特表2021-523234(P2021-523234A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-523234(P2021-523234A)
(43)【公表日】2021年9月2日
(54)【発明の名称】衛生洗浄液
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20210806BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20210806BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20210806BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20210806BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20210806BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20210806BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20210806BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20210806BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20210806BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20210806BHJP
【FI】
   A61K8/9789
   A61Q11/00
   A61Q19/10
   A61Q5/02
   A61Q5/12
   A61Q19/00
   A61K36/185
   A61P17/00 101
   A61P13/02 105
   A61P31/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2021-513746(P2021-513746)
(86)(22)【出願日】2018年7月6日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月9日
(86)【国際出願番号】MY2018050045
(87)【国際公開番号】WO2019221593
(87)【国際公開日】20191121
(31)【優先権主張番号】PI2018701868
(32)【優先日】2018年5月16日
(33)【優先権主張国】MY
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520438590
【氏名又は名称】ダイアモンド スター グローバル エスディーエヌ.ビーエイチディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】チョン クウィック チュア
(72)【発明者】
【氏名】シン サイオン ロウ
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083BB01
4C083BB48
4C083CC01
4C083CC04
4C083CC23
4C083CC32
4C083CC33
4C083CC38
4C083CC41
4C083DD31
4C083DD41
4C083FF04
4C088AB12
4C088AC01
4C088CA03
4C088CA15
4C088CA17
4C088MA16
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA82
4C088ZA90
4C088ZB35
(57)【要約】
本発明は、木酢(203、301)を得る工程と、精製された木酢(301)がパーソナルケア製品の総重量または総体積の18〜22%を占めるように木酢(203、301)をパーソナルケア製品(302)中に加える工程とを含む、パーソナルケア製品(302)の調製方法を提供する。木酢(203、301)は、フタバナヒルギ(101)の木および葉(102)の熱分解(100)によって得られ、皮膚感染症および尿路感染症を引き起こす微生物を不活性化または死滅させるが、相当量の有益な微生物を留めておく。木酢(203、301)は、グアイアコールを有することなく得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木酢を得る工程と、
前記木酢がパーソナルケア製品の総重量または総体積の18〜22%を占めるように前記木酢を前記パーソナルケア製品中に加える工程とを含み、
前記木酢が、フタバナヒルギの熱分解によって得られ、皮膚感染症および尿路感染症を引き起こす微生物を不活性化または死滅させるが、相当量の有益な微生物を留めておく、パーソナルケア製品の調製方法。
【請求項2】
前記木酢が、グアイアコールを有することなく得られる、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項3】
前記相当量の有益な微生物が、病原性微生物による攻撃に対する防御に役立つ、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項4】
前記留めおかれる有益な微生物が乳酸菌である、請求項1または3に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項5】
前記木酢が、前記パーソナルケア製品の総重量または総体積の20%を占める、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項6】
抽出したての木酢が、精製されて前記パーソナルケア製品中に加えられる前に、少なくとも3か月間熟成のために置かれる、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項7】
前記木酢が、不純物を除去するために濾過または蒸留によって精製される、請求項6に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項8】
熱分解のために使用されるフタバナヒルギの部分が、樹皮、茎、枝、根、葉またはそれらのあらゆる組合せである、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項9】
前記木酢が、シリンゴール、安息香酸、マルトール、カテコールおよびバニリンを含有する、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項10】
前記パーソナルケア製品は、例えば、女性器洗浄液、シャワージェル、石鹸、洗顔製品、化粧品、香水、ボディローション、毛髪用シャンプーおよびコンディショナー、整髪製品、軟膏、消毒薬、或いは、その他皮膚および口腔ケア製品である、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項11】
前記パーソナルケア製品中に、劣化防止安定剤が加えられる、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項12】
前記パーソナルケア製品中に、液液界面または液固界面の表面張力を低下させる界面活性剤または洗剤が加えられる、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項13】
前記パーソナルケア製品中に、ゲル化剤が加えられる、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項14】
前記パーソナルケア製品中に、乳化剤が加えられる、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項15】
パーソナルケア製品の総重量または総体積の18〜22%を占めるように前記パーソナルケア製品中に加えられた木酢を備え、
前記木酢が、フタバナヒルギの熱分解によって得られ、皮膚感染症および尿路感染症を引き起こす微生物を不活性化または死滅させるが、相当量の有益な微生物を留めておく、パーソナルケア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して人体の抗菌洗浄用の物質を調合するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の様々な部位は、主に細菌と真菌とからなる多くの微生物種の生息地である。人体は最外層の皮膚によって保護されているが、皮膚には、有益な微生物だけでなく、病原性微生物も存在している。病原性微生物が侵入すれば、(アクネ菌(Cutibacterium acnes)などによって引き起こされる)ニキビ、(通常、酵母によって引き起こされる)発疹、(連鎖球菌属(Streptococcus)またはブドウ球菌属(Staphylococcus)によって引き起こされる)蜂巣炎、(ハンセン菌(Mycobacterium leprae)によって引き起こされる)ハンセン病、(酵母の一種であるカンジダ属(Candida)によって引き起こされる)カンジダ症、(白癬種(Tinea spp.)によって引き起こされる)白癬などの皮膚障害を引き起こすこともありうる。したがって、個人の衛生状態を維持するために注意を払う必要があり、特に性器の衛生状態については、通常、特別な注意が最も重要である。
【0003】
人体の洗浄または入浴のための現在の調合物は、一般に、皮膚に存在する微生物のほぼ全てを接触時に90〜99%の効率で意図的に死滅させる(殺菌性または殺真菌性の)、または不活性化する(静菌性または静真菌性の)抗菌物質を含んでいる。しかしながら、これらの抗菌製品は、人体にとって有益な微生物と有益でない微生物とを区別する能力を有していない。そのため、このような抗菌製品を乱用すれば、次には、不快と、病原性微生物による攻撃から防御する自然障壁の役割を果たしている有益な微生物が失われることによる皮膚障害さえ引き起こすおそれがある。乳酸菌などの有益な皮膚微生物は、実際に、人間の免疫機構における防護の最前線を構成している。
【0004】
パーソナルケア製品の現在の市場にとって、人間の皮膚に有益な乳酸菌ではなく、病原性微生物を選択的に不活性化するか、または除去することができる抗菌調合物があれば有利になるであろう。
【0005】
木酢には、一般に、パーソナルケア製品での使用に適した抗菌特性を有する以外に、強い抗酸化特性を有する、酢酸、メタノール、エステル、アセタール、ケトン、ギ酸などの様々な化学成分を含む、200種類以上の有機化合物が含まれる。しかしながら、それぞれ異なる木材植物種に由来する木酢は、このような化合物のそれぞれ異なる組成を含んでおり、したがって、その選択的な抗菌特性を達成するために塗布される前に、それぞれ異なる調合戦略を必要とする。加えて、様々な植物種由来の木酢中には、不快な刺激臭の原因となるグアイアコールも大量に検出された。したがって、グアイアコールの存在なしに最適濃度の植物種由来の木酢を利用することはさらなる利点である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、抗菌剤である(木材乾留液としても知られる)木酢を特徴とする。
【0007】
特に、本発明は、木酢を得る工程と、木酢がパーソナルケア製品の総重量または総体積の18〜22%を占めるように木酢をパーソナルケア製品中に加える工程とを含む、パーソナルケア製品の調製方法に関する。
【0008】
木酢は、フタバナヒルギ(Rhizophora apiculata)の熱分解によって得られ、皮膚感染症および尿路感染症を引き起こす微生物を不活性化または死滅させるが、病原性微生物による攻撃に対する防御に役立つ相当量の有益な微生物を留めておく。
【0009】
好ましくは、木酢は、グアイアコールを有することなく得られる。
【0010】
好ましくは、留めおかれる有益な微生物は乳酸菌である。
【0011】
好ましくは、木酢は、パーソナルケア製品の総重量または総体積の20%を占める。
【0012】
さらに、提案された方法では、木酢は、精製されてパーソナルケア製品中に加えられる前に、少なくとも3か月間熟成のために置かれる。その後、木酢は、不純物を除去するために濾過または蒸留によって精製される。
【0013】
熱分解のために使用されるフタバナヒルギの部分としては、樹皮、茎、枝、根、葉またはそれらのあらゆる組合せが挙げられる。
【0014】
精製された木酢は、以下に限定されないが、シリンゴール、安息香酸、マルトール、カテコールおよびバニリンを含有している。
【0015】
一部の実施形態では、パーソナルケア製品には、例えば、女性器洗浄液、シャワージェル、石鹸、洗顔製品、化粧品、香水、ボディローション、毛髪用シャンプーおよびコンディショナー、整髪製品、軟膏、消毒薬、その他皮膚および口腔ケア製品が含まれる。
【0016】
好ましくは、パーソナルケア製品中に劣化防止安定剤が加えられる。
【0017】
好ましくは、パーソナルケア製品中に、液液界面または液固界面の表面張力を低下させる界面活性剤または洗剤が加えられる。
【0018】
好ましくは、パーソナルケア製品中にゲル化剤および/または乳化剤が加えられる。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、パーソナルケア製品の総重量または総体積の18〜22%を占めるようにパーソナルケア製品中に加えられる精製された木酢を含んだパーソナルケア製品について記述する。
【0020】
木酢は、フタバナヒルギの熱分解によって得られ、皮膚感染症および尿路感染症を引き起こす微生物を不活性化または死滅させるが、相当量の有益な微生物を留めておく。
【0021】
本発明は、以下に十分に記載され添付の図面に例示された、特徴と、部分の組合せからなっており、本発明の範囲から逸脱しない範囲で、または本発明のいずれの利点も犠牲にしない範囲で細部について様々な変更が可能であることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の一部の実施形態の様々な局面をさらに明確にするため、添付の図面に例示された特定の実施形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。これらの図面が発明の典型的な実施形態を示すに過ぎず、したがって発明の範囲を限定するとみなされるべきではないことは理解される。本発明を、以下の添付の図面を介したさらなる特定性と詳細によって記述および説明する。
図1図1は、フタバナヒルギの木と葉の熱分解から煙の木酢への凝縮へ、さらに、その後木酢が精製されてパーソナルケア製品中に加えられるまでの処理フローを示す。
図2図2は、28の微生物菌株に対する検査抽出液の抗菌活性(最小阻害濃度および最小殺菌濃度)を示すドットプロットヒストグラムである。
図3図3は、削減率(%)で測定された大腸菌(E. coli)ATCC25922、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)LCUM0005、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)ATCC90028、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)LCUM1001に対する20%濃度の木酢抽出液による削減効果を示す棒グラフである(負の率の測定値をもつ全てのデータ点は、ゼロパーセントの削減として記録された)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一般原則は、抗菌抽出液である木酢を製造し、パーソナルケア製品の調合に組み込む方法に関する。
【0024】
図1を参照すると、木酢(203、301)は、マングローブ植物であるフタバナヒルギ(101)の木と葉(102)の熱分解(100)から得られる(マングローブオイル(bakau minyak)としても知られる)。熱分解(100)は、ポリマーの天井温度(ポリマーがモノマーに戻る傾向がある温度)を超える高温による加熱であって、乾留、含水熱分解または真空熱分解の形で行うことができる。空気と水がない場合には、乾留が行なわれる。過熱水または蒸気が存在する場合には含水熱分解が行われるのに対して、密閉された真空環境では真空熱分解が行われる。
【0025】
熱分解(100)処理は、煙(103)と、チャー(104)と呼ばれる焦げた固形物を生じる。煙(103)は凝縮器内で凝縮(200)させられ、凝縮器中では、煙(103)を冷却するために、冷却水が凝縮器の一端から中に通され、他端から外に出る。過剰な不要のガス(201)が放出され、凝縮物(202)が凝縮器の底に集められる。凝縮物(202)は、抽出したての木酢(203)と、バイオオイルと、ビチューメンとにさらに分離される。抽出したての木酢(203)は、不純物を除去するための濾過または蒸留による精製(300)の前に、3か月またはそれ以上の間熟成させられる。
【0026】
精製された木酢(301)は、パーソナルケア製品(302)の総重量または総体積の18〜22%、好ましくは20%の終末濃度でパーソナルケア製品(302)中に加えられる。これは、フタバナヒルギ(101)由来の20%の精製木酢(301)を含有する製品の3分間の使用が、人間の消化器官、尿路および性器の防護に関与する乳酸桿菌属(Lactobacillus)などの乳酸菌に対してではなく、一般的に見られる皮膚細菌、特に人間に有害となる可能性があり、ひどい体臭を発生させる腸内細菌およびブドウ球菌属に対して効率的かつ選択的に作用する(不活性化または死滅させる)ことが判明したからである。
【0027】
トリクロサン、トリクロカルバン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロキシレノールなどの一般的な抗菌剤に取って代えて、フタバナヒルギ(101)由来の木酢(203、301)の使用が提案される。
【0028】
実施例1において、木酢(203、301)中の主要な化合物について述べる。
【0029】
木酢(203、301)中の様々な化合物のそれぞれが、異なる微生物不活性化の機構と効率を有する。したがって、有益な微生物を留めおきながら、有益でなく、有害な皮膚微生物を選択的に不活性化するために塗布される木酢(203、301)の理想的な濃度が最適化された。
【0030】
27菌株の病原性微生物(様々な種)と1菌株の有益な細菌に対して行われた有効性試験を示す特定の実施例(実施例2〜4)に基づいて、本発明の抗菌効果と選択効果についてさらに述べる。
【実施例】
【0031】
実施例1
フタバナヒルギ(101)の熱分解(100)に由来する木酢(203、301)中の主要な活性抗菌化合物は、木酢の28.8重量%を構成するシリンゴール(国際純正応用化学連合(IUPAC)化学名:2,6−ジメトキシフェノール)である。安息香酸(4.8468%を構成)、マルトール(IUPAC化学名:3−ヒドロキシ−2−メチルピラン−4−オン、4.1448%を構成)、カテコール(IUPAC化学名:ベンゼン−1,2−ジオール、2.7173%を構成)、バニリン(IUPAC化学名:4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド、1.3902%を構成)などの抗酸化物質も木酢(203、301)中に存在し、その抗菌活性に寄与する。これらの化合物の全てが、他の種に由来する木酢にも通常存在することが報告されている。しかしながら、他の植物種由来の木酢中には、不快な刺激臭の原因となるグアイアコールも大量に検出された。フタバナヒルギ由来の木酢中には、グアイアコールは検出されなかった。実際に、シリンゴールとその誘導体は、ガスクロマトグラフィー−質量分析法(GCMS)分析によって検出された化学成分の約30%を占めており、フタバナヒルギ由来の木酢の主要成分であることが判明した。したがって、フタバナヒルギ由来の木酢の芳香は、シリンゴールによってもたらされる強い木と煙の香りを有する。
【0032】
表1に、フタバナヒルギ(101)由来の木酢中の主要な化合物のライブラリ/IDと、それに対応するケミカル・アブストラクト・サービス(CAS)の登録番号と、GCMSによって検出された濃度(R1)とを示す。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例2
木酢の抗菌活性が(表2に記載するように)、大腸菌、エンテロバクター種(Enterobacter spp.)エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、アシネトバクター種(Acinetobacter spp.)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・ケフィール(Candida kefyr)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、ラクトバチルス・ペントーサスを含む、広範囲の細菌種および真菌種ならびに菌株に対して検査される。
【0035】
【表2】
【0036】
実施例3
最小阻害濃度および最小殺菌濃度に関して測定した木酢抽出液の抗菌活性が、28の微生物菌株、すなわち、大腸菌ATCC25922、大腸菌LCUM0100、腸管毒素原性大腸菌(ETEC)LCUM0010、分散接着性大腸菌(DAEC)LCUM0011、腸管侵入性大腸菌(EIEC)LCUM0013、腸管出血性大腸菌(EHEC)LC0014、腸管病原性大腸菌(EPEC)LCUM0015、エンテロバクター種LCUM0105、エンテロコッカス・フェカーリスATCC33186、エンテロコッカス・フェシウムATCC700221、アシネトバクター種LCUM099、緑膿菌LCUM0111、緑膿菌LCUM0112、プロテウス・ミラビリスATCC7002、黄色ブドウ球菌LCUM0005、表皮ブドウ球菌ATCC14990、表皮ブドウ球菌ATCC35984、スタフィロコッカス・サプロフィティカスATCC15305、バチルス・セレウスLCUM0001、バチルス・セレウスLCUM0002、カンジダ・グラブラータRJ4、カンジダ・トロピカリスRJ8、カンジダ・アルビカンスATCC90028、カンジダ・アルビカンスATCC90029、カンジダ・ケフィールATCC204093、カンジダ・パラプシローシスATC90018およびラクトバチルス・ペントーサスLCUM1001に対して検査された。
【0037】
図1を参照すると、殺菌効果は、概して阻害効果を達成するために必要とされる濃度よりも高い抽出液濃度で生じた。20%濃度を越えると、有益な細菌株であるラクトバチルス・ペントーサスLCUM1001を除いて、検査された菌株の全てが死滅した。
【0038】
実施例4
大腸菌ATCC25922、黄色ブドウ球菌LCUM0005、カンジダ・アルビカンスATCC90028およびラクトバチルス・ペントーサスLCUM1001に対する20%濃度の木酢抽出液による削減効果が、木酢への1分間、3分間および5分間の曝露後の削減率(%)で測定された(図2に示すように)。木酢への3分間の曝露が、有害な微生物(大腸菌ATCC25922、黄色ブドウ球菌LCUM0005およびカンジダ・アルビカンスATCC90028)の最も高い平均削減率と、有益な細菌(ラクトバチルス・ペントーサス)のかなり低い削減率をもたらした。その最適の木酢濃度は、全て皮膚感染症と尿路感染症を引き起こす、グラム陰性腸内細菌の99.99%、グラム陽性ブドウ球菌の99.40%およびカンジダの73.47%を選択的に不活性化した。しかしながら、乳酸菌に対しては、製品との3分間の接触時に乳酸菌の26.03%しか不活性化されなかったので、製品の効果はなかった。ここで調査されている種以外では、保存可能な有益な乳酸菌には、ラクトバチルス・アシドフィルス(L. acidophilus)、ラクトバチルス・ブレビス(L. brevis)、ラクトバチルス・カゼイ(L. casei)、ラクトバチルス・ファーメンタム(L. fermentum)、ラクトバチルス・パラプランタルム(L. paraplantarum)、ラクトバチルス・プランタルム(L. plantarum)など多数に加えて、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)などの他の一般的なプロバイオティック細菌属も含まれる。
【0039】
パーソナルケア製品の例としては、女性器洗浄液、シャワージェル、石鹸、洗顔製品、化粧品、香水、ボディローション、毛髪用シャンプーおよびコンディショナー、整髪製品、軟膏、消毒薬、或いは、その他皮膚および口腔ケア製品などが挙げられる。
【0040】
このようなパーソナルケア製品を調製する方法は、木酢に加えて、他の化合物と混合してパーソナルケア製品の特徴を向上させることを含んでいてもよい。多くの化合物の中には、以下のような界面活性剤の役割を果たすもの、すなわち、
硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、カルボン酸塩に分類される陰イオン界面活性剤:有名なアルキル硫酸塩として、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、それらと関連するラウレス硫酸ナトリウム、ミレス硫酸ナトリウムのようなアルキルエーテル硫酸塩など、カルボン酸塩として、アルキルカルボン酸塩(石鹸)、例えば、ステアリン酸ナトリウム、カルボン酸のより専門的な種として、ラウロイルサルコシンナトリウム、カルボン酸をベースとするフッ素系界面活性剤など;
オクテニジン二塩酸塩のような、pH依存性第1級、第2級または第3級アミンに分類される陽イオン界面活性剤:陽イオン界面活性剤として、さらに、臭化セトリモニウム(CTAB)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウムまたは臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODAB)のような永久荷電第4級アンモニウム塩など;
CHAPS(3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホナート)、コカミドプロピルヒドロキシスルタインのようなスルタイン、コカミドプロピルベタイン(アンモニウムをもつカルボン酸を有する)のようなベタインなどの両性イオン界面活性剤;
エトキシレート、脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、アミン酸化物、ラウリルジメチルアミンオキシド、スルホキシド、ジメチルスルホキシド、ホスフィン酸化物に分類される非イオン界面活性剤がある。
【0041】
金属イオンによる不活性化、pH変化、UVまたは光への曝露および酸化に起因するパーソナルケア製品の劣化を防止するために、劣化防止安定剤(例えば、亜リン酸エステル、アルキル化フェノールのような抗酸化剤だけでなく、金属イオン封鎖剤や、二ナトリウムエチレンジアミン四酢酸、ポリアスパラギン酸アンモニウム、エチドロン酸四ナトリウムのようなキレート化剤)をパーソナルケア製品の調合に加えることができる。安定剤は、清澄性の維持、芳香化合物の保護、酸敗の防止にも役立つ。
【0042】
さらに、塗布の安定性と容易性を達成するためにパーソナルケア製品中の物質の均質混合と増粘を促進するため、増粘剤またはゲル化剤(例えば、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、植物ゴム、蝋)および乳化剤(一般例として、乳化蝋、セテアリルアルコール、ポリソルベート20、セテアレス−20など)をパーソナルケア製品の調合にさらに加えることができ、それらの一部は安定剤としての役割も果たす。
【0043】
本発明は、その基本的な特徴から逸脱しない範囲で他の特定の形態で実施されてもよい。記載の実施形態は、あらゆる点で例示に過ぎず、非限定的であるとみなされるべきである。したがって、発明の範囲は、上記の説明ではなく、請求の範囲によって示される。請求の範囲の等価物の意味および範囲内に入るあらゆる変更も発明の範囲内に包含されるべきである。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2020年11月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木酢を得る工程と、
前記木酢がパーソナルケア製品の総重量または総体積の18〜22%を占めるように前記木酢を前記パーソナルケア製品中に加える工程とを含み、
前記木酢が、フタバナヒルギの熱分解によって得られ、皮膚感染症および尿路感染症を引き起こす微生物を不活性化または死滅させるが、相当量の有益な微生物を留めておく、パーソナルケア製品の調製方法。
【請求項2】
前記木酢が、グアイアコールを有することなく得られる、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項3】
前記相当量の有益な微生物が、病原性微生物による攻撃に対する防御に役立つ、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項4】
前記留めおかれる有益な微生物が乳酸菌である、請求項1または3に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項5】
前記木酢が、前記パーソナルケア製品の総重量または総体積の20%を占める、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項6】
抽出したての木酢が、精製されて前記パーソナルケア製品中に加えられる前に、少なくとも3か月間熟成のために置かれる、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項7】
前記木酢が、不純物を除去するために濾過または蒸留によって精製される、請求項6に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項8】
熱分解のために使用されるフタバナヒルギの部分が、樹皮、茎、枝、根、葉またはそれらのあらゆる組合せである、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項9】
前記木酢が、シリンゴール、安息香酸、マルトール、カテコールおよびバニリンを含有する、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項10】
前記パーソナルケア製品は、女性器洗浄液、シャワージェル、石鹸、洗顔製品、化粧品、香水、ボディローション、毛髪用シャンプーおよびコンディショナー、整髪製品、軟膏、消毒薬、或いは、皮膚および口腔ケア製品である、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項11】
前記パーソナルケア製品中に、劣化防止安定剤が加えられる、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項12】
前記パーソナルケア製品中に、液液界面または液固界面の表面張力を低下させる界面活性剤または洗剤が加えられる、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項13】
前記パーソナルケア製品中に、ゲル化剤が加えられる、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項14】
前記パーソナルケア製品中に、乳化剤が加えられる、請求項1に記載のパーソナルケア製品の調製方法。
【請求項15】
パーソナルケア製品の総重量または総体積の18〜22%を占めるように前記パーソナルケア製品中に加えられた木酢を備え、
前記木酢が、フタバナヒルギの熱分解によって得られ、皮膚感染症および尿路感染症を引き起こす微生物を不活性化または死滅させるが、相当量の有益な微生物を留めておく、パーソナルケア製品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
図2を参照すると、殺菌効果は、概して阻害効果を達成するために必要とされる濃度よりも高い抽出液濃度で生じた。20%濃度を越えると、有益な細菌株であるラクトバチルス・ペントーサスLCUM1001を除いて、検査された菌株の全てが死滅した。
【国際調査報告】