特表2021-523202(P2021-523202A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-523202(P2021-523202A)
(43)【公表日】2021年9月2日
(54)【発明の名称】経口溶液製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20210806BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20210806BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20210806BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20210806BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20210806BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20210806BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210806BHJP
【FI】
   A61K31/519
   A61K9/08
   A61K47/10
   A61K47/26
   A61K47/12
   A61K47/18
   A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-564165(P2020-564165)
(86)(22)【出願日】2019年5月3日
(85)【翻訳文提出日】2021年1月4日
(86)【国際出願番号】IB2019053650
(87)【国際公開番号】WO2019220253
(87)【国際公開日】20191121
(31)【優先権主張番号】62/671,208
(32)【優先日】2018年5月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/835,278
(32)【優先日】2019年4月17日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】ジャイン,アシュウィンクマー
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ウィーリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB01
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD42
4C076DD51
4C076DD67
4C076FF52
4C076FF53
4C076FF61
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA52
4C086NA06
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン、またはその乳酸塩もしくはリンゴ酸塩、および乳酸またはリンゴ酸を含む緩衝系を含む、経口溶液製剤または用時調製用経口粉末に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(パルボシクリブ)またはその乳酸塩もしくはリンゴ酸塩、および乳酸またはリンゴ酸を含む緩衝系を含む経口水溶液。
【請求項2】
パルボシクリブまたはその乳酸塩を、最大約40.0mg/mLの溶液濃度で含む、請求項1に記載の経口水溶液。
【請求項3】
パルボシクリブまたはその乳酸塩を、約25.0mg/mLの溶液濃度で含む、請求項2に記載の経口水溶液。
【請求項4】
前記緩衝系が、DL−乳酸、D−乳酸またはL−乳酸を、最大約0.2Mの溶液濃度で含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の経口水溶液。
【請求項5】
前記緩衝系が、DL−乳酸を、約0.1Mの溶液濃度で含む、請求項4に記載の経口水溶液。
【請求項6】
パルボシクリブまたはそのリンゴ酸塩を、最大約15.0mg/mLの溶液濃度で含む、請求項1に記載の経口水溶液。
【請求項7】
パルボシクリブまたはそのリンゴ酸塩を、約12.5mg/mLまたは約10.0mg/mLの溶液濃度で含む、請求項6に記載の経口水溶液。
【請求項8】
前記緩衝系が、DL−リンゴ酸、D−リンゴ酸またはL−リンゴ酸を、約0.2Mの溶液濃度で含む、請求項6または7に記載の経口水溶液。
【請求項9】
約3.6〜約4.0のpHを有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の経口水溶液。
【請求項10】
約100.0mg/mL〜約350.0mg/mLの溶液濃度でのキシリトール、および約1.0mg/mL〜約10.0mg/mLの溶液濃度でのスクラロース、またはそれらの混合物から選択される1種またはそれより多くの医薬的に許容される甘味料をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の経口水溶液。
【請求項11】
1種またはそれより多くの医薬的に許容される着香料をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の経口水溶液。
【請求項12】
保存剤、抗酸化剤、pH調節剤、希釈剤、可溶化剤、粘度調整剤および着色剤からなる群から選択される1種またはそれより多くの医薬的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の経口水溶液。
【請求項13】
それぞれ約1.0mg/mL〜約1.5mg/mLの溶液濃度での安息香酸および安息香酸ナトリウムから選択される1種またはそれより多くの保存剤を含む、請求項12に記載の経口水溶液。
【請求項14】
それぞれ約0.1mg/mL〜約1.0mg/mLの溶液濃度での没食子酸プロピルおよびEDTA二ナトリウムから選択される1種またはそれより多くの抗酸化剤を含む、請求項12に記載の経口水溶液。
【請求項15】
約25.0mg/mLの溶液濃度でのパルボシクリブ、約0.1Mの溶液濃度での乳酸、約320.0mg/mLの溶液濃度でのキシリトール、および約8.0mg/mLの溶液濃度でのスクラロースを含む経口水溶液であって、約3.6〜約4.0のpHを有する、上記溶液。
【請求項16】
約12.5mg/mLまたは約10.0mg/mLの溶液濃度でのパルボシクリブ、約0.2Mの溶液濃度でのリンゴ酸、約100.0mg/mLの溶液濃度でのキシリトール、および約1.0mg/mLの溶液濃度でのスクラロースを含む経口水溶液であって、約3.6〜約4.0のpHを有する、上記溶液。
【請求項17】
(a)約1.0mg/mL〜約3.0mg/mLの溶液濃度での医薬的に許容される着香料;(b)約1.0mg/mL〜約1.5mg/mLの溶液濃度での安息香酸ナトリウム;および/または(c)約0.10mg/mL〜約1.0mg/mLの溶液濃度での没食子酸プロピルをさらに含む、請求項15または16に記載の経口水溶液。
【請求項18】
約5.0wt%〜約15.0wt%のパルボシクリブまたはそのリンゴ酸塩、および約15.0wt%〜約25.0wt%のリンゴ酸を含む緩衝系を含む、用時調製用経口粉末。
【請求項19】
約8.0wt%〜約10.0wt%のパルボシクリブまたはそのリンゴ酸塩、および約18.0wt%〜約20.0wt%のリンゴ酸を含む緩衝系を含む、請求項18に記載の用時調製用経口粉末。
【請求項20】
(a)それぞれ約1.0wt%〜約1.5wt%の、安息香酸および安息香酸ナトリウムから選択される1種またはそれより多くの保存剤;(b)約50.0wt%〜約75.0wt%でのキシリトール、および/または約0.5wt%〜約1.0wt%でのスクラロースから選択される1種またはそれより多くの甘味料;および/または(c)抗酸化剤をさらに含み、該抗酸化剤は、約0.01wt%〜約1.0wt%でのEDTA二ナトリウムである、請求項18または19に記載の用時調製用経口粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、6−アセチル−8−シクロペンチル−5−メチル−2−(5−ピペラジン−1−イル−ピリジン−2−イルアミノ)−8H−ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−オン(以下、パルボシクリブ)、またはその乳酸塩もしくはリンゴ酸塩、医薬的に許容される溶媒、および薬物の安定性と保存を可能にするのに好適な緩衝系を含む経口溶液製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
パルボシクリブは、CDK4およびCDK6の有力で選択的な阻害剤であり、以下の構造を有する。
【0003】
【化1】
【0004】
パルボシクリブは、WHO Drug Information、27巻、2号、172頁(2013)に記載されている。
パルボシクリブおよびその医薬的に許容される塩は、国際公報WO2003/062236号および米国特許第6,936,612号、7,208,489号および7,456,168号;国際公報WO2005/005426号および米国特許第7,345,171号および7,863,278号;国際公報WO2008/032157号および米国特許第7,781,583号;ならびに国際公報WO2014/128588号に開示されている。パルボシクリブの固体製剤は、国際公報WO2016/193860号に開示されている。前述の参考文献のそれぞれの内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2003/062236号
【特許文献2】米国特許第6,936,612号
【特許文献3】米国特許第7,208,489号
【特許文献4】米国特許第7,456,168号
【特許文献5】WO2005/005426号
【特許文献6】米国特許第7,345,171号
【特許文献7】米国特許第7,863,278号
【特許文献8】WO2008/032157号
【特許文献9】米国特許第7,781,583号
【特許文献10】WO2014/128588号
【特許文献11】WO2016/193860号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】WHO Drug Information、27巻、2号、172頁(2013)
【発明の概要】
【0007】
小児対象、経鼻胃(NG)管を有する対象、または固体剤形、例えば錠剤またはカプセルの嚥下が困難な対象での使用に好適な、口当たりのよい、医薬的に許容されるパルボシクリブの経口溶液製剤を開発する必要がある。このような経口溶液製剤は、例えば食物の作用またはプロトンポンプ阻害剤(PPI)との共投与への作用に関して、有利な生物薬剤学的な特性を有し得る。
【0008】
発明の簡潔な要旨
本発明は、パルボシクリブまたはその乳酸塩もしくはリンゴ酸塩、医薬的に許容される溶媒、および乳酸もしくはリンゴ酸、または乳酸もしくはリンゴ酸の塩を含む緩衝系を含む経口溶液製剤を提供する。多くの実施態様において、溶媒は、水を含み、任意選択で医薬的に許容される共溶媒をさらに含む。
【0009】
一形態において、本発明は、パルボシクリブまたはその乳酸塩もしくはリンゴ酸塩、および乳酸またはリンゴ酸を含む緩衝系を含む経口溶液製剤を提供する。一部のこのような実施態様において、パルボシクリブは、遊離塩基の形態である。他のこのような実施態様において、パルボシクリブは、乳酸塩またはリンゴ酸塩の形態である。一形態において、本発明は、パルボシクリブまたはその乳酸塩、および乳酸または乳酸塩を含む緩衝系を含む経口溶液製剤を提供する。一部のこのような実施態様において、パルボシクリブは、遊離塩基の形態である。他のこのような実施態様において、パルボシクリブは、乳酸塩の形態である。
【0010】
別の形態において、本発明は、パルボシクリブまたはそのリンゴ酸塩、およびリンゴ酸またはリンゴ酸塩を含む緩衝系を含む経口溶液製剤を提供する。一部のこのような実施態様において、パルボシクリブは、遊離塩基の形態である。他のこのような実施態様において、パルボシクリブは、リンゴ酸塩の形態である。
【0011】
このような経口溶液製剤は、それを必要とする患者によってすぐ使用できる形態で提供することができる。代替として、このような経口溶液製剤は、用時調製用経口粉末(oral powder for constitution;OPC)から製造してもよい。このようなOPC剤形は、あらゆる公知の手順によって製剤化し、再調製することができる。一部の実施態様において、剤形は、ボトル中の粉末であり、この粉末に水を添加し、撹拌することにより再調製されて、望ましい用量を送達することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、以下の本発明の詳細な好ましい実施態様の説明および本明細書に含まれる実施例を参照することによってより容易に理解することができる。本明細書において使用される用語は、単に具体的な実施態様を記載する目的のためである。さらに、本明細書において具体的に定義されない限り、本明細書において使用される用語は、関連分野において公知のその従来の意味が与えられるものとすることが理解されるものとする。
【0013】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、別段の指定がない限り、複数形の指示対象を含む。例えば、「1つの」置換基(a substituent)は、1つまたはそれより多くの基を含む。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、当業者によって考察される場合、容認される平均の標準誤差内に含まれる値を有することを意味する。多くの場合、用語「約」は、その対象となる値または範囲の±20%、好ましくは±10%、より好ましくは±5%を指す。
【0015】
本明細書に記載される発明は、本明細書で具体的に開示されていない何らかの要素の非存在下で実施することもできる。したがって、例えば、本明細書におけるいずれの場合においても、用語「含む」、「から本質的になる」および「からなる」はいずれも、他の2つの用語のいずれかで置き換えることができる。
【0016】
本発明は、パルボシクリブまたはその乳酸塩もしくはリンゴ酸塩、医薬的に許容される溶媒、および乳酸もしくはリンゴ酸を含む緩衝系を含む経口溶液製剤を提供する。
本発明の経口溶液製剤は、経口投与に好適なあらゆる医薬的に許容される溶媒と共に製剤化することができる。好ましい実施態様において、医薬的に許容される溶媒は、水を含み、このような経口溶液製剤は、本明細書において、「経口水溶液製剤」と称される。一部の実施態様において、医薬的に許容される溶媒は、水を含み、任意選択で、医薬的に許容される共溶媒、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール400(PEG400)、グリセリン、エタノール、またはそれらの組合せをさらに含む。
【0017】
2.0〜8.4のpH範囲内および25℃〜40℃の温度での、水性緩衝系中でのパルボシクリブの溶解性を調査した。表1に、溶解性実験の結果を示す。驚くべきことに、パルボシクリブは、乳酸およびリンゴ酸の水性緩衝系中で、最小の分解で、顕著に強化された溶解性を有していたことが見出された。それゆえに、本明細書に記載される経口溶液製剤のための緩衝系中に、乳酸またはリンゴ酸のいずれかを含めた。このような緩衝系は、約3.0〜約4.5のpH範囲で、好ましくは約3.6〜約4.0のpH範囲で、より好ましくは約3.8のpHで、安定であり、医薬品有効成分(API)およびさらなる賦形剤と適合性を有する。
【0018】
一形態において、本発明は、パルボシクリブまたはその乳酸塩もしくはリンゴ酸塩、および乳酸またはリンゴ酸を含む緩衝系を含む経口水溶液製剤を提供する。一部のこのような実施態様において、パルボシクリブは、遊離塩基の形態である。他のこのような実施態様において、パルボシクリブは、乳酸塩の形態であり、緩衝剤は、乳酸を含む。他のこのような実施態様において、パルボシクリブは、リンゴ酸塩の形態であり、緩衝剤は、リンゴ酸を含む。一部のこのような実施態様において、本溶液は、1種またはそれより多くの味を強化する物質または味をマスキングする物質を含む。
【0019】
一形態において、本発明は、パルボシクリブまたはその乳酸塩、および乳酸を含む緩衝系を含む経口水溶液製剤を提供する。一部のこのような実施態様において、パルボシクリブは、遊離塩基の形態である。他のこのような実施態様において、パルボシクリブは、乳酸塩の形態である。一部のこのような実施態様において、本溶液は、1種またはそれより多くの味を強化する物質または味をマスキングする物質を含む。
【0020】
別の形態において、本発明は、パルボシクリブまたはそのリンゴ酸塩、およびリンゴ酸を含む緩衝系を含む経口水溶液製剤を提供する。一部のこのような実施態様において、パルボシクリブは、遊離塩基の形態である。他のこのような実施態様において、パルボシクリブは、リンゴ酸塩の形態である。一部のこのような実施態様において、本溶液は、1種またはそれより多くの味を強化する物質または味をマスキングする物質を含む。
【0021】
一部の実施態様において、経口水溶液製剤は、パルボシクリブまたはその乳酸塩もしくはリンゴ酸塩を、約10mg/mL〜約50mg/mLの溶液濃度で、好ましくは、約12.5mg/mL〜約25mg/mLの溶液濃度で含み、ここで濃度は、パルボシクリブの遊離塩基の形態に対するものであるか、またはパルボシクリブ乳酸塩またはリンゴ酸塩の形態の場合の遊離塩基の当量として計算される。一部の実施態様において、経口水溶液製剤は、パルボシクリブまたはその乳酸塩もしくはリンゴ酸塩を、最大約40.0mg/mL、最大約35.0mg/mL、最大約30.0mg/mL、最大約25.0mg/mL、最大約20.0mg/mL、最大約15.0mg/mL、最大約12.5mg/mLまたは最大約10.0mg/mLの溶液濃度で含む。
【0022】
一部の実施態様において、経口水溶液製剤は、パルボシクリブを、約25.0mg/mLの溶液濃度で含む。一部の実施態様において、経口水溶液は、パルボシクリブを、約12.5mg/mLの溶液濃度で含む。一部の実施態様において、経口水溶液は、パルボシクリブを、約10.0mg/mLの溶液濃度で含む。
【0023】
一部の実施態様において、経口水溶液は、パルボシクリブまたはその乳酸塩を、約25.0mg/mLの溶液濃度で含む。一部の実施態様において、経口水溶液は、パルボシクリブまたはその乳酸塩を、約12.5mg/mLの溶液濃度で含む。一部のこのような実施態様において、緩衝系は、乳酸を含む。
【0024】
一部のこのような実施態様において、経口水溶液は、パルボシクリブまたはそのリンゴ酸塩を、約12.5mg/mLの溶液濃度で含む。一部のこのような実施態様において、経口水溶液は、パルボシクリブまたはそのリンゴ酸塩を、約10.0mg/mLの溶液濃度で含む。一部のこのような実施態様において、緩衝系は、リンゴ酸を含む。
【0025】
一部の実施態様において、経口水溶液は、パルボシクリブまたはその乳酸塩を、少なくとも10.0mg/mL、少なくとも12.5mg/mL、少なくとも15.0mg/mL、少なくとも20.0mg/mL、または少なくとも25.0mg/mLの溶液濃度で含む。一部のこのような実施態様において、緩衝系は、乳酸を含む。
【0026】
一部の実施態様において、経口水溶液は、パルボシクリブまたはそのリンゴ酸塩を、少なくとも10.0mg/mL、少なくとも12.5mg/mL、または少なくとも15.0mg/mLの溶液濃度で含む。一部のこのような実施態様において、緩衝系は、リンゴ酸を含む。
【0027】
本発明の経口水溶液は、乳酸またはリンゴ酸を含む緩衝系を含む。このような緩衝系は、安定であり、APIおよびさらなる賦形剤と適合性を有する。
一部の実施態様において、緩衝系は、乳酸を、約0.05M〜約0.2Mの濃度で含む。一部の実施態様において、緩衝系は、乳酸を、約0.1Mの濃度で含む。一部の実施態様において、緩衝系は、乳酸を、約0.2Mの濃度で含む。一部の実施態様において、緩衝系は、乳酸を、最大約0.2Mの濃度で含む。本発明の経口溶液において、DL−乳酸、D−乳酸またはL−乳酸、またはそれらの混合物を使用してもよい。多くの実施態様において、緩衝系は、DL−乳酸を含む。
【0028】
一部の実施態様において、緩衝系は、リンゴ酸を、約0.1M〜約0.2Mの濃度で含む。一部の実施態様において、緩衝系は、リンゴ酸を、約0.1Mの濃度で含む。一部の実施態様において、緩衝系は、リンゴ酸を、約0.2Mの濃度で含む。本発明の経口溶液において、DL−リンゴ酸、D−リンゴ酸もしくはL−リンゴ酸、またはそれらの混合物を使用してもよい。一部の実施態様において、緩衝系は、L−リンゴ酸を含む。
【0029】
本発明の経口水溶液は、安定な製剤を提供するpH範囲に緩衝化されており、成分は、経口投与に好適な単位用量の体積で、溶液中に存在したままである。好ましくは、投与体積は、約5mL〜約15mLである。より好ましくは、投与体積は、約5mL〜約10mLである。125mg APIの標準的な成人用量の場合、12.5mg/mLの濃度は、10mLの投与体積に相当し、25.0mg/mLの濃度は、5mLの投与体積に相当する。
【0030】
一部の実施態様において、緩衝系のpH範囲を調整して目標とするpH範囲内にするのに、微量の希酸(例えば、10%塩酸水溶液)が使用される。
一部の実施態様において、経口水溶液は、約3.0〜約4.5のpHを有する。一部の実施態様において、経口水溶液は、約3.5〜約4.3のpHを有する。多くの実施態様において、経口水溶液は、約3.6〜約4.0のpHを有する。一部のこのような実施態様において、経口水溶液は、約3.8のpHを有する。約pH3.5未満のpH値で、分解の増加が観察された。約4.3を超えるpH値で、APIの多少の沈殿が観察された。
【0031】
一部の実施態様において、経口水溶液は、1種またはそれより多くの味を強化する物質または味をマスキングする物質、例えば、甘味料、着香料、または口当たりを改変する賦形剤をさらに含む。このような賦形剤は、APIの苦味および/または後味をマスキングしたり、または口当たりを改変したりして、味の良さを強化するために使用することができる。
【0032】
多くの実施態様において、経口溶液は、1種またはそれより多くの医薬的に許容される甘味料を含む。一部の実施態様において、経口溶液は、キシリトール、スクラロース、アセスルファムカリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム、サッカリンカルシウム、アスパルテーム、ネオテーム、アドバンテーム、ステビオシド、スクロース、フルクトース、グルコース、デキストロース、マルチトール、ソルビトールおよびマンニトール、またはそれらの混合物からなる群から選択される1種またはそれより多くの医薬的に許容される甘味料を含む。強い甘味料、例えばスクラロースは、典型的には、約0.05mg/mL〜約15.0mg/mLの濃度範囲で含まれる。全体の甘味料、例えばキシリトールは、それより多くの量で、例えば約100.0mg/mL〜約350.0mg/mL、または約50.0mg/mL〜約500.0mg/mLの量で使用することができる。
【0033】
一部の実施態様において、経口溶液は、キシリトールを、約100.0mg/mL〜約350.0mg/mLの溶液濃度で含む。一部のこのような実施態様において、経口溶液は、キシリトールを、約320.0mg/mLの溶液濃度で含む。他のこのような実施態様において、経口溶液は、キシリトールを、約100.0mg/mLの溶液濃度で含む。
【0034】
一部の実施態様において、経口溶液は、スクラロースを、約1.0mg/mL〜約10.0mg/mLの溶液濃度で含む。一部のこのような実施態様において、経口溶液は、スクラロースを、約8.0mg/mLの溶液濃度で含む。他のこのような実施態様において、経口溶液は、スクラロースを、約1.0mg/mLの溶液濃度で含む。
【0035】
一部の実施態様において、経口水溶液は、約100.0mg/mL〜約350.0mg/mLの溶液濃度でのキシリトール、および約1.0mg/mL〜約10.0mg/mLの溶液濃度でのスクラロース、またはそれらの混合物から選択される、1種またはそれより多くの医薬的に許容される甘味料を含む。
【0036】
好ましい一実施態様において、経口溶液は、キシリトールを、約320.0mg/mLの溶液濃度で含み、スクラロースを、約8.0mg/mLの溶液濃度で含む。別の好ましい実施態様において、経口溶液は、キシリトールを、約100.0mg/mLの溶液濃度で含み、スクラロースを、約1.00mg/mLの溶液濃度で含む。
【0037】
APIの苦味をマスキングするために、様々な医薬的に許容される着香料が本発明の製剤中に含まれていてもよい。着香料としては、これらに限定されないが、ブドウ、オレンジ、サクランボ、イチゴまたはラズベリーの着香料が挙げられる。着香料は、典型的には、約0.5mg/mL〜約10.0mg/mLの濃度範囲で含まれ、薬物製剤中で十分に可溶性であると予想される。一部の実施態様において、着香料は、約1.0mg/mL〜約5.0mg/mLの濃度で含まれる。一部の実施態様において、着香料は、約1.0mg/mL〜約3.0mg/mLの濃度で含まれる。
【0038】
一部の実施態様において、本発明の経口水溶液は、抗微生物性の保存剤、抗酸化剤、pH調節剤、希釈剤、可溶化剤、粘度調整剤および着色剤からなる群から選択される、1種またはそれより多くの医薬的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0039】
一部の実施態様において、経口溶液は、1種またはそれより多くの抗微生物性の保存剤をさらに含む。好適な抗微生物性の保存剤としては、これらに限定されないが、安息香酸もしくはその医薬的に許容される塩、ソルビン酸もしくはその医薬的に許容される塩、プロピオン酸もしくはその医薬的に許容される塩、またはパラベンエステルもしくはその医薬的に許容される塩が挙げられる。典型的には、保存剤は、約0.1mg/mL〜約2.5mg/mL、約0.1mg/mL〜約1.5mg/mL、時には約1.0mg/mL〜約1.5mg/mLの濃度範囲で含まれる。
【0040】
一部の実施態様において、保存剤は、安息香酸ナトリウムまたは安息香酸である。一部の実施態様において、保存剤は、安息香酸ナトリウムである。一部の実施態様において、保存剤は、ソルビン酸またはソルビン酸カリウムである。一部の実施態様において、保存剤は、プロピオン酸またはプロピオン酸ナトリウムである。一部の実施態様において、保存剤は、メチル、エチル、もしくはプロピルパラベン、またはそれらの混合物である。一部の実施態様において、保存剤は、メチルパラベンおよび安息香酸ナトリウムである。
【0041】
一部の実施態様において、経口溶液は、安息香酸ナトリウムを、約0.1mg/mL〜約1.5mg/mLの濃度で含む。一部のこのような実施態様において、経口溶液は、安息香酸ナトリウムを、約1.0mg/mLの濃度で含む。他のこのような実施態様において、経口溶液は、安息香酸ナトリウムを、約1.5mg/mLの濃度で含む。
【0042】
一部の実施態様において、経口溶液は、1種またはそれより多くの抗酸化剤をさらに含む。好適な抗酸化剤としては、これらに限定されないが、没食子酸プロピル、アスコルビン酸およびその医薬的に許容される塩またはエステル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、システイン/システイン塩酸塩、亜二チオン酸ナトリウム(ヒドロ亜硫酸Na、スルホキシル酸Na)、ゲンチシン酸およびその医薬的に許容される塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその医薬的に許容される塩(例えば、EDTA二ナトリウム)、グルタミン酸一ナトリウム、グルタチオン、メチオニン、モノチオグリセロール、α−トコフェロールおよびその医薬的に許容される塩、チオグリコール酸ナトリウム、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0043】
抗酸化剤は、典型的には、約0.01mg/mL〜約5.0mg/mLの濃度範囲で含まれる。一部の実施態様において、本溶液は、1種またはそれより多くの抗酸化剤を、それぞれ約0.1mg/mL〜約1.0mg/mLの溶液濃度で含む。
【0044】
一部の実施態様において、経口溶液は、没食子酸プロピルを、約0.025mg/mL〜約1.0mg/mLの濃度で含む。一部の実施態様において、経口溶液は、没食子酸プロピルを、約0.25mg/mL〜約1.50mg/mLの濃度で含む。一部の実施態様において、経口溶液は、没食子酸プロピルを、約0.025mg/mL〜約2.0mg/mLの濃度で含む。一部のこのような実施態様において、経口溶液は、没食子酸プロピルを、約0.10mg/mLの溶液濃度で含む。一部のこのような実施態様において、経口溶液は、没食子酸プロピルを、約0.5mg/mLの溶液濃度で含む。一部のこのような実施態様において、経口溶液は、没食子酸プロピルを、約1.0mg/mLの溶液濃度で含む。
【0045】
一部の実施態様において、経口溶液は、EDTAまたはその医薬的に許容される塩を、約0.025mg/mL〜約1.0mg/mLの濃度で含む。一部の実施態様において、経口溶液は、EDTAまたはその医薬的に許容される塩を、約0.025mg/mL〜約2.0mg/mLの濃度で含む。一部の実施態様において、経口溶液は、EDTAまたはその医薬的に許容される塩を、約0.25mg/mL〜約1.50mg/mLの濃度で含む。一部の実施態様において、経口溶液は、EDTAまたはその医薬的に許容される塩を、約1.0mg/mLの溶液濃度で含む。一部の実施態様において、経口溶液は、EDTAまたはその医薬的に許容される塩を、約0.1mg/mLの溶液濃度で含む。このような実施態様において、EDTAは、多くの場合、二ナトリウム塩の形態である。一部の実施態様において、経口溶液は、EDTA二ナトリウムを、約1.0mg/mLの溶液濃度で含む。一部の実施態様において、経口溶液は、EDTA二ナトリウムを、約0.1mg/mLの溶液濃度で含む。
【0046】
一部の実施態様において、経口溶液は、没食子酸プロピルを、約0.025mg/mL〜約1.0mg/mLの濃度で含み、EDTA二ナトリウムを、約0.025mg/mL〜約1.0mg/mLの濃度で含む。一部のこのような実施態様において、経口溶液は、没食子酸プロピルを、約1.0mg/mLの溶液濃度で含み、EDTA二ナトリウムを、約1.0mg/mLの溶液濃度で含む。
【0047】
別の形態において、本発明は、約25.0mg/mLの溶液濃度でのパルボシクリブ、約0.1Mの溶液濃度での乳酸、約320.0mg/mLの溶液濃度でのキシリトール、および約8.0mg/mLの溶液濃度でのスクラロースを含む経口水溶液であって、約3.6〜約4.0のpHを有する、上記溶液を提供する。一部のこのような実施態様において、本溶液は、(a)約1.0mg/mL〜約3.0mg/mLの溶液濃度での医薬的に許容される着香料;(b)約1.0mg/mLの溶液濃度での安息香酸ナトリウム;および/または(c)約0.10mg/mLの溶液濃度での没食子酸プロピルをさらに含む。
【0048】
別の形態において、本発明は、約12.5mg/mLの溶液濃度でのパルボシクリブ、約0.2Mの溶液濃度でのリンゴ酸、約100.0mg/mLの溶液濃度でのキシリトール、および約1.0mg/mLの溶液濃度でのスクラロースを含む経口水溶液であって、前記溶液は、約3.6〜約4.0のpHを有する、上記溶液を提供する。一部のこのような実施態様において、本溶液は、(a)約1.0mg/mL〜約3.0mg/mLの溶液濃度での医薬的に許容される着香料;(b)約1.5mg/mLの溶液濃度での安息香酸ナトリウム;および/または(c)約1.0mg/mLの溶液濃度での没食子酸プロピルをさらに含む。
【0049】
本発明の製剤はまた、すでに記載された乳酸およびリンゴ酸の緩衝系に加えて、他のpH調節剤を含んでいてもよい。他のpH調節剤としては、これらに限定されないが、クエン酸、リン酸、コハク酸、酒石酸または酢酸、およびそれらの塩が挙げられる。また、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、クエン酸カリウムおよびそれらの混合物も挙げられる。このようなpH調節剤は、約0.01重量%〜約5重量%の範囲で使用することができる。
【0050】
本発明の製剤は、例えば製剤の粘度または濃度調整するために、1種またはそれより多くの希釈剤を含んでいてもよい。希釈剤はまた、製剤において他の目的を果たすこともでき(例えば、全体の甘味料として、例えばキシリトール)、約5重量%〜約80重量%の範囲で含まれていてもよい。
【0051】
本発明の製剤は、1種またはそれより多くの可溶化剤、例えば、医薬的に許容されるグリコール、アルコール、ケトン、油類、シクロデキストリンなどを含んでいてもよい。
本発明の製剤は、1種またはそれより多くの粘度調整剤を含んでいてもよい。粘度調整剤の例としては、これらに限定されないが、ポリビニルピロリドン、ヒプロメロース、ポリアクリレートおよびポリアクリレートのコポリマー樹脂、セルロースおよびセルロース誘導体、ヒドロキシアルキルセルロース、キサンタンガム、ポリビニル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ソルビトール、スクロース、キシリトール、デキストロース、フルクトース、マルチトール、糖、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。粘度調整剤は、約0.05重量%〜約10重量%の範囲で含まれていてもよい。
【0052】
任意選択で、本発明の製剤は、着色剤を含んでいてもよく、その例としては、医薬的に許容される天然または合成の色素を挙げることができる。
別の形態において、本発明は、治療有効量の本発明の経口溶液を投与することを含む、それを必要とする対象を処置する方法を提供する。一部のこのような実施態様において、経口溶液は、本発明の用時調製用粉末の再調製によって製造される。
【0053】
さらなる形態において、本発明は、がん(例えば、乳がん、食道がん、または頭頸部がん)を処置する方法であって、それを必要とする対象に、本発明の経口溶液として治療有効量のパルボシクリブを投与することによる、上記方法を提供する。一部のこのような実施態様において、経口溶液は、本発明の用時調製用粉末の再調製によって製造される。さらなる形態において、本発明は、それを必要とする対象におけるがんの処置のための本発明の経口溶液製剤の使用を提供する。
【0054】
用語「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、処置される障害の症状の1つまたはそれより多くをある程度緩和すると予想される、投与される化合物の量を指す。
パルボシクリブの標準的な成体のための用量である125.0mgにおいて、約25.0mg/mLの溶液濃度は、単位用量当たり約5.0mLの経口溶液体積に対応し、一方で、約12.5mg/mLの溶液濃度は、単位用量当たり約10.0mLの経口溶液体積に対応することが理解されると予想される。100.0mgのパルボシクリブの用量で、約25.0mg/mLの溶液濃度は、単位用量当たり約4.0mLの経口溶液体積に対応し、一方で、約12.5mg/mLの溶液濃度は、単位用量当たり約8.0mLの経口溶液体積に対応する。75.0mgのパルボシクリブの用量で、約25.0mg/mLの溶液濃度は、単位用量当たり約3.0mLの経口溶液体積に対応し、一方で、約12.5mg/mLの溶液濃度は、単位用量当たり約6.0mLの経口溶液体積に対応する。25.0mgのパルボシクリブの用量で、約25.0mg/mLの溶液濃度は、単位用量当たり約1.0mLの経口溶液体積に対応し、一方で、約12.5mg/mLの溶液濃度は、単位用量当たり約2.0mLの経口溶液体積に対応する。
【0055】
別の形態において、本発明は、経口水溶液として用時調製用粉末組成物を提供する。このような製剤は、時には、調製のための経口粉末、または「OPC」製剤と称される。OPC製剤は、あらゆる公知の手順によって製剤化し、再調製することができる。一部の実施態様において、剤形は、水を添加し、撹拌することにより再調製される乾燥粉末である。
【0056】
用時調製用粉末製剤は、本明細書においてさらに記載される通りに、粉末を予め決定された量の水と混合して、パルボシクリブまたはその乳酸塩もしくはリンゴ酸塩の経口水溶液を形成することによって再調製することができる。このような用時調製用経口粉末組成物は、改善された貯蔵安定性または貯蔵寿命を有し得る。本発明の粉末組成物の成分の濃度は、粉末組成物の総重量に基づく理論上の重量(g)または重量パーセント(wt.%)として示すことができる。
【0057】
一部の実施態様において、本発明は、約0.1wt%〜約20.0wt%のパルボシクリブ、またはその乳酸塩もしくはリンゴ酸塩を含む用時調製用経口粉末を提供する。一部の実施態様において、本発明は、約3.0wt%〜約15.0wt%のパルボシクリブ、またはその乳酸塩もしくはリンゴ酸塩を含む用時調製用経口粉末を提供する。他の実施態様において、本発明は、約5.0wt%〜約10.0wt%のパルボシクリブ、またはその乳酸塩もしくはリンゴ酸塩を含む用時調製用経口粉末を提供する。さらに他の実施態様において、本発明は、約5.0wt%〜約10.0wt%のパルボシクリブを含む用時調製用経口粉末を提供する。
【0058】
用時調製用経口粉末は、混合物の成分を合わせて、例えばビンブレンダーで乾式混合することによって、または適切な溶媒中の成分を含む混合物の凍結乾燥を介して、製造することができる。粉末は、ボトル中に充填されてもよい。ボトル中の粉末は、水で再調製して、望ましい用量を送達することができる。
【0059】
一部の実施態様において、用時調製用経口粉末は、1種またはそれより多くの味を強化する物質または味をマスキングする物質、例えば甘味料、着香料、または口当たりを改変する賦形剤を含む。一部の実施態様において、粉末組成物は、1種またはそれより多くの甘味料を含む。一部のこのような実施態様において、甘味料は、キシリトール、スクラロース、アセスルファムカリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム、サッカリンカルシウム、アスパルテーム、ネオテーム、アドバンテーム、ステビオシド、スクロース、フルクトース、グルコース、デキストロース、マルチトール、ソルビトールおよびマンニトール、またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0060】
一部のこのような実施態様において、甘味料は、粉末組成物の約5重量%〜約90重量%の量で存在する。強い甘味料、例えばスクラロースは、約0.25wt%〜約5.0wt%の範囲、多くの場合、約0.50wt%〜約3.0wt%の範囲で含まれていてもよい。全体の甘味料、例えばキシリトールは、それより多くの量で、例えば約25.0wt%〜約80.0wt%の量で使用することができる。
【0061】
一部の実施態様において、粉末組成物は、APIの安定性のために許容できる範囲内に組成物のpHを維持するために、緩衝化剤を含む。本明細書に記載されるような好適な緩衝化剤としては、乳酸、リンゴ酸、またはそれらの塩が挙げられる。特定の実施態様において、緩衝化剤は、約1wt%〜約20wt%の量で存在する。一部の実施態様において、緩衝化剤は、約15.0wt%〜約25wt%の量で存在する。一部のこのような実施態様において、緩衝剤は、リンゴ酸である。
【0062】
粉末組成物は、抗微生物性の保存剤、抗酸化剤、pH調節剤、希釈剤、可溶化剤、粘度調整剤、着香料および着色剤からなる群から選択される、1種またはそれより多くの医薬的に許容される賦形剤をさらに含んでいてもよい。
【0063】
一部の実施態様において、粉末組成物は、保存剤、例えば経口水溶液に関して本明細書に記載されるようなものを含む。一部のこのような実施態様において、保存剤は、粉末組成物中に、約0.01wt%〜約5wt%の量で存在していてもよい。
【0064】
一部の実施態様において、粉末組成物は、着香料、例えば経口水溶液に関して本明細書に記載されるようなものを含む。一部のこのような実施態様において、着香料は、粉末組成物中に、約0.1wt%〜約5wt%の量で存在していてもよい。
【0065】
一形態において、本発明は、約5.0wt%〜約15.0wt%のパルボシクリブ、またはその乳酸塩もしくはリンゴ酸塩を含む用時調製用経口粉末を提供する。一部の実施態様において、用時調製用経口粉末は、約15.0wt%〜約25.0wt%の乳酸またはリンゴ酸を含む緩衝系を含む。
【0066】
一実施態様において、本発明は、約5.0wt%〜約15.0wt%のパルボシクリブ、またはそのリンゴ酸塩、および約15.0wt%〜約25wt%のリンゴ酸を含む用時調製用経口粉末を提供する。
【0067】
一実施態様において、本発明は、約8.0wt%〜約1.0wt%のパルボシクリブまたはそのリンゴ酸塩、および約18.0wt%〜約20wt%リンゴ酸を含む用時調製用経口粉末を提供する。
【0068】
一部の実施態様において、用時調製用経口粉末は、緩衝化剤、pH調節剤、甘味料、着香料、保存剤、抗酸化剤、希釈剤、可溶化剤、粘度調整剤および着色剤からなる群から選択される1種またはそれより多くの医薬的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0069】
一部のこのような実施態様において、用時調製用経口粉末は、(a)それぞれ約1.0wt%〜約1.5wt%の、安息香酸および安息香酸ナトリウムから選択される1種またはそれより多くの保存剤;(b)約50.0wt%〜約75.0wt%でのキシリトール、および約0.5wt%〜約1.0wt%でのスクラロースから選択される1種またはそれより多くの甘味料;および/または(c)抗酸化剤をさらに含み、抗酸化剤は、約0.01wt%〜約1.0wt%でのEDTAである。
【0070】
さらなる形態において、本発明は、パルボシクリブまたはその乳酸塩もしくはリンゴ酸塩を含む経口水溶液を製造する方法であって、水、および任意選択で医薬的に許容される共溶媒を含む医薬的に許容される溶媒中に、本明細書に記載される用時調製用粉末を溶解させる工程を含む、上記方法を提供する。一部の実施態様において、パルボシクリブまたはその乳酸塩もしくはリンゴ酸塩は、最大約40.0mg/mLの溶液濃度で、本明細書に記載の用時調製用粉末製剤の再調製によって形成された経口水溶液中に存在する。
【0071】
一部の実施態様において、パルボシクリブまたはそのリンゴ酸塩は、約15.0mg/mL、約12.5mg/mLまたは約10.0mg/mLの溶液濃度で、本明細書に記載の用時調製用粉末製剤の再調製によって形成された経口水溶液中に存在する。一部の実施態様において、パルボシクリブまたはその乳酸塩は、約25.0mg/mLまたは約12.5mg/mLの溶液濃度で、本明細書に記載の用時調製用粉末製剤の再調製によって形成された経口水溶液中に存在する。
【0072】
「対象」は、本明細書で使用される場合、ヒトまたは動物対象を指す。特定の好ましい実施態様において、対象は、ヒトである。一部の実施態様において、対象は、疾患の状態に苦しむ患者である。他の実施態様において、対象は、健康な志願者であってもよい。一部の実施態様において、対象は、小児患者である。他の実施態様において、対象は、カプセルまたは錠剤などの経口用剤形の嚥下が困難な対象である。他の実施態様において、対象は、経鼻胃(NG)管を有する。
【0073】
用語「処置する(または、治療する(treating))」は、本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、このような用語が適用される障害もしくは状態、またはこのような障害もしくは状態の1つまたはそれより多くの症状を、回復させること、軽減すること、その進行を抑制すること、または防止することを意味する。用語「処置(または、治療(treatment))」は、本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、直前で定義したように処置する行為を指す。用語「処置する(または、治療する(treating))」は、対象のアジュバントおよびネオアジュバント療法も含む。
【0074】
本明細書に記載されるパルボシクリブの経口溶液は、単独で投与されてもよいし、または別の抗がん治療剤、例えば処置されるがんのタイプのための標準的治療剤と組み合わせて投与されてもよい。別の形態において、本発明は、本明細書においてさらに記載される通りに、パルボシクリブまたはその乳酸塩もしくはリンゴ酸塩の経口水溶液を作製する方法を提供する。
【0075】
以下の非限定的な例において本発明を例示する。
実施例
【実施例1】
【0076】
様々な緩衝剤中でのパルボシクリブの溶解性
パルボシクリブ(遊離塩基)の溶解性を、様々な水性緩衝溶液およびそれらの混合物中で評価した。緩衝剤を、0.01M〜0.2Mの範囲の濃度で、2.0〜8.4の範囲のpH値で製造した。重さを量り、およそ200mgのパルボシクリブを3〜4mLの緩衝剤に入れることによってサンプルを製造した。溶液をボルテックスで混合し、温度サイクルチャンバー中に25℃で8時間、続いて40℃で12時間、次いで25℃で8時間置いた。次いで得られた溶液をHPLCによって分析して、緩衝剤中でのパルボシクリブの溶解性(mg/mL)を決定した。
【0077】
以下の表1に結果を示す。総分解(%)は、0.05%より大きい新しいHPLCピーク、および加えられるAPIに存在するレベルからの有意な変化を示すピークのみを含む。NT=試験されなかった。
【0078】
【表1】
【0079】
この溶液は、0.2MのDL乳酸緩衝剤中で、45.7mgのAPIが溶解したときでもなお透明であり、飽和溶解度にまだ達していなかったほどであった。25mg/mLのAPIで、溶液濃度は約56mmolであり、乳酸緩衝剤は、100mmolであるか、または約2倍過量である。DL−乳酸濃度が0.2Mから0.1Mに減少し、さらに0.01Mになるにつれて、API溶解性は低下する。
【実施例2】
【0080】
乳酸を含む経口溶液製剤
25.00mg/mLのパルボシクリブ(遊離塩基)APIの最終的な溶液濃度が得られるように、製剤成分の量を計算する。
【0081】
清潔な好適な容器に、バッチに必要な55%の総体積である、550mg/mLの注射用水を入れた。水の温度を15〜30℃に維持した。没食子酸プロピル(0.1mg/mL)、安息香酸ナトリウム(1.00mg/mL)、およびスクラロース(8.00mg/mL)の重さを量り、連続的に混合しながら配合容器に添加した。成分を、最低限でも10分、または完全に溶解するまで混合した。全ての成分が完全に溶解したことを目視で検証した後、DL−乳酸(純度88〜92%)(10.13mg/mL;純度に応じて調整:DL乳酸の質量=100mM×90.08(モル質量)×1mL/88.9%(純度係数)=10.13mg)の重さを量り、連続的に混合しながら容器に添加して、0.1Mの最終的な緩衝剤濃度を達成した。パルボシクリブ遊離塩基API(25.00mg/mL)の重さを量り、連続的に混合しながら容器に添加した。APIを10〜15分の期間にわたりゆっくり添加して、凝集を回避した。APIが完全に配合容器に添加されたら、最低限でも1時間、または全てのAPIが溶解するまで、溶液を混合した。APIの溶解の完了を目視で検証した後、キシリトール(320.00mg/mL)の重さを量り、連続的に混合しながら容器に添加した。キシリトールを10〜15分の期間にわたりゆっくり添加して、凝集を回避した。溶液を、最低限でも10分、またはキシリトールが溶解するまで混合した。キシリトールの溶解の完了を目視で検証した後、ブドウフレーバー(フィルメニッヒ(Firmenich)天然ブドウフレーバー(534732T);成分表示:>50%プロピレングリコール;10〜25%グリセリン;1〜10%天然フレーバー)(3.00mg/mL)の重さを量り、連続的に混合しながら容器に添加した。溶液を最低限でも10分混合した。ブドウフレーバーを完全に混合した後、微量のHCl(0.005mg/mL;溶液1L当たり5mLの10%HCl)の重さを量り、連続的に混合し、必要に応じてpHを調整しながら、容器に添加した。溶液を最低限でも10分混合した。溶液のpHを測定して、pHが3.6〜4.0の間(目標pH3.8)であることを確認した。連続的に混合しながら、配合容器に残部の注射用水(1mLになるまで適量)を添加し、溶液を最低限でも10分混合した。溶液の最終的なpHを再測定して、3.6〜4.0の範囲内(目標pH3.8)であることを確認した。配合された経口溶液を、0.2μmフィルターに通過させて好適な保持タンクにろ過した。経口溶液製剤密度は1112.3mg/mLであった。
【0082】
【表2】
【実施例3】
【0083】
リンゴ酸を含む経口溶液製剤
リンゴ酸を含む経口溶液製剤を、実質的に実施例2に記載された通りに製造した。製剤3A(表3)は、パルボシクリブを、12.5mg/mLの溶液濃度で含む。製剤3B(表4)は、パルボシクリブを、10mg/mLの溶液濃度で含む。
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【実施例4】
【0086】
例示的な用時調製用粉末製剤
ビンブレンダーで各成分を混合し、次いで粉末をボトル中に充填することによって、用時調製用粉末製剤を製造した。ボトル中の粉末は、水で再調製して、望ましい用量を送達することができる。製剤4A(表5)および製剤4B(表6)は、緩衝剤としてリンゴ酸を含む。
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【実施例5】
【0089】
パルボシクリブの相対的生物学的利用率に対するプロトンポンプ阻害剤の作用
健康な志願者における交差非盲検非無作為化薬物動態(PK)研究を実行して、実質的に実施例2に記載された通りに製造された、表7に記載される単回の125mg用量のパルボシクリブ経口溶液(OS)の生物学的利用率に対するラベプラゾールの作用を推測した。
【0090】
パルボシクリブ経口溶液を、絶食条件下で、ラベプラゾールの存在および非存在下で試験した。
【0091】
【表7】
【0092】
表8に示された結果は、経口溶液が、絶食条件下でプロトンポンプ阻害剤であるラベプラゾールとの薬物−薬物相互作用を示さなかったこと(CmaxおよびAUC)を実証した。
【0093】
【表8】
【0094】
本発明は、その本質または必須の特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態で具体化することができる。
【国際調査報告】