(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
垂直フロー検出デバイス及び関連する方法が提供される。デバイスは、第1の表面及び第2の表面を有する膜を備えることがあり、複数の多孔質構造が、前記第1の表面と前記第2の表面との間に延びて、前記第1の表面によって形成された第1の流体チャンバ及び前記第2の流体表面によって形成された第2の流体チャンバから流体導管を形成する。捕捉剤は、膜上及び/又は膜内に固定化される。剛性多孔質膜支持体が、前記膜を機械的に支持し、膜を横切る比較的均一な流れを実現する。膜の周りでの流体の漏れを防ぐために、膜の外縁の周りに様々なガスケット又はホルダ要素が位置決めされる。流体ポンプは、前記第1の流体チャンバから前記第2の流体チャンバへの方向に流体試料の流れを押し流すように構成される。
第1の表面及び第2の表面を有する膜であって、前記第1の表面が前記第2の表面と反対側に面し、前記第1の表面と前記第2の表面とが膜厚によって分離されている膜と、
前記第1の表面によって形成された第1の流体チャンバ及び前記第2の流体表面によって形成された第2の流体チャンバから流体導管を形成するように前記第1の表面と前記第2の表面との間に延びる複数の多孔質構造と、
前記膜の第1の表面に、及び/又は前記第1の膜表面と前記第2の膜表面との間で、前記膜の内部に固定化された捕捉剤と、
前記膜を機械的に支持し、使用中に前記第1の流体チャンバに露出される前記膜の前記第1の表面を横切る比較的均一な流れを実現するように位置決めされた剛性多孔質膜支持体と、
前記膜の外縁部の周りに位置決めされたガスケット又は流体不浸透性材料と、
前記膜と前記ガスケット又は前記流体不浸透性材料との密封構成を実現して、前記膜の周りでの流体の漏れを防ぐホルダと、
前記第1の流体チャンバから前記第2の流体チャンバへの方向に流体試料の流れを押し流すように構成されたフローデバイスと、
を備える垂直フロー検出デバイス。
前記捕捉剤に結合された流体試料中の標的分析物を検出するための検出器をさらに備え、前記検出器が、前記膜をスキャン又は撮像するように構成されたスキャナ又はイメージャを任意選択で備える、請求項1に記載の垂直フロー検出デバイス。
前記多孔質膜が、紙、ニトロセルロース、ポリカーボネート、及びPVDFからなる群から選択される材料を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の垂直フロー検出デバイス。
前記ホルダが、前記デバイスを分解することなく前記膜を撮像するための撮像システムに取り付けて、ポイントオブケア環境で完全な試料を検出システムに提供するように構成された標準的な取付具を備え、前記撮像システムが、任意選択で、ポータブルイメージャ、スキャナ、又はスマートフォンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の垂直フロー検出デバイス。
2つ以上の異なる標的分析物の多重化検出のための空間的に離散したアレイとして設けられた複数の個別の捕捉剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の垂直フロー検出デバイス。
2つのOリングをさらに備え、第1のOリングが、前記第1の剛性多孔質膜支持体の上面によって支持され、第2のOリングが、前記第2の剛性多孔質膜支持体の底面によって支持されて、流体チャンバと膜支持体との間の良好な封止を保証する、請求項7に記載の垂直フロー検出デバイス。
前記捕捉剤が抗体を含み、前記標的分析物が、前記抗体に特異的に結合し、検出可能な標識が前記標的分析物に直接的又は間接的に接続される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の垂直フロー検出デバイス。
前記膜が、プラスチック及びポリマー、紙、ニトロセルロース、セルロース、PVDF、ポリカーボネート、セラミック、金属材料、ガラス(ガラスマイクロファイバを含む)、及び/又は陽極酸化アルミニウムを含む1つ又は複数の多孔質固体材料を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の垂直フロー検出デバイス。
前記膜の特徴的な孔径が10μm未満、1μm未満、0.5μm未満、又は0.1μm以下であり、10%から95%の間の多孔率を有し、任意選択で、相互接続又は繊維状の多孔質構造を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の垂直フロー検出デバイス。
前記多孔質膜支持体が、1μm以上、1000μm以下の孔径を有し、前記膜を横切って実質的に均一な流量プロファイルを実現するように空間的に配置されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の垂直フロー検出デバイス。
前記標的分析物が、DNA、RNA、抗原、ポリペプチド、タンパク質、又は金属イオンのうちの1つ又は複数を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の垂直フロー検出デバイス。
複数の捕捉剤スポット、及び1μm〜5mmの間の捕捉剤スポットサイズを有し、流体試料の流れが前記捕捉剤スポットに均一に向けられる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の垂直フロー検出デバイス。
流体フローを受けるように流れにさらされた膜表面積を有し、流れにさらされた膜表面積を調節するための手段をさらに備え、前記流れにさらされた膜表面積が、所望の流量及び試料体積に基づいて選択され、表面積が、試料体積の増加と共に増加する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の垂直フロー検出デバイス。
前記調節するための手段が、調節可能なガスケット、前記膜の一部分を覆う不浸透性層、及び前記膜の上に位置決めされたマスク層からなる群から選択される、請求項17に記載の垂直フロー検出デバイス。
前記垂直フロー検出デバイスが、双方向フローに対応し、前記試料を反対の流れ方向に繰り返し向けて、試料の検出及び試料の使用を改善することができる、請求項21に記載の方法。
前記押し流すステップが、前記第2の流体チャンバ内のより低い圧力と比べて前記第1の流体チャンバ内により高い圧力を生成することによる前記流体試料の圧送を含む、請求項21に記載の方法。
前記押し流すステップが、前記流体試料の圧送を含み、前記圧送が、前記第2の流体チャンバ内でのより低い圧力に対して、より高い圧力を前記第1の流体チャンバ内で生成し、続いて前記第1の流体チャンバ内でのより低い圧力に対して、より高い圧力を前記第2の流体チャンバ内で生成し、以て制御された双方向の流れを実現することによって行われる、請求項21に記載の方法。
前記流量が、前記捕捉剤からの結合された標的分析物の切り離しに対応する最大剪断応力よりも小さい剪断応力を前記細孔を通して生成する、請求項21〜25のいずれか一項に記載の方法。
少なくとも1つの追加の異なる捕捉剤で少なくとも1つの追加の標的分析物を検出するステップをさらに含み、以て多重検出を実現する、請求項21〜26のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[0087]一般に、本明細書で使用する用語及び語句は、当技術分野において認識されている意味を有し、そのような意味は、当業者に知られている標準的なテキスト、ジャーナル参考文献、及び文脈を参照することによって見ることができる。以下の記述に適用可能な場合、本発明の文脈における特定の用語及び語句の特定の使用を明瞭にするためにそれらの定義が提供される。
【0034】
[0088]実施例1:生物脅威病原体の診断のための紙ベース垂直フローイムノアッセイ(VFI)
[0089]前世紀中、基礎及び応用微生物学で成された進歩と並行して、生物剤及び生物毒素の武器化に対して成された進歩が懸念されている(Jansen et al., 2014;LW et al., 1997)。現在では、公衆衛生及び安全保障に対する潜在的な脅威として米国保健福祉省によって列挙された70近くの生物剤が存在する。これらの化学剤への曝露は、様々なヒト及び動物疾患を引き起こすことがある(Higgins et al., 1999;Lakoff,2008)。類鼻疽菌は、ヒト及び動物に致死的な病気である類鼻疽を引き起こす、土壌及び水中に生息する細菌であり、その武器化される可能性及び致死的疾患を生み出す能力のため、高い優先度の生物脅威と考えられる。最近では、世界中の類鼻疽の症例の総数は165,000人と推定されており、そのうち89,000人が死亡している(Limmathurotsakul et al., 2016)。類鼻疽は、現在の診断法は必要な感度を欠くことが多いため、診断及び治療が非常に難しい場合がある。類鼻疽は、皮膚や軟部組織の軽度の感染から臓器膿瘍まで及ぶ広範な臨床症状を示し(Wiersinga et al., 2012)、東南アジア及び北オーストラリアの多くの熱帯及び亜熱帯地域における市中感染性敗血症の最も一般的な原因の1つである(Limmathurotsakul et al., 2016)。感染症は、症状発現後24〜48時間以内に、軽度の疾患から重篤な敗血症に変化し、類鼻疽の未治療症例は、90%の死亡率を有する(Limmathurotsakul et al., 2010b)。早期の診断及び治療は、疾病管理を改善し、感染した患者の死亡率を下げる主因となる(Currie et al., 2010)。
【0035】
[0090]類鼻疽菌を検出するための免疫学的及び分子的手法におけるいくつかの進歩(Sirisinha et al., 2000)にもかかわらず、臨床試料(例えば、血液、尿、膿汁、唾液など)からの類鼻疽菌の培養が、依然として類鼻疽の診断のゴールデンスタンダードである。しかし、多くの臨床試料中に存在する細菌は低レベルであるため、実験室培養は非常に時間がかかり、困難であることも多い。PCRを含む培養及び他の分子診断手法は、資源が限られた地域では確保できないことが多い高度な機器及び熟練した職員を必要とする。これらの難しさにより、そのような地域では感染症が誤診され、極めて過少に報告される可能性がある(Limmathurotsakul et al., 2010b)。さらに、近年の統計的研究において、培養法は、感度が低いため、類鼻疽感染症の診断のための高信頼性のゴールドスタンダードではないことがわかっている(Limmathurotsakul et al., 2010a)。これらの理由から、臨床試料から類鼻疽菌などの生物脅威剤を迅速且つ正確に検出することができる単純で迅速なポイントオブケア(POC)診断ツールが非常に必要とされている。
【0036】
[0091]ナノテクノロジー及びバイオセンシング技術の進歩に伴い、紙材料が生物医学的応用に利用されてきた(Hu et al., 2014;Parolo and Arben Merkoci,2013;Warren et al., 2014;Yetisen et al., 2013)。紙ベースデバイスは、タンパク質(Li et al., 2010)、核酸(He et al., 2012)、及び細胞活性(Liu et al., 2009)を検出することが報告されている。報告されている紙デバイスの大部分は、流体フローが紙の表面に平行であるラテラルフローイムノアッセイ(LFI)形式で設計されている。この形式は通常、裏打ち層と結合されたいくつかの紙セグメントからなり(Yetisen et al., 2013)、試験流体は、紙の毛細管力によってこれらのセグメントを通じて移送される。LFIの主要な利点としては、低コスト、迅速な結果、柔軟性、及び使いやすさが挙げられる。しかし、適切な流量を達成するために、紙材料の孔径は数ミクロン以上に限定され、これは、生体分子の捕捉を妨げ、したがってアッセイの感度を低下させることがある。
【0037】
[0092]さらに、試料体積の制約及び多重化の難しさが、LFI開発が直面する他のハードルである。多重検出のためのいくつかのLFIプロトタイプは、分枝幾何形状(Li et al., 2011;Mu et al., 2014)、多重試験ライン(Rivas et al., 2015)、及びマイクロアレイ(Helene and Svahn,2014;Lafleur et al., 2012;Safenkova et al., 2016)を含む紙デバイスを使用して報告されている。全体的に、統合化アッセイの数は、依然として限られており、アッセイは、上流の反応が下流の反応に影響を及ぼさないように、交差汚染を防止するために膜の幾何形状及びマイクロアレイレイアウトの入念な設計を必要とする。
【0038】
[0093]LFIプラットフォームを改良する1つの手法は、垂直フロースルーデバイスの使用である。この代替形式は、膜ベースのイムノアッセイであるという点で類似しているが、流体は平行ではなく紙の表面に垂直に加えられる(Desmet et al., 2011;Oh et al., 2013;Pauli et al., 2015)。1つの設計では、従来の横方向フローセグメントを積み重なるように置き換えるだけで、液体を下層から上層に拡散させる(Eltzov and Marks,2017;Harendarcikova et al., 2017;Park and Park,2017)。他の方法は、アッセイ試薬を段階的にただ1つの膜に押し通し、標的が膜の試薬と反応することを可能にすることである。垂直フローアレルゲンマイクロアレイアッセイは、アレルゲン成分を含むヒト血清試料中のIgE活性を検出するために構築された(Chinnasamy et al., 2014;Reuterswaerd et al., 2015)。同様に、HIV p24とB型肝炎ウイルス抗原の同時検出のための免疫濾過アッセイが最近報告された(Cretich et al., 2015)。96ウェル真空プレートを使用して、ニトロセルロース膜を通して試薬を引き出し、チフス菌(Salmonella typhi)由来のリポ多糖体(LPS)に特異的なIgMを検出する、別の垂直フロー形式が開発された(Ramachandran et al., 2013)。近年、より高い感度に向けて、垂直フローアッセイを表面増強ラマン分光法(SERS)などのより高度な読出し技術と結合する可能性を研究するための取組みが行われている(Berger et al., 2016;Clarke et al., 2017)。
【0039】
[0094]本実施例は、生物脅威病原体の検出のための紙ベース垂直フローイムノアッセイ(VFI)デバイスを提示する。類鼻疽の原因物質である類鼻疽菌をモデル菌として使用した。以前の研究では、類鼻疽菌のための診断バイオマーカとして、莢膜多糖(CPS)、すなわち1,3結合した2−O−アセチル−6−デオキシ−b−D−マンノース−ヘプトピラノース残基のポリマーが検証されている(AuCoin, 2012;Nuti et al., 2011)。LFIによってCPSを正常に検出することができることも示されている(Houghton et al., 2014;Robertson et al., 2015)。CPS LFIによって検出できない低レベルのCPSを有する類鼻疽患者もいることは明らかである。本実施例では、VFIパラメータを最適化して、感度が向上され、生物脅威病原体のシンプレックス検出能力とマルチプレックス検出能力の両方を備えたPOCアッセイを開発した。
【0040】
[0095]開示されるデバイスのVFIプラットフォームを最適化するために考慮される必要があるいくつかの重要なパラメータがある。VFI膜の面積は大きいが、表面試薬を有する感知スポットは、小体積の試薬を堆積させることによって縮小することができる。これにより、空間的に独立したスポットマイクロアレイを作成する同じ膜に様々なアッセイを組み込むことによって、多重検出が可能となる。以前の研究では、試料体積の増加がフロースルー免疫センサの感度を向上させることができることが報告されている(Pauli et al., 2015)。しかし、試料流量の影響は、垂直フローデバイスを使用して研究されてはいない。流量は、このようなアッセイを行うために必要な時間に影響を与えるので重要な因子であり、定義上、ポイントオブケアデバイスは迅速である。開示されるデバイスのVFIプラットフォームでは、本実施例は、試料流量の増加が単位面積当たりの試料体積を直接増加させ、それによりVFIベースのアッセイの感度を向上させることを示している。最後に、VFIデバイスの流路は、LFIの数センチメートルの流路と比較して、膜厚のみまで劇的に減少した。これにより、サブミクロンの孔径を有する膜の利用が可能となった。ナノ細孔膜の使用がVFIアッセイの感度を大幅に改善することができることがいくつかの結果により示されている。
【0041】
[0096]紙ベース免疫バイオセンサの分析:
図1Aは、開示される垂直フロー検出デバイス1で使用される、垂直フロー形式での紙ベース免疫バイオセンサの原理を示す。
図1Bに示されるように、輸送プロセスの推定を助けるために、膜3の多孔質構造11を束ねられた管として近似した。細孔半径dを有する多孔質材料24において、液体は、
【数1】
のフロー23速度、及び感知長さL
sで膜3を通って流れ、感知長さL
sは、膜3の検出可能な厚さ9である。感知領域は(撮像面も)、上面A
v、例えば半径R
mを有する円形である第1の表面5であり、第2の表面は、膜厚9によって離された膜の底部側(観察できない側)にある。
図1Cは、多孔質構造11の内面が、表面濃度γを有する捕捉抗体、例えば捕捉剤19でコーティングされていることを示している。標的の拡散係数はDであり、抗原−抗体対は、k
onの結合定数、及び物質移動係数k
cを有する。
【0042】
[0097]VFIシステムには2つの重要な無次元数がある(Schlappi et al., 2016;Squires et al., 2008;Zimmermann et al., 2005)。第1の無次元数は、ダムケラー数(D
a)であり、吸着速度と輸送速度の関係を特徴付ける。
【数2】
【0043】
[0098]第2の無次元数は、ペクレ数(P
e)であり、これを使用して、対流速度と拡散速度を比較することができる。
【数3】
【0044】
[0099]低濃度で標的抗原13を捕捉するためには、2つの条件が望まれる:(1)効率的な捕捉アッセイ(D
a>>1)。捕捉抗体19に結合する抗原13の速度は、抗原13の分子が例えば多孔質構造11の孔壁に移送される速度よりも速い。高い流速23は、移送速度K
cを増加させ、D
aを低下させ、捕捉効率を低下させる。しかし、これは、高い結合反応速度を有するアッセイを使用することによって相殺することができる。本実施例では、高い捕捉抗体密度を有する低濃度の抗原13の検出に焦点を当て、したがって、捕捉は、D
a>>1を保証するのに十分に速いと仮定した。(2)非拡散制限アッセイ(P
e<1)により、感知領域を通して抗原13を対流させる前に、全ての送達された抗原13が孔壁に拡散することができる。以前のシミュレーションにおいて、P
e<1を維持することで、>90%の捕捉効率が保証されることが示されている(Schlappi et al., 2016)。式(2)でP
e<1を設定すると、体積流量(Q)に次の制約が設けられる。
【数4】
【0045】
[0100]ここで、Φは膜3の多孔率である。式(3)によれば、膜3の孔径を縮小することは、フロー23の最大流量Qを増加させるのに効果的な方法であり、より多くの抗原13がセンサによって検出され得る。理論的分析に基づいて、高いフロー23速度と小さい膜3孔径とを有するデバイス1に関するVFI設計が、アッセイ感度を改良することができることが決定された。
【0046】
[0101]材料及び方法:VFIプラットフォームの構成:
図2の(A)に示されるように、デバイス1のVFIプラットフォームは、支持要素及び封止要素と共に、例えば支持体21とホルダ29と共に、ステンレス鋼フィルタホルダ29(Swinny Filter Holder 13mm,Millipore(米国マサチューセッツ州))に封入された直径13mmのニトロセルロース膜(実際のフロースルー領域は直径10mm)を備える。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ガスケット25及びOリング77をそれぞれ紙膜3の下及び上に置いて、液体流路を封止し、漏れを防止する。シリンジ6及びポンプ31(
図30B)(New Era Pump Systems,Inc.(米国ニューヨーク州))は、制御されたフロー23流量で、試料及び試薬を垂直に紙膜3に押し通すことができる。
【0047】
[0102]市販のステンレス鋼膜支持体が使用された従来の垂直フローシステムでは、0.1μm超の孔径を有する膜において大きな信号変動が報告された(Chinnasamy et al., 2014)。この変動は、ステンレス鋼支持体の可撓性に一部起因すると考えられた。したがって、ディープエッチング法を使用して、ステンレス鋼よりも高いヤング率を有するシリコンで支持体21を作製する。シリコングリッドは、あまり変形せずにフロー23に対して膜3を機械的に支持し、したがって信号変動を低減した。したがって、本明細書で提供されるデバイスはいずれも、シリコングリッドを含む、ステンレス鋼のヤング率よりも高いヤング率を有する材料から形成された支持体を使用することがある。
【0048】
[0103]デバイス1でのVFIは、その高いタンパク質結合能(Lu et al., 2010)及び小さい孔径の範囲での利用可能性により、ニトロセルロース膜3を使用して作製することができる。4つのニトロセルロース膜、すなわちAmersham Protran 0.1μm NC、0.2μm NC、0.45μm NC、及びWhatman AE98(孔径5μm)(GE Healthcare Life Sciences(米国ペンシルバニア州))を試験して比較する。CO
2レーザ(VersaLaser 2.30,Universal Laser Systems(米国アリゾナ州))を使用して、膜を直径13mmのディスクに切断する。捕捉抗体マイクロアレイは、マイクロソレノイドロボットディスペンサ(BioJet Elite、Biodot(米国カリフォルニア州)を含むAD1520マイクロディスペンサ)を使用して、1ナノリットルの液滴体積で紙ディスクに定量供給され、これは、直径220μmの円形スポットを作成する。
【0049】
[0104]類鼻疽菌検出マイクロアレイ:類鼻疽菌の検出は、感染中に細菌によって放出される莢膜抗原13であるCPSを標的とするサンドイッチイムノアッセイに基づく(Nuti et al., 2011)。Biodotマイクロディスペンサを使用して、捕捉剤スポット79のアレイとして紙膜3に捕捉抗体19を固定化する。
図2の(B)は、120個の複製された検出スポット79と、3個の陰性対照スポット79と、19個の陽性対照スポット79とを含む、類鼻疽菌検出マイクロアレイのレイアウトを示す。検出スポット79では、スポット79毎に1nLで1滴ずつ、CPS特異的mAb 4C4(10mg/mL)を堆積する。陽性対照スポット79では、スポット79毎に1nLで3滴ずつ、ヤギ抗マウスIgM+IgG+IgA(1mg/mL)(SouthernBiotech,Birmingham(米国アリゾナ州))を堆積する。陰性対照スポット79では、スポット79毎に1nLで1滴ずつ、1×PBSを堆積する。定量供給された膜3は、使用するまで、シリカ乾燥剤を含むアルミニウムパウチに室温で保存される。細菌の分離と培養、バイオマーカの発見、及びモノクローナル抗体の親和性の特性評価の詳細なプロセスが、以前の報告で紹介されている(Nuti et al., 2011)。
【0050】
[0105]VFI操作ワークフロー:CPSは、糖単位の繰り返しから構成される線状ポリマーである(Perry et al., 1995)。その結果、繰り返しのエピトープ結合部位により、同じ抗体をCPSの捕捉及び検出に使用できるようになる。
図2Cに示されるVFIワークフローでは、捕捉抗体アレイとして紙膜3にCPS特異的mAb 4C4を固定化し、検出試薬として4C4標識金ナノ粒子12(4C4−GNP)を使用した。直径40nmの金コロイドへのmAb 4C4の受動吸収によって、4C4−GNP12原液を調製した。洗浄して遊離抗体を除去した後、4C4−GNP12溶液を540nmでOD=9に濃縮し、これは、1.5nMの濃度に相当する。CPS及び4C4−GNP12を膜3に押し通すと、抗原13−抗体10複合体は、捕捉剤19の抗体スポット79のアレイに結合し、サンドイッチアレイを形成した。実験後、通常の卓上スキャナで膜3をスキャンして、
図2Cの「上面図」で示されるように、金ナノ粒子12によって生成された比色信号を抽出した。VFI試験手順は、30分未満で完了することができる。
【0051】
[0106]詳細な実験手順は、膜3の平衡化のために膜3を通して1mLの1×PBS(リン酸緩衝生理食塩水(Gibco(米国マサチューセッツ州))を流すことを含む。次いで、阻害緩衝液(2.5%のTriton X−100を含む10mMのホウ酸塩緩衝液、pH=8)を流すことによって膜3を処理し、膜3を阻害し、非特異的結合を防止した。CPSスパイクアッセイ緩衝溶液(0.1%のTriton X−100と0.1%のBSAとを含む0.1MのPB緩衝液、pH=7.2)を、制御されたフロー23流量及び持続時間で、シリンジ6のフローデバイス(例えばポンプ31)を使用して膜3に押し通した。2つの反応スキーム、すなわち逐次プロトコルと予混合プロトコルを試験する。
【0052】
[0107]逐次プロトコル:CPSスパイクアッセイ緩衝液を膜3に押し通して、CPSを膜3の捕捉抗体剤19に結合させた。次いで、4C4−GNP12溶液を膜3に押し通した。第2のステップ中、4C4−GNP12は、膜3の捕捉抗体剤19にすでに捕捉され結合されているCPSに結合した。
【0053】
[0108]予混合プロトコル:CPSスパイクアッセイ緩衝溶液を、4C4−GNP12と10分間予混合した。この予混合ステップは、4C4−GNP12が溶液中の遊離CPSを結合する追加の時間を提供する。次いで、シリンジ3によってこの混合物を膜3に押し通して、膜3の捕捉抗体19によるCPS−4C4−GNP12複合体の捕捉を可能にした。
【0054】
[0109]試料を処理した後、膜3を通して1.5mLのブランクアッセイ緩衝液を流すことによって膜3を洗浄し、非特異的又は緩く結合されたタンパク質及び過剰な4C4−GNP12を除去した。VFIデバイス1を解体し、急速乾燥ステップとして5分間、膜3を濾紙(Whatman定性濾紙、グレード1(GE Healthcare Life Sciences(米国ペンシルバニア州)))の上に置き、その後、卓上スキャナを使用してスキャンした。VFI試験プロセス全体が30分未満で終了した。
【0055】
[0110]1×PBSは、ThermoFisher製である。ウシ血清アルブミン(BSA)、Triton X−100、PB緩衝液、ホウ酸、及び四ホウ酸ナトリウムは、Sigma Aldrich製である。使用される全ての化学物質は分析グレードであり、さらに精製又は変更することなく適用される。
【0056】
[0111]画像処理及びデータ解析:乾燥プロセス後、非圧縮TIFFファイル形式にエクスポートして、48ビットRGB環境及び2400dpi解像度で、消費者グレードの卓上スキャナ(CanonScan 9000F II)及びScan IJ Utility(CanonScan用デフォルトソフトウェア)を用いてVFI膜3をスキャンした。次いで、Matlab(Mathworks(米国マサチューセッツ州))の組み込み関数rgb2grayを使用して、48ビットRGB画像を16ビットグレースケール画像に変換した。得られた画像をImageJにインポートし、マイクロアレイグリッドを使用してスポット79を解析して、ローカルバックグラウンドを差し引いたスポット79から平均グレースケール値を抽出した。Excel2016(Microsoft(米国ワシントン州))を使用して、データ処理及び解析を行った。
【0057】
[0112]VFI反応スキーム
[0113]本発明者らの初期のインシリコ理論分析は、より小さな孔径及び高い試料流速で膜を組み込んだ多孔質膜ベースの免疫センサが、従来のLFIよりも良い感度を実現することを示す。以下の実験結果は、理論的発見を検証し、類鼻疽菌アッセイを用いてVFIの検出限界(LOD)に対する膜孔径及び試料流速の影響を特性評価する。
【0058】
[0114]最初に実施した実験では、2つのVFI反応スキーム、すなわち逐次及び予混合を比較した。逐次手法は、スポット79の捕捉抗体剤19マイクロアレイによるCPSの捕捉に依拠し、続いて、シリンジ6によって4C4−GNP12溶液を膜3に押し通したときに、捕捉されたCPSに4C4−GNP12を結合させた。予混合手法は、抗原13(CPS)と検出抗体10粒子(4C4−GNP12)とに相互作用及び結合のための追加時間を与えてから、スポット79の捕捉抗体剤19マイクロアレイに押し通して、そのマイクロアレイによって捕捉した。どちらの手法も、孔径0.2μmのニトロセルロース膜3.1mLのアッセイ緩衝溶液にスパイクされた1ng/mLのCPS、及び10μLのOD=9(540nm)4C4−GNP12を使用した。
図3Bに示されるように、予混合プロトコルにより、逐次プロトコルよりも強い信号を有する検出スポット79(中央アレイ)を得た。相対強度は、
図3Aで示されるように、6.5倍増加した。本実施例では、予混合手法の感度の向上は、CPSと4C4−GNP12との結合時間の増加、及び表面反応と比較したときの液体反応のより良い効率に起因すると考えられる。この後の実験は全て、予混合法を使用して行った。
【0059】
[0115]孔径5μmの膜を有するVFI:反応スキームを選択した後、孔径5μmのニトロセルロース膜3(Whatman AE98,GE Healthcare)を使用して実験を行った。この膜3は、CPS LFIプロトタイプ(孔径10μm、Whatman FF120hp、GE Healthcare)で使用されたニトロセルロース膜3と同様の孔径を有するが、支持層はない(Houghton et al., 2014)。10分間1.5mL/分のフロー23の体積流量、すなわちLFIの流量に相当するフロー23流量で、予混合された試料溶液をシリンジ6によって膜3に押し通した。精製されたCPSをVFIで試験して、この条件下でLODを決定した。CPSの希釈液(1、0.5、0.2、0.1、0.04、0.02、及び0.004ng/mL)をアッセイ緩衝液中で調製し、VFI膜3に加えた。フロースルーステップ前に、試料に15μLの4C4−GNP12溶液を加え、10分間混合した。LODは、バックグラウンド信号よりも標準偏差(SD)の3倍を超える信号を生成した濃度として定義した。
図4に示されるように、LODは、0.1ng/mL又はそれよりもわずかに低いものと決定された。
【0060】
[0116]孔径5μmの膜に対する流速の影響:次に、アッセイの感度に対するフロー23速度の影響を調べた。より速いフロー23速度は、より多くの抗原13を膜3センサに送達し、これは感度を改善することができると考えられた。VFIシステムは、アッセイ緩衝液にスパイクされた1ng/mL CPSを使用して、異なるフロー23速度で、AE98膜3で10分間の一定のアッセイ時間を用いて試験した。GNP12の最終濃度を一定に維持するように、CPS試料に加えた4C4−GNP12原液の体積を調整した。
図5に示される結果によれば、フロー23速度(体積フロー23流量を膜3の表面積81で割った値に等しい)が増加するにつれて、検出スポット及び陽性対照スポット79の両方からの信号が増加された。
【0061】
[0117]試料フロー23速度の増加が感度を改善することができるとわかったところで、5mL/分のより高いフロー23流量で、VFIデバイス1のLODを再び試験した。精製CPSの希釈液(1、0.5、0.2、0.1、0.04、0.02、及び0.004ng/mL)をアッセイ緩衝液中で調製し、VFI膜3に加えた。50μLの4C4−GNP12溶液をCPS試料に加えて、10分間混合した。
図6に示されるように、LODは、0.04ng/mL又はそれよりもわずかに低いものと決定された。
【0062】
[0118]VFI膜孔径効果:異なる孔径(0.1μm、0.2μm、0.45μm、及び5μm)を有する4つのニトロセルロース膜3を試験して、CPS VFIの感度に対する膜3孔径の効果を決定した。0.1μmが、市販のニトロセルロース膜の最小孔径である。1つの濾紙(Whatman定性濾紙、グレード1、有効孔径11μm)も試験したが、捕捉抗体固定化ステップで失敗した。全体を通して、アッセイ緩衝溶液にスパイクされた1ng/mLのCPSを試験試料として使用した。1.5mL/分のフロー23流量及び10分のアッセイ時間で試料を処理した。異なるニトロセルロース膜3を使用して得た結果が
図7に示されている。ニトロセルロース膜の孔径の減少により、検出スポット79に対する信号の強調が得られた。0.1μmの膜3からの信号は、5μmの膜3に関して観察された信号の2倍の強さだった。
【0063】
[0119]孔径0.1μmの膜に対する流速の影響:本実施例では、様々な孔径の膜3のうちで最良の信号を示した0.1μmの膜を使用して、フロー23速度の影響を試験した。10分の一定時間に関して、0.5、1、1.5、2、3、4、5mL/分のフロー23流量で、1ng/mLのCPSをスパイクしたアッセイ緩衝溶液を膜3に押し通した。
図8に示される結果によれば、より大きなフロー23流量で増加した信号強度が観察された。孔径5μmの膜3を用いて、より大きなフロー23流量での感度の増加も観察されたが、全体の信号は、孔径0.1μmの膜3を用いたほうが強かった。膜3の孔径の変化に伴うバックグラウンドレベルの有意な変化はなかった。
【0064】
[0120]最適化されたVFIシステムのLOD:2つの重要な因子、すなわち膜の孔径及び試料流速の影響を、スパイクされた試料を用いた実験を通して個別に実証し、理論モデルとの良好な一致を示した。フロー23流量及び膜3孔径の研究から得られた知見を使用して、最良の性能のフロー23流量及び膜3の条件を統合して、最適条件、すなわち最小の膜3孔径及び最高のフロー23流量でのVFIデバイス1のLODを決定した。孔径0.1μmの膜3を選択して、5mL/分の最高フロー23流量で試料を通した。精製CPSの希釈液(1、0.5、0.2、0.1、0.04、0.02、及び0.004ng/mL)をアッセイ緩衝液で調製し、50μLの4C4−GNP12溶液と10分間混合し、次いで、シリンジ6を使用してVFI膜3に通した。膜3のスキャン画像が、各膜3から抽出された信号と共に
図8に示されている。LODは、0.02ng/mLであるか、又はそれよりもわずかに低いものと決定された。
【0065】
[0121]生物脅威病原体の多重化検出のためのVFI−概念実証:異なる捕捉抗体剤19を利用するスポット79のマイクロアレイを収容する能力により、VFIは、多重バイオマーカ検出に本質的に適している。生物脅威の検出に関して、VFIデバイス1プラットフォームを使用して概念実証実験を行って、CPSとPGA(炭疽菌の原因物質である炭疽菌に関するバイオマーカ)の2つの標的を同時に検出した(Gao et al., 2015)。多重化VFI膜3の設計が
図10Aに示されている。検出マイクロアレイを2つの部分に分割した。半分は、CPSを標的とするmAb 4C4でコーティングし、残りの半分は、PGAを標的とするmAb 8B10でコーティングした。ヤギ抗マウスIgM+IgG+IgA及び1XPBSも、陽性対照及び陰性対照として同じ膜3に定量供給した。異なる抗原13含有量を有する4つの試料(CPS陰性/PGA陰性、1ng/mL CPS/PGA陰性、CPS陰性/1ng/mL PGA、及び1ng/mL CPS/1ng/mL PGA)を、1mL/分の流量及び10分のアッセイ時間で0.1μmの孔径のVFI膜3によって処理した。
図10Bは、4つの膜3のスキャンされた画像を示す。
図10Cは、4つの膜3からの信号強度を示す。検出スポット79は、対応する抗原13が試料に存在するときにのみ陽性信号を示した。この実験は、VFIデバイス1プラットフォームが複数の生物脅威剤を同時に検出することができることを実証した。LFIとは異なり、VFIデバイス1では、検出スポット79が空間的に離され、反応が互いに独立しており、VFIを大規模な多重化検出に特に適したものにする。しかしながら、交差反応又は非特異的結合が起こる可能性が依然としてあり(Juncker et al., 2014)、予混合条件及び緩衝溶液のさらなる特性評価を必要とすることがある。この実験は、VFIプラットフォームが複数の生物脅威剤を同時に検出することが可能であったことを示す。LFIとは異なり、検出スポットは空間的に離れており、反応はVFIシステム内で互いに独立しており、これは、本明細書で実現されるVFIデバイスをより大規模な多重化検出に特に適したものにする。
【0066】
[0122]VFI流体シミュレーション:膜3を横切る流れの均一性を調べるために、FEMソフトウェアCOMSOL Multiphysics 5.0(CONSOL,Inc.(米国カリフォルニア州ロサンジェルス))を使用して流体シミュレーションを行った。シミュレーションは、紙膜3又はSiグリッド支持体21を使用せずに、ステンレス鋼ホルダ29チャンバを用いて開始した。流体力学の性質により、速度は、
図11Aに示されるように、ホルダ29チャンバの中央部分でかなり高かった。支持体21(複数の開口部を有する非変形可能な固体構造としてモデル化)と紙膜3(多孔質薄膜としてモデル化)とをモデルに実装すると、液体流れプロファイルが大幅に変化した。
図11Bに示されるように、支持体21及び膜3は、フローチャンバを横切る流体のフロー23を均一にした。
図11Cは、膜3を横切るフロー23の大きさのプロファイルの拡大図を示す。固体部分の上部での速度よりも、Siグリッド支持体21の中空部分の上部の速度のほうが高い。
図11D及び11Eで示されるように、この速度変動は、紙膜3での圧力の変動に変わる。しかし、撮像面として最も重要な部分である紙膜3の上面5に対する圧力は、圧力変動は1%以内である。したがって、膜3を横切るフロー23及び圧力は均一であるとみなすことができる。
【0067】
[0123]考察:本実施例では、生物脅威病原体の検出は、ナノ多孔性ニトロセルロース膜3に統合されたサンドイッチイムノアッセイに基づき、比色分析信号を読出し情報として生成する。VFIデバイス1の技術は、生物脅威病原体検出のための、単純で小型化された迅速な(30分以内のサンプルトゥーアンサー(sample−to−answer)時間)プラットフォームを実現する。
【0068】
[0124]フロースルーデバイス1の流量の影響を試験するとき、一般的な実験スキームは、試料体積を一定に保ち、流量を変化させることである(Zimmermann et al., 2005)。これは、限された試料体積で高速の処理速度でアッセイを続行するのに効果的である。しかし、実際の用途では、特に尿や環境水などの豊富な試料を扱うときは、試料体積はもはや制約ではない。したがって、本実施例での実験は、10分の一定のアッセイ時間で、フロー23流量を変えて、すなわち試料体積を変えて行い、VFIの検出感度を比較した。LFI試験に必要な時間と一致するように、10分のアッセイ時間を選択した。2つのタイプの膜3(孔径5μm及び0.1μm)を用いて、フロー23速度の影響を試験した。どちらの場合にも、フロー23流量が増加するにつれて、検出スポット79からの信号が強調された。フロー23速度と信号強度とのこの関係は、膜3の多孔質構造23を束になったナノチューブとしてモデル化して、フロースルー表面イムノセンサに関する古典的なモデル(Squires et al., 2008)で説明することができる。フロー23流量が増加するにつれて、表面抗体捕捉剤19によって標的抗原13を捕捉することができる枯渇区域の厚さが減少した。しかしまた、増加されたフロー23流量は、より多くの試料を膜3に送達し、これは、減少された枯渇区域の厚さによる結合の損失を相殺した。
【0069】
[0125]開示されるVFIデバイス1の設計により、固定化された捕捉抗体剤1を有する領域に押し通された試料のみを検出することができた。他の領域を通った試料の残りは廃棄した。したがって、検出領域に送達される試料の量を決定したのは、総試料体積ではなく、単位面積当たりの試料体積であった。単位面積当たりの試料体積が多いほど、捕捉抗体剤19によって捕捉することができる標的抗原13の量が多くなる。表1は、いくつかの従来の免疫濾過デバイスの重要な特徴を要約したものである。開示されるVFIデバイス1は、以前の研究と比較して、単位面積当たりの試料体積がはるかに大きい。その結果、VFIの感度は改善された。
【0070】
[0126]表1:提示されたVFIと以前に報告された免疫濾過デバイスとの重要な特徴の比較。開示されるVFIデバイス1での単位面積当たりの試料体積が大きいため、より良い感度が達成された。
【表1】
【0071】
[0127]膜3にわたる平均CVは、10%であると計算された。これは、以前に開発されたシステムに匹敵する(Chinnasamy et al., 2014)。
図11に示されるように、流体シミュレーションを行って、濾紙ホルダ内のフロー23プロファイルを調査し、膜3にわたる均一性を確認した。特に、Si支持体21を使用するとき、より大きな孔の膜3を用いた場合でも、以前の文献(Chinnasamy et al., 2014)で報告された高いCV値(CV>0.85)は観察されなかった。本実施例において作製されたシリコングリッド支持体21は、市販のステンレス鋼よりも高いヤング率を有することが可能である。このSiグリッド支持体21は、変形の影響を受けにくく、以て不均質なフロー23が起こるのを防止する。
【0072】
[0128]理論モデルに基づいて予測され、後で本実施例の実験を通して示されるように、VFIの利点は、2つの要因、すなわち単位面積当たりの試料体積及び膜3孔径から主に生じる。従来のLFIは、長い膜(約40mm)を通して液体を移送するために毛細管力に依拠しており、これは、膜3孔径に制限を与える。LFI膜孔径の一般的な範囲は、3〜12μmである(Posthuma−Trumpie et al., 2009)。しかし、VFIは、サブミクロンの孔径を有する膜3を使用できるようにする、短い膜3フロー23経路(約130μm)を有する。より小さい孔径は、多孔質構造11内でより多くの結合部位を生成する、より高いタンパク質装填容量を実現する。また、より小さな孔径は、抗原13が膜表面の抗原捕捉剤19によって捕捉されるのに必要な拡散距離を減少させる。LFIシステムの膜孔径を減少させることも、アッセイ感度を高めるための効果的な方法であり得ることが示されている(Henderson and Stewart,2002)。これらの理由に基づいて、本実施例では、孔径0.1μmを有するニトロセルロース膜3をCPSアッセイのための最適化された基材として選択した。しかし、標的抗原13がCPSよりも大きい用途では、0.2μm及び0.45μmの選択肢も残っている。
【0073】
[0129]さらに良好な感度を得ることを妨げる主要な障害の1つは、低い4C4−GNP12濃度であった。現在のVFIは、単位面積当たりの大きい試料体積を実現するために、大きい総試料体積を必要とする。一方、大きい試料体積の使用は、結合効率を増加させるためにかなりの量の標識ナノ粒子12を必要とする。この問題を解決するための1つの取り得る解決策は、単位当たりの大きい試料体積を維持しながら、試料の総体積を減少させることである。これに対する1つの手法は、より小さい表面積81を有する小型化VFIデバイス1を開発することである。
【0074】
[0130]本実施例は、生物脅威病原体の迅速な診断のための開示される紙ベース垂直フローイムノアッセイ(VFI)デバイス1のプロトタイプの開発及び最適化を述べる。類鼻疽の原因物質である類鼻疽菌をモデル細菌標的として使用し、サンドイッチアッセイを開発して、診断用バイオマーカとして莢膜多糖(CPS)を検出した。VFIデバイス1は、場合により互いに異なることがある少なくとも120個の検出スポット79、30分未満のアッセイ時間、及び通常の卓上スキャナに適用可能な金ナノ粒子12媒介比色読出値を組み込む。試料フロー23流量及び膜3孔径が、開示されるVFIデバイス1の性能に及ぼす影響を調査した。本実施例の結果は、ナノ細孔膜3を通る高いフロー23速度が、より高い感度を実現する鍵であることを示す理論分析とよく一致した。ディープエッチングされたシリコングリッド支持体21を市販のステンレス鋼支持体の代わりに使用して、より大きな孔径の膜3を有する大きな信号変動を防止するのを助けた。2つの反応スキームを比較した。その結果、試料と抗体標識ナノ粒子12とを事前に混合した予混合法がより効果的であることが判明した。精製されたCPSを用いて、0.02ng/mLの検出限界(LOD)を示した。VFIデバイス1プラットフォームを使用したCPS及びPGAを用いた多重化生物脅威検出も示された。開示されるVFIデバイス1は、資源が限られた又は臨床の様々な状態で生物脅威剤を検出して減少させるための有益な手法を実現する。
【0075】
[0131]例えば、Chen et al. ”Paper−based Vertical Flow Immunoassay (VFI) for detection of bio−threat pathogens” Talanta 191(1):81−88(2019年1月−2018年8月17日オンラインで閲覧可能)及び裏付ける補完資料を参照されたい。それらの全てを参照により本明細書に援用する。
【0076】
[0132]実施例2:垂直紙ベース免疫診断システム(VPI−DS)の設計規則
[0133]本実施例は、均一性及びPGAアレイ印刷;PGAのためのmAbの精製及び共役、並びにLPS、LcrV、及びF1のためのmAbの開発、LFIによるpH及びイオン強度の影響の決定、並びにLcrV及びF1 LFIの試験に対処する。開示されるデバイス1を使用するVPIアッセイも、CPS及び自動画像解析ソフトウェアに関して評価した。
【0077】
[0134]膜全体にわたるT信号の変動:スクリーニング実験後のニトロセルロース膜3の皺の問題を解決するために、いくつかの手法を取った。
図12A〜12Cは、これらの問題を様々な程度で表す膜3の画像を示す。
【0078】
[0135]問題:処理された試料のほとんどにおいて、スクリーニング実験後、ニトロセルロース膜3に濃い円形の染み14が見て取れる。これは、液体が通過した後の膜3の皺によるものであり、この皺によって平坦でない紙表面が生成され、これが次いで濃い染み14として撮像される。染み14は、検出スポット79及び背景のグレースケール強度を変化させ、誤検出結果を招く可能性があるため問題となる。
【0079】
[0136]
図13A〜13Cは、以下のような、この問題の解決を試みて失敗したいくつかの手法を示す:1)ステンレス鋼グリッドではなく、膜3支持体としてのSiグリッド支持体21の使用。本発明者らは、膜3の形状をより良く維持するために、Siの高い剛性を利用することを試みた(
図13A)。2)管調整器33。本発明者らは、スクリーニングチャンバ39の出口37に接続されている垂直配管35を延長して、液体が垂直に膜3を通って流れるようにした(
図13B)。3)カスタマイズされたOリング77。本発明者らは、より均一な力を膜3に加えるために、平坦な表面を有する独自のOリング77を作製した(
図13C)。
【0080】
[0137]
図14は、皺の背景にある提案される推論を示す概略図である:スクリーニングチャンバ39を組み立てるとき、膜3に加えられる力(クランプ力及びねじり力)は膜3の縁部でより高く、これにより膜3がドーム状になる。液体が膜3を通って流れると、より高い圧力が中央部にかかり、それにより皺が発生する。
【0081】
[0138]
図15A及び15Bは、膜3の皺及び染みの問題に対する解決策を示す。最終的な解決策:スクリーニングチャンバを組み立てる前から、膜3をPBSで事前に濡らす。ここまで、本発明者らは、気泡と膜3の皺の問題を解決した。品質は、(
図15Bを
図15Aと比較してわかるように)大きく向上している。
【0082】
[0139]信号均一性研究:VFIにおける懸念の1つは、膜3を横切る液体のフロー23の変動が信号の不均一性をもたらす可能性があることである。本発明者らは、膜3に加えられた圧力のインシリコでの結果を提示している。これは、膜3全体で一貫性があり比較的均一であるように見える。試料の一部を用いて分析を行い、信号均一性を調べる。
【0083】
[0140]本発明者らは、例として、乾燥時間実験結果から10分間の試料を使用する。アレイ内の多くの検出スポット79の間で変動が見られる場合でも、以前の出版物で報告されているように明確なパターンを観察することはできない。変動はランダムに現れる。現在のデバイス1では、信号の変動は約15%であり、これは文献で報告されている値と比較してかなりの改良である。ディスペンサ自体の精度によって主に決定されるディスペンシングプロセスには、ベンダの仕様に応じて10%超の変動がある。
【0084】
[0141]本明細書で提供されるシステム及び方法により、ラテラルフローシステムを凌駕する信号検出及び感度の実現が容易になる。例えば、
図16Aは、表面に様々な捕捉剤(例えば、この例では抗体)を有する膜を示しており、各捕捉抗体に関連する流れの断面積を反映するように中空チューブとして概略的にモデル化されている。
図16Bは、それぞれ対応する比色読出値を有する4つの異なる捕捉抗体(1つの対照捕捉抗体及び3つの異なる捕捉抗体)を示す断面の拡大図である。
図16Cは、流速(μ)、感知長さ(L
s)、膜孔径(d)、及び拡散率(D)に基づいたモデルを示す。拡散時間(t
dif)及び滞留時間(t
res)は、以下のように計算する。
[0142]t
dif=d
2/(4D)
[0143]t
res=L
s/μ
【0085】
[0144]このようにして、本明細書で提供される垂直フローシステム(VFI)のナノ細孔は、高い流速でのより良い標的捕捉を可能にする。さらに、VFIは、ラテラルフローシステム(LFI)では通常40mm以上であるのに対し、約100μm以下の短い流れ経路を有する。
【0086】
[0145]PGAアッセイ定量供給及びVFI試験:CPSアッセイ以外に、本発明者らは、PGAアッセイの初期研究の一部を開始した。PGAのためのサンドイッチが以下で作製される。
図17に示されるように、このアッセイでは、捕捉抗体(8B10)剤19及び検出抗体10(8B10−GNP)を使用する。同じレシピで、
図18の(A)及び(B)に示されるように、BioDotディスペンサを使用してニトロセルロース膜3に8B10捕捉抗体(8B10)剤19を定量供給することができる。
【0087】
[0146]概念実験では、5ng/mLの濃度で8B10サンドイッチアッセイを試験する。結果が
図18C及び18Dに示されている。サンドイッチアッセイは、0.2μmと0.45μmの膜3の両方で機能する。5ng/mLのCPSと5ng/mLのCPSとの結果を並べて示す。実際には、PGAアッセイは、より強い信号を示している。本発明者らは、このアッセイはより感度が高いと予想する。
【0088】
[0147]mAbの開発及び精製:炭疽菌PGA mAbの産生及び精製:炭疽菌ポリγD−グルタミン酸(PGA)特異的mAb、8B10を、組換えタンパク質A親和性クロマトグラフィを使用して精製する。さらに、精製されたmAbを40nmの金コロイドに結合させた。精製されたPGAと共に、標識されていないmAbと標識されたmAbとの両方を、垂直フローアッセイ形式で最適化される第2の抗体−抗原対の一部として準備する。
【0089】
[0148]野兎病菌LPS mAbの産生及び精製:野兎病菌LPS反応性mAb、1A4を産生するハイブリドーマ細胞株を、組織培養用Integraフラスコで増殖させる。組換えタンパク質A親和性クロマトグラフィを使用した1ラウンドの精製により、40mgの抗体の収量が得られる。しかし、細胞株は高密度Integra培養条件下では不安定であることがわかっている。これに応じて、LPSに対する高親和性モノクローナル抗体のより大規模なライブラリを単離するために、新たな1組のマウスを野兎病菌LPSで免疫する。免疫後6週間の血清力価によって、複数のマウスが高レベルのLPS特異的抗体を有することが示された。Ft LPSでさらに追加免疫した後、ハイブリドーマの産生のために脾細胞を単離する。
【0090】
[0149]ペスト菌LcrV及びF1 mAbの産生、精製、及び特性評価:LcrVモノクローナル抗体:8つの精製されたLcrVモノクローナル抗体全てに対してSPR分析を行い、mAb結合反応速度及び精製された組換えLcrVへの親和性を決定した(以下の表2)。各mAbについて会合速度定数(ka)及び解離速度定数(kd)を決定し、平衡解離定数又は「親和性」(KD=kd/ka)を計算するために使用した。代替として、定常状態平衡モデル(SSKD)を使用して親和性も計算した。他の全てのLcrVモノクローナル抗体と比較したとき、mAb 8F10では10倍高い会合速度(ka)が観察された。モノクローナル抗体6F10が、試験した8つの抗体の中で最も遅い解離速度を示した。全体として、mAb 8F10はSPR分析で最高の性能を示し、最も高い結合親和性を示した。
【0091】
[0150]抗原13捕捉ELISA形式でLcrV mAbを使用して、LFI産生のための最良の抗体対を決定した。8つのLcrV mAbを全てHRP結合し、rLcrVの検出に使用した。rLcrVは、ELISA形式で、標識されていないLcrV抗体によって捕捉された。各抗体対の検出限界(LOD(ng/ml))を計算した(以下の表3)。
【0092】
[0151]F1モノクローナル抗体:12個のモノクローナル抗体F1抗体のライブラリを生成し、組換えタンパク質A親和性クロマトグラフィを使用して精製した。精製された抗原13及びELISAの作業負荷を節約するために、12個の精製されたF1 mAbに関するスクリーニング戦略を(LcrV戦略から)変更した。12個のF1 mAbを全て金で標識して、プロトタイプLFIで湿式試験して、上位8個のmAb候補を、SPR分析及び抗原13捕捉ELISAによるさらなるスクリーニングのために選択した。F1 mAb間で結合反応速度又は親和性に有意差は認められず、F1 mAbは、他の抗体と比較して10倍高い会合速度を示した(以下の表4)。8つのF1mAbを全てHRP結合し、組換えF1を使用して抗原13捕捉ELISA形式で試験した。バックグラウンドレベルの5倍のカットオフを使用して、各抗体対の検出限界を決定した(表5)。
【0093】
[0152]バイオマーカの精製:市販のバイオマーカ(LPS、PGA、F1)を購入する。
【0094】
[0153]LFI(CPS)によるpH及びイオン強度の影響:mAb結合反応性に対するpH及びイオン条件の影響を比較する最初の実験では、表面プラズモン共鳴(SPR)とラテラルフローイムノアッセイ(LFI)の結果を直接比較することができないことが示された。LFI形式は、開発中の垂直フローアッセイに最も類似しているため、このイムノアッセイのみを使用して試験系列を継続することを決定した。4C4ラテラルフローイムノアッセイのバックグラウンド及び感度に対するイオン条件の影響を調査するために、界面活性剤P20を用いて又は用いずに、様々なイオン強度でリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)を使用してLFIを行った。100mM未満のNaCl塩濃度(イオン濃度:0.125mol/L)で有意なバックグラウンドが観察された。300mM(イオン濃度:0.325mol/L)までの塩濃度の上昇は、LFI性能に有意な変化をもたらさなかった(以下の表1)。これらの結果は、0.325mol/Lを超えるイオン濃度を有するPBSの使用により、本発明者らのLFIでの偽陽性結果が減少する可能性があることを示している。イオン条件の試験を完了するために、本発明者らは、より高いイオン条件での4C4 LFIの試験を計画し、場合によっては、開示されるデバイス1の垂直フローアッセイ形式とより適合性があり得る緩衝剤の試験を計画する。
【0095】
[0154]ペスト菌LcrV及びF1 LFIプロトタイプの開発:LcrV mAbの大部分が、抗原13捕捉ELISAで良好に機能したので、全てのLcrV mAbを金結合し、LFIプラットフォームでの検出器及び/又は捕捉抗体としての評価のために試験ラインとしてニトロセルロースに噴霧した。全てのLcrV LFIプロトタイプの初期試験が完了し、視覚的検出限界が1〜10ng/mlの有望な候補がいくつかある(
図19)。
【0096】
[0155]ELISAにおいて最も高い反応性を有する8つのF1抗体を、LFI形式での同様の試験のために選択した(
図20)。いくつかのプロトタイプは、組換えF1で1〜10ng/mlの視覚的検出限界を有する。
【0097】
[0156]初期試験は、緩衝液にスパイクされたrLcrV又はrF1を使用して実施した。ここで、現在の取組みは、マトリックスとしてヒト血清と共に使用するためにLFIプロトタイプを最適化することに焦点を当てている。
【0098】
[0157]
図19に示されるように、様々な濃度のrLcrV(左から右に、1μg/mL、100ng/mL、10ng/mL、1ng/mL、500pg/mL)及び陰性対照を用いて、(A)8F7:6F10、(B)8F10:2B2、(C)8F10:6E5(D)8F10:6F10のラテラルフローイムノアッセイ(LFI)試験を行った。20分後に画像を記録した。
【0099】
[0158]
図20に示されるように、様々な濃度の組換えF1(左から右に、1μg/mL、100ng/mL、10ng/mL、1ng/mL、500pg/mL、及び陰性対照)を用いて、(A)4E5:3F2、(B)10D9:3F2、(C)11C7:3F2、(D)11C7:15C4のラテラルフローイムノアッセイ(LFI)を試験した。20分後に画像を記録した。
【0100】
[0159]VPI CPS最適化:まず動作範囲を得るために、異なるパラメータを個別に試験した。次いで、DSDによるDOEスクリーニングを行って、重要なパラメータを選択し、次いで、最終的な最適化のために、重要なパラメータに対して完全な要因実験を行う。
【0101】
[0160]膜材料の比較及び最適化:
図21は、本実施例のために最適化及び比較に使用する膜3の例を示す。開示されるデバイス1における垂直フロー23システムの利点の1つは、液体輸送がニトロセルロース膜3の多孔質構造11に依拠しないことであり、これにより、膜3材料の孔径をはるかに小さくすることができる。小さな孔径を有するそのような膜3は、より多くの捕捉抗体剤19に結合するためのはるかに高い装填容量を有する。さらに、抗体−抗原結合を促進するために、拡散範囲を大幅に縮小する。
【0102】
[0161]本発明者らは、まず、SEMを用いて、0.2μm及び0.45μmの孔径を有する2種類の垂直フローニトロセルロース膜3、典型的なラテラルフロー膜(10μmの孔径)、及び濾紙を調べた(2K倍率での結果を上で見ることができる)。そのようなより微細な多孔質構造11により、検出効率を大幅に改良可能であることを想像することができる。
【0103】
[0162]次いで、本発明者らは、CPSのアッセイを用いて、開示されるデバイス1のVFIシステムにおいて6種類の材料を試験した。ラテラルフロー膜を比較するために、同じ供給業者によって提供されている最も近い膜であるので、8μm及び12μmのニトロセルロース膜3を選択した。
【表2】
【0104】
[0163]1mL/分のスクリーニング速度で5ng/mLの濃度で1mLのCPSを用いた結果を
図22で見ることができる。ニトロセルロース膜3の全ての試料において、陽性対照スポット79(
図22の上部及び下部の列)をはっきりと見ることができ、検出スポット79(中央アレイ)は様々な強度を有する。しかし、濾紙では、定量供給されたマイクロアレイが汚れており、検出又は対照スポットのいずれからも信号を観察することができない。
【0105】
[0164]次に、画像(
図23A及び23B)から獲得したグレースケール強度を見てみる。16ビットのグレースケールスキャンを使用しており、したがって値の範囲を1〜65535にする必要があることに留意されたい。孔径が小さくなるに従い、信号が強調されることがわかる。特に、検出スポット79では、0.1μm膜3からの信号は、12μm膜3からの信号の16倍の強度である。この結果によって、孔径がはるかに小さいニトロセルロース材料を選択することで、検出感度を大幅に向上させることができるという本発明者らの理論が強力に裏付けられる。
【0106】
[0165]乾燥時間研究:開示されるデバイス1のVFIシステムの多くの利点の1つは、ラテラルフロー試験ストリップ(μLレベル)では不可能である大きい体積の試料(mLレベル)の処理を高速で可能にすることである。しかし、膜3をスキャンして画像解析及び信号抽出を行う前に、ある程度の乾燥時間が依然として必要である。
【0107】
[0166]本発明者らは、乾燥時間(10〜30分)の影響を調べた。乾燥時間は、膜3を液体から取り出してから画像をスキャンするまでの時間である。スキャンされた画像が
図24に示されている。
【0108】
[0167]検出スポット79のグレースケール強度は、
図25A及び25Bで見ることができる。乾燥時間が長くなるにつれて、検出スポット79とバックグラウンドとの絶対強度(未処理の強度)がどちらも上昇する。膜3の余剰の水が蒸発するにつれて、膜3の反射率が変化し、膜3の色が明るく見えることを説明できる。対照的に、相対強度(検出スポット79からバックグラウンドを差し引く)は、乾燥時間が長くなってもそれほど変化しない。したがって、本発明者らは、最短の乾燥時間である10分を選択し、試験時間全体をできるだけ短くすることができる。乾燥時間は、乾燥パッド91(
図31A)、又は同様の能動的乾燥機構を使用することによってさらに短縮できることに留意されたい。
【0109】
[0168]検出抗体10の研究:サンドイッチアッセイの重要な部分として、検出抗体10と捕捉された抗原13との結合が、最終的な信号の強度を主に決定する。CPSは多価標的であるため、検出Ab10の濃度が増加するにつれて、より多くのナノ粒子12が抗原13に結合する。したがって、信号が強調される。しかし、飽和点に到達してそれを超えると、検出Ab10濃度がさらに上昇しても、バックグラウンドが増加するだけである。したがって、検出抗体10の最適な濃度を特徴評価して見つけ出すことが重要である。
【0110】
[0169]ここで、本発明者らは、緩衝液にスパイクした1mL CPS 1ng/mLを試料溶液として使用し、5μL〜60μLまでの様々な量の検出Ab10を試験する。結果は
図26で見ることができる。
図27A及び27Bに示されるように、検出Ab10濃度が上昇し、検出スポット79及び陽性対照スポット79の強度がどちらも増強される。
【0111】
[0170]検出スポット79及び陽性対照スポット79の値は、検出Ab10の濃度が増加するにつれて両方の信号が改善されるという同じ規則を示している。40μLと60μLの差は、20μLと40μLの差よりもはるかに小さいことに留意されたい。これは、約40〜60μLの検出抗体10で、サンドイッチアッセイが飽和点に達する可能性があることを示している。
【0112】
[0171]試料体積及び捕捉抗体剤19濃度の研究:スクリーニング試料が膜3を通過するときに、捕捉抗体が抗原13を捕捉する。予想できるように、膜3に定量供給される捕捉抗体剤19が多いほど、より多くの抗原13が捕捉される。また、捕捉抗体剤19には飽和点があり、この点を超えると、より多くの捕捉抗体剤19を加えても、捕捉される抗原13の量はそれ以上増加しない。異なる濃度の捕捉抗体剤19溶液を定量供給することは可能であるが、ディスペンサには、定量供給する液体の粘度に対する制限がある。したがって、本発明者らは、膜3の捕捉抗体剤19の量を増加させるために、捕捉抗体剤19溶液の複数の液滴を定量供給することを選択する。
【0113】
[0172]mLレベルで試料を処理できることが、開示されるデバイス1のVFIシステムの別の利点である。試料体積は、検出スポット79を通過する抗原13の実際の量を決定する。試料体積の増加は、標的濃度の減少を補償し、したがって、開示されるデバイス1のシステム感度を向上させる。
【0114】
[0173]本発明者らは、これら2つの因子を同時に試験するために、
図28に示される実験を設計した。マイクロアレイ(左側)は、6列の検出スポット79を有する。各列には異なる数の液滴(1〜6滴、捕捉抗体剤19溶液の濃度は10mg/mL)が定量供給され、それにより、捕捉抗体剤19の量は列毎に異なっていた。本発明者らは、異なる体積(1mLから10mL)であるが同じCPS濃度0.04ng/mLの6つのスクリーニング試料を調製した。1mL/分のフロー23速度で試料をスクリーニングした。
【0115】
[0174]結果は
図29で見ることができる。試料体積が増加するにつれて、信号強度が増加する。10mLの試料は、1mLの試料よりも有意に高い信号を示す。しかし、同じ試料内では、異なる捕捉抗体剤19濃度のスポット79間で結果はあまり変化しない。これは、10mg/mLの4C4捕捉抗体剤19の液滴1滴だけでも、通過する全ての抗原13を捕捉するのに十分であることを示す。
【0116】
[0175]上記の単一パラメータ研究により、重要な因子及び関心範囲を特定するのに役立つ。
【0117】
[0176]開示されるデバイス1のための3.5mm膜3のシステム開発:ここで、本発明者らは、単位面積当たりの試料がVFIシステムにおける主要な因子であることを確認した。単位面積当たりの試料を増加するには、1)総試料体積を増加させること、及び2)膜3のサイズを小さくすることの2つの方法がある。第1の方法は比較的簡単で、実験装置に変更を加える必要がない。特に、尿など、典型的には大きい体積を有する生体試料に適している。しかし、試料の処理にかなり長い時間を要する。さらに、本発明者らは、
図30A〜30Cに示されるように、膜3のサイズを小さくするためのいくつかの概念的な作業を試みた。
【0118】
[0177]標準的な13mm膜3に対して、本発明者らは、直径がわずか3.5mmのより小さいバージョンを作製した。これは、ニードル41の内側の空間に収まるほど十分に小さい(
図30A)。また、ガスケット25、Siグリッド支持体21、Oリング77(
図30C)、及びアダプタ43のより小さいバージョンを作製して、それらをニードルチャンバ45内に組み付けた(
図30B)。理論的には、シリンジ6のポンプ31なしで作動させることが可能であり、可搬性が高い。
【0119】
[0178]
図31A、31B、及び31Cは、0.5mL/分のフロー23速度でのCPS(5ng/mL)アッセイを用いた3.5mm膜3セットアップの試験のための実験セットアップ及びグレースケール強度結果を示す。
図31Cにプロットされた結果は、標準的な13mmディスク膜3からの信号と比較して、有意に強い信号(最大20倍)を示す。開示されるデバイス1のそのようなより小さな実施形態は、試料体積が小さく、超高感度を必要とする用途に特に有用であり得る。
【0120】
[0179]6つの設計因子を含む新規のVFIデバイス1の設計を完了した:相対グレースケール強度を制御する最も重要な主要効果は、抗原13の濃度及び検出抗体10の濃度であった。また、抗原13の濃度に関連する有意な二次効果と共に、抗原13の濃度に関連する2つの重要な双方向相互作用があった。
【0121】
[0180]追加の設計パラメータは、膜3の孔径、緩衝液pH、及び緩衝液イオン強度である。関連する設計パラメータの例は、以下のものである:1.膜3の孔径(0.1〜0.45μm);2.抗原13の濃度(0.5〜1.5ng/mL);3.検出Ab10の濃度(範囲はまだ決定されていないことに留意されたい;現在の飽和点は60μLである);4.フロー23速度(0.5〜1.5mL/分);5.緩衝液pH(6.5〜8.5);6.イオン強度(0.1〜0.5)。
【0122】
[0181]目標は、開示されるデバイス1で最大の相対グレースケール強度を生成するこれらの設計要素全ての理想的な値を特定することである。
【0123】
[0182]応答曲面での曲率に関するエビデンス(evidence)に基づいて、ここでも決定的スクリーニング計画(DSD)が適切である。DSDは、比較的少量の実行(合計17回)で6つの設計因子に対応することができ、追加の実行なしで2次効果の推定を可能にする。実行順序がランダム化された17回の実行計画表を以下に示す。
【表3】
【0124】
[0183]自動画像解析ソフトウェア:観察者の影響を最小限に抑えるためには、客観的な観察及び解析ソフトウェアシステムが必要である。ソフトウェアは、膜3の画像を解析して試験領域を位置特定し、各試験スポット79に関する値を測定する。プログラミング環境はLabVIEWである。
【0125】
[0184]第1のステップは、パターンを位置特定し、既知の位置に方向付けることである。第2のステップは、パターン内のスポット79を解析して、それらの強度を決定することである。現在、ソフトウェアはファイルを読み取ることができる。粗調整では、
図32に示されるように、画像を回転させて画像を方向付ける。位置特定が終了した後、ソフトウェアは、画像が真っ直ぐになるように微調整を行う必要がある。画像を方向付けると、ソフトウェアはパターンを検出し、各スポット79のドットを評価することができる。現在、
図33に示されるように、ソフトウェアは、各スポット79のドットの中心25ピクセルの平均を提供する。プログラムの現在の状態では、試験ケースの80%で自動方向付けが成功している。本発明者らは、このプロセスを改善するための方法を検討して試験している。現時点では、ユーザが解析プロセスを調整する必要がある。この部分は、既知の方法及び手順を使用して自動化することができる。
【0126】
[0185]リスク及び問題:リスク1−バイオドットディスペンサの変動が、系統的な変動を生じることがある。緩和戦略:工業レベル又は圧電作動式のマイクロディスペンサを使用する。解像度:本発明者らが使用している液滴サイズ(1nL)は、通常、マイクロソレノイドディスペンサのカットオフサイズである。液滴のばらつきは、10%の通常値よりも大きい。工業レベルのマイクロディスペンサを使用して、開示されるデバイス1でのVFIシステム全体の安定性を高めることができる。
【0127】
[0186]リスク2−mAb 1A4細胞株の不安定性。緩和戦略:1A4細胞株がまだ産生している間、不安定であり増殖が遅いことから、Ft反応性mAbを産生するハイブリドーマを増やすという決定が成された。解決策:10匹のマウスをFt LPSで免疫し、現在、最大の免疫反応に関して監視及び追加免疫している。脾臓摘出術及び融合術を実施して、高い反応性のFt mAbのより大きなライブラリを作成する。
【0128】
[0187]検査すべき他の因子は以下のものを含む:異なるイオン条件でLFIによって決定される類鼻疽菌抗体−抗原結合。高い反応性のペスト菌LcrV及びF1特異的mAbのライブラリの生成、精製、及び特性評価。ペスト菌LcrV及びF1 LFIプロトコルの開発及び試験。緩衝液にスパイクされた組換えタンパク質を使用した初期段階プロトタイプによる検出限界の決定。1A4(Ft LPS特異)mAbの精製。新たなマウスの免疫化と野兎病菌LPSに特異的な力価の生成。
【0129】
[0188]機会には以下のことが含まれる:
図34A及び34Bに示されるように、蠕動ポンプ31で試料を再循環させる。代替法は、より大きな試料体積を必要とせずに、単位面積当たりの試料を増加することである。このようにして、双方向フロー47に関して、捕捉のための追加の機会が利用可能である。何らかのアクティブな乾燥ステップを組み込んで、膜3の乾燥時間を5分未満にさらに短縮する。開示されるデバイス1のVFIシステムでは、本発明者らは、LFIに使用される膜の100分の1である0.1μmの小さな孔径を有する膜3を使用することができる。そのような小さい拡散範囲では、抗原13は、膜3の細孔を通過するときに捕捉剤19によってより容易に捕捉される。単位面積当たりの試料は、現在のサンドイッチアッセイにおいて最も主要な因子である。本発明者らは、膜3のサイズを小さくすることにより最大の信号強調を実現した。異なるイオン条件のチェイス緩衝液を用いた4C4 LFIの試験では、抗体−抗原結合のための最適なイオン条件の重要性が強調された。
【0130】
表1:4C4 LFIプロトタイプを、緩衝液のみ、又はチェイス緩衝液中に界面活性剤P20を伴う若しくは伴わない様々なイオン強度でのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中の1ng/ml CPSで試験した。20分後にESEリーダを使用して光学密度を取得した。結果は、2つの独立した実験の平均値を表す。
【表4】
【表5】
【0131】
表2:SPR分析によって決定されたLcrV mAbの結合反応速度及び親和性。読取値は、2つの独立した実験の平均値を表す。
【表6】
【0132】
表3:抗原13捕捉ELISAによって決定されたLcrV mAb対の検出限界(LOD)。LODを、バックグラウンドの5倍(OD=450nm)で信号を生成するrLcrVの濃度(ng/ml)として計算した。読取値は、各濃度で3回行われた、2つの独立したELISAの平均値を表す。
【表7】
【0133】
表4:F1 mAbの結合反応速度及び親和性をSPR分析によって決定した。読取値は、2つの独立した実験の平均値を表す。
【表8】
【0134】
表5:抗原13捕捉ELISAによって決定されたF1 mAb対の検出限界(LOD)。LODを、バックグラウンドの5倍(OD=450nm)で信号を生成するrF1の濃度(ng/ml)として計算した。読取値は、各濃度で3回行われた、2つの独立したELISAの平均値を表す。
【表9】
【0135】
[0189]実施例3:高流量感受性垂直フロー診断デバイス1及び使用方法:
[0190]心血管疾患及び癌予後モニタリング、並びに感染症診断及び生物脅威検出など、ポイントオブケア環境において資源が限られた現場でバイオマーカ測定を行う必要がある多くのシナリオが存在する。多くの場合、これらのバイオマーカは低濃度(例えば、<1ng/ml)で検出する必要がある。しかし、最も一般的なPOC試験形式である現在の紙ベースラテラルフローイムノアッセイ(LFI)は、この要件に対して十分な感度がない。一例は、類鼻疽用のバイオマーカである莢膜多糖(CPS)であり、これは、米国政府によってリストされているTier I生物脅威剤である。現在のLFIは、診療所での検出限界(LOD)が約1ng/mlである。この感度では、依然として、感染した患者の有意な割合がアッセイによって診断されない。より高い感度の単純なPOCアッセイが非常に必要である。
【0136】
[0191]以前に、ラテラルフローイムノアッセイ感度を改善する様々な方法が報告されている。それらの方法は、主に2つのグループに分けられる。1つは、センサの動力学、すなわち紙の孔径、幾何形状、試料体積の効果を利用する。孔径がより小さく、LFIでの流れがより遅いほど、感度が高くなることがよく知られている。さらに、Parolo et al.(2013)は、LFIでのより良い感度のために試料を濃縮するための幾何形状を報告している;Parolo et al.(2015)は、異なる体積の試料を紙に通すことによって、LODを要求に応じたものにするためのシリンジ垂直フロー形式のLFIの変形を報告している;Oh et al.(2013)は、紙膜のサイズを縮小し、体積を大きくすると、感度が高まることを報告している。しかし、試料流速の影響については言及されていない。垂直フロー形式でのバイオマーカの多重検出に関するChinnasamy et al.(2014)による別の論文では、高速の流体フローが、剪断力によりバックグラウンドを低減することが報告されており、最適な流速は約1.5ml/分(すなわち、0.33mm/秒)であると報告されている。
【0137】
[0192]感度を改善するための別の様式は、新規の検出メカニズムによるものである。大抵のLFIアッセイは、単純な比色検出のための標識として金ナノ粒子を使用する。デュアル金ナノ粒子、銀増強、又は化学発光検出用の結合酵素などの他の検出スキームは、感度を向上させることができるが、複雑性が増すという犠牲を払う。
【0138】
[0193]本出願では、LFIでのより高い感度のためのより遅い流れのよく知られている効果とは対照的に、本発明者らは、開示される垂直フローデバイス1でのより高い感度のための速いフロー23の利益を実現する。イムノアッセイなどのリガンド−受容体結合バイオセンサでは、感度はセンサを通過する試料の量とセンサでの捕捉剤の効率によって制限される。POC試験は短時間で行うことが好ましいので、POC時間枠(例えば10分)内により多くの試料を送達するためのより高い流速、及びより良い捕捉効率のためのより小さい紙膜孔径が、アッセイを改良する。本明細書で提供されるデバイス1及び方法はいずれも、以下のことを含み得る。
【0139】
[0194]1.フロー23速度は、従来のアッセイ(約3.3mm/秒)の速度よりも高いが、剪断によって標的及び標識の捕捉を切り離す速度(特定の結合反応速度及び強度に依存し、約33mm/秒よりも大きいことがある)よりも小さい。そのような剪断は、非特異的結合を除去してバックグラウンドを低減し、信号及び感度をさらに向上させるのに役立つ。したがって、本明細書で提供されるデバイス及び方法はいずれも、33mm/秒未満であるが3.3mm/秒を超える、又は約33mm/秒〜10mm/秒の間、又は約33mm/秒〜20mm/秒の間、又はそれらの任意のサブ範囲にある流速又は流束に関係することがある;2.紙膜3の孔径は、より良い捕捉効率のために、従来のLFI以下である(<15μm)。
【0140】
[0195]一般に、開示される垂直フローデバイス1は、以下のものを含む:1.捕捉剤19及び診断アッセイ用の対照試薬が装填された多孔質膜3;2.損壊を回避するために液体のフロー23に対して膜3を機械的に支持することができる多孔質膜支持体21。支持体は、流体が流れて通過できるようにする複数の細孔若しくは多孔質膜3又は組合せなどを有するグリッドを備えたSiウェハ又は鋼片でよい;3.紙膜3を押し下げ、液漏れを防止するためのガスケット25;4.ガスケット25/膜3/支持体21のアセンブリを保持し、ガスケット25を支持体25での膜3に押し付けて、内側ガスケット25領域内でのみ流体が膜3及び支持体21を通って流れるホルダ29;5.膜3/支持体21にわたる圧力差を生成して、任意の所望のフロー23流量での流体フロー23を垂直に膜3に押し通すPOCポンプ31(例えば、手動作動することができ、又は動力式ポンプ31に接続することができるシリンジ6)。ポンプ31は、異なる用途に必要なフロー23流量に応じて、手動で押すことによって置き換えることができる;6.膜3の上面5に及び/又は膜3の内側に、例えば細孔表面に沿って固定化された捕捉剤19の1つ又は複数のスポット79。マイクロディスペンシング技術を使用して、捕捉抗体剤19のスポット79のアレイを膜3に定量供給することができる。各スポットは、1つのタイプの標的を検出することができる。このマイクロアレイ設計は、異なるアッセイ間の相互汚染も最小限に抑える;7.膜3の捕捉スポット79によって捕捉することができる標的バイオマーカを含むことも含まないこともある試料溶液;8.標的バイオマーカに特異的に結合し、検出可能な信号を生成することができる標識剤を含む検出溶液;9.一実施形態では、順次に膜3を通って流れる試料溶液及び検出溶液23;別の実施形態では、混合され、次いで複合体として膜3を通って流れる試料及び検出溶液23;10.卓上スキャナによる金粒子12ベースの比色検出などの、膜3の表面5の標識を検出する検出システム49。
【0141】
[0196]より速いフロー23と、より小さな孔径との両方が、紙膜3を通して試料を流すために作動圧力を増加させる。本明細書で提供されるデバイス1及び方法は、比較的高圧下(例えばHPLCで、約<500バール)で機能することができる。高圧の手動生成のために、小さなピストン面積を有するシリンジ6を使用することができる(例えば、ピストン直径<5mm)。
【0142】
[0197]ホルダ29が高圧に耐えることができるためには、ガスケット25/膜3/支持体21を収容するチャンバ39のサイズを小型化することもまた良好である。
【0143】
[0198]試料体積が限られている場合、膜3の面積81の縮小により、高フロー23操作に必要とされる単位面積当たりの所望の試料体積に到達することができる。試料体積が限られている場合、流体の漏れを防ぐために膜3をガスケット25で挟む2つの支持体21により、試料を双方向フロー47で前後に膜3のセンサに押し通して、有効な試料体積を増加することができる。
【0144】
[0199]支持体21及びガスケット25は、より単純なデバイス1及びその操作のために、ホルダ29に一体化することができる。
【0145】
[0200]膜3の面積を減少するために、ワックスを印刷して膜3に溶かして、望ましくない膜3の領域を遮ることができる。
【0146】
[0201]米国保健福祉省によれば、約70の物質(病原体及び毒素)が、曝露時にヒト及び動物の健康に深刻な脅威をもたらす可能性がある。他のCBRNの脅威も、保安及び事故に関する主要なリスクである。曝露は、農村地域、さらには戦場において、資源が限られた状況で発生することがよくある。したがって、これらの環境の下で独立して動作することができる、迅速でありポイントオブケア(POC)の、多重化された使いやすい診断デバイスを開発する必要があることは明らかである。
【0147】
[0202]紙は、非常に安価で広く入手可能な材料として、そのようなタスクを実施するためによく追究されてきた。一般的に見られるラテラルフロー形式は、その低いコスト及び低い複雑さにより、過去数十年にわたって迅速な診断の主流となっている。しかし、標的抗原13の数が増加するにつれてアッセイの性能が低下する可能性があるので、ディップスティック設計で多重検出を実施することは困難である。
さらに、試料体積は、液体を輸送するために紙の毛細管力のみに依拠しているので制限される。最も重要なことに、バイオマーカが検出限界(LOD)未満しか蓄積しない特定の感染症には感度が不十分である。これらの制限は、試験の精度を低下させ、したがってその臨床的重要性を低下させる可能性がよくある。
【0148】
[0203]本明細書で提供されるのは、異なる診断用途に容易に適合させることができる、新規の垂直フロー紙ベースイムノアッセイ(VFI)デバイス1のプラットフォームである。図示されるように、アッセイ試薬を含む試験膜3は、アダプタ43を使用して、シリンジ6のポンプ31の針41のチャンバ45に挿入される。機械的グリッド支持体21は、液体フロー23に対して膜3を支持するために、膜3の下に配置される。液漏れを抑制及び防止するために、Oリング77が膜3の上に配置される。試験試料はシリンジに貯蔵され、手動で押すことによって、又はシリンジ6のポンプ31を用いて、膜3を通して垂直に移動される。デバイス1は、スクリーニング試験後に分解して、撮像及び他の後続の分析のために膜3を回収することができる。
【0149】
[0204]開示されるデバイス1及び方法は、比色検出以外の異なる検出方法と適合性がある。例えば、バイオマーカの電気化学的検出は、膜3の基質上の印刷された電極を用いて実施することができる。光学検出(SERSなど)や磁気検出などの他のスキームも実装することができる。
【0150】
[0205]垂直フロー診断デバイス1は、以下のうちのいずれか1つ又は複数を含むことがある:1.ニトロセルロース膜3、PVDF膜3、膜3としての濾紙などであり得る:2.孔径の選択に関して高い耐性がある(従来の範囲は0.01μm〜20μm)。より小さい孔径は、拡散範囲を大幅に縮小し、捕捉剤19が関与する捕捉反応を促進し、感度を高める;3.10μm〜1000μm、しかし好ましくは10〜30μmの厚さ9を有して、標的捕捉に十分な場所を確保し、またフロー23の抵抗を最小限に抑える。
【0151】
[0206]膜支持体21は:1.Siやステンレス鋼などにすることができる;2.膜3を支持するのに十分に大きな厚さを有する(>10μmなど);3.1μm〜1000μmの孔径を有する;5.膜3を横切る均一なフロー23など、ガスケット25領域内の所望のフロー23流量プロファイルを与える分布を有するガスケット25領域内の複数の細孔。
【0152】
[0207]ガスケット25は:1.Oリングなどの弾性材料にすることができる;2.内側ガスケット25領域を画定する構造を備えた微細加工材料にすることもできる。
【0153】
[0208]異なる用途シナリオを含む、3つの構成を以下に例示する。
【0154】
[0209]構成1:流体フロー23は、特定の現実的な時間枠(例えば、ポイントオブケア用途に関しては10分)中に標識信号が最大化されるように、所定の最適流量で制御することができる。手動で押して、流体を膜3に押し通す。シリンジ6のピストン面積は、利用可能な最大圧力が最適な流量23に到達することを可能にするために減少される。臨床試料からの非特異的結合は、流体フロー23によっても減らすことができる。Oリング77の開口部は比較的大きく、大きい試料体積を用いた高多重検出に適している。
【0155】
[0210]構成2:内側ガスケット25の面積は、単一の膜3支持体の孔径(例えば、約0.00008mm
2、0.1μm細孔の膜3に関しては直径約10μm)と同様まで、構成1での膜3の面積よりも小さくなるように制御される(約96mm
2、直径約3.5mm)。非常に優れた感度、多重化に対する低い要件、小さい試料体積を必要とする用途に適している。
【0156】
[0211]構成3:膜3は、2つの膜支持体21の間に挟まれている。ガスケット25を支持体21と統合するために、支持体21にナイフエッジを製造することができる。このサンドイッチ構成は、双方向の流体フロー47が、最適な流量で膜3を通るリサイクルを可能にできるようにする。限られた試料体積で超高感度を必要とするアプリケーションに使用することができる。
【0157】
[0212]実施例4:Tier I生物脅威剤の多重検出のための垂直フロー紙ベースイムノアッセイ(VFI)法の開発
[0213]70を超える生物学的因子及び毒素が、ヒト及び動物の両方の健康に深刻な脅威をもたらすことが確認されている。これらの薬剤への曝露は、多くの場合、資源が限られている戦場や農村地域などの厳しい環境で発生する。したがって、多重化に適した、感度が高く、費用対効果が高く、使いやすいポイントオブケア診断ツールを開発することが不可欠である。本発明者らは、Tier Iの生物脅威の多重検出を実施する垂直フロー紙ベースイムノアッセイ(VFI)精密濾過デバイス1を開発し、特性評価した。デバイス1のプラットフォームは、10分未満で直接可視化するための比色信号を生成する微生物抗原13の捕捉に基づいている。
【0158】
[0214]類鼻疽菌(Tier I剤)は、壊滅的な細菌感染症である類鼻疽の原因物質である。垂直フロー形式で類鼻疽菌莢膜多糖(CPS)を検出するために、サンドイッチイムノアッセイを構築した。CPS特異的モノクローナル抗体(mAb 4C4)を、ニトロセルロース膜3(孔径<1μm)に固定化し、捕捉抗体剤19として働かせた。マイクロディスペンサを使用して、mAb 4C4をニトロセルロース膜3のスポット79アレイ形式にスポットした。mAb 4C4と結合された金ナノ粒子12(GNP)は、CPSへの結合後に比色信号を生成する検出抗体10として働いた。検出抗体10を、CPSでスパイクされた緩衝液と事前に混合することによってVFIを実行し、次いで、シリンジ6のポンプ31を用いて試料を垂直に膜3に通した。洗浄及び乾燥ステップの後、膜3を標準的な卓上スキャナでスキャンし、自動撮像解析ソフトウェアを使用して分析した。
【0159】
[0215]開示されるデバイス1のVFIシステムを特性評価するために、実験計画(DOE)スクリーニング分析をJMP Pro 13で作成した。6つの連続する因子(フロー23流量、アッセイ時間、GNP12の量、予混合時間、緩衝液pH、緩衝液イオン強度、及び1つのカテゴリ因子)と、膜3タイプとを含む7つのVFIパラメータを研究した。
【0160】
[0216]結果及び結論:従来の紙ベースラテラルフローアッセイは、小さい試料体積、及び標的の捕捉には非効率的な比較的大きな膜孔径(>10μm)の必要性により、感度及び多重化機能が制限されることがある。開示されるVFIデバイス1は、能動流体圧送を実施することによって、これらの問題に対する優れた解決策を提供する。
【0161】
[0217]DOEの結果によれば、フロー23流量及びアッセイ時間は、平均信号強度に影響を与える2つの最も重要な因子であり、次いで膜3のタイプ、pH、及び予混合時間が続いた。フロー23流量とアッセイ時間との間に2因子相互作用があった。これは、単位面積当たりの試料体積が、開示されるVFIデバイス1の感度をさらに改善するための鍵となり得ることを示す。信号の変動に関しては、GNP12の量及び膜3のタイプが支配的な要因であり、次いでフロー23流量が続いた。スクリーニング設計により、VFIデバイス1のさらなる最適化のために調査される重要な因子を特定した。
【0162】
[0218]これらの最適な実験条件下で、CPSアッセイに関する現在のVFIの検出限界(LOD)は、4pg/mL(従来のラテラルフローデバイスの10分の1)である。また、本発明者らは、CPS及びPGA(炭疽の原因物質である炭疽菌のためのバイオマーカ)の多重検出についても実証する。開示されるデバイス1のVFIシステムは、様々な生物脅威の検出について特性評価されることがあり、多重化能力、及び小型化による性能の改善について検証され得る。
【0163】
[0219]実施例5:設計ガイドライン及びシステム仕様
[0220]パラメータ1−膜3の材料と孔径:設計規則:高いタンパク質結合能を有する膜3の材料が好ましい。膜3の孔径が小さいほど、検出感度が高くなる。フロー23の経路が非常に小さいため(約130μm)、開示されるデバイス1のVFIシステムでナノ細孔膜3を使用することができる。推奨値:0.1μmの孔径を有するニトロセルロース膜3は、類鼻疽、炭疽菌、及びペストに関するアッセイで最高の感度を示す。
【0164】
[0221]パラメータ2−捕捉抗体剤19:設計規則:膜3の捕捉抗体剤19の密度が高いほど、標的抗原13を捕捉するためにより多くの結合部位が利用可能になる。捕捉抗体剤19の濃度は、膜3の材料の装填容量に基づいて飽和状態に押し上げるべきである。推奨値:1つの液滴(1ナノリットルの体積)の捕捉抗体剤19溶液(10mg/mL)が、検出スポット79として膜3に堆積される。
【0165】
[0222]パラメータ3−pH:設計規則:緩衝液中の試験範囲(pH6.4〜8.4)では、pHが重要になることがある。推奨値:アッセイに依存する。
【0166】
[0223]パラメータ4−イオン強度:設計規則:本発明者らが試験した範囲(50〜450mM)では、150mM未満の値は、高いバックグラウンドを与えた;VFIシステムでの150〜450mMの値では、イオン強度の有意な影響は観察されなかった。推奨値:150〜450mM。
【0167】
[0224]パラメータ5−マトリックスタイプ
[0225]設計規則:開示されるVFIデバイス1では、3つのタイプの最も一般的に使用されるヒト体液、すなわち血清、血漿、尿を使用することができる。血清及び血漿は、狭いpH及びイオン強度の範囲を有し、これら2つの因子からの変動は通常は重要ではない。pH及びイオン強度の大きなばらつき(最大10倍の差)が知られているヒト尿試料。これは、開示されるデバイス1のVFIシステムでより詳細な特性評価を必要とする。VFI膜3を閉塞することがある微粒子や細胞成分を除去するには、0.2μmのポリエーテルスルホン(PES)膜による前濾過が好ましい。推奨値:血清、血漿、又は尿。
【0168】
[0226]パラメータ6−VFIデバイス1の反応スキーム:設計規則:予混合スキーム:試料がVFI膜3を通って流される前に、試料を、GNP12で標識された検出抗体10と混合する;逐次スキーム:溶液で標識された試料及び検出抗体10を、逐次ステップで膜3を通して流す。推奨値:本発明者らの結果は、予混合が好ましいことを示すが、アッセイに依存することがある。
【0169】
[0227]パラメータ7−AuNP12で標識された検出抗体10:設計規則:CPSアッセイなど、検出と捕捉の両方に同じ抗体を使用するアッセイの場合、AuNP12で標識された検出抗体12の濃度を上昇させても、検出感度は大幅には向上しない。LcrVアッセイなど、検出と捕捉に関して異なる抗体を使用するアッセイの場合、AuNP12で標識された検出抗体10の濃度を上昇させると、検出感度が大幅に向上する可能性がある。現在、LcrVアッセイにおいて、検出スポット79とバックグラウンドとの最良のコントラストを与えるAuNP12標識抗体の最適濃度を見つけるために、実験がさらに行われている。CCDベースのカメラ検出で使用されるとき、分枝NPはより高い散乱係数及び調節可能な波長を有しており反射率を高める可能性があるので、金ナノスターと標準回転楕円体NP12との比較も評価中である。推奨値:アッセイに依存する。
【0170】
[0228]パラメータ8−単位流量:設計規則:単位流量(mm/秒)は、試料体積流量(mL/分又はcm
3/分)をVFI膜3の表面積81(mm
2)で割った値として定義される。単位流量が高いほど、より多くの試料を一定時間に感知領域81に送達することができ、より良い検出感度を実現することができる。単位流量は、ポンプ31によって制限される。フロー23流量が高いほど、より高い圧力が必要になり、これは、ポンプ31を停止させる、又はVFIハウジング(例えばホルダ29)を破損する可能性がある。推奨値:ポンプ31に基づいて、本発明者らは、現在、New EraシリンジポンプNE1000を使用しており、フロー23流量は容易に1.5mm/秒にすることができる。
【0171】
[0229]パラメータ9−VFI試験時間:設計規則:予混合時間:これは、試料が、AuNP12溶液で標識された抗体と混合される時間である。予混合時間が長いほど、抗原13をAuNP12でより良く標識することができる。VFI実行時間:試料(標識AuNP12と混合された)がVFI膜3を押し通される時間である。一定のフロー23流量の場合、実行時間が長いほど、検出感度がより良くなる。推奨値:現在の設定は、10分の予混合時間及び10分の実行時間である。10分の実行時間は、ラテラルフロー試験に必要な時間と一致するように選択したが、ユーザのニーズに基づいて変更することができる。
【0172】
[0230]パラメータ10−膜支持体21のグリッド:設計規則:膜支持体21の剛性は、フロースルーステップ中の膜3の変形を決定し、この変形は、膜3全体にわたる信号均一性に影響を与えることがある。支持体21がより剛性になり得るほど、膜3を横切る信号はあまり不均一でなくなる。推奨値:開示されるデバイス1に関する現在のVFIセットアップでは、ディープエッチングされたSi支持体21が使用される。
【0173】
[0231]パラメータ11−膜3のサイズ及び多重度:設計規則:VFI膜3の表面積81はスポット79の総数を決定し、したがって、試験の多重度を、開示されるVFIデバイス1と統合することができる。スポット79サイズは多重度の制限因子であり、これはマイクロディスペンサの液滴サイズに依存する。本発明者らの現在のマイクロソレノイド値ディスペンサでは、最小の液滴体積は1ナノリットルである。しかし、より高度なピエゾディスペンサを用いると、液滴サイズをピコリットルレベルに縮小することができ、したがってスポット79サイズをはるかに小さくすることができる。推奨値:本発明者らの現在のディスペンサでは、7スポット/mm
2を有することができたが、他のディスペンサは11スポット/mm
2を示した。
【0174】
[0232]パラメータ12−試料体積:設計規則:試料体積は、単位流量及び膜3の表面積81によって決定される。VFIは、はるかに大きい範囲の試料体積に対処する:現在、標準的なVFIは、1mL〜50mL以上の試料を処理し、ミニVFIは500μL〜5mLの試料を処理する。余剰の希釈ステップを追加すると、感度を大きく失うことなく、下限をさらに100μLまで拡張することができる。そのような広範囲の試料体積は、開示されるVFIデバイス1に、様々なタイプの試料を処理する際の多くの融通性を与える。推奨値:標準的なVFIデバイス1は、1mL〜50mL以上の試料を処理し、ミニVFIデバイス1は、100μL〜5mLの試料を処理する。
【0175】
[0233]パラメータ13−デバイス1の統合及びソフトウェア:設計規則:現在、開示されるデバイス1に関する膜3及び支持体21は、ほとんどの標準的なシリンジ6に適合するようにルアーロックデバイスとして設計されている。核酸構成の場合、開示されるデバイス1のシステムはまた、VFIデバイス1と結合された試料調製モジュールを統合する。スマートフォンデバイス51のカメラ53で撮像するためのデータ解析ソフトウェア。推奨値:プラスチックシリンジ及びルアーロックコネクタ。
【0176】
[0234]実施例6:受動毛細管駆動式システム55による垂直フロー23
[0235]適切な垂直フロー23が膜3を横切って発生することを確実にするために、他のシステムが利用可能である。例えば、受動/毛細管ポンプ式の垂直フローデバイス1は、大きな試料体積/面積と適合性がある。能動ポンプ式デバイス1(例えば、電気などの外部エネルギー源によって動力を供給されるポンプ31)と比較して同様の試料体積/面積が実現される。能動ポンプ31を受動フロー23に置き換えることにより、プロセスがより単純になる。
【0177】
[0236]本実施例のデバイス1は、シングルプレックス又はマルチプレックスバイオマーカ検出用の垂直フローデバイス1である。このデバイス1と前述の垂直フローデバイス1との違いは、このデバイス1の試薬/流体が、能動的機械的ポンプ31とは対照的に、吸収性材料57の受動毛細管力によって圧送されることである。
【0178】
[0237]
図35は、受動毛細管駆動式の垂直フローシステム55の例示的実施形態を示す。関連する態様は、以下のことを含む:(1)他の垂直フローデバイス1の検出膜3と同様の検出膜3があり、捕捉剤19を膜3に固定化することができる;(2)検出領域81は、面積「A」を有する。この領域81は、ガスケット25メカニズムによって、又はワックス印刷など、膜3に液体不浸透性材料(液体遮断材料58)の層を印刷することによって、又はマスキングテープによって画定することができる。(3)試料を保持するために検出膜3の上には「試料チューブ/ホルダ」59がある。試料は、検出膜3に入る前に事前濾過される。プレフィルタ56は、外部にあっても、試料チューブ/ホルダ59と一緒でもよい。(4)時間の経過と共に検出膜3を通して試料を引っ張る毛細管ポンプとして作用する吸収性材料57があり:(a)検出領域81を通過する試料体積は、検出膜3の約200μL/mm
2、すなわち総体積200mm×Aよりも高く;(b)毛細管作用がポイントオブケア時間枠内で、例えば10〜30分で完了され、これは、流体フロー23速度が約0.2mm/秒よりも高いことを意味し;(c)全ての試料体積を収容する吸収性材料57が、「A」を中心として比較的均一に扇形に広がる。
【0179】
[0238]実用の際には、通常、「A」は、100〜0.01mm
2の面積を有し、「A」は円形を有することができる。「A」は線形状を有していてもよいが、その場合も、吸収性材料57は、「A」の外形を超えて均一に扇形に広がる。
【0180】
[0239]実施例7:放射線傷害の診断をサポートするための好適な線量測定のための費用対効果の高い方法
[0240]テロリストの非人道的な爆弾の爆発や原子力発電所の事故など大量の死傷者が出る原子力災害は、多くの命を治療して救うために効果的且つ迅速な医療応答を必要とする。第一対応者は、即時の医療介入が必要な人と遅延治療の候補者とを区別するために、吸収された放射線量を正確に評価しなければならない。
【0181】
[0241]米国食品医薬品局(FDA)によって承認された生物学的線量測定法はまだないが、現在、二動原体染色体アッセイ(DCA)が「ゴールデンスタンダード」とみなされている。このアッセイは電離放射線に非常に特異的であり、二動原体染色体のバックグラウンドレベルが低いので高感度である。しかし、全ての細胞遺伝学ベースのアッセイと同様に、DCAは労働集約的であり、線量を推定するのに長い時間がかかる。これは、緊急シナリオでの放射線量評価の重要な制限である。
【0182】
[0242]特に末梢血リンパ球における遺伝子発現プロファイルの開発は、生物学的放射線量測定への代替手法として提案されている。IRを含む環境ストレスへのヒト細胞の曝露は、複数の信号伝達経路を活性化することが知られており、遺伝子発現変化の複雑なパターンを急速に生じる。DCA又は小核アッセイとは対照的に、遺伝子発現は細胞分裂を必要とせず、高度な分子アッセイで迅速に分析することができる(Lacombe et al., 2018)。しかし、そのような多数の試料を処理して分析し、数時間で結果を返すために、技術開発には、ハイスループットプラットフォームに統合されたポイントオブケアデバイスを実現するための自動化及び小型化が必要である。
【0183】
[0243]ナノテクノロジーの進歩に伴い、紙材料は生物医学的用途に利用されており、有望な性能及び利点を示している。報告されている紙デバイスの大部分は、流体の流れが紙の表面に平行であるラテラルフローイムノアッセイ(LFI)形式で設計されている。LFIの主な利点には、低コスト、迅速な結果、柔軟性、使いやすさが含まれる。しかし、適切な流量を実現するために、紙材料の孔径は数マイクロメートル以上に制限され、これは、生体分子の捕捉、したがってアッセイ感度を妨げる。さらに、試料体積の制約及び多重化の難しさが、LFI開発が直面する他のハードルである。LFIプラットフォームを改善するための1つの手法は、フロースルーデバイスの開発である。この代替形式は、膜ベースのイムノアッセイであるという点でLFIと同様であるが、流体は、膜の表面に平行ではなく垂直に適用される(Chen et al., 2018)。したがって、垂直フローイムノアッセイは、より良い感度を実現し、より速く、フック効果を回避する。
【0184】
[0244]本明細書では、核酸検出のための費用対効果が高く、迅速なフロースルー紙ベースデバイス1であり、既存のDCAアッセイよりも高い特異性及び感度を有する、正確で、信頼性があり、小型化され、自動化された高スループットの生物学的線量測定プラットフォームが実現される。
【0185】
[0245]技術的目的:特に血液などの体液中のヒト循環細胞からの遺伝子発現プロファイルの評価は、生物学的放射線量測定のための標準的であるが労力及び費用のかかる細胞遺伝学的アッセイに対する有望な手法である。本明細書で提供されるのは、照射後にPBMCからの放射線量測定遺伝子の発現レベルを評価するための垂直フロー紙ベースデバイス1プラットフォーム(VFP)(
図36)である。このようにして、デバイス及び方法は、吸収された照射線量を正確に測定することができる。
【0186】
[0246]VFP手法を使用した4つの異なる遺伝子(3つの放射線応答遺伝子及び1つのハウスキーピング遺伝子)の検出。このデバイスは、同じ膜3で3つの放射線応答遺伝子を検出し、正規化のために同様に同じ膜3で検出されたハウスキーピング遺伝子を使用することによって(単一の膜3での合計4つの遺伝子)、非照射試料と照射試料との間で発現レベルを測定及び計算する。結果は、細胞株からの2つの遺伝子をVFP膜3で同時に増幅及び検出することができることを示す。ここで、本発明者らは、全血を生物学的試料として使用して、ヒト体液に対するアッセイ実現可能性を示す。血液試料を照射され、RNAを抽出して定量化する。PCRプライマーを遺伝子のパネル用に設計し、標準的なPCRを使用して標的を増幅し、アガロースゲルを使用してアンプリコンを評価する。最も高い信号を有する3つの放射線応答遺伝子及びハウスキーピング遺伝子を選択して、VFP膜3に通して検出する。照射後の遺伝子発現変化を検出及び定量化する開示されるVFPデバイス1の能力を評価するために、VFPを使用する遺伝子発現を分析し、リアルタイムqPCR手法と比較する。
【0187】
[0247]関連する側面は以下のものを含む:全血試料採取及び試料処理(細胞培養、照射、RNA抽出、RNA定量化など);放射線応答遺伝子及びハウスキーピング遺伝子のパネル用のPCRプライマーの開発(プライマー設計、PCR実験の最適化、製品評価);VFPを使用した検出と、リアルタイムqPCRとの比較(特異性、多重化、信号感度などと共に、範囲、精度、及びスループットの確認)。
【0188】
[0248]他の技術的側面には、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)を使用する等温増幅が含まれる。本発明者らは、放射線傷害の診断のためのVFPを同時に開発しながら、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)を使用する等温増幅法を開発する。この手法は、標準的な増幅を回避することによって、より迅速な試料調製を容易にし、したがって、フェーズIIプロトタイプへの成熟のために、開示されるVFPデバイス1と組み合わされる完全に自動化された試料調製プラットフォームへの統合がより容易になる。技術目標1で述べたのと同じプライマーを使用して、全血を使用してRPAを開発する。アンプリコンの品質は、VFPで試験する前に、アガロースゲル又はELISAを使用して評価する。
【0189】
[0249]これらの側面は以下のものを含む:全血試料の採取/処理(細胞培養、照射、RNA抽出、RNA定量化など);RPA開発(実験的最適化、プライマー設計、製品評価);開示されるVFPデバイス1を使用した検出(特異性、多重化、信号感度と共に範囲、精度、スループットの確認);VFPに関する等温増幅の最適化(時間、温度など)。
【0190】
[0250]容易に拡張可能であるように照射の吸収線量を正確に測定するために、考慮すべき側面は以下のものを含む:a)指定された標的遺伝子パネル用のPCRプライマー(プライマー設計)及びb)PCR製品品質評価法;最良の信号対雑音比を実現するための検出器の選択;結果を報告するための定量化戦略;試料タイプ、採取、及び保管;試料処理。最良の信号対雑音比の観点から結合親和性を実証するためにシステムを評価する。
【0191】
[0251]方法:
[0252]試料の採取及び処理−異なる個人及び混合性からプールされた全血試料を、認定された会社(BioChemed)に注文する。抗凝固剤として使用されることがあるキレート剤(例えば、EDTA)がマグネシウムに干渉し、それによりPCRの効率を低下させる可能性があるため、ヘパリン又はクエン酸ナトリウムを用いて採取した血液が好ましい。
【0192】
[0253]受領後、血液を、1.5mLマイクロ遠心チューブ(約1mL)にアリコートし、X−RAD 320(Precision X−Ray Inc.、North Branford(米国コネチカット州))を使用して0、2、4、及び6GyのX線にさらす。2mmAlフィルタを用いて320kVp及び12.5mAで照射を行う。線源と軸との間の距離は42cmであり、線量率は3Gy/分である。UNIDOS E PTW T10010電位計及びTN30013電離箱を使用してビームを較正し、測定は空気中で15cm×15cmのフィールドサイズに関して行う。照射後、血液試料を、10%熱不活化ウシ胎児血清(Invitrogen)を添加したRPMI 1640培地(Invitrogen)で1:1に希釈し、6ウェルプレートで37℃で24時間、5%CO
2を含む加湿インキュベータでインキュベートすることができる。
【0193】
[0254]24時間後、製造業者の推奨に従ってQIAamp(登録商標)RNA血液ミニハンドブック(Qiagen)を使用してRNAを抽出する。Agilent 2100バイオアナライザシステム(Agilent)及びEpoch(商標)マイクロプレート分光光度計(Biotek)を使用してRNAの品質を試験及び定量化し、その後、使用するまで−80℃で保管する。
【0194】
[0255]標準的な増幅−成功率を最大化するために、いくつかの放射線応答遺伝子及びハウスキーピング遺伝子からのPCRプライマーを設計する。放射線応答遺伝子として、BAX、CDKN1A、DDB2、FDXR、GADD45A、及びHIST1H3Dを選択する。これらの遺伝子は、PBMCでの放射線量測定バイオマーカ候補として多くの研究によって特定されており、最近、いくつかのメタアナリシスで検討されている(Lacombe et al., 2018;Lu et al. Sci Rep.2014)。ハウスキーピング遺伝子として、CDR2、MRPS5、及びMRPS18A遺伝子を選択する。これらの遺伝子は公開されており、現在、検証及び承認された診断の放射線血液検査において正規化に使用されている(DxTerity Diagnostic, Lucas et al., 2014)。PRIMER−Blast(NCBI)を使用することによってPCRプライマーを設計する。一部の遺伝子が複数の転写変異体を有するかどうかにかかわらず、これらの変異体全てを標的とするプライマー対を優先的に選択する。特異性を確保するために、他の遺伝子と架橋するプライマーは除外する。400塩基対(bp)を超えるサイズを有するアンプリコンは、アガロースゲルによって検出可能であるように選択する。VFPを使用するイムノアッセイによって検出されるようにするために、各プライマー対に関して、フォワードプライマーを、その5’末端で、FITC群を追加することによって修飾し、リバースプライマーを、その5’末端で、各遺伝子毎に異なる化学基を追加することによって修飾する(Cy3、DIG、DNPなど)。
【0195】
[0256]まず、RNA to cDNA EcoDry(商標)Premix(Oligo dT)キット(タカラ)を使用することによって、RNAをcDNAに変換する。このキットは、効率的であり正確なファーストストランドcDNA合成を可能にする便利なドライマスタミックスである。したがって、マスタミックスにRNAと共にPCRグレードの水を加えることによって、再構成が簡単になる。したがって、このシステムは、試料調製のための自動化されたポイントオブケアプラットフォームへの統合可能性をもたらす。次に、High Yield PCR EcoDry(商標)Premixを使用して、PCRによる標準的な増幅を行う。RT−PCRキットと同様に、このキットは、PCRグレードの水、cDNA、及び設計されたプライマーによって再構成された凍結乾燥マスタミックスを含む。VFP分析の前に、増幅効率及びアンプリコンサイズを、臭化エチジウムを含む従来の2%アガロースゲルによって評価する。VFPの定量効率を評価するために、アンプリコンもリアルタイムqPCRによって増幅する。5’末端に修飾がない同じプライマーを使用して、qPCRを行う。qPCRは、Stratagene Mx3005p(Agilent)で、製造業者の推奨に従ってRT
2 SYBR Green ROX qPCR Mastermix(Qiagen)を使用して行う。ΔΔCT法によって相対倍率変化を計算する。最良の個人又はパネルのハウスキーピング遺伝子を定義するために、CDR2及び/又はMRPS5及び/又はMRPS18A遺伝子発現レベルにデータを正規化する。
【0196】
[0257]線形回帰に基づいて1つの分析を行う。各遺伝子について、直線当てはめ(倍率変化対放射線量)に関するR2値を計算し、R2>0.9の遺伝子(又は最高のR2値を有する3つの遺伝子)を、線形に挙動するものとして選択する。マルチプレックスVFP分析に関しては、アガロースゲルに対して最高の信号を示す3つの放射線応答遺伝子及びハウスキーピング遺伝子と、最高の線形性を有する放射線応答遺伝子を選択する。
【0197】
[0258]遺伝子発現レベルをハウスキーピング遺伝子で正規化し、倍率変化を計算して、VFPとqPCRで比較する。マルチプレックスVFP分析に関しては、アガロースゲルに対して最高の信号を示す3つの放射線応答遺伝子及びハウスキーピング遺伝子と、qPCRによって検出された非照射試料と照射試料との最高の倍率変化とを選択する。
【0198】
[0259]VFPデバイス1の構成及びデータ解析−開示されるVFPデバイス1は、ステンレス鋼フィルタホルダ29(Swinny Filter Holder 13mm XX3001200, Millipore(米国マサチューセッツ州))にカプセル化された直径13mm又は3mmのニトロセルロース膜3を備える。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ガスケット25及びOリング77を、それぞれ紙膜3の下及び上に配置して、液体フロー23の経路を封止する。ガスケット25及びOリング77は、MilliporeからのSwinnyフィルタホルダ77と共にパッケージとして購入される。シリンジ6のポンプ31(NE−1000自動シングルシリンジポンプ、New Era Pump Systems, Inc.(米国ニューヨーク州))を使用して、試料及び試薬を、制御されたフロー23の流量で垂直に紙膜3に押し通す。本発明者らは、市販のステンレス鋼支持体を使用する代わりに、ディープエッチング法を使用してシリコンを用いて支持体21を製造する。支持体21のシリコングリッドは、フロースループロセス中にフロー23に対して膜3を機械的に支持する。
【0199】
[0260]VFPデバイス1は、小さい孔径の範囲でのニトロセルロース膜3の高いタンパク質結合能力及び利用可能性により、ニトロセルロース膜3を使用して構築することができる。4つのニトロセルロース膜3、Amersham Protran 0.1μm NC、0.2μm NC、0.45μm NC、及びWhatman AE98(孔径5μm)(GE Healthcare Life Sciences、米国ペンシルバニア州)を試験及び比較することができる。4種類の膜3は全て、異なる孔径を有する100%純粋なニトロセルロースからなる。CO
2レーザ(VersaLaser 2.30、Universal Laser Systems、米国アリゾナ州)を使用して、膜3を所定の形状に切断する。スポット79の捕捉抗体剤19マイクロアレイは、マイクロソレノイド非接触ロボットディスペンサ(BioJet Elite、Biodot(米国カリフォルニア州)を含むAD1520マイクロディスペンサ)を使用して、1ナノリットルの液滴体積で紙ディスクに定量供給し、これが、直径220μmの円形スポット79を作成する。
【0200】
[0261]まず、(各遺伝子について異なる化合物で特異的に標識されたアンプリコンの一方の末端に対する)特異的捕捉剤19抗体を紙膜3に固定化する。FITC修飾5’末端、したがってFITC標識金ナノ粒子12(FITC−GNP)も含む全てのアンプリコンを、全ての標的に関する固有の検出剤として使用する。2つの実験手順、すなわち予混合及び逐次を試験して比較することができる。PCR産物を、FITC−GNP12を含む緩衝液溶液(0.1%Triton X−100及び0.1%BSAを含む0.1M PB緩衝液、pH=7.2)に10分間スパイクする。その間に、膜3を阻害緩衝液(2.5%Triton X−100を含む10mMホウ酸塩緩衝液、pH=8)で処理する。試料混合物を膜3に押し通して、膜3の捕捉剤19抗体によるPCR産物−FITC−GNP12複合体の捕捉を可能にする。試料を処理した後、1.5mLのブランクアッセイ緩衝液を膜3に流すことによって膜3を洗浄して、非特異的又は緩く結合したアンプリコン及び過剰なFITC−GNP12を除去する。VFPデバイス1を解体し、乾燥ステップとして5分間、膜3を濾紙(Whatman定性濾紙、グレード1、GE Healthcare Life Sciences)に置く。その後、VFP膜3を、消費者グレードの卓上スキャナ(CanonScan 9000 F II)及びScan IJ Utility(CanonScan用のデフォルトソフトウェア)を用いてスキャンし、48ビットRGB環境及び2400dpiの解像度を非圧縮TIFFファイル形式にエクスポートする。次いで、Matlab(Mathworks(米国マサチューセッツ州))の組み込み関数rgb2grayを使用して、48ビットRGB画像を16ビットのグレースケール画像に変換する。得られた画像をImageJにインポートし、マイクロアレイグリッドを使用してスポット79を分析して、ローカルバックグラウンドを差し引かれたスポット79からの平均グレースケール値を抽出する。検出限界(LOD)は、バックグラウンド信号よりも3標準偏差(SD)を超えて大きい信号を生成した濃度として定義する。データ処理及び分析を行う。
【0201】
[0262]4つの捕捉剤19抗体を印刷された膜3を通して個々のアンプリコンを流すことによって、VFP膜3の特異性を評価する。実際、まず、4つの特異的捕捉剤19抗体で膜3をコーティングする。次に、アンプリコンを1つだけ含む試料を膜3に流す。この実験を、各アンプリコン毎に4回繰り返す。各捕捉剤19抗体について信号を検出する。信号がバックグラウンドの少なくとも2倍高い場合、標的抗体に関する信号は有意であり特異的であるとみなされる(PBSを印刷されたスポット79によって生成された信号として決定される)。放射線応答遺伝子の発現レベルを、選択したハウスキーピング遺伝子で正規化する。qPCRデータ処理と同様に、VFPとqPCRとの結果を比較し、生物学的線量測定遺伝子発現アッセイとしてVFPパワーを評価するために、結果として生じる倍率変化を放射線量の関数として直線当てはめ曲線にプロットする。
【0202】
[0263]等温核酸増幅−等温核酸増幅は、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)に基づくことができ、これは、高速で可搬性のある核酸検出アッセイの開発のための、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に対する非常に多用途の代替物である。前述したのと同じ全血試料からRPAを開発する。前述したのと同じプロトコルに従ってRNAを抽出する。RPA増幅は、製造業者の推奨に従ってTwistAmpキット(TwistDX)を使用することによって完全に行うことができる。このキットはDNAを増幅するために開発されているが、本発明者らは、RNAを増幅するために、反応混合物に逆転写酵素(AMV逆転写酵素、Sigma−Aldrich、42℃で効率的)を追加する。標準的なPCR用に設計されたものと同じPCRプライマーを反応に使用する。アガロースゲルによってRPA産物を評価し、最終的にVFPで検出することができる。
【0203】
[0264]まず、42℃で30分、反応を行う。効率的である場合には、様々なタイミングポイントが評価され、可能であれば最大10分まで短縮される。VFPは非常に高感度であり、本発明者らは、短時間の増幅でも信号を検出するのに十分であり得ると予想する。
【0204】
[0265]しかし、製造業者は、RPAがPCRプライマーと共に機能することができると主張しているが、RPAは、より短い配列を増幅するより長いプライマーを必要とすることがある。アンプリコンを検出することができない場合は、RPA専用に新たなプライマーを設計する。そのような手法の場合、アガロースゲル技法はRPA産物(PCR産物よりも短い)の検出には理想的ではないことがあり、そこで、サンドイッチELISAを使用してRPA効率を評価することができる。
【0205】
[0266]本発明者らは、同じVFP膜3において2つの異なる遺伝子(CDKN1A及びHIST1H3D)を高い特異性で検出することができ、複数の標的のためのマルチプレックス手法を使用する可能性を示唆する。VFP膜3での比色信号を定量化することによって、本発明者らは、非照射試料と照射試料との遺伝子発現レベルの相違を検出する能力も示す。
【0206】
[0267]また、本発明者らは、類鼻疽菌病原体の表面莢膜多糖(CPS)も検出する。本発明者らは、VFPのパラメータ及び重要な因子を最適化する。したがって、本発明者らは、フロー23の速度を高め(最大1.06mm/秒)、膜3の孔径を小さくする(0.1μmまで)と、感度を少なくとも5倍に高めることができることを示す。緩衝溶液中のスパイクされたCPSに関するVFPの検出限界は0.02ng/mLに決定され、これは、開示されるVFPデバイス1が、様々な臨床条件及び資源が限られた条件(例えば農村又は戦場の環境)における分子の免疫検出用のポイントオブケアツールとして大きな可能性を示すことを示唆する。
【0207】
[0268]本実施例は、公衆衛生上の緊急事態の場合に放射線被曝、線量、及び傷害を定義することができる低密度遺伝子の発現レベルを迅速に測定するのに適した生物学的線量測定デバイス1を実現する。
【0208】
[0269]デバイス及び方法は、複数の部位及び異なる治療モダリティからの癌患者の大きな集団を用いて、機関の規制を満たすことを含めて検証することができる。
【0209】
[0270]実施例8:垂直フロー紙ベース健康監視プラットフォームの人間中心の設計増強
[0271]この例は、遺伝子発現に基づく健康監視のための統合された試料調製モジュールを含む、宇宙ミッションのための微小重力環境で動作するVFPプラットフォームの人間中心の設計を提示する。このプラットフォームは、宇宙飛行時の安全な動作と、エンドユーザ(宇宙飛行士)の固有の人口統計への使いやすさを保証するように設計される。これは、開示される垂直フロー紙ベースプラットフォーム(VFP)デバイス1に関する人間中心の設計を開発するという現場のニーズに対応し、操作性及び使いやすさを向上させ、効率及び安全性を高め、エラーを減らし、宇宙での健康状態監視のための学習曲線を減らす。
【0210】
[0272]開示されるVFPデバイス1は、(例えば、
図2〜
図2Cを参照して図示して上述したように)小さい又は大きい体積の体液中の数十又は数百のバイオマーカを短期間(約10分)で検出することが可能な小型の「シリンジ状の」カートリッジを使用するモバイルポイントオブケア(POC)機器である。デバイス1のプラットフォームは、肉眼で直接検出する又はリーダとしてのスマートフォン51の標準的なカメラ53によって検出することができるナノ粒子12標識からの比色信号を伴う特異的抗体対による抗原13の捕捉に基づく。開示されるVFPデバイス1のプラットフォームは、抗原13バイオマーカ検出のための標準的なラテラルフローアッセイと比較して、約25倍改善された感度を示した。TRISH VFPプロジェクトは、宇宙飛行中の宇宙飛行士の健康状態を監視するための遺伝子発現バイオマーカ(例えば生物学的線量測定や感染)を検出することによって、開示されるデバイス1のプラットフォームの機能を拡張している。
【0211】
[0273]開示されるデバイス1の現在のVFPプラットフォームは、地球上の抗原13バイオマーカのPOC検出のために設計されているが、宇宙ミッションには最適化されていなかった。遺伝子発現バイオマーカ検出用のデバイス1のプラットフォームの拡張には、試料調製プロセス用の追加モジュールも必要である。宇宙ミッション中に操作されるデバイス1の場合、一般市民、宇宙飛行士、NASAの人員、高価値機器の安全を含め、ミッションの安全性を確保することが不可欠である。宇宙飛行士の人口統計を考慮することも重要である。宇宙飛行士は、高度な教育を受け、訓練され、高いモチベーションを持つが、作業が過酷である。また、宇宙ミッションには、宇宙ミッション中の宇宙飛行士の情報処理能力、記憶想起、強さ、及び注意力を低下させる多くの因子がある。例えば、重力の低下、概日リズムのずれによる疲労、頭部方向への体液シフトによる視力の低下、音響感度、及び長期間の深宇宙探査の他のストレスである。特殊な環境(例えば電離放射線)、及び宇宙ミッションでの限られた資源(質量、パワー、体積など)は、宇宙飛行中に使用されるデバイスについて考慮する必要がある追加の因子である。
【0212】
[0274]上記の条件に対処するために、本発明者らは、宇宙ミッションのための核酸バイオマーカ検出用の自動化された試料調製を含むユーザ中心のVFPプラットフォームを設計する。核酸VFPプラットフォームは、宇宙飛行士の介入の必要性を最小限に抑えるためのモジュール式のプラグアンドプレイ設計を有する。
図37は、プラットフォームの動作のプロセス400流れ図を示している。これは主に3つのモジュールを備える。すなわち、ブロック403:試料Prep1−白血球選別、ブロック405:試料Prep2−RNA増幅(細胞溶解、mRNA逆転写、cDNA等温増幅を含む)、及びブロック407:最終的なVFPアッセイ及び検出。
【0213】
[0275]ブロック403、試料Prep1−白血球選別モジュール:最小侵襲性で採取することができる全身性の体液であるので、現在の遺伝子発現生物学的線量測定バイオマーカが血液中のリンパ球から検出される。白血球からの遺伝子発現を検出するために、通常、赤血球を除去して、大量のRNAバックグラウンドからの干渉を低減する必要がある。従来、これはFicoll−Paque密度勾配分離によって行われる。しかし、このプロセスは、複数の手動取扱いが必要であり、自動化するのは困難である。この問題を克服するために、決定的側方変位(DLD)に基づく白血球選別マイクロ流体チップが使用され、ここで、異なるサイズを有する細胞がマイクロポストアレイを通って流れ、アレイのカラムが細胞ストリームに対してわずかに傾いており、アレイによって定義された「クリティカルサイズ」よりも大きい細胞は、元のストリームから押し出される(及び分離される)。本発明者らは、遺伝子発現アプリケーション用のDLDチップを実証し、試料調製の最初のステップとしてVFPプラットフォームにそのDLDチップを統合した。
図38は、DLDチップ40のレイアウト、及び指定されたチャネル62に分類されている白血球60の蛍光画像を示す。
【0214】
[0276]ブロック405/試料Prep2−RNA増幅モジュール:RNA増幅モジュールは、白血球溶解、mRNA逆転写、及び等温DNA増幅を実現する。
【0215】
[0277]RNAは、有機抽出、フィルタベースのスピンバスケット、磁性粒子、又は直接溶解によって、検出用の様々なプロセスを通じて調製することができる。直接溶解法は:(i)正確なRNA表現の可能性が最も高く、(ii)小さい試料で作用することができ、(iii)単純な自動化に適している。直接溶解アッセイ化学を、VFP遺伝子発現検出に使用して、マイクロ流体カートリッジを介して実装することができる。
【0216】
[0278]抽出されたmRNAは、cDNAに逆転写され、VFP検出のために増幅される必要がある。従来、cDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による周期的な加熱/冷却プロセスによって増幅されている。しかし、ループ介在等温増幅(LAMP)、ローリングサークル増幅(RCA)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)など、単純な自動化及びPOC用途のためのいくつかの等温増幅プロセスが最近報告されている。他の等温増幅の欠点を克服するリコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)プロセスを採用することができる。逆転写プロセスを増幅プロセスと統合することも可能である。ラテラルフロー試験のための金ナノ粒子12標識試薬用の市販キットが利用可能であり、それらのキットをVFPアッセイ及び検出に直接採用することができる。マイクロプロセスコントローラによって制御されるマイクロ流体カートリッジは、VFP検出のための逆転写及び増幅プロセスを自動化するように設計される。
【0217】
[0279]ブロック407/VFPアッセイ及び検出モジュール:このモジュールは、試料処理用のシリンジ6カートリッジ、並びに検出及びデータ解析用のリーダを含む、本明細書で述べるデバイスのいずれかの現在の抗原13検出VFPプラットフォームの主な特徴を含む。主検出膜3は、膜ホルダ29内に収容されている。膜ホルダ29は、シリンジ6カートリッジに取り付けることができ、それにより、増幅されたDNA試料を、捕捉剤19による標的捕捉のために膜3に押し通すことができる。次いで、膜ホルダ29を取り外して、アレイスキャン及びデータ解析のためにリーダに取り付けることができる。
図36は、データ獲得のためにスマートフォン51のアダプタ157に取り付けられた小型の膜ホルダ29の現在の設計の拡大図と共に、流体の取扱いを容易にするための動力源のないばね式のシリンジ6カートリッジの現在の設計を示す。これらの要素は、上流の試料調製モジュール(例えばブロック403及び/又は405)とインターフェースするように再構成される。
【0218】
[0280]全体的なプラットフォーム設計:最後に、試料PrepとVFPモジュール(ブロック403、405、及び407)とを、人間中心のカートリッジ設計によって統合する。これは、宇宙ミッションの成功を最適化すると共に人間の健康を維持するために動作上の妥当性を保証するための人間システムの統合に役立つ。設計活動は、システム及び乗組員因子、すなわち宇宙飛行士乗組員及び宇宙医学チームを通じて、有人宇宙飛行の運用(すなわち臨床宇宙医学や遠征支援など)のより広範な目的のために、NASAの顧客に対して製品プラットフォームの明確な価値を強調することを狙いとしている。
【0219】
[0281]宇宙ベースのプラットフォーム(例えば、現在は国際宇宙ステーション(ISS)であるが、軌道上を周る地球外の基地に関して)に乗ると、研究者は、ほぼリアルタイムでの計画されたアップグレードを伴う実験データを毎日監視する。この高スループットの、再構成可能であり自動化されたアーキテクチャにより、微小重力のスケーラブルで手頃な使用が可能になる。
図39は、モジュール式の自動化された試料調製及び監視システムに統合された人間中心のカートリッジ設計のプロセスワークフロー700を示す。設計中、宇宙ミッションの各段階中の保管温度、パワー要件、遠隔測定速度などの動作制約に従う。設計は、仕様毎に、流体フロー23とフィルタリングを制御するための内部電子機器を含む。適切な画像分析ソフトウェアがシステムで使用され、関連するデータの収集及び検証を保証する。
【0220】
[0282]したがって、単純な指先からの血液採取を使用して宇宙飛行時の健康監視のために微小重力環境で動作可能な、遺伝子発現バイオマーカ検出のための試料調製を含むVFPプラットフォーム設計であって、宇宙ミッションに関して承認された使い捨てカートリッジ及び適切な試料ポートを含むワークフロー700の自動化された試料調製、処理、及び監視システムに統合される、VFPプラットフォーム設計が実現される。
【0221】
[0283]実施例9:多重病原体検出のための垂直フロー紙ベースイムノアッセイ(VPI)診断システムの開発
[0284]この例は、多重病原体検出のための垂直統合フローアッセイシステム技術(Vertical Integrated Flow Assay System Technology、「VERIFAST」)を提供する。VERIFASTは、複数のケア段階及び現場で使用するための迅速な(<30分)ポイントオブニード診断デバイス1である。
【0222】
[0285]実現可能性の初期研究は、開示されるデバイス1の統合垂直フローイムノアッセイプラットフォームのための提案されたバイオマーカパネル及びアッセイキットの性能を実証する。VERIFAST(商標)の次の段階は、FDAデバイスのガイドラインを満たす詳細なユーザ要件を定義することである。要件の範囲は、試料調製、安定化/輸送、調製、定量化/検出、マルチプレックスアレイ画像の解釈、及び完全に統合された自動ポイントオブニード(PON)システムへのそれらの組み込みを含めた、マルチプレックスバイオマーカパネル及びプロトコルの各構成部分を含む。得られるのは、成果物をチェックして適切に変更することができる要件のリストである。
【0223】
[0286]VERIFASTシステム用のシステムに統合するための主要なプロセスは以下のものである:臨床試料(例えば血液や尿)及び非臨床試料(例えば増殖培地や土壌懸濁液マトリックス)に関する試料調製の向上;マルチプレックスシグネチャとアッセイ化学の最適化(すなわち5つの病原体;ナノ粒子12の増強された光学特性12);現在のベンチトップ走査システムから、ポイントオブニード構成のためのコンパクトなスマートフォン51のへ光学検出モジュールのアップグレード;血清及び環境試料又は実験室で成長させた試料からのマルチプレックスバイオマーカの適切な分析のためのデータ解釈ソフトウェアの変更及び最適化。
【0224】
[0287]できるだけ高い成功率を実現するようにプロセスを最適化するために、試料調製カートリッジ及び計装ハードウェアを設計し、構築し、(反復して)試験する。適切なデータ保護及びデータ秘匿化の達成に成功した後、これらのエキスパートシステムを外部サーバへのゲートウェイを介して利用可能にすることができる。このタスクは、指定されたモバイルシステムとの適合性を保証するように調整する。その後の評価のために、システム対応の試料調製カートリッジのパッケージングを提供する。
【0225】
[0288]主な目的は、ヒト臨床流体又は環境試料での生物学的特徴の迅速な検出(<30分)及び多重化同定のために設計された、可搬性がある迅速なマルチプレックス体液調製、処理、及び「サンプルトゥーアンサー(sample−to−answer)」分析システムにおいて、紙ベースマイクロ流体垂直フロー統合アッセイ技術プラットフォーム(VERIFAST)を実現することである。技術的側面は、以下のようなものである:バイオアッセイの設計及び統合。本発明者らは、試料採取、試料体積処理、緩衝液組成、試料実行時間、及び結果分析を含む、マイクロ流体デバイスのためのワークフロー統合を設計する;標準的なLFIアッセイに関する、各バイオマーカについてのVERIFASTアッセイの評価及び検証。VERIFASTシステムを、以前に開発された又は開発プロセス中の関連するLFIと比較する。これは、特に提案される多重化構成において、VERIFASTがLFIよりも改善された分析感度を実現することができるかどうかを示す;VERIFASTプラットフォーム全体の設計、組立て、及び検証。反復プロセスを通じて、VERIFASTアッセイを、分析感度(例えば、検出限界、LOD)について最適化する;前臨床試験へのVERIFASTプラットフォームシステムの変換;製品開発及びFDA承認のための準備。
【0226】
[0289]製品の説明:以下は、開示されるデバイス1の現在のVFIシステム及びその次世代(VERIFAST(商標))の仕様の要約である。
【表10】
【0227】
[0290]
図36は、ポイントオブニードコンセプトに関するVERIFAST開発の図である。
【0228】
[0291]試料採取モジュールに重要なのは以下のことである:モジュールの採取デバイスは、少なくとも200μL〜5mLの全血からある範囲の体積を確実に採取することが可能でなければならない;又は培地培養用の土壌懸濁液を調製するように構成されることが可能でなければならない;モジュールの採取デバイスは、適切なトレーニングを受けた比較的熟練していない個人によるリモート環境での使用に適合性がなければならない;モジュールの採取デバイスは、採取されたバイオ試料を、VERIFASTシステムプラットフォームのマルチプレックスアッセイ検出の次のサブシステムに確実に送達することが可能でなければならない;モジュールの採取デバイスは、ユーザ追跡情報を追跡してVERIFASTシステムプラットフォームに転送して、情報の証拠保全を保証するのに適切な方法でなければならない。
【0229】
[0292]VFI膜に関連する関連の側面は以下のことを含む:膜基板は、様々なフロー23の流速レジームに対応するための良好な機械的特性を有し、小型化構成に適した全ての必要な流体特性を最適化するために適合性のある制御された孔径を有する;膜には全ての必要な試薬を事前に装填することができる;膜は、6ヶ月の最低保存期間を有するようにパッケージ化することができ、3年が好ましい。
【0230】
[0293]マルチプレックスアッセイに関する関連する側面は以下のことを含む:アッセイは、ポイントオブニードで少量(例えば、<200μL)から多量(>5mL)まで様々な体積で採取された生物学的流体の5つの病原体バイオマーカを区別することが可能である;アッセイは、2桁の対数目盛にわたって線形である分析範囲を有することができ、投入された標本に応じてナノモル未満の標的濃度が好ましい;アッセイに関する分析性能要件(正確さ及び精度)は、最終的なマルチプレックスバイオマーカアルゴリズムから導出され、療法決定点の前又は近くで再現性のある診断を可能にするように設計される;アッセイは、肉眼で、又はモバイルスマートフォンデバイス51などで容易に利用可能な光学撮像システムを使用して読み取ることができる;アッセイは、全血又は尿の投入から開始し、少なくとも、撮像センサ(例えばスマートフォン51のカメラ53)によって検出することができるナノ粒子12標識から散乱信号を特異的に生成している抗体カップリングを有する複数の標的バイオマーカから病原体への個人の生物学的曝露を決定することができる。
【0232】
[0295]VERIFASTプラットフォームは、操作者が、患者試料を個別に含むプラスチックシリンジ6又は同等のカートリッジモジュールを装填することを可能にする。デバイス1は、4つのステップで処理し、多重病原体アッセイを行い、バイオマーカの相互作用を記録し、診断結果を提供するために必要な分析を行う:1.体液の濾過及び前処理(例えば、血清と血漿の分離);2.マルチプレックスアッセイを使用した、抗原13とのAb標識及びハイブリダイゼーション反応;3.撮像検出(例えば、ナノ粒子12の散乱);4.結果を決定するためのバイオマーカ検出の数値処理。
【0233】
[0296]結果は、機器のデータベースに記録され、特定の要件及び用途、例えばモバイル環境又は現場操作シナリオに適合される形式で操作者に提供される。操作者は、処理されたデバイス1を廃棄することができる。
【0234】
[0297]VERIFAST技術プラットフォームは、多重病原体バイオマーカパネルシステムとして要約され、このシステムは、開示されるデバイス1の様々な実施形態を参照して前述したいくつかの主要なサブシステムに分割される。
【0235】
[0298]VERIFASTシステムプラットフォームは、いくつかの学際的分野での進歩を統合して、新たな自立型の統合された紙ベースマイクロ流体垂直フローデバイス1診断プラットフォームシステムを実現することによって、遠隔環境で少なくとも5つの細菌性病原体の複数のバイオマーカでイムノアッセイ試験を行う能力を大幅に改善及び変更する。いくつかのシングルプレックスラテラルフローイムノアッセイ(LFI)は、細菌検出用にすでに存在し、他の用途で使用されている。しかし、本発明者らは、専門家ではないユーザが電力を必要とせずに操作するのに適した、完全に自動化された小型のポイントオブニーズ形式で現在使用されているマルチプレックスTier I病原体ベースのシステムはないことを認識している。あるいは、直接の視覚化又は標準的なモバイル電子機器(例えばスマートフォン51のカメラ53)を使用した撮像によって、必要な全てのアッセイ試薬、オンボード流体管理、及び多重検出を事前にロードされた自立型の垂直フローデバイスへの試料装填を超える複数ステップの手動準備もないことを認識している。本実施例では、本発明者らは、複合の知識及び学際的知識を構築し、この統合されたテクノロジーをモバイル環境で使用できるようにするのに必要な検証を概説する。VERIFASTプラットフォームを特色付けるのは、検出が高感度であり特異的であるだけでなく、多重生物学的信号の特性評価のための分析が、一連の独立したアッセイではなく同時に行われることである。本実施例の統合システム手法は、既存の技術的及び科学的サブコンポーネントの統合に基づく、完全にハンドヘルドの「サンプルトゥーアンサー」分析手法につながる。
【0236】
[0299]このデバイス及び方法は、体液中の重要な病原体の現在の細菌バイオマーカに焦点を合わせることができるが、アッセイは、他の非臨床標的との二重使用のために設計することもできる。本研究で使用する検出バイオマーカは、多様なプラットフォーム技術にわたって複数のシステムでそれらをスクリーニングすることによって、特異性について検証される。VERIFASTシステムプラットフォームを用いて、病原体への曝露の有無に対する生物学的応答を、容易に利用可能な液体又は環境試料で迅速に評価することができることは、アクティブなミッションに従事する現場操作者の効果的な保護に向けて大きな飛躍をもたらす。
【0237】
[0300]
図39は、本実施例に関するアッセイワークフロー700、例えばVERIFAST自動アッセイワークフローの図である。
【0238】
[0301]本実施例で提示される解決策は、臨床実験室の試験能力の現在のパラダイムから、資源が限られたフィールドフォワードの厳しい環境での臨床試料と環境試料との二重試験の包括的なハンドヘルド診断能力にシフトする。そのような変換は、分子アッセイ技術の進歩、細菌性病原体に関する高感度であり特異的なバイオマーカの開発及び検証、並びにマルチプレックス垂直フローイムノアッセイ技術の進歩により、現在ようやく可能になっている。開示されるVERIFASTシステムプラットフォームは、これらの進歩を医療的防衛ソリューションに統合して、体液中の病原体を、できるだけ早い曝露時点で迅速に特定できるようにする。研究室からフィールドフォワード環境への既存の技術の移行は、簡単なことではなく、この変換作業が本実施例の主な焦点である。例えば、研究室では、単一の特定の標的を評価するアッセイに焦点が当てられることがよくあり、これらのアッセイは、多くの場合、一度に1つずつ使用される。対照的に、ポイントオブニード環境では、生物学的摂動の多くが同様の症状を示す可能性があるため、広範な標的を迅速に検出することができる能力が主な目的となる。本発明者らの手法の重要な革新は、広範なプラットフォーム検証及び迅速なプロトタイピングが現在行われているポイントオブニード紙ベースマイクロ流体垂直フローイムノアッセイのためのこれらの既存の技術を、広範に検証される試薬キットと組み合わせて、厳しい環境で作業する人員によるフィールドフォワード用途のためにTier I病原体曝露に対する複数の生物学的応答を同時に試験するためのロバストな診断プラットフォームにすることである。
【0239】
[0302]AuCoin研究所は、感染症のためのバイオマーカの発見とイムノアッセイの開発を専門とする。このチームは、患者試料内の脱落/分泌された微生物抗原13を同定するために、インビボ微生物抗体発見(In Vivo Microbial Antigen Discovery、「InMAD」)を含む複数のプラットフォームを開発した(Yuan, Fales, et al. 2012;Yuan, Khoury, 2012)。これは、微生物抗原13の直接検出のための複数アッセイの開発及び最適化につながっている(Yuan, Fales, et al., 2012;Wang, et al., 2016;Indrasekara, Meyers, et al., 2014;Liu et al, 2015;Indrasekara, Johnson, et al., 2018)。本発明者らのアッセイ開発ワークフローは、以下のことを含む。(i)患者試料中の複数の脱落した微生物バイオマーカの同定、(ii)各標的に対するよく特性化された捕捉剤19mAbの大きなパネルの分離(各標的に対して>20mAbを生成することが、優れたアッセイ性能を保証する)、(iii)mAbの選択肢を絞り、バイオマーカ検出のために抗原捕捉ELISAを最適化する、及び(iv)アッセイを様々な診断形式(LFI、VFIなど)に移行する。
【0240】
[0303]このプログラムは、保健福祉省によって分類された全てのTier I細菌選択剤を含むがそれらに限定されない、多くの病原体に関するLFIの開発に焦点を当てている。これらの病原体には、炭疽菌、類鼻疽菌、鼻疽菌、野兎病菌、及びペスト菌が含まれる。これらは、この本実施例で研究される感染症である。以下の表は、5つの病原体のバイオマーカと各シングルプレックスLFIアッセイの現状を要約したものである。本発明者らは、VERIFASTシステムに関して同じバイオマーカを引き続き使用する。結果を、対応するLFIと比較する。現在、類鼻疽菌用に開発されたLFIは、鼻疽菌もよく同定することが期待され、これは、各種によって産生される保存された莢膜多糖(CPS)によるものである。炭疽菌及び類鼻疽菌LFIは、InBios International(米国ワシントン州シアトル)と共同開発され、1ng/mlの検出限界(LOD)を実現することが示されている。これらのアッセイはどちらも実施中であり、現在、前臨床環境で評価している。野兎病菌用のLFIは進行中であり、VFIシステムの評価にバイオマーカ及び鉛mAbが利用可能である。ペスト菌に関するバイオマーカが同定されており、mAbは現在精製中である。モノクローナル抗体産生、BSL3病原体の増殖、細菌標的の精製、及びプロトタイプアッセイの開発は、AuCoin研究所で進行中である。
【0242】
[0305]
図40Aは、本実施例による紙ベースVFIデバイス1(Cheng, et al., 2019)の設計を示す。このデバイスは、ニトロセルロース膜3ベースの垂直フローイムノアッセイ(VFI)診断デバイス1を備える。
図40の挿入図は、スポット79のマイクロアレイからの陽性信号を示す例示的な膜3である。
図40のプロトタイプは、スポット抗体捕捉剤79アレイを備えたニトロセルロース膜3(例えば、直径3.5mm)と、シリコン膜支持体21と、ポリカーボネートハウジング(例えばホルダ29)内に位置するOリング77とを含む。VFIデバイス1は、標準的なルアーロック取付具を使用して試料シリンジ6に接続する。試料実行が完了した後、
図40Bに示されるプロトタイプ化された撮像検出システム49のモジュール設計に示されるように、ルアーロックを試料シリンジ6から簡便に切り離し、スマートフォン51のカメラ53の撮像プローブに再接続することができる。
図40Bに示されるセットアップは、スマートフォン51のカメラ53でVFI膜3をスキャンするために使用される撮像検出システム59モジュールの一例である。このプロセスでは、膜3はVFIデバイス1の内部に留まり、これにより、バイオハザードの可能性のある試料へのユーザの曝露が最小限に抑えられる。
【0243】
[0306]
図40Aの挿入図は、スポット79のマイクロアレイからの陽性信号を示す膜3の例である。マイクロアレイスポット79を、病原体パネルの様々なバイオマーカを標的とする捕捉剤19抗体と共に堆積する。マイクロアレイ膜3を、1ナノリットルの液滴サイズを有するBioDot(商標)マイクロソレノイドディスペンサで製造し、これは、膜3に約220μmのスポット79サイズをもたらす。スポット79サイズ、スポット79の空間分解能、及び多重化の数など、VFI膜3の品質は、インラインカメラフィードバックモジュールを備えた高度なマイクロピエゾディスペンシングシステムでさらに改善することができる。
【0244】
[0307]Si支持体21は、深掘りRIE法を使用して製造されたフロー貫通穴(直径150μm)を有する円形シリコンディスクである。Si支持体21は、液体フロー23に対する膜3の機械的支持を実現する。シリコン支持体21は、市販のステンレス鋼支持体よりも高いヤング率を有し、したがって、フロー23の圧力下での変形の影響を受けにくい。これにより、膜3でのスポット79マイクロアレイ全体にわたる信号均一性が大幅に向上される。
【0245】
[0308]垂直フロー診断プラットフォームを最適化するための現在進行中の研究の重要な部分として、複数のシステムパラメータが理論的及び実験的に調査されている。開示されるVFIデバイス1のプラットフォームは、サンドイッチイムノアッセイに基づいて生物脅威病原体を検出する。開示されるデバイス1のVFIシステムには、2つの重要な無次元数がある。1つは、ダムケラー数(D
a)であり、吸着速度と輸送速度の関係を特徴付ける。第2の無次元数は、ペクレ数(P
e)であり、対流速度と拡散速度との比である。捕捉剤19を使用して低濃度で標的抗原13を捕捉するために、2つの条件が望まれる:(1)効率的な捕捉アッセイ(D
a>>1)。捕捉剤19抗体に結合する抗原13の速度が、膜3の細孔壁への抗原13分子輸送の速度よりも速い;(2)非拡散制限アッセイ(P
e<1)は、送達される全ての抗原13が、感知領域81を通して対流される前に、膜3の細孔壁に拡散することを可能にする。
【0246】
[0309]これらの2つの要件に基づいて、VFI設計は、アッセイ感度を改良するために、高いフロー23速度及び小さい膜3孔径を有する。
【0247】
[0310]以下の表は、開示されるデバイス1のVFIシステムの性能に対する影響を決定するために、開示されるデバイス1のVFIシステムについて調べた因子を要約したものである。因子は、それぞれ試料、デバイス、アッセイ、及び操作プロトコルに関連する4つのグループに分けることができる。
【表13】
【0248】
[0311]膜3の材料の孔径及び試料フロー23流量など、いくつかの因子が非常に重要であることが見出されている。実験結果は、より小さいナノメートル孔径を有するニトロセルロース膜3が、開示されるデバイス1のVFIプラットフォームに実装されている現在の4つの生物脅威アッセイで最高の感度を実現することを示している。単位流量が高いほど、より多くの試料が一定時間に感知領域81に送達され、より良い検出感度を実現することができる。対照的に、捕捉剤19抗体の密度など、いくつかの因子はそれほど重要ではない。膜3のスポット領域が飽和している限り、より多くの捕捉剤19抗体を同じ領域に追加しても、開示されるVFIデバイス1の感度はさらには向上されない。
【0249】
[0312]生物脅威性病原体の検出及び多重検出におけるVFIシステムの性能
[0313]以下の表は、同じアッセイを使用するラテラルフローイムノアッセイシステムと比較したVFIデバイスの主要な仕様を表示する。
【表14】
【0250】
[0314]エリア81を通るより大きな流れ、及び能動ポンプメカニズム(例えば、ポンプ31)の統合により、VFIデバイス1は、尿又は環境水土壌懸濁液試料など、より大きな体積を有する試料を処理することが可能である。より大きい試料体積の場合には試料調製ステップがより長いので、開示されるVFIデバイス1の合計試験時間はLFIよりも長くなるが、それでも30分のベンチマークを下回る。開示されるVFIデバイス1の感度は、同様のLFI構成よりも約25倍感度が高い。
【0251】
[0315]本発明者らは、開示されるデバイス1のVFIプラットフォームを使用して実験を行い、2つの標的、すなわちCPS及びPGAを同時に検出する。多重化VFI膜3の設計は、
図10A〜10Cに示されており、VFIとCPS及びPGAとの多重化アッセイが同じ膜で検出される。
図10Bは、異なる試料(CPS−/PGA−、CPS+/PGA−、CPS−/PGA+、CPS+/P)を用いた4つの膜3のスキャンされた画像を示す。検出スポット79マイクロアレイを、2つの部分に分けた。半分は、CPSを標的とするmAb 4C4捕捉剤19でコーティングし、残りの半分は、PGAを標的とするmAb 8B10捕捉剤19でコーティングした。異なる抗原81含有量を有する4つの試料(CPS陰性/PGA陰性、1ng/mL CPS/PGA陰性、CPS陰性/1ng/mL PGA、1ng/mL CPS/1ng/mL PGA)をVFI膜3で処理した。
図10Bは、4つの膜3のスキャンされた画像を示す。
図10Cは、4つの膜3からの信号強度を示す。検出スポット79は、対応する抗原81が試料中に存在した場合にのみ陽性信号を示した。この実験は、開示されるデバイス1のVFIプラットフォームが複数の生物脅威剤を同時に検出することができることを実証した。LFIとは異なり、開示されるデバイス1のVFIシステムでは、検出スポット79が空間的に離され、互いに独立しており、開示されるVFIデバイス1を大規模な多重化検出に特に適したものにする。
【0252】
[0316]
図41は、現在のベンチトップ画像分析ソフトウェア161のユーザインターフェースを示す。miniVFI膜を分析するためのソフトウェアのワークフローは、3つの主要なステップを含む:1)事前定義されたテンプレートを使用して画像を識別及び回転する;2)マイクロアレイ内の各スポット79を位置特定する。テンプレートを識別した後、テンプレートを基準にしてx/y2軸座標が作成される。各スポット79の座標は、ピッチ距離及び走査dpiに基づいて計算することができる;3)各スポット79及びその背景から強度を取得する;4)各スポット79に関する診断レポート(陽性、陰性、及び不明)を生成する。これは、場合によっては1つのタイプのバイオマーカに関するものでもよい。
【0253】
[0317]本発明者らは、結果を、ImageJを使用した手動の方法と比較した。平均して、差は最大15%だった。膜からの信号強度自体が10%の変動を有することを考えると、ソフトウェアからの結果はかなり正確である。注:ソフトウェア161システムは、LFIストリップを分析するように構成されてもいる。
【0254】
[0318]プラズモニックナノ粒子のうち、界面活性剤を含まない分枝金ナノ粒子は、表面増強光感知及び撮像用途から、癌治療のための光熱処理及び光免疫療法に至るまで、幅広い用途のためのナノプラットフォームとして優れた特性を示している。球状コアから突き出た複数の鋭い枝を有する金ナノ粒子を合成するための、界面活性剤及びキャッピング剤を使用しない方策が導入されており、これは「金ナノスター」(GNS)と呼ばれている(Nuti, et al., 2011)。リガンド交換や広範な精製プロトコルを必要としない、生体適合性のあるリガンドフリーの表面化学、直接的な表面機能化の容易さ、及び生体分子の装填に利用可能な優れた表面積(同じ直径の球状金ナノ粒子と比較して)は、他のタイプの金ナノ粒子と比較したGNSによって実現されるいくつかの主要な利点である(Jiang et al., 2011);Yuan,Weng, et al., 2011;Yuan,Khoury, et al., 2012;Yuan,Fales, et al., 2012;Wang, et al., 2016;Indrasekara,Meyers, et al., 2016;Liu,Ashton, et al., 2015;Indrasekara,Johnson, et al., 2018;Lenshof, et al., 2009;Kim, et al., 2017;Kuo, et al., 2015)。さらに、GNSは、高散乱断面積、プラズモン増強吸収、可視から近赤外スペクトル範囲での形状制御されたプラズモン吸収帯の調整可能性など、独特であり優れた光学特性を示す(Nuti, et al, 2011;Gong, et al, 2013)。一括して、GNSの化学的特性と光学的特性との両方が、VERIFASTプラットフォームの用途の光学的検出性能を高めるための多用途プラットフォームを実現することができる。
【0255】
[0319]生物医学的用途におけるナノ粒子の有効性及び信頼性は、ナノ粒子の物理的、化学的、及び光学的特性の一貫性及び再現性に強く依拠し、そのような一貫性及び再現性は、主にそれらの形態学的特徴によって決定される。設計パラメータは、高い信頼性で、目的に合わせた製造GNS用に開発した。GNSの再現性及び均質性を改善する最適化されたボトムアップ合成プロトコルと、それらの形態、特に分枝密度、分枝の幾何学的特徴を変調して、所望の光学特性を取得する機能が備わっている。実験パラメータの体系的な変更により、GNSは、
図42に示されるように、3〜30分枝/粒子の範囲の分枝密度、30〜200nmの全体サイズ、及び530nm〜900nmの範囲の光吸収で製造することができる(Nuti, et al, 2011;Gong, et al, 2013)。
図42は、透過型電子顕微鏡(TEM)画像及び吸収スペクトルを示しており、界面活性剤及びキャッピング剤を含まないシード媒介合成手法を使用して高い再現性を有する高品質GNSの形態学的及び光学的調整を示す。
【0256】
[0320]バイオマーカパネルの開発:mAbの精製及びQC(品質管理)試験
[0321]VFI形式で使用するミリグラム量(≧500mg)の各mAb捕捉剤19のを精製する。プロトタイプ抗原81捕捉アッセイ、LFI、及びVPIを開発するために、捕捉剤19mAbが必要である。既存のハイブリドーマ細胞株を、ハイブリドーマ増殖培地を含むIntegraバイオリアクタ(Integra systems)で培養する。ハイブリドーマ上清液を定期的に採取し、mAbを、タンパク質Aカラムでの親和性クロマトグラフィによって精製する。遺伝的浮動の結果として生じ得る悪影響を回避するために、ハイブリドーマ細胞株の新たなバイアルを定期的に起こし、抗体サブクラスを定期的に監視する。捕捉剤19mAbの各ロットに、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、ウエスタンブロット及び表面プラズモン共鳴(SPR−/Biacore X100)アッセイを含む厳密なQC試験を施して、捕捉剤19mAbの性能を確認する。SPRアッセイは、動力学的結合データ(オンレート及びオフレート)の決定を含むmAb親和性の詳細な評価を可能にする。簡潔に言うと、精製された細菌バイオマーカを、Biacoreセンサチップに固定化する。試料(mAbの2倍段階希釈[333−5.2nM])をセンサ表面にわたって60秒間注入し、その後、捕捉剤19mAbを受動的に解離させる。BIA評価ソフトウェアを使用して、Ka(オンレート)、Kd(オフレート)、及びK
D(平衡解離定数又は「親和性」)を決定する。解離定数(K
D)は、BIA評価ソフトウェアにおいて定常状態モデルを使用して決定する。
【0257】
[0322]受動吸収又は機能化表面化学のいずれかを使用して、検出mAbを、ELISAの場合には西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に、LFI及びVPIの場合にはGNP12及びGNSに結合させる。また、共役試薬に、ELISA又はLFI形式での検証を含む定量及びQC法を施す。
【0258】
[0323]バイオマーカの精製及び細菌分離株の調製:ミリグラム量(≧20mgs)の各バイオマーカ(細菌抗原81)を精製して使用する。これは、開発されるプロトタイプLFI及びVPIのそれぞれの性能を試験するために必要である。類鼻疽菌CPS、炭疽菌PGA、及び野兎病菌LPSの精製は、病原体の増殖を必要とする(場合によっては、選択された化学剤免除株が使用されることがある)。ペスト菌によって発現されるバイオマーカを、組換え法によって発現する。さらに、各細菌性病原体の、熱又は化学的に不活化された全細胞及び全細胞溶解物を生成する。作業はBSL3実験室で行う。組換えタンパク質及び細菌調製物を使用して、各バイオマーカに関するVFIのLOD(pg/ml及びcfu/ml)を決定する。
【0259】
[0324]プロトタイプシングルプレックスLFI開発:プロトタイプシングルプレックスLFIを製造して、対応するVFIと比較するために使用する。VFIの目標は、LODにおいて少なくとも10倍の改良を実現することである。現在、炭疽菌、類鼻疽菌、及び鼻疽菌に関するプロトタイプLFIが使用できる。バイオマーカLPS、LcrV、及びF1を使用する野兎病菌及びペスト菌に関するプロトタイプLFIが、現在このプロジェクトのために製造されている。BioDot 3050を使用して、プロトタイプLFIを製造する。LFIの各成分及びパラメータを、試料パッド、試料体積、チェイス緩衝液、共役パッド、mAbラベリング、膜、試験ラインmAb、吸収パッドなど、従来の方法に基づいて最適化する。分析感度/検出限界(LOD)を、各プロトタイプLFIアッセイに関して決定する。さらに、精製されたバイオマーカと全細菌細胞を、関連の試料マトリックス(例えば、血液、尿)にスパイクして、LODを決定する。パフォーマンス結果を、対応するVPIと比較する。LFI膜とVFI膜3とをどちらも同じ画像分析アルゴリズムで撮像する。
【0260】
[0325]光学的検出剤の開発:VFI金ナノ粒子12標識の光学的特性を最適化するために、主なタスクは製造プロセスの最適化に焦点を当てる。シード媒介手法による界面活性剤及びキャッピング剤を含まないGNSの合成が記載されている(Yuan, Khoury, et al., 2012)。GNS合成のこの方法は、他のナノ粒子合成と比較して非常に単純であり、形態学的特徴と光吸収(局在表面プラズモン)位置との優れた微調整を可能にしながら、完了に約10秒しかかからない(Yuan, Khoury, et al., 2012;Yuan, Fales, et al., 2012;Wang, et al., 2016;Indrasekara, Meyers, et al., 2014;Liu, Ashton, et al., 2015;Indrasekara, Johnson, et al., 2018)。簡潔に言うと、多結晶球状金ナノ粒子(金シード)と塩化金の酸性混合物にAgNO
3(形状指向剤)及びアスコルビン酸(還元剤)を迅速に順次添加すると、瞬時にGNSが生成される(
図43A及び43B)。
図43Aは、GNS合成の概略図である。
図43Bは、様々なAgNO
3濃度下で形成されたGNSのTEM及び3Dモデリング画像(スケールバー50nm)である:(S5:5μM、S10:10μM、S20:2μM、S30:30μM)。合成されたGNSは、さらに使用するまで4℃で保存することができ、又はポリエチレングリコールでコーティングしてコロイド安定性及びさらなる機能化の目的を向上させることができる。
【0261】
[0326]金ナノ粒子12のバッチを生成する能力及びAbとのカップリング:現場で使用される場合、開示されるVERIFASTデバイス1の処理は、2つの主要なステップを含む。第1のステップは、抗原81が捕捉剤19抗体に結合することができるように、膜3を通して試料を流すことである。第2のステップは、膜3を通して洗浄緩衝液を流して、余剰のナノ粒子12及び非特異的な緩く結合された抗原81を除去することである。本発明者らは、三方弁システム163(概念実証アクチュエータの概略が
図44Aに示されている)を使用して、2つの液体を膜3に送達することができる。ユーザがシリンジ6を交換して液体を切り替える現在の実験室での実践と比較して、バルブシステム163の使用にはいくつかの利点がある。操作が簡単である。また、シリンジ6を切り替えるときの圧力降下による気泡の問題も解消する。液体封鎖システムを形成して、危険であり得る試料へのユーザの曝露を低減する。本発明者らの現在の実験室セットアップでは、シリンジ6のポンプ31(120V AC電源を使用)を使用して、プロトタイプデバイス1の膜3を通して液体を押し出す。現場での電力供給が限られていることを考慮して、本発明者らは、液体を作動させるために外部電源を必要としない代替方法を使用することを提案する。
図44Bは、ガスシリンジ4を使用して膜3を通して液体を押すプロトタイプ設計である。15ポンドのガスシリンジ4の本発明者らの予備試験では、所望の時間枠内で試薬を流すことができることが示されている。より小型化されて単純化された液体作動法が、VERIFASTシステムプラットフォームに統合される。
【0262】
[0327]Si膜支持体21の製造:Si膜支持体21は、膜3を横切る均一な信号を容易に実現するVFIデバイス1の重要な構成要素である。現在、それは半導体微細加工技法によって製造されている。まず、フォトリソグラフィを使用して、両面研磨されたSiウェハにレジスト層をパターン形成する。次いで、レジストをオーブン又はホットプレート内で熱硬化させて、Siウェハの深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)用のマスクとして機能させ、基板に異方性貫通穴アレイを作成する。マスクの設計、レジストの回転、フォトリソグラフィ、及びレジストのベーキングは、クリーンルームで行うことができる。Siウェハ当たりの支持体21が多いほど、支持体21の単価は下がるが、ウェハにエッチングされる貫通穴が増えるため、ウェハが破損する可能性もある。最適な設計に到達すると、支持体21の製造が、プロトタイピングデバイス1の製造のために拡張される。
【0263】
[0328]小型化された膜での複製を用いたアレイ印刷:
図45の(A)〜(C)は、本実施例の膜3アレイ印刷の態様を示す。
図45の(A)は、VFIデバイス1設計におけるニトロセルロース膜3の表面積81を示す(Φ=3.5mm;膜3の灰色の領域は、Oリング77によって覆われている)。エッチングされた貫通穴を有するSi支持体21のフロースルー領域は、直径2mmの円内にある。
【0264】
[0329]
図45の(B)は、スポット79の多重アレイの設計である。マイクロソレノイドディスペンサを使用すると、最小液滴体積は1ナノリットルであり、230μmのスポット79サイズが得られる。本発明者らは、フロースルーエリア81内に最大6つの検出スポット79を適合させることができ、各抗原81につき1つのみである。しかし、試験の精度及び信頼性を改善するために、各抗原81について二重さらには三重のスポット79が望まれる。
図45の(C)及び(D)は、それぞれ二重及び三重の5つの抗原81に関するスポット79の多重マイクロアレイの設計である。本発明者らの小型の膜3内のこれらの追加の検出スポット79に適合するために、スポット79サイズとピッチ距離との両方を低減する必要がある。スポット79サイズに基づいて、所望の液滴体積は約450ピコリットルであると計算することができる。現在のマイクロソレノイドディスペンサは、このピコリットルディスペンシングを行うことができない。ピエゾディスペンサは、そのような小さな液滴サイズを実現し、定量供給の空間分解能を向上させることができる。
【0265】
[0330]ピエゾ液体ディスペンサを用いて、所望のスポット79サイズ及びピッチ距離を実現するために、様々なパラメータを試験する。小型化された膜3の中心に多重化されたcAbアレイを印刷するためのプロトコルが開発されている。多重化されたcAbアレイ膜3の少量生産のための手順も開発されている。簡潔に言うと、複数の小型化された膜を、CO
2レーザによって大きな膜3シートから切り取る。次いで、小さな膜3を、アレイ印刷のために剛性の膜ホルダに装填する。膜3のホルダは、ポリカーボネート又は他の硬質プラスチックのCNC機械加工によって製造することができる。ポリカーボネートの剛性は、小さな膜3へのディスペンサの正確な位置合わせを可能にする。
【0266】
[0331]試料マトリックスにおける試料調製及びアッセイの最適化:試料調製は、実世界での用途のための任意のアッセイの重要な部分である。血漿や尿などの複数の試料マトリックスのためのPON環境(例えば、5分未満の時間枠)に適した試料調製モジュールとプロトコルが望まれる。調製された試料の品質は、抗原の損失を最小限に抑え、ベンチトップ手順に対する同様のアッセイ分析感度を確保するように特徴付けることができる。
【0267】
[0332]血液用の血漿抽出カートリッジ:選択されるバイオマーカ病原体は、迅速な疾患診断のための患者の循環系における細菌抗原である(Nuti, et. al., 2011)。血漿/血清は、病原体イムノアッセイのための一般的な試料である。従来の血漿/血清は、全血を遠心分離し、細胞を含まない上清を採取することによって調製される。しかし、PON環境において、場所を取り、高電力を必要とする遠心分離を使用することは現実的ではない。単純であり迅速な血漿/血清生成法が非常に必要である。血漿や血清などの血液成分のうち、血漿は凝血因子の凝固を必要としないため、より速くなる可能性があり、通常はPON用途のための選択肢となる。
【0268】
[0333]全血からの血漿分離の重要性のために、これを実現するための多くの研究が報告されており、電気力(Jiang et al., 2011)、音響力(Lenshof et al., 2009)、流体力学(Kim et al., 2017)、構造化(Kuo et al., 2015)又は膜濾過(Gong et al., 2013)の使用を含む。それらの技法のうち、膜ベースの濾過が最も単純な形式である。膜ベースの濾過では、市販の非対称ポリスルホン膜(例えば、Vivid Plasma Separation Membrane、Pall)を使用して、全血から血漿を2分で分離することができる。
図46A及び46Bは、膜ベースの血漿抽出装置165(
図46A)、及び作製された指作動式血漿抽出器167(
図46B)の基本構造を示す。
図46Aに示されるように、膜169は、上部プレート171及び下部プレート173の前に挟まれている。上部プレート171は、入口175と、血液試料を収容するための支持構造179を備えた及びチャンバ177とを有する。下部プレート173は、膜169から血漿を抽出するための毛細管構造181を有する。血漿出口183は、抽出された血漿を圧出することができる別の毛細管構造である。
【0269】
[0334]血漿分離抽出器デバイス(165、167)は、生物学的線量測定のために製造されて試験されている。得られた知識を、このタスクに活用することができる。上部プレート171と下部プレート173との両方の幾何形状及び表面張力を調査して、試料の損失を最小限に抑えながら高速の血漿抽出を実現する。現在、膜169は、50μL/cm2未満の全血容量に制限されている。しかし、膜面積81を拡大することにより、現場でのミリリットルスケールの血液の取扱いが報告されている(Gong, et al., 2013)。3D構造、例えば積層された膜169を使用してさらなる拡張を探る。さらに、細胞沈降を使用して、血漿抽出の速度及びスループットを改良することができる(Dimov, et al, 2011;Galligan, et al., 2015)。例えば、
図46A及び46Bの基本構造は、細胞沈降による濾過能力を改善するために、底部にある超疎水性血液チャンバ177を用いて上下逆にひっくり返すことができる。同様のデバイスで、約6.5倍優れた膜169容量が報告されている(Liu, Liao, et al., 2016)。
【0270】
[0335]圧力/真空及び等張希釈による赤血球の凝集などの他の現象も、約5分以内に数ミリリットルの血漿を抽出するという目標を達成するために利用される。最後に、抽出血漿の品質は、5つの抗原81全てに関するスパイク回復実験を使用して特性評価され、ベンチトップ手順と比較される。抗原81の損失及び分析感度の変化を使用して、デバイス/プロトコルの最適化をガイドする。
【0271】
[0336]尿は、VFIデバイス及びVFIデバイスを利用する用途のための別の一般的な試料マトリックスである。血液試料とは異なり、尿は、分離する必要のある細胞が大量には含まれておらず、開示される任意のVFIデバイスで直接使用することができる。しかし、よく調節された血漿とは異なり、尿は大きく変動する組成を有する。pHは、pH4.5〜8.0の間で変化することがあり、浸透圧は50〜1300mOsm/kgの間、尿比重(USG)は1.005〜1.030の間で変化することがある(Sviridov, et al., 2009)。本発明者らは、pHがアッセイ結果に影響を与える可能性があり、0.15未満のイオン強度が信号バックグラウンドを増加させる可能性があることを示している。しかし、pHの変動が、イヌの尿中のIL−6の検出にあまり影響を与えなかったことも報告されている(Wood., et al., 2011)。これらの影響は、ヒト尿マトリックスでさらに研究される(試料マトリックスでのアッセイ最適化を参照)。必要であれば、pHストリップを使用して試料のpHを試験し、HCl又はNaOHによって中和することができる。NaClを加えることによってイオン強度を増加させることができる。
【0272】
[0337]血漿マトリックス最適化:血漿又は血清は、イムノアッセイにおける抗原に対する強い阻害効果を有する可能性があることが報告されている(Tate, et al., 2004;de Jager, et al., 2009)。スパイク及び回復実験では、特定の抗原に関する血清/血漿中の回復率が1%と低いことが示されている(Rosenberg−Hanson, et al., 2014)。これは、VFIアッセイでも観察される。
図47は、緩衝液又は血清のいずれかにスパイクされた25ng/ml LcrVを示す。強いマトリックス阻害効果を示す、緩衝液及び血清中のスパイクされた25ng/mL LcrVの信号がプロットされている。血清試料からの信号は、GNP 12濃度が4倍高くても、緩衝液の信号よりもかなり小さい。しかし、血漿の希釈は、このマトリックス阻害効果を一部緩和することができ、希釈していない試料よりもわずかに希釈した試料のほうが好ましいことが示唆されている(Rosenberg−Hanson, et al., 2014)。一方、本発明者らは、最小の0.1μmニトロセルロース膜を通して希釈されていない血清試料を流すとき、膜の目詰まりも確認した。両方の観察結果が、VFIデバイスで使用するための血漿試料の希釈を示唆する。それにもかかわらず、アッセイ感度への重大な影響を回避するために、より小さな希釈倍率が依然として好ましい。
【0273】
[0338]マトリックス効果の複雑さにより、本発明者らは、血漿マトリックスにおけるVFIデバイス1アッセイを最適化するための実験計画法(DOE)を使用する。重要なパラメータは以下のものである:(1)血漿希釈倍率;(2)膜3の孔径;(3)フロー23の速度;(4)GNP 12−dAb 10濃度。まず、スクリーニング実験を行って、4つの因子のどれがアッセイ性能に大きな影響を与えているかを決定する。実験のこの段階の目標は、応答に有意な影響を有していない設計因子を排除することである。第2の実験は、応答曲面タイプ設計であり、ここで、因子レベル最適化を容易にするために、設計因子とそれらの相互作用と間の真の関係が決定される。膜阻害及び適切な希釈緩衝液も事前に個別に試験する。さらに、本発明者らは、事前に、試料及び金ナノ粒子12検出抗体10の予混合に10分を費やし、試料実行時間はさらに10分であった。この例では、本発明者らは、新たな手法を採用して、短い混合時間の直後に試料を実行する。このようにすると、試料実行時間は20分に近づき、センサを通される試料を2倍にすると同時に、溶液中での液体抗原−抗体反応を依然として可能にする。血漿試料の希釈は直線的ではなく、異なる抗原に対するその影響は抗原毎に異なる可能性があるため、各抗原は個別に最適化される。
【0274】
[0339]前述のように、ヒトの尿は、pH(4.5〜8.0)、浸透圧(0.05〜1.3Osm/kg)、及びUSG1.002〜1.030で大きなばらつきがある(Sviridov, et al., 2009;Cook, et al., 2000)。また、ヒトの尿は、タンパク質と、血漿に比べて大量の尿素や馬尿酸などとの複雑な混合物を含む(Sviridov, et al., 2009)。USGが高いほど特定のサイトカインの回復が改善されるという興味深い観察結果と共に、尿マトリックスによる阻害効果も報告されている(Wood, et al., 2011)。VFIに対する尿マトリックスの影響を十分に研究することは重要な取組みとなる。したがって、最初の取組みでは、尿試料のpH及びイオン強度の影響を研究する。購入した尿試料のpH及びイオン強度を、pHメータ(又はpHストリップ)及び導電率メータで測定する。次いで、酸/塩基及びNaClの滴定によってpH及びイオン強度を調整することができ、異なるpH、イオン強度条件下で、スパイクされた抗原81に対してVFIを実施することができる。pHとイオン強度に加えて、希釈倍率、膜孔径、流速、GNP 12−dAb10濃度など他の関連パラメータも、血漿マトリックス研究と同様のDOE戦略を使用してアッセイ最適化のために試験する。USG及び浸透圧データが尿供給業者から要求され、プロジェクト中に監視する。結果は、開示されるデバイス1を用いたVFIアッセイに関する最終的な試料調製戦略に影響を与える。
【0275】
[0340]標本採取及び処理モジュールの実証:プラットフォーム最適化のための実験的手法は連続的である。典型的には、スクリーニング実験は、選択された要因のどれがアッセイ性能に大きな影響を与える可能性があるかを決定するために行う。次いで、設計因子とそれらの相互作用との間の真の関係を決定することができる応答曲面型設計を適用して、因子レベル最適化を容易にする。スクリーニング段階に関して、決定的スクリーニング計画(DSD)が使用される可能性が高い。これは、DSDが、効率的なスクリーニング設計として機能すると共に、いくつかの魅力的な相関特性と、実験の第2の段階での効率を見出すのに適切な統計モデルに当てはめることができる機能とを実現するからである。スクリーニング段階の結果に応じて、拡張DSD、又は中央複合設計などの従来の応答曲面設計のいずれかが使用される。
【0276】
[0341]VFI膜3から獲得した画像を確実に分析するためのソフトウェアが必要である。既存のソフトウェアアルゴリズム(CK Point #2.4)は、画像を調べ、試験パターンを位置特定し、必要に応じて画像の向きを調整し、次いでドットパターンを分析して、バックグラウンド値と比較した信号スポット79の値を決定して、標的が検出されたかどうかを判断する。このソフトウェアは、任意の受信画像に関する選択されたクラウドの場所を監視する。画像が到着すると、プログラムは、画像を開いて分析し、次いでアーカイブのための安全な場所に移して、結果を報告する。この構成は、データセキュリティ及び通信プロトコル並びに(例えば防衛共同体によって確立された)要件内で、モバイルハンドヘルドデバイスプラットフォーム(例えばスマートフォン51又は等価な電子機器)への変換に対応するように再プログラムされる。
【0277】
[0342]電子機器(例えばスマートフォン51)用アプリケーション
[0343]ソフトウェアは、信頼性が高く、使いやすいエンドユーザインターフェースを容易に実現することができる。軍が承認したスマートフォン51用に設計されたアプリケーション(例えば、iPhone及びGalaxyデバイスを備えたNett Warriorネットワーク)は、CCDフォン51のカメラ53を使用して試験膜3の必要な48ビット画像を取得することができる。次いで、アプリケーションは、既存のソフトウェアによって分析されるように、軍が承認したネットワーク上の場所に画像を送信することができ、又はスマートフォン51で直接分析が行われるようにアプリケーションを書くことができ、軍が承認したネットワーク上の場所に結果が送信される。
【0278】
[0344]主要な5つの病原体カテゴリそれぞれの試料サイズは、以下の表に基づいて決定され、これは、いくつかの推定感度及び特異性に関して、試料サイズと95%信頼区間との関係を示す。
【表15】
【0279】
[0345]実地試験の目標は、VERIFAST PON試験の性能測定基準を正確に確立することである。採取された試料の数が多いほど、マルチプレックス試験の感度と特異性との両方について、精度がより良くなる、又は95%CI幅が狭くなる。
【0280】
[0346]一例として、参照標準実験室増殖培養試験に関して、500人の被験者から採取することによって90%のPON試験感度を実現した場合、95%CIは約±2.6%になる。同様に、感染していない1000個の試料を採用することで導出される70%の特異性は、95%CIが±2.8%になる。この測定基準は、検証研究のためにスポンサーへのデバイスの納品後に必要となる、カテゴリ毎の患者又は非ヒト霊長類(NHP)試料の数を推定するための手段を提供する。
【0281】
[0347]実施例10:核酸及び生物学的製剤の検出
[0348]本明細書で述べるシステム及びプロセスのいずれかを使用して、核酸、より一般的には生物学的製剤を検出することができる。例えば、
図48〜50は、生物脅威に対応するものを含む様々な生物製剤を検出するための垂直フロー検出デバイスの有用性を示す。
図48及び49は、F1(ペスト)及びLPSに特異的な抗体である、膜に接続された捕捉剤を示す。VFI膜の写真が右側に示され、対照スポット及び検出スポットを有する。
図50は、4つのTier I生物脅威に関する検出結果を要約したものである。
【0282】
[0349]
図51は、細胞から核酸を取得するための1つのプロセスの要約である。RNAは細胞株から抽出することができ、望まれるときには、標準的なRT及び標準的なPCRを含め、標的の増幅を生じることができる。次いで、試料を、本明細書で述べるVFシステムのいずれかに導入することができる。
図51は、細胞培養を示し、本明細書で提供されるシステム及び方法は、限定はしないが組織生検又は体液を含む様々な試料出発材料と適合性がある。
図52は、本明細書で述べるシステムのいずれかを使用した核酸の検出の概略図である。捕捉抗体は、標的核酸配列に特異的な膜に接続される。検出抗体を使用して、捕捉抗体に結合された標的核酸配列の存在を検出することができる。
【0283】
[0350]本明細書で提供されるシステム及び方法は、高い特異性を有する。例えば、
図53は、ヌクレオチドスポット(左端のバー)及び陰性スポット(右バー)での陽性試料(1mLの緩衝液で希釈されたCDKN1Aアンプリコン)に関する垂直フローを使用するCDKN1Aの検出を示す。陰性試料(1mLの緩衝液)に関して、統計的に有意な比色信号は検出されない。
【0284】
[0351]
図54は、垂直フローデバイスを使用したCDKN1A及びHIST1H3Dの検出に関する結果を要約したものである。このシステムは、陰性試料と、2つの標的のうちの1つだけが存在する試料とによって示されるように、所望の標的に対して高い特異性を有する。
【0285】
[0352]本明細書で提供されるシステムは、放射線に曝露された細胞の検出に有用である。
図55の上部パネルは、細胞が3Gy/分の線量で放射線に曝露されていない(0Gy)又は曝露されている(5Gy)、照射プロトコルを要約したものである。RNAを抽出して増幅し、得られたアンプリコンをアガロースゲル(左下のパネル)又は垂直フローデバイスに通す。アガロースゲルに関して統計的な相違は観察されないが、垂直フローデバイス及び方法によって放射線との有意な違いが確実に検出される。これは、本明細書で提供される方法及びデバイスが非常に感度及び特異性が高く、様々な用途に役立つことを示す。
【0286】
[0353]例えば、膜で検出することが可能な遺伝子の数を増やすことができる。さらなる定量化は、例えば、正規化を容易にするために1つ又は複数のハウスキーピング遺伝子を使用することによって実現される。4つの遺伝子を使用する1つの例は以下のものである:(1)CDKN1A(リバース:ビオチン);(2)HIST1H3D(リバース:ジゴキシゲニン);(3)DDB2(リバース:ジニトフェニル);(4)ハウスキーピング遺伝子MRPS5(リバース:Cy3)。同様に、タンパク質検出のための多重化は、それぞれ関連のタンパク質又はその一部に特異的な異なる捕捉抗体を使用することによって適合性がある。タンパク質検出の例には、莢膜多糖(CPS)を標的とする類鼻疽菌の検出が含まれる。他の細胞内タンパク質バイオマーカ(例えば、リンパ球タンパク質FDXR、BAX、DDB2、及びACTN1)も、本発明の垂直フローデバイスで調べることができる。垂直フローデバイス及びシステムは、血液試料である試料とも適合性がある。
【0287】
[0354]例えば等温リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)を使用することによって、膜への導入の上流での試料調製を単純化することができる。システムは、流体カートリッジを含む様々なフォームファクタと適合性があり、様々なシステムに統合することができる。例えば、シリンジポンプなどの流体ポンプは、可搬性のある小型で軽量の電源内蔵システムで置き換えることができる。一般的な要件には、約2mL〜5mLの総体積と、0.2〜0.5mL/分の範囲の一定の流量が含まれる。例としては、摩擦や流れの変動を低減するための定力ばね及び/又はボールスライドなど、動力がなく、定荷重を加えることが可能な単純でロバストなシステムを挙げることができる。
【0288】
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【0289】
(参照による組み込みに関する記述及び変形形態)
[0427]本出願全体にわたる全ての参照、例えば、発行又は付与された特許若しくは均等物を含む特許文書;特許出願公開;及び非特許文献又は他の原資料は、各参考文献が本出願の開示と少なくとも部分的に矛盾しない範囲で、参照により個別に組み込まれているかのように、それらの全体を参照により本明細書に組み込む(例えば、一部矛盾する参考文献は、その参考文献の一部矛盾する部分を除いて参照により組み込まれる)。
【0290】
[0428]本明細書で採用されている用語及び表現は、説明の用語として使用され、限定ではない。そのような用語及び表現の使用には、図示されて述べられている特徴又はその一部の均等物を除外する意図はなく、特許請求される本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識されている。したがって、本発明は、好ましい実施形態、例示的な実施形態、及び任意選択的な特徴によって具体的に開示されているが、当業者は、本明細書に開示される概念の修正及び変形に依拠することもでき、そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲によって定義されているように本発明の範囲内にあるとみなされる。本明細書で提供される特定の実施形態は、本発明の有用な実施形態の例であり、本発明が、本明細書に記載されたデバイス、デバイス構成要素、方法ステップの多くの変形形態を使用して実施することができることが当業者には明らかである。当業者には明らかであるように、本発明の方法に有用な方法及びデバイスは、多数の任意選択的な組成物及び処理要素及びステップを含むことができる。
【0291】
[0429]本明細書において1群の置換が開示されるとき、その群の全ての個々の要素及び全てのサブグループが別々に開示されることが理解される。本明細書でマーカッシュ群又は他のグループ化が使用されるとき、グループの全ての個々の要素、及びグループの取り得る全ての組合せ及び部分組合せが本開示に個別に含まれることが意図されている。
【0292】
[0430]本明細書において記載又は例示されるあらゆる製剤又は成分の組合せは、特に明記しない限り、本発明を実施するために使用することができる。
【0293】
[0431]本明細書で範囲が与えられているときは常に、例えば、サイズ範囲、数値範囲、孔径範囲、多孔率範囲、厚さ範囲、LOD範囲、温度範囲、時間範囲、流量範囲、又は組成若しくは濃度範囲、全ての中間範囲及びサブ範囲、並びに与えられた範囲に含まれる全ての個々の値が本開示に含まれることを意図されている。本明細書の説明に含まれる範囲又は部分範囲内の任意の部分範囲又は個々の値は、本明細書における特許請求の範囲から除外することができることを理解されたい。
【0294】
[0432]本明細書に記載されている全ての特許及び公開物は、本発明が関係する分野の当業者の技術レベルを示している。本明細書で引用される参考文献は、それらの公開日又は出願日現在の技術水準を示すために、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれ、この情報は、必要であれば、先行技術における特定の実施形態を除外するように本明細書で使用できることが意図されている。例えば、物質の組成が特許請求される場合、本明細書に引用された参考文献において実施可能な開示がなされている化合物を含め、本出願人の発明の前に当技術分野で知られており利用可能な化合物は、本明細書における物質の組成クレームに含まれないことが意図されている。
【0295】
[0433]本明細書で使用するとき、「備える(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(Containing)」、又は「を特徴とする(characterized by)」と同義であり、非限定的(inclusive又はopen−ended)であり、引用されていない追加の要素又は方法ステップを除外しない。本明細書で使用するとき、「からなる(consisting of)」は、クレーム要素で指定されていない要素、ステップ、又は成分を除外する。本明細書で使用するとき、「本質的にからなる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲の基本的且つ新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又はステップを除外しない。本明細書における各場合において、「備える」、「本質的にからなる」、及び「からなる」という用語の任意のものを、他の2つの用語のいずれかで置き換えることができる。本明細書で例示的に述べられる本発明は、適切には、任意の要素がない状態で実施することができ、本発明の限定は本明細書に特に開示されていない。
【0296】
[0434]具体的に例示されたもの以外の出発材料、生物学的材料、試薬、合成方法、精製方法、分析方法、アッセイ方法、及び生物学的方法を、必要以上の実験に頼ることなく本発明の実践において使用できることを当業者は理解されよう。そのような材料及び方法の全ての当技術分野で知られている機能的等価物は、本発明に含まれることが意図されている。採用されている用語及び表現は、説明の用語として使用され、限定ではない。そのような用語及び表現の使用には、図示されて述べられている特徴又はその一部の均等物を除外する意図はなく、特許請求される本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識されている。したがって、本発明は、好ましい実施形態及び任意選択的な特徴によって具体的に開示されているが、当業者は、本明細書に開示される概念の修正及び変形に依拠することもでき、そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲によって定義されているように本発明の範囲内にあるとみなされる。