(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-523778(P2021-523778A)
(43)【公表日】2021年9月9日
(54)【発明の名称】脊椎安定化と神経調節とを組み合わせるシステム、デバイス、および方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20210813BHJP
A61B 17/70 20060101ALI20210813BHJP
A61N 1/05 20060101ALI20210813BHJP
【FI】
A61N1/36
A61B17/70
A61N1/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2020-563631(P2020-563631)
(86)(22)【出願日】2019年5月10日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月21日
(86)【国際出願番号】US2019031865
(87)【国際公開番号】WO2019217921
(87)【国際公開日】20191114
(31)【優先権主張番号】62/670,034
(32)【優先日】2018年5月11日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520032538
【氏名又は名称】シナーヒューズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SYNERFUSE, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モルナー,グレゴリー・エフ
(72)【発明者】
【氏名】パーヤー,ハリー
(72)【発明者】
【氏名】ペイマン,ナズミ
(72)【発明者】
【氏名】ゼナンコ,ジャスティン・ディ
【テーマコード(参考)】
4C053
4C160
【Fターム(参考)】
4C053BB12
4C053FF04
4C053JJ13
4C053JJ27
4C160LL24
4C160LL42
4C160LL66
(57)【要約】
疼痛管理システムは、脊椎安定化デバイスと、神経調節デバイスとを含む。脊椎安定化デバイスは、ロッドと、ロッドの一部を受け入れるように構成されたねじ頭空洞を規定するねじ頭を各々が有する複数の椎弓根スクリューと、ロッドを空洞内の所定の位置に固定するために、空洞の内壁と係合するように構成された対応する複数のインサートとを含む。神経調節デバイスは、ハウジング内にパッケージされた電子機器を含む治療モジュールを含む。ハウジングは、複数の椎弓根スクリューのうちの1つのねじ頭の対応する特徴と嵌合するように構成された少なくとも1つの特徴を有するフォームファクタを有する。それぞれの特徴は、治療モジュールが椎弓根スクリューのねじ頭に機械的に結合し、後に分離することを可能にするように嵌合する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み型医療用リード線であって、
第1の側面および前記第1の側面とは反対の第2の側面を有するリボン構造と、
前記第1の側面に関連付けられており、第1のパターンにおいて配置されている複数の第1の電極と、
前記第2の側面に関連付けられており、第2のパターンにおいて配置されている複数の第2の電極と
を備え、
前記リボン構造は、力が加えられると平坦状態から非平坦状態に移行し、前記力が取り除かれると前記非平坦状態のままであるように構成されている、リード線。
【請求項2】
前記非平坦状態は、前記リボン構造が、前記リボン構造の長手方向軸に沿って交互の方向に少なくとも1つの曲線においてまたは一連の連続する曲線において曲がる波状状態に対応する、請求項1に記載のリード線。
【請求項3】
前記波状状態は、1mmおよび3mmの範囲内の曲率半径を有する少なくとも1つの曲線を含む、請求項2に記載のリード線。
【請求項4】
前記非平坦状態は、前記リボン構造の長さに沿った前記リボン構造の縁部が前記リボン構造の中心に沿って延伸する長手方向軸を中心にして湾曲するねじれ状態に対応する、請求項1に記載のリード線。
【請求項5】
前記第1のパターンは2次元アレイであり、前記複数の第1の電極は、前記リボン構造の前記第1の側面に関連付けられる電気絶縁材料によって分離されている、請求項1に記載のリード線。
【請求項6】
前記第2のパターンは2次元アレイであり、前記複数の第2の電極は、前記リボン構造の前記第2の側面に関連付けられる電気絶縁材料によって分離されている、請求項1に記載のリード線。
【請求項7】
前記第1の電極および前記第2の電極は、2mm〜4mmの範囲内の長さ、および0.25mmと2mmの範囲内の幅を有する、請求項1に記載のリード線。
【請求項8】
前記リボン構造の長さに沿った隣接する第1の電極または隣接する第2の電極間の間隔が、前記第1の電極または前記第2の電極の長さの2倍以下である、請求項1に記載のリード線。
【請求項9】
前記リボン構造506の幅にわたる隣接する第1の電極または隣接する第2の電極間の間隔が、前記第1の電極または前記第2の電極の幅の2倍以下である、請求項1に記載のリード線。
【請求項10】
前記リボン構造は、3cm〜8cmの範囲内の長さ、および2mm〜5mmの範囲内の幅によって特徴付けられる、請求項1に記載のリード線。
【請求項11】
前記リボン構造が、0.25mm〜1mmの範囲内の厚さによって特徴付けられる、請求項1に記載のリード線。
【請求項12】
前記第1のパターンおよび前記第2のパターンは、第1の電極または第2の電極のいずれかおよび前記リボン構造を通じて垂直に延伸する軸に沿って第2の電極と位置整合する第1の電極がないように、前記複数の第1の電極および前記複数の第2の電極を互いに対して配置する、請求項1に記載のリード線。
【請求項13】
前記第1のパターンおよび前記第2のパターンは、第1の電極または第2の電極のいずれかおよび前記リボン構造を通じて垂直に延伸する軸に沿って第1の電極が第2の電極と位置整合するように、前記複数の第1の電極および前記複数の第2の電極を互いに対して配置する、請求項1に記載のリード線。
【請求項14】
治療モジュールのインターフェース構造に機械的に結合し、後に治療モジュールから分離するように構成されたリード線インターフェース構造を有する近位端領域をさらに備える、請求項1に記載のリード線。
【請求項15】
前記リード線インターフェース構造が、各々が前記第1の電極または前記第2の電極のうちの一方に電気的に結合されている複数の電気接点を備える、請求項14に記載のリード線。
【請求項16】
一対の椎弓根スクリュー、ロッド、および一対のインサートを含む脊椎安定化デバイスとともに埋め込むための埋め込み型神経調節デバイスであって、各インサートは、1つの前記椎弓根スクリューのねじ頭のねじ頭空洞内に前記ロッドの一部分を固定するように構成されており、前記神経調節デバイスは、
1つの前記椎弓根スクリューの前記ねじ頭の対応する特徴と嵌合するように構成された少なくとも1つの特徴を含むフォームファクタを有するハウジングを備える治療モジュールであり、それぞれの前記特徴は、前記治療モジュールが前記椎弓根スクリューの前記ねじ頭に機械的に結合し、後に分離することを可能にするように嵌合する、治療モジュールと、
複数の電極を有する遠位端領域と、前記治療モジュールに機械的および電気的に結合し、後に前記治療モジュールから分離するように構成されたリード線インターフェース構造を有する近位端領域とを備えるリード線と
を備える、神経調節デバイス。
【請求項17】
前記ハウジングの前記少なくとも1つの特徴は、外壁を有する中央突起を含み、
前記ねじ頭の前記対応する特徴は、ねじ頭空洞を含み、
前記中央突起は、前記中央突起の前記外壁と前記空洞の1つまたは複数の内壁との間のねじ係合、および前記突起の前記外壁と前記空洞の1つまたは複数の内壁との間の摩擦嵌合のうちの1つを通じて前記ねじ頭空洞と嵌合する、
請求項16に記載の神経調節デバイス。
【請求項18】
前記ハウジングの前記少なくとも1つの特徴は、ハウジング空洞を画定する一対の反対の側方突起を含み、
前記ねじ頭の前記対応する特徴は、前記ねじ頭自体を含み、
前記ねじ頭は、前記ねじ頭の前記外壁と前記反対の側方突起の1つまたは複数の内壁との間のねじ係合、および前記ねじ頭の前記外壁と前記反対の側方突起の1つまたは複数の内壁との間の摩擦嵌合のうちの1つを通じて前記ハウジング空洞と嵌合する、
請求項17に記載の神経調節デバイス。
【請求項19】
前記治療モジュールが、前記リード線インターフェース構造と結合するように構成された治療モジュールインターフェース構造を備える、請求項18に記載の神経調節デバイス。
【請求項20】
前記治療モジュールインターフェース構造が、前記リード線インターフェース構造の対応するコネクタと嵌合するように構成された少なくとも1つのインラインコネクタを有するドングルを含む、請求項19に記載の神経調節デバイス。
【請求項21】
前記ハウジングが上側領域を含み、前記治療モジュールインターフェース構造が、前記上側領域において露出され、前記リード線インターフェース構造の対応する複数の電気接点と嵌合するように構成された複数の電気接点を備える、請求項19に記載の神経調節デバイス。
【請求項22】
前記ハウジングは、前記ハウジングの曲げやすい表面に形成された溝を備え、前記溝は、リード線本体の一部分を受け入れ、前記部分を摩擦嵌合によって所定の位置に固定するように構成されている、請求項16に記載の神経調節デバイス。
【請求項23】
疼痛管理システムであって、
ロッド、前記ロッドの一部分を受け入れるように構成されたねじ頭空洞を画定するねじ頭を各々が有する複数の椎弓根スクリュー、および前記ロッドを前記空洞内の所定の位置に固定するために、前記空洞の内壁と係合するように構成された対応する複数のインサートを備える脊椎安定化デバイスと、
前記複数の椎弓根スクリューのうちの1つの前記ねじ頭の対応する特徴と嵌合するように構成された少なくとも1つの特徴を含むフォームファクタを有するハウジング内にパッケージされた電子機器を含む治療モジュールを備える神経調節デバイスであって、それぞれの前記特徴は、前記治療モジュールが前記椎弓根スクリューの前記ねじ頭に機械的に結合し、後に分離することを可能にするように嵌合する、神経調節デバイスと
を備える、疼痛管理システム。
【請求項24】
複数の電極を有するリボン構造と、前記治療モジュールに機械的および電気的に結合し、後に分離するように構成されたリード線インターフェース構造とを備える埋め込み型医療用リード線をさらに備える、請求項23に記載の疼痛管理システム。
【請求項25】
埋め込み型医療用リード線であって、
第1の側面および前記第1の側面とは反対の第2の側面を有するリボン構造と、
前記第1の側面に関連付けられており、第1のパターンにおいて配置されている複数の第1の電極と、
前記第2の側面に関連付けられており、第2のパターンにおいて配置されている複数の第2の電極と
を備え、
前記リボン構造は、力が加えられると平坦状態から非平坦状態に移行し、前記力が取り除かれると前記非平坦状態のままであるように構成されている、埋め込み型医療用リード線をさらに備える、請求項23に記載の疼痛管理システム。
【請求項26】
慢性腰痛を治療する方法であって、
椎骨の不整合または前記椎骨の間のもしくは前記椎骨に隣接する神経の圧迫に起因する侵害受容性疼痛を治療するために、脊椎固定術から治癒している患者の腰部の一対の前記椎骨を同時に安定化させることと、
神経幹の損傷、ならびに脳および脊髄の神経の過敏化に起因する神経因性疼痛を治療するために、前記患者が脊椎固定術から治癒している間に、前記一対の椎骨に関連する1つまたは複数の神経構造を神経調節することと
を含む、方法。
【請求項27】
脊椎安定化ハードウェアと、前記脊椎安定化ハードウェアの構成要素に機械的に結合し、分離するように構成された治療モジュールを有する神経調節デバイスとを含む疼痛管理システムを埋め込む方法であって、
脊椎固定処置中に前記脊椎安定化ハードウェアを埋め込んでいる間に、神経構造への直接アクセスを作成することと、
直接視覚アクセス下で標的神経構造上にまたは隣接してリード線を配置することと、
前記治療モジュールを前記脊椎安定化ハードウェアの構成要素に機械的に結合することと、
前記リード線を前記治療モジュールに機械的および電気的に結合することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「脊椎に神経調節を送達するための方法および装置(Method and Apparatus to Deliver Neuromodulation to the Spine)」と題する、2018年5月11日に出願された米国仮特許出願第62/670,034号の利点および優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、一般に、慢性腰痛の治療、より詳細には、脊椎安定化および神経調節の同時提供を通じて慢性腰痛を治療するシステム、デバイス、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
慢性腰痛は、椎間板変性症、骨折、脊柱管狭窄症、および脊椎すべり症(椎骨の滑り)などの状態に起因する脊椎不安定症によって引き起こされる。通常、慢性腰痛を患う患者は、最初に、運動、理学療法、注射および投薬などの保守的な疼痛管理技法を使用して治療される。保守的な疼痛管理によって患者の疼痛症状が効果的に治療されない場合は、より積極的な疼痛管理アプローチを採用することができる。
【0004】
より積極的な疼痛管理シナリオでは、患者は、固定デバイスを利用して背中を固定および矯正して背中の安定性を回復し、疼痛を軽減する外科的脊椎固定処置を受け得る。脊椎固定術は、脊柱を安定させるための外科的技法である。固定手術は、隣接する椎骨の間に固い骨を作り、骨の間の動きをなくすように設計されている。手術の目標は、疼痛の機械的側面および/または疼痛の原因としての神経の圧迫もしくは刺激に対処することである。脊椎すべり症、椎間板変性症または再発性椎間板ヘルニア、脊椎感染症(例えば、結核または化膿性など)、脊椎骨折および脊椎腫瘍などの脊椎不安定症の場合には、脊椎固定術が推奨される場合がある。
【0005】
図1Aを参照すると、脊椎固定術に利用される固定デバイスの例は、一対の椎弓根スクリューおよびロッドを含む。脊椎固定術の外科的処置の間、隣接する椎骨の間の空間へのアクセスは、例えば、椎弓切開術を通して得られる。骨移植片と呼ばれる骨材料が、椎骨の癒合を促進するのを助けるために、その空間内に配置される。骨移植片を配置した後、固定デバイスが埋め込まれて、癒合が完了するまでの間に腰部を安定させる。この目的のために、各椎弓根スクリューのねじ山部分が、それぞれの椎骨のそれぞれの椎弓根にねじ込まれ、ねじ頭部分が露出したままにされる。次に、剛性があり柔軟性のないロッドがねじ頭の中および間に配置され、各ねじ頭においてねじ頭ナットによって所定の位置に固定される。ロッドアンドスクリュー固定デバイスは、それが取り付けられている隣接する椎骨間の相対的な動きを防止する。
【0006】
ただし、脊椎固定術は必ずしも意図したとおりに疼痛を軽減するとは限らない。実際、残存痛が、最大40%の脊椎手術の後に発生し、年間平均200億米ドルの医療費がかかっており、患者の生活の質が大幅に低下している。従来の腰部手術後の残存痛は、多くの場合、依然として患者に、経口オピオイド、脊髄注射、無線周波数(RF)神経アブレーションまたは脊髄刺激などの他の積極的な疼痛軽減治療法を模索させるか、または、最終的には疼痛を軽減するために別の脊椎手術を追求させる。脊椎手術後疼痛症候群とも呼ばれるこの状態は、従来の脊髄刺激の主な指標の1つである。
【0007】
脊髄刺激は慢性神経因性疼痛を効果的に治療することがよく知られているため、そのような神経因性疼痛が脊椎不安定症の患者に存在することを示唆している。神経因性疼痛の発生は、神経への直接的な損傷および/または刺激の結果として生じることが多く、同じく脊椎不安定症と組み合わせて存在する可能性のある自然の機械的/侵害受容性疼痛(すなわち、身体に何か問題があることを知らせる)とは異なる。疼痛の神経因性の要素は、患者の慢性的な不安定性、および脊髄神経の圧迫、ならびに/または手術前に影響を受けた脊椎レベルでの弱くなった/不安定な椎骨内の刺激の結果として生じている可能性がある。追加の神経因性疼痛が、手術を行うための外科的切除(皮膚、筋肉、骨、神経)から生じる可能性がある。したがって、神経調節が、この既存の神経因性疼痛を治療することができ、また、手術から生じるその後の神経因性疼痛を治療または予防さえすることになる。
【0008】
図1Bを参照すると、慢性腰痛を治療するために利用される例示的な脊髄刺激システムは、パルス発生器および一対のリード線を含む。埋め込み処置の間、リード線の電極支持端が、脊椎の硬膜上腔に経皮的に埋め込まれて、神経調節される神経の領域に電極を配置する。次に、硬膜上腔の外側のリード線の部分が、皮膚の下に進められ、パルス発生器に接続される。パルス発生器は、脊柱の側面に形成された皮下ポケットに埋め込まれる。
【0009】
しかし、ほとんどの患者は、他の多くの治療法に失敗するまで脊髄刺激について指示されず、最初の脊椎固定術から脊髄刺激が提供されるまでに2〜5年かかることが多く、その結果、障害および病的状態が長くなる。その結果、多くの患者は十分な軽減を経験せず、残存痛を軽減するための無駄な試みにおいて中毒性のあるオピオイドに依存することになることが多い。これは、2016年における210万人のオピオイド使用障害、1150万人の処方オピオイドの乱用、および2015年における5,000億ドルを超えると推定されるオピオイド危機の年間経済的コストを引き起こした。特に慢性腰痛に対する長期のオピオイド使用の有効性を確認した臨床研究はないため、この公衆衛生的流行の程度に起因して、オピオイドに目を向ける前に他のすべての疼痛管理方法を使い尽くすことが依然として重要である。
【0010】
したがって、脊椎手術後疼痛の発生後可能な限り早く神経調節療法の提供を可能にするために、外科的脊椎処置と神経刺激インプラント処置との間の時間的分離を低減または排除することが望ましい。脊椎固定ハードウェアと神経調節構成要素とを組み合わせることによって、神経因性疼痛治療と同時に機械的/侵害受容性疼痛治療を提供する疼痛管理システムを有することも望ましい。以下に開示される概念が、これらのおよび他の需要に対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
概要
神経構造を神経調節するための埋め込み型医療用リード線は、第1の側面および第1の側面とは反対の第2の側面を有するリボン構造を含む。複数の第1の電極が、第1の側面に関連付けられ、第1のパターンにおいて配置され、一方、複数の第2の電極が、第2の側面に関連付けられ、第2のパターンにおいて配置される。リボン構造は、力が加えられると平坦状態から非平坦状態に移行し、力が取り除かれると非平坦状態のままであるように構成される。例えば、非平坦状態は、リボン構造が、リボン構造の長手方向軸に沿って交互の方向に少なくとも1つの曲線においてまたは一連の連続する曲線において曲がる波状状態であり得る。リード線のより微細な態様では、波状状態は、1mmおよび3mmの範囲内の曲率半径を有する少なくとも1つの曲線を含む。別の例では、非平坦状態は、リボン構造の長さに沿ったリボン構造の縁部がリボン構造の長手方向軸を中心にして湾曲するねじれ状態であり得る。リボン構造が異なる非平坦状態をとる能力は、リボン構造の材料特性、リボン構造の厚さ、ならびに電極サイズ、電極間の間隔、および電極パターンを含む、リボン構造の構成の関数である。
【0012】
脊椎安定化デバイスとともに埋め込むための埋め込み型神経調節デバイスは、治療モジュールおよびリード線を含む。脊椎安定化デバイスは、各々がねじ頭空洞を備えたねじ頭を有する一対の椎弓根スクリューを含み、治療モジュールは、1つの椎弓根スクリューのねじ頭の対応する特徴と嵌合するように構成された少なくとも1つの特徴を含むフォームファクタを有するハウジングを含む。それぞれの特徴は、治療モジュールが椎弓根スクリューのねじ頭に機械的に結合し、後に分離することを可能にするように嵌合する。例えば、嵌合は、ねじ式係合または摩擦によるものであり得る。リード線は、複数の電極を有する遠位端領域と、治療モジュールに機械的および電気的に結合し、後に治療モジュールから分離するように構成されたリード線インターフェース構造を有する近位端領域とを含む。
【0013】
疼痛管理システムは、脊椎安定化デバイスと、神経調節デバイスとを含む。脊椎安定化デバイスは、ロッドと、ロッドの一部を受け入れるように構成されたねじ頭空洞を規定するねじ頭を各々が有する複数の椎弓根スクリューと、ロッドを空洞内の所定の位置に固定するために、空洞の内壁と係合するように構成された対応する複数のインサートとを含む。神経調節デバイスは、ハウジング内にパッケージされた電子機器を含む治療モジュールを含む。ハウジングは、複数の椎弓根スクリューのうちの1つのねじ頭の対応する特徴と嵌合するように構成された少なくとも1つの特徴を有するフォームファクタを有する。それぞれの特徴は、治療モジュールが椎弓根スクリューのねじ頭に機械的に結合し、後に分離することを可能にするように嵌合する。したがって、疼痛管理システムは、3つのタイプの疼痛、すなわち、(1)不整合または不安定性によって引き起こされる機械的/侵害受容性疼痛と、(2)神経幹の損傷ならびに脳および脊髄内の神経の過敏化によって引き起こされる神経因性疼痛と、(3)本質的に外科的処置によって引き起こされる術後の疼痛とに同時に対処する。
【0014】
慢性腰痛を治療する方法は、脊椎固定術から治癒している患者の腰部の一対の椎骨を安定化させることと、患者が脊椎固定術から治癒している間に上記一対の椎骨に関連する1つまたは複数の神経構造を神経調節することとを含む。安定化は、脊椎の不整合または椎骨間のもしくは椎骨に隣接する神経の圧迫に起因する侵害受容性疼痛を治療し、一方、神経調節は、神経幹の損傷ならびに脳および脊髄の神経の過敏化に起因する神経因性疼痛を治療する。
【0015】
脊椎安定化ハードウェアおよび神経調節デバイスを有する疼痛管理システムを埋め込む方法は、脊椎安定化ハードウェアを埋め込んでいる間に神経構造への直接アクセスを作成することと、直接視覚アクセス下で標的神経構造上にまたは標的神経構造に隣接してリード線を配置することとを含む。本方法は、神経調節デバイスの治療モジュールを脊椎安定化ハードウェアの構成要素に機械的に結合することと、神経調節デバイスのリード線を治療モジュールに機械的および電気的に結合することとをさらに含む。
【0016】
装置および方法の他の態様は、以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになることが理解され、装置および方法の様々な態様は例示として示され、説明される。理解されるように、これらの態様は、他の異なる形態で実装することができ、そのいくつかの詳細は、他の様々な点において変更することができる。したがって、図面および詳細な説明は、本質的に例示と見なされるべきであり、限定と見なされるべきではない。
【0017】
図面の簡単な説明
ここで、システム、デバイス、および方法の様々な態様を、原寸に比例しない添付の図面を参照して、限定ではなく例として詳細な説明に提示する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】一対の椎弓根スクリューおよびロッドを含む、脊椎固定術に利用される埋め込み脊椎固定デバイスの図である。
【
図1B】パルス発生器および一対のリード線を含む、慢性腰痛を治療するために利用される埋め込み脊髄刺激システムの図である。
【
図2】椎弓根スクリューおよびロッドを含む一対の脊椎固定デバイスと、椎弓根スクリューに機械的に結合され、分離されるように構成されたリボンリード線および治療モジュールを含む神経調節デバイスとを含む、上部腰椎レベルに埋め込まれた疼痛管理システムの概略図である。
【
図3A】脊椎固定デバイスの椎弓根スクリューに機械的に結合された神経調節デバイスの治療モジュールを示す、
図2の線3A−3Aに沿った概略断面図である。
【
図3B】神経調節デバイスのリボンリード線の両側面配置を示す、
図2の線3B−3Bに沿った概略断面図である。
【
図3C】上部腰椎レベルにおけるリボンリード線の片側面配置を示す概略断面図である。
【
図3D】下部腰椎レベルにおけるリボンリード線の片側面配置を示す概略断面図である。
【
図4】椎弓根スクリュー、椎弓根スクリューのねじ頭に結合された治療モジュール、およびリボンリード線を含む、
図2の疼痛管理システムの構成要素の図である。
【
図5A】両側面に電極を有する電極支持リボン構造を含む
図4のリボンリード線の図である。
【
図5E】反対側面の電極が、互いに対して互い違いにされているか、またはオフセットされている、
図5Aのリボンリード線のリボン構造の一部の図である。
【
図5F】反対側面の電極が、互いに積層されているか、または位置整合されている、
図5Aのリボンリード線のリボン構造の一部の図である。
【
図5G】リボン構造が曲げ力を受けており、その長手方向軸に沿って波状構成をとっている、
図5Aのリボンリード線の図である。
【
図5H】リボン構造が曲げ力を受けており、
図5Gの曲線よりも、例えば曲率半径がより小さいなど、より鋭い曲線を有する、その長手方向軸に沿って波状構成をとっている、
図5Aのリボンリード線の図である。
【
図5I】リボン支持体がねじれ力を受けており、その長手方向軸を中心にねじれ構成をとっている、
図5Aのリボンリード線の図である。
【
図6A】椎弓根スクリューのねじ頭に結合された
図4の治療モジュールの概略図である。
【
図6B】
図6Aの治療モジュールの代替の実施形態の図である。
【
図6C】
図6Aの治療モジュールの代替の実施形態の図である。
【
図7】椎弓根スクリューのねじ頭に結合された治療モジュールの代替の実施形態の概略図である。
【
図8】椎弓根スクリュー、椎弓根スクリューのねじ頭に結合された治療モジュール、およびリボンリード線を含む、疼痛管理システムの代替の実施形態の構成要素の概略図である。
【
図9】1つまたは複数のリード線に関連付けられた治療モジュールと、1つまたは複数のセンサに関連付けられた健康情報モジュールと、治療コントローラおよび患者インターフェースデバイスを含む1つまたは複数の外部デバイスとを備える埋め込み型医療デバイスを含む、
図1Aのシステムのブロック図である。
【
図10】
図9の治療モジュールおよびリード線のブロック図である。
【
図11】
図9の健康情報モジュールおよび関連するセンサのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
本明細書において、脊椎安定化ハードウェアと、脊椎安定化ハードウェアの構成要素に機械的に結合し、後に分離するように構成された治療モジュール構成要素を有する神経調節デバイスとを含む、埋め込み型疼痛管理システムが開示される。1つの実施形態では、脊椎安定化ハードウェアは、一対の椎弓根スクリューおよびロッドを含む脊椎固定デバイスの形態であり、治療モジュールは、椎弓根スクリューに機械的に結合され、分離されるように構成される。神経調節デバイスはまた、その遠位端にリボン状の電極支持領域を有し、その近位端に、治療モジュールに機械的に結合され、分離されるように構成されたインターフェース構造を有するリード線も含む。治療モジュールおよびリード線の結合および分離機能を所与として、治療モジュールは、必要に応じて、単にリード線を治療モジュールから分離し、治療モジュールを椎弓根スクリューから分離することによって交換することができる。
【0020】
リボンリード線の遠位端領域は、非常に柔軟であり、力が加えられると実質的に平坦状の形状から非平坦形状に移行し、力が除去されると非平坦状態のままになるように構成されているリボン構造を含む。これにより、リボン構造は、遠位端領域の長さに沿って波打つ形状または遠位端領域の長さに沿ってねじれる形状を含む、様々な形状をとり、保持することが可能である。そのように構成されると、リード線の遠位端領域は、脊髄神経構造および枝の周りおよびそれらの間を蛇行し、解剖学的構造に一致する形状をとることができる。さらに、電極は、遠位端領域の両側面に配置することができる。これは、リード線の遠位端領域が反転して、結果、領域の片側面の電極が神経構造に刺激エネルギーを供給するためにもはや適切に配置されていない場合、反対側面の電極が適切に配置され、刺激電極としての役割を果たすという点で有利である。
【0021】
椎骨の不整合または椎骨の間のもしくは椎骨に隣接する神経の圧迫に起因する侵害受容性疼痛を治療するために、脊椎固定術中に腰部の椎骨を同時に安定化させることと、神経幹の損傷、ならびに脳および脊髄の神経の過敏化に起因する神経因性疼痛を治療するために、椎骨に関連する1つまたは複数の神経構造を神経調節することとを含む、慢性腰痛を治療する方法も、本明細書において開示される。脊椎安定化と同時に神経調節を送達することによって、患者の疼痛をより効果的かつ全体的に治療し、より良い結果を保証することができる。本明細書に開示される方法は、脊椎安定化および神経調節の2つの相補的な治療が、同じ解剖学的空間内で同時に送達されることを可能にする。機械的安定化を神経刺激と相乗的に使用することはまた、脊椎手術に関連する急性疼痛を軽減するのに寄与し得る。
【0022】
本明細書においてまた、脊椎安定化ハードウェアと、脊椎安定化ハードウェアの構成要素に機械的に結合し、分離するように構成された治療モジュール構成要素を有する神経調節デバイスとを含む疼痛管理システムを埋め込む方法も開示される。脊椎安定化ハードウェアは、脊椎固定処置の一部として埋め込まれる。この外科的処置の一部として、癒合領域の神経構造へのオープンアクセスが提供され、神経調節デバイスのリード線が神経構造にまたはその近くに配置される。続いて、治療モジュールは、脊椎安定化ハードウェアの構成要素に機械的に結合され、リード線は、治療モジュールに機械的および電気的に結合される。
【0023】
リード線の配置に関しては、脊椎固定処置中に脊椎が露出するため、脊椎外科医が一部の神経構造および枝を直接視認することができる。これにより、カテーテルまたはシースなどの埋め込み器具を必要とせずに、外科医がリード線を直接配置することができる。例えば、経椎間孔アプローチを使用して、リボンリード線の遠位端は、例えば、前根、後根、後根神経節(DRG)および脊髄を含む神経構造を通しておよびその周りに蛇行することができる。刺激は、より末梢の枝、または後根侵入部(DREZ)もしくは脊髄視床路のより中心にある枝から脊髄神経の他の側面にも送達され得る。外科的に容易にアクセスすることができ、解剖学的に可視性であることによって、脊椎手術中に患者の疼痛を伴う皮膚炎をカバーするために、複数の神経レベルを両側面から標的化することができる。
【0024】
場合によっては、脊椎固定術は神経調節とは別に処方され、典型的には、脊椎固定術が最初に処方され、神経調節は、他の治療選択肢がなくなるまで延期される。これらの場合の脊椎固定処置と神経調節デバイス埋め込み処置との間の時間は、6〜10年になり得る。また、認識の欠如または専門家に紹介するアクセス、オピオイドの問題などにより、20年以上かかることもある。しかし、他の場合には、患者は脊椎固定術と神経調節の両方を処方され得る。しかしながら、従来、神経調節デバイス埋め込み処置および脊椎固定処置は、いくつかの理由のいずれかのために別個に実行されている。例えば、
図1Bに示されるような従来の神経調節デバイスの埋め込みは、脊椎外科医の従来の慣行から外れる可能性があり、したがって、患者は、神経調節デバイスを埋め込む疼痛専門家に紹介される必要がある。したがって、脊椎固定処置と神経調節の同時処方というまれなケースでさえ、脊椎固定術と神経調節デバイス埋め込み処置との間の時間は、3ヶ月〜1年の範囲になり得る。そのような時間の分離を所与として、神経調節デバイスの後からの埋め込み中に、瘢痕組織の蓄積のために、脊椎空間を移動して神経刺激リード線を埋め込むことは困難であることが多い。したがって、本明細書に開示されるように、単一の外科的設定で両方の処置を実行することが有利である。
【0025】
疼痛管理システム
図2を参照すると、埋め込み型疼痛管理システム200が、上部腰椎レベルに埋め込まれて示されている。疼痛管理システム200は、一対の脊椎固定デバイス202、204の形態の脊椎ハードウェアを含む。脊椎固定デバイス202、204は、脊椎固定処置の一部として脊椎を安定化させるように構成される。疼痛管理システム200はまた、神経調節デバイス206を含む。神経調節デバイス206は、1つまたは複数の神経構造にエネルギーを送達するように構成され、エネルギーは、神経系活動の調節をもたらす。本明細書に記載の神経調節デバイス206は、主出力として標的構造(複数可)に電気刺激を送達するが、熱(加熱または冷却)、無線周波数(RF)、超音波(機械的、振動)、光学的(または光遺伝学的)、レーザ、および磁気を含む、神経活動を調節するための代替形態のエネルギー送達が想定される。
【0026】
神経調節は、ドーパミンなどの伝達物質、または神経回路の興奮性および発火パターンを調節することができるペプチドサブスタンスPなどの他の化学メッセンジャーを放出することによって神経の集団に影響を与える可能性のある神経細胞活動を刺激することによって、身体の自然な生物学的反応を利用する。神経要素との電気的相互作用の作用機序として、神経膜に対するより直接的な電気生理学的影響もあり得る。最終的な効果は、神経網機能の摂動状態からの「正常化」である。神経刺激の推定される作用機序は、脱分極遮断、神経発火の確率的正常化、軸索遮断、神経発火角化症の減少、および中枢神経系のすべてのレベルでの神経網振動の抑制を含む。最近の機能的MRIの証拠は、脳活動の変化が神経因性疼痛に関連しており、神経調節が疼痛に関連してこの機能を改善することを示唆している。
【0027】
引き続き
図2を参照すると、脊椎固定デバイス202、204の各々は、一対の椎弓根スクリュー208a、208b、208c、208dおよびロッド210a、210bを含む。これらの脊椎固定デバイス202、204は、本明細書ではロッドアンドスクリューデバイスと称される場合がある。椎弓根スクリュー208a、208b、208c、208dおよびロッド210a、210bの材料構造およびそれぞれの寸法は、埋め込まれた動作環境でこれらの構成要素を柔軟性のないものにする、剛性の測度、例えば、加えられる力に応答して物体が変形に抵抗する程度を与える。この目的のために、椎弓根スクリュー208a、208b、208c、208dは、例えば、ステンレス鋼またはチタン合金から形成されてもよく、椎骨の骨構造にねじ込まれるように寸法設定および成形される。ロッド210a、201bもまた、例えば、ステンレス鋼またはチタン合金から形成されてもよく、異なる脊椎レベルに埋め込まれた隣接する椎弓根スクリューの間に固定的に締結されるように寸法設定および成形される。脊椎固定デバイス202、204が埋め込まれると、椎弓根スクリュー208a、208b、208c、208dがねじ込まれている隣接する椎骨は、スクリューにまたがる剛性ロッド210a、210bによって互いに対して動かないようにされる。
【0028】
神経調節デバイス206は、リボンリード線212および治療モジュール214を含む。治療モジュール214は、椎弓根スクリュー208aに機械的に結合し、後に分離するように構成される。同様に、リボンリード線212は、リボンリード線および治療モジュールに関連するそれぞれのインターフェース構造216、218を通じて治療モジュール210に機械的に結合し、後に分離するように構成される。治療モジュール210に機械的に結合されるとき、リボンリード線212の遠位端にある1つまたは複数の電極は、治療モジュール214内の回路に電気的に結合される。
【0029】
それぞれの構成要素間の結合および分離は、ある構成要素の別の構成要素からの分離が、いずれかの構成要素の構造的完全性を変更または損傷しないようなものである。この意味で、構成要素は、互いに取り外し可能に結合されていると説明することができ、ここで、分離は、最小限の力を加えることを伴う。例えば、リボンリード線212は、リード線インターフェース構造216のコネクタピンを治療モジュールインターフェース構造218の対応するコネクタポートから手動で引き抜くことによって、治療モジュール214から分離することができる。
【0030】
図2に示される疼痛管理システム200は、1つの治療モジュール214および1つのリボンリード線212のみを含むが、追加の治療モジュールおよびリボンリード線が、システムに含まれてもよい。例えば、1つの構成では、1つまたは複数の追加の治療モジュールを、他の椎弓根スクリュー208b、208c、208dのうちの1つまたは複数に機械的に結合することができる。次に、各追加の治療モジュールを、リード線に機械的および電気的に結合することができる。追加の治療モジュールが接続されているリード線は、治療モジュール214にすでに接続されているものと同じリボンリード線212であり得る。この目的のために、リボンリード線212は、リード線インターフェース構造216の追加のコネクタピンの1つを通じて追加の治療モジュールに接続することができる。代替的に、追加の治療モジュールが接続されるリード線は、追加のリード線(図示せず)であってもよい。別の構成では、1つまたは複数の追加のリボンリード線を、単一の治療モジュール214に機械的および電気的に結合することができる。この場合、治療モジュール214は、リボンリード線のそれぞれのコネクタピンを受け入れるように各々が構成された複数のコネクタポートを備えた治療モジュールインターフェース構造218を含むことになる。
【0031】
このように疼痛管理システム200の構成要素を一般的に説明したが、脊椎の解剖学的構造に対する疼痛管理システムの様々な配置の説明を以下に行い、続いて疼痛管理システムの神経調節デバイスの構成要素をより詳細に説明する。
【0032】
疼痛管理システムの配置
図2の線3A−3Aに沿った断面である
図3Aを参照して、
図2の疼痛管理システム200の椎弓根スクリュー208aが、椎骨の後側302から前側304へとねじ込まれ、延伸して示されている。そうする際、椎弓根スクリュー208aのねじ部分306が、椎弓板308、椎弓根310を含む椎骨の骨構造を通過して、前体312に入る。椎弓根スクリュー208aのねじ頭314が、後側302で露出している。ねじ頭314はU字形であり、ロッド210aが配置される空洞を画定する。ねじ付きインサート316は、空洞の内壁のねじ山と係合し、回転してロッドと係合し、ロッドを所定の位置に固定する。神経調節デバイスの治療モジュール214は、椎弓根スクリュー208aのねじ頭314に機械的に結合されている。例えば、
図6A、
図6Bおよび
図6Cを参照して以下でさらに説明するように、治療モジュール214は、それぞれのねじ山を通して、または治療モジュールのそれぞれの表面とねじ頭との間の摩擦嵌合によって、ねじ頭314と機械的に係合することができる。
【0033】
図2の線3B−3Bに沿った概略断面図である
図3Bを参照して、神経調節デバイスのリボンリード線212が、両側面配置で様々な神経構造に隣接して配置されて示されている。これに関連して、両側面とは、脊柱正中線の両側面の神経構造上にまたはそれに隣接して電極を位置決めするリード線配置を指す。
図3Bに示される配置例では、リボンリード線212の電極支持遠位端領域は、遠位端領域の部分が、第1の後根神経節322、第1の前根324、脊髄320の腹側、第2の前根326、および第2の後根神経節328のうちの1つまたは複数の上にまたは隣接して位置決めされるように、神経構造を通じて、およびその周りで遠位端領域を蛇行する経路に沿って、脊髄320の第1の側面にある椎孔318を通じて延在する。リボンリード線212をこのように配置することにより、様々な神経構造の神経調節が、椎骨または軟骨の刺激とともに可能になり、後者は脊椎固定術の骨成長/治癒を促進する。
【0034】
図3Cを参照すると、神経調節デバイスのリボンリード線212が、片側面配置で様々な神経構造に隣接して配置されて示されている。これに関連して、片側面とは、脊柱正中線の一方の側面の神経構造上にまたはそれに隣接して電極を位置決めするリード線配置を指す。
図3Cに示される配置例では、リード線の電極支持遠位端領域は、遠位端領域の部分が、第1の脊髄神経330、第1の後根神経節322、第1の後根332、および脊髄320の背側の一部分のうちの1つまたは複数の上にまたは隣接して位置決めされるように、神経構造を通じて、およびその周りで遠位端領域を蛇行する経路に沿って、脊髄320の第1の側面にある椎孔318を通じて延在する。リボンリード線212をこのように配置することにより、様々な神経構造の神経調節が、椎骨または軟骨の刺激とともに可能になり、後者は脊椎固定術の骨成長/治癒を促進する。
【0035】
図2を参照すると、
図3Bおよび
図3Cに示されるようなリード線の配置は、脊椎固定デバイス202、204の埋め込み中に行うことができる。この目的のために、脊椎固定術中に、椎間板へのアクセスを得るために椎弓切除術および/または椎弓切開術を実施することができる。結果として、外科医が神経構造に直接アクセスすることができる外科的開口部220が利用可能である。したがって、リボンリード線212の遠位端領域は、従来のリード線送達器具を必要とせずに、神経構造を通じておよびその周りに配置され、蛇行することができる。例えば、外科的開口部220によって提供されるオープンアクセス処置では、外科医は、経皮シースまたはカテーテルを使用して脊柱領域にアクセスする必要はなく、また、外科医は、そのような送達器具を通じてリード線を前進させる必要もない。
【0036】
下部腰椎に埋め込まれたリボンリード線212の概略断面図である
図3Dを参照して、神経調節デバイスのリボンリード線212が、片側面配置で様々な神経構造に隣接して配置されている。
図3Dに示される配置例では、リード線の電極支持遠位端領域は、遠位端領域の部分が、第1の脊髄神経330、第1の後根神経節322、第1の後根332、および脊髄円すい/馬尾340の背側の一部分のうちの1つまたは複数の上にまたは隣接して位置決めされるように、神経構造を通じて、およびその周りで遠位端領域を蛇行する経路に沿って、脊髄320の第1の側面にある椎孔318を通じて延在する。リボンリード線212をこのように配置することにより、様々な神経構造の神経調節が、椎骨または軟骨の刺激とともに可能になり、後者は脊椎固定術の骨成長/治癒を促進する。
【0037】
神経調節デバイス
図4を参照すると、上に開示したように、本明細書に開示される神経調節デバイス206は、リボンリード線212および治療モジュール214を含む。治療モジュール214は、椎弓根スクリュー208aのねじ頭314に機械的に結合し、分離するように構成される。同様に、リボンリード線212は、リボンリード線および治療モジュールに関連するそれぞれのインターフェース構造216、218を通じて治療モジュール214に機械的に結合し、後に分離するように構成される。治療モジュール210に機械的に結合されるとき、リボンリード線212の遠位端にある1つまたは複数の電極は、治療モジュール214内の回路に電気的に結合される。
【0038】
リボンリード線
図5A〜
図5Dを参照すると、リボンリード線212は、遠位端領域502および近位端領域504を含む。遠位端領域502は、その第1の側面510内に配置された複数の第1の電極508と、その第2の側面514内に配置された複数の第2の電極512とを有する可撓性薄型リボン構造506を含む。可撓性薄型リボン構造506は、リボン構造を軟質で、柔軟であり、延性であるようにするために、リボン構造に高度の柔軟性を提供するように選択されるショア硬さを有する可撓性生体適合性ポリマー(例えば、シリコーン)から作成することができる。この目的のために、ショア硬さは60A程度とすることができる。リボン構造506は、0.25mm〜1mmの範囲内の厚さを有することができる。各側面のそれぞれの電極508、512は、リボン構造506の絶縁材料によって互いに電気的に絶縁されている。さらに、リボン構造506は、反対側面の電極間の電気的干渉を防ぐために、第1の側面510の第1の電極508と第2の側面514の第2の電極512との間に挟まれた絶縁材料の層を含むことができる。
【0039】
図5A〜
図5Dに示される例示的なリボンリード線212では、リボン構造506は、その第1の側面510に2列の電極508と、第2の側面514に2列の電極512とを含み、各列は16個の電極を有する。したがって、リボン構造506の各側面は、2×16の2次元アレイに対応するパターンに配列された32個の電極508、512を有する。無論、異なる数の電極がリボン構造506に含まれてもよく、異なる2次元アレイパターンが電極によって形成されてもよい。例えば、リボンリード線212の他の実施形態では、リボン構造506は、各側面に2×8の2次元アレイに配列された16個の電極を含むことができ、電極は合計で32個あり、または、各側面に2×24の2次元アレイに配列された24個の電極を含むことができ、電極は合計で48個ある。
【0040】
電極508、512は、好ましくは、非腐食性で高導電性の材料から形成されている。このような材料の例としては、ステンレス鋼、MP35N、白金、および白金合金が挙げられる。電極508、512は、別個に形成し、リボン構造506のシリコーン材料に組み込むことができる。この場合、電極508、512は、0.05〜0.2mmの範囲内の厚さを有することができる。代替的に、リボン構造506は、薄膜技術を使用して製造されてもよく、その場合、電極508、512は、薄膜堆積を使用して、リボン構造の一部を形成する基板層のそれぞれの側面に形成されてもよい。この場合、電極508、512は、0.01〜0.1mmの範囲内の厚さを有することができる。いずれの場合も、電極508、512の表面は、リボン構造506の表面と実質的に同一平面上にある。別の例では、リボン構造506は、個々の患者の解剖学的構造(例えば、選択的神経根の解剖学的構造)に基づくカスタム印刷リード線であり得る。解剖学的構造は、患者の神経/脊椎領域をスキャンして寸法を取得し、その後、輪郭および寸法の入力を取得してリード線をカスタム印刷することによって取得することができる。
【0041】
1つまたは複数のセンサは、リボン構造506に関連付けることができる。例えば、リボン構造506は、治療モジュール214に温度フィードバック信号を提供するために、その第1の側面510内に配置された複数の第1の温度センサ509と、その第2の側面514内に配置された複数の第2の温度センサ513とを有することができる。各温度センサは、電極508、512のグループまたはクラスタに関連付けられ得る。
【0042】
リボン構造506は、切開外科手術中に1つまたは複数の神経構造に電極を配置することを可能にするために、最大限の柔軟性を有するように構成される。リボン構造506の上記の材料組成および厚さに加えて、リボン構造の追加の特徴が、所望の柔軟性を与える。これらの追加の特徴は、1)リボン構造の同じ側面での電極508、512の互いに対する配置、2)リボン構造の反対側面での電極508、512の互いに対する配置、ならびに3)電極のサイズおよび電極間の間隔を含む。
【0043】
同じ側面の電極配置
図5Bおよび
図5Cを参照すると、各側面510、514の電極508、512は、リボン構造506の柔軟性を改善するように選択されたパターンにおいて配置されている。この目的のために、電極508、512は、リボン構造506の長さに沿って実質的に位置整合されているが、それらは、リボン構造の幅にわたって互いに対してオフセットまたは互い違いにされている。したがって、リボン構造506は、他の様態で、同じ側面の2つの電極508、512が幅にわたって並んで位置整合された場合に生じるであろう剛性領域を欠いている。同じ側面の電極がこのように互い違いになることで、リボン構造506の長さに沿って、およびその幅にわたって、リボン構造506の柔軟性が改善する。別の構成において、電極508、512は、リボン構造506の長さに沿って、および、リボン構造の幅にわたって実質的に位置整合されている。したがって、リボン構造506は、その長さに沿って、電極がないために柔軟性が高い領域と、幅にわたって電極が並んでいる柔軟性が低い領域とが交互になっている。
【0044】
反対側面の電極配置
図5Eを参照すると、リボンリード線212の遠位端領域502のそれぞれの側面510、514上のそれぞれの電極508、512の配置は、反対側面の電極が互いに対して互い違いに配置されるか、またはオフセットされるようなものであり得る。言い換えれば、第1の電極508の第1のパターンおよび第2の電極512の第2のパターンは、電極およびリボン構造506を通じて垂直に延伸する軸515に沿って第2の電極と位置整合する第1の電極がないように、複数の第1の電極および複数の第2の電極を互いに対して配置する。
【0045】
図5Fに示される代替構成では、リボンリード線212の遠位端領域502のそれぞれの側面510、514上のそれぞれの電極508、512の配置は、反対側面の電極が互いに対して互い違いに積み重ねられるか、または位置整合されるようなものであり得る。言い換えれば、第1の電極508の第1のパターンおよび第2の電極512の第2のパターンは、電極およびリボン構造506を通じて垂直に延伸する軸517に沿って第1の電極が第2の電極と位置整合するように、複数の第1の電極および複数の第2の電極を互いに対して配置する。
【0046】
これらの配置には各々利点がある。例えば、
図5Eに示される互い違いの配置は、反対側面の電極間のより大きい間隔を提供し、したがって、電極間の電流漏れを低減する。互い違いの配列はまた、薄膜めっき技術を使用してより容易に製造することを可能にすることもできる。
図5Fに示される積み重ね配置は、リボン構造506に、その側面のそれぞれに金属電極を欠く領域を提供し、したがって、遠位端領域をより柔軟にすることを可能にする。
【0047】
上記は、反対側面の電極が位置整合またはオフセットされている代替構成を説明しているが、他の配置が可能である。例えば、反対側面の電極は、電極の部分のみが重なるように部分的に位置整合させることができる。そのような構成の一例では、反対側面の電極は、電極のそれぞれの表面の間に50%の重なりが存在するように配置され得る。
【0048】
電極のサイズおよび間隔
図5A〜
図5Eに示されるリボンリード線212では、電極508、512は、細長いホッケーリングの形状である。この構成では、電極508、512は、2mm〜4mmの範囲内の長さ、および0.25mmと2mmの範囲内の幅を有することができる。リボン構造506の長さに沿った隣接する電極間の間隔は、電極の長さの2倍以下である。リボン構造506の幅にわたる隣接する電極間の間隔は、電極の幅の2倍以下である。しかしながら、リボンリード線212は、ちょうど説明した形状およびサイズの電極を必要としない。電極508、512は、例えば、正方形、楕円形、円形などを含む、異なる形状を有してもよい。
【0049】
代表的な実施形態による電極サイズおよび電極間間隔は、
図3Bおよび
図3Cを参照して上記に記載されたものなどの標的神経構造の刺激を制御するのに十分な分解能を提供する。さらに、電極クラスタ516a〜d、516e〜hの少なくとも1つを、標的神経構造を刺激するために適切に配置することができるため、電極クラスタ516a〜d、516e〜hは、脊柱の領域におけるリボンリード線212の遠位端領域502の外科的配置中に、ある程度の位置許容度を提供する。また、リボン構造506の移動または反転に起因して、埋め込み後に遠位端領域502が標的神経構造に対して変位する場合、その標的神経構造に加えられる刺激は、リボン構造の同じ側面の異なる電極508、512(リボン構造が長手方向に動く場合)に、またはリボン構造の反対側面の電極(リボンが反転またはねじれる場合)にシフトされ得る。
【0050】
図5A〜
図5Dを参照すると、1つの実施形態では、各側面の32個の電極508、512は、各々が8つの電極を有する4つの電極クラスタにグループ化される。したがって、リボンリード線212は、合計8つの電極クラスタを有し、第1の側面に4つのクラスタ516a〜dがあり、第2の側面に4つのクラスタ516e〜hがある。1つの構成では、各側面の隣接する電極クラスタ516a〜d、516e〜hは、絶縁材料518a〜c、518d〜fの領域によって互いに分離されている。隣接する電極クラスタ516a〜d、516e〜hの間の絶縁材料の領域518a〜c、518d〜fは、リボンリード線212の遠位端領域502に、より柔軟性の高い領域を提供する。具体的には、電極508、512の金属構造は、遠位端領域502の、電極クラスタ516a〜d、516e〜hに対応する領域の柔軟性を、遠位端領域502の、絶縁材料の領域518a〜c、518d〜fに対応する電極のない領域よりもいくらか低くする。
【0051】
図5A〜
図5Dに示されるリボン構造506の実施形態は、離間された電極クラスタ516a〜d、516e〜hを含むが、そのような間隔は任意選択である。したがって、他の実施形態では、電極508、512は、リボン構造506の長さに沿って等間隔に配置されている。電極508、512は依然としてクラスタにグループ化され得るが、そのようなグループ化は本質的に機能的であり、物理的ではない。したがって、本明細書において使用される場合、「クラスタ」という用語は、電極のグループ間にいかなる種類の間隔要件も与えない。
【0052】
リード線の配置
図5A〜
図5Dを引き続き参照すると、遠位端領域502は、リボンリード線212の意図された配置用途に応じて、いくつかの長さ(L)のうちの1つを有し得る。例えば、1つの実施形態では、
図3Bを参照して上述したような両側面配置で配置するためのリボンリード線212は、5cm〜8cmの範囲内の長さ(L)を有してもよい。別の実施形態では、
図3Cを参照して上述したような片側面配置で配置するためのリボンリード線212は、2cm〜5cmの範囲内の長さ(L)を有してもよい。遠位端領域502の幅(W)は、2mm〜5mmの範囲内であり、2列の電極を収容するようにサイズ設定されている。遠位端領域502の厚さ(T)は、0.25mm〜1mmの範囲内である。長さに応じて、リボン構造506の1つまたは複数の電極特徴を変更することができる。例えば、より短い長さのリボン構造506は、より長い長さのリボン構造よりも少ない電極を有し得る。代替的に、電極の数は同じであってもよいが、より短いリボン構造の電極のサイズは、より長いリボンの電極よりも小さくてもよい。さらに別の代替形態では、電極の数およびサイズは同じであってもよいが、より短いリボン構造における電極間の間隔は、より長いリボン構造における間隔よりも小さくてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、リボンリード線212は、遠位端領域502およびその関連する電極508、512が、脊髄レベルにおいて、その脊髄レベルに関連する1つまたは複数の神経構造においてまたはその近くで、患者内に埋め込むことができる。例えば、
図3Bを参照して前述したように、リボンリード線の遠位端領域502は、電極508、512がそのレベルにおいて脊髄の両側面のDRGの近くに配置され、電極が脊髄にあるように、脊髄レベルを通じて蛇行することができる。
【0054】
埋め込み後、疼痛の治療に有効な1つまたは複数の電極クラスタにおける電極の組合せを決定することができる。例えば、
図3Bを参照すると、第1の後根神経節322の近くの電極クラスタ内の電極の組合せを、刺激エネルギーを第1の後根神経節に送達するために選択することができる。第1の前根324の近くの電極クラスタ内の別の電極の組合せを、刺激エネルギーを第1の前根に送達するために選択することができる。脊髄320の前側近くの電極クラスタ内のさらに別の電極の組合せを、刺激エネルギーを脊髄に送達するために選択することができる。刺激のための適切な電極の決定後、治療モジュールは、決定された電極の組合せに従って、第1の列および第2の列を使用してパルスを送達するようにプログラムすることができる。
【0055】
リード線の相互接続
図5Aを参照すると、リボンリード線212は、リード線を治療モジュール214に機械的および電気的に接続するためのリード線インターフェース構造216を含む。管状リード線本体526が、リボン構造506とリード線インターフェース構造216との間に延伸する。可撓性薄型リボン構造506内に埋め込まれた導体が、リード線本体526を通って延伸して、電極508、512と、インターフェース構造520に関連する接点との間の電気的接続を可能にする。
【0056】
1つの実施形態では、リード線インターフェース構造216は、各々が9つの電気接点524を有する4つのインラインコネクタピン522を備える。各コネクタピン522は、8つの電極クラスタ516a〜d、516e〜hのうちの1つに切り替え可能に接続されている。切り替え可能な接続は、リード線に含まれるマルチプレクサ回路によって提供され得る。マルチプレクサ回路は、治療モジュールから制御信号を受信するように構成されたリボンリード線212内の論理回路を使用して制御することができる。論理回路は、マルチプレクサ回路を適切に設定することによって信号に応答する。コネクタピン522と電極クラスタとが接続されると、9つの電気接点524のうちの8つが、接続された電極クラスタ516a〜d、516e〜hのそれぞれの電極508、512に接続する。コネクタピン522の残りの第9の電気接点524は、接地または非アクティブな止めねじ部位として機能する。
【0057】
リード線機能
したがって、切開外科手術中に1つまたは複数の神経構造に電極を配置することを可能にするように最大限の柔軟性を有するように構成されている、その遠位端領域の長さに沿った電極の2次元アレイを有するリボンリード線212が開示される。リード線は切開手術中に配置され、神経構造の周りおよびその間で蛇行するように意図されているため、複数の神経構造の標的化と電極シフトとを可能にする電極配置も提供しながら、従来の経皮リード線またはパドルリード線に関連する設計機能が回避される。例えば、硬膜上腔内のパドルリード線の場所は、リード線のパドル領域が実質的に平面の形状をとるように設計されている。そのようなリード線のパドル領域は強制的に曲げることができるが、パドル領域は、そのような力が取り除かれると、パドル領域がその実質的に平面の形状に跳ね返るように構成される。
【0058】
本明細書に開示されるリボンリード線212において、リボン構造506は、リボン構造の厚さ、電極の形状およびサイズ、電極間の間隔、同じ側面の電極配置、反対側面の電極配置のうちの1つまたは複数を介して、力が加わったときに非平坦構成をとるように構成される。そのような力は、例えば、外科医が切開処置の配置中にリード線に加えることができる曲げまたはねじりの力を含み得る。しかしながら、リボン構造506の柔軟性は、力が除去されるときにリボン構造が非平坦構成を保持するようなものである。言い換えれば、リボン構造は柔軟で可撓性があるため、外科医が曲げ、ねじり、蛇行などを介して配置すると、リボン構造は解剖学的構造に適合し、外科医が最終的にリード線を配置し、もはや何らかの種類の力がそれに加わらなくなった後も適合したままになる。
【0059】
図5Gを参照すると、リボン構造506は、その長手方向軸に沿って波状構成をとり、保持するように構成される。言い換えれば、リボン構造506は、曲げ力が加わるのに応答して、リボン構造の中心に沿って延伸する長手方向軸519に沿って交互の方向に少なくとも1つの曲線または一連の連続する曲線において曲がるように構成される。
図5Gに示される例示的な状態では、リボン構造506は、電極クラスタ516a〜d、516e〜h領域内でとられるわずかな曲線と比較して、電極のない領域、すなわち、絶縁材料の領域518a〜c、518d〜fにおいて、より鋭い曲線をとる。
【0060】
図5Hを参照すると、リボン構造506はまた、隣接する電極508、512の間の絶縁材料の領域530において波状構成をとり、保持するように構成される。
図5Hに示される例では、リボン構造506は、電極508、512がリボン構造の長さに沿って均一に分布するように構成される。したがって、
図5Gに示される例とは異なり、隣接する電極クラスタ516a〜d、516e〜hの間に絶縁材料の大きい領域518a〜c、518d〜fはなく、リボン構造506は、
図5Gの曲線よりも、例えば曲率半径がより低いなど、より密な曲線をとる。1つの構成では、リボン構造506は、1mmおよび3mmの範囲内の曲率半径531を有する曲線をとる。リボン構造が隣接する電極間のすべての間隔において湾曲することが可能であるが、説明を容易にするために、
図5Hに示されるリボン構造506は、隣接する電極間の1つおきの間隔において湾曲することに留意されたい。
【0061】
図5Iを参照すると、リボン構造506は、その長手方向軸に沿ってねじれ構成をとり、保持するように構成される。言い換えれば、リボン構造506はまた、リボン構造の中心に沿って延伸する長手方向軸523を中心にしてねじり力が加わるのに応答して、リボン構造の反対の縁部521a、521bが湾曲するように構成される。
【0062】
従来の経皮的リード線に関しては、これらのリード線は既知のパドルリード線よりも柔軟性があり得るが、経皮的リード線は、設計上、リング電極および場合によっては先端電極の線形アレイを有する。これらのリード線は、電極シフトによる複数の神経構造の高分解能標的化を可能にする電極の2次元アレイを有しない。
【0063】
治療モジュール
図6A、
図6B、
図6C、および
図6Dを参照すると、埋め込み型神経調節デバイス206の治療モジュール214は、様々な電子構成要素を封入するハウジング602を含む。ハウジング602は、チタンなどの生体適合性金属から形成することができ、椎弓根スクリュー208aのねじ頭314の対応する特徴と嵌合するように構成された1つまたは複数の特徴を含むフォームファクタを有する。いくつかの構成では、ハウジングの1つまたは複数の部分は、例えばシリコーンなどの低デュロメータゴムまたはゴム様材料などの、曲げやすい生体適合性材料の層から形成されてもよく、またはそれでコーティングされてもよい。代替的に、ハウジングは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのポリマー熱可塑性物質を含む生体適合性非金属材料の組合せから形成されてもよく、例えば、ハウジングの大部分が、そのようなポリマー熱可塑性物質から形成されてもよく、特定の特徴が、曲げやすいシリコーンでコーティングされるか、または、曲げやすいシリコーンから形成される。それぞれの特徴は、治療モジュール214がねじ頭314に機械的に結合し、後に分離することを可能にするように嵌合する。治療モジュール214とねじ頭314との間の結合および分離は、ある構成要素の別の構成要素からの分離が、いずれかの構成要素の構造的完全性を変更または損傷しないようなものである。この意味で、構成要素は、互いに取り外し可能に結合されていると説明することができ、ここで、分離は、最小限の力を加えることを伴う。
【0064】
図6Aおよび
図6Bを参照すると、ハウジング602の嵌合特徴は、外壁606を有する中央突起604であってもよく、ねじ頭314の対応する嵌合特徴は、ねじ頭空洞608である。ねじ頭空洞608は、ねじ頭314の反対側面610の間の空間によって画定される。ねじ頭空洞608の下部は、ロッドアンドスクリュー安定化デバイスのロッド210aおよびねじ付きインサート612を受け入れるように構成される。ねじ付きインサート612は、ねじ頭314の反対側面610の内壁に形成されたねじ山と係合し、回転中にロッド201aに向かって下向きに前進して、ロッドの一部と係合し、ロッドを所定の位置に固定する。
【0065】
図6Aに示される治療モジュール214の構成では、中央突起604の外壁606はねじ切りされており、ねじ付きインサート612と同様に、これもねじ山314の反対側面610の内壁に形成されたねじ山に係合し、ねじ頭314の上面614がハウジング602の下面616と当接するまで、回転中にねじ付きインサート612に向かって下向きに前進する。したがって、この構成では、治療モジュール214は、ねじ回転によってねじ頭314に結合され、後に、治療モジュール214またはねじ頭314のいずれかの構造的完全性を変更または損傷することなく、ねじ回転によって分離することができる。
【0066】
図6Bに示される治療モジュール214の構成では、ハウジング602の中央突起604は、中央突起がねじ頭空洞608に緊密にフィットするようにサイズ設定される。したがって、突起の外壁606は、ハウジング602をねじ頭314に固定する緊密な摩擦嵌合を確立するために、ねじ頭314の反対側面610の内壁と係合する。この摩擦嵌合を容易にするために、中央突起は、力を受けて圧縮してねじ頭空洞608に緊密にフィットする、例えばプラスチックなどの曲げやすい材料から形成することができ、またはこの材料でコーティングすることができる。ハウジング602は、ねじ頭314の上面614がハウジング602の下面616と当接するまで、ねじ付きインサート612に向かって下向きに押すことができる。したがって、この構成では、治療モジュール214は、押す力によってねじ頭314に結合され、後に、治療モジュール214またはねじ頭314のいずれかの構造的完全性を変更または損傷することなく、引く力によって分離することができる。
【0067】
図6Cを参照すると、ハウジング602の嵌合特徴は、ハウジング空洞620を画定する一対の反対の側方突起618a、618bであってもよく、ねじ頭314の対応する嵌合特徴は、ねじ頭自体の一部である。ハウジング空洞620は、ハウジング602の反対の側方突起618a、618bとの間の空間によって画定され、ねじ頭314の部分を受け入れるように構成される。この構成では、ねじ頭314はまた、ロッドアンドスクリュー安定化デバイスのロッド210aを受け入れるように構成されたねじ頭空洞608と、ロッドの一部と係合してそれを所定の位置に固定するねじ付きインサート612とを有する。
【0068】
1つの構成では、反対の側方突起618a、618bの内壁はねじ切りされており、ねじ頭314の外壁に形成された対応するねじ山と係合する。したがって、この構成では、治療モジュール214は、ねじ回転によってねじ頭314に結合され、後に、治療モジュール214またはねじ頭314のいずれかの構造的完全性を変更または損傷することなく、ねじ回転によって分離することができる。
【0069】
別の構成では、ハウジング602のハウジング空洞620は、ねじ頭314に緊密にフィットするようにサイズ設定される。したがって、反対の側方突起618a、618bの内壁は、ハウジング602をねじ頭314に固定する緊密な摩擦嵌合を確立するために、ねじ頭314の外壁と係合する。この摩擦嵌合を容易にするために、反対の側方突起618a、618bの内壁は、力を受けて圧縮してねじ頭314に緊密にフィットする、例えばプラスチックなどの曲げやすい材料でコーティングすることができる。ハウジング602は、ねじ頭314の上面614がハウジング602の下面616と当接するまで、ねじ頭314の上で下向きに押すことができる。したがって、この構成では、治療モジュール214は、押す力によってねじ頭314に結合され、後に、治療モジュール214またはねじ頭314のいずれかの構造的完全性を変更または損傷することなく、引く力によって分離することができる。
【0070】
引き続き
図6Aを参照すると、治療モジュール214は、リード線インターフェース構造と結合するように構成された治療モジュールインターフェース構造218を含む。1つの構成では、治療モジュールインターフェース構造218は、リード線インターフェース構造の対応するコネクタ構造と嵌合するように構成されたインラインコネクタ構造624を有するドングル622である。別の構成では、ドングル622は、4つのインラインコネクタ構造626を有する。
【0071】
図6Dを参照すると、治療モジュール214の電子構成要素630は、大部分が、ハウジング602の上側領域628に配置されている。ただし、一部の電子構成要素は、ハウジングの他の部分に配置されている場合がある。例えば、例として電池または誘導充電式コンデンサなどのエネルギー源632は、突起604の内側に配置され得る。電池は、ワイヤレス充電式または非充電式(すなわち、一次電池)であってもよい。電池は、超薄膜電池であってもよく、または、単層炭素繊維電池であってもよい。電池はボタンキャップの形状をしていてもよい。治療モジュール214の電子構成要素630のさらなる説明は、
図9〜
図12を参照して以下に提供される。
【0072】
図7を参照すると、より大きいねじ頭空洞720を有する椎弓根スクリュー708aとともに使用するように構成された治療モジュール214の代替実施形態において、電子構成要素730のほとんどは、ねじ付きインサート712の直上のねじ頭空洞720内にあるハウジング702の一部分内に配置されている。治療モジュール214は、
図6A、
図6B、および
図6Cを参照して上述した方法のいずれかにおいて、ねじ頭714に結合し、分離することができる。ハウジング702のフォームファクタは、ねじ頭714の上部より上方に突出するドーム型上部722を含む。溝724を含むドーム型上部722は、曲げやすい材料の層から形成され、またはそれでコーティングされ得る。溝724は、ハウジング702から延伸するドングルワイヤ726の一部を受け入れて所定の位置に固定するように構成される。
【0073】
図8を参照すると、
図7の椎弓根スクリューと同様の椎弓根スクリュー808aとともに使用するように構成された治療モジュール214の別の代替実施形態において、電子構成要素830のほとんどは、ねじ付きインサート812の直上のねじ頭空洞820内にあるハウジング802の一部分内に配置されている。治療モジュール214は、
図6A、
図6B、および
図6Cを参照して上述した方法のいずれかにおいて、ねじ頭814に結合し、分離することができる。治療モジュール214は、ハウジング802の上側領域において露出された複数の電気コネクタを備えるインターフェース構造822を含む。電気コネクタは、リード線インターフェース構造824の対応する複数の電気コネクタと嵌合するように構成される。
【0074】
電子構成要素
図9を参照すると、神経調節デバイス206は、患者に治療を送達するためにリボンリード線212に結合された治療モジュール214を含む。神経調節デバイス206はまた、データを収集および分析し、整形外科インプラントデバイスの状態および患者ステータスを示すための、1つまたは複数のインプラント完全性センサ942、944および1つまたは複数の患者健康センサ946に関連付けられた健康情報モジュール940も含むことができる。インプラント完全性センサ942、944および患者健康センサ946は、典型的には、健康情報モジュールに含まれる。しかしながら、いくつかのインプラント完全性センサは、整形外科インプラントデバイスに直接関連付け、ケーブルによって健康情報モジュール940に結合することができる。
【0075】
外部充電器/コントローラ904が、誘導結合928を通じてエネルギーを生成し、治療モジュールに伝送または放出する。治療モジュール214は、充電器/コントローラ904によって伝送されたエネルギーを受け取り、エネルギーを貯蔵し、最終的に、エネルギーを使用して、ある形態の治療を生成し、リボンリード線212を通じ患者に送達する。充電器/コントローラ904と治療モジュール214との間の誘導結合はまた、充電器/コントローラから治療モジュールへのプログラミング情報のダウンロード、および治療モジュールから充電器/コントローラへの、例えば治療送達記録などの手術情報のアップロードのためのこれらの構成要素間のデータ通信を容易にすることもできる。代替的に、治療モジュール214と充電器/コントローラ904との間のプログラミングおよびデータ収集は、ワイヤレスRF遠隔測定またはBluetooth(登録商標)インターフェース930を通じて実施されてもよい。誘導結合またはRF遠隔測定実施のいずれかにおいて、健康情報モジュール940によって収集される健康情報はまた、治療モジュール214と健康情報モジュールとを相互接続する通信バス932を通じて充電器/コントローラ904にアップロードされてもよい。
【0076】
外部患者インターフェースデバイス906が、ワイヤレスRF遠隔測定またはBluetoothインターフェース934を通じて、健康情報モジュール940によって収集される健康情報をアップロードすることができる。例えば、治療送達記録などの手術情報もまた、治療モジュール214と健康情報モジュール940とを相互接続する通信バス932を通じて、治療モジュールから外部患者インターフェースデバイス906にアップロードすることができる。外部患者インターフェースデバイス906はまた、治療モジュール214の限定された動作制御を提供することもできる。この目的のために、外部患者インターフェースデバイス906は、患者の疼痛を評価し、刺激パラメータを調整するために患者と対話するアプリケーションまたはソフトウェアを含むことができる。パラメータは、患者が手動で、アプリケーションアルゴリズムと連動して治療モジュールによって自動的に、または臨床医が遠隔的に調整することができる。治療モジュール214による治療の送達を開始するか、または治療レジメンに従って治療を送達するように治療モジュールをプログラムするために、コマンド信号を、RF遠隔測定インターフェース934を介して、および通信バス932を通じて、患者インターフェースデバイスから治療モジュールに送信することができる。
【0077】
図10は、
図9の治療モジュール214およびリボンリード線212のブロック図である。治療モジュール214は、リード線の対応するリード線インターフェース構造216とインターフェースするように適合された治療モジュールインターフェース構造218を含む。リボンリード線は、電極インターフェース1008と電気的にインターフェースするための1つまたは複数の電極クラスタ516a〜d、516e〜hを選択するためのマルチプレクサ回路を含む。電極インターフェース1008は、治療の送達に必要な、選択されたクラスタ内の1つまたは複数の電極を選択するためのマルチプレクサ回路を含む。電極インターフェース1008はまた、神経組織との適切なインターフェースに必要とされる、分離、および電荷平衡機能を含むがこれらに限定されない他の特徴または機能を提供する回路を含むこともできる。
【0078】
充電回路1014は、誘導結合インターフェース928を介して充電器/コントローラ904からエネルギーを受け取り、治療モジュールのエネルギー貯蔵構成要素1024にエネルギーを提供する。エネルギー貯蔵構成要素1024は、スーパーキャパシタまたは1つもしくは複数の充電式電池であってもよい。別の構成では、エネルギーは、遠隔誘導エネルギー源によって提供され、リアルタイムで使用されてもよく、その場合、エネルギーは貯蔵されず、エネルギー貯蔵構成要素1024は必要ではない場合がある。
【0079】
治療コントローラ1010が、電極インターフェース1008に結合され、制御信号1012を通じて電極インターフェースによる電極の選択を制御する。治療コントローラ1010による電極選択の結果として、例えば、双極電極構成など、電極クラスタ516a〜e、516e〜hにおける一対の電極を通じて治療が送達され得る。治療モジュール214はまた、選択された電極を通して電気刺激エネルギーを送達するために必要な信号を提供する。治療コントローラ1010は、エネルギー貯蔵構成要素1024に結合され、エネルギー貯蔵構成要素からエネルギーを引き出し、刺激エネルギー信号を生成するように構成される。
【0080】
リボンリード線212の各電極クラスタ516a〜d、516e〜hはまた、そのクラスタの温度を示す信号を提供するように構成された温度センサも含むことができる。温度センサは、リード線インターフェース構造216および治療モジュールインターフェース構造218を通じて電極インターフェース1008に結合される。1つの構成では、温度センサは、標的領域の温度が指定された基準を満たすことを保証するために、温度フィードバック信号1018を治療コントローラ1010に提供する。温度フィードバックはまた、上首尾な治療設定の指標を提供することもできる。代替モダリティとしての熱に関連して、刺激はまた、相乗的に治療効果があり得る、領域内の一定量の非損傷性の熱を生成するために使用することもできる。
【0081】
治療信号を生成するためのエネルギーを供給することに加えて、エネルギー貯蔵構成要素1024は、例えば、電極インターフェース1008、治療コントローラ1010および充電回路1014の構成要素を含む、治療モジュール214の電子構成要素の動作に必要な電圧および電流を供給する。治療モジュール214はまた、メモリ回路1026も含む。メモリ回路1026は、送達された治療の履歴、エネルギー貯蔵構成要素の再充電セッション、および温度測定値に対応する情報を記憶することができる。
【0082】
治療モジュール214は、ワイヤレス通信リンクを通じて治療モジュールと充電器/コントローラ904との間のRF遠隔測定通信を可能にする通信インターフェース1022を含むことができる。充電器/コントローラ904は、医師が治療レジメンによって治療コントローラ1010をプログラムすることを可能にする。例えば、治療コントローラ1010は、治療セッション中に選択された治療の定期的な用量を送達するようにプログラムすることができる。通信インターフェース1022はまた、メモリ回路1026からの情報のダウンロードも可能にする。
【0083】
図11は、健康情報モジュール140、および、インプラント完全性センサと患者健康センサの一方または両方として機能し得る様々なセンサ1114、1116、1118、1120、1122のブロック図である。センサは、各々が健康情報モジュール140から遠隔して配置された1つまたは複数のひずみゲージ1114、圧電センサ1116、位置センサ/GPS1118、ならびに、各々が情報モジュール内に配置された1つまたは複数の加速度計1120およびジャイロスコープ1122を含む。健康情報モジュール140から遠隔したセンサは、ケーブルによってケーブルコネクタ158またはモジュールのヘッダに接続する。ケーブルコネクタ158は、ケーブルを健康情報モジュール140に物理的に固定し、各センサを健康情報モジュール140内のセンサデータプロセッサ1102に物理的および電気的に結合する。
【0084】
センサデータプロセッサ1102は、センサ1114、1116、1118、1120、1122からの信号を取得および処理して、インプラントデバイスの機械的完全性および/または患者の健康状態を示す測定基準を決定することができる。代替的に、またはそれに加えて、外部患者インターフェースデバイス116が、健康情報モジュール140から情報を取得し、その情報を処理して測定基準を決定することができる。いくつかのデバイス完全性測定基準および患者の健康測定基準が想定され、システム110は、これらの測定基準のうちの1つまたは複数を決定するように構成することができる。
【0085】
「耐荷重性」測定基準として参照される第1のデバイス完全性測定基準は、整形外科インプラントデバイスの種々のハードウェア構成要素間の負荷分散の指標を提供する。ほとんどのインプラントデバイスは、埋め込み後および十分な治癒後、インプラントデバイスに加えられる骨構造の重量または力(本明細書においては骨構造の「負荷」と称される)が、デバイスのハードウェア構成要素間で、一部の構成要素が他の構成要素よりも多くの負荷を負担するように分散されるように構成されている。例えば、ロッドアンドスクリュー脊椎固定デバイスにおいて、骨に埋め込まれた椎弓根スクリューは、ロッドよりも多くの荷重を担持するように意図されている。意図した分散と適合しないハードウェア構成要素間の負荷分散は、治癒が完了していないか、または、インプラントデバイスが骨に対して安定していないことを示している可能性がある。ロッドアンドスクリュー脊椎固定デバイスについて続けると、椎弓根スクリューを取り巻く骨質の不十分な再成長または癒合により、デバイスが不安定になりまたは緩む可能性がある。この場合、そうでなければ椎弓根スクリューによって担持される荷重の一部が、ロッドに再分散される。
【0086】
耐荷重性測定基準は、例えば、整形外科インプラントデバイスのハードウェア構成要素に関連付けられたひずみゲージ1114または圧電センサ1116を通じて取得することができる。これらのセンサ1114、1116のいずれかの出力は、センサが取り付けられている構成要素によって担持される負荷の測度としての役割を果たすことができる。出力の経時的な監視により、デバイス完全性の低下に関連する可能性のある負荷の変化を検出することが可能になる。例えば、別の構成要素ほど多くの負荷を担持することを意図されていない構成要素からのひずみゲージ1114出力の増加は、他の構成要素が緩んでいることを示している。さらに、ロッドアンドスクリュー脊椎固定デバイスについて続けると、ロッドに取り付けられたひずみゲージ1114の出力の増加は、椎弓根スクリューが緩んでいることを示している。
【0087】
「相対位置」測定基準として参照される第2のデバイス完全性測定基準は、整形外科インプラントデバイスの種々のハードウェア構成要素の相対位置の指標を提供する。ほとんどのインプラントデバイスは、インプラント後および十分な治癒後、デバイスの種々のハードウェア構成要素の互いに対する位置が固定されるように構成されている。例えば、ロッドアンドスクリュー脊椎固定デバイスでは、椎弓根スクリューとロッドとの相対位置を固定する必要がある。固定位置決めと適合しないハードウェア構成要素間の相対位置検出または測定基準は、ハードウェア構成要素の一方または両方が安定していないことを示している可能性がある。ロッドアンドスクリュー脊椎固定デバイスについて続けると、椎弓根スクリューを取り巻く骨質の不十分な再成長または癒合により、デバイスが不安定になりまたは緩む可能性がある。この場合、椎弓根スクリューとロッドとの間の相対位置は、ベースライン値から変化する。
【0088】
相対位置測定基準は、例えば、整形外科インプラントデバイスのハードウェア構成要素に関連付けられた、GPSセンサなどの位置センサ1118を通じて取得することができる。位置センサ1118の出力は、2つの構成要素間の距離の測度としての役割を果たすことができる。出力の経時的な監視により、デバイス完全性の低下に関連する可能性のある距離の変化を検出することが可能になる。例えば、距離の増加は、ハードウェア構成要素が互いに対して移動したことを示す。さらに、ロッドアンドスクリュー脊椎固定デバイスについて続けると、ロッドといずれかの椎弓根スクリューとの間の距離の増加は、ハードウェア構成要素の1つが移動しており、緩んでいる可能性があることを示す。
【0089】
「安定性」測定基準として参照される第3のデバイス完全性測定基準は、整形外科インプラントデバイスの1つまたは複数のハードウェア構成要素の安定性の指標を提供する。インプラントデバイスは、インプラント後および十分な治癒後、デバイスの種々のハードウェア構成要素が所定の位置に固定されるように構成されている。例えば、ロッドアンドスクリュー脊椎固定デバイスでは、椎弓根スクリューとロッドとを固定する必要がある。安定した固定位置のものと適合しないハードウェア構成要素の安定性測定基準は、ハードウェア構成要素の一方または両方が緩んでいることを示している可能性がある。ロッドアンドスクリュー脊椎固定デバイスについて続けると、椎弓根スクリューを取り巻く骨質の不十分な再成長または癒合により、デバイスが不安定になりまたは緩む可能性がある。
【0090】
安定性測定基準は、例えば、健康情報モジュール140内の加速度計1120を通じて取得することができる。加速度計1120は、運動および振動を検知し、そのような動きを表す信号を出力する。一部の動きは患者の活動が原因である可能性があり、一方で、他の動きはハードウェア構成要素の動きが原因である可能性がある。例えば、緩い椎弓根スクリューは、ロッドの振動をもたらす可能性があり、その結果、ロッドに固定された健康情報モジュール140の振動が生じる可能性がある。健康情報モジュール140内のセンサデータプロセッサ1102は、信号を処理して、患者に起因する動きとインプラントデバイスに起因する動きとを区別することができる。これは、加速度計信号のフィルタリングおよびスペクトル分析を通じて行うことができ、ロッドの振動から生じる動きは、患者の動きによって引き起こされるものとは異なるスペクトル周波数成分である。
【0091】
本明細書において「活動」測定基準として参照される第1の患者健康測定基準は、患者の動きの指標を提供する。活動測定基準は、例えば、健康情報モジュール140内の加速度計1120を通じて取得することができる。ちょうど述べたように、加速度計1120は、運動および振動を検知し、そのような動きを表す信号を出力する。一部の動きは患者の活動が原因である可能性があり、一方で、他の動きはハードウェア構成要素の動きが原因である可能性がある。健康情報モジュール140内のセンサデータプロセッサ1102は、信号を処理して、患者に起因する動きとインプラントデバイスに起因する動きとを区別することができる。これは、加速度計信号のフィルタリングおよびスペクトル分析を通じて行うことができ、ロッドの振動から生じる動きは、患者の動きによって引き起こされるものとは異なるスペクトル周波数成分である。疼痛およびまたは疼痛の軽減成功の潜在的なバイオマーカは、患者の動き、姿勢、運動/活動、および環境内の動きの量(すなわち、外出/旅行)によって示すことができる。
【0092】
本明細書で「運動」測定基準と呼ばれる第2の患者健康測定基準は、患者の運動の範囲の指標を提供する。例えば、この指標は、患者がかがむ、または、特定の方向に向きを変える能力を示すことができる。運動測定基準は、例えば、健康情報モジュール140内のジャイロスコープ1122を通じて取得することができる。
【0093】
様々なセンサに加えて、健康情報モジュール140は、電源1104、メモリ回路1106、および通信インターフェース1108を含む。電源1104は、例えば、センサデータプロセッサ1102、センサ、および通信インターフェース1108の構成要素を含む、モジュールの電子構成要素の動作に必要な電圧および電流を供給する。電源1104は、治療モジュール114を参照して上で説明したもののような誘導結合リンクを通じて再充電されるように構成することができる。メモリ回路1106は、センサデータプロセッサ1102によって決定されたセンサ出力および測定基準の履歴に対応する情報を記憶することができる。
【0094】
通信インターフェース1108は、ワイヤレス通信リンクを通じた健康情報モジュールと外部患者インターフェースデバイス116との間のRF遠隔測定通信を可能にする。外部患者インターフェースデバイス116は、メモリ回路1106からの情報のダウンロードを可能にする。情報はまた、インターフェースが充電目的で使用されていないときに、誘導遠隔測定によって誘導結合リンクを通じてメモリ回路1106からダウンロードすることもできる。
【0095】
本開示の様々な態様は、当業者が本発明を実施することを可能にするために提供される。本開示全体を通じて提示される例示的な実施形態への様々な修正が、当業者には容易に明らかであろう。したがって、特許請求の範囲は、本開示の様々な態様に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲の文言と一致する全範囲を与えられるべきである。当業者に知られている、または後に知られるようになる、本開示全体を通じて記載されている例示的な実施形態の様々な構成要素とのすべての構造的および機能的同等物は、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、特許請求の範囲に含まれることが意図される。さらに、本明細書に開示されているものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているか否かに関係なく、公に捧げることを意図したものではない。請求項の要素は、要素が「〜するための手段」という語句を使用して明示的に記載されていない限り、または、方法請求項の場合は「〜するためのステップ」という語句を使用して明示的に記載されていない限り、米国特許法第112条の第6段落の規定に基づいて解釈されるべきではない。
【国際調査報告】