特表2021-522978(P2021-522978A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-522978経皮透過型薬物伝達パッチおよびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-522978(P2021-522978A)
(43)【公表日】2021年9月2日
(54)【発明の名称】経皮透過型薬物伝達パッチおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20210806BHJP
【FI】
   A61M37/00 530
   A61M37/00 505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2021-514258(P2021-514258)
(86)(22)【出願日】2018年5月18日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月18日
(86)【国際出願番号】KR2018005738
(87)【国際公開番号】WO2019221318
(87)【国際公開日】20191121
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】506376458
【氏名又は名称】ポステック アカデミー−インダストリー ファンデーション
(71)【出願人】
【識別番号】520452965
【氏名又は名称】シルラ インダストリアル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】イム, グンベ
(72)【発明者】
【氏名】イ, ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ビョンソン
(72)【発明者】
【氏名】ウ, ヒョンス
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA72
4C267BB02
4C267BB24
4C267BB48
4C267CC05
4C267EE08
4C267FF10
4C267GG02
4C267GG12
4C267GG16
4C267GG43
(57)【要約】
本発明の一実施形態による経皮透過型薬物伝達パッチは、可撓性のベース層と、ベース層の一面に位置する複数のマイクロニードルを含む。複数のマイクロニードルそれぞれは生分解性高分子と薬物を含み、内部に空の空間を有する。複数のマイクロニードルそれぞれは放射方向に伸びた複数の突起を含む星形のピラミッドからなり、複数の突起のうちの円周方向に沿って隣接する二つの突起の間は凹んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のベース層;および
前記ベース層の一面に位置し、生分解性高分子と薬物を含み、内部に空の空間を有する複数のマイクロニードルを含み、
前記複数のマイクロニードルそれぞれは放射方向に伸びた複数の突起を含む星形のピラミッドからなり、
前記複数の突起のうちの円周方向に沿って隣接した二つの突起の間は凹んでいる、経皮透過型薬物伝達パッチ。
【請求項2】
前記ベース層には、前記複数のマイクロニードルそれぞれの前記空の空間を開放させる開口が位置する、請求項1に記載の経皮透過型薬物伝達パッチ。
【請求項3】
前記複数のマイクロニードルそれぞれで、前記放射方向による前記複数の突起それぞれの突出長さは全て同一であり、前記複数の突起のうちの前記円周方向に沿って隣接した前記二つの突起の間の距離は全て同一である、請求項1に記載の経皮透過型薬物伝達パッチ。
【請求項4】
前記複数の突起は、3個以上20個以下である、請求項3に記載の経皮透過型薬物伝達パッチ。
【請求項5】
前記複数のマイクロニードルそれぞれで、前記薬物はマイクロニードルの尖端部に集中して位置する、請求項1に記載の経皮透過型薬物伝達パッチ。
【請求項6】
前記複数のマイクロニードルそれぞれで、前記薬物はマイクロニードル全体に均一に分布する、請求項1に記載の経皮透過型薬物伝達パッチ。
【請求項7】
透明板と、前記透明板の一面に位置し放射方向に伸びた複数の突起を含む星形のピラミッドからなる複数の突出部を含むマスターモールドを製作する段階;
前記マスターモールドを用いて前記複数の突出部に対応する形状を有する複数の凹部を含むモールドを製作する段階;および
前記モールドと薬物および生分解性高分子溶液を用いてベース層と、内部に空の空間を有しながら前記複数の凹部に対応する形状を有する複数のマイクロニードルを含む経皮透過型薬物伝達パッチを製作する段階;
を含む、経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【請求項8】
前記マスターモールドの製作は、
前記透明板の上に光硬化性高分子層を形成し、
光源と前記透明板の間にグレースケールマスクを配置し、
前記グレースケールマスクを通じて前記光硬化性高分子層に光を照射して前記光硬化性高分子層の一部を硬化させる過程を含む、請求項7に記載の経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【請求項9】
前記グレースケールマスクは、放射方向に伸びた複数の突起を含む星形の光透過部と、前記光透過部以外の光遮断部を含み、
前記光透過部の光透過率は、前記光透過部の中心から遠くなるほど小さくなる、請求項8に記載の経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【請求項10】
前記光透過部は、複数のドットから構成され、
前記複数のドットは、前記光透過部の中心から遠くなるほど小さな大きさを有する、請求項9に記載の経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【請求項11】
前記光透過部は、大きさが同一な複数のドットから構成され、
前記光透過部の中心から遠くなるほど前記複数のドットの間の距離が大きくなる、請求項9に記載の経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【請求項12】
前記モールドの製作は、
前記マスターモールドの上に高分子溶液を塗布して高分子層を形成し、
前記高分子層に熱を加えて硬化させる過程を含む、請求項7に記載の経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【請求項13】
前記高分子層を硬化させる前、前記高分子層に負圧を印加して前記高分子層に含まれている微細気泡を除去する、請求項12に記載の経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【請求項14】
前記経皮透過型薬物伝達パッチの製作は、
前記モールドに含まれている前記複数の凹部それぞれの尖端部に薬物を満たし、
前記複数の凹部それぞれの壁面と前記複数の凹部の間の前記モールド表面に生分解性高分子溶液を塗布し、
前記薬物と前記生分解性高分子溶液を乾燥させて前記ベース層と前記複数のマイクロニードルを製作し、
前記モールドから前記ベース層と前記複数のマイクロニードルを分離する過程を含む、請求項7に記載の経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【請求項15】
前記薬物と前記生分解性高分子溶液を乾燥させる前、
前記モールドの後面に真空フィルターと真空チャンバーを配置し、前記真空チャンバーと連結された真空ポンプを稼動し、
前記モールドと前記真空フィルターを通じて前記薬物と前記生分解性高分子溶液に単一方向の負圧を印加して前記薬物と前記生分解性高分子溶液に含まれている微細気泡を除去する、請求項14に記載の経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【請求項16】
前記経皮透過型薬物伝達パッチの製作は、
前記モールドに含まれている前記複数の凹部それぞれの壁面に生分解性高分子溶液と薬物が混合された材料溶液を塗布し、
前記複数の凹部の間の前記モールド表面に生分解性高分子溶液を塗布し、
前記材料溶液と前記生分解性高分子溶液を乾燥させて前記ベース層と前記複数のマイクロニードルを製作し、
前記モールドから前記ベース層と前記複数のマイクロニードルを分離する過程を含む、請求項7に記載の経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【請求項17】
前記材料溶液と前記生分解性高分子溶液を乾燥させる前、
前記モールドの後面に真空フィルターと真空チャンバーを配置し、前記真空チャンバーと連結された真空ポンプを稼動し、
前記モールドと前記真空フィルターを通じて前記材料溶液と前記生分解性高分子溶液に単一方向の負圧を印加して前記材料溶液と前記生分解性高分子溶液に含まれている微細気泡を除去する、請求項16に記載の経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮透過型薬物伝達パッチに関するものであって、より詳しくは、内部が空いているマイクロニードルの機械的強度向上のための経皮透過型薬物伝達パッチおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
経皮透過型薬物伝達パッチ(以下、便宜上‘パッチ’という)は、薬物を搭載した生分解性高分子からなるマイクロニードル(micro−needle)を含む。
マイクロニードルは皮膚の角質層を突き抜けて皮膚の表皮または真皮に入り込んで数分〜数時間皮膚に留まりながら体液によって分解されて薬物を体内に吸収させる。このようなパッチは薬物伝達過程で既存の注射器針と異なり出血と痛みが殆どない。
マイクロニードルは、尖端部に薬物を搭載し中央部は中空形態に構成できる。このようなマイクロニードルを備えたパッチは、皮膚に薬物のみ残しておき皮膚から速かに分離でき、皮膚に付けた状態で維持すべき時間を短縮させることができる。しかし、空の空間の大きさが大きくなるほどマイクロニードルの機械的強度が弱くなって皮膚を突き抜けられなくなる。
また、マイクロニードルは、体積に対する表面積が広いほど皮膚の体液と接触する面積が拡大され、生分解性高分子が急速に溶けて薬物の吸収効率を高めることができる。しかし、従来のパッチは、製造の便宜のために主に円錐または四角錐のように形状が単純であり体積に対する表面積が大きくないマイクロニードルを備えているので、薬物の吸収効率を高めるのに限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、中空のマイクロニードルの機械的強度を高めると同時に体積に対する表面積を拡大させることによって皮膚に対する浸透効率と薬物の吸収効率を向上させることができる経皮透過型薬物伝達パッチおよびその製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態による経皮透過型薬物伝達パッチは、可撓性のベース層と、ベース層の一面に位置する複数のマイクロニードルを含む。複数のマイクロニードルそれぞれは生分解性高分子と薬物を含み、内部に空の空間を有する。複数のマイクロニードルそれぞれは放射方向に伸びた複数の突起を含む星形のピラミッドからなり、複数の突起のうちの円周方向に沿って隣接する二つの突起の間は凹んでいる。
【0005】
ベース層には複数のマイクロニードルそれぞれの前記空の空間を開放させる開口が配置されてもよい。
複数のマイクロニードルそれぞれで、放射方向による複数の突起それぞれの突出長さは全て同一であってもよく、複数の突起のうちの円周方向に沿って隣接する二つの突起の間の距離は全て同一であってもよい。複数の突起は3個以上20個以下であってもよい。
複数のマイクロニードルそれぞれで、薬物はマイクロニードルの尖端部に集中して位置するようにしてもよい。他方、複数のマイクロニードルそれぞれで、薬物はマイクロニードル全体に均一に分布するようにしてもよい。
【0006】
本発明の一実施形態による経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法は、(1)透明板と、透明板の一面に位置し放射方向に伸びた複数の突起を含む星形のピラミッドからなる複数の突出部を含むマスターモールドを製作する段階と、(2)マスターモールドを用いて複数の突出部に対応する形状を有する複数の凹部を含むモールドを製作する段階と、(3)モールドと薬物および生分解性高分子溶液を用いてベース層と、内部に空の空間を有しながら複数の凹部に対応する形状を有する複数のマイクロニードルを含む経皮透過型薬物伝達パッチを製作する段階を含む。
【0007】
マスターモールドの製作は、透明板の上に光硬化性高分子層を形成し、光源と透明板の間にグレースケールマスクを配置し、グレースケールマスクを通じて光硬化性高分子層に光を照射して光硬化性高分子層の一部を硬化させる過程を含むことができる。
グレースケールマスクは、放射方向に伸びた複数の突起を含む星形の光透過部と、光透過部以外の光遮断部を含むことができ、光透過部の光透過率は光透過部の中心から遠くなるほど小さくなってもよい。
光透過部は複数のドットから構成でき、複数のドットは光透過部の中心から遠くなるほど小さな大きさを有することができる。他方、光透過部は大きさが同一な複数のドットから構成でき、光透過部の中心から遠くなるほど複数のドットの間の距離が大きくなってもよい。
【0008】
モールドの製作は、マスターモールドの上に高分子溶液を塗布して高分子層を形成し、高分子層に熱を加えて硬化させる過程を含むことができる。高分子層を硬化させる前、高分子層に負圧を印加して高分子層に含まれている微細気泡を除去することができる。
経皮透過型薬物伝達パッチの製作は、モールドに含まれている複数の凹部それぞれの尖端部に薬物を満たし、複数の凹部それぞれの壁面と複数の凹部の間のモールド表面に生分解性高分子溶液を塗布し、薬物と生分解性高分子溶液を乾燥させてベース層と複数のマイクロニードルを製作し、モールドからベース層と複数のマイクロニードルを分離する過程を含むことができる。
薬物と生分解性高分子溶液を乾燥させる前、モールドの後面に真空フィルターと真空チャンバーを配置し、真空チャンバーと連結された真空ポンプを稼動し、モールドと真空フィルターを通じて薬物と生分解性高分子溶液に単一方向の負圧を印加して薬物と生分解性高分子溶液に含まれている微細気泡を除去することができる。
【0009】
他方、経皮透過型薬物伝達パッチの製作は、モールドに含まれている複数の凹部それぞれの壁面に生分解性高分子溶液と薬物が混合された材料溶液を塗布し、複数の凹部の間のモールド表面に生分解性高分子溶液を塗布し、材料溶液と生分解性高分子溶液を乾燥させてベース層と複数のマイクロニードルを製作し、モールドからベース層と複数のマイクロニードルを分離する過程を含むことができる。
材料溶液と生分解性高分子溶液を乾燥させる前、モールドの後面に真空フィルターと真空チャンバーを配置し、真空チャンバーと連結された真空ポンプを稼動し、モールドと真空フィルターを通じて材料溶液と生分解性高分子溶液に単一方向の負圧を印加して材料溶液と生分解性高分子溶液に含まれている微細気泡を除去することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、星形のピラミッドから構成されたマイクロニードルは突起の突出形状と突起の間の凹形状によって拡大された表面積を有し、高い機械的強度を有する。したがって、マイクロニードルの皮膚浸透効率と薬物の吸収効率を高め、より短時間で薬物を体内に吸収させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による経皮透過型薬物伝達パッチの斜視図である。
図2図1に示した経皮透過型薬物伝達パッチの部分拡大断面図である。
図3図1に示した経皮透過型薬物伝達パッチ中の一つのマイクロニードルを拡大した斜視図である。
図4図3に示したマイクロニードルの平面図である。
図5】四角錐形状からなる比較例によるマイクロニードルを示した斜視図である。
図6】マイクロニードルの実現可能な変形例を示す斜視図である。
図7】本発明の一実施形態によるパッチの製造方法を示す工程フローチャートである。
図8a図7に示した第1段階のマスターモールド製作過程を示した図である。
図8b図7に示した第1段階のマスターモールド製作過程を示した図である。
図8c図7に示した第1段階のマスターモールド製作過程を示した図である。
図8d図7に示した第1段階のマスターモールド製作過程を示した図である。
図9図8aに示した光透過部と図8dに示した突出部の変形例を示した図である。
図10図8aに示した光透過部と図8dに示した突出部の変形例を示した図である。
図11図8aに示した光透過部と図8dに示した突出部の変形例を示した図である。
図12a図7に示した第2段階のモールド製作過程を示した図である。
図12b図7に示した第2段階のモールド製作過程を示した図である。
図12c図7に示した第2段階のモールド製作過程を示した図である。
図13a図7に示した第3段階のパッチ製作過程を示した図である。
図13b図7に示した第3段階のパッチ製作過程を示した図である。
図13c図7に示した第3段階のパッチ製作過程を示した図である。
図13d図7に示した第3段階のパッチ製作過程を示した図である。
図14a図13a〜図13dに示したパッチ製作過程の変形例を示した図である。
図14b図13a〜図13dに示したパッチ製作過程の変形例を示した図である。
図14c図13a〜図13dに示したパッチ製作過程の変形例を示した図である。
図15a図13a〜図13dに示したパッチ製作過程の他の変形例を示した図である。
図15b図13a〜図13dに示したパッチ製作過程の他の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は様々な異なる形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0013】
図1は本発明の一実施形態による経皮透過型薬物伝達パッチ(以下、便宜上‘パッチ’という)の斜視図であり、図2図1に示したパッチの部分拡大断面図である。図3図1に示したパッチ中の一つのマイクロニードルを拡大した斜視図であり、図4図3に示したマイクロニードルの平面図である。
図1図4を参照すれば、本実施形態のパッチ100は、内部に空の空間11を有する複数のマイクロニードル10と、複数のマイクロニードル10と接触して複数のマイクロニードル10を一体に連結するベース層20とから構成される。複数のマイクロニードル10は、ベース層20の一面に相互間距離を置いて整列される。
【0014】
ベース層20には複数の開口21が配置されてもよく、複数のマイクロニードル10それぞれの空の空間11は開口21と通ずるようにしてもよい。即ち、マイクロニードル10の空の空間11は後方に向かって開放された空間であってもよい。ベース層20は複数のマイクロニードル10を支持する可撓性(flexible)支持体であって、皮膚の屈曲に合わせて容易に曲がる一定の厚さの生分解性高分子フィルムから構成できる。
複数のマイクロニードル10は同一の大きさと同一の形状を有することができ、ベース層20の上で並んで整列できる。マイクロニードル10は粉または液体形態の薬物が分散された生分解性高分子からなり、皮膚の角質層を突き抜けて皮膚の表皮または真皮に入り込む。薬物はマイクロニードル10の尖端部に集中されているか、マイクロニードル10全体に均一に分布するようにしてもよい。
パッチ100を構成する生分解性高分子はヒアルロン酸(hyaluronic acid)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)、およびポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)のうちの少なくとも一つを含むことができるが、このような例示に限定されない。マイクロニードル10は皮膚の表皮または真皮で数分〜数時間留まりながら体液によって分解されて薬物を体内に吸収させる。
【0015】
本実施形態のパッチ100で、マイクロニードル10は放射方向に伸びた複数の突起12を含む星形のピラミッドからなる。明細書全体で‘放射方向’はマイクロニードル10を上から見た時(即ち、マイクロニードル10の平面上で)マイクロニードル10の中心から四方に伸びていく方向を意味する。
図3図4では、八角星形のピラミッドからなるマイクロニードル10を例として挙げて示した。
複数の突起12はマイクロニードル10の中心から放射方向と並んで伸びており、突起12の大きさはベース層20から遠くなるほど漸進的に小さくなる。そして複数の突起12のうちの円周方向に沿って隣接する二つの突起12の間は凹形状をなす。明細書全体で‘円周方向’はマイクロニードル10を一回り囲む方向を意味する。
複数の突起12が放射方向に伸びており、円周方向に沿って隣接する二つの突起12の間が凹形状を成すことは、四角錐のような多角錐形状のマイクロニードルと区別される重要な形状的な特徴である。
【0016】
図5は、四角錐形状からなる比較例によるマイクロニードルを示した斜視図である。図5を参照すれば、四角錐形状のマイクロニードル30は上から見た時、四つの角部31を有し、四つの角部31のうちの互いに隣接する二つの角部31の間は直線をなす。
再び図3図4を参照すれば、本実施形態のパッチ100でマイクロニードル10が含む複数の突起12のうちの円周方向に沿って隣接する二つの突起12を最短距離で連結する仮想の線L1を仮定すれば、二つの突起12の間はこの仮想の線L1よりマイクロニードル10の中心に向かって内側に位置する。
【0017】
具体的に、複数の突起12それぞれは尖端部13と、隣接の突起12と連結される根部14から構成され、根部14は円周方向に沿って隣接する二つの端部13を最短距離で連結する仮想の線よりマイクロニードル10の中心に向かってさらに内側に位置する。
放射方向による複数の突起12それぞれの突出長さは全て同一であってもよく、複数の突起12のうちの円周方向に沿って隣接する二つの端部13の間の距離も全て同一であってもよい。即ち、マイクロニードル10は、回転対称を成すことができる。回転対称形状であるマイクロニードル10は、全体表面で体液と均一に接触して生分解性高分子の分解効率を高めることができる。
【0018】
星形のピラミッドから構成されたマイクロニードル10は突起12の突出形状と突起12の間の凹形状によって拡大された表面積を有し、高い機械的強度を有する。即ち、マイクロニードル10は、同じ高さと同じ体積の空の空間を有する円錐または四角錐形状のマイクロニードルより拡大された表面積および改善された機械的強度を有する。
皮膚の表皮または真皮に侵入したマイクロニードル10は表面積が広いほど体液と広く接触して体液の吸収速度が速くなる。したがって、マイクロニードル10を構成する生分解性高分子が急速に溶けて薬物を速かに放出することができる。
一方、マイクロニードル10の空の空間11はパッチ100を皮膚から速かに分離させ、パッチ100が皮膚に付いた状態で維持すべき時間を短縮させる効果があるが、マイクロニードル10の機械的強度を低下させる。本実施形態のマイクロニードル10は複数の突起12が成す安定した多角星形状によって改善された機械的強度を有し、皮膚を容易に突き抜けて入って薬物を体内に伝達することができる。
【0019】
本実施形態のパッチ100で、マイクロニードル10を構成する突起12の個数は八つに限定されず、多様に変化できる。具体的に、マイクロニードル10を構成する突起12の個数は3個以上であり、好ましく3個〜20個の範囲に属してもよい。
突起12の個数が3個以上である時、マイクロニードル10は星形ピラミッドを実現することができる。突起12の個数が20個を超過すれば、パッチ100の製造工程が複雑になるだけでなく、円錐と比較した時、表面積拡大効果が少ない。
【0020】
図6は、マイクロニードルの実現可能な変形例を示す斜視図である。図6では四角星ピラミッド形状のマイクロニードル10aと、互角星ピラミッド形状のマイクロニードル10bと、六角形ピラミッド形状のマイクロニードル10cを例として挙げて示した。
再び図1図4を参照すれば、本実施形態のパッチ100はマイクロニードル10の高い縦横比(aspect ratio)を維持しながらマイクロニードル10の機械的強度を高め、表面積を効果的に拡大させることができる。その結果、マイクロニードル10の皮膚浸透効率と薬物の吸収効率を高め、より短時間で薬物を体内に吸収させることができる。
【0021】
以下、本実施形態によるパッチの製造方法について説明する。図7は、本発明の一実施形態によるパッチの製造方法を示す工程フローチャートである。
図7を参照すれば、パッチの製造方法は、星形のピラミッドからなる複数の突出部を含むマスターモールドを製作する第1段階(S10)と、マスターモールドを用いてモールドを製作する第2段階(S20)と、モールドを用いて複数のマイクロニードルとベース層を含むパッチを製作する第3段階(S30)を含む。
【0022】
図8a〜図8dは、図7に示した第1段階のマスターモールド製作過程を示した図である。
図8a〜図8cを参照すれば、ガラス板のような透明板41の上に光硬化性高分子層42が位置し、光源43と透明板41の間にグレースケールマスク44が位置する。光源43は紫外線平行光露光機から構成でき、光硬化性高分子層42は紫外線硬化型高分子を含むことができる。
グレースケールマスク44は、光透過率が互いに異なる複数の領域を含む露光マスクである。本実施形態で、グレースケールマスク44は、放射方向に伸びた複数の突起を含む星形の光透過部45と、光透過部45以外の光遮断部46を含む。
光遮断部46は紫外線を遮断する金属層であってもよく、光透過部45は金属層が除去された開口領域であってもよい。図8a〜図8cでは、八角星形の光透過部45を例として挙げて示した。
【0023】
グレースケールマスク44で、光透過部45は、中心から遠くなるほど小さくなる光透過率を有する。このために、光透過部45は複数のドットから構成でき、複数のドットは光透過部45の中心から遠くなるほど小さな大きさを有することができる(図8b参照)。他方、光透過部45は大きさが同一な複数のドットから構成でき、光透過部45の中心から遠くなるほどドットの間の距離が大きくなってもよい(図8c参照)。
光源43を作動させてグレースケールマスク44を通じて光硬化性高分子層42に光を照射すれば、光透過部45に対応する位置の光硬化性高分子層42が光によって硬化される。この時、硬化される構造物47の形状は光透過部45の平面形状に対応し、硬化される構造物47の高さは光源43の光強さおよび光透過部45の光透過率に比例する。
【0024】
図8bおよび図8cのようにグレースケールマスク44が八角星形の光透過部45を備えた場合、硬化された構造物47は中心から遠くなるほど高さが小さくなる八角星形のピラミッド形態に形成される。
透明板41の上の光硬化性高分子層42は、硬化された部分と硬化されていない部分に分けられ、硬化されていない部分が現像で除去される。そうすれば、図8dのように透明板41と、透明板41の一面に配列された複数の突出部48からなるマスターモールド40が完成される。複数の突出部48は、八角星形のピラミッドからなる。
【0025】
図9図11は、図8aに示した光透過部と図8dに示した突出部の変形例を示した図である。
図9を参照すれば、光透過部45aは放射方向に伸びた四つの突起を含み、中心から遠くなるほど小さくなる光透過率を有する。このようなグレースケールマスク44aを用いて製作されたマスターモールドの突出部48aは、四角星形のピラミッドからなる。
【0026】
図10を参照すれば、光透過部45bは放射方向に伸びた五つの突起を含み、中心から遠くなるほど小さくなる光透過率を有する。このようなグレースケールマスク44bを用いて製作されたマスターモールドの突出部48bは、互角星形のピラミッドからなる。
図11を参照すれば、光透過部45cは放射方向に伸びた六つの突起を含み、中心から遠くなるほど小さくなる光透過率を有する。このようなグレースケールマスク44cを用いて製作されたマスターモールドの突出部48cは、六角星形のピラミッドからなる。
【0027】
図9図11では中心から遠くなるほど小さな大きさを有する複数のドットから構成された光透過部45a、45b、45cを例として挙げて示したが、光透過部45a、45b、45cは図8cのように全て同一な大きさを有しながら中心から遠くなるほど相互間距離が大きくなる複数のドットから構成されてもよい。
このように、光透過部45の形状を変更することによって3個以上、好ましく3個〜20個範囲に属する突起数を有する星形のピラミッド突出部48を製作することができる。
【0028】
図12a〜図12cは、図7に示した第2段階のモールド製作過程を示した図である。
図12a〜図12cを参照すれば、マスターモールド40の上に高分子溶液が塗布されて高分子層51を成す。高分子層51は、熱硬化性樹脂を含むことができる。高分子層51は例えば、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane)を含むことができるが、このような例示で限定されない。
この時、マスターモールド40と接する高分子層51の表面周囲に微細な気泡が位置することがあるので、図示していない真空装置を用いて高分子層51に負圧(negative pressure)を印加する方法で微細気泡を除去することができる。
【0029】
次いで、高分子層51に熱を加えて硬化させ、硬化されたモールド52からマスターモールド40を分離させて複数の凹部53を有するモールド52を完成する。モールド52は一定の厚さの板構造物であってもよく、モールド52の一面にマスターモールド40の突出部48に対応する形状を有する複数の凹部53が位置する。
【0030】
図7に示した第3段階のパッチ製作過程は、下記の三つの方法のうちのいずれか一つからなり得る。図13a〜図13dに第1の方法を示し、図14a〜図14cに第2の方法を示し、図15aと図15cに第3の方法を示した。
【0031】
図13a〜図13dは、図7に示した第3段階のパッチ製作過程を示した図である。
図13aと図13bを参照すれば、複数の凹部53それぞれの尖端部に薬物61を注入し、生分解性高分子溶液62を複数の凹部53それぞれの壁面と複数の凹部53の間のモールド52表面に薄く塗布して生分解性高分子溶液62がモールド52表面の屈曲に沿って切れることなく連続でつながるようにする。
即ち、生分解性高分子溶液62は複数の凹部53それぞれの壁面に沿って一定の厚さで位置し、複数の凹部53の間のモールド52表面でも一定の厚さで位置する。モールド52に塗布された生分解性高分子溶液62の厚さは凹部53深さの半分以下であってもよく、薬物61と生分解性高分子溶液62の表面またはその内部に微細気泡が存在することがある。
【0032】
図13cを参照すれば、モールド52の後面に真空フィルター71と真空チャンバー72を配置する。真空フィルター71は複数のホールが形成された多孔板から構成され、真空チャンバー72は真空ポンプ73と連結された内部空間を含む。モールド52は硬化された状態であるが、内部に数多い微細気孔が存在する超微細多孔性構造物である。
真空ポンプ73を稼動すれば、真空フィルター71とモールド52を通じて薬物61と生分解性高分子溶液62に負圧が印加される。この時の負圧は全ての方向からかかる圧力でなく、薬物61と生分解性高分子溶液62からモールド52に向かう単一方向の圧力である。
モールド52の後面から加えられる単一方向の負圧を用いれば、薬物61と生分解性高分子溶液62を変形させないながらその内部に含まれている微細気泡を容易に除去することができる。
【0033】
図13dを参照すれば、薬物61と生分解性高分子溶液62を乾燥させて固体形態のパッチ100として固めた後、モールド52からパッチ100を分離させる。パッチ100は内部に空の空間11を有しながら尖端部に薬物が集中された複数のマイクロニードル10と、複数のマイクロニードル10を連結するベース層20から構成される。
【0034】
図14a〜図14cは、図13a〜図13dに示したパッチ製作過程の変形例を示した図である。
図14a〜図14cを参照すれば、粉または液状の薬物を生分解性高分子溶液に分散させて材料溶液63を製造し、材料溶液63を複数の凹部53それぞれの壁面に沿って薄く塗布する。塗布された材料溶液63の厚さは凹部53の深さの半分以下であってもよい。
次いで、生分解性高分子溶液62を複数の凹部53の間のモールド52表面に塗布する。そして、モールド52の後面から材料溶液63と生分解性高分子溶液62に単一方向の負圧を印加して材料溶液63と生分解性高分子溶液62に含まれている微細気泡を除去する(図13c参照)。
次いで、複数の凹部53に位置する材料溶液63とモールド52表面の生分解性高分子溶液62を乾燥させて固体形態のパッチ100として固めた後、モールド52からパッチ100を分離させる。
パッチ100は、内部に空の空間11を有しながら薬物が均一に分散された複数のマイクロニードル10と、複数のマイクロニードル10を連結するベース層20から構成される。
【0035】
図15aと図15bは、図13a〜図13dに示したパッチ製作過程の他の変形例を示した図である。
図15aと図15bを参照すれば、粉または液状の薬物を生分解性高分子溶液に分散させて材料溶液63を製造し、材料溶液63を複数の凹部53それぞれの壁面と複数の凹部53の間のモールド52表面に薄く塗布して材料溶液63がモールド表面の屈曲に沿って切れることなく連続でつながるようにする。塗布された材料溶液63の厚さは凹部53の深さの半分以下であってもよい。
そして、モールド52の後面から材料溶液63に単一方向の負圧を印加して材料溶液63に含まれている微細気泡を除去する(図13c参照)。次いで、材料溶液63を乾燥させて固体形態のパッチ100として固めた後、モールド52からパッチ100を分離させる。
パッチ100は内部に空の空間11を有する複数のマイクロニードル10と、複数のマイクロニードル10を連結するベース層20から構成され、複数のマイクロニードル10とベース層20が均一に分散された薬物を含む。
【0036】
前述の方法によれば、一度のマスターモールド40の製作で複数のモールド52を大量生産することができ、複数のモールド52を用いてパッチ100を容易に製作することができる。また、表面または内部に気泡がない形状精密度が非常に優れた複数のマイクロニードル10を製作することができる。
パッチ100に含まれている複数のマイクロニードル10は内部に空の空間11を有しながらマスターモールド40の突出部48と同一な星形のピラミッドからなる。
【0037】
前記では本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
図9
図10
図11
図12a
図12b
図12c
図13a
図13b
図13c
図13d
図14a
図14b
図14c
図15a
図15b
【国際調査報告】