特表2021-523874(P2021-523874A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-523874抗メソセリン抗体およびその抗体薬物コンジュゲート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-523874(P2021-523874A)
(43)【公表日】2021年9月9日
(54)【発明の名称】抗メソセリン抗体およびその抗体薬物コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20210813BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20210813BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20210813BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20210813BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20210813BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20210813BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20210813BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210813BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20210813BHJP
【FI】
   A61K47/68
   C07K16/30ZNA
   C07K16/46
   C12N15/13
   C12N15/63 Z
   A61K39/395 N
   A61K39/395 T
   A61K38/05
   A61P35/00
   A61K39/395 Y
   C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2020-535025(P2020-535025)
(86)(22)【出願日】2019年5月15日
(85)【翻訳文提出日】2020年6月17日
(86)【国際出願番号】CN2019086977
(87)【国際公開番号】WO2019223579
(87)【国際公開日】20191128
(31)【優先権主張番号】201810487856.4
(32)【優先日】2018年5月21日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520217663
【氏名又は名称】栄昌生物制薬(烟台)有限公司
【氏名又は名称原語表記】REMEGEN, LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】房 健 民
(72)【発明者】
【氏名】黄 長 江
(72)【発明者】
【氏名】姜 静
(72)【発明者】
【氏名】叶 慧
(72)【発明者】
【氏名】李 慎 軍
(72)【発明者】
【氏名】徐 巧 玉
(72)【発明者】
【氏名】羅 文 ▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】王 名 雪
【テーマコード(参考)】
4B064
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA05
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA10
4C084BA23
4C084BA32
4C084NA14
4C084ZB26
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB01
4C085BB41
4C085CC23
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA51
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、MSLNを標的とする抗体薬物コンジュゲートを開示する。本発明は、抗体薬物コンジュゲート(ADC)を作製する方法も開示する。本発明は、操作された重鎖および軽鎖を含む新規MSLN抗体またはその機能的断片をさらに開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Ab−(L−D)を有する抗体薬物コンジュゲートであって、式中、
(a)AbはMSLNに特異的に結合する抗体またはその機能的断片であり、
(b)Lはリンカーであるか、または存在せず、
(c)Dは治療剤であり、
(d)nは1、2、3、4、5、6、7または8である、抗体薬物コンジュゲート。
【請求項2】
MSLNに特異的に結合する前記抗体が重鎖および軽鎖を含み、
(i)前記重鎖が3つのCDR領域を含み、前記CDR領域の少なくとも1つのアミノ酸配列が配列番号1、2もしくは3に記載のアミノ酸配列またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を有し、
(ii)前記軽鎖が3つのCDR領域を含み、前記CDR領域の少なくとも1つのアミノ酸配列が配列番号4、5もしくは6に記載のアミノ酸配列またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を有する、請求項1に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項3】
MSLNに特異的に結合する前記抗体が重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、
(i)前記重鎖可変領域が配列番号7に記載のアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含み、
(ii)前記軽鎖可変領域が配列番号8に記載のアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1または2に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項4】
前記抗体がモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、1本鎖抗体(scFv)または2重特異性抗体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項5】
前記治療剤がドラスタチンペプチド、好ましくはMMAD、MMAEまたはMMAF、より好ましくはMMAEである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項6】
前記リンカーおよび前記抗体が前記抗体のチオール基によって連結している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項7】
前記リンカーが以下の式
【化1】
によって示された構造を有するか、または前記リンカーが以下の式
【化2】
によって示された構造を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項8】
以下の式のいずれか1つによって示された構造を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【化3】
【請求項9】
メソセリンに特異的に結合することができる抗体またはその機能的断片であって、
前記抗体が重鎖および軽鎖を含み、
(i)前記重鎖が3つのCDR領域を含み、前記CDR領域の少なくとも1つのアミノ酸配列が配列番号1、2もしくは3に記載のアミノ酸配列またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を有し、
(ii)前記軽鎖が3つのCDR領域を含み、前記CDR領域の少なくとも1つのアミノ酸配列が配列番号4、5もしくは6に記載のアミノ酸配列またはそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を有する、抗体またはその機能的断片。
【請求項10】
前記抗体が重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、
(i)前記重鎖可変領域が配列番号7に記載のアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含み、
(ii)前記軽鎖可変領域が配列番号8に記載のアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、請求項9に記載の抗体またはその機能的断片。
【請求項11】
前記抗体がモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、1本鎖抗体(scFv)または2重特異性抗体である、請求項9または10に記載の抗体またはその機能的断片。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片をコードする、単離されたポリペプチド。
【請求項13】
請求項9〜11のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片の重鎖をコードするポリヌクレオチドおよび請求項9〜11のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片の軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む、単離されたポリヌクレオチドの組み合わせ。
【請求項14】
請求項12に記載のポリヌクレオチドまたは請求項13に記載のポリヌクレオチドの組み合わせを含み、前記ポリヌクレオチドが宿主細胞または無細胞発現系においてそれらによってコードされるポリペプチドの発現を可能にする制御配列に作動可能に連結している、発現ベクターまたは発現ベクターの組み合わせ。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のコンジュゲートおよび/または請求項9〜11のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片、および医薬的に許容できる担体を含む医薬組成物。
【請求項16】
癌の処置または予防のための医薬品の製造における、請求項1〜8のいずれか一項に記載のコンジュゲート、請求項9〜11のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的断片、請求項12に記載のポリヌクレオチド、請求項13に記載のポリヌクレオチドの組み合わせ、請求項14に記載の発現ベクターまたは請求項15に記載の医薬組成物の使用であって、好ましくは前記癌がメソセリン陽性癌である使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、抗メソセリン抗体またはその機能的断片に関する。本発明はまた、抗メソセリン抗体および低分子薬物を含む抗体薬物コンジュゲートに関する。本発明はさらに、腫瘍の処置のための医薬品の製造における本発明の抗体およびコンジュゲートの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
MSLN(メソセリン)は、中皮細胞、中皮腫および卵巣癌においてモノクローナル抗体CAK1によって認識される抗原である。多くの腫瘍組織で高発現している40kDaの細胞表面糖タンパク質なので、治療用抗体の非常に良好な標的マーカーである。
【0003】
モノクローナル抗体は治療標的特異性が高くて副作用は低いが、それらの有効性は単独で使用したときに限定される。抗体薬物コンジュゲートは、リンカーを介して毒素と抗体を連結することによって形成され、強い標的化能力および高効率の細胞傷害性の両方を備えており、新たなADC薬の使用は最も有望な免疫療法の1つとなっており、癌免疫療法に多くの注目が寄せられている。
【0004】
いくつかの研究グループが、MSLNを標的とする抗体薬物コンジュゲートを構築してきたが、これらの抗体薬物コンジュゲートには依然として多くの欠点があり、例えば、抗体のシステインのチオール基によるカップリングはペプチド鎖間の元々のジスルフィド結合の喪失を引き起こし、得られたADCは不安定で、一旦ADCが循環系に入ると、その半減期は短くなり、その毒性のある副作用は深刻であること、抗体のリジンのアミノ基によるカップリングはカップリング部位を無作為化し、抗体の標的化能力に影響を及ぼし得ることなどである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、当業界では、よりすぐれた特性を備えたMSLN抗体およびその抗体を含む抗体薬物コンジュゲートを開発することが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内容
本発明は、抗メソセリン抗体またはその機能的断片、およびその抗体もしくはその機能的断片を含む抗体薬物コンジュゲートを提供する。特に、本発明の抗体薬物コンジュゲートは、安定性が高く、毒性のある副作用が少なく、および/またはメソセリンに対する親和性が高い。
【0007】
詳細には:
一態様では、本発明は、以下の構造式を有する抗体薬物コンジュゲートであって、
Ab−(L−D)
式中、AbはMSLNに特異的に結合する抗体またはその機能的断片であり、
Lは空であるか、または任意のリンカーであり、
Dは任意の治療剤であり、
nは1から8から選択される整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7もしくは8であるかまたはそれらの任意の2つの間の間隔である、抗体薬物コンジュゲートを提供する。
【0008】
さらに、本発明の抗体またはその機能的断片は、重鎖および軽鎖を含み、(i)重鎖は少なくとも3つのCDR領域を含み、CDR領域の少なくとも1つのアミノ酸配列は配列番号1、2もしくは3に記載のアミノ酸配列またはそれらと少なくとも80%(好ましくは、85%、90%、95%、98%もしくは99%)の配列同一性を有する配列を有し、(ii)軽鎖は少なくとも3つのCDR領域を含み、CDR領域の少なくとも1つのアミノ酸配列は配列番号4、5もしくは6に記載のアミノ酸配列またはそれらと少なくとも80%(好ましくは、85%、90%、95%、98%もしくは99%)の配列同一性を有する配列を有する。好ましくは、本発明の抗体またはその機能的断片は、重鎖および軽鎖を含み、(i)重鎖可変領域は3つのCDR領域を含み、CDR領域は配列番号1、2もしくは3に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有し、および/または(ii)軽鎖可変領域は3つのCDR領域を含み、CDR領域は配列番号4、5もしくは6に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有する。最も好ましくは、本発明で開示した抗メソセリン抗体の重鎖のCDRは、配列番号1、配列番号2および配列番号3に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有し、その軽鎖可変領域のCDRは、配列番号4、配列番号5および配列番号6に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有する。
【0009】
さらに、本発明は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む抗メソセリン抗体またはその機能的断片を提供し、(i)重鎖可変領域は配列番号7に記載のアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%(好ましくは、85%、90%、95%、98%もしくは99%)の配列同一性を有する配列を含み、(ii)軽鎖可変領域は配列番号8に記載のアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%(好ましくは、85%、90%、95%、98%もしくは99%)の配列同一性を有する配列を含む。好ましくは、抗体は重鎖および軽鎖を含み、(i)重鎖可変領域は配列番号7に記載のアミノ酸配列を含み、および/または(ii)軽鎖可変領域は配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む。最も好ましくは、本発明で開示した抗メソセリン抗体の重鎖可変領域は、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む。
【0010】
ある種の特定の実施形態では、本発明の抗体は重鎖および軽鎖を含み、重鎖は配列番号10に記載のアミノ酸配列を含み、軽鎖は配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む。
【0011】
別の態様では、本発明は抗メソセリン抗体またはその機能的断片および治療剤を含む抗体薬物コンジュゲートを提供する。好ましくは、本発明の抗体薬物コンジュゲートは、抗メソセリン抗体またはその機能的断片を治療剤に連結するリンカーをさらに含む。
【0012】
ある種の実施形態では、本発明のリンカーLは、当業界で公知の任意の手段、好ましくはチオール基および/またはアミノ基によって抗体に連結することができる。好ましい実施形態では、本発明の抗体は、抗体のチオール基によってリンカーに連結している。本発明のリンカーLは存在していなくてもよく(すなわち、抗体は治療剤Dに直接連結している)、または切断可能な(すなわち、インビボ環境において切断するリンカー)もしくは切断不可能なリンカーのいずれか1つまたはそれらの組み合わせであってもよく、好ましくは、リンカーは以下の表1に挙げたリンカーから選択することができる。
【0013】
【表1】
【0014】
一部の実施形態では、本発明のリンカーは、好ましくは以下の表2に挙げたリンカーから選択される。
【0015】
【表2】
【0016】
本発明の一部の実施形態では、治療剤Dは、マイタンシン化合物、V−ATPアーゼ阻害剤、アポトーシス促進剤、Be12阻害剤、McL1阻害剤、HSP90阻害剤、IAP阻害剤、mTOr阻害剤、微小管安定化剤、微小管不安定化剤、アウリスタチン、ドラスタチン、MetAP(メチオニンアミノペプチダーゼ)、タンパク質CRM1核外移行阻害剤、DPPIV阻害剤、プロテアソーム阻害剤、ミトコンドリアでのリン酸転移反応の阻害剤、タンパク質合成阻害剤、キナーゼ阻害剤、CDK2阻害剤、CDK9阻害剤、キネシン阻害剤、HDAC阻害剤、DNA損傷剤、DNAアルキル化剤、DNA干渉剤、DNA副溝結合剤、DHFR阻害剤およびドラスタチンペプチドからなる群から選択される。
【0017】
本発明の一部の好ましい実施形態では、治療剤Dは細胞傷害性物質(例えば、代謝拮抗薬、抗腫瘍性抗生物質、アルカロイド)、免疫作用増強剤または放射性同位元素である。好ましくは、治療剤Dは、MMAD(モノメチルアウリスタチンD)およびその誘導体、MMAE(モノメチルアウリスタチンE)およびその誘導体、MMAF(モノメチルアウリスタチンF)およびその誘導体、メルタンシン誘導体M1、メルタンシン誘導体M4、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、PBDA(ピロロベンゾジアゼピン)、ドキソルビシン、ビンカアルカロイド、メトトレキセート、ビンブラスチン、ダウノルビシンからなる群から選択することができ、より好ましくは、治療剤はマイタンシノイド(例えば、アンサマイトシンまたはメルタンシン)、ドラスタチンおよびその誘導体から選択され、最も好ましくは、治療剤はMMADおよびMMAEからなる群から選択される。
【0018】
ある種の実施形態では、本発明は、一般式Ab−(L−D)の抗体薬物コンジュゲートに関し、式中、Abは本発明の任意の抗メソセリン抗体であり、LはPy−MAA−Val−Cit−PAB、Mc−Val−Cit−PABからなる群から選択され、DはMMADまたはMMAEから選択され、nは1から8から選択される整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8またはそれらの任意の2つの間の間隔である。
【0019】
ある種の特定の実施形態では、本発明の抗体薬物コンジュゲートは以下の式のいずれかで示した構造を有し、式中、nは1、2、3、4、5、6、7または8である。
【0020】
【化1】
【0021】
特に、本発明は、一般式Ab−(L−D)の抗体薬物コンジュゲートに関し、式中、Abは本発明の任意の抗メソセリン抗体であり、抗体の重鎖可変領域CDRは、配列番号1、配列番号2および配列番号3に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有し、抗体の軽鎖可変領域CDRは配列番号4、配列番号5および配列番号6に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有し、LはPy−MAA−Val−Cit−PABであり、DはMMAEである。より詳細には、本発明の抗体薬物コンジュゲートは、以下の式によって示された構造を有するRC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAEであり、式中、nは1、2、3、4、5、6、7または8である。
【0022】
【化2】
【0023】
特に、本発明は、一般式Ab−(L−D)の抗体薬物コンジュゲートに関し、式中、Abは本発明の任意の抗メソセリン抗体であり、抗体の重鎖可変領域CDRは、配列番号1、配列番号2および配列番号3に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有し、抗体の軽鎖可変領域CDRは配列番号4、配列番号5および配列番号6に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有し、LはPy−MAA−Val−Cit−PABであり、DはMMADである。より詳細には、本発明の抗体薬物コンジュゲートは、以下の式によって示された構造を有するRC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMADであり、式中、nは1、2、3、4、5、6、7または8である。
【0024】
【化3】
【0025】
特に、本発明は、一般式Ab−(L−D)の抗体薬物コンジュゲートに関し、式中、Abは本発明の任意の抗メソセリン抗体であり、抗体の重鎖可変領域CDRは、配列番号1、配列番号2および配列番号3に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有し、抗体の軽鎖可変領域CDRは配列番号4、配列番号5および配列番号6に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有し、LはMc−Val−Cit−PABであり、DはMMAEである。より詳細には、本発明の抗体薬物コンジュゲートは、以下の式によって示された構造を有するRC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAEであり、式中、nは1、2、3、4、5、6、7または8である。
【0026】
【化4】
【0027】
特に、本発明は、一般式Ab−(L−D)の抗体薬物コンジュゲートに関し、式中、Abは本発明の任意の抗メソセリン抗体であり、抗体の重鎖可変領域CDRは、配列番号1、配列番号2および配列番号3に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有し、抗体の軽鎖可変領域CDRは配列番号4、配列番号5および配列番号6に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有し、LはMc−Val−Cit−PABであり、DはMMADである。より詳細には、本発明の抗体薬物コンジュゲートは、以下の式によって示された構造を有するRC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMADであり、式中、nは1、2、3、4、5、6、7または8である。
【0028】
【化5】
【0029】
特に、本発明は、一般式Ab−(L−D)の抗体薬物コンジュゲートに関し、式中、Abは本発明の任意の抗メソセリン抗体であり、抗体は、配列番号7に記載の重鎖可変領域配列および配列番号8に記載の軽鎖可変領域配列を有し、LはPy−MAA−Val−Cit−PABであり、DはMMAEである。より詳細には、本発明の抗体薬物コンジュゲートは、以下の式によって示された構造を有するRC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAEであり、式中、nは1、2、3、4、5、6、7または8である。
【0030】
【化6】
【0031】
特に、本発明は、一般式Ab−(L−D)の抗体薬物コンジュゲートに関し、式中、Abは本発明の任意の抗メソセリン抗体であり、抗体は、配列番号7に記載の重鎖可変領域配列および配列番号8に記載の軽鎖可変領域配列を有し、LはPy−MAA−Val−Cit−PABであり、DはMMADである。より詳細には、本発明の抗体薬物コンジュゲートは、以下の式によって示された構造を有するRC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMADであり、式中、nは1、2、3、4、5、6、7または8である。
【0032】
【化7】
【0033】
特に、本発明は、一般式Ab−(L−D)の抗体薬物コンジュゲートに関し、式中、Abは本発明の任意の抗メソセリン抗体であり、抗体は、配列番号7に記載の重鎖可変領域配列および配列番号8に記載の軽鎖可変領域配列を有し、LはMc−Val−Cit−PABであり、DはMMAEである。より詳細には、本発明の抗体薬物コンジュゲートは、以下の式によって示された構造を有するRC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAEであり、式中、nは1、2、3、4、5、6、7または8である。
【0034】
【化8】
【0035】
特に、本発明は、一般式Ab−(L−D)の抗体薬物コンジュゲートに関し、式中、Abは本発明の任意の抗メソセリン抗体であり、抗体は、配列番号7に記載の重鎖可変領域配列および配列番号8に記載の軽鎖可変領域配列を有し、LはMc−Val−Cit−PABであり、DはMMADである。より詳細には、本発明の抗体薬物コンジュゲートは、以下の式によって示された構造を有するRC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMADであり、式中、nは1、2、3、4、5、6、7または8である。
【0036】
【化9】
【0037】
別の態様では、本発明は、メソセリンに結合することができる抗体またはその機能的断片を提供し、抗体またはその機能的断片は重鎖および軽鎖を含み、
(i)重鎖は少なくとも3つのCDR領域を含み、CDR領域の少なくとも1つのアミノ酸配列は配列番号1、2もしくは3に記載のアミノ酸配列を有するか、またはそれらと少なくとも80%(好ましくは、85%、90%、95%、98%もしくは99%)の配列同一性を有する配列を有し、および/または
(ii)軽鎖は少なくとも3つのCDR領域を含み、CDR領域の少なくとも1つのアミノ酸配列は配列番号4、5もしくは6に記載のアミノ酸配列を有するか、またはそれらと少なくとも80%(好ましくは、85%、90%、95%、98%もしくは99%)の配列同一性を有する配列を有する。
【0038】
ある種の特定の実施形態では、本発明の抗メソセリン抗体またはその機能的断片は、重鎖および軽鎖を含み、
(i)重鎖可変領域は3つのCDR領域を含み、CDR領域は配列番号1、2もしくは3に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有し、および/または
(ii)軽鎖可変領域は3つのCDR領域を含み、CDR領域は配列番号4、5もしくは6に記載のアミノ酸配列をそれぞれ有する。
【0039】
特に、本発明で開示した抗メソセリン抗体の重鎖CDR領域のアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2および配列番号3でそれぞれ記載されている。
【0040】
特に、本発明で開示した抗メソセリン抗体の軽鎖CDR領域のアミノ酸配列は、配列番号4、配列番号5および配列番号6でそれぞれ示されている。
【0041】
より詳細には、本発明で開示した抗メソセリン抗体では、その重鎖CDR領域のアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2および配列番号3でそれぞれ記載されており、その軽鎖可変領域CDR領域のアミノ酸配列は、配列番号4、配列番号5および配列番号6でそれぞれ記載されている。
【0042】
さらなる態様では、本発明は、重鎖および軽鎖を含む抗メソセリン抗体またはその機能的断片を提供し、重鎖および軽鎖は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域をそれぞれ含み、
(i)重鎖可変領域は配列番号7に記載のアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%(好ましくは、85%、90%、95%、98%もしくは99%)の配列同一性を有する配列を含み、
(ii)軽鎖可変領域は配列番号8に記載のアミノ酸配列またはそれと少なくとも80%(好ましくは、85%、90%、95%、98%もしくは99%)の配列同一性を有する配列を含む。
【0043】
ある種の特定の実施形態では、抗体は重鎖および軽鎖を含み、重鎖および軽鎖は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域をそれぞれ含み、
(i)重鎖可変領域は配列番号7に記載のアミノ酸配列を含み、および/または
(ii)軽鎖可変領域は配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む。
【0044】
特に、本発明の抗メソセリン抗体は重鎖および軽鎖を含み、重鎖および軽鎖は、配列番号10および配列番号9に記載のアミノ酸配列をそれぞれ含む。
【0045】
ある種の特定の実施形態では、抗メソセリン抗体またはその機能的断片は単離されている。
【0046】
ある種の特定の実施形態では、抗メソセリン抗体またはその機能的断片は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、1本鎖抗体(scFv)または2重特異性抗体であり、ある種の特定の実施形態では、抗メソセリン抗体またはその機能的断片はモノクローナル抗体であり、ある種の特定の実施形態では、抗メソセリン抗体またはその機能的断片はヒト化抗体であり、ある種の特定の実施形態では、抗メソセリン抗体またはその機能的断片はIgGlカッパ抗体である。
【0047】
さらなる態様では、本発明は、本発明の抗体をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0048】
さらなる態様では、本発明は、単離されたポリヌクレオチドの組み合わせを提供し、この組み合わせは、本発明の抗体またはその機能的断片の軽鎖をコードするポリヌクレオチドおよび本発明の抗体またはその機能的断片の重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0049】
さらなる態様では、本発明は、発現ベクターまたは発現ベクターの組み合わせを提供し、それらは、本発明によるポリヌクレオチドまたは本発明によるポリヌクレオチドの組み合わせを含み、ポリヌクレオチドはこのポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの発現を可能にする宿主細胞または無細胞発現系の制御配列に作動可能に連結している。
【0050】
さらなる態様では、本発明は、本発明による抗体またはその機能的断片および/または本発明によるコンジュゲートおよび医薬的に許容できる担体を含む医薬組成物を提供する。
【0051】
さらなる態様では、本発明は、癌の治療または予防を必要とする対象に、治療有効量の本発明による抗体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドの組み合わせ、発現ベクター、コンジュゲートおよび/または医薬組成物を投与することを含む、癌の処置または予防の方法を提供する。
【0052】
さらなる態様では、本発明は、癌の処置または予防のための医薬品の製造における本発明による抗体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドの組み合わせ、発現ベクター、コンジュゲートおよび/または医薬組成物の使用を提供する。
【0053】
さらなる態様では、本発明は、癌の処置または予防に使用するために、本発明による抗体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドの組み合わせ、発現ベクター、コンジュゲートおよび/または医薬組成物を提供する。
【0054】
さらなる態様では、本発明は、癌の処置のための医薬品の製造における上記実施形態のいずれか1つの抗体薬物コンジュゲートの使用を提供する。
【0055】
ある種の特定の実施形態では、本発明の癌はメソセリン陽性癌である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】リンカーを有するRC88抗体と薬物コンジュゲートとのカップリングを特徴とするRC88−PY−MAA−Val−Cit−PAB−MMAEおよびRC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAEのSDS−PAGE分析図を示している。
図2】本発明のコンジュゲートのカップリングを示した図であり、図Aは疎水性高速液体クロマトグラフィー(HIC−HPLC)によるRC88−PY−MAA−Val−Cit−PAB−MMAEのカップリングの検出結果を示しており、図Bは疎水性高速液体クロマトグラフィー(HIC−HPLC)によるRC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAEのカップリングの検出結果を示している。
図3】本発明のコンジュゲートの細胞傷害効果を示した図であり、図AはMSLNを高発現しているOval−Citar−3細胞における本発明のRC88抗体薬物コンジュゲート(すなわち、RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE、RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAD、RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAE、RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAD)の細胞傷害効果曲線を示しており、図BはMSLNを高発現しているOval−Citar−3細胞におけるコンジュゲートしていない抗体リンカーおよび細胞毒素コンジュゲート(Py−Val−Cit−PAB−MMAE、Py−Val−Cit−PAB−MMAD、Mc−Val−Cit−PAB−MMAE、Mc−Val−Cit−PAB−MMAD)の細胞傷害効果曲線を示しており、図CはMSLNを高発現しているOval−Citar−3細胞における細胞毒素MMAE、MMADおよび陽性対照PTX(パクリタキセル)の細胞傷害効果曲線を示しており、横軸は薬物の対数濃度を表しており、縦軸は薬物の対応する対数濃度での最大阻害率を表している。
図4】日数に応じた腫瘍を有するマウスの体重のグラフを示しており、マウスはRC88抗体(2mg/kg)、RC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAD、RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE、RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAE、RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAD、2mg/kg)およびMMAE(0.0716mg/kg)を投与されており(週に1回、全部で3回投与された)、横軸は日数を表し、縦軸は投与の対応する日数後の腫瘍を有するマウスの体重を表す。この試験では、対照群は生理食塩水(対照)およびMMAEである。
図5】日数に応じた腫瘍を有するマウスの腫瘍体積のグラフを示しており、マウスはRC88抗体(2mg/kg)、RC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAD、RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE、RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAE、RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAD、2mg/kg)およびMMAE(0.0716mg/kg)を投与されており(週に1回、全部で3回投与された)、横軸は日数を表し、縦軸は投与の対応する日数後の腫瘍を有するマウスの腫瘍体積を表す。この試験では、対照群は生理食塩水(対照)およびMMAEである。
図6】RC88抗体(2mg/kg)、RC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAD、RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE、RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAE、RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAD、2mg/kg)およびMMAE(0.0716mg/kg)を週に1回、全部で3回投与された腫瘍を有するマウスの腫瘍重量のグラフを示しており、対照群は生理食塩水(対照)およびMMAEであった。
図7】日数に応じた腫瘍を有するマウスの体重のグラフを示しており、マウスはRC88抗体(3mg/kg)、RC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE、3mg/kg、1.5mg/kg、0.75mg/kg)、MMAE(0.06mg/kg)、RC88抗体(3mg/kg)+MMAE(0.06mg/kg)、IgG−MMAE(3mg/kg)、PTX(パクリタキセル、10mg/kg)を投与され(PTXは週に2回、全部で6回投与され、その他は週に1回、全部で3回投与された)、横軸は日数を表し、縦軸は投与の対応する日数後の腫瘍を有するマウスの体重を表す。この試験では、対照群は生理食塩水(対照)およびMMAEである。
図8】日数に応じた腫瘍を有するマウスの腫瘍体積のグラフを示しており、マウスはRC88抗体(3mg/kg)、RC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE、3mg/kg、1.5mg/kg、0.75mg/kg)、MMAE(0.06mg/kg)、RC88抗体(3mg/kg)+MMAE(0.06mg/kg)、IgG−MMAE(3mg/kg)、PTX(パクリタキセル、10mg/kg)を投与され(週に1回、薬物を3回投与された腫瘍を有するマウスの腫瘍体積の合計(PTXは週に2回、全部で6回投与され、その他は週に1回、全部で3回投与された)、横軸は日数を表し、縦軸は対応する投与日数後の腫瘍を有するマウスの腫瘍体積を表す。この試験では、対照群は生理食塩水(対照)およびMMAEである。
図9】MSLNを高発現しているOval−Citar−3ヒト卵巣癌を有するマウスモデルにおけるRC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE)の抗腫瘍効果を示している。
図10】ELISA測定法によるMSLN陽性腫瘍細胞に対するRC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE)の親和性曲線を示している。
図11】標的に対する本発明のコンジュゲートの親和性を示した図であり、図AはELISA測定法によるMSLN陽性腫瘍細胞に対するRC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE)の親和性曲線を示しており、図Bは組換えヒトMSLNタンパク質に対するRC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE)の競合結合曲線を示している。
図12】組換えヒトMSLNタンパク質に対するRC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE)およびCA125の競合結合曲線を示している。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明を実施するための具体的なモデル
定義
特に定義しない限り、本明細書で使用した技術用語および科学用語は全て、当業者によって理解されているのと同じ意味を有する。当業界の特定の定義および専門用語については、従事者はCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel)を参照することができる。アミノ酸残基の略語は、20個の一般的に使用されるL−アミノ酸の1つを意味する当業界で使用される標準的な3文字および/または1文字コードである。
【0058】
本発明では、広範囲に亘って数値範囲およびパラメータ近似値が示されているが、特定の実施形態における数値は可能な限り正確に記載されている。しかし、それぞれの測定値には標準偏差が存在するため、任意の数値は本質的にある種の誤差を含有している。さらに、本明細書で開示した範囲は全て、ありとあらゆる部分的範囲を包含するものと理解されたい。例えば、「1から10」という引用範囲は、最小1と最大10(終点を含む)との間のありとあらゆる部分的範囲を包含するものと考えるべきであり、すなわち、最小1以上、例えば、1から6.1で開始する部分的範囲全て、および最大10以下、例えば、5.5から10で終了する部分的範囲である。さらに、「本明細書に組み込んだ」と称するいかなる参照も、その全体が組み込まれているものと理解される。
【0059】
説明で使用したように、参照している対象の単数形は、対象の1つに明確および明瞭に限定されていない限り、その複数形を包含することにさらに注意されたい。用語「または」は、文脈で明瞭に他の場合が示されていない限り、用語「および/または」と同義に使用することができる。
【0060】
本明細書で使用したように、MSLNとしても知られている用語「メソセリン」は、細胞のメソセリン前駆体タンパク質のプロセシングから得られた任意の天然の成熟メソセリンを意味する。この用語は、特に記載していない限り、霊長類(例えば、ヒト、類人猿およびサル)および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物源由来のメソセリンを包含し、この用語はメソセリンのスプライシングバリアントまたは対立形質バリアントなどの天然に生じる任意のバリアントも包含する。
【0061】
本明細書で使用したように、用語「医薬組成物」、「組み合わせ薬物」および「薬物の組み合わせ」は同義に使用され、少なくとも1つの薬物および、任意選択で、特定の目的を実現するために一緒に組み合わせた医薬的に許容される担体または賦形剤を意味する。ある種の実施形態では、医薬組成物は、本発明の目的を実現するために一緒に作用することができる限り、時間および/または空間で分離されている組み合わせを含む。例えば、医薬組成物に含有されている成分(例えば、本発明による抗体、核酸分子、核酸分子の組み合わせ、および/またはコンジュゲート)は、対象にまとめて、または対象に別々に投与することができる。医薬組成物に含有されている成分を対象に別々に投与するとき、成分は対象に同時または順次投与することができる。好ましくは、医薬的に許容できる担体は、水、緩衝化水溶液、PBS(リン酸緩衝液)などの等張生理食塩水、グルコース、マンニトール、デキストロース、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、炭酸マグネシウム、0.3%グリセロール、ヒアルロン酸、エタノールまたはポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、トリグリセリドなどである。使用した医薬的に許容できる担体の種類は、本発明による組成物が経口、経鼻、皮内、皮下、筋肉内または静脈内投与のために製剤化されているかどうかに特に左右される。本発明による組成物は、添加物として湿潤剤、乳化剤または緩衝物質を含んでいてもよい。
【0062】
本発明による医薬組成物、ワクチンまたは医薬調製物は、任意の適切な経路、例えば、経口、経鼻、皮内、皮下、筋肉内または静脈内投与を介して投与することができる。
【0063】
本明細書で使用した用語「治療剤」は、治療効果(例えば、任意の疾患および/または障害の処置、予防、改善または阻害)を発揮し得る任意の物質または実体を意味し、限定はしないが、化学療法剤、放射線療法剤、免疫療法剤、温熱療法剤などを含む。
【0064】
本明細書で使用したように、「CDR領域」または「CDR」は、Kabatら(Kabatら、Sequences of proteins of immunological interest、5編、U.S.Department of Health and Human Services、NIH、1991および後のバージョン)によって定義されたように、イムノグロブリンの重鎖および軽鎖の超可変領域を意味する。3つの重鎖CDRおよび3つの軽鎖CDRがある。本明細書で使用したように、用語CDRまたはCDR(複数)は、これらの領域の1つまたはこれらの領域のいくつかもしくは全てをも示すために使用され、抗体の抗原またはその認識エピトープに対する親和性による結合に関与するアミノ酸残基の大部分を含有している。
【0065】
本発明の目的のために、2つの核酸またはアミノ酸配列の間の「一致性」、「同一性」または「類似性」は、最適に整列させた後で得られた比較すべき2つの配列の間の同一なヌクレオチドまたは同一なアミノ酸残基のパーセンテージを意味し、このパーセンテージは単に統計的なもので、2つの配列の間の違いは無作為に分散しており、その長さ全体に亘っている。2つの核酸またはアミノ酸配列の間の配列比較は、最適に整列させた後で配列を比較することによって典型的に実施され、比較は、区域または「比較ウインドウ」によって実施することができる。手動による実施に加えて、配列を比較するための最適な整列は、SmithおよびWaterman(1981)[Ad.App.Math.2巻:482]の局所相同性アルゴリズム、NeddlemanおよびWunsch(1970)[J.MoI.Biol.48巻:443]の局所相同性アルゴリズム、PearsonおよびLipman(1988)[Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85巻:2444)の類似性検索法、またはコンピュータソフトウェア(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WIのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA、またはBLAST NもしくはBLAST P比較ソフトウェア)によっても、これらのアルゴリズムを使用して実施することができる。
【0066】
本明細書で使用したように、「治療有効量」または「有効量」は、投与する対象に対してその有益性を示すのに十分な用量を意味する。投与する実際の量ならびに投与する速度および時間経過は、処置する対象の状態および重症度に左右される。処置の指示(例えば、用量の決定など)は、最終的には総合診療医およびその他の医師の責任であり、処置する疾患、個々の患者の状態、送達部位、投与方法およびその他の公知の要素を通常考慮して、医師らの決定次第である。
【0067】
本明細書で使用した用語「対象」は、ヒトなどの哺乳類を意味するが、野生動物(サギ、コウノトリ、ツルなど)、家畜(アヒル、ガチョウなど)または実験動物(オランウータン、サル、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、マーモット、リスなど)などのその他の動物であってもよい。
【0068】
本明細書で使用したように、「抗体」は、最も広い意味で使用され、限定はしないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、2重特異性抗体)および抗体断片を含む様々な抗体構造を包含し、特に、本明細書で使用した「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続した少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含むタンパク質を意味する。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3個のドメイン(CH1、CH2およびCH3)を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VLと略す)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1個のドメイン(CL)を含有する。VHおよびVL領域はまた、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する相補性決定領域(CDR)と称される多様性の高い複数の領域に細分することができる。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端まで、以下の順番:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された3個のCDRおよび4個のFRで構成される。重鎖および軽鎖のこれらの可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(エフェクター細胞など)および古典的な補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主の組織または要素に対するイムノグロブリンの結合を媒介する。キメラまたはヒト化抗体も、本発明による抗体に包含される。
【0069】
用語「ヒト化抗体」は、非ヒト抗体から得られたCDR領域を含む抗体を意味し、抗体分子のその他の部分は1つの(またはいくつかの)ヒト抗体から得られている。さらに、結合親和性を保持するために、フレームワーク領域(FRと称する)区域のいくつかの残基は修飾することができる(Jonesら、Nature、321巻:522〜525、1986;Verhoeyenら、Science、239巻:1534〜1536、1988;Riechmannら、Nature、332巻:323〜327、1988)。本発明によるヒト化抗体またはその断片は、当業者に公知の技術によって(例えば、以下の文献:Singerら、J.Immun.150巻:2844〜2857、1992;Mountainら、Biotechnol.Genet.Eng.Rev.、10巻:1〜142、1992;またはBebbingtonら、Bio/Technology、10巻:169〜175、1992に記載のように)調製することができる。
【0070】
用語「キメラ抗体」は、抗体の可変領域配列が1つの種由来で、抗体の定常領域配列が別の種由来である、例えば、可変領域配列がマウス抗体から得られ、定常領域配列がヒト抗体から得られた抗体を意味する。本発明によるキメラ抗体またはその断片は、遺伝子組換え技術を使用することによって調製することができる。例えば、キメラ抗体はプロモーター、本発明による非ヒト、特にマウスモノクローナル抗体の可変領域をコードする配列およびヒト抗体の定常領域をコードする配列を含む組換えDNAをクローニングすることによって生成することができる。このような組換え遺伝子によってコードされた本発明のキメラ抗体は、例えば、マウス−ヒトキメラであってもよく、その特異性はマウスDNAから得られた可変領域によって決定され、そのアイソタイプはヒトDNAから得られた定常領域によって決定される。キメラ抗体を調製する方法は、例えば、Verhoeynら(BioEssays、8巻:74、1988)の文献を参照することができる。
【0071】
用語「モノクローナル抗体」は、単一の分子組成物を有する抗体分子の調製物を意味する。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに単一の結合特異性および親和性を示す。
【0072】
本明細書では、用語「機能的断片」は、機能的断片が得られた抗体の重または軽可変鎖の部分配列からなる、または含む抗体断片を意味し、この部分配列は、機能的断片が得られた抗体と同じ結合特異性および十分な親和性を保持するのに十分で、好ましくは、機能的断片が得られた抗体の少なくとも1/100と等しい親和性を示し、より好ましくは、少なくとも1/10と等しい親和性を示す。このような機能的断片は、機能的断片が得られた抗体配列の最少5個のアミノ酸、好ましくは10、15、25、50および100個の連続したアミノ酸を含む。
【0073】
本明細書で使用した用語「DAR」は、抗体薬物コンジュゲートにおける薬物−抗体比を意味し、1つの抗体とコンジュゲートした薬物分子の平均数を表す。好ましくは、本発明の抗体薬物コンジュゲートは、約2から約6、例えば、約2、2.5、3、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、5、5.5、6またはそれらの間の任意の間隔のDAR値を有する。
【0074】
一般的に、モノクローナル抗体またはその機能的断片、特にマウスモノクローナル抗体またはその機能的断片を調製するために、マニュアル「Antibodies」(HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor NY、726頁、1988)で具体的に記載された技術またはKohlerおよびMilstein(Nature、256巻:495〜497、1975)に記載のハイブリドーマ細胞からの調製の技術を参照することができる。
【0075】
本発明によるモノクローナル抗体または抗体薬物コンジュゲートは精製することができ、例えば、アフィニティーカラムで精製することができ、このアフィニティーカラムには本発明による抗体によって特異的に認識されるエピトープを含有するMSLN抗原またはその断片の1つが予め固定されている。より詳細には、モノクローナル抗体は、残存するタンパク質混入物およびDNAおよびLPSを排除するために、イオン交換クロマトグラフィーが連結しているか、または連結していないプロテインAおよび/またはGクロマトグラフィーによって精製することができ、それ自体は、2量体またはその他の多量体の存在による潜在的な凝集物を排除するために、セファロースゲルの排除クロマトグラフィーが連結しているか、または連結していない。より好ましい実施形態では、これらの技術はいずれも同時または連続的に使用することができる。
【0076】
本明細書で使用した用語「ドラスタチン」は、海洋生物、Dollabella auriculariaから単離されたポリペプチドを意味し、限定はしないが、ドラスタチン10およびドラスタチン15を含む。ドラスタチンペプチドは、強力な抗癌活性を示す有糸分裂阻害剤で、したがって、抗癌薬の候補である。研究者らは、MMAEおよびMMAFなどのドラスタチンペプチドのいくつかの誘導体をさらに発見し、合成した。
【0077】
本明細書では、用語「リンカー」は、抗体を薬物に連結する抗体薬物コンジュゲート(すなわち、ADC)の一部を意味し、切断可能であるか、または切断不可能であってもよい。切断可能なリンカー(すなわち、切断できるリンカーまたは生分解できるリンカー)は、標的細胞内または標的細胞上で切断し、薬物を放出することができる。ある種の実施形態では、本発明のリンカーは非常に良好な安定性を有し、標的までの送達中(例えば、血液中で)の薬物の放出を大幅に低減し、それによって副作用および毒性を低減する。いくつかの特定の実施形態では、本発明のリンカーは、ジスルフィドをベースにしたリンカー(高濃度のスルフヒドリル基を有する腫瘍細胞中で選択的に切断する)、ペプチドリンカー(腫瘍細胞中の酵素によって切断される)、ヒドラゾンリンカーなどの切断可能なリンカーから選択される。その他の特定の実施形態では、本発明のリンカーは、チオエーテルリンカーなどの切断不可能なリンカー(すなわち、切断できないリンカー)から選択される。さらにその他の実施形態では、本発明のリンカーは、切断可能なリンカーおよび切断不可能なリンカーの組み合わせである。好ましくは、本発明のリンカーは、Mc−Val−Cit−PABおよびPy−MAA−Val−Cit−PABからなる群から選択される。
【0078】
抗MSLN抗体
本発明の抗体薬物コンジュゲートの抗体は、ヒトMSLNに特異的に結合することが特徴である。好ましくは、抗体は高い親和性で、例えば、1×10−7M以下のKでMSLNに結合する。抗MSLN抗体は、好ましくは以下の特性の1つまたは複数を表す:
(a)ヒトMSLNに1×10−7M以下(例えば、5×10−8M以下、2×10−8M以下、5×10−9M以下、4×10−9M以下、3×10−9M以下、2×10−9M以下)のKで結合する;
(b)MSLNを高発現するOval−Citar−3細胞に、例えば、2000ng/ml以下(例えば、1000ng/ml以下、500ng/ml以下、400ng/ml以下、300ng/ml以下、250ng/ml以下、200ng/ml以下、150ng/ml以下、100ng/ml以下、50ng/ml以下、40ng/ml以下、30ng/ml以下、20ng/ml以下、10ng/ml以下、5ng/ml以下)のEC50で結合し、好ましくは、EC50はフローサイトメトリー法またはELISA法を使用することによって決定される;および
(c)MSLNを発現する細胞のインビボにおける増殖を阻害する。
【0079】
モノクローナル抗体RC88
本発明の抗体薬物コンジュゲートで好ましく使用した抗体は、ヒトモノクローナル抗体RC88である。RC88のVHおよびVLのアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号7および8で示される。
【0080】
別の態様では、本発明の抗体はRC88の重鎖および軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3またはそれらの組み合わせを含むことができる。RC88のVHCDR1、VHCDR2およびVHCDR3のアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号1〜3で示される。RC88のVLCDR1、VLCDR2およびVLCDR3のアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号4〜6で示される。CDR領域はKabatシステム(Kabat、E.A.ら、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、5編、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication NO:91−3242;以後「Kabat’3242」と称する)を使用して記載される。
【実施例】
【0081】
以下は、本発明の方法および組成物の例である。上記の定義および全般的な説明を踏まえて、様々なその他の実施形態を実施することができることを理解されたい。
【0082】
実施例1:抗メソセリン抗体
本発明の抗メソセリン抗体を生成するために、標準的方法を使用して免疫した動物を作製し、例えば、Kohler & Milstein、(1975)Nature 256巻:495〜497、Kozborら(1983)Immunol.Today 4巻:72、およびColeら、in MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY、Alan R.Liss、Inc.、1985、77〜96頁を参考にした。
【0083】
メソセリンは、公知の技術によって細胞から分離して精製し、動物の免疫のための免疫源として使用し、例えば、Zola、MONOCLONAL ANTIBODIES:PREPARATION AND USE OF MONOCLONAL ANTIBODIES AND ENGINEERED ANTIBODY DERIVATIVES(BASICS:FROM BACKGROUND TO BENCH)Springer−Verlag Ltd.、New York、2000;BASIC METHODS IN ANTIBODY PRODUCTION AND CHARACTERIZATION、11章、「Antibody Purification Methods」HowardおよびBethell編、CRC Press、2000;ANTIBODY ENGINEERING(SPRINGER LAB MANUAL.)、KontermannおよびDubel編、Springer−Verlag、2001を参考にした。
【0084】
脾細胞は、免疫化した動物から採取し、骨髄腫細胞株と融合させて、ハイブリドーマを得た。次に、高い結合親和性を備えた抗MSLN抗体をスクリーニングによって得た。
【0085】
マウス抗MSLNモノクローナル抗体は、軽鎖または重鎖CDRをヒトIgGlまたは重鎖フレームワーク領域に移植することによってヒト化した。マウス抗MSLN抗体軽鎖および重鎖のCDRは、Kabatシステムを使用して決定した。抗体可変領域データベースを整列させることによって、マウスMSLN抗体と高い相同性を備えたヒトIgG1フレームワーク領域を同定した。したがって、ヒト化MSLN抗体の様々な軽鎖可変領域配列およびヒト化抗MSLNの様々な重鎖可変領域配列を設計した。この設計によって、ヒト化重鎖および軽鎖の可変領域配列を合成し、完全長のヒト化MSLN軽鎖を得るために、ヒト化MSLN抗体軽鎖可変領域とヒトカッパ定常領域をPCRによって融合させ、完全長のヒト化MSLN重鎖を得るためにヒト化MSLN重鎖可変領域とIgG定常領域をPCRによって融合させた。様々な軽鎖および重鎖を一緒にして発現させ、精製したヒト化抗体をELISA結合親和性によってヒト−マウスキメラ抗体と比較し、候補ヒト化抗体(RC88抗体と称する)をスクリーニングによって得た。
【0086】
以下の表3は、RC88抗体軽鎖および重鎖のCDRアミノ酸配列を示す。
【0087】
【表3】
【0088】
RC88抗体重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号7):
【0089】
【化10】
【0090】
RC88抗体軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号8):
【0091】
【化11】
【0092】
RC88抗体軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を配列9(配列番号9)および配列10(配列番号10)で記載する。
【0093】
RC88抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号9):
【0094】
【化12】
【0095】
RC88抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号10):
【0096】
【化13】
【0097】
実施例2:抗体薬物コンジュゲート(ADC)の調製
実施例2a:リンカー−薬物コンジュゲートの調製
【0098】
【化14】
【0099】
(1)化合物1(Py−MAA−Val−Cit−PAB−OH)の合成
化合物Py−MAA(1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン−メルカプト酢酸、10.00g、29.3mmol)をDMF(200mL)に溶解し、HATU(16.73g、44.0mmol)、Val−Cit−PAB−OH(9.20g、23.4mmol)、DIPEA(15.32ml、87.9mmol)を添加し、室温で24時間撹拌し、反応の進行をTLCによってモニターした。反応が完了した後、溶媒を減圧下でロータリーエバポレーターによって蒸発させ、粗生成物を分取高速液体クロマトグラフィーによって精製し、得られた溶液を減圧下でロータリーエバポレーターによって蒸発させ、化合物1(6.67g、32.4%、白色固形粉末)を得た。
【0100】
(2)化合物2(Py−MAA−Val−Cit−PAB−PNP)の合成
化合物1(7.02g、10.0mmol)をDMF(200mL)に溶解し、NPC(ジ(p−ニトロフェニル)カーボネート、4.56g、15.0mmol)およびDIPEA(2.09mL、12mmol)を添加し、反応は室温で5時間実施し、反応の進行をTLCによってモニターした。反応が完了した後、反応混合物を石油エーテル(1500mL)に注ぎ、撹拌し、濾過して、得られた濾過ケークを石油エーテル(150mL×3)で洗浄し、吸引によって乾燥し、灰白色の固形粉末(6.57g、75.7%)を得た。
【0101】
(3)化合物3(Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE)の合成
化合物2(1.74g、2.2mmol)をDMF20mLに溶解し、MMAE(1.44g、2.0mmol)、HOBt(0.27g、2.0mmol)、DIPEA(0.70mL、4.0mmol)およびピリジン(4mL)を窒素ガスの保護下で添加した。室温で24時間撹拌しながら、反応の進行をTLCによってモニターした。反応が完了した後、精製は分取高速クロマトグラフィーによって実施し、得られた溶液を減圧下でロータリーエバポレーターによって蒸発させ、化合物3(白色固形粉末、1.35g、46.7%)を得た。LC−MS m/z(ES+)、1446.35(M+H)+、IR(3334.32cm−1、2965.9cm−1、1652.70cm−1、1538.92cm−1、1436.71cm−1)。
【0102】
(4)化合物4(Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAD)の合成
化合物2(0.87g、1.1mmol)をDMF10mLに溶解し、MMAD(0.77g、1.0mmol)、HOBt(0.14g、1.0mmol)、DIPEA(0.35mL、2.0mmol)およびピリジン(2mL)を窒素ガスの保護下で添加した。室温で24時間撹拌しながら、反応の進行をTLCによってモニターした。反応が完了した後、精製は分取高速クロマトグラフィーによって実施し、得られた溶液を減圧下でロータリーエバポレーターによって蒸発させ、化合物4(白色固形粉末、0.65g、43.5%)を得た。LC−MS m/z(ES+)、1499.76(M+H)+。
【0103】
(5)化合物6(Mc−Val−Cit−PAB−PNP)の合成
化合物5(Mc−Val−Cit−PAB、4.58g、8.0mmol)をDMF(100mL)に溶解し、NPC(ジ(p−ニトロフェニル)カーボネート、3.65g、12.0mmol)およびDIPEA(1.70mL、9.6mmol)を添加し、室温で5時間反応させ、反応の進行をTLCによってモニターした。反応が完了した後、反応混合物を石油エーテル(1000mL)に注ぎ、撹拌して濾過して、得られた濾過ケークを石油エーテル(60mL×3)で洗浄し、吸引によって乾燥し、灰白色の固形粉末(5.04g、85.2%)を得た。
【0104】
(6)化合物7(Mc−Val−Cit−PAB−MMAE)の合成
化合物6(1.19g、1.6mmol)をDMF12mLに溶解し、MMAE(1.08g、1.5mmol)、HOBt(0.21g、1.5mmol)、DIPEA(0.55mL、3.0mmol)およびピリジン(2.5mL)を窒素ガスの保護下で添加した。室温で24時間撹拌しながら、反応の進行をTLCによってモニターした。反応が完了した後、精製は分取高速クロマトグラフィーによって実施し、得られた溶液を減圧下でロータリーエバポレーターによって蒸発させ、化合物7(白色固形粉末、0.891g、45.1%)を得た。LC−MS m/z(ES+)、1316.18(M+H)+。
【0105】
(7)化合物8(Mc−Val−Cit−PAB−MMAD)の合成
化合物6(0.74g、1.1mmol)をDMF10mLに溶解し、MMAD(0.77g、1.0mmol)、HOBt(0.14g、1.0mmol)、DIPEA(0.35mL、2.0mmol)およびピリジン(2mL)を窒素ガスの保護下で添加した。室温で24時間撹拌しながら、反応の進行をTLCによってモニターした。反応が完了した後、精製は分取高速クロマトグラフィーによって実施し、得られた溶液を減圧下でロータリーエバポレーターによって蒸発させ、化合物8(白色固形粉末、0.59g、42.8%)を得た。LC−MS m/z(ES+)、1369.38(M+H)+。
【0106】
実施例2b:抗体薬物コンジュゲートの調製
【0107】
【化15】
【0108】
RC88抗体10mg/mL、DTPA(ジエチレントリアミンペンタ酢酸)10mmol/LおよびTCEP(トリス−2−カルボキシエチル−ホスフィン)5mmol/Lの5モル倍をPCR試験管に添加し、25℃で2時間撹拌し、その後、0℃で25%DMSO(ジメチルスルホキシド)および薬物(化合物3、4、7または8)5mmol/Lの5モル倍を添加し、25℃で10時間撹拌した。反応が完了した後で、精製して残存する未反応薬物およびDMSOなどの遊離低分子を除去するためにPBS緩衝液による3回の遠心分離によって限外濾過を実施して、カップリングはSDS−PAGE電気泳動法および疎水性高速液体クロマトグラフィー(HIC−HPLC)によって検出した。RC88−PY−MAA−Val−Cit−PAB−MMAEおよびRC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAEは、還元型SDS−PAGEによって特徴づけ、この実験ではNovex’s NuPAGEの予め作製されたゲルを使用し、各試料の全試料体積は10μLで、結果は図1に示した。RC88−PY−MAA−Val−Cit−PAB−MMAEについては、その架橋リンカーは還元されたジスルフィド結合を共有結合によって再度連結するので、異なるバンドがあり、150kDaは完全な抗体(LHHL)であり、125kDaは1つの軽鎖がカップリングしていないことを示し(LHH)、100kDaは2つの重鎖がカップリングしており(HH)、75kDaは1つの軽鎖および1つの重鎖がカップリングしており(LH)、50kDaおよび25kDaはそれぞれ重鎖および軽鎖であった。RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAEについては、架橋リンカーは存在せず、ジスルフィド結合は2つのスルフヒドリル基に還元されており、その後2つのリンカー−毒素それぞれにカップリングし、したがって還元型SDS−PAGEは50kDaおよび25kDaの2つのバンドのみを示した。RC88−PY−MAA−Val−Cit−PAB−MMAEおよびRC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAEのカップリングは、疎水性高速液体クロマトグラフィー(HIC−HPLC)によって検出され、結果は図2Aおよび図2Bに示されており、結果はDAR値がそれぞれ、3.95(RC88−PY−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE)および3.9(RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAE)であることを示した。
【0109】
実施例3:MSLNを高発現するOval−Citar−3細胞の構築
良好に増殖したOval−Citar−3細胞(ATCC)を6ウェルプレートに3×10/ウェルで接種し、一晩接着させた後、元の培地を廃棄して、ポリブレン(sigma)10μg/mLを含有する新鮮な培地400μLを添加し、ヒトMSLNコーディング配列を含有するレンチウイルスベクター(pRRL−cmv)600μLを適切な濃度でその間に添加し、ウェルを混合した後、培養を24時間継続した。培養終了後、新鮮な培地との置換を実施し、培養の拡大を実施し、陽性細胞はフローサイトメーターを使用して選択した。選択した陽性細胞を培養拡大のために使用し、MSLNの発現はフローサイトメーターによって分析し、MSLNを最高に発現している細胞(以後、Oval−Citar−3−MSLNと称する)をその後の実験のために選択した。
【0110】
実施例4:RC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲートおよび対応するリンカー−薬物および薬物の細胞傷害活性の検出
良好な増殖状態のOval−Citar−3−MSLN細胞を96ウェル細胞培養プレート(5×10細胞/mL、100μL/ウェル)に添加し、COインキュベーター内で37℃で一晩インキュベートした。RC88抗体、RC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE、RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAD、RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAE、RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAD)および対応するリンカー−薬物コンジュゲート(Py−Val−Cit−PAB−MMAE、Py−Val−Cit−PAB−MMAD、Mc−Val−Cit−PAB−MMAE、Mc−Val−Cit−PAB−MMAD)、薬物(MMAE、MMAD)、PTX(パクリタキセル)を完全培地で以下の濃度に希釈した:RC88抗体、RC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE、RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAD、RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAE、RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAD)については、最終濃度は0.32、1.6、8、16、32、64、128、640、3200ng/mLであり、リンカー−薬物コンジュゲート(Py−Val−Cit−PAB−MMAE、Py−Val−Cit−PAB−MMAD、Mc−Val−Cit−PAB−MMAE、Mc−Val−Cit−PAB−MMAD)については、最終濃度は0.4、2、10、20、40、80、160、800、4000ng/mLであり、薬物(MMAE、MMAD)については、最終濃度は0.0016、0.008、0.04、0.2、0.4、0.8、1.6、8、40ng/mLであり、PTX(パクリタキセル)については、最終濃度は0.004、0.02、0.098、0.3、0.89、2.67、8、40、200ng/mLであった。希釈後、これらを96プレート(100μL/ウェル)に添加し、ブランク群(薬物を含まない同量の培地)および3つの対照群を設定し、インキュベーションはCO恒温インキュベーター内で37℃で72時間実施した。100μL/ウェルの用量でCCK−8 10μLを含有する培地(FBSなし)を添加し、COインキュベーター内で37℃で2から4時間インキュベートし、450nmでのOD値をマイクロプレートリーダーで読み取った。阻害率は、以下の式:IR%=(ODブランク−OD薬物)×100/ODブランクによって計算した。Prismソフトウェアを使用して、阻害率をy値とし、薬物濃度をx値として使用し、4パラメータ曲線適合を実施し、最大阻害率と最小阻害率の間の値に対応する薬物濃度値を記録し(IC50値はソフトウェアによって初期設定した)、結果を図3および表4に示した。結果は、RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAD、RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAD、RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE、RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAEはOval−Citar−3−MSLNの増殖の阻害に効果的であることを示した。
【0111】
【表4】
【0112】
実施例5:MSLNを高発現するOval−Citar−3ヒト卵巣癌を有するマウスモデルにおけるRC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲートの抗腫瘍実験
良好な増殖状態のOval−Citar−3−MSLN細胞(2×10)をヌードマウス(Changzhou Cavans Laboratory Animal Co.,Ltd.、証明書番号:201611240、登録番号:SCXK(Su)2011−0003)に皮下接種し、腫瘍体積が約100〜400mmに増殖した後、動物を無作為化した。RC88抗体(2mg/kg)、RC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAD、RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE、RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAE、RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAD、2mg/kg)およびMMAE(0.0716mg/kg)をそれぞれ、1週間に1回、全部で3回投与し、陰性対照群には同体積の生理食塩水を同時に投与した。結果を図4、5および6に示す。
【0113】
結果は、RC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲートは腫瘍を有するマウスの体重増加に影響を及ぼさず、RC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAD、RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE、RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAE、RC88−Mc−Val−Cit−PAB−MMAD、2mg/kg)はいずれも腫瘍を有するマウスにおける異種移植に著しい阻害を示し、一方、RC88抗体はあまり抗腫瘍効果を示さなかったことを示した。
【0114】
実施例6:MSLNを高発現しているOval−Citar−3ヒト卵巣癌を有するマウスモデルにおけるRC88抗体薬物コンジュゲートの抗腫瘍実験
正常な増殖状態のOval−Citar−3−MSLN細胞(2×10)をヌードマウス(Changzhou Cavans Laboratory Animal Co.,Ltd.、証明書番号:201611240、登録番号:SCXK(Su)2011−0003)に皮下接種し、腫瘍体積が約100〜400mmに増殖した後、動物を無作為化した。RC88抗体(3mg/kg)、RC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE、3mg/kg、1.5mg/kg、0.75mg/kg)、MMAE(0.06mg/kg)、RC88抗体(3mg/kg)+MMAE(0.06mg/kg)、ヒト血清IgG−MMAE(3mg/kg)、PTX(パクリタキセル)(10mg/kg)をそれぞれ、週に1回、全部で3回(PTXは週に2回、全部で6回)投与し、陰性対照群には同量の生理食塩水を同時に投与した。結果を図7、8および9に示す。結果は、RC88抗体薬物コンジュゲートについては、3mg/kg群および1.5mg/kg群の腫瘍を有するマウスは最初の投与の7日後に腫瘍の著しい減少を示し、3mg/kg群では投与の10日後に肉眼で認められる腫瘍は示されず、1.5mg/kg群では投与の17日後に肉眼で認められる腫瘍は示されず、0.75mg/kg群では3回投与した後、腫瘍増殖は依然として比較的速いことが示され、対照(生理食塩水)群と比較して投与の21日後の腫瘍体積には統計学的差は認められず(P>0.05)、T/C>40%であったことを示した。パクリタキセル(PTX)群については、投与の21日後に2匹の腫瘍を有するマウスにおいて腫瘍は完全に排除され(CR)、腫瘍体積およびRTVは対照(生理食塩水)群とは統計学的に異なり(P<0.05)、T/C<40%であった。パクリタキセル(PTX)群とRC88抗体薬物コンジュゲート3mg/kg群および1.5mg/kg群の間には統計学的な差はなかった。RC88抗体群、MMAE群、RC88抗体+MMAE群、IgG−MMAE群および対照(生理食塩水)群の間には有意な差はなかった(P>0.05)。
【0115】
実施例7:RC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲートのMSLN陽性腫瘍細胞に対する親和性の検出
MSLN陽性腫瘍細胞に対するRC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE)の親和性を検出するためにフローサイトメーターを使用した。対数増殖期のOval−Citar−3−MSLN細胞を1.5mL EP試験管(群当たり4×10)中で1500rpmで5分間遠心分離し、PBSで徹底的に洗浄し、上清画分を廃棄し、細胞をパラホルムアルデヒド(200μL、4%)中に再懸濁させ、25℃で15分間固定し、PBSで1回洗浄し、2500rpmで3分間遠心分離し、上清画分を廃棄し、RC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲートを冷1%BSA−PBS(ウシ血清アルブミン−PBS)緩衝液で10000ng/mLから1.52ng/mLの3倍勾配に希釈し、各濃度の溶液200μLを使用して細胞を再懸濁した。ブランク対照群の細胞を直接冷1%BSA−PBSに再懸濁し、陰性対照群の細胞を1%BSAで調製したhIgG(Zhongke Chenyu)5μg/mLに再懸濁した。インキュベーションを4℃で30分間実施し、細胞を均一にインキュベートするために上下反転混合を10分毎に1回実施し、インキュベーション後、細胞を冷PBSで1回洗浄し、4℃で2500rpmで3分間遠心分離し、上清を廃棄し、冷PBSで1:200に希釈したFITC(フルオレセインイソチオシアネート)標識ヤギ抗ヒトIgG Fcγ(Jackson ImmunoResearch)200μLを各試験管に添加し、4℃で30分間インキュベートし、細胞を均一にインキュベートするために上下反転混合を10分毎に1回実施した。インキュベーション終了時、細胞を冷PBSで1回洗浄し、4℃で2500rpmで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、細胞をPBS400μLに再懸濁し、検出のためにフローサイトメーター(BD Calibur)に移し、結果を図10に示した。結果は、RC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE)の両方がMSLN陽性腫瘍細胞に対して、それぞれEC50値153.5ng/mLおよび251.4ng/mLで強い結合親和性を有することを示した。
【0116】
実施例8:RC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲートのMSLN陽性腫瘍細胞への結合活性の検出
MSLN陽性腫瘍細胞へのRC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE)の結合活性をELISA法によって検出した。対数増殖期のOval−Citar−3−MSLN細胞を96ウェル細胞培養プレート(4×10細胞/mL、100μL/ウェル)に添加し、COインキュベーター内で37℃で一晩インキュベートし、上清画分を廃棄し、プレートを0.05%PBST緩衝液(250μL/ウェル)で3回洗浄し、4%パラホルムアルデヒド100μLをウェル毎に添加し、25℃で30分間固定し、プレートを0.05%PBST緩衝液(250μL/ウェル)で3回洗浄し、各ウェルに3%BAS−PBST(ウシ血清アルブミン−PBST)250μLを添加し、室温で2時間インキュベートした後、プレートを0.05%PBST緩衝液(250μL/ウェル)で3回洗浄し、試料を添加し、1)結合曲線:RC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲートを1%BAS−PBST緩衝液で3000ng/mLから0.05ng/mLの3倍勾配に希釈し、次に96ウェルプレート(100μL/ウェル)に添加した、2)競合曲線:組換えヒトMSLNタンパク質(Yiqiao Shenzhou)を1%BAS−PBSTで10000ng/mLから0.51ng/mLに希釈し、RC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲートを20ng/mLに希釈し、次に同体積のMSLNタンパク質希釈液と混合し、96ウェルプレートに100μL/ウェルで添加し、25℃で1時間インキュベートした後、プレートを3回洗浄し、各ウェルに1%BAS−PBSTで希釈したHRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)標識ヤギ抗ヒトIgG Fc(Bethyl)(1:2000)を添加し、25℃で1時間インキュベートした後、プレートを3回洗浄し、暗所で5〜10分間発色させるためにTMB発色キット(Kangwei Century)を使用し、停止のために硫酸2Mを使用し、プレートをマイクロプレートリーダーを用いて読み取り、結果を図11に示した。結果は、RC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲートの両方がMSLN陽性腫瘍細胞に強く結合し、RC88抗体薬物コンジュゲートがRC88抗体と比較してわずかに減少していることを示したが、有意な差はなく、それらのEC50値はそれぞれ11.0±0.81ng/mLおよび19.7±5.80ng/mLであることを示した。組換えヒトMSLNタンパク質の競合実験は、RC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲートがOval−Citar−3−MSLN細胞の表面のMSLNに特異的に結合することを示した。
【0117】
実施例9:RC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲートおよびCA125のMSLNへの競合結合
MSLNに対するRC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲート(RC88−Py−MAA−Val−Cit−PAB−MMAE)およびCA125の競合結合能力をELISAによって決定した。ELISAプレートは、組換えタンパク質MSLN(Yiqiao Shenzhou、200ng/mL)でコーティングした。試料添加:RC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲートは、20μg/mL(50μL/ウェル)から10点に達するまで、1%BAS−PBST(ウシ血清アルブミン−PBST)緩衝液で希釈し、組換えタンパク質CA125(hisタグ、R&D)は1%BAS−PBST緩衝液で200ng/mL(50μL/ウェル)まで希釈し、全反応系は100μL/ウェルで、2次抗体(マウス−抗hisモノクローナル抗体、R&D)は5000倍に希釈し、100μL/ウェル、TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジン)を5〜7分間発色のために使用し、次に、反応を硫酸2Mで停止させ、プレートをマイクロプレートリーダーを用いて450nmで読み取り、結果を図12に示した。結果は、組換えCA125タンパク質の組換えヒトMSLNタンパク質への結合はRC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲートの濃度の増加につれて減少することを示し、RC88抗体およびRC88抗体薬物コンジュゲートは、組換えヒトCA125タンパク質の組換えヒトMSLNタンパク質への結合を遮断することができることを示唆している。
【0118】
上記の説明は、好ましい実施形態を企図しており、例示するだけのものであり、本発明を実施するために必要な性質の組み合わせを制限するものではない。提供した見出しは、本発明の様々な実施形態を制限することを意味するものではない。「含む(including)」、「含む(comprising)」および「包含する(encompassing)」などの用語は、制限を意味するものではない。さらに、特に記載しない限り、数字による修飾がないときには複数の形態が含まれ、語句「または」は「および/または」を意味する。本明細書で特に定義しない限り、本明細書で使用した全ての技術用語および科学用語は、当業者によって通常理解されている意味と同じ意味を有する。
【0119】
本出願で言及した出版物および特許は全て、本明細書では参考として組み込まれている。本発明で記載した方法および組成物の数多くの改変および変更が当業者には明らかであろう。本発明は、特定の好ましい実施形態によって説明されているが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。実際に、本発明を実施するために記載された様式の当業者には明らかな多くの変更は、添付の特許の範囲内に含まれることを企図する。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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【国際調査報告】