特表2021-522979(P2021-522979A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-522979経皮透過型薬物伝達パッチおよびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-522979(P2021-522979A)
(43)【公表日】2021年9月2日
(54)【発明の名称】経皮透過型薬物伝達パッチおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20210806BHJP
【FI】
   A61M37/00 530
   A61M37/00 505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2021-514259(P2021-514259)
(86)(22)【出願日】2018年5月18日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月18日
(86)【国際出願番号】KR2018005739
(87)【国際公開番号】WO2019221319
(87)【国際公開日】20191121
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】506376458
【氏名又は名称】ポステック アカデミー−インダストリー ファンデーション
(71)【出願人】
【識別番号】520452965
【氏名又は名称】シルラ インダストリアル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】イム, グンベ
(72)【発明者】
【氏名】イ, ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ビョンソン
(72)【発明者】
【氏名】ウ, ヒョンス
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA72
4C267BB02
4C267BB24
4C267BB48
4C267CC05
4C267EE08
4C267FF10
4C267GG02
4C267GG12
4C267GG16
4C267GG43
(57)【要約】
経皮透過型薬物伝達パッチは、可撓性のベース層と、ベース層の一面に配置し生分解性高分子と薬物を含む複数のマイクロニードルとを含む。複数のマイクロニードルそれぞれは、放射方向に伸びた複数の突起を含む星形状のピラミッドからなり、複数の突起のうち、円周方向に沿って隣り合う二つの突起の間は凹んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のベース層と;
前記ベース層の一面に配置し、生分解性高分子と薬物を含む複数のマイクロニードルとを含み、
前記複数のマイクロニードルそれぞれは、放射方向に伸びた複数の突起を含む星形のピラミッドからなり、
前記複数の突起のうち、円周方向に沿って隣り合う二つの突起の間は凹んでいる、経皮透過型薬物伝達パッチ。
【請求項2】
前記複数のマイクロニードルそれぞれは、前記放射方向による前記複数の突起それぞれの突出長さは全て同じであり、前記複数の突起のうち、前記円周方向に沿って隣り合う前記二つの突起の間の距離は全て同じである、請求項1に記載の経皮透過型薬物伝達パッチ。
【請求項3】
前記複数の突起は3個以上20個以下である、請求項2に記載の経皮透過型薬物伝達パッチ。
【請求項4】
透明板と、前記透明板の一面に配置し放射方向に伸びた複数の突起を含む星形状のピラミッドからなる複数の突出部を含むマスターモールドを製作する段階と;
前記マスターモールドを用いて前記複数の突出部に対応する形状を有する複数の凹部を含むモールドを製作する段階と;
前記モールドと薬物および生分解性高分子溶液を用いてベース層と、前記ベース層の一面に配置し前記複数の凹部に対応する形状を有する複数のマイクロニードルを含む経皮透過型薬物伝達パッチを製作する段階と、を含む、経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【請求項5】
前記マスターモールドの製作は、
前記透明板の上に光硬化性高分子層を形成し、
光源と前記透明板の間にグレースケールマスクを配置し、
前記グレースケールマスクを通じて前記光硬化性高分子層に光を照射して前記光硬化性高分子層の一部を硬化させる過程を含む、請求項4に記載の経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【請求項6】
前記グレースケールマスクは、放射方向に伸びた複数の突起を含む星形状の光透過部と、前記光透過部以外の光遮断部とを含み、
前記光透過部の光透過率は、前記光透過部の中心から遠くなるほど小さくなる、請求項5に記載の経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【請求項7】
前記光透過部は複数のドットで構成され、
前記複数のドットは、前記光透過部の中心から遠くなるほど小さな大きさを有する、請求項6に記載の経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【請求項8】
前記光透過部は、大きさが同じの複数のドットで構成され、
前記光透過部の中心から遠くなるほど前記複数のドット間の距離が大きくなる、請求項6に記載の経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【請求項9】
前記モールドの製作は、
前記マスターモールド上に高分子溶液を塗布して高分子層を形成し、
前記高分子層に熱を加えて硬化する過程を含む、請求項4に記載の経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【請求項10】
前記高分子層を硬化する前に、前記高分子層に負圧を印加して前記高分子層に含まれている微細気泡を除去する、請求項9に記載の経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【請求項11】
前記経皮透過型薬物伝達パッチの製作は、
前記モールドに含まれている前記複数の凹部に生分解性高分子溶液と薬物を混合した材料溶液を満たし、
前記モールド上に生分解性高分子溶液を塗布し、
前記生分解性高分子溶液と前記材料溶液を乾燥させて前記ベース層と前記複数のマイクロニードルを製作し、
前記モールドから前記ベース層と前記複数のマイクロニードルを分離させる過程を含む、請求項4に記載の経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【請求項12】
前記生分解性高分子溶液と前記材料溶液を乾燥させる前に、
前記モールドの後面に真空フィルターと真空チャンバーを配置し、前記真空チャンバーと連結された真空ポンプを稼動し、
前記モールドと前記真空フィルターを通じて前記生分解性高分子溶液と前記材料溶液に単一方向の負圧を印加して前記生分解性高分子溶液と前記材料溶液に含まれている微細気泡を除去する、請求項11に記載の経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮透過型薬物伝達パッチに関し、より詳しくは、マイクロニードル(micro needle)の表面積拡張のための経皮透過型薬物伝達パッチおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮透過型薬物伝達パッチ(以下、便宜上「パッチ」という)は、薬物を搭載した生分解性高分子からなるマイクロニードル(micro−needle)を含む。
マイクロニードルは、皮膚の角質層を突き抜けて皮膚の表皮または真皮に入り込んで数分〜数時間皮膚に留まりながら体液によって分解されて薬物を体内に吸収させる。このようなパッチは、薬物伝達過程で既存の注射器針と異なり、出血と痛みが殆どない。
マイクロニードルは、体積に対する表面積が広いほど皮膚の体液と接触する面積が拡大され、生分解性高分子が急速に溶けて薬物の吸収効率を高めることができる。しかし、従来のパッチは、製造の便宜のために主に円錐または四角錐のように形状が単純で、体積に対する表面積が大きくないマイクロニードルを備えているので、薬物の吸収効率を高めるのに限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、高い縦横比を維持しながら体積に対する表面積が広いマイクロニードルを備えて、薬物の吸収効率を高めることができる経皮透過型薬物伝達パッチおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態による経皮透過型薬物伝達パッチは、可撓性のベース層と、ベース層の一面に配置し、生分解性高分子と薬物を含む複数のマイクロニードルを含む。複数のマイクロニードルそれぞれは、放射方向に伸びた複数の突起を含む星形のピラミッドからなり、複数の突起のうちの円周方向に沿って隣り合う二つの突起の間は凹んでいる。
複数のマイクロニードルそれぞれで、放射方向による複数の突起それぞれの突出長さは全て同じであってもよく、複数の突起のうちの円周方向に沿って隣り合う二つの突起の間の距離は全て同じであってもよい。複数の突起は3個以上20個以下であってもよい。
【0005】
本発明の一実施形態による経皮透過型薬物伝達パッチの製造方法は、(1)透明板と、透明板の一面に配置し、放射方向に伸びた複数の突起を含む星形のピラミッドからなる複数の突出部を含むマスターモールドを製作する段階と、(2)マスターモールドを用いて複数の突出部に対応する形状を有する複数の凹部を含むモールドを製作する段階と、(3)モールドと薬物および生分解性高分子溶液を用いてベース層と、ベース層の一面に配置し、複数の凹部に対応する形状を有する複数のマイクロニードルを含む経皮透過型薬物伝達パッチを製作する段階とを含む。
【0006】
マスターモールドの製作は、透明板上に光硬化性高分子層を形成し、光源と透明板の間にグレースケールマスクを配置し、グレースケールマスクを通じて光硬化性高分子層に光を照射して光硬化性高分子層の一部を硬化させる過程を含むことができる。
【0007】
グレースケールマスクは、放射方向に伸びた複数の突起を含む星形状の光透過部と、光透過部以外の光遮断部とを含むことができる。光透過部の光透過率は、光透過部の中心から遠くなるほど小さくなる。
【0008】
光透過部は複数のドットで構成され、複数のドットは、光透過部の中心から遠くなるほど小さな大きさを有することができる。また、光透過部は、大きさが同一な複数のドットで構成され、光透過部の中心から遠くなるほど複数のドット間の距離が大きくなることもある。
【0009】
モールドの製作は、マスターモールドの上に高分子溶液を塗布して高分子層を形成し、高分子層に熱を加えて硬化する過程を含むことができる。高分子層を硬化する前に高分子層に負圧を印加して高分子層に含まれている微細気泡を除去することができる。
【0010】
経皮透過型薬物伝達パッチの製作は、モールドに含まれている複数の凹部に生分解性高分子溶液と薬物が混合された材料溶液を満たし、モールド上に生分解性高分子溶液を塗布し、生分解性高分子溶液と材料溶液を乾燥させてベース層と複数のマイクロニードルを製作し、モールドからベース層と複数のマイクロニードルを分離させる過程を含むことができる。
【0011】
生分解性高分子溶液と材料溶液を乾燥させる前、モールドの後面に真空フィルターと真空チャンバーを配置し、真空チャンバーと連結された真空ポンプを稼動し、モールドと真空フィルターを通じて生分解性高分子溶液と材料溶液に単一方向の負圧を印加して生分解性高分子溶液と材料溶液に含まれている微細気泡を除去することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、星形のピラミッドから構成されたマイクロニードルは、突起の突出形状と突起間の凹形状によって拡大された表面積を有する。皮膚の表皮または真皮に侵入したマイクロニードルは表面積が広いほど体液と広く接触して体液の吸収速度が速くなる。したがって、マイクロニードルを構成する生分解性高分子が急速に溶けて薬物を速かに放出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による経皮透過型薬物伝達パッチの斜視図である。
図2図1に示した経皮透過型薬物伝達パッチ内の一つのマイクロニードルを拡大した斜視図である。
図3図2に示したマイクロニードルの平面図である。
図4】四角錐形状からなる比較例によるマイクロニードルを示した斜視図である。
図5】マイクロニードルの実現可能な変形例の一部を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態によるパッチの製造方法を示す工程フローチャートである。
図7a図6に示した第1段階のマスターモールド製作過程を示した図である。
図7b図6に示した第1段階のマスターモールド製作過程を示した図である。
図7c図6に示した第1段階のマスターモールド製作過程を示した図である。
図7d図6に示した第1段階のマスターモールド製作過程を示した図である。
図8図7aに示した光透過部と図7dに示した突起の変形例を示した図である。
図9図7aに示した光透過部と図7dに示した突起の変形例を示した図である。
図10図7aに示した光透過部と図7dに示した突起の変形例を示した図である。
図11a図6に示した第2段階のモールド製作過程を示した図である。
図11b図6に示した第2段階のモールド製作過程を示した図である。
図11c図6に示した第2段階のモールド製作過程を示した図である。
図12a図6に示した第3段階のパッチ製作過程を示した図である。
図12b図6に示した第3段階のパッチ製作過程を示した図である。
図12c図6に示した第3段階のパッチ製作過程を示した図である。
図12d図6に示した第3段階のパッチ製作過程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は多様な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態による経皮透過型薬物伝達パッチ(以下、便宜上「パッチ」という)の斜視図であり、図2は、図1に示したパッチ内の一つのマイクロニードルを拡大した斜視図であり、図3は、図2に示したマイクロニードルの平面図である。
【0016】
図1図3を参照すると、本実施形態のパッチ100は、ベース層10と、ベース層10の一面に配置する複数のマイクロニードル20とで構成される。ベース層10は、複数のマイクロニードル20を支持する可撓性(flexible)支持体であり、皮膚の屈曲に合わせて容易に曲がる一定の厚さの生分解性高分子フィルムで構成される。
【0017】
複数のマイクロニードル20は、同じ大きさと同じ形状を有することができ、ベース層10の一面で互いに距離をおいて並んで整列できる。マイクロニードル20は、粉または液体形態の薬物が分散した生分解性高分子からなり、皮膚の角質層を突き抜けて皮膚の表皮または真皮まで浸透する。
【0018】
パッチ100を構成する生分解性高分子は、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)およびポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)のうちの少なくとも一つを含むことができるが、これらに限定されない。マイクロニードル20は、皮膚の表皮または真皮に数分〜数時間留まりながら体液によって分解されて薬物を体内に吸収させる。
【0019】
本実施形態のパッチ100で、マイクロニードル20は放射方向に伸びた複数の突起21を含む星形のピラミッドからなる。明細書全体において「放射方向」は、マイクロニードル20を上から見たとき(すなわち、マイクロニードル20の平面上に)、マイクロニードル20の中心から四方に伸びていく方向を意味する。
【0020】
図2および図3においては、八角星形のピラミッドからなるマイクロニードル20を例として示している。
複数の突起21は、マイクロニードル20の中心から放射方向に並んで伸びており、突起21の大きさはベース層10から遠くなるほど漸進的に小さくなる。そして、複数の突起21のうちの円周方向に沿って隣り合う二つの突起21の間は凹形状をなす。明細書全体において「円周方向」は、マイクロニードル20を一回りする方向を意味する。
複数の突起21が放射方向に伸びており、円周方向に沿って隣り合う二つの突起21の間が凹形状をなすことが、四角錐のような多角錐形状のマイクロニードルと区別される重要な形状的な特徴である。
【0021】
図4は四角錐形状からなる比較例によるマイクロニードルを示した斜視図である。図4を参照すると、四角錐形状のマイクロニードル30は上から見たとき、四つの角部31を有し、四つの角部31のうちの互いに隣り合う二つの角部31の間は直線をなす。
再び図2および図3を参照すると、本実施形態のパッチ100においてマイクロニードル20が含んでいる複数の突起21のうち、円周方向に沿って隣り合う二つの突起21を最短距離で連結する仮想の線L1を仮定すれば、二つの突起21の間はこの仮想の線L1よりマイクロニードル20の中心に向かって内側に位置する。
【0022】
具体的には、複数の突起21それぞれは針状部22と、隣り合う突起21と連結される根部23とで構成され、根部23は、円周方向に沿って隣り合う二つの針状部22を最短距離で連結する仮想の線L1よりマイクロニードル20の中心に向かってさらに内側に位置する。
放射方向による複数の突起21それぞれの突出長さは全て同じであってもよく、複数の突起21のうち、円周方向に沿って隣り合う二つの針状部22の間の距離も全て同じであってもよい。すなわち、マイクロニードル20は回転対称をなすことができる。回転対称形状のマイクロニードル20は、全体表面で体液と均一に接触して生分解性高分子の分解効率を高めることができる。
このように星形のピラミッドで構成されるマイクロニードル20は、突起21の突出形状と突起21間の凹形状によって拡大された表面積を有する。すなわち、星形のピラミッドで構成されるマイクロニードル20は、同じ幅と同じ高さを有する円錐および四角錐形状のマイクロニードルより拡大された表面積を有する。
【0023】
皮膚の表皮または真皮に侵入したマイクロニードル20は、表面積が広いほど体液と広く接触して体液の吸収速度が速くなる。したがって、マイクロニードル20を構成する生分解性高分子が急速に溶けて薬物を速かに放出することができる。
本実施形態のパッチ100においてマイクロニードル20を構成する突起21の個数は8個に限定されず、多様に変更可能である。具体的には、マイクロニードル20を構成する突起21の個数は3個以上であり、好ましくは3〜20個の範囲である。
突起21の個数が3個以上である場合マイクロニードル20は星形のピラミッドを実現することができる。突起21の個数が20個を超える場合パッチ100の製造工程が複雑になるだけでなく、円錐と比較して表面積の拡大効果が小さい。
【0024】
図5は、マイクロニードルの実現可能な変形例を示す斜視図である。図5には、四角錐ピラミッド形状のマイクロニードル20aと、五角錐ピラミッド形状のマイクロニードル20bと、六角錐ピラミッド形状のマイクロニードル20cを例として示している。
再び図1図3を参照すると、本実施形態のパッチ100は、マイクロニードル20の高い縦横比(aspect ratio)を維持しながらマイクロニードル20の表面積を効果的に拡大させることができ、その結果、薬物の吸収効率を高め、より短時間で薬物を体内に吸収させることができる。
【0025】
次に、本実施形態によるパッチの製造方法について説明する。図6は、本発明の一実施形態によるパッチの製造方法を示す工程フローチャートである。
【0026】
図6を参照すると、パッチの製造方法は、星形のピラミッドからなる複数の突出部を含むマスターモールドを製作する第1段階(S10)と、マスターモールドを用いてモールドを製作する第2段階(S20)と、モールドを用いてベース層と複数のマイクロニードルを含むパッチを製作する第3段階(S30)とを含む。
【0027】
図7a〜図7dは、図6に示した第1段階のマスターモールドの製作過程を示した図である。
図7a〜図7cを参照すると、ガラス板などの透明板41の上に光硬化性高分子層42を配置し、光源43と透明板41との間にグレースケールマスク44を配置する。光源43は紫外線平行光露光機で構成され、光硬化性高分子層42は紫外線硬化型高分子を含むことができる。
【0028】
グレースケールマスク44は、光透過率が互いに異なる複数の領域を含む露光マスクである。本実施形態でグレースケールマスク44は、放射方向に伸びた複数の突起を含む星形状の光透過部45と光遮断部46とを含む。
光遮断部46は紫外線を遮断する金属層であり、光透過部45は金属層のない開口領域である。図7a〜図7cには、八角星形状の光透過部45を例として示している。
【0029】
グレースケールマスク44において、光透過部45は中心から遠くなるほど小さくなる光透過率を有する。そのため、光透過部45は複数のドットで構成され、複数のドットは光透過部45の中心から遠くなるほど小さな大きさを有する(図7b参照)。また、光透過部45は大きさが同一な複数のドットで構成され、光透過部45の中心から遠くなるほどドット間の距離は大きくなる(図7c参照)。
光源43を作動してグレースケールマスク44を通じて光硬化性高分子層42に光を照射すると、光透過部45に対応する位置の光硬化性高分子層42が光によって硬化する。この時、硬化した構造物47の形状は光透過部45の平面形状に対応し、硬化した構造物47の高さは光源43の光強さおよび光透過部45の光透過率に比例する。
【0030】
図7bおよび図7cに示すように、グレースケールマスク44が八角星形状の光透過部45を備える場合、硬化した構造物47は、中心から遠くなるほど高さが小さくなる八角星形状のピラミッド形態をなす。
透明板41上の光硬化性高分子層42は、硬化した部分と硬化しない部分に分けられ、硬化しない部分は現像で除去される。そうすると、図7dのように透明板41と、透明板41の一面に配列される複数の突出部48からなるマスターモールド40が完成される。複数の突出部48は八角星形状のピラミッドからなる。
【0031】
図8図10は、図7aに示した光透過部および図7dに示した突出部の変形例を示した図である。
図8を参照すると、光透過部45aは、放射方向に伸びた四つの突起を含み、中心から遠くなるほど小さくなる光透過率を有する。このようなグレースケールマスク44aを用いて製作されたマスターモールドの突出部48aは四角星形状のピラミッドからなる。
【0032】
図9を参照すると、光透過部45bは放射方向に伸びた5個の突起を含み、中心から遠くなるほど小さくなる光透過率を有する。このようなグレースケールマスク44bを用いて製作されたマスターモールドの突出部48bは五角星形状のピラミッドからなる。
【0033】
図10を参照すると、光透過部45cは放射方向に伸びた6個の突起を含み、中心から遠くなるほど小さくなる光透過率を有する。このようなグレースケールマスク44cを用いて製作されたマスターモールドの突出部48cは六角星形状のピラミッドからなる。
図8図10には、中心から遠くなるほど小さな大きさを有する複数のドットで構成される光透過部45a、45b、45cを例として示しているが、光透過部45a、45b、45cは、図7cのように全て同じ大きさを有し、中心から遠くなるほど相互間の距離は広くなる複数のドットで構成することもできる。
このように光透過部45の形状を変更することによって3個以上、好ましくは、3〜20個の範囲に属する突起の数を有する星形状のピラミッド突出部48を製作することができる。
【0034】
図11a〜図11cは、図6に示した第2段階でのモールドの製作過程を示した図である。
図11a〜図11cを参照すると、マスターモールド40の上に高分子溶液が塗布されて高分子層51を形成する。高分子層51は、熱硬化性樹脂を含むことができる。高分子層51は、例えばポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane)を含むことができるが、これに限定されない。
この時、マスターモールド40と接する高分子層51の表面周囲に微細な気泡が発生することがあるので、図示していない真空装置を用いて高分子層51に負圧(negative pressure)を印加する方法で微細気泡を除去することができる。
【0035】
次に、高分子層51に熱を加えて硬化し、硬化したモールド52からマスターモールド40を分離させて複数の凹部53を有するモールド52を完成する。モールド52は一定の厚さの板構造物であり、モールド52の一面にはマスターモールド40の突出部48に対応する形状を有する複数の凹部53が形成される。
【0036】
図12a〜図12dは、図6に示した第3段階でのパッチの製作過程を示した図である。
図12aを参照すると、粉または液状の薬物を生分解性高分子溶液に分散させて材料溶液61を製造し、材料溶液61を複数の凹部53が位置するモールド52の表面に塗布する。塗布された材料溶液61は、複数の凹部53に流れて複数の凹部53を満たす。
次に、生分解性高分子溶液62をモールド52の上に再び塗布して、モールド52の表面および複数の凹部53に満たされた材料溶液61を覆う。この時、材料溶液61および生分解性高分子溶液62の表面またはその内部に微細気泡が存在することがある。
【0037】
図12bを参照すると、モールド52の後面に真空フィルター71と真空チャンバー72とを配置する。真空フィルター71は、複数のホールが形成された多孔板で構成され、真空チャンバー72は、真空ポンプ73と連結される内部空間を含む。モールド52は硬化した状態であるが、内部に数多く微細気孔が存在する超微細多孔性構造物である。
真空ポンプ73を稼動すると、真空フィルター71とモールド52を通じて材料溶液61と生分解性高分子溶液62に負圧が印加される。この場合、負圧は全ての方向からかかる圧力でなく、材料溶液61および生分解性高分子溶液62からモールド52に向かう単一方向の圧力である。
負圧が全ての方向で印加される場合、材料溶液61と生分解性高分子溶液62の粘度が高いときに気泡が円滑に抜け出せず、形状歪みが発生する。すなわち、気泡が表面の外へ抜け出せない状態で空気中に露出した表面に皮膜が形成され、内部に気泡を含んだ状態で固まることになる。
しかし、モールド52の後面で一方向に負圧を加えれば、材料溶液61と生分解性高分子溶液62を変形せず、その内部に含まれている微細気泡を容易に除去することができる。特に、モールド52の凹部53に満たされた材料溶液61に含まれている微細気泡がモールド52と真空フィルター71を通じて容易に抜け出すことができる。
【0038】
図12cおよび図12dを参照すると、複数の凹部53に満たされた材料溶液61と、モールド52の表面の生分解性高分子溶液62を乾燥させて固体形態のパッチ100で固めた後、モールド52からパッチ100を分離させる。パッチ100は、生分解性高分子溶液62が硬化したベース層10と、複数の凹部53に満たされた材料溶液61が硬化した複数のマイクロニードル20とで構成される。
【0039】
上述した方法によれば、一度のマスターモールド40の製作で複数のモールド52を大量生産することができ、複数のモールド52を用いてパッチ100を容易に製作することができる。また、表面または内部に気泡のない形状精密度が非常に優れた複数のマイクロニードル20を製作することができる。
パッチ100に含まれている複数のマイクロニードル20は、マスターモールド40の突出部48と同じ星形状のピラミッドからなり、拡大された表面積によって薬物の吸収効率を高めることができる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図8
図9
図10
図11a
図11b
図11c
図12a
図12b
図12c
図12d
【国際調査報告】