特表2021-523416IP Force 特許公報全文掲載

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-523416(P2021-523416A)
(43)【公表日】2021年9月2日
(54)【発明の名称】有機発光デバイスの光抽出層のための被覆溶液およびそれを使用することによって有機発光デバイスの光抽出基板を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20210806BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20210806BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210806BHJP
【FI】
   G02B5/02 B
   H05B33/02
   H05B33/14 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-563788(P2020-563788)
(86)(22)【出願日】2019年5月14日
(85)【翻訳文提出日】2021年1月12日
(86)【国際出願番号】US2019032243
(87)【国際公開番号】WO2019222233
(87)【国際公開日】20191121
(31)【優先権主張番号】10-2018-0055478
(32)【優先日】2018年5月15日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュヨン
【テーマコード(参考)】
2H042
3K107
【Fターム(参考)】
2H042BA02
2H042BA15
2H042BA20
3K107AA01
3K107CC05
3K107EE28
3K107FF00
3K107FF03
3K107FF14
3K107FF15
3K107GG06
3K107GG08
(57)【要約】
有機発光デバイスの光抽出層のための被覆溶液は、金属酸化物を含む光散乱粒子、および溶媒を含むことがある。有機発光デバイスの光抽出基板を製造する方法は、その被覆溶液を使用して、インクジェットコーティングまたは吹き付けコーティングによって、ベース基板上に光抽出層を形成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光デバイスの光抽出層のための被覆溶液であって、
金属酸化物およびSiO2の少なくとも一方を含む光散乱粒子、および
溶媒、
を含み、
24時間に亘り測定されたときに、30以下のTurbiscan Stability Index(TSI)を有する、被覆溶液。
【請求項2】
前記金属酸化物が、TiO2、SiO2、BaTiO3、ZnO、MgO、SnO2、Al2O3、ZrO2、CeO2、Fe2O3、Fe3O4、WO3、Y2O3、SrTiO3、FeTiO3、MnTiO3、Nb2O5、およびKTaO3からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1記載の被覆溶液。
【請求項3】
前記溶媒が、ブチルセロソルブ、ジアセトンアルコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、α−テルピネオール、ベンジルアルコール、ドデカン、ホルムアミド、エチル−3−エトキシプロピオネート、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シロキサン、シルセスキオキサン、シラザン、シロキサン誘導体、シルセスキオキサン誘導体、およびシラザン誘導体からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1または2記載の被覆溶液。
【請求項4】
前記光散乱粒子の質量が、前記被覆溶液の質量の50%以下であり、該光散乱粒子が、20nmから50nmに及ぶ粒径を有する、請求項1から3いずれか1項記載の被覆溶液。
【請求項5】
分散剤をさらに含み、該分散剤が、高分子のアルキルアンモニウム塩、ポリエーテルホスフェート、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリ(エチレンオキシド)、第二級アルコールエトキシレート、アクリレートポリマー、および2−(ジブチルアミノ)エタノールからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1から4いずれか1項記載の被覆溶液。
【請求項6】
前記分散剤の質量が、前記光散乱粒子の質量の15%以下である、請求項5記載の被覆溶液。
【請求項7】
前記被覆溶液が、10dyn/cm(mN/m)から70dyn/cm(mN/m)に及ぶ表面張力、および0.1cpから20cpに及ぶ粘度を有する、請求項1から6いずれか1項記載の被覆溶液。
【請求項8】
前記被覆溶液が、5cpから15cpに及ぶ粘度を有する、請求項7記載の被覆溶液。
【請求項9】
有機発光デバイスの光抽出基板を製造する方法において、
被覆溶液を使用することによって、ベース基板上に光抽出層を形成する工程、
を有してなり、
前記被覆溶液は、
金属酸化物およびSiO2の少なくとも一方を含む光散乱粒子、および
溶媒、
を含み、
該被覆溶液は、24時間に亘り測定されたときに、30以下のTurbiscan Stability Index(TSI)を有する、方法。
【請求項10】
前記光抽出層を形成する工程が、インクジェットコーティングまたは吹き付けコーティングにより前記ベース基板を前記光抽出層で被覆する工程を含む、請求項9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その全ての内容がここに引用される、2018年5月15日に出願された先行する韓国特許出願第10−2018−0055478号からの優先権に基づき、その恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
有機発光デバイスの光抽出層のための被覆溶液およびそれを使用する有機発光デバイスの光抽出基板の製造方法
【背景技術】
【0003】
有機発光デバイスの光抽出効率への関心が増すにつれて、内部または外部光抽出層についての研究が活発に行われてきた。全発光の約20%しか外部に放出されないので、光抽出層についての研究は、有機発光デバイスからの光の80%(光導波路モードで失われる)を抽出し、使用するように行われている。その光抽出層は、大きく、内部および外部光抽出層に分けられる。外部光抽出層は、ベース基板の外側に、様々な形態のマイクロレンズを含むフイルムを取り付けることによって効果を達成することができ、その光抽出効率は、マイクロレンズの形態にあまり依存しない。光導波路モードで失われる光を抽出する内部光抽出層は、外部光抽出層よりも高い光抽出効率を達成することができる。内部光抽出層が、異なる屈折率を有する材料の混合物により形成される場合、光散乱効果を最大にすることが可能である。しかしながら、この目的のために、光が認識できるサイズを有する光散乱構造を混合しなくてはならない。様々な形態(粒子の形状、細孔の形状など)および様々な材料の光散乱構造が利用されることがある。
【発明の概要】
【0004】
本開示の非限定的な実施の形態の態様は、失われる光を抽出できる光散乱層を被覆するための被覆溶液および光抽出基板を製造する方法
【0005】
本開示の特定の非限定的な実施の形態の態様は、先に述べられた特徴および/または先に述べられていない他の特徴に対応する。しかしながら、その非限定的な実施の形態の態様は、先の特徴に対応する必要はなく、本開示の非限定的な実施の形態の態様は、先に記載された特徴に対応しなくてもよい。
【0006】
本開示の第1の態様によれば、有機発光デバイスの光抽出層のための被覆溶液が提供される。その被覆溶液は、金属酸化物を含む光散乱粒子、および溶媒を含む。
【0007】
本開示の第2の態様によれば、有機発光デバイスの光抽出基板を製造する方法が提供される。この方法は、有機発光デバイスの光抽出層のための被覆溶液を使用して、ベース基板上に光抽出層を形成する工程を含む。
【0008】
本開示の実施の形態は、以下の図面に基づいて、詳しく記載される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本開示の実施の形態による有機発光デバイスの構造を示す断面図
【図2】ベース基板に被覆溶液の液滴を吹き付け、被覆する過程を連続的に示す図
【図3】被覆層のエッジプロファイルを示す図
【図4】被覆層の平面図
【図5】被覆層のエッジプロファイルを示す測定結果
【図6】代表的な波長(400nm、550nmおよび660nm)に関する高屈折率金属酸化物のマトリクス中の、細孔である光散乱構造によるヘイズ強度のシミュレーション結果を示すグラフ
【図7】比較例における被覆層のエッジに生じるコーヒーリングを示す図
【図8】本開示の実施の形態による被覆溶液の溶液安定性を示す図
【図9】本開示の実施の形態による被覆溶液の表面張力を示す図
【図10】被覆溶液の粘度に依存するインクジェットコーティングの結果を示す図
【図11】剪断速度を変えながら、本開示の実施の形態による被覆溶液の粘度を測定することによって得られた結果を示すグラフ
【図12】本開示の実施の形態により製造された光抽出基板を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以後、添付図面を参照して、本開示を詳しく説明する。
【0011】
図1は、本開示の実施の形態による有機発光デバイスの構造を示す断面図である。
【0012】
図1に示されるような、実施の形態において、有機発光デバイスは、光抽出基板およびその光抽出基板上に形成された有機発光素子を含むことがある。実施の形態において、その光抽出基板は、ベース基板10、およびベース基板10上に形成された光抽出層を含むことがある。実施の形態において、その光抽出層は、光散乱層20を含むことがある。有機発光素子は、電極層40、60および有機層50を含むことがある。有機層50は、発光層を含むことがある。実施の形態において、その光抽出層は、光散乱層20に加え、光散乱層20と電極層40との間に形成された平坦化層(図示せず)を含むことがある。電極層40、60を通じて、有機層50に電気エネルギーが供給されたときに、有機層50の発光層内で光が発生し、発生した光は、電極層40、光散乱層20およびベース基板10を順次通過し、次いで、外部に放出される。
【0013】
ベース基板10について、ガラス、プラスチックなど、どのような透明材料を使用してもよい。ベース基板10は、大量生産のために、ロール・ツー・ロール製造法によって、そのような材料を使用して製造されることがある。
【0014】
ベース基板10に光散乱層20を被覆するために、液体の被覆材料が好ましいであろう。有機発光デバイスの耐用年数について、水分および酸素が外部から侵入するのを防ぐように、有機発光デバイスの被包において光散乱層20を配置する必要がある。この場合、光散乱層20は、有機発光デバイスの形状(または有機層の形状)と一致する特定の形状(円形、四角形など)を有するように必ず調節される。この目的のために、バーコーティング、スロットダイコーティングなどによって、ベース基板10の全表面を被覆し、次いで、有機層の外側に対応する部分の上の被覆層を除去する方法、またはインクジェットコーティング、吹き付けコーティングなどによって、有機層に対応する部分のみを選択的に被覆する方法が使用されることがある。インクジェットコーティングまたは吹き付けコーティングを使用する場合、液体中に分散された光散乱粒子が噴射されるか、または吹き付けられる。ノズルから液滴の形態で噴射された液体の被覆溶液は、ベース基板10に到達するように動いている間に蒸発する。光散乱粒子などの固形物が含まれる場合、その蒸発はさらに促進されることがある。その理由は、1つの液滴の体積が非常に小さい、例えば、数ピコリットルから数十ピコリットル(ピコリットル:1×10−12L)であるからなのである。したがって、被覆方法に適した被覆溶液を製造する必要が必ずある。特に、インクジェットコーティングおよび吹き付けコーティングの場合、ノズルを詰まらせずに、優れたコーティング品質を得るように、最適な被覆溶液を提供する必要がある。
【0015】
有機発光素子内で生じる光を抽出する場合、屈折率の差による屈折を使用する方法を使用することが好ましく、これにより、光損失を減少させることができる。この場合、効率的な光散乱のために、適切なサイズを有する光散乱粒子が使用されることがある。その光散乱粒子は、TiO2、BaTiO3、ZnO、MgO、SnO2、Al2O3、ZrO2、CeO2、Fe2O3、Fe3O4、WO3、Y2O3、SrTiO3、FeTiO3、MnTiO3、Nb2O5、KTaO3などの金属酸化物、およびSiO2の内の少なくとも1つを含むことがある。
【0016】
粒子は、被覆に使用すべき液体の被覆溶液を製造するために、溶媒中に分散される。上述したように、液滴形態での選択的な被覆のために、光散乱構造を中に分散させるべき溶媒の揮発性が非常に重要である。溶媒が適切な揮発性を有さない場合、コーティングの品質が著しく低下するか、またはノズルが詰まるために、被覆を行うことができない。本開示の実施の形態において、その溶媒は、ブチルセロソルブ、ジアセトンアルコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、α−テルピネオール、ベンジルアルコール、ドデカン、ホルムアミド、エチル−3−エトキシプロピオネート、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シロキサン、シルセスキオキサン、シラザン、シロキサン誘導体、シルセスキオキサン誘導体、シラザン誘導体などからなる群より選択される少なくとも1つを含むことがある。
【0017】
実施の形態において、物理的性質を考えると、光散乱粒子の質量は、濾過によって異物が除去された後の被覆溶液の総質量の50%を超えないことがある。光散乱粒子の比率が大きすぎると、インクジェットノズルの詰まりが促進され、これにより、高品質のコーティングを得ることが難しくなる。
【0018】
適切な質量比の光散乱粒子および適切な揮発性を有する溶媒が使用される場合でさえ、安定な分散剤溶液を形成するために溶媒中に光散乱粒子が適切な分散されていなければ、被覆は不可能である。したがって、適切な分散剤(界面活性剤)が添加されることがある。実施の形態において、分散剤は、高分子のアルキルアンモニウム塩、ポリエーテルホスフェート、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリ(エチレンオキシド)、第二級アルコールエトキシレート、アクリレートポリマー、2−(ジブチルアミノ)エタノール、またはその混合物からなる群より選択される少なくとも1つを含むことがある。そのような材料は、被覆溶液が440℃の温度に曝されたときに、揮発性材料の99.5%以上が揮発された後の非常に安定な被覆層の形成に寄与できる。分散剤の量は、光散乱粒子の表面積に比例することがある。実施の形態において、金属酸化物の光散乱粒子が使用される場合、分散剤の量は、光散乱粒子の質量の15%を超えないことがある。その理由は、光散乱粒子の表面と結合していない余剰の分散剤または界面活性剤が、被覆溶液の安定性を損ない、有機発光デバイスの製造から長期間経過した後に、ガス放出し、それによって、有機発光デバイスの耐用年数が短くなることがあるからなのである。
【0019】
インクジェットコーティングまたは吹き付けコーティングの場合、液滴が噴射される。この時、液滴は、ベース基板10上で最適な湿潤性を有するように設計されるべきである。そうでなければ、液滴は、図2のB工程において融合されず、よって、滑らかな被覆表面を作ることが難しくなる。このことは、被覆溶液の接触角または表面張力に密接に関係している。初期段階で被覆された被覆表面の水平長さがL0と示され、乾燥後の被覆表面の水平長さがL1と示される場合、液滴の湿潤性のために、L1>L0の関係が通常満たされる。この場合、液滴が滑らかに融合され、長さL1が長さL0より過剰に大きくない場合、コーティング品質を制御することは容易である。例えば、長さL0が80mmである場合、本開示の実施の形態による被覆溶液を使用することによって、その長さは、L1<81.5mmに制御することができる(縦方向の増加比は1.9%未満である)。一般に、L1/L0<1.1の関係を満たすことのできる溶液を製造することが可能である。
【0020】
被覆溶液が施され、次いで、乾燥される間に、様々な現象が起きる。例えば、図2のCに示されるように、被覆層の端部が丘のように上昇する現象が起きる。このことは、被覆層の中心表面の高さがH1と示され、丘の高さがH2と示される場合、H2>H1を意味する(図3参照)。高さH2が高さH1より過剰に高い場合、分離および外観欠陥が生じる確率が高い。この現象は、全ての被覆層(図4の断面B)のエッジ部分で通常起こり、多角形被覆層(図4の断面A)を形成する場合、特に深刻になる。
【0021】
図4の形状の被覆が形成され、断面A、Bが表面プロファイラ(BRUKER Companyから得られるDekTak)により測定される場合、図5に示されるようなプロファイルを得ることができる。この時、高さH1、H2の比は、H2/H1<5となるであろう。実施の形態において、水平面と被覆表面との間の角度は、約10°以下、約2°以下、または約0.5°以下であることがある。図5は、水平面と被覆表面との間の角度が約3°である例を示す。
【0022】
通常、インクジェットまたは吹き付けコーティングに関して、金属酸化物の光散乱粒子は、ノズルに悪影響を及ぼすであろう。したがって、できるだけ小さいサイズを有する粒子を使用することが好ましい。しかしながら、数十ナノメートル以下の粒子は、ごくわずかな光散乱特性しか持たないので、その粒子を使用するインクジェット溶液の有効性は必然的に低下する。しかしながら、20nmから50nmの粒子に関してさえ、光散乱特性を最大にすることができる。このことが、図6のシミュレーション結果から分かる。本開示の実施の形態による被覆溶液が使用される場合、様々なサイズの細孔、例えば、数十ナノメートルから数百ナノメートルの細孔を形成することができ、よって、光散乱構造(効果的な細孔である)の形成を誘発することが可能である。図6は、光散乱構造の平均サイズが変数として使用され、FDTD法にしたがって、光散乱構造の比が被覆層の断面積の約11%である場合、代表的な波長(400nm、550nmおよび660nm)に関する高屈折率金属酸化物のマトリクス中の光散乱構造(細孔である)によるヘイズ強度のシミュレーション結果を示すグラフである。グラフから分かるように、光散乱構造(細孔である)のサイズが、d=1000nmを基準として、より小さくなるにつれて、ヘイズ強度が増加する。通常の有機発光デバイスが低強度の青を示すことを考えると、d=200nm以下の光散乱構造(400nmの波長辺りでより高いヘイズ強度を示す)が好ましいであろう。したがって、本開示に開示されたような非常に小さい粒子(20nmから50nm)を使用することによる細孔を形成する方法は、光散乱効率を増加させながら、インクジェットおよび吹き付けコーティングのノズルの耐久性を維持する上で重要な役割を果たすことができる。
【0023】
一般に、光抽出層の表面が滑らかであることが好ましい。その理由は、このことが、光抽出層上に電極層を形成し、次いで、その上に有機層を蒸着する上で役立つからなのである。反対に、光抽出層の表面が粗い場合、電極の断続が起こり、またはホットスポットが作られ、発熱による欠陥が生じてしまう。したがって、上述したように、約20nmから50nmの平均粒径を有する光散乱粒子が使用される場合、光抽出層の表面は、反射器のように、乾燥後に光沢仕上げになる。このことは、表面が意図されたように形成されていることを示す。
【0024】
大きい粒径を有する光散乱粒子を使用して調製された被覆溶液がインクジェットで被覆される場合、図7に示されるように、被覆層の内側と外側の間の境界に、不均一なラインが見える。このことは、光が不均一に抽出されるであろうから、好ましくない。被覆層のエッジにコーヒーリングが形成され、これは、エッジプロファイルが非常に悪いことを示す。また、大きい粒径を有する光散乱粒子が使用される場合、ノズルが頻繁に詰まり、これにより、被覆操作の生産性が著しく低下するであろう。
【0025】
この被覆溶液は、施され、次いで、440℃以上の温度に加熱される。このことは、有機発光デバイスを製造するときに、光抽出層のガス放出を最小にする働きをし、これは、有機発光デバイスの耐用年数にとって非常に役立つ。それに加え、高温加熱によって、光抽出層中に残される結合剤などの有機成分を除去することが好ましい。何故ならば、その有機成分は光抽出層の光吸収率を増加させて、効率を悪化させるからである。
【0026】
図8は、本開示の実施の形態による被覆溶液の安定性を示す図である。
【0027】
その実施の形態において、被覆溶液の安定性(TIS;Turbiscan Stability Index)は、24時間に亘り測定した場合、30以下または3以下であることがある。安定性(TSI)は、溶液が静置されたときに、後方散乱の変化量を使用することによって、安定性を測定するように作られたTurbiscan(Formulation Companyから得られる)を使用して測定することができる。
【0028】
【数1】
【0029】
図8に示された実施の形態において、TSIは、24時間に亘り測定されたときに、15℃から35℃で約2.0以下であり、50℃で約3.2であった。高温での急激な沈殿を考えると、非常に安定な被覆溶液を製造することが可能であることが分かる。
【0030】
通常のインクジェット用インクがナノ粒子を含むことは一般的ではない。しかしながら、本開示の実施の形態による被覆溶液はナノ粒子を含み、よって、安定性は非常に重要である。安定性が不十分な被覆溶液の場合、その溶液中に分散された光散乱粒子が急激に沈殿する。これにより、ノズルから吐出された溶液の濃度が不均一になるか、またはノズルが詰まることがある。
【0031】
図9は、本開示の実施の形態による被覆溶液の表面張力を示す図である。
【0032】
その実施の形態において、その被覆溶液の表面張力は、10dyn/cm(mN/m)から70dyn/cm(mN/m)、27dyn/cm(mN/m)から45dyn/cm(mN/m)、または32dyn/cm(mN/m)から45dyn/cm(mN/m)であることがある。本開示の実施の形態によるそのような表面張力を有する被覆溶液は、ノズルから正確な方向に吐出することができ、それゆえ、基板上に所望の形状で印刷することができる。
【0033】
図10は、その被覆溶液の粘度に依存するインクジェットコーティングの結果を示す図である。
【0034】
インクジェットコーティングに使用すべき被覆溶液の粘度は、0.1cpから20cpまたは5cpから15cpであることがある。
【0035】
図10を参照すると、被覆溶液A、Cの粘度は5cpから6cpであり、被覆溶液B、Dの粘度は2cpから3cpであった。同量の被覆溶液を滴下した場合、広がる程度は異なった。被覆溶液B、Dによる被覆は不可能ではなかったが、被覆溶液A、Cにより、より良い被覆結果が得られた。
【実施例】
【0036】
試験例1
1.48gの酸性高分子のアルキルアンモニウム塩を210gのジプロピレングリコールモノメチルエーテル(またはジアセトンアルコール)に加え、次いで、得られた混合物をよく撹拌した。次に、この混合物に37gのルチルTiO2粉末(平均粒径=20nmから50nm)を加え、これを再び撹拌し、350Wおよび20kHzの超音波プロセッサで1時間に亘り分散させた。適切なフィルタを使用して、分散溶液の不純物を濾過し、このように被覆溶液を得た。剪断速度を変えながら被覆溶液の粘度を測定することによって得られた結果が、図11に示されている。測定に、HAAKE(商標)Viscotester(商標)550を使用した。500/sから2500/sの範囲で5cpから15cpの粘度が観察された。このことから、被覆溶液が剪断薄化特徴を有することが分かるであろう。インクジェット印刷、吹き付けコーティングなどに、この被覆溶液が使用される場合、ノズルの端部で被覆溶液に高い剪断応力が瞬時に印加されるので、この被覆溶液は非常に都合の良い粘度挙動を有する。インクジェット塗工機により、ガラス製ベース基板10に被覆溶液を被覆し、このようにして、図12に示されたような光散乱層20を得た。光散乱層20上にITO電極層を蒸着した後、有機層を形成して、有機発光デバイスを製造した。この有機発光デバイスにより、1.6倍以上の光抽出効率が得られた。
【0037】
試験例2
0.4gのアルキルアンモニウム塩を加え、26gのジアセトンアルコールとよく混合した。この混合物に8g(23.3質量%)のBaTiO3粉末を加え、これを次いで、300Wおよび20kHzの超音波プロセッサで約18分間に亘り処理した。ガラス超極細繊維フィルタを使用して、不純物を除去し、次に、インクジェットコーティングを行って、光散乱層を形成した。この光散乱層は、特に高い透過率およびヘイズ強度のために、長波長の光に敏感に応答するので、長波長の光の抽出に特に適していた。この有機発光デバイスにより、1.5倍以上の光抽出効率が得られた。
【0038】
本開示の実施の形態の先の記載は、説明および記載の目的で与えられてきた。それは、網羅的であること、または本発明の記載を開示された正確な形態に限定することを意図していない。明らかに、多くの改変および変更が当業者に明白であろう。これらの実施の形態は、本開示の原理およびその実際的な適用を最良に説明するために選択され、記載されており、それによって、当業者が様々な実施の形態について本開示を理解することができ、考えられる特定の使途に適するように様々な改変を理解することができる。本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその等価物により定義されることが意図されている。
【0039】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0040】
実施形態1
有機発光デバイスの光抽出層のための被覆溶液であって、
金属酸化物およびSiO2の少なくとも一方を含む光散乱粒子、および
溶媒、
を含み、
24時間に亘り測定されたときに、30以下のTurbiscan Stability Index(TSI)を有する、被覆溶液。
【0041】
実施形態2
前記金属酸化物が、TiO2、SiO2、BaTiO3、ZnO、MgO、SnO2、Al2O3、ZrO2、CeO2、Fe2O3、Fe3O4、WO3、Y2O3、SrTiO3、FeTiO3、MnTiO3、Nb2O5、およびKTaO3からなる群より選択される少なくとも1つを含む、実施形態1に記載の被覆溶液。
【0042】
実施形態3
前記溶媒が、ブチルセロソルブ、ジアセトンアルコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、α−テルピネオール、ベンジルアルコール、ドデカン、ホルムアミド、エチル−3−エトキシプロピオネート、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シロキサン、シルセスキオキサン、シラザン、シロキサン誘導体、シルセスキオキサン誘導体、およびシラザン誘導体からなる群より選択される少なくとも1つを含む、実施形態1に記載の被覆溶液。
【0043】
実施形態4
前記光散乱粒子の質量が、前記被覆溶液の質量の50%以下である、実施形態1に記載の被覆溶液。
【0044】
実施形態5
分散剤をさらに含む、実施形態1に記載の被覆溶液。
【0045】
実施形態6
前記分散剤が、高分子のアルキルアンモニウム塩、ポリエーテルホスフェート、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリ(エチレンオキシド)、第二級アルコールエトキシレート、アクリレートポリマー、および2−(ジブチルアミノ)エタノールからなる群より選択される少なくとも1つを含む、実施形態5に記載の被覆溶液。
【0046】
実施形態7
前記分散剤の質量が、前記光散乱粒子の質量の15%以下である、実施形態5に記載の被覆溶液。
【0047】
実施形態8
前記光散乱粒子が、20nmから50nmに及ぶ粒径を有する、実施形態1に記載の被覆溶液。
【0048】
実施形態9
前記被覆溶液が、10dyn/cm(mN/m)から70dyn/cm(mN/m)に及ぶ表面張力を有する、実施形態1に記載の被覆溶液。
【0049】
実施形態10
前記被覆溶液が、0.1cpから20cpに及ぶ粘度を有する、実施形態1に記載の被覆溶液。
【0050】
実施形態11
前記被覆溶液が、5cpから15cpに及ぶ粘度を有する、実施形態10に記載の被覆溶液。
【0051】
実施形態12
有機発光デバイスの光抽出基板を製造する方法において、
被覆溶液を使用することによって、ベース基板上に光抽出層を形成する工程、
を有してなり、
前記被覆溶液は、
金属酸化物およびSiO2の少なくとも一方を含む光散乱粒子、および
溶媒、
を含み、
該被覆溶液は、24時間に亘り測定されたときに、30以下のTurbiscan Stability Index(TSI)を有する、方法。
【0052】
実施形態13
前記光抽出層を形成する工程が、インクジェットコーティングまたは吹き付けコーティングにより前記ベース基板を前記光抽出層で被覆する工程を含む、実施形態12に記載の方法。
【0053】
実施形態14
有機発光デバイスの光抽出基板を製造するための装置において、
該装置は、ベース基板に被覆溶液を被覆することによって光抽出層を形成するように作られており、
前記被覆溶液は、
金属酸化物およびSiO2の少なくとも一方を含む光散乱粒子、および
溶媒、
を含み、
該被覆溶液は、24時間に亘り測定されたときに、30以下のTurbiscan Stability Index(TSI)を有する、装置。
【符号の説明】
【0054】
10 ベース基板
20 光散乱層
40、60 電極層
50 有機層
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【国際調査報告】

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