(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-522836(P2021-522836A)
(43)【公表日】2021年9月2日
(54)【発明の名称】スプライスオパシーの軽減、及びRNAドミナンス障害の治療のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/86 20060101AFI20210806BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20210806BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20210806BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20210806BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20210806BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20210806BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20210806BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20210806BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20210806BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20210806BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20210806BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20210806BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20210806BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20210806BHJP
【FI】
C12N15/86 ZZNA
C12N15/113 130Z
C12N15/54
C12N15/12
C12N15/864 100Z
C12N15/63 Z
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K31/7105
A61K31/713
A61P21/02
A61P25/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】82
(21)【出願番号】特願2020-563947(P2020-563947)
(86)(22)【出願日】2019年5月15日
(85)【翻訳文提出日】2021年1月7日
(86)【国際出願番号】US2019032423
(87)【国際公開番号】WO2019222354
(87)【国際公開日】20191121
(31)【優先権主張番号】62/671,769
(32)【優先日】2018年5月15日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】517075883
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ワシントン
【氏名又は名称原語表記】University of Washington
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】シャンバーレイン, ジョエル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA13
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4C086ZA94
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4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA08
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA15
4C087ZA94
4C087ZC41
(57)【要約】
本明細書は、スプライシング因子蛋白質と結合及び隔離する異常な拡張リピート領域を含むRNA転写物の核内保持を特徴とする障害を含む、不適切なリボ核酸(RNA)スプライシングに関連する障害を治療するための組成物及び方法を開示する。本明細書は、拡張リピート領域を含むRNA転写物の発現を抑制する干渉RNAコンストラクト、及びそのような干渉RNA分子をコードするアデノ随伴ウイルスベクターのようなウイルスベクターを開示する。例えば、本明細書は、ジストロフィアミオトニカプロテインキナーゼ(DMPK)RNA転写物にアニーリングし、拡張CUGトリヌクレオチドリピートを含むDMPK RNAの発現を減衰させる、siRNA、miRNA、及びshRNAコンストラクトのような干渉RNA分子を開示する。本明細書に記載された組成物及び方法を用いて、本明細書に記載された他の状態の中でも筋強直性ジストロフィーを有するヒト患者のようなRNAドミナンス障害を有する患者へ、患者のスプライスオパシーの発生を減少させるように、干渉RNAコンストラクト又はそれを含むベクターを投与することができ、それによって疾患の根本的な原因を治療ができる。
【選択図】
図2A-2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスベクターであって、それぞれが少なくとも17ヌクレオチドの長さの干渉リボ核酸(RNA)をコードする1以上のトランスジーンを含み、ここで、各干渉RNAは拡張リピート領域を含む内因性RNA転写物にアニーリングする部分を含み、且つ各干渉RNAの前記部分は前記拡張リピート領域と重ならない前記内因性RNA転写物のセグメントにアニーリングする、ウイルスベクター。
【請求項2】
前記内因性RNA転写物がヒトジストロフィアミオトニカプロテインキナーゼ(DMPK)をコードする、請求項1のウイルスベクター。
【請求項3】
前記拡張リピート領域が50以上のCUGトリヌクレオチドリピートを含む、請求項2のウイルスベクター。
【請求項4】
前記拡張リピート領域が約50〜約4000のCUGトリヌクレオチドリピートを含む、請求項2のウイルスベクター。
【請求項5】
前記ベクターが、前記干渉RNAにアニーリングしないヒトDMPK RNA転写物をコードするトランスジーンをさらに含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項6】
前記ヒトDMPK RNA転写物が、前記干渉RNAに85%未満の相補性を有する、請求項5のベクター。
【請求項7】
前記内因性RNA転写物が、配列番号1又は配列番号2の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する部分を含む、請求項2〜6のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項8】
前記内因性RNA転写物が、配列番号1又は配列番号2の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する部分を含む、請求項7のウイルスベクター。
【請求項9】
前記内因性RNA転写物が、配列番号1又は配列番号2の核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する部分を含む、請求項8のウイルスベクター。
【請求項10】
前記内因性RNA転写物が、配列番号1又は配列番号2の核酸配列を有する部分を含む、請求項9のウイルスベクター。
【請求項11】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのエクソン1〜15のいずれか1つ内の内因性RNA転写物のセグメントにアニーリングする、請求項2〜10のいずれか1項のウイルスベクター。
【請求項12】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのエクソン1〜15のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に少なくとも85%相補的な核酸配列を有する、請求項2〜11のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項13】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのエクソン1〜15のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に少なくとも90%相補的な核酸配列を有する、請求項12のウイルスベクター。
【請求項14】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのエクソン1〜15のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に少なくとも95%相補的な核酸配列を有する、請求項13のウイルスベクター。
【請求項15】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのエクソン1〜15のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に完全に相補的な核酸配列を有する、請求項14のウイルスベクター。
【請求項16】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのイントロン1〜14のいずれか1つ内の内因性RNA転写物のセグメントにアニーリングする、請求項2〜10のいずれか1項のウイルスベクター。
【請求項17】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのイントロン1〜14のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に少なくとも85%相補的な核酸配列を有する、請求項2〜10のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項18】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのイントロン1〜14のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に少なくとも90%相補的な核酸配列を有する、請求項17のウイルスベクター。
【請求項19】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのイントロン1〜14のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に少なくとも95%相補的な核酸配列を有する、請求項18のウイルスベクター。
【請求項20】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのイントロン1〜14のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に完全に相補的な核酸配列を有する、請求項19のウイルスベクター。
【請求項21】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含む内因性RNA転写物のセグメントにアニーリングする、請求項2〜10のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項22】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含むセグメントの核酸配列に少なくとも85%相補的な核酸配列を有する、請求項2〜10及び21のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項23】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含むセグメントの核酸配列に少なくとも90%相補的な核酸配列を有する、請求項22のウイルスベクター。
【請求項24】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含むセグメントの核酸配列に少なくとも95%相補的な核酸配列を有する、請求項23のウイルスベクター。
【請求項25】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含むセグメントの核酸配列に完全に相補的な核酸配列を有する、請求項24のウイルスベクター。
【請求項26】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKの5'非翻訳領域(UTR)又は3'UTR内の内因性RNA転写物のセグメントにアニーリングする、請求項2〜10のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項27】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内のセグメントの核酸配列に少なくとも85%相補的な核酸配列を有する、請求項2〜10及び26のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項28】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内のセグメントの核酸配列に少なくとも90%相補的な核酸配列を有する、請求項27のウイルスベクター。
【請求項29】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内のセグメントの核酸配列に少なくとも95%相補的な核酸配列を有する、請求項28のウイルスベクター。
【請求項30】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内のセグメントの核酸配列に完全に相補的な核酸配列を有する、請求項29のウイルスベクター。
【請求項31】
前記セグメントが約10〜約80ヌクレオチドの長さである、請求項12〜30のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項32】
前記セグメントが約15〜約50ヌクレオチドの長さである、請求項31のウイルスベクター。
【請求項33】
前記セグメントが、約17〜約23ヌクレオチドの長さである、請求項32のウイルスベクター。
【請求項34】
前記各干渉RNAの部分が、配列番号3〜39のいずれか1つの核酸配列を有する内因性RNA転写物のセグメントにアニーリングする、請求項2〜10のいずれか1項のウイルスベクター。
【請求項35】
前記干渉RNAが、1〜8個のヌクレオチドミスマッチを伴ってヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物にアニーリングする、請求項2〜34のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項36】
前記干渉RNAが、1〜5個のヌクレオチドミスマッチを伴ってヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物にアニーリングする、請求項35のウイルスベクター。
【請求項37】
前記干渉RNAが、1〜3個のヌクレオチドミスマッチを伴ってヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物にアニーリングする、請求項36のウイルスベクター。
【請求項38】
前記干渉RNAが、2個超のヌクレオチドミスマッチを伴わずにヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物にアニーリングする、請求項2〜34のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項39】
前記干渉RNAが、配列番号3〜161のいずれか1つの核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する部分を含む、請求項2〜38のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項40】
前記干渉RNAが、配列番号3〜161のいずれか1つの核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する部分を含む、請求項39のウイルスベクター。
【請求項41】
前記干渉RNAが、配列番号3〜161のいずれか1つの核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する部分を含む、請求項40のウイルスベクター。
【請求項42】
前記干渉RNAが、配列番号3〜161のいずれか1つの核酸配列を有する部分を含む、請求項41のウイルスベクター。
【請求項43】
前記内因性RNA転写物が、ヒト染色体9オープンリーディングフレーム72(C9ORF72)及び拡張リピート領域を含む、請求項1のウイルスベクター。
【請求項44】
前記拡張リピート領域が、約25〜約1600個のGGGGCCヘキサヌクレオチドリピートを含む、請求項43のウイルスベクター。
【請求項45】
前記拡張リピート領域が、30個超のGGGGCCヘキサヌクレオチドリピートを含む、請求項43のウイルスベクター。
【請求項46】
前記内因性RNA転写物が、配列番号163、165、又は166の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する部分を含む、請求項43〜45のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項47】
前記内因性RNA転写物が、配列番号163、165、又は166の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する部分を含む、請求項46のウイルスベクター。
【請求項48】
前記内因性RNA転写物が、配列番号163、165、又は166の核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する部分を含む、請求項47のウイルスベクター。
【請求項49】
前記内因性RNA転写物が、配列番号163、165、又は166の核酸配列を有する部分を含む、請求項48のウイルスベクター。
【請求項50】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトC9ORF72内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも85%相補的な核酸配列を有する、請求項43〜49のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項51】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトC9ORF72内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも90%相補的な核酸配列を有する、請求項50のウイルスベクター。
【請求項52】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトC9ORF72内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも95%相補的な核酸配列を有する、請求項51のウイルスベクター。
【請求項53】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトC9ORF72内のセグメントの核酸配列に完全に相補的な核酸配列を有する、請求項52のウイルスベクター。
【請求項54】
前記セグメントが約10〜約80ヌクレオチドの長さである、請求項50〜53のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項55】
前記セグメントが約15〜約50ヌクレオチドの長さである、請求項54のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項56】
前記セグメントが約17〜約23ヌクレオチドの長さである、請求項55のウイルスベクター。
【請求項57】
前記干渉RNAが、1〜8個のヌクレオチドミスマッチを伴ってヒトC9ORF72を含む内因性RNA転写物にアニーリングする、請求項43〜56のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項58】
前記干渉RNAが、1〜5個のヌクレオチドミスマッチを伴ってヒトC9ORF72を含む内因性RNA転写物にアニーリングする、請求項57のウイルスベクター。
【請求項59】
前記干渉RNAが、1〜3個のヌクレオチドミスマッチを伴ってヒトC9ORF72を含む内因性RNA転写物にアニーリングする、請求項58のウイルスベクター。
【請求項60】
前記干渉RNAが、2個超のヌクレオチドミスマッチを伴わずにヒトC9ORF72を含む内因性RNA転写物にアニーリングする、請求項43〜56のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項61】
前記干渉RNAが、ショートインターフェアリングRNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、又はマイクロRNA(miRNA)である、請求項1〜60のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項62】
前記干渉RNAがmiRNAであり、任意に前記miRNAがU6 miRNAである、請求項61のウイルスベクター。
【請求項63】
前記ウイルスベクターが成熟miRNAをコードするプライマリーmiRNA(pri-miRNA)転写物を含む、請求項62のウイルスベクター。
【請求項64】
前記ウイルスベクターが成熟miRNAをコードするpre-miRNA転写物を含む、請求項62のウイルスベクター。
【請求項65】
前記干渉RNAが、筋細胞又はニューロンにおける干渉RNAの発現を誘導するプロモーターに動作可能に連結している、請求項1〜64のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項66】
前記プロモーターが、デスミンプロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、筋クレアチンキナーゼプロモーター、ミオシン軽鎖プロモーター、ミオシン重鎖プロモーター、心臓トロポニンCプロモーター、トロポニンIプロモーター、myoD遺伝子ファミリープロモーター、アクチンアルファプロモーター、アクチンベータプロモーター、アクチンガンマプロモーター、又はオキュラーペアード様ホメオドメイン3(PITX3)のイントロン1内のプロモーターである、請求項65のウイルスベクター。
【請求項67】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、バキュロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、及び合成ウイルスからなる群から選択される、請求項1〜66のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項68】
前記ウイルスベクターがAAVである、請求項67のウイルスベクター。
【請求項69】
前記AAVがAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh10、又はAAVrh74セロタイプである、請求項68のウイルスベクター。
【請求項70】
前記ウイルスベクターが偽型AAVである、請求項68のウイルスベクター。
【請求項71】
前記偽型AAVがAAV2/8である、請求項70のウイルスベクター。
【請求項72】
前記偽型AAVがAAV2/9である、請求項70のウイルスベクター。
【請求項73】
前記AAVが組換えカプシド蛋白質を含む、請求項72のウイルスベクター。
【請求項74】
前記合成ウイルスが、キメラウイルス、モザイクウイルス、又は偽型ウイルスであり、及び/又は外来蛋白質、合成ポリマー、ナノ粒子、又は小分子を含む、請求項67のウイルスベクター。
【請求項75】
干渉RNAをコードする又は含む核酸であって、前記干渉RNAは、配列番号3〜161のいずれか1つの核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する部分を含む、核酸。
【請求項76】
前記干渉RNAが、配列番号3〜161のいずれか1つの核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する部分を含む、請求項75の核酸。
【請求項77】
前記干渉RNAが、配列番号3〜161のいずれか1つの核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する部分を含む、請求項76の核酸。
【請求項78】
前記干渉RNAが、配列番号3〜161のいずれか1つの核酸配列を有する部分を含む、請求項77の核酸。
【請求項79】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのエクソン1〜15のいずれか1つ内のヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物のセグメントにアニーリングする、請求項75〜78のいずれか1項の核酸。
【請求項80】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのエクソン1〜15のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも85%相補的な核酸配列を有する、請求項75〜79のいずれか1項の核酸。
【請求項81】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのエクソン1〜15のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも90%相補的な核酸配列を有する、請求項80の核酸。
【請求項82】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのエクソン1〜15のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも95%相補的な核酸配列を有する、請求項81の核酸。
【請求項83】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのエクソン1〜15のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に完全に相補的な核酸配列を有する、請求項82の核酸。
【請求項84】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのイントロン1〜14のいずれか1つ内のヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物のセグメントにアニーリングする、請求項75〜78のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項85】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのイントロン1〜14のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも85%相補的な核酸配列を有する、請求項75〜78及び83のいずれか1つの核酸。
【請求項86】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのイントロン1〜14のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも90%相補的な核酸配列を有する、請求項85の核酸。
【請求項87】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのイントロン1〜14のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも95%相補的な核酸配列を有する、請求項86の核酸。
【請求項88】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKのイントロン1〜14のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に完全に相補的な核酸配列を有する、請求項87の核酸。
【請求項89】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含むヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物のセグメントにアニーリングする、請求項75〜78のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項90】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含むセグメントの核酸配列に対して少なくとも85%相補的な核酸配列を有する、請求項75〜78及び89のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項91】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含むセグメントの核酸配列に対して少なくとも90%相補的な核酸配列を有する、請求項90の核酸。
【請求項92】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含むセグメントの核酸配列に対して少なくとも95%相補的な核酸配列を有する、請求項91の核酸。
【請求項93】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含むセグメントの核酸配列に完全に相補的な核酸配列を有する、請求項92の核酸。
【請求項94】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内のヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物のセグメントにアニーリングする、請求項75〜78のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項95】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも85%相補的な核酸配列を有する、請求項75〜78及び94のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項96】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも90%相補的な核酸配列を有する、請求項95の核酸。
【請求項97】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも95%相補的な核酸配列を有する、請求項96の核酸。
【請求項98】
前記各干渉RNAの部分が、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内のセグメントの核酸配列に完全に相補的な核酸配列を有する、請求項97の核酸。
【請求項99】
前記セグメントが約10〜約80ヌクレオチドの長さである、請求項99の核酸。
【請求項100】
前記セグメントが約15〜約50ヌクレオチドの長さである、請求項99の核酸。
【請求項101】
前記セグメントの長さが約17〜約23ヌクレオチドの長さである、請求項100の核酸。
【請求項102】
前記干渉RNAが、1〜8個のヌクレオチドミスマッチを伴ってヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物にアニーリングする、請求項75〜101のいずれか1項の核酸。
【請求項103】
前記干渉RNAが、1〜5個のヌクレオチドミスマッチを伴ってヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物にアニーリングする、請求項102の核酸。
【請求項104】
前記干渉RNAが、1〜3個のヌクレオチドミスマッチを伴ってヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物にアニーリングする、請求項103の核酸。
【請求項105】
前記干渉RNAが、2個超のヌクレオチドミスマッチを伴わずにヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物にアニーリングする、請求項75〜101のいずれか1項の核酸。
【請求項106】
前記干渉RNAが、ショートインターフェアリングRNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、又はマイクロRNA(miRNA)である、請求項75〜105のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項107】
前記干渉RNAがmiRNAであり、任意に前記miRNAがU6 miRNAである、請求項106の核酸。
【請求項108】
前記核酸が成熟miRNAをコードするプライマリーmiRNA(pri-miRNA)転写物を含む、請求項107の核酸。
【請求項109】
前記核酸が成熟miRNAをコードするpre-miRNA転写物を含む、請求項107の核酸。
【請求項110】
前記干渉RNAが、筋細胞又はニューロンにおける干渉RNAの発現を誘導するプロモーターに動作可能に連結している、請求項75〜109のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項111】
前記プロモーターが、デスミンプロモーター、PGKプロモーター、筋クレアチンキナーゼプロモーター、ミオシン軽鎖プロモーター、ミオシン重鎖プロモーター、心臓トロポニンCプロモーター、トロポニンIプロモーター、myoD遺伝子ファミリープロモーター、アクチンアルファプロモーター、アクチンベータプロモーター、アクチンガンマプロモーター、又はオキュラーPITX3のイントロン1内に存在する筋特異的プロモーターである、請求項110の核酸。
【請求項112】
請求項75〜111のいずれか1項の核酸を含むベクター。
【請求項113】
前記ベクターが、前記干渉RNAにアニーリングしないヒトDMPK RNA転写物をコードするトランスジーンをさらに含む、請求項112のベクター。
【請求項114】
前記ヒトDMPK RNA転写物が、前記干渉RNAに対して85%未満の相補性を有する、請求項113に記載のベクター。
【請求項115】
請求項75〜111のいずれか1項の核酸を含む組成物であって、前記組成物はリポソーム、ベシクル、合成ベシクル、エキソソソーム、合成エキソソーム、デンドリマー、又はナノ粒子である、組成物。
【請求項116】
請求項1〜74及び112〜114のいずれか1つのベクター、又は請求項115の組成物、及び薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項117】
それを必要とするヒト患者におけるスプライスオパシーの発生を減少させる方法であって、治療的に有効な量の請求項1〜74及び112〜114のいずれか1つのベクター、又は請求項115又は116の組成物を前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項118】
前記患者が筋強直性ジストロフィーを有する、請求項117の方法。
【請求項119】
前記患者への前記ベクター又は組成物の投与時に、前記患者はマッスルブラインド様蛋白質のRNA転写基質のコレクティブスプライシングの増加を示す、請求項117又は118の方法。
【請求項120】
前記患者への前記ベクター又は組成物の投与時に、前記患者はエクソン22を含むサルコプラズミック/エンドプラズミックカルシウムATPase 1(SERCA1)mRNAの発現の増加を示す、請求項117〜119のいずれか1項に記載の方法。
【請求項121】
前記患者への前記ベクター又は組成物の投与時に、前記患者はエクソン7aを含むクロリドボルテージゲートチャネル1(CLCN1)mRNAの発現の減少を示す、請求項117〜120のいずれか1項に記載の方法。
【請求項122】
前記患者への前記ベクター又は組成物の投与時に、前記患者はエクソン11を含むZO-2関連スペックル蛋白質(ZASP)の発現の減少を示す、請求項117〜121のいずれか1項に記載の方法。
【請求項123】
前記患者への前記ベクター又は組成物の投与時に、SERCA1、CLCN1、及び/又はZASP mRNAの発現が、約1.1倍〜約10倍に増加する、請求項119〜122のいずれか1項に記載の方法。
【請求項124】
前記患者へのベクター又は組成物の投与時に、前記患者はインスリン受容体、リアノジン受容体1、心筋トロポニン、及び/又は骨格筋トロポニンをコードするRNA転写物のコレクティブスプライシングの増加を示す、請求項117〜123のいずれか1項に記載の方法。
【請求項125】
それを必要とするヒト患者における拡張リピート領域を含むRNAの核内保持を特徴とする障害の治療方法であって、治療的に有効な量の請求項1〜74及び112〜114のいずれか1項のベクター、又は請求項115又は116の組成物を前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項126】
前記障害が筋強直性ジストロフィー又は筋萎縮性側索硬化症である、請求項125の方法。
【請求項127】
前記ベクター又は組成物が、静脈内、イントラセカル、イントラセレブロベントリキュラー、イントラパレンチマル、イントラシスターナル、皮内、経皮、非経口、筋肉内、鼻腔内、皮下、パーキュタネアス、気管内、腹腔内、動脈内、血管内、吸入、パーフュージョン、ラバージ、又は経口投与の方法で患者に投与される、請求項117〜126のいずれか1項に記載の方法。
【請求項128】
請求項1〜74及び112〜114のいずれか1つのベクター、又は請求項115又は116の組成物を含むキットであって、前記患者におけるスプライスオパシーの発生を減少させるために前記ベクター又は組成物をヒト患者に投与するようにキットの使用者に指示するパッケージインサートをさらに含む、キット。
【請求項129】
請求項1〜74及び112〜114のいずれか1つのベクター、又は請求項115又は116の組成物を含むキットであって、拡張リピート領域を含むRNAの核内保持を特徴とする障害を治療するために前記ベクター又は組成物をヒト患者に投与するように前記キットの使用者に指示するパッケージインサートをさらに含む、キット。
【請求項130】
前記障害が筋強直性ジストロフィー又は筋萎縮性側索硬化症である、請求項129のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府ライセンス権
本発明は、国立衛生研究所から授与されたグラント番号R03 AR056107の下で政府の支援を受けて行われたものである。政府は本発明について一定の権利を有している。
【0002】
技術分野
本発明は、核酸バイオテクノロジーの分野に関するものであり、不適切なリボ核酸スプライシングに関連する遺伝性疾患を治療するための組成物及び方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
異常な拡張リピート領域を含む内因性リボ核酸(RNA)転写物の発現及び核内保持は、特に1型筋強直性ジストロフィーを含む様々な遺伝性疾患の根底にある病態であるRNAドミナンスの発症につながる。筋強直性ジストロフィーは筋ジストロフィーの最も一般的な形態であり、ヒト成人の約7,500人に1人の頻度で発症すると推定されている。RNAドミナンスは、RNA転写物の機能獲得型変異によって生じ、これらの分子に望ましくない生物学的活性を付与する。筋強直性ジストロフィーでは、ジストロフィアミオトニカプロテインキナーゼ(DMPK)をコードするRNA転写物中の拡張CUGトリヌクレオチドリピートの存在により、RNAドミナンスが発揮され、マッスルブラインド様蛋白質のようなRNAスプライシングを制御するRNA蛋白質を隔離する。これは、スプライシング因子蛋白質に対する拡張領域の高いアビディティのおかげである。RNAドミナンスに関連した他の疾患の中でも、筋強直性ジストロフィーの症状を正常に治療し、改善するための戦略は乏しく、これらの疾患に対する有効な治療法の必要性が残されている。
【発明の概要】
【0004】
本明細書は、スプライスオパシーの発生を減少させるため、及びリボ核酸(RNA)ドミナンスに関連する障害を治療するために有用な組成物及び方法を開示する。その病態は、スプライシング因子蛋白質と結合及び隔離する拡張リピート領域を含むメッセンジャーRNA(mRNA)転写物の発現及び核内保持によって誘導され、それによって様々なmRNA転写物の適切なスプライシングを妨害する。このような障害を治療するために使用され得る本明細書に記載の組成物は、異常な拡張リピート領域を含むRNA転写物の発現を抑制する干渉RNAコンストラクトを含む核酸、例えば、siRNA、miRNA、及びshRNAコンストラクトであって、核内に保持されたリピート拡張RNA転写物の部分にアニーリングして、様々な細胞プロセスによってこれらの病的転写物の分解を促進するものを含む。本明細書は、そのような干渉RNAコンストラクトをコードする、ウイルスベクターのようなベクターをさらに開示する。異常な拡張リピート領域を含むRNA転写物の発現を抑制するための干渉RNAコンストラクト(例えば、siRNA、miRNA、又はshRNA)をコードする本明細書に記載の例示的なウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、例えば、偽型AAV2/8及びAAV2/9ベクターである。
【0005】
本明細書に記載された組成物及び方法を使用して、スプライスオパシーを経験している及び/又はミオトニックジストロフィーのようなRNAドミナンスに関連する疾患を有する患者へ、拡張リピート領域を含むRNA転写物の発現を減少させ、そしてリピート拡張RNAによって隔離されたスプライシング因子蛋白質を解放するように、干渉RNAコンストラクト又はそれをコードするベクターを含む核酸を投与できる。例えば、本明細書に記載された組成物及び方法は、筋強直性ジストロフィーを有する患者を治療するために使用でき、そのような患者へは、干渉RNAコンストラクト又はそのようなコンストラクトをコードするAAVベクターのようなウイルスベクターを投与してもよく、それにより、ジストロフィアミオトニカプロテインキナーゼ(DMPK)をコードするRNA転写物の発現を低下させることができる。野生型DMPK RNAコンストラクトは、典型的には、転写物の3'非翻訳領域(UTR)内の約5〜約37 CUGトリヌクレオチドリピートを含む。しかしながら、筋強直性ジストロフィーを有する患者は、50個以上のCUGリピートを含むDMPK RNA転写物を発現する。本明細書に記載の組成物及び方法は、この変異体DMPK RNAを発現する患者を治療するために使用することができ、それによってスプライシング因子を解放して、筋機能に関連する蛋白質の適切なスプライシングを指揮し、筋強直性ジストロフィーの根本的な原因を治療する。同様に、本明細書に記載の組成物及び方法は、RNAドミナンス及びリピート拡張RNA転写物の発現に関連する様々な他の障害におけるスプライスオパシーを減少させ、そして1つ以上の根本的な原因を治療するために使用できる。
【0006】
本明細書の開示は、拡張リピート領域から遠位の部位でリピート拡張RNA標的にアニーリングする干渉RNAコンストラクトが、そのRNA転写物の発現を抑制し、そうでなければその分子によって隔離されるであろうスプライシング因子蛋白質を効果的に解放するために使用できるという驚くべき発見に一部基づいている。従って、本明細書に記載された組成物及び方法は、相補的なヌクレオチドリピートモチーフを含む必要なく、病的RNA転写物の発現及び核内保持を減少させることができる。この特性は、重要な臨床上の利点を提供する。ヌクレオチドリピートは、ヒト患者のゲノムなどの哺乳類ゲノムにおいてユビキタスである。ヌクレオチドリピートを持たず、むしろ標的RNA転写物の他の領域にアニーリングする干渉RNAコンストラクトの使用は、ヌクレオチドリピート領域をたまたま含むがスプライシング因子蛋白質を異常に隔離しない他の遺伝子をコードするもののような、他の転写物の発現を阻害することなく、RNAドミナンス障害をもたらす転写物の選択的抑制を可能にする。本明細書に記載の組成物及び方法を用いて、病的ヌクレオチドリピート拡張を含むRNA転写物の発現を減少させつつ、重要な健全なRNA転写物(例えば、ヌクレオチドリピートをたまたま含む非標的遺伝子をコードするRNA転写物)、並びにその下流の蛋白質産物の発現を維持できる。
【0007】
第一の態様において、本発明は、干渉RNAをコードする1つ以上のトランスジーンを含むウイルスベクターを特徴とする。例えば、ウイルスベクターは、1〜5個のそのようなトランスジーン、1〜10個のそのようなトランスジーン、1〜15個のそのようなトランスジーン、1〜20個のそのようなトランスジーン、1〜50個のそのようなトランスジーン、1〜100個のそのようなトランスジーン、1〜1000個のそのようなトランスジーン、又はそれより多くのそのようなトランスジーン(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、1000、又はそれより多くのそのようなトランスジーン)を含んでもよい。干渉RNA(s)は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも17、少なくとも19、又はそれより大きい長さのヌクレオチド(例えば、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又はそれより大きい長さのヌクレオチド、例えば、17〜24、18〜23、又は19〜22の長さのヌクレオチド)であってもよい。
【0008】
干渉RNA(s)は、例えば、それぞれ独立して、10〜35ヌクレオチドの長さであってもよい。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、10ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、11ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、12ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、13ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、14ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、15ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、16ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、17ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、18ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、19ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、20ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、21ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、22ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、23ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、24ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、25ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、26ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、27ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、28ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、29ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、30ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、31ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、32ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、33ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、34ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は35ヌクレオチドの長さである。
【0009】
いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)は、拡張リピート領域を含む内因性RNA転写物にアニーリングする部分を含む。各干渉RNA(s)の部分は、拡張リピート領域と重ならない内因性RNA転写物のセグメントにアニーリングしてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、内因性RNA転写物は、ヒトDMPKをコードし、拡張リピート領域を含む。拡張リピート領域は、例えば、約50個以上のCUGトリヌクレオチドリピート、例えば、約50個〜約4000個のCUGトリヌクレオチドリピート(例えば、特に、約50個のCUGトリヌクレオチドリピート、約60個のCUGトリヌクレオチドリピート、約70個のトリヌクレオチドリピート、80個のトリヌクレオチドリピート、90個のトリヌクレオチドリピート、100個のトリヌクレオチドリピート、110個のトリヌクレオチドリピート、120個のトリヌクレオチドリピート、130個のトリヌクレオチドリピート、140個のトリヌクレオチドリピート、150個のトリヌクレオチドリピート、160個のトリヌクレオチドリピート、170個のトリヌクレオチドリピート、180個のトリヌクレオチドリピート、190個のトリヌクレオチドリピート、200個のトリヌクレオチドリピート、210個のトリヌクレオチドリピート、220個のトリヌクレオチドリピート、230個のトリヌクレオチドリピート、240個のトリヌクレオチドリピート、250個のトリヌクレオチドリピート、260個のトリヌクレオチドリピート、270個のトリヌクレオチドリピート、280個のトリヌクレオチドリピート、290個のトリヌクレオチドリピート、300個のトリヌクレオチドリピート、310個のトリヌクレオチドリピート、320個のトリヌクレオチドリピート、330個のトリヌクレオチドリピート、340個のトリヌクレオチドリピート、350個のトリヌクレオチドリピート、360個のトリヌクレオチドリピート、370個のトリヌクレオチドリピート、380個のトリヌクレオチドリピート、390個のトリヌクレオチドリピート、400個のトリヌクレオチドリピート、410個のトリヌクレオチドリピート、420個のトリヌクレオチドリピート、430個のトリヌクレオチドリピート、440個のトリヌクレオチドリピート、450個のトリヌクレオチドリピート、460個のトリヌクレオチドリピート、470個のトリヌクレオチドリピート、480個のトリヌクレオチドリピート、490個のトリヌクレオチドリピート、500個のトリヌクレオチドリピート、510個のトリヌクレオチドリピート、520個のトリヌクレオチドリピート、530個のトリヌクレオチドリピート、540個のトリヌクレオチドリピート、550個のトリヌクレオチドリピート、560個のトリヌクレオチドリピート、570個のトリヌクレオチドリピート、580個のトリヌクレオチドリピート、590個のトリヌクレオチドリピート、600個のトリヌクレオチドリピート、610個のトリヌクレオチドリピート、620個のトリヌクレオチドリピート、630個のトリヌクレオチドリピート、640個のトリヌクレオチドリピート、650個のトリヌクレオチドリピート、660個のトリヌクレオチドリピート、670個のトリヌクレオチドリピート、680個のトリヌクレオチドリピート、690個のトリヌクレオチドリピート、700個のトリヌクレオチドリピート、710個のトリヌクレオチドリピート、720個のトリヌクレオチドリピート、730個のトリヌクレオチドリピート、740個のトリヌクレオチドリピート、750個のトリヌクレオチドリピート、760個のトリヌクレオチドリピート、770個のトリヌクレオチドリピート、780個のトリヌクレオチドリピート、790個のトリヌクレオチドリピート、800個のトリヌクレオチドリピート、810個のトリヌクレオチドリピート、820個のトリヌクレオチドリピート、830個のトリヌクレオチドリピート、840個のトリヌクレオチドリピート、850個のトリヌクレオチドリピート、860個のトリヌクレオチドリピート、870個のトリヌクレオチドリピート、880個のトリヌクレオチドリピート、890個のトリヌクレオチドリピート、900個のトリヌクレオチドリピート、910個のトリヌクレオチドリピート、920個のトリヌクレオチドリピート、930個のトリヌクレオチドリピート、940個のトリヌクレオチドリピート、950個のトリヌクレオチドリピート、960個のトリヌクレオチドリピート、970個のトリヌクレオチドリピート、980個のトリヌクレオチドリピート、990個のトリヌクレオチドリピート、1,000個のトリヌクレオチドリピート、1,100個のトリヌクレオチドリピート、1,200個のトリヌクレオチドリピート、1,300個のトリヌクレオチドリピート、1,400個のトリヌクレオチドリピート、1,500個のトリヌクレオチドリピート、1,600個のトリヌクレオチドリピート、1,700個のトリヌクレオチドリピート、1,800個のトリヌクレオチドリピート、1,900個のトリヌクレオチドリピート、2,000個のトリヌクレオチドリピート、2,100個のトリヌクレオチドリピート、2,200個のトリヌクレオチドリピート、2,300個のトリヌクレオチドリピート、2,400個のトリヌクレオチドリピート、2,500個のトリヌクレオチドリピート、2,600個のトリヌクレオチドリピート、2,700個のトリヌクレオチドリピート、2,800個のトリヌクレオチドリピート、2,900個のトリヌクレオチドリピート、3,000個のトリヌクレオチドリピート、3,100個のトリヌクレオチドリピート、3,200個のトリヌクレオチドリピート、3,300個のトリヌクレオチドリピート、3,400個のトリヌクレオチドリピート、3,500個のトリヌクレオチドリピート、3,600個のトリヌクレオチドリピート、3,700個のトリヌクレオチドリピート、3,800個のトリヌクレオチドリピート、3,900個のトリヌクレオチドリピート、又は4,000個のトリヌクレオチドリピート)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、内因性RNA転写物は、配列番号1又は配列番号2の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%の配列同一性)を有する部分を含む。いくつかの実施形態では、内因性RNA転写物は、配列番号1又は配列番号2の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%の配列同一性)を有する部分を含む。いくつかの実施形態では、内因性RNA転写物は、配列番号1又は配列番号2の核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%の配列同一性)を有する部分を含む。内因性RNA転写物は、例えば、配列番号1又は配列番号2の核酸配列を有する部分を含んでもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターはさらに、転写時に、干渉RNAにアニーリングしないコドン最適化されたヒトDMPKをコードするトランスジーンのような、ヒトDMPKをコードするトランスジーンを含む。例えば、ヒトDMPKをコードするトランスジーンによって発現されるDMPK転写物は、干渉RNAに85%未満の相補性(例えば、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、又は1%の相補性、又はそれ未満の相補性)であってもよい。ヒトDMPKをコードするトランスジーンは、例えば、干渉RNAをコードするトランスジーン(s)と動作可能に連結されていてもよく、そのような場合、干渉RNA(s)とDMPKは同じプロモーターから発現される。これは、例えば、干渉RNA(s)をコードするトランスジーンとヒトDMPKをコードするトランスジーンとの間に内部リボソームエントリーサイト(IRES)を配置することによって効果的に行われ得る。いくつかの実施形態では、干渉RNA(s)をコードするトランスジーンとヒトDMPKをコードするトランスジーンは、それぞれ別々のプロモーターに動作可能に連結している。
【0012】
いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、配列番号3〜39のいずれか1つの核酸配列を有する内因性RNA転写物のセグメントにアニーリングする。
【0013】
いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPK RNAのエクソン1〜15のいずれか1つ内の内因性RNA転写物のセグメント(例えば、ヒトDMPK RNAのエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、又はエクソン15の内のセグメント)にアニーリングする。各干渉RNAの部分は、例えば、ヒトDMPKのエクソン1〜15のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも85%相補的(例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有していてもよい。いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKのエクソン1〜15のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも90%相補的(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有する。例えば、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKのエクソン1〜15のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも95%相補的(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有していてもよい。いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKのエクソン1〜15のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に完全に相補的な核酸配列を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPK RNAのイントロン1〜14のいずれか1つ内の内因性RNA転写物のセグメント(例えば、ヒトDMPK RNAのイントロン1、イントロン2、イントロン3、イントロン4、イントロン5、イントロン6、イントロン7、イントロン8、イントロン9、イントロン10、イントロン11、イントロン12、イントロン13、又はイントロン14の内のセグメント)にアニーリングする。各干渉RNAの部分は、例えば、ヒトDMPKのイントロン1〜14のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも85%相補的(例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有していてもよい。いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKのイントロン1〜14の1つ内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも90%相補的(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有する。例えば、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKのイントロン1〜14のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも95%相補的(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有していてもよい。いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKのイントロン1〜14のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に完全に相補的な核酸配列を有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含む内因性RNA転写物のセグメント(例えば、エクソン1とイントロン1の間、イントロン1とエクソン2の間、エクソン2とイントロン2の間、イントロン2とエクソン3の間、エクソン3とイントロン3の間、イントロン3とエクソン4の間、エクソン4とイントロン4の間、イントロン4とエクソン5の間、エクソン5とイントロン5の間、イントロン5とエクソン6の間、エクソン6とイントロン6の間、イントロン6とエクソン7の間、エクソン7とイントロン7の間、イントロン7とエクソン8の間、エクソン8とイントロン8の間、イントロン8とエクソン9の間、エクソン9とイントロン9の間、イントロン9とエクソン10の間、エクソン10とイントロン10の間、イントロン10とエクソン11の間、エクソン11とイントロン11の間、イントロン11とエクソン12の間、エクソン12とイントロン12の間、イントロン12とエクソン13の間、エクソン13とイントロン13の間、イントロン13とエクソン14の間、エクソン14とイントロン14の間、又はイントロン14とエクソン15の間の境界を含むセグメント)にアニーリングする。各干渉RNAの部分は、例えば、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含むセグメントの核酸配列に対して少なくとも85%相補的(例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有していてもよい。いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含むセグメントの核酸配列に対して少なくとも90%相補的(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有する。例えば、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含むセグメントの核酸配列に対して少なくとも95%相補的(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有していてもよい。いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含むセグメントの核酸配列に完全に相補的な核酸配列を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内の内因性RNA転写物のセグメントにアニーリングする。各干渉RNAの部分は、例えば、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも85%相補的(例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有していてもよい。いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも90%相補的(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有する。例えば、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも95%相補的(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有していてもよい。いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内のセグメントの核酸配列に完全に相補的な核酸配列を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、ヒトDMPK内のセグメントは、約10〜約80ヌクレオチドの長さである。例えば、セグメントは、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチド、25ヌクレオチド、26ヌクレオチド、27ヌクレオチド、28ヌクレオチド、29ヌクレオチド、30ヌクレオチド、31ヌクレオチド、32ヌクレオチド、33ヌクレオチド、34ヌクレオチド、35ヌクレオチド、36ヌクレオチド、37ヌクレオチド、38ヌクレオチド、39ヌクレオチド、40ヌクレオチド、41ヌクレオチド、42ヌクレオチド、43ヌクレオチド、44ヌクレオチド、45ヌクレオチド、46ヌクレオチド、47ヌクレオチド、48ヌクレオチド、49ヌクレオチド、50ヌクレオチド、51ヌクレオチド、52ヌクレオチド、53ヌクレオチド、54ヌクレオチド、55ヌクレオチド、56ヌクレオチド、57ヌクレオチド、58ヌクレオチド、59ヌクレオチド、60ヌクレオチド、61ヌクレオチド、62ヌクレオチド、63ヌクレオチド、64ヌクレオチド、65ヌクレオチド、66ヌクレオチド、67ヌクレオチド、68ヌクレオチド、69ヌクレオチド、70ヌクレオチド、71ヌクレオチド、72ヌクレオチド、73ヌクレオチド、74ヌクレオチド、75ヌクレオチド、76ヌクレオチド、77ヌクレオチド、78ヌクレオチド、79ヌクレオチド、又は80ヌクレオチドの長さであってもよい。いくつかの実施形態では、ヒトDMPK内のセグメントは、約15〜約50ヌクレオチドの長さであり、例えば、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチド、25ヌクレオチド、26ヌクレオチド、27ヌクレオチド、28ヌクレオチド、29ヌクレオチド、30ヌクレオチド、31ヌクレオチド、32ヌクレオチド、33ヌクレオチド、34ヌクレオチド、35ヌクレオチド、36ヌクレオチド、37ヌクレオチド、38ヌクレオチド、39ヌクレオチド、40ヌクレオチド、41ヌクレオチド、42ヌクレオチド、43ヌクレオチド、44ヌクレオチド、45ヌクレオチド、46ヌクレオチド、47ヌクレオチド、48ヌクレオチド、49ヌクレオチド、又は50ヌクレオチドの長さのセグメントである。いくつかの実施形態では、ヒトDMPK内のセグメントは、長さが約17〜約23ヌクレオチドの長さであり、例えば、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、又は23ヌクレオチドのセグメントの長さである。いくつかの実施形態では、セグメントは18ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、セグメントは19ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、セグメントは20ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、セグメントは21ヌクレオチドの長さである。
【0018】
いくつかの実施形態では、干渉RNAは、1〜8個のヌクレオチドのミスマッチ(例えば、1個のヌクレオチドのミスマッチ、2個のヌクレオチドのミスマッチ、3個のヌクレオチドのミスマッチ、4個のヌクレオチドのミスマッチ、5個のヌクレオチドのミスマッチ、6個のヌクレオチドのミスマッチ、7個のヌクレオチドのミスマッチ、又は8個のヌクレオチドのミスマッチ)を伴って、ヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物に対してアニーリングする。いくつかの実施形態では、干渉RNAは、1〜5個のヌクレオチドミスマッチ、例えば、1個のヌクレオチドミスマッチ、2個のヌクレオチドミスマッチ、3個のヌクレオチドミスマッチ、4個のヌクレオチドミスマッチ、又は5個のヌクレオチドミスマッチを伴って、ヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物にアニーリングする。いくつかの実施形態では、干渉RNAは、1〜3個のヌクレオチドミスマッチ、例えば、1個のヌクレオチドミスマッチ、2個のヌクレオチドミスマッチ、又は3個のヌクレオチドミスマッチを伴って、ヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物にアニーリングする。いくつかの実施形態では、干渉RNAは、2超個のヌクレオチドミスマッチを伴わずに、ヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物に対してアニーリングする。例えば、干渉RNAは、ヌクレオチドミスマッチを伴わずに、1個のヌクレオチドミスマッチ、又は2個のヌクレオチドミスマッチを伴って、ヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物に対してアニーリングしてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、干渉RNAは、配列番号3〜161のいずれか1つの核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%の配列同一性)を有する部分を含む。干渉RNAは、例えば、配列番号3〜161のいずれか1つの核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%の配列同一性)を有する部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、干渉RNAは、配列番号3〜161のいずれか1つの核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%の配列同一性)を有する部分を含む。いくつかの実施形態では、干渉RNAは、配列番号3〜161のいずれか1つの核酸配列を有する部分を含む。いくつかの実施形態では、干渉RNAは、本明細書の表5に示されるパッセンジャー鎖及びガイド鎖の組み合わせを有するmiRNAである。
【0020】
いくつかの実施形態では、内因性RNA転写物は、ヒト染色体9オープンリーディングフレーム72(C9ORF72)及び拡張リピート領域を含む。
【0021】
拡張リピート領域は、例えば、25個超のGGGGCC(配列番号162)ヘキサヌクレオチドリピート、例えば、約700〜約1,600個のGGGGCC(配列番号162)ヘキサヌクレオチドリピートを含んでもよい。例えば、拡張リピート領域は、特に、700個のヘキサヌクレオチドリピート、710個のヘキサヌクレオチドリピート、720個のヘキサヌクレオチドリピート、730個のヘキサヌクレオチドリピート、740個のヘキサヌクレオチドリピート、750個のヘキサヌクレオチドリピート、760個のヘキサヌクレオチドリピート、770個のヘキサヌクレオチドリピート、780個のヘキサヌクレオチドリピート、790個のヘキサヌクレオチドリピート、800個のヘキサヌクレオチドリピート、810個のヘキサヌクレオチドリピート、820個のヘキサヌクレオチドリピート、830個のヘキサヌクレオチドリピート、840個のヘキサヌクレオチドリピート、850個のヘキサヌクレオチドリピート、860個のヘキサヌクレオチドリピート、870個のヘキサヌクレオチドリピート、880個のヘキサヌクレオチドリピート、890個のヘキサヌクレオチドリピート、900個のヘキサヌクレオチドリピート、910個のヘキサヌクレオチドリピート、920個のヘキサヌクレオチドリピート、930個のヘキサヌクレオチドリピート、940個のヘキサヌクレオチドリピート、950個のヘキサヌクレオチドリピート、960個のヘキサヌクレオチドリピート、970個のヘキサヌクレオチドリピート、980個のヘキサヌクレオチドリピート、990個のヘキサヌクレオチドリピート、又は1,000個のヘキサヌクレオチドリピートを含んでもよい。拡張リピート領域は、30個超のヘキサヌクレオチドリピート、例えば、30個のヘキサヌクレオチドリピート、40個のヘキサヌクレオチドリピート、50個のヘキサヌクレオチドリピート、60個のCUGヘキサヌクレオチドリピート、70個のヘキサヌクレオチドリピート、80個のヘキサヌクレオチドリピート、90個のヘキサヌクレオチドリピート、100個のヘキサヌクレオチドリピート、110個のヘキサヌクレオチドリピート、120個のヘキサヌクレオチドリピート、130個のヘキサヌクレオチドリピート、140個のヘキサヌクレオチドリピート、150個のヘキサヌクレオチドリピート、160個のヘキサヌクレオチドリピート、170個のヘキサヌクレオチドリピート、180個のヘキサヌクレオチドリピート、190個のヘキサヌクレオチドリピート、200個のヘキサヌクレオチドリピート、210個のヘキサヌクレオチドリピート、220個のヘキサヌクレオチドリピート、230個のヘキサヌクレオチドリピート、240個のヘキサヌクレオチドリピート、250個のヘキサヌクレオチドリピート、260個のヘキサヌクレオチドリピート、270個のヘキサヌクレオチドリピート、280個のヘキサヌクレオチドリピート、290個のヘキサヌクレオチドリピート、300個のヘキサヌクレオチドリピート、310個のヘキサヌクレオチドリピート、320個のヘキサヌクレオチドリピート、330個のヘキサヌクレオチドリピート、340個のヘキサヌクレオチドリピート、350個のヘキサヌクレオチドリピート、360個のヘキサヌクレオチドリピート、370個のヘキサヌクレオチドリピート、380個のヘキサヌクレオチドリピート、390個のヘキサヌクレオチドリピート、400個のヘキサヌクレオチドリピート、410個のヘキサヌクレオチドリピート、420個のヘキサヌクレオチドリピート、430個のヘキサヌクレオチドリピート、440個のヘキサヌクレオチドリピート、450個のヘキサヌクレオチドリピート、460個のヘキサヌクレオチドリピート、470個のヘキサヌクレオチドリピート、480個のヘキサヌクレオチドリピート、490個のヘキサヌクレオチドリピート、500個のヘキサヌクレオチドリピート、510個のヘキサヌクレオチドリピート、520個のヘキサヌクレオチドリピート、530個のヘキサヌクレオチドリピート、540個のヘキサヌクレオチドリピート、550個のヘキサヌクレオチドリピート、560個のヘキサヌクレオチドリピート、570個のヘキサヌクレオチドリピート、580個のヘキサヌクレオチドリピート、590個のヘキサヌクレオチドリピート、600個のヘキサヌクレオチドリピート、610個のヘキサヌクレオチドリピート、620個のヘキサヌクレオチドリピート、630個のヘキサヌクレオチドリピート、640個のヘキサヌクレオチドリピート、650個のヘキサヌクレオチドリピート、660個のヘキサヌクレオチドリピート、670個のヘキサヌクレオチドリピート、680個のヘキサヌクレオチドリピート、690個のヘキサヌクレオチドリピート、700個のヘキサヌクレオチドリピート、710個のヘキサヌクレオチドリピート、720個のヘキサヌクレオチドリピート、730個のヘキサヌクレオチドリピート、740個のヘキサヌクレオチドリピート、750個のヘキサヌクレオチドリピート、760個のヘキサヌクレオチドリピート、770個のヘキサヌクレオチドリピート、780個のヘキサヌクレオチドリピート、790個のヘキサヌクレオチドリピート、800個のヘキサヌクレオチドリピート、810個のヘキサヌクレオチドリピート、820個のヘキサヌクレオチドリピート、830個のヘキサヌクレオチドリピート、840個のヘキサヌクレオチドリピート、850個のヘキサヌクレオチドリピート、860個のヘキサヌクレオチドリピート、870個のヘキサヌクレオチドリピート、880個のヘキサヌクレオチドリピート、890個のヘキサヌクレオチドリピート、900個のヘキサヌクレオチドリピート、910個のヘキサヌクレオチドリピート、920個のヘキサヌクレオチドリピート、930個のヘキサヌクレオチドリピート、940個のヘキサヌクレオチドリピート、950個のヘキサヌクレオチドリピート、960個のヘキサヌクレオチドリピート、970個のヘキサヌクレオチドリピート、980個のヘキサヌクレオチドリピート、990個のヘキサヌクレオチドリピート、1,000個のヘキサヌクレオチドリピート、1,100個のヘキサヌクレオチドリピート、1,200の個のヘキサヌクレオチドリピート、1,300個のヘキサヌクレオチドリピート、1,400個のヘキサヌクレオチドリピート、1,500個のヘキサヌクレオチドリピート、1,600個のヘキサヌクレオチドリピート、又はそれより多くのヘキサヌクレオチドリピートを含んでもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、内因性RNA転写物は、配列番号163の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%の配列同一性)を有する部分を含む。内因性RNA転写物は、例えば、配列番号163の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%の配列同一性)を有する部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、内因性RNA転写物は、配列番号163の核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%の配列同一性)を有する部分を含む。いくつかの実施形態では、RNA転写物は、配列番号163の核酸配列を有する部分を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、内因性RNA転写物は、配列番号165の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%の配列同一性)を有する部分を含む。内因性RNA転写物は、例えば、配列番号165の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%の配列同一性)を有する部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、内因性RNA転写物は、配列番号165の核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%の配列同一性)を有する部分を含む。いくつかの実施形態では、RNA転写物は、配列番号165の核酸配列を有する部分を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、内因性RNA転写物は、配列番号166の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%の配列同一性)を有する部分を含む。内因性RNA転写物は、例えば、配列番号166の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%の配列同一性)を有する部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、内因性RNA転写物は、配列番号166の核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%の配列同一性)を有する部分を含む。いくつかの実施形態では、RNA転写物は、配列番号166の核酸配列を有する部分を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトC9ORF72内のセグメントの核酸配列、例えば、配列番号163、165、又は166内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも85%相補的(例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトC9ORF72内のセグメントの核酸配列、例えば、配列番号163、165、又は166内のセグメントの核酸配列に対して、少なくとも90%相補的(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有する。例えば、各干渉RNAの部分は、ヒトC9ORF72内のセグメントの核酸配列、例えば、配列番号163、165、又は166内のセグメントの核酸配列に対して、少なくとも95%相補的(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%又は100%相補的)である核酸配列を有していてもよい。いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトC9ORF72内のセグメントの核酸配列、例えば、配列番号163、165、又は166内のセグメントの核酸配列に完全に相補的な核酸配列を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、ヒトC9ORF72内のセグメントは、約10〜約80ヌクレオチドの長さである。例えば、セグメントは、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチド、25ヌクレオチド、26ヌクレオチド、27ヌクレオチド、28ヌクレオチド、29ヌクレオチド、30ヌクレオチド、31ヌクレオチド、32ヌクレオチド、33ヌクレオチド、34ヌクレオチド、35ヌクレオチド、36ヌクレオチド、37ヌクレオチド、38ヌクレオチド、39ヌクレオチド、40ヌクレオチド、41ヌクレオチド、42ヌクレオチド、43ヌクレオチド、44ヌクレオチド、45ヌクレオチド、46ヌクレオチド、47ヌクレオチド、48ヌクレオチド、49ヌクレオチド、50ヌクレオチド、51ヌクレオチド、52ヌクレオチド、53ヌクレオチド、54ヌクレオチド、55ヌクレオチド、56ヌクレオチド、57ヌクレオチド、58ヌクレオチド、59ヌクレオチド、60ヌクレオチド、61ヌクレオチド、62ヌクレオチド、63ヌクレオチド、64ヌクレオチド、65ヌクレオチド、66ヌクレオチド、67ヌクレオチド、68ヌクレオチド、69ヌクレオチド、70ヌクレオチド、71ヌクレオチド、72ヌクレオチド、73ヌクレオチド、74ヌクレオチド、75ヌクレオチド、76ヌクレオチド、77ヌクレオチド、78ヌクレオチド、79ヌクレオチド、又は80ヌクレオチドの長さであってもよい。いくつかの実施形態では、ヒトC9ORF72内のセグメントは、約15〜約50ヌクレオチドでの長さ、例えば、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチド、25ヌクレオチド、26ヌクレオチド、27ヌクレオチド、28ヌクレオチド、29ヌクレオチド、30ヌクレオチド、31ヌクレオチド、32ヌクレオチド、33ヌクレオチド、34ヌクレオチド、35ヌクレオチド、36ヌクレオチド、37ヌクレオチド、38ヌクレオチド、39ヌクレオチド、40ヌクレオチド、41ヌクレオチド、42ヌクレオチド、43ヌクレオチド、44ヌクレオチド、45ヌクレオチド、46ヌクレオチド、47ヌクレオチド、48ヌクレオチド、49ヌクレオチド、又は50ヌクレオチドの長さのセグメントである。いくつかの実施形態では、ヒトC9ORF72内のセグメントは、約17〜約23ヌクレオチドでの長さ、例えば、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、又は23ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、セグメントは18ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、セグメントは19ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、セグメントは20ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、セグメントは21ヌクレオチドの長さである。
【0027】
いくつかの実施形態では、干渉RNAは、1〜8個のヌクレオチドミスマッチを伴って(例えば、1個のヌクレオチドミスマッチ、2個のヌクレオチドミスマッチ、3個のヌクレオチドミスマッチ、4個のヌクレオチドミスマッチ、5個のヌクレオチドミスマッチ、6個のヌクレオチドミスマッチ、7個のヌクレオチドミスマッチ、又は8個のヌクレオチドミスマッチを伴って)、ヒトC9ORF72をコードする内因性RNA転写物に対して、アニーリングする。いくつかの実施形態では、干渉RNAは、1〜5個のヌクレオチドミスマッチ、例えば、1個のヌクレオチドミスマッチ、2個のヌクレオチドミスマッチ、3個のヌクレオチドミスマッチ、4個のヌクレオチドミスマッチ、又は5個のヌクレオチドミスマッチを伴って、ヒトC9ORF72をコードする内因性RNA転写物にアニーリングする。いくつかの実施形態では、干渉RNAは、1〜3個のヌクレオチドミスマッチ、例えば、1個のヌクレオチドミスマッチ、2個のヌクレオチドミスマッチ、又は3個のヌクレオチドミスマッチを伴って、ヒトC9ORF72をコードする内因性RNA転写物にアニーリングする。いくつかの実施形態では、干渉RNAは、2個超のヌクレオチドミスマッチを伴わずに、ヒトC9ORF72をコードする内因性RNA転写物に対してアニーリングを行う。例えば、干渉RNAは、ヌクレオチドミスマッチを伴わずに、1個のヌクレオチドミスマッチ、又は2個のヌクレオチドミスマッチを伴って、ヒトC9ORF72をコードする内因性RNA転写物に対してでアニーリングしてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、干渉RNAは、ショートインターフェアリングRNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、又はU6 miRNAのようなマイクロRNA(miRNA)である。miRNAは、例えば、内因性ヒトmiR-30a核酸配列に基づいて、標的mRNA(例えば、本明細書に記載の標的mRNA)との相補性のために必要に応じて1以上の核酸置換を有するものであってもよい。miRNAの場合、ウイルスベクターは、例えば、成熟miRNAをコードするプライマリーmiRNA(pri-miRNA)転写物を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、成熟miRNAをコードするpre-miRNA転写物を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、干渉RNAは、筋細胞又はニューロンにおける干渉RNAの発現を誘導するプロモーターに動作可能に連結している。プロモーターは、例えば、デスミンプロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、筋クレアチンキナーゼプロモーター、ミオシン軽鎖プロモーター、ミオシン重鎖プロモーター、心臓トロポニンCプロモーター、トロポニンIプロモーター、myoD遺伝子ファミリープロモーター、アクチンアルファプロモーター、アクチンベータプロモーター、アクチンガンマプロモーター、又はオキュラーペアード様ホメオドメイン3(PITX3)のイントロン1内のプロモーターであってもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、AAV、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、バキュロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、又は合成ウイルスである。ウイルスベクターは、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh10、又はAAVrh74セロタイプであってもよい。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、AAV2/8又はAAV/29ベクターのような偽型AAVである。ウイルスベクターは、組換えカプシド蛋白質を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、キメラウイルス、モザイクウイルス、又は偽型ウイルスのような合成ウイルス、及び/又は外来蛋白質、合成ポリマー、ナノ粒子、又は小分子を含む合成ウイルスである。
【0031】
別の態様において、本発明は、配列番号3〜161のいずれか1つの核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%の配列同一性)を有する部分を含む、干渉RNAをコードする又は含む核酸を特徴とする。いくつかの実施形態では、干渉RNAは、配列番号3〜161のいずれか1つの核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%の配列同一性)を有する部分を含む。干渉RNAは、例えば、配列番号3〜161のいずれか1つの核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%の配列同一性)を有する部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、干渉RNAは、配列番号3〜161のうちのいずれか1つの核酸配列を有する部分を含む。いくつかの実施形態では、干渉RNAは、本明細書の表5に示されるパッセンジャー鎖及びガイド鎖の組み合わせを有するmiRNAである。
【0032】
いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPK RNAのエクソン1〜15のいずれか1つ内のヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物のセグメント(例えば、ヒトDMPK RNAのエクソン1、エクソン2、エクソン3、エクソン4、エクソン5、エクソン6、エクソン7、エクソン8、エクソン9、エクソン10、エクソン11、エクソン12、エクソン13、エクソン14、又はエクソン15の内のセグメント)にアニーリングする。各干渉RNAの部分は、例えば、ヒトDMPKのエクソン1〜15のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも85%相補的(例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有していてもよい。いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKのエクソン1〜15のいずれか1つのエクソン内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも90%相補的(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有する。例えば、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKのエクソン1〜15のいずれか1つのエクソン内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも95%相補的(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有していてもよい。いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKのエクソン1〜15のいずれか1つのエクソン内のセグメントの核酸配列に完全に相補的な核酸配列を有する。
【0033】
いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPK RNAのイントロン1〜14のいずれか1つ内のヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物のセグメント(例えば、ヒトDMPK RNAのイントロン1、イントロン2、イントロン3、イントロン4、イントロン5、イントロン6、イントロン7、イントロン8、イントロン9、イントロン10、イントロン11、イントロン12、イントロン13、又はイントロン14の内のセグメント)にアニーリングする。各干渉RNAの部分は、例えば、ヒトDMPKのイントロン1〜14のいずれか1つのイントロン内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも85%相補的(例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有していてもよい。いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKのイントロン1〜14の任意の1つ内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも90%相補的(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有する。例えば、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKのイントロン1〜14のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも95%相補的(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有していてもよい。いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKのイントロン1〜14のいずれか1つ内のセグメントの核酸配列に完全に相補的な核酸配列を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含むヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物のセグメント(例えば、エクソン1とイントロン1の間、イントロン1とエクソン2の間、エクソン2とイントロン2の間、イントロン2とエクソン3の間、エクソン3とイントロン3の間、イントロン3とエクソン4の間、エクソン4とイントロン4の間、イントロン4とエクソン5の間、エクソン5とイントロン5の間、イントロン5とエクソン6の間、エクソン6とイントロン6の間、イントロン6とエクソン7の間、エクソン7とイントロン7の間、イントロン7とエクソン8の間、エクソン8とイントロン8の間、イントロン8とエクソン9の間、エクソン9とイントロン9の間、イントロン9とエクソン10の間、エクソン10とイントロン10の間、イントロン10とエクソン11の間、エクソン11とイントロン11の間、イントロン11とエクソン12の間、エクソン12とイントロン12の間、イントロン12とエクソン13の間、エクソン13とイントロン13の間、イントロン13とエクソン14の間、エクソン14とイントロン14の間、又はイントロン14とエクソン15の間の境界を含むセグメント)にアニーリングする。各干渉RNAの部分は、例えば、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含むセグメントの核酸配列に対して少なくとも85%相補的(例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有していてもよい。いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含むセグメントの核酸配列に対して少なくとも90%相補的(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有する。例えば、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含むセグメントの核酸配列に対して少なくとも95%相補的(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有していてもよい。いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPK内のエクソン-イントロン境界を含むセグメントの核酸配列に完全に相補的な核酸配列を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内のヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物のセグメントにアニーリングする。各干渉RNAの部分は、例えば、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも85%相補的(例えば、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有していてもよい。いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも90%相補的(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有する。例えば、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内のセグメントの核酸配列に対して少なくとも95%相補的(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である核酸配列を有していてもよい。いくつかの実施形態では、各干渉RNAの部分は、ヒトDMPKの5'UTR又は3'UTR内のセグメントの核酸配列に完全に相補的な核酸配列を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、ヒトDMPK内のセグメントは、約10〜約80ヌクレオチドの長さである。例えば、セグメントは、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチド、25ヌクレオチド、26ヌクレオチド、27ヌクレオチド、28ヌクレオチド、29ヌクレオチド、30ヌクレオチド、31ヌクレオチド、32ヌクレオチド、33ヌクレオチド、34ヌクレオチド、35ヌクレオチド、36ヌクレオチド、37ヌクレオチド、38ヌクレオチド、39ヌクレオチド、40ヌクレオチド、41ヌクレオチド、42ヌクレオチド、43ヌクレオチド、44ヌクレオチド、45ヌクレオチド、46ヌクレオチド、47ヌクレオチド、48ヌクレオチド、49ヌクレオチド、50ヌクレオチド、51ヌクレオチド、52ヌクレオチド、53ヌクレオチド、54ヌクレオチド、55ヌクレオチド、56ヌクレオチド、57ヌクレオチド、58ヌクレオチド、59ヌクレオチド、60ヌクレオチド、61ヌクレオチド、62ヌクレオチド、63ヌクレオチド、64ヌクレオチド、65ヌクレオチド、66ヌクレオチド、67ヌクレオチド、68ヌクレオチド、69ヌクレオチド、70ヌクレオチド、71ヌクレオチド、72ヌクレオチド、73ヌクレオチド、74ヌクレオチド、75ヌクレオチド、76ヌクレオチド、77ヌクレオチド、78ヌクレオチド、79ヌクレオチド、又は80ヌクレオチドの長さであってもよい。いくつかの実施形態では、ヒトDMPK内のセグメントは、約15〜約50ヌクレオチドの長さであり、例えば、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチド、25ヌクレオチド、26ヌクレオチド、27ヌクレオチド、28ヌクレオチド、29ヌクレオチド、30ヌクレオチド、31ヌクレオチド、32ヌクレオチド、33ヌクレオチド、34ヌクレオチド、35ヌクレオチド、36ヌクレオチド、37ヌクレオチド、38ヌクレオチド、39ヌクレオチド、40ヌクレオチド、41ヌクレオチド、42ヌクレオチド、43ヌクレオチド、44ヌクレオチド、45ヌクレオチド、46ヌクレオチド、47ヌクレオチド、48ヌクレオチド、49ヌクレオチド、又は50ヌクレオチドの長さのセグメントである。いくつかの実施形態では、ヒトDMPK内のセグメントは、長さが約17〜約23ヌクレオチドの長さであり、例えば、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、又は23ヌクレオチドのセグメントの長さである。いくつかの実施形態では、セグメントは18ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、セグメントは19ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、セグメントは20ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態では、セグメントは21ヌクレオチドの長さである。
【0037】
いくつかの実施形態では、干渉RNAは、1〜8個のヌクレオチドのミスマッチ(例えば、1個のヌクレオチドのミスマッチ、2個のヌクレオチドのミスマッチ、3個のヌクレオチドのミスマッチ、4個のヌクレオチドのミスマッチ、5個のヌクレオチドのミスマッチ、6個のヌクレオチドのミスマッチ、7個のヌクレオチドのミスマッチ、又は8個のヌクレオチドのミスマッチ)を伴って、ヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物に対してアニーリングする。いくつかの実施形態では、干渉RNAは、1〜5個のヌクレオチドミスマッチ、例えば、1個のヌクレオチドミスマッチ、2個のヌクレオチドミスマッチ、3個のヌクレオチドミスマッチ、4個のヌクレオチドミスマッチ、又は5個のヌクレオチドミスマッチを伴って、ヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物にアニーリングする。いくつかの実施形態では、干渉RNAは、1〜3個のヌクレオチドミスマッチ、例えば、1個のヌクレオチドミスマッチ、2個のヌクレオチドミスマッチ、又は3個のヌクレオチドミスマッチを伴って、ヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物にアニーリングする。いくつかの実施形態では、干渉RNAは、2超個のヌクレオチドミスマッチを伴わずに、ヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物に対してアニーリングする。例えば、干渉RNAは、ヌクレオチドミスマッチを伴わずに、1個のヌクレオチドミスマッチ、又は2個のヌクレオチドミスマッチを伴って、ヒトDMPKをコードする内因性RNA転写物に対してアニーリングしてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、干渉RNAは、siRNA、shRNA、又はU6 miRNAのようなmiRNAである。miRNAは、例えば、内因性ヒトmiR-30a核酸配列に基づいて、標的mRNA(例えば、本明細書に記載の標的mRNA)との相補性のために必要に応じて1以上の核酸置換を有するものであってもよい。miRNAの場合、核酸は、例えば、成熟miRNAをコードするpri-miRNA転写物を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、成熟miRNAをコードするpre-miRNA転写物を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、干渉RNAは、筋細胞又はニューロンにおける干渉RNAの発現を誘導するプロモーターに動作可能に連結している。プロモーターは、例えば、デスミンプロモーター、PGKプロモーター、筋クレアチンキナーゼプロモーター、ミオシン軽鎖プロモーター、ミオシン重鎖プロモーター、心臓トロポニンCプロモーター、トロポニンIプロモーター、myoD遺伝子ファミリープロモーター、アクチンアルファプロモーター、アクチンベータプロモーター、アクチンガンマプロモーター、又はオキュラーPITX3のイントロン1内のプロモーターであってもよい。
【0040】
さらなる態様において、本発明は、上記の態様又は実施形態のいずれかの核酸を含むベクターを特徴とする。ベクターは、例えば、AAV(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh10、又はAAVrh74セロタイプ、又はAAV2/8又はAAV/29ベクターのような偽型AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、バキュロウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、又は合成ウイルス(例えば、キメラウイルス、モザイクウイルス、又は偽型ウイルス、及び/又は外来蛋白質、合成ポリマー、ナノ粒子、又は小分子を含む合成ウイルス)であってもよく、1つ以上の組換えキャプシド蛋白質を含んでもよい。
【0041】
さらに別の態様では、本発明は、上記の態様又は実施形態のいずれかの核酸を含む組成物を特徴とする。この組成物は、例えば、リポソーム、ベシクル、合成ベシクル、エクソソーム、合成エクソソーム、デンドリマー、又はナノ粒子であってもよい。
【0042】
別の態様において、本発明は、上記のいずれかの態様又は実施形態の核酸を含む医薬組成物を特徴とする。医薬組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤をさらに含んでもよい。
【0043】
さらなる態様において、本発明は、(例えば、スプライシングがマッスルブラインド様蛋白質の活性によって部分的に調節されるmRNA転写物の)スプライスオパシーの発生を、それを必要とするヒト患者などの患者において減少させる方法を特徴とする。方法は、治療上有効な量の上記の態様又は実施形態のいずれかのベクター又は組成物を患者に投与することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、患者は筋強直性ジストロフィーを有する。患者へのベクター又は組成物の投与時に、患者はマッスルブラインド様蛋白質の1つ以上のRNA転写基質のコレクティブスプライシングの増加を示し得る。
【0044】
別の態様において、本発明は、治療的に有効な量上記の態様又は実施形態のいずれかのベクター又は組成物を患者に投与することによる、ヒト患者などのそれを必要とする患者の拡張リピート領域を含むRNAの核内保持を特徴とする障害の治療方法を特徴とする。障害は、例えば、筋強直性ジストロフィーであってもよく、核内保持RNAは、DMPK RNAであってもよい。いくつかの実施形態では、障害は、筋萎縮性側索硬化症であり、核内保持RNAは、C9ORF72 RNAである。
【0045】
患者へのベクター又は組成物の投与時に、患者はマッスルブラインド様蛋白質の1つ以上のRNA転写基質のコレクティブスプライシングの増加を示し得る。例えば、患者へのベクター又は組成物の投与時に、患者は、例えば、本明細書に記載のRNA又は蛋白質検出法を用いて評価される、エクソン22を含むサルコプラズミック/エンドプラズミックカルシウムATPase 1(SERCA1)mRNAの発現の増加、例えば、約1.1倍〜約10倍、又はそれより大きい増加(例えば、約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.1倍、3.2倍、3.3倍、3.4倍、3.5倍、3.6倍、3.7倍、3.8倍、3.9倍、4倍、4.1倍、4.2倍、4.3倍、4.4倍、4.5倍、4.6倍、4.7倍、4.8倍、4.9倍、5倍、5.1倍、5.2倍、5.3倍、5.4倍、5.5倍、5.6倍、5.7倍、5.8倍、5.9倍、6倍、6.1倍、6.2倍、6.3倍、6.4倍、6.5倍、6.6倍、6.7倍、6.8倍、6.9倍、7倍、7.1倍、7.2倍、7.3倍、7.4倍、7.5倍、7.6倍、7.7倍、7.8倍、7.9倍、8倍、8.1倍、8.2倍、8.3倍、8.4倍、8.5倍、8.6倍、8.7倍、8.8倍、8.9倍、9倍、9.1倍、9.2倍、9.3倍、9.4倍、9.5倍、9.6倍、9.7倍、9.8倍、9.9倍、10倍又はそれより大きい倍数のエクソン22を含むSERCA1 mRNAの発現の増加)を示し得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、患者へのベクター又は組成物の投与時に、患者は、例えば、本明細書に記載のRNA又は蛋白質検出法を用いて評価される、エクソン7aを含むクロリドボルテージゲートチャネル1(CLCN1)mRNAの発現の減少、例えば、約1%〜約100%の減少(例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のエクソン7aを含むCLCN1 mRNAの発現の減少)を示し得る。
【0047】
例えば、患者へのベクター又は組成物の投与時に、患者は、例えば、本明細書に記載のRNA又は蛋白質検出法を用いて評価される、エクソン11を含むZO-2関連スペックル蛋白質(ZASP)の発現の減少、例えば、約1%〜約100%の減少(例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のエクソン11を含むZASP mRNAの発現の減少)を示し得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、患者へのベクター又は組成物の投与時に、患者は、例えば、本明細書に記載のRNA又は蛋白質検出法を用いて評価される、インスリン受容体、リアノジン受容体1(RYR1)、心筋トロポニン、及び/又は骨格筋トロポニンをコードするRNA転写物のコレクティブスプライシングの増加、例えば、約1.1倍〜約10倍、又はそれより大きい増加(例えば、約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.1倍、3.2倍、3.3倍、3.4倍、3.5倍、3.6倍、3.7倍、3.8倍、3.9倍、4倍、4.1倍、4.2倍、4.3倍、4.4倍、4.5倍、4.6倍、4.7倍、4.8倍、4.9倍、5倍、5.1倍、5.2倍、5.3倍、5.4倍、5.5倍、5.6倍、5.7倍、5.8倍、5.9倍、6倍、6.1倍、6.2倍、6.3倍、6.4倍、6.5倍、6.6倍、6.7倍、6.8倍、6.9倍、7倍、7.1倍、7.2倍、7.3倍、7.4倍、7.5倍、7.6倍、7.7倍、7.8倍、7.9倍、8倍、8.1倍、8.2倍、8.3倍、8.4倍、8.5倍、8.6倍、8.7倍、8.8倍、8.9倍、9倍、9.1倍、9.2倍、9.3倍、9.4倍、9.5倍、9.6倍、9.7倍、9.8倍、9.9倍、10倍又はそれより大きい倍数のインスリン受容体、RYR1、心筋トロポニン、及び/又は骨格筋トロポニンをコードするコレクティブスプライシングされたRNA転写物の増加)を示す。
【0049】
前述の2つの態様のいずれかにおけるいくつかの実施形態では、ベクター又は組成物は、静脈内、イントラセカル、イントラセレブロベントリキュラー、イントラパレンチマル、イントラシスターナル、皮内、経皮、非経口、筋肉内、鼻腔内、皮下、パーキュタネアス、気管内、腹腔内、動脈内、血管内、吸入、パーフュージョン、ラバージ、又は経口投与の方法で患者に投与される。
【0050】
別の態様において、本発明は、上記の態様又は実施形態のいずれかのベクター又は組成物を含むキットを特徴とする。キットは、スプライシングがマッスルブラインド様蛋白質の活性によって部分的に調節されるmRNA転写物のスプライスオパシーのような、患者におけるスプライスオパシーの発生を減少させるためにベクター又は組成物を患者に投与するようにキットの使用者に指示するパッケージインサートをさらに含んでもよい。
【0051】
さらなる態様において、本発明は、上記の態様又は実施形態のいずれかのベクター又は組成物、及び拡張リピート領域を含むRNAの核内保持を特徴とする障害を治療するために、患者におけるスプライスオパシーの発生を減少させるために、キットの使用者にベクター又は組成物を患者に投与するように指示するパッケージインサートを含むキットを特徴とする。障害は、例えば、筋強直性ジストロフィーであってもよく、核内保持RNAはDMPK RNAであってもよい。いくつかの実施形態では、障害は筋萎縮性側索硬化症であり、核内保持RNAはC9ORF72 RNAである。
【0052】
定義
本明細書で使用される用語「約」は、記載されている値の上又は下の10%以内の値を指す。例えば、「約100個の核酸残基」というフレーズは、90〜110個の核酸残基の値を指す。
【0053】
本明細書で使用される「アニーリング」という用語は、鎖間水素結合によって媒介されるハイブリダイゼーションの方法によって、例えば、ワトソン-クリック塩基対合に従って、核酸の安定なデュプレックスを形成することを指す。デュプレックスの核酸は、例えば、互いに少なくとも50%相補的(例えば、互いに約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)であってもよい。ある核酸の別の核酸へのアニーリング時に形成される「安定なデュプレックス」は、ストリンジェントな洗浄によって変性されないデュプレックス構造である。例示的なストリンジェントな洗浄条件は、当技術分野で知られており、デュプレックスの個々の鎖の融解温度よりも約5℃未満の温度、及び0.2M未満の一価塩濃度(例えば、NaCl濃度)(例えば、0.2M、0.19M、0.18M、0.17M、0.16M、0.15M、0.14M、0.13M、0.12M、0.11M、0.1M、0.09M、0.08M、0.07M、0.06M、0.05M、0.04M、0.03M、0.02M、0.01M、又はそれ未満)のような低濃度の一価塩を含む。本明細書で使用される「保存的変異」、「保存的置換」、又は「保存的アミノ酸置換」という用語は、極性、静電荷、及びステリックボリュームのような類似の物理化学的特性を示す1つ以上の異なるアミノ酸への1つ以上のアミノ酸の置換を指す。以下の表1に天然に存在する20種類のアミノ酸のそれぞれについてまとめた。
【表1】
【0054】
この表から、保存的アミノ酸ファミリーは、例えば、(i)G、A、V、L、I、P、及びM、(ii)D及びE、(iii)C、S及びT、(iv)H、K及びR、(iv)N及びQ、及び(vi)F、Y及びWを含むことが理解される。保存的変異又は置換とは、1つのアミノ酸を同じアミノ酸ファミリーのメンバーで置換するものである(例えば、SerのThrへの置換、LysのArgへの置換)。
【0055】
本明細書で使用される用語「ジストロフィアミオトニカプロテインキナーゼ」及びその略語「DMPK」は、例えば、ヒト対象における骨格筋構造及び機能の調節に関与するセリン/スレオニンキナーゼ蛋白質を指す。用語「ジストロフィアミオトニカプロテインキナーゼ」及び「DMPK」は、本明細書において言い換え可能なものとして使用され、DMPK遺伝子の野生型の形態だけでなく、野生型DMPK蛋白質の変異体及びそれをコードする核酸も指す。ヒトDMPK mRNAの2つのアイソフォームの核酸配列は、それぞれGenBankアクセッションNos: BC026328.1、及びBC062553.1に対応する配列番号1及び2として本明細書に提供される(3'UTRは含まれない)。これらの核酸配列を以下の表2に示す。
【表2】
【0056】
本明細書で使用される「ジストロフィアミオトニカプロテインキナーゼ」及び「DMPK」という用語は、例えば、配列番号1又は配列番号2の核酸配列に対して少なくとも85%同一(例えば、配列番号1又は配列番号2の核酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%同一)である核酸配列を有するヒトDMPK遺伝子の形態、及び/又は野生型DMPK蛋白質に対して1つ以上(例えば、25個まで)の保存的なアミノ酸置換を有するDMPK蛋白質をコードするヒトDMPK遺伝子の形態を含む。本明細書で使用される用語「ジストロフィアミオトニカプロテインキナーゼ」及び「DMPK」は、さらに、野生型DMPK mRNA転写物のCUGトリヌクレオチドリピート領域の長さに対して、拡張されたCUGトリヌクレオチドリピート領域を含むDMPK RNA転写物を含む。拡張リピート領域は、例えば、約50個以上のCUGトリヌクレオチドリピート、例えば、約50個〜約4000個のCUGトリヌクレオチドリピート(例えば、特に、約50個のCUGトリヌクレオチドリピート、約60個のCUGトリヌクレオチドリピート、約70個のトリヌクレオチドリピート、80個のトリヌクレオチドリピート、90個のトリヌクレオチドリピート、100個のトリヌクレオチドリピート、110個のトリヌクレオチドリピート、120個のトリヌクレオチドリピート、130個のトリヌクレオチドリピート、140個のトリヌクレオチドリピート、150個のトリヌクレオチドリピート、160個のトリヌクレオチドリピート、170個のトリヌクレオチドリピート、180個のトリヌクレオチドリピート、190個のトリヌクレオチドリピート、200個のトリヌクレオチドリピート、210個のトリヌクレオチドリピート、220個のトリヌクレオチドリピート、230個のトリヌクレオチドリピート、240個のトリヌクレオチドリピート、250個のトリヌクレオチドリピート、260個のトリヌクレオチドリピート、270個のトリヌクレオチドリピート、280個のトリヌクレオチドリピート、290個のトリヌクレオチドリピート、300個のトリヌクレオチドリピート、310個のトリヌクレオチドリピート、320個のトリヌクレオチドリピート、330個のトリヌクレオチドリピート、340個のトリヌクレオチドリピート、350個のトリヌクレオチドリピート、360個のトリヌクレオチドリピート、370個のトリヌクレオチドリピート、380個のトリヌクレオチドリピート、390個のトリヌクレオチドリピート、400個のトリヌクレオチドリピート、410個のトリヌクレオチドリピート、420個のトリヌクレオチドリピート、430個のトリヌクレオチドリピート、440個のトリヌクレオチドリピート、450個のトリヌクレオチドリピート、460個のトリヌクレオチドリピート、470個のトリヌクレオチドリピート、480個のトリヌクレオチドリピート、490個のトリヌクレオチドリピート、500個のトリヌクレオチドリピート、510個のトリヌクレオチドリピート、520個のトリヌクレオチドリピート、530個のトリヌクレオチドリピート、540個のトリヌクレオチドリピート、550個のトリヌクレオチドリピート、560個のトリヌクレオチドリピート、570個のトリヌクレオチドリピート、580個のトリヌクレオチドリピート、590個のトリヌクレオチドリピート、600個のトリヌクレオチドリピート、610個のトリヌクレオチドリピート、620個のトリヌクレオチドリピート、630個のトリヌクレオチドリピート、640個のトリヌクレオチドリピート、650個のトリヌクレオチドリピート、660個のトリヌクレオチドリピート、670個のトリヌクレオチドリピート、680個のトリヌクレオチドリピート、690個のトリヌクレオチドリピート、700個のトリヌクレオチドリピート、710個のトリヌクレオチドリピート、720個のトリヌクレオチドリピート、730個のトリヌクレオチドリピート、740個のトリヌクレオチドリピート、750個のトリヌクレオチドリピート、760個のトリヌクレオチドリピート、770個のトリヌクレオチドリピート、780個のトリヌクレオチドリピート、790個のトリヌクレオチドリピート、800個のトリヌクレオチドリピート、810個のトリヌクレオチドリピート、820個のトリヌクレオチドリピート、830個のトリヌクレオチドリピート、840個のトリヌクレオチドリピート、850個のトリヌクレオチドリピート、860個のトリヌクレオチドリピート、870個のトリヌクレオチドリピート、880個のトリヌクレオチドリピート、890個のトリヌクレオチドリピート、900個のトリヌクレオチドリピート、910個のトリヌクレオチドリピート、920個のトリヌクレオチドリピート、930個のトリヌクレオチドリピート、940個のトリヌクレオチドリピート、950個のトリヌクレオチドリピート、960個のトリヌクレオチドリピート、970個のトリヌクレオチドリピート、980個のトリヌクレオチドリピート、990個のトリヌクレオチドリピート、1,000個のトリヌクレオチドリピート、1,100個のトリヌクレオチドリピート、1,200個のトリヌクレオチドリピート、1,300個のトリヌクレオチドリピート、1,400個のトリヌクレオチドリピート、1,500個のトリヌクレオチドリピート、1,600個のトリヌクレオチドリピート、1,700個のトリヌクレオチドリピート、1,800個のトリヌクレオチドリピート、1,900個のトリヌクレオチドリピート、2,000個のトリヌクレオチドリピート、2,100個のトリヌクレオチドリピート、2,200個のトリヌクレオチドリピート、2,300個のトリヌクレオチドリピート、2,400個のトリヌクレオチドリピート、2,500個のトリヌクレオチドリピート、2,600個のトリヌクレオチドリピート、2,700個のトリヌクレオチドリピート、2,800個のトリヌクレオチドリピート、2,900個のトリヌクレオチドリピート、3,000個のトリヌクレオチドリピート、3,100個のトリヌクレオチドリピート、3,200個のトリヌクレオチドリピート、3,300個のトリヌクレオチドリピート、3,400個のトリヌクレオチドリピート、3,500個のトリヌクレオチドリピート、3,600個のトリヌクレオチドリピート、3,700個のトリヌクレオチドリピート、3,800個のトリヌクレオチドリピート、3,900個のトリヌクレオチドリピート、又は4,000個のトリヌクレオチドリピート)を含んでもよい。
【0057】
本明細書で使用される「干渉RNA」という用語は、(i)標的RNA転写物にアニーリングし、それにより核酸デュプレックスを形成する、及び(ii)RNA転写体のヌクラーゼ媒介分解を促進する、及び/又は(iii)機能性リボソーム-RNA転写物複合体の形成を立体的に防止するか、そうでなければ標的RNA転写物からの機能性蛋白質産物の形成を弱めることによるなど、RNA転写物の翻訳を遅らせる、阻害する、又は防止する方法により、標的RNA転写物の発現を抑制するショートインターフェアリングRNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、又はショートヘアピンRNA(shRNA)のようなRNAを意味する。本明細書に記載の干渉RNAは、例えば、一本鎖又は二本鎖オリゴヌクレオチドの形態で、又は干渉RNAをコードするトランスジーンを含むベクター(例えば、本明細書に記載のアデノ随伴ウイルスベクターのようなウイルスベクター)の形態で、筋強直性ジストロフィーを有するヒト患者などの患者に提供されてもよい。例示的な干渉RNAプラットフォームは、例えば、Lam et al., Molecular Therapy - Nucleic Acids 4:e252 (2015); Rao et al., Advanced Drug Delivery Reviews 61:746-769 (2009); 及びBorel et al., Molecular Therapy 22:692-701 (2014)に記載されており、それらの各開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
本明細書で使用される核酸の「長さ」は、核酸の5'末端から3'末端までのヌクレオチドの量を測定することによって評価される核酸の直線的なサイズを指す。対象の核酸の長さを決定するために使用され得る例示的な分子生物学的技術は、当技術分野で知られている。
【0059】
本明細書で使用される用語「筋強直性ジストロフィー」は、DMPKをコードし、50〜4,000個のCUGリピートを有する拡張CUGトリヌクレオチドリピート領域のような、3'非翻訳領域(UTR)に拡張CUGトリヌクレオチドリピート領域を含むRNA転写物の核内保持を特徴とする、遺伝性筋消耗性障害を指す。対照的に、野生型RMPK RNA転写物は、典型的には、3'UTR中に5〜37のCUGリピートを含む。筋強直性ジストロフィーを有する患者において、拡張CUGリピート領域は、マッスルブラインド様蛋白質のようなRNA結合スプライシング因子と相互作用する。この相互作用により、変異体転写物は核病巣(nuclear foci)に保持され、RNA結合蛋白質が他のpre-mRNA基質から離れて隔離され、その結果、筋肉構造と機能の調節に関与する蛋白質のスプライスオパシーが促進される。I型筋強直性ジストロフィー(DM1)では、骨格筋が最も重篤な影響を受ける組織であることが多いが、この疾患は心筋や平滑筋、オキュラーレンズ、及び脳にも毒性の影響を与える。頭蓋筋、四肢遠位筋及び横隔膜筋が優先的に影響を受ける。早期に手先の器用さが損なわれ、数十年に及ぶ重度の障害を引き起こす。筋強直性ジストロフィー患者の死亡時の年齢の中央値は55歳であり、これは典型的には、呼吸不全によって生じる(de Die-Smulders C E, et al., Brain 121:1557-1563 (1998))。
【0060】
本明細書で使用される「動作可能に連結」という用語は、第一の分子(例えば、第一の核酸)が第二の分子(例えば、第二の核酸)に連結されたものを指す。ここで、分子は、第一の分子が第二の分子の機能に影響を与えるように配置されている。2つの分子は、単一の連続した分子の一部であっても、そうでなくてもよく、互いに隣接していても、そうでなくてもよい。例えば、プロモーターは、プロモーターが細胞内で関心のある転写可能なポリヌクレオチド分子の転写を調節する場合、転写可能なポリヌクレオチド分子に動作可能に連結される。さらに、転写制御エレメントの2つの部分は、一方の部分の転写活性化機能が他方の部分の存在によって悪影響を受けないように接合されている場合、互いに動作可能に連結される。2つの転写制御エレメントは、リンカー核酸(例えば、介在するノンコーディング化核酸)を介して互いに動作可能に連結されていてもよく、又は介在するヌクレオチドが存在しない状態で互いに動作可能に連結されていてもよい。
【0061】
本明細書で使用される核酸分子の1つのセグメントは、2つのセグメントが1つ以上の構成ヌクレオチドを共有する場合、同じ核酸分子の別のセグメントと「重なる」と考えられる。例えば、同じ核酸分子の2つのセグメントは、2つのセグメントが1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、又はそれ以上の構成ヌクレオチドを共有する場合、互いに「重なる」と考えられる。2つのセグメントの共通の構成ヌクレオチドが0である場合、2つのセグメントは互いに「重なる」とはみなされない。
【0062】
参照ポリヌクレオチド配列に関する「パーセント(%)配列相補性」は、最大パーセントの配列相補性を達成するために配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入した後、参照ポリヌクレオチド配列中の核酸に相補的である候補配列中の核酸のパーセントとして定義される。所与のヌクレオチドは、2つのヌクレオチドがカノニカルワトソン-クリック塩基対を形成する場合、本明細書に記載されるような参照ヌクレオチドに対して「相補的」であると考えられる。疑問を避けるために、本明細書の開示の文脈におけるワトソン-クリック塩基対は、アデニン-チミン、アデニン-ウラシル、及びシトシン-グアニン塩基対を含む。適切なワトソン-クリック塩基対は、本明細書の開示の文脈では「一致」と呼ばれ、一方、各不対のヌクレオチド、及び各不正確に対になったヌクレオチドは、「ミスマッチ」と呼ばれる。パーセント核酸配列相補性を決定する目的でのアラインメントは、当業者の能力の範囲内である様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、又はMegalignソフトウェアのような公に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成できる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大の相補性を達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメータを決定できる。例示として、所与の核酸配列Aの所与の核酸配列Bに対するパーセント配列相補性(これは、代替的に、所与の核酸配列Bに対する一定のパーセント相補性を有する所与の核酸配列Aと表現できる)は、以下のように計算される。100×(X/Yの割合)
ここで、Xは、A及びBのそのプログラムのアラインメントにおける(例えば、BLASTのようなコンピュータソフトウェアによって実行される)アライメントの相補的な塩基対の数であり、ここで、Yは、Bの核酸の総数である。核酸配列Aの長さが核酸配列Bの長さと等しくない場合、AからBへのパーセント配列相補性はBからAへのパーセント配列相補性と等しくないことが理解され得る。本明細書で使用されるクエリー核酸配列は、クエリー核酸配列が参照核酸配列に対して100%の配列相補性を有する場合、参照核酸配列に対して「完全に相補的」であると考えられる。
【0063】
参照ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列に関する「パーセント(%)配列同一性」は、最大パーセントの配列同一性を達成するために配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入した後、参照ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列中の核酸又はアミノ酸と同一である候補配列中の核酸又はアミノ酸のパーセントとして定義される。パーセント核酸又はアミノ酸配列同一性を決定する目的でのアラインメントは、当業者の能力の範囲内である様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、又はMegalignソフトウェアのような公に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成できる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントのための適切なパラメータを決定できる。例えば、パーセント配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムBLASTを使用して生成できる。例示として、所与の核酸又はアミノ酸配列Aの所与の核酸又はアミノ酸配列Bに対するパーセント配列同一性(これは、代替的に、所与の核酸又はアミノ酸配列Bに対する一定のパーセント同一性を有する所与の核酸又はアミノ酸配列Aと表現できる)は、以下のように計算される。100×(X/Yの割合)
ここで、Xは、A及びBのそのプログラムのアラインメントにおける配列アライメントプログラム(例えば、BLAST)によって同一性一致としてスコア付けされたヌクレオチド又はアミノ酸の数であり、ここで、Yは、Bの核酸の総数である。核酸又はアミノ酸配列Aの長さが核酸又はアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AからBへのパーセント配列同一性はBからAへのパーセント配列同一性と等しくないことが理解され得る。
【0064】
本明細書で使用される「医薬組成物」という用語は、本明細書に記載された核酸又はベクターのような治療剤を含む混合物を意味し、任意に1種以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、及び/又は担体と組み合わせて、対象者に影響を与える、又は影響を与え得る特定の疾患又は状態を予防、治療、又はコントロールするために、対象者、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトに投与できる。
【0065】
本明細書で使用される「薬剤学的に許容される」という用語は、過剰な毒性、刺激性、アレルギー反応及びその他の問題のある合併症を伴わない、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)のような対象の組織との接触に適した化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を意味し、妥当な利益/リスク比に見合ったものである。
【0066】
本明細書で使用される用語「リピート領域」は、ヒトDMPK遺伝子の3'UTR中のポリCTG配列(又はそのRNA転写物の3'UTR中のポリCUG配列)のような核酸リピートを含む、対象の遺伝子又はそのRNA転写物内のセグメントを指す。リピート領域のヌクレオチド繰り返しの数が、遺伝子又はそのRNA転写物の野生型のリピート領域に通常見られる繰り返しの量を超える場合、リピート領域は、「拡張リピート領域」、「リピート拡張」又はそのようなものであると考えられる。例えば、野生型ヒトDMPK遺伝子の3'UTRは、典型的には5〜37個のCTG又はCUGリピートを含む。DMPK遺伝子又はそのRNA転写体の文脈での「拡張リピート領域」及び「リピート拡張」は、従って、約50〜約4000個のCUGトリヌクレオチドリピート(例えば、特に、約50個のCUGトリヌクレオチドリピート、約60個のCUGトリヌクレオチドリピート、約70個のトリヌクレオチドリピート、80個のトリヌクレオチドリピート、90個のトリヌクレオチドリピート、100個のトリヌクレオチドリピート、110個のトリヌクレオチドリピート、120個のトリヌクレオチドリピート、130個のトリヌクレオチドリピート、140個のトリヌクレオチドリピート、150個のトリヌクレオチドリピート、160個のトリヌクレオチドリピート、170個のトリヌクレオチドリピート、180個のトリヌクレオチドリピート、190個のトリヌクレオチドリピート、200個のトリヌクレオチドリピート、210個のトリヌクレオチドリピート、220個のトリヌクレオチドリピート、230個のトリヌクレオチドリピート、240個のトリヌクレオチドリピート、250個のトリヌクレオチドリピート、260個のトリヌクレオチドリピート、270個のトリヌクレオチドリピート、280個のトリヌクレオチドリピート、290個のトリヌクレオチドリピート、300個のトリヌクレオチドリピート、310個のトリヌクレオチドリピート、320個のトリヌクレオチドリピート、330個のトリヌクレオチドリピート、340個のトリヌクレオチドリピート、350個のトリヌクレオチドリピート、360個のトリヌクレオチドリピート、370個のトリヌクレオチドリピート、380個のトリヌクレオチドリピート、390個のトリヌクレオチドリピート、400個のトリヌクレオチドリピート、410個のトリヌクレオチドリピート、420個のトリヌクレオチドリピート、430個のトリヌクレオチドリピート、440個のトリヌクレオチドリピート、450個のトリヌクレオチドリピート、460個のトリヌクレオチドリピート、470個のトリヌクレオチドリピート、480個のトリヌクレオチドリピート、490個のトリヌクレオチドリピート、500個のトリヌクレオチドリピート、510個のトリヌクレオチドリピート、520個のトリヌクレオチドリピート、530個のトリヌクレオチドリピート、540個のトリヌクレオチドリピート、550個のトリヌクレオチドリピート、560個のトリヌクレオチドリピート、570個のトリヌクレオチドリピート、580個のトリヌクレオチドリピート、590個のトリヌクレオチドリピート、600個のトリヌクレオチドリピート、610個のトリヌクレオチドリピート、620個のトリヌクレオチドリピート、630個のトリヌクレオチドリピート、640個のトリヌクレオチドリピート、650個のトリヌクレオチドリピート、660個のトリヌクレオチドリピート、670個のトリヌクレオチドリピート、680個のトリヌクレオチドリピート、690個のトリヌクレオチドリピート、700個のトリヌクレオチドリピート、710個のトリヌクレオチドリピート、720個のトリヌクレオチドリピート、730個のトリヌクレオチドリピート、740個のトリヌクレオチドリピート、750個のトリヌクレオチドリピート、760個のトリヌクレオチドリピート、770個のトリヌクレオチドリピート、780個のトリヌクレオチドリピート、790個のトリヌクレオチドリピート、800個のトリヌクレオチドリピート、810個のトリヌクレオチドリピート、820個のトリヌクレオチドリピート、830個のトリヌクレオチドリピート、840個のトリヌクレオチドリピート、850個のトリヌクレオチドリピート、860個のトリヌクレオチドリピート、870個のトリヌクレオチドリピート、880個のトリヌクレオチドリピート、890個のトリヌクレオチドリピート、900個のトリヌクレオチドリピート、910個のトリヌクレオチドリピート、920個のトリヌクレオチドリピート、930個のトリヌクレオチドリピート、940個のトリヌクレオチドリピート、950個のトリヌクレオチドリピート、960個のトリヌクレオチドリピート、970個のトリヌクレオチドリピート、980個のトリヌクレオチドリピート、990個のトリヌクレオチドリピート、1,000個のトリヌクレオチドリピート、1,100個のトリヌクレオチドリピート、1,200個のトリヌクレオチドリピート、1,300個のトリヌクレオチドリピート、1,400個のトリヌクレオチドリピート、1,500個のトリヌクレオチドリピート、1,600個のトリヌクレオチドリピート、1,700個のトリヌクレオチドリピート、1,800個のトリヌクレオチドリピート、1,900個のトリヌクレオチドリピート、2,000個のトリヌクレオチドリピート、2,100個のトリヌクレオチドリピート、2,200個のトリヌクレオチドリピート、2,300個のトリヌクレオチドリピート、2,400個のトリヌクレオチドリピート、2,500個のトリヌクレオチドリピート、2,600個のトリヌクレオチドリピート、2,700個のトリヌクレオチドリピート、2,800個のトリヌクレオチドリピート、2,900個のトリヌクレオチドリピート、3,000個のトリヌクレオチドリピート、3,100個のトリヌクレオチドリピート、3,200個のトリヌクレオチドリピート、3,300個のトリヌクレオチドリピート、3,400個のトリヌクレオチドリピート、3,500個のトリヌクレオチドリピート、3,600個のトリヌクレオチドリピート、3,700個のトリヌクレオチドリピート、3,800個のトリヌクレオチドリピート、3,900個のトリヌクレオチドリピート、or 4,000個のトリヌクレオチドリピート)のような、37個超のCTG又はCUGリピートを含むリピート領域を意味する。
【0067】
本明細書で使用される用語「RNAドミナンス」とは、対象のRNA転写物の野生型によって含まれるリピート領域が存在する場合にはその量に関連して、拡張リピート領域を含むRNA転写物の発現及び核内保持によって誘導される病的状態を指す。RNAドミナンスの毒性効果は、例えば、病的変異体RNA転写物の拡張リピート領域とスプライシング因子蛋白質との間の結合相互作用の発現であり、これは、pre-mRNA転写物から離れたスプライシング因子の隔離を促進し、それにより、そのような基質の間でスプライスオパシーを生じさせる。RNAドミナンスに関連する例示的な障害は、特に、本明細書に記載される筋強直性ジストロフィー及び筋萎縮性側索硬化症である。
【0068】
本明細書で使用される用語「サンプル」は、対象から単離された検体(例えば、血液、血液成分(例えば、血清又は血漿)、尿、唾液、羊水、脳脊髄液、組織(例えば、胎盤又は皮膚)、膵液、絨毛膜絨毛サンプル、又は細胞)を指す。対象は、例えば、遺伝性筋消耗性疾患(例えば、筋強直性ジストロフィー(例えば、I型筋強直性ジストロフィー)のような筋ジストロフィー)のような、本明細書に記載された疾患に罹患している患者であってもよい。
【0069】
本明細書で使用される「特異的に結合する」及び「結合する」という用語は、イオン、塩、小分子、及び/又は蛋白質の不均一な集団の中で、例えば、RNA結合スプライシング因子蛋白質のようなリガンド又は受容体によって認識される、RNA転写物のような特定の分子の存在を特に決定する結合反応を指す。種(例えば、RNA転写物)に特異的に結合するリガンド(例えば、本明細書に記載のRNA結合蛋白質)は、例えば、1mM未満のK
Dで種に結合してもよい。例えば、種に特異的に結合するリガンドは、100μMまでのK
D(例えば、1pMと100μMの間)で種に結合してもよい。他の分子に特異的な結合を示さないリガンドは、その特定の分子又はイオンに対して、1mMを超える(例えば、1μM、100μM、500μM、1mM、又はそれを超える)K
Dを示してもよい。特定の蛋白質に対するリガンドの親和性を決定するために、様々なアッセイ形式が使用され得る。例えば、固相ELISAアッセイは、標的蛋白質を特異的に結合するリガンドを同定するために日常的に使用される。特定の蛋白質の結合を決定するために使用できるアッセイフォーマット及び条件の説明については、例えば、Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, New York (1988)及びHarlow & Lane, Using Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, New York (1999)を参照。
【0070】
本明細書で使用される用語「スプライスオパシー」とは、対象のmRNA転写物の野生型と比較して、1つ以上の代替スプライス産物の発現をもたらすmRNA転写物のスプライスパターンの変化を指す。スプライスオパシーは、例えば、mRNA転写物が、コード化された蛋白質の活性に必要な1つ以上のエクソンが翻訳時にmRNA転写物中にもはや存在しないような方法でスプライスされている場合に、機能の毒性損失につながり得る。さらに、又は代替的に、機能の毒性損失は、例えば、コード化された蛋白質の適切なフォールディングを妨げるような方法で、1つ以上のイントロンの異常なインクルージョンによって生じ得る。
【0071】
本明細書で使用される用語「対象」及び「患者」は、本明細書に記載されるような特定の疾患又は状態(例えば、遺伝性筋消耗性障害、例えば、筋強直性ジストロフィー)に対する治療を受ける生物を指す。対象及び患者の例は、本明細書に記載される疾患又は状態に対する治療を受ける哺乳動物、例えば、ヒトを含む。
【0072】
本明細書で使用される用語「転写制御エレメント」は、対象の遺伝子の転写を少なくとも部分的に制御する核酸を指す。転写制御エレメントは、遺伝子の転写を制御又は制御を助けるプロモーター、エンハンサー、及び他の核酸(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含んでもよい。転写制御エレメントの例は、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185 (Academic Press, San Diego, CA, 1990)に記載されている。
【0073】
本明細書で使用される用語「治療(treat)」又は「治療(treatment)」は、治療的処置を意味し、その場合、目的は、遺伝性筋衰弱性障害、例えば、筋強直性ジストロフィー、特にI型筋強直性ジストロフィーの進行などの望ましくない生理学的変化又は障害を防止又は遅らせる(減少させる)ことである。筋強直性ジストロフィー治療の文脈において、治療の成功を示す有益な又は所望の臨床結果には、限定されないが、検出可能であるか検出不可能であるかどうかにかかわらず、症状の緩和、疾患の範囲の減少、疾患の安定化(即ち、悪化しない)状態、疾患の進行の遅延又は遅化、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的又は全体的であるかどうかにかかわらず)を含む。筋強直性ジストロフィー(例えば、I型筋強直性ジストロフィー)を有する患者の治療は、拡張CUGトリヌクレオチドリピート領域を含むDMPK RNA転写物の発現の減少のような、1つ以上の検出可能な変化で顕在化し得る(例えば、本明細書に記載のベクター又は核酸のような治療剤の投与前の患者の拡張CUGトリヌクレオチドリピート領域を含むDMPK RNA転写物の発現に対する1%以上(例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の減少)の拡張CUGトリヌクレオチドリピート領域を含むDMPK RNA転写物の発現の減少)。RNA発現レベルを評価するために使用できる方法は、当技術分野で知られており、本明細書に記載されているRNA-seqアッセイ及びポリメラーゼ連鎖反応技術を含む。CPVT患者の治療が成功した場合の追加の臨床的兆候は、例えば、マッスルブラインド様蛋白質に依存する方法でスプライスされたRNA転写物のスプライスオパシーの緩和を含む。例えば、筋強直性ジストロフィーを有する患者の治療成功のシグナルとなる観察は、本明細書に記載の治療剤のような治療剤の投与に続いて、患者がマッスルブラインド様蛋白質の1つ以上のRNA転写物基質のコレクティブスプライシングの増加を示すという所見を含む。例えば、筋強直性ジストロフィーの治療が成功したことを示す指標は、例えば、本明細書に記載のRNA又は蛋白質検出法を用いて評価される、患者がエクソン22を含むサルコプラズミック/エンドプラズミックカルシウムATPase 1 (SERCA1) mRNAの発現の増加、例えば、約1.1倍〜約10倍の増加、又はそれより大きい増加(例えば、約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.1倍、3.2倍、3.3倍、3.4倍、3.5倍、3.6倍、3.7倍、3.8倍、3.9倍、4倍、4.1倍、4.2倍、4.3倍、4.4倍、4.5倍、4.6倍、4.7倍、4.8倍、4.9倍、5倍、5.1倍、5.2倍、5.3倍、5.4倍、5.5倍、5.6倍、5.7倍、5.8倍、5.9倍、6倍、6.1倍、6.2倍、6.3倍、6.4倍、6.5倍、6.6倍、6.7倍、6.8倍、6.9倍、7倍、7.1倍、7.2倍、7.3倍、7.4倍、7.5倍、7.6倍、7.7倍、7.8倍、7.9倍、8倍、8.1倍、8.2倍、8.3倍、8.4倍、8.5倍、8.6倍、8.7倍、8.8倍、8.9倍、9倍、9.1倍、9.2倍、9.3倍、9.4倍、9.5倍、9.6倍、9.7倍、9.8倍、9.9倍、10倍、又はそれより大きいエクソン22を含むSERCA1 mRNAの発現の増加)を示すという観測を含む。また、筋強直性ジストロフィーの治療は、例えば、本明細書に記載のRNA又は蛋白質検出法を用いて評価される、エクソン7aを含むクロリドボルテージゲートチャネル1(CLCN1)mRNAの発現の減少、例えば、約1%〜約100%の減少(例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のエクソン7aを含むCLCN1 mRNAの発現の減少)として現れてもよい。さらに、治療の成功は、例えば、本明細書に記載のRNA又は蛋白質検出法を用いて評価される、患者がエクソン11を含むZO-2関連スペックル蛋白質(ZASP)の発現の減少、例えば、約1%〜約100%の減少(例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のエクソン11を含むZASP mRNAの発現の減少)を示すことの測定によって示されてもよい。また、筋強直性ジストロフィーの治療の成功は、本明細書に記載のRNA又は蛋白質検出法を用いて評価される、治療後に、患者がインスリン受容体、リアノジン受容体1(RYR1)、心筋トロポニン、及び/又は骨格筋トロポニンをコードするRNA転写物のコレクティブスプライシングの増加、例えば、約1.1倍〜約10倍、又はそれより大きい増加(例えば、約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.1倍、3.2倍、3.3倍、3.4倍、3.5倍、3.6倍、3.7倍、3.8倍、3.9倍、4倍、4.1倍、4.2倍、4.3倍、4.4倍、4.5倍、4.6倍、4.7倍、4.8倍、4.9倍、5倍、5.1倍、5.2倍、5.3倍、5.4倍、5.5倍、5.6倍、5.7倍、5.8倍、5.9倍、6倍、6.1倍、6.2倍、6.3倍、6.4倍、6.5倍、6.6倍、6.7倍、6.8倍、6.9倍、7倍、7.1倍、7.2倍、7.3倍、7.4倍、7.5倍、7.6倍、7.7倍、7.8倍、7.9倍、8倍、8.1倍、8.2倍、8.3倍、8.4倍、8.5倍、8.6倍、8.7倍、8.8倍、8.9倍、9倍、9.1倍、9.2倍、9.3倍、9.4倍、9.5倍、9.6倍、9.7倍、9.8倍、9.9倍、10倍、又はそれより大きいインスリン受容体、RYR1、心筋トロポニン、及び/又は骨格筋トロポニンをコードするコレクティブスプライスされたRNA転写物の発現の増加)を示すという所見によって示され得る。筋強直性ジストロフィーの治療が成功した場合の追加の臨床兆候は、頭蓋筋、四肢遠位筋及び横隔膜筋のような筋機能の改善を含む。
【0074】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、コードされたトランスジーンを発現する目的で、細胞(例えば、ヒト細胞などの哺乳類細胞)、組織、器官、又は本明細書に記載される疾患又は状態に対する治療を受けている患者のような生物への対象の遺伝子の送達のためのビヒクルとして機能し得る核酸、例えば、DNA又はRNAを指す。本明細書に記載の組成物及び方法と関連して有用な例示的なベクターは、プラスミド、DNAベクター、RNAベクター、ビリオン、又は他の適切なレプリコン(例えば、ウイルスベクター)である。外因性蛋白質をコードするポリヌクレオチドを原核生物又は真核生物細胞に送達するために、様々なベクターが開発されてきた。そのような発現ベクターの例は、例えば、WO 1994/11026に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載された発現ベクターは、ポリヌクレオチド配列だけでなく、例えば、蛋白質の発現及び/又はそのポリヌクレオチド配列の哺乳類細胞のゲノムへの組み込みに使用される追加の配列要素を含む。本明細書に記載されたトランスジーンの発現に使用できる特定のベクターは、遺伝子の転写を導くプロモーター領域及びエンハンサー領域のような制御配列を含むプラスミドを含む。トランスジーンを発現させるための他の有用なベクターは、遺伝子の翻訳速度を高める、又は遺伝子転写で得られるmRNAの安定性又は核エクスポートを改善するポリヌクレオチド配列を含む。これらの配列要素は、発現ベクターに担持された遺伝子の効率的な転写を導くために、例えば、5'及び3'未翻訳領域、内部リボソームエントリーサイト(IRES)、ポリアデニル化シグナルサイトを含む。また、本明細書に記載の発現ベクターはそのようなベクターを含む細胞を選択するためのマーカーをコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。好適なマーカーの例としては、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、又はノーセオトリシンのような抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子を含む。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】
図1は、エクソンの構成(斜線の長方形ボックスで表される)及びCUGトリヌクレオチドリピート領域の部位を含む、ヒトジストロフィアミオトニカプロテインキナーゼ(DMPK)RNAの構造を示す図である。図の下部に沿った600〜12,600までの数値は、DMPK RNA転写物の長さに従ったヌクレオチド位置を示す。この図は、本明細書に記載された様々な例示的な干渉RNAコンストラクトが配列相補性の手段でアニーリングするDMPK RNA転写物内の領域を示す。
【
図2A-2C】
図2A〜2Cは、RNAドミナンスに関連するもののような対象のいくつかの遺伝子を標的とする干渉RNA分子をコードするrAAVベクター(rAAV-RNAiベクター)の第3世代の概略を示す図である。rAAVプラスミドpARAP4は、ラウスサルコーマウイルス(RSV)プロモーターから発現されるヒトアルカリホスファターゼレポーター遺伝子(Hu Alk Phos)レポーター遺伝子と、SV40ポリアデニル化配列pAとを含む。インバーテッドターミナルリピート(ITR)はrAAV2に由来し、ゲノムはrAAV6カプシドにパッケージングされている。最新のベクター改変は、筋肉細胞毒性のためにより高用量でのrAAV-RNAiの有効性を制限したHu Alk Phos発現を防ぐために、RSVプロモーター配列を除去する。
【
図3A】
図3Aは、筋強直性ジストロフィーのようなRNAドミナンス障害のマウスモデルへのrAAV-RNAiベクターの例示的な投与経路を示す図である。
【
図3B-3C】
図3B及び3Cは、I型筋強直性ジストロフィー(DM1)及びこの疾患のマウスHSA
LRモデルの様々な特徴を比較する図である。HSA
LRマウスは、ヒトのDMに類似した筋強直性ジストロフィーの特徴を示す。HSA
LRトランスジーンは、ヒト骨格アクチン(HSA)遺伝子の3'UTRに(CTG)
250リピートを挿入したものである。このトランスジーンをマウス骨格筋で発現させると、ミオトニー放電(myotonic discharge)が明らかになり、様々なmRNAにスプライシング変化が生じ、拡張トランスジーンmRNAとスプライシング因子を含む核病巣が存在することになる。
【
図4】
図4は、後述の実施例1に記載のrAAV6 HSA miR DM10を導入したHSA
LRマウスの特徴を示す図である。ヒト胎盤アルカリホスファターゼ(AP)染色は、活性レポーター遺伝子発現を伴うウイルスゲノムの存在を示す。処置したマウスからの低温切片のH&E染色。時期、注射後8週間、4週齢のHSA
LRマウス。
【
図5A-5B】
図5A及び5Bは、後述の実施例1に記載のように形質転換された7匹の個々のHSA
LRマウスにおけるHSA mRNA及びHSA miRDM10の発現を定量化したグラフである。示されたmRNA発現は、rAAV注入8週間後のqPCRにより評価した。
【
図6A-6E】
図6A〜6Eは、後述の実施例1に記載されるように、rAAV6 HSA miR DM10の全身注射が、前脛骨筋(TA)におけるAtp2a (SERCA1)及びCLCN1のスプライシングを改善することを示す図である。対照的に、別のRNAiヘアピン、miR DM4は、これらのスプライシング欠陥を逆転させるほど効果的ではない。
【
図7A-7C】
図7A〜7Cは、in vivoで評価された再設計rAAV-miR DM10及び-miR DM4の構造及び活性を示す図である。以前に試験されたAlk Phos発現ベクターと比較した遺伝子サイレンシングの有効性を評価するためのHu Alk Phos発現を阻止するためのRSVプロモーターを含まないベクターの筋肉内注射。
図7Aは、
図7Bのゲル上でラベル付けされた「新DM10」及び「新DM4」としての、RSVプロモーター配列を欠くrAAVゲノムの模式図である。
図7Bは、Alk Phosを発現する「旧DM10」と比較した、「新DM10」及び「新DM4」のTA筋へのIM注入後のAtp2a1/Serca1のためのスプライシングパターンの分析を示す。L=低用量の5x10
9ベクターゲノム。H=高用量の5x10
10ベクターゲノム。-はRSVプロモーターを含まない。+はベクターゲノム中にRSVが存在する。高用量を選択したのは、Hu Alk Phosを発現するベクターのIM注入を伴う中心核(CN)の存在によって特徴付けられるようないくらかの筋肉再生を誘発したためである。しかしながら、RSVを欠いたrAAV DM10である新DM10及び新DM4の高用量では、筋肉のターンオーバーの証拠は観察されなかった。
【
図8A】
図8Aは、DMPK標的miRNAを発現する精製プラスミドをHEK293細胞にトランスフェクトし、RNAを単離し、RISC複合体によるDMPK転写物エンゲージメント及びDicer切断を評価するためにRT-qPCRに供した方法を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、U6 DMPK miRNAsの遺伝子サイレンシング活性の評価を示すグラフである。候補の治療用miRNA発現カセットa及びbは、1.5μgのプラスミドDNAでHEK293細胞をトランスフェクションした48時間後に、miRNA発現カセットを持たないプラスミドと比較して、内因性DMPK mRNAの減少を示した。プラスミド及びコントロールごとに8個の生物学的レプリケートをアッセイした。x軸の「a」は、配列番号42の核酸配列を有するパッセンジャー鎖及び配列番号79の核酸配列を有するガイド鎖を含むmiRNAを表す。「b」は、配列番号44の核酸配列を有するパッセンジャー鎖及び配列番号81の核酸配列を有するガイド鎖を含むmiRNAを表す。「c」は、配列番号46の核酸配列を有するパッセンジャー鎖及び配列番号83の核酸配列を有するガイド鎖を含むmiRNAを表す。「d」は、配列番号47の核酸配列を有するパッセンジャー鎖及び配列番号84の核酸配列を有するガイド鎖を含むmiRNAを表す。「なし」は、抗DMPK miRNAで処理されていない細胞を表す。
【
図9】
図9は、後述の実施例4に記載されているような、HEK293細胞におけるDMPK発現をダウンレギュレートするための、本明細書に記載されている様々なsiRNA分子の能力を示すグラフである。y軸の値は、ノーマライズドDMPK発現を表し、x軸は、試験された抗DMPK siRNA分子を示す。x軸上の第一のエントリは、HEK293細胞をトランスフェクションビヒクルのみで処理した場合に対応し、x軸上の第二のエントリは、ネガティブコントロールとしてスクランブル核酸配列を有するsiRNAで処理した場合に対応する。特定の配列番号を有するsiRNA分子は、本明細書に、例えば、後述の表4に記載されている。「抗DMPK」の後に英数字の識別子が続くラベルを付したsiRNA分子は、Thermo Fisher Scientificから市販されている。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本明細書に記載の組成物及び方法は、スプライスオパシーの発生を減少させるため、及び特に筋強直性ジストロフィー及び筋萎縮性側索硬化症のようなリボ核酸(RNA)ドミナンスに関連する障害を治療するために有用である。本明細書に記載の組成物は、異常な拡張リピート領域を含むRNA転写物の発現を抑制する干渉RNAコンストラクトを含む核酸を含む。そのようなリピート拡張を有する種々のRNA転写物はRNAスプライシング因子に対する高いアビディティを示すため、その活性は重要な生理学的利益を提供する。このアビディティはRNAスプライシング因子を他のpre-mRNA基質から遠ざけて隔離することで、転写物の適切なスプライシングを阻害することになる。メカニズムは限定されないが、本明細書に記載された組成物は、拡張ヌクレオチドリピートを有するRNA転写物の発現を減少させ、それによって様々な他のpre-mRNA転写物のスプライシングを適切に制御できるように隔離されたスプライシング因子を解放することによって、病態を改善し得る。例えば、本明細書に記載の組成物及び方法は、拡張CUGトリヌクレオチドリピート領域を含むジストロフィアミオトニカプロテインキナーゼ(DMPK)RNA転写物の発現に関連する筋強直性ジストロフィーのような障害を治療するために使用してもよい。同様に、本明細書に記載の組成物及び方法は、GGGGCC(配列番号162)ヘキサヌクレオチドリピートを含むC9ORF72 RNA転写物の発現の上昇を特徴とする、筋萎縮性側索硬化症を治療するために使用できる。
【0077】
本明細書に記載される干渉RNAコンストラクトは、ショートインターフェアリングRNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、又はマイクロRNA(miRNA)のような任意の様々な形態であってもよい。本明細書に記載される干渉RNAは、追加的に、ウイルスベクターのようなベクターにコードされていてもよい。例えば、本明細書の開示は、偽型AAVベクター(例えば、AAV2/8及びAAV2/9ベクター)のようなアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであり、このベクターは、拡張ヌクレオチドリピートを有するRNA転写物の発現を減少させる干渉RNAコンストラクトをコードするトランスジーンを含む。
【0078】
本明細書に記載の組成物及び方法は、他の利点の中でも、拡張ヌクレオチドリピート領域を有する他のRNAの中で、病的RNA転写物の発現を選択的に抑制できるという有利な特徴を提供する。この特性は、ヒト患者のゲノムなどの哺乳類ゲノムにおけるヌクレオチドリピートの有病率を考慮すると、特に有益である。本明細書に記載された組成物及び方法を使用して、病的ヌクレオチドリピート拡張を含むRNA転写物の発現を減少させ、一方で、重要な健康なRNA転写物及びそのコードされた蛋白質産物の発現を維持できる。
【0079】
この有利な特徴は、部分的には、拡張リピート領域から離れた部位でリピート拡張RNA標的にアニーリングする干渉RNAコンストラクトが、RNA転写物の発現を抑制し、そうでなければこれらの分子によって隔離されるであろうスプライシング因子蛋白質を解放するために使用され得るという驚くべき発見に基づくものである。従って、本明細書に記載の組成物及び方法は、相補的なヌクレオチドリピートモチーフを含む必要なしに、病的RNA転写物の発現及び核内保持を減少させることができる。
【0080】
以下のセクションは、本明細書に記載の組成物及び方法と組み合わせて使用され得る例示的な干渉RNAコンストラクトの説明、並びにそのようなコンストラクトをコードするベクターの説明、及び筋強直性ジストロフィー及び筋萎縮性側索硬化症のようなスプライスオパシーに関連する障害を治療するために使用され得る手順の説明を提供する。
【0081】
RNAドミナンスの治療方法及びスプライスオパシーの修正方法
本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、スプライスオパシーを経験している患者及び/又は筋強直性ジストロフィーのようなRNAドミナンスに関連する疾患を有する患者へ、拡張リピート領域を含むRNA転写物の発現を減少させるように、干渉RNAコンストラクト又はそれをコードするベクターを含む核酸を投与できる。メカニズムは限定されないが、この活性は、病的RNA転写物のリピート拡張領域に高いアビディティで結合するRNA結合蛋白質を解放するという有益な効果を提供する。このようなRNA結合蛋白質の解放は重要であり、リピート拡張RNA転写物に結合して隔離された蛋白質は、典型的には、様々なpre-mRNA転写物の適切なスプライシングを調節するために利用可能であり得るスプライシング因子を含む。筋強直性ジストロフィーのようなRNAドミナンス障害を有する患者において、筋機能の制御において重要な役割を有する蛋白質をコードする様々な転写物のスプライシングを制御するマッスルブラインド様蛋白質のようなスプライシング因子は、重要なpre-mRNA基質から隔離されている。本明細書に記載の組成物及び方法は、拡張ヌクレオチドリピート領域を含むRNA転写物の分解を促進し、それによってそのような転写物からの重要なRNA結合蛋白質の解放を効果的に行うことによって、RNAドミナンス障害を治療できる。
【0082】
I型筋強直性ジストロフィー
I型筋強直性ジストロフィーは、成人の筋ジストロフィーの中で最も一般的な形態であり、7,500人に1人の頻度で発症すると推定されている(Harper P S., Myotonic Dystrophy. London: W.B. Saunders Company; 2001)。この疾患は、ヒトDMPK1遺伝子のノンコーディングCTGリピートの拡張によって生じる常染色体優性疾患である。DMPK1は、細胞質性セリン/スレオニンキナーゼをコードする遺伝子である(Brook et al., Cell. 68:799-808 (1992))。拡張CTGリピートは、DMPK1の3′非翻訳領域(UTR)に位置する。この変異は、拡張CTGリピート(CUGexp)を含むRNAの発現が細胞の機能不全を誘導するプロセスであるRNAドミナンスを導く(Osborne R J and Thornton C A., Human Molecular Genetics. 15:R162-R169 (2006))。
【0083】
大きなCUGリピートを有するDMPK mRNAの変異型は、完全に転写され、ポリアデニル化されるが、核内に捕捉されたままである(Davis et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 94:7388-7393 (1997))。これらの変異型の核内保持mRNAは、I型筋強直性ジストロフィーの最も重要な病理学的特徴の一つである。DMPK遺伝子は、典型的には、3′UTRに約5〜約37個のCTGリピートを有する。I型筋強直性ジストロフィーにおいては、この数は著しく拡張され、例えば、50回から4,000回を超えるリピートがあり得る。続くRNA転写物中のCUGexpトラクトは、マッスルブラインド様蛋白質を含むRNA結合スプライシング因子蛋白質と相互作用する。拡張CUGリピート領域によって生じる増強されたアビディティは、変異体転写物が核病巣でそのようなスプライシング因子蛋白質が保持される原因となる。この変異体RNAの毒性は、筋機能の制御に重要な役割を持つ蛋白質をコードするものを含む、他のpre-mRNA基質からRNA結合性スプライシング因子蛋白質を隔離することに起因する。
【0084】
I型筋強直性ジストロフィーでは、骨格筋が最も重篤な影響を受ける組織であるが、心筋や平滑筋、オキュラーレンズ、脳にも重要な影響を及ぼす。筋組織の中でも、頭蓋筋、四肢遠位筋、横隔膜筋が優先的に影響を受けることが多い。早期に手先の器用さが損なわれ、数十年に及ぶ重度の障害を引き起こす。死亡時の年齢の中央値は55歳であり、通常は呼吸不全によるものである(de Die-Smulders C E, et al., Brain 121(Pt 8):1557-1563 (1998))。筋強直性ジストロフィーの症状としては、限定されないが、ミオトニア、筋肉のこわばり、ディセイブリングディスタルウィークネス、顔と顎の筋肉の衰弱、嚥下困難、まぶたの垂れ下がり(眼瞼下垂)、首の筋肉の衰弱、腕と脚の筋肉の衰弱、持続的な筋肉痛、過眠症、筋肉疲労、嚥下障害、呼吸不全、不整脈、心筋損傷、アパシー、インスリン抵抗性、及び白内障を含む。また、子どもの場合の症状は、発達の遅れ、学習障害、言語及び発話障害、人格発達障害を含んでもよい。
【0085】
病原性DMPK転写物
本明細書に記載の組成物及び方法を用いて治療できる筋強直性ジストロフィー患者は、例えば、I型筋強直性ジストロフィーを有し、CUGリピート拡張を有するDMPK RNA転写物を発現するヒト患者などの患者を含む。本明細書に記載の組成物及び方法による治療を受けている患者によって発現され得る例示的なDMPK RNA転写物は、GenBankアクセッションNos NM_001081560.1, NT_011109.15 (ヌクレオチド18540696〜18555106), NT_039413.7 (ヌクレオチド16666001〜16681000), NM_032418.1, AI007148.1, AI304033.1, BC024150.1, BC056615.1, BC075715.1, BU519245.1, CB247909.1, CX208906.1, CX732022.1, 560315.1, 560316.1, NM_001081562.1, 及びNM_001100.3で示される。
【0086】
病的DMPK RNA発現の抑制
本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、筋強直性ジストロフィー(例えば、I型筋強直性ジストロフィー)に罹患している患者などの患者に、病的なDMPK mRNA転写物にアニーリングして発現を抑制する干渉RNAをコードするベクター、又はそれを含む組成物を投与してもよい。本明細書に記載の組成物及び方法は、約50〜約4,000、又はそれより多くのCUGリピートを含むDMPK mRNA転写物のような拡張CUGリピートを含むDMPK mRNA転写物の発現を選択的に減少させてもよい。例えば、本明細書に記載された干渉RNA分子は、CUGリピート拡張を有する核内保持DMPK転写物を特異的に分解する核内リボヌクレアーゼなどのリボヌクレアーゼを活性化してもよい。変異体DMPK mRNA発現の減少は、例えば、本明細書に記載のベクター又は核酸のような本明細書に記載の治療剤を投与する前の患者における、拡張されたCUGトリヌクレオチドリピート領域を含むDMPK mRNA転写物の発現に対して、例えば、約1%以上、例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の減少であってもよい。RNA発現レベルを評価するために使用できる方法は、当技術分野で知られており、本明細書に記載のRNA-seqアッセイ及びポリメラーゼ連鎖反応技術を含む。
【0087】
スプライスオパシーの修正
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物及び方法は、筋強直性ジストロフィー(例えば、I型筋強直性ジストロフィー)に罹患している患者などの患者における1つ以上のスプライスオパシーを修正するために使用できる。メカニズムは限定されないが、本明細書に記載された干渉RNA分子の、病的DMPK転写物(例えば、拡張CUGリピート領域を含むDMPK転写物)にアニーリングし、その発現を抑制する能力は、そうでなければCUGリピートに結合する方法によって隔離されて得るマッスルブラインド様蛋白質などのスプライシング因子を解放し得る。そして、このスプライシング因子の解放は、スプライシング因子の1つ以上のRNA転写物基質のコレクティブスプライシングを効果的に生じさせる。例えば、患者への筋強直性ジストロフィーを罹患した患者にベクター又は組成物の投与時、その患者は、例えば、前脛骨筋、腓腹筋、及び/又は大腿四頭筋において、エクソン22を含むサルコプラズミック/エンドプラズミックカルシウムATPase 1(SERCA1)mRNAの発現の増加を示し得る。エクソン22を含むSERCA1 mRNA転写物の発現の増加は、例えば、約1.1倍〜約10倍、又はそれより大きい増加(例えば、約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.1倍、3.2倍、3.3倍、3.4倍、3.5倍、3.6倍、3.7倍、3.8倍、3.9倍、4倍、4.1倍、4.2倍、4.3倍、4.4倍、4.5倍、4.6倍、4.7倍、4.8倍、4.9倍、5倍、5.1倍、5.2倍、5.3倍、5.4倍、5.5倍、5.6倍、5.7倍、5.8倍、5.9倍、6倍、6.1倍、6.2倍、6.3倍、6.4倍、6.5倍、6.6倍、6.7倍、6.8倍、6.9倍、7倍、7.1倍、7.2倍、7.3倍、7.4倍、7.5倍、7.6倍、7.7倍、7.8倍、7.9倍、8倍、8.1倍、8.2倍、8.3倍、8.4倍、8.5倍、8.6倍、8.7倍、8.8倍、8.9倍、9倍、9.1倍、9.2倍、9.3倍、9.4倍、9.5倍、9.6倍、9.7倍、9.8倍、9.9倍、10倍、又はそれより大きい倍数のエクソン22を含むSERCA1 mRNAの発現の増加)であってもよい。これは、例えば、本明細書に記載のRNA又は蛋白質検出法を用いて評価される。
【0088】
いくつかの実施形態では、筋強直性ジストロフィーを罹患する患者への本明細書に記載のベクター又は組成物の投与時に、患者は、例えば、前脛骨筋、腓腹筋、及び/又は大腿四頭筋において、エクソン7aを含むクロリドボルテージゲートチャネル1(CLCN1)mRNAの発現の減少を示し得る。エクソン7aを含むCLCN1 mRNA転写物の発現の減少は、例えば、約1%〜約100%の減少(例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のエクソン7aを含むCLCN1 mRNAの発現の減少)であってもよい。これは、例えば、本明細書に記載のRNA又は蛋白質検出法を用いて評価される。
【0089】
追加的又は代替的に、筋強直性ジストロフィーに罹患する患者への本明細書に記載のベクター又は組成物の投与時に、患者は、例えば、前脛骨筋、腓腹筋、及び/又は大腿四頭筋において、エクソン11を含むZO-2関連スペックル蛋白質(ZASP)の発現の減少を示し得る。エクソン11を含むZASP mRNA転写物の発現の減少は、例えば、約1%〜約100%の減少(例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のエクソン11を含むZASP mRNAの発現の減少)であってもよい。これは、例えば、本明細書に記載のRNA又は蛋白質検出法を用いて評価される。
【0090】
追加的又は代替的に、筋強直性ジストロフィーに罹患する患者への本明細書に記載のベクター又は組成物の投与時に、患者は、インスリン受容体、リアノジン受容体1(RYR1)、心筋トロポニン、及び/又は骨格筋トロポニンをコードするRNA転写物のコレクティブスプライシングの増加、例えば、約1.1倍〜約10倍の増加、又はそれより大きい増加(例えば、約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.1倍、3.2倍、3.3倍、3.4倍、3.5倍、3.6倍、3.7倍、3.8倍、3.9倍、4倍、4.1倍、4.2倍、4.3倍、4.4倍、4.5倍、4.6倍、4.7倍、4.8倍、4.9倍、5倍、5.1倍、5.2倍、5.3倍、5.4倍、5.5倍、5.6倍、5.7倍、5.8倍、5.9倍、6倍、6.1倍、6.2倍、6.3倍、6.4倍、6.5倍、6.6倍、6.7倍、6.8倍、6.9倍、7倍、7.1倍、7.2倍、7.3倍、7.4倍、7.5倍、7.6倍、7.7倍、7.8倍、7.9倍、8倍、8.1倍、8.2倍、8.3倍、8.4倍、8.5倍、8.6倍、8.7倍、8.8倍、8.9倍、9倍、9.1倍、9.2倍、9.3倍、9.4倍、9.5倍、9.6倍、9.7倍、9.8倍、9.9倍、10倍、又はそれより大きい倍数のインスリン受容体、RYR1、心筋トロポニン、及び/又は骨格筋トロポニンをコードするコレクティブスプライスされたRNA転写物の発現の増加。)を示してもよい。これは、例えば、本明細書に記載のRNA又は蛋白質検出法を用いて評価される。
【0091】
筋機能の改善
本明細書に記載された組成物及び方法の有益な治療効果、例えば、本明細書に記載された干渉RNA分子及びそれをコードするベクターの能力が、(i)病的DMPK RNA発現を抑制し、及び/又は(ii)筋機能制御に関与する蛋白質のコレクティブスプライシングを回復させることが、様々な方法で臨床的に現れ得る。例えば、I型筋強直性ジストロフィーなどの筋強直性ジストロフィーを有する患者において、頭蓋筋、四肢遠位筋、及び/又は横隔膜筋機能の改善を示し得る。筋機能の改善は、例えば、筋量、筋収縮の頻度、及び/又は筋収縮の大きさの増加として観察され得る。例えば、本明細書に記載の組成物及び方法を使用したとき、筋強直性ジストロフィー(例えば、I型筋強直性ジストロフィー)に罹患している患者は、頭蓋筋、四肢遠位筋、及び/又は横隔膜筋の筋肉量、筋収縮の頻度、及び/又は筋収縮の大きさの増加を示してもよい。筋量、筋収縮の頻度、及び/又は筋収縮の大きさの増加は、例えば、1%以上の増加、例えば、1%〜25%、1%〜50%、1%〜75%、1%〜100%、1%〜500%、1%〜1000%、又はそれより大きい割合の増加、例えば、約1%、5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、80%、900%、1,000%、又はそれより大きい割合の筋肉量、筋収縮の頻度、及び/又は筋収縮の大きさの増加であってもよい。
【0092】
特に、筋強直性ジストロフィー(例えば、I型筋強直性ジストロフィー)を有する患者において、本明細書に記載された干渉RNA分子、及びそれをコードするベクターの有益な治療効果は、ミオトニアの減少として顕在化し得る。従って、本明細書に記載の組成物及び方法を用いて、筋強直性ジストロフィー(例えば、I型筋強直性ジストロフィー)を有する患者に、筋弛緩を促進及び/又は早めるために、本明細書に記載の干渉RNA分子又はそれをコードするベクターを投与してもよい。例えば、本明細書に記載の組成物及び方法は、塩化物イオン濃度の変動に起因する自発的活動電位の発現を抑制することにより、筋弛緩を促進するために使用され得る。メカニズムは限定されないが、この有益な活性は、例えば、患者におけるエクソン7aを含むCLCN1 mRNAの発現が減少するような、CLCN1 mRNAのコレクティブスプライシングの回復によって引き起こされてもよい。CLCN1チャネル蛋白質は塩化物イオン濃度を調節しているため、CLCN1 mRNA転写物のスプライシングパターンを修正することにより、自発的活動電位の低下や筋弛緩速度の改善がもたらされ、ミオトニアが改善され得る。
【0093】
ミオトニアの抑制は、当技術分野で知られている様々な技術を用いて評価することができ、例えば、筋電図法を用いて評価できる。特に、左右の大腿四頭筋、左右の腓腹筋、左右の前脛骨筋、及び/又は腰部傍脊柱筋の筋電図は、筋強直性ジストロフィーを有するヒト患者などの患者におけるミオトニアに対する本明細書に記載された組成物及び方法の効果を評価するために実施できる。筋電図プロトコルは、例えば、Kanadia et al., Science 302:1978-1980 (2003)に記載されている。例えば、筋電図は、30ゲージの同心針電極を用いて、各筋肉に対して最低10本の針を挿入して実施してもよい。このようにして、ヒト患者又はモデル生物(例えば、本明細書に記載される筋ジストロフィーのマウスモデル)のような対象について、平均ミオトニアグレードが決定されてもよい。次に、このグレードを、本明細書に記載の治療剤(例えば、干渉RNA分子又はそれをコードするベクター)の投与前に決定された患者又はモデル生物の平均ミオトニアグレードと比較できる。治療剤の投与後に平均ミオトニアグレードが減少したという所見は、筋強直性ジストロフィーの治療が成功したことを示す指標として、及びミオトニアの症状の改善が成功したことを示す指標として役立ち得る。
【0094】
筋強直性ジストロフィーの追加症状の改善
本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、I型筋強直性ジストロフィーなどの筋強直性ジストロフィーを有する患者に、筋強直性ジストロフィーの1つ以上の症状を減衰させるか、又は完全に除去するように、干渉RNA分子又はそれをコードするベクターを投与できる。上述したミオトニアとは別に、筋強直性ジストロフィーの症状としては、限定されないが、筋肉のこわばり、ディセイブリングディスタルウィークネス、顔と顎の筋肉の衰弱、嚥下困難、眼瞼下垂、首の筋肉の衰弱、腕と脚の筋肉の衰弱、持続的な筋肉痛、過眠症、筋肉疲労、嚥下障害、呼吸不全、不整脈、心筋損傷、アパシー、インスリン抵抗性、及び白内障を含む。また、子どもの場合の症状は、発達の遅れ、学習障害、言語及び発話障害、人格発達障害を含んでもよい。本明細書に記載された組成物及び方法は、前記症状の1つ以上又はすべてを緩和するために使用され得る。
【0095】
治療効果の持続
本明細書に記載された組成物及び方法は、長期間持続し得る有益な臨床効果を提供する。例えば、本明細書に記載の1つ以上の干渉RNA分子、及び/又はそれをコードするベクターを使用して、筋強直性ジストロフィー(例えば、I型筋強直性ジストロフィー)を有する患者において、(i)病的DMPK RNA発現の減少(例えば、約50〜約4,000回のCUGリピートを有するDMPK RNAの発現の減少)、(ii)筋肉機能の改善(例えば、頭蓋筋、四肢遠位筋、及び横隔膜筋における、例えば、筋肉量及び/又は筋肉活性の改善)、及び/又は(iiii)筋強直性ジストロフィーの1つ以上の症状の緩和を、1日以上、数週間、数ヶ月、又は数年の期間にわたって示し得る。例えば、本明細書に記載の組成物及び方法を使用した本明細書に記載の有益な治療効果は、少なくとも30日、少なくとも35日、少なくとも40日、少なくとも45日、少なくとも50日、少なくとも55日、少なくとも60日、少なくとも65日、少なくとも70日、少なくとも75日、少なくとも76日、少なくとも77日、少なくとも78日、少なくとも79日、少なくとも80日、少なくとも85日、少なくとも90日、少なくとも95日、少なくとも100日、少なくとも105日、少なくとも110日、少なくとも115日、少なくとも120日、又は少なくとも1年の期間にわたって達成され得る。
【0096】
筋強直性ジストロフィーのマウスモデル
本明細書に記載の干渉RNA分子又はそれをコードするベクターの治療効果を調べるために、適切なマウスモデルを利用できる。例えば、HSA(ヒト骨格アクチン)
LR(ロングリピート)マウスモデルは、I型筋強直性ジストロフィーの確立されたモデルである(例えば、Mankodi et al., Science 289:1769 (2000)を参照。この開示は、HSA
LRマウスに関連するものとして参照により本明細書に組み込まれる)。このマウスは、拡張CTG領域を含むヒト骨格アクチン(hACTA1)トランスジーンを担持している。特に、HSA
LRマウスのhACTA1トランスジーンは、遺伝子の3′ UTRに挿入された220個のCTGリピートを含む。転写に伴い、hACTA1-CUGexp RNA転写物は、骨格筋の核病巣に蓄積し、ヒトI型筋強直性ジストロフィーで観察されるものに類似したミオトニアをもたらす。これは、例えば、CUGリピート拡張がスプライシング因子に結合し、筋機能を制御する上で重要な役割を果たす遺伝子をコードするpre-mRNA転写物からスプライシング因子が隔離されることに起因する(例えば、Mankodi et al., Mol. Cell 10:35 (2002), and Lin et al., Hum. Mol. Genet. 15:2087 (2006)を参照。各々の開示は、HSA
LRマウスに関連するものとして参照により本明細書に組み込まれる)。従って、CUG拡張リピート領域を有するhACTA1 RNA転写物の発現の抑制によるHSA
LRマウスにおけるI型筋強直性ジストロフィー症状の改善は、病的DMPK RNA転写物の発現の抑制によるヒト患者における同様の症状の改善の予測因子であり得る。HSA
LR I型筋強直性ジストロフィーマウスは、例えば、ヒト骨格アクチンの3′ UTRに250個のCUGリピートを有するhACTA1トランスジーンのFVB/Nマウスのゲノムへの挿入によって、当技術分野で知られている方法を用いて作製できる。続いて、このトランスジーンは、hACTA1 RNA中のCUGリピート拡張RNAとしてマウスに発現される。このリピート拡張RNAは、核内に保持され、筋強直性ジストロフィー患者のヒト組織サンプルで観察されたものに類似した核インクルージョンを形成する。
【0097】
上述したように、HSA
LRマウスモデルにおいて、核内での拡張CUG RNAの蓄積は、マッスルブラインド様蛋白質などのポリ(CUG)結合スプライシング因子蛋白質の隔離を導く(Miller et al., EMBO J. 19:4439 (2000))。SERCA1遺伝子の代替スプライシングを制御するこのスプライシング因子は、そのため、HSA
LRマウスの拡張CUG病巣内に隔離される。この隔離は、SERCA1遺伝子の代替スプライシングの制御障害を誘発する。本明細書に記載の干渉RNA分子、及び/又はそれをコードするベクターの治療効果を評価するために、組成物は、hACTA1 RNA転写物の領域、例えば、CUGリピート拡張から遠位の部位にアニーリングするように設計してもよい。これは、例えば、CUGリピート拡張領域と重ならないhACTA1 RNAのセグメントに少なくとも85%相補的(例えば、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は100%相補的)である干渉RNA分子を設計することによって達成されてもよい。リピート拡張hACTA1 RNAの抑制、及びそれに伴うコレクティブスプライスされたSERCA1 mRNA(及び、そのため、機能的SERCA1蛋白質)の増加は、当技術分野で知られており、本明細書に記載されているRNA及び蛋白質検出方法を用いて評価できる。例えば、病的hACTA1 RNAにアニーリングし、その発現を抑制するように設計された干渉RNA分子の投与に続いて、コレクティブスプライスされたSERCA1 mRNA転写物(例えば、エクソン22を含むSERCA1 mRNA転写物)の発現の増加をモニターするために、トータルRNAを、製造元の指示に従い、RNeasy Lipid Tissue Mini Kit (Qiagen
(R))を用いて、HSA
LRマウスの前脛骨筋、腓腹筋、大腿四頭筋の1つ以上、又は全ての部位から精製できる。RT-PCRは、例えば、SuperScript III One-Step RT-PCRシステム及びPlatinum Taqポリメラーゼ(Invitrogen
(R))を用いて、cDNA合成及びPCR増幅のための遺伝子特異的プライマーを用いて行うことができる。SERCA1のフォワード及びリバースプライマーは、例えば、Bennett and Swayze, Annu Rev. Pharmacol. 50:259-293 (2010)に記載されている。PCR産物は、アガロースゲル上で分離し、SybrGreen I Nucleic Acid Gel Stain (Invitrogen
(R))で染色し、Fujifilm LAS-3000 Intelligent Dark Boxを用いて画像化できる。干渉RNA分子又はそれをコードするベクターによるSERCA1遺伝子のコレクティブスプライシングの回復は、例えば、HSA
LRマウスの前脛骨筋、腓腹筋、及び/又は大腿四頭筋において、ヒトDMPK RNA上の類似部位にアニーリングする干渉RNA分子又はそれをコードするベクターの治療効果を予測するものであり得る。
【0098】
筋強直性ジストロフィーの追加のマウスモデルは、ヒトDMPK 3′UTR全体を含むトランスジェニックマウスであるLC15マウス、ラインAを含む(Wheelerら、ロチェスター大学によって開発された)。このマウスは、FVBバックグラウンドにバッククロスされた第二世代のマウスである。DMPKトランスジーンは、このマウスにおいて、DMPK RNA転写物中のCUGリピートとして発現され、核内に保持され、それにより、筋強直性ジストロフィー患者のヒト組織サンプルにおいて観察されるものに類似した核インクルージョンを形成する。LC15マウスは、約350〜約400のCUGリピートを含むDMPK RNA転写物を発現し得る。このマウスは、I型筋強直性ジストロフィーの初期徴候を示し、筋組織にはミオトニアを示さない。
【0099】
本明細書に記載の干渉RNA分子又はそれをコードするベクターの治療効果を評価するために使用され得る筋強直性ジストロフィーの別のマウスモデルは、DMSXLモデルである。DMSXLマウスは、高いレベルのCTGリピート不安定性を有するマウスの連続的な交配の方法によって生成され、その結果、DMSXLマウスは、3'UTR中に>1,000個のCUGトリヌクレオチドリピートを含むDMPK RNA転写物を発現する。DMSXLマウス及びその作製方法は、例えば、Gomes-Pereira et al., PLoS Genet. 3:e52 (2007), and Huguet et al., A, PLoS Genet. 8:e1003043 (2012)に詳細に記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
リピート拡張RNAの核内保持によって特徴づけられる追加の障害
I型筋強直性ジストロフィーに加えて、拡張リピート領域を有するRNA転写物の発現及び核内保持を特徴とし、本明細書に記載の組成物及び方法を用いて治療され得る障害には、特にII型筋強直性ジストロフィー及び筋萎縮性側索硬化症を含む。II型筋強直性ジストロフィーの場合、患者は、CCUG(配列番号164)リピート拡張を有する細胞核酸結合蛋白質(CNBP)遺伝子(ジンクフィンガー蛋白質9(ZNF9)遺伝子としても知られている)の変異体バージョンを発現してもよい。筋萎縮性側索硬化症を有する患者の場合、患者は、拡張GGGGCC(配列番号162)リピートを有するC9ORF72の変異体バージョンを発現し得る。C9ORF72 mRNAのいくつかのアイソフォームの核酸配列を以下の表3に示す。全ての例において、これらの障害を有する患者は、変異RNA転写物にアニーリングしてその発現を抑制し、それにより、通常は他の基質に結合するであろうが、そのような患者によって発現される変異転写物中のリピート拡張領域への高アビディティ結合によって代わりに隔離されるであろうRNA結合蛋白質を解放する干渉RNA分子(又はそれをコードするベクター)の投与によって治療され得る。病的CNBP及びC9ORF72転写物のような、CCUG(配列番号164)及びGGGGCC(配列番号162)リピートを有する核内RNA転写物の発現の減少をモニターするための方法は、当技術分野で知られている様々な分子生物学的手法を含み、本明細書に記載されている。
【表3】
【0101】
干渉RNA
本明細書に記載の組成物及び方法を用いて、スプライスオパシー及び/又はRNAドミナンスを特徴とする障害を有する患者に、拡張リピート領域を含む変異RNA転写物の発現を抑制するために、干渉RNA分子、それを含む組成物、又はそれをコードするベクターを投与してもよい。例えば、I型筋強直性ジストロフィーの場合、抑制する対象となるRNA転写物は、当該転写物の3'UTRに拡張CUGリピート領域を含むヒトDMPK RNAである。II型筋強直性ジストロフィーの場合、抑制される標的RNA転写物は、拡張CCUG(配列番号164)リピート領域を含むヒトZNF9 RNAである。筋萎縮性側索硬化症の場合、抑制される標的RNA転写物は、拡張GGGGCC(配列番号162)リピート領域を含むヒトC9ORF72 RNAである。
【0102】
本明細書に記載の組成物及び方法と組み合わせて使用される、I型筋強直性ジストロフィーなどのRNAドミナンス障害の治療のために使用できる例示的な干渉RNA分子は、特に、siRNA分子、miRNA分子、及びshRNA分子である。siRNA分子の場合、siRNAは一本鎖であっても二本鎖であってもよく、一方でmiRNA分子は一本鎖でヘアピンを形成し、核酸のデュプレックス構造を思わせる水素結合構造を採用している。いずれの場合においても、干渉RNAは、リピート拡張変異RNA標的に(例えば、相補性によって)アニーリングするアンチセンス鎖又は「ガイド」鎖を含んでもよい。また、干渉RNAはガイド鎖に相補的な「パッセンジャー」鎖を含んでもよく、即ち、RNA標的と同じ核酸配列を有してもよい。
【0103】
拡張CUGリピートモチーフを含む変異体DMPKにアニーリングする例示的な干渉RNA分子、及びI型筋強直性ジストロフィーの治療のために本明細書に記載された組成物及び方法と組み合わせて使用できる例示的な干渉RNA分子は、以下の表4に示されている。以下の干渉RNA分子が配列相補性の方法でアニーリングする標的DMPK RNA転写物上の部位を図示したものが、
図1に示されている。
【表4】
【0104】
本明細書に記載の組成物及び方法と関連した有用な例示的なmiRNAコンストラクトは、以下の表5に示すようなパッセンジャー鎖及びガイド鎖の組み合わせを有する。
【表5】
【0105】
干渉RNA送達用ベクター
干渉RNA送達のためのウイルスベクター
ウイルスゲノムは、患者の標的細胞(例えば、ヒト細胞などの哺乳類細胞)のゲノムへの対象の遺伝子の効率的な送達のために使用できるベクターの豊富な供給源を提供する。ウイルスゲノムは、ゲノム内に含まれるポリヌクレオチドが、典型的には、一般化された又は特殊化されたトランスダクションによって標的細胞のゲノムに組み込まれるので、遺伝子送達のために特に有用なベクターである。このプロセスは、天然のウイルス複製サイクルの一部として起こり、遺伝子インテグレーションを誘導するために蛋白質又は試薬の添加を必要としない。本明細書に記載される組成物及び方法において使用され得るウイルスベクターの例は、AAV、レトロウイルス、アデノウイルス(例えば、Ad5、Ad26、Ad34、Ad35、及びAd48)、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、オルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)のようなネガティブ鎖RNAウイルス、ラブドウイルス(例えば、狂犬病及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹及びセンダイウイルス)、ピコルナウイルス及びアルファウイルスのようなポジティブ鎖RNAウイルス、及びアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型及び2型、エプスタインバーウイルス、サイトメガロウイルス)、ポックスウイルス(例えば、ワクシニア、改変ワクシニアアンカラ(MVA)、フォウルポックス及びカナリアポックス)を含む二本鎖DNAウイルスである。本明細書に記載される組成物及び方法において使用され得る他のウイルスとしては、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポウイルス、ヘパドナウイルス、及び肝炎ウイルスを含む。レトロウイルスの例としては、鳥白血病サルコーマ、哺乳類C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプーマウイルス(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, Third Edition, B. N. Fields, et al., Eds., Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)を含む。他の例としては、マウス白血病ウイルス、マウスサルコーマウイルス、マウス乳腺腫瘍ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコサルコーマウイルス、鳥白血病ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、バブーン内在性ウイルス、ギボンエイプ白血病ウイルス、メイソンファイザーモンキーウイルス、シミアン免疫不全ウイルス、シミアンサルコーマウイルス、ラスサルコーマウイルス、及びレンチウイルスを含む。ベクターの他の例は、例えば、US Patent No. 5,801,030に記載されており、その開示は、遺伝子治療における使用のためのウイルスベクターに関するものとして参照により本明細書に組み込まれる。
【0106】
干渉RNA送達のためのAAVベクター
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される干渉RNAコンストラクトは、患者の標的心臓細胞(例えば、筋肉細胞)などの細胞への導入を容易にするために、組換えAAV(rAAV)ベクターに組み込まれる。本明細書に記載の組成物及び方法において有用なrAAVベクターは、(1)本明細書に記載の干渉RNAコンストラクト(例えば、本明細書に記載のsiRNA、shRNA、又はmiRNA)をコードするトランスジーン、及び(2)異種遺伝子を促進及び発現させる核酸を含む組換え核酸コンストラクトを含む。ウイルス核酸は、ウイルスへのDNAの複製及びパッケージング(例えば、機能的ITR)のためにシスで必要とされるAAVの配列を含んでもよい。また、そのようなrAAVベクターはマーカー遺伝子又はレポーター遺伝子を含んでもよい。有用なrAAVベクターは、天然に存在するAAV遺伝子の1つ以上を全体又は部分的に欠失させたが、機能的フランキングITR配列を保持するものを含む。AAV ITRsは、特定の用途に適した任意のセロタイプ(例えば、セロタイプ2由来)であってもよい。rAAVベクターを使用するための方法は、例えば、Tal et al., J. Biomed. Sci. 7:279-291 (2000)、及びMonahan and Samulski, Gene Delivery 7:24-30 (2000)に記載されており、各開示は、それらが遺伝子送達のためのAAVベクターに関連するものとして参照により本明細書に組み込まれる。
【0107】
本明細書に記載の核酸及びベクターは、細胞への核酸又はベクターの導入を容易にするために、rAAVビリオンに組み込むことができる。AAVのキャプシド蛋白質は、ビリオンの外部の非核酸部分を構成し、AAVキャップ遺伝子によってコードされる。キャップ遺伝子は、3つのウイルスコート蛋白質、VP1、VP2及びVP3をコードしており、これらはウイルスの組み立てに必要である。rAAVビリオンの構築は、例えば、US Patent Nos. 5,173,414; 5,139,941; 5,863,541; 5,869,305; 6,057,152、及び6,376,237、並びにRabinowitz et al., J. Virol. 76:791-801 (2002)及びBowles et al., J. Virol. 77:423-432 (2003)に記載されており、各開示は遺伝子送達のためのAAVベクターに関連するものとして参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
本明細書に記載の組成物及び方法において有用なrAAVビリオンは、AAV 1、2、3、4、5、6、7、8及び9を含む様々なAAVセロタイプに由来するものを含む。異なるセロタイプのAAVベクター及びAAV蛋白質の構築及び使用は、例えば、Chao et al., Mol. Ther. 2:619-623 (2000); Davidson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:3428-3432 (2000); Xiao et al., J. Virol. 72:2224-2232 (1998); Halbert et al., J. Virol. 74:1524-1532 (2000); Halbert et al., J. Virol. 75:6615-6624 (2001); 及びAuricchio et al., Hum. Molec. Genet 10:3075-3081 (2001)に記載されており、各開示は遺伝子送達のためのAAVベクターに関連するものとして参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
また、本明細書に記載の組成物及び方法において有用なのは、偽型rAAVベクターである。偽型ベクターは、所与のセロタイプ(例えば、AAV2)のAAVベクターを、所与のセロタイプ以外のセロタイプ(例えば、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、又はAAV9など)に由来するカプシド遺伝子で偽型化したものを含む。例えば、代表的な偽型ベクターは、AAVセロタイプ8又はAAVセロタイプ9に由来するカプシド遺伝子で偽型化された治療用蛋白質をコードするAAV2ベクターである。偽型rAAVビリオンの構築及び使用を含む技術は、当技術分野で知られており、例えば、Duan et al., J. Virol. 75:7662-7671 (2001); Halbert et al., J. Virol. 74:1524-1532 (2000); Zolotukhin et al., Methods, 28:158-167 (2002); 及びAuricchio et al., Hum. Molec. Genet., 10:3075-3081 (2001)に記載されている。
【0110】
ビリオンキャプシド内に変異を有するAAVウイルスは、非変異キャプシドビリオンよりも特定の細胞型をより効果的に感染させるために使用され得る。例えば、好適なAAV変異体は、特定の細胞型へのAAVの標的化を容易にするために、リガンド挿入変異を有していてもよい。挿入変異体、アラニンスクリーニング変異体、及びエピトープタグ変異体を含むAAVキャプシド変異体の構築及び特徴付けは、Wu et al., J. Virol. 74:8635-45 (2000)に記載されている。本発明の方法において使用できる他のrAAVビリオンは、エキソンシャッフリングと同様に、ウイルスの分子ブリーディングによって生成されるそれらのカプシドハイブリッドを含む。例えば、Soong et al., Nat. Genet., 25:436-439 (2000)及びKolman and Stemmer, Nat. Biotechnol. 19:423-428 (2001)を参照。
【0111】
干渉RNAの送達のための追加の方法
トランスフェクション技術
本明細書に記載の干渉RNAコンストラクトをコードするトランスジーンなどのトランスジーンを、標的細胞(例えば、RNAドミナンスを罹患するヒト患者由来又は内の標的細胞)に導入するために使用できる技術は、当技術分野で知られている。例えば、エレクトロポレーションは、対象の細胞への静電ポテンシャルの適用によって哺乳類細胞(例えば、ヒト標的細胞)を透過させるように使用できる。このようにして外部電場にさらされた哺乳類細胞(例えば、ヒト細胞)は、その後、外来核酸を取り込みやすくなる。哺乳類細胞のエレクトロポレーションは、例えば、Chu et al., Nucleic Acids Research 15:1311 (1987)に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。同様の技術、Nucleofection
TMは、真核細胞の核内への外来ポリヌクレオチドの取り込みを刺激するために、印加された電場を利用する。Nucleofection
TM及びこの技術を実行するのに有用なプロトコルは、例えば、Distler et al., Experimental Dermatology 14:315 (2005)及びUS 2010/0317114に詳細に記載されており、各開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
標的細胞のトランスフェクションに有用な追加の技術は、スクイーズポレーション法を含む。この技術は、加えたストレスに応答して形成される膜状ポアを介した外来DNAの取り込みを刺激するために、細胞の急速な機械的変形を誘導する。この技術は、ヒト標的細胞などの細胞への核酸の送達にベクターを必要としないという点で有利である。スクイーズポレーションは、例えば、Sharei et al., Journal of Visualized Experiments 81:e50980 (2013)に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
リポフェクションは、標的細胞のトランスフェクションに有用な別の技術を表す。この方法は、核酸をリポソームに装填することを含み、このリポソームは、リポソームの外側に向かって、第四級アミン又はプロトン化アミンなどのカチオン性官能基をしばしば提示する。これは、細胞膜のアニオン性の性質のために、リポソームと細胞との間の静電相互作用を促進し、これは最終的に、例えば、リポソームと細胞膜との直接的な融合によって、又は複合体のエンドサイトーシスによって、外来核酸の取り込みを導く。リポフェクションは、例えば、US Patent No. 7,442,386に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。外来核酸の取り込みを誘発するために細胞膜とのイオン性相互作用を利用する同様の技術は、カチオン性ポリマー-核酸複合体を細胞に接触させることを含む。細胞膜との相互作用に有利な正電荷を付与するようにポリヌクレオチドに関連付ける例示的なカチオン性分子は、活性化デンドリマー(例えば、Dennig, Topics in Current Chemistry 228:227 (2003)に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)及びジエチルアミノエチル(DEAE)-デキストランであり、トランスフェクション剤としての使用は、例えば、Gulick et al., Current Protocols in Molecular Biology 40:I:9.2:9.2.1 (1997)に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。磁気ビーズは、核酸の取り込みを導くために印加された磁場を利用する方法であるため、温和で効率的な方法で標的細胞にトランスフェクトするために使用できる別のツールである。この技術は、例えば、US 2010/0227406に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0114】
標的細胞による外来核酸の取り込みを誘導するための別の有用なツールは、細胞を穏やかに透過させ、ポリヌクレオチドが細胞膜を透過することを可能にするために、特定の波長の電磁放射線に細胞を曝すことを含む技術であるレーザーフェクションである。この技術は、例えば、Rhodes et al., Methods in Cell Biology 82:309 (2007)に詳細に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0115】
マイクロベシクルは、本明細書に記載の方法に従って標的細胞のゲノムを改変するために使用できる別の潜在的なビヒクルを表す。例えば、糖蛋白質VSV-Gと、例えば、ヌクレアーゼなどのゲノム修飾蛋白質との共発現によって誘導されたマイクロベシクルは、その後、遺伝子又は制御配列などの目的のポリヌクレオチドを共有結合的に組み込むために細胞のゲノムを調整するように、内因性ポリヌクレオチド配列の部位特異的切断を触媒する細胞に蛋白質を効率的に送達するために使用できる。真核細胞の遺伝子改変のための、ゲシクルとも呼ばれるベシクルの使用は、例えば、Quinn et al., Genetic Modification of Target Cells by Direct Delivery of Active Protein [アブストラクト]、Methylation changes in early embryonic genes in cancer [アブストラクト]、Proceedings of the 18th Annual Meeting of the American Society of Gene and Cell Therapy; 2015 May 13, アブストラクトNo. 122に記載されている。
【0116】
遺伝子編集による干渉RNAをコードする遺伝子の組み込み
上記に加えて、本明細書に記載された干渉RNAコンストラクトをコードするトランスジーンなどのトランスジーンを標的細胞、特にヒト細胞に組み込むために使用できる様々なツールが開発されている。干渉RNAコンストラクトをコードするポリヌクレオチドを標的細胞に組み込むために使用できるそのような方法の一つは、トランスポゾンの使用を含む。トランスポゾンは、トランスポザーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドであり、5'及び3'エキシジョンサイトによって挟まれた対象のポリヌクレオチド配列又は遺伝子を含む。トランスポゾンが細胞内に送達されると、トランスポザーゼ遺伝子の発現が開始され、その結果、トランスポゾンから目的の遺伝子を切断する活性酵素が生じる。この活性は、トランスポザーゼによるトランスポゾンのエキシジョンサイトの部位特異的認識によって媒介される。いくつかの実施形態では、このエキシジョンサイトは、末端リピート又は反転末端リピートであり得る。トランスポゾンから一旦切除されると、対象のトランスジーンは、細胞の核ゲノム内に存在する類似のエキシジョンサイトのトランスポザーゼ触媒による切断によって、哺乳類細胞のゲノムに統合され得る。これにより、対象のトランスジーンを相補的なエキシジョンサイトで切断された核内DNAに挿入することができ、対象の遺伝子を哺乳類細胞ゲノムのDNAに結合するホスホジエステル結合の後続の共有結合により、組み込みプロセスが完了する。特定の実施形態では、トランスポゾンは、標的遺伝子をコードする遺伝子が最初にRNA産物に転写され、その後、哺乳類細胞ゲノムに組み込まれる前にDNAに逆転写されるようなレトロトランスポゾンであってもよい。例示的なトランスポゾン系は、ピギーバックトランスポゾン(例えば、WO 2010/085699に詳細に記載されている)及びスリーピングビューティートランスポゾン(例えば、US 2005/0112764に詳細に記載されている)であり、各開示は、対象の細胞への遺伝子送達における使用のためのトランスポゾンに関連するものとして参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
標的細胞のゲノムへの標的トランスジーンの組み込みのための別のツールは、もともとウイルス感染に対する細菌及び古細菌の適応防御機構として進化したシステムである、クラスタードレギュラトリーインタースペースドショートパリンドロミックリピート(CRISPR)/Casシステムである。CRISPR/Casシステムは、プラスミドDNA内の回文反復配列と関連するCas9ヌクレアーゼを含む。DNAと蛋白質のこのアンサンブルは、最初に外来DNAをCRISPR遺伝子座に組み込むことにより、標的配列の部位特異的なDNA切断を導く。この外来配列とCRISPR遺伝子座のリピートスペーサー要素を含むポリヌクレオチドは、宿主細胞内で転写されてガイドRNAを生成し、その後、ガイドRNAは標的配列にアニーリングし、Cas9ヌクレアーゼをこの部位に局在させることができる。このようにして、標的DNA分子に近接した位置にCas9をもたらす相互作用は、RNA:DNAハイブリダイゼーションによって制御されるため、高度に部位特異的なCas9介在性DNA切断を外来ポリヌクレオチドに生じさせることができる。その結果、対象の任意の標的DNA分子を切断するためにCRISPR/Casシステムを設計できる。この技術は、真核生物のゲノムを編集するために利用されており(Hwang et al., Nature Biotechnology 31:227 (2013))、標的遺伝子をコードする遺伝子が組み込まれる前にDNAを切断するために、標的細胞のゲノムを部位特異的に編集する効率的な手段として使用できる。遺伝子発現を調節するためのCRISPR/Casの使用は、例えば、US Patent No. 8,697,359に記載されており、その開示はゲノム編集のためのCRISPR/Casシステムの使用に関連して、参照により本明細書に組み込まれる。標的細胞への対象の転写遺伝子の組み込みに先立って、ゲノムDNAを部位特異的に切断するための代替的な方法は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)及びトランスクリプションアクチベーター-ライクエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)の使用を含む。CRISPR/Casシステムとは異なり、これらの酵素は、特定の標的配列に局在化するための誘導ポリヌクレオチドを含まない。標的特異性は、代わりに、これらの酵素内のDNA結合ドメインによって制御される。ゲノム編集用途におけるZFN及びTALENの使用は、例えば、Urnov et al., Nature Reviews Genetics 11:636 (2010)、及びJoung et al., Nature Reviews Molecular Cell Biology 14:49 (2013)に記載されており、各開示はゲノム編集のための組成物及び方法に関連するものとして参照により本明細書に組み込まれる。
【0118】
標的トランスジーンをコードするポリヌクレオチドを標的細胞のゲノムに組み込むために使用できる追加のゲノム編集技術には、ゲノムDNAを部位特異的に切断するように合理的に設計できるARCUS
TMメガヌクレアーゼの使用を含む。哺乳類細胞のゲノムに標的遺伝子をコードする遺伝子を組み込むためにこの酵素を使用することは、そのような酵素について確立され定義された構造活性相関の観点から有利である。一本鎖メガヌクレアーゼは、所望の位置でDNAを選択的に切断するヌクレアーゼを作るために、特定のアミノ酸位置で修飾することができ、標的細胞の核内DNAに標的遺伝子を部位特異的に組み込むことを可能にする。この一本鎖ヌクレアーゼは、例えば、US Patent Nos. 8,021,867及びUS 8,445,251に広範囲に記載されており、各開示はゲノム編集のための組成物及び方法に関連して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
RNA転写産物の発現を検出する方法
拡張CUGトリヌクレオチドリピートを有するDMPK RNA転写物、又は拡張GGGGCC(配列番号162)ヘキサヌクレオチドを有するC9ORF72 RNA転写物のような病的RNA転写物の発現レベルは、例えば、様々な核酸検出技術によって知ることができる。追加的又は代替的に、RNA転写物の発現は、RNA転写物の翻訳によって生産されるコード化蛋白質の濃度又は相対的な存在量を評価することによって推測できる。また、蛋白質濃度は、例えば、機能的アッセイを用いて評価できる。この技術を使用して、コード化蛋白質の発現をモニタリングしながら、本明細書に記載の組成物及び方法に応じた病的RNA転写物の濃度の低下を観察できる。以下のセクションでは、病的RNA転写物及びその下流の蛋白質産物の発現レベルを測定するために使用できる例示的な技術を記載する。RNA転写物の発現は、限定されないが、核酸配列決定、マイクロアレイ分析、プロテオミクス、in-situハイブリダイゼーション(例えば、蛍光in-situハイブリダイゼーション(FISH))、増幅に基づくアッセイ、in-situハイブリダイゼーション、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)、ノーザン分析及び/又はRNAsのPCR分析を含む、当技術分野で知られている多くの方法論によって評価できる。
【0120】
核酸検出
RNA転写物の発現を検出するための核酸ベースの方法は、イメージングベースの技法(例えば、ノーザンブロット又はサザンブロット)を含み、これは、例えば、本明細書に記載された干渉RNAをコードするベクター又はそのような干渉RNAコンストラクトを含む組成物の投与後に患者から得られた細胞と組み合わせて使用できる。ノーザンブロット分析は、当技術分野でよく知られた技術であり、例えば、Molecular Cloning, a Laboratory Manual, second edition, 1989, Sambrook, Fritch, Maniatis, Cold Spring Harbor Press, 10 Skyline Drive, Plainview, NY 11803-2500に記載されている。遺伝子及び遺伝子産物の状態を評価するための典型的なプロトコルは、例えば、Ausubel et al., eds., 1995, Current Protocols In Molecular Biology, Units 2 (Northern Blotting), 4 (Southern Blotting), 15 (Immunoblotting) and 18 (PCR Analysis)に記載されている。
【0121】
拡張CUGトリヌクレオチドリピートを有するDMPK RNA転写物及び拡張GGGGCC(配列番号162)ヘキサヌクレオチドリピートを有するC9ORF72 RNA転写物のような拡張されたヌクレオチドリピート領域を有するRNA転写物の抑制を評価するために本明細書に記載の組成物及び方法と組み合わせて使用され得るRNA検出技術は、マイクロアレイシーケンシング実験(例えば、サンガーシーケンシング法及び次世代シーケンシング法(ハイスループットシーケンシング又はディープシーケンシングとしても知られている)をさらに含む。例示的な次世代シーケンシング技術は、限定されないが、Illuminaシーケンシング、Ion Torrentシーケンシング、454シーケンシング、SOLiDシーケンシング、及びナノポアシーケンシングプラットフォームを含む。当技術で知られている追加のシークエンシング方法も使用できる。例えば、mRNAレベルでのトランスジーン発現は、RNA-Seq(例えば、Mortazavi et al., Nat. Methods 5:621-628 (2008)に記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を使用して測定してもよい。RNA-Seqは、サンプル中のRNA分子を直接配列決定することによって発現をモニタリングするための安定な技術である。簡潔に言えば、この方法は、RNAを200ヌクレオチドの平均長への断片化、ランダムプライミングによるcDNAへの変換、及び二本鎖cDNAの合成を含み得る(例えば、Agilent Technology
(R)のJust cDNA DoubleStranded cDNA Synthesis Kitを使用する)。次に、各ライブラリ用の配列アダプター(例えば、Illumina
(R)/Solexaから)を追加することにより、cDNAを配列決定用の分子ライブラリに変換し、得られた50〜100ヌクレオチドリードをゲノム上にマッピングする。
【0122】
RNA発現レベルは、マイクロアレイ技術が高分解能を提供するため、マイクロアレイベースのプラットフォーム(例えば、一塩基多型アレイ)を用いて決定してもよい。様々なマイクロアレイ法の詳細は文献に記載されている。例えば、U.S. Pat. No. 6,232,068及びPollack et al., Nat. Genet. 23:41-46 (1999)を参照。各開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。核酸マイクロアレイを用いて、mRNAサンプルを逆転写及び標識してcDNAを生成する。次に、プローブは、固体支持体上に配列され固定化された1つ以上の相補的核酸にハイブリダイズできる。アレイは、例えば、アレイの各メンバーの配列及び位置が既知であるように構成できる。標識されたプローブと特定のアレイメンバーとのハイブリダイゼーションは、プローブが由来したサンプルがその遺伝子を発現していることを示す。発現レベルは、ハイブリダイズしたプローブ-サンプル複合体から検出されたシグナルの量に応じて定量できる。典型的なマイクロアレイ実験は、以下の工程を含む。1) サンプル由来の単離RNAから蛍光標識された標的の調製、2) 標識された標的のマイクロアレイへのハイブリダイゼーション、3) アレイの洗浄、染色、及びスキャン、4)スキャンした画像の解析、及び5) 遺伝子発現プロファイルの生成。マイクロアレイプロセッサーの一例は、市販されているAffymetrix GENECHIP
(R)システムであり、ガラス表面上のオリゴヌクレオチドの直接合成によって作製されたアレイである。当業者に知られているような他のシステムを使用してもよい。
【0123】
また、増幅に基づくアッセイも、拡張されたCUGトリヌクレオチドリピートを有するDMPK RNA転写物、又は拡張されたGGGGCC(配列番号162)ヘキサヌクレオチドリピートを有するC9ORF72 RNA転写物のような特定のRNA転写物の発現レベルを測定するために使用できる。このようなアッセイにおいて、転写物の核酸配列は、増幅反応(例えば、qPCRなどのPCR)において鋳型として作用する。定量増幅では、増幅産物の量は、元のサンプル中の鋳型の量に比例する。適切な対照との比較は、本明細書に記載された原理に従って、使用された特定のプローブに対応する、対象の転写物の発現レベルの測定値を提供する。TaqManプローブを用いたリアルタイムqPCRの方法は、当技術分野でよく知られている。リアルタイムqPCRのための詳細なプロトコルは、例えば、Gibson et al., Genome Res. 6:995-1001 (1996),及びin Heid et al., Genome Res. 6:986-994 (1996)に記載されており、各開示はそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されているRNA転写物の発現レベルは、例えば、RT-PCR技術によって決定できる。PCRに使用されるプローブは、検出可能なマーカー、例えば、放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤、又は酵素で標識してもよい。
【0124】
蛋白質の検出
また、RNAコンストラクトの発現はコンストラクトによってコードされる蛋白質の発現を分析することによって推測できる。蛋白質レベルは、当技術分野で知られている標準的な検出技術を用いて評価できる。本明細書に記載の組成物及び方法を用いて使用するのに適した蛋白質発現アッセイは、プロテオミクスアプローチ、免疫組織化学的及び/又はウェスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、酵素結合免疫濾過アッセイ(ELIFA)、質量分析、質量分析イムノアッセイ、及び生化学的酵素活性アッセイを含む。特に、プロテオミクス法は、大規模な蛋白質発現データセットをマルチプレックスで生成するために使用できる。プロテオミクス法は、サンプル(例えば、シングルセルサンプル又は多細胞集団)中に発現する蛋白質の発現レベルを同定及び測定するために、標的蛋白質のパネルに特異的なキャプチャー試薬(例えば、抗体)を利用して、ポリペプチド(例えば、蛋白質)及び/又はペプチドマイクロアレイを検出及び定量するために、質量分析法を利用できる。
【0125】
例示的なペプチドマイクロアレイは、基質に結合した複数のポリペプチドを有し、オリゴヌクレオチド、ペプチド、又は蛋白質の、複数の結合したポリペプチドのそれぞれへの結合は、別々に検出可能である。あるいは、ペプチドマイクロアレイは、限定されないが、特定のオリゴヌクレオチド、ペプチド、又は蛋白質の結合を特異的に検出できるモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ファージディスプレイバインダー、酵母ツーハイブリッドバインダー、アプタマーを含む、複数のバインダーを含んでもよい。ペプチドアレイの例は、U.S. Patent Nos. 6,268,210, 5,766,960及び5,143,854に記載されており、各開示その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
質量分析(MS)は、トランスジーンの送達後の患者(例えば、ヒト患者)からの細胞内のトランスジーン発現を同定及び特徴付けるために、本明細書に記載された方法と組み合わせて使用され得る。対象の蛋白質又はペプチドフラグメントを決定、検出、及び/又は測定するために、当技術分野で知られているMSの任意の方法、例えば、LC-MS、ESI-MS、ESI-MS/MS、MALDI-TOF-MS、MALDI-TOF/TOF-MS、タンデムMSなどを使用できる。質量分析計は、一般に、イオン源と光学系、質量分析器、及びデータ処理用電子機器を含む。質量分析器は、走査型質量分析計、イオンビーム型質量分析計、例えば、飛行時間(TOF)、四重(Q)などが挙げられ、トラップ型質量分析計、例えば、イオントラップ(IT)、オービトラップ、及びフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FT-ICR)などが本明細書に記載された方法において使用され得る。様々なMS方法の詳細は文献に記載されている。例えば、Yates et al., Annu. Rev. Biomed. Eng. 11:49-79, 2009を参照。この開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0127】
MS分析に先立って、患者から得られたサンプル中の蛋白質は、まず、化学的(例えば、シアノゲンブロマイド切断を介して)又は酵素的(例えば、トリプシン)消化によって、より小さいペプチドに消化され得る。また、複雑なペプチドサンプルはフロントエンド分離技術、例えば、2D-PAGE、HPLC、RPLC、及びアフィニティークロマトグラフィーの使用から利益を得る。消化され、任意に分離されたサンプルは、その後、さらなる分析のために荷電分子を生成するために、イオン源を使用してイオン化される。サンプルのイオン化は、例えば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧化学イオン化(APCI)、光イオン化、電子イオン化、高速原子衝撃(FAB)/液体二次イオン化(LSIMS)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)、電界イオン化、電界脱離、サーモスプレー/プラズマスプレーイオン化、及び粒子線イオン化によって実施できる。イオン化方法の選択に関連する追加情報は、当技術分野の当業者に知られている。
【0128】
イオン化後、消化されたペプチドは、次に、シグネチャーMS/MSスペクトルを生成するために断片化されてもよい。MS/MSとしても知られるタンデムMSは、複雑な混合物を分析するために特に有用であり得る。タンデムMSは、MS選択の複数の工程を含み、段階の間に何らかの形態のイオンフラグメンテーションが発生し、これは、空間的に分離された個々の質量分析計エレメントを用いて達成されてもよく、又は時間的に分離されたMS工程を有する単一の質量分析計を用いて達成されてもよい。空間的に分離されたタンデムMSでは、元素は物理的に分離及び区別され、元素間の物理的な連結でハイバキュームが維持される。時間的に分離されたタンデムMSでは、イオンが同じ場所にトラップされた状態で分離が行われ、複数の分離工程が経時的に行われる。その後、シグネチャーMS/MSスペクトルをペプチド配列データベース(例えば、SEQUEST)と比較できる。また、ペプチドに対する翻訳後修飾も、例えば、特定のペプチド修飾を可能にしながら、データベースに対してスペクトルを検索することによって決定され得る。
【0129】
医薬組成物
干渉RNAコンストラクト、及びそのコンストラクトをコードする又は含むベクター及び組成物は、本明細書に記載されているように、RNAドミナンスを罹患しているヒト患者などの患者への投与のためのビヒクルに組み込むことができる。本明細書に記載の干渉RNAコンストラクトをコードするベクター、例えば、ウイルスベクターを含む医薬組成物は、当技術分野で知られている方法を用いて調製できる。例えば、そのような組成物は、例えば、生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤を用いて(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)が参照により本明細書に組み込まれる)、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態のような所望の形態で調製できる。
【0130】
本明細書に記載の核酸及びウイルスベクターの混合物は、1種以上の賦形剤、担体、又は希釈剤と好適に混合した水中で調製できる。また、分散液はグリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物、並びに油中で調製してもよい。通常の保存及び使用条件下では、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するための防腐剤を含んでもよい。注射可能な使用に適した医薬形態には、無菌の水溶液又は分散液、及び無菌の注射可能な溶液又は分散液の即時調製のための無菌の粉末を含む。(US 5,466,468に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。いずれの場合においても、製剤は無菌であってもよく、容易にシリンジで利用できる程度に流動性であってもよい。製剤は、製造及び保管の条件下で安定であってもよく、細菌及び真菌のような微生物のコンタミネーション作用に対して保存されてもよい。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適当な混合物、及び/又は植物油を含む溶媒又は分散媒体であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散の場合には必要な粒子径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持されてもよい。微生物の作用の防止は、各種の抗菌・抗真菌剤、例えば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによりもたらすことができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖類や塩化ナトリウム等を含むことが好ましい。注射用組成物の吸収の延長は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチンなどを組成物中に使用することによってもたらされ得る。
【0131】
例えば、本明細書に記載された医薬組成物を含む溶液は、必要に応じて適切に緩衝化され、液体希釈剤は、最初に十分な生理食塩水又はグルコースで等張化されてもよい。これらの特定の水溶液は、静脈内、イントラセカル、イントラセレブロベントリキュラー、イントラパレンチマル、イントラシスターナル、筋肉内、皮下、及び腹腔内投与に特に適している。これに関連して、採用され得る滅菌水性媒体は、本明細書の開示に照らして当技術分野の当業者に知られているであろう。例えば、1つの投与量を1mlの等張NaCl溶液に溶解し、1000mlの皮下注射液に加えるか、又は提案された注入部位に注射することができる。投与量については、治療を受ける対象者の状態により、必然的に多少のバリエーションが生じる。投与の責任者は、いかなる場合においても、個々の対象に対する適切な投与量を決定する。さらに、ヒトへの投与のために、製剤は、FDA Office of Biologics standardsによって要求されるように、無菌性、発熱性、一般的な安全性、及び純度の基準を満たしていてもよい。
【0132】
投与経路と投与量
本明細書に記載の干渉RNAコンストラクトをコードするトランスジーンを含む、本明細書に記載されたAAVベクターなどのウイルスベクターは、様々な投与経路によって患者(例えば、ヒト患者)に投与されてもよい。投与経路は、例えば、疾患の発症及び重症度に応じて異なり、例えば、静脈内、イントラセカル、イントラセレブロベントリキュラー、イントラパレンチマル、イントラシスターナル、皮内、経皮、非経口、筋肉内、鼻腔内、皮下、パーキュタネアス、気管内、腹腔内、動脈内、血管内、吸入、パーフュージョン、ラバージ、及び経口投与を含んでもよい。血管内投与は、患者の血管内への送達を含む。いくつかの実施形態では、投与は、静脈(静脈内)とみなされる血管への投与であり、いくつかの投与では、投与は、動脈(動脈内)であるとみなされる血管への投与である。静脈としては、内頸静脈、末梢静脈、冠状静脈、肝静脈、門脈、大伏在静脈、肺静脈、上大静脈、下大静脈、胃静脈、脾静脈、下腸間膜静脈、上腸間膜静脈、頭部静脈、及び/又は大腿静脈が挙げられるが、これらに限定されない。動脈は、冠動脈、肺動脈、上腕動脈、内頸動脈、大動脈弓、大腿動脈、末梢動脈、及び/又は毛様体動脈を含むが、これらに限定されない。送達は、小動脈又は毛細血管を介して又はそれらに送達されてもよいことが企図される。
【0133】
治療レジメンは、様々であり得、そしてしばしば、疾患の重症度及び患者の年齢、体重、及び性別に依存する。治療は、ベクター(例えば、ウイルスベクター)又は本明細書に記載された他の薬剤を、様々な単位用量での標的細胞への導入に有用であるものとして投与することを含んでもよい。各単位用量は、典型的には、所定量の治療用組成物を含む。
【実施例】
【0134】
以下の実施例は、本明細書に記載の組成物及び方法がどのように使用され、製造され、評価され得るかについての説明を当業者に提供するために記載されており、本発明の単なる例示であることを意図しており、本発明者らが本発明とみなすものの範囲を限定することを意図していない。
【0135】
実施例1. RNAドミナンスに関連する障害の治療のためのmiRNAコンストラクトをコードするアデノ随伴ウイルスベクターの開発及び評価
目的
本実施例は、RNAドミナンス障害である筋強直性ジストロフィーのマウスモデルにおいて発現されるヒトDMPK及びマウスHSA
LRに対するmiRNAコンストラクトをコードするrAAVベクターの開発及び評価を特徴付けるために実施された一連の実験を記載する。筋強直性ジストロフィー(DM)は、毒性のある拡張リピートmRNAの発現をもたらすマイクロサテライトリピートの拡張によって生じる。別のRNAドミナンス障害である顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)は、成人筋における毒性蛋白質であるDUX4の発現を導くD4Z4マクロサテライトリピートの縮小によって生じる。本実施例に記載の実験の目的は、疾患を有する個体における筋機能障害及び損失を防止するために、筋DM及びFSHDに関連するmRNAを標的とするmiRNAコンストラクトをコードするAAVベクターを開発することである。
【0136】
材料及び方法
I型筋強直性ジストロフィー(DM1)のrAAV-RNAi療法を開発するために、ヒト骨格アクチン遺伝子(HSA)に向けられた干渉RNAヘアピンを設計及び製造し、DM1のHSA
LRマウスモデルでその有効性をテストできるようになった。HSA
LRマウスは、HSA遺伝子の3'UTRに拡張CTGリピートを挿入して作成した。これは、ヒトのDMPK遺伝子の疾患を引き起こすリピート拡張と同様の遺伝的状況である。HSA
LRマウスは、筋強直性ジストロフィー、さまざまなmRNAのスプライシング変化、核インクルージョン(病巣)を含む、骨格筋のDM1に関連する遺伝的及び表現型の変化の多くを示す。この研究の目的は、拡張CUGリピート領域を含む異常なHSA
LR RNA転写物の発現を減少させるアプローチを変換し、ヒトの疾患標的遺伝子であるDMPKを抑制するためのパラダイムを開発することであった。
【0137】
この目的のために、19〜22 bpのターゲット認識配列を持つRNAi発現カセットを、さまざまなアプリケーションでテストした。RNAiヘアピンはmiR-30a内因性配列に基づいていた。一本鎖rAAVゲノムは、筋肉を標的とするためにrAAV6キャプシドにパッケージした。rAAV6 HSA RNAiコンストラクトは、4週齢のHSA
LRマウス(n=7〜9)の尾静脈に前もって静脈内注射(IV)によって送達した。
【0138】
結果
図2A〜2Cに示すように、治療用RNAiのテストと開発のためにいくつかの遺伝子をターゲットにしている第3世代のrAAV-RNAiベクターを開発した。rAAVプラスミドpARAP4は、ラウスサルコーマウイルス(RSV)プロモーターから発現するヒトアルカリホスファターゼレポーター遺伝子(Hu Alk Phos)レポーター遺伝子とSV40ポリアデニル化配列pAを含む。インバーテッドターミナルリピート(ITR)はrAAV2に由来し、ゲノムはrAAV6キャプシドにパッケージングされている。最新のベクター改変は、筋肉細胞毒性のためにより高用量でのrAAV-RNAiの有効性を制限したHu Alk Phos発現を防ぐために、RSVプロモーター配列を除去する。
【0139】
図3A〜3Cに示すように、HSA
LRマウスは、ヒトのDMに類似した筋強直性ジストロフィーの特徴を示す。HSA
LRトランスジーンは、HSA遺伝子の3'UTRに(CTG)
250リピートを挿入したものである。このトランスジーンをマウス骨格筋で発現させると、ミオトニー放電が明らかになり、様々なmRNAにスプライシング変化が生じ、拡張トランスジーンmRNAとスプライシング因子を含む核病巣が存在することになる。
【0140】
図4に示すように、HSA
LRマウスにrAAV6 HSA miR DM10を導入した。ヒト胎盤アルカリホスファターゼ(AP)染色は、活性レポーター遺伝子発現を伴うウイルスゲノムの存在を示し、さらに、処理したマウスの低温切片のH&E染色も示されている。時期、注射後8週間、4週齢のHSA
LRマウス。
【0141】
図5A及び5B、
図6A〜6E、及び
図7A〜7Cに示すように、HSA
LR転写物に相補的なmiRNAコンストラクトをコードするrAAV-RNAiベクターは、病的HSA
LR RNAの発現を減少させ、SERCA1 mRNAのコレクティブスプライシングの回復によって証明されるように、処理しなければCUGリピート拡張によって隔離されるであろうRNA結合スプライシング因子の解放を効果的にもたらした(
図6C及び6D)。rAAV6 HSA miR DM10全身注射は、前脛骨筋(TA)のSERCA1とCLCN1のスプライシングを改善する。対照的に、別のRNAiヘアピンであるmiR DM4は、これらのスプライシング欠陥を逆転させるほど効果的ではなかった。
【0142】
miRNAベースドヘアピンに組み込むためのDMPK RNA標的配列の選択は、siRNAデザインのガイドラインを用いて行った。候補標的配列は、他の遺伝子座又は代替スプライス領域での予測シード配列の一致に基づいて除外した。追加のスクリーニングは、ヒトゲノムへの短い配列アライメントのためのBowtieを用いた解析、及び広範なBLAST検索を含む。ヒトDMPKに対する例示的な干渉RNAコンストラクトは、上記の表4に示されており、
図1にグラフィカルに表されている。
【0143】
結論
この実験で実証されたように、筋肉中のHu Alk Phosプロモーターを欠くベクターの局所注入は、SERCA1 mRNAアダルトスプライシング産物の量の増加によって測定されるように、HSA
LRマウスのスプライシング関連表現型を改善する。SERCA1 mRNAのスプライシングは約95%修正されており、技術の向上がこのアプローチの有効性を高める可能性があることを示す。
【0144】
さらに、この結果は、HSAヘアピンのrAAV6媒介送達により、HSA
LRマウスでモデル化されたDM1の多くの分子及び表現型特性(ミオトニア、疾患関連スプライシング変化、スプライシング因子の隔離を含む)が改善されることを示す。さらに、本明細書に記載の組成物及び方法を用いて、U6発現DMPK miRNAを担持したベクターは、トランスフェクション後のHEK293細胞における内因性DMPK mRNAを減少させることができる。このデータは、DM1を治療するためのRNAi媒介遺伝子治療の有用性を示している。
【0145】
RNAi媒介治療は、脊髄性筋萎縮症に有効であり、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象とした臨床試験が進行中である。霊長類以外の動物を用いた研究では、AAVが手足の局所デリバリーで効率的に筋肉を変換し、10年間も持続することが実証されている。これらの研究は、特に本明細書に記載されているI型筋強直性ジストロフィーなどのヒトのドミナントな筋肉疾患の治療のためのrAAV媒介RNAi遺伝子治療の開発をサポートする。
【0146】
実施例2. DMPKに対するmiRNAをコードするウイルスベクターの投与によるヒト患者の筋強直性ジストロフィーの治療
本明細書に記載の組成物及び方法を用いて、当業者は、拡張CUGリピート領域を含む変異DMPK RNA転写物にアニーリングし、その発現を減少させるmiRNAをコードするウイルスベクターを、I型筋強直性ジストロフィーを有する患者に投与できる。ベクターは、偽型AAV2/8又はAAV2/9ベクターなどのAAVベクターであってもよい。ベクターは、本明細書に記載された1つ以上の投与経路、例えば、静脈内、イントラセカル、イントラセレブロベントリキュラー、イントラパレンチマル、イントラシスターナル、筋肉内、又は皮下注射によって投与されてもよい。コードされたmiRNAは、配列番号40〜161のいずれか1つの核酸配列を有するmiRNAのような、本明細書に記載の特徴を有するmiRNAであってもよい。
【0147】
ベクターの投与後、医師は、本明細書に記載のRNA検出技術を用いて、例えば、SERCA1、CLCN1、及び/又はZASPをコードするコレクティブスプライスされたmRNA転写物の濃度を評価することにより、障害の進行及び治療の有効性をモニターしてもよい。また、医師は、コレクティブスプライシングされた転写物から生じる機能的なSERCA1、CLCN1、及び/又はZASP蛋白質産物の濃度をモニターしてもよい。追加的に又は代替的に、医師は、患者が発現した変異体DMPK RNA転写物、特に、約50〜約4,000、又はそれより多くのCUGトリヌクレオチドリピートを有するDMPK転写物の濃度をモニターしてもよい。(i)コレクティブスプライスされたSERCA1、CLCN1、及び/又はZASP mRNA転写物の濃度が増加したこと、(iii)コレクティブスプライスされたmRNA転写物の翻訳から生じる機能性SERCA1、CLCN1、及び/又はZASP蛋白質産物の濃度が増加したこと、及び/又は(iiii)拡張CUGトリヌクレオチドリピート領域を有する変異体DMPK RNA転写物の濃度が減少したことを見いだすことは、患者の治療が成功したことを示す指標となり得る。また、医師は、ミオトニア、筋肉のこわばり、ディセイブリングディスタルウィークネス、顔と顎の筋肉の衰弱、嚥下困難、まぶたの垂れ下がり(眼瞼下垂)、首の筋肉の衰弱、腕と脚の筋肉の衰弱、持続的な筋肉痛、過眠症、筋肉疲労、嚥下障害、呼吸不全、不整脈、心筋損傷、アパシー、インスリン抵抗性、及び白内障のような疾患の1つ以上の症状の進行をモニターしてもよい。また、子どもの場合の症状は、発達の遅れ、学習障害、言語及び発話障害、人格発達障害を含んでもよい。前述の症状のうち1つ又は複数又はすべてが改善されたという所見は、治療が成功したことを示す臨床的指標としても機能する。
【0148】
実施例3. DMPKに対するsiRNAオリゴヌクレオチドの投与によるヒト患者の筋強直性ジストロフィーの治療
本明細書に記載の組成物及び方法を用いて、当業者は、拡張CUGリピート領域を含む変異DMPK RNA転写物にアニーリングし、その発現を減少させるsiRNAオリゴヌクレオチドを、I型筋強直性ジストロフィーを有する患者に投与できる。オリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号3〜39のいずれか1つの核酸配列を有していてもよい。
【0149】
オリゴヌクレオチドの投与後、医師は、本明細書に記載のRNA検出技術を用いて、例えば、SERCA1、CLCN1、及び/又はZASPをコードするコレクティブスプライスされたmRNA転写物の濃度を評価することにより、障害の進行及び治療の有効性をモニターしてもよい。また、医師は、コレクティブスプライシングされた転写物から生じる機能的なSERCA1、CLCN1、及び/又はZASP蛋白質産物の濃度をモニターしてもよい。追加的に又は代替的に、医師は、患者が発現した変異体DMPK RNA転写物、特に、約50〜約4,000、又はそれより多くのCUGトリヌクレオチドリピートを有するDMPK転写物の濃度をモニターしてもよい。(i)コレクティブスプライスされたSERCA1、CLCN1、及び/又はZASP mRNA転写物の濃度が増加したこと、(iii)コレクティブスプライスされたmRNA転写物の翻訳から生じる機能性SERCA1、CLCN1、及び/又はZASP蛋白質産物の濃度が増加したこと、及び/又は(iiii)拡張CUGトリヌクレオチドリピート領域を有する変異体DMPK RNA転写物の濃度が減少したことを見いだすことは、患者の治療が成功したことを示す指標となり得る。また、医師は、ミオトニア、筋肉のこわばり、ディセイブリングディスタルウィークネス、顔と顎の筋肉の衰弱、嚥下困難、まぶたの垂れ下がり(眼瞼下垂)、首の筋肉の衰弱、腕と脚の筋肉の衰弱、持続的な筋肉痛、過眠症、筋肉疲労、嚥下障害、呼吸不全、不整脈、心筋損傷、アパシー、インスリン抵抗性、及び白内障のような疾患の1つ以上の症状の進行をモニターしてもよい。また、子どもの場合の症状は、発達の遅れ、学習障害、言語及び発話障害、人格発達障害を含んでもよい。前述の症状のうち1つ又は複数又はすべてが改善されたという所見は、治療が成功したことを示す臨床的指標としても機能する。
【0150】
実施例4. 培養HEK293細胞における抗DMPK siRNA分子のDMPK1発現抑制能
本実施例は、本明細書の表4に記載の種々のsiRNA分子などの抗DMPK siRNA分子が培養ヒト細胞におけるDMPK1 mRNAの発現を減少させる能力を評価するために実施した実験の結果を記載する。比較の目的のために、上記の表4に記載のsiRNA分子の試験に加えて、スクランブルsiRNA分子及び市販の抗DMPK siRNA分子も試験した。
【0151】
この実験を実施するために、HEK293細胞(2×10
5細胞/ウェル)を、1μLのLipofectamine
TM RNAiMAX (Thermo Fisher Scientific)を用いて、5pMの候補抗DMPK siRNA分子(例えば、上記の表4に記載のsiRNA分子)又は5pMのスクランブルネガティブsiRNAコントロール(Silencer
(R) Select siRNA, Ambion by Life Technologies)のいずれかに3回トランスフェクトした。ノーマライゼーションのために、1μL Lipofectamine
TM RNAiMAXのみで処理した細胞のモックトランスフェクションを含めた。RNAをRNeasy Plus Mini Kit (Qiagen)を用いて 48時間後に採取した。生成したcDNAは、SuperScript
TM III Reverse Transcriptase (Thermo Fisher Scientific)を用いて、サンプルあたり150ngのRNAを用いて生成した。DMPK1のノックダウンを検出するためにqPCRを実施した。qPCR実験をTaqMan
TM Fast Advanced Master Mixを用いて3回セットアップし、反応はQuantStudio 3 RT-PCR instrument (Thermo Fisher Scientific)を用いて行った。DMPK1発現値を、QuantStudio 3ソフトウェアを用いて、GAPDH(TaqMan
TM Gene expression assay ID Hs02786624_g1)にノーマライゼーションした。
【0152】
この実験の結果を
図9に示す。この図からわかるように、上記の表4に記載された様々なsiRNA分子は、生きたヒト細胞においてDMPK1発現をダウンレギュレートできる。
図9にグラフィカルに示されたデータは、下記の表6に数値形式で示される。
【表6】
【0153】
他の実施形態
本明細書に記載されている全ての刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれの独立した刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同様の範囲で参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、その特定の実施形態に関連して記載されてきたが、さらなる改変が可能であることが理解されるであろう。さらに、本願は、典型的には、本発明の原理に従う本発明のあらゆる変形、使用、又は適応をカバーすることを意図しており、本発明が属する技術分野における既知又は慣例の範囲内に入ってきた本発明からの発展を含み、本明細書に先に述べた本質的特徴が適用され得るものであり、さらに、特許請求の範囲に従うものである。他の実施形態は、特許請求の範囲に含まれる。
【国際調査報告】