特表2021-523930(P2021-523930A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-523930マクロライド化合物と免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-523930(P2021-523930A)
(43)【公表日】2021年9月9日
(54)【発明の名称】マクロライド化合物と免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7052 20060101AFI20210813BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20210813BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210813BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20210813BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210813BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20210813BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20210813BHJP
【FI】
   A61K31/7052
   A61P37/04
   A61P35/00
   A61P31/12
   A61P43/00 121
   A61K45/00
   A61K39/395 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】71
(21)【出願番号】特願2021-500355(P2021-500355)
(86)(22)【出願日】2019年3月25日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月16日
(86)【国際出願番号】EP2019057364
(87)【国際公開番号】WO2019180265
(87)【国際公開日】20190926
(31)【優先権主張番号】18163703.4
(32)【優先日】2018年3月23日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】18163705.9
(32)【優先日】2018年3月23日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520361896
【氏名又は名称】アイエスアール イミューン システム レギュレイション ホールディング アクチエボラグ(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビンクビスト、オーラ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB331
4C084ZC751
4C085AA14
4C085CC23
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、免疫刺激マクロライドとチェックポイント阻害剤との組み合わせを提供する。組み合わせは、相乗効果があり、ウイルス性疾患及び癌を治療する際に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクロライドが、式Iを有する前記マクロライドと免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせ:
【化1】

(式中、Xは、C=O、−NRCH−、−CHNR−、−NR(C=O)−、−(C=O)NR−、C=NOH、及びCH(OH)−から選択され、Rは、式(II)又は式(III)の糖であり:
【化2】

式中、Rは、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロアリール部分から選択され、
式中、アルキル部分は、任意選択で分岐しているC−Cアルキル基から選択され、
式中、ヘテロアルキル部分は、任意選択で分岐又は置換され、任意選択で1つ以上のヘテロ原子を含むC−Cアルキル基から選択され、
式中、シクロアルキル部分は、任意選択で置換され、任意選択で1つ以上のヘテロ原子を含むC−C環状アルキル基から選択され、
式中、アリール部分は、任意選択で置換されたC芳香環から選択され、
式中、ヘテロアリール部分は、1つ以上のヘテロ原子を含む任意選択で置換されたC−C芳香環から選択され、
式中、ヘテロ原子は、O、N、P、及びSから選択され、
式中、置換基は、独立して、アルキル、OH、F、Cl、NH、NH−アルキル、NH−アシル、S−アルキル、S−アシル、O−アルキル、及びO−アシルから選択され、
式中、アシルは、C−Cの任意選択で分岐したアシル基から選択され、
式中、Rは、H及びMeから選択され、
式中、Rは、H及びMeから選択され、
式中、Rは、H及びCR212223から選択され、
式中、R21、R22、R23、ならびにR、R、R、R、R、及びR10は、独立して、H、Me、NR1112、NO、及びOR11から選択され、
式中、式(II)のRと一緒のR23、式(II)のRと一緒のR、式(II)のRと一緒のR、及び式(II)のRと一緒のRは、独立して、各グループが接続されている炭素原子間に二重結合を残すために接合されてもよく、
式中、R22と一緒のR21、Rと一緒のR、Rと一緒のR、又はR10と一緒のRは、カルボニルで置き換えられてもよく、
式中、R11及びR12は、独立して、H及びアルキルから選択され、
式中、R13は、H、OH、及びOCHから選択され、
式中、R14は、H及びOHから選択され、
式中、R、R、R、R、R、又はR10のうちの1つは、NR1112及びNO
又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される)。
【請求項2】
マクロライドが以下から選択される、請求項1に記載の組み合わせ:
【化3-1】

【化3-2】

【化3-3】

【化3-4】

又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
マクロライドが以下である、請求項1〜2のいずれかに記載の組み合わせ:
【化4】

又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
免疫チェックポイント阻害剤が、細胞毒性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4、CD152としても知られている)、プログラム細胞死タンパク質1(PD−1、CD279としても知られている)、PD−1リガンド1(PD−L1、B7−H1及びCD274としても知られている)、PD−1リガンド2(PD−L2、B7−DC及びCD−273としても知られている)、T細胞膜タンパク質3(TIM3、HAVcr2としても知られている)、アデノシンA2a受容体(A2aR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3、CD223としても知られている)、B7−H3(CD276としても知られる)、B7−H4(B7−S1、B7X、VCTN1としても知られている)、2B4(CD244として知られている)、B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA、CD272としても知られている)、ならびにCMTM6から選択された免疫チェックポイントを標的とする、請求項1〜3のいずれかに記載の組み合わせ。
【請求項5】
免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA4阻害剤、PD−1阻害剤、PD−L1阻害剤、PD−L2阻害剤、TIM3阻害剤、A2aR阻害剤、LAG3阻害剤、B7−H3阻害剤、B7−H4阻害剤、2B4阻害剤、BTLA阻害剤、及びCMTM6阻害剤から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の組み合わせ。
【請求項6】
免疫チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、トレメリムマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、AMP−224、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、MDX−1105、IMP321、エノブリツズマブ、及びMGD009から選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の組み合わせ。
【請求項7】
免疫チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブから選択される、請求項6に記載の組み合わせ。
【請求項8】
一方の組成物が、マクロライド及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含み、他方の組成物が免疫チェックポイント阻害剤及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、2つの医薬組成物の形態の請求項1〜7のいずれかに記載の組み合わせ。
【請求項9】
2つの医薬組成物が、同じ又は異なる投与経路のために設計されている、請求項8に記載の組み合わせ。
【請求項10】
免疫刺激剤としての使用など、医学で使用するための、請求項1〜9のいずれか一項に定義される組み合わせ。
【請求項11】
癌の治療に使用するための、請求項10に記載の組み合わせ。
【請求項12】
ウイルス性疾患の治療に使用するための、請求項10に記載の組み合わせ。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載の組み合わせ及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項14】
請求項10〜12のいずれかに記載の組み合わせ及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項15】
癌の治療又は予防に使用するための医薬品キットであって、単一のパッケージで、
i)マクロライドを含む第1の組成物、
ii)免疫チェックポイント阻害剤を含む第2の組成物、及び
iii)使用説明書
を含む、医薬品キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫チェックポイント阻害剤と、免疫系を刺激することができる、イムノライドと呼ばれるマクロライドとの組み合わせに関する。本発明は、それ自体の組み合わせ、ならびに医学、特に癌の免疫療法治療及びHIVなどのウイルス性疾患の治療に使用するための組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
癌細胞は、多種多様な癌特異的抗原を引き起こす無数の遺伝子変異及び後成的変化を特徴とする。これらの抗原は、T細胞によって検出され、T細胞は、抗原を利用して前癌性及び/又は癌性細胞をそれらの正常な細胞から区別し、癌特異的免疫応答を引き出す。T細胞性免疫応答の振幅及び質は通常、免疫チェックポイントによってレギュレートされ、免疫チェックポイントは、応答の大きさをそれぞれ増加又は減少させるように作用する刺激分子及び阻害分子ならびに/又は分子経路として定義することができる。通常の生理学的条件下では、免疫チェックポイントは、自己免疫の予防及び病原性感染に起因する組織損傷からの保護に不可欠である。しかしながら、癌細胞は、免疫抵抗性を得るための方法として免疫チェックポイントタンパク質の調節不全を利用する場合がある。
【0003】
T細胞性抗腫瘍免疫応答を誘発する1つのアプローチは、「チェックポイント遮断」と称され、癌細胞によって利用される免疫抑制チェックポイントの遮断又は阻害を指す。多くの免疫チェックポイントは、リガンド−受容体相互作用によって開始されるため、これらのチェックポイントは、抗体によって遮断されるか、又は問題のリガンド及び/もしくは受容体の組換え型によって調節され得る。
【0004】
いくつかの免疫チェックポイントは、単独で又は組み合わせて、T細胞性抗腫瘍免疫応答の増強に関連している。これらとしては、細胞毒性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4、CD152としても知られている)、プログラム細胞死タンパク質1(PD−1、CD279としても知られている)、PD−1リガンド1(PD−L1、B7−H1及びCD274としても知られている)、PD−1リガンド2(PD−L2、B7−DC及びCD−273としても知られている)、T細胞膜タンパク質3(TIM3、HAVcr2としても知られている)、アデノシンA2a受容体(A2aR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3、CD223としても知られている)、及びB7−H3(CD276としても知られる)、B7−H4(B7−S1、B7X、VCTN1としても知られている)、2B4(CD244として知られている)、ならびにB及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA、CD272としても知られている)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、関連する免疫チェックポイントの他の例は、科学文献及び特許文献に見出すことができ、本発明の範囲内でもある。
【0005】
免疫チェックポイント阻害は、T細胞性抗腫瘍免疫を増強するのに有用であるが、本発明者らは、免疫チェックポイント阻害を1つ以上の補完的メカニズムと組み合わせて、T細胞活性化をさらに増強すると、さらに良好な抗腫瘍効果が提供されると想到する。この目的のために、本発明者らは、マクロライドが免疫刺激性抗癌及び免疫刺激性抗ウイルス効果を有することを認識し、これにより、本発明者らは、改善された治療計画を実現するために補完的メカニズムを利用する本発明に至った。
【0006】
CD4T細胞は、免疫応答の重要なメディエーターであり、癌患者におけるCD4T細胞の免疫能力を高める方法及び手段が当技術分野で非常に必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】マクロライドエリスロマイシンA、化合物1、化合物A、化合物B、及びEM703の構造を示す図である。
図2】T細胞及びB細胞でのCD69のアップレギュレーションを示す図である。PBMCを化合物1、化合物A、ならびに活性化対照LPS及びIFN−γで24時間処理した。初期活性化マーカーCD69の発現は、フローサイトメトリーを用いてCD4+T細胞集団(左)及びCD19+B細胞集団(右)で測定した。値は、3つのサンプルの平均蛍光強度、MFI、及びエラーバーの標準偏差を表す。
図3】T細胞及びB細胞でのHLA−A、B、Cのアップレギュレーションを示す図である。PBMCを、化合物1又はAならびに活性化対照LPS及びIFN−γで24時間処理した。HLA−A、B、Cの発現は、フローサイトメトリーを用いてCD4+T細胞集団(左)及びCD19+B細胞集団(右)で測定した。値は、3つのサンプルの平均蛍光強度、MFI、及びエラーバーの標準偏差を表す。
図4】血中単球でのCD80及びHLA−DRのアップレギュレーションを示す図である。PBMCを化合物1又はAならびに活性化対照LPS及びIFN−γで24時間処理した。CD80及びHLA−DRの発現は、フローサイトメトリーを用いて単球細胞集団で測定した。値は、3つのサンプルの平均蛍光強度、MFI、及びエラーバーの標準偏差を表す。
図5】血中単球でのCD80のアップレギュレーションを示す図である。PBMCを化合物1又はA、及び活性化対照IFN−γで24時間処理した。CD80の発現は、フローサイトメトリーを用いて単球細胞集団で測定した。値は、3つのサンプルの平均蛍光強度、MFI、及びエラーバーの標準偏差を表す。
図6】ELISAで測定した、化合物1で48時間又は1週間刺激した後のPBMCからのIL−10の産生を示す図である。
図7】増殖色素Celltrace violet(Invitrogen)及びフローサイトメトリーを用いて測定した、化合物1による6日間の刺激後のCD4 T細胞増殖を示す図である。未処理の細胞(UNT)又は化合物Aを対照として使用した。
図8】フローサイトメトリーを用いて測定した、化合物1とのインキュベーション後のCMV特異的CD8 T細胞上のIL−7受容体α(CD127)のアップレギュレーションを示す図である。
図9】化合物1又はAの存在下又は非存在下でCMVペプチドを用いて5日間成長させたPBMC(CMV+ドナーから)からのインターフェロン−γ分泌(サイトメトリービーズアッセイで測定)を示す図である。
図10】示された化合物で48時間刺激されたマクロファージからのインターフェロン−γ分泌(サイトメトリービーズアッセイで測定)を示す図である。
図11】指定された化合物で48時間刺激されたPBMC又はマクロファージからのケモカインRANTES分泌(サイトメトリービーズアッセイで測定)を示す図である。
図12】示された化合物で48時間刺激されたPBMC又はマクロファージからのIL12p70分泌(サイトメトリービーズアッセイで測定)を示す図である。
図13】示された化合物で48時間刺激されたPBMC、マクロファージ、又はCD4 T細胞からのIL1b分泌(サイトメトリービーズアッセイで測定)を示す図である。
図14】示された用量の化合物1を24時間前に注射したC57bl/6マウスの血中の%CD25高細胞を示す図である。CD25の発現をフローサイトメトリーで測定した。
図15】示された化合物を24時間前に注射した3匹の個々のC57bl/6マウスの脾臓における%MHCクラスI高CD11b+細胞を示す図である。MHCクラスI及びCD11bの発現をフローサイトメトリーで測定した。
図16】抗PD−1遮断及びISR397の相乗効果を示す図である。C57BL/6JマウスにB16−F10メラノーマ細胞を皮下接種した後、抗PD−1(黒丸)、抗PD−1+ISR397(黒四角)で処理するか、又は未処理のままにした(黒三角)。3、8、11、15、18日目に測定された腫瘍体積を示す。
図17】抗PD−1遮断及びISR397の相乗効果を示す図である。C57BL/6JマウスにB16−F10メラノーマ細胞を皮下接種した後、未処理のままにした(ピンク)、抗PD−1(紫)で処理、又は抗PD−1+ISR397(赤)で処理した。実験の終了時(18日目)に測定された腫瘍体積を示す。
図18】抗PD−1遮断及びISR397の相乗効果を示す図である。C57BL/6JマウスにB16−F10メラノーマ細胞を皮下接種した後、抗PD−1(黒丸)、抗PD−1+ISR397(黒四角)で処理するか、又は未処理のままにした(黒三角)。3、8、11、15、18日目に測定された腫瘍体積を示す。
図19】ISR397(化合物1)作用の提案されたメカニズムの描写を示す図である。
【0008】
発明概論
エリスロマイシン及びアジスロマイシンなどのマクロライドは、細菌感染症の治療に長年使用されてきた。エリスロマイシンは、放線菌サッカロポリスポラ・エリスラエア(Saccharopolyspora erythraea)の発酵によって産生されるポリケチド天然物マクロライドである。アジスロマイシンは、エリスロマイシンの半合成アザリド誘導体である。エリスロマイシンなどのマクロライドの抗菌活性を説明する多くの参考文献が存在する。この抗菌メカニズムは、細菌の50S細菌リボソームのP部位に分子が結合することで実現され、これにより、tRNA結合を妨害する。
【0009】
多くの参考文献は、半合成及び生合成工学によるエリスロマイシンの類似体の生成について説明している。特に、エリスロマイシン、デソサミン/クラジノース、及びミカロースのグリコシル基を半合成で除去する方法が説明されている。エリスロマイシンアグリコンに代替のグリコシル基を追加するための生体内変化についてのさらなる方法が説明されている(例えば、Gaisser et al.2000,Schell et al.2008及びWO2001/079520を参照)。しかしながら、この公開された作業の主な焦点は、抗菌性のエリスロマイシン類似体を生成することであった。
【0010】
WO2007/004267は、第2の治療薬を含む組成物と組み合わせて、mTOR阻害剤及びアルブミンを含むナノ粒子を含む組成物を投与することによる、固形腫瘍の治療のための方法及び組成物を開示する。
【0011】
WO2016/100882は、免疫調節剤及び癌を治療する際に使用するための第2の治療薬を含む組み合わせを開示し、免疫調節剤は、免疫チェックポイント分子の阻害剤である。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、特に癌及び免疫系の刺激が有益である癌における治療を改善するためのマクロライドと免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせに関する。
【0013】
抗菌活性を欠くマクロライドによる免疫刺激活性は、これまで報告されていない。驚くべきことに、化合物1(図8)などの本発明の化合物が、免疫系のいくつかの細胞型に対して強力な免疫刺激効果を有することが今や見出された。1μMの化合物1による末梢血単核細胞(PBMC)のin vitro刺激の24〜48時間後、活性化マーカーCD69をCD4T細胞及びB細胞でアップレギュレートした(図1)。本発明者らはまた、T細胞及びB細胞での分子MHCクラスI(HLA−ABC)のアップレギュレーションを観察し(図2)、これはウイルス抗原の抗原提示への効果を示している。化合物1によるPBMC集団での単球の刺激は、共刺激分子CD80及び抗原提示分子MHCクラスII(HLA−DR)のアップレギュレーションをもたらした(図3)。マクロファージに分化した単球も、化合物1による刺激に応答してCD80のアップレギュレーションを示した(図4)。さらに、化合物1で刺激されたPBMCは、免疫抑制性サイトカインIL−10の産生が増加したサイトカインプロファイルの変化を発現し、これは特定の条件下での免疫抑制効果を示している。化合物1の免疫学的効果をさらに分析すると、フローサイトメトリーで測定した、6日間の刺激後のT細胞のサイトカイン駆動増殖プロファイルの変化が明らかになった(図6)。加えて、ウイルス特異的T細胞増殖は、化合物1の影響を受けた。サイトメガロウイルス(CMV)抗原及び化合物1の存在下で培養されたCMV感染ドナーからのPBMCは、IL−7受容体α(CD127)の発現が増加した活性化CMV特異的CD8+T細胞の表現型の変化を表示した(図7)。CD127は、T細胞の恒常性、分化、及び機能に不可欠であり、発現の低下は、HIV及び他の慢性ウイルス性疾患の重症度と相関している(Crawley et al.2012)。
【0014】
要約すると、化合物1は、抗原提示、共刺激、ならびにT細胞の活性化及び増殖に影響を与えることにより、免疫応答を特異的に活性化及び修飾する驚くべき能力を有する。本明細書に表示した例の多くにおいて、以前にSchell et al.2008(化合物20として)で公開されたグリコシル化が変化した別の関連マクロライドエリスロマイシン類似体である化合物2(図8)は、アッセイでほとんど又はまったく活性を示さなかったため、陰性対照として含まれた。
【0015】
免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用されるマクロライドは、免疫系の調節効果を最大化すると同時に、治療上望ましくない直接的な抗菌効果を最小化する。
【0016】
したがって、本発明は、マクロライドと免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせに関する。この組み合わせは、癌の予防及び治療に有用である。マクロライドと免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせは、マクロライドの免疫刺激効果とチェックポイント阻害剤によって媒介される免疫系の破壊の放出とを組み合わせることによって、増強された抗腫瘍効果をもたらすと想到される。
【0017】
そのような組み合わせに有用なマクロライドとしては、式(I)のマクロライド(本明細書の別の段落を参照)が挙げられるが、これに限定されない。対象となる具体的な免疫チェックポイント阻害剤としては、CTLA4阻害剤、PD−1阻害剤、PD−L1阻害剤、PD−L2阻害剤、LAG3阻害剤、B7−H3阻害剤、及びCMTM6阻害剤から選択される薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書の別の段落には、マクロライドと組み合わせて使用するのに適した免疫チェックポイント阻害剤の例が示されている。
【0018】
マクロライドと免疫チェックポイント阻害剤との特に興味深い組み合わせとしては、マクロライドが本明細書に記載の化合物から選択される組み合わせが挙げられる。より特に興味深いのは、本明細書に記載の化合物から選択されたマクロライドと、化合物1(ISC397)ならびにPD−1、PD−L1、及びCTLA−4の阻害剤から選択された免疫チェックポイント阻害剤を含む構造式、例えば、ISC397+PD−1、ISC397+PD−L1又はISC397+CTLA−4又はISC397+PD−1+CTLA−4又はISC397+PD−L1+CTLA−4との組み合わせである。
【0019】
マクロライドと免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせは、マクロライド、免疫チェックポイント阻害剤、及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の形態であり得るか、又は2つの医薬組成物の形態であり得、一方の組成物が、マクロライド及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含み、他方の組成物が、免疫チェックポイント阻害剤及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。後者の場合、2つの組成物は、同じ又は異なる投与経路のために設計され得る。
【0020】
あるいは、マクロライドと免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせは、マクロライド、免疫チェックポイント阻害剤、及び1つ以上の美容上許容される賦形剤を含む化粧品組成物の形態であり得る。
【0021】
マクロライドと免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせは、さらに、単一のパッケージで、以下を含む医薬品キットの形態であり得る:
i)マクロライドを含む第1の組成物、
ii)免疫チェックポイント阻害剤を含む第2の組成物、及び
iii)使用説明書。
【0022】
本発明の組み合わせの一般用途
マクロライドと免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせは、医学及び/又は化粧品に有用である。マクロライドと免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせは、医学での使用に特に関心がある。潜在的な用途には、関連する任意の癌形態の治療又は予防の方法が含まれ、この方法は、それを必要とするヒト又は動物の対象に、治療有効量のマクロライドと免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせを投与することを含む。
【0023】
本発明はまた、癌を治療又は予防するための方法であって、それを必要とするヒト又は動物の対象に、本明細書に記載の特許請求の範囲及び実施形態のいずれか1つによる治療有効量の組み合わせを投与することを含む、方法に関する。
【0024】
上記組み合わせを含む医薬組成物及び医薬品キットを含む、マクロライドと免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせは、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳/CNS腫瘍、乳癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、結腸/直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、妊娠性絨毛性疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭及び下咽頭癌、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、肝癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肺カルチノイド腫瘍、リンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、口腔及び中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽種、横紋筋肉腫、唾液腺癌、基底扁平上皮癌、メラノーマ、メルケル細胞皮膚癌、小腸癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及びウィルムス腫瘍を含むがこれらに限定されない、任意の形態の癌の予防及び治療に有用であると想到される。
【0025】
本明細書に開示される本発明の組み合わせはまた、HIV、アデノウイルス、アルファウイルス、アルボウイルス、ボルナ病、ブニヤウイルス、カリシウイルス、尖圭コンジローマ(Condyloma Acuminata)、コロナウイルス、コクサッキーウイルス、サイトメガロウイルス、デング熱ウイルス、伝染性膿瘡(Contageous Ecthyma)、エプスタイン−バーウイルス、伝染性紅斑、ハンタウイルス、ウイルス性出血熱、ウイルス性肝炎、単純ヘルペスウイルス、帯状疱疹ウイルス、感染性単核球症、インフルエンザ、ラッサ熱ウイルス、麻疹、流行性耳下腺炎、伝染性軟属腫、パラミクソウイルス、サシチョウバエ熱、ポリオーマウイルス、リフトバレー熱、風疹、遅延性疾患のウイルス、天然痘、亜急性硬化性全脳炎、腫瘍ウイルス感染、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス、狂犬病ウイルス、及び呼吸器合胞体ウイルス(Respiratory Syncitial Virus)などのウイルス剤又はウイルス性疾患に感染した患者の治療などにおいて、免疫応答刺激が有用である疾患、障害、状態、及び症状を治療するために使用され得る。特に、HIVは、本文脈において興味深いものである。
【0026】
本明細書に記載のマクロライドは、医学、医学研究、又はそのような用途のための組成物の製造に使用することができる。したがって、以下において「マクロライド」という用語が医療用途又は医薬組成物に関連して使用される場合、その用語はまた、式(I)の化合物を含むことを意図する。特に、式(I)のマクロライドの本明細書に記載の医学的用途としては、RがEtであり、Rが式(II)の糖であり、R13がOHであり、R14がHである場合、RがHであり、RがMeであり、RがHであり、RがOHであり、RがHであり、RがNR1112であり、RがHであり、R10がHであり、XがC=Oである化合物が挙げられる。
【0027】
式(I)のマクロライドは、直接的な抗菌効果を最小限に抑えるように設計されているが、免疫活性化特性に焦点を当てている。本発明の化合物を細菌の大腸菌(E.coli)、S.サリバリウス(S.salivarius)、L.カゼイ(L.casei)、及びB.ロンガム(B.longum)、又はルテウス菌(M.luteus)の培養物に添加した場合、抗菌効果は認識されないか、最小限に抑えられる。宿主細胞に影響を与える単離された免疫刺激特性を有する化合物を有することの利点は、細菌耐性の発生が回避されることである。加えて、腸内細菌叢に影響を与えるマクロライドのよく知られた副作用が回避され、ディフィシル菌(Clostridium difficile)の異常増殖が下痢及び偽膜性大腸炎(pseudomebraneous colitis)を引き起こすリスクを伴う。多くのウイルス及び癌は、免疫認識を回避するためのメカニズムを発達させ、つまり、HLA発現をダウンレギュレートして、T細胞による検出を回避する。介入の化合物のメカニズムは、感染細胞でのHLA分子の活性化及び発現の増加に依存している。HLA分子は、感染細胞の排除を可能にするT細胞の認識シグナルを提示するために、細胞内感染性病原体に由来するペプチドをロードして提示する。
【0028】
知られたマクロライドと比較した式(I)の化合物の有利な特性には、以下のうちの1つ以上が含まれ得る:
−直接的な抗菌活性の低下
−MHCクラスI刺激の改善
−免疫調節の改善
−抗原提示細胞の活性化の改善
−T細胞応答の改善
−抗腫瘍応答の改善
−抗ウイルス活性の改善
−MHCクラスII抗原提示の改善
【0029】
本発明の組み合わせを含む医薬組成物
本発明はまた、1つ以上の薬学的に許容される希釈剤又は担体と一緒に本発明の組み合わせを含む医薬組成物を提供する。
【0030】
マクロライドと免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせは、マクロライド、免疫チェックポイント阻害剤、及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の形態であり得るか、又は2つの医薬組成物の形態であり得、一方の組成物が、マクロライド及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含み、他方の組成物が免疫チェックポイント阻害剤及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。後者の場合、2つの組成物は、同じ又は異なる投与経路のために設計され得る。
【0031】
本発明の組み合わせ又はその製剤は、例えば任意の従来の経路によって投与され得るが、非限定的に、非経口的に、経口的に、局所的に、又は粘膜(頬側、舌下、経皮、膣、直腸、鼻、眼などを含む)を介して、医療装置(例えば、ステント)を介して、又は吸入によって投与され得る。治療は、単回投与又はある期間にわたる複数回投与からなり得る。
【0032】
各化合物(すなわち、それぞれマクロライド及びチェックポイント阻害剤)又は化合物を含む組成物は、別々の投与経路によって、かつ異なる製剤タイプで投与され得る。また、投与頻度は、同じでなくてもよい。
【0033】
マクロライド及びチェックポイント阻害剤の投与計画は、問題の化合物又は組成物の特性に応じて変動し得る。投与計画は、組み合わせの単回投与、又はそれぞれがマクロライド又はチェックポイント阻害剤のいずれかを含む2つの組成物からなり得る。投与計画はまた、1つ以上の期間にわたる複数回の投与であり得る。投与は、特定の用途、治療される疾患、ならびに治療される患者の体調及び特徴(性別、体重、及び年齢など)に応じて、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、頻度を減らす、又は頻度を増やしてもよい。治療は、例えば、滴下剤を介した、又はデポ剤もしくは徐放性製剤を介した静脈内投与などの継続的な投与によるものであってもよい。
【0034】
本発明の組み合わせをそのまま投与することは可能であるが、それを医薬製剤として1つ以上の許容される担体と一緒に存在させることが好ましい。担体は、本発明の化合物と適合性であり、そのレシピエントに有害ではないという意味で「許容される」ものでなければならない。好適な担体の例は、以下により詳細に記載される。
【0035】
医薬組成物は、単位剤形を含む好適な剤形で都合よく提示されてもよく、薬学の分野でよく知られた方法のいずれかによって調製されてもよい。そのような方法は、本発明の化合物を1つ以上の賦形剤と会合させるステップを含む。一般に、医薬組成物は、本発明の化合物を賦形剤(複数可)と均一かつ密接に会合させ、次いで、必要に応じて、得られた組成物を例えば、タブレットに成形することによって調製される。
【0036】
本発明の組み合わせは、通常、経口又は非経口経路による通常の任意の投与経路により、活性成分を含む医薬製剤の形態で、任意選択で薬学的に許容される剤形の、無毒の有機又は無機の酸又は塩基の付加塩の形態で投与され得る。障害及び治療される患者、ならびに投与経路に応じて、組成物は、様々な用量及び/又は頻度で投与され得る。
【0037】
医薬組成物は、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならない;したがって、必要に応じて細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されるべきである。液剤、分散剤、乳剤、及び懸濁剤などの液体製剤の場合、担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、植物油、ならびにそれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒体であり得る。
【0038】
例えば、本発明の組み合わせは、香味剤もしくは着色剤を含有し得る錠剤、カプセル剤、フィルム剤、胚珠剤、エリキシル剤、液剤、乳剤、又は懸濁剤の形態で経口、口腔内、又は舌下投与され得る。
【0039】
経口投与に好適な本発明の医薬組成物は、カプセル剤、カシェ剤、又は錠剤などの個別の単位として提供されてもよく、それぞれが、所定量の活性成分を、例えば、錠剤もしくはカプセル剤の形態で、複数の単位として:粉末もしくは顆粒として;水性液体もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として;又は水中油型液体エマルジョンもしくは油中水型液体エマルジョンとして含有する。活性成分はまた、巨丸剤、舐剤、又はペースト剤として提供されてもよい。
【0040】
経口投与に好適な本発明の組み合わせの溶液又は懸濁液は、水、アルコール、ポリオールなどを含む1つ以上の溶媒、及びpH調整剤、安定剤、界面活性剤、可溶化剤、分散剤、保存剤、香料などのような1つ以上の賦形剤も含有し得る。具体例としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、分散剤、例えば、ポリソルベート80、界面活性剤、及び可溶化剤、例えば、ポリエチレングリコール、Phosal 50 PG(ホスファチジルコリン、大豆脂肪酸、エタノール、モノ/ジグリセリド、プロピレングリコール、及びアスコルビルパルミタートからなる)を含む。本発明による製剤はまた、エマルジョンの形態であってもよく、本発明の組み合わせは、水中油型エマルジョン又は油中水型エマルジョンなどのエマルジョン中に存在してもよい。油は、天然油もしくは合成油、又は任意の油様物質、例えば、大豆油もしくはベニバナ油又はそれらの組み合わせなどであり得る。
【0041】
錠剤は、微結晶セルロース、ラクトース(例えばラクトース一水和物又はラクトース無水物)、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム及びグリシン、ブチル化ヒドロキシトルエン(E321)、クロスポビドン、ヒプロメロースなどの賦形剤、デンプン(好ましくは、トウモロコシ、ポテト、又はタピオカデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、及び特定の複雑なシリカートなどの崩壊剤、ならびにポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、マクロゴール8000、スクロース、ゼラチン、及びアラビアゴムなどの造粒結合剤を含有し得る。さらに、マグネシウムステアラート、ステアリン酸、グリセリルベヘナート、及びタルクなどの滑沢剤が含まれてもよい。
【0042】
錠剤は、任意選択で1つ以上の副成分と共に圧縮又は成型することにより作製され得る。圧縮錠剤は、任意選択で結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤、又は分散剤と混合された粉末もしくは顆粒などの自由流動形態の活性成分を好適な機械で圧縮することによって調製され得る。成型錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を好適な機械で成型することによって作製され得る。錠剤は、任意選択で被覆又は刻み目を入れてもよく、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを様々な割合で使用して、その中の活性成分を徐放又は制御放出するように処方して所望の放出プロファイルを提供し得る。
【0043】
同様の種類の固体組成物もゼラチンカプセルの充填剤として用いられ得る。これに関して好ましい賦形剤としては、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖、又は高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。水性懸濁液及び/又はエリキシル剤の場合、本発明の組み合わせは、様々な甘味剤もしくは香味剤、色素、又は染料と、乳化剤及び/又は懸濁剤と、ならびに水、エタノール、プロピレングリコール、及びグリセリン、ならびにそれらの組み合わせなどの希釈剤と組み合わせ得る。
【0044】
口内への局所投与に好適な本発明の医薬組成物としては、活性成分を風味付きで、通常スクロース及びアラビアゴム又はトラガカントを含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアラビアゴムなどの不活性基剤中に活性成分を含むトローチ;ならびに活性成分を好適な液体担体中に含む洗口剤が挙げられる。
【0045】
局所投与に適した本発明の医薬組成物は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、粉末剤、溶液、ペースト剤、ゲル剤、含浸包帯剤、スプレー剤、エアゾール剤又はオイル剤、経皮装置、散粉剤などとして処方され得る。これらの組成物は、活性剤を含有する従来の方法で調製され得る。したがって、それらはまた、保存剤、薬物浸透を助けるための溶媒、クリーム又は軟膏中の皮膚軟化剤、及びローションのためのエタノール又はオレイルアルコールなどの適合する従来の担体及び添加剤を含んでもよい。そのような担体は、組成物の最大約1%〜最大約98%として存在してもよい。より通常には、それらは、組成物の最大約80%を形成する。ほんの一例として、クリーム又は軟膏は、所望の粘稠度を有するクリーム又は軟膏を製造するのに十分な量で、約5〜10重量%の化合物を含有する十分な量の親水性材料及び水を混合することによって調製される。
【0046】
経皮投与に適した本発明の医薬組成物は、レシピエントの表皮と長期間密接に接触したままでいることを意図した個別のパッチとして提示され得る。例えば、活性成分は、イオン導入法によってパッチから送達され得る。
【0047】
外部組織、例えば口及び皮膚への適用のためには、組成物は、局所用軟膏又はクリームとして適用されるのが好ましい。軟膏剤において処方される場合、活性成分は、パラフィン系軟膏基剤又は水混和性軟膏基剤と共に用いられ得る。
【0048】
あるいは、活性成分は、水中油型クリーム基剤又は油中水型基剤を用いてクリーム剤において処方され得る。
【0049】
非経口投与の場合、液体単位剤形は、活性成分及び滅菌ビヒクル、例えば、これらに限定されないが、水、アルコール、ポリオール、グリセリン、及び植物油を用いて調製され、水が好ましい。使用されるビヒクル及び濃度に応じて、活性成分は、コロイド状、懸濁状、又はビヒクル中に溶解させることができる。溶液を調製する際には、活性成分を注射用水に溶解し、好適なバイアル又はアンプルに充填して密封する前に濾過滅菌することができる。
【0050】
有利には、局所麻酔薬、保存剤、及び緩衝剤などの薬剤をビヒクルに溶解することができる。安定性を高めるために、組成物をバイアルに充填した後に凍結し、水を真空下で除去することができる。次いで、乾燥凍結乾燥粉末をバイアル中に密封し、使用の前に液体を再構成するために付随の注射用水バイアルを供給し得る。
【0051】
注射用途に好適な本発明の医薬組成物は、無菌水溶液又は分散液を含む。さらに、組成物は、そのような滅菌注射用溶液又は分散液の即時調製用の滅菌粉末の形態であり得る。全ての場合において、最終注射形態は、無菌でなければならず、容易な注射可能性のために効果的に流動性でなければならない。
【0052】
非経口懸濁液は、活性成分が溶解される代わりにビヒクルに懸濁され、滅菌が濾過によって達成できないことを除いて、溶液と実質的に同じ様式で調製される。無菌ビヒクルに懸濁する前に、活性成分をエチレンオキシドに曝露することによって滅菌することができる。有利には、活性成分の均一な分布を容易にするために界面活性剤又は湿潤剤が組成物中に含まれる。
【0053】
特に上述した成分に加えて、本発明の製剤は、問題の製剤の種類を考慮して当技術分野で従来の他の薬剤、例えば経口投与に好適な香味剤を含み得ることを理解されたい。当業者は、好適な製剤を選択する方法及びそれを調製する方法を知っている(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 18Ed又はそれ以降を参照)。当業者はまた、好適な投与経路及び投与量を選択する方法を知っている。
【0054】
当業者であれば、本発明の組み合わせの個々の投与量の最適な量及び間隔は、治療される状態の性質及び程度、投与形態、投与経路及び投与部位、ならびに治療されている特定の対象の年齢及び状態によって決定されることを認識し、医師が最終的に使用されるべき適切な投与量を決定することを認識する。この投与量は、必要に応じて何度も繰り返され得る。副作用が発生した場合、通常の臨床診療に従って、投与量及び/又は投与頻度を変更又は低減することができる。
【0055】
文脈上別段の要求がない限り、本明細書で言及される全ての%値は、%w/wである。
【0056】
本発明の組み合わせで使用するためのマクロライド
本発明の組み合わせで使用するための免疫刺激マクロライドは、式(I)のマクロライド又はその薬学的に許容される塩水和物、溶媒和物、互変異性体、鏡像異性体、又はジアステレオマーであり:
【化1】

式中、Xは、C=O、−NRCH−、−CHNR−、−NR(C=O)−、−(C=O)NR−、C=NOH、及びCH(OH)−から選択され、Rは、式(II)又は式(III)の糖であり:
【化2】

式中、Rは、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロアリール部分から選択され、
式中、アルキル部分は、任意選択で分岐しているC−Cアルキル基から選択され、
式中、ヘテロアルキル部分は、任意選択で分岐又は置換され、任意選択で1つ以上のヘテロ原子を含むC−Cアルキル基から選択され、
式中、シクロアルキル部分は、任意選択で置換され、任意選択で1つ以上のヘテロ原子を含むC−C環状アルキル基から選択され、
式中、アリール部分は、任意選択で置換されたC芳香環から選択され、
式中、ヘテロアリール部分は、1つ以上のヘテロ原子を含む任意選択で置換されたC−C芳香環から選択され、
式中、ヘテロ原子は、O、N、P、及びSから選択され、
式中、置換基は、独立して、アルキル、OH、F、Cl、NH、NH−アルキル、NH−アシル、S−アルキル、S−アシル、O−アルキル、及びO−アシルから選択され、
式中、アシルは、C−Cの任意選択で分岐したアシル基から選択され、
式中、Rは、H及びMeから選択され、
式中、Rは、H及びMeから選択され、
式中、Rは、H及びCR212223から選択され、
式中、R21、R22、R23、ならびにR、R、R、R、R、及びR10は、独立して、H、Me、NR1112、NO、及びOR11から選択され、
式中、式(II)のRと一緒のR23、式(II)のRと一緒のR、式(II)のRと一緒のR、及び式(II)のRと一緒のRは、独立して、各グループが接続されている炭素原子間に二重結合を残すために接合されてもよく、これにより、
式中、R23とRとが接合して二重結合を形成する場合、そのとき式(II)は、以下によって表すことができ:
【化3】

式中、RとRとが接合して二重結合を形成する場合、そのとき式(II)は、以下によって表すことができ:
【化4】

式中、RとRとが接合して二重結合を形成する場合、そのとき式(II)は、以下によって表すことができ:
【化5】

式中、RとRとが接合して二重結合を形成する場合、そのとき式(II)は、以下によって表すことができ:
【化6】

式中、式(III)のRと一緒のR、式(III)のRと一緒のR、及び式(III)のRと一緒のRは、独立して、結合を表すために接合して、各グループが接続されている炭素原子間に二重結合を残してもよく、これにより、
式中、RとRとが接合して二重結合を形成する場合、そのとき式(III)は、以下によって表すことができ:
【化7】

式中、RとRとが接合して二重結合を形成する場合、そのとき式(III)は、以下によって表すことができ:
【化8】

式中、RとRとが接合して二重結合を形成する場合、そのとき式(III)は、以下によって表すことができ:
【化9】

式中、R22と一緒のR21、Rと一緒のR、Rと一緒のR、又はR10と一緒のRは、カルボニルで置き換えられてもよく、
式中、R11及びR12は、独立して、H及びアルキルから選択され、
式中、R13は、H、OH、及びOCHから選択され、
式中、R14は、H及びOHから選択され、
式中、R、R、R、R、R、又はR10のうちの1つは、NR1112及びNOから選択される。
【0057】
いくつかの態様では、マクロライドは、式(i)によるが、
ただし、RがEtであり、Rが式(II)の糖であり、R13がH又はOHであり、R14がH又はOHである場合、RがHであり、RがMeであり、RがHであり、RがOHであり、RがHであり、RがNR1112であり、RがHであり、R10がHであることを条件とし、Xは、C=Oでなくてもよいが、
ただし、RがEtであり、Rが式(II)の糖であり、R13がH又はOHであり、R14がH又はOHである場合、RがHであり、RがMeであり、RがOHであり、RがHであり、RがOHであり、RがMeであり、RがHであり、R10がHであることを条件とし、Xは、C=Oでなくてもよいが、
ただし、RがEtであり、Rが式(II)の糖であり、R13がH又はOHであり、R14がH又はOHである場合、RがHであり、RがMeであり、RがOHであり、RがHであり、RがHであり、RがNR1112であり、RがHであり、R10がOHであることを条件として、Xは、C=Oでなくてもよい。
【0058】
式(I)の免疫刺激性マクロライド又はその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、互変異性体、鏡像異性体、又はジアステレオマーは、以下を有し得、
【化10】

式中、XはC=O、−NRCH−、及びCH(OH)−から選択され、Rは式(II)の糖であり:
【化11】

式中、Rは、アルキル又はシクロアルキル部分から選択され、
式中、アルキル部分は、任意選択で分岐し、独立して、任意選択でヒドロキシル化されたC−Cアルキル基から選択され、
式中、シクロアルキル部分は、C−Cの任意選択で置換された環状アルキル基から選択され、
式中、置換基は、アルキル及びOHから選択され、
式中、Rは、H及びMeから選択され、
式中、Rは、H及びMeから選択され、
式中、Rは、H及びCR212223から選択され、
式中、R21、R22、R23、ならびにR、R、R、R、R、及びR10は、独立して、H、Me、NR1112、NO、及びOR11から選択され、
式中、式(II)のRと一緒のR23、式(II)のRと一緒のR、式(II)のRと一緒のR、及び式(II)のRと一緒のRは、独立して、各グループが接続されている炭素原子間に二重結合を残すために接合されてもよく、これにより、
式中、R23とRとが接合して二重結合を形成する場合、そのとき式(II)は、以下によって表すことができ:
【化12】

式中、RとRとが接合して二重結合を形成する場合、そのとき式(II)は、以下によって表すことができ:
【化13】

式中、RとRとが接合して二重結合を形成する場合、そのとき式(II)は、以下によって表すことができ:
【化14】

式中、RとRとが接合して二重結合を形成する場合、そのとき式(II)は、以下によって表すことができ:
【化15】

式中、R22と一緒のR21、Rと一緒のR、Rと一緒のR、又はR10と一緒のRは、カルボニルで置き換えられてもよく、
式中、R11及びR12は、独立して、H及びアルキルから選択され、
式中、R13は、H、OH、及びOCHから選択され、
式中、R14は、H及びOHから選択され、
式中、R、R、R、R、R、又はR10のうちの1つは、NR1112及びNOから選択される。
【0059】
一態様では、上記のマクロライドは、式(I)によるが、
ただし、RがEtであり、Rが式(II)の糖であり、R13がH又はOHであり、R14がH又はOHである場合、RがH、RがMeであり、RがHであり、RがOHであり、RがHであり、RがNR1112であり、RがHであり、R10がHであることを条件として、Xは、C=Oでなくてもよいが、
ただし、RがEtであり、Rが式(II)の糖であり、R13がH又はOHであり、R14がH又はOHである場合、RがHであり、RがMeであり、RがOHであり、RがHであり、RがOHであり、RがMeであり、RがHであり、R10がHであることを条件として、Xは、C=Oでなくてもよいが、
ただし、RがEtであり、Rが式(II)の糖であり、R13がH又はOHであり、R14がH又はOHである場合、RがH、RがMeであり、RがOHであり、RがHであり、RがHであり、RがNR1112であり、RがHであり、R10がOHであることを条件として、Xは、C=Oでなくてもよい。
【0060】
マクロライドは、3−ヒドロキシル位置でグリコシル化する生体内変化株の培養物への式IVとのアグリコンの添加を伴う、式(I)の化合物を産生するための方法によって提供され得る。
【化16】
【0061】
マクロライドの興味深い選択は、Rが、L−ダウノサミン、L−アコサミン、L−リストサミン、D−リストサミン、4−オキソ−L−バンコサミン、L−バンコサミン、D−フォロサミン、L−アクチノサミン、3−エピ−L−バンコサミン、L−ビセニサミン、L−マイコサミン、D−マイコサミン、D−3−N−メチル−4−O−メチル−L−リストサミン、D−デソサミン、N,N−ジメチル−L−ピロロサミン、L−メゴサミン、L−ノガラミン、L−ロドサミン、D−アンゴロサミン、L−ケダロサミン、2’−N−メチル−D−フコサミン、3−N,N−ジメチル−L−エレモサミン、D−ラビドサミン、3−N,N−ジメチル−D−マイコサミン/D−ミカミノース、3−N−アセチル−D−ラビドサミン、4−O−アセチル−D−ラビドサミン、3−N−アセチル−4−O−アセチル−D−ラビドサミン、D−グルコサミン、N−アセチル−D−グルコサミン、L−デソサミン、D−アモサミン、D−ビオサミン、L−アビジノサミン、D−グロサミン、D−アロサミン、及びL−シビロサミンから選択される化合物である。
【0062】
マクロライドのさらに別の興味深い選択は、RがD−アンゴロサミン、N−デスメチルD−アンゴロサミン、N−ジデスメチルD−アンゴロサミン、N−デスメチルN−エチルD−アンゴロサミン、及びN−ジデスメチルN−ジエチルD−アンゴロサミンから選択される化合物である。
【0063】
マクロライドのさらに別の興味深い選択は、RがN−デスメチルD−アンゴロサミン、N−ジデスメチルD−アンゴロサミン、N−デスメチルN−エチルD−アンゴロサミン、及びN−ジデスメチルN−ジエチルD−アンゴロサミンから選択される化合物である。
【0064】
マクロライドのさらに別の興味深い選択は、Rが式(II)による糖である化合物である。
【0065】
マクロライドのさらに別の興味深い選択は、Rが式2による糖である化合物であり、式中、RはHであり、RはMeであり、RはHであり、RはOHであり、RはHであり、RはNR1112であり、RはHであり、R10はHである。
【0066】
マクロライドのさらに別の興味深い選択は、R11がH、Me、及びEtから選択され、R12がH、Me、及びEtから選択される化合物である。
【0067】
マクロライドのさらに別の興味深い選択は、R11がEtであり、R12がEtである化合物である。
【0068】
マクロライドのさらに別の興味深い選択は、R11がMeであり、R12がEtである化合物である。
【0069】
マクロライドのさらに別の興味深い選択は、XがC=O、−NRCH−及びCH(OH)−から選択される化合物である。
【0070】
マクロライドのさらに別の興味深い選択は、RがMe、Et、及びシクロアルキルから選択される化合物である。
【0071】
マクロライドのさらに別の興味深い選択は、RがMe及びEtから選択される化合物である。
【0072】
マクロライドのさらに別の興味深い選択は、Xが−NRCH−又はCHNR−から選択される化合物である。
【0073】
マクロライドのさらに別の興味深い選択は、R、R、R、又はRのうちの1つがNR1112である化合物である。
【0074】
マクロライドのさらに別の興味深い選択は、R21、R22、R23、ならびにR、R、R、R、R、及びR10が、独立して、H、Me、NR1112、及びOR11から選択される化合物である。
【0075】
マクロライドのさらに別の興味深い選択は、R13及びR14が、OHである化合物である。
【0076】
特に興味深いのは、式(I)のマクロライドであり、式中、RはEtであり、Rは式(II)の糖であり、R13はOHであり、R14はHであり、RはHであり、RはMeであり、RはHであり、RはOHであり、RはHであり、RはNR1112であり、RはHであり、R10はHであり、XはC=Oである。
【0077】
具体的なマクロライドとしては、以下が挙げられる:
【化17-1】

【化17-2】

【化17-3】

【化17-4】
【0078】
本明細書における例から分かるように、いくつかのマクロライドは、本明細書で定義されるような実質的な抗菌活性を持たない。
【0079】
式(I)のマクロライドのための一般的な調製方法
当業者は、式(I)のマクロライドが、知られた方法を使用して、様々なやり方で調製され得ることを認識するであろう。下記の経路は、式(I)の化合物の調製に用いることができるいくつかの方法の単なる例示である。
【0080】
生体内変化にアグリコンが必要な場合、これらには多数の方法でアクセスできる。アジスロマイシン及びエリスロマイシンは、容易に入手でき、好適な出発点と見なされる。ミカロース/クラジノース及び/又はデソサミンは、グリコシド切断などの化学的方法によって除去される。簡単に言えば、一方法では、酸で処理することによって糖を除去し得る。アミノ糖の除去を容易にするために、最初にジメチルアミンを酸化して、次いで熱分解によって除去されるN−オキシドを形成する必要がある。次いで、得られた5−O/3−O糖を、酸性分解によって除去することができる。好適な方法は、LeMahieu et al.1974及びDjokic et al.1988によって教示されている。最後に、化合物は、アミノ糖を添加する細菌株を使用して生体内変化する。
【0081】
好適なアグリコンへの別の経路は、好適なブロックされた変異体からの発酵及び単離によるものである。例えば、エリスロノリドB(3a)は、例えば、米国特許第3,127,315号(例えば、NRRL2361、NRRL2360、NRRL2359、及びNRRL2338)、Gaisser et al.2000(例えば、S.エリスラエア(S.erythraea)DM ΔBV ΔCIII)に記載されている菌株及びプロセスなどのグリコシル化でブロックされたS.エリスラエア(S.erythraea)の菌株の発酵によって生成することができる。簡単に言えば、発酵は、当技術分野で知られた方法によって行われる。典型的には、種培養が調製され、生産容器に移される。生産段階は、4日〜10日であり、生物は、好適な撹拌及び通気を伴って24℃〜30℃で成長する。次いで、抽出及び精製によって、アグリコンを単離することができる。
【0082】
本発明のアグリコン又は化合物がアミノ糖又は他の任意の第三級アミンを有し、発酵によって調製される場合、細菌ブロスを抽出し、化合物を精製する必要がある。典型的には、バクテリアブロスは、pH8〜10、理想的には9.5に調整される。次いで、ブロスを好適な有機溶媒で抽出することができる。この溶媒は、水混和性ではなく、理想的には酢酸エチル、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、又は同様の特性を有する溶媒である。ブロス及び溶媒は、理想的には、一定期間、例えば30分又は1時間、撹拌することにより混合される。次いで、相を分離し、有機抽出物を除去する。ブロスは、このようにして複数回、理想的には2〜3回抽出することができる。次いで、合わせた有機抽出物を真空中で還元することができる。次いで、残留物を弱酸性の水性溶媒に溶解又は懸濁する。典型的には、これは、塩化アンモニウム水溶液である。次いで、これを酢酸エチルなどの非水混和性有機溶媒で数回、理想的には2〜3回抽出する。得られた水層を収集し、pHをpH8〜10、理想的には9.0に調整する。次いで、得られた水層を酢酸エチルなどの非水混和性有機溶媒で数回、理想的には2〜3回抽出する。有機抽出物を合わせ、真空中で還元して、さらなる精製を必要とする標的化合物で増強された粗抽出物を得る。
【0083】
化合物精製は、クロマトグラフィー又は(再)結晶化によって行うことができ、必要な方法は、当業者によく知られている。順相シリカでクロマトグラフィーが必要であり、本発明のアグリコン又は化合物がアミノ糖又は他の第三級アミンを有する場合、そのとき移動相に塩基性修飾剤を添加することが有益である。例えば、順相シリカでのクロマトグラフィーは、添加した0〜5%の水酸化アンモニウム水溶液で溶出するためにヘキサン、酢酸エチル、メタノール系を使用することができる。理想的には、2%の水酸化アンモニウム水溶液を添加する。生体内変化に続いて、本発明の未使用のアグリコン及び化合物の両方を、好適な溶媒系を使用して同じ粗抽出物から別々に精製することができる。さらに精製が必要な場合、これは、任意選択で分取HPLCによって実施することができる。
【0084】
第一級又は第二級アミンをアルキル化するための還元的アミノ化は、当業者によく知られている。アミンを溶媒中でアルデヒド又はケトンと混合し、還元剤を添加する。次いで、水素化ホウ素ナトリウムは、アミン及びカルボニルの反応から生じるイミン又はヘミアミナールを還元することができ、例えば、アルキル化アミンが生じる。水素化ホウ素ナトリウムはまた、存在する他のカルボニル基、例えば、ケトンも還元し得る。ケトンも存在する場合、シアノ水素化ホウ素ナトリウムなどのプロトン化イミンにより特異的な還元剤を使用することが好ましいが、最適な条件を見つけるために、異なる還元剤、溶媒、温度、及び反応時間を試験する必要があるかもしれないことは、当業者には明らかであろう。
【0085】
本発明の組み合わせで使用するためのチェックポイント阻害剤
現在知られているチェックポイント阻害剤は、未だ同定されていないチェックポイント阻害剤と同様に、本発明に関連して興味深い。したがって、興味深いのは、イピリムマブ及びトレメリムマブなどのCTLA4阻害剤から選択された薬剤、又はペンブロリズマブ(MK3475)、ニボルマブ(MDX−1106)、ピジリズマブ(CT−011)、AMP−224などのPD−1阻害剤から選択された薬剤、又はアテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、MDX−1105、抗PD−1(Merck,Johnson,Roche、もしくはAstraからのクローンRMP 1−14)などのPD−L1阻害剤から選択された薬剤、又はPD−L2阻害剤から選択された薬剤、又はIMP321などのLAG3阻害剤から選択された薬剤、又はエノブリツズマブ及びMGD009などのB7−H3阻害剤から選択された薬剤、又はCMTM6から選択された薬剤である。
【0086】
特に興味深いのは、イピリムマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブから選択される免疫チェックポイント阻害剤である。
【0087】
さらに特に興味深いのは、PD−1の阻害剤から選択された免疫チェックポイント阻害剤である。
【0088】
しかしながら、免疫チェックポイント阻害剤の他の例は、科学文献及び特許文献に見出すことができ、本発明の範囲内にもある。
【0089】
定義
冠詞「a」、「an」、及び「the」は、本明細書では、冠詞の文法的対象の1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「類似体」は、1つの類似体又は複数の類似体を意味する。
【0090】
本明細書で使用される場合、「直接抗菌効果」という用語は、細菌のrRNA複合体への結合をと通して発生するエリスロマイシン及び類似体の抗菌活性を指す。この効果は、いかなる宿主の免疫系成分の存在も必要としないため、in vitro最小発育阻止濃度(MIC)アッセイ及びディスク阻害アッセイなどの標準的な抗菌アッセイで明らかである。
【0091】
本明細書で使用される場合、「実質的な抗菌活性を持たない」という用語は、本発明の化合物が、大腸菌(E.coli)、S.サリバリウス(S.salivarius)、L.カゼイ(L.casei)、及びB.ロンガム(B.longum)におけるその抗菌活性について本明細書の例13に従って試験された場合、>64μg/mlのMIC値を有することを意味するように意図される。
【0092】
本明細書で使用される場合、「免疫刺激剤」という用語は、免疫系を活性化する化合物を意味することを意図している。
【0093】
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントを標的とする」という文は、それがチェックポイントシグナル伝達を遮断することを意味するように意図される。
【0094】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、例えば、直鎖アルキルの場合は−C2n+1などの水素原子で完全に飽和された、sp3混成炭素原子のみから構成される任意の直鎖又は分枝鎖を指し、式中、nは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、ヘキシル、又はイソヘキシルなどの1〜6の範囲になり得る。本明細書で使用されるアルキルは、さらに置換され得る。
【0095】
本文脈における「ヘテロアルキル」という用語は、単独で又は組み合わせて使用される基−X−C−アルキルを示し、Cアルキルは、上記で定義された通りであり、Xは、O、S、NH、又はN−アルキルである。線状ヘテロアルキル基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、及びヘキソキシである。分岐ヘテロアルキルの例は、イソプロポキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、イソペントキシ、及びイソヘキソキシである。環状ヘテロアルキルの例は、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、及びシクロヘキシルオキシである。本明細書で使用されるヘテロアルキルは、さらに置換され得る。
【0096】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、−C2n−1の一般式を有する環状/環構造の炭素鎖を指し、式中、nは、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシルなどのような3〜6である。本明細書で使用されるシクロアルキルは、環状構造においてさらに置換され得るか、又はヘテロ原子(O、S、NH、又はN−アルキル)を含有し得る。
【0097】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、炭素環式芳香環系を含むことを意図している。アリールはまた、以下に列挙される炭素環系の部分的に水素化された誘導体を含むことを意図している。
【0098】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、フリル、チエニル、ピロリルなどの窒素、酸素、及び硫黄の中から選択される1つ以上のヘテロ原子を含有する複素環式不飽和環系を含み、以下に列挙される複素環式系の部分水素化誘導体を含むことも意図している。
【0099】
本明細書で使用される「アリール」及び「ヘテロアリール」という用語は、任意選択で非置換又は一置換、二置換、もしくは三置換され得るアリール、又は任意選択で非置換又は一置換、二置換、もしくは三置換され得るヘテロアリールを指す。「アリール」及び「ヘテロアリール」の例としては、フェニル、ビフェニル、インデニル、ナフチル(1−ナフチル、2−ナフチル)、N−ヒドロキシテトラゾリル、N−ヒドロキシトリアゾリル、N−ヒドロキシイミダゾリル、アントラセニル(1−アントラセニル、2−アントラセニル、3−アントラセニル)、フェナントレニル、フルオレニル、ペンタレニル、アズレニル、ビフェニレニル、チオフェニル(1−チエニル、2−チエニル)、フリル(1−フリル、2−フリル)、フラニル、チオフェニル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、ピラニル、ピリダジニル、ピラジニル、1,2,3−トリアジニル、1,2,4−トリアジニル、1,3,5−トリアジニル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、テトラゾリル、チアジアジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル(チアナフテニル)、インドリル、オキサジアゾリル、イソキサゾリル、キナゾリニル、フルオレニル、キサンテニル、イソインダニル、ベンズヒドリル、アクリジニル、ベンズイソキサゾリル、プリニル、キナゾリニル、キノリジニル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、フテリジニル、アゼピニル、ジアゼピニル、ピロリル(2−ピロリル)、ピラゾリル(3−ピラゾリル)、5−チオフェン−2−イル−2H−ピラゾール−3−イル、イミダゾリル(1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル)、トリアゾリル(1,2,3−トリアゾール−1−イル、1,2,3−トリアゾール−2−イル、1,2,3−トリアゾール−4−イル、1,2,4−トリアゾール−3−イル)、オキサゾリル(2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル)、チアゾリル(2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル)、ピリジル(2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル)、ピリミジニル(2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、6−ピリミジニル)、ピラジニル、ピリダジニル(3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、5−ピリダジニル)、イソキノリル(1−イソキノリル、3−イソキノリル、4−イソキノイル、5−イソキノリル、6−イソキノリル、7−イソキノリル、8−イソキノリル)、キノリル(2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、5−キノリル、6−キノリル、7−キノリル、8−キノリル)、ベンゾ[b]フラニル(2−ベンゾ[b]フラニル、3−ベンゾ[b]フラニル、4−ベンゾ[b]フラニル、5−ベンゾ[b]フラニル、6−ベンゾ[b]フラニル、7−ベンゾ[b]フラニル)、2,3−ジヒドロ−ベンゾ[b]フラニル(2−(2,3−ジヒドロ−ベンゾ[b]フラニル)、3−(2,3−ジヒドロ−ベンゾ[b]フラニル)、4−(2,3−ジヒドロ−ベンゾ[b]フラニル)、5−(2,3−ジヒドロ−ベンゾ[b]フラニル)、6−(2,3−ジヒドロ−ベンゾ[b]フラニル)、7−(2,3−ジヒドロ−ベンゾ[b]フラニル))、ベンゾ[b]チオフェニル(2−ベンゾ[b]チオフェニル、3−ベンゾ[b]チオフェニル、4−ベンゾ[b]チオフェニル、5−ベンゾ[b]チオフェニル、6−ベンゾ[b]チオフェニル、7−ベンゾ[b]チオフェニル)、2,3−ジヒドロ−ベンゾ[b]チオフェニル(2−(2,3−ジヒドロ)−ベンゾ[b]チオフェニル)、3−(2,3−ジヒドロ−ベンゾ[b]チオフェニル)、4−(2,3−ジヒドロ−ベンゾ[b]チオフェニル)、5−(2,3−ジヒドロ−ベンゾ[b]チオフェニル)、6−(2,3−ジヒドロ−ベンゾ[b]チオフェニル)、7−(2,3−ジヒドロ−ベンゾ[b]チオフェニル))、インドリル(1−インドリル、2−インドリル、3−インドリル、4−インドリル、5−インドリル、6−インドリル、7−インドリル)、インダゾリル(1−インダゾリル、2−インダゾリル、3−インダゾリル、4−インダゾリル、5−インダゾリル、6−インダゾリル、7−インダゾリル)、ベンズイミダゾリル、(1−ベンズイミダゾリル、2−ベンズイミダゾリル、4−ベンズイミダゾリル、5−ベンズイミダゾリル、6−ベンズイミダゾリル、7−ベンズイミダゾリル、8−ベンズイミダゾリル)、ベンゾオキサゾリル(1−ベンゾオキサゾリル、2−ベンゾオキサゾリル)、ベンゾチアゾリル(1−ベンゾチアゾリル、2−ベンゾチアゾリル、4−ベンゾチアゾリル、5−ベンゾチアゾリル、6−ベンゾチアゾリル、7−ベンゾチアゾリル)、カルバゾリル(1−カルバゾリル、2−カルバゾリル、3−カルバゾリル、4−カルバゾリル)が挙げられるが、これらに限定されない。部分的に水素化された誘導体の非限定的な例は、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、1,4−ジヒドロナフチル、ピロリニル、ピラゾリニル、インドリニル、オキサゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゼピニルなどである。
【0100】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機又は有機の酸又は塩基から形成される従来の塩、ならびに四級アンモニウム酸付加塩を含む。好適な酸塩のより具体的な例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ギ酸、乳酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、パルモック(palmoic)酸、マロン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸ヒドロキシナフトエ酸、ヨウ化水素酸、リンゴ酸、ステアリン酸(steroic)、タンニン酸などが挙げられる。シュウ酸などの他の酸は、それ自体は薬学的に許容されないが、本発明の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩を得る際の中間体として有用な塩の調製に有用であり得る。好適な塩基性塩のより具体的な例としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、亜鉛、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、及びプロカインの塩が挙げられる。
【0101】
本発明は、以下の非限定的な実施形態によってさらに説明される:
1.マクロライドと免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせ。
2.マクロライドが実質的な抗菌活性を持たない、実施形態1に記載の組み合わせ。
3.例13に記載の抗菌活性試験に従って試験した場合、マクロライドが>64μg/mlのMIC値を有する、実施形態2に記載の組み合わせ。
4.マクロライドが式Iを有する実施形態1〜3のいずれかによるマクロライドと免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせ:
【化18】

(式中、Xは、C=O、−NRCH−、−CHNR−、−NR(C=O)−、−(C=O)NR−、C=NOH、及びCH(OH)−から選択され、Rは、式(II)又は式(III)の糖であり:
【化19】

式中、Rは、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロアリール
部分から選択され、
式中、アルキル部分は、任意選択で分岐しているC−Cアルキル基から選択され、
式中、ヘテロアルキル部分は、任意選択で分岐又は置換され、任意選択で1つ以上のヘテロ原子を含むC−Cアルキル基から選択され、
式中、シクロアルキル部分は、任意選択で置換され、任意選択で1つ以上のヘテロ原子を含むC−C環状アルキル基から選択され、
式中、アリール部分は、任意選択で置換されたC芳香環から選択され、
式中、ヘテロアリール部分は、1つ以上のヘテロ原子を含む任意選択で置換されたC−C芳香環から選択され、
式中、ヘテロ原子は、O、N、P、及びSから選択され、
式中、置換基は、独立して、アルキル、OH、F、Cl、NH、NH−アルキル、NH−アシル、S−アルキル、S−アシル、O−アルキル、及びO−アシルから選択され、
式中、アシルは、C−Cの任意選択で分岐したアシル基から選択され、
式中、Rは、H及びMeから選択され、
式中、Rは、H及びMeから選択され、
式中、Rは、H及びCR212223から選択され、
式中、R21、R22、R23、ならびにR、R、R、R、R、及びR10は、独立して、H、Me、NR1112、NO、及びOR11から選択され、
式中、式(II)のRと一緒のR23、式(II)のRと一緒のR、式(II)のRと一緒のR、及び式(II)のRと一緒のRは、独立して、各グループが接続されている炭素原子間に二重結合を残すために接合されてもよく、
式中、R22と一緒のR21、Rと一緒のR、Rと一緒のR、又はR10と一緒のRは、カルボニルで置き換えられてもよく、
式中、R11及びR12は、独立して、H及びアルキルから選択され、
式中、R13は、H、OH、及びOCHから選択され、
式中、R14は、H及びOHから選択され、
式中、R、R、R、R、R、又はR10のうちの1つは、NR1112及びNO
又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される)。
5.マクロライドが以下から選択される、実施形態1〜4のいずれかに記載の組み合わせ:
【化20-1】

【化20-2】

【化20-3】

【化20-4】

又はそれらの薬学的に許容される塩。
6.マクロライドが、以下である、実施形態1〜5のいずれかに記載の組み合わせ:
【化21】

又はその薬学的に許容される塩。
7.免疫チェックポイント阻害剤が、細胞毒性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4、CD152としても知られている)、プログラム細胞死タンパク質1(PD−1、CD279としても知られている)、PD−1リガンド1(PD−L1、B7−H1及びCD274としても知られている)、PD−1リガンド2(PD−L2、B7−DC及びCD−273としても知られている)、T細胞膜タンパク質3(TIM3、HAVcr2としても知られている)、アデノシンA2a受容体(A2aR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3、CD223としても知られている)、B7−H3(CD276としても知られる)、B7−H4(B7−S1、B7X、VCTN1としても知られている)、2B4(CD244として知られている)、B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA、CD272としても知られている)、ならびにCMTM6から選択される免疫チェックポイントを標的とする、実施形態1〜6のいずれかに記載の組み合わせ。
8.免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA4阻害剤、PD−1阻害剤、PD−L1阻害剤、PD−L2阻害剤、TIM3阻害剤、A2aR阻害剤、LAG3阻害剤、B7−H3阻害剤、B7−H4阻害剤、2B4阻害剤、BTLA阻害剤、及びCMTM6阻害剤から選択される、実施形態1〜7のいずれかに記載の組み合わせ。
9.マクロライドが、
【化22】

又はその薬学的に許容される塩であり、
免疫チェックポイント阻害剤がPD−1阻害剤である、実施形態8に記載の組み合わせ。
10.免疫チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、トレメリムマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、AMP−224、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、MDX−1105、IMP321、エノブリツズマブ、及びMGD009から選択される、実施形態1〜9のいずれかに記載の組み合わせ。
11.免疫チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブから選択される、実施形態10に記載の組み合わせ。
12.一方の組成物が、マクロライド及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含み、他方の組成物が免疫チェックポイント阻害剤及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、2つの医薬組成物の形態の実施形態1〜11のいずれかに記載の組み合わせ。
13.2つの医薬組成物が、同じ又は異なる投与経路のために設計されている、実施形態12に記載の組み合わせ。
14.医学で使用するための実施形態1〜13のいずれか1つに定義されている組み合わせ。
15.免疫刺激剤として使用するための実施形態14に記載の組み合わせ。
16.癌の治療に使用するための実施形態14又は15のいずれかに記載の組み合わせ。
17.癌が、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳/CNS腫瘍、乳癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、結腸/直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、妊娠性絨毛性疾患、ホジキン病、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭及び下咽頭癌、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、肝癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肺カルチノイド腫瘍、リンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、口腔及び中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、網膜芽種、横紋筋肉腫、唾液腺癌、基底扁平上皮癌、メラノーマ、メルケル細胞皮膚癌、小腸癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ならびにウィルムス腫瘍から選択される、実施形態16に記載の組み合わせ。
18.ウイルス性疾患の治療に使用するための、実施形態14又は15のいずれかに記載の組み合わせ。
19.ウイルス性疾患が、HIV、アデノウイルス、アルファウイルス、アルボウイルス、ボルナ病、ブニヤウイルス、カリシウイルス、尖圭コンジローマ(Condyloma Acuminata)、コロナウイルス、コクサッキーウイルス、サイトメガロウイルス、デング熱ウイルス、伝染性膿瘡(Contageous Ecthyma)、エプスタイン−バーウイルス、伝染性紅斑、ハンタウイルス、ウイルス性出血熱、ウイルス性肝炎、単純ヘルペスウイルス、帯状疱疹ウイルス、感染性単核球症、インフルエンザ、ラッサ熱ウイルス、麻疹、流行性耳下腺炎、伝染性軟属腫、パラミクソウイルス、サシチョウバエ熱、ポリオーマウイルス、リフトバレー熱、風疹、遅延性疾患のウイルス、天然痘、亜急性硬化性全脳炎、腫瘍ウイルス感染、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス、狂犬病ウイルス、及び呼吸器合胞体ウイルス(Respiratory Syncitial Virus)から選択される、実施形態18に記載の組み合わせ。
20.実施形態1〜13のいずれかに記載の組み合わせ及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
21.実施形態14〜19のいずれかに記載の組み合わせ及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
22.癌の治療又は予防に使用するための医薬品キットであって、単一のパッケージで、
i)マクロライドを含む第1の組成物、
ii)免疫チェックポイント阻害剤を含む第2の組成物、及び
iii)使用説明書
を含む、医薬品キット。
23.マクロライドが以下から選択される、実施形態22に記載の医薬品キット:
【化23-1】

【化23-2】

又はそれらの薬学的に許容される塩。
24.マクロライドが以下である、実施形態21に記載の医薬品キット:
【化24】

又はその薬学的に許容される塩。
25.癌を治療又は予防するための方法であって、それを必要とするヒト又は動物の対象に、実施形態1〜13のいずれか1つに記載の治療有効量の組み合わせを投与することを含む、方法。
【0102】
実験的
材料
特に明記しない限り、以下の例で使用される全ての試薬は、商業的供給源から得られる。アジスロマイシンBのサプライヤーの例としては、Santa Cruz Biotechnology(テキサス州、米国)及びToronto Research Chemicals(トロント、カナダ)が挙げられる。
【0103】
抗体
抗CD80 V450、抗CD69 PE、抗HLA−DR APC−R700、抗CD127−APC、及び抗HLA−A、B、C FITCは、BD Biosciencesから購入した。T細胞増殖アッセイ用のセルトレースバイオレットは、Invitrogenから購入した。ELISA抗体は、BD Biosciencesから購入した。
【0104】
培地
25mMのHEPES、L−グルタミン、ピルビン酸ナトリウム、10%のウシ胎児血清(Gibco)、100μg/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシンを補充したRPMI−1640(Invitrogen)
【0105】
一般的な生物学的方法
免疫刺激に対する本発明の化合物の効果は、以下に記載される方法のうちの1つ以上を使用して試験され得る:
【0106】
一般的な化合物法
化合物分析−溶液中の溶解度及び安定性
【0107】
発酵ブロス及び化合物の分析
以下のようにして得られた発酵ブロスのアリコートを等量の酢酸エチルと共に30分間激しく振とうし、次いで遠心分離によって分離するか、又はすでに単離された化合物をメタノール:水(9:1、0.1mg/ml)に溶解し、次いで遠心分離により分離した。上清をLC−MS及びLC−MS/MSで分析し、40℃で加熱したLuna HPLCカラム(250×4.6mm;Phenomenex(マックルズフィールド、英国))を使用して、塩基不活性化Luna C18逆相シリカ(5ミクロンの粒径)でクロマトグラフィーを実現した。BrukerEsquireイオントラップMSに接続されたクォータナリポンプ、オートサンプラ、カラムオーブン、及びダイオードアレイ検出器で構成されるAgilent 1100HPLCシステム。
移動相A=水中0.1%のギ酸
移動相B=アセトニトリル中0.1%のギ酸
【0108】
グラジエント:T=0分、B=50%;T=4.5分、B=50%;T=7分、B=100%;T=10.5分、B=100%;T=10.75分、B=50%;T=13分、B=50%。
【0109】
化合物をLC−MS及びLC−MS/MSで同定し、LC−MS/MSで内部標準に対して定量化した。
フローサイトメトリーによるマーカー発現の分析
【0110】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、フィコール−パック密度遠心分離を用いて健康なドナーから精製した。細胞を、25mMのHEPES、L−グルタミン、ピルビン酸ナトリウム(Sigma)、10%のウシ胎児血清、100μg/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシン(Hyclone)を補充した完全RPMI−1640培地(Invitrogen)で、37℃、5%のCOで24〜72時間培養し、化合物1及び2の濃度を上げながら刺激した。次いで、細胞をPBSで洗浄し、細胞表面マーカーに特異的なモノクローナル抗体(BD Pharmingen)で染色し、BD FACS Canto IIフローサイトメーターを使用してフローサイトメトリーで分析した。全てのサンプルを2回試験した。
【0111】
サイトメガロウイルス(CMV)培養
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、フィコール−パック密度遠心分離を用いて健康なCMV陽性ドナーから精製した。PBMCをPBS中の5μMのセルトレースバイオレット(Invitrogen)で15分間標識し、次いで完全な細胞培養培地で洗浄した。標識されたPBMCを、L−グルタミン、ピルビン酸ナトリウム(Sigma)、10%のウシ胎児血清、100μg/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシン(Hyclone)を補充したAIM−V培地(Invitrogen)で、37℃、5%のCOで6〜8日間、CMV pp65タンパク質(1μgペプチド/ml、JPT)にまたがるペプチドライブラリーの存在下で培養した。細胞増殖を、BD FACS Canto IIフローサイトメーターを使用したフローサイトメトリーで評価した。
【0112】
ELISA
上清IL−10を完全RPMI培地、37℃、5%のCOで2.5μMの化合物1及び100U/mLのIL−2(Miltenyi Biotechnologies)と48時間及び7日間インキュベートした後、標準サンドイッチELISA(全てBD Biosciences製の抗体)で測定した。
【0113】
TLR2アッセイ
サンプル及び対照を、標準的なアッセイ条件を使用したInvivogenでのセルレポーターアッセイを使用して、組換えHEK−293−TLR細胞株で2回試験した。これらの細胞株は、ヒトTLR2タンパク質及び分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)であるレポーター遺伝子を機能的に過剰発現する。このレポーター遺伝子の産生は、NFkB誘導性プロモーターによって駆動される。TLRレポーター細胞株の活性化の結果は、光学密度値(OD)として示される。
【0114】
20μlの各試験品を使用して、200μlの最終反応体積でhTLR2レポーター細胞株を刺激した。サンプルを2回試験し、少なくとも2つの濃度(20μM及び10μM)を試験した。
【0115】
細胞透過性の評価(双方向)
10μMの試験品をCaco−2細胞単層の頂端(A)表面に添加し(0.3%のDMSO及び5μMのLYを含むHBSSバッファー中、37℃)、90分間のインキュベーション後に化合物の基底外側(B)区画への浸透を測定した。これはまた、能動輸送を調査するために逆方向(基底外側から頂端)で実行した。LC−MS/MSは、試験化合物及び標準対照化合物の両方のレベルを定量化するために使用される。流出比は、BからAへの透過性をAからBへの透過性で割ることによって計算した。
薬物透過性:Papp=(VA/(面積×時間))×([薬物]アクセプター/(([薬物]初期、ドナー)×希釈係数)
【0116】
代謝安定性の評価(ミクロソーム安定性アッセイ)
ミクロソームの代謝率は、以下のように試験した:
ヒト肝ミクロソームをバッファーC(0.1Mのリン酸カリウムバッファー、1.0mMのEDTA、pH7.4)で2.5mg/mLの濃度に希釈した。ミクロソーム安定性研究を、30μLの1.5μMの化合物スパイク溶液をウェルに添加することによって実施した(1.5μLの500μMスパイク溶液(10μLの10mM DMSOストック溶液を190μLのACNに入れて最終的に1μMの最終試験濃度を生成)及び18.75μLの20mg/mLの肝臓ミクロソームを479.75μLのバッファーCに入れる)。全てのサンプルを37℃で約15分間プレインキュベートした。これに続いて、穏やかに混合しながら15μLのNADPH溶液(6mM)を添加することにより反応を開始した。アリコート(40μL)を0、5、15、30、及び45分で取り出し、内部標準(135μL)を含有するACNでクエンチした。タンパク質を遠心分離(4000rpm、15分)で除去し、サンプルプレートの化合物濃度をLC−MS/MSで分析した。次いで、分析物の濃度を元々存在していた量と比較して、標準的な方法で半減期を計算した。
【0117】

例1−化合物1の調製(ISC397)
【化25】
【0118】
アジスロマイシンアグリコン(Az−AG)の調製(1a)
アジスロマイシンアグリコン(1a)は、文献(Djokic et al.1988)に記載されている方法を使用して生成した。簡単に説明すると、アジスロマイシンは、3−O及び5−O糖の酸性除去によってアジスロマイシンアグリコンに変換される。5−Oアミノ糖は、最初に酸化及び熱分解されて切断を容易にする。
【0119】
エリスロマイシンアグリコン(エリスロノリド)をグリコシル化できる生体内変化株の生成:
【0120】
S.エリスラエア(S.erythraea)18A1(pAES52)の生成
actII−ORF4 pactI/III発現系(Rowe et al.1998)と共にangAI、angAII、angCVI、ang−orf14、angMIII、angB、angMI、及びangMIIを含有する発現プラスミドであるpAES52を以下のように生成した。
【0121】
アンゴラマイシン糖生合成遺伝子を、American Type Culture Collection(マナッサス、バージニア州、米国)から得られたS.ユリサーマス(S.eurythermus)ATCC23956株のコスミドライブラリーから増幅した。生合成遺伝子クラスター配列は、EU038272、EU220288、及びEU232693として寄託した(Schell et al.2008)。
【0122】
生合成遺伝子カセットは、以前に記載されたように(Schell et al.2008、ESI)ベクターpSG144で組み立てられ、糖生合成に必要な8が得られるまで連続遺伝子を追加し、プラスミドpAES52を作成した。
【0123】
pAES52を18A1株(WO2005054265)に形質転換した。
【0124】
pAES52のS.エリスラエア(S.erythraea)18A1への形質転換
pAES52は、標準的な方法(Kieser et al.2000、Gaisser et al.1997)を使用して、プロトプラストによってS.エリスラエア(S.erythraea)18A1に形質転換した。得られた菌株をISOM−4522と指定し、2017年1月24日に受け入れ番号:NCIMB42718でNCIMBに寄託した。
【0125】
S.エリスラエア(S.erythraea)SGT2(pAES54)の生成
actII−ORF4 pactI/III発現系(Rowe et al.,1998)と共にangAI、angAII、angCVI、ang−orf14、angMIII、angB、angMI、及びangMIIを含有する発現プラスミドであるpAES54を以下のように生成した
【0126】
アンゴラマイシン糖生合成遺伝子を、American Type Culture Collection(マナッサス、バージニア州、米国)から得られたS.ユリサーマス(S.eurythermus)ATCC23956株のコスミドライブラリーから増幅した。生合成遺伝子クラスター配列は、EU038272、EU220288、及びEU232693として寄託した(Schell et al.2008)
【0127】
生合成遺伝子カセットは、以前に記載されたように(Schell et al.2008、ESI)ベクターpSG144で組み立てられ、糖生合成に必要な8が得られるまで連続遺伝子を追加し、プラスミドpAES52を作成した。
【0128】
プラスミドpAES54を、actII−ORF4 pactI/IIIプロモーター系を含有する11,541bp SpeI−NheIフラグメントをライゲートすることによって作製し、8ang遺伝子を、アプラマイシン耐性遺伝子、oriC、ストレプトマイセスに移すためのoriT、及び統合的形質転換のためのattP部位を有するphiBT1インテグラーゼを含有する、pGP9からの5,087bp XbaI−SpeIフラグメントを用いて、pAES52から切除した。(互換性のあるNheI及びXbaI部位をライゲーション中に除外した。)
【0129】
次いで、pAES54をS.エリスラエア(S.erythraea)SGT2に形質転換した(Gaisser et al.2000、WO2005054265)。
【0130】
pAES54のS.エリスラエア(S.erythraea)SGT2への形質転換
pAES54を、標準的な方法を使用して、接合によってS.エリスラエア(S.erythraea)SGT2に移した。簡単に説明すると、大腸菌ET12567 pUZ8002を標準的な手順でpAES54で形質転換し、アプラマイシン(50μg/mL)、カナマイシン(50μg/mL)、及びクロラムフェニコール(33μg/mL)選択を用いて2TYに広げた。このプレートを37℃で一晩インキュベートした。これからのコロニーを使用して、対数増殖期後期に達するまで37℃でインキュベートした新鮮な液体2TY培養物を設定した。細胞を回収し、洗浄し、S.エリスラエア(S.erythraea)SGT2の胞子と混合し、R6のプレートに広げ、28℃でインキュベートした。24時間後、これらのプレートに3mgのアプラマイシン及び2.5mgのナリジクス酸を含有する1mLの滅菌水をかぶせ、28℃でさらに5〜7日間インキュベートした。このプレート上の接合完了体を、アプラマイシン(100μg/mL)を含有するR6の新鮮なプレートに移した。
【0131】
代替生体内変化株
あるいは、BIOT−2945(Schell et al.2008)は、これがエリスロノリドにアンゴロサミンも追加するため、生体内変化株として使用してもよい。
【0132】
化合物1を調製するためのアジスロマイシンアグリコンの生体内変化
SV2培地(40mL)及び8μLチオストレプトン(25mg/mL)を含有する三角フラスコ(250mL)に、0.2mLのISOM−4522株の胞子ストックを接種し、30℃でインキュベートし、300rpmで2.5cmのスローで48時間振とうした。
【表1】
【0133】
EryPP培地(7mL)を含有する滅菌バンジド(sterile bunged)ファルコンチューブ(50mL)を調製し、抗生物質を含まないシードフラスコ(ファルコンチューブあたり0.5mL)から培養物を接種した。ファルコンを30℃でインキュベートし、300rpmで2.5cmのスローで24時間振とうした。
【表2】
【0134】
24時間後、アジスロマイシンアグリコン(DMSO中0.5mM、50μL)を各ファルコンチューブに加え、インキュベーションを300rpmで2.5cmのスローでさらに6日間続けた。
【0135】
化合物1の単離
全ブロスをpH9.5に調整し、1体積の酢酸エチルで2回抽出した。遠心分離(3,500rpm、25分)後の吸引により有機層を収集した。有機層を合わせ、真空中で還元して、化合物1を含有する褐色のガムを明らかにした。この抽出物を酢酸エチル(200ml)と塩化アンモニウム水溶液(20mlの50%濃縮溶液)とに分配した。分離後、有機層をさらなる体積(200ml)の塩化アンモニウム水溶液で抽出した。次いで、合わせた水層を水酸化ナトリウム水溶液でpH9.0に調整し、次いで1体積当量の酢酸エチルで2回抽出した。有機層を合わせ、真空中で還元して褐色の固体にした。次いで、この抽出物をシリカカラムにアプライし、以下によって段階的に(500mlロットで)溶出した:
【表3】
【0136】
化合物1は、主にF及びGにあった。これらの溶媒を合わせ、真空中で還元して、化合物1を含有する褐色の固体を得た。次いで、この物質を分取HPLC(C18 Gemini NXカラム、20mMの酢酸アンモニウム及びアセトニトリルを溶媒として用いたPhenomenex)で精製した。標的化合物を含有する画分をプールし、乾燥させた後、C18 SPEカートリッジで脱塩した。
【0137】
例2−化合物3の調製(知られた化合物−Schell et al.,2008の化合物17に対応)
【化26】

エリスロノリドB(3a)は、米国特許第3,127,315号(例えば、NRRL2361、2360、2359、及び2338)、Gaisser et al 2000(例えば、S.エリスラエア(S.erythraea)DM ΔBV ΔCIIIに記載される菌株及びプロセスなどのグリコシル化でブロックされたS.エリスラエア(S.erythraea)の菌株の発酵によって生成することができる。
【0138】
次いで、エリスロノリドB(3a)を、3−ヒドロキシルにアンゴロサミンを添加できる生体内変化株(NCIMB 42718など)に供給し、標準的な方法で発酵ブロスから化合物3を単離した。
【0139】
例3−化合物4の調製
【化27】

アジスロマイシンBアグリコン(4a)を、アジスロマイシンAの場合と同じ方法で、アジスロマイシンBから糖を加水分解することによって生成した。
【0140】
次いで、アジスロマイシンBアグリコン(4a)を、3−ヒドロキシルにアンゴロサミンを添加できる生体内変化株(NCIMB 42718など)に供給し、標準的な方法を使用して発酵ブロスから単離した。
【0141】
例4−化合物5の調製
【化28】

シクロブチルエリスロノリドB(5a)を、WO98/01571に記載されている方法を使用して生成した。簡単に説明すると、S.エリスラエア(S.erythraea)DM ΔBV ΔCIII(Gaisser et al.2000)は、pIG1(Long et al.,2002、WO98/01571)で形質転換した。得られた菌株をシクロブテンカルボン酸を添加して発酵させると、シクロブチルエリスロノリドB(5a)が生成した。これは、標準的な方法を使用して発酵ブロスから単離した。
【0142】
次いで、シクロブチルエリスロノリドB(5a)を、3−ヒドロキシルにアンゴロサミンを添加できる生体内変化株(NCIMB 42718など)及び標準的な方法を使用して発酵ブロスから単離した化合物5に供給した。
【0143】
例5−化合物6の調製
【化29】

メチル基は、それをATCC 31771の発酵に添加し、標準的な方法を使用して発酵ブロスから化合物6を単離することにより、化合物3のアミノ糖(例2を参照)から除去した。
【0144】
例6−化合物7の調製
【化30】

化合物3を溶媒中の水素化ホウ素ナトリウムで処理した。標準的な反応後処理に続いて、化合物7を標準的な方法によって精製した。
【0145】
例7−化合物8の調製
【化31】

14−デスメチルエリスロノリドB(8a)を、WO2000/00618に記載されている方法を使用して生成した。簡単に説明すると、S.エリスラエア(S.erythraea)DM ΔBV ΔCIII(Gaisser et al.2000)をpPFL43で形質転換した。得られた菌株を典型的な方法を使用して発酵させ、化合物8aをクロマトグラフィーを使用して単離した。
【0146】
次いで、14−デスメチルエリスロノリドB(8a)を、3−ヒドロキシルにアンゴロサミンを添加できる生体内変化株(NCIMB 42718など)に供給し、標準的な方法を使用して発酵ブロスから単離した。
【0147】
例8−化合物9の調製
【化32】

14−ヒドロキシアンゴロサミンエリスロノリドB(9)を、化合物3(例2を参照)をS.ロチェイ(S.rochei)ATCC 21250の発酵に供給し、ヒドロキシル基を追加することによって生成した。次いで、標準的な方法を使用して、化合物9を発酵ブロスから単離した。
【0148】
例9−化合物10の調製
【化33】

化合物6(6.0mg、0.01mmol)をジクロロメタン(1mL)に溶解し、アセトアルデヒド(1.0μL、0.02mmol)を添加した。反応物を室温で撹拌し、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(2.1mg、0.01mmol)を添加した。反応物を30分間撹拌し、次いで濃重炭酸ナトリウム水溶液(25mL)を添加することによりクエンチした。水性抽出物を酢酸エチル(3x25mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、濃縮ブライン溶液で洗浄し、溶媒を真空で除去した。次いで、標的化合物10を分取HPLCによって精製した。
【0149】
例10−化合物12の調製
【化34】

化合物3(例2を参照)は、それをATCC 31771の発酵に添加することによってアミノ糖から両方のメチル基を除去するように生体内変化し、化合物11を標準的な方法を使用して発酵ブロスから単離した。
【0150】
化合物11をTHFに溶解し、アセトアルデヒドを添加する。反応物を室温で撹拌し、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加する。反応物をさらに撹拌し、重炭酸ナトリウム水溶液を添加することにより反応をクエンチする。水性抽出物をEtOAc(3×体積当量)で抽出する。有機抽出物を合わせ、ブラインで洗浄し、溶媒を真空で除去する。次いで、標的化合物12は、標準的な方法を使用して精製される。
【0151】
例11−化合物14の調製
【化35】

化合物1(例1を参照)は、それをATCC 31771の発酵に添加することによってアミノ糖からメチル基を除去するように生体内変化され、化合物13は、標準的な方法を使用して発酵ブロスから単離される。
【0152】
化合物13をTHFに溶解し、アセトアルデヒドを添加する。反応物を室温で撹拌し、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加する。反応物をさらに撹拌し、重炭酸ナトリウム水溶液を添加することにより反応をクエンチする。水性抽出物をEtOAc(3×体積当量)で抽出する。有機抽出物を合わせ、ブラインで洗浄し、溶媒を真空で除去する。次いで、標的化合物14は、標準的な方法を使用して精製される。
【0153】
例12−化合物16の調製
【化36】

化合物1(例1を参照)は、それをATCC 31771の発酵に添加することによってアミノ糖から両方のメチル基を除去するように生体内変化され、化合物15は、標準的な方法を使用して発酵ブロスから単離される。
【0154】
化合物15をTHFに溶解し、アセトアルデヒドを添加する。反応物を室温で撹拌し、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加する。反応物をさらに撹拌し、重炭酸ナトリウム水溶液を添加することにより反応をクエンチする。水性抽出物をEtOAc(3×体積当量)で抽出する。有機抽出物を合わせ、ブラインで洗浄し、溶媒を真空で除去する。次いで、標的化合物16は、標準的な方法を使用して精製される。
【0155】
例13−直接的な抗菌活性の評価
一般的な腸内細菌の4つの菌株(大腸菌(Escherichia coli)、サリバリウス連鎖球菌亜種(Streptococcus salivarius subsp.salivarius)、カゼイ乳酸菌(Lactobacillus casei)、及びビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.infantis)ならびに一般的な哺乳類の皮膚分離株のミクロコッカスルテウス(Micrococcus luteus)に対するマクロライド化合物の生物活性を、最小発育阻止濃度(MIC)アッセイを使用して評価した。細菌株は、NCIMBから入手したルテウス菌(M.luteus)を除いてDSMZ(ブラウンシュワイク、ドイツ)から購入し、−80℃で20%のグリセロールに保存した。
【0156】
陽性対照(アジスロマイシン及びエリスロマイシン)、ならびに試験化合物1及び2のストック溶液(100%のDMSO)を、ブロスで256μg/mlの作業ストック濃度に希釈した(最終アッセイ試験濃度範囲128μg/ml〜0.00391μg/ml)。他の全ての化合物のストック溶液をブロスで希釈して、128μg/mlの作業ストック濃度にした(最終アッセイ試験濃度範囲64μg/ml〜0.00195μg/ml)。
【0157】
細菌株は、37℃で好気的に培養されたルテウス菌(M.luteus)を除いて、37℃の嫌気性チャンバー中の適切なブロスで培養した。18時間の培養物をブロスでOD595が0.1になるように希釈し、次いでさらに1:10に希釈した。96ウェルプレートで、2回、200μlの試験化合物の作業ストックをウェル1に移し、ブロスで段階希釈(1:2)した。100μlの細菌懸濁液を各ウェルに分注し、完全に混合した。適切な無菌対照が含まれ、プレートを嫌気性チャンバー中で、又は好気的に(ルテウス菌(M.luteus))37℃で18時間インキュベートした。MICは、目に見える成長のない第1のウェルでの試験化合物の濃度であると決定した。
【表4】
【0158】
表1に表したデータから分かるように、化合物1、3、4、5、6、7、8、及び9は、試験した細菌株のいずれに対しても抗菌活性を示さないが、エリスロマイシン及びアジスロマイシンは、いくつかの菌株に対して強力な活性を示す。
【0159】
例14−免疫刺激活性の評価
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、フィコール−パック密度遠心分離を用いて健康なドナーから精製した。細胞は、25mMのHEPES、L−グルタミン、ピルビン酸ナトリウム(Sigma)、10%のウシ胎児血清、100μg/mLのペニシリン、及び100μg/mLのストレプトマイシン(Hyclone)を補充した完全RPMI−1640培地(Invitrogen)で培養した。細胞は、組織培養プレート中の化合物1及び2の濃度を増加させながら、37℃、5%のCOで24時間(研究1〜4)又は48時間〜1週間(研究5)刺激した。細胞をプレートから取り出し、PBSで洗浄し、BD Pharmingen製のモノクローナル抗体及びFACS Canto IIフローサイトメーターを使用して、フローサイトメトリーで細胞特異的表面マーカー及びMHCクラスIの発現について分析した。
【0160】
上清IL−10を、完全RPMI培地、37℃、5%のCOで2.5μMの化合物1及び100 U/mLのIL−2(Miltenyi Biotechnologies)と48時間及び7日間インキュベートした後、標準サンドイッチELISA(全てBD Biosciences製の抗体)で測定した。
研究1:1μMの化合物1(図8)による末梢血単核細胞(PBMC)のin vitro刺激の24時間後、活性化マーカーCD69をCD4+T細胞及びB細胞でアップレギュレートした(図1)。
研究2:本発明者らはまた、T細胞及びB細胞での分子MHCクラスI(HLA−ABC)のアップレギュレーションを観察し(図2)、これはウイルス抗原の抗原提示への効果を示している。
研究3:化合物1によるPBMCの刺激は、単球上の共刺激分子CD80及び抗原提示分子MHCクラスII(HLA−DR)のアップレギュレーションをもたらした(図3)。
研究4:マクロファージに分化した単球も、化合物1による刺激に応答してCD80をアップレギュレートした(図4)。
研究5:化合物1で48時間及び7日間刺激されたPBMCは、サンドイッチELISAで測定した、免疫抑制性サイトカインIL−10の産生の増加を伴う変化したサイトカインプロファイルを発現した。これは、特定の条件下での免疫抑制効果を示している(図5)。
研究6:PBMCを化合物1で刺激し、IL−2(Miltenyi Biotechnologies)及びCell Trace Violet Dye(Invitrogen)の存在下でRPMI培地で6日間培養した。増殖は、フローサイトメトリーで測定した。化合物1の免疫学的効果の分析により、T細胞のサイトカイン駆動増殖プロファイルの変化が明らかになった(図6)。
研究7:ウイルス特異的T細胞増殖も化合物1の影響を受けた。CMV抗原及び化合物1の存在下で6日間培養されたサイトメガロウイルス(CMV)感染ドナーからのPBMCは、フローサイトメトリーで測定した、IL−7受容体α(CD127)の発現が増加した活性化CMV特異的CD8+T細胞の表現型の変化を表示した(図7)。CD127は、T細胞の恒常性、分化、及び機能に不可欠であり、発現の低下は、HIV及び他の慢性ウイルス性疾患の重症度と相関している(Crawley et al.2012)。
分かるように、化合物1は、抗原提示、共刺激、ならびにT細胞の活性化及び増殖に影響を与えることにより、免疫応答を特異的に活性化及び修飾する驚くべき能力を有する。これらの研究の多くには、以前にSchell et al,2008で(化合物20として)公開された、グリコシル化が変化した別の関連マクロライドエリスロマイシン類似体である化合物2が含まれ、アッセイでほとんど又はまったく活性を示さなかった。
研究8:CMV抗原の存在下で培養されたCMV感染ドナーからのPBMCを、未処理又は化合物1又は化合物2に3日間曝露した。化合物1への曝露は、高レベルのIFN−γの分泌を誘導したが、抗原培養のみ又は化合物Aと一緒の抗原は、IFN−γの分泌を誘導しなかった(図9)。
研究9:化合物1又は2に48時間曝露された健康なドナーからのマクロファージ。化合物1に曝露されたマクロファージのみがIFN−γを分泌したが、未処理のマクロファージ及び化合物Aに曝露されたマクロファージは、IFN−γを分泌しなかった(図10)。したがって、化合物1は、健康なドナーからのマクロファージでIFN−γ分泌を誘導することができる。
研究10:化合物1又は2に2日間曝露されたPBMC及びマクロファージ(図11)。PBMCにおけるRANTESの基礎発現は、化合物2の影響を受けなかったが、化合物1は、発現の2倍のアップレギュレーションを誘導した。RANTESの発現は、マクロファージではごくわずかであり、化合物1は、高い発現を誘導した。
研究11:化合物1及び2に2日間曝露されたPBMC及びマクロファージ。PBMC及びマクロファージは、化合物1に応答してIL−12p70を分泌したが、化合物2は、未処理の細胞で分泌を誘導できなかった(図12)。
研究12:化合物1及び2に2日間曝露されたPBMC、マクロファージ、及びCD4+T細胞。IL−1β分泌は、マクロファージでは化合物1によって増加し、PBMCではわずかに増加したが、CD4+T細胞ではIL−1βは、誘導されなかった(図13)。
研究13:化合物1を0.165mg/kg〜5mg/kgでC57bl/6マウスに静脈内投与した。CD25+細胞の存在量は、5mg/kgの最高用量を受容した動物で増加し(図14)、同じグループの体重も増加した(図示せず)。
研究14:化合物1又は2をC57bl/6マウスに静脈内投与した。24時間後、脾臓を摘出し、CD11b+脾臓細胞でのMHCクラスI発現を評価した化合物1は、MHC I発現の高い脾臓細胞の増加を誘導したが、化合物Aを注射したマウスの脾臓細胞では効果は観察されなかった。
【0161】
例15−代謝安定性の評価
本発明の化合物の代謝安定性は、標準的なヒトミクロソーム安定性アッセイで評価した(一般的な方法を参照)。半減期が長い化合物は、投与後の半減期が長くなると予想され、これは、投与頻度を減らすのに有用であり得る。半減期が短い化合物は、患者の系に入ると活性物質が急速に分解する「ソフトドラッグ」としての使用に有用であり得る。化合物の半減期を以下の表2に示すように評価した:
【表5】
【0162】
分かるように、本発明の化合物の多くは、アジスロマイシン、エリスロマイシン、及びEM703と比較して、代謝安定性を増加又は減少させた(例えば、EP1350510を参照)。
【0163】
例16−caco−2透過性の評価
本発明の化合物の透過性は、標準的なcaco−2双方向透過性アッセイで評価した(一般的な方法を参照)。透過性が増加した化合物は、細胞透過性及び効果の可能性が良好であると予想され、透過性が改善された、かつ/又は流出が減少した化合物は、経口バイオアベイラビリティが増加すると予想される。化合物の透過性及び流出を以下の表3に示す。
【表6】
【0164】
分かるように、本発明の化合物の多くは、アジスロマイシン及びEM703と比較して、改善された細胞透過性及び/又は減少した流出を有する(例えば、EP1350510を参照のこと)。
【0165】
例17−TLR2刺激の評価
化合物は、TLR2受容体の刺激について測定するTLR2レポーターアッセイ(一般的な方法を参照)を使用して試験した。刺激効果を、分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)の放出による光学密度(OD)の増加として測定し、表4に示す。
【表7】
【0166】
分かるように、化合物1は、5μMまでの濃度でTLR2を刺激し、化合物17は、10μMまでの濃度でTLR2を刺激したが、Schell et al,2008(化合物17及び20として)で以前に公開されたグリコシル化が変化した関連マクロライド系エリスロマイシン類似体であるエリスロマイシンA、アジスロマイシン、ならびに化合物2及び3は、20μMまでの濃度で刺激をほとんど又はまったく示さなかった。
【0167】
例18−化合物17の調製
【化37】

アグリコン17aを、9−デオキソ−8a−アザ−8a−メチル−8a−ホモエリスロマイシン(Wilkening 1993)から生成して、続いて糖を加水分解した。次いで、17aを、3−ヒドロキシルにアンゴロサミンを添加することができる生体内変化株(NCIMB42718など)及び標準的な方法を使用して発酵ブロスから単離された化合物17に供給した。
【0168】
例19−化合物18の調製
【化38】

6−デオキシエリスロノリドB(6−DEB、18a)を、3−ヒドロキシルにアンゴロサミンを添加できる生体内変化株(NCIMB 42718など)に供給し、標準的な方法を使用して発酵ブロスから単離した。
【0169】
例20−ISC397とチェックポイント阻害剤との組み合わせの効果の研究
C57BL/6Jマウスは、ドイツのチャールズリバー研究所から購入した。マウスに、イソフルラン麻酔下で1x106 B16−F10メラノーマ細胞を右後部側面に皮下注射した。
【0170】
治療群は(群あたり10匹のマウス)であった:
1)1、3、6、9、及び12日目の抗PD−1(Merck、Johnson、Roche、又はAstraのクローンRMP 1−14、200マイクログラム/用量)。
2)1、3、6、9、及び12日目の抗PD−1(Merck、Johnson、Roche、又はAstraのクローンRMP 1−14、200マイクログラム/用量)+毎日実験終了までISR397(500マイクログラム/用量)。
3)未処理。
【0171】
全ての化合物を静脈内注射した。腫瘍体積を毎日測定し、動物の健康状態を1日2回測定した。腫瘍が2mlに達した場合、又は健康状態が悪い場合、動物を殺傷した。実験を18日目に終了し、全てのマウスが頸椎脱臼により死亡した。
【0172】
結果を図16〜19に示す。
【0173】
参考文献
Kieser et al.2000 Practical Streptomyces Genetics、John Innes Foundation発行
Crawley et al.The influence of HIV on CD127 expression and its potential implications for IL−7 therapy.Semin Immunol.2012 Jun;24(3):231−40.
Gaisser et al.Analysis of seven genes from the eryAI−eryK region of the erythromycin biosynthetic gene cluster in Saccharopolyspora erythraea.Mol.Gen.Genet.,1997 Oct;256(3):239−51.
Gaisser et al.A defined system for hybrid macrolide biosynthesis in Saccharopolyspora erythraea Mol.Micro.,2000;36(2):391-401
Schell et al.Engineered biosynthesis of hybrid macrolide polyketides containing D−angolosamine and D−mycaminose moieties Org.Biomol.Chem.,2008;6:3315−3327
LeMahieu et al.Glycosidic Cleavage Reactions on Erythromycin A.Preparation of Erythronolide A,J.Med.Chem.,1974,17(9):953−956
Djokic et al.Erythromycin Series.Part 13.Synthesis and Structure Elucidation of 10−Dihydro−10−deoxo−11−methyl−11−azaerythromycin A J.Chem.Res.(S),1988;5:152−153
Glansdorp et al.Using Chemical Probes to Investigate the Sub−Inhibitory Effects of Azithromycin,Org.Biolmol.Chem.,2008;208(6):4120−4124
Rowe et al.Construction of new vectors for high−level expression in actinomycetes.Gene.1998 Aug 17;216(1):215−23.
Long et al.Engineering specificity of starter unit selection by the erythromycin−producing polyketide synthase.Mol.Microbiol.2002 Mar;43(5):1215−25.
Wilkening et al.The synthesis of novel 8a−aza−8a−homoerythromycin derivatives via the Beckmann rearrangement of(9Z)−erythromycin A oxime,Bioorg.Med.Chem Lett.1993,3(6),p1287−1292
【0174】
特許及び特許出願を含む、本出願で言及される全ての参照は、可能な限り最大限に参照することにより本明細書に組み込まれる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2020年4月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクロライドが、式Iを有する前記マクロライドと免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせ:
【化1】

(式中、Xは、−NRCH、−CHNR−、−NR(C=O)−、−(C=O)NR−、及びC=NOHから選択され、Rは、式(II)又は式(III)の糖であり:
【化2】

式中、Rは、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロアリール部分から選択され、
式中、アルキル部分は、任意選択で分岐しているC−Cアルキル基から選択され、
式中、ヘテロアルキル部分は、任意選択で分岐又は置換され、任意選択で1つ以上のヘテロ原子を含むC−Cアルキル基から選択され、
式中、シクロアルキル部分は、任意選択で置換され、任意選択で1つ以上のヘテロ原子を含むC−C環状アルキル基から選択され、
式中、アリール部分は、任意選択で置換されたC芳香環から選択され、
式中、ヘテロアリール部分は、1つ以上のヘテロ原子を含む任意選択で置換されたC−C芳香環から選択され、
式中、ヘテロ原子は、O、N、P、及びSから選択され、
式中、置換基は、独立して、アルキル、OH、F、Cl、NH、NH−アルキル、NH−アシル、S−アルキル、S−アシル、O−アルキル、及びO−アシルから選択され、
式中、アシルは、C−Cの任意選択で分岐したアシル基から選択され、
式中、Rは、H及びMeから選択され、
式中、Rは、H及びMeから選択され、
式中、Rは、H及びCR212223から選択され、
式中、R21、R22、R23、ならびにR、R、R、R、R、及びR10は、独立して、H、Me、NR1112、NO、及びOR11から選択され、
式中、式(II)のRと一緒のR23、式(II)のRと一緒のR、式(II)のRと一緒のR、及び式(II)のRと一緒のRは、独立して、各グループが接続されている炭素原子間に二重結合を残すために接合されてもよく、
式中、R22と一緒のR21、Rと一緒のR、Rと一緒のR、又はR10と一緒のRは、カルボニルで置き換えられてもよく、
式中、R11及びR12は、独立して、H及びアルキルから選択され、
式中、R13は、H、OH、及びOCHから選択され、
式中、R14は、H及びOHから選択され、
式中、R、R、R、R、R、又はR10のうちの1つは、NR1112及びNO
又はそれらの薬学的に許容される塩から選択される)。
【請求項2】
マクロライドが以下から選択される、請求項1に記載の組み合わせ:
【化3-1】

【化2】

及び
【化3】

又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
マクロライドが以下である、請求項1〜2のいずれかに記載の組み合わせ:
【化4】

又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
免疫チェックポイント阻害剤が、細胞毒性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4、CD152としても知られている)、プログラム細胞死タンパク質1(PD−1、CD279としても知られている)、PD−1リガンド1(PD−L1、B7−H1及びCD274としても知られている)、PD−1リガンド2(PD−L2、B7−DC及びCD−273としても知られている)、T細胞膜タンパク質3(TIM3、HAVcr2としても知られている)、アデノシンA2a受容体(A2aR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3、CD223としても知られている)、B7−H3(CD276としても知られる)、B7−H4(B7−S1、B7X、VCTN1としても知られている)、2B4(CD244として知られている)、B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA、CD272としても知られている)、ならびにCMTM6から選択された免疫チェックポイントを標的とする、請求項1〜3のいずれかに記載の組み合わせ。
【請求項5】
免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA4阻害剤、PD−1阻害剤、PD−L1阻害剤、PD−L2阻害剤、TIM3阻害剤、A2aR阻害剤、LAG3阻害剤、B7−H3阻害剤、B7−H4阻害剤、2B4阻害剤、BTLA阻害剤、及びCMTM6阻害剤から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の組み合わせ。
【請求項6】
免疫チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、トレメリムマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、AMP−224、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、MDX−1105、IMP321、エノブリツズマブ、及びMGD009から選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の組み合わせ。
【請求項7】
免疫チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブから選択される、請求項6に記載の組み合わせ。
【請求項8】
一方の組成物が、マクロライド及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含み、他方の組成物が免疫チェックポイント阻害剤及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、2つの医薬組成物の形態の請求項1〜7のいずれかに記載の組み合わせ。
【請求項9】
2つの医薬組成物が、同じ又は異なる投与経路のために設計されている、請求項8に記載の組み合わせ。
【請求項10】
免疫刺激剤としての使用など、医学で使用するための、請求項1〜9のいずれか一項に定義される組み合わせ。
【請求項11】
癌の治療に使用するための、請求項10に記載の組み合わせ。
【請求項12】
ウイルス性疾患の治療に使用するための、請求項10に記載の組み合わせ。
【請求項13】
請求項1〜のいずれかに記載の組み合わせ及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項14】
請求項10〜12のいずれかに記載の組み合わせ及び1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項15】
癌の治療又は予防に使用するための医薬品キットであって、単一のパッケージで、
i)請求項1〜3のいずれかに定義されるマクロライドを含む第1の組成物、
ii)免疫チェックポイント阻害剤を含む第2の組成物、及び
iii)使用説明書
を含む、医薬品キット。
【国際調査報告】