(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
三重特異性三価抗体構築物、この構築物を含む医薬組成物、およびその使用の方法を提示する。本明細書に記載されている結合分子のいずれかを含む、精製された結合分子も本明細書に開示されている。ある特定の態様では、結合分子は、CH1親和性精製ステップを含む精製方法によって精製される。ある特定の態様では、精製方法は、単一ステップの精製方法である。本明細書に記載されている結合分子のいずれかと、薬学的に許容される希釈剤とを含む医薬組成物も本明細書に開示されている。本明細書において、がんを有する対象を処置するための方法であって、治療有効量の本明細書に記載のいずれかの医薬組成物を投与することを含む、方法も開示する。
前記Bドメインおよび前記Gドメインのアミノ酸配列が異なり、それぞれ別々に直交型修飾を内在性CH3配列に含み、前記Bドメインは前記Gドメインと相互作用し、前記Bドメインと前記Gドメインのどちらも、前記直交型修飾を欠くCH3ドメインと有意に相互作用しない、請求項1〜6のいずれか一項に記載の結合分子。
前記Bドメインおよび前記Gドメインの前記直交型修飾が、ドメインBとドメインGとの間に操作されたジスルフィド架橋を生成する変異を含む、請求項8に記載の結合分子。
操作されたジスルフィド架橋を生成する前記Bドメインおよび前記Gドメインの前記変異が、前記BドメインとGドメインの一方におけるS354C変異、および他方のドメインにおける349Cである、請求項9に記載の結合分子。
前記Bドメインおよび前記Gドメインの前記ノブ・イン・ホール変異が、前記BドメインとGドメインの一方におけるT366W変異、ならびに他方のドメインにおけるT366S、L368AおよびY407V変異である、請求項11に記載の結合分子。
前記Bドメインおよび前記Gドメインの前記電荷対変異が、前記BドメインとGドメインの一方におけるT366K変異、および他方のドメインにおけるL351D変異である、請求項13に記載の結合分子。
前記CH1配列および前記CL配列がそれぞれ、1つまたは複数の直交型修飾を含み、前記CH1配列を有するドメインが、前記直交型修飾を欠くCL配列を有するドメインと有意に相互作用しない、請求項15または16に記載の結合分子。
前記直交型修飾が、少なくとも1つのCH1ドメインとCLドメインとの間に操作されたジスルフィド架橋を生成する変異を含み、前記変異が、前記CH1配列の138位および前記CL配列の116位における操作されたシステイン;前記CH1配列の128位および前記CL配列の119位における操作されたシステイン、ならびに前記CH1配列の129位および前記CL配列の210位における操作されたシステインからなる群から選択される、請求項17に記載の結合分子。
前記直交型修飾が、少なくとも1つのCH1ドメインとCLドメインとの間に操作されたジスルフィド架橋を生成する変異を含み、前記変異が、前記CH1配列の128位およびCLカッパ配列の118位における操作されたシステインを含む、請求項17に記載の結合分子。
前記直交型修飾が、少なくとも1つのCH1ドメインとCLドメインとの間に操作されたジスルフィド架橋を生成する変異を含み、前記変異が、前記CL配列におけるF118C変異と対応する前記CH1配列におけるA141C;前記CL配列におけるF118C変異と対応する前記CH1配列におけるL128C;および前記CL配列におけるS162C変異と対応する前記CH1配列におけるP171C変異からなる群から選択される、請求項17に記載の結合分子。
前記直交型修飾が、少なくとも1つのCH1ドメインとCLドメインとの間の電荷対変異を含み、前記電荷対変異が、前記CL配列におけるF118S変異と対応する前記CH1配列におけるA141L;前記CL配列におけるF118A変異と対応する前記CH1配列におけるA141L;前記CL配列におけるF118V変異と対応する前記CH1配列におけるA141L;および前記CL配列におけるT129R変異と対応する前記CH1配列におけるK147Dからなる群から選択される、請求項17から20のいずれかに記載の結合分子。
前記直交型修飾が、少なくとも1つのCH1ドメインとCLドメインとの間の電荷対変異を含み、前記電荷対変異が、前記CL配列におけるN138K変異と対応する前記CH1配列におけるG166D、および前記CL配列におけるN138D変異と対応する前記CH1配列におけるG166Kからなる群から選択される、請求項17から20のいずれかに記載の結合分子。
前記異なる配列が、それぞれ別個に直交型修飾を内在性CH3配列に含み、前記Eドメインは前記Kドメインと相互作用し、前記Eドメインと前記Kドメインのどちらも、前記直交型修飾を欠くCH3ドメインと有意に相互作用しない、請求項25に記載の結合分子。
操作されたジスルフィド架橋を生成する前記変異が、前記Eドメインと前記Kドメインの一方におけるS354C変異、および他方のドメインにおける349Cである、請求項27に記載の結合分子。
前記ノブ・イン・ホール変異が、前記Eドメインまたは前記Kドメインの一方におけるT366W変異、ならびに他方のドメインにおけるT366S、L368AおよびY407V変異である、請求項29に記載の結合分子。
前記電荷対変異が、前記Eドメインまたは前記Kドメインの一方におけるT366K変異、および他方のドメインにおける対応するL351D変異である、請求項31に記載の結合分子。
前記Eドメインおよび前記Kドメインのアミノ酸配列が、前記第1のポリペプチドと前記第3のポリペプチドとの間の特異的会合を促進する特異的相互作用を有するように選択された2つの異なる抗体ドメインの内在性配列である、請求項25に記載の結合分子。
前記Aドメインと前記Bドメインとの間のジャンクションを形成する配列が、IKRTPREPまたはIKRTVREPである、上記請求項のいずれかに記載の結合分子。
少なくとも1つのCH3アミノ酸配列が、前記CH3アミノ酸配列とヒンジアミノ酸配列とを連結するC末端トリペプチド挿入を有し、ここで前記トリペプチド挿入は、PGK、KSCおよびGECからなる群から選択される、上記請求項のいずれかに記載の結合分子。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図面は、例示の目的のためのみに、本発明の様々な実施形態を示している。当業者は、本明細書に例示された構造および方法の代替的実施形態が、本明細書に記載の本発明の原理から逸脱することなく利用しうることを以下の説明から容易に認識する。
6.詳細な説明
6.1.定義
【0073】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者に一般に理解されている意味を有する。本明細書で使用される場合、以下の用語は、下記で与えられる意味を有する。
【0074】
「抗原結合部位」は、所与の抗原またはエピトープを特異的に認識するまたはそれに特異的に結合する三価三重特異性結合分子の領域を意味する。
【0075】
「B−body」は、本明細書で使用される場合、また、
図3を参照すると、第1および第2のポリペプチド鎖の特色を含む結合分子であって、(a)第1のポリペプチド鎖はドメインA、ドメインB、ドメインDおよびドメインEを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、A−B−D−Eの配向で配置され、ドメインAはVLアミノ酸配列を有し、ドメインBはCH3アミノ酸配列を有し、ドメインDはCH2アミノ酸配列を有し、ドメインEは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し;(b)第2のポリペプチド鎖はドメインFおよびドメインGを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、F−Gの配向で配置され、ドメインFはVHアミノ酸配列を有し、ドメインGはCH3アミノ酸配列を有し;(c)第1および第2のポリペプチドは、AドメインとFドメインとの間の相互作用およびBドメインとGドメインとの間の相互作用を介して会合して、結合分子を形成する、結合分子を指す。B−bodyは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際特許出願番号PCT/US2017/057268により詳細に記載されている。
【0076】
本明細書で使用される場合、「処置する」または「処置」という用語は、治療的処置および予防的または防止的手段の両方を指し、ここで目的は、多発性硬化症、関節炎またはがんの進行などの望ましくない生理学的変化または障害を予防または減速(軽減)することである。有益または望ましい臨床結果としては、検出可能であろうとまたは検出不能であろうと、症状の緩和、疾患の範囲の縮減、疾患の安定した(つまり、悪化していない)状態、疾患の進行の遅延または減速、疾患の状態の回復または緩和、および寛解(部分的寛解または完全寛解)が挙げられるが、これらに限定されない。「処置」は、処置を受けない場合の予測生存期間と比較した生存期間の延長も意味しうる。処置を必要とする対象には、すでに状態もしくは障害に罹患している対象、ならびに状態もしくは障害を有する傾向にある対象、または状態もしくは障害を予防すべき状態にある対象が含まれる。
【0077】
「対象」、「個体」、「動物」、「患者」または「哺乳動物」は、診断、予防または治療が望まれる任意の対象、特に哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象には、ヒト、家庭用動物、農業用動物、ならびに動物園、スポーツまたはペット動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、畜牛、乳牛などが含まれる。
【0078】
「十分な量」という用語は、所望の効果を生じさせるために十分な量、例えば、細胞内のタンパク質凝集を調節するために十分な量を意味する。
【0079】
「治療有効量」は、疾患の症状を改善するために有効な量である。予防が治療と考えることができるように、治療有効量は「予防有効量」であることができる。
6.2.その他の解釈上の規則
【0080】
別途指定しない限り、本明細書における配列に対する全ての参照は、アミノ酸配列に対するものである。
【0081】
他に規定のない限り、抗体の定常領域残基の番号付けは、それらの全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれるwww.imgt.org/IMGTScientificChart/Numbering/Hu_IGHGnber.html#refs (accessed Aug. 22, 2017)に記載のEuインデックスおよびEdelman et al., Proc. Natl. Acad. USA, 63:78−85 (1969)に従い、本明細書に記載の三価三重特異性結合分子の鎖内の残基の物理的な位置に関わらず、内在性定常領域の配列におけるその位置に従って残基を特定する。「内在性配列」または「天然配列」は、生物、組織、または細胞に由来し、人工的に修飾または変異されていない、核酸およびアミノ酸配列の両方を含む任意の配列を意味する。
【0082】
ポリペプチド鎖番号(例えば、「第1の」ポリペプチド鎖、「第2の」ポリペプチド鎖等、またはポリペプチド「鎖1」、「鎖2」等)は、結合分子を形成する特異的ポリペプチド鎖に特有の識別子として本明細書で使用され、結合分子内の異なるポリペプチド鎖の順序または含量の暗示を意図するものではない。
【0083】
この開示において、「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含有すること(containing)」、「有すること(having)」、「含む(includes)」、「含むこと(including)」およびその言語的変化形は、米国特許法でそれらが帰する意味を有し、明示的に列挙されている成分以外のさらなる成分の存在を許容する。
【0084】
本明細書で提供される範囲は、列挙される端点を含む範囲内の全ての値についての省略表現と理解される。例えば、1〜50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49および50からなる群からの任意の数、数の組合せ、または部分範囲を含むと理解される。
【0085】
特に明記されていない限りまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「または」という用語は、包括的であると理解される。特に明記されていない限りまたは文脈から明らかでない限り、「a」、「an」および「the」という用語は、単数または複数であると理解される。
【0086】
特に明記されていない限りまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「約」という用語は、当技術分野で通常許容される範囲内、例えば、平均の2標準偏差以内と理解される。約は、示された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%または0.01%以内と理解することができる。文脈から明らかでない限り、本明細書で提供される全ての数値は、約という用語によって修飾されている。
6.3.三価三重特異性結合分子
【0087】
第1の態様では、三価三重特異性結合分子を提供する。三価三重特異性結合分子は、ABSが合わせて3つの認識特異性を有する3つの抗原結合部位を有し、したがって、「三価三重特異性」と称される。
6.3.1.三価三重特異性2×1抗体構造
【0088】
図21に関して、さまざまな三価の実施形態では、三価三重特異性結合分子は、第1、第2、第3、第4および第5のポリペプチド鎖を含み、
(a)第1のポリペプチド鎖はドメインA、ドメインB、ドメインD、ドメインE、ドメインNおよびドメインOを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、N−O−A−B−D−Eの配向で配置され、ドメインAは可変領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインBは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインDはCH2アミノ酸配列を有し、ドメインEは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインNは可変領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインOは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し;
(b)第2のポリペプチド鎖はドメインFおよびドメインGを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、F−Gの配向で配置され、ドメインFは可変領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインGは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し;
(c)第3のポリペプチド鎖はドメインH、ドメインI、ドメインJおよびドメインKを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、H−I−J−Kの配向で配置され、ドメインHは可変領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインIは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインJはCH2アミノ酸配列を有し、ドメインKは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し;
(d)第4のポリペプチド鎖はドメインLおよびドメインMを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、L−Mの配向で配置され、ドメインLは可変領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインMは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し;
(e)第5のポリペプチド鎖はドメインPおよびドメインQを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、P−Qの配向で配置され、ドメインPは可変領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインQは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し;
(f)第1および第2のポリペプチドは、AドメインとFドメインとの間の相互作用およびBドメインとGドメインとの間の相互作用を介して会合しており;
(g)第3および第4のポリペプチドは、HドメインとLドメインとの間の相互作用およびIドメインとMドメインとの間の相互作用を介して会合しており;
(h)第1および第5のポリペプチドは、NドメインとPドメインとの間の相互作用およびOドメインとQドメインとの間の相互作用を介して会合して、結合分子を形成し;
(i)第1および第3のポリペプチドは、DドメインとJドメインとの間の相互作用およびEドメインとKドメインとの間の相互作用を介して会合して、結合分子を形成し;
(j)ドメインN、ドメインAおよびドメインHのアミノ酸配列が異なり;
(k)第2および第5のポリペプチド鎖が同一であり、第4のポリペプチド鎖が異なり、または第4および第5のポリペプチド鎖が同一であり、第2のポリペプチド鎖が異なり;
(l)AドメインとFドメインとの間の相互作用は、第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成し、HドメインとLドメインとの間の相互作用は、第2の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成し、NドメインとPドメインとの間の相互作用は、第3の抗原に特異的な第3の抗原結合部位を形成する。
【0089】
図2に図示するように、これらの三価の実施形態は「2×1」三価構築物と称される。
【0090】
図52に関して、ある特定の実施形態では、第2および第5のポリペプチド鎖は同一であり、第4のポリペプチド鎖は第2および第5のポリペプチド鎖と異なり、ドメインOおよびドメインBのアミノ酸配列は同一であり、ドメインIのアミノ酸配列はドメインOおよびドメインBと異なる。
【0091】
図53に関して、ある特定の実施形態では、第4および第5のポリペプチド鎖は同一であり、第2のポリペプチド鎖は第2および第5のポリペプチド鎖と異なり、ドメインOおよびドメインIのアミノ酸配列は同一であり、ドメインBのアミノ酸配列はドメインOおよびドメインIと異なる。
【0092】
様々な実施形態では、ドメインOは、ペプチドリンカーを介してドメインAに連結される。様々な実施形態では、ドメインSは、ペプチドリンカーを介してドメインHに連結される。好ましい実施形態では、ドメインOをドメインAに連結するかまたはドメインSをドメインHに連結するペプチドリンカーは、セクション6.3.20.6においてより詳細に記載されている6アミノ酸GSGSGSペプチド配列である。
6.3.2.三価三重特異性1×2抗体構造
【0093】
図26に関して、さまざまな三価の実施形態では、三価三重特異性結合分子は、第1、第2、第3、第4および第6のポリペプチド鎖を含み、
(a)第1のポリペプチド鎖はドメインA、ドメインB、ドメインDおよびドメインEを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、A−B−D−Eの配向で配置され、ドメインAは可変領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインBは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインDはCH2アミノ酸配列を有し、ドメインEは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し;
(b)第2のポリペプチド鎖はドメインFおよびドメインGを含み、
ここでドメインは、N末端からC末端へ、F−Gの配向で配置され、ドメインFは可変領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインGは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し;
(c)第3のポリペプチド鎖はドメインH、ドメインI、ドメインJ、ドメインK、ドメインRおよびドメインSを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、R−S−H−I−J−Kの配向で配置され、ドメインHは可変領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインIは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインJはCH2アミノ酸配列を有し、ドメインKは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインRは可変領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインSは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し;
(d)第4のポリペプチド鎖はドメインLおよびドメインMを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、L−Mの配向で配置され、ドメインLは可変領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインMは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し;
(e)第6のポリペプチド鎖はドメインTおよびドメインUを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、T−Uの配向で配置され、ドメインTは可変領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインUは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し;
(f)第1および第2のポリペプチドは、AドメインとFドメインとの間の相互作用およびBドメインとGドメインとの間の相互作用を介して会合しており;
(g)第3および第4のポリペプチドは、HドメインとLドメインとの間の相互作用およびIドメインとMドメインとの間の相互作用を介して会合しており;
(h)第1および第6のポリペプチドは、RドメインとTドメインとの間の相互作用およびSドメインとUドメインとの間の相互作用を介して会合して、結合分子を形成し;
(i)第1および第3のポリペプチドは、DドメインとJドメインとの間の相互作用およびEドメインとKドメインとの間の相互作用を介して会合して、結合分子を形成し;
(j)ドメインR、ドメインAおよびドメインHのアミノ酸配列が異なり;
(k)第2および第6のポリペプチド鎖が同一であり、第4のポリペプチド鎖が異なり、または第4および第6のポリペプチド鎖が同一であり、第2のポリペプチド鎖が異なり;
(l)AドメインとFドメインとの間の相互作用は、第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成し、HドメインとLドメインとの間の相互作用は、第2の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成し、RドメインとTドメインとの間の相互作用は、第3の抗原に特異的な第3の抗原結合部位を形成する。
【0094】
図2に図示するように、これらの三価の実施形態は「1×2」三価構築物と称される。
【0095】
図54に関して、ある特定の実施形態では、第4および第6のポリペプチド鎖は同一であり、第4のポリペプチド鎖は第2および第6のポリペプチド鎖と異なり、ドメインSおよびドメインIのアミノ酸配列は同一であり、ドメインBのアミノ酸配列はドメインSおよびドメインIと異なる。
【0096】
図55に関して、ある特定の実施形態では、第2および第6のポリペプチド鎖は同一であり、第4のポリペプチド鎖は第2および第6のポリペプチド鎖と異なり、ドメインSおよびドメインBのアミノ酸配列は同一であり、ドメインIのアミノ酸配列はドメインSおよびドメインBと異なる。
【0097】
各種の実施形態では、ドメインOは、ペプチドリンカーを介してドメインAに連結されている。各種の実施形態では、ドメインSは、ペプチドリンカーを介してドメインHに連結されている。好ましい実施形態では、ドメインOをドメインAに連結するか、またはドメインSをドメインHに連結するペプチドリンカーは、6.3.20.6項により詳細に記載するように、6アミノ酸のGSGSGSペプチド配列である。
6.3.3.ドメインA(可変領域)
【0098】
三価三重特異性結合分子において、ドメインAは可変領域ドメインアミノ酸配列を有する。本明細書に記載されている可変領域ドメインアミノ酸配列は、VLおよびVH抗体ドメイン配列を含む抗体の可変領域ドメインアミノ酸配列である。VLおよびVH配列は、それぞれセクション6.3.3.1および6.3.3.4でさらになお詳細に後述される。好まれる実施形態では、ドメインAはVL抗体ドメイン配列を有し、ドメインFはVH抗体ドメイン配列を有する。
6.3.3.1.VL領域
【0099】
本明細書に記載の三価三重特異性結合分子において有用なVLアミノ酸配列は、抗体軽鎖可変ドメイン配列である。本明細書に記載の天然抗体および抗体構築物の両方における典型的な配列では、特異的VLアミノ酸配列が、特異的VHアミノ酸配列と会合して、抗原結合部位を形成する。様々な実施形態では、VLアミノ酸配列は、下記セクション6.3.3.2および6.3.3.3においてさらに詳細に記載されているように、ヒト配列、合成配列、または、ヒト配列、非ヒト哺乳動物配列、哺乳動物配列および/もしくは合成配列の組合せを含む、哺乳動物配列である。
【0100】
様々な実施形態では、VLアミノ酸配列は、天然に存在する配列の変異配列である。ある特定の実施形態では、VLアミノ酸配列は、ラムダ(λ)軽鎖可変ドメイン配列である。ある特定の実施形態では、VLアミノ酸配列は、カッパ(κ)軽鎖可変ドメイン配列である。好ましい実施形態では、VLアミノ酸配列は、カッパ(κ)軽鎖可変ドメイン配列である。
【0101】
本明細書に記載の三価三重特異性結合分子では、ドメインAのC末端は、ドメインBのN末端に連結されている。ある特定の実施形態では、ドメインAは、下記セクション6.3.20.1および実施例6においてさらに詳細に記載されているように、ドメインAとドメインBとの間のジャンクションにおいてそのC末端で変異しているVLアミノ酸配列を有する。
6.3.3.2.相補性決定領域
【0102】
VLアミノ酸配列は、「相補性決定領域」(CDR)と称される高度に可変性の配列、典型的に3つのCDR(CDR1、CD2、およびCDR3)を含む。様々な実施形態では、CDRは、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ラクダ、ロバ、ヤギおよびヒト配列を含むがこれらに限定されない哺乳動物配列である。好ましい実施形態では、CDRは、ヒト配列である。様々な実施形態では、CDRは、天然に存在する配列である。様々な実施形態では、CDRは、特定の抗原またはエピトープに対して抗原結合部位の結合親和性を変化させるように変異された天然に存在する配列である。ある特定の実施形態では、天然に存在するCDRは、親和性成熟および体細胞超変異を介してin vivo宿主で変異されている。ある特定の実施形態では、CDRは、PCR突然変異誘発および化学的突然変異誘発を含むがこれらに限定されない方法を介してin vitroで変異されている。様々な実施形態では、CDRは、ランダム配列CDRライブラリおよび合理的に設計されたCDRライブラリから得られたCDRを含むがこれらに限定されない、合成配列である。
6.3.3.3.フレームワーク領域およびCDRグラフト化
【0103】
VLアミノ酸配列は、「フレームワーク領域」(FR)配列を含む。FRは、一般的に、散在されたCDRの足場として作用する保存配列領域(セクション6.3.3.2.参照)であり、典型的には、FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4配置(N末端からC末端へ)である。様々な実施形態では、FRは、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ラクダ、ロバ、ヤギおよびヒト配列を含むがこれらに限定されない哺乳動物配列である。好ましい実施形態では、FRは、ヒト配列である。様々な実施形態では、FRは、天然に存在する配列である。様々な実施形態では、FRは、合理的に設計された配列を含むがそれに限定されない、合成配列である。
【0104】
様々な実施形態では、FRおよびCDRは両方が、同じ天然に存在する可変ドメイン配列に由来する。様々な実施形態では、FRおよびCDRは、異なる可変ドメイン配列に由来し、ここでCDRはFR足場にグラフト化され、CDRが特定の抗原に対する特異性を提供している。ある特定の実施形態では、グラフト化されたCDRは全て、同じ天然に存在する可変ドメイン配列に由来する。ある特定の実施形態では、グラフト化されたCDRは、異なる可変ドメイン配列に由来する。ある特定の実施形態では、グラフト化されたCDRは、ランダム配列CDRライブラリおよび合理的に設計されたCDRライブラリから得られたCDRを含むがこれらに限定されない、合成配列である。ある特定の実施形態では、グラフト化されたCDRおよびFRは、同じ種に由来する。ある特定の実施形態では、グラフト化されたCDRおよびFRは、異なる種に由来する。好ましいグラフト化されたCDR実施形態では、抗体は「ヒト化」されており、ここで、グラフト化されたCDRは、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ラクダ、ロバおよびヤギ配列を含むがこれらに限定されない非ヒト哺乳動物配列であり、FRはヒト配列である。ヒト化抗体は、教示する全てについてその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,407,213号においてより詳細に議論されている。様々な実施形態では、ある種に由来するFRの部分または特定の配列は、別の種のFRの部分または特定の配列を置き換えるために使用される。
6.3.3.4.VH領域
【0105】
本明細書に記載されている三価三重特異性結合分子におけるVHアミノ酸配列は、抗体重鎖可変ドメイン配列である。天然のおよび本明細書に記載されている三価三重特異性結合分子の両方の典型的な抗体配置において、特異的VHアミノ酸配列は、特異的VLアミノ酸配列と会合して、抗原結合部位を形成する。様々な実施形態では、セクション6.3.3.2および6.3.3.3にさらに詳細に上述されている通り、VHアミノ酸配列は、ヒト配列を含む哺乳動物配列、合成配列、または非ヒト哺乳動物、哺乳動物および/または合成配列の組合せである。様々な実施形態では、VHアミノ酸配列は、天然に存在する配列の変異した配列である。
6.3.4.ドメインB(定常領域)
【0106】
三価三重特異性結合分子において、ドメインBは定常領域ドメイン配列を有する。本明細書に記載されている定常領域ドメインアミノ酸配列は、抗体の定常領域ドメインの配列である。
【0107】
様々な実施形態では、定常領域配列は、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ラクダ、ロバ、ヤギおよびヒト配列を含むがこれらに限定されない哺乳動物配列である。好ましい実施形態では、定常領域配列は、ヒト配列である。ある特定の実施形態では、定常領域配列は、抗体軽鎖由来である。特定の実施形態では、定常領域配列は、ラムダまたはカッパ軽鎖由来である。ある特定の実施形態では、定常領域配列は、抗体重鎖由来である。特定の実施形態では、定常領域配列は、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはIgMアイソタイプである抗体重鎖配列である。特定の実施形態では、定常領域配列は、IgGアイソタイプに由来する。好まれる実施形態では、定常領域配列は、IgG1アイソタイプに由来する。好まれる特定の実施形態では、定常領域配列は、CH3配列である。CH3配列は、セクション6.3.4.1でさらになお詳細に後述される。他の好まれる実施形態では、定常領域配列は、オルソロガスCH2配列である。オルソロガスCH2配列は、セクション6.3.4.2でさらになお詳細に後述される。
【0108】
特定の実施形態では、定常領域配列は、1つまたは複数の直交型変異を含むように変異された。好まれる実施形態では、ドメインBは、セクション6.3.16.2でさらになお詳細に後述される通り、ノブ・ホール(knob−hole)(同義的に「ノブ・イン・ホール」、「KIH」)直交型変異、およびセクション6.3.16.1にさらになお詳細に後述されている通り、直交型変異を含有するCH3ドメインと操作されたジスルフィド架橋を形成するS354CまたはY349C変異のいずれかを含むCH3配列である定常領域配列を有する。一部の好まれる実施形態では、ノブ・ホール直交型変異は、T366W変異である。
6.3.4.1.CH3領域
【0109】
CH3アミノ酸配列は、本明細書に記載されるように、抗体重鎖のC末端ドメインの配列である。
【0110】
様々な実施形態では、CH3配列は、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ラクダ、ロバ、ヤギおよびヒト配列を含むがこれらに限定されない哺乳動物配列である。好ましい実施形態では、CH3配列は、ヒト配列である。ある特定の実施形態では、CH3配列は、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgM、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4アイソタイプに由来し、またはIgEもしくはIgMアイソタイプ由来のCH4配列である。特定の実施形態では、CH3配列は、IgGアイソタイプに由来する。好ましい実施形態では、CH3配列は、IgG1アイソタイプに由来する。一部の実施形態では、CH3配列は、IgAアイソタイプに由来する。
【0111】
ある特定の実施形態では、CH3配列は、内在性配列である。特定の実施形態では、CH3配列は、UniProt受託番号P01857アミノ酸224−330である。様々な実施形態では、CH3配列は、内在性CH3配列のセグメントである。特定の実施形態では、CH3配列は、N末端アミノ酸G224およびQ225を欠く内在性CH3配列を有する。特定の実施形態では、CH3配列は、C末端アミノ酸P328、G329およびK330を欠く内在性CH3配列を有する。特定の実施形態では、CH3配列は、N末端アミノ酸G224およびQ225ならびにC末端アミノ酸P328、G329およびK330を欠く内在性CH3配列を有する。好ましい実施形態では、三価三重特異性結合分子は、CH3配列を有する複数のドメインを有し、ここで、CH3配列は、全長内在性CH3配列、ならびにN末端アミノ酸、C末端アミノ酸、またはその両方を欠くCH3配列の両方を指すことができる。
【0112】
ある特定の実施形態では、CH3配列は、1つまたは複数の変異を有する内在性配列である。特定の実施形態では、変異は、セクション6.3.16.1−6.3.16.4においてさらに詳細に記載されているように、内在性CH3配列に導入されて特定のCH3配列の特定の対形成をガイドする、1つまたは複数の直交型変異である。
【0113】
ある特定の実施形態では、教示する全てについて参照により本明細書に組み込まれるStickler et al. (Genes Immun. 2011 Apr; 12(3): 213−221)においてより詳細に記載されているように、CH3配列は、本明細書でイソアロタイプ変異と称される、あるアロタイプの特定のアミノ酸を別のアロタイプのアミノ酸に置き換えることによって、抗体の免疫原性を低減するように操作されている。特定の実施形態では、G1m1アロタイプの特定のアミノ酸が置き換えられている。好ましい実施形態では、CH3配列において、イソアロタイプ変異D356EおよびL358Mがなされている。
【0114】
好ましい実施形態では、ドメインBは、以下の変異変化P343V;Y349C;およびトリペプチド挿入445P、446G、447Kを有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有する。他の好ましい実施形態では、ドメインBは、以下の変異変化:T366K;およびトリペプチド挿入445K、446S、447Cを有するヒトIgG1 CH3配列を有する。さらなる他の好ましい実施形態では、ドメインBは、以下の変異変化:Y349Cおよびトリペプチド挿入445P、446G、447Kを有するヒトIgG1 CH3配列を有する。
【0115】
ある特定の実施形態では、ドメインBは、それらと異なって、内在性CH3配列に組み込まれた447C変異を有するヒトIgG1 CH3配列を有する。
【0116】
本明細書に記載される三価三重特異性結合分子では、ドメインBのN末端が、ドメインAのC末端に連結されている。ある特定の実施形態では、ドメインBは、下記セクション6.3.20.1および実施例6においてさらに詳細に記載されているように、ドメインAとドメインBとの間のジャンクションにおいてそのN末端で変異しているCH3アミノ酸配列を有する。
【0117】
三価三重特異性結合分子では、ドメインBのC末端は、ドメインDのN末端に連結されている。ある特定の実施形態では、ドメインBは、下記セクション6.3.20.3においてさらに詳細に記載されているように、ドメインBとドメインDとの間のジャンクションにC末端で伸長されているCH3アミノ酸配列を有する。
【0118】
一部の実施形態では、ドメインBは、ヒトIgA CH3配列を含む。IgA CH3アイソタイプ置換は、6.3.16.4項にさらに詳細に記載する。例示的なヒトIgA CH3アミノ酸配列は、TFRPEVHLLPPPSEELALNELVTLTCLARGFSPKDVLVRWLQGSQELPREKYLTWASRQEPSQGTTTFAVTSILRVAAEDWKKGDTFSCMVGHEALPLAFTQKTIDRL(配列番号84)である。
6.3.4.2.オルソロガスなCH2領域
【0119】
本明細書に記載されているCH2アミノ酸配列は、N末端からC末端へと参照した場合の、抗体重鎖の第3のドメインの配列である。CH2アミノ酸配列は、全般に、セクション6.3.5により詳細に後述される。一連の実施形態では、三価三重特異性結合分子は、CH2配列を有するCH2ドメインの2つ以上の対セットを有し、第1のセットは、第1のアイソタイプ由来のCH2アミノ酸配列、および別のアイソタイプ由来のCH2アミノ酸配列の1つまたは複数のオルソロガスセットを有する。本明細書に記載されているオルソロガスCH2アミノ酸配列は、共有されるアイソタイプ由来のCH2アミノ酸配列と相互作用することができるが、三価三重特異性結合分子に存在する別のアイソタイプ由来のCH2アミノ酸配列とは有意に相互作用しない。特定の実施形態では、CH2アミノ酸配列の全セットが、同じ種に由来する。好まれる実施形態では、CH2アミノ酸配列の全セットが、ヒトCH2アミノ酸配列である。他の実施形態では、CH2アミノ酸配列のセットは、異なる種に由来する。特定の実施形態では、CH2アミノ酸配列の第1のセットは、三価三重特異性結合分子における他の非CH2ドメインと同じアイソタイプに由来する。特定の実施形態では、第1のセットは、IgGアイソタイプ由来のCH2アミノ酸配列を有し、1つまたは複数のオルソロガスセットは、IgMまたはIgEアイソタイプ由来のCH2アミノ酸配列を有する。ある特定の実施形態では、CH2アミノ酸配列のセットのうち1つまたは複数は、内在性CH2配列である。他の実施形態では、CH2アミノ酸配列のセットのうち1つまたは複数は、1つまたは複数の変異を有する内在性CH2配列である。特定の実施形態では、1つまたは複数の変異は、直交型ノブ・ホール変異、直交型電荷対変異または直交型疎水性変異である。三価三重特異性結合分子に有用なオルソロガスCH2アミノ酸配列は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際PCT出願WO2017/011342およびWO2017/106462により詳細に記載されている。
6.3.5.ドメインD(定常領域)
【0120】
本明細書に記載されている三価三重特異性結合分子において、ドメインDは、定常領域アミノ酸配列を有する。定常領域アミノ酸配列は、セクション6.3.4により詳細に記載されている。
【0121】
好まれる一連の実施形態では、ドメインDは、CH2アミノ酸配列を有する。CH2アミノ酸配列は、本明細書に記載されるように、N末端からC末端へ参照して天然抗体重鎖の第3のドメインのCH2アミノ酸配列である。様々な実施形態では、CH2配列は、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ラクダ、ロバ、ヤギおよびヒト配列を含むがこれらに限定されない哺乳動物配列である。好ましい実施形態では、CH2配列は、ヒト配列である。ある特定の実施形態では、CH2配列は、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはIgMアイソタイプに由来する。好ましい実施形態では、CH2配列は、IgG1アイソタイプに由来する。
【0122】
ある特定の実施形態では、CH2配列は、内在性配列である。特定の実施形態では、配列は、UniProt受託番号P01857アミノ酸111−223である。好ましい実施形態では、CH2配列は、下記セクション6.3.20.3においてより詳細が議論されているように、N末端可変ドメイン−定常ドメインセグメントを、CH2ドメインへ連結するN末端ヒンジ領域ペプチドを有する。
【0123】
三価三重特異性結合分子では、ドメインDのN末端が、ドメインBのC末端に連結されている。ある特定の実施形態では、ドメインBは、下記セクション6.3.20.3においてさらに詳細に記載されているように、ドメインDとドメインBとの間のジャンクションにおいてC末端で伸長されているCH3アミノ酸配列を有する。
6.3.6.ドメインE(定常領域)
【0124】
三価三重特異性結合分子において、ドメインEは、定常領域ドメインアミノ酸配列を有する。定常領域アミノ酸配列は、セクション6.3.4により詳細に記載されている。
【0125】
ある特定の実施形態では、定常領域配列は、CH3配列である。CH3配列は、上記セクション6.3.4.1においてさらに詳細に記載されている。特定の実施形態では、定常領域配列は、1つまたは複数の直交型変異を含むように変異されている。好ましい実施形態では、ドメインEは、下記セクション6.3.16.2においてより詳細に記載されているように、ノブ−ホール(同義的に「ノブ・イン・ホール」、「KIH」)直交型変異、ならびに下記セクション6.3.16.1においてより詳細に記載されているように、直交型変異を含有するCH3ドメインと操作されたジスルフィド架橋を形成するS354CまたはY349C変異のいずれかを含むCH3配列である定常領域配列を有する。一部の好ましい実施形態では、ノブ−ホール直交型変異は、T366W変異である。
【0126】
ある特定の実施形態では、定常領域ドメイン配列は、CH1配列である。特定の実施形態では、ドメインEのCH1アミノ酸配列は、三価三重特異性結合分子における唯一のCH1アミノ酸配列である。ある特定の実施形態では、CH1ドメインのN末端は、下記で6.3.20.5においてさらに詳細に記載されているように、CH2ドメインのC末端に連結されている。ある特定の実施形態では、定常領域配列は、CL配列である。ある特定の実施形態では、下記で6.3.20.5においてさらに詳細に記載されているように、CLドメインのN末端は、CH2ドメインのC末端に連結されている。CH1およびCL配列は、セクション6.3.10.1にさらに詳細に記載されている。
6.3.7.ドメインF(可変領域)
【0127】
三価三重特異性結合分子において、ドメインFは、可変領域ドメインアミノ酸配列を有する。セクション6.3.1にさらになお詳細に記述されている可変領域ドメインアミノ酸配列は、VLおよびVH抗体ドメイン配列を含む抗体の可変領域ドメインアミノ酸配列である。VLおよびVH配列は、それぞれセクション6.3.3.1および6.3.3.4にさらになお詳細に上述されている。好まれる実施形態では、ドメインFは、VH抗体ドメイン配列を有する。
6.3.8.ドメインG(定常領域)
【0128】
三価三重特異性結合分子において、ドメインGは、定常領域アミノ酸配列を有する。定常領域アミノ酸配列は、セクション6.3.4により詳細に記載されている。
【0129】
好まれる特定の実施形態では、定常領域配列は、CH3配列である。CH3配列は、セクション6.3.4.1でさらになお詳細に後述される。他の好まれる実施形態では、定常領域配列は、オルソロガスCH2配列である。オルソロガスCH2配列は、セクション6.3.4.2でさらになお詳細に後述される。
【0130】
ある特定の好ましい実施形態では、ドメインGは、以下の変異変化:S354C;およびトリペプチド挿入445P、446G、447Kを有するヒトIgG1 CH3配列を有する。一部の好ましい実施形態では、ドメインGは、以下の変異変化:S354C;および445P、446G、447Kトリペプチド挿入を有するヒトIgG1 CH3配列を有する。一部の好ましい実施形態では、ドメインGは、以下の変化:L351D;および445G、446E、447Cトリペプチド挿入を有するヒトIgG1 CH3配列を有する。
6.3.9.ドメインH(可変領域)
【0131】
三価三重特異性結合分子において、ドメインLは可変領域ドメインアミノ酸配列を有する。セクション6.3.1にさらになお詳細に記述されている可変領域ドメインアミノ酸配列は、VLおよびVH抗体ドメイン配列を含む抗体の可変領域ドメインアミノ酸配列である。VLおよびVH配列は、それぞれセクション6.3.3.1および6.3.3.4にさらになお詳細に上述されている。好まれる実施形態では、ドメインHはVL抗体ドメイン配列を有する。
6.3.10.ドメインI(定常領域)
【0132】
三価三重特異性結合分子において、ドメインIは定常領域ドメインアミノ酸配列を有する。定常領域ドメインアミノ酸配列は、セクション6.3.4にさらになお詳細に上述されている。三価三重特異性結合分子の一連の好まれる実施形態では、ドメインIはCLアミノ酸配列を有する。別の一連の実施形態では、ドメインIはCH1アミノ酸配列を有する。CH1およびCLアミノ酸配列は、セクション6.3.10.1にさらに詳細に記載されている。
6.3.10.1.CH1およびCL領域
【0133】
CH1アミノ酸配列は、本明細書に記載される場合、N末端からC末端へ参照して抗体重鎖の第2のドメインの配列である。ある特定の実施形態では、CH1配列は、内在性配列である。様々な実施形態では、CH1配列は、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ラクダ、ロバ、ヤギおよびヒト配列を含むがこれらに限定されない哺乳動物配列である。好ましい実施形態では、CH1配列は、ヒト配列である。ある特定の実施形態では、CH1配列は、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはIgMアイソタイプに由来する。好ましい実施形態では、CH1配列は、IgG1アイソタイプに由来する。好ましい実施形態では、CH1配列は、UniProt受託番号P01857アミノ酸1−98である。
【0134】
本明細書に記載される三価三重特異性結合分子において有用なCLアミノ酸配列は、抗体軽鎖定常ドメイン配列である。ある特定の実施形態では、CL配列は、内在性配列である。様々な実施形態では、CL配列は、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ラクダ、ロバ、ヤギおよびヒト配列を含むがこれらに限定されない哺乳動物配列である。好ましい実施形態では、CL配列は、ヒト配列である。
【0135】
ある特定の実施形態では、CLアミノ酸配列は、ラムダ(λ)軽鎖定常ドメイン配列である。特定の実施形態では、CLアミノ酸配列は、ヒトラムダ軽鎖定常ドメイン配列である。好ましい実施形態では、ラムダ(λ)軽鎖配列は、UniProt受託番号P0CG04である。
【0136】
ある特定の実施形態では、CLアミノ酸配列は、カッパ(κ)軽鎖定常ドメイン配列である。好ましい実施形態では、CLアミノ酸配列は、ヒトカッパ(κ)軽鎖定常ドメイン配列である。好ましい実施形態では、カッパ軽鎖配列は、UniProt受託番号P01834である。
【0137】
ある特定の実施形態では、CH1配列およびCL配列は両者共に内在性配列である。ある特定の実施形態では、下のセクション6.3.10.2にさらになお詳細に記述される通り、CH1配列およびCL配列は別個に、それぞれ直交型修飾を内在性CH1およびCL配列に含む。CH1配列における直交型変異が、CH1結合試薬とCH1ドメインとの間の特異的結合相互作用を排除しないことを理解されたい。しかし、一部の実施形態では、直交型変異は、特異的結合相互作用を排除しないとしても、低減させる場合がある。CH1配列またはその部分を有するドメインが、CH1配列またはその部分を有するドメインと会合することができるように、CH1およびCL配列は、内在性または修飾配列のいずれかの、その部分となることもできる。さらに、上述のCH1配列の一部分を有する三価三重特異性結合分子は、CH1結合試薬に結合され得る。
【0138】
理論に制約されることは望まないが、CH1ドメインは、また、そのフォールディングが典型的にIgGの分泌における律速ステップであるという点において、特有である(Feige et al. Mol Cell. 2009 Jun 12;34(5):569−79;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。よって、CH1を含むポリペプチド鎖の律速成分に基づく三価三重特異性結合分子の精製は、不完全鎖から完全複合体を精製する手段、例えば、1つまたは複数の非CH1を含む鎖のみを有する複合体からの律速CH1ドメインを有する複合体の精製を提供することができる。
【0139】
記述された通り、CH1律速発現は、一部の態様では利益となる場合があるが、CH1は、完全三重特異性三価結合分子の全体的な発現を限定する可能性がある。よって、ある特定の実施形態では、CH1配列(複数可)を含むポリペプチド鎖の発現は、完全複合体を形成する三価三重特異性結合分子の効率を改善するように調整される。説明目的の例では、CH1配列(複数可)を含むポリペプチド鎖を発現するように構築されたプラスミドベクターの比は、他のポリペプチド鎖を発現するように構築されたプラスミドベクターと比べて増加させることができる。別の説明目的の例では、CL配列(複数可)を含むポリペプチド鎖と比較した場合、CH1配列(複数可)を含むポリペプチド鎖は、2つのポリペプチド鎖のうち小さい方となることができる。別の特定の実施形態では、CH1配列(複数可)を含むポリペプチド鎖の発現は、いずれのポリペプチド鎖がCH1配列(複数可)を有するか制御することにより調整することができる。例えば、CH1ドメインが、4ドメインポリペプチド鎖(例えば、本明細書に記載されている第3のポリペプチド鎖)におけるCH1配列のネイティブ位置の代わりに、2ドメインポリペプチド鎖(例えば、本明細書に記載されている第4のポリペプチド鎖)に存在するように、三価三重特異性結合分子を操作することは、CH1配列(複数可)を含むポリペプチド鎖の発現の制御に使用することができる。しかし、他の態様では、他の鎖と比較して高すぎるCH1含有鎖の相対的発現レベルは、CH1鎖を有するが他の鎖のそれぞれがない不完全複合体をもたらし得る。よって、ある特定の実施形態では、CH1配列(複数可)を含むポリペプチド鎖の発現は、CH1含有鎖がない不完全複合体の形成を低減させ、かつ、CH1含有鎖があるが完全複合体に存在する他の鎖がない不完全複合体の形成を低減させるように調整される。
6.3.10.2.CH1およびCL直交型修飾
【0140】
ある特定の実施形態では、CH1配列およびCL配列は別個に、それぞれ直交型修飾を内在性CH1およびCL配列に含む。
【0141】
本明細書に記載の「直交型修飾」または同意語の「直交型変異」は、直交型修飾が不存在の第1および第2のドメインの結合と比較して、相補的な直交型修飾を有する第2のドメインに対する直交型修飾を有する第1のドメインの結合の親和性を変える、抗体ドメインのアミノ酸配列における1つまたは複数の操作された変異である。一部の実施形態では、直交型修飾は、直交型修飾が不存在の第1および第2のドメインの結合と比較して、相補的な直交型修飾を有する第2のドメインに対する直交型修飾を有する第1のドメインの結合の親和性を減少させる。好ましい実施形態では、直交型修飾は、直交型修飾が不存在の第1および第2のドメインの結合と比較して、相補的な直交型修飾を有する第2のドメインに対する直交型修飾を有する第1のドメインの結合の親和性を増加させる。ある特定の好ましい実施形態では、直交型修飾は、相補的な直交型修飾を欠くドメインに対する直交型修飾を有するドメインの親和性を減少させる。
【0142】
ある特定の実施形態では、直交型修飾は、内在性抗体ドメイン配列における変異である。各種の実施形態では、直交型修飾は、アミノ酸の付加または欠失を含むが、これらに限定されない、内在性抗体ドメイン配列のN末端またはC末端の修飾である。特定の実施形態では、直交型修飾には、下記でさらに詳細に記載する、操作されたジスルフィド架橋、ノブ・イン・ホール変異および電荷対変異を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、直交型修飾には、限定されないが、操作されたジスルフィド架橋、ノブ・イン・ホール変異および電荷対変異から選択される直交型修飾の組合せを含む。特定の実施形態では、直交型修飾は、6.3.4.1項においてさらに詳細に記載するイソアロタイプ変異などの免疫原性を低減するアミノ酸置換と組み合わせることができる。
【0143】
ある特定の実施形態では、CH1/CL対のCH1配列およびCL配列は、それぞれ別々に直交型修飾を内在性CH1およびCL配列に含む。他の実施形態では、CH1/CL対の1つの配列は、少なくとも1つの修飾を含むが、CH1/CL対の他の配列は、それぞれの直交のアミノ酸位置に修飾を含まない。
【0144】
CH1/CL直交型修飾は、CH1ドメインにおける修飾残基と、対応するCLドメインにおける修飾残基または未修飾残基との間の相互作用を介してCH1/CLドメインの対形成に影響を与え得る。
【0145】
CH1配列における直交型変異がCH1結合試薬とCH1ドメインとの間の特異的な結合相互作用を排除しないことが理解されるべきである。しかしながら、一部の実施形態では、直交型変異は、特異的な結合相互作用を低減させるが、除外しない場合がある。CH1およびCL配列はまた、CH1配列を有するドメインまたはその部分がCH1配列またはその部分を有するドメインと会合することができるように、内在性配列または修飾配列のいずれかのその部分であり得る。さらにまた、本明細書に記載のCH1配列の部分を有する結合分子は、CH1結合試薬によって結合され得る。
例示的なCH1/CL直交型修飾:操作されたジスルフィド架橋
【0146】
CH1/CL直交型修飾の一部の実施形態は、CH1およびCLに、操作されたシステインの間の操作されたジスルフィド架橋を含む。このような操作されたジスルフィド架橋は、修飾CH1を含むポリペプチドと対応する修飾CLを含むポリペプチドとの間の相互作用を安定化し得る。
【0147】
操作されたジスルフィド架橋を含む直交型CH1/CL修飾は、一例として、EUインデックスにより番号付けされる、128、129、138、141、168または171位に操作されたシステインを有するCH1ドメインを含むことができる。操作されたジスルフィド架橋を含むこのような直交型CH1/CL修飾は、一例として、EUインデックスにより番号付けされる、116、118、119、164、162または210位に操作されたシステインを有するCLドメインをさらに含んでいてもよい。
【0148】
例えば、CH1/CL直交型修飾は、それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,053,562号および米国特許第9,527,927号において番号づけされ、より詳細に議論される、CH1配列の138位およびCL配列の116位、CH1配列の128位およびCL配列の119位、またはCH1配列の129位およびCL配列の210位の操作されたシステインから選択され得る。一部の実施形態では、CH1/CL直交型修飾は、EUインデックスによって番号付けされる、CH1配列の141位およびCL配列の118位に操作されたシステインを含む。
【0149】
一部の実施形態では、CH1/CL直交型修飾は、EUインデックスによって番号付けされる、CH1配列の168位およびCL配列の164位に操作されたシステインを含む。一部の実施形態では、CH1/CL直交型修飾は、EUインデックスによって番号付けされる、CH1配列の128位およびCL配列の118位に操作されたシステインを含む。一部の実施形態では、CH1/CL直交型修飾は、EUインデックスによって番号付けされる、CH1配列の171位およびCL配列の162位に操作されたシステインを含む。一部の実施形態では、CL配列はCL−ラムダ配列である。好ましい実施形態では、CL配列はCL−カッパ配列である。一部の実施形態では、操作されたシステインは、EUインデックスによって番号付けされる、CH1配列の128位およびCLカッパ配列の118位にある。
【0150】
下記の表8は、EUインデックスに従って番号付けされる、CH1とCLとの間の操作されたジスルフィド架橋を含む例示的なCH1/CL直交型修飾を提供する。
【表8】
【0151】
一連の好ましい実施形態では、非内在性(操作された)システインアミノ酸を提供する変異は、Euインデックスによって番号付けされる、CL配列におけるF118C変異と、CH1配列における対応するA141C、またはCL配列におけるF118C変異と、CH1配列における対応するL128C、CL配列におけるT164C変異と、CH1配列における対応するH168C変異、またはCL配列におけるS162C変異と、CH1配列における対応するP171C変異である。
CH1/CL直交型変異:電荷対変異
【0152】
各種の実施形態では、CL配列およびCH1配列における直交型修飾は電荷対変異である。本明細書で使用される場合、電荷対変異は、ドメインが、相補的な電荷対変異なしのドメインとの会合と比べて、相補的な電荷対変異を有する第2のドメインと優先的に会合するように、ドメイン表面における残基の電荷に影響を与えるアミノ酸置換である。ある特定の実施形態では、電荷対変異は、特異的ドメインの間の直交型会合を改善する。電荷対変異は、米国特許第8,592,562号、米国特許第9,248,182号および米国特許第9,358,286号にさらに詳細に記載されており、このそれぞれは、それらが教示するすべてについて、参照により本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態では、電荷対変異は、特異的ドメインの間の安定性を改善する。特定の実施形態では、電荷対変異は、教示する全てについて参照により本明細書に組み込まれるBonisch et al. (Protein Engineering, Design & Selection, 2017, pp.1−12)においてさらに詳細に記載されているように、EuインデックスによってナンバリングされるCL配列におけるF118S、F118AまたはF118V変異と対応するCH1配列におけるA141L、またはCL配列におけるT129R変異と対応するCH1配列におけるK147Dである。
【0153】
一部の場合では、CH1/CL電荷対変異は、Euインデックスによって番号付けされる、CL配列におけるN138K変異と、CH1配列における対応するG166D、またはCL配列におけるN138D変異と、CH1配列における対応するG166Kである。一部の実施形態では、電荷対変異は、CH1配列におけるP127E変異と、対応するCl配列における対応するE123K変異である。一部の実施形態では、電荷対変異は、CH1配列におけるP127K変異と、対応するCL配列における対応するE123(変異していない)である。
【0154】
下記の表9は、例示的なCH1/CL直交電荷対修飾を提供する。
【表9】
6.3.10.3.CH1/CL直交型修飾の組合せ
【0155】
ある特定の実施形態では、単一のCH1/CL対のCH1およびCLドメインは、別々に2つまたはそれよりも多くのそれぞれの直交型修飾を内在性CH1およびCL配列に含有する。例えば、CH1およびCL配列は、第1の直交型修飾および第2の直交型修飾を内在性CH1およびCL配列に含有していてもよい。内在性CH1およびCL配列における2つまたはそれよりも多くのそれぞれの直交型修飾は、本明細書に記載のCH1/CL直交型修飾のいずれかから選択することができる。
【0156】
一部の実施形態では、第1の直交型修飾は直交型電荷対変異であり、第2の直交型修飾は直交型の操作されたジスルフィド架橋である。一部の実施形態では、第1の直交型修飾は、表9に記載の直交型電荷対変異であり、追加の直交型修飾は、それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,053,562号および米国特許第9,527,927号において番号付けされ、より詳細に議論される、CH1配列の138位およびCL配列の116位、CH1配列の128位およびCL配列の119位、またはCH1配列の129位およびCL配列の210位の操作されたシステインから選択される操作されたジスルフィド架橋を含む。一部の実施形態では、第1の直交型修飾は、表9に記載の直交型電荷対変異であり、追加の直交型修飾は、表8に記載の操作されたジスルフィド架橋を含む。一部の実施形態では、第1の直交型修飾は、CH1配列におけるL128C変異およびCL配列におけるF118C変異を含み、第2の直交型修飾は、同じCH1配列における残基166の修飾および同じCL配列における残基138の修飾を含む。一部の実施形態では、第1の直交型修飾は、CH1配列におけるL128C変異およびCL配列におけるF118C変異を含み、第2の直交型修飾は、CH1配列におけるG166D変異およびCL配列におけるN138K変異を含む。一部の実施形態では、第1の直交型修飾は、CH1配列におけるL128C変異およびCL配列におけるF118C変異を含み、第2の直交型修飾は、CH1配列におけるG166K変異およびCL配列におけるN138D変異を含む。
6.3.11.ドメインJ(CH2)
【0157】
三価三重特異性結合分子では、ドメインJは、CH2アミノ酸配列を有する。CH2アミノ酸配列は、上記セクション6.3.5でさらに詳細に記載されている。好ましい実施形態では、CH2アミノ酸配列は、下記セクション6.3.20.4においてより詳細に記載されているように、ドメインJをドメインIへ連結するN末端ヒンジ領域を有する。
【0158】
三価三重特異性結合分子では、ドメインJのC末端は、ドメインKのN末端に連結されている。特定の実施形態では、ドメインJは、下記セクション6.3.20.5においてさらに詳細に記載されているように、CH1アミノ酸配列またはCLアミノ酸配列を有するドメインKのN末端に連結されている。
6.3.12.ドメインK(定常領域)
【0159】
三価三重特異性結合分子では、ドメインKは、定常領域ドメインアミノ酸配列を有する。定常領域ドメインアミノ酸配列は、上記セクション6.3.4においてさらに詳細に記載されている。好ましい実施形態では、ドメインKは、下記セクション6.3.16.2でさらに詳細に記載されているノブ−ホール直交型変異;上記6.3.4.1においてより詳細に記載されているイソアロタイプ変異;ならびに下記セクション6.3.16.1においてより詳細に記載されている直交型変異を含有するCH3ドメインと操作されたジスルフィド架橋を形成するS354CまたはY349C変異のいずれかを含むCH3配列である定常領域配列を有する。一部の好ましい実施形態では、イソアロタイプ変異と組み合わされたノブ−ホール直交型変異は、以下の変異変化:D356E、L358M、T366S、L368AおよびY407Vである。
【0160】
ある特定の実施形態では、定常領域ドメイン配列は、CH1配列である。特定の実施形態では、ドメインKのCH1アミノ酸配列は、三価三重特異性結合分子における唯一のCH1アミノ酸配列である。ある特定の実施形態では、6.3.20.5でさらになお詳細に後述される通り、CH1ドメインのN末端は、CH2ドメインのC末端に接続される。ある特定の実施形態では、定常領域配列は、CL配列である。ある特定の実施形態では、6.3.20.5でさらになお詳細に後述される通り、CLドメインのN末端は、CH2ドメインのC末端に接続される。CH1およびCL配列は、セクション6.3.10.1にさらに詳細に記載されている。
6.3.13.ドメインL(可変領域)
【0161】
三価三重特異性結合分子では、ドメインLは、可変領域ドメインアミノ酸配列を有する。セクション6.3.1にさらになお詳細に記述されている可変領域ドメインアミノ酸配列は、VLおよびVH抗体ドメイン配列を含む抗体の可変領域ドメインアミノ酸配列である。VLおよびVH配列は、それぞれ上記セクション6.3.3.1および6.3.3.4においてさらに詳細に記載されている。好ましい実施形態では、ドメインLは、VH抗体ドメイン配列を有する。
6.3.14.ドメインM(定常領域)
【0162】
三価三重特異性結合分子では、ドメインMは、定常領域ドメインアミノ酸配列を有する。定常領域ドメインアミノ酸配列は、上記セクション6.3.4においてさらに詳細に記載されている。三価三重特異性結合分子の一連の好まれる実施形態では、ドメインIはCH1アミノ酸配列を有する。別の一連の好まれる実施形態では、ドメインIはCLアミノ酸配列を有する。CH1およびCLアミノ酸配列は、セクション6.3.10.1にさらに詳細に記載されている。
6.3.15.ドメインAおよびFの対形成
【0163】
三価三重特異性結合分子では、ドメインA VLまたはVHアミノ酸配列およびコグネートドメインF VLまたはVHアミノ酸配列は会合して、抗原結合部位(ABS)を形成する。A:F抗原結合部位(ABS)は、抗原のエピトープに特異的に結合することができる。ABSによる抗原結合は、下記セクション6.3.15.1においてさらに詳細に記載されている。
【0164】
様々な多価の実施形態では、ドメインAおよびF(A:F)によって形成されるABSは、三価三重特異性結合分子内の1つまたは複数の他のABSと配列が同一であり、したがって、三価三重特異性結合分子内の1つまたは複数の他の配列同一ABSと同じ認識特異性を有する。
【0165】
様々な多価の実施形態では、A:F ABSは、三価三重特異性結合分子内の1つまたは複数の他のABSと配列が非同一である。ある特定の実施形態では、A:F ABSは、三価三重特異性結合分子における1つまたは複数の他の配列非同一ABSと異なる認識特異性を有する。特定の実施形態では、A:F ABSは、三価三重特異性結合分子における少なくとも1つの他の配列非同一ABSによって認識される抗原と異なる抗原を認識する。特定の実施形態では、A:F ABSは、三価三重特異性結合分子における少なくとも1つの他の配列非同一ABSによっても認識される抗原の、異なるエピトープを認識する。この実施形態では、ドメインAおよびFによって形成されるABSは、抗原のエピトープを認識し、ここで、三価三重特異性結合分子内の1つまたは複数の他のABSは、同じ抗原を認識するが、同じエピトープは認識しない。
6.3.15.1.ABSによる抗原の結合
【0166】
ABSおよびそのようなABSを含む三価三重特異性結合分子は、ABSが特異的に結合するエピトープ(またはより全体的には抗原)を「認識する」と言われ、エピトープ(またはより全体的には抗原)は、ABSの「認識特異性」または「結合特異性」と言われる。
【0167】
ABSは、特定の親和性で、その特定の抗原またはエピトープに結合すると言われる。本明細書で記載される場合、「親和性」は、1個の分子と別の分子との間の非共有結合性分子間力相互作用の強度を指す。親和性、つまり相互作用の強度は、解離平衡定数(K
D)として表すことができ、ここでK
D値は低いほど、分子間の相互作用が強力であることを示す。抗体構築物のK
D値は、当技術分野で周知の方法によって測定することができ、例えば、バイオレイヤー干渉法(例えば、Octet/FORTEBIO(登録商標))、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、Biacore(登録商標))、および細胞結合アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書の目的のために、親和性は、Octet/FORTEBIO(登録商標)を使用してバイオレイヤー干渉法によって測定された解離平衡定数である。
【0168】
「特異的結合」は、本明細書で使用される場合、ABSとそのコグネート抗原またはエピトープとの間の親和性を指し、ここでK
D値は、10
−6M、10
−7M、10
−8M、10
−9Mまたは10
−10M未満である。
【0169】
図2に概略化されるように、本明細書に記載される結合分子におけるABSの数は、結合分子の「価」を定義する。単一のABSを有する結合分子は「一価」である。複数のABSを有する結合分子は、「多価」であると言われる。2つのABSを有する多価結合分子は「二価」である。3つのABSを有する多価結合分子は「三価」である。4つのABSを有する多価結合分子は「四価」である。
【0170】
様々な多価の実施形態では、複数のABSは全て同じ認識特異性を有する。
図2に概略化されているように、そのような結合分子は、「単一特異性」「多価」結合構築物である。他の多価の実施形態では、複数のABSの少なくとも2つが、異なる認識特異性を有する。そのような結合分子は、多価および「多重特異性」である。ABSが集約的に2つの認識特異性を有する多価の実施形態では、結合分子は「二重特異性」である。ABSが集約的に3つの認識特異性を有する多価の実施形態では、結合分子は「三重特異性」である。
【0171】
ABSが、集約的に、同じ抗原に存在する異なるエピトープに対して複数の認識特異性を有する多価の実施形態では、結合分子は、「多重パラトピック(multiparatopic)」である。ABSが、集約的に、同じ抗原の2つのエピトープを認識する多価の実施形態では、結合分子は、「二重パラトピック(biparatopic)」である。
【0172】
さまざまな多価の実施形態では、本明細書に記載の三価三重特異性結合分子を含む多価の結合分子は、特異的な標的に対する結合分子のアビディティを改善する。本明細書で記載される場合、「アビディティ」は、2つまたはそれより多くの分子、例えば特定の標的に対する多価結合分子間の全体的な相互作用の強度を指し、ここで、アビディティは、複数のABSの親和性によって与えられる相互作用の累積強度である。アビディティは、上記で説明されているような、親和性を決定するために使用される方法と同じ方法によって測定することができる。ある特定の実施形態では、特定の標的に対する三価三重特異性結合分子のアビディティは、相互作用が特異的結合相互作用であり、ここで2つの分子間のアビディティは、10
−6M、10
−7M、10
−8M、10
−9Mまたは10
−10M未満のK
D値を有する。ある特定の実施形態では、特定の標的に対する結合分子のアビディティが、相互作用が特異的結合相互作用であるK
D値であり、ここで個々のABSの1つまたは複数の親和性は、それらの各抗原またはエピトープ自体への特異的結合として十分なK
D値を有していない。ある特定の実施形態では、アビディティは、共通の特定の標的または複合体の別個の抗原、例えば個々の細胞で見出される別個の抗原に対する複数のABSの親和性によって与えられる相互作用の累積強度である。ある特定の実施形態では、アビディティは、共通の個々の抗原の別個のエピトープに対する複数のABSの親和性によって与えられる相互作用の累積強度である。
6.3.16.ドメインBおよびGの対形成
【0173】
本明細書に記載されている三価三重特異性結合分子において、ドメインB定常領域アミノ酸配列およびドメインG定常領域アミノ酸配列が会合する。定常領域ドメインアミノ酸配列は、セクション6.3.4にさらになお詳細に上述されている。
【0174】
一連の好まれる実施形態では、ドメインBおよびドメインGは、CH3アミノ酸配列を有する。CH3配列は、セクション6.3.4.1にさらになお詳細に上述されている。様々な実施形態では、BおよびGドメインのアミノ酸配列は、同一である。これらの実施形態のいくつかでは、配列は、内在性CH3配列である。
【0175】
様々な実施形態では、BおよびGドメインのアミノ酸配列は異なっており、それぞれ別個に直交型修飾を内在性CH3配列に含み、ここでBドメインはGドメインと相互作用し、BドメインとGドメインのどちらも、直交型修飾を欠くCH3ドメインと有意に相互作用しない。
【0176】
本明細書に記載される「直交型修飾」または同義的に「直交型変異」は、直交型修飾を有する第1のドメインの、相補的な直交型修飾を有する第2のドメインに対する結合の親和性を増加させる抗体ドメインのアミノ酸配列における1つまたは複数の操作された変異である。ある特定の実施形態では、直交型修飾は、直交型修飾を有するドメインの、相補的な直交型修飾を欠くドメインに対する親和性を減少させる。ある特定の実施形態では、直交型修飾は、内在性抗体ドメイン配列における変異である。様々な実施形態では、直交型修飾は、アミノ酸の付加または欠失を含むがこれらに限定されない、内在性抗体ドメイン配列のN末端またはC末端の修飾である。特定の実施形態では、直交型修飾には、セクション6.3.16.1−6.3.16.4においてさらに詳細に記載されている操作されたジスルフィド架橋、ノブ・イン・ホール変異、電荷対変異およびアイソタイプ置換が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、直交型修飾には、限定されないが、操作されたジスルフィド架橋、ノブ・イン・ホール変異および電荷対変異から選択される直交型修飾の組合せが含まれる。特定の実施形態では、直交型修飾は、上記セクション6.3.4.1においてさらに詳細に記載されているイソアロタイプ変異などの免疫原性を減少させるアミノ酸置換と組み合わせることができる。
6.3.16.1.直交型操作されたジスルフィド架橋
【0177】
様々な実施形態では、直交型修飾は、第1のドメインと第2のドメインとの間の操作されたジスルフィド架橋を生成する変異を含む。本明細書に記載される場合、「操作されたジスルフィド架橋」は、2つまたはそれより多いドメインが会合するとき非天然ジスルフィド結合を形成するように、2つまたはそれより多いドメインに非内在性システインアミノ酸を提供する変異である。操作されたジスルフィド架橋は、教示する全てについて参照によりその全体が本明細書に組み込まれるMerchant et al. (Nature Biotech (1998) 16:677−681)においてより詳細に記載されている。ある特定の実施形態では、操作されたジスルフィド架橋は、特定のドメイン間の直交型会合を改善させる。特定の実施形態では、操作されたジスルフィド架橋を生成する変異は、第1または第2のCH3ドメインの一方におけるK392C変異、ならびに他方のCH3ドメインにおけるD399Cである。好ましい実施形態では、操作されたジスルフィド架橋を生成する変異は、第1または第2のCH3ドメインの一方におけるS354C変異、ならびに他方のCH3ドメインにおけるY349Cである。別の好ましい実施形態では、操作されたジスルフィド架橋を生成する変異は、KSCトリペプチド配列を組み込んだCH3ドメインのC末端の伸長によって提供される第1および第2のCH3ドメインの両方における447C変異である。
6.3.16.2.直交型ノブ−ホール変異
【0178】
様々な実施形態では、直交型修飾は、ノブ−ホール(同義的にノブ・イン・ホール)変異を含む。本明細書で記載される場合、ノブ−ホール変異は、第1のドメインが、相補的立体変異のないドメインとの会合と比較して、相補的立体変異を有する第2のドメインと優先的に会合するように、第1のドメインの表面の立体的特徴を変化させる変異である。ノブ−ホール変異は、それぞれその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,821,333号および米国特許第8,216,805号において、より詳細に記載されている。様々な実施形態では、ノブ−ホール変異は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるMerchant et al. (Nature Biotech (1998) 16:677−681))においてさらに詳細に記載されているように、操作されたジスルフィド架橋と組み合わされる。様々な実施形態では、ノブ−ホール変異、イソアロタイプ変異、および操作されたジスルフィド変異が組み合わされる。
【0179】
ある特定の実施形態では、ノブ・イン・ホール変異は、第1のドメインにおけるT366Y変異、ならびに第2のドメインにおけるY407T変異である。ある特定の実施形態では、ノブ・イン・ホール変異は、第1のドメインにおけるF405A、ならびに第2のドメインにおけるT394Wである。ある特定の実施形態では、ノブ・イン・ホール変異は、第1のドメインにおけるT366Y変異およびF405Aであり、第2のドメインにおけるT394WおよびY407Tである。ある特定の実施形態では、ノブ・イン・ホール変異は、第1のドメインにおけるT366W変異、ならびに第2のドメインにおけるY407Aである。ある特定の実施形態では、組み合わされたノブ・イン・ホール変異および操作されたジスルフィド変異は、第1のドメインにおけるS354CおよびT366W変異、ならびに第2のドメインにおけるY349C、T366S、L368AおよびY407V変異である。好ましい実施形態では、組み合わされたノブ・イン・ホール変異、イソアロタイプ変異、および操作されたジスルフィド変異は、第1のドメインにおけるS354CおよびT366W変異、ならびに第2のドメインにおけるY349C、D356E、L358M、T366S、L368AおよびY407V変異である。
6.3.16.3.直交型電荷対変異
【0180】
様々な実施形態では、直交型修飾は、電荷対変異である。本明細書で使用される場合、電荷対変異は、ドメインが、相補的電荷対変異のないドメインとの会合と比較して、相補的電荷対変異を有する第2のドメインと優先的に会合するように、ドメインの表面のアミノ酸の電荷に影響を与える変異である。ある特定の実施形態では、電荷対変異は、特定のドメイン間の直交型会合を改善させる。電荷対変異は、それぞれ教示する全てについて参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,592,562号、米国特許第9,248,182号、および米国特許第9,358,286号においてより詳細に記載されている。ある特定の実施形態では、電荷対変異は、特定のドメイン間の安定性を改善させる。好ましい実施形態では、電荷対変異は、第1のドメインにおけるT366K変異、および他のドメインにおけるL351D変異である。
6.3.16.4.IgA−CH3アイソタイプドメイン置換
【0181】
一部の実施形態では、CH3配列を含有し得る第1および第2のドメインと、CH3配列も含有し得る第3および第4のドメインとの望ましくない会合を低減することが望ましい。このような場合において、第1および/または第2のドメインにおけるヒトIgAに由来するCH3配列(IgA−CH3)の使用は、このような望ましくない会合を低減することによって、抗体の組立および安定性を改善し得る。第3および第4のドメインがIgG−CH3配列を含む結合分子の一部の実施形態では、第1および/または第2のドメインは、IgA−CH3配列を含む。
【0182】
一部の実施形態では、第1または第2のドメインの少なくとも1つは、6.3.20.3項に記載のCH3リンカー配列を含む。一部の実施形態では、第1および第2のドメインの両方とも、6.3.20.3項に記載のCH3リンカー配列を含む。一部の実施形態では、第1のドメインは第1のCH3リンカー配列を含み、第2のドメインは第2のCH3リンカー配列を含む。一部の実施形態では、第1のCH3リンカー配列は、第1および第2のCH3リンカー配列のシステイン残基の間でのジスルフィド架橋の形成によって、第2のCH3リンカー配列と会合する。一部の実施形態では、第1のCH3リンカーおよび第2のCH3リンカーは同一である。一部の実施形態では、第1のCH3リンカーおよび第2のCH3リンカーは同一ではない。一部の実施形態では、第1のCH3リンカーおよび第2のCH3リンカーは、1〜6アミノ酸の長さで異なる。一部の実施形態では、第1のCH3リンカーおよび第2のCH3リンカーは、1〜3アミノ酸の長さで異なる。
【0183】
一部の実施形態では、第1のCH3リンカーおよび第2のCH3リンカーを下記の表10に提供する。
【表10】
【0184】
好ましい実施形態では、第1のCH3リンカーはAGCであり、第2のCH3リンカーはAGKGSCである。一部の実施形態では、第1のCH3リンカーはAGKGCであり、第2のCH3リンカーはAGCである。一部の実施形態では、第1のCH3リンカーはAGKGSCであり、第2のCH3リンカーはAGCである。一部の実施形態では、第1のCH3リンカーはAGKCであり、第2のCH3リンカーはAGCである。
6.3.17.ドメインEおよびKの対形成
【0185】
様々な実施形態では、Eドメインは、CH3アミノ酸配列を有する。
【0186】
様々な実施形態では、Kドメインは、CH3アミノ酸配列を有する。
【0187】
様々な実施形態では、EおよびKドメインのアミノ酸配列は同一であり、配列は、内在性CH3配列である。
【0188】
様々な実施形態では、EドメインとKドメインの配列は異なる。様々な実施形態では、異なる配列が、それぞれ別個に直交型修飾を内在性CH3配列に含み、ここでEドメインはKドメインと相互作用し、EドメインとKドメインのどちらも、直交型修飾を欠くCH3ドメインと有意に相互作用しない。ある特定の実施形態では、直交型修飾には、6.3.16.1〜6.3.16.4項でさらに詳細に記載する、操作されたジスルフィド架橋、ノブ・イン・ホール変異、電荷対変異およびアイソタイプ置換を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、直交型修飾には、限定されないが、操作されたジスルフィド架橋、ノブ・イン・ホール変異および電荷対変異から選択される直交型修飾の組合せを含む。特定の実施形態では、直交型修飾は、イソアロタイプ変異などの免疫原性を減少させるアミノ酸置換と組み合わせることができる。
6.3.18.ドメインIおよびMならびにドメインHおよびLの対形成
【0189】
様々な実施形態では、ドメインIは、CL配列を有し、ドメインMは、CH1配列を有する。様々な実施形態では、ドメインHは、VL配列を有し、ドメインLは、VH配列を有する。好ましい実施形態では、ドメインHは、VLアミノ酸配列を有し、ドメインIは、CLアミノ酸配列を有し、ドメインLは、VHアミノ酸配列を有し、およびドメインMは、CH1アミノ酸配列を有する。別の好ましい実施形態では、ドメインHは、VLアミノ酸配列を有し、ドメインIは、CLアミノ酸配列を有し、ドメインLは、VHアミノ酸配列を有し、ドメインMは、CH1アミノ酸配列を有し、ドメインKは、CH3アミノ酸配列を有する。
【0190】
様々な実施形態では、IドメインおよびMドメインのアミノ酸配列は、それぞれ別個に直交型修飾を内在性配列に含み、ここでIドメインはMドメインと相互作用し、IドメインとMドメインのどちらも、直交型修飾を欠くドメインと有意に相互作用しない。一連の実施形態では、Iドメインにおける直交型変異はCL配列にあり、Mドメインにおける直交型変異はCH1配列にある。CH1およびCL配列に存在する直交型変異は、上のセクション6.3.10.2により詳細に記載されている。
【0191】
様々な実施形態では、HドメインおよびLドメインのアミノ酸配列は、それぞれ別個に直交型修飾を内在性配列に含み、ここでHドメインはLドメインと相互作用し、HドメインとLドメインのどちらも、直交型修飾を欠くドメインと有意に相互作用しない。一連の実施形態では、Hドメインにおける直交型変異はVL配列にあり、Lドメインにおける直交型変異はVH配列にある。特定の実施形態では、直交型変異は、VH/VL境界での電荷対変異である。好ましい実施形態では、VH/VL境界での電荷対変異は、教示する全てについて参照により本明細書に組み込まれるIgawa et al. (Protein Eng. Des. Sel., 2010, vol. 23, 667−677)においてより詳細に記載されているように、VHにおけるQ39Eと対応するVLにおけるQ38K、またはVHにおけるQ39Kと対応するVLにおけるQ38Eである。
【0192】
ある特定の実施形態では、AドメインとFドメインとの間の相互作用が、第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成し、HドメインとLドメインとの間の相互作用が、第2の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成する。ある特定の実施形態では、AドメインとFドメインとの間の相互作用が、第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成し、HドメインとLドメインとの間の相互作用が、第1の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成する。
6.3.19.四価2×2結合分子
【0193】
様々な実施形態では、結合分子は、4つの抗原結合部位を有し、したがって「四価」と称される。
【0194】
図34に関して、さらなる一連の実施形態では、結合分子は、第5および第6のポリペプチド鎖をさらに含み、(a)第1のポリペプチド鎖はドメインNおよびドメインOをさらに含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、N−O−A−B−D−Eの配向で配置され;(b)第3のポリペプチド鎖はドメインRおよびドメインSをさらに含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、R−S−H−I−J−Kの配向で配置され;(c)結合分子は、第5および第6のポリペプチド鎖をさらに含み、ここで第5のポリペプチド鎖はドメインPおよびドメインQを含み、ドメインは、N末端からC末端へ、P−Qの配向で配置され、第6のポリペプチド鎖はドメインTおよびドメインUを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、T−Uの配向で配置され;(d)第1および第5のポリペプチドは、NドメインとPドメインとの間の相互作用およびOドメインとQドメインとの間の相互作用を介して会合しており、第3および第6のポリペプチドは、RドメインとTドメインとの間の相互作用およびSドメインとUドメインとの間の相互作用を介して会合して、結合分子を形成する。
【0195】
様々な実施形態では、ドメインOは、ペプチドリンカーを介してドメインAに連結され、ドメインSは、ペプチドリンカーを介してドメインHに連結される。好ましい実施形態では、ドメインOをドメインAに連結し、ドメインSをドメインHに連結するペプチドリンカーは、セクション6.3.20.6においてより詳細に記載されているように、6アミノ酸GSGSGSペプチド配列である。
6.3.19.1.四価2×2二重特異性構築物
【0196】
図34を参照して、一連の四価2×2二重特異性結合分子では、ドメインNおよびドメインAのアミノ酸配列は同一であり、ドメインHおよびドメインRのアミノ酸配列は同一であり、ドメインOおよびドメインBのアミノ酸配列は同一であり、ドメインIおよびドメインSのアミノ酸配列は同一であり、ドメインPおよびドメインFのアミノ酸配列は同一であり、ドメインLおよびドメインTのアミノ酸配列は同一であり、ドメインQおよびドメインGのアミノ酸配列は同一であり、ドメインMおよびドメインUのアミノ酸配列は同一であり;AドメインとFドメインとの間の相互作用が、第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成し、ドメインNおよびドメインPが、第1の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成し、HドメインとLドメインとの間の相互作用が、第2の抗原に特異的な第3の抗原結合部位を形成し、RドメインとTドメインとの間の相互作用が、第2の抗原に特異的な第4の抗原結合部位を形成する。
【0197】
図34を参照して、別の一連の四価2×2二重特異性結合分子では、ドメインHおよびドメインAのアミノ酸配列は同一であり、ドメインNおよびドメインRのアミノ酸配列は同一であり、ドメインIおよびドメインBのアミノ酸配列は同一であり、ドメインOおよびドメインSのアミノ酸配列は同一であり、ドメインLおよびドメインFのアミノ酸配列は同一であり、ドメインPおよびドメインTのアミノ酸配列は同一であり、ドメインMおよびドメインGのアミノ酸配列は同一であり、ドメインQおよびドメインUのアミノ酸配列は同一であり;AドメインとFドメインとの間の相互作用が、第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成し、ドメインNおよびドメインPが、第2の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成し、HドメインとLドメインとの間の相互作用が、第1の抗原に特異的な第3の抗原結合部位を形成し、RドメインとTドメインとの間の相互作用が、第2の抗原に特異的な第4の抗原結合部位を形成する。
6.3.20.ドメインジャンクション
6.3.20.1.VLとCH3ドメインとを連結するジャンクション
【0198】
様々な実施形態では、VLドメインのC末端とCH3ドメインのN末端との間のジャンクションを形成するアミノ酸配列は、操作された配列である。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸は、VLドメインのC末端で欠失または付加されている。ある特定の実施形態では、VLドメインのC末端とCH3ドメインのN末端とを連結しているジャンクションは、下記のセクション6.13.7の表2に記載されている配列の1つである。特定の実施形態では、A111が、VLドメインのC末端で欠失されている。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸が、CH3ドメインのN末端で、欠失または付加されている。特定の実施形態では、P343は、CH3ドメインのN末端で欠失されている。特定の実施形態では、P343およびR344は、CH3ドメインのN末端で欠失されている。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸が、VLドメインのC末端およびCH3ドメインのN末端の両方で欠失または付加されている。特定の実施形態では、A111が、VLドメインのC末端で欠失されており、P343が、CH3ドメインのN末端で欠失されている。好ましい実施形態では、A111およびV110が、VLドメインのC末端で欠失されている。別の好ましい実施形態では、A111およびV110が、VLドメインのC末端で欠失され、CH3ドメインのN末端が、P343V変異を有する。
6.3.20.2.VHとCH3ドメインとを連結するジャンクション
【0199】
様々な実施形態では、VHドメインのC末端とCH3ドメインのN末端との間のジャンクションを形成するアミノ酸配列は、操作された配列である。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸が、VHドメインのC末端で欠失または付加されている。ある特定の実施形態では、VHドメインのC末端とCH3ドメインのN末端を連結するジャンクションは、下記のセクション6.13.7の表3に記載されている配列の1つである。特定の実施形態では、K117およびG118が、VHドメインのC末端で欠失されている。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸が、CH3ドメインのN末端で欠失または付加されている。ある特定の実施形態では、P343は、CH3ドメインのN末端で欠失されている。ある特定の実施形態では、P343およびR344は、CH3ドメインのN末端で欠失されている。ある特定の実施形態では、P343、R344およびE345が、CH3ドメインのN末端で欠失されている。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸が、VHドメインのC末端およびCH3ドメインのN末端の両方で欠失または付加されている。好ましい実施形態では、T116、K117およびG118が、VHドメインのC末端で欠失されている。
6.3.20.3.CH3のC末端をCH2のN末端に連結しているジャンクション(ヒンジ)
【0200】
本明細書に記載の三価三重特異性結合分子では、CH2ドメインのN末端は、「ヒンジ」領域アミノ酸配列を有する。本明細書で使用される場合、ヒンジ領域は、抗体のN末端可変ドメイン−定常ドメインセグメントと抗体のCH2ドメインとを連結している抗体重鎖の配列である。加えて、ヒンジ領域は、典型的に、N末端可変ドメイン−定常ドメインセグメントとCH2ドメインとの間のフレキシビリティ、ならびに重鎖間のジスルフィド架橋を形成するアミノ酸配列モチーフ(例えば、第1および第3のポリペプチド鎖)の両方を提供する。本明細書で使用される場合、ヒンジ領域アミノ酸配列は、配列番号56である。
【0201】
様々な実施形態では、CH3アミノ酸配列は、CH3ドメインのC末端とCH2ドメインのN末端との間のジャンクションにおいてC末端で伸長されている。ある特定の実施形態では、CH3アミノ酸配列は、CH3ドメインのC末端とヒンジ領域との間のジャンクションにおいてC末端で伸長され、次いでCH2ドメインのN末端に連結されている。好ましい実施形態では、CH3アミノ酸配列は、PGKトリペプチド配列の挿入、続いてIgG1ヒンジ領域のDKTHTモチーフの挿入によって伸長されている。
【0202】
特定の実施形態では、CH3ドメインのC末端における伸長は、別のCH3ドメインの直交型C末端伸長とジスルフィド結合を形成することができるアミノ酸配列を組み込んでいる。好ましい実施形態では、CH3ドメインのC末端における伸長は、KSCトリペプチド配列とそれに続くIgG1ヒンジ領域のDKTHTモチーフを組み込んでおり、IgG1ヒンジ領域のDKTHTモチーフは、カッパ軽鎖のGECモチーフを組み込んでいる別のCH3ドメインの直交型C末端伸長とジスルフィド結合を形成する。
6.3.20.4.CLのC末端とCH2のN末端とを連結するジャンクション(ヒンジ)
【0203】
様々な実施形態では、CLアミノ酸配列は、そのC末端を介してヒンジ領域に連結され、次いで、CH2ドメインのN末端に連結される。ヒンジ領域配列は、上記セクション6.3.20.3においてより詳細に記載されている。好ましい実施形態では、ヒンジ領域アミノ酸配列は、配列番号56である。
6.3.20.5.CH2のC末端を定常領域ドメインに連結するジャンクション
【0204】
様々な実施形態では、CH2アミノ酸配列は、そのC末端を介して、定常領域ドメインのN末端に連結されている。定常領域は、上記セクション6.3.6においてより詳細に記載されている。好ましい実施形態では、CH2配列は、その内在性配列を介してCH3配列に連結されている。他の実施形態では、CH2配列は、CH1またはCL配列に連結されている。CH2配列のCH1またはCL配列への連結を議論する例が、その全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,242,247号においてより詳細に記載されている。
6.3.20.6.三価および四価分子においてドメインOをドメインAにまたはドメインSをドメインHに連結するジャンクション
【0205】
様々な実施形態では、抗体の重鎖(例えば、第1および第3のポリペプチド鎖)が、追加のABSを提供する追加のドメインを含むようにそのN末端で伸長される。
図21、
図26および
図34を参照して、ある特定の実施形態では、ドメインOおよび/またはドメインSの定常領域ドメインアミノ酸配列のC末端は、それぞれ、ドメインAおよび/またはドメインHの可変領域ドメインアミノ酸配列のN末端に連結されている。一部の好ましい実施形態では、定常領域ドメインは、CH3アミノ酸配列であり、可変領域ドメインは、VLアミノ酸配列である。一部の好ましい実施形態では、定常領域ドメインは、CLアミノ酸配列であり、可変領域ドメインは、VLアミノ酸配列である。ある特定の実施形態では、定常領域ドメインは、ペプチドリンカーを介して可変領域ドメインに連結されている。好ましい実施形態では、ペプチドリンカーは、6アミノ酸GSGSGSペプチド配列である。
【0206】
様々な実施形態では、抗体の軽鎖(例えば、第2および第4のポリペプチド鎖)が、抗体の追加の可変ドメイン−定常ドメインセグメントを含むようにそのN末端で伸長される。ある特定の実施形態では、定常領域ドメインは、CH1アミノ酸配列であり、可変領域ドメインは、VHアミノ酸配列である。
6.4.特異的二価B−Body構造
【0207】
さらなる態様では、下記および6.4.1.〜6.4.5項に記載の二価B−Body構造に基づく三価三重特異性結合分子を提供する。
【0208】
図3を参照して、一連の実施形態では、二価B−Body構造は、第1、第2、第3、および第4のポリペプチド鎖を含み、ここで(a)第1のポリペプチド鎖はドメインA、ドメインB、ドメインD、およびドメインEを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、A−B−D−Eの配向で配置され、ドメインAはVLアミノ酸配列を有し、ドメインBはCH3アミノ酸配列を有し、ドメインDはCH2アミノ酸配列を有し、ドメインEは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し;(b)第2のポリペプチド鎖はドメインFおよびドメインGを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、F−Gの配向で配置され、ドメインFはVHアミノ酸配列を有し、ドメインGはCH3アミノ酸配列を有し;(c)第3のポリペプチド鎖はドメインH、ドメインI、ドメインJ、およびドメインKを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、H−I−J−Kの配向で配置され、ドメインHは可変領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインIは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインJはCH2アミノ酸配列を有し、およびKは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し;(d)第4のポリペプチド鎖はドメインLおよびドメインMを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、L−Mの配向で配置され、ドメインLは可変領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインMは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し;(e)第1および第2のポリペプチドは、AドメインとFドメインとの間の相互作用およびBドメインとGドメインとの間の相互作用を介して会合し;(f)第3および第4のポリペプチドは、HドメインとLドメインとの間の相互作用およびIドメインとMドメインとの間の相互作用を介して会合し;(g)第1および第3のポリペプチドは、DドメインとJドメインとの間の相互作用およびEドメインとKドメインとの間の相互作用を介して会合して、二価B−Body構造を形成する。
【0209】
好ましい実施形態では、ドメインEは、CH3アミノ酸配列を有し;ドメインHは、VLアミノ酸配列を有し;ドメインIは、CLアミノ酸配列を有し、ドメインKは、CH3アミノ酸配列を有し;ドメインLは、VHアミノ酸配列を有し;ドメインMは、CH1アミノ酸配列を有する。
【0210】
ある特定の実施形態では、AドメインとFドメインとの間の相互作用が、第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成し、HドメインとLドメインとの間の相互作用が、第2の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成し、二価B−Body構造は、二重特異性二価B−Body構造である。ある特定の実施形態では、AドメインとFドメインとの間の相互作用が、第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成し、HドメインとLドメインとの間の相互作用が、第1の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成し、二価B−Body構造は、単一特異性二価B−Body構造である。
6.4.1.二価の二重特異性B−Body「BC1」
【0211】
図3および
図6に関して、一連の実施形態では、第1、第2、第3および第4のポリペプチド鎖を有する二価B−Body構造に基づく三価三重特異性結合分子であって、(a)第1のポリペプチド鎖はドメインA、ドメインB、ドメインDおよびドメインEを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、A−B−D−Eの配向で配置され、ドメインAは第1のVLアミノ酸配列を有し、ドメインBはT366K変異を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列、およびIgG1ヒンジ領域のDKTHTモチーフに続くKSCトリペプチド配列が組み込まれたC末端伸長を有し、ドメインDはヒトIgG1 CH2アミノ酸配列を有し、ドメインEはS354CおよびT366W変異を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸を有し;(b)第2のポリペプチド鎖はドメインFおよびドメインGを有し、ここでドメインは、N末端からC末端へ、F−Gの配向で配置され、ドメインFは第1のVHアミノ酸配列を有し、ドメインGはL351D変異を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列、およびGECアミノ酸ジスルフィドモチーフが組み込まれたC末端伸長を有し;(c)第3のポリペプチド鎖はドメインH、ドメインI、ドメインJおよびドメインKを有し、ここでドメインは、N末端からC末端へ、H−I−J−Kの配向で配置され、ドメインHは第2のVLアミノ酸配列を有し、ドメインIはヒトCLカッパアミノ酸配列を有し、ドメインJはヒトIgG1 CH2アミノ酸配列を有し、ドメインKはY349C、D356E、L358M、T366S、L368AおよびY407V変異を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有し;(d)第4のポリペプチド鎖はドメインLおよびドメインMを有し、ここでドメインは、N末端からC末端へ、L−Mの配向で配置され、ドメインLは第2のVHアミノ酸配列を有し、ドメインMはヒトIgG1 CH1アミノ酸配列を有し;(e)第1および第2のポリペプチドは、AドメインとFドメインとの間の相互作用およびBドメインとGドメインとの間の相互作用を介して会合しており;(f)第3および第4のポリペプチドは、HドメインとLドメインとの間の相互作用およびIドメインとMドメインとの間の相互作用を介して会合しており;(g)第1および第3のポリペプチドは、DドメインとJドメインとの間の相互作用およびEドメインとKドメインとの間の相互作用を介して会合して、二価B−Body構造を形成し;(h)ドメインAおよびドメインFは、第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成し;(i)ドメインHおよびドメインLは、第2の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成する、結合分子を提供する。
【0212】
好ましい実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、配列番号8の配列を有し、第2のポリペプチド鎖は、配列番号9の配列を有し、第3のポリペプチド鎖は、配列番号10の配列を有し、および第4のポリペプチド鎖は、配列番号11の配列を有する。
6.4.2.二価の二重特異性B−Body「BC6」
【0213】
図3および
図14を参照して、一連の実施形態では、第1、第2、第3、および第4のポリペプチド鎖を有する二価B−Body構造に基づく三価三重特異性結合分子であって、(a)第1のポリペプチド鎖はドメインA、ドメインB、ドメインD、およびドメインEを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、A−B−D−Eの配向で配置され、ドメインAは第1のVLアミノ酸配列を有し、ドメインBは、KSCトリペプチド配列とそれに続くIgG1ヒンジ領域のDKTHTモチーフを組み込んだC末端伸長を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有し、ドメインDはヒトIgG1 CH2アミノ酸配列を有し、ドメインEはS354CおよびT366W変異を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸を有し;(b)第2のポリペプチド鎖はドメインFおよびドメインGを有し、ここでドメインは、N末端からC末端へ、F−Gの配向で配置され、ドメインFは第1のVHアミノ酸配列を有し、ドメインGはGECアミノ酸ジスルフィドモチーフを組み込んだC末端伸長を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有し;(c)第3のポリペプチド鎖はドメインH、ドメインI、ドメインJ、およびドメインKを有し、ここでドメインは、N末端からC末端へ、H−I−J−Kの配向で配置され、ドメインHは第2のVLアミノ酸配列を有し、ドメインIはヒトCLカッパアミノ酸配列を有し、ドメインJはヒトIgG1 CH2アミノ酸配列を有し、およびKはY349C、D356E、L358M、T366S、L368AおよびY407V変異を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有し;(d)第4のポリペプチド鎖はドメインLおよびドメインMを有し、ここでドメインは、N末端からC末端へ、L−Mの配向で配置され、ドメインLは第2のVHアミノ酸配列を有し、ドメインMはヒトIgG1アミノ酸配列を有し;(e)第1および第2のポリペプチドは、AドメインとFドメインとの間の相互作用およびBドメインとGドメインとの間の相互作用を介して会合し;(f)第3および第4のポリペプチドは、HドメインとLドメインとの間の相互作用およびIドメインとMドメインとの間の相互作用を介して会合し;(g)第1および第3のポリペプチドは、DドメインとJドメインとの間の相互作用およびEドメインとKドメインとの間の相互作用を介して会合して、二価B−Body構造を形成し;(h)ドメインAおよびドメインFは、第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成し;(i)ドメインHおよびドメインLは、第2の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成する、結合分子を提供する。
6.4.3.二価の二重特異性B−Body「BC28」
【0214】
図3および
図16を参照して、一連の実施形態では、第1、第2、第3、および第4のポリペプチド鎖を有する二価B−Body構造に基づく三価三重特異性結合分子であって、(a)第1のポリペプチド鎖はドメインA、ドメインB、ドメインD、およびドメインEを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、A−B−D−Eの配向で配置され、ドメインAは第1のVLアミノ酸配列を有し、ドメインBは、Y349C変異およびPGKトリペプチド配列とそれに続くIgG1ヒンジ領域のDKTHTモチーフを組み込んだC末端伸長を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有し、ドメインDはヒトIgG1 CH2アミノ酸配列を有し、ドメインEはS354CおよびT366W変異を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸を有し;(b)第2のポリペプチド鎖はドメインFおよびドメインGを有し、ここでドメインは、N末端からC末端へ、F−Gの配向で配置され、ドメインFは第1のVHアミノ酸配列を有し、ドメインGはS354C変異およびPGKトリペプチド配列を組み込んだC末端伸長を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有し;(c)第3のポリペプチド鎖はドメインH、ドメインI、ドメインJ、およびドメインKを有し、ここでドメインは、N末端からC末端へ、H−I−J−Kの配向で配置され、ドメインHは第2のVLアミノ酸配列を有し、ドメインIはヒトCLカッパアミノ酸配列を有し、ドメインJはヒトIgG1 CH2アミノ酸配列を有し、およびKはY349C、D356E、L358M、T366S、L368AおよびY407Vを有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有し;(d)第4のポリペプチド鎖はドメインLおよびドメインMを有し、ここでドメインは、N末端からC末端へ、L−Mの配向で配置され、ドメインLは第2のVHアミノ酸配列を有し、ドメインMはヒトIgG1 CH1アミノ酸配列を有し;(e)第1および第2のポリペプチドは、AドメインとFドメインとの間の相互作用およびBドメインとGドメインとの間の相互作用を介して会合し;(f)第3および第4のポリペプチドは、HドメインとLドメインとの間の相互作用およびIドメインとMドメインとの間の相互作用を介して会合し;(g)第1および第3のポリペプチドは、DドメインとJドメインとの間の相互作用およびEドメインとKドメインとの間の相互作用を介して会合して、二価B−Body構造を形成し;(h)ドメインAおよびドメインFは、第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成し;(i)ドメインHおよびドメインLは、第2の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成する、結合分子を提供する。
【0215】
好ましい実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、配列番号24の配列を有し、第2のポリペプチド鎖は、配列番号25の配列を有し、第3のポリペプチド鎖は、配列番号10の配列を有し、および第4のポリペプチド鎖は、配列番号11の配列を有する。
6.4.4.二価の二重特異性B−Body「BC44」
【0216】
図3および
図19を参照して、一連の実施形態では、第1、第2、第3、および第4のポリペプチド鎖を有する二価B−Body構造に基づく三価三重特異性結合分子であって、(a)第1のポリペプチド鎖はドメインA、ドメインB、ドメインD、およびドメインEを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、A−B−D−Eの配向で配置され、ドメインAは第1のVLアミノ酸配列を有し、ドメインBは、Y349C変異、P343V変異、およびPGKトリペプチド配列とそれに続くIgG1ヒンジ領域のDKTHTモチーフを組み込んだC末端伸長を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有し、ドメインDはヒトIgG1 CH2アミノ酸配列を有し、ドメインEはS354C変異およびT366W変異を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸を有し;(b)第2のポリペプチド鎖はドメインFおよびドメインGを有し、ここでドメインは、N末端からC末端へ、F−Gの配向で配置され、ドメインFは第1のVHアミノ酸配列を有し、ドメインGはS354C変異およびPGKトリペプチド配列を組み込んだC末端伸長を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有し;(c)第3のポリペプチド鎖はドメインH、ドメインI、ドメインJ、およびドメインKを有し、ここでドメインは、N末端からC末端へ、H−I−J−Kの配向で配置され、ドメインHは第2のVLアミノ酸配列を有し、ドメインIはヒトCLカッパアミノ酸配列を有し、ドメインJはヒトIgG1 CH2アミノ酸配列を有し、およびKはY349C、T366S、L368AおよびY407Vを有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有し;(d)第4のポリペプチド鎖はドメインLおよびドメインMを有し、ここでドメインは、N末端からC末端へ、L−Mの配向で配置され、ドメインLは第2のVHアミノ酸配列を有し、ドメインMはヒトIgG1アミノ酸配列を有し;(e)第1および第2のポリペプチドは、AドメインとFドメインとの間の相互作用およびBドメインとGドメインとの間の相互作用を介して会合し;(f)第3および第4のポリペプチドは、HドメインとLドメインとの間の相互作用およびIドメインとMドメインとの間の相互作用を介して会合し;(g)第1および第3のポリペプチドは、DドメインとJドメインとの間の相互作用およびEドメインとKドメインとの間の相互作用を介して会合して、二価B−Body構造を形成し;(h)ドメインAおよびドメインFは、第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成し;(i)ドメインHおよびドメインLは、第2の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成する、結合分子を提供する。
【0217】
好ましい実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、配列番号32の配列を有し、第2のポリペプチド鎖は、配列番号25の配列を有し、第3のポリペプチド鎖は、配列番号10の配列を有し、および第4のポリペプチド鎖は、配列番号11の配列を有する。
6.4.5.IgA−CH3ドメイン対を有する二価結合分子
【0218】
図3に関して、一連の実施形態では、結合分子は、第1、第2、第3および第4のポリペプチド鎖を有し、(a)第1のポリペプチド鎖はドメインA、ドメインB、ドメインDおよびドメインEを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、A−B−D−Eの配向で配置され、ドメインAは可変領域アミノ酸配列を有し、ドメインBはヒトIgA CH3アミノ酸配列を有し、ドメインDはヒトIgG1 CH2アミノ酸配列を有し、ドメインEはヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有し;(b)第2のポリペプチド鎖はドメインFおよびドメインGを有し、ここでドメインは、N末端からC末端へ、F−Gの配向で配置され、ドメインFは可変領域アミノ酸配列を有し、ドメインGはヒトIgA CH3アミノ酸配列を有し;(c)第3のポリペプチド鎖はドメインH、ドメインI、ドメインJおよびドメインKを有し、ここでドメインは、N末端からC末端へ、H−I−J−Kの配向で配置され、ドメインHは可変領域アミノ酸配列を有し、ドメインIは定常領域アミノ酸配列を有し、ドメインJはヒトIgG1 CH2アミノ酸配列を有し、ドメインKはヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有し;(d)第4のポリペプチド鎖はドメインLおよびドメインMを有し、ここでドメインは、N末端からC末端へ、L−Mの配向で配置され、ドメインLは可変領域アミノ酸配列を有し、ドメインMは定常領域アミノ酸配列を有し;(e)第1および第2のポリペプチドは、AドメインとFドメインとの間の相互作用およびBドメインとGドメインとの間の相互作用を介して会合しており;(f)第3および第4のポリペプチドは、HドメインとLドメインとの間の相互作用およびIドメインとMドメインとの間の相互作用を介して会合しており;(g)第1および第3のポリペプチドは、DドメインとJドメインとの間の相互作用およびEドメインとKドメインとの間の相互作用を介して会合して、結合分子を形成する。一部の実施形態では、ドメインAおよびドメインFは、第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成し、ドメインHおよびドメインLは、第2の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成する。
【0219】
一部の実施形態では、ドメインAはVHアミノ酸配列を含み、ドメインFはVLアミノ酸配列を含み、ドメインHはVHアミノ酸配列を含み、ドメインIはCH1アミノ酸配列を含み、ドメインLはVLアミノ酸配列を含み、ドメインMはCLアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ドメインAは第1のVHアミノ酸配列を含み、ドメインFは第1のVLアミノ酸配列を含み、ドメインHは第2のVHアミノ酸配列を含み、ドメインLは第2のVLアミノ酸配列を含む。
【0220】
好ましい実施形態では、ドメインAはVLアミノ酸配列を含み、ドメインFはVHアミノ酸配列を含み、ドメインHはVLアミノ酸配列を含み、ドメインLはVHアミノ酸配列を含み、ドメインIはCLアミノ酸配列を含み、ドメインMはCH1アミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CLアミノ酸配列はCL−カッパ配列である。一部の実施形態では、ドメインAは第1のVLアミノ酸配列を含み、ドメインFは第1のVHアミノ酸配列を含み、ドメインHは第2のVLアミノ酸配列を含み、ドメインLは第2のVHアミノ酸配列を含む。
【0221】
一部の実施形態では、ドメインEは、ヒトIgG1 CH3アミノ酸配列にS354CおよびT366W変異をさらに含む。一部の実施形態では、ドメインKは、ヒトIgG1 CH3アミノ酸配列にY349C、D356E、L358M、T366S、L368AおよびY407V変異をさらに含む。
【0222】
一部の実施形態では、ドメインBは、IgG1ヒンジ領域のDKTHTモチーフに続いて、6.3.20.3項に記載の第1のCH3リンカー配列を含み、ドメインGは、6.3.20.3項に記載の第2のCH3リンカー配列を含む。一部の実施形態では、第1のCH3リンカー配列は、第1および第2のCH3リンカー配列のシステイン残基の間でのジスルフィド架橋の形成によって、第2のCH3リンカー配列と会合する。
【0223】
一部の実施形態では、第1のCH3リンカーおよび第2のCH3リンカーは同一である。一部の実施形態では、第1のCH3リンカーおよび第2のCH3リンカーは同一ではない。一部の実施形態では、第1のCH3リンカーおよび第2のCH3リンカーは、1〜6アミノ酸の長さで異なる。一部の実施形態では、第1のCH3リンカーおよび第2のCH3リンカーは、1〜3アミノ酸の長さで異なる。一部の実施形態では、第1のCH3リンカーはAGCであり、第2のCH3リンカーはAGKGSCである。一部の実施形態では、第1のCH3リンカーはAGKGCであり、第2のCH3リンカーはAGCである。一部の実施形態では、第1のCH3リンカーはAGKGSCであり、第2のCH3リンカーはAGCである。一部の実施形態では、第1のCH3リンカーはAGKCであり、第2のCH3リンカーはAGCである。
【0224】
一部の実施形態では、結合分子は、6.3.10.3項および6.3.10.3項に記載の1つまたは複数のCH1/CL修飾をさらに含む。
【0225】
一部の実施形態では、結合分子は、6.8.4項に記載のエフェクター機能を低減する修飾をさらに含む。
6.5.特定の三価結合分子
6.5.1.三価1×2二重特異性B−Body「BC28−1×2」
【0226】
6.4.3項および
図26に関して、一連の実施形態では、上記に記載の二価B−Body構造に基づく三価三重特異性結合分子は、第6のポリペプチド鎖を含み、(a)第3のポリペプチド鎖はドメインRおよびドメインSをさらに含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、R−S−H−I−J−Kの配向で配置され、ドメインRは第1のVLアミノ酸配列を有し、ドメインSはY349C変異を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列、およびドメインSをドメインHに連結するGSGSGSリンカーペプチドに続いて、PGKトリペプチド配列が組み込まれたC末端伸長を有し;(b)三価三重特異性結合分子は、ドメインTおよびドメインUを含む第6のポリペプチド鎖をさらに含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、T−Uの配向で配置され、ドメインTは第1のVHアミノ酸配列を有し、ドメインUはS354C変異を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列、およびPGKトリペプチド配列が組み込まれたC末端伸長を有し;(c)第3および第6のポリペプチドは、RドメインとTドメインとの間の相互作用およびSドメインとUドメインとの間の相互作用を介して会合して、三価三重特異性結合分子を形成し、(d)ドメインRおよびドメインTは、第1の抗原に特異的な第3の抗原結合部位を形成する。
【0227】
好ましい実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、配列番号24の配列を有し、第2のポリペプチド鎖は、配列番号25の配列を有し、第3のポリペプチド鎖は、配列番号37の配列を有し、第4のポリペプチド鎖は、配列番号11の配列を有し、および第6のポリペプチド鎖は、配列番号25の配列を有する。
6.5.2.三価1×2三重特異性B−Body「BC28−1×1×1a」
【0228】
セクション6.4.3ならびに
図26および
図30を参照して、一連の実施形態では、上記の二価B−Body構造に基づく三価三重特異性結合分子は、第6のポリペプチド鎖をさらに含み、ここで(a)第3のポリペプチド鎖はドメインRおよびドメインSをさらに含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、R−S−H−I−J−Kの配向で配置され、ドメインRは第3のVLアミノ酸配列を有し、ドメインSは、T366K変異およびKSCトリペプチド配列とそれに続くドメインSをドメインHに連結するGSGSGSリンカーペプチドを組み込んだC末端伸長を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有し;(b)三価三重特異性結合分子が、第6のポリペプチド鎖をさらに含み、第6のポリペプチド鎖が、ドメインTおよびドメインUを含み、ここでドメインは、N末端からC末端へ、T−Uの配向で配置され、ドメインTは第3のVHアミノ酸配列を有し、ドメインUはL351D変異およびGECアミノ酸ジスルフィドモチーフを組み込んだC末端伸長を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有し;(c)第3および第6のポリペプチドは、RドメインとTドメインとの間の相互作用およびSドメインとUドメインとの間の相互作用を介して会合して、三価三重特異性結合分子を形成し;(d)ドメインRおよびドメインTが第3の抗原に特異的な第3の抗原結合部位を形成する。
【0229】
好ましい実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、配列番号24の配列を有し、第2のポリペプチド鎖は、配列番号25の配列を有し、第3のポリペプチド鎖は、配列番号45の配列を有し、第4のポリペプチド鎖は、配列番号11の配列を有し、および第6のポリペプチド鎖は、配列番号53の配列を有する。
6.6.他の結合分子プラットフォーム
【0230】
上述の様々な抗体プラットフォームは、限定的なものではない。特異的CDRサブセットを含む本明細書に記載されている三価三重特異性結合分子は、全長抗体、Fab断片、Fv、scFv、タンデムscFv、ダイアボディ、scダイアボディ、DART、tandAb、ミニボディ、ラクダ類VHH、および当業者に公知の他の抗体断片またはフォーマットを含むがこれらに限定されない、いずれかの適合性の結合分子プラットフォームに基づくことができる。例示的な抗体および抗体断片フォーマットは、それが教示する全てについて参照により本明細書に組み込まれる、Brinkmann et al. (MABS, 2017, Vol. 9, No. 2, 182−212)に詳細に記載されている。
【0231】
一部の実施形態では、三価三重特異性結合分子は、CrossMab(商標)プラットフォームに基づく。CrossMab(商標)抗体は、米国特許第8,242,247号;米国特許第9,266,967号;および米国特許第8,227,577号、米国特許出願公開第20120237506号、米国特許出願公開第20090162359号、WO2016016299号、WO2015052230号に記載されている。一部の実施形態では、三価三重特異性結合分子は、a)第1の抗原に特異的に結合する抗体の軽鎖および重鎖;ならびにb)第2の抗原に特異的に結合する抗体の軽鎖および重鎖を含む二価二重特異性抗体に基づいており、第2の抗原に特異的に結合する抗体に由来する定常ドメインCLおよびドメインCH1は、互いに置き換えられる。一部の実施形態では、三価三重特異性結合分子は、6.4項および
図3に関して構造化されたフォーマットに基づいており、AはVHであり、BはCH1であり、DはCH2であり、EはCH3であり、FはVLであり、GはCLであり、HはVLまたはVHであり、IはCLであり、JはCH2であり、KはCH3であり、LはVHまたはVLであり、MはCH1である。
【0232】
一部の実施形態では、三価三重特異性結合分子は、米国特許第8,871,912号およびWO2016087650号に記載の一般的な構造を有する抗体に基づく。一部の実施形態では、三価三重特異性結合分子は、VL−CH3で構成される軽鎖(LC)、およびVH−CH3−CH2−CH3を含む重鎖(HC)を含むドメイン交換抗体に基づいており、LCのVL−CH3はHCのVH−CH3と二量化し、それによりCH3LC/CH3HCドメイン対を含むドメイン交換LC/HC二量体を形成する。一部の実施形態では、三価三重特異性結合分子は、6.4項および
図3に関して構造化されたフォーマットに基づいており、AはVHであり、BはCH3であり、DはCH2であり、EはCH3であり、FはVLであり、GはCH3であり、HはVHであり、IはCH1であり、JはCH2であり、KはCH3であり、LはVLであり、MはCLである。
【0233】
一部の実施形態では、三価三重特異性結合分子は、WO2017011342号に記載のプラットフォームに基づく。一部の実施形態では、三価三重特異性結合分子は、6.4項および
図3に関して構造化されたフォーマットに基づいており、AはVHまたはVLであり、BはIgMまたはIgEに由来するCH2であり、DはCH2であり、EはCH3であり、FはVLまたはVHであり、GはIgMまたはIgEに由来するCH2であり、HはVHであり、IはCH1であり、JはCH2であり、KはCH3であり、LはVLであり、MはCLである。
【0234】
一部の実施形態では、三価三重特異性結合分子は、WO2006093794号に記載のプラットフォームに基づく。一部の実施形態では、三価三重特異性結合分子は、6.4項および
図3に関して構造化されたフォーマットに基づいており、AはVHであり、BはCH1であり、DはCH2であり、EはCH3であり、FはVLであり、GはCLであり、HはVLであり、IはCLまたはCH1であり、JはCH2であり、KはCH3であり、LはVHであり、MはCH1またはCLである。
6.7.抗原特異性
【0235】
本明細書に記載の結合分子に潜在的に関連する抗原結合部位は、多種多様な分子標的に特異的に結合するように選択され得る。例えば、抗原結合部位(単数または複数)は、E−Cad、CLDN7、FGFR2b、N−Cad、Cad−11、FGFR2c、ERBB2、ERBB3、FGFR1、FOLR1、IGF−Ira、GLP1R、PDGFRa、PDGFRb、EPHB6、ABCG2、CXCR4、CXCR7、インテグリン−avb3、SPARC、VCAM、ICAM、アネキシン、TNFα、CD137、アンジオポエチン2、アンジオポエチン3、BAFF、ベータアミロイド、C5、CA−125、CD147、CD125、CD147、CD152、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD25、CD274、CD28、CD3、CD30、CD33、CD37、CD4、CD40、CD44、CD44v4、CD44v6、CD44v7、CD50、CD51、CD52、CEA、CSF1R、CTLA−2、DLL4、EGFR、EPCAM、HER3、GD2ガングリオシド、GDF−8、Her2/neu、CD2221、IL−17A、IL−12、IL−23、IL−13、IL−6、IL−23、インテグリン、CD11a、MUC1、Notch、TAG−72、TGFβ、TRAIL−R2、VEGF−A、VEGFR−1、VEGFR2、VEGFc、ヘマトポエチン(4ヘリックスバンドル)(EPO(エリスロポエチン)、IL−2(T細胞増殖因子)、IL−3(マルチコロニーCSF)、IL−4(BCGF−1、BSF−1)、IL−5(BCGF−2)、IL−6 IL−4(IFN−β2、BSF−2、BCDF)、IL−7、IL−8、IL−9、IL−11、IL−13(P600)、G−CSF、IL−15(T細胞増殖因子)、GM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、OSM(OM、オンコスタチンM)、およびLIF(白血病阻止因子)など);インターフェロン(IFN−γ、IFN−αおよびIFN−βなど);免疫グロブリンスーパーファミリー(B7.1(CD80)およびB7.2(B70、CD86)など);TNFファミリー(TNF−α(カケクチン)、TNF−β(リンホトキシン、LT、LT−α)、LT−β、Fas、CD27、CD30、および4−1BBLなど);ならびに特定のファミリーに分類されないもの(TGF−β、IL 1α、IL−1β、IL−1 RA、IL−10(サイトカイン合成阻害因子F)、IL−12(NK細胞刺激因子)、MIF、IL−16、IL−17(mCTLA−8)、および/またはIL−18(IGIF、インターフェロン−γ誘導因子)など)に特異的に結合しうる;二重特異性抗体に関する実施形態では、抗体は、例えば、これらの標的のうちの2つに結合しうる。さらに、標的マスト細胞および好塩基球を標的とするためのIgE抗体のFc部分の使用など、Fc受容体発現細胞を標的とするために、抗体の重鎖のFc部分を使用してもよい。TNFR1(CD120aおよびTNFRSF1Aとしても公知)、TNFR2(CD120bおよびTNFRSF1Bとしても公知)、TNFRSF3(LTβRとしても公知)、TNFRSF4(OX40およびCD134としても公知)、TNFRSF5(CD40としても公知)、TNFRSF6(FASおよびCD95としても公知)、TNFRSF6B(DCR3としても公知)、TNFRSF7(CD27としても公知)、TNFRSF8(CD30としても公知)、TNFRSF9(4−1BBとしても公知)、TNFRSF10A(TRAILR1、DR4およびCD26としても公知)、TNFRSF10B(TRAILR2、DR5およびCD262としても公知)、TNFRSF10C(TRAILR3、DCR1、CD263としても公知)、TNFRSF10D(TRAILR4、DCR2およびCD264としても公知)、TNFRSF11A(RANKおよびCD265としても公知)、TNFRSF11B(OPGとしても公知)、TNFRSF12A(FN14、TWEAKRおよびCD266としても公知)、TNFRSF13B(TACIおよびCD267としても公知)、TNFRSF13C(BAFFR、BR3およびCD268としても公知)、TNFRSF14(HVEMおよびCD270としても公知)、TNFRSF16(NGFR、p75NTRおよびCD271としても公知)またはTNFRSF17(BCMAおよびCD269としても公知)、TNFRSF18(GITRおよびCD357としても公知)、TNFRSF19(TROY、TAJおよびTRADEとしても公知)、TNFRSF21(CD358としても公知)、TNFRSF25(Apo−3、TRAMP、LARDまたはWS−1としても公知)、EDA2R(XEDARとしても公知)を含むがこれらに限定されない、受容体のTNFファミリーに特異的に結合する抗原結合部位(単数または複数)が選択され得る。
【0236】
限定されないが、PD1、PDL1、CTLA−4、PDL2、B7−H3、B7−H4、BTLA、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、BY55およびCGEN−15049などのチェックポイント阻害剤の標的を含む、免疫−腫瘍学の標的に特異的に結合する抗原結合部位(複数可)が選択され得る。
【0237】
特定の実施形態では、三価三重特異性結合分子は、2つの腫瘍関連抗原およびT細胞表面発現分子に特異的に結合する抗原結合部位を有する。詳細な実施形態では、三価三重特異性結合分子は、2つの腫瘍関連抗原およびT細胞表面発現タンパク質のCD3に特異的に結合する抗原結合部位を有する。理論に縛られることを望まないが、2つの腫瘍抗原およびT細胞表面発現分子(すなわち、CD3)に特異的に結合する三価三重特異性結合分子は、T細胞が腫瘍関連抗原を発現する細胞(すなわち、標的細胞)に再指向することよって、2つの腫瘍関連抗原を発現する細胞のT細胞媒介死滅(細胞傷害毒性)を指向し得る。二重特異性抗CD3分子を使用するT細胞媒介死滅は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2006/0193852号に詳細に記載されている。一部の実施形態では、T細胞表面発現分子は、T細胞の標的細胞への再指向を可能にする任意の分子から選択される。一部の実施形態では、2つの腫瘍関連抗原に対する個々のABSの1つまたは複数の親和性は、それら自身上のそれらのそれぞれの抗原またはエピトープに特異的に結合すると見なされるK
D値を有さないが、2つの腫瘍関連抗原を発現する特異的標的細胞に対する三価三重特異性結合分子のアビディティは、相互作用が特異的結合相互作用であるようなK
D値を有する。
【0238】
一連の実施形態では、腫瘍関連細胞を特異的に標的にする抗原結合部位(複数可)が選択され得る。さまざまな実施形態では、抗原結合部位(複数可)は、腫瘍関連免疫細胞を特異的に標的にする。ある特定の実施形態では、抗原結合部位(複数可)は、腫瘍関連調節性T細胞(Treg)を特異的に標的にする。詳細な実施形態では、結合分子は、結合分子が腫瘍関連調節性T細胞を特異的に標的にするような、CD25、OX40、CTLA−4およびNRP1の1つまたは複数から選択される抗原に特異的な抗原結合部位を有する。詳細な実施形態では、結合分子は、結合分子が腫瘍関連調節性T細胞を特異的に標的にするような、CD25およびOX40、CD25およびCTLA−4、CD25およびNRP1、OX40およびCTLA−4、OX40およびNRP1、またはCTLA−4およびNRP1に特異的に結合する抗原結合部位を有する。好ましい実施形態では、二重特異性二価結合分子は、結合分子が腫瘍関連調節性T細胞を特異的に標的にするような、CD25およびOX40、CD25およびCTLA−4、CD25およびNRP1、OX40およびCTLA−4、OX40およびNRP1、またはCTLA−4およびNRP1に特異的に結合する抗原結合部位を有する。詳細な実施形態では、腫瘍関連調節性T細胞の特異的標的化は、調節性T細胞の欠乏(例えば、死滅)をもたらす。好ましい実施形態では、調節性T細胞の欠乏は、下記の6.8.1項でより詳細に議論されるように、抗体が毒素にコンジュゲートするなどの抗体−薬物コンジュゲート(ADC)の修飾によって媒介される。
6.8.さらに別の修飾
【0239】
さらなる一連の実施形態では、三価三重特異性結合分子は追加的修飾を有する。
6.8.1.抗体−薬物コンジュゲート
【0240】
様々な実施形態では、三価三重特異性結合分子は、治療剤(すなわち、薬物)にコンジュゲートされて、三価三重特異性結合分子−薬物コンジュゲートを形成する。治療剤には、化学治療剤、画像化剤(例えば、放射性同位体)、免疫調節剤(例えば、サイトカイン、ケモカイン、またはチェックポイント阻害剤)、および毒素(例えば、細胞毒性剤)が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、治療剤は、下記セクション6.8.3においてより詳細に議論されているように、リンカーペプチドを介して三価三重特異性結合分子に連結されている。
【0241】
薬物を本明細書に開示される三価三重特異性結合分子にコンジュゲートするために適合しうる抗体−薬物コンジュゲート(ADC)の調製方法は、例えば、それぞれ教示する全てについて参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,624,003号(ポット法)、米国特許第8,163,888号(ワンステップ法)、米国特許第5,208,020号(ツーステップ法)、米国特許第8,337,856号、米国特許第5,773,001号、米国特許第7,829,531号、米国特許第5,208,020号、米国特許第7,745,394号、WO2017/136623、WO2017/015502、WO2017/015496、WO2017/015495、WO2004/010957、WO2005/077090、WO2005/082023、WO2006/065533、WO2007/030642、WO2007/103288、WO2013/173337、WO2015/057699、WO2015/095755、WO2015/123679、WO2015/157286、WO2017/165851、WO2009/073445、WO2010/068759、WO2010/138719、WO2012/171020、WO2014/008375、WO2014/093394、WO2014/093640、WO2014/160360、WO2015/054659、WO2015/195925、WO2017/160754、Storz (MAbs. 2015 Nov−Dec; 7(6): 989−1009)、Lambert et al. (Adv Ther, 2017 34: 1015)、Diamantis et al. (British Journal of Cancer, 2016, 114, 362−367)、Carrico et al. (Nat Chem Biol, 2007. 3: 321−2)、We et al. (Proc Natl Acad Sci USA, 2009. 106: 3000−5)、Rabuka et al. (Curr Opin Chem Biol., 2011 14: 790−6)、Hudak et al. (Angew Chem Int Ed Engl., 2012: 4161−5)、Rabuka et al. (Nat Protoc., 2012 7:1052−67)、Agarwal et al. (Proc Natl Acad Sci USA., 2013, 110: 46−51)、Agarwal et al. (Bioconjugate Chem., 2013, 24: 846−851)、Barfield et al. (Drug Dev. and D., 2014, 14:34−41)、Drake et al. (Bioconjugate Chem., 2014, 25:1331−41)、Liang et al. (J Am Chem Soc., 2014, 136:10850−3)、Drake et al. (Curr Opin Chem Biol., 2015, 28:174−80)およびYork et al. (BMC Biotechnology, 2016, 16(1):23)に記載されている。
6.8.2.さらなる結合部分構造
【0242】
様々な実施形態では、三価三重特異性結合分子は、1つまたは複数の追加の結合部分構造を含む修飾を有する。ある特定の実施形態では、結合部分構造は、例えば、全長抗体、Fab断片、Fv、scFv、タンデムscFv、ダイアボディ、scダイアボディ、DART、tandAb、ミニボディ、カメリドVHH、および当業者に公知の他の抗体断片もしくはフォーマットを含むがこれらに限定されない抗体断片または抗体フォーマットである。例示的な抗体および抗体断片フォーマットは、教示する全てについて参照により本明細書に組み込まれるBrinkmann et al. (MABS, 2017, Vol. 9, No. 2, 182−212)において詳細に記載されている。
【0243】
特定の実施形態では、1つまたは複数の追加の結合部分構造は、第1または第3のポリペプチド鎖のC末端に連結されている。特定の実施形態では、1つまたは複数の追加の結合部分構造は、第1および第3のポリペプチド鎖の両方のC末端に連結されている。特定の実施形態では、1つまたは複数の追加の結合部分構造は、第1および第3のポリペプチド鎖の両方のC末端に連結されている。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の追加の結合部分構造の個々の部分が、機能性結合部分構造を形成するように、第1および第3のポリペプチド鎖のC末端に別個に連結されている。
【0244】
特定の実施形態では、1つまたは複数の追加の結合部分構造は、ポリペプチド鎖のいずれか(例えば、第1、第2、第3、第4、第5、または第6のポリペプチド鎖)のN末端に連結されている。ある特定の実施形態では、追加の結合部分構造の個々の部分が、機能性結合部分構造を形成するように、異なるポリペプチド鎖のN末端に別個に連結されている。
【0245】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の追加の結合部分構造は、三価三重特異性結合分子内のABSの異なる抗原またはエピトープに特異的である。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の追加の結合部分構造は、三価三重特異性結合分子内のABSの同じ抗原またはエピトープに特異的である。修飾が2つまたはそれより多い追加の結合部分構造である特定の実施形態では、追加の結合部分構造は、同じ抗原またはエピトープに特異的である。修飾が2つまたはそれより多い追加の結合部分構造である特定の実施形態では、追加の結合部分構造は、異なる抗原またはエピトープに特異的である。
【0246】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の追加の結合部分構造は、下記セクション6.8.3においてより詳細が議論されているように、例えば、反応性化学および親和性タグシステムを含むがこれらに限定されないin vitro方法を使用して三価三重特異性結合分子に連結される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の追加の結合部分構造は、Fc媒介結合(例えば、プロテインA/G)を介して三価三重特異性結合分子に連結される。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の追加の結合部分構造は、例えば、三価三重特異性結合分子と追加の結合部分構造との融合産物のヌクレオチド配列を同じ発現ベクター(例えば、プラスミド)にコード化するなどの組換えDNA技術を使用して、三価三重特異性結合分子に連結される。
6.8.3.官能基/反応基
【0247】
様々な実施形態では、三価三重特異性結合分子は、例えば追加の部分構造(例えば、上記セクション6.8.1および6.8.2においてより詳細が議論されている薬物コンジュゲートおよび追加の結合部分構造)の連結などの下流プロセスおよび下流精製プロセスにおいて使用することができる、官能基または化学的反応性基を含む修飾を有する。
【0248】
ある特定の実施形態では、修飾は、例えば、反応性チオール(例えば、マレイミド系反応性基)、反応性アミン(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド系反応性基)、「クリック化学」基(例えば、反応性アルキン基)、およびホルミルグリシン(FGly)を保持するアルデヒド類を含むがこれらに限定されない化学的反応性基である。ある特定の実施形態では、修飾は、親和性ペプチド配列(例えば、HA、HIS、FLAG、GST、MBPおよびStrepシステムなど)を含むがこれらに限定されない官能基である。ある特定の実施形態では、官能基または化学的反応性基は、開裂可能なペプチド配列を有する。特定の実施形態では、開裂可能なペプチドは、光開裂、化学開裂、プロテアーゼ開裂、還元条件、およびpH条件を含むがこれらに限定されない手段によって開裂される。特定の実施形態では、プロテアーゼ開裂は、細胞内プロテアーゼによって実施される。特定の実施形態では、プロテアーゼ開裂は、細胞外または膜会合プロテアーゼによって実施される。プロテアーゼ開裂を採用するADC治療は、教示する全てについて参照によりその全体が本明細書に組み込まれるChoi et al. (Theranostics, 2012; 2(2): 156−178.)においてより詳細に記載されている。
6.8.4.低減されたエフェクター機能
【0249】
ある特定の実施形態では、三価三重特異性結合分子は、抗体結合に通常関連するエフェクター機能を低減させる抗体ドメインのアミノ酸配列における1つまたは複数の操作された変異を有する。エフェクター機能としては、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)、補体固定(例えば、C1q結合)、抗体依存性細胞媒介性ファゴサイトーシス(ADCP)、オプソニン化など、抗体のFc部分へのFc受容体結合に起因する細胞機能が挙げられるがこれらに限定されない。エフェクター機能を低減させる操作された変異は、それの全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2017/0137530号、Armour, et al. (Eur. J. Immunol. 29(8) (1999) 2613−2624)、Shields, et al. (J. Biol. Chem. 276(9) (2001) 6591−6604)およびOganesyan, et al. (Acta Cristallographica D64 (2008) 700−704)により詳細に記載されている。
【0250】
特定の実施形態では、三価三重特異性結合分子は、FcR受容体による三価三重特異性結合分子のFc部分の結合を低減させる抗体ドメインのアミノ酸配列における1つまたは複数の操作された変異を有する。一部の実施形態では、FcR受容体は、FcRγ受容体である。特定の実施形態では、FcR受容体は、FcγRIIaおよび/またはFcγRIIIA受容体である。
【0251】
特定の実施形態では、エフェクター機能を低減させる1つまたは複数の操作された変異は、抗体のCH2ドメインにおける変異である。様々な実施形態では、1つまたは複数の操作された変異は、CH2ドメインのL234およびL235位に存在する。特定の実施形態では、1つまたは複数の操作された変異は、CH2ドメインのL234AおよびL235Aである。他の実施形態では、1つまたは複数の操作された変異は、CH2ドメインのL234、L235およびP329位に存在する。特定の実施形態では、1つまたは複数の操作された変異は、CH2ドメインのL234A、L235AおよびP329Gである。好まれる実施形態では、1つまたは複数の操作された変異は、CH2ドメインのL234A、L235AおよびP329Kである。
6.9.精製方法
【0252】
B−bodyプラットフォームを含む三価三重特異性結合分子を精製する方法が本明細書に提供される。
【0253】
一連の実施形態では、方法は、i)三価三重特異性結合分子を含む試料をCH1結合試薬と接触させるステップであって、三価三重特異性結合分子が、複合体において会合した少なくとも第1、第2、第3および第4のポリペプチド鎖を含み、複合体が、少なくとも1つのCH1ドメインまたはその部分を含み、複合体におけるCH1ドメインの数が、複合体の価数(valency)よりも少なくとも1つ少なく、接触が、CH1結合試薬がCH1ドメインまたはその部分に結合するのに十分な条件下で行われる、ステップと;ii)1つまたは複数の不完全複合体から複合体を精製するステップであって、不完全複合体が、第1、第2、第3および第4のポリペプチド鎖を含まない、ステップとを含む。
【0254】
典型的な天然に存在する抗体において、N末端からC末端へナンバリングされた第2のドメインとしてCH1ドメインをそれぞれ有する、2つの重鎖が会合する。よって、典型的な抗体は、2つのCH1ドメインを有する。CH1ドメインは、セクション6.3.10.1により詳細に記載されている。本明細書に記載されている種々の三価三重特異性結合分子において、タンパク質におけるCH1ドメインの数が有効に低減されるように、タンパク質に典型的に見出されるCH1ドメインは、別のドメインに置換されている。非限定的な説明目的の例では、典型的な抗体のCH1ドメインをCH3ドメインに置換し、単一のCH1ドメインのみを有する抗原結合タンパク質を生成することができる。
【0255】
三価三重特異性結合分子は、典型的な抗体アーキテクチャをもはや保有しないように操作された抗体アーキテクチャに基づく分子を指すこともできる。例えば、抗体は、そのNまたはC末端において拡張して、抗原結合タンパク質の価数(セクション6.3.15.1により詳細に記載されている)を増加させることができ、ある特定の実例では、CH1ドメインの数も、典型的な2つのCH1ドメインを越えて増加される。このような分子は、タンパク質におけるCH1ドメインの数が、抗原結合タンパク質の価数よりも少なくとも1つ少なくなるように、そのCH1ドメインのうち1つまたは複数を置換させることもできる。一部の実施形態では、他のドメインによって置換されるCH1ドメインの数は、単一のCH1ドメインのみを有する三価三重特異性結合分子を生成する。他の実施形態では、別のドメインによって置換されるCH1ドメインの数は、2つまたはそれよりも多いが、抗原結合タンパク質の価数よりも少なくとも1つ少ないCH1ドメインを有する三価三重特異性結合分子を生成する。特定の実施形態では、三価三重特異性結合分子が2つまたはそれよりも多いCH1ドメインを有する場合、複数のCH1ドメインは全て、同じポリペプチド鎖に存在することができる。他の特定の実施形態では、三価三重特異性結合分子が2つまたはそれよりも多いCH1ドメインを有する場合、複数のCH1ドメインは、完全複合体に存在する同じポリペプチド鎖の複数コピーにおける単一のCH1ドメインとなることができる。
6.9.1.CH1結合試薬
【0256】
三重特異性三価結合分子を精製する例示的で非限定的な方法において、三価三重特異性結合分子を含む試料は、CH1結合試薬と接触される。本明細書に記載されているCH1結合試薬は、CH1エピトープに特異的に結合するいずれかの分子となることができる。CH1エピトープをもたらす様々なCH1配列は、セクション6.3.10.1により詳細に記載されており、特異的結合は、セクション6.3.15.1により詳細に記載されている。
【0257】
一部の実施形態では、CH1結合試薬は、免疫グロブリンタンパク質に由来し、CH1エピトープに特異的に結合する抗原結合部位(ABS)を有する。特定の実施形態では、CH1結合試薬は、「抗CH1抗体」とも称される抗体である。抗CH1抗体は、種々の種に由来することができる。特定の実施形態では、抗CH1抗体は、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ラクダ、ロバ、ヤギおよびヒト抗体を含むがこれらに限定されない、哺乳動物抗体である。特定の実施形態では、抗CH1抗体は、単一ドメイン抗体である。本明細書に記載されている単一ドメイン抗体は、ABSを形成し、CH1エピトープに特異的に結合する単一の可変ドメインを有する。例示的な単一ドメイン抗体としては、それが教示する全てについて参照により本明細書に組み込まれる、国際出願WO2009/011572により詳細に記載されているラクダおよびサメに由来する重鎖抗体が挙げられるがこれらに限定されない。好まれる実施形態では、抗CH1抗体は、ラクダ由来の抗体(「ラクダ類抗体」とも称される)である。例示的なラクダ類抗体としては、ヒトIgG−CH1 CaptureSelect(商標)(ThermoFisher、#194320010)およびヒトIgA−CH1(ThermoFisher、#194311010)が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、抗CH1抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は典型的に、培養されている抗体産生細胞系から産生される。他の実施形態では、抗CH1抗体は、ポリクローナル抗体、すなわち、それぞれがCH1エピトープを認識する異なる抗CH1抗体の集合体である。ポリクローナル抗体は典型的に、目的の抗原またはその断片、この場合はCH1で免疫化した動物の抗体含有血清を収集することにより産生される。
【0258】
一部の実施形態では、CH1結合試薬は、免疫グロブリンタンパク質に由来しない分子である。このような分子の例としては、Perret and Boschetti (Biochimie, Feb. 2018, Vol 145:98−112)により詳細に記載されている通り、アプタマー、ペプトイドおよびアフィボディ(affibody)が挙げられるがこれらに限定されない。
6.9.2.固体支持体
【0259】
三重特異性三価結合分子を精製する例示的で非限定的な方法において、CH1結合試薬は、本発明の様々な実施形態では、固体支持体に取り付けることができる。本明細書に記載されている固体支持体は、他の実体、例えば、CH1結合試薬を取り付けるまたは固定化することができる材料を指す。「担体」とも称される固体支持体は、国際出願WO2009/011572により詳細に記載されている。
【0260】
特定の実施形態では、固体支持体は、ビーズまたはナノ粒子を含む。ビーズおよびナノ粒子の例としては、アガロースビーズ、ポリスチレンビーズ、磁気ナノ粒子(例えば、Dynabeads(商標)、ThermoFisher)、ポリマー(例えば、デキストラン)、合成ポリマー(例えば、Sepharose(商標))、またはCH1結合試薬の取付けに適した他のいずれかの材料が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、固体支持体は、CH1結合試薬の取付けを可能にするように修飾される。固体支持体修飾の例としては、タンパク質と共有結合を形成する化学修飾(例えば、活性化されたアルデヒド基)、およびCH1結合試薬のコグネート修飾と特異的に対形成する修飾(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン対、ジスルフィド連結、ポリヒスチジン−ニッケル、またはアジド−アルキニル対などの「クリックケミストリー」修飾)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0261】
ある特定の実施形態では、三価三重特異性結合分子へのCH1結合試薬接触に先立ち、CH1結合試薬は、固体支持体に取り付けられ、「抗CH1樹脂」とも本明細書で称される。一部の実施形態では、抗CH1樹脂は、溶液中に分散される。他の実施形態では、抗CH1樹脂は、カラム内に「充填される」。次に、抗CH1樹脂は、三価三重特異性結合分子と接触され、CH1結合試薬は、三価三重特異性結合分子に特異的に結合する。
【0262】
他の実施形態では、CH1結合試薬が三価三重特異性結合分子に接触した後に、CH1結合試薬は、固体支持体に取り付けられる。非限定的な例証として、ビオチン修飾を有するCH1結合試薬は、三価三重特異性結合分子と接触させることができ、その後、CH1結合試薬/三価三重特異性結合分子混合物は、ストレプトアビジン修飾固体支持体と接触させて、三価三重特異性結合分子に特異的に結合されたCH1結合試薬を含むCH1結合試薬を固体支持体に取り付けることができる。
【0263】
CH1結合試薬が固体支持体に取り付けられる方法において、種々の実施形態では、結合された三重特異性三価結合分子は、固体支持体から放出または「溶出」され、三価三重特異性結合分子を有する溶出液を形成する。一部の実施形態では、対形成した修飾を反転させる(例えば、ジスルフィド連結の還元)、三価三重特異性結合分子と競合して外すための試薬を添加する(例えば、ニッケルへの結合に関してポリヒスチジンと競合するイミダゾールの添加)、三価三重特異性結合分子を切断して外す(例えば、修飾に切断可能部分が含まれていてよい)、または三価三重特異性結合分子に対するCH1結合試薬の特異的結合に他の仕方で干渉することにより、結合された三重特異性三価結合分子が放出される。特異的結合に干渉する方法としては、CH1結合試薬に結合された三重特異性三価結合分子と低pH溶液との接触が挙げられるがこれに限定されない。好まれる実施形態では、低pH溶液は、0.1M酢酸、pH4.0を含む。他の実施形態では、結合された三重特異性三価結合分子は、ある範囲の低pH溶液、すなわち、「勾配」と接触させることができる。
6.9.3.さらなる精製
【0264】
例示的で非限定的な方法の一部の実施形態では、三価三重特異性結合分子をCH1結合試薬と接触させ、続いて三価三重特異性結合分子を溶出するステップを使用した方法の単一の反復が使用されて、1つまたは複数の不完全複合体から三価三重特異性結合分子を精製する。特定の実施形態では、他の精製ステップは行われない。他の実施形態では、1つまたは複数の追加的な精製ステップが行われて、1つまたは複数の不完全複合体から三価三重特異性結合分子をさらに精製する。1つまたは複数の追加的な精製ステップとしては、サイズ(例えば、サイズ排除クロマトグラフィ)、電荷(例えば、イオン交換クロマトグラフィ)または疎水性(例えば、疎水性相互作用クロマトグラフィ)などの他のタンパク質特徴に基づく三価三重特異性結合分子の精製が挙げられるがこれらに限定されない。好まれる実施形態では、追加的な陽イオン交換クロマトグラフィが行われる。その上、上述のCH1結合試薬と三価三重特異性結合分子との接触を繰り返すと共に、反復間のCH1精製方法を修飾して、例えば、第1の反復のための溶出ステップおよびその後の溶出のための勾配溶出を使用して、三価三重特異性結合分子は、さらに精製することができる。
6.9.4.複合体のアセンブリおよび純度
【0265】
本発明の実施形態では、少なくとも4つの別個のポリペプチド鎖が、一体に会合して、完全複合体、すなわち、三価三重特異性結合分子を形成する。しかし、少なくとも4つの別個のポリペプチド鎖を含有しない不完全複合体を形成する場合もある。例えば、ポリペプチド鎖のうち1、2または3つのみを有する不完全複合体を形成し得る。他の例では、不完全複合体は、4つ以上のポリペプチド鎖を含有することができるが、少なくとも4つの別個のポリペプチド鎖を含有しない、例えば、不完全複合体は、別個のポリペプチド鎖の2つ以上のコピーと不適切に会合する。本発明の方法は、不完全複合体から複合体、すなわち、完全にアセンブルした三重特異性三価結合分子を精製する。
【0266】
精製ステップの有効性および効率を評価するための方法は、当業者にとって周知であり、そのようなものとしては、SDS−PAGE解析、イオン交換クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィおよび質量分析が挙げられるがこれらに限定されない。純度は、種々の判断基準に従って評価することもできる。判断基準の例としては、1)完全にアセンブルされた三重特異性三価結合分子によって提供される溶出液における総タンパク質のパーセンテージの評価、2)所望の産物を精製するための方法の倍数濃縮またはパーセント増加の評価、例えば、溶出液における完全にアセンブルされた三重特異性三価結合分子によって提供される総タンパク質の、出発試料におけるものとの比較、3)特異的な望まれない産物(例えば、会合していない単一のポリペプチド鎖、ポリペプチド鎖のいずれかの組合せの二量体、またはポリペプチド鎖のいずれかの組合せの三量体)のパーセントまたはパーセント減少の決定を含む、望まれない産物、例えば、上述の不完全複合体の総タンパク質のパーセンテージ、またはパーセント減少の評価が挙げられるがこれらに限定されない。純度は、本明細書に記載されている方法のいずれかの組合せの後に評価することができる。例えば、純度は、本明細書に記載されている通り、抗CH1結合試薬を使用した単一の反復の後に、またはセクション6.9.3により詳細に記載されている通り、追加的な精製ステップの後に評価することができる。精製ステップの有効性および効率を使用して、抗CH1結合試薬を使用して記載されている方法を、プロテインA精製などの当業者にとって公知の他の精製方法と比較することもできる。
6.10.製造方法
【0267】
本明細書に記載されている三価三重特異性結合分子は、抗体製造のために現在使用されている、標準無細胞翻訳、一過性トランスフェクションおよび安定したトランスフェクションアプローチを使用した発現により容易に製造することができる。特定の実施形態では、ExpiFectamineなどのThermoFisherのプロトコールおよび試薬、またはそれが教示する全てについて参照により本明細書に組み込まれるFang et al. (Biological Procedures Online, 2017, 19:11)に詳細に記載されているポリエチレンイミンなどの当業者にとって公知の他の試薬を使用して、Expi293細胞(ThermoFisher)を三価三重特異性結合分子の産生のために使用することができる。
【0268】
後述する実施例にさらに記載されている通り、CaptureSelect CH1樹脂などのCH1親和性樹脂およびThermoFisherから提供されたプロトコールを使用して、発現されたタンパク質は、望まれないタンパク質およびタンパク質複合体から容易に分離することができる。他の精製戦略としては、プロテインA、プロテインGまたはプロテインA/G試薬の使用が挙げられるがこれらに限定されない。当技術分野でルーチンに使用される通り、イオン交換クロマトグラフィを使用して、さらなる精製をもたらす(affect)ことができる。
6.11.医薬組成物
【0269】
別の態様では、本明細書に記載される三価三重特異性結合分子と、薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物が提供される。典型的な実施形態では、医薬組成物は滅菌される。
【0270】
様々な実施形態では、医薬組成物は、三価三重特異性結合分子を0.1mg/ml〜100mg/mlの濃度で含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、三価三重特異性結合分子を、0.5mg/ml、1mg/ml、1.5mg/ml、2mg/ml、2.5mg/ml、5mg/ml、7.5mg/mlまたは10mg/mlの濃度で含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、三価三重特異性結合分子を、10mg/mlを超える濃度で含む。ある特定の実施形態では、三価三重特異性結合分子は、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、40mg/ml、45mg/ml、またはさらには50mg/mlもしくはそれより高い濃度で存在する。特定の実施形態では、三価三重特異性結合分子は、50mg/mlを超える濃度で存在する。
【0271】
様々な実施形態では、医薬組成物は、それぞれその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,961,964号、米国特許第8,945,865号、米国特許第8,420,081号、米国特許第6,685,940号、米国特許第6,171,586号、米国特許第8,821,865号、米国特許第9,216,219号、米国特許出願第10/813,483号、WO2014/066468、WO2011/104381およびWO2016/180941においてより詳細に記載されている。
6.12.処置方法
【0272】
別の態様では、処置方法であって、患者の処置に有効な量で、本明細書に記載されている三価三重特異性結合分子を患者に投与するステップを含む方法が提供される。
【0273】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、がんを処置するために使用されうる。がんは、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸管、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、上咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌または子宮由来のがんとなることができる。一部の実施形態では、がんは、新生物、悪性腫瘍;癌腫;未分化の癌腫;巨細胞および紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;ピロマトリックス癌;移行上皮癌;乳頭移行上皮癌;腺癌;悪性ガストリノーマ;胆管細胞癌;肝細胞癌;混合型肝細胞癌および肝細胞癌;小柱状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープにおける腺癌;家族性大腸ポリポーシスの腺癌;固形癌;悪性カルチノイド腫瘍;細気管支(branchiolo)−肺胞腺癌;乳頭腺癌;嫌色素性癌;好酸性癌;好酸性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞状腺癌;乳頭状濾胞状腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;類内膜(endometroid)癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳道腺癌;粘膜表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液腺癌;印環細胞癌;浸潤性腺管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性乳癌;乳房のパジェット病;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌:扁平上皮化生を伴う腺癌;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質性腫瘍;悪性莢膜細胞腫;悪性顆粒膜細胞腫;悪性セルトリ間質細胞腫瘍;セルトリ細胞癌;悪性ライディッヒ細胞腫;悪性脂質細胞腫瘍;悪性傍神経節腫;悪性乳房外傍神経節腫;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性黒色腫;メラニン欠乏性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑における悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;悪性線維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫;悪性混合腫瘍;ミュラー混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽腫;癌肉腫;悪性間葉腫;悪性ブレンナー腫瘍;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚細胞腫;胚性癌腫;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛癌;悪性中腎腫;血管肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性血管周囲細胞腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽細胞腫;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル上皮肉腫;悪性エナメル上皮腫;エナメル上皮線維肉腫;悪性松果体腫;脊索腫;悪性神経膠腫;上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星状細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起膠腫;未分化神経外胚葉性腫瘍;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経原性腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫;悪性顆粒細胞腫;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン側肉芽腫;小リンパ球型悪性リンパ腫;びまん性大細胞型悪性リンパ腫;濾胞性悪性リンパ腫;菌状息肉腫;他の特定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞性白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;およびヘアリー細胞白血病であり得る。
【0274】
本開示の抗体は、例えば、がん、自己免疫、移植拒絶反応、外傷後の免疫応答、移植片対宿主病、虚血、脳卒中、および感染症の処置のために、例えば、HIVのgp120などのウイルス抗原を標的とすることにより、それ自体または医薬組成物の形態で、対象に投与することができる。
6.13.
【実施例】
【0275】
以下の実施例は、例示として提供されるものであり、限定するものではない。
6.13.1.方法
【0276】
様々な抗原結合タンパク質の精製のための非限定的な説明目的の方法、および様々なアッセイにおけるそれらの使用は、下により詳細に記載されている。
6.13.1.1.Expi293発現
【0277】
製造業者の使用説明書に従ってExpi293一過性トランスフェクション系を使用して、検査されている様々な抗原結合タンパク質を発現させた。簡潔に説明すると、4つの個々の鎖をコードする4つのプラスミドを、他に記述がなければ1:1:1:1質量比で混合し、ExpiFectamine 293トランスフェクションキットを用いてExpi 293細胞へとトランスフェクトした。細胞を37℃で、8%CO2、100%湿度にて、125rpmで振盪しつつ培養した。トランスフェクトした細胞に、トランスフェクションの16〜18時間後に1回栄養供給した。2000gで10分間の遠心分離により、5日目に細胞を回収した。親和性クロマトグラフィ精製のために上清を収集した。
6.13.1.2.プロテインAおよび抗CH1精製
【0278】
様々な抗原結合タンパク質を含有する清澄化された上清を、AKTA Purifier FPLCにおいてプロテインA(ProtA)樹脂または抗CH1樹脂のいずれかを使用して分離した。直接(head−to−head)比較が行われた例において、様々な抗原結合タンパク質を含有する上清を、2つの等しい試料へと分割した。ProtA精製のため、1mLプロテインAカラム(GE Healthcare)をPBS(5mMリン酸ナトリウム・リン酸カリウム(sodium potassium phosphate)pH7.4、150mM塩化ナトリウム)で平衡化した。5ml/分にて試料をカラムにロードした。0.1M酢酸pH4.0を使用して試料を溶出した。280nmの吸光度により溶出をモニターし、解析のために溶出ピークをプールした。抗CH1精製のため、1mL CaptureSelect(商標)XLカラム(ThermoFisher)をPBSで平衡化した。5ml/分にて試料をカラムにロードした。0.1M酢酸pH4.0を使用して試料を溶出した。280nmの吸光度により溶出をモニターし、解析のために溶出ピークをプールした。
6.13.1.3.SDS−Page解析
【0279】
様々な分離された抗原結合タンパク質を含有する試料は、完全産物、不完全産物の存在および全体的な純度に関して、還元および非還元SDS−PAGEにより解析した。2μgの各試料を、15μL SDSローディング緩衝剤に添加した。還元試料は、10mM還元剤の存在下で75℃にて10分間インキュベートした。非還元試料は、還元剤なしで95℃にて5分間インキュベートした。還元および非還元試料を、ランニング緩衝剤により4〜15%勾配TGXゲル(BioRad)にロードし、30分間250ボルトでランを行った。ランの完了後に、ゲルをDI水で洗浄し、GelCode Blue Safe Protein Stain(ThermoFisher)を使用して染色した。解析に先立ちゲルをDI水で脱染した。脱染したゲルのスキャンした画像のデンシトメトリー解析を、標準画像解析ソフトウェアを使用して行って、各試料におけるバンドの相対的存在量を計算した。
6.13.1.4.IEXクロマトグラフィ
【0280】
様々な分離された抗原結合タンパク質を含有する試料は、完全産物の不完全産物および不純物に対する比に関して陽イオン交換クロマトグラフィにより解析した。清澄化された上清は、AKTA Purifier FPLCにおける5ml MonoS(GE Lifesciences)により解析した。MonoSカラムを緩衝剤A、10mM MES、pH6.0で平衡化した。2ml/分にて試料をカラムにロードした。6CVにわたる緩衝剤B(10mM MES、pH6.0、1M塩化ナトリウム)による0〜30%勾配を使用して試料を溶出した。280nmの吸光度により溶出をモニターし、ピーク積分により試料の純度を計算して、単量体ピークおよび夾雑物ピークの存在量を同定した。単量体ピークおよび夾雑物ピークは、上述のSDS−PAGEによる解析のために別々にプールした。
6.13.1.5.分析的SECクロマトグラフィ
【0281】
様々な分離された抗原結合タンパク質を含有する試料は、単量体の高分子量産物および不純物に対する比に関して分析的サイズ排除クロマトグラフィにより解析した。清澄化された上清は、Agilent 1100 HPLCにおける業界標準TSK G3000SWxlカラム(Tosoh Bioscience)により解析した。TSKカラムをPBSで平衡化した。1mg/mLの各試料25μLを、1ml/分にてカラムにロードした。1.5CVのPBSの均一濃度の流れを使用して試料を溶出した。280nmの吸光度により溶出をモニターし、ピーク積分により溶出ピークを解析した。
6.13.1.6.質量分析
【0282】
様々な分離された抗原結合タンパク質を含有する試料を、質量分析により解析して、分子量により正確な種を確認した。全解析は、第三者研究機関により行われた。簡潔に説明すると、試料は、酵素のカクテルで処置して、グリコシル化を除去した。試料は両者共に還元フォーマットで検査して、分子量により各鎖を特異的に同定した。試料は全て、非還元条件下で検査して、試料における全ての複合体の分子量を同定した。質量スペクトル解析を使用して、分子量に基づき特有の産物の数を同定した。
6.13.1.7.ファージディスプレイによる抗体発見
【0283】
ヒトFabライブラリのファージディスプレイは、標準プロトコールを使用して行われる。目的のビオチン化抗原は、購入されるか、または合成される。標準プロトコールを使用したファージELISAにより、目的の抗原に結合する能力に関してファージクローンをスクリーニングする。簡潔に説明すると、ファージにおける複製および発現が可能な発現ベクター(ファージミドとも称される)を使用して、Fabフォーマットされたファージライブラリを構築する。重鎖および軽鎖の両方が、同じ発現ベクターにおいてコードされており、重鎖は、ファージコートタンパク質pIIIのトランケートバリアントに融合された。軽鎖および重鎖−pIII融合体は、別々のポリペプチドとして発現され、細菌周辺質においてアセンブルし、そこで、レドックス潜在力が、ジスルフィド結合形成を可能にして、候補ABSを含有するファージディスプレイ抗体を形成する。ライブラリにおいて使用されるファージディスプレイ重鎖(配列番号74)および軽鎖(配列番号75)足場は、下に収載されており、それによると、小文字「x」は、ライブラリを作成するために変動されたCDRアミノ酸を表し、太字イタリック体は、一定であったCDR配列を表す。
【0284】
特異的ライブラリは、VL CDR配列およびVH CDR配列に多様性を導入することによって生成される。多様性は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるKunkel, TA (PNAS January 1, 1985. 82 (2) 488−492)により詳細に記載されている通り、自然抗体レパートリーにおいて見出される多様性を模倣するためにVL CDR3、ならびにVH CDR1(H1)、CDR2(H2)およびCDR3(H3)に多様性を導入するプライマーを使用する、Kunkel変異生成によって作成される。簡潔に説明すると、標準手順を使用して、単離されたファージから一本鎖DNAを調製し、Kunkel変異誘発を実行する。次に、化学合成されたDNAを電気穿孔してTG1細胞に入れ、続いて回収する。回収された細胞を継代培養し、M13K07ヘルパーファージに感染させて、ファージライブラリを産生する。
【0285】
標準手順を使用してファージパニングを行う。簡潔に説明すると、ファージパニングの第1のラウンドは、PBST−2%BSAにおける1mLの体積で、調製されたライブラリ由来の約5×10
12個のファージに晒した、ストレプトアビジン磁気ビーズに固定化された標的により行う。1時間インキュベーション後に、ビーズに結合したファージを、磁気スタンドを使用して上清から分離する。ビーズを3回洗浄して、非特異的に結合したファージを除去し、次いでこれを、OD
600約0.6のER2738細胞(5mL)に添加する。20分後に、感染した細胞を、25mL 2×YT+アンピシリンおよびM13K07ヘルパーファージにおいて継代培養し、激しく振盪しつつ一晩37℃で育成する。翌日、PEG沈殿による標準手順を使用してファージを調製する。SAVコーティングされたビーズに特異的なファージのプレクリアランス(Pre−clearance)をパニングに先立ち行う。標準手順を使用した100nMビーズ固定化抗原によるKingFisher磁気ビーズハンドラーを使用して、パニングの第2のラウンドを行う。総計して、3〜4ラウンドのファージパニングを行って、標的抗原に特異的なFabをディスプレイするファージを濃縮する。標的特異的濃縮は、ポリクローナルおよびモノクローナルファージELISAを使用して確認する。DNA配列決定を使用して、候補ABSを含有する単離されたFabクローンを決定する。
【0286】
抗原結合剤発見キャンペーンにおいて結合親和性を測定するために、上述のファージスクリーニングにおいて同定されたVLおよびVHドメインを、二価単一特異性ネイティブヒト全長IgG1アーキテクチャへとフォーマットし、Octet(Pall ForteBio)バイオレイヤー(biolayer)干渉計におけるバイオセンサーに固定化した。目的の可溶性抗原は、次いで、系に添加され、結合が測定される。
【0287】
B−bodyフォーマットを使用して行われる実験のため、下に示す通り、また、
図3を参照する通り、個々のクローンのVL可変領域を二価1×1 B−body「BC1」足場のドメインAおよび/またはHへとフォーマットし、VH領域をそのドメインFおよび/またはLへとフォーマットする。
【0288】
「BC1」足場:
第1のポリペプチド鎖(配列番号78)
ドメインA=抗原1 B−bodyドメインA/H足場(配列番号76)
ドメインB=CH3(T366K;445K、446S、447Cトリペプチド挿入)
ドメインD=CH2
ドメインE=CH3(T366W、S354C)
第2のポリペプチド鎖(配列番号79):
ドメインF=抗原1 B−bodyドメインF/L足場(配列番号77)
ドメインG=CH3(L351D;445G、446E、447Cトリペプチド挿入)
第3のポリペプチド鎖(配列番号80):
ドメインH=抗原2 B−bodyドメインA/H足場(配列番号76)
ドメインI=CL(カッパ)
ドメインJ=CH2
ドメインK=CH3(Y349C、D356E、L358M、T366S、L368A、Y407V)
第4のポリペプチド鎖(配列番号81):
ドメインL=抗原2 B−bodyドメインF/L足場(配列番号77)
ドメインM=CH1。
【0289】
BC1 1×2フォーマットのために、可変ドメインは、上記の鎖1、2および4、ならびに配列番号82の配列を有する鎖3のスキャフォールドにフォーマット化され、ドメインSおよびドメインHの間のジャンクションは、配列TASSGGSSSG(配列番号83)を有する10アミノ酸リンカーである。ポリペプチド鎖2および鎖6は、1×2フォーマットにおいて同一である。
6.13.1.8.NFκB GFP Jurkat T細胞刺激アッセイ
【0290】
NFκB/Jurkat/GFP転写レポーター細胞系は、System Biosciences(Cat#TR850−1)から購入した。同時刺激に使用された抗CD28抗体は、BD Pharmingen(Cat 555725)から購入した。溶液Cバックグラウンド抑制色素は、Life Technologies(K1037)から購入した。簡潔に説明すると、96ウェルの黒色の壁と透明な底のプレートにおいて、B−body(商標)抗体の希釈系列および1ug/mLの抗CD28抗体の存在下、Jurkat細胞(エフェクター細胞、E)を腫瘍細胞(T)と2:1〜4:1のE:T比で混合した。プレートを37℃/5%CO
2で6時間インキュベートし、その後、溶液Cバックグラウンドサプレッサーの6×溶液をプレートに添加し、プレートリーダーにおいてGFP蛍光を読み出した。最大半量応答を生じる抗体の濃度を指すEC50値を、希釈系列から決定した。
6.13.1.9.初代T細胞細胞傷害性アッセイ
【0291】
標的腫瘍抗原を発現する細胞(T)およびエフェクター細胞(E)を3:1〜10:1に及ぶE:T比で混合した。使用されたエフェクター細胞は、PBMCまたは単離された細胞傷害性CD8+T細胞を含む。候補の再び方向付けるT細胞抗体は、希釈系列で細胞に添加した。対照は、培地のみ対照、腫瘍細胞のみ対照、および無処置E:T細胞対照を含んだ。混合した細胞および対照条件を37℃/5%CO
2で40〜50時間インキュベートした。Cytotoxicity Detection Kit Plus(LDH)は、Sigma(Cat 4744934001)から購入し、製造業者の指示に従った。簡潔に説明すると、腫瘍細胞に添加した溶解溶液は、100%細胞傷害性対照とし、無処置E:T細胞は、0%細胞傷害性対照とした。各試料における乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)のレベルは、490nmの吸光度により決定し、100%および0%対照に対して正規化した。最大半量応答を生じる抗体の濃度を指すEC50値を、希釈系列から決定した。
6.13.2.
(実施例1)
二価単一特異性構築物および二価の二重特異性構築物
【0292】
TNFαを認識する二価単一特異性B−Bodyを、標準的な分子生物学的手法を使用して、以下の構成(VL(セルトリズマブ)−CH3(ノブ)−CH2−CH3/VH(セルトリズマブ)−CH3(ホール))で構築した。この構築物において、
第1のポリペプチド鎖(配列番号1)
ドメインA=VL(セルトリズマブ)
ドメインB=CH3(IgG1)(ノブ:S354C+T366W)
ドメインD=CH2(IgG1)
ドメインE=CH3(IgG1)
第2のポリペプチド鎖(配列番号2)
ドメインF=VH(セルトリズマブ)
ドメインG=CH3(IgG1)(ホール:Y349C、T366S、L368A、Y407V)
第3のポリペプチド鎖:
第1のポリペプチド鎖と同一
第4のポリペプチド鎖:
第2のポリペプチド鎖と同一。
【0293】
ドメインおよびポリペプチド鎖の参照は、
図3に従う。構築物の全体の構成を
図4に示す。「(VL)」と略記して特定されているドメインAを有する第1のポリペプチド鎖の配列は、配列番号1で提供される。「(VH)」と略記して特定されているドメインFを有する第2のポリペプチド鎖の配列は、配列番号2で提供される。
【0294】
全長構築物を、E.coli無細胞タンパク質合成発現系で、約18時間、26℃で穏やかに撹拌しながら発現させた。発現後、無細胞抽出物を遠心分離して、不溶性物質をペレット化し、上清を、10×カイネティックバッファー(Forte Bio)で2倍希釈して、バイオレイヤー干渉のための検体として使用した。
【0295】
ビオチン化TNFαを、ストレプトアビジンセンサーに固定化し、約1.5nmのウェーブシフト応答に付した。10×カイネティックバッファーでベースラインを確立した後、センサーを、抗体構築物検体溶液中に浸漬した。構築物は、セルトリズマブの従来のIgGフォーマットに匹敵する約3nmの応答を与え、機能性の全長抗体へと組み立てられる二価単一特異性構築物の能力を実証した。結果を
図5に示す。
【0296】
本発明者らはまた、以下のドメイン構成を有する二価の二重特異性抗体を構築した:
第1のポリペプチド鎖:VL−CH3−CH2−CH3(ノブ)
第2のポリペプチド鎖:VH−CH3
第3のポリペプチド鎖:VL−CL−CH2−CH3(ホール)
第4のポリペプチド鎖 VH−CH1。
【0297】
配列(可変領域配列を除く)を、配列番号3(第1のポリペプチド鎖)、配列番号4(第2のポリペプチド鎖)、配列番号5(第3のポリペプチド鎖)、配列番号6(第4のポリペプチド鎖)でそれぞれ示す。
6.13.3.
(実施例2)
二価の二重特異性B−Body「BC1」
【0298】
本発明者らは、PD1および第2の抗原「抗原A」に特異的な「BC1」と称する二価の二重特異性構築物を構築した。「BC1」構成の顕著な特徴を、
図6に示す。
【0299】
さらに詳細に、
図3に従ってドメインおよびポリペプチド鎖の参照を示し、天然の配列からの修飾を括弧内に示すと、構成は、以下の通りであった:
第1のポリペプチド鎖(配列番号8)
ドメインA=VL(「抗原A」)
ドメインB=CH3(T366K;445K、446S、447Cトリペプチド挿入)
ドメインD=CH2
ドメインE=CH3(T366W、S354C)
第2のポリペプチド鎖(配列番号9):
ドメインF=VH(「抗原A」)
ドメインG=CH3(L351D;445G、446E、447Cトリペプチド挿入)
第3のポリペプチド鎖(配列番号10):
ドメインH=VL(「Nivo」)
ドメインI=CL(カッパ)
ドメインJ=CH2
ドメインK=CH3(Y349C、D356E、L358M、T366S、L368A、Y407V)
第4のポリペプチド鎖(配列番号11):
ドメインL=VH(「Nivo」)
ドメインM=CH1。
【0300】
Aドメイン(配列番号12)およびFドメイン(配列番号16)は、「抗原A」に特異的な抗原結合部位(A:F)を形成する。Hドメインは、ニボルマブ由来のVH配列を有し、Lドメインは、ニボルマブ由来のVL配列を有し;HおよびLは会合して、ヒトPD1に特異的な抗原結合部位(H:L)を形成する。
【0301】
Bドメイン(配列番号13)は、いくつかの変異、つまりT366K、445K、446Sおよび447C挿入を有するヒトIgG1 CH3の配列を有する。T366K変異は、ドメインGにおけるL351D残基の電荷対コグネートである。ドメインBにおける「447C」残基は、C末端KSCトリペプチド挿入に由来するものである。
【0302】
ドメインD(配列番号14)は、ヒトIgG1 CH2の配列を有する。
【0303】
ドメインE(配列番号15)は、変異T366WおよびS354Cを有するヒトIgG1 CH3の配列を有する。366Wは、「ノブ」変異である。354Cは、ドメインKにおけるコグネート349C変異とジスルフィド結合を形成することができるシステインを導入する。
【0304】
ドメインG(配列番号17)は、以下の変異:L351D、および445G、446E、447Cトリペプチド挿入を有する、ヒトIgG1 CH3の配列を有する。L351D変異は、ドメインB T366K変異に対する電荷対コグネートを導入する。ドメインGの「447C」残基は、C末端GECトリペプチド挿入に由来する。
【0305】
ドメインI(配列番号19)は、ヒトCカッパ軽鎖(Cκ)の配列を有する。
【0306】
ドメインJ[配列番号20]は、ヒトIgG1 CH2ドメインの配列を有し、ドメインDの配列と同一である。
【0307】
ドメインK[配列番号21]は、以下の変化:Y349C、D356E、L358M、T366S、L368A、Y407Vを有するヒトIgG1 CH3の配列を有する。349C変異は、ドメインEのコグネート354C変異とジスルフィド結合を形成することができるシステインを導入する。356EおよびL358Mは、免疫原性を減少させるイソアロタイプアミノ酸を導入する。366S、368Aおよび407Vは、「ホール」変異である。
【0308】
ドメインM[配列番号23]は、ヒトIgG1 CH1領域の配列を有する。
【0309】
「BC1」は、哺乳動物発現を使用して100μg/mlを超える濃度で、高レベルで容易に発現することができる。
【0310】
本発明者らは、二価の二重特異性「BC1」タンパク質が、ThermoFisherからのCH1特異的CaptureSelect(商標)親和性樹脂を使用して単一ステップで容易に精製することができることを見出した。
【0311】
図7Aに示すように、SEC解析は、単一ステップのCH1親和性精製ステップにより、ゲル濾過を介して、>98%がモノマーである単一の単分散ピークが得られることを実証する。
図7Bは、CrossMab二価抗体構築物のSEC解析の比較文献データを示す。
【0312】
図8Aは、CaptureSelect(商標)CH1親和性樹脂を使用してワンステップ精製した後の「BC1」の陽イオン交換クロマトグラフィ溶出プロファイルであって、単一のタイトなピークが示されている。
図8Bは、標準的なプロテインA精製を使用して精製した後の「BC1」の陽イオン交換クロマトグラフィ溶出プロファイルであり、不完全な組み立て産物の同時精製と一致する追加的な溶出ピークを示す。
【0313】
図9は、非還元条件下のSDS−PAGEゲルを示す。レーン3でみられるように、CH1親和性樹脂を用いた「BC1」の単一ステップの精製により、ほぼ均一な単一バンドが得られる。レーン4は、続いて陽イオン交換仕上げ工程で最小の追加的な精製を行ったものを示す。レーン7は、比較による、標準的なプロテインA精製を使用した軽度の精製を示し、レーン8〜10は、陽イオン交換クロマトグラフィを使用した、プロテインA精製物質のさらなる精製を示す。
【0314】
図10は、非還元および還元条件下の両方での単一ステップのCH1−親和性精製後の「BC1」のSDS−PAGEゲル(パネルA)を、参照文献で公開されている非還元および還元条件下のCrossMab二重特異性抗体のSDS−PAGEゲル(パネルB)と比較した図である。
【0315】
図11は、還元条件下の2つの別個の重鎖(
図11A)、および2つの別個の軽鎖(
図11B)を実証する「BC1」の質量分析の解析を示す。
図12における質量分析データは、精製後の不完全対形成の非存在を確認する。
【0316】
加速安定性試験を実行して、「BC1」B−Body設計の長期安定性を評価した。精製されたB−BodyをPBSバッファー中8.6mg/mlに濃縮して40℃でインキュベートした。構造的完全性をShodex KW−803カラムを備えた分析的サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を使用して毎週測定した。構造的完全性を、凝集物の形成と関連させて、無傷のモノマーのパーセンテージ(%モノマー)を測定することによって決定した。データを
図13に示す。IgG対照1は、良好な安定性特性を有する陽性対照である。IgG対照2は、インキュベーション条件下で凝集することが公知の陰性対照である。「BC1」B−Bodyは、分析的SECで決定されるように、構造的完全性を何ら失うことなく、8週間、インキュベートされた。
【0317】
また、二価構築物のTMは約72℃であり、本発明者らは、「BC1」が高い耐熱性を有すると決定した。
【0318】
表1は、重要な開発性特徴について、「BC1」とCrossMabとを比較する。
【表1】
*Schaefer et al. (Proc Natl Acad Sci USA. 2011 Jul 5;108(27):11187−92)からのデータ
6.13.4.
(実施例3)
二価の二重特異性B−Body「BC6」
【0319】
本発明者らは、「BC6」と称する二価の二重特異性B−Bodyを構築した。「BC6」は、「BC1」と同様であるが、ドメインBの残基366およびドメインGの残基351で野生型残基を保持していることを除いてBC1と同一であった。したがって「BC6」は、「BC1」のドメインBとドメインGにおける正しい対形成を容易にするように設計された電荷対コグネートT366KおよびL351Dを欠く。「BC6」構成の顕著な特徴を
図14に示す。
【0320】
「BC1」に存在する電荷対残基の非存在にもかかわらず、CH1親和性樹脂を使用した「BC6」の単一ステップの精製は、高度に均質な試料をもたらすことが分かった。
図15Aは、CaptureSelect(商標)CH1親和性樹脂を使用したワンステップ精製後の「BC6」のSEC解析を示す。データは、単一のステップCH1親和性精製によって、「BC1」での観察と同様に、単一の単分散ピークが得られることを実証し、ポリペプチド鎖1とポリペプチド鎖2との間およびポリペプチド鎖3とポリペプチド鎖4との間のジスルフィド結合が無傷のままであることを実証する。またクロマトグラムは、非共有結合性の凝集物が存在しないことも示す。
【0321】
図15Bは、非還元条件下のSDS−PAGEゲルを示し、レーン1は単一ステップのCH1親和性精製後の「BC6」の第1のロットをローディングしたものであり、レーン2は、単一ステップのCH1親和性精製後の「BC6」の第2のロットをローディングしたものである。レーン3および4は、CH1親和性精製に続けてイオン交換クロマトグラフィを用いて達成しうるさらなる精製を実証する。
6.13.5.
(実施例4)
二価の二重特異性B−Body「BC28」、「BC29」、「BC30」、「BC31」
【0322】
本発明者らは、ドメインBおよびGのCH3境界内の操作されたジスルフィドを「BC1」および「BC6」に存在するC末端ジスルフィドに対する代替的S−S連結として有する二価1×1二重特異性B−Body「BC28」、「BC29」、「BC30」および「BC31」を構築した。文献は、CH3境界のジスルフィド結合が、Fc CH3ドメインの状況で直交性を行使するには不十分であることを示している。これらのB−Body構築物の全体の構成を
図16に概略化し、「BC28」の顕著な特徴を下記に示す:
ポリペプチド鎖1:「BC28」鎖1(配列番号24)
ドメインA=VL(抗原「A」)
ドメインB=CH3(Y349C;445P、446G、447K挿入)
ドメインD=CH2
ドメインE=CH3(S354C、T366W)
ポリペプチド鎖2:「BC28」鎖2(配列番号25)
ドメインF=VH(抗原「A」)
ドメインG=CH3(S354C;445P、446G、447K挿入)
ポリペプチド鎖3:「BC1」鎖3(配列番号10)
ドメインH=VL(「Nivo」)
ドメインI=CL(カッパ)
ドメインJ=CH2
ドメインK=CH3(Y349C、D356E、L358M、T366S、L368A、Y407V)
ポリペプチド鎖4:「BC1」鎖4(配列番号11)
ドメインL=VH(「Nivo」)
ドメインM=CH1。
【0323】
「BC28」A:F抗原結合部位は、「抗原A」に特異的である。「BC28」H:L抗原結合部位は、PD1(ニボルマブ配列)に特異的である。「BC28」ドメインBは、野生型CH3と比較して以下の変化:Y349C;445P、446G、447K挿入を有する。「BC28」ドメインEは、野生型CH3と比較して以下の変化:S354C、T366Wを有する。「BC28」ドメインGは、野生型と比較して以下の変化:S354C;445P、446G、447K挿入を有する。
【0324】
したがって、「BC28」は、ドメインBの残基349Cに操作されたシステイン、およびドメインGの残基354Cに操作されたシステインを有する(「349C−354C」)。
【0325】
「BC29」は、ドメインBの残基351CおよびドメインGの351Cに、操作されたシステインを有する(「351C−351C」)。「BC30」は、ドメインBの残基354CおよびドメインGの349Cに操作されたシステインを有する(「354C−349C」)。BC31は、残基394Cに操作されたシステイン、およびドメインGの394Cに操作されたシステイン(「394C−394C」)を有する。BC32は、ドメインBの残基407CおよびドメインGの407Cに操作されたシステインを有する(「407C−407C」)。
【0326】
図17は、CaptureSelect(商標)CH1親和性樹脂を使用してワンステップ精製した後の非還元条件下でのSDS−PAGE解析を示す。レーン1および3は、無傷の「BC28」(レーン1)および「BC30」(レーン3)の高レベルの発現および実質的な均一性を示す。レーン2は、BC29のオリゴマー化を示す。レーン4および5は、BC31およびBC32の乏しい発現をそれぞれ示し、BC32の連結が不十分であることを示す。別の構築物BC9(Genentechによって報告された、ドメインBの残基392およびドメインGの399に導入されたシステインを有し(「392C−399C」)、ジスルフィド対を形成する構築物)は、SDS PAGEでオリゴマー化を示した(データは示さず)。
【0327】
図18は、CaptureSelect(商標)CH1親和性樹脂を使用したワンステップ精製後の「BC28」および「BC30」のSEC解析を示す。さらに本発明者らは、「BC28」が、プロテインA樹脂を使用した単一ステップの精製を使用して容易に精製することができることを実証した(結果は示さず)。
6.13.6.
(実施例5)
二価の二重特異性B−Body「BC44」
【0328】
図19は、本発明者らの現行の好ましい二価の二重特異性1×1構築物である二価の二重特異性1×1 B−Body「BC44」の一般的構成を示す。
第1のポリペプチド鎖(「BC44」鎖1)(配列番号32)
ドメインA=VL(抗原「A」)
ドメインB=CH3(P343V;Y349C;445P、446G、447K挿入)
ドメインE=CH2
ドメインE=CH3(S354C、T366W)
第2のポリペプチド鎖(=「BC28」ポリペプチド鎖2)(配列番号25)
ドメインF=VH(抗原「A」)
ドメインG=CH3(S354C;445P、446G、447K挿入)
第3のポリペプチド鎖(=「BC1」ポリペプチド鎖3)(配列番号10)
ドメインH=VL(「Nivo」)
ドメインI=CL(カッパ)
ドメインJ=CH2
ドメインK=CH3(Y349C、D356E、L358M、T366S、L368A、Y407V)
第4のポリペプチド鎖(=「BC1」ポリペプチド鎖4)(配列番号11)
ドメインL=VH(「Nivo」)
ドメインM=CH1
6.13.7.
(実施例6)
可変−CH3ジャンクション操作
【0329】
本発明者らは、ドメインAとBとの間のVL−CH3ジャンクション、ならびにドメインFとGとの間のVH−CH3ジャンクションを変異させた一連のバリアントを作製し、二価1×1 B−Body構築物の発現レベル、組み立て、および安定性を評価した。多くの解決策がありうるが、本発明者らは、T細胞エピトープの導入を減少させるために、VL、VHおよびCH3ドメイン内で天然に見出される残基のみを使用することを選択した。ドメイン構成の構造的評価は、好ましい配列組合せをさらに限定する。下記表2および表3は、「BC1」および他の二価構築物に基づくいくつかのジャンクションバリアントについてのジャンクションを示す。
【表2】
【表3】
【0330】
図20は、40℃での加速安定性試験プロトコールにおける示された週数での「BC15」および「BC16」試料のサイズ排除クロマトグラフィを示す。「BC15」は安定なままであった;「BC16」は、経時的に不安定となることが分かった。
6.13.8.
(実施例7)
三価2×1二重特異性B−Body構築物(「BC1−2×1」)
【0331】
本発明者らは、「BC1」に基づいて三価2×1二重特異性B−Body「BC1−2×1」を構築した。構成の顕著な特徴を
図22に示す。
【0332】
より詳細には、
図21に要約されているドメインおよびポリペプチド鎖の参照を使用して、
第1のポリペプチド鎖
ドメインN=VL(「抗原A」)
ドメインO=CH3(T366K、447C)
ドメインA=VL(「抗原A」)
ドメインB=CH3(T366K、447C)
ドメインD=CH2
ドメインE=CH3(ノブ、354C)
第5のポリペプチド鎖(=「BC1」鎖2)
ドメインP=VH(「抗原A」)
ドメインQ=CH3(L351D、447C)
第2のポリペプチド鎖(=「BC1」鎖2)
ドメインF=VH(「抗原A」)
ドメインG=CH3(L351D、447C)
第3のポリペプチド鎖(=「BC1」鎖3)
ドメインH=VL(「Nivo」)
ドメインI=CL(カッパ)
ドメインJ=CH2
ドメインK=CH3(ホール、349C)
第4のポリペプチド鎖(=「BC1」鎖4)
ドメインL=VH(「Nivo」)
ドメインM=CH1
【0333】
図23は、ThermoFisher Expi293一過性トランスフェクション系を使用して発現されたタンパク質の非還元SDS−PAGEを示す。
【0334】
レーン1は、CaptureSelect(商標)CH1親和性樹脂を使用してワンステップ精製した後の三価2×1「BC1−2×1」タンパク質の溶離液を示す。レーン2は、CaptureSelect(商標)CH1親和性樹脂を使用してワンステップ精製した後の、より分子量が低く、移動が速い、二価「BC1」タンパク質を示す。レーン3〜5は、プロテインAを使用した「BC1−2×1」の精製を示す。レーン6および7は、CH1親和性樹脂を使用した「BC1−2×1」の精製を示す。
【0335】
図24は、Octet(Pall ForteBio)解析を使用して、二価「BC1」構築物のアビディティを、三価2×1「BC1−2×1」構築物のアビディティと比較したものである。ビオチン化抗原「A」を表面に固定化し、その表面上を、結合解析のために、抗体構築物に通過させる。
6.13.9.
(実施例8)
三価2×1三重特異性B−Body構築物(「TB111」)
【0336】
本発明者らは、
図25に概略化された構成を有する三価2×1三重特異性分子「TB111」を設計した。
図21に示すドメイン命名規則を参照して、TB111は、以下の構成を有する(「Ada」は、アダリムマブ由来のV領域を示す):
ポリペプチド鎖1
ドメインN:VH(「Ada」)
ドメインO:CH3(T366K、394C)
ドメインA:VL(「抗原A」)
ドメインB:CH3(T366K、349C)
ドメインD:CH2
ドメインE:CH3(ノブ、354C)
ポリペプチド鎖5
ドメインP:VL(「Ada」)
ドメインQ:CH3(L351D、394C)
ポリペプチド鎖2
ドメインF:VH(「抗原A」)
ドメインG:CH3(L351D、351C)
ポリペプチド鎖3
ドメインH:VL(「Nivo」)
ドメインI:CL(カッパ)
ドメインJ:CH2
ドメインK:CH3(ホール、349C)
ポリペプチド鎖4(=「BC1」鎖4)
ドメインL:VH(「Nivo」)
ドメインM:CH1
この構築物は、発現しなかった。
6.13.10.
(実施例9)
三価1×2二重特異性構築物(「BC28−1×2」)
【0337】
本出願人らは、次のドメイン構造を有する三価1×2二重特異性B−bodyを構築した:
第1のポリペプチド鎖(=「BC28」鎖1)(配列番号24)
ドメインA=VL(抗原「A」)
ドメインB=CH3(Y349C;445P、446G、447K挿入)
ドメインD=CH2
ドメインE=CH3(S354C、T366W)
第2のポリペプチド鎖(=「BC28」鎖2)(配列番号25)
ドメインF=VH(抗原「A」)
ドメインG=CH3(S354C;445P、446G、447K挿入)
第3のポリペプチド鎖(配列番号37)
ドメインR=VL(抗原「A」)
ドメインS=CH3(Y349C;445P、446G、447K挿入)
リンカー=GSGSGS
ドメインH=VL(「Nivo」)
ドメインI=CL
ドメインJ=CH2
ドメインK=CH3(Y349C、D356E、L358M、T366S、L368A、Y407V)
第4のポリペプチド鎖(=「BC1」鎖4)(配列番号11):
ドメインL=VH(「Nivo」)
ドメインM=CH1
第6のポリペプチド鎖(=「BC28」鎖2)(配列番号25)
ドメインT=VH(抗原「A」)
ドメインU=CH3(S354C;445P、446G、447K挿入)。
【0338】
H:L結合抗原結合部位と同様に、A:F抗原結合部位は「抗原A」に特異的である。R:T抗原結合部位は、PDに対して特異的である。この構築物の特異性は、したがって抗原「A」×(PD1−抗原「A」)である。
6.13.11.
(実施例10)
三価1×2二重特異性構築物(「CTLA4−4×Nivo×CTLA4−4」)
【0339】
本発明者らは、
図27に概略化した一般構造を有する、三価1×2二重特異性分子(「CTLA4−4×Nivo×CTLA4−4」)を構築した。ドメインの命名法を
図26に示す。
【0340】
図28は、SDS−PAGEゲルであり、ここで非還元および還元条件下の「CTLA4−4×Nivo×CTLA4−4」構築物を示すレーンを枠で囲っている。
【0341】
図29は、2つの抗体「CTLA4−4×OX40−8」および「CTLA4−4×Nivo×CTLA4−4」の抗原結合を比較している。「CTLA4−4×OX40−8」は、CTLA4に一価的に結合する一方、「CTLA4−4×Nivo×CTLA4−4」は、CTLA4に二価的に結合する。
6.13.12.
(実施例11)
三価1×2三重特異性構築物「BC28−1×1×1a」
【0342】
本発明者らは、
図30に概略化した一般構造を有する三価1×2三重特異性分子を構築した。
図26に示すドメインの命名法を参照して、
第1のポリペプチド鎖(=「BC28」鎖1)[配列番号24]
ドメインA=VL(抗原「A」)
ドメインB=CH3(Y349C;445P、446G、447K挿入)
ドメインD=CH2
ドメインE=CH3(S354C、T366W)
第2のポリペプチド鎖(=「BC28」鎖2)(配列番号25)
ドメインF=VH(抗原「A」)
ドメインG=CH3(S354C;445P、446G、447K挿入)
第3のポリペプチド鎖(配列番号45)
ドメインR=VL(CTLA4−4)
ドメインS=CH3(T366K;445K、446S、447C挿入)
リンカー=GSGSGS
ドメインH=VL(「Nivo」)
ドメインI=CL
ドメインJ=CH2
ドメインK=CH3(Y349C、D356E、L358M、T366S、L368A、Y407V)
第4のポリペプチド鎖(=「BC1」鎖4)(配列番号11)
ドメインL=VH(「Nivo」)
ドメインM=CH1。
第6のポリペプチド鎖(=hCTLA4−4鎖2)(配列番号53)
ドメインT=VH(CTLA4)
ドメインU=CH3(L351D、445G、446E、447C挿入)
【0343】
この三重特異性構築物の抗原結合部位は、以下の通りであった:
抗原結合部位A:Fは、「抗原A」に特異的であった;
抗原結合部位H:Lは、PD1(ニボルマブ配列)に特異的であった;
抗原結合部位R:Tは、CTLA4に特異的であった。
【0344】
図31は、単一の明確に確定されるピークを示す、一過性発現およびCaptureSelect(商標)CH1親和性樹脂を使用してワンステップ精製した後の「BC28−1×1×1a」のサイズ排除クロマトグラフィを示す。
6.13.13.
(実施例12)
二価および三価構築物のSDS−PAGE解析
【0345】
図32は、それぞれ一過性発現およびCaptureSelect(商標)CH1親和性樹脂を使用してワンステップ精製した後の様々な構築物の、非還元および還元条件下でのSDS−PAGEゲルを示す。
【0346】
レーン1(非還元条件)およびレーン2(還元条件、+DTT)は、二価1×1二重特異性構築物「BC1」である。レーン3(非還元)およびレーン4(還元)は、三価の二重特異性2×1構築物「BC1−2×1」である(実施例7参照)。レーン5(非還元)およびレーン6(還元)は、三価1×2二重特異性構築物「CTLA4−4×Nivo×CTLA4−4」である(実施例10参照)。レーン7(非還元)およびレーン8(還元)は、実施例11に記載の三価1×2三重特異性「BC28−1×1×1a」構築物である。
【0347】
SDS−PAGEゲルは、各構築物の完全なアセンブリを実証しており、各構築物について、非還元ゲルの主要なバンドが、予測される分子量で示されている。
6.13.14.
(実施例13)
結合解析
【0348】
図33は、3つの抗原:PD1、抗原「A」およびCTLA−4へのOctet結合解析を示す。それぞれの場合において、抗原が固定化され、B−Bodyが検体である。参照のために、1×1二重特異性の「BC1」と「CTLA4−4×OX40−8」も比較すると、1×1 B−Bodyが、抗原結合部位が選択される抗原のみに特異的に結合することが実証された。
【0349】
図33Aは、「BC1」がPD1および抗原「A」に結合するが、CTLA4に結合しないことを示す。
図33Bは、二価の二重特異性1×1構築物「CTLA4−4×OX40−8」がCTLA4に結合するが、抗原「A」またはPD1に結合しないことを示す。
図33Cは、三価三重特異性1×2構築物「BC28−1×1×1a」がPD1、抗原「A」およびCTLA4に結合することを示す。
6.13.15.
(実施例14)
四価構築物
【0350】
図35は、2×2四価二重特異性構築物「BC22−2×2」の全体の構成を示す。2×2四価二重特異性は、それぞれの可変ドメイン−定常ドメインセグメントを複製することによって「BC1」足場で構築した。ドメインの命名法を
図34に概略化する。
【0351】
図36は、SDS−PAGEゲルである。レーン7〜9は、CaptureSelect(商標)CH1親和性樹脂を使用してワンステップ精製した後(「CH1溶離液」)、およびさらにイオン交換クロマトグラフィ精製した後(レーン8、「IEX後のpk1」;レーン9、「IEX後のpk2」)の「BC22−2×2」四価構築物をそれぞれ示す。レーン1〜3は、CH1親和性精製した後(レーン1)、レーン2および3はさらにイオン交換クロマトグラフィした後の三価2×1構築物「BC21−2×1」である。レーン4〜6は、1×2三価構築物「BC12−1×2」である。
【0352】
図37は、2×2四価構築物全体の構成を示す。
【0353】
図39および40は、代替的な構成を有する四価構築物の概略図である。ドメインの命名法を
図38に示す。
6.13.16.
(実施例15)
B−Bodyによる二重特異性抗原係合
【0354】
四価二重特異性2×2 B−Body「B−Body−IgG 2×2」を構築した。より詳細には、
図38にまとめたドメインおよびポリペプチド鎖の参照を使用して、
第1のポリペプチド鎖
ドメインA=VL(セルトリズマブ)
ドメインB=CH3(IgG1、ノブ)
ドメインD=CH2(IgG1)
ドメインE=CH3(IgG1)
ドメインW=VH(抗原「A」)
ドメインX=CH1(IgG1)
第3のポリペプチド鎖(第1のポリペプチド鎖と同一)
ドメインH=VL(セルトリズマブ)
ドメインI=CH3(IgG1、ノブ)
ドメインJ=CH2(IgG1)
ドメインK=CH3(IgG1)
ドメインWW=VH(抗原「A」)
ドメインXX=CH1(IgG1)
第2のポリペプチド鎖
ドメインF=VH(セルトリズマブ)
ドメインG=CH3(IgG1、ホール)
第4のポリペプチド鎖(第3のポリペプチド鎖と同一)
ドメインF=VH(セルトリズマブ)
ドメインG=CH3(IgG1、ホール)
第7のポリペプチド鎖
ドメインY=VH(「抗原A」)
ドメインZ=CLカッパ
第8のポリペプチド鎖(第7のポリペプチド鎖と同一)
ドメインYY=VH(「抗原A」)
ドメインZZ=CLカッパ。
【0355】
これを、実施例1に記載されるようにクローニングし、発現させた。ここで、BLI実験は、ビオチン化抗原「A」のストレプトアビジンセンサー上への固定化、その後の10×カイネティックバッファーを用いたベースラインの確立で構成した。次いで、センサーを、無細胞発現された「B−Body−IgG 2×2」中に浸漬し、次いで、新たなベースラインを確立した。最終的に、センサーを、第2の結合事象が観察された100nM TNFαに浸漬し、単一の「B−Body−IgG 2×2」構築物による両方の抗原の二重特異性結合を確認した。結果を
図41に示す。
6.13.17.
(実施例16)
「BB−IgG 2×2」の抗原特異的細胞結合
【0356】
Expi−293細胞を、Expi−293トランスフェクションキット(Life Technologies)を使用して、mockトランスフェクトするかまたは抗原「B」で一過性トランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、Expi−293細胞を回収し、4%パラホルムアルデヒド中で15分間、室温で固定化した。細胞を、PBS中で2回洗浄した。200,000抗原BまたはMockトランスフェクトされたExpi−293細胞を、V底96ウェルプレート内の100μLのPBS中に入れた。細胞を、3ug/mLの濃度の「B−Body−IgG 2×2」と1.5時間、室温でインキュベートした。細胞を、300×Gで7分間遠心分離し、PBSで洗浄し、8μg/mLの濃度の100μLのFITC標識ヤギ抗ヒト第2抗体と室温で1時間インキュベートした。細胞を300×Gで7分間遠心分離し、PBSで洗浄し、細胞結合をGuava easyCyteを使用してフローサイトメトリーによって確認した。結果を
図42に示す。
6.13.18.
(実施例17)
二価および三価構築物のSDS−PAGE解析
【0357】
図45は、それぞれ一過性発現およびCaptureSelect(商標)CH1親和性樹脂を使用してワンステップ精製した後の様々な構築物の、非還元および還元条件下でのSDS−PAGEゲルを示す。
【0358】
レーン1(非還元条件)およびレーン2(還元条件、+DTT)は、二価1×1二重特異性構築物「BC1」である。レーン3(非還元)およびレーン4(還元)は、二価1×1二重特異性構築物「BC28」である(実施例4参照)。レーン5(非還元)およびレーン6(還元)は、二価1×1二重特異性構築物「BC44」である(実施例5参照)。レーン7(非還元)およびレーン8(還元)は、三価1×2二重特異性「BC28−1×2」構築物である(実施例9参照)。レーン9(非還元)およびレーン10(還元)は、実施例11に記載の三価1×2三重特異性「BC28−1×1×1a」構築物である。
【0359】
SDS−PAGEゲルは、各構築物の完全なアセンブリを実証しており、各構築物について、非還元ゲルの主要なバンドが、予測される分子量で示されている。
6.13.19.
(実施例18)
可変−CH3ジャンクション操作の安定性解析
【0360】
様々なジャンクションバリアントの組合せ間の対形成安定性を評価した。示差走査蛍光定量を行って、鎖1のVL−CH3ポリペプチド(ドメインAおよびB)と鎖2のVH−CH3ポリペプチド(ドメインFおよびG)との間の様々なジャンクションバリアント対形成の融点を決定した。ジャンクションバリアント「BC6jv」、「BC28jv」、「BC30jv」、「BC44jv」および「BC45jv」(それぞれ、上記表2および表3でみられる「BC6」、「BC28」、「BC30」、「BC44」および「BC45」の対応するジャンクション配列を有する)は、76〜77度の範囲のTmを有し、対形成安定性の増加を実証する(表4参照)。
図46は、「BC24jv」、「BC26jv」および「BC28jv」の熱転移の差異を示し、「BC28jv」が3つの中で安定性が最も大きいことを実証している。図のx軸は温度であり、y軸は温度変化で割った蛍光変化(−dFluor/dTemp)である。実験は、教示する全てについて参照により本明細書に組み込まれるNiesen et al. (Nature Protocols, (2007) 2, 2212 − 2221)に記載されているように行った。
【表4】
6.13.20.
(実施例19)
CD3候補結合分子
【0361】
後述する通り、様々なCD3抗原結合部位を構築し検査した。
6.13.20.1.CD3結合アーム
【0362】
SP34抗CD3抗体(SP34−89、配列番号68および69)のヒト化バージョンに基づく一連のCD3結合アームバリアントを、VHまたはVLアミノ酸配列(配列番号70〜73)のいずれかにおける点変異により操作した。表5に記載されている通り、様々なVHおよびVL配列を一体に対形成させた。
【表5】
【0363】
VLおよびVHバリアントは、1×1 BC1 B−bodyの一方のアームへとクローニングし、一方、他方のアームは、無関係抗原結合部位を含有した。
図47は、Octet(Pall ForteBio)バイオレイヤーインターフェロメトリー解析によって決定された、非変異誘発SP34−89一価B−bodyの結合親和性を実証する。構築物の2倍系列希釈(200〜12.5nM)を使用して、SP34−89に対する23nMの結合親和性を決定し(k
on=3×10
5M
−1s
−1、k
off=7.1×10
−3s
−1)、これは、文献における他のSP34バリアントに対する親和性にマッチする。動態親和性も、平衡結合親和性にマッチした。
6.13.20.2.CD3結合アーム発見
【0364】
Fab CDRに多様性が導入された化学合成Fabファージライブラリを、モノクローナルファージELISAフォーマットを使用してCD3抗原に対してスクリーニングし、それによると、プレート固定化されたCD3バリアントが、上述の通りファージへの結合に関して評価された。CD3抗原を認識したFabを発現するファージクローンを配列決定した。表Aは、CD3抗原結合部位の候補を列挙する。興味深いことに、CD3−8は、ヒトおよびカニクイザルのCD3抗原と交差反応性であった。
【表A】
6.13.21.
(実施例20)
二重特異性B−body単一ステップの精製
【0365】
二重特異性抗体の抗CH1精製効率も、二重特異性抗体のFc部分内のそのネイティブ位置に見出されるCH3ドメインに導入された標準ノブ・ホール直交型変異のみを有し、他のドメイン修飾がない結合分子に関して検査した。したがって、検査した2種の抗体KL27−6およびKL27−7はそれぞれ、抗体の各アームに1つが存在する、2つのCH1ドメインを含有した。セクション6.13.1により詳細に記載されている通り、各二重特異性抗体を発現させ、抗CH1カラムにおいて望まれないタンパク質産物から精製し、SDS−PAGEゲルにおいてランを行った。
図48に示す通り、不完全二重特異性抗体を表す75kDaの有意なバンドが存在し、これは、
図3を参照すると、(i)第1および第2の、または(ii)第3および第4のポリペプチド鎖のみを含有する複合体として解釈される。よって、抗CH1を使用して、各アームにCH1ドメインを有する完全二重特異性分子を精製する方法は、不完全抗体複合体によるバックグラウンドコンタミネーションをもたらした。
6.13.22.
(実施例21)
エフェクター機能を低減させるFc変異
【0366】
一連の操作されたFcバリアントを、モノクローナルIgG1抗体トラスツズマブ(ハーセプチン、「WT−IgG1」)において生成し、これは、CH2ドメインのL234、L235およびP329位に変異を有する。検査したバリアントの特異的変異は、下の表6に記載されており、sFc1(PALALA)、sFc7(PGLALA)およびsFc10(PKLALA)を含む。すべてのバリアントは、本明細書に記載の通り、Expi293発現によって作製した。
【表6】
【0367】
タンパク質の融解温度は、Protein Thermal Shift Dyeキット(Thermo Fisher)を使用して決定した。簡潔には、目的のタンパク質を1mg/mlの濃度にした。Thermal shift dye mix(水、Thermal shift緩衝液およびThermal Shift Dye)を目的のタンパク質に添加した。タンパク質/thermal dye mixを、ガラスキャピラリー管に添加し、Roche Light Cyclerにおける温度勾配を使用して分析した。タンパク質を、37℃で2分間インキュベートした後、0.1℃/秒の温度上昇速度で37℃〜99℃の温度勾配を開始した。蛍光の増加を経時的に測定し、これを使用して、熱融解温度を計算した。表6は、上記のProtein Thermal Shift実験からの結果を表す。すべてのバリアントは、野生型IgGと同等の安定性を示した。
【0368】
WT−IgG1およびFcバリアントをOctetバイオセンサーに固定化し、可溶性FcγRIaを系に添加して、結合を決定した。
図49は、トラスツズマブへのFcγRIa結合を実証する(
図49A「WT IgG1」)が、sFc10への結合を実証しない(
図49B)、Octet(Pall ForteBio)バイオレイヤーインターフェロメトリー解析を示す。FcγRIaの添加後に、トラスツズマブについてシグナルの増加がみられたが、sFc10について観察可能なシグナル増加は検出されず、FcγRIaが、操作された変異を有する抗体にもはや結合しなくなったことを実証する。検査したバリアントの結合概要を表6に提示する。加えて、全バリアントが、HER2への強い結合を保持した(図示せず)。
【0369】
WT−IgG1およびFcバリアントを、FcγR結合の別の尺度として、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)アッセイにおいて検査した。簡潔には、FCγRIIIaエフェクター機能に対する選択されたFc変異の影響を、ADCC Bioreporterアッセイキット(Promega)を使用して評価した。各バリアントの連続希釈物をSKBR3細胞とともにインキュベートした。次いで、反応物を、製造者のプロトコールに従って、ADCC Bioassayエフェクター細胞とともに、加湿CO2インキュベーター中、37℃でインキュベートし、6〜24時間インキュベートした。インキュベーション後、Bio−Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイ試薬を各試料に添加し、発光シグナルをグロー型発光読み取り機能を有するプレートリーダーで測定した。
【0370】
図50に示すように、トラスツズマブ(Herceptin、「WT−IgG1」)は死滅を実証したが、試験したFcバリアントは検出可能なレベルの死滅をもたらさなかった。
【0371】
WT−IgG1およびFcバリアントも、ELISAによって、補体成分のC1qの結合について試験した。簡潔には、最大で128μg/mlのIgGを、それぞれのバリアントについて固定化した。ELISAを、12μg/mlのC1q、および1/400希釈のC1q−HRP二次抗体を用いて行った。洗浄物および試料をPBST−BSA(1%)に希釈した。
【0372】
図51に示す通り、トラスツズマブ(ハーセプチン、「WT−IgG1」)は、C1q結合を実証したが、sFc1とsFc7とsFc10のいずれも、検出可能なC1q結合をもたらさなかった。よって、結果は、検査したFcバリアントが、低減したレベルのFcエフェクター機能を有することを実証する。
6.13.23.
(実施例22)
共通の軽鎖ライブラリを使用する共通のVL配列を有する新たなABSの発見
【0373】
共通の軽鎖可変配列を共有する2つの新たな抗原結合部位(ABS)を有する三価三重特異性結合分子は、デノボで特定される。使用した共通の軽鎖ライブラリは、重鎖可変ドメイン(VH)に対するCDRの多様性を制限する。共通の軽鎖ライブラリは、in vitroディスプレイ(ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、哺乳動物ディスプレイなど)について、またはヒト化動物モデルにおいて作成される。共通の軽鎖ライブラリを用いて行われた選択により、2つのABSについてのVHドメインにおける多様性を有するが、両方のABSに共通する軽鎖可変ドメイン(VL)における単一配列を有さない、三価三重特異性結合分子を作製する。
6.13.23.1.共通の軽鎖ファージライブラリの構築
【0374】
共通の軽鎖ライブラリは、特異的な重鎖可変ドメイン(例えば、VH3−23)および特異的な軽鎖可変ドメイン(例えば、Vk−1)に由来する配列を使用して作成される。ファージディスプレイライブラリは、当技術分野において公知のいくつかの戦略により作成され得る。ここで、Fabフォーマット化ファージライブラリは、ファージにおける複製および発現が可能な発現ベクター(ファージミドとも称される)を使用して構築される。重鎖および軽鎖は両方とも、同じ発現ベクターにおいてコードされ、重鎖はファージコートタンパク質pIIIの切断バリアントと融合されている。軽鎖および重鎖は、別々のポリペプチドとして発現され、軽鎖および重鎖−pIII融合体は細菌のペリプラズム中で組み立てられ、酸化還元電位は、ジスルフィド結合形成を可能にして、候補ABSを含有する抗体を形成する。
【0375】
共通の軽鎖ライブラリを構築するために、単一の軽鎖可変ドメインは、共通の軽鎖CDR1(L1)およびCDR2(L2)がヒト生殖細胞系列に残ったままであり、CDR3(L3)が多種の抗原への結合を支持することが可能なコンセンサス配列から選択される場合に、選択される。ライブラリを構築することもでき、ここで、共通の軽鎖におけるすべてのVL CDRが軽鎖可変配列の完全なヒトの多様性を表すように変更される。所与の共通の軽鎖について、VHドメインのすべてのCDRの位置は、ヒト抗体レパートリーにおいて見出されるCDR長による位置のアミノ酸の頻度に一致するように多様化される。多様性は、当技術分野において公知のいくつかの戦略により作成され得る。ここで、Kunkel変異生成は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるKunkel, TA (PNAS January 1, 1985. 82 (2) 488−492)により詳細に記載されている通り、自然抗体レパートリーにおいて見出される多様性を模倣するためにVH CDR H1、H2およびH3に多様性を導入するプライマーを用いて行われる。簡潔には、一本鎖DNAは、標準手順を使用して単離されたファージから調製され、Kunkel変異生成が行われる。化学的に合成されたDNAは、次いで、TG1細胞にエレクトロポレーションされ、続いて回収される。回収された細胞は、二次培養され、M13K07ヘルパーファージにより感染させて、ファージライブラリを作製する。
6.13.23.2.共通の軽鎖ファージスクリーニング
【0376】
ファージパニングは、標準手順を使用して行われる。簡潔には、ファージパニングの第1ラウンドは、ストレプトアビジン磁気ビーズに固定化された標的抗原を、上記に記載の調製されたライブラリからの約5×10
12ファージと、PBST−2%BSA中で1mLの体積で混合して行う。1時間のインキュベーション後、ビーズ結合ファージを、磁気スタンドを使用して上清から分離する。ビーズを3回洗浄して、非特異的に結合したファージを除去し、次いで、ER2738細胞(5mL)に約0.6のOD
600で添加する。20分後、感染細胞を、25mLの2×YT+アンピシリンおよびM13K07ヘルパーファージ中で二次培養し、激しく振とうしながら37℃で終夜生育させる。翌日、ファージを、PEG沈殿によって、標準手順を使用して調製する。SAVコートビーズに特異的なファージの事前クリアランスを、パニングの前に行う。パニングの第2ラウンドは、標準手順を使用して、100nMのビーズ固定化抗原を有するKingFisher磁気ビーズハンドラーを使用して行う。合計で、3〜4ラウンドのファージパニングを行って、標的抗原に特異的なFabをファージディスプレイにおいて富化する。次いで、標的特異的富化は、ポリクローナルおよびモノクローナルファージELISAを使用して確認する。
6.13.23.3.共通の軽鎖ライブラリを使用する三価三重特異性抗体の発見
【0377】
共通の軽鎖可変領域(VL)を共有する2つの新たなABSを有し、異なる抗原または同じ抗原の異なるエピトープをそれぞれ認識する、三価三重特異性抗体は、発見キャンペーンにおいて特定される。三価三重特異性抗体は、共通のVL領域を共有せず、第3の明確に異なる抗原に特異的である、第3のABSも有する。
【0378】
上記に記載の共通の軽鎖ライブラリを使用するファージディスプレイキャンペーンを使用して、抗原1(A1)または抗原2(A2)に結合する候補ABSが別々に特定される。抗原1または抗原2に対する特異性を与える異なるVHを有するが、共通のVLを共有するABSは、1μMから1nMを下回る範囲の親和性で、特定される。ABSは、特徴付けのために、全長ヒト二価一重特異性ネイティブIgG1構造に再フォーマット化される。候補は、結合親和性、エピトープおよび一般的な生物物理学量(発現、純度、開発可能性など)について評価される。抗原1および抗原2の両方に結合する、10nM〜1μM、または好ましくは50nM〜250nMの範囲の個々の結合親和性を有するABSが特定される。
【0379】
抗原1および抗原2に対する親IgG候補に由来するVLドメインおよびVHドメインは、抗原3(A3)に特異的な第3のABSと一緒に、下記の1×2抗体フォーマットに再フォーマット化される。候補の組合せは、一過性哺乳動物発現を介して発現され、精製され、細胞表面上の両方の抗原に同時に共関与する能力について試験される。候補は以下の結合特性を有する。
抗原1に対する一価KD:50〜100nM
抗原2に対する一価KD:50〜100nM
抗原3に対する一価KD:<100nM
二重陽性細胞に対する二価アビディティ:<10nM
【0380】
候補の鎖構造(
図55に関して)
鎖1:VH
A1−CH3−CH2−CH3
Hole
鎖2および鎖6:VL
A1/A2−common−CH3
鎖3:VH
A2−CH3−VH
A3−CH1−CH2−CH3
Knob
鎖4:VL
A3−CL1
(注記:VL
A3−CL1およびVH
A3−CH1は交換することができ、すべてのドメインは、以前に記載された直交型変異のいずれかを保有していてもよい)
6.13.23.4.共通の軽鎖ライブラリを使用するT細胞を再指向する三価三重特異性抗体の発見
【0381】
共通の軽鎖可変領域(VL)を共有する2つの新たなABSを有し、異なる腫瘍抗原または同じ腫瘍抗原の異なるエピトープをそれぞれ認識する、三価三重特異性抗体は、発見キャンペーンにおいて特定される。三価三重特異性抗体は、共通のVL領域を共有せず、CD3イプシロンなどのT細胞再指向療法に有用なT細胞分子に特異的である、第3のABSも有する。この三価三重特異性抗体はまた、2つの腫瘍抗原に対する低い一価親和性を利用し、さらに細胞表面上に両方の抗原が存在する腫瘍細胞への強い二価結合を達成するように設計することができる。
【0382】
上記に記載の共通の軽鎖ライブラリを使用するファージディスプレイキャンペーンを使用して、腫瘍抗原1(TA1)または腫瘍抗原2(TA2)に結合する候補ABSが別々に特定される。腫瘍抗原1または腫瘍抗原2に対する特異性を与える異なるVHを有するが、共通のVLを共有するABSは、1μMから1nMを下回る範囲の親和性で、特定される。ABSは、特徴付けのために、全長ヒト二価一重特異性ネイティブIgG1構造に再フォーマット化される。候補は、結合親和性、エピトープおよび一般的な生物物理学量(発現、純度、開発可能性など)について評価される。抗原1および抗原2の両方に結合する、10nM〜1μM、または好ましくは50nM〜250nMの範囲の個々の結合親和性を有するABSが特定される。
【0383】
腫瘍抗原1および腫瘍抗原2に対する親IgG候補に由来するVLドメインおよびVHドメインは、CD3に特異的な第3の公知のABS(例えば、SP34、OKT3など、およびこれらのヒト化バリアント)と一緒に、下記の1×2抗体フォーマットに再フォーマット化される。候補の組合せは、一過性哺乳動物発現を介して発現され、精製され、細胞表面上の両方の抗原に同時に共関与する能力について試験する。T細胞死滅および増殖アッセイなどの追加の機能アッセイを行って、抗体の有効性を特徴付ける。候補は以下の結合特性を有する。
抗原1に対する一価KD:50〜100nM
抗原2に対する一価KD:50〜100nM
CD3イプシロンに対する一価KD:20〜100nM
二重陽性腫瘍細胞に対する二価アビディティ:<10nM
【0384】
候補の鎖構造(
図55に関して)
鎖1:VH
TA1−CH3−CH2−CH3
Hole
鎖2および鎖6:VL
TA1/TA2−common−CH3
鎖3:VH
TA2−CH3−VH
CD3−CH1−CH2−CH3
Knob
鎖4:VL
CD3−CL1
(注記:VL
CD3−CL1およびVH
CD3−CH1は交換することができ、すべてのドメインは、以前に記載された直交型変異のいずれかを保有していてもよい)
6.13.24.
(実施例23)
共通の重鎖ライブラリを使用する共通のVH配列を有するABSの発見
【0385】
共通の重鎖可変配列を共有する2つの新たな抗原結合部位(ABS)を有する三価三重特異性結合分子は、デノボで特定される。使用した共通の軽鎖ライブラリは、CDRの軽鎖可変ドメイン(VL)への多様性を制限する。共通の重鎖ライブラリは、in vitroディスプレイ(ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、哺乳動物ディスプレイなど)について、またはヒト化動物モデルにおいて作成される。共通の重鎖ライブラリを用いて行われた選択により、2つのABSについてのVLドメインにおける多様性を有するが、両方のABSに共通する重鎖可変ドメイン(VH)における単一配列を有さない、三価三重特異性結合分子を作製する。
6.13.24.1.共通の重鎖ファージライブラリの構築
【0386】
共通の重鎖ライブラリは、特異的な重鎖可変ドメイン(例えば、ヒトVH3−23)および特異的な軽鎖可変ドメイン(例えば、ヒトVk−1)に由来する配列を使用して作成される。ファージディスプレイライブラリは、当技術分野において公知のいくつかの戦略により作成され得る。ここで、Fabフォーマット化ファージライブラリは、ファージにおける複製および発現が可能な発現ベクター(ファージミドとも称される)を使用して構築される。重鎖および軽鎖は両方とも、同じ発現ベクターにおいてコードされ、重鎖はファージコートタンパク質pIIIの切断バリアントと融合されている。軽鎖および重鎖は、別々のポリペプチドとして発現され、軽鎖および重鎖−pIII融合体は細菌のペリプラズム中で組み立てられ、酸化還元電位は、ジスルフィド結合形成を可能にして、候補ABSを含有する抗体を形成する。
【0387】
共通の重鎖ライブラリを構築するために、単一の重鎖可変ドメインは、共通の重鎖CDR1(H1)およびCDR2(H2)がヒト生殖細胞系列に残ったままであり、CDR3(H3)が多種の抗原への結合を支持することが可能なコンセンサス配列から選択される場合に、選択される。ライブラリを構築することもでき、ここで、共通の重鎖におけるすべてのVH CDRが重鎖可変配列の完全なヒトの多様性を表すように変更される。所与の共通の重鎖について、VLドメインのすべてのCDRの位置は、ヒト抗体レパートリーにおいて見出されるCDR長による位置のアミノ酸の頻度に一致するように多様化される。多様性は、当技術分野において公知のいくつかの戦略により作成され得る。ここで、Kunkel変異生成は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるKunkel, TA (PNAS January 1, 1985. 82 (2) 488−492)により詳細に記載されている通り、自然抗体レパートリーにおいて見出される多様性を模倣するためにVL CDR L1、L2およびL3に多様性を導入するプライマーにより行われる。簡潔には、一本鎖DNAは、標準手順を使用して単離されたファージから調製され、Kunkel変異生成が行われる。化学的に合成されたDNAは、次いで、TG1細胞にエレクトロポレーションされ、続いて回収される。回収された細胞は、二次培養され、M13K07ヘルパーファージにより感染させて、ファージライブラリを作製する。
6.13.24.2.共通の重鎖ファージスクリーニング
【0388】
ファージパニングは、標準手順を使用して行われる。簡潔には、ファージパニングの第1ラウンドは、ストレプトアビジン磁気ビーズに固定化された標的抗原を、上記に記載の調製されたライブラリからの約5×10
12ファージと、PBST−2%BSA中で1mLの体積で混合して行う。1時間のインキュベーション後、ビーズ結合ファージを、磁気スタンドを使用して上清から分離する。ビーズを3回洗浄して、非特異的に結合したファージを除去し、次いで、ER2738細胞(5mL)に約0.6のOD
600で添加する。20分後、感染細胞を、25mLの2×YT+アンピシリンおよびM13K07ヘルパーファージ中で二次培養し、激しく振とうしながら37℃で終夜生育させる。翌日、ファージを、PEG沈殿によって、標準手順を使用して調製する。SAVコートビーズに特異的なファージの事前クリアランスを、パニングの前に行う。パニングの第2ラウンドは、標準手順を使用して、100nMのビーズ固定化抗原を有するKingFisher磁気ビーズハンドラーを使用して行う。合計で、3〜4ラウンドのファージパニングを行って、標的抗原に特異的なFabをファージディスプレイにおいて富化する。次いで、標的特異的富化は、ポリクローナルおよびモノクローナルファージELISAを使用して確認する。
6.13.24.3.共通の重鎖ライブラリを使用する三価三重特異性抗体の発見
【0389】
共通の重鎖可変領域(VH)を共有する2つの新たなABSを有し、異なる抗原または同じ抗原の異なるエピトープをそれぞれ認識する、三価三重特異性抗体は、発見キャンペーンにおいて特定される。三価三重特異性抗体は、共通のVH領域を共有せず、第3の明確に異なる抗原に特異的である、第3のABSも有する。
【0390】
上記に記載の共通の重鎖ライブラリを使用するファージディスプレイキャンペーンを使用して、抗原1(A1)または抗原2(A2)に結合する候補ABSが別々に特定される。抗原1または抗原2に対する特異性を与える異なるVLを有するが、共通のVHを共有するABSは、1μMから1nMを下回る範囲の親和性で、特定される。ABSは、特徴付けのために、全長ヒト二価一重特異性ネイティブIgG1構造に再フォーマット化される。候補は、結合親和性、エピトープおよび一般的な生物物理学量(発現、純度、開発可能性など)について評価される。抗原1および抗原2の両方に結合する、10nM〜1μM、または好ましくは50nM〜250nMの範囲の個々の結合親和性を有するABSが特定される。
【0391】
抗原1および抗原2に対する親IgG候補に由来するVLドメインおよびVHドメインは、抗原3(A3)に特異的な第3のABSと一緒に、下記の1×2 B−Bodyフォーマットに再フォーマット化される。例示的な1×2 B−Bodyスキャフォールド鎖は、配列番号78、79、81および82によって記載される。候補の組合せは、一過性哺乳動物発現を介して発現され、精製され、細胞表面上の両方の抗原に同時に共関与する能力について試験する。候補は以下の結合特性を有する。
抗原1に対する一価KD:50〜100nM
抗原2に対する一価KD:50〜100nM
抗原3に対する一価KD:<100nM
二重陽性細胞に対する二価アビディティ:<10nM
【0392】
候補の鎖構造(
図55に関して)
鎖1:VL
A1−CH3−CH2−CH3
Hole
鎖2および鎖6:VH
A1/A2−common−CH3
鎖3:VL
A2−CH3−VL
A3−CL1−CH2−CH3
Knob
鎖4:VH
A3−CH1
(注記:VL
A3−CL1およびVH
A3−CH1は交換することができ、すべてのドメインは、以前に記載された直交型変異のいずれかを保有していてもよい)
6.13.24.4.共通の重鎖ライブラリを使用するT細胞を再指向する三価三重特異性抗体の発見
【0393】
共通の重鎖可変領域(VH)を共有する2つの新たなABSを有し、異なる腫瘍抗原または同じ腫瘍抗原の異なるエピトープをそれぞれ認識する、三価三重特異性抗体は、発見キャンペーンにおいて特定される。三価三重特異性抗体は、共通のVH領域を共有せず、CD3イプシロンなどのT細胞再指向療法に有用なT細胞分子に特異的である、第3のABSも有する。この三価三重特異性抗体はまた、2つの腫瘍抗原に対する低い一価親和性を利用し、さらに細胞表面上に両方の抗原が存在する腫瘍細胞への強い二価結合を達成するように設計することができる。
【0394】
上記に記載の共通の重鎖ライブラリを使用するファージディスプレイキャンペーンを使用して、腫瘍抗原1(TA1)または腫瘍抗原2(TA2)に結合する候補ABSが別々に特定される。腫瘍抗原1または腫瘍抗原2に対する特異性を与える異なるVLを有するが、共通のVHを共有するABSは、1μMから1nMを下回る範囲の親和性で、特定される。ABSは、特徴付けのために、全長ヒト二価一重特異性ネイティブIgG1構造に再フォーマット化される。候補は、結合親和性、エピトープおよび一般的な生物物理学量(発現、純度、開発可能性など)について評価される。抗原1および抗原2の両方に結合する、10nM〜1μM、または好ましくは50nM〜250nMの範囲の個々の結合親和性を有するABSが特定される。
【0395】
腫瘍抗原1および腫瘍抗原2に対する親IgG候補に由来するVLドメインおよびVHドメインは、CD3に特異的な第3のABS(例えば、SP34、OKT3など、およびこれらのヒト化バリアント)と一緒に、下記の1×2 B−Bodyフォーマットに再フォーマット化される。例示的な1×2 B−Bodyスキャフォールド鎖は、配列番号78、79、81および82によって記載される。候補の組合せは、一過性哺乳動物発現を介して発現され、精製され、細胞表面上の両方の抗原に同時に共関与する能力について試験する。T細胞死滅および増殖アッセイなどの追加の機能アッセイを行って、抗体の有効性を特徴付ける。候補は以下の結合特性を有する。
抗原1に対する一価KD:50〜100nM
抗原2に対する一価KD:50〜100nM
CD3イプシロンに対する一価KD:20〜100nM
二重陽性腫瘍細胞に対する二価アビディティ:<10nM
【0396】
候補の鎖構造(
図55に関して)
鎖1:VL
TA1−CH3−CH2−CH3
Hole
鎖2および鎖6:VH
TA1/TA2−common−CH3
鎖3:VL
TA2−CH3−VL
CD3−CL1−CH2−CH3
Knob
鎖4:VH
CD3−CH1
(注記:VL
CD3−CL1およびVH
CD3−CH1は交換することができ、すべてのドメインは、以前に記載された直交型変異のいずれかを保有していてもよい)
6.13.25.
(実施例24)
公知のABS配列に基づく共通のVL配列またはVH配列を有する新たなABSの発見
【0397】
公知の特異性を有する親ABS配列から出発して、共通の軽鎖可変配列または共通の重鎖可変配列のいずれかを共有する2つの新たな抗原結合部位(ABS)を有する三価三重特異性結合分子が、特定される。共通の軽鎖ライブラリは、重鎖可変ドメイン(VH)に対するCDRの多様性を制限するが、共通の重鎖ライブラリは、重鎖可変ドメイン(VL)に対するCDRの多様性を制限する。共通の軽鎖または重鎖ライブラリは、in vitroディスプレイ(ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、哺乳動物ディスプレイなど)について、またはヒト化動物モデルにおいて作成される。
【0398】
他のライブラリは、結合特異性に関して不可知である、生殖細胞系列配列を含むVH配列またはVL配列からデノボで出発するが、スクリーニングは、ここで、生殖細胞系列配列以外のCDR配列を含み得る公知の特異性を有するABSから出発して行われる。公知のABS配列から出発して、親VHまたはVL配列は、それぞれ、以前に記載された通り、それらのCDRに導入された多様性を有するVL配列またはVH配列のいずれかと対形成する。非同族VH/VL対(すなわち、VHおよびVL対は親ABSに由来しない)は、以前に記載された通り、抗原1および抗原2の2つの抗原への結合についてスクリーニングされる。抗原の1つは、親ABSに結合する同じ抗原であり得る。候補ABSをさらに特徴付けるためのVH配列およびVL配列の追加の再フォーマット化は、以前に記載された通り、行われる。
【0399】
スクリーニングおよび特徴付けは、共通のVL領域またはVH領域の配列を共有する、異なる抗原またはエピトープにそれぞれ特異的な2つの新たなABSを有する三価三重特異性結合分子をもたらす。三価三重特異性抗体は、共通のVL領域またはVH領域を共有せず、第3の明確に異なる抗原に特異的である、第3のABSも有する。
6.13.25.1.公知のABSに由来する共通の重鎖を使用する三価三重特異性抗体の発見
【0400】
抗原のヒトOX40に特異的な新たな抗原結合部位を、ヒトOX40に対する公知の特異性を有する親ABS配列から出発して決定した。
【0401】
簡潔には、ヒトOX40に対するファージパニングキャンペーンから単離されたVHドメインを、共通の重鎖可変ドメイン配列として使用し、OX40キャンペーンから単離された、39個の他のABS候補のVLドメイン、およびその親の同族VLドメインと対形成した。キャンペーンでは、VLドメインの多様性は、CDR1およびCDR2定常を保持しながら、CDR3配列に限定した。候補のVL CDR3配列を表7に示す。OX40−13のVHは、最初に、L92〜L94位の嵩高い残基のその相対的な欠如について選択した(CDRH1:GFTFSSYIIHW;CDRH2:WVAYIFPYSGETYYADS;CDRH3:CARGAYYYTDLVFDYW)。ABS候補は、小スケールで、2mLの体積で、Expi293細胞中でモノクローナル抗体として発現した。発現の5日後、澄明な上清をPBST−BSAに3倍希釈し、biolayer干渉分光法(Octet)を介して、ビオチン化ヒトOX40に対する結合の維持について試験した。ここで、ストレプトアビジンセンサーを、約0.8nmの結合応答に達するまで、ビオチン化OX40で固定化した。ベースラインを確立した後、希釈された上清を抗原結合について評価した。
【0402】
図56は、OX40−13 VHドメインと、
図56Aに示された非同族VLドメイン1〜12および21〜24、
図56Bに示された非同族VLドメイン25〜40ならびに
図56Cに示された非同族VLドメイン14〜20およびVLドメインVL13と対形成したVLドメインについてのOctet結合分析を示す。非同族VLドメインのいくつかは、OX40−1およびOX40−27のVLを含む、親OX40−13 ABSと同等の結合を実証した。他は、親OX40−13 ABSと同等の検出可能な結合を実証しなかった。一方、依然として他は、親OX40−13 ABSの間の中程度の結合の範囲、および検出可能な結合の限定を実証した。興味深いことに、OX40−1およびOX40−27などの配列のいくつかは、親OX40−13 VL配列から著しく分化し、多くのVL配列が親VHの抗原認識を維持し得ることを示唆する。
【0403】
OX40−13に由来する共通の重鎖可変配列とそれぞれ対形成した、ここで発見した2つの新たなOX40 ABSは、新たなABS候補が、発現、収率または結合特性の顕著な喪失を引き起こさない、三価三重特異性抗体にフォーマット化される。
【表7】
6.13.26.
(実施例25)
公知のABSに由来する共通のVL配列またはVH配列を有する新たなABSの発見
【0404】
公知の特異性を有する親ABS配列から出発して、共通の軽鎖可変配列または共通の重鎖可変配列のいずれかを親ABSと共有する新たな抗原結合部位(ABS)を有する三価三重特異性結合分子が、特定される。共通の軽鎖ライブラリは、重鎖可変ドメイン(VH)に対するCDRの多様性を制限するが、共通の重鎖ライブラリは、重鎖可変ドメイン(VL)に対するCDRの多様性を制限する。共通の軽鎖または重鎖ライブラリは、in vitroディスプレイ(ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、哺乳動物ディスプレイなど)について、またはヒト化動物モデルにおいて作成される。
【0405】
他のライブラリは、結合特異性に関して不可知である、生殖細胞系列配列を含むVH配列またはVL配列からデノボで出発する。しかしながら、スクリーニングは、ここで、共通のVH配列またはVL配列を親ABSと共有しながら、異なる抗原特異性を有する新たなABSを発見するために、公知の特異性を有する親ABSから出発して行われる。公知のABS配列から出発して、親VHまたはVL配列は、それぞれ、以前に記載された通り、それらのCDRに導入された多様性を有するVL配列またはVH配列のいずれかと対形成する。対は、以前に記載された通り、目的の抗原への結合についてスクリーニングされる。候補ABSをさらに特徴付けるためのVH配列およびVL配列の追加の再フォーマット化は、以前に記載された通り、行われる。
【0406】
スクリーニングおよび特徴付けは、公知の抗原に特異的な公知の親ABSおよび異なる抗原に特異的な新たなABSを有する三価三重特異性結合分子をもたらし、ここで、ABSは、共通のVL領域またはVH領域の配列を共有する。三価三重特異性抗体は、共通のVL領域またはVH領域を共有せず、第3の明確に異なる抗原に特異的である、第3のABSも有する。
6.13.26.1.トラスツズマブと共有する共通のVLを有する新たなABSの発見
【0407】
共通の軽鎖ライブラリを使用するファージディスプレイキャンペーンは、HER2に特異的なトラスツズマブの軽鎖VL配列を使用して作成される。ヒトVH3−23 CDR配列は、ヒト抗体レパートリーにおいて見出されるCDR長による位置のアミノ酸の頻度に一致するように多様化され、対形成したVL/VH配列を発現するファージは、以前に記載された通り、目的の抗原(A2)への結合についてスクリーニングされる。ABSは、特徴付けのために、全長ヒト二価一重特異性ネイティブIgG1構造に再フォーマット化される。候補は、結合親和性、エピトープおよび一般的な生物物理学量(発現、純度、開発可能性など)について評価される。抗原1および抗原2の両方に結合する、10nM〜1μM、または好ましくは50nM〜250nMの範囲の個々の結合親和性を有するABSが特定される。
【0408】
目的の抗原に対する親IgG候補に由来するVLドメインおよびVHドメインは、CD3に特異的な第3のABS(例えば、SP34、OKT3など、およびこれらのヒト化バリアント)と一緒に、下記の1×2抗体フォーマットに再フォーマット化される。候補の組合せは、一過性哺乳動物発現を介して発現され、精製され、細胞表面上の両方の抗原に同時に共関与する能力について試験する。T細胞死滅および増殖アッセイなどの追加の機能アッセイを行って、抗体の有効性を特徴付ける。候補は以下の結合特性を有する。
トラスツズマブ1に対する一価KD:7nM
目的の抗原(A2)に対する一価KD:50〜100nM
CD3イプシロンに対する一価KD:20〜100nM
二重陽性腫瘍細胞に対する二価アビディティ:<10nM
【0409】
候補の鎖構造の例
鎖1:VH
trastuzumab−CH3−CH2−CH3
Hole
鎖2および鎖6:VL
trastuzumab−CH3
鎖3:VH
A2−CH3−VH
CD3−CH1−CH2−CH3
Knob
鎖4:VL
CD3−CL1
(注記:VL
CD3−CL1およびVH
CD3−CH1は交換することができ、すべてのドメインは、以前に記載された直交型変異のいずれかを保有していてもよい)
6.14.配列
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
他の配列:
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
7.参照による組み込み
【0410】
本出願で引用された全ての公開文献、特許、特許出願および他の文献は、あたかも個別の公開文献、特許、特許出願または他の文献が、あらゆる目的のために参照により個別に示されて組み込まれているのと同程度に、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
8.均等物
【0411】
様々な特定の実施形態を例証および記載してきたが、上記明細書は限定的なものではない。様々な変更が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく行われうることが理解される。多くの変形が、本明細書を検討すると、当業者には明らかになる。