(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-522477(P2021-522477A)
(43)【公表日】2021年8月30日
(54)【発明の名称】クロマトグラフィカラムの品質評価のための遷移分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/86 20060101AFI20210802BHJP
G01N 30/56 20060101ALI20210802BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20210802BHJP
G01N 30/02 20060101ALI20210802BHJP
B01J 20/287 20060101ALI20210802BHJP
B01J 20/288 20060101ALI20210802BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20210802BHJP
B01J 20/285 20060101ALI20210802BHJP
B01D 15/08 20060101ALI20210802BHJP
B01D 15/32 20060101ALI20210802BHJP
B01D 15/34 20060101ALI20210802BHJP
B01D 15/36 20060101ALI20210802BHJP
B01D 15/38 20060101ALI20210802BHJP
【FI】
G01N30/86 V
G01N30/56 Z
G01N30/26 A
G01N30/02 B
B01J20/287
B01J20/288
G01N30/86 P
B01J20/281 R
B01J20/285 N
B01J20/285
B01D15/08
B01D15/32
B01D15/34
B01D15/36
B01D15/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2020-557994(P2020-557994)
(86)(22)【出願日】2019年4月19日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月10日
(86)【国際出願番号】US2019028349
(87)【国際公開番号】WO2019204747
(87)【国際公開日】20191024
(31)【優先権主張番号】62/660,340
(32)【優先日】2018年4月20日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141025
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ランドルフ,ポール
【テーマコード(参考)】
4D017
【Fターム(参考)】
4D017AA09
4D017BA07
4D017CA01
4D017CA05
4D017CA12
4D017CA13
4D017DA03
4D017EB10
(57)【要約】
本開示は、クロマトグラフィカラムを操作する方法を目的とする。この方法は、カラム充填を含むクロマトグラフィカラムの操作中に、カラム出口信号及び累積流量パラメータを、少なくとも1つの移動相遷移フロントの2つ以上の間隔で収集することを含む。モデルガンマ累積分布曲線は、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータに基づいて決定される。モデルガンマ累積分布曲線のパラメータを使用して、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての理論段相当高さ(HETP)値を計算し、計算されたHETP値に基づいてクロマトグラフィカラム充填の品質を評価する。ルーチンのカラムモニタリング中に、HETPの有害な傾向が観察されるか、又は管理限界を超えた場合、溶出液の製品品質、カラムプロセス性能、及び/又は不純物除去データを評価して、特定されたバッチの製品品質を確保する必要がある。製品品質又はカラム性能のいずれかが設定された基準に適合しない場合は、カラムのコンディショニング、再充填又は交換などの適切な是正処置を行い、更なる使用のためにリリースする前に品質評価を行う必要がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィカラムを操作する方法であって、前記方法が、
カラム充填を含む前記クロマトグラフィカラムの第1の操作中に、カラム出口信号及び累積流量パラメータを、少なくとも1つの移動相遷移フロントの2つ以上の間隔で収集する工程と、
前記少なくとも1つの移動相遷移フロントについての収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータに基づいて、上昇遷移フロントについては式Ia又は下降遷移フロントについては式Ibを使用して、モデルガンマ累積分布曲線を決定する工程であって、式Ia又は式Ibは、
【数1】
であり、各式中、Cは所与のVのカラム出口信号であり、Vはカラム体積で除算された累積流量であり、k、θ、及びV
iは曲線を画定するために使用される形状、スケール、及びオフセットパラメータである、モデルガンマ累積分布曲線を決定する工程と、
式II及びモデルガンマ累積分布曲線のパラメータk、θ、及びV
iを使用して、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての理論段相当高さ(HETP)値を計算する工程であって、式IIは、
【数2】
式中、
μ=kθ+V
i
【数3】
L=カラム長さである、理論段相当高さ(HETP)値を計算する工程と、
前記計算されたHETP値に基づいて、クロマトグラフィカラム充填の品質を評価する工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記評価に基づいて、クロマトグラフィカラムのコンディショニング、交換、又は再充填を行うことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クロマトグラフィカラム充填の1つ又は複数の後続の使用中に、対応する移動相遷移フロントの2つ以上の間隔でカラム出口信号及び累積流量パラメータを収集する工程と、
前記クロマトグラフィカラム充填の前記1つ又は複数の後続の各使用中に、前記収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータを使用して、前記決定及び前記計算を実行する工程と、
前記実行に基づいて、前記1つ又は複数の後続の各使用中に、前記クロマトグラフィカラム充填のHETP値を決定する工程と、
前記2つ以上の後続の使用の前記クロマトグラフィカラム充填の前記決定されたHETP値の傾向を収集する工程と、
前記収集された傾向に基づいて、前記クロマトグラフィカラム充填の品質の変化を特定する工程とを更に含み、前記クロマトグラフィカラムのコンディショニング、交換又は再充填は、前記特定に基づくものとなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記カラム充填の前記1つ又は複数の後続の使用における前記クロマトグラフィカラム充填の前記HETP値の増加が、前記カラム充填の1つ又は複数の以前の使用における前記クロマトグラフィカラム充填の前記HETP値と比較して、前記クロマトグラフィカラム充填の品質の低下を特定する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記カラム充填の前記第1の操作中に、2つ以上の異なる移動相遷移フロントのカラム出口信号及び累積流量パラメータを収集し、前記方法が、
前記2つ以上の異なる移動相遷移フロントのそれぞれについて収集された前記カラム出口信号及び累積流量パラメータを使用して、前記決定及び計算を実行する工程であって、前記2つ以上の異なる移動相遷移フロントのそれぞれについてHETP値を独立して計算する、前記決定及び計算を実行する工程と、
前記2つ以上の計算されたHETP値に基づいて、前記クロマトグラフィカラム充填の品質を評価する工程とを更に含み、それにより、前記クロマトグラフィカラムの前記コンディショニング、交換又は再充填は、前記評価に基づくものとなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記移動相遷移フロントが、変性剤を含む移動相から非変性剤を含む移動相への変化によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記移動相遷移フロントが、非変性剤を含む移動相から変性剤を含む移動相への変化によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記移動相遷移フロントが、アルカリ性移動相状態からより酸性の移動相状態への変化によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記移動相遷移フロントが、酸性移動相状態からよりアルカリ性の移動相状態への変化によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記移動相遷移フロントが、有機溶媒を含む移動相から水性移動相への変化によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記移動相遷移フロントが、水性移動相から有機溶媒を含む移動相への変化によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記カラム出口信号が、導電性である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記決定が、
最小信号値を0に設定し、最大導電率値を1に設定することによって、前記移動相遷移フロントの前記収集されたカラム出口信号を正規化する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記収集が、
前記カラム充填を含む前記クロマトグラフィカラムに、第1の移動相を加える工程と、
前記カラム充填を含むクロマトグラフィカラムに、第2の移動相を添加する工程であって、前記第1及び第2の移動相は、異なる検出可能なカラム出口信号を有する、第2の移動相を添加する工程と、
前記第1の移動相と第2の移動相との間で、移動相遷移の2つ以上の間隔で前記カラム出口信号及び累積流量パラメータを収集する工程とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1及び第2の移動相の前記カラム出口信号が、信号ノイズを超える量で信号が異なる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記カラム出口信号及び累積流量パラメータが、移動相遷移フロント全体を通してそれぞれ異なる間隔で収集される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記クロマトグラフィカラム充填が、親和性クロマトグラフィ充填材料、イオン交換クロマトグラフィ充填材料、吸着クロマトグラフィ充填材料、疎水性相互作用クロマトグラフィ充填材料、金属キレート親和性クロマトグラフィ充填材料、サイズ排除クロマトグラフィ充填材料、又は分子排除クロマトグラフィ充填材料からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年4月20日に出願された米国特許仮出願第62/660,340号に対する優先権を主張するものであり、特許仮出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、クロマトグラフィカラムの品質評価の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カラムクロマトグラフィは、治療用タンパク質を産生するための精製プロセスにおいて使用される重要な技術である。カラムの性能は、プロセスがベンチトップから製造プラントまでスケールアップされるまで、及びカラム寿命にわたって維持されなければならない。プロセスをスケールアップするために、カラム径、装置、及びバッファ消費量が増加すると、カラム評価手順の困難さ、充填されたベッドの完全性に対する潜在的な変化、及びロジスティックスが発生する可能性がある。
【0004】
クロマトグラフィカラムの品質評価のための現在の方法は、ピークの最大値から平均値を推定し、半分の高さにおけるピークの幅からの標準偏差を推定することによって、パルス注入後の分散の測定値である理論段相当高さ(HETP)を計算する。この方法の主な制限は、ピーク形状がガウス分布から逸脱している場合、分散(すなわち、HETP)の正確な測定値を提供しないことである。感度の不足を補うために、第2の測定値である非対称性を利用して、ピーク歪度を評価する。この測定値は、最大ピーク高さの10%でのリーディングピーク幅とテーリングピーク幅とを比較している。この手法の限界は、カラム性能の変化に対する感度の欠如をもたらし、カラム性能は実際には許容可能であるが、カラムの再充填又はコンディショニングをもたらすことが多い。カラムの品質評価のための他の方策が報告されている。これらの方策としては、プロセス遷移をモデル化するためにガウス分布又は非ガウス分布を使用することが含まれる(例えば、Larsonら、「Use of Process Data to Assess Chromatographic Performance in Production−Scale Protein Purification Columns」、Biotechnol.Prog.19:485−492(2003年)及びBelousovらの米国特許第9,047,438号及びGangulyの米国特許第8,410,928号を参照)。ガウス法は、注入方法に関して上述したように感度に同じ制限を有し、報告された非ガウス法は複雑な計算を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
繰り返し操作中のクロマトグラフィカラム性能の変化を監視し、カラムがその寿命にわたって実行する有効性を評価するために、より感度が高く、より合理的に定義された限界を有する改善された品質評価手順が必要とされる。本発明は、技術分野におけるこの欠点を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡単にするために、参照により本明細書に組み込まれる、本明細書に添付の独立及び従属請求項によって、本発明の実施形態がそれぞれ定義される。本発明の様々な態様の他の実施形態、特徴、及び長所は、添付の図面に関連付けられる以下の発明を実施するための形態から明らかになる。
【0007】
特定の実施形態では、本発明は、クロマトグラフィカラムを操作する方法を提供する。この方法は、カラム充填を含むクロマトグラフィカラムの第1の操作中に、カラム出口信号及び累積流量パラメータを、少なくとも1つの移動相遷移フロントの2つ以上の間隔で収集する工程を含む。この方法は、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータに基づいて、上昇遷移フロントについては式Ia又は下降遷移フロントについては式Ibを使用して、モデルガンマ累積分布曲線を決定する工程を更に含み、式Ia又は式Ibは、
【0008】
【数1】
であり、各式中、Cは所与のVのカラム出口信号であり、Vはカラム体積で除算された累積流量であり、k、θ、及びV
iは曲線を画定するために使用される形状、スケール、及びオフセットパラメータである。理論段相当高さ(HETP)値は、式II及びモデルガンマ累積分布曲線のパラメータk、θ、及びV
iを使用して、少なくとも1つの移動相遷移フロントについて計算され、式IIは、
【0009】
【数2】
式中
μ=kθ+V
i
【0010】
【数3】
L=カラム長さである。
【0011】
クロマトグラフィカラム充填の品質は、計算されたHETP値に基づいて評価される。この評価に基づいて、クロマトグラフィカラムは再利用、コンディショニング、交換、又は再充填される。
【0012】
本明細書でガンマ分布遷移分析(GDTA)と称される、カラム完全性を評価するための新たな方法が開発された。新しい方法は、カラム操作の規則的なプロセス工程の間に生成される移動相遷移フロントデータを介して曲線に適合するための数学的モデルを使用する。次いで、モデル曲線パラメータを利用して、カラム品質の尺度としてカラムベッド全体の分散を計算する。移動相遷移フロントは、導電率、pH、及び/又はバッファ成分などの異なる特性を有するプロセスバッファ/洗浄液が使用されるクロマトグラフィ精製プロセス内の別個の工程から生じる。方法は、一般に、通常のカラム処理中に生成される任意の1つ又は複数の移動相遷移フロントに適用することができる。
【0013】
GDTA法の主要な利点は、ガウスHETP推定法よりもカラムベッド全体の分散をより敏感に測定できることである。GDTAを使用することにより、GDTAモデルが曲線適合からの分散を正確に測定するため、非対称性を測定する必要はない。加えて、ガンマ分布関数を使用することで、以前に報告された代替の非ガウス法と比較して、フロント遷移の解析が容易になる。クロマトグラフィプロセス中に既に存在する移動相遷移を使用することで、余分なオフラインプロセス工程の必要性を回避する。更に、多くの場合、過去のデータにより、実施前にカラム効率の過去の範囲を確立することができる。最後に、GDTA法を自動化して、一貫した適用を確実にすることができる。
【0014】
特定の実施形態では、本発明は、クロマトグラフィカラムを操作する方法を提供し、当該方法は、
カラム充填を含むクロマトグラフィカラムの第1の操作中に、カラム出口信号及び累積流量パラメータを、少なくとも1つの移動相遷移フロントの2つ以上の間隔で収集する工程と、
少なくとも1つの移動相遷移フロントについての収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータに基づいて、上昇遷移フロントについては式Ia又は下降遷移フロントについては式Ibを使用して、モデルガンマ累積分布曲線を決定する工程であって、式Ia又は式Ibは、
【0015】
【数4】
であり、各式中、Cは所与のVのカラム出口信号であり、Vはカラム体積で除算された累積流量であり、k、θ、及びV
iは曲線を画定するために使用される形状、スケール、及びオフセットパラメータである、モデルガンマ累積分布曲線を決定する工程と、
式II及びモデルガンマ累積分布曲線のパラメータk、θ、及びV
iを使用して、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての理論段相当高さ(HETP)値を計算する工程であって、式IIは、
【0016】
【数5】
式中、
μ=kθ+V
i
【0017】
【数6】
L=カラム長さである、理論段相当高さ(HETP)値を計算する工程と、
当該計算されたHETP値に基づいて、クロマトグラフィカラム充填の品質を評価する工程と、を含む方法。
【0018】
特定の実施形態では、本発明は、以下の工程を更に含む方法を提供する:
当該評価に基づいてクロマトグラフィカラムをコンディショニング、交換、又は再充填する工程。
【0019】
特定の実施形態では、本発明は、以下の工程を更に含む方法を提供する:
クロマトグラフィカラム充填の1つ又は複数の後続の使用中に、対応する移動相遷移フロントの2つ以上の間隔でカラム出口信号及び累積流量パラメータを収集する工程と、
クロマトグラフィカラム充填の1つ又は複数の後続の各使用中に、収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータを使用して、当該決定及び当該計算を実行する工程と、
当該実行に基づいて、当該1つ又は複数の後続の各使用中に、クロマトグラフィカラム充填のHETP値を決定する工程と、
2つ以上の後続の使用のクロマトグラフィカラム充填の決定されたHETP値の傾向を収集する工程と、
当該収集された傾向に基づいて、当該クロマトグラフィカラム充填の品質の変化を特定する工程であり、当該クロマトグラフィカラムのコンディショニング、交換又は再充填は、当該特定に基づくものとなる。
【0020】
特定の実施形態では、本発明は、当該カラム充填の1つ又は複数の後続の使用におけるクロマトグラフィカラム充填のHETP値の増加が、当該カラム充填の1つ又は複数の以前の使用におけるクロマトグラフィカラム充填のHETP値と比較して、クロマトグラフィカラム充填の品質の低下を特定する方法を提供する。
【0021】
特定の実施形態では、本発明は、カラム充填の当該第1の操作中に、2つ以上の異なる移動相遷移フロントのカラム出口信号及び累積流量パラメータを収集する方法を提供し、当該方法は、以下の工程を含む:
2つ以上の異なる移動相遷移フロントのそれぞれについて収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータを使用して、当該決定及び計算を実行し、2つ以上の異なる移動相遷移フロントのそれぞれについてHETP値を独立して計算する工程と、
2つ以上の計算されたHETP値に基づいて、クロマトグラフィカラム充填の品質を評価する工程、それにより、クロマトグラフィカラムの当該コンディショニング、交換又は再充填は、当該評価に基づくものとなる。
【0022】
特定の実施形態では、本発明は、移動相遷移フロントが、変性剤を含む移動相から非変性剤を含む移動相への変化によって生成される方法を提供する。
【0023】
特定の実施形態では、本発明は、移動相遷移フロントが、非変性剤を含む移動相から変性剤を含む移動相への変化によって生成される方法を提供する。
【0024】
特定の実施形態では、本発明は、移動相遷移フロントが、アルカリ性移動相状態からより酸性の移動相状態への変化によって生成される方法を提供する。
【0025】
特定の実施形態では、本発明は、移動相遷移フロントが、酸性移動相状態からよりアルカリ性の移動相状態への変化によって生成される方法を提供する。
【0026】
特定の実施形態では、本発明は、移動相遷移フロントが、有機溶媒を含む移動相から水性移動相への変化によって生成される方法を提供する。
【0027】
特定の実施形態では、本発明は、移動相遷移フロントが、水性移動相から有機溶媒を含む移動相への変化によって生成される方法を提供する。
【0028】
特定の実施形態では、本発明は、カラム出口信号が導電性である方法を提供する。
【0029】
特定の実施形態では、本発明は、当該決定が、
最小信号値を0に設定し、最大導電率値を1に設定することによって、移動相遷移フロントの当該収集されたカラム出口信号を正規化する工程を含む方法を提供する。
【0030】
特定の実施形態では、本発明は、当該収集が、
当該カラム充填を含むクロマトグラフィカラムに、第1の移動相を添加する工程と、
当該カラム充填を含むクロマトグラフィカラムに、第2の移動相を添加する工程であって、当該第1及び第2の移動相は、異なる検出可能なカラム出口信号を有する、第2の移動相を添加する工程と、
第1の移動相と第2の移動相との間で、移動相遷移の2つ以上の間隔で当該カラム出口信号及び累積流量パラメータを収集する工程とを含む方法を提供する。
【0031】
特定の実施形態では、本発明は、第1及び第2の移動相のカラム出口信号が、信号ノイズを超える量で信号が異なる方法を提供する。
【0032】
特定の実施形態では、本発明は、カラム出口信号及び累積流量パラメータが、移動相遷移フロントの全体にわたってそれぞれ異なる間隔で収集される方法を提供する。
【0033】
特定の実施形態では、本発明は、クロマトグラフィカラム充填が、親和性クロマトグラフィ充填材料、イオン交換クロマトグラフィ充填材料、吸着クロマトグラフィ充填材料、疎水性相互作用クロマトグラフィ充填材料、金属キレート親和性クロマトグラフィ充填材料、サイズ排除クロマトグラフィ充填材料、又は分子排除クロマトグラフィ充填材料からなる群から選択される方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1A】例示的なガンマ分布遷移分析曲線適合のグラフを示す。
図1Aは、移動相遷移データへの例示的なガンマ分布遷移分析曲線適合を示すグラフである。
【
図1B】例示的なガンマ分布遷移分析曲線適合のグラフを示す。
図1Bは、カラム効率の尺度としての理論段相当高さ(HETP)を計算するために使用される、その曲線からのパラメータを有する、移動相転移データへの例示的なガンマ分布遷移分析曲線適合を示すグラフである。
【
図2】本明細書に記載されるクロマトグラフィカラムの品質評価システムを示す図である。
【
図3】プロテインAカラム平衡化フロントの変換なしのHETPの確率プロットである。
【
図4】プロテインAカラム平衡化フロントの変換なしの平方和(SS)の確率プロットである。
【
図5】プロテインAカラム洗浄フロントの変換なしのHETPの確率プロットである。
【
図6】プロテインAカラム洗浄フロントの変換なしのSSの確率プロットである。
【
図7】プロテインAカラム平衡化フロントの自然対数(λ=0)変換を伴うHETPの確率プロットである。
【
図8】プロテインAカラム平衡化フロントの自然対数(λ=0)変換を伴うSSの確率プロットである。
【
図9】プロテインAカラム洗浄フロントの自然対数(λ=0)変換を伴うHETPの確率プロットである。
【
図10】プロテインAカラム洗浄フロントの自然対数(λ=0)変換を伴うSSの確率プロットである。
【
図11】プロテインAカラム平衡化の平均値(V
m)の確率プロットである。
【
図12】プロテインAカラム洗浄フロントの平均値(V
m)の確率プロットである。
【
図13】プロテインAカラム平衡化のフロントの自然対数(λ=0)変換を伴うHETPの管理図である。UCL=上方管理限界;LCL=下方管理限界である。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図14】プロテインAカラム平衡化フロントのHETPの時系列プロットである。UCLは、
図13の変換データから導出される。
【
図15】プロテインAカラム洗浄フロントの自然対数(λ=0)変換を伴うSSの管理図である。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図16】プロテインAカラム平衡化フロントのSSの時系列プロットである。UCLは、
図15の変換データから導出される。
【
図17】プロテインAカラム平衡化の平均値(V
m)の管理図である。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図18】プロテインAカラム洗浄フロントの自然対数(λ=0)変換を伴うHETPの管理図である。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図19】プロテインAカラム洗浄フロントのHETPの時系列プロットである。UCLは、
図18の変換データから導出される。
【
図20】プロテインAカラム洗浄フロントの自然対数(λ=0)変換を伴うSSの管理図である。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図21】プロテインAカラム洗浄フロントのSSの時系列プロットである。UCLは、
図20の変換データから導出される。
【
図22】プロテインAカラム洗浄フロントの平均値(V
m)の管理図である。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図23】カラム充填によってグループ化された直接生成物捕獲(DPC)プロテインAカラム平衡化フロントのHETP結果の時系列プロットである。
【
図24】カラム充填によってグループ化されたDPCプロテインAカラム洗浄フロントのHETP結果の時系列プロットである。
【
図25】スキッドによってグループ化されたDPCプロテインAカラム平衡化フロントのHETP結果の時系列プロットである。
【
図26】スキッドによってグループ化されたDPCプロテインAカラム洗浄フロントのHETP結果の時系列プロットである。
【
図27】DPCプロテインAカラム平衡化の平均流量を示すチャートである。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図28】平衡化中の平均プレカラム圧力のチャートである。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール則1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図29】DPCプロテインAカラム洗浄フロントの平均洗浄流量のチャートである。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図30】DPCプロテインAカラム洗浄フロントの平均洗浄圧力のチャートである。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図31】洗浄流量を変更する前及び後のHETPを示すチャートである。チャート上の番号付けされた点は、シューハートルール1、2及び3に基づいて、HETP結果において明らかな孤立値及び/又は傾向を示し、すなわち、1は管理限界外の1点を表し、2は中心線の同じ側にある8点を表し、3は着実に増加又は減少する6つの連続した点を表す。
【
図32】45バッチのREMICADE(登録商標)(インフリキシマブ)の平衡化フロントで評価した2つの異なるプロテインAカラム充填のHETPの時系列プロットである。
【
図33】SP−セファロース高性能(SPHP)カラム平衡化フロントのHETPの時系列プロットである。管理限界は、自然対数Box−Cox変換データから導出される。
【
図34】SPHPカラムWFIフラッシュフロントのHETPの時系列プロットである。管理限界は、自然対数Box−Cox変換データから導出される。
【
図35】SPHPカラムストレージフロントのHETPの時系列プロットである。管理限界は、自然対数Box−Cox変換データから導出される。
【
図36】Q2カラム平衡化フロントのHETPの時系列プロットである。管理限界は、自然対数Box−Cox変換データから導出される。
【
図37】Q2カラムストリップ平衡化フロントのHETPの時系列プロットである。管理限界は、自然対数Box−Cox変換データから導出される。
【
図38】Q2カラムストレージフロントのHETPの時系列プロットである。管理限界は、自然対数Box−Cox変換データから導出される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本開示は、カラムの繰り返し操作中の充填されたクロマトグラフィカラムベッドの変化をモニタリングするための改善された品質評価に関する。この方法は、スケールとは無関係に、カラムの寿命を通してカラムが性能を発揮する有効性を評価する実用的な手段を提供する。
【0036】
クロマトグラフィカラム分離効率は、クロマトグラフィの理論プレートモデルを使用して特徴付けられることが多い。この手法を使用して、クロマトグラフィカラムは、多数の段階又は理論プレートからなるものとして認識される。各プレートは、試料成分が移動相と固定相との間の平衡を達成する距離である(Van Deemter、Zuiderweg及びKlinkenberg、「Longitudinal Diffusion and Resistance to Mass Transfer as Causes of Nonideality in Chromatography」、Chem.Engng.Sci.5:271〜289(1956年)を参照し、その全体が参照により本明細書に組み込まれている)。カラム効率は、カラム内の理論プレート数N
pで測定され、カラム内のプレート数が多いほど平衡化が進み、クロマトグラフィバンドの分散が少なくなり、ピークが狭くなり、分離の質が向上することを意味する。所与のカラムのプレートの数が多いほど、プレートの高さは低くなる。したがって、カラム効率は、プレートの高さを計算することによっても測定することができ、これは、「理論段相当高さ」又はHETPと呼ばれる。この手法を使用して、HETP値が小さいほど、カラム分離の効率が高くなる。
【0037】
HETPは、クロマトグラフィカラムの長さLを、理論的なプレートの数N
pで割ることによって計算される。
HETP=L/N
p
カラムが保有する理論プレートの数は、過去にはパルス注入後のクロマトグラフのピークを以下の式で調査することによって決定されてきた:
【0038】
【数7】
式中、t
Rは保持時間であり、w
1/2は半分の高さにおけるピーク幅である。しかし、この手法は、N
pを計算するために使用されるピーク形状がガウス分布から逸脱している場合、カラム効率の正確な測定値を提供しない。この感度の不足を補うために、第2の測定値である非対称性を利用して、ピーク歪度を評価する。この測定値は、最大ピーク高さの10%でのリーディングピーク幅とテーリングピーク幅とを比較している。上述のように、このモデルは、カラム性能の変化を検出する感度を欠いている。
【0039】
本明細書に記載される方法は、ルーチンのクロマトグラフィカラム操作中に生じる1つ又は複数の移動相遷移フロント上のガンマ分布に基づく、代替的でより正確なHETPの測定を提供する。したがって、本開示は、クロマトグラフィカラムを操作する方法を目的とする。この方法は、カラム充填を含むクロマトグラフィカラムの第1の操作中に、カラム出口信号及び累積流量パラメータを、少なくとも1つの移動相遷移フロントの2つ以上の間隔で収集することを含む。この方法は、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータに基づいて、上昇遷移フロントについては式Ia又は下降遷移フロントについては式Ibを使用して、モデルガンマ累積分布曲線を決定することを更に含む。
【0040】
【数8】
式Ia及び式Ibを参照すると、Cは所与のVのカラム出口信号であり、Vはカラム体積で除算された累積流量であり、k、θ、及びV
iは曲線を画定するために使用される形状、スケール、及びオフセットパラメータである。理論段相当高さ(HETP)値は、式II及びモデルガンマ累積分布曲線のパラメータk、θ、及びV
iを使用して、少なくとも1つの移動相遷移フロントについて計算され、式IIは、
【0043】
クロマトグラフィカラム充填の品質は、計算されたHETP値に基づいて評価される。カラム品質の評価に基づいて、クロマトグラフィカラムは、後続の使用が許容可能であると判定されるか、そうでなければ、コンディショニング、交換、又は再充填されなければならない。
【0044】
本明細書に開示されるカラムの品質評価の方法は、任意のクロマトグラフィカラムに適用することができる。例示的なクロマトグラフィカラムとしては、液体クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、イオン交換クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィ、分子排除、超臨界流体クロマトグラフィ、ガスクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、二次元クロマトグラフィ、高速タンパク質(FPLC)クロマトグラフィ、向流クロマトグラフィ、キラルクロマトグラフィ、水性順相(ANP)、混合モードクロマトグラフィ、及び偽親和性クロマトグラフィに使用されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例示的なカラム充填剤は、親和性クロマトグラフィ充填剤(例えば、プロテインA又はプロテインG親和性クロマトグラフィ充填剤)、イオン交換クロマトグラフィ充填剤(例えば、陽イオン交換(カルボキシメチル樹脂)、陰イオン交換(アミノエチル樹脂)、及び混合モード交換クロマトグラフィ充填剤)、吸着クロマトグラフィ充填剤(例えば、シリカゲル又はアルミナ充填剤)、疎水性相互作用クロマトグラフィ充填剤(例えば、フェニル−セファロース、アザ−アレノフィリン樹脂、又はm−アミノフェニルボロン酸充填剤)、金属キレート親和性クロマトグラフィ充填剤(例えば、Ni(II)−及びCu(II)−親和性クロマトグラフィ充填剤)、サイズ排除クロマトグラフィ充填剤(例えば、ゲル電気泳動又はキャピラリ電気泳動充填剤)、又は分子排除クロマトグラフィ充填剤(例えば、ポリスチレン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本明細書に記載される方法は、ルーチンのクロマトグラフィカラム操作中、例えば、試料中の化学物質又は生物学的物質の単離、精製、又は特定の間に適用することができる。このような化合物としては、例えば、タンパク質(例えば、抗体及びそのフラグメント)、核酸、炭水化物、脂質、有機低分子、無機低分子、ウイルス、リポソーム、及び任意のそのような化合物のハイブリッド又は変異型を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0046】
試験のためにカラムをオフラインにする必要がある、以前のクロマトグラフィカラムの品質評価方法、例えば、パルス注入法とは対照的に、本明細書に記載される法は、ルーチンのカラム操作中に実施される。本方法は、ルーチンのカラム精製プロセス中に生じる、プロセスバッファ及び異なる特性を有する溶液を含む移動相プロセス遷移の利点を有する。
【0047】
本発明の方法によれば、「移動相」とは、カラムクロマトグラフィにおける液相であって、クロマトグラフィカラム充填の固定クロマトグラフィ材料を取り囲み、移動するものである。クロマトグラフィカラム操作中、移動相の組成及び特性は、各プロセス工程、例えば、平衡化、洗浄などで変化することが多い。移動相の特性の変化は、溶出液、すなわち、固定相を通過した後にカラムから溶出する移動相で検出及び測定することができる。本明細書で使用するとき、「カラム出口信号」は、溶出液がカラムから溶出する際に検出される移動相からの溶出液の物理的又は化学的特性の信号である。カラム出口信号を提供する物理的又は化学的特性は、任意の典型的なクロマトグラフィ検出器を使用して測定することができる、pH、導電率、光吸収、蛍光、電荷、塩濃度、偏光測定、屈折率、電気化学反応、質量電荷比などの任意の特性であり得る。カラム出口信号を測定するのに好適なクロマトグラフィ検出器としては、質量分析計、赤外分光計、可視分光計、紫外分光計、フーリエ変換赤外分光計、炎イオン化検出器、低角度レーザ光散乱検出器、ダイオードアレイ検出器、蛍光分光計、pH検出器、導電率検出器、電気化学検出器、及び屈折率検出器などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
カラム出口信号は、溶出液から収集される。更に、カラム出口信号を収集するために、「累積流量」も収集される。「累積流量」は、カラムから経時的に溶出される流体の総体積である。この値をカラム体積で割った値を、カラム体積単位で表す。
【0049】
遷移フロントは、累積流量に対するカラム出口信号の変化によって生成される。遷移フロントは、1つ又は複数の異なる特性(例えば、導電率、pHなど)を有する異なる移動相の、カラムへの連続的な適用から生じる。本明細書に記載される方法によれば、遷移フロントに対するカラム出口信号は、最大値1及び最小値0を有するように正規化され得る。本明細書で言及されるように、「下降遷移フロント」とは、開始移動相が、順次導入された移動相のカラム出口信号よりも高いカラム出口信号、例えば、導電率を有する移動相遷移のことである。
【0050】
本明細書で使用されるように、「上昇遷移フロント」とは、開始移動相が、順次導入される移動相のカラム出口信号よりも低いカラム出口信号、例えば、導電率を有する移動相遷移のことである。
【0051】
遷移フロントは、カラム操作の過程で認定されるカラム充填を含むクロマトグラフィカラムに第1の移動相を添加することによって作成される。第1の移動相の添加の一部の時点で、例えば、第1の移動相が溶出を開始すると、第1の移動相とは異なる検出可能なカラム出口信号を有する第2の移動相が、カラム充填を含むクロマトグラフィカラムに添加される。第1の移動相と第2の移動相との間で遷移する際に、移動相の2つ以上の間隔でカラム出口信号及び累積流量パラメータを収集することにより、遷移フロントを検出する。
【0052】
一実施形態では、第1及び第2の移動相のカラム出口信号は、信号ノイズを超える量で信号が異なる。一実施形態では、第1の移動相と第2の移動相との間のカラム出口信号の差は、バックグラウンド信号ノイズの5%以上である。別の実施形態では、第1の移動相と第2の移動相との間のカラム出口信号の差は、バックグラウンド信号ノイズの少なくとも10%以上である。別の実施形態では、別の実施形態では、第1の移動相と第2の移動相との間のカラム出口信号の差は、バックグラウンド信号ノイズの少なくとも15%以上である。
【0053】
一実施形態では、遷移フロント上で検出されるカラム出口信号は導電率である。この実施形態では、第1の移動相と第2の移動相との間のカラム出口信号は、好ましくは、少なくとも1μS/cm、少なくとも10μS/cm、少なくとも100μS/cm、少なくとも1mS/cm、又は1mS/cm超異なる。
【0054】
別の実施形態では、遷移フロント上で検出されるカラム出口信号は、pHである。この実施形態では、第1の移動相と第2の移動相との間のカラム出口信号は、好ましくは、少なくとも0.05のpH単位、少なくとも0.1のpH単位、少なくとも1のpH単位、少なくとも2のpH単位、又は2を超えるpH単位で異なる。
【0055】
別の実施形態では、遷移フロント上で検出されるカラム出口信号は、UV−Vis吸光度である。この実施形態では、第1の移動相と第2の移動相との間のカラム出口信号は、好ましくは少なくとも0.01の吸光度単位、少なくとも0.1の吸光度単位、少なくとも0.5の吸光度単位、少なくとも0.8の吸光度単位、又は0.8を超える吸光度単位で異なる。
【0056】
別の実施形態では、遷移フロント上で検出されるカラム出口信号は、赤外吸光度である。この実施形態では、第1の移動相と第2の移動相との間のカラム出口信号は、好ましくは、少なくとも1パーセントの透過率、少なくとも10パーセントの透過率、少なくとも20パーセントの透過率、少なくとも30パーセントの透過率、又は30パーセントを超える透過率で異なる。
【0057】
一実施形態では、移動相遷移フロントは、変性剤を含む移動相から非変性剤を含む移動相への変化によって生成される。別の実施形態では、移動相遷移フロントは、非変性剤を含む移動相から変性剤を含む移動相への変化によって生成される。
【0058】
別の実施形態では、移動相遷移フロントは、アルカリ性移動相状態から中性又はより酸性の移動相状態への変化によって生成される。あるいは、移動相遷移フロントは、酸性移動相状態から中性又はよりアルカリ性の移動相状態への変化によって生成される。
【0059】
別の実施形態では、移動相遷移フロントは、有機溶媒を含む移動相から水性移動相への変化によって生成される。あるいは、移動相遷移フロントは、水性移動相から有機溶媒を含む移動相への変化によって生成される。
【0060】
カラム出口信号及び累積流量パラメータは、移動遷移フロントの過程でそれぞれ異なる間隔で収集される。好ましくは、カラム出口信号及び累積流量パラメータは、最小カラム出口信号から最大カラム出口信号まで、又はその逆に、移動遷移フロントの全体の過程で収集される。一実施形態では、カラム出口信号及び累積流量パラメータは、不規則な間隔で収集され、例えば、カラム出口信号の変化が検出されると収集される。別の実施形態では、カラム出口信号及び累積流量パラメータは、移動遷移フロントの全体の過程で一定の時間間隔で収集される。例えば、一実施形態では、カラム出口信号及び累積流量パラメータは、移動遷移フロントの全体の過程で1秒間隔で収集される。別の実施形態では、カラム出口信号及び累積流量パラメータは、移動遷移フェーズの過程で5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60秒間隔で収集される。
【0061】
一実施形態では、カラム出口信号データは、分析期間にわたって最大値を1に設定し、最小値を0に設定することによって、上述のように正規化される。流量はまた、カラム体積に変換され、異なるカラム充填間のデータの比較のために標準化される。このデータを使用して、ガンマ累積分布関数(「CDF」を使用して、収集されたデータポイントに最も適合する曲線を生成する。ガンマCDFは、3つの値:形状パラメータk;スケールパラメータθ(シータ);及びオフセットパラメータV
iにより決定され、以下の式Iを使用する:
C=f(V,k,θ,Vi)式I
【0062】
式Iを参照すると、Cは、所与のVのカラム出口信号であり、Vは、累積流量をカラム体積で除算したものである。式Iaは、式Iに由来し、上昇遷移フロントに沿ってガンマ分布関数値を決定するために使用される。
【0063】
【数11】
式中、
Γは、第2種不完全ガンマ関数であり、
γは、第1種不完全ガンマ関数である。
あるいは、式Ibはまた、式Iに由来し、下降遷移フロントに沿ってガンマ分布関数値を決定するために使用される。
【0065】
図1Aは、カラム遷移フロントにわたって収集された例示的な正規化カラム出口信号及びカラム体積データをプロットするグラフである。式Iaを使用して、データに対する曲線適合を生成した。
【0066】
最良適合ガンマCDFパラメータは、k、θ、及びV
iの値を操作して、データからの平方和の偏差が最小となるモデル曲線を生成するパラメータを見出すことによって決定される。この曲線は、最適な適合モデルを生成するために、遷移フロント全体からのデータポイントを介して適合される。この曲線からのk、θ、及びV
iパラメータを利用して、カラム効率の指標として、カラム内のプレート数N
p又はプレートの高さ、すなわち、HETPを計算する。
【0067】
プレートの数N
pは、モデル曲線の平均μ及び分散σ
2に基づいて計算される。平均及び分散は、以下のように曲線から導出される:
平均、μ=kθ+V
i
分散、σ
2=kθ
2
プレートの数は、以下の平均及び分散に基づいて計算される:
プレートの数、N
p=μ
2/σ
2
HETPは、以下のように、センチメートルのカラムの長さLをプレートの数N
pで割ったものに基づいて、上述のように計算される。
【0069】
図1Bは、定義された平均μ及び分散σ2パラメータを有する、
図1Aに示されるものと同じグラフを示す。
【0070】
本明細書に記載されるように計算されたデータに対するモデル適合を評価するために、平均(V
m)、平方和(SS)、及びモードも決定することができる。SSは、導出されるプロセスデータからのモデル曲線の偏差の直接測定である。V
m値は、カラム体積単位における遷移の中心点の尺度である。バッファ遷移には典型的には1カラム体積が必要なため、この値は1に近い値にする必要がある。平均は、典型的には、フロントの形状によって影響されない。平均値を使用して、誤差の自動計算をチェックする。例えば、値が低い場合は、データ収集エラーを示している可能性があり、結果を確認するために更なる調査を必要とする可能性がある。モードは、変化率が最大である体積に対応する。これは、遷移曲線が対称である場合に平均と等しい。典型的には、遷移に歪みがあり、モードは平均よりも低い。
【0071】
HETPに加えて、k(形状)パラメータから計算することができる他の要因としては、非対称性に関連する尺度である歪度(γ
1)、及びピーク鮮鋭度の尺度である尖度(γ
2)が挙げられる。これらの要因を使用して、カラム性能の変化を特定することができる。
【0073】
本明細書に記載される方法によれば、カラム出口信号及び累積流量パラメータは、ガンマCDFからHETPを計算するために、カラムプロセスがカラム上で実行されるたびに、同じ移動遷移相について収集される。同じプロセス工程及び同じスケールで使用されるカラムにより生成される過去のデータはまた、HETPを計算するために取得し、利用することができる。HETPデータを収集して、過去又は現在の操作中に対応する遷移のHETP値の傾向を特定し、HETP値の上限及び下限の管理限界を特定する。管理限界は、許容可能なHETP値の範囲、すなわち、許容可能なカラム効率に対応するHETP値を定義するHETPの高値及び低値である。これらの上限及び下限の管理限界は、統計的評価に基づいて設定することができる。例えば、一実施形態では、上限及び下限の管理限界は、平均+/−2、3、又は4標準偏差を計算することによって設定される。一実施形態では、上限及び下限の管理限界は、本明細書の実施例に記載される平均+/−3標準偏差を計算することによって設定される。別の実施形態では、上限及び下限の管理限界は、過去のデータから信頼区間を計算することによって設定することができる。一実施形態では、上限及び下限の管理限界は、過去のデータから95%、96%、97%、又は98%信頼区間を計算することによって設定される。別の実施形態では、上限及び下限の管理限界は、過去のデータから99%信頼区間を計算することによって設定される。
【0074】
上限及び下限の管理限界を利用して、カラムの時間及び使用に対するカラム効率の変化を特定する。典型的には、上限管理限界を超えるHETPの任意の増加は、カラム効率の低下を示し得る。ルーチンのカラムモニタリング中に、HETPの有害な傾向が観察されるか、又は管理限界を超えた場合、溶出液の製品品質、カラムプロセス性能、及び/又は不純物除去データを評価して、特定されたバッチの製品品質を確保する必要がある。製品品質又はカラム性能のいずれかが設定された基準に適合しない場合は、カラムのコンディショニング、再充填又は交換などの適切な是正処置を行い、更なる使用のためにリリースする前に品質評価を行う必要がある。充填されたベッドを再分配するためにクロマトグラフィカラムをコンディショニングする方法は、使用されるカラムに応じて異なるが、当業者にはよく理解される。
【0075】
カラム操作中のカラム性能のモニタリングは、精製プロトコルにルーチンに含まれる1つ又は2つ以上の遷移相に基づくことができる。好ましくは、モニタリングは、精製プロトコル中の2つ又は3つ以上の遷移相についてガンマCDFに基づいて計算されたHETP値に基づく。
【0076】
以下に記載されるように、カラム性能を決定するために本明細書に記載されるGDTA法を使用してHETPを計算することは、同じプロセス工程及び同じスケールで使用されるカラムから収集された過去のデータに基づくことができる。プロセス工程の適格縮尺モデルモデルから生成されるデータを評価に使用することもできる。これにより、品質評価データと比較して、カラムの性能の品質を評価することができる。
【0077】
流量(Van Deemter効果)、潜在的なバッファ相互作用、及び余分なカラム体積などの要因は、本明細書に記載されるGDTA法の結果に影響を与える可能性があり、GDTAの管理限界を設定する際に評価する必要がある。GDTAに含まれる遷移フロントは、両方の移動相カラム出口信号測定値がスケール上にあり、移動相間のカラム出口信号測定値の差がバックグラウンド信号ノイズを上回っており、移動相と樹脂との間の相互作用が一貫しており、再現性があるなどの特定の基準を満たすことが好ましい。
【0078】
使用中のリリース及びモニタリングに使用される一般的なカラム評価基準は、装置及び樹脂の種類に固有の過去のデータを評価することによって決定されるものとする。カラムの品質評価結果と性能との間の関係を評価するために使用することができる、ルーチンの製品品質及びプロセス性能の測定の例を表1に列挙する。評価に使用されるルーチンの品質及びプロセス性能の測定は、表1に列挙されるものに限定されるものではなく、リストはガイドラインであることを意味し、評価されるプロジェクト及びプロセス工程の特定の要件に基づいている必要がある。製品品質及びプロセス性能に関する仕様及び許容基準は、プロジェクト固有であり、プロセス要件に基づいて決定される。
【0080】
本明細書に記載されるガンマ分布遷移分析法は、カラム操作中にリアルタイムで実行することができる。この方法は、クロマトグラフィカラムの品質評価のコンピューティングデバイスによって、カラム充填を含むクロマトグラフィカラムの第1の操作中に、カラム出口信号及び累積流量パラメータを、少なくとも1つの移動相遷移フロントの2つ以上の間隔で収集することと、クロマトグラフィカラムの品質評価のコンピューティングデバイスによって、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータに基づいて、上昇遷移フロントについては式Ia又は下降遷移フロントについては式Ibを使用して、モデルガンマ累積分布曲線を決定することとを含む。
【0082】
式Ia及び式Ibを参照すると、Cは所与のVのカラム出口信号であり、Vは、カラム体積で除算された累積流量であり、k、θ、及びV
iは、曲線を画定するために使用される形状、スケール及びオフセットパラメータである。この方法は、クロマトグラフィカラムの品質評価のコンピューティングデバイスによって、式II及びモデルガンマ累積分布曲線のパラメータk、θ、及びV
iを使用して、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての理論段相当高さ(HETP)値を計算することを更に含む。式IIは、
【0085】
本方法は、クロマトグラフィカラムの品質評価のコンピューティングデバイスを使用して、当該計算されたHETP値に基づいて、クロマトグラフィカラム充填の品質を評価することを更に含む。この評価に基づいて、クロマトグラフィカラムの操作者は、クロマトグラフィカラムを再使用できるか、又は次のカラム操作の前に交換、再充填、又はコンディショニングする必要があるかを判断することができる。
【0086】
図2は、クロマトグラフィカラムを操作し、本明細書に記載されるようなカラム効率をリアルタイムで評価する方法及びシステムの概要を提供する図である。
図2及び上述のように、システム10は、複雑な混合物としてカラムに導入された生体分子を分離するために使用されるクロマトグラフィカラム12、すなわち、溶出液14、クロマトグラフィカラムから溶出する際に溶出液中のカラム出力信号を検出する検出器20、検出器20からの信号/データを送信する通信インタフェース22、カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24、及びサーバ26を含む。
【0087】
クロマトグラフィカラム12は、透過性、半透過性、又は不透過性の固相カラム充填材料で充填される。好適なクロマトグラフィカラム及びカラム充填材料は、上述のように記載されている。対象となる生体分子を含む溶出液14をクロマトグラフィカラム12に導入する。移動相16もまた、クロマトグラフィカラム12に導入する。移動相16は、クロマトグラフィカラム12の固定相を通じた生体分子の分離、及びクロマトグラフィカラムの出力18を通じた溶出液中の生体分子の溶出を促進する。本明細書に記載される方法によって、移動相16は、以下に記載されるように、1つ又は複数の物理的又は化学的特性、例えば、pH、導電率、塩濃度が互いに異なる、連続的に導入されたカラムバッファ及び/又は洗浄試薬を含む。1つ又は複数の物理的又は化学的特性におけるこれらの差違は、検出器20によって溶出液中で検出される。
【0088】
検出器20は、クロマトグラフィカラム12の出力18に結合される。したがって、検出器20は、クロマトグラフィカラム12の溶出液を介してカラム出力信号をモニタリング及び収集する。好適な検出器及び溶出液の特性、すなわち、検出されるカラム出力信号は、上述のように記載されている。検出器は、検出器20によって収集されたデータ(例えば、カラム出力信号及び累積流量パラメータ)を、データ処理用のカラムの品質評価コンピューティングデバイス24及び/又はストレージのためのサーバ26に送信する通信インタフェースユニット22に結合されている。
【0089】
本明細書に記載されるシステムのカラムの品質評価のコンピューティングデバイス24は、バス36又は他のリンクによって一緒に結合される、中央処理ユニット(CPU)又はプロセッサ32、メモリ30、ネットワークインタフェース28、及びユーザインタフェース34を含む、任意のコンピューティングデバイス、例えばコンピュータ、パーソナルコンピューティング装置、スマートフォンなどであってもよい。カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24は、他のタイプ及び/又は数の他の構成の構成要素及び要素を含んでもよい。
【0090】
カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24内のプロセッサ32は、本明細書の実施例によって説明及び例示されるガンマ分布遷移分析の1つ又は複数の態様の記憶された命令のプログラムを実行するが、他のタイプ及び/又は数の処理装置を使用することができ、プロセッサ32は、他のタイプ及び/又は数のプログラムされた命令を実行することができる。一実施形態では、プロセッサ32は、カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24にのみ配置される。別の実施形態では、プロセッサは、検出器20とカラムの品質評価のコンピューティングデバイス24との間に分散される。例えば、一実施形態では、カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24のプロセッサ32は、検出器に連結されたマイクロコントローラを含む。この実施形態では、マイクロコントローラは、検出器20によって収集されたデータを、カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24に送信されるデジタル信号にマッピング又は変換することができるオンボードプロセッサとして機能する。1つ又は複数の検出器に連結されたマイクロコントローラは、カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24の1つ又は複数の処理機能を実行することができる。
【0091】
カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24内のメモリ30は、本明細書に記載されるように、GDTAの1つ又は複数の態様のためのこれらのプログラムされた命令を記憶している。メモリ30には、タイミングプロセッサ装置内のランダムアクセスメモリ(RAM)及び/又はリードオンリーメモリ(ROM)、又はカラムの品質評価のコンピューティングデバイス24内のプロセッサ32に結合された磁気的、光学的、又は他の読み書きシステムによって読み書きされるフロッピーディスク、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROM、又は他のコンピュータ読み取り可能な媒体など、様々な種類のメモリ記憶装置を使用することができる。
【0092】
カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24のネットワークインタフェース28は、カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24と検出器20との間の通信を操作的に結合し、通信を容易にするが、他のタイプ及び/又は数の接続及び構成を有する他のタイプ及び/又は数の通信ネットワーク又はシステムを使用することができる。
【0093】
カラムの品質評価のコンピューティングデバイス24は、例えば、グラフィカルユーザインタフェース、タッチユーザインタフェース、又はウェブベースのユーザインタフェースなどのユーザインタフェース34を更に含んでもよい。ユーザインタフェースは、クロマトグラフィカラムの品質評価パラメータに関する情報をユーザに表示するように構成される。ユーザインタフェースはまた、クロマトグラフィカラムパラメータに関するユーザからの入力を受信するように構成される。
【0094】
図2に示すサーバ26は、それぞれがCPU又はプロセッサ、メモリ、及びネットワークインタフェースを含む1つ又は複数のコンピューティングデバイスであってもよく、これらは、カラムの品質評価のコンピューティング装置24に関して記載されたものと同様のバス又は他のリンクによって一緒に結合される。サーバ26は、他のタイプ及び/又は数の他の構成の構成要素及び要素を含んでもよい。
【0095】
本明細書に記載されるシステムの通信インタフェース22は、1つ又は複数のローカルエリアネットワーク(LAN)及び/又はワイドエリアネットワーク(WAN)を含むことができる。例示としてのみ、通信インタフェース22は、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)及び/又はセキュアHTTP(HTTPS)を含む、イーサネット上のTCP/IP及び業界標準プロトコルを使用することができるが、他のタイプ及び/又は数の通信ネットワークが利用されてもよい。
【0096】
本開示の別の態様は、ガンマ分布遷移分析を使用してクロマトグラフィカラムの品質評価のための命令を記憶している、一過性のコンピュータ読み取り可能な媒体に関する。これらの命令は、プロセッサによって実行されると、カラム充填を含むクロマトグラフィカラムの第1の操作中に、カラム出口信号及び累積流量パラメータを、少なくとも1つの移動相遷移フロントの2つ以上の間隔で収集する工程と、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータに基づいて、上昇遷移フロントについては上述のような式Ia又は下降遷移フロントについては上述のような式Ibを使用して、モデルガンマ累積分布曲線を決定する工程と、上述のように式II及び本明細書に記載されるモデルガンマ累積分布曲線のパラメータk、θ、及びV
iを使用して、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての理論段相当高さ(HETP)値を計算し、当該計算されたHETP値に基づいてクロマトグラフィカラム充填の品質を評価する工程とを含む工程をプロセッサに実行させる、実行可能なコードを含む。
【0097】
本開示の別の態様は、クロマトグラフィカラムの品質評価の装置に関する。この装置は、プロセッサ及びプロセッサに連結されたメモリを含む。メモリは、メモリに記憶されたプログラム命令を実行するように構成される。これらの命令は以下を含む:カラム充填を含むクロマトグラフィカラムの第1の操作中に、カラム出口信号及び累積流量パラメータを、少なくとも1つの移動相遷移フロントの2つ以上の間隔で収集する工程と、上述のように、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての収集されたカラム出口信号及び累積流量パラメータに基づいて、上昇遷移フロントについては式Ia又は下降遷移フロントについては式Ibを使用して、モデルガンマ累積分布曲線を決定する工程と、上述のように式II及び本明細書に記載されるモデルガンマ累積分布曲線のパラメータk、θ、及びV
iを使用して、少なくとも1つの移動相遷移フロントについての理論段相当高さ(HETP)値を計算し、当該計算されたHETP値に基づいてクロマトグラフィカラム充填の品質を評価する工程。
【実施例】
【0098】
実施例1−レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造に使用される、プロテインAクロマトグラフィカラムのカラムの品質評価へのガンマ分布遷移分析の適用
概論:
治療抗体レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造プロセスは、いくつかの段階を含み、そのうちの4つはクロマトグラフィ精製を含む。カラムの品質評価のためのガンマ分布遷移分析(GDTA)を、これらのカラム工程のそれぞれの間に2つ又は3つの遷移に適用した。この実施例は、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造中に使用されるプロテインAカラム精製工程にGDTA法を適用することを記載している。精製プロセスは、本明細書に記載されるように、GDTAに適した2つの遷移フロント、すなわち、平衡化及び中間洗浄を含む。
【0099】
69バッチのレミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の連続精製から、60の平衡化及び69の洗浄フロントを含む129のフロントについてGDTAを実行した。ガンマフロント分布分析は、製造と並行して行われ、製造プロセスに影響を与えなかった。全ての製造、モニタリング及び制御は、現在の有効な手順を使用して行われた。レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)のカラムクロマトグラフィ精製中、導電率(すなわち、カラム出口信号)及び溶出液の流量(すなわち、累積流量)を記録した。
【0100】
GDTAをリアルタイムでカラム操作に適用したことに加えて、過去4年間に処理された285バッチの過去のデータもまた、本明細書に記載されるように収集及び分析した。データセットには、253の平衡化のフロント及び285の洗浄フロントを含み、合計538の過去のフロントが含まれていた。使用前消毒が行われた32バッチについては、平衡化のフロントは生成されなかった。このデータセットは、カラムの寿命を通じて均等な分布を提供するために選択され、11のカラム充填を表す。
【0101】
GDTAプロトコル:
プロテインAカラム精製の各遷移フロント、すなわち、洗浄及び平衡化について、導電率及び累積流量を記録した。カラムがインラインに置かれた時点を特定するために、プレカラム導電率及び圧力の傾向を評価することによって、開始点の決定を行った。フロントの持続時間について、スプレッドシートを作成し、計算された10秒の間隔を使用して、サーバから流量及び導電率のデータを取得するように設定した。
【0102】
導電率データは、最大値を1及び最小値を0とし、他の点を比例的にスケーリングすることで正規化した。加えて、流量をカラム体積に変換した。
【0103】
開始ガンマCDFを、PIモジュールと同じ開始k、θ、V
iパラメータを使用して計算した。V
iは、ガンマ分布関数のx項の各体積値から減算した。精製中に増加していた導電率を正規化するために、V
i未満の体積では導電率の値を0に設定し、最大値を1に設定した。
【0104】
各導電率値と各体積点に対するモデル適合との差(誤差)を計算した。加えて、0.5〜1.8CVの誤差に対する平方和を計算した。次の式を使用して平方和の最小値を有するモデル曲線を生成するk、θ、及びV
iパラメータを見つけるために、Excelソルバーを使用して最良適合ガンマCDFパラメータを計算した
【0105】
【数18】
ソルバーは、最も近い適合に達することを確実にするために、k≧0.0001及びV
i≧0の制約を有するGRG非線形法を使用して、10,000回の反復を行った。
k、θ、及びV
iの最終値から以下のパラメータを計算した:
平均(V
m)、μ=kθ+V
i、
分散、σ
2(シグマ二乗)=kθ
2
モード=(k−1)θ+V
i
【0106】
【数19】
平均流量及びプレカラム圧力を、各フロントについて0.5〜1.8CVの期間にわたって計算した。
【0107】
受入基準の分析及び評価:
正規性
平衡化及び洗浄フロントの両方についてのHETP及びSSの結果を、確率プロットを作成することによって正規性について評価した。確率プロット(
図3〜
図12)では、データポイント(HETP又はSSの結果)は、試料で観察された実際の累積分布を表している。線は、試料から推定されるパラメータを使用した正規分布に基づいて、適合された累積分布並びに信頼区間の上限値及び下限値を表している。パーセンタイルスケールを変換することにより、適合された分布が直線を形成する。HETP及びSSデータセットはそれぞれ、下端で0に拘束されているが、正規分布モデルは負の値を示唆している。得られた確率プロットは、曲線形状を示す。
図3〜
図6を参照されたい。したがって、結果は、自然対数変換を用いて良好に適合する。自然対数変換データの確率プロットについては、
図7〜
図10を参照されたい。
【0108】
平均(V
m)のデータもまた、正規性について評価した。
図11及び
図12は、データが正規分布に適合することを示し、わずかな孤立値のみを示す。したがって、変換は必要なかった。このパラメータは、プロトコルにおいて指定されなかったが、曲線適合が有効であることを保証した。このパラメータの管理限界もまた、この分析から生成される。
【0109】
孤立値の特定及び変動の原因。
孤立値を特定し、結果の変動性を評価するために、各パラメータについての管理図を作成した。
図13〜
図22を参照されたい。管理図は、HETP及びSSの変換されたデータを使用し、自然対数変換が適用された。データはまた、これらのパラメータのそれぞれについて、変換された上限の管理限界を有する時系列プロットでプロットされる。
【0110】
HETP:平衡化及び洗浄フロントの両方について、多くの孤立値及び傾向が、HETP結果において明らかである。加えて、
図13及び
図18は、図中の四角で表され、以下に番号を付したシューハートルール1、2及び3に基づくデータの傾向を示している。
【0111】
【表2】
【0112】
これらの変位に関連するバッチは、許容可能なプロセスを代表するので、分析から除外されなかった。
【0113】
管理図(
図13及び
図18)の両方は、管理限界を更に超える、多くのシューハートルール1の違反の数を示しており、これも管理限界を超えている。各場合において、問題は、カラムを再コンディショニングすることによって特定及び修正された。
【0114】
予想されるように、カラム充填の変動に起因して、いくつかの実行は、ルール2及び3の基準を満たしていた。傾向を更に評価するために、カラム充填(
図23〜
図24)及びスキッド(
図25〜
図26)によりグループ化されたデータを使用して時系列プロットを作成した。これらのチャートは、特別な原因による変動の多くが、カラムの劣化及びいくつかの孤立した変位に起因することを示している。平衡化フロントの各カラムについて、HETPの増加傾向が明らかである(
図23)。洗浄フロントで観察された変位は、異なる時間で一方のスキッド又は他方のスキッドに分離されているように見え(
図26)、これは、スキッドにおけるカラム性能の変動の原因がある可能性を示唆している。
【0115】
平方和(SS):平方和は、ガンマ分布がプロセスデータにどのくらい良好に適合するかの尺度である。この測定は、HETP結果が有効であることを確認にするためのチェックを提供する。変換されたデータの管理図は、それぞれ平衡化及び洗浄について
図15及び
図20に示される。この測定値は、上限の管理限界のみを有する。
図15は、上限の管理限界を超えた6点を示す。これらのうちの4つは、より高いHETPと関連付けられる。バッチ880572Mは、フロントの間に流れが乱れてSSが高くなったが、HETPには影響しなかった。
【0116】
流量及び圧力の評価。
データセットの平均流量及びプレカラム圧力を評価して、任意の孤立値を特定した。特定された差違と結果との間の関係を評価した。
【0117】
流量及びプレカラム圧力は、
図27〜
図30の傾向がある。チャートは、各工程の流量制御に優れていることを示している。この評価の間、洗浄流量を変化させた。プレカラム圧力は、スキッド及びカラムに関連する変動を示しているが、一般的には、範囲内で安定である。
図31は、HETP値が洗浄流量変化によって有意な影響を受けていないことを示している。
【0118】
プロテインAカラムの管理限界
HETP:
HETPは、カラム性能に直接関連し、分散を増加させる可能性があるシステム内の他の要因によっても影響を受ける。結果は、>0でなければならない。HETPの管理限界は、平衡化についての
図13及び洗浄フロントについての
図18に示すように、自然対数Box−Cox変換(λ=0)を使用することによって最適に決定される。管理図は、平均+/−3標準偏差を使用してMinitabにより計算された変換されたデータの管理限界を示す(以下の表2も参照されたい)。標準偏差は、平均移動範囲に基づいて決定される。カラム寿命にわたるカラム性能の変動を考慮するために、100の移動範囲を選択した。上限及び下限の管理限界を逆変換(e
x)して、変換されていないデータの管理限界を決定する。
【0119】
各フロントのHETP結果及び管理限界の時系列プロットを
図14及び
図19に示す。これらの限界内での動作は、この過去のレビューに基づいて、許容可能なクロマトグラフ性能が得られると期待されている。上限の管理限界を超える値は、カラム流量の問題を示している可能性があり、更に評価する必要がある。下限の管理限界を下回る値は、計算エラーを示している可能性がある。
【0120】
平方和(SS):
SSは、ガンマ分布モデルがどのくらい良好にデータに適合するかを示す尺度である。この尺度を使用して、GDTA法で計算されたHETP値がプロセスデータを表すことを確認する。下限は存在せず、結果は>0でなければならない。SSの上限の管理限界は、平衡化についての
図15及び洗浄フロントについての
図20に示すように、自然対数Box−Cox変換(λ=0)を使用することによって最適に決定される。管理図は、平均+/−3標準偏差を使用してMinitabにより計算された変換されたデータの管理限界を示す。標準偏差は、平均移動範囲に基づいて決定される。カラム寿命にわたるカラム性能の変動を考慮するために、100の移動範囲を選択した。管理図は、平衡化及び洗浄フロントについてそれぞれ0.050及び0.989を与えるように逆変換した、変換されたデータの上限の管理限界を示している(表2を参照されたい)。各フロントのSS結果及び管理限界の時系列プロットを
図16及び
図20に示す。限界内の結果は、モデルがデータ及び過去の結果に適合することを確実にする。結果がこの範囲外である場合、特別な原因が考えられる。
【0121】
平均値:
平均値を、ガンマ分布モデルの精度の第2の尺度として加えた。平均値は、フロントの理論的な質量中心を表し、大きな余分なカラム体積や移動相と樹脂との間の相互作用など、システム内でそれをシフトさせる他の要因がない限り、常に1カラム体積に近い値であるべきである。平衡化及び洗浄フロントの両方の平均値は、ほぼ正規分布しており、変換を必要とせず、
図11及び
図12を参照されたい。平衡化フロントの平均は、1.07CV付近に密に分布しており、いくつかの孤立値がいずれかの側に存在し、高い側では1.2に接近しており、
図17を参照されたい。洗浄フロントは、わずかに多くの変動を示し、0.8に接近したいくつかの低い孤立値が存在する0.99CVの中心にあり、
図22を参照されたい。両フロントの平均値については、0.80〜1.20CVの管理限界を適用することが推奨される(表2を参照されたい)。平均値はカラム性能の尺度ではなく、分析が適切であったかどうかを確認するためのチェックとして用いられるものであるため、これは適切である。より厳しい管理限界は、このチェックのために不必要な感度になってしまう。
【0122】
【表3】
【0123】
実施例2−レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造に使用される、プロテインAクロマトグラフィカラムの最適以下の性能の検出のためのガンマ分布遷移分析の適用
治療抗体レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造プロセスは、いくつかの段階を含み、そのうちの4つはクロマトグラフィ精製を含む。カラムの品質評価のためのガンマ分布遷移分析(GDTA)を、これらのカラム工程のそれぞれの間に2つ又は3つの遷移に適用した。この実施例は、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)製造に使用されるプロテインAカラム精製工程にGDTA法を適用することを記載している。精製プロセスは、本明細書に記載されるように、GDTAに適した2つの遷移フロント、すなわち、平衡化及び中間洗浄を含む。
【0124】
カラム充填883333M001で処理された23バッチ及びカラム充填885473M001で処理された22バッチを含む、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の45バッチの連続した精製から、45の平衡化フロントについてGDTAを実行した。ガンマフロント分布分析は、製造と並行して行われ、製造プロセスに影響を与えなかった。全ての製造、モニタリング及び制御は、現在の有効な手順を使用して行われた。レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)のカラムクロマトグラフィ精製中、導電率(すなわち、カラム出口信号)及び溶出液の流量(すなわち、累積流量)を記録した。
【0125】
45バッチの平衡化HETP結果の傾向は、
図32を参照して、カラム充填間の有意差を示した。カラム評価のための現在の対照では、2つのカラム充填間の差は確認されなかった。バッチ収率の評価は、2つのカラム充填で処理されたバッチ間の有意な差(p=0.001)を示し、より高いHETP値を有するカラム充填の方が4.3%低いと推定された。他の潜在的要因を評価し、収率差に対する相関は示さなかった。したがって、この分析からの結論は、カラム性能差がより低い収率を引き起こしたことである。この発見に基づいて、より低い収率のカラムをコンディショニングして、使用を連続する前にカラム充填を改善した。この実施例は、クロマトグラフィカラム品質を評価する際のGDTA法の感度を示す。
【0126】
実施例3−レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造に使用される、SP−セファロース高性能クロマトグラフィカラムのカラムの品質評価へのガンマ分布遷移分析の適用
概論:
上述のように、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造プロセスは、いくつかの段階を含み、そのうちの4つはクロマトグラフィ精製を含む。本実施例は、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)製造に使用されるSP−セファロース高性能(SPHP)カラム精製工程にGDTA法を適用することを記載している。SPHPカラムは陽イオン交換クロマトグラフィカラムである。精製プロセスは、本明細書に記載されるように、GDTAに適した3つの遷移フロント、すなわち、平衡化、WFIフラッシュ、及びストレージフロントを含む。
【0127】
23バッチのレミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の精製から、23の平衡化、WFIフラッシュ、及びストレージフロントを含む69のフロントについてGDTAを実行した。ガンマフロント分布分析は、製造と並行して行われ、製造プロセスに影響を与えなかった。全ての製造、モニタリング及び制御は、現在の有効な手順を使用して行われた。レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)のカラムクロマトグラフィ精製中、導電率(すなわち、カラム出口信号)及び溶出液の流量(すなわち、累積流量)を記録した。
【0128】
GDTAをリアルタイムでカラム操作に適用したことに加えて、過去4年間に処理された189の遷移フロントの過去のデータもまた、本明細書に記載されるように収集及び分析した。データセットには、64の平衡化フロント、63のWFIフラッシュフロント、及び62のストレージフロントが含まれた。このデータセットは、カラムの寿命を通じて均等な分布を提供するために選択され、6のカラム充填を表す。
【0129】
SPHPカラムフロントのGDTAは、上記実施例1に記載されるように行われた。この分析は、HETP、SSの測定値、及び各フロントの平均値を生成した。統計的評価に基づいてこれら3つのパラメータのそれぞれに導出された管理限界を以下の表3に列挙する。
【0130】
SPHPカラムの管理限界:
HETP:
HETPは、カラム性能に直接関連し、分散を増加させる可能性があるシステム内の他の要因によっても影響を受ける。結果は、>0でなければならない。HETPの管理限界は、自然対数Box−Cox変換(λ=0)を使用することによって最良に決定される。変換されたデータの管理限界は、平均+/−3標準偏差を使用してMinitabにより計算した。標準偏差は、平均移動範囲に基づいて決定される。カラム寿命にわたるカラム性能の変動を考慮するために、25の移動範囲を選択した。上限及び下限の管理限界を逆変換(e
x)して、変換されていないデータの管理限界を決定する。各フロントのHETP結果及び管理限界の時系列プロットを
図33(平衡化フロント)、
図34(WFIフラッシュフロント)、及び
図35(ストレージフロント)に示す。これらの限界内での動作は、この過去のレビューに基づいて、許容可能なクロマトグラフ性能が得られると期待されている。上限の管理限界を超える値は、カラム流量の問題を示している可能性があり、更に評価する必要がある。下限の管理限界を下回る値は、計算エラーを示している可能性がある。
【0131】
平方和(SS):
SSは、ガンマ分布モデルがどのくらい良好にデータに適合するかを示す尺度である。この尺度を使用して、GDTA法で計算されたHETP値が、プロセスデータを表すことを確認する。下限は存在せず、結果は>0でなければならない。SSの上限の管理限界は、自然対数Box−Cox変換(λ=0)を使用することによって最良に決定される。変換されたデータの管理限界は、平均+/−3標準偏差を使用してMinitabにより計算した。標準偏差は、平均移動範囲に基づいて決定される。カラム寿命にわたるカラム性能の変動を考慮するために、100の移動範囲を選択した。変換されたデータの上限の管理限界を逆変換して、平衡化フロントについて0.110、WFIフラッシュフロントについて0.027、及びストレージフロントについて0.073を得た(表3を参照されたい)。限界内の結果は、モデルがデータ及び過去の結果に適合することを確実にする。結果がこの範囲外である場合、特別な原因が考えられる。
【0132】
平均値:
平均値を、ガンマ分布モデルの精度の第2の尺度として加えた。平均値は、フロントの理論的な質量中心を表し、大きな余分なカラム体積や移動相と樹脂との間の相互作用など、システム内でそれをシフトさせる他の要因がない限り、常に1カラム体積に近い値であるべきである。平衡化、WFIフラッシュ及びストレージフロントの平均値は、不規則な分布を有し、変換から恩恵を受けていない。フロントのそれぞれの平均については、0.80〜1.20CVの管理限界を適用することが推奨される(表3を参照されたい)。平均値はカラム性能の尺度ではなく、分析が適切であったかどうかを確認するためのチェックとして用いられるものであるため、これは適切である。これらの限界は、予想される計算結果からの有意な逸脱を特定するために十分であると予想される。より厳しい管理限界は、このチェックのための不必要な感度になってしまい、これは各カラム充填で変化すると見られる。
【0133】
【表4】
【0134】
実施例4−レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)の製造に使用される、Q2クロマトグラフィカラムのカラムの品質評価へのガンマ分布遷移分析の適用
概論:
この実施例は、レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)製造に使用される二次陰イオン交換(Q2)カラム精製工程にGDTA法を適用することを記載している。Q2カラムは、陰イオン交換クロマトグラフィカラムである。精製プロセスは、本明細書に記載されるように、GDTAに適した3つの遷移フロント、すなわち、平衡化、ストリップ、及びストレージフロントを含む。
【0135】
23の平衡化及びストリップフロント、及び22のストレージフロントを含む68のフロントについてGDTAを実行した。ガンマフロント分布分析は、製造と並行して行われ、製造プロセスに影響を与えなかった。全ての製造、モニタリング及び制御は、現在の有効な手順を使用して行われた。レミケード(登録商標)(インフリキシマブ)のカラムクロマトグラフィ精製中、導電率(すなわち、カラム出口信号)及び溶出液の流量(すなわち、累積流量)を記録した。
【0136】
GDTAをリアルタイムでカラム操作に適用したことに加えて、過去4年間に処理された324の遷移フロントの過去のデータもまた、本明細書に記載されるように収集及び分析した。データセットには、121の平衡化フロント、124のストリップフロント、及び79のストレージフロントが含まれた。このデータセットは、カラムの寿命を通じて均等な分布を提供するために選択され、10のカラム充填を表す。
【0137】
Q2カラムフロントのGDTAは、上記実施例1に記載されるように行われた。この分析は、HETP、SSの測定値、及び各フロントの平均値を生成した。統計的評価に基づいてこれら3つのパラメータのそれぞれに導出された管理限界を以下の表4に列挙する。
【0138】
Q2カラムの管理限界:
HETP:
HETPは、カラム性能に直接関連し、分散を増加させる可能性があるシステム内の他の要因によっても影響を受ける。結果は、>0でなければならない。HETPの管理限界は、自然対数Box−Cox変換(λ=0)を使用することによって最良に決定される。変換されたデータの管理限界は、平均+/−3標準偏差を使用してMinitabにより計算した。標準偏差は、平均移動範囲に基づいて決定される。カラム寿命にわたるカラム性能の変動を考慮するために、100の移動範囲を選択した。上限及び下限の管理限界を逆変換(e
x)して、変換されていないデータの管理限界を決定する。
【0139】
各フロントのHETP結果及び管理限界の時系列プロットを
図36(平衡化フロント)、
図37(ストリップフロント)、及び
図38(ストレージフロント)に示す。これらの限界内での動作は、この過去のレビューに基づいて、許容可能なクロマトグラフ性能が得られると期待されている。上限の管理限界を超える値は、カラム流量の問題を示している可能性があり、更に評価する必要がある。下限の管理限界を下回る値は、計算エラーを示している可能性がある。
【0140】
平方和(SS):
SSは、ガンマ分布モデルがどのくらい良好にデータに適合するかを示す尺度である。この尺度を使用して、GDTA法で計算されたHETP値が、プロセスデータを表すことを確認する。下限は存在せず、結果は>0でなければならない。SSの上限の管理限界は、自然対数Box−Cox変換(λ=0)を使用することによって最良に決定される。変換されたデータの管理限界は、平均+/−3標準偏差を使用してMinitabにより計算した。標準偏差は、平均移動範囲に基づいて決定される。カラム寿命にわたるカラム性能の変動を考慮するために、100の移動範囲を選択した。移動範囲法ではより高い標準偏差を出していたため、ストレージフロントの集計データから標準偏差を決定した。管理限界を下の表4に報告する。限界内の結果は、モデルがデータ及び過去の結果に適合することを確実にする。結果がこの範囲外である場合、特別な原因が考えられる。
【0141】
平均値:
平均値を、ガンマ分布モデルの精度の第2の尺度として加えた。平均値は、フロントの理論的な質量中心を表し、大きな余分なカラム体積や移動相と樹脂との間の相互作用など、システム内でそれをシフトさせる他の要因がない限り、常に1カラム体積に近い値であるべきである。平衡化、ストリップ、及びストレージフロントの平均値は、不規則な分布を有し、変換から恩恵を受けていない。フロントのそれぞれの平均については、0.80〜1.20CVの管理限界を適用することが推奨される(表4を参照されたい)。平均値はカラム性能の尺度ではなく、分析が適切であったかどうかを確認するためのチェックとして用いられるものであるため、これは適切である。これらの限界は、予想される計算結果からの有意な逸脱を特定するために十分であると予想される。より厳しい管理限界は、このチェックのための不必要な感度になってしまい、これは各カラム充填で変化すると見られる。
【0142】
【表5】
【0143】
好ましい実施形態を本明細書で詳細に描写及び説明するが、本発明の趣旨から逸脱することなく様々な修正、追加、置換などを行うことができ、したがって、これらは以下の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると考えられることは、当業者には明らかであろう。
【国際調査報告】