特表2021-522400(P2021-522400A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-522400層状発泡ポリマー材料を調製するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-522400(P2021-522400A)
(43)【公表日】2021年8月30日
(54)【発明の名称】層状発泡ポリマー材料を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/12 20060101AFI20210802BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20210802BHJP
   B32B 5/32 20060101ALI20210802BHJP
【FI】
   C08J9/12
   B32B5/18
   B32B5/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2021-506079(P2021-506079)
(86)(22)【出願日】2019年1月4日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月15日
(86)【国際出願番号】IB2019050068
(87)【国際公開番号】WO2019202407
(87)【国際公開日】20191024
(31)【優先権主張番号】102018000004727
(32)【優先日】2018年4月19日
(33)【優先権主張国】IT
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520404171
【氏名又は名称】マテリアス・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】MATERIAS S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】エルネスト・ディ・マイオ
(72)【発明者】
【氏名】ルイージ・ニコライス
【テーマコード(参考)】
4F074
4F100
【Fターム(参考)】
4F074AA16
4F074AA32
4F074AA63A
4F074AA64
4F074AA65
4F074AA71
4F074AA74
4F074AA78
4F074AB01
4F074AB05
4F074BA32
4F074BA33
4F074BA53
4F074BA95
4F074CA29
4F074DA33
4F074DA36
4F074DA47
4F074DA53
4F100AK01A
4F100AK03A
4F100AK33A
4F100AK36A
4F100AK41A
4F100AK46A
4F100AK49A
4F100AK51A
4F100AK53A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA11
4F100BA26
4F100CA01A
4F100DE01A
4F100DJ01A
4F100EJ17A
4F100GB66
4F100JA13A
4F100JB13A
4F100JB16A
(57)【要約】
本発明は、層の間の界面において不連続性を欠く層状発泡ポリマー材料、及び
・発泡性ポリマー材料を提供する工程;
・加圧及び20℃を超える温度下で発泡性ポリマー材料中の上記1種以上の発泡剤を可溶化する工程;及び
・圧力を瞬間的に解放する工程;
を含むその製造方法に関し、
可溶化工程が、経時的に変化し得る上記1種以上の発泡剤の圧力プロファイルを用いて行われる製造方法。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の発泡剤を使用する手段により層状発泡ポリマー材料を調製する方法であって、前記方法が、
・発泡性ポリマー材料を提供する工程;
・加圧及び20℃を超える温度下で発泡性ポリマー材料中の前記1種以上の発泡剤を可溶化する工程;及び
・圧力を瞬間的に解放する工程;
を含み、
前記可溶化工程が、経時的に変化し得る前記1種以上の発泡剤の圧力プロファイルを用いて行われることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記圧力プロファイルが、周期的又は非周期的な様式において、経時的に変化することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧力プロファイルが、正弦、三角、矩形、又はのこぎり型、又はこれらの組み合わせから成る群から選択される波形を伴う周期的な様式において、経時的に変化することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記圧力プロファイルが、線形、断片、曲線、放物線、指数、瞬間的プロファイル、又はそれらの組み合わせに従う非周期的な様式において経時的に変化することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記圧力プロファイルが、大気圧に等しい最小圧力から最大300バールまで、好ましくは大気圧から250バールまで、有利に大気圧から200バールまで変化することを特徴とする、先行請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記圧力プロファイルが、経時的に増加する少なくとも1つの圧力プロファイルをもつ工程と、経時的に減少する少なくとも1つの圧力プロファイルをもつ工程と、を含むことを特徴とする、先行請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記圧力プロファイルが、経時的に一定の少なくとも1つの圧力プロファイルをもつ工程を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
1種の発泡剤を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
2種以上の発泡剤の混合物を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物中の前記発泡剤の濃度が経時的に変化することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1種以上の発泡剤が、不活性気体、二酸化炭素、及び置換又は非置換の、3〜8の炭素原子を有する脂肪族炭化水素(直鎖状、分岐鎖状、環状)から成る群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記1種以上の発泡剤が、窒素、二酸化炭素、n−ブタン、イソ−ブタン、n−ペンタン、イソ−ペンタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(フレオンR−134a)、1,1−ジフルオロエタン(フレオンR−152a)、ジフルオロメタン(フレオンR−32)、及びペンタフルオロエタンを含む群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマー材料が熱可塑性及び熱硬化性ポリマー材料から成る群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記熱可塑性ポリマー材料が、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル及びポリアミドを含む群から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記熱硬化性ポリマー材料が、ポリウレタン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリフェノール、及びポリイミドを含む群から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15に定義された方法によって得られる多層構造をもつ発泡ポリマー材料。
【請求項17】
前記少なくとも2つの層の間の界面において密度及び/又はモルフォロジーの段階的な変化を伴う異なる密度及び/又はモルフォロジーを有する少なくとも2つの層を含むことを特徴とする、請求項16に記載の発泡ポリマー材料。
【請求項18】
前記発泡ポリマー材料が多層の予備発泡ビーズ又は多層の発泡シートから成ることを特徴とする、先行請求項15から17のいずれか1項に記載の発泡ポリマー材料。
【請求項19】
前記多層の予備発泡ビーズが、少なくとも1つの非発泡層と、少なくとも1つの予備発泡層と、を含み、前記非発泡層が前記予備発泡層に対して半径方向外側の位置に配置されていることを特徴とする、請求項18に記載の発泡ポリマー材料。
【請求項20】
前記多層の発泡シートが、(i)より低い密度及びより微細なモルフォロジーをもつ少なくとも1つの層と、より高い密度及びより粗いモルフォロジーをもつ少なくとも1つの層、又は(ii)より低い密度及びより粗いモルフォロジーをもつ少なくとも1つの層と、より高い密度及びより微細なモルフォロジーをもつ少なくとも1つの層、又は(iii)均一なモルフォロジーを有する、より低い密度をもつ少なくとも1つの層と、より高い密度をもつ少なくとも1つの層、又は(iv)均一な密度を有する、より粗いモルフォロジーをもつ少なくとも1つの層と、より微細なモルフォロジーをもつ少なくとも1つの層を含むことを特徴とする、請求項18に記載の発泡ポリマー材料。
【請求項21】
多層構造及び均一な組成をもつ発泡ポリマー材料であって、前記多層構造が少なくとも2つの層を含み、前記少なくとも2つの層の各々が特定の異なるモルフォロジー及び/又は密度を有し、前記発泡材料中に存在する前記少なくとも2つの層の間の界面における密度及び/又はモルフォロジーにおいて段階的な変化を示すことを特徴とする、発泡ポリマー材料。
【請求項22】
前記多層構造が少なくとも3つの層、好ましくは3つの層から5つの層を含むことを特徴とする、請求項21に記載の発泡ポリマー材料。
【請求項23】
全体的又は部分的に多層構造及び均一な組成をもつ発泡ポリマー材料で作られた、製造された製品であって、前記多層構造が少なくとも2つの層を含み、前記少なくとも2つの層の各々が特定の異なるモルフォロジー及び/又は密度を有し、前記発泡材料中に存在する前記少なくとも2つの層の間の界面における密度及び/又はモルフォロジーにおいて段階的な変化を示すことを特徴とする製品。
【請求項24】
前記多層構造が多勾配モルフォロジーを含む、請求項23に記載の製造された製品。
【請求項25】
前記多層構造が異方性モルフォロジーを含む、請求項23に記載の製造された製品。
【請求項26】
前記製造された製品が、保護システム(脛あて、バックブレース、肩及び肘パッド、膝パッド、シェル及びパッド、防弾ベスト)、ヘルメット、整形外科用プロテーゼ、歯科用プロテーゼ、外皮プロテーゼ、組織工学用足場、吸収及び防音スラブ及びシステム、断熱システム及びスラブ、スポーツシューズ用のソール及び構成要素、自動車用パネル、スポーツ機器、備品、包装、濾過膜及びシステム、セラミック材料及び多孔質金属用の犠牲発泡体、ディフューザー及び通気装置用発泡体、生体医療システム、制御された薬物送達のためのパッドとパッチ、プログレッシブ機械的応答システム、プログレッシブ機能応答システム、電磁遮蔽システム、触媒システム、航空及び航空宇宙用発泡体、オプトエレクトロニクス用発泡体、浮揚システム、フレーム及びシャシー及び眼鏡フレームから成る群から選択される、請求項23に記載の製造された製品。
【請求項27】
前記製造された製品が整形外科用プロテーゼから成る群から選択される、請求項23に記載の製造された製品。
【請求項28】
前記整形外科用プロテーゼが、下肢(足、足首、膝、大腿骨、腰)、上肢(手、手首、肘、上腕骨、肩)、及び脊柱の整形外科用内部プロテーゼから成る群から選択される、請求項27に記載の製造された製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルモルフォロジーの観点及び密度の観点の両方から、層状発泡ポリマー材料を調製するための方法に関する。
【0002】
特に、上記方法は、その後発泡させるのに必要な物理的発泡剤を可溶化するための操作を使用し、経時的に変化し得る条件を特徴とする。より具体的には、可溶化工程の経時的に変化し得る条件は、ポリマー中の物理的発泡剤の濃度の不均一なプロファイルを発生させ、これは、発泡の際に、それに応じて不均一なモルフォロジー及び密度を発生させる。
【背景技術】
【0003】
最近、セル密度及び/又はモルフォロジーの観点における均一な構造によって特徴付けられる発泡材料に関して、その構造的及び機能的特性が改善された「勾配(gradient)」発泡材料に関心が集まっている。
【0004】
これは最近の理論的数値的及び実験的の両方の科学研究により示されている。特許文献は、このような層状発泡構造又は勾配モルフォロジー及び/又は密度をもつものの使用及び利点を記載している。米国特許出願第2015125663号の公報は、ヘルメットにおける衝撃からのエネルギー吸収において、「勾配」様式で組み立てられたポリマー発泡体の異なる層の使用を記載している。
【0005】
層状発泡体に関連のあるもう1つの分野は、(蒸気箱成形(steam−chest molding)又はビーズ発泡としても知られる)焼結のための膨張の分野であり、これは、焼結発泡ポリスチレン製品の生産において非常に一般的であるが、より最近では、数ある中で、ポリプロピレン、熱可塑性ポリウレタン及びポリ乳酸にも使用している。この分野では、製品の製造において、型に挿入され、水蒸気又は高温気体で覆われて、ビーズの最終的な発泡及び焼結を達成する(形がほぼ球形で、寸法が1ミリメートルに近い)予備発泡ビーズが使用される。最終的な発泡は、主に、予備発泡ビーズ中になおも含有されていて、加熱とともに放出する発泡剤、例えばペンタンに起因する。
【0006】
実際、予備発泡及び最終発泡の間の期間における拡散による発泡剤の損失を防ぐ可能性は、技術的に非常に重要である。この拡散現象による損失は、異なる保存期間(シーズニング)を経たビーズを用いて製品を生産しなければならない場合、予備発泡ビーズの保存及び方法標準化の問題における限界である。
【0007】
半径方向に層状になったモルフォロジー、例えば、内側の層における発泡剤の損失を防止するための障壁として作用する密な中間層又は外側の層を利用することができる予備発泡ビーズを有することは、上記の問題を解決するであろう。
【0008】
ゴルフボール又はスポーツ衝撃保護器具などのいくつかの市販製品は、1つ以上の発泡層をもつ積層製品である(例えば、サリバン(Sullivan)らの米国特許出願第2015/0283432号及びドンジス(Donzis)らの米国特許第4486901号を参照)。
【0009】
しかしながら、このような層状構造を創出するように調節された技術は、おそらく人工的であり、工業化まで遠い及び/又は困難である。
【0010】
例えば、ニクヒル・グプタ(Nikhil Gupta)らの「Comparison of compressive properties of layered syntactic foams having gradient in microballoon volume fraction and wall thickness」Mater. Sci. Eng A 427 (2006) 331−342頁は、ポリマー中に異なる寸法をもつ中空ガラス微小球を配置することを伴う実験室戦略を記載している。
【0011】
欧州特許出願第1452191号及び欧州特許出願第1878450号において、複合材料の使用による積層構造の創出のための操作が記載されている。特に、欧州特許出願第1452191号においては、主に第1の材料によって構成される工程から主に第2の成分によって構成される工程まで変化する濃度勾配とともに2つのポリマー材料の混合物が使用され、欧州特許出願第1878450号においては、発泡性ポリマー材料と一緒に鋳型内の充填剤及び/又は繊維の正確な配置を使用して、複合予備発泡体が作られる。これらの操作は、複合材料の使用と、これらの材料の成分の複雑な調製及び分配の両方を必要とする。
【0012】
より頻繁に、国際公開第2016102291号、国際公開第2014041516号及びTW200918316A、及びエルヘン・ワン(Erheng Wang)らの「The blast resistance of sandwich composites with stepwise graded cores」 、International Journal of Solids and Structures 46 (2009) 3492−3502頁に記載されているように、結合又は融着の手段によって、異なるモルフォロジー及び/又は密度をもつ発泡体の数層のカップリング(coupling)が記載され、使用される。カップリング操作の煩雑さとは別に、これらは、とりわけ結合又は熱融着の手段によって実行される場合、性能及び設計の観点から問題となる接合部における不連続性を有することに留意すべきである。もう1つのアプローチは、シュウ・シー(Zhou C)らの「Fabrication of functionally graded porous polymer via supercritical CO foaming」、 Composites:Part B 42 (2011) 318−325頁によって導入され、「発泡剤濃度の非平衡プロファイル」の使用が検討されている。この方法において、発泡剤の均一な濃度を達成するために必要な時間よりも短い時間にわたって、一定の温度及び圧力において行われる可溶化工程によって、発泡される材料が発泡剤によって部分的に飽和されている。この場合、発泡される試料の最も離れた部分(圧力下で発泡剤と接触する自由表面、即ち最も内側の部分に関する)は、上記表面(より多くの外部部分)に隣接する部分に関して低い濃度の発泡剤を含有し、発泡剤の濃度は、発泡剤の外圧にあわせて容易に平衡状態に達する。その結果、試料の内部部分は発泡が少なくなるか、又は発泡が不足し、一方、外部部分は完全に発泡する。このような構造の設計は、多数のポリマー/発泡剤系に利用できる、ポリマー中の発泡剤の拡散係数の知識を前提とする。
【0013】
記載された方法は、製造が簡便であるにもかかわらず、試料内部の発泡層がより少なく、外部の発泡層がより多いことを特徴とする、単一勾配発泡材料の構成のみを可能にするので、やや限定される。勾配の対称性は、試料形状及び発泡剤によって接近され得る試料表面に明らかに依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015125663号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0283432号明細書
【特許文献3】米国特許第4486901号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1452191号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1878450明細書
【特許文献6】国際公開第2016102291号
【特許文献7】国際公開第2014041516号
【特許文献8】TW200918316A
【0015】
【非特許文献1】Mater.Sci.Eng A,2006,Vol.42,p.331−342
【非特許文献2】International Journal of Solids and Structures,2009,Vol.46,p.3492−3502
【非特許文献3】Composites:Part B,2011,Vol.42,p.318−325
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の方法は、当技術分野で既知の方法の欠点を克服することを目的とする。
【0017】
特に、出願人は、本発明の方法を用いて、層状発泡構造が、簡便、低コストの方法で得られることを観測している。
【0018】
さらに、出願人は、本発明の方法で得られた層状発泡構造は、層間の界面に不連続性を示さず、逆に、発泡材料中に存在する気泡の密度及びモルフォロジーの両方の段階的な変化を示すことを観測している。出願人はまた、本発明の方法により、層の数、及びそれらのモルフォロジー及び密度の観点の両方から、幅広い設計の選択をもつ層状発泡構造を得ることが可能になることを観測している。
【0019】
出願人は、発泡前の可溶化工程において、経時的に変化し得る少なくとも1つの条件を使用して、ポリマー中の発泡剤の物質移動(mass transport)における少なくとも1つの非平衡の工程を含む、層状発泡材料を調製する方法の手段によって、これら及び他の利点を得ることができることを観測している。
【0020】
出願人は、ポリマー中の1種以上の発泡剤の可溶化工程における1つ以上の経時的にし得る条件の使用が、同じポリマー中の発泡剤の濃度の不均一なプロファイルを発生させ、これは、発泡の際に、それに応じて不均一なモルフォロジー及び密度を発生させることを観測している。
【0021】
出願人は、(例えば正弦波の周期のような)一定の特性時間Tによって特徴付けられる物質移動における境界条件のいずれかの変化のポリマー中の浸透深さLpenは、式(1)によって与えられると考えている。
【0022】
【数1】
【0023】
ここで、Dはポリマー中の発泡剤の拡散率である。
【0024】
物質移動における境界条件の変化が瞬間的である場合、関係自体は、変化自体の賦課(imposition)後の各時間Tにおける、変化の影響が関係する厚さを示す。
【0025】
出願人は、物質移動における境界条件の変化は、以下の3つの変数によって実質的に影響され得ることを観測している。
・圧力変化
・膨張気体の組成における変化
・温度変化
【0026】
出願人は、まず、一定の期間T及び、例えば、正弦、三角、矩形、のこぎりなど波形によって特徴付けられる周期的変化を生じさせることができる管理プログラムを使用することにより、圧力変化を適切に調整することができることを見出している。
【0027】
出願人はまた、線形、放物線、指数、瞬間的(impulsive)プロファイル等に従って、非周期的変化を迅速又はゆっくりと操作することができる管理プログラムを使用することにより、圧力変化を適切に調整することができることを見出している。
【0028】
同様に、本出願人は、異なる拡散係数Dによって特徴付けられる2種以上の発泡剤(窒素及び二酸化炭素など)の分圧を変化させることによって、膨張気体における組成の変化を、適切に調整することができることを見出している。
【0029】
最後に、出願人は、その動力学がエネルギー輸送の動力学に従い、システムの他の特性(熱拡散率)によって特徴付けられる温度変化が、異なる層を得るために、圧力及び膨張気体の組成に依存する物質移動の動力学に、較正された様式において重ね合わせ/結合することができることを観測している。
【0030】
したがって、本出願人は、1種以上の発泡剤の圧力における周期的変化の手段による可溶化工程を適切に設計することによって、また、温度変化を使用することによって、各層が特定の異なるモルフォロジー及び密度を有する、多層構造をもつ発泡ポリマーを得ることが可能であることを見出している。
【課題を解決するための手段】
【0031】
したがって、本発明の第1の目的は、1種以上の発泡剤を使用する手段により層状発泡ポリマー材料を調製するための方法により表され、上記方法は、
・発泡性ポリマー材料を提供する工程;
・加圧及び20℃を超える温度下で発泡性ポリマー材料中における上記1種以上の発泡剤を可溶化する工程;及び
・圧力を瞬間的に解放する工程;
を含み、
上記可溶化工程が、経時的に変化し得る上記1種以上の発泡剤の圧力プロファイルを用いて行われることを特徴とする。
【0032】
本発明の第2の目的は、本発明の第1の目的に従った方法により得られる多層構造をもつ発泡ポリマー材料により表される。
【0033】
本発明の第3の目的は、多層構造及び均一な組成をもつ発泡ポリマー材料であって、上記多層構造が少なくとも2つの層を含み、上記少なくとも2つの層の各々が特定の異なるモルフォロジー及び/又は密度を有し、上記発泡材料中に存在する上記少なくとも2つの層の間の界面における密度及び/又はモルフォロジーにおいて段階的な変化を示すことを特徴とする、発泡ポリマー材料によって表される。
【0034】
特に、本発明の第3の目的に従う発泡ポリマー材料は、上記少なくとも2つの層の間の界面において、モルフォロジー及び/又は密度における不連続性を示さないことを特徴とする。
【0035】
本発明の第4の目的は、全体的又は部分的に多層構造及び均一な組成をもつ発泡ポリマー材料で作られた、製造された製品であって、上記多層構造が少なくとも2つの層を含み、上記少なくとも2つの層の各々が特定の異なるモルフォロジー及び/又は密度を有し、上記発泡材料中に存在する上記少なくとも2つの層の間の界面における密度及び/又はモルフォロジーにおいて段階的な変化を示すことを特徴とする製造された製品によって表される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1A図1Aは、本発明で使用した不連続発泡装置の写真を示す。
【0037】
図1B図1Bは、本発明で使用した不連続発泡装置の図を示す。
【0038】
図2A図2Aは、実施例1〜6で使用した試料の図であり、底面ΣeΣ’及び側面Ωが強調されている。
【0039】
図2B図2Bは、実施例1で使用した発泡を可能にするために圧力を解放する直前の、試料の全軸方向プロファイルに沿った発泡剤の軸方向濃度プロファイルを示す。
【0040】
図2C図2Cは、実施例1の操作を経た試料から得られる発泡体部分の走査電子顕微鏡写真(スケールバーは500μm)を示す。明確にするために、試料の半分のみを、図中に示す垂直線に対して対称に示す。
【0041】
図3A図3Aは、実施例2で使用した発泡を可能にするために圧力解放の直前の、発泡剤の軸方向濃度プロファイルを示す。
【0042】
図3B図3Bは、実施例2の操作を経た試料から得られる発泡体部分の走査電子顕微鏡写真(スケールバーは500μm)を示す。試料の断面の全体が示され、5つの対称層を強調する。
【0043】
図3C図3Cは、図3Bに示した画像と同じものを示しており、細孔サイズの定性的な傾向を示す重ね合わせたグラフをもつ。
【0044】
図4A図4Aは、実施例3で使用した発泡を可能にするために圧力を解放する直前の、試料の全軸方向プロファイルに沿った発泡剤の軸方向濃度プロファイルを示す。
【0045】
図4B図4Bは、実施例3の操作を経た試料から得られる発泡体部分の走査電子顕微鏡写真(スケールバーは500μm)を示す。
【0046】
図5A図5Aは、実施例4で使用した発泡を可能にするために圧力を解放する直前の、試料の全軸方向プロファイルに沿った発泡剤の軸方向濃度プロファイルを示す。
【0047】
図5B図5Bは、実施例4の操作を経た試料から得られる発泡体部分の走査電子顕微鏡写真(スケールバーは500μm)を示す。明確にするために、試料の半分のみを、図中に示す垂直線に対して対称に示す。
【0048】
図6A図6Aは、実施例5で使用した発泡を可能にするために圧力を解放する直前の、発泡剤の軸方向濃度プロファイルを示す。
【0049】
図6B図6Bは、実施例5の操作を経た試料から得られる発泡体部分の走査電子顕微鏡写真(スケールバーは500μm)を示す。明確にするために、試料の半分のみを、図中に示す垂直線に対して対称に示す。
【0050】
図7A図7Aは、実施例6で使用した発泡を可能にするために圧力を解放する直前の、発泡剤の軸方向濃度プロファイルを示す。
【0051】
図7B図7Bは、実施例6の操作を経た試料から得られる発泡体部分の走査電子顕微鏡写真(スケールバーは500μm)を示す。明確にするために、試料の半分のみを、図中に示す垂直線に対して対称に示す。
【0052】
図8図8は、半径rを強調した、実施例7〜9で使用した試料のダイアグラムを示す。
【0053】
図8A図8Aは、実施例7で使用した発泡を可能にするために圧力を解放する直前の、発泡剤の軸方向濃度プロファイルを示す。
【0054】
図8B図8Bは、実施例7の操作を経た試料から得られる発泡体部分の走査電子顕微鏡写真(スケールバーは200μm)を示す。
【0055】
図9A図9Aは、実施例8で使用した発泡を可能にするために圧力を解放する直前の、発泡剤の軸方向濃度プロファイルを示す。
【0056】
図9B図9Bは、実施例8の操作を経た試料から得られる発泡体部分の走査電子顕微鏡写真(スケールバーは200μm)を示す。
【0057】
図10A図10Aは、実施例9で使用した発泡を可能にするために圧力を解放する直前の、発泡剤の軸方向濃度プロファイルを示す。
【0058】
図10B図10Bは、実施例9の操作を経た試料から得られる発泡体部分の走査電子顕微鏡写真(スケールバーは100μm)を示す。
【0059】
図11A図11Aは、実施例10で使用した発泡を可能にするために圧力を解放する直前の、試料の全軸方向プロファイルに沿った発泡剤の軸方向濃度プロファイルを示す。
【0060】
図11B図11Bは、実施例10の操作を経た試料から得られる発泡体部分の走査電子顕微鏡写真(スケールバーは500μm)を示す。試料の断面の全体が示され、4つの非対称層を強調する。
【0061】
図12A図12Aは、実施例11で使用した大腿骨の上端部の形状を有する多孔質金属容器を示す。
【0062】
図12B図12Bは、実施例11の操作を経た試料から得られる縦方向の発泡体部分の走査電子顕微鏡写真(スケールバーは1mm)を示す。
【0063】
図12C図12Cは、実施例11の操作を経た試料から得られる横方向の発泡体部分の走査電子顕微鏡写真(スケールバーは1mm)を示す。
【0064】
図12D図12Dは、大腿骨頭(head of a femur)の横方向の断面を示す。
【0065】
<発明の詳細な説明>
「ポリマー材料」という表現は、熱可塑性又は熱硬化性のホモポリマー又はコポリマー、又はそれらの混合物を含む、ポリマー材料を示す。
【0066】
「発泡性ポリマー材料」という表現は、一定の温度及び圧力下において発泡剤を吸収することができ、同圧力の解放時に気泡の核形成を可能にし、凝固までの気泡の成長中に矯正応力(the straightening stresses)に抵抗するポリマー材料を示す。
【0067】
「発泡剤」という表現は、ポリマー材料の内部に気泡を形成することによりポリマー材料の膨張をもたらすことができる物質を示す。
【0068】
「多層構造」という表現は、2つ以上の層、好ましくは3つ以上の層を含む、構造を示す。
【0069】
「均一な組成」という表現は、そのすべて点において均一及び一定の組成のポリマー材料から成る組成物を示す。
【0070】
「不連続」という用語は、熱間接合手段によって、又は別々に作られた異なる構造を有する2つの層の接着剤によって作られた複合材料に典型的な、2つの隣接する層の間の正味の明確な境界を示す。
【0071】
「密度」という用語は、ポリマー材料の層の与えられた体積の重量とこの体積との間の比率を示す。
【0072】
「モルフォロジー」という用語は、発泡ポリマー材料内に形成する気泡の形状、サイズ及び体積当たりの単位数を示す。
【0073】
「発泡ポリマー材料」という用語は、内部に発泡剤の手段によって気泡が形成しているポリマー材料を示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明の第1の目的は、1種以上の発泡剤を使用する手段により積層発泡ポリマー材料を調製するための方法により表され、上記方法は、
・発泡性ポリマー材料を提供する工程;
・加圧及び20℃を超える温度下で発泡性ポリマー材料中において上記1種以上の発泡剤を可溶化する工程;及び
・圧力を瞬間的に解放する工程;
を含み、
上記可溶化工程が、経時的に変化し得る上記1種以上の発泡剤の圧力プロファイルを用いて行われることを特徴とする。
【0075】
本発明の第1の目的によれば、上記圧力プロファイルは、好ましくは経時的に周期的又は非周期的な様式において変化する。
【0076】
本発明の第1の目的によれば、上記圧力プロファイルは、好ましくは、正弦、三角、矩形、のこぎり波形型又はこれらの組み合わせから成る群から選択される波形で周期的な様式において経時的に変化する。
【0077】
本発明の第1の目的によれば、上記圧力プロファイルは、好ましくは、線形、断片、曲線、放物線、指数、瞬間的プロファイル、又はそれらの組み合わせに従う非周期的な様式において経時的に変化する。
【0078】
本発明の第1の目的によれば、上記圧力プロファイルは、大気圧に等しい最小圧力から最大300バールまで、より好ましくは大気圧から250バールまで、有利に大気圧から200バールまで変化する。
【0079】
本発明の第1の目的によれば、上記圧力プロファイルは、好ましくは、経時的に増加する少なくとも1つの圧力プロファイルをもつ工程と、経時的に減少する少なくとも1つの圧力プロファイルをもつ工程と、を含む。
【0080】
本発明の第1の目的によれば、上記圧力プロファイルは、有利に、経時的に一定の少なくとも1つの圧力プロファイルをもつ工程を含む。
【0081】
本発明の第1の目的によれば、可溶化工程は、発泡剤又は2種以上の発泡剤の混合物、好ましくは2種の発泡剤の混合物を用いて行われる。有利に、可溶化工程は、経時的に発泡剤の濃度を変化させることによって行うことができる。特に、上記混合物の発泡剤の濃度は、経時的に変化することができる。
【0082】
本発明の第1の目的によれば、可溶化工程は、好ましくは、20℃と350℃の間、より好ましくは30℃と250℃の間、及び有利に50℃と200℃の間、を含む温度において行われる。
【0083】
本発明の第1の目的によれば、上記1種以上の発泡剤は、不活性気体、二酸化炭素、及び置換又は非置換の、3〜8の炭素原子を有する脂肪族炭化水素(直鎖状、分岐鎖状、環状)から成る群から選択される。有利に、発泡剤は、窒素、二酸化炭素、n−ブタン、イソ−ブタン、n−ペンタン及びイソ−ペンタンから成る群から選択される。好ましくは、置換脂肪族炭化水素は、ハロゲン化炭化水素、特に、クロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン及びフルオロカーボン、例えば、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(フレオンR−134a)、1,1−ジフルオロエタン(フレオンR−152a)、ジフルオロメタン(フレオンR−32)、ペンタフルオロエタン(フレオンR−125)などを含む。
【0084】
本発明の第1の目的によれば、上記ポリマー材料は、好ましくは、熱可塑性又は熱硬化性ポリマー材料から成る群から選択される。
【0085】
有利に、上記熱可塑性ポリマー材料は、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル及びポリアミドを含む群から選択される。
【0086】
好ましくは、上記熱硬化性ポリマー材料は、ポリウレタン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリフェノール、及びポリイミドを含む群から選択される。
【0087】
好ましくは、上記ポリマー材料は、スチレン、エチレン、プロピレン、及びポリスチレン、ポリエチレン、及びポリプロピレンのような他のオレフィンのポリマー及びコポリマーである。要すれば、上記ポリマー材料は、1種以上のコモノマーを包含することができる。コモノマーは、例えば、アルキルスチレン、ジビニルベンゼン、アクリロニトリル、ジフェニルエーテル、α−メチルスチレン、又はこれらの組み合わせを含むことができる。例として、ポリマー材料は、約0%重量〜約30%重量、好ましくは約0.1%重量〜約15%重量、より好ましくは約1%重量〜約10%重量のコモノマーを含むことができる。
【0088】
好ましくは、ポリマー材料は、約10,000ダルトンから約500,000ダルトン、より好ましくは約150,000ダルトンから約400,000ダルトン、さらにより好ましくは約200,000ダルトンから約350,000ダルトンの(GPCで測定された)分子量Mwを有し得る。
【0089】
有利に、ポリマー材料は、標準ASTM D 1238に従って200℃の温度及び10kgの荷重で測定された、1.0g/10分と20g/10分の間を含んだスライディングインデックス(sliding index)を有する。
【0090】
好ましくは、本発明で使用されるポリマー材料は、その厚さ全体にとって均一な組成を有する、すなわち、その全ての点において均一で一定の組成を有する。
【0091】
有利に、本発明の方法は、欧州特許出願第1452191号及び欧州特許出願第1878450号に記載されているような組成勾配を含む複合材料の使用を回避しながら、2つ以上の層をもつ多層製品を生産することを可能にする。
【0092】
さらに、本発明の方法は、発泡剤(又は発泡剤の混合物)の可溶化操作の間に複数の勾配を創出することを有利に可能にし、したがって、異なるモルフォロジー及び/又は密度を有する3、4、5又はそれ以上の層をもつ多層材料を生産することを可能にする。
【0093】
好ましくは、本発明の第1の目的によれば、圧力は10バール/秒以上、より好ましくは100バール/秒以上の速度で瞬間的に解放される。
【0094】
本発明の第2の目的は、本発明の第1の目的に従った方法により得られる多層構造をもつ発泡ポリマー材料によって表される。
【0095】
有利に、本発明の第2の目的によれば、上記発泡ポリマー材料は、上記少なくとも2つの層の間の界面においてモルフォロジー及び/又は密度における不連続性を有することなく、異なる密度及び/又はモルフォロジーを有する少なくとも2つの層を含む。好ましくは、上記発泡ポリマー材料は、異なる密度及び/又はモルフォロジーを有する少なくとも2つの層を含み、発泡材料中に存在する密度及び/又はモルフォロジーにおいて段階的な変化を有する。
【0096】
本発明の第2の目的によれば、発泡ポリマー材料は、好ましくは、多層の予備発泡ビーズ又は多層の発泡シートから成る。
【0097】
有利に、上記多層の発泡シートは、より低い密度及びより微細なモルフォロジーをもつ少なくとも1つの層と、より高い密度及びより粗いモルフォロジーをもつ少なくとも1つの層と、を含む。
【0098】
好ましくは、上記多層の発泡シートは、より低い密度及びより粗いモルフォロジーをもつ少なくとも1つの層と、より高い密度及びより微細なモルフォロジーをもつ少なくとも1つの層と、を含む。
【0099】
有利に、上記多層の発泡シートは、均一なモルフォロジーをもつ、より低い密度をもつ少なくとも1つの層と、より高い密度をもつ少なくとも1つの層と、を含む。有利に、上記多層の発泡シートは、均一な密度をもつ、より粗いモルフォロジーをもつ少なくとも1つの層と、より微細なモルフォロジーをもつ少なくとも1つの層と、を含む。
【0100】
有利に、上記多層の予備発泡ビーズは、少なくとも1つの非発泡層と、少なくとも1つの予備発泡層と、を含み、上記非発泡層は、予備発泡層に対して半径方向外側の位置に配置される。
【0101】
したがって、本発明の方法により、別々に得られた層を一緒に結合又は融着して得られる材料に典型的な不連続性を欠く多層構造を持ち、均一な組成をもつ発泡ポリマー材料を得ることが初めて可能になり、それにより複合材料の使用を回避することができる。
【0102】
したがって、本発明の第3の目的は、多層構造及び均一な組成をもつ発泡ポリマー材料であって、上記多層構造が少なくとも2つの層を含み、上記少なくとも2つの層の各々が特定の異なるモルフォロジー及び/又は密度を有し、上記発泡材料中に存在する上記少なくとも2つの層の間の界面において密度及び/又はモルフォロジーにおいて段階的な変化を示すことを特徴とする、発泡ポリマー材料によって表される。
【0103】
特に、本発明の第3の目的による発泡ポリマー材料は、上記少なくとも2つの層の間の界面において、モルフォロジー及び密度における不連続性を示さないことを特徴とする。有利に、本発明の第2及び第3の目的によれば、上記発泡ポリマー材料は、異なる密度及び/又はモルフォロジー、及び発泡材料中に存在する密度及び/又はモルフォロジーにおいて段階的な変化を有する少なくとも2つの層を含む。
【0104】
特に、多層構造は、少なくとも3つの層を含み、より具体的には、特定の異なるモルフォロジー及び/又は密度をもつ3、4、5又はそれ以上の層を含む。
【0105】
3層材料が特に好ましく、その実施形態は実施例1、4、5、及び6に記載され、図2C、5B、6B、及び7Bに図示され、並びに5層材料が特に好ましく、その実施形態は実施例2及び10に記載され、図3B及び11Bに図示される。
【0106】
本発明の第2及び第3の目的によるポリマー材料は、それ自体が、多勾配及び異方性モルフォロジーをもつ、すなわち、多孔性によって決定されるモルフォロジーをもつ、複雑な形状の製造された製品の創出のために使用される傾向がある。
【0107】
本発明の第4の目的は、全体的又は部分的に多層構造及び均一な組成をもつ発泡ポリマー材料で作られた、製造された製品であって、上記多層構造が少なくとも2つの層を含み、上記少なくとも2つの層の各々が特定の異なるモルフォロジー及び/又は密度を有し、上記発泡材料中に存在する上記少なくとも2つの層の間の界面における密度及び/又はモルフォロジーにおいて段階的な変化を示すことを特徴とする製造された製品によって表される。
【0108】
好ましくは、本発明の第4の目的によれば、上記多層構造は、多勾配モルフォロジーを含む。
【0109】
有利に、本発明の第4の目的によれば、上記多層構造は異方性モルフォロジーを含む。
【0110】
特に、本発明の第4の目的によれば、上記製造された製品は、例えば、保護システム(脛あて、バックブレース(back braces)、肩及び肘パッド、膝パッド、シェル(shells)及びパッド、防弾ベスト)、ヘルメット及びヘルム(helms)、整形外科用プロテーゼ、歯科用プロテーゼ、外皮プロテーゼ、組織工学用足場、吸収及び防音スラブ及びシステム、断熱システム及びスラブ、スポーツシューズ用のソール及び構成要素、自動車用パネル、スポーツ機器、備品、包装、濾過膜及びシステム、セラミック材料及び多孔質金属用の犠牲発泡体(sacrificial foams)、ディフューザー及び通気装置用発泡体、生体医療システム、制御された薬物送達のためのパッドとパッチ、プログレッシブ(progressive)機械的応答システム、プログレッシブ機能応答システム、電磁遮蔽システム、触媒システム、航空及び航空宇宙用発泡体、オプトエレクトロニクス用発泡体、浮揚システム、フレーム及びシャシー、及び眼鏡フレームによって表される。
【0111】
特に、本発明の第4の目的によれば、上記製造された製品は、例えば、整形外科用プロテーゼ、すなわち、ヒト又は動物の体の骨格セグメントの骨構造を同じ構造特性で複製することができる医療器具によって表される。
【0112】
特に、本発明の第4の目的による整形外科用プロテーゼは、下肢(足、足首、膝、大腿骨、腰)、上肢(手、手首、肘、上腕骨、肩)、及び脊柱の整形外科用内部プロテーゼを含む。
【0113】
ここで、本発明は、解釈のために記載された材料及び方法を参照して説明されるが、以下の実験部における目的に限定されない。
【実施例】
【0114】
<実験部>
発泡体試料の調製のために、図1に示されたバッチ発泡システムを使用したが、そのいくつかの詳細を以下に示す。図1は、本発明で使用された不連続発泡装置の写真(図1A)及び図(図1B)を示す。
【0115】
反応器は円筒形で、熱調節及び加圧されており、容量は0.3L(HiP、BC−1型)である。反応器は、関連する方法パラメータの測定及び制御を可能にするために改良された。
【0116】
温度制御には、加熱要素として電熱ヒータ(11)を使用し、冷却要素としてオイルバスをもつ熱交換器(12)を使用した。
【0117】
ヒータ(11)及び熱交換器(12)は、PIDサーモレギュレータ(アスコンX 1モデル)によって制御され、それは、Pt100プローブ(4)を使用して反応器内の温度を読み取る。
【0118】
飽和工程中の圧力を測定し、発泡剤の放出中の圧力パターンを記録するために、シェービズ(Schaevitz)圧力変換器、モデルP943(3)を使用した。弁(1)を膨張気体供給源に接続し、一方、弁(2)を真空ポンプに接続した。
【0119】
圧力解放システムは、HiPボール排出弁、モデル15−71 NFB(5)、HiP電気機械アクチュエータ、モデル15−72 NFB TSR8(6)、及び圧縮空気用配管(8)及び電磁弁作動信号(7)用ケーブル(9)に接続された電磁弁(7)から成る。このシステムにより、弁の開放を再現することができた。圧力解放中の経時的な圧力パターンP(t)を、DAQ PCI6036Eデータ収集システム、ナショナルインスツルメンツ(National Instruments)社、オースティン、テキサス州、アメリカ合衆国、を使用して記録した。
【0120】
圧力プログラムは、テレダイン(Teledyne) ISCO 500 D体積ポンプ(リンカーン ネブラスカ州、 アメリカ合衆国)によって管理された。ポンプ制御装置のシリアルインターフェースにより、コンピュータによりポンプを制御し、いずれかの圧力プログラムを行うことが可能であった。さらに、コントローラは異なる流体のために最大4つのポンプを処理できる。
【0121】
可溶化工程の変化し得る条件の創出は、以下の実施例に記載されるように、発泡剤の可溶化圧力の変化、周期的パターン(例えば、三角波又は正弦波)、又は非周期的パターン(直線や曲線のプロファイル)により生じ得る。
【0122】
<実施例1−発明>
この実施例において、使用されるポリマーは、ベルサリス社(Versalis SpA)(マントア(Mantua)、イタリア)によって供給される、コードN2380のポリスチレン(PS)であり、それぞれ300kDa、1.05g/cm及び、200℃及び10kgにおいて2.0g/10minに等しい、平均分子量、密度及びメルトフローインデックスをもつ。
【0123】
試料は、直径25mm、厚さ2.2mmのPSの円筒ディスクから成る。それらの側面(図2AにおけるΩ)を(発泡剤を完全に通さない)金属バリアフィルムで保護し、曝されて発泡剤と接触する面は、上下2つの底(図2AのΣとΣ’)のみである。このように物質移動は、円筒軸方向において起こり、一次元の問題として研究できる。バリアフィルムの使用は、この場合、及び実施例2、3、4、5及び6に記載されたものにおいて、発泡される試料が円筒状である場合、材料移動の一次元の処理をより厳密にする必要性のみによって決定される。多層構造を得るために必須であるとは考えられていない。
【0124】
試料を、室温において、図1に示した及び先に記載されたバッチ発泡システムに収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0125】
次いで、表1に記載された圧力プロファイルを使用し、システムに膨張するCO気体の可溶化工程を施した。
【0126】
【表1】
【0127】
表1に示すように、圧力プロファイルは、次の3つの段階を含む:
・工程1において、膨張するCO気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜(ramp)で大気圧から150バールにした。
・工程2において、膨張するCO気体の圧力を2.6分(156秒)の線形傾斜で150バールから200バールまで上昇させた。
・工程3において、膨張するCO気体の圧力を5.2分(312秒)の線形傾斜で200バールから100バールまで減少させた。
【0128】
工程3の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0129】
圧力が解放される直前、工程3の終了時において、サトウらによる「ポリ(酢酸ビニル)及びポリスチレン中の二酸化炭素の溶解度及び拡散係数」、The Journal of Supercritical Fluids 19 (2001) 187−198頁に報告されている100℃でのPS中のCO拡散率に関するデータを使用して、コムソル・マルチフィジックス(Comsol Multiphysics)10.0シミュレーションソフトウェアを使用して計算された濃度プロファイル及び上記の幾何学的配置は、図2Bに示される結果となった。
【0130】
特に、高濃度の発泡剤をもつ底面近くの2つ、及び低濃度の発泡剤をもつ中央領域の、3つの異なる発泡領域が発泡円筒ディスクにおいて認識され、識別された。この濃度プロファイルから、圧力の解放に際し、異なる領域の異なる発泡能が見出された。
【0131】
高濃度の発泡剤をもつ領域は発泡条件(ここで、特に100℃の温度、約6重量%の濃度、1000bar/sの圧力解放速度)に依存しているモルフォロジー及び密度で発泡したが、発泡剤を欠く中央領域は、高濃度領域と同じ操作条件であっても発泡しなかった。
【0132】
特に、図2Cは、明らかな3つの層構造をもつ、生成した発泡体の断面の走査電子顕微鏡画像を示す。底面近くの2つの領域は、約0.1g/cmの密度と約20μmの最小細孔サイズで発泡したが、中心領域は発泡しなかった。濃度プロファイルの段階的な変化を使用することにより、3つの領域の間に明確な分離は創出されなかった。逆に、密度及びモルフォロジーの両方の段階的な変化が検出された。特に、ディスクの中心に向かう発泡剤の濃度の減少は、気泡のサイズ(約20μm〜約300μm)の増加と0.1から1g/cmの密度の増加をもたらした。特定の可溶化プログラムを使用して、以下の実施例に記載されるように、異なる層の数、厚さ、モルフォロジー及び密度を設計することが可能である。
【0133】
<実施例2−発明>
バリアフィルムの組成、幾何学的形状及び配置について、実施例1に記載したものと類似のPS試料を、室温において、図1に示され、先に記載されたバッチ発泡装置の反応器に収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0134】
次いで、表2に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO気体の可溶化工程を施した。
【0135】
【表2】
【0136】
表2に示すように、圧力プロファイルは、次の4つの段階を含む:
・工程1において、膨張するCO気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から130バールにした;
・工程2において、圧力を120分間、130バールに維持した;
・工程3において、膨張するCO気体の圧力を9.6分(576秒)の線形傾斜で130バールから80バールまで減少させた;
・工程4において、膨張するCO気体の圧力を15.6分(936秒)の線形傾斜で80バールから130バールまで上昇させた。
【0137】
工程4の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0138】
圧力が解放される直前、工程4の終了時において、サトウらによる「ポリ(酢酸ビニル)及びポリスチレン中の二酸化炭素の溶解度及び拡散係数」、The Journal of Supercritical Fluids 19 (2001)187−198頁に報告されている100℃でのPS中のCO拡散率に関するデータを使用して、コムソル・マルチフィジックス(Comsol Multiphysics)10.0シミュレーションソフトウェアを使用して計算された濃度プロファイル及び上記の幾何学的配置は、図3Aに示される結果となった。
【0139】
特に、高濃度の発泡剤をもつ底面近くの2つ、低濃度をもつ中間領域の2つ、及び高濃度の発泡剤を再びもつ中央領域の、5つの異なる発泡領域が発泡円筒ディスクにおいて認識され、識別された。
【0140】
この濃度プロファイルから、圧力の解放に際し、異なる領域の異なる発泡能が見出された。
【0141】
高濃度の発泡剤(表面近くの2つと中央の1)をもつ領域は、発泡条件(ここで、特に100℃温度、約5重量%の濃度、1000bar/sの圧力解放速度)に依存する(図3Bに「高発泡領域」で示した)モルフォロジー及び密度で発泡し、一方、より少ない発泡剤(約3%の濃度)をもつ2つの中間領域は、(図3Bに「低発泡領域」で示した)より低い発泡度を有した。
【0142】
特に、図3B図3Dは、走査型電子顕微鏡で撮影された、明瞭な5つの層構造をもつ、異なる倍率で生成した発泡体の断面のいくつかの画像を示す。底面及び中心領域に近い2つの領域は、約0.1g/cmの密度及び約20μmの細孔サイズで、発泡した。2つの中間領域は、0.3g/cmの密度及び約80μmの細孔サイズで、あまり発泡していなかった。
【0143】
また、この例では、観測された濃度プロファイルの段階的な変化を使用することにより、異なる領域間の明確な分離は創出されなかった。逆に、密度及びモルフォロジーの両方の段階的な変化が検出された。画像3C及び3Dは、遷移帯のいくつかの拡大を示し、ここで、気泡のサイズの変化に注目することができる。
【0144】
本発明の方法は、シュウ・シーらの「Fabrication of functionally graded porous polymer via supercritical CO foaming」、 Composites:Part B 42 (2011) 318−325頁に記載されている方法とは異なり、幅広い設計の自由度を可能にする。
【0145】
さらに、発泡試料において、図2C及び3Bに見られるように、当該技術分野で既知の方法で得られた製品に存在するカップリングによって積層された製品とは異なり、モルフォロジーにおける不連続性が形成されないことが観測された。
【0146】
<実施例3−比較>
バリアフィルムの組成、幾何学的形状及び配置について、実施例1に記載したものと類似のPS試料を、室温において、図1に示され先に記載されたバッチ発泡装置の反応器に収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0147】
次いで、表3に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO気体の可溶化工程を施した。
【0148】
【表3】
【0149】
表3に示すように、圧力プロファイルは次の2つの工程を含む:
・工程1において、膨張するCO気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から100バールにした;
・工程2において、膨張するCO気体圧を180分間、100バールに保ち、発泡剤の完全な可溶化を可能にした。
【0150】
工程2の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0151】
圧力が解放される直前、工程2の終了時における濃度プロファイルは一定であり、COの約6重量%に等しい。
【0152】
この濃度プロファイルから、圧力の解放とともに、密度(約0.1g/cm)の観点及びモルフォロジー(平均気泡サイズ50μm)の観点の両方から均一な発泡があった。
【0153】
この種類の均一な構造は、技術水準の典型である。
【0154】
空間横座標「円柱軸」xの関数として、最大圧力での平衡濃度に対するパーセンテージとして表された、段階2の終了時(発泡直前)におけるCO濃度値を示すグラフが図4Aに示されている。得られた発泡体の走査電子顕微鏡画像を図4Bに示す。
【0155】
<実施例4−比較>
バリアフィルムの組成、幾何学的形状及び配置について、実施例1に記載したものと類似のPS試料を、室温において、図1に示され先に記載されたバッチ発泡装置の反応器に収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0156】
次いで、表4に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO気体の可溶化工程を施した。
【0157】
【表4】
【0158】
表4に示すように、圧力プロファイルは、次の2つの工程を含む:
・工程1において、膨張するCO気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から100バールにした;
・工程2において、圧力を20分間、100バールに維持した;
【0159】
工程2の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0160】
圧力が解放される直前、工程2の終了時に、濃度プロファイルは、科学的及び技術的文献に広く記載されている誤差関数(erf)によって記述されるものである。
【0161】
特に、シュウ・シーらの「Fabrication of functionally graded porous polymer via supercritical CO foaming」、 Composites:Part B 42 (2011) 318−325頁に記載されているように、円筒状ディスク内の発泡剤の濃度は、外側から内側へと段階的に変化する。外層において、外部表面近くの気体濃度は6%重量であり、一方、内側の層では、溶解時間(この場合20分)が完全な溶解に必要な時間よりもはるかに低いため、ゼロである。
【0162】
空間横座標「円柱軸」xの関数として、最大圧力での平衡濃度に対するパーセンテージとして表された、段階2の終了時(発泡直前)におけるCO濃度値を示すグラフが図5Aに示されている。得られた発泡体の走査電子顕微鏡画像を図5Bに示す。
【0163】
この発泡体において、約0.1g/cmの密度及び微細なモルフォロジーで発泡した底面近くの2つ、及び非発泡の中心領域の、3つの異なる発泡領域が認識され、識別できた。特に、発泡領域は不均一なモルフォロジーを有しており、単位体積当たりの気泡数は、外表面から内表面に向かって段階的に減少し(それに対応して気泡のサイズも大きくなり)、外から内への気体濃度が低いことを示している。この種類の構造は、当業者には既知であり(シュウ・シーらの「Fabrication of functionally graded porous polymer via supercritical CO foaming」、 Composites:Part B 42 (2011) 318−325頁)、一定の外部圧力における発泡剤の物質移動の問題に対する「誤差関数」解に由来する。したがって、例えば、発泡/非発泡層の厚さ及び/又は勾配領域の幅を変更するなど、構造を変える可能性はない。その上、なおさら、発泡剤の雰囲気に曝される外部表面に関して対称性の理由によって規定されたものでなければ、厚み濃度に非単調なパターンを有することは不可能である。
【0164】
<実施例5−発明>
バリアフィルムの組成、幾何学的形状及び配置について、実施例1に記載したものと類似のPS試料を、室温において、図1に示され先に記載されたバッチ発泡装置の反応器に収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0165】
次いで、表5に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO気体の可溶化工程を施した。
【0166】
【表5】
【0167】
表5に示すように、圧力プロファイルは次の4つの段階を含む:
・工程1において、膨張するCO気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から200バールにした;
・工程2において、膨張するCO気体の圧力を9.6分間、200バールに保った;
・工程3において、膨張するCO気体の圧力を200バールから100バールまで0.2分間(12秒)で減少させた;
・工程4において、膨張するCO気体の圧力を5分間、100バールに保った;
【0168】
工程4の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0169】
圧力が解放される直前、工程4の終了時において、サトウらによる「ポリ(酢酸ビニル)及びポリスチレン中の二酸化炭素の溶解度及び拡散係数」、The Journal of Supercritical Fluids 19 (2001)187−198頁に報告されている100℃でのPS中のCO拡散率に関するデータを使用して、コムソル・マルチフィジックス(Comsol Multiphysics)10.0シミュレーションソフトウェアを使用して計算された濃度プロファイル及び上記の幾何学的配置は、図6Aに示される結果となった。
【0170】
特に、高濃度の発泡剤をもつ底面近くの2つ、及び低濃度の発泡剤をもつ中央領域の、3つの異なる発泡領域が発泡円筒ディスクにおいて認識され、識別された。図5Aに示された濃度プロファイルとは異なり、この場合、プロファイルは高濃度の領域で最初は平坦であり、その後内側に向かって減少する。一方、図5Aの場合、気体濃度が一定の領域は得られなかった。
【0171】
この濃度プロファイルから、圧力の解放に際し、異なる領域の異なる発泡能が見出された。
【0172】
高濃度の発泡剤をもつ領域は、発泡条件に依存しているモルフォロジー及び密度で発泡したが、発泡剤を欠く中央領域は、高濃度領域と同じ操作条件であっても発泡しなかった。
【0173】
特に、図6Bは、明らかな3つの層構造をもつ、生成した発泡体の断面の走査電子顕微鏡画像を示す。底面近くの2つの領域は、約0.1g/cmの密度と約20μmの最小細孔サイズで発泡したが、中心領域は発泡しなかった。しかしながら、図5Bに記載された場合とは異なり、この場合、一定の濃度をもつ最も外側の領域の結果として、発泡モルフォロジーはより均一であり、さらに内側のみが、より低い気体濃度の結果として、(平均サイズが増加し)気泡の数が減少する。
【0174】
<実施例6−発明>
バリアフィルムの組成、幾何学的形状及び配置について、実施例1に記載したものと類似のPS試料を、室温において、図1に示され先に記載されたバッチ発泡装置の反応器に収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0175】
次いで、表6に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO及び134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)気体の可溶化工程を施した。
【0176】
【表6】
【0177】
表6に示すように、圧力プロファイルは、次の4つの段階を含む:
・工程1において、膨張するCO気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から100バールにした;
・工程2において、膨張するCO気体の圧力を9.6分間、100バールに保った;
・工程3において、膨張するCO気体の圧力を100バールから0バールまで0.2分(12秒)で低下させた;同時に、同じ工程において、外部の圧力が平衡化した一方で、より大きい分子量の第2の気体134aを使用して、合計外部圧力を100バールに維持した;
・工程4において、134aの気体圧を2分間、100バールに保った;
【0178】
工程4の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0179】
圧力が解放される直前、工程4の終了時において、サトウらによる「ポリ(酢酸ビニル)及びポリスチレン中の二酸化炭素の溶解度及び拡散係数」、The Journal of Supercritical Fluids 19 (2001)187−198頁に報告されている100℃でのPS中のCO拡散率に関するデータを使用して、コムソル・マルチフィジックス(Comsol Multiphysics)10.0シミュレーションソフトウェアを使用して計算された濃度プロファイル及び上記の幾何学的配置は、図7Aに示される結果となった。この計算を使用するために、気体134aの拡散係数は、COの拡散係数よりもはるかに高く設定され、全ての実際的な影響について、ポリマー中の134aの吸収は無視された。
【0180】
特に、高濃度の発泡剤をもつ底面近くの2つ、及び低濃度(0付近)の発泡剤をもつ中央領域の、3つの異なる発泡領域が発泡円筒ディスクにおいて認識され、識別された。図5Aに示した濃度プロファイルとは異なり、この場合、CO濃度は表面付近で低い。
【0181】
この濃度プロファイルから、圧力の解放に際し、異なる領域の異なる発泡能が見出された。
【0182】
高濃度の発泡剤をもつ領域は、発泡条件に依存しているモルフォロジー及び密度で発泡したが、発泡剤を欠く中央の領域は発泡しなかった。
【0183】
特に、図7Bは、明らかな3つの層構造をもつ、生成した発泡体の断面の走査電子顕微鏡画像を示す。底面近くの2つの領域は、発泡したが、中心領域は発泡していなかった。しかしながら、図5Bに記載された場合とは異なり、この場合、発泡モルフォロジーは、図7Aに示された圧力プロファイルに対応して、気泡の密度が外側から内側に向かって移動し、最初に増加し、次に減少する2つの勾配によって記載することができる。
【0184】
<実施例7−比較>
この実施例において、使用されるポリマーは、ベルサリス社(マントア、イタリア)によって供給される、コードN2380のポリスチレン(PS)であり、それぞれ300kDa、1.05g/cm及び、200℃及び10kgにおいて2.0g/10minに等しい、平均分子量、密度及びメルトフローインデックスをもつ。
【0185】
試料は、図8に概略的に示す直径1mmのPS球から成る。これらの物体は、いわゆる予備発泡ビーズを、予備発泡ビーズの焼結方法の下流で最終製品を創出するために水蒸気を使用するシステムにおいて、焼結させるために使用される。このシステムでは、物質移動は半径方向に起こり、一次元の問題として研究できる。
【0186】
バリア層を全く含まない試料を、室温において、図1に示され先に記載されたバッチ発泡システムに収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0187】
次いで、表7に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO気体の可溶化工程を施した。
【0188】
【表7】
【0189】
表7に示すように、圧力プロファイルは、次の2つの工程を含む:
・工程1において、膨張するCO気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から100バールにした;
・工程2において、膨張するCO気体の圧力を10分間、100バールに保ち、発泡剤の完全な可溶化を可能にした。
【0190】
工程2の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0191】
圧力が解放される直前、工程2の終了時における濃度プロファイルは一定であり、COの約6%重量に等しい。気体濃度プロファイルを図8Aに示す。
【0192】
この濃度プロファイルから、圧力の解放とともに、密度(約0.1g/cm)の観点及びモルフォロジー(平均気泡サイズ50μm)の観点の両方から均一な発泡があった。
【0193】
この種類の均一な構造は、技術水準の典型である。
【0194】
得られた発泡体の走査電子顕微鏡画像を図8Bに示す。
【0195】
<実施例8−発明>
バリアフィルムの組成、幾何学的形状及び欠如について、実施例7に記載されたものと類似のPSの試料を、室温において、図1に示され先に記載されたバッチ発泡装置の反応器に収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0196】
次いで、表8に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO及びN気体の可溶化段階を施した。
【0197】
【表8】
【0198】
表8に示すように、圧力プロファイルは、次の4つの段階を含む:
・工程1において、膨張するCO気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から100バールにした;
・工程2において、膨張するCO気体の圧力を10分間、100バールに保ち、発泡剤の完全な可溶化を可能にした;
・工程3においてCOをNと交換した
・工程4において、膨張するN気体の圧力を0.5分間、100バールに保った。
【0199】
工程4の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0200】
圧力が解放される直前、工程2の終了時における2つの気体の濃度プロファイルを図9Aに示す。
【0201】
この濃度プロファイルから、圧力の解放に伴い、密度の観点及びモルフォロジー観点の両方からバイモーダル(bimodal)な発泡があった。
【0202】
得られた発泡体の走査電子顕微鏡画像を図9Bに示す。特に、外層では、発泡剤としてNを使用して発泡させたためモルフォロジーが非常に微細で、中央領域では、COで発泡させたため気泡密度はより低くなったことに留意されたい。文献では、(同じ圧力で)低濃度にもかかわらず、NはCOよりも大きな核形成能を有することが広く証明されており、これはCOの使用の場合において低密度を決定する。
【0203】
<実施例9−発明>
バリアフィルムの組成、幾何学的形状及び欠如について、実施例7に記載されたものと類似のPSの試料を、室温において、図1に示され先に記載されたバッチ発泡装置の反応器に収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0204】
次いで、表9に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO及び134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)気体の可溶化工程を施した。
【0205】
【表9】
表1に示すように、圧力プロファイルは次の4つの段階を含む:
・工程1において、膨張するCO気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から100バールにした;
・工程2において、膨張する気体圧を10分間、100バールに保ち、発泡剤の完全な可溶化を可能にした;
・工程3において、COをもう1つの気体(134a)と交換した;
・工程4において、膨張する134aの気体の圧力を2分間、100バールに保った。
【0206】
工程4の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0207】
圧力が解放される直前、工程2の終了時における2つの気体の濃度プロファイルを図10Aに示す。
【0208】
この濃度プロファイルから、圧力が解放される時には、発泡は中央の層においてのみ見られた。
【0209】
得られた発泡体の走査電子顕微鏡画像を図10Bに示す。特に、約50μmの発泡していない外層が存在し、次いで発泡した内部コアどのように存在するかに留意されたい。このモルフォロジーは飽和条件を変化させなければ得ることができない。
【0210】
<実施例10−発明>
バリアフィルムの組成、幾何学的配置及び配置について、実施例1に記載したものと類似のPSの試料を、2つの底面(図2Aの表面Σ)の一方に、ポリ(ビニルアルコール)、PVA、100ミクロン厚の重合体フィルムで被覆した。このポリマーは、当該ポリスチレンのものよりも約2桁低い二酸化炭素拡散率を有し、円筒状試料の中心線の底面に平行な面に関して非対称な濃度プロファイルを得るために効果的に使用することができる。この試料を、室温において、図1に示され先に記載されたバッチ発泡システムの反応器に収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0211】
次いで、表10に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO気体の可溶化工程を施した。
【0212】
【表10】
【0213】
表10に示すように、圧力プロファイルは次の4つの段階を含む:
・工程1において、膨張するCO気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から130バールにした;
・工程2において、膨張するCO気体の圧力を10時間(600分)、130バールに保ち、発泡剤の完全な可溶化を可能にした;
・工程3において、膨張するCO気体の圧力を10分の線形傾斜で80バールまで減少させた;
・工程4において、膨張するCO気体の圧力を10分の線形傾斜で130バールまで上昇させた。
【0214】
工程4の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0215】
圧力が解放される直前、工程2の終了時における2つの気体の濃度プロファイルを図11Aに示す。
【0216】
この濃度プロファイルから、圧力の解放に際し、異なる領域の異なる発泡能が見出された。
【0217】
高濃度の発泡剤をもつ領域は、発泡条件に依存しているモルフォロジー及び密度でより発泡したが、低濃度の発泡剤をもつ領域は発泡が少なかった。
【0218】
特に、図11Bは、(図11Bの画像に「試料の中心線」として示されている)試料の中心に関して、明らかに非対称の4つの層構造をもつ、生成した発泡体の断面の走査電子顕微鏡画像を示す。視線を誘導するために、SEM顕微鏡写真の異なる領域における細孔サイズの定性的傾向を示す図を挿入した。縦の点線は、異なる領域の輪郭を示している。
【0219】
<実施例11−発明>
組織工学の分野で使用される生体適合性ポリエステルであるポリカプロラクトン、PCLの試料を、発泡材料を制限し成形するように、図12Aに示された大腿骨の上端部の形状を有する多孔性金属容器に導入し、容器を、室温において、図1に示され先に記載されたバッチ発泡装置の反応器内に収容した。次いで、反応器を閉じ、5分間、80℃の温度に、次いで60℃にした。
【0220】
次いで、表11に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO及びN気体の可溶化段階を施した。
【0221】
【表11】
【0222】
表8に示すように、圧力プロファイルは次の4つの段階を含む:
・工程1において、膨張するCO気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から100バールにした;
・工程2において、膨張するCO気体圧を10分間、100バールに保ち、発泡剤の完全な可溶化を可能にした。
・工程3において、COをNと交換した
・工程4において、膨張するN気体の圧力を3分間、100バールに保った。
【0223】
工程4の間、温度を40℃にし、工程4の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0224】
圧力が解放される直前、工程4の終了時における2つの気体の濃度プロファイルは図9Aに示されたものと類似していた。
【0225】
この濃度プロファイルから、圧力の解放に伴い、密度の観点及びモルフォロジーの観点の両方から二重の発泡があった。
【0226】
得られた発泡体の走査電子顕微鏡画像を図12B及び12Cに示す。図12Bは縦方向の断面を示し、図12Cは横方向の断面を示す。図12Dに示されている大腿骨の骨構造との類似性は驚くべきものである。特に、図12Dの直線点線は、発泡試料の図12Bに示されるものと非常に類似する実際の大腿骨構造の領域を示し、一方、図12Dの円形線は、発泡試料の図12Cに示されるものと非常に類似する実際の大腿骨構造の領域を示す。鋳型の充填中に得られた、実際の大腿骨と同様の図12Cの配向及び細長い孔の(発泡相の間、細孔はポリマーのフローラインに従う)形状に留意されたい。
【0227】
したがって、本発明の方法を用いることにより、容易かつ低コストで人工骨プロテーゼを創出することができる。一般に、鋳型、ポリマー充填のレベル、可溶化工程、及び発泡中のポリマーの鋳型充填の流体力学を適切に設計することによって、所望のセルモルフォロジー、密度及び配向をもつ多勾配多孔質構造を創出し、発泡材料の構造的及び機能的異方性特性を最適化することが可能である。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図12D
【国際調査報告】