【実施例】
【0122】
以下の例示的な実施例は、本明細書に記載される組成物及び方法の実施形態を代表するものであり、いかようにも制限を意図するものではない。
【0123】
実施例1−LIFに特異的なラット抗体の生成
ヒトLIFのアミノ酸23〜202をコード化するcDNAを発現プラスミド(Aldevron GmbH,Freiburg,Germany)にクローニングした。粒子衝撃のためのハンドヘルド装置(「遺伝子銃」)を使用して、DNA被覆された金粒子の皮内適用によって、実験用ラット(Wistar)のグループを免疫化した。一過性に形質移入されたHEK細胞の細胞表面発現は、LIFタンパク質のN末端に付加されたタグを認識する抗タグ抗体を使用して確認した。一連の免疫化後に血清サンプルを採取し、上記の発現プラスミドで一過性に形質移入されたHEK細胞について、フローサイトメトリーで試験した。抗体産生細胞を単離し、標準的な手順に従ってマウス骨髄腫細胞(Ag8)と融合させた。上記のようにフローサイトメトリーアッセイでスクリーニングすることによって、LIFに特異的な抗体を産生するハイブリドーマを同定した。RNA保護剤(RNAlater、カタログ番号AM7020、ThermoFisher Scientific製)を使用して、陽性ハイブリドーマ細胞の細胞ペレットを調製し、抗体の可変ドメインの配列決定のためにさらに処理した。
【0124】
実施例2−LIFに特異的なマウス抗体の生成
ヒトLIFのアミノ酸23〜202をコード化するcDNAを発現プラスミド(Aldevron GmbH,Freiburg,Germany)にクローニングした。粒子衝撃のためのハンドヘルド装置(「遺伝子銃」)を使用して、DNA被覆された金粒子の皮内適用によって、実験用マウス(NMRI)のグループを免疫化した。一過性に形質移入されたHEK細胞の細胞表面発現は、LIFタンパク質のN末端に付加されたタグを認識する抗タグ抗体を使用して確認した。一連の免疫化後に血清サンプルを採取し、上記の発現プラスミドで一過性に形質移入されたHEK細胞について、フローサイトメトリーで試験した。抗体産生細胞を単離し、標準的な手順に従ってマウス骨髄腫細胞(Ag8)と融合させた。上記のようにフローサイトメトリーアッセイでスクリーニングすることによって、LIFに特異的な抗体を産生するハイブリドーマを同定した。RNA保護剤(RNAlater、カタログ番号AM7020、ThermoFisher Scientific製)を使用して、陽性ハイブリドーマ細胞の細胞ペレットを調製し、抗体の可変ドメインの配列決定のためにさらに処理した。
【0125】
実施例3−LIFに特異的なラット抗体のヒト化
引き続くヒト化のために、ラット免疫(5D8)から1つのクローンを選択した。標準的なCDRグラフト化法を使用して、ヒト化を実施した。重鎖及び軽鎖領域は、標準的な分子クローニング技術を用いて5D8ハイブリドーマからクローニングし、サンガー法によって配列決定した。次に、ヒト重鎖及び軽鎖可変配列に対してBLAST検索を実施し、それぞれから4つの配列をヒト化のアクセプターフレームワークとして選択した。これらのアクセプターフレームワークを脱免疫化し、T細胞応答エピトープを除去した。4つの異なる重鎖アクセプターフレームワーク(H1〜H4)及び4つの異なる軽鎖フレームワーク(L1〜L4)に、5D8の重鎖及び軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3をクローニングした。次に、CHO−S細胞(Selexis)での発現;LIF誘導STAT3リン酸化の阻害;及び表面プラズモン共鳴(SPR)による結合親和性について、16個の異なる抗体を全て検査した。これらの実験は、表1に要約される。
【0126】
【表1】
【0127】
10日間の培養後、流加培養内のエルレンマイアーフラスコ(3×105個の細胞/mLの播種、200mLの培養容積)で、形質移入された細胞の発現能を比較した。この時点で細胞を採取し、分泌された抗体をプロテインAカラムを使用して精製し、次に定量化した。H3重鎖(配列番号43)を使用したものを除いて、全てのヒト化抗体が発現された。H2及びL2可変領域は、その他の可変領域(配列番号42及び配列番号46)と比較して、良好に機能した。
【0128】
チロシン705におけるLIF誘導STAT3リン酸化の阻害は、ウエスタンブロットによって判定した。6ウェルプレートに10万個の細胞/ウェルの密度で、U251神経膠腫細胞を播種した。細胞は、任意の処理の前に24時間完全培地中で培養し、その後、細胞を8時間血清飢餓状態にした。その後、10μg/mlの濃度で、示された抗体を有する細胞を一晩培養した。処理後、ホスファターゼ及びプロテアーゼ阻害剤を含有する放射免疫沈降アッセイ(RIPA)溶解緩衝液中でタンパク質を得て、定量化し(BCAタンパク質アッセイ、Thermo Fisher Scientific)、ウエスタンブロットで使用した。ウエスタンブロットのために、5%の脱脂乾燥乳−TBST中で膜を1時間ブロックし、一次抗体(p−STAT3、カタログ番号9145、Cell Signaling;又はSTAT3、カタログ番号9132、Cell Signaling)と共に一晩、又は30分間(β−アクチンペルオキシダーゼ、カタログ番号A3854、Sigma−Aldrich)インキュベートした。次に、膜をTBSTで洗浄し、二次培養物と共にインキュベートし、再度洗浄した。タンパク質は、化学発光(SuperSignal Substrate、カタログ番号34076、Thermo Fisher Scientific)によって検出した。これらの結果は
図1に示される。pSTAT3バンドがより濃いほど、阻害が少ない。5D8(非ヒト化ラット)、A(H0L0)、C(H1L2)、D(H1L3)、及びG(H2L2)と標識されるレーンで、阻害が高く;H(H2L3)、O(H4L2)、及びP(H4L3)では、阻害は中程度であり;B(H1L1)、E(H1L4)、F(H2L1)、I(H2L4)、N(H4L1)、及びQ(H4L4)では、阻害は不在であった。
【0129】
LIF誘導STAT3リン酸化の阻害を示した抗体は、次にSPRで解析して結合親和性を判定した。簡潔に述べると、Biacore(商標)2002装置を使用して、アミン結合したhLIFに対する、A(H0L0)、C(H1L2)、D(H1L3)、及びG(H2L2)、H(H2L3)及びO(H4L2)ヒト化抗体の結合を観察した。運動定数及び親和性は、6つのリガンド濃度で全てのセンサーチップ表面上に生成された、全てのセンサーグラムの数学的センサーグラムフィッティング(ラングミュア相互作用モデル[A+B=AB])によって判定した。各濃度の最良適合曲線(最小カイ二乗)を用いて、運動定数及び親和性を計算した。表1を参照されたい。
【0130】
実験セットアップでは、分析物として二価の抗体を使用したので、ヒト化抗体の標的結合機序へのより詳細な洞察を得るために、最良適合センサーグラムもまた、二価分析物のフィッティングモデル[A+B=AB;AB+B=AB2]に基づいて解析した。二価フィッティングモデルを用いた動的センサーグラム解析[A+B=AB;AB+B=AB2]で、mAbサンプルの相対親和性ランキングを確認した。
【0131】
結合親和性が高く、バッチ培養からの収率が高いことから、より詳細な解析のために、H2及びL2を含むヒト化5D8を選択した。
【0132】
実施例4−クローン5D8のヒト化はLIFへの結合を改善する
さらなる解析のために、H2L2クローン(h5D8)を選択し、親ラット5D8(r5D8)及びマウスクローン1B2への、SPRによる結合を比較した。1B2抗体は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und(and) Zellkulturen GmbH(DSM ACC3054)に寄託された、以前に開示されたマウス抗LIF抗体であり、比較目的で含めた。大腸菌(E.coli)及びHEK−293細胞からそれぞれ精製された、組換えヒトLIFをリガンドとして使用した。ヒト又は大腸菌(E.coli)起源のLIFをアミンカップリング化学作用を用いてBiacore光学的センサーチップの表面に共有結合させ、結合親和性を運動定数から計算した。
【0133】
材料及び方法
大腸菌(E.coli)からのヒトLIFはMilliporeから得た、参照LIF1010;HEK−293細胞からのヒトLIFはACRO Biosystemsから得た、参照LIF−H521b。LIFは、Biacoreアミンカップリングキット(BR−1000−50;GE−Healthcare,Uppsala)を使用して、センサーチップに結合させた。サンプルは、CM5光学センサーチップ(BR−1000−12;GE−Healthcare,Uppsala)を使用して、Biacore(商標)2002機器上で試験した。Biacore HBS−EP緩衝液を装置の稼働中に使用した(BR−1001−88;GE−Healthcare,Uppsala)。BIAevaluation 4.1ソフトウェアを使用して、結合センサーグラムの動態解析を実施した。運動定数及び親和性は、分析物濃度を上げながら全てのセンサーチップ表面上に生成された、全てのセンサーグラムの数学的センサーグラムフィッティング(ラングミュア相互作用モデル[A+B=AB])によって判定した。センサーグラムはまた、判定されたラングミュア抗体−標的親和性に対する二価の寄与(例えば、結合力の寄与)の推定値を生成するために、成分分析を含めた、二価分析物センサーグラムフィッティングモデル[A+B=AB;AB+B=AB2]に基づいて解析した。各濃度の最良適合曲線(最小カイ二乗)を用いて、運動定数及び親和性を計算した。これらの親和性実験の要約は、表2(大腸菌(E.coli)で産生されたヒトLIF)及び表3(HEK293細胞で産生されたヒトLIF)に示される。
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【0136】
この一組の実験からのラングミュア1:1センサーグラムフィッティングモデルは、ヒト化5D8(h5D8)抗体が、マウス1B2及びr5D8よりもヒトLIFに対して約10〜25倍高い親和性で結合することを示す。
【0137】
次に、h5D8抗体を複数の生物種のLIFに対してSPRで試験した。h5D8SPR結合動態は、異なる生物種及び発現系に由来する組換えLIF分析物に対して実施した:ヒトLIF(大腸菌(E.coli)、HEK293細胞);マウスLIF(大腸菌(E.coli)、CHO細胞);ラットLIF(大腸菌(E.coli));カニクイザルLIF(酵母、HEK293細胞)。
【0138】
材料及び方法
h5D8抗体は、非共有結合のFc特異的捕捉によって、センサーチップ表面に固定化した。組換えIg(Fc)特異的S.アウレウス(S.aureus)プロテインA/Gを捕捉剤として使用し、LIF分析物に対する抗LIF抗体の立体的に一様で可撓性の提示を可能にした。LIF分析物の起源は、次のようである:ヒトLIF(大腸菌(E.coli)由来;Millipore LIF1050);ヒトLIF(HEK由来、ACRO Biosystems LIF−H521);マウスLIF(大腸菌(E.coli);MilliporeNF−LIF2010);マウスLIF(CHOから;Reprokineカタログ番号RCP09056);サルLIF(酵母Kingfisher Biotechカタログ番号RP1074Y);HEK−293細胞において産生されたサルLIF。全体的に、h5D8はいくつかの生物種のLIFとの結合を示した。この親和性実験の概要は、表4に示される。
【0139】
【表4】
【0140】
実施例5−ヒト化クローン5D8は生体外でSTAT3のLIF誘導リン酸化を阻害する
h5D8の生物学的活性を判定するために、ヒト化バージョン及び親バージョンをLIF活性化の細胞培養モデルで試験した。
図2Aは、神経膠腫細胞株をヒトLIFと共にインキュベートした際に、ヒト化クローンがSTAT3リン酸化(Tyr 705)の阻害の増加を提示したことを示す。
図2Bは、
図2Aと同一設定で、h5D8の抗体希釈度を変えて繰り返した実験を示す。
【0141】
材料及び方法
6ウェルプレートに15万個の細胞/ウェルの密度で、U251神経膠腫細胞を播種した。細胞は、任意の処理の前に、完全培地中で24時間培養した。その後、細胞を10μg/mlの濃度でr5D8抗LIF抗体又はh5D8抗LIF抗体で一晩処理し、又は処理しなかった(対照細胞)。
【0142】
処理後、ホスファターゼ及びプロテアーゼ阻害剤を含有する放射免疫沈降アッセイ(RIPA)溶解緩衝液中でタンパク質を得て、定量化し(BCAタンパク質アッセイ、Thermo Fisher Scientific)、ウエスタンブロットで使用した。ウエスタンブロットのために、5%の脱脂乳−TBST中で膜を1時間ブロックし、一次抗体(p−STAT3、カタログ番号9145、Cell Signaling;又はSTAT3、カタログ番号9132、Cell Signaling)と共に一晩、又は30分間(β−アクチンペルオキシダーゼ、カタログ番号A3854、Sigma−Aldrich)インキュベートした。次に、膜をTBSTで洗浄し、必要に応じて二次抗体と共にインキュベートして、再度洗浄した。タンパク質は、化学発光(SuperSignal Substrate、カタログ番号34076、Thermo Fisher Scientific)によって検出した。
【0143】
実施例6−U−251細胞におけるLIFの内因性レベルに対するh5D8抗体処理のIC50値。
U−251細胞では、血清飢餓条件下におけるh5D8の生物学的阻害のためのIC50が、わずか490ピコモル濃度(
図3A)であることもまた解明された。代表的な結果、
図3A及び3B及び表5を参照されたい。
【0144】
【表5】
【0145】
材料及び方法
U−251細胞は、6cmプレート当たり60万個の細胞(条件当たり)で播種した。細胞は、血清飢餓状態下(0.1%FBS)で、対応する濃度のh5D8(滴定)で37℃で一晩処理した。pSTAT3の陽性対照として組換えLIF(R&D、#7734−LF/CF)を使用して、37℃で1.79nMで10分間細胞を刺激した。pSTAT3の陰性対照として、JAKI阻害剤(Calbiochem、#420099)を1μMで、37℃で30分間使用した。次に、Meso Scale Discovery Multi−SpotアッセイシステムTotal STAT3(カタログ番号K150SND−2)及びPhospho−STAT3(Tyr705)(カタログ番号K150SVD−2)キットのプロトコルに従って、溶解物のために細胞を氷上で採取し、MSD Meso Sector S600によって、検出可能なタンパク質レベルを測定した。
【0146】
実施例7−ヒトLIFに特異的に結合する追加的な(Additonal)抗体
ヒトLIFに特異的に結合するその他のラット抗体クローン(10G7及び6B5)が同定され、それらの結合特性の要約は以下の表6に示され、クローン1B2が比較の役割を果たす。
【0147】
材料及び方法
組換えLIF標的タンパク質[ヒトLIF(大腸菌(E.coli));Milliporeカタログ番号LIF 1010及びヒトLIF(HEK293細胞);ACRO Biosystemsカタログ番号LIF−H521b]を分析物として塗布して、CM5光学的センサーチップの表面上に固定化された、抗LIFモノクロナール抗体1B2、10G7、及び6B5について、動態リアルタイム結合解析を実施した。
【0148】
包括的(センサグラムセットの同時フィッティング)並びに単曲線フィッティングアルゴリズムを適用して、ラングミュア1:1結合モデルを用いて、数学的センサーグラムフィッティングによって、運動定数及び親和性を得た。包括的適合の妥当性は、kobs解析によって評価した。
【0149】
【表6】
【0150】
実施例8−追加的な抗LIF抗体は生体外でSTAT3のLIF誘導リン酸化を阻害する
細胞培養におけるSTAT3のLIF誘導リン酸化を阻害する能力について、追加的なクローンを試験した。
図4に示されるように、クローン10G7及び先に詳述したr5D8は、1B2クローンと比較して、LIF誘導STAT3リン酸化の高い阻害を示した。抗LIFポリクローナル抗血清(pos.)を陽性対照として含めた。6B5は阻害を示さなかったが、これは、この実験で使用された非グリコシル化LIFに対する6B5の結合の欠如の可能性によって、説明されてもよい。
【0151】
材料及び方法
6ウェルプレートに15万個の細胞/ウェルの密度で、患者由来の神経膠腫細胞を播種した。細胞は、B27(Life Technologies)、ペニシリン/ストレプトマイシン及び増殖因子(20ng/mlのEGF及び20ng/mlのFGF−2[PeproTech])を補充した、Neurobasal培地(Life Technologies)からなるGBM培地中で、任意の処理の前に24時間培養した。翌日、大腸菌(E.coli)で産生された組換えLIFによって、又は組換えLIFと示された抗体との混合物によって(10μg/mlの抗体の最終濃度、及び20ng/mlの組換えLIFの最終濃度)、細胞を15分間処理し又は処理しなかった。処理後、ホスファターゼ及びプロテアーゼ阻害剤を含有する放射免疫沈降アッセイ(RIPA)溶解緩衝液中でタンパク質を得て、定量化し(BCAタンパク質アッセイ、Thermo Fisher Scientific)、ウエスタンブロットで使用した。ウエスタンブロットのために、5%の脱脂乳−TBST中で膜を1時間ブロックし、一次抗体(p−STAT3、カタログ番号9145、Cell Signaling)と共に一晩、又は30分間(β−アクチン−ペルオキシダーゼ、カタログ番号A3854、Sigma−Aldrich)インキュベートした。次に、膜をTBSTで洗浄し、必要に応じて二次抗体と共にインキュベートして、再度洗浄した。タンパク質は、化学発光(SuperSignal Substrate、カタログ番号34076、Thermo Fisher Scientific)によって検出した。
【0152】
実施例9−LIFは複数の腫瘍タイプにわたって高度に過剰発現される
免疫組織化学検査を複数のヒト腫瘍タイプ上で実施し、LIF発現の程度を判定した。
図5に示されるように、LIFは、多形性膠芽腫(GBM)、非小細胞肺がん(NSCLC)、卵巣がん、結腸直腸がん(CRC)、及び膵臓がんで高度に発現される。
【0153】
実施例10−ヒト化クローンh5D8は非小細胞肺がんのマウスモデルにおける腫瘍増殖を阻害する
ヒト化5D8クローンが生体内でLIF陽性がんを阻害する能力を判定するために、この抗体を非小細胞肺がん(NSCLC)のマウスモデルで試験した。
図6Aは、ビヒクル陰性対照と比較して、この抗体で処置されたマウスの腫瘍増殖の減少を示す。
図6Bは、r5D8バージョンを使用して生成されたデータを示す。
【0154】
材料及び方法
生体内生物発光をモニターするために、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を発現するレンチウイルスで、LIFレベルの高いマウス非小細胞肺がん(NSCLC)細胞株KLN205を安定的に感染させた。マウスモデルを開発するために、肋間穿刺によって、8週齢の免疫適格性同系DBA/2マウスの左肺に、5×105個のKLN205非小細胞肺がん(NSCLC)細胞を同所性に移植した。対照ビヒクル又は15mg/kg又は30mg/kgのh5D8抗体の週2回の腹腔内投与でマウスを処置し、腫瘍増殖を生物発光によってモニターした。生物発光イメージングのために、1〜2%吸入イソフルラン麻酔下で、マウスに0.2mLの15mg/mLのD−ルシフェリンを腹腔内注射した。生物発光シグナルは、高感度冷却CCDカメラからなるIVISシステム2000シリーズ(Xenogen Corp.Alameda,CA,USA)を使用してモニターした。Living Imageソフトウェア(Xenogen Corp.)を使用して、イメージングデータをグリッド化し、各ボックス化された領域の全生物発光シグナルを統合した。データは、関心領域(ROI)の全光子束放出量(光子/秒)を用いて解析した。結果は、h5D8抗体による処置が、腫瘍退縮を促進することを実証する。データは、平均±SEMとして提示される。
【0155】
実施例11−h5D8は多形性膠芽腫のマウスモデルにおける腫瘍増殖を阻害する
ルシフェラーゼ発現ヒト細胞株U251を使用する同所性GBM腫瘍モデルにおいて、r5D8は、300μgのr5D8及びh5D8の腹腔内(IP)注射を週2回投与されたマウスで、腫瘍体積を有意に減少させた。この研究の結果は、
図7Aに示される(処置後26日目の定量化)。この実験はまた、200μg又は300μgで処置したヒト化h5D8マウスを使用して実施され、7日間の処置後に統計的に有意な腫瘍の減少が示された。
【0156】
材料及び方法
ルシフェラーゼを安定して発現するU251細胞を採取してPBSで洗浄し、400gで5分間遠心分離してPBSに再懸濁し、自動細胞計数器(Countess、Invitrogen)で計数した。細胞を氷上に保ち、最適生存率を維持した。マウスにケタミン(Ketolar50(登録商標))/キシラシン(Rompun(登録商標))を腹腔内投与して(それぞれ75mg/kg、10mg/kg)麻酔した。各マウスを定位固定装置に注意深く入れて、固定した。頭部の毛を脱毛クリームで除去し、頭部の皮膚を外科用メスで切って頭蓋骨を露出させた。人字縫合の側方1.8mmで前方1mmの座標に、ドリルで慎重に小さな切開を行った。Hamilton 30Gシリンジを使用して、5μLの細胞を右側線条体に2.5mmの深さで接種した。頭部切開をHistoacryl(Hystoacryl)組織接着剤(Braun)で閉鎖し、皮下鎮痛剤メロキシカム(Metacam(登録商標))(1mg/kg)をマウスに注射した。各マウスに移植された最終的な細胞数は、3×105個であった。
【0157】
マウスを週2回腹腔内投与されるh5D8で処置した。処置は、腫瘍細胞接種の直後、0日目に開始した。マウスは、h5D8又はビヒクル対照の合計2回の投与を受けた。
【0158】
体重及び腫瘍体積:体重を毎週2回測定し、7日目に生物発光によって腫瘍増殖を定量化した(Xenogen IVIS Spectrum)。生体内での生物発光活性を定量化するために、マウスをイソフルオランで麻酔し、ルシフェリン基質(PerkinElmer)(167μg/kg)を腹腔内注射した。
【0159】
生物発光(Xenogen IVIS Spectrum)によって判定される腫瘍サイズは、7日目に評価した。各処置群について、個々の腫瘍の測定値と平均±SEMを算出した。統計的有意性は、対応のない非パラメトリックマン・ホイットニーU検定によって判定した。
【0160】
実施例12−h5D8は卵巣がんのマウスモデルにおける腫瘍増殖を阻害する
r5D8の有効性をその他の2つの同系腫瘍モデルで評価した。卵巣同所性腫瘍モデルID8では、300μgのr5Dの週2回の腹腔内投与は、腹部容積によって測定される腫瘍増殖を有意に阻害した(
図8A及び8B)。
図8Cの結果は、h5D8もまた、200μg以上の用量で腫瘍体積を減少させたことを示す。
【0161】
材料及び方法
ID8細胞は、10%のウシ胎仔血清(FBS)(Gibco、Invitrogen)、40U/mLのペニシリン及び40μg/mLのストレプトマイシン(PenStrep)(Gibco、Invitrogen)及び0.25μg/mLのプラスモシン(Invivogen)を補充した、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(Gibco、Invitrogen)中で培養した。
【0162】
ID8細胞を採取してPBSで洗浄し、400gで5分間遠心分離し、PBSに再懸濁した。細胞を氷上に保ち最適な生存率を維持して、200μLの細胞懸濁液を27G針で腹腔内注射した。マウスに移植された最終的な細胞数は、5×106個であった。
【0163】
マウスは、示されるように異なる用量で腹腔内投与されたh5D8で週2回処置した。体重を週2回測定し、キャリパー(Fisher Scientific)を使用して腹囲を測定することで、腫瘍進行をモニターした。
【0164】
実施例13−r5D8は結腸直腸がんのマウスモデルにおける腫瘍増殖を阻害する
皮下結腸CT26腫瘍を有するマウスにおいて、r5D8(300μgの週2回腹腔内投与)は、腫瘍増殖を有意に阻害した(
図9A及び9B)。
【0165】
材料及び方法
CT26細胞は、10%のウシ胎児血清(FBS)、40U/mLのペニシリン及び40μg/mLのストレプトマイシン(PenStrep)及び0.25μg/mLのプラスモシンを補充した、Roswell Park Memorial Institute培地(RPMI[Gibco、Invitrogen])中で培養した。
【0166】
CT26細胞(8×105個)をトリプシン化してPBSで洗浄し、400gで5分間遠心分離して100μLのPBSに再懸濁した。細胞を氷上に保って、細胞死を避けた。CT26細胞は、27G針を使用して皮下注射を介してマウスに投与した。
【0167】
300μgのr5D8、又はビヒクル対照は、CT26細胞移植後の3日目から、週2回の腹腔内注射(IP)を介してマウスに投与した。
【0168】
体重及び腫瘍体積を週に3回測定した。キャリパー(Fisher Scientific)を使用して、腫瘍体積を測定した。
【0169】
実施例14−r5D8は腫瘍モデルにおける炎症性浸潤を減少させる
U251 GBM同所性モデルでは、
図10Aに示されるように、M2分極マクロファージのマーカーであるCCL22の発現が、r5D8で処置された腫瘍において有意に減少した。この知見はまた、
図10Bに示すように、3つの患者サンプルが処置後にCCL22及びCD206(MRC1)発現(M2マクロファージのマーカーでもある)の有意な減少を示した、r5D8を使用した生理学的に関連する器官型組織切片培養モデルにおいても確認された(MRC1及びCCL22の双方について、上側の対照と下側の処置を比較されたい)。さらに、r5D8は、免疫適格性マウスの同系ID8(
図10C)及びCT26(
図10D)腫瘍において、CCL22+M2マクロファージもまた減少させた。H5D8処置はまた、同系CT26腫瘍モデルにおける免疫賦活性表現型に向けてマクロファージをプログラムした(
図10E)。h5D8処置は、CD206陰性/MHCII陽性画分の増加によって示されるように、M1表現型のマクロファージを増加させ、CD206陽性/MHCII陰性画分の減少によって示されるように、M2表現型のマクロファージを減少させた。
図10Fは、LIFノックダウンを伴うU251細胞の馴化培地中で培養された単球からの遺伝子発現データを示す。MRC1、CCL2、CCL1、及びCTSK(三角形で示される)は全て、発現の有意な低下を示した。
【0170】
実施例15−r5D8は非骨髄系エフェクター細胞胞を増加させる
追加的な免疫機序を調べるために、腫瘍微小環境内のT細胞及びその他の非骨髄系性免疫エフェクター細胞に対する、r5D8の効果を評価した。卵巣同所性ID8同系モデルにおいて、r5D8処置は、
図11Aに示されるように、腫瘍内NK細胞の増加と、CD4+及びCD8+T細胞の合計及び活性化の増加とをもたらした。同様に、結腸同系CT26腫瘍モデルにおいて、r5D8は、
図11Bに示されるように、腫瘍内NK細胞を増加させ、CD4+及びCD8+T細胞を増加させ、CD4+CD25+FoxP3+T−reg細胞を減少させる傾向にあった。CD4+CD25+FoxP3+T−reg細胞の減少傾向はまた、
図11Cに示されるように、r5D8処置に続いて同系同所性KLN205腫瘍モデルにおいても観察された。T細胞が有効性を媒介する要件と一致して、CT26モデルにおけるCD4+及びCD8+T細胞の枯渇は、
図12に示されるように、r5D8の抗腫瘍有効性を阻害した。
【0171】
T細胞枯渇の材料及び方法
CT26細胞は、10%のウシ胎児血清(FBS[Gibco、Invitrogen])、40U/mLのペニシリン及び40μg/mLのストレプトマイシン(PenStrep[Gibco、Invitrogen])及び0.25μg/mLのプラスモシン(Invivogen)を補充した、RPMI培地(Gibco、Invitrogen)中で培養した。CT26細胞(5×105個)を採取してPBSで洗浄し、400gで5分間遠心分離して100μLのPBSに再懸濁した。細胞を氷上に保って、細胞死を避けた。CT26細胞は、27Gシリンジを使用して皮下注射を介してマウスの両脇腹に投与した。マウスは、試験デザインに示されるように、r5D8の腹腔内投与によって週2回処置した。ビヒクル対照(PBS)、ラットr5D8、及び/又は抗CD4及び抗CD8は、研究デザインに記載されているように、週2回腹腔内注射(IP)を介してマウスに投与した。全ての抗体処置は、同時に投与した。
【0172】
実施例16−ヒトLIFと複合体形成したh5D8の結晶構造
h5D8が結合したLIF上のエピトープを判定し、結合に関与するh5D8の残基を判定するために、h5D8の結晶構造を3.1Åの分解能で解析した。共結晶構造は、LIFのN末端ループがh5D8の軽鎖可変領域と重鎖可変領域の間の中央に位置することを明らかにした(
図13A)。さらに、h5D8は、LIFのらせんA及びCC上の残基と相互作用し、それによって不連続で高次構造的なエピトープを形成する。結合は、いくつかの塩架橋、H結合、及びファンデルワールス相互作用によって駆動される(表7、
図13B)。LIFのh5D8エピトープは、gp130との相互作用領域に及ぶ。Boulanger,M.J.,Bankovich,A.J.,Kortemme,T.,Baker,D.& Garcia,K.C.Convergent mechanisms for recognition of divergent cytokines by the shared signaling receptor gp130.Molecular cell 12,577−589(2003)を参照されたい。結果は以下の表7に要約され、
図13に描写される。
【0173】
【表7】
【0174】
【表8】
【0175】
材料及び方法
LIFをHEK293S(Gnt I−/−)細胞で一過性に発現させ、Ni−NTAアフィニティークロマトグラフィーで精製し、20mMのTris、pH8.0及び150mMのNaCl中でのゲル濾過クロマトグラフィーがそれに続いた。組換えh5D8 FabをHEK293F細胞で一過性に発現させ、KappaSelectアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製し、カチオン交換クロマトグラフィーがそれに続いた。精製されたh5D8 FabとLIFを1:2.5のモル比で混合し、EndoHを使用した脱グリコシル化の前に、室温で30分間インキュベートした。引き続いて、ゲル濾過クロマトグラフィーを使用し、複合体を精製した。複合体化を20mg/mLに濃縮し、疎マトリックススクリーンを使用した結晶化試験のためにセットアップした。19%(v/v)イソプロパノール、19%(w/v)PEG4000、5%(v/v)グリセロール、0.095Mクエン酸ナトリウム、pH5.6を含む条件で、4℃で結晶を形成させた。この結晶をCanadian Light Source(CLS)の08ID−1ビームラインで、3.1Åの分解能で回折させた。Kabsch et al.Xds.Acta crystallographica.Section D,Biological crystallography 66,125−132(2010)に従って、XDSを使用してデータを収集し、処理してスケーリングした。McCoy et al.Phaser crystallographic software.J Appl Crystallogr 40,658−674(2007)に従って、Phaserを使用した分子置換によって、構造を決定した。Coot and phenix.refineを使用して、モデル構築及び精緻化を反復し、構造が許容可能なRworkとRfreeに収束するまで精緻化した。Emsley et al.Features and development of Coot.Acta crystallographica.Section D,Biological crystallography 66,486−501(2010);及びAdams,et al.PHENIX:a comprehensive Python−based system for macromolecular structure solution.Acta crystallographica.Section D,Biological crystallography 66,213−221(2010)respectivelyを参照されたい。図は、PyMOL(The PyMOL Molecular Graphics System,Version 2.0 Schrodinger,LLC)で作成された。
【0176】
実施例17−h5D8はLIFに対して高い特異性を有する
h5D8のその他のLIFファミリーメンバーへの結合を試験して、結合特異性を判定した。Octet96解析を用いて、双方のタンパク質が大腸菌(E.coli)で産生された場合、h5D8のヒトLIFへの結合は、LIFの最も相同性の高いIL−6ファミリーメンバーであるオンコスタチンM(OSM)への結合よりもおよそ100倍大きい。双方のタンパク質が哺乳類系で産生された場合、h5D8はOSMへの結合を示さない。データは、表8に要約される。
【0177】
【表9】
【0178】
材料及び方法
Octet結合実験:試薬は、製造業者の提供するマニュアルに従って使用し調製した。Octet Data Acquisitionソフトウェアver.9.0.0.26を使用して、次のように基本動態実験を実施した:センサー/プログラムの設定:i)平衡化(60秒間);ii)負荷(15秒間);iii)ベースライン(60秒間);iv)結合(180秒間);及びv)解離(600秒間)。
【0179】
サイトカインに対するh5D8のOctet親和性:Octet Data Acquisitionソフトウェアver.9.0.0.26を使用して、次のように基本動態実験を実施した:アミン反応性第2世代バイオセンサー(AR2G)は、水中で最低15分間水和させた。バイオセンサーへのh5D8のアミン結合は、アミン結合第二世代キットを使用して、ForteBio Technical Note 26(参考文献を参照されたい)に従って実施した。ディップステップは、30℃、10000rpmで次のように実施した:i)水中で60秒間の平衡化;ii)水中で20mMのECD、10mMのスルホ−NHSで300秒間の活性化;iii)10mMの酢酸ナトリウム、pH6.0中の10μg/mlのh5D8の600秒間の固定化;iv)1Mのエタノールアミン、pH8.5中で300秒間のクエンチ;v)水中で120秒間のベースライン。次に、30℃、10000rpmで、以下の浸漬及び読み取りステップで動態実験を実施した:vi)1×動態緩衝液中での60秒間のベースライン;vii)1×動態緩衝液中のサイトカインの適切な連続希釈液の180秒間の結合;viii)1×動態緩衝液中の300秒間の解離;ix)それぞれ10mMグリシン、pH2.0と1×動態緩衝液との間で交互する3回の再生/中和サイクル(それぞれ5秒間で3サイクル)。再生に続いて、バイオセンサーは、その後続の結合解析で再利用した。
【0180】
哺乳類胞から産生されたヒト組換えLIFは、ACROBiosystems(LIF−H521b)からのものであり;哺乳類細胞で産生されたヒト組換えOSMは、R&D(8475−OM/CF)からのものであり;大腸菌(E.coli)細胞で産生されたヒト組換えOSMは、R&D(295−OM−050/CF)からのものであった。
【0181】
実施例18−h5D8 fabの結晶構造
h5D8 Fabの5つの結晶構造を幅広い化学的条件下で決定した。これらの構造の高分解能は、CDR残基の立体配座が軽微な可撓性と関連しており、異なる化学環境下でも非常に類似していることを示す。この抗体のユニークな特徴は、可変重鎖領域の100位の非標準的なシステインの存在である。構造解析は、システインが不対であり、溶媒にほとんどアクセスできないことを示す。
【0182】
そのIgGのパパイン消化によってH5D8 Fabを得て、標準的なアフィニティ、イオン交換及びサイズクロマトグラフィー技術を用いた精製がそれに続いた。蒸気拡散法を用いて結晶を得て、分解能1.65Å〜2.0Åの範囲で5つの結晶構造を決定できた。全ての構造は、5.6、6.0、6.5、7.5,及び8.5の5つの異なるpHレベルにわたる結晶化条件にもかかわらず、同じ結晶学的空間群で、同様の単位セル寸法(P212121、a約53.8Å、b約66.5Å、c約143.3Å)で解析した。したがって、これらの結晶構造は、結晶充填のアーチファクトに妨げられず、幅広い化学条件にわたるh5D8 Fabの三次元的性質を比較できるようにする。
【0183】
電子密度を全ての相補性決定領域(CDR)残基で観測し、それを引き続いてモデル化した。注目すべきことに、LCDR1及びHCDR2は細長い立体配座を取り、浅いLCDR3及びHCDR3領域と一緒になって、パラトープの中央に結合溝を形成していた(
図14A)。5つの構造は全ての残基にわたり高度に類似しており、全原子の根平均二乗偏差は0.197Å〜0.327Åであった(
図14A)。これらの結果は、CDR残基の立体配座が、5.6〜8.5の範囲のpHレベル、及び150mM〜1Mの範囲のイオン強度をはじめとする、様々な化学環境で維持されることを示した。h5D8パラトープの静電気表面の解析は、正及び負の帯電領域が等しく親水特性に寄与し、一般的な疎水性パッチがないことを明らかにした。h5D8は、HCDR3の基部に非標準的なシステイン(Cys100)があるという、珍しい特徴を有する。5つの構造全てにおいて、この遊離システインは秩序化されており、いかなるジスルフィドスクランブルも形成しない。さらに、それは、Cys付加(システイニル化)又はグルタチオン付加(グルタチオン化)によって修飾されず、重鎖のLeu4、Phe27、Trp33、Met34、Glu102、Leu105の主鎖及び側鎖原子との間で、ファンデルワールス相互作用(3.5〜4.3Åの距離)する(
図14B)。最後に、Cys100は、CDR1及びHCDR3の立体配座の媒介に関与しているように見える、主に埋没した構造残基である。したがって、本発明者らの5つの結晶構造におけるこの領域の均一な配置によって観察されるように、これがその他のシステインとの反応性を持つ可能性は低い。
【0184】
材料及び方法
H5D8−1 IgGはCatalent Biologicsから入手し、25mMのヒスチジン、6%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、pH6.0中で製剤化した。製剤化されたIgGは、PBS、1.25mMのEDTA、10mMのシステイン中で、37℃で1時間、1:100μgのパパイン(Sigma)で消化する前に、10K MWCO濃縮器(Millipore)を使用してPBSに徹底的に緩衝液交換した。パパイン消化されたIgGは、AKTA Startクロマトグラフィーシステム(GE Healthcare)を使用して、プロテインAカラム(GE Healthcare)を通過させた。h5D8 Fabを含有するプロテインA通過物を回収し、10K MWCO濃縮器(Millipore)を使用して20mMの酢酸ナトリウム、pH5.6中に緩衝液交換した。得られたサンプルは、AKTA Pureクロマトグラフィーシステム(GE Healthcare)を使用して、Mono Sカチオン交換カラム(GE Healthcare)上に負荷した。1Mの塩化カリウムの勾配での溶出によって優勢なh5D8 Fabピークを得て、それを20mMのTris−HCl、150mMの塩化ナトリウム、pH8.0でのSuperdex 200増量ゲル濾過カラム(GE Healthcare)を使用して、回収、濃縮し、サイズが均一になるように精製した。h5D8Fabの高純度は、還元条件及び非還元条件下でのSDS−PAGEによって確認した。
【0185】
精製されたh5D8Fabは、10K MWCO濃縮器(Millipore)を使用して、25mg/mLに濃縮した。Oryx 4ディスペンサー(Douglas Instruments)を使用して、20℃で疎マトリックス96条件の市販スクリーンJCSG TOP96(Rigaku Reagents)及びMCSG−1(Anatrace)を使用した、蒸気拡散結晶化実験をセットアップした。以下の5つの結晶化条件で4日後に結晶を得て、収穫した:1)0.085Mのクエン酸ナトリウム、25.5%(w/v)のPEG4000、0.17Mの酢酸アンモニウム、15%(v/v)のグリセロール、pH5.6;2)0.1MのMES、20%(w/v)のPEG6000、1Mの塩化リチウム、pH6.0;3)0.1MのMES、20%(w/v)のPEG4000、0.6Mの塩化ナトリウム、pH6.5;4)0.085MのナトリウムHEPES、17%(w/v)のPEG4000、8.5%(v/v)の2−プロパノール、15%(v/v)のグリセロール、pH7.5;及び5)0.08Mのトリス、24%(w/v)のPEG4000、0.16Mの塩化マグネシウム、20%(v/v)のグリセロール、pH8.5。液体窒素中でのフラッシュ凍結の前に、結晶を含有する母液に、必要に応じて5〜15%(v/v)のグリセロール又は10%(v/v)のエチレングリコールを補充した。結晶をAdvanced Photon Source、ビームライン23−ID−DD(Chicago,IL)でX線シンクロトロン放射に暴露させ、回折パターンをPilatus3 6M検出器で記録した。データをXDSで処理し、Phaserを使用した分子置換によって構造を決定した。精緻化はPHENIXで行い、反復モデル構築はCootで行った。図はPyMOLで生成した。全てのソフトウェアは、SBGridを介してアクセスした。
【0186】
実施例19−h5D8のシステイン100における変異は結合を保存する
h5D8の解析は、重鎖の可変領域の100位(C100)における遊離システイン残基を明らかにした。ヒト及びマウスのLIFへの結合及び親和性を特性解析するために、C100を各天然アミノ酸で置換することによって、H5D8変異型を生成した。ELISA及びOctetアッセイを用いて、結合を特性解析した。結果は、表9に要約される。ELISA EC50曲線は、
図15に示される(
図15AヒトLIF及び
図15BマウスLIF)。
【0187】
【表10】
【0188】
材料及び方法
ELISA:h5D8 C100変異型のヒト及びマウスLIFへの結合をELISAによって判定した。組換えヒト又はマウスLIFタンパク質をMaxisorp 384ウェルプレート上に、1μg/mLで一晩、4℃で被覆した。プレートを1×ブロック緩衝液で室温で2時間ブロックした。各h5D8 C100変異型の滴定物を添加し、室温で1時間結合させた。プレートをPBS+0.05%ツイーン20で3回洗浄した。HRP共役抗ヒトIgGを添加し、室温で30分間結合させた。プレートをPBS+0.05%ツイーン20で3回洗浄し、1×TMB基質を使用して展開した。反応を1MのHClで停止させ、450nmでの吸光度を測定した。図の作成と非線形回帰解析は、Graphpad Prismを用いて実施した。
【0189】
Octet RED96:ヒト及びマウスのLIFに対するh5D8 C100変異型の親和性は、Octet RED96システムを使用してBLIによって判定した。h5D8 C100変異型は、1×動態緩衝液中の30秒間ベースラインに続いて、7.5μg/mLで抗ヒトFcバイオセンサー上に負荷した。ヒト又はマウスLIFタンパク質の滴定物は、負荷されたバイオセンサーに90秒間結合させ、1×動態緩衝液中で300秒間解離させた。KDは、1:1包括的フィットモデルを用いて、データ解析ソフトによって計算した。
【0190】
実施例20−h5D8は、生体外でLIFのgp130への結合を遮断する
h5D8がLIFのLIFRへの結合を妨げたかどうかを判定するために、Octet RED 96プラットフォームを用いた分子結合アッセイを実施した。H5D8は、抗ヒトFcキャプチャーによりAHCバイオセンサーに上に負荷した。次に、バイオセンサーをLIFに浸漬したところ、予想通り、結合が観察された(
図16A、中央3分の1)。引き続いて、バイオセンサーを異なる濃度のLIFRに浸漬した。用量依存的結合が観察された(
図16A、右側3分の1)。対照実験は、この結合がLIF特異的であり(未掲載)、LIFRとh5D8又はバイオセンサーとの非特異的相互作用に起因するものではないことを実証した。
【0191】
h5D8とLIFの結合をさらに特性解析するために、一連のELISA結合実験を実施した。H5D8及びLIFをプレインキュベートし、次に、組換えヒトLIFR(hLIFR)又はgp130のどちらかで被覆されたプレートに導入した。h5D8/LIF複合体と被覆された基質との間の結合の欠如は、h5D8が何らかの様式で、LIFの受容体への結合を妨害したことを示す。さらに、LIFに結合しなかった対照抗体((−)で示されるイソタイプ対照)、又は既知の結合部位でLIFに結合する対照抗体(B09はgp130又はLIFRのどちらともLIF結合について競合しない;r5D8はh5D8のラット親バージョンである)もまた使用した。ELISAの結果は、h5D8/LIF複合体が(r5D8/LIF複合体と同様に)hLIFRに結合できたことを実証し、これらの抗体がLIF/LIFR結合を妨げなかったことが示唆された(
図16A)。対照的に、h5D8/LIF複合体(及びr5D8/LIF複合体)は、組換えヒトgp130と結合できなかった(
図16B)。これは、LIFがh5D8に結合すると、LIFのgp130結合部位が影響を受けることを示唆した。
【0192】
実施例21−ヒト組織におけるLIF及びLIFR発現
LIF及びLIFRの発現レベルを判定するために、多くの異なるタイプのヒト組織に対して、定量的リアルタイムPCRを実施した。
図17A及び17Bに示される平均発現レベルは、100ngの全RNA当たりのコピーとして与えられる。ほとんどの組織は、100ngの全RNA当たり、少なくとも100コピーを発現した。LIF mRNA発現は、ヒト脂肪組織(腸間膜−回腸[1])、血管組織(脈絡叢[6]及び腸間膜[8])、及び臍帯[68]組織において最高であり;脳組織(皮質[20]及び黒質[28])において最低であった。LIFR mRNA発現は、ヒト脂肪組織(腸間膜−回腸[1])、血管組織(肺[9])、脳組織[11−28]、及び甲状腺[66]組織において最高であり;PBMC[31]において最低であった。カニクイザル組織におけるLIF及びLIFR mRNA発現レベルは、ヒト組織で観察されたものと類似しており、LIF発現が脂肪組織で高く、LIFR発現は脂肪組織で高く、PBMCで低かった(データ未掲載)。
【0193】
図17A及び
図17Bの組織番号付けは、次のとおり。1−脂肪(腸間膜−回腸);2−副腎;3−膀胱;4−膀胱(膀胱三角);5−血管(脳:中脳動脈);6−血管(脈絡叢);7−血管(冠動脈);8−血管(腸間膜(結腸));9−血管(肺);10−血管(腎臓);11−脳(小脳扁桃);12−脳(尾状核);13−脳(小脳);14脳−(皮質:前帯状回);15−脳(皮質:後帯状回);16−脳(皮質:正面−側方);17−脳(皮質:内側前頭);18−脳(皮質:後頭);19−脳(皮質:頭頂);20−脳(皮質:側頭);21−脳(背側縫線核);22−脳(海馬);23−脳(視床下部:前側);24−脳(視床下部:後側);25−脳(青斑核);26−脳(延髄);27−脳(側坐核);28−脳(黒質);29−乳房;30−盲腸;31−末梢血単核細胞(PBMCs);32−結腸;33−背根神経節(ganlia)(DRG);34−十二指腸;35−卵管;36−胆嚢;37−心臓(左心房);38−心臓(左心室);39−回腸;40−空腸;41−腎臓(皮質);42−腎臓(髄質);43−腎臓(骨盤);44−肝臓(実質);45−肝臓(気管支:一次);46−肝臓(気管支:三次);47−肺(実質);48−リンパ腺(扁桃);49−筋肉(骨格);50−食道;51−卵巣;52−膵臓;53−松果体腺;54−脳下垂体;55−胎盤;56−前立腺;57−直腸;58−皮膚(包皮);69−脊髄;60−脾臓(実質);61−胃(幽門洞);62−胃(体部);63−胃(胃底);64−胃(幽門管);65−精巣;66−甲状腺;67−気管;68−臍帯;69−尿管;70−子宮(子宮頸部);71−子宮(子宮筋層);及び72−輸精管。
【0194】
実施例22−h5D8及び抗PD−1抗体は結腸直腸がんのマウスモデルにおける腫瘍増殖を阻害する
同系CT26及びMC38モデルにおいて、h5D8の有効性をPD−1阻害剤との組み合わせで評価した。
図18A及び18Bに示されるように、PD−1阻害剤とh5D8の組み合わせで処置されたマウスは、PD−1阻害剤単独又はh5D8単独で処置されたマウスと比較して、CT26腫瘍増殖の減少を示した。h5D8単剤療法による耐久性のある延命効果は観察されず(
図18C)、抗PD1療法ではまれにしか観察されなかった(
図18C)一方で、h5D8と抗PD1の組み合わせは、処置されたCT26及びMC38腫瘍保持マウスのそれぞれ約40%及び30%において、長期延命効果もたらした(
図18C)。重要なことには、長期的に腫瘍のないCT26生存者は腫瘍再移植に抵抗性であり、長期持続適応免疫の獲得と一致していた(
図18D)。
【0195】
h5D8とPD−1阻害剤の組み合わせが、それによって腫瘍増殖に影響を及ぼす、追加的な免疫機構を調べるために、
図19A及び19Bに示されるように、浸潤製CD8T細胞の機能性に対する組み合わせの効果を評価した。h5D8処置の単剤療法では、CT26及びMC38腫瘍のどちらでも、それぞれCD8 TILの効果なしであるか、又はほんのわずかな増加が観察された。単剤療法としての抗PD1は、CD8 TILに対してほとんど効果がなかったが、h5D8との組み合わせは、CT26及びMC38の双方の腫瘍においてCD8 TILの有意な増加をもたらし、組み合わせで観察された有効性の増加が、潜在的にCD8 TILの増加によって駆動されることが示唆された(
図19C及び19D)。
【0196】
対照及び単剤処置群と比較して、h5D8と抗PD1の組み合わせで処置されたマウスから採取された腫瘍は、CD8 TILの増加を示しただけでなく、GZMB、Ki67、及びCD44によって同定される、細胞溶解性、増殖性、及び抗原経験サブセットのそれぞれの増加もまた示した。併用療法を受けた腫瘍は、CD8/Treg、M1/M2、及びCD8/CD11b比の増加もまた示し、抗腫瘍免疫に有利な腫瘍微小環境(TME)の強力な調節が実証された。これらのデータは、LIFがマクロファージの分極を抑制することによって、少なくともある程度TMEの抑制を駆動し、それが引き続いて宿主の抗腫瘍免疫を鈍らせることを支持する。h5D8によるLIFの阻害はこの効果を逆転させ、抗PD1療法などのT細胞促進療法と組み合わせることで、強力な抗腫瘍免疫を駆動し、がんのマウスモデルにおいて、持続性の延命効果を可能にする。
【0197】
抗PD1単剤療法又はh5D8及び抗PD1の組み合わせのどちらかで処置されたマウスから採取された腫瘍において、CD8 TILが細胞毎に機能的に異なるかどうかを調べるために、腫瘍特異的抗原に反応してCD8 TILがIFNγを産生する能力を調べた。抗PD1で、又はh5D8と抗PD1との組み合わせで処置されたCT26腫瘍から単離されたCD8 TILは、CT26の免疫優勢拒絶反応抗原を含むAH1ペプチド(gp70;423〜431アミノ酸)によって生体外で刺激されたときに、機能に差がないことを示した(
図19C)。同様に、抗PD1で、又はh5D8と抗PD1との組み合わせで処置されたMC38腫瘍から単離されたCD8 TILもまた、免疫優性腫瘍抗原ペプチド(p15e;604〜611アミノ酸)によって生体外で刺激されたときに、機能に差がないことを示し、組み合わせの有効性の増加が、細胞毎のCD8 TIL機能の増加ではなく、CD8 TIL頻度の全体的な増加によって駆動されていることが示唆された。
【0198】
材料及び方法
h5D8と、PD−1阻害剤である抗体クローンRMP1−14(BioXCell)とをそれぞれ15mg/kg及び10mg/kgの用量で週2回投与し、キャリパーによる測定を通じて腫瘍体積をモニターした。
【0199】
実施例23−LIF、TAM、及びTreg間の相関
がん免疫系に対するLIFの効果は、がんゲノムアトラス(TCGA)から、28種類の固形腫瘍にわたり、腫瘍関連マクロファージ(TAM)及び調節性T細胞(Treg)の相対存在量を測定することによって判定された。LIFと、TAM及びTregとの間の有意な相関が、いくつかの腫瘍タイプにわたって観察された(
図20A及び20B)。神経膠芽腫(GBM)、前立腺がん、甲状腺がん、及び卵巣がんは、LIF、TAM、及びTregの間で最も高い相関性を示し、サンプル間で高いLIF発現を示した4つの腫瘍タイプであった(
図20A及び20B)。GBM腫瘍では、腫瘍細胞及び免疫細胞浸潤による広範なLIF発現が観察された(
図24)。
【0200】
ヒトGBM及び卵巣がん(OV)のTCGAデータセットの双方の解析で、LIFと、CCL2、CD163、及びCD206との間に有意な正の相関が見られた(
図28)。LIFとCXCL9の間に相関は観察されなかったが(データ未掲載)、腫瘍全体にわたりCXCL9 mRNAの比較的低いレベルが観察された。これらの結果は、20人のGBM患者のコホートを解析し、腫瘍のLIF、CXCL9、CCL2、CD163、及びCD206 IHCを実施することによって、タンパク質レベルで検証した。LIFと、CCL2、CD163、及びCD206との間に、強い正の相関が観察された(
図21E)。CXCL9は孤立した細胞群で発現しており、腫瘍に存在する低レベルのCXCL9 mRNAが説明された。特に、CXCL9は、ヒトGBMにおいてLIFと逆の相関を示した(
図21E)。
【0201】
本明細書に記載される実施例は、LIFが、腫瘍促進性TAMの存在を促進する一方で、CD8+T細胞の排除に重要な役割を果たすことをさらに描写する。高レベルのLIFを発現する腫瘍におけるLIFの遮断は、TAMにおけるCD206、CD163、及びCCL2を減少させ、CXCL9発現を誘導することが観察された。LIFの遮断は、CXCL9のエピジェネティックサイレンシングを解除し、CD8+T細胞腫瘍浸潤を始動させた。LIF中和抗体とPD1免疫チェックポイント阻害との組み合わせは、腫瘍退縮及び全生存増加を促進した。
【0202】
材料及び方法
がんゲノムアトラス(TCGA)、Firebrowse server(firebrowse.org、バージョン2016_01_28)から、28種の異なる固形腫瘍に罹患している9,403人の患者のRNA−seqデータをダウンロードした。発現データ(RSEM)を全ての下流解析についてlog2変換した。次に、関心のある4つの免疫集団であるTAM、Treg、CD4+T細胞、及びCD8+T細胞の遺伝子シグネチャを取得した。次に、LIF発現と4つの免疫集団の遺伝子シグネチャとの相関、及びLIFと関心のある遺伝子のセットとの相関を計算した。
【0203】
実施例24−GL261N、RCAS、及びID8モデルにおけるLIF機能を抑制する
がんにおけるLIFの潜在的な免疫調節的役割について、GBM及び卵巣がん(LIFがTAM及びTregと強く相関する腫瘍型)の免疫適格性マウスモデルにおいて検討した。GBM細胞株GL261N(GL261細胞株の派生物)、GFAP−tv−aRCAS−PDGFA、shp53、shNF1(RCAS)組換えモデル、及びマウスの脳(GL261N及びRCAS)と腹膜(ID8)に腫瘍を生じさせた卵巣がん細胞株ID8は、高レベルのLIFを発現することが確認された(
図25)。
【0204】
中和抗体を使用して、GL261N、RCAS、及びID8モデルにおけるLIF機能を抑制した。これらのモデルでは、腫瘍増殖の減少及び生存率の増加が観察された(
図20C、20G、20H、20K、20P)。LIFを発現しない腫瘍であるGL261腫瘍モデルにおけるLIFの遮断は、腫瘍の増殖を阻害しなかった(
図25E)。LIFに対する中和抗体は、これらの動物モデル(高LIF発現に基づいて選択された)においてp−STAT3レベルの著しい減少を誘導し、LIFがJAK−STAT3経路を誘導する主なサイトカインであることが示された(
図20D及び20L)。さらに、Ki67陽性細胞の有意な減少は観察されなかった一方で、切断されたカスパーゼ3(CC3)の増加が観察され、LIFの遮断が腫瘍細胞死を誘導することが示唆された(
図20D、20L)。
【0205】
材料及び方法
全ての動物実験は、欧州連合及び国内指令に合致して、Vall d’Hebron Research InstituteのInstitutional Animal Care Committeeのガイドラインに従って承認され、実施された。メスC57BL/6及びNODSCIDは、Janvierから購入した。脳腫瘍モデルでは、8週齢C57BL/6マウスの右脳半球の線条体(人字縫合の1mm前側で人字縫合の1.8mm側方;脳実質内2.5mm)に、いずれもルシフェラーゼ発現を有する3×105個のGL261N、GL261、又はRCAS細胞を定位的に種した。卵巣腫瘍モデルでは、8週齢のC57BL/6マウスに、5×106個のID8卵巣がん細胞を腹腔内注射した。300μg(ID8)又は600μg(GL261N、GL261、及びRCAS)の用量の抗LIF又は対照IgGを週2回腹腔内投与した。さらに、200μgの用量のラット抗マウスPD1遮断抗体(抗PD1、BioXCell)、抗マウス/ヒト/ラットCCL2抗体(MCP−1、BioXcell)又は3μgの抗マウスCXCL9抗体(R&D)を週2回腹腔内投与した。腫瘍進行は、体重によって、及び腹囲(ID8)によって、又はXenogenogen IVIS(登録商標)スペクトル(GL261N、GL261、及びRCAS)を使用した生物発光測定によって、モニターした。マウスは、疾病や苦痛の臨床徴候(すなわち悪液質、食欲不振、又は呼吸数の増加)を示したとき、又は腫瘍が正常な身体機能を妨害し始めたときに安楽死させた。
【0206】
実施例25−GL261N腫瘍の抗LIF処置
免疫不全動物を使用して、抗LIF処置に対する免疫系の役割を評価した。RAG−/−又はNOD SCIDマウス(いずれも適応免疫応答を欠くマウスの系統)におけるGL261N腫瘍の抗LIFによる処置は、腫瘍増殖に有意な影響を示さなかった(
図25F)。結果は、LIFの遮断に対する抗腫瘍反応が、主に適応免疫応答によって媒介されることを示した。
【0207】
材料及び方法
使用されたマウスが、Jackson LaboratoriesからのRAG−/−、CCL2−/−、及びCXCL9−/−、そしてCharles RiverからのNOD SCIDγ(NSG)であったことを除いて、実施例24の方法を用いた。
【0208】
実施例26−抗LIF処置は腫瘍促進性TAM数を減少させてCD8+T細胞腫瘍浸潤を増加させる
抗LIF処置に対する免疫応答伴う分子機序は、腫瘍促進性TAM(CD11b+Ly6G−Ly6C−CD206+CD163+MHCIIlow)数の減少(
図20E、20I、20M)、そして重要なことには、抗LIFでの処置時におけるCD8+T細胞の腫瘍浸潤の同時の増加(
図20D、20F、20J、20L、20N)を観察することによって、さらに調べた。抗LIFで処置すると、Treg及びNK細胞数は、それぞれ減少し増加した(
図25G〜25J)。浸潤性CD8+T細胞はGZMAを発現し、それらが細胞傷害効果を媒介することが示唆された(
図26A)。さらに、CD8+T細胞の区画は、PD1を発現した(
図26B、26C)。動員された単球由来のTAM(CD11b+Ly6G−Ly6C−CD49d+)は、抗LIFに応答して減少し(
図26D)、樹状細胞集団(CD11b+、CD11c+、MHCII+)には大きな影響は見られず(
図26E)、組織内のIL−10又はIL−12のレベルにも大きな影響は見られなかった(
図26F)。
【0209】
材料及び方法
マウスを安楽死させ、腫瘍を単離した。GL261N及びRCAS腫瘍を脳腫瘍解離キットで酵素的に消化し、ミエリンをミエリン除去ビーズII(全てMiltenyi Biotecから)を使用して除去した。ID8腫瘍をマウス腫瘍解離キット(Miltenyi Biotec)で処理し、腹水を採取した。器官型モデルのヒトGBM検体及び患者由来の異種移植片は、ヒト腫瘍解離キット(Miltenyi Biotec)で酵素的に消化した。
【0210】
GL261N細胞懸濁液から、抗Ly6C−APC及び抗APCマイクロビーズと抗Ly6Gマイクロビーズを使用してLy6G+とLy6C+集団を枯渇させ、次にCD11b磁気ビーズを使用して、CD11b+細胞の単離を実施した。CD45+細胞の単離は、抗マウスCD45磁気ビーズを使用して実施した。ID8細胞懸濁液から、抗CD11b磁気ビーズを使用してCD11b+細胞を単離した。最後に、器官型切片から、抗ヒトCD45磁気ビーズを使用してCD45+細胞の単離を実施した。全ての単離手順は、製造会社の使用説明書に従って、MultiMACS Cell24 Separator Plusを使用して実施し、磁気ビーズはMiltenyi Biotecから購入した。
【0211】
CD3、CD4、CD335、CD163、MHCクラスII、CXCR3(eBioscience)、CD45、CD8、F4/80、CD11b、CD11c、CD206、CD49d(BD Bioscience)、LIFR(Novus Biologicals)Ly6G、Ly6C、CCR2、及びPD1(Biolegend)に対するマウス抗体をフローサイトメトリーのために使用した。FoxP3、Granzyme A(GZMA)、CXCL9(eBioscience)、及びCCL2(Biolegend)の細胞内染色は、特異的染色セット(eBioscience)を使用して実施した。フローヒト試験では、CD11b、CD14(BD Bioscience)、CD45、CD3、CXCR3(Biolegend)、及びCD8(BD Pharmigen)に対する抗体を使用した。場合によっては、サンプルを事前にLIVE/DEAD固定可能黄色死染キット(Thermo Fisher Scientific)と共にインキュベートして、生存率を判定した。白血球集団を確立するために、ヒトGBM器官型及び患者由来の異種移植片の陽性対照として、106個のPBMC(「スパイクPBMC」と称される)を対照サンプルに添加した。
【0212】
サンプルはBD LSRFortessa(商標)細胞分析装置又はNavios(Beckman Coulter)で取得し、データはFlowJoソフトウェアで解析した。
【0213】
実施例27−CD8+T細胞浸潤はLIF遮断に対する抗腫瘍応答の結果ではない
腫瘍が確立されてから4日間マウスを抗LIFで処置する急性処置実験を実施することよって、LIF媒介腫瘍免疫浸潤の制御が、抗腫瘍反応の原因であるのか又は結果であるのかを評価した。4日間の処置は腫瘍増殖には影響しなかったが(
図26G)、CD8+T細胞腫瘍浸潤に関与するのには十分であった(
図26H)。これは、CD8+T細胞浸潤が、LIFの遮断に対する抗腫瘍応答の結果ではなかったことを示す。
【0214】
実施例28−遺伝子応答妥当性検証
ID8マウスモデルからCD11b+細胞を単離し、細胞を抗LIF抗体で処理し、トランスクリプトミクス解析を実施することにより、下方制御された発がん性表現型に関連する遺伝子を判定した。同定された遺伝子は、CCL2、CCL3、CCL7、PF4、CTSK、CD206、及びCD163であった。そして興味深いことに、CXCL9は上方制御された(
図21A)。前述の遺伝子応答は、ID8及びGL261Nモデルにおいて、qRT−PCRによって検証された(
図21B)。
【0215】
CXCL9及びCCL2は、それぞれCD8+T細胞腫瘍浸潤、及びTAMとTregの動員に重要なケモカインとして際立っていた。TAM(CD11b+Ly6G−Ly6C−)における、LIFの中和によるCXCL9及びCCL2の制御が確認された(
図21C)。TAMの免疫染色及び単離は、TAMにおいてCXCL9、CCL2、CD206、及びびCD163が主に発現され(
図21D)、抗LIFによる処置がそれらの発現を制御することを示した(
図21C、21D)。CXCR3(CXCL9受容体)、CCR2(CCL2受容体)、及びLIFRは、TAM及びCD8+T細胞(
図27A)で発現される。qRT−PCR解析は、GL261N腫瘍から選別された、CD11b+Ly6G−Ly6C−及びCD11b−Ly6G−Ly6C−細胞における、CD11b及びCXCL9 mRNAの存在を定量化した。(
図27B)
【0216】
材料及び方法
mRNA抽出(RNeasy Mini又はMicro Kit、Qiagen)、レトロトランスクリプション(BioRadからのmRNA用iScript Reverse Supermix)のために細胞を溶解し、製造業者の推奨に従って、Applied BiosystemsのTaqmanプローブを使用してqRT−PCRを実施した。パラフィン包埋切片については、高純度FFPET RNA単離キット(Roche)を使用して、製造会社の使用説明書に従ってRNAを得た。反応は、CFX384 Touch(商標)リアルタイムPCR検出システム(Bio−Rad)において実行し、結果は、Ct法で計算された対照サンプルに対する倍数変化として表した。内部正規化対照として、マウス又はヒトACTB又はGAPDHを使用した。
【0217】
RNAは、Affymetrixマイクロアレイプラットフォーム上で、Mouse Gene 2.1 STを使用してアッセイした。次に、それをRobust−Microarray Average(RMA)に基づいて正規化した。limma Bioconductorパッケージを使用して、対合サンプルを考慮し、ベイズ線形回帰を通じて、抗LIF処置されたマウスにおいて示差的に発現される遺伝子を同定した。
【0218】
実施例29−CXCL9ノックアウトマウス及びCCL2ノックアウトマウスにおける抗LIF応答
CXCL9及びCCL2ノックアウトマウス(CXCL9−/−、CCL2−/−)マウスモデルを用いて、LIFの発がん性機能におけるCXCL9及びCCL2の制御との関連性を試験した。これらのマウスモデルにおける腫瘍は、CXCL9及びCCL2に対する遮断抗体で処置した。興味深いことに、LIFの阻害に対する抗腫瘍応答は、CXCL9−/−マウスでは鈍化したが、CCL2−/−マウスでは鈍化しなかった(
図21F)。同様に、CXCL9中和抗体は抗LIFに対する抗がん応答を阻害したが、CCL2抗体は阻害しなかった(
図21F)。これらの結果は、抗LIF応答の主な媒介物が、CXCL9であることを示す。予想通り、CXCL9の遮断は、抗LIFに応答してCD8+T細胞腫瘍浸潤を減少させた(
図21G)。
【0219】
材料及び方法
スライドを脱パラフィン化し、水和させた。抗原検索は、pH6又はpH9のクエン酸抗原賦活化溶液(DAKO)、10分間の10%ペルオキシダーゼ(H2O2)、室温で1時間のブロッキング液(2%BSA)を使用して実施した。検出システムとして、製造業者の指示に従ってEnVision FLEX+(DAKO)を使用し、ヘマトキシリン(hematoxilin)による対比染色、脱水、及びマウンティング(DPX)がそれに続いた。患者からのGBM腫瘍におけるLIF、CCCL2、CD163、CD206、及びCXCL9の染色の定量化をHスコア(3×強染色の百分率+2×中等度染色の百分率+弱染色の百分率)として表したところ、0〜300の範囲が得られた。p−STAT3、Ki67、CC3、及びCD8の定量化は、ImageJを使用して実施し、群当たり5匹のマウス毎に3つの異なる視野の細胞総数をカウントし、陽性細胞の百分率を算出した。グラフ中のデータは、平均値±SEMとして提示される。
【0220】
免疫組織化学的抗体:ヒトLIF(Atlas;1:200)、マウスLIF(AbCam;1:200)、マウスp−STAT3(Cell Signaling;1:50)、マウスKi67(AbCam;1:200)、マウスCleaved−Caspase3(CC3)(Cell Signaling;1:500)、マウスCD8(Bioss;1:200)、ヒト/マウスCCL2(Novus Biologicals、1:200)、ヒトCXCL9(Thermo Fischer Scientific;1:100)、及びヒトCD163(Leica Novacastra;1:200)。
【0221】
核をDAPIで対比染色し、レーザー走査型共焦点NIKON Eclipse Ti顕微鏡を使用して画像を取得した。免疫蛍光の定量化はImageJを使用して実施し、群当たり3〜5匹の各マウス毎に2〜3つの異なる視野のCD11b、Iba1、又はCD3について陽性である全て又は最大100個の細胞をカウントして、Iba1(GL261Nモデルのため)又はCD68/CD11b(ID8モデルのため)陽性集団内のCCL2、CD206、及びCD163に対して陽性である細胞の百分率を算出した。CXCL9については、このサイトカインのシグナルで取り囲まれる細胞の百分率を全細胞集団内で算出した。器官型切片については、各患者(n=3)の3〜4つの視野を定量化した。器官型組織免疫蛍光については、条件毎に5つの異なるZスタック画像をFighi−Image Jソフトウェアによって処理した。CD8+T細胞については、全集団間のCD8+T細胞の百分率を算出した。グラフ中のデータは、平均±SEMで表される。
【0222】
免疫蛍光抗体:ヒト/マウスCCL2(Novus Biologicals、1:200)、ヒト/マウスCD11b(AbCam;1:2000)、ヒト/マウスIba1(Wako;1:1000)、マウスCD68(AbCam;1:200)、ヒト/マウスCD206(Abcam;1:500)、マウスCD163(Abcam;1:200)、CXCL9(マウスNovus Biologicals1:200;ヒトThermo Fischer Scientific;1:200)、及びヒトCD8(DAKO;1:200)。
【0223】
実施例30−マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)の初代培養におけるLIFの効果
マウスBMDMの初代培養に対するLIFの効果を試験して、マクロファージにおけるLIFによるCXCL9及びCCL2の制御に関与する分子機序を探究した。LIFは、BMDMにおいてIFNγ又はIL4によって誘導された、いくつかのM1様及びM2様マーカーの発現を制御した(
図22A)。BMDMをIFNγで処理した場合を除き、CXCL9発現は検出されなかった。組換えLIFは、mRNAレベルとタンパク質レベルの双方で、IFNγによるCXCL9の誘導を抑制した(
図22B及び22C)。CXCL9は、新鮮なヒトGBM腫瘍から得られた患者由来のTAM(CD11b+CD14+)において、IFNγ及びLIFによっても制御された(
図22D及び29A)。これらの結果は、組換えLIFが、mRNAレベルとタンパク質レベルの双方で、LPSによるCXCL9の誘導を抑制したことを観察することで、さらに検証された。(
図29B)。したがって、LIFはCXCL9誘導のリプレッサーとしての機能を果たした。LIFで処理した際のCXCL9プロモーターのp−STAT3への結合は、観察されなかった(データ未掲載)。これと一致して、LIF処置は、H3リジン27トリメチル化(H3K27me3)のレベルを増加させ、アセチル化H4(H4ac)のレベルを減少させ、CXCL9プロモーター領域へのEZH2結合を増加させることが分かり、LIFがエピジェネティックなサイレンシングを通じて、CXCL9発現を制御することが示された(
図22E)。
【0224】
材料及び方法
骨髄由来マクロファージ(BMDM)は、6〜10週齢のC57BL/6マウスから得た。簡潔に述べると、20%の熱不活化FBSと、マクロファージコロニー刺激因子の供給源としての30%のL細胞熟成培地(cm)とを補充したDMEM(Life Technologies)中で、骨髄前駆体を培養した。6日間の培養後に、分化したマクロファージを得た。L細胞cmは、10%の熱不活性化FBS(Life Technologies)を補充したDMEM中で増殖させたL929細胞から得た。ヒトマクロファージは、ヒトGBM標本から単離した。簡潔に述べると、腫瘍解離キットで腫瘍組織を酵素的に消化し、CD11b磁気ビーズ及びMultiMACS Cell24分離器Plus(全てMiltenyi Biotecから)を使用して、CD11b+細胞を単離した。得られたCD11b+細胞は、10%の熱不活化FBS(Life Technologies)を補充したRPMI培地中で培養した。組換えLIF、IFNγ、LPS、及びIL4は、それぞれ、Millipore、R&DSystems、Sigma、及びCreative BioMartから購入した。
【0225】
クロマチンの免疫沈降は、Upstate(Millipore)の標準プロトコルに従って行った。簡潔に述べると、1%のホルムアルデヒドを使用して、1.2×107個のBMDMを37℃で10分間固定して採取し、超音波分解して200〜500bpのクロマチン断片を生成した。次に、2j.tgの抗p−STAT3(Tyr705)抗体、抗トリメチルヒストンH3(Lys27)(Cell Signaling)、抗アセチルH4(Millipore)又は抗EZH2(Millipore)を使用して、20j.tgの剪断されたクロマチンを一晩免疫沈降させた。20j.tlのプロテインG磁気ビーズを使用して免疫複合体を回収して洗浄し、溶出させた。65℃、4時間で架橋を逆転させ、QiagenからのPCR精製キットを使用して、免疫沈降DNAを回収した。関心のあるゲノム領域は、SYBR Green Master Mix(Invitrogen)を使用したリアルタイム定量PCR(qPCR)によって同定した。
【0226】
実施例3−患者における免疫細胞腫瘍浸潤のLIF制御
実際のがん患者の腫瘍において、LIFがCXCL9の抑制を通じて免疫細胞腫瘍浸潤を制御することを確認するために、患者から新鮮に入手されたGBM標本から器官型組織培養物を生成した。これらの器官型モデルは、患者の腫瘍の組織構造及びストロマ(免疫細胞を含む)を維持する腫瘍切片の短期培養を可能にする。腫瘍細胞が高レベルのLIFを発現した3人の患者からの器官型組織培養物(
図22H)。Iba1マーカーによって検出されたように、3つの全ての培養物でTAMの大きな浸潤が存在し、TAMのほとんどは、CCL2、CD163、及びCD206を発現した。興味深いことに、LIFに対する中和抗体による器官型培養物の3日間の処置は、CCL2、CD163、及びCD206の減少とCXCL9発現の増加を促進した(
図22H)。
【0227】
材料及び方法
ヒトGBM標本は、Vall d’Hebron University Hospital and Clinic Hospitalから入手した。臨床プロトコルは、全ての対象からインフォームドコンセントを得て、Vall d’Hebron Institutional Review Board and Clinic Hospital(CEIC)によって承認された。
【0228】
GBM神経球は、以下に記載されるようにして生成した。簡潔に述べると、外科的切除後30分以内に腫瘍サンプルを処理した。ヒトGBMサンプルの細かく刻んだ断片は、PBS中の200U/mlのコラゲナーゼI(Sigma)及び500U/mlのDNaseI(Sigma)で、37℃で1時間、絶えず激しく撹拌しながら消化した。単一細胞懸濁液を70μmの細胞ストレーナー(BD Falcon)(BDファルコン)を通して濾過し、PBSで洗浄した。最後に、細胞を再懸濁し、引き続いて、B27、ペニシリン/ストレプトマイシン(全てライフテクノロジーズから)及び増殖因子(20ng/mlのEGF及び20ng/mlのFGF−2(PeproTech))を補充した、Neurobasal培地からなるGBM培地中で培養した。
【0229】
GBM器官型切片培養物は、次のように生成した。切除後、外科標本を外科用メスで長さ5〜10mm、幅1〜2mmの長方形のブロックに切断し、6ウェルプレート内の0.4μm膜培養インサート(Millipore)に個別に移し入れた。6ウェルプレートに挿入物を入れる前に、B27(Life Technologies)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies)、及び増殖因子(20ng/mlのEGF及び20ng/mlのFGF−2)(PeproTech)を補充した、1.2mlのNeurobasal培地(Life Technologies)を各ウェルに入れた。培養は、定湿、95%の空気、5%のCO2で37℃に保った。1日後、切片をラット抗LIF遮断抗体又はその対応する正常IgG(10μg/ml)で3日間処理した。CXCL9遮断試験では、ヒトCXCL9に対する中和マウスモノクローナル抗体(R&D Systems)を1.5μg/mlで培養物に添加した。場合によっては、0.1ng/mlのヒトrIFNγ(R&D Systems)を24時間添加した。並行して、Lymphosep(Biowest)を使用して遠心分離密度分離によって、同一患者の全血から末梢血単核細胞(PBMC)を得た。PBMCは、使用するまで10%の不活化FBS及び10%のDMSOを補充したRPMI培地中で凍結保存した。免疫細胞浸潤アッセイのために、対照又は抗LIF切片をMatrigel(Corning)中に包埋し、その後、完全RPMI培地中で24ウェルプレートに1×106個のPBMCを添加した。さらに、上清を採取し、器官型切片をMatrigelから回収し、IF及びフローサイトメトリーのためにさらに処理した。いくつかの条件で、PBMCを106個の細胞/mlの濃度でPBSで再懸濁し、5μMのCell Trace CFSE(Invitrogen)で20分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞をRPMIで洗浄し、Matrigelに包埋された切片に添加した。24時間後、蛍光性のPBMCのMatrigelへの侵入を、各条件毎に5つの異なる領域で遊走する細胞をカウントすることによって、顕微鏡下で評価した。
【0230】
実施例32−抗LIFによる処置は高レベルのLIFを発現する腫瘍においてCXCL9を増加させCCL2発現を減少させた
免疫細胞腫瘍浸潤に対するLIFの影響を評価した。抗LIF処置後、高レベルのLIFを発現する腫瘍を有する3人の患者からの器官型切片を、同じ患者からの末梢血単核細胞(PBMC)と共にインキュベートした(
図23A)。抗LIFによる処置は、CXCL9を増加させ、CCL2発現を減少させ(
図23B)、腫瘍標本周囲のMatrigelへの免疫細胞浸潤を誘導した(
図23B)。特に、CD8+T細胞はLIF遮断時に腫瘍組織に動員され(
図23B、23C)、CXCL9の中和によりCD8+T細胞浸潤が阻止されたことから、この効果はCXCL9に依存した(
図23D)。
【0231】
同様の結果は、生体内モデルの文脈において確認された。腫瘍がLIFを高レベルで発現した4人の患者からの腫瘍断片をNSGマウスに接種し、これらのマウスをLIF中和抗体で5日間処置した。次に、各患者のPBMCをマウスに接種した。興味深いことに、抗LIFで処置されたマウスは、CD8+T細胞腫瘍浸潤の増加を示し、浸潤性CD8+T細胞のほとんどは、CXCL9受容体であるCXCR3を発現していた(
図23E)。
【0232】
実施例33−PD1遮断による抗腫瘍応答の増加
顕性腫瘍を有するマウスモデルを抗LIF及び抗PD1抗体で処置し、LIF及びPD1の遮断の組み合わせが、GL261N、RCAS、及びID8腫瘍におけるそれぞれの個々の処置と比較して、腫瘍増殖をさらに減少させることを観察した(
図30)。さらに、重要なことに、抗LIFと抗PD1の組み合わせ処置は、全生存期間を増加させ、腫瘍の退縮を誘導した(
図23F及び23G)。
【0233】
完全な腫瘍退縮退縮を示すマウスを集め、3×105個の腫瘍細胞を再接種した。これらのマウスでは腫瘍が出現しなかった一方で、並行して同数の細胞を接種した未感作マウスでは腫瘍が急速に増殖した(
図23H)。この再挑戦実験の結果は、抗LIFと抗PD1による併用療法が、免疫記憶を生じさせたことを示した。
【0234】
請求された発明の実施形態
ここで、本明細書に記載される発明の特定の実施形態を記載する。
1.個体のがんを治療するための、PD−1、PDL−1又はPDL−2シグナル伝達阻害剤と組み合わせた、白血病抑制因子(LIF)結合ポリペプチドの使用。
2.LIF結合ポリペプチドと、PD−1、PDL−1又はPDL−2シグナル伝達阻害剤とが、別個の製剤中で個体に投与される、実施形態1の使用。
3.LIF結合ポリペプチドと、PD−1、PDL−1又はPDL−2シグナル伝達阻害剤とが、同一製剤中で個体に投与される、実施形態1の使用。
4.PD−1、PDL−1、又はPDL−2シグナル伝達阻害剤が個体に投与される前に、LIF結合ポリペプチドが個体に投与される、実施形態1又は2の使用。
5.LIF結合ポリペプチドが個体に投与される前に、PD−1、PDL−1、又はPDL−2シグナル伝達阻害剤が個体に投与される、実施形態1又は2の使用。
6.LIF結合ポリペプチドが個体に投与されるのと同時に、PD−1、PDL−1、又はPDL−2シグナル伝達阻害剤が個体に投与される、実施形態1又は2の使用。
7.LIF結合ポリペプチドが、免疫グロブリン可変領域の断片、又は免疫グロブリン重鎖定常領域を含む、実施形態1〜6のいずれか1つの使用。
8.LIF結合ポリペプチドが、LIFと特異的に結合する抗体を含む、実施形態1〜7のいずれか1つの使用。
9.LIFと特異的に結合する抗体が、ヒト抗体フレームワーク領域に由来する少なくとも1つのフレームワーク領域を含む、実施形態8の使用。
10.LIFと特異的に結合する抗体がヒト化されている、実施形態8の使用。
11.LIFと特異的に結合する抗体が脱免疫化されている、実施形態8の使用。
12.LIFと特異的に結合する抗体が、2つの免疫グロブリン重鎖と、2つの免疫グロブリン軽鎖とを含む、実施形態8の使用。
13.LIFと特異的に結合する抗体が、IgG抗体である、実施形態8の使用。
14.LIFと特異的に結合する抗体が、Fab、F(ab)2、単一ドメイン抗体、一本鎖可変断片(scFv)、又はナノボディである、実施形態8の使用。
15.LIFと特異的に結合する抗体が、
a)配列番号1〜3のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域1(VH−CDR1);
b)配列番号4又は5に記載されるアミノ酸配列のいずれか1つを含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域2(VH−CDR2);
c)配列番号6〜8のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域3(VH−CDR3);
d)配列番号9又は10のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域1(VL−CDR1);
e)配列番号11又は12のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域2(VL−CDR2);及び
f)配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域3(VL−CDR3)
を含む、実施形態8〜14のいずれか1つの使用。
16.LIFと特異的に結合する抗体が、
a)配列番号41、42、44、又は66のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を有する、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)配列;及び
b)配列番号45〜48のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を有する、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)配列
を含む、実施形態8〜15のいずれか1つの使用。
17.VH配列が、配列番号42に記載されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、90%、95%、97%、98%、又は99%同一であり;VL配列が、配列番号46に記載されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、90%、95%、97%、98%、又は99%同一である、実施形態16の使用。
18.VH配列が、配列番号42に記載されるアミノ酸配列と同一であり、VL配列が、配列番号46に記載されるアミノ酸配列と同一である、実施形態17の使用。
19.LIFと特異的に結合する抗体が、
a)配列番号57〜60又は67のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を有する、免疫グロブリン重鎖配列;及び
(b)配列番号61〜64のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を有する、免疫グロブリン軽鎖配列
を含む、実施形態8〜15のいずれか1つの使用。
20.LIFと特異的に結合する抗体が、約200ピコモル濃度未満のKDで結合する、実施形態8〜19のいずれか1つの使用。
21.LIFと特異的に結合する抗体が、約100ピコモル濃度未満のKDで結合する、実施形態8〜19のいずれか1つの使用。
22.PD−1、PDL−1、又はPDL−2シグナル伝達阻害剤が、抗体又はそのPD−1、PDL−1、又はPDL−2結合断片を含む、実施形態8〜21のいずれか1つの使用。
23.抗体がPD−1と特異的に結合する、実施形態22の使用。
24.抗体が、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、AMP−514、チスレリズマブ、スパルタリズマブ、又はそのPD−1結合断片を含む、実施形態22の使用。
25.抗体が、PDL−1又はPDL−2と特異的に結合する、実施形態22の使用。
26.抗体が、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、BMS−936559、又はFAZ053、又はそのPDL−1又はPDL−2結合断片を含む、実施形態25の使用。
27.PD−1、PDL−1、又はPDL−2シグナル伝達阻害剤が、PD−1、PDL−1、又はPDL−2に結合するFc融合タンパク質を含む、実施形態8〜16のいずれか1つの使用。
28.Fc融合タンパク質が、AMP−224又はそのPD−1結合断片を含む、実施形態27の使用。
29.PD−1、PDL−1、又はPDL−2シグナル伝達阻害剤が、PD−1、PDL−1、又はPDL−2の小分子阻害剤を含む、実施形態1〜28のいずれか1つの使用。
30.PD−1、PDL−1、又はPDL−2を通じたシグナル伝達の小分子阻害剤が、N−{2−[({2−メトキシ−6−[(2−メチル[1,1’−ビフェニル]−3−イル)メトキシ]ピリジン−3−イル}メチル)アミノ]エチル}アセトアミド(BMS202);(2−((3−シアノベンジル)オキシ)−4−((3−(2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ダイオキシン−6−イル)−2−メチルベンジル)オキシ)−5−メチルベンジル)−D−セリン塩酸塩;(2R,4R)−1−(5−クロロ−2−((3−シアノベンジル)オキシ)−4−((3−(2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ダイオキシン−6−イル)−2−メチルベンジル)オキシ)ベンジル)−4−ヒドロキシピロリジン−2−カルボン酸;3−(4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−1−フェニルインドール;3−(4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−1−フェニル−1h−インドール;L−α−グルタミン、N2,N6−ビス(L−セリル−L−アスパラギニル−L−スレオニル−L−セリル−L−α−グルタミル−L−セリル−L−フェニルアラニル)−L−リシル−L−フェニルアラニル−L−アルギニル−L−バリル−L−スレオニル−L−グルタミニル−L−ロイシル−L−アラニル−L−プロリル−L−リシル−L−アラニル−L−グルタミニル−L−イソロイシル−L−リシル;(2S)−1−[[2,6−ジメトキシ−4−[(2−メチル[1,1’−ビフェニル]−3−イル)メトキシ]フェニル]メチル]−2−ピペリジンカルボン酸;グリシンアミド、N−(2−メルカプトアセチル)−L−フェニルアラニル−N−メチル−L−アラニル−L−アスパラギニル−L−プロリル−L−ヒスチジル−L−ロイシル−N−メチルグリシル−L−トリプトフィル−L−セリル−L−トリプトフィル−N−メチル−L−ノルロイシル−N−メチル−L−ノルロイシル−L−アルギニル−L−システイニル−、環式(1→14)−チオエーテル;又はそれらの誘導体又は類似体を含む、実施形態29の使用。
31.がんが、進行性固形腫瘍、神経膠芽腫、胃がん、皮膚がん、前立腺がん、膵臓がん、乳がん、精巣がん、甲状腺がん、頭頸部がん、肝臓がん、腎臓がん、食道がん、卵巣がん、結腸がん、肺がん、リンパ腫、軟部組織がん、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態1〜30のいずれか1つの使用。
32.がんが、非小細胞肺がん、上皮性卵巣がん、又は膵管腺がんを含む、実施形態31の使用。
33.がんが、単剤療法として投与されるLIF結合ポリペプチド又はPD−1、PDL−1、又はPDL−2シグナル伝達阻害剤の治療量による治療に対して不応性である、実施形態1〜32のいずれか1つの使用。
34.がんを有する個体に、
a)白血病抑制因子(LIF)結合ポリペプチドと;
b)PD−1(CD279)、PDL−1(CD274)、又はPDL−2(CD273)シグナル伝達阻害剤と
の組み合わせの有効量を投与するステップを含む、がんを有する個体を治療する方法。
35.LIF結合ポリペプチドと、PD−1(CD279)、PDL−1(CD274)、又はPDL−2(CD273)シグナル伝達阻害剤とが、別々に投与される、実施施形態34の方法。
36.がんを有する個体に、LIF結合ポリペプチドの有効量を投与するステップを含む、実施施形態34の方法。
37.がんを有する個体に、PD−1の阻害剤の有効量を投与するステップを含む、実施施形態34の方法。
38.LIF結合ポリペプチドが、免疫グロブリン可変領域の断片、又は免疫グロブリン重鎖定常領域を含む、実施形態34〜37のいずれか1つの方法。
39.LIF結合ポリペプチドが、LIFと特異的に結合する抗体を含む、実施形態34〜37のいずれか1つの方法。
40.LIFと特異的に結合する抗体が、ヒト抗体フレームワーク領域に由来する少なくとも1つのフレームワーク領域を含む、実施形態39の方法。
41.LIFと特異的に結合する抗体がヒト化されている、実施形態39の方法。
42.LIFと特異的に結合する抗体が脱免疫化されている、実施形態39の方法。
43.LIFと特異的に結合する抗体が、2つの免疫グロブリン重鎖と、2つの免疫グロブリン軽鎖とを含む、実施形態39の方法。
44.LIFと特異的に結合する抗体が、IgG抗体である、実施形態39の方法。
45.LIFと特異的に結合する抗体が、Fab、F(ab)2、単一ドメイン抗体、一本鎖可変断片(scFv)、又はナノボディである、実施形態39の方法。
46.LIFと特異的に結合する抗体が、
a)配列番号1〜3のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域1(VH−CDR1);
b)配列番号4又は5に記載されるアミノ酸配列のいずれか1つを含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域2(VH−CDR2);
c)配列番号6〜8のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域3(VH−CDR3);
d)配列番号9又は10のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域1(VL−CDR1);
e)配列番号11又は12のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域2(VL−CDR2);及び
f)配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域3(VL−CDR3)
を含む、実施形態39〜45のいずれか1つの方法。
47.LIFと特異的に結合する抗体が、
a)配列番号41、42、44、又は66のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を有する、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)配列;及び
b)配列番号45〜48のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を有する、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)配列
を含む、実施形態39〜46のいずれか1つの方法。
48.VH配列が、配列番号42に記載されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一であり;VL配列が、配列番号46に記載されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%同一である、実施形態47の使用。
49.VH配列が、配列番号42に記載されるアミノ酸配列と同一であり、VL配列が、配列番号46に記載されるアミノ酸配列と同一である、実施形態48の方法。
50.LIFと特異的に結合する抗体が、
a)配列番号57〜60又は67のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、90%、95%、97%、98%、又は99%同一のアミノ酸配列を有する、免疫グロブリン重鎖配列;及び
b)配列番号61〜64のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、90%、95%、97%、98%、又は99%同一のアミノ酸配列を有する、免疫グロブリン軽鎖配列
を含む、実施形態39〜46のいずれか1つの方法。
51.LIFと特異的に結合する抗体が、約200ピコモル濃度未満のKDで結合する、実施形態39〜50のいずれか1つの方法。
52.LIFと特異的に結合する抗体が、約100ピコモル濃度未満のKDで結合する、実施形態39〜50のいずれか1つの方法。
53.PD−1、PDL−1、又はPDL−2シグナル伝達阻害剤が、抗体又はそのPD−1、PDL−1、又はPDL−2結合断片を含む、実施形態34〜52のいずれか1つの方法。
54.抗体がPD−1と特異的に結合する、実施形態53の方法。
55.抗体が、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、AMP−514、チスレリズマブ、スパルタリズマブ、又はそのPD−1結合断片を含む、実施形態54の方法。
56.抗体が、PDL−1又はPDL−2と特異的に結合する、実施形態53の方法。
57.抗体が、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、BMS−936559、又はFAZ053、又はそのPDL−1又はPDL−2結合断片を含む、実施形態56の方法。
58.PD−1、PDL−1、又はPDL−2シグナル伝達阻害剤が、PD−1、PDL−1、又はPDL−2に結合するFc融合タンパク質を含む、実施形態34〜52のいずれか1つの方法。
59.Fc融合タンパク質が、AMP−224又はそのPD−1結合断片を含む、実施形態58の方法。
60.PD−1、PDL−1、又はPDL−2シグナル伝達阻害剤が、PD−1、PDL−1、又はPDL−2の小分子阻害剤を含む、実施形態34〜52のいずれか1つの方法。
61.PD−1、PDL−1、又はPDL−2を通じたシグナル伝達の小分子阻害剤が、N−{2−[({2−メトキシ−6−[(2−メチル[1,1’−ビフェニル]−3−イル)メトキシ]ピリジン−3−イル}メチル)アミノ]エチル}アセトアミド(BMS202);(2−((3−シアノベンジル)オキシ)−4−((3−(2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ダイオキシン−6−イル)−2−メチルベンジル)オキシ)−5−メチルベンジル)−D−セリン塩酸塩;(2R,4R)−1−(5−クロロ−2−((3−シアノベンジル)オキシ)−4−((3−(2,3−ジヒドロベンゾ[b][1,4]ダイオキシン−6−イル)−2−メチルベンジル)オキシ)ベンジル)−4−ヒドロキシピロリジン−2−カルボン酸;3−(4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−1−フェニルインドール;3−(4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−1−フェニル−1h−インドール;L−α−グルタミン、N2,N6−ビス(L−セリル−L−アスパラギニル−L−スレオニル−L−セリル−L−α−グルタミル−L−セリル−L−フェニルアラニル)−L−リシル−L−フェニルアラニル−L−アルギニル−L−バリル−L−スレオニル−L−グルタミニル−L−ロイシル−L−アラニル−L−プロリル−L−リシル−L−アラニル−L−グルタミニル−L−イソロイシル−L−リシル;(2S)−1−[[2,6−ジメトキシ−4−[(2−メチル[1,1’−ビフェニル]−3−イル)メトキシ]フェニル]メチル]−2−ピペリジンカルボン酸;グリシンアミド、N−(2−メルカプトアセチル)−L−フェニルアラニル−N−メチル−L−アラニル−L−アスパラギニル−L−プロリル−L−ヒスチジル−L−ロイシル−N−メチルグリシル−L−トリプトフィル−L−セリル−L−トリプトフィル−N−メチル−L−ノルロイシル−N−メチル−L−ノルロイシル−L−アルギニル−L−システイニル−、環式(1→14)−チオエーテル;又はそれらの誘導体又は類似体の1つ又は複数を含む、実施形態60の方法。
62.がんが、進行性固形腫瘍、神経膠芽腫、胃がん、皮膚がん、前立腺がん、膵臓がん、乳がん、精巣がん、甲状腺がん、頭頸部がん、肝臓がん、腎臓がん、食道がん、卵巣がん、結腸がん、肺がん、リンパ腫、軟部組織がん、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態34〜61のいずれか1つの方法。
63.がんが、非小細胞肺がん、上皮性卵巣がん、又は膵腺がんを含む、実施形態62の方法。
64.がんが、治療量のLIF結合ポリペプチド阻害剤による治療に対して不応性である、実施形態34〜63のいずれか1つの方法。
65.がんが、治療量のPD−1、PDL−1、又はPDL−2シグナル伝達阻害剤阻害剤(an inhibitor of an inhibitor of)による治療に対して不応性である、実施形態34〜63のいずれか1つの方法。
66.白血病抑制因子(LIF)結合ポリペプチドと、PD−1、PDL−1、又はPDL−2シグナル伝達阻害剤とが、別々に投与される、実施形態34〜65のいずれか1つの方法。
67.LIF結合ポリペプチドと、PD−1、PDL−1、又はPDL−2シグナル伝達阻害剤とが、同時に投与される、実施形態34〜65のいずれか1つの方法。
68.LIF結合ポリペプチドと、PD−1、PDL−1、又はPDL−2シグナル伝達阻害剤とが、単一組成物中で投与される、実施形態34〜65のいずれか1つの方法。
69.個体のがんを治療するための、PD−1又はPDL−1結合抗体と組み合わせた、白血病抑制因子(LIF)と特異的に結合する抗体の使用であって、LIF結合抗体は、
a)配列番号1〜3のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域1(VH−CDR1);
b)配列番号4又は5に記載されるアミノ酸配列のいずれか1つを含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域2(VH−CDR2);
c)配列番号6〜8のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域3(VH−CDR3);
d)配列番号9又は10のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域1(VL−CDR1);
e)配列番号11又は12のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域2(VL−CDR2);及び
f)配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域3(VL−CDR3)
を含む。
70.がんを有する個体に、
a)i.配列番号1〜3のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域1(VH−CDR1);
ii.配列番号4又は5に記載されるアミノ酸配列のいずれか1つを含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域2(VH−CDR2);
iii.配列番号6〜8のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域3(VH−DR3);
iv.配列番号9又は10のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域1(VL−CDR1);
v.配列番号11又は12のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域2(VL−CDR2);及び
vi.配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域3(VL−CDR3)を含む、白血病抑制因子(LIF)と特異的に結合する抗体(of an)と;
b)PD−1又はPDL−1結合抗体と
の組み合わせの有効量を投与するステップを含む、がんを有する個体を治療する方法。
71.がんを有する個体に、LIFと特異的に結合する抗体の有効量を投与するステップを含む、実施形態70の方法。
72.がんを有する個体に、PD−1又はPDL−1結合抗体の有効量を投与するステップを含む、実施形態70の方法。
73.LIFと特異的に結合する抗体と、PD−1又はPDL−1結合抗体とが、別々に投与される、実施形態70〜72のいずれか1つの方法。
74.がんが、多形性膠芽腫(GBM)、NSCLC(非小細胞肺がん)、卵巣がん、結腸直腸がん、甲状腺がん、膵臓がん、又はそれらの組み合わせである、実施形態70〜73のいずれか1つの方法。
75.がんを有する個体に、
a)i.配列番号1〜3のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域1(VH−CDR1);
ii.配列番号4又は5に記載されるアミノ酸配列のいずれか1つを含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域2(VH−CDR2);
iii.配列番号6〜8のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域3(VH−DR3);
iv.配列番号9又は10のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域1(VL−CDR1);
v.配列番号11又は12のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域2(VL−CDR2);及び
vi.配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域3(VL−CDR3)を含む、白血病抑制因子(LIF)と特異的に結合する抗体(of an)と;
b)PD−1又はPDL−1結合抗体と
の組み合わせの有効量を投与するステップを含む、がんを有する個体の腫瘍内の腫瘍促進性腫瘍関連マクロファージ(TAM)を減少させる方法。
76.がんを有する個体に、LIFと特異的に結合する抗体の有効量を投与するステップを含む、実施形態75の方法。
77.がんを有する個体に、PD−1又はPDL−1結合抗体の有効量を投与するステップを含む、実施形態75の方法。
78.LIFと特異的に結合する抗体と、PD−1又はPDL−1結合抗体とが、別々に投与される、実施形態75〜77のいずれか1つの方法。
79.TAM細胞が、CD11b、CD206、及びCD163からなるリストから選択される、任意の1、2、又は3つの分子の表面発現を示す、実施形態75〜78のいずれか1つの方法。
80.腫瘍が、肺腫瘍、脳腫瘍、膵臓腫瘍、乳房腫瘍、腎臓腫瘍、大腸腫瘍、卵巣腫瘍、又はそれらの組み合わせからなる、実施形態75〜78のいずれか1つの方法。
81.がんを有する個体に、
a)i.配列番号1〜3のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域1(VH−CDR1);
ii.配列番号4又は5に記載されるアミノ酸配列のいずれか1つを含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域2(VH−CDR2);
iii.配列番号6〜8のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域3(VH−DR3);
iv.配列番号9又は10のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域1(VL−CDR1);
v.配列番号11又は12のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域2(VL−CDR2);及び
vi.配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域3(VL−CDR3)を含む、白血病抑制因子(LIF)と特異的に結合する抗体(of an)と;
b)PD−1又はPDL−1結合抗体と
の組み合わせの有効量を投与するステップを含む、がんを有する個体に免疫記憶を生成する方法。
82.がんを有する個体に、LIFと特異的に結合する抗体の有効量を投与するステップを含む、実施形態81の方法。
83.がんを有する個体に、PD−1又はPDL−1結合抗体の有効量を投与するステップを含む、実施形態81の方法。
84.LIFと特異的に結合する抗体と、PD−1又はPDL−1結合抗体とが、別々に投与される、実施形態81〜83のいずれか1つの方法。
85.免疫記憶が、CD8+T細胞によって媒介される、実施形態81〜84のいずれか1つの方法。
86.免疫記憶が、CD4+T細胞によって媒介される、実施形態81〜84のいずれか1つの方法。
87.腫瘍に罹患した個体に、
a)i.配列番号1〜3のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域1(VH−CDR1);
ii.配列番号4又は5に記載されるアミノ酸配列のいずれか1つを含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域2(VH−CDR2);
iii.配列番号6〜8のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域3(VH−DR3);
iv.配列番号9又は10のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域1(VL−CDR1);
v.配列番号11又は12のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域2(VL−CDR2);及び
vi.配列番号13に記載されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域3(VL−CDR3)を含む、白血病抑制因子(LIF)と特異的に結合する抗体(of an)と;
b)PD−1又はPDL−1結合抗体と
の組み合わせの有効量を投与するステップを含む、個体(induvial)の腫瘍中のTリンパ球の量を増加させる方法。
88.がんを有する個体に、LIFと特異的に結合する抗体の有効量を投与するステップを含む、実施形態87の方法。
89.がんを有する個体に、PD−1又はPDL−1結合抗体の有効量を投与するステップを含む、実施形態87の方法。
90.LIFと特異的に結合する抗体と、PD−1又はPDL−1結合抗体とが、別々に投与される、実施形態87の方法。
91.Tリンパ球がCD8+T細胞を含む、実施形態87〜90のいずれか1つの方法。
92.Tリンパ球がCD4+T細胞を含む、実施形態87〜90のいずれか1つの方法。
93.腫瘍が、肺腫瘍、脳腫瘍、膵臓腫瘍、乳房腫瘍、腎臓腫瘍、大腸腫瘍、卵巣腫瘍、又はそれらの組み合わせからなる、実施形態87〜90のいずれか1つの方法。
【0235】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され説明されているが、このような実施形態は単なる例示として提供されることは、当業者には明らかであろう。本発明から逸脱することなく、当業者には、多数のバリエーション、変更、及び置き換えが可能である。本明細書に記載された本発明の実施形態に対する様々な代替物が、本発明の実施において用いられてもよいものと理解すべきである。
【0236】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、発行済み特許、及びその他の文書は、あたかも個々の刊行物、特許出願、発行済み特許、又はその他の文書が、その全体が参照により援用されることが具体的且つ個別に示されているかのように、参照により本明細書に援用される。参照により援用されたテキストに含まれる定義は、本開示の定義と矛盾する範囲で除外される。
【0237】
【表11】
【0238】
【表12】
【0239】
【表13】
【0240】
【表14】