特表2021-520848(P2021-520848A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-520848条件付き再プログラム化細胞から動物モデルを得るための方法および抗腫瘍薬のスクリーニングのための動物モデルの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-520848(P2021-520848A)
(43)【公表日】2021年8月26日
(54)【発明の名称】条件付き再プログラム化細胞から動物モデルを得るための方法および抗腫瘍薬のスクリーニングのための動物モデルの使用
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/027 20060101AFI20210730BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20210730BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20210730BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20210730BHJP
   C12N 5/09 20100101ALN20210730BHJP
【FI】
   A01K67/027
   G01N33/48 N
   G01N33/50 Z
   G01N33/15 Z
   C12N5/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2021-504560(P2021-504560)
(86)(22)【出願日】2019年3月19日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月10日
(86)【国際出願番号】CN2019078703
(87)【国際公開番号】WO2019196606
(87)【国際公開日】20191017
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/083110
(32)【優先日】2018年4月13日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520398445
【氏名又は名称】シャンハイ エルアイディーイー バイオテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI LIDE BIOTECH CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェン タンイー
【テーマコード(参考)】
2G045
4B065
【Fターム(参考)】
2G045AA29
2G045CB02
4B065AA90X
4B065BA30
4B065BB12
4B065BB18
4B065BB19
4B065BB28
4B065BB34
4B065BB37
4B065BC10
4B065BD50
4B065CA46
(57)【要約】
本発明は、抗腫瘍薬のスクリーニングの動物モデルを条件付き再プログラム化腫瘍細胞から得るための方法、およびそれを用いた抗腫瘍薬のスクリーニングの方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗腫瘍薬のスクリーニングのための動物モデルを得るための方法であって、
患者の腫瘍生検試料から得た原発腫瘍細胞を、下記成分:
a)0.01〜1.0mg/Lのヒドロコルチゾン、
b)1.0〜10.0mg/Lのイヌリン、
c)1.0〜20.0μg/Lのコレラトキシン、
d)2.0〜50.0mg/Lのアデニン、
e)1.0〜30.0μg/LのEGF、
f)1.0〜30.0μmol/LのY−27632、
g)ペニシリン/ストレプトマイシン、
h)2〜20%のFBS、
i)F12培地、
j)高グルコースDMEM、および任意で
k)非必須アミノ酸溶液、
l)GlutaMAX添加剤
を含む組成物中で培養する工程(1)と、
前記工程(1)で得た原発腫瘍細胞を動物に移植する工程(2)と
を含む、方法。
【請求項2】
前記工程(1)の組成物が、下記成分:
a)0.3〜0.5mg/L、好ましくは0.4mg/Lのヒドロコルチゾン、
b)4〜6mg/L、好ましくは5mg/Lのイヌリン、
c)7〜9μg/L、好ましくは8.3μg/Lのコレラトキシン、
d)20〜30mg/L、好ましくは24.2mg/Lのアデニン、
e)8〜12μg/L、好ましくは10μg/LのEGF、
f)8〜12μmol/L、好ましくは10μmol/LのY−27632、
g)ペニシリン/ストレプトマイシン、
h)8〜12%、好ましくは10%のFBS、
i)F12培地、
j)高グルコースDMEM、および任意で
k)非必須アミノ酸溶液、
l)GlutaMAX添加剤
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記腫瘍生検試料が針生検試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記針生検で得られた検体の原発腫瘍細胞の濃度は、約2mol/L未満、約1.9mol/L未満、約1.8mol/L未満、約1.7mol/L未満、約1.6mol/L未満、約1.5mol/L未満、約1.4mol/L未満、約1.3mol/L未満、約1.2mol/L未満、約1.1mol/L未満、約1.0mol/L未満、約0.9mol/L未満、約0.8mol/L未満、約0,7mol/L未満、約0.6mol/L未満、約0.5mol/L未満、約0.4mol/L未満、約0.3mol/L未満、約0.2mol/L未満、約0.1mol/L以下、例えば、約2mol/L未満、約1.7mol/L未満、約0.8mol/L未満、約0.64mol/L未満、または約0.59mol/L未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記動物がマウスまたはラット、具体的には、免疫不全マウスである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記原発腫瘍細胞が前記工程(1)の組成物中でフィーダー細胞と共に培養され、具体的には、前記フィーダー細胞はマウス胎児繊維芽(MEF)細胞であり、より具体的にはMEF細胞はマイトマイシンCで処理されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(1)で得られた原発腫瘍細胞が中空繊維を介して動物に移植され、具体的には前記中空繊維が修飾フッ化ポリビニリデンで作られたものであり、より具体的には、前記中空繊維が修飾フッ化ポリビニリデンで作られたものであり、且つカットオフ値が500,000ダルトンである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記中空繊維が前記動物の皮下に移植される、請求項1に記載の方法。
である。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法で得られた抗腫瘍薬のスクリーニングのための動物モデルであって、前記動物がマウスまたはラット、具体的には、免疫不全マウスである、動物モデル。
【請求項10】
請求項9に記載の動物モデルに候補薬を投与することを含む、抗腫瘍薬のスクリーニングの方法。
【請求項11】
前記動物モデルにおける腫瘍細胞成長を測定することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項9に記載の動物モデルの抗腫瘍薬のスクリーニングにおける使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、in vitroおよびin vivoの両方の条件で患者の腫瘍生検試料より得られた原発腫瘍細胞を増殖させるための組成物、得られた原発腫瘍細胞を組成物中で増殖させるための方法、動物モデルを用いた抗腫瘍薬の効果のスクリーニングのための動物モデルを得るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
条件付き再プログラミング(CR)とは、正常細胞および腫瘍細胞を含む疾患細胞から、患者由来培養細胞を迅速かつ効率的に確立するための細胞培養技術である。CRの最も大きな利点は、その患者組織サンプルからの迅速かつ効率的な培養細胞の増殖にある。これによって、臨床利用のための情報を提供するのに十分な速さで、研究者が抗癌剤や免疫療法に対する腫瘍の感受性をスクリーニングすることができるようになる。
【0003】
動物モデルにおける抗腫瘍薬の効果についての試験は、このような動物モデルが抗腫瘍薬のスクリーニングにおいて重要であることから、重要である。このような動物モデルは、患者のin vivoの環境を模倣し、患者の応答を反映するため、より効果的である。動物モデルを確立するためには、当業者は、通常、十分に大量の腫瘍細胞を得る必要がある。しかし、患者から得た腫瘍試料は、その入手方法によっては非常に少量もしくはトレース量しか腫瘍細胞を含んでいないこともある。例えば、針生検で得た腫瘍試料は、非常に少量の腫瘍細胞しか含んでおらず、よって、当業者が抗腫瘍薬のスクリーニングのための所望の動物モデルを確立するために使用するのは非常に困難な場合もある。
【0004】
条件付き再プログラミングによる腫瘍細胞の不死化は、細胞に基づく診断、薬剤感受性アッセイ、およびin vitroのバイオバンキングのための増殖腫瘍細胞を作製するための貴重なツールである。しかし、患者から得た原発腫瘍細胞、特に少量またはトレース量しかない(例えば、針生検の)細胞検体をいかに効果的且つ上手く培養するかは、未だに課題である。
【発明の概要】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明者は、いろいろな種類の腫瘍由来の原発腫瘍細胞を不死化に向けて条件付き再プログラム化し、条件付き再プログラム化腫瘍細胞を、抗腫瘍薬の試験のための動物モデルの確立に使用した。原発腫瘍細胞は切除組織、生検または針生検試料から得た。本発明で得られた条件付き再プログラム化原発腫瘍細胞は、極低温凍結の際の保存性の高い、典型的なコロニー化増殖を示した。いくつかのケースでは、細胞を複数回継代することも可能であり、有用な細胞系となる。原発腫瘍細胞と同様に、条件付き再プログラム化腫瘍細胞は、in vitroの試験薬感受性について信頼できるものである。本発明者は、薬効の試験のための条件付き再プログラム化腫瘍細胞(CRC)の動物モデルへの移植に成功し、動物モデルを用いて抗腫瘍薬のスクリーニングを行った。さらに本発明は、条件付き再プログラム化腫瘍細胞の薬効試験における使用を開示する。
【0006】
本発明の一態様は、抗腫瘍薬のスクリーニングのための動物モデルを得るための方法を提供し、当該方法は、患者の腫瘍生検試料から得た原発腫瘍細胞を、下記成分:
a)0.01〜1.0mg/Lのヒドロコルチゾン、
b)1.0〜10.0mg/Lのイヌリン、
c)1.0〜20.0μg/Lのコレラトキシン、
d)2.0〜50.0mg/Lのアデニン、
e)1.0〜30.0μg/LのEGF、
f)1.0〜30.0μmol/LのY−27632、
g)ペニシリン/ストレプトマイシン、
h)2〜20%のFBS、
i)F12培地、
j)高グルコースDMEM、および任意で
k)非必須アミノ酸溶液、
l)GlutaMAX添加剤
を含む組成物中で培養する工程(1)と、前記工程(1)で得た原発腫瘍細胞を動物に移植する工程(2)とを含む。実施の形態において、本発明の方法の工程(1)の組成物は、下記成分:
a)0.3〜0.5mg/L、好ましくは0.4mg/Lのヒドロコルチゾン、
b)4〜6mg/L、好ましくは5mg/Lのイヌリン、
c)7〜9μg/L、好ましくは8.3μg/Lのコレラトキシン、
d)20〜30mg/L、好ましくは24.2mg/Lのアデニン、
e)8〜12μg/L、好ましくは10μg/LのEGF、
f)8〜12μmol/L、好ましくは10μmol/LのY−27632、
g)ペニシリン/ストレプトマイシン、
h)8〜12%、好ましくは10%のFBS、
i)F12培地、
j)高グルコースDMEM、および任意で
k)非必須アミノ酸溶液、
l)GlutaMAX添加剤を含む。
【0007】
実施の形態において、腫瘍生検試料は針生検試料である。実施の形態において、針生検で得られた検体の原発腫瘍細胞の濃度は、約2mol/L未満、約1.9mol/L未満、約1.8mol/L未満、約1.7mol/L未満、約1.6mol/L未満、約1.5mol/L未満、約1.4mol/L未満、約1.3mol/L未満、約1.2mol/L未満、約1.1mol/L未満、約1.0mol/L未満、約0.9mol/L未満、約0.8mol/L未満、約0,7mol/L未満、約0.6mol/L未満、約0.5mol/L未満、約0.4mol/L未満、約0.3mol/L未満、約0.2mol/L未満、約0.1mol/L以下、例えば、約2mol/L未満、約1.7mol/L未満、約0.8mol/L未満、約0.64mol/L未満、約0.59mol/L未満である。実施の形態において、原発腫瘍細胞は工程(1)の組成物中でフィーダー細胞と共に培養され、具体的には、フィーダー細胞はマウス胎児繊維芽(MEF)細胞である。実施の形態において、MEF細胞はマイトマイシンCで処理されたものである。
【0008】
実施の形態において、本発明における動物はマウスまたはラット、具体的には、免疫不全マウス、例えば、ヌードマウスである。実施の形態において、中空繊維内の工程(1)で得られた原発腫瘍細胞が動物に移植された。実施の形態において、中空繊維は修飾フッ化ポリビニリデンで作られたものであり、より具体的には、前記中空繊維は修飾フッ化ポリビニリデンで作られたものであり、且つカットオフ値が500,000ダルトンである。
【0009】
本発明の別の態様は、本発明の方法によって得られた、抗腫瘍薬のスクリーニングのための動物モデルを提供する。実施の形態において、本発明における動物はマウスまたはラット、具体的には、免疫不全マウス、例えば、ヌードマウスである。
【0010】
本発明の別の態様は本発明の動物モデルに候補薬を投与する工程を含む、本発明の動物モデルを用いた、抗腫瘍薬のスクリーニングの方法を提供する。実施の形態において、上記方法は、本発明の動物モデルにおける腫瘍細胞成長を測定する工程をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】種々の腫瘍試料より得た、増殖コロニー中の条件付き再プログラム化細胞の形態を示す。A:P0、P4およびP6継代後の、肺癌患者の切除検体由来の条件付き再プログラム化初期細胞、B:P3継代後の、肺癌患者の生検試料由来の条件付き再プログラム化細胞、C:P4継代後の、腺様嚢胞癌患者の針生検試料由来の条件付き再プログラム化細胞、D:P12継代後の、悪性腹膜中皮腫患者の針生検試料由来の細胞、E:P7継代後の、神経膠芽腫患者の切除検体由来の細胞、F:P6継代後の、結腸直腸癌患者の生検試料由来の細胞、G:P3継代後の、胆嚢癌患者の切除検体由来の細胞である。
図2】A:MDX079ミニ−PDXモデルにおける試験薬の抗腫瘍効果の結果、B:MDX083ミニ−PDXモデルにおける試験薬の抗腫瘍効果の結果、C:MDX095ミニ−PDXモデルにおける試験薬の抗腫瘍効果の結果、D:MDX107ミニ−PDXモデルにおける試験薬の抗腫瘍効果の結果、E:MDX123ミニ−PDXモデルにおける試験薬の抗腫瘍効果の結果。
図3-1】A:MDX133ミニ−PDXモデルにおける試験薬の抗腫瘍効果の結果、B:MDX154ミニ−PDXモデルにおける試験薬の抗腫瘍効果の結果、C:MDX164ミニ−PDXモデルにおける試験薬の抗腫瘍効果の結果、D:MDX165ミニ−PDXモデルにおける試験薬の抗腫瘍効果の結果、E:MDX168ミニ−PDXモデルにおける試験薬の抗腫瘍効果の結果、F:MDX169ミニ−PDXモデルにおける試験薬の抗腫瘍効果の結果。
図3-2】G:MDX174ミニ−PDXモデルにおける試験薬の抗腫瘍効果の結果、H:MDX186ミニ−PDXモデルにおける試験薬の抗腫瘍効果の結果、I:MDX189ミニ−PDXモデルにおける試験薬の抗腫瘍効果の結果、J:MDX203ミニ−PDXモデルにおける試験薬の抗腫瘍効果の結果。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一態様は、抗腫瘍薬のスクリーニングのための動物モデルを得るための方法であって、患者の腫瘍生検試料から得た原発腫瘍細胞を、下記成分:
a)0.01〜1.0mg/Lのヒドロコルチゾン、
b)1.0〜10.0mg/Lのイヌリン、
c)1.0〜20.0μg/Lのコレラトキシン、
d)2.0〜50.0mg/Lのアデニン、
e)1.0〜30.0μg/LのEGF、
f)1.0〜30.0 μmol/LのY−27632、
g)ペニシリン/ストレプトマイシン、
h)2〜20%のFBS、
i)F12培地、
j)高グルコースDMEM、および任意で
k)非必須アミノ酸溶液、
l)GlutaMAX添加剤
を含む組成物中で培養する工程(1)と、前記工程(1)で得た原発腫瘍細胞を動物に移植する工程(2)とを含む方法を提供する。実施の形態において、腫瘍生検試料は針生検試料である。実施の形態において、針生検で得られた試料中の腫瘍細胞の濃度は約2mol/L未満である。
【0013】
工程(1)の組成物中のヒドロコルチゾンの濃度は、0.01〜1.0mg/L、具体的には約0.05〜1.0mg/L、約0.1〜1.0mg/L、約0.1〜0.9mg/L、約0.2〜0.8mg/L、約0.2〜0.7mg/L、約0.25〜0.65mg/L、約0.25〜0.6mg/L、約0.3〜0.5mg/L、約0.35〜0.55mg/L、約0.35〜0.4mg/L、約0.4〜0.45mg/L、約0.35〜0.45mg/L、約0.45〜0.55mg/L、約0.05mg/L、約0.1mg/L、約0.2mg/L、約0.3mg/L、約0.31mg/L、約0.32mg/L、約0.33mg/L、約0.34mg/L、約0.35mg/L、約0.36mg/L、約0.37mg/L、約0.38mg/L、約0.39mg/L、約0.4mg/L、約0.41mg/L、約0.42mg/L、約0.43mg/L、約0.44mg/L、約0.45mg/L、約0.46mg/L、約0.47mg/L、約0.48mg/L、約0.49mg/L、約0.5mg/L、約0.6mg/L、約0.7mg/L、約0.8mg/L、約0.9mg/L、約1.0mg/Lとなり得る。
【0014】
工程(1)の組成物中のインスリンの濃度は、1.0〜10mg/L、具体的には約1〜10mg/L、約2〜9mg/L、約3〜8mg/L、約3〜7mg/L、約4.5〜6.5mg/L、約4〜6mg/L、約1mg/L、約2mg/L、約3mg/L、約4mg/L、約5mg/L、約6mg/L、約7mg/L、約8mg/L、約9mg/L、約10mg/Lとなり得る。
【0015】
工程(1)の組成物中のコレラトキシンの濃度は、1〜20μg/L、具体的には約2〜20μg/L、約3〜18μg/L、約4〜15μg/L、約5〜10μg/L、約6〜10μg/L、約7〜9μg/L、約7.5〜8.5μg/L、約1μg/L、約2μg/L、約3μg/L、約4μg/L、約5μg/L、約6μg/L、約7μg/L、約8μg/L、約8.1μg/L、約8.2μg/L、約8.3μg/L、約8.4μg/L、約8.5μg/L、約8.6μg/L、約8.7μg/L、約8.8μg/L、約8.9μg/L、約9μg/L、約10μg/L、約11μg/L、約12μg/L、約13μg/L、約14μg/L、約15μg/L、約16μg/L、約17μg/L、約18μg/L、約19μg/L、約20μg/Lとなり得る。
【0016】
工程(1)の組成物中のアデニンの濃度は、2〜50mg/L、具体的には約5〜40mg/L、約10〜30mg/L、約15〜30mg/L、約20〜30mg/L、約22〜27mg/L、約23〜26mg/L、約24〜25mg/L、約2mg/L、約6mg/L、約8mg/L、約10mg/L、約12mg/L、約14mg/L、約16mg/L、約18mg/L、約20mg/L、約21mg/L、約22mg/L、約23mg/L、約24mg/L、約24.1mg/L、約24.2mg/L、約24.3mg/L、約24.4mg/L、約24.5mg/L、約24.6mg/L、約24.7mg/L、約24.8mg/L、約24.9mg/L、約25mg/L、約26mg/L、約27mg/L、約28mg/L、約29mg/L、約30mg/L、約35mg/L、約40mg/Lとなり得る。
【0017】
工程(1)の組成物中のEGFの濃度は、1〜30μg/L、具体的には約2〜20μg/L、約4〜18μg/L、約6〜16μg/L、約8〜12μg/L、約9〜11μg/L、約9.5〜10.5μg/L、約2μg/L、約4μg/L、約6μg/L、約7μg/L、約8μg/L、約9μg/L、約10μg/L、約11μg/L、約12μg/L、約14μg/L、約16μg/L、約18μg/L、約20μg/L、約25μg/L、約30μg/Lとなり得る。
【0018】
工程(1)の組成物中のY〜27632濃度は、1〜30μmol/L、具体的には、約2〜20μmol/L、約4〜18μmol/L、約6〜16μmol/L、約8〜12μmol/L、約9〜11μmol/L、約9.5〜10.5μmol/L、約2μmol/L、約4μmol/L、約6μmol/L、約7μmol/L、約8μmol/L、約9μmol/L、約10μmol/L、約11μmol/L、約12μmol/L、約14μmol/L、約16μmol/L、約18μmol/L、約20μmol/L、約25μmol/L、約30μmol/Lとなり得る。
【0019】
工程(1)の組成物中のFBSの濃度は、2〜20%、具体的には約4〜15%、約5〜18%、約6〜16%、約7〜14%、約8〜12%、約9〜11%、約9.5〜10.5%、約2%、約4%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約14%、約16%、約18%、約20%となり得る。
【0020】
実施の形態において、本発明は、抗腫瘍薬のスクリーニングのための動物モデルを得るための方法であって、患者の腫瘍生検試料から得た原発腫瘍細胞を、下記成分:
a)0.3〜0.5mg/L、好ましくは0.4mg/Lのヒドロコルチゾン、
b)4〜6mg/L、好ましくは5mg/Lのイヌリン、
c)7〜9μg/L、好ましくは8.3μg/Lのコレラトキシン、
d)20〜30mg/L、好ましくは24.2mg/Lのアデニン、
e)8〜12μg/L、好ましくは10μg/LのEGF、
f)8〜12μmol/L、好ましくは10 μmol/LのY−27632、
g)ペニシリン/ストレプトマイシン、
h)8〜12%、好ましくは10%のFBS、
i)F12培地、
j)高グルコースDMEM、および任意で
k)非必須アミノ酸溶液、
l)GlutaMAX添加剤.
を含む組成物中で培養する工程(1)と、前記工程(1)で得た原発腫瘍細胞を動物に移植する工程(2)とを含む方法を提供する。実施の形態において、腫瘍生検試料は針生検試料である。実施の形態において、針生検で得られた試料中の腫瘍細胞の濃度は約2mol/L未満、約1.9mol/L未満、約1.8mol/L未満、約1.7mol/L未満、約1.6mol/L未満、約1.5mol/L未満、約1.4mol/L未満、約1.3mol/L未満、約1.2mol/L未満、約1.1mol/L未満、約1.0mol/L未満、約0.9mol/L未満、約0.8mol/L未満、約0,7mol/L未満、約0.6mol/L未満、約0.5mol/L未満、約0.4mol/L未満、約0.3mol/L未満、約0.2mol/L未満、約0.1mol/L以下、例えば、約2mol/L未満、約1.7mol/L未満、約0.8mol/L未満、約0.64mol/L未満、約0.59mol/L未満である。実施の形態において、原発腫瘍細胞は、工程(1)の組成物中でフィーダー細胞と共に培養され、具体的にはフィーダー細胞はマウス胎児繊維芽(MEF)細胞である。実施の形態において、MEF細胞はマイトマイシンCで処理されたものである。
【0021】
実施の形態において、本発明の方法における動物は、マウスまたはラット、具体的にはヌードマウスなどの免疫不全マウスである。実施の形態において、中空繊維内の、工程(1)で得られた原発腫瘍細胞が動物に移植される。実施の形態において、中空繊維は修飾フッ化ポリビニリデンで作られたものであり、より具体的には、前記中空繊維は修飾フッ化ポリビニリデンで作られたものであり、且つカットオフ値が500,000ダルトンである。
【0022】
本発明の別の態様は、本発明の方法で得られた、抗腫瘍薬のスクリーニングのための動物モデルを提供する。実施の形態において、本発明の動物は、マウスまたはラット、具体的にはヌードマウスなどの免疫不全マウスである。
【0023】
本発明の別の態様は、本発明の動物を用いた、抗腫瘍薬のスクリーニングの方法であって、本発明の動物モデルに候補薬を投与する工程を含む方法を提供する。実施の形態において、上記方法は、本発明の動物モデルにおける腫瘍細胞成長を測定する工程をさらに含む。
【0024】
腫瘍細胞は、いろいろな種類の腫瘍から得ることができ、消化管(例えば、胃、腸、十二指腸、直腸、膵臓など)、乳房、肺、肝臓、および内分泌腺(例えば、副腎、副甲状腺、脳下垂体、精巣、卵巣、および胸腺、甲状腺)、泌尿器系および生殖系(例えば、腎臓、膀胱、卵巣、精巣、前立腺など)、骨格筋系(例えば、骨、平滑筋、横紋筋など)、皮膚等の腫瘍が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、腫瘍細胞は胃癌、十二指腸癌の生検試料および肺癌から誘導することができる。
【0025】
条件付き再プログラム化原発腫瘍細胞は、注射、あるいは当業界で知られる他の方法または装置を用いて動物に移植することができる。実施の形態において、条件付き再プログラム化原発腫瘍細胞は、in vivoの腫瘍成長のためのPDXモデルの製造方法によって動物に移植される。例えば、以下を参照:“Melanoma patient〜derived xenografts accurately model the disease and develop fast enough to guide treatment decisions”,Oncotarget, Vol. 5, No. 20, Berglind O. Einarsdottir et.al.,2014年9月8日発行; “Personalizing Cancer Treatment in the Age of Global Genomic Analyses: PALB2 Gene Mutations and the Response to DNA Damaging Agents in Pancreatic Cancer”, Molecular Cancer Therapies,2010年12月6日発行、DOI: 10.1158/1535〜7163.MCT〜10〜0893, Maria C. Villarroel。実施の形態において、条件付き再プログラム化原発腫瘍細胞を中空糸管に移動し、次にそれを動物に移植した。中空繊維は修飾フッ化ポリビニリデンで作られたものであって、カットオフ値が500,000ダルトンのものでよい、本発明においては、ミニ−PDXデバイス(mini-PDX device)とは、修飾フッ化ポリビニリデンで作られた中空繊維であって、そのカットオフ値が500,000ダルトンのものを意味し、患者から得られた原発腫瘍細胞を含有してもよく、候補動物に移植することのできるもの、例えば、候補動物に皮下移植することのできるものである。本発明において、ミニ−PDXモデルは、本発明のミニ−PDXモデルを移植された動物を意味する。ミニ−PDX動物モデルは、本発明に記載した方法/試験に使用することができる。
【0026】
本発明の別の態様は、本発明の動物を用いた抗腫瘍薬のスクリーニングの方法であって、本発明の動物モデルに候補薬を投与する工程を含む方法を提供する。いくつかの態様において、本発明の動物モデルが保有する腫瘍細胞の成長を投与の前と後に測定する工程をさらに含む。いくつかの態様において、腫瘍のサイズは本発明の動物モデルに薬剤を投与する前および5〜14日後、具体的には5〜7日後に測定する。いくつかの態様において、腫瘍細胞のアポトーシスを、本発明の動物モデルに薬剤を投与する前および5〜14日後、具体的には5〜7日後に測定する。いくつかの態様において、腫瘍細胞の分化を、本発明の動物モデルに薬剤を投与する前および5〜14日後、具体的には5〜7日後に測定する。当業者は、本発明の動物モデルが保有する腫瘍細胞の成長を投与の前と後に測定するための適切な方法を選択することができる。
【0027】
薬剤の投与は、いかなる適切な経路、経口または非経口、で実施してもよい。例えば。候補薬を本発明の動物モデルに経口投与または筋肉注射(例えば、筋肉内、皮下または静脈内への注入)、局所投与、吸入、および皮膚パッチ等の経皮送達、移植、座薬で与えることができる。当業者は需要に応じて適切な投与経路を選択する。
【0028】
本発明においてスクリーニングする候補薬は、公知の抗腫瘍薬やそれらの組み合わせ、新規な抗腫瘍薬やそれらの組み合わせ、または公知の抗腫瘍薬の新規の組み合わせでもよい。本発明の方法においてスクリーニングする薬剤は、固体状、半固体状または液状でもよい。
【0029】
候補動物への薬剤の投与は、経口投与あるいは筋肉注射(例えば、筋肉内、皮下または静脈内の点滴によって)、局所投与、吸入、ならびに皮膚パッチなどの経皮送達、移植、坐剤、などで行うことができる。当分野の技術者は、その需要に応じて、適切な経路を選択する。
【実施例】
【0030】
添付の図面に参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【0031】
条件付き再プログラミング培地
培地は、以下の原料を含む。
・ 375mLのF12培地(市販品)、125mLの高グルコースDMEM(市販品)、25mLの10%FBS(市販品)、5mLのヒドロコルチゾン、5mLのインスリン、5mLのコレラトキシン、5mLのアデニン、5mLのペニシリン/ストレプトマイシン(市販品)、5mLのEGF、1mLのY〜27632。
・ 任意の原料:非必須アミノ酸溶液(市販品)、およびGlutaMAX添加剤(市販品)。
【0032】
準備:
以下の原料を調製した。
・ ヒドロコルチゾン:25mgの市販のヒドロコルチゾンを5mLの冷たい100%エタノールに溶解して、5mg/mL溶液を作る。0.8mLの当該5mg/mL溶液を100mLの、5%ウシ胎仔血清(FBS)を含むHBESに加える。ろ過滅菌し、10mL等量を−20℃で保存する。ヒドロコルチゾンの最終濃度は0.4mg/Lである。
・ コレラトキシン:1.2mLの滅菌水を1mgのコレラトキシン(市販品)を含むバイアルに添加して、10μM溶液を得る。50μLの当該10μM溶液を50mLの、0.1%ウシ胎仔血清(FBS)を含むHBESで希釈する。ろ過滅菌し、10mL等量を4℃で保存する。コレラトキシンの最終濃度は8.3μg/Lである。
・ インスリン:12.5mgの市販のインスリンを25mLの0.005MのHCLに溶解する。FBSで予め湿らせたシリンジフィルターでろ過滅菌する。インスリンの最終濃度は5mg/Lである。
・ アデニン:121mgの市販のアデニンを50mLの0.05MのHClに加えて1時間撹拌して溶解する。ろ過滅菌し、10mL等量を−20℃で保存する。アデニンの最終濃度は24.2mg/Lである。
・ 上皮成長因子(EGF):100μgの市販のEGFを10mLの滅菌水に溶解する。90mLの、0.1%ウシ血清アルブミンを含むHBESを添加する。ろ過滅菌し、10mL等量を−20℃で保存する。EGFの最終濃度は10μg/Lである。
・ Y−27632:DMSO中で10μmol。市販品。
培地は使用のために冷たい場所に適宜保管した。
【0033】
フィーダー細胞の調製:
MEF(マウス胎児繊維芽)細胞を、C57マウスのe13.5胚から単離し、10%FBS添加DMEMで増殖させた。3〜5継代後の単離MEF細胞をマイトマイシンC(10μg/ml)で2時間処理し、PBSで洗浄した。処理後のMEFを回収し、フィーダー細胞として凍結保存した。
【0034】
実施例1
1. 材料
1.1 条件付き再プログラミングのための腫瘍
MDX079、MDX083、MDX095、MDX107、MDX123の条件付き再プログラミング細胞はそれぞれ個別に回収した。MDX079は女性肺癌患者由来であり、MDX083モデルは27歳男性腺様嚢胞癌患者由来であり、MDX095モデルは54歳男性悪性腹膜中皮腫患者由来であり、MDX107モデルは54歳男性神経膠芽腫患者由来であり、MDX123モデルは53歳男性結腸直腸癌患者由来であった。
【0035】
1.2 動物
1.2.1 Balb/cヌードマウス、雌、上海ラボラトリー動物センター(Shanghai Laboratory Animal Center)(中国、上海、Lingchang、SCXK(SH)2013〜0018)
週齢:6〜8週
性別:雌
体重:18〜22g
【0036】
1.2.2 飼育条件
マウスは、定温、定湿のSPF室内で、各ケージに3匹を飼育した。
温度:20〜26℃
湿度:40〜70%
明暗サイクル:明環境を12時間、暗環境を12時間
【0037】
ケージ:ポリカーボネート製。サイズは325mm×210mm×180mm。床敷材はトウモロコシの穂軸であり、週2回交換した。
飼料:研究期間全体を通じて、動物は照射滅菌済みの乾燥粒状飼料を自由に食べることができた。
【0038】
水:動物は、滅菌済飲料水自由に飲むことができた。
【0039】
ケージの識別:各ケージの識別ラベルは以下の情報を含んでいた:動物の数、性別、種、受取日、処置、研究番号、群番号、および処置開始日。
【0040】
動物の識別:動物は耳へのコード付けによって印を付けた。
【0041】
1.3 装置
逆相顕微鏡DMIL、LEICA社製。バランスALC−310.3、Acclulab社製。マイクロバランスBSA224S、Sartorius社製。遠心分離機5810R、Eppendorf社製。
【0042】
ミニ−PDXデバイス:修飾フッ化ポリビニリデン製で、カットオフ値が500,000ダルトン、内径1〜2mmの中空繊維。所望の長さに切断。
【0043】
2. 手順と方法
2.1 細胞培養
腫瘍組織試料を緩衝溶液で洗浄し、バイオセーフティキャビネット内ですべての非腫瘍組織および壊死した腫瘍組織を除去する。腫瘍を1〜3mmの断片に切断し、ペレットを1×コラーゲナーゼ溶液に懸濁し、37℃で1〜2時間インキュベートする。単一細胞を70uMのストレイナーによって回収し、腫瘍細胞濃度を求めるために細胞数を計数する(切除および生検/針生検腫瘍試料より得た試料の腫瘍細胞数の計数を参照)。細胞を条件付き再プログラミング培地で培養し、腫瘍細胞の増殖後に条件付き再プログラミング細胞を回収する。
【0044】
生検/針生検で得た腫瘍組織を1×コラーゲナーゼ溶液に懸濁し、37℃で1〜2時間インキュベートする。単一細胞を70uMのストレイナーによって回収し、腫瘍細胞濃度を求めるために細胞数を計数する(「9.切除および生検/針生検腫瘍試料より得た試料の腫瘍細胞数の計数」を参照)。細胞を条件付き再プログラミング培地で培養し、腫瘍細胞の増殖後に条件付き再プログラミング細胞を回収する。
【0045】
2.2 ミニ−PDXデバイスの接種
細胞懸濁液でミニ−PDXデバイスを満たし、デバイスをNu/Nu−ヌードマウスの両側面に皮下接種してミニ−PDXモデルを確立した。接種日を0日とした。体重に基づきマウスをランダムに群に分け、0日に処置を開始した。各研究群における試験品の投与およびミニ−PDXデバイス番号を下記実験計画表に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
【表5】
【0051】
2.3 観察
本研究におけるプロトコルおよびその変更点または動物の飼育と使用に関わる手順は、実施の前に上海LIDEの学内動物飼育および使用検討会(Institutional Animal Care and Use Committee、IACUC)の承認を得た。研究の際には、動物の飼育および使用を実験動物ケア評価認証協会(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care、AAALAC)の規定に沿って実施した。接種後、動物の罹患率および死亡率について毎日チェックした。日々のモニタリングの時に、正常な行動、例えば、運動性、飼料および水の消費、体重の増減(体重は週2回または1日おきに測定)、目/毛の乾燥に対する腫瘍成長および処置の影響、及びその他の異常な影響についてくまなくチェックした。各副群内の動物数に基づき、死亡および観察された臨床所見を記録した。
【0052】
2.4 エンドポイント
2.4.1 体重を毎日測定し、本研究の処置期間は7日とし、最終日には全マウスを賭殺し、CTG(細胞生存率)アッセイのためにミニ−PDXデバイスを取り出した。相対腫瘍増殖速度(%)は抗腫瘍活性の指標である。
【0053】
2.4.2 VCd7〜Vd0>0のとき、相対腫瘍増殖速度(%)=(VTd7〜Vd0)/(VCd7〜Vd0)×100%であり、VCd7〜Vd0<0のとき、相対腫瘍増殖速度(%)=VTd7/VCd7×100%(VTd7:処置群の7日目の細胞生存率、VCd7:対照群の7日目の細胞生存率、Vd0:0日目の細胞生存率)である。
【0054】
3. 結果(図2参照)
【0055】
4. まとめと考察
MDX079ミニ−PDXモデルにおいて、ドセタキセルおよびカルボプラチンの組み合わせ処置(T/C%=−21%)は、腫瘍細胞生存率の有意な低下をもたらし得るものであり、ゲムシタビンおよびカルボプラチンの組み合わせ処置(T/C%=55%)も抗腫瘍活性を示し、ペメトレキセドおよびカルボプラチンの組み合わせ処置(T/C%=103%)処置、ペメトレキセド、カルボプラチンおよびベバズリマブの組み合わせ処置(T/C%=119%)、エトポシドおよびカルボプラチンの組み合わせ処置(T/C%=114%)は、抗腫瘍活性を示さなかった。
【0056】
MDX083ミニ−PDXモデルにおいて、パクリタキセルおよびシスプラチンの組み合わせ処置(T/C%=44%)、ゲムシタビンおよびシスプラチンの組み合わせ処置(T/C%=41%)、ドセタキセルおよびカルボプラチンの組み合わせ処置(T/C%=50%)、5−Fuおよびシスプラチンの組み合わせ処置(T/C%=45%)、エピルビシン、5−Fuおよびシスプラチンmp組み合わせ処置(T/C%=45%)を含む全ての処置群が腫瘍細胞生存率の低下をもたらし得るものである。
【0057】
MDX095ミニ−PDXモデルにおいて、5−Fu処置(T/C%=80%)、パクリタキセル処置(T/C%=79%)が、腫瘍細胞生存率の低下をもたらし、ゲムシタビンおよびシスプラチンの組み合わせ処置(T/C%=119%)は抗腫瘍活性を示さず、シスプラチン処置(T/C%=128%)、エピルビシン処置(T/C%=120%)、エトポシド処置(T/C%=109%)は抗腫瘍活性を示さなかった。
【0058】
MDX107ミニ−PDXモデルにおいて、テモゾロミド処置は抗腫瘍活性を示さなかった。In MDX123ミニ−PDXモデルにおいて、5−Fu処置(T/C%=75%)、オキサリプラチン処置(T/C%=61%)、イリノテカン処置(T/C%=68%)、ベバズリマブ処置(T/C%=76%)は、腫瘍細胞生存率の低下をもたらし得るものであり、ラルチトレキセド処置(T/C%=92%)、ベバズリマブ処置(T/C%=101%)は抗腫瘍活性を示さなかった。
【0059】
実施例2
5. 材料
5.1 条件付き再プログラミングのための腫瘍
MDX133、MDX154、MDX164、MDX165、MDX168、MDX169、MDX174、MDX186、MDX189、MDX203 の条件付き再プログラミング細胞はそれぞれ個別に回収した。MDX133は45歳男性胃癌患者由来であり、MDX154モデルは女性胆嚢癌患者由来であり、MDX164モデルは43歳男性神経膠芽腫患者由来であり、MDX165モデルは64歳男性神経膠芽腫患者由来であり、MDX168モデルは66歳女性胆嚢癌患者由来であり、MDX169モデルは52歳男性肺癌患者由来であり、MDX174モデルは59歳男性肺癌患者由来であり、MDX186モデルは54歳女性膵臓癌患者由来であり、MDX189モデルは44歳男性食道癌患者由来であり、MDX203モデルは61歳男性胆嚢癌患者由来であった。
【0060】
5.2 動物
5.2.1 Balb/cヌードマウス、雌、上海ラボラトリー動物センター(中国、上海、Lingchang、上海、中国、SCXK(SH)2013〜0018)
週齢: 6〜8週
性別: 雌
体重: 18〜22g
【0061】
5.2.2 飼育条件
マウスは、定温、定湿のSPF室内で、各ケージに3匹を飼育した。
温度: 20〜26℃
湿度: 40〜70%
明暗サイクル: 明環境を12時間、暗環境を12時間
【0062】
ケージ: ポリカーボネート製。サイズは325mm×210mm×180mm。床敷材はトウモロコシの穂軸であり、週2回交換した。
飼料: 研究期間全体を通じて、動物は照射滅菌済みの乾燥粒状飼料を自由に食べることができた。
水: 動物は、滅菌済飲料水自由に飲むことができた。
ケージの識別: 各ケージの識別ラベルは以下の情報を含んでいた:動物の数、性別、種、受取日、処置、研究番号、群番号、および処置開始日。
動物の識別: 動物は耳へのコード付けによって印を付けた。
【0063】
5.3 装置
逆相顕微鏡DMIL、LEICA社製。バランスALC−310.3、Acclulab社製。マイクロバランスBSA224S、Sartorius社製。遠心分離機5810R、Eppendorf社製。
【0064】
ミニ−PDXデバイス:修飾フッ化ポリビニリデン製で、カットオフ値が500,000ダルトン、内径1〜2mmの中空繊維。所望の長さに切断。
【0065】
6. 手順と方法
6.1 細胞培養
腫瘍組織試料を緩衝溶液で洗浄し、バイオセーフティキャビネット内ですべての非腫瘍組織および壊死した腫瘍組織を除去する。腫瘍を1〜3mmの断片に切断し、ペレットを1×コラーゲナーゼ溶液に懸濁し、37℃で1〜2時間インキュベートする。単一細胞を70uMのストレイナーによって回収し、腫瘍細胞濃度を求めるために細胞数を計数する (切除および生検/針生検腫瘍試料より得た試料の腫瘍細胞数の計数を参照)。細胞を条件付き再プログラミング培地で培養し、腫瘍細胞の増殖後に条件付き再プログラミング細胞を回収する。
【0066】
生検/針生検で得た腫瘍組織を1×コラーゲナーゼ溶液に懸濁し、37℃で1〜2時間インキュベートする。単一細胞を70uMのストレイナーによって回収し、腫瘍細胞濃度を求めるために細胞数を計数する(切除および生検/針生検腫瘍試料より得た試料の腫瘍細胞数の計数を参照)。細胞を条件付き再プログラミング培地で培養し、腫瘍細胞の増殖後に条件付き再プログラミング細胞を回収する。
【0067】
6.2 ミニ−PDXデバイスの接種
細胞懸濁液でミニ−PDXデバイスを満たし、デバイスをNu/Nuーヌードマウスの両側面に皮下接種してミニ−PDXモデルを確立した。接種日を0日とした。体重に基づきマウスをランダムに群に分け、0日に処置を開始した。各研究群における試験品の投与およびミニ−PDXデバイス番号を下記実験計画表に示した。
【0068】
【表6】
【0069】
【表7】
【0070】
【表8】
【0071】
【表9】
【0072】
【表10】
【0073】
【表11】
【0074】
【表12】
【0075】
【表13】
【0076】
【表14】
【0077】
【表15】
【0078】
6.3 観察
本研究におけるプロトコルおよびその変更点または動物の飼育と使用に関わる手順は、実施の前に上海LIDEの学内動物飼育および使用検討会(IACUC)の承認を得た。研究の際には、動物の飼育および使用を実験動物ケア評価認証協会(AAALAC)の規定に沿って実施した。接種後、動物の罹患率および死亡率について毎日チェックした。日々のモニタリングの時に、正常な行動、例えば、運動性、飼料および水の消費、体重の増減(体重は週2回または1日おきに測定)、目/毛の乾燥に対する腫瘍成長および処置の影響、及びその他の異常な影響についてくまなくチェックした。各副群内の動物数に基づき、死亡および観察された臨床所見を記録した。
【0079】
6.4 エンドポイント
6.4.1 体重を毎日測定し、本研究の処置期間は7日とし、最終日には全マウスを賭殺し、CTG(細胞生存率)アッセイのためにミニ−PDXデバイスを取り出した。相対腫瘍増殖速度(%)は抗腫瘍活性の指標である。
【0080】
6.4.2 VCd7〜Vd0>0のとき、相対腫瘍増殖速度(%)=(VTd7〜Vd0)/(VCd7〜Vd0)×100%であり、VCd7〜Vd0<0のとき、相対腫瘍増殖速度(%)=VTd7/VCd7×100%(VTd7:処置群の7日目の細胞生存率、VCd7:対照群の7日目の細胞生存率、Vd0:0日目の細胞生存率)である。
【0081】
7. 結果(図3参照)
【0082】
8.まとめと考察
MDX133ミニ−PDXモデルにおいては、パクリタキセル処置(T/C%=52%)は、腫瘍細胞生存率の低下をもたらし得るものであり、イリノテカン処置(T/C%=72%)、S−1処置(T/C%=86%)、オキサリプラチン処置(T/C%=89%)も少量の抗腫瘍活性を示し、5−Fu処置(T/C%=103%)は抗腫瘍活性を示さなかった。
【0083】
MDX154ミニ−PDXモデルにおいて、ゲムシタビン処置(T/C%=100%)、オキサリプラチン処置(T/C%=174%)、5−Fu処置(T/C%=111%)、Nab−パクリタキセル処置(T/C%=162%)、イリノテカン処置(T/C%=227%)を含む全ての処置群が抗腫瘍活性を示さなかった。
MDX164ミニ−PDXモデルにおいて、テモゾロミド処置(T/C%=102%)は抗腫瘍活性を示さなかった。
【0084】
MDX165ミニ−PDXモデルにおいて、テモゾロミド処置(T/C%=29%)は、腫瘍細胞生存率の低下をもたらし得るものであった。
【0085】
MDX168ミニ−PDXモデルにおいて、Nab−パクリタキセル処置(T/C%=15%)、イリノテカン処置(T/C%=12%)は、腫瘍細胞生存率の低下をもたらし得るものであり、ゲムシタビン処置(T/C%=53%)、オキサリプラチン処置(T/C%=75%)も少量の抗腫瘍活性を示し、5−Fu処置(T/C%=146%)は抗腫瘍活性を示さなかった。
【0086】
MDX169ミニ−PDXモデルにおいて、ドセタキセルおよびカルボプラチンの組み合わせ処置(T/C%=20%)、パクリタキセルおよびカルボプラチンの組み合わせ処置(T/C%=40%)は、腫瘍細胞生存率の低下をもたらし得るものであり、ペメトレキセドおよびカルボプラチンの組み合わせ処置(T/C%=55%)、ゲムシタビンおよびカルボプラチンの組み合わせ処置(T/C%=82%)、ビノレルビンおよびカルボプラチンの組み合わせ処置(T/C%=91%)も少量の抗腫瘍活性を示した。
【0087】
MDX174ミニ−PDXモデルにおいて、ゲムシタビンおよびカルボプラチンの組み合わせ処置(T/C%=86%)は少量の抗腫瘍活性を示し、ペメトレキセドおよびカルボプラチンの組み合わせ処置(T/C%=104%)、パクリタキセルおよびカルボプラチンの組み合わせ処置(T/C%=120%)、ドセタキセルおよびカルボプラチンの組み合わせ処置(T/C%=110%)、ビノレルビンおよびカルボプラチンの組み合わせ処置(T/C%=134%)は抗腫瘍活性を示さなかった。
【0088】
MDX186ミニ−PDXモデルにおいて、Nab−パクリタキセル処置(T/C%=0%)、イリノテカン処置(T/C%=5%)は、腫瘍細胞生存率の有意な低下をもたらし得るものであり、オキサリプラチン処置(T/C%=47%)は抗腫瘍活性を示し、ゲムシタビン処置(T/C%=83%)、5−Fu処置(T/C%=90%)も少量の抗腫瘍活性を示した。
【0089】
MDX189ミニ−PDXモデルにおいては、S−1およびオキサリプラチンの組み合わせ処置(T/C%=〜2%)、ドセタキセル、シスプラチンおよび5−Fuの組み合わせ処置(T/C%=14%)、5−Fuおよびシスプラチンの組み合わせ処置(T/C%=19%)は、腫瘍細胞生存率の有意な低下をもたらし得るものであった。
【0090】
MDX203ミニ−PDXモデルにおいては、オキサリプラチン処置(T/C%=43%)、イリノテカン処置(T/C%=48%)、Nab−パクリタキセル処置(T/C%=52%)は、腫瘍細胞生存率の低下をもたらし得るものであり、ゲムシタビン処置(T/C%=77%)、5−Fu処置(T/C%=83%)も少量の抗腫瘍活性を示した。
【0091】
9. 切除および生検/針生検腫瘍試料より得た試料の腫瘍細胞数の計数
公知の方法によって腫瘍細胞数を計数し、懸濁液中の腫瘍細胞濃度に変換した。M:mol/L。
【0092】
【表16】
図1
図2
図3-1】
図3-2】
【国際調査報告】