特表2021-522032(P2021-522032A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-522032脾神経活性を調整するために超音波通信を用いる埋め込み
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-522032(P2021-522032A)
(43)【公表日】2021年8月30日
(54)【発明の名称】脾神経活性を調整するために超音波通信を用いる埋め込み
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20210802BHJP
   A61N 1/378 20060101ALI20210802BHJP
   A61B 5/24 20210101ALI20210802BHJP
   A61B 5/05 20210101ALI20210802BHJP
【FI】
   A61N1/36
   A61N1/378
   A61B5/04 A
   A61B5/05 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】71
(21)【出願番号】特願2021-506382(P2021-506382)
(86)(22)【出願日】2019年4月19日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月4日
(86)【国際出願番号】US2019028381
(87)【国際公開番号】WO2019204769
(87)【国際公開日】20191024
(31)【優先権主張番号】62/660,109
(32)【優先日】2018年4月19日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520404344
【氏名又は名称】イオタ バイオサイエンシズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IOTA BIOSCIENCES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(72)【発明者】
【氏名】カルメナ, ジョセ エム.
(72)【発明者】
【氏名】マハービズ, マイケル エム.
(72)【発明者】
【氏名】ニーリイ, ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ケイ, ジョシュア
【テーマコード(参考)】
4C053
4C127
【Fターム(参考)】
4C053JJ03
4C053JJ05
4C053JJ18
4C053JJ21
4C053KK01
4C053KK10
4C127AA01
4C127DD03
(57)【要約】
本明細書に記載されるのは、被験者における免疫系をモニター又は調整する方法、炎症を治療、低減若しくはモニターする方法、血圧をモニターする方法、高血圧を治療する方法、又は埋め込まれた医療装置を使用して脾神経を電気的に刺激するか若しくは脾神経活性を検出することによって、患者の炎症又は高血圧の治療を実施若しくは調整するための方法である。また、本明細書に記載されるのは、そのような方法を行うための埋め込み可能な医療装置である。埋め込まれた医療装置は、超音波を受信し、超音波からのエネルギーを装置に電力を供給する電気エネルギーに変換するように構成される超音波変換器と、脾神経を電気的に刺激するか又は脾神経活性を検出するように構成される、超音波変換器と電気的に通信する2つ以上の電極と、任意に脾神経取り付け部とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の免疫系を調整する方法であって、
外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、
前記超音波からのエネルギーを、前記被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、前記装置は前記被験者の脾神経と電気的に連絡している2つ以上の電極を備える、変換することと、
前記装置を使用して前記脾神経を電気的に刺激することと、
を備える、方法。
【請求項2】
被験者の炎症を低減する方法であって、
外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、
前記超音波からのエネルギーを、前記被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、前記装置は前記被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、
前記装置を使用して前記脾神経を電気的に刺激することであって、その刺激は、前記被験者の炎症を低減するよう構成される、刺激することと、
を備える、方法。
【請求項3】
被験者の炎症性疾患を治療する方法であって、
外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、
前記超音波からのエネルギーを、前記炎症性疾患を有する前記被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、前記装置は前記被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、
前記装置を使用して前記脾神経を電気的に刺激することであって、その刺激は前記被験者の炎症を低減するように構成される、刺激することと、
を備える、方法。
【請求項4】
被験者の炎症性サイトカインの血中濃度を調整する方法であって、
外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、
前記超音波からのエネルギーを、前記被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、前記装置は前記被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、
前記装置を使用して前記脾神経を電気的に刺激することであって、その刺激は、前記被験者の前記炎症性サイトカインの前記血中濃度を調整するよう構成される、刺激することと、
を備える、方法。
【請求項5】
前記方法が、前記炎症性サイトカインの脾臓放出を調整する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、前記被験者の前記炎症性サイトカインの前記血中濃度を増加させる、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、前記炎症性サイトカインの前記血中濃度を低減させる、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項8】
前記炎症性サイトカインは、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−1β(IL−1β)、又は高移動度グループボックス1(HMGB1)である、請求項4乃至7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記脾神経を電気的に刺激することが、前記被験者の1つ以上の免疫細胞の活性化を調整する、請求項1乃至8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記脾神経を電気的に刺激することが、前記被験者の前記1つ以上の免疫細胞の活性化を高める、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記脾神経を電気的に刺激することが、前記被験者の前記1以上の免疫細胞の活性化を低減する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記脾神経を電気的に刺激することが、前記被験者のナチュラルキラー(NK)細胞の活性化を調整する、請求項9乃至11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記脾神経が、1ms未満の長さの1つ以上の電気パルスを使用して電気的に刺激される、請求項1乃至12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記脾神経が、約100μs〜400μsの長さの1つ以上の電気パルスを使用して電気的に刺激される、請求項1乃至13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記脾神経が、約750μA〜約10mAの振幅を有する1つ以上の電気パルスを使用して電気的に刺激される、請求項1乃至14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記脾神経が、1つ以上の方形波電気パルスを使用して電気的に刺激される、請求項1乃至14の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記脾神経が、二相電気パルスを使用して電気的に刺激される、請求項1乃至15の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記二相電気パルスは、カソード相が続くアノード相を備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記脾神経は、2つ以上の電気パルスを備える複数のパルス列を使用して電気的に刺激され、前記パルス列は約500ms以上の滞留時間によって分離される、請求項1乃至18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
被験者の免疫系をモニターする方法であって、
外部の超音波変換器から超音波を受信することと、
前記超音波からのエネルギーを、前記被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、前記装置は前記被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、
前記脾神経の電気的活性を検出することと、
前記脾神経の前記電気的活性に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射することと、
前記被験者の前記免疫系の状態の変化を示す、ベースラインの電気的活性に対する電気活性の偏位をモニターすることと、
を備える、方法。
【請求項21】
前記脾神経の前記電気的活性の増加が免疫系活性の増加を示す、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、前記被験者の炎症をモニターすることであって、前記脾神経の前記電気的活性の変化が、前記被験者における炎症の変化を示す、モニターすることを備える、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、前記被験者に実施される療法をモニターすることを備える、請求項20乃至22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記療法を前記被験者に実施することをさらに備える、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記療法が抗炎症療法である、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記抗炎症療法が、検出された炎症の増加に応じて実施される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
被験者の炎症に対する療法を実施する方法であって、
外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、
前記超音波からのエネルギーを、前記被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、前記装置は前記被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、
前記脾神経の電気的活性を検出することと、
前記脾神経の電気活性を符号化する超音波後方散乱を放射することと、
前記脾神経の前記電気活性の偏位を、前記脾神経のベースラインの電気的活性と比較してモニターすることと、
前記脾神経の前記電気的活性の前記偏位が炎症応答を示している場合に抗炎症療法を実施することと、
を備える、方法。
【請求項28】
被験者に実施される療法を調節する方法であって、
外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、
前記超音波からのエネルギーを、前記被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、前記装置は前記被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、
前記脾神経の電気的活性を検出することと、
前記脾神経の電気活性を符号化する超音波後方散乱を放射することと、
外部装置で前記超音波後方散乱を受信することと、
前記脾神経の前記電気的活性の偏位を、前記脾神経のベースラインの電気的活性と比較してモニターすることであって、前記偏位は、前記被験者の免疫系状態の変化を示す、モニターすることと、
前記被験者の免疫系状態の前記変化に基づいて前記療法を調節することと、
を備える、方法。
【請求項29】
免疫系状態の前記変化は炎症応答の変化である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記被験者に前記療法を実施することをさらに備える、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記療法が抗炎症療法である、請求項28乃至30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記抗炎症療法が所望の効果をもたらさないか、又は望ましくない炎症応答をもたらす場合に、前記抗炎症療法が調節される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗炎症療法が所望の効果を得る場合、前記抗炎症療法は中止される、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
被験者の血圧を調整する方法であって、
外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、
前記超音波からのエネルギーを、前記被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、前記装置は前記被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、
前記装置を使用して前記脾神経を電気的に刺激することであって、その刺激は、前記被験者の血圧を調整するよう構成される、刺激することと、
を備える、方法。
【請求項35】
被験者の高血圧を治療する方法であって、
外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、
前記超音波からのエネルギーを、前記被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、前記装置は前記被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、
前記装置を使用して前記脾神経を電気的に刺激することであって、その刺激は、前記被験者の高血圧を低減するよう構成される、刺激することと、
を備える、方法。
【請求項36】
前記脾神経を電気的に刺激することが、脾神経活性を遮断することを備える、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
埋め込み可能なの前記医療装置が電池を含まない、請求項1乃至36の何れか一項に記載の方法。
【請求項38】
埋め込み可能なの前記医療装置が無線周波数通信システムを含まない、請求項1乃至37の何れか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記埋め込まれた医療装置が、最長寸法で約5mm以下の長さを有する、請求項1乃至38の何れか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記埋め込まれた医療装置が、約5mm以下の体積を有する、請求項1乃至33の何れか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記被験者が抗環状シトルリン化ペプチド(抗CCP)陽性であるか、又は疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)に応答しない、請求項1乃至40の何れか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記被験者がヒトである、請求項1乃至42の何れか一項に記載の方法。
【請求項43】
埋め込み可能な医療装置であって、
超音波を受信し、前記超音波からのエネルギーを前記装置に電力を供給する電気エネルギーに変換するように構成される超音波変換器を備える本体と、
前記超音波変換器と電気的に連絡する2つ以上の電極であって、前記電極は脾神経を電気的に刺激するか、又は脾神経活性を検出するように構成される、電極と、
前記本体に取り付けられる脾神経取り付け部であって、前記脾神経取り付け部は前記装置を前記脾神経又は脾動脈に取り付け、前記2つ以上の電極を前記脾神経と電気的に連絡するように配置するように寸法決めされ、構成される、脾神経取り付け部と
を備える、埋め込み可能な医療装置。
【請求項44】
前記2つ以上の電極が、
前記脾神経を電気的に刺激するように構成される第1の電極及び第2の電極と、
前記脾神経活性を検出するように構成される第3の電極及び第4の電極と、を備える、請求項43に記載の埋め込み可能な医療装置。
【請求項45】
請求項43又は44に記載の埋め込み可能な医療装置と、
前記埋め込み可能な医療装置に前記超音波を送信するように構成されるインテロゲータであって、前記超音波は、検出された脾神経活性、検出された脾神経活性の変化、生理学的状態、又は生理学的状態の変化に応答してトリガ信号をさらに符号化する、インテロゲータと、
を備える閉ループシステム。
【請求項46】
複数の二相電気パルスを備えるパルス列を使用して被験者の脾神経を電気的に刺激することを備える、前記被験者の免疫系を調整する方法。
【請求項47】
前記二相電気パルスは、カソード相が続くアノード相を備える、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対する相互参照]
本出願は2018年4月19日に出願された米国仮出願第62/660,109号に対する優先権の利益を主張し、これは、あらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野] 本発明は、免疫系をモニター若しくは調整する方法、炎症を治療、軽減若しくはモニターする方法、血圧をモニター若しくは調整する方法、高血圧を治療する方法、又は埋め込まれた医療装置を使用して脾神経を電気的に刺激するか若しくは脾神経活性を検出することによって、患者における炎症若しくは高血圧のための療法を実施若しくは調節する方法に関する。本発明はさらに、そのような方法を行うための埋め込み可能な医療装置に関する。
【背景技術】
【0003】
関節リウマチ、クローン病、大腸炎、ループス、脊椎炎などの炎症性疾患は世界中で何百万人もの人々が罹患し、毎年数十億ドルを超える年間の医療費がかかっている。さらに、多くの炎症性疾患に対して、医薬品で治療される患者は、最終的にこれらの薬物への感度を減じることになる。炎症症状は、炎症を引き起こす免疫細胞やサイトカインを血流中に放出させる働きのある脾臓の活動を調整することで制御できる。
【0004】
迷走神経に電気パルスを放射する埋め込み可能な装置が開発されており、これは炎症を調整するのに役に立つことができる。迷走神経は、肝臓、胃、心臓、肺、腎臓、及び腸を含む、他の多くの臓器と接続する神経のネットワークを介して、脾臓につながる脾神経に影響を及ぼし、連絡している。したがって、迷走神経に伝達される電気パルスは脾臓の活動だけでなく、多くの他の器官の活動も調整し、望ましくない副作用をもたらす。例えば、迷走神経刺激は、声帯痛、心拍数の低下、及び脳の長期変化をもたらしうる。
【0005】
本明細書で参照されるすべての刊行物、特許、及び特許出願の開示は、それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれる任意の参照が本開示と矛盾する場合、本開示が優先するものとする。
【発明の概要】
【0006】
免疫系をモニター若しくは調整する方法、炎症を治療、軽減若しくはモニターする方法、血圧をモニター若しくは調整する方法、高血圧を治療する方法、又は埋め込まれた医療装置を使用して脾神経を電気的に刺激するか若しくは脾神経活性を検出することによって、患者における炎症若しくは高血圧のための療法を実施若しくは調節する方法が本明細書で記載される。
【0007】
いくつかの実施形態では、脾神経活性及び刺激が閉ループ系において行われ、ここで脾神経は、検出された脾神経活性又は検出された脾神経活性の変化に応答して刺激される。これらの方法を行うための埋め込み可能な医療装置が、本明細書でさらにさらに記載される。いくつかの実施形態では、被験者の免疫系を調節する方法であって、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、超音波からのエネルギーを、被験者の脾神経と電気的に連絡している2つ以上の電極を含む、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することと、装置を使用して脾神経を電気的に刺激することと、を備える方法がある。免疫系は例えば、炎症性サイトカイン(腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−1β(IL−1β)、又は高移動度グループボックス1(HMGB1)など)の血中濃度を調整(増加又は減少)し、及び/又は免疫細胞活性化を調整(増加又は減少)すること(ナチュラルキラー(NK)細胞活性化の減少など)によって調節され得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、被験者の炎症を低減する方法であって、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、超音波からのエネルギーを、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、装置が被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、装置を使用して脾神経を電気的に刺激することと、を備え、その刺激が被験者の炎症を低減するように構成される方法がある。いくつかの実施形態では、炎症は自己免疫疾患によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、炎症は、関節リウマチ、クローン病、大腸炎、ループス、又は脊椎炎によって引き起こされる。
【0009】
いくつかの実施形態では、被験者の炎症性疾患を治療する方法であって、外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、前記超音波からのエネルギーを、炎症性疾患を有する被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、装置が被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を含む、変換することと、装置を用いて脾神経を電気的に刺激することであって、その刺激は被験者の炎症を低減するように構成される、刺激することと、を含む方法がある。いくつかの実施形態では、炎症性疾患は自己免疫疾患である。いくつかの実施形態では、炎症性疾患は、関節リウマチ、クローン病、大腸炎、ループス、又は脊椎炎である。
【0010】
いくつかの実施形態では、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、超音波からのエネルギーを、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、装置が被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、装置を使用して脾神経を電気的に刺激することであって、その刺激は、被験者の炎症性サイトカインの血中濃度を低減するように構成される、刺激することと、を備える、被験者の炎症性サイトカインの血中濃度を調整する方法がある。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインの血中濃度は、被験者において増加する。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインの血中濃度は、被験者において減少する。いくつかの実施形態では、この方法は、炎症性サイトカインの脾臓放を減少させる。いくつかの実施形態では、炎症性サイトカインは、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−6(IL−6)、(インターロイキン−1β、IL−1βなどの)インターロイキン−1(IL−1)、又は高移動度グループボックス1(HMGB1)である。
【0011】
上記方法のいくつかの実施形態では、脾神経を電気的に刺激することはトリガ信号に応答して生じる。いくつかの実施形態では、トリガ信号が、埋め込まれた医療装置によって受信された超音波において符号化される。いくつかの実施形態では、トリガ信号が脾神経活性に基づく。いくつかの実施形態では、トリガ信号がベースラインの脾神経活性からの偏位に基づく。いくつかの実施形態では、脾神経活性が、埋め込まれた医療装置によって検出される。いくつかの実施形態では、トリガ信号が、測定された生理学的条件にさらに基づく。いくつかの実施形態では、生理学的条件が温度、脈拍数、又は血圧である。いくつかの実施形態では、生理学的条件が、埋め込まれた医療装置によって測定される。
【0012】
上記方法のいくつかの実施形態では、この方法が、脾神経活性又は生理学的条件に関連する超音波後方散乱符号化情報を放射することを備える。いくつかの実施形態では、脾神経活性又は生理学的条件に関連する情報を符号化する超音波後方散乱が、外部装置によって受信される。いくつかの実施形態では、超音波後方散乱が、装置の状態に関連する情報、又は装置によって放射される1つ以上の電気パルスをさらに符号化する。
【0013】
上記方法のいくつかの実施形態では、この方法は、外部装置において、トリガ信号を符号化する超音波を送信することを備える。
【0014】
いくつかの実施形態では、被験者の免疫系をモニターする方法であって、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、超音波からのエネルギーを、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、装置が被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、脾神経の電気的活性を検出することと、脾神経の前記電気的活性に関連する超音波後方散乱符号化情報を発することと、被験者の前記免疫系の状態の変化を示す、ベースラインの電気的活性に対する電気活性の偏位をモニターすることと、を備える方法がある。いくつかの実施形態では、脾神経の電気的活性の増加が免疫系活性の増加を示す。
【0015】
免疫系をモニターする上記方法のいくつかの実施形態では、この方法は、被験者の炎症をモニターすることを備え、ここで、脾神経の電気的活性の変化が被験者の炎症の変化を示す。いくつかの実施形態では、脾神経の電気的活性の増加が被験者の炎症の変化を示す。いくつかの実施形態では、脾神経の電気的活性の減少が被験者の炎症の低減を示す。いくつかの実施形態では、炎症は自己免疫疾患によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、炎症は、関節リウマチ、クローン病、大腸炎、ループス、又は脊椎炎によって引き起こされる。
【0016】
免疫系をモニターする上記方法のいくつかの実施形態では、この方法は、被験者に実施される療法をモニターすることを備える。いくつかの実施形態では、この方法は被験者に療法を実施することをさらに備える。いくつかの実施形態では、療法は抗炎症療法である。いくつかの実施形態では、抗炎症療法は、検出された炎症の増加に応答して実施される。いくつかの実施形態では、抗炎症療法は薬物療法である。いくつかの実施形態では、抗炎症療法は、神経を電気的に刺激することを備える。いくつかの実施形態では、神経は、被験者の迷走神経、腹腔神経節、横隔膜下迷走神経、内臓神経、上腸間膜神経、又は脾神経である。
【0017】
免疫系をモニターする上記方法のいくつかの実施形態では、この方法は、外部装置で超音波後方散乱を受信することを備える。
【0018】
いくつかの実施形態では、被験者の炎症に対する治療を実施する方法であって、外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、超音波からのエネルギーを、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、装置が被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、脾神経の電気的活性を検出することと、脾神経の電気活性を符号化する超音波後方散乱を放射することと、脾神経の電気活性の偏位を、脾神経のベースラインの電気的活性と比較してモニターすることと、脾神経の電気的活性の偏位が炎症反応を示している場合に抗炎症療法を実施することと、備える方法がある。いくつかの実施形態では、療法は薬物療法を備える。いくつかの実施形態では、療法が、神経を電気的に刺激することを備える。いくつかの実施形態では、神経は、被験者の迷走神経、腹腔神経節、横隔膜下迷走神経、内臓神経、上腸間膜神経、又は脾神経である。
【0019】
いくつかの実施形態では、被験者に実施される治療を調節する方法であって、外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、超音波からのエネルギーを、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、脾神経の電気的活性を検出することと、脾神経の電気活性を符号化する超音波後方散乱を放射することと、外部装置で超音波後方散乱を受信することと、脾神経の電気的活性の偏位を、脾神経のベースラインの電気的活性と比較してモニターすることであって、この偏位は、被験者の免疫系状態の変化を示す、モニターすることと、被験者の免疫系状態の変化に基づいて治療を調節することと、を備える方法がある。いくつかの実施形態では、免疫系状態の変化が炎症応答の変化である。
【0020】
いくつかの実施形態では、被験者に実施される療法を調節する方法は、被験者にその療法を実施することをさらに備える。いくつかの実施形態では、療法は抗炎症療法である。いくつかの実施形態では、抗炎症療法が抗炎症療法が所望の効果をもたらさないか、又は望ましくない炎症応答をもたらす場合に調節される。いくつかの実施形態では、抗炎症療法は、抗炎症療法が所望の効果を得た場合に中止される。いくつかの実施形態では、療法は薬物療法を備える。いくつかの実施形態では、療法は、被験者に実施される療法の周波数又は用量を調節することを備える。いくつかの実施形態では、療法が、神経を電気的に刺激することを備える。いくつかの実施形態では、神経は、被験者の迷走神経、腹腔神経節、横隔膜下迷走神経、内臓神経、上腸間膜神経、又は脾神経である。いくつかの実施形態では、療法を調整することは、神経を電気的に刺激するために使用される1つ以上の電気パルスの周波数、電圧、電流、又は持続時間を調節することを備える。いくつかの実施形態では、被験者は、炎症を引き起こす自己免疫疾患を有する。いくつかの実施形態では、被験者は、関節リウマチ、クローン病、大腸炎、ループス、又は脊椎炎を有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、被験者の血圧を調整する方法であって、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、超音波からのエネルギーを、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、装置が被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、装置を使用して脾神経を電気的に刺激することと、を備え、その刺激が被験者の血圧を調整するように構成される、方法がある。
【0022】
いくつかの実施形態では、被験者の高血圧を治療する方法であって、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、超音波からのエネルギーを、被験者における完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、装置が被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、装置を使用して脾神経を電気的に刺激することと、を備え、その刺激が被験者の高血圧を低減するように構成される、方法がある。いくつかの実施形態では、脾神経を電気的に刺激することは脾神経活性を遮断することを備える。いくつかの実施形態では、脾神経を電気的に刺激することは約1kHz以上の周波数で複数の電気パルスを放射することを備える。
【0023】
血圧を調整するか又は高血圧を治療する方法のいくつかの実施形態では、この方法は、トリガ信号に応答して生じる脾神経を電気的に刺激することを備える。いくつかの実施形態では、トリガ信号が、埋め込まれた医療装置によって受信された超音波において符号化される。いくつかの実施形態では、トリガ信号が脾神経活性に基づく。いくつかの実施形態では、トリガ信号がベースラインの脾神経活性からの偏位に基づく。いくつかの実施形態では、脾神経活性が、埋め込まれた医療装置によって検出される。いくつかの実施形態では、トリガ信号が、測定された生理学的条件にさらに基づく。いくつかの実施形態では、生理学的条件が温度、脈拍数、又は血圧である。いくつかの実施形態では、生理学的条件が、埋め込まれた医療装置によって測定される。
【0024】
血圧を調節するか、又は高血圧を治療する方法のいくつかの実施形態では、この方法が、脾神経活性又は生理学的条件に関連する超音波後方散乱符号化情報を放射することを備える。いくつかの実施形態では、脾神経活性又は生理学的条件に関連する情報を符号化する超音波後方散乱が、外部装置によって受信される。いくつかの実施形態では、超音波後方散乱が、装置の状態に関連する情報、又は装置によって放射される1つ以上の電気パルスをさらに符号化する。
【0025】
血圧を調節するか、又は高血圧を治療する方法のいくつかの実施形態では、この方法が、外部装置において、トリガ信号を符号化する超音波を送信することを備える。
【0026】
上記方法の何れかのいくつかの実施形態では、この方法が、外部装置を使用して埋め込み可能な医療装置に電力を供給する超音波を送信することを備える。
【0027】
上記方法の何れかのいくつかの実施形態では、埋め込まれた医療装置が、脾神経及び脾動脈を囲む血管周囲筋膜に完全に埋め込まれる。
【0028】
上記方法の何れかのいくつかの実施形態では、脾神経が脾動脈から分離されない。
【0029】
上記方法の何れかのいくつかの実施形態では、埋め込み可能な医療装置が電池を備えない。
【0030】
上記方法の何れかのいくつかの実施形態では、埋め込み可能な医療装置が無線周波数通信システムを備えない。
【0031】
上記方法の何れかのいくつかの実施形態では、埋め込まれた医療装置が装置の本体から延びる電気リード線を備えない。
【0032】
上記方法の何れかのいくつかの実施形態では、埋め込まれた医療装置が超音波変換器を備える本体を備え、その装置の本体が脾神経又は脾動脈に取り付けられる。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な医療装置は、本体に取り付けられる脾神経取り付け部を含み、ここでこの脾神経取り付け部は、装置を脾神経又は脾動脈に取り付け、2つ以上の電極を脾神経と電気的に連絡するよう配置するように寸法決めされ構成される。
【0033】
上記方法の何れかのいくつかの実施形態では、埋め込まれた医療装置が最長寸法で約5mm以下の長さを有する。
【0034】
上記方法の何れかのいくつかの実施形態では、埋め込まれた医療装置が約5mm以下の体積を有する。
【0035】
上記方法の何れかのいくつかの実施形態では、被験者が抗環状シトルリン化ペプチド(抗CCP)陽性であるか、又は疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)に応答しない。
【0036】
上記方法の何れかのいくつかの実施形態では、被験者はヒトである。
【0037】
埋め込み可能な医療装置であって、超音波を受信し、その超音波からのエネルギーを装置に電力を供給する電気エネルギーに変換するように構成された超音波変換器を備える本体と、超音波変換器と電気的に連絡する2つ以上の電極であって、電極は脾神経を電気的に刺激するか、又は脾神経活性を検出するように構成される、電極と、本体に取り付けられる脾神経取り付け部であって、脾神経取り付け部は装置を脾神経又は脾動脈に取り付け、2つ以上の電極を脾神経と電気的に連絡するように配置するように寸法決めされ、構成される、脾神経取り付け部とを備える、埋め込み可能な医療装置が本明細書に記載されている。
【0038】
埋め込み可能な医療装置のいくつかの実施形態では、脾神経取り付け部は、脾神経又は脾動脈を少なくとも部分的に取り囲むように構成されるクリップを備える。いくつかの実施形態では、クリップが本体の下方に延びる複数の可撓性脚部を備える。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置は、フック又はループを操作することに応答して、可撓性脚部のうちの少なくとも1つを操作するように構成されるフック又はループを備える。いくつかの実施形態では、フック又はループが可撓性脚部のうちの1つの端部に配置される。いくつかの実施形態では、フック又はループが本体の近位に配置される。いくつかの実施形態では、可撓性脚部が湾曲している。いくつかの実施形態では、この脚部は、脚部が本体の下方に延びるにつれて、本体に向かって湾曲する前に、本体から離れるように延びる。いくつかの実施形態では、複数の可撓性脚部が少なくとも1対の脚部を備え、ここでこの一対の脚部は、反対方向に本体から離れてかつ下方に延びる第1の脚部及び第2の脚部を備える。いくつかの実施形態では、第1の脚部及び第2の脚部は本体に接続されたクロスバーによって接続される。いくつかの実施形態では、クロスバーは、可撓部を介して装置の本体に接続される。いくつかの実施形態では、可撓部はヒンジである。いくつかの実施形態では、装置が2対の脚部を備え、この対の脚部それぞれは本体の反対側に配置される。いくつかの実施形態では、脚部が本体の底部表面を介して本体に取り付けられる。いくつかの実施形態では、脚部が本体の側壁を介して本体に取り付けられる。いくつかの実施形態では、脚部が金属、金属合金、セラミック、シリコン、又は非ポリマー材料を備える。
【0039】
上記の埋め込み可能な医療装置のいくつかの実施形態では、脚部がエラストマーコーティング又は非エラストマーポリマーコーティングを備える。いくつかの実施形態では、エラストマーコーティング又は非エラストマーポリマーコーティングが生体不活性である。いくつかの実施形態では、エラストマーコーティング又は非エラストマーポリマーコーティングがシリコン、ポリ(p−キシリレン)ポリマー、ウレタンポリマー、又はポリイミドである。いくつかの実施形態では、脚部のうちの少なくとも1つは、エラストマーコーティング又は非エラストマーポリマーコーティングでコーティングされた外面と、エラストマーコーティング又は非エラストマーポリマーコーティングでコーティングされていない少なくとも1つの電極を備える内面とを備える。
【0040】
上記の埋め込み可能な医療装置のいくつかの実施形態では、本体は底部表面を含み、2つ以上の電極は本体の底部で終端する。
【0041】
上記の埋め込み可能な医療装置のいくつかの実施形態では、2つ以上の電極がクリップ上に配置される。いくつかの実施形態では、クリップが本体の下方に延びる複数の可撓性脚部を備え、2つ以上の電極がその可撓性脚部上に配置される。
【0042】
上記の埋め込み可能な医療装置のいくつかの実施形態では、本体がハウジングを備える。いくつかの実施形態では、ハウジングが生体不活性材料を備えるか、又は生体不活性材料でコーティングされる。いくつかの実施形態では、ハウジングは生体不活性材料を備え、そのハウジングの生体不活性材料はチタン又はセラミックを備える。いくつかの実施形態では、本体が超音波変換器及び2つ以上の電極に電気的に接続された集積回路を備える。
【0043】
上記の埋め込み可能な医療装置のいくつかの実施形態では、集積回路はコンデンサを備えるエネルギー蓄積回路を備える。
【0044】
上記の埋め込み可能な医療装置のいくつかの実施形態では、本体が最長寸法で約5mm以下の長さである。
【0045】
上記の埋め込み可能な医療装置のいくつかの実施形態では、超音波変換器が、脾神経活性に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射するように構成される。いくつかの実施形態では、この情報が、生理学的条件、装置状態、又は放射された電気パルスに関連する情報をさらに備える。いくつかの実施形態では、超音波変換器が、埋め込み可能な装置を動作させるための命令を符号化する超音波を受信するように構成される。いくつかの実施形態では、この命令は、神経に電気パルスを放射させるために埋め込み可能な装置を動作させるトリガ信号を備える。
【0046】
上記の埋め込み可能な医療装置のいくつかの実施形態では、脾神経取り付け部が、装置をヒトの脾神経に取り付けるように寸法決めされ、構成される。
【0047】
上記の埋め込み可能な医療装置のいくつかの実施形態では、埋め込み可能な医療装置が電池を備えない。
【0048】
上記の埋め込み可能な医療装置のいくつかの実施形態では、埋め込み可能な医療装置が無線周波数通信システムを備えない。
【0049】
上記の埋め込み可能な医療装置のいくつかの実施形態では、埋め込まれた医療装置が脾神経取り付け部上で終端することなく、装置の本体から延びる電気リード線を備えない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】埋め込み可能な装置の本体の側面図を示す。この本体は、コンデンサを有する電力回路を含む集積回路に電気的に接続された超音波変換器を含む。この本体はさらに、フィードスルーを含む底面を含み、この底面は、集積回路が装置上の他の場所に配置された電極と電気的に接続することを可能にする。
【0051】
図2】超音波変換器、集積回路、及びコンデンサを含む、埋め込み可能な装置の本体の上面図を示す。
【0052】
図3】超音波変換器と、集積回路と、生理学的条件を測定するように構成することができるセンサとを含む例示的な埋め込み可能な装置を示す。
【0053】
図4】直交して配置された2つの超音波変換器を含む埋め込み可能な装置の本体を示す。この本体はさらに、コンデンサを含む電力回路を有する集積回路を含む。
【0054】
図5】クリップに取り付けられた本体を有する例示的な埋め込み可能な装置を示す。この本体は、脾神経と電気的に連絡する2つ以上の電極に電気的に接続された超音波変換器及び集積回路を含む。このクリップは、神経からの電気生理学的パルスを電気的に刺激又は検出するために、本体を脾神経及び脾動脈に保持し、さらに、電極を所定の位置に保持する。
【0055】
図6】超音波変換器及び集積回路を囲むハウジングを有する本体を含む埋め込み可能な装置の別の例を示す。この本体は、脾神経及び脾動脈を少なくとも部分的に取り囲み、電極を神経と電気的に連絡するように配置するように構成される脚部を含むクリップに取り付けられる。
【0056】
図7】複数の脚部を有するクリップに取り付けられた本体を有する埋め込み可能な装置の別の実施形態の側面図を示す。このクリップは、本体の底面の下で本体に取り付けられる。この脚部は脚部の外側部分は被覆でコーティングされているが、脚部の内側部分はコーティングされていない。この電極はコーティングされておらず、脚部の内側部分に配置されている。
【0057】
図8A】、
図8B】脚部上に配置された電極を有する脚部の2つの例示的な構成を示す。図8Aでは、脚部の内面に沿って配置される単一の電極を脚部が含む。図8Bでは、脚部の内面に沿った異なる位置で終端する複数の電極を脚部が含む。
【0058】
図9A】脚部の末端にフックを有する脚部の一実施形態を示す。
図9B】装置の本体の近位にフックを有する埋め込み可能な装置の一実施形態を示す。図9Bの装置上のフックは本体の反対側の脚部に接続されており、フックを操作することにより、脚部を外向きに屈曲させることが可能である。
【0059】
図10】埋め込み可能な装置と共に使用することができる例示的なインテロゲータを示す。
【0060】
図11】埋め込み可能な装置と通信するインテロゲータを示す。このインテロゲータは、トリガ信号を符号化することができる超音波を送信することができる。この埋め込み可能な装置は、情報を符号化するために埋め込み可能な装置によって調整され得る超音波後方散乱を放射する。
【0061】
図12】集積回路に電気的に接続された超音波変換器及び電極を示す、埋め込み可能な装置の一実施形態の概略図を示す。この集積回路は電力回路を含み、この電力回路は、超音波変換器からの電気エネルギーを格納することができるコンデンサを含む。この集積回路は、情報を符号化するために、電力回路を動作させ超音波変換器を通って流れる電流を変調させることができるデジタル回路又はマルチ信号集積回路(デジタル回路又は変調回路を含むマルチ信号集積回路を有する)をさらに含む。
【0062】
図13A】、
図13B】長さ300μs、1.8mAのパルス振幅、及び二相パルス間の200msの滞留時間を用いた、長さ300μsの単極性のカソード第1の二相性方形波パルス(150μsのカソード相及び150μsのアノード相、60μsの位相間隔を有する)を使用して、脾神経を20分間刺激した、又は刺激しないラットにおけるTNF−α(図13A)及びIL−1β(図13B)血清濃度を示す。
【0063】
図14A】カソード第1の二相方形波パルスを使用して、変動振幅範囲(50μA〜2.5mAの範囲)で、2ms、1ms、400μs、又は200μs(カソード相とアノード相との間で均等に分割され、60μsの位相間隔を有する)の脾神経の刺激に対する誘発ピークトゥピーク(P2P)複合活動電位(CAP)応答を示す。より長いパルスは、同じピークトゥピークCAP応答を引き起こすために、より低いパルス振幅を必要とした。
図14B】2ms、1ms、400μs、又は200μs(カソード相とアノード相との間で均等に分割された、60μsの位相間隔を有する)の間の脾神経の刺激に対する誘発ピークトゥピーク(P2P)複合活動電位(CAP)応答を、変動電荷(印加電流振幅及びパルス長によって決定される)で示す。これは、所与のCAP応答に対して電荷を送出する場合に、より低いパルス長がより効率的であることを実証する。
【0064】
図15】5Hzで脾神経に印加された、300μs(n=7)又は1ms(n=4)(60μsの相間隔で、カソード相とアノード相との間で均等に分割された)、又は刺激されていない(n=24)1.8mAパルスを使用した脾神経刺激(続いてLPS注入)の20分間の完了後の時間の関数としての血清TNF−αレベルを示す。より短いパルス長は、被験者のTNF−αレベルを調節するのにより有効であった。
【0065】
図16】750μA(n=5)、1.0mA(n=6)、1.5mA(n=2)又は1.8mA(n=12)の振幅を用いて、又は非刺激(n=24)で、毎秒5パルス(5Hz)で適用された300μsパルス(カソード相とアノード相との間で均等に分割され、60μsの位相間隔を有する)の列を用いて、20分間の脾神経刺激(続いてLPS注入)の完了後の時間の関数として、血清TNF−αレベルを示す。血清TNF−αレベルを低下させるのに全ての振幅が有効であった。
【0066】
図17】LPS注入の直前(ベースライン)に開始する時間の関数としての血清TNF−αレベルを示す。LPS投与に続く10分間の休止期間の後、脾神経を、300μs(カソード相とアノード相との間で均等に分割され、60μsの位相間隔を有する)パルス長を使用して(n=8)、又は非刺激で(n=24)、30/秒(30Hz)の速度で、1.8mAのアノード第1の二相方形波パルスの列を使用して、40分間刺激した。
【0067】
図18】(1)1.8mA(n=7)の規則的に間隔を置いたパルス(5Hz)、(2)500ms間の10パルス(20Hz)の列、続いて1.5秒の滞留時間(n=5)、又は(3)非刺激(n=24)の何れかを使用して、10分間の安静及びLPS注入が続く、脾神経刺激の20分の完了後に開始する時間の関数としての血清TNF−αレベルを示す。滞留時間が続くパルス列は、被験者の血清TNF−αレベルを調整する際に、規則的に間隔を置いたしたパルスと同じくらい有効であった。
【0068】
図19】二相アノード第1の300μsパルス、又は二相カソード第1の300μsパルス(カソード相とアノード相との位相の間で均等に分割され、60μsの位相間隔を有する)についての変動パルス振幅でのピークトゥピーク(P2)誘発応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本明細書に記載されるのは免疫系をモニター若しくは調整する方法、炎症を治療、軽減若しくはモニターする方法、血圧をモニターする方法、高血圧を処置する方法、又は、例えば埋め込まれた医療装置を使用して、脾神経を電気的に刺激するか若しくは脾神経活性を検出することによって、患者の炎症又は高血圧のための療法を実施又は調節する方法である。埋め込み可能な医療装置は被験者に完全に埋め込まれ、(1)超音波変換器を有する本体、(2)超音波変換器と電気的に連絡し、脾神経を電気的に刺激するか、又は脾神経によって伝達される電気信号を検出するように構成される2つ以上の電極、及び(3)クリップなど、本体に取り付けられる脾神経取り付け部を含むことができる。脾神経取り付け部は、装置を脾神経又は脾動脈に取り付け、2つ以上の電極を脾神経と電気的に連絡するように配置するように寸法決めされ、構成される。
【0070】
埋め込み可能な装置は外部の超音波変換器によって送信され得る超音波を受信し、超音波からのエネルギーを、埋め込み可能な装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することができる。いくつかの実施形態では、脾神経活性を調整するために、埋め込み可能な装置が脾神経を電気的に刺激する。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置が脾神経によって送信された電気信号を検出し、検出された電気信号に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射する。
【0071】
以前の埋め込み可能な装置は、迷走神経又は他の自律神経と接触して配置された末端を有する長い電気リード線に取り付けられた電池式刺激器を使用した。この刺激器から延びる電気リード線は、比較的大きな刺激器が標的神経から離れた位置に埋め込まれることを可能にした。しかし、電気リード線は損傷を受けやすく、埋め込まれた刺激器はその大きさのために悪影響となりやすい。加えて、刺激器内の電池は時間の経過と共に摩耗し、外科手技によって交換する必要がある。
【0072】
炎症を治療するための公知の埋め込み可能な装置とは対照的に、本明細書に記載される埋め込み可能な装置は、超音波変換器が超音波エネルギーをこの装置に電力を供給する電気エネルギーに変換するので、電池無しである。さらに、この埋め込み可能な装置は、電気リード線の損傷及び/又は破損を伴う合併症を回避するために、本体から延びる電気リード線(本体に取り付けられた脾神経取り付け部上に配置された電極を除く)を含まない。電気リード線の代わりに、この埋め込み可能な装置は、装置の本体を神経に直接取り付けるために埋め込むことができるほど十分に小さい。さらに、この埋め込み可能な装置は脾神経上に直接埋め込むことができるほど十分に小さく、これは標的外の神経刺激による合併症を制限する。
【0073】
無線の埋め込まれた神経刺激装置では、効率的なエネルギー使用は重要な関心事である。無線電力送出は、被験者に不可逆的な損傷を引き起こし得る組織加熱に対する安全上の懸念によって制限される。さらに、刺激電極を介する高レベルの電荷注入は、水の電気分解及び電極材料への損傷をもたらし得る。したがって、最小量の電荷を使用して神経組織の最大活性化を達成するように構成される刺激パルスパラメータが一般に好ましい。例えば、いくつかの実施形態では、刺激電気パルスは、長さが1ms未満(例えば、長さが約100μs〜約400μs)である。この長さのパルスは被験者におけるサイトカイン(例えば、TNF−α、IL−6、IL−1β、及び/又はHMGB1)レベル又は免疫細胞(例えば、NK細胞)活性化を効果的に調整し得る。埋め込み可能な装置は、被験者におけるサイトカイン(例えば、TNF−α、IL−6、IL−1β、及び/又はHMGB1)レベルを効果的に調節するために脾神経を刺激し、一方で、組織を刺激するために電荷を効率的に放出してもよい。
【0074】
いくつかの埋め込み可能な装置について、刺激のエネルギー要求が、次の刺激パルスを送出するために十分に再充電されることのできる前に、エネルギー貯蔵装置を枯渇させるシナリオ。これらの状況では、その組織に電気パルスを連続的に印加することは望ましくない場合がある。被験者におけるサイトカインレベルの効果調整は、2つ以上の電気パルスを含むパルス列を適用することによって達成され得、ここで、パルス列は滞留時間によって分離されることが見出された。この滞留時間は装置時間が再充電することを可能にするが、依然として免疫系を効果的に調整する。
【0075】
埋め込み可能な装置は被験者に埋め込まれ、その被験者は哺乳動物であってもよい。いくつかの実施形態では、この被験者は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、サル、又はげっ歯類(ネズミ又はマウスなど)である。いくつかの実施形態では、被験者が抗環状シトルリン化ペプチド(抗CCP)陽性であるか、又は疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)に応答しない。いくつかの実施形態では、被験者は高血圧を有する。いくつかの実施形態では、被験者は自己免疫疾患である場合のある炎症性疾患を有する。一例として、炎症性疾患は、限定されるわけではないが、関節リウマチ、クローン病、大腸炎、ループス、又は脊椎炎であってもよい。
【0076】
本明細書で提供される方法は超音波変換器を有する埋め込まれた医療装置を使用して記載されるが、免疫系調整方法は完全に埋め込まれてもそうでなくてもよい他の適当な装置を使用して行われてもよいことが企図される。それにもかかわらず、記載される埋め込み可能な装置は、記載された免疫系調整方法を実装するために特によく適している。
【0077】
[定義]
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそわないことを指示しない限り、複数の参照を含む。
【0078】
本明細書では、「約」若しくは「おおよそ」の値又はパラメータへの参照は、その値又はパラメータそれ自体に向けられた変動を含む(及び記載する)。例えば、「約X」を指す記載は「X」の記載を含む。
【0079】
本明細書に記載される本発明の態様及び変形は、「それからなる」及び/又は「本質的にそれからなる」態様及び変形を含むことが理解される。
【0080】
本明細書では、用語「被験者」及び「患者」は、脊椎動物を指すために互換的に使用される。
【0081】
本明細書では、用語「治療する」、「治療すること」、「治療」、及び「療法」は、少なくとも1つの症状の軽減、阻害、抑制、若しくは排除を介した異常の改善、疾患若しくは異常の進行の遅延、疾患若しくは異常の再発の遅延、又は疾患若しくは異常の阻害を含む、病状又は異常に苦しむ被験者に利益を提供する任意の行為を同義に指す。
【0082】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の各介在値、及びその明言された範囲内の任意の他の明言された値又は介在値は、本開示の範囲内に包含されることが理解されるべきである。明言された範囲が上限又は下限を含む場合、それらの何れかを除外する範囲もまた、本開示に含まれる。
【0083】
本明細書で記載される様々な実施形態の特性のうちの1つ、いくつか、又はすべては、本発明の他の実施形態を形成するために組み合わせられてもよいことは理解されるべきである。本明細書で使用される項目見出しは、構成的な目的のためでしかなく、記載される主題を制限すると解釈すべきではない。
【0084】
「実施形態」に関連して上述した特徴及び選好は別個の選好であり、その特定の実施形態のみに限定されるものではなく、技術的に実現可能な他の実施形態からの特徴と自由に組み合わせられてもよく、特徴の好ましい組み合わせを形成してもよい。この記載は当業者が本発明を作成及び使用することを可能にするために提示され、特許出願及びその要件の文脈で提供される。記載された実施形態に対する種々の変形は当業者に容易に明らかであり、本明細書での一般的な原理は他の実施形態に適用されてもよい。したがって、本発明は、示された実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に記載された原理及び特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。
【0085】
[免疫系を調整する方法]
脾神経の電気刺激は、脾臓内にある又は脾臓を通過する(ナチュラルキラー(NK)細胞などの)免疫細胞の活性を(減少又は増加させるなど)調整することと同じく、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−1(IL−1)(インターロイキン−1β、IL−βなど)、及び高移動度グループボックス1(HMGB1)などの炎症誘発性サイトカインの放出を調整することにより、免疫系を調整することができる。例えば、脾神経への電気シグナルは増加したノルアドレナリン放出を引き起こすことがあり、これはアセチルコリン放出を増加させるために脾臓内のT細胞を刺激する。アセチルコリンは脾臓マクロファージによるTNFα及びIL−6放出の下方制御をシグナル伝達し、それにより、被験者の炎症を低減する。免疫系の調整は、被験者の炎症を低減すること、被験者の炎症性サイトカインの放出を減少させること、又は被験者の炎症性サイトカインの濃度を減少させることを可能にし得る。被験者の炎症は、自己免疫疾患、関節リウマチ、クローン病、大腸炎、ループス、脊椎炎、急性傷害、又は任意の他の炎症性疾患によって引き起こされる場合がある。従って、本明細書に記載される方法は、1つ以上の炎症性サイトカイン(例えば、TNF−α、IL−6、IL−1β、及び/又はHMGB1)の血中濃度を調整し及び/若しくは減少(又は増加)させ、並びに/又は1つ以上の免疫細胞(例えば、NK細胞)の活性化を調整(増加又は減少)するために使用されてもよい。
【0086】
既知の方法、例えば、関節における腫脹の低減、被験者によって報告される低減された疼痛又は不快感、放射線学に基づく炎症のスコアの変化、炎症によって引き起こされる骨又は組織の損傷の反転、又はサイトカイン濃度などの1つ以上の血液マーカーの測定を使用して、炎症の低減を決定することができる。血液中のサイトカインは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、質量分析、又は任意の他の適切な方法などの公知の方法によって測定することができる。
【0087】
免疫系は、神経学的信号を誘導するため、又は神経学的信号をブロックするために脾神経を電気的に刺激することによって調整することができる。免疫系調整の方向(すなわち、サイトカイン放出及び/若しくは免疫細胞(例えば、NK細胞)活性化の増加又は減少)は、(例えば、パルス長、パルス周波数、及び/又は電流振幅によって制御される)ような脾神経に送出される電荷の量及び/又はパルスの極性(又は二相パルスについての極性シーケンス)に依存し得る。例えば、脾神経に送達される少量の電荷はサイトカイン(例えば、TNF−α)血中レベル及び/又はNK細胞活性化を減少させることができるが、脾神経に送出されるより多量の電荷は被験者のサイトカイン(例えば、TNF−α)血中レベル及び/又はNK細胞活性化を増加させることができる。パルスの、カソード又はアノードのような極性(又はカソード第1又はアノード第1のような二相パルスにおけるパルスの極性のシーケンス)は、また、脾神経の誘発応答に影響を及ぼすこともでき、それによって、送出される電荷の効率(及び影響)を変更する。例えば、脾神経に投与されるカソード第1二相パルスは、脾神経に投与されるアノード第1二相パルスと同じ誘発応答を得るために、増加したパルス振幅を必要とする。
【0088】
正弦波パルスを使用した脾神経の高周波対低周波電気刺激も、免疫系調整の方向に影響を及ぼし得る。例えば、(約1kHz〜約10kHzなどの)高周波電気刺激は脾神経の神経活性を遮断又は制限し、炎症誘発性サイトカイン放出を増加させることができるが、一方で(約1Hz〜約1kHzなどの)低周波電気刺激は脾神経の神経活性を増加させ、炎症誘発性サイトカイン放出を阻害又は減少させることができる。
【0089】
本明細書に記載される埋め込み可能な医療装置は、埋め込み可能な装置に電力を供給し動作させる超音波を受信するように構成される超音波変換器に加え、被験者の脾神経と電気的に連絡する電極を含む。この埋め込み可能な装置は、例えば外部の超音波変換器(例えば、インテロゲータ)から超音波を受信し、その超音波からのエネルギーを、埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換する。次に、この埋め込み可能な医療装置は、脾神経を電気的に刺激することができる。
【0090】
この埋め込み可能な医療装置は、被験者に完全に埋め込まれる。いくつかの実施形態では、この装置が脾神経及び脾動脈を取り囲む血管周囲筋膜に完全に埋め込まれる。脾神経を脾動脈から分離する必要はない。本明細書にさらに記載されるように、埋め込み可能な医療装置は、この装置を脾神経及び/又は脾動脈に取り付け、この装置の2つ以上の電極を脾神経と電気的に連絡するように配置する寸法決めされ構成される、脾神経取り付け部を含んでもよい。
【0091】
脾神経を電気的に刺激するために、埋め込まれた医療装置は、1つ以上の電気パルスを放射することができる。埋め込まれた装置によって放射される1つ以上の電気パルスは、1つ以上の直流パルス又は1つ以上の交流パルスであり得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の電気パルスが滞留時間によって分離される。
【0092】
いくつかの実施形態では、電気パルスが約1マイクロ秒(μs)以上(約5μs以上、約10μs以上、約20μs以上、約50μs以上、約100μs以上、約150μs以上、約250μs以上、約500μs以上、約1ミリ秒(ms)以上、約5ms以上、約10ms以上、約25ms以上、約50ms以上、約100ms以上、約200ms以上、又は約500ms以上など)である。いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスが約1000ms以下(約500ms以下、約200ms以下、約100ms以下、又は約50ms以下、約25ms以下、約10ms以下、約5ms以下、約1ms以下、約500μs以下、約250μs以下、約150μs以下、約100μs以下、約50μs以下、約20μs以下、約10μs以下、又は約5μs以下など)である。いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスは長さが1ms未満、例えば、長さが約50μs〜約450μs、長さが約100μs〜約400μs、又は長さが約200μs〜約400μsである。
【0093】
いくつかの実施形態では、電気パルス間の滞留時間が約1マイクロ秒(μs)以上(約5μs以上、約10μs以上、約20μs以上、約50μs以上、約100μs以上、約250μs以上、約500μs以上、約1ミリ秒(ms)以上、約5ms以上、約10ms以上、約25ms以上、又は約50ms以上など)である。いくつかの実施形態では、滞留時間が約100ms以下(約50ms以下、約25ms以下、約10ms以下、約5ms以下、約1ms以下、約500μs以下、約250μs以下、約100μs以下、約50μs以下、約20μs以下、約10μs以下、又は約5μs以下など)である。
【0094】
この埋め込み可能な装置はパルス列において複数の電気パルスを放射してもよく、パルス列は滞留時間によって分離することができる。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置が、滞留時間の間電力回路を充電する。いくつかの実施形態では、滞留時間が約0.5秒以上(約0.7秒以上、約1秒以上、約1.5秒以上、約2秒以上、約5秒以上、又は約10秒以上など)である。いくつかの実施形態では、パルス列間の滞留時間が約15秒以下(約10秒以下、約4秒以下などの約5秒以下、約3秒以下、約2秒以下、約1.5秒以下、又は約1.5秒以下など)である。例として、いくつかの実施形態では、パルス列間の滞留時間が約0.5秒〜約15秒、又はそれらの間の任意の値である。
【0095】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスが約1マイクロアンペア(μA)以上(約5μA以上、約10μA以上、約25μA以上、約50μA以上、約100μA以上、約250μA以上、約500μA以上、約1ミリアンペア(mA)以上、約5mA以上、約10mA以上、又は約25mA以上など)である。いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスが約50mA以下(例えば、約25mA以下、約10mA以下、約5mA以下、約1mA以下、約500μA以下、約250μA以下、約100μA以下、約50μA以下、約25μA以下、約10μA以下、約5μA以下、又は約1μA以下)である。例として、いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスの振幅が約500μA〜約10mA(約750μA〜約5mA、又は約1mA〜約1.8mAなど)である。
【0096】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスが約0.1Hz以上(約0.5Hz以上、約1Hz以上、約5Hz以上、約10Hz以上、約25Hz以上、約50Hz以上、約100Hz以上、約200Hz以上、約300Hz以上、約400Hz以上、約500Hz以上、約600Hz以上、約700Hz以上、約800Hz以上、約1kHz以上、約2kHz以上、又は約5kHz以上など)の周波数を有する。いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスが約10kHz以下(約5kHz以下、約2kHz以下、約1kHz以下、約800Hz以下、約700Hz以下、約600Hz以下、約500Hz以下、約400Hz以下、約300Hz以下、約200Hz以下、約100Hz以下、約50Hz以下、約25Hz以下、約10Hz以下、約5Hz以下、約1Hz以下、又は約0.5Hz以下など)の周波数を有する。
【0097】
いくつかの実施形態では、埋め込まれた医療装置が脾神経で電圧パルスを生成する。いくつかの実施形態では、電圧が約50mV以上(例えば、約100mV以上、約250mV以上、約500mV以上、約1V以上、約2.5V以上、約5V以上、又は約10V以上)である。いくつかの実施形態では、電圧が約20V以下(例えば、約15V以下、約10V以下、約5V以下、約2.5V以下、約1V以下、約500mV以下、約250mV以下、又は約100mV以下)である。
【0098】
脾神経に投与される電気パルスは、正弦波、正方形、鋸歯状、又は任意の他の適切な形状であってもよい。電気パルスは単相(すなわち、カソード相のみ又はアノード相のみを有する)又は二相(すなわち、カソード相及びアノード相の両方を有する)であってもよい。本明細書で使用される「二相パルス」は、アノード相及びカソード相を有する単一パルスを指す。二相パルスにおけるカソード相及びアノード相の順序はいずれの順序(すなわち、アノード優先又はカソード優先)であってもよい。二相パルスのアノード相及びカソード相は中間間隔(例えば、約10μs〜約150μsの長さ、例えば、約10μs〜約20μs、約20μs〜約40μs、約40μs〜約60μs、約60μs〜約80μs、約80μs〜約100μs、又は約100μs〜約150μsの長さ)によって分離されてもよい。この中間間隔は一般に、偶発的な酸化還元反応の反転を可能にするのに十分に短く、電荷が反転する前に神経の実質的な脱分極を可能にするのに十分に長い。二相パルスの長さは、アノード相及びカソード相の長さを指し、二相パルスの任意選択的に存在する中間間隔の長さを除外する。
【0099】
いくつかの実施形態では、被験者の脾神経を電気的に刺激することを含む、被験者の免疫系を調整する(炎症性サイトカイン(TNF−α、IL−6、IL−1β又はHMGB1のうちの1つ以上など)の血中濃度を増加若しくは減少させることによる調整、及び/又は1つ以上の免疫細胞(例えば、NK細胞)の活性化を増加若しくは減少させることによる調整)方法がある。いくつかの実施形態では、複数の電気パルスを含むパルス列を使用して膜神経が電気的に刺激される。パルス列の電気パルスは例えば、方形波パルス又は正弦波パルスを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では方形波パルスは単相(例えば、カソード方形波パルス又はアノード方形波パルス)であり、いくつかの実施形態では方形波パルスは二相(アノード位相及びカソード位相を含む)であり、これらの方形波パルスは任意に、中間間隔によって分離される。二相パルスのいくつかの実施形態ではカソード相がアノード相に続き、二相パルスのいくつかの実施形態ではアノード相がカソード相に続く。いくつかの実施形態では、電気パルスの長さは1ms未満である。いくつかの実施形態では、電気パルスの周波数は約100Hz以下である。この方法は例えば、本明細書に記載される完全に埋め込み可能なな装置などの埋め込み可能な装置を使用して実装されてもよい。いくつかの実施形態では、この方法は、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、その超音波からのエネルギーを、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することとをさらに含み、この装置は被検体の脾神経と電気的に連絡する2つ以上の電極を備える。
【0100】
いくつかの実施形態では、複数の二相電気パルスを含むパルス列を使用して被験者の脾神経を電気的に刺激することを含む、被験者の免疫系を調節する(例えば、1つ以上の炎症性サイトカイン(例えば、TNF−α、IL−6、IL−1β又はHMGB1のうちの1つ以上)の血中濃度を増加又は減少させることによって、及び/又は1つ以上の免疫細胞(例えば、NK細胞)の活性化を増加又は減少させることによって、調節する)方法がある。パルス列の電気パルスは例えば、方形波パルス又は正弦波パルスを含んでいてもよい。二相パルスのいくつかの実施形態ではカソード相がアノード相に続き、二相パルスのいくつかの実施形態ではアノード相がカソード相に続く。いくつかの実施形態では、電気パルスの長さは1ms未満である。いくつかの実施形態では、電気パルスの周波数は約100Hz以下である。この方法は例えば、本明細書に記載される完全に埋め込み可能なな装置などの埋め込み可能な装置を使用して実装されてもよい。いくつかの実施形態では、この方法は、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、その超音波からのエネルギーを、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することとをさらに含み、この装置は被検体の脾神経と電気的に連絡する2つ以上の電極を備える。
【0101】
脾神経の電気刺激は、トリガ信号に応答して起こり得る。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な医療装置によって受信された超音波が、脾神経を電気的に刺激するように埋め込み可能な医療装置に命令するトリガ信号を符号化する。トリガ信号は、埋め込み可能な装置によって放射される電気パルスの周波数、振幅、持続時間、パルスパターン、パルス形状、又は滞留時間を含む命令を含んでもよい。例えば、トリガ信号は埋め込み可能な装置に、神経活性を刺激するために第1の周波数で脾神経を刺激し、神経活性を遮断するために第2の周波数で脾神経を刺激するように命令することができる。
【0102】
トリガ信号は、脾神経の活性、免疫系状態の変化、炎症の増加若しくは低減、又は炎症応答に基づくことができる。本明細書でさらに記載するように、埋め込み可能な医療装置は、脾神経活性を検出し、その脾神経活性に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射するように構成することができる。この超音波後方散乱は、脾神経活性に関連する情報を得るために超音波後方散乱を復号することのできるインテロゲータによって受信することができる。この情報は、インテロゲータによって分析されるか、又はその情報を分析するために別のコンピュータシステムに中継されることができる。脾神経の活性に基づいて、インテロゲータは埋め込まれた医療装置にトリガ信号を送信し、装置に脾神経を電気的に刺激するよう命令することができる。いくつかの実施形態では、トリガ信号は、ベースラインの脾神経活性と比較した脾神経活性の増加に基づく。ベースラインの脾神経活性は例えば、個々の被験者において確立することができ、そのトリガ信号は、ベースラインの脾神経活性からの偏位に基づくことができる。
【0103】
トリガ信号は例えば、ある期間にわたって脾神経から測定された電圧電位変化又は電圧電位変化パターンに基づくことができる。電圧変化(例えば、電圧スパイク)は脾神経を通過する活動電位を示すものであり、これは、埋め込まれた装置上の電極によって検出される。電圧スパイクの周波数及び/又は振幅の差(活動電位の単一電圧スパイク又は複合電圧スパイク)は、1つ以上の電気パルスを脾神経に放射することによって調整される場合のある免疫活性の変化を示し得る。
【0104】
トリガシステムはまた、埋め込み可能な医療装置又は任意の他の装置若しくは方法によって測定される場合のある、生理学的条件などの1つ以上の追加の因子又は代わりの因子に基づいてもよい。トリガ信号が基礎とすることができる例示的な生理学的条件は温度、血圧、又は脈拍数を含むが、これらに限定されない。生理学的条件は、例えば被験者が発熱を有する場合には、免疫系が調整されるべきでない、又は急性疾患などの何らかの理由で、異なる電気パルスパターンを使用して調整されるべきでないことを実証する場合がある。
【0105】
いくつかの実施形態では、トリガ信号は、脾神経活性パターンの分析、及び温度、脈拍、又は血圧などの検出された生理学的条件に基づく。脾神経活性は、埋め込み可能な医療装置、又は他の何らかの装置若しくは方法によって検出されてもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、トリガ信号は、過去の期間にわたって、例えば、数分、数時間、又は数日間にわたって検出された集計情報(例えば、脾神経活性及び/又は生理学的条件)に関連する情報に基づくことができる。例えば、いくつかの実施形態では、トリガが約30秒、約1分、約5分、約15分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約8時間、約12時間、約24時間、約2日、約4日、又は約7日以内から検出される脾神経活性に関連する情報に基づく。
【0107】
いくつかの実施形態では、埋め込まれた医療装置は、その埋め込まれた装置に電力を供給し動作させる超音波を送信することができるインテロゲータを使用して動作させることができる。本明細書でさらに説明するように、このインテロゲータは超音波を埋め込まれた装置に送信し、及び/又は埋め込まれた装置から放射された超音波後方散乱を受信することができる超音波変換器を含む装置である。いくつかの実施形態では、インテロゲータが被験者の外部の装置であり、被験者が着用することができる。いくつかの実施形態では、インテロゲータによって送信される超音波がトリガ信号を符号化する。
【0108】
一例では、被験者の免疫系を調整する方法は、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、超音波からのエネルギーを、被験者の脾神経と電気的に連絡している2つ以上の電極を含む、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することと、装置を使用して脾神経を電気的に刺激することと、を含む。いくつかの実施形態では、脾神経を電気的に刺激することはトリガ信号に応答して生じる。いくつかの実施形態では、トリガ信号は、埋め込まれた医療装置によって受信された超音波に符号化され、外部のインテロゲータによって送信されてもよい。いくつかの実施形態では、トリガ信号はベースラインの脾神経活性からの偏位などの脾神経活性に基づく。いくつかの実施形態では、トリガ信号は、温度、脈拍数、及び/又は血圧などの生理学的条件にさらに基づく。いくつかの実施形態では、脾神経活性及び/又は生理学的条件は、埋め込まれた医療装置によって検出又は測定され、脾神経活性又は生理学的条件に関連する情報は、埋め込まれた医療装置によって放射される超音波後方散乱に符号化される。いくつかの実施形態では、この方法は、脾神経活性又は生理学的条件に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射することを含み、これは外部装置(例えば、インテロゲータ)によって受信されてもよい。
【0109】
別の例では、被験者の炎症を低減する方法であって、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、超音波からのエネルギーを、被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を含む、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することと、装置を使用して脾神経を電気的に刺激することと、を含み、その刺激が被験者の炎症を低減するように構成される方法がある。いくつかの実施形態では、被験者の炎症が自己免疫疾患によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、被験者の炎症は、関節リウマチ、クローン病、大腸炎、ループス、又は脊椎炎によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、この方法は被験者の炎症をモニターすることを含む。いくつかの実施形態では、脾神経を電気的に刺激することはトリガ信号に応答して生じる。いくつかの実施形態では、トリガ信号は、埋め込まれた医療装置によって受信された超音波に符号化され、外部のインテロゲータによって送信されてもよい。いくつかの実施形態では、トリガ信号はベースラインの脾神経活性からの偏位などの脾神経活性に基づく。いくつかの実施形態では、トリガ信号は、温度、脈拍数、及び/又は血圧などの生理学的条件にさらに基づく。いくつかの実施形態では、脾神経活性及び/又は生理学的条件は、埋め込まれた医療装置によって検出又は測定され、脾神経活性又は生理学的条件に関連する情報は、埋め込まれた医療装置によって放射される超音波後方散乱に符号化される。いくつかの実施形態では、この方法は、脾神経活性又は生理学的条件に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射することを含み、これは外部装置(例えば、インテロゲータ)によって受信されてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態では、被験者の炎症性サイトカイン(腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−1(IL−1)(IL−1βなど)、又は高移動度グループボックス1(HMGB1)など)の血中濃度を低下させる方法であって、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、超音波からのエネルギーを、被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を含む、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することと、装置を使用して脾神経を電気的に刺激することとを含み、その刺激が被験者の炎症性サイトカインの血中濃度を低下させるように構成される、方法がある。いくつかの実施形態では、この方法は、炎症性サイトカインの脾臓放出を減少させる。いくつかの実施形態では、この方法は、炎症性サイトカインの血中濃度を測定することを含む。いくつかの実施形態では、脾神経を電気的に刺激することはトリガ信号に応答して生じる。いくつかの実施形態では、トリガ信号は、埋め込まれた医療装置によって受信された超音波に符号化され、外部のインテロゲータによって送信されてもよい。いくつかの実施形態では、トリガ信号はベースラインの脾神経活性からの偏位などの脾神経活性に基づく。いくつかの実施形態では、トリガ信号は、温度、脈拍数、及び/又は血圧などの生理学的条件にさらに基づく。いくつかの実施形態では、脾神経活性及び/又は生理学的条件は、埋め込まれた医療装置によって検出又は測定され、脾神経活性又は生理学的条件に関連する情報は、埋め込まれた医療装置によって放射される超音波後方散乱に符号化される。いくつかの実施形態では、この方法は、脾神経活性又は生理学的条件に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射することを含み、これは外部装置(例えば、インテロゲータ)によって受信されてもよい。
【0111】
[被験者の免疫系状態又は炎症をモニターする方法]
埋め込まれた医療装置は、個体の免疫系状態又は炎症をモニターするために使用され得る。前述したように、脾神経活性は、TNF−α、IL−6、IL−1(例えば、IL−1β)、及びHMGB1などの炎症誘発性サイトカインを含む脾臓サイトカイン放出に加え、脾臓内に存在するかは脾臓を通過する免疫細胞の活性に関連付けられている。したがって、脾神経活性のモニターをすることで、免疫系及び炎症のモニターが可能となる。本明細書でさらに記載されるように、埋め込まれた医療装置は、脾神経活性を検出するように構成される2つ以上の電極を含むことができる。脾神経活性を検出するように構成される2つ以上の電極は、脾神経を電気的に刺激するように構成される2つ以上の電極と同じであっても異なっていてもよい。
【0112】
脾神経活性を介して免疫系状態をモニターすることで、炎症応答などの免疫応答の開始、オフセット、又は規模のモニターが可能となる。さらに、埋め込まれた医療装置によって検出された脾神経活性の変化は、自己免疫疾患、関節リウマチ、クローン病、大腸炎、ループス、又は脊椎炎などの炎症性疾患に関連する情報を提供することができる。したがって、本明細書に記載の方法は、炎症性疾患又は抗炎症療法をモニターすることを可能にする。免疫系応答のモニターはまた、本明細書中にさらに記載されるように、抗炎症療法を含む種々の療法に対する調節を可能にする。
【0113】
免疫系の状態の変化は、ベースライン脾神経活性と比較して、脾神経活性の増加、脾神経活性の減少、又は脾神経活性のパターンの変化によって検出されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、炎症の増加が、脾神経活性の減少又は脾神経活性のパターンの変化によって示される。
【0114】
免疫系をモニターするための埋め込み可能な医療装置は、脾神経活性に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射するように構成される超音波変換器を含む。この情報は、例えば、周波数、電圧、形状、又はパルスパターンなど、脾神経によって送信される電気生理学的パルスに関連する情報を含むことができる。情報を符号化する超音波後方散乱波は、インテロゲータによって受信され、情報を復号するために分析されることができる。埋め込まれた医療装置の超音波変換器はまた、埋め込まれた装置に電力を供給する超音波を受信することができ、この超音波は、超音波後方散乱を受信するように構成されるインテロゲータ又は別個のインテロゲータによって送信されてもよい。埋め込み可能な医療装置の超音波変換器は、外部変換器から超音波を受信し、超音波からのエネルギーを埋め込み可能な医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換する。
【0115】
電流は超音波変換器を通して流れ、この電流は脾神経活性に関連する情報を符号化するように変調され得る。例えば、埋め込まれた医療装置は、超音波変換器に電気的に接続された集積回路と、脾神経活性を検出するように構成される電極とを含むことができる。この集積回路は、脾神経活性に関連する情報を符号化するために電流を変調する変調回路を含むことができる。超音波後方散乱は超音波変換器を介して流れる電流によって影響されるので、超音波変換器によって放射される超音波後方散乱は変調された電流へと符号化された脾神経活性情報を符号化する。
【0116】
埋め込まれた医療装置によって検出された電気信号の偏位は、免疫系の状態の変化を示す。例えば、ある期間にわたる脾神経の電圧電位の上昇は、被験者の炎症の増加を示す。脾神経活性のベースライン信号の偏位から、炎症応答の開始、オフセット、及び規模を決定することが可能である。
【0117】
埋め込まれた医療装置によって放射された超音波後方散乱は外部装置(例えば、インテロゲータ)によって受信され得、超音波後方散乱に符号化された情報は、免疫系の状態、又は炎症応答などの免疫系の状態の変化を決定するために分析され得る。
【0118】
炎症の増加などの免疫応答の変化は、抗炎症療法のような療法が被験者に実施されるべきであることを示すことができる。したがって、いくつかの実施形態では、抗炎症療法などの療法が免疫系状態の変化に応答して被験者に実施される。いくつかの実施形態では、薬物療法は、免疫系の状態の変化に応答して被験者に実施される。いくつかの実施形態では、この療法は、迷走神経、脾神経、腹腔神経節、横隔膜下迷走神経、内臓神経、及び/又は上腸間膜神経などの神経の電気的刺激である。
【0119】
一例では、被験者の免疫系をモニターする方法であって、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、超音波からのエネルギーを、被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を含む、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することと、脾神経の電気的活性を検出することと、脾神経の電気的活性に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射することと、を含み、この電気的活性の偏位が被験者の免疫系の状態の変化を示す、方法がある。いくつかの実施形態では、この方法は、外部装置(例えば、インテロゲータ)で超音波後方散乱を受信することを含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、被験者の炎症をモニターする方法であって、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、超音波からのエネルギーを、被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を含む、被験者における完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することと、脾神経の電気的活性を検出することと、脾神経の電気的活性に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射することと、電気的活性の偏位をモニターすることとを含み、この電気的活性の偏位が被験者の炎症の変化を示す、方法がある。いくつかの実施形態では、電気活性の増加は、炎症の増加を示す。いくつかの実施形態では、電気活性の減少は、炎症の低減を示す。いくつかの実施形態では電気的活性の識別可能なパターンの変化(例えば、電圧振幅又は周波数の変化)は炎症の低減を示す。いくつかの実施形態では、炎症は、自己免疫疾患、関節リウマチ、クローン病、大腸炎、ループス、又は脊椎炎によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、抗炎症薬又は神経の電気的刺激などの抗炎症療法が、炎症の増加に応答して被験者に実施される。いくつかの実施形態では、この方法は、外部装置(例えば、インテロゲータ)で超音波後方散乱を受信することを含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、被験者の炎症応答をモニターする方法であって、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、超音波からのエネルギーを、被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を含む、被験者における完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することと、脾神経の電気的活性を検出することと、脾神経の電気的活性に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射することと、電気的活性の偏位をモニターすることとを含み、この電気的活性の増加が被験者の炎症応答を示す、方法がある。いくつかの実施形態では、電気活性の増加は、炎症の増加を示す。いくつかの実施形態では、電気活性の減少は、炎症の低減を示す。いくつかの実施形態では、電気的活性の識別可能なパターンの変化は、炎症の低減を示す。いくつかの実施形態では、抗炎症薬又は神経の電気刺激などの抗炎症療法が、炎症応答に応答して被験者に実施される。いくつかの実施形態では、この方法は、外部装置(例えば、インテロゲータ)で超音波後方散乱を受信することを含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、被験者における抗炎症療法をモニターする方法であって、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、超音波からのエネルギーを、被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を含む、被験者における完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することと、脾神経の電気的活性を検出することと、脾神経の電気的活性に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射することと、電気的活性の偏位をモニターすることとを含み、電気的活性の偏位が抗炎症療法に対する応答を示す、方法がある。いくつかの実施形態では、方法が被験者に抗炎症療法を施すことを含む。いくつかの実施形態では、抗炎症療法は薬物療法又は(迷走神経、脾神経、腹腔神経節、横隔膜下迷走神経、内臓神経、又は上腸間膜神経などの)神経の電気的刺激であり、いくつかの実施形態では、この方法は外部装置(例えば、インテロゲータ)で超音波後方散乱を受信することを含む。
【0123】
[炎症の療法を実施又は調節する方法]
上述したように、埋め込まれた医療装置は脾神経活性を検出することができ、脾神経活性の変化は、被験者の炎症応答の増加又は減少を示すことができる。埋め込み可能な装置によって検出された脾神経活性に基づいて、免疫系、例として炎症応答をモニターすることができる。いくつかの実施形態では、脾臓活性の偏位が炎症応答を示す場合、抗炎症療法を被験者に実施することができる。いくつかの実施形態では、個体の炎症応答状態の変化に応答して抗炎症療法が調節される。
【0124】
調節される場合のある例示的な療法は、神経の電気的刺激又は薬物の投与を含むが、これらに限定されない。刺激される場合のある例示的な神経は、脾神経、迷走神経、腹腔神経節、横隔膜下迷走神経、内臓神経、及び/又は上腸間膜神経を含む。例示的な薬物は、TNF−α阻害剤、IL−6阻害剤、IL−1阻害剤(例えば、IL−1β阻害剤)、又は疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)などの抗炎症薬を含むが、これらに限定されない。例えば、抗炎症薬は、アバタセプト、アダリムマブ、アザチオプリン、セルトリズマブペゴル、シクロホスファミド、シクロスポリン、エントラセプト、ゴリムマブ、ヒドロキシクロロキン硫酸塩、インフリキシマブ、レフルノミド、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、リツキシマブ、スルファサラジン、又はトシリズマブのうち任意の1つ以上でよい。
【0125】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される埋め込み可能な医療装置が抗炎症療法を実施するために閉ループ(すなわち、フィードバック)システム内で動作する。例えば、埋め込まれた医療装置は、脾神経活性に基づいて炎症応答を検出するために使用され得、炎症応答が検出される場合には脾神経を電気的に刺激する。いくつかの実施形態では、脾神経活性を遮断するために、埋め込まれた医療装置が脾神経を電気的に刺激する。脾神経活性に関連する情報は、埋め込まれた医療装置の超音波変換器によって放射される超音波後方散乱に符号化することができ、この超音波後方散乱は、インテロゲータによって受信することができる。脾神経の電気的活性の偏位はモニターすることができ、脾神経の電気的活性が炎症応答を示している場合には抗炎症療法を実施することができる。
【0126】
追加の又は代わりの抗炎症療法が実施される場合があるので、脾神経活性を検出し、脾神経の電気刺激を実施する、その両方のために、埋め込まれた医療装置を使用する必要はない。例えば、抗炎症療法は、迷走神経、腹腔神経節、横隔膜下迷走神経、内臓神経、及び/又は上腸間膜神経などの、脾神経以外の神経の電気的刺激であってよい。神経の刺激は、自動であってもよく、被験者によって制御されてもよい。いくつかの実施形態では、抗炎症療法は薬物療法である。
【0127】
一例として、いくつかの実施形態では、被験者の炎症に対する療法を実施する方法であって、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、超音波からのエネルギーを、被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を含む、被験者における完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することと、脾神経の電気的活性を検出することと、脾神経の電気的活性を符号化する超音波後方散乱を放射することと、脾神経の電気活性の偏位をモニターすることと、その脾神経の電気的活性の偏位が炎症応答を示す場合に抗炎症療法を実施することと、を含む方法がある。いくつかの実施形態では、抗炎症療法は、脾神経、迷走神経、腹腔神経節、横隔膜下迷走神経、内臓神経、及び/又は上腸間膜神経などの神経の刺激である。いくつかの実施形態では、抗炎症療法は薬物療法である。
【0128】
埋め込まれた医療装置はまた、その療法に対する免疫応答(例えば、炎症応答)に基づいて、被験者に実施される療法を調節するために使用され得る。この療法は、抗炎症療法、又は被験者の免疫応答に影響を与える場合のある何らかの他の療法であってもよい。例えば、炎症性副作用を有する薬物が患者に投与されてもよく、その薬物の用量は、炎症応答に基づいて調節されてもよい。その療法が所望の効果をもたらさない場合、又はその療法が望ましくない炎症応答を引き起こす場合、その療法は調節されてもよい。いくつかの実施形態では、その療法(例えば、抗炎症療法)は、その療法が所望の効果を得た場合に中止される。
【0129】
いくつかの実施形態では、その療法に対する調節は、その療法(例えば、薬物療法)が被験者に実施される頻度又は投薬量に対する調節であってもよい。いくつかの実施形態では、療法に対する調節は、神経の電気的刺激の周波数、パターン、又は振幅に対する調節であってもよい。
【0130】
[血圧を調節する、又は高血圧を治療する方法]
脾神経の電気的刺激はまた、埋め込み可能な医療装置を使用して、被験者の心血管状態を調節するために使用され得る。例えば、脾神経の電気的刺激は、被験者の血圧を調整するために、又は高血圧を治療するために使用され得る。神経系、免疫系、及び血圧間の結びつきは以前から確立されている。Carnevaleらの、A cholinergic-sympathetic pathway primes immunity in hypertension and mediates brain-to-spleen communication(Nature Communications, vol.7、2016年)を参照されたい。脾神経活性及び免疫機能は、被験者の血圧及び高血圧状態と関連付けられる。本明細書中に記載されるように、埋め込まれた医療装置を使用する脾神経活性の調整は、被験者の血圧を調整するため、及び/又は高血圧を治療するために使用される。
【0131】
血圧は、神経学的信号を誘導するため、又は神経学的信号をブロックするために脾神経を電気的に刺激することによって調整することができる。例えば、(約1kHz〜約10kHzなどの)高周波電気刺激は、血圧を低下させ、及び/又は高血圧を低下させるために脾神経の神経活性を遮断又は制限することができ、一方で高振幅で印加される(約1Hz〜約1kHzなどの)低周波電気刺激は、血圧を上昇させるために脾神経の神経活性を増大させることができる。
【0132】
本明細書に記載される埋め込み可能な医療装置は、埋め込み可能な装置に電力を供給し動作させる超音波を受信するように構成される超音波変換器に加え、被験者の脾神経と電気的に連絡する電極を含む。この埋め込み可能な装置は、例えば外部の超音波変換器(例えば、インテロゲータ)から超音波を受信し、その超音波からのエネルギーを、埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換する。次いでこの埋め込み可能な医療装置は、血圧を調節するため、及び/又は高血圧を治療するために脾神経を電気的に刺激することができる。
【0133】
この埋め込み可能な医療装置は、脾神経と電気的に連絡する電極を用いて、被験者に完全に埋め込まれる。いくつかの実施形態では、この装置が脾神経及び脾動脈を取り囲む血管周囲筋膜に完全に埋め込まれる。脾神経を脾動脈から分離する必要はない。本明細書にさらに記載されるように、埋め込み可能な医療装置は、この装置を脾神経及び/又は脾動脈に取り付け、この装置の2つ以上の電極を脾神経と電気的に連絡するように配置する寸法決めされ構成される、脾神経取り付け部を含んでもよい。
【0134】
脾神経を電気的に刺激するために、埋め込まれた医療装置は、血圧を調節するように、及び/又は高血圧を治療するように構成される1つ以上の電気パルスを放射することができる。埋め込まれた装置によって放射される1つ以上の電気パルスは、1つ以上の直流パルス又は1つ以上の交流パルスを含むことができる。いくつかの実施形態では、2つ以上の電気パルスが滞留時間によって分離される。
【0135】
いくつかの実施形態では、電気パルスが約1マイクロ秒(μs)以上(約5μs以上、約10μs以上、約20μs以上、約50μs以上、約100μs以上、約250μs以上、約500μs以上、約1ミリ秒(ms)以上、約5ms以上、約10ms以上、約25ms以上、約50ms以上、約100ms以上、約200ms以上、又は約500ms以上など)である。いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスが約1000ms以下(約500ms以下、約200ms以下、約100ms以下、又は約50ms以下、約25ms以下、約10ms以下、約5ms以下、約1ms以下、約500μs以下、約250μs以下、約100μs以下、約50μs以下、約20μs以下、約10μs以下、又は約5μs以下など)である。
【0136】
いくつかの実施形態では、電気パルス間の滞留時間が約1マイクロ秒(μs)以上(約5μs以上、約10μs以上、約20μs以上、約50μs以上、約100μs以上、約250μs以上、約500μs以上、約1ミリ秒(ms)以上、約5ms以上、約10ms以上、約25ms以上、又は約50ms以上など)である。いくつかの実施形態では、滞留時間が約100ms以下(約50ms以下、約25ms以下、約10ms以下、約5ms以下、約1ms以下、約500μs以下、約250μs以下、約100μs以下、約50μs以下、約20μs以下、約10μs以下、又は約5μs以下など)である。
【0137】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスが約1マイクロアンペア(μA)以上(約5μA以上、約10μA以上、約25μA以上、約50μA以上、約100μA以上、約250μA以上、約500μA以上、約1ミリアンペア(mA)以上、約5mA以上、約10mA以上、又は約25mA以上など)である。いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスが約50mA以下(約25mA以下、約10mA以下、約5mA以下、約1mA以下、約500μA以下、約250μA以下、約100μA以下、約50μA以下、約25μA以下、約10μA以下、約5μA以下、又は約1μA以下など)である。
【0138】
いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスが約0.1Hz以上(約0.5Hz以上、約1Hz以上、約5Hz以上、約10Hz以上、約25Hz以上、約50Hz以上、約100Hz以上、約200Hz以上、約300Hz以上、約400Hz以上、約500Hz以上、約600Hz以上、約700Hz以上、約800Hz以上、約1kHz以上、約2kHz以上、又は約5kHz以上など)の周波数を有する。いくつかの実施形態では、1つ以上の電気パルスが約10kHz以下(約5kHz以下、約2kHz以下、約1kHz以下、約800Hz以下、約700Hz以下、約600Hz以下、約500Hz以下、約400Hz以下、約300Hz以下、約200Hz以下、約100Hz以下、約50Hz以下、約25Hz以下、約10Hz以下、約5Hz以下、約1Hz以下、又は約0.5Hz以下など)の周波数を有する。
【0139】
いくつかの実施形態では、埋め込まれた医療装置が脾神経に電圧パルスを生成する。いくつかの実施形態では、電圧が約50mV以上(例えば、約100mV以上、約250mV以上、約500mV以上、約1V以上、約2.5V以上、約5V以上、又は約10V以上)である。いくつかの実施形態では、電圧が約20V以下(例えば、約15V以下、約10V以下、約5V以下、約2.5V以下、約1V以下、約500mV以下、約250mV以下、又は約100mV以下)である。
【0140】
血圧を調整するための、及び/又は高血圧を治療するための脾神経の電気的刺激は、トリガ信号に応答して起こり得る。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な医療装置によって受信された超音波が、脾神経を電気的に刺激するように埋め込み可能な医療装置に命令するトリガ信号を符号化する。トリガ信号は、埋め込み可能な装置によって放射される電気パルスの周波数、振幅、持続時間、パルスパターン、パルス形状、又は滞留時間を含む命令を含んでもよい。例えば、トリガ信号は埋め込み可能な装置に、神経活性を刺激するために第1の周波数で脾神経を刺激し、神経活性を遮断するために第2の周波数で脾神経を刺激するように命令することができる。
【0141】
トリガ信号は、脾神経活性若しくは血圧、又は脾神経活性若しくは血圧の変化に基づくことができる。血圧は、埋め込まれた医療装置を使用して、又は任意の他の適切な装置によって測定されてもよい。本明細書でさらに説明するように、埋め込み可能な医療装置は、脾神経活性を検出し、その脾神経活性及び/又は血圧に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射するように構成することができる。この超音波後方散乱は、脾神経活性及び/又は血圧に関連する情報を得るために超音波後方散乱を復号することができるインテロゲータによって受信することができる。この情報は、インテロゲータによって分析されるか、又はその情報を分析するために別のコンピュータシステムに中継されることができる。脾神経の活性及び/又は測定された血圧に基づいて、インテロゲータは埋め込まれた医療装置にトリガ信号を送信し、装置に脾神経を電気的に刺激するように命令することができる。いくつかの実施形態では、トリガ信号は、ベースラインの脾神経活性と比較した脾神経活性の増加に基づく。ベースラインの脾神経活性は例えば、個々の被験者において確立することができ、そのトリガ信号は、ベースラインの脾神経活性からの偏位に基づくことができる。
【0142】
トリガ信号は例えば、ある期間にわたって脾神経から測定された電圧電位変化又は電圧電位変化パターンに基づくことができる。電圧変化(例えば、電圧スパイク)は脾神経を通過する活動電位を示すものであり、これは、埋め込まれた装置上の電極によって検出される。電圧スパイクの周波数及び/又は振幅の差(活動電位の単一電圧スパイク又は複合電圧スパイク)を検出することができ、脾神経を刺激するために1つ以上の電気パルスが放射されてもよい。いくつかの実施形態では、トリガ信号は、脾神経活性パターンの分析及び測定された血圧に基づく。
【0143】
いくつかの実施形態では、トリガ信号は、過去の期間にわたって、例えば、数分、数時間、又は数日間にわたって検出された集計情報(例えば、脾神経活性及び/又は血圧)に関連する情報に基づくことができる。例えば、いくつかの実施形態では、トリガが約30秒、約1分、約5分、約15分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約8時間、約12時間、約24時間、約2日、約4日、又は約7日以内から検出される脾神経活性に関連する情報に基づく。
【0144】
いくつかの実施形態では、埋め込まれた医療装置は、その埋め込まれた装置に電力を供給し動作させる超音波を送信することができるインテロゲータを使用して動作させることができる。本明細書でさらに説明するように、このインテロゲータは超音波を埋め込まれた装置に送信し、及び/又は埋め込まれた装置から放射された超音波後方散乱を受信することができる超音波変換器を含む装置である。いくつかの実施形態では、インテロゲータが被験者の外部の装置であり、被験者が着用することができる。いくつかの実施形態では、インテロゲータによって送信される超音波がトリガ信号を符号化する。
【0145】
一例では、被験者の血圧を調整する方法であって、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、超音波からのエネルギーを、被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を含む、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することと、装置を使用して脾神経を電気的に刺激することと、を含み、その刺激が被験者の血圧を調整するように構成される、方法がある。いくつかの実施形態では、この方法は、被験者の血圧を測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、血圧が埋め込まれた医療装置を使用して測定され、脾神経活性から決定されてもよい。いくつかの実施形態では、脾神経が約1kHz以上(例えば、約1kHz〜約10kHz)の周波数で電気的に刺激される。いくつかの実施形態では、脾神経を電気的に刺激することはトリガ信号に応答して生じる。いくつかの実施形態では、トリガ信号は、埋め込まれた医療装置によって受信された超音波に符号化され、外部のインテロゲータによって送信されてもよい。いくつかの実施形態では、トリガ信号はベースラインの脾神経活性からの偏位などの脾神経活性、及び/又は測定された血圧に基づく。いくつかの実施形態では、この方法は、脾神経活性及び/又は血圧に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射することを含み、これは外部装置(例えば、インテロゲータ)によって受信されてもよい。
【0146】
いくつかの実施形態では、被験者の高血圧を治療する方法であって、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、超音波からのエネルギーを、被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を含む、被験者における完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することと、装置を使用して脾神経を電気的に刺激することと、を含み、その刺激が被験者の高血圧を低減するように構成される、方法がある。いくつかの実施形態では、この方法は、被験者の血圧を測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、血圧が埋め込まれた医療装置を使用して測定され、脾神経活性から決定されてもよい。いくつかの実施形態では、脾神経が約1kHz以上(例えば、約1kHz〜約10kHz)の周波数で電気的に刺激される。いくつかの実施形態では、脾神経を電気的に刺激することはトリガ信号に応答して生じる。いくつかの実施形態では、トリガ信号は、埋め込まれた医療装置によって受信された超音波に符号化され、外部のインテロゲータによって送信されてもよい。いくつかの実施形態では、トリガ信号はベースラインの脾神経活性からの偏位などの脾神経活性、及び/又は測定された血圧に基づく。いくつかの実施形態では、この方法は、脾神経活性及び/又は血圧に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射することを含み、これは外部装置(例えば、インテロゲータ)によって受信されてもよい。
【0147】
[血圧及び高血圧をモニターする方法]
被験者の自律神経の神経活性は、被験者の血圧と関連付けられている。例えば、Hellyerらの、Autonomic Nerve Activity and Blood Pressure in Ambulatory Dogs(Heart Rhythm, vol.11, no.2 307〜313ページ、2014年)を参照されたい。被験者における血圧又は高血圧をモニターするために、(脾神経活性又は迷走神経活性などの)自律神経活性を検出し分析することができる。
【0148】
いくつかの実施形態では、脾神経活性は、脾神経と電気的に連絡する2つ以上の電極を有する埋め込まれた医療装置を使用して検出され、この検出された脾神経活性は被験者の血圧又は高血圧をモニターするために使用することができる。例えば、被験者の血圧の増加又は減少が存在するかどうかを決定するために、脾神経活性の変化を使用することができる。脾神経活性を検出するように構成される2つ以上の電極は、脾神経を電気的に刺激するように構成される2つ以上の電極と同じであっても異なっていてもよい。
【0149】
いくつかの実施形態では、埋め込まれた医療装置は、血圧を測定又はモニターするために使用することができる圧力センサを含む。例えば、圧力センサは、微小電気機械システム(MEMS)センサであってもよい。
【0150】
圧力センサを使用して取得されてもよく、脾神経活性から推測されてもよい、脾神経活性及び/又は血圧に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射するように構成される超音波変換器を、埋め込まれた医療装置が含む。この情報は例えば、周波数、電圧、形状、又はパルスパターンなど、脾神経によって送信される電気生理学的パルスに関連する情報、又はその電気生理学的パルスの変化に関連する情報を含むことができる。情報を符号化する超音波後方散乱波は、インテロゲータによって受信され、情報を復号するために分析されることができる。埋め込まれた医療装置の超音波変換器はまた、埋め込まれた装置に電力を供給する超音波を受信することができ、この超音波は、超音波後方散乱を受信するように構成されるインテロゲータ又は別個のインテロゲータによって送信されてもよい。埋め込み可能な医療装置の超音波変換器は、外部変換器から超音波を受信し、超音波からのエネルギーを埋め込み可能な医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換する。
【0151】
電流は超音波変換器を通して流れ、この電流は脾神経活性及び/又は血圧に関連する情報を符号化するように変調され得る。例えば、埋め込まれた医療装置は、超音波変換器に電気的に接続された集積回路と、脾神経活性を検出するように構成される電極と、又は圧力センサを含むことができる。この集積回路は、脾神経活性及び/又は検出された血圧に関連する情報を符号化するために電流を変調する変調回路を含むことができる。超音波後方散乱は超音波変換器を流れる電流によって影響されるので、超音波変換器によって放射される超音波後方散乱は変調された電流へと符号化された脾神経活性情報及び/又は血圧情報を符号化する。
【0152】
埋め込まれた医療装置によって検出された電気信号の偏位は、血圧の変化を示す。例えば、ある期間にわたる脾神経の電圧電位の上昇は、上昇した血圧及び/又は高血圧を示す。すなわち、脾神経活性の測定されたサイクリック電圧エンベロープの振幅の増加は、血圧の上昇及び/又は高血圧を示すことができる。脾神経活性のベースライン信号の偏位から、血圧変化の開始、オフセット、及び規模を決定することができる。
【0153】
埋め込まれた医療装置によって放射された超音波後方散乱は外部装置(例えば、インテロゲータ)によって受信され得、超音波後方散乱に符号化された情報は、血圧、血圧変化、又は高血圧をモニターするために分析され得る。
【0154】
血圧の変化は、降圧療法などの療法が被験者に実施されるべきであることを示すことができる。したがって、いくつかの実施形態では、高血圧の療法が血圧の変化に応答して被験者に実施される。いくつかの実施形態では、薬物療法は、血圧の変化に応答して被験者に実施される。いくつかの実施形態では、この療法は、迷走神経、脾神経、腹腔神経節、横隔膜下迷走神経、内臓神経、及び/又は上腸間膜神経などの神経の電気的刺激である。
【0155】
[埋め込まれた医療装置]
埋め込まれた医療装置は、脾神経と電気的に連絡するように構成される2つ以上の電極を含む。いくつかの実施形態では、埋め込まれた医療装置は、1つ以上の超音波変換器を収容する本体と、装置を動作させる集積回路とを含む。この超音波変換器は超音波を受信し、受信した超音波を装置に電力を供給する電気エネルギーに変換する。この装置の本体は、超音波変換器と(例えば、集積回路を介して)電気で連絡する2つ以上の電極又はセンサを含むか、又はそれらに接続され得る。いくつかの実施形態では、超音波変換器を流れる電流は、超音波変換器によって放射される超音波後方散乱波に情報を符号化するために変調され得る。超音波後方散乱波に符号化された情報は、例えば、センサによって検出された(温度、パルス、及び/又は血圧などの)生理学的条件、電極によって検出された電気生理学的信号、装置の状態(例えば、装置が超音波に符号化された信号を受信していることを確認している状態、集積回路の動作を確認している状態、又は装置が電力供給されていることを確認している状態)、又は埋め込み可能な装置によって放射された電気パルスに関連する情報を含んでいてもよい。
【0156】
いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置は、装置を脾神経又は脾神経動脈に取り付けるよう寸法決めされ構成される本体にに取り付けられた、クリップなどの脾神経取り付け部を備える。脾神経取り付け部はさらに、2つ以上の電極を脾神経と電気的に連絡するように配置するよう寸法決めされ構成される。いくつかの実施形態では、脾神経取り付け部は、脾神経を少なくとも部分的に取り囲み、2つ以上の電極を脾神経と電気的に連絡するように配置するように構成されるクリップである。
【0157】
[埋め込み可能な装置の本体]
埋め込み可能な装置の本体は、1つ以上の超音波変換器、並びにセンサ及び/又は電極対を含む。この電極対は、電気パルスからの電気生理学的信号を検出するか、又は電気パルスを放射するように構成することができる。電気生理学的信号を検出し、検出されたその電気生理学的信号に関連する情報を符号化することができる例示的な埋め込み可能な装置は、国際公開第2018/009910A2号に記載される。電気パルスを放射するために超音波を使用して動作できる例示的な埋め込み可能な装置は、国際公開第2018/009912A2号に記載される。センサは、例えば生理学的条件を検出又は測定することができる(温度センサ、酸素センサ、pHセンサ、歪みセンサ、圧力センサ、インピーダンスセンサ、又は検体の濃度を検出することができるセンサなどの)センサであってもよい。超音波によって電力供給され、検出された生理学的条件を符号化する超音波後方散乱を放射することができる例示的な埋め込み可能な装置は、国際公開第2018/009905A2号及び国際公開第2018/009911A2号に記載される。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置がセンサと電極対の両方を含む。いくつかの実施形態では、集積回路が埋め込み可能な装置に含まれており、この埋め込み可能な装置は電極又はセンサと超音波変換器との間を電気的に接続し、それらの間で連絡することができる。この集積回路は変調回路を含むことができ、この変調回路は、電流内のデータを符号化するために1つ以上の超音波変換器を流れる電流を変調する。変調された電流は超音波変換器が放射する超音波後方散乱波に影響し、その超音波後方散乱波はデータを符号化する。
【0158】
図1は、超音波変換器102及び集積回路104を備えた、例示的な埋め込み可能な装置本体の側面図を示す。図示される実施形態では、集積回路104は、コンデンサ106を含む電力回路を含む。このコンデンサは超音波変換器によって超音波エネルギーから変換された電気的エネルギーを一時的に格納することができ、エネルギーを格納又は放出するために集積回路104によって動作することができる。超音波変換器102、集積回路104、及びコンデンサ106は、プリント回路基板であってもよい背面板108上に据えられる。基部108は、底面110と側壁112a及び112bとを含むハウジング内にセットされる。このハウジングは、ハウジング内の本体構成要素をふさぐ頂部(図示せず)を更に含むことができる。底面110は、背面版及び/又は集積回路を1つ以上の電極に電気的に接続する1つ以上のフィードスルー114a、114b、及び114cを含んでいてもよい。この1つ以上の電極は、例えばハウジングの底面110の下に設置されてもよく、又は本明細書に記載されるようにクリップ上に設置されてもよい。この構成では、電極は神経と電気的に連絡することができ、本体の構成要素は、例えば本明細書で述べられるようなクリップを使用して、埋め込み可能な装置が埋め込まれ神経に取り付けられるときに、その神経の上に配置される。超音波変換器102は集積回路104と電気的に接続され、集積回路104はフィードスルーを介して電極と電気的に接続され、それによって、超音波変換器102を電極に電気的に接続する。
【0159】
図2は、ハウジングの頂部を再び除いた、図1に示されるものと同様の本体の上面図を図示する。ハウジングは4つの側壁112a、112b、112c、及び112dを用いて示されているが、ハウジングは任意の適切な形状(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、若しくはそれ以上の側壁を有する、又は円形若しくは楕円形の単一の湾曲した側壁を有する)であり得ることが理解される。
【0160】
図3は、超音波変換器302と、集積回路304と、(温度、圧力、歪み、検体濃度、酸素、又はpHを検出することができるセンサなどの)センサ306とを有する例示的な埋め込み可能な装置の概略図を図示する。超音波変換器302は集積回路304に電気的に接続されており、この集積回路は、センサ306に電気的に接続されている。図示される実施形態は集積回路を用いて示されているが、このセンサは超音波変換器に直接接続され得ることも構想されている。さらに、本明細書で述べられるように、1つ以上のセンサは、電気パルスを検出及び/又は放射するように構成される電極をさらに有する埋め込み可能な装置上に含めることができる。
【0161】
超音波変換器は超音波を受信し、その超音波からのエネルギーを電気エネルギーに変換するように構成される。電気エネルギーは、装置に電力を供給するために集積回路に送出される。埋め込み可能な装置は、超音波を介して情報を受信又は送信するように動作することもできる。埋め込み可能な装置によって受信された超音波(例えば、インテロゲータによって送出されたもの)は、埋め込み可能な装置を動作させるための命令を符号化することができる。この命令は、例えば電極を通して電気パルスを放射するように埋め込み可能な装置に命令するトリガ信号を含んでいてもよい。トリガ信号は例えば、電気パルスがいつ放射されるべきか、パルス周波数、パルス電力若しくは電圧、パルス形状、及び/又はパルス持続時間に関する情報を含んでいてもよい。
【0162】
埋め込み可能な装置は、インテロゲータによって受信され得る情報を送信するようにも動作できる。埋め込み可能な装置上の超音波変換器は、超音波を受信し、超音波後方散乱を発し、これにより、この埋め込み可能な装置によって送信される情報を符号化することができる。電流は超音波変換器を通して流れ、情報を符号化するために変調され得る。この電流は、例えば電流を変調するセンサに電流を通すことによって直接的に変調されてもよく、例えば検出された生理学的条件又は電気生理学的パルスに基づいて変調回路を使用して電流を変調することによって間接的に変調されてもよい。いくつかの実施形態では、超音波に符号化された情報が、検出された生理学的条件又は埋め込み可能な装置によって検出された電気生理学的パルスに関連しない情報を含む。例えば、情報は、埋め込み可能な装置の状態若しくは電気パルスが放射されたことを確認する確認信号に関連する情報、及び任意で、電力、周波数、電圧、持続時間、又は放射された電気パルスに関連する他の情報を含むことができる。
【0163】
いくつかの実施形態では、本体がハウジングを含み、このハウジングは基部、1つ以上の側壁、及び頂部を含むことができる。このハウジングは、1つ以上の超音波変換器及び集積回路を囲むことができる。間質液が超音波変換器及び/又は集積回路と接触するのを防止するために、ハウジングは(例えば、はんだ付け又はレーザ溶接によって)密閉されてもよい。神経と電気的に連絡するように構成される電極は、ハウジングによって囲まれていない。ハウジングは好ましくは生体不活性金属(例えば、鋼又はチタン)又は生体不活性セラミック(例えば、チタニア又はアルミナ)などの生体不活性材料から作成される。ハウジング(又はハウジングの頂部)は、超音波がハウジングを貫通することを可能にするように薄くてもよい。いくつかの実施形態では、ハウジングの厚さは約75マイクロメートル(μm)以下、約50μm以下、約25μm以下、又は約10μm以下など、約100μm以下の厚さである。いくつかの実施形態では、ハウジングの厚さは約5μm〜約10μm、約10μm〜約25μm、約25μm〜約50μm、約50μm〜約75μm、又は約75μm〜約100μmの厚さである。
【0164】
いくつかの実施形態では、本体がハウジング内にポリマーなどの素材を備える。この素材はハウジングの外部の組織とハウジング内の組織との間の音響インピーダンス不整合を低減するために、ハウジング内の空きスペースを埋めることができる。したがって、装置の本体は、好ましくは空気が全くない又は真空である。
【0165】
埋め込み可能な装置の本体は比較的小さく、これは、埋め込み可能な装置にしばしば関連付けられる組織炎症を制限する一方で、快適かつ長期間の埋め込みを可能にする。いくつかの実施形態では、装置の本体の最長寸法は、長さが約5mm以下、約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1mm以下、約0.5mm以下、約0.3mm以下、約0.1mm以下である。いくつかの実施形態では、装置の本体の最長寸法は、装置の最長寸法において、約0.05mm以上、約0.1mm以上、約0.3mm以上、約0.5mm以上、約1mm以上、約2mm以上、又は約3mm以上である。いくつかの実施形態では、装置の本体の最長寸法は、長さが約0.04mm〜約5mm、長さが約0.05mm〜約4mm、長さが約0.07mm〜約3mm、長さが約0.08mm〜約3mm、又は長さが約1mm〜約2mmである。
【0166】
いくつかの実施形態において、埋め込み可能な装置の本体は(約4mm以下、3mm以下、2mm以下、又は1mm以下など、)約5mm以下の容積を有する。ある実施形態では、埋め込み可能な装置の本体が約0.5mm〜約5mm、約1mm〜約5mm、約2mm〜約5mm、約3mm〜約5mm、又は約4mm〜約5mmの体積を有する。埋め込み可能な装置の小さなサイズにより、その装置の腹腔鏡移植が可能になり、それによって、装置を埋め込む際の組織損傷が最小限になる。
【0167】
埋め込み可能な装置は、1つ、2つ、又は3つ以上の超音波変換器などの1つ以上の超音波変換器を含む。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置は、第1の偏波軸を有する第1の超音波変換器と、第2の偏波軸を有する第2の超音波変換器とを含み、ここで第2の超音波変換器は第2の偏波軸が第1の偏波軸と直交するように配置され、第1の超音波変換器及び第2の超音波変換器は、装置に電力を供給し超音波後方散乱を放射する超音波を受信するように構成される。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な医療装置は、第1の偏波軸を有する第1の超音波変換器と、第2の偏波軸を有する第2の超音波変換器と、第3の偏波軸を有する第3の超音波変換器とを含み、第2の超音波変換器は、第2の偏波軸が第1の偏波軸及び第3の偏波軸に直交するように配置され、第3の超音波変換器は、第3の偏波軸が第1の偏波及び第2の偏波軸に直交するように位置決めされ、第1の超音波変換器及び第2の超音波変換器は、装置に電力を供給し超音波後方散乱を放射する超音波を受信するように構成される。1つ、2つ、又は3つ以上の超音波変換器を有する埋め込み可能な装置は、神経などの組織と電気的に連絡するように構成されるセンサ又は2つ以上の電極をさらに含んでいてもよい。任意で、この埋め込み可能な装置は集積回路をさらに含む。
【0168】
図4は、2つの直交して配置された超音波変換器を含む装置の本体を示す。この本体は、プリント回路基板などの背面板402と、コンデンサ406を含む電力回路である集積回路404とを含む。本体は、集積回路404に電気的に接続された第1の超音波変換器408と、集積回路404に電気的に接続された第2の超音波変換器410とをさらに含む。第1の超音波変換器408は第1の偏波軸412を含み、第2の超音波変換器410は第2の偏波軸414を含む。第1の超音波変換器408及び第2の超音波変換器は、第1の偏波軸412が第2の偏波軸414に直交するように配置される。ハウジング(図示せず)は本体構成要素を囲み、任意にふさぐことができる。さらに、集積回路は、センサ又は電極に電気的に結合することができる。
【0169】
埋め込み可能な装置の超音波変換器は、容量型微細加工超音波変換器(CMUT)若しくは圧電微細加工超音波変換器(PMUT)などの微細加工超音波変換器とすることができ、又はバルク圧電変換器とすることができる。バルク圧電変換器は、結晶、セラミック、又はポリマーなどの任意の天然又は合成材料とすることができる。例示的なバルク圧電変換器データは、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZO)、窒化アルミニウム(AlN)、水晶、ベルリナイト(AlPO)、トパズ、ランガサイト(LaGaSiO14)、オルトリン酸ガリウム(GaPO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、タングステン酸ナトリウム(NaWo)、ビスマスフェライト(BiFeO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びニオブ酸鉛マグネシウム−チタン酸鉛(PMN−PT)を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、バルク圧電変換器はほぼ立方体(すなわち、約1:1:1(長さ:幅:高さ)のアスペクト比)である。いくつかの実施形態では、圧電変換器は、長さ又は幅アスペクトの何れかにおいて、約7:5:1以上、又は約10:10:1以上など、約5:5:1以上のアスペクト比を有する板状である。いくつかの実施形態では、バルク圧電変換器は、約3:1:1以上のアスペクト比で長く狭く、その最長寸法は超音波後方散乱波の方向(すなわち、分極軸)に整列される。いくつかの実施形態では、バルク圧電変換器の1寸法は、変換器の駆動周波数又は共振周波数に対応する波長(λ)の1/2に等しい。この共振周波数において、変換器の何れかの面に衝突する超音波は、逆位相に達するために180°の位相シフトを受け、2つの面の間で最大の変位を引き起こすだろう。いくつかの実施形態では、圧電変換器の高さは(約40μm〜約400μm、約100μm〜約250μm、約250μm〜約500μm、又は約500μm〜約1000μmなど)約10μm〜約1000μmである。いくつかの実施形態では、圧電変換器の高さは(約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1mm以下、約500μm以下、約400μm以下、250μm以下、約100μm以下、又は約40μm以下など)約5mm以下である。いくつかの実施形態では、圧電変換器の高さは、長さが(約40μm以上、約100μm以上、約250μm以上、約400μm以上、約500μm以上、約1mm以上、約2mm以上、約3mm以上、又は約4mm以上など)約20μm以上である。
【0171】
いくつかの実施形態では、超音波変換器は、最長寸法において(約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1mm以下、約500μm以下、約400μm以下、250μm以下、約100μm以下、又は約40μm以下など)約5mm以下の長さを有する。いくつかの実施形態では、超音波変換器は、最長寸法において(約40μm以上、約100μm以上、約250μm以上、約400μm以上、約500μm以上、約1mm以上、約2mm以上、約3mm以上、又は約4mm以上など)約20μm以上の長さを有する。
【0172】
この超音波変換器は、集積回路との電気通信を可能にするために、2つの電極と接続される。第1の電極は変換器の第1の面に取り付けられ、第2の電極は変換器の第2の面に取り付けられ、ここで第1の面及び第2の面は、1つの寸法に沿って変換器の対向する側面である。いくつかの実施形態では、電極は、銀、金、白金、白金黒、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT))、導電性ポリマー(導電性PDMS又はポリイミドなど)、又はニッケルを備える。いくつかの実施形態では、変換器の電極間の軸が変換器の動きと直交する。
【0173】
いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置は、脾神経と電気的に連絡する2つ以上の電極を備える。埋め込み可能な装置は例えば、脾神経と電気的に連絡するように電極を配置し留めるために、本明細書に記載されるような脾神経取り付け部を含むことができる。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置によって放射される1つ以上の電気パルスが脾神経活性を刺激する。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置によって放射される1つ以上の電気パルスが脾神経活性を遮断する。
【0174】
埋め込み可能な装置は、複数の電極を備える。いくつかの実施形態では、この電極は対になっている。電極対は2つの電極から形成され得、したがって、3つの電極を有する埋め込み可能な装置は3つの電極対を有することができる。脾神経活性は電極対の電極間で検出することができ、又はこの脾神経は、電極対の何れかを使用して刺激することができる。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上、又は15以上の電極対を備える。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置が2、3、5、6、7、8、9、10個又はそれより多くの電極を備える。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置は、電気パルスを放射するために電極対内の電極を選択することができる、又は脾神経活性を検出する電極対を選択することができるマルチプレクサを含む。
【0175】
脾神経に電気的に接続される2つ以上の電極は、その神経に沿って直線的に配列される必要はない。例えば、電極は神経と係合してもよく、又はその神経に対して横軸に沿う他の組織と係合してもよく、これは横方向にパルスを放射できる。2つ以上の電極は、横軸に沿って、正反対(すなわち180°)、又は180°未満(例えば、約170°以下、約160°以下、約150°以下、約140°以下、約130°以下、約120°以下、約110°以下、約100°以下、約90°以下、約80°以下、約70°以下、約60°以下、約50°以下、約40°以下、又は約30°以下)などの任意の角度で脾神経に係合することができる。
【0176】
いくつかの実施形態では、電極対の電極は(約4mm以下、約3mm以下、約2mm以下、約1.5mm以下、約1mm以下、又は約0.5mm以下など)約5mm以下で分離される。いくつかの実施形態では、電極対の電極は(約1mm以上、約1.5mm以上、約2mm以上、約3mm以上、又は約4以上など)約0.5mm以上離れている。いくつかの実施形態では、電極は、約0.5mm〜約1mm、約1mm〜約1.5mm、約1.5mm〜約2mm、約2mm〜約3mm、約3mm〜約4mm、又は約4mm〜約5mmだけ離れている。
【0177】
この電極は、埋め込み可能な装置の本体内の集積回路に電気的に結合される。いくつかの実施形態では、電極は、本体の下に、例えば、本体構成要素(例えば、超音波変換器、集積回路など)に対向する本体ハウジングの基部の面上に配置されるか、又は終端する。いくつかの実施形態では、本明細書で詳述するように、電極はクリップの脚部に沿って終端する。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極が、脚部のうちの1つの端から端までの少なくとも一部に沿って露出される。
【0178】
電極は、ハウジングの基部内の1つ以上のフィードスルーを介して集積回路に電気的に結合されてもよい。このフィードスルーは例えば、(銀、銅、金、白金、白金黒、又はニッケルを含む金属などの)金属、サファイア、又は導電性セラミック(例えば、インジウムスズ酸化物(ITO))であってもよい。電極は、はんだ付け、レーザ溶接、又はフィードスルーを電極に圧着するなどの任意の適切な手段を使用してフィードスルーと接続されてもよい。
【0179】
いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置が1つ以上のセンサを含む。このセンサは、温度、酸素濃度、pH、(グルコースなどの)検体、歪み、又は圧力などの生理学的条件を検出するように構成される。生理学的条件の変動はインピーダンスを調整し、インピーダンスは次に、埋め込み可能な装置上の超音波変換器を流れる電流を変調する。上述のように、この超音波変換機はインテロゲータによって検出される超音波後方散乱を生成し、超音波後方散乱波の変化は生理学的条件に関する情報を反映する。いくつかの実施形態では、このシステムが、生理学的システムの変化を検出するように構成される。いくつかの実施形態では、このシステムが、例えば超音波後方散乱を既知の値に較正することによって、生理学的条件の値又は凡その値を検出するように構成される。埋め込み可能な装置は、同じ生理学的条件又は異なる生理学的条件を検出する場合のある(2、3、4、5つ又はそれ以上など、)1つ以上のセンサを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置が10、9、8、7、6、又は5つ以下のセンサを備える。例えば、いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置は、温度を検出するように構成される第1のセンサと、酸素を検出するように構成される第2のセンサとを含む。両方の生理学的条件の変化は超音波後方散乱波に符号化することができ、この超音波後方散乱波は、外部コンピューティングシステムによって解読することができる。
【0180】
集積回路は、超音波変換器とセンサ及び/又は電極との間で通信する。例えば、超音波変換器は超音波に符号化された情報を受信し、その情報を符号化する電流を生成することができ、この電流は集積回路に送信される。電流に符号化された情報は、電極及び/又はセンサを動作させるための命令を含むことができ、集積回路は、この命令に従って電極及び/又はセンサを動作させることができる。集積回路はまた、センサ及び/又は電極から信号を受信することができ、センサ及び電極から受信された信号に関連する情報を符号化するために、超音波変換器を通して流れる電流を変調することができる。
【0181】
いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置は、情報を符号化する超音波後方散乱を放射する。超音波後方散乱は、インテロゲータによって受信され、例えば符号化された情報を決定するために解読され得る。この情報は、埋め込み可能な装置の集積回路内の変調回路を使用して符号化することができる。この変調回路は情報(例えば、検出された電気生理学的パルス又は生理学的条件に関連する情報、又は装置状態に関連する情報)を符号化するために、超音波変換器を通して流れる電流を変調することができる。変調された電流は、超音波後方散乱を調整するために超音波変換器を通して流れ、それによって超音波後方散乱波中の情報を符号化する。変調回路は、オン/オフスイッチ又は電界効果トランジスタ(FET)などの1つ以上のスイッチを含む。埋め込み可能な装置のいくつかの実施形態と共に使用することができる例示的なFETは、金属−酸化物−半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)である。変調回路は、超音波変換器を流れる電流のインピーダンスを変更することができ、この変換器を通して流れる電流の変動は、電気生理学的信号を符号化する。いくつかの実施形態では、超音波後方散乱に符号化された情報は、埋め込み可能な装置に対する一意の識別子を含む。これは、例えば、複数の埋め込み可能な装置が被験者に埋め込まれたときに、インテロゲータが正しい埋め込み可能な装置と連絡することを確実にするために有用であり得る。いくつかの実施形態では、超音波後方散乱に符号化された情報は、埋め込み可能な装置によって放射された電気パルスを検証する検証信号を含む。いくつかの実施形態では、超音波後方散乱に符号化された情報は、エネルギー蓄積回路(又はエネルギー蓄積回路内の1つ以上のコンデンサ)に格納されたエネルギー量又は電圧を含む。いくつかの実施形態では、超音波後方散乱に符号化された情報は、検出されたインピーダンスを含む。インピーダンス測定値の変化は、瘢痕組織又は電極の経時的な劣化を識別することができる。
【0182】
いくつかの実施形態では、変調回路は、デジタル回路又は混合信号集積回路によって動作され、デジタル化信号又はアナログ信号で情報を能動的に符号化することができる。デジタル回路又は混合信号集積回路は、メモリと、埋め込み可能な装置を動作させるための1つ以上の回路ブロック、システム、又はプロセッサとを含んでいてもよい。これらのシステムは例えば、搭載マイクロコントローラ若しくはプロセッサ、有限状態機械実装、又はインプラント上に格納された若しくはインテロゲータと埋め込み可能な装置との間の超音波通信を介して提供された1つ以上のプログラムを実行することができるデジタル回路を含むことができる。いくつかの実施形態では、デジタル回路又は混合信号集積回路は、アナログ−デジタル変換器(ADC)を含み、これは、デジタル回路又は混合信号集積回路によって信号が処理され得るように、インテロゲータから放射される超音波に符号化されたアナログ信号を変換することができる。デジタル回路又は混合信号集積回路は、例えば組織を刺激するための電気パルスを生成するように、電力回路を動作させることもできる。いくつかの実施形態では、デジタル回路又は混合信号集積回路は、インテロゲータによって送信された超音波に符号化されたトリガ信号を受信し、そのトリガ信号に応答して電気パルスを放電するように電力回路を動作させる。
【0183】
いくつかの実施形態では、集積回路は、エネルギー蓄積回路を含むことのできる電力回路を含む。超音波によって電力供給される埋め込み可能な装置は、好ましくは電池無しであるが、電気エネルギーを一時的に蓄積するために、エネルギー蓄積回路は1つ以上のコンデンサを含むことができる。超音波からのエネルギーは超音波変換器で電流に変換され、エネルギー蓄積回路に蓄積できる。このエネルギーは、デジタル回路、変調回路、又は1つ以上の増幅器に電力を供給するなど、埋め込み可能な装置を動作させるために使用することができ、又は組織を刺激するために使用される電気パルスを生成するために使用することができる。いくつかの実施形態では、電力回路は例えば、整流器及び/又はチャージポンプをさらに含む。
【0184】
いくつかの実施形態では、集積回路は、1つ以上のセンサ及び/又は電極に電流を供給する駆動回路を含む。任意に、駆動回路は、存在する場合には、デジタル回路又は混合信号集積回路によって動作される。いくつかの実施形態では、1つ以上の増幅器は、駆動回路とデジタル回路との間に配列れる。いくつかの実施形態では、集積回路は、センサ及び/又は電極から信号を受信することができる(CMOSフロントエンドなどの)フロントエンド回路を含む。このフロントエンド回路で受信した信号はデジタル回路に中継できる。
【0185】
図12は、集積回路と、電気パルスを放射するように構成される電極とを含む埋め込み可能な装置の実施形態の概略図を示す。この埋め込み可能な装置は、超音波変換器と、(1つ以上のコンデンサ(「CAP」)を含むことができる)エネルギー蓄積回路を含む電力回路と、デジタル回路又はマルチ信号集積回路と、1対の電極とを含む。超音波変換器は電力回路に接続されており、これは、超音波からのエネルギーをエネルギー蓄積回路に蓄積することを可能にする。電力回路は、デジタル回路又はマルチ信号集積回路が電力回路を動作させることができるように、デジタル回路又はマルチ信号集積回路に接続される。デジタル回路又はマルチ信号集積回路は、超音波変換器にも接続される。トリガ信号が超音波変換器によって受信された超音波に符号化されると、デジタル回路又はマルチ信号集積回路は、トリガ信号を検出することができる。次いで、デジタル回路又はマルチ信号集積回路は、エネルギー回路に格納されたエネルギーを放出するために電力回路を動作させ、それによって、電極を使用して電気パルスを放射することができる。任意に、デジタル回路又はマルチ信号集積回路は、埋め込み可能な装置の動作に関連する情報、又は電極によって検出された電気パルスに関連する情報などの情報を符号化するために、超音波変換器を通して流れる電流を変調することができる変調回路を動作させる、又は含むことができる。
【0186】
[脾神経取り付け部]
いくつかの実施形態では、埋め込み可能な医療装置は、本体に取り付けられる脾神経取り付け部を含み、ここでこの脾神経取り付け部は、装置を脾神経又は脾動脈に取り付け、2つ以上の電極を脾神経と電気的に連絡するよう配置するように寸法決めされ構成される。いくつかの実施形態では、脾神経取り付け部は、2つ以上の電極を脾神経と電気的に連絡するよう配置するために、神経を少なくとも部分的に取り囲むように構成される、本体に取り付けられるクリップである。脾神経は脾動脈に取り付けられていてもよく、脾神経取り付け部は、脾神経と脾動脈とを少なくとも部分的に取り囲むように構成することができる。
【0187】
脾神経取り付け部は、埋め込み可能な装置を脾神経及び/又は脾動脈上の所定の位置に保持する。いくつかの実施形態では、脾神経取り付け部は、脾神経及び/又は脾動脈上の埋め込み可能な装置の何らかの回転運動を可能にする。いくつかの実施形態では、脾神経取り付け部は、脾神経及び/又は動脈に内向きの圧力を働かせることによって、その神経及び/又は動脈を把持する。脾神経取り付け部によって働く内向きの圧力の量は、クリップ脚部などの脾神経取り付け部構成要素のばね定数によるのに加えて、脾神経取り付け部のサイズ及び曲率に基づいて、決定することができる。この内向きの圧力は、挿入後に組織が治癒する間、埋め込み可能な装置を所定の位置に保持するのに十分であるべきであるが、脚部に接触する神経上膜又は血管壁が損傷されるほど高くはないべきである。いくつかの実施形態では、神経又は糸状組織への内向きの圧力は、(約0.7MPa以下、約0.5MPa以下、又は約0.3MPa以下など、)約1MPa以下である。いくつかの実施形態では、神経又は糸状組織への内向きの圧力は、(約0.1MPaから約0.3MPa、約0.3MPaから約0.5MPa、約0.5MPaから約0.7MPa、又は約0.7MPaから約1MPaなど、)約0.1MPaから約1MPaである。
【0188】
いくつかの実施形態では、埋め込み可能な医療装置は、超音波を受信し、超音波からのエネルギーを、装置に電力を供給する電気エネルギーに変換するように構成される超音波変換器を備える本体と、超音波変換器と電気的に連絡する2つ以上の電極と、本体に取り付けられる脾神経取り付け部と、を含み、この脾神経取り付け部は、装置を脾神経又は脾動脈に取り付け、2つ以上の電極を脾神経と電気的に連絡するよう配置するように寸法決定され構成される。いくつかの実施形態では、脾神経取り付け部は、脾神経又は脾動脈を少なくとも部分的に取り囲むように構成されるクリップを備える。
【0189】
このクリップは、埋め込み可能な装置の本体の下方に延びる複数の可撓性脚部を含むことができる。いくつかの実施形態では、この脚部は湾曲している。例えば、いくつかの実施形態では、この脚部は、脚部が本体の下方に延びるにつれて、本体に向かって湾曲する前に、本体から離れるように延びる。クリップは一対の脚部を含んでもよく、その対の各脚部は本体から離れるように反対方向に延びる。この構成は、脚部が脾神経及び/又は脾動脈に巻きつく(又は少なくとも部分的に脾神経及び/又は脾動脈に巻きつく)ことを可能にする。一対の脚部の脚部は、脚部が互い違いの構成に配置されることを可能にするクロスバーによって接続することができ、対の脚部の一方は、他方の脚部よりも本体に近接して配置される。脚部を装置の本体から異なる距離で互い違いにすることによって、この脚部は、脾神経及び/又は脾動脈を完全に取り囲むように、脚部の端部が互いに通り過ぎて延びるように延びることができる。いくつかの実施形態では、一対の脚部の脚部及びクロスバーが金属、金属合金、セラミック、シリコン、又は非ポリマー材料などの材料の単一片(例えば、同時押出成形又は同時印刷)である。装置の脚部又はクロスバーは、装置の本体に接続される。埋め込み可能な装置がそれぞれクロスバーによって接続された2対の脚部を含む場合、そのクロスバーは、本体の反対端で本体に取り付けられてもよい。本体に取り付けられたクロスバーの端から端までは、脾神経及び/又は脾動脈の軸に平行であり得る同じ軸に沿うことができる。
【0190】
いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置の脚部又はクロスバーは、ヒンジ(例えば、ばねヒンジ)などの可撓部を介して装置の本体に接続される。脚部及び可撓部の可撓性は、クリップの脚部を屈曲させることによって、埋め込み可能な装置が神経上の所定の配置に操作されることを可能にし、これは、装置の電極を神経と電気的に連絡するよう正確に配置するために、それらのデフォルト位置へと戻ることができる。
【0191】
図5は、クリップを有する埋め込み可能な装置の一例を示す。この埋め込み可能な装置は、超音波変換器504及び集積回路506を含む本体502を含む。超音波変換器504はインテロゲータから超音波を受信することができ、この超音波変換器は、超音波からのエネルギーを、装置に電力を供給する電気エネルギーに変換する。超音波変換器504は、超音波変換器504を通して流れる電流で情報を符号化することのできる集積回路506に電気的に接続されている。超音波変換器504は、受信した電流に基づいて超音波後方散乱を放射し、この超音波後方散乱は、電流に符号化された情報を符号化する。
【0192】
埋め込み可能な装置は、例えば集積回路506を通して超音波変換器504と電気的に連絡している2つ以上の電極を含む。いくつかの構成では、電極は、例えば集積回路506によって動作されることによって神経に電気パルスを放射するように構成される。任意に、脾神経活性は電極によって検出され、検出された脾神経活性に基づいて超音波変換器504を通して流れる電流を調節することのできる、集積回路506に連絡される。埋め込み可能な装置の本体502は、クリップ508に取り付けられる。このクリップは神経510を取り囲み、2つ以上の電極を神経と電気的に連絡するよう配置するように構成される。
図5に図示される実施形態では、電極は神経510と接触する本体502の底部に沿って配置される。いくつかの実施形態では、2つ以上の電極が神経と物理的に接触しているが、電極が脾神経と電気的に連絡したままである限り、埋め込み可能な装置のいくらかの移動が許容されてもよい。電極は、脾神経の神経上膜を貫通する必要はない。
【0193】
クリップは、脾神経510の対向側に配置された第1の脚部512及び第2の脚部514を含む。クリップの脚部は、クリップを脾神経上に配置するためにその脚部が外側に屈曲することができるように、任意に可撓性である。脚部が解放されると、脚部は内側に跳ね返り、電極を脾神経と電気的に連絡した状態に維持する。脚部のサイズ及び間隔は、脾神経及び/又は脾動脈と係合し取り付けるように構成される。図5に図示される実施形態では、脚部514が本体502とほぼ同じ長さの幅を有する。脚部514は、神経510の側面に沿って本体から神経510の下まで延びる第1のセグメント516と、第1の部分の底部から神経510の下方に向かって延びる第2のセグメント518とを含む。可撓部520(例えば、ばねヒンジなどのヒンジ)は、第1のセグメント516と第2のセグメント518とを接合し、これは、埋め込み可能な装置が神経上に配置されているときに、第2のセグメント518が第1のセグメント516に向かって屈曲することを可能にする。第2のセグメント518の端部は解放され、第2のセグメント518は神経510の下方の配置に跳ね返る。任意に、第2の可撓部522(例えば、ヒンジであってもよい)が、脚部508を本体502に取り付ける。第2の可撓部522は、埋め込み可能な装置を神経510上に配置するときに、脚部514が外向きに屈曲することを可能にする。
【0194】
図6は、本体602と、複数の可撓性脚部604、606、608、及び610を備える、神経を少なくとも部分的に取り囲むように構成されるクリップとを含む、埋め込み可能な装置の別の例を示す。本体602はハウジングを含み、超音波を受け取り、その超音波からのエネルギーを埋め込み可能な装置に電力を供給する電気エネルギーに変換するように構成される超音波変換器を収容する。この埋め込み可能な装置は、本体ハウジングの底部に配置された複数の電極をさらに含む。電極は、例えば埋め込み可能な装置の本体602内に収容される集積回路を介して、超音波変換器と電気的に連絡している。このクリップが神経を少なくとも部分的に取り囲むように神経上に配置されるときに、電極は脾神経と電気的に連絡するように配置される。
【0195】
埋め込み可能な装置の脚部604、606、608、及び610は、本体602の下方に延びて湾曲しており、これは、脚部が脾神経及び/又は脾動脈の周りに巻き付くことを可能にする。脚部の上部は本体602から離れるように延び、その脚部は、本体の下方に延びるにつれて本体602に向かって後方に湾曲する。図6に図示されるクリップは、第1の一対の脚部604及び606と、第2の一対の脚部608及び610とを含む。対になった脚部は、本体から離れて反対方向に延びている。脚部604及び606の上部はクロスバー612によって接続され、脚部608及び610の上部はクロスバー614によって接続される。クロスバー612は可撓部616を介して本体602に接続され、クロスバー614は第2の可撓部(図示せず)を介して本体602に接続される。可撓部は例えば、(ばねヒンジなどの)ヒンジであってもよい。クロスバーは本体602の対向側に接続され、クロスバーの端から端までは、同じ方向(すなわち、神経に平行)に向けられる。
【0196】
クリップは、クリップの脚部が脾神経及び/又は脾動脈を少なくとも部分的に取り囲むことを可能にするように設計される。いくつかの実施形態では、図6に示す装置のクリップなど、脚部の内面が、脾神経及び/又は脾動脈が通過する円筒状空間を形成する。いくつかの実施形態では、装置の脚部は、約500μm〜約8mm(例えば、約500μm〜約1mm、約1mm〜約1.5mm、約1.5mm〜約2.5mm、約2.5mm〜約5mm、又は約5mm〜約8mm)の直径を有する円筒形空間を形成する。脾神経は、埋め込み可能な装置を所定の位置にして脾臓動脈に取り付けられる場合があるので、いくつかの実施形態では、その円筒形空間が(約2mm〜約3mm、約3mm〜約4mm、約4mm〜約5mm、約5mm〜約6mm、約6mm〜約7mm、約7mm〜約8mmなど、)約2mm〜約8mmの直径を有する。
【0197】
装置の脚部はまた、脾神経に最適に係合するよう寸法決めされてもよく、いくつかの実施形態では、(約200μm〜約400μm、約400μm〜約1mm、約1mm〜約1.5mm、又は約1.5mm〜約2mmなど、)約200μm〜約2mmの幅(脚部上の任意のコーティング材料を含む)を有していてもよい。いくつかの実施形態では、クリップの脚部は、脾神経及び脾動脈に最適に係合するよう寸法決めされ、(約500μm〜約1mm、約1mm〜約1.5mm、又は約1.5mm〜約2mmなど、)約500μm〜約2mmの幅(脚部上の任意のコーティング材料を含む)を有していてもよい。
【0198】
図7は、クリップを有する埋め込み可能な装置の別の実施形態の側面図を示す。図6に示す埋め込み可能な装置と同様に、埋め込み可能な装置は、脾神経を少なくとも部分的に取り囲むように構成されるクリップを有する本体702を含む。クリップは脚部704及び706を含むが、この装置は、任意に、追加の脚部及び/又は1つ以上のクロスバーを含むことが企図される。ハウジング702の底面708は、フィードスルー710、712、及び714を含む。このフィードスルーは、装置本体内の集積回路を電極に電気的に接続する。例えば、フィードスルー710はコネクション718を介して電極716に電気的に接続され、フィードスルー714はコネクション722を介して電極720に電気的に接続される。コネクション718及び722は、例えば、フィードスルーを電極に接続するはんだ、溶接部、又はクリンプであってもよい。電極716は脚部704の内面に配置され、電極720は脚部706の内面に配置される。電極は、例えばフィードスルーを介して埋め込み可能な装置の本体702内に収容される集積回路を介して、超音波変換器と電気的に連絡している。クリップが少なくとも部分的に神経を取り囲むように神経上に配置されると、電極は、その神経と電気的に連絡するように配置される。脚部704及び脚部706は、封止材料724を介して装置の本体702に固定される。この封止材料は、コネクション718及び722をふさぐこともできる。いくつかの実施形態では、封止材料がエポキシ又はポリマー(シリコーン又はウレタンポリマーなど)である。
【0199】
埋め込み可能な装置の脚部は、金属、金属合金、セラミック、シリコン、又は非ポリマー材料を備えることができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極が脚部の内面に配置される。脚部は可撓性であり、好ましくは、脚部が神経及び/又は糸状組織の周りに配置され得るように、弾かれる。いくつかの実施形態では、脚部又は脚部の一部は、ポリジメチルシオロキサン(PDMS)、シリコン、ウレタンポリマー、ポリ(p−キシリレン)ポリマー(PARYLENE(登録商標)の商品名で販売されているポリ(p−キシリレン)ポリマーなど)、又はポリイミドなど、好ましくは生体不活性であるエラストマーコーティング又は非エラストマーコーティングでコーティングされる。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置は、脚部の内面上に1つ以上の電極を含む。いくつかの実施形態では、脚部の内面上の1つ以上の電極は、エラストマーコーティング又は非エラストマーポリマーコーティングでコーティングされないが、導電性材料でコーティングされてもよい(例えば、電極の電気的特性を改善するためにPEDOTポリマー又は金属で電気めっきされてもよい)。したがって、いくつかの実施形態では、脚部の外面のみが被覆でコーティングされる。任意に、この被覆は、本体のハウジングをさらにコーティングする。例として図7を参照すると、脚部704及び706の外面は、被覆726でコーティングされている。しかしながら、電極716及び720は脚部704及び706の内側表面上にあるので、被覆726は脚部の内側表面をコーティングしない。
【0200】
図8A及び図8Bは、クリップの脚部に電極を備えた2つの例示的な構成を図示する。図8Aに示すように、脚部802は、エラストマーポリマー又は非エラストマーポリマーなどの被覆804でコーティングされる。単一の電極がエラストマー又は非エラストマーポリマーを通して露出され、これは、神経と電気的に連絡し得る。図8Bは、脚の内面に沿って複数の電極808を有する脚806を図示する。図8Bに図示される実施形態では、脚部806は、エラストマーポリマー又は非エラストマーポリマーでコーティングされていない。しかしながら、脚部806は、脚部806の外面上のポリマーで任意にコーティングされ得る。
【0201】
いくつかの実施形態では、脚部の末端に近接して配置されてもよく、又は脚部の端から端までに沿って配置されてもよい、1つ以上のフック又はループを、脚部が備える。
このフック又はループは、クリップを適所に操作、屈曲、又は配置するのに役立つよう使用することができる。いくつかの実施形態では、フック又はループが埋め込み可能な装置の本体に向かって湾曲し、いくつかの実施形態ではフック又はループが埋め込み可能な装置の本体から離れるように湾曲する。図9Aは、脚部の末端にフックを有する脚部の一実施形態を示す。脚部902は、開始端904で装置の本体に接続し、本体の下方に、本体から離れるように延びる。脚部902は、908で外向きに湾曲する前に、906で内向きに湾曲し、脚部の終端912でフック910を形成する。いくつかの実施形態では、クリップは、例えば図9Bに示すように、クリップの脚部を操作するように構成されるフック又はループを含む。埋め込み可能な装置は、本体914の下方に、本体から離れるように延びる脚部916に取り付けられた本体914を含む。脚部916は、例えば連続部(例えば、金属又は非エラストマープラスチック)を介して、本体914の反対側のフック918に接続される。フック918及び脚部916は、例えば、この連続部を形成するために、同時押出成形又は同時印刷されてもよい。フック918が下向きに押されると、脚部916は外向きに押し出される。この機構により、埋め込み可能な装置は、例えば腹腔鏡移植により、神経上に適切に配置することができる。
【0202】
埋め込み可能な装置の2つ以上の電極は、クリップによって、神経と電気的に連絡するように配置される。いくつかの実施形態では、2つ以上の電極が神経に直接接触する。いくつかの実施形態では、2つ以上の電極が神経の約2mm以内(約1.8mm以内、約1.6mm以内、約1.4mm以内、約1.2mm以内、約1.0mm以内、約0.8mm以内、約0.6mm以内、約0.4mm以内、又は約0.2mm以内)に配置される。この電極は、本体の底部に、又は1つ以上のクリップ脚部上に配置されてもよい。本体の下方に延びる脚部は本体を神経に固定し、電極を本体の底部上に配置することによって、この電極は、神経と電気的に連絡するよう配置される。
【0203】
[インテロゲータ]
インテロゲータは、埋め込み可能な装置に電力を供給する及び/又は動作させるために使用される超音波を使用して、1つ以上の埋め込み可能な装置と無線で通信することができる。例えば、インテロゲータは、埋め込み可能な装置に電気パルスを放射するように命令するトリガ信号などの、装置を動作させるための命令を符号化する超音波を送信することができる。インテロゲータは、埋め込み可能な装置によって送信された情報を符号化する、埋め込み可能な装置からの超音波後方散乱をさらに受信することができる。この情報は例えば、検出された電気生理学的パルス、埋め込み可能な装置によって放射された電気パルス、及び/又は測定された生理学的条件に関連する情報を含んでいてもよい。インテロゲータは、超音波送信機及び/又は超音波受信機として(又は超音波を代替的に送信又は受信するように構成され得るトランシーバとして)動作することができる1つ以上の超音波変換器を含む。1つ以上のこの変換器は変換器アレイとして配置することができ、インテロゲータは1つ以上の変換器アレイを任意に含むことができる。いくつかの実施形態では、超音波送信機能は、別個の装置上の超音波受信機能から分離される。すなわち、任意に、インテロゲータは、超音波を埋め込み可能な装置に送信する第1の装置と、埋め込み可能な装置から超音波後方散乱を受信する第2の装置とを備える。いくつかの実施形態では、アレイ内の変換器は、規則的な間隔、不規則な間隔を有する、又は疎に位置づけることができる。いくつかの実施形態では、アレイは可撓性である。いくつかの実施形態では、アレイは平面であり、いくつかの実施形態ではアレイは非平面である。
【0204】
例示的なインテロゲータが図10に示されている。図示されたインテロゲータは、複数の超音波変換器を有する変換器アレイを示す。いくつかの実施形態では、変換器アレイは、1個以上、2個以上、3個以上、5個以上、7個以上、10個以上、15個以上、20個以上、25個以上、50個以上、100個以上、250個以上、500個以上、1000個以上、2500個以上、5000個以上、又は10000個以上の変換器を含む。いくつかの実施形態では、変換器アレイは、100,000個以下、50,000個以下、25,000個以下、10,000個以下、5000個以下、2500個以下、1000個以下、500個以下、200個以下、150個以下、100個以下、90個以下、80個以下、70個以下、60個以下、50個以下、40個以下、30個以下、25個以下、20個以下、15個以下、10個以下、7個以下、又は5個以下の変換器を含む。変換器アレイは、例えば50個以上の超音波変換器画素を備えるチップとすることができる。
【0205】
図10に示されるインテロゲータは単一の変換器アレイを図示するが、このインテロゲータは1つ以上、2つ以上、又は3つ以上の別個のアレイを含むことができる。いくつかの実施形態では、インテロゲータは、(9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個の変換器アレイなど、)10個以下の変換器アレイを含む。この別個のアレイは例えば、被験者の異なる地点に位置づけることができ、同じ又は異なる埋め込み可能な装置と通信することができる。いくつかの実施形態では、アレイが埋め込み可能な装置の対向側に設置される。インテロゲータは、特定用途向け集積回路(ASIC)を含むことができ、ASICは、変換器アレイ内の各変換器のためのチャネルを含む。いくつかの実施形態では、チャネルが(「T/Rx」によって図10に示される)スイッチを含む。このスイッチは、代替的に、超音波を送信するか又は超音波を受信するように、チャネルに接続された変換器を構成することができる。このスイッチは、超音波受信回路を、より高電圧の超音波送信回路から分離することができる。
【0206】
いくつかの実施形態では、チャネルに接続された変換器は、超音波を受信するためだけに、又は超音波を送信するためだけに構成され、スイッチはチャネルから任意に省略される。チャネルは、送信された超音波を制御するように動作する遅延制御部を含むことができる。遅延制御部は例えば、位相シフト、時間遅延、パルス周波数及び/又は波形(振幅及び波長を含む)を制御することができる。遅延制御部は、超音波を送信するために変換器によって使用されるより高い電圧に遅延制御からの入力パルスをシフトする、レベルシフタに接続することができる。いくつかの実施形態では、各チャネルの波形及び周波数を表すデータが、「波テーブル」に格納され得る。これは、各チャネルの送信波形を異ならせることを可能にする。次いで、このデータを変換器アレイへの実際の送信信号へと「流れ」ださせるために、遅延制御及びレベルシフタを使用することができる。いくつかの実施形態では、各チャネルに対する送信波形は、マイクロコントローラ又は他のデジタルシステムの高速シリアル出力によって直接生成され、レベルシフタ又は高電圧増幅器を介して変換器素子に送られることができる。いくつかの実施形態では、ASICは、ASICに供給される第1の電圧を、チャネルに印加されるより高い第2の電圧に変換するために、チャージポンプ(図10に図示)を含む。チャネルは、遅延制御部を動作させるデジタルコントローラなどのコントローラによって制御することができる。
【0207】
超音波受信回路では、受信された超音波は、変換器(受信モードに設定)によって電流に変換され、データ取り込み回路に送信される。いくつかの実施形態では、増幅器、アナログ−デジタル変換器(ADC)、可変利得増幅器、若しくは組織損失を補償する時間利得制御可変利得増幅器、及び/又は帯域通過フィルタが受信回路に含まれる。ASICは、(インテロゲータの着用可能な実施形態に好ましい)電池などの電源から電力を引き出すことができる。図10に図示される実施形態では、ASICに1.8Vの電源が供給され、これはチャージポンプによって32Vに増加されるが、任意の適切な電圧を使用することができる。いくつかの実施形態では、インテロゲータは、プロセッサと非一時的コンピュータ可読メモリとを含む。いくつかの実施形態では、上述のチャネルがT/Rxスイッチを含まず、代わりに、良好な飽和回復を有する低ノイズ増幅器の形態の高電圧Rx(受信器回路)を有する独立したTx(送信)及びRx(受信)を収容する。いくつかの実施形態では、T/Rx回路はサーキュレーターを含む。いくつかの実施形態では、変換器アレイがインテロゲータ送信/受信回路内の処理チャネルよりも多くの変換器素子を含み、マルチプレクサはパルスごとに送信素子の異なるセットを選択する。例えば、3:1マルチプレクサを介して192個の物理変換器素子に接続された64個の送信受信チャネルであって、64個の変換器素子のみが所与のパルス上でアクティブである。
【0208】
いくつかの実施形態では、インテロゲータは埋め込み可能なである。いくつかの実施形態では、インテロゲータは外部にある(すなわち、埋め込まれていない)。例として、外部インテロゲータは、着用可能であり得、ストラップ又は接着剤によって本体に固定されてもよい。別の例では、外部インテロゲータは、ワンドであり得、(医療専門家などの)ユーザに保持されてもよい。いくつかの実施形態では、インテロゲータは、縫合糸、単純な表面張力や、布ラップ、スリーブ、弾性バンドなどの衣類ベースの固定装置を介して、又は皮下固定によって本体に保持することができる。インテロゲータの変換器又は変換器アレイは、変換器の残りの部分とは別個に配置されてもよい。例えば、変換器アレイは、第1の位置(例えば、1つ以上の埋め込まれた装置の近位)で被験者の皮膚に固定され得、インテロゲータの残りは、第2の位置に配置されてよく、ワイヤは変換器又は変換器アレイをインテロゲータの残りに繋ぐ。
【0209】
変換器アレイの具体的な設計は、アレイ内の個々の変換器の所望の貫通深さ、開口サイズ、及びサイズに依存する。変換器アレイのレイリー距離Rは、次のように計算される。
【数1】
ここで、Dは開口部のサイズであり、λは伝播媒体(すなわち組織)内の超音波の波長である。当技術分野で理解されるように、レイリー距離は、アレイによって放射されるビームが完全に形成される距離である。すなわち、受信電力を最大にするために、その圧力場は、レイリー距離での自然焦点に収束する。したがって、いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置は、変換器アレイからレイリー距離とほぼ同じ距離にある。
【0210】
変換器アレイ内の個々の変換器は、ビームフォーミング又はビームステアリングのプロセスを通して、レイリー距離と、変換器アレイによって放射される超音波のビームの位置とを制御するように調整することができる。線形拘束最小分散(LCMV)ビームフォーミングなどの技術は、複数の埋め込み可能な装置を外部の超音波トランシーバと通信させるために使用することができる。例えば、Bertrandらの、Beamforming Approaches for Untethered、Ultrasonic Neural Dust Motes for Cortical Recording(a Simulation Study、IEEE EMBC,2014年8月)を参照されたい。いくつかの実施形態では、ビームステアリングは、アレイ内の変換器によって放射される超音波の電力又は位相を調節することによって行われる。
【0211】
いくつかの実施形態では、インテロゲータは、1つ以上の変換器を使用して超音波をビームステアリングするための命令、1つ以上の埋め込み可能な装置の相対位置を決定するための命令、1つ以上の埋め込み可能な装置の相対移動をモニターするための命令、1つ以上の埋め込み可能な装置の相対移動を記録するための命令、及び複数の埋め込み可能な装置からの後方散乱を逆畳み込みするための命令のうちの1つ以上を含む。
【0212】
任意に、インテロゲータは、モバイル装置(例えば、スマートフォン又はテーブル)などの別個のコンピュータシステムを使用して制御される。コンピュータシステムは、例えばネットワーク接続、無線(RF)接続、又はBluetooth(登録商標)を介して、インテロゲータに無線通信することができる。コンピュータシステムは例えば、インテロゲータをオン又はオフしてもよく、又はインテロゲータによって受信された超音波に符号化された情報を分析してもよい。
【0213】
[埋め込み可能な装置とインテロゲータとの間の通信]
埋め込み可能な装置とインテロゲータとは、超音波を使用して互いに無線で通信する。埋め込み可能な装置は、埋め込み可能な装置上の1つ以上の超音波変換器を介してインテロゲータから超音波を受信し、この超音波は、埋め込み可能な装置を動作させるための命令を符号化することができる。埋め込み可能な装置上の超音波変換器の振動は、この変換器の電気端子間に電圧を生成し、集積回路を含む装置を通して電流が流れる。電流はエネルギー蓄積回路を充電するために使用することができ、このエネルギー蓄積回路は、例えばトリガ信号を受信した後に電気パルスを放射するために使用されるエネルギーを格納することができる。このトリガ信号は、インテロゲータから埋め込み可能な装置に送信され、電気パルスが放射されるべきであるということを知らせることができる。いくつかの実施形態では、トリガ信号は、周波数、振幅、パルス長、又はパルス形状(例えば、交流、直流、又はパルスパターン)など、放射されるべき電気パルスに関する情報を含む。デジタル回路はトリガ信号を解読し、パルスを放射するために電極及び電気蓄積回路を動作させることができる。
【0214】
いくつかの実施形態では、超音波後方散乱が埋め込み可能な装置から放射され、これは、埋め込み可能な装置、埋め込み可能な装置によって放射された電気パルス、埋め込み可能な装置によって検出された電気生理学的パルス、又は検出された生理学的条件に関する情報を符号化することができる。例えば、超音波後方散乱は、電気パルスが放射されたことを検証する検証信号を符号化することができる。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置が電気生理学的信号を検出するように構成され、検出された電気生理学的信号に関する情報は超音波後方散乱によってインテロゲータに送信されることができる。超音波後方散乱で信号を符号化するために、埋め込み可能な装置の超音波変換器を通して流れる電流は、検出された電気生理学的信号又は測定された生理学的条件などの符号化された情報の関数として変調される。いくつかの実施形態では、電流の変調はアナログ信号であり得、これは、例えば、検出された脾神経活性によって直接変調され得る。いくつかの実施形態では、電流の変調はデジタル化された信号を符号化し、これは集積回路内のデジタル回路によって制御され得る。後方散乱は、外部の超音波トランシーバ(初期超音波を送信した外部の超音波トランシーバと同じであっても、異なっていてもよい)によって受信される。したがって、電気生理学的信号からの情報は、後方散乱超音波の振幅、周波数、又は位相の変化によって符号化することができる。
【0215】
図11は、埋め込み可能な装置と通信するインテロゲータを示す。外部の超音波トランシーバは、組織を通過することができる超音波(「搬送波」)を放射する。搬送波は、小型化された超音波変換器(例えば、小型化されたバルク圧電変換器、PUMT、又はCMUT)に機械的振動を生じさせる。超音波変換器の両端に電圧が生成され、これは、埋め込み可能な装置上の集積回路を通して流れる電流を付与する。超音波変換器を通して流れる電流は、埋め込み可能な装置上の変換器に、後方散乱超音波を放射させる。いくつかの実施形態では、集積回路は、情報を符号化するために超音波変換器を通して流れる電流を変調し、結果としてもたらされた超音波後方散乱波が情報を符号化する。後方散乱波は、インテロゲータによって検出することができ、超音波後方散乱に符号化された情報を解釈するために分析することができる。
【0216】
インテロゲータと埋め込み可能な装置との間の通信は、超音波を送受信するパルスエコー法を使用することができる。パルスエコー法では、インテロゲータが所定の周波数で一連のインテロゲーションパルスを送信し、次いで、埋め込まれた装置から後方散乱エコーを受信する。いくつかの実施形態では、このパルスは、正方形、長方形、三角形、鋸歯状、又は正弦波である。いくつかの実施形態では、出力されるパルスは、2レベル(GND及びPOS)、3レベル(GND、NEG、POS)、5レベル、又は任意の他の複数レベル(例えば、24ビットDACを使用する場合)とすることができる。いくつかの実施形態では、パルスは、動作中にインテロゲータによって連続的に送信される。いくつかの実施形態では、パルスがインテロゲータによって連続的に送信されるとき、そのインテロゲータ上の変換器の一部は超音波を受信するように構成され、そのインテロゲータ上の変換器の一部は超音波を送信するように構成される。超音波を受信するように構成される変換器と、超音波を送信するように構成される変換器とは、インテロゲータの同じ変換器アレイ上にあることができ、異なる変換器アレイ上にあることもできる。いくつかの実施形態では、インテロゲータ上の変換器が超音波を代替的に送信又は受信するように構成することができる。例えば、変換器は、1つ以上のパルスを送信することと、休止期間との間をサイクルすることができる。この変換器は、1つ以上のパルスを送信するときに超音波を送信するように構成され、次いで、休止期間中に受信モードに切り替えることができる。
【0217】
いくつかの実施形態では、後方散乱超音波は、埋め込み可能な装置によってデジタル化される。例えば埋め込み可能な装置は、オシロスコープ又はアナログ−デジタル変換器(ADC)及び/又はメモリを含むことができ、これらは、電流(又はインピーダンス)変動における情報をデジタル的に符号化することができる。情報を符号化することができるデジタル化された電流変動は、超音波変換器によって受信され、これは、次いでデジタル化された音波を送信する。デジタル化されたデータは、例えば特異値分解(SVD)と最小二乗法に基づく圧縮とを使用することによって、アナログデータを圧縮することができる。いくつかの実施形態では、この圧縮は相関器又はパターン検出アルゴリズムによって行われる。後方散乱信号は、単一の時点で再構成データポイントを生成するために、後方散乱領域の第4順のバターワースバンドパスフィルタ整流積分などの、一連の非線形変換を経てもよい。このような変換は、ハードウェア(すなわち、ハードコーディングされた)又はソフトウェアの何れかで行うことができる。
【0218】
いくつかの実施形態では、デジタル化されたデータが一意の識別子を含むことができる。この一意の識別子は、例えば、複数の埋め込み可能な装置及び/又は複数の電極対を備える埋め込み可能な装置を備えるシステムにおいて有用であり得る。例えば一意の識別子は、複数の埋め込み可能な装置からのものであるとき、例えば埋め込み可能な装置から(検証信号などの)情報を送信するときに、発端の埋め込み可能な装置を識別することができる。いくつかの実施形態では、埋め込み可能な装置は複数の電極対を備え、これらの電極対は、単一の埋め込み可能な装置によって同時に又は代替的に電気パルスを放射してもよい。電極の異なる対は例えば、異なる組織(例えば、異なる神経若しくは異なる筋肉)又は同じ組織の異なる領域において電気パルスを放射するように構成され得る。デジタル化された回路は、どの電極対が電気パルスを放射したかを識別及び/又は検証するために、一意の識別子を符号化することができる。
【0219】
いくつかの実施形態では、デジタル化された信号はアナログ信号のサイズを圧縮する。デジタル化された信号の減少したサイズは、超音波後方散乱で符号化された情報のより効率的な報告を可能にすることができる。デジタル化を通じて送信される情報のサイズを圧縮することによって、潜在的に重複する信号を正確に送信することができる。
【0220】
いくつかの実施形態では、インテロゲータは複数の埋め込み可能な装置と通信する。これは、例えば、多入力多出力(MIMO)システム理論を使用して行うことができる。例えば、時分割多重化、空間多重化、又は周波数多重化を使用した、インテロゲータと複数の埋め込み可能な装置との間の通信。インテロゲータは、逆畳み込みされ得る複数の埋め込み可能な装置からの結合された後方散乱を受信することができ、それによって、各埋め込み可能な装置から情報を抽出する。いくつかの実施形態では、インテロゲータは、変換器アレイからの送信された超音波を、ビームステアリングを介して特定の埋め込み可能な装置へと集束させる。このインテロゲータは、送信された超音波を第1の埋め込み可能な装置に集束させ、第1の埋め込み可能な装置からの後方散乱を受信し、送信された超音波を第2の埋め込み可能な装置に集束させ、第2の埋め込み可能な装置からの後方散乱を受信する。いくつかの実施形態では、インテロゲータは超音波を複数の埋め込み可能な装置に送信し、次いで、複数の埋め込み可能な装置から超音波を受信する。
【0221】
[例示的な実施形態]
以下の実施形態は例示的なものであり、本発明を限定するものと考えるべきではない。
【0222】
[実施形態1]
被験者の免疫系を調整する方法であって、
外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、
超音波からのエネルギーを、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、装置が被験者の脾神経と電気的に連絡している2つ以上の電極を備える、変換することと、装置を用いて脾神経を電気的に刺激することと、を備える、方法。
【0223】
[実施形態2]
被験者の炎症を減少させる方法であって、
外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、
超音波からのエネルギーを、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、装置が被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、装置を用いて脾神経を電気的に刺激することであって、その刺激は、被験者の炎症を低減するよう構成される、刺激することと、を備える方法。
【0224】
[実施形態3]
炎症が自己免疫疾患によって引き起こされる、実施形態2に記載の方法。
【0225】
[実施形態4]
炎症が関節リウマチ、クローン病、大腸炎、ループス、又は脊椎炎によって引き起こされる、実施形態2又は3に記載の方法。
【0226】
[実施形態5]
被験者の炎症性疾患を治療する方法であって
外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、
超音波からのエネルギーを、炎症性疾患を有する被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、装置が被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、装置を用いて脾神経を電気的に刺激することであって、その刺激は、被験者の炎症を低減するよう構成される、刺激することと、を備える方法。
【0227】
[実施形態6]
炎症性疾患が自己免疫疾患である、実施形態5に記載の方法。
【0228】
[実施形態7]
炎症性疾患が関節リウマチ、クローン病、大腸炎、ループス、又は脊椎炎である、実施形態5又は6に記載の方法。
【0229】
[実施形態8]
被験者の炎症性サイトカインの血中濃度を低下させる方法であって、
外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、
超音波からのエネルギーを、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、装置が被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、装置を使用して脾神経を電気的に刺激することであって、その刺激は、被験者の炎症性サイトカインの血中濃度を低減するように構成される、刺激することと、を備える方法。
【0230】
[実施形態9]
その方法が、炎症性サイトカインの脾臓放出を減少させる、実施形態8に記載の方法。
【0231】
[実施形態10]
炎症性サイトカインが、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−1β(IL−1β)、又は高移動度グループボックス1(HMGB1)である、実施形態8又は9に記載の方法。
【0232】
[実施形態11]
脾神経を電気的に刺激することが、被験者の1つ以上の免疫細胞の活性化を低下させる、実施形態1乃至10の何れか一つに記載の方法。
【0233】
[実施形態12]
脾神経を電気的に刺激することが、被験者のナチュラルキラー(NK)細胞の活性化を低下させる、実施形態11に記載の方法。
【0234】
[実施形態13]
脾神経が、500μs未満の長さの1つ以上の電気パルスを使用して電気的に刺激される、実施形態1乃至12の何れか一つに記載の方法。
【0235】
[実施形態14]
脾神経が、約100μs〜200μsの長さの1つ以上の電気パルスを使用して電気的に刺激される、実施形態1乃至13の何れか一つに記載の方法。
【0236】
[実施形態15]
1つ以上の電気パルスが、約750μA〜約10mAの振幅を有する、実施形態13又は14に記載の方法。
【0237】
[実施形態16]
脾神経が、2つ以上の電気パルスを備える複数のパルス列を使用して電気的に刺激され、そのパルス列は約500ms以上の滞留時間によって分離される、実施形態1乃至15の何れか一つに記載の方法。
【0238】
[実施形態17]
脾神経を電気的に刺激することが、トリガ信号に応答して生じる、実施形態1乃至16の何れか1つに記載の方法。
【0239】
[実施形態18]
トリガ信号が、埋め込み可能な医療装置によって受信された超音波内で符号化される、実施形態17に記載の方法。
【0240】
[実施形態19]
トリガ信号が脾神経活性に基づく、実施形態17又は18に記載の方法。
【0241】
[実施形態20]
トリガ信号が、ベースライン脾神経活性からの偏位に基づく、実施形態17乃至19の何れか1つに記載の方法。
【0242】
[実施形態21]
脾神経活性が埋め込まれた医療装置によって検出される、実施形態19又は20に記載の方法。
【0243】
[実施形態22]
トリガ信号が、測定された生理学的条件にさらに基づく、実施形態17乃至21の何れか1つに記載の方法。
【0244】
[実施形態23]
生理学的条件が温度、脈拍数、又は血圧である、実施形態22に記載の方法。
【0245】
[実施形態24]
生理学的条件が埋め込まれた医療装置によって測定される、実施形態22又は23に記載の方法。
【0246】
[実施形態25]
脾神経活性又は生理学的条件に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射することを備える、実施形態22乃至24の何れか1つに記載の方法。
【0247】
[実施形態26]
脾神経活性又は生理学的状態に関連する情報を符号化する超音波後方散乱が、外部装置によって受信される、実施形態25に記載の方法。
【0248】
[実施形態27]
超音波後方散乱は、装置の状態に関連する情報、又は装置によって放射される1つ以上の電気パルスをさらに符号化する、実施形態25又は26に記載の方法。
【0249】
[実施形態28]
外部装置において、トリガ信号を符号化する超音波を送信することを備える、実施形態19乃至27の何れか1つに記載の方法。
【0250】
[実施形態29]
被験者の免疫系をモニターする方法であって、
外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、
超音波からのエネルギーを、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、装置が被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、
脾神経の電気的活性を検出することと、
脾神経の電気的活性に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射することと、被験者の免疫系の状態の変化を示す、ベースラインの電気的活性に対する電気的活性の偏位をモニターすることと、を備える方法。
【0251】
[実施形態30]
脾神経の電気的活性の増加が免疫系活性の増加を示す、実施形態29に記載の方法。
【0252】
[実施形態31]
被験者の炎症をモニターすることであって、脾神経の電気的活性の変化が、被験者の炎症の変化を示す、実施形態29又は30に記載の方法。
【0253】
[実施形態32]
脾神経の電気的活性の増加が、被験者の炎症の変化を示す、実施形態31に記載の方法。
【0254】
[実施形態33]
脾神経の電気的活性の減少が、被験者の炎症の低減を示す、実施形態31又は32に記載の方法。
【0255】
[実施形態34]
炎症が自己免疫疾患によって引き起こされる、実施形態31乃至33の何れか一つに記載の方法。
【0256】
[実施形態35]
炎症が関節リウマチ、クローン病、大腸炎、ループス、又は脊椎炎によって引き起こされる、実施形態31乃至34の何れか一つに記載の方法。
【0257】
[実施形態36]
その方法が、被験者に投与される療法をモニターすることを備える、実施形態29乃至35の何れか1つに記載の方法。
【0258】
[実施形態37]
その療法を被験者に実施することをさらに備える、実施形態36に記載の方法。
【0259】
[実施形態38]
その療法が抗炎症療法である、実施形態36又は37に記載の方法。
【0260】
[実施形態39]
抗炎症療法が、検出された炎症の増加に応じて実施される、実施形態38に記載の方法。
【0261】
[実施形態40]
抗炎症療法が薬物療法である、実施形態38又は39に記載の方法。
【0262】
[実施形態41]
抗炎症療法が神経を電気的に刺激することを備える、実施形態38又は39に記載の方法。
【0263】
[実施形態42]
神経が、被験者の迷走神経、腹腔神経節、横隔膜下迷走神経、内臓神経、上腸間膜神経、又は脾神経である、実施形態41に記載の方法。
【0264】
[実施形態43]
超音波後方散乱を外部装置で受信することを備える、実施形態29乃至42の何れか1つに記載の方法。
【0265】
[実施形態44]
被験者に炎症の療法を実施する方法であって、
外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、
超音波からのエネルギーを、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、装置が被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、
脾神経の電気的活性を検出することと、
脾神経の電気的活性を符号化する超音波後方散乱を放射することと、
脾神経の電気的活性のベースラインの電気的活性と比較して脾神経の電気的活性の偏位をモニターすることと、脾神経の電気的活性の偏位が炎症応答を示す場合に抗炎症療法を実施することと、を備える方法。
【0266】
[実施形態45]
その療法が薬物療法である、実施形態44に記載の方法。
【0267】
[実施形態46]
その療法は、神経を電気的に刺激することを備える、実施形態44に記載の方法。
【0268】
[実施形態47]
神経が、被験者の迷走神経、腹腔神経節、横隔膜下迷走神経、内臓神経、上腸間膜神経、又は脾神経である、実施形態46に記載の方法。
【0269】
[実施形態48]
被験者に実施される療法を調節する方法であって、
外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、
超音波からのエネルギーを、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することと、
脾神経の電気的活性を検出することと、
脾神経の電気的活性を符号化する超音波後方散乱を放射することと、
外部装置での超音波後方散乱を受信することと、
脾神経のベースラインの電気的活性と比較した脾神経の電気的活性の偏位をモニターすることであって、その偏位は、被験者の免疫システム状態の変化を示す、モニターすることと、被験者の免疫システム状態の変化に基づいて療法を調節することと、を備える方法。
【0270】
[実施形態49]
免疫系状態の変化が炎症応答の変化である、実施形態48に記載の方法。
【0271】
[実施形態50]
その療法を被験者に実施することをさらに含む、実施形態48又は49に記載の方法。
【0272】
[実施形態51]
その療法が抗炎症療法である、実施形態48乃至50の何れか一つに記載の方法。
【0273】
[実施形態52]
抗炎症療法が所望の効果をもたらさないか、又は望ましくない炎症応答をもたらす場合に、抗炎症療法が調節される、実施形態51に記載の方法。
【0274】
[実施形態53]
抗炎症療法が所望の効果を得る場合、抗炎症療法は中止される、実施形態51又は52に記載の方法。
【0275】
[実施形態54]
その療法が薬物療法を含む、実施形態48乃至53の何れか一つに記載の方法。
【0276】
[実施形態55]
療法を調節することが、被験者に実施される療法の周波数又は用量を調節することを備える、実施形態54に記載の方法。
【0277】
[実施形態56]
その療法は、神経を電気的に刺激することを含む、実施形態48乃至54の何れか1つに記載の方法。
【0278】
[実施形態57]
神経が、被験者の迷走神経、腹腔神経節、横隔膜下迷走神経、内臓神経、上腸間膜神経、又は脾神経である、実施形態56に記載の方法。
【0279】
[実施形態58]
療法を調整することが、神経を電気的に刺激するために使用される1つ以上の電気パルスの周波数、電圧、電流、又は持続時間を調節することを備える、実施形態56又は57に記載の方法。
【0280】
[実施形態59]
被験者が、炎症を引き起こす自己免疫疾患を有する、実施形態44乃至58の何れか一つに記載の方法。
【0281】
[実施形態60]
被験者が、関節リウマチ、クローン病、大腸炎、ループス、又は脊椎炎を有する、実施形態44乃至59の何れか1つに記載の方法。
【0282】
[実施形態61]
被験者の血圧を調整する方法であって、
外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、
超音波からのエネルギーを、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、装置が被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、装置を使用して脾神経を電気的に刺激することであって、その刺激は、被験者の血圧を調整するように構成される、刺激することと、を備える方法。
【0283】
[実施形態62]
被験者の高血圧を治療する方法であって、
外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、
超音波からのエネルギーを、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することであって、装置が被験者の脾神経に接触する2つ以上の電極を備える、変換することと、装置を用いて脾神経を電気的に刺激することであって、その刺激は、被験者の高血圧を低減するよう構成される、刺激することと、を備える方法。
【0284】
[実施形態63]
脾神経を電気的に刺激することが、脾神経活性を遮断することを備える、実施形態61又は62に記載の方法。
【0285】
[実施形態64]
脾神経を電気的に刺激することが、約1kHz以上の周波数で複数の電気パルスを放射することを備える、実施形態61乃至63の何れか1つに記載の方法。
【0286】
[実施形態65]
脾神経を電気的に刺激することが、トリガ信号に応答して生じる、実施形態60乃至63の何れか1つに記載の方法。
【0287】
[実施形態66]
トリガ信号が、埋め込み可能な医療装置によって受信された超音波内で符号化される、実施形態65に記載の方法。
【0288】
[実施形態67]
トリガ信号が脾神経活性に基づく、実施形態65又は66に記載の方法。
【0289】
[実施形態68]
トリガ信号が、ベースライン脾神経活性からの偏位に基づく、実施形態65乃至67の何れか1つに記載の方法。
【0290】
[実施形態69]
脾神経活性が埋め込まれた医療装置によって検出される、実施形態67又は68に記載の方法。
【0291】
[実施形態70]
トリガ信号が、測定された生理学的条件にさらに基づく、実施形態67乃至69の何れか1つに記載の方法。
【0292】
[実施形態71]
生理学的条件が温度、脈拍数、又は血圧である、実施形態70に記載の方法。
【0293】
[実施形態72]
生理学的条件が埋め込まれた医療装置によって測定される、実施形態70又は71に記載の方法。
【0294】
[実施形態73]
脾神経活性又は生理学的条件に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射することを備える、実施形態69乃至70の何れか1つに記載の方法。
【0295】
[実施形態74]
脾神経活性又は生理学的状態に関連する情報を符号化する超音波後方散乱が、外部装置によって受信される、実施形態73に記載の方法。
【0296】
[実施形態75]
超音波後方散乱は、装置の状態に関連する情報、又は装置によって放射される1つ以上の電気パルスをさらに符号化する、実施形態73又は74に記載の方法。
【0297】
[実施形態76]
外部装置において、トリガ信号を符号化する超音波を送信することを備える、実施形態65乃至75の何れか1つに記載の方法。
【0298】
[実施形態77]
外部装置を使用して埋め込み可能な医療装置に電力を供給する超音波を送信することを備える、実施形態1乃至76の何れか一項に記載の方法。
【0299】
[実施形態78]
埋め込まれた医療装置が、脾神経及び脾動脈を囲む血管周囲筋膜に完全に埋め込まれる、実施形態1乃至77の何れか一つに記載の方法。
【0300】
[実施形態79]
脾神経が脾動脈から分離されない、実施形態1乃至78の何れか一つに記載の方法。
【0301】
[実施形態80]
埋め込み可能なの医療装置が電池を備えない、実施形態1乃至79の何れか1つに記載の方法。
【0302】
[実施形態81]
埋め込み可能なの医療装置が無線周波数通信システムを備えない、実施形態1乃至80の何れか1つに記載の方法。
【0303】
[実施形態82]
埋め込み可能なの医療装置は、装置の本体から延びる電気リード線を備えない、実施形態1乃至81の何れか1つに記載の方法。
【0304】
[実施形態83]
埋め込まれた医療装置は、超音波変換器を備える本体を備え、その装置の本体が脾神経又は脾動脈に取り付けられる、実施形態1乃至82の何れか一つに記載の方法。
【0305】
[実施形態84]
埋め込まれた医療装置は、本体に取り付けられた脾神経取り付け部を備え、この脾神経取り付け部は、装置を脾神経又は脾臓動脈に取り付け、2つ以上の電極を脾神経と電気的に連絡するよう配置するように寸法決めされ構成される、実施形態83に記載の方法。
【0306】
[実施形態85]
埋め込まれた医療装置は、最長寸法で約5mm以下の長さを有する、実施形態1乃至84の何れか1つに記載の方法。
【0307】
[実施形態86]
埋め込み可能な医療装置が、約5mm以下の体積を有する、実施形態1乃至84の何れか1つに記載の方法。
【0308】
[実施形態87]
被験者が抗環状シトルリン化ペプチド(抗CCP)陽性であるか、又は疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)に応答しない、実施形態1乃至86の何れか1つに記載の方法。
【0309】
[実施形態88]
被験者がヒトである、実施形態1乃至87の何れか一つに記載の方法。
【0310】
[実施形態89]
埋め込み可能な医療装置であって、
超音波を受信し、その超音波からのエネルギーを装置に電力を供給する電気エネルギーに変換するように構成される超音波変換器を備える本体と、
超音波変換器と電気的に連絡する2つ以上の電極であって、この電極は脾神経を電気的に刺激するか、又は脾神経活性を検出するように構成される、電極と、
本体に取り付けられる脾神経取り付け部であって、この脾神経取り付け部は装置を脾神経又は脾動脈に取り付け、2つ以上の電極を脾神経と電気的に連絡するように配置するように寸法決めされ、構成される、脾神経取り付け部と、を備える埋め込み可能な医療装置。
【0311】
[実施形態90]
脾神経取り付け部が、脾神経又は脾動脈を少なくとも部分的に取り囲むように構成されるクリップを含む、実施形態89に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0312】
[実施形態91]
クリップは、本体の下方に延びる複数の可撓性脚部を備える、実施形態90に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0313】
[実施形態92]
埋め込み可能な装置は、フック又はループを操作することに応答して、可撓性脚部のうちの少なくとも1つを操作するように構成されるフック又はループを備える、実施形態91に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0314】
[実施形態93]
フック又はループが、可撓性脚部のうちの1つの端部に配置される、実施形態92に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0315】
[実施形態94]
フック又はループが、本体の近位に配置される、実施形態92に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0316】
[実施形態95]
可撓性脚部が湾曲している、実施形態91乃至94の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置。
【0317】
[実施形態96]
脚部が本体の下方に延びるにつれて、脚部が本体に向かって湾曲する前に本体から離れるように延びる、実施形態95に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0318】
[実施形態97]
複数の可撓性脚部は少なくとも1対の脚部を備え、この一対の脚部は、反対方向に本体から離れて下方に延びる第1の脚部及び第2の脚部を備える、実施形態96に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0319】
[実施形態98]
第1の脚部及び第2の脚部は、本体に接続されたクロスバーによって接続される、実施形態97に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0320】
[実施形態99]
クロスバーは、可撓部を介して装置の本体に接続される、実施形態98に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0321】
[実施形態100]
可撓部がヒンジである、実施形態99に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0322】
[実施形態101]
装置が2対の脚部を備え、この対の脚部それぞれは本体の反対側に配置される、実施形態97乃至100の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置。
【0323】
[実施形態102]
脚部が、本体の底面を通して本体に取り付けられる、実施形態91乃至101の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置。
【0324】
[実施形態103]
脚部が、本体の側壁を通して本体に取り付けられる、実施形態91乃至101の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置。
【0325】
[実施形態104]
脚部が、金属、金属合金、セラミック、シリコン、又は非ポリマー材料を備える、実施形態91乃至103の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置。
【0326】
[実施形態105]
脚部が、エラストマーコーティング又は非エラストマーポリマーコーティングを備える、実施形態91乃至104の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置。
【0327】
[実施形態106]
エラストマーコーティング又は非エラストマーポリマーコーティングは生体不活性である、実施形態105に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0328】
[実施形態107]
エラストマーコーティング又は非エラストマーポリマーコーティングが、シリコン、ポリ(p−キシリレン)ポリマー、ウレタンポリマー、又はポリイミドである、実施形態105又は106に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0329】
[実施形態108]
脚部のうちの少なくとも1つは、エラストマーコーティング又は非エラストマーポリマーコーティングでコーティングされた外面と、エラストマーコーティング又は非エラストマーポリマーコーティングでコーティングされていない少なくとも1つの電極を備える内面とを備える、実施形態105乃至107の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置。
【0330】
[実施形態109]
本体が底面を備え、2つ以上の電極が本体の底面上で終端される、実施形態89乃至108の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置。
【0331】
[実施形態110]
2つ以上の電極がクリップ上に配置される、実施形態89乃至109の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置。
【0332】
[実施形態111]
クリップが本体の下方に延びる複数の可撓性脚部を備え、2つ以上の電極がその可撓性脚部上に配置される、実施形態110に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0333】
[実施形態112]
本体がハウジングを含む、実施形態89乃至111の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置。
【0334】
[実施形態113]
ハウジングが、生体不活性材料を備えるか、又はそれでコーティングされる、実施形態112に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0335】
[実施形態114]
ハウジングが生体不活性材料を備え、ここで、ハウジングの生体不活性材料がチタン又はセラミックを備える、実施形態113に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0336】
[実施形態115]
本体は、超音波変換器及び2つ以上の電極に電気的に接続された集積回路を備える、実施形態89乃至114の何れか一項に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0337】
[実施形態116]
集積回路は、コンデンサを備えるエネルギー蓄積回路を備える、実施形態115に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0338】
[実施形態117]
本体は、最長寸法で約5mm以下の長さである、実施形態89乃至116の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置。
【0339】
[実施形態118]
超音波変換器は、脾神経活性に関連する情報を符号化する超音波後方散乱を放射するように構成される、実施形態89乃至117の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置。
【0340】
[実施形態119]
情報が、生理学的条件、装置状態、又は放射された電気パルスに関連する情報をさらに備える、実施形態118に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0341】
[実施形態120]
超音波変換器は、埋め込み可能な装置を操作するための命令を符号化する超音波を受信するように構成される、実施形態89乃至119の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置。
【0342】
[実施形態121]
命令が、電気パルスを神経に放射するように埋め込み可能な装置を動作させるトリガ信号を備える、実施形態120に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0343】
[実施形態122]
脾神経取り付け部が、装置をヒトの脾神経に取り付けるように寸法決めされ、構成される、実施形態89乃至121の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置。
【0344】
[実施形態123]
埋め込み可能な医療装置が電池を備えない、実施形態89乃至122の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置。
【0345】
[実施形態124]
埋め込み可能な医療装置が無線周波数通信システムを備えない、実施形態89乃至123の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置。
【0346】
[実施形態125]
埋め込み可能な医療装置は、脾神経取り付け部上で終端することなく装置の本体から延びる電気リード線を備えない、実施形態89乃至124の何れか一項に記載の埋め込み可能な医療装置。
【0347】
[実施形態125]
2つ以上の電極は、脾神経を電気的に刺激し脾神経活性を検出するように構成される、実施形態89乃至125の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置。
【0348】
[実施形態127]
2つ以上の電極が、
脾神経を電気的に刺激するように構成される第1の電極及び第2の電極と、
脾神経活性を検出するように構成される第3の電極及び第4の電極とを備える、実施形態89乃至126の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置。
【0349】
[実施形態128]
実施形態89乃至127の何れか1つに記載の埋め込み可能な医療装置と、
埋め込み可能な医療装置に超音波を送信するように構成されるインテロゲータであって、この超音波は、検出された脾神経活性、検出された脾神経活性の変化、生理学的条件、又は生理学的条件の変化に応答してトリガ信号をさらに符号化する、インテロゲータと、を備える閉ループシステム。
【0350】
[実施形態129]
被験者の脾神経活性を調整する方法であって、
外部の超音波変換器からの超音波を受信することと、
超音波からのエネルギーを、被験者の脾神経と電気的に連絡している2つ以上の電極を備える、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することと、装置を用いて脾神経を電気的に刺激することと、を備える、方法。
【0351】
[実施形態130]
複数の二相電気パルスを備えるパルス列を使用して被験者の脾神経を電気的に刺激することを備える、被験者の免疫系を調整する方法。
【0352】
[実施形態131]
二位相性電気パルスは、カソード相が続くアノード相を備える、実施形態130に記載の方法。
【0353】
[実施形態132]
パルス列が、1つ以上の炎症性サイトカインの血中濃度を増加させるように構成される、実施形態130又は131に記載の方法。
【0354】
[実施形態133]
パルス列が、1つ以上の炎症性サイトカインの血中濃度を低下させるように構成される、実施形態130又は131に記載の方法。
【0355】
[実施形態134]
1つ以上の炎症性サイトカインが、TNF−α、IL−6、IL−1β又はHMGB1のうちの1つ以上を含む、実施形態132又は133に記載の方法。
【0356】
[実施形態135]
パルス列が、免疫細胞の活性化を増加させるように構成される、実施形態130又は131に記載の方法。
【0357】
[実施形態136]
パルス列が、免疫細胞の活性化を減少させるように構成される、実施形態130又は131に記載の方法。
【0358】
[実施形態137]
免疫細胞がナチュラルキラー(NK)細胞である、実施形態135又は136記載の方法。
【0359】
[実施形態138]
電気パルスが1ミリ秒未満の長さである、実施形態130乃至137の何れか1つに記載の方法。
【0360】
[実施形態139]
電気パルスの周波数が約100Hz以下である、実施形態130乃至138の何れか1つに記載の方法。
【0361】
[実施形態140]
その方法が、本明細書に記載の完全に埋め込み可能なの装置などの埋め込み可能な装置を使用して実装される、実施形態130乃至139の何れか1つに記載の方法。
【0362】
[実施形態141]
この方法が、外部の超音波変換器から超音波を受信することと、その超音波からのエネルギーを、被験者に完全に埋め込まれた医療装置に電力を供給する電気エネルギーに変換することとをさらに備え、この装置は被検体の脾神経と電気的に連絡する2つ以上の電極を備える、実施形態130乃至140の何れか1つに記載の方法。
【0363】
[実施例]
本出願は、本出願の例示的な実施形態として提供される以下の非限定的な実施例を参照することによって、より良く理解される場合がある。以下の実施例は、実施形態をより完全に説明するために提示され、本出願の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本出願の特定の実施形態を本明細書に示し、説明したが、そのような実施形態が単に例として提供されることは明らかであろう。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多数の変形、変更、及び置換が当業者に想起されてもよい。本明細書に記載された方法を実施する際に、本明細書に記載された実施形態の様々な代替形態が採用されてもよいことは理解されたい。
【0364】
[実施例1:免疫系を調整する脾神経の刺激]
この実施例では、脾神経刺激は、リポ多糖類の静脈内注入によってトリガされる急性免疫チャレンジに対する炎症応答を低減させるための方法として使用された。体重がおよそ250〜400グラムである成体の雌雄のルイス・ラットは、MAのウィルミントンにあるチャールズ・リバー・ラボラトリーズ社から調達した。ラットを12時間の光/暗サイクルでペアで飼育し、自由に給餌した。すべての実験は、地域の動物実験委員会のガイドラインに従って行われた。
【0365】
動物を、デジタル気化器(Kent Scientific、Torrington、CT)を使用して純酸素と混合したイソフルランガスを用いて完全に麻酔した。動物を仰臥位に置き、中心温度をモニターし赤外線加熱パッドを制御するために直腸体温計を挿入し、酸素飽和度をモニターするためにパルスオキシメーター(Kent Scientific、Torrington、CT)を右前足にクリップした。左側側面と腹部との毛皮を刈り込んだ。左大腿動脈及び静脈は、医療グレードのマイクロウレタンチューブ(Scientific Commodities、Inc.、Lake Havasu City、AZ)を使用してカテーテル処理され、ブタ腸粘膜由来の50U/mlヘパリンナトリウム溶液(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)でカテーテルを固定した。動脈圧波形を取り込むために、動脈ラインを圧力変換器(Stoelting、Wood Dale、IL)に接続し、静脈ラインを、後の工程における注入及び回収点として使用した。
【0366】
腹腔へのアクセスを得るために正中開腹術を施行した。脾神経血管束を同定し、腹腔動脈からの近位起始部と、脾門部に入る前に動脈が分岐する遠位点の間で区域を選択した。動脈のおよそ3mmの断片を、その付随する脾神経枝と共に静脈及び周囲組織から穏やかに単離し、1mm間隔で位置づけられた3×50μm幅の白金電極(Microprobes、Inc.、Gaithersburg、MD)を収容する神経カフに入れた。3mm×3mmの正方形の0.004インチの白金シートから作成された特注の対電極を、カフから数ミリメートル離れて膵臓組織と接触して近くに位置づけた。最後に、Ag/Clペレット接地電極(WPI、Sarasota、FL)を腹腔内に位置づけた。
【0367】
神経カフ電極が脾神経と電気的に接触していることを検証するために、カフの3つの電極及び接地電極は、疑似三極構成で差動増幅器(A−Mシステム、Sequim、WA)に接続された。信号を1000xに増幅し、100Hzと5kHzの間で帯域通過フィルタをかけ、デジタルオシロスコープ(Tektronix、Beaverton、OR)で見た。自発的交感神経活性の存在は、カフが正しく位置づけられており、外科手技によって神経が損傷されていなかったことを示す指標として用いられた。手技の次の段階に進む前に、安定な神経活性を15分間モニターした。
【0368】
適切な電極配置の検証に続いて、定電流絶縁パルス刺激器(A−M Systems、Sequim、WA)を使用して脾神経を刺激した。刺激装置の正端子を対電極に接続し、負端子を神経カフの中央電極に接続した。パルスは、以下のパラメータ、300μsパルス長(150μsカソード相、60μs位相間隔、150μsアノード相)、1mAと1.8mAとの間のパルス振幅、及び20分間にわたる5Hzの平均周波数で、を有する単極のカソード第1の二相方形波パルスであった。合計27匹のラットに刺激パルスを与え、24匹のラットに刺激パルスを与えなかった(コントロール)。
【0369】
先天性免疫応答をトリガするために、E. coli由来の致死量未満のリポ多糖(LPS)(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)を、刺激の終了の10分後に、500μlの生理食塩水ボーラス中に60μg/kgの濃度で静脈カテーテルを通して注入した。LPSは、−20℃で凍結した1mg/mlアリコートから毎日新鮮に調製した。
【0370】
約200μlの血液を、以下の間隔、15分間の自然記録期間の終了に対応し、刺激の開始の直前である「ベースライン」、次いで、LPSの注入の45、90、135、及び180分後で、静脈カテーテルから採取した。血液を室温で30分間凝固させ、次いで20分間遠心分離し、その後、血清を直ちに抽出し、さらなる分析まで−20℃で凍結した。
【0371】
血清サイトカイン(TNF−α及びIL−1β)レベルは、製造業者の指示に従って定量的ELISAキット(R&Dシステム、Minneapolis、MN)を使用して決定した。蛍光吸収は、96ウェルプレートリーダ(Thermo-Fisher Scientific、Waltham、MA)を使用して測定した。4パラメーターロジスティック回帰曲線が、製造業者によって供給された既知の標準試料に曲線を適合させることによって、試料中のサイトカイン濃度を計算するために使用された。
【0372】
各サンプルにおいて測定されたTNF−α及びIL−1βの血清濃度を、LPS注入の開始に対して、それぞれ図13A及び図13Bに示す。図13Bでは、より低い振幅の刺激はIL−1βレベルに影響を及ぼさないように見えたので、1.5mAと1.8mAとの間のトニック刺激パルスを受けた動物のみが示されている。両コホートのTNF−α血清濃度はLPS投与に続いて約90分でピークに達した。免疫抑制神経刺激は、免疫抑制神経刺激を受けなかったラットの血清濃度と比較して、ピークTNF−α血清濃度の大幅な減少をもたらした(それぞれ3872pg/ml対1424pg/ml)。免疫抑制神経刺激を受けたラットのIL−1β血清濃度は、免疫抑制神経刺激を受けなかったラットのIL−1β血清濃度よりも低かった(180分後、それぞれ292pg/ml対296pg/ml)が、IL−1β血清濃度は180分の実験の間、増加し続けた。
【0373】
[実施例2:脾神経刺激−応答曲線と刺激応答効率]
脾神経における誘発化合物活動電位(CAP)を引き出すための異なる刺激パルスパラメータの有効性をテストするために、脾神経血管束を露出させ、実施例1に記載したようにラットのコホートのためにカフ電極を埋め込んだ。2つの約3mmの長さの神経/動脈複合体が電極配置のために同定される。近位位置は、腹腔動脈からの脾神経及び動脈の分岐点のすぐ遠位になるように選択した。遠位位置は、脾門に入る前に脾動脈がいくつかの分岐に分裂する点のすぐ近位になるように選択した。これは、神経応答が刺激アーチファクトによって不明瞭にならないであろうことを確実にするために、記録電極と刺激電極との間の距離を最大にするために行われた。近位位置と遠位位置との間の典型的な間隔は、10mmと15mmとの間であった。刺激のためのカフ電極を近位位置に位置づけ、記録のためのカフ電極を遠位位置に位置づけた。変動するパラメータ(パルス長及び/又は振幅)の刺激カソード第1の二相方形波パルスを刺激電極に送出し、誘発されたCAPを測定し、記録電極で記録した。パラメータの各セットについて、測定可能なCAPを(μVで)誘発するために必要な最小振幅パルスを(mAで)決定し、次いで、刺激パルスが神経内の軸索の全てを活性化していたパルス振幅飽和点の増加に伴って、CAPのピークトゥピーク点がもはや成長しなくなるまで、振幅を段階的に増加させることによって、補充曲線を生成した。各パルス振幅レベルについて、脾神経を100のパルスで刺激し、ピークトゥピーク応答を計算するために、これらの100回の試行の平均CAPが使用された。方形電流パルスによって送出される電荷は振幅と持続時間との積であるので、神経から所与の振幅CAPを誘発するために必要な電荷量に関して、パラメータの各セットの効率の直接比較がこのようにして比較され得る。
【0374】
異なるパルス幅が異なる充電効率を有するかどうかを決定するために、変動パルス幅に対する電荷送出の関数として誘発された脾神経応答の振幅をプロットする補充曲線を生成した。所与のパルス振幅に対して、より長いパルスは、脾神経からより大きな複合活動電位(CAP)を引き出すことが見出された。50μAから2.5mAの範囲の変動振幅の200μs、400μs、1ms、又は2ms(カソード相とアノード相との間で均等に分割され、60μsの位相間隔を有する)のカソード第1の二相方形波パルスを刺激電極で送出し、誘発CAPを記録電極で測定及び記録した。所与のパルス振幅について、より長いパルスは、脾神経からより大きなCAPを引き出した(例示的な結果については図14Aを参照のこと)。しかしながら、所与のパルスで注入された全電荷の関数として誘発応答をプロットすることによって、検出された信号におけるより大きなピークトゥピーク誘発応答によって決定されるように、200μsパルスがより長いパルス幅より優れていることがわかる。例示的な結果については図14Bを参照されたい。したがって、刺激パルスの送出は、より短いパルス幅を使用するとより効率的である。図14A及び図14Bに示される結果は、それぞれ単一の動物から得られたが、異なるパルス長及び/又は振幅で異なる動物について同様の結果が観察された。
【0375】
200μsのパルス長を有する刺激パルスについて、脾神経応答を引き出すためのパルス振幅閾値は、およそ1mAであり、およそ1.8mAで飽和し、より大きな振幅パルスは誘発応答に関して減少するリターンを生成した。
【0376】
[実施例3:サイトカイン放出調整のための脾神経刺激パルス長]
脾神経刺激パルス長が脾神経の刺激後の被験者の血清TNF−αレベルの調整にどのように影響するかをテストするために、ラットのコホートにおいて一連の電気パルスを用いて脾神経を刺激した。脾神経血管束を露出させ、実施例1に記載したようにラットのコホートのためにカフ電極を埋め込んだ。ラットの脾神経を、300μs(n=7)又は1msパルス長(n=4)(カソード相とアノード相との間で均等に分割され、60μsの位相間隔を有する)を使用して、5パルス/秒(5Hz)で印加された1.8mAのカソード第1の二相方形波パルスの列を使用して20分間刺激し、その後、10分間休止し、続いてラットに、静脈カテーテルを通して500μlの生理食塩水ボーラス中の60μg/kgのLPSを注入した。コントロールのコホート(n=24)に電極を埋め込み、LPSを注入したが、刺激パルスは全く受けなかった。血清TNF−αレベルを、LPS注入に続いて0分、45分、90分、及び180分の時点で、実施例1に記載されるように測定した。LPS注入後及び刺激の完了後の時間の関数としての血清TNF−αレベルを図15に示す。1.8mAパルス振幅を用いた刺激は、200μsパルス長で送出された場合、LPSチャレンジ後のTNF−α放出を減少させるのに有効であったが、1msパルス長を使用した場合には有効ではなかった。したがって、パルス長は、有効な刺激を生成するのに必要な電力を低減するために選択された。
【0377】
[実施例4:サイトカイン放出の調整のための脾神経刺激パルス振幅]
脾神経刺激パルス振幅が脾神経の刺激後の被験者の血清TNF−αレベルの調整にどのように影響するかをテストするために、ラットのコホートにおいて一連の電気パルスを用いて脾神経を刺激した。脾神経血管束を露出させ、実施例1に記載したようにラットのコホートのためにカフ電極を埋め込んだ。ラットの脾神経を、10分間安静の前に750μA(n=5)、1.0mA(n=4)、1.5mA(n=2)又は1.8mA(n=7)の振幅を使用して、5パルス/秒(5Hz)で印加された200μsの(カソード相とアノード相との間で均等に分割され、60μsの位相間隔を有する)カソード第1の二相方形波パルスの列を用いて20分間刺激し、その後10分間休止し、続いてラットに、静脈カテーテルを通して500μlの生理食塩水ボーラス中の60μg/kgのLPSを注入した。コントロールのコホート(n=24)に電極を埋め込み、LPSを注入したが、刺激パルスは全く受けなかった。血清TNF−αレベルを、LPS注入に続いて0分、45分、90分、及び180分の時点で、実施例1に記載されるように測定した。LPS注入後及び刺激の完了後の時間の関数としての血清TNF−αレベルを図16に示す。
【0378】
LPS注入後の血清TNF−αレベルを減少させるのに全てのパルス振幅が有効であり、1mA以上の電流が最も有効なTNF−α減少を生じた。
【0379】
[実施例5:サイトカイン放出増加のための脾神経刺激]
刺激パラメータ(例えば、パルス周波数及び/又はパルス極性)を変更することによってサイトカインレベル(例えば、TNF−αレベル)を増加させることもできることを実証するために、実験も行った。本実験では、LPSの静脈注入によってトリガされた急性免疫攻撃に対する炎症応答を増加させる方法として、脾神経刺激を用いた。ラットのコホートに、実施例1に記載したように、脾神経血管束の周囲にカフを配置することにより、脾神経刺激電極カフを埋め込んだ。ラットの脾神経を、300μsのパルス長(カソード相とアノード相との間で均等に分割され、60μsの相間隔を有する)を使用して(n=8)、30/秒(30Hz)の速度の31.8mAのアノード第1の二相方形波パルスの列を使用して40分間刺激した。刺激期間は、静脈カテーテルを通して生理食塩水の500μlボーラス中の60μg/kgのLPSをラットに注入した10分後に開始した。コントロールのコホート(n=24)に電極を埋め込み、LPSを注入したが、刺激パルスは全く受けなかった。血清TNF−αレベルを、LPS注入に続いてベースライン(LPS投与直前)、45分、90分、及び180分の時点で、実施例1に記載されているように測定した。LPS注入後及び刺激の完了後の時間の関数としての血清TNF−αレベルを図17に示す。これらのパラメーターを使用して脾神経刺激を受けたラットは、コントロールの動物と比較して有意に高いTNF−α濃度を、45分の時点(それぞれ686pg/mlと比較して1536pg/ml)に加え、90分の時点(それぞれ3869pg/mlと比較して7123pg/ml)で有した。これらのデータは、脾神経刺激が免疫応答を増強する可能性を実証している。
【0380】
[実施例6:サイトカイン放出調整のための脾神経刺激パルスパターン]
脾神経刺激パルスパターンが脾神経の刺激後の被験者の血清TNF−αレベルの調整にどのように影響するかをテストするために、パルス列間の滞留時間(すなわち静止期)を有するラットのコホートにおいて、一連の電気パルスを用いて脾神経を刺激した。これを、刺激期間を通して定常周波数でパルスを送出するトニック刺激パラダイムと比較した。2秒間に送出されるパルスの総数を、研究群間で制御した。
【0381】
脾神経血管束を露出させ、実施例1に記載したようにラットのコホートのためにカフ電極を埋め込んだ。脾神経を、1.8mAの「バースト」パルス列(10の300μsパルス(カソード相とアノード相との間で均等に分割され、60μsの位相間隔を有する)で20Hzを500ms、続いて1.5秒の滞留時間、n=5)又は1.8mAの「トニック」パルス列(連続300μsパルス(カソード相とアノード相との間で均等に分割され、60μsの位相間隔を有する)で5Hz、n=7)で20分間刺激し、その後10分間休止し、続いてラットに、静脈カテーテルを通して500μlの生理食塩水ボーラス中の60μg/kgのLPSを注入した。コントロールのコホート(n=24)に電極を埋め込み、LPSを注入したが、刺激パルスは全く受けなかった。血清TNF−αレベルを、LPS注入に続いてベースライン、45分、90分、及び180分の時点で、実施例1に記載されるように測定した。LPS注入及び刺激の完了後の時間の関数としての血清TNF−αレベルが図18に示されており、バーストパターンは強直パターンと比較してTNF−α放出を低減するのに等しく有効であり、したがって、装置が滞留時間中に充電できるように、無線で充電された埋め込み装置を使用して刺激を送出する場合に最適な方法である場合があることが見出された。
【0382】
[実施例7:脾神経活性の調整のための脾神経刺激パルス極性]
この実施例では、より低いパルス振幅で脾神経応答をトリガし、したがってエネルギー効率を改善するアノード第1パルスの能力を実証するために、二相パルスの順序を変えた。ラットのコホートにおいて、脾神経血管束を露出させ、一対のカフ電極を、実施例2に記載されるように神経/動脈複合体上に埋め込んだ。近位電極に刺激を送出し、遠位電極でCAPを記録することによって、100μA〜2.6mAの範囲の変動振幅の、300μsの長さのアノード又はカソード第1の二相方形波パルス(カソード相とアノード相との間で均等に分割され、60μsの位相間隔を有する)について、補充曲線を生成した。代表的な動物からのデータを図19に示す。各点は100の誘発応答の平均である。CAPを引き出すための閾値は、その閾値及び中間範囲応答ゾーンにおけるアノード第1パルスについてより低く、アノード第1パルスがカソード第1パルスより少ない電流でCAP応答をトリガすることができることを実証した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】