(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-523808(P2021-523808A)
(43)【公表日】2021年9月9日
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20210813BHJP
A61M 25/04 20060101ALI20210813BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20210813BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20210813BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20210813BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20210813BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20210813BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20210813BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20210813BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20210813BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20210813BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20210813BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20210813BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20210813BHJP
【FI】
A61M25/10 510
A61M25/04
A61P13/02
A61P35/00
A61K45/00
A61K9/127
A61K47/24
A61K31/337
A61K33/24
A61K31/513
A61K31/407
A61K31/7068
A61K31/704
A61K31/675
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2021-512363(P2021-512363)
(86)(22)【出願日】2019年5月6日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月24日
(86)【国際出願番号】US2019030833
(87)【国際公開番号】WO2019213648
(87)【国際公開日】20191107
(31)【優先権主張番号】62/666,848
(32)【優先日】2018年5月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/680,172
(32)【優先日】2018年6月4日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520428627
【氏名又は名称】ライパック オンコロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】オーフェリン, マイケル ジー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C267
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076BB11
4C076CC27
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4C267BB05
4C267BB26
4C267BB28
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4C267GG16
(57)【要約】
本発明は、上部尿路上皮癌(UTUC)に化学療法剤又はX線造影剤を局所送達する。本発明は、逆行性又は順行性のカテーテル手段により、尿管/腎盂内に配置される作業チャネルとバルーンとを備えたバルーンカテーテルを具備する。バルーンは、尿管を一時的に閉塞するように膨張され、化学療法剤を含む製剤は、カテーテルの作業チャネルに注入され、製剤が尿路上皮壁に付着して浸透するのに十分な時間で、尿管/腎盂内に滞留可能である。製剤は、リポソーム又は非リポソーム製剤であり得る。注入された化学療法剤の製剤の少なくとも一部は、滴下注入される間に尿路上皮壁に付着して、尿管/腎盂内に滞留する。本発明の方法は、尿管鏡検査の切除又は腫瘍の切除を含む、他のUTUC治療方法への補助療法として実施可能である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端111と遠位端112とを有するカテーテル101であって、
前記カテーテル101の前記近位端111内のバルーン注入用ポート161と流体連通して、さらに、前記カテーテル101の前記遠位端112内の膨張型閉塞バルーン140と流体連通する、バルーン膨張用管腔130と、
前記カテーテル101の前記近位端111内のガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポート171と流体連通して、さらに、前記カテーテル101の前記遠位端112内の少なくとも1つの孔と流体連通するガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170であって、前記少なくとも1つの孔から前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポート171まで尿を通過させる、ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170と、
前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170と流体連通して、前記カテーテル101の前記遠位端112に配置されるガイドワイヤ入口孔355であって、ガイドワイヤ上に前記カテーテル101を装填して、前進させて、前記ガイドワイヤは、前記ガイドワイヤ入口孔355と、前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170と、前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポート171とを通過する、ガイドワイヤ入口孔355と、
前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポート171と前記膨張型閉塞バルーン140との間の前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170に沿って配置されて、所定の尿管圧が超過される場合に、前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170に管腔流体を放出するように構成される、圧力安全弁175と、を具備し、
前記膨張型閉塞バルーン140は、バルーン膨張用管腔160と流体連通して、前記カテーテル101の前記遠位端112に配置されて、前記膨張型閉塞バルーン140は、前記弁175の所定の尿管解放圧より大きい力に耐えるように構成される、カテーテル101。
【請求項2】
前記膨張型閉塞バルーン140は、患者の尿管内に膨張されるように構成される、請求項1に記載のカテーテル101。
【請求項3】
前記膨張型閉塞バルーン140は、患者の尿管管腔内に膨張されるように構成される、請求項1に記載のカテーテル101。
【請求項4】
前記膨張型閉塞バルーン140は、閉塞バルーンである、請求項1に記載のカテーテル101。
【請求項5】
前記膨張型閉塞バルーン140は、伸展バルーンである、請求項1に記載のカテーテル101。
【請求項6】
前記バルーン注入用ポート161と前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポート171の少なくとも1つは、前記カテーテル101から取外し可能である、請求項1に記載のカテーテル101。
【請求項7】
必要とする対象に、上部尿路上皮癌(UTUC)を治療するための方法であって、前記対象の尿管又は腎盂に化学療法剤を送達することを含み、
A.請求項1に記載のカテーテルを、前記尿管内に配置すること、
B.前記尿管又は腎盂を一時的に閉塞するように、前記カテーテルの前記閉塞バルーン140を膨張させること、
C.治療用量の化学療法薬を含む製剤を、前記カテーテルの前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170内に装填すること、
D.前記製剤を、前記尿管又は腎盂内に滴下注入すること、および
E.前記滴下注入された製剤を、前記製剤の少なくとも一部が尿路上皮壁に付着して部分的に浸透するのに十分な時間で、前記尿管又は腎盂内に滞留させること、を含む、方法。
【請求項8】
前記化学療法剤は、タキサン級薬剤、白金系薬剤、5−フルオロウラシル、マイトマイシンC、ゲムシタビン、エピルビシン、チオテパの少なくとも1つ、又はそれらの組み合わせである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記製剤は、リポソーム製剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記リポソーム製剤は、
(A)タキサン級薬剤又は白金系薬剤と、
(B)ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)と、
(C)ジミリストイルホスファチジルグリセロールナトリウム(DMPG)と、を含み、
A:B:Cの重量/重量比は、1:(1.3〜4.5):(0.4〜2.5)である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記タキサン級薬剤は、パクリタキセルであり、A:B:Cの重量/重量比は、(1):(1.43):(0.47)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記滴下注入された製剤は、少なくとも約1分、約10分、約15分、約20分、約30分、約45分、約1時間、又は約2時間、前記尿管又は腎盂の前記少なくとも1つ内に滞留可能である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
対象の尿管又は腎盂を視認するための方法であって、
A.請求項1に記載のカテーテルを、前記尿管内に配置すること、
B.前記尿管又は腎盂を一時的に閉塞するように、前記カテーテルの前記閉塞バルーン140を膨張させること、
C.X線造影剤を含む組成物を、前記カテーテルの前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170内に装填すること、
D.前記X線造影剤を含む前記組成物を、前記尿管又は腎盂内に滴下注入すること、及び
E.前記患者への腎盂静脈逆流暴露を最小限にする一方、前記滴下注入組成物を、蛍光透視法又はX線撮影法で、前記尿管又は腎盂を視認可能に十分な時間で、前記尿管又は腎盂内に滞留させること、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年5月4日出願の米国仮特許出願第62/666,848号及び2018年6月4日出願の米国仮特許出願第62/680,172号の利益を主張する。本出願は、2018年5月4日出願の米国仮特許出願第62/666,848号及び2018年6月4日出願の米国仮特許出願第62/680,172号の記載内容すべてを、本明細書に引用することで組み込む。
【0002】
本発明は、上部尿路上皮癌(UTUC)に化学療法剤を局所送達するための装置及び方法に関する。本発明は、逆行性又は順行性のカテーテル手段により、尿管及び/又は腎盂へのリポソームと他の治療製剤の局所送達に影響を与えるカテーテルを具備する。
【背景技術】
【0003】
尿路上皮は、膀胱と上部尿路を一列に配する組織層である。尿路上皮は、膨張・収縮して、尿路を通して尿を押し出す。尿路上皮は、尿に直接接するため、この配された尿路上皮は、腎臓により血液からろ過して除去される化学物質(発癌性物質含む)に曝される。これらの化学物質により、細胞が変化し、癌として制御不能に増殖し得る。
【0004】
上部尿路上皮癌(UTUC)は、比較的珍しい種類の癌であり、すべての尿路上皮癌の5〜10%を占めるにすぎない。西欧諸国のUTUCの推定年間発生率は、住民10万人当たり約2症例(又は年間6千症例)である。UTUCは、70〜90歳の年齢層で発症ピークが見られ、男性が3倍発症しやすい。該疾患症例の17%に膀胱癌が併発する。膀胱での再発は、UTUC患者の22〜47%に生じるのに対し、対側上部尿路での再発率は2〜6%である。UTUC症例の60%が診断時に浸潤性であるのに対し、膀胱腫瘍の浸潤性割合は15〜25%である。
【0005】
UTUC治療は、腫瘍悪性度(侵襲性の度合い)、腫瘍の大きさ、患者の年齢、病歴、健康全般及び患者の腎臓集合系の解剖学的構造に依存する。治療の選択肢には、外科手術、放射線治療及び化学療法が含まれる。
【0006】
UTUC治療を高リスク患者に施す際は、根治的腎尿管全摘術(RNU)が必要になる場合がある。他方、低リスク症例は、対側腎が機能する場合に検討可能な、保存的治療を含み得る。低リスクUTUCに腎臓温存手術(KSS)を施すと、腫瘍転帰や腎機能を損なうことなく、根治的腎尿管全摘術に関連する病的状態を回避することができる。さらに、保存的治療はまた、不可避な症例のすべて(すなわち、腎不全又は機能する単腎を有する患者)においても検討可能である。最も一般的なKSS手法は、尿管鏡検査の逆行性腫瘍の切除法、経皮順行性腫瘍の切除法、又は尿管部分摘除術を含む。
【0007】
尿管鏡検査を使用する、UTUCの内視鏡的切除法は、厳選した症例や以下の状況において検討可能である:レーザ発生装置とワニ口型内視鏡用鉗子が生検用に利用可能な場合;尿管鏡が可撓性及び剛性な場合;より詳細で厳密な監視が必要であると、患者に知らされる場合;及び完全な腫瘍切除が強く推薦される場合。しかしながら、離れた解剖学的腎盂領域に内視鏡手段を実施すると、外科的な切除や生検実施の能力が制限され得る。さらに、内視鏡的治療のみでは、腫瘍の病期や度合いを過小評価するリスクがある。その上、尿管鏡検査で治療した腎盂腫瘍や尿管腫瘍の再発率は、それぞれ33〜35%と31〜32%と高率である。
【0008】
腫瘍の再発に対処するために、UTUCの外科的治療は、化学療法抗癌剤を使用して、術後滴下注入療法により併用可能である。UTUC治療において、KSSの後にMMCを管腔内滴下注入することで、有望な転帰が得られることが報告されている。しかしながら、尿管・腎盂手法や適切な薬剤の滞留時間を達成するのが困難であるため、内視鏡治療後に従来の局所的化学療法を実施すると、病気の再発に準最適効果が現れる。従来のシステムでは、管腔内で持続させて、送達装置からの薬物放出を制御することはできない。薬物が放出される期間の制御及び/又は短縮を要することが多い。放出時間の秒から分に、又は分から時間、日、又は週単位への延長等は利点であり得る。さらに、長期にわたって薬物の放出率を制御することは、所望な場合が多い。
【0009】
外科的切除と局所的な術後化学療法後ですら、尿路上皮腫瘍の再発が継続するため、UTUC患者用のさらなる治療措置の必要性が際立っている。薬剤の局所投与は、道管と脈管の壁に関わるケースにおいて、輸送系器官として機能することから特別な課題となる。上部尿路への管腔内送達は、尿管内容物の水性環境、排出性蠕動、及び尿路上皮障壁への浸透のしにくさを考慮すると、特有の課題を提起する。
【0010】
従前のバルーンカテーテルは、最適な薬物送達能力を与えず、バルーンの大きさや形状に関する不具合を有し、尿管及び/又は腎盂の圧力を確認・調整して、管腔内化学療法剤を安全に送達する有効な手段を含むものではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、化学療法抗癌剤を使用して、滴下注入療法を含むUTUC内視鏡的治療方法を提供する。本発明は、化学療法剤の滞留時間が延長されて、このため、化学療法剤に尿路上皮癌がますます暴露(及び潜在的に浸透)可能になる、UTUC治療方法を含む。本発明は、化学療法剤が(酸性)pH尿に沈殿せず、製剤により、化学療法剤が、UTUCが影響する尿管及び/又は腎盂の尿路上皮壁に少なくとも部分的に付着できる、化学療法剤の安定したリポソーム製剤を使用する装置及び方法を提供する。このような方法は、治療の副作用を最小限にする一方、その効能を増大又は維持可能にする。
【0012】
本発明は、上部尿路上皮癌を治療する装置及び方法をさらに含む。上部尿路上皮癌(UTUC)に化学療法剤を局所送達するための発明に係る1つの方法は、逆行性又は順行性のカテーテル手段により、尿管及び/又は腎盂に作業チャネルを備えたバルーンカテーテルを配置する。カテーテルバルーンは、尿管を一時的に閉塞するように膨張されて、化学療法剤を含む液体リポソーム製剤は、カテーテルの作業チャネルに滴下注入される。これにより、リポソーム製剤の少なくとも一部が、尿路上皮壁に付着(及び潜在的には部分的に浸透)可能に十分な時間で、滴下注入されたリポソーム製剤は、尿管/腎盂内に滞留可能である。
【0013】
本発明の1つの実施例は、体内管腔内の標的部位に薬剤を投与するためのカテーテルを含む。本発明の1つの実施例は、UTUCを治療するためのカテーテル経由で、化学療法剤を送達することを含む。カテーテルは、それ自体が、Y体ルアーハブで管腔軸に結合される、ガイドワイヤ/排液/滴下注入(GDI)用管腔とバルーン膨張(BI)用管腔と、を具備する。管腔軸は、管腔軸に配列される、ガイドワイヤ/排液/滴下注入(GDI)用管腔とバルーン膨張(BI)用管腔との両方を具備する。バルーン膨張(BI)用管腔は、バルーン膨張溶液から膨張式カテーテルバルーンまでの流体連通経路を提供する。膨張されたバルーンは、腎内集合系からの造影剤の流れを止めて、ガイドワイヤ/排液/滴下注入(GDI)管腔は、ガイドワイヤ/排液/滴下注入(GDI)管腔の近位端から管腔軸の遠位端まで流体連通を提供して、例えば、尿管等の体内管腔内の流体を排出するために使用可能である。ガイドワイヤ/排液/滴下注入(GDI)管腔の近位端では、カテーテルは、管腔器官内の圧力を調整する圧力逆止弁を具備する。管腔器官(したがって、ガイドワイヤ/排液/滴下注入(GDI)用管腔)内の圧力が所定圧力に達する場合、逆止弁は開いて、圧力を解放する。さらに、バルーンは、カテーテル位置をX線で確認するために、管腔軸の外面に取り付けられたマーカバンドを具備する。本発明の別の典型的な実施形態は、腎盂静脈逆流と上部尿路の解剖的歪みを最小限にするため、逆止弁を備えた逆行性腎盂造影法用のカテーテルを具備する。造影剤(又は他の材料)は、腎盂静脈逆流を最小限にするため、逆止弁により腎内集合系から排出可能である。
【0014】
本発明の1つの典型的な実施形態は、近位端と遠位端とを有するカテーテルを具備する。カテーテルは、カテーテルの近位端のバルーン注入用ポートと流体連通して、さらに、カテーテルの遠位端の膨張型閉塞バルーンと流体連通する、バルーン膨張用管腔を具備する。カテーテルはまた、カテーテルの近位端のガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポートと流体連通して、さらに、カテーテルの遠位端の少なくとも1つの排出孔と流体連通する、ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔を具備する。ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔は、少なくとも1つの排出孔からガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポートまで尿を通過させる。
【0015】
カテーテルはまた、ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔と流体連通して、カテーテルの遠位端に配置される、ガイドワイヤ入口孔を具備する。ガイドワイヤ入口孔は、ガイドワイヤ上にカテーテルを装填して、前進させるために使用され、ガイドワイヤは、ガイドワイヤ入口孔と、ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔と、ガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポートとを通過する。
【0016】
カテーテルはまた、ガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポートと膨張型閉塞バルーンとの間のガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔に沿って配置されて、所定尿管圧が超過される場合のガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔に管腔流体を放出するように構成される、圧力安全弁を具備する。さらに、膨張型閉塞バルーンは、バルーン膨張用管腔と流体連通して、カテーテルの遠位端に配置される。膨張型閉塞バルーンは、該弁の所定尿管解放圧よりも大きい力に耐えるように構成される。本発明の1つの典型的な実施形態において、膨張型閉塞バルーンは、患者の尿管内に膨張されるように構成される。本発明の1つの典型的な実施形態において、膨張型閉塞バルーンは、患者の尿管管腔内に膨張されるように構成される。本発明の1つの典型的な実施形態において、膨張型閉塞バルーンは、閉塞バルーンである。本発明の1つの典型的な実施形態において、膨張型閉塞バルーンは、伸展バルーンである。
【0017】
本発明の1つの典型的な実施形態において、バルーン注入用ポートとガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポートの少なくとも1つは、カテーテルから取外し可能である。
【0018】
本発明の1つの典型的な実施形態は、治療を必要とする対象における上部尿路上皮癌(UTUC)を治療するための方法を含む。該方法は、対象の尿管又は腎盂に化学療法剤を送達することを含む。該方法は、尿管に本発明に係るカテーテルを配置すること、尿管又は腎盂を一時的に閉塞するように、カテーテルの閉塞バルーンを膨張させること、を含む。該方法はまた、治療用量の化学療法薬を含む製剤をカテーテルのガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔に装填すること、該製剤を尿管又は腎盂に滴下注入すること、を含む。該方法は、滴下注入された製剤が、該製剤の少なくとも部分が尿路上皮壁に付着して部分的に浸透するのに十分な時間で、尿管又は腎盂に滞留させることを含む。
【0019】
本発明の1つの実施形態において、化学療法剤は、タキサン級薬剤、白金系薬剤、5−フルオロウラシル、マイトマイシンC、ゲムシタビン、エピルビシン、チオテパの少なくとも1つ、又はそれらの組み合わせである。本発明の1つの実施形態において、製剤は、化学療法剤のリポソーム製剤である。本発明の1つの実施形態において、リポソーム製剤は、タキサン級薬剤又は白金系薬剤、少なくとも1つのリン脂質成分を含む。本発明の1つの実施形態において、少なくとも1つのリン脂質成分は、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)とジミリストイルホスファチジルグリセロールナトリウム(DMPG)の組み合わせである。本発明の1つの実施形態において、リポソーム製剤は、パクリタキセル、DMPC及びDMPGを含む。本発明の1つの実施形態において、リポソーム製剤は、パクリタキセル、DMPC及びDMPGを、それぞれの重量/重量比が1:(1〜10):(1〜10)となるように含む。
【0020】
本発明の1つの実施形態において、滴下注入された製剤は、少なくとも1〜120分間、尿管又は腎盂に滞留可能である。
【0021】
本発明の1つの実施形態は、対象の尿管又は腎盂を視認するための方法を含む。該方法は、本発明に係るカテーテルを尿管内に配置すること、尿管又は腎盂を一時的に閉塞するように、カテーテルの閉塞バルーンを膨張させること、X線造影剤を含む組成物をカテーテルのガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔に装填すること、X線造影剤を含む組成物を尿管又は腎盂に滴下注入すること、および患者への腎盂静脈逆流暴露を最小限にする一方、滴下注入された組成物を、蛍光透視法又はX線撮影法で、尿管又は腎盂を視認可能に十分な時間で、尿管又は腎盂内に滞留させること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】
図2は、逆行性手段による、尿管及び腎盂への化学療法製剤のリポソーム製剤の送達を示す。番号1の線は、尿管鏡を示す。
【
図3】
図3は、本発明の典型的なカテーテルの側面図を示す。
【
図5】
図5は、本発明のカテーテルで使用する典型的な弁を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、体内管腔内の標的部位に薬剤を投与するためのシステム及び方法に関する。本発明の1つの実施形態は、上部尿路上皮癌(UTUC)に化学療法剤を局所送達するためのシステム及び方法に関する。
図1Aは、管様体を有し、該体を通過する管腔を備えた、本発明の典型的なカテーテル101を示す。カテーテル101は、中空のバルーン膨張用管腔160と、カテーテル101の近位端111から延伸するガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170と、を具備し、それぞれ、バルーン膨張用管腔161の近位端とガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔171の近位端を含む。バルーン膨張用管腔161の近位端は、バルーン膨張用管腔160と流体連通したバルーン注入用ポートとして機能できる。
【0024】
バルーン膨張用管腔160とガイドワイヤ/排液/滴下注入(GDI)用管腔170は、Y体ルアーハブ165内で連結して、管腔軸105に2つの別個のチャネル(管腔)を形成する。管腔軸105は、弾性体で一般的に円筒形であり、尿管、腎盂、漏斗、腎杯、腎臓を含む、管腔器官に挿入可能である。
図1Bでさらに示す通り、管腔軸105は、一般的に円形断面を有し、少なくとも2つの管腔と、バルーン膨張用管腔160と、ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170と、を具備する。バルーン膨張用管腔160とガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170は、管腔軸105の長さを通過して、長手方向に平行に形成される。管腔軸105は、バルーン膨張用管腔161とガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔171の近位端から、作業長さWLに沿って遠位端150まで、縦方向に延伸する。
【0025】
カテーテル101は、遠位端150近傍に位置決めされた露出外面142を備えた膨張型バルーン140を具備する。バルーン140は、バルーン膨張用管腔160と流体連通して、バルーン膨張用管腔160経由で溶液を受ける。本発明の1つの実施形態において、バルーン140は、長さ約10〜20mmであり、遠位端150の先端から15mm(10mm〜20mm等)に位置決めされる。バルーン140は、未膨張(静止)状態で直径約8mmであり、管腔軸105の中心と同軸である。バルーン140は、未膨張状態でROマーカバンド144により固定されて、20mmの一定長さであるが、異なる直径(最大約20mm)に膨張可能で、尿管、腎盂、腎臓を含む、対象となる異なる管腔器官を閉塞する。膨張状態での典型的なバルーン容量は、2cc〜12ccのバルーン容量を含む。本発明の1つの実施例において、バルーン容量は3ccで、流体(例:水)3ccでは、バルーン直径は約1.6cmである。流体4ccでは、バルーン直径は約1.8cm(フレンチ値は、それぞれ8、24)である。
【0026】
本発明の1つの典型的なバルーンカテーテルは、例えば、シリコン又はPVC製で、約3.2フレンチ値の直径を有し、内径は0.38フレンチ値で、1cmの細長の楕円バルーンを有する。バルーン圧は、必要に応じて調整可能で、例えば、最大10mmHgに達し得る。カテーテル装置は、X線造影で強化された、蛍光透視法等の撮像技術のサポートにより、挿入・位置決めが可能である。本発明の1つの典型的な方法において、バルーンは、位置決め後に、尿管を閉塞するのに十分な容量まで膨張されて、リポソーム製剤は、以下でさらに記載される通り、近位尿管に直接滴下注入される。
【0027】
バルーン140は、ポリウレタン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、エラストマー、ゴム、シリコン、プラスチック等の耐熱性樹脂又は高分子及び他の樹脂又は高分子から、膜型に形成される。バルーン140は、使用中に、バルーン140に溶液を装填することで膨張されて、略球形等の回転体の形状をなす。本発明の1つの実施例において、溶液は、生理的食塩水と造影剤の混合液であるが、溶液は、生理的食塩水、減菌水、空気、二酸化炭素及び他の流体等の液体又は気体のいずれかであり得る。バルーン140の形状は、例えば、管腔内壁の形状に基づいて、(球形以外の)他の様々な形状であり得る。例えば、バルーン140は、単軸と長軸が互いに等しい球形、単軸を回転軸に規定する偏球形、長軸を回転軸に規定する長球形、砂袋形、及び他の形状であり得る。バルーン140が特定の形状によらず、バルーン140は、管腔内壁に直接接する場合に変形可能な弾性部材から形成されるものとする。
【0028】
バルーン膨張用管腔160は、カテーテル101の管腔軸105内部で、溶液源(別個に図示せず)からY体ルアーハブ165を通過してバルーン140内部に形成される装填部分まで連通する溶液輸送経路を提供して、溶液をバルーン140に送達又は伝達して、バルーン140を膨張(及び収縮)させる。溶液源は、特定の量の溶液を保持する溶液輸送経路(バルーン膨張用管腔160)と連通するチャンバを具備可能である。活栓、注射器、弁、又は他の流量制御装置は、溶液源からバルーン膨張用管腔160を通過してバルーン140まで送達される溶液の量を正確に調整するために使用可能である。溶液がバルーン140に送達されると、バルーンは膨張する。ピストン又は他の圧力調整装置は、バルーン膨張用管腔160と一直線に配置可能で、バルーン140を所定圧力又は確定した直径になるまで膨張を継続して、対象となる尿管管腔器官を閉塞する。バルーン140を膨張させるために、ピストン又は他の圧力調整装置から圧力を除去可能で、バルーン140は弾性のため、圧縮変形されて、バルーン膨張用管腔160を通して(カテーテルの遠位端112から、バルーン膨張用管腔161の近位端まで)溶液を押し戻すことで、バルーン140を収縮させる。
【0029】
膨張流体は、使用中、閉鎖系に保持される。膨張流体は、膨張時、バルーン膨張用管腔160とバルーン140に入る。膨張流体は、このように膨張される場合、医療従事者又は他のユーザが、典型的に、バルーン140を膨張させるために使用したものと類似の注射器又は他の流量制御装置で、バルーン140を明確に収縮させた後に、バルーン膨張用管腔160とバルーン140に入る。
【0030】
ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170は、遠位端150を管腔器官の標的部位にガイドする、ガイドワイヤ入口孔355(
図3に示す)経由で、ガイドワイヤを受ける。ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170は、流体を体内空洞から排出するための体内空洞(例:膀胱、尿管、腎盂又は腎臓)と流体連通する。ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170は、本発明において多くの目的(例:放射線療法装置の運搬・送付、医薬製品の滴下注入、カメラ又は他の可視化装置の配置、遮蔽物の除去及び他の用途)に使用可能である一方、ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170は、さらに以下で説明する通り、管腔器官に再度化学療法剤を注入/滴下注入するために使用される。ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170はまた、X線造影剤を滴下注入して、蛍光透視法又はX線撮影法で、上部尿路集尿系の構造を規定するために使用可能である。ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170はまた、尿路上皮細胞の組織学的、細胞学的又は分子的評価用の尿検体を採取するために使用可能である。
【0031】
弁175は、カテーテル101を治療位置に配置後、ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170に一直線に配置される。本発明の1つの実施例において、弁175は、カテーテル110に結合して、ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔(GDIポート)171の近位端を形成するモジュールアタッチメントである。弁175は、モジュール構造を備えて、従来のルアー又はネジ込み式接続等により、取外し又は交換可能である。
【0032】
腎盂静脈逆流は、外傷性圧力現象で、例えば、尿管上方に注入された造影剤の漏出が、腎洞脂肪と腎静脈の支脈に腎杯円蓋角で生じる。これを予防するため、尿管上方に造影剤を注入する場合、漏斗とゴム管を使用して、造影剤を重力落下で流し込む泌尿器科医がいる。注射器で注入する際に使用する圧力は、実に最大200mmHgと驚くほど高い。痛みは、逆行性腎盂造影中に、腎盂の充填状態に対する信頼できる指標ではない。患者の中には、不快感を持たずに100mmHgを超過する圧力に耐える一方、20mmで激しい不快感を持つ患者もいる。逆流の出現は、変異性の現象で、25mmHgほどの低圧で発生して、痛みは、それと同時に起こる場合と起こらない場合がある。
【0033】
弁175は、常時閉で、管腔器官の圧力が、15mmHg等の所定圧力を満たす又は超過する場合、ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170の圧力を解放するために設定可能である。弁175の圧力解放設定は、最大尿管圧よりも低くなり、カテーテル101を使用する前に測定又は推定可能である。本発明の弁175は、所定圧が管腔器官又はガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170内で超過される場合、管腔流体/内容物をガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170に放出できるように設定可能である。
図1A及び
図3に示す通り、弁175は、例えば、ガイドワイヤ/排液管腔171の近位端近傍に配置可能である。バルーン140が管腔器官を閉塞する間、管腔器官内の圧力が尿生成及び集尿により上昇するにつれて、所定圧力は超過して、弁175は開いて、ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔171の近位端に向けてカテーテル101の遠位端150から尿が排出可能である。管腔器官から大量の尿を排出すると、該器官の圧力が解放されて(すなわち、管腔内容量の減少に伴い圧力は減少する)、患者への障害や腎盂静脈暴露が防止される。管腔器官圧力が所定圧以下に降下する場合、弁175は再度閉まり、弁175が再度開く場合に圧力が所定圧力を満たす又は超過するよう再び上昇しなければ、閉のままである。常時閉の一方向逆止弁は、逆流を防ぐ一方、流体を間欠注入する。弁は、圧力が加わる場合に自動で開く。
【0034】
弁175は、特定の圧力に到達するまで、流体を管腔170から排出させない構造要素を具備する。例えば、弁175は、管腔を備えたハウジングと、ボールと、管腔内のバネで、バネが画成された開口部に対してボールを押圧するバネと、を具備する。ボール圧力がバネ圧力を超過する場合、ボールは、画成された開口部から離れて移動して、流体は、ボール周辺を移動して、近位端171に出る。バネ張力を制御することで、弁が圧力を解放する圧力は、制御可能である。圧力開放弁は、ルアーコネクタに連結可能で、追加の弁、集尿源、及び他の排出装置にさらに連結可能である。弁175は、圧力制御特性に基づいて、選定可能である。例えば、腎盂静脈フィードバックは、約15〜20cmの水圧(又は約0.27psi)で発生するため、人体の亀裂圧力(すなわち、弁が流体を放出する圧力)は、約0.27PSIであるものとする。
図5は、典型的な弁の数とその性能特性を示す。
【0035】
この特定の圧力は、選んで使用する一方向弁によっては医師が選定可能で、本発明は、医師の使用で利用可能な、異なる所定圧力を有する1組の一方向弁を具備する。上記で概説した通り、圧力は、所望の最大尿管圧値に対応するように設定可能である。したがって、流体は、使用される場合、患者の最大尿管圧が超過されるよりも十分前に、ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔171の近位端で弁175から排出する。
【0036】
該方法は、逆行性(又は順行性)の上部尿路手段により、尿管/腎盂に作業チャネル(ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170)とバルーン140を有するバルーンカテーテル101を配置することを含む。カテーテルバルーン140は、尿管を一時的に閉塞するように膨張されて、化学療法剤を含む液体リポソーム製剤(又は非リポソーム化学療法製剤)は、カテーテル101の作業チャネル(ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170)に注入/滴下注入される。注入されたリポソーム製剤は、製剤の少なくとも一部が尿路上皮壁に付着して(かつ部分的に浸透する)のに十分な時間で、尿管及び/又は腎盂内に滞留可能である。本発明の方法において、滞留時間は、約1〜約120分である。例えば、リポソーム製剤は、少なくとも1分、少なくとも10分、少なくとも15分、少なくとも20分、少なくとも30分、少なくとも45分、少なくとも60分、少なくとも75分、少なくとも90分、少なくとも105分、又は少なくとも120分間、滞留可能である。本発明の方法において、注入された化学療法剤は、滴下注入されている間、尿路上皮壁に接触・付着して、尿管及び/又は腎盂内に滞留する。
上記で指摘の通り、本発明は、治療用量の薬剤を滴下注入により、尿管及び/又は腎盂に送達するために使用可能である。より詳しくは、本発明は、UTUC治療の目的で、タキサン級薬剤、白金系薬剤、5−フルオロウラシル、マイトマイシンC、ゲムシタビン、エピルビシン、又はチオテパを含むがこれらに限定されない化学療法薬の製剤を送達するために一般的に使用される。好ましい化学療法薬の製剤は、化学療法薬のリポソーム製剤である。本発明に係るリポソーム製剤は、一般的に、1つの薬学的に許容されるリン脂質又は薬学的に許容されるリン脂質の混合物である、少なくとも1つのリン脂質成分を含む。天然及び合成リン脂質を使用してよい。本発明で使用するリポソーム製剤のリン脂質の実施例は、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、卵ホスファチジルコリン、大豆ホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルグリセロールナトリウム、1,2−ジミリストイル−ホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、リン酸ジパルミトイル、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−rac−グリセロール、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン及びスフィンゴミエリンを含むがこれらに限定されない。例えば、本発明で使用するリポソーム製剤は、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)とジミリストイルホスファチジルグリセロールナトリウム(DMPG)を含み得る。したがって、本明細書記載のカテーテルにより送達されるリポソーム製剤は、パクリタキセル、DMPC及びDMPGを含んでよい。例えば、本発明で使用するリポソーム内のパクリタキセル、DMPC及びDMPGのそれぞれの重量/重量比は、1:(1〜10):(1〜10)、又はこの中のいかなる比率でよい。本発明に係るリポソーム製剤は、グリセロ脂質又はスフィンゴ脂質のような、リン酸を含まない脂質等のリン脂質以外の脂質からなる、又は部分的になり得る。代わりとして、本発明で使用するリポソーム製剤は、リン酸脂質以外の1つ以上の脂質を含むリポソーム製剤を含んで、コレステロール又はコレステロール誘導成分を追加で含んでよい。
【0037】
本発明と使用可能なリポソーム製剤はまた、商標名Lipusuで市販されるパクリタキセル製剤を含む、パクリタキセル、レシチン、コレステロール、トレオニン及びグルコースを含む、リポソーム製剤を対象とするWO2019/018619と;パクリタキセル、ドセタキセル又はシスプラチンのリポソーム製剤を開示する、米国特許公開第2019/0015334(「USPPN2019/0015334」)に開示の製剤を含む。
【0038】
本発明と使用するためのより好ましい製剤は、USPPN2019/0015334に開示の製剤であり、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)とジミリストイルホスファチジルグリセロールナトリウム(DMPG)を組み合わせて、パクリタキセル、ドセタキセル又はシスプラチンのいずれかを含む。USPPN2019/0015334で最も好ましい製剤は、(A)薬剤(パクリタキセル、ドセタキセル、又はシスプラチン)、(B)DMPC;及び(C)DMPGを、重量/重量比(A):(B):(C)が(1):(1.3〜4.5):(0.4〜2.5)で、又は、パクリタキセル、DMPC及びDMPGが(1):(1.43):(0.47)のw/w比率の組み合わせ等の、この中のいかなる比率で含む。
【0039】
化学療法薬の治療用量は、UTUCに罹患する対象の尿管又は腎盂に送達される場合、UTUCの兆候や症状を改善する薬剤の量である。例えば、薬剤の治療用量により、本発明により単独投与又は複数回投与いずれかで投与される場合、全身腫瘍組織量又は転移の数や大きさが減少する。用語「改善する」又は「治療する」は、病気の根治を含む、病気の兆候や症状の回数又は重症度の低減を指す。治療用量での薬剤の量は、「有効量」と呼ばれる場合もあり、UTUCの病期、重症度、経過、薬歴、患者個人の健康状態、体重、薬の反応及び/又は担当医の判断に依存する。本発明の方法用の典型的な治療用量は、1〜1000mg/m
2の範囲のパクリタキセルの量を含む。例えば、治療用量は、1〜100mg/m
2、50〜150mg/m
2、100〜200mg/m
2、150〜250mg/m
2、200〜300mg/m
2、350〜450mg/m
2、400〜500mg/m
2、450〜550mg/m
2、500〜600mg/m
2、550〜650mg/m
2、600〜700mg/m
2、750〜850mg/m
2、800〜900mg/m
2、850〜950mg/m
2、900〜1000mg/m
2、又は950〜1000mg/m
2からでよい。本発明の典型的使用でのパクリタキセルの投与治療用量の濃度、本発明に係るカテーテルにより尿管又は腎盂に滴下注入されるパクリタキセルの量は、例えば、少なくとも0.5mg/ml、少なくとも1mg/ml、少なくとも1.5mg/ml、少なくとも2mg/ml、少なくとも2.5mg/ml、少なくとも3mg/ml、少なくとも3.5mg/ml、少なくとも4mg/ml、少なくとも4.5mg/ml、少なくとも5mg/ml、又はその中のいかなる濃度でよい。
【手続補正書】
【提出日】2020年11月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端111と遠位端112とを有するカテーテル101であって、前記カテーテル101は、
前記カテーテル101の前記近位端111内のバルーン注入用ポート161と流体連通して、さらに、前記カテーテル101の前記遠位端112内の膨張型閉塞バルーン140と流体連通する、バルーン膨張用管腔130と、
前記カテーテル101の前記近位端111内のガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポート171と流体連通して、さらに、前記カテーテル101の前記遠位端112内の少なくとも1つの孔と流体連通するガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170であって、前記少なくとも1つの孔から前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポート171まで尿を通過させる、ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170と、
前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170と流体連通して、前記カテーテル101の前記遠位端112に配置されるガイドワイヤ入口孔355であって、ガイドワイヤ上に前記カテーテル101を装填して、前進させて、前記ガイドワイヤは、前記ガイドワイヤ入口孔355と、前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170と、前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポート171とを通過する、ガイドワイヤ入口孔355と、
前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポート171と前記膨張型閉塞バルーン140との間の前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170に沿って配置されて、所定の尿管圧が超過される場合に、前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170に管腔流体を放出するように構成される、圧力安全弁175と
を具備し、
前記膨張型閉塞バルーン140は、バルーン膨張用管腔160と流体連通して、前記カテーテル101の前記遠位端112に配置されて、前記膨張型閉塞バルーン140は、前記弁175の所定の尿管解放圧より大きい力に耐えるように構成される、カテーテル101。
【請求項2】
前記膨張型閉塞バルーン140は、患者の尿管内に膨張されるように構成される、請求項1に記載のカテーテル101。
【請求項3】
前記膨張型閉塞バルーン140は、患者の尿管管腔内に膨張されるように構成される、請求項1に記載のカテーテル101。
【請求項4】
前記膨張型閉塞バルーン140は、閉塞バルーンである、請求項1に記載のカテーテル101。
【請求項5】
前記膨張型閉塞バルーン140は、伸展バルーンである、請求項1に記載のカテーテル101。
【請求項6】
前記バルーン注入用ポート161と前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポート171の少なくとも1つは、前記カテーテル101から取外し可能である、請求項1に記載のカテーテル101。
【請求項7】
必要とする対象に、上部尿路上皮癌(UTUC)を治療するためのシステムであって、前記システムは、前記対象の尿管又は腎盂に化学療法剤を送達するように構成され、前記システムは、
A.請求項1に記載のカテーテルであって、前記カテーテルは、前記尿管内又は尿管管腔内に配置されるように構成され、前記カテーテルの前記閉塞バルーン140は、前記尿管又は腎盂を一時的に閉塞するように、膨張するように構成される、カテーテルと、
B.治療用量の化学療法薬を含む製剤であって、前記製剤は、前記カテーテルの前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170内に装填され、前記製剤は、前記尿管又は腎盂内に滴下注入され、前記滴下注入された製剤は、前記製剤の少なくとも一部が尿路上皮壁に付着して部分的に浸透するのに十分な時間で、前記尿管又は腎盂内に滞留可能である、製剤と
を具備する、システム。
【請求項8】
前記化学療法剤は、タキサン級薬剤、白金系薬剤、5−フルオロウラシル、マイトマイシンC、ゲムシタビン、エピルビシン、チオテパの少なくとも1つ、又はそれらの組み合わせである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記製剤は、リポソーム製剤である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記リポソーム製剤は、
(A)タキサン級薬剤又は白金系薬剤と、
(B)ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)と、
(C)ジミリストイルホスファチジルグリセロールナトリウム(DMPG)と
を含み、
A:B:Cの重量/重量比は、1:(1.3〜4.5):(0.4〜2.5)である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記タキサン級薬剤は、パクリタキセルであり、A:B:Cの重量/重量比は、(1):(1.43):(0.47)である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記滴下注入された製剤は、少なくとも約1分、約10分、約15分、約20分、約30分、約45分、約1時間、又は約2時間、前記尿管又は腎盂の少なくとも1つ内に滞留可能である、請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
対象の尿管又は腎盂を視認するためのシステムであって、前記システムは、
A.請求項1に記載のカテーテルであって、前記カテーテルは、前記尿管内又は尿管管腔内に配置されるように構成され、前記カテーテルの前記閉塞バルーン140は、前記尿管又は腎盂を一時的に閉塞するように、膨張するように構成され、前記圧力安全弁175は、患者への腎盂静脈逆流暴露を最小限にするように構成される、カテーテルと、
B.X線造影剤を含む組成物であって、前記組成物は、前記カテーテルの前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170内に装填され、前記X線造影剤を含む前記組成物は、前記尿管又は腎盂内に滴下注入され、前記滴下注入された組成物は、蛍光透視法又はX線撮影法で、前記尿管又は腎盂を視認可能に十分な時間で、前記尿管又は腎盂内に滞留可能である、組成物と
を具備する、システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
本発明の1つの実施形態は、対象の尿管又は腎盂を視認するための方法を含む。該方法は、本発明に係るカテーテルを尿管内に配置すること、尿管又は腎盂を一時的に閉塞するように、カテーテルの閉塞バルーンを膨張させること、X線造影剤を含む組成物をカテーテルのガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔に装填すること、X線造影剤を含む組成物を尿管又は腎盂に滴下注入すること、および患者への腎盂静脈逆流暴露を最小限にする一方、滴下注入された組成物を、蛍光透視法又はX線撮影法で、尿管又は腎盂を視認可能に十分な時間で、尿管又は腎盂内に滞留させること、を含む。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
近位端111と遠位端112とを有するカテーテル101であって、
前記カテーテル101の前記近位端111内のバルーン注入用ポート161と流体連通して、さらに、前記カテーテル101の前記遠位端112内の膨張型閉塞バルーン140と流体連通する、バルーン膨張用管腔130と、
前記カテーテル101の前記近位端111内のガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポート171と流体連通して、さらに、前記カテーテル101の前記遠位端112内の少なくとも1つの孔と流体連通するガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170であって、前記少なくとも1つの孔から前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポート171まで尿を通過させる、ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170と、
前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170と流体連通して、前記カテーテル101の前記遠位端112に配置されるガイドワイヤ入口孔355であって、ガイドワイヤ上に前記カテーテル101を装填して、前進させて、前記ガイドワイヤは、前記ガイドワイヤ入口孔355と、前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170と、前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポート171とを通過する、ガイドワイヤ入口孔355と、
前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポート171と前記膨張型閉塞バルーン140との間の前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170に沿って配置されて、所定の尿管圧が超過される場合に、前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170に管腔流体を放出するように構成される、圧力安全弁175と、を具備し、
前記膨張型閉塞バルーン140は、バルーン膨張用管腔160と流体連通して、前記カテーテル101の前記遠位端112に配置されて、前記膨張型閉塞バルーン140は、前記弁175の所定の尿管解放圧より大きい力に耐えるように構成される、カテーテル101。
(項目2)
前記膨張型閉塞バルーン140は、患者の尿管内に膨張されるように構成される、項目1に記載のカテーテル101。
(項目3)
前記膨張型閉塞バルーン140は、患者の尿管管腔内に膨張されるように構成される、項目1に記載のカテーテル101。
(項目4)
前記膨張型閉塞バルーン140は、閉塞バルーンである、項目1に記載のカテーテル101。
(項目5)
前記膨張型閉塞バルーン140は、伸展バルーンである、項目1に記載のカテーテル101。
(項目6)
前記バルーン注入用ポート161と前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用ポート171の少なくとも1つは、前記カテーテル101から取外し可能である、項目1に記載のカテーテル101。
(項目7)
必要とする対象に、上部尿路上皮癌(UTUC)を治療するための方法であって、前記対象の尿管又は腎盂に化学療法剤を送達することを含み、
A.項目1に記載のカテーテルを、前記尿管内に配置すること、
B.前記尿管又は腎盂を一時的に閉塞するように、前記カテーテルの前記閉塞バルーン140を膨張させること、
C.治療用量の化学療法薬を含む製剤を、前記カテーテルの前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170内に装填すること、
D.前記製剤を、前記尿管又は腎盂内に滴下注入すること、および
E.前記滴下注入された製剤を、前記製剤の少なくとも一部が尿路上皮壁に付着して部分的に浸透するのに十分な時間で、前記尿管又は腎盂内に滞留させること、を含む、方法。
(項目8)
前記化学療法剤は、タキサン級薬剤、白金系薬剤、5−フルオロウラシル、マイトマイシンC、ゲムシタビン、エピルビシン、チオテパの少なくとも1つ、又はそれらの組み合わせである、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記製剤は、リポソーム製剤である、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記リポソーム製剤は、
(A)タキサン級薬剤又は白金系薬剤と、
(B)ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)と、
(C)ジミリストイルホスファチジルグリセロールナトリウム(DMPG)と、を含み、
A:B:Cの重量/重量比は、1:(1.3〜4.5):(0.4〜2.5)である、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記タキサン級薬剤は、パクリタキセルであり、A:B:Cの重量/重量比は、(1):(1.43):(0.47)である、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記滴下注入された製剤は、少なくとも約1分、約10分、約15分、約20分、約30分、約45分、約1時間、又は約2時間、前記尿管又は腎盂の前記少なくとも1つ内に滞留可能である、項目7に記載の方法。
(項目13)
対象の尿管又は腎盂を視認するための方法であって、
A.項目1に記載のカテーテルを、前記尿管内に配置すること、
B.前記尿管又は腎盂を一時的に閉塞するように、前記カテーテルの前記閉塞バルーン140を膨張させること、
C.X線造影剤を含む組成物を、前記カテーテルの前記ガイドワイヤ/排液/滴下注入用管腔170内に装填すること、
D.前記X線造影剤を含む前記組成物を、前記尿管又は腎盂内に滴下注入すること、及び
E.前記患者への腎盂静脈逆流暴露を最小限にする一方、前記滴下注入組成物を、蛍光透視法又はX線撮影法で、前記尿管又は腎盂を視認可能に十分な時間で、前記尿管又は腎盂内に滞留させること、を含む方法。
【国際調査報告】