特表2021-520992(P2021-520992A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-520992合成ガスから航空灯油を合成する際に使用される触媒の製造方法、その方法により得られた触媒、及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-520992(P2021-520992A)
(43)【公表日】2021年8月26日
(54)【発明の名称】合成ガスから航空灯油を合成する際に使用される触媒の製造方法、その方法により得られた触媒、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/04 20060101AFI20210730BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20210730BHJP
   B01J 29/16 20060101ALI20210730BHJP
   B01J 29/14 20060101ALI20210730BHJP
   C10G 2/00 20060101ALI20210730BHJP
【FI】
   B01J37/04 102
   B01J37/08
   B01J29/16 M
   B01J29/14 M
   C10G2/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-555431(P2020-555431)
(86)(22)【出願日】2019年4月2日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月11日
(86)【国際出願番号】CN2019080955
(87)【国際公開番号】WO2019196703
(87)【国際公開日】20191017
(31)【優先権主張番号】201810331053.X
(32)【優先日】2018年4月13日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】598152091
【氏名又は名称】ハイケム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520108855
【氏名又は名称】株式会社模範
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】椿 范立
(72)【発明者】
【氏名】高 潮
(72)【発明者】
【氏名】李 杰
(72)【発明者】
【氏名】彭 小波
(72)【発明者】
【氏名】柴 剣宇
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC02A
4G169BC02B
4G169BC03A
4G169BC03B
4G169BC04A
4G169BC04B
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4G169BC44B
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4G169BC62B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169CC24
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4G169FB06
4G169FB30
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4G169FC07
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4G169FC10
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4G169ZA04B
4G169ZD06
4H129AA01
4H129BA12
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4H129KD22X
4H129KD22Y
4H129KD24X
4H129KD25X
4H129KD26X
4H129KD44X
4H129KD44Y
4H129NA23
4H129NA25
4H129NA43
(57)【要約】
【課題】本発明は合成ガスから航空灯油を製造する際に使用される触媒の製造方法、該方法により製造される触媒、及び合成ガスから航空灯油を合成する際の該触媒の用途を提供する。
【解決手段】該触媒は担体、その上に担持された触媒活性成分と助触媒を含み、(A)Ru、Fe、Ni、Co、Pt及びPdから選ばれる元素である触媒活性成分1〜50wt%と、(B)触媒活性成分と異なる、周期律表の第一族金属元素、遷移元素及びランタノイド元素から選ばれる元素である助触媒1〜20wt%と、(C)担体と、を含む。触媒は触媒活性金属を担持する前に弱酸と強塩基で担体を熱処理することによって、製造された触媒が合成ガスから航空灯油を製造する際に用いられる時、従来のフィッシャー・トロプシュ反応のASF分布を打破し、航空灯油の高選択性を取得し、さらに許容可能又はより高いCO転化率を得ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ガスから航空灯油を製造する際に使用される触媒の製造方法であって、
該触媒は、担体、該担体に担持された触媒活性成分と助触媒を含む担持型触媒であり、該触媒の全重量に基づき、該触媒は、
(A)元素として1〜50wt%の、Ru、Fe、Ni、Co、Pt及びPdから選ばれる1つ又は複数の元素である触媒活性成分と、
(B)元素として1〜20wt%の、触媒活性成分と異なる、周期律表の第一族金属元素、遷移元素及びランタノイド元素から選ばれる1つ又は複数の元素である助触媒と、
(C)担体と、
を含み、
前記触媒の製造方法は、
(1)解離定数Kaが1.0×10−3〜1.0×10−1の弱酸水溶液を用いて担体を熱処理するステップと、
(2)アルカリ金属水酸化物水溶液を用いてアルカリ性条件下でステップ(1)の処理により得られた担体を熱処理するステップと、
(3)助触媒とする金属元素を担持するために、ステップ(2)において得られた生成物を助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液と直接接触させ、又はステップ(2)において得られた生成物を濾過し、洗浄し、乾燥した後に助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液と接触させるステップと、
(4)触媒活性成分とする金属元素を担持するために、ステップ(3)において得られた生成物を濾過し、洗浄し、乾燥し、焼成した後、さらに触媒活性成分とする金属元素の水溶性金属塩自体又はその溶液と接触させるステップと、
(5)ステップ(4)において得られた生成物を焼成し、触媒を得るステップと、
を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
該触媒の全重量に基づき、該触媒は、(A)元素として5〜30wt%、より好ましくは12〜18wt%の触媒活性成分と、(B)元素として1〜15wt%、より好ましくは8〜12wt%の助触媒と、(C)60〜94wt%、より好ましくは70〜80wt%の担体と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒活性成分はNi、Co及びFeから選ばれる1つ又は複数の元素であり、特にCo、Fe又はその組み合わせであり、及び/又は、助触媒はNa、K、La、Ce及びMnから選ばれる1つ又は複数の元素であり、特にLa、Ce又はその組み合わせであり、及び/又は、担体はカーボンナノチューブ、グラフェン、活性炭、SiO、Al、ZrO、炭化ケイ素、TiO及びモレキュラーシービングから選ばれる1つ又は複数であり、好ましくは1つ又は複数のモレキュラーシービングであり、特にY型モレキュラーシービング、クリノプチロライト、モルデナイト及びZSM−5の1つ又は複数であり、助触媒がTiである場合、担体はTiOでなく、助触媒がZrである場合、担体はZrOでない前提とする、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
触媒活性成分の水溶性金属塩は硝酸塩、酢酸塩、塩化物塩、それらの水和物又はその任意の混合物であり、好ましくは硝酸塩又はその水合物であり、及び/又は、助触媒の水溶性塩は硝酸塩、酢酸塩、塩化物塩、それらの水和物又はその任意の混合物であり、好ましくは硝酸塩又はその水合物である、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(1)において前記弱酸は有機弱酸であり、好ましくはシュウ酸、フェニルヘキサカルボン酸、マレイン酸、サリチル酸及びEDTAから選ばれる1つ又は複数であり、特にEDTAであり、及び/又は、ステップ(1)における弱酸水溶液の濃度は0.04〜0.5mol/Lであり、好ましくは0.04〜0.1mol/Lであり、及び/又は、ステップ(1)における熱処理は還流温度を超えない条件下で行われ、好ましくは40〜100℃、より好ましくは70〜100℃の温度下で行われ、及び/又は、ステップ(1)における熱処理は1〜10時間であり、好ましくは4〜10時間行われる、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(2)においてアルカリ金属水酸化物は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はその組み合わせであり、好ましくは水酸化ナトリウムであり、及び/又は、アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度は0.1〜1mol/Lであり、好ましくは0.1〜0.5mol/Lであり、及び/又は、ステップ(2)における熱処理は40〜100℃で行われ、好ましくは40〜80℃で行われ、及び/又は、ステップ(2)において熱処理の時間は0.1〜2時間であり、好ましくは0.1〜1時間である、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
助触媒とする金属元素を担持するために、ステップ(2)の熱処理を行う前、ステップ(1)の処理により得られた担体を濾過し、洗浄し、乾燥し、及び/又は、ステップ(3)において、ステップ(2)において得られた生成物を濾過し、洗浄し、乾燥した後に助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液と接触させる、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(3)において、助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液の濃度は0.1〜4mol/Lであり、好ましくは0.5〜2mol/Lであり、ステップ(3)において、担体と助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液との接触は40〜100℃で行われ、好ましくは40〜80℃で行われ、及び/又は、担体と助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液との接触は2〜24時間行われ、好ましくは4〜12時間行われる、
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(4)において、触媒活性成分とする金属元素の水溶性金属塩は溶融状態でステップ(3)において得られた生成物と接触し、好ましくは触媒活性成分とする金属元素の水溶性金属塩をステップ(3)において得られた生成物と混合した後にさらに密閉した容器内で溶融させる、
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(2)、(3)及び(4)における乾燥はそれぞれ独立して60〜120℃の条件下で行われ、及び/又は、ステップ(4)及びステップ(5)における焼成はそれぞれ独立して350〜650℃で行われ、好ましくはステップ(4)における焼成は450〜650℃で行われ、ステップ(5)における焼成は350〜500℃で行われる、
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により製造される触媒。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により製造される触媒の、合成ガスから製造される航空灯油における用途。
【請求項13】
合成ガスから航空灯油を製造する際の反応において、H/COのモル比は1〜5であり、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1以上2未満である、
ことを特徴とする請求項12に記載の用途。
【請求項14】
合成ガスから航空灯油を製造する際の反応において、反応圧力は1〜5MPa(ゲージ圧)であり、反応温度は150〜350℃であり、及びW/Fは5〜20gh mol−1であり、好ましくは、反応圧力は1〜3MPa(ゲージ圧)であり、反応温度は200〜300℃であり、及びW/Fは8〜15gh mol−1である、
ことを特徴とする請求項12又は13に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成ガスから航空灯油を合成する際に使用された触媒の製造方法に関し、さらに、該方法により得られた触媒及び該触媒の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
航空灯油はジェット燃料とも呼ばれ、主にジェット宇宙船エンジンの燃料として使用されており、現在国際的に需要量が非常に多い液体燃料であり、一般的に炭素数が8〜16である混合炭化水素系で構成される。航空灯油に対する需要量が日増しに高まっているため、その値段は高いままであり、航空灯油の合成は世界各国で広く注目されている。2020年までに、中国の航空灯油の需要量は4000万トンを超えると推定されている。現在、航空灯油の生産には主に以下のような方法がある。1)原油から蒸留する。この方法は、日増しに枯渇する石油資源に大きく依存し、且つ設備材料に対する要求も高い。2)バイオマスの高温熱分解によりバイオマスオイルを生成し、さらに脱酸素により液体燃料にアップグレードする。該プロセスは複雑であり、且つ製造されたバイオマスオイルの品質が低く、エンジン燃料として直接使用することができないため、さらに精製する必要がある。3)バイオマスに対する化学的及び生物学的処理(加水分解、発酵、選択的水素化等を含む)によって小分子平台物を取得し、さらにこれらの低分子化合物を原料として、炭素−炭素カップリング反応によって航空灯油鎖長(C〜C16)を有する酸素含有の有機化合物を得る。該プロセスは複雑であり、技術が未熟であり、膨大な投資を必要とする。エネルギー変換の架け橋として、合成ガスは石炭、天然ガス、バイオマスをクリーンな石油製品に変換することができ、最も将来性のある石油の代替ルートの1つとして考えられている。20世紀の20年代、FischerとTropschにより、合成ガスを原料として触媒と適切な条件下で炭化水素化合物(液体燃料)を合成する合成ルートが開発されたが、フィッシャー・トロプシュ合成と呼ばれている。該ルートは最初に非石油資源から合成ガスを製造し、次にCOの接触水素化によって液体燃料を生成する。該一炭素合成ルートは、環境に優しく、反応条件が温和であり、原子経済性が高いという利点があるだけでなく、世界のエネルギー構造を調整し、石油資源に対する依存性を改善するために重要な戦略的意味がある。ところが、従来のフィッシャー・トロプシュ合成生成物の分布はAnderson−Schulz−Flory(ASF)分布を満たし、これは、ASF分布における航空灯油の選択的理論値が40%未満であることを意味し、フィッシャー・トロプシュ反応による航空灯油の産業化生産を妨げるからである。以上から分かるように、如何に従来のフィッシャー・トロプシュ反応のASF分布を打破するかは、合成ガスから製造される航空灯油の産業化を実現する重要なポイントであり、合成ガスから製造される航空灯油の反応において触媒の開発は従来のフィッシャー・トロプシュ反応のASF分布を打破する重要なポイントである。
【0003】
研究によれば、合成ガスから航空灯油を直接製造するためには、従来のASF分布を打破し、生成物をC〜C16区間に集中させる必要があることが明らかになった。例えば、富山大学では、航空灯油の選択性を向上させるために、反応器にオレフィンを注入する方法を用いることによってASF分布曲線を航空灯油の分布区間に移動させている(J.Li、G.Yang、Y.Yoneyama、T.Vitidsant、N.Tsubaki、Fuel、2016、171:159〜166)。但し、この方法は追加でオレフィンを注入する付加のプロセスが必要であり、固定床反応器に適用せず、使用性が低い。
【0004】
周知のように、合成ガスから航空灯油を製造する際には強い発熱反応が発生し、副生成物の水が生成し、コバルト系単一金属触媒は酸化しやすいため、反応において、凝集し、焼結し、不活性化しやすく、一般的にフィッシャー・トロプシュ反応はASF分布を満たし、目的生成物の選択性が低く、航空灯油の合成におけるこのルートの大規模な使用を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の上記状況に鑑みて、本発明の発明者は、合成ガスから航空灯油を製造する際に使用される触媒の新しい製造方法を発見するために、合成ガスから航空灯油を製造する際に使用される触媒について広範囲にわたる詳細な研究を実施し、該方法により製造される触媒が合成ガスから製造される航空灯油に用いられる時、従来のフィッシャー・トロプシュ反応のASF分布を打破し、航空灯油の高選択性を得ることができ、さらに許容可能又はより高いCO転化率を得ることができる。本発明者は、合成ガスから航空灯油を製造する際に使用される触媒を製造する場合、まず弱酸と強塩基で担体を熱処理し、次に助触媒と触媒活性金属を担持することによって、製造された触媒を合成ガスから製造される航空灯油に用いる時、従来のフィッシャー・トロプシュ反応のASF分布を打破し、航空灯油の高選択性を得ることができ、さらに許容可能又はより高いCO転化率を得ることができることを発見した。本発明は前記発見に基づいて実現されたものである。
【0006】
そのため、本発明の一つの目的は合成ガスから航空灯油を製造する際に使用される触媒の製造方法を提供することである。該方法は、まず弱酸と強塩基で担体を熱処理し、次に助触媒と触媒活性金属を担持することによって、製造された触媒を合成ガスから航空灯油を製造する際に用いる場合、従来のフィッシャー・トロプシュ反応のASF分布を打破し、航空灯油の高選択性を得ることができ、さらに許容可能又はより高いCO転化率を得ることができる。
【0007】
本発明のもう一つの目的は本発明の方法により製造された、合成ガスから製造される航空灯油用触媒を提供することである。該触媒を合成ガスから製造される航空灯油に用いる場合、従来のフィッシャー・トロプシュ反応のASF分布を打破し、航空灯油の高選択性を得ることができ、さらに許容可能又はより高いCO転化率を得ることができる。
【0008】
本発明の最後の目的は本発明の方法により製造される触媒を合成ガスから航空灯油を製造する際に触媒とする用途を提供することである。該触媒を合成ガスから航空灯油を製造する際に用いる場合、従来のフィッシャー・トロプシュ反応のASF分布を打破し、航空灯油の高選択性を得ることができ、さらに許容可能又はより高いCO転化率を得ることができる。
【0009】
本発明の上記目的を実現する技術的解決手段を以下のようにまとめることができる。
【0010】
1.合成ガスから航空灯油を製造する際に使用される触媒の製造方法であって、該触媒は担体、該担体に担持された触媒活性成分と助触媒を含む担持型触媒であり、該触媒の全重量に基づき、該触媒は、
(A)元素として1〜50wt%の、Ru、Fe、Ni、Co、Pt及びPdから選ばれる1つ又は複数の元素である触媒活性成分、
(B)元素として1〜20wt%の、触媒活性成分と異なる、周期律表の第一族金属元素、遷移元素及びランタノイド元素から選ばれる1つ又は複数の元素である助触媒、
及び(C)担体、を含み、
前記触媒の製造方法は以下のステップを含み、
(1)解離定数Kが1.0×10−3〜1.0×10−1の弱酸水溶液で担体を熱処理すること、
(2)アルカリ金属水酸化物水溶液を用いてアルカリ性条件下でステップ(1)の処理により得られた担体を熱処理すること、
(3)助触媒とする金属元素を担持するために、ステップ(2)において得られた生成物を助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液と直接接触させ、又はステップ(2)において得られた生成物を濾過し、洗浄し、乾燥した後に助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液と接触させること、
(4)触媒活性成分とする金属元素を担持するために、ステップ(3)において得られた生成物を濾過し、洗浄し、乾燥し、焼成した後、さらに触媒活性成分とする金属元素の水溶性金属塩自体又はその溶液と接触させること、及び
(5)ステップ(4)において得られた生成物を焼成し、触媒を得る、
ことを特徴とする方法。
【0011】
2.該触媒の全重量に基づき、該触媒は、
(A)元素として5〜30wt%、より好ましくは12〜18wt%の触媒活性成分、
(B)元素として1〜15wt%、より好ましくは8〜12wt%の助触媒、及び
(C)60〜94wt%、より好ましくは70〜80wt%の担体、を含む、
第1項に記載の方法。
【0012】
3.触媒活性成分はNi、Co及びFeから選ばれる1つ又は複数の元素であり、特にCo、Fe又はその組み合わせであり、及び/又は、助触媒はNa、K、La、Ce及びMnから選ばれる1つ又は複数の元素であり、特にLa、Ce又はその組み合わせであり、及び/又は、
担体はカーボンナノチューブ、グラフェン、活性炭、SiO、Al、ZrO、炭化ケイ素、TiO及びモレキュラーシービングから選ばれる1つ又は複数であり、好ましくは1つ又は複数のモレキュラーシービングであり、特にY型モレキュラーシービング、クリノプチロライト、モルデナイト及びZSM−5の1つ又は複数であり、助触媒がTiである場合、担体はTiOでなく、助触媒がZrである場合、担体はZrOでない前提とする、
第1項又は第2項に記載の方法。
【0013】
4.触媒活性成分の水溶性金属塩は硝酸塩、酢酸塩、塩化物塩、それらの水和物又はその任意の混合物であり、好ましくは硝酸塩又はその水合物であり、及び/又は、助触媒の水溶性塩は硝酸塩、酢酸塩、塩化物塩、それらの水和物又はその任意の混合物であり、好ましくは硝酸塩又はその水合物である、
第1〜3項のいずれか1項に記載の方法。
【0014】
5.ステップ(1)において前記弱酸は有機弱酸であり、好ましくはシュウ酸、フェニルヘキサカルボン酸、マレイン酸、サリチル酸及びEDTAから選ばれる1つ又は複数であり、特にEDTAであり、及び/又はステップ(1)における弱酸水溶液の濃度は0.04〜0.5mol/Lであり、好ましくは0.04〜0.1mol/Lであり、及び/又はステップ(1)における熱処理は還流温度を超えない条件下で行われ、好ましくは40〜100℃、より好ましくは70〜100℃の温度下で行われ、及び/又はステップ(1)における熱処理は1〜10時間、好ましくは4〜10時間行われる、
第1〜4項のいずれか1項に記載の方法。
【0015】
6.ステップ(2)においてアルカリ金属水酸化物は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はその組み合わせであり、好ましくは水酸化ナトリウムであり、及び/又は、アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度は0.1〜1mol/Lであり、好ましくは0.1〜0.5mol/Lであり、及び/又は、ステップ(2)における熱処理は40〜100℃で行われ、好ましくは40〜80℃で行われ、及び/又は、ステップ(2)における熱処理の時間は0.1〜2時間であり、好ましくは0.1〜1時間である、
第1〜5項のいずれか1項に記載の方法。
【0016】
7.助触媒とする金属元素を担持するために、ステップ(2)の熱処理を行う前、ステップ(1)の処理により得られた担体を濾過し、洗浄し、乾燥し、及び/又は、ステップ(3)において、ステップ(2)において得られた生成物を濾過し、洗浄し、乾燥した後に、さらに助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液と接触させる、
第1〜6項のいずれか1項に記載の方法。
【0017】
8.ステップ(3)において、助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液の濃度は0.1〜4mol/Lであり、好ましくは0.5〜2mol/Lであり、ステップ(3)において、担体と助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液との接触は40〜100℃で行われ、好ましくは40〜80℃で行われ、及び/又は、担体と助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液との接触は2〜24時間行われ、好ましくは4〜12時間行われる、
第1〜7項のいずれか1項に記載の方法。
【0018】
9.ステップ(4)において、触媒活性成分とする金属元素の水溶性金属塩は溶融状態でステップ(3)において得られた生成物と接触し、好ましくは触媒活性成分とする金属元素の水溶性金属塩をステップ(3)において得られた生成物と混合した後にさらに密閉した容器内で溶融させる、
第1〜8項のいずれか1項に記載の方法。
【0019】
10.ステップ(2)、(3)及び(4)における乾燥はそれぞれ独立して60〜120℃の条件下で行われ、及び/又は、ステップ(4)及びステップ(5)における焼成はそれぞれ独立して350〜650℃で行われ、好ましくはステップ(4)における焼成は450〜650℃で行われ、ステップ(5)における焼成は350〜500℃で行われる、
第1〜9項のいずれか1項に記載の方法。
【0020】
11.第1〜10項のいずれか1項に記載の方法により製造される触媒。
【0021】
12.第1〜10項のいずれか1項に記載の方法により製造される触媒の、合成ガスから製造される航空灯油における用途。
【0022】
13.合成ガスから製造される航空灯油の反応において、H/COのモル比は1〜5であり、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1以上2未満である、
第12項に記載の用途。
【0023】
14.合成ガスから製造される航空灯油の反応において、反応圧力は1〜5MPa(ゲージ圧)であり、反応温度は150〜350℃であり、及びW/Fは5〜20gh mol−1であり、好ましくは、反応圧力は1〜3MPa(ゲージ圧)であり、反応温度は200〜300℃であり、及びW/Fは8〜15gh mol−1である、
第12項又は第13項に記載の用途。
【0024】
本発明のこれら及びその他の目的、特徴及び利点は、以下の内容に組み合わせて本発明を考慮して、当業者に理解される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一態様によれば、合成ガスから航空灯油を製造する際に使用される触媒の製造方法を提供し、該触媒は担体、当該担体に担持された触媒活性成分と助触媒を含む担持型触媒であり、該触媒の全重量に基づき、該触媒は、
(A)元素として1〜50wt%の、Ru、Fe、Ni、Co、Pt及びPdから選ばれる1つ又は複数の元素である触媒活性成分、
(B)元素として1〜20wt%の、触媒活性成分と異なる、周期律表の第一族金属元素、遷移元素及びランタノイド元素から選ばれる1つ又は複数の元素である助触媒、及び
(C)担体、を含む。
【0026】
前記触媒の製造方法が以下のステップを含み、
(1)解離定数Kが1.0×10−3〜1.0×10−1の弱酸水溶液で担体を熱処理すること、
(2)アルカリ金属水酸化物水溶液を用いてアルカリ性条件下でステップ(1)の処理により得られた担体を熱処理すること、
(3)助触媒とする金属元素を担持するために、ステップ(2)において得られた生成物を助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液と直接接触させ、又はステップ(2)において得られた生成物を濾過し、洗浄し、乾燥した後に助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液と接触させること、
(4)触媒活性成分とする金属元素を担持するために、ステップ(3)において得られた生成物を濾過し、洗浄し、乾燥し、焼成した後、さらに触媒活性成分とする金属元素の水溶性金属塩自体又はその溶液と接触させること、及び
(5)ステップ(4)において得られた生成物を焼成し、触媒を得る、
ことを特徴とする方法。
【0027】
本発明にかかる触媒は触媒活性成分、助触媒及び担体を含む担持型触媒であり、前記触媒活性成分と助触媒は担体に担持されている。触媒活性成分として、一般的にRu、Fe、Ni、Co、Pt及びPdから選ばれる1つ又は複数の元素であり、好ましくはCo、Ni及びFeから選ばれる1つ又は複数の元素であり、特にCo及び/又はFeである。触媒活性成分は、単体として触媒内に存在してもよく、酸化物などの化合物の形態として触媒内に存在してもよく、又は両者の混合物の形態として触媒内に存在してもよい。元素として、触媒の全重量に基づき、本発明にかかる触媒は一般的に1〜50wt%の触媒活性成分、好ましくは5〜30wt%、より好ましくは12〜18wt%の触媒活性成分を含む。
【0028】
本発明にかかる触媒はさらに助触媒を含む。助触媒の存在はさらに合成ガスから航空灯油を製造する際の航空灯油の選択性を向上させることができ、CO転化率を向上させる場合もある。助触媒として、一般的に触媒活性成分と異なる、周期律表の第一族金属元素、遷移元素及びランタノイド元素から選ばれる1つ又は複数の元素である。第一族金属元素はLi、Na及びKを含む。第一族金属元素を助触媒とする場合、好ましくはNa及び/又はKである。遷移元素とは、周期律表におけるdブロックの一連の金属元素を指し、このブロックは3〜12族の合計10族の元素を含むが、fブロック内の遷移元素を含まず、即ちランタノイド元素とアクチニド元素を含まない。遷移元素としてSc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Os、Rh、Ir、Zn、Cd及びHgを挙げることができる。遷移金属を助触媒とする場合、好ましくはMo、Mn及びZnから選ばれる1つ又は複数であり、特に好ましくはMo及び/又はMnである。ランタノイド元素としてLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuを挙げることができる。ランタノイド元素を助触媒とする場合、好ましくはLa、Ce、Pr及びTbから選ばれる1つ又は複数であり、特に好ましくはLa及び/又はCeである。本発明の好ましい一実施形態において、助触媒はNa、K、La、Ce及びMnから選ばれる1つ又は複数の元素であり、特にLa、Ce又はその組み合わせである。助触媒は単体として触媒内に存在してもよく、酸化物などの化合物の形態として触媒内に存在してもよく、又は両者の混合物の形態として触媒内に存在してもよい。元素として、触媒の全重量に基づき、本発明にかかる触媒は一般的に1〜20wt%の助触媒、好ましくは1〜15wt%、より好ましくは8〜12wt%の助触媒を含む。
【0029】
本発明にかかる触媒は担持型触媒であり、触媒活性成分と助触媒は担体に担持されている。担体として、合成ガスから航空灯油を接触合成する際に使用される触媒に適する任意の担体であってもよい。担体は、好ましくはカーボンナノチューブ、グラフェン、活性炭、SiO、Al、ZrO、SiC及びモレキュラーシービングから選ばれる1つ又は複数の担体であり、より好ましくは1つ又は複数のモレキュラーシービング担体、特にY型モレキュラーシービング、クリノプチロライト、モルデナイト及びZSM−5から選ばれる1つ及び複数の担体であり、前提として、助触媒がTiである場合、担体はTiOでなく、助触媒がZrである場合、担体はZrOでない。触媒の全重量に基づき、本発明にかかる触媒は一般的に40〜98wt%の担体、好ましくは60〜94wt%、より好ましくは70〜80wt%の担体を含む。
【0030】
本発明にかかる触媒は、まず弱酸と強塩基で担体を熱処理し、次に助触媒と触媒活性金属を担持することによって、製造された触媒を合成ガスから製造される航空灯油に用いる場合、従来のフィッシャー・トロプシュ反応のASF分布を打破し、航空灯油の高選択性を得ることができ、さらに許容可能又はより高いCO転化率を得ることができる。そのため、一般的に以下のステップを含む方法により本発明にかかる触媒を製造する。
【0031】
(1)解離定数Kが1.0×10−3〜1.0×10−1の弱酸水溶液で担体を熱処理すること、
(2)アルカリ金属水酸化物水溶液を用いてアルカリ性条件下でステップ(1)の処理により得られた担体を熱処理すること、
(3)助触媒とする金属元素を担持するために、ステップ(2)において得られた生成物を助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液と直接接触させ、又はステップ(2)において得られた生成物を濾過し、洗浄し、乾燥した後に助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液と接触させること、
(4)触媒活性成分とする金属元素を担持するために、ステップ(3)において得られた生成物を濾過し、洗浄し、乾燥し、焼成した後、さらに触媒活性成分とする金属元素の水溶性金属塩自体又はその溶液と接触させること、及び
(5)ステップ(4)において得られた生成物を焼成し、触媒を得る。
【0032】
まず、ステップ(1)において、解離定数K(25℃で、弱電解質が溶液においてイオン化平衡に達した時、溶液における様々なイオン濃度の積の、溶液における非イオン化分子の濃度に対する比率)が1.0×10−3〜1.0×10−1の弱酸水溶液で担体を熱処理する必要がある。ここでの弱酸として、有機弱酸を効果的に使用し、特にシュウ酸、フェニルヘキサカルボン酸、マレイン酸、サリチル酸及びEDTA(エチレンジアミン四酢酸)から選ばれる1つ又は複数、特にEDTAを用いることができる。該熱処理において、弱酸水溶液の濃度は、一般的に0.04〜0.5mol/Lであり、好ましくは0.04〜0.1mol/Lである。ここでの熱処理は、一般的に室温より高い温度又は昇温する温度下で行うことを要求する。但し、該温度は一般的に還流温度を超えず、例えば、熱処理温度は40〜100℃であり、好ましくは70〜100℃である。熱処理時間は、一般的に1〜10時間であり、好ましくは4〜10時間である。
【0033】
ステップ(1)の熱処理が完了した後、アルカリ金属水酸化物水溶液を用いてアルカリ性条件下でステップ(1)の処理により得られた担体を直接熱処理してもよく、ステップ(1)の処理により得られた担体を濾過し、洗浄し、乾燥した後にアルカリ金属水酸化物水溶液を用いてアルカリ性条件下で熱処理してもよく、好ましくは後者である。ここで言う「直接」とは、ステップ(1)において得られた生成物を分離することなく(例えば、濾過、洗浄及び乾燥から選ばれる任意の工程も行わない)、アルカリ金属水酸化物水溶液を用いてアルカリ性条件下で熱処理することを指す。ここでの洗浄として、脱イオン水等で洗浄することができ、洗浄は1回行ってもよく、複数回行ってもよい。洗浄を減圧下で行い、例えば、吸引濾過条件下で行うことが有利である。ここでの乾燥として、一般的に洗浄後の固体を60〜120℃の温度下で10〜48時間乾燥し、好ましくは10〜24時間乾燥する。
【0034】
ステップ(2)において、アルカリ金属水酸化物水溶液を用いてアルカリ性条件下でステップ(1)の処理により得られた担体を熱処理する。ここでのアルカリ金属水酸化物として、一般的に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はその組み合わせを用いることができ、好ましくは水酸化ナトリウムである。アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度は、一般的に0.1〜1mol/Lであり、好ましくは0.1〜0.5mol/Lである。該熱処理は一般的に40〜100℃で行い、好ましくは40〜80℃で行うことができる。該熱処理の時間は一般的に0.1〜2時間であり、好ましくは0.1〜1時間である。
【0035】
ステップ(3)において、助触媒とする金属元素を担持するために、ステップ(2)において得られた生成物を助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液と直接接触させ、又はステップ(2)において得られた生成物を濾過し、洗浄し、乾燥した後に助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液と接触させる。ここで言う「直接」とは、ステップ(2)において得られた生成物を分離することなく(例えば、濾過、洗浄及び乾燥から選ばれる任意の工程も行わない)、助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液と接触させることを指す。ここでの洗浄として、脱イオン水等で洗浄することができ、洗浄は1回行ってもよく、複数回行ってもよい。洗浄は減圧下で行い、例えば、吸引濾過条件下で行うことが有利である。ここでの乾燥として、一般的に洗浄後の固体を60〜120℃の温度下で10〜48時間乾燥し、好ましくは10〜24時間乾燥する。ステップ(3)において、助触媒とする金属の水溶性金属塩の、水、好ましくは脱イオン水における水溶液を提供する。該水溶性金属塩水溶液の濃度は一般的に0.1〜4mol/Lであり、好ましくは0.5〜2mol/Lである。助触媒の水溶性金属塩は硝酸塩、酢酸塩、塩化物塩、それらの水和物又はその任意の混合物であってもよく、好ましくは硝酸塩、酢酸塩、それらの水和物又はその任意の混合物であり、特に硝酸塩又はその水合物である。ステップ(3)において処理された担体と助触媒とする金属元素の水溶性塩の水溶液との接触は、一般的に40〜100℃で行われ、好ましくは40〜80℃で行われる。該接触時間は一般的に2〜24時間であり、好ましくは4〜12時間である。
【0036】
ステップ(4)において、触媒活性成分とする金属元素を担持するために、ステップ(3)において得られた生成物を濾過し、洗浄し、乾燥し、焼成した後、さらに触媒活性成分とする金属元素の水溶性金属塩自体又はその溶液と接触させる。ここでの洗浄として、脱イオン水等で洗浄することができ、洗浄は1回行ってもよく、複数回行ってもよい。洗浄は減圧下で行い、例えば吸引濾過条件下で行うことが有利である。ここでの乾燥として、一般的に洗浄後の固体を60〜120℃の温度下で10〜48時間乾燥し、好ましくは10〜24時間乾燥する。ここでの焼成として、焼成温度は一般的に350〜650℃であり、好ましくは450〜650℃である。焼成時間は一般的に2〜8時間であり、好ましくは4〜8時間である。触媒活性成分とする金属元素の水溶性金属塩は、硝酸塩、酢酸塩、塩化物塩、それらの水和物又はその任意の混合物であってもよく、好ましくは硝酸塩、酢酸塩、それらの水和物又はその任意の混合物であり、特に硝酸塩又はその水合物である。触媒活性成分とする金属元素の水溶性金属塩自体と接触させる時、一般的に該水溶性金属塩を溶融状態(例えば、その融点以上に加熱する)でステップ(3)において得られた生成物と接触又は混合する。該水溶性金属塩をステップ(3)において得られた生成物と混合した後、さらに密閉した容器内で溶融させることが有利である。触媒活性成分とする金属元素の水溶性金属塩の水溶液と接触させる時、触媒活性成分とする金属元素の水溶性金属塩を水溶液として調製し、次にステップ(3)において得られた生成物を該水溶性金属塩の水溶液に浸漬又は浸し、又は該水溶性金属塩の水溶液をステップ(3)において得られた生成物にスプレーする。触媒活性成分とする金属元素の水溶性金属塩の水溶液を用いる時、その濃度は特に制限されず、触媒活性成分とする金属元素を担体に担持することができればよく、一般的に5〜50wt%であってもよく、好ましくは5〜30wt%である。水溶液の形態で接触する温度も特に制限されず、一般的に20〜40℃であってもよい。
【0037】
ステップ(5)において、ステップ(4)において得られた生成物を焼成し、触媒を得る。該焼成は、一般的に350〜650℃で行われ、好ましくは350〜500℃で行われる。焼成時間は、一般的に2〜8時間であり、好ましくは4〜8時間である。焼成雰囲気は、一般的に空気又は不活性雰囲気である。
【0038】
本明細書において、不活性雰囲気とは、焼成条件下で化学反応に関与しない雰囲気を指し、例えば窒素ガス、アルゴンガスである。
【0039】
本発明にかかる触媒は、まず弱酸と強塩基で担体を熱処理し、次に助触媒と触媒活性成分を担持することによって、製造された触媒を合成ガスから航空灯油を製造する際に用いる場合、従来のフィッシャー・トロプシュ反応のASF分布を打破し、航空灯油の高選択性を得ることができ、さらに許容可能又はより高いCO転化率を得ることができる。
【0040】
そのため、本発明の別の態様によれば、本発明にかかる触媒製造方法により製造される触媒を提供する。該触媒に関する全ての特徴は上述の触媒製造の記載と同じである。
【0041】
本発明の最後の態様によれば、本発明の方法により製造される触媒の、合成ガスから製造される航空灯油における用途を提供する。
【0042】
本発明にかかる触媒は、触媒内の触媒活性成分及び任意に存在する助触媒が単体形態を呈するように、合成ガスから航空灯油を製造する際に用いられる前に、該触媒を還元させる必要がある。このため、一般的に触媒用水素ガス含有の雰囲気を還元する。還元温度は、一般的に200〜400℃であり、好ましくは250〜350℃である。還元圧力は、一般的に0〜4.0MPaであり、好ましくは0〜1.0MPaのゲージ圧である。還元時間は、一般的に3〜12時間であり、好ましくは6〜12時間である。還元雰囲気には、純粋な水素ガスを用いてもよく、水素ガス含有の混合ガスを用いてもよい。還元後、触媒内の触媒活性成分と助触媒は単体形態を呈し、触媒活性を示す。
【0043】
本発明にかかる触媒を使用し合成ガスから航空灯油を製造する反応において、H/COのモル比は、一般的に1〜5であり、好ましくは1〜3である。該モル比が2未満である場合は、モル比が2以上の場合に比べて、さらに該反応の航空灯油の選択性を向上させることができる。そのため、本発明の好ましい一実施形態において、H/COのモル比は1以上2未満である。該合成反応の反応圧力は、一般的に1〜5MPa(ゲージ圧)であり、好ましくは1〜3MPa(ゲージ圧)である。該合成反応の温度は、一般的に150〜350℃であり、好ましくは200〜300℃である。該合成反応のW/F(ガス毎時空間速度)は、一般的に5〜20gh mol−1であり、好ましくは8〜15gh mol−1である。好ましい一実施形態において、合成ガスから航空灯油を製造する際の反応において、反応圧力は1〜5MPa(ゲージ圧)であり、反応温度は150〜350℃であり、及びW/Fは5〜20gh mol−1である。より好ましい一実施形態において、合成ガスから航空灯油を製造する際の反応において、反応圧力は1〜3MPa(ゲージ圧)であり、反応温度は200〜300℃であり、及びW/Fは8〜15gh mol−1である。
【0044】
従来技術に対して、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0045】
合成ガスから航空灯油を製造する際には強い発熱反応が発生し、副生成物の水を生成し、コバルト系単一金属触媒は酸化しやすいため、反応において、凝集し、焼結し、不活性化しやすく、一般的にフィッシャー・トロプシュ反応はASF分布を満たし、目的生成物(即ち航空灯油)の選択性が低く、理論値は40%を超えない。本発明において、まず弱酸と強塩基で担体を熱処理し、次に触媒活性成分(Ru、Fe、Ni、Co、Pt、Pd又はその任意の組み合わせ)と助触媒を担持することによって、高分散性の合成ガスから航空灯油を製造する際に使用される触媒を得ることができ、反応プロセスにおける触媒の安定性が低いという問題の解決に役立ち、触媒の安定性を向上させ、従来のフィッシャー・トロプシュ反応のASF分布を打破することができ、特に航空灯油の高選択性を得ることができ、さらに許容可能又はより高いCO転化率を得ることもできる。
【0046】
実施例
以下、具体的な実施例に合わせて本発明をさらに説明するが、それを本発明の保護範囲を制限するためのものとして理解してはならない。
【0047】
実施例1
触媒の製造
EDTAを脱イオン水で濃度0.07mol/Lの溶液Iに調製し、6.7gのY型モレキュラーシービング(東ソー株式会社、HSZ−320NAA)を秤量し、溶液Iに入れて6時間還流撹拌した後に濾過し、脱イオン水で洗浄し、次に120℃で乾燥した。NaOHを脱イオン水で濃度0.4mol/Lの溶液IIに調製し、3.4gの前記処理後のY型モレキュラーシービングを入れ、40℃で30分混合撹拌した後に濾過し、脱イオン水で洗浄し、次に120℃で乾燥した後に前駆体aを得た。硝酸マンガンを脱イオン水で濃度1mol/Lの溶液IIIに調製した。溶液IIIに1gの前駆体aを加え、80℃で12時間保持した後に濾過し、脱イオン水で洗浄し、次に120℃で乾燥した後に前駆体bを得た。前駆体bを空気雰囲気下650℃で6時間焼成した。次に1gの得られたものと1.72gの硝酸コバルト六水和物を秤量し、粉砕ボウルに入れ、30分粉砕した。得られた生成物を密閉したガラス瓶に置き、60℃の条件下で48時間溶融させた。次に管状炉内にて窒素雰囲気下400℃で4時間焼成し、触媒Aを得たが、元素として15wt%のCoと10%重量のMnを含んだ。
【0048】
触媒還元と反応
得られた触媒Aの合計0.5グラムを径9ミリメートルの直立管状反応器内に入れ、触媒Aを固定床により設置した。管状反応器の上部入口から水素ガスを入れ、温度400℃とゲージ圧0MPa下で触媒Aを8時間持続的に還元させた。触媒Aが還元された後、温度を250℃に降下させ、合成ガスを入れ、H/COのモル比が1であり、反応圧力が2MPa(ゲージ圧)であり、反応温度が250℃であり、及びW/Fが10gh mol−1の条件下で連続的に反応させた。反応結果は表1に示すとおりである。
【0049】
実施例2
実施例1における触媒の製造を繰り返したが、相違点は、1mol/Lの硝酸ナトリウム水溶液で溶液IIIを代替することである。最終的に触媒Bを得たが、元素として15wt%のCoと10wt%のNaを含んだ。
【0050】
触媒還元と反応
実施例1における触媒還元と反応工程を繰り返したが、相違点は、触媒Bで触媒Aを代替することである。反応結果は表1に示すとおりである。
【0051】
実施例3
実施例1における触媒の製造を繰り返したが、相違点は、1mol/Lの硝酸セリウム水溶液で溶液IIIを代替することである。最終的に触媒Cを得たが、元素として15wt%のCoと10wt%のCeを含んだ。
【0052】
触媒還元と反応
実施例1における触媒還元と反応工程を繰り返したが、相違点は、触媒Cで触媒Aを代替することである。反応結果は表1に示すとおりである。
【0053】
実施例4
実施例1における触媒の製造を繰り返したが、相違点は、1mol/Lの硝酸ランタン水溶液で溶液IIIを代替することである。最終的に触媒Dを得たが、元素として15wt%のCoと10wt%のLaを含んだ。
【0054】
触媒還元と反応
実施例1における触媒還元と反応工程を繰り返したが、相違点は、触媒Dで触媒Aを代替することである。反応結果は表1に示すとおりである。
【0055】
実施例5
実施例1における触媒の製造を繰り返したが、相違点は、1mol/Lの硝酸リチウム水溶液で溶液IIIを代替することである。最終的に触媒Eを得たが、元素として15wt%のCoと10wt%のLiを含んだ。
【0056】
触媒還元と反応
実施例1における触媒還元と反応工程を繰り返したが、相違点は、触媒Eで触媒Aを代替することである。反応結果は表1に示すとおりである。
【0057】
実施例6
実施例1における触媒の製造を繰り返したが、相違点は、1mol/Lの硝酸カリウム水溶液で溶液IIIを代替することである。最終的に触媒Fを得たが、元素として15wt%のCoと10wt%のKを含んだ。
【0058】
触媒還元と反応
実施例1における触媒還元と反応工程を繰り返したが、相違点は、触媒Fで触媒Aを代替することである。反応結果は表1に示すとおりである。
【0059】
比較例1
1gのY型モレキュラーシービング(東ソー株式会社、HSZ−320NAA)と1.72gの硝酸コバルト六水和物を秤量し、粉砕ボウルに入れ、30分粉砕した。得られた生成物を密閉したガラス瓶に置き、60℃の条件下で48時間溶融させた。次に管状炉において窒素雰囲気下400℃で4時間焼成し、触媒C−Aを得たが、元素として15wt%のCoを含んだ。
【0060】
触媒還元と反応
実施例1における触媒還元と反応工程を繰り返したが、相違点は、触媒C−Aで触媒Aを代替することである。反応結果は表1に示すとおりである。
【0061】
比較例2
EDTAを脱イオン水で濃度0.07mol/Lの溶液Iに調製し、3.4gのY型モレキュラーシービング(東ソー株式会社、HSZ−320NAA)を秤量し、溶液Iに入れて6時間還流撹拌した後に濾過し、脱イオン水で洗浄し、次に120℃で乾燥した後に前駆体aを得た。硝酸ナトリウムを脱イオン水で濃度1mol/Lの溶液IIに調製した。溶液IIに1gの前駆体aを入れ、80℃下で12時間保持した後に濾過し、脱イオン水で洗浄し、次に120℃で乾燥した後に前駆体bを得た。前駆体bを空気雰囲気下650℃で6時間焼成した。次に1gの得られたものと1.72gの硝酸コバルト六水和物を秤量し、粉砕ボウルに入れ、30分粉砕した。得られた生成物を密閉したガラス瓶に置き、60℃の条件下で48時間溶融させた。次に管状炉において窒素雰囲気下400℃で4時間焼成し、触媒C−Bを得たが、元素として15wt%のCoと10wt%のNaを含んだ。
【0062】
触媒還元と反応
実施例1における触媒還元と反応工程を繰り返したが、相違点は、触媒C−Bで触媒Aを代替することである。反応結果は表1に示すとおりである。
【0063】
比較例3
NaOHを脱イオン水で濃度0.4mol/Lの溶液Iに調製し、6.7gのY型モレキュラーシービング(東ソー株式会社、HSZ−320NAA)を秤量し、溶液Iに入れて40℃で30分混合撹拌した後に濾過し、脱イオン水で洗浄し、次に120℃で乾燥した後に前駆体aを得た。硝酸ナトリウムを脱イオン水で濃度1mol/Lの溶液IIに調製した。溶液IIに1gの前駆体aを加え、80℃で12時間保持した後に濾過し、脱イオン水で洗浄し、次に120℃で乾燥した後に前駆体bを得た。前駆体bを空気雰囲気下650℃で6時間焼成した。次に1gの得られたものと1.72gの硝酸コバルト六水和物を秤量し、粉砕ボウルに入れ、30分粉砕した。得られた生成物を密閉したガラス瓶に置き、60℃条件下で48時間溶融させた。次に管状炉において窒素雰囲気下400℃で4時間焼成し、触媒C−Cを得たが、元素として15wt%のCoと10wt%のNaを含んだ。
【0064】
触媒還元と反応
実施例1における触媒還元と反応工程を繰り返したが、相違点は、触媒C−Cで触媒Aを代替することである。反応結果は表1に示すとおりである。
【0065】
比較例4
1gのY型モレキュラーシービング(東ソー株式会社、HSZ−320NAA)を測り取り、1.72gの硝酸コバルト六水和物を含む硝酸コバルト飽和水溶液に浸漬した後に乾燥した。次に管状炉において窒素雰囲気下400℃で4時間焼成し、触媒C−Dを得たが、元素として15wt%のCoを含んだ。
【0066】
触媒還元と反応
実施例1における触媒還元と反応工程を繰り返したが、相違点は、触媒C−Dで触媒Aを代替することである。反応結果は表1に示すとおりである。
【0067】
比較例5
硝酸ナトリウムを脱イオン水で濃度1mol/Lの溶液Iに調製した。溶液Iに1gのY型モレキュラーシービング(東ソー株式会社、HSZ−320NAA)を加え、80℃で12時間保持した後に濾過し、脱イオン水で洗浄し、次に120℃で乾燥した後に前駆体aを得た。前駆体aを空気雰囲気下650℃で6時間焼成した。次に1gの得られたものと1.72gの硝酸コバルト六水和物を秤量し、粉砕ボウルに入れ、30分粉砕した。得られた生成物を密閉したガラス瓶に入れ、60℃条件下で48時間溶融させた。次に管状炉において窒素雰囲気下400℃で4時間焼成し、触媒C−Eを得たが、元素として15wt%のCoと10wt%のNaを含んだ。
【0068】
触媒還元と反応
実施例1における触媒還元と反応工程を繰り返したが、相違点は、触媒C−Eで触媒Aを代替することである。反応結果は表1に示すとおりである。
【0069】
【表1】
【0070】
a:航空灯油成分におけるイソ/ノルマル比、即ち生成物成分がC〜C16の炭化水素系におけるイソ炭化水素系とノルマル炭化水素系とのモル比であり、イソ/ノルマル比が高く、燃料の氷点が低いほど、航空機の使用に役立つ。
【国際調査報告】