(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
メラノコルチン受容体特異的ペプチド、特にメラノコルチン−1受容体について選択的且つ特異的な環状ペプチドの、消化管のメラノコルチン受容体媒介性又は応答性の疾患、徴候、症状、及び症候群の処置のための、消化管の管腔への送達のための製剤、組成物、及び方法。
少なくとも1つの遅延放出ポリマーを含む粒子マトリックス内に配置された、メラノコルチン受容体特異的ペプチド又はその薬学的に許容される塩を含む、下方消化(GI)管放出医薬製剤。
前記ペプチド又はその薬学的に許容される塩は、前記粒子マトリックス内で混合されることによって、前記粒子マトリックス、及び前記ペプチド又はその薬学的に許容される塩の混合物が形成される、請求項2に記載の製剤。
前記pH感応性メタクリル酸メチル/メタクリル酸コポリマーは、Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dからなる群から選択される、請求項9に記載の製剤。
前記Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dは、約6:6:1、又は約6.2:6.2:1、又は約23.25:23:3.75からなる群から選択されるL100-55対S100対FS30Dの重量比で存在する、請求項10に記載の製剤。
前記メラノコルチン受容体特異的ペプチド又はその薬学的に許容される塩は、メラノコルチン−1受容体(MC1r)特異的ペプチド又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の製剤。
前記MC1r特異的ペプチド又はその薬学的に許容される塩は、メラノコルチン−2受容体(MC2r)、メラノコルチン−3受容体(MC3r)、及びメラノコルチン−5受容体(MC5r)にて機能的に不活性である、請求項12に記載の製剤。
少なくとも1つの遅延放出ポリマーを含む前記粒子マトリックスは、約6:6:1、又は約6.2:6.2:1、又は約23.25:23:3.75からなる群から選択されるL100-55対S100対FS30Dの重量比で存在するEudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dを含む混合物である、請求項19に記載の製剤。
前記Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dは、最大粒子サイズが直径1000μm以下の粒子である、請求項20に記載の製剤。
前記少なくとも1つの遅延放出ポリマーは、ヒト患者に投与された場合に、前記メラノコルチン受容体特異的ペプチド又はその薬学的に許容される塩の最大放出を、結腸内でもたらす、請求項1に記載の製剤。
前記少なくとも1つの遅延放出ポリマーは、約6:6:1、又は約6.2:6.2:1、又は約23.25:23:3.75からなる群から選択されるL100-55対S100対FS30Dの重量比で存在するEudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dを含む混合物である、請求項28に記載の製剤。
前記メラノコルチン受容体特異的ペプチド又はその薬学的に許容される塩は、MC1r、並びにMC3r、MC4r、及びMC5rからなる群から選択される少なくとも1つの付加的なメラノコルチン受容体にて、機能的に活性である、請求項1に記載の製剤。
a.約6:6:1、又は約6.2:6.2:1、又は約23.25:23:3.75からなる群から選択されるL100-55対S100対FS30Dの重量比でEudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dの溶液混合物を用意する工程と;
b.前記溶液混合物にAc−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dap)−Trp−NH2(配列番号6)又はその薬学的に許容される塩を加える工程と;
c.Ac−Nle−cyclo(Glu−His−D−Phe−Arg−Dap)−Trp−NH2(配列番号6)又はその薬学的に許容される塩を含む溶液混合物を乾燥させる工程と;
d.前記乾燥させた混合物を粒子に変換する工程であって、生じた粒子サイズは、直径約1000μm以下であり、且つ約25以下である、工程と
を含むプロセスによって調製された、下方GI管放出医薬製剤。
前記ペプチド又はその薬学的に許容される塩は、前記粒子マトリックス内で混合されることによって、前記粒子マトリックス、及び前記ペプチド又はその薬学的に許容される塩の混合物を形成する、請求項41に記載の方法。
前記pH感応性メタクリル酸メチル/メタクリル酸コポリマーは、Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dからなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
前記Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dは、約6:6:1、又は約6.2:6.2:1、又は約23.25:23:3.75からなる群から選択されるL100-55対S100対FS30Dの重量比で存在する、請求項50に記載の方法。
少なくとも1つの遅延放出ポリマーを含む前記粒子マトリックスは、約6:6:1、又は約6.2:6.2:1、又は約23.25:23:3.75からなる群から選択されるL100-55対S100対FS30Dの重量比で存在するEudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dを含む混合物である、請求項57に記載の方法。
前記Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dは、最大粒子サイズが直径1000μm以下の粒子である、請求項58に記載の方法。
前記少なくとも1つの遅延放出ポリマーは、前記ヒトIBD患者に投与された場合に、前記メラノコルチン受容体特異的ペプチド又はその薬学的に許容される塩の最大放出を、結腸内でもたらす、請求項41に記載の方法。
前記少なくとも1つの遅延放出ポリマーは、約6:6:1、又は約6.2:6.2:1、又は約23.25:23:3.75からなる群から選択されるL100-55対S100対FS30Dの重量比で存在するEudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dを含む混合物である、請求項65に記載の方法。
前記メラノコルチン受容体特異的ペプチド又はその薬学的に許容される塩は、MC1r、並びにMC3r、MC4r、及びMC5rからなる群から選択される少なくとも1つの付加的なメラノコルチン受容体にて機能的に活性である、請求項41に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
1.0 定義。
本発明の説明に進む前に、本明細書中で示す特定の用語を定義する。
【0038】
本発明に従うペプチドについて記載される配列において、アミノ酸残基は、米国特許審査便覧(Manual of Patent Examining Procedure)第9版の第2400章に記載される従来の意味を有する。ゆえに、「Nle」はノルロイシンであり、「Asp」はアスパラギン酸であり、「His」はヒスチジンであり、「Phe」はフェニルアラニンであり、「Arg」はアルギニンであり、「Trp」はトリプトファンであり、「Lys」はリシンである等である。D−異性体は、3文字コード又はアミノ酸名の前の「D−」によって示される(例えば、D−Pheは、D−フェニルアラニンである)ことが理解されよう。前述のものによって包含されないアミノ酸残基として、以下のアミノ酸又はアミノ酸側鎖が挙げられ、そのようなアミノ酸残基は、L−異性体又はD−異性体であり得ることが理解されよう:
【0041】
用語「アルファアミノ酸」は、一般的な構造の任意のアミノ酸
【化1】
(そのイオン化してない形態で示される)を含み、Rは、任意の側鎖基又は水素であり、限定されないが、先の表及び段落において記載されるアミノ酸残基又は側鎖基が挙げられる。
【0042】
「N置換されたアミノ酸」は、アミノ酸側鎖部分が、骨格アミノ基に共有結合した任意のアミノ酸を意味し、場合によっては、α−炭素位置に、H以外の置換基がない場合が挙げられる。サルコシンは、N置換されたアミノ酸の例である。一例として、サルコシンは、サルコシン及びAlaのアミノ酸側鎖部分が同じ、メチルであるという点で、AlaのN置換されたアミノ酸誘導体と呼ぶことができる。特許請求の範囲又は本明細書中の説明が「アミノ酸」を指す場合はいつでも、そのような呼称は、「N置換されたアミノ酸」を含むが、これに限定されない。
【0043】
用語「L−異性体アミノ酸又はD−異性体アミノ酸」は、本明細書中で定義される任意のアミノ酸残基を意味し、具体的には任意のアルファ−アミノ酸、ベータ−アミノ酸、ガンマ−アミノ酸、又はデルタ−アミノ酸が挙げられ、限定されないが、DNAによって直接コードされているアミノ酸、翻訳後に修飾されたアミノ酸、直接的なDNAによる以外の生物学的手段によって発現されたアミノ酸、タンパク質構成アミノ酸若しくは非タンパク質構成アミノ酸、又は任意の合成アミノ酸若しくは人工アミノ酸が挙げられる。
【0044】
アミノ酸(L−異性体アミノ酸又はD−異性体アミノ酸を含む)は、「アミド結合(amide bond or amide linkages)」によって一緒に結合されて、あるアミノ酸の骨格カルボン酸基を、別のアミノ酸の骨格アミノ基と連結する共有結合、ペプチド結合を形成することによって、ペプチド結合(C(=O)−NH−)を形成する。
【0045】
特定の例において、基はアミノ酸と、例えば、特にアミノ酸の代わりにジカルボン酸を用いて、置換されてもよい。本明細書中で利用される1つの特定のジカルボン酸は、コハク酸であり、「Suc」と略され、これは構造式
【化2】
を有する。
【0046】
用語「アルカン」は、直鎖状飽和炭化水素又は分枝状飽和炭化水素を含む。直鎖状アルカン基の例として、メタン、エタン、プロパンが挙げられる。分枝状アルカン基又は置換アルカン基の例として、メチルブタン又はジメチルブタン、メチルペンタン、ジメチルペンタン、又はトリメチルペンタンが挙げられる。一般に、任意のアルキル基は、アルカンの置換基であってもよい。
【0047】
用語「アルケン」は、1つ以上の炭素二重結合を含有する不飽和炭化水素を含む。そのようなアルケン基の例として、エチレン、プロペンが挙げられる。
【0048】
用語「アルケニル」は、2〜6個の炭素原子の一価の直鎖状炭化水素基、又は少なくとも1つの二重結合を含有する3〜6個の炭素原子の一価の分枝状炭化水素基を含む;それらの例として、エテニル、2−プロペニルが挙げられる。
【0049】
本明細書中で定められる「アルキル」基として、直鎖状鎖又は分枝状鎖の飽和脂肪族炭化水素基である指定された長さのアルキル基が挙げられる。そのようなアルキル基の非限定的な例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシルが挙げられる。
【0050】
用語「アルキン」は、2〜6個の炭素原子の一価の直鎖状炭化水素基、又は少なくとも1つの三重結合を含有する3〜6個の炭素原子の一価の分枝状炭化水素基を含む;それらの例として、エチン、プロピレン(propyne)、ブチンが挙げられる。
【0051】
用語「アリール」は、6〜12個の環原子の単環式芳香族炭化水素基又は二環式芳香族炭化水素基を含み、そして場合によっては、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロ、ニトロ、アシル、シアノ、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、又はアルコキシ−カルボニルから選択される1つ以上の置換基で独立して置換されている。アリール基の例として、フェニル、ビフェニル、ナフチル、1−ナフチル、及び2−ナフチル、それらの誘導体が挙げられる。
【0052】
用語「アラルキル」は、基−R
aR
bを含み、式中、R
aは、アルキレン(二価アルキル)基であり、R
bは、先で定義されたアリール基である。アラルキル基の例として、ベンジル、フェニルエチル、3−(3−クロロフェニル)−2−メチルペンチルが挙げられる。
【0053】
用語「脂肪族」は、炭化水素鎖、例えば、アルカン、アルケン、アルキン、及びそれらの誘導体を有する化合物を含む。
【0054】
用語「アシル」は、基R(C=O)−を含み、式中、Rは、有機基、例えば、アルキル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、又はヘテロシクリルである。非限定的な例として、アセチル基CH
3−C(=O)−があり、本明細書中で、以下「Ac」と呼ばれる。本明細書中で用いられるRは、C
1〜C
17の直鎖状又は分枝状のアルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、又はアルキルアリールを含んでもよい。
【0055】
ペプチド又は脂肪族部分は、先で定義されるアルキル基又は置換アルキル基が、1つ以上のカルボニル{−(C=O)}基を介して結合されている場合、「アシル化されている」。ペプチドは、通常、N末端にてアシル化されている。
【0056】
用語「ヘテロアリール」は、窒素、酸素、及び硫黄から選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する単環式芳香族環及び二環式芳香族環を含む。5員又は6員のヘテロアリールは、単環式芳香族複素環である;それらの例として、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、イソキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジンが挙げられる。二環式芳香族複素環として、以下に限定されないが、ベンゾチアジアゾール、インドール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンズイミダゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、ベンゾトリアゾール、ベンゾキサゾール、イソキノリン、プリン、フルオロピリジン(furopyridine)、及びチエノピリジンが挙げられる。
【0057】
本明細書中で用いられる用語「アミド」は、三価窒素がカルボニル基に取り付けられている化合物、すなわち−C(=O)−NH
2(すなわち一級アミド)、−C(=O)−NHR
c、及び−C(=O)−NR
cR
dを含み、式中、R
c及びR
dはそれぞれ独立して、有機基を表す。本明細書中で置換アミド基に言及する場合、これは、前記有機基(R
c及びR
d)の少なくとも1つが置換されていることを意味する。アミドの例として、メチルアミド、エチルアミド、プロピルアミドが挙げられる。
【0058】
「イミド」は、イミド基(−C(=O)−NH−C(=O)−)を含有する化合物を含む。
【0059】
「アミン」は、アミノ基(−NH
2)、−NHR
a、及び−NR
aR
bを含有する化合物を含み、式中、R
a及びR
bはそれぞれ独立して、有機基を表す。本明細書中で置換アミン基に言及する場合、これは、有機基(R
a及びR
b)の少なくとも1つが置換されていることを意味する。
【0060】
「ニトリル」は、カルボン酸誘導体であり、且つ有機基に結合した(−CN)基を含有する化合物を含む。
【0061】
用語「ハロゲン」は、ハロゲン原子、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素、並びに1つ以上のハロゲン原子を含む基、例えば−CF
3を含む。
【0062】
用語「組成物」は、医薬組成物等であり、活性成分、及びキャリアを作り上げる不活性成分を含む生成物、並びに、直接的又は間接的に、当該成分のいずれか2つ以上の組合せ、錯体化、若しくは凝集に、又は当該成分の1つ以上の解離に、又は当該成分の1つ以上の他のタイプの反応若しくは相互作用に由来するあらゆる生成物を包含する。したがって、医薬組成物は、活性成分及び1つ以上の薬学的に許容されるキャリアを混合することによって製造されるあらゆる組成物を包含する。
【0063】
メラノコルチン受容体「アゴニスト」によって意味されるのは、内因性物質、原薬、又は本明細書中で開示される特定のペプチド化合物が挙げられる化合物であり、これは、メラノコルチン受容体と相互作用して、薬理学的応答を開始することができ、以下に限定されないが、メラノコルチン受容体に特有の、アデニルシクラーゼ活性化等の、シグナル伝達を開始することが挙げられる、受容体の活性化が挙げられる。メラノコルチン受容体アゴニストは、MC1r、MC2r、MC3r、MC4r、及びMC5rの1つ以上にてアゴニストであってもよい。本発明にとって、MC1rにてアゴニストであるメラノコルチン受容体アゴニストが好ましい。
【0064】
「α−MSH」によって意味されるのは、ペプチドAc−Ser−Tyr−Ser−Met−Glu−His−Phe−Arg−Trp−Gly−Lys−Pro−Val−NH
2(配列番号2)、並びにその類似体及び相同体であり、限定されないが、NDP−α−MSHが挙げられる。
【0065】
「NDP−α−MSH」によって意味されるのは、ペプチドAc−Ser−Tyr−Ser−Nle−Glu−His−D−Phe−Arg−Trp−Gly−Lys−Pro−Val−NH
2(配列番号3)、並びにその類似体及び相同体である。
【0066】
「EC
50」によって意味されるのは、部分アゴニストを含むアゴニストの、そのアゴニストについて考えられる最大応答の50%をもたらすモル濃度である。一例として、72nMの濃度にて、MC1r細胞発現系でのcAMPアッセイで判定される、化合物について考えられる最大応答の50%をもたらす試験化合物は、EC
50が72nMである。特に明記しない限り、EC
50の判定と関連するモル濃度は、リットルあたりのナノモル(nM)である。
【0067】
「Ki(nM)」によって意味されるのは、コンペティタの不在下での平衡時に受容体の結合部位の半分に結合する競合化合物のモル濃度を表す、平衡インヒビタ解離定数である。一般に、Kiの数値は、Kiが低ければ、親和性が高いというように、受容体に対する化合物の親和性に逆に相関する。Kiは、Cheng及びPrusoffの式(Cheng Y., Prusoff W. H., Biochem. Pharmacol. 22: 3099-3108, 1973):
【数1】
を用いて判定することができ、式中、「リガンド」は、コンペティタの濃度であり、K
Dは、コンペティタによる50%の受容体占有をもたらす、コンペティタに対する受容体親和性の逆の尺度である。特に明記しない限り、Ki判定と関連するモル濃度は、nMである。Kiは、特定の受容体(例えば、MC1r、MC3r、MC4r、又はMC5r)、特定の種(例えば、ヒト又はマウス)、及び特定のリガンド(例えば、α−MSH又はNDP−α−MSH)に関して表すことができる。
【0068】
「阻害」によって意味されるのは、競合阻害アッセイにおける、知られている標準と比較した、受容体結合の減衰パーセント又は低下である。ゆえに、「1μM(NDP−α−MSH)での阻害」によって意味されるのは、例えば後に記載されるアッセイ条件下での、試験されることとなる化合物の決定量、例えば1μMの試験化合物の追加によるNDP−α−MSHの結合の低下パーセントである。一例として、NDP−α−MSHの結合を阻害しない試験化合物は、阻害が0%であり、NDP−α−MSHの結合を完全に阻害する試験化合物は、阻害が100%である。典型的には、後に記載されるように、例えばI
125標識NDP−α−MSHによる、検出可能標識アッセイ、又は、例えばEu−NDP−α−MSHによる、ランタニドキレート蛍光アッセイが、競合阻害試験に用いられる。しかしながら、様々な標識系又はタグ系の使用を含む、競合阻害を試験する他の方法が知られており、そして一般に、競合阻害を試験する、当該技術において知られているあらゆる方法が、本発明に使用されてもよい。ゆえに、「阻害」は、試験化合物がメラノコルチン受容体へのα−MSHの結合を減弱するかを判定するための一尺度であることがわかる。
【0069】
「結合親和性」によって意味されるのは、本明細書中でKi(nM)として表される、化合物又は薬物の、その生物学的標的に結合する能力である。
【0070】
E
maxによって意味されるのは、指定されたメラノコルチン受容体発現細胞系において、化合物、例えばアデニリルシクラーゼの最大刺激によって達成可能な、最大機能活性である。NDP−α−MSHによって達成される最大刺激は、100%のE
maxと表され、NDP−α−MSHの最大活性の半分を刺激することができる化合物は、E
maxが50%であると表される。本明細書中に記載されるアッセイ条件下でE
maxが70%以上である本発明の化合物は、アゴニストとして分類され得、E
maxが10%〜70%である化合物は、部分アゴニストと分類され得、E
maxが10%未満である化合物は、不活性であると分類され得る。
【0071】
一般に、「機能活性」は、化合物による受容体の活性化の直後の、例えばメラノコルチン受容体による、受容体のシグナリングの尺度、又は受容体関連シグナリングの変化の尺度である。メラノコルチン受容体は、ヘテロ三量体Gタンパク質の活性化により、シグナル伝達を開始する。一態様において、メラノコルチン受容体は、Gα
Sを介してシグナルを発し、これは、アデニリルシクラーゼによってcAMPの生成を触媒する。ゆえに、アデニリルシクラーゼの刺激の判定、例えばアデニリルシクラーゼの最大刺激の判定は、機能活性の一尺度であり、そして本明細書中で例示される主要な尺度である。しかしながら、機能活性の代用の尺度が、本発明の実行に使用されてもよく、そして本発明の範囲内で具体的に意図されて含まれることが理解されるべきである。ゆえに、一例において、Mountjoy K.G. et al., Melanocortin receptor-medicated mobilization of intracellular free calcium in HEK293 cells. Physiol Genomics 5:11-19, 2001、又はNewman et al., Activation of the melanocortin-4 receptor mobilizes intracellular free calcium in immortalized hypothalamic neurons. J Surg Res: 132:201-207, 2006によって報告されている、そしてこれらに開示されている方法を用いる、カルシウムに結合する特定の蛍光分子、例えばFura2を用いて、細胞内遊離カルシウムが測定されてもよい。Fluo−4は、一般的に用いられている代用のカルシウム結合色素でもある(Nohr et al., The orphan G protein-coupled receptor GPR139 is activated by the peptides: Adrenocorticotropic hormone (ACTH), α-, and β-melanocyte stimulating hormone (α-MSH, and β-MSH), and the conserved core motif HFRW. Neurochem Int 102: 105-113, 2017)。さらに、Ca2
+放出事象の上流で、そして同経路において、ホスファチジルイノシトール4,5−二リン酸からのイノシトール三リン酸又はジアシルグリセロールの生成の測定、例えば市販の入手可能なHTRFアッセイ(Liu et al., Comparison on functional assays for Gq-coupled GPCRs by measuring inositol monophospate-1 and intracellular calcium in 1536-well plate format. Curr Chem Genomics 1: 70-77, 2008)によって、活性化を測定することも可能である。機能活性のさらに別の尺度は、受容体内在化であり、これは、例えばNickolls S.A. et al., Functional selectivity of melanocortin 4 receptor peptide and nonpeptide agonists: evidence for ligand specific conformational states. J Pharm Exper Therapeutics 313:1281-1288, 2005に開示される方法を用いた、調節経路の活性化に由来する。機能活性のさらに別の尺度は、Gタンパク質受容体の活性化と関連するヌクレオチドの交換及び交換速度、例えば、Gタンパク質αサブユニット上でのGDP(グアノシン二リン酸)の、GTP(グアノシン三リン酸)(guanosine triphosphase)との交換であり、これは、Manning D.R., Measures of efficacy using G proteins as endpoints: differential engagement of G proteins through single receptors. Mol Pharmacol 62:451-452, 2002に開示されるように、グアノシン5’−(γ−[
35S]チオ)−三リン酸を用いたラジオアッセイが挙げられる、いくつもの手段によって測定することができる。Gi、Gq、Gs、Gi2/i3サブファミリに属する14の異なるGα種の活性/係合を測定するための、比較的新しいアッセイプラットフォームが考案された。というのもこれは、リガンド結合直後のGαサブユニット及びGγサブユニットの離脱を測定するためにBRET(生物発光共鳴エネルギー伝達)ベースのバイオセンサを用いる受容体に関係するからである(Zhao et al., Biased signaling of protease-activated receptors. Front Endocrinol 5:67, 2014、van der Westhuizen et al., Quantification of ligand bias for clinically relevant β2-adrenergic receptor ligands: Implications for drug taxonomy. Molecular Pharm 85:492-509, 2014)。種々の遺伝子ベースのアッセイが、G結合タンパク質の活性化を測定するために開発されており、例えば、Chen W. et al., A colorimetric assay from measuring activation of Gs- and Gq-coupled signaling pathways. Anal Biochem 226:349-354, 1995;Kent T.C. et al., Development of a generic dual-reporter gene assay for screening G-protein-coupled receptors. Biomol Screening, 5:437-446, 2005;又はKotarsky K. et al., Improved receptor gene assays used to identify ligands acting on orphan seven-transmembrane receptors. Pharmacology & Toxicology 93:249-258, 2003に開示されるものがある。Chen et al.の比色アッセイは、Hruby V.J. et al., Cyclic lactam α-melanocortin analogues of Ac-Nle4-cyclo[Asp5,D-Phe7,Lys10] α-melanocyte-stimulating hormone-(4-10)-NH2 with bulky aromatic amino acids at position 7 shows high antagonist potency and selectivity at specific melanocortin receptors. J Med Chem 38:3454-3461, 1995に開示されるように、メラノコルチン受容体活性化の測定用に適合されてきた。一般に、機能活性は、いかなる方法によって測定されてもよく、G結合受容体の活性化及び/又はシグナリングを判定する方法が挙げられ、そしてさらに、将来開発又は報告されるかもしれない方法が挙げられる。前述の論文及びその中で開示される方法はそれぞれ、あたかも全部が示されているかの如く、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0072】
ペプチドは、確認可能であるならば、そのようなペプチドについてのEC
50値が約1000nMよりも大きい場合、「機能的に不活性である」。
【0073】
略語「μm」は、尺度の国際単位の記号であり、マイクロメーター又はマイクロメートルとして知られており、そしてまた一般的にミクロンとしても知られている。
【0074】
本明細書中で用いられる用語「粒子」は、その性質及びサイズについて何ら限定されず、あらゆる粒子、マイクロ粒子、球体、ビーズ、顆粒、ペレット、微粒子、又は経口剤型に組み込まれ得るあらゆる構造単位を含み、そして直径が約1000μm未満の粒子が挙げられる、本明細書中で用いられる「マイクロ粒子」を含む。
【0075】
本明細書中で用いられる用語「処置する」及び「処置」は、患者が、指定された疾患又は障害を患っている間に生じる疾患又は障害の重症度を引き下げる作用を意図している。
【0076】
本明細書中で用いられる用語「薬理的に有効な量」(「治療的に有効な量」を含む)は、所望の治療効果又は生物学的効果を誘導するのに十分な、本発明に従って投与されるペプチドの量を意味する。
【0077】
本明細書中で用いられる用語「予防的に有効な」又は「予防的な」は、患者が、指定された疾患又は障害に苦しみ始める前に、医者又は他の臨床医が予防し、阻害し、又は軽減しようと試みる医学的状態にある哺乳動物の苦痛を予防若しくは阻害し、又は苦痛を軽減することとなる、本発明のペプチドを含む化合物の量を意味する。
【0078】
2.0 製剤及び用途。
2.1 好ましい実施形態において、メラノコルチン受容体特異的ペプチド、好ましくはMC1r特異的環状ペプチド、又はそれらの薬学的に許容される塩は、pH依存性放出形態に製剤化され、メラノコルチン受容体特異的ペプチド又はその薬学的に許容される塩は、少なくとも1つの遅延放出ポリマーを含む粒子マトリックス又はマイクロ粒子マトリックス内に配置される。ペプチド又はその薬学的に許容される塩は、マイクロ粒子マトリックス内で混合されることによって、マイクロ粒子マトリックス、及びペプチド又はその薬学的に許容される塩の混合物を形成し得る。マイクロ粒子マトリックス、及びペプチド又はその薬学的に許容される塩の混合物は、水性可溶性カプセル内に配置されてもよく、当該カプセルは、ゼラチンカプセルであってもよい。或いは、マイクロ粒子マトリックス、及びペプチド又はその薬学的に許容される塩の混合物は、タブレットに形成されてもよく、当該タブレットはさらに、シールコーティング及び腸溶コーティングの少なくとも1つを含んでもよい。少なくとも1つの遅延放出ポリマーとして、場合によっては、Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dからなる群から選択されるコポリマー等の、pH感応性メタクリル酸メチル/メタクリル酸コポリマーを含む、pH依存性放出ポリマーが挙げられ得る。Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dコポリマーは、約6:6:1、又は約6.2:6.2:1、又は約23.25:23:3.75からなる群から選択されるL100-55対S100対FS30Dの重量比で存在してもよい。
【0079】
別の実施形態において、メラノコルチン受容体特異的ペプチド又はその薬学的に許容される塩は、Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dap)−Trp−NH
2(配列番号6)又はその薬学的に許容される塩である。Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dap)−Trp−NH
2(配列番号6)又はその薬学的に許容される塩を含む製剤において、粒子マトリックス又はマイクロ粒子マトリックスは、約6:6:1、又は約6.2:6.2:1、又は約23.25:23:3.75からなる群から選択されるL100-55対S100対FS30Dの重量比で存在するEudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dを含むpH依存性遅延放出ポリマー混合物が挙げられ得る。Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dは、最大粒子サイズが直径1000μm以下、好ましくは直径約600μm以下、さらに好ましくは少なくとも直径約250μmである粒子、例えばマイクロ粒子であってもよい。一態様において、最大粒子サイズは、少なくとも直径約1500μm、直径1400μm、直径1300μm、直径1200μm、直径1100μm、直径1000μm、直径900μm、直径800μm、直径700μm、直径600μm、又は直径500μmを含んでもよい。別の態様において、最小粒子は、直径約2.5μm、直径5μm、直径10μm、直径15μm、直径20μm、直径25μm、直径50μm、直径75μm、直径100μm、直径125μm、直径150μm、直径175μm、直径200μm、直径225μm、直径250μm、直径300μm、直径350μm、又は直径400μm以上であってもよい。さらに別の態様において、最小直径及び最大直径は、前述の群から選択され、そして最小粒径と最大粒径間の差異は、約100μm、125μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、550μm、又は600μm以下である。部分的に、最大粒径、最小粒径、及び最小粒径と最大粒径間の差異は、処置されることが所望されるGI管の領域へのメラノコルチン受容体特異的ペプチドの最大送達を得るように最適化することができる。
【0080】
一部の実施形態において、メラノコルチン受容体特異的ペプチド、好ましくはMC1r特異的環状ペプチド又はその薬学的に許容される塩は、pH依存性放出形態で製剤化される。或いは、そのようなペプチドは、GI管、例えば、十二指腸、空腸、回腸、末端回腸、上行結腸、横断結腸、下行結腸、S状結腸、又は直腸の特定の領域にてペプチドを放出する形態で製剤化される。一態様において、製剤は、MC1r特異的環状ペプチド又はその薬学的に許容される塩、及び特定のpH(例えばpH5又はpH7)にて当該ペプチドを放出する腸溶コーティングでコーティングされた不活性キャリアを含有してもよい。一態様において、十二指腸放出又は空腸放出に好ましいpHは、pH4.5〜5.5又はpH5.5〜6.5である。別の態様において、回腸放出、末端回腸放出、又は結腸放出に好ましいpHは、pH5.5〜6.5又はpH6.5〜7.5である。不活性キャリアが利用されるならば、マンニトール、ラクトース、微結晶セルロース、又はデンプンが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0081】
特定の実施形態及びIBD徴候、例えばUCについて、活性薬物、例えばMC1r特異的環状ペプチド又はその薬学的に許容される塩の放出を、約5.5のpHにて開始するが、2時間を超えるが7時間未満の期間にわたって、好ましくは約4〜約7時間の期間にわたって、活性薬物の20%以下をpH5.5にて放出し、且つ約6.0を超える、又は代わりに約6.5のpHにて80%以上の活性薬物を放出する複合経口薬を利用することが所望される。
【0082】
別の実施形態において、MC1r特異的環状ペプチド又はその薬学的に許容される塩は、粒子マトリックス又はマイクロ粒子マトリックス内に製剤化され、例えば、カプセル内に配置された、遅延放出ポリマー混合物又はpH依存性放出ポリマー混合物であり、当該カプセルはさらに、シールコーティング若しくは腸溶コーティングを、又はこれらの双方を含んでもよい。pH依存性放出ポリマーは、約6:6:1、又は約6.2:6.2:1、又は約23.25:23:3.75からなる群から選択されるL100-55対S100対FS30Dの重量比で存在するEudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dを含むポリマー混合物を含んでもよい。Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dは、最大粒子サイズが直径1000μm以下、好ましくは直径約600μm以下、さらに好ましくは少なくとも直径約25μm、又は少なくとも直径約250μmのマイクロ粒子であってもよい。
【0083】
別の実施形態において、MC1r特異的環状ペプチド又はその薬学的に許容される塩は、タブレットコア、シールコーティング、及び腸溶コーティングを含む微粒子の形態又はタブレット形態で製剤化され、タブレットコアは、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、及びMC1r特異的環状ペプチド又はその薬学的に許容される塩を含む。一例として、限定されないが、タブレットコアの製剤は、糖アルコール、例えば、アラビトール、エリトリトール、グリセロール、イソマルト、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、若しくはキシリトール、又は所望されるあらゆる平均粒子サイズ、例えば、約50μm、約100μm、約250μm、若しくは好ましくは約1,000μm未満の所望されるあらゆる平均粒子サイズの微結晶セルロースを含んでもよい。タブレット又は他の製剤はさらに、薬学的に許容される賦形剤、例えば、ポビドン、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クエン酸塩、例えばクエン酸ナトリウム又はステアリン酸マグネシウムを含んでもよい。そのような賦形剤は、界面活性剤、崩壊剤、潤滑剤、又はバインダーとして機能し得る剤を含む。ゆえに、一般的な薬学的バインダー、例えばポビドン、希釈剤、滑剤、フィラー、例えば微結晶セルロース、潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、崩壊剤、例えばクロスカルメロースナトリウム、保存剤、着色剤等が使用されてもよい。
【0084】
2.2 本明細書中で開示される組成物、製剤、及び方法は、医療用途、及び動物管理又は獣医学的用途の双方に用いることができる。典型的には、当該方法は、ヒトに用いられるが、他の哺乳動物に用いられてもよい。用語「患者」は、哺乳動物の個体を表し、明細書の全体を通して、そして特許請求の範囲において、そのように用いられる。本発明の主要な用途は、ヒト患者に関わるが、本発明は、ラボ、農場、動物園、野生、ペット、スポーツ、又は他の動物に用いられてもよい。臨床徴候及び具体的なユーティリティとして、以下が挙げられる:
【0085】
本発明のペプチド、組成物、製剤、及び方法は、対象において、UC及びクローン病が挙げられるがこれらに限定されないIBDの処置に関する。別の態様において、炎症性疾患として、IBD、例えば、クローン病、UC、膠原性大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、便流変更性大腸炎(diversion colitis)、ベーチェット症候群、感染性大腸炎、及び分類不能大腸炎の形態が挙げられる。
【0086】
種々のサイトカインの発現が、ある種の形態のIBDに次ぐ、又は同時に起こる炎症プロセスが挙げられる炎症プロセス中に、増大する。TNF−αは、主にマクロファージによって、そしてまた、他のタイプの細胞によって生成される多面発現性サイトカインである。炎症プロセス中に増大する他のサイトカインとして、IL−1及びIL−6が挙げられる。TNF−α等のサイトカインが、多くの例において有益な作用を有する一方、大幅なレベルの増大、又はかなりの期間のレベルの増大により、病理作用が及び得る。
【0087】
一実施形態において、本発明は、IBDに次ぐ炎症誘発性サイトカインの産生及び発現を減少させることを含む、炎症誘発性サイトカインの産生及び発現を減少させるために、本発明のペプチドの1つ以上を用いる方法に関する。限定されないが、TNF−α、IL−1、及びIL−6の1つ以上が挙げられる炎症誘発性サイトカインの産生及び発現の減少は、好ましくは、IBD等の疾患の部位での組成物からのペプチドの放出後の短い期間内で起こる。
【0088】
関連する実施形態において、本発明は、抗炎症性サイトカインの産生及び発現を増大させるために、本発明のペプチドの1つ以上を用いる方法に関する。限定されないが、IL−10が挙げられる抗炎症性サイトカインの産生及び発現の増大は、好ましくは、IBD等の疾患の部位での組成物からペプチドの放出後の短い期間内で起こる。
【0089】
一般に、患者に投与されるMC1r特異的環状ペプチド又はその薬学的に許容される塩の実際の量は、投与の様式、用いられる製剤、及び所望される応答によって決まるかなり広い範囲の間で変動することとなる。処置用の投薬は、所望される治療効果をもたらすのに十分な量の、前述の手段又は当該技術において知られている他のあらゆる手段のいずれかによる投与である。ゆえに、治療的に有効な量として、患者において、UC及びクローン病が挙げられるIBDを治療的に緩和するのに、又はIBDの発症若しくは再発を予防し、若しくは遅延させるのに、又はUC及びクローン病が挙げられるIBDの増悪の再発を予防若しくは制限する際に、予防的に効果的である、若しくは予防的であるのに十分な、本発明のペプチド又は医薬組成物の量が挙げられる。
【0090】
一般に、本発明の実行に利用されるMC1r特異的環状ペプチド又はその薬学的に許容される塩は、高度に活性である。例えば、当該環状ペプチドは、選択された特定のペプチド、送達剤型、所望される治療応答、及び当業者に知られている他の要因に応じて、GI管の管腔、例えば結腸又は大腸の管腔に、好ましくはIBD又は他の疾患の部位の近位に、約0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、50、100、500、1000、又は5000μg/体重kgにて投与されてもよい。
【0091】
3.0 特定の徴候用の併用療法。
本発明のペプチド、組成物、及び方法は、IBD、UC、若しくはクローン病、又はMC1r媒介性若しくはMC1r応答性である、GI管のあらゆる疾患、徴候、症状、若しくは症候群の、1つ以上の他の医薬的に活性な化合物と組み合わせた投与による処置に用いられてもよい。そのような組合せ投与は、本発明のペプチド、及び1つ以上の他の医薬的に活性な化合物の双方を含む単一の剤型によってもよく、そのような単一の剤型として、タブレット又はカプセルが挙げられる。或いは、組合せ投与は、2つの異なる剤型の投与によってもよく、一方の剤型は、本発明のペプチドを含有し、そして他方の剤型は、別の医薬的に活性な化合物を含む。この例において、剤型は、同じであっても異なってもよい。用語「共投与する」は、併用療法において少なくとも2つの化合物がそれぞれ、生物活性のそれぞれの期間又は作用が重なる時間枠の間に投与されることを示す。ゆえに、当該用語は、化合物の連続投与及び同時投与を含み、一化合物が、本発明のペプチドの1つ以上である。複数の化合物が共投与されるならば、2つ以上の化合物の投与経路は、同じである必要はない。併用療法を限定する意味はないが、以下は、使用されてもよい特定の併用療法を例示する。
【0092】
GI管の炎症関連疾患、徴候、症状、及び症候群の処置のために、本発明のペプチドが、1つ以上の抗炎症剤との共投与によることを含む併用療法に用いられてもよい。抗炎症剤の一クラスが、グルココルチコイドであり、以下に限定されないが、コルチゾンが挙げられ、酢酸コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、プレドニゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、及びアルドステロンが挙げられる。抗炎症剤の別のクラスが、アミノサリチラートであり、以下に限定されないが、5−アミノサリチル酸、例えば、メサラミン、バルサラジド、及びオルサラジンが挙げられる。
【0093】
共投与によるものを含む併用療法に用いられ得る他の抗炎症剤として、アスピリン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(例えば、イブプロフェン及びナプロキセン(naproxin))、TNF−αインヒビタ(例えば、テニダプ及びラパマイシン、又はそれらの誘導体)、若しくはTNF−αアンタゴニスト(例えば、インフリキシマブ、OR1384)、シクロオキシゲナーゼインヒビタ(すなわち、COX−1及び/又はCOX−2インヒビタ)、CTLA4−lgアゴニスト/アンタゴニスト、CD40リガンドアンタゴニスト、IMPDHインヒビタ、例えばミコフェノレート、インテグリンアンタゴニスト、アルファ−4ベータ−7インテグリンアンタゴニスト、細胞接着インヒビタ、インターフェロンガンマアンタゴニスト、ICAM−1、プロスタグランジン合成インヒビタ、ブデソニド、クロファジミン、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼインヒビタ、タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)インヒビタ、IKKインヒビタ、過敏性大腸症候群の処置用の他の療法(例えば、米国特許第6,184,231号に開示されるもの)、又は他のNF−κBインヒビタ、例えば、コルチコステロイド、カルフォスチン、CSAID、4−置換イミダゾ[1,2−A]キノキサリン(米国特許第4,200,750号に開示される);インターロイキン−10、サリチラート、一酸化窒素、及び他の免疫抑制剤;並びに核転座インヒビタ、例えばデオキシスペルグアリンが挙げられる。共投与されてもよい免疫抑制薬として、アザチオプリン、メルカプトプリン、シクロスポリン、及びメトトレキサートが挙げられる。また、共投与は、腫瘍壊死因子(TNF)−アルファインヒビタ、例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、及びゴリムマブと共に使用されてもよい。用いられてもよい他の生物学的療法は、ナタリズマブ、ベドリズマブ、及びウステキヌマブを含む。共投与は、プロトンポンプインヒビタ(例えば、オメプラゾール、パントプラゾール、エゾメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、デクスランソプラゾール、ラベプラゾールナトリウム、オメプラゾールマグネシウム、パントプラゾールナトリウム、ナプロキセン/エゾメプラゾール、エゾメプラゾールマグネシウム、エゾメプラゾールナトリウム、又はオメプラゾール/重炭酸イオン)と共に、又は小腸内細菌過増殖を制御する抗生物質(例えば、リファキシミン又はネオマイシン)と共に使用されてもよい。
【0094】
4.0 多微粒子送達製剤を製造する方法。
一態様において、MC1r特異的ペプチドが挙げられる、本発明に使用されるペプチドは、GI管の管腔への、好ましくはGI管のより下方の領域の管腔への、さらに好ましくは、GI管におけるIBD等の疾患のあらゆる位置の前(直前が挙げられる)への、未変化のペプチドの経口送達用に製剤化される。胃、及びGI管の上方の領域、例えば小腸を回避することで、GI管の下方の領域に薬物を送達することが、多くの薬物分子、特に、タンパク質又はペプチドを含むタンパク質薬物に所望される。口及び胃は、アミノ酸鎖を壊すことができる種々の酵素を含む。小腸は、ペプチドが挙げられるアミノ酸鎖を、ジペプチド及び単一のアミノ酸残基が挙げられる、吸収且つ消化され得る小さな単位に小さくすることができる種々のペプチダーゼを生成する。ゆえに、結腸が挙げられる下方GI管の管腔への未変化のペプチドの送達のために、ペプチド分解なしで胃、及び消化管の上方の領域を通過する方法及び製剤が使用されなければならない。また、ペプチドが、pH又は酵素活性に起因して、胃の酸性環境において安定しないならば、このアプローチが用いられてもよい。
【0095】
プロドラッグの使用、pH感応性ポリマーによるコーティング、徐放性剤型の設計、又は生物分解性ポリマー、例えば結腸細菌によって排他的に分解するアゾポリマー及び多糖の利用が挙げられる下方GI管の標的化を達成するのに概念的に利用されてもよいいくつかのアプローチがある。各系は、利点及び不利点がある。
【0096】
結腸送達用の単一ユニットの剤型は、結腸内での局所的治療作用の喪失の原因となり得る、高い患者間実行可能性(viability)及び患者内実行可能性、並びに不十分な再現性に起因して、製剤の早期崩壊の不利益を被り得る。多微粒子送達系は、より良好な生体利用性、局所的炎症のリスクの引下げ、及び予測可能な胃排出等の利益をもたらす。
【0097】
ゆえに、一態様において、本発明は、メラノコルチン受容体特異的ペプチド、例えばMC1r特異的環状ペプチド又はその薬学的に許容される塩を含有する微粒子剤型を提供し、当該微粒子剤型は、胃の酸性環境内で、メラノコルチン受容体特異的ペプチド又はその薬学的に許容される塩を保護する一方、小腸、又は上方のGI管内で、プロテアーゼ分解を妨げ、又は制限するが、下方GI管、例えば大腸又は結腸内で、未変化のメラノコルチン受容体特異的ペプチド又はその薬学的に許容される塩を放出する。この手段によって、メラノコルチン受容体特異的ペプチド又はその薬学的に許容される塩は、大腸若しくは結腸が挙げられる下方GI管の管腔に、又は大腸若しくは結腸が挙げられる下方GI管の管腔の近位に存在する、1つ以上のMC受容体、好ましくはMC1rに結合して、これをアゴナイズすることによって、治療応答をもたらす。
【0098】
このアプローチは、pH感応性メタクリル酸メチル/メタクリル酸コポリマーを用いる遅延放出(腸溶)マイクロ粒子を利用することによって、使用されてもよい。利用されてもよいpH感応性メタクリル酸メチル/メタクリル酸コポリマーの一形態が、Evonik Industriesによって製造されているEudragit(登録商標)ポリマーであるが、他の様々なpH感応性メタクリル酸メチル/メタクリル酸コポリマー、及び他の様々なpH感応性ポリマー又はコポリマーが、本発明に使用されてもよいことが理解される。
【0099】
メラノコルチン受容体特異的ペプチドは、重量ベースで、約0.1%〜約30%のpH感応性遅延放出粒子を構成してもよい。好ましくは、メラノコルチン受容体特異的ペプチドは、重量ベースで、約1%〜約10%、又は約2%〜約5%のpH感応性遅延放出粒子を構成する。
【0100】
粒子又はマイクロ粒子は、硬ゼラチンカプセル等のカプセル中に充填されてもよいし、タブレット、ビーズ、顆粒、粉末、カプレット、トローチ、サシェ、カシェ剤、パウチ、ガム、スプリンクル、及び懸濁液等に製剤化されてもよい。一態様において、メラノコルチン受容体特異的ペプチド、好ましくはMC1r特異的環状ペプチド又はその薬学的に許容される塩を含む粒子、及びpH感応性メタクリル酸メチル/メタクリル酸コポリマーが、カプセル又はタブレット等の固体形態に製剤化されるならば、カプセル又はタブレットは、シールコーティング又は腸溶コーティングでコーティングされても、双方でコーティングされてもよい。一般に、タブレット、ビーズ、顆粒、カプレットが挙げられる、薬物送達のあらゆる固体形態は、シールコーティング又は腸溶コーティングでコーティングされても、双方でコーティングされてもよい。腸溶コーティングは、pH感応性メタクリル酸メチル/メタクリル酸コポリマーを含んでもよい。
【0101】
一態様において、本発明は、10%未満の活性薬物、例えばメラノコルチン受容体特異的ペプチド、MC1r特異的環状ペプチド、又はその薬学的に許容される塩が、約1〜約3の酸性pHで2時間の期間に放出され、追加の10%未満の活性薬物が、約4.5〜5.5の酸性pHで1時間の期間に放出され、そして80%以上の活性薬物が、約6を超えるpHにて4〜7時間の期間に放出される製剤、剤型、及び方法を提供する。
【0102】
本発明において、特に有用なのが、pH依存性ポリメタクリレート、例えば、Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)L100、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dである。これらのポリメタクリレートは、以下を含む:
【0103】
Eudragit(登録商標)L100-55:固体物質。当該製品は、固体物質で0.7%ラウリル硫酸ナトリウムPh. Eur./NF及び2.3%ポリソルベート80 Ph. Eur./NFを含有する。Eudragit(登録商標)L100-55は、メタクリル酸及びアクリル酸エチルに基づくアニオンコポリマーを含有する。遊離カルボキシル基の、エステル基に対する比率は、おおよそ1:1である。モノマーは、コポリマー鎖に沿ってランダムに分配されている。SEC方法に基づいて、Eudragit(登録商標)L100-55の重量平均モル質量(Mw)は、おおよそ320,000g/molである。
【0104】
Eudragit(登録商標)L100:固体物質。当該製品は、固体物質で0.3%ラウリル硫酸ナトリウムPh. Eur./NFを含有する。Eudragit(登録商標)L100は、メタクリル酸及びメタクリル酸メチルに基づくアニオンコポリマーである。遊離カルボキシル基の、エステル基に対する比率は、Eudragit(登録商標)L100において、おおよそ1:1である。SEC方法に基づいて、Eudragit(登録商標)L100の重量平均モル質量(Mw)は、おおよそ125,000g/molである。
【0105】
Eudragit(登録商標)S100:固体物質。当該製品は、固体物質で0.3%ラウリル硫酸ナトリウムPh. Eur./NFを含有する。Eudragit(登録商標)S100は、メタクリル酸及びメタクリル酸メチルに基づくアニオンコポリマーである。遊離カルボキシル基の、エステル基に対する比率は、Eudragit(登録商標)S100において、おおよそ1:2である。SEC方法に基づいて、Eudragit(登録商標)S100の重量平均モル質量(Mw)は、おおよそ125,000g/molである。
【0106】
Eudragit(登録商標)FS30D:30%乾燥物質入り水性分散系として供給される。水は、”Purified Water in bulk” Ph. Eur.の仕様に従って、そしてConductivity of ”Purified Water” USPについての仕様に従って、試験される。分散系は、固体物質で0.3%ラウリル硫酸ナトリウムPh. Eur./NF及び1.2%ポリソルベート80 Ph. Eur./NFを、乳化剤として含有する。Eudragit(登録商標)FS30Dは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、及びメタクリル酸に基づくアニオンコポリマーの水性分散系である。遊離カルボキシル基の、エステル基に対する比率は、おおよそ1:10である。モノマーは、コポリマー鎖に沿ってランダムに分配されている。SEC方法に基づいて、Eudragit(登録商標)FS30Dの重量平均モル質量(Mw)は、おおよそ280,000g/molである。
【0107】
Eudragit(登録商標)L100、Eudragit(登録商標)L100-55、又はEudragit(登録商標)S100の1gが、7gのメタノール、エタノール中、水性イソプロピルアルコール中、アセトン(おおよそ3%の水を含有する)中、そして1N水酸化ナトリウム中に溶解して、澄明〜濁った溶液を与える。これらの特定のEudragit(登録商標)調製物は、酢酸エチル、塩化メチレン、石油エーテル、及び水中に実質的に不溶性である。Eudragit(登録商標)L100-55は、pH5.5を超えて溶解する;Eudragit(登録商標)L100は、pH6.0を超えて溶解する;Eudragit(登録商標)S100は、pH7.0を超えて溶解する;そしてEudragit(登録商標)FS30Dは、pH7.0を超えて溶解する。
【0108】
種々の技術が、薬物カプセル化に利用可能である。一態様において、固体分散系を介したマイクロ粒子形成に続く微粉化が利用されてもよく、これは単純であり、高いカプセル化効率及び高い収率を実現する。
【0109】
薬物を製造するために、メラノコルチン受容体特異的ペプチド、MC1r特異的環状ペプチド、又はそれらの薬学的に許容される塩は、適切な溶媒、例えば、アセトン、メタノール、若しくは水、又は前述の一部若しくは全部の組合せ中に分散されてもよい。Eudragit(登録商標)コポリマーは、メタノール又はアセトン中に溶解されてもよい。ペプチドを含む薬物分散系は、コポリマー溶液に、撹拌されながら加えられる。次に、生じた混合液は、真空乾燥されて、粉砕されて、適切なスクリーンを通して篩にかけられる。一態様において、60メッシュスクリーン上に30メッシュスクリーンが使用され、60メッシュスクリーン上に収集された生じた粒子サイズは、直径250〜600μmである。別の態様において、60メッシュスクリーン上に収集された粒子は、0.1M塩酸溶液pH1.2で懸濁又はリンスされて、表面MC1rペプチド薬物分子を除去してから、乾燥させた。生じたマイクロ粒子は、カプセル化されてもよいし、タブレット化されてもよい。また、充填されたカプセル又はタブレットは、上方消化管内で放出される薬物の量をさらに減らすことによって、より多くの薬物が結腸に達することができるように、腸溶コーティングされる。
【0110】
或いは、メタノール、メタノール−水(例えば2:1の混合液)、及び水が、メラノコルチン受容体特異的ペプチド又はその薬学的に許容される塩用の溶媒/分散剤として使用されてもよい。或いは、アセトン又はアセトン−水が、溶媒/分散剤として使用されてもよい。一態様において、水が使用されるならば、コポリマーを溶解させるのに用いられるアセトンの量の約3%以下となるような量で用いられてもよい。
【0111】
本発明に使用される製剤は、一実施形態において、可溶性であり、且つより低いpHにて関連ペプチドを放出するEudragit(登録商標)ポリマー、例えばL100-55を、可溶性であり、且つより高いpHにて関連ペプチドを放出するポリマー、例えばEudragit(登録商標)S100若しくはFS30D、又は双方と組み合わせて、組み込んでもよい。この混合物は、より広いpH範囲にわたる放出を確実にする。より広いpH範囲での放出は、単一の特定のpHでの結腸放出用の先行技術の製剤よりも優れている。なぜなら、一部の患者において疾患が存在し得る、GI管内のより上方での部分的な放出を可能にするため、そしてまた、健康な対象においてみられるよりもGI管のpHが低い(より低いpH値は、IBD疾患状態に起因する)患者のGI管の一部において、放出を実現するためである。所望されるならば、特定のIBD疾患状態での下方GI管のpHの場合のように、様々なEudragit(登録商標)ポリマー(例えば、Eudragit(登録商標)L100-55)が部分的に中和されてもよく、且つ/或いは他の添加物、例えば、アルギン酸、ソルビン酸、若しくはコハク酸、又はそれらの塩が加えられて、4.5〜5.5等のより低いpHでの薬物の放出を増大させてもよい。メラノコルチン受容体特異的ペプチド(当該メラノコルチン受容体特異的ペプチドは、全身吸収を通して治療利益を提供するのではなく、GI管の管腔表面上に、又は表面内に存在する受容体に結合する)と組み合わされる広範囲のpH放出プロファイルの利用は、多種多様な患者の処置に適した治療剤を提供する。ゆえに、メラノコルチン受容体特異的ペプチドの全身吸収がほとんど、又は全くないので、そして、起こり得るあらゆる全身吸収からの治療利益がほとんど、又は全くないので、製剤は、好ましくは、疾患が存在する、又は存在し得るGI管の範囲を通して利益を提供することが、そしてIBDの寛解又は治療をもたらすような範囲内で十分な投薬を実現することが意図される。特に、メラノコルチン受容体特異的ペプチドの全身吸収がほとんど、又は全くないので、消化管の管腔に送達され得るメラノコルチン受容体特異的ペプチドの量を制限する全身毒性も全身性副作用もほとんど、又は全くないことに注目することが重要である。
【0112】
一部の実施形態において、遅延放出(腸溶)粒子又はマイクロ粒子として製剤化された様々なpH感応性メタクリル酸メチル/メタクリル酸コポリマーの組合せが使用される。一部の実施形態において、粒子又はマイクロ粒子は、Eudragit(登録商標)L100-55及びEudragit(登録商標)S100を、約1:1、又は約2:3、又は約1:2、又は約3:2、又は約2:1のL100-55対S-100の重量比で含む。他の実施形態において、粒子又はマイクロ粒子は、Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)L100、及びEudragit(登録商標)S100を、約1:1:1、又は約4:3:3、又は約3:4:3、又は約1:1:1、又は約1:2:1、又は約1:2:2、又は約2:1:1、又は約2:2:1、又は約2:1:2のL100-55対L100対S-100の重量比で含む。他の実施形態において、粒子又はマイクロ粒子は、Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S100、及びEudragit(登録商標)FS30Dを、約6:6:1、又は約23.35:23:3.75、又は約5:5:1、又は約4:4:1、又は約6:5:1、又は約5:6:1、又は約3:3:1、又は約6:5:2、又は約5:6:2のL100-55対S100対FS30Dの重量比で含む。特に好ましいのは、約6:6:1又は約23.25:23:3.75のL100-55対S100対FS30Dの重量比である。
【0113】
メラノコルチン受容体特異的ペプチドの量は、pH感応性遅延放出ポリマーの重量ベースで、約0.1%〜約30%を構成してもよい。好ましくは、メラノコルチン受容体特異的ペプチドは、重量ベースで、約1%〜約10%、又は約2%〜約5%のpH感応性遅延放出ポリマーを構成する。
【0114】
一般に、pH依存性放出ポリマーマトリックス内に配置されたメラノコルチン受容体特異的ペプチドの固体形態は、本明細書中に記載される方法によって、又は、以下に限定されないが、加熱、冷却、冷凍乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、急速溶媒蒸発、溶媒再結晶、マイクロ波誘起析出、超音波処理誘起析出が挙げられる技術によって調製されてもよい。生じた固体形態の粒子サイズは、例えば、約25μm以上の最小寸法から約1000μm直径以下の最大寸法まで変動し得、例えば、摩擦、ミリング、微粒子化、若しくは超音波処理(適切なスクリーンを通した篩分けがあってもなくてもよい)、又は当該技術において知られている他の方法が挙げられる粒子サイズ引下げ技術によって、指定の最小から指定の最大までの粒子サイズの所望の範囲を選択するように制御することができる。一態様において、粒子サイズは、直径約1000μm未満、又は直径約600μm未満、且つ直径約25μm超、又は直径約250μm超である。
【0115】
5.0 腸溶コーティング。
一態様において、メラノコルチン受容体特異的ペプチド、MC1r特異的環状ペプチド、又はそれらの薬学的に許容される塩は、経口送達用に、例えばカプセル形態又はタブレット形態に製剤化される。ペプチドは、好ましくは、タブレット又はカプセルが胃を通過するまで、そして場合によっては、小腸の全部又は一部をさらに通過するまで、ペプチドが放出されないように、ペプチドが、腸溶保護剤内に入れられたカプセル形態又はタブレット形態であるように、製剤化されてもよい。本出願の文脈において、用語腸溶コーティング又は腸溶材料は、本質的には未変化で胃を通過することとなるが、腸管、好ましくは、以下に限定されないが、大腸内で迅速に分解して活性ペプチド原薬を放出することとなるコーティング又は材料を指すことが理解されよう。用いられてもよい一腸溶コーティング溶液は、酢酸フタル酸セルロース、そして場合によっては、他の成分、例えば、水酸化アンモニウム、トリアセチン、エチルアルコール、メチレンブルー、及び精製水を含む。酢酸フタル酸セルロースは、個々の剤型、例えばタブレット及びカプセルを腸溶コーティングするのに用いることができるポリマーであり、約5.5〜約6.0未満のpHにて水中に可溶性でない。酢酸フタル酸セルロースが挙げられる腸溶コーティングは、胃の酸性環境からの保護を実現するが、十二指腸(約6〜6.5のpH)の環境内で溶解し始め、そして剤型が回腸(約7〜8のpH)に達する時までには、完全に溶解する。酢酸フタル酸セルロースに加えて、他の腸溶コーティング材料が知られており、本発明に用いられてもよく、限定されないが、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルエチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ酢酸フタル酸ビニル、及びメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマーが挙げられる。使用される腸溶コーティングは、主に胃の外側の部位にて剤型の溶解を促進し、そして、腸溶コーティングが、おおよそ少なくとも6.0のpHにて、より好ましくは約6.0〜約8.0のpHにて溶解するように選択されてもよい。好ましい一態様において、腸溶コーティングは、回腸付近で溶解して分解する。
【0116】
一部の実施形態において、メラノコルチン受容体特異的ペプチド、MC1r特異的環状ペプチド、又はそれらの薬学的に許容される塩は、外側がコーティングされた微粒子充填カプセル又はタブレット形態に製剤化され、当該コーティングは、場合によっては、pH≦6.0等の低いpHにて安定しているが、約6.0よりも大きいpHにて溶解するポリマーを含む、又はこれからなる。外側のコーティングはさらに、胃内が挙げられる酸性条件で安定するが、結腸の管腔のpH等のより高いpHにて溶解し得るポリマーを含んでもよいし、これからなってもよい。また、コーティングの溶解の速度が、所望される放出パラメータに応じて変動し得ることが有利であり、且つ意図される。
【0117】
外側のコーティングは、一例として、限定されないが、指定されたpH範囲に対して応答性であり、且つ当該pH範囲内で可溶性である、ポリ(メタ)アクリラート等のポリマーが挙げられるポリマーからなってもよいし、これを含んでもよい。一態様において、外側のコーティングは、アニオン基、又はアニオン基に変換され得る基を有する、1つ以上のポリマー又はコポリマーからなる、又はこれを含む。別の態様において、外側のコーティングは、アニオン基、又はアニオン基に変換され得る基を有する1つ以上のポリマー又はコポリマーと一緒に、カチオン基、又はカチオン基に変換され得る基を有する1つ以上の(メタ)アクリラートコポリマーからなる、又はこれを含む。そのような特定のポリマー、コポリマー、及び(メタ)アクリラートコポリマーが、米国特許第9,237,760号(あたかも全部が示されているかの如く、参照によって本明細書に組み込まれる)に教示されている。ゆえに、腸溶コーティングは、アクリラートポリマー、例えばEudragit(登録商標)S100であってもEudragit(登録商標)L100であってもよい。Eudragit(登録商標)S100は、約pH7.0にて溶解する一方、Eudragit(登録商標)L100は、約pH6.0にて溶解する。前述の腸溶コーティングのいずれも、前述の製剤に使用することができ、限定されないが、Eudragit(登録商標)多微粒子製剤を含む製剤が挙げられる。
【0118】
一部の実施形態において、カプセル又はタブレットが挙げられる医薬組成物はさらに、シーリングを含んでもよいし、シールコーティングを含んでもよい。このコーティングは、タブレット中への水分浸透を防止し得る。ゆえに、シールコーティングは、水分に対する、薬学的に許容されるバリアを提供するポリマー又は他の材料を含み得る。そのようなシールコーティングとして、場合によっては所望の色素を有する、ポリビニルアルコール、並びにポリマー及び可塑剤の種々の組合せが挙げられ得る。
【0119】
腸溶コーティングとして用いることができる他のpH依存性ポリマーとして、先で開示されたものに加えて、以下に限定されないが、腸溶セルロース誘導体、例えば、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース;天然樹脂、例えばセラック及びゼイン;腸溶アセタート誘導体、例えばポリ酢酸フタル酸ビニル、酢酸フタル酸セルロース、酢酸アセトアルデヒドジメチルセルロース;並びに種々のポリメタクリレートベースのポリマーが挙げられる。また、pH依存性腸溶コーティングは、前述のもののいずれかを含む、2つ以上のpH依存性ポリマーの組合せを含んでもよい。
【0120】
6.0 本発明に利用されるペプチド。
一態様において、本発明は、環状部分内にHis−Phe−Argに由来するコア配列を含有するが、コア部分内にTrpを含まない環状ペプチドを利用し、Trp、又はその誘導体若しくは模擬物(以下に限定されないが、Nal 1又はNal 2が挙げられる、少なくとも1つのアリール又はヘテロアリールを含む側鎖を有するアミノ酸残基と定義される)は、C末端側の環状部分の直ぐ外側のアミノ酸残基である。一態様において、配列His−Phe−Arg−Xaa
6−Trp(配列番号1)が使用され、Xaa
6はアミノ酸であって、その側鎖が、ペプチドの別のアミノ酸の側鎖とともに環状の架橋を形成するアミノ酸である。
【0121】
His−Phe−Arg−Xaa
6−Trp(配列番号1)に由来するコア配列は、いくつかの置換を含んでもよい。His位置は、Hisであってもよいし、置換された、又は非置換のProであってもよいし、少なくとも1つの第一級アミン、第二級アミン、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコール、エーテル、スルフィド、スルホン、スルホキシド(sufoxide)、カルボニル(carbomyl)、又はカルボキシルを含む側鎖を有するアミノ酸であってもよい。置換されたProとして、以下に限定されないが、アミノ酸、例えば、Hyp、Hyp(Bzl)、Pro(4R−Bzl)、又はPro(4R−NH
2)が挙げられる。Phe位置は、Pheであってもよいが、最も典型的には、置換された、若しくは非置換のD−Phe、D−Nal 1、D−Nal 2、又は、ピリジルを含む側鎖を有するアミノ酸である。Arg位置は、Arg、Lys、Orn、Dab、又はDapであっても、置換された、又は非置換のProであっても、Citであってもよいし、少なくとも1つの第一級アミン、第二級アミン、グアニジン、尿素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はエーテルを含む側鎖を有するアミノ酸であってもよい。Xaa
6は、第一級アミンを含む側鎖を有するアミノ酸、例えば、Lys、Orn、Dab、Dap、カルボキシル基を有するアミノ酸、例えば、Asp、Glu、若しくはhGlu、又はジスルフィド基を有するアミノ酸、例えば、Cys若しくはPenであってもよく、全て、環状の架橋の性質に従う。Trp位置は、少なくとも1つの置換された、又は非置換のアリール又はヘテロアリール、例えば、Trp、Nal 1、又はNal 2を含む側鎖を有するアミノ酸であってもよい。
【0122】
一態様において、本発明は、式(I)の環状ペプチド:
【化3】
(その鏡像異性体、立体異性体、若しくはジアステレオ異性体、又は前述のいずれかの薬学的に許容される塩が全て挙げられる)を含む製剤を利用し、
式中:
R
1は、−H、−NH−R
10、−NH−R
10−R
11、又は−NH−R
11であり;
R
2は、−CH−又は−N−であり;
R
3は−H、−CH
3、又は−CH
2−であり、−CH
2−であるならば、R
4と共に、一般的な構造の環
【化4】
を形成し;
R
4は、−H、−(CH
2)
z−であり、R
3が−CH
2−であるならば、そして−(CH
2)
z−であるならば、R
3と共に環を形成し、式中、−(CH
2)
z−中のあらゆるHは、場合によっては、R
12で置換されており、又はR
4は、−(CH
2)
w−R
13−(CH
2)
w−R
14であり、式中、いずれかの(CH
2)
w中のあらゆるHは、場合によっては、−(CH
2)
w−CH
3で置換されており;
R
5は、−(CH
2)
w−R
15であり;
R
6は、−H、−CH
3、又は−CH
2−であり、−CH
2−であるならば、R
7と共に、一般的な構造の環
【化5】
を形成し;
R
7は、−(CH
2)
z−であり、R
6が−CH
2−であるならば、そして−(CH
2)
z−であるならば、R
6と共に環を形成し、又はR
7が−(CH
2)
w−R
16であり;
R
8は、−R
17−R
18又は−R
18であり;
R
9は、
−(CH
2)
x−C(=O)−NH−(CH
2)
y−、
−(CH
2)
x−NH−C(=O)−(CH
2)
y−、
−(CH
2)
x−C(=O)−(CH
2)
z−C(=O)−(CH
2)
y−、
−(CH
2)
x−C(=O)−NH−C(=O)−(CH
2)
y−、
−(CH
2)
x−NH−C(=O)−NH−(CH
2)
y−、
−(CH
2)
x−NH−C(=O)−(CH
2)
z−C(=O)−NH−(CH
2)
y−、又は
−(CH
2)
x−S−S−(CH
2)
y−であり;
R
10は、1〜3個のアミノ酸残基であり;
R
11は、H、又はC
1〜C
17アシル基であり、式中、C
1〜C
17は、直鎖状又は分枝状のアルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、又はアルキルアリールを含み;
R
12は、場合によっては存在し、そして存在するならば、それぞれの例において、独立して、−R
13−(CH
2)
w−R
14であり;
R
13は、場合によっては存在し、そして存在するならば、それぞれの例において、独立して、
−O−、
−S−、
−NH−、
−S(=O)
2−、
−S(=O)−、
−S(=O)
2−NH−、
−NH−S(=O)
2−、
−C(=O)−、
−C(=O)−O−、
−O−C(=O)−、
−NH−C(=O)−O−、
−O−C(=O)−NH−、
−NH−C(=O)−、又は
−C(=O)−NH−であり;
R
14は、それぞれの例において、独立して、
−H、−CH
3、−N(R
19a)(R
19b)、−NH−(CH
2)
z−N(R
19a)(R
19b)、−NH−CH(=NH)−N(R
19a)(R
19b)、−NH−CH(=O)−N(R
19a)(R
19b)、−O(R
19a)、−(R
19a)(R
19b)、−S(=O)
2(R
19a)、−C(=O)−O(R
19a)、
【化6】
であり、
式中、R
14中のあらゆる環は、場合によっては、1つ以上の環置換基で置換されており、そして1つ以上の置換基が存在する場合、同じであり、又は異なっており、そして独立して、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、−O−アリール、C−(=O)OH、又はC(=O)−N(R
19a)(R
19b)であり;
R
15は、フェニル、ナフチル、又はピリジルであり、場合によっては、ハロ、(C
1〜C
10)アルキル−ハロ、(C
1〜C
10)アルキル、(C
1〜C
10)アルコキシ、(C
1〜C
10)アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、及びアルコキシ−カルボニルから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されており;
R
16は、−H、−N(R
19a)(R
19b)、−NH−(CH
2)
z−N(R
19a)(R
19b)、−NH−CH(=NH)−N(R
19a)(R
19b)、−NH−CH(=O)−N(R
19a)(R
19b)、−O(R
19a)、直鎖状又は分枝状のC
1〜C
17アルキル鎖、−C(=O)−N(R
19a)(R
19b)、−S(=O)
2(R
19a)、
【化7】
であり、
式中、あらゆる環は、場合によっては、1つ以上の任意選択の環置換基で置換されており、そして1つ以上の置換基が存在する場合、同じであり、又は異なっており、そして独立して、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、アラルキル、O−アラルキル、又は−O−アリールであり;
R
17は、1〜3個のアミノ酸残基であり;
R
18は、−OH、−N(R
19a)(R
19b)、−N(R
19a)(CH
2)
w−(C
1〜C
7)シクロアルキル、又は−O−(CH
2)
w−(C
1〜C
7)シクロアルキルであり;
R
19a及びR
19bは、それぞれ独立して、H、又はC
1〜C
4の直鎖状若しくは分枝状のアルキル鎖であり;
wは、それぞれの例において、独立して、0〜5であり;
xは、1〜5であり;
yは、1〜5であり;そして
zは、それぞれの例において、独立して、1〜5である。
【0123】
式(I)の環状ペプチドにおいて、R
17は、式
【化8】
の単一のアミノ酸残基であってもよく、
式中、R
20は、
【化9】
であり、場合によっては、1つ以上の環置換基で置換されており、そして1つ以上が存在する場合、同じであり、又は異なっており、そして独立して、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、又は−O−アリールである。
【0124】
別の態様において、本発明は、式(II):
【化10】
の環状ペプチドを利用し、
式中、可変部分は、式(I)に指定された通りである。
【0125】
別の態様において、本発明は、式(III):
【化11】
の環状ペプチドを利用し、
式中、R
21a、R
21b、及びR
21cは、それぞれの例において、独立して、水素、ハロ、(C
1〜C
10)アルキル−ハロ、(C
1〜C
10)アルキル、(C
1〜C
10)アルコキシ、(C
1〜C
10)アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、又はアルコキシ−カルボニルであり、そして他の全ての可変部分は、式(I)に指定された通りである。
【0126】
別の態様において、本発明は、式(IV):
【化12】
の環状ペプチドを利用し、
式中、R
22は、H、又はC
1〜C
9の直鎖状若しくは分枝状のアルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、若しくはアルキルアリールであり;
R
21a、R
21b、及びR
21cは、式(III)について定義された通りであり;そして
他の全ての可変部分は、式(I)に指定された通りである。
【0127】
別の態様において、本発明は、式(V):
【化13】
の環状ペプチドを利用し、
式中、可変部分は、式(IV)の環状ペプチドに指定された通りである。
【0128】
別の態様において、本発明は、式(VI):
【化14】
の環状ペプチドを利用し、
式中、可変部分は、式(III)の環状ペプチドに指定された通りである。
【0129】
式(I)の環状ペプチドにおいて、R
9は、−(CH
2)
x−C(=O)−NH−(CH
2)
y−であってもよく、式中、xは4であり、且つyは3であり、xは3であり、且つyは2であり、又はxは2であり、且つyは1である。或いは、R
9は、−(CH
2)
x−NH−C(=O)−(CH
2)
y−であってもよく、式中、xは1であり、且つyは2であり、xは2であり、且つyは3であり、又はxは3であり、且つyは4である。
【0130】
式(I)の環状ペプチドにおいて、R
3は、R
4と共に、一般的な構造の環
【化15】
を形成してもよく、
式中、zは3である。
【0131】
式(I)の環状ペプチドにおいて、R
17は、式
【化16】
の単一のアミノ酸残基であってもよい。
【0132】
ゆえに、本発明は、一態様において、式(VII):
Z−Xaa
1−Xaa
2−Xaa
3−Xaa
4−Xaa
5−Xaa
6−Xaa
7−Y (VII)
の環状ペプチド、又はその薬学的に許容される塩を利用してもよく、式中:
Zは、H又はN末端基であり;
Xaa
1は、場合によっては存在し、そして存在するならば、1〜3個のL−又はD−異性体アミノ酸残基であり;
Xaa
2及びXaa
6は、L−又はD−異性体アミノ酸であり、その側鎖は、環状の架橋を含み;
Xaa
3は、L−若しくはD−Proであり、場合によっては、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、アルキル−アリール、アルキル−O−アリール、アルキル−O−アルキル−アリール、若しくは−O−アリールで置換されており、又はXaa
3は、少なくとも1つの第一級アミン、第二級アミン、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、エーテル、スルフィド、若しくはカルボキシルを含む側鎖を有するアミノ酸のL−若しくはD−異性体であり;
Xaa
4は、フェニル、ナフチル、又はピリジルを含む側鎖を有するL−又はD−異性体アミノ酸であり、場合によっては、環は、ハロ、(C
1〜C
10)アルキル−ハロ、(C
1〜C
10)アルキル、(C
1〜C
10)アルコキシ、(C
1〜C
10)アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、及びアルコキシ−カルボニルから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されており;
Xaa
5は、L−若しくはD−Proであり、又はXaa
5は、少なくとも1つの第一級アミン、第二級アミン、グアニジン、尿素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、若しくはエーテルを含む側鎖を有するL−若しくはD−異性体アミノ酸であり;
Xaa
7は、場合によっては存在し、そして存在するならば、1〜3個のL−又はD−異性体アミノ酸残基であり;そして
Yは、C末端基である。
【0133】
一態様において、Xaa
4は、D−Pheであってもよく、場合によっては、ハロ、(C
1〜C
10)アルキル−ハロ、(C
1〜C
10)アルキル、(C
1〜C
10)アルコキシ、(C
1〜C
10)アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、及びアルコキシ−カルボニルから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されている。
【0134】
別の態様において、Xaa
2及びXaa
6の一方が、Asp、hGlu、又はGluのL−又はD−異性体であってもよく、そしてXaa
2及びXaa
6の他方が、Lys、Orn、Dab、又はDapのL−又はD−異性体である。代替の態様において、Xaa
2及びXaa
6はそれぞれ、Cys、D−Cys、Pen、又はD−Penであってもよい。
【0135】
別の態様において、Xaa
1は、直鎖状又は分枝状のアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールを含む側鎖を有するアミノ酸であってもよい。
【0136】
別の態様において、Xaa
7は、少なくとも1つのアリール又はヘテロアリールを含む側鎖を有するアミノ酸であってもよく、場合によっては、1つ以上の環置換基で置換されており、そして1つ以上の置換基が存在する場合、同じであり、又は異なっており、そして独立して、ヒドロキシル、ハロゲン、スルホンアミド、アルキル、−O−アルキル、アリール、又は−O−アリールである。
【0137】
別の態様において、N末端基は、C
1〜C
17アシル基であってもよく、C
1〜C
17は、直鎖状若しくは分枝状のアルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、若しくはアルキルアリール、直鎖状若しくは分枝状のC
1〜C
17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル、若しくはアラルキル鎖、又はN−アシル化された直鎖状若しくは分枝状のC
1〜C
17アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル、若しくはアラルキル鎖を含む。
【0138】
別の態様において、Yは、1つ又は2つの直鎖状又は分枝状のC
1〜C
17アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル、又はアラルキル鎖で置換されているヒドロキシル、アミド、又はアミドであってもよい。
【0139】
ゆえに、本発明は、別の態様において、先で定義された式(VII)の環状ペプチドを提供するが、
Xaa
4は、D−Pheであり、場合によっては、ハロ、(C
1〜C
10)アルキル−ハロ、(C
1〜C
10)アルキル、(C
1〜C
10)アルコキシ、(C
1〜C
10)アルキルチオ、アリール、アリールオキシ、ニトロ、ニトリル、スルホンアミド、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、及びアルコキシ−カルボニルから独立して選択される1つ以上の置換基で置換されており;
Xaa
5は、Arg、Lys、Orn、Dab、又はDapのL−又はD−異性体であり;そして
Xaa
7は、Trp、Nal 1、又はNal 2のL−又はD−異性体である。
【0140】
前述のものにおいて、一態様において、Xaa
3は、HisのL−又はD−異性体であってもよく、そして別の態様において、Zは、C
1〜C
17アシル基であってもよく、そしてXaa
1は、NleのL−又はD−異性体であってもよい。
【0141】
前述のものにおいて、そして式(I)において、置換Proは、例えば、Hyp、Hyp(Bzl)、Pro(4−Bzl)、及びPro(4−NH
2)であってもよい。
【0142】
式(I)〜式(VII)内に包含されるペプチドは、1つ以上の非対称の要素、例えばステレオジェニック(stereogenic)中心、ステレオジェニック軸を含有するので、式(I)内に包含されるペプチドは、様々な立体異性型で存在し得る。式(I)〜式(VII)内に包含されるペプチドが挙げられる、具体的に記載されるペプチド及び一般的に記載されるペプチドの双方について、鏡像異性体及びジアステレオ異性体が挙げられる、全てのキラル中心又は他の異性体中心(isomeric center)での異性体の全ての形態は、本明細書中で包含されることが意図される。本発明のペプチドはそれぞれ、複数のキラル中心を含み、そして、本発明のペプチドの、エナンチオピュアな調製物での使用に加えて、ラセミ体の混合物又は鏡像異性体的に富化された混合物として用いられてもよい。典型的には、本発明のペプチドは、キラル的に純粋な試薬、例えば、指定されたL−又はD−アミノ酸を用いて、エナンチオ純度が維持されるように試薬、条件、及び方法を用いて合成されることとなるが、ラセミ体の混合物が製造され得ることが考えられ、且つ意図される。そのようなラセミ体の混合物は、場合によっては、周知の技術を用いて分離されてもよく、そして個々の鏡像異性体が、単独で用いられてもよい。ペプチドが互変異性型で存在し得る温度、溶媒、及びpHのケースにおいて、そしてそれらの特定の条件下で、各互変異性型は、平衡して存在するか、主に1つの型で存在するかに拘わらず、本発明内に含まれると意図される。ゆえに、式(I)のペプチドの単一の鏡像異性体は、光学活性形態であり、非対称の合成、光学的に純粋な前駆体からの合成によって、又はラセミ体の分解能によって得ることができる。
【0143】
本発明はさらに、本ペプチドのプロドラッグを含むことが意図され、これは、投与の直後に、代謝プロセスによる化学変換を経てから、活性のある薬理学的ペプチドとなるものである。一般に、そのようなプロドラッグは、本ペプチドの機能的誘導体であり、式(I)〜式(VII)のペプチドにインビボで容易に変換可能である。プロドラッグは、式(I)〜式(VII)の活性のある親ペプチド薬物をインビボ放出する、共有結合したあらゆる化合物である。適切なプロドラッグ誘導体の選択及び調製のための従来の手順が、例えば、”Design of Prodrugs”, ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985に記載されている。プロドラッグの典型的な例が、官能部分上に、例えばヒドロキシル、カルボキシル、又はアミノ官能基のエステル化により、生物学的に不安定な保護基を有するものである。ゆえに、一例として、限定されないが、プロドラッグは、式(I)のペプチドを含み、エステルプロドラッグ形態、例えば、例えばRが−OHである、式(I)のR基の低級アルキルエステルであって、アルキル基内に1〜8個の炭素を含んでもよい低級アルキルエステル、又はアラルキル基内に6〜12個の炭素を有するアラルキルエステルが使用される。大まかに言って、プロドラッグとして、酸化、還元、アミノ化、脱アミノ化、水酸化、脱水酸化、加水分解、脱加水分解、アルキル化、脱アルキル化、アシル化、脱アシル化、リン酸化、又は脱リン酸化されて、式(I)の活性のある親ペプチド薬物をインビボで生成し得る化合物が挙げられる。
【0144】
また、本発明は、式(I)〜式(VI)に記載されるペプチドと同一であるが、式(I)〜式(VI)において示される1つ以上の原子が、通常自然界で見出される原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置換されているペプチドを含む。本発明の化合物中に組み込まれてもよい同位体の例として、水素、炭素、窒素、及び酸素の同位体、例えば、それぞれ
2H、
3H、
13C、
14C、
15N、
18O、及び
17Oが挙げられる。上述の同位体及び/又は他の原子の他の同位体を含有する、本発明のペプチド、及び薬学的に許容される塩、又は前記化合物の溶媒和物は、本発明の範囲内である。本発明のある種の同位体標識された化合物、例えば、
3H及び
14C等の放射性同位体が組み込まれたものは、種々のアッセイ、例えば、薬物及び/又は基質組織分配アッセイに使用されてもよい。より重い同位体との置換、例えば重水素(
2H)との1つ以上の水素原子の置換は、ある場合に、代謝安定性の増大が挙げられる、薬理学的利益をもたらすことができる。式(I)〜式(VI)の同位体標識されたペプチドは、通常、同位体標識されていない試薬の代わりに同位体標識された試薬を用いることによって、調製することができる。
【0145】
7.0 本発明に利用されるペプチドを製造する方法。
一般に、本発明のペプチドは、固相合成によって合成されて、当該技術において知られている方法に従って精製されてもよい。種々の樹脂及び試薬を利用するいくつかの周知の手順のいずれかを用いて、本発明のペプチドが調製されてもよい。
【0146】
本発明の環状ペプチドは、アミノ酸間でのペプチド結合の形成のための知られている従来の手順によって、容易に合成することができる。そのような従来の手順として、例えば、カルボキシル基及び他の反応基が保護されているアミノ酸の遊離アルファアミノ基又はその残基と、アミノ基又は他の反応基が保護されている別のアミノ酸の遊離第一級カルボキシル基又はその残基との間での縮合を可能にするあらゆる溶液相手順が挙げられる。従来の好ましい手順において、本発明の環状ペプチドは、固相合成によって合成されて、当該技術において知られている方法に従って精製することができる。種々の樹脂及び試薬を利用するいくつかの周知の手順のいずれかを用いて、本発明のペプチドを調製することができる。
【0147】
環状ペプチドを合成するプロセスは、所望のペプチドを提供するために、所望される配列内の各アミノ酸が、別のアミノ酸又はその残基に1つずつ連続して加えられる手順によって、又は所望されるアミノ酸配列を有するペプチドフラグメントが、最初に従来通り合成されてから縮合される手順によって、実行されてもよい。生じたペプチドはその後、環化されて、本発明の環状ペプチドが得られる。
【0148】
固相ペプチド合成方法は周知であり、当該技術において実行される。そのような方法において、本発明のペプチドの合成は、固相方法の一般的な原理に従って、所望されるアミノ酸残基を1つずつ、成長するペプチド鎖中に順次組み込むことによって実行することができる。当該方法は、Merrifield, R.B., ”Solid phase synthesis (Nobel lecture), ”Angew Chem 24:799-810 (1985)及びBarany et al., The Peptides, Analysis, Synthesis and Biology, Vol. 2, Gross, E. and Meienhofer, J., Eds. Academic Press 1-284 (1980)が挙げられる多数の参考文献に開示されている。
【0149】
ペプチドの化学合成において、種々のアミノ酸残基の反応性側鎖基が、適切な保護基で保護されており、これは、保護基が除去されるまで、その部位にて化学反応が起こるのを妨げている。また、共通するのは、アミノ酸残基又はフラグメントのアルファアミノ基の保護である一方、その実体は、カルボキシル基にて反応してから、アルファアミノ保護基が選択的に除去されて、その部位にて以降の反応が起こるのを可能にする。特定の保護基が、固相合成方法及び溶液相合成方法で開示されており、且つ知られている。
【0150】
アルファアミノ基は、ウレタン型保護基、例えば、ベンジルオキシカルボニル(Z)及び置換ベンジルオキシカルボニル、例えば、p−クロロベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ブロモベンジルオキシカルボニル、p−ビフェニル−イソプロポキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、及びp−メトキシベンジルオキシカルボニル(Moz)、並びに脂肪族ウレタン型保護基、例えば、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、及びアリルオキシカルボニル(Alloc)が挙げられる適切な保護基によって保護されてよい。Fmocは、アルファアミノ保護に好まれる。
【0151】
グアニジノ基は、適切な保護基、例えばニトロ、p−トルエンスルホニル(Tos)、Z、ペンタメチルクロマンスルホニル(Pmc)、アダマンチルオキシカルボニル、ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Pbf)、及びBocによって保護されてもよい。Pbf及びPmcは、Argに好まれる保護基である。
【0152】
本明細書中に記載される本発明のペプチドは、固相合成を用いて、例えば、Symphony Multiplex Peptide Synthesizer(Rainin Instrument Company)自動ペプチド合成装置によって、メーカーによって提供されるプログラミングモジュールを用いて、且つメーカーのマニュアルに示されるプロトコルに従って、調製した。
【0153】
固相合成は、保護されたアルファアミノ酸を適切な樹脂に結合させることによって、ペプチドのC末端から開始される。そのような出発物質は、9−Fmoc−アミノキサンテン−3−イルオキシ−Merrifield樹脂(Sieber Amide樹脂)への、若しくは4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmoc−アミノメチル)フェノキシ樹脂(Rink Amide樹脂)へのアミド結合によって、p−ベンジルオキシベンジルアルコール(Wang)樹脂、2−クロロトリチルクロリド樹脂、若しくはオキシム樹脂へのエステル結合によって、又は当該技術において周知の他の手段によって、アルファアミノ保護アミノ酸を取り付けることによって調製される。必要に応じて、樹脂は、反復的なサイクルに入れられて、アミノ酸が順次加えられる。アルファアミノFmoc保護基は、塩基性の条件下で除去される。N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中のピペリジン、ピペラジン、ジエチルアミン、又はモルホリン(20〜40v/v%)が、この目的のために用いられてもよい。
【0154】
アルファアミノ保護基の除去後、以降の保護されたアミノ酸が、所望される順序で段階的に連結されて、中間の、保護されたペプチド樹脂が得られる。ペプチドの固相合成においてアミノ酸の連結に用いられる活性化試薬は、当該技術において周知である。ペプチドが合成された後に、所望されるならば、直交的に保護された(orthogonally protected)側鎖保護基は、ペプチドの更なる誘導体化のために、当該技術において周知である方法を用いて除去されてもよい。
【0155】
典型的には、直交保護基が、必要に応じて用いられる。例えば、本発明のペプチドは、アミノ基含有側鎖を有する複数のアミノ酸を含有する。一態様において、Allyl−Alloc保護スキームが使用され、アミノ酸は、その側鎖によってラクタム架橋を形成し、そして様々な反応条件下で切断可能な直角保護基が、アミノ基含有側鎖を有する他のアミノ酸に用いられる。ゆえに、例えば、Fmoc−Lys−(Alloc)−OH、Fmoc−Orn−(Alloc)OH、Fmoc−Dap−(Alloc)−OH、Fmoc−Dab−(Alloc)−OH、Fmoc−Asp(OAll)−OH、又はFmoc−Glu(OAll)−OHアミノ酸は、環化と同時にラクタム架橋を形成する位置に使用することができる一方、アミノ基含有側鎖を有する他のアミノ酸は、異なる直交保護基を有し、例えばFmoc−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−Lys(Boc)−OH、Fmoc−Dab(Boc)−OHを有する。他の保護基が同様に使用されてもよい;一例として、限定されないが、Mtt/OPp(4−メチルトリチル/2−フェニルイソプロピル)が使用されてもよく、側鎖は、環化と同時にラクタム架橋を形成し、直交保護基は、Mtt/OPpの切断に適した条件を用いて切断可能でない他の位置に利用される。
【0156】
ペプチド中の反応基は、固相合成中に、又は樹脂からの除去後に、選択的に修飾することができる。例えば、ペプチドは、樹脂上にありながら、N末端修飾、例えばアセチル化を得るように修飾することもできるし、切断試薬の使用によって樹脂から取り外してから修飾することもできる。同様に、アミノ酸の側鎖を修飾する方法は、ペプチド合成の技術の当業者に周知である。ペプチド上に存在する反応基になされる修飾の選択は、部分的に、ペプチドに所望される特徴によって決定されることとなる。
【0157】
本発明のペプチドにおいて、一実施形態において、N末端基は、N−アセチル基の導入によって修飾される。一態様において、N末端での保護基の除去後に、樹脂結合ペプチドが、ピリジン等の有機塩基の存在下で、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中無水酢酸と反応する方法が使用される。溶液相アセチル化が挙げられる、N末端アセチル化の他の方法が当該技術において知られており、これが使用されてもよい。
【0158】
ペプチドは、一実施形態において、ペプチド樹脂からの切断前に環化することができる。反応性側鎖部分を介した環化のために、所望される側鎖が脱保護されて、ペプチドが、適切な溶媒中に懸濁されて、環カップリング剤が加えられる。適切な溶媒として、DMF、ジクロロメタン(DCM)、又は1−メチル−2−ピロリドン(NMP)が挙げられる。適切な環カップリング試薬として、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(BOP)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyBOP)、2−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TATU)、2−(2−オキソ−1(2H)−ピリジル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TPTU)、又はN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド/1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(DCCI/HOBt)が挙げられる。カップリングは、従来通り、適切な塩基、例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、sym−コリジン、又はN−メチルモルホリン(NMM)の使用によって開始される。
【0159】
非ラクタム環架橋を有するペプチド、例えば以下の架橋:
−(CH
2)
x−NH−C(=O)−(CH
2)
z−C(=O)−NH−(CH
2)
y−
(式中、x、y、及びzは、それぞれ独立して、1〜5である)
を含有するペプチドについて、当該ペプチドは、環化されることとなる位置に側鎖保護ジアミンアミノ酸を使用する固相合成を用いて、製造することができる。そのような位置において特に好ましいのが、Dap、Dab、又はLysであり、好ましくは、アミン保護基、例えば、Alloc、Mtt、Mmt(メトキシトリチル)、Dde(1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキサ−1−イリデン))エチル)、ivDde(1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキサ−1−イリデン)−3−メチルブチル)、又は他のあらゆる直交的に切断可能な保護基を有する。典型的には、1つの側鎖保護基が、最初に除去され、例えば、ジクロロメタン中2%TFAを用いてMttが除去される。樹脂の洗浄後、生じた樹脂結合脱保護アミンは、例えば、環状無水物、例えば無水コハク酸又はグルタル酸無水物(ジクロロメタン/ピリジン中1:1)の0.5M溶液でアシル化される。追加の洗浄工程の後に、第2のジアミノアミノ酸の直交的に切断可能な保護基が切断され、例えば、ジクロロメタン中テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)及びフェニルシランを用いてAllocが除去される。ジクロロメタン及びDMFで洗浄した後に、樹脂結合ペプチドは、標準的なカップリング試薬、例えばTBTU及び塩基を用いて環化される。或いは、ivDde保護樹脂結合ジアミノアミノ酸が、DMF中5%ヒドラジン溶液を用いて脱保護され得、そしてDMFによる洗浄後、生じた樹脂結合アミンは、環状無水物でアシル化されてもよいし、樹脂結合カルボン酸で環化されてもよい。
【0160】
次に、環化されたペプチドは、適切なあらゆる試薬、例えばDCM中エチルアミン、又は、トリフルオロ酢酸(TFA)、トリイソプロピルシラン(TIS)、ジメトキシベンゼン(DMB)、水等の剤の種々の組合せを使用して、固体相から切断することができる。生じた粗ペプチドを乾燥させて、もしあれば、残ったアミノ酸側鎖保護基を、適切なあらゆる試薬、例えばTFAを、水、TIS、2−メルカプトエタノール(mercaptopethane)(ME)、及び/又は1,2−エタンジチオール(EDT)の存在下で用いて、切断する。最終生成物は、低温エーテルを加えることによって析出させて、濾過によって収集する。最終の精製は、適切なカラム、例えばC
18カラムを用いる逆相高速液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)によるものであり、又は分離若しくは精製の他の方法、例えば、ペプチドのサイズ又は電荷に基づく方法を使用することもできる。一旦精製されると、ペプチドは、いくつもの方法、例えば、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、アミノ酸分析、質量分析によって特徴付けることができる。
【0161】
C末端置換アミド誘導体又はN−アルキル基を有する本発明のペプチドについて、保護されたアルファアミノ酸を適切な樹脂に結合させることによる、ペプチドのC末端から開始される固相合成によって、合成を進めてもよい。置換されたアミド誘導体を固相上に調製するそのような方法は、当該技術において説明されてきた。例えば、Barn, D. R., et al., “Synthesis of an array of amides by aluminum chloride assisted cleavage on resin bound esters, ” Tetrahedron Letters, 37:3213-3216 (1996);DeGrado, W. F. and Kaiser E. T., “Solid-phase synthesis of protected peptides on a polymer bound oxime: Preparation of segments comprising the sequences of a cytotoxic 26-peptide analogue, ” J. Org. Chem., 47:3258-3261 (1982)参照。そのような出発物質は、アルファアミノ保護アミノ酸をエステル結合によってp−ベンジルオキシベンジルアルコール(Wang)樹脂に、又は周知の手段によってオキシム樹脂に取り付けることによって、調製することができる。ペプチド鎖は、アミノ酸の所望の配列、環化されたペプチド、及び適切なアミン(メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン等)の溶液により処理されたペプチド樹脂により成長する。p−ベンジルオキシベンジルアルコール(Wang)樹脂を使用したペプチドは、DCM中塩化アルミニウムによって樹脂から切断することができ、そしてオキシム樹脂を使用したペプチドは、DCMによって切断することができる。C末端置換アミドを有するペプチドを調製する別の方法は、ホルミル樹脂、例えば4−(4−ホルミル−3−メトキシフェノキシ)ブチリル-AM樹脂(FMPB AM樹脂)への還元的アミノ化によってアルキルアミンを取り付けてから、順次、固相合成の一般的な原理を利用して、所望されるアミノ酸残基を組み込むものである。
【0162】
主に固相Fmoc化学を参照して合成を説明してきたが、本発明の環状ペプチドを製造する他の化学及び合成方法、例えば、一例として、限定されないが、Boc化学、溶液化学を使用する方法、並びに他の化学及び合成方法が使用されてもよいことが理解されるべきである。
【実施例】
【0163】
8.0 本発明に利用されるペプチドの評価に使用される試験及びアッセイ。
本発明に利用されるメラノコルチン受容体特異的ペプチドは、結合、機能状態、及び有効性を判定するために、種々のアッセイ系及び動物モデルによって試験することができる。
【0164】
8.1 [I
125]−NDP−α−MSHを用いた競合阻害アッセイ。
競合阻害結合アッセイを、組換えhMC1r若しくはhMC4r(各例において、接頭辞hはヒトを指す)を発現するHEK−293細胞から調製した膜ホモジェネート、又は代わりに、内因性マウスMC1rを含有するB16−F10マウス黒色腫細胞由来の膜ホモジェネートを用いて実行した。後に続く実施例において、MC1r及びMC4rの全ての値は、特に明記しない限り、ヒト組換え受容体についてである。アッセイを、96穴ポリプロピレン丸底プレート(VWRカタログ番号12777-030)内で実行した。膜ホモジェネートを、0.1nM[I
125]−NDP−α−MSH(Perkin Elmer)と共にインキュベートし、そして100mM NaCl、2mM CaCl
2、2mM MgCl
2、0.3mM 1,10−フェナントロリン、及び0.2%ウシ血清アルブミン入り25mM HEPESバッファ(pH7.5)を含有するバッファ中で、本発明の試験ペプチドの濃度を高めた。37℃にて90分間のインキュベーションの後、アッセイ混合液を、GF/B Unifilterプレート(Perkin-Elmerカタログ番号6005177)上に濾過して、ウェルあたり3mLの氷冷バッファで洗浄した。フィルタを空気乾燥させて、35μLのシンチレーションカクテルを各ウェルに加えた。プレートを、結合放射活性について、Microbetaカウンター内でカウントした。非特異的結合を、1μM NDP−α−MSHの存在下での[I
125]−NDP−α−MSHの結合の阻害によって測定した。最大特異的結合(100%)を、1μM NDP−α−MSHの不在下、そして存在下で細胞膜に結合した放射活性(cpm)の差異として定義した。各アッセイを二反復で行って、実際の平均値を記載し、0%未満の結果は0%と報告した。本発明のペプチドについてのKi値を、Graph-Pad Prism(登録商標)曲線適合ソフトウェアを用いて求めた。
【0165】
8.2 アゴニスト活性についてのアッセイ。
細胞内cAMPの蓄積を、hMC1r(Kang, L., et al., “A selective small molecule agonist of MC1r inhibits lipopolysaccharide-induced cytokine accumulation and leukocyte infiltration in mice,”J. Leuk. Biol. 80:897-904 (2006)参照)を発現するヒト黒色腫細胞株、HBL、又はhMC4rを発現するHEK−293細胞内で機能的応答を誘発する本発明のペプチドの能力の尺度として調査した。hMC1rを発現するコンフルエントHBL細胞、又は組換えhMC4rを発現するHEK−293細胞を、酵素フリー細胞分離バッファ中でのインキュベーションによって培養プレートから剥離した。分散した細胞を、10mM HEPES(pH7.5)、1mM MgCl
2、1mMグルタミン、0.5%アルブミン、及び0.3mM 3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)、ホスホジエステラーゼインヒビタを含有するEarle’s Balanced Salt Solution中に懸濁させた。細胞を、HBL細胞についてウェルあたり0.4×10
5細胞の、そしてHEK−293細胞についてウェルあたり0.5×10
5細胞の密度にて、96ウェルプレート内にプレーティングして、10分間予めインキュベートした。細胞を、DMSO(1%の最終DMSO濃度)中に、200μLの総アッセイ容量中0.05〜5000nMの濃度範囲にて溶解させた本発明のペプチドに、37℃にて15分間曝した。NDP−α−MSHを、参照アゴニストとして用いた。クリプタート標識抗cAMP及びd2標識cAMPを利用する、Cisbio Bioassays由来のHTRF(登録商標)cAMP細胞ベースのアッセイ系によって、cAMPレベルを判定した。プレートを、665及び620nMにて、Perkin-Elmer Victorプレートリーダーで読んだ。データ分析を、Graph-Pad Prism(登録商標)ソフトウェアにより、非線形回帰分析法によって実行した。最大効力(E
max)値を、本発明の各試験ペプチドについて、参照メラノコルチンアゴニストNDP−α−MSHによって達成される値と比較して求めた。
【0166】
9.0 本発明で利用されるペプチドの例。
以下の構造のペプチドを合成して、示すように、平均したMC1r及びMC4rのKi値を求めた。Ki値は、−[I
125]−NDP−α−MSHを用いて求めた。全ての結果を、パーセンテージ値であるE
max値を除いて、nMで表す。上述の7節に記載するように、見出しを付けた主要な配列を有するペプチドを合成して、精製した。生じたペプチドは、示す構造を有した。合成及び精製の後、ペプチドを、上述の8節に記載するように試験して、結果を示した。
【0167】
9.1 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Lys)−Trp−NH
2(配列番号4)
【化17】
【0168】
9.2 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号5)
【化18】
【0169】
9.3 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dap)−Trp−NH
2(配列番号6)
【化19】
【0170】
9.4 Ac−Nle−シクロ(Asp−His−D−Phe−Arg−Dap)−Trp−NH
2(配列番号7)
【化20】
【0171】
9.5 Ac−Nle−シクロ(Cys−His−D−Phe−Arg−Cys)−Trp−NH
2(配列番号8)
【化21】
【0172】
9.6 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Orn)−Trp−NH
2(配列番号9)
【化22】
【0173】
9.7 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−D−Trp−NH
2(配列番号10)
【化23】
【0174】
9.8 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号11)
【化24】
【0175】
9.9 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−D−Nal 1−NH
2(配列番号12)
【化25】
【0176】
9.10 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Nal 2−NH
2(配列番号13)
【化26】
【0177】
9.11 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−D−Nal 2−NH
2(配列番号14)
【化27】
【0178】
9.12 Ac−D−Phe−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号15)
【化28】
【0179】
9.13 Ac−Phe−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号16)
【化29】
【0180】
9.14 シクロ(Suc−His−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号17)
【化30】
【0181】
9.15 CH
3−(CH
2)
2−C(=O)−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号18)
【化31】
【0182】
9.16 CH
3−(CH
2)
3−C(=O)−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号19)
【化32】
【0183】
9.17 CH
3−(CH
2)
4−C(=O)−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号20)
【化33】
【0184】
9.18 CH
3−(CH
2)
5−C(=O)−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号21)
【化34】
【0185】
9.19 シクロ−プロパノイル−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号22)
【化35】
【0186】
9.20 シクロ−ヘキサノイル−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号23)
【化36】
【0187】
9.21 シクロペンチルアセチル−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号24)
【化37】
【0188】
9.22 シクロヘキシルアセチル−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号25)
【化38】
【0189】
9.23 フェニルアセチル−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号26)
【化39】
【0190】
9.24 フェニルプロパノイル−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号27)
【化40】
【0191】
9.25 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Ala−NH
2(配列番号28)
【化41】
【0192】
9.26 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dap)−Trp−OH(配列番号29)
【化42】
【0193】
9.27
【化43】
【0194】
9.28
【化44】
【0195】
9.29
【化45】
【0196】
9.30 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Nal 1−NH
2(配列番号33)
【化46】
【0197】
9.31 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−OH(配列番号34)
【化47】
【0198】
9.32 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−NH
2(配列番号35)
【化48】
【0199】
9.33 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Ala−Dab)−NH
2(配列番号36)
【化49】
【0200】
9.34 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Gly−Dab)−Trp−NH
2(配列番号37)
【化50】
【0201】
9.35 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Ala−Dab)−Trp−NH
2(配列番号38)
【化51】
【0202】
9.36 Ac−Nle−シクロ(Glu−Ala−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号39)
【化52】
【0203】
9.37 Ac−Nle−シクロ(Glu−Arg−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号40)
【化53】
【0204】
9.38 Ac−Nle−シクロ(Glu−Cit−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号41)
【化54】
【0205】
9.39 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Lys−NH
2(配列番号42)
【化55】
【0206】
9.40 Ac−Nle−シクロ(Glu−Lys−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号43)
【化56】
【0207】
9.41 Ac−Nle−シクロ(Glu−Dab−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号44)
【化57】
【0208】
9.42 Ac−Nle−シクロ(Glu−Orn−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号45)
【化58】
【0209】
9.43
【化59】
【0210】
9.44 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−NH
2(配列番号47)
【化60】
【0211】
9.45 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Ala−Dab)−NH
2(配列番号48)
【化61】
【0212】
9.46 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Dab)−NH
2(配列番号49)
【化62】
【0213】
9.47 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Gly−Dab)−Trp−NH
2(配列番号50)
【化63】
【0214】
9.48 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Ala−Dab)−Trp−NH
2(配列番号51)
【化64】
【0215】
9.49 Ac−Nle−シクロ(Glu−Ala−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号52)
【化65】
【0216】
9.50 Ac−Nle−シクロ(Glu−Arg−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号53)
【化66】
【0217】
9.51 Ac−Nle−シクロ(Glu−Cit−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号54)
【化67】
【0218】
9.52 Ac−Nle−シクロ(Glu−His−D−Phe−Arg−Dab)−Lys−NH
2(配列番号55)
【化68】
【0219】
9.53 Ac−Nle−シクロ(Glu−Lys−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号56)
【化69】
【0220】
9.54 Ac−Nle−シクロ(Glu−Dab−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号57)
【化70】
【0221】
9.55 Ac−Nle−シクロ(Glu−Orn−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号58)
【化71】
【0222】
9.56 Ac−Nle−シクロ(Glu−Orn−D−Phe−Arg−Dab)−NH
2(配列番号59)
【化72】
【0223】
9.57 Ac−Nle−シクロ(Glu−Orn−D−Phe(2−Cl)−Arg−Dab)−NH
2(配列番号60)
【化73】
【0224】
9.58 Ac−Nle−シクロ(Glu−Orn−D−Phe(3−Cl)−Arg−Dab)−NH
2(配列番号61)
【化74】
【0225】
9.59 Ac−Nle−シクロ(Glu−Orn−D−Phe(4−Cl)−Arg−Dab)−NH
2(配列番号62)
【化75】
【0226】
9.60 Ac−Nle−シクロ(Glu−Orn−D−Phe(2−F)−Arg−Dab)−NH
2(配列番号63)
【化76】
【0227】
9.61 Ac−Nle−シクロ(Glu−Orn−D−Phe(4−F)−Arg−Dab)−NH
2(配列番号64)
【化77】
【0228】
9.62 Ac−Nle−シクロ(Glu−Orn−D−Phe(3,4−F)−Arg−Dab)−NH
2(配列番号65)
【化78】
【0229】
9.63 Ac−Nle−シクロ(Glu−Orn−D−Phe(4−Me)−Arg−Dab)−NH
2(配列番号66)
【化79】
【0230】
9.64 Ac−Nle−シクロ(Glu−Orn−D−Phe(4−OMe)−Arg−Dab)−NH
2(配列番号67)
【化80】
【0231】
9.65 Ac−Nle−シクロ(Glu−Pro−D−Phe−Arg−Dab)−NH
2(配列番号68)
【化81】
【0232】
9.66 Ac−Nle−シクロ(Glu−Pro−D−Phe−Arg−Dab)−Trp−NH
2(配列番号69)
【化82】
【0233】
10. 本発明に利用した多微粒子製剤の例。
以下に記載したロットの製剤を製造した:
【0234】
【表3】
【0235】
種々のロットに、約1%〜2%(ペプチド/ポリマーのw/w)の実施例9.3の環状ペプチドをロードした。C−18カラムを使用するHPLC方法を、種々の酸及びpH範囲での環状ペプチド放出の研究を含むアッセイに使用した。マイクロ粒子の薬物ロード(drug load)及びカプセル化効率を、製造プロセス後に求めた。マイクロ粒子の性能を、インビトロ放出方法によって特徴付けた。
【0236】
リン酸バッファ(水酸化ナトリウムでpHを7.5に調整した0.5mLリン酸を含有する1Lバッファ)pH7.5〜8.0の適切な容量中に、重量の知られているマイクロ粒子を溶解させることによって、薬物ローディングを求めた。生じた溶液を、薬物について、HPLCを用いて分析した。カプセル化効率(EE)について、マイクロ粒子を0.1M HClでリンスして、乾燥させて、薬物ローディングについて、記載したように用いた。薬物ローディング及びEE値を、薬物及びポリマーの開始重量に基づいて算出した。薬物ローディングは99%よりも大きく、そして調製した全てのサンプルのカプセル化効率は、95%よりも大きかった。
【0237】
【表4】
【0238】
実施例9.3の環状ペプチドを含有するEudragit(登録商標)マイクロ粒子の溶解を、USP装置2を用いて、0.1M HCl pH1.2又は酢酸バッファpH4.5である酸の500mLから開始して行った。約1gのマイクロ粒子を、正確に秤量して、37℃にて2時間、酸の中に懸濁させた。次に、媒体のpHを順次、pH5.5に1時間、そしてpH6.8にもう1時間、そして最後にpH7.4に7時間、調整した。
【0239】
図4〜
図11は、種々のEudragit(登録商標)ポリマー及びそれらの混合物を用いて調製したマイクロ粒子からの、実施例9.3の環状ペプチドの代表的な放出プロファイルである。通常、薬物の放出は、pH依存性であり、速度は、用いたポリマーのタイプによって決まる。
【0240】
図4〜
図8は、指定されたEudragit(登録商標)ポリマー及びその混合物を用いて調製したマイクロ粒子からの、実施例9.3の環状ペプチドの放出プロファイルを示す。
図8に示すように、ペプチド放出はpH依存性であり、そしてpH4.5〜5.5にて放出はなく、pH4.5〜7.5にておおよそ全体が放出した。
【0241】
一生成物標的プロファイルは、pH5.5にて約20%から始まる、GI管の全体を通じた薬物放出であった。様々なポリマーを用いて調製したマイクロ粒子の混合物を試験した。
図9は、混合したマイクロ粒子から得られた放出プロファイルを示す。40%のロット29、30%のロット27、及び30%のロット31を含むロット38を、更なる開発用に選択した。調製プロセスを単純化して、混合の均一性を確実にするために、混合マイクロ粒子ロット38と同じ比率でポリマー型を共溶解させることによって、多くのマイクロ粒子(ロット41)を調製し、そして、マイクロ粒子を調製する際に、製剤が、重量ベースで約46.5%のEudragit(登録商標)L100-55、46%のEudragit(登録商標)S100、及び7.5%のEudragit(登録商標)FS30Dを含むように用いた。
図10は、ロット41の放出プロファイルを示しており、これは、予め混合したポリマーから調製したものであり、ロット38マイクロ粒子混合物と同じ比率である。このロットを、臨床前の薬物動態学的研究及び効力研究における評価用に選択した。
図11は、ロット41(n=3)についての繰返し溶解プロファイルを示す。
【0242】
ロット41のようにEudragit(登録商標)ポリマー混合物を含有するプラセボマイクロ粒子(ロット49)を調製して、活性ロット41用の希釈剤として用いて、臨床前ラットカプセルサイズ9に充填した。プラセボ及び活性マイクロ粒子を秤量して、幾何学的希釈によって混合した。混合物の均一性試験を行って、マイクロ粒子を臨床前カプセルに充填して、17mgの充填重量を含有させた。100、50、20、又は10μgの実施例9.3の環状ペプチド含量(strength)を含有するカプセルを、動物モデルでの試験用に調製した。全ての充填カプセルを個々に秤量して、重量を記録した。
【0243】
11. 実験モデル。
11.1 内因性MC1rアゴニストACTH(副腎皮質刺激ホルモン)及びα−MSH(アルファ−メラノコルチン刺激ホルモン)と比較する、実施例9.3の環状ペプチドのインビトロ選択性の評価を、仏国のCerepにて行った。結果は以下の通りであった:
【0244】
【表5】
【0245】
11.2 活性研究及び安全性研究をインビトロで行った。実施例9.3の環状ペプチドは、α−MSH及びACTHに匹敵する、リポ多糖誘導TNF−α阻害を実証した。それとは別に、Eurofins lead profileにおいて、活性は、10μMでの72個のインビトロアッセイのいずれにおいても検出されなかった
【0246】
11.3 ジニトロベンゼンスルホン酸(DNBS)を溶液として、雄の200gのWistarラットの直腸に投与して腸管腔の炎症を誘導した、腸炎症の、カニューレを挿入したラットモデルにおいて実施例9.3の環状ペプチドを評価した。ラットの上行結腸の近位部分内にカテーテルを挿入した。カテーテルは、投薬アクセスのために、首筋から出した。10個の群において、ラットに:0.5μg及び5.0μgの、実施例9.3の環状ペプチド及びビヒクル(滅菌水)を、結腸内注射を介して、DNBSの誘発(challenge)の24時間、12時間、及び2時間前に、そしてDNBSの誘発の6時間後に投薬してから、7日目まで5日間連続して1日2回投薬した。カニューレ非挿入対照ラットに、スルファサラジン(陽性対照)及びビヒクル(非処置対照)を投与した。
図1A及び
図1Bに示すように、腸炎症のDNBSラットモデルにおいて、腸の管腔に送達された実施例9.3の環状ペプチドは、腸炎症のパラメータ(結腸重量及び炎症スコア)の引下げにおいて、スルファサラジン(標準治療)と同程度に活性であり、且つ非処置の対照よりも優れていた。
【0247】
11.4 結腸放出用の実施例9.3の環状ペプチドを含有する先の10節のロット41の経口カプセル製剤の薬物動態学及び薬力学を、ラットにおいて評価した。250〜350グラムの重さの7〜9週齢の合計24頭のSprague-Dawleyラットを利用して、一晩絶食させてから、実施例9.3の0.1mgの環状ペプチドを含有する単カプセルを経口投薬した。食物及び水は不断給餌であった。腸管及び結腸の内容物を、特定の時点にて(n=20)、そして試験後(n=4)に収集した。
図2に示すように、ロット41の実施例9.3の環状ペプチドの経口製剤は、結腸内で放出されて、9時間以内にラット腸管を経て前進した。
【0248】
11.5 ラットにおける大腸炎のDNBSモデルにおいて、実施例9.3の環状ペプチドの10μg、20μg、及び50μgを含有するロット41の経口カプセル製剤を、1日2回(bid)投与で、ロット49のプラセボビヒクル及びスルファサラジン処置と比較して評価した。
図3A及び
図3Bに示すように、ベースライン補正した炎症スコア及び巨視的障害スコアは双方とも、50μgの実施例9.3の環状ペプチドを含有するカプセルにより、プラセボビヒクルに対して有意に低く(向上し)、そしてスルファサラジンと同程度であった。血漿のアッセイは、実施例9.3の全身性環状ペプチドを全く検出しなかった。
【0249】
12. ヒト臨床研究。
実施例9.3のC
14標識環状ペプチドの経口製剤を、ロット41のように製剤化した。C
14標識を用いて、単回の経口投与の後に、遠位GI管内での実施例9.3のペプチドの放出及び吸収を評価した。Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)S-100、及びEudragit(登録商標)FS30Dのポリメタクリレートの組合せを選択して、23.25:23.0:12.5の重量比にて利用した。L100-55及びS-100の重量は、固体材料の乾燥重量であり、FS30Dの重量は、商業的に調製された水性製剤のものであり、12.5グラムの液体FS30Dは、23.25:23:3.75のポリマーの重量比について、3.75グラムのポリマーを含有した。ポリメタクリレートの組合せをアセトン中に入れて、長期間撹拌した。実施例9.3のC
14標識ペプチドの適切な量を水中に溶解させて、調製したアセトン−ポリメタクリレート溶液と混合して、長期間撹拌して、真空下で乾燥させた。乾燥した材料を回収して、ペプチドを含有しない更なる乾燥ポリメタクリレート混合液で希釈して、予め定めた量の材料中で所望の標的濃度を得て、所望の直径に粉砕して、篩にかけた。篩にかけた材料を、ゼラチンサイズ2カプセル内に配置して、経口製剤を用意した。
【0250】
経口製剤を、24人の対象に微小用量レベルで投与して、それぞれ4人の対象の6つのコホートに分割した。コホート1〜5の対象には、服用後5、8、11、14、及び17時間にて下剤を投与し、そしてコホート6の対象には、下剤を投与しなかった。血液、尿、及び糞便のサンプルの薬物動態学的分析(実施例9.3のペプチド、及び実施例9.3のペプチドの代謝物質、N末端が遊離酸である実施例9.26のペプチドの存在についての分析を含む)を、全てのコホート内の対象について行った。
【0251】
実施例9.26のペプチドの存在は、ポリマーマトリックスからの実施例9.3のペプチドの放出の証拠を提供する。なぜなら、実施例9.3のC末端アミドの、実施例9.26の酸への変換が、ポリマーマトリックスからのペプチドの放出後にのみ起こり得るからである。実施例9.3及び実施例9.26の双方のペプチドは、分析した糞便のサンプル中で有意に、且つおおよそ等しいレベルで見出された。また、実施例9.3及び実施例9.26のどちらの未変化ペプチドも、血漿中又は尿中で見出されなかった。尿中で同定された唯一の放射性物質は、C
14標識フェニルアラニンであった。これらの結果は、結腸中に薬物生成物が後に放出される、上方のGI管を通る薬物生成物の重要な保護及び送達を示している。加えて、血漿又は尿のサンプル中での実施例9.3又は実施例9.26の検出可能なあらゆるペプチドの欠如によって明示されるように、体循環中に吸収された薬物生成物はなかった。
【0252】
本発明を、これらの好ましい実施形態を具体的に参照して詳細に説明してきたが、他の実施形態が同じ結果を達成することもできる。本発明の変形及び変更は、当業者にとって明らかであろう。そして、そのような変更及び均等物を全て包含することが意図されている。先で引用した全ての参照、出願、特許、及び刊行物の開示の全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。