【実施例】
【0106】
注:側鎖連結アミノ酸の合成に関連する実施例において、名称は、最初にIUPAC命名法で示されている。その後に略語名称が使用されている。表1はその対応を示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0107】
(実施例1)
銅複合体を介した(S)−6−アクリルアミド−2−アミノヘキサン酸モノマーの合成
L−リジン(14.62g、100mmol)を150mLの脱イオン水に溶解し、約80℃に加熱した。炭酸銅(16.6g、75mmol)を30分間かけて少量ずつ加えた。反応物をさらに30分間撹拌した。高温で深青色の懸濁液をシリカゲルでろ過した。フィルターを少量の水で洗浄した。翌日、リジン銅複合体を含有する合わせたろ液を氷浴で冷却し、100mLのテトラヒドロフラン(THF)を加えた。メチル−tert−ブチルエーテル(TBME)中の塩化アクリロイルの溶液(8.9mL、110mmol)を、1時間にわたって滴下により添加した。pHを10%水酸化ナトリウム溶液の並行滴下により添加により最初に8〜10に維持した。塩化アクリロイル溶液の半分を加えると、生成物が沈殿し始めた。大部分の塩化アクリロイルが添加されたときに、水酸化ナトリウムの添加を遅くして、pHを約6に下げ、反応混合物の温度を室温にした。青色懸濁液をさらに2時間撹拌し、次いでろ過した。フィルターに保持された固体物質を水およびアセトンで洗浄し、次いで乾燥した。収量が6.5gのアクリロイル−L−リジン銅複合体を得た。
【0108】
アクリロイル−L−リジン銅複合体(29.5g)を300mLの脱イオン水に懸濁し、氷浴で冷却した。H
2Sガスを、硫化銅の沈殿が完了するまで懸濁液に吹き込んだ。3グラムの活性炭を懸濁液に加えた。懸濁液を100℃に短時間加熱した。室温に冷却した後、500mLのアセトンを懸濁液に加え、次いでシリカゲルでろ過した。透明なろ液をロータリーエバポレーターに入れた。溶媒を蒸発させた後、固体生成物を200mLの50%アセトン水溶液で再結晶させた。収量が17.76g(70%)の白色粉末を得た。この化合物の構造をNMRおよびLC−MS分光法により検証した。
【0109】
(実施例2)
(2S)−3−(アクリロイルオキシ)−2−アミノプロパン酸の合成
水(50mL)中のL−セリン(5g、47.6mmol)の溶液を80℃に加熱し、固体炭酸銅(5.79g、26.2mmol)を加えた。溶液を10分間撹拌した。続いて不溶解残留物をろ過により収集し、水(30mL)で洗浄した。合わせたろ液を氷浴で冷却し、KOH(27.1mL、47.6mmol)をゆっくりと加えた。この溶液に、アセトン(30mL)中の塩化アクリロイル(4.52mL、59.5mmol)の混合物を滴下により添加した。次いで反応混合物を撹拌下、4℃で一晩インキュベートした。形成された固体を単離し、水(50mL)/メタノール(50mL)/エチル−tert−ブチルエーテル(50mL)(MTBE)で洗浄し、最後に減圧下で乾燥して、O−アクリロイル−L−セリン−Cu
2+複合体(3.8g、10.01mmol、収率42.1%)を得た。続いて、複合体中の銅を実施例1に記載された手順と類似した手順により除去した。収量が1.43g(45%)のアクリロイル−L−セリンを白色の粉末として得た。この化合物の同一性をNMRおよびLC−MS分光法により検証した。
【0110】
(実施例3)
(2S)−3−(アクリロイルオキシ)−2−アミノブタン酸の合成
6mLのトリフルオロ酢酸(TFA)を含む反応容器を、氷浴で冷却した。続いて、固体L−トレオニン(2.00g、16.79mmol)を加え、混合物を5分間撹拌した。トリフルオロメタンスルホン酸(0.18mL、2.0mmol)、続いて塩化アクリロイル(2.5mL、32.9mmol)を加え、反応混合物を室温で2時間インキュベートした。反応が完了した後、生成物をメチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)で沈殿させた。固体を単離した後、生成物をMTBEおよびアセトンで洗浄した。最後にO−アクリロイル−L−トレオニン塩酸塩を減圧下で乾燥して、白色の粉末(収率32%)を得た。この化合物の構造をNMRおよびLC−MS分光法により検証した。
【0111】
(実施例4)
(S)−3−(4−(アクリロイルオキシ)フェニル)−2−アミノプロパン酸の合成
O−アクリロイル−L−チロシン−Cu
2+複合体の合成は、実施例1に記載された手順に従って実施した。銅を以下の手順により複合体から除去した。73.15g(140mmol)のO−アクリロイル−L−チロシン−Cu
2+複合体を破砕皿中の220mLの2N HClに溶解した。混合物を、Polytron(登録商標)PT3000機器を使用して均質化した。続いて混合物をろ過し、残留物を50mLの2N HClで2回洗浄した。次いで固体化合物をNaOHにより減圧下、40℃で乾燥して、O−アクリロイル−L−チロシン塩酸塩(46.96g、収率63%)を得た。
【0112】
(実施例5)
(S)−2−(4−アクリルアミドフェニル)−2−アミノ酢酸の合成
Boc−4−アミノ−L−フェニルアラニン(2.50g、8.9mmol、Anaspec、Fremont、CA)を25mLのクロロホルムに溶解した。トリエチルアミン(2.47mL、17.8mmol)をこの溶液に加え、混合物を−15℃に冷却した。続いて、クロロホルム中の塩化アクリロイル(0.79mL、9.8mmol)を、撹拌しながら混合物に滴下により添加した。塩化アクリロイルの添加が完了した後、反応混合物をさらに3時間撹拌した。その後、反応混合物をガラスフィルターに通し、保護(S)−2−(4−アクリルアミドフェニル)−2−アミノ酢酸をカラムクロマトグラフィーにより精製し、残留溶媒を蒸発させた。得られた(S)−2−(4−アクリルアミドフェニル)−2−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)酢酸(500mg、1.5mmol)を5mLのジクロロメタン(DCM)に溶解した。トリフルオロ酢酸(TFA)(800μL、10.38mmol)を加え、溶液を室温で1時間撹拌した。その後、溶媒を減圧下で除去し、5mLのDCMを加え、溶媒を再び減圧下で除去した。この手順を数回繰り返した。最後に生成物を3mLのDCMに溶解し、メチル−tert−ブチルエーテル(MTBE)で沈殿させた。固体をガラスフィルターで収集し、真空下で乾燥して、純粋なアクリロイル−4−アミノ−L−フェニルアラニンを15%の収率で得た。この化合物の構造をNMRにより検証した。
【0113】
(実施例6)
(2S)−4−(アクリロイルオキシ)ピロリジン−2−カルボン酸および(R)−3−(アクリロイルチオ)−2−アミノプロパン酸の合成
これらの化合物の合成を実施例1に記載されたように実施した。(2S)−4−(アクリロイルオキシ)ピロリジン−2−カルボン酸および(R)−3−(アクリロイルチオ)−2−アミノプロパン酸では、出発材料は、それぞれ4−ヒドロキシ−L−プロリンおよびL−システインであった。
【0114】
(実施例7)
(S)−6−アクリルアミド−2−(3−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド)ヘキサン酸(AK−フェノール)の合成
DMF(9mL)中のAK(538mg、2.69mmol)およびTEA(443μL、3.18mmol)の溶液に、ボルトンハンター試薬(643mg、2.44mmol)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した。次いで反応混合物をろ過し、揮発物をN
2ストリーム下で除去した。残留物をSiO
2カラムクロマトグラフィーにより精製した。構造をNMR分光法により検証した。
【0115】
(実施例8)
アミノ酸のメタクリル/エチルアクリル/プロピルアクリル誘導体の合成
メタクリル/エチルアクリル/プロピルアクリル誘導体の合成を、対応する酸塩化物、例えば塩化メタクリロイルを実施例1〜7に記載された条件下で使用して実施した。
【0116】
(実施例9)
フルオレセイン修飾共主要モノマーAK−フルオレセイン−V1の合成
20mLの反応容器中で、アクリロイル−L−リジン[実施例1を参照すること](150mg、0.749mmol)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC、321mg、0.824mmol)およびトリエチルアミン(0.114mL、0.824mmol)の溶液をDMFで調製した。反応物を、一定撹拌下、暗所において室温で一晩インキュベートした。続いて、溶液を0.4μmのフィルターでろ過して、潜在的な粒子を除去した。その後、残留溶媒を、ロータリーエバポレーターにより真空を適用しながら30℃で除去した。構造を、NMRおよびLC−MSにより検証した(収率98%、純度>95%)。その後、合成されたモノマーを、溶媒としてDMFおよび開始剤としてAIBNを使用するジメチルアクリルアミド(DMA)[90/10mol/mol]との共重合で試験した。重合反応を65℃で6時間実施し、得られたコポリマーを、実施例13に提示されているプロトコールを使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析した。
【0117】
(実施例10)
フルオレセイン修飾共主要モノマーAK−フルオレセイン−V2の合成
反応は、実施例9に提示された合成プロトコールに従って出発材料としてフルオレセイン−NHSを用いて実施したが、10mol%過剰のAKを用い、これを反応後に沈殿により除去した。
【0118】
構造を、NMRおよびLC−MSにより検証した(収率85%、純度>93%)。その後、合成されたモノマーを、溶媒としてDMFおよび開始剤としてAIBNを使用するジメチルアクリルアミド(DMA)[90/10mol/mol]との共重合で試験した。重合反応を65℃で6時間実施し、得られたコポリマーを、実施例13に提示されているプロトコールを使用してGPCにより分析した。
【0119】
(実施例11)
非切断性リンカーを有するドキソルビシン(DOX)修飾共主要モノマー(AK−DOX−V1)の合成
DMF中のDOX・HCl(200mg、345μmol、1.00当量)およびEt
3N(50μL、348μmol、1.01当量)の溶液に、無水コハク酸(36.2mg、362μmol、1.05当量)を加えた。混合物を不活性雰囲気下、室温で30分間撹拌し、次いでNHS(43.7mg、379μmol、1.10当量)、続いてEDC・HCl(69.4mg、362μmol、1.05当量)を加えた。得られた混合物を室温で一晩撹拌し、次いでAK(69.0mg、345μmol、1.00当量)、続いてEt
3N(53μL、379μmol、1.10当量)を加えた。反応混合物を再び室温で一晩撹拌した。揮発物をN
2ストリーム下で蒸発させ、残留物をSiO
2カラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物(228mg、276μmol、80%)を得た。
【0120】
(実施例12)
カテプシンB感受性リンカーを有するドキソルビシン修飾共主要モノマー(AK−DOX−V2)の合成
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中のDOX・HCl(86mg、149μmol、1.10当量)、MC−Val−Cit−PABO−PNP(100mg、136μmol、1.00当量)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(26μL、149μmol、1.10当量)の溶液を室温で2時間撹拌する。得られた混合物に、AK(28.5mg、142μmol、1.05当量)、続いてDIPEA(26μL、149μmol、1.10当量)を加える。反応混合物を室温で一晩撹拌する。揮発物をN
2ストリーム下で蒸発させ、残留物をSiO
2でのクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物(109mg、81μmol、60%)を得る。
【0121】
(実施例13)
BOC−G
n−Cellophilの合成の一般手順
ステップ1:RAFT−NHS中間体の合成:
CH
2Cl
2中の、Tucker et al. (ACS Macro Letters (2017) 6(4): 452-457)に記載されたように合成された2−[[(エチルチオ)チオキソメチル]チオ]−2−メチル−プロパン酸(22.85g、102mmol、1.0当量)、および1−ヒドロキシピロリジニン−2,5−ジオン(1-hydroxypyrrolidinine-2,5-dione)(12.89g、112mmol、1.1当量)の溶液に、EDC・HCl(21.48g、112mmol、1.1当量)を0℃で加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌した。次いで反応混合物をN
2流下で部分的に(総体積の約半分まで)蒸発させ、AcOEtおよび再蒸留水(ddH
2O)で希釈した。二相溶液を分液漏斗に移し、抽出した後、有機相をddH
2O、NaHCO
3飽和水溶液(3×)、ddH
2O(2×)およびブラインで連続的に洗浄した。有機相を乾燥し(Na
2SO
4)、すべての揮発物を減圧下で除去した。残留物をn−ヘキサンで摩砕し、得られた黄色懸濁液をろ過した。ケーキをn−ヘキサンで洗浄した。黄色の固体を減圧下で乾燥し、得られた中間体(RAFT−NHS)をさらに精製することなく使用した(31.8g、99.0mmol、97%)。すべての分析データは、文献の値と一致していた。Yang et al. (2012) Macromolecular rapid communications 33(22): 1921-6。
【0122】
ステップ2:RAFT−EDA−BOC中間体の合成:
CH
2Cl
2中のRAFT−NHS出発材料(1.22g、3.61mmol、1.0当量)の溶液に、CH
2Cl
2中のt−ブチル−(2−アミノエチル)カルバメート(0.81g、5.0mmol、1.4当量)およびEt
3N(1.0mL、7.2mmol、2.0当量)の溶液を、−10℃で滴下により添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。有機混合物を、NH
4Clの飽和水溶液(2×)、NaHCO
3の飽和水溶液(2×)およびブラインで連続的に洗浄した。有機相を乾燥し(Na
2SO
4)、すべての揮発物を減圧下で除去した。残留物をn−ヘプタンおよびEt
2Oの混合物で再結晶させた。黄色の結晶をろ過し、n−ヘプタンで洗浄し、減圧下で乾燥して、次の中間体(RAFT−EDA−BOC、1.26g、3.44mmol、95%)を得た。得られた化合物の構造をMSおよびNMR分光法により検証した。
【0123】
ステップ3:RAFT−EDA−OTf中間体の合成:
TFA中のRAFT−EDA−BOC(1.25g、3.41mmol、1.0当量)の冷溶液を60分間撹拌した。次いで反応混合物をMeOHおよびCH
2C
l2(1/2)で希釈し、揮発物を部分的に(総体積の2/3を)N
2流下で除去した。得られたRAFT−EDA−OTfを黄色の油状物(2.00g、3.29mmol、96%)として単離し、さらに精製することなく次のステップで使用した。得られた化合物の構造をMSおよびNMR分光法により検証した。
【0124】
ステップ4:BOC−G
n−RAFT中間体の合成:
CH
2Cl
2中のBOC−G
3(697mg、2.41mmol、1.0当量)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt水和物)(92.0mg、600μmol、0.25当量)およびEDC・HCl(485mg、2.53mmol、1.05当量)の溶液を、不活性雰囲気(N
2)下、0℃で30分間撹拌した。この溶液に、CH
2Cl
2中のRAFT−EDA−OTf(917mg、2.41mmol、1.0当量)の溶液およびDIPEA(2.13mL、12.5mmol、5.2当量)を連続的に滴下により添加した。反応混合物を0℃で1時間、次いで室温で一晩撹拌した。反応混合物をCH
2Cl
2で希釈し、有機混合物を、NH
4Cl飽和溶液(3×)、NaHCO
3飽和溶液、ddH
2Oおよびブラインで連続的に洗浄した。有機相を収集し、乾燥し(Na
2SO
4)、揮発物を減圧下で部分的に(総体積の2/3を)除去した。得られた溶液にEtOAcを加えた。次いで、得られた曇った溶液を冷蔵庫に一晩保管して、黄色の懸濁液を得て、それをろ過し、ケーキを冷EtOAcで洗浄した。黄色の固体を減圧下で乾燥して、BOC−G
3−RAFT剤(396mg、736μmol、31%)を得た。得られた化合物の構造をMSおよびNMR分光法により検証した。
【0125】
ステップ5:BOC−G
n−DMA−RAFTプレポリマーの合成
ジオキサン中のDMA(192μL、1.86mmol、10当量)の溶液に、BOC−G
3−RAFT剤(100mg、186μmol、1.0当量)およびAIBN(6.1mg、37μmol、0.20当量)を連続的に加えた。反応混合物を60℃で6時間撹拌した。次いで反応生成物をn−ヘキサンに沈殿させた。薄黄色の懸濁液をろ過し、得られたケーキをn−ヘキサンで洗浄し、最後にアセトンに溶解した。次いで揮発物を減圧下で除去して、BOC−G
3−DMA−RAFTプレポリマーを黄色の油状物(280mg、186μmol、99%)として得た。得られた化合物の構造をMSおよびNMR分光法により検証した。
【0126】
ステップ6(必要に応じて):G
n−DMA−RAFTプレポリマーの合成
ジオキサン中のBOC−G
3−DMA−RAFTプレポリマーの溶液を、ジオキサン中のHCl(4M)の溶液で2時間処理する。揮発物をN
2流下、室温で除去する。残留物を、さらに精製することなく使用する。得られた化合物の構造をMSおよびNMR分光法により検証する。
【0127】
ステップ7:BOC−G
n−Cellophilの合成
ddH
2O中のDMA(1.23mL、11.9mmol、70当量)およびAK(272mg、1.36mmol、8当量)の溶液に、BOC−G
3−DMAプレポリマー(221mg、170μmol、1.0当量)およびVA044(27.5mg、85μmol、0.4当量)を連続的に加えた。反応混合物を55℃で4時間撹拌した。反応混合物をddH
2Oおよびジオキサンで希釈した。この溶液に、ホスフィン酸(50w%、93μL、850μmol、5当量)、TEA(118μL、850μmol、5当量)およびVA044(27.5mg、85μmol、0.5当量)を連続的に加えた。反応混合物を100℃で4時間撹拌した。次いで、得られた混合物をddH
2Oで透析し(MWCO 3.5kDa)、濃縮液をフリーズドライして(freeze-dried)、BOC−G
3−Cellophilを白色の粉末(1.20g、120μmol、2ステップで71%)として得た。得られた化合物の構造を、NMR分光法および以下のプロトコールを使用するGPCにより検証した。3.33mg/mLのコポリマーの貯蔵溶液を、溶出緩衝液(0.05%(w/v)NaN
3を含有する脱イオン水)で調製し、0.45μmシリンジフィルターでろ過した。続いて、0.4mLの貯蔵溶液をGPC装置(1260 Infinity LC−System、Agilent、Santa Clara、CA)のポートに注入した。クロマトグラフィーを、溶出緩衝剤により0.5mL/分の一定流速で実施した。コポリマーの試料を、55℃の外部カラムオーブンに設置されたSupurema3カラムシステム(プレカラム、1000Å、30Å;粒径5μm;PSS、Mainz、Germany)で分離した。コポリマーをRI(屈折率)およびUV検出器により分析した。較正曲線(10ポイント)を、プルラン標準を使用して確立した。特徴付けされたコポリマーの分子量を、この標準を参照することにより推定した。
【0128】
ペンタグリシン誘導体(BOC−G
5−Cellophil)の合成は、出発材料としてBOC−G
5−Na塩を使用するというわずかな変更を伴い、上記のプロトコールに従って達成した。BOC−G
5−Na塩はペンタグリシンから得て、Wang, T.-P. et al (2012) Bioconjugate Chemistry 23(12): 2417-2433に従って合成した。他のオリゴグリシン機能化Cellophilコポリマーを、同様のプロトコールを使用して生成することができる。
【0129】
(実施例14)
BOC−G
n−PEG
x−Cellophilの合成
BOC−G
3−PEG
11−Cellophilの合成は、上記の一般手順(実施例13:ステップ1〜4および7)に従って達成した。ステップ2は、出発材料としてBOC−PEG
11−CH
2CH
2−NH
2を使用して実施して、RAFT−PEG
11−BOCを生じ、ステップ3はEtOAc中のHClを使用して実施した。
【0130】
PEG
23誘導体(BOC−G
3−PEG
23−Cellophil)の合成は、出発材料としてBOC−PEG
23−CH
2CH
2−NH
2を使用するというわずかな変更を伴い、上記のプロトコールに従って達成した。他のオリゴグリシン機能化およびPEG機能化Cellophilコポリマーを、同様のプロトコールにより生成することができる。
【0131】
(実施例15)
BOC−G
n−Cellophil−(フルオレセイン)
8またはBOC−G
n−PEG
x−Cellophil−(フルオレセイン)
8の合成
NaHCO
3(0.1N)の水溶液中のBOC−G
3−Cellophil(1.0当量)またはBOC−G
3−PEG
11−Cellophil(1.0当量)(調製には、実施例13、ステップ7を参照すること)の溶液に、DMSO中のFITC(16当量)の溶液をゆっくりと加えた。得られた反応混合物を室温で16時間撹拌し、NaHCO
3の水溶液(0.1N)、次いでddH
2Oで透析した(MWCO 3.5kDa)。濃縮液をフリーズドライして、暗橙色の粉末(収率:80〜92%)を得た。この化合物の構造をNMRおよびGPCにより検証した。
トリグリシンおよびトリグリシン−(PEG)
23誘導体の合成を、同じプロトコールを使用して達成した。
【0132】
(実施例16)
H
2N−G
n−Cellophil−(フルオレセイン)
8またはH
2N−G
n−PEG
x−Cellophil−(フルオレセイン)
8の合成
EtOH中のBOC−G
3−Cellophil−(フルオレセイン)
8(1.0当量)またはBOC−G
3−PEG
11−Cellophil−(フルオレセイン)
8(1.0当量)の溶液に、EtOH中のHCl(約1.25N)の溶液を加えた。得られた反応混合物を室温で2時間撹拌し、水(2×)で透析した(MWCO 3.5kDa)。濃縮液をフリーズドライして、暗橙色の(静電)粉末(99%)を得た。この化合物の構造をNMRおよびGPCにより検証した。
【0133】
(実施例17)
カテプシンB感受性ドキソルビシン含有Cellophilの合成
ステップ1 H−Lys(Alloc)−OHの調製
H
2O(100mL)中のL−リジン塩酸塩(1.0当量)および塩基性炭酸銅(II)(1.1当量)の溶液を30分間還流させた。還流の際に形成された固体を熱時ろ過により除去した。ろ液を0℃に冷却し、固体重炭酸ナトリウム(3.1当量)の添加によりpH9に調整した。クロロギ酸アリル(1.5当量)を1時間かけて滴下により添加し、その間、溶液を0℃で撹拌した。この添加の際に、反応混合物を固体重炭酸ナトリウムの添加によりpH9に維持した。反応混合物を室温に温め、一晩撹拌した。反応の際に形成された青色の固体生成物を、ろ過により定量収率で収集した。
Lys(Alloc)の固体銅塩をH
2O(250mL)に懸濁し、2当量のチオアセトアミド(2.0当量)を加えた。アルカリ性懸濁液を50℃で3時間撹拌し、その間に固体がゆっくりと溶解した。続いて、溶液を2M HClでpH2に酸性化し、5分間沸騰させた。沈殿したCuSをろ過により除去した。ろ液を真空下で約60mLに濃縮し、その時点でLys(Alloc)の塩酸塩が白色の固体(79%)として沈殿し、それをろ過により回収した。
【0134】
ステップ2 FMOC−Val−Lys(Alloc)−OHの調製
ジオキサン(30mL)中のFMOC−Val−OSu(1.0当量)の室温で激しく撹拌した溶液を、水(30mL)中のLys(Alloc)−OH(1.1当量)およびNaHCO
3(2.1当量)の溶液と合わせた。温度を、最初の30分間に冷水浴を使用して25℃未満に維持した。混合物を室温で14時間撹拌し続けた。混合物を水(50mL)で希釈し、次いで15%クエン酸でpH3に酸性化した。得られた懸濁液を酢酸エチル(3×100mL)で抽出し、合わせた有機層を水およびブラインで洗浄し、乾燥し、蒸発させて、オフホワイトの固体を得た。固体をTHFに溶解し、次いでメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)を加え、ろ過した後に純白な固体(80%)を得た。
【0135】
ステップ3 FMOC−Val−Lys(Alloc)−PABOHの調製
THF(15mL)中のFMOC−Val−Lys(Alloc)−OH(1.0当量)およびPABOH(1.1当量)の室温で撹拌した溶液を、EEDQ(1.1当量)で処理した。16時間後、混合物を30℃で蒸発乾固し、残留物をMTBEで再結晶させて、濃黄色(deep yellow)の生成物(84%)を得た。
【0136】
ステップ4:H−Val−Lys(Alloc)−PABOHの調製
CH
2Cl
2(35ml)中のFMOC−Val−Lys(Alloc)−PABOH(1.0当量)を室温でジエチルアミン(50ml)により処理した。混合物を短時間超音波処理し、室温で4時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をCH
2Cl
2でフラッシュし、シリカのクロマトグラフィーにかけて、生成物を無色の泡状物(69%)として得た。
【0137】
ステップ5:MC−Val−Lys(Alloc)−PABOHの調製
CH
2Cl
2(5ml)中のH−Val−Lys(Alloc)−PABOH(1.1当量)およびDIEA(1.1当量)を室温でCH
2Cl
2(2ml)中のMC−NHS(1.1当量)により処理した。混合物を室温で一晩撹拌した。酢酸エチル(60ml)を加え、混合物を水およびブラインで洗浄し、乾燥し、蒸発させて、所望の生成物(96%)を得た。
【0138】
ステップ6:MC−Val−Lys(Alloc)−PABO−PNPの調製
THF(15mL)中のMC−Val−Lys(Alloc)−PABOH(1.0当量)の室温で撹拌した溶液を、PNPクロロホルメート(1.2当量)および乾燥ピリジン(1.5当量)で処理した。反応物を、HPLC分析が混合物に抽出物が存在しないことを示すまで、一晩撹拌した。混合物をEtOAc(50mL)で希釈し、クエン酸(50mL、H
2O中10%)で酸性化した。有機相を水(50mL)およびブライン(25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を蒸発させて、薄黄色の固体を得た。固体をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(20:1のDCM/MeOH)により精製して、純粋な化合物を、黄色を帯びた固体(58%)として得た。
【0139】
ステップ7:MC−Val−Lys(Alloc)−PABC−DOXの調製
NMP(8mL)中のMC−Val−Lys(Alloc)−PABO−PNP(1.0当量)およびDOX・HCl(1.1当量)を室温でEt
3N(1当量)により処理した。その後、混合物を暗所で3日間インキュベートした。次いで、混合物を10%の2−プロパノール/酢酸エチル(100mL)で希釈し、水(3×100mL)およびブライン(50mL)で洗浄し、乾燥し、蒸発させて、濃橙色(deep orange)の油状物を得た。これをシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、純粋な生成物を赤色固体(92%)として得た。
【0140】
ステップ8:MC−Val−Lys−PABC−DOXの調製
THF(7mL)中のMC−Val−Lys(Alloc)−PABC−DOX(1.0当量)を、アルゴン下、室温で、Pd(PPh
3)
4(0.03当量)、酢酸(2.5当量)および水素化トリブチルスズ(1.5当量)で処理した。混合物を暗所において室温で1時間撹拌し、その最中に橙色の固体が形成し始めた。混合物をエーテル(25mL)で希釈し、続いてエーテル中の1M HCl(2mL)を添加した。得られた懸濁液を短時間超音波処理し、次いでろ過した。橙色の固体をエーテルで繰り返し洗浄し、次いで5:1のDCM:MeOHに溶解した。これに、Celite(7g)を加え、次いで溶媒を蒸発させた。得られた固体をCelite(登録商標)に吸着させ、Celiteカラム(DCM:MeOHの100:1のスラリーから作製)にドライロードした(dry-loaded)。カラムを、DCM:MeOHの100:1の混合物、続いてDCM:MeOHの10:1の混合物で溶出した。所望の生成物を橙色の固体(30%)として得た。
異なるアミノ酸配列を有するリンカー誘導体MC−Ala−Lys−PABC−DOX、MC−Val−Cit−PABC−DOXを、シトルリンリンカーがAlloc保護基を必要としないこと以外は上記に記述された手順と同じ手順に従って合成した。
【0141】
ステップ9:CellophilコポリマーへのカテプシンB感受性リンカーのカップリング
続いて、上記に記述されたリンカードキソルビシンコンジュゲートを、以下の一般手順を使用してCellophilコポリマー(実施例13、ステップ7)にカップリングした。
DMF中のCellophilコポリマー(1.0当量)およびEt
3N(12当量)の溶液に、リンカードキソルビシンコンジュゲート(10当量)の溶液を不活性雰囲気下、室温で滴下により添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。最後に混合物をddH
2Oで希釈し、得られた懸濁液をろ過した。次いで、ろ液をddH
2O(2×10L)で透析し(MWCO 3.5kDa)、濃縮液を凍結乾燥して、赤色の易流動性粉末(収率60〜70%)を得た。得られた化合物の構造をNMR分光法により検証した。
【0142】
(実施例18)
CellophilコポリマーからのドキソルビシンのカテプシンB媒介放出。
ヒト肝臓カテプシンB(Merck、MW約27500)(5単位)を400μLの酢酸塩緩衝液(50mMの酢酸塩+1mMのEDTA、pH5.0)に溶解した。10μLの酵素溶液を、390μLの活性化溶液(5mMのジチオトレイトール、100mMのリン酸ナトリウム緩衝剤、5mMのEDTA、100mMのNaCl、0.01%のBrij58、pH6.0)と共に37℃で約30分間インキュベートした。その間、20μLの実施例17のポリマーリンカーDOXコンジュゲート(1μmol)を、1473μLの活性化溶液に加え、37℃でインキュベートした。32μLの活性化酵素(0.01U)を基質溶液に加え、反応物を37℃でインキュベートした。遊離DOXの放出を、HPLCおよび光度計測定によりモニターした。MC−Val−Lys−PABC−PNP−DOXが最短の半減期を呈し、次にMC−Ala−Lys−PABC−DOXおよびMC−Val−Cit−PABC−DOXであった。
【0143】
(実施例19)
ドキソルビシン含有共主要モノマー(AK−DOX−V1およびAK−DOX−V2)の共重合。
ドキソルビシンを含むCellophilコポリマーの合成は、RAFT剤としてBOC−G
n−RAFT中間体、BOC−G
n−DMA−RAFTプレポリマー、RAFT−PEG
X−BOC、または対応するBOC脱保護試薬(実施例13、ステップ6に記載されたプロトコールに従って得た)(1.0当量)およびドキソルビシン含有共主要モノマー(8.0当量)(AK−DOX−V1またはAK−DOX−V2)を使用して、共主要モノマーの共重合についての一般手順(実施例13、ステップ7)により達成される。
【0144】
(実施例20)
AK−フェノールの共重合
ヨウ素反応性モノマーを含むCellophilコポリマーの合成は、RAFT試薬としてBOC−G
3−RAFT中間体、BOC−G
3−DMA−RAFTプレポリマー、RAFT−PEG
11−BOC、または対応するBOC脱保護試薬(実施例13、ステップ6に記載されたプロトコールに従って得た)(1.0当量)および共主要モノマーとしてAK−フェノール(8.0当量)を使用して、共主要モノマーの共重合についての一般手順(実施例13、ステップ7)によって達成した。ddH
2Oの代わりに、0.1MのNaHCO
3を溶媒として使用した。所望の生成物の構造をNMR分光法により検証した。
【0145】
(実施例21)
ヨウ素反応性ポリマー担体のヨウ素化
PBS緩衝液(pH=7.4)中の実施例20のAK−フェノールコポリマー(70mg、7.0μmol)の溶液に、NaI(7.86mg、52μmol)およびクロラミンT(14.8mg、52μmol)を連続的に加えた。次いで反応混合物を室温で30分間撹拌し、その後、Na
2S
2O
5水溶液(0.3M)で希釈した。次いで、得られた溶液を10LのddH2Oで透析し、濃縮液をフリーズドライした。所望の生成物の構造をNMR分光法により検証した。
【0146】
(実施例22)
ソルターゼ媒介反応を使用するHer2+モデル抗体へのH
2N−G
5−Cellophil−(フルオレセイン)
8のカップリング
H
2N−G
5−Cellophil−(フルオレセイン)
8(実施例16)を、以下の一般手順を使用して、Her2抗原に対する完全ヒトモノクローナル抗体にコンジュゲートすることができる。重鎖のC末端でソルターゼモチーフ(LPETG)およびヘキサヒスチジンタグ(His
6)により遺伝子修飾されたHer2モノクローナル抗体[10μM]を、H
2N−G
5−Cellophil−(フルオレセイン)
8[100μM]と共に、0.62μMのソルターゼAの存在下、50mMのHepes、150mMのNaCl、5mMのCaCl
2、pH7.5中において、25℃で3.5時間インキュベートする。反応は、25mMリン酸ナトリウム(pH7.5)で平衡にしたProtein A HiTrapカラム(GE Healthcare)に通過させることによって停止させる。充填したカラムを5カラム体積(CV)の緩衝剤で洗浄する。結合したコンジュゲートを5CVの溶出緩衝液(0.1Mのクエン酸、pH2.8)で溶出し、1CVの画分を、25%(v/v)の1M Tris塩基を含む管に収集して、溶液を中和する。タンパク質含有画分をプールし、続いて製造会社の使用説明書に従ってNAP−25カラム(GE Healthcare)を使用して、緩衝剤交換により10mMのコハク酸ナトリウムpH5.0、100mg/mLのトレハロース、0.1%(w/v)のポリソルベート20に配合する。カップリング反応の成功は、4〜20%勾配のトリスグリシンゲルでのSDS−PAGE、ならびに抗His
6一次抗体およびホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体を使用するウエスタンブロット(WB)分析により定量的に検証する。WBシグナルの検出は、増強化学発光(ECL)キット(Pierce(商標)、ECL Western Blotting Substrate)を使用して実施する。非修飾抗Her2−LPETG−His
6抗体は対照としての機能を果たす。抗His
6抗体の消滅は、ソルターゼ反応が完了したことを示す。定量的分析では、サイズ排除クロマトグラフィーを実施する。薬物の抗体に対する比(DAR)は、残存非修飾抗体(UV検出波長280nm)のピーク強度の比較により計算する。
【0147】
(実施例23)
H
2N−G
3−Cellophilコポリマーの毒性探索
本開示のポリマー担体は生物分解性ではない。したがって、担体が健康な組織に対して無害であることを実証することが重要であった。本開示のポリマー担体(ペイロードなし)の毒性探索研究を実施した。簡潔には、HepG2細胞を、96ウェル黒色壁透明底ポリスチレンプレートに1ウェルあたり100μLで平板培養した。試験化合物は、DMAおよびAK(90/10mol%)を含むH
2N−G
3−Cellophilコポリマー(12kDa)であり、実施例13、ステップ7に記載された手順により調製した。HepG2細胞に、試験化合物を、0.04〜100μMの濃度で投与した。37℃での72時間のインキュベーションの終了時に、適切な色素または抗体を培養物に加えた。次いでプレートを、自動蛍光細胞画像機(ArrayScan(登録商標)、Thermo Scientific Cellomics)を使用してスキャンした。
以下の8個の細胞健康パラメーター(CHP)を評価した。
【0148】
細胞計数:1ウェルあたりの細胞の減少数は、壊死、アポトーシスまたは細胞増殖の低減によって、毒性を示している。核のサイズ:核野の増加は、壊死またはG2細胞周期の停止を示すことができ、減少はアポトーシスを示すことができる。DNA構造:DNA構造の増加は、染色体の不安定性およびDNA断片化を示すことができる。ミトコンドリア質量:ミトコンドリア質量の減少は、総ミトコンドリアの損失を示し、増加は、ミトコンドリアの膨張または細胞のエネルギー需要への適応応答を示唆する。ミトコンドリア膜電位(Δψm):減少は、典型的にはアポトーシスシグナル伝達をもたらすミトコンドリアの完全性の損失を示し、ミトコンドリア膜電位の増加は、細胞のエネルギー需要への適応応答を示す。酸化ストレス:反応性酸素種(ROS)の増加は、早期の細胞傷害性応答である。グルタチオン含有量:グルタチオン(GSH)含有量の減少は、ROSの産生または試験化合物への直接結合の結果でありうる。GSH含有量の増加は、酸化ストレスへの細胞の適応応答を表す。細胞ATP:細胞が溶解すると、ATPは細胞から放出される。代謝的に活性ではない細胞は、ATPを放出しない。したがって、代謝活性細胞の減少は、検出されるATPレベルの減少をもたらす。
【表2】
対照1:カルボニルシアニド3−クロロフェニルヒドラゾン;対照2:L−ブチオニン−スルホキシミン;MEC:最小有効用量、すなわち、効果が検出される最低用量:AC
50:最大効果の50%が観察される濃度;MTD:最大耐容用量、すなわち、<20%の細胞損失が観察された濃度。NR:応答なし;NS:統計的に有意ではない。
この研究は、100μMまでの濃度のG
3−CellophilコポリマーへのHepG2細胞の曝露が、試験CHPに対して効果を有さなかったことを明らかにした。このことは、本開示のコポリマーの高い生体適合性を実証している。
【0149】
(実施例24)
Cellophil−(フルオレセイン)
n−ADCのがん細胞特異性
実施例22のHER2抗体機能化G
5−Cellophil−(フルオレセイン)
8コポリマーの、その標的細胞への親和性を、SKBR3およびMDA−MB−468がん細胞系を使用した実験で検査する。SKBR3細胞は、ヒト上皮増殖因子受容体2を過剰発現し(HER2+)、一方、MDA−MB−468細胞は、その受容体を発現しない(HER2−)。結合は、以下の簡潔なプロトコールを使用してFACS(=蛍光活性化細胞選別)により評価する。
【0150】
細胞を、160μLの培地/ウェル[4.5g/Lのグルコース、1.5mMのL−グルタミンおよび10%ウシ胎児血清(MG−30、CLS)を補充したDMEM]中に5,000〜10,000個の細胞の密度で96ウェルプレートに平板培養する。5%CO
2雰囲気で加湿インキュベーターにより37℃で1日インキュベートした後、細胞を採取し、洗浄し、細胞懸濁液を、10%ウシ胎児血清(FCS)、1%アジ化ナトリウムを補充した氷冷PBS(pH7.5)で1.25×10
6細胞/mLの濃度に調整する。細胞懸濁液を12×75mm
2のポリスチレン丸底に移し、次いで5μg/mLのCellophil−(フルオレセイン)
16−ADCと共に暗所において4℃で45分間インキュベートする。その後、細胞を400×gで5分間遠心分離し、500μLの氷冷PBS(pH7.5、10%FCS、1%アジ化ナトリウムを補充)に再懸濁することにより3回洗浄し、その後、フローサイトメーターにより分析する。
【0151】
Cellophil−(フルオレセイン)
16−ADCに曝露された、またはフルオレセインタグ付けトラスツズマブに曝露されたSKBR3細胞のFACS染色を比較すると、Cellophil−フルオレセイン−ADCにおける抗体の標的親和性が保存されていることが実証される。MDA−MB−468細胞を使用して、Cellophil−ADCの非特異的結合を分析する。
【0152】
(実施例25)
モデルタンパク質へのG
5−Cellophil−(フルオレセイン)
8の結合
モデルタンパク質(赤色蛍光mCherry)を、C末端でソルターゼ認識モチーフ(LPETG)により、およびN末端近くで追加のシステインより遺伝子修飾した。mCherryの修飾コード配列を含むDNA断片を、in vitroで合成した。
Cys−mCherry−LPETG−His6のコード配列(配列番号1):
5’-ATGTGTGGTGGTAGCGGTGGTTCAGGTGGTTCTGGCGGTAGTGGTGGCAGCATGGTTAGCAAAGGTGAAGAGGATAATATGGCCATCATCAAAGAATTCATGCGCTTCAAAGTTCACATGGAAGGTAGCGTTAATGGCCACGAATTTGAAATTGAAGGTGAAGGCGAAGGTCGTCCGTATGAAGGCACCCAGACCGCAAAACTGAAAGTTACCAAAGGTGGTCCGCTGCCGTTTGCATGGGATATTCTGAGTCCGCAGTTTATGTATGGTAGCAAAGCCTATGTTAAACATCCGGCAGATATTCCGGATTACCTGAAACTGAGCTTTCCGGAAGGTTTTAAATGGGAACGTGTGATGAATTTTGAAGATGGTGGTGTTGTTACCGTTACACAGGATAGCAGCCTGCAGGATGGTGAATTTATCTATAAAGTTAAACTGCGTGGCACGAATTTTCCGAGTGATGGTCCGGTTATGCAGAAAAAAACCATGGGTTGGGAAGCAAGCAGCGAACGTATGTATCCGGAAGATGGCGCACTGAAAGGTGAAATTAAACAGCGTCTGAAGCTGAAAGATGGCGGTCATTATGATGCAGAAGTTAAAACCACCTACAAAGCCAAAAAACCGGTTCAGCTGCCTGGTGCATATAACGTTAACATCAAACTGGATATTACCAGCCACAACGAGGATTATACCATTGTGGAACAGTATGAACGTGCAGAAGGTCGCCATAGTACCGGTGGTATGGATGAACTGTATAAAGGTGGCAGTGGTGGATCTGGTGGCTCAGGCGGAAGCGGTGGTAGCCTGCCGGAAACCGGTGGTCTGAATGATATTTTTGAAGCCCAGAAAATCGAATGGCATGAACATCATCAC CATCACCACTAA-3’
【0153】
このDNA断片をクローニングベクターpMA−T(Invitrogen/Thermo Fisher Scientific、Germany)にサブクローニングした。後者の構築物をNdelおよびBamH1で消化した。この消化産物を1.5%アガロースゲルで電気泳動し、mCherryのDNAを含む断片を切り取り、Qiagenゲル抽出キット(Qiagen、Hilden、Germany)を使用して、DNAを抽出した。次いで、精製されたDNA断片を、T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs、UK)を使用して発現ベクターpET28−cに連結した。続いて、挿入されたDNA配列の正確さを配列分析で検証した。タンパク質産生では、得られたプラスミド(pCIS−[C]−mcherry−[LPETG])をコンピテントなEscherichia coli BL21DE3細胞に形質転換した。細胞を増殖させて(LB培地+100μg/mlのアンピシリン、37℃、500mlの振とうフラスコ)、0.4のOD
600にし、その後、タンパク質発現を1mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)により誘導した。細胞を4時間後に遠心分離(6000×g、15分間、4℃)により採取し、溶解緩衝液(50mMのNaH
2PO
4、0.5MのNaCl、pH8.0)に懸濁し、超音波処理により溶解した。細胞細片を遠心分離(30,000×g、30分間、4℃)により除去した。Cys−mcherry−LPETG−His
6タンパク質の精製は、製造会社のプロトコールに従って、ニッケル−NTAアフィニティークロマトグラフィー(ニッケル−NTAアガロース、Thermo Fisher Scientific、Germany)により実施した。タンパク質の収量をBradfordアッセイ(Bio−Rad Laboratories GmbH、Muenchen、Germany)により定量し、組み換えタンパク質のサイズおよび純度をSDS−PAGEにより検証した。
【0154】
続いて精製されたLPETGタグ付けmCherry[10μM]を実施例16の異なる濃度のH
2N−G
5−Cellophil−(フルオレセイン)
8[20〜100μM]と共に、増加濃度のソルターゼA[0.062〜0.62μM]の存在下、50mMのHepes、150mMのNaCl、5mMのCaCl
2、pH7.5中において25℃で3.5時間インキュベートする。CellophilコポリマーまたはソルターゼAが欠如している対照反応を並行して実施する。反応(20μl)を、5μlの4×SDS−PAGE添加液(loading buffer)+10%w/vのβ−メルカプトエタノール(Biorad、Germany)の添加および熱処理(5分間、95℃、600rpmでの一定振とう)によって停止する。次いで試料を4〜20%のSDS−PAGEゲル(Mini−PROTEAN(登録商標)TGX(商標)Precast Gels Biorad、Germany)により150Vで30分間電気泳動し、続いてゲルをクーマシーブルー染色に付した。カップリングの成功は、mCherryより大きなサイズの生成物の出現に基づいて推定する。
【0155】
(実施例26)
腫瘍細胞特異的アプタマーDML−7によるCellophil−(フルオレセイン)
8の機能化
ステップ1:1−((3−アジドプロピル)アミノ)−2−メチル−1−オキソプロパン−2−イルエチルカルボノ−トリチオエートの合成:
CH
2Cl
2(44mL)中の2,5−ジオキソピロリジン−1−イル2−(((エチルチオ)カルボノチオイル)チオ)−2−メチルプロパノエート(2.4g、7.47mmol、1.0当量)およびEt
3N(1.249mL、8.96mmol、1.2当量)の溶液に、CH
2Cl
2(15mL)中の3−アジドプロパン−1−アミン(0.879mL、8.96mmol、1.2当量)の溶液を室温および不活性雰囲気下で60分間かけて滴下により添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。最後に、反応混合物を、HCl水溶液(1M、3×20mL)、ddH
2O(2×25mL)およびNaHCO
3飽和水溶液(20mL)で連続的に洗浄した。有機相を乾燥し(Na
2SO
4)、揮発物を減圧下で除去した。残留した橙色の油状物(2.25g、7.34mmol、98%)を、さらに精製することなく使用した。標記化合物の構造をNMR分光法により検証した。
【0156】
ステップ2:RAFT−DMA−N
3プレポリマーの合成
標記化合物の合成は、実施例13、ステップ5のプレポリマー合成の一般的プロトコールに従い、1−((3−アジドプロピル)アミノ)−2−メチル−1−オキソプロパン−2−イルエチルカルボノトリチオエートを出発材料として使用して達成した。標記化合物の構造をMSおよびNMR分光法により検証した。
【0157】
ステップ3:Cellophil−N
3の合成
標記化合物の合成は、RAFT−DMA−N
3プレポリマーを出発材料として使用し、実施例13、ステップ7の一般的プロトコールに従って達成した。標記化合物の構造をNMR分光法により検証した。
【0158】
ステップ4:Cellophil−(フルオレセイン)
8−N
3の合成
標記化合物の合成は、Cellophil−N
3およびフルオレセイン−NHSを出発材料として使用し、実施例15のアミン反応性活性剤についての一般的プロトコールに従って達成した。標記化合物の構造をNMR分光法により検証した。
【0159】
代替的合成:
フルオレセインを含むCellophilコポリマーの合成は、RAFT試薬としてRAFT−DMA−N
3プレポリマーおよび共主要モノマーとしてAK−フルオレセイン−V2(8.0当量)を使用して、共主要モノマーの共重合についての一般手順(実施例13、ステップ7)を介して達成することができる。
【0160】
ステップ5:アプタマーDML−7−[C6]−NH
2の合成
転移性前立腺がん細胞への特異性が知られているアプタマーDML−7の修飾形態(Duan et al. (2016) Oncotarget 7(24): 36436)を、固相(Sigma Aldrich、Gillingham、UK)に合成した。
5’-ACGCTCGGATGCCACTACAGGTTGGGG
TCGGGCATGCGTCCGGAGAAGGGCAAAC
GAGAGGTCACCAGCACGTCCATGAG-3’(配列番号2)-[C6]-NH
2
6炭素原子スペーサーおよび反応性アミノ基を付加して、機能化を容易にした。その後、アプタマーの凍結乾燥粉末を(緩衝剤)により室温で2時間再水和した。続いて、溶液を95℃で10分間加熱し、次いで、一晩かけて室温に冷まして、正確な三次元立体構造を得た。
【0161】
ステップ6:Cellophil−(フルオレセイン)
8−N
3へのDML−7−[C6]−NH
2アプタマーのカップリング
DNAアーゼ無含有PBS緩衝剤中のDML−7−[C6]−NH
2(1.0当量、ステップ5で調製)の溶液に、ジベンゾシクロオクチン−N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(1.5当量)を加える。反応混合物を、アプタマーアミンの完全な変換が観察(LC−MS)されるまで室温で混合する。続いて、Cellophil−(フルオレセイン)
8−N
3(2.0当量)を加え、アルキン−アプタマー中間体の完全な変換が観察されるまで反応させる。次いで混合物を、溶出剤として水(+0.01%のNaN
3)を用いるセミ分取(semi-preparative)GPCにより精製する。所望の生成物を含有する精製画分を、脱塩カラム(PD10、Thermo Fisher Scientific、German)で脱塩する。続いて、所望の生成物を凍結乾燥して、白色の粉末を得る。
【0162】
得られたアプタマー含有Cellophil−(フルオレセイン)
8を電気移動度シフトアッセイ(electromobility shift assay)(EMSA)により分析する。この分析では、18μLの後者コポリマーの貯蔵溶液[EMSA緩衝液(10mMのTris−HCl、75mMのKCl、0.25mMのEDTA、0.1%のTriton X100、5%のグリセロール(v/v)、0.2mMのDTT、pH8.0)中の0.3mg/mL]に、2μLの5×核酸試料緩衝液(Biorad、Germany)を加える。続いて、試料を1.5%のアガロースゲルにより電気泳動する(UV染色用に0.25μg/mlの臭化エチジウム、1×TAE緩衝剤を補充、135V、35分間)。DML−7アプタマーおよびCellophil−(フルオレセイン)
8−N
3は対照としての機能を果たす。バンド移行におけるシフトにより、Cellophil−(フルオレセイン)
8部分への共有結合に起因したアプタマーの分子量の増加が明らかに確認される。
【0163】
(実施例27)
オキシム機能化ポリマー担体の合成
ステップ1:tert−ブチル(6,6−ジメチル−7,12−ジオキソ−4−チオキソ−3,5−ジチア−8,11−ジアザトリデカン−13−イル)オキシカルバメート(RAFT−EDA−オキシム−BOC)の合成
CH
2Cl
2(40mL)中の2−(((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)オキシ)酢酸(486mg、2.54mmol、1.0当量)の溶液に、HOBt水和物(467mg、3.05mmol)およびN1−((エチルイミノ)メチレン)−N3,N3−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン塩酸塩(511mg、2.67mmol、1.05当量)をN
2下、0℃で加えた。得られた溶液を0℃で30分間撹拌した。最後に、2−(2−(((エチルチオ)カルボノチオイル)チオ)−2−メチルプロパンアミド)エタンアミニウム2,2,2−トリフルオロアセテート(966mg、2.54mmol、1.0当量)およびN−エチル−N−イソプロピルプロパン−2−アミン(2,24mL、13.2mmol、5.2当量)を連続的に加え、反応混合物を0℃で1時間、次いで室温で一晩撹拌した。すべての揮発物を減圧下で除去し、残留物をEtOAc(100mL)に取った。有機混合物を、NH
4Clの飽和水溶液(3×40mL)、NaHCO
3の飽和水溶液(3×40mL)、ddH
2O(3×40mL)およびブライン(40mL)で連続的に洗浄した。有機相を乾燥し(Na
2SO
4)、すべての揮発物を減圧下で除去した。得られた黄色の固体残留物をEt
2O(40mL)に懸濁した。懸濁液をろ過し、フィルターケーキをEt
2O(2×20mL)、ddH
2O(3×20mL)およびEt
2O(3×20mL)で洗浄し、真空下で乾燥した。生成物を黄色の粉末(900mg、2.00mmol、収率79%)として単離した。標記化合物の構造をNMR分光法により検証した。
【0164】
ステップ2:RAFT−DMA−オキシム−BOCプレポリマーの合成
標記化合物の合成は、実施例13、ステップ5のプレポリマー合成についての一般的プロトコールに従い、RAFT−EDA−オキシム−BOCを出発材料として使用して達成した。所望の生成物の構造をMSおよびNMR分光法により検証した。
【0165】
ステップ3:Cellophil−オキシム−BOCの合成
標記化合物の合成は、RAFT−DMA−オキシム−BOCプレポリマーを出発材料として使用し、実施例13、ステップ7の一般的プロトコールに従って達成した。標記化合物の構造をGPCおよびNMR分光法により検証した。
【0166】
ステップ4:Cellophil−(フルオレセイン)
8−オキシム−BOCの合成
標記化合物の合成は、実施例15のアミン反応性活性剤についての一般的プロトコールに従い、Cellophil−オキシム−BOCおよびFITCを出発材料として使用して達成することができる。標記化合物の構造をNMR分光法により検証することができる。
【0167】
ステップ5:Cellophil−(フルオレセイン)
8−オキシムの合成
Cellophil−(フルオレセイン)
8−オキシム−BOCを、BOC脱保護についての一般手順(実施例16)に従って脱保護する。
【0168】
ステップ6:アルデヒド−IgGへのCellophil−(フルオレセイン)
8−オキシムのカップリング
Cellophil−(フルオレセイン)
8−オキシムを、文献(Dong et al. (2017) Angew Chem Int Ed 56: 1273)に記載されているように、酸化(NaIO
4)ポリクローナル抗体IgG(アルデヒドIgG)に共有結合的にカップリングさせることができる。所望の生成物の構造をMSにより検証することができる。
【0169】
(実施例28)
モデルタンパク質へのCellophil−(フルオレセイン)
8−N
3の結合
ステップ1:mCherryモデルタンパク質のアルキン機能化:
脱ガスPBS緩衝剤、pH7.5中の実施例25のシステイン担持mCherryモデルタンパク質(1.0当量)の溶液に、過剰量のトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)(100当量)を不活性雰囲気下で加える。得られた溶液を十分に混合し、DMSO中のジベンゾシクロオクチン−マレイミド(DBCO−マレイミド)の脱ガス溶液を不活性雰囲気下で加える前に、20分間放置する。得られた反応混合物を室温で一晩撹拌した。次いで混合物を、溶出剤として水(+0.01%のNaN
3)を用いるセミ分取GPCにより精製する。所望の生成物を含有する精製画分を、脱塩カラムを使用して脱塩して、mCherry−DBCOを得る。
【0170】
ステップ2:クリック化学を介したmCherryモデルタンパク質のCellophil機能化:
PBS緩衝剤、pH7.5中のmCherry−DBCO(1.0当量)およびCellophil−(フルオレセイン)
8−N
3(2.0当量、実施例26、ステップ4で得た)の溶液を、室温で16時間撹拌する。次いで混合物を、製造会社のプロトコールに従ってNi
2+NTAアフィニティークロマトグラフィー(ニッケル−NTAアガロース、Thermo Fisher Scientific、Germany)により精製する。(mCherryはヘキサ−ヒスチジンタグを含む。)所望の生成物を含有する精製画分を、脱塩カラムを使用して脱塩して、mCherry−Cellophil(フルオレセイン)
8を得る。得られたタンパク質ポリマーコンジュゲートは、実施例25に提示されたプロトコールおよび対照としてCys−mcherry−LPETG−His
6(実施例25を参照すること)を使用して、SDS−PAGEにより分析することができる。クーマシー染色ゲルにおいて観察された対照と比較した生成物のサイズの増加は、タンパク質へのポリマーのカップリングが成功したことを示している。
【0171】
(実施例29)
アザマイケルライゲーション戦略を利用したアミン修飾NH
2−G
n−Cellophil−(DOX)
8によるHer2+抗体(トラスツズマブ)における未変性リジン残基の機能化
トラスツズマブ−Cellophil−(DOX)
16の合成は、抗体の軽鎖にカップリングしているアミン求核剤としてNH
2−G
n−Cellophil−(DOX)
8を使用し、Bernades, G. J. L.(J Am Chem Soc (2018) 140: 4004-)により開発されたプロトコールに従って達成される。これは、抗体分子1個あたり平均して16個のドキソルビシン分子を含むADC複合体をもたらす。トラスツズマブ(PBS中20mg/ml)はCarbosynth、UKから得た。
【0172】
(実施例30)
トラスツズマブ−Cellophil−(DOX)
16の抗がん有効性
トラスツズマブ−Cellophil−(DOX)
16(実施例29を参照すること)の抗がん有効性は、以下のように検証することができる。
【0173】
実験は、SKBR3およびMDA−MB−468のがん細胞系を使用して96ウェルプレートで実施する。SKBR3細胞は、ヒト上皮増殖因子受容体2を過剰発現し(HER2+)、一方、MDA−MB−468細胞は、この受容体を発現しない(HER2−)。ウェルには、5,000〜10,000個の細胞を、4.5g/Lのグルコース、1.5mMのL−グルタミンおよび10%ウシ胎児血清(MG−30、CLS)を補充した、75μLのダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)に接種する。加湿インキュベーターにより37℃および5%CO
2で1日インキュベートした後、25μlの増殖培地中のADCトラスツズマブ−Cellophil−(DOX)
16(実施例29で調製)の段階希釈物をウェルに加える。ウェルにおける最終ADC濃度は0.02ng/mL〜20μg/mLの範囲である(ADC未変性細胞が陰性対照としての機能を果たす)。各希釈物を3連で試験する。比較する目的で、並行培養物は増殖培地中のトラスツズマブの段階希釈物を受ける。72時間インキュベートした後、プレートをインキュベーターから取り出し、室温に平衡にする。およそ20分後、細胞生存率を、製造会社の使用説明書に従って実施されるaWST−1細胞増殖アッセイ(Sigma−Aldrich、Germany)によりアッセイする。アッセイの読み取り値は、420〜480nmでの吸光度である。トラスツズマブ−Cellophil−(DOX)
16の抗がん有効性は、ADC処理培養物、非処理培養物およびトラスツズマブ処理培養物においてそれぞれ測定された吸光度値を比較することによって推定される。SKBR3およびMDA−MB−468から得た結果の比較は、ADCの標的特異性につての情報を提供する。
【0174】
(実施例31)
フルオレセイン修飾共主要モノマーを使用するクリック反応性アジドCellophil(フルオレセイン)
8の合成
AK−フルオレセイン(実施例10)を、以下のプロトコールを利用して、アジド修飾RAFT剤(1−((3−アジドプロピル)アミノ)−2−メチル−1−オキソプロパン−2−イルエチルカルボノトリチオエート)によるRAFT重合において共重合した。
【0175】
DMA(0.97mmol、80当量)およびAK−フルオレセイン(0.097mmol、8当量)を2mlの乾燥ジオキサンに溶解し、N
3−RAFT[(1−((3−アジドプロピル)アミノ)−2−メチル−1−オキソプロパン−2−イルエチルカルボノトリチオエート](0.012mmol、1当量)およびAIBN(4.85μmol、0.4当量)を加えた。完全に溶解した後、重合を、65℃に加熱することによって誘導した。重合は、65℃での6時間のインキュベーションの後で完了した。続いて、反応混合物を室温に冷却し、コポリマーのRAFT基を、実施例13に提示されたプロトコールを使用して除去した。次いで、得られた混合物をddH2Oで透析し(MWCO 3.5kDa)、濃縮液を凍結乾燥して、N
3−Cellophil−(フルオレセイン)
8を橙色の粉末(85%)として得た。この化合物の構造をNMR分光法およびGPC分析により検証した(約13kDaのMW、1.08のPDI)。
【0176】
N
3−Cellophil−(フルオレセイン)
8を、アルキン(例えば、DBCO)修飾がん細胞特異的標的化部分との銅無含有クリック反応に使用することができる。
【0177】
(実施例32)
発癌性タンパク質を標的にするヨウ素負荷Cellophil抗体コンジュゲートの合成
広範囲の癌遺伝子に対するモデル抗体ポリマーコンジュゲートを生成するために、タンパク質BMI−1を標的にする市販の抗体を選択した。BMI−1(ポリコームリングフィンガー(polycomb ring finger)癌遺伝子)は、成人造血幹細胞、ならびに成人末梢および中枢神経系神経幹細胞の効率的な自己再生細胞分化にとって必要である。BMI−1は、細胞周期阻害遺伝子であるp16およびp19を調節する癌遺伝子であると報告されている。BMI−1の過剰発現は、膀胱、皮膚、前立腺、乳房、卵巣、結腸直腸などのいくつかのタイプのがん、ならびに血液系悪性腫瘍において重要な役割を果たすと思われる(Lessard J et. al. (2003). Nature 423 (6937): 255−60. doi:10.1038;Molofsky AV et. al. (2005). Genes Dev. 19 (12): 1432−7. doi:10.1101/gad.1299505)。
【0178】
放射性ヨウ素を負荷することができるNH
2−GGG−Cellophil[DMA
41/AK−フェノール
3]の合成は、実施例20に提示されたプロトコールと同様であるが、AK−フェノール(3当量)と主要モノマーDMA(41当量)のモル比を調整して実施した。得られたコポリマーの平均分子量(5.6kDa)および分子量分布(PDI 1.18)が、LC−MSおよびゲル浸透クロマトグラフィーにより記録された。透析およびフリーズドライにより精製した後、Cellophilコポリマーを、ソルターゼ認識モチーフ(LPETG)を含む完全長ヒトポリコームリングフィンガー癌遺伝子に対するAbFlex(商標)BMI−1(モノクローナル)抗体に以下のプロトコールを使用してカップリングした。
【0179】
BMI−1抗体[6μM]をNH
2−GGG−Cellophil[DMA
41/AK−フェノール
3][120μM]と共に、[2μM]のソルターゼA(アミノ酸置換基P94R、D160N、D165A、K190EおよびK196Tを含み、C末端6xHisタグを含むソルターゼA5タンパク質[S.aureaus、Uniprot A0A077UNB8−1]、Active Motif Inc.、USA)の存在下、HEPESベース反応緩衝液(Active Motif Inc.、USA)中に30℃で1時間インキュベートした。米国特許第9,267,127号。CellophilコポリマーまたはソルターゼAが欠如している対照反応を並行して実施した。カルシウム依存性カップリング反応を、EDTA二ナトリウム塩(250mM)の添加により最終の濃度の5mMにして停止させ、試料を最終的に特徴付けするまで4℃で保管した。
【0180】
分析のため、抗体ポリマーコンジュゲートをFabricator(登録商標)(Genovis Inc.、USA)で消化した。[FabRICATOR(IdeS)は、ヒンジの下にある特異的部位で抗体を消化し、F(ab’)2およびFc/2断片の均質プールを生成するシステインプロテアーゼである]。消化は製造会社のプロトコールに従って実施した。続いて、切断生成物を、実施例25のプロトコールを使用してSDS−PAGEにより分析した。抗体のFc/2バンドにおける高分子量へのシフトは、抗体へのCellophilコポリマーのカップリングが成功したことを示した。カップリング反応の効率を、陰性対照の残存(非修飾)Fc/2バンドと比較して半定量的に分析した。カップリング効率は約50%であることが見出された。
カップリング生成物の詳細な特徴付けでは、IdeS消化抗体CellophilコンジュゲートのLC−MS分析を、以下のプロトコールを使用して実施した。
【0181】
IdeS消化抗体Cellophilコンジュゲートの反応混合物をddH
2Oで10倍に希釈した。5μLの得られた溶液をLCMSシステム(G6230 LC−MS TOF System、Agilent、Santa Clara、CA)に注入し、水、イソプロパノール、ACNおよび0.1%FAからなる溶出剤を用いるC8−HPLCカラムを使用して分離した。続いて、クロマトグラムおよびスペクトルをAgilentのMasshunterソフトウエアソルーションを使用して解析した。クロマトグラムおよびスペクトルの分析は、コポリマーがmABの重鎖のみにカップリングすることを示した。
【0182】
Cellophil抗BMI−1コンジュゲートに、実施例21に提示されたプロトコールを使用してヨウ素放射性同位体を負荷して、標的がん療法のための抗体ポリマーコンジュゲートを生成することができる。一部の実施形態において、例えば、長い半減期を有するヨウ素同位体の場合では、AK−フェノール含有コポリマーの負荷を標的化抗体にカップリングする前に実施してもよい。
【0183】
(実施例33)
mTGタグ(=NH
2−PEG
n)−RAFT−BOCによるCellophil(DMA
n/AK
m)コポリマーの合成
以下の手順は、放射性同位体を結合するために共有結合キレート剤により機能化されうるCellophilコポリマーの合成を説明している。ここに提示されているコポリマー(mTGタグ)−DMA
30/AK
8は、一般合成手順を例示する機能を果たす。コポリマーのサイズおよびコポリマーに含まれている機能化部位の数は、用いるモノマーのモル比を変えることで変更することができる。
【0184】
ddH
2O中のDMA(116μL、1120μmol、30当量)およびAK(60mg、300μmol、8当量)の溶液に、tert−ブチル(6,6−ジメチル−7−オキソ−4−チオキソ−11,14,17,20,23−ペンタオキサ−3,5−ジチア−8−アザペンタコサン−25−イル)カルバメート(22mg、32.2μmol、1.0当量)およびVA044(3.6mg、11.2μmol、0.3当量)を連続的に加えた。反応混合物を60℃で4時間撹拌した。次いで反応混合物をddH
2Oおよびジオキサンで希釈した。この溶液に、ホスフィン酸(50w%、27μL、158μmol、5当量)、TEA(22μL、158μmol、5当量)およびAIBN(1.6mg、9.5μmol、0.3当量)を連続的に加えた。反応混合物を75℃で8時間撹拌した。次いで、得られた混合物をddH
2Oで透析し(MWCO 3.5kDa)、濃縮液をフリーズドライして、Cellophil BOC−NH−PEG
5−(DMA
30/AK
8)を白色の粉末(140mg、120μmol、2ステップで78%)として得た。得られた化合物の構造を、NMR分光法および以下のプロトコールを使用するGPCにより検証した。3.33mg/mLのコポリマーの貯蔵溶液を、溶出緩衝液(0.05%(w/v)NaN
3を含有する脱イオン水)で調製し、0.45μmシリンジフィルターでろ過した。続いて、0.4mLの貯蔵溶液をGPC装置(1260 Infinity LC−System、Agilent、Santa Clara、CA)のポートに注入した。クロマトグラフィーを、溶出緩衝剤により一定流速の0.5mL/分で実施した。コポリマーの試料を、55℃の外部カラムオーブンに設置されたSupurema3カラムシステム(プレカラム、1000Å、30Å;粒径5μm;PSS、Mainz、Germany)で分離した。コポリマーをRI(屈折率)およびUV検出器により分析した。較正曲線(10ポイント)を、プルラン標準を使用して確立した。特徴付けされたコポリマーの分子量を、この標準を参照することにより推定した。
【0185】
(実施例34)
無水物DOTA/NHS−DOTAによるCellophil[BOC−NH−PEG
5−(DMA
30/AK
8)]コポリマーの機能化
ddH
2O中のCellophil BOC−NH−PEG
5−(DMA
30/AK
8)(20mg、3.45μmol)の溶液に、DMSO中の無水物DOTA(25mg、36μmol)またはNHS−DOTA(27mg、36μmol)の溶液を加え、35℃で24時間撹拌し、次いでこの溶液に3M HClを加え、0℃に1時間加熱した。次いで、得られた混合物をddH
2Oで透析し(MWCO 3.5kDa)、濃縮液をフリーズドライして、NH
2−PEG
5−(DMA
30/AK−DOTA
8)を得た。得られた化合物の構造をNMR分光法により検証した。
【0186】
(実施例35)
Cellophil[DBCO−NH−PEG
5−(DMA
30/AK−DOTA
8)]の合成。
乾燥DMSO(1.5mL)中のCellophil NH
2−PEG5−(DMA
30/AK−DOTA
8)(3.6μmol)、DBCO−NHS(18μmol)およびトリエチルアミン(7.2μmol)の溶液を25℃で24時間撹拌した。次いで、得られた混合物を0.1Mの炭酸アンモニウムで透析し(MWCO 3.5kDa)、濃縮液をフリーズドライして、Cellophil DBCO−NH−PEG5−(DMA
30/AK−DOTA
8)を得た。反応をGPCで追跡し、得られた化合物の構造をNMR分光法により検証した。
【0187】
(実施例36)
Her2受容体過剰発現がん細胞を標的にする診断薬および治療薬のための放射標識トラスツズマブ−[Cellophil−(DOTA
4]
2コンジュゲートの合成
腫瘍診断では、原発性腫瘍またはその転移の検出限界が患者の生存率にとって重要であり、それは後期腫瘍が多くの場合に不十分な予後に関連するからである。がん細胞の検出と同様に後の治療における放射標識腫瘍組織特異的抗体の使用は、放射線医学(radio medicine)にとって潜在的に有望な方法である。しかし、この種の手法は低い信号対雑音比が妨げになっており、それは、わずかな放射性同位体のみが標的化部分/抗体に結合されうるという事実、および目的の放射性同位体が短い(通常、抗体の半減期より短い)半減期を有するという事実に起因している。したがって、放射性同位体のカーゴを増やすことがきわめて望ましい。この実施例には、改善された腫瘍細胞の検出および治療のために放射標識抗体Cellophilコンジュゲートが記載されている。
【0188】
実施例33〜35に提示された手順により合成されたDBCO機能化Cellophilポリマーを、Dennler et al. (Bioconjugate Chem. (2014) 25: 569 -578)により記載された手順により295位のグルタミン(Q295)がアジド基で機能化されているIgGタイプのがん細胞特異的抗体(例えば、Her2+がん細胞を標的にするトラスツズマブ)にコンジュゲートする。
【0189】
簡潔には、抗体をPNGアーゼF(Merck KGaA、Darmstadt、Germany)で脱グリコシル化する。PBS(pH7.4)中のトラスツズマブ(Carbosynth Ltd、Berkshir、UK)10μgあたり1単位の酵素を含有する反応混合物を、Q295を活性化するため、37℃で一晩インキュベートする。続いて、PBS(pH8)中の脱グリコシル化トラスツズマブ(6.6μm)をNH
2−PEG
5−アジド(80モル当量)および微生物トランスグルタミナーゼ(MTGアーゼ)(6U/mL、Zedira、Darmstadt、Germany)と共に37℃で16時間インキュベートする。インキュベートした後、MTGアーゼ活性を、MTGアーゼ反応停止剤(reactionstopper)(Zedira、Darmstadt、Germany)の添加により遮断する。過剰NH
2−PEG
4−アジド、MTGアーゼおよび残存PNGアーゼFを除去するため、反応混合物を、Amicon(登録商標)Ultra 4mLカラム(100kDa MWCO、Merck KGaA、Darmstadt、Germany)を使用してNH
4OAc(0.5m、pH5.5)に緩衝剤交換する(3回)。
【0190】
続いて実際のクリック反応は、トラスツズマブ−(NH−PEG
5−アジド)
2を3倍モル過剰のDBCO機能化Cellophilポリマーと共に37℃で3時間インキュベートすることによって実施して、トラスツズマブ−(Cellophil−DOTA
4)
2を生じる。過剰ポリマーおよび非機能化トラスツズマブをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により除去し、完全機能化抗体を含有する画分をプールすることができる。
【0191】
111−InCl
3による抗体Cellophilコンジュゲート(トラスツズマブ−(Cellophil−DOTA
4)
2の1μgあたり4MBq)の放射標識を37℃で1時間実施し、その後、インジウム−111標識抗体ポリマーコンジュゲートを、0.5mL/分の流速で実施するSuperdex75 10/300GLカラム(GE Healthcare、Chicago、USA)のSECにより精製する。大ピーク画分をプールする。得られたトラスツズマブ−[Cellophil−(DOTA−In−111)
4]
2を使用して、陽電子放射断層撮影法(PET)により、例えば、乳がん、結腸がん、または肺がんの患者において、従来の抗体放射性同位体複合体によって得ることができる感受性より高い感受性でHer2+がん細胞を検出することができる。感受性の増加は、In−111カーゴが従来の放射標識抗体と比較して増加していることに起因する。
【0192】
同じ手順を使用して、ルテチウム177などの適切な治療用放射性同位体が負荷された治療用抗体Cellophilコンジュゲートを調製することができる[上記に記載された手順に使用された111−InCl
3を177−LuCl
3に置換する]。
【0193】
(実施例37)
シクロアルキンCellophil(DOTA
n)−CO
2Hの合成
本開示のコポリマーをクリック反応性シクロアルキン基、例えばDBCOにより機能化するため、クリック反応性部分を、RAFT基の除去の際に組み込むことができる。
ステップ1−シクロアルキン開始剤の合成
DBCO修飾開始剤を、Ulbrichおよび同僚のプロトコール(Polym. Chem., 2014 5, 1340)に従って合成する。
ステップ2−RAFT−Cellophil−CO
2Hコポリマーの合成:
RAFT−Cellophil−CO
2Hコポリマーの合成は、実施例13に記載された一般的プロトコール(ステップ6〜7のエチルRAFT試薬から出発する)に従って達成される。
ステップ3−シクロアルキンCellophil(DOTA
n)−CO
2Hコポリマーの合成:
DMSO/ddH
2O(1/1)中のRAFT−Cellophil−CO
2Hの溶液に、シクロアルキン含有開始剤(20当量)を一度に加える。反応混合物を封止し、黄色が消滅するまで(4時間)70℃で加熱する。そのうえ、反応の進行をHPLCによって追跡する。得られた溶液を室温に冷却し、pHを、p−NCS−Bz−DOTA−GA(Chematech)またはDOTA−NHS(コポリマーにおける反応性アミノ基1つあたり2当量)を加える前に8に調整する。混合物をddH
2O(MWCO:5000Da)で透析し、濃縮液を凍結乾燥し、NMR分光法およびSECにより特徴付ける。
【0194】
(実施例38)
Her2受容体過剰発現がん細胞を標的にする治療薬のための放射標識トラスツズマブ−[Cellophil−(DOTA
4]
4コンジュゲートの合成
実施例33および35に提示された手順により合成されたDBCO機能化Cellophilポリマーを、製造会社のプロトコールに従って使用した市販の酵素ベース修飾キット(SiteClick(商標)Antibody Labeling System、Thermo−Fisher−Scientific、Waltham、USA)により、重鎖1つあたり2つのアジド基で機能化されている(抗体1つあたり最大4つのアジド基の付加をもたらす)IgGタイプのがん細胞特異的抗体(Her2+がん細胞を標的にするトラスツズマブ(登録商標))にコンジュゲートした。
【0195】
トラスツズマブ−アジド
4におけるアジド基へのカップリングは、抗体のアジド基に対して1.5倍モル過剰のDBCO−Cellophilコポリマーを使用し、実施例36に提示されたプロトコールに従って実現した。カップリングの成功は、SDS−PAGEにより検証した。
【0196】
177−LuCl
3による放射標識[トラスツズマブ−(Cellophil−DOTA
4)
4の1μgあたり8MBq]は、37℃で1時間インキュベートすることによって実施し、その後、ルテチウム−177標識抗体ポリマーコンジュゲートを、Superdex75 10/300GLカラム(GE Healthcare、Chicago、USA)のSECにより精製する。得られたトラスツズマブ−[Cellophil−(DOTA−Lu−177)
4]
4を使用して、Her2過剰発現がん細胞を標的にし、破壊することができる。
【0197】
同じ手順を使用して、放射性同位体Lu−177を適切な診断用放射性同位体、例えばガリウム68に置換して[上記に提示された手順において177−LuCl
3を68−GaCl
3に置換することにより]、診断用抗体Cellophilコンジュゲートを調製することができる。
【0198】
(実施例39)
mTgタグCellophilからの、Her2受容体過剰発現がん細胞を標的にする診断薬および治療薬のための放射標識トラスツズマブ−[Cellophil−(DOTA
8]
2コンジュゲートの合成
実施例34のCellophilコポリマーを、基質としてコポリマーのNH
2−PEG
5基を使用して、トランスグルタミナーゼ媒介反応により、トラスツズマブのようなモノクローナル抗体に直接カップリングすることができる。このため、実施例36のプロトコールを使用するが、NH2−PEG
4−アジドをNH
2−PEG
5−DMA
30/AK−DOTA
8に置き換え、抗体の40倍のモル過剰量で使用して16個のキレート剤を有する抗体、すなわち、トラスツズマブ−[Cellophil−(DOTA
8]
2を生成することが例外である。
【0199】
(実施例40)
TCO−Tzクリック化学による標的化部分へのカップリングのための、テトラジン機能化Cellophilコポリマーの合成
ステップ1:テトラジン−Cellophilコポリマーの合成:
乾燥DMSO(1.5mL)中の実施例34のCellophilコポリマー(3.6μmol)、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル2−(4−(6−メチル−1,2,4,5−テトラジン−3−イル)フェニル)アセテート(18μmol)およびトリエチルアミン(7.2μmol)の溶液を、25℃で24時間撹拌した。次いで、得られた混合物を0.1Mの炭酸アンモニウムで透析し(MWCO 3.5kDa)、濃縮液をフリーズドライして、テトラジン−Cellophil[DMA
30/AK−DOTA
8]を得た。反応をSECにより追跡し、得られた化合物の構造をNMR分光法により検証した。
【0200】
(実施例41)
テトラジン−歪みアルキン[4+2]付加環化を利用する蛍光団修飾Cellophil−[DMA
30/AK−DOTA
8)の合成
乾燥DMSO(0.5mL)中の実施例40のテトラジン修飾Cellophilコポリマー(1.3μmol)および(E)−6−アミノ−9−(2−カルボキシ−5−((5−(((シクロオクタ−4−エン−1−イルオキシ)カルボニル)アミノ)ペンチル)カルバモイル)フェニル)−4,5−ジスルホ−3H−キサンテン−3−イミニウム(1.3μmol)の溶液を、25℃で24時間撹拌した。次いで、得られた混合物を0.1Mの炭酸アンモニウムで透析し(MWCO 3.5kDa)、濃縮液をフリーズドライして、AF色素488クリックCellophilを得た。反応をGPCにより追跡し、得られた化合物の構造をNMR分光法により検証した。蛍光団標識Cellophil誘導体を使用して、例えば、強力な読み取りシグナルが有益である血流内のコポリマーの半減期または腎排出を決定するために、薬力学的研究を実施することができる。
【0201】
(実施例42)
TCO修飾タンパク質へのCellophilテトラジン−[DMA
30/AK−DOTA
8)のカップリング
実施例40のテトラジン機能化Cellophilコポリマーの溶液(3当量)をPBS(pH7.4)に溶解し、PBS(pH7.4)に溶解したトランスシクロオクテン(TCO)修飾タンパク質[NH
2−PEG
5−TCOをNH
2−PEG
5−アジドに置換して実施例36に提示された方法と同様の方法によって調製することができる](2つのTCO基を含む1当量)を撹拌下、室温で3時間かけて滴下により添加する。続いて未反応ポリマーを、100kDaのMWCOを有する膜を使用する透析により除去する。反応の成功をSDS−PAGEおよびHPLCにより追跡する。
【0202】
(実施例43)
AK−DOTAの合成
無水DMF(1mL)中のAK(50mg、250μmol)およびEt
3N(104μL、749μmol)の溶液に、DOTA−NHS(HPF
6/TFA塩)(200mg、262μmol)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、綿のパッドでろ過した。ろ液をMeCNに沈殿させ、次いでろ過した。ケーキをMeCNで洗浄し、減圧下で乾燥して、白色の粉末(95mg、65%)を得た。この化合物を、重合の際にコポリマーへのキレート剤の指向組み込みに使用することができる。