【実施例】
【0331】
ここまで概して本発明を説明しているが、それは、本発明の特定の態様及び実施形態の説明のみのために含まれ、本発明を限定することが意図されない、以下の実施例への参照により、よりはっきりと理解されるであろう。
【0332】
実施例1:小分子による鉄輸送の回復は、動物における吸収及びヘモグロビン化を促進する
概要
本実施例は、小分子天然物のヒノキチオールが、そのような勾配を抑えて、細胞への、細胞内及び/または細胞外への鉄輸送を回復させることができることを示す。同じ化合物は、DMT1欠乏ラット及びフェロポーチン欠乏マウスにおける腸鉄吸収、並びにDMT1−及びマイトフェリン欠乏ゼブラフィッシュにおけるヘモグロビン化を促進する。これらの所見は、鉄輸送の小分子媒介部位及び方向選択的回復における一般的な機構の枠組みを示す。これらの所見はまた、鉄のタンパク質トランスポーター、あるいは、他のイオンを欠かせる機能を部分的に模倣する小分子が、ヒト疾患を治療する可能性を有し得ることを示唆する。
【0333】
部位及び方向選択的膜貫通イオン輸送は、局所電気化学的勾配を生成する能動イオン輸送タンパク質と、それらを使用する受動イオン輸送タンパク質との協調的機能を介して、ほとんどの生体系において達成される(1)。受動イオン輸送タンパク質の欠乏は、貧血、嚢胞性線維症、不整脈、及び神経、骨格筋、内分泌、及び腎障害を含む多くのヒト疾患を引き起こす(2〜5)。対応する能動イオン輸送タンパク質は、典型的には、機能を維持するため、これらの欠如しているタンパク質を正常に提供する膜の上流のイオン勾配を蓄積し得る。これらの堅牢なネットワークが、多くのイオン輸送タンパク質の非選択的な性質にもかかわらず、イオン選択的輸送を達成する能力に留意すると(1、2)、イオン輸送を自律的に行うことができる小分子は、そのような勾配を活用して、膜貫通イオンフラックスを部位及び方向選択的に回復させることができたと仮説を立てた(
図1A)。
【0334】
鉄恒常性は、能動及び受動鉄輸送タンパク質と、本質的な使用が可能なそれらの調節物質との動的ネットワークによって維持される一方、この酸化還元活性金属の毒性を最小限にする(2)。鉄排泄の既知の調節機構は存在しないため(6)、全身の鉄レベルは、食事に含まれる鉄吸収の厳格な調節を通じて主に制御される(2、6)。鉄輸送、恒常性、または代謝に関与するタンパク質の欠乏または機能不全は、細胞への、細胞内及び/または細胞外への鉄の移動を妨げることが多く(
図1A)、25個を超えるメンデル病と関連している(表S1)(6〜9)。小分子鉄トランスポーターが、そのような状況において選択的に蓄積する不安定な鉄プール(2)の膜貫通勾配を活用して、細胞への、細胞内及び/または細胞外への鉄の移動を回復させることで、内因性の鉄依存性生理学的プロセスにおけるその使用が可能になるかどうかが問題であった(
図1A)。
【0335】
異なる方向、細胞位置、及び組織における鉄移動を混乱させる3つの疾患関連鉄トランスポーター欠乏を、この試験のために具体的に選択した(2、6)。二価金属トランスポーター1(DMT1、aka Nramp2、DCT1、SLC11A2)の欠乏は、十二指腸腸細胞の頂端側の鉄取り込みを低下させ、赤血球前駆細胞におけるエンドソーム鉄放出を予防する(2、6)。ミトコンドリア内膜におけるマイトフェリン(Mfrn1、aka SLC25A37)欠乏は、ミトコンドリア基質への鉄流入を損なう(10、11)。フェロポーチン(FPN1、aka IReg1、MTP1、SLC40A1)欠乏は、腸上皮及び細網内皮系マクロファージからの鉄流出を低下させる(12〜15)。
【0336】
以前の報告は、デフェリプロン及びピリドキサールイソニコチノイルヒドラゾン(PIH))などの、高用量の親水性鉄キレート剤、並びにサリシルアルデヒドイソニコチノイルヒドラゾン(SIH)などの親油性の高い誘導体が、過剰な鉄に結合して、再配置させ得ることを示唆している(16、17)。しかしながら、これらのキレート剤のうちの多くの対応する錯体は、限られた膜透過を示し、共局在タンパク質が鉄動員を達成する働きを必要とする場合がある(18、19)。あるいは、膜貫通鉄輸送を自律的に行って、上述のタンパク質の各々が欠如している細胞及び動物における生理機能を促進することができる親油性小分子を特定しようとした。
【0337】
酵母における小分子媒介機能的相補性
そのような分子を見つけるため、修正された機能的相補性実験(20)を設計し、ここで、鉄に結合すると知られているかまたは予測される候補化合物を、鉄輸送錯体FetFtr1(fet3Δftr1Δ)が欠如しているSaccharomyces cerevisiae株への増殖を回復させる能力を試験した(21)。デフェリプロン、PIH、及びSIHは、増殖救出を示さなかった(
図7B)。これに対し、Chamaecyparis taiwanensis(タイワンヒノキ)木の精油から野副によって最初に単離された、天然物ヒノキチオール(Hino、β−ツヤプリシン、
図1B)(22)は、非常に効果的であった(
図1C〜E及び
図8A)。この天然物は、広範な他の生物活性を発揮する鉄及び他の金属の強力なキレート剤(23〜26)として以前に特徴付けられている(25〜31)。ヒノキチオールは、発酵及び呼吸状態下(
図1D及び
図8A)、かつ、公知のシデロホアトランスポーターに非依存的に(
図8B)、鉄トランスポーター欠乏酵母への増殖を回復させた(21、32)。ヒノキチオールは、同様の倍加時間により野生型レベルへの増殖を持続的に回復させる(
図1E及び
図8C〜E)。
【0338】
水素化分解によるC−2酸素原子の合成除去により、C2−デオキシヒノキチオールが得られた(C2deOHino、
図1B及び
図8F)。ヒノキチオールとは対照的に、C2deOHinoは、鉄に結合するかまたは鉄を輸送することができないため、陰性対照として機能させた(
図9A、B)。ヒノキチオールは、酵母増殖を用量依存的に回復させる一方、C2deOHinoは、回復させない(
図1F)。ヒノキチオールはまた、C2deOHinoではなく、鉄流入を回復させ(
図1G)、ヒノキチオール媒介増殖は、鉄依存性である(
図8G、H)。増殖回復は、他の親油性α−ヒドロキシケトンで同様に観察されたが、親水性α−ヒドロキシケトンでも、他のイオンを輸送する小分子でも観察されなかった(
図7A〜C及び
図8I)。
【0339】
ヒノキチオールによる鉄結合及び輸送の特徴付け
ヒノキチオールが、第一鉄及び第二鉄に結合して、脂質膜を横断して第一鉄及び第二鉄を輸送する能力をより良く理解するために、生物物理実験を行った。この天然物は、第二鉄または第一鉄を添加する際の色及びUV−Visスペクトルの急激な変化から明らかなように、鉄に速やかに結合して、ヒノキチオール:鉄錯体を形成する(
図2A、B及び
図9A、C)。水溶性鉄キレート剤(17)と異なり、ヒノキチオール:鉄錯体は、水上の無極性溶媒中に優勢的に分配する(
図2A及び
図8I)。例えば、95%超のヒノキチオール:鉄錯体は、水上のオクタノール中に分配する一方、デフェリプロン:鉄錯体は、あるいは、水中に95%超の分配を呈する(
図8I)。これは、ICP−MS分析を介して決定されたように、水性層から有機層へのヒノキチオール:鉄錯体の定量的抽出と合致する(
図9D)。
【0340】
ヒノキチオールは、第一鉄及び第二鉄に強く結合し、第一鉄では、K
A=5.1×10
15、第二鉄では、K
A=5.8×10
25であり、後者は、デフェリプロンよりも一桁を超えて強力である(
図9E〜H及び表2)。その高親和性と合致して、ヒノキチオールは、不安定な鉄プールを構成する鉄クエン酸錯体から鉄を除去する(
図9A)。緩衝溶液中で、競合実験は、ヒノキチオールが、鉄結合タンパク質であるトランスフェリン及びフェリチンから鉄を除去することもできるが、ヒノキチオールを、トランスフェリンに比べて1,000倍超過剰に、フェリチンに比べて1,000,000倍超過剰に使用した場合のみであることを示す(
図9I〜K)。ヒノキチオールは、pKa=7.33を有し、中性及び陰イオン状態の両方が、生理学的条件下でアクセス可能であることを示唆する(
図9L)。さらに、ヒノキチオールに結合した
56Feは、溶液中の
55Feと容易に置換され、20%超の置換が、10分以内に観察された(
図9M)。従って、生理学的条件下のヒノキチオールによる鉄の結合は、非常に動的であると予想され、ヒノキチオール錯体から鉄結合タンパク質への鉄の簡単に放出、及び鉄関連生理学的プロセスにおけるその後の使用を可能にし得る。
【0341】
ヒノキチオールは、モデルリポソーム膜を横断して第一鉄及び第二鉄の両方を自律的に輸送する一方、C2deOHino、デフェリプロン、及びPIHは、最小輸送を示す(
図2C、D)。輸送活性錯体はまだ特定されていないが、種形成研究は、水性緩衝液中の3:1 Hino:Fe
III錯体の優勢的な形成と合致する(
図9N、O)。トリス(ヒナコラト)鉄(III)のX線結晶構造分析は、一対のC
1−対称錯体を明らかにし、各々は、親水性の鉄結合中心コアを包み込む親油性の外側シェルからなった(
図2E及び
図9P)。
【0342】
ヒノキチオールは、多数の二価金属に結合し、輸送することができる広域のスペクトルメタロフォアである(
図10A〜I、及び表S3)。ヒノキチオールは、Fe
IIよりもCu
IIに10倍以上競合的に結合し、リポソーム中でFe
IIよりもCu
IIを80倍速く輸送したが、銅の低アクセシビリティは、インビボでの高い鉄選択性をもたらす可能性がある。具体的に、サイトゾルの不安定な銅プールは、鉄よりも100億倍低い(表S3)(33〜35)。これは、並外れた親和性及び選択性でCu
IIに結合するトランスポーター、シャペロン、貯蔵タンパク質、流出タンパク質、及び調節物質の堅牢なネットワークによるものである(35)。例えば、酵母銅恒常性の調節に不可欠である転写活性物質Mac1は、9.7×10
−20MのK
Dで銅に結合する(35)。ヒノキチオールによるfet3Δftr1Δ酵母を処理する際に、細胞内鉄レベルは、ビヒクル処理対照に比べて増加した一方、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、及び銅のレベルは、変化しなかった(
図10J)。
【0343】
水性系におけるFe(Hino)
3の酸化還元電位は、遊離鉄の+770mVと比較して、−361mVまで低下すると推定される(
図2F、
図11A〜J、及び表S2、4〜6)。これと合致して、還元環境において、鉄(III)の還元は、ヒノキチオールの存在下で遅くなるが、2時間未満ではまだほぼ定量的である(
図11K、L)。さらに、酸化還元電位は、pHの減少及びヒノキチオール濃度の減少に伴って増加する(
図11F、I、J及び表S4、5)。まとめると、これらのデータは、第二鉄及び第一鉄の両方が、生理学的条件下で、ヒノキチオールの存在下で容易にアクセスできる必要があることを示唆する。
【0344】
鉄輸送の回復は、細胞における吸収及びヘモグロビン化を促進する
従って、ヒノキチオールが、DMT1、Mfrn1、またはFPN1が欠乏している哺乳動物細胞への、哺乳動物細胞内及び/または哺乳動物細胞外への鉄移動を促進することができたかどうか仮説を立てた。安定したshRNAトランスフェクション(
図12A〜C)を介して確立された、分化DMT1欠乏Caco−2腸上皮単層(
図S1A)における鉄の取り込み及び経上皮輸送(36、37)について最初に試験した。野生型対照に比べて、DMT1欠乏単層は、
55FeCl
3の頂端側への添加後に、細胞への鉄の取り込みの低下、及び側底液への経上皮鉄輸送の低下を示した(
図3A、B)。ヒノキチオール(500nM)の頂端側への添加は、腸内の滞留時間に見合った時間枠で取り込み及び輸送(
図3A、B)を回復させた(
図3C)。ヒノキチオールは、単層の一体性を混乱させなかったが(
図12D)、観察可能な毒性を引き起こさず(表S7)、及び基底DMT1発現に影響を及ぼさなかった(
図12B、C)。ヒノキチオール媒介輸送は、十二指腸全体に見られるpHの範囲にわたって生じ、pHの減少に伴って増加する(
図12E)。ヒノキチオールが、広範囲の濃度にわたって取り込み及び輸送を促進する一方、C2deOHino、及び準毒性濃度の鉄キレート剤:デフェリプロン、デフェロキサミン、PIH、及びSIHは、取り込み及び輸送の両方を促進しなかった(
図12F、G及び表S7)。高濃度のこれらのより親水性の鉄キレート剤は、あるいは、DMT1欠乏単層への鉄の取り込みを減少させた(
図12F)。
【0345】
DMT1が、欠如、欠失、または低形質である場合には、赤血球系前駆細胞のエンドソームからの細胞内鉄(II)流出は除外されるため、ヘモグロビン化を予防する(
図S1B)(2、6、38)。ヒノキチオールの不在下または存在下で、DS19マウス赤白血病(MEL)細胞(39)、並びにshRNAトランスフェクトDMT1欠乏MEL細胞におけるDMSO誘導分化及びヘモグロビン化を試験した(
図13A〜C)。対照細胞は、細胞ペレットにおけるヘモグロビンの特徴的なピンク色(
図3D)、及びo−ジアニシジンによるヘモグロビン化細胞の茶色染色によって示されるように、3日後に正常に分化した(
図13D、E)。ヘモグロビン化の低下は、DMT1欠乏細胞において観察された(
図3D〜F、及び
図13D〜F)。3日間のヒノキチオール処理(1μM)は、観察可能な毒性を有さずに、
55Fe取り込み(
図13F)、
55Fe−ヘム組み込み(
図3F)、及びヘモグロビン化(
図3D及び
図13D〜J)を回復させた一方(
図13K及び表S7)、C2deOHinoは、効果がなかった(
図3E、F及び
図13F、I、J)。予想した通り、分化は、ヒノキチオール処理(
図13L)の有無に依らず、DMSOの不在下で観察されなかった。
【0346】
DMT1欠乏細胞へのかつDMT1欠乏細胞内への鉄のヒノキチオール媒介輸送が観察された後、同じ小分子を、他の鉄輸送タンパク質と置き換えることができるかどうかも仮説を立てた。ミトコンドリア内膜中のMfrn1は、鉄をミトコンドリア基質に流入させて、ヘモグロビン化させる(
図S1C)(2、10)。CRISPR−Cas9媒介ノックアウトを介して発育させたMfrn1欠乏MEL細胞(
図14A)は、DMSO誘導後に、o−ジアニシジン染色(
図3G)、
55Fe取り込み(
図14B)、及び
55Fe−ヘム組み込み(
図14C)によるヘモグロビン化の低下を呈した。ヒノキチオール(1μM)は、ヘモグロビン化を回復させた一方、C2deOHinoは、効果を示さず(
図3G及び
図14B、C)、鉄のヒノキチオール媒介ミトコンドリア送達を示唆する。予想した通り、ヒノキチオールは、ポルフィリン生合成に関与するタンパク質があるいは欠乏しているMEL細胞(TMEM14CΔ)へのヘモグロビン化を促進しなかった(
図14D〜F)。
【0347】
FPN1欠乏は、腸上皮の側底側膜を横断する鉄流出(
図S1D)、及び老化赤血球から鉄を再利用する細網内皮系マクロファージからの鉄流出(
図S1E)を低下させる(13、14)。ケルセチン(40)及びヘプシジン(41)を使用して、分化Caco−2上皮単層及びJ774マクロファージ(41)のFPN1レベルをそれぞれ一時的に減少させた(
図14G〜J)。ヒノキチオール(1μM)は、鉄の取り込みに影響を与えることなく(
図3I)、かつ、単層の一体性を破壊することなく(
図14L)、FPN1欠乏Caco−2単層における経上皮鉄輸送を回復させた(
図3H及び
図14K)。ヒノキチオールはまた、観察可能な毒性なく、FPN1欠乏J774マクロファージからの鉄放出を時間依存的かつ用量依存的に回復させた(
図3J、K、
図14M、及び表S7)。
【0348】
鉄勾配の部位及び方向選択的蓄積及び放出
その後、ヒノキチオールが、トランスポーター欠乏系における蓄積膜貫通鉄勾配を抑えることによって、部位及び方向選択的鉄移動を促進するという機構仮説(
図1A)について調査した。DMT1欠乏MEL細胞におけるコンパートメント化された鉄を蛍光色素で最初に視覚化した(
図15A〜C)(42、43)。oxyburstグリーン−BSAコンジュゲートは、鉄媒介酸化の際にエンドソーム蛍光に局在し(
図15C)、サイトゾル及びミトコンドリアにそれぞれおける閉鎖型プローブのカルセイングリーン(
図15A)及びRPA(
図15B)からの蛍光発光は、鉄結合の際に消失される。比較的低いエンドソーム、高いサイトゾル、及び高いミトコンドリア鉄レベルは、誘導sh対照MEL細胞で観察された(
図4A及び
図16A、B、E、H)。DMT1欠乏MEL細胞における鉄促進oxyburstグリーン蛍光の2倍増加は、サイトゾル及びミトコンドリア鉄の低下(
図4A及び
図16A、E、H)と共に観察された(
図4A及び
図16A、B)。ヒノキチオール処理は、oxyburstグリーン蛍光を2.1倍減少させて、カルセイングリーン及びRPA蛍光を付随して消失した(
図4A及び
図16A〜J)。任意の1つの特定の理論に束縛されることなく、これらのデータは、エンドソーム鉄の蓄積プールのサイトゾルへのヒノキチオール媒介放出、及びその後のミトコンドリアの取り込みを支援する。
【0349】
カルセイングリーン及び
55Fe試験はまた、野生型細胞に比べて、FPN1欠乏J774マクロファージにおける不安定な鉄の蓄積を明らかにした(
図4B〜D)。ヒノキチオールは、高い細胞外または細胞内鉄の存在にそれぞれ依存して、J774マクロファージからの鉄流入(
図4E)及び流出(
図3J及び
図14M)の両方を方向選択的に促進する。さらに、リポソームからのヒノキチオール媒介鉄(II)及び鉄(III)流出、及びJ774マクロファージへの鉄(III)の取り込みは、膜貫通鉄勾配に正比例する(
図4E〜G及び
図17A〜D)。最終的に、J774マクロファージに鉄を負荷し、細胞を濯いで、細胞外鉄を除去し、カルセイングリーンで染色した(
図17E)。ヒノキチオール添加(t=5分)は、カルセイングリーン蛍光を急速に増加させた一方、ビヒクル及びC2deOHinoは、効果がなかった(
図4H、I、
図18A〜C、及び動画S1)。その後、FeCl
3(t=12分)の外部添加を介して、これらの同じ細胞における勾配が逆転した(
図17E)。DMSOまたはC2deOHino処理細胞は、効果がなかった(
図4I及び
図18A、C)一方、カルセイングリーン蛍光の消失は、ヒノキチオール処理で観察された(
図4H、I、
図18B)。これらの結果は、細胞内鉄レベルが高い場合のJ774マクロファージからの鉄の最初のヒノキチオール媒介放出、その後、この膜貫通勾配が細胞外鉄の添加により逆転する場合にこれらのマクロファージへの鉄のヒノキチオール媒介取り込みと合致する(
図17E)。
【0350】
鉄恒常性を維持する機構
次に、鉄トランスポーター欠乏細胞における他のイオン輸送タンパク質及び調節物質(2)の内因性ネットワークが、小分子ヒノキチオールと協働して、部位及び方向選択的鉄輸送の回復を促進しながら、なお鉄恒常性の維持に役立つかどうかについて仮説を立てた。酵母では、鉄の細胞内移動及び貯蔵は、プロトン駆動力として知られるプロトン勾配に依存し、血漿及び液胞膜それぞれにおけるATP依存性能動イオン輸送タンパク質Pma1及びV−ATPaseによって生成される(21、35)。このプロトン駆動力におけるヒノキチオール媒介鉄輸送の依存性と合致して、ヒノキチオール救出fet3Δftr1Δ酵母は、Pma1及びV−ATPaseの化学的阻害に非常に敏感であるが、オフ経路阻害剤には敏感ではない(
図19A〜C)。
【0351】
腸上皮では、鉄輸送タンパク質を転写的及び翻訳的に調節して、全身の鉄レベルを維持する一方、過負荷を回避する(2、44)。具体的に、過剰鉄、側底側の流出タンパク質FPN1、及びトランスフェリン受容体1(TfR1)の隔離を担うフェリチンの頂端側のH
+/Fe
2+共輸送体DMT1、重(FTH1)及び軽(FTL1)鎖のレベルは、対応するmRNA転写産物の5’−及び3’−非翻訳領域に位置する短鎖ヘアピン鉄応答エレメント(IRE)を介して翻訳的に調節される(
図20A)(2)。鉄感受性鉄応答タンパク質(IRP1及びIRP2)は、これらのIREに結合して、鉄飢餓下で、翻訳(5’−IRE、Fth1、Ftl1、Fpn1)を遮断するかまたはmRNA(3’−IRE、Dmt1、TfR1)を安定化させる(
図20A)。鉄刺激及び結合の際に、IRPは、mRNAから解離し、記載されている効果を逆転させる。転写調節は、転写活性化物質の低酸素誘導性因子2−α(Hif2α)を通じて達成され、O
2及び鉄媒介プロリン水酸化後に分解される(
図20B)(2)。Hif2αは、Fpn1の転写を活性化して、鉄欠乏下でIRE媒介翻訳抑制を回避する(2)。
【0352】
これらの恒常性機構と合致して、貧血状態(45)は、フェリチンレベルの減少及びFPN1レベルの増加に伴って、DMT1欠乏Caco−2単層に最初に観察されるため(
図5A及び
図19D〜L)、小分子媒介鉄輸送に対して好ましい細胞環境を提供する。これらの内因性タンパク質との機能的協働に支援を提供することで、DMT1欠乏Caco−2単層を横断するヒノキチオール媒介鉄の取り込み及び輸送は、一方向である(
図5B及び
図19M)。低用量のヒノキチオール(500nM)による頂端側の処理により、フェリチンへの
55Feの組み込みが可能になり(
図5C)、高親和性の鉄シャペロンポリ(rC)結合タンパク質1(PCBP1)によって媒介される可能性がある(2)。最終的に、FPN1(40)のケルセチン媒介ノックダウンは、頂端側の取り込みに影響を与えることなく、ヒノキチオール媒介膜貫通輸送を拮抗する(
図5D及び
図19N〜P)。
【0353】
さらに、DMT1欠乏単層における経上皮輸送の速度の増加は、頂端側FeCl
3の濃度の増加に伴って観察されたが、これらの効果は、高濃度の鉄で横ばいになる(
図5E)。さらに、膜貫通輸送の同様のレベリングは、持続的な鉄の勾配(25μM FeCl
3)で、かつ、ヒノキチオールの濃度を増加させて、同じ単層を処理する場合に観察される(
図5F)。この現象は、広範囲のヒノキチオール及び鉄濃度にわたって観察された(
図21)。次いで、内因性系が、持続的な鉄の勾配の存在下で、細胞鉄状態のヒノキチオール媒介変化にどのように応答するか確かめた。IRP媒介翻訳調節と合致して、IRP2の減少、フェリチンサブユニット(5’−IRE)の増加、及びTfR1(3’−IRE)タンパク質レベルの減少は、持続的な鉄の勾配の存在下で、最大5μMのヒノキチオール濃度の関数として観察された(
図5G及び
図22A〜E)。転写因子Hif1α及びHif2αは、Fpn1 mRNA及びタンパク質レベルの減少と共に同様に減少した(
図5G及び
図22F〜I)。予想した通り、サイトゾル鉄シャペロンPCBP1及びHif2α非依存性Fth1 mRNAレベルのIRE非依存的発現は変化せず、鉄の不在下でヒノキチオールを添加した際に、FPN1の変化は観察されなかった(
図5G及び
図22K〜N)。これらの効果の軽度の逆転は、高濃度のヒノキチオールで観察された(
図5G及び
図22A〜J)。カルセイングリーンによるサイトゾル鉄の視覚化は、ヒノキチオールの増加に伴ったDMT1欠乏Caco−2単層のインキュベーションが、不安定な鉄の最大5μMへの増加をもたらしたことを示した(
図5H〜J)。さらには、ヒノキチオールの増加は、蛍光消失を予防し、恐らくは、高用量の強結合メタロフォアによる不安定な鉄の競合細胞内キレート化によるものであった(
図5H〜J)。まとめると、これらの結果は、内因性恒常性ネットワークが、小分子ヒノキチオールと協働して、鉄輸送の促進に役立ちながら、その恒常性を維持し、鉄毒性を予防することができるという結論を支援する。
【0354】
この機構の枠組みに基づいて、ヒノキチオールが、野生型細胞において、比較的最小の効果を有すると仮説を立てた。同濃度のヒノキチオールが、正常なCaco−2単層、MEL細胞、及びJ774細胞のそれぞれにおける経上皮鉄輸送、ヘモグロビン化、及び鉄放出を乱す能力を試験した(
図23A〜F)。対応するタンパク質欠乏系で観察された経上皮鉄輸送(
図3B)、ヘモグロビン化(
図3G)、及び鉄放出(
図3J)のヒノキチオール促進増加とは対照的に、軽微な影響が、同一条件下で、ヒノキチオール処理した野生型系において観察された(
図23A〜F)。まとめると、これらの結果は、ヒノキチオールが、特異的鉄トランスポータータンパク質が欠如している脂質膜を横断して選択的に蓄積する勾配を抑えることによって、部位及び方向選択的鉄輸送を回復させることと合致する。
【0355】
動物における腸鉄吸収及び末梢ヘモグロビン化の回復
その後、ヒノキチオールが、これらの鉄トランスポーター欠乏の動物モデルにおける腸鉄吸収及びヘモグロビン化を回復させることができたかどうかを確かめた。十二指腸腸細胞におけるDMT1欠乏及びFPN1欠乏は、細胞の頂端側の鉄取り込み、及び血液の側底側の流出をそれぞれ混乱させることによって、腸内での鉄吸収の速度を低下させる(2、6、12〜15)。強制経口投与を介した単回用量の
59Fe及び1.5mg/kgのヒノキチオールを投与する際のDMT1欠乏ベオグラード(b/b)ラット(6)及びFPN1欠乏フラットアイアン(ffe/+)マウス(14、15)における腸鉄吸収を試験した。高用量のヒノキチオールは、2年間の慢性経口投与の際に、ラットにおいて非毒性であることが報告される(46)。b/bラットで以前に報告された鉄吸収の低下(47)と同様に、
59Fe吸収の2倍低下が、兄弟対照(+/+または+/b)に比べて、C2deOHino処理b/bラットで観察された(
図6A及び
図24A)。ヒノキチオールによるb/bラットの処理は、
59Fe吸収を増加させて、1時間後に対照レベルに戻した(
図6A及び
図24A)。以前の結果(15)と合致して、ffe/+マウスはまた、鉄を低速度で吸収した(
図6B)。ヒノキチオールは、1時間及び2時間後に、ffe/+マウスにおける
59Fe吸収を増加させた(
図6B及び
図24B)。
59Fe吸収の速度における統計的に有意な増加は、1時間後にヒノキチオール処理した野生型マウスで観察されたが、2時間後には観察されなかった(
図24C)。
【0356】
相補性RNAによるMfrn1タンパク質の異所性発現を介した、Mfrn1欠乏ゼブラフィッシュにおけるヘモグロビン化の回復が以前に示されている(10)。Danio rerioは、造血試験における強力なモデル生物として十分に確立されている。(48)、あるいは、これを採用して、小分子鉄トランスポーターによる長期処理が、DMT1欠乏及びMfrn1欠乏におけるヘモグロビン化を回復させることができたかどうかを試験した(10、49)。最初に、GFP標識赤血球を発現するTg(グロビンLCR:eGFP)ゼブラフィッシュ株におけるDMT1のモルホリノ媒介の一時的なノックダウンを行った(50)。未成熟Dmt1 mRNAのエクソン4/イントロン4接合部を標的化する設計されたアンチセンスモルホリノの注入は、定常状態Dmt1レベルを低下させ(
図24D)、FACS分析によるGFP陽性赤血球系細胞の数を減少させた(
図6C)。受精後24時間(hpf)のヒノキチオールの水への添加、及びさらに2日間のインキュベーションは、観察可能な毒性なく、これらのDMT1欠乏モルファントゼブラフィッシュにおけるヘモグロビン化を促進した一方、C2deOHinoは、効果がなかった(
図6C)。ヒノキチオールが、遺伝的に変異したシャルドネ(Chardonnay)(cdy
te216)ゼブラフィッシュにおけるヘモグロビン化を同様に回復させることができたかどうかさらに試験した。このゼブラフィッシュは、短縮DMT1につながるナンセンス突然変異を含むため、重度の低色素性小球性貧血を呈する(49)。+/cdyフィッシュのヘテロ接合性交配は、72hpfのo−ジアニシジン染色後の各クラッチ中の約75%健常(+/+及び+/cdy)胚及び約25%貧血(cdy/cdy)胚のメンデル分布をもたらした(
図6D)。2日間のヒノキチオール処理は、高ヘモグロビンレベルを呈するフィッシュの数を増加させた一方、C2deOHinoは、効果がなかった(
図6D)。
【0357】
また、Mfrn1欠乏モルファントTg(グロビンLCR:eGFP)ゼブラフィッシュ(10、50)におけるヘモグロビン化を試験した。48時間のヒノキチオール処理は、これらのモルファントにおけるヘモグロビン化及びGFP陽性赤血球の数をもう一度回復させた(
図6E)。最終的に、ヒノキチオールを試験して、遺伝的に突然変異したフラスカティ(Frascati)(frs
tq223)ゼブラフィッシュにおけるヘモグロビン化を回復させることができたかどうか確認した。このゼブラフィッシュは、不活性Mfrn1ミトコンドリアタンパク質及び胚発生中の重度の貧血につながるミスセンス突然変異を含む(10、11)。+/frsフィッシュのヘテロ接合性交配から回収した胚のヒノキチオール処理は、貧血表現型を救出した(
図6F)。遺伝子型(
図6G)の健常な仔フィッシュ(+/+及び+/frs)は、o−ジアニシジンによる茶色染色を呈する一方、未処理frs/frsフィッシュは、茶色染色を呈しない(
図6H)。ヒノキチオール処理は、frs/frsフィッシュへの茶色染色を回復させた(
図6H)。予想した通り、ヒノキチオールは、ポルフィリン生合成(Alas2)に関与する初期酵素が欠乏しているソーテルヌ(sau
tb223)ゼブラフィッシュ(51)を救出せず(
図24E)、鉄輸送の欠陥への救出の特異性を示す。
【0358】
展望
従って、小分子は、3つの異なる鉄輸送タンパク質が欠乏している異なる細胞における部位及び方向選択的鉄輸送を回復させることができ、同じ化合物は、対応する動物モデルにおける食事による腸鉄吸収または末梢ヘモグロビン化を促進することができる。機構的試験は、鉄トランスポーターが欠如している家系において蓄積する膜貫通イオン勾配の役割を支援し、ヒノキチオールは、部位及び方向選択的膜貫通鉄輸送を回復させることができる。さらに、内因性タンパク質に基づく恒常性機構は、この不完全な小分子と連結して、他の細胞プロセスを混乱させることなく鉄関連生理学的プロセスを促進する。
【0359】
ヒノキチオールと同様に、多くのイオン輸送タンパク質は、不完全に選択的である。しかしながら、異なるイオンの相対的存在度は、生体系における選択性の増加に寄与する。例えば、タンパク質クロライドチャンネルは、ブロミド及びヨージドに対して、クロリドに対して主に非選択的であるが、後者のハロゲンの低天然存在度は、インビボでのクロリド選択性に有利である(1、52)。示差イオンアクセシビリティは、多くの不完全なイオン輸送タンパク質に観察されたインビボ選択性をさらに増強させる(33〜35)。ヒノキチオールと同様に、DMT1及びFPN1は、Co
2+、Mn
2+、Zn
2+、及び/またはCu
2+を輸送する(6、13、15)。しかしながら、高親和性金属タンパク質は、これらの他の金属の不安定なプールを著しく減少させて、高いアクセシビリティよるインビボでの鉄の選択的結合及び輸送につながる(33〜35)。
【0360】
これらの所見はまた、概念的枠組み及び概念実証のデモンストレーションを提供して、小分子の追跡が、多くのヒト疾患の根底にある欠如または機能不全の鉄輸送タンパク質の代わりになることを支援する。FPN1の後天性欠乏が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、及び炎症性腸疾患を含む多くの一般的な疾患に罹患している患者において頻繁に発生する慢性炎症性貧血(AI)の根底にあることが最近認識されている(9)。さらに、このアプローチは、多くの多様な鉄過剰障害において組織(例えば、肝臓または脳)中に蓄積する過剰鉄の急速な排泄を促進する可能性を有し得る。
【0361】
材料及び方法
細胞株及び増殖条件
野生型(DEY1457)及び同質遺伝子fet3Δftr1Δ S.cerevisiaeは、D.Kosman(53)から得た。野生型(YPH499)及び同質遺伝子fet3Δarn1−4Δ S.cerevisiaeは、C.Philpott(54)から得た。20g/Lの寒天なし(液体培地)またはあり(固体培地)で、10g/Lの酵母抽出物、20g/Lのペプトン、及び20g/Lのデキストロースを含有する標準YPD培地上で酵母を維持した。特に断りのない限り、酵母の増殖回復アッセイは、20g/Lの寒天なし(液体培地)またはあり(固体培地)で、pH=7.0の50mM MES/トリス緩衝液中の1.91g/Lの鉄遊離YNB−FeCl
3(ForMedium CYN 1201)、0.79g/LのComplete Supplement Mixture(Sunrise Science Products 1001−010)、5g/Lの硫酸アンモニウム(Sigma A4418)、20g/Lのデキストロース、10μMのFeCl
3(Sigma 451649)、及び10μMのヒノキチオール(β−Thujaplicin、Sigma 469521)からなる低鉄SD培地を使用した。ろ過滅菌した水中の40%w/vデキストロース溶液、調製したてのDMSO中の無菌10mMヒノキチオールストック、及び調製したての無菌水中の10mM FeCl
3ストックからの高圧蒸気滅菌後に、デキストロース、ヒノキチオール、及びFeCl
3をそれぞれ添加した。非発酵性の増殖回復には、30g/Lのグリセロールをデキストロースの代わりに使用したことを除いては、同じ合成培地を使用した。
【0362】
ヒトCaco−2細胞(HTB−37)及びマウスマクロファージ(J774A.1)は、ATCCから得て、10%のHI FBS(Gibco 16000−036)、4mM グルタミン(Lonza BE17−605E)、100μg/mLのPEN−STREP(Lonza DE17−602E)、及び1%のMEM NEAA(Fisher 11140−050)を含有するDMEM(Gibco 10313−021)で培養した。トランスフェクトCaco−2細胞株は、800mg/LのG418(Santa Cruz sc−29065B)を含有するこの培地上で維持した。フレンド(Friend)マウス赤白血病細胞(MEL、DS19サブクローン)は、Arthur Skoultchi(Albert Einstein College of Medicine,Bronx,NY)から得て、10%のHI FBS、2mM グルタミン、100μg/mLのPEN−STREP、及び1%MEMのNEAAを含有するDMEMで培養した。トランスフェクトsh対照及びshDMT1 MEL細胞株は、1g/LのG418を含有するこの培地上で維持した。
【0363】
Caco−2細胞(継代18〜50)をT75フラスコ中で≧90%密集度に増殖させた後、0.25%トリプシン−EDTA(Fisher 25200−056)でトリプシン処理して、G418なし(野生型)またはG418あり(トランスフェクト)で、Caco−2培地中で、10:1希釈で継代した。2×10
5個の細胞/ウェルでの6ウェルコンパニオンプレート(Fisher 08−771−24)中に、0.4μmのPET細胞培養挿入物(Fisher 08−771)上にCaco−2細胞(継代20〜50)を播種することによって、単層を増殖させて、21〜28日間で完全に分化させた後、3〜4日ごとに培地を変えて実験を行った。
【0364】
MEL細胞を、T25フラスコ中の懸濁液で約1×10
6個の細胞/mLになるまで増殖させて、G418の有無に依らず、MEL完全培地中に、1×10
5個の細胞/mLで新しいT25フラスコに再播種した。毎月の培養で、MEL細胞の新しいバックストックを使用した。
【0365】
J774細胞(継代20〜80)をT75フラスコ中で90%密集度に増殖させた後、剥離して、J774完全培地中で、5:1希釈で再播種した。1〜2日ごとに培地を変えた。
【0366】
動物及び動物の管理
the Guide for the Care and Use of Laboratory Animals of the National Institutes of Healthで概説される指針及び推奨事項に厳密に準拠して試験を行った。
【0367】
健常(+/+)及びフラットアイアン(ffe/+)マウスにおける試験に使用したプロトコルは、the Harvard Medical Animal Care and Use Committeによって承認された。フラットアイアンマウスの繁殖、食事、及び遺伝子型決定は、前述のように行った(55)。
【0368】
全てのゼブラフィッシュ実験は、the Institutional Animal Care and Use Committeeの規制に準拠して行った。以下の野生型AB株及びゼブラフィッシュ変異株を使用した:フラスカティ(frs
tq223)(10)、シャルドネ(cdy
te216)(49)、及びソーテルヌ(sau
tb223)(51)。
【0369】
ベオグラード(+/+、+/b、またはb/b)ラットにおける試験のプロトコルは、the Division of Laboratory Animal Medicine(DLAM)及びthe Northeastern University−Institutional Animal Care and Use Committee(NU−IACUC)によって承認された。ヘテロ接合(+/b)及びホモ接合性(b/b)ベオグラードラット(Fischer F344バックグラウンド)の育種者は、Michael Garrick博士(SUNY Buffalo)によって厚意により提供され、12:12時間の明暗周期を維持し、水及び施設の食事を自由に摂取させた。
59Fe腸鉄吸収実験前に、様々な予備試験を(3〜5ヵ月齢の範囲の)ベオグラードラットのコホートで行い、その間、500mg/kgの鉄を含有する鉄補充食(TD.02385,Harlan Teklad,Madison,WI)で、<15週間、ラットをビヒクルまたは様々な化合物で処理した。全てのラットに薬物を摂取させず、鉄添加食を少なくとも1週間受け続けた後、
59Fe腸吸収実験を行った。
【0370】
統計
全てのデータは、平均または重量平均±SEMを示し、特に記載がない限り、最小で3つの生物学的反復を含む。統計分析は、スチューデントt検定または一元配置もしくは二元配置の分散分析(ANOVA)から得たP値を表し、必要に応じてテューキーの事後検定を行った。NS、有意ではない;特に記載がない限り、*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001。
【0371】
寒天プレート上の小分子による鉄欠乏酵母の増殖救出(
図1C、D、
図7A〜C、及び
図8A、B)
酵母の増殖救出は、2%のアガロースゲル、10μMのFeCl
3、及び10μMのヒノキチオール(DMSO中の40×ストックから)を含有する、pH=7.0の50mM MES/トリス緩衝液中の低鉄SD寒天プレート上で、以前に報告されたものと同様に行った(20)。野生型対照及びビヒクル(DMSO)で処理したfet3Δftr1Δまたはfet3Δarn1−4Δ対照は、ヒノキチオールの不在下で、10μMのFeCl
3を含有する同じ低鉄SD培地を用いて同一条件下で行った。酵母をYPD培地中で一晩増殖させて、低鉄SD培地中で1.0の600nMの光学密度(OD600)に希釈した後、10倍連続希釈し、DMSOビヒクルまたはヒノキチオール(40×DMSOストックから10μM)のいずれかを含有する上述の低鉄SD寒天プレート上に、これらの酵母懸濁液(1ドット当たり10μL)を接種した。
【0372】
ディスク拡散アッセイでは、酵母をYPD培地中で一晩増殖させて、低鉄SD培地中でOD600=0.1に希釈し、10μMのFeCl
3を含有する低鉄SD寒天プレート上に画線した。ディスク拡散アッセイは、適当な酵母株(低鉄SD培地中でOD600=0.1から)で画線した10μMのFeCl
3を含有する低鉄SD寒天プレート上で、ヒノキチオール、トロポロン(Sigma T89702)、α−ドラブリン(Specs Compound Handling AN−584/43416897)、マルトール(Sigma H43407)、デフェリプロン(DFP、Sigma 379409)、ピリドキサールイソニコチノイルヒドラゾン(PIH、Santa Cruz sc−204192)、サリシルアルデヒドイソニコチノイルヒドラゾン(SIH、以下の合成及び特徴付けを参照)、コメン酸(COMA、Obiter Research,LLCによって厚意にて寄付された)、アムホテリシンB(AK Scientific L970)、ノナクチン(Sigma N2286)、カルシマイシン(Sigma C7522)、またはプロジギオシン(Santa Cruz sc−202298)(ペーパーディスク当たり10μL)の≧10mMストック溶液(DMSO中)を用いて行った。非発酵性条件下の増殖回復は、2%デキストロースの代わりに3%グリセロールを用いて行った。特に記載がない限り、30℃での接種及びインキュベーションの48〜72時間後に画像を撮影した。
【0373】
液体培地中の小分子によるfet3Δftr1Δ酵母の増殖救出(
図1E、F及び
図S3G、H)
酵母の増殖救出は、特に記載がない限り、96ウェルプレート中で、10μMのFeCl
3を含有する低鉄SD液体培地中の10μMヒノキチオールを用いて、以前に報告されたものと同様に行った(20)。ビヒクル(DMSO)で処理した野生型対照及びfet3Δftr1Δは、ヒノキチオールの不在下で、10μMのFeCl
3を含有する同じ低鉄SD培地を用いて同一条件下で行った。酵母をYPD培地中で一晩増殖させて、SD培地中で0.1のOD600で希釈し、10倍希釈し、連続的に攪拌しながら(200rpm)30℃でインキュベートした。OD600は、特に記載がない限り、接種の24〜48時間後に得た。
【0374】
ヒノキチオール及びC2−デオキシヒノキチオール(C2deOHino、以下の合成を参照)による小分子用量応答(
図1F)は、小分子(DMSO中の40×ストック溶液)を添加して、示された最終濃度を得ることによって決定した。
【0375】
鉄用量応答試験(
図8G)は、10μMヒノキチオール(DMSO中の40×ストック溶液から)を含有するFeCl
3なしで、同じ低鉄SD培地中で行った。FeCl
3(水中の40×ストック溶液)を添加して、最大10μMのFeCl
3で、示された最終濃度を得た。
【0376】
FeCl
3の投与量を増加させた用量依存的なヒノキチオール促進救出では(
図8H)、10mM FeCl
3ストックから10、25、50、または100μMのFeCl
3のいずれかを含有するSD培地を作製した後、ヒノキチオール(DMSO中の40×ストック溶液)を添加して、示された最終濃度を得た。
【0377】
持続可能性アッセイ(
図8C)
fet3Δftr1Δ酵母の持続可能なヒノキチオール促進増殖回復は、10μMのヒノキチオール及び10μMのFeCl
3を含有する低鉄SD寒天プレートから、10μMのヒノキチオール及び10μMのFeCl
3を含有する低鉄SD液体培地にヒノキチオール救出酵母を接種した後、寒天プレート上に酵母懸濁液(0.1のOD600に希釈)を画線したことによって、以前に報告されたものと同様に行った(20)。このプロセスを100日超繰り返した。ヒノキチオールのSD寒天プレートからの除去は、fet3Δftr1Δ酵母細胞増殖なしをもたらしたため、fet3Δftr1Δ酵母増殖に対するヒノキチオールの継続的な信頼が観察された。
【0378】
ヒノキチオールで処理したfet3Δftr1Δ酵母の倍化時間(
図13D、E)
野生型及びヒノキチオール救出fet3Δftr1Δ酵母の倍加時間は、10μMのFeCl
3及びDMSOまたは10μMのヒノキチオール(DMSO中の40×ストックから)を含有する同じ低鉄SD培地中でOD600を毎時48時間にわたって追跡し、対数増殖期中に式Td=(t2−t1)×[log(2)/log(q2/q1)]を適用することによって、以前に報告されたものと同様に決定した(20)。
【0379】
Pma1の阻害剤、V−ATPaseによる酵母細胞増殖の化学的阻害(
図19A〜C)
ヒノキチオール処理した野生型及びヒノキチオール救出fet3Δftr1Δ酵母細胞増殖の化学的阻害は、10μMのFeCl
3及び10μMのヒノキチオールを含有する低鉄SD培地中で、以前に報告されたように行った(20)。カスポファンギン(Sigma SML0425)、エブセレン(Sigma 70530)またはバフィロマイシンB1(Santa Cruz sc−202072)(DMSO中の40×ストック)の投与量を増やして、酵母懸濁液(OD600=0.1から10倍希釈)に添加して、示された最終用量を得た。EC50値は、GraphPad PRISMを用いて、酵母増殖曲線に適合させて計算した。
【0380】
酵母におけるFe
3+取り込みアッセイ(
図1G)
野生型及びfet3Δftr1Δ酵母への鉄(III)の取り込みは、Kosmanとその同僚らから適応した(56)。一晩、酵母培養を繰り返し遠心分離して、水で濯いだ。細胞ペレットをMilliQ水中で再懸濁させて、FeCl
3なしのSD培地中で希釈した。細胞を30℃で3時間インキュベートし、遠心分離して、水で2回濯いだ。その後、細胞を50mM クエン酸ナトリウム及び2%グルコースを含有するSD培地中に3×10
7個の細胞/mLで懸濁させた。ヒノキチオールまたはC2deOHino(DMSO中の40×ストックから)を添加して、100μMの最終濃度にした後、
55FeCl
3(1.1μCi)を酵母懸濁液に添加した。懸濁液を継続的に均質化した後、アリコートを採取して、10mLの室温水で希釈した。その後、0.45μmニトロセルロースフィルター(Millipore HAWP)を通じた真空ろ過を介して細胞を回収し、室温水(100mLの×5)で濯いだ。次いで、3mLのシンチレーションカクテルを含有するシンチレーションバイアルにフィルターを移して、液体シンチレーション計数器を用いて、放射能を測定した。ヒノキチオールは、5〜100μMの
55Fe取り込みの用量依存的増加を示した一方、C2deOHinoは、最大100μMの取り込みを示さなかった。
【0381】
小分子鉄キレートの親油性決定(
図2A及び
図8I)
オクタノール−水分配係数は、平衡化したpH=5の水とオクタノールを等量で用いて、100μMの小分子及び33μMのFeCl
3(PIHは、2:1錯体を形成するため、PIHに対して50μMのFeCl
3)で、以前に報告されたように得た(57、58)。水中の小分子の濃度は、公知の初期基準と比較して、UV−Vis分光法を介して決定した。
【0382】
ヘキサン−水分配は、pH=7.0での50mM Mes−トリス緩衝液とヘキサンを等量で用いて、500μMの小分子及び50μMのFeCl
3で、上述と同様に得た。
【0383】
ヒノキチオールのpKaの決定(
図9L)
ヒノキチオールのpKaは、pHを変化させた分光光度滴定によって決定した。ヒノキチオール(100μM)をH
2O中の0.1M KCl溶液中に溶解させて、(0.1M HClを用いて)pH=3.0に酸性化した。0.1M KOHの連続滴定を用いてUV−Visスペクトルを繰り返し得て、pH(3.0、3.4、3.9、4.2、4.6、4.9、6.0、6.4、7.0、7.2、7.6、8.4、9.3、9.7、10.4、10.9、11.7、12.0)の範囲を得た。明確な等吸収点は、365nmで観察され、新しいλmaxは、387nmで、pHの減少に伴って観察された。その後、OriginPro(R
2=0.996)でpH及びロジスティック適合に対するAbs387/Abs240のプロットを介して、pKaを決定し、変曲点(pKa=7.33)を計算した。
【0384】
小分子鉄結合の決定(
図9A〜C)
小分子鉄(III)結合は、pH=7.0の10mM MES/トリス緩衝液中のFeCl
3(10μM)またはクエン酸鉄(III)(10μMの、Sigma F3388)の添加前後に、小分子(30μM)のUV−Vis分光法によって決定した。鉄(II)結合は、62.5mMのアスコルビン酸ナトリウムを含有するpH=7.0の25mM MES/トリス緩衝液中の小分子(30μM)及びFeCl
2(10μM)のUV−Vis分光法によって決定した。
【0385】
鉄(III)によるヒノキチオールの滴定(
図2B及び
図9N、O)
鉄(III)滴定試験は、50μMのヒノキチオールを添加して、pH=7.0の10mM MES/トリス緩衝液中のFeCl
3(0、1、5、10、12.5、15、16.67、17.5、20、25、30、35、37.5、40、及び50μM)の当量を増加させて行った。沈殿物は、全ての場合で観察されず、溶液は、鉄(III)の当量の増加に伴って、茶色い溶液に変化した。鉄の量を増加させると、λmaxは、約240から250nmにシフトし、420nmの吸光度は、最大で約3:1 Hino:Feに増加した。
【0386】
小分子による鉄(II)及び鉄(III)結合親和性の決定(
図14E〜H及び表S2)
ヒノキチオール、デフェリプロン、トロポロン、マルトール、及び/またはEDTAの鉄(II)または鉄(III)との会合定数は、以前に報告されたものと同様に、競合試験を通じて決定した(59)。具体的に、鉄(II)に対する会合定数は、フェロジン競合アッセイ(フェロジンのKA=3.65×10
15)によって決定した(60)。FeCl
2(25μM)を、62.5mMのアスコルビン酸ナトリウムを含有するpH=7.0の25mM MES/トリス緩衝液中のフェロジン(75μM)と事前に混合した。小分子の(DMSO中の40×ストックから)増加濃度を添加して、示された最終濃度にした。溶液を24時間平衡化した後、562nmで吸光度を読み取った。ヒノキチオール、トロポロン、及びデフェリプロンの鉄(III)に対する会合定数は、EDTA(KA=1.7×10
24)競合アッセイ(59)、マルトールに対する会合定数は、クエン酸塩(KA=1×10
17)競合アッセイ(61)によって決定した。各キレート剤を、0.1M KClを含有するpH=7.0の50mM MES/トリス緩衝液中で、FeCl
3と3:1比で混合し、対応する鉄錯体を形成した。3:1キレート剤:鉄錯体に対応するピークのλmaxを、錯体ごとに決定した(約400〜500nM)。その後、このFe(キレート剤)
3ストックを、0.1M KClを含有するpH=7.0の50mM MES/トリス緩衝液中にEDTAまたはクエン酸塩の増加濃度を含有する溶液に添加し、示された最終濃度のキレート剤(75μM)、FeCl
3(25μM)、及び競合キレート剤を得た。系を一晩平衡化させて、Fe(キレート剤)
3錯体に対応する吸光度を決定した。キレート剤ごとのEC50値は、滴定液の濃度に対する吸光度をプロットすることで、OriginPro上の非線形曲線適合(Hill1)によって計算し、錯体ごとのKAは、KA、リガンド=(KA、競合物*[EC50])/[リガンド]の式から決定した。ここで、リガンドは、鉄にもともと結合している分子であり、競合物は、競合キレート剤である。
【0387】
ヒノキチオールによる鉄結合タンパク質からの
55Feの除去(
図14I〜K)
ヒノキチオールがトランスフェリンから鉄を除去する能力は、Cerami及び同僚らから適合した
55Feアッセイを通じて決定した(62)。
55Feを、PBS緩衝液中で、前述と同様にトランスフェリン(Tf)上に負荷した(63)。ヒノキチオールの増加用量(DMSO中の1000×ストックから)をPBS緩衝液中の
55Fe2Tf(1nM)の溶液に添加し、示された最終濃度を得た。溶液を37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション後、ヒノキチオール結合した任意の
55Feを、EtOAcによる鉄:ヒノキチオール錯体の抽出によって単離した。有機層の放射性レベルは、シンチレーションカクテルで希釈後に決定した。
55Feの抽出は、ヒノキチオールの不在下で観察されず、トランスフェリンは、PBS緩衝液中のEtOAc抽出の前後に、ホロ−トランスフェリンのUV−Vis分光法によって決定されるように、抽出プロセスから変性しなかった。
【0388】
以下に記載のように、野生型Caco−2単層のインキュベーション及び免疫沈降を通じたフェリチンの単離によって、フェリチンを
55Feに負荷した。免疫沈降フェリチンを、pH=7.0の50mM MES/トリス緩衝液中で、2.5ngフェリチン/mL(以下に記載のように、ELISAによって決定)に希釈し、ヒノキチオールの増加濃度を添加し(DMSO中の1000×ストックから)、示された最終濃度を得た。懸濁液を室温で2時間混合した。インキュベーション後、遠心分離及びPBSでの濯ぎを繰り返し行って、フェリチンに結合しなかった任意の
55Feを除去し、寒天ペレット中に残っている放射性レベルを、シンチレーションカクテルで希釈し、液体シンチレーション計数した後に決定した。
【0389】
Fe(Hino)
3の結晶構造(
図2E、
図14P、及び表S8)
合成Fe(Hino)
3のX線品質結晶は、溶媒を一晩ゆっくりと平静に蒸発させることによる、キャップのない1mLバイアルにおけるアセトン(2mL)及びベンゼン(0.2mL)中のFe(Hino)
3(10mg)の再結晶から得た。X線単結晶分析は、イリノイ大学X線施設によって行った。
【0390】
ICP−MSによるヒノキチオール結合選択性の決定(
図9D、
図15A、B、及び表S2)
多数の二価金属によるヒノキチオールの結合選択性は、前述と同様に決定した(32)。具体的に、pH=7.0の1:1 H
2O:MeOHにおける10mM MES/トリス緩衝液中のヒノキチオール2mM溶液を、pH=7.0の1:1 H2O:MeOHにおける10mM MES/トリス緩衝液中の2mM FeCl
2、2mM MnCl
2、2mM CoCl
2、2mM NiCl
2、2mM ZnCl
2、及び2mM CuCl
2を含有する溶液と等量で混合し、二価金属及びヒノキチオールごとに1mM 最終濃度を得た。着色溶液を室温で4時間インキュベートした。溶液を緩衝液中で希釈し、1:1 ヘキサン:酢酸エチルを用いて抽出した(×3)。有機層を回収して、MgSO
4で乾燥させて、ろ過した。溶媒を真空で除去し、70%HNO
3で消化させて、金属含有量は、イリノイ大学SCS微量分析施設を通じて、ICP−MS分析によって決定した。
【0391】
対照実験は、ヒノキチオールの不在以外は上述のものと同様に行った。有機層中の金属は、ICP−MSによって検出されなかった。また、対照実験は、60mMヒノキチオールを用いた以外は上述のものと同様に行った。抽出後の金属含有量を、抽出前の水溶液中の初期金属含有量と比較して、金属:ヒノキチオール錯体が、有機層中で抽出されることを決定した。
【0392】
フェロジンを用いた、リポソームからの鉄流出の決定(
図2C、D、
図4F、G、及び
図S17A〜D)
POPCリポソームからの鉄(III)流出は、以前に報告されたものと同様に決定した(64)。POPCリポソームは、25mM Mes/トリス緩衝液中のpH=7.0の30mM FeCl
3、62.5mMのクエン酸塩を用いて、報告されたものと同様に調製した(65)。Sephadex G−50を用いたサイズ排除クロマトグラフィー、及び外部緩衝液での溶出によって、外部鉄を除去した。外部緩衝液は、25mM Mes/トリス緩衝液中のpH=7.0の62.5mMのアスコルビン酸塩からなった。この緩衝液中の1mMのリンにリポソームを希釈した。フェロジン(Sigma 160601)を添加して(外部緩衝液中の100×ストック)、500μMの最終濃度にした。その後、リポソーム懸濁液を96ウェルプレートに移して、DMSOまたは5μMのヒノキチオール、C2deOHino、デフェリプロン、またはPIH(DMSO中の40×ストック溶液)のいずれかを添加して、実験を開始させた。30℃で連続的に攪拌しながらプレートリーダーを用いて、2時間の経過にわたって、OD562を毎分決定し、示された時間で、外部フェロジン−鉄キレートの相対量を検出した。2時間後、リポソームをTriton−Xで溶解して、100%の鉄流出を得た。ヒノキチオールは、POPCリポソームから鉄(III)流出を用量及び温度依存的に促進した一方、C2deOHinoは、最大100μMの流出を示さなかった。
【0393】
鉄(II)流出は、上述のように行ったが、しかしながら、内部緩衝液は、あるいは、25mM Mes/トリス緩衝液中でpH=7.0の30mM FeSO
4、62.5mMのアスコルビン酸塩からなり、Triton−X溶解を1時間後に行った。
【0394】
リポソーム内鉄及び/またはヒノキチオールの濃度の増加に伴った鉄流出の速度は、示された濃度の鉄及びヒノキチオールを用いて、上述のように決定した。様々な濃度の鉄に対して、ヒノキチオール(10μM)をPOPCリポソームに添加し、562nmでの吸光度の変化を2時間にわたって決定した。様々な濃度のヒノキチオールに対して、30mMのリポソーム内鉄を上述のように使用した。リポソームの外側の鉄濃度は、フェロジン−鉄の消光係数(27,900M
−1cm
−1)を用いて決定した(66)。これを使用して、実験ごとの総容量を用いて、示された時間にリポソームから放出された鉄の量を決定した。鉄流出の速度は、ヒノキチオール処理の1時間後に決定した。
【0395】
PhenGreenを用いた、リポソームからの金属流出の決定(
図15C〜I及び表S2)
POPCリポソームからの異なる二価金属のヒノキチオール促進放出は、以前に報告されたものと同様に、PhenGreen(Fisher P14312)の消失を追跡することによって行った(67、68)。
【0396】
リポソームは、(Fe
2+に対して)pH=7.0の5mM MES/トリス緩衝液中の10mMのアスコルビン酸塩、(Cu
2+に対して)pH=7.0の5mM MES/トリス緩衝液中の10mMのクエン酸塩、または(Mn
2+、Co
2+、Ni
2+、及びZn
2+に対して)pH=7.0の5mM MES/トリス緩衝液のいずれかからなる内部緩衝液で上述のように調製した。いずれの場合も、リポソームは、内部緩衝液に添加したFeCl
2、MnCl
2、CoCl
2、NiCl
2、ZnCl
2、またはCuCl
2のいずれかの5mMを用いて調製した。外部緩衝液は、10μMのPhenGreenを含有するpH=7.0の5mM MES/トリス緩衝液(DMSO中の1000×ストックから)であった。リポソーム懸濁液を1mMのリンに希釈した。リポソーム懸濁液を96ウェルプレートに移して、DMSOまたは2μMのヒノキチオール(DMSO中の40×ストックから)のいずれかをt=2分で添加した。蛍光は、500nmの励起、及び530nmの発光を1時間にわたって監視した。1時間後、リポソームをTriton−Xで溶解して、蛍光を記録した。いずれの場合も、蛍光の消失は、溶解後のDMSO処理リポソーム中で観察され、溶解前のヒノキチオール処理リポソームのものと同様のレベルに到達した(Hino処理リポソームで流出が観察されなかったMn
2+を除いて、蛍光消失は、Mn
2+の溶解後に観察された)。DMSO処理リポソーム及びヒノキチオール処理リポソームは、溶解後に同様の蛍光消失レベルを有した。金属流出の総量は、10μMのPhenGreen及び各金属の公知濃度による外部緩衝液中の蛍光消失の標準曲線を用いて決定した。t1/2値は、OriginProで漸近適合を用いて計算した。t1/2値は、金属ごとの最大金属流出の半分への到達に要する時間を示す。
【0397】
酵母における金属選択性の決定(
図10J)
細胞内金属レベルのヒノキチオール媒介変化は、
図13Hからの増殖救出条件、及び
図1GのFe取り込み試験の適合を用いて決定した。具体的に、野生型及びfet3Δftr1Δ酵母をYPD培地中で一晩増殖させて、濯ぎ、FeCl
3を有さないSD培地中で、30℃で3時間インキュベートした。次いで、酵母を、100μMのFeCl
3、及びDMSOビヒクルまたは10μMのヒノキチオールのいずれかを含有するSD培地(50mM MES/Tris、pH=7.0)中で、OD600=0.50で再懸濁させた。インキュベーションの2.5時間後、細胞を5℃で遠心分離して、50mM Tris/HCl緩衝液(pH=6.5)中の冷たい10mM EDTAで2回、冷たい金属遊離水で1回濯いだ。その後、細胞を48時間凍結乾燥させた。凍結乾燥細胞をHNO
3:HClの5:1混合物で消化させた後、CEM Discover SP−Dマイクロ波分解器中で、自動化された順次マイクロ波分解を施した。得られた澄明な溶液を金属遊離水中で希釈し、ICP−MSによって元素分析を行った。
【0398】
ヒノキチオールに結合した第二鉄の交換可能性(
図14M)
ヒノキチオールに結合した第二鉄の可逆的置換は、前述と同様に決定した(69)。非放射能FeCl
3(1000×ストックから100nM、
56Feと称される)を、pH=7.0の10mM MES/トリス緩衝液中のヒノキチオール(1000×ストックから100nM)に添加した。溶液を37℃で1時間平衡化した後、等量の
55FeCl
3(100nM)を添加した。溶液を37℃でインキュベートし、示された時点で、アリコートを採取し、水に添加した。鉄ヒノキチオール錯体は、酢酸エチルによる抽出を通じて、非結合鉄から直ちに分離し、放射性計数は、シンチレーション計数によって決定した。2%未満の鉄が、ヒノキチオールの不在下で、酢酸エチル層中で見られた。
【0399】
その後、平衡化率は、ヒノキチオール錯体(平衡状態で、1:1
55Fe:
56Fe)で見られた理論上の最大値の
55Feから放射性計数を正規化することによって決定した。
【0400】
ヒノキチオール及び他のキレート剤の電気化学的試験(
図2F、
図11A〜J、及び表S2、4〜6)
定電位電気化学的方法は、3つの電極細胞で、CH機器電気化学ワークステーション(モデル760C、Austin、TX)で行った。Hg作用電極は、Barton et alによって前述された手順を利用して、Ptワイヤ上のHgの電極位置によって組み立てた(70)。全ての実験は、Ag/AgCl基準電極に対して報告され、グラファイト補助電極を利用した。電解質は、測定前にUHPアルゴンを注入した。アルゴンの陽圧を、実験全体を通じて維持した。
【0401】
特に断りのない限り、実験は、HNO
3及びKOHを滴定液として用いて、H
2OまたはpH=7.2の1:1 MeOH:H
2O中の0.1Mトリス緩衝液を使用した。特に断りのない限り、実験は、100mV/sの走査速度、100μMのFe(NO
3)
3、及び500μMの小分子を使用した。全ての酸化還元電位は、正常な水素電極(NHE)に対して記録した。
【0402】
Fe(Hino)
nの推定酸化還元電位は、pH=7.2の0.1Mトリス緩衝液中のMeOHの濃度の関数として、Fe(Hino)
nの決定した酸化還元電位の最良適合線の外挿を通じて決定した。
【0403】
鉄(III)還元の速度(
図11K、L)
ヒノキチオールの不在下または存在下での鉄(III)還元の速度は、フェロジンを用いて決定し、前述と同様に、鉄(II)の濃度を定量化した(71)。具体的に、鉄(III)またはFe(Hino)
3をH
2Oの溶液中で事前に混合し、62.5mMのアスコルビン酸ナトリウム及びフェロジン(3mM)を含有するpH=7.0の25mM MES/トリス緩衝液に希釈し、10μMのFeCl
3及び30μMのヒノキチオールの最終濃度にした。Fe(フェロジン)
3に対応する562nmでの吸光度は、示された時点で決定した。その後、鉄(II)の濃度は、この緩衝液中のフェロジン−鉄の決定した消光係数を通じて計算した(ε=19,200M
−1cm
−1)。
【0404】
DMT1に対するCaco−2細胞及びMEL細胞のトランスフェクション
Caco−2細胞は、6ウェルプレート中に2×10
5個の細胞/ウェル(約30%コンフルエント)を播種した24時間後に、非標的化対照hRNAコンストラクトまたはヒトDMT1(Qiagen KH05760N)を標的化する4つの他のshRNAコンストラクトのいずれかの10μg/ウェルを有するリポフェクタミンLTX(Invitrogen 15338−100)及びPlus試薬(Invitrogen 11514−015)を用いて、以前に報告された(36)ようにトランスフェクトされた。トランスフェクション剤を除去し、細胞を24時間回復させた後、0.8g/LのG418を含有するCaco−2完全培地で処理した。細胞をG418培地中で約2週間インキュベートし、トランスフェクト細胞の選択を促進した一方、完全な細胞死が、非トランスフェクト細胞で観察された。非標的化対照コンストラクト=5’−GGAATCTCATTCGATGCATAC−3’;shDMT1コンストラクト(クローン4)=5’−AACCTATTCTGGCCAGTTTGT−3’。
【0405】
MEL細胞は、非標的化対照hRNA(Sigma、CMV−ネオベクターを用いた、5’−CAACAAGATGAAGAGCACCAA−3’)またはマウスDMT1を標的化する5つのshRNAコンストラクト(Sigma、クローン1〜5:TRCN0000332748、TRCN0000306610、TRCN0000079533、TRCN0000079535、及びTRCN0000079536)のいずれかを50μg有する2×10
7個の細胞/mLで、30mM NaClを有する400μLの血清遊離DMEMを含有する0.4cmキュベット(Biorad 1652081)中のエレクトロポレーション(0.28kV、975μFパルス)によってトランスフェクトした。トランスフェクション後、細胞を10mLのMEL完全培地を含有するT25フラスコに移して、6日間増殖させて、新鮮なMEL完全培地中に10:1の希釈で2日ごとに再播種した。この後、細胞を1g/LのG418を含有するMEL完全培地中に1×10
5個の細胞/mLの細胞で再播種し、非電気穿孔野生型(DS19)MEL細胞をもともと含有しているT25フラスコで細胞が観察されなくなるまで、新鮮なG418培地中に10:1の希釈で約2日ごとに再播種することによって、2週間の期間にわたって細胞を選択した。
【0406】
Mfrn1欠乏MEL細胞株は、前述のように、CRISPR/Cas9ゲノム編集を用いて発生させた(72〜74)。Mfrn1遺伝子座のエクソン2及び4を標的にした。エクソン2標的化配列は、5’−GATGCTTGTATACCGGGCTT−3’であり、エクソン4標的化配列は、5’−GAAGAACTCATAAACGGACC−3’であった。Mfrn1マウス遺伝子座の遺伝子内の欠失を文書化するのに使用したプライマーは、以下のものであった:エクソン4(フォワード)5’−GTTTGCCTCTGCGGTGTGATC−3’;エクソン2(フォワード)5’−GGAGGACGCTGTGGGGGGGGG−3’;エクソン2(リバース)5’−GTCCATCTTTTCTACAAGCC−3’。
【0407】
qRT−PCR条件(
図12A、
図13A、
図14A、及び
図22G、L)
Dmt1 mRNAレベルは、以下に記載のように処理を行った後、製造者のプロトコルに従って、SYBR Green(Agilent 600825)を用いたqRT−PCRを介して決定した。分化Caco−2単層におけるDmt1 mRNAレベルを決定するため(播種後の21〜28日目)、mRNAは、製造者の指示に従って、RNeasy Mini Kit(Qiagen 74104)を用いて単離した。Dmt1の閾値サイクル(Ct)値は、Pfaffl法を用いて、Dmt1(Origene HP200584)及びアクチン(Origene HP204660)に対するプライマーを用いて内部対照アクチンに正規化した後、sh対照レベルに正規化した。
【0408】
MELクローンにおける相対Dmt1 mRNAレベルを決定するため、mRNAは、製造者の指示に従って、RNeasy Mini Kit(Qiagen 74104)を用いて、2%DMSO及び10μMのクエン酸鉄(III)で3日間かけて分化させたMELクローンから単離した。Dmt1のCt値は、Pfaffl法を用いて、Dmt1(Origene MP215650)及びHprt1(Origene MP206455)に対するプライマーを用いて内部対照Hprt1に正規化した後、sh対照レベルに正規化した。
【0409】
上述のように、4時間、25μMのFeCl
3で処理し、ヒノキチオール濃度(0、0.5、1、3、5、10、25、及び50μM)を増加させた際のshDMT1 Caco−2単層におけるFpn1及びFth1 mRNAレベルは、上述のように、mRNAの単離後に決定した。閾値サイクル値は、Pfaffl法を用いて、Fpn1(Origene HB210988)及びFth1(Origene HP205786)に対するプライマーを用いて内部対照アクチンに正規化した後、ヒノキチオールの不在下で、shDMT1レベルに正規化した。
【0410】
相対Mfrn1 mRNAレベルは、前述のように、TaqManプローブ(Applied Biosystems)を用いて、qRT−PCRを介して決定した(75)。
【0411】
ウェスタンブロット条件(
図5A、G、
図12B、C、
図13B、C、J、
図14G〜J、
図19D、F〜K、N、O、及び
図22C〜F、H〜N)
Caco−2単層、分化MEL細胞、またはJ774細胞に、救出実験で記載された処理を行った後、プロテアーゼ阻害剤(Thermo 88266)を含有するRIPA緩衝液(Thermo 89901)で溶解した。BCAキット(Thermo 23225)によってタンパク質濃度を決定し、同じRIPA緩衝液中で2mg/mLに希釈した。その後、相対タンパク質レベルは、室温で2時間、5%BSAで遮断する10または20μgのタンパク質溶解物のウェスタンブロットを介して、かつ、5℃で一晩、5%BSA中のヒト抗DMT1(1:3,000希釈、Santa Cruz sc−30120)、マウス抗DMT1(1:1,000希釈、Santa Cruz sc−166884)、ヒト抗FTL1(1:1,000希釈、Santa Cruz sc−74513)、ヒト抗FPN1 HRPコンジュゲート(1:10,000希釈、Novus Biologicals NBP1−21502H)、マウス抗グロビンα HRPコンジュゲート(100℃で加熱しない、1:10,000希釈、Lifespan Biosciences LS−C212172)、ヒト抗TfR1 HRPコンジュゲート(1:10,000希釈、Abcam ab10250)、ヒト抗IRP1(1:1,000希釈、Santa Cruz sc−14216)、ヒト抗IRP2(1:1,000希釈、Santa Cruz sc−33682)、ヒト抗Hif1α HRPコンジュゲート(1:1,000希釈、Novus Biologicals NB100−105H)、ヒト抗Hif2α HRPコンジュゲート(1:1,000希釈、Novus Biologicals NB100−122H)、ヒト抗PCBP1(1:1,000希釈、Santa Cruz sc−393076)、またはヒト抗アクチンHRPコンジュゲート(1:10,000希釈、Cell Signaling 5125S)のいずれかからなる一次抗体を用いて決定した後、TBSTで徹底的に濯ぎ、ヤギ抗ウサギIgG HRPコンジュゲート(1:5,000希釈−DMT1、Cell Signaling 7074、5%乳汁中)、ヤギ抗マウス IgG1 HRPコンジュゲート(1:1,000希釈−PCBP1、1:5,000希釈−IRP2、1:3,000希釈−DMT1、Santa Cruz sc−2060、5%BSA中)、ロバ抗ヤギIgG HRPコンジュゲート(1:1,000希釈−IRP1、Santa Cruz sc−2020、5%BSA中)、またはヤギ抗マウスIgG2a HRPコンジュゲート(1:10,000希釈−FTL1、Santa Cruz sc−2061、5%BSA中)のいずれかからなる二次抗体で(非HRPコンジュゲートではない場合には)室温にて2時間インキュベーションした。ブロットをTBSTで徹底的に濯ぎ、製造者の指示に従って、フェムト秒化学発光溶液の添加後に撮像した(Thermo Fisher 34095)。
【0412】
ELISAによるフェリチンレベルの決定(
図19E及び
図22A)
sh対照及びshDMT1 Caco−2単層溶解物における絶対フェリチンタンパク質レベルは、製造者の指示に従って、市販のサンドイッチELISAキット(Abcam ab108837)を用いて決定した。
【0413】
図19Eで見られる結果について、タンパク質溶解物は、以下に記載のように、500nM FeCl
3で処理後に単離した。
図22Aで見られる結果について、Caco−2単層は、以下に記載のように、25μMのFeCl
3及び0,0.5、1、3、5、10、25、または50μMのヒノキチオールで処理した。
【0414】
分化Caco−2単層における
55Fe取り込み及び輸送(
図3A〜C、H、I、
図5B、D〜F、
図12E〜G、
図14K、
図19M、P、Q、
図21、及び
図23A、D)
6ウェルプレート中のPETインサート上で増殖させた分化Caco−2単層(P25〜50、播種後の21〜28日目)からの培地を吸引し、単層をPBSで濯いだ。2mLの側底液(10mM HEPES緩衝液中のpH=7.4の血清遊離DMEM)を側底側に添加し、200nMの
55FeCl
3または示された濃度のFeCl
3と、DMSOビヒクル、ヒノキチオール、C2deOHino、デフェリプロン、PIH、SIH、またはメシル酸デフェロキサミン(Sigma D9533)(DMT1欠乏では、500nMのHino/C2deOHino、FPN1欠乏では、1μMのHino/C2deOHino、または、DMSO中の1000×ストックの示された濃度の小分子)のいずれかとを含有する1mLの頂端液(10mM MES緩衝液中のpH=5.5の血清遊離DMEM)を、細胞単層を混乱させることなく、膜インサートの壁への添加を介して、頂端側に添加した。その後、特に記載がない限り、単層を37℃で4時間インキュベートした。側底液の100μLアリコートを除去し、シンチレーションカクテル中で希釈し、液体シンチレーション計数器で放射能を決定し、
55Fe輸送の相対量を定量化した。細胞内
55Feを決定するため、側底側及び頂端側培地を除去し、単層をPBS(×2)で濯いだ。その後、細胞を500μLの200mM NaOHで溶解して、ニューテーターを一晩混合し、シンチレーションカクテル中で細胞溶解物を希釈後に、液体シンチレーション計数器で放射能を決定した。特に記載がない限り、全ての値をsh対照単層に正規化した。絶対鉄レベルは、公知の基準による
55Fe放射能レベルの較正を通じて決定し、1枚の膜当たりのタンパク質の平均mgは、プロテアーゼ阻害剤を含有するRIPA緩衝液によるタンパク質溶解によって決定し、製造者の指示に従って、BCAキットを通じて定量化した。
【0415】
pHの関数としての
55Fe輸送の決定(
図12E)には、DMEM中の10mM PIPES(pH=6.5)または10mM HEPES(pH=7.4)を含有する頂端液の使用を除いて、上述のプロトコルを使用した。
【0416】
一方向取り込み及び輸送の決定(
図5B及び
図19M)は、
55FeCl
3(200nM)の側底添加、及びDMSOまたはヒノキチオール(500nM)の側底添加を除いて、上述のように決定した。その後、頂端液のアリコートを採取して、側底側から頂端側への輸送を決定した。細胞内
55Feは、上述のように決定した。
【0417】
鉄及び/またはヒノキチオールの濃度の関数としての
55Fe輸送の決定(
図5E及び
図21)は、示された濃度の鉄(濃度ごとに20:1
56Fe:
55Fe)またはヒノキチオール(DMSO中の1000×ストックから)の使用を除いて、上述のように行った。ヒノキチオール濃度を増加させて添加した際の内因性タンパク質の翻訳及び転写調節変化の実験(
図5F〜J、
図21、及び
図22A〜L)には、25μMの非放射能FeCl
3、及び示された濃度のヒノキチオール(DMSO中の1000×ストックから)を使用した。
【0418】
鉄の不在下でヒノキチオール濃度を増加させる際のフェロポーチンレベルの決定(
図22M、N)は、200nMの非放射能FeCl
3を含有する上述のような手順を使用した。
【0419】
FPN1ノックダウン後の
55Fe輸送の決定(
図5D及び
図19N〜P)は、以下に記載のように、ケルセチンをインキュベートして、FPN1をノックダウンした後、200nMの
55FeCl
3を用いて、上述のように決定した(40)。
【0420】
Caco−2単層におけるフェリチンの
55Fe免疫沈降(
図5C、
図19L、及び
図22B)
フェリチンの免疫沈降は、ヒト抗FTL1(Santa Cruz sc−74513)及びタンパク質G PLUS−アガロースビーズ(Santa Cruz sc−2002)を用いて行った。細胞溶解物は、上述のように、DMSOまたはヒノキチオール(
図19Lでは、500nM、
図22Bでは、0、0.5、1、3、5、10、25、または50μM)及びFeCl
3(
図19Lでは、200nMの
55Fe、25μMの20:1
56Fe:
55Fe)で4時間頂端処理した後、sh対照及びshDMT1 Caco−2単層から得た。細胞溶解物を一次抗体(1:100希釈)で室温にて1時間インキュベートした後、一定混合しながら、二次抗体(1:10希釈)で室温にて1時間インキュベートした。遠心分離、及びPBSによる濯ぎを繰り返し行い、アガロースペレット中の放射性レベルは、シンチレーション液中の希釈によって決定した。
【0421】
Caco−2単層におけるTEER決定(
図12D及び
図14L)
Caco−2膜完全性を決定するため、輸送試験は、
55FeCl
3の代わりに非放射能鉄の使用を除いて、上述のように行った。示された時点で、経上皮電気抵抗(TEER)は、上皮電圧抵抗計で決定し、実験の開始時に、膜のTEERと比較した。
【0422】
細胞株におけるWST−8毒性(表S7)
Caco−2、MEL、及び/またはJ774細胞における小分子媒介毒性の決定は、DMSO中の1000×ストックの示された小分子を用いて、示された最終濃度を得た以前に報告されたものと同様に(76)、WST−8キット(Cayman Chemical 10010199)を用いて、製造者の指示に従って行った。
【0423】
DMSOによるMEL細胞の分化(
図3D)
MEL細胞による分化実験(39)を行うため、示されたMEL細胞を、12ウェルプレート中の1μMのヒノキチオールまたはC2deOHino(DMSO中の1000×ストックから添加)の不在下または存在下で、10μMのクエン酸鉄(III)及び2%DMSOを含有するMEL完全培地中で1×10
5個の細胞/mLに希釈した。その後、特に記載がない限り、細胞を37℃で72時間インキュベートした。DMSOの不在下、同一条件下で対照実験を行い、以下に記載のように、分化が、o−ジアニシジン染色によって観察されなかったことが分かった。
【0424】
ジアニシジンによる誘導MEL細胞の染色(
図3E、G、
図13D、E、G、H、L、
図14D、及び
図23B、E)
以前に報告されたものと同様に、o−ジアニシジン染色を介したDMSO誘導の3日後に、ヘモグロビン化MEL細胞を定量化した(74)。誘導の3日後に細胞を遠心分離して、PBSで濯いだ。その後、細胞を、水中に7.5mM o−ジアニシジン、900mM H
2O
2、及び150mM 酢酸を含有する溶液中に、約1×10
6個の細胞/mLで懸濁させた。その後、細胞をAXIO Zoom V16顕微鏡で撮像し、カラー画像を得た。その後、染色細胞の数を、ImageJ分析を介して定量化し、各画像の総細胞数と比較した。ヒノキチオールがヘモグロビン化のためにDMSO誘導を必要とすることを決定するため、2%DMSOは、72時間インキュベーション及びo−ジアニシジン染色の前に、実験の開始時に添加しなかった。
【0425】
MEL細胞における
55Fe取り込み(
図13F、K及び
図14B、E)
MEL細胞を上述のように誘導して、分化させ、37℃で70時間インキュベートした後、飽和鉄トランスフェリン(
55Fe
2Tf)溶液(10μMの
55Fe
2Tfストックから40nMの最終濃度)を添加した。細胞をさらに2時間インキュベートした。完了後、細胞を血球計算器で計数し、遠心分離後に培地を除去し、細胞をPBS(×3)で濯ぎ、細胞懸濁液をシンチレーションカクテル中で希釈し、放射能を決定した。放射性レベルは、野生型(DS19)レベルに比べて、細胞ごとに正規化した(血球計算器によって計数した)。
【0426】
MEL細胞における
55Feヘム組み込み(
図3F、
図13K、及び
図14C、F)
MEL細胞を上述のように誘導して、分化させ、37℃で64時間インキュベートした後、飽和
55Fe
2Tf溶液(10μMの
55Fe
2Tfストックから250nMの最終濃度)を添加した。細胞をさらに8時間インキュベートした。完了後、細胞を血球計算器で計数し、遠心分離後に培地を除去し、細胞をPBS(×3)で濯いだ。その後、細胞をRIPA緩衝液で溶解して、水で希釈し、3:1 酢酸エチル:酢酸溶液を用いて、ヘムを抽出した。有機抽出物のアリコートをシンチレーションカクテル中で希釈し、放射能を決定した。放射性レベルは、野生型(DS19)レベルに比べて、細胞ごとに正規化した(血球計算器によって計数した)。
【0427】
ヘモグロビンレベルの決定(
図13I、J)
MEL細胞を上述のように誘導して、分化させ、37℃で72時間インキュベートした。完了後、細胞を血球計算器で計数し、遠心分離後に培地を除去し、細胞をPBS(×2)で濯いだ。その後、水による凍結/解凍サイクルを繰り返して、細胞を溶解し、10
6個の細胞ごとのヘモグロビンレベルは、遠心分離後にOD415を決定することによって、前述のように決定した(77)。ウェスタンブロットによるグロビンレベルは、上述のように、分化後に決定した。インキュベーションの72時間後、細胞を溶解し、グロビンレベルは、上述のように、ウェスタンブロットによって決定した。
【0428】
Caco−2細胞及びJ774細胞におけるFPN1のノックダウン(
図3H〜K、
図5D、
図14G〜M、及び
図19N〜P)
野生型Caco−2細胞におけるFPN1レベルをノックダウンするため、分化上皮単層を、前述と同様に、G418を含有するCaco−2完全培地中の150μMのケルセチン(Sigma 337951)で18時間インキュベートした(40)。sh対照及びshDMT1 Caco−2単層におけるFPN1レベルをノックダウンするため、インキュベーションは、250μMのケルセチンを除いて、上述のように行った。インキュベーションの完了後、頂端液及び側底液を吸引し、PBSで濯いだ後、
55Fe輸送及び取り込みは、上述のように決定した。
【0429】
野生型J774細胞におけるFPN1レベルをノックダウンするため、前述と同様に(41)、細胞を、J774完全培地中の2μg/mLマウスヘプシジン(Peptides International PLP−3773−PI)で1時間インキュベートした後、
55FeをJ774細胞に負荷し、
55Fe放出を決定した。
【0430】
J774マクロファージからの
55Fe放出(
図3J、K、
図14M、及び
図23C、F)
J774細胞を12ウェルプレート中で増殖させて、約80%の密集度にした。その後、細胞を新鮮なJ774完全培地(1mL)中でビヒクルまたはヘプシジンで処理し、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、培地を吸引した後、ビヒクルまたはヘプシジンを含有するJ774完全培地(1mL)中の
55Fe
2Tf(50nM)溶液を添加した。細胞を37℃で10分間インキュベートし、培地を除去した。細胞をPBS(×2)で濯いだ後、37℃で10分間、J774完全培地(1mL)で濯いだ。培地を吸引した後、DMSOまたは小分子(特に記載がない限り、5μM、1000×希釈液)を含有するJ774完全培地(1mL)を、ヘプシジンの存在下または不在下で添加した。示された時間で、培地のアリコート(≦100μL)を除去し、シンチレーションカクテル中で希釈し、放射能は、液体シンチレーション計数によって決定した。実験の完了後、培地を除去し、細胞をPBSで濯ぎ、連続的に攪拌しながら(50rpm)、細胞を500μLの200mM NaOHで、37℃で2時間溶解した。細胞溶解物をシンチレーションカクテル中で希釈し、細胞内
55Feレベルは、液体シンチレーション計数によって決定した。%
55Fe放出は、示された時間での細胞外
55Feの総(細胞内+細胞外)
55Feに対する比によって決定した。
【0431】
J774マクロファージへの
55Feの取り込み(
図4D、E)
J774細胞を12ウェルプレート中で増殖させて、約80%の密集度にした。その後、細胞を、50μMのFeCl
3(100:1
56Fe:
55Fe)を含有する10mM HEPES緩衝液(1mL)中のpH=7.4の血清遊離DMEM培地におけるビヒクルまたはヘプシジンで処理した。37℃でのインキュベーションの4時間後、細胞をPBS(×2)で濯ぎ、プロテアーゼ阻害剤を含有する500μL RIPA緩衝液で溶解した。細胞溶解物をシンチレーションカクテル中で希釈し、細胞内
55Feは、液体シンチレーション計数によって決定し、各ウェル中の総タンパク質に正規化した。
【0432】
細胞外鉄の関数としてのヒノキチオール促進鉄の取り込み(
図4E)は、1μMのヒノキチオール(DMSO中の1000×ストックから)、及び示された最終濃度のFeCl
3(20:1
56Fe:
55Fe)を用いて、野生型J774マクロファージにおいて上述と同様に行った。示された時間で、細胞をPBS(×2)で濯ぎ、200mM NaOHで溶解した。細胞溶解物をシンチレーションカクテル中で希釈し、細胞内
55Feは、液体シンチレーション計数によって決定し、各ウェル中の総タンパク質に正規化した。
【0433】
MEL細胞の生細胞蛍光イメージング(
図4A及び
図16A、B、E、H)
サイトゾル及びミトコンドリア鉄を視覚化するため、カルセイングリーン及びRPA蛍光の共焦点イメージングをそれぞれ行った。MEL細胞を誘導して、上述のように分化させた。インキュベーションの70時間後、クエン酸鉄(III)(10μMの最終濃度)を添加した。細胞をさらに2時間インキュベートした後、遠心分離して、PBSで濯いだ。その後、細胞を、1μMのカルセイングリーン−AM(Thermo Fisher C34852)及び1μMのRPA(Axxora SQX−RPA.1)を含有するPBS中に再懸濁させた。その後、細胞を37℃で15分間インキュベートした。細胞を遠心分離して、PBSで濯ぎ、10μMのFe
2Tfを含有するDMEM中に再懸濁させた。その後、LSM710顕微鏡で10分以内に細胞を撮像した。細胞ごとの相対カルセイングリーン及びRPA蛍光は、実験ごとに100超個の細胞を用いて、ImageJ分析によって決定した。
【0434】
エンドソーム鉄レベルを視覚化するため、oxyburstグリーン−BSAコンジュゲート(Thermo Fisher O13291)の共焦点イメージングを行った。MEL細胞を誘導して、上述のように分化させた。70時間後、クエン酸鉄(III)(10μMの最終濃度)及びoxyburstグリーン−BSAコンジュゲート(200μg/mL)を添加した。細胞をさらに2時間インキュベートした後、遠心分離して、PBSで濯いだ。その後、細胞をDMEM−HEPES緩衝液中に再懸濁させて、H
2O
2(50mMの最終濃度)を添加した。細胞を室温でインキュベートした後、oxyburstグリーン蛍光は、LSM710顕微鏡で、H
2O
2を添加した10分後に決定した。細胞ごとの相対oxyburstグリーン蛍光は、実験ごとに100超個の細胞を用いて、ImageJ分析によって決定した。
【0435】
MEL細胞のフローサイトメトリー(
図16C、D、F、G、I、J)
フローサイトメトリーによる細胞カルセイングリーン及びRPA蛍光の中央値を定量化するため、細胞の染色は、0.1μMのカルセイングリーン−AM及び0.1μMのRPAの使用を除いて、上述のように行った。その後、カルセイングリーン及びRPA蛍光は、実験ごとに≧10,000個の細胞を計数するBD FACS Aria IIソーターを用いて、37℃で決定した。次いで、蛍光の中央値を、色素ごとにshDMT1に正規化した。
【0436】
フローサイトメトリーによる細胞oxyburstグリーン蛍光の中央値を定量化するため、細胞の染色は、500μg/mLのoxyburstグリーン−BSAコンジュゲートの使用、5mM H
2O
2の使用を除いて、上述のように行い、H
2O
2の添加後に細胞を37℃で20分間インキュベートした後、実験ごとに20,000個の細胞を計数するBD LSR IIフローサイトメーターを用いて、蛍光分析をした。次いで、蛍光の中央値を、色素ごとにshDMT1に正規化した。
【0437】
J774マクロファージにおけるサイトゾル鉄レベルの一時的イメージング(
図4B、C、H、I、
図18A〜C)
ヒノキチオールが、人工鉄勾配の生成を通じて血漿膜を横断して、鉄を可逆的かつ自律的に輸送する能力を評価するため、J774マクロファージをIbidi皿(Ibidi NC0723624)中で増殖させて、約80%の密集度にした後、5mMアスコルビン酸及び200μM FeSO
4を含有するJ774完全培地でインキュベートした。細胞を1.5時間インキュベートし、培地を吸引し、細胞をPBSで濯いだ。その後、細胞を、37℃で20分間、DMEM中でカルセイングリーン−AM(1μM)でインキュベートした。培地を吸引し、細胞をPBS(×2)で濯いだ後、DMEM(10mM HEPES中でpH=7.4)及び1mMプロベネシド(Sigma P8761)を添加した。その後、カルセイングリーン蛍光を、示された30分の時点で、5%CO
2、37℃で、LSM880顕微鏡で撮像した。ヒノキチオール(100μMの最終濃度)、C2deOHino(100μMの最終濃度)、またはDMSO(全ては、50μL DMEM中の1000×ストックから)を5分で添加し、FeCl
3(100μMの最終濃度、DMEM中の50μL)の溶液を12分で添加した。各時点での各画像の蛍光をImageJ分析によって分析した後、実験ごとに100超個の細胞を用いて、画像ごとにt=0での蛍光に正規化した。
【0438】
野生型及びFPN1欠乏J774細胞における鉄の取り込みの一時的な生細胞イメージングは、上述のように、カルセイングリーンによる細胞の染色後に行った。その後、細胞をPBS(×2)で濯ぎ、ヘプシジンの存在下または不在下で、200μM FeSO
4、5mMアスコルビン酸、及び5mMプロベネシドを含有するJ774完全培地中でインキュベートした。カルセイングリーン蛍光は、示された時点で得られ、各時点での各画像の蛍光をImageJ分析によって分析した後、実験ごとに100超個の細胞を用いて、画像ごとにt=0での蛍光に正規化した。
【0439】
Caco−2単層におけるカルセイングリーンによるサイトゾル鉄の一時的イメージング(
図5H〜J)
shDMT1 Caco−2単層における不安定な鉄レベルの一時的な生細胞イメージングは、pH=7.4 DMEM中の頂端液及び側底液におけるカルセイングリーン−AM(5μM)によるCaco−2単層の30分間の染色後に行った。PBS(×2頂端側及び側底側)で濯いだ後、単層を、DMEM(側底側)中のpH=7.4 HEPES緩衝液と、25μMのFeCl
3及び0、0.5、1、3、5、10、25、または50μMのヒノキチオール(DMSO中の1000×ストックから)のいずれかを含有する頂端液(DMEM中のpH=5.5 MES緩衝液)とによるCaco−2輸送実験と同様に処理した。カルセイングリーン蛍光は、t=0分及びt=60分で得られ、各画像の蛍光をImageJ分析によって定量化した。
【0440】
59Fe腸吸収(
図6A、B及び
図24A〜C)
健常(+/+)及びffe/+マウスにおける鉄の胃腸吸収に対するヒノキチオールの効果を特徴付けるため、胃内強制投与前には、4時間(8am〜12pm)食事を控えた。マウスに最大で2%のイソフルランで麻酔をかけて、20ゲージの1.5インチ強制経口投与針を用いて、
59FeCl
3を投与した。
59FeCl
3(200μCi/kg体重)は、6mMヒノキチオールの存在下または不在下で、10mMアスコルビン酸を含有するトリス緩衝生理食塩水中で希釈した。投与した最終容量は、マウスごとに1.5mL/kgであり、個々の体重ごとに補正した。投与した60、120、及び240分後に血液を回収し、
59Feレベルを決定した。6時間後にイソフルランを過剰投与することで、マウスをヒトの手で犠牲にし、心臓穿刺によって血液を回収した。放射能は、ガンマ計数によって定量化し、強制経口投与用量のパーセンテージ(±SEM)として計算した。4匹の遺伝子型一致マウス/日で実験を行った;予備分析を決定し、胃内強制投与後の
59Feの取り込みに対する性別間の効果はなかった;示した実験で性別混合を使用した。
【0441】
3〜5ヵ月齢のb/bラットにおける鉄の
59Fe胃腸吸収は、6mMヒノキチオールまたは6mM C2deOHinoのいずれかの存在下で、上述の手順と同様に特徴付けた。正常な鉄の取り込みの速度と比較するため、同齢の兄弟対照(+/+または+/b)ベオグラードラットは、小分子なしで
59Feを投与したことを除いて、同じ手順で試験した。投与した15、30、60、120、180、240、及び360分後に、尾静脈から血液(50μL)を採取した。放射能は、ガンマ計数によって定量化し、強制経口投与用量のパーセンテージ(±SEM)として計算した。動物は、6時間でヒトの手で安楽死させた。
【0442】
モルファントゼブラフィッシュにおけるノックダウン(
図6C、E及び
図24D)
モルホリノ(MO)は、GeneTools,LLC(Philomath,OR)から購入した。使用したMoの配列は、以下の通りであった:dmt1 MO:5’−GAGTGTGAAACGTGACGCACCCCTT−3’;mfrn1 MO:5’−TAAGTTGCATTACCTTGACTGAATC−3’。1細胞期でのゼブラフィッシュ胚に、前述のように、MOを注入した(72、78)。胚中のヘモグロビン化細胞のo−ジアニシジン染色は、前述の通りであった(79)。トランスジェニックTg(グロビンLCR:eGFP)株由来の蛍光標識赤血球を用いたフローサイトメトリーによる定量化(50)は、前述のように行った(72、75)。モルファントにおけるdmt1 mRNAの半定量的RT−PCRは、前述のように、カスタム仕様のプローブを用いて行った(80)。dmt1プライマーの配列は、以下の通りである:5’−CTGAACCTGCGCTGGTCCC−3’(フォワード);5’−TCCGTTAGCGAAGTCGTGCATG−3’(リバース)。対照actbプライマーの配列は、以下の通りであった:5’−GTTGGTATGGGACAGAAAGACAG−3’(フォワード);5’−ACCAGAGGCATACAGGGACAG−3’(リバース)。
【0443】
トランスポーター欠乏ゼブラフィッシュにおけるヘモグロビン化の回復(
図6C〜F及び
図24E)
変異型胚またはモルファント胚のいずれかを、受精後の(hpf)24時間超に発生させた後、前述のように、プロナーゼで絨毛膜除去した(81)。その後、絨毛膜除去した胚またはモルファントを、1μMのヒノキチオール(またはビヒクル)及び10μMのクエン酸鉄(III)の存在下で、さらに48時間インキュベートした。ビヒクル処理胚を0.01mM DMSOに暴露した。クエン酸鉄(III)(10μM)によるC2deOHino(1μM)は、陰性対照として使用した。対照胚、及び約72hpfの変異型またはモルファント胚のいずれかを、(a)o−ジアニシジンによる直接染色(79)または(b)フローサイトメトリーのために前述のように機械的に均質化(75、78)のいずれかで行った。
【0444】
ヘテロ接合性交配からの変異型ゼブラフィッシュの遺伝子型決定及びイメージング(
図6G、H)
ヒノキチオール救出frstq223胚の遺伝子型決定は、前述のように行った(10)。
【0445】
小分子の合成及び特徴付け
材料
市販試薬は、Sigma−Aldrichから購入し、特に記載がない限り、さらに精製せずに使用した。Pangborn及び同僚らによって記載されるように、充填カラムを通じた継代を介して、溶媒を精製した(82)。全ての水を使用前に脱イオン化した。
【0446】
一般的実験手順
特に記載がない限り、反応は、アルゴンの陽圧下で、ゴム隔膜を装備した、火炎乾燥丸底フラスコまたは改変シュレンクフラスコを行った。特に記載がない限り、有機溶液は、20〜35℃の浴温で、減圧下で、回転蒸発を介して濃縮した。E.Merckシリカゲル60 F254プレート(0.25mm)上で示された溶媒を用いて、薄層クロマトグラフィー(TLC)を分析することによって、反応を監視した。化合物は、UVランプ(λ=254nmまたは366nM)への暴露、及び/またはKMnO
4の溶液による染色によって視覚化した後、Varitempヒートガンを用いて加熱した。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、Merckシリカゲルグレード9385 60Å(230〜240メッシュ)を用いて行った。分取HPLC精製は、SunFire 5μm C18カラムによるAgilent 1260 Infinityシリーズ分取HPLCを用いて行った(Waters Corporation)。
【0447】
構造分析
1H NMR、
13C NMR、及び
19F NMRは、Unity Inova 500NB、Varian XR500、またはUnity 500機器上で、20℃で記録した。化学シフト(δ)を、テトラメチルシランからの百万分率(ppm)低磁場で報告し、NMR溶媒中の残留プロチウムを基準とする(CHCl
3、δ=7.26;DMSO−d6、δ=2.50)。データを以下の通りに報告する:化学シフト、多重度(s=一重項、d=二重項、t=三重項、m=多重項、app=見かけ)、ヘルツ(Hz)の結合定数(J)、及び積分。
13C NMRは、NMR溶媒中の炭素共鳴を基準とする(CDCl
3、δ=77.16;DMSO−d6、δ=39.52)。
19F NMRは、外部標準中のフッ素共鳴を基準とする(CFCl
3、δ=0.00)
【0448】
鉄(III)ヒノキチオール錯体
【化349】
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攪拌棒を装備した火炎乾燥20mLバイアルに、硝酸鉄(III)非水和物(819.8mg、2.03mmol)を添加した後、ヒノキチオール(1.0092g、6.15mmol)を添加した。その後、エタノール(10mL)を添加した。反応を2時間激しく攪拌し、紫色の懸濁液を得た。生成物を、ろ過を介して回収し、アセトン中で再結晶して、紫色固体(959.9mg、1.76mmol、86.7%収率)として生成物を得た。
【0449】
HRMS(ESI+)
C
30H
34O
6Fe(M+H)
+に対する算出値:546.1705;観測値:546.1703
元素分析
算出値[C]:66.06%;観測値[C]:65.88%
算出値[H]:6.10%;観測値[H]:6.21%
算出値[Fe]:10.24%;観測値[Fe]:10.19%
【0450】
ヒノキチオールのトリフラート化
攪拌棒を装備したオーブン乾燥300mL丸底フラスコに、ヒノキチオール(3.014g、18.27mmol)を添加した後、無水CH
2Cl
2(200mL)添加した。システムを窒素下に置き、蒸留したてのルチジン(2.54mL、21.92mmol)を、シリンジを介して添加した。システムを氷/水浴中で0℃に冷却し、トリフラート無水物(3.38mL、20.10mmol)を、シリンジを介して滴下して加えた。溶液を0℃で15分間攪拌した後、室温に温めて、さらに3時間攪拌した。完了後、反応物を飽和水性NH
4Cl溶液でクエンチした。生成物をCH
2Cl
2中で抽出し、CuSO
4で洗浄し、ブラインで洗浄し、無水MgSO
4で乾燥させた。生成物をろ過し、溶媒を回転蒸発によって除去した。その後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(3:1 ヘキサン:EtOAc)によって、C−2及びC−7異性体の分離できない混合物として生成物を精製し、わずかに着色した油(4.819g、16.27mmol、C−2及びC−7異性体の53:47混合物として88.6%収率)を得た。
TLC(1:1 ヘキサン:EtOAc)
Rf=0.68,UV(254nm)及びKMnO
4染色によって視覚化
1H NMR(500MHz,CDCl
3)
δ 7.34−7.24(m,5H),7.14(dt,J=11.5,0.7Hz,1H),7.08(dt,J=8.6,0.6Hz,1H),6.99(dd,J=11.4,9.4Hz,1H),2.91−2.80(app.m,2H),1.26(d,J=6.8Hz,6H),1.26(d,J=6.8Hz,6H)
13C NMR(126MHz,CDCl
3)
δ 178.0,177.7,158.7,155.9,152.3,139.0,138.2,137.9,137.8,131.9,129.9,129.3,127.6,38.8,38.2,22.9,2.8
19F NMR(470.2MHz,CDCl
3)
δ−74.76,−74.84
HRMS(ESI+)
C11H12F3O4S(M+H)+に対する計算値:297.0408;観測値:297.0408
【0451】
ヒノキチオール−トリフラート水素化分解
酢酸ナトリウム(1.11g、13.4mmol)、トリフラート化ヒノキチオール(2.00g、6.76mmol)、炭素上の10重量%パラジウム(71.8mg)、及びメタノール(75mL)を、攪拌棒を含有する火炎乾燥200mL丸底フラスコに添加した。懸濁液をN
2で脱ガスした後、溶液を通じてH
2をバブリングせずにH
2雰囲気下に置いた。反応物を攪拌し、TLC(Et
2O)によって30分間分析した。完了後、N
2を、システムを通じてバブリングし、黒色懸濁液をセライト上でろ過した。メタノールを回転蒸発によって除去し、生成物をジエチルエーテル中で抽出し、ブラインで洗浄した。無水MgSO
4で乾燥後、溶媒を回転蒸発によって除去し、わずかに着色した油を得た。分取HPLC(283nm、H
2O中の20%MeCN)によって生成物を精製し、C2−デオキシヒノキチオール及びC7−デオキシヒノキチオールを透明油(C2deOHino:325mg、2.21mmol、32.4%収率;C7deOHino:204mg、1.38mmol、20.4%収率)として得た。
TLC(Et
2O)
Rf=0.49,UV(254nm)及びKMnO
4染色によって視覚化
1H NMR(500MHz,CDCl
3)
δ C2:7.10−6.97(m,3H),6.91(ddd,J=12.0,2.6,0.8Hz,1H),6.81(ddd,J=8.7,1.5,0.7Hz,1H),2.73(7重項,J=6.8Hz,1H),1.19(d,J=6.9Hz,6H)
δ C7:7.09−7.01(m,3H),6.93−6.92(m,2H),2.74(7重項,J=6.8Hz,1H),1.21(d,J =6.9Hz,6H)
13C NMR(126MHz,CDCl
3)
δ C2:188.0,156.2,141.9,140.1,138.1,137.2,130.5,38.1,23.0
δ C7:188.0,157.4,141.9,138.7,137.1,136.1,133.8,38.4,22.9
HRMS(ESI+)
C10H13O(M+H)+に対する計算値:149.0966;観測値:149.0973
【0452】
サリシルアルデヒドイソニコチノイルヒドラゾンの合成
イソニコチン酸ヒドラジド(198mg、1.4mmol)を、攪拌棒及びEtOH(3mL)を含有する火炎乾燥7mLバイアルに添加した。その後、サリシルアルデヒド(175mg、1.4mmol)を、シリンジを介して滴下して加えた。溶液を、N
2下で、75℃で6時間攪拌した。溶液を0℃に冷却し、真空ろ過によって固体を回収した。生成物を冷EtOHで濯ぎ、EtOH中で再結晶して、真空ろ過後に白色固体(237mg、1.0mmol、69%収率、>95%純度)を得た。特徴付けは、以前に報告されたものと一致した(83)。
TLC(EtOAc)
Rf=0.38,UV(254nm)及びKMnO
4染色によって視覚化
1H NMR(500MHz,DMSO−d6)
δ 11.08(s,1H),8.80(dd,J=4.5,1.7Hz,2H),8.68(s,1H),7.85(dd,J=4.4,1.7Hz,2H),7.61(dd,J=7.7,1.7Hz,1H),7.32(ddd,J=8.2,7.2,1.7Hz,1H),6.97−6.90(m,2H),−1.76(s,1H)
13C NMR(126MHz,DMSO−d6)
δ 161.4,157.5,150.4,149.0,140.0,131.8,129.3,121.6,119.5,118.7,116.5
HRMS(ESI+)
C13H12N3O2(M+H)+に対する計算値:242.0930;観測値:242.0924
【0453】
イオン輸送タンパク質の定義
本明細書で使用される場合、「イオン輸送タンパク質」は、膜を横断してイオンを輸送する細胞によって使用されるタンパク質を意味するものであり、これらは、「能動イオン輸送タンパク質」及び「受動イオン輸送タンパク質」にさらに分枝する。語句「能動イオン輸送タンパク質」とは、ATP(一次性能動)などのエネルギー源への「上り坂」輸送プロセスまたは別のイオンまたは基質分子(二次性能動)の「下り坂」移動を連結することによって、これらの電気化学的勾配に対してイオンを輸送するものと定義することを意味する。これらの能動イオン輸送タンパク質は、「ポンプ」または「交換体」と代替的に呼ばれることが多い。語句「受動イオン輸送タンパク質」とは、イオンの下り坂移動を単に触媒する受動的なタンパク質イオンチャンネル及び他のイオン輸送タンパク質を記述することを意味する。これらの受動イオン輸送タンパク質は、「チャンネル」及び/または「(受動)トランスポーター」と代替的に呼ばれることが多い。
【0454】
表
表1.鉄吸収、恒常性、及び代謝の障害。鉄吸収、恒常性、及び代謝の欠陥と関連する、ヒトにおける遺伝性疾患の非包括的一覧。これらの疾患は、3つのカテゴリーに大きく分類することができる:(i)欠陥鉄吸収の疾患、(ii)異常な組織鉄レベルと関連する鉄関連タンパク質の疾患、及び(iii)異常な組織鉄レベルと関連する二次障害。他の効果に加えて、これらの疾患は、ある特定の細胞内コンパートメント、細胞、または組織における鉄の異常なレベルと関連し、小分子鉄トランスポーターは、異常な鉄恒常性の効果の改善に役立ち得る。
【表1-1】
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【表1-2】
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【0455】
表2.鉄キレート剤の物理的特性。ヒノキチオール及び他のキレート剤の結合親和性及び酸化還元電位は、それぞれ、競合アッセイ及びサイクリックボルタンメトリーを通じて決定した。ヒノキチオールは、デフェリプロンを含む多くの他の鉄キレート剤より強力に鉄(II)及び鉄(III)に結合する。鉄:ヒノキチオール錯体は、そのオクタノール−水分配係数によって決定されるように、無極性溶媒中に可溶性である。
【表2】
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【0456】
表3.ヒノキチオール結合及び輸送の選択性。ヒノキチオールは、抽出後の有機可溶性ヒノキチオール:金属錯体のICP−MS分析、かつ、リポソームからの金属流出の速度の決定によって決定されるように、多くの他の二価金属に結合し、輸送する。生物系における結合及び輸送の選択性は、細胞の内部の他の金属によりも不安定な鉄のメタロミクス存在度が高いため、高くなる可能性が高い。(参考文献33及び34を参照)。ND=未決定;値は、少なくとも3つの独立した実験の平均を表す。
【表3】
[この文献は図面を表示できません]
【0457】
表S4.異なるHino:Fe比のヒノキチオール:鉄錯体の標準酸化還元電位。2つの異なる酸化還元波は、ヒノキチオールのサイクリックボルタモグラム(CV)で観察された。酸化還元電位は、ヒノキチオール濃度の増加に伴って減少した。CVは、pH=7.2の1:1 MeOH:H
2Oの0.1Mトリス緩衝液、及び100μMのFe(NO
3)
3を用いて、Hg電極、Ag/AgCl基準、及びグラファイト補助による100mV/sの走査速度で得られた。ND=未決定;値は、3つの独立した実験の平均を表す。
【表4】
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【0458】
表5.異なるpHのヒノキチオール:鉄錯体の標準酸化還元電位。1つの電子酸化還元プロセス(E
01)に対応する酸化還元波の酸化還元電位は、様々なpHで決定した。酸化還元電位は、pHの減少に伴って増加し、恐らくは、2:1または1:1ヒノキチオール:鉄錯体への種形成の増加によるものである。CVは、示されたpHの1:1 MeOH:H
2Oの0.1Mトリス緩衝液、及び500μMのヒノキチオール及び100μMのFe(NO
3)
3を用いて、Hg電極、Ag/AgCl基準、及びグラファイト補助による100mV/sの走査速度で得られた。ND=未決定;値は、1〜3の独立した実験の平均を表す。
【表5】
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【0459】
表6.NADP
+に関する異なる鉄錯体の酸化還元電位。酸化還元電位は、多くの異なる鉄:キレート剤錯体のサイクリックボルタンメトリーによって観察された。CVは、pH=7.2の1:1 MeOH:H
2Oの0.1Mトリス緩衝液、及び500μMの小分子及び及び100μMのFe(NO
3)
3を用いて、Hg電極、Ag/AgCl基準、及びグラファイト補助による100mV/sの走査速度で得られた。値は、1〜3の独立した実験の平均を表す。
【表6】
[この文献は図面を表示できません]
【0460】
表7.小分子毒性の評価。小分子処理の>24時間の後のWST−8アッセイによって決定されるように、異なる細胞型におけるヒノキチオール、C2deOHino、デフェリプロン、及びPIH EC
90値。値は、3つの独立した実験の平均を表す。
【表7】
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【0461】
表8.Fe(Hino)
3(cm63dsa)の結晶データ及び構造精密化
【表8】
[この文献は図面を表示できません]
【0462】
参考文献
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【0463】
実施例2:ヒノキチオール誘導体の合成−β置換ブロミド
【化350】
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200mgのブロミドで約15個の誘導体を作製することができる。
【0464】
実施例3:ヒノキチオール誘導体の合成−100mgのスケール反応
【化351】
[この文献は図面を表示できません]
【0465】
実施例4:ヒノキチオールのモジュラー4工程の全合成
【化352】
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代替ボルネート:
【化353】
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式中、
Rは独立して、C
1−20−アルキル、C
2−20−アルケニル、C
3−9−シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、各々は、未置換であるか、または、ハロ、NO
2、CN、C
1−6−アルキル、C
1−6−ハロアルキル、及びC
1−6−アルコキシからなる群から選択される置換基で置換される。
【0466】
実施例5:ヒノキチオール誘導体一次ボロン酸の合成
【化354】
[この文献は図面を表示できません]
【0467】
実施例6:ヒノキチオール誘導体の合成−親油性試験
【化355】
[この文献は図面を表示できません]
【0468】
実施例7:ヒノキチオール誘導体の合成
【化356】
[この文献は図面を表示できません]
【0469】
実施例8:ヒノキチオール誘導体の合成
【化357】
[この文献は図面を表示できません]
【0470】
実施例9:3−ブロモ、4−ブロモ、及び5−ブロモトロポロンの合成
【化358-1】
[この文献は図面を表示できません]
【化358-2】
[この文献は図面を表示できません]
【0471】
実施例10:ブロモトロポロンのクロスカップリング
【化359】
[この文献は図面を表示できません]
【0472】
実施例11:ヒノキチオール誘導体の合成−β置換ブロミド
【化360】
[この文献は図面を表示できません]
【0473】
実施例12:ヒノキチオール誘導体の合成−二次ボロン酸
【化361】
[この文献は図面を表示できません]
【0474】
実施例13:ヒノキチオール誘導体によるfetΔftr1Δ増殖の回復
【化362】
[この文献は図面を表示できません]
【0475】
実施例14:fetΔftr1Δ増殖の回復におけるヒノキチオール誘導体の構造−活性関係試験
この試験は、最適活性のための、トロポロン環上の炭化水素置換基のサイズの最適なウィンドウを特定する。側鎖が長くなりすぎると、具体的には、4個を超える炭素になると、欠如しているタンパク質鉄トランスポーター機能を置き換える能力において大きな損失がある。このデータセットは、炭化水素置換基(すなわち、1〜4個の炭素が、最適であると思われる)の最適なウィンドウの有界性に対する強力なエビデンスを付加する。(
図25A〜25D)
【0476】
実施例15:ヒノキチオールは、FPN欠乏マウスの肝臓から鉄を放出する
フラットアイアンマウスにおける、鉄動員及び分布に対するヒノキチオールの効果を特徴付けるため、腹腔内(IP)注射を介して、用量(1〜50mg/kg)の増加に伴って、ヒノキチオールを投与した。投与の4時間後にマウスを安楽死させて、血液及び組織の範囲を回収した。肝臓非ヘム鉄の用量依存的減少が観察された。肝臓及び脾臓を含む様々な組織中の全鉄はさらに、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)によって測定した。データは、ヒノキチオール(10mg/kgで)によるフラットアイアンマウスの処理が、肝臓からの鉄を放出させることを示す(
図26B)。これらのデータは、ヒノキチオールが、FPN欠乏マウスの肝臓から鉄を放出することを示す。他の組織は、非ヘム鉄中の還元を示唆するデータが得られた(
図26C〜26E)。
【0477】
実施例16:テレビン油の注射によって誘導された低鉄血症は、ヒノキチオール処理によって軽減された
テレピン油(TO)の注射は、マウスにおける炎症を誘導する一般的な方法である。単回用量のTOは、十二指腸及び脾臓におけるFPNタンパク質レベルの下方調節(
図27B)と付随して、肝臓におけるヘプシジンmRNAレベルを急速に増加させた(
図27A)。結果として、鉄蓄積は、十二指腸及び脾臓で生じた。さらに、血清鉄は、ヘマトクリット値(
図27D)に影響を与えることなく減少した(
図27C)。TO注射によって誘導された低鉄血症は、ヒノキチオール処理によって軽減された一方、他のFDA承認薬は、その効果を提供できなかった(
図27E)。
【0478】
実施例17:TOを用いた慢性AIの動物モデル
慢性AIは臨床的に関連するので、TOを用いた慢性AIの動物モデルを発生させて、最適化した。C57BL/6マウスにおいてTOの週1回注射を3週間することが、最良モデルであると分かった(
図28A)。慢性炎症の際に、肝臓ヘプシジンの上方調節は、最後の注射の4日後に消失し、血清鉄は、ベースラインレベルに戻った(
図28B)。しかしながら、脾臓及び十二指腸におけるFPN下方調節(
図28C)及び組織鉄蓄積(
図28D)は、少なくとも2週間持続した。重要なことに、貧血が発生した(
図28E)。
【0479】
実施例18:fetΔftr1Δ増殖の回復におけるヒノキチオール誘導体の構造−活性関係試験
AIにおけるヒノキチオールの薬力学(効果)の評価に加えて、ヒノキチオールの薬物動態を特徴付けて、処理の最適な用量スキームをガイドした。腹腔内注射(
図29A)及び強制経口投与(
図29B)による単回用量は、ヒノキチオールの迅速な処分を示した。ヒノキチオールは、用量依存的な薬物動態を呈し;半減期の増加は、高用量(100mg/kg)で観察され、これは、ヒノキチオール代謝の飽和による可能性が高い。
【0480】
参照による組み込み
本明細書に記載した全てのUS特許及びUS及びPCT公開特許出願は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合は、ここに記載されている如何なる定義も含めて本出願が優先する。
【0481】
等価物
本発明の特定の実施形態について論述してきたが、上記明細書は例示的であって限定するものではない。本発明の多くの変形は、本明細書及び後述する特許請求の範囲を鑑みれば当業者には明らかなものである。本発明の完全な範囲は、特許請求の範囲、並びにその完全な範囲の等価物、及び明細書並びにその変形例を参照することにより決定されるべきである。