特表2021-523810(P2021-523810A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-523810(P2021-523810A)
(43)【公表日】2021年9月9日
(54)【発明の名称】組織修復用組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/18 20060101AFI20210813BHJP
   A61L 27/60 20060101ALI20210813BHJP
【FI】
   A61L27/18
   A61L27/60
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2021-514260(P2021-514260)
(86)(22)【出願日】2018年5月25日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月16日
(86)【国際出願番号】KR2018005988
(87)【国際公開番号】WO2019225789
(87)【国際公開日】20191128
(31)【優先権主張番号】10-2018-0058947
(32)【優先日】2018年5月24日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】520449699
【氏名又は名称】デックスレボ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ヨ、チェ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】シム、ミョン ソプ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュン ぺ
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB19
4C081BA15
4C081BB01
4C081CA171
4C081CA181
4C081CA201
4C081CC01
4C081DA15
(57)【要約】
本発明は、毒性のない生体適合性高分子を利用した組織修復用組成物及びそれに対する製造方法を開示する。
本発明によると、疎水性生体適合性高分子及び親水性生体適合性高分子が重合された共重合体を含み、前記共重合体が水に分散されているコロイド相(phase)の組織修復用組成物及びそれに対する製造方法を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性生体適合性高分子及び親水性生体適合性高分子が重合された共重合体を含み、前記共重合体が水に分散されているコロイド相(phase)の組織修復用組成物。
【請求項2】
前記組成物は、下記化学式1で表されるK値の範囲が0.3〜1.8であることを特徴とする請求項1に記載の組織修復用組成物:
【数1】

ここで、m100は水溶液100g中の重合体のモル数であり、Mは親水性部分の分子量であり、Mは疎水性部分の分子量であり、HLBは下記数式2で表される値である。
【数2】

ここで、Mは親水性部分の分子量であり、Mは分子全体の分子量である。
【請求項3】
前記数式2によるHLBの値は、1〜14の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の組織修復用組成物。
【請求項4】
前記疎水性生体適合性高分子は、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリジオキサノン、ポリトリメチルカルボネート、ポリヒドロキシ酪酸、及びそれを含む共重合体からなる群より選択されるいずれか一つ以上の高分子であることを特徴とする請求項1に記載の組織修復用組成物。
【請求項5】
前記親水性生体適合性高分子は、メトキシポリエチレングリコール、ジヒドロキシポリエチレングリコール、モノアルコキシポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコールからなる群より選択されるいずれか一つ以上の高分子であることを特徴とする請求項1に記載の組織修復用組成物。
【請求項6】
前記共重合体の結合構造は、下記化学式1、化学式2、または化学式3の構造を含むことを特徴とする請求項1に記載の組織修復用組成物:
【化1】

【化2】

【化3】

ここで、Xは親水性生体適合性高分子であり、Yは疎水性生体適合性高分子である。
【請求項7】
前記親水性生体適合性高分子は、300〜20,000g/molであることを特徴とする請求項1に記載の組織修復用組成物。
【請求項8】
前記疎水性生体適合性高分子は、1,000〜3,000g/molであることを特徴とする請求項1に記載の組織修復用組成物。
【請求項9】
前記共重合体は、1,300〜50,000g/molであることを特徴とする請求項1に記載の組織修復用組成物。
【請求項10】
前記共重合体のコロイド溶液内の濃度は、10〜50重量%であることを特徴とする請求項1に記載の組織修復用組成物。
【請求項11】
前記コロイド相は、水を添加する場合に濁度の変化がないか、増加することを特徴とする請求項1に記載の組織修復用組成物。
【請求項12】
疎水性生体適合性高分子及び親水性生体適合性高分子を重合させて重合体を製造するステップと、
前記重合体に水を加えてコロイド溶液を得るステップと、
を含む組織修復用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組織修復用組成物及びその製造方法に関し、より詳しくは、高分子を利用した組織修復用組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
社会の構造が変わり、人口が増加するにつれ、火傷、褥瘡、成形、難治性潰瘍、糖尿性皮膚怪死などの患者の数も次第に増加しつつあり、それに合わせた損傷した皮膚の治療方法も発展している。30年前までも火傷で体表面積の60%以上が損傷すると敗血症で死亡することが普通であったが、最近は人工皮膚の発展で水分損失と感染を防ぐことができ、死亡率を相当減少することができるようになっている。人工皮膚は、大きく創傷被覆材(wound dressing)と培養皮膚(cultured skin)に分けられる。
【0003】
創傷被覆材は局所的な創傷や傷の深さがひどくない創傷に適用することができ、植皮できるまでの期間の間創傷を保護するか、自家培養皮膚が完成するまで所要される3〜4週間傷を保護し、培養皮膚の適用を容易にする役割をする。
【0004】
培養皮膚は、ひどい皮膚欠損や広範囲の創傷の場合、瘢痕組織を最小化するための治療方法に使用されるものであって、細胞培養技術を利用して皮膚細胞を十分に増殖させた後、永久生着を目的に移植される。しかし、培養皮膚の場合、バクテリア、真菌類、耐毒性及びマイコプラズマ(mycoplasma)試験を介した多くの安全性検討を必要とし、様々なウィルス[HIV 1&2、HTLV II&IIII、CMV IgM、B型及びC型肝炎ウィルス(Hepatitis B&C)、アデノウィルス]試験を介して安全性を確認し製造すべきである煩わしさがある。また、死体の皮膚を移植する場合、それの原産地を把握することができない問題点と、加工処理において、人体成分は熱加工が不可能なため、上述した致命的なウィルスを100%滅菌することができない短所がある。そして、細胞を培養して移植するまでかかる時間が少なくとも一週間以上所要されるため、応急措置が求められる患者の場合は使用することが困難である。
【0005】
一方、創傷被覆材の場合、培養皮膚に比べ広範囲に適用することができ、取り扱いが容易で、応急措置が求められる患者に適用可能な長所がある。しかし、創傷被覆材は一時的な被覆の用途で使用されるため、永久生着に難しさがある。また、キチン、キトサン、コラーゲンのような天然高分子の創傷被覆材の場合は、機械的強度が低く、高価で、大量生産が難しく、シリコン、ポリウレタンのような合成高分子の創傷被覆材の場合は、細胞親和性が低く、傷部位との密着性が欠如する短所がある。
【0006】
最近、ヒアルロン酸ゲルを利用した製品が多数開発されているが、ヒアルロン酸は2週から2ヶ月の間非常に速く生体内再吸収が起こるため問題となっている。そこで、特許文献1のように、ヒアルロン酸と架橋物質を互いに架橋連結して再吸収期間を延長した製品が販売されている。しかし、このような架橋製品も架橋物質の毒性のための問題点が報告されている実情である。
【0007】
このような問題のため、最近は生体内で分解される高分子を利用した組織修復用製品も多数開発されているが、従来の生体適合性高分子を利用したフィラー剤型で、水に溶けない高分子をマイクロサイズの粒子に加工した後、粘度のあるメディア(media)を介して分散させた剤型に開発されて使用されている。20〜50umのポリ乳酸(PLA)粒子をカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液に分散させた剤型、または20〜50umのポリカプロラクトン(PCL)粒子をCMC及びグリセリン水溶液に分散させた剤型を使用しているが、これは注射の際にマイクロ粒子が針に詰まるという施術上の不便さと、粒子が均一に分散されないため均一な組織修復効果が出ない問題点があった。
【0008】
また、非特許文献1によると、高分子基盤の組織修復用製品の場合、体内で食作用(phagocytosis)を避けて長期間効能を発揮するためには、40um以上の粒子直径を有するべきであるとしている。しかし、前記40um以上の粒子直径を有する剤型を使用する際、マイクロ粒子が針に詰まる施術上の不便さと、粒子が均一に分散されないため均一な組織修復効果が出ない問題点があった。
【0009】
このような前記問題点を解決するための組織修復用製品の開発が至急な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許 第10−2004−0072008号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Klaus Laeschke,「Biocompatibility of Microparticles into Soft Tissue Fillers」、『Semin Cutan Med Surg 23』,2004,214−217
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
よって、本発明は前記問題を解決するために案出されたものであって、毒性のない高分子を利用する組織修復用組成物及びその製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した技術的課題を解決するために、本発明は、疎水性生体適合性高分子及び親水性生体適合性高分子が重合された共重合体を含み、前記共重合体が水に分散されているコロイド相(phase)の組織修復用組成物を提供する。
【0014】
また、前記組成物は、下記数式1で表されるK値の範囲が0.3〜1.8であることを特徴とする組織修復用組成物を提供する。
【0015】
【数1】
【0016】
数式1において、m100は水溶液100g中の重合体のモル数であり、Mは親水性部分の分子量であり、Mは疎水性部分の分子量であり、HLBは下記数式2で表される値である。
【0017】
【数2】
【0018】
数式2において、Mは親水性部分の分子量であり、Mは分子全体の分子量である。
また、前記数式2によるHLBの値は、1〜14の範囲の値を有することを特徴とする組織修復用組成物を提供する。
【0019】
また、前記疎水性生体適合性高分子は、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリジオキサノン、ポリトリメチルカルボネート、ポリヒドロキシ酪酸、及びそれを含む共重合体からなる群より選択されるいずれか一つ以上の高分子であることを特徴とする組織修復用組成物を提供する。
【0020】
また、前記親水性生体適合性高分子は、メトキシポリエチレングリコール、ジヒドロキシポリエチレングリコール、モノアルコキシポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコールからなる群より選択されるいずれか一つ以上の高分子であることを特徴とする組織修復用組成物を提供する。
【0021】
また、前記共重合体の結合構造は、下記化学式1、化学式2、または化学式3の構造を含むことを特徴とする組織修復用組成物を提供する。
【0022】
【化1】
【0023】
【化2】
【0024】
【化3】
【0025】
化学式1〜3において、Xは親水性生体適合性高分子であり、Yは疎水性生体適合性高分子である。
【0026】
また、前記親水性生体適合性高分子は、分子量が300〜20,000g/molであることを特徴とする組織修復用組成物を提供する。
【0027】
また、前記疎水性生体適合性高分子は、分子量が1,000〜30,000g/molであることを特徴とする組織修復用組成物を提供する。
【0028】
また、前記共重合体は、分子量が1,300〜50,000g/molであることを特徴とする組織修復用組成物を提供する。
【0029】
また、前記共重合体のコロイド溶液内の濃度は、10〜50重量%であることを特徴とする組織修復用組成物を提供する。
【0030】
また、前記コロイド相は、水を添加する場合に濁度の変化がないか、増加することを特徴とする組織修復用組成物を提供する。
【0031】
また、疎水性生体適合性高分子及び親水性生体適合性高分子を重合させて重合体を製造するステップと、前記重合体に水を加えてコロイド溶液を得るステップと、を含む組織修復用組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、疎水性生体適合性高分子及び親水性生体適合性高分子が重合された共重合体を含むことで、生体内注入の際に毒性がないため安全で、救急患者に使用することができるコロイド相の組織修復用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】PBS及びコロイド水溶液を注入した後の試料の漏出有無をDSLR(D3000、Nicon、Japan)で撮影した写真である。
図2】コロイド水溶液を注入した後、時間の経過による皮膚の厚さを光学顕微鏡を介して撮影した写真である。
図3】コロイド水溶液を注入した後、時間の経過によるコラーゲンを光学顕微鏡を介して撮影した写真である。
図4】PBSを注入した後、時間の経過による皮膚の厚さを光学顕微鏡を介して撮影した写真である。
図5】PBSを注入した後、時間の経過によるコラーゲンを光学顕微鏡を介して撮影した写真である。
図6】PBS及びコロイド水溶液を注入した後、時間の経過による皮膚の厚さを示すグラフである。
図7】コロイド水溶液をDSLR(D3000、Nicon、Japan)で撮影した写真である。
図8】本願発明と標準液の濁度をDSLR(D3000、Nicon、Japan)で撮影して比較した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、好ましい実施例を介して本発明を詳細に説明する。その前に、本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語や単語は通常的であるか辞書的な意味に限って解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るとの原則に立脚して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されるべきである。よって、本明細書に記載された実施例の構成は、本発明の最も好ましい実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないため、本発明の出願時点において、これらを代替し得る多様な均等物と変形例が存在し得るということを理解すべきである。また、明細書全体にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」という際、これは特に反対する記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素を更に含むことを意味する。
【0035】
本発明者らは、救急患者に使用することができ、比較的安価で製造することができ、毒性のない安全な組織修復用組成物を製造するために生体適合性高分子を研究した結果、親水性生体適合性高分子と疎水性生体適合性高分子を重合させた共重合体が生体内で毒性がなく、安全に組織を修復することができて、救急患者に適用可能なことを発見し本発明に至った。
【0036】
よって、本発明は疎水性生体適合性高分子及び親水性生体適合性高分子が重合された共重合体を含み、前記共重合体が水に分散されているコロイド相の組織修復用組成物を開示する。
【0037】
前記コロイドとは、分子やイオンよりは大きい微粒子が気体または液体中に分散されている状態をコロイド状態といい、コロイド状態となっている全体をコロイドという。
従来のフィラー製品は肉眼で粒子のサイズを識別することができたが、本発明において、前記コロイド相の粒子のサイズは肉眼で識別することができず、不溶性異物が存在しない状態であって、前記不溶性異物とは、米国薬局方(USP)の一般試験法である不溶性微粒子試験法に従って、きれいに洗浄した容器に溶液製剤を入れ、白色光源の直下、約2750〜3000lxの明るさの位置で肉眼で観察した際に容易に検出される不溶性異物をいう。
【0038】
本発明において、前記粒子のサイズは肉眼で識別できない場合であって、前記組成物を体内に注入する際に高分子間の結合でマトリックス構造を形成し、食作用が起こらずに皮膚内で長期間組織修復効果を発揮することができる。
本発明において、前記組成物の下記数式1で表されるK値の範囲は0.3〜1.8であり、好ましくは0.4〜1.5である。前記K値が0.3未満であるか1.8を超過すれば、剤型としての効能が低下する恐れがある。
【0039】
【数3】
【0040】
数式1において、m100は水溶液100g中の重合体のモル数であり、Mは親水性部分の分子量であり、Mは疎水性部分の分子量であり、HLBは下記数式2で表される値である。
【0041】
【数4】
【0042】
数式2において、Mは親水性部分の分子量であり、Mは分子全体の分子量である。
【0043】
疎水性生体適合性高分子及び親水性生体適合性高分子が重合された共重合体が水に溶けて溶解されたコロイド水溶液において、水溶液100gに溶けている前記共重合体のモル数が、前記疎水性生体適合性高分子の分子量、前記親水性生体適合性高分子の分子量、及び混合割合によって一定な値を有しないため、本発明である組織修復用組成物の組織修復効能の範囲を設定することができなかった。そこで、本発明は組織修復用組成物の組織修復効能の範囲を導出するために、前記疎水性生体適合性高分子及び親水性生体適合性高分子が重合された共重合体が水に溶けて溶解されたコロイド水溶液において、水溶液100gに溶けている前記共重合体のモル数と、親水性生体適合性高分子、疎水性生体適合性高分子、及びHLBの相関関係を研究した結果、一定な値を確認し、それをK値と定めた。
【0044】
つまり、本発明において、前記K値は、疎水性生体適合性高分子及び親水性生体適合性高分子が重合された共重合体が分散されているコロイド相で測定された水溶液100gに溶けている高分子のモル数、疎水性生体適合性高分子の分子量、親水性生体適合性高分子の分子量、及びHLB値の関係を示す値である。
【0045】
前記コロイド相において、K値は前記水溶液100gに溶けている高分子のモル数、前記疎水性生体適合性高分子の分子量、前記親水性生体適合性高分子の分子量、及び前記HLBによって一定な値を示す。
【0046】
前記剤型の効能とは、体内に導入される前は共重合体のうち親水性高分子の役割が大きく作用し、溶媒と高分子の相互作用のため肉眼で識別可能な不溶性異物がなく、水溶液中に均一に安定して分散されているコロイド相を形成するが、体内に導入された後は、体内環境の影響で疎水性高分子の役割が大きく作用し、水溶液中に高分子が安定して分散されていた構造が崩れ、高分子間の結合で形成されたマトリックス構造がコラーゲンを誘導して組織を修復することを意味する。
【0047】
また、前記組織修復とは、皮膚組織などの外傷や炎症などの原因で組織に怪死、欠損が生じた際、その組織を元の状態に戻そうとするメカニズムをいう。
【0048】
本発明において、高分子分子量とは、数平均分子量(Number Average Molecular Weight、Mn)を意味する。水平均分子量とは、分子量分布を有する高分子化合物の成分分子種の分子量を、水分率またはモル分率で平均して得られる平均分子量を意味する。
【0049】
前記数式2によるHLBの値は1〜14の範囲であり、好ましくは2〜12で、より好ましくは2.5〜10の範囲である。HLBの値が1未満であれば前記重合された高分子が水に溶解されず、14を超過すれば体内注入の際に体内に吸収されて剤型としての効能がない恐れがある。
【0050】
本発明において、HLB値(Hydrophile−Lipophile Balance)とは、両親媒性高分子の水と油に対する親和性の程度を示す値である。HLBが大きいということは親水性高分子の割合が高いことを指し、小さいということは親水性高分子の割合が低いということを指す。
【0051】
前記疎水性生体適合性高分子は、前記数式1によるK値に符合するように、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリジオキサノン、ポリトリメチルカルボネート、ポリヒドロキシ酪酸、及びそれを含む共重合体からなる群より選択されるいずれか一つ以上の高分子であってもよく、好ましくはポリカプロラクトンである。
【0052】
前記親水性生体適合性高分子は、前記数式1によるK値に符合するように、メトキシポリエチレングリコール、ジヒドロキシポリエチレングリコール、モノアルコキシポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコールからなる群より選択されるいずれか一つ以上の高分子であってもよく、好ましくはメトキシポリエチレングリコールである。
前記共重合体の結合構造は下記化学式1で表されてもよく、化学式2で表されてもよく、または化学式3の構造で表されてもよいが、これに限らない。
【0053】
【化4】
【0054】
【化5】
【0055】
【化6】
【0056】
化学式1〜3において、Xは親水性生体適合性高分子であり、Yは疎水性生体適合性高分子である。
【0057】
前記親水性生体適合性高分子の分子量は、前記数式1によるK値に符合するように、300〜20,000g/molであってもよく、好ましくは700〜15,000g/molであってもよく、より好ましくは1,000〜10,000g/molであってもよい。
【0058】
前記疎水性生体適合性高分子の分子量は、前記数式1によるK値に符合するように、1,000〜30,000g/molであってもよく、好ましくは1,500〜27,500g/molであってもよく、より好ましくは2,000〜25,000g/molであってもよい。
【0059】
前記共重合体の分子量は、前記数式1によるK値に符合するように、1,300〜50,000g/molであってもよく、好ましくは2,200〜42,500g/molであってもよく、より好ましくは3,000〜35,000g/molであってもよい。
【0060】
前記共重合体のコロイド溶液内の濃度は、前記数式1によるK値に符合するように、10〜50重量%であってもよく、好ましくは13〜48重量%であってもよく、より好ましくは15〜45重量%であってもよい。50%を超過すればコロイド相水溶液の粘度が非常に高いゲル性状を帯びるため注射器による注入が非常に難しくなる恐れがあり、10%未満であれば剤型としての効能がない恐れがある。
【0061】
前記コロイド相は、水を添加した場合において、濁度に変化がないか増加する。一般的なコロイド相は水を加えれば濁度が減少するが、本願発明のコロイド相の濁度は減少しない。前記本願発明において、コロイド相に分散されている高分子は、親水性生体高分子と疎水性生体高分子共に水に溶けられる構造を形成している。しかし、水を加えれば、親水性生体高分子及び疎水性生体高分子が形成している可溶化構造が崩れるようになる。よって、前記のように水を加える場合、疎水性生体高分子の間で結合が形成されて濁度に変化がないか、逆に増加するようになる。
【0062】
本発明は他の様態として、前記組織修復用組成物の製造方法を提供する。
【0063】
前記製造方法は、疎水性生体適合性高分子及び親水性生体適合性高分子を重合させて共重合体を製造するステップと、前記共重合体に水を加えてコロイド溶液を得るステップと、を含む。
【0064】
この際、前記共重合体が水に分散されているコロイド溶液の場合、共重合体の融点から水の沸点の間の温度で加熱することで、粒子のサイズを肉眼で識別できず、不溶性異物が存在しないコロイド相が形成される。
【0065】
前記製造方法で製造された組織修復用組成物は、皮膚内に注入されてコラーゲンを形成する組織修復効果を示す。
【0066】
以下、本発明による具体的な製造例及び実施例を挙げて説明する。製造例及び実施例の記載中で使用した化学物の略号は以下のようである。
−mPEG:メトキシポリエチレングリコール
−PCL:ポリカプロラクトン
【0067】
製造例1:mPEG2000−PCL2000高分子剤型の製造
親水性生体適合性高分子として分子量2,000g/molのメトキシポリエチレングリコールに疎水性生体適合性高分子として分子量2,000g/molのポリカプロラクトン単量体を触媒下で重合し、共重合体(mPEG2000−PCL2000)を製造した。
【0068】
製造例2:mPEG2000−PCL4000高分子剤型の製造
製造例1において、分子量2,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量4,000g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例1と同じ方法で製造した。
【0069】
製造例3:mPEG2000−PCL5000高分子剤型の製造
製造例1において、分子量2,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量5,000g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例1と同じ方法で製造した。
【0070】
製造例4:mPEG2000−PCL7500高分子剤型の製造
製造例1において、分子量2,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量7,500g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例1と同じ方法で製造した。
【0071】
製造例5:mPEG2000−PCL10000高分子剤型の製造
製造例1において、分子量2,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量10,000g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例1と同じ方法で製造した。
【0072】
製造例6:mPEG2000−PCL12500高分子剤型の製造
製造例1において、分子量2,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量12,500g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例1と同じ方法で製造した。
【0073】
製造例7:mPEG2000−PCL15000高分子剤型の製造
製造例1において、分子量2,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量15,000g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例1と同じ方法で製造した。
【0074】
製造例8:mPEG5000−PCL5000高分子剤型の製造
親水性生体適合性高分子として分子量5,000g/molのメトキシポリエチレングリコールに疎水性生体適合性高分子として分子量5,000g/molのポリカプロラクトン単量体を触媒下で重合し、共重合体(mPEG5000−PCL5000)を製造した。
【0075】
製造例9:mPEG5000−PCL7500高分子剤型の製造
製造例8において、分子量5,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量7,500g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例8と同じ方法で製造した。
【0076】
製造例10:mPEG5000−PCL10000高分子剤型の製造
製造例8において、分子量5,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量10,000g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例8と同じ方法で製造した。
【0077】
製造例11:mPEG5000−PCL12500高分子剤型の製造
製造例8において、分子量5,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量12,500g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例8と同じ方法で製造した。
【0078】
製造例12:mPEG5000−PCL15000高分子剤型の製造
製造例8において、分子量5,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量15,000g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例8と同じ方法で製造した。
【0079】
製造例13:mPEG5000−PCL17500高分子剤型の製造
製造例8において、分子量5,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量17,500g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例8と同じ方法で製造した。
【0080】
製造例14:mPEG5000−PCL20000高分子剤型の製造
製造例8において、分子量5,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量20,000g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例8と同じ方法で製造した。
【0081】
製造例15:mPEG5000−PCL25000高分子剤型の製造
製造例8において、分子量5,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量25,000g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例8と同じ方法で製造した。
【0082】
製造例16:mPEG10000−PCL10000高分子剤型の製造
親水性生体適合性高分子として分子量10,000g/molのメトキシポリエチレングリコールに疎水性生体適合性高分子として分子量10,000g/molのポリカプロラクトン単量体を触媒下で重合し、共重合体(mPEG10000−PCL10000)を製造した。
【0083】
製造例17:mPEG10000−PCL12500高分子剤型の製造
製造例16において、分子量10,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量12,500g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例16と同じ方法で製造した。
【0084】
製造例18:mPEG10000−PCL15000高分子剤型の製造
製造例16において、分子量10,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量15,000g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例16と同じ方法で製造した。
【0085】
製造例19:mPEG10000−PCL17500高分子剤型の製造
製造例16において、分子量10,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量17,500g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例16と同じ方法で製造した。
【0086】
製造例20:mPEG10000−PCL20000高分子剤型の製造
製造例16において、分子量10,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量20,000g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例16と同じ方法で製造した。
【0087】
製造例21:mPEG10000−PCL25000高分子剤型の製造
製造例16において、分子量10,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量25,000g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例16と同じ方法で製造した。
【0088】
製造例22:mPEG10000−PCL30000高分子剤型の製造
製造例16において、分子量10,000g/molのポリカプロラクトンの代わりに分子量30,000g/molのポリカプロラクトンで重合したことを除いては、製造例16と同じ方法で製造した。
【0089】
実施例1
前記製造例1〜22によって製造された高分子に水を加え、80℃温度に加熱した後、混合して、高分子5重量%のコロイド水溶液を製造した。
【0090】
実施例2
実施例1において、高分子10重量%のコロイド水溶液を製造したことを除いては、実施例1と同じ方法でコロイド水溶液を製造した。
【0091】
実施例3
実施例1において、高分子15重量%のコロイド水溶液を製造したことを除いては、実施例1と同じ方法でコロイド水溶液を製造した。
【0092】
実施例4
実施例1において、高分子20重量%のコロイド水溶液を製造したことを除いては、実施例1と同じ方法でコロイド水溶液を製造した。
【0093】
実施例5
実施例1において、高分子25重量%のコロイド水溶液を製造したことを除いては、実施例1と同じ方法でコロイド水溶液を製造した。
【0094】
実施例6
実施例1において、高分子30重量%のコロイド水溶液を製造したことを除いては、実施例1と同じ方法でコロイド水溶液を製造した。
【0095】
実施例7
実施例1において、高分子35重量%のコロイド水溶液を製造したことを除いては、実施例1と同じ方法でコロイド水溶液を製造した。
【0096】
実施例8
実施例1において、高分子40重量%のコロイド水溶液を製造したことを除いては、実施例1と同じ方法でコロイド水溶液を製造した。
【0097】
実施例9
実施例1において、高分子45重量%のコロイド水溶液を製造したことを除いては、実施例1と同じ方法でコロイド水溶液を製造した。
【0098】
実施例10
実施例1において、高分子50重量%のコロイド水溶液を製造したことを除いては、実施例1と同じ方法でコロイド水溶液を製造した。
【0099】
実施例11
実施例1において、高分子55重量%のコロイド水溶液を製造したことを除いては、実施例1と同じ方法でコロイド水溶液を製造した。
【0100】
実施例12
実施例1において、高分子60重量%のコロイド水溶液を製造したことを除いては、実施例1と同じ方法でコロイド水溶液を製造した。
【0101】
実施例13
実施例1において、高分子65重量%のコロイド水溶液を製造したことを除いては、実施例1と同じ方法でコロイド水溶液を製造した。
【0102】
実験例1
以上の実施例1〜13によって製造された組織修復用組成物に対し、水溶液100g中の高分子のモル数を測定して、下記数式1によるK値を測定した。それによって剤型の効能を評価(剤型の効能がある部分はハイライトで表示)し、その結果を下記表1及び表2に示した。
【0103】
【数5】
【0104】
数式1において、m100は水溶液100g中の重合体のモル数であり、Mは親水性部分の分子量であり、Mは疎水性部分の分子量であり、HLBは下記数式2で表される値である。
【0105】
【数6】
【0106】
数式2において、Mは親水性部分の分子量であり、Mは分子全体の分子量である。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
表1を参照すると、水溶液100g中に溶けている高分子のモル数が分かり、一定な濃度でHLB値が低いほどモル数が減少することが分かる。
【0110】
濃度が45重量%を超過すればコロイド水溶液の粘性が強くなって注射による注入が難しくなり、15重量%未満であれば体内注入の際に体内に吸収されて剤型の効能がなかった。
【0111】
また、HLBが2.5未満であれば疎水性生体適合性高分子の割合が高くて水を加える場合高分子が溶解されず、10を超過すれば体内注入の際に体内に吸収されて剤型の効能がなかった。
【0112】
しかし、表1において、親水性生体高分子及び疎水性生体高分子の割合ではなく重合させた重合体の分子量で判断する際、mPEG2,000g/molとmPEG5,000g/molを比べたら、mPEG2,000g/molの際、水溶液100g中の高分子のモル数がmPEG5,000g/molの際より増加していた。よって、水溶液100g中の高分子のモル数が一定であるとはいえないため、それを一定な値に換算し、それを介して本発明による組織修復用組成物の形成範囲を測定するためにK値を導出した。
【0113】
表2を参照すると、表1とは異なって、親水性生体高分子及び疎水性生体高分子の分子量とHLB値の関係を把握することができるが、親水性生体高分子の分子量が同じであれば、疎水性生体高分子の分子量が増加するほどK値が減少する。これは親水性生体高分子及び疎水性生体高分子の割合で判断する場合も同じである。また、親水性生体高分子の分子量が異なるとしても、親水性生体高分子及び疎水性生体高分子の割合が同じであれば、K値が非常の類似した値を有することが分かる。
【0114】
前記K値は後述する一定な濃度範囲内で一定な値を有し、その範囲内で剤型の効能を確認することができる。また、K値は約0.12〜3.26に換算されるが、剤型の効能がある部分は0.4〜1.5の範囲である。
【0115】
また、コロイド水溶液において、濃度15〜45重量%、HLB2.5〜10、及びK値は0.4〜1.5で剤型としての効能があることが分かる。
【0116】
実験例2
本発明による組織修復用組成物を下記方法によって濁度を測定するために、製造例3を利用して製造されたコロイド相を使用し、それに対する結果を図8に示した。濁度標準液として4000NTUのformazin turbidity standardを使用した。
【0117】
<測定方法>
(1)標準液及び前記製造例3を利用して製造されたコロイド相をそれぞれ2倍、5倍、10倍、及び20倍に希釈した溶液を製造し、バイアルに入れて比較用試料を製造したが、希釈された標準溶液の濁度はそれぞれ4000、2000、800、400、及び200NTUであった。
(2)濁度比較用試料のバイアルの外側を拭き、白色LED光源の下、約1000lxの明るさで、希釈による濁度の変化と同一希釈割合における濁度の差を肉眼で観察した。
【0118】
図8は、本願発明と標準液の濁度をDSLR(D3000、Nicon、Japan)で撮影して比較した写真である。
【0119】
図8を検討すると、標準液の場合、左から右へ、希釈されるほど濁度が低くなることが分かる。
【0120】
一方、本願発明の場合、左から右へ、希釈されても濁度は低くならず、逆に原液より濃くなっている場合を肉眼で確認することができる。
【0121】
実験例3
本発明による組織修復用組成物の剤型としての効能を検証するために、動物実験を行った。
【0122】
試験動物として、生後6週のSDラット(Orient bio社から購入)を使用した。
【0123】
前記実験は、生後6週のSDラット1固体当たり8か所で、一側はリン酸緩衝食塩水(PBS)に、他側は試験物質群に指定し、計10匹のラットを3群に細分化した。実験期間中、飼育環境は温度24±2℃、相対湿度50±10%、照明時間12時間に設定し、エサは自由に食べるようにした。
【0124】
各群別ラットの正中線を中心に、左側皮下層に陰性対照群としてPBSを注入し、右側皮下層に前記製造例3で製造した高分子を水に溶かして製造したコロイド水溶液(濃度25%、HLB5.7、K値0.8864)を250μlずつ一定に注入し、注入直後の資料の漏出有無を観察して、その結果を図1に示した。
【0125】
前記コロイド水溶液及びPBSの投与直後(0’hr)、1週、2週、4週、及び6週経過後、実験動物を犠牲させて、試料注入部位の皮膚組織と未注入の皮膚組織を摘出し、10%中性緩衝ホルマリン溶液に固定した。その後、パラフィンに包埋し固めて、5μmの切片を制作した。ヘマトキシリン・エオジン(H&E)で染色した後、炎症/異物反応を下記表3によって評価し、試料の注入による皮膚全層(真皮層、皮下層)の厚さの増加を光学顕微鏡によって観察して、その結果を図2、4、及び6にそれぞれ示した。
【0126】
また、コロイド水溶液及びPBSの新生コラーゲンの生合成力を評価するために、マッソントリクローム(MT)で染色した後、組織内のコラーゲン形成を観察した。注入された資料の生体組織適合性は、主な基準になる下記表3によって炎症及び異物反応の確認を介して評価した。光学顕微鏡を利用して組織スライドを40倍、100倍、200倍、400倍率で観察した後、各スライド別の主な組織学的特徴を読み取り、その結果を図3及び図5に示した。
【0127】
また、前記注入されたコロイド水溶液による炎症と異物反応の程度を4段階に分け、PBS投与群で観察される炎症と異物反応をno inflammationに設定し、炎症反応や異物反応が深化するほど、almost clear(score 1)、mild(score 2)、moderate(score 3)、severe(score 4)で下記表3によって評価する(Duranti et al.Dermatol Surg 1998:24:1317−25)。
【0128】
【表3】
【0129】
図1はPBS及びコロイド水溶液を注入した後の試料の漏出有無をDSLR(D3000、Nicon、Japan)で撮影した写真であり、図2はコロイド水溶液を注入した後、時間の経過による皮膚の厚さを光学顕微鏡を介して撮影した写真であり、図3はコロイド水溶液を注入した後、時間の経過によるコラーゲンを光学顕微鏡を介して撮影した写真である。また、図4はPBSを注入した後、時間の経過による皮膚の厚さを光学顕微鏡を介して撮影した写真であり、図5はPBSを注入した後、時間の経過によるコラーゲンを光学顕微鏡を介して撮影した写真であり、図6はPBS及びコロイド水溶液を注入した後、時間の経過による皮膚の厚さを示すグラフである。
【0130】
図1を参照すると、PBS及びコロイド水溶液を投与した直後に観察すると、漏出される試料がないことが分かる。
【0131】
図2、4、及び6を参照すると、H&E染色で組織病理学的に評価した結果、コロイド水溶液を注入した組織皮下層で、コロイド水溶液の注入によって皮下層の厚さも6週まで時間の経過によって増加することが分かり、それによる増加幅がPBSを注入した図4に比べ著しく向上されていることが分かる。
【0132】
図3及び図5を参照すると、MT染色で組織病理学的に評価した結果、コロイド水溶液を注入した組織皮下層で、コロイド水溶液の注入によるコラーゲンの形成が確認されており、コラーゲンの形成によって皮下層の厚さも6週まで時間の経過によって増加することが分かり、それによる増加幅がPBSを注入した図5に比べ著しく向上されていることが分かる。
【0133】
また、図2図5を参照すると、前記表3によって異物反応を評価する際、コロイド水溶液の注入による大きな異物反応は見られず、繊維組織の炎症細胞、リンパ球、及び巨大細胞がほとんど見られないscore 1であって、コロイド水溶液を投与する前と差がないことが分かる。
【0134】
このように、本発明によって濃度、HLB、及びK値を満足する場合、毒性のない生体適合性高分子を利用する組織修復用組成物及びその製造方法を提供することができる。
【0135】
これまで本発明の好ましい実施例を図面を参照して詳細に説明した。本発明の説明は例示のためのものであって、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的特徴を変更せずも他の具体的な形態に容易に変形可能であることを理解できるはずである。
【0136】
よって、本発明の範囲は、上述した詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味、範囲及びその均等概念から導き出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】