(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
前記抗BCMA scFvが、可変重(VH)鎖相補性決定領域(CDR)及び参照抗体と同じ可変軽(VL)鎖CDRを含み、前記参照抗体が、配列番号60として記載されるVH及び配列番号61として記載されるVLを含む、請求項7に記載の操作されたT細胞。
前記抗CD33 scFvが、参照抗体と同じVH CDR及び同じVL鎖CDRを含み、前記参照抗体が、配列番号140として記載されるVH及び配列番号141として記載されるVLを含む、請求項13に記載の操作されたT細胞。
前記抗CD33 scFvが、それぞれ配列番号140及び141において記載されるアミノ酸配列を含むVH及びVL鎖を含む、請求項11に記載の操作されたT細胞。
前記抗CD19 scFvが、参照抗体と同じVH CDR及び同じVL鎖CDRを含み、前記参照抗体が、配列番号152として記載されるVH及び配列番号153として記載されるVLを含む、請求項19に記載の操作されたT細胞。
前記抗CD19 scFvが、それぞれ配列番号152及び153において記載されるアミノ酸配列を含むVH及びVL鎖を含む、請求項19に記載の操作されたT細胞。
前記抗CD70 scFvが、参照抗体と同じVH CDR及び同じVL CDRを含み、前記参照抗体が、配列番号51として記載されるVH及び配列番号52として記載されるVLを含む、請求項26に記載の操作されたT細胞。
前記操作されたT細胞が、標的細胞であって、前記標的細胞が、前記CARに特異的な抗原を発現する標的細胞による5回の再チャレンジの後に細胞傷害性を維持する、請求項1〜43のいずれか一項に記載の操作されたT細胞。
操作されたT細胞を含む細胞の集団であって、前記操作されたT細胞が、破壊されたCD70遺伝子及びCD70に結合しないCARをコードする核酸を含む細胞の集団。
前記抗BCMA scFvが、可変重(VH)鎖相補性決定領域(CDR)及び参照抗体と同じ可変軽(VL)鎖CDRを含み、前記参照抗体が、配列番号60として記載されるVH及び配列番号61として記載されるVLを含む、請求項53に記載の細胞の集団。
前記抗CD33 scFvが、参照抗体と同じVH CDR及び同じVL鎖CDRを含み、前記参照抗体が、配列番号140として記載されるVH及び配列番号141として記載されるVLを含む、請求項59に記載の細胞の集団。
前記抗CD19 scFvが、参照抗体と同じVH CDR及び同じVL鎖CDRを含み、前記参照抗体が、配列番号152として記載されるVH及び配列番号153として記載されるVLを含む、請求項65に記載の細胞の集団。
前記抗CD70 scFvが、参照抗体と同じVH CDR及び同じVL CDRを含み、前記参照抗体が、配列番号51として記載されるVH及び配列番号52として記載されるVLを含む、請求項71〜76のいずれか一項に記載の細胞の集団。
前記操作されたT細胞が、標的細胞であって、前記標的細胞が、前記CARに特異的な抗原を発現する標的細胞による5回の再チャレンジの後に細胞傷害性を維持する、請求項47〜89のいずれか一項に記載の細胞の集団。
前記破壊されたβ2M遺伝子が、配列番号9〜14のいずれか1つから選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、請求項49〜92のいずれか一項に記載の細胞の集団。
前記破壊されたCD70遺伝子が、配列番号129〜134のいずれか1つから選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、請求項47〜93のいずれか一項に記載の細胞の集団。
前記T細胞にTRAC遺伝子を標的化するgRNAを送達することをさらに含み;前記操作されたT細胞がさらに、破壊されたTRAC遺伝子を含む、請求項111に記載の方法。
前記CARをコードする前記核酸が、前記TRAC遺伝子に対する左及び右の相同性アームと隣接し;且つ前記操作されたT細胞が、前記TRAC遺伝子中に前記CARをコードする前記核酸を含む、請求項112に記載の方法。
前記T細胞にβ2M遺伝子を標的化するgRNAを送達することをさらに含み;前記操作されたT細胞がさらに、破壊されたβ2M遺伝子を含む、請求項111〜113のいずれか一項に記載の方法。
前記RNA誘導型ヌクレアーゼが、Cas9ヌクレアーゼ、任意選択によりS.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9ヌクレアーゼである、請求項111〜116のいずれか一項に記載の方法。
前記TRAC遺伝子を標的化する前記gRNAが、配列番号98の前記ヌクレオチド配列を含むか又は配列番号118の前記ヌクレオチド配列を標的化し、且つ任意選択により、前記TRAC遺伝子を標的化する前記gRNAが、配列番号30の前記ヌクレオチド配列を含む、請求項112〜117のいずれか一項に記載の方法。
前記β2M遺伝子を標的化する前記gRNAが、配列番号99の前記ヌクレオチド配列を含むか又は配列番号119の前記ヌクレオチド配列を標的化し、且つ任意選択により、前記β2M遺伝子を標的化する前記gRNAが、配列番号31の前記ヌクレオチド配列を含む、請求項114〜118のいずれか一項に記載の方法。
前記CD70遺伝子を標的化する前記gRNAが、配列番号94又は95の前記ヌクレオチド配列を含むか又は配列番号114又は115の前記ヌクレオチド配列を標的化し、且つ任意選択により、前記CD70遺伝子を標的化する前記gRNAが、配列番号26又は27の前記ヌクレオチド配列を含む、請求項111〜119のいずれか一項に記載の方法。
前記抗BCMA scFvが、可変重(VH)鎖相補性決定領域(CDR)及び参照抗体と同じ可変軽(VL)鎖CDRを含み、前記参照抗体が、配列番号60として記載されるVH及び配列番号61として記載されるVLを含む、請求項130に記載の方法。
前記抗CD33 scFvが、参照抗体と同じVH CDR及び同じVL鎖CDRを含み、前記参照抗体が、配列番号140として記載されるVH及び配列番号141として記載されるVLを含む、請求項136に記載の方法。
前記抗CD19 scFvが、参照抗体と同じVH CDR及び同じVL鎖CDRを含み、前記参照抗体が、配列番号152として記載されるVH及び配列番号153として記載されるVLを含む、請求項142に記載の方法。
前記抗CD70 scFvが、参照抗体と同じVH CDR及び同じVL CDRを含み、前記参照抗体が、配列番号51として記載されるVH及び配列番号52として記載されるVLを含む、請求項148に記載の方法。
前記T細胞中の前記TRAC遺伝子、前記β2M遺伝子、又は前記TRAC及び前記β2M遺伝子の両方を破壊することをさらに含む、請求項157〜159のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本開示は、抗原標的化部分(例えば、CAR)を発現するように操作された免疫細胞においてCD70遺伝子を破壊することが、抗腫瘍効果を含む免疫に基づく療法に重要ないくつかの特徴を増強するという発見に少なくとも部分的に基づく。特に、そのような操作された免疫細胞は、長期間増強された抗腫瘍効果をもたらす増殖の延長及びインビボでの持続を含む予想外の優れた特徴を示した。注目すべきことに、これらの予想外の特徴は、BCMA、CD19、CD33及びCD70を含む様々な抗原に特異的な標的化部分により実証された。
【0074】
本明細書で実証されるとおり、CD70遺伝子を破壊することは、インビトロでの癌細胞によるチャレンジの繰り返しの後に抗原標的化部分を発現するように操作された免疫細胞の細胞傷害性の維持をもたらした。理論に束縛されるものではないが、細胞傷害性のこの維持は、CD70遺伝子を破壊することが、枯渇に耐性の操作された免疫細胞を産生することを示し、より長く生存する細胞をもたらし得る。
【0075】
抗原標的化部分を発現するように操作された免疫細胞においてCD70遺伝子を破壊することは、大型腫瘍に対する抗腫瘍効果を増強し、且つ耐久性のある抗癌記憶応答を誘導したことも見出された。特に、抗癌記憶応答は、再チャレンジ時に腫瘍増殖を防いだ。さらに、CD70遺伝子を破壊することは、操作された免疫細胞と標的細胞の比較的低い比で抗原標的化部分を発現するように操作された免疫細胞の細胞傷害性の増強をもたらし、低用量の操作された免疫細胞の潜在的な有効性を示すことが実証された。
【0076】
CD70遺伝子の破壊が、操作された免疫細胞の細胞増殖及びインビボでの持続を増強することも示された。理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載される操作された免疫細胞の優れた特徴は、より一貫した細胞集団、より多くの細胞分裂を生き延びる細胞の能力による大規模な産生、及び操作された細胞を産生するのに必要なより少ない開始細胞を可能にすると考えられる。そのような特徴はまた、臨床現場において有益であると判明し得る。例えば、増殖の増大及び枯渇の減少は、1用量当たりの有効性の増大及びより少ない用量で有効性を得る能力を示す。
【0077】
抗原標的化部分を発現するように操作された免疫細胞においてCD70遺伝子を破壊することは、高度に免疫抑制性の分子、すなわち、PD−L1を発現する癌細胞に対する細胞傷害性を維持することも実証された。理論に束縛されるものではないが、癌細胞上で発現されるPD−L1に結合したときに免疫細胞上で発現されるPD−1の内的な負のシグナルは、CD70を破壊することによって克服されると考えられる。
【0078】
したがって、本明細書では、有効性及び持続の増大を伴う操作された免疫細胞の使用を含む、BCMA
+、CD19
+、CD33
+、及びCD70
+悪性腫瘍などの癌の治療のための方法及び組成物(例えば、細胞組成物)が提供される。
【0079】
CD70遺伝子編集
表面抗原分類70(CD70)は、腫瘍壊死因子スーパーファミリーのメンバーであり、且つその発現は、活性化T及びBリンパ球及び成熟樹状細胞に限定される。CD70は、そのリガンドであるCD27との相互作用を通して、腫瘍細胞及び制御性T細胞の生存に関係づけられる。CD70及びその受容体であるCD27は、T細胞(活性化及びTreg)、及びB細胞を含む複数の細胞型における免疫機能において複数の役割を有する。これらの細胞型の全てにおいてCD70がどのように機能してアポトーシスなどの機能を制御しているのかは正確には不明であり、相反する役割を示す論文がある。例えば、CD70は、抗原負荷に依存してT細胞のアポトーシス又は生存を誘導することが報告されている(Wensveen,F.,et al.J.Immunol,Vol 188:4256−4267,2012)。
【0080】
CAR T細胞は、効果的な免疫療法であることがわかってきているが、様々な課題が残ったままである。例えば、CAR T細胞は、インビボにおいて経時的に枯渇し、且つ無効になる。製造に関しては、患者に投与するのに十分な細胞を産生するために著しく時間がかかる。これらの制約に対処するために、本開示は、内在性のCD70発現を破壊するが、同時に抗原標的化部分(例えば、scFv)を発現するように操作されたCAR T細胞を提供する。
【0081】
驚くべきことに、本開示は、CD70遺伝子を破壊することにより、抗原がCAR T中のscFvにより標的化されているにもかかわらず、CAR Tの活力及び機能の増大(例えば、増殖の延長、枯渇の減少)を可能にすることを示す。このことは、CD33及びCD70などのT細胞上で発現される抗原にさえ適用され、ここで、破壊されたCD70遺伝子の効果は、兄弟殺しが予想される場合でさえCAR T機能を保持する。すなわち、これらのCD70ノックアウト細胞(例えば、ここで、CD70遺伝子は、CRISPR/Cas9遺伝子編集技術を使用して編集された)は、CARの挿入とは独立して、未改変のT細胞(又はCD70を発現する編集されたT細胞)と比較して、継続性の安定した細胞増殖を示し、且つ比較的低いレベルのLAG3などの枯渇マーカーを発現する。本開示のCAR T細胞は、CAR T細胞を癌細胞に誘導する癌抗原に特異的に結合する任意の抗体(完全抗体及び抗体断片を含む)又は他の分子(例えば、受容体又はリガンド)を含み得る。いくつかの実施形態では、抗体は、抗CD70抗体(例えば、抗CD70 scFv)である。他の実施形態では、抗体は、抗CD19抗体(例えば、抗CD19 scFv)である。さらに他の実施形態では、抗体は、抗BCMA抗体(例えば、抗BCMA scFv)である。他の実施形態では、抗体は、抗CD33抗体(例えば、抗CD33 scFv)である。他の癌抗原が、本開示によって包含される。
【0082】
遺伝子破壊は、遺伝子編集(例えば、1つ以上のヌクレオチドを挿入するか又は欠失させるCRISPR/Cas遺伝子編集を使用する)を介する遺伝子改変を包含することが理解されるはずである。いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子は、機能性タンパク質をコードしない遺伝子である。いくつかの実施形態では、破壊された遺伝子を含む細胞は、遺伝子によってコードされる検出可能なレベル(例えば、抗体によって、例えば、フローサイトメトリーによって)のタンパク質を、(例えば、細胞表面で)発現しない。検出可能なレベルのタンパク質を発現しない細胞は、ノックアウト細胞と呼ばれ得る。例えば、CD70遺伝子編集を有する細胞は、CD70タンパク質が、CD70タンパク質に特異的に結合する抗体を使用して細胞表面で検出できない場合、CD70ノックアウト細胞とみなされ得る。
【0083】
本明細書では、いくつかの実施形態において、一定のパーセンテージの細胞が編集されて(例えば、CD70遺伝子が編集される)、特定の遺伝子及び/又はタンパク質を発現しない一定のパーセンテージの細胞をもたらす細胞の集団が提供される。いくつかの実施形態では、遺伝子編集された細胞の集団のうちの少なくとも50%(例えば、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は85%)の細胞は、CD70ノックアウト細胞である。いくつかの実施形態では、集団のうちの少なくとも50%の細胞(例えば、T細胞)が、検出可能なレベルのCD70タンパク質を発現しない。いくつかの実施形態では、遺伝子編集された細胞の集団のうちの少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の細胞は、CD70ノックアウト細胞であってもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、集団のうちの10%、15%、20%、25%、30%、35%又は40%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのCD70表面タンパク質を発現しない。いくつかの実施形態では、検出可能なレベルのCD70表面タンパク質を発現しない操作されたT細胞のパーセントは、経時的に増加する。したがって、いくつかの実施形態では、操作されたT細胞の集団のうちの少なくとも50%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのCD70表面タンパク質を発現しない。例えば、集団のうちの少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのCD70表面タンパク質を発現しない場合がある。いくつかの実施形態では、集団のうちの50%〜100%、50%〜90%、50%〜80%、50%〜70%、50%〜60%、60%〜100%、60%〜90%、60%〜80%、60%〜70%、70%〜100%、70%〜90%、70%〜80%、80%〜100%、80%〜90%、又は90%〜100%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのCD70表面タンパク質を発現しない。
【0085】
CD70遺伝子におけるゲノム改変(例えば、破壊、例えば、欠失、挿入、置換)をもたらす本明細書で提供されるとおりに使用され得る改変及び未改変のCD70 gRNA配列の非限定的な例は、表5において列挙される(例えば、配列番号23〜29及び33〜39)。他のgRNA配列は、19番染色体上に位置するCD70遺伝子配列を使用して設計され得る(GRCh38の座標:19番染色体:6,583,183〜6,604,103;Ensembl:ENSG00000125726)。ある種の実施形態では、CD70ゲノム領域を標的化するgRNAは、CD70 mRNA及び/又はタンパク質の発現を破壊するCD70遺伝子内、又は周囲でインデル(例えば:挿入、欠失又は置換)をもたらす。
【0086】
いくつかの実施形態では、RNA誘導型ヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼなどのCasヌクレアーゼ)を含有するリボ核タンパク質粒子(RNP)及びCD70遺伝子(又は任意の他の目的の遺伝子)を標的化するgRNAが、T細胞(例えば、一次T細胞)に送達される。他の実施形態では、RNA誘導型ヌクレアーゼ及びgRNAは、T細胞に別々に送達される。リボ核タンパク質粒子(RNP)は単に、gRNAと予め複合体を形成した/複合体を形成した(結合した)RNA誘導型ヌクレアーゼ(例えば、Cas9)である。
【0087】
いくつかの実施形態では、CD70遺伝子を標的化するgRNAは、配列番号33〜39を含むgRNAのいずれか1つなどであるが、これに限定されない合成的に改変されたgRNAである。いくつかの実施形態では、CD70遺伝子を標的化するgRNAは、配列番号23〜29を含むgRNAのいずれか1つなどであるが、これに限定されない合成的に改変されていないgRNAである。
【0088】
いくつかの実施形態では、CD70ゲノム領域を標的化するgRNA及びRNA誘導型ヌクレアーゼは、CD70遺伝子における二重鎖切断をもたらす。切断の修復は、CD70遺伝子においてインデルをもたらし、ここで、CD70遺伝子配列は、配列番号129〜134からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含み得る。
【0089】
多重遺伝子編集
本開示の操作されたT細胞は、いくつかの実施形態において、例えば、2つ以上の遺伝子における2つ以上の破壊された遺伝子(例えば、2つ以上の遺伝子編集)を含む。例えば、操作されたT細胞は、破壊されたCD70遺伝子、破壊されたT細胞受容体アルファ鎖定常領域(TRAC)遺伝子、破壊されたベータ−2−ミクログロブリン(β2M)遺伝子、破壊されたプログラム細胞死−1(PD−1又はPDCD1)遺伝子、又は前述の破壊された遺伝子の2つ以上の任意の組合せを含み得る。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、破壊されたTRAC遺伝子、破壊されたβ2M遺伝子、及び破壊されたCD70遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、破壊されたTRAC遺伝子、破壊されたβ2M遺伝子、及び破壊されたPD−1遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、破壊されたTRAC遺伝子、破壊されたβ2M遺伝子、破壊されたCD70遺伝子及び破壊されたPD−1遺伝子を含む。
【0090】
TRAC遺伝子編集
いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、破壊されたTRAC遺伝子を含む。この破壊は、TCRの機能喪失をもたらし、且つ操作されたT細胞に同種移植への非アロ反応性及び適合性を与え、移植片対宿主疾患のリスクを最小化する。いくつかの実施形態では、内在性のTRAC遺伝子の発現は、移植片対宿主反応を予防するために除去される。
【0091】
いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子発現における破壊は、キメラ抗原受容体(CAR)を(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター及びドナー鋳型を使用して)TRAC遺伝子にノックインすることによってもたらされる。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子発現における破壊は、TRACゲノム領域を標的化するヌクレアーゼ及びgRNAによりもたらされる。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子におけるゲノム欠失は、HDRによってもたらされ、ここで、キメラ抗原受容体(CAR)は、TRAC遺伝子のセグメントを(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター及びドナー鋳型を使用して)置き換える。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子発現における破壊は、TRACゲノム領域を標的化するヌクレアーゼ及びgRNA、及びキメラ抗原受容体(CAR)をTRAC遺伝子にノックインすることによりもたらされる。
【0092】
TRAC遺伝子においてゲノムをもたらす本明細書で提供されるとおりに使用され得る改変及び未改変のTRAC gRNA配列の非限定的な例は、表7において列挙される(例えば、配列番号30及び40)。また、参照により本明細書に組み込まれる、2018年5月11日に出願された国際出願番号PCT/US2018/032334号明細書も参照されたい。他のgRNA配列は、14番染色体上に位置するTRAC遺伝子配列を使用して設計され得る(GRCh38:14番染色体:22,547,506〜22,552,154;.Ensembl;ENSG00000277734)。いくつかの実施形態では、TRACゲノム領域を標的化するgRNA及びRNA誘導型ヌクレアーゼは、mRNA又はタンパク質の発現を破壊するTRAC遺伝子におけるインデルをもたらすTRACゲノム領域における切断をもたらす。
【0093】
いくつかの実施形態では、集団のうちの少なくとも50%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのT細胞受容体(TCR)表面タンパク質を発現しない。例えば、集団のうちの少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現しない場合がある。いくつかの実施形態では、集団のうちの50%〜100%、50%〜90%、50%〜80%、50%〜70%、50%〜60%、60%〜100%、60%〜90%、60%〜80%、60%〜70%、70%〜100%、70%〜90%、70%〜80%、80%〜100%、80%〜90%、又は90%〜100%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現しない。
【0094】
いくつかの実施形態では、RNA誘導型ヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼなどのCasヌクレアーゼ)を含有するリボ核タンパク質粒子(RNP)及びTRAC遺伝子(又は任意の他の目的の遺伝子)を標的化するgRNAが、T細胞(例えば、一次T細胞)に送達される。他の実施形態では、RNA誘導型ヌクレアーゼ及びgRNAは、T細胞に別々に送達される。リボ核タンパク質粒子(RNP)は単に、gRNAと予め複合体を形成した/複合体を形成したRNA誘導型ヌクレアーゼ(例えば、Cas9)である。
【0095】
いくつかの実施形態では、TRACゲノム領域を標的化するgRNA及びRNA誘導型ヌクレアーゼは、以下の表1における配列から選択されるヌクレオチド配列を含むTRAC遺伝子においてインデルをもたらす。
【0097】
いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較してTRAC遺伝子の欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較してTRAC遺伝子において15〜30塩基対の欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較して、TRAC遺伝子において15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30の欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較してTRAC遺伝子において30塩基対より多い欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較してTRAC遺伝子において20塩基対の欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較してTRAC遺伝子において配列番号86の欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較してTRAC遺伝子において配列番号86を含む欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較してTRAC遺伝子において配列番号118の欠失を含む。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、未改変のT細胞と比較してTRAC遺伝子において配列番号118を含む欠失を含む。
【0098】
β2M遺伝子編集
いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、破壊されたβ2M遺伝子を含む。β2Mは、MHC I複合体の共通の(不変の)構成要素である。遺伝子編集によってその発現を破壊することは、宿主対治療用異質遺伝子型T細胞反応を予防することになり、異質遺伝子型T細胞の持続の増大をもたらす。いくつかの実施形態では、内在性のβ2M遺伝子の発現は、宿主対移植片反応を予防するために除去される。
【0099】
β2M遺伝子においてゲノム欠失をもたらす本明細書で提供されるとおりに使用され得る改変及び未改変のβ2M gRNA配列の非限定的な例は、表7において列挙される(例えば、配列番号31及び41)。また、参照により本明細書に組み込まれる、2018年5月11日に出願された国際出願番号PCT/US2018/032334号明細書も参照されたい。他のgRNA配列は、15番染色体上に位置するβ2M遺伝子配列を使用して設計され得る(GRCh38の座標:15番染色体:44,711,477−44,718,877;Ensembl:ENSG00000166710)。
【0100】
いくつかの実施形態では、β2Mゲノム領域を標的化するgRNA及びRNA誘導型ヌクレアーゼは、mRNA又はタンパク質の発現を破壊するβ2M遺伝子におけるインデルをもたらすβ2Mゲノム領域における切断をもたらす。
【0101】
いくつかの実施形態では、集団のうちの少なくとも50%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現しない。例えば、集団のうちの少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現しない場合がある。いくつかの実施形態では、集団のうちの50%〜100%、50%〜90%、50%〜80%、50%〜70%、50%〜60%、60%〜100%、60%〜90%、60%〜80%、60%〜70%、70%〜100%、70%〜90%、70%〜80%、80%〜100%、80%〜90%、又は90%〜100%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現しない。
【0102】
いくつかの実施形態では、細胞の集団のうちの50%未満の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、細胞の集団のうちの30%未満の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現する。例えば、細胞の集団のうちの50%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、又は5%未満の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、細胞の集団のうちの40%〜30%、40%〜20%、40%〜10%、40%〜5%、30%〜20%、30%〜10%、30%〜5%、20%〜10%、20%〜5%、又は10%〜5%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現する。
【0103】
いくつかの実施形態では、RNA誘導型ヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼなどのCasヌクレアーゼ)を含有するリボ核タンパク質粒子(RNP)及びB2M遺伝子(又は任意の他の目的の遺伝子)を標的化するgRNAが、T細胞(例えば、一次T細胞)に送達される。他の実施形態では、RNA誘導型ヌクレアーゼ及びgRNAは、T細胞に別々に送達される。リボ核タンパク質粒子(RNP)は単に、gRNAと予め複合体を形成した/複合体を形成したRNA誘導型ヌクレアーゼ(例えば、Cas9)である。
【0104】
いくつかの実施形態では、編集されたβ2M遺伝子は、以下の表2における配列から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0106】
PD−1遺伝子編集
PD−1は、活性化T細胞において下方制御される免疫チェックポイント分子であり、T細胞の応答を弱めるか又は止める働きをする。遺伝子編集によってPD−1を破壊すれば、より多くの持続的且つ/又は強力な治療的T細胞応答をもたらし、且つ/又は対象における免疫抑制を低減できるであろう。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、破壊されたPD−1遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、内在性のPD−1遺伝子の発現は、本開示のCAR T細胞の抗腫瘍効果を増強するめに除去される。
【0107】
PD−1遺伝子においてゲノム欠失をもたらす本明細書で提供されるとおりに使用され得る改変及び未改変のPD−1 gRNA配列の非限定的な例は、表5において列挙される(例えば、配列番号32及び42)。また、参照により本明細書に組み込まれる、2018年5月11日に出願された国際出願番号PCT/US2018/032334号明細書も参照されたい。他のgRNA配列は、2番染色体上に位置するPD−1遺伝子配列を使用して設計され得る(GRCh38の座標:2番染色体:241,849,881〜241,858,908;Ensembl:ENSG00000188389)。
【0108】
いくつかの実施形態では、PD−1ゲノム領域を標的化するgRNA及びRNA誘導型ヌクレアーゼは、PD−1 mRNA又はタンパク質の発現を破壊するPD−1遺伝子におけるインデルをもたらすTRACゲノム領域における切断をもたらす。
【0109】
いくつかの実施形態では、集団のうちの少なくとも50%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのPD−1表面タンパク質を発現しない。例えば、集団のうちの少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのPD−1表面タンパク質を発現しない場合がある。いくつかの実施形態では、集団のうちの50%〜100%、50%〜90%、50%〜80%、50%〜70%、50%〜60%、60%〜100%、60%〜90%、60%〜80%、60%〜70%、70%〜100%、70%〜90%、70%〜80%、80%〜100%、80%〜90%、又は90%〜100%の操作されたT細胞は、検出可能なレベルのPD−1表面タンパク質を発現しない。
【0110】
いくつかの実施形態では、RNA誘導型ヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼなどのCasヌクレアーゼ)を含有するリボ核タンパク質粒子(RNP)及びPD−1遺伝子(又は任意の他の目的の遺伝子)を標的化するgRNAが、T細胞(例えば、一次T細胞)に送達される。他の実施形態では、RNA誘導型ヌクレアーゼ及びgRNAは、T細胞に別々に送達される。リボ核タンパク質粒子(RNP)は単に、gRNAと予め複合体を形成した/複合体を形成したRNA誘導型ヌクレアーゼ(例えば、Cas9)である。
【0111】
細胞表現型
いくつかの実施形態では、細胞の集団内の1つ以上の遺伝子編集は、細胞の増殖能、細胞の枯渇、細胞の生存能、細胞溶解能(例えば、サイトカイン産生及び/又は放出を増加させる)、又はこれらの任意の組合せにおける変化と関連する表現型をもたらす。
【0112】
いくつかの実施形態では、集団の操作されたT細胞は、抗CD70 scFv外部ドメインを含むCARを含む。いくつかの実施形態では、集団の操作されたT細胞は、抗BCMA scFv外部ドメインを含むCARを含む。いくつかの実施形態では、集団の操作されたT細胞は、抗CD19 scFv外部ドメインを含むCARを含む。いくつかの実施形態では、集団の操作されたT細胞は、抗CD33 scFv外部ドメインを含むCARを含む。前述の操作されたT細胞のいずれかは、以下の遺伝子の1つ以上における破壊も含み得る:TRAC、β2M、PD−1、及び/又はCD70(例えば、TRAC
−/β2M
−/CD70
−;TRAC
−/β2M
−/PD−1
−;又はTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−)。
【0113】
いくつかの実施形態では、本開示の操作されたT細胞は、対照細胞と比較して細胞増殖能の増大を示す。いくつかの実施形態では、本開示の操作されたT細胞は、対照T細胞と比較して、少なくとも20%高い細胞増殖能を示す。例えば、操作されたT細胞(例えば、TRAC
−/β2M
−/CD70
−;TRAC
−/β2M
−/PD−1
−;又はTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−;CARを伴うか又は伴わない)は、対照T細胞と比較して、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも90%高い細胞増殖能を示し得る。いくつかの実施形態では、本開示の操作されたT細胞は、対照T細胞と比較して、20%〜100%、20%〜90%、20%〜80%、20%〜70%、20%〜60%、20%〜50%、30%〜100%、30%〜90%、30%〜80%、30%〜70%、30%〜60%、30%〜50%、40%〜100%、40%〜90%、40%〜80%、40%〜70%、40%〜60%、40%〜50%、50%〜100%、50%〜90%、50%〜80%、50%〜70%、又は50%〜60%高い細胞増殖能を示す。細胞増殖を測定する方法は、当業者に知られており、本明細書に記載される。
【0114】
いくつかの実施形態では、本開示の操作されたT細胞は、対照T細胞と比較して、枯渇の減少を示す。例えば、操作されたT細胞は、対照T細胞と比較して、LAG3(又は他の枯渇マーカー)のレベルの低減を示し得る。いくつかの実施形態では、LAG3発現のレベルは、対照T細胞と比較して、少なくとも20%低減される。例えば、LAG3発現のレベルは、対照T細胞と比較して、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも90%低減され得る。いくつかの実施形態では、LAG3発現のレベルは、対照T細胞と比較して、20%〜100%、20%〜90%、20%〜80%、20%〜70%、20%〜60%、20%〜50%、30%〜100%、30%〜90%、30%〜80%、30%〜70%、30%〜60%、30%〜50%、40%〜100%、40%〜90%、40%〜80%、40%〜70%、40%〜60%、40%〜50%、50%〜100%、50%〜90%、50%〜80%、50%〜70%、又は50%〜60%低減される。いくつかの実施形態では、枯渇の減少は、TIGIT、PD−1、LAG−3又はこれらの組合せを含む枯渇マーカーの表面発現の減少を測定することによって決定される。表面発現を測定するための方法は、当業者に知られており、本明細書に記載される。
【0115】
いくつかの実施形態では、本開示の操作されたT細胞は、対照細胞と比較して、細胞生存能の増大を示す。いくつかの実施形態では、本開示の操作されたT細胞は、対照細胞と比較して、細胞生存能において少なくとも20%の増大を示す。例えば、本開示の操作されたT細胞は、対照細胞と比較して、細胞生存能において少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の増大を示し得る。いくつかの実施形態では、本開示の操作されたT細胞は、対照細胞と比較して、細胞生存能において20%〜100%、20%〜90%、20%〜80%、20%〜70%、20%〜60%、20%〜50%、30%〜100%、30%〜90%、30%〜80%、30%〜70%、30%〜60%、30%〜50%、40%〜100%、40%〜90%、40%〜80%、40%〜70%、40%〜60%、40%〜50%、50%〜100%、50%〜90%、50%〜80%、50%〜70%、又は50%〜60%の増大を示す。細胞生存能を測定する方法は、当業者に知られており、本明細書に記載される。
【0116】
いくつかの実施形態では、本開示の操作されたT細胞は、対照細胞と比較して、細胞溶解能の増大を示す。いくつかの実施形態では、本開示の操作されたT細胞は、対照細胞と比較して、細胞溶解能において少なくとも20%の増大(少なくとも20%多く標的細胞を死滅させる)を示す。例えば、本開示の操作されたT細胞は、対照細胞と比較して、細胞溶解能において少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の増大を示し得る。いくつかの実施形態では、本開示の操作されたT細胞は、対照細胞と比較して、細胞溶解能において20%〜100%、20%〜90%、20%〜80%、20%〜70%、20%〜60%、20%〜50%、30%〜100%、30%〜90%、30%〜80%、30%〜70%、30%〜60%、30%〜50%、40%〜100%、40%〜90%、40%〜80%、40%〜70%、40%〜60%、40%〜50%、50%〜100%、50%〜90%、50%〜80%、50%〜70%、又は50%〜60%の増大を示す。
【0117】
いくつかの実施形態では、本開示の操作されたT細胞は、対照細胞と比較して、サイトカイン分泌の増加を示す。例えば、いくつかの実施形態では、操作されたT細胞によって分泌されるサイトカイン(例えば、IL−2及び/又はIFN−ガンマ)のレベルは、対照T細胞によって分泌されるサイトカインのレベルより少なくとも2倍(例えば、少なくとも3倍、少なくとも4倍、又は少なくとも5倍)高い。
【0118】
対照T細胞は、いくつかの実施形態において、内在性のCD70タンパク質(T細胞によって通常発現されるCD70)を発現する操作されたT細胞(例えば、遺伝子編集されたT細胞)である。いくつかの実施形態では、対照T細胞は、内在性のCD70タンパク質を発現する操作されたT細胞であり、且つCAR(例えば、抗CD70 CAR又は抗BCMA CAR)をコードする核酸の挿入によって破壊されたTRAC遺伝子、破壊されたβ2M遺伝子、破壊されたPD−1遺伝子、又は前述の破壊された遺伝子の任意の組合せを含む。いくつかの実施形態では、対照T細胞は、未編集のT細胞である。
【0119】
驚くべきことに、本開示の多重遺伝子編集されたCAR T細胞(例えば、TRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−細胞)は、癌細胞による複数回のチャレンジ(再チャレンジとも呼ばれる)の後に細胞傷害性(癌細胞を死滅させる能力)を維持する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、標的細胞による少なくとも1回の再チャレンジの後に細胞傷害性を維持し、標的細胞は、CAR T細胞によって認識される抗原を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、標的細胞による少なくとも2回の再チャレンジの後に細胞傷害性を維持し、標的細胞は、CAR T細胞によって認識される抗原を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、癌細胞による少なくとも1回の再チャレンジの後に細胞傷害性を維持する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、癌細胞による少なくとも2回の再チャレンジの後に細胞傷害性を維持する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、標的細胞による1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回の再チャレンジの後に細胞傷害性を維持し、標的細胞は、CAR T細胞によって認識される抗原を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、標的細胞による2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回の再チャレンジの後に細胞傷害性を維持し、標的細胞は、CAR T細胞によって認識される抗原を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、癌細胞による2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回の再チャレンジの後に細胞傷害性を維持する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、標的細胞による10回以上の再チャレンジの後に細胞傷害性を維持し、標的細胞は、CAR T細胞によって認識される抗原を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、癌細胞による10回以上の再チャレンジの後に細胞傷害性を維持する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、CD70に特異的なCARを発現し、且つ標的細胞(例えば、癌細胞)は、CD70を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、CD19に特異的なCARを発現し、且つ標的細胞(例えば、癌細胞)は、CD19を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、CD33に特異的なCARを発現し、且つ標的細胞(例えば、癌細胞)は、CD33を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、BCMAに特異的なCARを発現し、且つ標的細胞(例えば、癌細胞)は、BCMAを発現する。
【0120】
遺伝子編集方法
遺伝子編集(ゲノム編集を含む)は、ヌクレオチド/核酸が、標的化された細胞のゲノム中などのDNA配列中に挿入され、欠失され、且つ/又は置換される一種の遺伝子操作である。標的化された遺伝子編集により、標的化された細胞のゲノム中(例えば、標的化された遺伝子又は標的化されたDNA配列中)の予め選択された部位での挿入、欠失、及び/又は置換が可能になる。内在性の遺伝子の配列が、例えば、ヌクレオチド/核酸の欠失、挿入又は置換によって編集されるとき、影響を受けた配列を含む内在性の遺伝子は、配列改変のためにノックアウト又はノックダウンされ得る。したがって、標的化された編集は、内在性の遺伝子発現を破壊するために使用され得る。「標的化された組込み」は、挿入部位での内在性の配列の欠失の有無にかかわらず、1つ以上の外来性の配列の挿入を含むプロセスを指す。標的化された組込みは、外来性の配列を含有するドナー鋳型が存在する場合、標的化された遺伝子編集から生じ得る。本明細書で使用する場合、「破壊された遺伝子」は、内在性の遺伝子と比較して、内在性の遺伝子から機能性タンパク質の発現が減少又は阻害されるような挿入、欠失又は置換を含む遺伝子を指す。本明細書で使用する場合、「遺伝子を破壊すること」は、内在性の遺伝子中で、内在性の遺伝子から機能性タンパク質の発現が減少又は阻害されるような少なくとも1つのヌクレオチド/核酸を挿入するか、欠失させるか又は置換する方法を指す。遺伝子を破壊する方法は、当業者に知られており、本明細書に記載される。
【0121】
標的化された編集は、ヌクレアーゼ非依存的な手法、又はヌクレアーゼ依存的な手法のいずれかを介して達成され得る。ヌクレアーゼ非依存的な標的化された編集手法において、相同組換えは、宿主細胞の酵素機構を介して内在性の配列に導入されることになる外来性のポリヌクレオチドに隣接する相同配列によって誘導される。外来性のポリヌクレオチドは、内在性の配列中においてヌクレオチドの欠失、挿入又は置換を導入し得る。
【0122】
或いは、ヌクレアーゼ依存的な手法は、特異的なレアカッティングヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)による二重鎖切断(DSB)の特異的な導入を介して比較的高い頻度を有して標的化された編集を達成できる。このようなヌクレアーゼ依存的な標的化された編集はまた、DNA修復機構、例えば、DSBに応答して生じる非相同末端連結(NHEJ)を利用する。NHEJによるDNA修復は、少数の内在性のヌクレオチドのランダムな挿入又は欠失(インデル)を引き起こす場合が多い。NHEJに媒介される修復とは反対に、修復はまた、相同組換え修復(HDR)によって生じる場合がある。一対の相同性アームに隣接する外来性の遺伝子材料を含有するドナー鋳型が存在するとき、外来性の遺伝子材料は、外来性の遺伝子材料の標的化された組込みをもたらすHDRによってゲノムに導入され得る。
【0123】
特異的且つ標的化されたDSBを導入できる利用可能なエンドヌクレアーゼとしては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びRNA誘導型CRISPR/Cas9ヌクレアーゼ(CRISPR/Cas9;クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート関連9)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、phiC31及びBxb1インテグラーゼを利用するDICE(二重インテグラーゼカセット交換)システムも、標的化された組込みのために使用され得る。
【0124】
ZFNは、1つ以上のジンクフィンガーを介して配列特異的な様式でDNAに結合するポリペプチドドメインであるジンクフィンガーDNA結合ドメイン(ZFBD)に融合されたヌクレアーゼを含む標的化ヌクレアーゼである。ジンクフィンガーは、構造が亜鉛イオンの配位を介して安定化されるジンクフィンガー結合ドメイン内の約30アミノ酸のドメインである。ジンクフィンガーの例としては、C2H2ジンクフィンガー、C3Hジンクフィンガー、及びC4ジンクフィンガーが挙げられるが、これらに限定されない。設計されたジンクフィンガードメインは、設計/組成物が主に、合理的な基準、例えば、既存のZFP設計及び結合データの情報を保管するデータベース中の情報を処理するための置換規則及びコンピューター処理されたアルゴリズムの適用からもたらされる、天然には存在しないドメインである。例えば、米国特許第6,140,081号明細書;同第6,453,242号明細書;及び同第6,534,261号明細書を参照されたい;国際公開第98/53058号パンフレット;国際公開第98/53059号パンフレット;国際公開第98/53060号パンフレット;国際公開第02/016536号パンフレット及び国際公開第03/016496号パンフレットも参照されたい。選択されたジンクフィンガードメインは、生成が主に、ファージディスプレイ、相互作用トラップ又はハイブリッド選択などの実験的なプロセスからもたらされる、天然には存在しないドメインである。ZFNは、米国特許第7,888,121号明細書及び米国特許第7,972,854号明細書においてより詳細に記載される。ZFNの最も認知されている例は、FokIヌクレアーゼとジンクフィンガーDNA結合ドメインの融合物である。
【0125】
TALENは、TALエフェクターDNA結合ドメインに融合されたヌクレアーゼを含む標的化ヌクレアーゼである。「転写活性化因子様エフェクターDNA結合ドメイン」、「TALエフェクターDNA結合ドメイン」、又は「TALE DNA結合ドメイン」は、TALエフェクタータンパク質のDNAへの結合に関与するTALエフェクタータンパク質のポリペプチドドメインである。TALエフェクタータンパク質は、キサントモナス(Xanthomonas)属の植物病原体によって感染中に分泌される。これらのタンパク質は、植物細胞の核に入り、それらのDNA結合ドメインを介してエフェクター特異的なDNA配列に結合し、且つそれらの転写活性化ドメインを介してこれらの配列で遺伝子転写を活性化する。TALエフェクターDNA結合ドメインの特異性は、2アミノ酸残基からなる可変領域(RVD)と呼ばれる選択された反復位置で多型を含むエフェクターにより可変の数の不完全な34アミノ酸反復に依存する。TALENは、米国特許出願公開第2011/0145940号明細書においてより詳細に記載される。当該技術分野におけるTALENの最も認知された例は、TALエフェクターDNA結合ドメインに対するFokIヌクレアーゼの融合ポリペプチドである。
【0126】
本明細書に提供されるとおりの使用に好適な標的化ヌクレアーゼのさらなる例としては、個別に使用されようと、組み合わせて使用されようと、Bxb1、phiC31、R4、PhiBT1、及びWβ/SPBc/TP901−1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
標的化ヌクレアーゼの他の非限定的な例としては、天然に存在するヌクレアーゼ及び組換えヌクレアーゼ、例えば、CRISPR/Cas9、制限エンドヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼホーミングエンドヌクレアーゼなどが挙げられる。
【0128】
CRISPR−Cas9遺伝子編集
CRISPR−Cas9システムは、遺伝子編集のために使用されるRNA誘導型DNA標的化プラットフォームとして転用されてきた原核生物において天然に存在する防御機構である。それは、DNAの切断を標的化するDNAヌクレアーゼCas9、並びに2つの非コードRNAであるcrisprRNA(crRNA)及びトランス活性化RNA(tracrRNA)に依拠する。CRISPRは、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピートの略称であり、例えば、原核生物を感染させたか又は攻撃したウイルスによって、細胞に以前に暴露した外来DNAと類似性を有するDNAの断片(スペーサーDNA)を含有する細菌及び古細菌のゲノムにおいて見出されるDNA配列のファミリーである。DNAのこれらの断片が原核生物によって使用されて、例えば、引き続く攻撃の間に同様のウイルスからの再導入時に同様の外来DNAを検出し、且つ破壊する。CRISPR座位の転写により、スペーサー配列を含むRNA分子の形成がもたらされ、これが、外来の外来性DNAを認識し、且つ切断できるCas(CRISPR関連)タンパク質と相互作用し、且つ標的化する。CRISPR/Casシステムのいくつかの種類及びクラスが記載されている(例えば、Koonin et al.,(2017)Curr Opin Microbiol 37:67−78を参照のこと)。
【0129】
crRNAは、通常標的DNA中の20ヌクレオチド(nt)配列とワトソン−クリック塩基対を介してCRISPR−Cas9複合体の配列認識及び特異性を促進する。crRNA中の5’ 20ntの配列の変化は、特定の座位へのCRISPR−Cas9複合体の標的化を可能にする。CRISPR−Cas9複合体は単に、標的配列が、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる特定の短いDNAモチーフ(配列NGGを有する)に続いている場合、crRNA、シングルガイドRNA(sgRNA)の最初の20ntに一致する配列を含有するDNA配列に結合する。
【0130】
TracrRNAは、crRNAの3’末端とハイブリダイズしてRNA二重鎖構造を形成し、Cas9エンドヌクレアーゼによって結合されて触媒活性のあるCRISPR−Cas9複合体を形成し、続いてこれにより標的DNAを切断できる。
【0131】
CRISPR−Cas9複合体が標的部位でDNAに結合すると、Cas9酵素内の2つの独立したヌクレアーゼドメインがそれぞれPAM部位の上流のDNA鎖の一方を切断し、DNAの両鎖が塩基対(平滑末端)で終結する二本鎖切断(DSB)を残す。
【0132】
CRISPR−Cas9複合体が特定の標的部位でDNAに結合し、部位特異的なDSBが形成された後、次の鍵となるステップはDSBの修復である。細胞は、DSBを修復するために2つの主要なDNA修復経路を使用する:非相同末端連結(NHEJ)及び相同組換え修復(HDR)。
【0133】
NHEJは、非分裂細胞を含む大多数の細胞型において高度に活性であるように見える堅固な修復機構である。NHEJは誤りがちであり、多くの場合、DSBの部位にて1〜数百のヌクレオチド間で除去又は付加をもたらす場合があるが、そのような改変は通常<20ntである。得られた挿入及び欠失(インデル)は、遺伝子のコード又は非コード領域を破壊する場合がある。代わりに、HDRは、内在的又は外因的に提供される長い一続きの相同性ドナーDNAを使用して、高い忠実度を有してDSBを修復する。HDRは、分裂細胞においてのみ活性であり、大部分の細胞型において相対的に低い頻度で生じる。本開示の多くの実施形態では、NHEJが、修復オペラントとして利用される。
【0134】
いくつかの実施形態では、Cas9(CRISPR関連タンパク質9)エンドヌクレアーゼは、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)に由来するが、他のCas9ホモログが使用されてもよい。本明細書に提供されるとおり、野生型Cas9が使用されてもよいし、Cas9の改変されたバージョンが使用されてもよい(例えば、Cas9の発展させたバージョン、又はCas9オルソログ若しくは変異体)ことが理解されるはずである。いくつかの実施形態では、Cas9は、Cpf1(クラスII CRISPR/Casシステム)などの別のRNA誘導型エンドヌクレアーゼと置き換えられてもよい。
【0135】
いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステムは、I型、II型、又はIII型のシステムに由来する構成要素を含む。CRISPR/Cas座位に関する最新の分類スキームは、I〜V又はVI型を有するクラス1及びクラス2 CRISPR/Casシステムを定義する(Makarova et al.,(2015)Nat Rev Microbiol,13(11):722−36;Shmakov et al.,(2015)Mol Cell,60:385−397)。クラス2 CRISPR/Casシステムは、単一のタンパク質エフェクターを有する。II型、V型、及びVI型のCasタンパク質は、「クラス2 Casヌクレアーゼ」と本明細書で呼ばれる単一タンパク質のRNA誘導型エンドヌクレアーゼである。クラス2 Casヌクレアーゼとしては、例えば、Cas9、Cpf1、C2c1、C2c2、及びC2c3タンパク質が挙げられる。Cpf1ヌクレアーゼ(Zetsche et al.,(2015)Cell 163:1−13)は、Cas9のホモログであり、RuvC様ヌクレアーゼドメインを含有する。
【0136】
いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、II型CRISPR/Casシステムに由来する(例えば、CRISPR/Cas9システムに由来するCas9タンパク質)。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、クラス2 CRISPR/Casシステムに由来する(Cas9タンパク質又はCpf1タンパク質などの単一タンパク質Casヌクレアーゼ)。タンパク質のCas9及びCpf1ファミリーは、DNAエンドヌクレアーゼを有する酵素であり、それらは、本明細書にさらに記載されるとおり、適切なガイドRNAを設計することによって所望の核酸標的を切断するように誘導され得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、2つ以上のヌクレアーゼドメインを含んでもよい。例えば、Cas9ヌクレアーゼは、少なくとも1つのRuvC様ヌクレアーゼドメイン(例えば、Cpf1)及び少なくとも1つのHNH様ヌクレアーゼドメイン(例えば、Cas9)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、Cas9ヌクレアーゼは、標的配列においてDSBを導入する。いくつかの実施形態では、Cas9ヌクレアーゼは、ただ1つの機能性ヌクレアーゼドメインを含有するように改変される。例えば、Cas9ヌクレアーゼは、ヌクレアーゼドメインの1つが、変異されるか又は完全に若しくは部分的に欠失されて、その核酸切断活性が低減するように改変される。いくつかの実施形態では、Cas9ヌクレアーゼは、機能性RuvC様ヌクレアーゼドメインを含有しないように改変される。他の実施形態では、Cas9ヌクレアーゼは、機能性HNH様ヌクレアーゼドメインを含有しないように改変される。ヌクレアーゼドメインのただ1つが機能的であるいくつかの実施形態において、Cas9ヌクレアーゼは、一本鎖切断(「ニック」)を標的配列に導入できるニッカーゼである。いくつかの実施形態では、Cas9ヌクレアーゼのヌクレアーゼドメイン内の保存されたアミノ酸は、ヌクレアーゼ活性を低減又は改変するために置換される。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼニッカーゼは、RuvC様ヌクレアーゼドメイン中においてアミノ酸置換を含む。RuvC様ヌクレアーゼドメイン中における例示的なアミノ酸置換は、D10Aを含む(S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9ヌクレアーゼに基づく)。いくつかの実施形態では、ニッカーゼは、HNH様ヌクレアーゼドメイン中においてアミノ酸置換を含む。HNH様ヌクレアーゼドメイン中における例示的なアミノ酸置換は、E762A、H840A、N863A、H983A、及びD986Aを含む(S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9ヌクレアーゼに基づく)。
【0138】
いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、I型CRISPR/Casシステムに由来する。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、I型CRISPR/Casシステムのカスケード複合体の構成要素である。例えば、Casヌクレアーゼは、Cas3ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、III型CRISPR/Casシステムに由来する。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、IV型CRISPR/Casシステムに由来する。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、V型CRISPR/Casシステムに由来する。いくつかの実施形態では、Casヌクレアーゼは、VI型CRISPR/Casシステムに由来する。
【0139】
ガイドRNA
本開示は、会合したポリペプチド(例えば、部位特異的ポリペプチド)の標的核酸内の特定の標的配列に対する活性を誘導できるゲノム標的化核酸を提供する。ゲノム標的化核酸は、RNAであり得る。ゲノム標的化RNAは、本明細書で「ガイドRNA」又は「gRNA」と呼ばれる。ガイドRNAは、目的の標的核酸配列、及びCRISPR反復配列にハイブリダイズする少なくとも1つのスペーサー配列を含む。II型システムにおいて、gRNAはまた、tracrRNA配列と呼ばれる第2のRNAを含む。II型gRNAにおいて、CRISPR反復配列及びtracrRNA配列は、互いにハイブリダイズして、二重鎖を形成する。V型gRNAにおいて、crRNAが、二重鎖を形成する。両方のシステムにおいて、二重鎖は、部位特異的ポリペプチドに結合し、その結果、ガイドRNA及び部位特異的ポリペプチドは、複合体を形成する。いくつかの実施形態では、ゲノム標的化核酸は、その部位特異的ポリペプチドとの会合により、複合体に標的特異性をもたらす。したがって、ゲノム標的化核酸は、部位特異的ポリペプチドの活性を誘導する。
【0140】
当業者によって理解されるとおり、各ガイドRNAは、そのゲノム標的配列に相補的なスペーサー配列を含むように設計される。Jinek et al.,Science,337,816−821(2012)及びDeltcheva et al.,Nature,471,602−607(2011)を参照されたい。
【0141】
いくつかの実施形態では、ゲノム標的化核酸(例えば、gRNA)は、二重分子ガイドRNAである。いくつかの実施形態では、ゲノム標的化核酸(例えば、gRNA)は、単一分子ガイドRNAである。
【0142】
二重分子ガイドRNAは、RNAの二本鎖を含む。第1の鎖は、5’から3’方向において、任意選択のスペーサー延長配列、スペーサー配列及び最小CRISPR反復配列を含む。第2の鎖は、最小tracrRNA配列(最小CRISPR反復配列に相補的)、3’tracrRNA配列及び任意選択のtracrRNA延長配列を含む。
【0143】
II型システムにおける単一分子ガイドRNA(「sgRNA」と呼ばれる)は、5’から3’方向において、任意選択のスペーサー延長配列、スペーサー配列、最小CRISPR反復配列、単一分子ガイドリンカー、最小tracrRNA配列、3’tracrRNA配列及び任意選択のtracrRNA延長配列を含む。任意選択のtracrRNA延長は、ガイドRNAに対する追加の機能性(例えば、安定性)に寄与する要素を含み得る。単一分子ガイドリンカーは、最小CRISPR反復及び最小tracrRNA配列を連結して、ヘアピン構造を形成する。任意選択のtracrRNA延長は、1つ以上のヘアピンを含む。
【0144】
V型システムにおける単一分子ガイドRNAは、5’から3’方向において、最小CRISPR反復配列及びスペーサー配列を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の5’末端で20ヌクレオチドのスペーサー配列を含む。いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の5’末端で20ヌクレオチド未満のスペーサー配列を含む。いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の5’末端で20ヌクレオチドより長いスペーサー配列を含む。いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の5’末端で17〜30ヌクレオチドを有する可変長スペーサー配列を含む(表3を参照のこと)。
【0146】
いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の3’末端にウラシルを含まない。いくつかの実施形態では、sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に1つ以上のウラシルを含む。例えば、sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に1個のウラシル(U)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に2個のウラシル(UU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に3個のウラシル(UUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に4個のウラシル(UUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に5個のウラシル(UUUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に6個のウラシル(UUUUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に7個のウラシル(UUUUUUU)を含み得る。sgRNAは、sgRNA配列の3’末端に8個のウラシル(UUUUUUUU)を含み得る。
【0147】
sgRNAは、改変されない場合もあるし、改変される場合もある。例えば、改変されたsgRNAは、1つ以上の2’−O−メチルホスホロチオエートヌクレオチドを含み得る。
【0149】
実例として、CRISPR/Cas/Cpf1システムにおいて使用されるガイドRNA、又は他のより小さいRNAは、下に説明され且つ当該技術分野において記載されるとおり、化学的手段によって容易に合成され得る。化学合成法が拡大し続けている一方で、ポリヌクレオチドの長さが百数十ヌクレオチドを超えて大幅に長くなると、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、PAGEなどのゲルの使用を回避する)などの方法によるそのようなRNAの精製は、より難しくなる傾向がある。比較的長いRNAを生成するために使用される1つの手法は、ともに連結される2つ以上の分子を生成することである。Cas9又はCpf1エンドヌクレアーゼをコードするものなどのはるかに長いRNAは、より容易に酵素的に生成される。当該技術分野において記載されるとおり、様々な種類のRNA修飾、例えば、安定性を増強し、自然免疫応答の可能性若しくは程度を低減し、且つ/又は他の特質を増強する修飾が、RNAの化学合成及び/若しくは酵素的生成の間又は後に導入され得る。
【0150】
いくつかの実施形態では、インデル頻度(編集頻度)は、非常に効率的なgRNA分子を同定するために使用され得るTIDE分析を使用して決定され得る。いくつかの実施形態では、非常に効率的なgRNAは、80%より高い遺伝子編集頻度をもたらす。例えば、gRNAは、それが、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%の遺伝子編集頻度をもたらす場合、非常に効率的であるとみなされる。
【0151】
いくつかの実施形態では、遺伝子破壊は、2つのガイドRNAを使用するゲノム配列の欠失によって発生し得る。細胞においてゲノム欠失をもたらす(例えば、細胞において遺伝子をノックアウトする)CRISPR−Cas遺伝子編集技術を使用する方法が知られている(Bauer DE et al.Vis.Exp.2015;95;e52118)。
【0152】
スペーサー配列
いくつかの実施形態では、gRNAは、スペーサー配列を含む。スペーサー配列は、目的の標的核酸の標的配列(例えば、ゲノム標的配列などのDNA標的配列)を定義する配列(例えば、20個のヌクレオチド配列)である。いくつかの実施形態では、スペーサー配列は、15〜30個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、スペーサー配列は、15、16、17、18、19、29、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、スペーサー配列は、20個のヌクレオチドである。
【0153】
「標的配列」は、PAM配列に隣接し、RNA誘導型ヌクレアーゼ(例えば、Cas9)によって改変される配列である。「標的核酸」は、二重鎖分子である:一方の鎖は、標的配列を含み、「PAM鎖」と呼ばれ、また他方の相補鎖は、「非PAM鎖」と呼ばれる。当業者は、gRNAスペーサー配列が、目的の標的核酸の非PAM鎖において位置する標的配列の逆相補鎖にハイブリダイズすることを認識している。したがって、gRNAスペーサー配列は、標的配列のRNA等価物である。例えば、標的配列が、5’−AGAGCAACAGTGCTGTGGCC−3’(配列番号86)である場合、gRNAスペーサー配列は、5’−AGAGCAACAGUGCUGUGGCC−3’(配列番号98)である。gRNAのスペーサーは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基対形成)を介して配列特異的な様式で目的の標的核酸と相互作用する。したがって、スペーサーのヌクレオチド配列は、目的の標的核酸の標的配列に依存して変化する。
【0154】
本明細書のCRISPR/Casシステムにおいて、スペーサー配列は、システムにおいて使用されるCas9酵素のPAMの5’に位置する標的核酸の領域にハイブリダイズするように設計される。スペーサーは、標的配列と完全に一致してもよいし、ミスマッチを有してもよい。各Cas9酵素は、それが標的DNA中で認識する特定のPAM配列を有する。例えば、S.ピオゲネス(S.pyogenes)は、標的核酸において配列5’−NRG−3’(ここで、Rは、A又はGのいずれかを含み、Nは、任意のヌクレオチドであり、Nは、スペーサー配列によって標的化される標的核酸配列の3’のすぐ近くにある)を含むPAMを認識する。
【0155】
いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、20個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、20個未満のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、20個より多いヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、少なくとも:5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30個以上のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、最大で:5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30個以上のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、PAMの最初のヌクレオチドの5’のすぐ近くに20個の塩基を含む。例えば、
【化1】
を含む配列において、標的核酸は、N(複数)(ここで、Nは、任意のヌクレオチドであり、下線のNRG配列は、S.ピオゲネス(S.pyogenes)PAMである)に対応する配列を含む。
【0156】
本明細書に提供されるとおりに使用され得るgRNAの非限定的な例は、この参照により本明細書に組み込まれる、2018年5月11日に出願されたPCT/IB2018/001619号において提供される。
【0157】
gRNAを作製する方法
本開示のgRNAは、インビトロ転写(IVT)、合成及び/又は化学合成法、又はこれらの組合せを含むが、これらに限定されない、当該技術分野において利用可能な好適な手段によって生成される。酵素的(IVT)、固相、液相、複合型の合成法、小領域合成、及びライゲーション法が利用される。一実施形態では、gRNAは、IVT酵素的合成法を使用して作製される。IVTによりポリヌクレオチドを作製する方法は、当該技術分野において知られており、国際出願PCT/US2013/30062号明細書において記載される。したがって、本開示はまた、ポリヌクレオチド、例えば、DNAコンストラクトを含み、ベクターは、本明細書に記載されるgRNAをインビトロ転写するために使用される。
【0158】
いくつかの実施形態では、非天然の修飾核酸塩基が、合成中又は合成後にポリヌクレオチド、例えば、gRNAに導入される。ある種の実施形態では、修飾は、ヌクレオシド間結合、プリン若しくはピリミジン塩基、又は糖におけるものである。いくつかの実施形態では、修飾は、ポリヌクレオチドの末端で導入される;化学合成又はポリメラーゼ酵素を用いる。修飾核酸及びそれらの合成の例は、PCT出願番号PCT/US2012/058519号明細書において開示される。修飾ポリヌクレオチドの合成はまた、Verma and Eckstein,Annual Review of Biochemistry,vol.76,99−134(1998)において記載される。
【0159】
いくつかの実施形態では、酵素的又は化学的ライゲーション法を使用して、ポリヌクレオチド又はそれらの領域を、標的化又は送達薬剤、蛍光標識、液体、ナノ粒子などの様々な機能性部分とコンジュゲートする。ポリヌクレオチド及び修飾ポリヌクレオチドのコンジュゲートは、Goodchild,Bioconjugate Chemistry,vol.1(3),165−187(1990)において概説される。
【0160】
本発明のある種の実施形態はまた、本明細書に記載されるgRNAをコードする核酸、例えばベクターを提供する。いくつかの実施形態では、核酸は、DNA分子である。他の実施形態では、核酸は、RNA分子である。いくつかの実施形態では、核酸は、crRNAをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、crRNAをコードするヌクレオチド配列は、天然に存在するCRISPR/Casシステムに由来する反復配列の全て又は一部に隣接するスペーサーを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、tracrRNAをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、crRNA及びtracrRNAは、2つの別々の核酸によってコードされる。他の実施形態では、crRNA及びtracrRNAは、単一の核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、crRNA及びtracrRNAは、単一の核酸の逆鎖によってコードされる。他の実施形態では、crRNA及びtracrRNAは、単一の核酸の同じ鎖によってコードされる。
【0161】
いくつかの実施形態では、本開示によって提供されるgRNAは、当該技術分野において記載される任意の手段によって化学的に合成される(例えば、国際公開第2005/01248号パンフレットを参照のこと)。化学合成法が拡大し続けている一方で、ポリヌクレオチドの長さが百数十ヌクレオチドを超えて大幅に長くなると、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、PAGEなどのゲルの使用を回避する)などの方法によるそのようなRNAの精製は、より難しくなる傾向がある。比較的長いRNAを生成するために使用される1つの手法は、ともに連結される2つ以上の分子を生成することである。
【0162】
いくつかの実施形態では、本開示によって提供されるgRNAは、酵素的方法(例えば、インビトロ転写、IVT)によって合成される。
【0163】
当該技術分野において記載されるとおり、様々な種類のRNA修飾、例えば、安定性を増強し、自然免疫応答の可能性若しくは程度を低減し、且つ/又は他の特質を増強する修飾が、RNAの化学合成及び/若しくは酵素的生成の間又は後に導入され得る。
【0164】
ある種の実施形態では、2つ以上のガイドRNAが、CRISPR/Casヌクレアーゼシステムにより使用され得る。各ガイドRNAは、CRISPR/Casシステムが2つ以上の標的核酸を切断するように、異なる標的化配列を含有し得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のガイドRNAは、Cas9 RNP複合体内での活性又は安定性などの同じ又は異なる特性を有し得る。2つ以上のガイドRNAが使用される場合、各ガイドRNAは、同じ又は異なるベクター上にコードされ得る。2つ以上のガイドRNAの発現を駆動するために使用されるプロモーターは、同じであるか又は異なる。
【0165】
ガイドRNAは、crRNAの標的化配列(例えば、スペーサー配列)を介して目的の任意の配列を標的化し得る。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの標的化配列と標的核酸分子上の標的配列の間の相補性の程度は、約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、又は100%である。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの標的化配列及び標的核酸分子上の標的配列は、100%相補的である。他の実施形態では、ガイドRNAの標的化配列及び標的核酸分子上の標的配列は、少なくとも1個のミスマッチを含有し得る。例えば、ガイドRNAの標的化配列及び標的核酸分子上の標的配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のミスマッチを含有し得る。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの標的化配列及び標的核酸分子上の標的配列は、1〜6個のミスマッチを含有し得る。いくつかの実施形態では、ガイドRNAの標的化配列及び標的核酸分子上の標的配列は、5又は6個のミスマッチを含有し得る。
【0166】
標的化配列の長さは、CRISPR/Cas9システム及び使用される構成要素に依存し得る。例えば、異なる細菌種に由来する異なるCas9タンパク質は、可変の最適な標的化配列の長さを有する。したがって、標的化配列は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、又は50を超えるヌクレオチド長を含み得る。いくつかの実施形態では、標的化配列は、18〜24ヌクレオチド長を含み得る。いくつかの実施形態では、標的化配列は、19〜21ヌクレオチド長を含み得る。いくつかの実施形態では、標的化配列は、20ヌクレオチド長を含み得る。
【0167】
本開示のいくつかの実施形態では、CRISPR/Casヌクレアーゼシステムは、少なくとも1個のガイドRNAを含む。いくつかの実施形態では、ガイドRNA及びCasタンパク質は、リボ核タンパク質(RNP)、例えば、CRISPR/Cas複合体を形成し得る。ガイドRNAは、Casタンパク質を標的核酸分子(例えば、ゲノムDNA分子)上の標的配列に誘導し得るが、ここで、Casタンパク質は、標的核酸を切断する。いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas複合体は、Cpf1/ガイドRNA複合体である。いくつかの実施形態では、CRISPR複合体は、II型CRISPR/Cas9複合体である。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Cas9タンパク質である。いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas9複合体は、Cas9/ガイドRNA複合体である。
【0168】
ガイドRNA及びヌクレアーゼの送達
いくつかの実施形態では、gRNA及びRNA誘導型ヌクレアーゼは、同時に又は逐次的に、別々に細胞に送達される。いくつかの実施形態では、gRNA及びRNA誘導型ヌクレアーゼは、細胞に一緒に送達される。いくつかの実施形態では、gRNA及びRNA誘導型ヌクレアーゼは、ともに予め複合体を形成して、リボ核タンパク質(RNP)を形成する。
【0169】
RNPは、少なくともそれらが、核酸が豊富な細胞環境中での乱雑な相互作用のリスクを最小化し、且つRNAを分解から保護するため、遺伝子編集に有用である。RNPを形成するための方法は、当該技術分野において知られている。いくつかの実施形態では、RNA誘導型ヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼなどのCasヌクレアーゼ)及び目的の遺伝子を標的化するgRNAを含有するRNPが、細胞(例えば、T細胞)に送達される。いくつかの実施形態では、RNPは、エレクトロポレーションによってT細胞に送達される。
【0170】
本明細書で使用する場合、「TRAC標的化RNP」は、RNA誘導型ヌクレアーゼと予め複合体を形成したTRAC遺伝子を標的化するgRNAを指す。本明細書で使用する場合、「β2M標的化RNP」は、RNA誘導型ヌクレアーゼと予め複合体を形成したβ2M遺伝子を標的化するgRNAを指す。本明細書で使用する場合、「CD70標的化RNP」は、RNA誘導型ヌクレアーゼと予め複合体を形成したCD70遺伝子を標的化するgRNAを指す。本明細書で使用する場合、「PD−1標的化RNP」は、RNA誘導型ヌクレアーゼと予め複合体を形成したPD−1遺伝子を標的化するgRNAを指す。
【0171】
いくつかの実施形態では、TRAC標的化RNPが、細胞に送達される。いくつかの実施形態では、β2M標的化RNPが、細胞に送達される。いくつかの実施形態では、CD70標的化RNPが、細胞に送達される。いくつかの実施形態では、PD−1標的化RNPが、細胞に送達される。
【0172】
いくつかの実施形態では、2つ以上のRNPが、細胞に送達される。いくつかの実施形態では、2つ以上のRNPが、細胞に別々に送達される。いくつかの実施形態では、2つ以上のRNPが、細胞に同時に送達される。いくつかの実施形態では、以下のRNPの少なくとも1つが、細胞に送達される:
(i)TRAC標的化RNP;
(ii)β2M標的化RNP;
(iii)CD70標的化RNP;又は
(iv)PD−1標的化RNP。いくつかの実施形態では、以下のRNPの少なくとも2つが、細胞に送達される:
(i)TRAC標的化RNP;
(ii)β2M標的化RNP;
(iii)CD70標的化RNP;又は
(iv)PD−1標的化RNP。
【0173】
いくつかの実施形態では、RNA誘導型ヌクレアーゼは、RNA誘導型ヌクレアーゼを発現するDNAベクター、RNA誘導型ヌクレアーゼをコードするRNA、又はタンパク質において細胞に送達される。いくつかの実施形態では、遺伝子を標的化するgRNAは、RNA、又はgRNAを発現するDNAベクターとして細胞に送達される。
【0174】
RNA誘導型ヌクレアーゼ、gRNA、及び/又はRNPの送達は、直接的な注射又は既知の方法、例えば、エレクトロポレーション又は化学的トランスフェクションを使用する細胞トランスフェクションを介するものであり得る。他の細胞トランスフェクション法が使用されてもよい。
【0175】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞
キメラ抗原受容体は、腫瘍細胞によって発現される抗原を認識し、それに結合するように操作された人工の免疫細胞受容体を指す。一般に、CARは、T細胞のために設計され、T細胞受容体(TCR)複合体のシグナル伝達ドメイン及び抗原認識ドメイン(例えば、抗体の一本鎖断片(scFv)又は他の抗体断片)のキメラである(Enblad et al.,Human Gene Therapy.2015;26(8):498−505)。CARを発現するT細胞は、CAR T細胞と呼ばれる。CARは、MHCに制限されない様式で選択された標的に対するT細胞の特異性及び反応性を再指示する能力を有する。MHCに制限されない抗原認識は、CARを発現するT細胞に抗原プロセシングに非依存的な抗原を認識する能力を与え、それにより腫瘍エスケープの主要な機構をバイパスする。さらに、T細胞において発現されるとき、CARは、内在性のT細胞受容体(TCR)アルファ及びベータ鎖と有利に二量体化しない。CARは、それらが結合する抗原によって参照される場合が多い。例えば、「CD19 CAR」、「CD70 CAR」、「CD33 CAR」及び「BCMA CAR」は、それぞれCD19、CD70、CD33又はBCMAに特異的に結合する抗原結合ドメインを含むCARである。したがって、このような用語は、抗CD19 CAR、抗CD70 CAR、抗CD33 CAR及び抗BCMA CARと互換的である。抗原に特異的に結合するCARが、いずれかの用語法により参照され得ることは当業者によって理解されるであろう。
【0176】
4つの世代のCARが存在し、その各々は異なる構成要素を含有する。第一世代のCARは、抗体に由来するscFvをヒンジ及び膜貫通ドメインを介してT細胞受容体のCD3ゼータ(ζ又はz)細胞内シグナル伝達ドメインに連結する。第二世代のCARは、追加のドメイン、例えば、CD28、4−1BB(41BB)、又はICOSを組み込んで、共刺激シグナルを供給する。第三世代のCARは、TCR CD3ζ鎖に融合した2つの共刺激ドメインを含有する。第三世代の共刺激ドメインは、例えば、CD3ζ、CD27、CD28、4−1BB、ICOS、又はOX40の組合せを含み得る。CARは、いくつかの実施形態において、一本鎖可変断片(scFv)に一般に由来する外部ドメイン、ヒンジ、膜貫通ドメイン、並びにCD3Z及び/若しくは共刺激分子に由来する1つ(第一世代)、2つ(第二世代)、又は3つ(第三世代)のシグナル伝達ドメインを有する内部ドメインを含有する(Maude et al.,Blood.2015;125(26):4017−4023;Kakarla and Gottschalk,Cancer J.2014;20(2):151−155)。
【0177】
CARは通常、それらの機能特性が異なる。T細胞受容体のCD3ζシグナル伝達ドメインは、結合される場合、T細胞の増殖を活性化し、且つ誘導することになるが、アネルギーを引き起こし得る(身体の防御機構による反応の欠如、末梢リンパ球寛容の直接的な誘導をもたらす)。リンパ球は、それらが特定の抗原に応答できない場合、アネルギー性であるとみなされる。第二世代のCARにおける共刺激ドメインの付加は、改変T細胞の複製能及び持続を向上させた。同様の抗腫瘍効果は、CD28又は4−1BB CARによりインビトロで観察されるが、前臨床インビボ研究は、4−1BB CARが、優れた増殖及び/又は持続をもたらし得ることを示唆する。臨床試験は、これらの第二世代のCARの両方が、インビボで実質的なT細胞増殖を誘導できることを示唆するが、4−1BB共刺激ドメインを含有するCARは、より長く持続するように見える。第三世代のCARは、効力を増強する複数のシグナル伝達ドメイン(共刺激)を組み合わせる。
【0178】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体は、第一世代のCARである。他の実施形態では、キメラ抗原受容体は、第二世代のCARである。さらに他の実施形態では、キメラ抗原受容体は、第三世代のCARである。
【0179】
CARは、いくつかの実施形態において、抗原結合ドメイン(例えば、scFvなどの抗体)、膜貫通ドメイン、及び細胞質(内)ドメインを含む細胞外(外部)ドメインを含む。
【0180】
外部ドメイン
外部ドメインは、細胞外の体液に曝されるCARの領域であり、且ついくつかの実施形態において、抗原結合ドメイン、並びに任意選択によりシグナルペプチド、スペーサードメイン、及び/又はヒンジドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、短いリンカーペプチドと連結した免疫グロブリンのVL及びVHを含む一本鎖可変断片(scFv)である。リンカーは、いくつかの実施形態において、可動性のための一続きのグリシン及びセリン並びに可溶性を加えるための一続きのグルタミン酸及びリジンとともに親水性残基を含む。一本鎖可変断片(scFv)は、実際には抗体の断片ではないが、代わりに10〜約25個のアミノ酸の短いリンカーペプチドと連結した免疫グロブリンの重(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。リンカーは通常、可動性のためにグリシン、及び溶解性のためにセリン又はスレオニンを豊富に含み、VHのN末端をVLのC末端に連結するか又はその逆のいずれかであり得る。このタンパク質は、定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。いくつかの実施形態では、本開示のscFvは、ヒト化されている。他の実施形態では、scFvは、完全ヒトである。さらに他の実施形態では、scFvは、(例えば、マウス及びヒト配列の)キメラである。
【0181】
いくつかの実施形態では、scFvは、抗CD70 scFvである(CD70に特異的に結合する)。本明細書に提供されるとおりに使用され得る抗CD70 scFvタンパク質の非限定的な例は、配列番号48又は配列番号50のアミノ酸配列を含み得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、scFvは、抗BCMA scFvである(BCMAに特異的に結合する)。本明細書に提供されるとおりに使用され得る抗BCMA scFvタンパク質の非限定的な例は、配列番号59のアミノ酸配列を含み得る。
【0183】
いくつかの実施形態では、scFvは、抗CD19 scFvである(CD19に特異的に結合する)。本明細書に提供されるとおりに使用され得る抗CD19 scFvタンパク質の非限定的な例は、配列番号151のアミノ酸配列を含み得る。
【0184】
いくつかの実施形態では、scFvは、抗CD33 scFvである(CD33に特異的に結合する)。本明細書に提供されるとおりに使用され得る抗CD33 scFvタンパク質の非限定的な例は、配列番号137のアミノ酸配列を含み得る。
【0185】
他のscFvタンパク質が使用されてもよい。
【0186】
シグナルペプチドは、CAR結合の抗原特異性を増強し得る。シグナルペプチドは、CD8などであるがこれに限定されない抗体、及びGST又はFLAGなどであるがこれらに限定されないエピトープタグに由来し得る。シグナルペプチドの例としては、MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP(配列番号88)及びMALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号89)が挙げられる。他のシグナルペプチドが使用されてもよい。
【0187】
いくつかの実施形態では、スペーサードメイン又はヒンジドメインは、CARの細胞外ドメイン(抗原結合ドメインを含む)と膜貫通ドメインの間、又はCARの細胞質内ドメインと膜貫通ドメインの間に位置する。スペーサードメインは、膜貫通ドメインをポリペプチド鎖中の細胞外ドメイン及び/又は細胞質内ドメインに連結するのに機能する任意のオリゴペプチド又はポリペプチドである。ヒンジドメインは、CAR、若しくはそのドメインに可動性をもたらすか、又はCAR、若しくはそのドメインの立体障害を妨げるのに機能する任意のオリゴペプチド又はポリペプチドである。いくつかの実施形態では、スペーサードメイン又はヒンジドメインは、最大で300個のアミノ酸(例えば、10〜100個のアミノ酸、又は5〜20個のアミノ酸)を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のドメインが、CARの他の領域に含まれてもよい。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、CD8ヒンジドメインである。他のヒンジドメインが使用されてもよい。
【0188】
膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインは、膜をまたがる疎水性アルファヘリックスである。膜貫通ドメインは、CARの安定性をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるとおりのCARの膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメインである。他の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインである。さらに他の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8及びCD28膜貫通ドメインのキメラである。他の膜貫通ドメインが、本明細書に提供されるとおりに使用されてもよい。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8a膜貫通ドメインである:
【化2】
他の膜貫通ドメインが使用されてもよい。
【0189】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、アミノ酸配列:IYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLY(配列番号126)を含むCD8a膜貫通ドメインである。
【0190】
内部ドメイン
内部ドメインは、受容体の機能的な末端である。抗原認識の後、受容体クラスター及びシグナルは、細胞に伝達される。最も一般的に使用される内部ドメインの構成要素は、CD3−ゼータであり、これは、3つの免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含有する。これは、抗原が結合された後に活性化シグナルをT細胞に伝達する。多くの場合、CD3−ゼータは、十分に能力のある活性化シグナルをもたらさない場合があり、したがって、共刺激シグナル伝達が使用される。例えば、CD28及び/又は4−1BBが、CD3−ゼータ(CD3ζ)とともに使用されて、増殖/生存シグナルを伝達し得る。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるとおりのCARの共刺激分子は、CD28共刺激分子である。他の実施形態では、共刺激分子は、4−1BB共刺激分子である。いくつかの実施形態では、CARは、CD3ζ及びCD28を含む。他の実施形態では、CARは、CD3−ゼータ及び4−1BBを含む。さらに他の実施形態では、CARは、CD3ζ、CD28、及び4−1BBを含む。表4は、本明細書で使用され得る4−1BB、CD28及びCD3−ゼータに由来するシグナル伝達ドメインの例を提供する。
【0192】
癌抗原
CD70
いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、CD70を標的化するように設計されたキメラ抗原受容体(CAR)により操作される。CD70は、T細胞の増殖及び生存に関与する共刺激受容体であるCD27についてのリガンドとして最初に同定された。CD70は、ウイルス感染中の流入領域リンパ節において少ないパーセンテージの活性化T細胞及び抗原提示細胞上においてのみ見出される。明細胞腎臓癌、乳癌、胃癌、卵巣癌、神経膠芽腫、及び血液悪性腫瘍などの固形癌を含むがこれらに限定されない多くのヒト腫瘍もまた、CD70を発現する。正常組織におけるその限定的な発現パターン及び多くの癌における過剰発現のために、CD70は、魅力的な治療標的である。
【0193】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、抗CD70抗体(例えば、抗CD70 scFv)を含むCARを発現するように操作される。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号47又は49の配列によってコードされる抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号48又は50の配列を含む抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号51の配列を含むVHを含む抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号52の配列を含むVLを含む抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体を含むCARは、配列番号45の配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体を含むCARは、配列番号46の配列を含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号47又は49と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号48又は50と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号51と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVHを含む抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号52と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含む抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体を含むCARは、配列番号45と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体を含むCARは、配列番号46と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0195】
BCMA
いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、BCMAを標的化するように設計されたCARにより操作される。B細胞成熟抗原(BCMA、CD269)は、腫瘍壊死因子受容体(TNF)スーパーファミリーのメンバーである。BCMAは、B細胞活性化因子(BAFF)及び増殖誘導リガンド(APRIL)に結合する。非悪性細胞の中で、BCMAは、形質細胞及び成熟B細胞のサブセットによって主に発現される。BCMAは、多発性骨髄腫細胞及び非ホジキンリンパ腫を含むB系列細胞によって選択的に発現され、したがって、BCMAもまた、魅力的な治療標的である。
【0196】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、抗BCMA抗体(例えば、抗BCMA scFv)を含むCARを発現するように操作される。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、配列番号58の配列によってコードされる抗BCMA scFvである。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、配列番号59の配列を含む抗BCMA scFvである。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、配列番号60の配列を含むVHを含む抗BCMA scFvである。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、配列番号61の配列を含むVLを含む抗BCMA scFvである。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体を含むCARは、配列番号56の配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体を含むCARは、配列番号57の配列を含む。
【0197】
いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、配列番号58と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる抗BCMA scFvである。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、配列番号59と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む抗BCMA scFvである。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、配列番号60と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVHを含む抗BCMA scFvである。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、配列番号61と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含む抗BCMA scFvである。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体を含むCARは、配列番号56と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体を含むCARは、配列番号57と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0198】
CD19
いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、CD19を標的化するように設計されたCARにより操作される。表面抗原分類19(CD19)は、白血病前駆細胞上で検出可能な抗原決定基である。ヒト及びマウスのアミノ酸及び核酸配列は、GenBank、Uniprot及びSwiss−Protなどの公的データベースにおいて見出すことができる。例えば、ヒトCD19のアミノ酸配列は、UniProt/Swiss−Prot受入番号P15391として見出すことができ、ヒトCD19のヌクレオチド配列のコード化は、受入番号NM−001178098で見出すことができる。CD19は、例えば、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球白血病及び非ホジキンリンパ腫を含む大部分のB細胞系列癌上で発現される。それはまた、B細胞前駆体の早期のマーカーである。例えば、Nicholson et al.Mol.Immun.34(16−17):1157−1165(1997)を参照されたい。
【0199】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、抗CD19抗体(例えば、抗CD19 scFv)を含むCARを発現するように操作される。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号150の配列によってコードされる抗CD19 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号151の配列を含む抗CD19 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号152の配列を含むVHを含む抗CD19 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号153の配列を含むVLを含む抗CD19 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体を含むCARは、配列番号148の配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体を含むCARは、配列番号149の配列を含む。
【0200】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号150と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる抗CD19 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号151と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む抗CD19 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号152と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVHを含む抗CD19 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号153と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含む抗CD19 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体を含むCARは、配列番号148と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体を含むCARは、配列番号149と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0201】
CD33
いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、CD33を標的化するように設計されたCARにより操作される。Siglec3としても知られるCD33は、シアル酸に結合することが知られる骨髄系列の細胞上で発現される膜貫通受容体である。CD33は、癌細胞(例えば、急性骨髄性白血病)において発現されるため、CD33は、これらの悪性腫瘍を標的化するための細胞表面マーカーとなると考えられる。
【0202】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、抗CD33抗体(例えば、抗CD33 scFv)を含むCARを発現するように操作される。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体は、配列番号138の配列によってコードされる抗CD33 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体は、配列番号137の配列を含む抗CD33 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体は、配列番号140の配列を含むVHを含む抗CD19 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体は、配列番号141の配列を含むVLを含む抗CD33 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体を含むCARは、配列番号136の配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体を含むCARは、配列番号139の配列を含む。
【0203】
いくつかの実施形態では、抗CD33抗体は、配列番号138と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる抗CD33 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体は、配列番号137と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む抗CD33 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体は、配列番号140と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVHを含む抗CD19 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体は、配列番号141と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを含む抗CD33 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体を含むCARは、配列番号136と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体を含むCARは、配列番号139と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0204】
抗体
抗体(複数の形態において互換的に使用される)は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合できる免疫グロブリン分子である。本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、インタクトな(すなわち、全長)モノクローナル抗体だけでなく、抗原結合断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、一本鎖可変断片(scFv)、その変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、ラクダ又はラマV
HH抗体)、多重特異性抗体(例えば、二重特性抗体)並びに抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント、及び共有結合的に修飾された抗体を含む、要求される特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された配置も包含する。
【0205】
典型的な抗体分子は、通常、抗原結合に関与する重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。抗原結合に関与するこれらの領域/残基は、当該技術分野において知られる方法によって参照抗体(例えば、本明細書に記載される抗CD70抗体又は抗BCMA抗体)のVH/VL配列のアミノ酸配列から同定され得る。VH及びVL領域は、「フレームワーク領域」(「FR」)として知られる、より保存されている領域が挿入された、「相補性決定領域」(「CDR」)として知られる超可変領域にさらに細分することができる。各VH及びVLは通常、次の順でアミノ末端からカルボキシ末端に整列した、3つのCDR及び4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。フレームワーク領域及びCDRの範囲は、当該技術分野において知られる方法論を使用して、例えば、全てが当該技術分野においてよく知られるKabat定義、Chothia定義、AbM定義、及び/又はcontact定義によって、正確に同定され得る。本明細書で使用する場合、CDRは、当該技術分野において知られる任意の方法によって定義されるCDRを指し得る。同じCDRを有する2つの抗体は、2つの抗体が、同じ方法によって決定された当該CDRの同じアミノ酸配列を有することを意味する。例えば、Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242,Chothia et al.,(1989)Nature 342:877;Chothia,C.et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901−917,Al−lazikani et al(1997)J.Molec.Biol.273:927−948;及びAlmagro,J.Mol.Recognit.17:132−143(2004)を参照されたい。hgmp.mrc.ac.uk及びbioinf.org.uk/absも参照されたい。
【0206】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗CD70 scFv、抗BCMA scFv、抗CD19 scFv又は抗CD33 scFvなどのscFvである。抗体は、IgD、IgE、IgG、IgA、又はIgM(又はそのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を含み、且つ抗体は、いずれかの特定のクラスのものである必要はない。重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、各種クラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのいくつかはさらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2に分けられ得る。免疫グロブリンの各種クラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。免疫グロブリンの各種クラスのサブユニット構造及び三次元配置は、よく知られている。
【0207】
本明細書に提供されるとおりに使用されることになる抗体は、マウス、ラット、ヒト、又は任意の他の起源(キメラ抗体又はヒト化抗体を含む)であり得る。いくつかの例において、抗体は、免疫学的に不活性である、例えば、補体に媒介される溶解を誘発しないか、又は抗体依存性細胞傷害(ADCC)を刺激しない定常領域などの改変された定常領域を含む。
【0208】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有する特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はその抗原結合断片である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を指す。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基により置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDR又はフレームワーク配列にも見出されないが、抗体性能をさらに洗練させ、且つ最適化するために含まれる残基を含んでもよい。一般に、ヒト化抗体は、全て又は実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全て又は実質的に全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインを実質的に全て含むことになる。最適なヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域又はドメイン(Fc)の少なくとも一部も含むことになる。ヒト化抗体の他の形態は、元の抗体からの1つ以上のCDRに「由来する」1つ以上のCDRとも呼ばれる、元の抗体に関して改変された1つ以上のCDR(1、2、3、4、5、又は6つ)を有する。ヒト化抗体はまた、親和性成熟を伴う場合がある。
【0209】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、ヒト抗体由来の重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を含み得るキメラ抗体である。キメラ抗体は、第1の種に由来する可変領域又は可変領域の部分及び第2の種に由来する定常領域を有する抗体を指す。通常、これらのキメラ抗体において、軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は、哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、及びラットなどの非ヒト哺乳動物)の1つの種に由来する抗体の可変領域を模倣するが、定常部分は、ヒトなどの別の哺乳動物に由来する抗体における配列と相同である。いくつかの実施形態では、アミノ酸改変は、可変領域及び/又は定常領域においてなされ得る。
【0210】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、ヒトCD70、ヒトBCMA、ヒトCD19又はヒトCD33などの標的抗原に特異的に結合する。標的又はエピトープに「特異的に結合する」抗体は、当該技術分野でよく理解される用語であり、そのような特異的な結合を決定する方法もまた、当該技術分野でよく知られている。分子は、それが、代替の標的よりも、特定の標的抗原とより頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、且つ/又はより高い親和性で反応又は会合する場合、「特異的な結合」を示すと言われる。抗体は、それが、他の基質に結合するよりも、より高い親和性、結合活性で、より迅速に、且つ/又はより長い持続時間で結合する場合、標的抗原に「特異的に結合する」。例えば、CD70、BCMA、CD19又はCD33エピトープに特異的に(又は優先的に)結合する抗体は、それが、他のCD70、BCMA、CD19若しくはCD33エピトープ又は非CD70、非BCMA、非CD19若しくは非CD33エピトープに結合するよりも、より高い親和性、結合活性で、より迅速に、且つ/又はより長い持続時間でこのCD70、BCMA、CD19又はCD33エピトープに結合する抗体である。それはまた、例えば、第1の標的抗原に特異的に結合する抗体が、第2の標的抗原に特異的に又は優先的に結合する場合もあるし、結合しない場合もあるというこの定義を読むことによっても理解される。そのため、「特異的な結合」又は「優先的な結合」は、必ずしも排他的結合を(含むことはできるが)必要とするものではない。一般に、必ずしもそうではないが、結合への参照は、優先的な結合を意味する。
【0211】
いくつかの実施形態では、抗体とCD70の間の平衡解離定数(K
D)は、100pM〜1μMである。いくつかの実施形態では、抗体とCD70の間のK
Dは、1nM〜100nMである。
【0212】
いくつかの実施形態では、抗体とBCMAの間の平衡解離定数(K
D)は、100pM〜1μMである。いくつかの実施形態では、抗体とBCMAの間のK
Dは、1nM〜100nMである。
【0213】
いくつかの実施形態では、抗体とCD19の間の平衡解離定数(K
D)は、100pM〜1μMである。いくつかの実施形態では、抗体とCD19の間のK
Dは、1nM〜100nMである。
【0214】
いくつかの実施形態では、抗体とCD33の間の平衡解離定数(K
D)は、100pM〜1μMである。いくつかの実施形態では、抗体とCD33の間のK
Dは、1nM〜100nMである。
【0215】
本明細書に開示されるとおりの例示的な抗体のいずれかの機能的バリアントもまた本開示の範囲内である。機能的バリアントは、参照抗体を基準としてVH及び/若しくはVL、又はVH CDRの1つ以上及び/若しくはVL CDRの1つ以上において1つ以上のアミノ酸残基の変異を含有し得るが、参照抗体と実質的に同様の結合活性及び生物学的活性(例えば、実質的に同様の結合親和性、結合特異性、阻害活性、抗腫瘍活性、又はこれらの組合せ)を保持している。
【0216】
いくつかの例において、本明細書で開示される抗体は、抗体A(VH:配列番号51;VL:配列番号52)又は抗体B(VH:配列番号60;VL:配列番号61)などの参照抗体のVH CDR1、VH CDR2、VH CDR3と比較して、10個以下のアミノ酸変異(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個以下のアミノ酸変異)を合わせて含有するVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む。「合わせて」は、3つのVH CDRの全てにおけるアミノ酸変異の総数が、既定の範囲内であることを意味する。或いは又は加えて、抗体は、参照抗体のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3と比較して、10個以下のアミノ酸変異(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2又は1個以下のアミノ酸変異)を合わせて含有するVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含み得る。
【0217】
いくつかの例において、本明細書で開示される抗体は、少なくとも1つが、抗体A(VH:配列番号51;VL:配列番号52)又は抗体B(VH:配列番号60;VL:配列番号61)などの参照抗体の対応物のVH CDRと同程度に、5個以下のアミノ酸変異(例えば、4、3、2、又は1個以下のアミノ酸変異)を含有するVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含み得る。特定の例において、抗体は、抗体A(VH:配列番号51;VL:配列番号52)又は抗体B(VH:配列番号60;VL:配列番号61)などの参照抗体のVH CDR3と同程度に、5個以下のアミノ酸変異(例えば、4、3、2、又は1個以下のアミノ酸変異)を含有するVH CDR3を含む。或いは又は加えて、抗体は、少なくとも1つが、参照抗体の対応物のVL CDRと同程度に、5個以下のアミノ酸変異(例えば、4、3、2、又は1個以下のアミノ酸変異)を含有するVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含み得る。特定の例において、抗体は、参照抗体のVL CDR3と同程度に、5個以下のアミノ酸変異(例えば、4、3、2、又は1個以下のアミノ酸変異)を含有するVL CDR3を含む。
【0218】
場合によっては、アミノ酸残基の変異は、保存的なアミノ酸残基置換であり得る。本明細書で使用する場合、「保存的なアミノ酸置換」は、アミノ酸置換がなされるタンパク質の相対的な電荷又はサイズの特徴を変えないアミノ酸置換を指す。バリアントは、そのような方法をまとめた参考文献、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook,et al.,eds.,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1989,又はCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel,et al.,eds.,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkに見出されるような、当業者に知られるポリペプチド配列を改変するための方法に従って作製され得る。アミノ酸の保存的置換は、以下の群内のアミノ酸の中でなされる置換を含む:(a)A→G、S;(b)R→K、H;(c)N→Q、H;(d)D→E、N;(e)C→S、A;(f)Q→N;(g)E→D、Q;(h)G→A;(i)H→N、Q;(j)I→L、V;(k)L→I、V;(l)K→R、H;(m)M→L、I、Y;(n)F→Y、M、L;(o)P→A;(p)S→T;(q)T→S;(r)W→Y、F;(s)Y→W、F;及び(t)V→I、L。
【0219】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される抗体は、抗体A(VH:配列番号51;VL:配列番号52)又は抗体B(VH:配列番号60;VL:配列番号61)などの参照抗体のVH CDRと合わせて少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、又は98%)同一のVH CDRを含み得る。或いは又は加えて、抗体は、参照抗体のVL CDRと合わせて少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、又は98%)同一のVL CDRを含み得る。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体A(VH:配列番号51;VL:配列番号52)若しくは抗体B(VH:配列番号60;VL:配列番号61)などの参照抗体のVHと少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、又は98%)同一のVH及び/又は参照抗体のVLと少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、又は98%)同一のVLを含み得る。
【0220】
いくつかの実施形態では、抗CD70抗体(例えば、抗CD70 scFv)は、それぞれ配列番号51及び52に記載されるアミノ酸配列を含むVH及びVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体(例えば、抗CD70 scFv)は、配列番号51に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号52に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含む。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体(例えば、抗CD70 scFv)は、配列番号51に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号52に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、Kabatに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体(例えば、抗CD70 scFv)は、配列番号51に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号52に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、Chothiaに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体(例えば、抗CD70 scFv)は、配列番号51に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号52に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、AbMに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体(例えば、抗CD70 scFv)は、それぞれ配列番号68、70及び72に記載される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、並びに配列番号62、64及び66に記載される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体(例えば、抗CD70 scFv)は、それぞれ配列番号69、71及び73に記載される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、並びに配列番号63、65及び67に記載される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号50に記載されるアミノ酸配列を含む抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号49に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号48に記載されるアミノ酸配列を含む抗CD70 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD70抗体は、配列番号47に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる抗CD70 scFvである。
【0221】
いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体(例えば、抗BCMA scFv)は、それぞれ配列番号60及び61に記載されるアミノ酸配列を含むVH及びVLを含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体(例えば、抗BCMA scFv)は、配列番号60に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号61に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体(例えば、抗BCMA scFv)は、配列番号60に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号61に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、Kabatに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体(例えば、抗BCMA scFv)は、配列番号60に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号61に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、Chothiaに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体(例えば、抗BCMA scFv)は、配列番号60に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号61に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、AbMに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体(例えば、抗BCMA scFv)は、それぞれ配列番号80、82及び84に記載される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、並びに配列番号74、76及び78に記載される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体(例えば、抗BCMA scFv)は、それぞれ配列番号81、83及び85に記載される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、並びに配列番号75、77及び79に記載される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、配列番号59に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA scFvである。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体は、配列番号58に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる抗BCMA scFvである。
【0222】
いくつかの実施形態では、抗CD19抗体(例えば、抗CD19 scFv)は、それぞれ配列番号152及び153に記載されるアミノ酸配列を含むVH及びVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体(例えば、抗CD19 scFv)は、配列番号152に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号153に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体(例えば、抗CD19 scFv)は、配列番号152に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号153に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、Kabatに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体(例えば、抗CD19 scFv)は、配列番号152に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号153に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、Chothiaに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体(例えば、抗CD19 scFv)は、配列番号152に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号153に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、AbMに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体(例えば、抗CD19 scFv)は、それぞれ配列番号169、170及び171に記載される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号166、167及び168に記載される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体(例えば、抗CD19 scFv)は、それぞれ配列番号175、176及び177に記載される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号172、173及び174に記載される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗CD19 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD19抗体は、配列番号150に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる抗CD19 scFvである。
【0223】
いくつかの実施形態では、抗CD33抗体(例えば、抗CD33 scFv)は、それぞれ配列番号140及び141に記載されるアミノ酸配列を含むVH及びVLを含む。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体(例えば、抗CD33 scFv)は、配列番号140に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号141に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含む。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体(例えば、抗CD33 scFv)は、配列番号140に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号141に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、Kabatに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体(例えば、抗CD33 scFv)は、配列番号140に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号141に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、Chothiaに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体(例えば、抗CD33 scFv)は、配列番号140に記載されるVHの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR2)、並びに配列番号141に記載されるVLの3つのCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)を含み、CDRは、AbMに従って決定される。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体(例えば、抗CD33 scFv)は、それぞれ配列番号142、143及び144に記載される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、並びに配列番号145、146及び147に記載される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体(例えば、抗CD33 scFv)は、それぞれ配列番号178、179及び180に記載される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、並びに配列番号145、146及び147に記載される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体は、配列番号137に記載されるアミノ酸配列を含む抗CD33 scFvである。いくつかの実施形態では、抗CD33抗体は、配列番号138に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる抗CD33 scFvである。
【0224】
抗原標的化キメラ抗原受容体コンストラクト
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、腫瘍抗原標的化CARを含む。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、通常、全く発現されない場合があるか、又は低レベルでのみ発現される場合がある非腫瘍細胞より腫瘍細胞においてより高レベルで発現されるタンパク質などの免疫原性分子を参照させる「腫瘍関連抗原」である。いくつかの実施形態では、腫瘍を内部に持つ宿主の免疫系によって認識される腫瘍関連構造は、腫瘍関連抗原と呼ばれる。いくつかの実施形態では、腫瘍関連抗原は、大部分の腫瘍によって広範に発現される場合、普遍的な腫瘍抗原である。いくつかの実施形態では、腫瘍関連抗原は、分化抗原、変異性抗原、過剰発現された細胞抗原又はウイルス抗原である。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、腫瘍細胞に固有のタンパク質などの免疫原性分子を指す「腫瘍特異抗原」又は「TSA」である。腫瘍特異抗原は、腫瘍細胞において排他的に発現される。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原は、CD70ではない。
【0225】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、非CD70標的化CAR(例えば、CD70に結合しないCAR)を含む。
【0226】
CD19 CAR
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、CD19 CAR、抗CD19 CAR又は抗CD19 CAR T細胞とも本明細書で呼ばれるCD19標的化CARを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 CARは、(i)抗CD19抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、及び(iii)少なくとも1つの共刺激ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0227】
いくつかの実施形態では、抗CD19 CARは、(i)抗CD19抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)CD28又は41BB共刺激ドメイン、及びCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 CARは、(i)抗CD19抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)CD28共刺激ドメイン及びCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 CARは、(i)抗CD19抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)41BB共刺激ドメイン及びCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0228】
いくつかの実施形態では、抗CD19 CARは、(i)抗CD19抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)配列番号126に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含むCD28共刺激ドメイン及び配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含むCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0229】
いくつかの実施形態では、抗CD19 CARは、(i)配列番号151に記載されるアミノ酸配列を含む抗CD19 scFvを含む外部ドメイン、(ii)配列番号126に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含むCD28共刺激ドメイン及び配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含むCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0230】
いくつかの実施形態では、抗CD19 CARは、(i)それぞれ配列番号152及び153に記載されるアミノ酸配列を含む可変重鎖及び軽鎖領域を含む抗CD19 scFvを含む外部ドメイン、(ii)配列番号126に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号20に記載されるアミノ酸配列を含むCD28共刺激ドメイン及び配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含むCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0231】
いくつかの実施形態では、抗CD19 CARは、配列番号149に記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD19 CARは、配列番号148に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの態様では、抗CD19 CARは、配列番号148に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0232】
CD33 CAR
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、CD33 CAR、抗CD33 CAR又は抗CD33 CAR T細胞とも本明細書で呼ばれるCD33標的化CARを含む。いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、(i)抗CD33抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、及び(iii)少なくとも1つの共刺激ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0233】
いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、(i)抗CD33抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)CD28又は41BB共刺激ドメイン、及びCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、(i)抗CD33抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)CD28共刺激ドメイン及びCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、(i)抗CD33抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)41BB共刺激ドメイン及びCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0234】
いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、(i)抗CD33抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)配列番号126に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む41BB共刺激ドメイン及び配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含むCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0235】
いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、(i)配列番号137に記載されるアミノ酸配列を含む抗CD33 scFvを含む外部ドメイン、(ii)配列番号126に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む41BB共刺激ドメイン及び配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含むCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0236】
いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、(i)それぞれ配列番号140及び141に記載されるアミノ酸配列を含む可変重鎖及び軽鎖領域を含む抗CD33 scFvを含む外部ドメイン、(ii)配列番号126に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む41BB共刺激ドメイン及び配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含むCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0237】
いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、配列番号139に記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD33 CARは、配列番号136に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの態様では、抗CD33 CARは、配列番号136に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0238】
BCMA CAR
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、BCMA CAR、抗BCMA CAR又は抗BCMA CAR T細胞とも本明細書で呼ばれるBCMA標的化CARを含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、(i)抗BCMA抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、及び(iii)少なくとも1つの共刺激ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0239】
いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、(i)抗BCMA抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)CD28又は41BB共刺激ドメイン、及びCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、(i)抗BCMA抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)CD28共刺激ドメイン及びCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、(i)抗BCMA抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)41BB共刺激ドメイン及びCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0240】
いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、(i)抗BCMA抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)配列番号126に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む41BB共刺激ドメイン及び配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含むCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0241】
いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、(i)配列番号59に記載されるアミノ酸配列を含む抗BCMA scFvを含む外部ドメイン、(ii)配列番号126に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む41BB共刺激ドメイン及び配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含むCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0242】
いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、(i)それぞれ配列番号60及び61に記載されるアミノ酸配列を含む可変重鎖及び軽鎖領域を含む抗BCMA scFvを含む外部ドメイン、(ii)配列番号126に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む41BB共刺激ドメイン及び配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含むCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0243】
いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、配列番号57に記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗BCMA CARは、配列番号56に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの態様では、抗BCMA CARは、配列番号56に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0244】
CD70 CAR
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、CD70 CAR、抗CD70 CAR又は抗CD70 CAR T細胞とも本明細書で呼ばれるCD70標的化CARを含む。いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、(i)抗CD70抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、及び(iii)少なくとも1つの共刺激ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0245】
いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、(i)抗CD70抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)CD28又は41BB共刺激ドメイン、及びCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、(i)抗CD70抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)CD28共刺激ドメイン及びCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、(i)抗CD70抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)CD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)41BB共刺激ドメイン及びCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0246】
いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、(i)抗CD70抗原結合ドメインを含む外部ドメイン、(ii)配列番号126に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む41BB共刺激ドメイン及び配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含むCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0247】
いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、(i)配列番号50に記載されるアミノ酸配列を含む抗CD70 scFvを含む外部ドメイン、(ii)配列番号126に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む41BB共刺激ドメイン及び配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含むCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0248】
いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、(i)それぞれ配列番号51及び52に記載されるアミノ酸配列を含む可変重鎖及び軽鎖領域を含む抗CD70 scFvを含む外部ドメイン、(ii)配列番号126に記載されるアミノ酸配列を含むCD8膜貫通ドメイン、並びに(iii)配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む41BB共刺激ドメイン及び配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含むCD3−ゼータシグナル伝達ドメインを含む内部ドメインを含む。
【0249】
いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、配列番号46に記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗CD70 CARは、配列番号45に記載されるヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの態様では、抗CD70 CARは、配列番号45に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0250】
キメラ抗原受容体コンストラクトの発現
ドナー鋳型
CARをコードする核酸は、ドナー鋳型と本明細書で呼ばれる(ドナーポリヌクレオチドとも呼ばれる)ものを含むT細胞に送達され得る。ドナー鋳型は、目的のゲノム位置で効率的なHDRを可能にする2つの相同な領域に隣接したCARをコードする核酸などの非相同配列を含有し得る。或いは、ドナー鋳型は、DNA中の標的化された位置と相同な領域を有しない場合があり、標的部位での切断後のNHEJ依存的末端連結によって組み込まれ得る。
【0251】
ドナー鋳型は、一本鎖及び/又は二重鎖のDNA又はRNAであってもよく、直鎖状又は環状形態で細胞に導入され得る。直鎖状形態で導入される場合、ドナー配列の末端は、当業者に知られる方法によって(例えば、エキソヌクレアーゼ分解から)保護され得る。例えば、1つ以上のジデオキシヌクレオチド残基が、直鎖状分子の3’末端に付加され、且つ/又は自己相補的オリゴヌクレオチドが、一方又は両方の末端に連結される。例えば、Chang et al.,(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:4959−4963;Nehls et al.,(1996)Science 272:886−889を参照されたい。外来性のポリヌクレオチドを分解から保護するための追加の方法としては、末端アミノ基の付加、並びに、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロアミダート、及びO−メチルリボース又はデオキシリボース残基などの修飾されたヌクレオチド間結合の使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0252】
ドナー鋳型は、例えば、複製開始点、プロモーター及び抗生物質耐性をコードする遺伝子などの追加の配列を有するベクター分子の一部として細胞に導入され得る。さらに、ドナー鋳型は、裸の核酸として、リポソーム又はポロクサマーなどの薬剤と複合体を形成した核酸として導入され得るか、又はウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス及びインテグラーゼ欠損レンチウイルス(IDLV))によって送達され得る。
【0253】
ドナー鋳型は、いくつかの実施形態において、その発現が、組込み部位の内在性プロモーター、すなわち、ドナーが挿入される内在性遺伝子の発現を駆動するプロモーターによって駆動されるように挿入される。しかしながら、いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、外来性プロモーター及び/又はエンハンサー、例えば、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、又は組織特異的プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、内在性プロモーターは、配列番号123の配列を含むEF1αプロモーターである。他のプロモーターが使用されてもよい。
【0254】
さらに、外来性配列はまた、転写又は翻訳制御配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、インスレーター、配列内リボソーム進入部位、2Aペプチドをコードする配列及び/又はポリアデニル化シグナルを含み得る。
【0255】
いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号44と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は98%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号44のヌクレオチド配列を含む。
【0256】
いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号55と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は98%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号55のヌクレオチド配列を含む。
【0257】
いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号135と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は98%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号135のヌクレオチド配列を含む。
【0258】
いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号156と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は98%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号156のヌクレオチド配列を含む。
【0259】
他の方法
いくつかの実施形態では、CARをコードする核酸は、当業者に知られる方法によって操作された細胞に導入される。例えば、CARは、ベクターによって操作された細胞に導入され得る。当該技術分野において知られる様々な異なる方法を使用して、本明細書で開示される核酸又は発現ベクターのいずれかを免疫エフェクター細胞に導入することができる。核酸を細胞に導入するための方法の非限定的な例としては、リポフェクション、トランスフェクション(例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、高度に分岐した有機化合物を使用するトランスフェクション、カチオン性ポリマーを使用するトランスフェクション、デンドリマー系トランスフェクション、光学的トランスフェクション、粒子系トランスフェクション(例えば、ナノ粒子トランスフェクション)、又はリポソーム(例えば、カチオン性リポソーム)を使用するトランスフェクション)、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、セルスクイージング、ソノポレーション、プロトプラスト融合、インペールフェクション、水力学的送達、遺伝子銃、マグネトフェクション、ウイルストランスフェクション、及びヌクレオフェクションが挙げられる。
【0260】
送達方法及びコンストラクト
ヌクレアーゼ及び/又はドナー鋳型は、プラスミドベクター、DNA小環、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター;ヘルペスウイルスベクター及びアデノ関連ウイルスベクター、及びその組合せを含むが、これらに限定されないベクター系を使用して送達され得る。
【0261】
従来のウイルス及び非ウイルス系遺伝子導入方法を使用して、細胞(例えば、T細胞)においてヌクレアーゼをコードする核酸及びドナー鋳型を導入することができる。非ウイルスベクター送達系としては、DNAプラスミド、DNA小環、裸の核酸、及びリポソーム又はポロクサマーなどの送達媒体と複合体を形成した核酸が挙げられる。ウイルスベクター送達系としては、細胞に送達された後にエピソーム又は組込みゲノムのいずれかを有するDNA及びRNAウイルスが挙げられる。
【0262】
核酸の非ウイルス送達の方法としては、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン又は脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、裸のRNA、キャップ付きRNA、人工ビリオン、及び薬剤で増強されたDNAの取込みが挙げられる。例えば、ソニトロン 2000システム(Rich−Mar)を使用するソノポレーションもまた、核酸の送達のために使用され得る。いくつかの具体例が、下に提供される。
【0263】
アデノ随伴ウイルス送達
CARコンストラクトをコードするドナー核酸は、アデノ随伴ウイルス(AAV)を使用して細胞に送達され得る。AAVは、宿主ゲノムに部位特異的に組込み、したがって、CARなどの導入遺伝子を送達できる小型のウイルスである。逆位末端配列(ITR)は、AAVゲノム及び/又は目的の導入遺伝子に隣接して存在し、複製開始点として機能する。また、AAVゲノムには、転写されたときにAAVゲノムをカプセル化して標的細胞に送達するためのカプシドを形成するrepタンパク質及びcapタンパク質も存在する。これらのカプシド上の表面受容体は、AAVの血清型を付与し、カプシドが主にどの標的臓器に結合するかを決定し、したがって、AAVが最も効率的に感染することになる細胞を決定する。現在知られているヒトAAVの血清型は12種類である。いくつかの実施形態では、AAVは、AAV血清型6(AAV6)である。
【0264】
アデノ随伴ウイルスは、いくつかの理由のために遺伝子療法に最も頻繁に使用されるウイルスの1つである。第一に、AAVは、ヒトを含む哺乳動物への投与時に免疫応答を誘発しない。第二に、AAVは、特に適切なAAV血清型を選択することを考慮するとき、標的細胞に効率的に送達される。最後に、AAVは、ゲノムが組込みを伴わずに宿主細胞において存続できるため、分裂細胞及び非分裂細胞の両方に感染する能力を有する。この形質により、それらが遺伝子療法の理想的な候補となる。
【0265】
相同組換え修復(HDR)
CARをコードするドナー核酸は、相同組換え修復(HDR)によって標的遺伝子座位に挿入される。標的部位でのDNAの両方の鎖が、CRISPR Cas9酵素によって切断される。次に、HDRが発生して、二重鎖切断(DSB)を修復し、ドナーDNAを挿入する。これが正しく発生するために、ドナー配列は、標的遺伝子のDSB部位を取り囲む配列に相補的な隣接している残基(以下、「相同性アーム」)を有するように設計される。これらの相同性アームは、DSB修復のための鋳型として機能し、本質的に誤りのない機構であるHDRを可能にする。相同組換え修復(HDR)の割合は、変異部位と切断部位の間の距離の関数であり、そのため、重複している配列又は近くの標的を選択することが重要である。鋳型は、相同領域に隣接した余分な配列を含んでもよいし、ゲノム配列と異なる配列を含有してもよく、したがって、配列編集が可能になる。
【0266】
標的遺伝子は、対象において免疫応答と関連する場合があり、ここで、標的遺伝子の少なくとも一部を持続的に欠失させることが、免疫応答を調節することになる。例えば、CAR T細胞を生成するために、標的遺伝子は、TCRα定常領域(TRAC)であり得る。TRACの破壊は、内在性TCRの機能の喪失をもたらす。
【0267】
いくつかの実施形態では、標的遺伝子は、セーフハーバー座位にある。
【0268】
操作されたT細胞
本開示の操作された(遺伝子編集された)CAR T細胞は、自己由来(「自己」)の又は非自己由来(「非自己」、例えば、異質遺伝子型、同一遺伝子又は異種間)であり得る。「自己由来」は、同じ対象からの細胞を指す。「異質遺伝子型」は、対象と同じ種であるが、対象中の細胞と遺伝的に異なる細胞を指す。いくつかの実施形態では、T細胞は、哺乳動物から得られる。いくつかの実施形態では、T細胞は、ヒトから得られる。
【0269】
T細胞は、末梢血単核球、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺排出、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含むが、これらに限定されないいくつかの供給源から得ることができる。ある種の実施形態では、T細胞は、遠心沈降、例えば、FICOLL(商標)分離などの当業者に知られる任意の数の技術を使用して対象から回収される血液の単位から得ることができる。
【0270】
いくつかの実施形態では、T細胞の単離された集団が使用される。いくつかの実施形態では、末梢血単核球(PBMC)の単離の後、細胞傷害性及びヘルパーTリンパ球の両方が、活性化、増殖、及び/又は遺伝的改変の前又は後のいずれかでナイーブ、メモリー、及びエフェクターT細胞亜集団に分別され得る。
【0271】
以下の細胞表面マーカー:TCRab、CD3、CD4、CD8、CD27 CD28、CD38 CD45RA、CD45RO、CD62L、CD127、CD122、CD95、CD197、CCR7、KLRG1、MCH−Iタンパク質及び/又はMCH−IIタンパク質の1つ以上を発現するT細胞の特定の亜集団がさらに、陽性又は陰性選択手法によって単離され得る。いくつかの実施形態では、TCRab、CD4及び/又はCD8からなる群から選択されるマーカーの1つ以上を発現するT細胞の特定の亜集団はさらに、陽性又は陰性選択手法によって単離され得る。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞集団は、以下のマーカー:CD70、CD57、CD244、CD160、PD−1、CTLA4、HΜ3、及びLAG3の1つ以上を発現しないか又は実質的に発現しない。いくつかの実施形態では、T細胞の亜集団は、遺伝子操作の前及び/又は遺伝子操作の後に陽性又は陰性選択によって単離され得る。
【0272】
いくつかの実施形態では、T細胞の単離された集団は、CD3+、CD4+、CD8+、又はその組合せを含むが、これらに限定されないマーカーの1つ以上を発現する。いくつかの実施形態では、T細胞は、ドナー、又は対象から単離され、遺伝子編集を受ける前に、最初に活性化され、インビトロで増殖するように刺激される。
【0273】
T細胞組成物の十分な治療用量を実現するために、T細胞は、1回以上の刺激、活性化及び/又は増殖にかけられる場合が多い。T細胞は、一般に、例えば、米国特許第6,352,694号明細書;同第6,534,055号明細書;同第6,905,680号明細書;同第6,692,964号明細書;同第5,858,358号明細書;同第6,887,466号明細書;同第6,905,681号明細書;同第7,144,575号明細書;同第7,067,318号明細書;同第7,172,869号明細書;同第7,232,566号明細書;同第7,175,843号明細書;同第5,883,223号明細書;同第6,905,874号明細書;同第6,797,514号明細書;及び同第6,867,041号明細書において記載されるとおりの方法を使用して、活性化及び増殖され得る。いくつかの実施形態では、T細胞は、ゲノム編集組成物のT細胞への導入の前に約1日〜約4日、約1日〜約3日、約1日〜約2日、約2日〜約3日、約2日〜約4日、約3日〜約4日、又は約1日、約2日、約3日、若しくは約4日間活性化及び増殖される。
【0274】
いくつかの実施形態では、T細胞は、ゲノム編集組成物のT細胞への導入の前に約4時間、約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間、又は約72時間活性化及び増殖される。
【0275】
いくつかの実施形態では、T細胞は、遺伝子編集組成物がT細胞に導入されるのと同時に活性化される。本明細書に記載される遺伝子編集方法のいずれかによって生成されるT細胞集団又は単離されたT細胞もまた、本開示の範囲内である。
【0276】
いくつかの実施形態では、本明細書では、破壊されたCD70遺伝子及びキメラ抗原受容体(CAR)、例えば、本明細書に記載されるものをコードする核酸を含む、遺伝的に操作されたT細胞を含むT細胞の集団が提供される。いくつかの実施形態では、CARは、病的な細胞上で発現される抗原に結合する。いくつかの実施形態では、CARは、CD70に結合する。他かの実施形態では、CARは、CD70に結合しない。このようなT細胞集団はさらに、以下の遺伝子編集:破壊された内在性プログラム細胞死−1(PD−1)遺伝子、破壊された内在性T細胞受容体アルファ鎖定常領域(TRAC)遺伝子、及び破壊された内在性ベータ−2−ミクログロブリン(β2M)遺伝子の1つ以上を有する遺伝的に操作されたT細胞を含み得る。いくつかの例において、CARをコードする核酸は、TRAC座位に挿入され得る。
【0277】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるT細胞の集団は、破壊されたCD70遺伝子及び病的な細胞上で発現される抗原に結合するキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む、遺伝的に操作されたT細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるT細胞の集団は、破壊されたCD70遺伝子及びキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む、遺伝的に操作されたT細胞を含み、ここで、CARは、CD70に結合する。他の実施形態では、本明細書で開示されるT細胞の集団は、破壊されたCD70遺伝子及びCARをコードする核酸を含む遺伝的に操作されたT細胞を含み、ここで、CARは、CD70遺伝子に結合しない。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるT細胞の集団は、破壊されたCD70遺伝子及び病的な細胞上で発現される抗原に結合するキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含み、且つ破壊されたPD1遺伝子をさらに含む、遺伝的に操作されたT細胞を含む。いくつかの実施形態では、CARは、CD70に結合する。いくつかの実施形態では、CARは、CD70に結合しない。いくつかの態様では、CARは、CD19に結合する。いくつかの実施形態では、CARは、CD33に結合する。いくつかの態様では、CARは、BCMAに結合する。すぐ上に記載された操作されたT細胞のいずれかはさらに、破壊されたT細胞受容体アルファ鎖定常領域(TRAC)遺伝子及び/又は破壊されたベータ−2−ミクログロブリン(β2M)遺伝子を含み得る。
【0278】
特定の例において、本明細書では、破壊されたCD70遺伝子、破壊されたT細胞受容体アルファ鎖定常領域(TRAC)遺伝子、破壊されたベータ−2−ミクログロブリン(β2M)遺伝子、キメラ抗原受容体(CAR)、例えば、本明細書に記載される抗BCMA CAR、抗CD19 CAR、抗CD33 CAR、又は抗CD70 CARをコードする核酸、及び任意選択により破壊されたプログラム細胞死−1(PD−1)遺伝子を含む、遺伝的に操作されたT細胞を含むT細胞の集団が提供される。本明細書で開示される操作されたT細胞のいずれかは、天然の(破壊されていない)HLA遺伝子を含有し得る。
【0279】
いくつかの例において、T細胞の集団の少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、90%、又は95%)は、本明細書で開示されるとおりのCARを発現し、且つ検出可能なレベルの表面CD70を発現しない。このような細胞はさらに、検出可能なレベルの表面TCR、検出可能なレベルの表面β2M、及び/又は検出可能なレベルの表面PD−1を発現しない特徴を持ち得る。例えば、T細胞の集団の少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、90%、又は95%)は、本明細書で開示されるとおりのCARを発現し、且つ検出可能なレベルの表面CD70、検出可能なレベルの表面TCR、及び検出可能なレベルの表面β2Mを発現しない。いくつかの場合において、T細胞の集団の少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、90%、又は95%)は、本明細書で開示されるとおりのCARを発現し、且つ検出可能なレベルの表面CD70、検出可能なレベルの表面TCR、検出可能なレベルの表面β2M、及び検出可能なレベルのPD−1を発現しない。
【0280】
本明細書に記載されるとおりのCARを発現し、且つ検出可能なレベルの表面CD70を発現しない単離された細胞もまた、本開示の範囲内である。このような単離された細胞は、検出可能なレベルの表面TCR、検出可能なレベルのβ2M、及び/又は検出可能なレベルの表面PD−1を発現しない場合がある。いくつかの例において、単離された細胞は、TRAC座位に挿入されるCARをコードする核酸を含む。
【0281】
また、本明細書では、RNA誘導型ヌクレアーゼ、例えば、本明細書に記載されるもの(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)、及びCD70遺伝子を標的化するガイドRNA(gRNA)(例えば、本明細書に記載されるもの)を含む操作されたT細胞を含む操作されたT細胞の集団が提供される。いくつかの場合において、T細胞集団におけるT細胞の少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、90%、又は95%)は、RNA誘導型ヌクレアーゼ及びCD70遺伝子を標的化するgRNAを含む。このような操作されたT細胞集団はさらに、PD−1遺伝子を標的化するgRNA、TRAC遺伝子を標的化するgRNA、β2M遺伝子を標的化するgRNA、及び/又は任意選択によりTRAC遺伝子座位に対して左及び右の相同性アームと隣接するCAR(例えば、本明細書に記載されるもの)をコードするヌクレオチド配列を含むドナー鋳型を含む核酸(例えば、ベクター)を含む操作されたT細胞を含み得る。いくつかの例において、T細胞集団におけるT細胞の少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、90%、又は95%)は、RNA誘導型ヌクレアーゼ、CD70遺伝子を標的化するgRNA、及びCARをコードする核酸を含む。CARをコードする核酸がさらに、TRAC遺伝子座位に対して左及び右の相同性アームを含むとき、T細胞はまた、TRAC遺伝子を標的化するgRNAを含み得る。加えて、T細胞はさらに、PD−1遺伝子を標的化するgRNA、β2M遺伝子を標的化するgRNA、又はその組合せを含み得る。
【0282】
また、RNA誘導型ヌクレアーゼ、CD70遺伝子を標的化するgRNA、並びに任意選択によりPD−1遺伝子を標的化するgRNA、TRAC遺伝子を標的化するgRNA、β2M遺伝子を標的化するgRNA、及びCAR(例えば、本明細書に記載されるもの)をコードするヌクレオチド配列を含むドナー鋳型を含む核酸(例えば、ベクター)のうちの1つ以上を含む単離された操作されたT細胞も、本開示の範囲内である。CARをコードするヌクレオチド配列は、TRAC遺伝子座位に対する左及び右の相同性アームと隣接し得る。
【0283】
CAR−T細胞の生成
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、細胞のゲノムを改変することによって生成される。いくつかの実施形態では、標的遺伝子中の部位での二重鎖切断(DSB)が誘導される。いくつかの実施形態では、DSBは、1つ以上の内在性のDNA修復経路を使用して修復される。いくつかの実施形態では、DNA修復経路は、相同配列を必要としない(例えば、非相同末端連結経路又はNHEJ経路)。いくつかの実施形態では、修復経路は、相同配列を必要とする(例えば、相同組換え経路又はHDR経路)。
【0284】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、エンドヌクレアーゼ、及び1つ以上の非コードRNAとしてのCRISPR−Cas9によりDSBを誘導すること、並びにHDR及び本明細書に記載されるドナーポリヌクレオチド鋳型を使用してDSBを修復することによって生成される。
【0285】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、TRACである標的遺伝子の配列に相補的なgRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号98に記載される配列を含むTRAC gRNAスペーサーを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号30に記載される配列を含むTRAC gRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、配列番号98に記載される配列を含むTRAC gRNAは、配列番号118に記載されるTRAC配列を標的化する。いくつかの実施形態では、配列番号30に記載される配列を含むTRAC gRNAは、配列番号118に記載されるTRAC配列を標的化する。
【0286】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号108に記載される配列を含むTRAC gRNAスペーサーを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号40に記載される配列を含むTRAC gRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、配列番号108に記載される配列を含むTRAC gRNAは、配列番号118に記載されるTRAC配列を標的化する。いくつかの実施形態では、配列番号40に記載される配列を含むTRAC gRNAは、配列番号118に記載されるTRAC配列を標的化する。
【0287】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、β2Mである標的遺伝子の配列に相補的なgRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号99に記載される配列を含むβ2M gRNAスペーサーを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号31に記載される配列を含むβ2M gRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、配列番号99に記載される配列を含むβ2M gRNAは、配列番号119に記載されるβ2M配列を標的化する。いくつかの実施形態では、配列番号31に記載される配列を含むβ2M gRNAは、配列番号119に記載されるβ2M配列を標的化する。
【0288】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号109に記載される配列を含むβ2M gRNAスペーサーを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号41に記載される配列を含むβ2M gRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、配列番号109に記載される配列を含むβ2M gRNAは、配列番号119に記載されるβ2M配列を標的化する。いくつかの実施形態では、配列番号41に記載される配列を含むβ2M gRNAは、配列番号119に記載されるβ2M配列を標的化する。
【0289】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、CD70である標的遺伝子の配列に相補的なgRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号94に記載される配列を含むCD70 gRNAスペーサーを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号26に記載される配列を含むCD70 gRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、配列番号94に記載される配列を含むCD70 gRNAは、配列番号114に記載されるCD70配列を標的化する。いくつかの実施形態では、配列番号26に記載される配列を含むCD70 gRNAは、配列番号114に記載されるCD70配列を標的化する。
【0290】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号104に記載される配列を含むCD70 gRNAスペーサーを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号36に記載される配列を含むCD70 gRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、配列番号104に記載される配列を含むCD70 gRNAは、配列番号114に記載されるCD70配列を標的化する。いくつかの実施形態では、配列番号36に記載される配列を含むCD70 gRNAは、配列番号114に記載されるCD70配列を標的化する。
【0291】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、CD70である標的遺伝子の配列に相補的なgRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号95に記載される配列を含むCD70 gRNAスペーサーを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号27に記載される配列を含むCD70 gRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、配列番号95に記載される配列を含むCD70 gRNAは、配列番号115に記載されるCD70配列を標的化する。いくつかの実施形態では、配列番号27に記載される配列を含むCD70 gRNAは、配列番号115に記載されるCD70配列を標的化する。
【0292】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号105に記載される配列を含むCD70 gRNAスペーサーを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号37に記載される配列を含むCD70 gRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、配列番号105に記載される配列を含むCD70 gRNAは、配列番号115に記載されるCD70配列を標的化する。いくつかの実施形態では、配列番号37に記載される配列を含むCD70 gRNAは、配列番号115に記載されるCD70配列を標的化する。
【0293】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、PD−1である標的遺伝子の配列に相補的なgRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号100に記載される配列を含むPD−1 gRNAスペーサーを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号32に記載される配列を含むPD−1 gRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、配列番号100に記載される配列を含むPD−1 gRNAは、配列番号120に記載されるβ2M配列を標的化する。いくつかの実施形態では、配列番号32に記載される配列を含むPD−1 gRNAは、配列番号120に記載されるPD−1配列を標的化する。
【0294】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号110に記載される配列を含むPD−1 gRNAスペーサーを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号42に記載される配列を含むPD−1 gRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、配列番号110に記載される配列を含むPD−1 gRNAは、配列番号120に記載されるPD−1配列を標的化する。いくつかの実施形態では、配列番号42に記載される配列を含むPD−1 gRNAは、配列番号120に記載されるPD−1配列を標的化する。
【0295】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号98に記載される配列を含むTRAC gRNA、配列番号99に記載される配列を含むβ2M gRNA、配列番号94若しくは95に記載される配列を含むCD70 gRNA、並びに/又は配列番号100に記載される配列を含むPD−1 gRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号108に記載される配列を含むTRAC gRNA、配列番号109に記載される配列を含むβ2M gRNA、配列番号104若しくは105に記載される配列を含むCD70 gRNA、並びに/又は配列番号110に記載される配列を含むPD−1 gRNAを使用して生成される。
【0296】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号30に記載される配列を含むTRAC gRNA、配列番号31に記載される配列を含むβ2M gRNA、配列番号26若しくは27に記載される配列を含むCD70 gRNA、並びに/又は配列番号32に記載される配列を含むPD−1 gRNAを使用して生成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたT細胞は、配列番号40に記載される配列を含むTRAC gRNA、配列番号41に記載される配列を含むβ2M gRNA、配列番号36若しくは27に記載される配列を含むCD70 gRNA、並びに/又は配列番号42に記載される配列を含むPD−1 gRNAを使用して生成される。
【0297】
いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、CARをコードする核酸である非相同配列を含むドナー鋳型を使用して生成される。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、TRACである標的遺伝子における配列に対応する相同性アームで構成される。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型の5’相同性アーム(左相同性アーム)は、配列番号122に記載される配列を含む。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型の3’相同性アームは、配列番号125に記載される配列を含む。
【0298】
いくつかの実施形態では、外来性プロモーターは、配列番号123に記載される配列を含むEF1aプロモーターである。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号135に記載される配列を含む。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号156に記載される配列を含む。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号44に記載される配列を含む。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、配列番号55に記載される配列を含む。
【0299】
いくつかの実施形態では、gRNA、ヌクレアーゼ、及びドナー鋳型をコードするポリヌクレオチドは、従来のウイルス及び非ウイルスに基づく遺伝子導入方法を使用して細胞(例えば、T細胞)に導入される。
【0300】
いくつかの実施形態では、gRNA、sgRNA、ヌクレアーゼをコードするmRNA、又はドナー鋳型などのポリヌクレオチドは、非ウイルスベクター送達系を使用して細胞に送達される。非ウイルスベクター送達系の例としては、DNAプラスミド、DNA小環、裸の核酸、リポソーム、リボ核タンパク質粒子(RNP)又はポロクサマーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、非ウイルスベクター送達系を使用してポリヌクレオチドを細胞に導入する方法としては、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、又は薬剤で増強された取込みが挙げられる。
【0301】
いくつかの実施形態では、gRNA、sgRNA、ヌクレアーゼをコードするmRNA、又はドナー鋳型などのポリヌクレオチドは、ウイルスベクター送達系を使用して細胞に送達される。ウイルスベクター送達系の例としては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0302】
いくつかの実施形態では、CARコンストラクトをコードするドナー鋳型は、1つ以上のポリヌクレオチドとして細胞に送達される。いくつかの実施形態では、CARコンストラクトをコードするドナー鋳型は、ウイルス送達媒体によって送達される。いくつかの実施形態では、ウイルス送達媒体は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。
【0303】
いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)は、ポリペプチドとして細胞に送達される。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)は、ゲノム標的化核酸(例えば、gRNA、sgRNA)と別々に細胞に送達される。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)は、1つ以上のゲノム標的化ポリヌクレオチド(例えば、gRNA、sgRNA)との複合体として細胞に送達される。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼ又は予め複合体を形成したエンドヌクレアーゼは、ナノ粒子、リポソーム、リボ核タンパク質、正に荷電したペプチド、小分子RNAコンジュゲート、アプタマー−RNAキメラ、又はRNAー融合タンパク質複合体を含むが、これらに限定されない非ウイルス送達媒体によって送達される。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼポリペプチド又は予め複合体を形成したエンドヌクレアーゼポリペプチドを細胞に導入する方法としては、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、又は薬剤に増強された取込みが挙げられる。
【0304】
いくつかの実施形態では、Cas9ポリペプチドは、1つ以上のsgRNAと予め複合体を形成して、リボ核タンパク質粒子(RNP)を形成する。いくつかの実施形態では、Cas9/sgRNA RNPは、脂質ナノ粒子を使用して製剤化される。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型は、AAVベクターを使用して製剤化される。いくつかの実施形態では、製剤化されたCas9/sgRNA RNPの細胞への送達は、細胞のエレクトロポレーションによって実施される。いくつかの実施形態では、AAVベクターとして製剤化されるドナー鋳型は、エレクトロポレーションの前に送達される。いくつかの実施形態では、AAVベクターとして製剤化されたドナー鋳型は、エレクトロポレーション中に送達される。いくつかの実施形態では、AAVベクターとして製剤化されたドナー鋳型は、エレクトロポレーション後に送達される。
【0305】
いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを使用して実施される遺伝子編集は、破壊されたTRAC遺伝子を有する操作されたT細胞をもたらす。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子の破壊は、TRAC遺伝子産物の発現の消失又は減少をもたらす。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子の破壊は、コードされる遺伝子産物の転写及び翻訳を破壊するか又は阻害する。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子の破壊は、TRAC遺伝子産物の発現の消失又は減少をもたらす。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子の発現の消失又は減少は、TCRの機能の喪失を伴う。いくつかの実施形態では、TCR機能の喪失は、同種移植に好適な(すなわち、GvHDを引き起こすリスクを最小化する)操作されたT細胞をもたらす。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子の破壊は、(例えば、AAVベクター及びドナー鋳型を使用して)CARにおいてTRAC遺伝子にノックインすることによって生成される。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子発現における破壊は、TRACゲノム領域を標的化し、且つCARにおいてCAR遺伝子にノックインするgRNAによって生成される。いくつかの実施形態では、ノックインCARは、DSBの部位を取り囲むTRACの配列に対応する相同性アームを有するドナー鋳型によって提供される。
【0306】
いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを使用して実施される遺伝子編集は、破壊されたβ2M遺伝子を有する操作されたT細胞をもたらす。いくつかの実施形態では、B2Mゲノム領域を標的化するgRNAは、コードされる遺伝子産物の転写及び翻訳を破壊するか又は阻害するβ2M遺伝子におけるインデルを生成する。いくつかの実施形態では、β2M遺伝子の破壊は、β2Mポリペプチドの発現の消失又は減少をもたらす。いくつかの実施形態では、B2Mポリペプチドの発現の消失又は減少は、MHC I複合体の機能の喪失を伴う。いくつかの実施形態では、MHC I機能の喪失は、同種移植に好適な(すなわち、宿主対異質遺伝子型T細胞応答のリスクを最小化する)操作されたT細胞をもたらす。いくつかの実施形態では、MHC I機能の喪失は、異質遺伝子型レシピエントにおいて操作されたT細胞の持続の増大をもたらす。
【0307】
いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを使用して実施される遺伝子編集は、破壊されたCD70遺伝子を有する操作されたT細胞をもたらす。いくつかの実施形態では、CD70ゲノム領域を標的化するgRNAは、コードされる遺伝子産物の転写及び翻訳を破壊するか又は阻害するCD70遺伝子におけるインデルを生成する。いくつかの実施形態では、CD70遺伝子の破壊は、CD70ポリペプチドの発現の消失又は減少をもたらす。いくつかの実施形態では、CD70ポリペプチドの発現の消失又は減少は、細胞増殖の増強、インビボでの持続の増強、枯渇の減少、及び/又は抗腫瘍効果の増強を伴う。
【0308】
いくつかの実施形態では、CRISPR/Cas9エンドヌクレアーゼを使用して実施される遺伝子編集は、破壊されたPD−1遺伝子を有する操作されたT細胞をもたらす。いくつかの実施形態では、PD−1ゲノム領域を標的化するgRNAは、コードされる遺伝子産物の転写及び翻訳を破壊するか又は阻害するPD−1遺伝子におけるインデルを生成する。いくつかの実施形態では、PD−1遺伝子の破壊は、PD−1ポリペプチドの発現の消失又は減少をもたらす。
【0309】
方法及び組成物
本明細書では、いくつかの実施形態において、癌を治療するための方法が提供される。本明細書に提供されるとおりに治療され得る癌の非限定的な例としては、多発性骨髄腫、白血病(例えば、T細胞白血病、B細胞急性リンパ性白血病(B−ALL)、及び/又は慢性リンパ性白血病(C−CLL))、リンパ腫(例えば、B細胞非ホジキンリンパ腫(B−NHL)、ホジキンリンパ腫、及び/又はT細胞リンパ腫)、及び/又は明細胞腎細胞癌(ccRCC)が挙げられる。いくつかの実施形態では、方法は、本開示のCAR T細胞(例えば、抗BCMA、抗CD19、抗CD33及び/又は抗CD70 CAR T細胞)を、多発性骨髄腫、白血病、又はリンパ腫を有する対象に送達することを含む。本明細書に提供されるとおりに治療され得る癌(例えば、固形腫瘍)の他の非限定的な例としては、膵臓癌、胃癌、卵巣癌、子宮頸癌、乳癌、腎臓癌、甲状腺癌、上咽頭癌、非小細胞肺(NSCLC)、神経膠芽腫、及び/又は黒色腫が挙げられる。
【0310】
CD70はまた、血液腫瘍及び癌腫上で検出されてきた。正常組織におけるCD70の限定的な発現パターン及び様々な悪性腫瘍におけるその広範な発現は、それを抗体に基づく療法のための魅力的な標的にする。しかしながら、CD70
+癌を標的化するCAR T細胞療法の使用は、T細胞におけるCD70発現のために潜在的に問題になる。潜在的な問題に対処するために、本開示はまた、内在性のCD70発現を破壊するが、同時に抗CD70結合部分(例えば、抗CD70 scFv)を発現するように操作されたCAR T細胞を提供する。
【0311】
いくつかの実施形態では、癌は、CD70
+癌である。他の実施形態では、癌は、BCMA
+癌である。いくつかの実施形態では、癌は、CD19+癌である。いくつかの実施形態では、癌は、CD33+癌である。他の癌抗原を発現する他の癌は、本開示の操作されたCD70ノックアウトCAR T細胞を使用して治療され得ることが理解されるはずである。
【0312】
方法は、いくつかの実施形態において、対象(例えば、CD70
+癌、BCMA
+癌、CD19+癌又はCD33+癌を有する患者)に本明細書に提供されるとおりのCAR T細胞の集団を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、対象にCD70遺伝子ノックアウトを含むCAR T細胞の集団を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、対象にCD70遺伝子ノックアウト及びPD1遺伝子ノックアウトを含むCAR T細胞の集団を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞を対象に移植することを含む。この移植工程は、当該技術分野において知られるいずれかの移植の方法を使用して達成され得る。例えば、操作された細胞は、対象の血液に直接的に注射されてもよいし、別の方法で対象に投与されてもよい。
【0313】
本明細書で実証されるとおり、CD70遺伝子ノックアウトを含むCAR T細胞は、増殖の延長及びインビボでの持続の増大を示す。いくつかの実施形態では、CD70遺伝子ノックアウトを含むCAR T細胞は、内在性のCD70を発現するCAR T細胞と比較して、抗腫瘍効果の増大を示す。いくつかの実施形態では、CD70遺伝子ノックアウトを含むCAR T細胞は、内在性のCD70を発現するCAR T細胞と比較して、固形腫瘍における抗腫瘍効果の増大を示す。理論に束縛されるものではないが、CD70遺伝子ノックアウトを含むCAR T細胞のインビボでの持続の増大は、固形腫瘍における増殖を可能にし、したがって、内在性のCD70を発現するCAR T細胞と比較して、そのような腫瘍における抗腫瘍効果の増強をもたらし得る。
【0314】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるCAR T細胞を有する固形腫瘍を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載される抗CD70 CAR T細胞を有する固形腫瘍を治療するための方法を提供する。
【0315】
投与する工程は、所望の効果がもたらされるように、腫瘍などの所望の部位での導入細胞の少なくとも部分的な局在をもたらす方法又は経路による、対象への細胞、例えば、操作されたT細胞の配置(例えば、移植)を含み得る。操作されたT細胞は、移植された細胞又は細胞の構成要素の少なくとも一部が生存したままである対象における所望の位置への送達をもたらす任意の適切な経路によって投与され得る。対象への投与後の細胞の生存期間は、数時間、例えば、24時間という短い期間、数日、数年もの間、或いは対象の寿命、すなわち、長期の生着であり得る。例えば、本明細書に記載されるいくつかの態様において、有効量の操作されたT細胞は、腹腔内又は静脈内経路などの全身性の投与経路を介して投与される。
【0316】
対象は、診断、治療、又は療法が望まれる任意の対象であり得る。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0317】
ドナーは、治療されている対象ではない個体である。ドナーは、患者ではない個体である。いくつかの実施形態では、ドナーは、治療されている癌を有しないか又は有すると疑われていない個体である。いくつかの実施形態では、複数のドナー、例えば、2以上のドナーが使用される。
【0318】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法に従って投与されている操作されたT細胞集団は、1つ以上のドナーから得られた異質遺伝子型のT細胞を含む。異質遺伝子型は、1つ以上の座位での遺伝子がレシピエント(例えば、対象)と同一ではない細胞、細胞集団、又は同じ種の1つ以上の異なるドナーから得られた細胞を含む生体試料を指す。例えば、対象に投与されている操作されたT細胞集団は、1以上の血縁ではないドナー、又は1以上の同一ではない同胞に由来し得る。いくつかの実施形態では、遺伝的に同一のドナー(例えば、同一の双子)から得られたものなど、同一遺伝子の細胞集団が使用され得る。いくつかの実施形態では、細胞は、自己細胞である;すなわち、操作されたT細胞は、対象から得られるか又は単離され、同じ対象に投与される、すなわち、ドナー及びレシピエントが同じである。
【0319】
有効量は、医学的状態(例えば、癌)の少なくとも1つ以上の徴候又は症状を予防するか又は軽減するのに必要な操作されたT細胞の集団の量を指し、所望の効果をもたらす、例えば、医学的状態を有する対象を治療する組成物の十分な量に関する。有効量はまた、疾患の症状の発症を予防するか若しくは遅らせるか、疾患の症状の経過を変えるか(例えば、疾患の症状の進行を遅くすることに限定されない)、又は疾患の症状を逆転させるのに十分な量を含む。任意の所与の場合に関して、適切な有効量は、当業者によって通常の実験を用いて決定され得ることが理解される。
【0320】
本明細書に記載される様々な態様における使用に関して、有効量の細胞(例えば、操作されたT細胞)は、少なくとも10
2細胞、少なくとも5×10
2細胞、少なくとも10
3細胞、少なくとも5×10
3細胞、少なくとも10
4細胞、少なくとも5×10
4細胞、少なくとも10
5細胞、少なくとも2×10
5細胞、少なくとも3×10
5細胞、少なくとも4×10
5細胞、少なくとも5×10
5細胞、少なくとも6×10
5細胞、少なくとも7×10
5細胞、少なくとも8×10
5細胞、少なくとも9×10
5細胞、少なくとも1×10
6細胞、少なくとも2×10
6細胞、少なくとも3×10
6細胞、少なくとも4×10
6細胞、少なくとも5×10
6細胞、少なくとも6×10
6細胞、少なくとも7×10
6細胞、少なくとも8×10
6細胞、少なくとも9×10
6細胞、又はその複合を含む。細胞は、1つ以上のドナーに由来するか、又は自己の供給源から得られる。本明細書に記載されるいくつかの例において、細胞は、必要とする対象への投与の前に培養において増殖される。
【0321】
投与の様式は、注射、注入、点眼、又は経口摂取を含む。注射としては、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、脳室内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節腔内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、及び胸骨内注射及び注入が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、経路は、静脈内である。
【0322】
いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は、全身的に投与され、これは、標的部位、組織、又は臓器に直接的ではなく、対象の循環系に入り、それにより代謝及び他の同様の過程にかけられるような細胞の集団の投与を指す。
【0323】
医学的状態の治療のための組成物を含む治療の有効性は、熟達した臨床医によって判定され得る。治療は、一例ではあるが、任意の1つ又は全ての徴候又は症状の機能的標的のレベルが有利な様式で変えられる(例えば、少なくとも10%増加する)、又は疾患(例えば、癌)の他の臨床的に認められている症状又はマーカーが改善又は緩和される場合、「有効な治療」とみなされる。有効性はまた、入院又は医学的介入の必要性によって評価されるとおり、対象が悪化しないことによって測定され得る(例えば、疾患の進行が止まるか、又は少なくとも遅くなる)。これらの指標を測定する方法は、当業者に知られており、且つ/又は本明細書に記載される。治療は、対象における疾患の任意の治療を含み、且つ(1)疾患を阻害すること、例えば、症状の進行を止めるか、又は遅くすること;又は(2)疾患を軽減すること、例えば、症状の退行をもたらすこと;及び(3)症状の発症の可能性を予防するか又は減少させることを含む。
【0324】
併用療法もまた、本開示により包含される。例えば、CD70及び/又はCD27抗体を使用して、CAR T細胞上のCD70及び/又はCD27に結合し、且つ/又はその活性を調節でき、且つ枯渇の減少、CAR T細胞増殖の増強及び癌細胞の死滅の有効性の増大を促進できる。したがって、CD70及び/又はCD27抗体を、当該技術分野において知られる任意のCAR T細胞とともに投与して、CAR T細胞の機能を向上させることができる。例えば、本明細書に提供される操作されたT細胞のいずれかが、抗CD70抗体、抗CD27抗体、又は抗CD70抗体及び抗CD27抗体の組合せと組み合わせて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、TRAC
−/β2M
− CAR
+ T細胞(例えば、抗CD70 CAR又は抗BCMA CAR)が、抗CD70及び/又は抗CD27抗体と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、TRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
− CAR
+ T細胞(例えば、抗CD70 CAR又は抗BCMA CAR)が、抗CD70及び/又は抗CD27抗体と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、TRAC
−/β2M
−/PD−1
− CAR
+ T細胞(例えば、抗CD70 CAR又は抗BCMA CAR)が、抗CD70及び/又は抗CD27抗体と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、TRAC
−/β2M
−/CD70
− CAR
+ T細胞(例えば、抗CD70 CAR又は抗BCMA CAR)が、抗CD70及び/又は抗CD27抗体と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、組み合わせて投与される抗体は、バルリルマブであってもよい。
【0325】
いくつかの実施形態では、本開示は、T細胞の枯渇を減少させる方法であって、T細胞中のCD70遺伝子を破壊することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、T細胞の増殖を増大させる方法であって、T細胞中のCD70遺伝子を破壊することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、T細胞の細胞障害性を増大させる方法であって、T細胞中のCD70遺伝子を破壊することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、T細胞における免疫チェックポイント(例えば、PD−1)の阻害効果を克服する方法であって、T細胞中のCD70遺伝子を破壊することを含む方法を提供する。
【0326】
他の実施形態
本開示は、以下の実施形態に関する。この節全体にわたって、実施形態という用語は、順序の前の「E」として省略される。例えば、E1は、実施形態1に等しい。
【0327】
E1.破壊されたCD70遺伝子、破壊されたプログラム細胞死−1(PD−1)遺伝子、及びキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む操作されたT細胞。
【0328】
E2.破壊されたCD70遺伝子及びCD70に結合するキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む操作されたT細胞。
【0329】
E3.破壊されたCD70遺伝子及びCD70に結合しないキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む操作されたT細胞。
【0330】
E4.破壊されたPD−1遺伝子をさらに含む、実施形態2又は3の操作されたT細胞。
【0331】
E5.破壊されたT細胞受容体アルファ鎖定常領域(TRAC)遺伝子をさらに含む、実施形態1〜4のいずれか1つの操作されたT細胞。
【0332】
E6.破壊されたベータ−2−ミクログロブリン(β2M)遺伝子をさらに含む、実施形態1〜5のいずれか1つの操作されたT細胞。
【0333】
E7.操作されたT細胞であって、
破壊されたT細胞受容体アルファ鎖定常領域(TRAC)遺伝子;
破壊されたベータ−2−ミクログロブリン(β2M)遺伝子;
破壊されたCD70遺伝子;及び
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む、操作されたT細胞。
【0334】
E8.CARをコードする核酸が、TRAC遺伝子に挿入される、実施形態7の操作されたT細胞。
【0335】
E9.破壊されたPD−1遺伝子をさらに含む、実施形態7又は8の操作されたT細胞。
【0336】
E10.CARが、抗CD70抗体を含む外部ドメインを含み、任意選択により、抗CD70抗体が、抗CD70一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態1〜9のいずれか1つの操作されたT細胞。
【0337】
E11.抗CD70 scFvが、参照抗体と同じ重鎖可変領域(VH)相補性決定領域(CDR)及び同じ軽鎖可変領域(VL)CDRを含み、参照抗体が、配列番号51として記載されるVH及び配列番号52として記載されるVLを含む、実施形態10の操作されたT細胞。
【0338】
E12.抗CD70 scFvが、参照抗体と同じVH及びVL鎖を含む、実施形態11の操作されたT細胞。
【0339】
E13.抗CD70 scFvが、配列番号48又は50のアミノ酸配列を含む、実施形態11の操作されたT細胞。
【0340】
E14.抗CD70 scFvが、配列番号50のアミノ酸配列を含む、実施形態11の操作されたT細胞。
【0341】
E15.CARが、抗BCMA抗体を含む外部ドメインを含み、任意選択により、抗BCMA抗体が、抗BCMA一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態1〜9のいずれか1つの操作されたT細胞。
【0342】
E16.抗BCMA scFvが、参照抗体と同じVH相補性決定領域(CDR)及び同じVL CDRを含み、参照抗体が、配列番号60として記載されるVH及び配列番号61として記載されるVLを含む、実施形態15の操作されたT細胞。
【0343】
E17.抗BCMA scFvが、参照抗体と同じVH及びVL鎖を含む、実施形態16の操作されたT細胞。
【0344】
E18.抗BCMA scFvが、配列番号59のアミノ酸配列を含む、実施形態16の操作されたT細胞。
【0345】
E19.CARが、CD28又は41BB共刺激ドメイン及び任意選択によりCD3シグナル伝達ドメインを含む、実施形態1〜18のいずれか1つの操作されたT細胞。
【0346】
E20.TRAC遺伝子が、配列番号44又は55のヌクレオチド配列を含み、且つ/又はCARをコードする核酸が、配列番号45又は56のヌクレオチド配列を含む、実施形態5〜19のいずれか1つの操作されたT細胞。
【0347】
E21.破壊されたβ2M遺伝子が、配列番号9〜14のいずれか1つから選択される遺伝子の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、実施形態6〜20のいずれか1つの操作されたT細胞。
【0348】
E22.操作されたT細胞が、癌細胞による5回の再チャレンジ後に細胞傷害性を維持する、実施形態1〜21のいずれか1つの操作されたT細胞。
【0349】
E23.操作されたT細胞が、癌細胞による10回の再チャレンジ後に細胞傷害性を維持する、実施形態22の操作されたT細胞。
【0350】
E24.破壊されたCD70遺伝子、破壊されたプログラム細胞死−1(PD−1)遺伝子、及びキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む操作されたT細胞を含む細胞の集団。
【0351】
E25.破壊されたCD70遺伝子、及びCD70に結合するキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む操作されたT細胞を含む細胞の集団。
【0352】
E26.破壊されたCD70遺伝子及びCD70に結合しないキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む操作されたT細胞を含む細胞の集団。
【0353】
E27.破壊されたプログラム細胞死−1(PD−1)遺伝子をさらに含む、実施形態25又は26の細胞の集団。
【0354】
E28.破壊されたT細胞受容体アルファ鎖定常領域(TRAC)遺伝子をさらに含む、実施形態24〜27のいずれか1つの細胞の集団。
【0355】
E29.破壊されたベータ−2−ミクログロブリン(β2M)遺伝子をさらに含む、実施形態24〜28のいずれか1つの細胞の集団。
【0356】
E30.細胞の集団であって、
破壊されたT細胞受容体アルファ鎖定常領域(TRAC)遺伝子;
破壊されたベータ−2−ミクログロブリン(β2M)遺伝子;
破壊されたCD70遺伝子;及び
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む操作されたT細胞を含む、細胞の集団。
【0357】
E31.CARをコードする核酸が、TRAC遺伝子に挿入される、実施形態30の細胞の集団。
【0358】
E32.操作されたT細胞がさらに、破壊されたプログラム細胞死−1(PD−1)遺伝子を含む、実施形態30又は31の細胞の集団。
【0359】
E33.CARが、抗CD70抗体を含む外部ドメインを含み、任意選択により、抗CD70抗体が、抗CD70一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態24又は27〜32のいずれか1つの細胞の集団。
【0360】
E34.抗CD70 scFvが、参照抗体と同じVH相補性決定領域(CDR)及び同じVL CDRを含み、参照抗体が、配列番号51として記載されるVH及び配列番号52として記載されるVLを含む、実施形態33の細胞の集団。
【0361】
E35.抗CD70 scFvが、参照抗体と同じVH及びVL鎖を含む、実施形態34の細胞の集団。
【0362】
E36.抗CD70 scFvが、配列番号48又は50のアミノ酸配列を含む、実施形態35の細胞の集団。
【0363】
E37.抗CD70 scFvが、配列番号50のアミノ酸配列を含む、実施形態35の細胞の集団。
【0364】
E38.CARが、抗BCMA抗体を含む外部ドメインを含み、任意選択により、抗BCMA抗体が、抗BCMA一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態24〜32のいずれか1つの細胞の集団。
【0365】
E39.抗BCMA scFvが、参照抗体と同じVH相補性決定領域(CDR)及び同じVL CDRを含み、参照抗体が、配列番号60として記載されるVH及び配列番号61として記載されるVLを含む、実施形態38の細胞の集団。
【0366】
E40.抗BCMA scFvが、参照抗体と同じVH及びVL鎖を含む、実施形態39の細胞の集団。
【0367】
E41.抗BCMA scFvが、配列番号59のアミノ酸配列を含む、実施形態39の細胞の集団。
【0368】
E42.TRAC遺伝子が、配列番号44又は55のヌクレオチド配列を含み、且つ/又はCARをコードする核酸が、配列番号45又は56のヌクレオチド配列を含む、実施形態28〜41のいずれか1つの細胞の集団。
【0369】
E43.破壊されたβ2M遺伝子が、配列番号9〜14のいずれか1つから選択される遺伝子の少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む、実施形態29〜42のいずれか1つの細胞の集団。
【0370】
E44.操作されたT細胞の少なくとも50%が、検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現せず、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現せず、検出可能なレベルのCD70表面タンパク質を発現せず、検出可能なレベルのPD−1表面タンパク質を発現せず、且つ/又は検出可能なレベルのCARを発現する、実施形態24〜43のいずれか1つの細胞の集団。
【0371】
E45.操作されたT細胞の50%〜70%が、検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現せず、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現せず、検出可能なレベルのCD70表面タンパク質を発現せず、検出可能なレベルのPD−1表面タンパク質を発現せず、且つ/又は検出可能なレベルのCARを発現する、実施形態44の細胞の集団。
【0372】
E46.操作されたT細胞の少なくとも90%、任意選択により90〜100%が、検出可能なレベルのTCR表面タンパク質を発現しない、実施形態28〜45のいずれか1つの細胞の集団。
【0373】
E47.操作されたT細胞の少なくとも60%、任意選択により60〜75%が、検出可能なレベルのβ2M表面タンパク質を発現しない、実施形態29〜46のいずれか1つの細胞の集団。
【0374】
E48.操作されたT細胞の少なくとも80%、任意選択により80〜100%が、検出可能なレベルのCD70表面タンパク質を発現しない、実施形態24〜47のいずれか1つの細胞の集団。
【0375】
E49.操作されたT細胞の少なくとも80%、任意選択により80〜95%が、検出可能なレベルのCARを発現する、実施形態1〜48のいずれか1つの細胞の集団。
【0376】
E50.操作されたT細胞が、対照T細胞と比較して少なくとも20%高い細胞増殖能を示す、実施形態24〜49のいずれか1つの細胞の集団。
【0377】
E51.操作されたT細胞が、対照T細胞と比較して少なくとも20%高い細胞溶解能を示す、実施形態24〜50のいずれか1つの細胞の集団。
【0378】
E52.操作されたT細胞によって分泌されるサイトカインのレベルが、対照T細胞によって分泌されるサイトカインのレベルより少なくとも2倍高い、実施形態24〜51のいずれか1つの細胞の集団。
【0379】
E53.操作されたT細胞が、対照T細胞と比較して細胞枯渇の減少を示す、実施形態24〜52のいずれか1つの集団。
【0380】
E54.操作されたT細胞が、対照T細胞と比較してLAG3のレベルの低減を示す、実施形態53の細胞の集団。
【0381】
E55.対照T細胞が、内在性のCD70タンパク質を発現する操作されたT細胞である、実施形態54のいずれか1つの細胞の集団。
【0382】
E56.操作されたT細胞が、サイトカイン依存性の増殖を維持する、実施形態24〜55のいずれか1つの細胞の集団。
【0383】
E57.操作されたT細胞が、癌細胞による5回の再チャレンジ後に細胞傷害性を維持する、実施形態24〜56のいずれか1つの細胞の集団。
【0384】
E58.操作されたT細胞が、癌細胞による10回の再チャレンジ後に細胞傷害性を維持する、実施形態47の細胞の集団。
【0385】
E59.対象に実施形態24〜58のいずれか1つの細胞の集団を投与することを含む方法。
【0386】
E60.操作されたT細胞が、操作されたヒトT細胞である、実施形態59の方法。
【0387】
E61.対象が、癌を有する、実施形態59又は60の方法。
【0388】
E62.癌が、CD70及び/又はBCMAを発現する、実施形態61の方法。
【0389】
E63.細胞の集団が、癌を治療するのに有効な量で対象に投与される、実施形態59〜62のいずれか1つの方法。
【0390】
E64.癌が、固形悪性腫瘍又は血液悪性腫瘍である、実施形態59〜63のいずれか1つの方法。
【0391】
E65.固形悪性腫瘍が、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、腎臓腫瘍、肺腫瘍、及び腸腫瘍からなる群から選択される、実施形態64の方法。
【0392】
E66.細胞の集団が、対象における腫瘍の体積を減少させるのに有効な量で対象に投与される、実施形態63の方法。
【0393】
E67.操作されたT細胞を生成するための方法であって、
(a)T細胞に
RNA誘導型ヌクレアーゼ、
CD70遺伝子を標的化するgRNA、及び
CARをコードする核酸を含むドナー鋳型を含むベクターを送達すること;並びに
(b)破壊されたCD70遺伝子を含み且つCARを発現する操作されたT細胞を生成することを含む方法。
【0394】
E68.工程(a)においてT細胞にPD−1遺伝子を標的化するgRNAを送達することをさらに含み;工程(b)の操作されたT細胞がさらに、破壊されたPD−1遺伝子を含む、実施形態67の方法。
【0395】
E69.工程(a)においてT細胞にTRAC遺伝子を標的化するgRNAを送達することをさらに含み;工程(b)操作されたT細胞がさらに、破壊されたTRAC遺伝子を含む、実施形態67又は実施形態68の方法。
【0396】
E70.CARをコードする核酸が、TRAC遺伝子座位に対する左及び右の相同性アームと隣接し;且つ工程(b)の操作されたT細胞が、TRAC遺伝子座位中に挿入されたCARをコードする核酸を含む、実施形態69の方法。
【0397】
E71.工程(a)においてT細胞にβ2M遺伝子を標的化するgRNAを送達することをさらに含み;工程(b)の操作されたT細胞がさらに、破壊されたβ2M遺伝子を含む、実施形態67〜70のいずれか1つの方法。
【0398】
E72.操作されたT細胞を生成するための方法であって、
(a)T細胞に
RNA誘導型ヌクレアーゼ、
TRAC遺伝子を標的化するgRNA、
β2M遺伝子を標的化するgRNA、
CD70遺伝子を標的化するgRNA、及び
CARをコードする核酸を含むドナー鋳型を含むベクターを送達すること;並びに
(b)操作されたT細胞を生成することを含む方法。
【0399】
E73.CARをコードする核酸が、TRAC遺伝子座位に対する左及び右の相同性アームと隣接する、実施形態72の方法。
【0400】
E74.T細胞にPD−1遺伝子を標的化するgRNAを送達することをさらに含む、実施形態72又は73の方法。
【0401】
E75.RNA誘導型ヌクレアーゼが、Cas9ヌクレアーゼ、任意選択によりS.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9ヌクレアーゼである、実施形態67〜74のいずれか1つの方法。
【0402】
E76.TRAC遺伝子を標的化するgRNAが、配列番号98のヌクレオチド配列を含むか又は配列番号118のヌクレオチド配列を標的化し、且つ任意選択により、TRAC遺伝子を標的化するgRNAが、配列番号30のヌクレオチド配列を含む、実施形態69〜75のいずれか1つの方法。
【0403】
E77.β2M遺伝子を標的化するgRNAが、配列番号99のヌクレオチド配列を含むか又は配列番号119のヌクレオチド配列を標的化し、且つ任意選択により、β2M遺伝子を標的化するgRNAが、配列番号31のヌクレオチド配列を含む、実施形態71〜76のいずれか1つの方法。
【0404】
E78.CD70遺伝子を標的化するgRNAが、配列番号94又は95のヌクレオチド配列を含むか又は配列番号114又は115のヌクレオチド配列を標的化し、且つ任意選択により、CD70遺伝子を標的化するgRNAが、配列番号26又は27のヌクレオチド配列を含む、実施形態67〜77のいずれか1つの方法。
【0405】
E79.PD−1遺伝子を標的化するgRNAが、配列番号100のヌクレオチド配列を含むか又は配列番号120のヌクレオチド配列を標的化し、且つ任意選択により、PD−1遺伝子を標的化するgRNAが、配列番号32のヌクレオチド配列を含む、実施形態68〜71及び74〜78のいずれか1つの方法。
【0406】
E80.CARが、抗CD70抗体を含む外部ドメインを含み、任意選択により、抗CD70抗体が、抗CD70一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態67〜79のいずれか1つの方法。
【0407】
E81.抗CD70 scFvが、参照抗体と同じVH相補性決定領域(CDR)及び同じVL CDRを含み、参照抗体が、配列番号51として記載されるVH及び配列番号52として記載されるVLを含む、実施形態80の方法。
【0408】
E82.抗CD70 scFvが、参照抗体と同じVH及びVL鎖を含む、実施形態81の方法。
【0409】
E83.抗CD70 scFvが、配列番号48又は50のアミノ酸配列を含む、実施形態81の方法。
【0410】
E84.抗CD70 scFvが、配列番号50のアミノ酸配列を含む、実施形態81の方法。
【0411】
E85.CARが、抗BCMA抗体を含む外部ドメインを含み、任意選択により、抗BCMA抗体が、抗BCMA一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態67〜79のいずれか1つの方法。
【0412】
E86.抗BCMA scFvが、参照抗体と同じVH相補性決定領域(CDR)及び同じVL CDRを含み、参照抗体が、配列番号60として記載されるVH及び配列番号61として記載されるVLを含む、実施形態85の方法。
【0413】
E87.抗BCMA scFvが、参照抗体と同じVH及びVL鎖を含む、実施形態86の方法。
【0414】
E88.抗BCMA scFvが、配列番号59のアミノ酸配列を含む、実施形態86の方法。
【0415】
E89.CARがさらに、CD28又は41BB共刺激ドメイン及び任意選択によりCD3zシグナル伝達ドメインを含む、実施形態67〜88のいずれか1つの方法。
【0416】
E90.ベクターが、配列番号46のアミノ酸配列を含むCARをコードする核酸を含む、実施形態72の方法。
【0417】
E91.ベクターが、配列番号57のアミノ酸配列を含むCARをコードする核酸を含む、実施形態72の方法。
【0418】
E92.RNA誘導型ヌクレアーゼ及びCD70遺伝子を標的化するgRNAを含む操作されたT細胞であって、任意選択により、CD70遺伝子を標的化するgRNAが、配列番号94又は95のヌクレオチド配列を含むか又は配列番号114又は115のヌクレオチド配列を標的化し、且つ任意選択により、CD70遺伝子を標的化するgRNAが、配列番号26又は27のヌクレオチド配列を含む操作されたT細胞。
【0419】
E93.PD−1遺伝子を標的化するgRNAをさらに含む実施形態92の操作されたT細胞であって、任意選択により、PD−1遺伝子を標的化するgRNAが、配列番号100のヌクレオチド配列を含むか又は配列番号120のヌクレオチド配列を標的化し、且つ任意選択により、PD−1遺伝子を標的化するgRNAが、配列番号32のヌクレオチド配列を含む操作されたT細胞。
【0420】
E94.TRAC遺伝子を標的化するgRNAをさらに含む実施形態92又は93の操作されたT細胞であって、任意選択により、TRAC遺伝子を標的化するgRNAが、配列番号98のヌクレオチド配列を含むか又は配列番号118のヌクレオチド配列を標的化し、且つ任意選択により、TRAC遺伝子を標的化するgRNAが、配列番号30のヌクレオチド配列を含む操作されたT細胞。
【0421】
E95.β2M遺伝子を標的化するgRNAをさらに含む実施形態92〜94のいずれか1つの操作されたT細胞であって、任意選択により、β2M遺伝子を標的化するgRNAが、配列番号99のヌクレオチド配列を含むか又は配列番号119のヌクレオチド配列を標的化し、且つ任意選択により、β2M遺伝子を標的化するgRNAが、配列番号31のヌクレオチド配列を含む操作されたT細胞。
【0422】
E96.RNA誘導型ヌクレアーゼが、Cas9ヌクレアーゼ、任意選択によりS.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9ヌクレアーゼである、実施形態92〜95のいずれか1つの操作されたT細胞。
【0423】
E97.CARをコードする核酸を含むドナー鋳型を含むベクターをさらに含む実施形態92〜96のいずれか1つの操作されたT細胞であって、任意選択により、CARをコードする核酸が、TRAC遺伝子座位に対する左及び右の相同性アームと隣接する操作されたT細胞。
【0424】
E98.CARが、抗CD70抗体を含む外部ドメインを含み、任意選択により、抗CD70抗体が、抗CD70一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態97の操作されたT細胞。
【0425】
E99.抗CD70 scFvが、参照抗体と同じVH相補性決定領域(CDR)及び同じVL CDRを含み、参照抗体が、配列番号51として記載されるVH及び配列番号52として記載されるVLを含む、実施形態98の操作されたT細胞。
【0426】
E100.抗CD70 scFvが、参照抗体と同じVH及びVL鎖を含む、実施形態99の操作されたT細胞。
【0427】
E101.抗CD70 scFvが、配列番号48又は50のアミノ酸配列を含む、実施形態99の操作されたT細胞。
【0428】
E102.抗CD70 scFvが、配列番号50のアミノ酸配列を含む、実施形態99の操作されたT細胞。
【0429】
E103.CARが、抗BCMA抗体を含む外部ドメインを含み、任意選択により、抗BCMA抗体が、抗BCMA一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態97の操作されたT細胞。
【0430】
E104.抗BCMA scFvが、参照抗体と同じVH相補性決定領域(CDR)及び同じVL CDRを含み、参照抗体が、配列番号60として記載されるVH及び配列番号61として記載されるVLを含む、実施形態103の操作されたT細胞。
【0431】
E105.抗BCMA scFvが、参照抗体と同じVH及びVL鎖を含む、実施形態104の操作されたT細胞。
【0432】
E106.抗BCMA scFvが、配列番号59のアミノ酸配列を含む、実施形態104の操作されたT細胞。
【0433】
E107.ベクターが、配列番号46又は57のアミノ酸配列を含むCARをコードする核酸を含む、実施形態97の操作されたT細胞。
【0434】
E108.増殖を増大させるか又はT細胞の枯渇を減少させる方法であって、T細胞中のCD70遺伝子を破壊することを含む方法。
【0435】
E109.T細胞においてプログラム細胞死−1(PD−1)遺伝子、T細胞受容体アルファ鎖定常領域(TRAC)遺伝子、及びベータ−2−ミクログロブリン(β2M)遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子を破壊することをさらに含む、実施形態108の方法。
【0436】
E110.T細胞においてキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を発現させることをさらに含む、実施形態108〜109のいずれか1つの方法。
【0437】
E111.CD70遺伝子が、CRISPR/Cas遺伝子編集によって破壊される、実施形態108〜110のいずれか1つの方法。
【0438】
E112.PD−1、TRAC、及び/又はβ2M遺伝子が、CRISPR/Cas遺伝子編集によって破壊される、実施形態110〜111のいずれか1つの方法。
【0439】
E113.対象における癌を治療するための方法であって、操作されたT細胞であって、破壊されたCD70遺伝子及びCARをコードする核酸を含む操作されたT細胞を含む細胞の集団を患者に投与し、それにより対象における癌を治療することを含む方法。
【0440】
E114.CARが、CD70に結合する、実施形態113の方法。
【0441】
E115.CARが、CD70に結合しない、実施形態113の方法。
【0442】
E116.操作されたT細胞がさらに、破壊されたTRAC遺伝子を含む、実施形態113〜115のいずれか1つの方法。
【0443】
E117.操作されたT細胞がさらに、破壊されたB2M遺伝子を含む、実施形態113〜116のいずれか1つの方法。
【0444】
E118.操作されたT細胞がさらに、破壊されたPD−1遺伝子を含む、実施形態113〜116のいずれか1つの方法。
【0445】
E119.対象における癌を治療するための方法であって、操作されたT細胞を含む細胞の集団であって、操作されたT細胞が、
(i)破壊されたTRAC遺伝子;
(ii)破壊されたB2M遺伝子;
(iii)破壊されたCD70遺伝子;及び
(iv)CARをコードする核酸を含む細胞の集団を患者に投与し、
それにより対象における癌を治療することを含む方法。
【0446】
E120.CARが、(a)抗CD70抗原結合断片を含む外部ドメイン、(b)CD8膜貫通ドメイン、及び(c)41BB共刺激ドメイン及びCD3z共刺激ドメインを含む外部ドメインを含む、実施形態113〜114及び116〜119のいずれか1つの方法。
【0447】
E121.破壊されたTRAC遺伝子が、CARをコードする核酸を含む、実施形態119又は120の方法。
【0448】
E122.抗CD70抗体が、抗CD70 scFvである、実施形態120〜121のいずれか1つの方法。
【0449】
E123.抗CD70 scFvが、参照抗体と同じ重鎖可変領域(VH)相補性決定領域(CDR)及び同じ軽鎖可変領域(VL)CDRを含み、参照抗体が、配列番号51として記載されるVH及び配列番号52として記載されるVLを含む、実施形態122の方法。
【0450】
E124.抗CD70 scFvが、参照抗体と同じVH及びVL鎖を含む、実施形態123の方法。
【0451】
E125.抗CD70 scFvが、配列番号48又は50のアミノ酸配列を含む、実施形態122の方法。
【0452】
E126.抗CD70 scFvが、配列番号50のアミノ酸配列を含む、実施形態122の方法。
【0453】
E127.CARが、抗BCMA抗体を含む外部ドメインを含み、任意選択により、抗BCMA抗体が、抗BCMA一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態113及び115〜118のいずれか1つの方法。
【0454】
E128.抗BCMA scFvが、参照抗体と同じVH相補性決定領域(CDR)及び同じVL CDRを含み、参照抗体が、配列番号60として記載されるVH及び配列番号61として記載されるVLを含む、実施形態127の方法。
【0455】
E129.抗BCMA scFvが、参照抗体と同じVH及びVL鎖を含む、実施形態128の方法。
【0456】
E130.抗BCMA scFvが、配列番号59のアミノ酸配列を含む、実施形態127の方法。
【0457】
E131.操作されたT細胞が、操作されたヒトT細胞である、実施形態113〜130のいずれか1つの方法。
【0458】
E132.癌が、CD70及び/又はBCMAを発現する、実施形態113〜131のいずれか1つの方法。
【0459】
E133.細胞の集団が、癌を治療するのに有効な量で対象に投与される、実施形態113〜132のいずれか1つの方法。
【0460】
E134.癌が、固形悪性腫瘍又は血液悪性腫瘍である、実施形態113〜133のいずれか1つの方法。
【0461】
E135.固形悪性腫瘍が、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、腎臓腫瘍、肺腫瘍、及び腸腫瘍からなる群から選択される、実施形態134の方法。
【0462】
E136.操作されたT細胞を含む細胞の集団であって、操作されたT細胞が、
(i)破壊されたTRAC遺伝子;
(ii)破壊されたベータ−2−ミクログロブリン(B2M)遺伝子;
(iii)破壊されたCD70遺伝子
(iv)(a)抗CD70抗原結合断片を含む外部ドメイン、(b)CD8膜貫通ドメイン、及び(c)41BB共刺激ドメイン及びCD3z共刺激ドメインを含む外部ドメインを含むCARをコードする核酸を含む細胞の集団。
【0463】
E137.破壊されたTRAC遺伝子が、CARをコードする核酸を含む、実施形態136の細胞の集団。
【0464】
E138.操作されたT細胞が、ヒトT細胞である、実施形態136〜137のいずれか1つの細胞の集団。
【0465】
E139.操作されたT細胞であって、
(i)破壊されたTRAC遺伝子であって、破壊されたTRAC遺伝子が、配列番号46に記載されるアミノ酸配列を含むCARをコードする核酸を含む破壊されたTRAC遺伝子;
(ii)破壊されたB2M遺伝子;及び
(iii)破壊されたCD70遺伝子を含む、操作されたT細胞。
【0466】
E140.CARをコードする核酸が、配列番号45と少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一の配列を含む、実施形態139の操作されたT細胞。
【0467】
E141.操作されたT細胞であって、
(i)破壊されたTRAC遺伝子であって、破壊されたTRAC遺伝子が、CARをコードする核酸を含み、核酸配列が、配列番号45と少なくとも90%同一である破壊されたTRAC遺伝子;
(ii)破壊されたB2M遺伝子;及び
(iii)破壊されたCD70遺伝子を含む、操作されたT細胞。
【0468】
E142.破壊されたTRAC遺伝子が、配列番号45又は配列番号44に記載されるヌクレオチド配列を含むドナー配列を含む、実施形態139〜141のいずれか1つの操作されたT細胞。
【0469】
E143.操作されたT細胞であって、
(i)配列番号44の核酸配列を含む破壊されたTRAC遺伝子;
(ii)破壊されたB2M遺伝子;及び
(iii)破壊されたCD70遺伝子を含む、操作されたT細胞。
【0470】
E144.T細胞が、ヒトT細胞である、実施形態139〜143のいずれか1つの操作されたT細胞。
【実施例】
【0471】
実施例1.T細胞におけるCas9:sgRNA RNPによるCD70の効率的なノックアウト
この実施例は、エクスビボでCRISPR/Cas9遺伝子編集を使用して一次ヒトT細胞におけるCD70遺伝子の効率的な編集を記載する。第1の3つのタンパク質をコードするエクソンを含有するCD70遺伝子のゲノムセグメントは、gRNA設計ソフトウェアにおける入力として使用された。ゲノムセグメントはまた、隣接するスプライス部位アクセプター/ドナー配列を含んだ。所望のgRNAは、CD70のアミノ酸配列を破壊し、アウトオブフレーム/機能喪失アレル(「CD70ノックアウト」アレルと呼ばれる)をもたらす、コード配列における挿入又は欠失を引き起こすことになるものであった。CD70遺伝子を標的化するインシリコで同定されたgRNAスペーサー配列中の7つ全てが合成され、gRNAは、表5において示されるとおり、特異的に修飾された。表5におけるgRNAは2’−O−メチルホスホロチオエート修飾で修飾されたが、未修飾gRNA、又は他の修飾を有するgRNAが使用されてもよい。また、この参照により全体として本明細書に組み込まれる、2018年5月11日に出願されたPCT/IB2018/001619号を参照されたい。
【0472】
【表5-1】
【0473】
【表5-2】
【0474】
一次ヒトT細胞は、Cas9ヌクレアーゼ及びCD70遺伝子(表5の配列)を標的化する合成的に修飾されたsgRNAを含有するリボ核タンパク質粒子(RNP)又は対照(Cas9なし、gRNAなし)でトランスフェクト(電気穿孔)された。トランスフェクションの4〜6日後、細胞は、(1)インデル頻度を評価するためにTIDE分析にかけられ、(2)細胞表面でのCD70発現レベルを評価するためにフローサイトメトリー(一次抗体:FITC抗ヒトCD70抗体、クローン113〜16、Biolegend)によって処理された。
【0475】
7種のgRNAは、表6に示されるとおり、TIDE分析によって測定可能なデータをもたらした。4種のgRNA配列は、80%を超えるタンパク質発現ノックダウンで85%を超えるインデルパーセンテージ(編集頻度)を得たが(配列番号23、26、27及び29)、これは、非常に効率的な遺伝子編集を示している。表6におけるデータは、1種のドナーからのものである。試験試料当たりの(蛍光強度の中央値(MFI)によって評価された)CD70タンパク質発現のレベルは、対照細胞に存在するCD70タンパク質発現のレベルに標準化された。
【0476】
【表6】
【0477】
T細胞におけるオンターゲットインデルプロファイルの分析
オンターゲットアンプリコン分析は、CD70遺伝子:
GCTTTGGTCCCATTGGTCGC(配列番号160;PAM配列番号114を有する標的配列)を標的化するT7ガイド(配列番号26;配列番号36)を使用する遺伝子編集の後にCD70座位で実施された。
【0478】
遺伝子編集の後、オンターゲットアンプリコン分析は、TRAC−/β2M−/CD70−/抗CD70 CAR+細胞(実施例3に記載されるとおりに生成される)におけるCD70座位の周囲で実施された。
【0479】
最初のPCRは、KAPA HiFi PCRキット(Kapa Biosystems、Wilmington、MA)を使用して実施された。100ngの入力gDNAは、10uMの各プライマーと組み合わされた。CD70_F及びCD70_Rプライマーが、CD70座位を増幅するように対にされた(表7)。
【0480】
【表7】
【0481】
TRAC
−/β2M
−/抗CD70 CAR+ T細胞を生成するCRISPR/Cas9遺伝子編集後のT細胞の集団におけるCD70座位の分析は、特定のインデル頻度をもたらし、CD70座位で編集された遺伝子配列をもたらす(表8;ダッシュとしての欠失及び太字の挿入)。編集された細胞の2つの細胞集団は、2つの異なるドナーT細胞(1及び2)から生成された。各ドナーからの編集されたT細胞の集団は、反復実験:1A/1B及び2A/2Bにおいて分析された。
【0482】
【表8】
【0483】
実施例2.多重遺伝子ノックアウトを有するT細胞の生成
この実施例は、2、3つ又は4つの遺伝子の発現を同時に欠くヒトT細胞を生成するCRISPR/Cas9遺伝子編集技術の使用を記載する。具体的には、T細胞受容体(TCR)遺伝子(TCRアルファ定常(TRAC)領域において編集された遺伝子)、2−ミクログロブリン(β2M)遺伝子、表面抗原分類70(CD70)遺伝子及び/又はプログラム細胞死1(PD−1又はPD1)遺伝子が、列挙された遺伝子の2つ以上においてT細胞欠損を生成するCRISPR/Cas9遺伝子編集によって編集された。以下の略称が、簡潔さ及び明確さのために図において使用される:
2X KO:TRAC
−/β2M
−
3X KO(PD−1):TRAC
−/β2M
−/PD−1
−
3X KO(CD70):TRAC
−/β2M
−/CD70
−
4X KO:TRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−
【0484】
活性化された一次ヒトT細胞は、Cas9:gRNA RNP複合体で電気穿孔された。ヌクレオフェクション混合物は、Nucleofector(商標)溶液、5×10
6細胞、1μM Cas9及び5μM gRNA(Hendel et al.,Nat Biotechnol.2015;33(9):985−989,PMID:26121415において記載される)を含有した。二重ノックアウトT細胞(2X KO)の生成のために、細胞は、各々が上に示される濃度でCas9タンパク質並びに以下のsgRNA:TRAC(配列番号40)及びβ2M(配列番号41)の1つを含有する2つの異なるRNP複合体で電気穿孔された。三重ノックアウトT細胞(3X KO)の生成のために、細胞は、各々が上に示される濃度でCasタンパク質並びに以下のsgRNA:(a)TRAC(配列番号40)、β2M(配列番号41)、及びPD−1(配列番号42);又は上に示される濃度で(b)TRAC(配列番号40)、β2M(配列番号41)、及びCD70(配列番号36又は37)の1つを含有するRNA複合体である3つの異なるRNP複合体で電気穿孔された。四重ノックアウトT細胞(4X KO)の生成のために、細胞は、各々が上に示される濃度でCas9タンパク質並びに以下のsgRNA:TRAC(配列番号40)、β2M(配列番号41)、PD−1(配列番号42)、及びCD70(配列番号36又は37)の1つを含有するRNA複合体である4つの異なるRNP複合体で電気穿孔された。gRNAの未改変のバージョン(又は他の改変バージョン)もまた使用され得る(例えば、配列番号30、31、32、26、及び/又は27)。表5及び9における配列。
【0485】
【表9】
【0486】
エレクトロポレーションの約1週間後、細胞は、未処理のままであるか又は酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)/イオノマイシンで一晩処理された。翌日、細胞をフローサイトメトリーのために処理して(例えば、Kalaitzidis D et al.J Clin Invest 2017;127(4):1405−1413)、編集された細胞集団の細胞表面でTRAC、β2M、PD−1、及びCD70発現レベルを評価した。以下の一次抗体が使用された(表10):
【0487】
【表10】
【0488】
表11及び12は、非常に効率的な多重遺伝子編集を示す。二重ノックアウト細胞(2X KO;TRAC
−/β2M
−)に関して、生存細胞の83%が、TCR及びβ2Mの発現を欠いた(表11;3X KO(PD1))。三重ノックアウト細胞に関して、生存細胞の70%が、TCR、β2M、及びPD−1の発現を欠き(表11);且つ生存細胞の80%が、TCR、β2M、及び使用されるCD70 gRNAに無関係にCD70の発現を欠いた(表12)。四重ノックアウト細胞(4X KO)に関して、生存細胞の78%が、TCR、β2M、PD−1、及びCD70の発現を欠いた(
図1)。
【0489】
【表11】
【0490】
【表12】
【0491】
T細胞における三重及び四重遺伝子編集が細胞の増殖に影響するかどうかを評価するため、細胞数を、二重、三重、及び四重遺伝子編集されたT細胞(未編集のT細胞が、対照として使用された)の間で編集後2週間にわたって数え上げた。5×10
6細胞が生成され、T細胞の各遺伝子型について蒔かれた。
【0492】
図2に示されるとおり、細胞増殖(拡大)は、エレクトロポレーション後の期間の試験にわたって継続した。同様の細胞増殖は、生存細胞の数によって示されるとおり、二重(β2M−/TRAC−)、三重(β2M−/TRAC−/PD−1−、又はβ2M−/TRAC−/CD70−)、及び四重(β2M−/TRAC−/PD−1−/CD70)ノックアウトT細胞の間で観察された。これらのデータは、多重遺伝子編集(最大で三重及び四重、CD70及びPD−1遺伝子を有する)が、T細胞増殖によって測定されるとおりT細胞の活力に影響を及ぼさないことを示唆する。
【0493】
実施例3.CD70及び/又はPD1を欠くCAR T細胞の生成
多重ノックアウトを有する抗CD70 CAR T細胞の生成
この実施例は、TCR遺伝子、β2M遺伝子、CD70遺伝子及び/又はPD1遺伝子の発現を欠き、且つCD70を標的化するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する異質遺伝子型ヒトT細胞の産生を記載する。これらの細胞は、図においてTCR
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+又は3X KO(CD70)CD70 CAR
+;TCR
−/β2M
−/PD1
−/抗CD70 CAR
+又は3X KO(PD1)CD70 CAR
+;TCR
−/β2M
−/PD1
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+又は4X KO CD70 CAR
+と呼ばれる。
【0494】
配列番号43のヌクレオチド配列を含む(配列番号46のアミノ酸配列を含む抗CD70 CARをコードする、配列番号44におけるドナー鋳型を含む)組換えアデノ随伴アデノウイルスベクター、血清型6(AAV6)(MOI 50,000)が、Cas9:sgRNA RNP(1μM Cas9、5μM gRNA)とともに活性化異質遺伝子型ヒトT細胞に送達された。以下のsgRNAが使用された:TRAC(配列番号40)、β2M(配列番号41)、CD70(配列番号36又は37)及びPD1(配列番号42)。gRNAの未改変のバージョン(又は他の改変バージョン)もまた使用され得る(例えば、配列番号30、31、32、26、及び/又は27)。エレクトロポレーションの約1週間後、細胞をフローサイトメトリーのために処理して、編集された細胞集団の細胞表面でのTRAC、β2M、CD70、及びPD1発現レベルを評価した。以下の一次抗体が使用された(表13):
【0495】
【表13】
【0496】
T細胞比率アッセイ次に、CD4+及びCD8+細胞の比率が、以下の抗体(表14)を使用するフローサイトメトリーによって、編集されたT細胞集団において評価された。
【0497】
【表14】
【0498】
高効率の遺伝子編集及びCAR発現は、編集された抗CD70 CAR T細胞集団において達成された。加えて、編集は、CD4/CD8 T細胞集団を不利に変化させなかった。
図3は、三重ノックアウトCAR T細胞における非常に効率的な遺伝子編集及び抗CD70 CAR発現を示す。55%を超える生存細胞が、TCR、β2M、及びCD70の発現を欠き、抗CD70 CARも発現した。
図4は、CD4/CD8 T細胞サブセットの正常な比率が、TRAC−/β2M−/CD70−/抗CD70 CAR+細胞において維持されたことを示し、これは、これらの多重遺伝子編集が、CD4/CD8 T細胞サブセットの比率によって測定されるとおり、T細胞の生態に影響を及ぼさないことを示唆している。
【0499】
図5は、四重ノックアウトCAR T細胞における非常に効率的な遺伝子編集及び抗CD70 CAR発現を示す。60%を超える生存細胞が、TCR、β2M、PD−1、及びCD70の発現を欠き、抗CD70 CARを発現した。
図6は、CD4/CD8 T細胞サブセットの正常な比率が、TRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+細胞において維持されたことを示し、これは、これらの多重遺伝子編集が、CD4+/CD8+ T細胞サブセットの比率によって測定されるとおり、T細胞の生態に影響を及ぼさないことを示唆している。
【0500】
多重ノックアウトを有する抗BCMA CAR T細胞の生成
この実施例は、TCR遺伝子、β2M遺伝子、PD−1遺伝子、及び/又はCD70遺伝子の発現を欠き、且つB細胞成熟抗原(BCMA)を標的化するキメラ抗原受容体(CAR)も発現する異質遺伝子型ヒトT細胞の産生を記載する。
【0501】
配列番号54のヌクレオチド配列を含む(配列番号57のアミノ酸配列を含む抗BCMA CARをコードする、配列番号55におけるドナー鋳型を含む)組換えアデノ随伴アデノウイルスベクター、血清型6(AAV6)が、Cas9:gRNA RNP(1μM Cas9、及び5μM gRNA)とともに活性化異質遺伝子型ヒトT細胞に送達された。以下のgRNAが使用された:TRAC(配列番号40)、β2M(配列番号41)、PD−1(配列番号42)、及びCD70(配列番号36又は37)。gRNAの未改変のバージョン(又は他の改変バージョン)もまた使用され得る(例えば、配列番号30、31、32、26、及び/又は27)。エレクトロポレーションの約1週間後、細胞を、抗CD70 CAR+ T細胞について上記のとおりにフローサイトメトリーのために処理したが、以下の相違を有した。抗BCMA CAR発現は、ビオチン化組換えヒトBCMA(ACROS Cat#BC7−H82F0)を使用して検出された。次に、二重及び四重ノックアウト抗BCMA CAR
+細胞が、本明細書に記載されるとおりに特徴付けされた。
【0502】
図7A〜7Bは、TRAC遺伝子、β2M遺伝子、CD70遺伝子及びPD−1遺伝子の非常に効率的な遺伝子編集を示す。
図7Cは、二重ノックアウト及び四重ノックアウト細胞における抗BCMA CAR+細胞の高い発現を示す。
【0503】
多重ノックアウトを有する抗CD19 CAR T細胞の生成
CD19を標的化するキメラ抗原受容体(CAR)を発現し、且つTCR遺伝子、β2M遺伝子、及び任意選択によりCD70遺伝子の発現を欠く、異質遺伝子型ヒトT細胞が生成された。
【0504】
異質遺伝子型T細胞を生成するため、活性化一次ヒトT細胞を、Cas9:gRNA RNP複合体で電気穿孔し、TRAC座位と相同性を有する抗CD19 CARドナー鋳型を含有するアデノ随伴アデノウイルスベクター(AAV)で感染させた。配列番号155のヌクレオチド配列を含む(配列番号149のアミノ酸配列を含む抗CD19 CARをコードする、配列番号156におけるドナー鋳型を含む)組換えAAV血清型6(AAV6)が、Cas9:sgRNA RNP(1μM Cas9、5μM gRNA)とともに活性化ヒトT細胞に送達された。以下のsgRNAを使用して、対応する遺伝子をノックアウトした:TRAC(配列番号40)、β2M(配列番号41)、CD70(配列番号36)。gRNAの未改変のバージョン(又は他の改変バージョン)もまた使用され得る(例えば、配列番号30、21又は27)。エレクトロポレーションの約1週間後、細胞を、抗CD70 CAR
+ T細胞について上記のとおりにフローサイトメトリーのために処理したが、以下の相違を有した。抗CD19 CAR発現は、ビオチン化組換えヒトCD19(ACROBIOSYSTEMS INC;CD9−H825)を使用して検出された。次に、CD70欠損抗CD70 CAR
+ T細胞が、本明細書に記載されるとおりに特徴付けされた。
【0505】
多重ノックアウトを有する抗CD33 CAR T細胞の生成
CD33を標的化するキメラ抗原受容体(CAR)を発現し、且つT細胞受容体(TCR)遺伝子(TCRアルファ定常(TRAC)領域において編集された遺伝子)、β2−ミクログロブリン(β2M)遺伝子、及び任意選択によりCD70遺伝子の発現を欠く、異質遺伝子型ヒトT細胞が生成された。
【0506】
異質遺伝子型T細胞を生成するため、活性化一次ヒトT細胞を、Cas9:gRNA RNP複合体で電気穿孔し、TRAC座位と相同性を有する抗CD33 CARドナー鋳型を含有するアデノ随伴アデノウイルスベクター(AAV)で感染させた。配列番号87のヌクレオチド配列を含む(配列番号139のアミノ酸配列を含む抗CD33 CARをコードする、配列番号135におけるドナー鋳型を含む)組換えAAV血清型6(AAV6)が、Cas9:sgRNA RNP(1μM Cas9、5μM gRNA)とともに活性化ヒトT細胞に送達された。以下のsgRNAを使用して、対応する遺伝子をノックアウトした:TRAC(配列番号40)、β2M(配列番号41)、CD70(配列番号36)。gRNAの未改変のバージョン(又は他の改変バージョン)もまた使用され得る(例えば、配列番号30、21又は27)。
【0507】
TCR+ T細胞(RNPなし)及びTRAC−/β2M− T細胞(CARを有しないTCR及びβ2M欠損細胞)の集団が、対照としての使用のために同様に生成された。エレクトロポレーションの約1週間後、細胞を、抗CD70 CAR
+ T細胞について上記のとおりにフローサイトメトリーのために処理したが、以下の相違を有した。抗CD33 CAR発現は、ビオチン化組換えヒトCD33を使用して検出された(データは示さず)。次に、CD70ノックアウト抗CD33 CAR
+ T細胞が、本明細書に記載されるとおりに特徴付けされた。
【0508】
CD70ノックアウトを有する抗CD33 CAR T細胞におけるCD4/CD8細胞集団の特徴付け
CD33は、T細胞上で発現され得るが、培養されたCD4細胞上においてCD8細胞より高いレベルで観察される。抗CD33 CAR−T細胞を生成する経過中、CD4細胞は、兄弟殺しのために実質的に減少する。
図8に示されるとおり、インタクトなCD70を有する抗CD33 CAR−T細胞培養物は、3週間の培養期間にわたってCD4+細胞において97%の減少を示したが、破壊されたCD70を有する細胞の培養物は、この時間経過にわたってわずか61%の減少を示した。したがって、CD70遺伝子を破壊することは、抗CD33 CAR−T細胞培養物において観察される兄弟殺しを減少させるように見える。理論に束縛されるものではないが、この効果は、CD70/CD27相互作用によって増強され得る免疫刺激機能を介して生じる可能性があり、CD70の遺伝子破壊は、悪性腫瘍における治療効果により最適であり得るよりバランスのとれたCD4/CD8比をもたらす。
【0509】
実施例4:CD70 KOは細胞増殖を増進させる
インビトロでの抗CD33 CAR T細胞の細胞増殖に対するCD70 KOの効果
サイトカイン含有培地(IL−2+IL−7)において細胞の増殖する能力を評価するため、抗CD33 CAR T細胞が利用された。具体的には、二重ノックアウト(TRAC−/B2M−)又は三重ノックアウト(TRAC−/B2M−/CD70−)を含む5×10
6個の総抗CD33 CAR T細胞が、実施例3に記載されるとおりに生成され、蒔かれ、10mL体積のサイトカイン含有培地中で増殖させられた。1週間後に細胞が計数された。次に、前の培養由来の5×10
6細胞が、10mL体積(新鮮なサイトカイン含有培地)に再び蒔かれ、1週間後、細胞の総数が数え上げられた。CD70遺伝子における破壊を含有する異質遺伝子型抗CD33 CAR−T細胞は、第1週及び第2週の再播種においてより高いレベルまで増殖した(
図9)。これらのデータは、CD70ノックアウトが、培養においてより高い細胞収量をもたらし得ることを示す。
【0510】
インビトロでの抗CD19 CAR T細胞の細胞増殖に対するCD70 KOの効果
サイトカイン含有培地(IL−2+IL−7)において細胞の増殖する能力をさらに評価するため、抗CD19 CAR T細胞が利用された。具体的には、二重ノックアウト(TRAC−/B2M−)又は三重ノックアウト(TRAC−/B2M−/CD70−)を含む5×10
6個の総抗CD19 CAR T細胞が、実施例3に記載されるとおりに生成され、蒔かれ、10mL体積のサイトカイン含有培地中で増殖させられた。1週間後に細胞が計数された。次に、前の培養由来の5×10
6細胞が、10mL体積(新鮮なサイトカイン含有培地)に再び蒔かれ、1週間後、細胞の総数が数え上げられた。CD70遺伝子における破壊を含有する異質遺伝子型抗CD19 CAR−T細胞は、CD70遺伝子破壊を伴わない対照細胞と比較して、第1週及び第2週の再播種においてより高いレベルまで増殖した(
図10)。これらのデータは、CD70ノックアウトが、培養においてより高い細胞収量をもたらし得ることを示す。
【0511】
インビトロでの抗BCMA CAR T細胞のサイトカインに駆動される増殖及びアポトーシスに対するCD70 KOの効果
サイトカインに駆動される増殖。細胞増殖に対するCD70及び/又はPD1ノックアウトの効果を評価するため、抗BCMA CAR T細胞が利用された。抗BCMA CAR T細胞は、実施例3に記載されるとおりに生成された。以下の編集されたT細胞の群が生成された:
TRAC−/B2M−/抗BCMA CAR+(対照;2KO、BCMA CAR+)
TRAC−/B2M−/CD70−/抗BCMA CAR+(3KO(CD70)、BCMA CAR+)
TRAC−/B2M−/PD1−/抗BCMA CAR+(3KO(PD1)、BCMA CAR+)
TRAC−/B2M−/CD70−/PD1−/抗BCMA CAR+(4KO、BCMA CAR+)
【0512】
編集された細胞は、CD3+B2M+細胞の磁性の枯渇によってTRAC−/B2M−細胞について濃縮された。簡潔には、細胞は、抗CD3ビオチン(Biolegend Cat#300404)抗β2Mビオチン(Biolegend Cat#316308)抗体により、それぞれ100μl体積中1×10
6細胞当たり0.5μgにて4℃で15分間標識され、洗浄され、ストレプトアビジン標識磁性マイクロビーズ(Miltenyi Biotech、130−048−101)とともに4℃で15分間インキュベートされた。細胞は、緩衝液中で再懸濁され、製造業者のプロトコルに従ってLSカラム(Miltenyi Biotech、130−042−401)に通された。IL−2/IL−7に駆動されるT細胞増殖に対するCD70又はPD1の効果を決定するために、編集されたT細胞(1E6細胞/ml)は、増殖培地(5%ヒトAB血清(HP1022、Valley Biomedical)が添加されたX−vivo培地(04−744、Lonza)、50ng/ml IL−2(rhIL−2;130−097−745、Miltenyi Biotech)及び10ng/ml IL−7(rhIL−7;Cellgenix 001410−050)中で最大4週間培養された。指定された日に、細胞は計数され、適切な培養皿中において1.5E6細胞/mlで新鮮な培地に再播種された。
【0513】
図11及び12は、CD70のノックアウトが、CD70が十分にある対照(すなわち、内在性CD70を含む抗BCMA CAR T細胞)と比較して、インビトロで抗BCMA CAR T細胞のIL−2/IL−7に駆動される増殖を増進させたことを示す。
図11はまた、CD70遺伝子が損なわれていない場合、このドナーからのT細胞が17日後に有意に減少しているように見える場合さえ、CD70 KOが、抗BCMA CAR T細胞の活力及び増殖能を増進できることを示す(ドナー2(
図12)と比較して、ドナー1(
図11)の減少した細胞数によって示されるとおり)。T細胞の活力を維持するこの特性(CD70遺伝子のKOによって可能になる)は、収量及び一貫性を増大させる製造時の増殖の拡大、患者における潜在的により少ない用量を可能にする枯渇した/活力のないT細胞のレスキュー、並びにより堅牢な応答、T細胞の活力に対してより有害であり得るが、T細胞活性の抑制を克服することなど他の利点を有する他のKO(例えば、PD1 KO)との組合せを含むCAR Tの開発の多くの側面に広範に適用可能である。
図11及び12に示されるとおり、単独でPD1遺伝子を欠失させることは、CAR T細胞の増殖に対する利益を示さないが、CD70 KOと組み合わせた場合、相乗効果を示す。
【0514】
アポトーシス。抗原に対する暴露後の抗BCMA CAR+ T細胞のアポトーシス性の細胞死に対するCD70 KOの効果は、抗原再チャレンジアッセイにおいて評価された。簡潔には、抗原暴露を達成するために、抗BCMA CAR+ T細胞が、プレートに接着した組換えBCMAタンパク質に暴露された。接着した抗原を有するプレートは、24ウェルプレートを1xPBS(1μg/ml;ビオチン化ヒトBCMAタンパク質、ACRO Biosystems)中の組換えBCMAタンパク質により4℃で一晩コーティングし、続いて未結合の抗原を洗い流すことによって作製された。洗浄後、抗原結合プレートは、CD70ノックアウトを有するか又は有しないいずれかの抗BCMA CAR+ T細胞をチャレンジするために使用された。2X KO(TRAC−/B2M−)抗BCMA CAR+ T細胞及び3X KO(TRAC−/B2M−/CD70−)抗BCMA CAR+ T細胞(1×10
6細胞/ml)が、IL−2(rhIL−2;130−097−745、Miltenyi Biotech)が添加された増殖培地(X−vivo培地(04−744、Lonza)、5%ヒトAB血清(HP1022、Valley Biomedical)中においてプレート結合組換えBCMAタンパク質(1μg/ml)に24時間暴露された。次に、細胞は洗浄され、計数され、合計3回の連続した再チャレンジ(24時間、48時間、及び72時間)のために24時間毎に新鮮なプレート結合抗原で再チャレンジ(1×10
6細胞/ml)された。各再チャレンジの最後に、一定分量の細胞を洗浄し、アネキシンV結合緩衝液(BioLegend)中においてヨウ化プロピジウムとともに蛍光色素がコンジュゲートされたアネキシンVにより室温で15分間染色した。次に、細胞は、洗浄され、フローサイトメトリーによる分析のためにアネキシンV結合緩衝液中で再懸濁された。各時点で細胞が計数され、1ml当たりの細胞数が導き出された。各時点での増殖率の計算のために、0時点での最初の増殖率が1に設定された。全ての他の時点に関する増殖率は、各時点での1ml当たりの細胞数に前の時点に関する1ml当たりの増殖率を掛けることによって計算された。例えば、72時間での増殖率は、72時間での1ml当たりの細胞数に48時間での1ml当たりの増殖率を掛けることによって計算された。
【0515】
図13は、CD70(CD70 KO)の欠失が、第2(48時間)及び第3(72時間)の再チャレンジ後のアポトーシス細胞のパーセンテージにおける減少によって示されるとおり、アポトーシスから抗BCMA CAR+ T細胞をレスキューすることを実証している。さらに、抗BCMA CAR+ T細胞におけるCD70発現の欠如は、抗原暴露に応答する抗BCMA CAR+ T細胞の増殖を驚くほど増強する(
図14)。
【0516】
インビトロでの抗CD70 CAR T細胞の細胞増殖に対するCD70 KOの効果
CAR T細胞においてCD70遺伝子を破壊することの影響をさらに評価するため、抗CD70 CAR T細胞が、実施例3に記載されるとおりに生成された。具体的には、3X KO(TRAC−/β2M−/CD70−)抗CD70 CAR T細胞が、異なるgRNA(T7(配列番号36及びT8(配列番号37))を使用して生成された。エレクトロポレーションの後、細胞増殖が、生存細胞を計数することによって実施例2に記載されるとおりに評価された。
図15は、三重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/CD70
−/T7又はT8 gRNAのいずれかで生成された抗CD70 CAR
+ T細胞は、二重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/抗CD70 CAR+ T細胞と比較して高い細胞増殖を示した。これらのデータは、CD70遺伝子をノックアウトすることが、抗CD70 CAR+ T細胞に細胞増殖の優位性をもたらすことを示唆する。
【0517】
細胞増殖はまた、四重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗CD70 CAR+ T細胞において評価された。これらの細胞は、三重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/抗CD70 CAR
+ T細胞及び二重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/抗CD70 CAR
+ T細胞と比較して、より高い増殖を示した(
図16)。
【0518】
実施例5.CD70 KOは、インビトロでCAR T細胞の耐久性及び効力を増大させる。
CD70ノックアウトを有する抗CD19 CAR T細胞の細胞を死滅させる機能
実施例3に記載されるとおりの編集された抗CD19 CAR T細胞の作製の後、CAR T細胞の機能活性を、フローサイトメトリーに基づく細胞障害性アッセイを使用して検証した。抗CD19 CAR T細胞(TRAC−/β2M−/CD19 CAR+及びTRAC−/β2M−/CD70−/CD19 CAR+)は、2つのCD19発現癌細胞株(標的細胞):Nalm6(ATCC crl3273)又はRaji(ATCC ccl−86)の1つと共培養された。標的細胞は、5μM efluor670(eBiosciences)で標識され、洗浄され、TRAC−/β2M−/抗CD19 CAR+、又はTRAC−/β2M−/β2M−/CD70−/抗CD19 CAR+との様々な比(0.01、0.05、0.1、0.5、1:1 T細胞:標的細胞)での共培養物中においてインキュベートされた。標的細胞は、96ウェル、U底プレートにおいてウェル当たり50,000細胞で播種された。共培養物は、一晩インキュベートされた。インキュベーションの後、ウェルは洗浄され、培地は、5mg/mL DAPI(Molecular Probes)の1:500希釈物を含有する200μLの培地で置き換えられた。次に、25μLのCountBrightビーズ(Life Technologies)が、各ウェルに加えられ、細胞培養物が、フローサイトメトリーによって細胞生存率について分析された(すなわち、生存細胞はDAPI染色について陰性である)。
【0519】
次に、標的細胞(例えば、Nalm6又はRaji細胞)の細胞溶解パーセントが、以下の式を使用して決定された:
細胞溶解パーセント=(1−((試験試料における標的細胞の総数)÷(対照試料における標的細胞の総数))×100;
式中、試験試料は、1)TRAC−/β2M−/CD19 CAR+ T細胞又は2)TRAC−/β2M−/CD70−/CD19 CAR+ T細胞と共培養された標的細胞(例えば、Nalm6又はRaji細胞)であり;且つ
対照試料は、共培養されていない単独の標的細胞であった。
【0520】
CD70遺伝子の破壊は、低いCAR−Tと標的の比率でRaji細胞株に対する抗CD19 CAR−T細胞の細胞溶解活性の増強をもたらした(
図17、下のパネル)。CD70の破壊は、Nalm6細胞株に対して抗CD19 CAR−T活性を増強しなかった(
図17、上のパネル)。注目すべきことに、Nalm6細胞株は、これらのCAR−T細胞により溶解することが比較的容易であり(Nalm6に関して0.1:1 CAR−T細胞と標的比で>80%溶解対Rajiに関して野生型細胞に関してこの比で0%)、Nalm6細胞に対するこのアッセイにおいて、CD70枯渇による結果として得られる有効性の増大の欠如を説明していると考えられる。Raji細胞株に対してCD70の喪失により付与される活性の増大は、困難な腫瘍環境において、特に、CAR−Tと腫瘍の比率が低い場合、CD70の喪失が、腫瘍細胞を根絶する際にCAR T細胞への実質的な利益を有し得ることを示す。
【0521】
CD70ノックアウトを有する抗CD33 CAR T細胞の細胞を死滅させる機能
実施例3に記載されるとおりの編集された抗CD33 CAR T細胞の作製の後、CAR T細胞の機能活性を、フローサイトメトリーに基づく細胞障害性アッセイを使用して検証した。抗CD33 CAR T細胞(TRAC−/β2M−/CD33 CAR+及びTRAC−/β2M−/CD70−/CD33 CAR+)又は対照T細胞(RNPなし)は、CD33発現癌細胞株MV4−11(ATCC CRL−9591)とともに共培養された。標的細胞は、5μM efluor670(eBiosciences)で標識され、洗浄され、TRAC−/B2M−/抗CD33 CAR+、TRAC−/β2M−/β2M−/CD70−/抗CD33 CAR+、又は対照との様々な比(0.01:1、0.03:1、0.06:1、0.125:1、0.25:1、0.5:1、又は1:1 T細胞:標的細胞)での共培養物中においてインキュベートされた。標的細胞は、96ウェル、U底プレートにおいてウェル当たり50,000細胞で播種された。共培養物は、一晩インキュベートされた。48時間後、ウェルは洗浄され、培地は、5mg/mL DAPI(Molecular Probes)の1:500希釈物を含有する200μLの培地で置き換えられた。次に、25μLのCountBrightビーズ(Life Technologies)が、各ウェルに加えられ、細胞培養物が、フローサイトメトリーによって細胞生存率について分析された(すなわち、生存細胞はDAPI染色について陰性である)。
【0522】
次に、標的細胞(例えば、MV4−11)の細胞溶解パーセントが、以下の式を使用して決定された:
細胞溶解パーセント=(1−((試験試料における標的細胞の総数)÷(対照試料における標的細胞の総数))×100;
式中、試験試料は、1)TRAC−/β2M−/CD33 CAR+ T細胞;又は2)TRAC−/β2M−/CD70−/CD33 CAR+ T細胞と共培養された標的細胞(例えば、MV4−11細胞)であり、且つ
対照試料は、共培養されていない単独の標的細胞であった。
【0523】
抗CD33 CAR T細胞の両方の集団は、効率的にMV4−11細胞を死滅させ、0.5 CAR T細胞:MV4−11細胞の比率でほぼ100%の細胞の死滅に達したが、TRAC−/B2M−/CD70−/CD33 CAR+ T細胞は、より低いCAR Tと癌細胞の比率でより高い細胞の死滅を実証した(
図18)。これらのデータは、追加のCD70ノックアウトを有する異質遺伝子型の抗CD33 CAR T細胞が、より低いCAR T細胞と標的細胞の比率でより効果的であることを実証している。
【0524】
CD70ノックアウトを有する抗CD70 CAR T細胞の細胞を死滅させる機能
細胞死滅アッセイを使用して、TRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+細胞及びTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+細胞のCD70
+接着腎細胞癌(RCC)由来細胞株(A498細胞)を死滅させる能力を評価した。接着細胞を、ウェル当たり50,000細胞で96ウェル中に播種し、37℃で一晩置いた。翌日、編集された抗CD70 CAR T細胞を、指定の比率で標的細胞を含有するウェルに加えた。指定されたインキュベーション期間の後、CAR T細胞を、吸引によって培養物から除去し、100μLのCell titer−Glo(Promega)をプレートの各ウェルに加えて、残留している生存細胞の数を評価した。次に、ウェル当たりの放出された光の量を、プレートリーダーを使用して定量化した。細胞は、24時間の共インキュベーション後にRCC由来細胞の強力な細胞の死滅を示した(
図19)。抗CD70 CAR T細胞は、CD70がノックアウトされた場合により高い効力を示したが、これは、低いT細胞:A498比(1:1及び0.5:1)で明白に目に見え、ここで、細胞溶解は、TRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+については90%を超えたままであるが、TRAC
−/β2M
−//抗CD70 CAR
+については細胞溶解が90%未満に落ちる。このことは、CD70遺伝子をノックアウトすることが、抗CD70 CAR+ T細胞により高い細胞死滅の能力をもたらすことを示唆する。
【0525】
実施例6.インビトロでのCD70欠損CAR T細胞の再チャレンジ
CD70ノックアウトは、連続的な再チャレンジ時に抗CD33 CAR+ Tによる細胞の死滅を増進する
抗原発現細胞(例えば:標的細胞)によるチャレンジ及び再チャレンジ後に細胞の増殖する能力を評価するため、抗CD33 CAR T細胞が、実施例3において記載されるとおりに生成され、且つ利用された。具体的には、合計5×10
6個のT細胞が、5×10
6個の照射された標的細胞(MV−4−11)の存在下で蒔かれ、10mL体積において増殖させられた。1週間後、細胞は計数され、続いて、前の培養物からの5×10
6細胞が、新鮮な一定分量の5×10
6個の照射された標的細胞とともに10mL体積において再度蒔かれ、1週間後に細胞の総数が数え上げられた。この工程が示されるとおりに繰り返され、各再チャレンジは5×10
6細胞で開始された。生存細胞の数は、実施例2において示されるとおりに計数された。CD70遺伝子における破壊を含有する異質遺伝子型抗CD33 CAR−T細胞は、MV−4−11細胞による2回のチャレンジの後の第2週においてより高いレベルまで増殖した(
図20)。これらのデータは、CD70が、抗原発現細胞の存在下でT細胞増殖を制限でき、その減少が、抗原刺激後により高い細胞増殖をもたらすことができることを示す。
【0526】
CD70ノックアウトは、連続的な再チャレンジ時に抗CD19 CAR+ Tによる細胞の死滅を増進する
抗原発現細胞(例えば:標的細胞)によるチャレンジ及び再チャレンジ後に細胞の増殖する能力をさらに評価するため、抗CD19 CAR T細胞が、実施例3において記載されるとおりに生成され、且つ利用された。具体的には、合計5×10
6個のT細胞が、5×10
6個の照射された標的細胞(Nalm6)の存在下で蒔かれ、10mL体積において増殖させられた。1週間後、細胞は計数され、続いて、前の培養物からの5×10
6細胞が、新鮮な一定分量の5×10
6個の照射された標的細胞とともに10mL体積において再度蒔かれ、1週間後に細胞の総数が数え上げられた。この工程が示されるとおりに繰り返され、各再チャレンジは5×10
6細胞で開始された。生存細胞の数は、実施例2において示されるとおりに計数された。CD70遺伝子における破壊を含有する異質遺伝子型抗CD19 CAR−T細胞は、最初の2回のチャレンジ中に同様の量まで増殖した。しかしながら、3回のチャレンジで、CD70遺伝子における破壊を含有する異質遺伝子型抗CD19 CAR−T細胞は、Nalm6細胞による3回目のチャレンジにおいてより高いレベルまで増殖した(
図21)。これらのデータは、CD70の存在が、抗原発現細胞の存在下でT細胞増殖を制限でき、その減少が、繰り返された抗原刺激後により高い細胞増殖をもたらすことができることを示す。
【0527】
CD70、又はPD−1とCD70のノックアウトは、連続的な再チャレンジ時に抗CD70 CAR
+ Tによる細胞の死滅を維持する
上で生成された抗CD70 CAR+ T細胞は、CD70+腎臓癌細胞株A498で連続的に再チャレンジされ、それらのCD70+腎臓癌細胞株A498又はACHNを死滅させる能力について評価された。
【0528】
A498細胞は、T25フラスコ中に蒔かれ、2つ(TRAC
−/β2M
−)、3つ(TRAC
−/β2M
−/PD−1
−)若しくは(TRAC
−/β2M
−/CD70
−))、又は4つ(TRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−)のgRNA編集のいずれかを含有する10×10
6個の抗CD70 CAR+ T細胞とともに2:1(T細胞対A498)の比で混合された。
【0529】
各チャレンジの2日又は3日後、細胞は計数され、洗浄され、新鮮なT細胞培地中で再懸濁され、1個のA498細胞当たり2個の抗CD70 CAR
+ T細胞の同じ比(2:1、CAR
+ T細胞:標的)で翌日に再チャレンジされた。CD70+ A498細胞による抗CD70 CAR+
T細胞のチャレンジは、13回繰り返された。A498細胞に対するそれぞれの暴露の後の3〜4日後(及び次の再チャレンジの前)、一定分量の培養物を採取し、2:1(CAR T細胞:標的細胞)の比でA498又はACHN標的細胞を死滅させるCAR T細胞の能力について分析した。細胞の死滅は、Cell titer−glo(Promega)を使用して測定された。A498による最初のチャレンジの前、2X KO(TRAC
−/β2M
−)、3X KO(TRAC
−/β2M
−/CD70)、3X KO(TRAC
−/β2M
−/PD−1
−)、及び4X KO(TRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−)を有する抗CD70 CAR+ T細胞はそれぞれ、100%に近づくA498細胞の標的細胞死滅を示した。しかしながら、チャレンジ9までに、2X KO(TRAC
−/β2M
−)及び3X KO(TRAC
−/β2M
−/PD−1
−)抗CD70 CAR
+T細胞は、A498細胞の標的細胞死滅を40%未満に誘導したが、3X KO(TRAC
−/β2M
−/CD70)及び4X KO(TRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−)抗CD70 CAR
+T細胞は、60%を超える標的細胞の死滅を示した(
図22A)。3X KO(TRAC
−/β2M
−/CD70)及び4X KO(TRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−)抗CD70 CAR
+ T細胞に関する標的細胞の死滅は、A498細胞による13回の再チャレンジ後でさえ60%を超えたままであり、これらのCAR+ T細胞が枯渇に耐性であると実証している。
【0530】
抗CD70 CAR T細胞はまた、A498腎癌細胞による連続的な再チャレンジの後に2:1(T細胞対ACHN)の比でACHN細胞を死滅させるそれらの能力について評価された(
図22B)。A498による最初のチャレンジの前に、二重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/抗CD70 CAR
+ T細胞、三重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/PD−1
−抗CD70 CAR
+ T、三重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+ T細胞及び四重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+ Tはそれぞれ、62%、47%、73%及び81%を超える死滅の効率を示した。
【0531】
チャレンジ5の後、三重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+ T細胞及び四重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗CD70 CAR+ T細胞は依然として、2:1(T細胞対ACHN)の比で55%を超えるACHN細胞を効率的に死滅させたが、二重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/抗CD70 CAR
+ T細胞及び三重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/抗CD70 CAR
+ Tによる細胞死滅は、11%未満のACHN細胞に落ちた。この傾向は継続したが、二重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/抗CD70 CAR
+ T細胞及び三重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/抗CD70 CAR
+ T細胞は、10回の再チャレンジを超えて生存できなかった。対照的に、三重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+ T細胞及び四重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+ T細胞は、培養物中で増殖し続け、且つ2回の再チャレンジの後に2:1(T細胞対ACHN)の比で30%を超えるACHN細胞を死滅させ続けた。
【0532】
データは、4x KO、CD70 CAR
+ T細胞及び3xKO(CD70)、CD70 CAR
+細胞が、2X KO、CD70 CAR
+ T又は3X KO(PD1)、CD70 CAR+ T細胞より強力であることを実証している。加えて、3X(CD70)KO及び4X KOは、T細胞枯渇を防ぐ。
【0533】
5回の再チャレンジの後、細胞は、癌細胞を死滅させるそれらの能力について評価された。驚くべきことに、3KO及び4KO抗CD70 CAR+ T細胞は、複数回の癌細胞チャレンジの後でさえ、癌細胞を死滅させる際に非常に有効なままであった(
図23A)。ACHN細胞に対する抗CD70 CAR+ T細胞の細胞死滅効果は、1:1、0.5:1、及び0.25:1の減少したエフェクター対標的細胞比でさえ再現性がある。(
図23A)。
【0534】
CAR T治療時の長期間の利益を確実にするため、CAR T細胞は、CAR−Tに媒介される細胞の死滅から癌細胞が脱出する可能性を除外するために、長期間にわたってそれらの標的細胞を同定し、且つ根絶することができるべきである。インビトロでの再チャレンジアッセイは、複数のサイクルのCAR−T細胞活性化にわたる標的細胞とCAR−T細胞の反復性の遭遇を模倣する。これらのデータは、二重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/抗CD70 CAR
+ T細胞及び三重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/抗CD70 CAR
+ T細胞と比較して、それらの標的細胞を死滅させる能力の低減を示すことなく、腎臓癌細胞による複数回のチャレンジを持続する際の三重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+ T細胞及び四重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+ T細胞の優位性を実証している。
【0535】
枯渇及び活性化マーカーはまた、再チャレンジ後の抗CD70 CAR+ T細胞においてフローサイトメトリーによって測定された。8回のチャレンジの後、三重(TRAC−/β2M−/CD70−)及び四重(TRAC−/β2M−/PD1−/CD70−)KO抗CD70 CAR+ T細胞は、それらの高い細胞死滅活性のレベルと一致して、二重(TRAC−/β2M−)及び四重(TRAC−/β2M−/PD1−/CD70−)KO抗CD70 CAR+ T細胞より高い活性化マーカーLAG3の発現を示した。三重(TRAC−/β2M−/CD70−)抗CD70 CAR+ T細胞(三重(TRAC−/β2M−/PD1−)及び四重(TRAC−/β2M−/PD1−/CD70−)KO抗CD70 CAR+T細胞と同様)において、二重(TRAC−/β2M−)抗CD70 CAR+ T細胞と比較して、PD1の発現が低いことが観察されたが、これは、CD70をノックアウトすることが、抗CD70 CAR+ T細胞における枯渇マーカーPD1発現の下方制御に効果を及ぼすことを示唆している。(
図23B)。
【0536】
PD−1及びCD70のノックアウトは、連続的な再チャレンジ時に抗BCMA CAR
+ Tによる細胞の死滅を維持する
実施例3に記載されるとおりに生成される抗BCMA CAR+ T細胞は、連続的に再チャレンジされ、且つBCMA+多発性骨髄腫細胞株MM.1S(ATCC CRL−2974)を死滅させるそれらの能力について評価された。CAR結合を介する連続的なT細胞活性化時にサイトカインを分泌する能力もまた、各再チャレンジの後に測定された。MM.1S細胞は、5μM eFlour670で標識され、2つ(TRAC
−/β2M
−)又は4つ((TRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−)のgRNA編集のいずれかを含有する1×10
6個の抗BCMA CAR
+ T細胞を有する6ウェルの組織培養皿において2:1(MM.1S対T細胞)の比で混合された。MM.1S細胞に対する暴露の1日後、一定分量の培養物を採取し、CAR−T細胞による標的細胞の死滅及びIFN−g分泌の両方について分析した。サイトカイン放出を測定するため、T細胞及び標的細胞を、指定の比で24時間共インキュベートした。上清培地を、製造業者の指示書(RD Systems)に従って新しいプレート上でのIL−2又はIFNγELISA(RD Systems)における使用のために回収した。細胞の死滅を定量するため、細胞は洗浄され、培地は、5mg/mL DAPI(Molecular Probes)の1:500希釈物を含有する200μLの培地で置き換えられた(死/瀕死細胞を数え上げるため)。最後に、25mLのCountBrightビーズ(Life Technologies)を、各ウェルに加えた。次に、細胞は、フローサイトメトリーによって処理された。
1)細胞/mL=((生存標的細胞イベントの数)/(ビーズイベントの数))x((ロットの割り当てられたビーズカウント(ビーズ/50μL))/(試料の体積))
2)合計の標的細胞は、細胞/mLに細胞の総体積を掛けることによって計算された。
3)次に、細胞溶解のパーセントが、以下の式:
%細胞溶解=(1−((試験試料中の標的細胞の総数)/(対照試料中の標的細胞の総数))×100
により計算された。
【0537】
各チャレンジの2日又は3日後、細胞は計数され、洗浄され、新鮮なT細胞培地中で再懸濁され、2つのeFlour670で標識されたMM.1S細胞当たり1つの抗BCMA CAR
+ T細胞の同じ比で再チャレンジされた。BCMA+ MM.1S細胞による抗BCMA CAR
+ T細胞のチャレンジは、連続的に10回繰り返された。MM.1S細胞による任意のチャレンジの前に、2X KO(TRAC−/B2M−)又は4X KO(TRAC−/B2M−/CD70−/PD−1−)抗BCMA CAR+ T細胞のいずれかとMM.1S細胞の共インキュベーションが、標的細胞の完全な死滅をもたらした。
【0538】
さらに、2X KO及び4X KO抗BCMA CAR+ T細胞の両方によるIFNγ産生は同様であった。しかしながら、MM.1S細胞による4回目の再チャレンジの後、2X KO抗BCMA CAR+ T細胞による標的細胞の死滅及びIFNγ産生は、4X KO抗BCMA CAR+ T細胞により誘導されるものと比較して減少した。8回目の再チャレンジまで、標的細胞の死滅は、2X KO抗BCMA CAR+ T細胞についてはほんのおよそ20%であったが、4X KO抗BCMA CAR+ T細胞によるIFNg及び標的細胞の死滅の両方は、MM.1S細胞によるいずれかのチャレンジの前に見られるものに匹敵したままであった(
図24A〜24B)。加えて、四重ノックアウト抗BCMA CAR T細胞は、標的細胞に対する暴露に応答してより高い増殖を示した(
図24C)。
【0539】
CAR T治療時の長期間の利益を確実にするため、CAR T細胞は、CAR−Tに媒介される細胞の死滅から癌細胞が脱出する可能性を除外するために、長期間にわたってそれらの標的細胞を同定し、且つ根絶することができるべきである。インビトロでの再チャレンジアッセイは、複数のサイクルのCAR−T細胞活性化にわたる標的細胞とCAR−T細胞の反復性の遭遇を模倣し、したがって、二重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/抗BCMA CAR
+ T細胞と比較して、細胞を死滅させる能力の低減を示すことなく、標的細胞による複数回のチャレンジを持続する際の4XノックアウトTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗BCMA CAR
+ T細胞の優位性を実証している(
図24A〜24C)。
【0540】
実施例7.CD70 KOは、過剰な阻害分子の課題を克服する
多重ノックアウト抗CD70 CAR+ T細胞のA498−PD−L1腎癌細胞への効果の比較
細胞死滅アッセイ。多重に遺伝子編集された抗CD70 CAR
+細胞のPD−L1を過剰発現するA498腎癌細胞を死滅させる能力は、本明細書に記載される細胞死滅アッセイを使用して判定された。PD−L1(CD274)を過剰発現する細胞を作製するため、A498細胞を、PD−L1 cDNA及びピューロマイシン耐性遺伝子をコードするレンチウイルス(Genecopoeia)で感染させた。ピューロマイシンによる選択の後、細胞を抗PD−L1抗体で染色して、PD−L1の発現を評価した。PD−L1を発現するA498細胞は、A498−PD−L1とも呼ばれ、記載される機能アッセイにおいて使用された。
【0541】
TRAC
−/β2M
−/抗CD70 CAR
+(2X KO、CD70 CAR
+)、TRAC
−/β2M
−/PD−1
−/抗CD70 CAR
+(3X KO(PD−1)、CD70 CAR
+)、TRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+(3X KO(CD70)、CD70 CAR
+)及びTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+(4X KO、CD70 CAR
+)T細胞を、2:1(
図25A)、1:1(
図25B)、又は0.5:1(
図25C)のCAR T細胞:A498−PD−L1標的細胞比でA498−PD−L1細胞とともにインキュベートした。CD70ノックアウト細胞は、24時間の共インキュベーション後にRCC由来細胞の強力な細胞の死滅を示した(
図25A〜25C)。PD1単独のノックアウトを有する細胞は、PD−L1過剰発現の存在下で細胞を効率的に溶解しなかった。しかしながら、CD70ノックアウトは、PD1ノックアウトをレスキューすることができ、増強された細胞溶解が、CD70 KO及びPD1 KOを有するCART細胞において観察された。これらのデータは、これらのCAR−T細胞の表面上でのCD70の消失が、PD−L1などの腫瘍細胞により発現される高度に免疫抑制性の分子の存在下でさえそれらの機能を増強することを実証している。
【0542】
サイトカイン放出アッセイ。サイトカイン放出アッセイは、本明細書に記載されるとおりに実施された。1:1の比(CAR T細胞:A948−PD−L1標的細胞)での24時間の共インキュベーション後にA948−PD−L1細胞の存在下で共培養された場合の二重ノックアウト、三重ノックアウト、及び四重ノックアウト抗CD70 CAR
+ T細胞のIL−2及びIFN−gを産生する能力は、ELISAアッセイを使用して評価された。細胞共培養物の上清に由来するIL−2及びIFN−gが測定された。四重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+ T細胞は、A948−PD−L1細胞と培養されたときに最も高いレベルのIFN−g(
図26A)及びIL−2(
図26B)を分泌した。これらのデータは、CD70のノックアウトが、PD−L1などの腫瘍細胞により発現される高度に免疫抑制性の分子の存在下でさえCAR−T細胞のサイトカイン分泌を増強することを実証している。CAR−T細胞におけるPD−1のノックアウトと合わせたCD70のノックアウトはさらに、その効果を増強する。理論に束縛されるものではないが、抗CD70 CAR+ T細胞においてCD70をノックアウトすることは、他の細胞ノックアウト(例えば、PD1)の有害な表現型をレスキューできると考えられる。これらのデータは、CAR T細胞においてCD70をノックアウトすることが、高度に免疫抑制性の状況において標的細胞の死滅及びCAR T機能を増強することを実証している。
【0543】
実施例8.CD70ノックアウトはインビボ有効性を向上させる
抗CD70 CART細胞におけるCD70及びPD1ノックアウトの有効性:NOGマウスにおける皮下腎細胞癌腫瘍異種移植モデル
小型の腫瘍モデルにおける治療
高レベルのCD70を発現する腎癌細胞を除去するCD70 CARを発現するT細胞の能力は、マウスにおける皮下腎細胞癌(A498)腫瘍異種移植モデルを使用してインビボで評価された。
【0544】
CRISPR/Cas9及びAAV6を、上のとおりに使用して(例えば、実施例3を参照のこと)、CD70を標的化するCARコンストラクト(配列番号45;配列番号46)を使用してTRAC座位からの同時の発現を伴ってTCR、β2M、CD70及び/又はPD1の発現を欠くヒトT細胞を作製した。この実施例において、活性化T細胞はまず、TRAC(配列番号40)、β2M(配列番号41)、PD1(配列番号42)、及びCD70(配列番号36又は37)を標的化するsgRNAを含有する2、3、又は4種の異なるCas9:sgRNA RNP複合体により電気穿孔された。TRAC座位でのDNA二重鎖切断は、キメラ抗原受容体カセット(遺伝子発現に関する−/+調節エレメント)に隣接するTRAC座位に対して右及び左の相同性アームを含有するドナー鋳型(配列番号44;配列番号45)(配列番号45のアミノ酸配列を含む抗CD70 CARをコードする)を含むAAV6に送達されるDNA鋳型による相同組換え修復によって修復された。
【0545】
結果として得られる改変T細胞は、2X KO(TRAC−/β2M−)、3X KO(TRAC−/β2M−/PD1−又はTRAC−/β2M−/CD70−)及び4X KO(TRAC−/β2M−/PD1−/CD70−)抗CD70 CAR+(41BB共刺激ドメインを有する)T細胞である。CD70+腎癌細胞株によって引き起こされる疾患を回復させるこれらの抗CD70 CAR+ T細胞の能力は、Translational Drug Development,LLC(Scottsdale、AZ)によって利用される方法を使用して、NOGマウスにおいて評価された。簡潔には、12頭の5〜8週齢雌、CIEA NOG(NOD.Cg−Prkdc
scidI12rg
tm1Sug/JicTac)マウスは、試験の開始の5〜7日前に病原体を含まない条件下で維持された、換気されたマイクロアイソレーターケージにおいて個別に飼育された。マウスは、右後側腹部において5×10
6個のA498腎癌細胞/マウスの皮下接種を受けた。平均腫瘍サイズが、25〜75mm
3(約50mm
3の標的)に達したとき、マウスはさらに、表15に示されるとおりの5つの治療群に分けられた。1日目、治療群2〜5は、表15に従って、単回の200μlの静注投与量の抗CD70 CAR+ T細胞を受容した。
【0546】
【表15】
【0547】
腫瘍体積は、治療開始日から週に2回測定された。91日目までの試験の期間中において、5日目までに、抗CD70 CAR T細胞の4種全ての治療は、腫瘍体積の減少を示し始め、22日までに、抗CD70 CAR T細胞の4種全てが、CD70+腎臓癌腫瘍を完全に除去した(
図27A)。これらのデータは、4種全ての抗CD70 CAR T細胞が、インビボでCD70+腎臓癌腫瘍を退行させることができることを実証している。
【0548】
再チャレンジ後の抗CD70 CAR T細胞の活性を試験するため、生存しているマウスの左後側腹部の皮下において、25日目に5×10
6個のA498腎癌細胞/マウスを接種した。(表16)。持続性の有効性は、46日目以降から評価された。結果は、
図27Bにおいて示される。56日目において、2X、CD70 CAR+ T細胞で治療された5頭のマウスのうちの5頭が、再チャレンジ後に腫瘍の再増殖を示し、3X(PD1)、CD70 CAR+ T細胞で治療された5頭のマウスのうちの4頭が、再チャレンジ後に腫瘍の再増殖を示し、4X(CD70、PD1)、CD70 CAR+ T細胞で治療された5頭のマウスのうちの2頭が、再チャレンジ後に腫瘍の再増殖を示したが、3X(CD70)、CD70 CAR+ T細胞で治療されたマウスは、再チャレンジ後に腫瘍の再増殖を示さなかった。この傾向は継続したが、70日目において、3X(PD1)、CD70 CAR
+ T細胞で治療された5頭のマウスのうちの4頭は、再チャレンジ後に腫瘍の再増殖を示し、4X(CD70、PD1)、CD70 CAR
+ T細胞で治療された5頭のマウスのうちの4頭は、再チャレンジ後に腫瘍の再増殖を示したが、3X(CD70)、CD70 CAR
+ T細胞で治療されたマウスのうちの1頭だけは、再チャレンジ後の34日目に現れ始めた小規模な腫瘍の再増殖を示した。91日目からも、3X(CD70)、CD70 CAR
+ T細胞で治療された5頭のマウスのうちの1頭だけが、腫瘍の再増殖を示し始めたが、これは、TRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+ T細胞が、腫瘍細胞への再曝露後のより高いインビボでの有効性を保持することを示している。
【0549】
【表16】
【0550】
大型の腫瘍モデルにおける治療
より大型の腎細胞癌腫瘍に対する抗CD70 CAR T細胞のインビボでの有効性が調査された。上のとおり、CRISPR/Cas9及びAAV6を使用して、CD70を標的化するCARコンストラクト(配列番号45)を使用してTRAC座位からの同時の発現を伴ってTCR、β2M、CD70及び/又はPD1の発現を欠くヒトT細胞を作製した。この実施例において、活性化T細胞はまず、TRAC(配列番号40)、β2M(配列番号41)、PD1(配列番号42)、及びCD70(配列番号36又は37)を標的化するsgRNAを含有する2、3、又は4種の異なるCas9:sgRNA RNP複合体により電気穿孔された。TRAC座位でのDNA二重鎖切断は、キメラ抗原受容体カセット(遺伝子発現に関する−/+調節エレメント)に隣接するTRAC座位に対して右及び左の相同性アームを含有するAAV6に送達されるDNA鋳型(配列番号43)(配列番号5のアミノ酸配列を含む抗CD70 CARをコードする)による相同組換え修復によって修復された。
【0551】
結果として得られる改変T細胞は、2X KO(TRAC−/β2M−)、3X KO(TRAC−/β2M−/PD1−又はTRAC−/β2M−/CD70−)及び4X KO(TRAC−/β2M−/PD1−/CD70−)抗CD70 CAR+(41BB共刺激ドメインを有する)T細胞である。CD70+腎癌細胞株によって引き起こされる疾患を回復させるこれらの抗CD70 CAR+ T細胞の能力は、Translational Drug Development,LLC(Scottsdale、AZ)によって利用される方法を使用して、NOGマウスにおいて評価された。簡潔には、12頭の5〜8週齢雌マウス、CIEA NOG(NOD.Cg−Prkdc
scidI12rg
tm1Sug/JicTac)は、試験の開始の5〜7日前に病原体を含まない条件下で維持された、換気されたマイクロアイソレーターケージにおいて個別に飼育された。マウスは、5×10
6個のA498腎癌細胞/マウスの皮下接種を受けた。平均腫瘍サイズが、125〜175mm
3(約150mm
3の標的)に達したとき、マウスはさらに、表17に示されるとおりの5つの治療群に分けられた。1日目、治療群2〜5は、表17に従って、単回の200μlの静注投与量の抗CD70 CAR+ T細胞を受容した。
【0552】
【表17】
【0553】
腫瘍体積は、治療開始日から週に2回測定された。4日目の治療までに、3X KO(TRAC−/β2M−/CD70−)抗CD70 CAR+ T細胞及び4X KO(TRAC−/β2M−/PD1−/CD70−)抗CD70 CAR+ T細胞のみが、腫瘍体積における減少を示し始めた(
図27C)。対照的に、2X KO(TRAC−/β2M−)抗CD70 CAR+ T細胞又は3X KO(TRAC−/β2M−/PD1−)抗CD70 CAR+ T細胞で治療された動物についての腫瘍増殖は、治療しない群と同様であった。23日目の治療までに、3X KO(TRAC−/β2M−/CD70−)抗CD70 CAR+ T細胞は、インビボでCD70+腎臓癌腫瘍を完全に除去した。23日目の治療までに、4X KO(TRAC−/β2M−/PD1−/CD70−)抗CD70 CAR+ T細胞に応答した腫瘍の除去は、ほぼ完全であり、5頭のマウスのうちの4頭が、インビボで検出可能な腎臓癌腫瘍を示さなかった。
【0554】
これらのデータは、3X KO(TRAC−/β2M−/CD70−)抗CD70 CAR+ T細胞及び4X KO(TRAC−/β2M−/PD1−/CD70−)抗CD70 CAR+ T細胞が、インビボで大型のCD70+腎臓癌腫瘍を著しく退行させることができることを示す。
【0555】
PD1、CD70、及びCD70ノックアウトを伴うPD1の文脈における抗BCMA CARに関するインビボ腫瘍モデル
NOGマウスにおける皮下MM.1S腫瘍異種移植モデルに対するTRAC−/β2M−/抗BCMA(4−1BB共刺激)CAR+ T 細胞、TRAC−/β2M−/PD−1−/抗BCMA(4−1BB共刺激)、TRAC−/β2M−/CD70−/抗BCMA(4−1BB共刺激)、及びTRAC−/β2M−/PD−1−/CD70−/抗BCMA(4−1BB共刺激)CAR+ T細胞の有効性が評価された。簡潔には、25頭の5〜8週齢雌、CIEA NOG(NOD.Cg−Prkdc
scidI12rg
tm1Sug/JicTac)マウスは、試験の開始の5〜7日前に病原体を含まない条件下で維持された、換気されたマイクロアイソレーターケージにおいて個別に飼育された。1日目において、25頭のマウスは、50%マトリゲル/マウス中にある5×10
6個のMM.1S細胞の右側腹部における皮下接種を受けた。平均腫瘍体積が、75と125mm
3の間に達したとき、マウスは、5つの治療群(N=5)に分けられ、表18に示されるとおりの約50%の抗BCMA CAR
+ T細胞を含むT細胞集団を投与された。
【0556】
【表18】
【0557】
腫瘍体積及び体重は、週に2回測定され、個々のマウスは、それらの腫瘍体積が≧2000mm
3に達したときに安楽死させられた。
【0558】
16日目までに、全ての治療群は、開始の体積からの腫瘍退縮を示したが、対照群における動物は、平均して1500mm
3より大きい腫瘍を有した。27日目までに、対照群における全ての動物は、≧2000mm
3の腫瘍体積の終点に達したが、全ての治療群は、20mm
3未満の平均腫瘍体積を有した(
図28A)。45日目において、治療群(群2〜5)からの全てのマウスはさらに、2回目の腫瘍チャレンジ(再チャレンジ)にかけられた。マウスは、50%マトリゲル/マウス中にある5×10
6個のMM.1S細胞の左側腹部における2回目の皮下接種を受けた。対照マウスの新たな群が登録され(N=5)、また、左側腹部において50%マトリゲル/マウス中にある5×10
6個のMM.1S細胞の接種を受けた。
【0559】
全てのマウスは、最初の右側腹部腫瘍及び左側腹部における再チャレンジ腫瘍の両方において腫瘍増殖についてモニターされた。全ての治療群は、大部分の対象における最初の右側腹部腫瘍における腫瘍増殖を順調に阻害した(
図28A;表19)。腫瘍増殖は、77日目までの実験期間の腫瘍再チャレンジの前及び後の両方での全ての治療によって阻害された。TRAC−/β2M−/CD70−/PD1−/抗BCMA CAR
+ Tで治療されたただ1つの対象が、最初の癌細胞チャレンジから腫瘍増殖を示した(表19)。
【0560】
驚くべきことに、左側腹部における再チャレンジの後の腫瘍増殖もまた、再チャレンジの日(45日目)から77日目までの全ての治療群によって著しく阻害された(
図28B;表19)。これらのデータは、CAR+ T細胞がインビボで持続して初期の腫瘍増殖を阻害し、さらに追加の癌細胞による再チャレンジ後には、これらのマウスにさらなるCAR−T細胞が送達されなかったにもかかわらず、新たな腫瘍の増殖を阻害することを実証している。例えば、TRAC−/β2M−/抗BCMA CAR
+ T細胞の集団で最初に治療された4頭のマウスのうちの3頭、TRAC−/β2M−/CD70−/抗BCMA CAR
+ T細胞で最初に治療された5頭のマウスのうちの3頭、及びTRAC−/β2M−/PD1−/抗BCMA CAR
+ T細胞で最初に治療された5頭のマウスのうちの3頭は、新たな癌細胞に対する2回目のチャレンジ(再チャレンジ)にもかかわらず新たな腫瘍増殖を示さなかった。これらのデータは、予想に反して、抗BCMA CAR
+ T細胞が、インビボで長期間、例えば、注射後少なくとも77日目まで持続でき、腫瘍細胞増殖を阻害し、且つインビボで長期間腫瘍体積を減少させるそれらの能力を保持することを実証している。これらの驚くべき結果は、そのようなTRAC−/β2M−/抗BCMA CAR
+ T細胞の使用が、インビボで優れた長期間の抗癌効果を達成することになることを示している。
【0561】
ヒトCD45+細胞は、製造業者のプロトコルに従ってBD Trucountチューブを使用してマウス血液から定量化され、且つBrilliant Violet 786コンジュゲート抗ヒトCD45(Biolegend Cat# 368528)を使用して検出された。全ての群は、1週目に100個のhuCD45+細胞/μl未満の値を示した。投与の2週間後、全ての群における循環しているCD45+の数は、3週目までに前の1週目の値に落ちる前にピークになった(
図29)。45日目の再チャレンジ時において、抗BCMA CAR+ T細胞で治療された対象は、癌の再チャレンジ後に循環しているCAR T細胞のその後の増殖を伴わずに腫瘍増殖を除去するか又は阻害することができた。これらのデータはさらに、予想に反して、抗BCMA CAR+ T細胞が、インビボで長期間、例えば、注射後少なくとも77日目まで持続でき、腫瘍細胞増殖を阻害し、且つインビボで長期間腫瘍体積を減少させるそれらの能力を保持することを実証している。これらの驚くべき結果は、TRAC−/β2M−/抗BCMA CAR+ T細胞、TRAC−/β2M−/CD70−/抗BCMA CAR+ T細胞及びTRAC−/β2M−/PD1−/抗BCMA CAR+ T細胞の使用が、インビボで優れた長期間の抗癌効果を達成することになることを示している。
【0562】
【表19】
【0563】
CD70ノックアウトの文脈における抗BCMA CARについてのインビボ腫瘍モデル:中程度のCAR T投与に対するCD70 KOの効果
CD70ノックアウトを伴うもの及び伴わないものの両方のいくつかの抗BCMA CAR
+ T細胞遺伝子型の有効性は、NOGマウスにおける皮下RPMI−8226腫瘍異種移植モデルに対して評価された。簡潔には、85頭の5〜8週齢雌、CIEA NOG(NOD.Cg−Prkdc
scidI12rg
tm1Sug/JicTac)マウスは、試験の開始の5〜7日前に病原体を含まない条件下で維持された、換気されたマイクロアイソレーターケージにおいて個別に飼育された。1目において、マウスは、10×10
6個のRPMI−8226細胞の皮下接種を受けた。RPMI−8226細胞による摂取の10日後、マウスは、17種の治療群(N=5)に分けられ、表20に示されるとおりの約80%の抗BCMA CAR
+ T細胞を含むT細胞集団を投与された。
【0564】
【表20】
【0565】
腫瘍体積及び体重は、週に2回測定され、個々のマウスは、腫瘍体積が≧2000mm
3であったときに安楽死させられた。22日までに、データは、100,000細胞で投与された任意の抗BCMA CAR T細胞遺伝子型と比較して、より高い用量の抗BCMA CART T細胞(1×10
5〜3×10
6細胞用量)に応答して腫瘍体積における統計的に有意な減少を示す(群5、9、13及び17)(
図30;表21)。
【0566】
36日目において、3×10
5細胞の中程度の用量で投与されたTRAC−/β2M−/CD70−/抗BCMA CAR+ T細胞は、CD70 KOを伴わない抗BCMA CAR+ T細胞(例えば、TRAC−/β2M−/抗BCMA CAR+ T細胞、TRAC−/β2M−/PD1−/抗BCMA CAR+ T細胞、又はTRAC−/β2M−/PD1−/CD70−/抗BCMA CAR+ T細胞)より腫瘍体積を減少させることに対してより大きい効果を示した。1×10
6個以上の全ての抗BCMA CAR+ T細胞のより高い用量の全て(
図30;100万、300万)は、腫瘍体積の完全な退縮を示した。この傾向は、試験の57日目からも継続した。
【0567】
これらの結果は、CD70の活性を阻害すること(例えば、CD70をノックアウトすることによる)は、インビボでCAR
+ T細胞の有効性及び効力を増加させる。この効果は、抗CD70 CARの存在に依存しない。
【0568】
【表21-1】
【0569】
【表21-2】
【0570】
実施例9.多重ノックアウトCAR T細胞は、サイトカイン依存性を保持する
サイトカイン依存性。遺伝子編集が、制御されない細胞増殖などの有害な特性を有する細胞を生成し得る望まれないオフターゲット編集をもたらしたかどうかを判定するため、サイトカイン及び/又は血清の非存在下で増殖する遺伝子編集されたCAR T細胞の能力が評価された。
【0571】
抗CD70 CAR T細胞:サイトカイン及び/又は血清の非存在下で増殖するTRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+細胞の能力が評価された。5×10
6個のTRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+細胞が、細胞生産の約2週間後に蒔かれた(0日目)。生存細胞の数は、完全培地、サイトカイン(IL−2及びIL−7)を伴わない5%ヒト血清、又は血清及びサイトカインを欠く基本培地のいずれかにおいて蒔いた7日及び14日後に数え上げられた。サイトカインを欠いた培養物において蒔かれた細胞は14日目に検出されなかったが、これは、ゲノム編集によるいずれかの潜在的なオフターゲット効果が、細胞に対して増殖因子非依存性の成長/増殖を誘導しなかったことを示唆している(
図31)。細胞は、サイトカインの存在下(サイトカインを含有する完全培地)でのみ増殖し、血清単独の存在下では増殖しなかった。したがって、インビボでは、サイトカイン、増殖因子又は抗原刺激の非存在下では、任意のオフターゲットゲノム編集のために細胞は増殖しない可能性がある。
【0572】
サイトカイン及び/又は血清の非存在下で増殖するTRAC
−/β2M
−/CD70
−/PD1
−抗CD70 CAR
+細胞の能力もまた評価された。2×10
6細胞が、細胞生産の約2週間後に蒔かれた(0日目)。生存細胞の数は、完全培地、サイトカイン(IL−2及びIL−7)を伴わない5%ヒト血清、又は血清及びサイトカインを欠く基本培地のいずれかにおいて蒔いた26日後まで数え上げられた。サイトカインを欠いた培養物において蒔かれた細胞は26日目に検出されなかったが、これは、ゲノム編集によるいずれかの潜在的なオフターゲット効果が、細胞に対して増殖因子非依存性の成長/増殖を誘導しなかったことを示唆している(
図32)。細胞は、サイトカインの存在下(サイトカインを含有する完全培地)でのみ増殖し、血清単独の存在下では増殖しなかった。したがって、ゲノム編集は、細胞がサイトカイン、増殖因子又は抗原刺激の非存在下で増殖することを可能にする任意の有害事象を誘導しなかった。
【0573】
抗BCMA CAR+ T細胞:サイトカイン及び/又は血清の非存在下で増殖するTRAC
−/β2M
−/CD70
−/PD−1
−抗BCMA CAR
+細胞の能力が評価された。TRAC
−/β2M
−/CD70
−/PD−1
−/抗BCMA CAR
+細胞はまた、4X KO、BCMA CAR
+細胞とも呼ばれる。1×10
6個の4X KO、BCMA CAR+細胞が、実施例6において記載される10回の再チャレンジ後に蒔かれた。生存細胞の数は、完全培地、サイトカイン(IL−2及びIL−7)を伴わない5%ヒト血清、又は血清及びサイトカインを欠く基本培地のいずれかにおいて蒔いた7日及び14日後に数え上げられた。サイトカインを欠いた培養物において蒔かれた細胞は13日目に検出されなかったが、これは、ゲノム編集によるいずれかの潜在的なオフターゲット効果が、細胞に対して増殖因子非依存性の成長/増殖を誘導しなかったことを示唆している(
図33)。細胞は、サイトカインの存在下(サイトカインを含有する完全培地)でのみ増殖し、血清単独の存在下では増殖しなかった。したがって、インビボにおいて、細胞は、制御されない様式で増殖しない可能性がある。
【0574】
他のCAR T細胞:本明細書で例示される抗CD33 CAR+ T細胞及び抗CD19 CAR+ T細胞が、サイトカインの存在下でのみ増殖し、且つ血清単独の存在下で増殖しないことが以前に示されている。したがって、インビボにおいて、これらの細胞は、制御されない様式で増殖しない可能性がある。
【0575】
サイトカイン放出アッセイ。サイトカイン放出を測定するため、T細胞及び標的細胞を、指定の比で24時間共インキュベートした。上清培地を、製造業者の指示書(RD Systems)に従って新しいプレート上でのIL−2又はIFNγELISA(RD Systems)における使用のために回収した。
【0576】
A498細胞の存在下で共培養されたときにインターロイキン−2(IL−2)を産生するTRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+細胞の能力は、ELISAアッセイを使用して分析された。三重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+ T細胞及び二重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/抗CD70 CAR
+ T細胞の両方が、高レベルのIL−2を分泌した。際だったことに、TRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+細胞は、A498細胞と培養されたときにTRAC
−/β2M
−/抗CD70 CAR
+細胞より高いレベルのIL−2を分泌した(
図34)。これらの結果は、CD70遺伝子をノックアウトすることが、抗CD70 CAR+ T細胞により多くのIL−2を分泌する優位性をもたらすことを示唆する。
【0577】
実施例10.A498腎癌細胞における抗CD70 CAR+ T細胞に対する多重ノックアウトの効果
抗CD70 CAR+ T細胞の機能に対する多重ノックアウトの効果
細胞死滅アッセイ。A498腎癌細胞を死滅させる多重遺伝子編集の能力は、上記の細胞死滅アッセイを使用して判定された。簡潔には、TRAC
−/β2M
−/抗CD70 CAR
+(2X KO、CD70 CAR
+)、TRAC
−/β2M
−/PD−1
−/抗CD70 CAR
+(3X KO(PD−1)、CD70 CAR
+)、TRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+(3X KO(CD70)、CD70 CAR
+)及びTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+(4X KO、CD70 CAR
+)細胞を、様々なCAR T細胞:A498標的細胞比でCD70
+接着RCC由来細胞株(A498細胞)とインキュベートした。
【0578】
TRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+細胞は、24時間の共インキュベーション後にRCC由来細胞の強力な細胞の死滅を示した(
図35)。四重TRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+ Tは、二重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/抗CD70 CAR
+ T細胞より高い能力を実証した三重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/抗CD70 CAR+ T細胞より高い細胞死滅の能力を実証した(0.5:1及び0.25:1の低いT細胞:A498比で目に見える)。結果は、CD70及びPD−1遺伝子の両方をノックアウトすることが、抗CD70 CAR+細胞により高い細胞死滅の能力を与えたことを実証している。
【0579】
遺伝子編集された細胞はまた、0.24:1のCAR T細胞:A948標的細胞比での24時間の共インキュベーション後にRCC由来細胞の強力な細胞死滅を示した。(
図36)。具体的には、三重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+ T細胞及び四重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+ T細胞は、二重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/抗CD70 CAR
+ T細胞又は三重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/抗CD70 CAR
+ T細胞より高い能力を実証した。これらのデータは、抗CD70 CARの文脈におけるCD70のノックアウトが、抗CD70 CAR
+ T細胞の細胞を死滅させる能力を向上させたことを示す。
【0580】
サイトカイン放出アッセイ。サイトカイン放出アッセイは、上記のとおりに実施された。0.25:1の比(CAR T細胞:A498標的細胞)での24時間の共インキュベーション後にA498細胞の存在下で共培養された場合の二重ノックアウト、三重ノックアウト、及び四重ノックアウト抗CD70 CAR
+ T細胞のIL−2及びインターフェロンガンマ(IFN−ガンマ(IFN−g))を産生する能力は、ELISAアッセイを使用して評価された。細胞共培養物の上清に由来するIL−2及びIFN−gが測定された。三重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+ T細胞及び四重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+ T細胞は、A498細胞と培養されたときに最も高いレベルのIFN−g(
図37A)及びIL−2(
図37B)を分泌した。
【0581】
枯渇マーカー発現に対するCD70ノックアウトの効果
枯渇マーカーPD−1及びLAG3のレベルは、上の実施例において使用されるTRAC
−/β2M
−/抗CD70 CAR
+(2X KO、CD70 CAR
+)、TRAC
−/β2M
−/PD−1
−/抗CD70 CAR
+(3X KO(PD−1)、CD70 CAR
+)、TRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+(3X KO(CD70)、CD70 CAR
+)及びTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+(4X KO、CD70 CAR
+)T細胞に対して評価された。CD4
+ T細胞は、PD−1発現(
図38)について評価され、CD8
+ T細胞及びCD4
+ T細胞の両方が、フローサイトメトリーによってLAG3発現(それぞれ
図39A及び39B)について評価された。
【0582】
データは、CD70 KOが、CAR T細胞における枯渇マーカー発現を減少させることを実証している。
図38におけるデータは、PD−1発現が、PD−1がノックアウトされたときに予想通りに減少され、且つCD70がノックアウトされたときにも減少されることを示す。
【0583】
図39A及び39Bにおけるデータは、CD70をノックアウトすることが、CD4及びCD8細胞におけるLAG3発現マーカーを減少させることを示す。
【0584】
データは、CD70をノックアウトすることが、特に、CD8
+及びCD4
+遺伝子が編集されたCAR+ T細胞の集団の潜在的な枯渇を減少させて、より良好な治療をもたらすことができたことを実証する。
【0585】
実施例11.CD70 KOは、複数の細胞型における細胞の死滅を増進する
様々な癌細胞株におけるCD70発現。相対的なCD70発現を様々な癌細胞株において測定して、様々な癌型を死滅させる抗CD70 CAR
+ T細胞の能力をさらに評価した。CD70発現は、Alexa Fluor 647抗ヒトCD70抗体(BioLegend Cat.No.355115)を使用するFACS分析によって測定された。
図40A(左のグラフ)は、他の腎臓癌細胞株A498、786−O、cacki−1及びCaki−2と比較した、FACSによって測定されるとおりのACHN細胞における相対的なCD70の発現を示す。さらに、非腎臓癌細胞株は、Alexa Fluor 647抗ヒトCD70抗体(BioLegend Cat.No.355115;
図40A、右のパネル)又は
図40BにおけるFITC抗ヒトCD70抗体(BioLegend Cat.No.355105)のいずれかを使用するFACS分析(表22、
図40A及び
図40B)によってCD70発現について評価された。SNU−1(腸癌細胞)は、A498と同様の高レベルのCD70発現を示した(
図40A、右のパネル)。SKOV−3(卵巣)、HuT78(リンパ腫)、NCI−H1975(肺)及びHs−766T(膵臓)細胞株は、ACHNと同様であるか又はより高いが、A498より低いCD70発現のレベルを示した(表22、
図40B)。
【0586】
【表22】
【0587】
細胞死滅アッセイ。多重に遺伝子編集された抗CD70 CAR+細胞のACHN腎癌細胞を死滅させる能力は、上記の細胞死滅アッセイを使用して判定された。TRAC
−/β2M
−/抗CD70 CAR
+(2X KO、CD70 CAR
+)、TRAC
−/β2M
−/PD−1
−/抗CD70 CAR
+(3X KO(PD−1)、CD70 CAR
+)、TRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+(3X KO(CD70)、CD70 CAR
+)及びTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+(4X KO、CD70 CAR
+)細胞は、0.5:1(
図40C)及び0.25:1(
図40D)のCAR T細胞:ACHN標的細胞比で低レベルのCD70抗原を発現する接着RCC由来細胞株(ACHN細胞)とともにインキュベートされた(
図40Aは、他の腎臓癌細胞株A498、786−O、cacki−1、及びCaki−2と比較した、FACSによって測定されるとおりのACHN細胞における相対的なCD70の発現を示す)。遺伝子編集された細胞は、24時間の共インキュベーション後にRCC由来細胞の強力な細胞の死滅を示した(
図40C及び40D)。細胞は、PD−1がノックアウトされた場合、CD70がノックアウトされた場合、より高い効力を示し、さらに、PD−1及びCD70の両方がノックアウトされた場合にわずかに高い効力を示した。結論として、PD−1若しくはCD70又はPD−1及びCD70の両方を合わせたノックアウトは、ACHN細胞における抗CD70 CAR+細胞の細胞を死滅させる能力を向上させる。
【0588】
ACHN細胞は、中程度から低レベルまでのCD70を発現することが見出されたが、それらは、驚くべきことに、3X KO(PD−1)、CD70 CAR+ T細胞、3X KO(CD70)、CD70 CAR+ T細胞、及び4X KO CD70 CAR+ T細胞により死滅しやすかった(
図40C及び40D)。これは、高いCD70発現が、抗CD70 CARを発現する遺伝子編集されたT細胞による標的細胞の効率的な死滅に必要ではないことを示す。さらに、SNU−1、SK−OV−3、NCI−H1975及びHS−766T細胞株のCD70発現レベルがACHNと同様であるか又はそれ以上であることが判明したという状況から、抗CD70 CAR
+ T細胞は、これらの癌細胞型を死滅させるのにも特に効率的であることが予想された。実際に、TRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+(4X KO、CD70 CAR
+)及びTRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+(3X KO(CD70)、CD70 CAR
+)は、驚くべきことに、ほんの24時間の共培養の後に多数の固形腫瘍細胞株の強力な細胞死滅を示したことが見出された(
図40Eは、4X KO CAR+ T細胞による死滅を示し、
図40Fは、3X KO CAR+ T細胞による死滅を示す)。3X KO、CD70 CAR+及び4X KO、CD70 CAR+ T細胞の両方が、4:1のエフェクター:標的細胞比で腎臓、膵臓、及び卵巣腫瘍細胞(A498、ACHN、SK−OV−3、及びHs−766T)を>60%死滅させ、1:1のエフェクター:標的細胞比で>50%を死滅させた。中程度から低いCD70発現を有した癌細胞株(NCI−H1975、Calu−1及びDU 145)の細胞の死滅は、共培養の24時間以内で4:1のエフェクター:標的細胞比で>30%の死滅を有して依然として効率的であった(
図40E及び40F)。3X KO又は4X KO、CD70 CAR+ T細胞のいずれかに対するより長い暴露(すなわち、96時間)は、全ての細胞型、特に、SKOV−3、Hs−766T、及びNIC−H1975細胞全体にわたって癌細胞死滅の増加をもたらし、死滅は、1:1のエフェクター:標的細胞比で>80%であった(
図40G)。
【0589】
SNU−1細胞の死滅は、視覚的な評価によって評価された。CAR+ T細胞への長い暴露後の標的細胞の死滅もまた、SNU−1癌細胞についての顕微鏡観察によって評価された。SNU−1細胞は、6ウェルプレートにおいて1ウェル当たり100万細胞の密度で蒔かれ、3X KO(CD70)、抗CD70 CAR
+ T細胞と4:1のエフェクター:標的比で混合された。共培養物は、6日間インキュベートされ、生存癌細胞の存在が顕微鏡観察によって評価された。全ての胃癌標的細胞(SNU−1)は、対照ウェルと比較して、TRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+ T細胞を含有するウェルにおいて除去されたが、これは、癌細胞が、長期間の共培養により抗CD70 CAR
+ T細胞によって完全に除去されたことを示している。
【0590】
CD70発現細胞を選択的に死滅させる抗CD70 CAR+ T細胞の能力が判定された。フローサイトメトリーアッセイを設計して、3X KO(CD70)(TRAC
−/B2M
−/CD70
−)抗CD70 CAR+ T細胞によって、癌細胞懸濁液株(例えば、「標的細胞」と呼ばれるK562、MM.1S及びHuT78癌細胞)の死滅を試験した。使用された標的細胞株のうちの2つは、CD70発現癌細胞(例えば、MM.1S及びHuT78)であったが、陰性対照癌細胞として使用された3つ目は、CD70発現を欠く(例えば、K562)。TRAC
−/B2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR+ T細胞は、CD70発現MM.1S若しくはHuT78細胞株又はCD70陰性K562細胞株のいずれかと共培養された。標的細胞は、5μM efluor670(eBiosciences)で標識され、洗浄され、96ウェルU底プレートにおいて1ウェル当たり50,000標的細胞の密度で播種された。標的細胞は、様々な比(0.5:1、1:1、2:1及び4:1 CAR+ T細胞対標的細胞)でTRAC
−/B2M
−/CD70
−抗CD70 CAR+ T細胞と共培養され、一晩インキュベートされた。標的細胞の死滅は、24時間の共培養後に判定された。細胞は洗浄され、5mg/mL DAPI(Molecular Probes)の1:500希釈物を含有する200μLの培地が各ウェルに加えられた(死/瀕死細胞を数え上げるため)。次に、細胞は、フローサイトメトリーによって分析され、残留している生存標的細胞の量が定量化された。
【0591】
図40H、
図40I、及び
図40Jは、TRAC−/B2M−/CD70−抗CD70 CAR+ T細胞による選択的な標的細胞の死滅を実証している。3X KO(CD70)CAR+ T細胞との24時間の共培養は、0.5:1の低いCAR+ T細胞とCD70発現標的細胞比でさえ、T細胞リンパ腫細胞(HuT78)のほぼ完全な死滅をもたらした(
図40J)。同様に、24時間の共培養は、試験された全てのCAR+ T細胞と標的細胞の比で多発性骨髄腫細胞(MM.1S)のほぼ完全な死滅をもたらした(
図40I)。標的細胞の死滅は、TRAC−/B2M−/抗CD70 CAR+ T細胞が、試験されたいずれのエフェクター:標的細胞比でも対照試料(例えば、癌細胞単独又はRNP T細胞を伴わない共培養物)のレベルを上回るCD70欠損K562細胞の死滅を誘導しなかったという点で選択的であることが見出された(
図40H)。
【0592】
サイトカイン放出アッセイ。サイトカイン放出アッセイは、上記のとおりに実施された。0.25:1の比(CAR T細胞:ACHN標的細胞)での24時間の共インキュベーション後にACHN細胞の存在下で共培養された場合の二重ノックアウト、三重ノックアウト、及び四重ノックアウト抗CD70 CAR
+ T細胞のIL−2及びIFN−gを産生する能力は、ELISAアッセイを使用して評価された。細胞共培養物の上清に由来するIL−2及びIFN−gが測定された。三重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+ T細胞及び四重ノックアウトTRAC
−/β2M
−/PD−1
−/CD70
−/抗CD70 CAR
+ T細胞は、ACHN細胞と培養されたときに最も高いレベルのIFN−g(
図41)及びIL−2(
図41B)を分泌した。結論として、CD70又はPD−1及びCD70の両方を合わせたノックアウトは、ACHN細胞における抗CD70 CAR+細胞の細胞を死滅させる能力を向上させる。
【0593】
実施例12.抗CD70 CAR+ T細胞におけるCD70 KOの有効性:NOGマウスにおける腫瘍異種移植モデル
卵巣腫瘍モデルにおける治療
中程度のレベルのCD70を発現する卵巣腺癌細胞を除去する抗CD70 CARを発現するT細胞の能力は、マウスにおける皮下卵巣癌(SKOV−3)腫瘍異種移植モデルを使用してインビボで評価された。
【0594】
CRISPR/Cas9及びAAV6を、上のとおりに使用して(例えば、実施例3を参照のこと)、CD70を標的化するCARコンストラクト(配列番号45;配列番号46)を使用してTRAC座位からの同時の発現を伴ってTCR、β2M、CD70の発現を欠くヒトT細胞を作製した。この実施例において、活性化T細胞はまず、TRAC(配列番号40)、β2M(配列番号41)、及びCD70(配列番号36又は37)を標的化するsgRNAを含有する3種の異なるCas9:sgRNA RNP複合体により電気穿孔された。TRAC座位でのDNA二重鎖切断は、キメラ抗原受容体カセット(遺伝子発現に関する−/+調節エレメント)に隣接するTRAC座位に対して右及び左の相同性アームを含有するドナー鋳型(配列番号44;配列番号45)(配列番号45のアミノ酸配列を含む抗CD70 CARをコードする)を含むAAV6に送達されるDNA鋳型による相同組換え修復によって修復された。
【0595】
得られた改変T細胞は、3X KO(TRAC−/β2M−/CD70−)抗CD70 CAR+ T細胞である。CD70+卵巣癌細胞株によって引き起こされる疾患を回復させるこれらの抗CD70 CAR+ T細胞の能力は、Translational Drug Development,LLC(Scottsdale、AZ)によって利用される方法を使用して、NOGマウスにおいて評価された。簡潔には、12頭の5〜8週齢雌、CIEA NOG(NOD.Cg−Prkdc
scidI12rg
tm1Sug/JicTac)マウスは、試験の開始の5〜7日前に病原体を含まない条件下で維持された、換気されたマイクロアイソレーターケージにおいて個別に飼育された。マウスは、右後側腹部において5×10
6個のSKOV−3卵巣癌細胞/マウスの皮下接種を受けた。平均腫瘍サイズが、25〜75mm
3(約50mm
3の標的)に達したとき、マウスはさらに、表23に示されるとおりの2つの治療群に分けられた。1日目、治療群2は、表23に従って、単回の200μlの静注投与量の抗CD70 CAR+ T細胞を受容した。
【0596】
【表23】
【0597】
腫瘍体積は、治療開始日から週に2回測定された。注射後9日目までに、抗CD70 CART細胞で治療された腫瘍は、未治療の動物における腫瘍と比較して、腫瘍体積の減少を示し始めた。注射後17日目までに、抗CD70 CAR T細胞で治療されたマウスにおけるCD70+卵巣癌腫瘍は、完全に除去された。腫瘍増殖のこの完全退縮は、注射後44日間を通して治療された動物において維持され、その後、抗CD70 CART細胞で治療された5頭のマウスのうちの4頭は、最後の観察(69日目)まで腫瘍がないままであった(
図42A)。これらのデータは、3X KO(TRAC−/β2M−/CD70−)抗CD70 CAR+細胞が、ヒト卵巣腫瘍を治療するのにインビボで非常に強力であることを実証している。
【0598】
非小細胞肺癌(NSCLC)腫瘍モデルにおける治療
中程度のレベルのCD70を発現する肺腺癌細胞を除去するCD70 CARを発現するT細胞の能力は、マウスにおける皮下肺癌(NCI−H1975)腫瘍異種移植モデルを使用してインビボで評価された。
【0599】
CRISPR/Cas9及びAAV6を、上のとおりに使用して(例えば、実施例3を参照のこと)、CD70を標的化するCARコンストラクト(配列番号43;配列番号44)を使用してTRAC座位からの同時の発現を伴ってTCR、β2M、CD70の発現を欠くヒトT細胞を作製した。この実施例において、活性化T細胞はまず、TRAC(配列番号40)、β2M(配列番号41)、及びCD70(配列番号36又は37)を標的化するsgRNAを含有する3種の異なるCas9:sgRNA RNP複合体により電気穿孔された。TRAC座位でのDNA二重鎖切断は、キメラ抗原受容体カセット(遺伝子発現に関する−/+調節エレメント)に隣接するTRAC座位に対して右及び左の相同性アームを含有するAAV6に送達されるDNA鋳型(配列番号43;配列番号44)(配列番号45のアミノ酸配列を含む抗CD70 CARをコードする)による相同組換え修復によって修復された。
【0600】
得られた改変T細胞は、3X KO(TRAC−/β2M−/CD70−)抗CD70 CAR+(41BB共刺激ドメインを有する)T細胞である。CD70+肺癌細胞株によって引き起こされる疾患を回復させるこれらの抗CD70 CAR+ T細胞の能力は、Translational Drug Development,LLC(Scottsdale、AZ)によって利用される方法を使用して、NOGマウスにおいて評価された。簡潔には、12頭の5〜8週齢雌、CIEA NOG(NOD.Cg−Prkdc
scidI12rg
tm1Sug/JicTac)マウスは、試験の開始の5〜7日前に病原体を含まない条件下で維持された、換気されたマイクロアイソレーターケージにおいて個別に飼育された。マウスは、右後側腹部において5×10
6個のNCI−H1975肺癌細胞/マウスの皮下接種を受けた。平均腫瘍サイズが、25〜75mm
3(約50mm
3の標的)に達したとき、マウスはさらに、表24に示されるとおりの2つの治療群に分けられた。1日目、治療群2は、表24に従って、単回の200μlの静注投与量の抗CD70 CAR+ T細胞を受容した。
【0601】
【表24】
【0602】
腫瘍体積は、治療開始日から週に2回測定された。注射後12日目までに、抗CD70 CART細胞で治療された腫瘍は、未治療の動物における腫瘍と比較して、腫瘍体積の減少を示し始めた。治療された動物における腫瘍のこの完全退縮は、注射後33日間を通して継続する。抗CD70 CAR T細胞による治療は、注射後40日目までの間、確立されたH1975肺癌異種移植片に対して強力な活性をもたらした(<100mm
3の腫瘍サイズを有する40日目までの全てのマウスにおいて、腫瘍再増殖が抑制された)が、その後、腫瘍が増殖し始めた。(
図42B)。これらのデータは、3X KO(TRAC−/β2M−/CD70−)抗CD70 CAR+細胞が、インビボでヒトCD70+肺癌腫瘍に対して強力な活性を有することを実証している。
【0603】
膵臓腫瘍モデルにおける治療
中程度のレベルのCD70を発現する膵臓癌細胞を除去するCD70 CARを発現するT細胞の能力は、マウスにおける皮下膵臓癌(Hs 766T)腫瘍異種移植モデルを使用してインビボで評価された。
【0604】
CRISPR/Cas9及びAAV6を、上のとおりに使用して(例えば、実施例3を参照のこと)、CD70を標的化するCARコンストラクト(配列番号43;配列番号44)を使用してTRAC座位からの同時の発現を伴ってTCR、β2M、CD70の発現を欠くヒトT細胞を作製した。この実施例において、活性化T細胞はまず、TRAC(配列番号40)、β2M(配列番号41)、及びCD70(配列番号36又は37)を標的化するsgRNAを含有する3種の異なるCas9:sgRNA RNP複合体により電気穿孔された。TRAC座位でのDNA二重鎖切断は、キメラ抗原受容体カセット(遺伝子発現に関する−/+調節エレメント)に隣接するTRAC座位に対して右及び左の相同性アームを含有するAAV6に送達されるDNA鋳型(配列番号43;配列番号44)(配列番号45のアミノ酸配列を含む抗CD70 CARをコードする)による相同組換え修復によって修復された。
【0605】
得られた改変T細胞は、3X KO(TRAC−/β2M−/CD70−)抗CD70 CAR+ T細胞である。CD70+膵臓癌細胞株によって引き起こされる疾患を回復させるこれらの抗CD70 CAR+ T細胞の能力は、Translational Drug Development,LLC(Scottsdale、AZ)によって利用される方法を使用して、NOGマウスにおいて評価された。簡潔には、12頭の5〜8週齢雌、CIEA NOG(NOD.Cg−Prkdc
scidI12rg
tm1Sug/JicTac)マウスは、試験の開始の5〜7日前に病原体を含まない条件下で維持された、換気されたマイクロアイソレーターケージにおいて個別に飼育された。マウスは、右後側腹部において5×10
6個のHs766T膵臓癌細胞の皮下接種を受けた。平均腫瘍サイズが、25〜75mm
3(約50mm
3の標的)に達したとき、マウスはさらに、表25に示されるとおりの2つの治療群に分けられた。1日目、治療群2は、表25に従って、単回の200μlの静注投与量の抗CD70 CAR+ T細胞を受容した。
【0606】
【表25】
【0607】
腫瘍体積は、治療開始日から週に2回測定された。注射後15日目までに、抗CD70 CART細胞で治療された腫瘍は、全ての未治療の動物において腫瘍体積の減少を示し始めた。抗CD70 CAR+ T細胞による治療は、試験された全てのマウスにおいてCD70+膵臓癌腫瘍のサイズを効率的に減少させ(<37mm
3)、試験の期間(67日目まで)にさらなる増殖の形跡を有しなかった(
図42C)。これらのデータは、3X KO(TRAC−/β2M−/CD70−)抗CD70 CAR+細胞が、確立されたHs766T膵臓癌異種移植片に対する強力な活性及び治療開始後60日を超える耐久性のある応答を有してインビボでヒトCD70+膵臓癌腫瘍の退縮を誘導することを実証している。
【0608】
皮膚T細胞リンパ腫腫瘍異種移植モデルにおける治療
T細胞リンパ腫を除去する抗CD70 CARを発現するT細胞の能力は、マウスにおける皮下T細胞リンパ腫(Hu T78)腫瘍異種移植モデルを使用してインビボで評価された。
【0609】
CRISPR/Cas9及びAAV6を、上のとおりに使用して(例えば、実施例3を参照のこと)、CD70を標的化するCARコンストラクト(配列番号43;配列番号44)を使用してTRAC座位からの同時の発現を伴ってTCR、β2M、CD70の発現を欠くヒトT細胞を作製した。この実施例において、活性化T細胞はまず、TRAC(配列番号40)、β2M(配列番号41)、及びCD70(配列番号36又は37)を標的化するsgRNAを含有する3種の異なるCas9:sgRNA RNP複合体により電気穿孔された。TRAC座位でのDNA二重鎖切断は、キメラ抗原受容体カセット(遺伝子発現に関する−/+調節エレメント)に隣接するTRAC座位に対して右及び左の相同性アームを含有するAAV6に送達されるDNA鋳型(配列番号43;配列番号44)(配列番号45のアミノ酸配列を含む抗CD70 CARをコードする)による相同組換え修復によって修復された。
【0610】
得られた改変T細胞は、3X KO(TRAC−/β2M−/CD70−)抗CD70 CAR+ T細胞である。CD70+ T細胞リンパ腫細胞株によって引き起こされる疾患を回復させるこれらの抗CD70 CAR+ T細胞の能力は、Translational Drug Development,LLC(Scottsdale、AZ)によって利用される方法を使用して、NOGマウスにおいて評価された。簡潔には、12頭の5〜8週齢雌、CIEA NOG(NOD.Cg−Prkdc
scidI12rg
tm1Sug/JicTac)マウスは、試験の開始の5〜7日前に病原体を含まない条件下で維持された、換気されたマイクロアイソレーターケージにおいて個別に飼育された。マウスは、右後側腹部において3×10
6個のHuT78 T細胞リンパ腫細胞の皮下接種を受けた。平均腫瘍サイズが、25〜75mm
3(約50mm
3の標的)に達したとき、マウスはさらに、表26に示されるとおりの2つの治療群に分けられた。1日目、治療群2は、表26に従って、単回の200μlの静注投与量の抗CD70 CAR+ T細胞を受容した。
【0611】
【表26】
【0612】
腫瘍体積は、治療開始日から週に2回測定された。注射後12日目までに、抗CD70 CART細胞で治療された腫瘍は、全ての未治療の動物において腫瘍体積の減少を示し始めた。抗CD70 CAR+ T細胞による治療は、15日目に試験された全てのマウスにおいてCD70+ T細胞リンパ腫腫瘍のサイズを効率的に減少させた(
図42C)。これらのデータは、3X KO(TRAC−/β2M−/CD70−)抗CD70 CAR+細胞が、確立されたHuT78T細胞リンパ腫異種移植片に対する強力な活性を有してインビボでヒトCD70+T細胞リンパ腫腫瘍の退縮を誘導することを実証している。
【0613】
【表27-1】
【0614】
【表27-2】
【0615】
【表27-3】
【0616】
【表27-4】
【0617】
【表27-5】
【0618】
【表27-6】
【0619】
【表27-7】
【0620】
【表27-8】
【0621】
【表27-9】
【0622】
【表27-10】
【0623】
【表27-11】
【0624】
【表27-12】
【0625】
【表27-13】
【0626】
【表27-14】
【0627】
【表27-15】
【0628】
【表27-16】
【0629】
【表27-17】
【0630】
【表27-18】
【0631】
【表27-19】
【0632】
【表27-20】
【0633】
【表27-21】
【0634】
【表27-22】
【0635】
【表27-23】
【0636】
【表27-24】
【0637】
【表27-25】
【0638】
【表27-26】
【0639】
【表27-27】
【0640】
【表27-28】
【0641】
【表27-29】
【0642】
【表27-30】
【0643】
本明細書で開示される全ての参考文献、特許及び特許出願は、それぞれが引用されている主題に関して参照により組み込まれており、場合によっては文書の全体を包含する場合がある。
【0644】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される不定冠詞「a」及び「an」は、反対に明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されるべきである。
【0645】
また、反対に明確に示されない限り、2つ以上の工程又は行為を含む本明細書で請求される任意の方法において、方法の工程又は行為の順序は、必ずしも方法の工程又は行為が列挙される順序に限定されないことが理解されるべきである。
【0646】
特許請求の範囲及び上記明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保有する」、「有する」、「含有する」、「関与する」、「保持する」、「構成する」などの全ての移行句は、オープンエンド、すなわち、以下を含むがこれらに限定されないことを意味するものと理解される。「からなる」及び「本質的にからなる」という移行句のみが、United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures 2111.03に規定されるとおり、それぞれクローズド又はセミクローズド移行句となるものとする。
【0647】
数値に先行する「約」及び「実質的に」という用語は、列挙された数値の±10%を意味する。
【0648】
値の範囲が提供される場合、範囲の上限と下限の間の各値は、本明細書において具体的に企図され、記載される。