特表2021-522859(P2021-522859A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-522859Jak−Stat経路を制御して細胞を分化、脱分化、若返りさせる技術及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-522859(P2021-522859A)
(43)【公表日】2021年9月2日
(54)【発明の名称】Jak−Stat経路を制御して細胞を分化、脱分化、若返りさせる技術及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20210806BHJP
【FI】
   C12N5/071
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2021-510508(P2021-510508)
(86)(22)【出願日】2019年4月30日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月21日
(86)【国際出願番号】CN2019085186
(87)【国際公開番号】WO2019210851
(87)【国際公開日】20191107
(31)【優先権主張番号】201810407253.9
(32)【優先日】2018年5月1日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520427550
【氏名又は名称】深▲セン▼阿爾法生物制薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN ALPHA BIOPHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】胡敏
(72)【発明者】
【氏名】李燕皎
(72)【発明者】
【氏名】胡▲ジュン▼源
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BA18
4B065BA30
4B065BD50
4B065CA44
(57)【要約】
Jak−Stat経路を制御して細胞を分化、脱分化、若返りさせる技術及びその使用が提供される。低分子化合物の組み合わせ、サイトカインの組み合わせ又は組換えタンパク質の組み合わせ、遺伝子編集技術、遺伝子組替え技術によりを細胞中のJak−Statシグナル伝達経路の遺伝子又はタンパク質ターゲットを定量及び/又は定時的に制御することにより、若返った細胞製品及び/又は異なる種類の細胞製品を得る。この製品は、細胞、組織、臓器、生体のリプログラミング;組織工学材料の構築;哺乳動物の組織、臓器損傷及び老化、退化した組織、臓器の修復;細胞、組織、臓器及び生体の老化進行の遅延又は逆転;細胞、組織、臓器及び生体の免疫調節に適用できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Jak−Stat経路を制御し、細胞を分化、脱分化、分化転換、若返り、老化、アポトーシスさせる技術及びその使用であって、
前記方法は、JAK−STATシグナル伝達経路を定量及び/又は定時的に活性化又は抑制することである、ことを特徴とする技術及びその使用。
【請求項2】
前記JAK−STATシグナル伝達経路を活性化又は抑制する方法において、JAK−STATシグナル伝達経路中で高発現する又は高発現される、低発現する又は発現が抑制される遺伝子又はタンパク質ターゲットは、CXCL2(遺伝子番号/Accession:AY577905.1)、SOS1(遺伝子番号/Accession:NM_005633.3)、STAT5B(遺伝子番号/Accession:NM_012448.3)、JAK1(遺伝子番号/Accession:NM_001321857.1)、JAK3(遺伝子番号/Accession:NM_000215.3)、SOCS3(遺伝子番号/Accession:NM_003955.4)、IL6ST(遺伝子番号/Accession:NM_001243835.1)、STAT1(遺伝子番号/Accession:NM_007315.3)、STAT2(遺伝子番号/Accession:NM_198332.1)、STAT3(遺伝子番号/Accession:NM_213662.1)、STAT4(遺伝子番号/Accession:NM_001243835.1)、STAT6(遺伝子番号/Accession:NM_001178081.1)、STAT5A(遺伝子番号/Accession:NM_001288720.1)、IRF9(遺伝子番号/Accession:NM_006084.4)、IL6(遺伝子番号/Accession:XM_005249745.5)、IL6R(遺伝子番号/Accession:NM_181359.2)、IL2(遺伝子番号/Accession:NM_000586.3)(例えば、IL2A及び/又はIL2B)、PRKCD(遺伝子番号/Accession:NM_001354679.1)、CXCL12(遺伝子番号/Accession:NM_000609.6)、CXCR4(遺伝子番号/Accession:NM_003467.2)、JAK2(遺伝子番号/Accession:NM_004972.3)、IL15RA(遺伝子番号/Accession:NM_001351095.1)、IL20RB(遺伝子番号/Accession:XM_006713665.4)、GHR(遺伝子番号/Accession:NM_001242406.2)和PRLR(遺伝子番号/Accession:NM_001204314.2)のうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のJak−Stat経路を制御し、細胞を分化、脱分化、分化転換、若返り、老化、アポトーシスさせる技術及びその使用。
【請求項3】
前記細胞は、JAK−STATを制御する初期標的細胞であり、前記標的細胞は、ヒト、ネズミ、サル、ブタを含む哺乳動物に由来し、前記標的細胞は、線維芽細胞、上皮細胞、脂肪細胞、血液細胞、間葉系幹細胞、神経細胞、筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、血管内皮細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、破骨細胞を含み、
前記方法により製造された細胞は、本発明において目的細胞として定義され、標的細胞に由来し、標的細胞中でJAK−STATを制御する過程において産生する特徴が異なる様々な種類の細胞を含み、前記特徴は、分化、逆分化、分化転換、若返り、老化、アポトーシスのうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のJak−Stat経路を制御し、細胞を分化、脱分化、分化転換、若返り、老化、アポトーシスさせる技術及びその使用。
【請求項4】
前記JAK−STATシグナル伝達経路に対する定量的な活性化又は抑制において、JAK−STATシグナル伝達経路に対する活性化又は抑制の定量は、目的細胞中のJAK−STATシグナル伝達経路の遺伝子又はタンパク質ターゲットの少なくとも1種が標的細胞に対して1〜300倍のうちのいずれか1つの倍数アップレギュレート又はダウンレギュレートし、或いは安全にノックアウトされて発現しないことである、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のJak−Stat経路を制御し、細胞を分化、脱分化、分化転換、若返り、老化、アポトーシスさせる技術及びその使用。
【請求項5】
前記JAK−STATシグナル伝達経路に対する定時的な活性化又は抑制において、JAK−STATシグナル伝達経路に対する活性化又は抑制の定時は、標的細胞中でJAK−STATシグナル伝達経路の遺伝子又はタンパク質ターゲットの少なくとも1種が高発現するか、低発現するか、又は発現しないように24時間〜220日間制御され、これにより得られる目的細胞は、JAK−STATシグナル伝達経路の遺伝子又はタンパク質ターゲットのうちの少なくとも1種を高発現、低発現又は非発現に長期間維持し、或いは、標的細胞と同じ発現レベルに回復させる、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のJak−Stat経路を制御し、細胞を分化、脱分化、分化転換、若返り、老化、アポトーシスさせる技術及びその使用。
【請求項6】
前記JAK−STATシグナル伝達経路を活性化又は抑制する方法において、NOD様受容体シグナル伝達経路、焦点接着斑(Focal adhesion)、細胞周期、クエン酸回路、TGF betaシグナル伝達経路、WNTシグナル伝達経路、Notchシグナル伝達経路、P53シグナル伝達経路、インスリンシグナル伝達経路、カルシウム(Calcium)シグナル伝達経路、Interleukin−19、Interleukin−20、Interleukin−22、Interleukin−24、IL7 HDAC(ヒストンデアセチラーゼ)、PKCシグナル伝達経路、RAR経路、アデニル酸シクラーゼシグナル伝達経路、HMT(ヒストンメチルトランスフェラーゼ)、DNMT(DNAメチルトランスフェラーゼ)、及びヒストンデメチラーゼ阻害剤からなる群から選択される経路又はターゲットのうちの少なくとも1種を調節することによりJAK−STATシグナル伝達経路を活性化又は抑制することができる、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のJak−Stat経路を制御し、細胞を分化、脱分化、分化転換、若返り、老化、アポトーシスさせる技術及びその使用。
【請求項7】
JAK−STATシグナル伝達経路の細胞ターゲット及び細胞シグナル伝達経路を活性化又は抑制し、
前記NOD様受容体シグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、NAIP、IL6、CXCL12、 NOD1、TAB3、CARD6、CXCL2、CXCL1、CXCL3、CARD8、CARD9、CASP1、CASP12、CASP4、CASP5、NFKB1、TMEM173、TNF、NFKBIB、NOD2、PYDC1、PYCARD、TAB1、TAB2、TNF、TLR4、NLRP1、NLRP12、NLRP3、NLRP6、MCU、RIPK3、RHOA、TAK1、BIRC2、ATG16L1、ATG5、ATG12、TANKからなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記焦点接着斑経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、TNXB、RAPGEF1、ITGB8、SRC、THBS1、ITGA3、VCL、CAPN2、FLT4、FLT1、ITGA3、ITGB1、ITGB3、ITGB5、ITGB6、ITGB7、ITGA1、ITGA10、ITGA11、ITGA2、ITGA2B、ITGA5、ITGA6、ITGA7、ITGA8、ITGA9、ITGAV、PDRVG、PDGFA、PDGFB、PDGFC、PDGFD、PDGFRA、PDGFRB、BIRC3、 BIRC2、BCL2、DOCK1、FN1、HGF、EGF、EGFR、IGF1、IGF1R、VEGFA、VEGFB、VEGFC、CTNNB1からなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記細胞周期を制御するための遺伝子又はタンパク質ターゲットは、MAD2L1、BUB1、ORC1、ORC2、ORC3、ORC4、ORC5、ORC6、ATM、ATR、CCNA1、CCNA2、CCNB1、CCNB2、CCNB3、CCND1、CCND2、SMAD2、SMAD3、SMAD4、E2F2、E2F2、E2F4、E2F5、EP300、FZR1、GADD45A、GADD45B、GADD45B、STAG1、STAG2、CDC14A、CDC14B、CDC20、CDC25A、CDC25B、MYC、SMC3、CDC16、YWHAH、YWHAB、YWHAQ、YWHAE、YWHAG、YWHAZからなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記クエン酸回路を制御するための遺伝子又はタンパク質ターゲットは、IDH3G、IDH3B、MDH2、SDHB、OGDH、MDH1、OGDHL、SUCLG1、SUCLG2、SUCLA2、SDHA、SDHB、SDHC、PDHA1、PDHB、ACLYからなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記TGF betaシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、ACVR1C、THBS1、FST、TGFB1、TGFBR1、TGFBR2.TGFBR3、BMP4、RUNX3、RUNX2、CREBBP、 IFNG、HRAS、FOS、TGFB2、TGFB3、ACVRL1、FOXO3、MTOR、KRAS、CREB1、ATF1、ATF2、ATF4、AKT1、AKT2、AKT3、HNF4A、HNF4G、PIK3R3からなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記WNTシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、PRKCA、WNT7B、PRICKLE1、LRP6、CTNNB1、FZD4、CCND2、PRICK、WNT5A、WNT1、WNT10A、WNT11、WNT9A、WNT9B、WNT3、WNT4Bからなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記Notchシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、CIR1、KAT2B、MAML2、PSEN2、DVL2、RFNG、SNW1、DLL4、DTX3、DLL3、DLL1、DTX1、DTX2、CREBBP、CTBP1、CTBP2、JAG1、JAG2、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、PSEN1、PSEN2からなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記P53シグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、CCNG2、SIAH1、BBC3、TP53AIP1、TP53、SETD7、ATF3、CCNA2、CDK2、CCNG1、CHEK1、PRKC DKAT2B、PRL23、PPP2CAからなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記カルシウムシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、RYR1、RYR2、RYR3、ESR1、AR(アンドロゲン受容体)、KDR(キナーゼインサートドメイン受容体)、VDR(ビタミンD受容体)、ITPR1、ITPR2、ITPR3、PDE1A、PDE1B、PDE1C、PRKCA、PRKCD、PRKCE、PRKCGからなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記インスリンシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、RAPGEF1、PHKG1、PYGL、TRIP10、INS、INSR、IRS1、PDPK1、PIK3CA、HRAS、GRB2、PTPN1、PTPN11からなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記PKCの遺伝子又はタンパク質ターゲットは、PRKCA、PRKCB、PRKDC、PRKCZ、PRKCE、PRKCG、PRKCD、PRKCH、PRKCI、PRKCQ、PRKD1、SLC9A5、MAPK3、MAPK9、MAPK8、MAPK1からなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記RAR中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、RARA、RARS、RARB、RARG、RXRA、RXRG、FAM120B、NCOA1、NCOR2からなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記HDACを制御する遺伝子又はタンパク質ターゲットは、HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7、HDAC8、HDAC9、HDAC10、HDAC11からなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記アデニル酸シクラーゼシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、PRKAR1A、ADCY10、ADCYAP1、ADCY1、ADCY2、ADCY6、ADCY3、GNAI1、GNAL、GNAT3、PRKACA、PRKAR2B、PRKACB、PRKAR1B、PRKACG、CDKN1B、PRKAR2A、NCAM1、CDKN1Aからなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記HMT中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、HNMT、DNMT1、KMT2A、EHMT2、EHMT1、KMT2A、DOT1L、EZH2、SETD7、DNMT3B、DNMT3A、SETDB1、SETD2からなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記DNMT中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、DNMT1、DNMT3B、DNMT3A、CDKN2A、CDKN2B、EHMT2、EHMT1、DNMT3L、CDH1、PARP1、MBD2からなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記ヒストンデメチラーゼ中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、KDM1A、KDM4A、KDM5A、KDM5B、KDM2A、KDM5C、KDM4B、KDM4C、KDM5D、KDM4D、KDM1B、HISTIH3A、HIST4H4、HIST2H3C、HAT1、HIST1H4C、HIST1H4F、HIST1H4J、HIST1H2AE、HIST1H2BB、CLOCK、NOCA1からなる群から選択される1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項6項に記載のJak−Stat経路を制御し、細胞を分化、脱分化、分化転換、若返り、老化、アポトーシスさせる技術及びその使用。
【請求項8】
前記JAK−STATシグナル伝達経路を定量的に活性化又は抑制する技術は、低分子化合物の組み合わせ、サイトカインの組み合わせ又は組換えタンパク質の組み合わせ、遺伝子編集技術及び遺伝子組替え技術のうちの少なくとも1種を採用し、
前記低分子化合物の組み合わせは、
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤:フェニル酪酸ナトリウム、酪酸塩、酪酸ナトリウム、VPA、スクリプタイド、アピシジン、LBH−589(パノビノスタット)、MS−275、SAHA(ボリノスタット)、トリコスタチン(TSA)、サマプリンA(psammaplin A)、スプリトマイシン、SRT1720、レスベラトロール、シルチノール、APHA、CI−994、デプデシン、FK−228、HC毒素、ITF−2357(ジビノスタット)、チダミド、RGFP 966、PHOB、BG45、ネクスツラスタットA、TMP269、CAY10603、MGCD−0103、ニルツバシン(Niltubacin)、PXD−101(ベリノスタット)、ピロキサミド、ツバシン(Tubacin)、EX−527、BATCP、カンビノール、MOCPAC、PTACH、MC1568、NCH51及びTC−H106
TGF−β阻害剤:616452、LY2109761、ピルフェニドン、Repsox(E−616452)、SB431542、A77−01、A8301、GW788388、ITD−1、SD208、SB525334、LY364947、ASP3029、D4476及びSB505124
PKC阻害剤:Go6983、Go6976及びビシンドリルマレイミドI(GF109203X)
WNT/β−カテニンアゴニスト:MAY−262611、CHIR98014、CHIR99021、LiCl、Li2CO3、TD114−2、AZD2858、AZD1080、BIO、ケンパウロン、TWS119、LY2090314、CBM1078、SB216763及びAR−A014418
cAMPアゴニスト:フォルスコリン、IBMX、プロスタグランジンE2(PGE2)、NKH477、8−pCPT−2′−O−Me−cAMP、GSK256066、アプレミラスト(CC−10004)、ロフルミラスト、シロミラスト、ロリプラム、ミルリノン、8−Bromo−cAMP、ジブチリル−Camp、Sp−8−Br−cAMPs
RARアゴニスト:TTNPB、ベキサロテン、Ch55、タミバロテン、レチノール、AM580、ATRA、ビタミンA、ビタミンA誘導物及び13−cis RA
ROCK阻害剤:Y−27632、Y−27632 2HCl、チアゾビビン、リパスディル(K−115)、ファスジル、GSK429286A、RKI−1447及びPKI−1313
JNK阻害剤:SP600125、JNK阻害剤IX、AS601245、AS602801及びJNK−IN−8
DNMT阻害剤:RG108、チオグアニン、5−Aza−2'−デオキシシチジン(デシタビン)、SGI−1027、ゼブラリン及び5−アザシチジン(AZA)
HMT阻害剤:EPZ004777、EPZ5676、GSK503、BIX 01294及びSGC 0946
ヒストンデメチラーゼ阻害剤:パルネート(トラニルシプロミン)、トラニルシプロミン(2−PCPA) HCl SP2509、4SC−202、ORY−1001(RG−6016)、GSKJ1及びGSK−LSD1
JAK−STAT阻害剤:STAT5−IN−1、JAK3−IN−1、JAK3−IN−7、WP1066、ホモハリントンニン、ピリドン6、ピリドン6、アルテスネイト、ルキソリチニブ、SH−4−54、バリシチニブ、ルキソリチニブリン酸塩、AG−490、バリシチニブリン酸塩、SAR−20347、CYT387メシレート、AS1517499、ペフィシチニブ、ルキソリチニブ硫酸塩、NSC 74859、Stattic、トファシチニブクエン酸塩、ピモジド、オクラシチニブマレイン酸塩、ルキソリチニブSエナンチオマー、SB1317、ニクロサミド、スクテラリン、ソルシチニブ、モグロール、ニフロキサジド、TG101348(SAR302503)、AG−1478(チルホスチンAG−1478)(EGFR阻害剤)
KX2−391(Src阻害剤)、PKI−402(PI3Kα/β/γ/δ及びmTOR阻害剤)、NSC 74859(S3I−201)(STAT3阻害剤)、フルダラビン(Fludara)(STAT−1阻害剤)、U0126−EtOH(UO126 EtOH)(MEK1及びMEK2阻害剤)、SGI−1776遊離塩基(Pim1、Pim2及びPim3阻害剤)、ソラフェニブ(Nexavar)(VEGFR、PDGFR、c−Raf及びB−Raf阻害剤)、PLX−4720(B−RafV600E及びc−Raf−1Y340D/Y341D阻害剤)
のうちの1種又は複数種を含み、
前記サイトカインの組み合わせ又は組換えタンパク質の組み合わせは、PDGFAA、PDGFAB、BMP4、IGF1、bFGF、EGF、VEGF、インスリン、アクチビンA、TGF−beta1、Noggin、BMP−2、Shh、IL−6、CXCL10、CXCL12、CXCL2、HGF、IFN gamma、IL−2、IL−6 R alpha、IL−2Ralpha、TNF−alpha、TNF−beta、TPO、IGF2、IGFBP5、IGFBP6、IGFBP4、IGFBP7、IGFBP9、PDGF−BB、MMP3、GDF11、TIMP2を含み、
前記遺伝子編集技術は、crispr/cas9遺伝子編集技術及びTALEN遺伝子編集技術によりJAK−STATシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲット、例えばSTAT5Aをアップレギュレート又はノックアウトすることを含み、
前記遺伝子組替え技術は、レンチウイルス又はレトロウイルスによりJAK−STATシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲット、例えば、STAT5Aを過剰発現又は抑制することを含む、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のJak−Stat経路を制御し、細胞を分化、脱分化、分化転換、若返り、老化、アポトーシスさせる技術及びその使用。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のJak−Statシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットをノックアウトすることによりスーパー線維芽細胞(例えば、STAT5)を製造し、
前記スーパー線維芽細胞は、普通線維芽細胞に対してSTAT5遺伝子をノックアウトした後の3〜150日内で得られた、若返ったとともにテロメアが延長したスーパー線維芽細胞であり、
前記間葉系幹細胞の老化を逆転する方法は、間葉系幹細胞を低分子化合物の組み合わせ又は遺伝子編集により処理し、最終的に若返った間葉系幹細胞を製造することであり、
前記低分子化合物の組み合わせは、Jak−Stat阻害剤、WNT/β−カテニンアゴニスト、DNMT阻害剤、TGF−β阻害剤及びcAMPアゴニストのうちの少なくとも1種を含み、
前記遺伝子編集による処理は、Jak−Statシグナル伝達経路の遺伝子又はタンパク質ターゲット(例えば、STAT5)をノックアウトすることであり、
前記低分子化合物の組み合わせによる処理は、1〜15μMのCHIR99021、1μM〜15μMの5−アザシチジン(AZA);及び/又は1μM〜15μMの5−アザシチジン(AZA)、3〜50μMのフォルスコリン;及び/又は1μM〜15μMの5−アザシチジン(AZA)、3〜50μMのフォルスコリン、1〜15μMのCHIR99021で間葉系幹細胞を1〜28日間処理することである、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のJak−Stat経路を制御し、細胞を分化、脱分化、分化転換、若返り、老化、アポトーシスさせる技術及びその使用、
前記いずれかの方法、それにより製造された細胞製品(例えば、修復型線維芽細胞)又は前記細胞製品の誘導物、例えば、細胞培養液/培地、細胞製品の溶解液、キット、薬物、健康製品、食品、化粧品若しくは医療機器の使用、
組織工学材料の種細胞、組織工学材料の足場の由来源として哺乳動物組織、臓器損傷及び老化、退化した組織、臓器を修復することにおける、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法、それにより製造された細胞製品及び/又は細胞製品の誘導物の使用、
医学研究における又は免疫調節剤とする請求項1から9のいずれか1項に記載の方法、それにより製造された細胞製品及び/又は細胞製品の誘導物の使用、
インビトロ/インビボでの哺乳動物の組織、臓器、生体の老化進行の予防、遅延、逆転における請求項1から9のいずれか1項に記載の方法、それにより製造された細胞製品及び/又は細胞製品の誘導物の使用、及び
細胞、組織、臓器、生体のリプログラミング、又は細胞、組織、臓器、生体の若返りにおける前記いずれかの方法、それにより製造された細胞製品及び/又は細胞製品の誘導物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞生物学の技術分野に属し、Jak−Stat経路を制御して細胞を分化、脱分化、若返りさせる技術及びその使用に関し、特にJAK−STATシグナル伝達経路を制御して細胞の分化、脱分化、分化転換、若返り、老化、アポトーシスを調節し、生体寿命を延長させる方法、その細胞製品の製造及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は、再生医療と抗老化の「聖杯」と見なされている。個体が老化を始めると、体内の幹細胞も老化し、骨、軟骨、心臓、筋肉、脳、皮膚、膵臓、肝臓、腎臓、胃腸管などを含む複数の臓器の悪変又は退化を引き起こす。免疫系機能の異常も老化に関係している。実際、組織や臓器の慢性的な炎症は、それらの退化や老化の原因である。老化細胞には通常、DNAの損傷又は変異、テロメアの短縮、エピジェネティクス、レドックス、エネルギー代謝の異常、増殖能力の低下、死細胞の増加などの問題が存在する。老化した幹細胞は、特定の細胞種に分化する能力を失い、他の細胞種へ異常的に分化する。例えば、知られているように、老齢個体に由来する骨髄間葉系幹細胞は、軟骨への分化能力が低下し、脂肪形成能力が向上する。したがって、脂肪組織で満たされた老化骨髄は、「黄色骨髄」とも呼ばれている。同様に、高齢者の神経幹細胞は、ニューロンへの分化が減少され、アストロサイトへの分化が増加する。これは、高齢者の認知能力の低下に関係していると考えられている。
【0003】
幹細胞、特に、間葉系幹細胞は、その入手しやすさ、スケーラブルかつ多用途、成長因子の放出作用、及び免疫調節能力により、老化進行及び関連疾患を治療又は介入する有力候補となっている。間葉系幹細胞は、臨床的には、移植片対宿主病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、紅斑性狼瘡、関節炎及び老化などの多種類の疾患の治療に広く使用されている。同種異系の使用について、臍帯間葉系幹細胞は、幅広く考慮されている。しかし、「非自己」細胞の長期/反復使用には常に臨床的なリスクが存在する。自家移植の方が安全だと考えられているが、残念ながら、年齢を重ねると間葉系幹細胞も老化する。老化した間葉系幹細胞は、多くの重要な機能を失ったので、その臨床応用が制限される。人工多能性幹細胞(iPS)は、高齢者から取得可能な若い細胞であり、治療に適した細胞源と考えられていた。しかし、iPSの誘導効率が低く、かつ外来遺伝子の導入が必要であるため、遺伝的変異が発生する場合が多く、臨床応用に有利ではない。最近、若返りの方法として遺伝子改変が使用されているが、この方法には依然としてオフターゲット及び腫瘍形成のリスクがある。従って、自己若返り可能で安全な細胞を製造する方法の開発、及び自己若返り可能で安全な修復型細胞の取得は、人間老化進行の予防、遅延及び逆転、組織、臓器構造又は機能の修復、健康状態及び生活の質の向上に対しては非常に重要である。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、Jak−Stat経路を制御して細胞を分化、脱分化、若返りさせる技術及びその使用、特にJAK−STATシグナル伝達経路を制御して細胞の分化、脱分化、分化転換、若返り、老化、アポトーシスを調節し、老化を逆転し、生体寿命を延長させる方法を提供することを目的とする。この方法により得られる細胞生成物(例えば、修復型線維芽細胞、若返った間葉系幹細胞)は、人間老化進行の予防、遅延及び逆転、組織、臓器構造又は機能の修復に適用できる。本発明の技術により製造された修復型線維芽細胞は、皮膚線維芽細胞の特性と間葉系幹細胞の特性を兼ね備えるため、修復型皮膚線維芽細胞(regenerative fibroblast、略称:rFib)と命名され、誘導若返り間葉系幹細胞(induced and rejuvenated mesenchymal stem cell,irMSC)又は誘導間葉系幹細胞(induced mesenchymal stem cell,iMSC)とも命名されてもよく、本明細書においてrFibと記される。
【0005】
本発明の技術的手段は、以下の通りである。JAK−STATシグナル伝達経路を定量及び/又は定時的に活性化又は抑制するJak−Stat経路を制御して細胞を分化、脱分化、若返りさせる技術及びその使用。
【0006】
前記方法において、JAK−STATシグナル伝達経路中で高発現する又は高発現される、低発現する又は発現が抑制される遺伝子又はタンパク質ターゲットは、CXCL2(遺伝子番号/Accession:AY577905.1)、SOS1(遺伝子番号/Accession:NM_005633.3)、STAT5B(遺伝子番号/Accession:NM_012448.3)、JAK1(遺伝子番号/Accession:NM_001321857.1)、JAK3(遺伝子番号/Accession:NM_000215.3)、SOCS3(遺伝子番号/Accession:NM_003955.4)、IL6ST(遺伝子番号/Accession:NM_001243835.1)、STAT1(遺伝子番号/Accession:NM_007315.3)、STAT2(遺伝子番号/Accession:NM_198332.1)、STAT3(遺伝子番号/Accession:NM_213662.1)、STAT4(遺伝子番号/Accession:NM_001243835.1)、STAT6(遺伝子番号/Accession:NM_001178081.1)、STAT5A(遺伝子番号/Accession:NM_001288720.1)、IRF9(遺伝子番号/Accession:NM_006084.4)、IL6(遺伝子番号/Accession:XM_005249745.5)、IL6R(遺伝子番号/Accession:NM_181359.2)、IL2(遺伝子番号/Accession:NM_000586.3)(例えば、IL2A及び/又はIL2B)、PRKCD(遺伝子番号/Accession:NM_001354679.1)、CXCL12(遺伝子番号/Accession:NM_000609.6)、CXCR4(遺伝子番号/Accession:NM_003467.2)、JAK2(遺伝子番号/Accession:NM_004972.3)、IL15RA(遺伝子番号/Accession:NM_001351095.1)、IL20RB(遺伝子番号/Accession:XM_006713665.4)、GHR(遺伝子番号/Accession:NM_001242406.2)和PRLR(遺伝子番号/Accession:NM_001204314.2)のうちの少なくとも1種を含む。
【0007】
前記細胞は、JAK−STATを制御する初期標的細胞であり、前記標的細胞は、ヒト、ネズミ、サル、ブタを含む哺乳動物に由来し、前記標的細胞は、線維芽細胞、上皮細胞、脂肪細胞、血液細胞、間葉系幹細胞、神経細胞、筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、血管内皮細胞、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、破骨細胞を含み、
前記方法により製造された細胞は、本明細書において目的細胞として定義され、標的細胞に由来し、標的細胞中でJAK−STATを制御する過程において産生する特徴が異なる様々な種類の細胞を含み、前記特徴は、分化、逆分化、分化転換、若返り、老化、アポトーシスのうちの少なくとも1種を含む。
【0008】
JAK−STATシグナル伝達経路に対する活性化又は抑制の定量は、目的細胞中のJAK−STATシグナル伝達経路の遺伝子又はタンパク質ターゲットの少なくとも1種が標的細胞に対して1〜300倍のうちのいずれか1つの倍数アップレギュレート又はダウンレギュレートすることである。
【0009】
JAK−STATシグナル伝達経路に対する活性化又は抑制の定時は、標的細胞中でJAK−STATシグナル伝達経路の遺伝子又はタンパク質ターゲットの少なくとも1種が高発現するか、低発現するか、又は発現しないように24時間〜220日間制御され、これにより得られる目的細胞は、JAK−STATシグナル伝達経路の遺伝子又はタンパク質ターゲットのうちの少なくとも1種を高発現、低発現又は非発現に長期間維持し、或いは、標的細胞と同じ発現レベルに回復させる。
【0010】
前記方法において、NOD様受容体シグナル伝達経路、焦点接着斑(Focal adhesion)、細胞周期、クエン酸回路、TGF betaシグナル伝達経路、WNTシグナル伝達経路、Notchシグナル伝達経路、P53シグナル伝達経路、インスリンシグナル伝達経路、カルシウム(Calcium)シグナル伝達経路、Interleukin−19、Interleukin−20、Interleukin−22、Interleukin−24、IL7 HDAC(ヒストンデアセチラーゼ)、PKCシグナル伝達経路、RAR経路、アデニル酸シクラーゼシグナル伝達経路、HMT(ヒストンメチルトランスフェラーゼ)、DNMT(DNAメチルトランスフェラーゼ)、及びヒストンデメチラーゼ阻害剤からなる群から選択される経路又はターゲットのうちの少なくとも1種を調節することによりJAK−STATシグナル伝達経路を活性化又は抑制することができる。
【0011】
JAK−STATシグナル伝達経路の細胞ターゲット及び細胞シグナル伝達経路を活性化又は抑制し、
前記NOD様受容体シグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、NAIP、IL6、CXCL12、 NOD1、TAB3、CARD6、CXCL2、CXCL1、CXCL3、CARD8、CARD9、CASP1、CASP12、CASP4、CASP5、NFKB1、TMEM173、TNF、NFKBIB、NOD2、PYDC1、PYCARD、TAB1、TAB2、TNF、TLR4、NLRP1、NLRP12、NLRP3、NLRP6、MCU、RIPK3、RHOA、TAK1、BIRC2、ATG16L1、ATG5、ATG12、TANKからなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記焦点接着斑経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、TNXB、RAPGEF1、ITGB8、SRC、THBS1、ITGA3、VCL、CAPN2、FLT4、FLT1、ITGA3、ITGB1、ITGB3、ITGB5、ITGB6、ITGB7、ITGA1、ITGA10、ITGA11、ITGA2、ITGA2B、ITGA5、ITGA6、ITGA7、ITGA8、ITGA9、ITGAV、PDRVG、PDGFA、PDGFB、PDGFC、PDGFD、PDGFRA、PDGFRB、BIRC3、 BIRC2、BCL2、DOCK1、FN1、HGF、EGF、EGFR、IGF1、IGF1R、VEGFA、VEGFB、VEGFC、CTNNB1からなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記細胞周期を制御するための遺伝子又はタンパク質ターゲットは、MAD2L1、BUB1、ORC1、ORC2、ORC3、ORC4、ORC5、ORC6、ATM、ATR、CCNA1、CCNA2、CCNB1、CCNB2、CCNB3、CCND1、CCND2、SMAD2、SMAD3、SMAD4、E2F2、E2F2、E2F4、E2F5、EP300、FZR1、GADD45A、GADD45B、GADD45B、STAG1、STAG2、CDC14A、CDC14B、CDC20、CDC25A、CDC25B、MYC、SMC3、CDC16、YWHAH、YWHAB、YWHAQ、YWHAE、YWHAG、YWHAZからなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記クエン酸回路を制御するための遺伝子又はタンパク質ターゲットは、IDH3G、IDH3B、MDH2、SDHB、OGDH、MDH1、OGDHL、SUCLG1、SUCLG2、SUCLA2、SDHA、SDHB、SDHC、PDHA1、PDHB、ACLYからなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記TGF betaシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、ACVR1C、THBS1、FST、TGFB1、TGFBR1、TGFBR2.TGFBR3、BMP4、RUNX3、RUNX2、CREBBP、 IFNG、HRAS、FOS、TGFB2、TGFB3、ACVRL1、FOXO3、MTOR、KRAS、CREB1、ATF1、ATF2、ATF4、AKT1、AKT2、AKT3、HNF4A、HNF4G、PIK3R3からなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記WNTシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、PRKCA、WNT7B、PRICKLE1、LRP6、CTNNB1、FZD4、CCND2、PRICK、WNT5A、WNT1、WNT10A、WNT11、WNT9A、WNT9B、WNT3、WNT4Bからなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記Notchシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、CIR1、KAT2B、MAML2、PSEN2、DVL2、RFNG、SNW1、DLL4、DTX3、DLL3、DLL1、DTX1、DTX2、CREBBP、CTBP1、CTBP2、JAG1、JAG2、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、PSEN1、PSEN2からなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記P53シグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、CCNG2、SIAH1、BBC3、TP53AIP1、TP53、SETD7、ATF3、CCNA2、CDK2、CCNG1、CHEK1、PRKC DKAT2B、PRL23、PPP2CAからなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記カルシウムシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、RYR1、RYR2、RYR3、ESR1、AR(アンドロゲン受容体)、KDR(キナーゼインサートドメイン受容体)、VDR(ビタミンD受容体)、ITPR1、ITPR2、ITPR3、PDE1A、PDE1B、PDE1C、PRKCA、PRKCD、PRKCE、PRKCGからなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記インスリンシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、RAPGEF1、PHKG1、PYGL、TRIP10、INS、INSR、IRS1、PDPK1、PIK3CA、HRAS、GRB2、PTPN1、PTPN11からなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記PKCの遺伝子又はタンパク質ターゲットは、PRKCA、PRKCB、PRKDC、PRKCZ、PRKCE、PRKCG、PRKCD、PRKCH、PRKCI、PRKCQ、PRKD1、SLC9A5、MAPK3、MAPK9、MAPK8、MAPK1からなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記RAR中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、RARA、RARS、RARB、RARG、RXRA、RXRG、FAM120B、NCOA1、NCOR2からなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記HDACを制御する遺伝子又はタンパク質ターゲットは、HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7、HDAC8、HDAC9、HDAC10、HDAC11からなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記アデニル酸シクラーゼシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、PRKAR1A、ADCY10、ADCYAP1、ADCY1、ADCY2、ADCY6、ADCY3、GNAI1、GNAL、GNAT3、PRKACA、PRKAR2B、PRKACB、PRKAR1B、PRKACG、CDKN1B、PRKAR2A、NCAM1、CDKN1Aからなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記HMT中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、HNMT、DNMT1、KMT2A、EHMT2、EHMT1、KMT2A、DOT1L、EZH2、SETD7、DNMT3B、DNMT3A、SETDB1、SETD2からなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記DNMT中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、DNMT1、DNMT3B、DNMT3A、CDKN2A、CDKN2B、EHMT2、EHMT1、DNMT3L、CDH1、PARP1、MBD2からなる群から選択される1種又は複数種であり、
前記ヒストンデメチラーゼ中の遺伝子又はタンパク質ターゲットは、KDM1A、KDM4A、KDM5A、KDM5B、KDM2A、KDM5C、KDM4B、KDM4C、KDM5D、KDM4D、KDM1B、HISTIH3A、HIST4H4、HIST2H3C、HAT1、HIST1H4C、HIST1H4F、HIST1H4J、HIST1H2AE、HIST1H2BB、CLOCK、NOCA1からなる群から選択される1種又は複数種である。
【0012】
前記方法は、低分子化合物の組み合わせ、サイトカインの組み合わせ又は組換えタンパク質の組み合わせ、遺伝子編集技術及び遺伝子組替え技術のうちの少なくとも1種を採用し、
前記低分子化合物の組み合わせは、
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤:フェニル酪酸ナトリウム、酪酸塩、酪酸ナトリウム、VPA、スクリプタイド、アピシジン、LBH−589(パノビノスタット)、MS−275、SAHA(ボリノスタット)、トリコスタチン(TSA)、サマプリンA(psammaplin A)、スプリトマイシン、SRT1720、レスベラトロール、シルチノール、APHA、CI−994、デプデシン、FK−228、HC毒素、ITF−2357(ジビノスタット)、チダミド、RGFP 966、PHOB、BG45、ネクスツラスタットA、TMP269、CAY10603、MGCD−0103、ニルツバシン(Niltubacin)、PXD−101(ベリノスタット)、ピロキサミド、ツバシン(Tubacin)、EX−527、BATCP、カンビノール、MOCPAC、PTACH、MC1568、NCH51及びTC−H106
TGF−β阻害剤:616452、LY2109761、ピルフェニドン、Repsox(E−616452)、SB431542、A77−01、A8301、GW788388、ITD−1、SD208、SB525334、LY364947、ASP3029、D4476及びSB505124
PKC阻害剤:Go6983、Go6976及びビシンドリルマレイミドI(GF109203X)
WNT/β−カテニンアゴニスト:MAY−262611、CHIR98014、CHIR99021、LiCl、Li2CO3、TD114−2、AZD2858、AZD1080、BIO、ケンパウロン、TWS119、LY2090314、CBM1078、SB216763及びAR−A014418
cAMPアゴニスト:フォルスコリン、IBMX、プロスタグランジンE2(PGE2)、NKH477、8−pCPT−2′−O−Me−cAMP、GSK256066、アプレミラスト(CC−10004)、ロフルミラスト、シロミラスト、ロリプラム、ミルリノン、8−Bromo−cAMP、ジブチリル−Camp、Sp−8−Br−cAMPs
RARアゴニスト:TTNPB、ベキサロテン、Ch55、タミバロテン、レチノール、AM580、ATRA、ビタミンA、ビタミンA誘導物及び13−cis RA
ROCK阻害剤:Y−27632、Y−27632 2HCl、チアゾビビン、リパスディル(K−115)、ファスジル、GSK429286A、RKI−1447及びPKI−1313
JNK阻害剤:SP600125、JNK阻害剤IX、AS601245、AS602801及びJNK−IN−8
DNMT阻害剤:RG108、チオグアニン、5−Aza−2'−デオキシシチジン(デシタビン)、SGI−1027、ゼブラリン及び5−アザシチジン(AZA)
HMT阻害剤:EPZ004777、EPZ5676、GSK503、BIX 01294及びSGC 0946
ヒストンデメチラーゼ阻害剤:パルネート(トラニルシプロミン)、トラニルシプロミン(2−PCPA) HCl SP2509、4SC−202、ORY−1001(RG−6016)、GSKJ1及びGSK−LSD1
JAK−STAT阻害剤:STAT5−IN−1、JAK3−IN−1、JAK3−IN−7、WP1066、ホモハリントンニン、ピリドン6、ピリドン6、アルテスネイト、ルキソリチニブ、SH−4−54、バリシチニブ、ルキソリチニブリン酸塩、AG−490、バリシチニブリン酸塩、SAR−20347、CYT387メシレート、AS1517499、ペフィシチニブ、ルキソリチニブ硫酸塩、NSC 74859、Stattic、トファシチニブクエン酸塩、ピモジド、オクラシチニブマレイン酸塩、ルキソリチニブSエナンチオマー、SB1317、ニクロサミド、スクテラリン、ソルシチニブ、モグロール、ニフロキサジド、TG101348(SAR302503)、AG−1478(チルホスチンAG−1478)(EGFR阻害剤)
KX2−391(Src阻害剤)、PKI−402(PI3Kα/β/γ/δ及びmTOR阻害剤)、NSC 74859(S3I−201)(STAT3阻害剤)、フルダラビン(Fludara)(STAT−1阻害剤)、U0126−EtOH(UO126 EtOH)(MEK1及びMEK2阻害剤)、SGI−1776遊離塩基(Pim1、Pim2及びPim3阻害剤)、ソラフェニブ(Nexavar)(VEGFR、PDGFR、c−Raf及びB−Raf阻害剤)、PLX−4720(B−RafV600E及びc−Raf−1Y340D/Y341D阻害剤)
のうちの1種又は複数種を含み、
前記サイトカインの組み合わせ又は組換えタンパク質の組み合わせは、PDGFAA、PDGFAB、BMP4、IGF1、bFGF、EGF、VEGF、インスリン、アクチビンA、TGF−beta1、Noggin、BMP−2、Shh、IL−6、CXCL10、CXCL12、CXCL2、HGF、IFN gamma、IL−2、IL−6 R alpha、IL−2Ralpha、TNF−alpha、TNF−beta、TPO、IGF2、IGFBP5、IGFBP6、IGFBP4、IGFBP7、IGFBP9、PDGF−BB、MMP3、GDF11、TIMP2を含み、
前記遺伝子編集技術は、crispr/cas9遺伝子編集技術及びTALEN遺伝子編集技術によりJAK−STATシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲット、例えばSTAT5Aをアップレギュレート又はノックアウトすることを含み、
前記遺伝子組替え技術は、レンチウイルス又はレトロウイルスによりJAK−STATシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲット、例えば、STAT5Aを過剰発現又は抑制することを含む。
【0013】
上述した方法で製造される修復型線維芽細胞であって、前記修復型線維芽細胞中のJAK−STATシグナル伝達経路は抑制され、前記JAK−STATシグナル伝達経路中の低発現し又は発現が抑制される遺伝子又はタンパク質ターゲットは、SOS1、STAT5B、JAK1、JAK3、SOCS3、IL6ST、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT6、STAT5A、IRF9、IL6、IL6R、IL2、IL2A、IL2B、PRKCD、CXCL12、CXCR4、JAK2、IL15RA、IL20RB、GHR、CXCL2及びPRLRのうちの少なくとも1種を含む修復型線維芽細胞。
【0014】
前記修復型線維芽細胞中のシグナル伝達経路は、以下の変化が発生する。NOD様受容体シグナル伝達経路が抑制され、及び/又はTGF−β受容体シグナル伝達経路が抑制され、及び/又はインスリンシグナル伝達経路がダウンレギュレートされ、及び/又はwntシグナル伝達経路がアップレギュレートされ、及び/又はnotchシグナル伝達経路がダウンレギュレートされ、及び/又はp53シグナル伝達経路がダウンレギュレートされる。
【0015】
前記修復型線維芽細胞の製造方法であって、前記修復型線維芽細胞の標的細胞は普通線維芽細胞であり、前記普通線維芽細胞は、哺乳動物(例えば、ヒト、サル、ネズミ、ブタ)の結合組織(例えば、血液、皮膚、骨髄、心臓)に由来する製造方法。
【0016】
前記製造方法において、普通線維芽細胞に対して低分子化合物の組み合わせにより処理し、修復型線維芽細胞を得る。前記低分子化合物の組み合わせは、Jak−Stat阻害剤、WNT/β−カテニンアゴニスト、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、及びcAMPアゴニストのうちの少なくとも1種を含む。
【0017】
前記修復型線維芽細胞の製造方法は、RARアゴニスト、DNMT阻害剤、HMT阻害剤、ヒストンデメチラーゼ阻害剤、ascorbate(アスコルビン酸)、JNK阻害剤、PKC阻害剤、ROCK阻害剤及びTGF−β阻害剤のうちの少なくとも1種を使用することをさらに含む。
【0018】
前記修復型線維芽細胞の製造方法において、時系列で段階的に第1段階化合物及び第2段階化合物を使用する。前記第1段階化合物はWNT/β−カテニンアゴニスト、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤及びcAMPアゴニストであり、或いは前記第1段階化合物は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、TGF−β受体阻害剤、WNT/β−カテニンアゴニスト及びcAMPアゴニストである。前記第2段階化合物は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、TGF−β阻害剤、WNT/β−カテニンアゴニスト、cAMPアゴニスト、RARアゴニスト、HMT阻害剤、ascorbate(アスコルビン酸)、PKC阻害剤、PKC阻害剤及びROCK阻害剤を含む。
【0019】
前記製造方法において、0.05〜10mMのVPA、1〜15μMのCHIR99021、0.5〜10μMのRepsox、3〜50μMのフォルスコリン、1〜20μMのGo6983、1〜25μMのY−27632、0.02〜1μMのAM580、0.5〜15μMのEPZ004777、0.2mMのVc、0.2〜20μMのTTNPB、1〜15μMの5−アザシチジン、1〜50μMのSP600125のうちの少なくとも1種を使用する。或いは、まず第1段階化合物で普通線維芽細胞を2〜10日間処理する。前記第1段階化合物は、0.05〜10mMのVPA、1〜15μMのCHIR99021、0.5〜10μMのRepsox、3〜50μMのフォルスコリンを含む。第1段階処理した後、第2段階化合物により4〜20日間処理する。前記第2段階化合物は、0.05〜10mMのVPA、1〜15μMのCHIR99021、0.5〜10μMのRepsox、3〜50μMのフォルスコリン、1〜20μMのGo6983、1〜25μMのY−27632、0.02〜1μMのAM580、0.5〜15μMのEPZ004777、0.2mMのVc、0.2〜20μMのTTNPBを含む。
【0020】
前記修復型線維芽細胞のテロメアの長さは、初期の普通線維芽細胞よりも1.5〜12倍延長し、未成年個体の同種細胞のレベルに近い。前記修復型線維芽細胞で製造された別の種類の細胞(例えば、骨芽細胞、軟骨細胞)は、同一動物個体に由来する同種細胞に比べ、テロメアが延長し、より強い機能活性を示す。
【0021】
上述した方法により製造された修復型線維芽細胞で製造された細胞生成物(例えば、細胞分泌物、細胞溶解液)は、組織工学材料の構築、細胞、組織、臓器及び生体老化の遅延又は逆転に適用できる。
【0022】
組織工学材料の構築、細胞、組織、臓器及び生体老化の遅延又は逆転における前記修復型線維芽細胞の使用。
【0023】
普通線維芽細胞に対してSTAT5遺伝子をノックアウトすることにより製造されるスーパー線維芽細胞。
【0024】
前記スーパー線維芽細胞の製造方法において、普通線維芽細胞に対してSTAT5遺伝子をノックアウトした後の3〜100日内で若返ったとともにテロメアが延長したスーパー線維芽細胞を得る。
【0025】
前記製造方法は、間葉系幹細胞を低分子化合物の組み合わせ又は遺伝子編集により処理し、最終的に若返った間葉系幹細胞を製造することである。前記低分子化合物の組み合わせは、Jak−Stat阻害剤、WNT/β−カテニンアゴニスト、DNMT阻害剤、TGF−β阻害剤及びcAMPアゴニストのうちの少なくとも1種を含む。前記遺伝子編集による処理は、Jak−Statシグナル伝達経路の遺伝子又はタンパク質ターゲット(例えば、STAT5A)をノックアウトすることである。
【0026】
前記低分子化合物の組み合わせによる処理は、1〜15μMのCHIR99021、1μM〜15μMの5−アザシチジン(AZA);及び/又は1μM〜15μMの5−アザシチジン(AZA)、3〜50μMのフォルスコリン;及び/又は1μM〜15μMの5−アザシチジン(AZA)、3〜50μMのフォルスコリン、1〜15μMのCHIR99021で間葉系幹細胞を1〜28日間処理することである。
【0027】
前記方法により製造された細胞製品(例えば、修復型線維芽細胞)又は前記細胞製品の細胞培養液/培地、細胞製品の溶解液、キット、薬物、健康製品、食品、化粧品又は医療機器の使用。
【0028】
組織工学材料の種細胞、組織工学材料の足場の由来源として哺乳動物組織、臓器損傷及び老化、退化した組織、臓器を修復することにおける、前記方法により製造された細胞製品(例えば、修復型線維芽細胞)の使用。
【0029】
医学研究における又は免疫調節剤とする前記方法により製造された細胞製品(例えば、修復型線維芽細胞)の使用。
【0030】
インビトロ/インビボでの哺乳動物の組織、臓器、生体の老化進行の予防、遅延、逆転における前記方法により製造された細胞製品(例えば、修復型線維芽細胞)の使用。
【0031】
細胞、組織、臓器、生体のリプログラミング、又は細胞、組織、臓器、生体の若返りにおける前記方法により製造された細胞製品の使用。
【0032】
本発明では、Jak−Statシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットを定量及び/又は定時的に制御することにより、細胞の分化、脱分化、分化転換、若返り、老化、アポトーシスを調節し、老化を逆転し、生体寿命を延長させる。低分子化合物の組み合わせ、サイトカインの組み合わせ、又は組換えタンパク質の組み合わせ、遺伝子編集技術、遺伝子組替え技術により細胞中のJak−Statシグナル伝達経路における遺伝子又はタンパク質ターゲットを定量及び/又は定時的に制御する。前記遺伝子又はタンパク質ターゲットは、CXCL2,SOS1、STAT5B、JAK1、JAK3、SOCS3、IL6ST、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT6、STAT5A、IRF9、IL6、IL6R、IL2(例えば、IL2A及び/又はIL2B)、PRKCD、CXCL12、CXCR4、JAK2、IL15RA、IL20RB、GHR及びPRLRのうちの少なくとも1種を含む。前記Jak−Statシグナル伝達経路を制御する低分子化合物の組み合わせは、Jak−Stat阻害剤、WNT/β−カテニンアゴニスト、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤及びcAMPアゴニスト、RARアゴニスト、DNMT阻害剤、HMT阻害剤、ヒストンデメチラーゼ阻害剤、ascorbate(アスコルビン酸)、JNK阻害剤、PKC阻害剤、ROCK阻害剤及びTGF−β阻害剤のうちの少なくとも1種を含む。前記サイトカインの組み合わせ又は組換えタンパク質の組み合わせは、PDGFAA、PDGFAB、BMP4、IGF1、bFGF、EGF、VEGF、インスリン、アクチビンA、TGF−beta1、Noggin(ノギン)、BMP−2、Shh、IL−6、CXCL10、CXCL12、CXCL2、HGF、IFN gamma、IL−2、IL−6 R alpha、IL−2Ralpha、TNF−alpha、TNF−beta、TPO、IGF2、IGFBP5、IGFBP6、IGFBP4、IGFBP7、IGFBP9、PDGF−BB、MMP3、GDF11、TIMP2を含む。前記遺伝子編集技術は、crispr/cas9遺伝子編集技術及びTALEN遺伝子編集技術によりJAK−STATシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲット、例えば、STAT5Aをアップレギュレート又はノックアウトする。前記遺伝子組替え技術は、レンチウイルス又はレトロウイルスによりJAK−STATシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲット、例えばSTAT5Aを過剰発現又は抑制する。
【0033】
本発明では、低分子化合物により線維芽細胞中のJak−Statシグナル伝達経路の遺伝子又はタンパク質ターゲット(例えば、STAT5A、JAK1)を抑制することで、修復型皮膚線維芽細胞を製造する。前記修復型皮膚線維芽細胞中のJak−Statシグナル伝達経路は抑制される。修復型線維芽細胞中のシグナル伝達経路は、以下の変化が発生する。NOD様受容体シグナル伝達経路が抑制され、及び/又はTGF-β受容体シグナル伝達経路が抑制され、及び/又はインスリンシグナル伝達経路がダウンレギュレートされ、及び/又はwntシグナル伝達経路がアップレギュレートされ、及び/又はnotchシグナル伝達経路がダウンレギュレートされ、及び/又はp53シグナル伝達経路がダウンレギュレートされる。前記修復型線維芽細胞のテロメアの長さは、初期の普通線維芽細胞よりも1.5〜12倍延長し、未成年個体の同種細胞のレベルに近い。前記修復型線維芽細胞で製造された別の種類の細胞(例えば、骨芽細胞、軟骨細胞)は、同一動物個体に由来する同種細胞に比べ、テロメアが延長し、より強い機能活性を示す。前記修復型線維芽細胞及び当該細胞で製造された細胞生成物(例えば、細胞分泌物、細胞溶解液)は、組織工学材料の構築、細胞、組織、臓器及び生体老化の遅延又は逆転に適用できる。
【0034】
本発明で提供されるJak−Statシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットを定量及び/又は定時的に制御することで細胞の分化、脱分化、分化転換、若返り、老化、アポトーシスを調節し、老化を逆転し、生体寿命を延長させる技術は、異なる種類の細胞間の分化転換を促進でき、異なる種類の若返った細胞(例えば、間葉系幹細胞の老化を逆転し、スーパー線維芽細胞を製造する)の製造に適用でき、細胞の老化及びアポトーシスの促進に適用できる。前記技術により製造された細胞及び細胞の生成物は、インビトロ/インビボでの哺乳動物の組織、臓器、生体の老化進行の予防、遅延、逆転に使用され、細胞、組織、臓器、生体のリプログラミングに使用され、組織工学材料の種細胞、組織工学材料の足場の由来源として哺乳動物組織、臓器損傷及び老化、退化した組織、臓器を修復することに使用される。
【0035】
発明のメカニズム
細胞中のJak−Statシグナル伝達経路の遺伝子又はタンパク質ターゲットの発現を制御して細胞の異なる代謝経路の変化を定量及び/又は定時的に調節することにより、標的細胞の細胞状態を改変させ、異なる種類の他の細胞に又は異なる細胞特性を有するように変換する。
【0036】
従来技術に比べ、本発明は、以下の有益な効果を有する。
本発明で提供される修復型線維芽細胞は、同一の個体に由来する線維芽細胞、同一の年齢層のドナーに由来する線維芽細胞に比べ、前記修復型線維芽細胞は、若返りの特徴を有するが、腫瘍形成性を有しない。前記若返りの特徴は、例えば、エピジェネティクスの変化及び/又は老化関連遺伝子発現量の変化及び/又は細胞テロメアの延長及び/又は細胞増殖速度の増加及び/又は細胞の長期で安定的な継代の能力を含む。この若返った細胞及びその細胞生成物は、哺乳動物の生体の老化を逆転し、寿命を延長させることができる。本発明で提供されるJak−Statシグナル伝達経路中の遺伝子又はタンパク質ターゲットを定量及び/又は定時的に制御することにより細胞の分化、脱分化、分化転換、若返り、老化、アポトーシスを調節し、老化を逆転し、生体寿命を延長させる技術は、細胞の分化、脱分化、分化転換、若返り、老化、アポトーシスを体系的に調節することができ、この技術により製造された細胞及び細胞生成物は、インビトロ/インビボでの哺乳動物の組織、臓器、生体の老化進行の予防、遅延、逆転に適用でき、細胞、組織、臓器、生体のリプログラミングに適用でき、組織工学材料の種細胞、組織工学材料の足場の由来源として哺乳動物の組織、臓器損傷、及び老化、退化した組織、臓器を修復することに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】修復型皮膚線維芽細胞(regenerative fibroblast,rFib)の製造を示す。
図2】rFibはFib及びbMSCに比べ、若返りの特徴を有することを示す。
図3】老化したbMSCの骨形成分化及び軟骨形成分化の能力はrFibよりも悪く、rFibは腫瘍形成性を有しないことを示す。
図4】rFibはインビトロで免疫調節機能を有することを示す。
図5】rFib細胞はインビボ免疫調節の機能を有することを示す。
図6】rFibは年齢制限なしの骨欠損修復能力を有することを示す。
図7】インビボ軟骨修復実験を示す。
図8】STAT5遺伝子を抑制することにより、皮膚線維芽細胞は若返り、多方向分化の能力を得ることを示す。
図9】STAT5をノックアウトした後のSTAT5及びH3K9meの変化状況を示す。
図10】別の株の62歳の(62Y)のFibに対してSTAT5をノックアウトした後の若返り及び分化能力の検出を示す。
図11】MSC細胞の若返りを示す。異なる化合物で細胞を3日間処理した後、β−ガラクトシダーゼ染色を行う。55Y=55歳、82Y=82歳;Y=yearは細胞ドナーの年齢を示す。
図12】rFib細胞は、老齢NOD/SCIDマウスの寿命を延長させ、その骨密度を高めることができることを示す。
図13】rFib細胞がマウスの複数の臓器に分布し、機能性細胞に分化することができることを示す。
図14】rFib細胞は、老齢骨粗鬆症マウスの骨密度を向上できることを示す。
図15】rFib培養液は、皮膚の愈合を顕著に促進できることを示す。rFib培養液群は、モデル構築の12日後にほとんど完全に愈合した。
図16】rFibは、マウスの下肢虚血症状を改善できることを示す。
図17】Mix Y処理により細胞STAT5、STAT3遺伝子の発現が抑制され(A−B)、CDKN1A遺伝子がダウンレギュレートされ、テロメアが延長し(C−D)、細胞が若返ることを示す。
図18】Mix Pn処理により、細胞STAT5の発現がダウンレギュレートされ(A)、ATF3、CDKN1A、GADD45B及びIL6の発現が抑制され(B−E)、細胞が若返ることを示す。
図19】Mix Y−Mix Pn2処理により、線維芽細胞JAK1の発現が抑制され(A)、そのテロメアの長さが延長する(B)ことを示す。
図20】皮膚線維芽細胞から神経細胞への変換を示す。図20Aは、皮膚線維芽細胞から変換した神経細胞のTuj1染色を示し、図20Bは、Nestin発現量の測定を示す。
図21】低分子化合物で作用することにより、ESから神経への分化過程において、STAT5遺伝子の発現がアップレギュレートされることを示す。
図22】KEGG経路が多く含まれるモジュールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
実施例1:修復型皮膚線維芽細胞の取得及びその特性の同定
【0039】
1、ヒト皮膚線維芽細胞を6ウェルプレートに接種し、皮膚線維芽細胞培養液中で24時間培養した。
【0040】
2、細胞培養液を低分子カクテル組み合わせMix Vを含むFib誘導培養液に交換し、2日ごとに液体を交換した。
【0041】
3、低分子カクテル組み合わせMix Vを含むrFib誘導培養液で5日間培養した後、培養液を低分子カクテル組み合わせMix Pを含むrFib誘導培養液に交換し、2日ごとに液体を交換した。
【0042】
4、低分子カクテル組み合わせMix Pを含むrFib誘導培養液で7日間培養した後、培養液を10%FBS、10ng/mL bFGF、100ng/mL PDGF−AB及び10ng/mL BMP4を添加したHG−DMEM、又は10%FBSを添加したHG−DMEMに交換し、或いはrFib培地(培地)で培養した。細胞を3日間処理した後、長期継代した。細胞を3日間処理した後、同定を始めた。
【0043】
5、長期継代時に、rFibをMSC基礎培地中で培養し、細胞コンフルエンスが90%に達した時に継代した。
【0044】
皮膚線維芽細胞培養液:10%FBS+HG−DMEM;又はブランド:HCell、商品番号:FMS003CのFibstar−CO培地。
【0045】
Mix V:10%FBSを添加した高グルコース(HG)−DMEM(0.5mMのVPA、3μMのCHIR99021、1μMのRepsox、10μMのフォルスコリンを含む)
【0046】
Mix P:10%FBSを添加したHG−DMEM(0.5mMのVPA、3μMのCHIR99021、1μMのRepsox、10μMのフォルスコリン、10μMのSP600125、5μMのGo 6983、5μMのY−27632、0.05μMのAM580、5μMのEPZ004777、0.2mMのVc、5μMのTTNPBを含む)
【0047】
或いは、ブランドがHCell、商品番号がFGS0040のFibGro培地に0.5mMのVPA、3μMのCHIR99021、1μMのRepsox、10μMのフォルスコリン、10μMのSP600125、5μMのGo 6983、5μMのY−27632、0.05μMのAM580、5μMのEPZ004777、0.2mMのVc、5μMのTTNPBを添加した。
【0048】
MSC基礎培地:10%FBS+LG−DMEM;Cyagenから購入された商品番号HUXMA−90011の骨髄間葉系幹細胞完全培地;又はブランドHCell、商品番号CRM0016−01のrFib培地。
【0049】
備考:特に指定のない限り、実施例で使用されている細胞はヒトに由来する。
【0050】
図1:修復型皮膚線維芽細胞(regenerative fibroblast,rFib)の製造
【0051】
Aは皮膚線維芽細胞(Fib)からrFibに変換する過程の模式図である。ほぼ老化したFib(P13継代)がrFibに変換した後、巨大な増殖可能性を得た(さらに19継代増殖可能)。同様の処理過程は、骨髄間葉系幹細胞の死を誘発した。
【0052】
BはrFib及びその相同Fibを長期増幅する時に増殖曲線の比較である。処理して得られたrFibの増殖速度は相同Fibよりも速かった。
【0053】
Cは変換前後の細胞三系分化(脂肪・骨・軟骨への分化)能力の組織化学的分析(親皮膚細胞は一人の39歳ボランティアのP8継代細胞代に由来する)である。サンプルを0日目(Fib、処理前)、5日目、12日目、15日目(rFib)に複数回増幅し、21日間の分化誘導後、その骨形成、脂肪形軟骨形成の能力を検出した。Osteoblast(骨芽細胞)(骨成形、アリザリンレッド染色により同定)、Adipocyte(脂肪細胞)(脂肪成形、オイルレッド染色により同定)、軟骨細胞(Chondrocyte)(軟骨成形、アルシアンブルー染色により同定)。複数回の継代後(P9継代、P16継代)、rFib細胞は依然として良好な三系分化(脂肪・骨・軟骨への分化)能力を維持した。
【0054】
Dは、q−RT−PCRにより、骨形成分化誘導の14日後にALPレベル、軟骨形成分化誘導の14日後にCOL2A1レベル、脂肪形成分化誘導の21日後にPPARGレベルを分析した結果を示す。結果から分かるように、rFib細胞は、若いbMSCと同様に、誘導された後、三系分化に関連した遺伝子を高発現する。D0(Fib)と比較し、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n≧3であった。
【0055】
E−Gは、低分子の組み合わせにより処理した後の、異なる時点での細胞のJAK1、STAT5の発現変化(処理後に低下)、テロメラーゼ(TERT)の発現状況(5日後に高発現)、及びテロメア長さの変化(15日目に顕著に延長)を示す。
【0056】
Hは、rFib細胞に対するトランスクリプトーム解析を示す。その集合状況は、Fib及びbMSCに近く、iPSC及びESCと異なり、皮膚線維芽細胞の特性及び間葉系幹細胞の特性を兼ね備える。rFibは、安全で、腫瘍形成性を有しない細胞である。
【0057】
図2:rFibはFib及びbMSCに比べ、若返った特徴を有する
【0058】
Aは、D0(P11継代の親Fib)、D15(rFib)のH3K9me3及びH4K20me3の免疫蛍光染色を示す。rFib細胞の老化マーカーH4K20me3は、その相同Fibよりも顕著に減少した。
【0059】
BとCは、D0(P11継代の親Fib)、D15(rFib)のγH2AXの免疫蛍光染色及び定量分析を示す。rFib細胞の老化マーカーγH2AXは、その相同Fibよりも顕著に減少した。
【0060】
Dは、2つの老齢個体に由来のFib、bMSC、rFibの長期増幅中の増殖曲線を示す。同じ色は、同一個体に由来する細胞を示す。rFibの増殖速度は、同一個体に由来するbMSC及びFibよりも速く、若いbMSC(33歳)よりも速かった。
【0061】
E−Gは、複数種の細胞老化マーカー(CDKN1A、ATF3及びIL−6)のq−RT−PCR検出を示す。rFib細胞及びrFib細胞によって誘導された骨芽細胞及び軟骨細胞の老化マーカーの発現は顕著に低下した。ここで、12Wは、妊娠12Wに流産した胎児に由来する皮膚細胞を示す。
【0062】
Hは、q−RT−PCRを用い、T/S値でFib、rFib、bMSC及びその分化した骨芽細胞(rFib−OB、bMSC−OB)、軟骨芽細胞(rFib−CH、bMSC−CH)の相対テロメア長さを測定した。
【0063】
E−H図において、同一個体に由来の細胞は、同じ色で示される。*は、相同Fibと比較した有意差を示し、#は、対応するbMSC、bMSC−OB(bMSCが分化した骨芽細胞)、及びbMSC−CH(bMSCが分化した軟骨芽細胞)と比較した有意差を示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、#p<0.05、##p<0.01、###p<0.001、n=3であった。
【0064】
図3:老化したbMSC骨形成及び軟骨形成分化能力はrFibよりも悪く、rFibは腫瘍形成性を有しない。
【0065】
Aは、異なる年齢の個体に由来するbMSC及びrFibの骨形成分化のアリザリンレッド染色を示す。結果から分かるように、老齢個体に由来するbMSC骨形成分化能力は大幅に低下したが、同一個体のrFibは良好な骨形成分化能力を保持した。
【0066】
Bは、異なる年齢の個体に由来するbMSC及びrFibの脂肪形成分化のオイルレッドO染色を示す。結果から分かるように、老齢個体に由来するbMSCの脂肪形成分化能力は大幅に向上したが、老齢個体に由来するrFibは若齢個体と一致する脂肪形成分化能力を保持した。
【0067】
C−Dは、q−RT−PCRにより対応する細胞の骨形成(ALP)、脂肪形成(PPARG)のマーカー遺伝子を定量分析した結果を示す。結果は染色結果と一致した。
【0068】
Dは、異なる年齢個体に由来するbMSC及びrFibの軟骨形成分化におけるCOL2A1及びMMP13免疫組織化学染色を示す。老齢bMSCが軟骨形成分化した後、COL2A1が低発現し、MMP13が高発現したが、老齢個体に由来するrFibは若齢個体のCOL2A1/MMP13の発現と類似した。
【0069】
F−Gは、q−RT−PCRにより異なる年齢の個体に由来するbMSC及びrFibが軟骨形成分化した後のCOL2A1及びMMP13の発現を検出した結果を示す。結果は染色結果と一致した。
【0070】
Hは、P9継代、P13継代のrFib、及びその相同P6継代のFibの核型検出を示す。結果から分かるように、rFibは長期継代されたとしても核型がそのFibと一致した。
【0071】
Iは、rFib奇形腫形成試験を示す。ヒト胚性幹細胞(hESC)を陽性対照とした。hESCをNOD/SCIDマウスに皮下移植した結果、奇形腫(明らかな三胚葉構造がある)が形成された一方、rFibのマウスに移植した結果、腫瘍な形成が観察されなかった。
【0072】
Jは、細胞のテロメア長さ及びテロメラーゼの発現状況の分析を示す。rFib細胞は、その相同Fib細胞よりもテロメアが顕著に延長し、誘導完成した後においても依然として安定に保持されたが、誘導過程においてテロメラーゼが一過性に高発現し、その後、低発現のレベルに復元した。この点は腫瘍細胞と異なる(腫瘍細胞においてテロメラーゼは継続的に高発現する)。これは、rFibが若返りながら、腫瘍形成性を有しないことを示している。
【0073】
6.1インビトロ免疫調節試験
【0074】
マイトマイシンCで2.5時間処理し、消化して計数し、細胞を1×10細胞/ウェルで24ウェルプレートに接種した。リンパ球をカルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル(CFDA−SE)により37℃で30分間染色し、2×10の密度で24ウェルプレートに接種した。最終濃度2μg/mlのPHAでリンパ球の増殖を刺激した。bMSC+リンパ球+PHA共培養群、rFib+リンパ球+PHA共培養群、皮膚線維芽細胞+リンパ球+PHA共培養群、リンパ球+PHA陽性対照群、及びリンパ球単独陰性対照群の5群を設定した。5日間共培養5した後、各ウェルのリンパ球を採取し、PBSで3回リンスした。抗CD3、CD4及びCD8抗体を用い、フローサイトメーターによりリンパ球の増殖状況を検出した。抗体は、いずれもBD biosciencesから購入された。
【0075】
図4:rFibはインビトロで免疫調節機能を有する。
【0076】
Aは、親Fib、rFib、bMSCをそれぞれT細胞と混合リンパ球反応で培養したことを示す。健康ボランティアに由来するPBMCはCFSEで標識された。「T+PHA」群に比べ、**p<0.01、***p<0.001、n=3であった。結果から分かるように、rFibは、T細胞の増殖を抑制する能力を有し、その相同Fib細胞は、T細胞の増殖を抑制する能力を有せず、rFibは免疫調節能力を有することを示している。
【0077】
B−Cは、rFibがCD4+免疫細胞サブタイプに対して調節能力を有することを示す。
【0078】
D−Eは、rFibがCD8+免疫細胞サブタイプに対して調節能力を有することを示す。
【0079】
6.2インビボ免疫調節実験
【0080】
1×10の密度で10cm培養皿中でbMSC、rFib、皮膚線維芽細胞を48時間培養した後、培養液を0.22μm濾過膜(Millipore)で濾過して細胞又は細胞破片を除去し、限外ろ過遠心チューブで100倍濃縮した。
【0081】
8〜12週齢のC57BL/6マウスに対して25mg/kg体重でPBSに溶解したコンカナバリンを尾静脈注射して急性肝障害を誘導し、PBSのみを注射して対照とした(Han et al.,2014)。各群に6匹のマウスがある。30分間後、異なる濃縮培地又はPBSを尾静脈注射した。培地を尾静脈注射した8.5時間後、マウスを安楽死させた。血液及び肝臓を採取した。肝臓をHEで染色し、フローサイトメーターによりCD3+T細胞を検出し、血液でALT/ASTを検出した。
【0082】
血清ALT/ASTの定量は説明書に従ってELISAキット(Shanghai Enzyme−linked Biotechnology Co.,Ltd)を用いて行った。各群に対して3つの独立した繰り返しサンプルを設置し、データは、平均値±SDで表される。
【0083】
図5:rFib細胞はインビボ免疫調節能力を有する。
【0084】
Aは、コンカナバリンでC57BL/6マウスの急性肝障害を誘導し、濃縮したrFibの細胞培養液で治療した結果を示す。結果から分かるように、rFib培養液で治療されたマウスは、肝臓に明らかな異常(出血、壊死など)がなかった。
【0085】
Bは、細胞培養液を尾静脈注射した8.5時間後の肝臓組織におけるTリンパ球の絶対値を測定した結果を示す。結果から分かるように、rFibの培養液は、bMSCと同様に顕著な免疫調節能力を有した。
【0086】
C−Dは、rFib培養液で治療されたマウスは、その血液ALT及びASTがいずれも正常レベルに近く、顕著な肝損傷症状がないことを示す。
【0087】
6.3普通遺伝子のPCR
【0088】
総RNAの抽出は、TRIzolキット(Takara Bio)の説明書に従って行った。Primescript RTキット(Takara Bio)によりRNA(1.0μg)をcDNAに逆転写した。q−RT−PCRにおいて、cDNAをテンプレートとし、SYBR Premix EX TaqTMII(Takara Bio)を特異的プライマー及びSYBR Greenとして使用した。循環条件は、製造業者(Takara)の説明に従った。相対発現レベルは、内部リファレンス(ACTIN)により正規化された。gPCRにおいて、ゲノムDNAをテンプレートとし、Premix Taq(Takara Bio)をヒト特異的プライマーACTINとして使用した。
【0089】
実施例2:rFib細胞は骨欠損修復能力を有する。
【0090】
倫理委員会の承認の下で8〜10週齢、体重20〜24gのNOD/SCIDマウスを用いて大腿骨欠損モデルを建築し、各群に5匹の動物を使用した。モデル構築方法は、ペントバルビタールナトリウムの麻酔下で、皮膚及び皮下組織を切開し、大腿直筋と半腱様筋を鈍性分離し、十分な大腿骨中段を露出させた。右側大腿骨の中心部の近位で手術を行った。手術で4mm×1mmの連続的な骨欠損を構築した。皮膚線維芽細胞(Fib)、骨髄間葉系幹細胞(bMSC)及びrFibをHoechst 33342(Thermo,NucBlue live cell)で染色した後、Matrigelと混合し、5×10細胞/匹のマウスで欠損部位に移植(投与)した。
【0091】
移植の28日後、マウスに致死量のペントバルビタールナトリウムを注入して安楽死させた。マウス大腿を鈍性分離し、4%PFAで固定し、μCTイメージング(SkyScan 1272,Bruker microCT)により検出し、採取したデータを分析した。
【0092】
図6:rFibは、年齢制限なしの骨欠損修復能力を有する。
【0093】
Aはマウス大腿骨中段欠損モデルの手術操作模式図である。
【0094】
Bは、異なる群のマウス大腿骨サンプル及びH&E染色を示す。若齢bMSC(31歳)及びrFib(39歳)はいずれも良好な骨欠損修復能力を有する。
【0095】
Cは、rFib細胞をHoechst 33342により標識し、青色の蛍光を自己発光できることを示す。修復部位の切片は、rFib細胞が欠損部位に新しい骨を形成し、数、位置が新生骨細胞に対応することを示している。
【0096】
Dは、異なる実験群のmicro−CT分析を示す。老齢個体に由来のrFib(62歳)は骨欠損を修復できるが、骨欠損修復能力が非常に弱い。
【0097】
Eは、異なる実験群のmicro−CT分析を示す。若齢(39歳)及び老齢(62歳)個体に由来のrFibの修復能力は近く、rFibの骨欠損修復能力が年齢により制限されないことを示している。
【0098】
実施例3:rFib細胞は軟骨欠損修復能力を有する。
【0099】
関節軟骨欠損モデルと細胞移植
【0100】
8〜10週齢、体重20〜24gのNOD/SCIDマウスを用いた。改良した関節軟骨モデルを用いてrFibの治療効果を評価した(Cheng et al.,2014)。生検パンチを用いて大腿骨遠位端の滑車溝中で関節軟骨欠損(1.5mm×1mm)を構築した。細胞(2.5×10/35μlのMatrigel)をHoechst 33342で標識し、欠損部位に植え込んだ。細胞を含まないMatrigelを植え込んで対照とした。
【0101】
図7:インビボ軟骨修復実験
【0102】
A−Bは、軟骨組織サンプル及び10μm切片のサフラニン・ファストグリーンで染色した。サフラニン・ファストグリーン染色において、赤色は軟骨を示し、緑色は骨組織を示す。若齢rFib(39歳)とbMSC(31歳)はいずれも軟骨欠損を修復することができ、老齢bMSC(62歳)は新しい組織を生成できるが、新生軟骨がない一方、老齢個体に由来のrFib(62歳)であっても軟骨組織を形成することができる。
【0103】
Cは、軟骨修復のPinedaスコアを示す。結果から分かるように、老齢個体に由来のrFib(62歳)と若齢個体に由来のrFib(39歳)は類似する軟骨修復能力を有する。
【0104】
D図において、切片から分かるように、Hoechst 33342で標識されたrFibは新しい軟骨組織を形成した。新たに生成した軟骨組織は正常軟骨の構造形態と類似し、異常組織の生成がない。
【0105】
実施例4〜12:異なる低分子化合物の組み合わせにより異なる時間処理し、修復型線維芽細胞を得た。同定方法は実施例1と同様であった。組み合わせを下表(表1)に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
実施例13:スーパー線維芽細胞の製造
【0108】
1、crispr/cas9のstat5A遺伝子がノックアウトされたベクタープラスミドの構築:以下のプラスミドはcyagen社から購入された。
pLV[2gRNA]−EGFP:T2A:Puro−U6>hSTAT5A[gRNA#4]−U6>hSTAT5A[gRNA#10]
pLV[Exp]−CBh>hCas9:T2A:Hygro
【0109】
2、製品説明書に従ってウイルスを導入し、ウイルスを導入した後の1日目に、ウイルスを含有する培地を除去し、新鮮な完全培地に交換した。37℃、5%COのインキュベータでインキュベートした。
【0110】
3、ウイルスを導入した後の2日目以降、レンチウイルスが持つ遺伝子は発現し始め、細胞を引き続き培養し、発現生成物をさらに累積し、又は細胞表現型を変化させた。
【0111】
4、細胞を増幅した後、抗生物質でウイルスが導入された細胞を精製し、細胞を10%FBS含有HG−DMEMで引き続き拡大培養し、細胞を150日間連続培養した。
【0112】
図8:STAT5遺伝子を抑制することにより、皮膚線維芽細胞は若返り、多方向分化能力を取得することができる。
【0113】
Aは、WGCNAにより確定された12,036個の遺伝子から選別されたrFibのKEGG経路が多く含まれる2つの代表的なモジュール及びいくつかのサンプルにおける2つの遺伝子モジュールの発現変化の箱ヒゲ図である。
【0114】
Bから分かるように、STAT5遺伝子をノックアウトした後、引き続き40日間培養し、免疫組織化学染色によりFibのSTAT5をノックアウトした後(Fib−STAT5−KO)のH4K20me3(老化マーカーが多いほど老化する)は対照よりも顕著に減少した。
【0115】
C.老化マーカー遺伝子の同定(ATF3、GADD45B、IL6、CDKN1A、老化した細胞が高発現)を示す。結果から分かるように、STAT5をノックアウトしたFib細胞老化マーカー遺伝子の発現は顕著に低下した。
【0116】
Dから分かるように、STAT5をノックアウトした後のFibが骨成形(Alizarin Red S、アリザリンレッド染色)軟骨成形(Alcian Blue、アルシアンブルー染色)能力を示す。
【0117】
E−Gは、STAT5遺伝子をノックアウトした後の、細胞JAK1、STAT5の発現変化(ノックアウトした後に低下)、テロメラーゼ(TERT)の発現状況(43日後に高発現)、及びテロメア長さの変化(54日目に顕著に延長)を示す。
【0118】
Hは、線維芽細胞においてJak−Statシグナル伝達経路を制御し、細胞及び生体を若返りさせる模式図である。
【0119】
図9:STAT5をノックアウトした後のSTAT5及びH3K9meの変化状況
【0120】
Aは、Fibに対してSTAT5をノックアウトした後、STAT5Aが発現しなくなることを示す。
【0121】
Bは、STAT5のノックアウトがH3K9meに影響を与えないことを示す。
【0122】
図10:別の株の62歳の(62Y)のFibに対してSTAT5をノックアウトした後の若返り及び分化能力の検出を示す。
【0123】
Aは、老化関連遺伝子の検出を示す。
【0124】
Bは、骨形成、軟骨形成分化の検出を示す。
【0125】
C−Dは、テロメラーゼ及びテロメア長さの検出を示す。
【0126】
Eは、STAT5発現状況の検出を示す。
【0127】
Fは、Mix V+Mix Pシステムで処理した同一株の細胞のSTAT5の検出を示す。
【0128】
実施例14:MSC細胞の若返り
【0129】
1、10%FBS含有低糖DMEMで異なる個体に由来の骨髄間葉系幹細胞を培養した。
【0130】
2、異なる化合物の組み合わせで細胞を3日間処理した後、細胞を引き続き10%FBS含有低糖DMEM培養液中で3日間培養した後、β−ガラクトシダーゼ染色を行った。
【0131】
【表2】
【0132】
図11:MSC細胞の若返り
異なる化合物で細胞を3日間処理した後、β−ガラクトシダーゼ染色を行った。55Y=55歳、82Y=82歳、Y=year:細胞ドナーの年齢
【0133】
実施例15:rFibの静脈注射により老化マウスの寿命を延長できる。
【0134】
同一の39歳の個体に由来するP9継代のFib、P13継代のrFib、及び同一の62歳の個体に由来するrFibをHoechst 33342で標識し、200μL DMEMに溶解した。細胞(10/匹)を自然に老化したNOD/SCIDマウス(43週齢;このマウスの平均寿命は36〜38週齢である。43週齢は人間の約86歳に相当する)に尾静脈注射した。溶媒群では、200μL DMEMのみを注射した。マウスが自然に死亡した後、サンプリングして検出した。
【0135】
図12は、rFib細胞は、老齢NOD/SCIDマウスの寿命を延長させ、その骨密度を高めることができることを示す。
【0136】
Aは、老化マウスの生存曲線を示す。rFib細胞が注射されたマウスは、細胞が若齢個体(39歳)に由来しても、老齢個体(62歳)に由来しても、マウスの寿命を効果的に延長できる。若齢のFib細胞であっても、寿命の延長作用を有せず、生存曲線は溶媒群と有意差がなかった。
【0137】
Bは、2群のマウス形態の観察を示す。43週齢のマウスは明らかに老化しており(毛が乱雑で、光沢がなく、傴僂であった)、rFib細胞を注射した4週間後のマウス状態が明らかに改善されずい、DMEMを注射されたマウスは4週間後にさらに老化した。
【0138】
C−Eは、それぞれ10週齢、25週齢、47週齢(43週齢にDMEMを注射、47週齢に死亡)、49週齢(43週齢にrFibを注射、49週齢に死亡)の4匹のネズミの解剖写真であり、胃粘膜切片をH&E染色し、第3腰椎のmicro−CT分析図である。同図から分かるように、rFib細胞が注射されたマウスの胃腸管の外観は若齢マウス(10W、25W)に近く、胃粘膜の厚さ、密度及び腰椎小柱骨構造は25Wマウスの状態に近く、DMEM注射群の老化マウスの胃腸管には顕著な病変があり、胃粘膜が短くて疎らであり、腰椎小柱骨の欠損、断裂が深刻であった。
【0139】
Fは、Micro−CTデータ分析を示す。rFibが注射された老齢マウスは、その骨密度(BMD)、相対骨体積(BV/TV)がいずれも25週齢のマウスに近く、小柱骨の数(Tb.N)及び小柱骨の分離度(Tb.Sp)は、DMEMが注射されたマウスに対していずれも改善された(各群に5匹の動物がある。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n=5)。
【0140】
Gは、p16Ink4aの発現分析を示す。rFibが注射された老齢マウスと25週齢及び10週齢のマウスには有意差がなく、DMEMが注射された老齢マウスp16Ink4aの発現は顕著に向上した。
【0141】
Hは、骨芽細胞(ALP)、破骨細胞(TRAP)の染色分析を示す。rFib細胞が注射された老齢マウスは、DMEM群よりも骨芽細胞の発現が顕著に向上し、破骨細胞の発現が低下した。
【0142】
I−Jは、骨芽細胞(I)、破骨細胞(J)の定量分析を示す。rFib細胞が注射された老齢マウスの骨芽細胞、破骨細胞の発現は25週齢マウスに近かった。
【0143】
Kにおいて、免疫組織化学染色から分かるように、rFibが注射されたマウスの骨にヒト抗体(hCD29、緑色)陽性が出現し、骨形成マーカーであるオステオカルシンが発現され(赤色)、rFibがNOD/SCIDマウスの体内で骨芽細胞に分化したことを示している。
【0144】
L−Mから分かるように、rFib培養液におけるGDF11(抗老化機能を有するタンパク質)及びPDGFA(骨成形に有利であるタンパク質)の分泌量は、その相同Fibよりも顕著に高く、rFibの抗老化及び骨密度向上機能は傍分泌作用に関係がある可能性がある。
【0145】
図13は、rFib細胞がマウスの複数の臓器に分布し、機能性細胞に分化することができることを示す。
【0146】
A−Bは、rFib細胞がマウスの胃、脾臓、肺、肝臓に分布することを示す(蛍光法及びPCR法により検出)。
【0147】
Cは、rFib細胞がマウスの骨骼に分布することを示す(PCR法により検出する。1#〜10#はマウスの番号を示し、1#〜5#はrFib細胞が注射されたマウスであり、6#〜10#はDMEMが注射されたマウスである)。
【0148】
Dにおいて、免疫組織化学染色から分かるように、rFibが注射されたマウスの骨にヒト抗体(hCD29、緑色)陽性が出現し、骨形成マーカーであるオステオカルシンが発現され(赤色)、rFibがNOD/SCIDマウスの体内で骨芽細胞に分化したことを示している。
【0149】
Eから分かるように、rFibの他の傍分泌物(BFGF、HGF、VEGF)はFibと同じであるか、又は有意差がなく、抗老化機能を発揮する主なメカニズムではない。
【0150】
実施例16:rFibの静脈注射により老齢骨粗鬆症動物の骨密度が向上する。
【0151】
図14は、rFib細胞は、老齢骨粗鬆症マウスの骨密度を向上できることを示す。
【0152】
Aは、ヒト細胞を用いて老齢性骨粗鬆症(28WのNOD/SCIDマウス)を介入した結果を示す。実験群では、1*10rFib細胞を200μL DMEMに分散して尾静脈注射した。対照群では、DMEMのみを注射し、週に1回、合計3週間投与した。1回目の注射後の28日目に安楽死させ、サンプリングし、腰椎骨の密度を測定した。Micro−CT結果から分かるように、実験群マウスの第3腰椎の小柱骨の構造はさらに緻密であった。
【0153】
Bは、実験群マウスのMicro−CTデータ分析結果を示す。結果から分かるように、その骨密度(BMD)、相対骨体積(BV/TV)及び小柱骨の数(Tb.N)は、いずれも向上した。
【0154】
実施例17:rFib細胞の培養液は動物皮膚創面の愈合を促進できる。
【0155】
C57マウスを用い、その背部に幅8cmの皮膚全層欠損を作り、対照群では治療せず、rFib培地群ではrFib培養液で毎日塗布治療した。
【0156】
図15は、rFib培養液は、皮膚の愈合を顕著に促進できることを示す。rFib培養液群は、モデル構築の12日後にほとんど完全に愈合した。
【0157】
実施例18:rFibはマウスの下肢虚血状況を改善できる。
【0158】
NOD/SCIDマウスの片側大腿動脈を結紮して下肢虚血モデルを構築した。手術後にレーザードップラーによりモデル構築の成功を検証した後、大腿動脈結紮点及びその遠端、近端に1×10細胞を1回限り注射した。細胞注射後の7日目、14日目にレーザードップラーにより血流量を測定した。
【0159】
図16は、rFibがマウスの下肢虚血症状を改善できることを示す。
【0160】
Aは、レーザードップラーによりマウスの下肢血流状況を検出した結果を示す。結果から分かるように、rFib及びbMSCはマウスの下肢虚血状況を顕著に改善できる。
【0161】
Bは、マウス下肢を結紮した後の7日目の写真である。対照群は、正常側の下肢を示す。Ischemicは結紮側の下肢を示す。結果から分かるように、rFib群及びbMSC群の結紮側の下肢壊死状況が顕著に軽度である。
【0162】
実施例19:異なる化合物の組み合わせによるrFib細胞の製造
【0163】
1、皮膚線維芽細胞を6ウェルプレートに接種し、皮膚線維芽細胞培養液中で24時間培養した。
【0164】
2、細胞培養液を低分子化合物組み合わせMix Yを含むrFib誘導培養液に交換し、2日ごとに液体を交換し、細胞を10日間処理した。
【0165】
3、低分子化合物組み合わせMix Yで処理した後、培養液を10%FBSが添加されたHG−DMEMに交換し、細胞を引き続き3日間培養した後に同定し、又はrFib培地で培養した。
【0166】
5、長期継代時に、rFibをMSC基礎培地中で培養し、細胞コンフルエンスが90%に達した時に継代した。
【0167】
皮膚線維芽細胞培養液:10%FBS+HG−DMEM;又はブランド:HCell、商品番号:FMS003CのFibstar−CO培地。
【0168】
Mix Y: 10%FBSを添加した高グルコース(HG)−DMEM(5μMのY−27632、0.2mMのVc、5μMのEPZ004777、10μMのフォルスコリン、1μMのRepsoxを含む)。
【0169】
或いは、ブランドがHCell、商品番号がFGS0040のFibGro培地に5μMのY−27632、0.2mMのVc、5μMのEPZ004777、10μMのフォルスコリン、1μMのRepsoxを添加した。
【0170】
MSC基礎培地:10%FBS+LG−DMEM;Cyagenから購入された商品番号HUXMA−90011の骨髄間葉系幹細胞完全培地;又はブランドHCell、商品番号CRM0016−01のrFib培地。
【0171】
図17は、Mix Y処理により細胞STAT5、STAT3遺伝子の発現が抑制され(A−B)、CDKN1A遺伝子がダウンレギュレートされ、テロメアが延長し(C−D)、細胞が若返ることを示す。
【0172】
実施例20:異なる化合物の組み合わせによるrFib細胞の製造
【0173】
1、皮膚線維芽細胞を6ウェルプレートに接種し、皮膚線維芽細胞培養液中で24時間培養した。
【0174】
2、細胞培養液を低分子化合物組み合わせMix Pnを含むrFib誘導培養液に交換し、2日ごとに液体を交換し、細胞を7日間処理した。
【0175】
3、低分子化合物組み合わせMix Pnで処理した後、培養液を10%FBSを添加したHG−DMEMに交換し、細胞を引き続き3日間培養した後に同定し、又はrFib培地で培養した。
【0176】
5、長期継代時に、rFibをMSC基礎培地中で培養し、細胞コンフルエンスが90%に達した時に継代した。
【0177】
皮膚線維芽細胞培養液:10%FBS+HG−DMEM;又ハブランド:HCell、商品番号:FMS003CノFibstar−CO培地。
【0178】
Mix Pn:10%FBSヲ添加シタHG−DMEM(0.5mMノVPA、3μMノCHIR99021、1μMノRepsox、10μMノフォルスコリン、5μMノGo 6983、5μMノY−27632、0.05μMノAM580、5μMノEPZ004777、0.2mMノVc、5μMノTTNPB、10μMノ5−Aza−2'−デオキシシチジンヲ含ム)。
【0179】
或いは、ブランドがHCell、商品番号がFGS0040のFibGro培地に0.5mMのVPA、3μMのCHIR99021、1μMのRepsox、10μMのフォルスコリン、5μMのGo 6983、5μMのY−27632、0.05μMのAM580、5μMのEPZ004777、0.2mMのVc、5μMのTTNPB、10μMの5−Aza−2'−デオキシシチジンを添加した。
【0180】
MSC基礎培地:10%FBS+LG−DMEM;Cyagenから購入された商品番号HUXMA−90011の骨髄間葉系幹細胞完全培地;又はブランドHCell、商品番号CRM0016−01のrFib培地。
【0181】
図18:Mix Pn処理により、細胞STAT5の発現がダウンレギュレートされ(A)、ATF3、CDKN1A、GADD45B及びIL6の発現が抑制され(B−E)、細胞が若返ることを示す。
【0182】
実施例21:異なる化合物の組み合わせによるrFib細胞の製造
【0183】
1、皮膚線維芽細胞を6ウェルプレートに接種し、皮膚線維芽細胞培養液中で24時間培養した。
【0184】
2、細胞培養液を低分子カクテル組み合わせMix Yを含むrFib誘導培養液に交換し、2日ごとに液体を交換した。
【0185】
3、低分子カクテル組み合わせMix Yを含むrFib誘導培養液で9日間培養した後、培養液を10%FBSを添加したHG−DMEMに交換し、3〜7日間処理した。
【0186】
4、ステップ3の処理後に、低分子化合物組み合わせMix Pn2を含むrFib誘導培養液を加え、2日ごとに液体を交換した。
【0187】
5、低分子化合物組み合わせMix Pn2を含むrFib誘導培養液で7日間培養した後、培養液を10%FBS、10ng/ml bFGF、100ng/ml PDGF−AB及び10ng/ml BMP4を添加したHG−DMEMに交換し、細胞を3日間処理し、或いは10%FBSを添加したHG−DMEMに交換して細胞を3日間処理し、或いはrFib培地で培養し、3日後に同定した。
【0188】
6、長期継代時に、rFibをMSC基礎培地中で培養し、細胞コンフルエンスが90%に達した時に継代した。
【0189】
皮膚線維芽細胞培養液:10%FBS+HG−DMEM;又はブランド:HCell、商品番号:FMS003CのFibstar−CO培地。
【0190】
Mix Y:10%FBSを添加した高グルコース(HG)−DMEM(5μMのY−27632、0.2mMのVc、5μMのEPZ004777、10μMのフォルスコリン、1μMのRepsoxを含む)。
【0191】
或いは、ブランドがHCell、商品番号がFGS0040のFibGro培地に5μMのY−27632、0.2mMのVc、5μMのEPZ004777、10μMのフォルスコリン、1μMのRepsoxを添加した。
【0192】
Mix Pn:10%FBSを添加したHG−DMEM(0.5mMのVPA、3μMのCHIR99021、1μMのRepsox、10μMのフォルスコリン、5μMのGo 6983、5μMのY−27632、0.05μMのAM580、5μMのEPZ004777、0.2mMのVc、5μMのTTNPBを含む)
【0193】
或いは、ブランドがHCell、商品番号がFGS0040のFibGro培地に0.5mMのVPA、3μMのCHIR99021、1μMのRepsox、10μMのフォルスコリン、5μMのGo 6983、5μMのY−27632、0.05μMのAM580、5μMのEPZ004777、0.2mMのVc、5μMのTTNPBを添加した。
【0194】
MSC基礎培地:10%FBS+LG−DMEM;Cyagenから購入された商品番号HUXMA−90011の骨髄間葉系幹細胞完全培地;又はブランドHCell、商品番号CRM0016−01のrFib培地。
【0195】
図19は、Mix Y−Mix Pn2処理により、線維芽細胞JAK1の発現が抑制され(A)、そのテロメアの長さが延長する(B)ことを示す。
【0196】
実施例22:皮膚線維芽細胞が神経細胞に分化変換する。
【0197】
1、皮膚線維芽細胞を6ウェルプレートに接種し、皮膚線維芽細胞培養液中で24時間培養した。
【0198】
2、細胞培養液を低分子化合物組み合わせMix Neuを含む神経誘導培養液に交換し、2日ごとに液体を交換した。
【0199】
3、低分子化合物組み合わせMix Neuを含む神経誘導培養液で細胞を5〜12日間培養した後、長紡錘形の細胞形態が神経細胞の形態に変化したことが観察され、培養液を神経細胞培養液に交換し、継続的に継代培養した。
【0200】
4、分化転換した神経細胞を免疫蛍光及び定量PCRにより同定した。
【0201】
皮膚線維芽細胞培養液:10%FBS+HG−DMEM;又はブランド:HCell、商品番号:FMS003CのFibstar−CO培地。
【0202】
Mix Neu:10%FBSを添加したHG−DMEM(0.5μMのA8301、10ng/mLのbFGF、5μMのEPZ004777、10μMのRG108、2μMのパルネート、10μMのCHIR99021、50μMのフォルスコリン、0.5mMのVPA、0.05μMのAM580、1μMのBIX 01294を含む)。
【0203】
神経細胞培養液:5mLのDMEM/F12、5mLのNeurobasal、1/100のN2、1/50のB27、100μMのcAMP、20ng/mLのBDNF、20ng/MlのGDNF、10%(v/v)のKOSR。
【0204】
図20:皮膚線維芽細胞から神経細胞への変換を示す。
【0205】
Aは、皮膚線維芽細胞から変換した神経細胞のTuj1染色を示す。
【0206】
Bは、Nestin発現量の測定を示す。
【0207】
実施例23:胚性幹細胞は神経細胞に分化する。
【0208】
1、接着培養された胚性幹細胞を消化した後、神経誘導液中で懸濁培養した。
【0209】
2、神経誘導液中で10〜15日間培養した後、細胞が続々に壁に接着することが観察され、懸濁培養された細胞をmatrigelで処理された6ウェルプレートに接種し、細胞を接着培養し、引き続き神経誘導液で5〜7日間培養した。
【0210】
3、細胞が壁に接着した後、神経誘導液を神経細胞培養液に交換した。
【0211】
4、誘導細胞に対して神経マーカーの免疫蛍光染色及び定量PCRの同定を行った。
【0212】
神経誘導液:10%KOSRを添加したDMEM/F12(10ng/mLのbFGF、5μMのY−27632、0.5mMのVPA、5μMのEPZ004777、10μMのフォルスコリン、1μMのRepsoxを含む)。
【0213】
神経細胞培養液:5mLのDMEM/F12、5mLのNeurobasal、1/100のN2、1/50のB27、100μMのcAMP、20ng/mLのBDNF、20ng/MlのGDNF、10%(v/v)のKOSR。
【0214】
図21は、低分子化合物で作用することにより、ESから神経への分化過程において、STAT5遺伝子の発現がアップレギュレートされることを示す。
【0215】
実施例24:実施例1で製造されたrFib細胞中のシグナル伝達経路の特徴
【0216】
実施例1に示される製造方法において、異なる個体に由来するrFib細胞に対してトランスクリプトームのシーケンシングを行い、WGCNAにより各細胞サンプルの12036個の遺伝子を分析し、12個のクラスタリングモジュールを得た。
【0217】
図22は、KEGG経路が多く含まれるモジュールを示す。
【0218】
棒グラフは、KEGG経路が多く含まれる12個のモジュールを示す。各KEGG経路の代表的な遺伝子は遺伝子メンバーの順序に従って示される。箱ヒゲ図は、各モジュール中の遺伝子の平均発現レベルの分布を示す。
図1
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【国際調査報告】