特表2021-521892(P2021-521892A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-521892UVを用いた植物栽培方法及びこのための植物栽培システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-521892(P2021-521892A)
(43)【公表日】2021年8月30日
(54)【発明の名称】UVを用いた植物栽培方法及びこのための植物栽培システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20210802BHJP
   A01G 9/20 20060101ALI20210802BHJP
   A01G 9/24 20060101ALI20210802BHJP
   A01G 22/15 20180101ALI20210802BHJP
【FI】
   A01G7/00 604Z
   A01G7/00 601C
   A01G9/20 B
   A01G9/24 A
   A01G22/15
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2021-507442(P2021-507442)
(86)(22)【出願日】2019年4月18日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月18日
(86)【国際出願番号】KR2019004711
(87)【国際公開番号】WO2019203597
(87)【国際公開日】20191024
(31)【優先権主張番号】10-2018-0046266
(32)【優先日】2018年4月20日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】520408054
【氏名又は名称】インダストリー−ユニヴァーシティ コーポレーション ファウンデーション オブ チュンブク ナショナル ユニヴァーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】506029004
【氏名又は名称】ソウル バイオシス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SEOUL VIOSYS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】オ, ミョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ジン フイ
(72)【発明者】
【氏名】ク, ジョン ヒョン
【テーマコード(参考)】
2B022
2B029
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AB11
2B022AB20
2B022DA02
2B022DA08
2B022DA17
2B022DA19
2B022DA20
2B029KB03
2B029KB10
2B029MA06
2B029SF10
2B029TA10
(57)【要約】
本発明は、UVを用いた植物栽培方法及びこのための植物栽培システムに関する。本発明の実施例に係る植物栽培方法は、植物にUVAを補光処理する段階と、植物の最大量子収率を測定する段階と、測定された最大量子収率によって植物の栽培段階を決定する段階とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物にUVA補光処理をする段階、
前記植物の最大量子収率を測定する段階、及び
前記測定された最大量子収率によって前記植物の栽培段階を決定する段階、
を含むUVを用いた植物栽培方法。
【請求項2】
前記植物の栽培段階を決定する段階において、
前記測定された最大量子収率が予め設定された範囲以内に含まれるようになったら、前記植物を収穫し、
前記測定された最大量子収率が予め設定された任意の範囲以内に含まれていない場合は、前記植物を生長させる段階を維持する、請求項1に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項3】
前記測定された最大量子収率が予め設定された任意の範囲以内に含まれていない場合は、
前記植物に追加ストレス処理を行う、請求項2に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項4】
前記追加ストレス処理は、前記UVAの波長帯、強度、持続時間などを変更する、請求項3に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項5】
前記追加ストレス処理は、前記植物に紫外線、温度(空気、根)、水分(欠乏、低酸素症)、光(光質、光度)、塩分、及びオゾンのうち少なくとも一つを用いたストレス処理である、請求項3に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項6】
前記最大量子収率の予め設定された任意の範囲は、前記植物の機能性物質の含量が平均以上であるときの範囲である、請求項2に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項7】
前記最大量子収率の予め設定された任意の範囲は0.6〜0.72である、請求項6に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項8】
前記最大量子収率の予め設定された任意の範囲は0.68〜0.69である、請求項6に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項9】
前記植物の機能性物質の含量は、カロテノイド含量、フラボノイド含量、フェノール含量又は抗酸化度である、請求項6に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項10】
前記植物は葉菜類又は薬用植物である、請求項1に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項11】
前記UVAを放出する光源はLEDである、請求項1に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項12】
前記植物にUVAを補光処理する段階において、
前記植物の生長が増加する、請求項1に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項13】
植物が栽培される空間を提供する植物栽培室、
前記植物に可視光及び白色光のうち少なくとも一つを含む光を照射する光源部、
前記植物にUVAを照射する補光部、及び
前記植物の最大量子収率を測定する量子収率測定部、
を含む植物栽培システム。
【請求項14】
前記光源部は、12時間の間隔で前記光を放出したり、又は前記光を放出しなかったりする、請求項13に記載の植物栽培システム。
【請求項15】
前記補光部は、UVAを放出するLEDを含む、請求項13に記載の植物栽培システム。
【請求項16】
前記植物栽培室の温度を制御する温度制御部、及び
前記植物栽培室の湿度を制御する湿度制御部、
をさらに含む、請求項13に記載の植物栽培システム。
【請求項17】
前記植物に培養液を提供する培養液提供部をさらに含む、請求項13に記載の植物栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UVを用いた植物栽培方法及びこのための植物栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
植物は、光エネルギーを用いて二酸化炭素及び水から有機物を合成する光合成作用をする。植物は、光合成作用によって得られた有機物の化学エネルギーを生長などのための栄養分として使用している。
【0003】
植物は、目的とする対象に効力を有する機能性物質を含んでいる。植物は、成長及び環境によって含有する機能性物質の数値が変わる。例えば、植物は、酸化ストレスによる損傷を防御するために、抗酸化物質を生成し、自らを保護する。人がこのような機能性物質を多く含有した植物を摂取すると、機能性物質は、人体に類似する作用をするようになる。よって、機能性物質を効率的に取得するためには、可能な限り機能性物質が多い状態であるときに植物を収穫しなければならない。
【0004】
したがって、植物の生長状態及び機能性物質の含量を確認する必要がある。また、植物の生長及び機能性物質の含量を増大させる方法も必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、非破壊方式で植物の収穫時期を決定し、植物を収穫する方法及びこのためのシステムを提供することにある。
【0006】
本発明が解決しようとする他の課題は、十分な有用物質が生成された状態の植物を収穫する方法及びこのためのシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施例によると、UVAを補光処理し、植物を生長させる段階と、植物の最大量子収率を測定する段階と、測定された最大量子収率によって植物の栽培段階を決定する段階とを含むUVAを用いた植物栽培方法が提供される。
【0008】
本発明の他の実施例によると、植物が栽培される空間を提供する植物栽培室と、植物に可視光及び白色光のうち少なくとも一つを含む光を照射する光源部と、植物にUVAを照射する補光部と、植物の最大量子収率を測定する量子収率測定部とを含む植物栽培システムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施例に係る植物栽培方法及びこのためのシステムは、植物にUVA補光処理をし、植物の生長及び機能性物質の含量を増大させることができる。
【0010】
また、本発明の実施例に係る植物栽培方法及びこのためのシステムは、植物の生長及び機能性物質の含量が十分な時点を、最大量子収率を用いて推測することができる。
【0011】
また、本発明の実施例に係る植物栽培方法及びこのためのシステムは、最大量子収率を用いることによって、非破壊方式で機能性物質を増大させるためのUVA補光処理期間、及びそれによって機能性物質が多量に含有された状態の植物の収穫時期を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係るUV照射と最大量子収率との関係を確認した結果を示した図である。
図2】本発明の実施例に係るUVの照射強度及び照射期間による最大量子収率の変化を確認した結果を示した図である。
図3】本発明の実施例に係る最大量子収率による機能性物質の含量の変化を確認した結果を示した図である。
図4】本発明の実施例に係る最大量子収率による機能性物質の含量の変化を確認した結果を示した図である。
図5】本発明の実施例に係る最大量子収率による機能性物質の含量の変化を確認した結果を示した図である。
図6】本発明の実施例に係る最大量子収率による機能性物質の含量の変化を確認した結果を示した図である。
図7】本発明の実施例に係る最大量子収率による機能性物質の含量の変化を確認した結果を示した図である。
図8】本発明の実施例に係る最大量子収率による機能性物質の含量の変化を確認した結果を示した図である。
図9】ケールにUVAを3日間補光処理する間に測定した最大量子収率(Maximum Quantum Yield;Fv/Fm)を示したグラフである。
図10】UVA補光処理する間のケールの生体重を示したグラフである。
図11】UVA補光処理する間のケールの最大量子収率を示したグラフである。
図12】ケールの最大量子収率による機能性物質の含量を示したグラフである。
図13】ケールの最大量子収率による機能性物質の含量を示したグラフである。
図14】ケールの最大量子収率による機能性物質の含量を示したグラフである。
図15】ケールの最大量子収率による機能性物質の含量を示したグラフである。
図16】ケールの最大量子収率による機能性物質の含量を示したグラフである。
図17】ケールの最大量子収率による機能性物質の含量を示したグラフである。
図18】アイスプラントのUVA補光処理時間による最大量子収率を示したグラフである。
図19】アイスプラントの生長に関するグラフである。
図20】アイスプラントの生長に関するグラフである。
図21】アイスプラントの生長に関するグラフである。
図22】アイスプラントの生長に関するグラフである。
図23】アイスプラントの光合成率を示したグラフである。
図24】アイスプラントのPAL活性を示したグラフである。
図25】アイスプラントの機能性物質の含量を示したグラフである。
図26】アイスプラントの機能性物質の含量を示したグラフである。
図27】ケールの生長を示したグラフである。
図28】ケールの生長を示したグラフである。
図29】ケールの生長を示したグラフである。
図30】ケールの生長を示したグラフである。
図31】ケールの葉面積を示したグラフである。
図32】ケールの葉厚指数を示したグラフである。
図33】ケールの総葉緑素含量を示したグラフである。
図34】ケールの総葉緑素含量を示したグラフである。
図35】ケールの機能性物質の含量に関するグラフである。
図36】ケールの機能性物質の含量に関するグラフである。
図37】ケールの機能性物質の含量に関するグラフである。
図38】ケールの機能性物質の含量に関するグラフである。
図39】ケールのPAL活性を示したグラフである。
図40】ケールのPAL活性を示したグラフである。
図41】本発明の実施例に係る植物栽培システムを示した例示図である。
図42】本発明の実施例に係る植物栽培方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の目的、特定の長所及び新規の特徴は、添付の各図面と連関する以下の詳細な説明及び好適な各実施例からさらに明白になるだろう。次に紹介する各実施例は、当業者に本発明の思想を十分に伝達するための例示として提供されるものである。よって、本発明は、以下で説明する各実施例に限定されなく、他の形態に具体化されてもよい。
【0014】
本発明において、植物は、葉菜類又は薬用植物であることを特徴とする。例えば、植物は、ケール、白菜、レタス、フユアオイ、春菊、キャベツ、セロリ、ホウレンソウ、フダンソウ、チンゲンサイ、チコリー、アスパラガス、アイスプラント、包み野菜類又はハーブ類を含んでもよいが、これに限定されるのではない。
【0015】
本発明者等は、前記のような要求によって導出されたものであって、植物のイメージ蛍光値(最大量子収率)を用いて機能性物質の含量を増進させるための植物のストレス決定方法を提供しようとする。
【0016】
一実施例によると、本発明は、植物の機能性物質の含量を増進させるための植物のストレス決定方法を提供しようとするものであって、前記方法は、
(1)植物全体から葉緑素蛍光イメージを取得する段階、
(2)前記取得された蛍光イメージを用いて植物の光化学系II(photosystem II;PS II)から放出する葉緑素蛍光値を取得する段階、及び
(3)前記取得した蛍光値から機能性物質の含量を予測し、植物のストレス特性を決定する段階、を含んでもよい。
【0017】
本発明に係る植物のストレス決定方法において、前記段階(1)の葉緑素蛍光イメージを取得する段階は、外部から光を遮断するチャンバーと、植物の蛍光を発光させる青色光源と、反射光から植物の葉緑素蛍光のみをろ過させるフィルターと、ろ過された葉緑素蛍光を撮影するカメラと、取得した映像情報を処理する映像処理機器とを含む葉緑素蛍光イメージの撮影装置を用いることを特徴とする。前記植物の蛍光を発光させる青色光源はLED光源であってもよい。LED光源は、青色光源に限定されるのではなく、白色光源であってもよい。
【0018】
本発明に係る植物のストレス決定方法において、前記段階(3)の植物のストレス特性を決定する段階は、段階(2)で取得したFv/Fm値と機能性物質の含量との相関分析を含むことを特徴とする。一般に、蛍光値が相対的に低いほど、植物がストレスを受けたことを間接的に確認することができ、植物において適切な量のストレスが作用する場合(適正な葉緑素蛍光値である場合)、植物の機能性成分の含量が増進し得ると判断することができる。
【0019】
本発明に係る植物のストレス決定方法において、前記ストレスは、紫外線、温度(空気、根)、水分(欠乏、低酸素症)、光(光質、光度)、塩分、及びオゾンを含むことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る植物のストレス決定方法において、前記ストレス特性は、ストレス強度、持続時間、回数又は持続性を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明に係る植物のストレス決定方法において、前記方法は、
(4)機能性物質の含量を増大させるために、葉緑素蛍光値が0.6以上〜0.75未満になるように植物のストレス特性を調節する段階をさらに含むことを特徴とする。
【0022】
本発明に係る植物のストレス決定方法において、前記植物は、葉菜類又は薬用植物であることを特徴とする。例えば、前記葉菜類は、ケール、白菜、レタス、フユアオイ、春菊、キャベツ、セロリ、ホウレンソウ、フダンソウ、チンゲンサイ、チコリー、アスパラガス、包み野菜類又はハーブ類を含んでもよいが、これに限定されるのではない。
【0023】
本発明に係る植物のストレス決定方法において、前記機能性物質は、カロテノイド、フラボノイド又はフェノールを含んでもよいが、これに限定されるのではない。
【0024】
本発明の植物の機能性物質の含量を増進させるための植物のストレス決定方法によると、植物のイメージ蛍光値を通じて機能性物質の含量を予測することによって植物のストレス特性、例えば、強度、持続時間、回数又は持続性を決定できるので、植物の機能性物質の含量を増進させるにおいて、多様な植物に処理されるストレスの決定に有用である。
【0025】
ケール
【0026】
図1は、本発明の実施例に係るUV照射と最大量子収率との関係を確認した結果を示す。
【0027】
UVA LED(365nmのピーク)を用いてケールに50W/m2で3時間にわたってUVAを照射し、最大量子収率を測定した。
【0028】
植物の葉緑素から放出される蛍光は、光合成の初期光化学反応に使用されていない光エネルギーの一部が再び光の形態で放出されることを示す。
【0029】
最大量子収率は、光化学反応に対する量子収率の最大値を示す。すなわち、植物の最大量子収率は、植物が光エネルギーを用いて光合成を行える最大値である。
【0030】
Fmは、暗順応した植物が飽和光を通じて誘導された最大蛍光値である。すなわち、Fmは、光合成に用いられた光エネルギーが0であるときに植物から放出された蛍光値である。
【0031】
Fvは、植物の減少した蛍光値である。Fvは、最大蛍光値から、暗状態で光を照らしたときに瞬間的に増加してから一定の値に維持される基底蛍光値を引いた値である。
【0032】
一般に、健康な植物は、最大量子収率が0.75〜0.83の値を有する。光化学系IIの反応中心が損傷したり、又はストレス環境によって健康でなかったりする植物の場合、最大量子収率がこれより低い値に測定される。すなわち、最大量子収率の値によって植物のストレス程度を間接的に確認することができる。
【0033】
本実施例において、ケールの最大量子収率は、葉緑素蛍光測定機を用いて測定した。
【0034】
葉緑素蛍光測定機は、ケールの蛍光イメージを撮影し、取得した蛍光イメージを分析し、最大量子収率を測定する。
【0035】
その結果、対照群(Control)の場合は、0.75〜0.83の最大量子収率を示した一方で、UVAが照射されたケールの場合は、0.4〜0.7の最大量子収率を示した。
【0036】
これによって、植物にUVAを照射し、最大量子収率を測定することによって、植物が受けるストレスの程度を予測できることを確認することができる。
【0037】
図2は、本発明の実施例に係るUVの照射強度及び照射期間による最大量子収率の変化を確認した結果を示す。
【0038】
UVA LED(365nmのピーク)を用いてケールに10W/m2、30W/m2及び50W/m2で3日間UVを照射した。このとき、一つのケールの葉を地表面に対して平行に固定し、一つの葉にUVが均一に照射されるように処理し、1日目及び3日目に最大量子収率の変化を測定した。
【0039】
その結果、UV照射強度が増加するほど(10W/m2<30W/m2<50W/m2)、最大量子収率が低くなることを確認することができる。
【0040】
図3図8は、本発明の実施例に係る最大量子収率による機能性物質の含量の変化を確認した結果を示す。
【0041】
イメージ蛍光値による機能性物質の含量の変化を確認するために、UVA LED(365nmのピーク)を用いてケールに10W/m2、30W/m2、及び50W/m2で3日間UVを照射した後、1日目及び3日目にケールの葉の最大量子収率を測定した。測定された最大量子収率を〜0.55未満、0.55以上〜0.6未満、0.6以上〜0.65未満、0.65以上〜0.7未満、0.7以上〜0.75未満、0.75以上〜0.8未満、及び0.8以上〜に分類し、前記範囲内でケール内の総フェノール含量及び抗酸化度を測定した。全体(all)、1日目及び3日目に測定された総フェノール含量及び抗酸化度をそれぞれ図3図8に示した。ここで、全体(all)は、1日目と3日目の結果を合わせたものである。
【0042】
その結果、全体(all)で測定された総フェノール含量及び抗酸化度は、いずれも0.6以上〜0.65未満の最大量子収率で有意に増大することが確認された(図3及び図4)。一方、1日目に測定された総フェノール含量及び抗酸化度は、いずれも0.7以上〜0.75未満で有意に増加することを示し(図5及び図6)、3日目に測定された総フェノール含量及び抗酸化度は0.6以上〜0.65未満で増加することを示した(図7及び図8)。1日目は、植物においてUV光源がさらに強くストレスとして作用したために0.7以上〜0.75未満で機能性物質の含量が増進したとすると、3日目は、植物がUV照射に3日間露出していたことからその間にUV照射環境に適応し、機能性物質を増進させるにおいてさらに強いストレス強度が必要であると判断される。
【0043】
ケールの栽培1
【0044】
ケールは、温度20℃、湿度60%の条件の密閉型植物生産システムで定植した後、3週間栽培された。また、ケールは、栽培時、12時間ごとに130±5μmol/m2/sの光強度の白色光と赤色光の混合光をケールに照射した。このとき、混合光は、白色光:赤色光=9:1である。また、栽培時に使用された培養液は、Hoagland & Arnonの培養液であって、pH 6.0、EC 1.0mS/cmである。
【0045】
植物生産システムでケールを栽培した後、ケールに紫外線を3日間補光処理した。ここで、紫外線はUVA波長帯の紫外線である。
【0046】
図9は、ケールにUVAを3日間補光処理する間に測定した最大量子収率(Maximum Quantum Yield;Fv/Fm)を示したグラフである。
【0047】
図9を参考にすると、紫外線を照射していないケールである対照群、10W/m2出力で紫外線が照射されたケールである第1実験群、30W/m2出力で紫外線が照射されたケールである第2実験群、及び50W/m2出力で紫外線が照射されたケールである第3実験群に対する最大量子収率を確認することができる。対照群、第1実験群〜第3実験群の最大量子収率は、ケールに6時間UVA補光処理をした後、3時間ごとに測定した。
【0048】
また、下記の<表1>は、図9のグラフの最大量子収率測定値を示した表である。
【0049】
【表1】
【0050】
図9及び表1を参考にすると、対照群は、最大量子収率(Fv/Fm)が0.75〜0.8の値を有する。対照群は、最大量子収率の最初測定値が0.8で、最後測定値が0.79に減少した。また、第1実験群は、最大量子収率が0.71〜0.78の値を有する。第1実験群は、最大量子収率の最初測定値が0.78で、最後測定値が0.74に減少した。また、第2実験群は、最大量子収率が0.63〜0.68の値を有する。第1実験群は、最大量子収率の最初測定値が0.68で、最後測定値が0.66に減少した。
【0051】
また、第3実験群は、最大量子収率が0.44〜0.59の値を有する。第1実験群は、最大量子収率の最初測定値が0.59で、最後測定値が0.53に減少した。
【0052】
すなわち、植物に照射されるUVAの強度が増加するほど、最大量子収率値が減少することが分かる。
【0053】
図10は、UVA補光処理する間のケールの生体重を示したグラフである。また、図11は、UVA補光処理する間のケールの最大量子収率を示したグラフである。
【0054】
図10は、UVA補光処理1日目及び3日目に測定されたケールの生体重を示す。
【0055】
下記の表2は、紫外線照射1日目及び3日目のケールの植物当たりの生体重及び最大量子収率値を示したものである。
【0056】
【表2】
【0057】
図10及び表2を通じて、UVA照射1日目及びUVA照射3日目の生体重の変化を確認することができる。対照群、第1実験群〜第3実験群は、UVA照射前には生体重が6.10である。対照群は、生体重がUVA照射1日目に5.67で、UVA照射3日目に7.71である。対照群は、生体重がUVA照射1日目に0.43だけ減少したが、UVA照射3日目に2.04だけ増加した。結局、対照群は、生体重がUVA照射3日目にUVA照射前より1.61だけ増加した。
【0058】
第1実験群は、生体重がUVA照射1日目に6.35で、UVA照射3日目に8.06である。第1実験群は、生体重がUVA照射1日目に0.25だけ増加し、UVA照射3日目に1.71だけ増加した。結局、第1実験群は、生体重がUVA照射3日目にUVA照射前より1.96だけ増加した。
【0059】
第2実験群は、生体重がUVA照射1日目に5.85で、UVA照射3日目に5.93である。第2実験群は、生体重がUVA照射1日目に0.25だけ減少し、UVA照射3日目に0.08だけ増加した。結局、第2実験群は、生体重がUVA照射3日目にUVA照射前より0.17だけ減少した。
【0060】
第3実験群は、生体重がUVA照射1日目に5.74で、UVA照射3日目に8.06である。第3実験群は、生体重がUVA照射1日目に0.63だけ減少し、UVA照射3日目に0.01だけ減少した。結局、第3実験群は、生体重がUVA照射3日目にUVA照射前より0.64だけ減少した。
【0061】
図11及び表2を通じて、UVA照射1日目及びUVA照射3日目の最大量子収率の変化を確認することができる。
【0062】
対照群、第1実験群〜第3実験群は、UVA照射前には最大量子収率が0.77である。
【0063】
対照群は、最大量子収率がUVA照射1日目に0.78で、UVA照射3日目に0.77である。対照群は、最大量子収率がUVA照射1日目に0.1だけ増加したが、UVA照射3日目に0.1だけ減少した。結局、対照群は、最大量子収率がUVA照射3日目にUVA照射前と同一であった。
【0064】
第1実験群は、最大量子収率がUVA照射1日目に0.73で、UVA照射3日目に0.73である。第1実験群は、最大量子収率がUVA照射1日目に0.04だけ増加し、UVA照射3日目に変化がなかった。結局、第1実験群は、最大量子収率がUVA照射3日目にUVA照射前より0.04だけ減少した。
【0065】
第2実験群は、最大量子収率がUVA照射1日目に0.68で、UVA照射3日目に0.67である。第2実験群は、最大量子収率がUVA照射1日目に0.09だけ減少し、UVA照射3日目に0.01だけ減少した。結局、第2実験群は、最大量子収率がUVA照射3日目にUVA照射前より0.1だけ減少した。
【0066】
第3実験群は、最大量子収率がUVA照射1日目に0.62で、UVA照射3日目に0.65である。第3実験群は、最大量子収率がUVA照射1日目に0.15だけ減少し、UVA照射3日目に0.03だけ増加した。結局、第3実験群は、最大量子収率がUVA照射3日目にUVA照射前より0.12だけ減少した。
【0067】
図10図11及び表2を検討すると、ケールにUVA補光処理をしたとき、生体重は、UVA補光処理前より増加したり、有意味な減少がなかったりした。また、ケールにUVAを補光処理したとき、最大量子収率はUVA照射前より減少した。
【0068】
したがって、植物にUVAを照射する場合、植物がストレスを受けたとしても、植物の成長が維持されたり、さらに良好になり得たりすることが分かる。
【0069】
表3〜表5は、ケールのUVA補光処理前、UVA補光処理1日目及びUVA補光処理3日目の最大量子収率、総フェノール含量及び抗酸化度を測定した値を示す。
【0070】
各実験は4個のケールを用いて行われた。また、UVA補光処理後には、1個のケールごとに2個のサンプルを採取し、最大量子収率、総フェノール含量及び抗酸化度をそれぞれ測定した。
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
図12図17は、ケールの最大量子収率による機能性物質の含量を示したグラフである。図12及び図13は、ケールのUVA補光処理をする全体期間の間の最大量子収率による総フェノール含量及び抗酸化度の平均的傾向を示したグラフである。ここで、全体期間は、UVA補光処理1日目と3日目を合わせたものである。
【0075】
図12を参考にすると、UVA補光処理をする全体期間の間、ケールの総フェノール含量が平均以上であるときの最大量子収率が約0.58〜0.74である。
【0076】
また、図13を参考にすると、UVA補光処理をする全体期間の間、ケールの抗酸化度が平均以上であるときの最大量子収率が約0.6〜0.72である。
【0077】
すなわち、ケールにUVA補光処理をすると、ケールの総フェノール含量と抗酸化度がいずれも平均以上であるときの最大量子収率が約0.6〜0.72になる。
【0078】
図14及び図15は、ケールにUVA補光処理をしてから1日目の最大量子収率による総フェノール含量及び抗酸化度の平均的傾向を示したグラフである。
【0079】
図14を参考にすると、UVA補光処理をしてから1日目に、ケールの総フェノール含量が平均以上であるときの最大量子収率が約0.68〜0.76である。
【0080】
また、図15を参考にすると、UVA補光処理をしてから1日目に、ケールの抗酸化度が平均以上であるときの最大量子収率が約0.67〜0.76である。
【0081】
すなわち、UVA補光処理をしてから1日目に、ケールの総フェノール含量と抗酸化度がいずれも平均以上であるときの最大量子収率が約0.68〜0.76になる。
【0082】
図16及び図17は、ケールにUVA補光処理をしてから3日目の最大量子収率による総フェノール含量及び抗酸化度の平均的傾向を示したグラフである。
【0083】
図16を参考にすると、UVA補光処理をしてから3日目に、ケールの総フェノール含量が平均以上であるときの最大量子収率が約0.61〜0.69である。
【0084】
また、図17を参考にすると、UVA補光処理をしてから3日目に、ケールの抗酸化度が平均以上であるときの最大量子収率が約0.62〜0.69である。
【0085】
すなわち、UVA補光処理をしてから3日目に、ケールの総フェノール含量と抗酸化度がいずれも平均以上であるときの最大量子収率が約0.62〜0.69になる。
【0086】
図12図17を通じて、ケールにUVA補光処理をすると、機能性物質の含量が平均以上であるときの最大量子収率が約0.68〜0.69であることが分かる。
【0087】
このように、植物の最大量子収率の測定のみでも、ケールの機能性物質が平均以上である時点を確認することができる。
【0088】
アイスプラントの栽培
【0089】
アイスプラントは、密閉型植物生産システム(温度23℃、CO2 1000μmol/mol、光周期12時間、PPFD 200μmol/m2/s、赤色光:白色光:青色光=8:1:1の混合光)の条件で播種してから3週間栽培した後、苗を定植した。また、苗は、定植後、3週間さらに栽培された。その後、アイスプラントに多様な波長帯のUVAを30W/m2で1週間にわたって補光処理した。このとき、補光処理に使用された光源は、365nm、375nm、385nm及び395nmの波長帯の光を放出するUVA LED、及びUVA波長帯を含む広範囲な波長帯の光を放出するUVAランプである。
【0090】
図18は、アイスプラントのUVA補光処理時間による最大量子収率を示したグラフである。
【0091】
UVA照射7日目を検討すると、365nmのLED及び375nmのLEDが、395nmのLED、385nmのLED及びUVAランプより低い最大量子収率を有する。ここで、365nmのLEDが375nmのLEDより低い蛍光値を有し、395nmのLED、385nmのLED及びUVAランプの蛍光値は互いに類似している。
【0092】
そして、UVAを照射していないアイスプラント(control)は、UVAを照射したアイスプラントより高い蛍光値を有することが分かる。
【0093】
ここで、植物にUVAを一定期間にわたって照射すると、UVAの種類に関係なく、植物がストレスを受け、UVAの波長帯が低いほど、さらに大きいストレスを受けることが分かる。
【0094】
図19図22は、アイスプラントの生長に関するグラフである。
【0095】
図19は、アイスプラントの生体重を示す。図20は、アイスプラントの乾物重を示す。図21は、アイスプラントの葉面積を示す。また、図22は、アイスプラントのSPAD(葉緑素の含量)を示す。
【0096】
生体重、乾物重及び葉面積を検討すると、一定期間にわたってUVA補光処理をすると、アイスプラントの生育が増大することが分かる。
【0097】
UVA補光処理1日目に、対照群に比べてアイスプラントの生育が減少する。これは、アイスプラントがUVAによってストレスを受け、生育が減少したためである。しかし、UVA処理5日目及び7日目を検討すると、UVA補光処理をしたアイスプラントのほとんどの生育が、対照群に比べて有意に増加したり、対照群と類似する水準であったりすることが分かる。すなわち、アイスプラントにUVA補光処理をすると、最初はストレスで生育が減少するが、アイスプラントは時間の経過と共に回復し、対照群の水準又はそれ以上に成長することが分かる。
【0098】
SPADを検討すると、UVA補光処理5日目にアイスプラントのSPAD数値が対照群に比べて増加したことを確認することができる。すなわち、アイスプラントは、UVAによって生育が増大することが分かる。特に、UVAランプ、365nmのLED及び375nmのLEDに比べて、395nmのLED及び385nmのLEDでアイスプラントのSPAD数値が大きいことを確認することができる。
【0099】
このように、植物にUVAを一定期間にわたって照射すると、植物の生育が増加したり、植物にUVAを照射しなかったときと少なくとも類似する水準であったりすることが分かる。
【0100】
図23は、アイスプラントの光合成率を示したグラフである。
【0101】
アイスプラントに3日間UVA補光処理をした場合の昼と夜の条件での光合成率を示す。
【0102】
昼の条件は、アイスプラントに混合光とUVA補光処理をしたことを示し、夜の条件は、混合光は除いてUVA補光処理のみをしたことを示す。
【0103】
昼の条件でUVA補光処理をしたアイスプラントの光合成率は、対照群より高いかそれと類似する水準である。また、夜の条件でUVA補光処理をしたアイスプラントの光合成率は、いずれも対照群より高く表れる。これにより、可視光線は除いてUVAが植物に照射されたとしても、植物の光合成に役立つことが分かる。すなわち、UVAが植物の生長に役立つことが分かる。また、光源がUVA LEDである場合、UVAランプよりも植物の生長にさらに役立つことが分かる。
【0104】
図24は、アイスプラントのPAL活性を示したグラフである。
【0105】
PALは、光合成同化産物が植物の生長と連関した1次代謝産物になるのか、それとも、機能性物質などの防御物質と連関した2次代謝産物になるのかを決定する酵素である。すなわち、PALの活性の増大は、2次代謝産物の増大を意味し得る。
【0106】
図24を検討すると、PAL活性は、対照群よりもUVA補光処理をしたアイスプラントでいずれも高い数値を有する。すなわち、植物にUVAを照射すると2次代謝産物が増大することが分かり、その結果、機能性物質が増大し得ることを推測することができる。
【0107】
図25及び図26は、アイスプラントの機能性物質の含量を示したグラフである。
【0108】
図25は、アイスプラントの総フェノール含量を示し、図26は、アイスプラントの抗酸化度を示す。
【0109】
一定期間にわたってUVA補光処理をした場合、アイスプラントのフェノール含量及び抗酸化度が対照群より高いことが分かる。特に、UVA補光処理5日目から、総フェノール含量及び抗酸化度が対照群より有意に高く表れた。
【0110】
アイスプラントを用いた実験結果を見ると、アイスプラントの生育と機能性物質の含量のパターンが類似していることが分かる。
【0111】
したがって、植物に一定期間にわたってUVAを照射すると、植物の生育と機能性物質がいずれも増加することが分かる。
【0112】
また、光源がUV LEDであるときとUVランプであるときを比較してみると、UVA LEDを用いて植物に紫外線を照射するときに、UVランプを用いるときよりも一部の期間を除いた期間にわたって生育及び機能性物質の含量の増大においてさらに良い結果が表れることが分かる。UVAランプの場合、UVA波長帯の全体に対するUVAが放出される。植物の光合成率の増加及び機能性物質の含量の増加などの特定機能は、UVAの特定波長帯の紫外線を必要とする。よって、UVAランプよりは、特定波長帯の紫外線を放出するLEDを用いて植物に補光処理をし、植物の特定機能を向上させることができる。
【0113】
ケールの栽培2
【0114】
ケールは、種子成長パックに播種し、2週間育苗した後、育苗されたケールを低光量及び高光量の条件下でそれぞれ3週間栽培した。低光量は125μmol/m2/sで、高光量は250μmol/m2/sである。二つの光量の条件で栽培されたケールの葉厚は、低光の条件に比べて高光の条件でさらに厚くなった。
【0115】
このように、葉厚が異なるケールにUVA LEDを用いてUVAを1週間補光処理した。
【0116】
図27図30は、ケールの生長を示したグラフである。
【0117】
図27は、多様な波長帯のUVAが補光処理された二つの種類のケールの地上部生体重を示し、図28は、多様な波長帯のUVAが補光処理された二つの種類のケールの地下部生体重を示す。また、図29は、多様な波長帯のUVAが補光処理された二つの種類のケールの地上部乾物重を示し、図30は、多様な波長帯のUVAが補光処理された二つの種類のケールの地下部乾物重を示す。
【0118】
図27図30では、7日間多様な波長帯のUVAを照射したときの二つの種類のケールと、UVAを照射していない対照群との間の生長を比較している。
【0119】
比較の結果、UVA照射7日後、低光及び高光で栽培された二つの種類のケールのほとんどは、対照群より大きい値の生体重及び乾物重を有することを確認することができる。特に、UVAの波長帯が長いほど、ケールの生体重及び乾物重が対照群に比べて有意な差の大きい値を有することを確認することができる。
【0120】
図31は、ケールの葉面積を示したグラフである。また、図32は、ケールの葉厚指数を示したグラフである。
【0121】
図31及び図32は、低光及び高光で栽培された二つの種類のケールに7日間UVA補光処理をしたときの葉面積及び葉厚の変化を示す。ここで、葉厚指数は、葉乾物重を葉面積で割った値である。よって、葉厚指数が大きくなるほど葉厚が厚い。
【0122】
二つの種類のケールの葉面積及び葉厚指数は、7日間UVA補光処理をしたとき、対照群に比べて概して大きい値を有することが分かる。特に、UVAの波長が長いほど、二つの種類のケールの葉面積及び葉厚指数が対照群に比べて有意な差の大きい値を有することを確認することができる。
【0123】
このように、図27図32を通じて、植物にUVAを照射すると植物の生長に役立ち、特に長い波長帯のUVAの場合、植物の生長増進に役立つことが分かる。
【0124】
図33及び図34は、ケールの総葉緑素含量を示したグラフである。
【0125】
図33は、低光で栽培されたケールの総葉緑素含量を示す。また、図34は、高光で栽培されたケールの総葉緑素含量を示す。
【0126】
図33を参考にすると、低光で栽培されたケールの場合、UVA補光処理をしてから2日から6日目のケールで対照群より概して大きい総葉緑素含量が表れる。図33では、グラフの理解を促進するために、対照群及び各波長帯のUVAが補光処理されたケールの総葉緑素含量の誤差範囲を示していない。図示していない誤差範囲を考慮すると、低光で栽培されたケールは、395nm波長帯のUVAを3日間処理したとき、総葉緑素含量が対照群に比べて有意な差の大きい値を有する。
【0127】
図34を参考にすると、高光で栽培されたケールの場合、UVA補光処理をしてから4日から7日目のケールで対照群より概して大きい総葉緑素含量が表れる。グラフに示していない総葉緑素含量の誤差範囲を考慮すると、高光で栽培されたケールの場合、365nm波長帯のUVAを4日間処理したとき、総葉緑素含量が対照群に比べて有意な差の大きい値を有する。
【0128】
このような実験の結果を通じて、植物に一定期間にわたってUVA補光処理をすると、植物が光合成を行える可能性を増大できることが分かる。よって、UVA補光処理により、植物が生長に役立つ光合成産物をさらに多く作り出せることが分かる。
【0129】
図35図38は、ケールの機能性物質の含量に関するグラフである。
【0130】
図35は、低光で栽培されたケールの総フェノール含量を示し、図36は、低光で栽培されたケールの抗酸化度を示す。また、図37は、高光で栽培されたケールの総フェノール含量を示し、図38は、高光で栽培されたケールの抗酸化度を示す。
【0131】
図35及び図36を検討すると、低光で栽培されたケールは、UVA補光処理をした場合、いずれも対照群に比べて高い総フェノール含量及び抗酸化度を有することを確認することができる。特に、低光で栽培されたケールは、375nm、385nm及び395nmの長い波長帯のUVAを照射してから5日及び6日目に他の条件のケールよりも機能性物質(総フェノール含量及び抗酸化度)の含量が有意に高く表れた。
【0132】
図37及び図38を検討すると、高光で栽培されたケールは、UVA補光処理をした場合、5日目以降から対照群に比べて高い総フェノール含量及び抗酸化度を有する。特に、高光で栽培されたケールは、365nmの短い波長帯のUVAを照射してから6日及び7日目に機能性物質の含量が他の条件のケールより有意に高く表れた。
【0133】
すなわち、機能性物質の含量を増加させるために、薄い葉の植物には小さいエネルギーを有する長い波長帯のUVAが適しており、厚い葉の植物には相対的に大きいエネルギーを有する短い波長帯のUVAが適していることが分かる。これにより、薄い葉の植物の場合は、短い波長帯のUVAが非常に強いストレスとして作用し、さらに大きい機能性物質の含量の増加を誘導できないことが分かる。また、厚い葉の植物の場合は、機能性物質の含量を増加させるために薄い葉の植物の機能性物質の含量を増加できるエネルギーよりさらに強いエネルギーが要求されることが分かる。
【0134】
図39及び図40は、ケールのPAL活性を示したグラフである。
【0135】
図39は、低光で栽培されたケールのPAL活性を示し、図40は、高光で栽培されたケールのPAL活性を示す。
【0136】
図39を参考にすると、低光で栽培されたケールのPAL活性は、UVA照射4日以降にUVA補光処理をしたケールが対照群より高い数値を有する。特に、低光で栽培されたケールのPAL活性は、395nm波長帯のUVA補光処理をした場合、5日及び6日目で高く表れる。すなわち、葉が薄い植物に低いエネルギーを有する波長帯のUVAを照射すると2次代謝産物が増大し、これは、植物の機能性物質の含量の増進に効果的であることが分かる。
【0137】
また、図40を参考にすると、高光で栽培されたケールのPAL活性は、365nmのUVAをケールに照射してから6日及び7日目に対照群より高い数値を有する。すなわち、葉が厚い植物に高いエネルギーを有する波長帯のUVAを照射すると2次代謝産物が増大し、これは、植物の機能性物質の含量の増進に効果的であることが分かる。
【0138】
アイスプラント及びケールを用いた実験を通じて、UVAが植物の生長及び機能性物質の含量を向上させることが分かる。また、特定波長帯のUVAは、植物の機能性物質の含量の増進などの特定機能の向上に役立つ。よって、特定波長帯の紫外線を放出するLEDを用いて植物に補光処理をすることによって、植物の特定機能を向上させることができる。
【0139】
図41は、本発明の実施例に係る植物栽培システムを示した例示図である。
【0140】
図41を参考にすると、植物栽培システム100は、植物栽培室110、光源部120、補光部130、量子収率測定部140、温度制御部150、湿度制御部160及び培養液提供部170を含む。
【0141】
植物栽培室110は、植物が栽培される空間を提供する。
【0142】
光源部120は、植物の生長のために植物に光を照射する。光源部120の光は、可視光及び白色光のうち少なくとも一つを含む。例えば、光源部120の光は、白色光と赤色光を任意の比率で混合した混合光であってもよい。例えば、光源部120は、光を12時間の間隔で植物に照射する。すなわち、光源部120は、12時間にわたって植物に光を照射した後、12時間にわたって植物に光を照射する動作を中断するという動作を繰り返すことができる。しかし、光源部120の光照射時間は、12時間周期に限定されるのではなく、植物の種類に応じて変更されてもよい。例えば、光源部120は、光照射時間が12時間以上になってもよい。又は、光源部120は、光を植物に持続的に照射することも可能である。
【0143】
補光部130は、植物にUVAを照射する。補光部130のUVAは、植物にストレスを与えて、植物が機能性物質を増大できるようにする。また、補光部130のUVAは、植物の生長に役立つこともできる。補光部130は、UVAを放出するLEDを含む光源装置であってもよい。
【0144】
量子収率測定部140は、植物の量子収率を測定する。量子収率測定部140を通じて植物の量子収率を測定し、植物の機能性物質の含量又は機能性物質の含量の増大の有無を確認することができる。
【0145】
温度制御部150は、植物栽培室110の温度を制御する。温度制御部150は、植物栽培室110を植物の成長に適正な温度に維持させることができる。
【0146】
湿度制御部160は、植物栽培室110の湿度を制御する。湿度制御部160は、植物栽培室110を植物の湿度に適正な温度に維持させることができる。
【0147】
培養液提供部170は、植物に培養液を提供する。培養液提供部170は、培養液を貯蔵しておき、必要に応じて植物に培養液を提供することができる。
【0148】
植物栽培システム100の各構成部は、予め格納された設定によって自動で作動することができる。又は、植物栽培システム100の各構成部は、ユーザーの必要に応じて手動で作動することも可能である。
【0149】
また、植物栽培システム100は、光源部120、補光部130、温度制御部150、湿度制御部160及び培養液提供部170のうち少なくとも一つを用いて植物に追加的なストレス処理をすることができる。
【0150】
また、植物栽培システム100は、図示していないが、植物に追加ストレス処理をするために塩分、オゾンなどを調節する別途の構成部をさらに含んでもよい。
【0151】
また、植物栽培システム100は、植物栽培室110の二酸化炭素の濃度を制御する構成部、及び風の強さを制御する構成部をさらに含んでもよい。また、植物栽培システム100は、植物栽培室110の環境を測定するためのセンサー、センサーの測定値によって植物栽培システム100の各構成部の動作を制御するためのデータベース及び制御部をさらに含んでもよい。
【0152】
このように、図41で示していない植物栽培システム100の他の構成部は、当業者の選択によって追加されてもよい。また、当業者の選択によって、図41に示した植物栽培システム100の各構成部のうち一部は省略されてもよい。
【0153】
本実施例に係る植物栽培システム100は、補光部130を用いて植物にUVAで補光処理をし、植物の機能性物質の含量を増大させる。また、植物栽培システム100は、ユーザーが量子収率測定部140を用いて植物の機能性物質の含量程度を予測できるようにし、それによって植物の収穫時期を決定することができる。量子収率測定部140は、ユーザーが望む場合に、手動又は自動で植物の量子収率を測定することができる。
【0154】
図42は、本発明の実施例に係る植物栽培方法を示したフローチャートである。
【0155】
S1段階を参考にすると、植物を生長させる。ここで、植物を生長させるとき、UVAを照射し、補光処理をする。UVA補光処理を含む植物の生長方法は、前記で説明したアイスプラント及びケールの生長方法を参考にすることができる。また、植物の生長方法は、植物の種類ごとに変更可能である。このとき、植物にUVA補光処理をすることによって、植物の生長のみならず、機能性物質の含量を増大させることができる。
【0156】
UVA補光処理に使用される光源はLEDである。LEDの場合、特定波長帯のUVAを放出することが可能である。よって、光源としてLEDを使用することによって、植物の種類及び状態に応じて特定波長帯のUVAで植物に補光処理をすることが容易になる。
【0157】
S2段階を参考にすると、植物の最大量子収率を測定する。植物の最大量子収率は、葉緑素蛍光測定機を用いて測定することができる。葉緑素蛍光測定機は、ケールの蛍光イメージを撮影し、取得した蛍光イメージを分析し、最大量子収率を測定する。
【0158】
S3段階を参考にすると、測定された最大量子収率によって植物の栽培段階を決定する。測定された最大量子収率を予め設定された範囲と比較する。ここで、予め設定された任意の範囲は、植物の機能性物質の含量が平均以上であるときの最大量子収率範囲である。任意の範囲は、前記で説明した実験を通じて決定され得る。本発明では、ケール及びアイスプラントを用いて実験したが、植物の種類が変更されると、任意の範囲も、変更された植物を用いた実験を通じて変更され得る。
【0159】
測定された最大量子収率が任意の範囲以内に含まれたら、植物が含有している機能性物質の含量が平均以上であると判断され得る。また、前記の実験を通じて、UVA補光処理を通じて植物の生長も向上することが分かる。
【0160】
S4段階では、測定された量子収率が任意の範囲以内に含まれた植物は、植物の生長及び機能性物質の含量が十分であると判断されて収穫される。例えば、任意の範囲は0.6〜0.72であってもよい。さらに、任意の範囲は0.68〜0.69であってもよい。
【0161】
S3段階で測定された量子収率が任意の範囲に含まれていない場合、植物に追加ストレスを処理することができる(S5段階)。
【0162】
植物に追加ストレス処理をし、植物の機能性物質の含量を増大させることができる。
【0163】
このとき、追加ストレス処理は、UVAの波長帯を変更したり、強度を変更したり、又は持続時間を変更することであってもよい。又は、追加ストレス処理は、植物に紫外線、温度(空気、根)、水分(欠乏、低酸素症)、光(光質、光度)、塩分、及びオゾンのうち少なくとも一つを用いたストレス処理であってもよい。又は、追加ストレス処理は、このストレス処理方法のうち少なくとも二つの方法を混合したものであってもよい。
【0164】
又は、S3段階で測定された量子収率が任意の範囲に含まれていない場合、追加ストレス処理段階を省略することも可能である。すなわち、植物の最大量子収率が任意の範囲以内になるまで、UVA補光処理をしながら植物を生長させる段階を持続することも可能である。
【0165】
本発明の実施例によると、植物の蛍光イメージを撮影し、これを分析することによって、植物の機能性物質の含有の度合いを確認することができる。よって、本発明によると、植物の生長及び機能性物質の含有量を考慮した時点で植物を収穫することが可能である。
【0166】
以上では、本発明に対してその好適な各実施例を中心に説明した。本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明が、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で変形した形態で具現され得ることを理解できるだろう。そのため、開示された各実施例は、限定的な観点ではなく、説明的な観点で考慮しなければならない。本発明の範囲は、上述した説明ではなく、特許請求の範囲に示されており、それと同等な範囲内にある全ての相違点は本発明に含まれたものと解釈しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
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図33
図34
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図37
図38
図39
図40
図41
図42
【手続補正書】
【提出日】2021年1月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物にUVA補光処理をする段階、
前記植物の最大量子収率を測定する段階、及び
前記測定された最大量子収率によって前記植物の栽培段階を決定する段階、
を含むUVを用いた植物栽培方法。
【請求項2】
前記植物の栽培段階を決定する段階において、
前記測定された最大量子収率が予め設定された範囲以内に含まれるようになったら、前記植物を収穫し、
前記測定された最大量子収率が予め設定された任意の範囲以内に含まれていない場合は、前記植物を生長させる段階を維持する、請求項1に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項3】
前記測定された最大量子収率が予め設定された任意の範囲以内に含まれていない場合は、
前記植物に追加ストレス処理を行う、請求項2に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項4】
前記追加ストレス処理は、前記UVAの波長帯、強度、又は持続時間を変更するストレス処理である、請求項3に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項5】
前記追加ストレス処理は、前記植物に紫外線、温度、分、光、塩分、及びオゾンのうち少なくとも一つを用いたストレス処理である、請求項3に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項6】
前記最大量子収率の予め設定された任意の範囲は、前記植物の機能性物質の含量が平均以上であるときの範囲である、請求項2に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項7】
前記最大量子収率の予め設定された任意の範囲は0.6〜0.72である、請求項6に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項8】
前記最大量子収率の予め設定された任意の範囲は0.68〜0.69である、請求項6に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項9】
前記植物の機能性物質の含量は、カロテノイド含量、フラボノイド含量、フェノール含量又は抗酸化度である、請求項6に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項10】
前記植物は葉菜類又は薬用植物である、請求項1に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項11】
前記UVAを放出する光源はLEDである、請求項1に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項12】
前記植物にUVAを補光処理する段階において、
前記植物の生長が増加する、請求項1に記載のUVを用いた植物栽培方法。
【請求項13】
植物が栽培される空間を提供する植物栽培室、
前記植物に可視光及び白色光のうち少なくとも一つを含む光を照射する光源部、
前記植物にUVAを照射する補光部、及び
前記植物の最大量子収率を測定する量子収率測定部、
を含む植物栽培システム。
【請求項14】
前記光源部は、12時間の間隔で前記光を放出したり、又は前記光を放出しなかったりする、請求項13に記載の植物栽培システム。
【請求項15】
前記補光部は、UVAを放出するLEDを含む、請求項13に記載の植物栽培システム。
【請求項16】
前記植物栽培室の温度を制御する温度制御部、及び
前記植物栽培室の湿度を制御する湿度制御部、
をさらに含む、請求項13に記載の植物栽培システム。
【請求項17】
前記植物に培養液を提供する培養液提供部をさらに含む、請求項13に記載の植物栽培システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
第3実験群は、生体重がUVA照射1日目に5.47で、UVA照射3日目に5.46である。第3実験群は、生体重がUVA照射1日目に0.63だけ減少し、UVA照射3日目に0.01だけ減少した。結局、第3実験群は、生体重がUVA照射3日目にUVA照射前より0.64だけ減少した。
【国際調査報告】