特表2021-522767(P2021-522767A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-522767(P2021-522767A)
(43)【公表日】2021年8月30日
(54)【発明の名称】回転電気機械の為の回転子
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/26 20060101AFI20210802BHJP
   H02K 15/06 20060101ALI20210802BHJP
【FI】
   H02K1/26 C
   H02K15/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2020-558882(P2020-558882)
(86)(22)【出願日】2019年4月19日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月18日
(86)【国際出願番号】EP2019060223
(87)【国際公開番号】WO2019206830
(87)【国際公開日】20191031
(31)【優先権主張番号】1853552
(32)【優先日】2018年4月23日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】505337087
【氏名又は名称】モトール ルロワ−ソメー
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】サン−ミッシェル,ジャック
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601CC01
5H601CC14
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601EE03
5H601GA02
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB22
5H601GB28
5H601GB33
5H601GB48
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615BB14
5H615BB16
5H615PP02
5H615PP13
5H615QQ12
(57)【要約】
本発明は、回転軸(X)の周りで回転する、電気機械の回転子であって、該回転子が、
複数の突磁極(13)の間にスロット(11)を形成する該複数の突磁極(13)、ここで、複数の突磁極のそれぞれが、該機械の回転軸(X)を含む径方向中央平面に対して非対称である全体的な形状である、及び、
複数のコイル(12)と、ここで、各コイル(12)が、対応する突磁極(13)上に、この突磁極に隣接する該スロット内でそれぞれ配置されている、
を備えている、上記回転子に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械(10)であって、
回転軸(X)の周りで回転する回転子(1)と、ここで、該回転子が、
複数の突磁極(13)の間にスロット(11)を形成する該複数の突磁極(13)、ここで、該複数の突磁極のそれぞれが、該機械の回転軸(X)を含む径方向中央平面に対して非対称である全体的な形状である、及び、
複数のコイル(12)、ここで、各コイル(12)が、対応する突磁極(13)上に、この突磁極に隣接する該スロット内でそれぞれ配置されている、
を備えており、
複数の歯の間にスロットを画定する該歯を備えている固定子(2)と
を備えている、前記電気機械(10)。
【請求項2】
各突磁極が、該回転子が回転軸(X)に沿って観察される場合に、特に該突磁極の第1の側面(14a)上に、横方向磁極片(14)を備えている、請求項1に記載の電気機械。
【請求項3】
上記突磁極が、該第1の側面(14a)とは反対側で、磁極片のない第2の側面(14b)を備えている、請求項2に記載の電気機械。
【請求項4】
該第2の側面(14b)が、その基点を通過する径方向平面(Z)内に延在し、又は径方向平面(Z)に対して角度(γ)を形成する、請求項3に記載の電気機械。
【請求項5】
該第2の側面(14b)が、該第1の側面に対してゼロ以外の角度(β)を形成する、請求項3又は4に記載の電気機械。
【請求項6】
該コイル(12)が、該コイルが巻かれた後に、対応する突磁極(13)上に挿入されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項7】
該コイル(12)が、2つの隣接するスロット内に収容された第1及び第2の部分(12a、12b)を備え、上記第1及び第2の部分が、回転軸(X)からそれぞれ距離(d1、d2)をあけて位置付けられ、該距離(d1、d2)が互いに等しい又は異なる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項8】
該コイル(12)が、隣接するコイル及び/又は磁極片(14)によって、該対応する突磁極上に保持されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項9】
電気機械の回転子(1)であって、
複数の突磁極(13)の間にスロット(11)を形成する該複数の突磁極(13)、ここで、該複数の突磁極のそれぞれが好ましくは、該機械の回転軸(X)を含む径方向平面に対して非対称である全体的な形状である、又は、更に好ましくは、全ての該突磁極が、全体的な形状において、特に非対称である、及び、
複数のコイル(12)、ここで、各コイル(12)が、上記突磁極に隣接する該スロット内で、対応する突磁極(13)上にそれぞれ配置され、該回転子内で、少なくとも1つのコイルが、2つの隣接するスロット内に収容された第1及び第2の部分(12a、12b)を備え、上記第1及び第2の部分(12a、12b)が、回転軸(X)からそれぞれ距離(d1、d2)をあけて位置付けられ、該距離(d1、d2)が互いに異なる、
を備えている、前記回転子(1)。
【請求項10】
回転軸(X)の周りで回転する電気機械の回転子(1)であって、
複数の突磁極(13)の間にスロット(11)を形成する該複数の突磁極(13)、ここで、該複数の突磁極のそれぞれが、該機械の回転軸(X)を含む径方向平面に対して非対称の全体的な形状であり、該回転子が回転軸(X)に沿って観察される場合に、該突磁極(13)は、横方向磁極片(14)をそれぞれ備え、該突磁極(13)は、第1の側面(14a)とは反対側で、磁極片のない第2の側面(14b)を備えている、及び、
複数のコイル(12)、ここで、各コイル(12)が、対応する突磁極(13)上に、この突磁極に隣接する該スロット内にそれぞれ配置されている、
を備えている、前記回転子(1)。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の回転子(1)と、固定子(2)とを備えている回転電気機械(10)。
【請求項12】
固定子(2)が、
外側に向かって径方向に開いているスロット(21)を複数の歯(23)の間に画定する該歯(23)を備えている歯付きリング(25)と、
該歯付きリングに取り付けられたヨーク(29)と
を備えている、請求項1〜8及び11のいずれか1項に記載の電気機械。
【請求項13】
固定子(2)が、該スロット(21)内に分散されて配置された巻線(22)を備え、巻線(22)が特に、該スロット(21)内に配列された電気導体(28)を有する、請求項12に記載の電気機械。
【請求項14】
請求項2〜8のいずれか1項に記載の電気機械(10)の回転子(1)、又は請求項10に記載の回転子(1)を製造する為の方法であって、
a)芯上にコイル(12)を準備すること、ここで、上記コイルが、該回転子のスロット内に収容されることが意図された第1及び第2の部分(12a、12b)を備えている、
b)該コイルの該第1の部分(12a)を、突磁極の第1の側面(14a)に隣接する第1のスロット内に挿入すること、ここで、上記第1の側面が、横方向磁極片を備えている、並びに
c)該コイルの該第2の部分(12b)を、上記突磁極の第2の側面(14b)に隣接する第2のスロット内に挿入すること
の工程を含む、前記方法。
【請求項15】
該コイルの該第1の部分(12a)が、該コイルを支承する対応する突磁極(13)の磁極片(14)の下で、又は後に挿入された第2のコイルの下で、保持される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該コイルの該第2の部分(12b)が、該コイルを支承する該突磁極に隣接する突磁極の該磁極片の下で、又は後に挿入された第2のコイルの下で、保持される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
コイル(12)が、その挿入時に変形される、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
該コイルが、その挿入時に、該コイルを磁極片の下で保持するように、特に円周方向に、オフセットされる、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
i)全ての該コイルの該第1の部分(12a)が、対応する該スロット内へ一度に全て挿入されること、次に、
ii)全ての該コイルの該第2の部分(12b)が、対応する該スロット内へ一度に全て挿入されること、並びに
iii)特に隣接するコイルによって及び/又は磁極片によって、対応する突磁極(13)上にコイルを保持するように、該コイル(12)が円周方向にオフセットされること
の工程を含む、請求項14〜18のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電気機械、特に同期機械、の分野に、より特にはそのような機械の回転子、に関する。本発明は、より特には、コイルが収容されるスロットを、突磁極回転子の間に作成する該突磁極回転子に関係する。
【背景技術】
【0002】
突磁極が磁極の径方向軸に対して対称である突磁極回転子(salient-pole rotor)を作成することは、既知の慣行である。該磁極はそれぞれ、磁極の自由端に向かって該磁極のそれぞれの側に1つずつ配置された2つの対称の磁極片を備えうる。そのような磁極片の存在は、該磁極上への巻線をより困難にし、且つ既製のコイルの挿入をほとんど不可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それ故に、スロット内でのコイルの容易な取り付けを可能にしながら、同時に良好な電磁性能を提供する回転電気機械回転子を有することが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、その観点のうちの1つに従って、回転軸Xの周りで回転する電気機械の回転子によって、この必要に応え且つこれを実現しようとするものであり、ここで、該回転子は、
複数の突磁極の間にスロットを形成する該複数の突磁極、ここで、該複数の突磁極のそれぞれが、該機械の回転軸(X)を含む径方向中央平面(radial midplane)に対して非対称である全体的な形状である、及び、
複数のコイル、ここで、各コイルが、対応する突磁極上に、この突磁極に隣接する該スロット内でそれぞれ配置されている、
を備えている。
【0005】
「非対称」によって意味されることは、該突磁極が該機械の回転軸を含むいかなる径方向平面に対して対称でないことである。好ましくは、全ての該突磁極が、全体的な形状において非対称である。
【0006】
考慮される径方向平面は、対応する磁極に対する中央平面であるうる。該中央平面は、空気間隙のレベルでの磁極の表面の中央を及び/又は回転子集団(rotor mass)へのその取付けのレベルにおける磁極の中央を通過しうる。
【0007】
該磁極のそれぞれの凸包絡は(convex envelope)、回転軸に直交する横断面で観察された対称平面を有しうる。
【0008】
「凸包絡」によって意味されることは、該磁極が内接させられる最少の凸形状である。該凸包絡は、磁極の輪郭をたどって磁極の凸形の輪郭をそれぞれ接続する密接に閉じた線である。該凸包絡は、磁極の周囲の凸形又は直線形の部分に重ねられ、凹形の部分によって分離された2つの凸形又は直線形の部分を毎回接続する弦をたどる(外側から見られたとき)、最小の長さの閉じた線である。該凸包絡は、磁極の周囲によって排他的に支持される伸ばされた輪ゴムによって区切られるはずの領域に対応する。
【0009】
該突磁極は、前述の径方向平面内に含まれうる磁極の径方向軸に沿って延在しうる。「磁極の径方向軸」によって意味されることは、径方向に、すなわち回転子の半径に沿って誘導された磁極の軸Yである。本発明では、これは、磁極に対する対称軸を指さない。この径方向軸は、磁極の頂点と交差しうる。該径方向軸は、中央線でありうる。
【0010】
本発明によって、突磁極の芯(core)は、対称の磁極の芯より太くすることができ、これは、芯内の飽和がよりゆっくりと実現されることを意味する。「芯」によって意味されることは、該磁極のうち、磁極片(pole shoes)以外の部分である。
【0011】
本発明に従う回転子は、改善された、コスト、コンパクトさ及び電磁性能を有する機械を得ることを可能にする。
【0012】
各突磁極は、該回転子が回転軸Xに沿って観察される場合に、特に該突磁極の第1の側面上に、横方向磁極片を備えうる。該突磁極上の該横方向磁極片は、該突磁極の幅をその自由端に向かって増大させることを可能にし、その結果、該磁極内の磁束がより大きくなり、従ってより大きい電力が得られる。また、該突磁極内の飽和のリスクを最小にすることも可能である。該横方向磁極片は、該突磁極及び該第1の側面の自由端に向かって位置付けられうる。該横方向磁極片は、該磁極の前部又は該磁極の後部に位置付けられうる。該磁極の該前部及び該後部は、回転子の回転方向に対して画定される。各突磁極は、前側面及び後側面を備えている。
【0013】
各突磁極は、磁極片のない少なくとも1つの側面を備えうる。
【0014】
該回転子がモータとして使用される回転電気機械内に備えられていることを意図される場合、該横方向磁極片は好ましくは、後面上に位置付けられ、ここで、該第1の側面は磁極の後面である。モータの場合、該回転子は好ましくは、反時計回り方向に回転する。従って、磁束の循環は、磁極の前部に向かってオフセットされる。この場合、該第1の側面は、該突磁極の後側面である。
【0015】
該回転子が発電機として使用される回転電気機械内に備えられていることを意図される場合、該横方向磁極片は好ましくは、前面上に位置付けられ、ここで、該第1の側面は磁極の前面である。発電機の場合、該回転子は好ましくは、時計回り方向に回転する。従って、磁束の循環は、磁極の後部に向かってオフセットされる。この場合、該第1の側面は、該突磁極の前側面である。そのような構成は、発電機モードで動作している場合、制動トルクを低減させるという利点を提供し、これは自動車の牽引において特に有利でありうる。
【0016】
該回転子が幾つかの突磁極を備えている例において、突磁極の横方向磁極片は全て、同じ側面上に位置付けられうる。例えば、該回転子の突磁極の横方向磁極片は全て、対応する突磁極の前側面上に位置付けられる。変形例において、該回転子の突磁極の横方向磁極片は全て、対応する突磁極の後側面上に位置付けられる。
【0017】
各突磁極は、該第1の側面とは反対側で、第2の側面を備え得、ここで、この第2の側面には磁極片がない。突磁極の片側に磁極片が存在しないので、巻線がより容易になり、及び、磁極上へコイルを挿入することがより容易になる。
【0018】
変形例において、各突磁極は、突磁極の第1の側面上に位置付けられた横方向磁極片のもの以外の形状の第2の磁極片を備えうる。該第2の磁極片は、該第1の磁極片よりも小さくされうる。従って、該突磁極は、該突磁極が、特にそれらの芯のレベルで同じサイズの2つの磁極片で構成されている場合よりも、より太くされうる。
【0019】
第2の側面は、その基点、特に上記突磁極に隣接するスロットの底部と第2の側面との交点、を通過する径方向平面Z内に延在し、又は径方向平面に対して角度γを形成する平面内に延在しうる。
【0020】
そのような構成は、その基点での突磁極の幅を最大にすることを可能にしながら、同時に該コイルが収容されることを可能にする。
【0021】
該スロットは、外側及び空気間隙に向かって径方向に開いている。該回転子は、外部固定子内に収容されることを意図された内部回転子である。
【0022】
該第2の側面は、該第1の側面に対して角度βを形成しうる。この角度βは、ゼロ以外でありうる。このとき、第1及び第2の側面は、互いに平行でない。
【0023】
該コイルは、それらが巻かれる前に、対応する突磁極上に挿入されうる。該コイルは、個々に準備されうる。本発明において、該回転子は、歯上へ直接的に巻かれない。本発明に従う回転子は好ましくは、集中された巻線を有する回転子であり、それは、該回転子の各コイルが回転子の単一の突磁極の周りで2つの連続するスロット内に延在しることを示すことを意味する。
【0024】
1つのコイル、又は更に好ましくは全ての該コイルが、2つの隣接するスロット内に収容された第1及び第2の部分を備え得、上記第1及び第2の部分は、回転軸Xからそれぞれ距離d1及びd2をあけて位置付けられる。該距離d1及びd2は、互いに等しいか又は異なりうる。
【0025】
一つのコイルの該第1の部分は、第1のスロット内に配置された部分であり、及び、該第2の部分は、該第2のスロット内に、該第1の部分に隣接して配置された部分である。
【0026】
距離d1及びd2が互いに異なる場合、該コイルは、「変形」していると云われ、ここで、その第1及び第2の部分は、該コイルのうち変曲を有しうる部分によって接続されている。
【0027】
変形例において、1つのコイルは、2つの隣接するスロット内に収容された第1及び第2の部分を備え得、ここで、該第1及び第2の部分は、回転軸Xから同じ距離d1をあけて位置付けられる。別のコイルは、2つの隣接するスロット内に収容された第1及び第2の部分を備え得、ここで、該第1及び第2の部分は、回転軸Xから同じ距離d2をあけて位置付けられる。従って、2つの異なるコイル、特には2つの隣接するコイル、は、回転軸Xから距離d1及びd2をあけてそれぞれ位置付けられた第1及び第2の部分を備え得、該距離は互いに異なる。一つの実施態様において、該回転子は、第1及び第2の部分が回転軸Xから同じ距離d1をあけて位置付けられたコイルと、第1及び第2の部分が回転軸Xから同じ距離d2をあけて位置付けられたコイルとを、交互に備えている。
【0028】
1つのコイル、又は更に好ましくは全ての該コイルが、隣接するコイル及び/又は磁極片によって、該対応する突磁極上に保持されうる。
【0029】
第1の実施態様において、1つのコイルは、2つの隣接するコイルによって、対応する突磁極上に保持されうる。
【0030】
第2の実施態様において、1つのコイルは、2つの隣接する突磁極の2つの磁極片によって、対応する突磁極上に保持されうる。
【0031】
第3の実施態様において、1つのコイルは、一方の側で隣接するコイルによって、他方の側で対応する突磁極の磁極片によって、対応する突磁極上に保持されうる。
【0032】
第4の実施態様において、1つのコイルは、一方の側で隣接するコイルによって、他方の側で隣接する突磁極の磁極片によって、対応する突磁極上に保持されうる。
【0033】
「隣接するコイル」によって意味されることは、関係するコイルに対応する突磁極に隣接して突磁極上に配置されたコイルである。該2つの隣接するコイルは、1つの同じスロット内に部分的に延在する。上記スロットは、関係する該2つの隣接するコイルを支承する2つの突磁極の間に形成される。
【0034】
本発明の別の主題は、前述の主題から独立して、又は前述の主題と組み合わせて、回転軸Xの周りで回転する電気機械の回転子であり、該回転子は、
複数の突磁極の間にスロットを形成する該複数の突磁極、ここで、該複数の突磁極のそれぞれが例えば、該機械の回転軸Xを含む径方向平面に対して非対称である全体的な形状をそれぞれ有することが可能である、又は更に好ましくは、全ての該突磁極が、全体的な形状において、非対称であることができる、
複数のコイル、ここで、各コイルが、対応する突磁極上に、この突磁極に隣接する該スロット内にそれぞれ配置され、該回転子内で、少なくとも1つのコイルが、2つの隣接するスロット内に収容された第1及び第2の部分を備え、上記第1及び第2の部分が、回転軸Xからそれぞれ距離d1及びd2をあけて位置付けられ、該距離d1及びd2が互いに異なる。
【0035】
1つの例示的な実施態様において、該回転子の全ての該コイルが、2つの隣接するスロット内に収容された第1及び第2の部分を備え、該第1及び第2の部分が、回転軸Xからそれぞれ距離d1及びd2をあけて位置付けられ、該距離d1及びd2が互いに異なる。
【0036】
回転子集団及びシャフト
該回転子は、回転軸に沿って延在するシャフトを備え得、ここで、該シャフト上に、突磁極を備えている磁気回転子集団が配置される。
【0037】
該シャフトは、磁気材料から作成され得、ここで、これは有利には、回転子集団における飽和のリスクを低減させ、及び、該回転子の電磁性能を改善することを可能にする。
【0038】
変形例において、該回転子は、回転子集団が配置される非磁性シャフトを備えている。該シャフトは、下記の比制限的なリストの材料から少なくとも部分的に作成されうる:
鋼、ステンレス鋼、チタン、又は任意の他の非磁性材料。
【0039】
一つの実施態様において、該回転子集団は、該非磁性シャフト上に直接、例えば中間リムなしで、配置されうる。変形例において、特にシャフトが非磁性でない場合、該回転子は、該回転子のシャフトを取り囲んで該シャフトを支承することが可能なリムを備えうる。
【0040】
該回転子集団は、回転軸に沿って延在し、及び該シャフトの周りに配置される。該シャフトは、該回転子集団へトルクを伝達する為の手段を備えうる。
【0041】
該回転子集団は、複数の磁気ラミネーション(magnetic laminations)の積層体から形成されうる。各磁気ラミネーションは、単一の部品でありうる。ラミネーションは、材料の接線方向ブリッジ(tangential bridges)によって接続された一続きのセクター(a succession of sectors)を備えうる。
【0042】
該磁極は、該回転子集団の残り部分と一体であるか、又は該回転子集団の残り部分に取り付けられうる。
【0043】
各回転子ラミネーションは例えば、磁性鋼の薄板、例えば厚さ0.1〜1.5mmの鋼、から切断される。該ラミネーションは、積層体内に組み立てられる前に、電気絶縁ラッカーによってそれらの反対側の面上で被覆されうる。代替的には、該絶縁は、該ラミネーションの熱処理によって得られうる。
【0044】
変形例において、該回転子集団は、回転子のシャフト上に組み立てられた複数の磁極ピース(pole pieces)を備え得、この場合、該回転子の該シャフトは好ましくは、非磁性である。組立ては、ダブテール(dovetails)を使用して、又は代替として、タイロッド(tie rods)によって、該機械のシャフト上へ実行されうる。各磁極ピースは、磁気ラミネーションの積層体を備えうる。
【0045】
該回転子集団は、該回転子の重量を軽くする為に、1以上の孔を備え得、これは、該回転子を均衡させること、又は該回転子が構成される該回転子ラミネーションを組み立てることを可能にする。孔は、ラミネーションをしっかりと一緒に保持するタイロッドの通過を可能にしうる。
【0046】
該ラミネーションは、ツール内で次々と切断されうる。該ラミネーションは、該ツール内で、フルパック又はサブパックで、積層され且つクリップ留めされ又は接合されうる。該ラミネーションは、一緒にクリップ留めされうる。変形例において、該ラミネーションの該パックは、該ツール外で積層され且つ溶接されうる。
【0047】
該回転子集団は、円形又は多葉形(multi-lobed)の外部輪郭を有し得、ここで、多葉形の形状は潜在的に、例えばトルクリップル(torque ripples)又は電流若しくは電圧の高調波を低減させる為に有益である。
【0048】
該回転子は、該シャフトを案内する為に使用される転がり軸受に関連して、オーバーハング有りで又は無しで取り付けられうる。
【0049】
該回転子は、軸方向に位置合わせされた幾つかの区分、例えば少なくとも2つの区分で作成されうる。該区分のそれぞれは、隣接する部片に対して角度的にオフセットされうる(これは、「ステップ・スキュー」(step skew)として知られる)。
【0050】
該スロットは、まっすぐ又は螺旋形でありうる。
【0051】
回転子コイル
該回転子コイルは、該スロット内に集中された様式(concentrated manner)で配置される。「集中された」によって意味されることは、各コイルが回転子の単一の突磁極の周りに巻かれることである。
【0052】
該コイルは、電気導体を備えている。該電気導体は、横断面において、円形若しくは平坦、又は実質上多角形、特に長方形の形状、でありうる。
【0053】
該導体が横断面において円形である場合、該導体は、該スロット内に六角形の積層体で配置されうる。該導体が横断面で平坦である場合、該導体は、長辺を介して互いに隣接して、該スロット内に1以上の列、特に単一の列、として配置され得、これはまた、フラットとして知られている。該積層を最適化することは、より多数の電気導体がスロット内に配置されることを可能にしうると同時に、該スロットの有用な表面積が低減されることを可能にしうるものであり、従って同じ体積に対してより大きい電力の回転子を得ることを可能にする。該コイルは、1列又は幾つかの列、例えば1列、2列、3列、又は4列、の電気導体を含みうる。
【0054】
該スロット内の電気導体は、横断面において実質的に長方形でありうる。好ましくは、該電気導体は、平坦化された横断面を有しうるものであり、長軸が歯の面に平行になる。従って、該電気導体は、フラットに巻かれうる。
【0055】
該コイルの電気導体は、エッジ又はフラットに巻かれうる。「エッジ」によって意味されることは、「フラット」とは異なり、コイルの電気導体の狭い面である。エッジに巻かれたコイルは、伸長方向を備えている長方形の横断面の電気導体が、この伸長方向に直交して巻かれたコイルである。従って、電気導体は、好ましくはその横断面の伸長方向に平行である巻線軸の周りに巻かれる。
【0056】
該コイルは、幾つかのコイルの集団に配置されうる。言い換えれば、1つの同じ電気導体が、一緒につなぎ合わされた幾つかのコイルを形成する。
【0057】
該コイルは、単独又は集団で巻かれ、そして次に、変形されうる。
【0058】
該電気導体は、該スロット内にランダムに配置され、又はスロット内に配列されうる。好ましくは、該電気導体は、該スロット内に配列される。「配列」によって意味されることは、該導体がスロット内にばらばらに配置されるのではなく、該スロット内に系統的に配置されることである。該導体は、該スロット内にランダムでなく積層され、例えば位置合わせされた電気導体の列として配置される。該電気導体の積層体は例えば、円形の横断面の電気導体の場合は六角形アレイの積層体、又は長方形の横断面の電気導体の場合は1つ若しくは幾つかの列の積層体である。
【0059】
該電気導体は好ましくは、金属、特に銅又はアルミニウム、から形成される。
【0060】
該電気導体は、表面被覆によって絶縁される。該電気導体は、エナメル加工されうる。該エナメルは、熱硬化性エナメルでありうる。該電気導体は、エナメル加工されて包装されうる。包装は、その機械的保護を与える為に、該電気導体を絶縁ファイバガラステープで取り囲むことからなり、それは、大きいサイズの機械において特に有利でありうる。
【0061】
該コイルは、冷却流体との熱交換を促すことを可能にする形状を有しうる。例えば、該コイルは、非対称の巻線オーバーハング(winding overhang)を有しうる。該コイル巻線オーバーハングは、該コイル巻線オーバーハングがその長さ、回転軸に対するその角度、その形状のうちの下記(非限定的である)のうちの少なくとも1つに対して非対称である場合、非対称であると言われる。
【0062】
該コイルの冷却を促す為に、該コイルは、1以上の軸方向開口を備えうる。
【0063】
各コイルの入口及び出口は、該コイルのそれぞれの側に1つずつ、又は両方同じ側に、位置付けられうる。接続は好ましくは、可能な限りシャフトの近くで、該コイルの底部に位置付けられ、これは、回転における機械的挙動を改善することを可能にする。この場合、該コイル内に偶数の層の導体が必要である。
【0064】
変形例;頂部及び底部にそれぞれある入口及び出口。
【0065】
好ましくは、該コイルは、絶縁によって、特に少なくとも1つの絶縁薄板によって、該スロットの壁から分離される。
【0066】
該コイルは、該回転子が回転子集団上に設置される前に、絶縁で覆われる。
【0067】
該絶縁は、アラミド繊維に基づくNomex(商標)タイプ、又は層の積層体、例えばNomex(商標)の1つの層、Mylar(商標)の1つの層、それに続いてNomex(商標)の1つの層を備えている3層構造でありうる。該絶縁は、所定の位置に接合されていても又はされていなくてもよい。
【0068】
次に、該絶縁によって覆われた該コイルは、特に突磁極上へ挿入される前に、樹脂又はラッカーに含浸させられることができる。
【0069】
該コイルは、それぞれ個々に含浸させられ得、又は該回転子全体が含浸させられうる。
【0070】
含浸は、浸漬被覆によって、又はVPI(真空圧含浸:Vacuum Pressure Impregnation)を使用して、実行されうる。
【0071】
一つの実施態様の変形例において、巻線オーバーハングの端部は、例えばDacron(商標)(ポリアミド)テープを使用して、機械的に締め付けられうる。
【0072】
該コイルは、磁極内で定位置に該コイルを塞ぐ為に、該スロット内にくさび留めされうる。この目的で、くさび、例えばスロット内へねじ又はクリップ留めされたくさび、が使用されうる。該くさびは、アルミニウム又はプラスチックから形成され、且つ種々の形状を有しうる。該くさびは、ヒートシンクとして作用して、冷却流体との熱交換を改善しうる。該くさびは、冷却流体の循環の為のチャネルを残すように作成されうる。該冷却流体は、空気、水、油でありうる。
【0073】
機械及び固定子
本発明の更なる主題は、前述された通りの回転子を備えている回転電気機械(rotating electrical machine)である。該機械は、モータとして又は発電機として使用されうる。該機械は、リラクタンス機でありうる。該機械は、同期モータ、又は変形例において、同期発電機を構成しうる。更なる変形例において、該機械は、非同期機械を構成する。
【0074】
該機械は、固定子を備えている。該固定子は、複数の歯の間にスロットを画定する該歯を備えている。これらのスロットは、空気間隙に向かって閉じられうる。
【0075】
一つの実施態様において、該固定子は、歯を支承する一体のヨークを備えうる。該スロットは、該ヨーク及び該空気間隙の両方に向かって閉じられうる。
【0076】
実施態様の変形例において、該固定子は、外側に向かって径方向に開いているスロットを複数の歯の間に画定する該歯を備えている歯付きリングと、該歯付きリングに取り付けられたヨークとを備えている。
【0077】
該固定子は、該スロット内に分散されて配置された巻線を備え得、及び、該巻線は特に、該スロット内に配列された電気導体を有する。
【0078】
「分散」によって意味されることは、該巻線のうちの少なくとも1つが、2つの隣接していないスロットを連続して通過することである。
【0079】
「取り付けられたヨーク」によって意味されることは、該ヨークが歯付きリングと一体として作成されるのではなく、該固定子の製造中に歯付きリングに取り付けられることである。
【0080】
該電気導体は、該スロット内にばらばらではなく規則的な様式で配置されることが可能である。該電気導体は、該スロット内にランダムでなく積層され、例えば位置合わせされた電気導体の列として配置される。該電気導体の積層体は例えば、円形の横断面の電気導体の場合は、六角形アレイの積層体である。
【0081】
該巻線の設置は、一方では、スロットの内側へのアクセスが容易であるため、これらはより広く開いており、たたし、これらは、空気間隙ではなく外側に向かって開いているスロットであり、及び、他方では、必要なツール類又は更には巻線機械にとってさえ、歯付きリングの周りで利用可能な空間が、固定子の孔で利用可能な空間よりはるかに大きいため、より容易になりうる。その上、該巻線動作は、巻線形回転子非同期又はDC機械の回転子の巻線と同様な様式で実行されることができる限り、相対的に安価である。
【0082】
該歯付きリングは、空気間隙の側の基点で接続された該固定子の1群の歯から形成される。該複数の歯は、接線方向のブリッジによって接続される。
【0083】
少なくとも1つのスロットが、歯付きリングの2つの連続する歯をともに接続する接線方向ブリッジによって、空気間隙の側で閉じられ得、又は更に好ましくは全てのスロットが、それぞれ歯付きリングの2つの連続する歯をともに接続する接線方向ブリッジによって、空気間隙の側で閉じられうる。1以上の接線方向ブリッジは、一定の幅を有する。変形例において、該1以上の接線方向ブリッジは、減少し、次に増大する幅を有する。
【0084】
少なくとも1つのスロットは、相互に平行な径方向エッジを有し得、更に好ましくは全てのスロットがこれを有しうる。
【0085】
該少なくとも1つのスロットは、回転軸に直交する横断面において、下記のリストから選択された形状を有しうる:長方形、六角形;ただし、このリストは非限定的である。好ましくは、少なくとも1つのスロットは、横断面において、空気間隙の方向に狭くなる底部を有し、特に六角形の形状を有する。好ましくは、該スロットの形状は、スロット内に配置された電気導体の積層体の形状に対応し、それは特に、スロットが六角形の横断面を有する場合に当てはまりうる。その上、この場合、接線方向ブリッジは一定でない幅であり、線形に減少し、次に増大する。接線方向ブリッジのそのような構成は、高調波を最小にすること、歯及びヨークの脱飽和によってより大きいトルクを得ること、並びに熱伝達を改善することを可能にする。
【0086】
少なくとも1つの歯、又は更に好ましくは全ての歯、は、横断面において、台形の全体的な形状でありうる。
【0087】
該スロット内の電気導体は、横断面において、非限定的であるが、円形又は多角形、特に長方形の形状でありうる。該導体が横断面において円形である場合、該導体は、該スロット内に六角形の積層体として配置されうる。該導体が横断面において長方形である場合、該導体は、長辺を介して互いに隣接して、該スロット内に単一の列として配置されうる。積層を最適化することは、より多数の電気導体をスロット内に配置することを可能にすると同時に、該スロットの有用な表面積を低減させることを可能にし、従って同じ体積に対してより大きい電力の固定子を得ることを可能にする。
【0088】
該歯付きリングは、接線方向ブリッジによって接続された歯の直線形ストリップを螺旋形に巻くことによって作成され得、直線形ストリップの歯は、収束するエッジを有するスロットを間に作成し、ここで、該スロットのエッジは、該ストリップが巻かれて歯付きリングを形成する場合に、実質的に相互に平行になる。変形例において、該ストリップは、それぞれ幾つかの歯を備えている扇形から形成され得、ここで、該扇形は、材料のブリッジによって接続され、ここで、これらの扇形は、薄板金属の直線形ストリップから切断される。
【0089】
該ヨークはまた、この巻線を容易にする為に、その幅がこれを許すならば、薄板金属のストリップを直接螺旋形に巻くことによって、又は切断時に上記薄板金属のストリップ内に好適なスロットを形成することによって、同様に作成されうる。
【0090】
該ヨークは、該巻線が該スロット内に設置された後に、該歯付きリングに取り付けられうる。
【0091】
実施態様の変形例において、該固定子は、集中された巻線を有する固定子である。該固定子は、歯と、該歯上に配置されたコイルとを備えうる。従って、該固定子は、該歯上に巻き付けられうるものであり、又は言い換えれば該固定子は、分散されていない巻線を有する。
【0092】
該固定子の歯は、磁極片を備えうる。変形例において、該固定子の歯には磁極片がない。
【0093】
該固定子は、ヨークを取り囲む外枠を備えうる。
【0094】
該固定子の歯は、誘起電流損失を制限する為にそれぞれ絶縁ラッカーで覆われた、磁気ラミネーションの積層体とともに作成されうる。
【0095】
該機械は、毎秒100メートル以上でありうる公称周速度(回転子の外径で測定される接線方向の速度)で動作しうる。従って、本発明に従う機械は、所望される場合、高速での動作を可能にする。
【0096】
本発明に従う回転電気機械は、例えば100〜500mm、更に好ましくは120〜400mm、で構成された外径を有し得、例えば200mm程度である。内径は例えば、300mm以下であり、特に60mm〜180mmで構成される。
【0097】
該機械の電力は、1〜300kWで構成され得、例えば100kW程度であり、ここで、この値は完全に非限定的である。
【0098】
該機械は、単一の内部回転子、又は変形例において単一の外部回転子、又は更なる変形例として、内部回転子及び外部回転子を備え得、ここで、これらは、固定子のそれぞれの側に1つずつ径方向に配列され、且つ回転結合される。
【0099】
磁極ごと及び位相ごとの該スロットの数は、整数又は分数でありうる。
【0100】
該回転子における磁極Pの数は、例えば4〜48、例えば4、6、8、10、又は12、で構成され、該固定子における歯Sの数は例えば、6〜48で構成される。
【0101】
製造方法
本発明の更なる主題は、前述の主題から独立して、又は前述の主題と組み合わせて、前述の回転子を製造する為の方法であって、
a)芯上にコイルを準備すること、ここで、上記コイルが、該回転子のスロット内に収容されることが意図された第1及び第2の部分を備えている、
b)該コイルの第1の部分を、突磁極の第1の側面に隣接する第1のスロット内に挿入すること、ここで、上記第1の側面が、横方向磁極片を備えている、並びに
c)該コイルの該第2の部分を、上記突磁極の第2の側面に隣接する第2のスロット内に挿入すること
の工程を含む方法である。
【0102】
従って、該コイルは、2つの隣接するスロット内に収容された第1及び第2の部分を備えうる。該第1及び第2の部分は、回転軸Xからそれぞれ距離d1及びd2をあけて位置付けられるように挿入され、該距離d1及びd2は互いに等しい又は異なる。
【0103】
各コイルは、特にエッジ又はフラットにそれ自体に巻かれた長方形の横断面の少なくとも1つのワイアから形成されうる。該ワイアは好ましくは、近接して巻かれる。
【0104】
一つの実施態様において、該コイルは、隣接するコイルによって及び/又は磁極片によって、対応する突磁極上に保持される。該コイルの第1の部分は、該コイルを支承する対応する突磁極の磁極片の下で、又は後に挿入された第2のコイルの下で、保持されうる。変形例において、該コイルの第2の部分は、該コイルを支承する該突磁極に隣接する突磁極の磁極片の下で、又は後に挿入される第2のコイルの下で、保持されうる。
【0105】
該コイルは、その挿入時に変形されうる。該コイルは、回転軸Xからそれぞれ距離d1及びd2をあけて位置付けられた2つの隣接するスロット内に収容されることが意図された第1及び第2の部分を備えているコイルを得るように変形され得、該距離d1及びd2は異なる。次に、該第1及び第2の部分は、変曲を呈しうるコイル部分によって接続される。
【0106】
該コイルは、その挿入時に、コイルを磁極片の下で保持するように、特に円周方向に、オフセットされうる。一つの実施態様において、該コイルは、該コイルを支承する対応する突磁極の磁極片下でその第1の部分を保持するようにオフセットされる。別の実施態様において、該コイルは、該コイルを支承する突磁極に隣接して突磁極の磁極片下でその第2の部分を保持するようにオフセットされる。
【0107】
一つの実施態様において、該コイルは、回転子の突磁極の上へ個々に挿入される。
【0108】
変形例において、該コイルは、一度に全て挿入される。従って、本発明の1つの主題は、前述の主題から独立して、又は前述の主題と組み合わせて、特に前述の回転子を製造する為の方法であって、
i)全ての該コイルの該第1の部分が、対応する該スロット内へ一度に全て挿入されること、次に、
ii)全ての該コイルの該第2の部分が、対応する該スロット内へ一度に全て挿入されること、並びに
iii)特に隣接するコイルによって及び/又は磁極片によって、対応する突磁極上にコイルを保持するように、該コイルが円周方向にオフセットされること
の工程を含む。
【0109】
本発明は、本発明の非限定的な例示的実施態様の下記の詳細な説明を読み、且つ添付の図面を研究すると、よりよく理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
図1図1は、本発明に従う回転電気機械の概略部分横断面図である。
図2a図2aは、機械内の誘導線を示す、図1の機械の横断面図である。
図2b図2bは、機械内の磁束線を示す、図1の機械の横断面図である。
図3a図3aは、突磁極上のコイルの位置決めの変形例の図1に類似の図である。
図3b図3bは、突磁極上のコイルの位置決めの変形例の図1に類似の図である。
図3c図3cは、突磁極上のコイルの位置決めの変形例の図1に類似の図である。
図4図4は、固定子の変形実施態様の図1に類似の図である。
図5図5は、変形機械の概略部分斜視図である。
図6図6は、実施態様の変形例の図1に類似の図である。
【発明を実施するための形態】
【0111】
図1は、内部回転子1及び外部固定子2を備えている回転電気機械10を示す。該固定子は、同期モータの文脈において、該回転子1を回転させる回転磁場を生成することを可能にし、及び、交流発電機の場合に、該回転子の回転が、固定子巻線内に起電力を誘起する。
【0112】
固定子2は、図示されている通り、歯付きリング25の複数の歯23の間に形成されたスロット21内に配置された巻線22を備えている。更に、該固定子は、歯付きリング25に取り付けられたヨーク29を備えている。該固定子は更に、図示されていないが、ヨークを取り囲む外枠を備えている。
【0113】
巻線22は、スロット21内に、分散された様式で配置されており、及び、該スロット21内に配列された電気導体を有する。
【0114】
記載された例におけるスロット21は、相互に平行な径方向のエッジを有し、及び、横断面において全体的な形状が方形である。
【0115】
該スロット21は、歯付きリング25の2つの連続する歯と一緒につなぎ合わせられる接線方向ブリッジ27によって、空気間隙に向かって閉じられている。接線方向ブリッジ27は、一定でない幅であり、減少し、次に、増大する。
【0116】
該歯付きリング25は、該接線方向ブリッジ27によって接続された歯のストリップを螺旋形に巻くことによって作成される。ストリップの歯23は、複数の歯の間に、収束するエッジを有する該スロット21を作成し、ここで、該ストリップがそれ自体に巻かれて歯付きリングを形成する場合に、該スロットのエッジは、相互に平行である。
【0117】
各スロット21は、2つの積層された巻線を備えており、それ故に2つの巻線段を備えている。
【0118】
ヨークの厚さeは、知られている機械と比較して、相対的に大きくありうる。同じことが、該歯の幅lにも当てはまる。このようにして、該固定子での電場(又はアンペア回数)の消費における有意な低減、又は更には該固定子を通過する磁束の有意な増加を得ることが可能である。
【0119】
図1に示されている回転子1は、回転子の回転軸Xに沿って軸方向に延在する磁気回転子集団3を備えており、ここで、この回転子集団は例えば、軸Xに沿って積層された磁気ラミネーションのパックによって形成され、該ラミネーションは例えば、同一であり、且つ厳密に重ねられる。該ラミネーションは、クリップ留めによって、リベット、タイロッド、溶接、又は任意の他の技法によって、一緒に保持されうる。該磁気ラミネーションは好ましくは、磁性鋼から形成される。全ての等級の磁性鋼が使用されることができる。
【0120】
該回転子集団3は、シャフト5上に取り付ける為の中心開口を備えている。該シャフトは、考慮される例において、非磁性材料、例えば非磁性ステンレス鋼若しくはアルミニウム、から形成され得、又は他方では磁性でありうる。
【0121】
本発明に従うと、該回転子1は、スロット11を間に作成する突磁極13を備えている。該回転子1は、複数のコイル12を更に備えており、ここで、各コイルは、上記突磁極に隣接するスロット11内に、対応する突磁極13上で配置されている。
【0122】
該突磁極13は、該機械の回転軸Xを含む径方向中央平面に対して非対称の全体的な形状を有する。該突磁極13はそれぞれ、回転子が回転軸Xに沿って観察される場合に、突磁極の自由端に向かって、突磁極の第1の側面14a上に位置付けられた横方向磁極片14を備えている。記載された例において、該横方向磁極片は、該突磁極の後側面上に位置付けられる。該突磁極は、第1の側面14aとは反対側で磁極片のない第2の側面14bを備えており、及び該第2の側面14bはその端部に、該コイルの挿入を容易にする面取り14cを有しうる。
【0123】
この例の磁束の循環は、図2a及び図2bに示されている通り、回転子の回転方向に前部に向かってオフセットされる。該突磁極における飽和がゆっくりと到達される。
【0124】
該第2の側面14bは、径方向平面Zに対してγを形成する平面内に延在する。
【0125】
該第2の側面14bは、第1の側面14aに対して角度βを形成する。この角度βは、ゼロ以外である。第1及び第2の側面は、互いに平行でない。
【0126】
該スロット11内でのコイルの該位置決めが、図3a〜図3cを参照して次に説明される。
【0127】
各コイル12は、2つの隣接するスロット11内にそれぞれ収容された第1の部分12a及び第2の部分12bを備えている。
【0128】
図3a及び図3bに示されている通り、これらの第1の部分12a及び第2の部分12bは、回転軸Xからそれぞれ異なる距離d1及びd2をあけて位置付けられうる。該距離d1及びd2が互いに異なる場合、該コイルは変形され、その第1及び第2の部分は、湾曲させられたコイル部分によって接続される。図3aの例において、該コイルは、一方の側で隣接するコイルによって、及び、他方の側で隣接する突磁極の磁極片14によって、対応する突磁極上に保持されている。図3bの例において、該コイルは、一方の側で隣接するコイルによって、他方の側で対応する突磁極の磁極片14によって、対応する突磁極上に保持されている。
【0129】
変形例において、該コイルは、2つの隣接するスロット内に収容された第1及び第2の部分を備えており、ここで、該第1及び第2の部分は、回転軸Xから同じ距離d1をあけて位置付けられる。このコイルは、2つの隣接するコイルによって、対応する突磁極上に保持されている。
【0130】
別のコイルは、2つの隣接するスロット内に収容された第1及び第2の部分を備えており、ここで、該第1及び第2の部分は、回転軸Xから同じ距離d2をあけて位置付けられる。このコイルは、2つの隣接する突磁極の2つの磁極片によって、対応する突磁極上に保持されている。
【0131】
従って、該回転子は、該第1及び第2の部分が回転軸Xから同じ距離d1をあけて位置付けられたコイルと、該第1及び第2の部分が回転軸Xから同じ距離d2をあけて位置付けられたコイルとを交互に備えている。
【0132】
このようにして、全ての該コイルが、隣接するコイルによって及び/又は磁極片によって、対応する突磁極上に保持される。
【0133】
図4に示されている実施態様の変形例において、該固定子は、該固定子の複数の歯23の間に形成されるスロット21の形状の点で、図1のものとは異なる。これらのスロットは、全体的な形状が六角形であり、ダイヤモンドポイントのような形状である。これらのスロット内の電気導体は、横断面において、円形の形状である。この配列は、六角形の配列である。その上、この例において、ヨーク29は、冷却液の循環の為の導管30を収容することが意図された半円形の長手方向リブ31を備えられている。
【0134】
該回転子コイルは、複数の巻きを備えうる。図5に示されている通り、1つのコイルの巻きはオフセットされ得、それはコイルの冷却を促すことを可能にしうる。冷却はまた、該スロット内で、該コイル内で及び複数の該コイルの間に残された空間を介して促されうる。
【0135】
更に、該機械は、該コイルの冷却を更に促す為に、該コイルの先端のレベルでシャフト上に配置されたファン40を備えうる。
【0136】
図1の例において、回転子磁極の数は8である。この数が異なっていた場合でも、本発明の範囲からの逸脱を構成しないであろう。該機械は、例えば、図6に示されている通り、回転子で、6つの突磁極を備えうる。
【0137】
該回転子は、次に詳細に説明される製造方法によって得られる。
【0138】
準備工程において、該コイルは、芯上に準備される。各コイルは、回転子スロット内に収容されることが意図された第1及び第2の部分を備えている。
【0139】
次に、該コイルの該第1の部分が、該突磁極の該第1の側面に隣接する第1のスロット内に挿入され、ここで、この第1の側面は、横方向磁極片を備えている。
【0140】
最後に、該コイルの該第2の部分が、該突磁極の該第2の側面に隣接する第2のスロット内に挿入される。
【0141】
特に、全ての該コイルの該第1の部分が、対応するスロット内へ一度に全て挿入され、次に、全ての該コイルの該第2の部分が、対応するスロット内へ一度に全て挿入される。
【0142】
最後に、該コイルは、特に、隣接するコイルによって及び/又は磁極片によって、対応する突磁極上にコイルを保持するように、円周方向にオフセットされる。
【0143】
得られたアセンブリは、他の場所で準備された固定子内へ挿入される前に、含浸させられることができる。
【0144】
当然ながら、本発明は、前述の例示的な実施態様に制限されない。
【0145】
表現「〜を備えている」は、「少なくとも一つを〜備えている」と同義であると理解されるべきである。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6
【国際調査報告】