特表2021-520941(P2021-520941A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-520941火災抑制泡沫を形成する組成物、前駆体、それらの使用およびそれらを製造する方法
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  • 特表2021520941-火災抑制泡沫を形成する組成物、前駆体、それらの使用およびそれらを製造する方法 図000017
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-520941(P2021-520941A)
(43)【公表日】2021年8月26日
(54)【発明の名称】火災抑制泡沫を形成する組成物、前駆体、それらの使用およびそれらを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A62D 1/04 20060101AFI20210730BHJP
【FI】
   A62D1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2020-556948(P2020-556948)
(86)(22)【出願日】2019年4月17日
(85)【翻訳文提出日】2020年10月15日
(86)【国際出願番号】EP2019060016
(87)【国際公開番号】WO2019202045
(87)【国際公開日】20191024
(31)【優先権主張番号】18305472.5
(32)【優先日】2018年4月17日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】319006807
【氏名又は名称】イメルテック ソシエテ パル アクシオン サンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】グリーンヒル−フーパー ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ボラス アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】コラール ジル
【テーマコード(参考)】
2E191
【Fターム(参考)】
2E191AA03
2E191AB01
2E191AB12
2E191AB51
(57)【要約】
本発明は、界面活性剤および/またはパーライト、ハイドロトロープ、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、ドロマイト、マイカおよびベントナイト、ならびにその組み合わせからなる群から選択される粒状無機材料、ならびに任意に1種または複数の添加剤を含む、火災を抑制するための水性組成物に関する。本発明は、さらに、そのような粒状無機材料の使用、ならびに乾燥前駆体組成物、火災抑制組成物、およびそれらを製造する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災を抑制するための水性組成物であって、
界面活性剤および/またはハイドロトロープ;及び
パーライト、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、ドロマイト、マイカおよびベントナイト、およびその組み合わせから選択される粒状無機材料、を含み、
任意に1種または複数の添加剤を含んでいてもよい、前記水性組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤が、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤の群から選択される、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤が、例えばテトラデシルトリメチルアンモニウムブロミドもしくはジココジメチルアンモニウムクロリドなどのアルキルトリメチルアンモニウムハライド、または二水素化タロウイルエチルヒドロキシエチルアンモニウムメトサルフェート、またはポリマー状第四級アンモニウムエステルなどのカチオン界面活性剤である、請求項2に記載の水性組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤が、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのアルキルエーテル硫酸塩、およびラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩から選択されるアニオン界面活性剤である、請求項2に記載の水性組成物。
【請求項5】
前記無機粒状材料が、タルク、炭酸カルシウム、マイカおよびカオリンからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項6】
前記無機粒状材料が、例えば、微晶質のタルク、大結晶質のタルクまたはその混合物などのタルクである、請求項5に記載の水性組成物。
【請求項7】
前記無機粒状材料が合成タルクである、請求項5または請求項6に記載の水性組成物。
【請求項8】
前記タルクが、d5010μm以下、例えばd505μm以下、例えばd500.01〜3.0μmの範囲、例えばd50約0.01μm、d50約1.0μmまたはd50約2.0μmの微晶質のタルクである、請求項5または6に記載の水性組成物。
【請求項9】
界面活性剤と水との比が0.01〜5質量%の範囲にある、請求項1〜8のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項10】
前記組成物中の粒状無機粉体の含有率が、前記組成物の全質量を基準にして0.1〜60質量%である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項11】
粒状無機粉体と界面活性剤との質量比が500:1〜1:1の範囲である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項12】
界面活性剤および/またはハイドロトロープ;ならびにパーライト、タルク、炭酸カルシウム、ドロマイト、マイカおよびベントナイト、およびその組み合わせからなる群から選択される粒状無機材料を含み、任意に1種または複数の添加剤を含んでいてもよい、請求項1〜11のいずれか1項に記載の前記水性組成物の乾燥前駆体。
【請求項13】
粒状無機粉体と界面活性剤との質量比が500:1〜1:1の範囲にある、請求項12に記載の乾燥前駆体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の水性組成物または乾燥前駆体を含む消火泡沫。
【請求項15】
水および界面活性剤および/またはハイドロトロープの混合物を用意するステップ;及び
パーライト、タルク、炭酸カルシウム、ドロマイト、マイカおよびベントナイト、及びその組み合わせからなる群から選択される粒状無機材料を用意するステップを含み、
1種または複数の添加剤を用意するステップを含んでもよく、
水および界面活性剤および/またはハイドロトロープの前記混合物と、前記粒状無機材料と、含んでもよい前記1種または複数の添加剤とを混合するステップ;及び
得られた混合物を泡立たせるステップを含む、
請求項14に記載の消火泡沫を製造する方法。
【請求項16】
請求項12または13に記載の乾燥前駆体を用意するステップ;及び
水を用意するステップを含み、
1種または複数の添加剤を用意するするステップを含んでもよく、
前記乾燥前駆体と、前記水と、含んでもよい前記1種または複数の添加剤とを混合するステップ;及び
得られた混合物を泡立たせるステップを含む、
請求項14に記載の消火泡沫を製造する方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に定義される粒状無機鉱物の、または請求項1〜11のいずれか1項に記載の水性組成物の、または請求項12または13のいずれか1項に記載の乾燥前駆体の、消火泡沫の調製における使用。
【請求項18】
前記粒状無機鉱物が、パーライト、タルク、炭酸カルシウム、ドロマイト、マイカ、およびベントナイト、およびその組み合わせから選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に定義される粒状無機鉱物の、または請求項1〜11のいずれか1項に記載の水性組成物の、または請求項12または13のいずれか1項に記載の乾燥前駆体の、または請求項14に記載の前記消火泡沫の使用を含む、火災、例えばクラスB火災を消す方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火組成物として適切な泡沫を形成するための水性かつ乾性の組成物、および消火泡沫に関する。本発明は、さらに、泡沫の形成における粒状無機材料の使用、泡沫安定性を改善する方法、および泡沫の消火性を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水性の泡沫は、いわゆるクラスB(液体燃料)火災に取り組むために使用される。泡沫は、特に外的環境において大規模火災および火災リスクに対処する場合に使用される。使用の例は、航空機や船舶の、空港などの民間航空設備、および大量の潜在的に可燃性の液体が使用または貯蔵された、石油精錬所、オイルおよびガス装備およびプラットフォームなどの産業施設での火災の抑制および阻止のためである。キャニスターに適用される他の消火媒体は、より一般には、より小規模なクラスB火災のリスクに対して使用される。
最先端技術によれば、この用途について好ましいタイプの泡沫は、性能を基準にして、いわゆる水性フィルム形成泡沫(AFFF)である。泡沫の最大の使用者は、しばしば液体燃料(オイル)に広がる独特の能力に依存するこの種の泡沫の使用のみを指定する。この性質は、溶液の非常に低い水系表面張力に関連づけられる。一旦、泡沫が燃料をおおって全面被覆すれば、それは、泡沫を不安定にする燃料の傾向に抵抗しなければならず、また、それは、燃料からの可燃性蒸気が、泡沫層と交差し、その上の空気と接触し、その結果、発火するのを阻止しなければならない。最先端技術において、このフィルム形成効果は、例えば米国特許第4,424,133号において示されているようにフルオロカーボン(FC)界面活性剤によって与えられる。
しかしながら、近年、FC界面活性剤は、環境に残存する傾向があり、水生生物に対して有毒になり得るので監視の下に置かれるようになった。C8鎖長FC界面活性剤は特に有害で、今や、関係当局によって禁止されるか、または自らに課した産業界禁止則に従う。C8からC6への鎖長の短縮によって、それらはそれほど有害でなくなるが、しかし、懸念はなおあり、おそらく、本用途でのすべてのFC界面活性剤の使用はいずれ禁止されよう。
【0003】
このことを認識して、消防泡沫生産者は、代替の非FC界面活性剤ベースの配合を探している。幾つかは既に存在し、使用されているが、どれもAFFFのフィルム形成能はない。求められており、現実的に新しく開発された配合と期待することができる1つの改善は、より長い泡沫寿命、すなわち、改善された泡沫安定性である。例えば国際公開第2012/123778号において開示されているような開発されている非FCベースの配合において、新規の界面活性剤およびポリマー(ゴム)の使用によって泡沫安定性を改善する試みがなされている。しかしながら、問題が、そのようなゴムがしばしば粘度を上げる作用をするということ、および、混合物成分が分離する傾向があるので、貯蔵寿命時間にまつわる問題に結びつくことである。組成物が使いやすく信頼できることが必須であっても、使用の前に組成物を希釈および/または泡立たせる際、成分の高粘度および分離は問題を引き起こす。
【0004】
例えば、米国特許第2016/0023032号は、高分子量水溶性陰イオンアクリルポリマー、多糖ゴムおよび界面活性剤の組み合わせを含み、同時に、許容される粘度および貯蔵安定性を有しつつ満足な消火性を達成し得る鎮火組成物(fire fighting compositions)を開示している。しかし、これらの鎮火組成物は、特定のゴムと組み合わせた非常に特異的な高分子量ポリマーに限定される。
国際公開第2017/161162号は、泡沫の広がりおよびフィルム形成を改善するように意図される新規のオルガノシロキサン化合物を含み、フッ素を含まない消火泡沫を開示している。新規のオルガノシロキサン化合物は、先のオルガノシリコン含有化合物より、合成するのが簡単であるが、これらの化合物は、現在市販されておらず、別個の生産および流通経路が必要である。
米国特許第2017/0368395号は、特異的な質量比で使用される2種の異なる界面活性剤の組み合わせを含み、フッ素を含まない消火泡沫を開示している。本明細書において開示される泡沫は、良好な広がり係数および小規模な航空燃料火災の消火を達成する。しかし、泡沫安定剤を使用しないと、泡沫安定性が低いと予想される。
したがって、先行技術は多くの異なる問題を表す。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、添付された特許請求の範囲に定義されている。
特に、界面活性剤および/またはハイドロトロープ、およびパーライト、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、ドロマイト、マイカおよびベントナイト、およびその組み合わせからなる群から選択される粒状無機材料を含む、火災を抑制するための水性組成物によって本発明が具現される。ある実施形態によると、本発明による水性組成物はさらに1種または複数の添加剤を含んでいてもよい。本発明によると、フッ素化化合物の使用を必要とせず、特にクラスB火災について良好な鎮火性を有する水性泡沫を形成する組成物が提供される。
ある実施形態において、本発明の水性組成物中に含まれる界面活性剤は、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤からなる群から選択されてもよい。例えば、界面活性剤は、例えば、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミドもしくはジココジメチルアンモニウムクロリドなどのアルキルトリメチルアンモニウムハライド、または二水素化タロウイルエチルヒドロキシエチルアンモニウムメトサルフェート、またはポリマー状第四級アンモニウムエステルなどのカチオン界面活性剤であってもよい。別の実施形態によれば、界面活性剤は、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのアルキルエーテル硫酸塩、およびラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩から選択されるアニオン界面活性剤であってもよい。これらのタイプの界面活性剤が本発明において特に有用であることがわかった。
【0006】
ある実施形態において、粒状無機材料は、タルク、炭酸カルシウム、マイカおよびカオリンからなる群から選択されてもよい。さらなる実施形態において、粒状無機材料は、例えば微晶質タルク、大結晶質タルクなどのタルク、またはその混合物であってもよい。これらの粒状無機材料が特に良好な性能を提示することがわかった。別の実施形態において、粒状無機材料は合成タルクであってもよい。
さらなる実施形態によれば、微晶質タルクは、約0.01μm、約1.0μmまたは約2.0μmなどの0.01〜3.0μmの範囲などの、5μm以下などの10μm以下のd50を有することができる。本発明による水性組成物の意図した使用に応じて、様々な粒度分布を選択することができる。
ある実施形態において、界面活性剤と水との比は0.01〜5質量%の範囲にある。この範囲内では、最も良好な結果が、消火性、貯蔵性、ならびに環境持続可能性に関して得られた。
【0007】
ある実施形態において、粒状無機粉体と界面活性剤との比は500:1〜1:1の範囲にある。本発明によると、水性組成物は、消火用途における使用時に容易に入手可能な、塩水、海水および淡水供給源を含む現地の水源を使用する希釈を必要とする、使える状態の組成物または濃縮物として提供されてもよい。
また、本発明の一部は、界面活性剤および/またはハイドロトロープ、ならびにパーライト、タルク、炭酸カルシウム、ドロマイト、マイカおよびベントナイト、およびその組み合わせからなる群から選択される粒状無機材料、ならびに任意に1種または複数の添加剤を含む乾燥前駆体(dry precursor)組成物である。一方で、そのような前駆体組成物は、取り扱い、貯蔵するのが容易で、他方では、水の添加後に、本発明による水性組成物を得るのが容易であり、それらは、消火用途での使用に特に安定で持ちのよい泡沫を与えることがわかった。
一実施形態によれば、本発明による乾燥前駆体組成物は、粒状無機粉体と界面活性剤との質量比を500:1〜1:1の範囲に有する。
別の実施形態によると、本発明は、本発明による水性組成物を含む消火泡沫に関する。例えば、本発明による水性組成物は、本発明による消火泡沫を得るために当業界で公知の手段を使用して泡立てることができる。
【0008】
また、本発明の一部は、本発明による乾燥前駆体組成物および/または水性組成物を使用する消火泡沫を製造する方法である。特定の実施形態によると、本方法は、水ならびに界面活性剤および/またはハイドロトロープの混合物を用意するステップ、パーライト、タルク、炭酸カルシウム、ドロマイト、マイカおよびベントナイトならびにその組み合わせからなる群から選択される粒状無機材料を用意するステップ、任意に1種または複数の添加剤を用意するステップ、水ならびに界面活性剤および/またはハイドロトロープ、用意された粒状無機材料ならびに任意に用意された前記1種または複数の添加剤の用意された混合物を混合するステップ、および得られた混合物を最後に泡立たせるステップを含む。本発明による形成の方法を使用して、良好な泡沫安定性を得ることができることがわかった。
別の実施形態によれば、本方法は、本発明の乾燥前駆体を用意するステップ、水を用意するステップ、任意に1種または複数の添加剤を用意するステップ、用意された乾燥前駆体、用意された水および任意に用意された1種または複数の添加剤を混合するステップ、および得られた混合物を最後に泡立たせるステップを含む。本発明による形成の方法を使用して、良好な泡沫安定性を得ることができることがわかった。
【0009】
また、本発明の一部は、本発明による水性組成物における、および本発明による消火泡沫の広がりによる、粒状無機材料の使用である。本発明によれば、前記使用のための粒状無機材料は、パーライト、タルク、炭酸カルシウム、ドロマイト、マイカおよびベントナイト、ならびにその組み合わせからなる群から選択される。
また、本発明の一部は、本発明による粒状無機鉱物または本発明による水性組成物の使用を含む、火災を消す方法である。
本発明は、以下の図への言及によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本明細書において開示される実験の部の実施例10〜39、ならびに、試験した様々なタルク試料の地理的な起源をグラフ式に表す(以下を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明および図への言及は、本発明の代表的な実施形態に関係があり、特許請求の範囲を限定するものでないことが理解される。
添付された特許請求の範囲による本発明は、泡沫、特に消火用途で、特にクラスB火災のために使用される泡沫の形成のための水性組成物を提供する。水性泡沫は、クラスB火災を消すために既に使用されている。本発明による泡沫は、FCベースの配合を使用する必要を回避し、環境にやさしく、一方で、同時に容易に入手可能な成分を使用し、泡沫安定性を上げることにより消火性を改善する。
本発明によると、より安定な泡沫は、水性泡沫を形成する組成物への粒状無機材料の添加によって形成することができる。特に、本発明に従って形成される泡沫は、最先端技術の泡沫と同様に容易に崩壊せず、より長い期間にわたってその泡状構造を維持する。実験室試験において、最先端技術の泡沫は、形成の10分以内の排水によって最初の質量の約80%以上を失うことがわかったが、本発明に従って形成された泡沫は、60分後に最初の質量の90%以内を維持することがわかった。これらの値は、本説明の実施例の部において記載の方法を使用することにより得られた。
理論に束縛されるつもりはないが、泡沫バブルの水空気界面に、粒状無機材料がとどまって泡沫安定性を改善すると考えられる。したがって、界面活性剤と粒状無機材料との比の平衡を保つ必要がある。界面活性剤が多すぎる場合、それは、無機粒状材料への吸着が過度であり、界面から水相へ移動する原因になる。特定の一実施形態において、界面活性剤は、良好な泡沫形成のための臨界ミセル濃度を超える。
【0012】
本発明によれば、界面活性剤は、水性組成物中の無機粒状材料に吸着する。そのような界面活性剤はまた捕集剤として知られている。例えば、カチオン界面活性剤は、タルクなどの無機粒子の負に帯電した表面へ付着することができる。
本発明によると、消火泡沫を形成するための水性組成物であって、界面活性剤および/またはハイドロトロープ、パーライト、タルク、炭酸カルシウム、ドロマイト、マイカおよびベントナイト、ならびにその組み合わせからなる群から選択される粒状無機材料、ならびに任意に1種または複数の添加剤を含む水性組成物が提供される。
界面活性剤またはハイドロトロープ
例えば、消火用途のための泡沫に使用するための界面活性剤、または泡立て剤は、当業界で公知である。ある実施形態において、界面活性剤は、1種または複数のアニオン界面活性剤、または1種または複数のカチオン界面活性剤、または1種または複数の非イオン界面活性剤、またはその組み合わせを含むか、またはそのようなものである。
【0013】
適切なアニオン界面活性剤は、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのアルキルエーテル硫酸塩、およびラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩を含むがこれらに限定されない。適切なアニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエチルアミン、ラウレス硫酸トリエチルアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウレス硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸塩モノエタノールアミン、ラウレス硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸ジエタノールアミン、ラウレス硫酸ジエタノールアミン、ラウリルモノグリセリド硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸カリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、トリデセス硫酸ナトリウム、メチルラウロイルタウリン酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウレススルホコハク酸ナトリウム、ラウロイルスルホコハク酸ナトリウム、トリデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアンホ酢酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ココイルイセチオン酸ナトリウム、メチルココイルタウリン酸ナトリウム、リン酸アルキルアリールエーテルおよびリン酸アルキルエーテルなどのリン酸エステル系界面活性剤、ならびにその混合物がさらに含まれる。アニオン界面活性剤は、例えば、第一級C8−C22アルカンスルホン酸塩、第一級C8−C22アルカン二スルホン酸塩、C8−C22アルケンスルホン酸塩、C8−C22ヒドロキシアルカンスルホン酸塩またはアルキルグリセリルエーテルスルホン酸塩などの脂肪族スルホン酸塩であってもよい。
【0014】
適切なカチオン界面活性剤は、アルキルトリメチルアンモニウムハライド、またはジアルキルジメチルアンモニウムハライドを含むがこれらに限定されず、ここで、アルキル基は、例えば、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミドまたはジココジメチルアンモニウムクロリドなどの10または12または14または16または18または20または22の炭素原子などの8〜24炭素原子を含んでもよい。他の適切なカチオン界面活性剤は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,936,159号に記載のような二水素化タロウイルエチルヒドロキシエチルアンモニウムメトサルフェート、またはポリマー状第四級アンモニウムエステルなどの第四級アンモニウム種である。理論によって束縛されようとは欲しないが、カチオン界面活性剤は、浮遊系において捕集剤のようにより多く作用すると考えられる。ほぼ中性のpH条件において粒子表面が負に帯電していると、カチオン界面活性剤はおそらく、アニオン界面活性剤より粒子に強く吸着する。アニオン界面活性剤はそれでもなおタルクに吸着し得るが、おそらくその疎水性後部の吸着を介するのであろう。
適切な非イオン界面活性剤としては、アルコール、酸、アミド、またはアルキレンオキシド、特にエチレンオキシドと単独でまたはプロピレンオキシドと共に反応させたアルキルフェノールが含まれる。例示の非イオン物質は、C6−C22アルキルフェノールエチレンオキシド縮合物、エチレンオキシドとの、C8−C18脂肪族第一級または第二級直鎖状または分岐アルコールの縮合物ならびにプロピレンオキシドおよびエチレンジアミンの反応生成物との、エチレンオキシドの縮合によって生じた生成物である。他の非イオン物質は、長鎖第三級アミンオキシドを含む。他の非イオン物質は、ココアミドベース界面活性剤であり、ココアミドをエタノールアミンなどのアルコールアミンと反応させることにより生成される。例示の非イオン物質はココアミドMEAおよびココアミドDEAを含む。他の適切な非イオン物質は、デシルグルコシド、ラウリルグルコシドおよびオクチルグルコシドなどのアルキルポリグルコシドを含む。
【0015】
ある実施形態において、界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム(または硫酸ドデシルナトリウム、SDS)、またはラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)である。ある実施形態において、界面活性剤は、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB)、またはジココジメチルアンモニウムクロリドである。
界面活性剤は、本発明の一態様による水性組成物中に臨界ミセル濃度(CMC)より少ないまたは多い量で存在しなければならない。CMCは、その上の濃度でミセルを形成する、界面活性剤の濃度として定義され、系に添加されるすべての追加の界面活性剤はミセルに向かう。組成中に界面活性剤があまりに多く存在する場合、それは水相へ粒状無機材料を移動させ、泡沫安定性を働かせるのを妨げることがある。したがって、界面活性剤と無機粒状材料との比の平衡を保つ必要がある。最先端技術の組成は、5.0質量%までの界面活性剤と水との比を必要とし得る。
【0016】
ある実施形態において、本発明による組成における界面活性剤と水との比は、0.01〜5質量%の範囲にある。例えば、組成中の界面活性剤と水との比は、例えば、0.1〜3質量%などの0.05〜4質量%、例えば、約0.05質量%、約0.3質量%、約0.5質量%、約1質量%、約2質量%、約3質量%、約4質量%、または約5質量%などの範囲であってもよい。例えば、本発明によれば、泡立て準備のできている組成は、約0.05質量%〜約0.1質量%の界面活性剤と水との比を有していてもよい。泡立てる前に希釈を必要とする濃縮物には、約0.5質量%から約5質量%または約1質量%までの界面活性剤と水との比があってもよい。
粒状無機材料
【0017】
本発明によると、発明の水性組成物から形成される泡沫の安定性は、粒状無機材料の存在によって改善される。
他に明示しない限り、本明細書において無機粒状材料に対して言及する粒径の性質は、水性媒体中に完全に分散した状態の粒子材料の沈降によって周知の方式で測定される通りであり、「Micromeritics Sedigraph 5100ユニット」と本明細書において称されるMicromeritics Instruments Corporation, Norcross, Georgia, USA(web-site: www.micromeritics.com)によって供給されるSedigraph 5100機を使用する。そのような機械は、所与のe.s.d値未満の「等価な球状直径」(e.s.d)と当業界で称されるサイズを有する粒子の質量累積率の測定およびプロットを提供する。平均粒径d50は、この方法で測定された粒子e.s.dの値であり、そこに、d50値未満の等価の球状直径を有する粒子が50質量%ある。上端部の粒径d90は、この方法で測定された粒子e.s.dの値であり、そこに、d90値未満の等価の球状直径を有する粒子が90質量%ある。
粒状無機材料にはそれを泡沫形成に適するようにする粒径範囲を有するものとするが、粒径範囲は特に限定的ではないものとする。例えば、無機粒状材料は、そのような粒子材料を用いて安定な泡沫を形成することができることを条件として約0.01μm〜約1mmの平均粒径d50を有することができる。例えば、粒状無機材料は、約500μm以下例えば、約250μm以下、または約100μm以下、または約50μm以下のd50を有することができる。ある実施形態において、無機粒状材料は、約25μm以下、例えば、約10μm以下、または約5μm以下、または約1μm以下のd50を有する。ある実施形態において、無機粒状材料は、約0.05μm〜約5μm、例えば、または約0.1μm〜約2.5μm、または約0.5μm〜約1μmのd50を有する。
【0018】
ある実施形態において、粒状無機材料は約1mm以下、例えば、約500μm以下、または約400μm以下、または約300μm以下、または約200μm以下、または約100μm以下のd90を有していてもよい。ある実施形態において、無機粒状材料は、約50μm以下、例えば、約20μm以下、または約10μm以下、または約5μm以下のd90を有する。ある実施形態において、無機粒状材料は、約0.5μm〜約10μm、例えば、または約1μm〜約7.5μm、または約2.5μm〜約5μmのd90を有する。
ある実施形態において、無機粒状材料はパーライト、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、ドロマイト、マイカおよびベントナイト、ならびにその組み合わせからなる群から選択される。
ある実施形態において、無機粒状材料は、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、カオリン、およびその組み合わせからなる群から選択される。
【0019】
ある実施形態において、無機粒状材料は、大結晶質(macrocrystalline)のタルク、または微晶質のタルク、またはその組み合わせなどのタルクである。個々の小板サイズ、すなわち個々のタルク小板(数千枚の基本シート)のSedigraph法によって測定されるメジアン径は、堆積物の形成条件に応じておよそ1μmから100μmを超えて様々であり得る。個々の小板サイズは、タルクのラメラ性を求める。高度に層状のタルクは大きな個々の小板を持つが、しかし、微晶質のタルクは小規模な小板を持つ。タルクはすべて層状と名付けられてもよいが、それらの小板サイズは堆積物ごとに異なる。小規模な結晶は、簡潔な高密度の鉱石であり、微晶質のタルクとして知られる。大きな結晶は、紙のように薄い層であり、大結晶質のタルクとして知られる。公知の微晶質タルク堆積物は、Montana(Yellowstone)およびAustralia(Three Springs)にある。微晶質の構造において、タルク素粒子は、より大きな板から構成される大結晶質の構造と比較して小板から構成される。
ある実施形態によると、無機粒状材料は、約50μm以下、例えば30μm以下などの、例えば20μm以下などの、例えば10μm以下などの、例えば約5μmなどのd90、および約20μm以下、例えば10μm以下などの、例えば5μm以下などの、例えば3μm以下などの、例えば約3μmまたは約1μmなどのd50を有する微晶質のタルクである。
【0020】
ある実施形態によると、無機粒状材料はベントナイトであり、例えば約100μm以下、例えば80μm以下などの、例えば70μm以下などの、例えば65μm以下などの、例えば約62μmなどのd95、および約30μm以下、例えば20μm以下などの、例えば19μm以下などの、例えば18μm以下などの、例えば約17μmなどのd50を有するベントナイトである(すべて、湿式Malvernレーザー散乱 ISO13329−1によって測定される)。
上で検討されたように、無機粒状材料が泡沫バブルの水空気界面から界面活性剤によって水相へ移動し、それが泡沫安定化性を進展させるのを阻止することを回避するために、界面活性剤および無機粒状材料の量は平衡を保つ必要がある。
【0021】
ある実施形態によれば、本発明による水性組成物中の粒状無機粉体と水との比は、0.1〜60質量%の範囲、例えば0.5質量%〜60質量%の範囲などの、例えば1質量%〜60質量%の範囲などの、例えば2質量%〜50質量%の範囲などの、または3質量%〜20質量%の範囲の、または4〜10質量%、例えば約4質量%もしくは約5質量%もしくは約6質量%もしくは約8質量%もしくは約10質量%もしくは約12質量%などの範囲であってもよい。例えば、本発明によれば、泡立て準備のできている組成は、約1質量%から約6質量%、または約3質量%までの粒状無機粉体と水との比を有していてもよい。泡立てる前に希釈を必要する濃縮物は、約10質量%から約60質量%、または約30質量%までの界面活性剤と水との比であってもよい。
ある実施形態によれば、本発明による水性組成物中の粒状無機粉体と界面活性剤との比は、500:1〜1:1の範囲、例えば300:1〜2:1、または250:1〜5:1、または200:1〜10:1、または100:1〜50:1などの、例えば約200:1、または約100:1または約50:1などの範囲であってもよい。
【0022】
さらなる成分および添加剤
粘度を上げるポリマーは、当業者には知られており、キサンタンガムなどのゴムを含んでもよい。これらは、またフィルム形成剤および泡沫安定剤として働くことができる。
鉱物ベースの抗沈降剤は、当業者に知られている。例えば、アタパルジャイト(「Attagel 40」、BASF)、カオリンおよび/または海泡石が使用されてもよい。
グリコールエーテルは、凍結防止剤、起泡力増進剤および溶媒として使用されてもよい。
本発明による組成に含まれてよいさらなる添加剤は、必要に応じて淡水または海水を用いて本発明による組成の使用を可能にするために、腐食抑制剤、抗菌添加剤、硬質金属イオン封鎖剤、pH緩衝液および/または軟水を用いて泡立ちを制御する塩を含む。
一実施形態によると、本発明による水性組成物は、例えば1質量%未満のフッ素化化合物、または1.0質量%未満のフッ素化化合物、または0.5質量%未満のフッ素化化合物、または0.1質量%未満のフッ素化化合物、または0.05質量%未満のフッ素化化合物、または0.01質量%未満のフッ素化化合物、または0.001質量%未満のフッ素化化合物などの非常にわずかのフッ素化化合物を含み、または、検出可能なフッ素化化合物を含まない。
【0023】
乾燥前駆体組成物
また、本発明の一部は、本発明による水性組成物を製造するための乾燥前駆体組成物である。一実施形態によると、乾燥前駆体組成物は、パーライト、タルク、炭酸カルシウム、ドロマイトおよびベントナイト、ならびにその組み合わせからなる群から選択される粒状無機材料、ならびに界面活性剤、ならびに/またはハイドロトロープからなる。水を単に添加するだけで本発明による水性組成物を得ることができる量の、前記粒状無機材料および前記界面活性剤、および/またはハイドロトロープが合わせられる。
例えば、界面活性剤は、本発明による水性組成物の場合に上に検討されたように、1種または複数のアニオン界面活性剤、または1種または複数のカチオン界面活性剤、または1種または複数の非イオン界面活性剤、またはその組み合わせを含むか、またはそれらからなっていてもよい。さらに、例えば、粒状無機材料は、本発明による水性組成物の場合に上に検討されたように、材料、粒度分布および品質が選択されてもよい。
本発明の一実施形態によると、乾燥前駆体組成物は、1種または複数の添加剤をさらに含む。
水性組成物の形成の方法
本発明の一実施形態によると、水性組成物は、本発明による乾燥前駆体組成物を用意することによって、および本発明による水性組成物を得るために必要とされる量の水を添加することによって得ることができる。本発明のさらなる実施形態によると、水性組成物は、必要とされる量の水および界面活性剤および/またはハイドロトロープの混合によって、ならびに、本発明による水性組成物を得るために粒子鉱物材料を撹拌しながら添加することによって得ることができる。この実施形態によると、前記粒子鉱物材料は、乾燥した状態もしくは湿潤(水性)状態で、または例えば水性懸濁液などの懸濁液として添加されてもよい。
本発明による水性組成物は、また本発明の一部を形成する消火泡沫を形成するために泡立たせてもよい。
【0024】
水性組成物の使用
上で検討されたように、水性組成物は消火泡沫を形成するために使用することができる。したがって、そのままで泡立たせるように意図されるか、または、容易に入手可能な水源の使用から希釈することができるかに応じて組成は様々な濃度で存在してもよい。例えば、石油およびガス装備およびプラットフォームまたは船舶での火災などの海での火災を消滅させる使用のための組成の場合、泡立てる前に海水で希釈されてもよい濃縮組成物が貯蔵されてもよい。他方では、希釈のための水が容易には入手可能でないか、または組成物を素早く泡立たせる必要のある場所で、例えば産業施設または空港内などで、組成物はより低い濃度または使用する準備ができている水性稀釈液で維持されてもよい。したがって、本発明による水性組成物は、低含水率の濃縮物として、または高含水率の希薄水性組成物として提供されてもよい。したがって、水性組成物中の粒状無機粉体の含有率は、組成の全質量を基準にして0.1質量%〜60質量%の範囲であってもよい。
【0025】
水性組成物は、当業者に公知の方法を使用して、すなわち、機械式手段によって泡立たせてもよい。そのような機械式手段は泡沫ノズルまたは泡沫発生器を含んでもよい。本明細書において消火泡沫の形成について検討される無機粒状材料の使用は、本発明の一部である。本発明によると、無機粒状材料の使用は、より安定な泡沫をもたらし、使用中に、クラスB火災において、燃えている燃料の表面により長くとどまり、分解速度は低く、燃えている燃料中への混入速度は低い。
さらに、消火組成物中に存在する無機粒状材料は、泡沫の分解または蒸発の後でさえ、系中にとどまるが、それは、クラスB火災で遭遇する温度で一般に安定であり、分解は1000℃未満で予想されないからである。したがって、泡沫中の水が蒸発したとしても、無機粒状材料は、その泡沫構造をまた保持する絶縁ブランケットを提供することができる。
最後に、本発明に従って使用する無機粒状材料は、世界市場で容易に入手可能であり、鎮火泡沫の使用後に環境汚染のリスクをもたらさない。本発明による泡沫は、全くフッ素化成分を含まず、最先端技術の泡沫より低い界面活性剤含有率を有する。
【0026】
泡沫膨張比(FER)
本発明による組成は、十分〜優秀な泡立ち性を有することがさらにわかった。5以上に近い、さらには8〜20を超える泡沫膨張比(FER)を標準水道水を用いて得ることができた。本明細書において使用される場合、FERは、膨張した泡沫の体積を泡立て前の溶液の体積で割ることにより計算された:
FER=V泡沫/V溶液
本発明が、相互に排他的となるような特色の組み合わせ以外、本明細書において言及される特色および/または制約の任意の組み合わせを含んでもよいことは留意されるべきである。前述の記載は、それを例証する目的で本発明の具体的な実施形態を対象とする。しかしながら、本明細書において記載される実施形態に対する、多くの修正および変形が可能であることは、当業者には明白であろう。そのような修正および変形はすべて、添付された特許請求の範囲に定義されるように本発明の範囲内となるように意図される。
【実施例】
【0027】
(実施例1〜5)
泡沫安定化性に関して様々な無機粒状材料を試験した。
水中のラウリルエーテル硫酸ナトリウム(MEYCO SLF 30、BASFによって提供される)の0.3質量%泡立て溶液へ幾つかの無機粒状材料(10質量%)を混合し、結果として得られた組成物を実験室泡沫発生器を使用して混合した。鉱物粒子が泡沫からの排水を遮断し、それによって結果に影響することがないように十分に粗いフリットが付き、底部に捕集器の付いた漏斗小室へ得られた泡沫(60g)を装入し、静置した。漏斗小室の真下に集めた水の量の測定により、泡沫分解を測定した。
【0028】
表1に試験した粒状無機材料を示す。
【表1】
【0029】
集めた水の量を30分間観察した。表2に結果を示す。示した値は漏斗小室内に残存する泡沫の百分率での値で、経時的な泡沫安定性の尺度と見なすことができる。
【表2】

すべての無機粒状材料が改善された泡沫安定性をもたらすことがわかった。実施例4(タルク)では、60分後の安定性は91%であった。実施例4で使用したタルクは、5μmのd90および1μmのd50を有する微晶質のタルクである。実施例5で使用したタルクは、6.2μmのd95および1.8μmのd50を有する大結晶質のタルクである(Sedigraph−ISO 13317−3による)。
【0030】
(実施例6および7)
さらなる試験系列において、無機粒子状物質を含まない水中のラウリルエーテル硫酸ナトリウム(MEYCO SLF 30、BASFによって提供される)の3質量%泡立ち溶液を、他の界面活性剤(無機粒子状物質を含むものおよび含まないもの)と比較した。ポリマーAはラウリル硫酸ナトリウム(SLS)であり、ポリマーBはテトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB)である。実験室泡沫発生器を使用して、表3に示す組成物を混合した。実施例6および7に使用したタルクは、6.2μmのd95および1.8μmのd50を有する大結晶質のタルクである(Sedigraph−ISO 13317−3による)。
【0031】
【表3】
【0032】
結果として得られた泡沫(60g)をフリットおよび底部に捕集器の付いた漏斗小室へ装入し、静置した。やはり、漏斗小室の真下に集めた水の量の測定により、泡沫分解を測定した。表4に結果を示す。
【表4】

3質量%から0.05質量%への界面活性剤の同時の大幅削減とともに5質量%タルクの添加によって、SLSに関して泡沫分解が低減されたことを示す。さらに、TTABの性能がSLSのそれより良好なことを示した。
【0033】
(実施例8および9)
泡沫を、様々な量のタルクおよびテトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB)の存在下で、脱塩水(実施例8)または標準水道水(実施例9)のいずれかを使用して試験した。使用したタルクは、21m2/gのBET表面積(ISO 9277)および1.1μmのメジアン粒径(Sedigraph−ISO 13317−3による)を有するImerys Talcによって提供される微晶質のタルクであった。TTABは5%の水性保存溶液として使用した。泡沫を、タルクおよびTTAB保存溶液を組み合わせて調製し、脱塩水または水道水を使用して100gにした。結果として得られた組成物を実験室泡沫発生器を使用して混合した。結果として得られた泡沫を、フリットおよび底部に捕集器の付いた漏斗小室へ装入し、静置した。漏斗小室の真下に集めた水の量の測定により、泡沫分解を測定した。表5に様々である試験パラメーターを示す。
【表5】
【0034】
集めた水の量を30分間観察した。表6に結果を示す。示した値は漏斗小室内に残存する泡沫の百分率での値で、経時的な泡沫安定性の尺度と見なすことができる。欄「FER」で示す値は得られた泡沫膨張比を示す。
【表6】
【0035】
すべての実施例が比較例1に対して改善された泡沫安定性をもたらすことがわかった(上記の表2を参照)。
【0036】
(実施例10〜17)
泡沫を、様々な量のタルクおよび界面活性剤の存在下で、標準水道水を使用して試験した。実施例10〜12に使用したタルクは、21m2/gのBET表面積(ISO 9277)および1.1μmのメジアン粒径(Sedigraph−ISO 13317−3による)を有するImerys Talcによって提供される微晶質のタルクであった。実施例13〜15に使用したタルクは、0.5μmのメジアン粒径(Sedigraph−ISO 13317−3による)を有する微晶質のタルクであった。実施例16および17に使用したタルクは以下に説明するような合成タルクであった。水中の様々な界面活性剤の3質量%保存溶液の希釈により泡沫を調製して界面活性剤の希薄水溶液を得、続いてタルクを添加し、水道水を使用して100gとした。実験室泡沫発生器を使用して、結果として得られた組成物を混合した。結果として得られた泡沫を、粗いフリットおよび底部に捕集器の付いた漏斗小室へ装入し、静置した。漏斗小室の真下に集めた水の量の測定により、泡沫分解を測定した。表7に様々である試験パラメーターを示す。
【0037】
国際公開第2015/159006号(連続法)または国際公開第2008/009799号(バッチ法)に開示されているように、1MPaを超える圧力および100℃〜600℃の温度で溶媒加熱処理を含む方法によって前記合成タルクを得た。このようにして得られた合成タルクをX線回折解析によって特性評価し、回折パターンは、平面(001)について9.40〜9.68Åの程度に距離をおいて位置するピーク、平面(020)について4.50〜4.75Åに位置するピーク平面(003)について3.10〜3.20Åに位置するピークおよび平面(060)について1.50〜1.55Åに位置するピークを示した。合成タルクは、500nmのd50メジアン粒径および300〜500m2/gの範囲のBET表面積を有する。
【0038】
【表7】
【0039】
ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)およびラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)をArquad C−35と比較した。ARQUAD C35は、ココヤシトリメチルアンモニウムクロリドの35質量%水溶液である。集めた水の量を30分間観察した。表8に結果を示す。示した値は漏斗小室内に残存する泡沫の百分率での値で、経時的な泡沫安定性の尺度と見なすことができる。欄「FER」で示す値は得られた泡沫膨張比を示す。
【表8】

すべての実施例が、比較例に対して改善された泡沫安定性をもたらすことがわかった(上記の表2を参照)。
【0040】
(実施例18〜23)
水溶液中15質量%の界面活性剤で濡らしておいた、様々な量のタルクおよび界面活性剤の存在下で、標準水道水を使用して泡沫を試験した。実施例18〜23に使用したタルクは、21m2/gのBET表面積(ISO 9277)および1.1μmのメジアン粒径(Sedigraph−ISO 13317−3による)を有するImerys Talcによって提供される微晶質のタルクであり、タルクおよび15質量%の水中界面活性剤を含む湿潤タルク組成物としておいた。混合しながら、水を徐々に添加して水溶液を得、続いて泡立たせた。実施例10〜17に関して、同一の方法で泡沫安定性を試験した(上記参照)。表9および表10に使用した組成および結果を示す。
【0041】
【表9】
【0042】
実施例18〜20において、組成物を形成直後に泡立たせた。実施例21〜23において、組成物を形成の7日後に泡立たせた。
【表10】
【0043】
(実施例24および25)
泡沫を、使用前、および界面活性剤と混合する前に濡らしておいた様々な量のタルクの存在下で、標準水道水を使用して試験した。実施例24〜25で使用したタルクは、21m2/gのBET表面積(ISO 9277)および1.1μmのメジアン粒径(Sedigraph−ISO 13317−3による)を有するImerys Talcによって提供される微晶質のタルクであり、水の添加前に質量比100:1(5gのタルクおよび0.05gのSLS)のSLSと混合しておいた。水を添加し100gの水性組成物を得、続いてこれを泡立て、0.05質量%のSLSおよび5質量%のタルクを含む水性泡沫を得た。実施例10〜17に関して、同一の方法で泡沫安定性を試験した(上記参照)。実施例24において、組成物を形成直後に泡立たせた。実施例25において、組成物を形成の14日後に泡立たせた。表11に結果を示す。
【表11】
【0044】
(実施例26〜55)
等しい量の様々な微晶質および大結晶質のタルクならびにテトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド(TTAB)の存在下で、標準水道水を使用して、泡沫を試験した。泡沫を調製し、先の実施例と同一の方法で試験した。表12に結果を示す。Sedigraph(ISO 13317−3)によって測定したメジアン粒径d50を示す。泡沫安定性は、泡沫から30%の水を排水するのに必要な時間で示す。
【0045】
【表12】

図1に結果をグラフ式に表し、これはまた、様々なタルクの地理的な起源を表す。タルクの起源から泡沫安定性へ幾分かの影響があることをグラフは示しているが、最も大きな効果は粒径であり、タルクが細かいほど、泡沫は安定である。
【0046】
(実施例56)
1.0質量%または0.5質量%の異なる鉱物およびラウリル硫酸ナトリウム(SLS)の存在下で泡沫を試験した。使用したタルクは、19m2/gのBET表面積(ISO 9277)および2.1μmのメジアン粒径(Sedigraph−ISO 13317−3による)を有するImerys Talcによって提供される高アスペクト比(HAR)のタルクであった。使用した炭酸カルシウムは、19m2/gのBET表面積(ISO 9277)および2.1μmのメジアン粒径(Sedigraph−ISO 13317−3による)を有する、Imerysによって提供される沈降炭酸カルシウム(PCC)であった。使用したベントナイトは、54.4m2/gのBET表面積(ISO 9277)および16.8μmのメジアン粒径(湿式Malvernレーザー散乱−ISO 13329−1による)を有するImerysによって提供されるベントナイトであった。使用したマイカは、2μm未満(Sedigraph−ISO 13317−3によって測定した)の粒径を有する粒子64%を有するImerysによって提供されるマイカであった。SLSは、3%の水性保存溶液として使用した。鉱物およびSLS保存溶液を合わせて泡沫を調製し、水を使用して100gとした。実験室泡沫発生器を使用して、結果として得られた組成物を混合した。結果として得られた泡沫を、フリットおよび底部に捕集器の付いた漏斗小室へ装入し、静置した。漏斗小室の真下に集めた水の量の測定により、泡沫分解を測定した。表13に様々である試験パラメーターを示す。
【0047】
【表13】
【0048】
集めた水の量を30分間観察した。表14に結果を示す。示した値は漏斗小室内に残存する泡沫の百分率での値で、経時的な泡沫安定性の尺度と見なすことができる。欄「FER」に示す値は、得られた泡沫膨張比を示す。
【表14】
【0049】
実施例56b〜56dおよび実施例56iが比較例56aに対して改善された泡沫安定性をもたらすことがわかった(上記の表14を参照)。実施例56e〜56hおよび実施例56jおよび56kは、泡沫安定性が同等であるかまたは下がったが、しかしなお許容範囲である。しかし、また、予期しないことに、上記の鉱物はすべて、比較例56aと比較して泡沫を抜ける可燃性蒸気の透過を低減または解消することは驚くべきことである。
図1
【国際調査報告】