(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-521335(P2021-521335A)
(43)【公表日】2021年8月26日
(54)【発明の名称】ターゲット及びターゲットの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20210730BHJP
C04B 35/58 20060101ALI20210730BHJP
C04B 35/645 20060101ALI20210730BHJP
【FI】
C23C14/34 A
C04B35/58 071
C04B35/645
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-555911(P2020-555911)
(86)(22)【出願日】2019年4月12日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月1日
(86)【国際出願番号】EP2019059517
(87)【国際公開番号】WO2019201796
(87)【国際公開日】20191024
(31)【優先権主張番号】GM50075/2018
(32)【優先日】2018年4月20日
(33)【優先権主張国】AT
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】515319954
【氏名又は名称】プランゼー コンポジット マテリアルズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ポルシク,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルレ,ザビーネ
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029DC05
4K029DC09
(57)【要約】
以下の化学組成:−以下の化合物のうちの少なくとも2つからの混合物95モル%〜100モル%:二ホウ化チタン(TiB
2)及び/又は二ホウ化バナジウム(VB
2)及び/又は二ホウ化チタン(TiB
2)と二ホウ化バナジウム(VB
2)との混合相、炭素(C)0.01モル%〜5モル%、二ホウ化チタン(TiB
2)及び/又は二ホウ化バナジウム(VB
2)及び/又は二ホウ化チタン(TiB
2)と二ホウ化バナジウム(VB
2)との混合相以外のホウ化物0.01モル%未満を有し、ここで、金属純度について、二ホウ化チタン(TiB
2)及び/又は二ホウ化バナジウム(VB
2)及び/又は二ホウ化チタン(TiB
2)と二ホウ化バナジウム(VB
2)との混合相からなる前記混合物並びに炭素(C)からの合計が、少なくとも99.8モル%であり、且つ、以下の物理的特性:先に定義した化学組成物の理論密度の90%超、好ましくは95%超の密度;及び10マイクロメートル未満、好ましくは3マイクロメートル未満、の二ホウ化チタン(TiB
2)及び/又は二ホウ化バナジウム(VB
2)及び/又は二ホウ化チタン(TiB
2)と二ホウ化バナジウム(VB
2)との混合相からの混合物の粒子の平均粒径を有する、物理気相成長用のターゲット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理気相成長用のターゲットであって、
以下の化学組成:
−以下の化合物のうちの少なくとも2つからなる混合物95モル%〜100モル%:二ホウ化チタン(TiB2)及び/又は二ホウ化バナジウム(VB2)及び/又は二ホウ化チタン(TiB2)と二ホウ化バナジウム(VB2)との混合相((Ti,V)B2)
− 0.01モル%〜5モル%の炭素(C)
− 0.01モル%未満の、二ホウ化チタン(TiB2)及び/又は二ホウ化バナジウム(VB2)及び/又は二ホウ化チタン(TiB2)と二ホウ化バナジウム(VB2)との混合相((Ti,V)B2)以外の他のホウ化物
を有し、
ここで、金属純度について、二ホウ化チタン(TiB2)及び/又は二ホウ化バナジウム(VB2)及び/又は二ホウ化チタン(TiB2)と二ホウ化バナジウム(VB2)との混合相((Ti,V)B2)からなる前記混合物並びに炭素(C)からの合計が、少なくとも99.8モル%であり、
且つ、以下の物理的特性:
− 上記で定義された化学組成の理論密度の90%超、好ましくは95%超、の密度
− 10マイクロメートル未満、好ましくは3マイクロメートル未満、の二ホウ化チタン(TiB2)及び/又は二ホウ化バナジウム(VB2)及び/又は二ホウ化チタン(TiB2)と二ホウ化バナジウム(VB2)との混合相((Ti,V)B2)の混合物の粒子の平均粒径
を有する物理気相成長用のターゲット。
【請求項2】
二ホウ化チタン(TiB2)及び/又は二ホウ化バナジウム(VB2)及び/又は二ホウ化チタン(TiB2)と二ホウ化バナジウム(VB2)との混合相((Ti,V)B2)の混合物におけるバナジウム(V)に対するチタン(Ti)のモル比が1:99〜99:1、好ましくは10:90〜90:10、の範囲内にある請求項1に記載のターゲット。
【請求項3】
炭素(C)が黒鉛の形態である請求項1又は2に記載のターゲット。
【請求項4】
二ホウ化チタン(TiB2)及び/又は二ホウ化バナジウム(VB2)及び/又は二ホウ化チタン(TiB2)と二ホウ化バナジウム(VB2)との混合相((Ti,V)B2)のみがX線識別可能な相の形態で存在する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のターゲット。
【請求項5】
二ホウ化チタン(TiB2)及び/又は二ホウ化バナジウム(VB2)及び/又は二ホウ化チタン(TiB2)と二ホウ化バナジウム(VB2)との混合相(Ti,V)B2)が、前記ターゲット中に均質に存在しており、そのため、それぞれ少なくとも1mm2のサイズの正方形又は円形の異なる測定領域を少なくとも5つ選んだ場合、前記それぞれの測定領域の表面で決定される平均化学組成が、選ばれた全測定領域から計算される平均化学組成から、20%よりも多くは、好ましくは10%よりも多くは、逸脱していない、請求項1〜4のいずれか1項に記載のターゲット。
【請求項6】
前記ターゲットのX線撮影検査において、優先的な結晶学的粒子配向を有しない等方性構造が確認でき、その際、二ホウ化チタン(TiB2)及び/又は二ホウ化バナジウム(VB2)及び/又は二ホウ化チタン(TiB2)と二ホウ化バナジウム(VB2)との混合相((Ti,V)B2)からなる粒子のアスペクト比が、1.5未満、好ましくは1.2未満、特に好ましくは実質的に1である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のターゲット。
【請求項7】
チタン(Ti)、バナジウム(V)、ホウ素(B)及び炭素(C)以外の必要に応じて存在する化学元素が、二ホウ化チタン(TiB2)及び/又は二ホウ化バナジウム(VB22)及び/又は二ホウ化チタン(TiB2)と二ホウ化バナジウム(VB2)との混合相((Ti,V)B2)の混合物の組織中に溶解しており、X線撮影で別個の相として検出され得ない、請求項1〜6のいずれか1項に記載のターゲット。
【請求項8】
前記ターゲットのHV30ビッカース硬さが、1500 HV30を超え、好ましくは2000 HV30を超える、請求項1〜7のいずれか1項に記載のターゲット。
【請求項9】
物理気相成長用のターゲット、特に請求項1〜8のいずれか1項に記載のターゲット、の製造方法であって、
−粉末形態で存在する二ホウ化チタン(TiB2)、粉末形態で存在する二ホウ化バナジウム(VB2)及び
−必要に応じて粉末状の炭素(炭素が不純物として存在していない場合)
が、混合され、必要に応じて機械的に粉砕され、そのようにして作られた粉末バッチが、成形金型内で熱間プレス又はスパークプラズマ焼結(SPS)により圧縮される、
製造方法において、
前記粉末バッチが、
−二ホウ化チタン(TiB2)と二ホウ化バナジウム(VB2)との混合物95モル%〜100モル%、及び
−必要に応じて、炭素(C)0.01モル%〜5モル%
からなること、ここで、金属純度について、二ホウ化チタン(TiB2)と二ホウ化バナジウム(VB2)との前記混合物及び炭素(C)からの合計が、少なくとも99.8モル%であること、
及び
前記熱間プレス又はスパークプラズマ焼結(SPS)が、少なくとも1,750℃、好ましくは少なくとも1,850℃、特に好ましくは少なくとも1,950℃、の温度で行なわれることを
特徴とする、製造方法。
【請求項10】
前記熱間プレス又はスパークプラズマ焼結(SPS)が、少なくとも20MPa、好ましくは少なくとも30MPa、の圧力で行なわれる、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記熱間プレス又はスパークプラズマ焼結(SPS)が、真空中又は不活性保護ガス雰囲気中で行なわれる、請求項9又は10に記載の製造方法。
【請求項12】
基材上に薄層を堆積するための物理気相成長法(PVD)における、請求項1〜8のいずれか1項に記載のターゲットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分の特徴を有する物理気相成長のためのターゲット(被覆源)及び請求項9の特徴を有するターゲットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、物理気相成長は、多種多様な層を製造するために幅広く使用されている。そのような層の用途は広範囲に及ぶため、様々な種類の被覆材料を堆積することが可能である必要がある。
【0003】
その際、物理気相成長には、例えば、蒸着、陰極噴霧(Kathodenzerstaeubung)(スパッタ堆積)又はアーク蒸着(Lichtbogenverdampfung)(陰極アーク堆積又はアーク源蒸着技術)などの様々な技術が使用される。
【0004】
ターゲットは、この目的のための基板材料に層を堆積するためのPVD(物理気相成長)プロセスで使用するのに適している。本発明の文脈において、ターゲットという用語は、スパッタターゲット又はアーク陰極であると理解されるべきである。
【0005】
ターゲットは、材料に応じて異なる技術を使用して製造される。その際、基本的には、粉末冶金プロセスと溶融冶金プロセスとを区別することができる。粉末冶金技術の場合、多くの異なる選択肢があり、これらは、統合される要素の特性を考慮しつつ、ターゲットの組成に応じて選ばれる必要がある。例としては、加圧、焼結、熱間静水圧プレス(HIP)、鍛造、圧延、熱間プレス(HP)又はスパークプラズマ焼結(SPS)、並びに、これらの組み合わせが、挙げられる。
【0006】
一般的なターゲット及び方法は、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に記載されている。
【0007】
特に、特許文献3には、少なくとも2つの異なる二ホウ化物を有する焼結体の製造が記載されており、この製造では、比較的低い焼結温度での製造の気孔率が低いという欠点を補うために、ホウ化物の形態にあるニッケル、鉄及びコバルトなどの金属をバインダー及び焼結助剤として使用することが必須である。焼結体をターゲットとして使用する場合、これらの金属により堆積層の純度が損なわれることが欠点である。
【0008】
また、共スパッタリングにより二ホウ化チタン(TiB
2)及び二ホウ化バナジウム(VB
2)からなる層を製造することも知られており、この場合、実質的に純粋な二ホウ化チタン(TiB
2)及び実質的に純粋な二ホウ化バナジウム(VB
2)からなる別個のターゲットが使用される。工業的なコーティングプロセスの場合、個々のターゲットが空間的に分離されているため、回転する基材により多重層が不可避的に生じ、化学的に均質な層が生じないことが欠点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2008/96648A1号
【特許文献2】特開平05−195199号公報
【特許文献3】特開昭55−128560号公報
【特許文献4】国際公開第2011/137472号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、高い密度を有し、高純度で化学的に均質な層を作ることが可能であり、微細で且つ等方性の微細構造を有する、一般的なターゲット及びターゲットの一般的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1の特徴を有するターゲット及び請求項9の特徴を有する方法により解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項において定義されている。基材上に薄層を堆積するための物理気相成長法(PVD)における本発明によるターゲットの使用についても保護が求められる。
【0012】
ターゲットを製造するための本発明による方法は比較的高温で行なわれるので、本発明は、ニッケル、コバルト又は鉄等の、バインダー又は焼結助剤を粉末添加物として使用しないで済む。しかしながら、それにより必然的に、組織は、これらの高温で大幅に粗大化し、これは、また、ターゲットとしての使用にとって不利であろう。本発明は、少なくとも2つの異なる相、即ち、二ホウ化チタン(TiB
2)、二ホウ化バナジウム(VB
2)及び、場合によって、炭素、好ましくは黒鉛(炭素が、二ホウ化チタン(TiB
2)又は二ホウ化バナジウム(VB
2)の相のうちの一方又は双方の不純物の形態で存在していない場合)、からなる粉末を使用することによって、この粗大化を回避する。それにより、比較的高い圧縮温度にも拘わらず、細かい微細構造の維持が確実になる。
【0013】
本発明によると、以下の少なくとも2つの化合物:二ホウ化チタン(TiB
2)及び/又は二ホウ化バナジウム(VB
2)及び/又は焼成中に形成された二ホウ化チタン(TiB
2)と二ホウ化バナジウム(VB
2)との混合相((Ti,V)B
2)の混合物並びに炭素(C)からの合計は、少なくとも99.8モル%である。これは、酸素(O)、窒素(N)又は水素(H)などの元素を考慮しない金属純度である。
【0014】
本発明による方法に使用することが可能な粉末バッチは、
−二ホウ化チタン(TiB
2)及び二ホウ化バナジウム(VB
2)からなる混合物95モル%〜100モル%と、
−必要に応じて炭素(C)0.01モル%〜5モル%と
からなる。
【0015】
二ホウ化チタン(TiB
2)及び/又は二ホウ化バナジウム(VB
2)の不純物に基づいて、二ホウ化チタン(TiB
2)及び/又は二ホウ化バナジウム(VB
2)以外のホウ化物が、本発明によるターゲット中に検出され得る(0.01モル%未満)。
【0016】
本発明の一実施例では、炭素(C)が黒鉛の形態で存在することが意図されている。
【0017】
以下に考察される本発明による全てのターゲット用粉末バッチの混合物について、例えば、以下の粉末を使用した:
−粒径d
50値が2.4μmのTiB
2
−粒径d
50値が7.0μmのVB
2
−粒径が6μm未満の黒鉛粉末。
【0018】
これらの粉末を、74/24/2モル%のTiB
2/VB
2/Cの比で混合し、粉砕ボールと共に粉砕ユニットで粉砕した。粉砕済みの粉末混合物を、プレス圧力30MPa及び温度2,000℃で、熱間プレスにより圧縮した。
【0019】
本発明の一実施形態では、二ホウ化チタン(TiB
2)及び二ホウ化バナジウム(VB
2)は、少なくとも1mm
2のサイズを有する少なくとも5つの正方形又は円形の異なる測定領域が表面上で選択された場合、それぞれの測定範囲の表面について決定される平均化学組成が、選択されたすべての測定範囲から計算される平均化学組成から20%以上、好ましくは10%以上、逸脱することがないように、ターゲット中に均一に分布されることが意図されている。
【0020】
本発明による異なるターゲットについての3つのそのような一連の測定値を、以下の表に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
各ターゲットについてそれぞれの測定範囲の表面上で決定された平均化学組成は、選択された全ての測定範囲から計算された平均化学組成から最小限にしか逸脱しないことが明らかに分かる。
【0023】
本発明の一実施形態では、ターゲットのX線検査において優先的な結晶粒配向を持たない等方性構造が見られることが意図されており、二ホウ化チタン(TiB
2)及び/又は二ホウ化バナジウム(VB
2)及び/又は混合相(Ti,V)B
2の混合物の粒子のアスペクト比は、1.5未満、好ましくは1.2未満、特に好ましくは本質的に1、である。
【0024】
本発明の一実施形態では、二ホウ化チタン(TiB
2)及び/又は二ホウ化バナジウム(VB
2)及び/又は二ホウ化チタン(TiB
2)と二ホウ化バナジウム(VB
2)との混合相((Ti,V)B
2)のみが、X線撮影で識別可能な相の形態で存在することが意図されている。
【0025】
方法に関して、本発明の一実施形態は、熱間プレス又はスパークプラズマ焼結(SPS)が、少なくとも20MPa、好ましくは少なくとも30MPa、の圧力で行なわれることが意図されている。
【0026】
熱間プレスによる製造例:
− ボールミルで粉砕して製造したTiB
2/VB
275/25モル%の粉末混合物
− 238×353mmのフォーマットのツールで熱間プレスして、以下のパラメータで32×238×353mmの寸法のプレートにする
− 2,000℃
− 29.5MPaの圧力に相当する252トンの力
− 焼結温度での保持時間30分。
【0027】
プレートによる達成密度は4.54g/cm
3であり、従って、理論密度4.5g/cm
3のTiB
275モル%及び理論密度5.1g/cm
3のVB
225モル%の混合比を用いて計算して得られたこの材料の理論密度4.64g/cm
3の約97.8%である。
【0028】
方法に関して、本発明の一実施形態では、熱間プレス又はスパークプラズマ焼結(SPS)は、真空中又は不活性保護ガス雰囲気中で行なわれることが意図されている。
【0029】
本開示に記載されているTiB
2/VB
2混合物から作られたターゲットの微細構造は、結晶サイズ、密度、ドーピング及び純度並びに熱間プレス又はSPSを経由する製造プロセスに関して、ホウ化物の他の組合せ、取り分け、ホウ化物TiB
2、VB
2、CrB
2、ZrB
2、NbB
2、MoB
2、MoB
2、HfB
2、TaB
2、WB
2、W
2B
5の組み合わせ、に、当業者が、応用することができる。混合物は、少なくとも2つのホウ化物からなる系、例えば、2つのホウ化物からの二元系、又は混合物中に同時に3、4又はそれ以上のホウ化物を含有する系である。
【0030】
本発明の例示的な実施形態は、図を参照して議論される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、純粋なTiB
2から作製された本発明に従わないターゲットのSEM(走査型子顕微鏡)画像を示す。
【
図2】
図2は、純粋なTiB
2から作製された本発明に従わない更なるターゲットのSEM画像を示す。
【
図3a】
図3aは、TiB
2/VB
2から作製された本発明によるターゲットのSEM画像を示す。
【
図3b】
図3bは、TiB
2/VB
2から作製された本発明によるターゲットのSEM画像を示す。
【
図4】
図4は、TiB
2/VB
2から作製された本発明によるターゲットのSEM画像を示す。
【
図5】
図5は、TiB
2/VB
2から作製された本発明によるターゲットのSEM画像を示す。
【
図6】
図6は、TiB
2/VB
2から作製された本発明によるターゲットのSEM画像を示す。
【
図7a】
図7aは、
図3bによる本発明のターゲットの放射線撮影画像(XRD)を示す。
【
図7b】
図7bは、
図7aのターゲットの放射線撮影画像(XRD)の拡大切片を示す。
【
図8】
図8は、75/25モル%のTiB
2/VB
2から作製された本発明のターゲットについての硬度試験の結果の写真である。
【
図9】
図9は、
図4によるターゲットについての硬度試験の結果の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1及び
図2は、対応して高い密度を達成するために異なる温度で圧縮された純粋なTiB
2材料の構造の例を示す。比較を容易にするために、拡大は、両方の図において同一であるように選択されている。温度が高すぎると、粒子は非常に粗くなる。
【0033】
図1は、1,650℃で熱間プレスした純TiB
2を示す。構造は、依然として比較的微細粒であり、推定平均粒径は2μmである。材料の密度は、4.43g/cm
3であり、従って、TiB
2についての理論密度4.52g/cm
3の約98%である。
【0034】
図2は、1,700℃で熱間プレスした純TiB
2を示す。構造は、既に部分的に比較的粗大化しており、個々の粒子は10μmより大きい。材料の密度は、TiB
2の理論密度の約98.5%である。
【0035】
図3〜
図5は、二ホウ化チタン(TiB
2)及び/若しくは二ホウ化バナジウム(VB
2)の混合物並びに/又は二ホウ化チタン(TiB
2)と二ホウ化バナジウム(VB
2)との混合相((Ti,V)B
2)中のバナジウム(V)に対するチタン(Ti)のモル比が、1:99〜99:1の範囲、好ましくは10:90〜90:10、の範囲である、本発明によるターゲットの例を示す。
図3〜
図5におけるTiB
2/VB
2材料の構造は、いかなるテクスチャリングをも示さず、本質的に1の粒子アスペクト比を有する等方性構造を示す。
【0036】
図3aは、TiB
2/VB
2が75/25モル%の材料から作製され、1,900℃でSPSにより圧縮されたターゲットの詳細を示す。材料の密度は4.19g/cm
3であり、従って、理論密度4.5g/cm
3のTiB
2の75モル%及び理論密度5.1g/cm
3のVB
2の25モル%の混合比を使用して計算される、この材料についての理論密度の4.64g/cm
3の約90%である。
【0037】
図3bは、TiB
2/VB
2が75/25モル%の材料から作製され、2,000℃でSPSにより圧縮されたターゲットの詳細を示す。材料の密度は4.49g/cm
3であり、従って、理論密度4.5g/cm
3のTiB
2の75モル%及び理論密度5.1g/cm
3のVB
2の25モル%の混合比を使用して計算される、この材料についての理論密度の4.64g/cm
3の約90%である。
【0038】
図4は、TiB
2/VB
2が87.5/12.5モル%の材料から作製され、2,000℃でSPSにより圧縮されたターゲットの詳細を示す。材料の密度は4.52g/cm
3であり、従って、理論密度4.5g/cm
3のTiB
2の87.5モル%及び理論密度5.1g/cm
3のVB
2の12.5モル%の混合比を使用して計算される、この材料についての理論密度の4.57g/cm
3の約99%である。
【0039】
図5は、2,000℃でSPSにより圧縮されたTiB
2/VB
2が93.75/6.25モル%の材料を示す。材料の密度は4.46g/cm
3であり、従って、理論密度4.5g/cm
3のTiB
293.75モル%及び理論密度5.1g/cm
3のVB
26.25モル%の混合比を使用して計算される、この材料についての理論密度4.53g/cm
3の約98%である。
【0040】
本発明による上述のターゲットは、SPSプロセスによって製造され、これは、それぞれの場合において真空中で実施された。
【0041】
比較のために、
図6は、それが最も低い許容可能な温度で圧縮されたことにより依然として高い気孔率を有する構造、即ち1,750℃で、SPSにより圧縮されたTiB
2/VB
2が75/25モル%の材料、を示す。材料の密度は4.01g/cm
3であり、従って、理論密度4.5g/cm
3のTiB
275モル%及び理論密度5.1g/cm
3のVB
225モル%の混合比を使用して計算される、この材料についての理論密度4.64g/cm
3の約86%である。
【0042】
図7a及び
図7bは、
図3bによる組成を有するターゲットについての相分析のためのX線スペクトルを示す。興味深いのは、TiB
2、(Ti,V)B
2及びVB
2の各相に特徴的な反射である。当業者は、これらの3つの相TiB
2、(Ti,V)B
2及びVB
2を、これらのスペクトルに割り当てることができる。
【0043】
図8〜
図10は、それぞれ、TiB
2/VB
2混合ターゲット上で測定された、FIV30硬度痕(Haerteeindruck)の一例を示す。硬度に関する代表的な記述のために、3つのFIV30硬度痕を基礎として使用した。
【0044】
図8は、75/25モル%のTiB
2/VB
2から作製されたターゲットについての3つのHV30硬度痕のうちの1つを示す。
【0045】
図9は、87.5/12.5モル%のTiB
2/VB
2から作製されたターゲットについての3つのFIV30硬度痕のうちの1つを示す。
【0046】
図10は、93.75/6.25モル%のTiB
2/VB
2から作製されたターゲットについての3つのFIV30硬度痕のうちの1つを示す。
【0047】
測定結果を以下の表にまとめる。
【表2】
【国際調査報告】