特表2021-523036(P2021-523036A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-523036(P2021-523036A)
(43)【公表日】2021年9月2日
(54)【発明の名称】積層造形のための多材料分離層
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/255 20170101AFI20210806BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20210806BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20210806BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20210806BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20210806BHJP
【FI】
   B29C64/255
   B29C64/124
   B29C64/264
   B33Y10/00
   B33Y30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-563405(P2020-563405)
(86)(22)【出願日】2019年5月6日
(85)【翻訳文提出日】2021年1月12日
(86)【国際出願番号】US2019030936
(87)【国際公開番号】WO2019217325
(87)【国際公開日】20191114
(31)【優先権主張番号】62/668,112
(32)【優先日】2018年5月7日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】516373915
【氏名又は名称】フォームラブス,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】FORMLABS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】スラクツカ,マルチン
(72)【発明者】
【氏名】フランツデール,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】フェルグソン,イアン
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA44
4F213AC05
4F213WA25
4F213WL06
4F213WL12
4F213WL13
4F213WL43
4F213WL72
4F213WL75
(57)【要約】
いくつかの態様によれば、積層多材料分離層は、液体フォトポリマーを硬化させることによって分離層と接触して固体材料の層が形成される積層造形装置で使用するために提供される。いくつかの実施形態では、積層多材料層は、上面のバリア層に加えて、硬化したフォトポリマーをコンテナから分離するのを助ける弾性の第1の層を含み得るものであり、これは、第1の層の材料と適合しない可能性のある液体フォトポリマー中の物質への暴露から第1の層を保護する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体フォトポリマーを硬化させて硬化フォトポリマーの層を形成することによって、部品を製造するように構成された積層造形装置であって、
液体フォトポリマーを保持するように構成され、積層多材料層を含み、積層多材料層の露出表面からの硬化フォトポリマーの分離を容易にするように構成されている、上部開放容器であって、積層多材料層は、
第1の材料層、および
第1の材料層の少なくとも一部に結合されたバリア層であって、少なくとも10Barrerの酸素透過性を有し、コンテナの露出面を形成する前記バリア層を含む、前記上部開放容器、および、
積層多材料層を通して化学線を導き、容器によって保持された液体フォトポリマーを硬化するように構成された少なくとも1つのエネルギー源を含む、前記積層造形装置。
【請求項2】
積層多材料層が、容器の内部底面に結合されている、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項3】
積層多材料層が、少なくとも2つの支持の間に懸架されている、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項4】
積層多材料層の部分に接触するように構成された少なくとも1つのローラーをさらに含む、請求項3に記載の積層造形装置。
【請求項5】
バリア層が、ポリメチルペンテン(PMP)を含む、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項6】
バリア層が、液体フォトポリマーの任意の化合物よりも酸素に対してより高い選択性を有する、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項7】
第1の材料層が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項8】
第1の材料層が、少なくとも200Barrerの酸素透過性を有する、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項9】
第2の材料層が、20Barrerと50Barrerの間の酸素透過性を有する、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項10】
第2の材料層をさらに含み、第2の材料層は、第1の材料層とバリア層との間に配置される、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項11】
第1の材料層が、感圧接着剤でバリア層に結合されている、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項12】
バリア層が、1mmから10mmの間の厚さを有する、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項13】
第1の材料層が、0.001インチから0.01インチの間の厚さを有する、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項14】
第1の材料層が、繊維複合フィルムである、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項15】
バリア層および第1の材料層が、化学線に対して透過である、請求項1に記載の積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、積層造形(例えば、3次元印刷)中に部品を表面から分離するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形、例えば、3次元(3D)印刷は、典型的には、構築材料の部分を特定の場所で固化させることによって、オブジェクトを造形する技術を提供する。積層造形技術は、ステレオリソグラフィー、選択的または熱溶解積層法、直接複合材製造(direct composite manufacturing)、薄膜積層法、選択相領域堆積、多相ジェット固化、弾道粒子製造、粒子堆積、レーザ焼結またはそれらの組み合わせを含み得る。多くの積層造形は、所望のオブジェクトの典型的な断面である連続する層を形成することによって部品を構築する。典型的には、各層は、予め形成された層またはオブジェクトが構築される基板のいずれかに接着するように形成される。
【0003】
ステレオリソグラフィーとして知られている積層造形の1つのアプローチでは、固体オブジェクトは、典型的には硬化性ポリマー樹脂の薄い層を、最初に基材上に、次にひとつを別の薄い層上に、連続的に形成することによって生成される。化学線への曝露は液体樹脂の薄い層を固化させ、それによって薄い層は硬くなり、また、これまでに硬化させた層または構築プラットフォームの底面に接着する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いくつかの態様において、液体フォトポリマーを硬化させて硬化フォトポリマーの層を形成することによって、部品を製造するように構成された積層造形装置であって、液体フォトポリマーを保持するように構成され、積層多材料層を含み、積層多材料層の露出表面からの硬化フォトポリマーの分離を容易にするように構成されている、上部開放容器であって、積層多材料層は、第1の材料層、および第1の材料層の少なくとも一部に結合されたバリア層であって、少なくとも10Barrerの酸素透過性を有し、容器の露出面を形成する前記バリア層を含む、前記上部開放容器、および、積層多材料層を通して化学線を導き、容器によって保持された液体フォトポリマーを硬化するように構成された少なくとも1つのエネルギー源を含む、前記積層造形装置が提供される。
【0005】
前述の装置および方法の実施形態は、上記または以下にさらに詳細に説明される態様、特徴、および行為の任意の適切な組み合わせによって実施され得る。本教示のこれらおよび他の態様、実施形態、および特徴は、添付の図面と併せて以下の説明からより十分に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
添付の図面は、原寸に描かれることを意図したものではない。分かり易くするために、すべての構成要素がすべての図面でラベル付けされているわけではない。 図面において:
【0007】
図1A図1Aは、いくつかの実施形態による、部品の複数の層を形成するステレオリソグラフィープリンタの概略図を示す。
図1B図1Bは、いくつかの実施形態による、部品の複数の層を形成するステレオリソグラフィープリンタの概略図を示す。
図1C図1Cは、いくつかの実施形態による、部品の複数の層を形成するステレオリソグラフィープリンタの概略図を示す。
【0008】
図1D図1Dは、いくつかの実施形態による、図1A〜1Cに示されるコンテナの内部底面に適用される例示的な分離層を示す。
【0009】
図2A図2Aは、いくつかの実施形態による、例示的な積層造形装置を示す。
図2B図2Bは、いくつかの実施形態による、例示的な積層造形装置を示す。
【0010】
図3A図3Aは、いくつかの実施形態による、懸架された薄膜(thin film)として機能する分離層上に部品の複数の層を形成するステレオリソグラフィープリンタの概略図を示す。
図3B図3Bは、いくつかの実施形態による、懸架された薄膜として機能する分離層上に部品の複数の層を形成するステレオリソグラフィープリンタの概略図を示す。
図3C図3Cは、いくつかの実施形態による、懸架された薄膜として機能する分離層上に部品の複数の層を形成するステレオリソグラフィープリンタの概略図を示す。
【0011】
図4A図4Aは、いくつかの実施形態による、積層された多材料分離層の様々な例示的な構成を示している。
図4B図4Bは、いくつかの実施形態による、積層された多材料分離層の様々な例示的な構成を示している。
図5A図5Aは、いくつかの実施形態による、積層された多材料分離層の様々な例示的な構成を示している。
図5B図5Bは、いくつかの実施形態による、積層された多材料分離層の様々な例示的な構成を示している。
図5C図5Cは、いくつかの実施形態による、積層された多材料分離層の様々な例示的な構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
積層造形中に部品を表面から分離するためのシステムおよび方法が提供される。上述したように、積層造形においては、構築プラットフォーム上に複数の材料層を形成することができる。場合によっては、1以上の層が、他の層または構築プラットフォーム以外の表面と接触するように形成されてもよい。例えば、ステレオリソグラフィー技術は、液体樹脂が配置されているコンテナのような追加の表面と接触するように樹脂の層を形成することができる。
【0013】
部品が他の層または構築プラットフォーム以外の表面と接触して形成される1つの例示的な積層造形技術を説明するために、逆ステレオリソグラフィープリンタを図1A〜Cに示す。例示的なステレオリソグラフィープリンタ100は、部品の層が予め硬化された層または構築プラットフォームに加えてコンテナの表面と接触して形成されるように、構築プラットフォーム上に下向きの方向に部品を形成する。図1A図1Cの例では、ステレオリソグラフィープリンタ100は、構築プラットフォーム104、コンテナ106、軸108、および液体樹脂110を含む。下向きの構築プラットフォーム104は、液体フォトポリマー110で満たされているコンテナ106の床に対向している。図1Aは、構築プラットフォーム104上に部品のいずれかの層を形成する前のステレオリソグラフィープリンタ100の構成を表す。
【0014】
図1Bに示すように、部品112は、初期層が構築プラットフォーム104に取り付けられた状態で層状に形成されてもよい。コンテナの床は化学線に対して透過性であってもよく、それはコンテナの床に載っている液体光硬化性樹脂の薄層の部分を標的とすることができる。化学線への曝露は液体樹脂の薄層を固化させ、それは硬くなる。層114は、以前に形成された層と、それが形成されたときのコンテナ106の表面との両方と少なくとも部分的に接触している。硬化した樹脂層の上面は、典型的には、コンテナの透過な床に加えて、構築プラットフォーム4の底面または以前に硬化した樹脂層のいずれかに接合する。層114の形成に続いて部品の追加の層を形成するためには、コンテナの透過な床と層との間に生じるいかなる接合も破壊されなければならない。例えば、層114の表面の1つまたは複数の部分(または表面全体)はコンテナに接着するが、次の層の形成に先立って接着を除去しなければならないようにすることができる。
【0015】
本明細書で使用されるとき、表面からの部品の「分離」は、部品を表面に接続する接着力の除去を指す。したがって、本明細書で使用されるように、分離直後に、部品および表面は、本明細書に記載の技法を介して分離され互いに接着されなくなっている限り、互いに接触(例えば、縁部および/または角で)していてもよい。
【0016】
部品と表面との間の接合の強度を低下させるための技術は、硬化プロセスを抑制すること、またはコンテナの内側に非常に滑らかな表面を提供することを含み得る。しかしながら、多くの使用事例では、コンテナから硬化した樹脂層を除去するために少なくともある程度の力を加えなければならない。
【0017】
図1Cは、コンテナを部品から機械的に分離するためにコンテナを回転させることによって部品に力を加えることができる1つの例示的な手法を示す。図1Cでは、ステレオリソグラフィープリンタ100は、コンテナの一方の側の固定軸108を中心にコンテナを回転させることによって部品112をコンテナ106から分離し、それによってコンテナの端部を固定軸より遠位に距離118(どんな適切な距離でもよい)だけ変位させる。この工程は、直前に生成された層をコンテナから分離するための、コンテナ106の部品112から離れる方向への回転を含むものであり、コンテナの部品に近づく方向への戻り回転がそれに引き続いてもよい。
【0018】
いくつかの実装形態では、構築プラットフォーム104は、部品とコンテナとの間に形成される液体樹脂の新しい層のための空間を作り出すためにコンテナから離れるように移動することができる。構築プラットフォームは、上記のコンテナ106の回転運動の前、最中、および/または後に、このようにして移動することができる。構築プラットフォームが動くときに関係なく、構築プラットフォームの動きに続いて、液体樹脂の新しい層が、形成される部品への曝露および追加に利用可能である。前述の硬化および分離プロセスの各ステップは、部品が完全に作成されるまで続けられてもよい。上述のステップのように部品とコンテナベースとを漸進的に分離することによって、部品とコンテナとを分離するのに必要なピーク力および/または合力を最小にすることができる。
【0019】
しかしながら、上述のプロセス中に力を加えることにより、複数の問題が生じる可能性がある。いくつかの使用例では、分離プロセスは部品自体におよび/または部品自体を通して力を加えることができる。部品に力が加わると、場合によっては、コンテナではなく部品が構築プラットフォームから外れることがある。これにより、製造プロセスが中断することがある。一部の使用例では、部品に力が加わると、部品自体の変形や機械的故障が発生する可能性がある。
【0020】
いくつかの場合、分離プロセス中に部品に加えられる力は、材料からの部品の物理的分離を支援する特性を備えた材料の上面と接触する部品を形成することによって低減することができる。この種類の材料層は、「分離層」と呼ばれることもある。分離層は、図1A〜Cに示される逆ステレオリソグラフィープリンタを含むが、これらに限定されない様々な積層造形装置で使用することができる。
【0021】
分離層を形成するのに適した材料はしばしば弾性を示し、それは分離中に部品がコンテナと接触することによって部品に加わる力を減少させる。このようにして、この分野で一般に使用されている1つの例示的な材料は、PDMSとしても知られているポリジメチルシロキサンである。米国特許出願第14/734,141号に記載されているように、より硬い基板の上に化学線的に透過な剥離層を設けるために、Sylgard184として市販されているPDMS配合物などのいくつかの種類のPDMSが使用されている。PDMSは、かなりの程度の酸素透過性、ならびにかなりの程度の化学線透過性を提供することが知られている。PDMSはまた、分離層にとって有利であると理解されている実質的な弾性および機械的性質を提供する。しかしながら、PDMSの1つの欠点は、ある種の物質にさらされると望ましくない反応または変化を受ける傾向があることである。このように、PDMSはこれらの物質と非適合性であると言われている。
【0022】
PDMSおよび他の弾性材料と特定の物質との非適合性は、これらの非適合性の物質を含むフォトポリマーと共に利用されると、弾性層の機械的または光学的特性の劣化など、分離層に様々な望ましくない変化をもたらす。例えば、イソボルニルアクリレートなどの特定の物質は、PDMSを膨張、「膨潤」(swell)または他の材料から分離させることさえあることが見出されている。この挙動は、ステレオリソグラフィープリンタのコンテナの内部に塗布されたPDMS分離層を使用不可能にする可能性がある。結果として、フォトポリマーに使用するための潜在的には興味深かった特定の物質は、そのような分離層が有する低コストおよび他の利点にもかかわらず、PDMS分離層を含むステレオリソグラフィー樹脂コンテナでの使用に適しているとは考えられていない。
【0023】
フォトポリマーに使用するための潜在的に興味のあった上述の物質と適合性のあるコンテナ内に分離層を形成するために使用できる他の材料があるが、それらの材料は一般に積層造形法に使用するための他の望ましい特性を示さない。例えば、材料は適合性であり得るが、部品に加えられる力を減少させながらコンテナからの部品の分離を容易にするために使用されるときには弾性のような望ましい機械的特性を有さないかもしれない。特に、酸素浸透性は、材料の酸素浸透性が少なくともいくつかのフォトポリマーの硬化を阻害すると思われるので、分離層にとって非常に望ましい性質である。硬化抑制によるコンテナの表面での未硬化樹脂の薄層の製造は、層が新たに形成された固体樹脂(solid resin)の層とコンテナとの間の接着力を減少させるので、コンテナからの硬化樹脂の分離を助ける。しかしながら、一般的に言えば、酸素浸透性の高い材料は、フォトポリマーに使用するための潜在的に興味のある上述の物質と適合性ではなく、そしてあり得るものはいずれも法外に高価である。
【0024】
本発明者らは、異なる材料の積層から形成された分離層が、PDMSのような弾性材料の上述の利点を提供しながら、弾性材料自体と適合性ではないフォトポリマーと共に使用する潜在的な関心のある物質と適合性があることを認識し理解した。このように、積層多材料分離層は、層から部品を分離するのに望ましい機械的性質および樹脂の硬化を抑制するのに十分な酸素浸透性を示すことができ、同時に多様な物質と適合性がある。一般に、本発明の実施形態は、2以上の材料のうちのいずれかによってもたらされる利点が増大または獲得されるように分離層を形成するために2以上の材料を有利に利用し得る一方で、2つ以上の材料のうちのいずれかに典型的に関連する不利益は軽減または最小化される。本明細書に記載の分離層は、既存のコンテナに取り付けられてもよく、および/またはコンテナの一部を形成してもよい。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、PDMSなどの第1の材料は、フォトポリマーと第1の材料との間の「バリア層」として作用するように配置された材料によって積層造形装置の通常の動作中にフォトポリマーと接触するのを防止されている。ステレオリソグラフィーシステムでそのような層と接触して固体材料を形成することは、望ましい機械的、光学的、および化学的特性を含む利点の組み合わせを、他の解決策よりも効率的かつ潜在的に低コストで提供し得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の材料層を1つまたは複数のバリア層と組み合わせて、積層多材料層を形成することができる。そのような積層多材料層は、積層造形装置で使用されるコンテナの内部底面を形成することができる(例えば、図1A〜1Cのコンテナ106として)か、または、固体材料が層と接触して形成されるように、他の装置で使用することができる。
【0026】
場合によっては、第1の材料とバリア層とを含む積層多材料層は、バリア層としてフッ素化エチレンプロピレン(FEP)などの不浸透性材料を使用することができる。しかしながら、FEPはフォトポリマーと第1の材料との間に適切なバリアを提供し得るが、その不浸透性のために、それはその表面で樹脂の硬化を妨げず、硬化の抑制は、固体フォトポリマーの新たに硬化した層からのコンテナの分離を助けることができるので望ましい。そのように、FEPよりも高い酸素浸透性および/または酸素選択性を有するバリア層は、これらの特性の一方または両方がフォトポリマー硬化の抑制をもたらし、それが今度は分離を助けるのでより望ましい。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、積層多材料分離層は、コンテナが配置される積層造形装置によって使用される化学線の少なくともそれらの波長に対して実質的に透明であり得る。例えば、フォトポリマーを硬化させるために405nmの波長を有するレーザービームを利用する積層造形装置は、多材料層が405nmの光に対して透明な部分(これらの部分は他の波長でも同様に透明であり得るが)を含む、積層多材料層を利用することができる。多材料層の任意の1以上の層は、コンテナ内に保持されているフォトポリマーの領域上に光が投射されることを可能にする各構成要素を通る透明窓がある限り、それほど透明ではない部分を含み得ることに留意されたい。
【0028】
積層造形の間に表面から部品を分離するためのシステムおよび方法に関連する様々な概念およびその実施形態のより詳細な説明を以下に示す。本明細書に記載された様々な態様は、多数の方法のいずれかで実施され得ることを理解されたい。特定の実施形態の例は、例示的な目的のためだけに本明細書に提供される。さらに、以下の実施形態で説明される様々な態様は、単独で、または任意の組み合わせで使用されてもよく、本明細書に明示的に記載された組み合わせに限定されない。
【0029】
本明細書に記載の技術は、図に示される例示的なシステムだけでなく、多くのステレオリソグラフィーシステムに一般的に適用可能であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるような1以上の積層造形技術を介して製造される構造は、複数の層から形成されてもよく、または複数の層を含んでもよい。例えば、層ベースの積層造形技術は、オブジェクトの観察によって検出可能な一連の層を形成することによってオブジェクトを製造することができ、このような層は、10ミクロンと500ミクロンの間の任意の厚さを含む任意のサイズとすることができる。いくつかの使用例では、層ベースの積層造形技術は、異なる厚さの層を含むオブジェクトを製造することができる。
【0030】
図1Dは、いくつかの実施形態による、図1A〜1Cに示されるコンテナ106の内部底面に適用される例示的な分離層150を示す。図1Dの例では、コンテナ106は、コンテナの内部に適用された本体126および分離層150を含む。いくつかの実施形態では、分離層150は、適切な方法でフレーム126に接着または他の方法で結合され得る。分離層150は、上で論じたような積層多材料分離層であり得るが、そのさらなる例を以下に説明する。コンテナ本体126は、アクリル、ガラス、および/または少なくとも一部が化学的に透明である任意の材料を含み得る。いくつかの実施形態では、コンテナ本体126は、剛性材料から形成されている。
【0031】
内部に配置された積層多材料分離層を有するコンテナを利用することができる別の例示的な積層造形装置を図3A図3Bに示す。例えば、コンテナ106は、図2A図2Bのシステム200に採用されてもよい。例示的なステレオリソグラフィープリンタ200は、支持ベース201、ディスプレイおよびコントロールパネル208、ならびにフォトポリマー樹脂の貯蔵および分配のための貯留および分配システム204を含む。支持ベース201は、システムを使用して物体を製造するように動作可能であり得る様々な機械的、光学的、電気的、および電子的構成要素を含み得る。
【0032】
動作中、フォトポリマー樹脂は、分配システム204からコンテナ202内に分配されてもよい。コンテナ202は、例えば図1Dに示されるコンテナ106内のもののような、積層された多材料分離層を含んでもよい。
【0033】
構築プラットフォーム205は、製造中の物体の底面層、または構築プラットフォーム205自体の底面層(最も低いz軸位置)が、コンテナ202の底部211からz軸に沿って所望の距離になるように、垂直軸203(図3A-Bに示されるようにz軸方向に沿って配向される)に沿って配置されてもよい。所望の距離は、構築プラットフォーム上または製造中の物体の予め形成された層上に製造されるべき固体材料の層の所望の厚さに基づいて選択することができる。
【0034】
図2A〜Bの例では、コンテナ202の底部211は、支持ベース201内に配置された放射線源(図示せず)によって生成された化学線に対して透過であり得る。コンテナ202および構築プラットフォーム205の底面部分に面する部分、またはその上に製造されている物体は、放射線に曝される可能性がある。そのような化学線に露光されると、液体フォトポリマーは、時には「硬化」と呼ばれる化学反応を受けて、露光された樹脂を実質的に凝固させて構築プラットフォーム205の底面部またはその上に製造される物体に付着させる。図2A〜Bは、構築プラットフォーム205上に物体の任意の層を形成する前のステレオリソグラフィープリンタ201の構成を表しており、明確にするために、描写されたコンテナ202内に液体フォトポリマー樹脂も示されていない。
【0035】
材料層の硬化に続いて、新たな層を形成するために構築プラットフォーム205を再配置するため、および/またはコンテナ202の底部211とのあらゆる結合に分離力を加えるために、構築プラットフォーム205は垂直運動軸203に沿って移動されてもよい。さらに、コンテナ202は、ステレオリソグラフィープリンタ201が水平運動軸210に沿ってコンテナを移動させることができるように支持ベース上に取り付けられ、それによって、少なくともいくつかの場合において、追加の分離力を有利に導入する。ワイパー206がさらに設けられ、水平運動軸210に沿った縁部207に沿って動くことができ、209において取り外し可能にまたは他の方法で支持ベース上に取り付けることができる。
【0036】
分離層を含み得る追加のステレオリソグラフィー装置が図3A〜3Bに示されている。図3A〜3Bの例では、液体フォトポリマー310は、薄膜350が引き伸ばされる支持体307を含む容器内に保持されている。膜350は、少なくとも容器内に液体を保持するのに十分な程度まで締め付けることができ、場合によっては、その上に、膜を通して液体フォトポリマーに化学線を向けることによって、固体材料の層を形成することができる平坦な表面を生成するのに十分に締め付けることができる。ステレオリソグラフィー装置300は、構築プラットフォーム304を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、ステレオリソグラフィー装置300は、図3Cに示されるように、膜350の下側を横切って移動し、膜に上向きの力を加えて、固体材料が製造され得る平坦な表面を生成する少なくとも1つのローラー320を含み得る。このような場合、ローラーがないと膜は完全にぴんと張って平らにならないかもしれないが、ある程度の「たるみ」を示すことがある(場合によっては非常に小さいこともある)。いくつかの実施形態では、ローラーが固体材料が製造された膜の領域から離れるとき、膜の重量により、固体材料から膜が部分的または全体的に剥離する可能性がある。
【0038】
図4A〜4Bおよび5A〜5Cは、分離層のいくつかの異なる例示的な構成を示し、それらのいずれも、図1Dに示される分離層150および/または図3A〜3Cに示される分離層350として使用され得る。
【0039】
図4Aは、いくつかの実施形態による、例示的な積層分離層を示している。図4Aの例では、分離層450は、バリア層401および第1の層402を含む。第1の層とバリア層は一緒になって、積層多材料分離層450を含む。分離層上に配置された液体フォトポリマーは、その表面のバリア層401に接触するが、第1の層402には接触しない。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、第1の層とバリア層の対向する表面は、互いに界面を形成してもよい。例えば、第1の層とバリア層の表面は互いに接合されていても、そうでなければ接着されていてもよい。第1の層401の表面408は、コンテナ(例えば、コンテナ106)の下の部分を形成する材料の表面、および/またはその光学的に透過な部分に接合または他の方法で接着することができる。図4Bは、図4Aに示されるようなバリア層401および第1の層402を含むが、バリア層と第1の層との間に配置され、2つの層を一緒に接着するように作用する接着剤層404も含む、分離層451を示す。
【0041】
図2の例に示すように、第1の層201の表面204は、コンテナ200によって保持されているフォトポリマーとは接触せず、代わりにバリア層202とコンテナ206の境界を形成する材料とだけ接触している。使用中(例えば、図1Dに示される分離層150および/または図3A〜3Cに示される分離層350として)、第1の層401の表面は、フォトポリマーと接触しないが、代わりに、バリア層402(および、いくつかの実施形態では、コンテナの境界を形成する材料)とのみ接触している。結果として、第1の層401がフォトポリマー内の各物質と化学的に適合性である必要はないかもしれない。バリア層401が所与の物質に対して比較的不浸透性である限りにおいて、フォトポリマー内の物質は、起こり得るあらゆる望ましくない相互作用または反応によって、第1の層402またはその内部で利用可能ではないであろう。
【0042】
いくつかの実施形態において、第1の層402は、機械的基板層を提供するものとして説明され得る。そのような実施形態では、機械的基板層は、エラストマー特性を有する比較的柔らかい固体材料で形成されてもよく、一方で、バリア層は、液体フォトポリマーと機械的基板層との間にバリアを設けながら、基板層の動きを制限しないように十分に可撓性であればよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、積層分離層を形成するために2以上の材料を選択することができる。多材料分離層は、例えば、3層、4層またはそれ以上の積層層を含むことができる。追加的にまたは代替的に、多材料分離層の1以上の層は、層の材料内に存在する添加材料を含み得る。いくつかの実施形態において、多材料分離層の層(例えば、PMP層)は、タルクまたはガラス鉱物充填物などの材料を組み込んでもよい。一般に、そのような添加剤はフィルム材料の不透過性を増加させることができるが、曝露の光学面のすぐ近くで不透過性を増加させても形成プロセスの精度または正確さはごくわずかに低下する。いくつかの実施形態では、第1の層および/またはバリア層は、2016年12月22日に出願された「Systems and Methods of Flexible Substrates for Additive Fabrication」というタイトルの米国特許出願第15/388,041号に開示されるような繊維複合膜であり得、その全体がここで参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
図5A〜5Cは、いくつかの実施形態による、追加の例示的な積層分離層を示す。図示された分離層550、551および552のそれぞれは、バリア層と、交互的な(interleaved)接着剤層と一緒に結合された2つの追加の層とを含む。分離層の層の数を増やすと、屈折率が異なる材料間の界面の数が増える可能性があり、それによって散乱、不要な内部反射、および/または他の光学的歪みを引き起こす可能性がある。さらに、膜内に複数の層を使用すると、以下でさらに説明するように、張力下で積層膜がしわになるか、さもなければ変形する傾向が実質的に増加する可能性がある。
【0045】
図5A、5Bおよび5Cは、いくつかの実施形態による、例示的な分離層550、551および552の断面をそれぞれ示している。示されるように、これらの分離層のそれぞれは、分離層の上面(すなわち、分離層がステレオリソグラフィー装置に設置されるときに液体フォトポリマーと接触するように配置された表面)に配置されたバリア層501を含み得る。分離層550、551および552のそれぞれはまた、分離層の下部境界に配置された第2の層503と、バリアと第2の膜層(film layers)との間に挿入された第1の層502とを含み得る。各分離層550、551および552は、分離層の界面接着剤層504a、結合層504bを含み得る。特に、接着剤層504aはバリア層501を第1の層502に結合し、接着剤層504bは第1の層502を第2の層503に結合する。いくつかの実施形態によれば、表面508は、コンテナ(例えば、コンテナ106)の下部を形成する材料の表面、および/またはその光学的に透明な部分に結合または他の方法で接着され得る。
【0046】
図5Bおよび5Cの例では、分離層551および552は、分離層の全幅および/または幅にわたって延在しない層を含む。図5Bに示されるように、例えば、第2の層503は、層503の特定の部分にギャップ505を含み得る。そのようなギャップ505は、他の利点の中でも、特に第2の層503がそうでなければ透過性の制限要因である実施形態において、複合膜500を介した酸素などの硬化抑制剤のより大きな伝達を潜在的に可能にし得る。
【0047】
代替的に、または追加的に、図5Cに示されるように、ギャップ506は、第1の層502内に形成され得る。そのようなギャップ506は、グリッドなどの第2の層502のパターン内の離散領域として分散され得る。いくつかの実施形態では、ギャップ506は、第1の層502の線形「ストリップ(strip)」の間に形成され得る。そのような構成では、ギャップ506は、空気、酸素ガス、または水または溶存酸素を含むパーフルオロカーボンなどの担体材料の導入などによって、バリア層501を通過するための追加の抑制剤材料の導入に適したチャネル様構造を形成し得る。そのようなチャネルは、チャネルのようなギャップ506を通る材料の流れが確立され得る範囲でさらに有利であり得る(例えば、分離層552が図3A〜3Cの例のように懸架された薄膜として配置される場合、またはそうでなければ)。ギャップ506を通る材料の流れは、バリア層への抑制性材料の補充を可能にし得、および/または膜および隣接するフォトポリマーの熱的維持を支援し得る。そのような熱維持は、バリア層501に隣接するフォトポリマー樹脂の温度を上昇させるために、加熱を含み得るが、未重合のフォトポリマー樹脂の温度をより良く維持し、複合膜500への熱損傷を防ぐために、かなりの可能性がある光重合プロセスによって生成された過剰な熱を放散することができるように、冷却を含む場合もある。
【0048】
分離層552が懸架された薄膜(例えば、図3A〜3Cまたはその他の例のように)ギャップ506として配置されるいくつかの実施形態では、線形ストリップが分離層552の主張力軸に沿って配向されるように、第1の層502の線形ストリップの間に配置され得る(つまり、張力が主に適用される軸)。
【0049】
いくつかの実施形態では、図5Bおよび5Cの例のギャップ505および/またはギャップ506は、代替的に、ボイド様(void-like)空間として残されるのではなく、1つまたは複数の材料で満たされ得る。例えば、ギャップ506は、酸素透過性を有するPDMSなどの抑制剤に対する優れた透過性を有する材料で満たされ得、そうでなければそのような透過性を欠き得る層502を通る輸送を提供する。代替的に、または追加的に、接着剤材料に関連して以下に説明するように、屈折率を一致させるために、ギャップ506を埋めるための材料を選択することができる。
【0050】
以下の段落は、図4A、4B、5A、5Bおよび5Cに示される分離層の様々な実施形態および構成を説明する。以下の説明において、「バリア層」または「前記バリア層」への言及は、例示的なバリア層401および501を含むがこれらに限定されない、液体フォトポリマーと接触するように配置されている、積層分離層内の任意の層を指し得ることが理解されよう。以下の説明において、「第1の層」または「前記第1の層」への言及は、第1の層402および第1の層502のいずれかまたは両方を指し得ることがさらに理解されよう。また、上記分離層のバリア層以外の層を総称して「支持層」と呼ぶこともある。例えば、分離層450の支持層は、第1の層402を含み;分離層451の支持層は、第1の層402および接着剤層404を含み;分離層550、551および552の支持層は、層502、503、504aおよび504bを含む。
【0051】
いくつかの態様では、酸素に対して比較的浸透性であるように選択された材料は、第1の層またはバリア層のいずれかがそのような特性を欠く実施形態に対して特定の利点を示し得る。上述したように、酸素はある種のフォトポリマー化学において光重合反応を阻害する傾向がある。この抑制効果は、分離層の表面に沿って未硬化の液体フォトポリマーの薄層をもたらし、潜在的に分離性能を改善する可能性がある。一例として、PDMS材料から形成された分離層は、500Barrer程度の比較的高い酸素浸透性を有し得る。
【0052】
比較的低い酸素浸透性を有するバリア層を利用する実施形態では、分離層の表面上のそのような抑制層は確実に形成されない可能性がある。上述したように、FEP材料から形成されたバリア層はその化学的弾力性に関して一定の利点を提供するが、その低い酸素浸透性(典型的には5Barrer未満)は分離層表面近くの液体フォトポリマー内の酸素抑制効果を減少または排除する。他方、PDMSのような比較的高い程度の酸素浸透性を有する材料は、十分な化学的弾力性を欠いているかまたはフォトポリマー化合物に対する不適切なバリアを提供し得る。したがって、バリア層のための適切な材料の選択は、第1の層材料の化学的非感受性と酸素浸透性および/または選択性とのバランスをとることを目的とし得る。コスト、機械的堅牢性、および製造可能性を含む他の要因もそのような決定に影響を及ぼし得る。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、液体フォトポリマーの化合物とも適合性のある最大の酸素浸透性を有するバリア層のための材料を選択することが有利であり得る。様々な実験において、本発明者らは、上記のようなPMPが、優れた化学的適合性および弾力性を有する一方で、35Barrer程度の適切な酸素浸透性を提供することを見出した。しかしながら、10〜20Barrerより大きいBarrer値および許容される適合性を有する他の材料もまた有利であり得、その例は上記で論じられている。そして、当業者によって理解され得るように、酸素以外の抑制材料が特定のフォトポリマー化学に関連し得る。そのような場合、酸素に関する浸透性特性に関する前述の観察は、代替抑制材料および選択された材料を通るその浸透性に適用可能である。
【0054】
液体フォトポリマーおよび選択された材料が互いに対して高度の湿潤性を有するように、液体フォトポリマーと接触するようにバリア層中の1つまたは複数の材料を選択することがさらに有利であり得る。特に、積層造形装置が、化学線へのその後の曝露のために、材料の表面に対して一定の厚さを有する液体フォトポリマーの薄膜を形成できることが望ましい場合がある。低い部分湿潤性を有するバリア層材料に塗布された液体フォトポリマーは、材料の表面を横切って実質的に均一な薄い層に容易に広がるよりもむしろビーズを形成する傾向、あるいは凝集する傾向がある。そのようなものとして、FEP、テフロン(登録商標)AF、および典型的には低い表面エネルギーを有する表面を含む他のそのような「非粘着」表面は、液体フォトポリマーに関して低い湿潤性の表面を提供する。この低い表面エネルギーは、硬化したフォトポリマーの分離には有利であり得るが、液体フォトポリマーの薄膜の形成に関しては望ましくない。対照的に、本発明者らは、PMPは、広範囲の液体フォトポリマーに関してFEPよりも実質的により湿潤性であり、その結果、PMPは硬化フォトポリマーに関して優れた分離性を有するという事実にもかかわらず、フォトポリマーの薄膜がPMPで形成された第1の材料に対してより確実に形成され得るということを突き止めた。
例えば、TPXまたはPMP−MXブランドで販売されている約0.005インチのPMP層は、さまざまなフォトポリマー樹脂で使用するための効果的なバリア層を提供し得る。
【0055】
本明細書に記載されている積層多材料分離層は、PDMS単独での使用など、従来の分離層を超える多数のさらなる利点を提供する。一例として、PDMS単独で形成された分離層は、「曇り」または「かぶり」として知られる方法で劣化する周知の傾向を有する。特定の理論に限定されることを望むものではないが、本発明者らは、この形態の劣化は実質的にフォトポリマー物質のPDMS材料への拡散および/または吸収ならびにそれに続くPDMS材料内の化学反応によるものであると仮定する。しかしながら、PMPのようなバリア層材料の比較的な不浸透性は、本明細書に記載されるようにフォトポリマーコンテナの有効使用寿命を劇的に増加させる。これは、部分的には、バリア層材料を通って分離層の大部分へのフォトポリマー物質の移動が実質的に減少したことによると考えられる。マイグレーションのこの減少および/または分離層劣化プロセスの減少は、さらに有利には、本発明の実施形態を使用して形成された部品の有効解像度および精度の大幅な向上を可能にする。これは、一部には、フォトポリマー物質の分離層への移行の減少およびそれに続く分解プロセスから生じる、分離層を通る化学線の透過における一貫性の改善によるものと考えられる。さらに、本発明者らは、積層多材料分離層を通過する化学線の散乱が著しく少ないことを観察した。
【0056】
いくつかの実施形態では、バリア層が形成される材料は、PMPとしても知られるポリメチルペンテンを含み得るか、それから実質的になり得るか、またはそれからなり得る。PMPは、例えば、三井化学アメリカ社からTPXブランドで入手可能である。本発明者らは、PMP材料が、より低い分離力を可能にする非常に低い表面張力(50mN/m未満)、化学線に対する高い透過度、低い屈折率、高いガス(特に酸素)浸透性、および液体フォトポリマーに使用するために潜在的に興味がある多種多様な物質への優れた耐性を含む、ステレオリソグラフィー用途に関していくつかの有利な特性を有することを認識した。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、バリア層401は、0.001インチ〜0.010インチの間、0.005インチ〜0.025インチの間、0.0025インチ〜0.0075インチの間、0.002インチ〜0.006インチの間、または0.003インチ〜0.005インチの間の厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、バリア層は薄膜である。例えば、バリア層は、0.003インチ〜0.005インチの間の厚さを有するPMPの薄膜であり得る。
【0058】
上述したように、酸素浸透性はフォトポリマーの硬化を阻害するので、そのような硬化の抑制を達成するのに十分な酸素浸透性を有するようにバリア層の1以上の材料を選択することが好ましい。さらに、多材料層を広範囲のフォトポリマー物質と適合性にするために、フォトポリマー内の望ましい物質に対して比較的不浸透性であるバリア層を選択することができる(少なくともいくつかの場合において、それはまた、支持層の材料と非適合性であり得る)。本発明者らは、これらの望ましい特性を示すいくつかの適切な材料を認識した。したがって、いくつかの実施形態によれば、バリア層は、PMP、フルオロシリコーン、フルオロシリコーンアクリレート、ポリメチルペンテン、ポリ(1-トリメチルシリル-1-プロピン)、ポリテトラフルオロエチレン系もしくは非晶質フルオロプラスチック、PTFEまたはデュポン社のテフロン(登録商標)またはテフロン(登録商標)AF、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール変性(PETG)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、支持層の1以上の材料は、分離層と接触される液体フォトポリマー中の物質との材料の化学的適合性についての懸念を少なくして選択され得る。いくつかの実施形態では、積層分離層内の1つまたは複数の支持層の材料(例えば、層402、層502および/または層503)は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含み得る。例えば、Dow CorningからSylgard 184として市販されている、同じくDow Corningから市販されているSylgard 527と3:1の比で混合されたPDMS材料が支持材料として使用されてきた。
【0060】
いくつかの実施形態では、多材料分離層の支持層を形成するために、複数の形態のPDMSを互いに組み合わせることができる。一例として、Sylgard184をSylgard527と3対1の比率で組み合わせて、上述のように支持層に形成することができる。別の例として、第1の層とバリア層との間、または第1の層とコンテナの表面との間に形成された接合は、第1の層とバリア層との間および/または第1の層とコンテナの表面との間に実質的に配置された第3の材料の適用によって強度が増強され得る。このようにして、そうでなければ強くまたは全く接着しない可能性がある潜在的に非適合性の材料をうまく利用することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、支持層(例えば、層402、層502および/または層503)は、100Barrer、150Barrer、200Barrer、250Barrerまたは300Barrer以上の酸素浸透性を有し得る。いくつかの実施形態において、支持層は、800Barrer、750Barrer、600Barrerまたは400Barrer以下の酸素浸透性を有し得る。上記範囲の任意の適切な組み合わせもまた可能である(例えば、300Barrer以上600Barrer以下の酸素浸透性など)。好ましくは、支持層は、100Barrer〜800Barrerの範囲、250Barrer〜750Barrerの範囲、または300Barrer〜600Barrerの範囲、または400Barrer〜600Barrerの範囲の酸素浸透性を有することができる。複数の支持層が分離層内に配置される使用例では、異なる支持層は、同じまたは異なる酸素透過性を有し得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、バリア層は、5Barrer、10Barrer、15Barrer、20Barrerまたは25Barrer以上の酸素浸透性を有し得る。いくつかの実施形態において、バリア層は、100Barrer、80Barrer、60Barrer、40Barrerまたは35Barrer以下の酸素浸透性を有し得る。上述の範囲の任意の適切な組み合わせも可能である(例えば、10Barrer以上40Barrer以下の酸素浸透性など)。好ましくは、バリア層は、10Barrer〜100Barrerの範囲、または15Barrer〜60Barrerの範囲、または10Barrer〜40Barrerの範囲、または20Barrer〜35Barrerの範囲の酸素浸透性を有することができる。
【0063】
所与の材料が第2の化合物に対してよりも第1の化合物に対してより透過性である限りにおいて、その材料は第2の化合物に対して第1の化合物に対して「選択性」を有すると言われる。そのような選択性は、第1の化合物についての浸透性の測定値と第2の化合物に対する浸透性の測定値との間の比で表され得、この比は1.0より大きい。上記の例を使用すると、FEPは全ての化合物に対して比較的等しく不浸透性であるので、FEPについての異なる材料に対する所与の材料の選択性はおそらく1に近いであろう。対照的に、PMPは、1よりも大きい(またははるかに大きい)フォトポリマー化合物に対する酸素に対する選択性を有し得る。
【0064】
バリア層が、フォトポリマー中の化合物よりも酸素、または代替の抑制材料に対してかなりの程度の選択性を有することがさらに有利であり得る。特に、PMPポリマーフィルムのような材料は、異なる化合物に対して所望の浸透性を有する膜を形成し得る。このような膜の浸透性は、少なくとも部分的には材料を浸透する特定の化合物に依存し得る。比較的不浸透性の材料に関しては、化合物の分子サイズによる変動が、いかなる限定された浸透性に関しても支配的な要因となり得る。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、分離層は、フォトポリマー樹脂中の化合物よりも酸素または他の関連する硬化抑制剤に対してより高い選択性を有する透過性材料を含み得る。このような分離層は、フォトポリマー樹脂中の化合物が分離層内または分離層を透過するのを防止しながら、抑制化合物(例えば、酸素)がフォトポリマー中に拡散することを有利に可能にする。例えば、バリア層は、フォトポリマーの1以上の化合物に対して酸素に対して高い選択性を有し得る。そのような選択性は、1〜10の間、または2〜20の間、または少なくとも5、または少なくとも10、または少なくとも20、または少なくとも50であり得る。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、酸素に対する選択性を有する透過性材料または別の関連する硬化抑制剤から、フォトポリマー樹脂中の化合物上に分離層を形成することによって、積層分離層は、化合物がフォトポリマー樹脂に拡散するのを抑制しながら、フォトポリマー樹脂中の化合物が分離層に浸透するのを防ぐ。フォトポリマーと接触しているため、この透過性は、バリア層にとって特に重要な場合がある。しかしながら、不浸透性の支持層は、支持層を介した輸送に利用可能な酸素などの抑制剤の量を制限する可能性があるため、支持層の透過性も重要である可能性がある。いくつかの実施形態では、これは、比較的高度の抑制剤透過性を有するそのようなすべての層の材料を選択することによって対処することができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、積層分離層内の1つまたは複数の層は、単独では完全性を独立して維持するのに十分な機械的強度または凝集性を有し得ないコーティングから形成され得る。そのようなコーティングは、コーティング層に凝集性および完全性を提供する基材に塗布することができる。一例として、図5A〜5Cに示されるバリア層501は、基板として第1の層502上に堆積または形成されたコーティング層であり得る。そのようなバリア層は、例えば、ケマーズ社から入手可能なテフロン(登録商標)AF1600または2400などの高酸素透過性材料を含み得、第1の層502上に2〜10ミクロンの厚さで堆積される。
【0068】
支持層がPETを含むいくつかの実施形態では、PETは酸素または他のガスに対して比較的不浸透性である可能性があるため、PETフィルム内にギャップを形成して、酸素または他の抑制性材料が、PETフィルム(例えば、ギャップ505および/またはギャップ506)内およびそれを通ってバリア層内に拡散することを可能にすることが有利である可能性がある。例えば、第1の層502は、バリア層501を形成するために、テフロン(登録商標)AF2400などの様々な材料で容易にハードコーティングされ得るポリエチレンテレフタレート(PET)材料のフィルムを含み得る。ハードコーティングは、フィルム(膜)を保護し、引っかき傷を防ぐように機能し得、アクリルまたはウレタンベースのコーティングなど、フィルムを経時的な損傷または引っかき傷から保護することができる任意のコーティングから構成され得る。
【0069】
そのようなハードコーティングバリア層を利用するいくつかの実施形態では、1つまたは複数の支持層内のギャップが、バリア層の領域が上に位置するのに十分に小さい直径または断面積を有することが有利であり、このようなギャップは、ギャップを「埋める」または他の方法で拡張するための適切な支持を保持する。一例として、行と列の間隔が1〜10mmであるPETフィルム全体にグリッドパターンのギャップ(例えば、ギャップ505および/またはギャップ506)を形成するために、25〜100ミクロンの厚さのPETフィルムに約1〜15ミクロンの穴を形成することができる。代替的に、適切なグリッドパターンは、[https://aip.scitation.org/doi/abs/10.1063/1.338127]および[https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0376738802003034]に記載されているものを含む、有孔膜を通る拡散を計算するための従来のアプローチを使用してモデル化されたギャップ506を通るガスの拡散を近似することによって、所望の透過性の量に基づいて決定され得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、テフロン(登録商標)AFは、スピン、スプレー、ブラシ、または浸漬技術を介してバルク溶媒に懸濁して適用され得る。テフロン(登録商標)AFを含む多くの適切な材料の「焦げ付き防止」の性質により、コロナル/プラズマ処理の使用を含む、および/または基板のガラス転移温度(Tg)を超えてPET基板を加熱することによって、接着力を高めるために、堆積前にPETフィルムをさらに処理することが有利である可能性がある。いくつかの実施形態において、適切なTgは、選択されたPET材料の結晶化度の量に応じて、67から80℃の間であり得る。コーティングに続いて、テフロン(登録商標)AF材料の滑らかなコーティングを残し、接着性をさらに改善するために、テフロン(登録商標)AF材料を輸送するバルク溶媒を部分的または完全に除去または抽出することができる。そのような除去は、高温、減圧、および/または他の様々な技術の使用を含む様々な方法で達成され得る。場合によっては、コーティング材料の複数の塗布が、支持フィルムに形成されたギャップを埋めることによって連続的で滑らかな表面が形成されることを確実にするのを助けるのに有利であり得る。代替的に、または追加的に、そのようなコーティング材料は、そのような穴のいくつかまたはすべてを埋めることができ、したがって、材料で満たされたギャップを形成し、材料がPETフィルムを通過することを可能にする。PETフィルムは、そのような処理中に真空テーブルまたは他の適切なジグを介して処理ステップ中に固定され得る。いくつかの使用例では、追加の支持層は、コーティングを追加して層502上に層503を形成することなどによって、基板として第1の支持層上にコーティング材料を適用することによって形成され得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、本発明者らは、接着剤材料の屈折率が接着層に可能な限り近くなるように、接着剤層504aおよび/または504bを形成するために接着剤材料を選択することが有利であること、異なる場合は、2つの材料の一方のインデックスまたは2つの材料のインデックスの幾何平均に可能な限り近づけることを見出した。いくつかの実施形態では、3M8211のような光学的に透明な接着剤などの厚さ約0.001インチの感圧接着剤の層を、フィルム層501と502の間、および/またはフィルム層502と503の間に適用することができる。いくつかの実施形態では、他の結合技術が、熱結合または超音波結合などの液体透明接着剤の代替または追加で利用され得る。
【0072】
上記の構造材料層に加えて、いくつかの実施形態では、追加の機能要素を、材料の層の間および/または支持層内に存在するギャップ内に積層された分離層に組み込むことができる。一例として、表示マークまたは基準は、印刷、堆積、または他の方法で分離層に積層することができる。場合によっては、そのような表示マークは、分離層の側面または角に沿って配置され得る。表示マークの1つのタイプは、2018年1月9日に出願された「Optical Sensing Techniques for Calibration of an Additive Fabrication Device and Related Systems and Methods」というタイトルの米国特許出願第15/865,421号に開示されているような散乱または吸収材料であり得る。いくつかの実施形態では、基準マークは、較正の目的で、複合フィルム構造自体によって、フィルムの平面内の位置に登録および固定され得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、積層造形装置は、分離層内の基準マークを感知することによって、分離層が変形したか、またはクリープを受けた程度を決定するように構成され得る。例えば、分離層に張力が加えられている場合(例えば、図3A〜3Cの例のように)、デバイスは、レイヤーに対して加えられた張力による層の変形を測定するために、分離層内の基準マークを感知し得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、そのような基準マークは、層間ではなく、分離層の上面または下面に配置され得る。そのような用途の一例は、積層造形装置において懸架された薄膜として配置された分離層の底面に配置された基準マークの使用であり、装置(例えば、1つ以上のローラー)は、分離層に接触しながら繰り返し移動する。そのような装置では、マークは、前記運動によって時間とともに徐々に摩耗する可能性があり、マークの存在を送信することによって、分離層の摩耗状態を決定することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、基準マークは、分離層および/または分離層を取り付けるタンクに関する追加情報を伝達することができ、例えば、1Dまたは2Dバーコード、会社のロゴ、および/または使用情報または指示を、層上、または積層分離層の層間に、印刷する。
【0075】
いくつかの実施形態では、分離層は、1つまたは複数の光フィルタリング層を含み得る。一例として、バンドパスフィルタまたはカットオフフィルタを分離層に組み込んで、化学線の1つまたは複数の特定の周波数がフィルムを透過し、可視光などの他の周波数が透過を遮断できるようにすることができる。さらに、様々なアクティブデバイスをそのような分離層に組み込むことができる。一例として、抵抗性加熱トレースは、薄くて柔軟な回路を使用して、分離層に埋め込まれ得る。別の例として、たわみ、応力、ひずみ、温度、誘導(例えば、樹脂レベルの場合)、RFID、または光センサーなどの様々なセンサーを、積層された分離層の層間に同様に組み込むことができる。同様に、分離層は、フレキシブルLCDまたはOLEDディスプレイなどのイメージングコンポーネントを含むことができる。
【0076】
分離層が懸架された薄膜として配置される(例えば、図3A〜3Cの例のように)いくつかの実施形態では、支持層は、張力下に置かれたときに比較的高度の引張強度および/またはクリープまたは他の変形に対する耐性を有する様々な材料から選択され得る。そのような引張強度は、薄膜を分離層として利用する用途において特に価値があり得、ここで、薄膜は、上記のように、動作中に張力下に置かれる。
【0077】
分離層が懸架された薄膜として配置される(例えば、図3A〜3Cの例のように)いくつかの実施形態では、1つまたは複数の支持層は、可撓性であり得るが、バリア層と比較して比較的非弾性(たとえば、比較的高い降伏ひずみとヤング率の両方を備えた薄い材料)であり得る。適切な材料の一例は、光学的に透明なポリスチレンの厚さ約0.002インチのフィルムである。
【0078】
分離層が懸架された薄膜として配置される(例えば、図3A〜3Cの例のように)いくつかの実施形態では、バリア層から最も遠くに配置された支持層は、運動中に支持層に接触し、および/またはそれに対して力を及ぼす可能性があるローラー要素などの様々な機械的装置と周期的に接触し得る。したがって、支持層材料は、そのような繰り返し接触に適した機械的特性を有する材料から有利に選択され得、その結果、より低い摩耗が達成され得る。特定の実施形態では、そのような特性はまた、摩耗および穿刺に対する優れた耐性、比較的低い摩擦、および/または比較的高度の潤滑性を含み得る。支持層が、分離層に過剰な力が加えられるパンクまたは他の故障モードに耐性があるように、実質的な弾性を有する材料を選択することがさらに有利であり得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、バリア層は、脂肪族熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含み得て、摩耗および潜在的な穿刺力の両方に対する実質的な耐性を提供する。そのような層は、0.001インチから0.005インチの間、または約0.002インチの厚さを有し得る。次に、バリア層は、接着剤層または他の方法を使用して、支持層(例えば、第1の層402または第1の層502)に接着または他の方法で接着され得る。当業者が理解するように、そのようなフィルム層結合は、低表面エネルギーおよび様々な形態の接着剤を克服するためのコロナ処理の使用を含む、様々な手段で達成され得る。
【0080】
分離層が液体フォトポリマーコンテナ(例えば、図1A〜1Dの例のように)の内面に適用されるいくつかの実施形態では、1つまたは複数の支持層は、コンテナの底部に約1〜10mmの深さまで注がれ、硬化して弾性固体になる材料の鋳造層(例:PDMS)を含むか、またはそれで構成することができる。いくつかの実施形態では、支持層は、一般的な液体フォトポリマー材料との化学的不適合性のために分離層での使用がこれまで考慮されていなかった材料を含む、PDMS以外の材料から形成され得る。化学線に対する必要な透過性を有する様々なエラストマー材料は、このような分離層での使用に適したものとすることができる。一例として、許容可能な程度の弾性および透過性を提供するために様々な形態の熱可塑性ポリウレタン(TPU)を選択することができる。いくつかの実施形態によれば、第1の層用の有利な材料は、約10〜50の間のショアータイプ(Shore Type)A測定によるデュロメーター値を有することができ、20−30の範囲が最も成功している。
【0081】
分離層が液体フォトポリマータンクの内面に適用されるいくつかの実施形態では(例えば、図1A〜1Dの例のように)、分離層は、以下の工程で形成され得る:最初に、Sylgard(登録商標)184のような約120mlの未硬化PDMS材料を217mm×171mmの底寸法を有する透明アクリル容器に導入し、そしてPDMS材料を硬化させる:続いて、20〜25mlの追加の未硬化PDMS材料を、以前に硬化したPDMS材料の上のコンテナに導入する:PDMS領域と同じサイズのPMPフィルムの薄膜を次にPDMS層の上に配置して、未硬化PDMSがPMPフィルムと以前に硬化したPDMS材料の領域にわたって広がるようにする:そして、PDMS材料の平坦な表面へのPMPフィルムの面一の塗布および硬化プロセスの完了を確実にするために、平らな塗布装置を利用して、PMPフィルムとPDMSとの間の接合およびPDMSとアクリル容器との間の結合を形成することができる。他の例では、多材料分離層を含むコンテナは、後続の堆積において第1の材料上にバリア材料をキャスティングすること、第1の材料上にバリア材料をスピンコーティングすること、第1の材料上にバリア材料を蒸気またはプラズマ堆積すること、および/または、選択された第1の材料およびバリア材料に適し得る他の方法などの、他の技術を用いて製造することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の層をさらに選択して、酸素または他の硬化抑制剤の「貯留」源を提供することができ、貯留層が、ある量の硬化抑制剤を溶解、懸濁、または他の捕捉された状態に少なくとも一時的に維持することができる。第1の期間において、硬化抑制剤は、補充速度を超える速度で消費されるか、さもなければ利用され得、貯留層内に捕捉される硬化抑制剤の量を減少させる。しかしながら、第2の期間中に、硬化抑制剤は、補充速度よりも低い速度で消費または利用され得、その結果、貯留層内に捕捉された硬化抑制剤の量は、貯留層の最大容量まで増加し得る。本発明者らは、比較枯渇の第1の期間の長さは、典型的には、比較補充の第2の期間の長さよりもはるかに短いことを観察した。したがって、貯留源として1つまたは複数の層を使用することにより、浸透性の低い材料の使用が可能になり、貯留層の完全な枯渇を回避しながら、より低い補充速度を提供することができる。場合によっては、ボイドまたは他の物理的ギャップを使用して貯留層を提供することができる。他の実施形態では、材料の最大容量を最適化するために、1つまたは複数の材料を選択することができる。多くの場合、本発明者らは、材料の最大容量が材料の透過性に密接に関連していることを見出した。他の実施形態では、貯留層の最大容量は、貯留材料の厚さまたは量を増やすことによって最適化することができ、したがって、単位体積あたりの容量を有する材料の総容量を増やすことができる。
【0083】
本明細書では、「透過性」である材料について言及する。コンテナの透過性およびその上に配置された多材料分離層の透過性は、化学線がコンテナ内のフォトポリマーに伝達されるために適切であることが理解されよう。そのように、「透過性」は化学線に対する透過性を意味し、それは全ての可視光に対する透過性を意味してもしなくてもよい。いくつかの実施形態では、化学線は可視スペクトルの放射線を含むことができ、したがって、そのような化学線に対して透過な材料は少なくとも1つの波長の可視光に対して透過である。
【0084】
さらに、様々な程度のガス浸透性、特に酸素浸透性を示す元素について本明細書で論じる。上に提供された浸透性値は、差圧法(真空法を含むがこれに限定されない)および等圧法を含む、ガス浸透性についての任意の適切な試験プロトコルの結果であり得る。例えば、上に提供された浸透性値は、材料のガス浸透性を測定するためのISO15105標準試験プロトコルの結果であり得る。
【0085】
そのような変更、修正および改良はこの開示の一部であることを意図しておりそして本発明の精神および範囲内にあることを意図している。さらに、本発明の利点が示されているが、本明細書に記載の技術のすべての実施形態がすべての記載された利点を含むわけではないことを理解されたい。いくつかの実施形態は、本明細書で有利であると説明されたいかなる特徴も実装しなくてもよく、場合によっては、説明された特徴のうちの1つまたは複数がさらなる実施形態を達成するために実装されてもよい。したがって、前述の説明および図面は例示にすぎない。
【0086】
本発明の様々な態様は、単独で、組み合わせて、または前述の実施形態で具体的に説明されていない様々な構成で使用することができ、したがって、その適用において、前述の説明に記載されるかまたは図面に示される構成要素の詳細および配置に限定されない。例えば、一実施形態に記載の態様は、他の実施形態に記載の態様と任意の方法で組み合わせることができる。
【0087】
クレームの要素を変更するためのクレームでの「第1」、「第2」、「第3」などの序数の用語の使用は、それ自体で優先順位、序列、または、あるクレーム要素と別のクレーム要素の順序、またはメソッドの動作が実行される時間的順序を暗示するものではないが、クレーム要素を区別するために、特定の名前を持つ1つのクレーム要素と同じ名前を持つ別の要素(ただし序数用語を使用する場合)を区別するためのラベルとして使用されている。
【0088】
また、本明細書で使用されている表現および用語は説明を目的としており、限定と見なされるべきではない。本明細書における「含む」、「含む」、または「有する」、「含有する」、「包含する」、およびそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目およびその等価物、ならびに追加の項目を包含することを意味する。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4AB
図5AB
図5C
【国際調査報告】