特表2021-521866(P2021-521866A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-521866コーヒー豆中のカフェイン含有量を低減させるための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-521866(P2021-521866A)
(43)【公表日】2021年8月30日
(54)【発明の名称】コーヒー豆中のカフェイン含有量を低減させるための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/82 20060101AFI20210802BHJP
   A01H 6/76 20180101ALI20210802BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20210802BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20210802BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20210802BHJP
   A23F 5/00 20060101ALI20210802BHJP
   A23F 5/24 20060101ALI20210802BHJP
   A01G 22/40 20180101ALI20210802BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20210802BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20210802BHJP
【FI】
   C12N15/82 Z
   A01H6/76ZNA
   A01H1/00 A
   C12N15/09 110
   C12N15/55
   A01H1/00 Z
   A23F5/00
   A23F5/24
   A01G22/40
   C12N15/12
   C12N15/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】72
(21)【出願番号】特願2020-560965(P2020-560965)
(86)(22)【出願日】2019年4月30日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月22日
(86)【国際出願番号】IB2019053538
(87)【国際公開番号】WO2019211750
(87)【国際公開日】20191107
(31)【優先権主張番号】1807192.8
(32)【優先日】2018年5月1日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519428096
【氏名又は名称】トロピック バイオサイエンシーズ ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】マオリ エヤル
(72)【発明者】
【氏名】ピグノッチ クリスティナ
(72)【発明者】
【氏名】シウォスゼク アグニエスカ
(72)【発明者】
【氏名】ガランティ ヤーロン
(72)【発明者】
【氏名】ネヴィット ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】チャパッロ ガルシア アンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】メイア オフィール
【テーマコード(参考)】
2B022
2B030
4B027
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AB20
2B030AA03
2B030AB03
2B030AD09
2B030CA01
2B030CA14
2B030CA17
2B030CA19
2B030CA24
2B030CB02
4B027FB21
4B027FC04
4B027FE01
4B027FE02
4B027FQ02
4B027FQ06
4B027FQ20
(57)【要約】
カフェイン生合成経路の少なくとも1つの成分をコードする核酸配列における機能喪失突然変異を含むゲノムを含むコーヒー植物が開示される。コーヒー植物またはその一部を製造する方法、カフェイン含有量が減少したコーヒー豆を製造する方法、およびカフェイン含有量が減少したコーヒーを製造する方法も開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カフェイン生合成経路の少なくとも1つの成分をコードする核酸配列における機能喪失突然変異を含むゲノムを含む、コーヒー植物。
【請求項2】
コーヒー植物またはその一部を製造する方法であって、前記方法が:
(a)コーヒー植物細胞を、カフェイン生合成経路の少なくとも1つの成分をコードする核酸配列に向けられたDNA編集剤にさらして、前記カフェイン生合成経路の前記少なくとも1つの成分をコードする前記核酸配列における機能喪失突然変異をもたらすステップ;および
(b)コーヒー植物またはその一部を前記コーヒー植物細胞から再生するステップ
を含む方法。
【請求項3】
前記コーヒー植物から豆を収穫することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コーヒー植物を自殖または交雑することをさらに含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記突然変異が少なくとも1つの対立遺伝子において起こる、請求項1に記載のコーヒー植物、または請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記突然変異が全ての対立遺伝子において起こる、請求項1に記載のコーヒー植物、または請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記カフェイン生合成経路の前記少なくとも1つの成分をコードする前記核酸配列に向けられたDNA編集剤で処理されている、請求項1、5または6に記載のコーヒー植物またはその子孫。
【請求項8】
前記突然変異が、欠失、挿入、挿入/欠失(Indel)、および置換からなる群より選択される、請求項1もしくは5〜7のいずれか一項に記載のコーヒー植物、または請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記コーヒー植物が、Coffea canephora種由来である、請求項1もしくは5〜8のいずれか一項に記載のコーヒー植物、または請求項2〜6もしくは8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記コーヒー植物が、Coffea arabica種由来である、請求項1もしくは5〜8のいずれか一項に記載のコーヒー植物、または請求項2〜6もしくは8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記さらすステップが、前記DNA編集剤をコードする核酸構築物である、請求項2〜6または8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記さらすステップは、DNA遊離送達法によるものである、請求項2〜6または8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記コーヒー植物が、前記機能喪失突然変異を欠く同じ遺伝的背景および発生段階および成長条件のコーヒー植物のそれと比較して少なくとも5%のカフェインの減少を含む、請求項1もしくは5〜10のいずれか一項に記載のコーヒー植物、または請求項2〜6もしくは8〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
コーヒー植物の細胞において前記DNA編集剤を発現するための植物プロモーターに作動可能に結合されているカフェイン生合成経路の少なくとも1つの成分に向けられたDNA編集剤をコードする核酸配列を含む、核酸構築物。
【請求項15】
前記DNA編集剤が少なくとも1つのsgRNAを含む、請求項7〜10もしくは13のいずれか一項に記載のコーヒー植物、請求項2〜6もしくは8〜13のいずれか一項に記載の方法、または請求項14に記載の核酸構築物。
【請求項16】
前記sgRNAが、配列番号51〜78からなる群より選択される核酸配列を含む、請求項15に記載のコーヒー植物、方法、または核酸構築物。
【請求項17】
DNA編集剤がエンドヌクレアーゼを含まない、請求項7〜10、13もしくは15〜16のいずれか一項に記載のコーヒー植物、請求項2〜6、8〜13もしくは15〜16のいずれか一項に記載の方法、または請求項14〜16のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項18】
DNA編集剤がエンドヌクレアーゼを含む、請求項7〜10、13もしくは15〜16のいずれか一項に記載のコーヒー植物、請求項2〜6、8〜13もしくは15〜16のいずれか一項に記載の方法、または請求項14〜16のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項19】
前記DNA編集剤が、メガヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR−エンドヌクレアーゼ、dCRISPR−エンドヌクレアーゼ、およびホーミングエンドヌクレアーゼからなる群から選択されるDNA編集系のものである、請求項7〜10、13もしくは15〜18のいずれか一項に記載のコーヒー植物、請求項2〜6、8〜13もしくは15〜18のいずれか一項に記載の方法、または請求項14〜18のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項20】
前記DNA編集剤がCRISPR−Casを含むDNA編集系のものである、請求項7〜10、13もしくは15〜18のいずれか一項に記載のコーヒー植物、請求項2〜6、8〜13もしくは15〜18のいずれか一項に記載の方法、または請求項14〜18のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項21】
前記DNA編集剤が、細胞における発現をモニタリングするためのレポーターに連結されている、請求項7〜10、13もしくは15〜20のいずれか一項に記載のコーヒー植物、請求項2〜6、8〜13もしくは15〜20のいずれか一項に記載の方法、または請求項14〜20のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項22】
前記レポーターが蛍光タンパク質である、請求項21に記載のコーヒー植物、方法、または核酸構築物。
【請求項23】
前記DNA編集剤は、Cc09_g06970(配列番号9に記載)、Cc09_g06960(配列番号7に記載)、Cc00_g24720(配列番号1に記載)、Cc09_g06950(配列番号5に記載)、Cc01_g00720(配列番号3に記載)およびCc02_g09350(配列番号11に記載)の間で少なくとも90%同一である核酸配列に向けられる、請求項7〜10、13もしくは15〜22のいずれか一項に記載のコーヒー植物、請求項2〜6、8〜13もしくは15〜22のいずれか一項に記載の方法、または請求項14〜22のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項24】
前記DNA編集剤が、配列番号26〜31、33〜36、38〜41、43〜45、47〜48または50のいずれか1つに述べた核酸配列に含まれる核酸セグメントに向けられる、請求項7〜10、13もしくは15〜23のいずれか一項に記載のコーヒー植物、請求項2〜6、8〜13もしくは15〜23のいずれか一項に記載の方法、または請求項14〜23のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項25】
前記カフェイン生合成経路の少なくとも1つの成分がメチルトランスフェラーゼである、請求項1、5〜10、13もしくは15〜24のいずれか一項に記載のコーヒー植物、請求項2〜6、8〜13もしくは15〜24のいずれか一項に記載の方法、または請求項14〜24のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項26】
前記メチルトランスフェラーゼがコアSAM結合ドメインを含む、請求項25に記載のコーヒー植物、方法、または核酸構築物。
【請求項27】
前記メチルトランスフェラーゼがN−メチルトランスフェラーゼである、請求項25または26に記載のコーヒー植物、方法、または核酸構築物。
【請求項28】
前記N−メチルトランスフェラーゼが、キサントシンメチルトランスフェラーゼ(XMT)、7−メチキサンチンメチルトランスフェラーゼ(MXMT)、および3,7−ジメチルキサンチンメチルトランスフェラーゼ(DXMT)からなる群より選択される、請求項27に記載のコーヒー植物、方法、または核酸構築物。
【請求項29】
前記N−メチルトランスフェラーゼが、Cc09_g06970(配列番号10に記載)、Cc09_g06960(配列番号8に記載)、Cc00_g24720(配列番号2に記載)、Cc09_g06950(配列番号6に記載)、Cc01_g00720(配列番号4に記載)、Cc02_g09350(配列番号12に記載)、BAC75663.1(配列番号14に記載)、ABD90686.1(配列番号16に記載)、BAB39215.1(配列番号18に記載)、ABD90685.1(配列番号20に記載)、BAB39216.1(配列番号22に記載)、およびBAC75664.1(配列番号24に記載)からなる群から選択される、請求項27に記載のコーヒー植物、方法、または核酸構築物。
【請求項30】
前記コーヒー植物が非トランスジェニックである、請求項1、5〜10、13もしくは15〜29のいずれか一項に記載のコーヒー植物、請求項2〜6、8〜13もしくは15〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
請求項1、5〜10、13または15〜30のいずれか一項に記載のコーヒー植物の植物部分。
【請求項32】
豆である、請求項31に記載の植物部分。
【請求項33】
前記豆が乾燥している、請求項32に記載の植物部分。
【請求項34】
カフェイン含有量が低下したコーヒー豆を製造する方法であって、前記方法が以下:
(a)請求項1、5〜10、13または15〜30のいずれか一項に記載の植物を栽培するステップ;および
(b)植物から豆を収穫するステップ
を含む方法。
【請求項35】
カフェイン含有量を低下させたコーヒーを製造する方法であって、前記方法が請求項34に記載の豆を抽出、脱水および任意に焙焼に供するステップを含む方法。
【請求項36】
請求項3または32〜33のいずれか一項に記載の豆のコーヒー。
【請求項37】
請求項34に記載の方法または請求項35に記載の方法により製造された豆のコーヒー。
【請求項38】
粉末の形態である、請求項36または37に記載のコーヒー。
【請求項39】
粒状形態である、請求項36または37に記載のコーヒー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(単数/複数)
本出願は、2018年5月1日出願の英国仮特許出願第1807192.8号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は、その全体において参照によって本出願中に組み込まれている。
【0002】
配列表の記述
本出願の出願と同時に提出された92,812バイトを含む2019年4月30日に作成された題名73882 Sequence Listing.txtのASCIIファイルは、参照によって本出願中に組み込まれている。
【0003】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、コーヒー豆中のカフェイン含有量を減少させるための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
Coffea canephora(ロブスタコーヒー)は、一般的な飲料コーヒーを作り出すために収穫され、処理されるその種子のために商業的に栽培される2つのCoffea種の1つである。コーヒーは、世界中で消費され、コーヒー植物に天然に蓄積し、適度なレベルで飲料内に出現する刺激性カフェインを含む。カフェインは、多数の消費者にとって望ましいものではあるが、避けたいと望むものはかなり少ない。カフェイン含有量が減少したコーヒーの販売は、現在1.6bnドル(市場の約7%)を占めている。現在、脱カフェインコーヒーを商業的に生産するために種々の方法が採用されており、そのすべてが収穫後のプロセスである。これらのプロセスを最適化するために多くの研究および開発が行われてきたが、それらは最終飲料への風味に寄与する他の成分に影響することなく、非ロースト豆からカフェインを除去することができない。
【0005】
カフェインは、プリンアルカロイドであり、プリン代謝に由来する二次代謝産物である。プリン代謝からのキサントシンは、3つのメチル化ステップおよびリボース残基の除去を経て、カフェインを生成する。これらのメチル化ステップは、3つのメチルトランスフェラーゼ、キサントシンメチルトランスフェラーゼ(XMT)、7−メチキサンチンメチルトランスフェラーゼ(MXMTまたはテオブロミンシンターゼ)、および3,7−ジメチルキサンチンメチルトランスフェラーゼ(DXMTまたはカフェインシンターゼ)に起因する。
【0006】
第1のステップは、XMTによるキサントシンのメチル化であり、7−メチキサントシンを生じ(図1、ステップ1)、リボース残基は、その後メチルキサントシンヌクレオシダーゼによって除去される(図1、ステップ2)。リボース非含有7−メチキサントシンは、MXMTにより触媒される第2のメチル化を受けて、3,7−ジメチルキサンチン(テオブロミン)が生成し(図1、ステップ3)、DXMTによりさらにメチル化されて、1,3,7−トリメチルキサンチン(カフェイン)が生成する[非特許文献1]。
【0007】
多くのグループは、植物体内のカフェイン蓄積を減少させるために、コーヒー中のカフェイン生合成を研究してきた。例えば、Ogitaらのグループ[非特許文献2;非特許文献3;および非特許文献1]は、トランスジェニックRNAiカセットの過剰発現を介して脱カフェイン化アラビカコーヒー植物を生産した。彼らは、CaMXMT1の3’非翻訳領域(UTR)およびコード領域を標的とするそれらのRNAi構築物を設計した。CaMXMT1 RNAi構築物の過剰発現は、CaMXMT1だけでなく、CaDXMT1およびCaXMT1の転写レベルを低下させた。これは、一次低分子二本鎖RNA(dsRNA)がCaXMT1およびCaDXMT1のmRNA配列を標的とする多くの二次低分子dsRNAを産生するメチルトランスフェラーゼのコード領域間で共有される類似性(90%超)の結果である可能性が高い。この方法により、彼らは、葉中のカフェイン蓄積を平均50%減少させることができ、1例では70%の減少を示した。
【0008】
いくつかの特許出願は、カフェイン合成に関与する遺伝子のダウンレギュレーションに関するものであり、ダウンレギュレーションは、リボザイム(特許文献1)によって、またはアンチセンス分子を用いたRNA干渉(RNAi)(特許文献2、特許文献3および特許文献4)によってもたらされる。
【0009】
追加の背景技術には、特許文献5が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願第2003/0014775号
【特許文献2】米国特許出願第2008/0127373号
【特許文献3】米国特許出願第2002/0108143号
【特許文献4】PCT公開第1998/036053号
【特許文献5】米国特許出願第2017/0014449号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Ogita,S.,et al.(2005)Plant Biotechnology 22(5):461−468
【非特許文献2】Ogita et al.,Nature(2003)423:823
【非特許文献3】Ogita et al.,Plant Molecular Biology(2004)54(6):931−941
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、カフェイン生合成経路の少なくとも1つの成分をコードする核酸配列における機能喪失突然変異を含むゲノムを含むコーヒー植物が提供される。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、コーヒー植物またはその一部を生産する方法が提供され、その方法は、(a)コーヒー植物細胞を、カフェイン生合成経路の少なくとも1つの成分をコードする核酸配列に向けられたDNA編集剤にさらして、カフェイン生合成経路の少なくとも1つの成分をコードする核酸配列における機能喪失突然変異をもたらすステップ;および(b)コーヒー植物またはその一部をコーヒー植物細胞から再生するステップを含む。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、コーヒー植物の細胞においてDNA編集剤を発現するための植物プロモーターに作動可能に結合されているカフェイン生合成経路の少なくとも1つの成分に向けられるDNA編集剤をコードする核酸配列を含む核酸構築物が提供される。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、本発明のいくつかの実施形態のコーヒー植物の植物部分が提供される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、カフェイン含有量が低下したコーヒー豆を製造する方法が提供され、この方法は、(a)本発明のいくつかの実施形態の植物を栽培するステップ;および(b)植物から豆を収穫するステップを含む。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、カフェイン含有量が減少したコーヒーを製造する方法が提供され、この方法は、本発明のいくつかの実施形態の豆を抽出、脱水および任意に焙焼に供するステップを含む。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、本発明のいくつかの実施形態の豆のコーヒーが提供される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、本発明のいくつかの実施形態の方法によって製造された豆のコーヒーが提供される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、この方法はさらに、コーヒー植物から豆を収穫することを含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、この方法はさらに、コーヒー植物の自家受精または交雑を含む。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、突然変異は、少なくとも1つの対立遺伝子において起こる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、突然変異は、すべての対立遺伝子において起こる。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によると、本発明のいくつかの実施形態のコーヒー植物またはその子孫は、カフェイン生合成経路の少なくとも1つの成分をコードする核酸配列に向けられたDNA編集剤で処理されている。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、突然変異は、欠失、挿入、挿入/欠失(Indel)、および置換からなる群から選択される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、コーヒー植物は、Coffea canephora種由来である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、コーヒー植物は、Coffea arabica種由来である。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によると、主題は、DNA編集剤をコードする核酸構築物である。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、主題は、DNA非含有送達方法による。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によると、コーヒー植物は、機能喪失突然変異を欠く同じ遺伝的背景および発生段階および成長条件のコーヒー植物のそれと比較して、カフェインの少なくとも5%の減少を含む。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、DNA編集剤は、組み込まれていないDNA編集剤である。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、DNA編集剤は、少なくとも1つのsgRNAを含む。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、sgRNAは、配列識別番号51〜78からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、DNA編集剤は、エンドヌクレアーゼを含まない。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、DNA編集剤は、エンドヌクレアーゼを含む。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、DNA編集剤は、メガヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR−エンドヌクレアーゼ、dCRISPR−エンドヌクレアーゼ、およびホーミングエンドヌクレアーゼからなる群から選択されるDNA編集系のものである。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、DNA編集剤は、CRISPR−Casを含むDNA編集系のものである。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、DNA編集剤は、細胞内での発現をモニタリングするためのレポーターに連結されている。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、レポーターは、蛍光タンパク質である。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によると、DNA編集剤は、Cc09_g06970(配列番号9に記載)、Cc09_g06960(配列番号7に記載)、Cc00_g24720(配列番号1に記載)、Cc09_g06950(配列番号5に記載)、Cc01_g00720(配列番号3に記載)およびCc02_g09350(配列番号11に記載)の間で少なくとも90%同一である核酸配列に向けられる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、DNA編集剤は、配列番号26〜31、33〜36、38〜41、43〜45、47〜48または50のいずれか1つに示される核酸配列に含まれる核酸セグメントに向けられる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、カフェイン生合成経路の少なくとも1つの成分は、メチルトランスフェラーゼである。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、メチルトランスフェラーゼは、コアSAM結合ドメインを含む。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、メチルトランスフェラーゼは、N−メチルトランスフェラーゼである。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、N−メチルトランスフェラーゼは、キサントシンメチルトランスフェラーゼ(XMT)、7−メチキサンチンメチルトランスフェラーゼ(MXMT)、および3,7−ジメチルキサンチンメチルトランスフェラーゼ(DXMT)からなる群から選択される。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、N−メチルトランスフェラーゼは、Cc09_g06970(配列番号10に記載)、Cc09_g06960(配列番号8に記載)、Cc00_g24720(配列番号2に記載)、Cc09_g06950(配列番号6に記載)、Cc01_g00720(配列番号4に記載)、Cc02_g09350(配列番号12に記載)、BAC75663.1(配列番号14に記載)、ABD90686.1(配列番号16に記載)、BAB39215.1(配列番号18に記載)、ABD90685.1(配列番号20に記載)、BAB39216.1(配列番号22に記載)、およびBAC75664.1(配列番号24に記載)からなる群から選択される。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、コーヒー植物は、非トランスジェニックである。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によると、植物部分は、豆である。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によれば、豆は、乾燥している。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によると、コーヒーは、粉末形態である。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によると、コーヒーは、顆粒形態である。
【0052】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および/または科学的用語は、本発明が関係する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様または同等の方法および材料は、本発明の実施形態の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料を、以下に記載する。不一致の場合には、定義を含む特許明細書が管理することになる。さらに、材料、方法、例は、例示的であるに過ぎず、必ずしも限定的であることを意図するものではない。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態は、添付図面を参照して、例のみによって本明細書に記載される。ここで詳細に図面を特定的に参照すると、示されている特定は、本発明の実施形態の例示的な議論の例によって、および目的のためのものであることが強調される。この点に関して、図面と共に採用される記述は、本発明の実施態様がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1図1は、コーヒー植物におけるカフェイン生合成経路を示す。第1のステップ(1)、第3のステップ(3)、第4のステップ(4)は、メチル基転移を特徴づけ、第2のステップ(2)は、リボース除去を伴う。XMT、キサントシンメチルトランスフェラーゼ;MXMT、7−メチルキサンチンメチルトランスフェラーゼ;DXMT、3,7−ジメチルキサンチンメチルトランスフェラーゼ。Ogita,S.,et al.(2005)Plant Biotechnology 22(5):461−468より包含し、修正した。
図2(1)】図2は、Coffea canephora(C.canephora)からの選択された候補遺伝子およびカフェインの生合成に関与するCoffea arabica(C.arabica)からの特徴付けられたメチルトランスフェラーゼのタンパク質アライメントを示す(配列番号2、4、6、8、10、14、18、22および24に記載されているように)。
図2(2)】図2は、Coffea canephora(C.canephora)からの選択された候補遺伝子およびカフェインの生合成に関与するCoffea arabica(C.arabica)からの特徴付けられたメチルトランスフェラーゼのタンパク質アライメントを示す(配列番号2、4、6、8、10、14、18、22および24に記載されているように)。
図3図3は、10種の植物由来のN−メチルトランスフェラーゼ配列の進化的関係を示す隣接結合分析を示している。枝長の和=76.09435312の最適樹を示す。この系統樹は、アミノ酸アラインメント(MUSCLE)からMEGA v6で計算した。ブートストラップ試験(100反復)で関連分類群が一緒にクラスター化した反復系統樹のパーセンテージは、着色した枝(赤色、40%未満;緑色、80%超)として示す。赤色太字の遺伝子IDは、カフェイン生合成経路で特徴付けられており、C.canephoraのゲノム中の密接に関連した遺伝子を検索するためのクエリー配列として使用されたC.arabica由来の遺伝子を示す。緑色太字の遺伝子IDは、カフェイン生合成に関与するC.arabica遺伝子に最も近い傾向が最も高い相同体であるC.canephora候補遺伝子を示す。緑色の他のすべての遺伝子IDは、検索した他のC.canephora N−メチルトランスフェラーゼに対応する。
図4図4は、C.canephora組織における選択された候補遺伝子の遺伝子発現を示す。XMT、MXMTおよびDXMTの最も近い相同体(すなわち、それぞれCc09_g06970、Cc00_g24270およびCc01_g00720)は、種々の葉組織において中程度から高度に発現される。データは、www.coffee−genome.org/から取得し、遺伝子発現解析に用いるRNA−seqデータの詳細な説明は、Denoued et al.,Science(2014)345(6201):1181−1184に見出すことができる。
図5図5は、C.canephora組織における選択された候補遺伝子の遺伝子発現を示す。XMT、MXMTおよびDXMTの追加の相同体(すなわち、Cc09_g06960およびCc09_g06950)は、種々の葉組織において低いまたは中程度の発現を有する。データは、www.coffee−genome.org/から取得し、遺伝子発現解析に用いるRNA−seqデータの詳細な説明は、Denoued et al.,2014、前出に見出すことができる。
図6(1)】図6は、カフェインの生合成に関与することが報告されている特徴付けられたN−メチルトランスフェラーゼの推定相同体としてコーヒーゲノム中で同定された5つの選択された候補遺伝子の多重アラインメントを示す(配列番号1、3、5、7および9に記載されているように)。ヌクレオチド配列は、デフォルトパラメータを用いてMUSCLEとアラインメントした。sgRNA6、7、11、12、13、14、37および38の標的部位は、候補遺伝子上に赤色の文字でマークされているか、または他のsgRNA(例えば、sgRNA11およびsgRNA37)との重複配列がある場合は青緑色で強調されている。PAM領域は、灰色で強調されている。
図6(2)】図6は、カフェインの生合成に関与することが報告されている特徴付けられたN−メチルトランスフェラーゼの推定相同体としてコーヒーゲノム中で同定された5つの選択された候補遺伝子の多重アラインメントを示す(配列番号1、3、5、7および9に記載されているように)。ヌクレオチド配列は、デフォルトパラメータを用いてMUSCLEとアラインメントした。sgRNA6、7、11、12、13、14、37および38の標的部位は、候補遺伝子上に赤色の文字でマークされているか、または他のsgRNA(例えば、sgRNA11およびsgRNA37)との重複配列がある場合は青緑色で強調されている。PAM領域は、灰色で強調されている。
図6(3)】図6は、カフェインの生合成に関与することが報告されている特徴付けられたN−メチルトランスフェラーゼの推定相同体としてコーヒーゲノム中で同定された5つの選択された候補遺伝子の多重アラインメントを示す(配列番号1、3、5、7および9に記載されているように)。ヌクレオチド配列は、デフォルトパラメータを用いてMUSCLEとアラインメントした。sgRNA6、7、11、12、13、14、37および38の標的部位は、候補遺伝子上に赤色の文字でマークされているか、または他のsgRNA(例えば、sgRNA11およびsgRNA37)との重複配列がある場合は青緑色で強調されている。PAM領域は、灰色で強調されている。
図7A図7Aは、選択したC.canephora遺伝子の部分的ヌクレオチド配列を示しており、これらは列挙したsgRNAを標的としていた。太字は試験したコーヒーの4系列間の対立遺伝子変異を示し、太字および下線付き文字はsgRNAによって標的される配列を示し、下線付き文字はプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位を示す。sgRNA6、7、11、12、13および14の各々についての標的sgRNA配列を、以下に提供し(注目すべきことに、これらの配列は、例えばプラスミドにおいてトランスフェクションに使用されるsgRNA配列ではない)、影付きはPAM部位を示し、これらを5’から3’の順に列挙する。配列は、配列番号25〜48に記載されている。
図7B図7Bは、選択したC.canephora遺伝子の部分的ヌクレオチド配列を示しており、これらは列挙したsgRNAを標的としていた。太字は試験したコーヒーの4系列間の対立遺伝子変異を示し、太字および下線付き文字はsgRNAによって標的される配列を示し、下線付き文字はプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位を示す。sgRNA6、7、11、12、13および14の各々についての標的sgRNA配列を、以下に提供し(注目すべきことに、これらの配列は、例えばプラスミドにおいてトランスフェクションに使用されるsgRNA配列ではない)、影付きはPAM部位を示し、これらを5’から3’の順に列挙する。配列は、配列番号25〜48に記載されている。
図7C図7Cは、選択したC.canephora遺伝子の部分的ヌクレオチド配列を示しており、これらは列挙したsgRNAを標的としていた。太字は試験したコーヒーの4系列間の対立遺伝子変異を示し、太字および下線付き文字はsgRNAによって標的される配列を示し、下線付き文字はプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位を示す。sgRNA6、7、11、12、13および14の各々についての標的sgRNA配列を、以下に提供し(注目すべきことに、これらの配列は、例えばプラスミドにおいてトランスフェクションに使用されるsgRNA配列ではない)、影付きはPAM部位を示し、これらを5’から3’の順に列挙する。配列は、配列番号25〜48に記載されている。
図7D図7Dは、選択したC.canephora遺伝子の部分的ヌクレオチド配列を示しており、これらは列挙したsgRNAを標的としていた。太字は試験したコーヒーの4系列間の対立遺伝子変異を示し、太字および下線付き文字はsgRNAによって標的される配列を示し、下線付き文字はプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位を示す。sgRNA6、7、11、12、13および14の各々についての標的sgRNA配列を、以下に提供し(注目すべきことに、これらの配列は、例えばプラスミドにおいてトランスフェクションに使用されるsgRNA配列ではない)、影付きはPAM部位を示し、これらを5’から3’の順に列挙する。配列は、配列番号25〜48に記載されている。
図7E図7Eは、選択したC.canephora遺伝子の部分的ヌクレオチド配列を示しており、これらは列挙したsgRNAを標的としていた。太字は試験したコーヒーの4系列間の対立遺伝子変異を示し、太字および下線付き文字はsgRNAによって標的される配列を示し、下線付き文字はプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位を示す。sgRNA6、7、11、12、13および14の各々についての標的sgRNA配列を、以下に提供し(注目すべきことに、これらの配列は、例えばプラスミドにおいてトランスフェクションに使用されるsgRNA配列ではない)、影付きはPAM部位を示し、これらを5’から3’の順に列挙する。配列は、配列番号25〜48に記載されている。
図8A図8Aは、配列決定分析およびT7アッセイを示し、染色体9中の選択された候補遺伝子Cc09g06960(xmt/mxmt/dxmt)、およびCc09g06970(xmt)のいくつかにおける突然変異の存在を明らかにする。(図8A)染色体9中の遺伝子(Cc09g06950、Cc09g06960、Cc09g06970)を表す画像であり、カフェイン生合成における推定上の役割があり、他の密接に関連するN−メチルトランスフェラーゼ遺伝子Cc00g24720およびCc01g00720との保存された領域に基づいてsgRNAを設計し、選択した相対的位置を示す。
図8B図8Bは、配列決定分析およびT7アッセイを示し、染色体9中の選択された候補遺伝子Cc09g06960(xmt/mxmt/dxmt)、およびCc09g06970(xmt)のいくつかにおける突然変異の存在を明らかにする。(図8B)Cc09g06950、Cc09g06960、Cc09g06970遺伝子座を、図8A(P−23〜P−28)に示すようにsgRNA領域の外側にある特異的プライマーで増幅し、pBLUNT(Invitrogen)にクローニングして、配列解析およびT7E1アッセイを行った。
図8C図8Cは、配列決定分析およびT7アッセイを示し、染色体9中の選択された候補遺伝子Cc09g06960(xmt/mxmt/dxmt)、およびCc09g06970(xmt)のいくつかにおける突然変異の存在を明らかにする。(図8C)T7E1アッセイで測定した突然変異検出。「27」は、sgRNAを含まない対照プラスミドを示す。「23」および「25」は、用いられるsgRNAの組み合わせである。赤色星印は、遺伝子編集の正の証拠を示す。
図8D図8Dは、配列決定分析およびT7アッセイを示し、染色体9中の選択された候補遺伝子Cc09g06960(xmt/mxmt/dxmt)、およびCc09g06970(xmt)のいくつかにおける突然変異の存在を明らかにする。(図8D)特定のsgRNAによって誘導されるゲノム編集機器の発現によって誘導される変異DNA配列を、野生型(2027−Ctrl)配列に並べる。PAMは黒色線で示し、sgRNA位置は赤色長方形で示す。遺伝子Cc09g06960について、1塩基対(bp)欠失(図8D)が、解析した7クローンのうち2クローン(2023−3および2023−6と標識)で認められた。各遺伝子についての他の5クローンの配列を示し、野生型配列と同一である。
図8E図8Eは、配列決定分析およびT7アッセイを示し、染色体9中の選択された候補遺伝子Cc09g06960(xmt/mxmt/dxmt)、およびCc09g06970(xmt)のいくつかにおける突然変異の存在を明らかにする。(図8E)特定のsgRNAによって誘導されるゲノム編集機器の発現によって誘導される変異DNA配列を、野生型(2027−Ctrl)配列に並べる。PAMは黒色線で示し、sgRNA位置は赤色長方形で示す。遺伝子Cc09g06970について、1bp挿入(図8E)が、解析した7クローンのうち2クローン(2023−3および2023−4と標識)で認められた。各遺伝子についての他の5クローンの配列を示し、野生型配列と同一である。
図8F図8Fは、配列決定分析およびT7アッセイを示し、染色体9中の選択された候補遺伝子Cc09g06960(xmt/mxmt/dxmt)、およびCc09g06970(xmt)のいくつかにおける突然変異の存在を明らかにする。(図8F)遺伝子Cc09g06950およびCc09g06970についての追加の突然変異配列。個々のクローン化アンプリコンの配列決定により289bpの大きな欠失が遺伝子Cc09g06950に認められ(8クローン中4クローン)、個々のクローン化アンプリコンの配列決定により210bpおよび40bpの再配列の欠失が遺伝子Cc09g06970に認められた(4クローン中3クローン)。sgRNA位置を赤色文字で示し、PAM領域を灰色で強調する。
図8G図8Gは、配列決定分析およびT7アッセイを示し、染色体9中の選択された候補遺伝子Cc09g06960(xmt/mxmt/dxmt)、およびCc09g06970(xmt)のいくつかにおける突然変異の存在を明らかにする。(図8G)遺伝子Cc09g06950およびCc09g06970についての追加の突然変異配列。個々のクローン化アンプリコンの配列決定により289bpの大きな欠失が遺伝子Cc09g06950に認められ(8クローン中4クローン)、個々のクローン化アンプリコンの配列決定により210bpおよび40bpの再配列の欠失が遺伝子Cc09g06970に認められた(4クローン中3クローン)。sgRNA位置を赤色文字で示し、PAM領域を灰色で強調する。
図9図9A〜Fは、すべての形質についてのトランスフェクトしたコーヒープロトプラストの再生を示す。(図9A)プラスミドpDK2027、pDK2023またはpDK2025によるトランスフェクションに供した新たに単離したコーヒープロトプラスト;(図9B)プロトプラスト単離およびトランスフェクションの48時間後に最初の細胞分裂が起こる;(図9C)トランスフェクションの3か月後にトランスフェクションしたプロトプラストから得た胚発生微小アリ;(図9D)微小アリから1〜2mmの胚発生カルスが発生する;(図9E)胚発生カルスから再生する球状およびトルペド胚;(図9F)再生されたコーヒー小植物。
図10図10は、C.canephoraからの候補のゲネスを標的とするように設計された追加のsgRNAを示す。注目すべきことに、PAM領域は、灰色で強調されている。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、コーヒー豆中のカフェイン含有量を減少させるための組成物および方法に関する。
【0056】
本発明の原理および動作は、図面および付随する説明を参照して、より良く理解され得る。
【0057】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の記載に示された、または実施例によって例示される詳細に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であるか、または様々な方法で実行もしくは実施されることが可能である。また、ここで採用されている用語および専門用語は、記述の目的のためのものであり、限定的なものと見なされるべきではないことは理解されるべきである。
【0058】
現在、様々な収穫後プロセスが、脱カフェインコーヒーを商業的に生産するために用いられている。これらのプロセスを最適化するために多くの研究および開発が行われてきたが、それらは、最終飲料に風味を与える他の成分に影響することなく、焙焼されていない豆からカフェインを除去することができない。
【0059】
カフェインはプリンアルカロイドであり、プリン代謝に由来する二次代謝産物である。プリン代謝からのキサントシンは、3つのメチル化ステップを経て、リボース残基を除去してカフェインを生成する。これらのメチル化ステップは、3つのメチルトランスフェラーゼ、キサントシンメチルトランスフェラーゼ(XMT)、7−メチキサンチンメチルトランスフェラーゼ(MXMTまたはテオブロミンシンターゼ)、および3,7−ジメチルキサンチンメチルトランスフェラーゼ(DXMTまたはカフェインシンターゼ)に起因する。カフェイン蓄積が減少したコーヒー植物の作出は、より少ない収穫後の加工および改善された飲料特性を必要とする製品をもたらすであろう。
【0060】
ゲノム編集は、今日では、改変のためにゲノムDNAの特定の配列を標的化するために使用できる確立された方法である。遺伝子のコード領域内のわずか数ヌクレオチドの改変は、しばしばmRNAのタンパク質への翻訳の妨害をもたらし得、その結果生じるタンパク質を不活性にする。この種の遺伝子ノックアウトは、カフェインのような特定の二次代謝産物の蓄積を減らすために、代謝経路の鍵となる酵素を改変するのに用いることができる。
【0061】
本発明を実行まで減少させる一方で、本発明者らは、コーヒー植物におけるカフェイン合成を標的とし、かつ妨害するように設計された遺伝子編集技術を考案した。ここに記載の技術は、機能喪失突然変異を引き起こし、カフェイン生合成をダウンレギュレートする突然変異を導入することによって、カフェイン合成に関与する内因性メチルトランスフェラーゼ、例えば、XMT、MXMTおよびDXMTを標的とする。さらに、記載された遺伝子技術は、プロモーター、ターミネーター、選択マーカーを有する発現カセットを含む古典的な分子遺伝学的およびトランスジェニック手段を必要としない。
【0062】
以下に、および後続する実施例の章に示すように、本発明者らは、コーヒー植物におけるカフェイン製造を減少させるために標的化され得るカフェイン生合成遺伝子を同定した(以下の実施例1参照)。本発明者らは、次に、XMT、MXMTおよびDXMT遺伝子を標的化し、これらのメチルトランスフェラーゼの少なくとも1つを対象とするCRISPR/Cas9系中で使用することができるsgRNAを設計した(以下の実施例2参照)。コーヒープロトプラスト中の2対のsgRNAを用いてXMT、MXMTおよびDXMT遺伝子を標的化し、配列解析およびT7アッセイによって明らかなように正確な突然変異を誘発した(以下の図8B〜Eおよび実施例2参照)。次に、ゲノム編集事象を経たプロトプラストからコーヒー植物を再生した(以下の図9A〜Fおよび実施例3を参照)。総合すると、この技術は、コーヒー植物を生成するために使用することができ、その結果、コーヒー豆は、風味に寄与する他の成分に影響を及ぼすことなく、低下したカフェイン含有量を含む。
【0063】
したがって、本発明の一態様によれば、コーヒー植物またはその一部を生産する方法であって、当該方法が:(a)コーヒー植物細胞を、カフェイン生合成経路の少なくとも1つの成分をコードする核酸配列に向けられたDNA編集剤にさらして、カフェイン生合成経路の少なくとも1つの成分をコードする核酸配列における機能喪失突然変異をもたらすステップ;および(b)コーヒー植物またはその一部をコーヒー植物細胞から再生するステップを含む方法が提供される。
【0064】
本明細書中で使用される「コーヒー」とは、Rubiaceae科、Coffea属の植物を指す。コーヒー種が多い。本発明の実施形態は、2つの主要な市販コーヒー種:アラビカコーヒーとして知られるコーヒーアラビカ(C.arabica)およびロバスタコーヒー(C.robusta)として知られるコーヒーカネフォラを指すことができる。Coffea liberica Bull.ex Hiernもここで検討されており、それは、世界のコーヒー豆市場の3%を占める。Coffea arnoldiana De Wildまたはより一般的にはリベリアコーヒーとしても知られている。アラビカ種からのコーヒーは、一般に「ブラジル」とも呼ばれ、または「他のマイルド」に分類される。ブラジル産コーヒーはブラジル産であり、「他のマイルド」は他の高級コーヒー生産国で栽培されており、それは、一般に、コロンビア、グアテマラ、スマトラ、インドネシア、コスタリカ、メキシコ、米国(ハワイ)、エルサルバドル、ペルー、ケニア、エチオピアおよびジャマイカを含むと認識されている。Coffea canephora、すなわちロバスタは、典型的には、アラビカコーヒーの低コスト増量剤として使用される。これらのロバスタコーヒーは、典型的には、西および中央アフリカ、インド、東南アジア、インドネシア、およびまたブラジルの下部地域で生育している。当業者は、地理的領域がコーヒー栽培プロセスが同一のコーヒー苗木を利用し、栽培環境が類似しているコーヒー栽培地域を指すことを理解するであろう。
【0065】
本明細書中で使用される「植物」とは、植物全体(複数可)、移植された植物、植物の祖先および子孫、ならびに種子、果実、シュート、茎、根(塊茎を含む)、台木、穂軸、ならびに植物細胞、組織および器官を含む植物部分を指す。
【0066】
具体的な実施形態によれば、植物は、植物細胞、例えば胚細胞懸濁液中の植物細胞である。
【0067】
具体的な実施形態によると、植物部分は豆である。
【0068】
「穀物」、「種子」、または「豆」は、顕花植物の再生の単位を指し、別のそのような植物に発生することができる。本明細書中で、特にコーヒー植物に関して使用されるように、用語は同義的かつ互換的に使用される。
【0069】
具体的な実施形態によると、細胞は生殖細胞である。
【0070】
具体的な実施形態によると、植物細胞は胚形成細胞である。
【0071】
具体的な実施形態によると、細胞は体細胞である。
【0072】
具体的な実施形態によると、植物細胞は体細胞性胚形成細胞である。
【0073】
具体的な実施形態によれば、細胞はプロトプラストである。
【0074】
1つの実施形態によれば、プロトプラストは、任意の植物組織、例えば、果実、花、根、葉、胚細胞懸濁液、カルスまたは実生組織に由来する。
【0075】
植物は、懸濁培養、プロトプラスト、胚、分裂組織領域、カルス組織、葉、配偶体、胞子体、花粉、および小胞子を含む任意の形態でよい。
【0076】
具体的な実施形態によると、植物部分はDNAを含む。
【0077】
具体的な実施形態によれば、コーヒー植物は、コーヒー育種系統、より好ましくはエリート系統のものである。
【0078】
具体的な実施形態によれば、コーヒー植物は、エリート系統のものである。
【0079】
具体的な実施形態によれば、コーヒー植物は、純粋な系統のものである。
【0080】
具体的な実施形態によれば、コーヒー植物は、コーヒー変種または育種生殖質のものである。
【0081】
本明細書中で使用される「育種系統」という用語は、野生変種または在来種とは対照的に、商業的に価値のある、または農学的に望ましい特性を有する栽培されたコーヒーの系統を指す。この用語は、商業的F雑種を作出するために使用される植物の本質的にホモ接合性であり、通常は近交系を表す、エリート育種系統またはエリート系統への参照を含む。多くの農学的に望ましい形質を含む優れた農学的性能のための育種および選択によって、エリート育種系統が得られる。エリート植物とは、エリート系統からのあらゆる植物である。優れた農学的性能は、本明細書に定義される農学的に望ましい形質の所望の組合せを指し、ここでは、農学的に望ましい形質の多数、好ましくは全てが、非エリート育種系統と比較して、エリート育種系統において改良されることが望ましい。エリート育種系統は、本質的にホモ接合であり、好ましくは近交系である。
【0082】
本明細書中で使用される「エリート系統」という用語は、優れた農学的性能のための育種および選択から生じた任意の系統を指す。エリート系統は、好ましくは、本明細書中で定義される望ましい農業形質について、複数の、好ましくは少なくとも3、4、5、6またはそれ以上(遺伝子)を有する系統である。
【0083】
「栽培品種」および「変種」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、自家消費用または商品化用の農産物を生産するために、例えば、農民および栽培者によって商業化される目的で、育種、例えば、交配および選択によって意図的に開発された植物を示す。「育種生殖質」という用語は、「野生」状態以外の生物学的状態を有する植物を示し、当該「野生」状態は、元々の栽培されていない状態、または植物もしくは系統の天然の状態を示す。
【0084】
「育種生殖質」という用語は、限定されるわけではないが、半天然、半野生、雑草、伝統的栽培品種、在来品種、育種材料、研究材料、育種家系、合成集団、雑種、創始者株/基礎集団、近交系(雑種栽培品種の親)、分離集団、突然変異体/遺伝的ストック、市場クラスおよび高度/改良栽培品種を含む。本明細書中で使用される用語「純血種」、「純粋な血種」または「近交系」は互換可能であり、反復自家交配および−または戻し交配によって得られる実質的にホモ接合性の植物または植物系統を指す。
【0085】
コーヒー変種の非包括的リストを、以下に示す:
野生コーヒー:これは、エチオピア原産のコーヒー種である「Coffea racemosa Lour」の通称である。
【0086】
Baron Goto Red:’Catuai Red’に非常に類似したコーヒー豆栽培品種。ハワイの数カ所で栽培されている。
【0087】
ブルーマウンテン:Coffea arabica L.’Blue Mountain’。Jamaican coffeaまたはKenyan coffeaとしても一般的に知られている。それは、ジャマイカ原産であるが、現在はハワイ、パプアニューギニアおよびケニアで栽培されている有名なアラビカ栽培品種である。それは、高品質のカップ風味を有する素晴らしいコーヒーである。それは、ナッツ状の芳香、鮮やかな酸味および特有の牛球状の風味が特徴である。
【0088】
ブルボン:Coffea arabica L.’Bourbon’。Coffea Arabicaの植物変種または栽培品種であり、それは、インド洋のマダガスカルの東部に位置する現在Reunionと呼ばれているフランスの支配されたBourbon島で最初に栽培された。
【0089】
ブラジル産コーヒー:Coffea arabica L.’Mundo Novo’。「Bourbon」および「Typica」変種から作出したコーヒー植物交雑種を識別するのに用いられる慣用名。
【0090】
Caracol/Caracoli:「’seashell’」を意味するスペイン語のCaracolilloから採用し、ピーベリーコーヒー豆を記述する。
【0091】
カチモール:1959年ポルトガルのCaturra株とHibrido de Timor株との間で交差開発されたコーヒー豆栽培品種である。それは、コーヒー葉さび病(Hemileia vastatrix)に対して耐性である。収量は優れているが品質は平均的なより新しい栽培品種選択。
【0092】
Catuai:Mundo NovoとCaturra Arabica栽培品種との間の交配である。その高収率で知られており、黄色(Coffea arabica L.’Catuai Amarelo’)または赤色チェリー(Coffea arabica L.’Catuai Vermelho’)のいずれかによって特徴付けられる。
【0093】
Caturra:比較的最近開発されたCoffea Arabica種の亜変種であり、一般的により急速に成熟し、より大きな収量を与え、BourbonおよびTypicaのような伝統的な「旧アラビカ」変種よりも耐病性である。
【0094】
Columbiana:コロンビアを起源とする栽培品種。それは、頑健であり、大量の産生株であるが、カップ品質は平均的である。
【0095】
Congencis:Coffea Congencis − コンゴの土手のコーヒー豆栽培品種であり、良質なコーヒーを生産しているが、収量は低い。商業的栽培に適さない。
【0096】
DewevreiIt:Coffea DewevreiIt。ベルギー・コンゴの森林に自生するのを発見されたコーヒー豆栽培品種。商業的栽培には適さないと考えられる。
【0097】
DybowskiiIt:Coffea DybowskiiIt。このコーヒー豆栽培品種は、熱帯間アフリカのEucoffeaの群に由来する。商業的栽培に適さないと考えられる
【0098】
Excelsa:Coffea Excelsa − 1904年に発見されたコーヒー豆栽培品種。病害に対する自然の耐性を持ち、高い収量をもたらす。いったん老化すると、アラビカ変種に似た臭いのあり、心地良い味を送達することができる。
【0099】
Guadalupe:現在ハワイで評価されているCoffea Arabicaの栽培品種。
【0100】
Guatemala(n):ハワイの他の地域で評価されているCoffea Arabicaの栽培品種。
【0101】
Hibrido de Timor:これは、ArabicaとRobustaとの自然雑種である栽培品種である。それは、44本の染色体をもつ点でアラビカコーヒーに似ている。
【0102】
Icatu:「Arabica & Robusta hybrids」をMundo Novo and CaturraのArabica栽培品種に混合した栽培品種。
【0103】
種間雑種:コーヒー植物種の雑種であり;ICATU(ブラジル;Bourbon/MNおよびRobustaの交雑種)、S2828(インド;ArabicaおよびLiberiaの交雑種)、Arabusta(Ivory Coast;ArabicaおよびRobustaの交雑種)を含む。
【0104】
「K7」、「SL6」、「SL26」、「H66」、「KP532」:Hemileiaのようなコーヒー植物病害の種々の変異体に対してより耐性のある有望な新しい栽培品種。
【0105】
ケント:マイソールインドで最初に開発され、東アフリカで栽培されたアラビカコーヒー豆の栽培品種。それは、「コーヒーさび病」病害に対して耐性であるが、コーヒーベリー類病には非常に弱い高収量植物である。それは、「S.288」、「S.333」および「S.795」のより耐性のある栽培品種に徐々に置き換えられつつある。
【0106】
名称がKouillou:マダガスカルのガボンの川に由来するCoffea canephora(Robusta)変種の名称。
【0107】
ラウリア:良質のカップを持つが、かなりの収量しか持たない干ばつ耐性栽培品種。
【0108】
Maragogipe/ Maragogype:Coffea arabica L。’Maragopipe’。「Elephant Bean」としても知られている。ブラジルのBahia州のMaragogype郡で最初に発見された(1884)Coffea Arabica(Typica)の突然変異変種。
【0109】
モーリチアナ:Coffea Mauritiana。苦いカップを作るコーヒー豆の栽培品種。商業的栽培には適さないと考えられる。
【0110】
Mundo Novo:変種「Arabica」と「Bourbon」との間の交雑種としてブラジルを起源とする自然雑種。それは、3500〜5500フィート(1070m〜1525m)で良好に生育し、病害に耐性があり、生産収率が高い非常に頑健な植物である。他の栽培品種よりも遅く成熟する傾向がある。
【0111】
Neo−Arnoldiana:Coffea Neo−Arnoldianaは、収量が高いためコンゴの一部地域で栽培されているコーヒー豆栽培品種である。市販の栽培には適さないと考えられる。
【0112】
Nganda:Coffea canephora Pierre ex A.Froehner’Nganda’。コーヒー植物の直立型のCoffea Canephoraは、Robustaと呼ばれ、その普及型はまた、NgandaまたはKouillouとして知られている。
【0113】
パカ:エルサルバドルの農学者によって作られ、このアラビカの栽培品種は、ブルボンよりも短く、収量も高いが、ラテンアメリカでは人気があるにもかかわらず、カップが劣っていると多くの人が信じている。
【0114】
Pacamara:低収率の大豆変種Maragogipeを高収率のPacaと交雑させることにより作出したアラビカ栽培品種。1960年代にエルサルバドルで開発され、この豆は、平均的なコーヒー豆よりも約75%大きい。
【0115】
Pache Colis:栽培品種CaturraとPache comumとの間の交配であるアラビカ栽培品種。もともとMataquescuintlaのグアテマラ農場で生育していることがわかった。
【0116】
Pache Comum:サンタロサグアテマラで開発されたTypica(アラビカ)の栽培品種変異。それは、良好に適応し、その平滑であり、やや平坦なカップに注目される。
【0117】
プレアンガー:現在ハワイで評価されているコーヒー植物栽培品種。
【0118】
プレトリア:現在ハワイで評価されているコーヒー植物栽培品種。
【0119】
Purpurescens:その異常な紫葉を特徴とするコーヒー植物栽培品種。
【0120】
Racemosa:Coffea Racemosa−乾季に葉を喪失し、雨季の始まりに再生育するコーヒー豆栽培品種。それは、一般的に味が悪く、商業的栽培には適していないと評価されている。
【0121】
Ruiru 11:ケニアのRuiruのコーヒー研究所で開発され、1985年に発売された新しい矮性交雑である。Ruiru 11は、コーヒーベリー類病とコーヒー葉さび病との両方に耐性がある。それはまた、収量が高く、通常の密度の2倍で植えるのに適している。
【0122】
San Ramon:Coffea arabica L.’San Ramon’.シロイヌナズナ(Arabica var typica)の矮星変種である。耐風性があり、収量が多く、耐干性がある小型の樹高。
【0123】
Tico:中米で栽培されるCoffea Arabicaの栽培品種。
【0124】
Timor Hybrid:1940年代にティモールで見出され、Arabica種とRobusta種との間の天然に存在する交雑種であるコーヒーの木の変種。
【0125】
チピカ:正しい植物学名は、Coffea arabica L.’Typica’である。それは、エチオピア原産であるCoffea Arabicaのコーヒー変種である。Var Typicaは、すべてのコーヒー変種の中で最も古く、最もよく知られており、依然として世界のコーヒー生産のバルクを構成している。最良のラテンアメリカコーヒーのいくつかは、チピカ株から得られたものである。その低収量生産の限界は、その優れたカップで補償されている。
【0126】
具体的な実施形態によると、コーヒー植物は、Coffea canephora種由来である。
【0127】
具体的な実施形態によると、コーヒー植物は、Coffea arabica種由来である。
【0128】
具体的な実施形態によると、コーヒー植物は、Arabusta種由来である。
【0129】
具体的な実施形態によると、コーヒー植物は、リベリカ種由来である。
【0130】
本明細書中で用いる「カフェイン」という用語は、キサンチンアルカロイド1,3,7−トリメチルキサンチンを指す。
【0131】
カフェインは、プリン代謝に由来する二次代謝産物である。主なカフェイン生合成経路は、キサントシン→7−メチルキサントシン→7−メチルキサンチン→テオブロミン→カフェインからなる順序であり、カフェインの生合成は、3つのメチル化ステップを含み、リボース残基を除去してカフェインを形成する。メチル化ステップは、メチルトランスフェラーゼに起因する。
【0132】
具体的な実施形態によれば、カフェイン生合成経路におけるメチルトランスフェラーゼは、S−アデノシルメチオニン(SAM)依存性メチルトランスフェラーゼである。
【0133】
具体的な実施形態によると、カフェイン生合成経路におけるメチルトランスフェラーゼは、N−メチルトランスフェラーゼである。
【0134】
具体的な実施形態によれば、カフェイン生合成経路におけるメチルトランスフェラーゼは、XMT、MXMTおよびDXMTである。
【0135】
本明細書中で使用される用語「XMT」または「キサントシンメチルトランスフェラーゼ」は、EC 2.1.1.158に規定する酵素を指す。典型的には、XMTは、7−メチルキサントシンを生成するメチル基のキサントシンへの転移を触媒する。
【0136】
具体的な実施形態によれば、XMT酵素は、C.Canephora遺伝子Cc09_g06970からコードされる。
【0137】
具体的な実施形態によると、XMT酵素は、Coffea arabica遺伝子AB048793からコードされる。
【0138】
具体的な実施形態によると、XMT酵素は、Coffea canephora遺伝子DQ422954からコードされる。
【0139】
本明細書で使用する用語「MXMT」または「7−メチルキサンチンメチルトラスフェラーゼ」は、EC 2.1.1.159に規定する酵素を指す(テオブロミンシンターゼとも呼ばれる)。典型的には、MXMTは、3,7−ジメチルキサンチン(テオブロミン)を生成するメチル基の7−メチルキサンチンへの転移を触媒する。
【0140】
具体的な実施形態によれば、MXMT酵素は、C.Canephora遺伝子Cc00_g24720からコードされる。
【0141】
具体的な実施形態によると、MXMT酵素は、Coffea arabica遺伝子AB048794.1からコードされる。
【0142】
具体的な実施形態によると、MXMT酵素は、Coffea arabica遺伝子AB084126からコードされる。
【0143】
本明細書中で使用される用語「DXMT」または「3,7−ジメチルキサンチンメチルトランスフェラーゼ」は、EC 2.1.1.160に規定される酵素を指す(カフェインシンターゼとも呼ばれる)。典型的には、DXMTは、1,3,7−トリメチルキサンチン(カフェイン)を生成するメチル基の3,7−ジメチルキサンチン(テオブロミン)への転移を触媒する。
【0144】
具体的な実施形態によれば、DXMT酵素は、C.Canephora遺伝子Cc01_g00720またはCc02_g09350からコードされる。
【0145】
具体的な実施形態によると、DXMT酵素は、C.Canephora遺伝子DQ422955からコードされる。
【0146】
具体的な実施形態によると、DXMT酵素は、Coffea arabica遺伝子AB084125.1からコードされる。
【0147】
具体的な実施形態によれば、N−メチルトランスフェラーゼ(例えば、XMT/MXMT/DXMT遺伝子)は、C.Canephora遺伝子Cc09_g06950またはCc09_g06960からコードされる。
【0148】
1つの実施形態によると、本発明のいくつかの実施形態のコーヒー植物は、カフェイン生合成経路の少なくとも1つの成分をコードする核酸配列における機能喪失突然変異を含む。
【0149】
本明細書中で用いられる「機能喪失」突然変異とは、キサントシンからカフェインを合成するためのメチルトランスフェラーゼ(例えば、XMT、MXMTおよび/またはDXMT)の能力の低下(すなわち、機能障害)または不能をもたらすゲノム異常を指す。本明細書中で用いられる「能力の低下」とは、機能喪失突然変異がない野生型酵素のそれと比較して、メチルトランスフェラーゼ活性(すなわち、カフェイン生合成)の低下を指す。具体的な実施形態によれば、減少した活性は、同じアッセイ条件下での野生型酵素の活性と比較して少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはさらにそれ以上である。メチルトランスフェラーゼ活性は、ELISAアッセイ(Abcam and Enzo Life Sciencesから市販)により検出することができる。
【0150】
具体的な実施形態によると、機能喪失突然変異は、メチルトランスフェラーゼ(例えば、XMT、MXMTおよび/もしくはDXMT)mRNAまたはタンパク質の発現をもたらさない。
【0151】
具体的な実施形態によると、機能喪失突然変異は、カフェイン生合成を支持することができないメチルトランスフェラーゼ(例えば、XMT、MXMTおよび/またはDXMT)タンパク質の発現をもたらす。
【0152】
1つの実施形態によると、本発明のいくつかの実施形態のコーヒー植物は、カフェイン生合成経路の1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の成分をコードする核酸配列における機能喪失突然変異を含む。
【0153】
1つの実施形態によると、本発明のいくつかの実施形態のコーヒー植物は、XMTをコードする核酸配列における機能喪失突然変異を含む。
【0154】
1つの実施形態によると、本発明のいくつかの実施形態のコーヒー植物は、MXMTをコードする核酸配列における機能喪失突然変異を含む。
【0155】
1つの実施形態によると、本発明のいくつかの実施形態のコーヒー植物は、DXMTをコードする核酸配列における機能喪失突然変異を含む。
【0156】
1つの実施形態によると、本発明のいくつかの実施形態のコーヒー植物は、XMT、MXMTまたはDXMTのいずれか2つをコードする核酸配列における機能喪失突然変異を含む。
【0157】
1つの実施形態によると、本発明のいくつかの実施形態のコーヒー植物は、XMT、MXMTおよびDXMTの全てをコードする核酸配列における機能喪失突然変異を含む。
【0158】
具体的な実施形態によれば、機能喪失突然変異は、欠失、挿入、挿入−欠失(Indel)、逆位、置換およびそれの組合せ(例えば、欠失および置換、例えば、欠失およびSNP)からなる群から選択される。
【0159】
具体的な実施形態によると、突然変異はホモ接合性である。
【0160】
具体的な実施形態によると、突然変異はヘテロ接合性である。
【0161】
機能欠失突然変異の生成のための提案された標的位置の例を、配列番号26〜50に提供する。
【0162】
カフェイン生合成経路の少なくとも1つの成分をコードする核酸配列に機能喪失突然変異を誘発するためには、DNA編集剤が利用される。
【0163】
以下は、本開示の具体的な実施形態に従って使用できる、目的の遺伝子およびそれを実施するための剤に核酸分子変化を導入するために使用される方法およびDNA編集剤の様々な非限定的な例の記述である。
【0164】
操作されたエンドヌクレアーゼを使用するゲノム編集−このアプローチは、ゲノム中の所望の位置(複数可)で典型的に切断および特異的な二本鎖切断を作成するために人工的に操作されたヌクレアーゼを使用する逆遺伝学的方法を指し、それは、その後、相同組換え(HR)または非相同末端結合(NHEJ)などの細胞内因性プロセスによって修復される。NHEJは、二本鎖切断におけるDNA末端を直接結合し、一方HRは、相同な供与配列を鋳型(すなわち、S期に形成される姉妹染色分体)として利用して、切断部位での失われたDNA配列を再生する。特異的なヌクレオチド修飾をゲノムDNAに導入するためには、HR(外因的に提供される一本鎖または二本鎖DNA)の間に、所望の配列を含む供与体DNA修復鋳型が存在しなければならない。
【0165】
ほとんどの制限酵素はその標的としてDNA上の数塩基対を認識し、これらの配列はしばしばゲノム全体の多くの場所に見出され、所望の位置に限定されない複数の切断を生じるため、従来の制限エンドヌクレアーゼを用いて、ゲノム編集を行うことはできない。この課題を克服し、部位特異的な一本鎖または二本鎖切断を作り出すために、現在までにいくつかの異なるクラスのヌクレアーゼが発見され、バイオエンジニアリングされている。これらには、メガヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)およびCRISPR/Cas系が含まれる。
【0166】
メガヌクレアーゼ−メガヌクレアーゼは、一般的にLAGLIDADGファミリー、GIY−YIGファミリー、His−CysボックスファミリーおよびHNHファミリーの4つのファミリーに分類される。これらのファミリーは、触媒活性および認識配列に影響を及ぼす構造モチーフによって特徴づけられる。例えば、LAGLIDADGファミリーの要素は、保存されたLAGLIDADGモチーフの1つまたは2つのコピーを有することを特徴とする。メガヌクレアーゼの4つのファミリーは、保存された構造要素ならびにしたがってDNA認識配列特異性および触媒活性に関して、互いに広く分離されている。メガヌクレアーゼは、微生物種において一般的に見出され、非常に長い認識配列(14bp超)を有するという独特の特性を有し、従って、それらを所望の位置での切断に対して自然に非常に特異的にする。
【0167】
これを、ゲノム編集において部位特異的な二本鎖切断を行うために利用することができる。当業者は、これらの天然に存在するメガヌクレアーゼを使用することができるが、このような天然に存在するメガヌクレアーゼの数は限られている。この課題を克服するために、突然変異誘発およびハイスループットスクリーニング法が、特有の配列を認識するメガヌクレアーゼ変形例を作り出すために使用されてきた。たとえば、各種メガヌクレアーゼを融合させて、新しい配列を認識するハイブリッド酵素が作られた。
【0168】
あるいは、メガヌクレアーゼのDNA相互作用アミノ酸を変えて、配列特異的メガヌクレアーゼを設計することもできる(例えば、米国特許第8,021,867号参照)。メガヌクレアーゼは、例えばCerto,MT et al.Nature Methods(2012)9:073−975;米国特許第8,304,222号;8,021,867号;8,119,381号;8,124,369号;8,129,134号;8,133,697号;8,143,015号;8,143,016号;8,148,098号;または8,163,514号に記載された方法を用いて設計することができ、各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。あるいは、部位特異的な切断特性を有するメガヌクレアーゼを、市販の技術、例えばPrecision Biosciences’Directed Nuclease Editor(商標)ゲノム編集技術を用いて得ることができる。
【0169】
ZFNおよびTALEN−二つの異なるクラスの操作されたヌクレアーゼ、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、共に標的された二本鎖切断の産生に有効であることが証明されている(Christian et al.,2010;Kim et al.,1996;Li et al.,2011;Mahfouz et al.,2011;Miller et al.,2010)。
【0170】
基本的に、ZFNおよびTALEN制限エンドヌクレアーゼ技術は、特定のDNA結合ドメイン(それぞれ一連の亜鉛フィンガードメインまたはTALE反復のいずれか)に結合する非特異性DNA切断酵素を利用する。典型的には、DNA認識部位および切断部位が互いに分離している制限酵素を選択する。切断部分を分離し、次にDNA結合ドメインに連結することにより、所望の配列に対して非常に高い特異性を有するエンドヌクレアーゼが得られる。このような特性を有する例示的な制限酵素は、Foklである。さらに、Foklは、ヌクレアーゼ活性を有するために二量体化を必要とする利点を有し、これは、各ヌクレアーゼパートナーが独特なDNA配列を認識するにつれて、特異性が劇的に増加することを意味する。この効果を高めるために、ヘテロ二量体としてしか機能できず、触媒活性が増加したFoklヌクレアーゼが操作されている。ヘテロ二量体機能ヌクレアーゼは、望まれないホモ二量体活性の可能性を避け、したがって二本鎖切断の特異性を増加させる。
【0171】
したがって、たとえば特定の部位を標的とするために、ZFNおよびTALENは、ヌクレアーゼ対として構築され、その対の各要素は、標的部位で隣接する配列に結合するように設計されている。細胞内で過渡状態に発現すると、ヌクレアーゼはその標的部位に結合し、FokIドメインはヘテロ二量体を形成して、二本鎖切断を生じる。これらの二本鎖切断が非相同末端結合(NHEJ)経路を介して修復されると、しばしば小さな欠失または小さな配列挿入が生じる。NHEJが行う各々の修復は独特であるので、1つのヌクレアーゼ対を用いると、標的部位にある範囲のさまざまな欠失をもつ対立遺伝子系列をつくることができる。
【0172】
一般に、NHEJは、遺伝子編集において比較的正確であり(ヒト細胞中のDSBの約85%が、検出から約30分以内にNHEJによって修復される)、誤ったNHEJは、修復が正確な場合、修復産物が変異原性になるまでヌクレアーゼが切断し続けるため信頼され、認識/切断部位/ PAMモチーフがなくなっている/変異している、または一時的に導入されたヌクレアーゼがもはや存在しない。
【0173】
欠失は、典型的には数塩基対から数百塩基対の長さのどこにも及ぶが、2対のヌクレアーゼを同時に用いることにより、より大きな欠失が細胞培養でうまく生じている(Carlson et al.,2012;Lee et al.,2010)。さらに、標的領域に対する相同性を有するDNAの断片をヌクレアーゼ対と連動して導入すると、相同組換え(HR)を介して(例えば、供与体鋳型の存在下で)二本鎖切断を修復して、特異的修飾を生成することができる(Li et al.,2011;Miller et al.,2010;Urnov et al.,2005)。
【0174】
ZFNおよびTALENの両方のヌクレアーゼ部分は類似の特性を有するが、これらの操作されたヌクレアーゼ間の違いは、それらのDNA認識ペプチドにある。ZFNは、Cys2−His2亜鉛フィンガーおよびTALE上のTALENに依存する。ペプチドドメインを認識するこれらのDNAは共に、そのタンパク質中に自然に組み合わさって見出されるという特徴をもっている。Cys2−His2亜鉛フィンガーは、典型的には、3bp離れた反復に見出され、様々な核酸相互作用タンパク質において多様な組み合わせで見出される。他方、TALEは、アミノ酸と認識されたヌクレオチド対との間に1対1の認識比をもつ反復中に見出される。亜鉛フィンガーおよびTALEは共に繰返しパターンで起こるので、種々の組み合わせを試して、多種多様な配列特異性をつくることができる。部位特異的亜鉛フィンガーエンドヌクレアーゼを作製するためのアプローチには、例えば、モジュールアセンブリー(必要な配列をカバーするためにトリプレット配列と相関する亜鉛フィンガーが列で付着される)、OPEN(ペプチドドメイン対トリプレットヌクレオチドの低ストリンジェンシー選択、続いて細菌系におけるペプチド組み合わせ対最終標的の高ストリンジェンシー選択)、およびとりわけ亜鉛フィンガーライブラリーの細菌ワンハイブリッドスクリーニングが含まれる。ZFNは、例えば、Sangamo Biosciences(商標)(Richmond,CA)から設計し、商業的に得ることもできる。
【0175】
TALENを設計し、入手する方法については、例えば、Reyon et al.Nature Biotechnology 2012 May;30(5):460−5;Miller et al.Nat Biotechnol.(2011)29:143−148;Cermak et al.Nucleic Acids Research(2011)39(12):e82およびZhang et al.Nature Biotechnology(2011)29(2):149−53に述べられており、参照により本明細書に組み込まれる。最近開発されたMojo Handと名付けられたウェブベースのプログラムは、ゲノム編集アプリケーションのためのTALおよびTALEN構築物を設計するためにMayo Clinicにより導入された(www.Talendesign.orgを通してアクセス可能である)。TALENは、例えば、Sangamo Biosciences(商標)(Richmond,CA)から設計し、商業的に得ることもできる。
【0176】
T−GEE系(TargetGene’s Genome Editing Engine)−標的細胞内でin vivoで集合し、所定の標的核酸配列と相互作用することができる、ポリペプチド部分および特異性付与核酸(SCNA)を含むプログラム可能な核タンパク質分子複合体が、提供される。プログラム可能な核タンパク質分子複合体は、標的核酸配列内の標的部位を特異的に改変および/もしくは編集し、かつ/または標的核酸配列の機能を改変することができる。核タンパク質組成物は、(a)キメラポリペプチドをコードし、(i)標的部位を修飾することができる機能ドメイン、および(ii)特異性を与える核酸と相互作用することができる連結ドメインを含むポリヌクレオチド、ならびに(b)(i)標的部位に隣接する標的核酸の領域に相補的なヌクレオチド配列、および(ii)ポリペプチドの連結ドメインに特異的に結合することができる認識領域を含む特異性付与核酸(SCNA)を含む。組成物は、特異性付与核酸および標的核酸の塩基対形成を介して、標的核酸に対する分子複合体の高い特異性および結合能力を有する、所定の核酸配列対象を正確に、確実に、かつコスト効果的に改変することを可能にする。組成物は遺伝毒性が低く、アセンブリにおいてモジュール的であり、特注なしで単一プラットフォームを利用し、専門のコア施設以外での独立した使用のために実用的であり、開発時間枠が短く、コストが削減される。
【0177】
CRISPR−Cas系(本明細書では「CRISPR」とも呼ばれる)−多くの細菌および古細菌は、侵入するファージおよびプラスミドの核酸分子を分解することができる内因性RNAベースの適応免疫系を含む。これらの系は、RNA成分を産生するクラスター化された規則的に間隙のある短回文反復(CRISPR)ヌクレオチド配列およびタンパク質成分をコードするCRISPR関連(Cas)遺伝子からなる。CRISPR RNA(crRNA)は、特定のウイルスおよびプラスミドのDNAに対する短い領域の相同性を含み、対応する病原体の相補的核酸を分解するためにCasヌクレアーゼを指令するガイドとして作用する。Streptococcus pyogenesのII型CRISPR/Cas系の研究により、3つの成分がRNA/タンパク質複合体を形成し、一緒になって配列特異的ヌクレアーゼ活性に十分であることが示されている:Cas9ヌクレアーゼ、標的配列に対する20塩基対の相同性を含むcrRNA、およびトランス活性化crRNA(tracrRNA)(Jinek et al.Science(2012)337:816−821)。
【0178】
さらに、crRNAとtracrRNAとの間の融合から構成される合成キメラガイドRNA(sgRNA)が、Cas9をin vitroでcrRNAに相補的であるDNA標的を切断するよう指示できることが実証された。また、合成sgRNAと組み合わせたCas9の一過性発現を使用して、さまざまな異なる種で標的された二本鎖切断(DSB)を生成できることも実証された(Cho et al.,2013,Nature Biotechnology 31,230−232;Cong et al.,2013,Science 339:819−823;DiCarlo et al.,2013,Nucleic Acids Research,41:4336−4343;Hwang et al.,2013,Nature Biotechnology 31:227−229;Jinek et al.,2013,eLife 2013;2:e00471;Mali et al.,2013,Science 339:823−826)。
【0179】
ゲノム編集のためのCRIPSR/Cas系には、2つの異なる構成要素が含まれる:sgRNAおよびエンドヌクレアーゼ、例えばCas9。
【0180】
sgRNAは、典型的には、標的相同配列(crRNA)と、単一のキメラ転写物中のCas9ヌクレアーゼ(tracrRNA)にcrRNAを連結する内在性細菌RNAの組合せをコードする20ヌクレオチド配列である。sgRNA/Cas9複合体は、sgRNA配列と補体ゲノムDNAとの間の塩基対形成によって標的配列に動員される。Cas9の結合を成功させるためには、ゲノム標的配列は、標的配列の直後に正しいProtospacer Adjacent Motif(PAM)配列も含まなければならない。sgRNA/Cas9複合体が結合すると、Cas9がDNAの両鎖を切断して二本鎖切断(DSB)を引き起こすことができるように、Cas9がゲノム標的配列に局在化する。ZFNおよびTALENと同様に、CRISPR/Casによって産生される二本鎖切断(DSB)は、相同組換え(HR)または非相同末端結合(NHEJ)を受けることができ、DNA修復中に特異的な配列改変を受けやすい。
【0181】
Cas9ヌクレアーゼは、2つの機能ドメイン:RuvCおよびHNHをもち、それぞれが異なるDNA鎖を切断する。これらのドメインの両方が活性であるとき、Cas9は、ゲノムDNAの二本鎖切断(DSB)を引き起こす。
【0182】
CRISPR/Casの重要な利点は、この系の高い効率が合成sgRNAを容易に作り出す能力と結合されることである。これは、異なるゲノム部位での標的改変および/または同じ部位での異なる改変を標的とするように容易に改変され得る系を作り出す。さらに、複数の遺伝子の同時標的化を可能にするプロトコルが確立されている。突然変異を有する細胞の大部分は、標的された遺伝子に両対立遺伝子性突然変異を提示する。
【0183】
しかし、sgRNA配列とゲノムDNA標的配列との間の塩基対形成相互作用における見かけ上の柔軟性は、Cas9によって切断される標的配列との不完全な一致を可能にする。
【0184】
単一の不活性な触媒ドメイン、RuvC−またはHNH−のいずれかを含むCas9酵素の改変された版は「ニッカーゼ」と呼ばれる。活性のあるヌクレアーゼドメインを1つだけもっていると、Cas9ニッカーゼは標的DNAの一方の鎖だけを切断し、一本鎖切断または「ニック」をつくる。一本鎖切断、すなわちニックは、PARP(センサー)およびXRCC1/LIG III複合体(連結反応)などのタンパク質が関与する一本鎖切断修復機構によってほとんど修復される。トポイソメラーゼI毒によって、または天然に存在するSSB上にPARP1を捕捉する薬物によって一本鎖切断(SSB)が生じた場合、これらは持続し得、細胞がS期に入り、複製フォークがこのようなSSBに出会うと、それらは、HRによって修復されるに過ぎない一本鎖終結DSBになる。しかし、Cas9ニッカーゼによって導入された二つの近位、反対側の鎖のニックは、二本鎖切断として扱われ、これは「二重ニック」CRISPR系と呼ばれることが多い。基本的に非平行DSBである二重ニックは、遺伝子標的に対する所望の効果およびドナー配列の存在および細胞周期段階に依存して、HRまたはNHEJによって他のDSBのように修復され得る(HRは、はるかに低い存在量であり、細胞周期のSおよびG2段階においてのみ起こり得る)。したがって、特異性およびオフターゲット効果の低下が極めて重要である場合、Cas9ニッカーゼを用いて、ゲノムDNAの近接および反対の鎖上に標的配列を有する2つのsgRNAを設計することにより、二重ニックを作り出すことにより、これらの事象が不可能ではないにもかかわらず、いずれかのsgRNAのみがゲノムDNAを変化させそうにないニックを生じるため、オフターゲット効果を低下させるであろう。
【0185】
2つの不活性な触媒ドメイン(デッドCas9、またはdCas9)を含むCas9酵素の改変版は、ヌクレアーゼ活性を有さず、一方sgRNA特異性に基づいて依然としてDNAに結合可能である。dCas9は、不活性な酵素を既知の調節ドメインに融合することにより、遺伝子発現を活性化または抑制するDNA転写調節因子のプラットフォームとして利用することができる。たとえば、ゲノムDNAの標的配列にdCas9だけが結合すると、遺伝子の転写を妨げることができる。
【0186】
本発明のいくつかの実施形態によって使用され得るCas9の追加の変種は、CasXおよびCpf1を含むが、これらに限定されない。CasX酵素は、Cas9と比較してサイズが小さく、細菌に見出され(それは典型的にはヒトには見出されない)、したがって、ヒトにおいて免疫系/応答を引き起こす可能性がより低い、RNA誘導ゲノムエディターの別個のファミリーを含む。また、CasXは、Cas9と比較して異なるPAMモチーフを利用し、したがってCas9 PAMモチーフが見出されない標的配列に使用できる[Liu JJ et al.,Nature.(2019)566(7743):218−223を参照]。Cas12aとも呼ばれるCpf1は、Cas9 PAM(NGG)がはるかに少ないATリッチ領域の編集に特に有利である[Li T et al.,Biotechnol Adv.(2019)37(1):21−27;Murugan K et al.,Mol Cell.(2017)68(1):15−25を参照]。
【0187】
別の実施形態によれば、CRISPR系は、DNA切断ドメインなどの様々なエフェクタードメインと融合させることができる。DNA切断ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。DNA切断ドメインを誘導することができるエンドヌクレアーゼの非限定的な例としては、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられるが、これらに限定されない(例えば、New England Biolabs CatalogまたはBelfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.参照)。例示的な実施形態では、CRISPR系の切断ドメインは、Foklエンドヌクレアーゼドメインまたは修飾されたFoklエンドヌクレアーゼドメインである。加えて、ホーミングエンドヌクレアーゼ(HE)の使用は、別の代替である。HEは、細菌、古細菌、および単細胞真核生物に見出される小タンパク質(300アミノ酸未満)である。HEの際立った特徴は、制限酵素(4〜8bp)などの他の部位特異的エンドヌクレアーゼに比べて比較的長い配列(14〜40bp)を認識することである。HEは、歴史的に小さな保存されたアミノ酸モチーフによって分類されてきた。少なくとも5つのそのようなファミリー:LAGLIDADG;GIY−YIG;HNH;His−CysボックスおよびPD−(D/E)xKが同定されており、これらはEDxHD酵素に関連しており、一部は別のファミリーと考えている。構造レベルでは、HNHおよびHis−Cysボックスは、PD−(D/E)xKおよびEDxHD酵素と同様に共通の折りたたみ(ββα−金属と表示)を共有している。ファミリーの各々の触媒的およびDNA認識戦略は様々であり、様々な応用のための工学に異なる程度でそれらを提供する。例えばMethods Mol Biol.(2014)1123:1−26を参照。本発明のいくつかの実施形態に従って使用され得る例示的なホーミングエンドヌクレアーゼは、限定されるものではないが、I−CreI、I−TevI、I−HmuI、I−PpoIおよびI−Ssp68031を含む。
【0188】
CRISPRの改良版、例えば、デッドCRISPR(dCRISPR−エンドヌクレアーゼ)はまた、CRISPR転写阻害(CRISPRi)またはCRISPR転写活性化(CRISPRa)に利用され得る。例えば、Kampmann M.,ACS Chem Biol.(2018)13(2):406−416;La Russa MFおよびQi LS.,Mol Cell Biol.(2015)35(22):3800−9]参照。
【0189】
本発明のいくつかの実施形態に従って使用され得るCRISPRの他のバージョンには、CRISPR系からの構成要素を他の酵素とともに使用して、細胞DNAまたはRNAに点突然変異を直接導入するゲノム編集が含まれる。
【0190】
したがって、1つの実施形態によれば、編集剤は、DNAまたはRNA編集剤である。
【0191】
1つの実施形態によると、DNAまたはRNA編集剤は、塩基編集を誘発する。
【0192】
ここで用いる「塩基編集」という用語は、二本鎖DNA切断を行わずに細胞DNAまたはRNAに点突然変異を導入することを指す。
【0193】
塩基編集では、DNA塩基エディターは典型的に、触媒的に障害されたCasヌクレアーゼと一本鎖DNA(ssDNA)上で働く塩基修飾酵素との間の融合を含む。その標的DNA座に結合すると、gRNAと標的DNA鎖との間の塩基対形成により、一本鎖DNAの小さな断片の「Rループ」への置換がもたらされる。このssDNAバブル内のDNA塩基は、塩基編集酵素(たとえば、デアミナーゼ酵素)によって修飾される。真核細胞における効率を向上させるために、触媒的に無効になったヌクレアーゼはまた、編集されていないDNA鎖にニックを生じさせ、編集された鎖を鋳型として使用して、編集されていない鎖を修復するように細胞を誘導する。
【0194】
2つのクラスのDNA塩基エディターが記載されている:シトシン塩基エディター(CBE)は、C−G塩基対をT−A塩基対に変換し、アデニン塩基エディター(ABE)は、A−T塩基対をG−C塩基対に変換する。まとめると、CBEおよびABEは、可能性のある4つの転移突然変異(CからT、AからG、TからCおよびGからA)すべてを媒介することができる。同様に、RNAでは、イノシンへの標的アデノシン変換は、アンチセンスおよびCas13誘導RNA標的法の両方を利用する。
【0195】
1つの実施形態によると、DNAまたはRNA編集剤は、触媒的に不活性なエンドヌクレアーゼ(例えば、CRISPR−dCas)を含む。
【0196】
1つの実施形態によると、触媒的に不活性なエンドヌクレアーゼは、不活性なCas9(例えば、dCas9)である。
【0197】
1つの実施形態によると、触媒的に不活性なエンドヌクレアーゼは、不活性なCas13(例えば、dCas13)である。
【0198】
1つの実施形態によると、DNAまたはRNA編集剤は、エピジェネティック編集(すなわち、DNA、RNAまたはヒストンタンパク質に化学的変化を与える)が可能である酵素を含む。
【0199】
例示的な酵素は、限定されるわけではないが、DNAメチルトランスフェラーゼ、メチラーゼ、アセチルトランスフェラーゼを含む。より具体的には、例示的な酵素は、例えば、DNA(シトシン−5)−メチルトランスフェラーゼ3A(DNMT3a)、ヒストンアセチルトランスフェラーゼp300、10−11転座メチルシトシンジオキシゲナーゼ1(TET1)、リジン(K)特異的デメチラーゼ1A(LSD1)ならびにカルシウムおよびインテグリン結合タンパク質1(CIB1)を含む。
【0200】
触媒的に障害されたヌクレアーゼに加えて、本発明のDNAまたはRNA編集剤は、ヌクレオベースデアミナーゼ酵素および/またはDNAグリコシラーゼ阻害剤も含み得る。
【0201】
具体的な実施形態によれば、DNAまたはRNA編集剤は、sgRNAとともに、BE1(APOBEC1−XTEN−dCas9)、BE2(APOBEC1−XTEN−dCas9−UGI)またはBE3(APOBEC−XTEN−dCas9(A840H)−UGI)を含む。APOBEC1はデアミナーゼ全長または触媒活性フラグメントであり、XTENはタンパク質リンカーであり、UGIはウラシルDNAグリコシラーゼ阻害剤であって、その後のU:Gミスマッチが修復されてC:G塩基対に戻るのを防ぎ、dCas9(A840H)はニッカーゼであり、dCas9を元に戻して、編集されていない鎖のみをニックするHNHドメインの触媒活性を回復し、新しく合成されたDNAを模擬して、目的のU:A生成物に至る。
【0202】
本発明のいくつかの実施形態に従った塩基編集に使用できる追加の化合物は、Rees and Liu,Nature Reviews Genetics(2018)19:770−788に明記されており、その全体において参照によって本出願中に組み込まれている。
【0203】
標的配列の選択および/または設計に役立つ公的に利用可能な多くのツール、ならびに、限定されないがFeng Zhang lab’s Target Finder、Michael Boutros lab’s Target Finder(E−CRISP)、RGEN Tools:Cas−OFFInder、CasFinder:ゲノム内の特定のCas9標的を識別するためのFlexible algorithmおよびCRISPR Optimal Target Finderのような、さまざまな種のさまざまな遺伝子について、生物情報学的に決定された固有のsgRNAのリストが多数ある。
【0204】
CRISPR系を用いるには、sgRNAおよびCasエンドヌクレアーゼ(たとえばCas9)の両方を標的細胞に発現させるか、または存在させるべきである(たとえばリボ核タンパク質複合体として)。挿入ベクターは、単一のプラスミド上に両方のカセットを含むことができ、またはカセットは、2つの別々のプラスミドから発現される。CRISPRプラスミドは、Addgene(Cambridge,MA)由来のpx330プラスミドなどが市販されている。クラスター化規則的空間間短回文反復(CRISPR)関連(Cas)−ガイドRNA技術および植物ゲノムを改変するためのCasエンドヌクレアーゼの使用も、少なくともSvitashev et al.,2015,Plant Physiology,169(2):931−945;KumarおよびJain,2015,J Exp Bot 66:47−57;および米国特許出願公開第20150082478号によって開示されており、それは、その全体において参照によって本出願中に特定的に組み込まれている。sgRNAによるDNA編集を効果づけるのに用いることができるCasエンドヌクレアーゼには、Cas9、Cpf1(Zetsche et al.,2015,Cell.163(3):759−71)、C2c1、C2c2、C2c3、cms1(Shmakov et al.,Mol Cell.2015 Nov 5;60(3):385−97)およびCas 13A/B(Barrangou1 et al.,2017,Molecular cell,65:582−584;Abudayyeh et al.,2017,Nature 550:280−284)が含まれるが、これに限定されない。Cas 13 A OR B(Cas 13 A/B)は、DNAではなくRNAを認識し、切断することができ、これは、RNA分解(RNAI様)が望まれるときに適用できる。
【0205】
「ヒットおよびラン」または「インアウト」は、2ステップ組換え手順を伴う。第1のステップでは、二重のポジティブ/ネガティブ選択可能マーカーカセットを含む挿入型ベクターを用いて、所望の配列改変を導入する。挿入ベクターは、標的遺伝子座に相同性の単一連続領域を含み、関連する突然変異を有するように改変される。この標的化構築物は、相同領域内の1つの部位で制限酵素で線状化され、細胞内に導入され、ポジティブの選択が行われて、相同組換え事象が単離される。相同配列を有するDNAは、プラスミド、一本鎖または二本鎖オリゴとして提供することができる。これらの相同組換え体は、選択カセットを含む介在ベクター配列によって分離される局所的な重複を含む。第2ステップでは、標的クローンをネガティブの選択に供して、重複配列間の染色体内組換えを介して選択カセットを失った細胞を同定する。局所的な組換え事象は、重複を取り除き、組換えの部位に応じて、対立遺伝子は導入された突然変異を保持するか、または野生型に戻るかのいずれかである。最終結果は、いかなる外来性配列の保持もなしに所望の変形例を導入することである。
【0206】
「二重置換」または「タグおよび交換」戦略は、ヒットおよびランアプローチと同様の2ステップ選択手順を含むが、2つの異なる標的化構築物の使用を必要とする。第1のステップでは、3’および5’相同アームを有する標準的な標的化ベクターを用いて、突然変異が導入されるべき箇所の近くに二重のポジティブ/ネガティブ選択可能カセットを挿入する。系構成要素が細胞に導入され、適用されたポジティブの選択の後、HR事象を同定することができた。次に、所望の突然変異と相同の領域を含む第2の標的化ベクターを、標的されたクローンに導入し、ネガティブの選択を適用して、選択カセットを除去し、突然変異を導入する。最終的な対立遺伝子は、所望の突然変異を含み、一方望ましくない外来性配列は排除される。
【0207】
部位特異的組換え酵素−酵母Saccharomyces cerevisiaeに由来するP1バクテリオファージおよびFlp組換え酵素に由来するCre組換え酵素は、各々独特の34塩基対DNA配列(それぞれ「Lox」および「FRT」と呼ばれる)を認識する部位特異的DNA組換え酵素であり、Lox部位またはFRT部位のいずれかに隣接する配列は、それぞれCreまたはFlp組換え酵素の発現時に部位特異的組換えを介して容易に除去することができる。たとえば、Lox配列は、13塩基対の逆方向反復が隣接する非対称な8塩基対のスペーサー領域で構成されている。Creは、13塩基対の逆方向反復配列に結合し、スペーサー領域内で鎖の切断および再連結を触媒することによって、34塩基対のlox DNA配列を組換える。スペーサー領域のCreによってできたずれたDNA切削は、6塩基対離れて、相同性センサーとして働く重複領域を与え、同じ重複領域をもつ組換え部位だけが確実に組換えを起こすようにする。
【0208】
基本的に、部位特異的組換え酵素系は、相同組換え事象後の選択カセットの除去のための手段を提供する。この系はまた、時間的または組織特異的方式で不活性化または活性化され得る条件的改変対立遺伝子の生成を可能にする。注目すべきことに、CreおよびFlp組換え酵素は、34塩基対のLoxまたはFRT「瘢痕」に残る。残っているLoxまたはFRT部位は、典型的には、改変された遺伝子座のイントロンまたは3’UTRに残されており、本証拠は、これらの部位が通常、遺伝子機能に有意に干渉しないことを示唆している。
【0209】
したがって、Cre/LoxおよびFlp/FRT組換えは、関連する突然変異、2つのLoxまたはFRT配列、および典型的には2つのLoxまたはFRT配列の間に配置された選択可能なカセットを含む3’および5’相同アームを有する標的化ベクターの導入を含む。ポジティブの選択が適用され、標的突然変異を含む相同組換え事象が同定される。負の選択と併せてCreまたはFlpを過渡状態に発現させる結果、選択カセットが切り出され、カセットが失われた細胞が選択される。最終的な標的された対立遺伝子は、外来性配列のLoxまたはFRT瘢痕を含む。
【0210】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、組み込まれていないDNA編集剤である。
【0211】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、DNA標的化モジュール(例えば、sgRNA)を含む。
【0212】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、エンドヌクレアーゼを含まない。
【0213】
具体的な実施形態によると、DNA編集剤は、エンドヌクレアーゼを含む。
【0214】
具体的な実施形態によると、DNA編集剤は、触媒的に不活性なエンドヌクレアーゼを含む。
【0215】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、ヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)およびDNA標的化モジュール(例えば、sgRNA)を含む。
【0216】
具体的な実施形態によると、DNA編集剤は、CRISPR/エンドヌクレアーゼである。
【0217】
具体的な実施形態によると、DNA編集剤は、少なくとも1つのsgRNA(例えば、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のsgRNA)を含む。
【0218】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、2つのsgRNAを含む。
【0219】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、2対のsgRNAを含む。
【0220】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、CRISPR/Cas、例えば、sgRNAおよびCas9またはsgRNAおよびdCas9である。
【0221】
例えばプラスミドなどの発現構築物内に見出され得る例示的なsgRNA配列は、以下に提供されるものを含むが、これらに限定されない:
sgRNA#6 AAAACCGAATTGAAATCATT(配列番号51)
sgRNA#7 TGCCTAATAGGGGCAATGCC(配列番号52)
sgRNA#11 TTCAAGGACAGGTTTCACCT(配列番号53)
sgRNA#12 CAACAAGTGCATTAAAGTTG(配列番号54)
sgRNA#13 AAAGAAAATGGACGCAAAAT(配列番号55)
sgRNA#14 AAAAAATGCATGGACTCCTC(配列番号56)
sgRNA#37 CGTATGCATTGTTCAAGGAA(配列番号57)
sgRNA#38 AAAGAAAATGGACGCAAGAT(配列番号58)
sgRNA−1 TTTGCACAATTAATCATTAAGGG(配列番号59)
sgRNA−2 CAAGAAGTCCTGCGGATGAATGG(配列番号60)
sgRNA−3 ACTTGTACATAAATCAAATTGGG(配列番号61)
sgRNA−4 CAAATTGGGACTGCCAAAGAAGG(配列番号62)
sgRNA−5 GAAGTCCTGCATATGAATGAAGG(配列番号63)
sgRNA−6 GACGGGCGGACGACATCCTTTGG(配列番号64)
sgRNA−7 TTGGTGATTGAATTGGGGATTGG(配列番号65)
sgRNA−8 GGGAGTATTTACTCTTCCAAAGG(配列番号66)
sgRNA−9 TCAACAAGTGCTTTAAAGTTGGG(配列番号67)
sgRNA−10 TGCTTTAAAGTTGGGGATTTGGG(配列番号68)
sgRNA−11 AAAATAGGATCGTGCCTGATAGG(配列番号69)
sgRNA−12 CGAACTGTTGAAAATGTGTTTGG(配列番号70)
sgRNA−13 CCTCGGGGAAGAGTCTGCCGTGG(配列番号71)
sgRNA−14 ACTTTGTACAGTGTCCCGAACGG(配列番号72)
sgRNA−15 ATTAGAACGTCCCACCATTCAGG(配列番号73)
sgRNA−16 ATGCGACGGCCCGAATACCATGG(配列番号74)
sgRNA−17 CATTCGGAAGAGTTGCTTTCAGG(配列番号75)
sgRNA−18 GTCTATGGTATTCAGGCCATCGG(配列番号76)
sgRNA−19 AGCGGATTGGTGACTGAACTGGG(配列番号77)
sgRNA−20 TCGGAAGAGTTGCTTTCAGGTGG(配列番号78)
【0222】
具体的な実施形態によれば、DNAまたはRNA編集剤は、塩基編集を誘発する。
【0223】
具体的な実施形態によると、DNAまたはRNA編集剤は、エピジェネティック編集のための酵素を含む。
【0224】
具体的な実施形態によると、DNA編集剤は、TALENである。
【0225】
具体的な実施形態によると、DNA編集剤は、ZFNである。
【0226】
具体的な実施形態によると、DNA編集剤は、メガヌクレアーゼである。
【0227】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、単一のメチルトランスフェラーゼ標的配列(例えば、XMT、MXMTまたはDXMT)を改変する。
【0228】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、2、3、4、5またはそれ以上のメチルトランスフェラーゼ標的配列(例えば、XMT、MXMTまたはDXMT)を改変する。
【0229】
具体的な実施形態によれば、単一のDNA編集剤は、多数の遺伝子(例えば、2〜10個の遺伝子、例えば、5〜10個の遺伝子、例えば、2〜5個の遺伝子、例えば、4〜5個の遺伝子、例えば、3〜5個の遺伝子、例えば、5個の遺伝子)を標的とする。
【0230】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、少なくとも50〜99%同一、例えば51〜99%、53〜99%、55〜99%、57〜99%、59〜99%、61〜99%、63〜99%、65〜99%、67〜99%、69〜99%、71〜99%、73〜99%、75〜99%、77〜99%、79〜99%、81〜99%、83〜99%、85〜99%、87〜99%、89〜99%、91〜99%、93〜99%、95〜99%、97〜99%、98〜99%同一、例えば50%、52%、54%、56%、58%、60%、62%、64%、66%、68%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、82%、84%、86%、88%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一、例えば99%同一である核酸配列を対象とし、Cc09_g06970(配列番号9に記載)、Cc09_g06960(配列番号7に記載)、Cc00_g24720(配列番号1に記載)、Cc09_g06950(配列番号5に記載)、Cc01_g00720(配列番号3に記載)およびCc02_g09350(配列番号11に記載)間で、5〜100ヌクレオチド(例えば、5〜50ヌクレオチド、例えば、5〜25ヌクレオチド、例えば、10〜25ヌクレオチド)にわたって、局所的整列(例えば、MUSCLEによるCLUSTAL複数配列整列)によって決定される。
【0231】
本明細書中で使用されるように、2つの核酸またはポリペプチド配列の関連における「配列同一性」または「同一性」は、整列されたときに同じである2つの配列中の残基への言及を含む。配列の同一性のパーセンテージをタンパク質に参照して用いる場合、同一でない残基の位置が保存的アミノ酸置換によってしばしば異なることが認識され、アミノ酸残基は類似の化学的性質(例えば電荷または疎水性)を有する他のアミノ酸残基に置換され、したがって分子の機能的特性を変化させない。配列が保存的置換で異なる場合には、配列の同一性のパーセントが上方に調節されて、置換の保存的性質が補正され得る。このような保存的置換によって異なる配列は、「配列類似性」または「類似性」を有すると考えられる。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。典型的には、これは、保存的置換を完全なミスマッチではなく部分的なミスマッチとしてスコア化し、それにより、配列同一性のパーセンテージを増加することを含む。したがって、例えば、同一のアミノ酸が1のスコアを与えられ、非保存的置換がゼロのスコアを与えられる場合、保存的置換は、ゼロと1との間のスコアを与えられる。保存的置換のスコアリングは、例えば、Henikoff SおよびHenikoff JG.[Amino acid substitution matrices from protein blocks.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.1992,89(22):10915−9]のアルゴリズムに従って計算される。
【0232】
同一性(例えば、パーセント相同性)は、例えば、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のBlastNソフトウェアを含む、任意の相同性比較ソフトウェアを用いて、例えばデフォルトパラメータを用いることによって決定することができる。
【0233】
本発明のいくつかの実施形態によると、同一性は、全体的同一性、すなわち、本発明の全アミノ酸または核酸配列にわたる同一性であり、その部分にわたるものではない。
【0234】
本発明のいくつかの実施形態によれば、用語「相同性」または「相同な」は、2つ以上の核酸配列の同一性;または2つ以上のアミノ酸配列の同一性;または1つ以上の核酸配列に対するアミノ酸配列の同一性を指す。
【0235】
本発明のいくつかの実施形態によれば、相同性は、全体的相同性、すなわち、本発明の全アミノ酸または核酸配列にわたる相同性であり、その部分にわたるものではない。
【0236】
2つ以上の配列間の相同性または同一性の程度は、種々の既知の配列比較ツールを用いて決定することができる。例えば、ポリヌクレオチド配列で開始し、他のポリヌクレオチド配列に対して比較する場合、EMBOSS−6.0.1 Needleman−Wunschアルゴリズム(enboss.sourceforge.net/apps/cvs/emboss/apps/needle.htmlから入手可能)を、以下のデフォルトパラメータで使用することができる:(EMBOSS−6.0.1)gapopen=10;gapextend=0.5;データファイル=EDNAFULL;brief=YES。
【0237】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、配列番号25〜50のいずれか1つに記載の核酸配列に含まれる核酸セグメントに向けられる。
【0238】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、配列番号26〜31、33〜36、38〜41、43〜45、47〜48または50のいずれか1つに記載の核酸配列に含まれる核酸セグメントに向けられる。
【0239】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、配列番号26〜31、33〜36、38〜41、43〜45、47〜48または50のいずれか1つに記載の核酸配列の部分配列に向けられる。
【0240】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、配列番号26〜31、33〜36、38〜41、43〜45、47〜48または50のいずれか1つに記載の全核酸配列に向けられる。
【0241】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、標的配列メチルトランスフェラーゼ(例えば、XMT、MXMTおよび/またはDXMT)を改変し、「標的外」活性を欠く、すなわち、コーヒーゲノム中の他の配列を改変しない。
【0242】
具体的な実施形態によれば、DNA編集剤は、コーヒーゲノム中の非必須遺伝子上の「標的外活性」を含む。
【0243】
非必須とは、DNA編集剤で改変した場合、農業的に価値のある方法(例えば、風味、バイオマス、収率、生物的/非生物的ストレス、害虫耐性、耐容性など)で標的ゲノムの表現型に影響を及ぼさない遺伝子を指す。
【0244】
1つの実施形態によれば、DNA編集剤は、植物細胞における発現をモニタリングするためのレポーターに連結される。
【0245】
1つの実施形態によると、レポーターは、蛍光レポータータンパク質である。
【0246】
用語「蛍光タンパク質」は、蛍光を発し、典型的にはフローサイトメトリー、顕微鏡法または任意の蛍光イメージング系によって検出可能であるポリペプチドを指し、したがって、そのようなタンパク質を発現する細胞の選択のための基礎として使用することができる。
【0247】
レポーターとして使用できる蛍光タンパク質の例は、限定されるものではないが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)および赤色蛍光タンパク質(例えば、dsRed、mCherry、RFP)である。蛍光または他のレポーターの非限定的なリストは、発光(例えば、ルシフェラーゼ)または比色分析(例えば、GUS)によって検出可能なタンパク質を含む。具体的な実施形態によると、蛍光レポーターは、赤色蛍光タンパク質(例えば、dsRed、mCherry、RFP)またはGFPである。
【0248】
新しいクラスの蛍光タンパク質および応用の総説は、Trends in Biochemical Sciences [Rodriguez,Erik A.;Campbell,Robert E.;Lin,John Y.;Lin,Michael Z.;Miyawaki,Atsushi;Palmer,Amy E.;Shu,Xiaokun;Zhang,Jin;Tsien,Roger Y.”The Growing and Glowing Toolbox of Fluorescent and Photoactive Proteins”.Trends in Biochemical Sciences.doi:10.1016/j.tibs.2016.09.010]中に見出される。
【0249】
当該技術分野で既知の任意の結合方法(例えば、レポーターへのDNA編集剤)を、本教示に従って使用することができる。
【0250】
本明細書で用いられる「結合された」という用語は、一つの配列が結合した配列に必要な機能を提供し得るような核酸配列の接合を指す。レポーターとの関連において、結合するとは、レポーターの転写がDNA編集剤の転写によって制御され、調節されるように、レポーターがDNA編集剤の配列に結合されることを意味する。さらに、またはその代替として、結合されたとはまた、レポーターおよびDNA編集剤の配列が、例えば2つの異なるプロモーターを用いて、同一のプラスミドから、または複数のプラスミドから転写されることを意味し得る(コトランスフェクション)。したがって、結合は、転写融合、翻訳融合であってもよく、または非融合であってもよい。
【0251】
DNA編集剤は、典型的には、発現ベクターを用いて植物細胞に導入される。
【0252】
したがって、本発明の態様によれば、コーヒー植物の細胞においてDNA編集剤を発現するためのシス作用性調節要素(例えば、植物プロモーター)に作動可能に結合しているカフェイン生合成経路の少なくとも1つの成分に向けられるDNA編集剤をコードする核酸配列を含む核酸構築物が提供される。
【0253】
本教示はまた、mRNA+sgRNAトランスフェクションまたはRNPトランスフェクションのようなDNAフリーの方法を用いるDNA編集剤の導入に関することが理解されるであろう。
【0254】
具体的な実施形態によれば、核酸構築物は、DNA編集剤のエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9または上述のエンドヌクレアーゼ)をコードする核酸配列を含む。
【0255】
いくつかの実施形態による方法で有用な構築物は、当業者に周知の組換えDNA技術を用いて構築することができる。このような構築物は、商業的に入手可能であり得、植物に形質転換するのに適しており、形質転換された細胞における関連する遺伝子の発現に適している。
【0256】
別の具体的な実施形態によると、エンドヌクレアーゼおよびsgRNAは、各々が植物細胞において活性なシス作用性調節要素(例えば、プロモーター)に作動可能に結合する異なる構築物からコードされる。
【0257】
本発明のいくつかの実施形態の特定の実施形態において、調節要素は、植物発現性プロモーターである。
【0258】
本明細書中で使用される「植物発現性」という語句は、植物細胞、組織または器官、好ましくは単子葉植物または双子葉植物の細胞、組織、または器官において発現を誘導、付与、活性化または増強することが少なくとも可能である、それに付加される、またはその中に含まれる任意の追加の調節要素を含むプロモーター配列を指す。本発明のいくつかの実施形態の方法に有用なプロモーターの例には、アクチン、CANV 35S、CaMV19S、GOS2が含まれるが、これらに限定されない。様々な組織、または発生段階において活性であるプロモーターもまた、用いることもできる。
【0259】
具体的な実施形態によれば、核酸構築物中のプロモーターは、Pol3プロモーターを含む。Pol3プロモーターの例としては、AtU6−29、AtU626、AtU3B、AtU3d、TaU6が挙げられるが、これらに限定されない。
【0260】
具体的な実施形態によれば、核酸構築物中のプロモーターは、Pol2プロモーターを含む。Pol2プロモーターの例としては、CaMV 35S、CaMV 19S、ユビキチン、CVMVが挙げられるが、これらに限定されない。
【0261】
具体的な実施形態によれば、核酸構築物中のプロモーターは、35Sプロモーターを含む。
【0262】
具体的な実施形態によれば、核酸構築物中のプロモーターは、U6プロモーターを含む。
【0263】
具体的な実施形態によれば、核酸構築物中のプロモーターは、ゲノム編集剤をコードする核酸配列または蛍光レポーターをコードする核酸配列に作動可能に結合した少なくとも1つのsgRNAおよび/またはPol2(例えば、CaMV35S)プロモーターをコードする核酸剤に作動可能に結合したPol 3(例えば、U6)プロモーターを含む(以下の具体的な実施形態で記載されるように)。
【0264】
具体的な実施形態によると、プロモーターは、U6 pol 3プロモーターである。
【0265】
本発明のいくつかの実施形態のポリペプチドの核酸配列は、植物発現のために最適化され得る。このような配列改変の例には、限定されるものではないが、関連する植物種において典型的に見出されるより密接なアプローチへの変化したG/C含有量、およびコドン最適化と一般的に呼ばれる植物種において非典型的に見出されるコドンの除去が含まれる。
【0266】
植物細胞は、本発明のいくつかの実施形態の核酸構築物で安定に、または一時的に形質転換され得る。安定な形質転換において、本発明のいくつかの実施形態の核酸分子は、植物ゲノムに組み込まれ、そのため、それは、安定であり、遺伝的な形質を表す。過渡状態形質転換では、核酸分子は、細胞形質転換された細胞によって発現されるが、それはゲノムに組み込まれず、そのため、それは過渡状態CRISPR−Cas9系を表す。
【0267】
具体的な実施形態によれば、植物は、DNA編集剤で一時的にトランスフェクトされる。
【0268】
具体的な実施形態によれば、構築物は、一過性発現に有用である(Helens et al.,2005,Plant Methods 1:13)。一過性形質転換の方法については、以下にさらに述べる。
【0269】
本発明のいくつかの実施態様の教示に従って、様々なクローニングキットを使用することができる[例えば、New England Biolabs(NEB)によるGoldenGateアセンブリキット]。
【0270】
具体的な実施形態によれば、核酸構築物は、バイナリーベクターである。バイナリーベクターの例は、pBIN19、pBI101、pBinAR、pGPTV、pCAMBIA、pBIB−HYG、pBecks、pGreenまたはpPZPである(Hajukiewicz,P.et al.,Plant Mol.Biol.25,989(1994)およびHellens et al,Trends in Plant Science 5,446(2000))。
【0271】
DNA送達の他の方法(例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、衝撃、ウイルス接種)で使用されるべき他のベクターの例は:pGE−sgRNA(Zhang et al.Nat.Comms.2016 7:12697)、pJIT163−Ubi−Cas9(Wang et al.Nat.Biotechnol 2004 32,947−951)、pICH47742::2x35S−5’UTR−hCas9(STOP)−NOST(Belhan et al.Plant Methods 2013 11;9(1):39)である。
【0272】
たとえばプロトプラストを用いる、植物細胞にDNAを導入するいくつかの方法があり、熟練した技術者は、いずれを選択するかを知っているだろう。
【0273】
核酸の送達は、当業者に知られている任意の方法によって、本発明の実施形態において植物細胞に導入され得、例えば、限定されずに:プロトプラストの形質転換による(例えば、米国特許第5,508,184号を参照されたい);乾燥/阻害を介したDNA取り込みによる(例えば、Potrykus et al.(1985)Mol.Gen.Genet.199:183−8を参照)。エレクトロポレーションによる(例えば、米国特許第5,384,253号を参照);炭化ケイ素繊維を用いた攪拌による(例えば、米国特許第5,302,523号および第5,464,765号を参照のこと)。アグロバクテリウムを介した形質転換による(例えば、米国特許第5,563,055号、第5,591,616号、第5,693,512号、第5,824,877号、第5,981,840号、および第6,384,301号を参照);DNA被覆粒子の加速による(例えば、米国特許第5,015,580号、5,550,318号、5,538,880号、6,160,208号、6,399,861号、および6,403,865号を参照)ならびにナノ粒子、ナノキャリアおよび細胞透過性ペプチドによる(国際公開第201126644A2号;国際公開第2009046384A1号;国際公開第2008148223A1号)を含み、DNA、RNA、ペプチドおよび/もしくはタンパク質、または核酸およびペプチドの組み合わせを植物細胞に送達するための方法における。
【0274】
トランスフェクションの他の方法としては、トランスフェクション試薬(例えば、Lipofectin、ThermoFisher)、デンドリマー(Kukowska−Latallo,J.F.et al.,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA93,4897−902)、細胞浸透ペプチド(Maee et al.,2005,Internalisation of cell−penetrating peptides into tobacco protoplasts,Biochimica et Biophysica Acta 1669(2):101−7)またはポリアミン(Zhang and Vinogradov,2010,Short biodegradable polyamines for gene delivery and transfection of brain capillary endothelial cells,J Control Release,143(3):359−366)の使用が挙げられる。
【0275】
具体的な実施形態によれば、植物細胞(例えば、プロトプラスト)へのDNAの導入は、エレクトロポレーションによって行われる。
【0276】
具体的な実施形態によれば、植物細胞(例えば、胚発生細胞)へのDNAの導入は、衝撃/バイオリスティクスによって行われる。
【0277】
具体的な実施形態によれば、プロトプラストにDNAを導入するために、この方法は、ポリエチレングリコール(PEG)媒介DNA取り込みを含む。さらなる詳細については、Karesch et al.(1991)Plant Cell Rep.9:575−578;Mathur et al.(1995)Plant Cell Rep.14:221−226;Negrutiu et al.(1987)Plant Cell Mol.Biol.8:363−373を参照されたい。次に、プロトプラストは、細胞壁が成長し、分裂を開始してカルスを形成し、芽および根が発達し、植物全体を再生することを可能にする条件下で培養する。
【0278】
一過性の形質転換は、改変された植物ウイルスを用いたウイルス感染によっても起こりうる。
【0279】
植物宿主の形質転換に有用であることが示されているウイルスには、CaMV、TMV、TRVおよびBVが含まれる。植物ウイルスを用いた植物の形質転換については、米国特許第4,855,237号(BGV)、欧州特許第67,553号(TMV)、日本国特許出願第63−14693号(TMV)、欧州特許第194,809号(BV)、欧州特許第278,667号(BV);およびGluzman,Y.et al.,Communications in Molecular Biology:Viral Vectors,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,pp.172−189(1988)に記載されている。植物を含む多くの宿主における外来DNAの発現に使用するためのシュードウイルス粒子は、国際公開第87/06261号に記載されている。
【0280】
植物における非ウイルス性外来性核酸配列の導入および発現のための植物RNAウイルスの構築は、上記の参考文献によって、ならびにDawson,W.O.et al.,Virology(1989)172:285−292;Takamatsu et al.EMBO J.(1987)6:307−311;French et al.Science(1986)231:1294−1297;およびTakamatsu et al.FEBS Letters(1990)269:73−76によって例証されている。
【0281】
ウイルスがDNAウイルスである場合には、ウイルス自体に適当な改変を施すことができる。別法として、ウイルスDNAを、外来性DNAを有する所望のウイルスベクターを構築するのを容易にするために、まず細菌性プラスミド中にクローン化することができる。次いで、ウイルスDNAを、プラスミドから切り出すことができる。ウイルスがDNAウイルスである場合、細菌の複製の起点がウイルスDNAに結合し、それが次いで細菌によって複製される。このDNAの転写および翻訳によって、コートタンパク質がつくられ、それは、ウイルスDNAをキャプシド形成する。ウイルスがRNAウイルスである場合は、一般にウイルスをcDNAとしてクローニングし、プラスミドに挿入する。次に、プラスミドを用いて、構築物のすべてをつくる。次いで、RNAウイルスは、プラスミドのウイルス配列を転写し、ウイルス遺伝子を翻訳して、ウイルスRNAをキャプシド形成するコートタンパク質(複数可)を産生することによって産生される。
【0282】
本発明のいくつかの実施形態の構築物に含まれるような非ウイルス性外因性核酸配列の植物への導入および発現のための植物RNAウイルスの構築は、上記参考文献ならびに米国特許第5,316,931号によって実証される。
【0283】
1つの実施形態において、植物ウイルス核酸が提供され、天然コートタンパク質コード配列は、ウイルス核酸、非天然植物ウイルスコートタンパク質コード配列、および非天然プロモーターから削除されており、好ましくは、植物宿主での発現、組換え植物ウイルス核酸のパッケージングが可能であり、組換え植物ウイルス核酸による宿主の全身感染を確実にする非天然コートタンパク質コード配列のサブゲノムプロモーターが、挿入されている。あるいは、コートタンパク質遺伝子は、タンパク質が産生されるように、その内部に非天然核酸配列を挿入することによって不活性化され得る。組換え植物ウイルス核酸は、1つ以上の追加の非天然サブゲノムプロモーターを含み得る。各非天然サブゲノムプロモーターは、植物宿主において隣接する遺伝子または核酸配列を転写または発現することができ、互いに、および天然サブゲノムプロモーターと組換えることができない。非天然(外来)核酸配列は、1つより多い核酸配列が含まれる場合には、天然植物ウイルスサブゲノムプロモーターまたは天然および非天然植物ウイルスサブゲノムプロモーターに隣接して挿入され得る。非天然核酸配列は、所望の産物を産生するために、サブゲノムプロモーターの制御下で宿主植物において転写または発現される。
【0284】
第2の実施態様において、天然のコートタンパク質コード配列が、非天然コートタンパク質コード配列の代わりに非天然コートタンパク質サブゲノムプロモーターの1つに隣接して配置されることを除いて、組換え植物ウイルス核酸が、第1の実施形態におけるように提供される。
【0285】
第3の実施形態では、天然のコートタンパク質遺伝子がそのサブゲノムプロモーターに隣接しており、1つ以上の非天然のサブゲノムプロモーターがウイルス核酸に挿入されている、組換え植物ウイルス核酸が提供される。挿入された非天然サブゲノムプロモーターは、植物宿主において隣接する遺伝子を転写または発現することが可能であり、互いに、および天然サブゲノムプロモーターと組換えることができない。非天然核酸配列は、配列がサブゲノムプロモーターの制御下で宿主植物において転写または発現されて、所望の産物を産生するように、非天然サブゲノム植物ウイルスプロモーターに隣接して挿入され得る。
【0286】
第4の実施形態において、組換え植物ウイルス核酸は、天然のコートタンパク質コード配列が非天然のコートタンパク質コード配列によって置換されることを除いて、第3の実施形態におけるように提供される。
【0287】
ウイルスベクターは、組換え植物ウイルス核酸によってコードされるコートタンパク質によってキャプシド形成されて、組換え植物ウイルスを産生する。組換え植物ウイルス核酸または組換え植物ウイルスを用いて、適当な宿主植物に感染させる。組換え植物ウイルス核酸は、宿主内での複製、宿主内での全身拡散、および宿主内での外来遺伝子(複数可)(単離された核酸)の転写または発現が可能であって、所望のタンパク質を産生する。
【0288】
採用された形質転換/感染方法にかかわらず、本教示はさらに、本明細書に記載される核酸構築物(複数可)を含む任意の細胞、例えば植物細胞(例えば、プロトプラスト)に関する。
【0289】
形質転換に続いて、細胞は、選択方法に供される。当該技術分野で公知の任意の方法を用いて、形質転換した細胞を選択することができる。
【0290】
選択に続いて、形質転換された植物細胞(例えば、プロトプラスト)の正に選択されたプールを採集し、アリコートを用いて、DNA編集事象を試験することができる。
【0291】
あるいは(または任意の検証に続いて)、クローンは、コロニー、すなわちクローン(少なくとも28日)およびマイクロカルスに発達するまで、選択(例えば、選択マーカーのための抗生物質)の非存在下で培養される。少なくとも60〜100日の培養(例えば、少なくとも70日、少なくとも80日)に続いて、カルスの細胞の一部を、DNA編集事象およびDNA編集剤の存在、すなわち、DNA編集剤をコードするDNA配列の消失について分析(検証)し、この方法の一過性の性質を指摘する。
【0292】
したがって、クローンは、求められる編集のタイプ、例えば、挿入、欠失、挿入−欠失(Indel)、逆位、置換およびそれらの組合せに依存して、本明細書中で「突然変異」または「編集」とも呼ばれるDNA編集事象の存在について検証される。
【0293】
具体的な実施形態によれば、突然変異は、約1〜500ヌクレオチド、約1〜250ヌクレオチド、約1〜150ヌクレオチド、約1〜100ヌクレオチド、約1〜50ヌクレオチド、約1〜25ヌクレオチド、約1〜10ヌクレオチド、約10〜250ヌクレオチド、約10〜200ヌクレオチド、約10〜150ヌクレオチド、約10〜100ヌクレオチド、約10〜50ヌクレオチド、約1〜50ヌクレオチド、約1〜10ヌクレオチド、約50〜150ヌクレオチド、約50〜100ヌクレオチドまたは約100〜200ヌクレオチドの改変を含む(カフェイン生合成経路の野生型成分、例えば、XMT/DXMT/MXMTのヌクレオチド配列と比較して)。
【0294】
1つの実施形態によれば、突然変異は、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450または多くとも500ヌクレオチドの改変を含む(カフェイン生合成経路の野生型成分、例えば、XMT/DXMT/MXMTのヌクレオチド配列と比較して)。
【0295】
1つの実施形態によれば、改変は、連続する核酸配列(例えば、少なくとも5、10、20、30、40、50、100、150、200、300、400、500塩基)においてであり得る。
【0296】
1つの実施形態によれば、改変は、例えば10、20、50、100、150、200、500、1000、2000、5000の核酸配列全体にわたって、非連続的な方法においてであり得る。
【0297】
具体的な実施形態によると、突然変異は、多くとも200ヌクレオチドの改変を含む。
【0298】
具体的な実施形態によると、突然変異は、多くとも150ヌクレオチドの改変を含む。
【0299】
具体的な実施形態によると、突然変異は、多くとも100ヌクレオチドの改変を含む。
【0300】
具体的な実施形態によると、突然変異は、多くとも50ヌクレオチドの改変を含む。
【0301】
具体的な実施形態によると、突然変異は、多くとも25ヌクレオチドの改変を含む。
【0302】
具体的な実施形態によると、突然変異は、多くとも20ヌクレオチドの改変を含む。
【0303】
具体的な実施形態によると、突然変異は、多くとも15ヌクレオチドの改変を含む。
【0304】
具体的な実施形態によると、突然変異は、多くとも10ヌクレオチドの改変を含む。
【0305】
具体的な実施形態によると、突然変異は、多くとも5ヌクレオチドの改変を含む。
【0306】
具体的な実施形態によると、突然変異は、多くとも2ヌクレオチドの改変を含む。
【0307】
具体的な実施形態によると、突然変異は、1つのヌクレオチドの改変を含む。
【0308】
1つの実施形態によれば、突然変異は、標的分子の認識/切断部位/PAMモチーフが、元のPAM認識部位を消失させるように改変されるようなものである。
【0309】
具体的な実施形態によると、突然変異は、PAMモチーフ中の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の核酸におけるものである。
【0310】
1つの実施形態によると、突然変異は、挿入を含む。
【0311】
具体的な実施形態によれば、挿入は、約1〜500ヌクレオチド、約1〜250ヌクレオチド、約1〜150ヌクレオチド、約1〜100ヌクレオチド、約1〜50ヌクレオチド、約1〜25ヌクレオチド、約1〜10ヌクレオチド、約10〜250ヌクレオチド、約10〜200ヌクレオチド、約10〜150ヌクレオチド、約10〜100ヌクレオチド、約10〜50ヌクレオチド、約1〜50ヌクレオチド、約1〜10ヌクレオチド、約50〜150ヌクレオチド、約50〜100ヌクレオチドまたは約100〜200ヌクレオチドの挿入を含む(カフェイン生合成経路の野生型成分、例えば、XMT/DXMT/MXMTのヌクレオチド配列と比較して)。
【0312】
一実施形態によれば、挿入は、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400または多くとも500ヌクレオチドの挿入を含む(カフェイン生合成経路の野生型成分、例えば、XMT/DXMT/MXMTのヌクレオチド配列と比較して)。
【0313】
具体的な実施形態によると、挿入は、多くとも200ヌクレオチドの挿入を含む。
【0314】
具体的な実施形態によると、挿入は、多くとも150ヌクレオチドの挿入を含む。
【0315】
具体的な実施形態によると、挿入は、多くとも100ヌクレオチドの挿入を含む。
【0316】
具体的な実施形態によると、挿入は、多くとも50ヌクレオチドの挿入を含む。
【0317】
具体的な実施形態によると、挿入は、多くとも25ヌクレオチドの挿入を含む。
【0318】
具体的な実施形態によると、挿入は、多くとも20ヌクレオチドの挿入を含む。
【0319】
具体的な実施形態によると、挿入は、多くとも15ヌクレオチドの挿入を含む。
【0320】
具体的な実施形態によると、挿入は、多くとも10ヌクレオチドの挿入を含む。
【0321】
具体的な実施形態によると、挿入は、多くとも5ヌクレオチドの挿入を含む。
【0322】
具体的な実施形態によると、挿入は、多くとも2ヌクレオチドの挿入を含む。
【0323】
具体的な実施形態によると、挿入は、1つのヌクレオチドの挿入を含む。
【0324】
1つの実施形態によると、突然変異は、欠失を含む。
【0325】
具体的な実施形態によれば、欠失は、約1〜500ヌクレオチド、約1〜250ヌクレオチド、約1〜150ヌクレオチド、約1〜100ヌクレオチド、約1〜50ヌクレオチド、約1〜25ヌクレオチド、約1〜10ヌクレオチド、約10〜250ヌクレオチド、約10〜200ヌクレオチド、約10〜150ヌクレオチド、約10〜100ヌクレオチド、約10〜50ヌクレオチド、約1〜50ヌクレオチド、約1〜10ヌクレオチド、約50〜150ヌクレオチド、約50〜100ヌクレオチドまたは約100〜200ヌクレオチドの欠失を含む(カフェイン生合成経路の野生型成分、例えば、XMT/DXMT/MXMTのヌクレオチド配列と比較して)。
【0326】
一実施形態によれば、欠失は、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450または多くとも500ヌクレオチドの欠失を含む(カフェイン生合成経路の野生型成分、例えば、XMT/DXMT/MXMTのヌクレオチド配列と比較して)。
【0327】
具体的な実施形態によると、欠失は、多くとも200ヌクレオチドの欠失を含む。
【0328】
具体的な実施形態によると、欠失は、多くとも150ヌクレオチドの欠失を含む。
【0329】
具体的な実施形態によると、欠失は、多くとも100ヌクレオチドの欠失を含む。
【0330】
具体的な実施形態によると、欠失は、多くとも50ヌクレオチドの欠失を含む。
【0331】
具体的な実施形態によると、欠失は、多くとも25ヌクレオチドの欠失を含む。
【0332】
具体的な実施形態によると、欠失は、多くとも20ヌクレオチドの欠失を含む。
【0333】
具体的な実施形態によると、欠失は、多くとも15ヌクレオチドの欠失を含む。
【0334】
具体的な実施形態によると、欠失は、多くとも10ヌクレオチドの欠失を含む。
【0335】
具体的な実施形態によると、欠失は、多くとも5ヌクレオチドの欠失を含む。
【0336】
具体的な実施形態によると、欠失は、多くとも2ヌクレオチドの欠失を含む。
【0337】
具体的な実施形態によると、欠失は、1つのヌクレオチドの欠失を含む。
【0338】
1つの実施形態によると、突然変異は、点突然変異を含む。
【0339】
具体的な実施形態によれば、点突然変異は、約1〜500ヌクレオチド、約1〜250ヌクレオチド、約1〜150ヌクレオチド、約1〜100ヌクレオチド、約1〜50ヌクレオチド、約1〜25ヌクレオチド、約1〜10ヌクレオチド、約10〜250ヌクレオチド、約10〜200ヌクレオチド、約10〜150ヌクレオチド、約10〜100ヌクレオチド、約10〜50ヌクレオチド、約1〜50ヌクレオチド、約1〜10ヌクレオチド、約50〜150ヌクレオチド、約50〜100ヌクレオチドまたは約100〜200ヌクレオチドの点突然変異を含む(カフェイン生合成経路の野生型成分、例えば、XMT/DXMT/MXMTのヌクレオチド配列と比較して)。
【0340】
1つの実施形態によれば、点突然変異は、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450または多くとも500ヌクレオチドの点突然変異を含む(カフェイン生合成経路の野生型成分、例えば、XMT/DXMT/MXMTのヌクレオチド配列と比較して)。
【0341】
具体的な実施形態によると、点突然変異は、多くとも200ヌクレオチドにおける点突然変異を含む。
【0342】
具体的な実施形態によると、点突然変異は、多くとも150ヌクレオチドにおける点突然変異を含む。
【0343】
具体的な実施形態によると、点突然変異は、多くとも100ヌクレオチドにおける点突然変異を含む。
【0344】
具体的な実施形態によると、点突然変異は、多くとも50ヌクレオチドにおける点突然変異を含む。
【0345】
具体的な実施形態によると、点突然変異は、多くとも25ヌクレオチドにおける点突然変異を含む。
【0346】
具体的な実施形態によると、点突然変異は、多くとも20ヌクレオチドにおける点突然変異を含む。
【0347】
具体的な実施形態によると、点突然変異は、多くとも15ヌクレオチドにおける点突然変異を含む。
【0348】
具体的な実施形態によると、点突然変異は、多くとも10ヌクレオチドにおける点突然変異を含む。
【0349】
具体的な実施形態によると、点突然変異は、多くとも5ヌクレオチドにおける点突然変異を含む。
【0350】
具体的な実施形態によると、点突然変異は、多くとも2ヌクレオチドにおける点突然変異を含む。
【0351】
具体的な実施形態によると、点突然変異は、1つのヌクレオチドにおける点突然変異を含む。
【0352】
1つの実施形態によると、突然変異は、欠失、挿入および/または点突然変異のいずれかの組合せを含む。
【0353】
1つの実施形態によると、突然変異は、ヌクレオチド置換(例えば、置換)を含む。
【0354】
具体的な実施態様によれば、置換は、約1〜500ヌクレオチド、1〜450ヌクレオチド、1〜400ヌクレオチド、1〜350ヌクレオチド、1〜300ヌクレオチド、1〜250ヌクレオチド、1〜200ヌクレオチド、1〜150ヌクレオチド、1〜100ヌクレオチド、1〜90ヌクレオチド、1〜80ヌクレオチド、1〜70ヌクレオチド、1〜60ヌクレオチド、1〜50ヌクレオチド、1〜40ヌクレオチド、1〜30ヌクレオチド、1〜20ヌクレオチド、1〜10ヌクレオチド、10〜100ヌクレオチド、10〜90ヌクレオチド、10〜80ヌクレオチド、10〜70ヌクレオチド、10〜60ヌクレオチド、10〜50ヌクレオチド、10〜40ヌクレオチド、10〜30ヌクレオチド、10〜20ヌクレオチド、10〜15ヌクレオチド、20〜30ヌクレオチド、20〜50ヌクレオチド、20〜70ヌクレオチド、30〜40ヌクレオチド、30〜50ヌクレオチド、30〜70ヌクレオチド、40〜50ヌクレオチド、40〜80ヌクレオチド、50〜60ヌクレオチド、50〜70ヌクレオチド、50〜90ヌクレオチド、60〜70ヌクレオチド、60〜80ヌクレオチド、70〜80ヌクレオチド、70〜90ヌクレオチド、80〜90ヌクレオチド、90〜100ヌクレオチド、100〜110ヌクレオチド、100〜120ヌクレオチド、100〜130ヌクレオチド、100〜140ヌクレオチド、100〜150ヌクレオチド、100〜160ヌクレオチド、100〜170ヌクレオチド、100〜180ヌクレオチド、100〜190ヌクレオチド、100〜200ヌクレオチド、110〜120ヌクレオチド、120〜130ヌクレオチド、130〜140ヌクレオチド、140〜150ヌクレオチド、160〜170ヌクレオチド、180〜190ヌクレオチド、190〜200ヌクレオチド、200〜250ヌクレオチド、250〜300ヌクレオチド、300〜350ヌクレオチド、350〜400ヌクレオチド、400〜450ヌクレオチド、または約450〜500ヌクレオチドの置換を含む(カフェイン生合成経路の野生型成分、例えば、XMT/DXMT/MXMTのヌクレオチド配列と比較して)。
【0355】
一実施形態によれば、ヌクレオチド交換は、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450または多くとも500ヌクレオチドのヌクレオチド置換を含む(カフェイン生合成経路の野生型成分、例えば、XMT/DXMT/MXMTのヌクレオチド配列と比較して)。
【0356】
具体的な実施形態によれば、ヌクレオチド置換は、多くとも200ヌクレオチドにおいてヌクレオチド置換を含む。
【0357】
具体的な実施形態によれば、ヌクレオチド置換は、多くとも150ヌクレオチドにおいてヌクレオチド置換を含む。
【0358】
具体的な実施形態によれば、ヌクレオチド置換は、多くとも100ヌクレオチドにおいてヌクレオチド置換を含む。
【0359】
具体的な実施形態によれば、ヌクレオチド置換は、多くとも50ヌクレオチドにおいてヌクレオチド置換を含む。
【0360】
具体的な実施形態によれば、ヌクレオチド置換は、多くとも25ヌクレオチドにおいてヌクレオチド置換を含む。
【0361】
具体的な実施形態によれば、ヌクレオチド置換は、多くとも20ヌクレオチドにおいてヌクレオチド置換を含む。
【0362】
具体的な実施形態によれば、ヌクレオチド置換は、多くとも15ヌクレオチドにおいてヌクレオチド置換を含む。
【0363】
具体的な実施形態によれば、ヌクレオチド置換は、多くとも10ヌクレオチドにおいてヌクレオチド置換を含む。
【0364】
具体的な実施形態によれば、ヌクレオチド置換は、多くとも5ヌクレオチドにおいてヌクレオチド置換を含む。
【0365】
具体的な実施形態によれば、ヌクレオチド置換は、多くとも2ヌクレオチドにおいてヌクレオチド置換を含む。
【0366】
具体的な実施形態によると、ヌクレオチド置換は、1つのヌクレオチドにおけるヌクレオチド置換を含む。
【0367】
具体的な実施形態によると、ゲノム編集事象は、コーヒー植物のゲノムへの外来DNAの導入(例えば、挿入または置換突然変異)を含み、他の方法では、例えば、第2の植物からの(例えば、交配による)伝統的な育種によって植物に導入することができる。
【0368】
具体的な実施形態によると、ゲノム編集事象は、伝統的な育種を通して(例えば、交配によって)導入され得るコーヒー植物のゲノムへの外来DNAの導入(例えば、挿入または置換突然変異)を含まない。
【0369】
配列変化を検出するための方法は、当該技術分野において周知であり、限定されるものではないが、DNA配列決定(例えば、次世代配列決定)、電気泳動、酵素ベースミスマッチ検出アッセイ、ならびにPCR、RT−PCR、RNアーゼ保護、インシチューハイブリダイゼーション、プライマー伸長、サザンブロット、ノーザンブロットおよびドットブロット分析などのハイブリダイゼーションアッセイを含む。単一ヌクレオチド多型(SNP)の検出のために使用される種々の方法、例えばPCRベースのT7エンドヌクレアーゼ、HetroduplexおよびSanger配列決定を、使用することもできる。
【0370】
DNA編集事象の存在を確認する別の方法、例えばIndelsは、ミスマッチしたDNAを認識し、切断する構造選択的酵素(例えば、エンドヌクレアーゼ)を用いるミスマッチ切断アッセイを含む。
【0371】
ミスマッチ切断アッセイは、インデルの検出のための簡便で費用対効果の高い方法であり、したがってゲノム編集によって誘導される突然変異を検出するための典型的な手順である。このアッセイでは、ヘテロ二本鎖DNAをミスマッチで切断する酵素および複数のヌクレオチドによって形成されるらせん外ループを用い、2つ以上のより小さな断片が得られる。約300〜1000bpのPCR産物を、生成した断片がサイズが異なっており、従来のゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって容易に分割できるように、予測されるヌクレアーゼ切断部位が中心から離れた状態で生成する。末端標識された消化産物は、自動ゲル電気泳動または毛細管電気泳動によっても分析できる。遺伝子座におけるインデルの頻度は、PCRアンプリコンおよび切断されたDNAバンドの統合強度を測定することによって推定することができる。消化ステップには15〜60分を要し、DNA調製およびPCRステップを加えると、3時間未満で全体アッセイを完了できる。
【0372】
このアッセイでは、2種類の代替の酵素が典型的に用いられる。T7エンドヌクレアーゼ1(T7E1)は、ミスマッチの上流の第1、第2または第3のホスホジエステル結合で不完全に一致したDNAを認識し、切断するリゾルベースである。T7E1ベースのアッセイの感度は、0.5〜5%である。一方、Surveyor(商標)ヌクレアーゼ(Transgenomic Inc.,Omaha,NE,USA)は、セロリ由来のミスマッチ特異的ヌクレアーゼのCELファミリーの要素である。それは、単一ヌクレオチド多型(SNP)または小さいインデルの存在によるミスマッチを認識し、切断し、ミスマッチの下流の両方のDNA鎖を切断する。それは、12 ntまでのインデルを検出でき、約3%程度の低い頻度、すなわち32コピーに1個の頻度で存在する突然変異に対して感受性がある。
【0373】
編集の存在を確認する尚他の方法は、さらに高分解能融解分析を含む。
【0374】
高分解能融解分析(HRMA)では、蛍光色素を組み込んだリアルタイムPCRによりゲノム標的(90〜200bp)に及ぶDNA配列を増幅し、続いてアンプリコンの溶融曲線解析を行うことを伴う。HRMAは、熱変性の間に二本鎖DNAからインターカレート色素が放出されるときの蛍光の消失に基づいている。それは、アンプリコンの温度依存性変性プロファイルを記録し、溶融プロセスに1種以上の分子種が関与しているか否かを検出する。
【0375】
さらに別の方法は、ヘテロ二本鎖可動性アッセイである。天然のポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって直接再ハイブリダイズしたPCR断片を分析することによっても、突然変異を検出することができる。この方法は、ポリアクリルアミドゲル中のヘテロ二本鎖DNAとホモ二本鎖DNAとの移動の違いを利用する。インデルによって引き起こされる、マッチングされた、およびミスマッチされたDNAストランドの間の角度は、ヘテロ二本鎖DNAが天然の条件下でホモ二本鎖DNAよりも著しく遅い速度で移動することを意味し、それらは、その移動性に基づいて容易に区別できる。15%ポリアクリルアミドゲルで、140〜170bpの断片を分離できる。このようなアッセイの感度は、最適条件下で0.5%に近づくことができ、これはT7E1と同様である。PCR産物を再アニーリングした後、アッセイの電気泳動成分は約2時間かかる。
【0376】
編集事象の存在を検証する他の方法については、Zischewski 2017 Biotechnol.Advances 1(1):95−104に長く記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0377】
コーヒー植物は、例えば、Tran,Hue T M et al.“Use of a draft genome of coffee(Coffea arabica)to identify SNPs associated with caffeine content”,Plant biotechnology Journal(2018)16(10):1756−1766.doi:10.1111/pbi.12912に記載されているように、二倍体または倍数体、例えば四倍体であり得、参照により本明細書に組み込まれる。したがって、ポジティブクローンは、DNA編集事象についてホモ接合性(すなわち、編集はすべての対立遺伝子で起こる)またはヘテロ接合性(すなわち、編集は、少なくとも1つの対立遺伝子で、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたはそれ以上の対立遺伝子で起こる)であり得ることが理解される。ヘテロ接合型の場合には、異なる対立遺伝子が異なる編集事象を担うことがある。さらに、ヘテロ接合型では、すべての対立遺伝子が当該事象(同一または異なる編集事象)を起こし得るわけではない。ホモ接合型の場合には、すべての対立遺伝子が同じ編集を起こすことがある。熟練技術者は、意図される使用に応じて、さらなる培養/再生および交配のためのクローンを選択する。
【0378】
所望によりDNA編集事象の存在を示すクローンは、DNA編集剤の存在についてさらに分析される。すなわち、DNA編集剤をコードするDNA配列の消失であり、この方法の一過性の性質を指摘している。
【0379】
このことは、DNA編集剤(例えば、mRNA、タンパク質で)の発現を、例えば、GFPまたはq−PCRの蛍光検出によって分析することによって行うことができる。
【0380】
代わりに、または追加的に、細胞を、本明細書に記載されるような核酸構築物、またはその部分、例えばレポーターポリペプチドまたはDNA編集剤をコードする核酸配列の存在について分析する。
【0381】
蛍光レポーターまたはDNA編集剤をコードするDNAを示さないクローン(例えば、蛍光顕微鏡検査、q−PCRおよびまたはサザンブロット、PCR、配列決定のような任意の他の方法によって確認されたように)であって、尚所望されるようなDNA編集事象(複数可)[突然変異(複数可)]を含むものは、さらなるプロセシングのために単離される。
【0382】
したがって、これらのクローンは保存できる(例えば凍結保存)。
【0383】
あるいは、細胞(たとえばプロトプラスト)を、まずカルスに発生する植物細胞の群に成長させ、次に植物組織培養法を用いてカルスから芽を再生(コーロジェネシス)させることによって、植物体全体に再生させることもできる。プロトプラストをカルスに成長させ、芽を再生させるには、植物の種ごとに特注されなければならない組織培養培地中の植物生長調節因子の適切なバランスが必要である。
【0384】
プロトプラスト融合とよばれる技術を用いて、プロトプラストを植物の育種に用いることもある。異なる種からのプロトプラストは、電場またはポリエチレングリコールの溶液を用いることによって融合を誘導される。この技術は、組織培養において体細胞雑種を生成するために使用され得る。
【0385】
プロトプラスト再生の方法は、当技術分野ではよく知られている。プロトプラストの単離、培養、および再生には、いくつかの要因が影響する。すなわち、遺伝子型、供与体組織およびその前処理、プロトプラスト単離のための酵素処理、プロトプラスト培養の方法、培養、培養培地、ならびに物理的環境である。徹底的なレビューについてはMaheshwari et al.1986 Differentiation of Protoplasts and of Transformed Plant Cells:3−36.Springer−Verlag,Berlinを参照のこと。参照により本明細書に組み込まれる。
【0386】
再生した植物は、熟練した技術者が適合するように、更なる育種、自殖、交配、戻し交配および選択に供することができる。
【0387】
最終系統、植物または中間育種産物の表現型は、例えばメチルトランスフェラーゼ遺伝子(例えば、XMT、MXMTおよび/またはDXMT)の配列の決定、mRNAまたはタンパク質レベルにおけるその発現、タンパク質の活性および/またはコーヒー豆の特性(例えば、低下したカフェインレベル)の分析などによって分析することができる。
【0388】
本明細書および以下に続く実施例の章に例示されている通りである。本発明者らは、安定した遺伝子組換えを回避しながら、ゲノム編集剤でコーヒーを形質転換することができた。
【0389】
したがって、本方法論は、選択可能な、またはスクリーニング可能なレポーターを組み込むことなく、ゲノム編集を可能にする。
【0390】
したがって、本発明の実施形態は、本発明の教示に従って作成された遺伝子編集事象(複数可)を含む植物、植物部分(例えば、豆)、植物細胞および植物の加工製品に関する。
【0391】
本発明の一態様によれば、カフェイン生合成経路の少なくとも1つの成分をコードする核酸配列における機能喪失突然変異を含むゲノムを含むコーヒー植物が提供される。
【0392】
本発明の一実施形態によれば、本明細書中に記載の方法に従って生成されたコーヒー植物が提供される。
【0393】
1つの実施形態によれば、本発明のいくつかの実施形態のコーヒー植物またはその一部は、機能喪失突然変異を欠く同じ遺伝的背景および発生段階および成長条件のコーヒー植物のものと比較して、カフェイン含有量を低下させることを含む。具体的な実施形態によれば、低下したカフェイン含有量は、機能喪失突然変異を欠く同じ遺伝的背景および発生段階および成長条件のコーヒー植物のものと比較して少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%またはさらにそれ以上である。
【0394】
一実施形態によれば、本発明のいくつかの実施形態のコーヒー植物は、機能喪失突然変異を欠く同一の遺伝的背景および発生段階および成長条件のコーヒー植物のものと比較して、カフェインの少なくとも約5%の減少を含む。
【0395】
1つの実施形態によると、本発明のいくつかの実施形態のコーヒー植物は、機能喪失突然変異を欠く遺伝的背景および発生段階および成長条件が同じコーヒー植物のものと比較して少なくとも約10%のカフェインの減少を含む。
【0396】
1つの実施形態によると、本発明のいくつかの実施形態のコーヒー植物は、非トランスジェニック(非GMO)である。
【0397】
1つの実施形態によると、本発明のいくつかの実施形態のコーヒー植物は、トランスジェニック(GMO)である。
【0398】
本教示はまた、本明細書に記載されている植物の部分、またはその加工製品に関する。
【0399】
具体的な実施形態によると、植物部分は豆である。
【0400】
別の具体的な実施形態によると、豆は乾燥している。
【0401】
いくつかの実施形態によれば、カフェイン含有量が低下したコーヒー豆を製造する方法が提供され、この方法は、以下:
(a)本発明のいくつかの実施形態の植物を成長させるステップ;
(b)植物から豆を収穫するステップ
を含む。
【0402】
さらなる実施形態によれば、カフェイン含有量が低下したコーヒーを製造する方法が提供され、当該方法は、本発明のいくつかの実施形態の豆を抽出、脱水および任意に焙焼に供するステップを含む。
【0403】
コーヒー豆(コーヒー植物から)を収穫するための当該技術分野で公知の任意の方法を、本発明に従って使用することができる。例えば、コーヒーチェリー(すなわち、豆を含むコーヒー果実)は、ストリップピッキング(機械もしくは手のいずれかによってコーヒーチェリーを一度に枝からはがす)または選択的ピッキング(成熟したチェリーのみを収穫し、手で個別に拾う)によって拾うことができる。
【0404】
さらに、コーヒー豆を加工するための当該技術分野で公知の任意の方法を、本発明に従って使用することができる。
【0405】
1つの実施形態によれば、コーヒー豆は、「湿式処理」によって処理され、チェリーの果肉/皮が豆から分離され、次に豆が例えば約2日間水中に浸漬されて発酵される。次いで、豆は、例えば太陽中で、または商業的な製造業者の場合は乾燥機中で洗浄され、乾燥され得る。
【0406】
1つの実施形態によれば、コーヒー豆は、「乾燥処理」によって処理され、小枝および他の異物がチェリーから分離され、チェリーは、例えば2〜3週間、例えばコンクリートまたはレンガ上で太陽中で広げられ(発酵が起こる)、さらに乾燥するために規則的に回転される。
【0407】
使用される処理方法(例えば「湿式処理」または「乾燥処理」)にかかわらず、チェリーの果肉/皮膚は、典型的には発酵の開始前に除去されることが認識されるであろう。
【0408】
1つの実施形態によれば、処理が行われた後、外皮を除去し(豆から)、豆を焙焼する。
【0409】
1つの実施形態によれば、本発明のいくつかの実施形態の豆のコーヒーが提供される。
【0410】
いくつかの実施形態の加工されたコーヒー組成物は、抽出もしくは醸造されるべきコーヒー粉末または可溶性コーヒー粉末の形態であり得る。したがって、コーヒーは粗粉、フィルターコーヒーまたはインスタントコーヒーであり得る。一方、本発明のコーヒー組成物は、焙焼されたコーヒー豆全体を含むこともできる。
【0411】
1つの実施形態によると、コーヒーは、粉末の形態である。
【0412】
1つの実施形態によると、コーヒーは、顆粒状形態である。
【0413】
本発明のさらなる実施形態は、コーヒー組成物および水を含むコーヒー飲料に関する。このようなコーヒー飲料は、当業者に公知の方法、例えば水で抽出する、水で醸造する、または本発明のコーヒー組成物を水に浸すことによって調製することができる。
【0414】
本発明のコーヒー飲料は、天然または人工の香味物質、乳製品、アルコール、発泡剤、天然または人工の甘味剤などのような他の物質も含むことができる。
【0415】
いくつかの実施形態のコーヒー組成物は、限定されるものではないが、アメリカーノ、カプチーノ、カフェラテ、エスプレッソ、マキアート、ブラック、フラットホワイト、アフォガート、モカチノ、アイリッシュコーヒーおよびモカなどの飲料における使用に適している。
【0416】
本発明のさらなる実施形態は、すぐに飲める飲料、クリーマー、コーヒーミックス、ココアモルト飲料を製造するための、およびチョコレート、パンまたは料理製品を製造するための、コーヒー組成物の使用に関する。
【0417】
本発明のコーヒー組成物は、飲料ディスペンサーに使用するためにカプセルに詰め込むことができる。さらに、またはその代替として、本発明のコーヒー組成物は、好ましくはコーヒーの乾燥および鮮度が維持されるように、紙、布またはプラスチック袋に詰め込むことができる。
【0418】
ここで使用する「約」とは、±10%を指す。
【0419】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する」およびそれらの結合体は、「含むが、これらに限定されない」を意味する。
【0420】
「からなる」という用語は、「含み、これに限定される」を意味する。
【0421】
用語「本質的に〜からなる」とは、組成物、方法または構造が追加の成分、ステップおよび/または部分を含み得るが、追加の成分、ステップおよび/または部分が特許請求される組成物、方法または構造の基本的および新規の特徴を実質的に変更しない場合に限ることを意味する。
【0422】
本明細書中で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が他の点を明確に指示しない限り複数の参照を含む。例えば、用語「化合物」または「少なくとも1つの化合物」は、それらの混合物を含む複数の化合物を含み得る。
【0423】
本明細書を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示することができる。範囲形式での説明は、単に便利および簡潔のためにすぎず、本発明の範囲に関する柔軟性のない制限として解釈すべきではないことを理解すべきである。したがって、範囲の説明は、当該範囲内の個々の数値だけでなく、可能なすべてのサブ範囲を具体的に開示したものと考えるべきである。例えば、1〜6などの範囲の記述は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などのサブ範囲、ならびに当該範囲内の個別の数、例えば、1、2、3、4、5、および6を具体的に開示したものと考えるべきである。これは、範囲の幅にかかわらず適用される。
【0424】
ここで数値範囲を示す場合は必ず、示された範囲内に引用されたいかなる数表示(分数または積分)も含めることを意味する。第1の表示番号と第2の表示番号との「間の範囲の/範囲」という句、および第1の表示番号「から」第2の表示番号までの「範囲の/範囲」という句は、本明細書では互換的に使用され、第1および第2の表示番号ならびにそれらの間のすべての分数および整数を含むことを意味する。
【0425】
ここでいう「方法」とは、化学、薬理学、生物学、生化学および医学分野の専門家が公知の、または公知の方法、手段、技術および手順から容易に開発された当該方法、手段、方法、技術および手順を含むが、これらに限定されるものではない。
【0426】
本明細書中で使用される、用語「処置する」は、状態の進行を阻止する、実質的に抑制する、遅くする、または逆行させる、状態の臨床的または審美的条件を実質的に改善する、または状態の臨床的または審美的条件の出現を実質的に妨げることを含む。
【0427】
別々の実施形態との関連で記述される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態においても組み合わせて提供され得ることが分かる。逆に、簡潔に言うと、単一の実施形態との関連で記載される本発明の様々な特徴は、別個に、または任意の適切なサブコンビネーションにおいて、または本発明の任意の他の記載された実施形態において適切なものとして提供されることもできる。様々な実施形態との関連で記載されている特定の特徴は、実施形態がそれらの要素を伴わない手術不能でない限り、それらの実施形態の必須の特徴とは考えられない。
【0428】
以下の請求項に記載されている本発明の様々な実施形態および側面は、以下の実施例において実験的裏付けを見出す。
【0429】
本出願において開示されたいかなる配列識別番号(SEQ ID NO)も、その配列ID NOが言及されている状況に応じて、DNA配列またはRNA配列のいずれかを指すことができることが理解されるが、それは、たとえその配列ID NOがDNA配列フォーマットまたはRNA配列フォーマットのみで発現されている場合であっても、その配列ID NOが言及されている状況に依存する。例えば、SEQ ID NO:1は、DNA配列形式で発現されるが(例えば、チミンについてTを引用する)、それは、MXMT核酸配列に相当するDNA配列、またはRNA分子核酸配列のRNA配列のいずれかを指すことができる。同様に、いくつかの配列は、記載されている分子の実際のタイプに応じて、RNA配列形式で発現される(例えば、ウラシルについてUを引用する)が、dsRNAを含むRNA分子の配列、または示されているRNA配列に相当するDNA分子の配列のいずれかを指すことができる。いずれにせよ、任意の置換で開示された配列を有するDNAおよびRNA分子の両方が想定される。
【実施例】
【0430】
ここでは、上記の説明とともに、本発明を非限定的な様式で例示する以下の実施例を参照する。
【0431】
一般に、本明細書中で使用される命名法および本発明で使用される実験室手順は、分子的、生化学的、微生物学的および組換えDNA技術を含む。このような技術は、文献で徹底的に説明されている。例えば、”Molecular Cloning:A laboratory Manual”Sambrook et al.,(1989);”Current Protocols in Molecular Biology”Volumes I−III Ausubel,R.M.,ed.(1994);Ausubel et al.,”Current Protocols in Molecular Biology”,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989);Perbal,”A Practical Guide to Molecular Cloning”,John Wiley & Sons,New York(1988);Watson et al.,”Recombinant DNA”,Scientific American Books,New York;Birren et al.(eds)”Genome Analysis:A Laboratory Manual Series”,Vols.1−4,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1998);米国特許第4,666,828号;4,683,202号;5,192,659号および5,272,057号に述べられている方法論;”Cell Biology:A Laboratory Handbook”,Volumes I−III Cellis,J.E.,ed.(1994);”Current Protocols in Immunology”Volumes I−III Coligan J.E.,ed.(1994);Stites et al.(eds),”Basic and Clinical Immunology”(第8版),Appleton & Lange,Norwalk,CT(1994);Mishell and Shiigi(eds),”Selected Methods in Cellular Immunology”,W.H.Freeman and Co.,New York(1980)を参照;利用可能なイムノアッセイは、特許文献および科学文献に広く記載されている。例えば、米国特許第3,791,932号;3,839,153号;3,850,752号;3,850,578号;3,853,987号;3,867,517号;3,879,262号;3,901,654号;3,935,074号;3,984,533号;3,996,345号;4,034,074号;4,098,876号;4,879,219号;5,011,771号および5,281,521号;”Oligonucleotide Synthesis”Gait,M.J.,ed.(1984);“Nucleic Acid Hybridization”Hames,B.D.およびHiggins S.J.,eds.(1985);”Transcription and Translation”Hames,B.D.およびHiggins S.J.,Eds.(1984);”Animal Cell Culture”Freshney,R.I.,ed.(1986);”Immobilized Cells and Enzymes”IRL Press,(1986);”A Practical Guide to Molecular Cloning”Perbal,B.,(1984)および”Methods in Enzymology”Vol.1−317,Academic Press;”PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications”,Academic Press,San Diego,CA(1990);Marshak et al.,”Strategies for Protein Purification and Characterization − A Laboratory Course Manual”CSHL Press(1996)を参照されたい;これらのすべては、本明細書に完全に記載されているかのように参照により組み込まれる。その他の一般的参考文献は、本文書全体を通して提供される。その中の手順は、当該技術分野において周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。ここに含まれるすべての情報は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0432】
一般的な材料および実験手順
胚発生カルスならびに細胞浮遊生成および維持
胚カルスは、以前に記載されているように[Protocol for somatic embryogenesis in woody plants.2005,Springer.p.167−1795中のEtienne,H.,Somatic embryogenesis protocol:coffee(Coffea arabica L.and C.canephora P.)]得た。簡単に言うと、若い葉を表面滅菌し、1cm片に切断し、2.26μMの2、4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、4.92μMのインドール−3−酪酸(IBA)および9.84μMのイソペンテニルアデニン(iP)を添加した半強度半固体MS培地上に1か月間置いた。次いで、外植片を、4.52μMの2,4−Dおよび17.76μMの6−ベンジルアミノプリン(6−BAP)を含有する半強度半固体MS培地に、胚発生カルスの再生まで6〜8か月間移した。胚発生カルスは、5μMの6−BAPを添加したMS培地上で維持した。
【0433】
細胞懸濁培養物を、以前に記載されているように胚形成カルスから作製した[Acuna,J.R.およびM.de Pena,Plant Cell Reports(1991).,10(6):345−348]。胚発生カルス(30g/l)を、13.32μMの6−BAPを添加した液体MS培地中に置いた。フラスコを、振盪インキュベーター(110rpm)中に28℃で入れた。細胞懸濁液は、完全に確立するまで2〜4週間ごとに継代培養/継代した。細胞懸濁培養物は、4.44μMの6−BAPを含む液体MS培地中で維持した。
【0434】
標的遺伝子
栽培品種Coffea canephora(Robustaコーヒー)における標的遺伝子は、メチルトランスフェラーゼ:キサントシンメチルトランスフェラーゼ(XMT)、7−メチキサンチンメチルトランスフェラーゼ(MXMTまたはテオブロミンシンターゼ)、および3,7−ジメチルキサンチンメチルトランスフェラーゼ(DXMTまたはカフェインシンターゼ)をコードする遺伝子である。
【0435】
【表1】
【0436】
sgRNA設計
sgRNA配列は、2つの別々の戦略に従って設計される。第1の戦略は、2つのcrRNAを直接用いてXMT遺伝子(Cc09_g06970)を標的とすることを伴う。第2の戦略は、遺伝子が相同性を共有しており、したがってcrRNAが経路中の脱カフェイン化遺伝子(デカフコーヒー遺伝子ともよばれる)の発現されたすべてのコピーを標的とするように設計されたという事実を利用している。
【0437】
crRNA配列は、オンラインCRISPR RGEN Tool(www.rgenome.net/)を用いて設計し、最良の対は、戦略に依存する標的配列への独特性に依存して選択した。
【0438】
各コーヒー変種からの各遺伝子を配列決定し、crRNA対象がsgRNA結合を阻害するSNPを含まないことを保証するために整列させた。sgRNA配列は、06、07、09および23と称されるCoffea canephoraの4つの系統を用いて研究するために設計した。
【0439】
sgRNA配列
sgRNA#6 AAAACCGAATTGAAATCATT(配列番号51)
sgRNA#7 TGCCTAATAGGGGCAATGCC(配列番号52)
sgRNA#11 TTCAAGGACAGGTTTCACCT(配列番号53)
sgRNA#12 CAACAAGTGCATTAAAGTTG(配列番号54)
sgRNA#13 AAAGAAAATGGACGCAAAAT(配列番号55)
sgRNA#14 AAAAAATGCATGGACTCCTC(配列番号56)
sgRNA#37 CGTATGCATTGTTCAAGGAA(配列番号57)
sgRNA#38 AAAGAAAATGGACGCAAGAT(配列番号58)
【0440】
sgRNAクローニング
利用したプラスミドは、(i)、CaMV35sプロモーターによって駆動されるeGFP;(ii)、CaMV35sプロモーターによって駆動されるCas9;および(iii)、sgRNAを駆動するAtU6プロモーターからなる転写単位で構成された。バイナリーベクター、例えばpCAMBIAまたはpRI−201−AN DNAを、使用することができる。
【0441】
プロトプラスト単離
植物材料(例えば、葉またはカルス)を消化溶液(1%セルラーゼ、0.5%マセロザイム、0.5%ドリセラーゼ、0.4Mマンニトール、154mM NaCl、20mM KCl、20mM MES pH5.6、10mM CaCl2)中で4〜24時間室温でインキュベートし、穏やかに振盪することによって、プロトプラストを単離した。消化後、残った植物材料を、W5溶液(154mM NaCl、125mM CaCl2、5mM KCl、2mM MES pH5.6)で洗浄し、プロトプラスト懸濁液を、40μmストレイナーでろ過した。室温で80gで3分間遠心分離した後、プロトプラストを2mlのW5緩衝液に再懸濁し、氷中で重力により沈殿させた。最後のプロトプラストペレットを、2mlのMMG(0.4Mマンニトール、15mM MagCl2、4mM MES pH5.6)に再懸濁し、プロトプラスト濃度を、血球計数により決定した。Trypan Blue染色を用いて、プロトプラストの生存率を推定した。
【0442】
ポリエチレングリコール(PEG)媒介プラスミドトランスフェクション
コーヒープロトプラストのPEGトランスフェクションは、Wang et al,.(2015)[Wang,H.,et al.,Scientia Horticulturae(2015)191:82−89]によって報告された戦略の改良版を用いて実施される。プロトプラストを、MMG溶液中で2〜5×10プロトプラスト/mlの密度に再懸濁する。100〜200μlのプロトプラスト懸濁液を、プラスミドを含むチューブに加える。プラスミド:プロトプラスト比は、形質転換効率に大きく影響するので、プロトプラスト懸濁液中のプラスミド濃度の範囲、5〜300μg/μlをアッセイする。この混合物にPEG溶液(100〜200μl)を加え、23℃で10〜60分間の範囲の様々な時間の長さの間インキュベートする。PEG4000濃度を最適化し、200〜400mMマンニトール中の20〜80%PEG4000の範囲、100〜500mMのCaCl溶液をアッセイする。次にプロトプラストをW5で洗浄し、80gで3分間遠心分離し、あらかじめ1ml W5で再懸濁し、23℃で暗所でインキュベートする。24〜72時間インキュベートした後、顕微鏡により蛍光を検出する。
【0443】
細胞/組織衝撃
粒子衝撃は、高速微小突起を用いて植物細胞にDNAを導入する手段として用いられる。先に述べたプロトコルは、C.canephoraの葉およびカルスを出発材料として用いて利用される(Hibberd Laboratory,Department of Plant Sciences,University of Cambridge)。簡単に言うと、カルスまたは表面殺菌した葉を、浸透処理のためにマンニトールを含む培地上に平板培養する。一方、DNAコートした金粒子は、直径1.0umの金40mgを秤量し、それを4℃の低結合性Eppendorfチューブ中で100%のエタノールと混合することによって調製する。金粒子の遠心分離および洗浄ステップに続いて、DNAでコーティングする:45μlのプラスミド(1000ng/μl)を添加し、ボルテックスして回転させる。次に、スペルミジンおよびCaClの混合物を調製し、これをその後DNAコートした金粒子に加える。氷冷後、DNAコートした金粒子混合物をエタノール中で再び洗浄し、新鮮な100%エタノール中に放置して衝撃を与える準備をする。衝撃にはBiolistic PDS−1000/He Instrument(Bio−Rad)を使用する。80〜450psiの破壊ディスクを、イソプロパノールおよび滅菌したマクロキャリアに入れる(チャンバおよびすべての成分は、70%のエタノールで滅菌する)。次に、DNAコートした金粒子混合物を、各マイクロキャリアの中心に配置し、エタノールを蒸発させ、すべての成分を組み立てて衝撃を与える。真空圧を設定し、ヘリウム弁を開き、カルスまたは葉を衝撃する。衝撃後、カルスまたは葉を衝撃後培地に通じて、浸透電位を低下させ、暗所でインキュベートして細胞修復を可能にする。
【0444】
蛍光タンパク質発現細胞のFACS選別
プラスミド/RNA送達の48時間後に、細胞を集め、フローサイトメーターを用いて蛍光タンパク質発現のために選別して、GFP/編集剤発現細胞について濃縮した[Chiang et al.,Sci Rep(2016).6:24356に既述のとおり]。この濃縮ステップは、抗生物質の選択をバイパスし、蛍光タンパク質、Cas9およびsgRNAを一時的に発現する細胞のみを収集することを可能にする。これらの細胞は、非相同体末端結合(NHEJ)および対応する遺伝子発現の喪失による標的遺伝子の編集についてさらに試験することができた。
【0445】
CRISPR系DNAの遺伝子改変および欠損のスクリーニング
各コロニーから、RFP選別プロトプラスト(任意のステップ)または衝撃由来コロニーのアリコートからDNAを抽出し、標的遺伝子に隣接するプライマーを用いてPCR反応を行った。コロニーをポジティブとしてサンプリングするための措置が取られた−後で植物を再生するために使用されたコロニー。同じ方法に供したがCas9−sgRNAを含まない対照反応を含ませ、野生型(WT)と考えた。次にPCR産物をアガロースゲル上で分離して、WTと比較して産物サイズのあらゆる変化を検出した。WT産物とは異なるPCR反応産物を、pBLUNT(Invitrogen)にクローニングした。さらに、編集事象の検証には配列決定を用いた。得られたコロニーを拾い、プラスミドを単離し、配列決定して、突然変異の性質を決定した。対応するタンパク質のドメイン改変または完全な消失をもたらすと予測される突然変異を有するクローン(コロニーまたはカルス)を、全ゲノム配列決定のために選択して、それらがCRISPR系DNA/RNAから遊離していることを検証し、ゲノムDNAレベルで突然変異を検出した。
【0446】
植物再生
配列が決定され、標的遺伝子の発現を失っていると予測され、CRISPR系DNA/RNAが存在しないことが見出されたクローンを、大量に作製するために増殖させ、並行して分化させて、所望の形質を試験するために機能的アッセイを実施する実生を作製した。
【0447】
要するに、形質移入されたプロトプラストを、フィーダープレート上のセルロース膜上に高密度で平板培養して、約15週間コロニー形成を可能にした。この間、プロトプラストに液体培地(B5培地+ビタミン、92g/Lグルコース)を毎週供給した。15週間後、プロトコロニー(マイクロカルス)を、増殖培地(半強度MS+B5ビタミン、+30g/Lスクロース)に移した。次に、増殖しているカルスを、胚発生および発芽のために再生培地(半強度MS+B5ビタミン、20g/lスクロース)に移した。3〜4週間後、発芽している胚は、実生の伸長のために固形培地に移す準備が整う。
【0448】
【表2】
【0449】
【表3】
【0450】
実施例1
カフェイン生合成遺伝子の同定に用いられるパイプライン
ロブスタコーヒー植物のカフェインレベルを低下させるために、XMT、MXMTおよびDXMTを含むカフェイン生合成に関連する遺伝子(図1)を、モデルまたは作物種における特徴づけされた経路から相同配列を検索することにより同定した。このプロセスには、系統解析による遺伝子の進化史の再構築、一般的および標的組織におけるそれらの発現の検証による候補のフィルター処理、および適切なsgRNA設計を保証するための(ミスマッチを避けるための)候補遺伝子の配列決定を目的とする、DNAおよびタンパク質配列の比較分析のための一連の連続的ステップが含まれる。この手順により、遺伝子の選択、ノックアウトのための最適化された標的領域(保存された、および潜在的に触媒性のドメイン)の同定、ならびに適切なsgRNAの設計が可能となった。このパイプラインは、共通の祖先をもつ相同タンパク質が同様の機能をもつ可能性があるという仮定と、系統再構築を行うことによって、遺伝子ファミリーが確立され、進化的な文脈における機能的多様性が評価されることに基づいている。これは、大規模なゲノム重複を起こした植物種および拡大した遺伝子ファミリーにとって、特に重要である。それにもかかわらず、遺伝子ファミリー内のパラログは必ずしも同じ機能をもっているわけではなく、そのプロセスの一部は、ファミリー内の遺伝子の選択を、個々に、または重複性をも説明するための群として標的化することである。
【0451】
実施例2
カフェイン生合成遺伝子の同定および標的化
前述したように、二次代謝産物カフェインの合成には、キサントシンを7−メチルキサンチンに変換してテオブロミンをカフェインに変換する3つのメチル化反応が関与している。この生合成経路に沿った重要な酵素は、XMT、MXMTおよびDXMTであり、これらは、in vitroでの合成経路を再構成することによって、およびコーヒー遺伝子の発現によって、カフェイン産生に関与することが、異種系のOgita et al.(2005)前出およびUefuji et al.[Uefuji et al.,Plant Molecular Biology(2005)59:221−227]において広範囲に研究され、証明されている。Coffea canephoraの全ゲノム解析により、二次代謝産物生合成に関与するいくつかの遺伝子が、N−メチルトランスフェラーゼを含む遺伝子ファミリーの拡張を受けていたことが明らかになった[Denoeud et al.,Science(2014)345(6201)]。この研究はまた、N−メチルトランスフェラーゼファミリーがコーヒー中に23の遺伝子をクラスター化するが、Arabidopsis(Denoeud et al.(2014)前出)などの他の植物種では明らかなクラスターを持たないことを示した。推定上の機能的N−メチルトランスフェラーゼをコードするコーヒーゲノム内の遺伝子を同定するために、特徴づけされたカフェイン生合成経路からの相同配列を同定した(図3および表2)。タンパク質整列から、選択された遺伝子は80〜99%の類似性を共有していることが示された(図2)。
【0452】
【表4】
【0453】
コーヒーゲノムハブ(www.coffee−genome.org)を利用して、種々のコーヒー組織における個々の候補遺伝子の各々の発現データを検索した(図4および5)。XMT、DXMTおよびMXMT Cc09g06970、Cc01g00720、Cc09g06950およびCc00g24720のホモログは葉組織および精子周囲で中等度から高度の発現を示し、一方遺伝子Cc09g06960は精子周囲を除いて低発現であった(図4および5)。これらの結果に基づき、1つの戦略は、Cc09g06970、Cc01g00720、Cc09g06950およびCc00g24720を標的とするsgRNAを設計することであった。しかし、ヌクレオチドレベルでの類似性が高いことから(図6)、Cc09_g06960を含むすべてのメチルトランスフェラーゼを標的とするようにsgRNAを設計できる保存領域を選択した。次に、これらの領域の配列を決定して、C.canephora系統(図7A〜Eに太字および下線を付した;配列番号25〜48)における配列を確認した。最後に、いくつかのアルゴリズムを用いて、sgRNAを設計し(図7A〜E、図10および配列番号51〜78)、これらを、予測された効率および確率に従ってランク付けして、ノックアウトを生成した。
【0454】
XMT、MXMTおよびDXMT遺伝子(Cc09g06970、Cc09g06950およびCc09g06960)は、図8Aに示すように2対のsgRNAを標的とした。sgRNAは、候補遺伝子のエクソン1とエクソン3との間に位置した。これらの領域は、前述の候補遺伝子間で高度に保存されているため選択された。sgRNAは、mCherry、Cas−9、およびU6 pol 3プロモーターによって駆動される2つのsgRNAを含むトランスフェクションプラスミドにクローニングされた。
【0455】
次に、CRISPR/Cas9複合体、ならびにXMT、MXMTおよびDXMT候補遺伝子を標的とするsgRNAを、コーヒープロトプラストにトランスフェクトし(PEGを用いて上述したように)、蛍光活性化細胞選別(FACS)によってそのような複合体を担持する細胞を濃縮した。mCherryマーカーを用いて、蛍光タンパク質を一過性に発現するトランスフェクトしたコーヒー細胞、Cas9およびsgRNAを分離し、選別し、トランスフェクション後3日目にmCherryポジティブコーヒープロトプラストを採取した(dpt)。6 dptで5000の選別したプロトプラスト(Qiagen Plant Dneasy抽出キット)からDNAを抽出した。図8Aに示すように、プライマーを用いて、感受性を増加させるために、ネステッドPCRを実施した。候補XMT、MXMTおよびDXMT遺伝子の増幅した領域のアガロースゲルを、図8Bに示す。
【0456】
明らかな欠失が認められないことは、ゲノム編集が標的遺伝子で行われなかったことを示すものではない。したがって、sgRNAおよびCRISPR/Cas9複合体が活性であり、XMT、MXMTおよびDXMT遺伝子におけるゲノム編集事象を誘発するかどうかを評価するために、T7E1アッセイを実施した。すべてのsgRNAの組合せは、Cc09g06970、Cc09g06960遺伝子においてゲノム編集事象を誘導することが見出された(図8C)。さらに、クローニングおよび配列決定により、T7E1の結果が確認された。したがって、いくつかのsgRNAが、図8Dおよび8Gに示されるように、誘導されたインデルを使用することが見出された。T7E1アッセイは、より高感度であり、したがって、sgRNAが標的された遺伝子において何らかの活性を有するかどうかを評価するのに有用である。結論として、これらの結果は、CRISPR/Cas9系が内在性XMT、MXMTおよびDXMT遺伝子における正確な突然変異の導入にうまく使用でき、sgRNAの設計および選択がゲノム編集の効率に影響することを実証する。
【0457】
実施例3
トランスフェクトしたコーヒー植物の再生
上記実施例2と平行して、プロトプラスト−再生パイプラインにおいてプロトプラストを進めた。簡単に述べると、プロトプラストを、フィーダープレート上のセルロース膜上に高密度で平板培養して、コロニー形成を可能にした。コロニーを拾い、増殖させ、2つのアリコートに分割した。DNA抽出およびゲノム編集(GE)試験には1アリコートを使用し、一方残りのアリコートはその状態が確認されるまで培養に保持した。GEであることを明確に示すもののみを、前方に選択した。
【0458】
次に、増殖カルスを、胚発生および発芽のために再生培地(半強度MS+B5ビタミン、20g/lスクロース)に移した。3〜4数週間後、発芽胚は、実生伸長のために固形培地に移す準備が整った。(図9A〜F)
【0459】
本発明は、その具体的な実施形態と併せて記載されているが、多くの代替法、改変および変形が当業者に明らかであることは明らかである。したがって、添付した特許請求範囲の精神および広い範囲内にある全てのこのような代替法、改変および変形を含めることが意図されている。
【0460】
本明細書に記載されているすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に、本明細書にその全体が組み込まれる。さらに、この出願におけるあらゆる参照の引用または同定は、そのような参照が本発明の先行技術として利用可能であると認められるものとして解釈しないものとする。章の見出しが用いられる範囲では、それらは、必ずしも限定的であると解釈すべきではない。
【0461】
さらに、本出願のあらゆる優先権文書(複数可)は、ここにその全体を引用して組み込まれている。
図1
図2(1)】
図2(2)】
図3
図4
図5
図6(1)】
図6(2)】
図6(3)】
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10
【配列表】
2021521866000001.app
【国際調査報告】