(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-521222(P2021-521222A)
(43)【公表日】2021年8月26日
(54)【発明の名称】6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸を使用して前立腺癌を治療するための治療方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/20 20060101AFI20210730BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20210730BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20210730BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20210730BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20210730BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20210730BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20210730BHJP
【FI】
A61K31/20
A61K31/337
A61K9/14
A61K9/107
A61K9/08
A61P35/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2020-556838(P2020-556838)
(86)(22)【出願日】2019年4月16日
(85)【翻訳文提出日】2020年10月12日
(86)【国際出願番号】US2019027597
(87)【国際公開番号】WO2019204251
(87)【国際公開日】20191024
(31)【優先権主張番号】62/658,238
(32)【優先日】2018年4月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/782,938
(32)【優先日】2018年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520395765
【氏名又は名称】ラファエル ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ルーサー, サンジーヴ
(72)【発明者】
【氏名】ショア, ロバート ジー.エル.
(72)【発明者】
【氏名】ビンガム, ポール
(72)【発明者】
【氏名】ザッカー, ズザナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA17
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4C076AA30
4C076BB01
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4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を使用して前立腺癌を治療するための方法、組成物、および医療用キットを提供し、ドセタキセルとの併用療法を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンドロゲン依存性前立腺癌およびアンドロゲン非依存性前立腺癌からなる群から選択される癌を治療するための方法であって、それを必要とする患者に6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を含む第1の治療剤の治療上有効な量を投与して、前記癌を治療することを含む、方法。
【請求項2】
前記癌がアンドロゲン依存性前立腺癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記癌がアンドロゲン非依存性前立腺癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記癌が転移性である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記患者に抗癌活性を有する第2の治療剤を投与することをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前立腺癌を治療するための方法であって、それを必要とする患者に(i)6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を含む第1の治療剤および(ii)ドセタキセルまたはその医薬品として許容可能な塩を含む第2の治療剤の治療上有効な量を投与して、前記前立腺癌を治療することを含む、方法。
【請求項7】
前記前立腺癌がアンドロゲン依存性前立腺癌である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記前立腺癌がアンドロゲン非依存性前立腺癌である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記前立腺癌が転移性である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の治療剤がドセタキセルである、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の治療剤が約50mg/m2から約100mg/m2までの範囲である投与量で投与される、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の治療剤が約75mg/m2の投与量で投与される、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の治療剤が任意の3週間に1回投与される、請求項6〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の治療剤が静脈内投与によって投与される、請求項6〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の治療剤が約150mg/m2から約1500mg/m2までの範囲である単位投与量で投与される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の治療剤が約500mg/m2から約1000mg/m2までの範囲である単位投与量で投与される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の治療剤が経口投与される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の治療剤が静脈内投与によって投与される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の治療剤が前記患者に1日に1回を超えない頻度で投与される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の治療剤が前記患者に少なくとも2週間の間週に2回投与される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の治療剤が前記患者に2週間毎に1回投与される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前立腺癌を治療するための方法であって、それを必要とする患者に6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を含む第1の治療剤の単位投与量を約150mg/m2から約1500mg/m2までの範囲である量で投与して、前記前立腺癌を治療することを含む、方法。
【請求項23】
前記単位投与量が6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩の約500mg/m2から約1000mg/m2までである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記単位投与量が前記患者に1日に1回を超えない頻度で投与される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記単位投与量が前記患者に週に2回投与される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項26】
前記単位投与量が前記患者に2週間毎に1回投与される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項27】
前記単位投与量が前記患者に静脈内投与される、請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記単位投与量が前記患者に経口投与される、請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の治療剤が、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸および医薬品として許容可能な担体を含む医薬組成物の形態で投与される、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の治療剤が、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸およびイオン対形成剤を含む医薬組成物の形態で投与される、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の治療剤が、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸およびトリエタノールアミンを含む医薬組成物の形態で投与される、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記患者が成人である、請求項1〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記患者がドセタキセルに対して少なくとも部分的に難治性である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
(i)6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を含む第1の治療剤、および(ii)前記第1の治療剤を使用してアンドロゲン依存性前立腺癌およびアンドロゲン非依存性前立腺癌からなる群から選択される癌を治療するための取扱説明書を含む、医療用キット。
【請求項35】
(i)6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を含む第1の治療剤、および(ii)ドセタキセルまたはその医薬品として許容可能な塩を含む第2の治療剤との併用で前記第1の治療剤を使用して前立腺癌を治療するための取扱説明書を含む、医療用キット。
【請求項36】
(i)6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を含む第1の治療剤、および(ii)約150mg/m2から約1500mg/m2までの範囲である前記第1の治療剤の投与量を使用して前立腺癌を治療するための取扱説明書を含む、医療用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月16日出願された米国特許仮出願第62/658,238号、および2018年12月20日出願された米国特許仮出願第62/782,938号の利益および優先権を主張し、その各々の内容が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸(CPI−613)またはその医薬品として許容可能な塩を使用して前立腺癌を治療するための方法、組成物、および医療用キットを提供し、ドセタキセルとの併用療法を含む。
【背景技術】
【0003】
癌は多くの工業国における主な死因である。最近の推定では、1000万人のアメリカ人が癌を患って現在生活しており、120万人のアメリカ人が各年新たに癌と診断されている。癌の診断および治療の改善に著しい進歩がなされている。しかし、現在の治療選択肢はしばしば重度の有害な副作用を患い、かつ/または治療がすべての患者には有効ではない。例えば、多くの臨床的に受け入れられている化学療法剤は、正常な増殖性宿主細胞に深刻な損傷を誘発し得る。多くの化学療法治療と関連する別の問題は、多くの腫瘍タイプにおいて、療法に対する生来的または後天的のいずれかの抵抗性があることである。
【0004】
前立腺癌は男性患者集団のかなりの部分に及んでいる。前立腺癌は、前立腺における悪性細胞の形成によって特徴付けられる。前立腺癌を有する患者の治療に役立てるために現在使用されている例示的な治療法には、手術、放射線療法、および化学療法が含まれる。手術には、しばしば前立腺の完全な外科的切除が含まれる。放射線療法には、電離放射線を前立腺の患部に適用することが含まれる。しかし、すべての患者が既存療法を用いて前立腺癌の十分な寛解を達成し、かつ/または既存療法を受けたときに有害な副作用を経験するわけではない。
【0005】
したがって、前立腺癌を治療するための改善された効能および/または低減された副作用をもたらす新規治療方法の必要性が存在する。本発明は、この必要性に取り組み、他の関連する利益を提供する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を使用して前立腺癌を治療するための方法、組成物、および医療用キットを提供し、ドセタキセルとの併用療法を含む。前立腺癌は、例えば、アンドロゲン依存性前立腺癌またはアンドロゲン非依存性前立腺癌として特徴付けられ得る。6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は、イオン対形成剤を含む医薬組成物などの医薬組成物として製剤化され得る。併用療法の一部として使用されるとき、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は、ドセタキセルなどの併用療法で使用される他の薬剤(複数可)を含む医薬組成物とは別に、患者への投与のための医薬組成物として製剤化され得る。前立腺癌を治療するための方法、組成物、および医療用キットは、前立腺癌を有する成人であるヒト男性患者に特定の利益をもたらす。
【0007】
したがって、本発明の一態様は、アンドロゲン依存性前立腺癌およびアンドロゲン非依存性前立腺癌からなる群から選択される癌を治療するための方法を提供する。本方法は、それを必要とする患者に6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を含む第1の治療剤の治療上有効な量を投与して、癌を治療することを含む。第1の治療剤は、例えば、経口または静脈内投与によって投与され得る。
【0008】
本発明の別の態様は、前立腺癌を治療する方法を提供し、本方法はそれを必要とする患者に、(i)6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を含む第1の治療剤、および(ii)ドセタキセルまたはその医薬品として許容可能な塩を含む第2の治療剤の治療上有効な量を投与することを含む。本方法は、例えば、アンドロゲン依存性前立腺癌またはアンドロゲン非依存性前立腺癌などの前立腺癌のタイプに従って特徴付けられ得る。第1の治療剤は、例えば、経口または静脈内投与によって投与され得る。
【0009】
本発明の別の態様は、特定の投与量に従って前立腺癌を治療するための方法を提供する。本方法は、それを必要とする患者に6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を含む第1の治療剤の単位投与量を約150mg/m
2から約1500mg/m
2までの範囲である量で投与して、前立腺癌を治療することを含む。本方法は、例えば、アンドロゲン依存性前立腺癌またはアンドロゲン非依存性前立腺癌などの前立腺癌のタイプに従って特徴付けられ得る。第1の治療剤は、例えば、経口または静脈内投与によって投与され得る。
【0010】
本発明の別の態様は、アンドロゲン依存性前立腺癌およびアンドロゲン非依存性前立腺癌からなる群から選択される癌を治療するための医療用キットを提供する。本キットは、(i)6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を含む第1の治療剤、および(ii)当該第1の治療剤を使用してアンドロゲン依存性前立腺癌およびアンドロゲン非依存性前立腺癌からなる群から選択される癌を治療するための取扱説明書を含む。取扱説明書は、例えば、経口または静脈内投与によるなどの第1の治療剤の投与経路を特定し得る。
【0011】
本発明の別の態様は、前立腺癌を治療するための医療用キットを提供する。本キットは、(i)6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を含む第1の治療剤、および(ii)ドセタキセルまたはその医薬品として許容可能な塩を含む第2の治療剤との併用で第1の治療剤を使用して前立腺癌を治療するための取扱説明書を含む。取扱説明書は、例えば、アンドロゲン依存性前立腺癌またはアンドロゲン非依存性前立腺癌などの治療される前立腺癌のタイプを特定し得る。取扱説明書は、例えば、経口または静脈内投与によるなどの第1の治療剤のための投与経路を特定し得る。
【0012】
本発明の別の態様は、特定の投与量に従って前立腺癌を治療するための医療用キットを提供する。本キットは、(i)6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を含む第1の治療剤、および(ii)約150mg/m
2から約1500mg/m
2までの範囲である第1の治療剤の投与量を使用して前立腺癌を治療するための取扱説明書を含む。取扱説明書は、例えば、アンドロゲン依存性前立腺癌またはアンドロゲン非依存性前立腺癌などの治療される前立腺癌のタイプを特定し得る。取扱説明書は、例えば、経口または静脈内投与によるなどの第1の治療剤のための投与経路を特定し得る。
【0013】
本発明の前述の態様は、以下の詳細な説明において、追加の実施形態とともにより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例2で説明される治療プロトコル後に観察された残存する生きたPC−3アンドロゲン耐性前立腺癌細胞の割合を示すグラフである。
【
図2】実施例3で説明される手順による2.5mg/kgまたは10mg/kgのCPI−613の投与後に経時的に観察された腫瘍体積を示すグラフである。
【
図3】実施例3で説明される手順による2.5mg/kgまたは10mg/kgのCPI−613の投与後のマウス生存時間を示すグラフである。
【
図4】マウスでのヒト非小細胞肺癌異種移植片における経口6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の抗腫瘍効能を示す。
【
図5】マウスでのヒト膵臓癌異種移植片における経口6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の抗腫瘍効能を示す。
【
図6】EudragitL100またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS−M)のいずれかを加えた6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の固体無定形分散製剤(それぞれ上および中央の回折パターン)、および結晶6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸(下の回折パターン)のX線粉末回析パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を使用して前立腺癌を治療するための方法、組成物、および医療用キットを提供し、ドセタキセルとの併用療法を含む。前立腺癌は、例えば、アンドロゲン依存性前立腺癌またはアンドロゲン非依存性前立腺癌として特徴付けられ得る。6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は、イオン対形成剤を含む医薬組成物などの医薬組成物として製剤化され得る。併用療法の一部として使用されるとき、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は、ドセタキセルなどの併用療法で使用される他の薬剤(複数可)を含む医薬組成物とは別に、患者への投与のための医薬組成物として製剤化され得る。前立腺癌を治療するための方法、組成物、および医療用キットは、前立腺癌を有する成人であるヒト男性患者に特定の利益をもたらす。本発明の実施は、特に明記されない限り、有機化学、薬理学、および生化学の従来の技術を使用する。そのような技術は、「Comprehensive Organic Synthesis」(B.M.Trost & I.Fleming,eds.,1991−1992)などの文献で説明されており、参照によって組み込まれている。本発明の様々な態様が以下のセクションで示されるが、しかし1つの特定のセクションで説明される本発明の態様は、いずれの特定のセクションにも限定されるものではない。
【0016】
I.定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語および語句を以下に定義する。
【0017】
本明細書で使用される用語「a」、「an」、および「the」は、「1つ以上」を意味し、文脈が不適切でない限り、複数を含む。
【0018】
用語「6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸」は、CPI−613、すなわち化学構造
【化1】
を有する化合物を指す。
【0019】
本発明の組成物に含まれる特定の化合物は、特定の幾何学型または立体異性型で存在し得る。本発明は、シス−およびトランス−異性体、R−およびS−鏡像体、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、それらのラセミ混合物、ならびにそれらの他の混合物を含むすべてのそのような化合物が本発明の範囲内に入るものとして考えられる。
【0020】
本明細書で使用されるとき、用語「患者」は本発明の方法によって治療される生物を指す。そのような生物には好ましくは、限定されないが、哺乳動物(例えば、ネズミ、サル、ウマ(馬)、ウシ(牛)、ブタ、イヌ、ネコなど)が含まれ、最も好ましくはヒトが含まれる。
【0021】
用語「アンドロゲン非感受性」、「アンドロゲン非依存性」、および「アンドロゲン耐性」は、本明細書において互換的に使用される。
【0022】
用語「アンドロゲン感受性」および「アンドロゲン依存性」は、本明細書において互換的に使用される。
【0023】
本明細書で使用されるとき、用語「治療すること」は、状態、疾患、障害などの改善(improvement)をもたらす、例えば低下、低減、調節、改善(ameliorating)、または消失する、あるいはその症状を改善する任意の効果を含む。例えば、治療は障害の症状の軽減または障害の完全な根絶を含むことができる。別の例として、治療は、疾患の進行を遅らせること、あるいは再燃を防止または遅延する維持治療など、その再発を防止もしくは遅延させることを含むことができる。
【0024】
本明細書で使用されるとき、用語「医薬組成物」は、組成物を特に体内または体外での診断用または治療用の使用に適するようにさせる不活性または活性である担体との活性剤の組み合わせを指す。
【0025】
語句「医薬品として許容可能な」は、本明細書においてこれらの化合物、材料、組成物、および/または投与形態を指すために使用され、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、またはその他の問題あるいは合併症を伴わずに人間および動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当な利益/リスク比に相応している。
【0026】
本明細書で使用されるとき、用語「医薬品として許容可能な担体」は、標準的な医薬品用担体のいずれかを指す。組成物はまた、安定剤および保存剤を含むことができる。担体、安定剤、および補助剤の例については、例えば、Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences,15th Ed.,Mack Publ.Co.,Easton,PA[1975]を参照する。
【0027】
本明細書で使用されるとき、用語「医薬品として許容可能な塩」は、対象への投与で本発明の化合物を与えることができる本発明の化合物の任意の医薬品として許容可能な塩(例えば、酸または塩基)を指す。従来技術に習熟した当業者に知られているように、本発明の化合物の「塩」は、無機または有機の酸および塩基から派生され得る。酸の例には、限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン−p−スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが含まれる。シュウ酸などの他の酸は、それら自体は医薬品として許容されないが、本発明の化合物およびそれらの医薬品として許容可能な酸付加塩を得る際に中間体として有用である塩の調製に使用され得る。塩基の例には、限定されないが、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、水酸化物、アンモニア、および式NW
3でWがC
1〜4アルキルである化合物などが含まれる。
【0028】
塩のさらなる例には、米国特許第8,263,653号に記載されているイオン対形成剤を使用して生成される塩が含まれ、その開示全体が参照によって本明細書に組み込まれている。なおさらなるイオン対形成剤は、Handbook of Pharmaceutical Salts Properties,Selection and Use,UIPAC,Wiley−VCH,P.H.Stahl,ed.のガイダンスによって選択することができ、その公表全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0029】
塩のさらなる例には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩などが含まれる。塩のさらに他の例には、Na
+、NH
4+、およびNW
4+(式中、WはC
1〜4アルキル基である)などの適切なカチオンと複合された本発明の化合物のアニオンが含まれる。用語「アルキル」は、従来技術で認識されており、飽和脂肪族基を含み、直鎖アルキル基および分枝鎖アルキル基が含まれる。
【0030】
特定の実施形態では、医薬品として許容可能な塩は、以下の酸から調製されるものである。塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、パリシル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。特定の他の実施形態では、医薬品として許容可能な塩は、カルボン酸基のナトリウム、カリウム、またはカルシウム塩などのアルカリ金属またはアルカリ土類塩である。
【0031】
治療上の使用のため、本発明の化合物の塩は医薬品として許容可能であることが意図される。しかし、医薬品として許容可能でない酸および塩基の塩もまた、例えば、医薬品として許容可能な化合物の調製または精製における使用が認められ得る。
【0032】
説明全体を通して、組成物およびキットが特定の構成要素を有する、含有する、または含むと記載されている場合、あるいはプロセスおよび方法が特定のステップを有する、含有する、または含むと記載されている場合、さらに、列挙された構成要素から本質的になる、またはそれからなる本発明の組成物およびキットがあり、列挙された処理ステップから本質的になる、またはそれからなる本発明によるプロセスおよび方法があることが意図される。
【0033】
一般的事柄として、パーセンテージを特定する組成物は特に指定されない限り重量によるものである。さらに、変数が定義を伴わない場合、変数の先の定義によって管理される。
【0034】
II.治療適用
本発明は、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を使用して前立腺癌を治療するための方法を提供する。本治療方法は、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を使用する単剤療法、ならびにドセタキセルなどの第2の抗癌剤との併用療法を包含する。本方法は、以下でさらに詳細に説明される。
【0035】
第1の治療方法
本発明の一態様は、前立腺癌を治療するための方法を提供する。特定の実施形態では、本発明はアンドロゲン依存性前立腺癌およびアンドロゲン非依存性前立腺癌からなる群から選択される癌を治療するための方法を提供する。本方法は、それを必要とする患者に6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を含む第1の治療剤の治療上有効な量を投与して、癌を治療することを含む。本方法は、本明細書において以下で説明される1つ以上の特性によってさらに特徴付けられ得る。
【0036】
第2の治療方法
本発明の別の態様は前立腺癌を治療するめの方法を提供し、それを必要とする患者に(i)6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を含む第1の治療剤、および(ii)ドセタキセルまたはその医薬品として許容可能な塩を含む第2の治療剤の治療上有効な量を投与して、前立腺癌を治療することを含む。本方法は、本明細書において以下で説明される1つ以上の特性によってさらに特徴付けられ得る。
【0037】
第3の治療方法
本発明の別の態様は、前立腺癌を治療する方法を提供し、それを必要とする患者に6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を約150mg/m
2から約1500mg/m
2までの範囲である量で含む第1の治療剤の単位投与量を投与して、前立腺癌を治療することを含む。本方法は、本明細書において以下で説明される1つ以上の特性によってさらに特徴付けられ得る。
【0038】
第1の治療方法の一般的な特性
上記第1の治療方法は、治療される癌のタイプおよび第2の治療剤が患者に投与されるかなどの追加の特性によってさらに特徴付けられ得る。
【0039】
癌のタイプ
本治療方法は、治療される癌のタイプに従ってさらに特徴付けすることができる。例えば、特定の実施形態では、癌はアンドロゲン依存性前立腺癌である。特定の他の実施形態では、癌はアンドロゲン非依存性前立腺癌である。
【0040】
癌は、それが転移性であるかに従ってさらに特徴付けられ得る。特定の実施形態では、癌は転移性である。
【0041】
第2の治療剤を投与すること
本治療方法は、第2の治療剤が患者に投与されるかに従って特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、抗癌活性を有する第2の治療剤が患者に投与される。
【0042】
第2の治療方法の一般的な特性
上記第2の治療方法は、治療される前立腺癌のタイプおよび第2の治療剤の独自性などの追加の特性によってさらに特徴付けられ得る。
【0043】
前立腺癌のタイプ
本治療方法は、治療される前立腺癌のタイプに従ってさらに特徴付けることができる。例えば、特定の実施形態では、前立腺癌はアンドロゲン依存性前立腺癌である。特定の他の実施形態では、前立腺癌はアンドロゲン非依存性前立腺癌である。
【0044】
前立腺癌は、それが転移性であるかに従ってさらに特徴付けられ得る。特定の実施形態では、前立腺癌は転移性である。
【0045】
第2の治療剤の独自性
本治療方法は、第2の治療剤の独自性に従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第2の治療剤はドセタキセルである。
【0046】
第2の治療剤の投与のための用量、時機、および経路
本治療方法は、第2の治療剤の投与の特性に従って特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、本治療方法は患者に投与される第2の治療剤の用量に従って特徴付けられ得る。したがって、特定の実施形態では、第2の治療剤は約50mg/m
2から約100mg/m
2までの範囲である投与量で投与される。特定の実施形態では、第2の治療剤は約75mg/m
2の投与量で投与される。
【0047】
本治療方法はまた、第2の治療剤の投与の頻度に従って特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第2の治療剤は任意の3週間に1回投与される。
【0048】
本治療方法は、第2の治療剤の投与経路に従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第2の治療剤は静脈内投与によって投与される。
【0049】
本治療方法はまた、ドセタキセルの投与について計画された投与サイクルに従って特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、ドセタキセルは3週サイクルの最初の日に投与される。特定の実施形態では、ドセタキセルは3週サイクルの最初の日に約50mg/m
2から約100mg/m
2までの用量で投与される。特定の実施態様では、ドセタキセルは3週サイクルの最初の日に約75mg/m
2の投与量で投与される。特定の実施形態では、ドセタキセルは3週サイクルの最初の日に1時間注入として投与される。特定の実施形態では、計画されたサイクルは少なくとも1回繰り返される。特定の実施形態では、本発明の方法は計画されたサイクル10回までによる治療を含む。
【0050】
第1および第2の治療方法の一般的な特性
上記第1および第2の治療方法は、第1の治療剤の投与のための単位投与量、時機、および経路などの追加の特性によってさらに特徴付けられ得る。
【0051】
第1の治療剤の投与のための単位投与量、時機、および経路
本治療方法は、第1の治療剤の投与の特性に従って特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、本治療方法は患者に投与される第1の治療剤の単位投与量に従って特徴付けられ得る。したがって、特定の実施形態では、第1の治療剤は約150mg/m
2から約1500mg/m
2までの範囲である単位投与量で投与される。特定の他の実施形態では、第1の治療剤は約150mg/m
2から約1300mg/m
2までの範囲である単位投与量で投与される。特定の他の実施形態では、第1の治療剤は約500mg/m
2から約1000mg/m
2までの範囲である単位投与量で投与される。特定の他の実施形態では、第1の治療剤は約500mg/m
2の単位投与量で投与される。
【0052】
本治療方法は、第1の治療剤の投与経路に従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤は経口投与される。特定の他の実施形態では、第1の治療剤は静脈内投与によって投与される。
【0053】
本治療方法はまた、第1の治療剤の投与の頻度に従って特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤は患者に1日に1回を超えない頻度で投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は患者に週に2回投与される。特定の他の実施形態では、第1の治療剤は患者に週に1回投与される。特定の他の実施形態では、第1の治療剤は患者に2週毎に1回投与される。特定の他の実施形態では、第1の治療剤は患者に2週毎に1回を超えない頻度で投与される。
【0054】
本治療方法はまた、第1の治療剤の投与のために計画された投与サイクルに従って特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤は4週サイクルで投与され、第1の治療剤が最初の3週間の間週に2回投与されて1週の休止が続く。特定の実施形態では、第1の治療剤は4週サイクルの1、8、および15日目に投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は2週サイクルの1および3日目に投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は最初の3週間の間週に2回、約150mg/m
2から約1500mg/m
2までの用量で投与されて1週の休止が続く。特定の実施形態では、第1の治療剤は4週サイクルの1、8、および15日目に約150mg/m
2から約1500mg/m
2までの用量で投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は2週サイクルの1および3日目に約150mg/m
2から約1500mg/m
2までの用量で投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は最初の3週間の間週に2回、約500mg/m
2から約100mg/m
2までの用量で投与されて1週の休止が続く。特定の実施態様では、第1の治療剤は4週サイクルの1、8、および15日目に約500mg/m
2から約100mg/m
2までの用量で投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は2週サイクルの1および3日目に約500mg/m
2から約1000mg/m
2までの用量で投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は最初の3週間の間週に2回、約150mg/m
2から約500mg/m
2までの用量で投与されて1週の休止が続く。特定の実施態様では、第1の治療剤は4週サイクルの1、8、および15日目に、約150mg/m
2から約500mg/m
2までの用量で投与される。特定の実施態様では、第1の治療剤は2週サイクルの1および3日目に、約150mg/m
2から約500mg/m
2までの用量で投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は最初の3週間の間週に2回、約500mg/m
2の用量で投与されて1週の休止が続く。特定の実施形態では、第1の治療剤は4週サイクルの1、8、および15日目に約500mg/m
2の用量で投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は2週サイクルの1および3日目に約500mg/m
2の用量で投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤の上記用量の各々は、2時間のIV注入として投与される。特定の実施形態では、計画されたサイクルは少なくとも1回繰り返される。特定の実施形態では、本発明の方法は計画されたサイクル10回までによる治療を含む。
【0055】
第1の治療剤は、患者に経口投与され得る。用量および計画は、例えば、患者の癌の特徴および別の治療剤が併用投与されるかに基づいて変化し、本明細書で提供されるガイダンスを考慮して従来技術に習熟した当業者によって容易に決定され得る。特定の実施形態では、用量および計画は、本明細書で示されるものなど、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩によって静脈内で使用される用量および計画に基づいて適応される。特定の実施形態では、用量は最大耐用量である。
【0056】
第1の治療剤の経口投与の利点は、IVと比較して、投与の適応性の実質的な増加を可能にすることである。従来技術では、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸は、1M(150mg/mL)トリエタノールアミン水溶液中の50mg/mL溶液として製剤化され、注射用無菌5%デキストロース(D5W)によって50mg/mLから低くて4mg/mL(例、12.5mg/mL)に希釈されてから、中心静脈カテーテルを介して30〜120分かけてIV注入として投与される。そのような注入は患者のために不都合であり、頻繁および/または長期の投与を含む投薬計画が事実上除外される。IV投与後の第1の治療剤の半減期は約1〜2時間のみであり(Pardee,T.S.et al.,Clin Cancer Res.2014,20,5255−64)、より頻繁および/または長期の投与を効果的に使用して、第1の治療剤への患者の暴露を増加し得る。
【0057】
例えば、前立腺癌の治療のために可能なIV計画は、第1の治療剤を4週サイクルの最初の3週間の間週に2回投与することを含む。経口投与される場合、開業医は第1の治療剤の用量および計画に関してより適応性を有するだろう。第1の治療剤は、IV計画のように、4週サイクルの最初の3週間の間週に2回、1日1回の用量で経口投与することができる。あるいは、第1の治療剤は、4週サイクルの最初の3週間の間週に2日、2回以上(例えば、3、4、または5回)の分割用量で投与することができ、かつ/または第1の治療剤は毎日までを含めて、本サイクルのより少ないまたは追加の日に投与することができる。
【0058】
経口投与の別の利点は、維持療法を実行可能にすることである。例えば、第一選択療法−第1の治療剤の有無に関わらない−で成功裏に治療され、癌が部分的または完全に寛解している患者は、再発を遅延または防止するために長期ベースで経口によって第1の治療剤で治療され得る。維持治療は、例えば、毎日または毎週など、定期ベースで第1の治療剤の1日に1、2、3、4、または5回の用量を含み得る。
【0059】
特定の実施形態では、第1の治療剤はそれが投与される各日に約1mgから約10,000mgまでの用量で経口投与される。1日用量は、1回の用量で投与、または3、4、もしくは5回の用量などの2回の用量以上に分割され得る。特定の実施形態では、1日用量は約10mgから約7,500mgである。特定の実施形態では、1日用量は約100mgから約5,000mgである。特定の実施形態では、1日用量は約200mgから約4,000mgである。特定の実施形態では、1日用量は約300mgから約3,000mgである。特定の実施形態では、1日用量は約400mgから約2,500mgである。特定の実施態様では、1日用量は約500mgから約2,000mgである。特定の実施形態では、1日用量は、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1,000mg、1,250mg、1,500mg、1,750mg、2,000mg、2,500mg、3,000mg、3,500mg、4,000mg、4,500mg、5,000mg、6,000mg、7,000mg、8,000mg、9,000mg、または10,000mgである。
【0060】
特定の実施形態では、投与サイクルは少なくとも1回繰り返される。特定の実施形態では、本発明の方法はサイクル2回以上による治療を含む。特定の実施形態では、本発明の方法はサイクル3回以上による治療を含む。特定の実施形態では、本発明の方法はサイクル4回以上による治療を含む。特定の実施形態では、本発明の方法はサイクル5回以上による治療を含む。特定の実施形態では、本発明の方法はサイクル6回以上による治療を含む。特定の実施形態では、本発明の方法はサイクル7回以上による治療を含む。特定の実施形態では、本発明の方法はサイクル8回以上による治療を含む。特定の実施形態では、本発明の方法はサイクル9回以上による治療を含む。特定の実施形態では、本発明の方法はサイクル10回以上による治療を含む。特定の実施形態では、本発明の方法は、第1の治療剤による定期的な治療を含み、毎日または毎週ベースで、1年、2年、3年、またはそれ以上などの延長された期間を含む。
【0061】
第3の治療方法の一般的な特性
上記の第3の治療方法は、単位投与量の投与のための量、時機、および経路などの追加の特徴によってさらに特徴付けられ得る。
【0062】
単位投与量の投与のための量、時機、および経路
本治療方法は、単位投与量の投与の特性に従って特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、本治療方法は患者に投与される単位投与量の量に従って特徴付けられ得る。したがって、特定の実施形態では、単位投与量は6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩の約500mg/m
2から約1000mg/m
2までである。特定の他の実施形態では、単位投与量は6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩の約500mg/m
2である。
【0063】
本治療方法はまた、単位投与量の投与の頻度に従って特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、単位投与量は患者に1日に1回を超えない頻度で投与される。特定の実施形態では、単位投与量は患者に週に2回投与される。特定の他の実施形態では、単位投与量は患者に週に1回投与される。特定の他の実施形態では、単位投与量は患者に2週毎に1回投与される。特定の他の実施形態では、単位投与量は患者に2週毎に1回を超えない頻度で投与される。
【0064】
本治療方法は、単位投与量の投与経路に従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、単位投与量は患者に静脈内投与される。特定の実施形態では、単位投与量は患者に経口投与される。
【0065】
本治療方法はまた、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩の投与のために計画された投与サイクルに従って特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は4週サイクルで投与され、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩が最初の3週間の間週に2回投与されて1週の休止が続く。特定の実施形態では、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は4週サイクルの1、8、および15日目に投与される。特定の実施形態では、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は2週サイクルの1および3日目に投与される。特定の実施形態では、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は、最初の3週間の間週に2回、約150mg/m
2から約1500mg/m
2までの用量で投与されて1週の休止が続く。特定の実施形態では、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は、4週サイクルの1、8、および15日目に約150mg/m
2から約1500mg/m
2までの用量で投与される。特定の実施形態では、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は、2週サイクルの1および3日目に約150mg/m
2から約1500mg/m
2までの用量で投与される。特定の実施形態では、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は、最初の3週間の間週に2回、約500mg/m
2から約100mg/m
2までの用量で投与されて1週の休止が続く。特定の実施形態では、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は、4週サイクルの1、8、および15日目に約500mg/m
2から約100mg/m
2までの用量で投与される。特定の実施形態では、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は、2週サイクルの1および3日目に約500mg/m
2から約1000mg/m
2までの用量で投与される。特定の実施形態では、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は、最初の3週間の間週に2回、約150mg/m
2から約500mg/m
2までの用量で投与されて1週の休止が続く。特定の実施形態では、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は、4週サイクルの1、8、および15日目に約150mg/m
2から約500mg/m
2までの用量で投与される。特定の実施形態では、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は、2週サイクルの1および3日目に約150mg/m
2から約500mg/m
2までの用量で投与される。特定の実施形態では、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は、最初の3週間の間週に2回、約500mg/m
2の用量で投与されて1週の休止が続く。特定の実施形態では、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は、4週サイクルの1、8、および15日目に約500mg/m
2の用量で投与される。特定の実施形態では、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許与可能な塩は、2週サイクルの1および3日目に約500mg/m
2の用量で投与される。特定の実施形態では、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩の上記用量の各々は、2時間IV注入として投与される。特定の実施形態では、計画されたサイクルは少なくとも1回繰り返される。特定の実施形態では、本発明の方法は計画されたサイクル10回までによる治療を含む。
【0066】
第1、第2、および第3の治療方法の追加の一般的特性
上記第1、第2、および第3の治療方法は、治療される患者および第1の治療剤の形態などの追加の特性によってさらに特徴付けられ得る。
【0067】
治療における患者
本治療方法は、治療される患者に従ってさらに特徴付けられ得る。好ましくは、患者はヒトである。特定の実施形態では、患者は成人である。特定の他の実施形態では、患者はドセタキセルに対して少なくとも部分的に難治性である。
【0068】
第1の治療剤の形態
本方法は第1の治療剤の形態に従ってさらに特徴付けられ得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤は6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩である。特定の他の実施形態では、第1の治療剤は6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸である。
【0069】
第1の治療剤は医薬組成物で製剤化され得る。特定の実施形態では、第1の治療剤は6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸および医薬品として許容可能な担体を含む医薬組成物の形態で投与される。特定の他の実施形態では、第1の治療剤は6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸およびイオン対形成剤を含む医薬組成物の形態で投与される。特定の実施形態では、第1の治療剤は6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸およびトリエタノールアミンを含む医薬組成物の形態で投与される。特定の他の実施形態では、本医薬組成物はさらにデキストロースおよび水を含む。
【0070】
使用され得る例示的なイオン対形成剤には、例えば、第三級アミン(トリエタノールアミンなど)、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、メフェナム酸、およびトロメタミンなどの他のアミン、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。特定の実施形態では、イオン対形成剤は有機ブレンステッド塩基である。特定の他の実施形態では、イオン対形成剤はアミン化合物である。さらに他の実施形態では、イオン対形成剤は、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アミノ置換脂肪族アルコール、ヒドロキシモノアルキルアミン、ヒドロキシジアルキルアミン、ヒドロキシトリアルキルアミン、アミノ置換ヘテロ脂肪族アルコール、アルキルジアミン、置換アルキルジアミン、または少なくとも1つの環窒素原子を含む任意に置換されたヘテロアリール基である。
【0071】
追加の例示的なイオン対形成剤には、例えば、ポリエチレンイミン、ポリグルタミン酸、アンモニア、L−アルギニン、ベネタミンベンザチン、ベタイン、水酸化カルシウム、コリン、デアノール、ジエタノールアミン(2,2’−イミノビス(エタノール))、ジエチルアミン、2−(ジエチルアミノ)−エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチル−グルカミン、ヒドラバミン、1H−イミダゾール、リジン、水酸化マグネシウム、4−(2−ヒドロキシエチル)−モルホリン、ピペラジン、水酸化カリウム、1−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリジン、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン(2,2’,2’’−ニトリロトリス(エタノール))、トロメタミン、および水酸化亜鉛が含まれる。特定の他の実施形態では、イオン対形成剤は、ジイソプロパノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、メグルミン、モルホリン、ピリジン、ナイアシンアミド、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−((2−ジメチルアミノ)エトキシ)エタノール、2−(ジメチルアミノ)エタノール、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、または水酸化アンモニウムである。特定の他の実施形態では、イオン対形成剤は、例えば水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物である。
【0072】
特定の実施形態では、第1の治療剤は少なくとも約50%(w/w)の純度を有する。特定の実施形態では、第1の治療剤は少なくとも約60%(w/w)の純度を有する。特定の実施形態では、第1の治療剤は少なくとも約70%(w/w)の純度を有する。特定の実施形態では、第1の治療剤は少なくとも約80%(w/w)の純度を有する。特定の実施形態では、第1の治療剤は少なくとも約90%(w/w)の純度を有する。特定の実施形態では、第1の治療剤は少なくとも約95%(w/w)の純度を有する。特定の実施形態では、第1の治療剤は少なくとも約96%(w/w)の純度を有する。特定の実施形態では、第1の治療剤は少なくとも約97%(w/w)の純度を有する。特定の実施形態では、第1の治療剤は少なくとも約98%(w/w)の純度を有する。特定の実施形態では、第1の治療剤は少なくとも約99%(w/w)の純度を有する。
【0073】
特定の他の実施形態では、第1の治療剤は6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸およびトリエタノールアミンを含む医薬組成物の形態で投与される。そのような医薬組成物は、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸に対するトリエタノールアミンのモル比に従ってさらに特徴付けられ得る。特定の実施形態では、トリエタノールアミンの6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸に対するモル比は、約10:1から約1:10、約10:1から約5:1、または約8:1の範囲である。特定の実施形態では、トリエタノールアミンの6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸に対するモル比は約8:1である。
【0074】
第1および第2の治療方法のための例示的な投与量および治療サイクル
一般的に、治療剤、例えば、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩は、患者に治療上有効な量で送達される。治療剤の治療上有効な量は、使用される特定の薬剤の活性、その薬剤の代謝安定性および作用の長さ、対象の種、年齢、体重、一般的な健康状態、食事状態、性別、および食事療法、投与の方式および時間、排泄率、もしあれば薬剤組み合わせ、ならびに治療される特定の状態の症状範囲および/または重症度によって変化し得る。1日に1回または数回の投与を含み得る正確な投与量を決定して、必要または望ましい順序で、所望の結果を得ることができ、投与量が個別の開業医によって調整されて所望の効果を達成し得る。治療は、1日以上で1回または数回の投与を含み得、投与量は個別の開業医によって調整されて所望の効果を達成し得る。好ましくは、使用される薬剤(複数可)の投与量は、疾患細胞(例えば、腫瘍細胞)とのみ相互作用して、正常細胞を比較的無傷(例えば、本質的に無傷)にしておくのに十分なものであるべきである。
【0075】
投与量は、単回用量で、または1日に1回から4回以上などの個々の分割された用量の形態で投与され得る。特定の実施形態では、1日投与量は単回用量で投与される。対象における反応が特定の用量で不十分である場合、さらにより高い用量(または異なる、より局所的な送達経路による有効なより高い用量)が患者の耐性の範囲まで使用され得る。
【0076】
併用療法における成分は、特定の順序で、かつ/または同一もしくは異なる日などの治療サイクルに従って投与され得る。例えば、特定の実施形態では、第1の治療剤の少なくとも1回用量が、治療サイクルにおける早い日など、第2の治療剤を投与する前に患者に投与される。特定の他の実施形態では、併用療法の活性成分は治療サイクルの同一日に投与され得、例えば同時に共投与される。特定の実施形態では、第2の治療剤の少なくとも1回用量が、治療サイクルにおける早い日など、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を投与する前に患者に投与される。特定の実施形態では、併用療法の活性成分は、治療サイクルを含むように、所定の方法、比率、および添加の順序で共投与され得る。特定の実施形態では、治療サイクルは患者への利益を最大にするため繰り返され得る。
【0077】
治療の効能および安全性
本発明の治療方法は、治療の効能および安全性によってさらに特徴付けられ得る。好ましくは、本方法は許容可能な安全プロファイルを提供し、リスクを上回る治療の利益を伴う。前立腺癌を有する少なくとも10名の患者の第II相または第III相臨床試験で試験したとき、本発明の方法は、好ましくは、少なくとも約10%の全奏効率、少なくとも約1か月の奏効期間、少なくとも約1か月の無増悪生存期間(PFS)、および/または少なくとも約1か月の全生存期間(OS)をもたらす。好ましくは、第II相または第III相臨床試験は少なくとも15名の患者を含む。より好ましくは、第II相または第III相臨床試験は少なくとも20名の患者を含む。より好ましくは、第II相または第III相臨床試験は少なくとも25名の患者を含む。より好ましくは、第II相または第III相臨床試験は少なくとも50名の患者を含む。より好ましくは、第II相または第III相臨床試験は少なくとも100名の患者を含む。より好ましくは、第II相または第III相臨床試験は少なくとも200名の患者を含む。より好ましくは、第II相または第III相臨床試験は少なくとも300名の患者を含む。より好ましくは、第II相または第III相臨床試験は少なくとも400名の患者を含む。より好ましくは、第II相または第III相臨床試験は少なくとも500名の患者を含む。好ましくは、本発明の方法は患者における少なくとも約20%の全奏効率をもたらす。より好ましくは、本発明の方法は少なくとも約30%の全奏効率をもたらす。より好ましくは、本発明の方法は少なくとも約40%の全奏効率をもたらす。より好ましくは、本発明の方法は少なくとも約50%の全奏効率をもたらす。より好ましくは、本発明の方法は少なくとも約60%の全奏効率をもたらす。より好ましくは、本発明の方法は少なくとも約70%の全奏効率をもたらす。より好ましくは、本発明の方法は少なくとも約80%の全奏効率をもたらす。より好ましくは、本発明の方法は少なくとも約90%の全奏効率をもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約2か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約3か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約4か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約5か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約6か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約7か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約8か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約9か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約10か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約11か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約12か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約14か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約16か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約18か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約20か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。好ましくは、本発明の方法は少なくとも約24か月の奏効期間、PFS、および/またはOSをもたらす。特定の実施形態では、上記の全奏効率、奏効期間、および無増悪生存期間は、第II相臨床試験で測定される。特定の実施形態では、上記の全奏効率、奏効期間、および無増悪生存期間は、第III相臨床試験で測定される。
【0078】
本方法は、望ましくは、指示された化合物(複数可)の治療上有効な量を患者に投与する。治療上有効な量は本明細書におけるガイダンスに基づいて決定することができ、例えば、特定の対象または対象集団において治療される障害または状態の阻害、停止、または改善を生じるのに十分な化合物の量であり得る。例えば、治療上有効な量は、疾患の進行を遅らせる、あるいは再燃を防止または遅延するための維持治療など、その再発を防止または遅延するのに十分な薬剤の量であることができる。ヒトまたは他の哺乳動物において、治療上有効な量は、実験室または臨床設定で実験的に決定することができ、あるいは治療される特定の疾患および対象のために、米国食品医薬品局または同等な外国の当局のガイドラインによって要求される量であり得る。適切な投与形態、投与量、および投与経路の決定は、製薬および医療の従来技術の通常の技術レベルの範囲内であることが認識されるべきである。
【0079】
IV.医療用キット
本発明の別の態様は、本明細書で説明される治療剤および/または医薬組成物を含む医療用キットを提供し、本キットを用いて本明細書で説明される障害を治療するための取扱説明書を伴う。特定の実施形態では、本医療用キットは、(i)6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を含む第1の治療剤、および(ii)アンドロゲン依存性前立腺癌およびアンドロゲン非依存性前立腺癌からなる群から選択される癌を第1の治療剤を使用して治療するための取扱説明書を含む。本医療用キットは、第1の治療方法に関連して本明細書で説明される特性のうちの1つ以上に従ってさらに特徴付けられ得る。
【0080】
本発明の別の態様は前立腺癌を治療するための医療用キットを提供し、キットは、(i)6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を含む第1の治療剤、および(ii)ドセタキセルまたはその医薬品として許容可能な塩を含む第2の治療剤と併用して第1の治療剤を用いて前立腺癌を治療するための取扱説明書を含む。本医療用キットは、第2の治療方法と関連して本明細書で説明される特性のうちの1つ以上に従ってさらに特徴付けられ得る。
【0081】
本発明の別の態様は、前立腺癌を治療するための医療用キットを提供し、キットは、(i)6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸またはその医薬品として許容可能な塩を含む第1の治療剤、および(ii)約500mg/m
2から約1000mg/m
2までの範囲である第一の治療剤の投与量を使用して前立腺癌を治療するための取扱説明書を含む。本医療用キットは、第3の治療方法と関連して本明細書で説明される特性のうちの1つ以上に従ってさらに特徴付けられ得る。
【0082】
V.医薬組成物
本明細書で説明される治療剤は、1種類以上の治療剤および医薬品として許容可能な担体を含む医薬組成物として製剤化され得る。例えば、第1の治療剤は医薬組成物として製剤化することができ、例えば、任意にさらなる抗癌剤をさらに含む。第1の治療剤および第2の治療剤の両方を含む医薬組成物は、共製剤化組成物と呼ばれることがある。
【0083】
本発明の特定の実施形態では、治療剤は、医薬品として許容可能なオイル、リポソーム、オイル−水また脂質−オイル−水のエマルジョンまたはナノエマルジョン、液体、あるいは錠剤またはカプセルで送達される塩、結晶形態、または他の固体形態として製剤化され得る。そのような製剤化を容易にするために、治療剤はそのための医薬品として許容可能な担体または賦形剤と組み合わされ得る。医薬品として許容可能な担体の例は従来技術でよく知られており、塩、脂質、緩衝剤、キレート剤、香味剤、着色剤、保存剤、生物学的利用能を高める吸収促進剤、抗菌剤、およびそれらの組み合わせなどの医薬組成物で通常使用されるものが、任意に他の治療成分と組み合わせて含まれる。
【0084】
以下で詳細に説明されるように、医薬組成物は固体または液体の形態での投与のために特に製剤化され得、例えば無菌の溶液もしくは懸濁液、または持続放出製剤として、例えば皮下、筋肉内、静脈内、または硬膜外注射による非経口投与に適応されるものを含む。
【0085】
CPI−613またはその医薬品として許容可能な塩のさらなる例は、米国特許第8,263,653号に記載されており、その開示全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0086】
医薬製剤または医薬組成物を調製する方法は、本発明の化合物を担体および、任意に1種類以上の副成分と混合するステップを含む。一般に、本製剤は本発明の化合物を液体担体、または微粉化固体担体、あるいはその両方と均一かつ密接に混合させ、次いで、必要に応じて、製品を成形することによって調製される。
【0087】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、1種類以上の本発明の化合物を、1種類以上の医薬品として許容可能な無菌の等張性の水性または非水性の溶液、分散体、懸濁液、またはエマルジョン、あるいは使用直前に無菌の注射可能な溶液または分散体に再構成され得る無菌粉末と組み合わせて含み、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、製剤を意図される受容者の血液と等張にする溶質、懸濁剤、または増粘剤を含み得る。
【0088】
特定の実施形態では、治療剤のうちの1つ以上は、非経口投与によって投与される。特定の他の実施形態では、治療剤のうちの1つ以上は、吸入、経口、局所、経皮、経鼻、眼、肺、直腸、経粘膜、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、胸腔内、胸膜内、子宮内、腫瘍内、もしくは注入の方法論または投与、あるいはそれらの任意の組み合わせのために、エアロゾル、スプレー、粉末、ゲル、ローション、クリーム、坐剤、軟膏などの剤形で製剤化される。前述で示されるように、そのような製剤が望ましい場合、従来技術で知られている他の添加剤が、製剤に所望の粘度および他の特性を付与するために含まれ得る。
【0089】
特定の実施形態では、第1の治療剤を含む医薬組成物は、乾燥経口投与剤形などの経口投与剤形である。特定の実施形態では、第1の治療剤を含む医薬組成物は、錠剤、ピル、カプセル、カプレット、粉末、顆粒、溶液、懸濁液、およびゲルから選択される経口投与剤形である。経口投与剤形は、医薬品として許容可能な賦形剤を含み得、担体、希釈剤、安定剤、可塑剤、結合剤、流動促進剤、崩壊剤、増量剤、潤滑剤、可塑剤、着色剤、フィルム形成剤、香味剤、保存剤、投与ビヒクル、および前述のいずれかの任意の組み合わせなどが挙げられる。医薬品として許容可能な賦形剤は、部分的には、投与される特定の組成物によって、ならびに特定の投与計画によって決定される。したがって、本発明の医薬組成物に適した幅広い様々な製剤がある(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th ed.,Gennaro et al.Eds.,Lippincott Williams and Wilkins,2000を参照する)。
【0090】
第1の治療剤を含む経口医薬組成物は、一般的に、少なくとも1種類の不活性賦形剤を含む。賦形剤には、医薬品として適合性のある結合剤、潤滑剤、湿潤剤、崩壊剤などが含まれる。錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、以下の賦形剤または同様な性質の化合物のいずれかを含むことができる。微細結晶セルロース、トラガカントガム、またはゼラチンなどの結合剤、デンプンまたはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogel、またはコーンスターチなどの分散剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤、スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤、あるいは、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ風味などの香味剤。投与単位剤形がカプセルであるとき、脂肪オイルなどの液体賦形剤を含むことができる。さらに、投与単位形態は、投与単位の物理的形態を改善する様々な他の材料、例えば、糖衣、シェラック、または腸溶剤を含むことができる。さらに、シロップは、活性化合物に加えて、甘味剤としてスクロースならびに特定の保存剤、色素、着色剤、および香味剤を含み得る。特定の実施形態では、第1の治療剤を含む経口医薬組成物は、賦形剤を組成物の約10重量%から約85重量%までなど、約5重量%から約99重量%までの量で含み、第1の治療剤が残りを構成する。特定の実施形態では、医薬品として許容可能な賦形剤は、組成物の全重量の約20%から約80%まで含まれる。特定の実施形態では、本医薬組成物は第1の治療剤を組成物の少なくとも約40重量%の量で含み、1つ以上の賦形剤が残りを構成する。特定の実施形態では、本医薬組成物は第1の治療剤を組成物の少なくとも約50重量%の量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は第1の治療剤を組成物の少なくとも約60重量%の量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は第1の治療剤を組成物の少なくとも約70重量%の量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は第1の治療剤を組成物の少なくとも約80重量%の量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は第1の治療剤を組成物の少なくとも約90重量%の量で含む。
【0091】
第1の治療剤を含む固体経口医薬組成物のための希釈剤には、限定されないが、微結晶セルロース(例えば、AVICEL(登録商標))、微細セルロース、ラクトース、デンプン、アルファ化デンプン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、砂糖、デキストレート類、デキストリン、デキストロース、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、三塩基性リン酸カルシウム、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マンニトール、ポリメタクリレート(例えば、Eudragit)、塩化カリウム、粉末セルロース、塩化ナトリウム、ソルビトールおよびタルクが含まれる。
【0092】
第1の治療剤を含む固体経口医薬組成物のための結合剤には、限定されないが、アカシア、トラガカント、スクロース、グルコース、アルギン酸、カルボマー(例えば、Carbopol)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、水素化植物オイル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、KLUCEL(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、METHOCEL(登録商標))、液体グルコース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マルトデキストリン、メチルセルロース、ポリメタクリレート、ポビドン(例えば、KOLLIDON(登録商標)、PLASDONE(登録商標))、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、およびデンプンが含まれる。特定の実施形態では、本医薬組成物は結合剤を組成物の約0.75重量%から約15重量%までなど、約0.5重量%から約25重量%までの量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は結合剤を組成物の約1重量%から約10重量%までの量で含む。
【0093】
患者の胃における圧縮された固体医薬組成物の溶解速度は、第1の治療剤を含む組成物への崩壊剤の添加によって増加され得る。崩壊剤には、限定されないが、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(例えば、AC−DI−SOL(登録商標)、PRIMELLOSE(登録商標))、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン(例えば、KOLLIDON(登録商標)、POLYPLASDONE(登録商標))、グアーガム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、メチルセルロース、微結晶セルロース、粉末セルロース、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(例えば、EXPLOTAB(登録商標))、およびデンプンが含まれる。特定の実施形態では、本医薬組成物は崩壊剤を組成物の約0.2重量%から10重量%までなど、約0.2重量%から約30重量%の量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は崩壊剤を組成物の約0.2重量%から約5重量%までの量で含む。
【0094】
第1の治療剤を含む経口医薬組成物は、任意に1種類以上の医薬品として許容可能な湿潤剤を含む。このような湿潤剤は、好ましくは、水と密接に関連して本組成物の生物学的利用能を改善すると考えられる状態にAPIを維持するように選択される。湿潤剤として使用できる界面活性剤の非限定的な例には、第四級アンモニウム化合物、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、および塩化セチルピリジニウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、例えばノノキシノール9、ノノキシノール10、およびオクトキシノール9、ポロキサマー(ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンブロックコポリマー)、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよびオイル、例えばポリオキシエチレン、カプリル酸/カプリン酸モノ−およびジグリセリド(例えば、GattefosseのLabrasol(商標))、ポリオキシエチレンカスターオイルおよびポリオキシエチレン水素化カスターオイル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばポリオキシエチレンセトステアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、例えばポリソルベート20およびポリソルベート80(例えば、ICIのTween(商標)80)、プロピレングリコール脂肪酸エステル、例えばプロピレンラウリン酸グリコール(例えば、GattefosseのLauroglycol(商標))、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸およびその塩、例えばオレイン酸、オレイン酸ナトリウム、およびオレイン酸トリエタノールアミン、グリセリル脂肪酸エステル、例えばモノステアリン酸グリセリル、ソルビタンエステル、例えばモノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタンおよびモノパルミチン酸ソルビタン、チロキサポール、ならびにそれらの混合物が含まれる。特定の実施形態では、第1の治療剤を含む医薬組成物は湿潤剤を組成物の約0.4重量%から約10重量%までなど、約0.25重量%から約15重量%までの量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は湿潤剤を組成物の約0.5重量%から約5重量%までの量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物はアニオン性界面活性剤である湿潤剤を含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は湿潤剤としてラウリル硫酸ナトリウムを含む。特定の実施形態では、本医薬組成物はラウリル硫酸ナトリウムを組成物の約0.4重量%から約4重量%までなど、約0.25重量%から約7重量%までの量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物はラウリル硫酸ナトリウムを組成物の約0.5重量%から約2重量%までの量で含む。
【0095】
潤滑剤(例えば、付着防止剤または流動促進剤)を添加して、第1の治療剤を含む固体経口組成物の流動特性を改善、かつ/または錠剤製剤の圧縮の際に組成物と装置の間の摩擦を低減することができる。潤滑剤として機能し得る賦形剤には、限定されないが、コロイド状二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、デンプン、タルク、および三塩基性リン酸カルシウムが含まれる。適切な潤滑剤にはさらに、ベヘン酸グリセリル(例えば、GattefosseのCompritol(商標)888)、ステアリン酸およびその塩でステアリン酸マグネシウム、カルシウム、そしてナトリウムなど、ステアリン酸亜鉛、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、水素化カスターオイル、水素化植物オイル(例えば、AbitecのSterotex(商標))、ワックス、ホウ酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、フマル酸ナトリウム、塩化ナトリウム、DL−ロイシン、PEG(例えば、Dow Chemical CompanyのCarbowax(商標)4000およびCarbowax(商標)6000)、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ならびにラウリル硫酸マグネシウムが含まれる。特定の実施形態では、第1の治療剤を含む経口医薬組成物は潤滑剤を組成物の約0.2重量%から約8重量%までなど、約0.1%から約10%までの量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は潤滑剤を組成物の約0.25重量%から約5重量%までの量で含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は潤滑剤としてステアリン酸マグネシウムを含む。特定の実施形態では、本医薬組成物はコロイド状二酸化ケイ素を含む。特定の実施形態では、本医薬組成物はタルクを含む。特定の実施形態では、本組成物はステアリン酸マグネシウムまたはタルクを組成物の約0.5重量%から約2重量%までの量で含む。
【0096】
香味剤および香味増強剤は、第1の治療剤を含む経口投与剤形を患者にとってより口当たり良くする。本発明の組成物に含まれ得る医薬品用の一般的な香味剤および香味増強剤には、マルトール、バニリン、エチルバニリン、メントール、クエン酸、フマル酸エチルマルトール、および酒石酸が含まれる。
【0097】
組成物はまた、医薬品として許容可能な任意の着色剤を使用して着色し、これらの外観を改善、および/または製品および単位投与レベルの患者識別を容易にし得る。
【0098】
賦形剤の選択および使用量は、本分野における標準的な手順の経験および考慮、ならびに参考文献に基づいて製剤科学者によって容易に決定され得る。本発明の第1の治療剤を含む固体経口組成物には、粉末、顆粒、凝集物、および圧縮組成物が含まれる。投与量は、単位投与剤形に簡便に提示され、製薬技術でよく知られた方法のいずれかによって調製され得る。投与剤形には、錠剤、ピル、粉末、カプレット、顆粒、カプセル、小袋、トローチ、およびロゼンジのような固体剤形が含まれる。特定の実施形態では、第1の治療剤を含む医薬組成物は錠剤である。特定の実施形態では、第1の治療剤を含む医薬組成物は噴霧乾燥分散体である。特定の実施形態では、第1の治療剤を含む医薬組成物は噴霧乾燥分散体であり、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS−M)から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。特定の実施形態では、第1の治療剤を含む医薬組成物は噴霧乾燥分散体であり、EudragitL100、ポリ(ビニルピロリドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、およびヒドロキシプロピルメチルセルローススクシネート(HPMCAS−M)から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。特定の実施形態では、第1の治療剤を含む医薬組成物は噴霧乾燥分散体であり、EudragitL100、ポリ(ビニルピロリドン)粘度グレードK30(PVP K30)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS−M)から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。特定の実施形態では、第1の治療剤を含む医薬組成物は噴霧乾燥分散体であり、EudragitL100およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS−M)から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。特定の実施形態では、第1の治療剤を含む医薬組成物は噴霧乾燥分散体であり、EudragitL100を含む。特定の実施形態では、第1の治療剤を含む医薬組成物は噴霧乾燥分散体であり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS−M)を含む。
【0099】
本発明の製剤は、適切な緩衝剤の添加により緩衝化され得る。
【0100】
特定の実施形態では、本発明の第1の治療剤を含む経口医薬組成物は、単位用量組成物である。特定の実施形態では、本医薬組成物は、第1の治療剤の約1mgから約5000mgまでを含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、第1の治療剤の約100mgから約3000mgまでを含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、第1の治療剤の約200mgから約2000mgまでを含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は第1の治療剤の約50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2500mg、または3000mgを含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は第1の治療剤の約300mg、500mg、700mg、または1000mgを含む。
【0101】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は米国特許第7,220,428号に記載されているようにエマルジョン、粒子、またはゲルを含む。特定の実施形態では、本医薬組成物は、約0.1%から約75%w/wの脂質または脂肪酸成分を有する固体または液体製剤である。特定の実施形態では、本製剤は約0.1%から約15%w/vの脂質および脂肪酸成分を含む。特定の実施形態では、脂肪酸成分は飽和または不飽和のC4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、またはC12脂肪酸および/またはそのような脂肪酸の塩を含む。脂質はコレステロールおよびそのアナログを含み得る。
【0102】
上記の記載は本発明の複数の態様および実施形態を説明しており、治療方法、医薬組成物、および医療用キットを含む。本特許出願は、態様および実施形態のすべての組み合わせおよび置換を明確に考慮している。
【実施例】
【0103】
今まで一般的に説明されている本発明は、以下の実施例を参照することによってより容易に理解されるが、本発明の特定の態様および実施形態の説明の目的でのみ含まれ、本発明を限定することは意図されない。
【0104】
実施例1−前立腺癌細胞株に対する6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸のインビトロでの効能
前立腺癌細胞株を死滅させる6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の効能をインビトロで試験した。試験した細胞株は、アンドロゲン依存性および非依存性増殖の両方を含めた多様なセットを表す。実験手順および結果を以下に説明する。
【0105】
パートI−実験手順
5種の前立腺癌細胞株のパネルを6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸によってインビトロで処理した。具体的には、前立腺癌細胞は6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸によって、10%FBS補充したRPMI中で60時間処理した。細胞生存率は、CellTiter96(登録商標)Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay(Promega)によってアッセイした。EC
50値を計算した。
【0106】
パートII−結果
CPI−613はインビトロで前立腺癌細胞を死滅させるのに非常に有効だった。EC
50値は、示した前立腺癌細胞株を死滅させる6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の能力を反映しており、以下の表1に示す。
【表1】
【0107】
実施例2−前立腺癌細胞株に対するドセタキセルと併用した6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸のインビトロでの効能
前立腺癌細胞株を死滅させるドセタキセルと併用した6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の効能をインビトロで試験した。実験手順および結果を以下に説明する。
【0108】
パートI−実験手順
PC−3アンドロゲン耐性前立腺癌細胞を、(i)6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸、(ii)ドセタキセル、または(iii)6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸およびドセタキセルの治療量以下の用量で処理した。具体的には、PC−3アンドロゲン耐性前立腺癌細胞を、(i)6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の50mM溶液単独、(ii)ドセタキセルの2nM溶液もしくはドセタキセルの200nM溶液のいずれか単独、または(iii)前述の量での6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸とドセタキセルの併用によって、RPMI+10%FBS中で44時間処理した。前立腺癌細胞の生存率は、CellTiterGLO(Promega)を使用して決定した。
【0109】
パートII−結果
CPI−613とドセタキセルの併用は、治療量以下の用量での各薬剤単独と比較して有意な細胞死滅化をもたらし、意外なことに、各薬剤単独で認められたレベルを加算することによって予測されるよりも多くの細胞死滅化をもたらした。言い換えると、CPI−613とドセタキセルの併用は相乗的であることを発見した。処理後に認められた生残PC−3アンドロゲン耐性前立腺癌細胞の割合を
図1に示す。
【0110】
実施例3−アンドロゲン耐性前立腺癌に対する6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸のインビボでの効能
アンドロゲン耐性前立腺癌細胞を死滅させる6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の効能を、アンドロゲン耐性前立腺癌の前臨床PC−3脇腹モデルにおいてインビボで試験した。実験手順および結果を以下に説明する。
【0111】
パートI−実験手順
マウスにアンドロゲン耐性前立腺PC−3癌細胞の腫瘍を移植した。マウスにおける腫瘍が約40mm
3に達した後、マウスの群(n=8)を(i)6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の2.5mg/kg、(ii)6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の10mg/kg、または(iii)生理食塩水コントロールによって5週間の間週に2〜3回処置した。CPI−613は臨床試験用と同じ方法で製剤化した。腫瘍はノギスを用いて測定した。腫瘍体積を療法の4週にわたって記録した。マウスの生存率は、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の0mg/kg、2.5mg/kg、または10mg/kgで処置されたマウスの群における療法経過週として測定し、実験の終了点には、死亡、腫瘍潰瘍、または750mm
3に達する腫瘍体積を含めた。
【0112】
パートII−結果 時間の経過に伴う腫瘍体積のグラフを
図2に示す。腫瘍増殖はCPI−613によって処置されたマウスの群で有意に遅かった。マウスの生存時間を表すグラフを
図3に示す(
図2と同じマウス)。6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸で処置されたマウスの両群は、腫瘍増殖の有意な減少、および毒性なく生存率の増加を示した。用量間に差は認められなかった。特定の理論に拘束されることは望まないが、用量間の差がないことは、反応のためにミトコンドリアで必要とされる薬剤摂取および濃度の閾値を超えていたことに起因する可能性がある。
【0113】
実施例4−非小細胞肺癌における6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の経口効能
ヒトH460 NSCLC細胞はAmerican Type Cell Culture(ATCC)(カタログ番号HTB−177、Manassas、VA)から入手した。これらの細胞は、ATCCから腫瘍細胞を受理した際、Charles River Labs Molecular Divisionによって実施されたマウス抗体産生(MAP)テストを用いてウイルス汚染について試験して陰性だった。腫瘍細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)および2mM L−グルタミン添加したロズウェルパーク記念研究所(RPMI)−1640溶液を50mL含むT225組織培養フラスコ中で、加湿した5%CO
2雰囲気において37℃で維持した。細胞をトリプシン処理によって2〜3日ごとに1:10の比率で分割し、新しいフラスコ中の新鮮な培地に再懸濁させた。細胞は実験のために70〜90%の密集度で同じ方法で採取した。
【0114】
CD1−Nu/Nu雌マウス、約4〜6週齢はCharles River Laboratoriesから入手した。ストーニーブルックにあるニューヨーク州立大学(SUNY)のDepartment of Animal Laboratory Researchのマイクロアイソレーター室においてマウスを1ケージで5匹飼育した。明暗サイクルは毎日各12時間であり、午前7時から午後7時まで明るくした。食餌(Purina Rodent Chow)および水(蒸留した無菌ろ過水、pH7)を自由に摂取させた。プロトコルと手順は、SUNY施設内動物管理使用委員会(IACUC)によって承認され、規則に従った。
【0115】
腫瘍接種前の試験場所への動物の到着と実験との間に7日間の順応期間を割り当てた。マウスは右脇腹部に、0.1mLのダルベッコのリン酸緩衝化塩(PBS)溶液に懸濁させた2×10
6個のヒトH460 NSCLCまたはBxPC3膵臓癌細胞を、27−5/8ゲージ針付1ccシリンジを用いて皮下(SC)接種した。腫瘍寸法(長さおよび幅)は処置の前、間、および後に毎日測定し(ノギスを使用)、腫瘍体積は長楕円体の式(長さ×幅
2)/2を使用して計算した。試験品またはコントロール品による処置を腫瘍細胞移植の8日後に開始し、そのとき腫瘍は約300mm
3だった。
【0116】
6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の経口投与は、群あたり11匹の動物で100mg/kgだった。6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の100mgを5%デキストロース中の少量の0.01〜0.05N NaOHに懸濁させ、4%氷酢酸でpH7.0に滴定して50mg/mLにした。投与前に、懸濁液を5%デキストロースによって12.5mg/mLに希釈し、動物は胃管栄養法によって送達された約0.2mLの投与容量で100mg/kgを受けた。腫瘍細胞移植後、マウスを8日目、15日目、22日目、および29日目に処置した。
【0117】
同様な試験を2×10
6個のBxPC−3細胞によって接種されたCD−1ヌードマウス(n=9)でも実施した。試験は腫瘍が150mm
3の平均サイズに達したときに開始し(0日目)、CPI−613を100mg/週の経口用量で4週間投与した。比較群(n=9)はIP処置によって25mg/kgの週用量で実施した。
【0118】
結果を
図4および5に示す。6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸で処置されたマウスにおける腫瘍は、5%デキストロースによって処理されたマウスまたは未処置マウスにおけるものよりもかなり遅く増殖したことが明らかである。効果は特にBxPC3腫瘍で顕著だった。この例は、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸が経口投与されたときに癌を治療するのに有効であることを示す。
【0119】
実施例5−6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の噴霧乾燥分散経口製剤
6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸(API)の固体無定形分散製剤は、APIをEudragitL100、ポリ(ビニルピロリドン)粘度グレードK30(PVP K30)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS−M)のポリマーのうちの1つと1:4で混合することによって調製し、小スケールBend Lab Dryerを35kg/時の乾燥ガス流速能力(BLD−35)で用いて、メタノールまたはアセトンから噴霧乾燥した。2つの代表的な噴霧乾燥分散(SDD)製剤(各75g)の条件、収率、および残留溶媒レベルを以下の表に示す。
【表2】
【0120】
走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、2種のSDD製剤の粒子形態を定性的に決定し、任意の程度の融合または結晶化が目視によって存在するか試験した。粒子は崩壊した球状形態を示し、気付いた結晶化または融合はなかった。
【0121】
X線回折は、一般的に、結晶性物質の存在に対して高感度であり、試料質量の約1%のLODを有する。どちらのSDD製剤についても、結晶性はPXRDによって検出されなかった。結晶性6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸APIと比較したディフラクトグラムを
図6で認めることができ、上のディフラクトグラムはEudragitL100製剤であり、中央のディフラクトグラムはHPMCAS−M製剤であり、下のディフラクトグラムは結晶性6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸である。
【0122】
実施例6−6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸のエマルジョン経口製剤
モノラウリン(131mg)および6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸(93mg)を、磁気撹拌バーを備えた丸底フラスコ内のポリソルベート80(2.5mL)中で50℃に加温した。透明な溶液までの完全な溶解後、50℃で激しく撹拌しながら水(7.5mL)を加えてエマルジョンを得た。
【0123】
6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸(312mg)をポリソルベート80(6.25g)、大豆オイル(1.25g)、ならびにコレステロール(14g)、酢酸コレステリル(14g)、安息香酸コレステリル(14g)、モノラウリン(25.4g)、およびモノパルミチン(32.6g)を含む脂質混合物(100mg)と混合し、固体が溶解するまで混合物を50℃に加熱した(30分)。デキストロース(11.25g)を236mLの水に溶解し、得られたデキストロース水溶液を上記のオイル溶液に加えた。得られた二相混合物を室温で30分間撹拌し、次に0.22umフィルターに通して真空ろ過した。
【0124】
実施例7−6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の液体製剤
6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸溶液は、(a)1M水性トリエタノールアミン中の6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の50mg/mL溶液を調製するステップ、および(b)50mg/mL溶液を5%デキストロース水溶液で5mg/mLの濃度まで希釈するステップによって調製した。得られた5mg/mL溶液は、以下の実施例8において「7A」として識別される。
【0125】
懸濁液ビヒクルは、(a)トリス緩衝剤(48mg)およびHPMCAS−HF(20mg)を14mLの蒸留水中で混合するステップ、(b)希水酸化ナトリウムでpHを7.4に調整して、HPMCAS−HFを溶解するステップ、(c)得られた溶液を約90℃に加熱するステップ、(d)MethocelA4M Premium(100mg)を加熱溶液に加えるステップ、(e)混合物を激しく撹拌して未溶解MethocelA4Mを懸濁させるステップ、(f)混合物をMethocelA4Mが溶解するまで(約10分)、氷浴で冷却および撹拌するステップ、(g)溶液を蒸留/脱イオン水で希釈して全容量を20mLにするステップ、および(h)pHを希酢酸または希水酸化ナトリウムによって7.4に調整して懸濁液ビヒクルを得るステップによって調製した。
【0126】
実施例5の噴霧乾燥製剤の懸濁液は、それぞれのSDD製剤の400mgを乳鉢に加え、懸濁液ビヒクル4mLをゆっくり加えて(少量ずつ添加後、乳棒で完全に混合して均一に分散させる)、次いでフラスコに移して、投与前に1分間撹拌することによって調製した。得られたEudragitL100 SDD製剤の懸濁液(20mg/mLの6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸)は、以下の実施例8において「7B」として識別される。得られたHPMCAS−M SDD製剤の懸濁液(20mg/mLの6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸)は、以下の実施例8において「7C」として識別される。
【0127】
同じ方法で、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の20mg/mL懸濁液は、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸80mgを乳鉢に加え、懸濁液ビヒクル4mLをゆっくり加え(少量ずつ添加後、乳棒で完全に混合して均一に分散させる)、次いでフラスコに移して、投与前に1分間撹拌することによって調製した。得られた6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の懸濁液は、以下の実施例8において「7D」として識別される。
【0128】
6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の溶液は、SOLUTOL(登録商標)(ヒドロキシステアリン酸ポリオキシル15、KOLLIPHOR(登録商標)HS 15)(3グラム)を蒸留水(7mL)に溶解して30%溶液を作製し、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸(50mg)を5mLのその30%溶液に加え、1分間ボルテックスし、次に45分間超音波処理して、無色透明の溶液(10mg/mL、pH7)を得ることによって調製した。得られた溶液は以下の実施例8において「7E」として識別される。
【0129】
実施例8−6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の経口生物学的利用能
1群あたり16匹のBALB/cヌードマウス(雄8匹と雌8匹)の6群に、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸を6つの異なる方法で投与した。(1)実施例7のトリエタノールアミン/デキストロース水溶液(25mg/kg、5mL/kg、例7A)の5μL/g IV注射(尾静脈)、(2)実施例7のトリエタノールアミン/デキストロース水溶液の5μL/g IP注射(25mg/kg、5mL/kg、7A)、(3)実施例7のEudragitL100 SDD懸濁液の5μL/g経口投与(100mg/kg、5mL/kg、7B)、(4)実施例7のHPMCAS−M SDD懸濁液の5μL/g経口投与(100mg/kg、5mL/kg、7C)、(5)実施例7の20mg/mL 6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸懸濁液の5μL/g経口投与(100mg/kg、5mL/kg、7D)、または(6)実施例7の10mg/mL SOLUTOL溶液の10μL/g経口投与(100mg/kg、10mL/kg、7E)。各実験では、約80μLの血液を4匹の雄および4匹の雌マウスの1つの下位群から投与後0.083、1、4、および24時間に、4匹の雄および4匹の雌マウスの他の下位群から0.5、2、および8時間に収集した。収集した血液試料からの血漿を、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸の存在についてLC−MS/MSによって分析した。
【表3】
【0130】
この例は、6,8−ビス−ベンジルチオ−オクタン酸が経口で生物学的に利用可能であることを示す。
【0131】
参照による組み込み
本明細書において参照される特許文書および科学論文の各々の全体の開示は、すべての目的のために参照により組み込まれる。
【0132】
均等物
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化され得る。したがって、前述の実施形態は、本明細書で説明される本発明を限定するよりもむしろすべての点で例示的であると考えられるべきである。そのため本発明の範囲は、前述の説明によるよりもむしろ添付の請求項の範囲によって示され、請求項の意味および同等性範囲の内にあるすべての変更は、そこに包含されることが意図される。
【国際調査報告】