(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-522021(P2021-522021A)
(43)【公表日】2021年8月30日
(54)【発明の名称】介入手術のための装置の操縦、追跡および誘導のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/092 20060101AFI20210802BHJP
【FI】
A61M25/092
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2020-561777(P2020-561777)
(86)(22)【出願日】2019年5月1日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月25日
(86)【国際出願番号】US2019030142
(87)【国際公開番号】WO2019213215
(87)【国際公開日】20191107
(31)【優先権主張番号】62/665,046
(32)【優先日】2018年5月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/799,473
(32)【優先日】2019年1月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/803,708
(32)【優先日】2019年2月11日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520421813
【氏名又は名称】マゼラン・バイオメディカル インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タバラエイ,モハメド・アリ
(72)【発明者】
【氏名】ラム,エミリー・マンシェウン
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ,ジェームズ・ジーウェン
(72)【発明者】
【氏名】ライト,グラハム・エー
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267AA28
4C267AA32
4C267BB52
4C267CC08
4C267CC19
4C267HH22
(57)【要約】
介入手術のための操縦装置とナビゲーションシステム。含まれるものは、血管内腔または心腔内に広がるように制御することができ、組織に周方向の力を加えることができる拡張可能構造からなる操縦装置を組み込む装置、システムおよび方法である。この構造は、一旦広がると、組織に対して固定することができ、内部カテーテルに接続された一組の紐を介して内部カテーテルを支持する。内部カテーテルは、ガイドワイヤやカテーテルなどの介入装置が通過できるように構成されている。装置のハンドル内の作動機構に接続されている紐を使用することで、内部カテーテルが操作され、その内部で動く装置またはそれに接続されている装置の位置を制御でき、装置のナビゲーションおよび既知の位置からの測定値を取得する目的で使用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管管腔内または心腔内で介入装置の位置調整をするための操縦装置であって、
血管管腔内または心腔内で広がり、かつ、周囲の組織に対して周方向の力をかけるように制御可能な一組の拡張可能構造体と、
1組の拡張可能構造体をアンカーポイントとして利用する1組の紐と、
環状の外周部と中央開口部とを有し、一組の拡張可能構造体によって囲まれ、環状の外周部の周りに固定された一組の紐の遠位端によって支持されるアイレットとを備え、アイレットの中央開口部に介入装置を通せるようになっており、
一組の紐を利用することによって、2つの自由度でアイレットを操作でき、血管管腔または心腔に対して幾何学的に規定された領域において、1組の拡張可能構造体の場所で、介入装置の位置を制御できることを特徴とする操縦装置。
【請求項2】
請求項1に記載の操縦装置であって、介入装置がガイドワイヤ、カテーテルまたは針であることを特徴とする操縦装置。
【請求項3】
請求項1に記載の操縦装置であって、一組の拡張可能構造体が一組の拡張可能な枝部であることを特徴とする操縦装置。
【請求項4】
請求項1に記載の操縦装置であって、内部カテーテルを利用して、通路を介して内部カテーテルの長さに沿って延びる内腔を通過させて患者の体内に介入装置を最初に案内し、内部カテーテルが患者の体外でアクセス可能な近位端部と、アイレットの環状の外周部と一直線をなす遠位端部とを有することを特徴とする操縦装置。
【請求項5】
請求項4に記載の操縦装置であって、鞘部が内部カテーテルの少なくとも一部を囲んでおり、一組の拡張可能構造体が周方向に広がるのを抑制できることを特徴とする操縦装置。
【請求項6】
請求項1に記載の操縦装置であって、ハンドルを使って内部カテーテルの近位端部から紐を操作することを特徴とする操縦装置。
【請求項7】
請求項6に記載の操縦装置であって、ハンドルによって介入装置を操縦するための7つのDOF調整を可能にすることを特徴とする操縦装置。
【請求項8】
請求項1に記載の操縦装置であって、エンコーダが紐に機械的に連結されて、アイレットと介入装置の位置を追跡することを特徴とする操縦装置。
【請求項9】
請求項8に記載の操縦装置であって、ユーザーインタフェースが、追跡したアイレットの位置を、操縦装置の機構の作業空間のナビゲーションマップ上に重ね合わせることによって、介入装置の位置を描写できることを特徴とする操縦装置。
【請求項10】
請求項1に記載の操縦装置であって、標的組織のボリューメトリックイメージングの再構築のために、患者の組織に対して一つ以上のエネルギー源、センサ、治療装置および診断装置を配置しかつ追跡できることを特徴とする操縦装置。
【請求項11】
請求項1に記載の操縦装置であって、介入装置の位置がモニターセンサで計測されることを特徴とする操縦装置。
【請求項12】
患者の血管管腔内または心腔内で介入装置の位置調整をするための操縦装置であって、
近位端部と遠位端部との間に延びる中央管腔を有する柔軟で細長い構造の内部カテーテルを備え、
内部カテーテルの近位端部に連結された、ユーザーの操作および操縦制御のためのハンドルを備え、
内部カテーテルをその長さに沿って少なくとも部分的に囲む細長い鞘部を備え、
内部カテーテルの近位端部に配置される一組の拡張可能な枝部を備え、一組の拡張可能な枝部と細長い鞘部とを互いに対して操作することによって、一組の拡張可能な枝部が身体の血管内または体腔内で広がり、かつ、周囲の組織に対して周方向の力を加えるように制御でき、
ハンドルを介してユーザーが操作するために近位端部にてハンドルに連結される一組の紐を備え、一組の紐は、内部カテーテルに沿って鞘部内に延びており、その遠位端部より先に一組の拡張可能な枝部のアンカーポイントに係合しており、
中央開口部を形成する環状の外周部を有するアイレットを備え、アイレットは一組の拡張可能な枝部によって囲まれ、かつ、アイレットの環状の外周部まわりに固定された一組の紐の遠位端部によって支持されており、アイレットは内部カテーテルの遠位端部に連結され、かつ、遠位端部と一直線をなしており、内部カテーテルを貫通する介入装置がアイレットの中央開口部を通過できるようになっていることを特徴とする操縦装置。
【請求項13】
請求項12に記載の操縦装置であって、ハンドルで一組の紐を操作することによって、アイレットおよびアイレットを通過する介入装置の対応する部分を、拡張可能な枝部のアンカーポイントによって規定される幾何学的に規定された領域に配置可能であることを特徴とする操縦装置。
【請求項14】
請求項12に記載の操縦装置であって、介入装置がガイドワイヤ、カテーテルまたは針であることを特徴とする操縦装置。
【請求項15】
請求項12に記載の操縦装置であって、エンコーダが紐に機械的に連結されて、アイレットと介入装置の位置を追跡することを特徴とする操縦装置。
【請求項16】
請求項15に記載の操縦装置であって、ユーザーインタフェースが、追跡したアイレットの位置を、操縦装置の機構の作業空間のナビゲーションマップ上に重ね合わせることによって、介入装置の位置を描写できることを特徴とする操縦装置。
【請求項17】
請求項12に記載の操縦装置であって、一組の紐が4本の紐を含むことを特徴とする操縦装置。
【請求項18】
患者の血管管腔内または心腔内で介入装置の位置調整をするための操縦装置であって、
内部を貫通する中央管腔を形成する細長い装置アセンブリを備え、そのアセンブリは近位端部にハンドルを有し、遠位端部に拡張可能構造体を有し、
その拡張可能構造体は、一組の拡張可能な枝部と一組の紐とアイレットとを備え、
一組の拡張可能な枝部は、血管管腔内または心腔内で広がり、かつ、周囲の組織に対して周方向の力をかけるように制御可能であり、
一組の紐は、一組の拡張可能な枝部をアンカーポイントとして利用し、
アイレットは、細長い装置アセンブリの遠位端部に近接しており、一組の紐によって支持されるとともに、その内部に介入装置を通せる大きさとされており、
一組の紐を利用することにより、アイレットを2つの自由度で操作できるとともに、拡張可能な枝部の場所で幾何学的に規定された領域において、介入装置の先端部の位置を制御可能にすることを特徴とする操縦装置。
【請求項19】
請求項18に記載の操縦装置であって、介入装置がガイドワイヤまたはカテーテルあることを特徴とする操縦装置。
【請求項20】
請求項18に記載の操縦装置であって、エンコーダが紐に機械的に連結されて、アイレットと介入装置の位置を追跡することを特徴とする操縦装置。
【請求項21】
請求項20に記載の操縦装置であって、ユーザーインタフェースが、追跡したアイレットの位置を、操縦装置の機構の作業空間のナビゲーションマップ上に重ね合わせることによって、介入装置の位置を描写できることを特徴とする操縦装置。
【請求項22】
請求項18に記載の操縦装置であって、一組の紐が4本の紐を含むことを特徴とする操縦装置。
【請求項23】
請求項18に記載の操縦装置であって、ハンドルが上部ローラと下部ローラとを有し、スライドしてアイレットを操縦することで、拡張可能な枝部を引き出すことを特徴とする操縦装置。
【請求項24】
請求項18に記載の操縦装置であって、エネルギー源が細長い装置アセンブリの管腔内に統合されていることを特徴とする操縦装置。
【請求項25】
請求項18に記載の操縦装置であって、紐の移動を測定することによって拡張可能構造体に対する位置を測定および追跡するように構成されている一組の位置センサが使用されることを特徴とする操縦装置。
【請求項26】
患者の血管管腔内または心腔内で介入装置を介してイメージングおよび手術案内をする方法であって、
介入装置を案内する電気機械式の操縦装置システムを提供するステップを備え、
このシステムが、
拡張可能な枝部を備えるカテーテルと、その遠位端部に配置され、ハンドルによって作動される一組の紐によって制御されるアイレットと、
一組の紐に取り付けられる複数の位置センサと、
介入装置およびカテーテルの少なくとも一つに取りつけられる複数のセンサと、
複数のセンサに通信可能に連結されるコンピューティング装置とを含み、
コンピューティング装置は、
少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサに操作可能に連結され、かつ、少なくとも1つのプロセッサによって呼び出される命令を保存するようになっているメモリと、
画像を描画しかつ可視化するために構成された位置調整・追跡エンジンと、
コンピューティング装置に通信可能に連結されるGUIディスプレイとを含み、
ハンドルを動かして介入装置の位置を追跡することによって、介入装置の先端部を所望の位置に移動させるステップと、
所望の位置で、複数のセンサから測定値を取得するステップと、
取得した測定値に基づいて、目的の血管管腔または心腔のマップを再構築するステップと、
仮想的に描画された装置画像を描画して読み込むステップと、
複数のセンサからカテーテルの位置を測定するステップと、
複数のセンサからカテーテル内の介入装置の軸方向の挿入を測定するステップと、
GUIディスプレイ上に表示された重ね合わせ画像における測定値に基づくマップ上に、仮想的に描画された装置画像を重ね合わせるステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、介入装置がガイドワイヤ、カテーテルまたは針であることを特徴とする方法。
【請求項28】
操縦装置を使って所望の解剖学的部位における組織の画像を取得する方法であって、
操縦装置はその遠位端部に介入装置の案内のための拡張可能構造体を備えており、
操縦装置の内部カテーテル内に統合されるセンサを提供するステップと、
センサの周囲の領域から測定値を取得するステップと、
内部カテーテルおよびセンサの位置を制御するステップと、
内部カテーテルの相対位置が追跡されているときに、内部カテーテルを拡張可能構造体内における様々な位置に無作為に位置調整することにより、作業空間全体にわたる測定値を取得するステップと、
その測定値を利用して、目的組織の大きい画像と手術を案内するためのナビゲーションマップとを生成するステップと、
拡張可能構造体に対する内部カテーテルの相対位置を推定し、かつ、グラフィカルユーザーインターフェース上に可視化するため、内部カテーテルの位置と内部カテーテル内の介入装置の移動とを利用するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、内部カテーテルのアイレットの配置または内部カテーテル内の介入装置の先端部の位置を、機構の作業空間のナビゲーションマップ上に重ね合わせるステップをさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、ナビゲーションマップが、内部カテーテル内に統合されたセンサで得られる情報を含み、得られた画像について、ユーザーが介入装置の相対位置を見られるようにし、それが操作されているときに、ナビゲーションマップによってその画像に対してリアルタイムに更新される介入装置の位置を可視化することができることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガイドワイヤ、カテーテルおよび針等の介入装置の操縦に関する。より具体的には、紐を用いた介入装置の先端を操作することに関する。また、本開示は、人体組織の低侵襲イメージングに関し、具体的には、このイメージングの情報を診断目的や介入手術を誘導するために使用することに関する。さらに、本開示は、心臓血管手術のための介入装置の操縦および追跡に関し、より具体的には、心臓及び血管内の介入のための介入装置の制御および操縦に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年5月1日に出願された米国仮特許出願62/665,046号、2019年1月31日に出願された米国仮特許出願第62/799,473号、および、2019年2月11日に出願された米国仮特許出願62/803,708に対する優先権を主張するものであり、これらは参照により本明細書に完全に援用される。
【背景技術】
【0003】
従来のガイドワイヤまたはカテーテルは、非常に柔軟な細長い部材であり、通常2つの自由度(「DOF」)で体外から操作され得る。概して、2つのDOFとは軸方向の移動または押引きと、軸回転である。多くの血管内介入では、ガイドワイヤを使って所望の標的に誘導できるようにしたり、障害物を通過させたりする必要がある。患者の体外からワイヤを操作して装置の先端を誘導する際の制限を考慮すると、血管内介入治療を行う者は、手術にかかるほとんどの時間をガイドワイヤまたはカテーテルの誘導に費やすことになる。
【0004】
多くの心臓血管手術は、低侵襲の装置を用いた経皮的アプローチを用いて、低侵襲で行われている。この様な手術は、関連する標的内または標的から関連する測定を行うことによる診断目的であるか、あるいは、組織との物理的相互作用によってその形態または機能を変化させ、または、組織を置換または修復することによる治療目的である。すべてのそのような手術は、概してカテーテルと呼ばれるガイドワイヤおよび柔軟な細長い構造体を使うことに依存している。
【0005】
従来のガイドワイヤは、人体の内腔に導入される、長くて柔軟で細い装置である。従来の2つのDOFを有するガイドワイヤシステムにおいては、操作者は、軸の軸方向および半径方向の操作を利用して、ガイドワイヤの先端を標的の位置に誘導する。誘導を容易にするため、そして安全上の理由から、これらのワイヤは非常に柔軟であり、患者内でのそれらの形状は血管の形状と構造によって決定される。従来のガイドワイヤを操縦する能力は、ガイドワイヤの形状に対する血管構造の機械的影響によって制限され、さらに、ガイドワイヤ操作のための2つのDOFしか有さない。X線透視撮影画像は限られた解像度の2D投影画像しか提供しないため、これらの手術は従来、限られた視覚的フィードバックを提供するX線透視撮影画像で誘導されるというさらなる制限がある。これらの制限により、心臓血管手術や血管内介入手術における主要な課題の一つは、ガイドワイヤの操作及び誘導である。
【0006】
カテーテルは概して細長いチューブであり、経皮的に血管系に導入された後、目的の解剖学的標的に誘導される。これらの装置は概して装置のプッシュプルおよび装置の回転により、患者の体外から遠隔操作される。カテーテルによっては、装置のハンドルにあるプランジャまたはノブの作動によって方向転換できる方向転換可能な先端を有してもよい。これらの手術は概して2DプロジェクションX線イメージングを用いて誘導される。
【0007】
全ての手術では、組織に対する装置の位置、形状および向きを正確かつ高い信頼性でコントロールすることが重要であるが、これらの設定を妨げるいくつかの技術的な制約がある。すなわち、装置が極端に柔軟であること、それらが患者の体外から遠隔操作されること、特性評価または予測が困難な、ダイナミックに動く解剖構造と装置とが機械的に係合することにより、装置の位置が影響を受けること、組織に対する装置の摩擦と機械的な係合とによって、装置の先端部にかかる力を制御することまたは予測することが困難であること、および、組織に対する装置の相対位置を可視化したり正確に推定したりすることが困難であることである。
【0008】
そのような制約に対処するにあたり、それらの操縦性を向上させるために、能動的および受動的な機構をワイヤに加えることによって、そのような装置(すなわち、ガイドワイヤおよびカテーテル)のデザインを修正する多くの試みがなされてきた。一般的なアプローチとしては、装置内の先端部に接続されたプルワイヤを統合することにより、先端部の操縦機能を追加することであった。
【0009】
従来、先端部の操縦ではプルワイヤを追加することに加えて、より高い硬度の材料を含むメインカテーテル軸を、より低い硬度の材料を含む遠位先端部と結合することを必要とする。この材料組成の差異により、紐を操作することで主として遠位先端を確実に操作できるようにする。装置の主軸に対して平行であるがオフセットされているプルワイヤに張力を加えることにより、メインシャフトに対して遠位端を曲げることができる。このアプローチは、概して操縦可能なカテーテル及び操縦可能なガイドワイヤに広く用いられており、装置の先端部の運動制御を3つのDOFで可能にしている。装置を操縦するためのこのデザインアプローチは、いくつかの実際的な課題の原因となっている。すなわち、すべてのタイプのガイドワイヤとカテーテルの再設計と開発が必要であること(つまり、既製のガイドワイヤまたはカテーテルは使用できない)、製造コストが増加する可能性があること、先端部を正確に追跡および可視化する際の制限が引き続き存在すること(誘導に使用される画像診断法のタイプに依存する)である。
【0010】
これらの問題に対処する他の試みでは、鞘部によって覆われた、拡張可能な遠位端部を有する第2の装置が用いられている。このデザインでは、遠位端部が鞘部に対して進退すると、遠位端が拡張または収縮することとなる。さらに遠位端部は、互いに対して固定された相対位置に配置された1つまたは複数のガイドワイヤを通すための複数のチャネルを有する。このデザインにより、ユーザーは、ガイドワイヤ用のチャネルを変えてガイドワイヤを異なる別個の位置に到達させることができる。このデザインは、どの既製のガイドワイヤにも対応するが、先端部を非常に限られた個別の位置にしか調整できず、可視化およびイメージガイダンスにおける制約に対して対処していない。
【0011】
装置の制御、可視化の限界および装置の操縦の制限は、様々な手順において課題が生じる。例えば、心臓アブレーションにおいて、通常の心臓リズムを回復させる目的で、エネルギーを特定の標的に届けるために、アブレーションカテーテルの先端部を、正確かつ高い信頼性で制御することが望ましい。このためアブレーションの間、アブレーションカテーテルの先端部を、特定の位置において安全だが最小限の力で心筋に対して適切な角度に維持する必要がある。しかしながら、カテーテルの誘導の制限により、このタスクを確実に繰り返し実行する際の課題が生じ、最終的には高い失敗率と有害事象につながってしまう。
【0012】
別の例として、心房中隔穿刺は、いくつかの手術のために心臓の右側から左側にアクセスするために必要となる。心房中隔穿刺では、通常、中空カテーテル(例えば、操縦可能な鞘部)を使用して、穿刺のために針先を標的部位に誘導する。組織に対する針の可視化の制限と、装置の確実な方向付けと配置における課題により、心臓タンポナーデ、大動脈ルート穿刺、塞栓性脳卒中、下壁誘導の一時的なST上昇および医原性心房中隔欠損など、いくつかの主要な合併症が発生する可能性がある。
【0013】
他の心臓手術の例として、心臓ペースメーカーの埋め込みによる再同期療法が挙げられる。このような手術では概してペースメーカーリードの先端を必要に応じて様々な標的に埋め込む。しかしながら、そのリードは前述の制限に苦しむカテーテルの先端にあるため、リードを目的の標的に確実かつ正確に配置し、リードを心筋壁にねじ込んだり取り付けたりすることは困難である。
【0014】
さらに別の例では、腹部大動脈瘤の治療のための血管内アプローチにおいて、血管内動脈瘤修復(EVAR)において、拡張可能なステントグラフトが、大動脈内に低侵襲的に配置される。このような手術において、他のいくつかのステントグラフトを介してメインステントを他の供給動脈に接続することが重要である。しかしながら、最初のステップとして、通常、ガイドワイヤを使用してステントグラフトの配置を誘導する。このプロセスは、一般にゲートカニュレーションと呼ぶ。目的の接続点の位置と方向によって、ガイドワイヤが大きな空洞(すなわち動脈または動脈瘤内)内で操作され、脈動する血流下にあるため、ゲートカニュレーションに長い時間がかかる場合がある。ゲートカニュレーションには、操縦と誘導を容易にするための機械的な休止点がない。その結果、このような手術には過剰に長い時間がかかり、失敗率がかなり高くなる可能性がある。
【0015】
さらに別の例では、経大動脈弁移植において、ガイドワイヤを使用して、移植のための弁の位置決めおよび位置合わせを容易にすることができる。しかしながら、ガイドワイヤは柔軟性があり、広い空間で動作し、大きな拍動性の血流を感じるため、最初のステップとしてガイドワイヤを弁に通すのは難しい手術であるが、手術は通常2D投影X線または超音波で誘導される。結果として、そのような手術は非常に長い時間がかかる可能性があり、高い失敗率または次善の結果をもたらす可能性がある。
【0016】
別の例では、アテローム性動脈硬化症の治療のために、血管内アプローチにおける最初のステップはガイドワイヤを閉塞部に通すことを含み、これによってその後、バルーンやステントの配置が容易になる。しかしながら、ガイドワイヤは動脈壁の周囲に留まる傾向があり、圧力がかかると座屈する。これらの制限は、そのような手術を誘導するために通常使用される2D投影X線蛍光透視法の制限とともに、高い技術的な失敗率と閉塞部を効果的に通過する際の制限につながる。
【0017】
体の内部のイメージングには、診断目的での機能、組織構造、解剖学的構造および組成の評価、身体の標的領域への介入を計画したり誘導したりすること、および標的領域への介入の影響を評価および監視することといった用途がある。内部イメージングの用途例には、消化管系、肺、心臓血管系(冠状動脈、末梢神経および神経血管系を含む)、泌尿生殖器系、乳房組織、肝臓組織など、解剖学的構造のさまざまな領域のイメージングが含まれる。具体的な例として、高周波超音波または光コヒーレンストモグラフィーによる心臓血管系のイメージングは、動脈プラークの構造と組成を評価するために開発された。
【0018】
既存の低侵襲イメージングプローブは、いくつかの制限に直面している。すなわち、組織に対するイメージング装置の相対位置が不確かまたは不明である場合がある。これにより、広い視野を作り出したり、大きなナビゲーションマップを再構築したりすることが妨げられ、標的の位置が不確かであることに起因して、取得した情報の有用性が制限される。特に超音波技術に基づく多くの介入イメージングプローブは「側方視型」であり、イメージングプローブの先端部に必要なハードウェアを取り付けるために利用できるスペースが少ないため、前方視型装置は概して視野または解像度が制限される。また、得られた画像に関連する他の治療または介入装置の可視化は、例えば超音波イメージングなどの多くの画像診断法では困難かつ変動しやすい可能性があり、そのような手術を誘導するためのそのような撮像機器の適用を制限する可能性がある。さらに、3次元ボリューメトリックイメージングは、低侵襲プローブ内の利用可能なスペースが限られているため、大型の多次元センサまたはトランシーバーアレイの統合によって実現することは困難である。
【0019】
組織のさまざまな特性は、介入手術のイメージングおよび誘導のためのさまざまな技術によって測定することができる。例えば、組織の音響インピーダンスは、超音波振動子で測定および検出することができる。その様な情報は、目的の組織の形状を検知するためにも使用され得る。軟組織の弾性特性と剛性は、超音波に基づく技術で特徴付けることもできる。エラストグラフィの代替方法とは、既知の機械的な励起入力(excitement input)を所望の標的表面に直接適用し、相互作用力と組織応答を監視することによる直接力測定である。
【0020】
イメージングプローブに統合できる別の画像診断法は、光学に基づく技術である。例としては、ラマン分光法、蛍光分光法、近赤外分光法または光コヒーレンス・トモグラフィー(OCT)がある。そのようなイメージング技術は、光の送達または感知のために光ファイバーベースの解決策を利用し得る。あるいは、同様の方法を使用して、レーザーを利用したアブレーションおよび光線力学療法を提供することができる。
【0021】
イメージングプローブに統合できる別の画像診断法は、電気を利用した技術である。この技術は、表面電極を使用してまたは既知の特性を備える入射電磁波に対する組織の反射応答を測定することによって測定できる、組織の電気伝導率、誘電率およびインピーダンスを測定するために使用できる。
【0022】
イメージングプローブに統合できる別の画像診断法は、核活動検出器である。これを利用して組織のさまざまな場所での核活動に起因する高エネルギー放射線を測定する。これは場合によっては、目的の標的部位に放射性造影剤が蓄積することに起因してもよい。
【0023】
使用される技術に関係なく、広い視野と高い空間分解能を備え、かつ、特定の標的位置に由来する2次元または3次元画像を作成できる前方視かつ低侵襲のイメージング装置を作り出すことは困難である。これは、プローブ内にハードウェアを統合および埋め込むという課題に加えて、目的の解剖学的構造に対するプローブの追跡における制限に起因する。これらの制限に対処するための解決手段が望まれている。
【0024】
さらに、他の介入装置の視覚化は多くの画像診断法において課題となり得るため、低侵襲の画像誘導介入を容易にするために、取得した画像に関連して治療装置または診断装置(カテーテルなど)を追跡および配置できる方法が望まれている。例えば超音波は、画像誘導における使用を妨げる可能性のあるアーティファクトの影響を受ける可能性がある。このようなアーティファクトは、イメージングに使用される超音波ビームに対する装置の配置に応じて、視野内の装置の可視性を変化させる可能性がある。たとえば、画像化される装置の材料の反射率と装置の表面テクスチャとは、取得した画像におけるその可視性に影響を与える可能性がある。同様の制限により、低侵襲の画像誘導介入のための多くの画像診断法の有用性を妨げている。これらの制限に対処できる解決手段が望まれている。
【0025】
したがって、介入手術中の操縦、追跡および誘導におけるこれらの制限に対処する装置、システムおよび方法が望まれる。
【発明の概要】
【0026】
開示した実施形態は、心臓血管手術のための介入装置の信頼でかつ正確な誘導における制限に対処する。開示した実施形態は、カテーテルの正確な操作および位置決め、ならびに解剖学的構造に対するその位置の追跡および可視化を可能にするシステムおよび方法に関する。提案したシステムおよび方法は操縦機構を内蔵している。この操縦機構は、目的の解剖学的部位(例えば、血管、心腔、ステントグラフト、または解剖学的に関連する空洞)内に広がるように制御することができ、拡張時に組織に周方向の力を加えることができる拡張可能構造体を備える。一旦、この構造体が拡張されると、拡張構造内に配置された柔軟なカテーテルに接続された対応する数の紐または紐に対して、いくつかの機械的ピボット点または静止点が提供される。一実施例として、その紐は一端からアイレットまたは内部カテーテルの開口部に接続され、他方で紐の他端は装置の長さに沿ってハンドルまで延びる。内部カテーテルは、治療用カテーテルやガイドワイヤなどの介入装置がその内部を通過できるように構成されている。また内部カテーテルは、エネルギー源やセンサの統合を可能にするように構成されてもよい。ハンドルの端から紐を操作することにより、内部カテーテルのアイレットを2つのDOFで操作して、その位置、つまり内部カテーテル内にある装置の位置を制御できる。
【0027】
実施形態において、一組の位置センサは、紐の位置または相対運動を測定する。例えばエンコーダは、紐に機械的に結合されてもよい。位置センサは、それに接続されているすべての紐の移動を測定することにより、拡張構造に対する内部カテーテルの位置を測定および追跡するように構成されている。
【0028】
また、一実施形態として、内部カテーテル内の治療装置の位置は、運動センサで測定することができる。
【0029】
本明細書に開示した実施形態は、ガイドワイヤ、カテーテルおよび針などの従来の介入装置の操縦における制限に対処する。実施形態は、ガイドワイヤ先端の正確な操作を可能にし、既製のガイドワイヤ、カテーテル、または針の効果的な操縦を容易にするシステムおよび方法に関する。提案したシステムおよび方法は、血管内腔または心腔内に広がり、組織に周方向の力を加えるように制御することができる、拡張可能な枝部などの一組の拡張可能構造を含む操縦機構を内蔵する。その構造体または枝部は、一旦広がると、アセンブリおよび血管内のアイレットを支持する一組の紐のアンカーポイントとして機能する。アイレットは、ガイドワイヤまたはカテーテルがアイレットを通過できるように構成されている。アイレットは2つのDOFで操作でき、それによって枝部が拡張した場所で、血管または心室に垂直な平面において(または幾何学的に形成された領域あるいは血管または心室に対する表面形状において)ガイドワイヤまたはカテーテルの先端部の位置を制御できる。
【0030】
実施形態において、一組のエンコーダが紐に機械的に連結されている。 エンコーダは、アイレットとガイドワイヤまたはカテーテルとの位置を追跡するように構成されている。追跡情報を使用して、ユーザーインターフェースは、機構の作業空間のナビゲーションマップ上に追跡されたアイレットの位置を重ね合わせることにより、ユーザーに先端部の位置を示す。
【0031】
開示した実施形態は、既存の低侵襲画像プローブにおけるいくつかの制限および低侵襲画像誘導介入のための現在の方法に対処する。より具体的には、実施形態は、組織に対するエネルギー源やセンサの位置の正確な位置決めおよび追跡、ならびに治療または診断装置の位置決めおよび追跡を可能にするシステムおよび方法に関する。エネルギー源やセンサの位置決めおよび追跡により、所望の標的組織のボリューメリックイメージングマップの再構築を可能にする。
【0032】
一実施例として、エネルギー源やセンサは、内部の柔軟なカテーテル内に統合されている。センサは、出来る限りエネルギー源と組み合わせて使用されて、センサの周囲またはその前の領域から測定値を取得してもよい。そのような方法を使用して、所望の解剖学的部位で組織の画像を取得することができる。内部カテーテルの位置、すなわちセンサを制御および測定できるため、相対位置を追跡しながら、拡張構造体内のさまざまな位置に内部カテーテルを任意に配置することにより、機構の作業空間全体にわたって測定値を取得できる。測定は異なる既知の位置で行われるため、取得した情報を利用して、目的の組織の大きな画像を生成するとともに、目的の手術を誘導するためのナビゲーションマップを作成することができる。
【0033】
内部カテーテルの位置や内部カテーテル内の装置の移動を含む追跡情報を使用して、拡張構造体に対する内部カテーテルまたは治療装置の相対位置を推定することができ、グラフィカルユーザーインターフェースを使用してユーザーに対して視覚化することができる。ユーザー。内部カテーテルのアイレットの位置、または内部カテーテル内の装置の先端の位置を、機構の作業空間のナビゲーションマップの上に重ね合わせることができる。そのナビゲーションマップはまた、内部カテーテル内に統合されたセンサで得られた情報を含んでもよい。これにより、ユーザーは、取得した医用画像に対する装置の相対的な位置を確認でき、操作中にその画像に対して更新された装置の位置をリアルタイムで確認できる。
【0034】
一実施形態として、ユーザーインターフェースは、固定している拡張構造体に関連する介入装置の仮想表示を示すとともに、インナーチューブのアイレットを出た長さに基づき、かつ、測定された内部カテーテル位置に基づいた介入装置のある場所をユーザーに示す。
【0035】
一実施形態は、患者の血管内腔または心腔内の介入装置を位置決めするための操縦装置を含む。操縦装置は、一組の拡張可能構造体、一組の紐およびアイレットを含む。一組の拡張可能構造体は、血管内腔または心腔内に広がるとともに周囲の組織に周方向の力を加えるように制御できる。一組の紐は、一組の拡張可能構造体をアンカーポイントとして使用する。アイレットは、環状の外周部と中央の開口部を有する。アイレットは、一組の拡張可能構造体に囲まれており、アイレットの環状の外周部まわりに固定されている一組の紐の遠位端によって支持されている。アイレットは、介入装置が中央の開口部を通過できるように構成されている。さらに、一組の紐を使用することにより、アイレットを2つの自由度で操作することができるとともに、拡張可能構造体の位置での血管内腔または心腔に対する幾何学的に規定された領域における介入装置の位置の制御を可能にする。
【0036】
一実施形態は、患者の血管内腔または心腔内に介入装置を位置決めするための操縦装置を含む。操縦装置は、内部カテーテル、ハンドル、細長い鞘部、一組の拡張可能な枝部、一組の紐、およびアイレットを含む。内部カテーテルは、近位端部と遠位端部との間に延びる中央管腔を有する柔軟で細長い構造である。ハンドルはユーザーが操作し操縦するためのものであり、内部カテーテルの近位端部に連結されている。細長い鞘部は、その長さに沿って内部カテーテルを少なくとも部分的に取り囲んでいる。一組の拡張可能な枝部は内部カテーテルの遠位端に位置し、体の血管または腔内に広がるように制御することができるとともに、一組の拡張可能な枝部と細長い鞘部とを互いに対して操作することによって周囲の組織に周方向の力を加えることができる。ユーザーがハンドルを介して操作できるように一組の紐が近位端部でハンドルに結合され、内部カテーテルに沿って細長い鞘部内に延びている。また一組の紐は、その遠位端部より先に、拡張可能な一組の枝部のアンカーポイントと係合する。アイレットは、中央の開口部を形成する環状の外周部を有する。アイレットは、拡張可能な一組の枝部に囲まれ、アイレットの環状の外周部に固定されている一組の紐の遠位端部によって支持されている。アイレットは、内部カテーテルの遠位端部と結合されかつ同一直線上に配置されて、介入装置がアイレットの中央開口部を通過するように内部カテーテルを貫通できるようにしている。
【0037】
一実施形態は、患者の血管内腔または心腔内に介入装置を位置決めするための操縦装置を含む。操縦装置は、内部を貫通する中央管腔を形成する細長い装置アセンブリを含む。そのアセンブリは近位端部にハンドルを有し、遠位端部に拡張可能構造体を有する。拡張可能構造体には、一組の拡張可能な枝部と、一組の紐と、アイレットとが含まれる。一組の拡張可能な枝部は、血管内腔または心腔内に広がり、かつ、周囲の組織に周方向の力を加えるように制御できる。一組の紐は、一組の拡張可能な枝部をアンカーポイントとして使用する。アイレットは、細長い装置アセンブリの遠位端に近接しており、一組の紐によって支持されており、介入装置がアイレットを通過できる大きさとされている。さらに、一組の紐を使用することにより、アイレットを2つの自由度で操作することができるとともに、拡張可能な枝部の位置に基づいて幾何学的に規定された領域における介入装置の先端の位置を制御可能にする。
【0038】
一実施形態は、患者の血管内腔または心腔内の介入装置を介したイメージングおよび手術ガイダンスのための方法を含む。この方法は、介入装置を案内する電気機械式操縦装置システムを提供することを含む。電気機械式操縦装置システムには、以下のものが含まれる。すなわち、拡張可能な枝部と、ハンドルによって作動される一組の紐によって制御される遠位先端にアイレットとを備えたカテーテル、一組の紐に機械的に結合された複数の位置センサ、介入装置およびカテーテルの少なくとも一つに取りつけられる複数のセンサと、複数のセンサに通信可能に連結されるコンピューティング装置とを含み、コンピューティング装置は、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサに操作可能に連結され、かつ、少なくとも1つのプロセッサによって呼び出される命令を保存するようになっているメモリ、画像を描画しかつ可視化するために構成された位置調整・追跡エンジンおよびコンピューティング装置に通信可能に連結されるGUIディスプレイである。この方法は、ハンドルを操作し、介入装置の位置を追跡することによって、介入装置の先端部を所望の位置に移動させることを含む。この方法は所望の位置で、複数のセンサから測定値を取得することを含む。この方法は、取得した測定値に基づいて、目的の血管腔内または心腔のマップを再構築することを含む。この方法は、仮想的に描画された装置画像を描画して読み込むことを含む。この方法は、複数のセンサからカテーテルの位置を測定することを含む。この方法は、複数のセンサからカテーテル内の介入装置の軸方向の挿入を測定することを含む。この方法は、GUIディスプレイ上に表示された重ね合わせ画像における測定値に基づくマップに、仮想的に描画された装置画像を重ね合わせることを含む。
【0039】
一実施形態は、操縦装置を使って所望の解剖学的部位における組織の画像を取得する方法を含み、操縦装置には介入装置の誘導のためにその遠位端部に拡張可能構造体を備える。この方法は、操縦装置の内部カテーテル内に統合されるセンサを提供すること、センサの周囲の領域から測定値を取得すること、内部カテーテルおよびセンサの位置を制御すること、内部カテーテルの相対位置が追跡されているときに、内部カテーテルを拡張可能構造体内における異なる位置に無作為に配置することにより、作業空間全体にわたる測定値を取得すること、その測定値を利用して目的の組織の大きい画像と手術を誘導するためのナビゲーションマップとを生成すること、および、拡張構造体に対する内部カテーテルの相対位置を推定するため、内部カテーテルの位置と内部カテーテル内の介入装置の移動とを利用して、グラフィカルユーザーインターフェース上に可視化することを提供する。
【0040】
上記の概要は、本明細書の主題の例示された各実施形態またはすべての実装を説明することを意図するものではない。以下の図および詳細な説明は、様々な実施形態をより具体的に例示している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本明細書の主題は、添付図面と関連する以下の様々な実施形態の詳細な説明を考慮することで、より完全に理解することができる。
【
図1】
図1は操縦装置の等角投影図であり、実施形態における操縦可能なカテーテル及びイメージングプローブの形態にある。
【
図2】
図2は、実施形態における操縦装置の遠位端部の拡大図である。
【
図3】
図3は、実施形態における装置の遠位端部の図であり、拡張可能な支持構造を示している。
【
図4】
図4は、実施形態における操縦装置のハンドルの拡大図である。
【
図6】
図6は、実施形態における、装置の別のハンドルの図である。
【
図7】
図7は、別の実施形態における、装置の別のハンドルの図である。
【
図8A】
図8Aは、実施形態における、拡張可能な構造体を配備する機構の図である。
【
図8B】
図8Bは、実施形態における、拡張可能な構造体を配備する機構の図である。
【
図9A】
図9Aは、実施形態において、外側の鞘部の遠位端部の向きをそらすための操縦機構の図である。
【
図9B】
図9Bは、実施形態において、外側の鞘部の遠位端部の向きをそらすための操縦機構の図である。
【
図10】
図10は、実施形態において、紐を動かしかつ紐に張力を与える内部機構の図である。
【
図11A】
図11Aは、他の実施形態において、紐を動かしかつ紐に張力を与える内部機構の上面図である。
【
図11B】
図11Bは、他の実施形態において、紐を動かしかつ紐に張力を与える内部機構の側面図である。
【
図11C】
図11Cは、他の実施形態において、紐を動かしかつ紐に張力を与える内部機構の等角図である。
【
図12A】
図12Aは、一実施形態において、2つのDOFで紐を動かすための2つの内部機構の配置を示す等角図である。
【
図12B】
図12Bは、一実施形態において、2つのDOFで紐を動かすための2つの内部機構の配置を示す正面図である。
【
図13A】
図13Aは、実施形態において、装置を操縦及び誘導するためのシステムのフローチャートである。
【
図13B】
図13Bは、実施形態による装置を操縦及び追跡するためのプログラムのフローチャートである。
【
図13C】
図13Cは、実施形態において、ホストコンピュータに実装される、ガイドワイヤやカテーテル等の装置を操縦及び追跡するためのプログラムのフローチャートである。
【
図14A】
図14Aは、実施形態において、グラフィカルユーザーインターフェースに表示されている仮想の血管マップの可視化である。
【
図14B】
図14Bは、実施形態において、グラフィカルユーザーインターフェースに表示されている仮想の血管マップの可視化である。
【
図15】
図15は、実施形態による、得られた画像を示すユーザーインターフェースを示し、これはグラフィカルユーザーインターフェース上に表示されたナビゲーションマップに対する装置の直近および過去の位置を示している。
【
図16】
図16は、一実施形態による、目的の組織の画像を取得するために、複数の既知の位置で測定値を取得するための操縦機構を使用する概念を示している。
【
図17】
図17は、一実施形態による、目的の組織の画像を取得するために、独立した装置を使用して複数の既知の位置で測定値を取得するための操縦機構を使用する概念を示す。
【
図18A】
図18Aは、一実施形態による、標的の画像を得るためのプログラムのフローチャートである。
【
図18B】
図18Bは、一実施形態による、ナビゲーションプラットフォーム及び対応するユーザーインターフェースのためのプログラムのフローチャートである。
【
図19A】
図19Aは、一実施形態による、EVARにおけるガイドワイヤナビゲーションのためのメインステントグラフト内の装置の取り得るアプローチおよび配置を示している。
【
図19B】
図19Bは、一実施形態による、EVARにおけるゲートカニュレーションのための装置の使用に関する取り得るアプローチを示す。
【
図20】
図20は、一実施形態による、特定の目的を果たすための配置時に特定の所望の形状をとる拡張可能な遠位構造を備えた先端機構の代替実施例を示す。
【
図21】
図21は、一実施形態による、大動脈弁手術のためのガイドワイヤナビゲーションを容易にするための装置の使用および配置のための取り得るアプローチを示す。
【
図22A】
図22Aは、一実施形態による、左心室カテーテル法の僧帽弁移植のためのガイドワイヤナビゲーションを容易にするための使用および配置のための取り得るアプローチを示す。
【
図22B】
図22Bは、一実施形態による、心房細動などの疾患の治療のための左心房におけるアブレーションのための使用および配置のための取り得るアプローチを示す。
【
図23】
図23は、一実施形態による、心房中隔穿刺のための針のナビゲーションのための使用および配置に対する取り得るアプローチを示す。
【
図24】
図24は、一実施形態による、代替実施形態による拡張可能な遠位先端構造および機構のバージョンを示す。
【
図25】
図25は、一実施形態による、拡張可能構造体を開いてかつ支持するための、膨張可能な構造体またはバルーンを利用する先端機構の一実施形態の側面図を示す。
【0042】
様々な実施形態において、様々な修正および別の形態が可能であるとともに、その詳細について図面の中の例により説明し、かつ、以下で説明する。自明であるが、その意図は、請求項に記載された発明を、明細書に記載した特定の実施形態に限定することではないことを理解されたい。換言すれば、その意図は特許請求の範囲によって定義される主題の主旨および範囲内にあるすべての修正物、均等物、および代替物を網羅することにある。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本明細書に開示されているのは、血管内の介入およびカテーテル法の際に、従来用いられているガイドワイヤやカテーテルを操縦するための、装置、システムおよび方法である。提案するシステムは、電気機械式の操縦装置と、コンピュータにて実行されるソフトウェアグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)とを備えることができる。また、本明細書に開示するのは、低侵襲医療のイメージングプローブを対象とする装置、システムおよび方法であって、生体組織および再構築された画像に対する介入装置の位置調整および追跡を可能とするものである。提案するシステムは、統合されたトランスデューサーおよびセンサを備えた電気機械式の操縦装置と、画像のレンダリングおよび可視化のためのソフトウェアだけでなく、コンピュータ上で診断、手術の計画、およびナビゲーション誘導のために実行するGUIを備えることが出来る。さらに本明細書に開示されるのは、心臓血管の介入のための装置の操縦および誘導のための、装置、システムおよび方法である。また、提案するシステムは、電気機械式の操縦装置と、診断、手術の計画およびナビゲーション誘導のためのコンピュータ上で実行するGUIのためのソフトウェアとを含むことができる。
【0044】
図1には、一実施例による操縦装置100が示されている。操縦装置100は、代わりにまたは加えて、イメージングプローブと呼ぶことができる。さらに本開示において時折、操縦装置100を操縦機構と呼んでもよい。
【0045】
一実施例として、操縦装置100は、近位端部102のハンドル110と、内部カテーテル130を少なくとも部分的に覆う鞘部122と、遠位端部104の拡張可能構造体112とを備えている。実施形態において、ハンドル110は近位端部102で操作者によって保持されるようになっている。さらに、ハンドル110は、操縦装置100や操縦可能なイメージングプローブの制御部として機能する。遠位端部104の拡張可能構造体112は、体の内腔に入るようなっており、かつ、ハンドル110を介して操作者によって制御されるようになっている。
【0046】
図2及び
図3には、一実施例による操縦装置100の拡張可能構造体112の拡大図と遠位端部104の拡大図とが示されている。一実施例として、拡張可能構造体112は、一組のまたは複数の拡張可能な枝部120(この代わりに伸縮式の枝部120と呼んでもよい)からなる。枝部120は、周方向の力を加え、かつ、所定の直径まで広がるように機械的に付勢されている。最初の状態では、枝部120は鞘部122内に機械的に拘束されている。枝部120が、鞘部122から引き出されると、枝部120は血管管腔内で広がって、周方向の力を血管壁123(あるいは心腔)に加える。ひとたび枝部120が拡張されると、枝部120が内腔や心腔に対してアンカーとなって相対的に固定されるようになる(アンカリング機能)。ひとたび拡張して、血管壁や心腔に固定されると、これらの枝部120の先端部のそれぞれが、機械的てこ装置(leverage)またはアンカーポイント124として機能する。
【0047】
本開示では、拡張可能な構造体の一種として、一組の拡張可能な枝部を備える装置について主に説明したが、さまざまな拡張するメッシュ、表面、部品、突起などの特徴を含む、他のセットや他の形態の拡張可能な構造体について同様に検討してもよい。さらに、本開示では、アンカーポイント124をピボットポイントと呼んでもよい。これらのアンカーポイント124のそれぞれは、内部のカテーテル130のアイレット128に連結された、複数の紐または紐126を支持する。本開示の全体を通して「紐」とは、金属、織物、ポリマー、または結晶等で形成された任意の種類の糸や、プルワイヤ(pull-wires)や、または同様の操作可能な部品を広く指すものであることは当然理解されたい。初期の状態において紐126には力が加えられず、アイレット128は、鞘部122および血管壁123と同心となっている。
【0048】
アイレット128の大まかな構造は、外周部が環状に形成されて、中央に開口を有する。アイレットは、概して拡張可能な枝部120によって囲まれており、紐126の遠位端部によってその環状の外周部周りに支持されている。さらに、ガイドワイヤまたはカテーテル132は、内部カテーテル130に挿通されて、アイレット128の中央の開口を通ってアイレット128から外に延びている。なお、ガイドワイヤ132及びカテーテルは、本開示の操縦装置100とともに用いることのできる介入装置の例であることは当然理解されたい。例えば操縦装置100により、患者の血管管腔内や心腔内に、そのような介入装置を配置することができる。枝部120の基部は、内部カテーテル/チューブ130に接続されており、最初それらはすべて鞘部122内に配置されている。鞘部122に対して内部カテーテル130が動くことで、枝部120が鞘部122から引き出されて広がり、あるいは、枝部120を鞘部122内に格納して圧縮する。一実施例として、内部カテーテル130内に統合された、センサ134として機能する送信機や受信機が設けられている。センサ134を使って生体組織の周囲の測定値を得ることができ、特にセンサ134の前の空間から測定値を得ることができる。
【0049】
図3の実施例において、装置の遠位端部にある拡張可能構造体112の枝部120は開いて固定された位置にある状態が示されており、枝部120が血管壁123に押し付けられている。ガイドワイヤ132は、内部カテーテル130の内腔を通過し、さらにアイレット128を通過する。アイレット128は、装置の中央に配置されており、紐126の操作によって操縦される。
【0050】
枝部120は、
図3に示すように、レーザー溶接技術を用いて棒(例えばステンレスやニチノール)を所望の形状に変形させたり溶接したりすることによって形成してもよい。一実施例として、枝部120は
図3に示すように金属の円柱に溶接されて、内部管の先端に埋め込まれてもよい。あるいは、枝部120は所望の材料の管からレーザー切断されてもよい。
【0051】
概して、一組の紐126を使用することにより、アイレット128を2つの自由度で操作することができるとともに、一組の拡張可能な構造体の位置において、血管の管腔や心腔に対して幾何学的に規定された領域内で介入装置の位置を制御可能となる。実施例によっては、アイレット128は、拡張可能な枝部120の位置において、血管の管腔や心腔に対して垂直な平面に配置されてもよい。また実施例によっては、アイレット128は例えばドーム形状等の表面形状や他の形状に沿って配置されてもよい。
【0052】
図4から5Bは、ハンドル110Aおよび操縦装置100のその他の部品の第1実施形態を開示している。
図6および7には、操縦装置100の類似のハンドル110B及び110Cの追加の別の実施形態が示されている。本開示において、これらのハンドル110Aや110Bや110Cのいずれに対しても、個別にまたはまとめて総称的にハンドル110と呼びことができる。さらに、場合によっては、これらのハンドル110と類似する構成要素に対して、同じ参照符号で呼ぶこともある。
図8〜12Bは、これらのハンドル110の1つまたは複数とともに使用する内部機構を概して示している。この機構は、どのハンドルの配置やそれらを適用可能または実施可能な類似の構成に対して、広く検討されかつ適用されるように評価されるべきである。
【0053】
図4は、一実施例による操縦装置100のハンドル110Aの拡大図である。実施例において、ハンドル110Aは、カテーテルまたはガイドワイヤ132が挿通される開口部140を備えている。ハンドル110Aは、アイレット128の操縦を可能にするための一組の機構を用いるトップローラホイール142及びボトムローラーホイール144を含むことができる。トップローラホイール142は、ハンドル110Aの主軸に対して垂直な軸回りに回転できる。ボトムローラーホイール144は、ハンドル110Aの主軸に対して平行な軸の回りに回転する。スライド部146は、内部カテーテル130に連結されており、枝部120の引き出しまたは挿入を可能にする。スライド部146は、鞘部122に対する内部カテーテル130の位置を固定することのできる締結ネジ148で実現されるロック機構を有している。そのロック機構によって、枝部120の引き出し量を調整できる。他の実施形態では、操作される紐126の数に応じて、ローラの数及び対応する機構が異なっていてもよい。
【0054】
図5Aは、操縦装置100のハンドル110Aの端面図である。
図5Bは、
図5AのA−A線断面から見た操縦装置100のハンドル110Aの断面図である。
図5Aの実施形態では、トップローラホイール142は、第1紐輪162に連結するためのボス部159を有している。トップローラホイール142はまた、別の連結機構166を介して、エンコーダ軸164に機械的に連結されている。エンコーダ軸164は磁石ホルダ168に連結されている。磁石ホルダ168は、磁気エンコーダセンサ173の磁石171を、磁気エンコーダセンサ173から一定距離に保持するように構成されている。バネを有する張力付与機構175を用いて、第1紐輪162の張力を維持することができる。紐126をトップローラホイール142に連結する他の実施例の機構において、張力を与える方法や検知する方法は異なっていてもよい。
【0055】
実施形態において、ボトムローラーホイール144は、第2紐輪182に連結するための拡張ボス部181を有している。ボトムローラーホイール144は、別のエンコーダ磁石ホルダ184にも機械的に連結されている。磁石ホルダ184は、磁気エンコーダセンサ188の磁石186を磁気エンコーダセンサ188から一定の距離に保持するように配置されている。バネを含む張力付与機構191を用いて第2紐輪182の張力を維持することができる。紐126をボトムローラーホイール144に連結する機構の他の実施形態において、張力を与える方法および検知する方法は異なっていてもよい。
【0056】
実施形態において、スライド部146及び締結ネジ148によって、鞘部122内の内部カテーテル130の引き出しおよび引き込みが可能となる。スライド部146は延出されており、内部カテーテル130に連結される開口部193を有する。スライド146は、ハンドル本体のスリット開口部195に沿って移動することができる。
【0057】
一実施例として、ハンドル110Aは、回路基板197を収容している。回路基板197は、エンコーダの位置を取得し、かつ、ポート198(例えばUSB)を介してあるいは無線でその情報をホストコンピュータに送信するために必要な全ての電子機器及び組み込みシステムを含んでいる。
【0058】
図6は、一実施形態による操縦装置100のハンドル110Bの拡大図である。実施形態において、ハンドル110Bは、カテーテルまたはガイドワイヤ132を挿入するためのシール弁141を備えている。ハンドル110Bは、トップローラホイール142及びボトムローラーホイール144を含み、これらはアイレット128や内部カテーテル130の操縦を可能にする一組の機構を利用する。トップローラホイール142は、ハンドル110Bの主軸に対して垂直な軸に沿って回転させることができる。ボトムローラーホイール144は、ハンドル110Bの主軸に対して平行な軸に沿って回転する。スライド部146は、内部カテーテル130に連結されており、枝部120の引き出しまたは引き込みを可能にする。一実施例として、スライド部146は同様に締結ネジ148によって実現されるロック機構を有する。ロック機構により、鞘部122に対して内部カテーテル130の位置を固定することができる。このロック機構によって、枝部120の引き出し範囲を調整できる。取手部149によって、外側鞘部122の先端部に連結された紐に張力を加えられるようになる。鞘部の長さ方向に沿う押し込み硬度(indentation hardness)が異なれば、ノブの回転によって生じる紐の張力が、鞘部のより柔らかい遠位部を撓ませることにつながる。他の実施形態において、操作される紐126の数に応じて、ローラーの数及び対応する機構が異なっていてもよい。
【0059】
図7に示されている他の実施形態では、ハンドル110Cは、内部カテーテル130を前進させて、かつ、枝部120の引き出しや引き込みを可能にするスライド部146を有する。ハンドル110Cはさらに、操縦機構160を有している。
【0060】
図8A及び8Bには、複数の視点から見たスライド部146が示されている。これに類似するスライド部146は、ハンドル110Cやハンドル100のデザインの他の変形例とともに使用することができる。このスライド部146により、鞘部122内の内部カテーテル130及び枝部120を引き出したり引き込んだりすることができる。一実施例として、ハンドル110のスライド部146は、ユーザーによって把持される2つの対向する表面部150を用いる。対向する表面部150の延長部152は、ハンドル110内の空洞156内にあるバネ158を使用することにより、面154に押し付けられる。バネ158から受ける力によって、2つの表面部152と面154との間に摩擦が生じ、スライド部146が動かないようにしている。ユーザーは、対向する表面部150を押すことで2つの表面部152と面154との間の摩擦を軽減し、かつ、スライド部146を動かせるようにして、内部カテーテル130を引き出したり引き込んだりすることができる。これにより、内部カテーテル130の引き出し量を調製することができる。
【0061】
一実施例として、
図9A及び
図9Bに示すように、ハンドル110は操縦機構160を利用することで、外側の鞘部122の遠位端の向きを変えることができる。これに類似する操縦機構160は、ハンドル110Cまたはその他のハンドル100のデザインの変形例とともに使用することができる。図示されている様に、操縦機構160は、螺旋歯車172に連結された回転式ダイヤル170を利用する。螺旋歯車172は、ナット174と係合する。ナット174は2つのガイドレール176で拘束されており、ナット174と螺旋歯車172とが係合するように、軸方向に移動できる。鞘部122の遠位端のうちの一端に接続されている紐178は、ナット174に連結されている。ナット175の移動により、紐178に張力が生じさせられるとともに、鞘部122の遠位端の向きを変えることができる。一実施例として、鞘部122は鞘部122の両側に2本の紐を有してもよく、それによって双方向に操縦できるようになる。
【0062】
一実施例として、第2紐180は
図9Bに示すように接続されている。そして、カテーテルハンドル110の組み立ての初めに、第2紐180に張力がかけられ、鞘部122の遠位端が対応するガイドワイヤの方向に付勢される。これにより、回転式ダイヤル170の作動を通して第1紐178を弛緩させるかまたは第1紐178に張力を加え、かつ、ナット174を移動させることによって双方向に操縦可能とする。
【0063】
図10はハンドル110内の内部機構の一実施例を示す。ハンドル110を使って紐126を引き寄せたり、それらの位置を検知したりすることができる。通常、この様な機構は装置ハンドル110の内部に2組あり、ユーザーは内部カテーテル130及びアイレット128を2つの自由度で操作できるようになる。
図10に示す実施形態において、紐126の自由端は歯車192に連結される。そして、組み立ての間、紐126に所望のレベルの張力を付与できるように、歯車192を回転させることができる。また、バネなどの張力付与機構を用いて、紐126に対してさらに張力を付与することもできる。中央の歯車194は、ユーザーによって操作されるホイール142または144に機械的に連結される。歯車196は、上述の歯車に連結され、かつ、エンコーダホイールなどの位置センサに連結されて、紐126の動作を検知できるようになっている。この構成により、装置の組み立てが容易になるとともに、組み立てる人が他の歯車194及び196を配設する前に、紐126に望どおりに張力を付与させられるようになる。歯車194及び196は、歯車192の相対的な位置を固定し、かつ、一組の紐126の張力を保持するものである。
【0064】
図11A〜Cは、紐126を操作しかつそれらの位置を検知するための内部機構200の他の実施形態を示す。本実施形態では組み立て工程の間、バネ機構202を利用して紐126に所望の張力を付与する。紐126は、ローラホイール204を介してバネ機構202に連結されている。ローラホイール204は、並んだバネ208によって、外方向に押されている。紐126はまた、ユーザーによって動作されるローラホイール142または144に対して機械的に接続されたメインローラー206にも連結されている。
【0065】
2本の独立した紐126を制御するための、その様な2つの内部機構200の配置を有する一実施例を
図12A及び
図12Bに示す。
【0066】
実施形態によっては、ハンドル110も回路基板を収容している。回路基板は、エンコーダの位置を取得し、ポート(例えばUSB)を介してまたは無線で、ホストコンピュータにその情報を送信するために必要な全ての電子機器及び組み込みシステムを含んでいる。
【0067】
図13Aには、一実施例によるカテーテルまたはガイドワイヤ126を操縦するためのシステム250が示されている。図示されているように、介入者(interventionalist)252等のユーザーは、カテーテルまたはガイドワイヤ132を7つのDOFで操作できる。ユーザーは、カテーテルハンドル110の外側のセクションからガイドワイヤを遠隔操作することにより、ガイドワイヤを押し引きおよび回転させること(2つのDOF)ができる。カテーテルを支持する外側の鞘部122は、それ自体を3つのDOF(遠位端部の押す/引く、回転および方向転換)で操作できる。上述した拡張可能構造体112の操縦機構により、さらに2つのDOFが提供される。後者の2つのDOF、すなわち、上/下および左/右は、ユーザーインターフェース254を用いてユーザーによって操作され得る。ユーザーインターフェース254は、ガイドワイヤ132またはカテーテルの先端部の位置データを表示するものである。
【0068】
図13Bと
図13Cはそれぞれ、プログラムのフローチャート260および270である。このプログラムは、装置100の組み込みシステムおよびホストコンピュータで実行できる。
図13Bによれば、装置100(例えばマイクロコントローラベースの回路)の組み込みシステム用のコードは、主にエンコーダ値の測定と、ホストコンピュータへのそれらの送信とをうけもつ。
図13Cによれば、ホストコンピュータのソフトウェアは、仮想の血管に対する装置100の位置の可視化をうけもつ。ガイドワイヤ132の位置は、リアルタイムで取得されるとともに、ユーザー用に仮想の血管マップ上に重ね合わされ、可視化される。
【0069】
フローチャート260は、概ね装置100に関するステップで構成されている。それは、ステップ262にてパラメーターを初期化し、続く264にてキャリブレーションを実行し、次に266にて位置の追跡を行い、268にてホストに位置を送信する。この方法では、266でさらに位置を追跡するように戻る(cycles back)。
【0070】
フローチャート270は、概ねホストコンピュータに関するステップで構成されている。それは、ステップ272にてパラメーターを初期化し、続くステップ274にて血管、現在位置および記録された位置を可視化する。これには患者の医用画像を重ね合わせることも含まれる。続いて、276にてホストが装置100から位置データを受信して、続く278にて可視化したもの(visualization)に先端部の位置を重ね合わせる。そして最後に280にて、位置を記録する要求があるか否かを照会する。280にて要求がない場合、その方法はステップ274に戻る。ステップ280にて要求があった場合、ホストはステップ274に戻る前に282にてその位置を記録する。
【0071】
実施形態において、ユーザーが記録した位置も同様に取得でき、ユーザーのために(例えば異なる色で)可視化することもできる。さらに、ユーザーが記録した位置は、ガイドワイヤが前にあった位置を示し、目的の前の配置を示す。実施例によっては、仮想の血管マップに、手術中または手術前に得ることのできる登録済みの患者のデータを重ね合わせることによって補足してもよい。例えば、その様な画像は磁気共鳴画像法やX線コンピュータ断層撮影を使って取得されて登録されてもよく、患者の組織内の装置の遠位端部の対応する位置に基づいて仮想マップ上に重ね合わされてもよい。
【0072】
図14A及び14Bは、グラフィカルユーザーインターフェースに表示された仮想の血管マップの1つの例を示す。実施形態において、円形部290は、血管の管腔を表している。正方形部292は、操縦装置の作業空間を表している。正方形の隅部294は、枝部120のアンカーポイントを表している。暗点296は、先端部またはアイレット128の現在の位置を表している。暗点296は、継続してリアルタイムで更新することができる。複数の明点298は、先端部またはアイレット128の記録された前の位置を表す。仮想インターフェイス上の医用画像(例えばMRI)のオーバーレイ299が、
図14Bに示されている。この画像の例では、画像上の暗い箇所が、ガイドワイヤの先端部のナビゲーションにおける仮想的な標的である閉塞(occlusion)内の開口部である。一実施例として、表示装置をハンドル110に直接取り付けてもよい(例えば、LCDまたはLEDスクリーン)。または、表示装置は個別の多数の発光ダイオードを備えてもよい。この発光ダイオードは、装置の作業空間を示すように配置され、前回と今回の装置の位置を示すために用いられる異なる色のLEDを備える。
【0073】
図15は、グラフィカルユーザーインターフェース300の一例を示す。実施形態において、円形部310は血管の管腔を仮想的に表している。矩形部312は、操縦装置100の作業空間を表している。また矩形部の隅部は、枝部のアンカーポイント124を表している。星314は、先端部またはアイレット128の現在位置を表しており、この現在の位置はリアルタイムで更新されている。円弧318は、追跡された紐の長さを表し、それらの交点から、314によって表されるアイレット128の現在の位置を推定する。暗点316は、ユーザーによって記録された前回の目的の位置を表している。
【0074】
図16は、提案した装置をイメージングの目的で利用する概念を示している。一実施例として、センサ134や送信機を含むアイレット128は、異なる位置320に移動させることができる。それぞれの位置において、信号322の超音波バーストなどが送信され、目的の標的組織324から反射される。反射された信号325は、その後にセンサ134によって感知され得る。センサや送信機を含むアイレット128を、320などの異なる位置に移動することにより、所望の目的領域をスキャンすることができ、また3D超音波画像等の画像を再構築する目的で測定値を得ることができる。
【0075】
一実施例として、
図17に示されるように、独立した装置が内部カテーテル130の内部に挿入されている。この装置は、トランシーバーまたはセンサ330を備える。一実施例として、このセンサ330は力センサであってもよい。センサ330を使って既知の機械的励起(mechanical excitation)を目的の組織に与え、センサ330で計測可能な機械的応答を得ることができる。アイレット128をスキャンしかつ移動させることによって、センサ330を異なる位置に移動させ、所望の目的領域をスキャンすることができ、イメージング(例えばエラストグラフィ)のための計測値を取得することができる。
【0076】
図18Aと18Bは、装置の組み込みシステムとホストコンピュータとで実行されるプログラムのフローチャート400Aおよび400Bを示す。
図18Aによれば、装置の既知の位置を用いて目的の表面全体をカバーし、そこから測定値を得ることができる。一実施例として、装置の位置はユーザーによって手動で動かすことができ、またはその代わりにハンドル110内の機構に連結されたアクチュエータによって自動的に動かすことができる。
図18Bには、装置の組み込みシステムとホストコンピュータとで実行できるソフトウェアのフローチャートが示されている。このソフトウェアは装置がどのようにして他の潜在的な測定値とともに位置を知るかを説明している。その測定値は、例えば内部カテーテル130内のガイドワイヤ132などの所望の目的の装置の挿入長を追跡する装置やセンサの先端部にてセンサ134から得られる測定値である。この測定値を使って、装置の作業空間内の枝部124に対するガイドワイヤ132の先端部の仮想3D描画を提供することができる。そのような情報は、上述した
図18Aのフローチャート内の方法に基づいて構成された画像に重ね合わせて表示されてもよい。
【0077】
フローチャート400Aは概して、402にてキャリブレーションと初期化(n=1)とをすることと、続いて404にて先端部(センサを含む)を位置(x
n,y
n)に移動させることからなる。次のステップ406は、位置(x
n,y
n)のセンサで計測値を取得することに関連する。次に408にてシステムは表面全体がカバーされているかどうかをチェックする。もしカバーされていない場合、その方法はステップ404に戻る。Yesの場合、その方法は進んで410にてn回の計測結果全てに基づいてマップを再構築する。
【0078】
フローチャート400Bは概して、412にて再構築されたマップまたは登録された画像を描画及び読み込むことと、続く414にて内部カテーテルの(x, y)座標を計測することとからなる。続く416にて、可能であれば、内部カテーテル内の装置100の軸方向の挿入を計測する。最後に418にて、(x,y,z)の計測値に基づいて、マップまたは登録された画像に、仮想の描画された装置画像を重ね合わせる。
【0079】
したがって、患者の血管の管腔内または心腔内に装置100を配置および追跡する方法について理解できるであろう。方法によっては、ガイドワイヤ132または介入装置を誘導する電気機械式操縦装置システムを提供することが必要である。電気機械式操縦装置システムは、拡張可能な枝部120を有するカテーテル132とアイレット128とを含むことができ、それはハンドル110によって作動される一組の紐126によって制御される遠位端部にあってもよい。そのシステムは、一つ以上の介入装置、カテーテル132および一組の紐126に取り付けられる複数のセンサと、その複数のセンサと通信可能に接続されたコンピューティング装置とを含むことができる。コンピューティング装置は、例えば少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサに動作可能に連結されるメモリおよびGUI表示装置を含むことができる。メモリは、少なくとも1つのプロセッサによって呼び出される指示を保存するようになっている。配置・追跡エンジンは、介入装置の位置を追跡するとともに、画像の描画および可視化のために通信するようになっている。GUI表示装置は、コンピューティング装置と通信可能に接続されている。方法には、ハンドル110を動作させることにより、介入装置の先端部を所望の位置に動かすことを含めることができる。この方法には、所望の位置の複数のセンサから計測結果を取得することを含めることができる。方法は、取得した計測結果に基づいて、目的の血管の管腔内または心腔のマップを再構築することをさらに含めることができる。方法には、配置・追跡エンジンを用いて、仮想的に描かれた装置画像を描画すること及び読み込むことを含めることができる。方法には、カテーテルの位置を複数のセンサから計測することと、カテーテル内にある介入装置の軸方向の挿入を複数のセンサから計測することとを含めることができる。最後に、方法によっては、GUI表示装置に表示された重ね合わせ画像における計測値に基づくマップに、仮想的に描かれた装置画像を重ね合わせることをさらに含む。
【0080】
図19Aは、ステントグラフト420の内部に配置された拡張可能構造体を示している。ステントグラフト420は、腹部大動脈瘤422内に配置されており、治療手順の一部として装置がどの様に使用できるかを示唆している。装置100を使用することで、ガイドワイヤ132をステント424の枝部や開口部に向けて操縦する目的で操縦し、メインステント420をゲートカニュレーションのために腎動脈426等の枝分かれした動脈と接続することができる。
【0081】
図19Bは、操縦装置100の別の使用方法を提案しており、腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術の手順の一部として、ゲートカニュレーションのための可能な配置位置を示唆している。この設定では、拡張可能構造体112は、上部大腿動脈430の開口部の近くに配置されている。また拡張可能構造体112を用いてゲートカニュレーションのためにガイドワイヤ132を操縦している。
【0082】
図20には、別の実施形態における拡張可能構造体112が示されている。図示されているように、その構造体は、それが鞘部122の外に進むかまたは配置されたときに、特定の方向を向くように構成されてもよい。これにより、EVAR手順のためのゲートカニュレーションなどの特定の介入を容易にする可能性がある。
【0083】
図21は、大動脈内に配置された拡張可能構造体112を示す。これにより、大動脈弁440を通り越すようにガイドワイヤやカテーテルを操縦しやすくし、大動脈弁移植術の一部として応用することを示唆している。
【0084】
図22Aは、左心房に位置する拡張可能構造体112を示している。これは、僧帽弁442の移植手術の一部として、ガイドワイヤまたはカテーテルを操縦すること、あるいは、左心室444においてカテーテル手術を行うことを目的とするものである。
【0085】
図22Bは、左心房に位置する拡張可能構造体112を示している。一例として、心房細動を治療するための心臓カテーテル法において操縦装置を使用することで、アブレーションカテーテル446を所望の標的の場所に配置、追跡及び操縦することができる。
【0086】
図23は、右心房内に配置された拡張可能構造体112を示す。これは、正確かつ信頼できる心房間膜452の経中隔穿刺ができるように針450をナビゲーションすることを目的としている。
【0087】
図24は、別の実施形態の拡張可能構造体112を示す。この拡張可能構造体112では、網状の構造体を用いて紐126を拡張および支持し、内部カテーテルとそのアイレット128または先端部とを操縦およびナビゲーションできるようにしている。
【0088】
図25は、別の実施形態の拡張可能構造体112の側面図を示している。この実施形態に示されている様に、バルーン462が内部カテーテル130に連結されてもよい。バルーン462のための導管は、内部カテーテル130の長さ方向に沿って延びていてもよい。このバルーン462は膨らませてもよい。そして、一実施形態によれば、バルーン462が膨らむことで拡張可能構造体や枝部120に圧力を加えられる。この機構を用いることで、それが材料の機械的特性のみに依存してそれ自体で拡張できない場合に、自己拡張構造体を拡張させることができる。
【0089】
別の一実施例として、2組の操縦機構を装置の長さに沿って異なる位置で使用することにより、ガイドワイヤの位置調整だけでなくガイドワイヤを曲げることもできるようになる。そのような一実施例において、第2の操縦機構は
図2及び3に示されたものと同様のものであり、固定されたまたは移動可能な第1の操縦機構から位置をずらされた装置に組み込むことができる。ガイドワイヤが通過する2つのアイレット間の距離に応じて、それぞれの操縦機構を独立して制御することで、ガイドワイヤの曲がり具合と、その位置とを同時に調整できる。
【0090】
また、さらに別の実施形態として、超音波振動子等のイメージング装置をアイレット128の操縦セクションに接続し、ボリューメトリック画像の再構築(例えば、1つの超音波振動子から2D超音波)のためにイメージング装置の位置を追跡できるようにしてもよい。別の一実施形態として、超音波振動子アレイや光学イメージング装置などのイメージングプローブを鞘部や枝部120に接続し、組織のイメージングと同時に、ガイドワイヤやカテーテルの操縦および追跡を可能にできる。
【0091】
またさらに別の実施形態として、様々なイメージングセンサや、それらを組み合わせたものをセンサ134として用いてもよい。イメージングセンサは、例えばコリメーターやフィルターまたはこれらを組み合わせたものを有する、光学センサ、超音波センサ/振動子、放射能検出器、シンチレータ、光電子増倍管および高周波アンテナ等である。また別の実施形態として、レーザー光源を内部カテーテル130内に配置して、装置で得た画像情報の有無に関わらず得られた追跡情報に基づいて、既知の所望の標的を治療する手段を提供してもよい。
【0092】
他の実施形態として、操縦のための作動方法として、機械的なもの(すなわち紐126)に代えて電磁気的なものであってもよい。その様な実施形態において、電場発生装置または磁場発生装置(例えばコイル)を枝部120またはアイレット128に接続してもよい。これにより枝部と操縦される開口との間に相対的な力を発生させて、枝部に対するアイレットの位置調整を行うことができる。他の実施形態として、紐をニチノールワイヤーと取り替えてもよい。ニチノールワイヤーは電流を使って拡張・格納でき、アイレット128の位置の調整を行うことができる。
【0093】
一実施形態として、鞘部122は操縦可能であり、かつ、鞘部122の先端に接続された他の枝部がハンドル内に作動(すなわち引っ張られる)されてもよい。これにより鞘部122の操縦およびナビゲーションにおいて他の自由度を与えることができる。
【0094】
他の実施形態として、内部カテーテル130を操作するために用いられる1本、2本、または3本の紐126があってもよい。
【0095】
他の実施形態として、バルーンを内部カテーテルに組み込んでもよい。バルーンは膨張させることができ、かつ、所望の組織に対して内部カテーテル130を固定するのに用いてもよい。
【0096】
一実施例として、ユーザーがハンドル110のホイール142,144を押したりクリックしたりすることで、目的の現在位置を記録したりするアプリケーション用にグラフィカルユーザーインターフェースと相互作用できるようにしてもよい。
【0097】
本明細書に記載の、装置、システム、及び方法は、様々に応用できる。例えば、上述したシステムを、血管形成手術のためのガイドワイヤのナビゲーションに用いることができる。一つの応用例として上述したシステムを、EVARや経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)のおけるガイドワイヤの操縦に用いることができる。一つの応用例として、上述したシステムを使ってカテーテル法(例えば心臓アブレーションまたは冷凍アブレーションあるいはリード留置)におけるカテーテルのナビゲーションをしたり、心臓カテーテル法における経中隔穿刺のための針の位置調整をしたりすることができる。さらに他の例として、システマチックかつ制御可能なアプローチで行う心臓治療において、上述したシステムを使って薬物や幹細胞の標的輸送ための薬物輸送カテーテル(例えば注射針)を操作及びナビゲートしてもよい。さらに別の例として、提案したシステム及び方法を生体組織検査または腫瘍学における応用として治療(例えば肺の生体組織検査や大腸内視鏡検査)の輸送に用いてもよい。
【0098】
本明細書に記載の装置、システム、及び方法により、ガイドワイヤやカテーテルに修正を加えることなく、カテーテル及びガイドワイヤの操縦能力を提供することができる。本明細書で提案したアプローチにより、ガイドワイヤやカテーテルの位置を正確に追跡でき、その結果、血管の管腔や心腔に関してその可視化も可能にする。本発明により、ガイドワイヤやカテーテルの正確な5つのDOFでの連続的な位置制御が可能となる。この新たなアプローチにより、従来のガイドワイヤやカテーテルの操作技術に関連する動き制御において、ユニークな特徴とともに2つの追加のDOFを提供する。このユニークな特徴により、正確な局所位置の制御および追跡だけでなくサポート及びアンカリングが可能となる。
【0099】
実施形態において、本明細書に開示された装置およびそれらの部品またはシステムは、コンピューティング装置、マイクロプロセッサ、および他のコンピュータやコンピューティング装置等を含む。これらは入力データとしてデジタルデータに対応するプログラム可能な任意の装置であってもよく、命令またはアルゴリズムに従って入力データを処理し、かつ、出力として結果を提供するようになっている。一実施例として、本明細書で議論したコンピューティング装置およびその他の装置は、コンピュータプログラムの命令を実行するようになっている中央処理装置(CPU)を備え、含み、またはこれに結合されてもよい。また、本明細書で議論したコンピューティング装置や同様の装置は、基本的な算術演算、論理演算、および入力/出力操作を実行するように構成されている。
【0100】
本明細書に開示されたコンピューティング装置やその他の装置はメモリを含むことができる。メモリはコンピューティング装置またはプロセッサを連結させることにより、必要に応じて揮発性メモリや不揮発性メモリを用いることができる。これにより、命令またはアルゴリズムを実行するための領域を提供するだけでなく、命令それ自体を記録するための領域を提供することができる。実施形態において、揮発性のメモリは、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、またはスタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)を含むことができる。実施形態において、不揮発性のメモリは、例えばリードオンリーメモリ、フラッシュメモリ、強誘電体RAM、ハードディスク、フロッピーディスク、磁気テープ、または光ディスクストレージを含むことができる。上述したリストは、使用できるメモリの種類を限定するものではない。なぜなら、これらの実施形態は例として挙げただけのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないからである。
【0101】
実施形態において、システムまたはその構成要素は、様々なエンジンを有するまたは含む。それぞれのエンジンは、機能または組み合わされた機能を自律的に実行するように構築され、プログラムされ、構成され、そうでなければ適応されている。本明細書で使用した「エンジン」という用語は、実世界の装置、部品または部品の配置であって、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)や、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)によるハードウェア、あるいは、マイクロプロセッサシステムおよびそのマイクロプロセッサシステムを(実行されながら)専用装置に転換させる特定機能を実行するためのエンジンを適合させる1セットのプログラム命令によるハードウェアとソフトウェアとを組み合わせたものとして定義できる。エンジンは、ハードウェアのみによって促進される特定の機能と、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって促進される他の機能との、2つを備えた組み合わせとして実装することもできる。特定の実装形態として、すべてのエンジンの少なくとも一部、あるいは、場合によってはエンジンのすべての部分が、ハードウェアを構成する、1つ以上のコンピューティングプラットフォームのプロセッサ上で実行される。(ハードウェアとしては、例えば、1つまたは複数のプロセッサ、メモリまたはドライブストレージなどのデータ記憶装置、ネットワークのインターフェイス装置等の入力/出力を行う装置、映像装置、キーボード、マウス、またはタッチスクリーン装置などである)。このハードウェアは、マルチタスキング、マルチスレッディング、適切な分散(クラスター、ピアツーピア、クラウドなど)処理または他の技術などを使ってエンジンを実装しながら、オペレーティングシステム、システムプログラム、およびアプリケーションプログラムを実行するものであってもよい。したがって、各エンジンは、物理的に実現可能なさまざまな構成であるということが理解できる。そして、各エンジンは、限定することを明示的に述べない限り、概して本明細書に例示された形態に限定されるべきではない。加えてエンジンそれ自体を2以上の複数のサブエンジンで構成できる。ここで、各サブエンジンは、それ自体をエンジンと見なすことができる。さらに、本明細書に記載の実施形態において、さまざまなエンジンの各々は、規定された自律機能に対応している。しかしながら、他の計画された実施形態として、各機能を2以上のエンジンに分散させられることを理解されたい。同様に、他に計画した実施形態として、複数の規定された機能が、1つのエンジンによって実装されてもよい。この1つのエンジンは、複数の機能を実行するとともに、出来る限り他の機能も実行できる。またはそのエンジンは、本明細書に具体的に例示されたものとは異なるように一組のエンジンに分配される。
【0102】
本明細書では、様々な実施形態のシステム、装置、及び方法について説明した。これらの実施形態は、例としての挙げたにすぎず、特許請求の範囲に記載の発明の範囲を限定することを意図するものではない。さらに、説明した実施形態の様々な特徴を様々な方法で組み合わせて多数の追加の実施形態を作り出せることを理解されたい。さらに、開示した実施形態で用いる様々な材料、寸法、形状、構成および配置などについて説明してきたが、開示したもの以外のものをクレームした発明の範囲を超えることなく利用できる。
【0103】
関連する技術分野における当業者であれば、本明細書の主題が、上記の個々の実施形態で示したものよりも少ない特徴を含んでもよいことが理解できるであろう。本明細書に記載の実施形態は、本明細書の主題の様々な特徴を組み合わせることのできる方法での徹底的な提案を示すものではない。それゆえ実施形態は、相互に排他的な特徴の組み合わせではなく、むしろ様々な実施例は当技術分野における当業者によって理解されるように、異なる個々の実施例から選択された異なる個々の特徴の組み合わせを含むことができる。さらに、一実施形態に関して記載された要素は、そのような実施例において特記しない限り、他の実施形態において実装することができる。
【0104】
従属請求項はその請求項において、一つ以上の他の請求項との特定の組み合わせについて言及してもよい。他の実施形態も同様に、従属請求項とそれぞれの他の従属請求項の主題との組み合わせ、または1つ以上の特徴と他の従属請求項または独立請求項との組み合わせを含むことができる。そのような組み合わせは、組み合わせる意図がないとの記載がない限り、本明細書で提案されている。
【0105】
上記の文書の参照による援用は、本明細書の明示的な開示に反する主題が援用されないように制限される。上記の文書の参照による援用はさらに、文書に含まる請求項が参照により本明細書に援用されないように制限される。上記の文書の参照による援用は、文書に提供されているいかなる定義も本明細書に明示的に含まれていない限り、参照により本明細書に援用されないようにさらに制限される。
【0106】
請求項を解釈する目的で、請求項に「手段」または「ステップ」という特定の用語が記載されていない限り、35U.S.C.§112(f)の規定は発動されないことが明確に意図されている。
【国際調査報告】