【実施例】
【0114】
<実験部>
発泡体試料の調製のために、
図1に示されたバッチ発泡システムを使用したが、そのいくつかの詳細を以下に示す。
図1は、本発明で使用された不連続発泡装置の写真(
図1A)及び図(
図1B)を示す。
【0115】
反応器は円筒形で、熱調節及び加圧されており、容量は0.3L(HiP、BC−1型)である。反応器は、関連する方法パラメータの測定及び制御を可能にするために改良された。
【0116】
温度制御には、加熱要素として電熱ヒータ(11)を使用し、冷却要素としてオイルバスをもつ熱交換器(12)を使用した。
【0117】
ヒータ(11)及び熱交換器(12)は、PIDサーモレギュレータ(アスコンX 1モデル)によって制御され、それは、Pt100プローブ(4)を使用して反応器内の温度を読み取る。
【0118】
飽和工程中の圧力を測定し、発泡剤の放出中の圧力パターンを記録するために、シェービズ(Schaevitz)圧力変換器、モデルP943(3)を使用した。弁(1)を膨張気体供給源に接続し、一方、弁(2)を真空ポンプに接続した。
【0119】
圧力解放システムは、HiPボール排出弁、モデル15−71 NFB(5)、HiP電気機械アクチュエータ、モデル15−72 NFB TSR8(6)、及び圧縮空気用配管(8)及び電磁弁作動信号(7)用ケーブル(9)に接続された電磁弁(7)から成る。このシステムにより、弁の開放を再現することができた。圧力解放中の経時的な圧力パターンP(t)を、DAQ PCI6036Eデータ収集システム、ナショナルインスツルメンツ(National Instruments)社、オースティン、テキサス州、アメリカ合衆国、を使用して記録した。
【0120】
圧力プログラムは、テレダイン(Teledyne) ISCO 500 D体積ポンプ(リンカーン ネブラスカ州、 アメリカ合衆国)によって管理された。ポンプ制御装置のシリアルインターフェースにより、コンピュータによりポンプを制御し、いずれかの圧力プログラムを行うことが可能であった。さらに、コントローラは異なる流体のために最大4つのポンプを処理できる。
【0121】
可溶化工程の変化し得る条件の創出は、以下の実施例に記載されるように、発泡剤の可溶化圧力の変化、周期的パターン(例えば、三角波又は正弦波)、又は非周期的パターン(直線や曲線のプロファイル)により生じ得る。
【0122】
<実施例1−発明>
この実施例において、使用されるポリマーは、ベルサリス社(Versalis SpA)(マントア(Mantua)、イタリア)によって供給される、コードN2380のポリスチレン(PS)であり、それぞれ300kDa、1.05g/cm
3及び、200℃及び10kgにおいて2.0g/10minに等しい、平均分子量、密度及びメルトフローインデックスをもつ。
【0123】
試料は、直径25mm、厚さ2.2mmのPSの円筒ディスクから成る。それらの側面(
図2AにおけるΩ)を(発泡剤を完全に通さない)金属バリアフィルムで保護し、曝されて発泡剤と接触する面は、上下2つの底(
図2AのΣとΣ’)のみである。このように物質移動は、円筒軸方向において起こり、一次元の問題として研究できる。バリアフィルムの使用は、この場合、及び実施例2、3、4、5及び6に記載されたものにおいて、発泡される試料が円筒状である場合、材料移動の一次元の処理をより厳密にする必要性のみによって決定される。多層構造を得るために必須であるとは考えられていない。
【0124】
試料を、室温において、
図1に示した及び先に記載されたバッチ発泡システムに収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0125】
次いで、表1に記載された圧力プロファイルを使用し、システムに膨張するCO
2気体の可溶化工程を施した。
【0126】
【表1】
【0127】
表1に示すように、圧力プロファイルは、次の3つの段階を含む:
・工程1において、膨張するCO
2気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜(ramp)で大気圧から150バールにした。
・工程2において、膨張するCO
2気体の圧力を2.6分(156秒)の線形傾斜で150バールから200バールまで上昇させた。
・工程3において、膨張するCO
2気体の圧力を5.2分(312秒)の線形傾斜で200バールから100バールまで減少させた。
【0128】
工程3の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0129】
圧力が解放される直前、工程3の終了時において、サトウらによる「ポリ(酢酸ビニル)及びポリスチレン中の二酸化炭素の溶解度及び拡散係数」、The Journal of Supercritical Fluids 19 (2001) 187−198頁に報告されている100℃でのPS中のCO
2拡散率に関するデータを使用して、コムソル・マルチフィジックス(Comsol Multiphysics)10.0シミュレーションソフトウェアを使用して計算された濃度プロファイル及び上記の幾何学的配置は、
図2Bに示される結果となった。
【0130】
特に、高濃度の発泡剤をもつ底面近くの2つ、及び低濃度の発泡剤をもつ中央領域の、3つの異なる発泡領域が発泡円筒ディスクにおいて認識され、識別された。この濃度プロファイルから、圧力の解放に際し、異なる領域の異なる発泡能が見出された。
【0131】
高濃度の発泡剤をもつ領域は発泡条件(ここで、特に100℃の温度、約6重量%の濃度、1000bar/sの圧力解放速度)に依存しているモルフォロジー及び密度で発泡したが、発泡剤を欠く中央領域は、高濃度領域と同じ操作条件であっても発泡しなかった。
【0132】
特に、
図2Cは、明らかな3つの層構造をもつ、生成した発泡体の断面の走査電子顕微鏡画像を示す。底面近くの2つの領域は、約0.1g/cm
3の密度と約20μmの最小細孔サイズで発泡したが、中心領域は発泡しなかった。濃度プロファイルの段階的な変化を使用することにより、3つの領域の間に明確な分離は創出されなかった。逆に、密度及びモルフォロジーの両方の段階的な変化が検出された。特に、ディスクの中心に向かう発泡剤の濃度の減少は、気泡のサイズ(約20μm〜約300μm)の増加と0.1から1g/cm
3の密度の増加をもたらした。特定の可溶化プログラムを使用して、以下の実施例に記載されるように、異なる層の数、厚さ、モルフォロジー及び密度を設計することが可能である。
【0133】
<実施例2−発明>
バリアフィルムの組成、幾何学的形状及び配置について、実施例1に記載したものと類似のPS試料を、室温において、
図1に示され、先に記載されたバッチ発泡装置の反応器に収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0134】
次いで、表2に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO
2気体の可溶化工程を施した。
【0135】
【表2】
【0136】
表2に示すように、圧力プロファイルは、次の4つの段階を含む:
・工程1において、膨張するCO
2気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から130バールにした;
・工程2において、圧力を120分間、130バールに維持した;
・工程3において、膨張するCO
2気体の圧力を9.6分(576秒)の線形傾斜で130バールから80バールまで減少させた;
・工程4において、膨張するCO
2気体の圧力を15.6分(936秒)の線形傾斜で80バールから130バールまで上昇させた。
【0137】
工程4の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0138】
圧力が解放される直前、工程4の終了時において、サトウらによる「ポリ(酢酸ビニル)及びポリスチレン中の二酸化炭素の溶解度及び拡散係数」、The Journal of Supercritical Fluids 19 (2001)187−198頁に報告されている100℃でのPS中のCO
2拡散率に関するデータを使用して、コムソル・マルチフィジックス(Comsol Multiphysics)10.0シミュレーションソフトウェアを使用して計算された濃度プロファイル及び上記の幾何学的配置は、
図3Aに示される結果となった。
【0139】
特に、高濃度の発泡剤をもつ底面近くの2つ、低濃度をもつ中間領域の2つ、及び高濃度の発泡剤を再びもつ中央領域の、5つの異なる発泡領域が発泡円筒ディスクにおいて認識され、識別された。
【0140】
この濃度プロファイルから、圧力の解放に際し、異なる領域の異なる発泡能が見出された。
【0141】
高濃度の発泡剤(表面近くの2つと中央の1)をもつ領域は、発泡条件(ここで、特に100℃温度、約5重量%の濃度、1000bar/sの圧力解放速度)に依存する(
図3Bに「高発泡領域」で示した)モルフォロジー及び密度で発泡し、一方、より少ない発泡剤(約3%の濃度)をもつ2つの中間領域は、(
図3Bに「低発泡領域」で示した)より低い発泡度を有した。
【0142】
特に、
図3B〜
図3Dは、走査型電子顕微鏡で撮影された、明瞭な5つの層構造をもつ、異なる倍率で生成した発泡体の断面のいくつかの画像を示す。底面及び中心領域に近い2つの領域は、約0.1g/cm
3の密度及び約20μmの細孔サイズで、発泡した。2つの中間領域は、0.3g/cm
3の密度及び約80μmの細孔サイズで、あまり発泡していなかった。
【0143】
また、この例では、観測された濃度プロファイルの段階的な変化を使用することにより、異なる領域間の明確な分離は創出されなかった。逆に、密度及びモルフォロジーの両方の段階的な変化が検出された。画像3C及び3Dは、遷移帯のいくつかの拡大を示し、ここで、気泡のサイズの変化に注目することができる。
【0144】
本発明の方法は、シュウ・シーらの「Fabrication of functionally graded porous polymer via supercritical CO
2 foaming」、 Composites:Part B 42 (2011) 318−325頁に記載されている方法とは異なり、幅広い設計の自由度を可能にする。
【0145】
さらに、発泡試料において、
図2C及び3Bに見られるように、当該技術分野で既知の方法で得られた製品に存在するカップリングによって積層された製品とは異なり、モルフォロジーにおける不連続性が形成されないことが観測された。
【0146】
<実施例3−比較>
バリアフィルムの組成、幾何学的形状及び配置について、実施例1に記載したものと類似のPS試料を、室温において、
図1に示され先に記載されたバッチ発泡装置の反応器に収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0147】
次いで、表3に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO
2気体の可溶化工程を施した。
【0148】
【表3】
【0149】
表3に示すように、圧力プロファイルは次の2つの工程を含む:
・工程1において、膨張するCO
2気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から100バールにした;
・工程2において、膨張するCO
2気体圧を180分間、100バールに保ち、発泡剤の完全な可溶化を可能にした。
【0150】
工程2の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0151】
圧力が解放される直前、工程2の終了時における濃度プロファイルは一定であり、CO
2の約6重量%に等しい。
【0152】
この濃度プロファイルから、圧力の解放とともに、密度(約0.1g/cm
3)の観点及びモルフォロジー(平均気泡サイズ50μm)の観点の両方から均一な発泡があった。
【0153】
この種類の均一な構造は、技術水準の典型である。
【0154】
空間横座標「円柱軸」xの関数として、最大圧力での平衡濃度に対するパーセンテージとして表された、段階2の終了時(発泡直前)におけるCO
2濃度値を示すグラフが
図4Aに示されている。得られた発泡体の走査電子顕微鏡画像を
図4Bに示す。
【0155】
<実施例4−比較>
バリアフィルムの組成、幾何学的形状及び配置について、実施例1に記載したものと類似のPS試料を、室温において、
図1に示され先に記載されたバッチ発泡装置の反応器に収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0156】
次いで、表4に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO
2気体の可溶化工程を施した。
【0157】
【表4】
【0158】
表4に示すように、圧力プロファイルは、次の2つの工程を含む:
・工程1において、膨張するCO
2気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から100バールにした;
・工程2において、圧力を20分間、100バールに維持した;
【0159】
工程2の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0160】
圧力が解放される直前、工程2の終了時に、濃度プロファイルは、科学的及び技術的文献に広く記載されている誤差関数(erf)によって記述されるものである。
【0161】
特に、シュウ・シーらの「Fabrication of functionally graded porous polymer via supercritical CO
2 foaming」、 Composites:Part B 42 (2011) 318−325頁に記載されているように、円筒状ディスク内の発泡剤の濃度は、外側から内側へと段階的に変化する。外層において、外部表面近くの気体濃度は6%重量であり、一方、内側の層では、溶解時間(この場合20分)が完全な溶解に必要な時間よりもはるかに低いため、ゼロである。
【0162】
空間横座標「円柱軸」xの関数として、最大圧力での平衡濃度に対するパーセンテージとして表された、段階2の終了時(発泡直前)におけるCO
2濃度値を示すグラフが
図5Aに示されている。得られた発泡体の走査電子顕微鏡画像を
図5Bに示す。
【0163】
この発泡体において、約0.1g/cm
3の密度及び微細なモルフォロジーで発泡した底面近くの2つ、及び非発泡の中心領域の、3つの異なる発泡領域が認識され、識別できた。特に、発泡領域は不均一なモルフォロジーを有しており、単位体積当たりの気泡数は、外表面から内表面に向かって段階的に減少し(それに対応して気泡のサイズも大きくなり)、外から内への気体濃度が低いことを示している。この種類の構造は、当業者には既知であり(シュウ・シーらの「Fabrication of functionally graded porous polymer via supercritical CO
2 foaming」、 Composites:Part B 42 (2011) 318−325頁)、一定の外部圧力における発泡剤の物質移動の問題に対する「誤差関数」解に由来する。したがって、例えば、発泡/非発泡層の厚さ及び/又は勾配領域の幅を変更するなど、構造を変える可能性はない。その上、なおさら、発泡剤の雰囲気に曝される外部表面に関して対称性の理由によって規定されたものでなければ、厚み濃度に非単調なパターンを有することは不可能である。
【0164】
<実施例5−発明>
バリアフィルムの組成、幾何学的形状及び配置について、実施例1に記載したものと類似のPS試料を、室温において、
図1に示され先に記載されたバッチ発泡装置の反応器に収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0165】
次いで、表5に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO
2気体の可溶化工程を施した。
【0166】
【表5】
【0167】
表5に示すように、圧力プロファイルは次の4つの段階を含む:
・工程1において、膨張するCO
2気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から200バールにした;
・工程2において、膨張するCO
2気体の圧力を9.6分間、200バールに保った;
・工程3において、膨張するCO
2気体の圧力を200バールから100バールまで0.2分間(12秒)で減少させた;
・工程4において、膨張するCO
2気体の圧力を5分間、100バールに保った;
【0168】
工程4の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0169】
圧力が解放される直前、工程4の終了時において、サトウらによる「ポリ(酢酸ビニル)及びポリスチレン中の二酸化炭素の溶解度及び拡散係数」、The Journal of Supercritical Fluids 19 (2001)187−198頁に報告されている100℃でのPS中のCO
2拡散率に関するデータを使用して、コムソル・マルチフィジックス(Comsol Multiphysics)10.0シミュレーションソフトウェアを使用して計算された濃度プロファイル及び上記の幾何学的配置は、
図6Aに示される結果となった。
【0170】
特に、高濃度の発泡剤をもつ底面近くの2つ、及び低濃度の発泡剤をもつ中央領域の、3つの異なる発泡領域が発泡円筒ディスクにおいて認識され、識別された。
図5Aに示された濃度プロファイルとは異なり、この場合、プロファイルは高濃度の領域で最初は平坦であり、その後内側に向かって減少する。一方、
図5Aの場合、気体濃度が一定の領域は得られなかった。
【0171】
この濃度プロファイルから、圧力の解放に際し、異なる領域の異なる発泡能が見出された。
【0172】
高濃度の発泡剤をもつ領域は、発泡条件に依存しているモルフォロジー及び密度で発泡したが、発泡剤を欠く中央領域は、高濃度領域と同じ操作条件であっても発泡しなかった。
【0173】
特に、
図6Bは、明らかな3つの層構造をもつ、生成した発泡体の断面の走査電子顕微鏡画像を示す。底面近くの2つの領域は、約0.1g/cm
3の密度と約20μmの最小細孔サイズで発泡したが、中心領域は発泡しなかった。しかしながら、
図5Bに記載された場合とは異なり、この場合、一定の濃度をもつ最も外側の領域の結果として、発泡モルフォロジーはより均一であり、さらに内側のみが、より低い気体濃度の結果として、(平均サイズが増加し)気泡の数が減少する。
【0174】
<実施例6−発明>
バリアフィルムの組成、幾何学的形状及び配置について、実施例1に記載したものと類似のPS試料を、室温において、
図1に示され先に記載されたバッチ発泡装置の反応器に収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0175】
次いで、表6に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO
2及び134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)気体の可溶化工程を施した。
【0176】
【表6】
【0177】
表6に示すように、圧力プロファイルは、次の4つの段階を含む:
・工程1において、膨張するCO
2気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から100バールにした;
・工程2において、膨張するCO
2気体の圧力を9.6分間、100バールに保った;
・工程3において、膨張するCO
2気体の圧力を100バールから0バールまで0.2分(12秒)で低下させた;同時に、同じ工程において、外部の圧力が平衡化した一方で、より大きい分子量の第2の気体134aを使用して、合計外部圧力を100バールに維持した;
・工程4において、134aの気体圧を2分間、100バールに保った;
【0178】
工程4の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0179】
圧力が解放される直前、工程4の終了時において、サトウらによる「ポリ(酢酸ビニル)及びポリスチレン中の二酸化炭素の溶解度及び拡散係数」、The Journal of Supercritical Fluids 19 (2001)187−198頁に報告されている100℃でのPS中のCO
2拡散率に関するデータを使用して、コムソル・マルチフィジックス(Comsol Multiphysics)10.0シミュレーションソフトウェアを使用して計算された濃度プロファイル及び上記の幾何学的配置は、
図7Aに示される結果となった。この計算を使用するために、気体134aの拡散係数は、CO
2の拡散係数よりもはるかに高く設定され、全ての実際的な影響について、ポリマー中の134aの吸収は無視された。
【0180】
特に、高濃度の発泡剤をもつ底面近くの2つ、及び低濃度(0付近)の発泡剤をもつ中央領域の、3つの異なる発泡領域が発泡円筒ディスクにおいて認識され、識別された。
図5Aに示した濃度プロファイルとは異なり、この場合、CO
2濃度は表面付近で低い。
【0181】
この濃度プロファイルから、圧力の解放に際し、異なる領域の異なる発泡能が見出された。
【0182】
高濃度の発泡剤をもつ領域は、発泡条件に依存しているモルフォロジー及び密度で発泡したが、発泡剤を欠く中央の領域は発泡しなかった。
【0183】
特に、
図7Bは、明らかな3つの層構造をもつ、生成した発泡体の断面の走査電子顕微鏡画像を示す。底面近くの2つの領域は、発泡したが、中心領域は発泡していなかった。しかしながら、
図5Bに記載された場合とは異なり、この場合、発泡モルフォロジーは、
図7Aに示された圧力プロファイルに対応して、気泡の密度が外側から内側に向かって移動し、最初に増加し、次に減少する2つの勾配によって記載することができる。
【0184】
<実施例7−比較>
この実施例において、使用されるポリマーは、ベルサリス社(マントア、イタリア)によって供給される、コードN2380のポリスチレン(PS)であり、それぞれ300kDa、1.05g/cm
3及び、200℃及び10kgにおいて2.0g/10minに等しい、平均分子量、密度及びメルトフローインデックスをもつ。
【0185】
試料は、
図8に概略的に示す直径1mmのPS球から成る。これらの物体は、いわゆる予備発泡ビーズを、予備発泡ビーズの焼結方法の下流で最終製品を創出するために水蒸気を使用するシステムにおいて、焼結させるために使用される。このシステムでは、物質移動は半径方向に起こり、一次元の問題として研究できる。
【0186】
バリア層を全く含まない試料を、室温において、
図1に示され先に記載されたバッチ発泡システムに収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0187】
次いで、表7に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO
2気体の可溶化工程を施した。
【0188】
【表7】
【0189】
表7に示すように、圧力プロファイルは、次の2つの工程を含む:
・工程1において、膨張するCO
2気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から100バールにした;
・工程2において、膨張するCO
2気体の圧力を10分間、100バールに保ち、発泡剤の完全な可溶化を可能にした。
【0190】
工程2の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0191】
圧力が解放される直前、工程2の終了時における濃度プロファイルは一定であり、CO
2の約6%重量に等しい。気体濃度プロファイルを
図8Aに示す。
【0192】
この濃度プロファイルから、圧力の解放とともに、密度(約0.1g/cm
3)の観点及びモルフォロジー(平均気泡サイズ50μm)の観点の両方から均一な発泡があった。
【0193】
この種類の均一な構造は、技術水準の典型である。
【0194】
得られた発泡体の走査電子顕微鏡画像を
図8Bに示す。
【0195】
<実施例8−発明>
バリアフィルムの組成、幾何学的形状及び欠如について、実施例7に記載されたものと類似のPSの試料を、室温において、
図1に示され先に記載されたバッチ発泡装置の反応器に収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0196】
次いで、表8に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO
2及びN
2気体の可溶化段階を施した。
【0197】
【表8】
【0198】
表8に示すように、圧力プロファイルは、次の4つの段階を含む:
・工程1において、膨張するCO
2気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から100バールにした;
・工程2において、膨張するCO
2気体の圧力を10分間、100バールに保ち、発泡剤の完全な可溶化を可能にした;
・工程3においてCO
2をN
2と交換した
・工程4において、膨張するN
2気体の圧力を0.5分間、100バールに保った。
【0199】
工程4の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0200】
圧力が解放される直前、工程2の終了時における2つの気体の濃度プロファイルを
図9Aに示す。
【0201】
この濃度プロファイルから、圧力の解放に伴い、密度の観点及びモルフォロジー観点の両方からバイモーダル(bimodal)な発泡があった。
【0202】
得られた発泡体の走査電子顕微鏡画像を
図9Bに示す。特に、外層では、発泡剤としてN
2を使用して発泡させたためモルフォロジーが非常に微細で、中央領域では、CO
2で発泡させたため気泡密度はより低くなったことに留意されたい。文献では、(同じ圧力で)低濃度にもかかわらず、N
2はCO
2よりも大きな核形成能を有することが広く証明されており、これはCO
2の使用の場合において低密度を決定する。
【0203】
<実施例9−発明>
バリアフィルムの組成、幾何学的形状及び欠如について、実施例7に記載されたものと類似のPSの試料を、室温において、
図1に示され先に記載されたバッチ発泡装置の反応器に収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0204】
次いで、表9に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO
2及び134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)気体の可溶化工程を施した。
【0205】
【表9】
表1に示すように、圧力プロファイルは次の4つの段階を含む:
・工程1において、膨張するCO
2気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から100バールにした;
・工程2において、膨張する気体圧を10分間、100バールに保ち、発泡剤の完全な可溶化を可能にした;
・工程3において、CO
2をもう1つの気体(134a)と交換した;
・工程4において、膨張する134aの気体の圧力を2分間、100バールに保った。
【0206】
工程4の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0207】
圧力が解放される直前、工程2の終了時における2つの気体の濃度プロファイルを
図10Aに示す。
【0208】
この濃度プロファイルから、圧力が解放される時には、発泡は中央の層においてのみ見られた。
【0209】
得られた発泡体の走査電子顕微鏡画像を
図10Bに示す。特に、約50μmの発泡していない外層が存在し、次いで発泡した内部コアどのように存在するかに留意されたい。このモルフォロジーは飽和条件を変化させなければ得ることができない。
【0210】
<実施例10−発明>
バリアフィルムの組成、幾何学的配置及び配置について、実施例1に記載したものと類似のPSの試料を、2つの底面(
図2Aの表面Σ)の一方に、ポリ(ビニルアルコール)、PVA、100ミクロン厚の重合体フィルムで被覆した。このポリマーは、当該ポリスチレンのものよりも約2桁低い二酸化炭素拡散率を有し、円筒状試料の中心線の底面に平行な面に関して非対称な濃度プロファイルを得るために効果的に使用することができる。この試料を、室温において、
図1に示され先に記載されたバッチ発泡システムの反応器に収容した。次いで、反応器を閉じ、100℃の温度にした。
【0211】
次いで、表10に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO
2気体の可溶化工程を施した。
【0212】
【表10】
【0213】
表10に示すように、圧力プロファイルは次の4つの段階を含む:
・工程1において、膨張するCO
2気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から130バールにした;
・工程2において、膨張するCO
2気体の圧力を10時間(600分)、130バールに保ち、発泡剤の完全な可溶化を可能にした;
・工程3において、膨張するCO
2気体の圧力を10分の線形傾斜で80バールまで減少させた;
・工程4において、膨張するCO
2気体の圧力を10分の線形傾斜で130バールまで上昇させた。
【0214】
工程4の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0215】
圧力が解放される直前、工程2の終了時における2つの気体の濃度プロファイルを
図11Aに示す。
【0216】
この濃度プロファイルから、圧力の解放に際し、異なる領域の異なる発泡能が見出された。
【0217】
高濃度の発泡剤をもつ領域は、発泡条件に依存しているモルフォロジー及び密度でより発泡したが、低濃度の発泡剤をもつ領域は発泡が少なかった。
【0218】
特に、
図11Bは、(
図11Bの画像に「試料の中心線」として示されている)試料の中心に関して、明らかに非対称の4つの層構造をもつ、生成した発泡体の断面の走査電子顕微鏡画像を示す。視線を誘導するために、SEM顕微鏡写真の異なる領域における細孔サイズの定性的傾向を示す図を挿入した。縦の点線は、異なる領域の輪郭を示している。
【0219】
<実施例11−発明>
組織工学の分野で使用される生体適合性ポリエステルであるポリカプロラクトン、PCLの試料を、発泡材料を制限し成形するように、
図12Aに示された大腿骨の上端部の形状を有する多孔性金属容器に導入し、容器を、室温において、
図1に示され先に記載されたバッチ発泡装置の反応器内に収容した。次いで、反応器を閉じ、5分間、80℃の温度に、次いで60℃にした。
【0220】
次いで、表11に記載された圧力プロファイルを使用して、システムに膨張するCO
2及びN
2気体の可溶化段階を施した。
【0221】
【表11】
【0222】
表8に示すように、圧力プロファイルは次の4つの段階を含む:
・工程1において、膨張するCO
2気体の圧力を0.2分(12秒)の線形傾斜で大気圧から100バールにした;
・工程2において、膨張するCO
2気体圧を10分間、100バールに保ち、発泡剤の完全な可溶化を可能にした。
・工程3において、CO
2をN
2と交換した
・工程4において、膨張するN
2気体の圧力を3分間、100バールに保った。
【0223】
工程4の間、温度を40℃にし、工程4の終了時に、発泡のために圧力を瞬間的に(1000bar/sの最高速度で)解放した。
【0224】
圧力が解放される直前、工程4の終了時における2つの気体の濃度プロファイルは
図9Aに示されたものと類似していた。
【0225】
この濃度プロファイルから、圧力の解放に伴い、密度の観点及びモルフォロジーの観点の両方から二重の発泡があった。
【0226】
得られた発泡体の走査電子顕微鏡画像を
図12B及び12Cに示す。
図12Bは縦方向の断面を示し、
図12Cは横方向の断面を示す。
図12Dに示されている大腿骨の骨構造との類似性は驚くべきものである。特に、
図12Dの直線点線は、発泡試料の
図12Bに示されるものと非常に類似する実際の大腿骨構造の領域を示し、一方、
図12Dの円形線は、発泡試料の
図12Cに示されるものと非常に類似する実際の大腿骨構造の領域を示す。鋳型の充填中に得られた、実際の大腿骨と同様の
図12Cの配向及び細長い孔の(発泡相の間、細孔はポリマーのフローラインに従う)形状に留意されたい。
【0227】
したがって、本発明の方法を用いることにより、容易かつ低コストで人工骨プロテーゼを創出することができる。一般に、鋳型、ポリマー充填のレベル、可溶化工程、及び発泡中のポリマーの鋳型充填の流体力学を適切に設計することによって、所望のセルモルフォロジー、密度及び配向をもつ多勾配多孔質構造を創出し、発泡材料の構造的及び機能的異方性特性を最適化することが可能である。