(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-523897(P2021-523897A)
(43)【公表日】2021年9月9日
(54)【発明の名称】フェニルアミノプロピオン酸ナトリウム誘導体、その製造方法及び応用
(51)【国際特許分類】
C07D 209/86 20060101AFI20210813BHJP
A61K 31/403 20060101ALN20210813BHJP
A61P 3/06 20060101ALN20210813BHJP
A61P 3/10 20060101ALN20210813BHJP
A61P 3/04 20060101ALN20210813BHJP
A61P 9/12 20060101ALN20210813BHJP
A61P 9/10 20060101ALN20210813BHJP
【FI】
C07D209/86
A61K31/403
A61P3/06
A61P3/10
A61P3/04
A61P9/12
A61P9/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-562699(P2020-562699)
(86)(22)【出願日】2019年4月29日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月6日
(86)【国際出願番号】CN2019084921
(87)【国際公開番号】WO2019214482
(87)【国際公開日】20191114
(31)【優先権主張番号】201810437901.5
(32)【優先日】2018年5月9日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519108051
【氏名又は名称】シンセン チップスクリーン バイオサイエンセズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルー,シエンピン
(72)【発明者】
【氏名】リー,チーピン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シャンウィ
(72)【発明者】
【氏名】カオ,ウェイジュン
(72)【発明者】
【氏名】デン,ジンユゥ
【テーマコード(参考)】
4C086
4C204
【Fターム(参考)】
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC12
4C086GA13
4C086NA20
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZA70
4C086ZC33
4C086ZC35
4C086ZC41
4C086ZC78
4C204AB14
4C204BB01
4C204DB40
4C204EB01
4C204FB17
4C204GB01
(57)【要約】
本発明は、フェニルアミノプロピオン酸ナトリウム誘導体、その製造方法及び応用を開示している。具体的には、3−(4−(2−(9H−カルバゾール−9−イル)エトキシ)フェニル)−2−((2−(4−(4−(2−カルボン酸ナトリウム−2−((2−(4−フルオロベンゾイル)フェニル)アミノ)エチル)フェノキシ)ベンゾイル)フェニル)アミノ)プロピオン酸ナトリウム、その調製方法、及びチグリタザール(Chiglitazar)又はその誘導体の原薬又は製剤の品質確保のための用途を開示している。特に、その化合物は、チグリタザール又はそのナトリウム塩の医薬品における不純物又は関連物質の検出ための参照品又は標準品として使用されることができる。
【化17】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【請求項2】
式(f)で表される化合物を水酸化ナトリウムと反応させることを含む、請求項1に記載の式(I)で表される化合物の製造方法。
【化10】
【請求項3】
式(f)で表される化合物は、式(e)で表される化合物の酸性化により得られる、請求項2に記載の式(I)で表される化合物の製造方法。
【化11】
【請求項4】
式(e)で表される化合物は、式(d)化合物を水酸化リチウムと反応させることにより得られる、請求項3に記載の式(I)で表される化合物の製造方法。
【化12】
【請求項5】
式(d)で表される化合物は、式(c)で表される化合物の酸性化により得られる、請求項4に記載の式(I)で表される化合物の製造方法。
【化13】
【請求項6】
式(c)で表される化合物は、式(a)で表される化合物と式(b)で表される化合物とを反応させることにより得られる、請求項5に記載の式(I)で表される化合物の製造方法。
【化14】
【請求項7】
チグリタザール又はその誘導体の原薬又は製剤の品質確保のための、請求項1に記載の式(I)で表される化合物の用途。
【請求項8】
前記式(I)で表される化合物は、チグリタザール又はその誘導体の医薬品における不純物又は関連物質の検出ための参照品又は標準品として使用される、請求項7に記載の用途。
【請求項9】
式(I)で表される化合物を参照品又は標準品として使用することを含む、チグリタザール又はその誘導体の医薬品における不純物又は関連物質の含有量の検出方法。
【化15】
【請求項10】
HPLC法である検出方法において、式(I)で表される化合物が外部標準物質として使用され、測定条件は、カラム:C18カラム、移動相:メタノール−水−テトラヒドロフラン−酢酸40:30:30:0.5、検出波長:236nmである、請求項9に記載の検出方法。
【請求項11】
不純物又は関連物質の含有量の検出又は制御するために、式(I)で表される化合物を使用することを含む、チグリタザール又はその誘導体の合成プロセス中の品質確保方法。
【化16】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[相互参照]
本出願は、2018年5月9日に中国特許庁へ提出された、発明の名称が「フェニルアミノプロピオン酸ナトリウム誘導体、その製造方法及び応用」である中国特許出願201810437901.5に基づき優先権を主張し、その全内容は、援用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、化学的医薬品の製造分野に属し、具体的には、フェニルアミノプロピオン酸ナトリウム誘導体に関し、本発明は、さらに、前記フェニルアミノプロピオン酸ナトリウム誘導体の製造方法、及びチグリタザール(Chiglitazar)又はその誘導体の医薬品のうちの原薬又は製剤の品質確保のためのその用途に関し、特に、前記フェニルアミノプロピオン酸ナトリウム誘導体は、チグリタザール又はその塩(例えば、ナトリウム塩)の原薬又は製剤における不純物又は関連物質検出のための参照品又は標準品として使用される。
【背景技術】
【0003】
2−(2−(4−フルオロベンゾイル)フェニルアミノ)−3−(4−(2−(9H−カルバゾール−9−イル)エトキシ)フェニル)プロピオン酸は、一般名としてチグリタザール(Chiglitazar)であり、代謝性疾患への治療及び予防作用を持つフェニルアラニン類化合物であり、その化学構造式は、以下の通りである。
【0004】
【化1】
【0005】
中国特許出願CN03126974.5及び米国特許出願US7,268,157には、いずれもその化合物の薬理活性を開示している。チグリタザールは、PPAR−α、PPAR−γ及びPPAR−δを選択的に活性化する能力を持ち、例えば、糖尿病、高血圧、肥満、インスリン抵抗性、高トリグリセリド血症、高血糖症、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病などの代謝症候群に関連する疾患を治療するために適用できる。
【0006】
従来の技術では、中国特許出願201610855107.3及び中国特許出願201410856282.5には、チグリタザール及びそのナトリウム塩の合成方法を開示している。
中国特許出願201610855107.3には、チグリタザールの工業的製造方法を開示しており、その合成経路は、以下の通りである。
【0007】
【化2】
【0008】
その方法は、工業的製造に適用し、得られた目的の化合物は、純度が高純度である。しかしながら、チグリタザールは安定性が劣り、医薬品の制造、保管、輸送中に分解しやすく、該医薬品の安全性や有効性に深刻な影響を与えるため、より高安定性のナトリウム塩であるチグリタザールナトリウムをにする必要がある。中国特許出願201410856282.5には、チグリタザールナトリウムの製造方法を開示しており、前記方法は、以下の通りである。
【0009】
【化3】
【0010】
上記のような従来の技術に係る製造方法により、純度が99%を超えるチグリタザールナトリウムを製造することができ、そのプロセスは、安定して制御可能であり、工業的製造に適する。しかしながら、本発明者らは鋭意検討を行ったところ、HPLC分析(カラム:C
18カラム、Shim−pack VP−ODS 5μm 250L×4.6;移動相:メタノール−水−テトラヒドロフラン−酢酸が40:30:30:0.5;検出波長:236nm;流速:1.5mL/min)より明らかになるように、相対保持比が約2.4で常に未知の構造の不純物が存在し、その不純物は原料1と原料2の相対的用量比に伴って一定の範囲内で変動することを発見した。原料1と原料2の割合が1:1である場合には、その不純物の含有量は、約0.18%(ピーク面積正規化法)であり、原料1と原料2の割合が1:1.5である場合には、その不純物の含有量は、約0.06%(ピーク面積正規化法)である。その不純物の存在と構造は従来技術では開示および報告されていないため、その薬理学的および毒性学的特性も不明であり、安全な投薬にリスクをもたらす。同時に、その不純物の構造は不明であり、先行技術にはチグリタザールナトリウムの不純物情報および分離方法を開示していないため、その不純物の分離および同定を非常に困難にする。
【0011】
一方では、患者への投与の安全性を確保するために、未知の不純物の構造を確認する必要があり、他方では、チグリタザール又はチグリタザールナトリウムなどの医薬品の品質確保に用いられ、特に関連物質/不純物の検出のための参照品又は参比標準品として使用されるために、その不純物化合物の製造方法を研究し、その参照品又は参照標準品を取得する必要がある。
【発明の概要】
【0012】
従来の技術に記載の必要に基づいて、本発明の目的の1つは、従来技術のプロセスによって調製されるチグリタザール又はチグリタザールナトリウム塩などの医薬品に存在するの未知の構造化合物を開示することにある。
本発明者らは、研究により、その不純物が3−(4−(2−(9H−カルバゾール−9−イル)エトキシ)フェニル)−2−((2−(4−(4−(2−カルボン酸ナトリウム−2−((2−(4−フルオロベンゾイル)フェニル)アミノ)エチル)フェノキシ)ベンゾイル)フェニル)アミノ)プロピオン酸ナトリウムであることを見出す。その構造は、式(I)に示される。
【0014】
理論に制限されることなく、広範な試験と研究の結果、本発明者らは上記式(I)で表される化合物は以下の副反応によって引き起こされる可能性があると推測する。
【0016】
実際に、上記式(I)で表される化合物の発生は、チグリタザールナトリウムを調製するための上記の反応経路に限定されず、同様にチグリタザールの合成生成物中に存在することもできる。
【0017】
他の側面では、本発明は、上記式(I)で表される化合物を調製する方法を提供する目的とし、前記方法の例示的な合成経路は、以下の通りである。
【0019】
なお、上記の反応経路で使用される反応溶媒および塩基は、例示であるが限定ではなく、当業者は適切な変更および調整を行うことができることを指摘しておくべきである。
【0020】
例示的な実施形態において、化合物(a)を化合物(b)と縮合反応させることにより化合物(c)を得る。その反応は、触媒として炭酸セシウム、好ましくは、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを使用することができ、反応温度が80〜120℃であり、反応時間が20〜30時間であることができる。得られた粗生成物は、さらに精製することなく、そのまま次の反応に使用することができる。
化合物(c)を酸性化して化合物(d)を得る。前記酸性化は、好ましくは塩酸を用いて行われる。その反応は、好ましくは溶媒として酢酸エチル及び水を使用し、反応温度が室温であり、反応時間が4〜5時間であることができる。得られた粗生成物は、さらに精製することなく、そのまま次の反応に使用することができる。
【0021】
化合物(d)を水酸化リチウムの存在下で加水分解して化合物(e)を得る。その反応では、好ましくは溶媒としてテトラヒドロフラン及び水を使用し、反応温度が室温であり、反応時間が12〜16時間であることができる。得られた粗生成物は、さらに精製することなく、そのまま次の反応に使用することができる。
化合物(e)を酸性化して化合物(f)を得る。前記酸性化は、好ましくは塩酸を用いて行われる。その反応は、好ましくは溶媒として酢酸エチル及び水を使用し、反応温度が室温であり、反応時間が4〜5時間であることができる。例示的な実施形態において、得られた粗生成物は、セミ分取HPLC用カラムにより単離され(カラム:YMC−Pack ODS−AQ 5μm 250L×20;移動相:メタノール−水−テトラヒドロフラン−氷酢酸 48:22:30:0.5;検出波長:236nm;流速:8ml/min)、純度が97%を超える化合物(f)を得る。
【0022】
化合物(f)を水酸化ナトリウムで中和して式(I)で表される化合物を得る。その反応では、溶媒としてメタノールを使用し、反応温度が室温であり、反応時間が20〜40minであることができる。
他の側面では、本発明は、さらに、チグリタザール又はその誘導体の原薬又は製剤の品質確保のための式(I)で表される化合物の用途を提供する。特に、本発明は、式(I)で表される化合物がチグリタザール又はチグリタザールナトリウムの医薬品における不純物又は関連物質の検出のための参照品又は標準品となる用途を提供する。
それに対応して、本発明は、本発明に係る式(I)で表される化合物を参照品又は標準品として不純物又は関連物質の検出ために使用することを含む、チグリタザール又はその誘導体の原薬又は製剤の品質確保方法を提供する。
【0023】
さらに、本発明は、チグリタザール又はその誘導体の医薬品における不純物又は関連物質の含有量を検出する方法を含み、前記方法は、式(I)で表される化合物を参照品又は標準品として使用することを含む。
【0025】
好ましくは、上記検出方法は、HPLC法である。
本発明に係る例示的な実施形態において、前記HPLC法の条件は、以下の通りである。
カラム:C
18カラム、Shim−pack VP−ODS 5μm 250L×4.6;
移動相:メタノール−水−テトラヒドロフラン−酢酸40:30:30:0.5;
検出波長:236nm;流速:1.5mL/min)。
式(I)で表される化合物を参照品とし、適量の式(I)で表される化合物をチグリタザールナトリウムのサンプル溶液に追加し、クロマトグラムを記録し、式(I)で表される化合物が約2.4の相対保持比を持つ不純物であることを確認する。それぞれチグリタザールナトリウムのサンプル溶液及び式(I)で表される化合物の標準品溶液のクロマトグラムを記録し、外部標準法によりチグリタザールナトリウムの医薬品における式(I)で表される化合物の含有量を計算する。
【0026】
本発明に係るHPLC検出方法は、正確で信頼できる測定結果、強い特異性、強い実用性の利点を有し、上記不純物を効果的に検出でき、且つ前記不純物とチグリタザール又はその塩との間の良好な分離を達成する。
不純物の研究は、医薬品の研究開発の重要な部分であり、医薬品の研究開発の全プロセスにわたり、医薬品の品質と安全性に直接影響する。チグリタザール又はその誘導体の品質研究に関連物質の参照品を与え、チグリタザール又はその誘導体、及びチグリタザール又はその誘導体を含む組成物(医薬品製剤を含む)の品質標準を向上させ、安全な投与に重要な指導を与えるために、本発明は、前記プロセスの不純物を研究し、合成し、同定する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施例を参照しながら本発明の内容をさらに説明するが、本発明の保護範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。本発明に記載のパーセントは、特記しない限り、全て重量パーセントである。本明細書に記載の数値範囲、例えば、計量単位又はパーセントは、いずれも明確な書面による参照を提供することを意図する。当業者は、本発明を実施する際に、本発明の教示及び原理に基づいて、この範囲外の、または単一の値とは異なる温度、濃度、数量などを使用しても、依然として所望の結果を得ることができる。
【0028】
用語及び定義:
「誘導体」:本発明では、チグリタザール誘導体はチグリタザール遊離酸だけでなく、その塩、例えば、ナトリウム塩のような無機塩、及びその水和物も含む。
「不純物」及び「相対保持比」:医薬品の純度に影響を与える任意の物質は不純物と呼ばれ、一般的に、不純物とは、製造および保管中に導入または生成された活性原薬以外の化学物質を指す。当業者は、分光法および他の物理的方法を使用して二次生成物、副産物、および追加の試薬(まとめて「不純物」と呼ばれる)を特定できるため、不純物がクロマトグラム中のピーク位置(又は薄層クロマトグラフィープレートでのスポット)に関連する(Strobel、H.A.;Heineman、 W.R.、Chemical Instrumentation:Asystematic Approach、3rd. (Wiley&Sons:New York1989))。その後、不純物はクロマトグラム中の位置によって同定でき、クロマトグラム中の位置は、サンプルをカラムに注入し、特定の成分とともに検出器を経由して流出する期間を分間で計算し、「保持時間」とも呼ばれる。この期間は、機器の使用条件や他の多くの要因に基づいて毎日変化する。不純物の正確な同定に対するこのような変化の影響を減らすために、当業者は、「相対保持比」(又はリテンションタイム、retention time)を使用して不純物を同定する。不純物の相対保持比とは、その保持時間を参照マーカー(例えば、参照品又は参照標準品)の保持時間で除した比率を指す。
【0029】
「参照品」及び「標準品」:当業者は、かなり純粋な化合物を「標準品」又は「参照品」として使用できることを知っている。参照品とは、一般的に同定、検査、含有量の測定及び検査機器の性能校正のための標準品を指すが、標準品とは、生物学的アッセイ、抗生物質、または生物学的薬物の含有量または効力の決定に使用される標準品を指す。本発明では、両者は厳密に区別されない。標準品は、定性分析に適用てもよく、未知の混合物で検出される化合物の含有量の定量測定に使用てもよい。同じ技術により既知濃度の標準品の溶液及び未知の混合物を分析する場合には、標準品は、「外部標準品」である。混合物中の化合物の含有量は、検出器の応答値を比較することによって測定することができる。同様に米国特許US6,333,198も参照してもよく、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。2つの化合物に対する検出器の感度の違いを補償する「応答係数」が予に特定されていると、標準品は混合物中の別の化合物の含有量の測定に使用されることもできる。そのために、標準品は混合物に直接添加され、「内部標準品」と称される。標準品が意図的に追加するのではなく、「標準品添加」という技術を利用して未知の混合物に検出可能な量の参照標準品が含まれる場合には、標準品を内部標準品として使用できる。
【0030】
出発原料及び実験装置は、以下の通りである。
チグリタザールナトリウム:中国特許出願201410856282.5及び201610855107.3に記載の方法に従って調製し、純度>99%である。
2−[(2−(4−フルオロベンゾイル)フェニル)アミノ]−3−(4−ヒドロキシルフェニル)プロピオン酸メチル(化合物(b)):北京楽威泰克医薬科技有限公司製、純度>96%。
高速液体クロマトグラフィー:機器:UltiMate3000;カラム:C
18カラ、Shim−pack VP−ODS 5μm 250L×4.6;検出器:VWD−3100。
セミ分取HPLC:機器:UltiMate3000;カラム:YMC−Pack ODS−AQ 5μm 250L×20;検出器:VWD−3100。
核磁気共鳴:機器:Varian INOVA 500;溶媒:DMSO−d
6。
高分解能質量分析:機器:VG ZAB−HSガスクロマトグラフィー質量分析計;検出方法:高速原子衝撃(FAB)。
【0031】
実施例1:式(I)化合物の単離、調製及び同定
【0033】
1.単離
0.5gのチグリタザールナトリウム(中国特許出願201410856282.5及び201610855107.3に記載の方法に従って調製される)をセミ分取HPLC用カラムにより単離し(カラム:YMC−Pack ODS−AQ 5μm 250L×20;移動相:メタノール−水−テトラヒドロフラン−冰酢酸 48:22:30:0.5;検出波長:236nm;流速:8ml/min)、30〜42minの溶離液を収集し、1mol/L炭酸水素ナトリウム水溶液でpH7に中和した。上記単離操作を40回繰り返し、毎回中和した液体を合わせ、真空で濃縮して有機溶媒を除去し、1mol/Lの希塩酸でpH5〜6に中和し、ろ過し、水で洗浄し、固体を収集し、室温で24h真空乾燥して化合物(f)5mgを得、純度(HPLC)が97.8%である。LC−MS (m/z) 933 (M+1)。
【0034】
反応フラスに化合物(f)5mg(0.0054mmol)及びメタノール1mLを順に加え、撹拌して溶解させた。水酸化ナトリウム0.43mg(0.011mmol)をメタノール0.5mLに溶解させ、上記溶液中に滴下し、室温で30min撹拌した。反応液を無水ジエチルエーテル15mLに滴下し、ろ過し、60℃で8h真空乾燥して式(I)で表される化合物5mgを得、純度(HPLC)が98.4%である。
構造同定:
HRMS(M
++1)(C
58H
45N
3O
8FN
2)計算値(%):976.2986;実測値(%):976.2992。
1H NMR (DMSO−d
6) δ 2.87 (dd, 1H, CH
2の1つ),3.02 (dd, 1H, CH
2の1つ),3.05 (dd, 1H, CH
2の1つ),3.22 (dd, 1H, CH
2の1つ),3.91 (m, 1H, CH),4.06 (m, 1H, CH),4.24 (t, 2H, CH
2),4.71 (t, 2H, CH
2),6.40 (m, 2H, Ar−H),6.58 (d, 2H, Ar−H),6.65 (d, 1H, Ar−H),6.69 (d, 1H, Ar−H),6.90 (d, 4H, Ar−H),7.00 (d, 2H, Ar−H),7.17 (t, 2H, Ar−H),7.27 (m, 8H, Ar−H),7.42 (m, 2H, Ar−H),7.47 (m, 2H, Ar−H),7.57 (m, 2H, Ar−H),7.62 (d, 2H, Ar−H),8.11 (d, 2H, Ar−H),8.60 (d, 1H, NH),8.81 (dd, 1H, NH)。
【0035】
2.調製
反応フラスにN,N−ジメチルホルムアミド400mL、2−(2−(4−フルオロベンゾイル)フェニルアミノ)−3−(4−(2−(9H−カルバゾール−9−イル)エトキシ)フェニル)プロピオン酸ナトリウム(即ち、化合物(a))23.76g(40mmol)、2−[(2−(4−フルオロベンゾイル)フェニル)アミノ]−3−(4−ヒドロキシルフェニル)プロピオン酸メチル(即ち、化合物(b))19.65g(50mmol)及び炭酸セシウム16.25g(50mmol)を順に加え、120℃で25h反応させ、ろ過し、濾液を飽和塩化ナトリウム水溶液4000mLに加え、ろ過し、水で洗浄し、固体を収集し、得られた固体を真空乾燥して化合物(c)の粗生成物を得、純度(HPLC)が12.2%である。LC−MS (m/z) 969 (M+1)。得られた生成物は、さらに精製することなく、そのまま次の反応に使用した。
反応フラスに酢酸エチル400mL及び上記化合物(c)を順に加え、30min撹拌し、水230mLを加え、3mol/L希塩酸150mLを滴下し、4h撹拌し、有機相を分離し、真空下で濃縮して化合物(d)の粗生成物を得、得られた生成物は、さらに精製することなく、そのまま次の反応に使用した。
【0036】
上記化合物(d)をテトラヒドロフラン350mLに溶解させ、12mol/L水酸化リチウム水溶液48mLを加え、室温で14h撹拌して反応させ、有機相を分離し、真空下で濃縮して化合物(e)の粗生成物を得、得られた生成物は、さらに精製することなく、そのまま次の反応に使用した。
反応フラスに酢酸エチル480mL及び上記化合物(e)を順に加え、30min撹拌し、水230mLを加え、3mol/L希塩酸150mLを滴下し、4h撹拌し、有機相を分離し、真空下で濃縮して化合物(f)の粗生成物を得、純度(HPLC)が18.9%である。LC−MS (m/z) 933 (M+1)。
化合物(d)の粗生成物0.5gをセミ分取HPLC用カラムにより単離し(カラム:YMC−Pack ODS−AQ 5μm 250L×20;移動相:メタノール−水−テトラヒドロフラン−冰酢酸 48:22:30:0.5;検出波長:236nm;流速:8ml/min)、30〜42minの溶離液を収集し、1mol/L炭酸水素ナトリウム水溶液でpH7に中和した。上記単離操作を5回繰り返し、毎回中和した液体を合わせ、真空下で濃縮して有機溶媒を除去し、1mol/L希塩酸でpH5〜6に中和し、ろ過し、水で洗浄し、固体を収集し、室温で24h真空乾燥して化合物(f)230mgを得、純度(HPLC)が98.0%である。LC−MS (m/z) 933 (M+1)。
【0037】
反応フラスに化合物(f)230mg(0.247mmol)及びメタノール5mLを順に加え、撹拌して溶解させた。水酸化ナトリウム19.76mg(0.494mmol)をメタノール1mLに溶解させ、上記溶液中に滴下し、室温で30min撹拌した。反応液を無水ジエチルエーテル45mLに滴下し、ろ過し、60℃で8h真空乾燥して式(I)で表される化合物を236mgを得、純度(HPLC)が98.6%である。
構造の同定より明らかになるように、調製された化合物は上記単離により得られた化合物のHRMS及び
1HNMRのいずれにも一致することが分かった。
【0038】
実施例2:チグリタザールナトリウムの医薬品における不純物の含有量測定ための参照品としての式(I)で表される化合物の使用
一、測定条件
機器:UltiMate3000;カラム:C
18カラム、Shim−pack VP−ODS 5μm 250L×4.6;検出器:VWD−3100、移動相:メタノール−水−テトラヒドロフラン−酢酸40:30:30:0.5;検出波長:236nm;流速:1.5mL/min。
【0039】
二、測定方法
(1)チグリタザールナトリウムサンプル約10mgを正確に秤量し、100mlのメスフラスコ内に入れ、溶媒としてメタノール−水−テトラヒドロフラン(40:30:30)で溶解させて標線まで希釈し、均一に振り混ぜ、試験溶液Aとし、20μl正確に量り取り、高速液体クロマトグラフに注入し、クロマトグラムを記録した。
(2)式(I)で表される化合物約10mgを正確に秤量し、100mlメスフラスコ内に入れ、溶媒としてメタノール−水−テトラヒドロフラン(40:30:30)で溶解させて標線まで希釈し、均一に振り混ぜ、1mL正確に量り取り、100mlメスフラスコ内に入れ、溶媒としてメタノール−水−テトラヒドロフラン(40:30:30)で溶解させて標線まで希釈し、均一に振り混ぜ、試験溶液Bとし、20μl正確に量り取り、高速液体クロマトグラフに注入し、クロマトグラムを記録した。
(3)それぞれ0.5mL試験溶液A及び0.5mL試験溶液Bを量り取り、均一に振り混ぜ、試験溶液Cとし、20μl正確に量り取り、高速液体クロマトグラフに注入し、クロマトグラムを記録した。
【0040】
三、測定結果
試験溶液Aのクロマトグラムにおいて、チグリタザールナトリウムの溶出時間は15.1minであり、また、35.8minで不純物のピークがあり、相対面積が0.05%である。
試験溶液Bのクロマトグラムにおいて、式(I)で表される化合物の溶出時間は35.8minである。
試験溶液Cのクロマトグラムにおいて、チグリタザールナトリウムの溶出時間は15.1minであり、また、35.8minで不純物のピークがあり、相対面積が0.7%である。
結論:式(I)で表される化合物はチグリタザールナトリウムサンプルにおける相対保持比が約2.4の不純物であることが確認された。
【0041】
実施例3:チグリタザールナトリウムの医薬品における不純物の含有量測定ための標準品としての式(I)で表される化合物の使用
一、測定条件
機器:UltiMate3000;カラム:C
18カラム、Shim−pack VP−ODS 5μm 250L×4.6;検出器:VWD−3100、移動相:メタノール−水−テトラヒドロフラン−酢酸40:30:30:0.5;検出波長:236nm;流速:1.5mL/min。
【0042】
二、測定方法
チグリタザールナトリウムサンプルを約10mgを正確に秤量し、100mlメスフラスコ内に入れ、溶媒としてメタノール−水−テトラヒドロフラン(40:30:30)で溶解させて標線まで希釈し、均一に振り混ぜ、試験溶液とした。また、式(I)で表される化合物の標準品約10mgを正確に秤量し、100mlメスフラスコ内に入れ、溶媒としてメタノール−水−テトラヒドロフラン(40:30:30)で溶解させて標線まで希釈し、均一に振り混ぜ、1mL正確に量り取り、置于1000mlメスフラスコ中、溶媒としてメタノール−水−テトラヒドロフラン(40:30:30)で溶解させて標線まで希釈し、均一に振り混ぜ、参照品溶液とした。上記の2つの溶液をそれぞれ20μl正確に量り取り、高速液体クロマトグラフに注入し、クロマトグラムを記録した。外部標準法によりピーク面積でチグリタザールナトリウムサンプルにおける式(I)で表される化合物の含有量を計算した。
【0043】
三、測定結果
合計3バッチのチグリタザールナトリウムサンプルを測定した結果は表1に示した。
【国際調査報告】