特表2021-522325(P2021-522325A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-522325(P2021-522325A)
(43)【公表日】2021年8月30日
(54)【発明の名称】真菌感染症の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20210802BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20210802BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20210802BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20210802BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20210802BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20210802BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20210802BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20210802BHJP
【FI】
   A61K45/00
   A61P31/10
   A61P11/00
   A61P11/06
   A61K9/14
   A61K9/08
   A61K31/496
   A61P37/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2021-506374(P2021-506374)
(86)(22)【出願日】2019年4月18日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月15日
(86)【国際出願番号】US2019028112
(87)【国際公開番号】WO2019204597
(87)【国際公開日】20191024
(31)【優先権主張番号】62/659,601
(32)【優先日】2018年4月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/696,510
(32)【優先日】2018年7月11日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520407253
【氏名又は名称】シプラ テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】ペリー,ジェイソン,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ハヴァ,デビッド,エル.
(72)【発明者】
【氏名】カラン,エイダン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA25
4C076AA29
4C076BB01
4C076BB40
4C076CC07
4C076CC15
4C076CC32
4C076FF68
4C084AA17
4C084MA17
4C084MA43
4C084MA52
4C084MA56
4C084NA10
4C084ZA59
4C084ZA61
4C084ZB13
4C084ZB35
4C086AA01
4C086AA10
4C086BC50
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA56
4C086NA10
4C086ZA59
4C086ZA61
4C086ZB13
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤、好ましくはイトコナゾールを投与することによって真菌感染症を治療する方法に関する。ここで、前記抗真菌剤は、
a)少なくとも500ng/g又はng/mLの抗真菌剤の肺濃度
b)25ng/mL以下の抗真菌剤の血漿濃度
を同時に達成するのに十分な量で投与される。好ましい形態は、乾燥粉末吸入として、である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含む真菌感染症を治療する方法であって、前記抗真菌剤は、
a)少なくとも500ng/g又はng/mLの前記抗真菌剤の肺濃度
b)25ng/mL以下の前記抗真菌剤の血漿濃度
を同時に達成するのに十分な量で投与され、但し前記抗真菌剤はポリエン抗真菌剤ではない方法。
【請求項2】
治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含むアスペルギルス症を治療する方法であって、前記抗真菌剤は、
a)少なくとも500ng/g又はng/mLの前記抗真菌剤の肺濃度
b)25ng/mL以下の前記抗真菌剤の血漿濃度
を同時に達成するのに十分な量で投与される真菌感染症を治療する方法。
【請求項3】
治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含むアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)を治療する方法であって、前記抗真菌剤は、
a)少なくとも500ng/g又はng/mLの前記抗真菌剤の肺濃度
b)25ng/mL以下の前記抗真菌剤の血漿濃度
を同時に達成するのに十分な量で投与される方法。
【請求項4】
治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含む呼吸器疾患の急性増悪の発生率又は重症度を治療または軽減する方法であって、前記抗真菌剤は、
a)少なくとも500ng/g又はng/mLの前記抗真菌剤の肺濃度
b)25ng/mL以下の前記抗真菌剤の血漿濃度
を同時に達成するのに十分な量で投与される方法。
【請求項5】
前記肺及び血漿濃度が、前記抗真菌剤の単回用量の投与後、少なくとも24時間持続する先行する請求項のいずれか1項の方法。
【請求項6】
前記肺及び血漿濃度が定常状態の濃度である先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含む真菌感染症を治療する方法であって、前記抗真菌剤は、単回用量又は初回用量と、それに続く1回以上の後続用量で投与されて、少なくとも100:1の肺:血漿比が達成される方法。
【請求項8】
治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含むアスペルギルス症を治療する方法であって、前記抗真菌剤は、単回用量又は初回用量と、それに続く1回以上の後続用量で投与されて、少なくとも100:1の肺:血漿比が達成される方法。
【請求項9】
治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含むアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)を治療する方法であって、前記抗真菌剤は、単回用量又は初回用量と、それに続く1回以上の後続用量で投与されて、少なくとも100:1の肺:血漿比が達成される方法。
【請求項10】
治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含む呼吸器疾患の急性増悪の発生率又は重症度を治療または軽減する方法であって、前記抗真菌剤は、単回用量又は初回用量と、それに続く1回以上の後続用量で投与されて、少なくとも100:1の肺:血漿比が達成される方法。
【請求項11】
前記患者は嚢胞性線維症を有している先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記患者はぜんそくを有している請求項1から10の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含む免疫無防備状態の患者の真菌感染症を治療する方法であって、前記抗真菌剤は、
a)少なくとも500ng/g又はng/mLの前記抗真菌剤の肺濃度
b)25ng/mL以下の前記抗真菌剤の血漿濃度
を同時に達成するのに十分な量で投与される方法。
【請求項14】
治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含む免疫無防備状態の患者の真菌感染症を治療する方法であって、前記抗真菌剤は、単回用量又は初回用量と、それに続く1回以上の後続用量で投与されて、少なくとも100:1の肺:血漿比が達成される方法。
【請求項15】
治療を必要とする患者の気道に、定常状態に達するまで、抗真菌剤を含む乾燥粉末製剤の初回の1回又は複数回の殺真菌用量を投与し、治療を必要とする患者に、定常状態を維持するために、1回以上の静真菌用量を後続することを含むことを含む真菌感染症を治療する方法。
【請求項16】
治療を必要とする患者の気道に、1回以上の用量の前記抗真菌剤を投与して、肺内の抗真菌剤の殺真菌レベルを達成し、肺内の前記抗真菌剤の静真菌レベルを維持するために1回以上の用量を後続することを含む真菌感染症を治療するための方法。
【請求項17】
静真菌用量は、殺真菌量が投与されたよりも少ない頻度で投与される請求項15に記載の方法。
【請求項18】
肺内の前記抗真菌剤の前記殺真菌レベルを達成する前記抗真菌剤の用量は、肺内の前記抗真菌剤の前記静真菌レベルを維持する用量よりも少ない頻度で投与される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
静真菌用量は殺真菌容量より少ない請求項15に記載の方法。
【請求項20】
肺内の前記抗真菌剤の前記殺真菌レベルを達成する用量は、肺内の前記抗真菌剤の前記静真菌レベルを維持する用量よりも少ないことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
治療を必要とする患者の気道に、少なくとも24時間に亘る肺内の最小殺真菌濃度(MFC90)を達成するために1回以上の負荷用量の前記抗真菌剤を投与し、少なくとも24時間に亘る肺内の最小静真菌濃度(MIC90)達成するために1回以上の維持用量を後続することを含む真菌感染症の治療方法。
【請求項22】
前記MFC90は少なくとも2000ng/g又はng/mLである請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記MIC90は少なくとも500ng/g又はng/mLである請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記維持用量は、殺真菌用量が投与されたよりも少ない頻度で投与される請求項21乃至23の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記維持用量は前記負荷用量よりも少ない請求項21乃至24の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記各用量はそれぞれ独立して、約2から約35mgの名目用量の抗真菌活性成分を含んでいる先行する請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項27】
用量の間隔は約1日である先行する請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項28】
用量の間隔は約2日である先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
用量の間隔は約3日である先行する請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
用量は週に3回である先行する請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項31】
治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含む真菌感染症を治療する方法であって、前記抗真菌剤は肺内の定常状態の抗真菌濃度を達成するために投与され、次に各用量がa)少なくとも約24時間に亘る少なくとも約500ng/g又はng/mLの前記抗真菌剤の肺濃度、及びb)少なくとも24時間に亘る約25ng/mL以下の前記抗真菌剤の血漿濃度を達成するのに十分な量の前記抗真菌剤が投与され、肺濃度及び血漿濃度の両方が同じ24時間の間を達成される方法。
【請求項32】
肺内の定常状態の抗真菌濃度は少なくとも500ng/g又はng/mLである請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗真菌剤はイトラコナゾールである先行する請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項34】
治療を必要とする患者の気道に、イトラコナゾールを投与することを含む、イトラコナゾールによって真菌感染症を治療する方法であって、イトラコナゾールの1回以上の殺真菌用量が投与され、続いて1回以上の静真菌用量が投与され、殺真菌及び静真菌用量は、投与中のどの時点でも、25ng/mLを超えるイトラコナゾールの血漿濃度を生成しない方法。
【請求項35】
治療を必要とする患者の気道に、イトラコナゾールを投与することを含む、イトラコナゾールによって真菌感染症を治療する方法であって、肺内の抗真菌剤の殺真菌濃度を達成する1回以上のイトラコナゾールの用量が投与され、続いて肺内の抗真菌剤の静真菌濃度を達成する1回以上の用量が投与され、前記1回以上の用量は、投与中のどの時点でも、25ng/mLを超えるイトラコナゾールの血漿濃度を生成しない方法。
【請求項36】
イトラコナゾールによって真菌感染症を治療する方法であって、i)肺内のイトラコナゾールの殺真菌レベルを達成するのに十分な量のイトラコナゾールをそれを必要とする患者の気道に投与し、ii)イトラコナゾールの血漿中濃度が25ng/mL以上かどうかを判断し、及びiii)イトラコナゾールの血漿濃度が25ng/mL以上である場合、患者に投与されるイトラコナゾールの量を、肺内のイトラコナゾールの静真菌レベルを達しするのに十分な量に減らして、イトラコナゾールの全身作用のリスクを軽減する方法。
【請求項37】
前記抗真菌剤は乾燥粒子の形態で投与される先行する請求項の何れか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記抗真菌剤は液剤の形態で投与される請求項1乃至36のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は2018年4月18日出願の米国特許出願第62/659,601号及び2018年7月11出願の米国特許出願第62/696,510号の利益を主張し、それぞれの内容全体が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
アスペルギルス属及びその他の真菌による肺真菌症は、嚢胞性線維症(CF)患者のような、呼吸機能が低下している患者における懸念が高まっている。例えば、患者は慢性肺真菌症又はアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)を患う可能性がある。これは典型的には長期の経口ステロイドで治療される重度の炎症状態である。アスペルギルス・フミガタス(A. fumigatus)が病気を引き起こす主な種だが、アスペルギルス・ニガー(A. niger)、アスペルギルス・テルス(A. terrus)、アスペルギルス・フラブス(A. flavus)などの他の種も人間に感染する。肺のA. fumigatus感染症は、宿主の免疫状態及び肺の基礎疾患に応じて、さまざまな病気として現れる。免疫無防備状態の宿主では、侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)は、血液ガン、臓器移植やその他の免疫抑制状態の治療の結果として免疫力が低下した患者に発生する生命にかかわる病気である。
【0003】
好中球減少症、及び造血幹細胞移植レシピエントのIPAの死亡率は、それぞれ>50%、及び>90%である。IPAに関する深刻な死亡率のため、感染のリスクを減らすように抗真菌剤予防投与を使用して感染のリスクを減らすようにしている。アスペルギルス・フミガタス(A. fumigatus)は、ぜんそくや嚢胞性線維症(CF)などの慢性肺疾患の患者にも慢性感染症を引き起こす。ぜんそく患者では、真菌のコロニー形成と感染が、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)を引き起こす可能性がある。ABPAは、アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)による気道のコロニー形成に応じて発生する複雑な過敏反応であり、ぜんそくやCFの患者に典型的である。気道内の真菌抗原に対する免疫反応は、Tヘルパー2型(Th2)細胞の活性化と、気道への炎症性細胞の動員を生じ、その中で最も重要なのは好酸球である。インターロイキン−4及びインターロイキン−5(IL−4及びIL−5)の発現は、これらのプロセスの中心である。IL−4は、B細胞による好酸球の動員及び免疫グロブリンE(IgE)の産生に関与する接着分子のアップレギュレーション(upregulation)を刺激し、これがマスト細胞の活性化を促す。Th2細胞とマスト細胞の両方によって産生されるIL−5は、好酸球活性化の重要なメディエーター(mediator)である。マスト細胞と好酸球の両方の活性化は、気管支収縮を誘発するメディエーターの放出をもたらす。
【0004】
トリアゾール(triazole、例えばイトラコナゾール(itraconazole))、ポリエン(polyene、例えばアムフォテリシンB(amphotericin B))及びエキノカンジン(echinocandin)を含む多数の抗真菌剤が知られている。抗真菌剤は通常、水溶性が低くて、経口バイオアベイラビリティ(bioavailability)に乏しく、安全治療レベルの抗真菌剤を提供するように投与可能な医薬製剤を得るのは難題だった。抗真菌剤は通常、肺感染症及びABPAを含む真菌感染症の処置として、経口または静脈内(IV)製剤として投与される。しかしこのような製剤は、乏しい経口バイオアベイラビリティ、有害な副作用及び毒性、並びに広汎な薬物間相互作用(drug-drug interactions)により、制限されている。理論的に全身性副作用を減少できる吸入による気道への送達のような代替アプローチも難問を提示する。特に、水溶性に乏しい薬剤は、吸入すると、局所的な肺毒性(local lung toxicity、例えば局所的な炎症、肉芽腫)を生じることはよく知られている。難溶性薬剤の局所的な毒性に対処する従来のアプローチは、例えばアモルファス薬剤を使用して、その溶解速度を向上させるように薬剤を配合することである。
【0005】
イトラコナゾールの化学構造は米国特許第4,916,134号に記載されている。イトラコナゾールは、治療効果(例えば真菌感染症の治療において)を提供するトリアゾール抗真菌剤であり、経口または静脈内送達可能なSPORANOX(登録商標)(イトラコナゾール;Janssen Pharmaceuticals)の有効成分である。イトラコナゾールは、当業界でよく知られた方法を使用して合成可能である。イトラコナゾールはぜんそく患者におけるABPAの治療についてFDAに承認されていないが、「標準治療」療法と見なされている。Sporanoxの経口カプセル製剤は、アムフォテリシンB療法に不耐性又は治療抵抗性(refractory)の患者における肺及び肺外のアスペルギルス症の治療用としてのラベル表示(laveled indication)を有する。しかしながら経口イトラコナゾールは、ABPA治療のための「標準治療」療法と見なされている。イトラコナゾールは、ABPA治療におけるランダム化比較試験(randomized controlled trial)に基づいて効能が証明された唯一の抗真菌剤だが、イトラコナゾールの経口用量は吸収及び食物相互作用の変動を有し、且つ漿液レベルと喀痰レベルとの間に良好でない関係を呈する。イトラコナゾールの高い血漿濃度は、肝臓中のCYP3A4が阻害されて、重大な薬物間相互作用(DDI)を引き起こす可能性がある。経口イトラコナゾールの不十分な薬物動態及び副作用プロファイルは、その治療的効能を制限している。真菌感染症を治療するための経口液剤投与と比較して、経口吸入投与による有意に高い肺:血漿比を達成し、それによって全身作用を低減するために投与することができる抗真菌剤の製剤を投与する新規な方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、1)結晶性粒子形態の抗真菌剤、2)安定剤、及び任意に3)1種以上の賦形剤を含有する均質な呼吸可能な複数の乾燥粒子を含む乾燥粉末製剤を、定常状態の濃度を維持するのに十分な乾燥粉末の量で投与することによって患者を治療する方法に関する。本発明の従来技術に対する一つの利点は、この方法が血漿濃度を低く保ちつつ、高い肺濃度を達成する乾燥粉末製剤の投与を可能にし、それによって抗真菌活性成分の全身作用を低減することにある。一つの特定の態様において、結晶性粒子形態の抗真菌剤は、ポリエン抗真菌剤ではない。他の特定の態様において、本発明は1)結晶性粒子形態のトリアゾール抗真菌剤、2)安定剤、及び任意に3)1つ以上の賦形剤に関する。より特定の態様において、トリアゾール抗真菌剤はイトラコナゾールである。
【0007】
一つの態様において、本発明は、治療を必要とする患者の気道(respiratory tract)に、有効量の抗真菌剤を投与することを含む真菌感染症を治療する方法に関し、前記抗真菌剤は、a)少なくとも500ng/g又はng/mLの抗真菌剤の肺濃度、及びb)25ng/mL以下の抗真菌剤の血漿濃度を同時に達成するのに十分な量で投与される。
【0008】
他の態様において、本発明は、治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含むアスペルギルス症を治療するための方法に関し、前記抗真菌剤は、a)少なくとも500ng/g又はng/mLの抗真菌剤の肺濃度及びb)25ng/mL以下の抗真菌剤の血漿濃度を同時に達成するのに十分な量で投与される。
【0009】
他の態様において、本発明は、治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含むアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)を治療するための方法に関し、前記抗真菌剤は、a)少なくとも500ng/g又はng/mLの抗真菌剤の肺濃度、及びb)25ng/mL以下の抗真菌剤の血漿濃度を同時に達成するのに十分な量で投与される。
【0010】
さらに他の態様において、本発明は、治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含む、呼吸器疾患の急性増悪の発生率又は重症度を治療または軽減するための方法に関し、前記抗真菌剤は、a)少なくとも500ng/g又はng/mLの抗真菌剤の肺濃度、及びb)25ng/mL以下の抗真菌剤の血漿濃度を同時に達成するのに十分な量で投与される。
【0011】
肺及び血漿の濃度は、抗真菌剤の単回用量の投与後、少なくとも24時間持続されてもよい。
【0012】
肺及び血漿の濃度は定常状態の濃度とすることができる。
【0013】
抗真菌剤は、乾燥粉末又は液体製剤の形態で投与されうる。
【0014】
他の態様において、本発明は、治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含む真菌感染症を治療する方法に関し、前記抗真菌剤は、単回用量又は初回用量と、それに続く1回以上の後続用量で投与されて、少なくとも100:1の肺:血漿比が達成される。
【0015】
他の態様において、本発明は、治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含むアスペルギルス症を治療する方法に関し、前記抗真菌剤は、単回用量又は初回用量と、それに続く1回以上の後続用量で投与されて、少なくとも100:1の肺:血漿比が達成される。
【0016】
他の態様において、本発明は、治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含むアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)を治療する方法に関し、前記抗真菌剤は、単回用量又は初回用量と、それに続く1回以上の後続用量で投与されて、少なくとも100:1の肺:血漿比が達成される。
【0017】
他の態様において、本発明は、治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含む呼吸器疾患の急性増悪の発生率又は重症度を治療または軽減する方法に関し、前記抗真菌剤は、単回用量又は初回用量と、それに続く1回以上の後続用量で投与されて、少なくとも100:1の肺:血漿比が達成される。
【0018】
患者は嚢胞性線維症を患っていてもよい。患者はぜんそくを患っていてもよい。
【0019】
他の態様において、本発明は、治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含む、免疫無防備状態の患者における真菌感染症を治療する方法に関し、前記抗真菌剤は、a)少なくとも500ng/g又はng/mLの抗真菌剤の肺濃度及びb)25ng/mL以下の抗真菌剤の血漿濃度を達成するのに十分な量で投与される。
【0020】
他の態様において、本発明は、治療を必要とする患者の気道に、有効量の抗真菌剤を投与することを含む、免疫無防備状態の患者における真菌感染症を治療する方法に関し、前記抗真菌剤は、単回用量又は初回用量と、それに続く1回以上の後続用量で投与されて、少なくとも100:1の肺:血漿比が達成される。
【0021】
また本発明は、治療を必要とする患者の気道に、定常状態が達成されるまで、抗真菌剤を含む乾燥粉末の初回の1回又は複数回の殺真菌用量(fungicidal dose)を投与し、治療を必要とする患者に、定常状態を維持するために、1回以上の静真菌用量(fungistatic dose)を後続することを含む、真菌感染症を治療する方法に関する。静真菌用量は、殺真菌用量が投与されたよりも少ない頻度で投与されてもよい。静真菌用量は、殺真菌用量よりも少なくてもよい。用量はそれぞれ独立して、約2から約35mgの名目用量(nominal dose)の抗真菌活性成分を含んでいてもよい。用量の間隔は少なくとも約1日でもよい。用量の間隔は少なくとも約2日でもよい。用量の間隔は少なくとも約3日でもよい。投与される用量の数は週あたり約3用量でもよい。
【0022】
一つの態様において、本発明は、治療を必要とする患者の気道に有効量の抗真菌剤を投与することを含む、真菌感染症を治療するための方法に関し、前記抗真菌剤は肺内の定常状態の抗真菌濃度(anti-fungal concentration)を達成するように投与され、続いて、各用量は、a)少なくとも約24時間に亘る少なくとも約500ng/g又はng/mLの抗真菌剤の肺濃度、及びb)少なくとも24時間に亘る約25ng/mL以下の抗真菌剤の血漿濃度を達成するのに十分な抗真菌剤を含む1つ以上の用量で抗真菌剤を投与する。
【0023】
又本発明は、治療を必要とする患者の気道に、イトラコナゾールを投与することを含む、イトラコナゾールによって真菌感染症を治療する方法に関し、イトラコナゾールの1回以上の殺真菌用量が投与され、続いて1回以上の静真菌用量が投与され、殺真菌用量及び静真菌用量は25ng/mLを超えるイトラコナゾールの血漿濃度を生成しない。
【0024】
他の態様において、本発明は、イトラコナゾールによって真菌感染症を治療する方法に関し、i)治療を必要とする患者の気道に、肺内のイトラコナゾールの殺真菌レベルを達成するのに十分な量のイトラコナゾールを投与し、ii)イトラコナゾールの血漿濃度が25ng/mL以上かどうか判断し、及びiii)イトラコナゾールの血漿濃度が25ng/mL以上である場合、患者に投与されるイトラコナゾールの量を、肺内のイトラコナゾールの静真菌レベルを達成するのに十分な量に減らして、イトラコナゾールの全身作用のリスクを軽減することを含む。
【0025】
他の態様において、本発明は、治療を必要とする患者の気道に、1回以上の用量の抗真菌剤を投与して、肺内の抗真菌剤の殺真菌レベルを達成し、肺内の抗真菌剤の静真菌レベルを維持するために1回以上の用量を後続することを含む、真菌感染症を治療するための方法に関する。肺内の抗真菌剤の殺真菌レベルを達成する抗真菌剤の用量は、肺内の抗真菌剤の静真菌レベルを維持する用量よりも少ない頻度で投与されてもよい。肺内の抗真菌剤の殺真菌レベルを達成する抗真菌剤の用量は、肺内の抗真菌剤の静真菌レベルを維持する用量よりも少なくてもよい。
【0026】
他の態様において、本発明は、治療を必要とする患者の気道に、少なくとも24時間に亘る肺内の最小殺真菌濃度(MFC90)を達成するために1回以上の負荷用量(loading dose(s))の抗真菌剤を投与し、少なくとも24時間に亘る肺内の最小静真菌濃度(MIC90)達成するために1回以上の維持用量を後続することを含む、真菌感染症を治療するための方法に関する。MFC90は、少なくとも2000ng/g又はng/mLであり得る。MIC90は、少なくとも500ng/g又はng/mLであり得る。維持用量は、殺真菌用量が投与されたよりも少ない頻度で投与してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】(A)及び(B)は、Sporanoxの動物PKデータ及び人データから確立したモデルを使用して、血漿曝露(図1A)及び肺曝露(図1B)に関し、製剤XIX、製剤XII及びSporanoxのシミュレートされた動態を示すグラフである。いずれのシミュレーションにおいても、5mgを1日1回吸入し(製剤XIX及びXII)、200mgのSporanox経口液剤を1日2回投与した。イトラコナゾールの濃度は、投与した7日間に亘り測定された。
図2】(A)及び(B)は、Sporanoxの動物PKデータ及び人データから確立したモデルを使用して、血漿曝露(図2A)及び肺曝露(図2B)に関し、製剤XIX、製剤XII及びSporanoxのシミュレートされた動態を示すグラフである。いずれのシミュレーションにおいても、20mgを1日1回吸入し(製剤XIIX及びXIX)、200mgのSporanox経口液剤を1日2回投与した。イトラコナゾールの濃度は、投与した7日間に亘り測定された。
図3】健康な有志被験者における96時間に亘る単回用量の製剤XII血漿薬物動態プロファイルを示すグラフである。研究の詳細は実施例4に示されている。
図4】健康な有志被験者における単回用量の後又は14日用量後の24時間に亘る製剤XII血漿薬物動態プロファイルを示すグラフである。研究の詳細は実施例4に示されている。
図5】(A)及び(B)は、ぜんそく患者における単回の吸入又は経口用量後の全身薬物動態の要約データを示すグラフである。ぜんそく患者に投与されたPUR1900(A)又は経口Sporanox(D)の単回用量の後の喀痰(図5A)及び血漿(図5B)におけるイトラコナゾールの薬物動態プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本願の開示は、定常状態の濃度を達成するのに十分な結晶性粒子形態の抗真菌剤を含む量の呼吸可能な乾燥粒子を投与することによる、呼吸器疾患を有する患者の治療方法に関する。本発明者らは、乾燥粉末製剤中の結晶性粒子形態の抗真菌剤の名目用量5mgを超える投与が、単なる静真菌濃度ではなく、殺真菌濃度を達成することを発見した。従って本願の開示は、イトラコナゾール等の抗真菌剤を含有する乾燥粉末製剤の殺真菌用量を含む初回の1回以上の用量を含み、定常状態を維持するための静真菌コース(例えば低用量又は低頻度用量)が後続する投与計画(dosage regimen)に関する。
【0029】
乾燥粉末は、経口吸入等の吸入によって患者に投与されうる。経口吸入を達成するために、受動乾燥粉末吸入器(passive dry powder inhaler)のような乾燥粉末吸入器を使用することができる。乾燥粉末製剤は、患者のアスペルギルス感染症のような真菌感染症の治療または予防をするために使用することが可能である。乾燥粉末からの恩恵を受ける患者は、例えば嚢胞性線維症やぜんそくを患い、及び/又は重度の免疫不全のために真菌感染症を発症するリスクの高い者である。抗真菌剤(例えばイトラコナゾール)の吸入製剤は、これらの患者の治療における経口又は静脈内(IV)製剤の多くの欠点を最小化する。
【0030】
驚くべきことに、イトラコナゾール等の抗真菌剤をアモルファス形態で含む乾燥粉末製剤は、治療用量で吸入すると、肺滞留時間がより短くなり、肺血漿曝露比及び肺組織に対する望ましくない毒性作用が減少する。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、材料の結晶形態(例えばナノ結晶形態)は肺内での溶解速度がより遅く、投与後24時間に亘って曝露をより連続的に提供し、全身曝露を最小限化すると考えられる。さらに、アモルファス投与で肺組織内に観察された局所毒性は、総投与量や曝露期間の観点からすると、薬物に対する肺組織の総曝露とは関連していない。イトラコナゾールは、人又は動物の肺細胞に対する活性が未だ知られておらず、局所濃度が上昇しても、局所毒性を説明できる局所薬理活性が存在していない。むしろ、アモルファス形態の毒性が、イトラコナゾールのアモルファス性に二次的な溶解度の増加に関連しているようであり、間質腔内における薬物の過飽和及び結果として生じる組織内での再結晶化をもたらし、局所的な肉芽腫性炎症を引き起こす。驚くべきことに、本発明者らは、結晶性粒子形態の抗真菌剤を含む乾燥粉末が、肺組織に対して毒性がより低いことを発見した。結晶性粒子状の抗真菌剤は、アモルファス形態と比較して溶解速度が低く、アモルファス形態の抗真菌剤の相当する用量よりも長く肺内に留まるので、これは驚くべきことだった。さらに、結晶性粒子状の抗真菌剤は、単回投与後及び28日以上に亘って、アモルファス形態の抗真菌剤の相当する用量よりも、高い肺曝露をもたらす。
【0031】
抗真菌剤の結晶化度は、抗真菌剤の複数の結晶性粒子の寸法と同様に、肺内での効果的な治療及び毒性の低減に重要なようである。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、抗真菌剤のより小さな複数の結晶性粒子(例えばナノ結晶性又は微結晶性抗真菌剤)は、より大きな複数の結晶性粒子よりも速く気道内膜液(airway lining fluid)に溶解し、その一つの要因は表面積の総量がより大きいためと考えられる。結晶性抗真菌剤は、アモルファス抗真菌剤よりも、気道内膜液にゆっくり溶解するとも考えられる。従って本明細書に記載の乾燥粉末は、所望の結晶化度及び粒子寸法を備えた結晶性粒子形態の抗真菌剤を使用して調剤することができ、且つ肺内の容認できない毒性を回避しつつ所望の薬物動態特性を達成するように適合させることができる。
【0032】
複数の呼吸可能な乾燥粉末は、1)結晶性粒子形態の抗真菌剤、2)安定剤、及び任意に3)1以上の賦形剤を含む均質な呼吸可能な複数の乾燥粒子を含む。従って乾燥粉末は、安定剤、任意の1以上の賦形剤及び結晶性抗真菌剤を含むサブ粒子(sub-particle、呼吸可能な複数の乾燥粒子よりも小さい粒子)を含む呼吸可能な複数の乾燥粒子によって特徴付けられる。このような呼吸可能な複数の乾燥粒子は、結晶性粒子形態の抗真菌剤を賦形剤水溶液中に懸濁した供給原料を調製し、この供給原料を噴霧乾燥するなどして、何れかの適切な方法を利用して調製することが可能である。
【0033】
[定義]
本発明書で使用する場合、用語「約」は、表示した値のプラスマイナス5%の相対範囲を指し、例えば「約20mg」は「20mgプラスマイナス1mg」である。
【0034】
本明細書で使用する場合、呼吸可能な複数の乾燥粒子の「投与」又は「投与する」という用語は、呼吸可能な複数の乾燥粒子を被験者の気道に導入することを指す。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「アモルファス」は、粉末X線回折(XRD)を通じて分析したときの有意な結晶性の欠如を示す。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「殺真菌用量」は、真菌を殺すのに必要な抗真菌剤の量(例えばMFC50、MFC90)を示す。殺真菌剤の用量は、真菌感染症の特定のタイプにより変化し、また熟練した医師により判定できる様々な要因によって付加的に変動しうる。
【0037】
本明細書で使用する場合、用語「静真菌用量」は、真菌の増殖を阻害するのに必要な抗真菌剤の量(例えばMIC50、MIC90)を指す。静真菌剤の用量は、真菌感染症の特定のタイプにより変化し、また熟練した医師により判定できる様々な要因によって付加的に変動しうる。
【0038】
本明細書で使用する用語「カプセル放出粉末塊(capsule emitted powder mass)」又は用語「CEPM」は、吸入操作中にカプセル又は用量単位容器(dose unit container)から放出される乾燥粉末製剤の量を指す。CEPMは質量分析で(gravimetrically)測定され、通常、吸入操作の前後にカプセルの重量を測定して、取り除かれた粉末製剤の質量を測定することによる。CEPMは、取り除かれた粉末の質量としてミリグラムで、又は吸入操作前のカプセル内に最初に充填された粉末質量のパーセンテージとして表すことが可能である。
【0039】
本明細書で使用する用語「結晶性粒子形態」は、粒子の形態(すなわち本明細書に開示された乾燥粉末を含む呼吸可能な複数の乾燥粒子よりも小さいサブ粒子)であり、且つ抗真菌剤は少なくとも約50%が結晶性である、抗真菌剤(塩、水和物、鏡像異性体等を含むその薬学的に許容される形態を含む)を指す。抗真菌剤の結晶化度パーセントは、サブ粒子中に存在する化合物の総量に対する結晶形態である化合物のパーセンテージを指す。所望に応じ、抗真菌剤は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は約100%の結晶であり得る。結晶性粒子形態の抗真菌剤は、約50ナノメートル(nm)から約5000nmの体積中位径(volume median diameter)(Dv50)の粒子の形態であり、好ましくは80nmからら1750nmのDv50、あるいは好ましくは50nmから800nmのDv50である。
【0040】
用語「分散性」は、呼吸可能なエアロゾルに飛散する乾燥粉末又は呼吸可能な複数の乾燥粒子の特性を説明する技術用語である。乾燥粉末又は呼吸可能な複数の乾燥粒子の分散性は、本明細書においては、一つの態様において、1バールの分散(すなわちレギュレータ)圧力において測定した体積中位幾何学径(volumetric median geometric diameter、VMGD)を4バールの分散(すなわちレギュレータ)圧力において測定したVMGDで除算した商として、あるいは0.5バールにおけるVMGDを4バールにおけるVMGDで除算した商として表される。VMGDはHELOS/RODOS等のレーザー回折で測定される。これらの商は、本明細書では、それぞれ「1バール/4バール分散性比」及び「0.5バール/4バール分散性比」と呼び、分散性は低い商と相関している。例えば、1バール/4バール分散性比は、HELOS又は他のレーザー回折システムにより測定された、約1バールにおいてRODOS乾燥粉末分散器(または同等の技術)のオリフィスから放出される乾燥粉末又は呼吸可能な複数の乾燥粒子のVMGDを、HELOS/RODOSによって4バールにおいて測定された同じ乾燥粉末又は呼吸可能な複数の乾燥粒子のVMGDで除算したものを指す。従って高分散性の乾燥粉末又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、1.0に近い1バール/4バール分散性比又は0.5バール/4バール分散性比を有することになろう。高分散性の粉末は、集塊、凝結又は凝集する(agglomerate, aggregate or clump together)傾向が低く、及び/又は仮に集塊、凝結又は凝集した場合でも、吸入器から放出されて被験者に吸い込まれる際に、容易に分散または脱凝集する。他の態様において、分散性は、流量の関数として、吸入器から放出される粒子寸法を測定することによって評価される。吸入器を通る流量が減少するほど、粉末を分散させるために粉末に伝達できる気流中のエネルギーの量が減少する。高分散性の粉末は、その質量中位空気動力学径(mass median aerodynamic diameter(MMAD))によって空気力学的に、又はVMGDによって幾何学的に特徴付けられた粒子寸法分布を有するだろう。これは、約15から約60リットル/分(LPM)や、約20から約60LPMや、約30LPMから約60LPMのような、人による典型的な流量の範囲に亘って、実質的に増加することはない。また高分散性の粉末は、より低い吸入流量でも約80%以上の、放出粉末の質量又は用量、あるいはカプセルからの放出粉末の質量又は用量を有するだろう。VMGDは、体積中位径(VMD),x50又はDv50と呼ばれることもある。
【0041】
本明細書で使用する用語「乾燥粒子」は、合計約15%までの水及び/又は他の溶媒を含み得る呼吸可能な粒子を指す。好ましくは乾燥粒子は、水及び/又は他の溶媒を、乾燥粒子の重量で、計約10%まで、計約5%まで、計約1%まで、又は計0.01%と1%の間で含み、あるいは水及び/又は他の触媒を実質的に含まなくてもよい。
【0042】
本明細書で使用する用語「乾燥粉末」は、呼吸可能な複数の乾燥粒子を含む組成物を指す。乾燥粉末は、水及び/又は他の溶媒を計約15%まで含んでいてもよい。好ましくは乾燥粉末は、水及び/又は他の溶媒を、乾燥粉末の重量で、計約10%まで、計約5%まで、計約1%まで、又は計0.01%と1%の間を含み、あるいは水及び/又は他の触媒を実質的に含まなくてもよい。一つの態様において、乾燥粉末は呼吸可能な乾燥粉末である。
【0043】
本明細書で使用する用語「有効量」は、所望の効果を達成するのに必要な薬剤の量を指す。所望の効果は、患者、例えば嚢胞性線維症(CF)、ぜんそく患者及び免疫不全患者の気道における真菌感染症、例えばアスペルギルス症の治療;アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の治療;及び呼吸器疾患の急性増悪の発生率又は重症度を治療または軽減するなどの効果である。特定の使用に対する実際の有効量は、特定の乾燥粉末又は呼吸可能な乾燥粒子、投与方法、及び被験者の年齢、体重、一般的な健康状態並びに治療される症状または状態の重症度より変化し得る。これら及び他の考慮事項に基づいて、特定の患者に対する乾燥粉末及び乾燥粒子の適切な投与量及び特定の患者への投薬スケジュールは、通常の技能を有する臨床医により決定され得る。本明細書で使用する場合、用語「放出用量」又は「ED」は、発射(firing)又は分散事象の後の、適切な吸入装置からの薬物製剤の送達の指標を指す。より具体的には、乾燥粉末製剤の場合、EDは、単位用量容器から引き出され且つ吸入装置のマウスピースから出る粉末のパーセンテージの尺度である。EDは、吸入装置によって送達される薬剤又は粉末の名目用量(すなわち発射前に適切な吸入装置に入れられた単位用量あたりの薬剤又は粉末の量)に対する比率、と定義される。
【0044】
EDは実験的に測定されたパラメータであり、USPセクション601エアロゾル、定量吸入器及び乾燥粉末吸入器、送達用量均一性、乾燥粉末吸入器からの送達容量のサンプリング米国薬局方条約、メリーランド州ロックビル、第13改訂版、222-225、2007年の方法を使用して決定できる。この方法は、患者への投薬を模倣するように設定された試験管内装置(in vitro device)を利用する。また次世代インパクター(NGI)実験により生じた結果から計算することも可能であり、マウスピースアダプター、NGI導入ポート及びNGI内の全てのステージから分析された薬物又は粉末の合計を通じて行われる。USP601に準拠したEDテストで生じた結果と、NGIで生じた結果とは、通常よく一致している。
【0045】
用語「肺対血漿比」又は「肺:血漿比」は、特定の時点において又は特定の時間範囲に亘って、肺内の抗真菌剤の濃度対血漿中の抗真菌剤の濃度の比を指す。例えば肺:血漿比は、肺又は漿液(serum)中の抗真菌剤の最大濃度(すなわち「Cmax)において、同時の又は任意の時点での測定に基づいて計算することができる。また肺:血漿比は、24時間に亘るような特定の期間に亘る総曝露(すなわち「曲線下面積(area under the curve)」又は「AUC」)として計算されてもよい。抗真菌剤の肺濃度は、喀痰中のレベルの測定や、肺洗浄や、生体組織検査やその他の何れかの方法により評価することができる。肺:血漿比は投与サイクルの任意の時点での同時測定に基づいて計算しても、定常状態において又はその前の同時測定に基づいて計算してもよい。本明細書で使用する用語「名目用量」は、抗真菌剤の1mg以上の個別用量を指す。名目用量は、1つのカプセル、ブリスター(blister)またはアンプル内の抗真菌剤の総用量である。
【0046】
本明細書で使用される用語「FPF(<X)」、「FPF(<Xミクロン)」及び「Xミクロン未満の微粒子画分(fine particle fraction)」は、空気動力学径がXミクロン未満の乾燥粒子のサンプルの割合を指す。ここでXは例えば3.4ミクロン,4.4ミクロン,5.0ミクロン又は5.6ミクロンに等しい。例えばFPF(<X)は、ステージ2上及び2ステージの崩壊(two-stage collapsed)したアンダーソンカスケードインパクター(Andersen Cascade Impactor (ACI))の最終収集フィルター上に堆積した呼吸可能な複数の乾燥粒子の質量を、機器へ送るためにカプセルに量り込んだ呼吸可能な複数の乾燥粒子の質量で除算することにより決定することができる。このパラメータは、「FPF_TD(<X)」とされることもあり、ここではTDは総用量を意味する。同様の測定は、8ステージACIを使用して実行することができる。8ステージACIカットオフは、標準の60L/minの流量においては異なるが、FPF_TD(<X)は8ステージ完全データセットから推定することが可能である。8ステージACIの結果は、FPFを決定するためにカプセル内にあったものの代わりに、ACI内に収集された用量を利用するUSP法によって計算することも可能である。同様に7ステージ次世代インパクター(NGI)を使用することもできる。
【0047】
本明細書で使用される用語「FPD(<X)」、「FPD(<Xミクロン)」及び「Xミクロン未満の微粒子用量(fine particle dose)」は、空気動力学径がXマイクロメートル未満の呼吸可能な複数の乾燥粒子によって送達される治療薬の質量を指す。ここでXは例えば3.4ミクロン,4.4ミクロン,5.0ミクロン又は5.6ミクロンに等しい。FPD<Xミクロンは、8ステージのアンダーソンカスケードインパクター(ACI)又は次世代インパクター(NGI)を標準の60L/minの流量で使用し、最終収集フィルターに堆積した質量を合計し、そして直接の計算又はFPD値を推定することにより決定することができる。
【0048】
本明細書で使用する用語「呼吸可能」は、吸入による被験者中の気道への送達(例えば肺送達)に適した乾燥粒子又は乾燥粉末を指す。呼吸可能な乾燥粉末又は乾燥粒子は、約10ミクロン未満、好ましくは約5ミクロン以下の質量中位空気動力学径(MMAD)を有する。
【0049】
本明細書で使用する場合、用語「気道」は上気道(upper respiratory tract)(例えば鼻道(nasal passages)、鼻腔(nasal cavity)、喉(throat)、咽頭(pharynx)及び喉頭(larynx)、呼吸気道(respiratory airways)(例えば気管(trachea)、気管支(bronchi)及び細気管支(bronchioles))、及び肺(例えば呼吸細気管支(respiratory bronchioles)、肺胞管(alveolar ducts)、肺胞嚢(alveolar sacs)及び肺胞(alveoli))を含む。
【0050】
本明細書で使用する場合、用語「下気道(lower respiratory tract)」は呼吸気道及び肺を含む。
【0051】
本明細書で呼吸可能な乾燥粒子を説明するために使用する用語「小さい(small)」は、約10ミクロン未満、好ましくは約5ミクロン以下あるいは約5ミクロン未満の体積中位幾何学径(VMGD)を有する粒子を指す。
【0052】
本明細書で使用する用語「安定剤」は、抗真菌剤が難溶性である液体中に結晶性粒子形態の抗真菌剤の物理的安定性を改善する(例えば微粒子の集塊、凝結、オスワルド熟成及び/又は凝集を低減する)化合物を指す。適切な安定剤は、界面活性剤及び両親媒性材料であり、PS20、PS40、PS60及びPS80等のポリソルベート(Polysorbate、PS;ポリオキシエチル化ソルビタン脂肪酸エステル(polyoxyethylated sorbitan fatty acid esters));ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸及びステアリン酸等の脂肪酸;Span20、Span40、Span60、Span80及びSpan85等のソルビタン脂肪酸エステル;ジパルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoylphosphosphatidylcholine(DPPC))、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン(l,2-Dipalmitoyl-sn-glycero-3-phospho-L-serine(DPPS))、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(l,2-Dipalmitoyl-sn-glycero-3-phosphocholine(DSPC))、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリン(1-palmitoyl-2-oleoylphosphatidylcholine(POPC))及び1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(l,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine(DOPC))等のリン脂質;ジホスファチジルグリセロール(diphosphatidyl glycerol(DPPG))、DSPG、DPPG、POPGその他のホスファチジルグリセロール(Phosphatidylglycerols、PGs);1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(l,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine(DSPE));脂肪アルコール;ベンジルアルコール;ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(polyoxyethylene-9-lauryl ether);グリココール酸;サーファクチン(surfactin);ポロキサマー((poloxomers);ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone(PVP));PEG/PPGブロック共重合体(プルロニクス(Pluronics)/ポロキサマー(Poloxamers));ポリオキシエチレンクロレステリルエーテル(polyoxyethyene chloresteryl ethers);POEアルキルエーテル(POE alky ethers);チロキサポール(tyloxapol);レシチン等である。好ましい安定剤はポリソルベート及び脂肪酸である。特に好ましい安定剤はPS80である。その他の好ましい安定剤はオレイン酸である。
【0053】
本明細書で使用する用語「均質乾燥粒子」は、界面活性剤安定化懸濁液として前処理された結晶性薬物(例えばナノ結晶性薬物)を含む粒子を指す。次に、均質乾燥粒子は(任意の)賦形剤を含む界面活性剤安定化懸濁液を噴霧乾燥により形成され、組成上均質な、より具体的には、界面活性剤による被覆された複数の結晶性薬物粒子と任意に1種以上の賦形剤との組成物と同定される乾燥粒子が生じる。
【0054】
[治療上の使用及び方法]
一つの態様において、本発明は、嚢胞性線維症、ぜんそく、特に重度のぜんそく、及び重度の免疫無防備状態の患者等の呼吸器(例えば肺)疾患を治療する方法に関する。この方法は、乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子を、治療を必要とする被験者の気道に投与し、それにより嚢胞性線維症、ぜんそく、特に重度のぜんそく、及び重度の免疫無防備状態の患者等の呼吸器(例えば肺)疾患を治療することを含む。この治療法はアスペルギルス症(例えばアスペルギルスフミガタス(fumigatus)症)の治療に特に有用である。この治療法は、イトラコナゾールに敏感な真菌感染症の治療にも有用である。本発明の別の態様は、例えばぜんそくまたは嚢胞性線維症などの患者におけるアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の治療である。また本発明は、吸入性の抗真菌製剤を投与することによって、耐性真菌感染症を有する個体を治療することを可能にすることができる。
【0055】
患者に投与される乾燥粉末の量は、定常状態濃度を維持するのに十分であればよい。本明細書で使用する場合、定常状態濃度(Css)は、「定常状態」が達成され、薬物投与および薬物除去の速度は等しい時の、例えば肺または血漿中の薬物の濃度を指す。定常状態濃度は極限として近づく値であり、理論的には、無限の複数の等しい間隔での等しい用量の最後に続いて達成される。このような条件下での最大値(Css,max)は、単一コンパートメントシステム(compartment system)から一次速度論により除去した薬物のためのCss,max=CO/(1−f)で与えられる。Css,maxの比率は、理論的には無限に長い期間の特定の投与計画(dose regimen)の条件下で、薬物が蓄積する程度を示す。対応する比率1/(1−f)は時として累積比率とも呼ばれる。R.Cssは、理論的には、一定速度で無限の持続時間の注入の「終期」に達成される極限である。ある態様において、約2mg、約3mg、約4mg、5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約50mg、約2mg〜約35mg、約5mg・約50mg、約10mg〜約50mg、約15mg〜約50mgの名目用量を投与できる。用量及び投与計画(dosing regimen)は、一定の肺:血漿比を達成するために、あるいは肺及び血漿中の特定の定常状態濃度を達成するために選択することができる。
【0056】
肺:血漿比は、少なくとも約100:1、少なくとも約200:1、少なくとも約300:1、少なくとも約400:1、少なくとも約500:1、少なくとも約600:1、少なくとも約700:1、少なくとも約800:1、少なくとも約1000:1、少なくとも約1300:1、少なくとも約1600:1、少なくとも約1900:1、少なくとも約2200:1、少なくとも約2500:1、少なくとも約2800:1、少なくとも約3000:1、少なくとも約3200:1、少なくとも約3400:1、少なくとも約3600:1、3000:1から4000:1までの間、3500:1・4000:1までの間又は3600:1から3700:1までの間でもよい。さらに、肺:血漿比は、少なくとも約2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、少なくとも20:1、少なくとも25:1、少なくとも50:1、又は少なくとも75:1でもよい。肺:血漿比は、肺又は漿液中の抗真菌剤の最大濃度(すなわち「Cmax」)における、又は任意の時点の同時測定に基づいて、計算することができる。また肺:血漿比は、24時間に亘るなどの特定の期間に亘る総曝露(すなわち「曲線下面積」又は「AUC」)についても計算することができる。肺:血漿比は、投与サイクルの任意の時点での同時測定に基づいて計算しても、定常状態またはその以前で計算してもよい。
【0057】
定常状態においては、肺:血漿比は、少なくとも約20:1、少なくとも約25:1、少なくとも50:1、少なくとも75:1、少なくとも約100:1、少なくとも約200:1、少なくとも約300:1、少なくとも約400:1、少なくとも約500:1、少なくとも約600:1、少なくとも約700:1、少なくとも約800:1、少なくとも約1000:1、少なくとも約1300:1、少なくとも約1600:1、少なくとも約1900:1、少なくとも約2200:1、少なくとも約2500:1、少なくとも約2800:1、少なくとも約3000:1、少なくとも約3200:1、少なくとも約3400:1、少なくとも約3600:1、3000:1から4000:1までの間、3500:1から4000:1までの間又は3600:1から3700:1までの間でもよい。
【0058】
血漿濃度を達成するために、乾燥粉末製剤を投与できる。血漿濃度は40ng/mL未満、35ng/mL未満、30ng/mL未満、25ng/mL以下、20ng/mL未満、15ng/mL未満、12ng/mL未満、10ng/mL未満、8ng/mL未満、6ng/mL未満、4ng/mL未満、2ng/mL未満、1.5ng/mL未満、1.0ng/mL未満、0.5ng/mL未満、0.3ng/mL未満又は0.2ng/mL未満でもよい。
【0059】
定常状態の血漿濃度を達成するために、乾燥粉末製剤を投与できる。定常状態において、血漿濃度は25ng/mL、20ng/mL未満、15ng/mL未満、12ng/mL未満、10ng/mL未満、8ng/mL未満、6ng/mL未満、4ng/mL未満、2ng/mL未満、1.5ng/mL未満、1.0ng/mL未満、0.5ng/mL未満、0.3ng/mL未満又は0.2ng/mL未満でもよい。さらに、定常状態の血漿濃度は40ng/mL未満、35ng/mL未満又は30ng/mL未満である。
【0060】
乾燥粉末製剤は、約500ng/mL、約800ng/mL、約1200ng/mL、約1600ng/mL、約2000ng/mL、約3000ng/mL、約4000ng/mL、約5000ng/mL、約5000ng/mL、約6000ng/mL、約7000ng/mL、約8000ng/mL、2000ng/mLから8000ng/mLまでの間又は約2000ng/mLから8100ng/mLまでの間の肺濃度を達成するために、1回以上の用量で投与することができる。肺濃度は、肺組織中の抗真菌剤の最大濃度(すなわち「Cmax」で、又は任意の時点で測定することができる。肺濃度は、投与サイクルの任意の時点で測定でき、定常状態又はそれ以前に計算できる。
【0061】
乾燥粉末製剤は、約500ng/mL、約800ng/mL、約1200ng/mL、約1600ng/mL、約2000ng/mL、約3000ng/mL、約4000ng/mL、約5000ng/mL、約5000ng/mL、約6000ng/mL、約7000ng/mL、約8000ng/mL、2000ng/mLから8000ng/mLまでの間又は約2000ng/mLから8100ng/mLまでの間の定常状態の肺濃度を達成するために、1回以上の用量で投与することができる。
【0062】
乾燥粉末製剤は、1日1回、1日2回、1日おきに1回又は3日に1回を、約7日間、14日間、21日間、28日間、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、1年間又は継続的に、投与することができる。ある実施形態において、乾燥粉末製剤は定常状態が達成されるまで1日1回投与し、続いてその後6ヶ月間まで頻度を少なくして投与する。ある実施形態において、1回以上の殺真菌用量を定常状態に達するまで毎日投与し、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間又は6ヶ月間に亘って1回以上の静真菌用量(例えばより低い用量、より少ない頻度で投与される用量)が後続する。ある実施形態において、肺内の抗真菌剤の殺真菌濃度を達成するのに必要な1回以上の用量を、得異常状態に達するまで毎日投与し、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間又は6ヶ月間に亘って、肺内の静真菌濃度を達成するのに必要な1回以上の用量(例えばより低い用量、より少ない頻度で投与される用量)が後続する。
【0063】
本発明の他の態様において、乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子の殺真菌用量を、治療を必要とする被験者の気道に投与し、乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子の1回以上の静真菌用量を後続し、それにより嚢胞性線維症、ぜんそく、特に重度のぜんそく、及び重度の免疫無防備状態の患者などの呼吸器(例えば肺)疾患を治療する。最小静真菌濃度(MIC)(例えばMIC50、MIC90など)を達成するために必要な静真菌用は、感染を引き起こす特定の真菌により変化するが、0.008から4pg/mL、0.008から0.03pg/mL、0.008から0.06pg/mL、0.03から>4pg/mL、0.015から0.5pg/mL、0.004から0.03pg/mL、0.5から1pg/mL、0.5pg/mLから>64pg/mL、0.5から2pg/mL又は0.03mg/Lから32mg/Lであってもよい。最小殺真菌濃度(MFC)(例えばMFC50、MFC90)を達成するために必要な殺真菌用量は、感染を引き起こす特定の真菌により変化するが、0.05mg/Lから、16mg/Lを超えていてもよい。肺及び血漿の濃度を決定するための様々な方法及びアッセイが当技術分野で知られており、抗真菌乾燥粉末の投与中及びその後の肺及び血漿の濃度を測定するために使用することができる。例えばバイオアッセイ又は高性能HPLCを使用して、患者が少なくとも7日間、少なくとも14日間、少なくとも21日間又は少なくとも28日間に亘って薬物を服用した後の、肺内の抗真菌活性剤の量を(例えば誘発採痰(induced sputum)、気管支洗浄(bronchial lavage)、自発痰(spontaneous sputum)を利用して)測定することができる。
【0064】
その他の態様において、本発明はアスペルギルス症等の気道における真菌感染症により引き起こされる急性増悪の治療、発生率又は重症度の低減、又は予防のための方法である。他の態様において、本発明はアスペルギルス症などの気道における真菌感染症により引き起こされる増悪の治療、発生率又は重症度の低減、又は予防のための方法である。他の態様において、本発明は例えばぜんそく又は嚢胞性線維症などの肺疾患を有する患者におけるアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)により引き起こされる増悪の治療、発生率又は重症度の低減、又は予防のための方法である。さらに他の態様において、本発明は免疫無防備状態の患者集団における侵襲性真菌症(invasive fungal infections)の予防又は治療のための方法である。
【0065】
その他の態様において、本発明は、嚢胞性線維症、ぜんそく、特に重度のぜんそく及び重度の免疫の患者等の呼吸器疾患及び/又は慢性肺疾患の症状を緩和するための方法である。他の態様において、本発明は、患者集団におけるアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の症状を緩和するための方法である。さらに他の態様において、本発明は炎症を軽減し、ステロイドの使用を節減し、又はステロイド治療の必要性を軽減するための方法である。その他の態様において、本発明は、嚢胞性線維症、ぜんそく、特に重度のぜんそく及び重度の免疫の患者等の呼吸器疾患及び/又は慢性肺疾患を有する患者の肺機能を改善するための方法である。他の態様において、本発明はアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)を有する患者の肺機能を改善するための方法である。乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、滴下技術等の任意の適切な方法、及び/又は乾燥粉末吸入器(DPI)や定量吸入器(MDI)等の吸入装置を使用して、治療を必要とする被験者の気道に投与することができる。米国特許第4,995,385号及び第4,069,819号に開示された吸入器、Spinhaler(登録商標)(Fisons、ラフバラ、U.K.)、Rotahalers(登録商標)、Diskhaler(登録商標)・及びDiskus(登録商標)(GlaxoSmithKline、リサーチトライアングルテクノロジーパーク、ノースカロライナ州)、FlowCaps(登録商標)(Hovione、ルーレス、ポルトガル)、Inhalators(登録商標)(Boehringer-Ingelheim、ドイツ)、Aerolizer(登録商標)(Novartis、スイス)、high-resistance, ultrahigh-resistance and low-resistance RS01(Plastiape、イタリア)その他の当業者に知られた多数のDPIが利用可能である。
【0066】
以下の科学雑誌の記事は、以下の乾燥粉末吸入器(DPI)の構成の完全な概要のために参照により組み込まれる:1)単回投与カプセルDPI、2)複数回投与ブリスターDPI、および3)複数回投与リザーバーDPI.N. Islam、E.Gladki、「乾燥粉末吸入器(DPI)−デバイスの信頼性と革新のレビュー」、International Journal of Pharmaceuticals、360(2008):1-1 1. H. Chystyn、「Diskus Review」、International Journal of Clinical Practice、2007年6月、61、6、1022-1036.H. Steckel、B.Muller、「乾燥粉末吸入器のin vitro評価I:一般的に使用されるデバイスの薬物沈着」、International Journal of Pharmaceuticals、154(1997):19-29.代表的なカプセルベースのDPIユニットには、RS-01(Plastiape、イタリア)、Turbospin(登録商標)(PH&T、イタリア)、Brezhaler(登録商標)(Novartis、スイス)、Aerolizer(Novartis、スイス)、Podhaler(登録商標)(Novartis、スイス)、HandiHaler(登録商標)(Boehringer Ingelheim、ドイツ)、AIR(登録商標)(Civitas、マサチューセッツ州)、Dose One(登録商標)(Dose One、メイン州)及びEclipse(登録商標)(Rhone Poulenc Rorer)がある。代表的な単位用量DPIにはConix(登録商標)(3M、ミネソタ州)、Cricket(登録商標)(Mannkind、カリフォルニア州)、Dreamboat(登録商標)(Mannkind、カリフォルニア州)、Occoris(登録商標)(Team Consulting、ケンブリッジ、イギリス)、Solis(登録商標)(Sandoz)、Trivair(登録商標)(Trimel Biopharma、カナダ)、Twincaps(登録商標)(Hovione、ルーレス、ポルトガル)がある。代表的なブリスターベースDPIユニットにはDiskus(登録商標)(GlaxoSmithKline(GSK)、イギリス)、Diskhaler(登録商標)(GSK)、Taper Dry(登録商標)(3M、ミネソタ州)、Gemini(登録商標)(GSK)、wincer(登録商標)(University of Groningen、オランダ)、Aspirair(登録商標)(Vectura、イギリス)、Acu-Breathe(登録商標)(Respirics、ミネソタ州、アメリカ合衆国)、Exubra(登録商標)(Novartis、スイス)、Gyrohaler(登録商標)(Vectura、イギリス)、Omnihaler(登録商標)(Vectura、イギリス)、Microdose(登録商標)(Microdose Therapeuti、アメリカ合衆国)、Multihaler(登録商標)(Cipla、インド)、Prohaler(登録商標)(Aptar)、Technohaler(登録商標)(Vectura、イギリス)及びXcelovair(登録商標)(Mylanペンシルベニア州)がある。代表的な貯蔵器ベースのDPIユニットにはClickhaler(登録商標)(Vectura)、Next DPI(登録商標)(Chiesi)、Easyhaler(登録商標)(Orion)、Novolizer(登録商標)(Meda)、Pulmojet(登録商標)(sanofi-aventis)、Pulvinal(登録商標)(Chiesi)、Skyehaler(登録商標)(Skyepharma)、Duohaler(登録商標)(Vectura)、Taifun(登録商標)(Akela)、Flexhaler(登録商標)(AstraZeneca、スウェーデン)、Turbuhaler(登録商標)(AstraZeneca、スウェーデン)及びTwisthaler(登録商標)(Merck)その他当業者に知られているものがある。
【0067】
一般に吸入装置(例えばDPI)は、一回の吸入において最大量の乾燥粉末又は乾燥粒子を送達することができる。これはブリスター、カプセル(例えば、寸法000,00,0E,0,1,2,3,及び4、それぞれの体積容量は1.37ml,950μl,770μl,680μl,480μl,360μl,270μl及び200μl)、又は吸入器内に乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子を収容する他の手段の容積による。好ましくは、ブリスターは約360マイクロリットル以下、約270マイクロリットル以下、またはより好ましくは約200マイクロリットル以下、約150マイクロリットル以下、あるいは100マイクロリットル以下の容積を有する。好ましくは、カプセルはサイズ2カプセルまたはサイズ4カプセルである。より好ましくはカプセルはサイズ3カプセルである。従って所望の用量又は有効量の送達は、2回以上の吸入を必要としてもよい。好ましくは、治療を必要とする被験者に投与される各用量は、有効量の呼吸可能な複数の乾燥粒子又は乾燥粉末を含み、約4回以下の吸入を利用して投与される。例えば、乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子の各用量は、単回吸入又は2、3あるいは4回の吸入で投与することができる。乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、好ましくは受動DPIを使用して単回の呼吸活性化ステップで投与される。このタイプの装置を使用する場合、被験者の吸入エネルギーが呼吸可能な複数の乾燥粒子を分散し、且つそれらを気道に引き込む。
【0068】
本発明の方法における使用に適した乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、上気道(すなわち中咽頭及び喉頭)を通り、気管を含み、気管支及び細気管支に入る分岐に続く下気道を通り、呼吸細気管支に次に分かれる終末細気管支を通って、続いて最終的な呼吸領域、肺胞又は深肺に到る。本発明の一つの実施形態において、呼吸可能な複数の乾燥粒子のほとんどは深肺に堆積する。本発明の他の実施形態において、送達は主として中央気道(central airways)である。他の実施形態において、送達は上気道である。好ましい実施形態において、呼吸可能な複数の乾燥粒子のほとんどは誘導気道(conducting airways)に堆積する。
【0069】
所望又は指示に応じて、本明細書に記載の乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は1種以上の他の治療薬と共に投与することができる。この他の治療薬は、経口、非経口(例えば静脈内、動脈内、筋肉内又は皮下の注射)、局所的に、吸入(例えば気管支内、鼻腔内又は経口吸入、鼻腔内滴下)により、直腸、膣等のような任意の適切な経路により投与することができる。呼吸可能な複数の乾燥粒子及び乾燥粉末は、他の治療薬の投与の前に、実質的に同時に又は投与の後に、投与することができる。好ましくは、乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子及び他の治療薬は、それらの薬理学的活性の実質的な重複を提供するように投与される。本明細書に記載の乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、それ自体が吸入されることを意図しており、本発明は即時調合分散液(extemporaneous dispersion)を作成する場合の乾燥粉末製剤の使用を除外している。即時調合分散液は、使用の直前、つまり患者への薬物の投与の間際に完成する調製物として当業者に知られている。本明細書で使用する場合、用語「即時調合分散液」は、溶液または懸濁液が製薬工場により直接製造されず、だたちに使用できる形態で商品化されていないが、乾燥固体組成物の調製に続く瞬間、通常は患者への投与に近い瞬間に調製される全ての場合を指す。
【0070】
[乾燥粉末及び乾燥粒子]
乾燥粉末製剤は、1)結晶性粒子形態の抗真菌剤、2)安定剤、及び3)1種以上の賦形剤を含む呼吸可能な複数の乾燥粒子を含んでいてもよい。いずれかの所望の抗真菌剤を、本明細書に記載の製剤中に含むことができる。多くの抗真菌剤がよく知られており、例えばアムホテリシンB(amphotericin B)などのポリエン抗真菌剤;イトラコナゾール、ケトコナゾール(ketoconazole)、フルコナゾール、ボリコナゾール(voriconazole)及びポサコナゾール(posaconazole)などのトリアゾール抗真菌剤;カスポファンギン(caspofungin)、ミカファンギン(micafungin)及びアニデュラファンギン(anidulafungin)のようなエキノカンジン(echinocandin)抗真菌剤である。その他のトリアゾール抗真菌剤にはクロトリマゾール(clotrimazole)、イザブコナゾール(Isavuconazole)及びミコナゾール(miconazole)が含まれる。新規な化学薬品クラスのトリテルペノイドグルカンシンターゼ(triterpenoid glucan synthase)阻害剤、例えばSCY−078を含む。またジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(dihydroorotate dehydrogenase)を阻害するF901318のようなオロトミド(orotomide)抗真菌剤も含まれる。その他の抗真菌剤には;アコジボロール(acoziborole)、アモロルフィン(amorolfine)、塩酸アモロルフィン(amorolfine hydrochloride)、硝酸アラセルタコナゾール(arasertaconazole nitrate)、ビホナゾール(bifonazole)、塩酸ブテナフィン(butenafine hydrochloride)、硝酸ブトコナゾール(butoconazole nitrate)、カルバクロル((carvacrol)、クロラミン−T(chloramine-T)、シクロピロックス(ciclopirox)、シクロピロックス(ciclopirox)、シクロピロックスオラミン(ciclopirox olamine)、塩酸クロコナゾール(croconazole hydrochloride)、エベルコナゾール(eberconazole)、エコナゾール(econazole)、硝酸エコナゾール(econazole nitrate)、フェナリモル(Fenarimol)、硝酸フェンチコナゾール(fenticonazole nitrate)、フルシトシン(flucytosine)、フルシトシン(flucytosine)、フルトリマゾール(flutrimazole)、ホルムアルデヒド(formaldehyde)、フォスラブコナゾール(fosravuconazole)、グリセオフルビン(griseofulvin)、硝酸イサブコナゾニウム(isavuconazonium sulphate)、硝酸イソコナゾール(isoconazole nitrate)、ラノコナゾール(Ianoconazole)、リラナフタート(liranaftate)、ルリコナゾール(luliconazole)、硝酸ミコナゾール(miconazole nitrate)、ナフチフィン(naftifine)、ナタマイシン(natamycin)、ニッコマイシンZ(nikkomycin Z)、ノベクサチン(Novexatin)、ナイスタチン(nystatin)、オテセコナゾール(oteseconazole)、硝酸オキシコナゾール(oxiconazole nitrate)、ピロクトンオラミン(piroctone olamine)、キルセコナゾール(quilseconazole)、酢酸レザフンギン(rezafungin acetate)、SCY−078クエン酸塩(SCY-078 citrate)、硫化セレン(selenium sulfide)、硝酸セルタコナゾール(sertaconazole nitrate)、硝酸スルコナゾール(sulconazole nitrate)、タウロリジン(taurolidine)、タバボロール(tavaborole)、テルビナフィン(terbinafine)、塩酸テルビナフィン(terbinafine hydrochloride)、テルコナゾール(terconazole)、チアベンダゾール(thiabendazole)、チオコナゾール(tioconazole)、トルナフタート(tolnaftate)、ウンデシレン酸(undecylenic acid)及びピリチオン亜鉛(zinc pyrithione)が含まれる。
【0071】
複数の抗真菌サブ粒子の寸法はもちろん、抗真菌剤の結晶化度は、肺内における効果的な治療及び毒性の低減のために重要なように思われる。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、結晶形態の抗真菌剤のより小さい複数のサブ粒子は、部分的には表面積がより大きいことを一つの要因として、より大きな複数の粒子よりも速く気道内層液に溶解すると考えられる。結晶性抗真菌剤は、アモルファス抗真菌剤よりも遅く気道内膜液に溶解するとも考えられる。従って本明細書に記載の乾燥粉末は、所望の結晶化度及びサブ粒子寸法を備えた結晶性粒子形態の抗真菌剤を使用して調剤することができ、且つ肺内の容認できない毒性を回避しつつ所望の薬物動態特性を達成するように適合させることができる。
【0072】
呼吸可能な複数の乾燥粒子は、重量%で約1%から約95%の抗真菌剤を含む。呼吸可能な乾燥粒子は、1日3回を超えて大量の乾燥粉末を吸入する必要なしに、治療的に有効な容量を投与及び維持できる分量の抗真菌剤を含んでいることが好ましい。例えば、呼吸可能な複数の乾燥粒子は、重量%で約1%から95%、約10%から75%、約15%から75%、約25%から75%、約30%から70%、約40%から60%、約50%から約90%、約50%から約70%、約70%から約90%、約60%から約80%、約20%、約50%、約70%又は約80%の抗真菌剤を含んでいることが好ましい。呼吸可能な複数の感想粒子は、重量%で約75%、約80%、約85%、約90%又は約95%の抗真菌剤を含んでいてもよい。特定の実施形態において、呼吸可能な抗真菌剤の範囲は、重量%で約40%から約90%、約55%から約85%、約55%から約75%又は約65%から約85%である。呼吸可能な複数の乾燥粒子中に存在する抗真菌剤の重量による量は、「薬物負荷(drug load)」とも呼ばれている。
【0073】
抗真菌剤は、呼吸可能な複数の乾燥粒子中に結晶性粒子形態(例えばナノ結晶性)で存在する。より具体的には、約50nmから約5000nm(Dv50)であるサブ粒子の形態であり、好ましくは、抗真菌剤は少なくとも50%が結晶性である。例えば、何れかの所望の薬物負荷のために、サブ粒子寸法は約100nm、約300nm、約1500nm、約80nmから約300nm、約80nmから約250nm、約80nmから約200nm、約100nmから約150nm、約1200nmから約1500nm、約1500nmから約1750nm、約1200nmから約1400nm又は約1200nmから約1350nm(Dv50)である。特定の実施形態において、サブ粒子は約50nmから約2500nmまでの間、約50nmから1000nmまでの間、約50nmから800nmまでの間、約50nmから600nmまでの間、約50nmから500nmまでの間、約50nmから400nmまでの間、約50nmから300nm、約50nmから200nmまでの間、または約100nmから300nmまでの間である。さらに、任意の所望の薬物負荷及びサブ粒子寸法について、抗真菌剤の結晶化度は少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は約100%結晶性である。好ましくは抗真菌剤は約100%結晶性である。結晶性粒子形態の抗真菌剤は、所望に応じて安定剤を含み、ウェットミリング、ジェットミリング又はその他の適切な方法等の適切な方法を利用して、任意の所望のサブ粒子寸法で調製することができる。
【0074】
呼吸可能な複数の乾燥粒子には安定剤も含まれる。安定剤は、ウェットミリングの間、噴霧乾燥供給原料中で、結晶性粒子形態の抗真菌剤の所望の寸法を維持するのに役立ち、湿潤及び分散を助長する。所望の乾燥粉末を得るために必要なだけの少量の安定剤を使用することが好ましい。安定剤の量は通常、乾燥粒子中に存在する抗真菌剤の量に関連し、約1:1(抗真菌剤:安定剤(重量:重量))から、約50:1(重量:重量)の範囲であり得るが、>(以上)10:1が好ましい。例えば複数の乾燥粒子中の抗真菌剤:安定剤の重量:重量の比は、>(以上)10:1、約10:1、約20:1、約1:1から約50:1、約10:1から約15:1又は約10:1から約20:1とすることができる。特定の実施形態において、この比は約5:1から約20:1、約7:1から約15:1又は約9:1から約11:1である。さらに、複数の乾燥粒子中に存在する安定剤の量は、重量%で約0.05%から約45%の範囲であり得る。特定の実施形態において、この範囲は重量%で約1%から約15%、約4%から約10%又は約5%から約8%である。一般に、呼吸可能な複数の乾燥粒子は、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、5重量%以下又は約1重量%のような、重量%で約10%未満の安定剤を含んでいるのが好ましい。あるいは、呼吸可能な複数の乾燥粒子は約5重量%、約6重量%、約7重量%、約7.5重量%、約8重量%又は約10重量%の安定剤を含む。本明細書に記載の乾燥粉末に使用するための特に好ましい安定剤は、ポリソルベート80である。他の好ましい安定剤はオレイン酸(またはその塩形態)である。生成された乾燥粉末中の結晶化の開始を防止するために界面活性剤を使用する従来技術とは対照的に、本発明内の界面活性剤は貧溶媒(anti-solvent)中の結晶性薬物のコロイド懸濁液を安定化するために添加される。
【0075】
また呼吸可能な複数の乾燥粒子は、何れかの適切な所望の量の1種以上の賦形剤を含む。乾燥粒子は約10重量%から約99重量%の総賦形剤含有量を含むことができ、約25重量%から約85重量%又は約40重量%から約55重量%がより典型的である。乾燥粒子は約1重量%、約2重量%、約4重量%、約6重量%、約8重量%又は約10重量%未満の総賦形剤含有量を含むことができる。特定の実施形態において、この範囲は約5%から約50%、約15%から約50%、約25%から約50%、約5%から約40%、約5%から約30%、約5%から約20%又は約5%から約15%である。他の実施形態において、賦形剤の範囲は約1%から約9%、約2%から約9%、約3%から約9%、約4%から約9%、約5%から約9%、約1%から約8%、約2%から約8%、約3%から約8%、約4%から約8%、約5%から約8%、約1%から約7%、約2% から約7%、約3%から約7%、約4%から約7%、約5%から約7%、約1%から約6%、約2%から約6%、約3%から約6%又は約1%から約5%である。
【0076】
多くの賦形剤が当技術分野で周知になっており、本明細書に記載の乾燥粉末及び乾燥粒子に含ませることができる。本明細書に記載の乾燥粉末及び複数の乾燥粒子に特に好ましい薬学的に許容される賦形剤には、一価及び二価の金属カチオン塩、炭水化物、糖アルコール及びアミノ酸が含まれる。
【0077】
適切な一価金属カチオン塩には、例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩が含まれる。本発明の呼吸可能な複数の乾燥粒子中に存在しうる適切なナトリウム塩には、例えば、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、二リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどが含まれる。
【0078】
適切なカリウム塩には、例えば、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、重炭酸カリウム、亜硝酸カリウム、過硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、重亜硫酸カリウム、リン酸カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、グルタミン酸カリウム、グアニル酸二カリウム、グルコン酸カリウム、リンゴ酸カリウム、アスコルビン酸カリウム、ソルビン酸カリウム、コハク酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム及びこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0079】
適切な二価金属カチオン塩には、マグネシウム塩及びカルシウム塩が含まれる。適切なマグネシウム塩には、例えば、乳酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、硝酸マグネシウム、ホウ酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、マレイン酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、リンゴ酸マグネシウム、タウ酸マグネシウム(magnesium taurate)、オロチン酸マグネシウム、グリシン酸マグネシウム、ナフテン酸マグネシウム、マグネシウムアセチルアセトナート、ギ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、六フッ化ケイ酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0080】
適切なカルシウム塩には、例えば塩化カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、グルコン酸カルシウムなどが含まれる。
【0081】
好ましいナトリウム塩は硫酸ナトリウムである。好ましいナトリウム塩は塩化ナトリウムである。好ましいナトリウム塩はクエン酸ナトリウムである。好ましいマグネシウム塩は乳酸マグネシウムである。
【0082】
本件で有用な炭水化物賦形剤には、単糖類及び多糖類が含まれる。代表的な単糖には、デキストロース(無水及び一水和物;グルコースやグルコース一水和物とも呼ばれる)、ガラクトース、D−マンノース、ソルボース等が含まれる。代表的な二糖には、ラクトース、マルトース、スクロース、トレハロース等が含まれる。代表的な三糖にはラフフモース等が含まれる。デキストラン、マルトデキストリン、及び2−ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンなどのシクロデキストリンを含むその他の炭水化物賦形剤を所望に応じて使用可能である。代表的な糖アルコールにはマンニトール、ソルビトール等が含まれる。好ましい糖アルコールはマンニトールである。好ましい炭水化物はマンニトール、ラクトース、マルトデキストリン及びトレハロースである。
【0083】
適切なアミノ酸賦形剤には、標準的な製薬処理技術の下で粉末を形成するいずれかの天然由来のアミノ酸が含まれており、また非極性(疎水性)アミノ酸と極性(非荷電、正荷電及び負荷電)アミノ酸が含まれている。そのようなアミノ酸は医薬品グレードであり、米国食品医薬品局による、一般に安全と認められる(GRAS)ものである。非極性アミノ酸の代表的な例としては、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン及びバリンが含まれる。極性の非荷電アミノ酸の代表的な例には、システイン、グリシン、グルタミン、セリン、スレオニン及びチロシンが含まれる。極性の正荷電のアミノ酸の代表的な例には、アルギニン、ヒスチジン及びリジンが含まれる。負荷電のアミノ酸の代表的な例には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれる。好ましいアミノ酸はロイシンである。
【0084】
一つの態様において、呼吸可能な複数の乾燥粒子が1種以上の賦形剤のうちの一つとして含むロイシンの量は約1%から約9%、約2%から約9%、約3%から約9%、約4%から約9%、約5%から約9%、約1%から約8%、約2%から約8%、約3%から約8%、約4%から約8%、約5%から約8%、約1%から約7%、約2%から約7%、約3%から約7%、約4%から約7%、約5%から約7%、約1%から約6%、約2%から約6%、約3%から約6%、約1%から約5%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約9%又は約10%である。他の態様では、呼吸可能な複数の乾燥粒子は1種以上の賦形剤のうちの一つとして10%以上の量のロイシンを含んでいる。
【0085】
本明細書に記載の乾燥粒子は、1)結晶性粒子形態の抗真菌剤、2)安定剤、及び任意に3)1種以上の賦形剤を含む。ある態様において、複数の乾燥粒子は一価又は二価の金属カチオン塩である第1賦形剤、及びアミノ酸、炭水化物又は糖アルコールである第2賦形剤を含む。例えば、第1賦形剤はナトリウム塩またはマグネシウム塩であり、第2賦形剤はアミノ酸(ロイシンのようなもの)とすることができる。より具体的な実施例において、第1賦形剤は硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム又は乳酸マグネシウムであり、第2賦形剤はロイシンとし得る。さらにより具体的には、第1賦形剤は硫酸ナトリウムであり、第2賦形剤はロイシンとすることができる。他の実施例において、第1賦形剤はナトリウム塩又はマグネシウム塩であり、第2賦形剤は糖アルコール(マンニトールのようなもの)であり得る。より具体的な実施例において、第1賦形剤は硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム又は乳酸マグネシウムであり、第2賦形剤はマンニトールであり得る。他の実施例において、第1賦形剤はナトリウム塩又はマグネシウム塩であり、第2賦形剤は炭水化物(マルトデキストリンのようなもの)であり得る。その他の実施例において、複数の乾燥粒子は結晶性粒子形態の抗菌剤、安定剤及び1種の賦形剤、例えばナトリウム塩、マグネシウム塩又はアミノ酸(例えばロイシン)を含む。
【0086】
一つの態様において、抗真菌剤がポリエン抗真菌剤(例えばアムフォテリシンB)ではないことを条件として、乾燥粉末製剤は、1)結晶性粒子形態の抗真菌剤、2)安定剤、及び3)1種以上の賦形剤を含む呼吸可能な複数の乾燥粒子を含む。
【0087】
一つの好ましい態様において、乾燥粉末製剤は、1)結晶性粒子形態のトリアゾール抗真菌剤、2)安定剤、及び3)1種以上の賦形剤を含む呼吸可能な複数の乾燥粒子を含んでいる。
【0088】
一つの態様において、乾燥粉末製剤は、以下のものを含む呼吸可能な複数の乾燥粒子を含んでいる。
【0089】
(i)約50%から約80%の結晶性粒子形態のトリアゾール抗真菌剤、約4%から約40%の安定剤及び約1%から約9%の1種以上の賦形剤;
(ii)約45%から約85%の結晶性粒子形態のトリアゾール抗真菌剤、約3%から約15%の安定剤、約3%から約50%のナトリウム塩、及び約1%から約9%の1種以上のアミノ酸;
(iii)約45%から約85%の結晶性粒子形態のトリアゾール抗真菌剤、約3%から約15%の安定剤、約3%から約50%の硫酸ナトリウム及び約1%から約9%のロイシン;
(iv)約45%から約85%の結晶性粒子形態のトリアゾール抗真菌剤、約3%から約15%の安定剤、約3%から約50%のナトリウム塩及び約1%から約8%の1種以上のアミノ酸;または
(v)約45%から約85%の結晶性粒子形態のトリアゾール抗真菌剤、約3%から約15%の安定剤、約3%から約50%の硫酸ナトリウム及び約1%から約9%のロイシン;
ここで全てのパーセンテージは重量パーセントであり、全ての製剤は乾燥ベースで合計100%になる。
【0090】
特に好ましい態様において、乾燥粉末製剤は1)結晶性粒子形態のトリアゾール、2)安定剤、及び3)1種以上の賦形剤を含む呼吸可能な複数の乾燥粒子を含んでいる。この特に好ましい形態においては、乾燥粉末製剤はラクトースを含まない。この特に好ましい実施形態の特定の処方は以下に示す。以下の表1において、これらの実施例は、イトラコナゾールサブ粒子とも呼ぶ、特定のイトラコナゾール結晶寸法である結晶性粒子形態であるイトラコナゾールについてさらに特定している。
【0091】
一つの態様において、乾燥粉末製剤は50%のイトラコナゾール、35%の硫酸ナトリウム、10%のロイシン及び5%のポリソルベート80を含む。
【0092】
一つの態様において、乾燥粉末製剤は50%のイトラコナゾール、37%の硫酸ナトリウム、8%のロイシン及び5%のポリソルベート80を含む。
【0093】
他の態様において、乾燥粉末製剤は60%のイトラコナゾール、26%の硫酸ナトリウム、8%のロイシン及び6%のポリソルベート80を含む。
【0094】
他の態様において、乾燥粉末製剤は70%のイトラコナゾール、15%のナトリウム、8%のロイシン及び7%のポリソルベート80を含む。
【0095】
他の態様において、乾燥粉末製剤は75%のイトラコナゾール、9.5%の硫酸ナトリウム、8%のロイシン及び7.5%のポリソルベート80を含む。
【0096】
他の態様において、乾燥粉末製剤は80%のイトラコナゾール、4%の硫酸ナトリウム、8%のロイシン及び8%のポリソルベート80を含む。
【0097】
他の態様において、乾燥粉末製剤は80%のイトラコナゾール、10%の硫酸ナトリウム、2%のロイシン及び8%のポリソルベート80を含む。
【0098】
他の態様において、乾燥粉末製剤は80%のイトラコナゾール、11%の硫酸ナトリウム、1%のロイシン及び8%のポリソルベート80を含む。
【0099】
一つの態様において、乾燥粉末製剤は50%のイトラコナゾール、35%の塩化ナトリウム、10%のロイシン及び5%のポリソルベート80を含む。
【0100】
一つの態様において、乾燥粉末製剤は50%のイトラコナゾール、37%の塩化ナトリウム、8%のロイシン及び5%のポリソルベート80を含む。
【0101】
他の態様において、乾燥粉末製剤は60%のイトラコナゾール、26%の塩化ナトリウム、8%のロイシン及び6%のポリソルベート80を含む。
【0102】
他の態様において、乾燥粉末製剤は70%のイトラコナゾール、15%の塩化ナトリウム、8%のロイシン及び7%のポリソルベート80を含む。
【0103】
他の態様において、乾燥粉末製剤は75%のイトラコナゾール、9.5%の塩化ナトリウム、8%のロイシン及び7.5%のポリソルベート80を含む。
【0104】
他の態様において、乾燥粉末製剤は80%のイトラコナゾール、4%の塩化ナトリウム、2%のロイシン及び8%のポリソルベート80を含む。
【0105】
他の態様において、乾燥粉末製剤は80%のイトラコナゾール、10%の塩化ナトリウム、2%のロイシン及び8%のポリソルベート80を含む。
【0106】
他の態様において、乾燥粉末製剤は80%のイトラコナゾール、11%の塩化ナトリウム、1%のロイシン及び8%のポリソルベート80を含む。
【0107】
乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は好ましくは小さく、質量密度が高く(mass dense)、且つ分散性である。体積中位幾何学径(VMGD)を測定するために、例えばSpraytecシステム(粒子寸法分析機器、Malvern Instruments)及びHELOS/RODOSシステム(乾式分配ユニットを備えたレーザー回折センサ、Sympatec GmbH)が使用できる。呼吸可能な複数の乾燥粒子は、約10ミクロン以下、約5ミクロン以下、約4μm以下、約3μm以下、約1μmから約μm、約1μmから約μm、約1.5μmから約3.5μm、約2μmから約5μm、約2μmから約4μm又は約2μmから約3μmの、HELOS/RODOSシステムを使用して、最大オリフィスリング圧力で、1.0バールの分散圧力設定(レギュレーター圧力とも言う)で、レーザー回折によって測定されるVMGDを有する。好ましくは、VMGDは約5ミクロン以下又は4μm以下である。一つの態様において、乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は約0.5ミクロン又は約1.0ミクロンの最小VMGDを有する。
【0108】
乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、好ましくは約2.0未満(例えば約0.9から約2未満)、約1.7以下(例えば約0.9から約1.7)、約1.5以下(例えば約0.9から約1.5)、約1.4以下(例えば約0.9から約1.4)又は約1.3以下(例えば約0.9から約1.3)の1バール/4バールの分散率及び/又は0.5バール/4バールの分散率を有しており、また好ましくは約1.5以下(例えば約1.0から約1.5)及び/又は約1.4以下(例えば、約1.0から約1.4)の1バール/4バール及び/又は0.5バール/4バールを有する。
【0109】
乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、好ましくは少なくとも約0.2g/cm3のタップ密度、少なくとも約0.25g/cm3、少なくとも約0.3g/cm3のタップ密度、少なくとも約0.35g/cm3、少なくとも0.4g/cm3のタップ密度を有する。例えば、乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、0.4g/cm3より大きいタップ密度(例えば0.4g/cm3より大きく約1.2g/cm3まで)、少なくとも約0.45g/cm3のタップ密度(例えば約0.45g/cm3から約1.2g/cm3)、少なくとも約0.5g/cm3(例えば約0.5g/cm3から約1.2g/cm3)、少なくとも約0.55g/cm3(例えば約0.55g/cm3から約1.2g/cm3)、少なくとも約0.6g/cm3(例えば約0.6g/cm3から約1.2g/cm3)又は少なくとも約0.6g/cm3から約1.0g/cm3のタップ密度を有する。あるいは乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、好ましくは約0.01g/cm3から約0.5g/cm3、約0.05g/cm3から約0.5g/cm3、約0.1g/cm3から約0.5g/cm3、約0.1g/cm3から約0.4g/cm3又は約0.1g/cm3から約0.4g/cm3のタップ密度を有する。あるいは乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、約0.15g/cm3から約1.0g/cm3のタップ密度を有する。あるいは乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、約0.2g/cm3から約0.8g/cm3のタップ密度を有する。
【0110】
乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は少なくとも約0.1g/cm3又は少なくとも約0.8g/cm3の嵩密度を有する。例えば乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は約0.1g/cm3から約0.6g/cm3、約0.2g/cm3から約0.7g/cm3、約0.3g/cm3から約0.8g/cm3の嵩密度を有する。
【0111】
呼吸可能な複数の乾燥粒子と、乾燥粉末が呼吸可能な乾燥粉末である場合の乾燥粉末とは、好ましくは10ミクロン未満のMMAD、好ましくは5ミクロン以下又は4ミクロン以下のMMADを有する。一つの態様において、呼吸可能な乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、好ましくは約0.5ミクロン、又は約1.0ミクロンの最小MMADを有する。一つの態様において、呼吸可能な乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、好ましくは約2.0ミクロン、約3.0ミクロン又は約4.0ミクロンの最小MMADを有する。
【0112】
乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、少なくとも約35%、好ましくは少なくとも約45%、少なくとも約60%、約45%から約80%までの間、又は約60%から約80%までの間の総用量の約5.6ミクロン未満のFPF(FPF<5.6μm)を好ましくは有する。
【0113】
乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、約25%から約60%までの間、又は約40%から約60%までの間の総用量の約3.4ミクロン未満のFPF(FPF<3.4μm)を好ましくは有する。
【0114】
乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、好ましくは最大約15重量%、最大約10重量%、最大約5重量%、又は最大約1重量%又は約0.01重量%から1重量%の間の水及び/又は溶媒の総含有量を有するか、あるいは水又は他の溶媒を実質的に含んでいなくてもよい。
【0115】
乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、好ましくは低い吸入エネルギーで投与され得る。異なる吸入流量と容積における、異なる抵抗の吸入器からの粉末の分散を関連付けるために、吸入操作を実行するのに必要なエネルギーを計算することができる。吸入エネルギーは、式E=R22Vから計算することができ、ここでEはジュール単位の吸入エネルギー、Rは吸入器抵抗(kPa1/2/LPM)、QはL/min単位の定常流量(L/min)、VはL単位の吸入空気量である。
【0116】
乾燥粉末吸入器のFDAガイダンス文書、及び様々なDPIを通じて成人平均2.2Lの吸入量を発見したTiddens 他の研究(Journal of Aerosol Med, 19(4), p.456-465, 2006)の両方に基づいて、2Lの吸入容積での2つの吸入器抵抗0.02及び0.055kPa1/2/LPMからの流量QのためにClarke他(Journal of Aerosol Med, 6(2), p.99-1 10, 1993)により測定された最大級気流量(PIFR)の値を使用することにより、健常成人集団は、快適な吸入の2.9ジュールから最大吸入の22ジュールまでの範囲の吸入エネルギーを達成することができると予測される。
【0117】
軽度、中等度及び重度の成人COPD患者は、それぞれ5.1から21ジュール、5.2から19ジュール及び2.3から18ジュールの最大吸入エネルギーを達成できると予測されている。これも、また吸入エネルギーの式に、測定された流量QのPIFR値を使用することに基づくものである。各グループで達成可能なPIFRは、吸い込まれている吸入器抵抗の関数である。Breeders 他の研究(Eur Respir J, 18, p.780-783, 2001)を利用して、それぞれの抵抗が0.021及び0.032kPa1/2/LPMの2台の乾燥粉末吸入器で達成可能な最大及び最小のPIFRを予測した。
【0118】
同様に、成人ぜんそく患者は、COPD集団と同じ仮定及びBreeders他によるPIFRデータに基づいて、7.4から21ジュールの最大吸入エネルギーを達成できると予測される。
【0119】
健常成人及び小児、COPD患者、5歳以上のぜんそく患者及びCF患者は、例えば、本発明の乾燥粉末製剤を分散し空にするのに十分な吸入エネルギーを提供することができる。
【0120】
乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、好ましくは、約5ジュール、約3.5ジュール、約2.4ジュール、約2ジュール、約1ジュール、約0.8ジュール、約0.5ジュール又は約0.3ジュールの総吸入エネルギーが適用されると仮定して、受動乾燥粉末吸入器からの、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%のCEPMのような高い放出容量により特徴付けられる。
【0121】
乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子を保持する容器(receptacle)は、約5mg、約7.5mg、約10mg、約15mg、約20mg又は約30mgを収納できる。一つの態様において、乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、以下の条件:30LPMの空気流量、10mgの総質量を含むサイズ3カプセルを使用して3秒間実行:の下で、毎分約0.036(kPa)1/2/リットル(sqrt(kPa)/liters)の抵抗を有する受動乾燥粉末吸入器から放出された場合、80%以上のCEPM及び5ミクロン以下のVMGDによって特徴付けられる。他の態様において、乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、以下の条件:20LPMの空気流量、10mgの総質量を含む寸法3カプセルを使用して3秒間実行:の下で、毎分約0.036kPa1/2/Lの抵抗を有する受動乾燥粉末吸入器から放出された場合、80%以上のCEPM及び5ミクロン以下のVMGDによって特徴付けられる。さらなる態様において、乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、以下の条件:15LPMの空気流量、10mgの総質量を含むサイズ3カプセルを使用して4秒間実行:の下で、毎分約0.036kPa1/2/Lの抵抗を有する受動乾燥粉末吸入器から放出された場合、80%以上のCEPM及び5ミクロン以下のVMGDによって特徴付けられる。
【0122】
乾燥粉末は単位用量容器を満たすことが可能であり、又は単位用量容器は少なくとも2%充填、少なくとも5%充填、少なくとも10%充填、少なくとも20%充填、少なくとも30%充填、少なくとも40%充填、少なくとも50%充填、少なくとも60%充填、少なくとも70%充填、少なくとも80%充填又は少なくとも90%充填とすることができる。
【0123】
単位用量容器はカプセル(例えばサイズ000,00,0E,0,1,2,3及び4であり、それぞれの容積容量は1.37ml、950μl、770μl、680μl、480μl、360μl、270μ1及び200μl)であり得る。カプセルは少なくとも2%充填、少なくとも5%充填、少なくとも10%充填、少なくとも20%充填、少なくとも30%充填、少なくとも40%充填又は少なくとも50%充填とすることができる。単位用量容器はブリスターであり得る。ブリスターは単一ブリスターとして、又は例えば7ブリスター、14ブリスター、28ブリスター又は30ブリスターのブリスターのセットの一部としてパッケージ化することができる。1つ以上のブリスターは好ましくは少なくとも30%充填、少なくとも30%充填、少なくとも50%充填又は少なくとも70%充填とすることができる。
【0124】
粉末であることの利点は、広い範囲の流量に亘って十分に分散し、比較的流量に依存しないことである。乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、幅広い患者の集団にシンプルに受動DPIを使用することを可能にする。
【0125】
特定の態様において、乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、複数の抗真菌サブ粒子とも呼ばれる結晶性粒子形態(例えば約80nmから約1750nmの抗真菌性サブ粒子寸法、例えば約60nmから約175nm、約150nmから約400nm又は約1200nmから約1750nmのような)の抗真菌剤、安定剤、及び任意に1種以上の賦形剤を含む。特定の乾燥粉末及び呼吸可能な複数の乾燥粒子は、以下の表1に示す配合を有する。本明細書に記載の乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、好ましくは;1)約10ミクロン以下、好ましくは約5ミクロン以下のHELOS/RODOSシステムを使用して計測された1バールにおけるVMGD;2)約1.5以下、約1.4以下又は約1.3以下の1バール/4バール分散性比及び/又は0.5バール/4バール分散性比;3)約10ミクロン以下、好ましくは約5ミクロン以下のMMAD;4)少なくとも約45%または少なくとも約60%の総用量のFPF<5.6μm;及び/又は5)少なくとも約25%又は少なくとも約40%の総用量のFPF<3.4μmによって特徴付けられる。所望に応じて、乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、約0.2g/cm3以上、約0.3g/cm3以上、約0.4g/cm3以上、約0.4g/cm3以上、約0.45g/cm3以上又は0.5g/cm3以上のタップ密度によってさらに特徴付けられる。
【0126】
【表1】
特定の態様において、製剤XIIは、57%の総用量の5ミクロン未満のFPFを有し、10.0mgの総乾燥粉末カプセル充填について2.8mgの5ミクロン未満の微粒子用量をもたらす。
【0127】
前の段落で特徴付けられた、何れかの範囲又は具体的に開示された配合により記述された乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、容器、例えばカプセル又はブリスターに充填されてもよい。
【0128】
容器がカプセルの場合、カプセルは例えばサイズ2またはサイズ3カプセルであり、好ましくはサイズ3カプセルである。カプセルの材料は、例えばゼラチン又はHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)とすることができ、好ましくはHPMCである。
【0129】
上に記述され特徴付けられた乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子は、乾燥粉末吸入器(DPI)に収納することができる。DPIはカプセルベースDPIやブリスターベースDPIでよく、好ましくはカプセルベースDPIである。より好ましくは、乾燥粉末吸入器は、RS01の乾燥粉末吸入器群(Plastiape S.p.A.、イタリア)から選択される。より好ましくは、乾燥粉末吸入器は、RS01 HR又はRS01 UHR2から選択される。最も好ましくは、乾燥粉末吸入器はRS01 HRである。
【0130】
本明細書に記載の方法において使用されうる例示的な製剤には以下が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0131】
【表1A】
[乾燥粉末及び乾燥粒子の調製方法]
呼吸可能な複数の乾燥粒子及び乾燥粉末は、乾燥粉末製剤が即時調合分散液となり得ないという条件で、あらゆる適切な方法を使用して調製可能である。乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子を調製する多くの適切な方法は、当該分野における従来の技術であり、シングル及びダブル乳化溶媒蒸発法、噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥、ミリング(例えばジェットミリング)、混合、溶媒抽出、溶媒蒸発、相分離、単純及び複合コアセルベーション(simple and complex coacervation)、界面重合、超臨界二酸化炭素(CO2)の使用を含む適切な方法、超音波結晶化、ナノ粒子凝集体形成及びこれらの組み合わせを含む他の適切な方法を含む。呼吸可能な複数の乾燥粒子は、当技術分野で知られているマイクロスフィア又はマイクロカプセルの製造方法を利用して製造できる。これらの方法は、所望の空気動力学特性(例えば空気動力学径及び幾何学径)を備えた呼吸可能な複数の乾燥粒子の形成を導く条件下で使用することができる。必要に応じて、寸法や密度などの所望の特性を備えた呼吸可能な複数の乾燥粒子を、篩い分け等の適切な方法を使用して選別することができる。
【0132】
寸法や密度等の所望の特性を備えた呼吸可能な複数の乾燥粒子を選別する適切な方法としては、湿式篩い分け、乾式篩い分け及び空気動力学的分級機(例えばサイクロン)が含まれる。
【0133】
呼吸可能な複数の乾燥粒子は、好ましくは、噴霧乾燥される。適切な噴霧乾燥技術は、例えばK. Masters in“Spray Drying Handbook”,John Wiley & Sons, New York (1984)により説明されている。一般に、噴霧乾燥の間、加熱された空気や窒素などの高熱ガスからの熱を利用して、連続的な液体供給物を噴霧することにより形成された液滴から溶媒を蒸発させる。加熱された空気を使用する場合、空気中の水分は使用に先立って少なくとも部分的に除去されている。窒素を使用する場合、窒素ガスを「乾燥」させることができ、これは余分な水蒸気がガスと結びつくことがないという意味である。所望に応じて、窒素または空気の水分レベルを、噴霧乾燥運転の開始前に「乾燥」窒素より上の固定値に設定することができる。所望に応じて、乾燥粒子を調製するために使用される噴霧乾燥装置又は例えばジェットミリング装置のような他の装置は、生成される際に呼吸可能な複数の乾燥粒子の粒子寸法を決定する直列幾何学粒子寸法分析計(inline geometric particle sizer)、及び/又は、生成される際に呼吸可能な複数の乾燥粒子の空気動力学的な直径を決定する直列空気動力学粒子寸法分析計(inline aerodynamic particle sizer)を含むことができる。
【0134】
噴霧乾燥の場合、適切な溶媒(例えば水性溶媒、有機溶媒、水性有機混合液又はエマルジョン)中で生成される乾燥粒子の成分を含む溶液、エマルジョン又は懸濁液を、噴霧装置を介して乾燥容器に供給する。例えばノズル又は回転噴霧器を使用して溶液又は懸濁液を乾燥容器に供給してもよい。ノズルは2流体ノズルとすることができ、内部ミキシング構成にも外部ミキシング構成にもすることができる。あるいは4又は24羽根車を有する回転噴霧器を使用してもよい。回転噴霧器又はノズルを装備できる適切な噴霧乾燥機の例としては、共にGEA Niro, Inc.(デンマーク)製のMobile Minor Spray Dryer やModel PSD-1、Biichi B-290 Mini Spray Dryer(BUCHI Labortechnik AG、フラヴィル、スイス)、ProCepT Formatrix R&D spray dryer(ProCepT nv, Zelzate、ベルギー)その他いくつかの噴霧乾燥機の選択肢が含まれる。実際の噴霧乾燥条件は、噴霧乾燥溶液又は懸濁液の組成、及び材料の流量を一つの原因として変化する。当業者は、噴霧乾燥される溶液、エマルジョン又は懸濁液の組成、所望の粒子特性、及び他の要因に基づいて、適切な条件を決定することができるだろう。一般に、噴霧乾燥機への入口温度は約90℃から300℃である。
【0135】
噴霧乾燥機の出口温度は、供給温度及び乾燥する材料の特性等の要因に応じて変わる。一般的には、出口温度は約50℃から約150℃である。所望に応じて、生成された呼吸可能な複数の乾燥粒子は、例えばふるいを使用した体積測定による寸法により分画でき、又は例えばサイクロンを利用した空気動力学径により分画でき、及び/又は当業者に知られている密度使用技術によってさらに分離できる。
【0136】
呼吸可能な複数の乾燥粒子を調製するために、一般的には、乾燥粉末の所望の成分(すなわち供給原料)を含むエマルジョン又は懸濁液が調製され、適切な条件下で噴霧乾燥される。好ましくは、供給原料中の溶解又は懸濁した固形分濃度は、少なくとも約約1g/L、少なくとも約2g/L、少なくとも約5g/L、少なくとも約10g/L、少なくとも約15g/L、少なくとも約20g/L、少なくとも約30g/L、少なくとも約40g/L、少なくとも約50g/L、少なくとも約60g/L、少なくとも約70g/L、少なくとも約80g/L、少なくとも約90g/L又は少なくとも約100g/Lである。供給原料は、適切な成分(例えば塩、賦形剤その他の有効成分)を適切な溶媒中に溶解、懸濁又は乳化することによって単一の溶液、懸濁液又はエマルジョンを調製することにより提供することができる。この溶液、エマルジョン又は懸濁液は、乾燥した及び/又は液体の成分のバルクミキシング(bulk mixing)、又は液体の成分の静止型ミキシング等の何れかの適切な方法を使用して調製され、調合物(combination)を形成することができる。例えば、親水性成分(例えば水溶液)及び疎水性成分(例えば有機溶液)は、静止型ミキサーを使用して調合することにより調合物を形成することができる。次に調合物を噴霧して液滴を生成し、これを乾燥させて呼吸可能な複数の乾燥粒子を形成することができる。好ましくは、噴霧ステップは成分が静止型ミキサー内で調合された直後に実行される。あるいは噴霧ステップはバルクミキシング溶液で実行される。
【0137】
供給原料は有機溶媒、水性溶媒又はこれらの混合液等の粒子形態の抗真菌剤が低い溶解度を有する何れかの溶媒を使用して調製することができる。利用可能な適切な有機溶媒には、例えばエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールその他等のアルコールが含まれるが、これらに限定すれるものではない。その他の有機溶媒としては、これらに限定するものではないが、テトラヒドロフラン(THF)、パーフルオロカーボン、ジクロロメタン、クロロホルム、エーテル、酢酸エチル、メチルtert−ブチルエーテル(methyl tert-butyl ether)その他が含まれる。使用可能な共溶媒には水性溶媒と、例えば、これらに限定するものではないが、上記の有機溶媒のような有機溶媒が含まれる。水性溶媒は水と緩衝液を含む。好ましい溶媒は水である。様々な方法(例えば静止型ミキシングやバルクミキシング)を使用して溶質と溶媒をミキシングし、当技術分野で知られている供給原料を調製することができる。所望に応じて、他の適切なミキシング方法を使用してもよい。例えば、ミキシングを引き起こすか促進する付加的成分を供給原料中に含めることができる。例えば、二酸化炭素は泡立ち若しくは発泡を生じ、よって溶媒と溶質の物理的なミキシングを促進するのに役立つことができる。
【0138】
供給原料又は供給原料の成分は、何れかの所望のpH、粘土または他の特性を有することができる。所望に応じて、pH緩衝液を溶媒若しくは共溶媒又は形成された混合物に添加することができる。一般的に、混合物のpHは約3から約8の範囲である。
【0139】
乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子を製造し、次に、例えばろ過やサイクロンによる遠心分離によって分離し、事前に選択した粒子寸法分布を有する粒子サンプルを提供することができる。例えば、サンプル中の約30%を超える、約40%を超える、約50%を超える、約60%を超える、約70%を超える、約80%を超える又は約90%を超える呼吸可能な複数の乾燥粒子を、選択した範囲内の直径を有するようにすることができる。呼吸可能な複数の乾燥粒子の特定のパーセンテージが含まれる選択された範囲は、例えば約0.1から約3ミクロン間のVMGDのような、本明細書に記載の粒子寸法範囲の何れかであり得る。
【0140】
懸濁液は、ナノ結晶性薬物を含む乾燥粉末を製造するための中間体と同様のナノ懸濁液でもよい。
【0141】
乾燥粉末は、硫酸ナトリウムやロイシンのようなマトリックス材料中に埋め込まれた薬物であってもよい。任意に、乾燥粉末が小さくて密度が高く且つ分散性になるように、乾燥粉末を噴霧乾燥してもよい。
【0142】
乾燥粉末は、他の複数の担体又は賦形剤粒子(「ニート粉末」と呼ばれる)を含むことのない、本明細書に記載された呼吸可能な複数の乾燥粒子のみから構成することができる。所望に応じて、乾燥粉末は本明細書に記載された呼吸可能な複数の乾燥粒子と、例えば10ミクロンを超える、20ミクロンから500ミクロン、好ましくは25ミクロンから250ミクロンの間の複数のラクトース担体粒子のようなものと、その他の複数の担体又は賦形剤粒子とのブレンドを含むことができる。
【0143】
好ましい実施例において、乾燥粉末は複数の担体粒子を含まない。一つの態様において、複数の結晶性薬物粒子は賦形剤及び/又は安定剤を含むマトリックスに埋め込まれている。乾燥粉末は、均一な含有量の呼吸可能な複数の乾燥粒子を含むことができ、各粒子は結晶性薬物を含んでいる。従って、本明細書で使用する場合、「均一な含有量」は、いずれの呼吸可能な粒子も、結晶性粒子形態の抗真菌剤、安定剤及び賦形剤を、ある量含んでいることを意味する。
【0144】
乾燥粉末は、少なくとも98%、少なくとも99%又は実質的に全ての複数の粒子(重量で)が抗真菌剤を含む呼吸可能な複数の乾燥粒子を含むことが可能である。
【0145】
乾燥粉末は、1種以上の賦形剤を含むマトリックス全体に分布する複数の結晶性薬物粒子を含むことができる。賦形剤は、いくつもの塩、糖類、脂質、アミノ酸、界面活性剤、ポリマー又は医薬用途に適合した他の成分を含むことができる。好ましい賦形剤には、硫酸ナトリウムとロイシンが含まれる。乾燥粉末は典型的には、当業者によく知られたいくつもの技術(例えばウェットミリングやジェットミリング)を使用して粒子寸法を調節するために、結晶性薬物を最初に処理することによって製造される。結晶性薬物は、安定剤を含む貧溶媒中で処理され、懸濁液を形成する。好ましい安定剤には、ポリソルベート(Tween)80とオレイン酸が含まれる。次に、結晶性薬物の安定化懸濁液は、1種以上の付加的な賦形剤と共に噴霧乾燥される。得られた乾燥粉末は、賦形剤マトリックス全体に分散した結晶性薬物を含み、各乾燥粒子は均質な組成を有している。
【0146】
特定の実施形態において、本発明の乾燥粉末は、通常は微小結晶寸法(micro- crystalline size)の範囲内で得られる結晶性薬物(例えばイトラコナゾール)から出発することによって製造される。微小結晶薬物の粒子寸法は、限定するものではないが、当業者によく知られている高圧均質化、高剪断均質化、ジェットミリング、ピンミリング、微細流動またはウェットミリング(ボールミリング、パールミリング又はビーズミリングとしても知られている)を含むいくつもの技術の何れかを使用してナノ結晶寸法に縮小される。ウェットミリングは、ナノメートル(<1μm)寸法の領域を含む、幅広い粒子寸法分布を達成できるため、多くの場合に好ましい。サブミクロン寸法の領域で特に重要になるのは、界面活性剤(例えばTween80)等の表面安定化成分の使用である。界面活性剤は、ミリング中に生成された多数の高エネルギー表面を隔離して凝集や沈降を阻止するために、ミリング中における複数のサブミクロン粒子と生成と、物理的に安定した懸濁液を形成することとを可能にする。このように、界面活性剤は複数の粒子全体の組成均一性を担保する、均一で安定した懸濁液の形成を可能にするので、界面活性剤の存在は、複数の均質な微粒子を噴霧乾燥するために重要である。界面活性剤の使用は、マイクロ懸濁液又はナノ懸濁液の形成を可能にする。界面活性剤を伴うと、複数のナノ結晶薬物(例えばITZ)粒子が貧溶媒中の安定したコロイド懸濁液中に懸濁する。薬物の貧溶媒は、水、又は水とアルコールまたはケトンのような他の混和性溶媒との組み合わせを、コロイド懸濁液の連続的な貧溶媒相として利用することができる。噴霧乾燥供給原料は、可溶性成分を所望の溶媒中に溶解し、続いて界面活性剤で安定化した結晶薬物ナノ懸濁液を得られた供給原料中に混合しつつ分散させることにより調製することができるが、このプロセスはこの特定の操作順序に限定されない。
【0147】
乾燥粉末及び/又は呼吸可能な複数の乾燥粒子の分析方法は以下の例証セクションで見られる。
【0148】
[液体製剤]
加圧式定量吸入器(pMDI)又はソフトミスト吸入器(SMI)を使って送達するための液体製剤は、いずれかの適切な方法を使用して調製することができる。例えば、pMDIと共に使用するためには、供給原料は、任意にポリソルベート80のような安定剤で安定化し、結晶性粒子形態のイトラコナゾールがHFA推進剤やCFC推進剤のような推進剤中に懸濁した加圧キャニスターの内部で調製することができる。
【0149】
次に、加圧された懸濁液はpMDIを作動させることにより患者の気道内に送達されうる。表2は、pMDIの使用による結晶性粒子形態のイトラコナゾールの送達のための様々な実施形態を含む。ナノ粒子固形分濃度は、約5%,約10%,約15%,約20%,約25%,約30%,約35%,約40%又は約50%から変わり得る。pMDIの用量体積(dose volume)は、約20uLから約110uLまで変わりうる。用量体積中のイトラコナゾールの量は約15%,20%,25%,30%又は40%でもよい。体積の残りの部分は、推進剤及び任意の界面活性剤を含んでいてもよい。pMDI送達効率は約15%,20%,25%,30%又は40%であり得る。pMDI中のイトラコナゾールの名目用量は、約0.50mgから約12mgまで変わりうる。例えば、名目用量は、約2mg,約3mg,約4mg,約5mg,約6mg,約7mg,約8mg,約9mg,約10mg又は約12mgであり得る。計算された送達用量は、約0.1mgから約5mgの範囲としうる。
【0150】
【表2】
SMIと共に使用するためには、例えば、イトラコナゾールが難溶性であり、ポリソルベート80のような安定剤で安定化した水のような溶媒中に、結晶粒子形態のイトラコナゾールが懸濁された供給原料を調製することができる。懸濁液は、装置内に装填されたカートリッジの内部の折り畳み可能なバッグ中に貯蔵できる。懸濁液の強制軽量体積(forced metered volume)が毛細管を通ってマイクロポンプ内に進む。SMIの作動時に、用量が患者に送達されうる。表3は、SMIの使用による結晶性粒子形態のイトラコナゾールの送達のための様々な実施例を含んでいる。ナノ粒子固形分濃度は、約5%,約10%,約15%,約20%,約25%,約30%,約35%,約40%又は約50%から変化する。SMIの用量体積は約10uLから約25uLまで変化する。製剤は結晶性粒子形態のイトラコナゾール及び界面活性剤を含んでいてもよい。SMI配達効率は約65%,70%,75%,80%又は85%である。pMDIにおけるイトラコナゾールの名目用量は、約1.0mgから約8mgまで変化しうる。例えば名目上の用量は、約2mg,約3mg,約4mg,約5mg,約6mg,約7mg又は約8mgでありうる。計算された送達用量は約0.5mgから約5mgの範囲であり得る。
【0151】
【表3】
[例証]
[実施例1 人のシミュレーション:経口吸入と経口液剤投与]
この人のシミュレーションには特定の仮定が作製された。ラットモデルを使用して推定された肺の全身吸収速度(Pulmonary systemic absorption rate)は、人のシミュレーションの入力として使用された。ラットモデルからの肺溶解度値(Pulmonary solubility value)は人のシミュレーションの開始点として使用された。Alberta Idealized Throat (MMADとGSD)データを使用した粒子寸法分布を、GastroPlus(商標)のICRP66モデルとともに使用して、人への沈着率を推定した。肺内に約56%、喉内に約12.6%の沈着を組み入れた実際の用量を使用した。薬物の残りのパーセンテージは、装置に保留されたものと仮定した。
【0152】
製剤XIIの単回投与薬物動態パラメータは、14日間の反復曝露でシミュレートされた。総肺濃度及び血漿濃度の両方における用量の比例的な増加は5mgから20mgと予測された。同様の半減期が肺と血漿との間で予測された。
【0153】
[表4:単回用量薬物動態パラメータ]
【0154】
【表4】
AUCinf:薬物投与時(時間0)から外挿された無限大までの濃度−時間曲線下の面積;AUCt:薬物投与時(時間0)から特定の時間(336時間)までの濃度−時間曲線下の面積;Cmax:観察された最大薬物濃度;DNCmax:用量が名目化されたCmax;tl/2:半減期;Tmax:観察された最大濃度までの時間。
【0155】
血漿及び肺内における用量の比例的増加は、複数回の用量の後と予測される。投与の7日後、モデルは肺内の蓄積、及び血漿におけるより大きな蓄積を予測した。人の予測に基づき、その後の投与に伴って、肺胞間質領域内に未溶解の薬物がいくらか蓄積することが予想された。経口液剤投与後の血漿濃度は、5−又は20−mgのいずれの経口吸入用量レベルでの血漿濃度よりも高かった。しかしながら総肺濃度は経口吸入投与後の方が高かった。このように総肺:血漿比は、経口溶液投与と比較すると、経口吸入投与が有意に高かった。
【0156】
[表5:複数回用量薬物動態パラメータ]
【0157】
【表5】
AUC0-tは、単回投与の場合はAUC0-24
略語:AR:累積率;AUC0-24:0から24時間までの血漿濃度−時間曲線下の面積;AUCinf:薬物投与時(時間0)から無限大までの血漿中濃度−時間曲線下の面積;AUCt:薬物投与時(時間0)から特定の時間(単回投与で24時間、複数回投与で360時間)までの濃度−時間曲線下の面積;Cmax:観察された最大薬物濃度。
【0158】
表6は、製剤XIIを5又は20mgの用量で吸入(経口吸入)又は200mgの経口Sporanox(経口液剤)で単回投与した後のモデル化された人臨床データを示す。肺:血漿比は各用量の7日間に亘る肺内と血漿におけるAUCデータを比較している。これらの比は経口投与よりも吸入投与の方が相当に高くなっている。経口投与は治療的肺レベルを生じさせ得る肺レベルを達成する可能性はあるが、より多くの全身曝露のみならず、より多くの総用量の送達を必要とするだろう(おそらくは経口で200mgの場合と同じ肺への曝露が0.2mgの吸入で得られる)。
【0159】
[表6:経口対吸入単回投与(7日間に亘るAUC)]
【0160】
【表6】
表7は21日目の「定常状態」での24時間に亘る曝露を示す。吸入を通じた毎日の投与を、吸入による一日おき(EOD)の可能な投与と比較した。EOD投与オプションは毎日の用量の半分のように見えるので、計画に基づいた曝露の動態を洗練することが可能かも知れない。EOD投与を行っても、肺内の曝露は、毎日の200mg経口投与後に見られる曝露と比較して、有意に高い。
【0161】
[表7:経口対吸入定常状態]
【0162】
【表7】
略語;AUC0-24:0−24時間の血漿濃度−時間曲線下の面積
時間;EOD:一日おき;QD:一日一回
図1A及び1Bは、5mgの用量における3種の抗真菌製剤の動態を示す。左側(図1A)のグラフは、通常の臨床的Sporanoxによる1日2回投与計画に対する一日一回の製剤XIX又は製剤XII投与の血漿曝露を示す。極めて明白に、吸入用量は遙かに低い全身曝露を生じ、製剤XII製剤は、最終的には製剤XIXと同様のトラフ曝露レベルに達するが、日内変動が少なく、Cmaxが遙かに低くなる。
【0163】
右側(図1B)は、同じ用量と計画での肺への曝露であり、破線はアスペルギルスMIC(〜500ng/g又はng/mL)に近似する。経口投与では、肺のレベルはMICを上回るが、1日2回投与の間の短期間のみであり、曝露期間の大部分は「有効」レベルを下回っている。肺内における非常に類似した曝露プロファイルが5mgの製剤XIX及びSporanoxで見られた。しかし曝露プロファイルは、5mgの製剤XIIの最低用量でさえ、1日目でも、24時間全体に亘り、そして投与した7日間に亘り、MIC及びSporanoxを超える肺曝露を生じた。
【0164】
トリアゾール抗真菌剤の効能はAUC/MICに基づいており、これは総曝露の量及び時間の両方の観点から、MICを超える曝露が有効性を決定する重要な要因であることを意味する。明らかに製剤XII製剤は製剤XIX製剤又は経口Sporanoxよりもはるかに効能を助成する理論的曝露を達成し、すべてにおいて全身曝露が大幅に低減する。
【0165】
図2A及び図2Bは、20mgの用量における3種の抗真菌剤の動態を示す。結果及び解釈は、より高い用量が投与されて対応する肺及び血漿の曝露が吸入用量のために増加したことを除き、図1A及び図1Bについて上述した5mgの吸入用量と同様である。高い用量の使用により、製剤XIXは24時間の期間に亘りMICを超える肺曝露を達成し、且つSporanoxよりも高い肺曝露を達成する。逆に、血漿曝露はSporanoxのそれを大幅に下回る。製剤XIIの20mgの曝露は、5mgの用量よりも高い肺曝露を生じ、時間経過を通じて一貫してMIC及びSporanoxの曝露を上回っている。
【0166】
[実施例2 フェーズ1/lb:安全性−忍容性(Tolerability)の研究]
健康なボランティアとぜんそく患者における安全性、忍容性及びPKの研究は、経口Sporanoxに対する肺及び血漿のPKの有利な点を強調している。研究のパート1では、製剤XIIの単回で漸増用量(5mg、10mg、25mg及び35mg)が健康なボランティア(n=6/コホート(cohort))に投与される。研究のパート2では、製剤XIIの複数回の漸増用量(10mg、20mg)が健康なボランティア(n=6/コホート)に投与され、オプションで3番目のコホートは35mgまでの用量を受ける。製剤XIIの安全性及び忍容性は、経口Sporanoxより5倍以上高い肺曝露、且つ経口Sporanoxで観察されるよりも5倍以上低いイトラコナゾール血漿レベルを提供すると予想される用量において、14日間までの製剤XIIの投与中に評価される。
【0167】
研究のパート3は、クロスオーバーデザインにおいてぜんそく患者(n=16)に単回用量として投与された製剤XII又は経口Sporanoxの安全性と忍容性を評価する。第1期に200gの経口Sporanoxを投与された患者は、第2期に20mg用量の製剤XIIを投与され、一方第1期に20mgの製剤XIIを投与された患者は、第2期に200mgの経口投与のSporanoxを投与される。喀痰及び血漿中のイトラコナゾールレベルを測定し、肺及び血漿の曝露を評価した。この研究は、製剤XIIの肺曝露が、A. fumigatusの最小静真菌濃度レベルよりも高く、経口Sporanoxで達成されたよりも高い肺濃度を生じることを確証する。製剤XIIの投与後のイトラコナゾールの血漿曝露は、経口Sporanox投与で観察されたものより5倍以上低かった。
【0168】
[実施例3 吸入イトラコナゾール製剤XIX及びXIIに吸入曝露した2匹のラット及び3匹の犬の研究からの気道所見の比較]
研究は、2つの試験施設で、複数のラット及び複数の犬に噴霧乾燥を使用して調剤された吸入乾燥粉末イトラコナゾールを使用して行われた。全ての研究には同じ医薬品有効成分が含まれていたが、場合によっては製剤の賦形剤、特に、複数の粒子中のイトラコナゾールの物理化学的特性が異なった。研究及びその結果は以下に要約されている。
【0169】
[ラットの研究]
[複数のラットへの製剤XIXの28日間吸入研究、続く28日間の回復期]
空気、プラセボ又は製剤XIXとして調剤されたイトラコナゾールを、5,20又は44mg/kg/日の目標用量において、イトラコナゾールは製剤濃度の50%で、28日間、ラットに曝露した。製剤CICに関連する顕微鏡所見は、肺と気管支、喉頭、及び気管分岐部内に5mg/kg/日を超えて(>5 mg/kg/day)、及び気管内に20mg/kg/日を超えて(>20 mg/kg/day)存在していた。肺と気管支内では、5mg/kg/日を超える(>5 mg/kg/day)イトラコナゾール用量で、最小(minimal)から軽微(slight)の肉芽腫性炎症が存在した。肉芽腫性炎症は、マクロファージのクラスターと、しばしば内腔中の粘膜の乳頭状の突出(papillary outfolding)を形成している細気管支粘膜内の多核細胞とを特徴としていた。マクロファージと多核巨細胞はしばしば細胞質内の針状突起(intracytoplasmic spicule)を有していた。肺胞マクロファージ集合体は、20mg/kg/日を超えて(>20 mg/kg/day)投与された複数のラット内で、バックグラウンド(background)を超える発生率で肺内にも存在した。これらのマクロファージは空胞化し、細胞質を泡状の外観にした。
【0170】
喉頭と気管分岐部では、5mg/kg/日を超える(>5 mg/kg/day)イトラコナゾール用量で、最小から軽微の肉芽腫性炎症が見られた。肺内と同様、この炎症はマクロファージのクラスターと、粘膜中に細胞質内の針状突起を伴う多核巨細胞とを特徴とした。同様に最小の肉芽腫性炎症が、20mg/kg/日を超えて(>20 mg/kg/day)で投与された複数のラットの気管粘膜に存在した。
【0171】
28日間の回復期の終了時に、44mg/kg/日で投与された複数のラット中に細気管支肉芽腫性炎症がまだ存在していた。このように、この用量での細気管支所見は回復期中に消散しなかった。肉芽腫性炎症は、回復期の終了時に喉頭、気管分岐部又は気管の中に観察されなかった。これは、回復期の間にこれらの組織が完全に消散したことを示唆している。要約すると、製剤CICに関連する主要な所見は、粘膜マクロファージと、細胞質内の針状突起を伴う多核巨細胞とにより特徴付けられた肉芽腫性炎症であった。5mg/kg/日を超える(>5 mg/kg/day)イトラコナゾールが投与された複数のラット中で発生したこの所見は、喉頭から細気管支までの誘導気道全体で発生し、44mg/kg/日で投与された複数のラット中で回復期の間に細気管支で消散されなかったため(他の用量群は回復期の終了時に検査していない)、全ての用量で有害であると見なされた。泡状の細胞質を備えた肺胞マクロファージの集合体も、最終犠牲(terminal sacrifice)において20mg/kg/日を超えて(>20 mg/kg/day)投与された複数のラット中のバックグラウンドを超える発生率で肺内に存在していた。
【0172】
[ラット内の製剤XII又は製剤XVを用いた28日間の吸入研究]
5,15又は40mg/kg/日の目標用量で製剤XIIとして製剤化したイトラコナゾールに、又は5あるいは15mg/kg/日の用量で製剤XVに、28日間ラットを曝露した。どちらの場合もイトラコナゾールは総製剤濃度の50%だった。さらに、複数のラットの1つのグループに、製剤XIIとして15mg/kgのイトラコナゾールを3日ごとに投与した。製剤XII及び製剤XVに関連する泡状マクロファージの最小から軽度(mild)の蓄積が15mg/kg/日で肺内に存在し、40mg/kg/日で製剤XIIを投与されたラット内でより高い発生率及び重症度を示した。3日ごとに投与された5mg/kg/日の製剤XIIあるいは15mg/kg/日の製剤XII又は製剤XVでは、肺内に泡状マクロファージの最小の蓄積があったようだが、空気又はプラセボの対照ラットを欠くので、これらの投与で試験項目に関連する影響があったかどうかを判断することはできなかった。試験項目に関連し有害と考えられる軽度の亜急性炎症が、製剤XIIを40mg/kg/日で投与された複数のラット中に存在した。製剤XII又は製剤XVの15mg/kg/日で投与された複数のラット中で発生した最小の亜急性炎症が試験項目に関連していたかどうかは明らかではなかった。
【0173】
同等の用量レベルで製剤XIIと投与された複数の押すラットと製剤XVを投与された複数の雄ラットの間で、マクロファージ蓄積又は亜急性炎症の発生率及び重症度に明確な差はなかった。製剤XIIと比較して、製剤XVを15mg/kg/日で投与された複数の雌ラットにおいて、これらの所見のより高い重症度及び/又は発生率の示唆があった。
【0174】
[犬の研究]
[14日間の回復期を伴う複数の犬への製剤XIXの7日間吸入研究]
5、10又は20mg/kg/日の目標用量で7日間、製剤XIXとして調剤されたイトラコナゾールに複数の犬を曝露した。イトラコナゾール製剤の濃度は全体の50%だった。5mg/kg/日で投与された複数の犬には、14日間の回復群が含まれた。有害と考えられる最小から軽度の製剤CIC関連の急性炎症は、20mg/kg/日で投与された両方の犬(雄1匹、雌1匹)に存在し、最小の急性炎症は10mg/kg/日で投与された1匹の雌犬に存在した。急性炎症は、好中球、マクロファージ及び細胞質内に針状突起を含むように見える(研究後のスライドレビューで観察された)少数の多核巨細胞の存在によって特徴付けられた。このように急性炎症は肉芽腫性炎症の特徴を示した。終末又は回復犠牲時に、5mg/kg/日で投与された複数の犬には、試験項目に関連する所見はなかった。
【0175】
[28日間の回復期を伴う複数の犬への製剤XIXの28日間の吸入研究]
空気、プラセボ又は5、10又は20mg/kg/日の目標用量で調剤されたイトラコナゾールに28日間、犬を曝露した。イトラコナゾール製剤の濃度は全体の50%だった。製剤XIXに関連した最小から軽度の細気管支/細気管支周囲の肉芽腫性炎症が、5mg/kg/日を超える(>5 mg/kg/day)複数の雄と複数の雌に存在した。この所見の発生率と重症度は5mg/kg/日を超える(>5 mg/kg/day)複数の雄と20mg/kg/日の複数の雌の用量で増加した。肉芽腫性炎症は、終末細気管支及び呼吸細気管支の中及び周辺にあり、マクロファージの集合体と、豊富な好酸球性細胞質を伴う多核巨細胞によって特徴付けられた。10mg/kg/日を超えて(>10 mg/kg/day)発生した軽度の肉芽腫性炎症は有害であると見なされた。肉芽腫性炎症は回復期の間に完全に消散した。
【0176】
[複数の犬への製剤XII及び製剤XVの14日間の吸入研究]
プラセボ、あるいは2,6又は20mg/kg/日の目標用量で製剤XIIとして調剤され、若しくは6又は20mg/kg/日の目標用量で製剤XVとして調剤されたイトラコナゾールに、14日間複数の犬を曝露した。さらに、複数の犬の1グループには、3日ごとに製剤XIIとして6mg/kg/日の目標用量を投与した。イトラコナゾール製剤の濃度は全ての場合で全体の50%だった。試験項目に関連する気道所見は、20mg/kg/日の製剤XII又は製剤XVを投与された複数の犬に存在した。試験項目に関連する、軽度の、肺胞内の混合細胞炎症(intra-alveolar, mixed cell inflammation)が、20mg/kg/日の製剤XIIを投与された全ての犬に存在した。試験項目に関連する、軽度の気管分岐部(carinal)及び気管の粘膜のリンパ球線炎症(lymphocytic inflammation)が、20mg/kg/日の製剤XII−02Cを投与された3匹の内2匹に存在した。さらに、20mg/kg/日の製剤XVを投与された3匹の犬の内1匹に、最小の肺胞内混合細胞炎症が存在した。従って所見の箇所は製剤XIIと製剤XVとの間で多少異なっていた。明確な試験項目に関連する所見が発生した用量レベル(20mg/kg/日)は両方の試験項目で同じだったが、変動性は製剤XIIと製剤XVとの比較を複雑なものにしている。軽度の混合細胞炎症は、3日ごとに6mg/kg/日の製剤XIIを投与された3匹の犬の内1匹及び6mg/kg/日の製剤XVを投与された3匹の犬の内の1匹に存在した。
【0177】
[ラット研究における製剤XIXの、製剤XII及び製剤XVに対する比較]
複数のラットの気道における製剤CIC関連の所見は、製剤XII及び製剤XVによって誘発されたものとは異なる特徴を有していた。さらに、製剤CIC関連の所見は、気道内により多くの領域(複数の組織)を含んでおり、より低い用量で有害である可能性があった。製剤XII又は製剤XVを用いたラット研究では、回復が評価されなかった。しかしながら、他の吸入物質の経験に基づけば、製剤XIXに曝露した後に存在した細気管支粘膜内の肉芽腫性炎症は、製剤XII又は製剤XVに含まれる肺胞マクロファージの増加又は亜急性炎症よりも緩慢に消散するのかも知れない。
【0178】
マクロファージ及び多核巨細胞からなる肉芽腫又は肉芽腫性炎症は、吸い込んだ異物を含む細胞質リソソーム内で容易に可溶化できない物質に対する普通の反応である。製剤XIXの吸入後の気道における複数レベルでの粘膜内のこれら細胞の存在は、試験項目が影響を受け、a)上皮に浸透してマクロファージより貪食された、又はb)マクロファーにより貪食された間質において溶解し、上皮に浸透し、再結晶化した、又はb)マクロファージにより貪食された間質で溶解し、上皮に浸透し、再結晶化したことを示唆している。回復期の間の完全な消散の欠如は、難溶性の形態の材料にしては予想外なことではない。
【0179】
40mg/kg/日の曝露で投与された製剤XIIは、軽度の亜急性炎症を生じさせ、これは試験項目に関連し、有害と見なされた。この亜急性炎症は肺胞実質組織(alveolar parenchyma)内で発生し、製剤XIX曝露で発生した肉芽腫性粘膜炎症とは形態学的に異なっていた。製剤XII又は製剤XVを15mg/kg/日投与した複数のラットで発生した最小の亜急性炎症が、試験項目に関連していたかどうかは明確ではなかった。製剤XIIの製剤XVとの比較においては、これらの試験項目を備えて同等の用量レベルで投与された複数の雌ラットの間で、マクロファージ蓄積又は亜急性炎症の発生率及び重症度についての明確な差はなかった。製剤XIIと比較して、製剤XVを15mg/kg/日で投与した複数の雌ラットにおいて、これらの所見のより高い重症度及び/又は発生率の示唆があった。製剤XII又は製剤XVを用いた研究では、回復は調査されなかった。しかしながら、最小から軽度の亜急性炎症及び最小から軽度のマクロファージ蓄積は、可逆的な所見と見なされ、通常、28日間の回復期内に消散すると予想される。
【0180】
製剤XII又は製剤XVの研究には空気またはプラセボの対照(placebo controls)が含まれていなかったので、これらのラット研究間で肺胞マクロファージ蓄積を比較するのは困難である。複数の異なる試験施設における複数のラットの複数の異なるグループは、最小の肺胞マクロファージ蓄積の異なるバックグラウンドの発生率を有することができる。しかしながら、これらの研究からのデータは、最小から軽度の肺胞マクロファージ蓄積が、製剤XII又は製剤XVを投与された複数のラットでより高い発生率及び/又はより低い用量で発生したかもしれないことを示唆しており、おそらくマクロファージにより貪食された形態の製剤XII又は製剤XVの肺胞におけるより大きな分散を示している。
【0181】
[犬の研究における製剤XIXの製剤XII及び製剤XVに対する比較]
複数の犬の気道における製剤CIC関連の所見は、製剤XII及び製剤XVによって誘発されたものとは異なる特徴を有していた。
【0182】
有害と見なされた製剤CIC関連の急性炎症は、10mg/kg/日で7日間の犬の研究に存在した。5mg/kg/日で7日間の研究では製剤CIC関連の所見はなかった。製剤XIXに関連する肉芽腫性炎症は、>5mg/kg/日で28日間の犬の研究では存在し、>10mg/kg/日で有害と見なされる軽度の重症度に到達した。遡及的に、7日間の研究で観察された急性炎症は、急性の肉芽腫性炎症として説明することができた。従ってこの所見は、製XIXを使用した犬の研究同士で類似していたものの、研究の長さを反映した差があった。療法の研究において、所見は10mg/kg/日で有害であると見なされた。炎症の箇所は、肺胞内とは対照的に、主として細気管支/細気管支周囲だった。この箇所は、誘導気道の向きを示しており、従って、粘膜箇所を表すものではなく、ラットの所見ほど控えめではなかったものの、複数のラットにおける製剤CIC関連の所見の箇所にいくらか類似している。肉芽腫性炎症は類似していたが、ラットと犬では形態学的に同一とは言えなかった。
【0183】
製剤XII又は製剤XVは、20mg/kg/日で14日間の犬の研究において試験項目関連の所見を誘発した。試験項目に関連する、軽度の肺胞内混合細胞炎症が、20mg/kg/日の製剤XIIを投与された全ての犬に存在した。有害性(adversity)は14日間の研究報告では取り上げられていないが、軽度の混合細胞炎症は有害であると考えられる可能性がある。6mg/kg/日での所見は、発生率が低いために明確に関連する試験項目ではなかった。複数の犬は10mg/kg/日で製剤XII又は製剤XVに曝露されなかったため、10mg/kg/日で有害だった製剤XIXと直接比較することができない。しかしながら、吸入曝露後の有害性を比較する場合、用量とは対照的に、肺組織レベルを比較する方が適切である可能性があり、これらは製剤XII及び製剤XVを投与した動物で相当に高かった。製剤XIXに関係する肉芽腫性炎症は、28日間の回復期の間に完全に消散した。製剤XIIと製剤XVを用いた14日間の犬の研究には、回復期は含まれていなかった。犬における製剤XII又は製剤XV関連の混合細胞炎症は、それが肺胞を含み、且つ肉芽腫性でなかったという点で、ラットにおける製剤XII又は製剤XV関連の亜急性炎症と形態学的にいくらか類似していた。
【0184】
[実施例4 健常被験者に吸入用の乾燥粉末として投与されたイトラコナゾールの単回及び複数回用量の安全性、忍容性及び薬物動態を評価するためのフェーズ1非盲検試験]
[過去のデータに基づくイトラコナゾール経口液剤の臨床薬物動態]
イトラコナゾールはシトクロムP450 3A4アイソエンザイムシステムにより肝臓内で代謝され、主としてヒドロキシイトラコナゾール(hydroxy-itraconazole)になる。ヒドロキシイトラコナゾールは活性があり、多くの臨床的に重要な真菌に対して抗真菌活性を有する。イトラコナゾールは血漿タンパク質により、経口液剤とカプセルに、それぞれ99.8%と99.6%、高度に結合している。
【0185】
経口イトラコナゾールの薬物動態は、人での単回及び複数回用量研究の両方で研究されている。薬物動態は2つの提示(液剤とカプセル)の間で異なり、経口液剤でより高い曝露が観察されている。経口液剤とカプセルは互換的に使用しないことが推奨されている。
【0186】
経口液剤の絶対バイオアベイラビリティは、健常なボランティアでは55%であり、絶食条件下で服用すると30%増加する。絶食条件下では、定常状態のAUC0-24hは、摂食条件下での曝露の131±30%であり、経口液剤は絶食して投与することが推奨される。定常状態においては、絶食条件下で、1日200mgの平均Cmax、W及びAUC0-24hは、それぞれ1,963±601ng/mL、2.5±0.8h及び29,271±10,285ng−h/mLだった。定常状態におけるイトラコナゾールの半減期は39.7±13hだった。
【0187】
[パート1からの薬物動態データ、健常なボランティアのSAD]
製剤XIIの単回吸入投与後の全身薬物動態の予備的要約データを表8に要約し、濃度−時間プロファイルを図3に示す。薬物動態データは、経口投与と比較して、製剤XIIの安全性プロファイルに与える影響のため、重要である。データは製剤XIIの吸入投与が全身曝露を低くすることを確証させる。用量はイトラコナゾール5mgから35mgの範囲だった。イトラコナゾールは体循環に急速に吸収され、全ての被験者が15分の最初のサンプリング時点で検証可能な血漿曝露を有していた。曝露は初めの18〜24時間概ね維持され、吸収が長引いたことが示されている。投与後24時間を超えると、血漿濃度はおおよそ安定した単一指数関数的に減少し、減衰率は全てのコホートで同様だった(Kelの幾何平均の範囲;0.021−0.032 1/h)。曝露(Cmax及びAUC)は単調に増加し、用量に比例するより概して小さかった。
【0188】
[表8 健常なボランティアにおける製剤XIIの単回吸入投与後の薬物動態データ]
【0189】
【表8】
示したデータは各コホート(5mgの用量はn=5;10、25及び35mgの用量はn=6)の幾何平均値である。*中央値
[パート2による薬物動態データ、健常なボランティアにおけるMAD]
製剤XIIの単回吸入投与及び14日間の毎日の吸入の後の全身薬物動態の要約データを表9に要約し、濃度−時間プロファイルを図4に示す。用量はイトラコナゾール10mg,20mg又は35mgのいずれかだった。パート1と同様、イトラコナゾールは体循環に急速に吸収され、全ての被験者が15分の最初のサンプリング時点で検出可能な血漿曝露を有していた。曝露は初めの18−24時間概ね維持され、コホート全体でTmaxの中央値の推定は7時間と18時間の間だった。血漿濃度の中央値は反復した投与ごとに増加し、濃度は14日目に定常状態に近づいた。経口液剤の投与後に報告されたイトラコナゾールの定常状態の血漿レベルと比較して、吸入後の曝露はAUC0-24hに基づいて100から400倍低かった。1日目から14日目までの間のイトラコナゾール蓄積は、CmaxとAUC0-24hの両方で約3倍であり、各用量で同様だった。パート1と同様、投与の終了時に、血漿濃度は安定した単一指数関数的に減少し、長期の全身曝露を生じさせるいずれの過大な肺蓄積もないことを示唆している。
【0190】
「表9 健常なボランティアにおける製剤XIIの単回及び複数回の吸入投与後の薬物動態データ]
【0191】
【表9】
示したデータは、各コホート(10mg及び20mgの用量はn=6;35mgの用量は1日目がn=6及び14日目がn=5)の幾何平均値である。*中央値
[パート3からの薬物動態データ、軽度から中等度の安定したぜんそくの成人被験者における単回投与]
ぜんそく患者における単回の吸入又は経口投与後の全身薬物動態の要約データを表10に要約し、濃度−時間プロファイルを図5A及び図5Bに示す。用量は、製剤XIIとして吸入された20mgのイトラコナゾール、又はSporanox経口液剤として投与された200mgのイトラコナゾールのいずれかだった。経口投与と吸入投与の両方で、イトラコナゾールは体循環に急速に吸収され、製剤XIIとSporanoxのTmax中央値の推定はそれぞれ4.0時間と1.5時間だった。製剤XIIの投与後、イトラコナゾールの血漿曝露は概ね増加し、及び/又は初めの24時間に亘って維持され、長期の吸収を示した。対照的に、経口投与されたイトラコナゾールは急速に吸収及び排除されたため、曝露は投与後すぐにピークに達したが、投与後12時間でCmaxの17%のレベルまで急速に低下した。24時間に亘る総全身曝露(AUC0-24h)は、経口投与後の曝露と比較すると、製剤XIIの後の約85分の1であり、最大曝露(Cmax)は、経口投与後の曝露と比較すると、製剤XIIの後の約250分の1だった。
【0192】
[表10 ぜんそく患者における製剤XII又は経口Sporanoxの単回投与後の薬物動態データ]
【0193】
【表10】
示したデータは、各コホート(製剤XIIはn=14及びSporanoxはn=15)の幾何平均値である。*中央値
誘発喀痰は、投与の2時間後、6時間後及び24時間後に採取されて、0.1ng/mLをLLOQ(定量下限)として、検証した液体クロマトグラフィー−質量分析/質量分析(LC−MS/MS)法を使用してイトラコナゾール濃度を測定するために使われた。喀痰イトラコナゾールレベルは、経口Sporanox投与と比較して、製剤XII投与でより高く、経口投与後のCmaxが116.3ng/mLであるのに対し、吸入後の幾何平均Cmaxは5381ng/mLだった(図5A)。製剤XIIの高い肺曝露は24時間に亘って維持されたが、イトラコナゾールの喀痰濃度は200mgのイトラコナゾールの単回経口投与後2時間から6時間の間に減少した。これらのデータは、製剤XIIの吸入投与が、低い全身曝露を維持しつつ、経口投与で達成されるよりも高く、高い持続的な肺曝露をもたらすことを確証させる。肺及び血漿の幾何平均Cmaxデータに基づくと、製剤XIIの結果は肺:血漿比が略2300:1であり、経口投与の結果は肺:血漿比が1:5だった。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】