル、シリコンアルキル、シリコンアルコキシド及びシリコンアルキルハライドを含む。より好ましくは、有機金属化合物は、アルミニウムアルキル及びマグネシウムアルキルを含む。さらに好ましくは、有機金属化合物は、アルミニウムアルキル、最も好ましくはトリアルキルアルミニウム化合物またはアルキル基がハロゲン原子、例えば、塩素または臭素で置換されているこの類型の化合物を含む。そのようなアルミニウムアルキルの例は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−イソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウムまたはジエチルアルミニウムクロリドまたはそれらの混合物である。
【0031】
本開示のプロセスは、それぞれの重合反応器の条件下で液体または超臨界状態にあり、生成されたエチレンポリマーが不溶性で固体粒子を形成する媒質、いわゆる懸濁媒質で起こる重合を含む。懸濁液の固形分含量は、一般に10〜80重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲にある。
【0032】
懸濁液の液相または超臨界相を形成する懸濁媒質は、一般に希釈剤を主成分として含むが、例えば、溶解されたモノマーまたはコモノマー、アルミニウムアルキルのような溶解された助触媒またはスカベンジャー、水素のような溶解された反応助剤、あるいはオリゴマーまたはワックスのような重合反応の溶解された反応生成物などのさらなる成分も含む。適切な希釈剤は、不活性でなければならない。すなわち、反応条件下で分解されてはならない。このような希釈剤は、例えば、3〜12個の炭素原子を有する炭化水素、特にイソブタン、ブタン、プロパン、イソペンタン、ペンタン、ヘキサンまたはオクタンのような飽和炭化水素またはこれらの混合物である。好ましい実施形態において、希釈剤は、炭化水素混合物である。原料から炭化水素混合物を生成するためには、特定の炭化水素を生成することよりも原料成分を分離するための需要が少ないことが求められ、これにより炭化水素混合物は、希釈剤よりも経済的に魅力的であるが、特定の炭化水素と同一の希釈性能を示す。しかしながら、炭化水素混合物は、沸点範囲を有し得る。
【0033】
沸点が希釈剤の沸点に近いか、または希釈剤の沸点範囲内にあるコモノマーとエチレン共重合を実行するときに、蒸発または蒸留によって希釈剤からコモノマーを分離することは経済的に可能ではない。成分の混合物を希釈剤として使用する場合、これは、高い沸点成分と低い沸点成分から希釈剤を分離する必要があることを意味する場合もあり得る。したがって、本開示のプロセスは、希釈剤及びコモノマーのうちの1つの沸点が近いか、または重なるときに、特に適している。これは、本プロセスが、希釈剤からコモノマーを分離せずにエチレン単独重合を実行する重合反応器に希釈剤が再循環できるからである。
【0034】
したがって、本開示の好ましい実施形態において、反応器カスケードに供給されるコモノマーのうちの1つの標準沸点と希釈剤の標準沸点との間の差、あるいは希釈剤が成分の混合物である場合、反応器カスケードに供給されるコモノマーのうちの1つの標準沸点と希釈剤の最初の標準沸点または最終の標準沸点との間の差は15℃以下、好ましくは10℃以下、特に6℃以下であり、ここで、標準沸点は、1013.25hPaでの沸点として定義される。
【0035】
本開示のプロセスは、40〜150℃、好ましくは50〜130℃、特に好ましくは60〜90℃の範囲の温度及び0.1〜20MPa、特に好ましくは0.3〜5MPaの圧力下で工業的に知られているすべての懸濁重合プロセスを使用して実施することができる。これらのタイプのプロセスは、一般に当業者に公知されている。
【0036】
本開示のプロセスは、直列に連結された少なくとも2つの重合反応器を有する反応器カスケードで実行される。反応器カスケードは、第1の重合反応器及び1つ以上の後続の重合反応器を含む。これらの反応器は、特定の設計に限定されず、好ましくはこれらの反応器は、ループ反応器または撹拌タンク型反応器である。本開示のプロセスは、2つの反応器のカスケード、すなわち、第1の重合反応器及び後続の反応器としての第2の重合反応器のカスケードでのみ実行され得る。しかしながら、第1の重合反応器の下流に配置された2つ以上の後続の重合反応器も可能である。好ましくは、それぞれの重合反応器には異なる重合条件が確立される。反応器カスケードはまた、第1の重合反応器の上流で予備重合反応器などの1つ以上の追加の重合反応器を含むことができる。
【0037】
本開示のプロセスの好ましい実施形態において、エチレンホモポリマーは、第1の重合反応器で製造され、エチレンのコポリマーは、後続の重合反応器で製造される。第1の重合反応器におけるエチレンホモポリマーが製造できるためには、コモノマーを第1の重合反応器に供給せず、反応器カスケードの第1の重合反応器に導入される供給ストリームまたは再循環ストリームの成分としてもコモノマーを直接供給しない。反応器カスケードが1つ以上の予備重合反応器を含む場合、予備重合は、好ましくはコモノマーを添加せずに実施される。
【0038】
本開示のプロセスによる重合反応器は、好ましくは単一反応器である。しかしながら、特に第1の重合反応器は、並列または直列に配置された2つ以上の反応器を有し、同一の条件下または実質的に同一の条件下で操作し、本開示のプロセスに応じる第1の重合反応器として作用することも可能である。
【0039】
本開示の好ましい実施形態において、本開示のマルチモーダルエチレンコポリマーは、第1の反応器及び1つの後続の重合反応器のカスケードで製造され、ここで、第1の重合反応器で製造されたポリエチレンは、エチレンホモポリマー、好ましくは低分子量エチレンホモポリマーであり、後続の重合反応器で製造されたポリエチレンは、エチレンコポリマー、好ましくは高分子量のコポリマーである。このようにして得られたマルチモーダルエチレンコポリマーは、好ましくは、第1の重合反応器で製造された35〜65重量%のエチレンホモポリマー及び後続の重合反応器で製造された35〜65重量%のエチレンコポリマーを含む。
【0040】
本開示の別の好ましい実施形態において、本開示のマルチモーダルエチレンコポリマーは、3つの重合反応器のカスケード、すなわち、第1の重合反応器及び2つの後続の重合反応器で製造され、ここで、第1の重合反応器で製造されたポリエチレンは、エチレンホモポリマー、好ましくは低分子量のエチレンホモポリマーであり、後続の重合反応器のうちの1つで製造されたポリエチレンは、エチレンコポリマー、好ましくは高分子量のコポリマーであり、他の後続の重合反応器で製造されたポリエチレンは、より高い分子量のエチレンコポリマー、好ましくは超高分子量のコポリマーである。このようにして得られたマルチモーダルエチレンコポリマーは、好ましくは第1の重合反応器で製造されたエチレンホモポリマー30〜60重量%、より好ましくは45〜55重量%、1つの後続の重合反応器で製造されたエチレンコポリマー30〜65重量%、より好ましくは20〜40%、及び他の後続の重合反応器で製造された高分子量のエチレンコポリマー1〜30重量%、より好ましくは15〜30重量%を含む。
【0041】
本開示のプロセスにおいて、反応器カスケードで形成されたマルチモーダルエチレンコポリマー粒子の懸濁液は、分離機に移され、ここで、マルチモーダルエチレンコポリマー粒子が懸濁媒質から分離される。マルチモーダルエチレンコポリマー粒子及び回収された懸濁媒質へのこのような分離は、遠心分離機、デカンタ(decanter)、フィルタまたはこれらの組み合わせなどのすべての適切な分離装置で実行され得る。好ましくは、分離機は遠心分離機である。本開示の好ましい実施形態において、反応器カスケードから回収された懸濁液は、最初に分離供給容器内に移され、分離供給容器から分離機に運ばれる。
【0042】
典型的に、回収された懸濁媒質は、80重量%以上の希釈剤を含む。回収された懸濁媒質のさらなる成分は、エチレン、コモノマー、アルミニウムアルキル及び水素、ならびにオリゴマー及びワックスのような溶解された反応生成物である。
【0043】
好ましくは、回収された懸濁媒質の大部分は、反応器カスケードに再循環される。好ましくは、反応器カスケードのすべての重合反応器には、回収された懸濁媒質の再循環された部分が提供される。好ましくは、回収された懸濁媒質の90〜99.99重量%、より好ましくは、95〜99.5重量%、特に98〜99重量%は、反応器カスケードに再循環される。反応器カスケードに再循環されない回収された懸濁媒質の部分は、例えば、ポンプの連続フラッシング(flushing)、供給ストリームのガス状不純物または重合プロセスのガス状副産物を除去するために排出され得るオフガス、または回収された懸濁媒質から意図的に除去されるワックスのような溶解された反応生成物を含む。
【0044】
回収された懸濁媒質は、好ましくは、最初に懸濁媒質収集容器に供給され、反応器カスケードの重合反応器に再循環されるために懸濁媒質収集容器から回収される。
【0045】
分離機における得られたマルチモーダルエチレンコポリマー粒子は、一般に依然として湿っており、好ましくは15重量%〜40重量%、より好ましくは20重量%〜35重量%の範囲の懸濁媒質含量を有する。したがって、分離されたマルチモーダルエチレンコポリマー粒子は、好ましくは閉ループで高温窒素を使用して残留懸濁媒質がマルチモーダルエチレンコポリマー粒子からストリッピングされる2段階の乾燥セクションに供給される。乾燥されたマルチモーダルエチレンコポリマー粒子は、好ましくは適切な量の添加剤が添加され、混合物が溶融され、均質化され、ペレット化される押出セクションに空気圧で運ばれる。好ましくは、乾燥プロセスにおいて、マルチモーダルエチレンコポリマー粒子から分離される懸濁媒質中の成分の大部分は、収集され、反応器カスケードに再循環される。
【0046】
本開示のプロセスにおいて、回収された懸濁媒質の一部は、回収された懸濁媒質中の精製された成分を生成するために精製セクションにおいて精製される。本開示の文脈における精製は、組成が1つ以上の分離された組成で分離されるか、または組成のうちの1つ以上の成分が組成から除去され、除去された成分(ら)がないか、少なくとも実質的に枯渇された精製組成が得られることを意味する。しかしながら、精製は、組成中の個々の成分が単離される程度まで行くことができる。このような精製プロセスは、例えば、希釈剤よりも著しく低い沸点を有する回収された懸濁媒質中の成分を回収された懸濁媒質から除去し、及び/または希釈剤よりも著しく高い沸点を有する懸濁媒質中の成分、例えば、オリゴマーまたはワックスを回収された懸濁媒質から除去することを含み得る。精製セクションを通過する回収された懸濁媒質の量は、好ましくは反応器カスケードに再循環される回収された懸濁媒質の1〜90重量%、より好ましくは5〜80重量%である。精製プロセスの好ましい実施形態において、回収された懸濁媒質は、個々の再循環回路における反応器カスケードに再循環される2種以上の成分に分離される。分離後、それぞれの再循環回路は、さらなる精製ステップを含むことができる。個々の再循環回路における反応器カスケードに再循環され得る回収された懸濁媒質中の成分は、希釈剤の他にもエチレン及びコモノマーなどであり得る。回収された懸濁媒質中の精製された成分は、反応器カスケードのうちの任意の反応器に移され得る。
【0047】
好ましくは、回収された懸濁媒質中の精製された成分を生成するためのプロセスは、回収された懸濁媒質の一部を蒸発させた後、懸濁媒質の蒸発された部分を再凝縮させるステップを含む。典型的に、回収された懸濁媒質の蒸発した部分は、エチレン、水素、使用された希釈剤よりも低いか、または類似の沸点を有するコモノマー、及び希釈剤の一部を含む。これは、例えば、n−ヘキサンまたはヘキサン異性体の混合物が希釈剤として使用され、1−ブテンがコモノマーとして使用される場合、回収された懸濁媒質に含まれる1−ブテンの大部分が懸濁媒質中の蒸発された部分の一部を形成することを意味する。好ましくは、回収された懸濁媒質中の蒸発された部分の大部分は、個々の再循環回路における1つ以上の重合反応器に再循環され、最も好ましくは1つ以上のさらなる精製ステップを通過した後に再循環される。
【0048】
本開示の特に好ましい実施形態において、回収された懸濁媒質中の精製された成分を生成するためのプロセスは、蒸留ステップを含む。好ましくは、蒸留によって得られる低い沸点の成分は、エチレン、水素、使用された希釈剤よりも低いか、または類似の沸点を有するコモノマー、及び希釈剤の一部を含む。これは、例えば、n−ヘキサンまたはヘキサン異性体の混合物を希釈剤として使用し、1−ブテンをコモノマーとして使用する場合、回収された懸濁媒質に含まれる1−ブテンの大部分が蒸留によって得られる低い沸点の一部を形成することを意味する。好ましくは、蒸留によって得られる低い沸点成分の大部分は、個々の再循環回路における1つ以上の重合反応器に再循環され、最も好ましくは1つ以上のさらなる精製ステップを通過した後に再循環される。
【0049】
好ましくは、蒸留によって得られるより高い沸点成分は、大部分の希釈剤、及び使用された希釈剤の沸点と類似するか、またはより高い沸点を有するコモノマーを含む。好ましくは、蒸留によって得られる高い沸点成分の大部分は、1つ以上の重合反応器に再循環され、最も好ましくは、1つ以上のさらなる精製ステップを通過した後に再循環される。
【0050】
好ましくは、精製セクションにおいて回収された懸濁媒質中の精製された成分を生成するためのプロセスは、ワックスの除去ステップを含む。重合プロセスから回収されたワックスは、エネルギーを生成させるために燃焼されるか、または重合プロセスの副産物として販売され得る。
【0051】
回収された懸濁媒質中の精製された成分を生成するためのプロセスは、例えば、吸着による精製、吸着による精製、またはメンブレン精製プロセスによる精製などの追加の精製ステップをさらに含むことができる。
【0052】
本開示のプロセスにおいて、回収された懸濁媒質中の精製された成分の少なくとも一部または一部は反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環される。好ましくは、反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環される回収された懸濁媒質中の成分は、希釈剤及びエチレンである。これらの成分は、個々の再循環回路における再循環されることが好ましい。
【0053】
好ましくは、回収された懸濁媒質の5〜70重量%は、回収された懸濁媒質中の精製された成分として反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環され、より好ましくは、回収された懸濁媒質の10〜60重量%、特に15〜50重量%が反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環される。
【0054】
本開示のプロセスによれば、希釈剤を含む第1の重合反応器に再循環される回収された懸濁媒質中の精製された成分は、第1の重合反応器に導入される前に触媒水素化を起こす。触媒水素化は、水素化触媒の存在下で不飽和化合物が水素と反応する化学的反応である。第1の重合反応器に再循環される懸濁媒質に含まれ得る不飽和化合物は、供給ストリームの不純物として反応器カスケード内に導入されるか、または重合プロセスの副反応における形成された様々な化合物であり得る。しかしながら、本開示にしたがって水素化される不飽和化合物の主要成分は、残留エチレン、及び主にコモノマーまたはコモノマーらである。
【0055】
触媒水素化は、液相または気相で実行することができ、好ましくは液相で実行する。
【0056】
水素化触媒としては、水素化に通常の触媒、例えば白金、パラジウム、ロジウム、またはモリブデン、タングステン、クロムまたは鉄などの遷移金属、コバルト、銅及びニッケルに基づく触媒を使用することができ、これらは個別にまたは混合物として使用することができ、一般に活性炭、セラミックなどの担体に適用することができる。水素化は、一般に50〜300℃、好ましくは100〜250℃で実行される。
【0057】
気相における水素化触媒の例は、白金またはパラジウムベースの組成物であり、特に好ましくはアルミナ上の白金またはパラジウムである。液相における方法水素化のための水素化触媒の例は、コバルト(アセチルアセトナート)またはニッケル(オクタノエート)などの、トリアルキルアルミニウムによって活性化されたコバルトまたはニッケルベースの触媒;ウィルキンソン(Wilkinson)触媒(Rh(PPh
3)
3Cl)などのロジウム触媒;Ru(H)Cl(PPh
3)
3などのルテニウム触媒である。択一的に、異種白金、白金酸化物またはパラジウム触媒が反応媒質中で懸濁液として使用され得る。方法1)及び2)に使用され得る水素化触媒は、文献[「触媒水素化」(R.L.Augustine、出版社Dekker、New York、1965)及び「Advanced Organic Chemistry」、4th Edition、p.771−780(J.March、出版社Wiley、New York、1992)]に記載されている。
【0058】
本開示の好ましい実施形態において、回収された懸濁媒質の一部は、後続の重合反応器に直接再循環される。好ましくは、反応器カスケードのすべての後続の重合反応器には、回収された懸濁媒質中の直接再循環された部分が提供される。これは、回収された懸濁媒質の一部が、好ましくは、希釈剤の他にも、未反応のエチレン及びコモノマー、アルミニウムアルキルのような助触媒またはスカベンジャー、水素のような溶解された反応助剤、及びオリゴマーまたはワックスのような重合反応の溶解された反応生成物を依然として含む第2の重合反応器及び任意のさらなる後続の重合反応器に再循環することを意味する。分離された懸濁媒質を直接再循環させることによって材料作業を減らすことができ、含まれている助触媒及びコモノマーまたはコモノマーを再利用するため、全体の運用コストを削減することができる。好ましくは、回収された懸濁媒質の10〜99重量%、より好ましくは20〜95重量%は、反応器カスケードに直接再循環される。
【0059】
好ましくは、希釈剤の損失を代替するために反応器カスケードに導入される新鮮な希釈剤は、重合反応器のうちの1つに直接供給されず、精製セクションの特定の成分に供給されるか、または精製セクション内に移される回収された懸濁媒質の一部に加えられる。
【0060】
本開示のプロセスは、経済的に好ましい条件下で反応器カスケード内の生成物特性及び加工性の優れた組み合わせを有するマルチモーダルエチレンコポリマーが生成できるようにし、このような理由は、反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環される回収された懸濁媒質が、コモノマーを含まず、これにより第1の重合反応器におけるエチレンホモポリマーを生成することができ、それにもかかわらず、懸濁媒質中の再循環された成分を使用し、第1の重合反応器における懸濁媒質の主要部分が形成できるからである。
【0061】
本開示の好ましい実施形態において、反応器カスケードの第1の重合反応器から回収されたポリエチレン粒子の懸濁液は、分離機内に供給され、ここで、懸濁媒質の一部が懸濁液から分離され、反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環され、ポリエチレン粒子の濃縮された懸濁液は、反応器カスケードの次の重合反応器に移される。第1の重合反応器より回収された懸濁液から懸濁媒質の一部を分離するのに適切な分離機は、遠心分離機、フィルタ、サイクロン、濃縮器(濃縮装置)またはこれらの組み合わせであり得る。第1の重合反応器から回収された懸濁液の懸濁媒質の一部を第1の重合反応器に直接再循環させることにより、第1の重合反応器から回収された懸濁液に代替するのに必要とされる回収された懸濁媒質中の水素化成分の量は減少され、これにより上記プロセスに対する運用コストが削減される。
【0062】
本開示の別の好ましい実施形態において、反応器カスケードは、少なくとも3つの重合反応器を含み、第1の重合反応器から第2の重合反応器に移された懸濁液は、分離機を通過するのみならず、第2の重合反応器から第3の重合反応器に移された懸濁液も分離機を通過する。第2の重合反応器から回収された懸濁媒質の一部を第2の重合反応器に直接再循環させることにより、第2の重合反応器から第3の重合反応器に移される懸濁媒質の量が最小化され、これにより第2の重合反応器から第3の重合反応器に移されるコモノマーの量は最小化される。このようなアプローチは、第2の及び第3の重合反応器における互いに異なるコモノマーを使用するか、または第2の及び第3の重合反応器における互いに異なる組成のコモノマー混合物を使用するのに好ましい。これらの例としては、第2の重合反応器におけるコモノマーとして主に1−ブテンを使用し、第3の重合反応器におけるコモノマーとして主に1−ヘキセンを使用するか、またはその逆であり得る。
【0063】
図1は、重合が3つの反応器のカスケードで起こる、本開示のプロセスにしたがってマルチモーダルエチレンコポリマーを製造するためのセットアップを概略的に示す。
【0064】
第1の重合反応器(1)における懸濁液中のオレフィンを重合するためには、回収された懸濁媒質中の再循環された精製成分を供給ライン(2)を介して反応器(1)に供給する。触媒、エチレン、可能なコモノマー及び重合助剤のような反応混合物の他の成分は、1つ以上の供給ライン(3)を介して反応器に供給される。反応器(1)における重合した結果として、懸濁媒質中で固体ポリエチレン粒子の懸濁液が形成される。この懸濁液は、反応器(1)で形成された懸濁液が濃縮された懸濁液に分離される分離機(5)にライン(4)を介して供給され、これは、ライン(6)を介して第2の重合反応器(7)に移され、液体懸濁媒質は、ライン(8)を介して第1の重合反応器(1)に再循環される。
【0065】
重合反応器(7)内においては、さらなる重合が起こる。直接再循環された懸濁媒質は、ライン(21)、(22)及び(24)を介して反応器(7)に供給され、回収された懸濁媒質中の再循環された精製成分は、ライン(41)及び(24)を介して反応器(7)に供給され得る。新鮮なエチレン、コモノマー、または反応混合物のさらなる成分は、1つ以上の供給ライン(9)を介して反応器(7)に供給され得る。その後、反応器(7)の懸濁液は、ライン(10)を介して追加の重合が実施される第3の重合反応器(11)に供給される。直接再循環された懸濁媒質は、ライン(21)及び(23)を介して反応器(11)に供給され、回収された懸濁媒質中の再循環された精製成分は、ライン(41)及び(22)を介して反応器(11)に供給され得る。1つ以上の供給ライン(12)は、エチレン、コモノマー、または反応混合物のさらなる成分を反応器(11)に補足的に供給できるようにする。
【0066】
反応器(11)における形成された固体マルチモーダルエチレンコポリマー粒子の懸濁液は、ライン(13)を介して分離供給容器(14)に連続的に移される。次に、上記懸濁液は、ライン(15)を介して遠心分離機(16)に通し、ここで、懸濁液は、固体マルチモーダルエチレンコポリマー粒子及び回収された液体懸濁媒質で分離される。分離されたマルチモーダルエチレンコポリマー粒子は、ライン(17)を介して乾燥機(図示せず)に送られた後、ペレット化ユニット(図示せず)に送られる。
【0067】
回収された懸濁媒質は、ライン(18)を介して懸濁媒質収集容器(19)に移される。上記容器から、回収された懸濁媒質は、ポンプ(20)によってライン(21)及び(22)と、ライン(23)及び(24)を介して重合反応器(7)及び/または重合反応器(11)に再循環され得る。
【0068】
回収された懸濁媒質の一部は、ライン(21)で分岐され、蒸発器(26)、蒸留カラム(34)及び吸着器ユニット(37)を含む精製セクションにライン(25)を介して移される。ライン(21)を介して分岐された回収された懸濁媒質は、蒸発器(26)内に運ばれる。回収された懸濁媒質のより高い沸点の分率は、ライン(27)を介して蒸発器(26)の下段から回収され、ワックス分離容器(28)に移される。液体ワックスは、ライン(29)を介してワックス分離容器(28)の下段から回収され、例えば、蒸気発生用焼却ユニット(図示せず)に運ばれるか、または市販中の固形化ユニット(図示せず)に運ばれる。ガス状分率は、ライン(30)を介してワックス分離容器(28)の上段から回収され、凝縮のために熱交換器(31)を通過し、ライン(25)を介して蒸発器(26)に再び送られる。
【0069】
蒸発器(26)で蒸発される回収された懸濁媒質の分率は、ライン(32)を介して蒸発器(26)の上段から回収され、凝縮のために熱交換器(33)を通過し、蒸留カラム(34)内に移される。低い沸点成分は、ライン(35)を介して蒸留カラム(34)の上段から回収される。1−ブテンをコモノマーとして使用し、反応器(1)、(7)及び(11)で重合を操作するとき、1−ブテンは、ライン(35)を介して回収され、1−ブテンを精製し、1−ブテンを反応器カスケードのうちの1つ以上の重合反応器に再循環させるために1−ブテン回収ユニット(図示せず)内に移される。
【0070】
蒸留カラム(34)の下段ストリームは、ライン(36)を介して吸着器ユニット(37)に移され、極性不純物を除去する。吸着器ユニット(37)を通過した後、重合反応器(7)及び(11)に再循環される下段ストリームの一部は、ライン(38)を介して下段ストリーム収集容器(39)に移される。上記収集容器から、下段ストリームは、ポンプ(40)によってライン(41)とライン(23)及び(24)を介して重合反応器(7)及び/または重合反応器(11)に再循環される。
【0071】
第1の重合反応器(1)に再循環される下段ストリームの一部は、吸着器ユニット(37)を通過した後、ライン(42)を介して触媒水素化ユニット(43)に移される。水素化された下段ストリームは、ライン(44)を介して水素化された下段ストリーム収集容器(45)に移される。上記収集容器から、水素化された下段ストリームは、ポンプ(46)によってライン(2)を介して第1の重合反応器(1)に再循環される。
【0072】
希釈剤の損失を代替するためには、例えば、マルチモーダルエチレンコポリマー粒子とともに希釈剤を排出させ、マルチモーダルエチレンコポリマー粒子の乾燥プロセスにおける希釈剤を完全に回収しないことによって、新鮮な希釈剤をライン(47)を介して精製セクションに供給する。
【0073】
本開示は、反応器カスケードにおける懸濁液中のオレフィンモノマーを重合させるための装置を提供し、本装置は:
− 反応器カスケードを形成する少なくとも2つの直列に連結された重合反応器、
− ポリオレフィン粒子の懸濁液と回収された懸濁媒質を分離させるための分離機、
− 反応器カスケードのうちの1つの重合反応器から反応器カスケードのうちの次の重合反応器へ、そして反応器カスケードのうちの最終の重合反応器から分離機に懸濁媒質中のポリオレフィン粒子の懸濁液を移すための移送ライン、及び
− 回収された懸濁媒質の一部を反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環させるための再循環ライン;を含み、
上記回収された懸濁媒質の一部を反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環させるための再循環ラインには、触媒水素化ユニットが装備されている。
【0074】
好ましくは、反応器カスケードの第1の重合反応器から反応器カスケードの次の重合反応器にポリオレフィン粒子の懸濁液を移すための移送ラインには、反応器カスケードの第1の重合反応器から反応器カスケードの次の重合反応器に移された懸濁液から懸濁媒質の一部を分離するための分離機が装備され、上記装置は、反応器カスケードの第1の重合反応器と反応器カスケードの次の重合反応器との間に設置された分離機における懸濁液から分離される懸濁媒質を反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環させるための再循環ラインをさらに含む。
【手続補正書】
【提出日】2020年12月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の重合反応器及び1つ以上の後続の重合反応器を含む反応器カスケードにおける懸濁液中のマルチモーダルエチレンコポリマーを製造するプロセスであって、
反応器カスケード内において、重合触媒の存在下で、40〜150℃の温度及び0.1〜20MPaの圧力でエチレン及び1つ以上のC3−C12−1−アルケンを重合し、希釈剤を含む懸濁媒質中でマルチモーダルエチレンコポリマー粒子の懸濁液を形成するステップ、
マルチモーダルエチレンコポリマー粒子の懸濁液を分離機内に移すステップであって、上記懸濁液がマルチモーダルエチレンコポリマー粒子及び回収された懸濁媒質に分離されるステップ、
回収された懸濁媒質中の精製された成分を生成するために、精製セクションにおいて回収された懸濁媒質の一部を精製するステップ、及び
回収された懸濁媒質中の精製された成分の少なくとも一部または一部を反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環させるステップ、を含み、
前記希釈剤を含む第1の重合反応器に再循環される回収された懸濁媒質中の精製された成分は、前記第1の重合反応器内に導入される前に触媒水素化を起こす、プロセス。
【請求項2】
前記第1の重合反応器に再循環される回収された懸濁媒質中の精製された成分は、回収された懸濁媒質の5〜70重量%に達する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
エチレンホモポリマーは、前記第1の重合反応器で製造され、エチレンのコポリマーは、前記後続の重合反応器で製造される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記マルチモーダルエチレンコポリマーは、エチレン−1−ヘキセンコポリマーである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記マルチモーダルエチレンコポリマーは、少なくとも2種のコモノマーを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記回収された懸濁媒質の一部は、後続の重合反応器に直接再循環される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記回収された懸濁媒質の精製された部分を生成するためのプロセスは、前記回収された懸濁媒質の一部を蒸発させた後、懸濁媒質中の蒸発された部分を再凝縮させるステップを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記反応器カスケードの第1の重合反応器から回収されたポリエチレン粒子の懸濁液は、分離機に供給され、ここで、前記懸濁媒質の一部が懸濁液から分離され、前記反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環され、ポリエチレン粒子の濃縮された懸濁液は、前記反応器カスケードの次の重合反応器に移される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
反応器カスケードにおける懸濁液中のオレフィンモノマーを重合するための装置であって:
− 反応器カスケードを形成する少なくとも2つの直列に連結された重合反応器、
− ポリオレフィン粒子の懸濁液と回収された懸濁媒質を分離させるための分離機、
− 反応器カスケードのうちの1つの重合反応器から反応器カスケードのうちの次の重合反応器へ、そして反応器カスケードのうちの最終の重合反応器から分離機に懸濁媒質中のポリオレフィン粒子の懸濁液を移すための移送ライン、及び
− 回収された懸濁媒質の一部を反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環させるための再循環ライン;を含み、
前記回収された懸濁媒質の一部を反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環させるための再循環ラインには触媒水素化ユニットが装備される、装置。
【請求項10】
前記反応器カスケードの第1の重合反応器から前記反応器カスケードの次の重合反応器にポリオレフィン粒子の懸濁液を移すための移送ラインには、前記反応器カスケードの第1の重合反応器から反応器カスケードの次の重合反応器に移される懸濁液から懸濁媒質の一部を分離させるための分離機が装備され、前記装置は、反応器カスケードの第1の重合反応器と反応器カスケードの次の重合反応器との間に設置された分離機における懸濁液から分離された懸濁媒質を反応器カスケードの第1の重合反応器に再循環させるための再循環ラインをさらに含む、請求項9に記載の装置。
【国際調査報告】