【実施例】
【0237】
実施例セットA
材料:一般実験化学物質および試薬溶液をSigma−Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。IL−6およびTNF−αのELISAキットをBio−legendから購入した。CXCL1のELISAキットは、R&D systemsから購入した。別段の指定がない限り、全ての抗体をSantacruzから購入した。LPSは、Sigma Aldrichから購入した。大腸炎グレードDSS(36,000〜50,000M.W)は、MP Bioから購入した。UroAは、以前に記載されたようにカスタム合成された(SAHA et al.(2016)“Gut Microbiota Conversion of Dietary Ellagic Acid into Bioactive Phytoceutical Urolithin A Inhibits Heme Peroxidases”PLoS One,Vol.11,Article e0156811)。
【0238】
マウス:C57BL/6マウスを、我々の動物施設で繁殖させるか、またはJackson Laboratoriesから購入した。Nrf2
−/−マウス(B6.129x1−Nfe2/2
tm1Ywk/J、ストック番号0170009)の交配対をJackson Laboratoriesから購入し、L動物施設のUで交配して実験動物を生成した。AhR
−/−マウス(モデル番号9166)は、Taconic Laboratoriesから購入した。我々は、7〜9週齢のマウスを大腸炎の実験に利用した。マウスを特定の病原体を含まない(SPF)バリア条件下で温度制御された室内で、暗闇および光の交互の12時間のサイクルで維持した。動物は自由に過剰に餌を与え、水を自由に摂取させた。全ての研究は、Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC),University of Louisville,Louisville,KY,USAから承認されたプロトコルの下で行った。
【0239】
UAS03の合成のための合成手順:化学的なUroA(3,8−ジヒドロキシ−6H−ジベンゾ[b,d]ピラン−6−オン)の構造は、2つのフェニル環上に架橋エステル、ラクトン、および2つのヒドロキシルを有する。UroAは、2つのフェニル環を連結し、平面構造にもたらすラクトン(環状エステル)結合を有する。胃pHまたは消化酵素は、ラクトン結合を加水分解して環の開放をもたらし得る。これは、平面構造を失い、プロペラ構造となり、その活性を失わせ得る。より安定で強力な化合物を生成するために、以下の手順により非加水分解性環状エーテル誘導体UAS03を合成した(
図10)。
【0240】
水素化ホウ素ナトリウム(0.165g、4.38mmol)を乾燥THF(10mL)に加え、混合物を10℃冷却した後、エーテル酸ホウ素塩(0.80g、5.7mmol)を1時間かけて滴下した。次いで、THF(5mL)中の3,8−ジヒドロキシ−6H−ベンゾ[c]クロメン−6−オン(Uro−A)(0.5g、2.19mmol)を10分間にわたって添加した。混合物を50℃で5時間撹拌した。反応の完了を薄層クロマトグラフィー(TLC)によってモニターした。反応物をメタノールでクエンチした。3N HCl水溶液(10ml)を添加し、混合物を50℃に30分間穏やかに加熱した。反応混合物を10%NaOH溶液で中性に調整し、揮発物を減圧下で蒸発させた。粗生成物を、60〜120メッシュシリカゲルを有するヘキサン中の50%エチルアセテートを使用してカラムクロマトグラフィーによって精製して、純粋な6H−ベンゾ[c]クロメン−3,8−ジオール生成物を得た。
【0241】
MS(M+1)=
215.2.1 H−NMR(DMSO−d
6):δ:9.49(2 H,s),7.51−7.50(1 H,d,J=6.6Hz),7.47(1 H,d,J=6.6Hz),6.75−6.73(1 H,m),6.61(1 H,s),6.48(1 H,m),6.32(1 H,s),4.96(2 H,s)
,13C−NMR(DMSO−d
6):δ:158.10,156.71,154.93,131.88,123.86,122.79,121.66,115.72,114.89,111.84,110.07,103.95,68.18。
【0242】
細胞培養:10%胎児ウシ血清、1×ペニシリン−ストレプトマイシン溶液(100U/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシン;Sigma Aldrich)を補充したDMEM−高グルコースおよびEMEM−高グルコース(Cornings;10−009CV)中で、それぞれ、ヒト結腸上皮癌細胞株、HT29(ATCC番号HTB−38(商標))およびCaco2細胞(ATCC番号HTB−37(商標))を、加湿された雰囲気の中(5%CO
2、95%空気、37℃)で維持した。マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)を単離し、以下の手順を使用して培養した(KUROWSKA−STOLARSKA et al.(2009)“IL−33 amplifies the polarization of alternatively activated macrophages that contribute to airway inflammation”The Journal of Immunology,Vol.183,pp.6469−6477)。簡潔に述べると、マウスをCO
2麻酔によって屠殺し、70%エタノールですすぎ、骨髄を脛骨および大腿骨から単離した。骨髄細胞を、分化のために10%FBS、1%グルタミン、1×ペニシリン−ストレプトマイシン溶液、および50ng/mLのマウスM−CSF(R&D Systems Inc.,Minneapolis,MN)を補充したDMEM−高グルコース(HyClone)中に7日間播種(2×10
6細胞/ml)した。
【0243】
BMDM中のIL−6およびTNF−αの測定:ELISAおよびRNA単離のために、BMDMを96(10,000細胞/ウェル)および12ウェル(0.1×10
6細胞/ウェル)プレートに播種した。抗炎症特性を評価するために、BMDMを、50ng/mL濃度のE.coli由来リポ多糖(LPS、O55:B5、Sigma)で単独で、または示された濃度(0.01、0.1、1、10、25、50μM)のUroAまたはUAS03と組み合わせて、4重で6時間刺激した。ELISAを介したサイトカイン産生のために、上清を収集し、4℃で10分間10,000×gで遠心分離して任意の細胞をペレットダウンし、サイトカインを、製造業者の使用説明書に従ってIL−6およびTNF−α特異的ELISAキット(Biolegend)を使用して定量化した。
【0244】
LPS誘発性腹膜炎:オスのマウス(C57BL/6J、6〜8週齢)を、3群、すなわちビヒクル(0.25%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC))、UroA、およびUAS03に無作為に分割した。UroAおよびUAS03群は、それぞれの化合物(100μlの体積中20mg/kg)を0、6、12、18、および24時間で強制経口投与した。ビヒクル群は同時に同じ体積のCMCを投与した。24時間後、マウスにLPS(2mg/kg;Sigma−Aldrich)を腹腔内注射した。4時間のLPS接種後、マウスを屠殺し、血液を採取した。血清を、BDマイクロテナーセパレータチューブを使用して調製した。それぞれのELISAアッセイキット(Biolegend)を使用して、血清試料をIl−6およびTNF−αについて分析した。
【0245】
リアルタイムPCR:全RNAを、Maxwell(登録商標)16 LEV simplyRNA組織キット(Promega)を使用して細胞/組織から単離し、TaqManC逆転写キット(Applied Biosystems,CA,USA)で逆転写した。転写したcDNA(希釈後)を100nMの遺伝子特異的プライマー(リアルタイムプライマーLLC)および1×SYBR緑色反応混合物(Power SYBR(登録商標)Green PCR Master Mix;Applied Biosystems,CA,USA)と混合した。遺伝子発現の変化を、CFX96(商標)リアルタイムシステム(Bio Rad)を使用して解析し、発現の倍数変化を、GAPDH/β−アクチンをハウスキーピング遺伝子として使用して未処理の対照で正規化し、2
ΔΔCT法を使用して計算した。
【0246】
インビトロ透過性試験.インビトロ細胞透過性試験のために、Caco2細胞またはHT29細胞(2×10
4細胞/cm
2)を、24ウェルTranswell(登録商標)プレート(Corning;USA)、ポリエステル膜フィルター(孔径0.4μm、表面積1.12cm
2)上に播種した(KOWAPRADIT et al.(2010)“In vitro permeability enhancement in intestinal epithelial cells(Caco−2)monolayer of water soluble quaternary ammonium chitosan derivatives”Aaps Pharmscitech,Vol.11,pp.497−508)。培養培地を頂部と基底チャンバの両方に添加し、培地をCaco2細胞については21日まで、またはHT29細胞については5〜7日まで隔日交換した。Caco2細胞については、EMD Millipore Millicell−ERS2 Volt−Ohm Meter(Millipore)を使用して経エーテル電気抵抗(TEER)を計算した。600Ω.cm
2を超えるフィルター(細胞単層を有する)を透過性試験に使用した。細胞が所望のコンフルエント(単層細胞)に到達した後、細胞をビヒクル(0.01%DMSO)、UroA(50μM)、およびUAS03(50μM)で24時間前処理した。処理後、単層をPBSで洗浄して任意の残留薬物を除去し、200μLのLPS(HBSS中50ng/ml)を各ウェルに添加し、2時間インキュベートした。LPS処理後、単層をPBSで2回洗浄し、200μLのFITC−デキストラン(FD−4、Sigma Aldrich,USA)溶液(HBSS中1mg/mL)を添加した。2時間後、基底チャンバからの試料を取り出し、それぞれ480および525nmの励起および発光波長で蛍光96ウェルプレートリーダーを使用してFD4濃度を決定した。
【0247】
RNA配列決定:ビヒクルおよびUroA(50μM)(n=3)で24時間処理したHT29細胞から全RNAを単離し、トリゾールベースの溶解、続いてQiagen RNeasyキットを使用してRNAを単離した。単離されたRNAを、Agilent Bioanalyzer 2100システム(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)を使用して完全性(RIN>9.5)についてチェックし、Qubitフルオロメトリーアッセイ(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を使用して定量化した。1μgの全RNAを使用して、IlluminaのTruSeq Stranded mRNA LTライブラリ調製プロトコル(Illumina Inc.,San Diego,CA)に従って、ポリA濃縮mRNASeqライブラリを調製した。15個全ての試料を個別にバーコード化し、断片サイズ決定のために、Agilent Bioanalyzer DNA 1000分析(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)と併せてIllumina PlatformsのためのKAPAライブラリ定量化キット(Kapa Biosystems,Wilmington,MA)で定量化した。平均断片サイズは、約300bpであった。1%PhiXスパイクインを有するプールされた1.8pMのライブラリを、1つのNextSeq500/55075サイクル高出力キットv2配列決定フローセルにロードし、IlluminaNextSeq500シーケンサー上で配列決定した。FASTQC(バージョン0.10.1)を使用して、1×75bp配列の品質をチェックした(ANDREWS(2014)“FastQC:A Quality Control Tool for High Throughput Sequence Data」”。品質の低下が予想される読み取りの終了時に、読み取りの全長にわたって30を超える中央品質スコア(エラー確率=0.001または1,000の1ベースコールが不正確であると予測される)、および20を超えるより低い分位数(エラー確率=0.01)でトリミングする必要はなかった。各試料の生の読み取りを、tophat2(バージョン2.0.13)を使用してHomo sapiens(hg38)参照ゲノムアセンブリ(hg38.fa)に直接整列させ(KIM et al.(2013)“TopHat2:accurate alignment of transcriptomes in the presence of insertions,deletions and gene fusions”Genome biology,Vol.14,Article R36)、bam形式で整列ファイルを生成した。任意のパラメータとしては、−no−coverage−searchおよび−ライブラリ型fr−1本鎖が挙げられる。ヒトENSEMBL(FLICEK et al.,(2014)“Ensembl 2014”Nucleic acids research,Vol.42,pp.D749−D755))トランスクリプトームgtf v82を転写産物同定に使用し、合計60,903個の遺伝子を得た。平均して、試料当たり2600万リードを、97%の平均整列速度で整列させた。配列マッピングに続いて、cuffdiff2(バージョン2.2.1)(TRAPNELL et al.(2013)“Differential analysis of gene regulation at transcript resolution with RNA−seq”Nature biotechnology,Vol.31,pp.46−53;TRAPNELL et al.,(2012)“Differential gene and transcript expression analysis of RNA−seq experiments with TopHat and Cufflinks”Nature protocols,Vol.7,pp.562−578)を含むプログラムのタキシードスイートを使用して、任意選択のパラメータ−ライブラリー型fr−1本鎖で差次発現遺伝子を決定した。RNA−seqデータを遺伝子データベース(GEO#GSE113581)に蓄積した。
【0248】
免疫ブロット(ウェスタンブロット):全タンパク質溶解物を、放射免疫沈降アッセイ(RIPA)緩衝液(Sigma−Aldrich,USA)を使用して結腸組織/細胞のいずれかから収集し、使用説明書に従ってBCAタンパク質定量キット(Thermo Scientific)を使用して定量化した。総タンパク質(20〜50μg)をNuPAGE(商標)4〜12%Bis−Trisゲル(Novex Life technologies)上で分解し、ポリフッ化ビニリデン膜(0.22μmの孔;Millipore,USA)にトランスファーした。5%(w/v)脱脂粉乳(1×TBSを含む)で1時間ブロッキングした後、膜を4℃で一晩それぞれの抗体と共にインキュベートした(それぞれの抗体の希釈を表A1に示す)。翌日、Horseradishペルオキシダーゼとコンジュゲートしたそれぞれの二次抗体をプローブし、化学発光基質を使用してタンパク質バンドを検出した(ImageQuant LAS 4000)。ImageJソフトウェアを使用してバンドの濃度測定分析を行った。Cldn4、Ocln、Cldn1、Cyp1A1、AhR、HO1、NQO1、Keap1、β−アクチン、およびラミンBに対する抗体を、Santa Cruz Biotechnologies(USA)から購入し、Nrf2をNovus Biologicals(USA)から購入した。抗体の供給源および一覧を表A1に提示する。
表A1:ウェスタンブロットに使用される抗体のリスト。
【表2】
[この文献は図面を表示できません]
【0249】
共焦点イメージング:HT29またはCaCo2またはBMDM細胞(50,000細胞/ウェル)を8ウェルチャンバスライド(154534PK;ThermoFisher Scientific)に播種し、それらを一晩増殖させた。細胞をビヒクル(0.01%DMSO)またはUroA(50μM)またはUAS03(50μM)で所望の時点で誘導し、冷メトノールで固定した。AhRまたはNrf2またはCldn4をそれぞれの抗体(1:200希釈)で染色した後、蛍光標識(AhRについてはAlexa flour 594、Nrf2およびCldn4についてはAlexa flour 488)された二次抗体(1:500希釈;ThermoFisher Scientific)を行った。核をDAPI(Sigma Aldrich)で染色した。Nikon A1R共焦点顕微鏡を用いて、適切なレーザーチャネルを有する60倍倍率レンズを用いて共焦点画像をキャプチャした。
【0250】
AhRレポーターアッセイ:AhRレポートアッセイを、AhRレポーターアッセイシステム(Indio Biosciences)を使用して行った。AhRレポーター細胞(AhRプロモーター下でルシフェラーゼを発現する)、および陽性対照MeBio(AhRリガンド)化合物をキットで提供された。細胞をビヒクルもしくはUroAもしくはUAS03、またはエラグ酸もしくはMeBioで6時間処理し、発光を製造者の使用説明書に従って測定した。
【0251】
Nrf2−レポーターアッセイ:ARE−ルシフェラーゼプラスミドベクターは、Cayman Chemicalsから入手した。HT29細胞を、リポフェクタミン3000試薬(ThermoFisher Scientific)を使用して50%コンフルエンシーでトランスフェクトした。簡潔に述べると、細胞を6ウェルプレート(0.5×10
6細胞)に播種し、24時間成長させた。1μgのプラスミドDNAおよびトランスフェクション試薬を含むトランスフェクション複合体を、FBSの不在下で各ウェルに添加した。6時間後、10%FBSを含有する培地を添加し、細胞をさらに16〜18時間インキュベートした。これらの細胞をビヒクル(0.01%DMSO)もしくはUroA(50μM)もしくはUAS03(50μM)もしくはスルホラファン(10μM)で24時間処理した。誘導物質とのインキュベーション後、細胞を溶解し、ホタルルシフェラーゼ活性(発光)を、マルチウェルプレートルミノメーター(BMG、LABTECH)を使用してルシフェラーゼアッセイシステム(Promega)で測定した。
【0252】
Cyp1A1酵素活性の測定(エクスビボ):ビヒクルまたはUroAまたはUAS03、BNFまたはFICZで、経口経路または腹腔内経路のいずれかを介して、指示された濃度で1週間毎日処理した。1週間後、マウスを安楽死させ、結腸および肝臓組織を解離した。これらの組織由来のマイクロソームを、以下の手順を使用して調製した(SINGH et al.,(2013)“Evaluation of memory enhancing clinically available standardized extract of Bacopa monniera on P−glycoprotein and cytochrome P450 3A in Sprague−Dawley rats”PloS one,Vol.8,Article e72517)。肝ミクロソームについては、肝臓を最初に0.9%の塩化ナトリウム溶液で灌流し、切除した。付着した血液および生理食塩水を組織紙上でブロットすることによって除去し、組織を組織均質化緩衝液(250mMのスクロースを含む50mMのTris−HCl、pH7.4)中でホモジナイズした。ホモジネートを10,000×gで4℃で30分間遠心分離した。得られた上清をさらに105,000×gで4℃で60分間遠心分離した。ペレットをホモジナイゼーション緩衝液で洗浄し、4℃で60分間、105,000×gで再び遠心分離した。ペレットを均質化緩衝液中に懸濁し、タンパク質およびCYPアッセイに使用した。腸ミクロソーム調製のために、腸を除去し、0.9%の塩化ナトリウムで洗浄した。腸を長手方向に切開して粘膜層を露出させ、ガラススライドの助けを借りて粘膜をスクラップした。スクレープした組織を、ホモジナイゼーション緩衝液(グリセロール(20%v/v)、プロテアーゼ阻害剤(1%)、およびヘパリン(3U/ml)を含む50mMのTris−HCl緩衝液)中に収集した。この懸濁粘膜をホモジナイズし、10,000×gで4℃で20分間遠心分離した。得られた上清をさらに105,000×gで4℃で60分間遠心分離した。ペレットを緩衝液で洗浄し、再び105,000×gで4℃で60分間遠心分離した。ペレットをホモジナイゼーション緩衝液に懸濁し、タンパク質およびCYP酵素アッセイに使用した。
【0253】
エトキシレゾルフィン−O−デエチラーゼ(EROD)アッセイ:マイクロソームタンパク質(0.5mg)を、エトキシレゾルフィン(0.01mM)を含有する200μLのTris緩衝液(0.1M、pH7.4)と混合した。反応を開始するために、NADPH(0.1mM)を添加し、37℃で10分間インキュベートした。10分後、等量のアセトニトリルを添加することによって反応を終了させ、反応混合物を13000×gで4℃で10分間遠心分離させた。上清を使用して、蛍光を測定することによってレゾルフィンを決定した(Ex.530nm、Em.580nm)。純粋なレゾルフィン(Sigma Aldrich)を使用して、標準曲線を生成した。
【0254】
P450−GloCyp1A1発光アッセイ:上記マイクロソーム(20μg)を、P450−GloCyp1A1発光アッセイに、製造者の使用説明書に従って使用した。
【0255】
Cyp1A1酵素活性のインビトロでの測定。ERODアッセイ:ビヒクル、UroAおよびUAS03(24時間)で処理したHT−29細胞(15,000細胞/ウェル)をHBSS緩衝液ですすぎ、次いで新鮮なHBSS緩衝液を5μMの7−エトキシレゾルフィンと共に添加した。細胞をさらに、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション時間後、蛍光(Exc.530nm、Em.580nm)を測定し、生成物(レゾルフィン)をキャリブレーション標準から計算し、タンパク質濃度で正規化した。
【0256】
P450−GloCyp1A1発光アッセイ:HT29細胞(25,000細胞/ウェル)を48ウェルプレートにプレートした。次いで、細胞をUroA(0.1、1、10、25、および50μM)またはUAS03(0.1、1、10、25、および50μM)またはFICZ(0.1、1、10、25、および50nM)で24時間処理した。処理後、細胞を洗浄して、任意の残留薬物、およびCyp1A1基質を含む新鮮な培地を3時間除去した(キットカタログ番号V8751;Promegaに提供されるプロトコルに従う)。インキュベーション後、25μlの培養培地を各ウェルから除去し、96ウェルの白色不透明プレートに移し、25μlのルシフェリン検出試薬を添加して発光反応を開始し、プレートを室温で20分間インキュベートした。インキュベーション後、発光をルミノメーターに記録した。データは、ビヒクル処理に対する倍率変化として報告された。
【0257】
低分子干渉RNA(siRNA)媒介ノックダウン実験:AhRsiRNA(SR300136)およびCyp1A1siRNA(SR301093)は、Origeneから購入した。ノックダウン実験のために、HT29細胞(0.5×10
6細胞/ウェル)を6ウェルプレートに播種し、24時間増殖させた。与えられた使用説明書に従って、Lipofectamine(登録商標)RNAiMAX試薬(ThermoFisher Scientific)を使用して、AhR、Cyp1A1、および対照siRNAをHT29細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション24時間後、細胞をビヒクル(0.01%DMSO)、UroA(50μM)およびUAS03(50μM)で24時間誘導した。誘導物質での処理後、細胞をRIPA緩衝液を使用して溶解し、全タンパク質を使用して、ウェスタンブロットによってAhR、Cyp1A1およびcldn4の発現を解析した。
【0258】
CRISPR/Cas9法によるCyp1A1欠失:HT29細胞(1.5×10
5)をトランスフェクションの24時間前に抗生物質を含まない標準増殖培地中6ウェルに播種した。60%コンフルエンシー細胞で、細胞を、UltraCruz(登録商標)トランスフェクション試薬(sc−395739、Santa Cruz)を使用して、CRISPR/Cas9 KOプラスミド(sc−400511−KO−2、Santa cruz)およびHDRプラスミド(sc−400511−HDR−2、Santa cruz)のそれぞれ2μgで共トランスフェクトした。培地を、トランスフェクションの96時間後に(4μg/mLのピューロマイシンを含む)選択培地で置き換えた。蛍光顕微鏡およびウェスタンブロット(CYP1A1)でトランスフェクションが確認された。GFPおよびRFPの二重陽性細胞を、MoFlo XDP選別機器(Beckman Coulter)を使用して選別した。これらの選別におけるCyp1A1の欠失を、ウェスタンブロットによって確認した。次いで、これらの細胞を6ウェルプレートにプレーティングして、Cldn4発現に対するUroA/UAS03の効果を評価するための標準培地に播種した。24時間後、タンパク質のためにUroA/UAS03処理細胞を採取し、正常なHT29細胞と共にCldn4発現を調査した。
【0259】
NF−κB EMSAアッセイ:10%胎児ウシ血清(FBS)、100U/mlペニシリン、および100U/mlストレプトマイシンで補充したDMEM中で、RAW264.7細胞またはBMDMを100mmディッシュに播種した(1×10
6)。細胞を24時間増殖させ、インキュベーション後、細胞を、UroA(50μM)およびUAS03(50μM)を含んで、または含まずにLPS(50ng/mL)で6時間処理した。処理後、培養培地を除去し、PBSで洗浄した。細胞を、PBS中でスクレープし、ペレットダウンした。上清を廃棄し、ペレットを、NE−PER核および細胞質キット(Thermo Scientific、カタログ番号78833)を使用する核タンパク質および細胞質タンパク質の単離に使用した。後に、核タンパク質(2μg)を、核因子カッパB p65(Viagene Biotech Incカタログ番号IRTF28260)のIR Fluo−プローブを有する非放射性EMSAキットを使用するEMSAに使用した。
【0260】
結腸移植培養:野生型(C57BL/6)またはNrf2
−/−またはAhR
−/−マウス由来の結腸組織片(0.5〜1cmの長さ)を、ビヒクル(0.01%DMSO)、UroA(50μM)またはUAS03(50μM)の存在下で、加湿雰囲気中で、完全なDMEM−高グルコース培地(10%ウシ胎児血清、1×ペニシリンストレプトマイシン溶液を補充)中で3重で24時間培養した。タンパク質調製(RIPA+緩衝液を有する組織溶解物)または全RNA単離のために組織を処理した。これらの組織溶解物またはRNAを使用して、Nrf2、Cldn4、およびAhRの発現を決定した。
【0261】
RNAおよびタンパク質分析のための組織処理:結果セクションに記載されているように、マウスを処理した。マウスをCO
2窒息、続いて頸部脱臼で安楽死させた。結腸を解剖し、管腔内容物を冷PBS(PMSFおよびオルトバンデート酸ナトリウムを含む)でフラッシュアウトした。結腸の小さい部分を液体窒素中でスナップ凍結し、RNA分析のために−80℃で保管した。タンパク質試料の調製のために、結腸を長手方向に開き、事前に冷却されたガラススライドを使用して氷冷1×PBS中で粘膜をスクレープし、4℃で300×gで10分間遠心分離した。上清を廃棄し、ペレットをRIPA緩衝液(1×プロテアーゼ阻害剤を含む)中に懸濁し、高速でボルテックスした。氷上で30分間インキュベーションした後、試料を13,000×gで4℃で20分間遠心分離した。上清を収集し、タンパク質を、BCAタンパク質定量キットを使用して定量化した。溶解物をウェスタンブロットに適切に使用した。
【0262】
28日間繰り返し投与毒性試験:UroAおよびUAS03の毒性を評価するために、28日間の繰り返し用量毒性試験を行った。マウスに、UroA(20および40mg/kg/日)ならびにUAS03(20および40mg/kg/日)を28日間毎日投与した。体重、食物、および水の摂取量を毎週評価した。28日後、マウスを屠殺し、全ての主要臓器の総検査を行った。血液を収集して血清を得た。血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)を、使用説明書に従ってALT/ASTキット(BioVision)を使用して解析した。
【0263】
2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)誘発性大腸炎:オスのC57BL/6またはNrf2
−/−マウス(6〜8週齢のマウス)を、ケタミン/キシラジン(100mg/12.5mg/kgのIP)混合物で麻酔し、50%エタノール中の単回用量のTNBS(2.5mg/マウス、Sigma Aldrich,USA)を投与した。TNBSの投与後、マウスを30〜60秒間逆さまに保持して、結腸内のTNBSの適切な分布を確保した。対照群は、TNBSを含まない50%のエタノールを投与した。TNBSを有するマウスを、ランダムに、ビヒクル(0.25%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC))、UroA、およびUAS03の3つの群に分けた。UroAまたはUAS03を、所望の濃度で0.25%ナトリウム−CMCに再懸濁した。マウスに、所望の濃度(体重1kg当たり4または20mg)で100μl中のVehまたはUroAまたはUAS03を経口投与した。処理は、TNBS投与の12時間後に開始し、その後72時間まで12時間毎になされた。この実験は、AhR
−/−マウスが関与したTNBSの60時間後に終了した。一部の実験では、我々は、12時間TNBS投与後に1回のみ処理した。投与されたTNBSおよび対照マウスを、80時間のTNBS/エタノール処理後に、組織および血漿収集のために安楽死させた。マウスを大腸炎表現型について検査した。
【0264】
DSS誘発性大腸炎:マウスにおける急性実験的大腸炎は、飲料水中で3%(w/v)の大腸炎グレードDSS(MP Biomedicals)を7日間投与することによって誘導した。対照動物はDSSを含まない飲料水を投与した。全ての大腸炎群マウスを、DSS処理の4日
目および6日
目に、3つの群、すなわちビヒクル処理(0.25%Na−CMC)、UroA(20mg/kg/日)、およびUAS03(20mg/kg/日)にランダムに分けた。7日後、動物を通常の水に7日間戻した。慢性DSS大腸炎モデルについては、2.0%(w/v)のDSSの3つのサイクルを使用し、各DSSサイクルは構成され、または7日、続いて10日の通常の水であり、マウスは、DSSサイクルの4日
目および6日
目ごとにUroA(20mg/kg/日)で処理された。
【0265】
大腸炎の重症度と組織の収集の評価:体重、便の一貫性、および直腸出血の変化についてマウスを毎日評価し、スコアを与え、得られた疾患活動性指数に組み合わせた(MURTHY et al.,(1993)“Treatment of dextran sulfate sodium−induced murine colitis by intracolonic cyclosporin”Dig Dis Sci,Vol.38,pp.1722−1734)。安楽死後、結腸を回収し、PBS含有(1mMのPMSFおよび0.2mMのオルトバナジウム酸ナトリウム)でフラッシュした。結腸長および結腸重量を測定し、結腸の小さな部分をミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性およびRNA単離のために切除した。MPOおよびRNA抽出のための組織を液体窒素中でスナップ凍結し、さらなる分析まで−80℃で保管した。組織学的検査のための組織を、10%リン酸緩衝生理食塩水ホルマリンに保管した。血液を収集し、血清を3500×gで15分間遠心分離することによって分離した。血清サイトカイン(IL−6、TNF−α;Biolegend)およびケモカイン(CXCL1;R&D Systems)レベルを、製造者の使用説明書に従ってELISAによって測定した。
【0266】
インビボ腸透過性アッセイ:腸バリア機能を、FITC−デキストラン(MW4000、FD4,Sigma−Aldrich,USA)を使用してインビボ腸透過性について評価した(FURUTA et al.,(2001)“Hypoxia−inducible factor 1−dependent induction of intestinal trefoil factor protects barrier function during hypoxia”J Exp Med,Vol.193,pp.1027−1034)。簡潔に述べると、マウスにFITC−デキストラン(100gm体重当たり60mg)を経口投与した。安楽死前にマウスを4時間絶食させた。血清中のFITC−デキストラン濃度は、血清中のFITC−デキストランの標準曲線(励起、485nm、発光、525nm、BMG LABTECH)を使用して決定した。
【0267】
ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性:結腸におけるMPO活性は、以下の手順を使用して決定した(KIM et al.(2012)“Investigating intestinal inflammation in DSS−induced model of IBD”J Vis Exp,Vol.60,Article e3678(6 pages))。簡潔に述べると、結腸組織を50mMのPBS(pH6.0)中0.5%(w/v)のヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(H6269;Sigma−aldrich,USA)中でホモジナイズした。このホモジネートは、均質な懸濁液を得るために3回の凍結融解サイクルおよび10〜15秒超音波処理を行った。この懸濁液からの上清を、13000×gで20分間、4℃で遠心分離した後に回収した。次いで、上清(10μl)を、0.167mg/mlのo−ジアニシジン(Sigma−Aldrich,USA)および0.0005%H
2O
2(Sigma−Aldrich USA)を含む50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に添加し、吸光度を2分間間隔で450nm(BMG、LABTECH)で得た。各試料中のMPOの単位は、MPOの1単位(U)=1.13×10
−2nm/分のモル吸光係数で割った1μmolのH
2O
2を考慮して決定され、各試料中のMPOは、[ΔA(t
2−t
1)]/Δmin×(1.13×10
−2)式を用いて計算し、MPO単位をmg組織あたりで正規化した。
【0268】
組織病理学:収集した結腸組織を10%緩衝ホルムアルデヒド溶液中で一晩固定し、固定組織に標準的な組織病理学的処理をした。簡潔に述べると、固定後、組織は脱水し、パラフィン埋め込み前にキシレンで洗浄した。5μmのパラフィン切片を切断し(Leicaミクロトーム)、H&E染色のために染色した。Aperio Scanscopeを用いてH&E画像をキャプチャした。H & E切片は、Erben et al.(ERBEN et al.,(2014)“A guide to histomorphological evaluation of intestinal inflammation in mouse models”Int J Clin Exp Pathol,Vol.7,pp.4557−4576)に記載されるスコア付けを用いて、盲検でスコア付けした。
【0269】
以下に考察される結果に使用される方法は、別段の指示がない限り、実施例セットAで論じられる方法である。
【0270】
実施例セットB
URoAおよびUAS03の合成および抗炎症活性
UroA(3,8−ジヒドロキシ−6H−ジベンゾ[b,d]ピラン−6−オン)は、平面構造をもたらす2つのモノヒドロキシルフェニル環を連結するラクトン(環状エステル結合)を有する(
図1A)。胃pHまたは消化酵素は、ラクトン環を加水分解することができ、これにより環が開き、平面構造および場合によってはその活性が失われる(理論に拘束されることを望むものではない)。より安定し、おそらくより強力な化合物を生成するために、非加水分解性環状エーテル誘導体UAS03(6H−ベンゾ[c]クロメン−3,8−ジオール)を合成した(
図1A)。両方の化合物の安定性を、胃pHおよび消化酵素の条件下で検査した。結果は、UAS03が実際に胃pHで、また胃酵素、例えば、エステラーゼおよびプロテアーゼの存在下でも安定であることを示した(
図1A)。URoAとUAS03の両方は、マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)においてLPS誘導性IL−6およびTNF−αを減少させ、UAS03は、ナノモル濃度での抗炎症活性を示した(
図1B)。次に、UroAおよびUAS03の抗炎症活性をLPS誘導性腹膜炎マウスモデルにおいてインビボで検査した。UroAまたはUAS03処理は、血清IL−6レベルおよびTNF−αレベルのLPS誘導性増加を減少させた(
図1C)。これらの結果は、UAS03が、増加した抗炎症活性を有するUroAの強力な構造類似体であることを示唆する。
【0271】
UroA/UAS03はタイトジャンクションタンパク質を誘導する
微生物代謝産物は腸上皮に近接しているので、我々は、代謝産物が上皮細胞機能に直接影響を及ぼす可能性があると推測する(理論に拘束されることを望まない)。このような効果を調べるために、UroAに曝露した上皮細胞株(HT29)のRNA−Seq分析を行った。方法に記載されているように解析を行い、差異的遺伝子発現の有意性を決定するために、cuffdiff2アルゴリズムを用いた。0.05の未補正p値カットオフに基づいて、1,960個の遺伝子が、HT29細胞におけるUroA処理の結果として差次的に発現されることが決定された。このリストをさらに制限すると、437個の遺伝子が、UroA処理HT29細胞においてFDR補正q値<0.05で差次的に発現することが見出された(
図1D)。これらの制限された遺伝子リストを使用した経路分析を、Ingenuity Pathway Analysis(IPA)ソフトウェアを使用して行った(
図1D)。真核生物開始因子2(eIF2)、ラパマイシン(mTOR)の哺乳動物標的、およびミトコンドリア機能障害経路は、上位3経路として現れた。MTORおよびeIF2経路に対するUroAの影響は、結腸上皮機能との関連で確立する必要があった。RNA−Seq解析は、シトクロムP4501A1(Cyp1A1)が上位3つのUroA上方制御遺伝子の中にあることを示した。経路分析は、Nrf2およびAhRシグナル伝達経路が上部25にあることをさらに示す(
図1D)。バリア機能の調節は、IBDを緩和するのに役立つことがあると推測する(理論に拘束されることを望むものではない)。したがって、RNA−Seqデータにおけるタイトジャンクションタンパク質の発現を調査し、Claudin4(Cldn4)がUroA処理細胞において上方制御されることを見出した(
図1E〜F)。Cldn4およびCyp1A1に加えて、UroAはまた、ヘムオキシゲナーゼ1(HMOX1またはHO1)の発現を増加させた(
図1E〜F)。HO1はNrf2依存性遺伝子であり、毒性ヘムの除去、酸化ストレスからの保護、アポトーシスおよび炎症の調節を含むいくつかの有益な活性を発揮することができる。これらの観察に基づいて、UroAおよびUAS03がタイトジャンクションタンパク質を誘導し、AhRおよびNrf2経路を通じてバリア機能を増強することができると仮定した。
【0272】
Ingenuity Pathway Analysis(IPA)は、Nrf2およびAhRシグナル伝達経路の濃縮を明らかにし(
図1D)、UroAシグナル伝達におけるこれらの経路の役割を支持した。IBDにおける潜在的な治療手段は、バリア機能を増加させる能力である。したがって、我々は、UroA処理細胞におけるタイトジャンクションタンパク質Cldn4の発現の増加を観察したことに関心があった。RNA−seqデータセットにおいて統計的に有意ではないが、リアルタイムPCRを使用して、追加のタイトジャンクションタンパク質ZO−1およびOcln1の発現の増加をさらに観察した(
図1G)。UroAまたはUAS03によるこれらのタンパク質の増加したレベルは、HT29と別の結腸上皮細胞株Caco2の両方におけるウェスタンブロット(
図1H)および共焦点イメージングによるCldn4(
図1I)によって確認された。さらに、UroA/UAS03で処理したマウスの結腸におけるCldn4の発現の上昇を観察した(
図1J)。トランスウェルプレート中のインビトロFITC−デキストラン透過性アッセイを使用して、タイトジャンクションタンパク質の増加の機能結果を検査した。
図1Lに示すように、Caco2またはHT29細胞をUAS03またはUroAで前処理することは、LPSを阻害し、FITC−デキストランの底部チャンバへの漏出を誘導した。全体的に、これらの結果は、UroA/UAS03による処理が、腸関門の完全性を潜在的に増強するタイトジャンクションタンパク質の発現を増加させたことを示唆する。
【0273】
AhRはUroA/UAS03の活動を媒介する
RNA−SeqデータおよびリアルタイムPCRデータは、UroAがCyp1A1を上方制御したことを示唆した(
図1E〜F、
図2A〜B)。P450−GloCyp1A1アッセイ(
図2C)および7−エトキシレゾルフィン−O−デエチラーゼ(EROD)アッセイ(
図2D)を実施して、Cyp1A1酵素活性が同様に影響を受けたかどうかを判定した。結腸上皮細胞におけるUroA/UAS03はCyp1A1活性を誘導した(
図2Cおよび
図2D)。Cyp1A1はAhRシグナル伝達の下流標的であるため、UroA/UAS03がAhRを介してそれらの作用を媒介するかどうかを調べた。これらのアッセイにおいて、強力なAhRリガンド[2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−p−ジオキシン(TCDD)または6−ホルミリンドロ[3,2−b]カルバゾール(FICZ)および低親和性AhRリガンド(β−ナフトフラボン(BNF)]を利用して、Cyp1A1活性をUroA/UAS03と比較した。UroA/UAS03は、50μMで低親和性AhRリガンドBNFと同様にCyp1A1を活性化した。予想通り、FICZおよびTCDD等の高親和性リガンドは、UroA/UAS03/BNFと比較して、ナノモル濃度でもCyp1A1活性の増加を示した(
図2Cおよび
図2D)。野生型およびAhR
−/−マウスを使用して、UroA/UAS03がインビボでCyp1A1活性を誘導するかどうかを試験した。
図2Eに示すように、UroA/UAS03は、野生型の結腸および肝臓においてCyp1A1活性を活性化したが、AhR
−/−マウスにおいては活性化しなかった。さらに、UroA/UAS03処理野生型マウスは、BNFおよびFICZ処理マウスと比較して、結腸組織において比較的多くのCyp1A1活性を示した(
図2F〜G)。腹腔内(i.p)を通して送達されるFICZおよびBNFは、経口経路を通して送達されるUroA/UAS03と比較して、肝臓においてより多くのCyp1A1活性を示した(
図2F〜G)。ファーストパス効果に起因する可能性がある。投与経路を直接比較するために、腹腔内を通じてUroAまたはUAS03またはFICZを送達し、Cyp1A1酵素活性を決定した。予想通り、高親和性AhRリガンド、FICZは、UroA/UAS03による5〜6倍と比較して肝臓において約30倍を誘導した(
図2H)。結腸において、FICZはCyp1A1活性を最大約5倍まで増加させたが、UroA/USA03は約3倍しか増加しなかった。要約すると、これらの結果から、UroA/UAS03がCyp1A1の発現を上方制御し、低レベルではあるが、インビボでAhRを介して酵素活性を増強することが示唆される。
【0274】
UroA/UAS03によるAhRの直接活性化を、HT29細胞において、XRE−ルシフェラーゼレポーターアッセイおよびAhRの核移行によって検査した。データは、UroA/UAS03処理が、より高いレベル(約15倍)のAhR活性化を引き起こした高親和性リガンドMeBioと比較して、ルシフェラーゼ活性の2〜4倍の誘導をもたらしたことを示した(
図2I)。UroAとUAS03の両方は、AhRの核移行を誘導した(
図2J〜K)。AhRは、UroAまたはUAS03で処理したマウスにおいて上方制御された(
図1K)。次に、AhRまたはCyp1A1が、タイトジャンクションタンパク質Cldn4のUroA/UAS03媒介性上方制御に関与しているかどうかを調べた。この目的のために、siRNAノックダウンを使用してAhRまたはCyp1A1発現を抑制し、Cldn4発現を検査した。
図2L〜Oに示すように、UroA/UAS03は、AhRまたはCyp1A1ノックダウン細胞の両方においてCldn4を誘導しないように見える。さらに、CRISPR/Cas9法を用いてHT29細胞中のCyp1A1も欠失させ、UroA/UAS03媒介活性を調べた。Cyp1A1の欠失は、親HT29細胞と比較して、Cldn4の基礎レベルに対する効果を示さなかった(
図2P)。
図2Q〜Sに示すように、UroA/UAS03は、Cyp1A1欠失した細胞においてCldn4またはNQO1を上方制御しなかったように見えた。これらの結果は、UroA/US03が、AhR−Cyp1A1依存性経路の活性化を介してタイトジャンクションタンパク質の発現を誘導することを示唆する。
【0275】
UroA/UAS03はNrf2を介して腸バリア機能を増強する
AhRはUroA媒介活性において役割を果たすように見えるので、乳癌細胞株MCF−7(<<http://dbarchive.biosciencedbc.jp/kyushu−u/hg19/target/AHR.1.html>>)で行ったChIP−Atlas(<<http://chip−atlas.org/target_genes>>)
を使用して既存のAhRリガンドチップ分析を分析した。分析は、Nrf2がAhRシグナル伝達カスケードの標的であることを示唆した(
図3A)。同様に、AhRはまた、Ocln、TJP3、Cldn2、3、および5等のタイトジャンクションタンパク質に影響を及ぼす(
図3B)。さらに、RNA配列データ(Ingenuity)の経路解析は、AhRおよびNrf2経路が上位25に列挙されていることも明らかにした。TCDDがNrf2経路を介してその活性のいくつかを媒介するにつれて、我々は、UroA/UAS03がAhR−Nrf2依存性経路を活性化することによってタイトジャンクションタンパク質を誘導する可能性があると仮定した。結腸上皮細胞ならびにAhRおよびNrf2が欠損したマウスにおいて、この仮説を試験した。UroA/UAS03による処理は、mRNAとタンパク質レベルの両方でNrf2を上方制御し(
図3Cおよび
図3G)、HT29細胞内でその核移行を誘導した(
図3H〜I)。ARE−ルシフェラーゼアッセイを使用して、Nrf2プロモーター活性を検証し、UroA/UAS03は、より低いレベルではあるが、既知のNrf2活性化剤スルフォラファン(SFN)と同様に、処理時に発光を増強した(
図3D)。Nrf2およびその標的遺伝子HO1は、UroA/UAS03で処理された野生型マウスの結腸内(
図1J〜K)ならびにHT29細胞内(
図3E)で上方制御される。UroA/UAS03に誘導されたCldn4上方制御におけるAhR−Nrf2経路の正確な機能および相互依存性を調べるために、C57BL/6(野生型、WT)、AhR
−/−およびNrf2
−/−マウス由来の結腸外植片を使用した。NAD(P)H:キノンオキシドレダクターゼ(NQO1)は、細胞質2−電子還元酵素をコードし、誘導はAhRとNrf2経路の両方によって共有される。これらのマウスの結腸外植片におけるNQO1の発現をUroA/UAS03が上方制御するかどうかを調査した。UroA/UAS03での処理は、WT結腸外植片におけるNrf2、NQO1、およびCldn4の両方の発現を誘導した(
図3J〜N)。しかしながら、これらの化合物は、Nrf2
−/−とAhR
−/−結腸外植片の両方におけるCldn4およびNQO1、ならびにAhR
−/−マウス結腸外植片におけるNrf2を誘導しなかったように見えた(
図3J〜N)。これは、UroA/UAS03媒介活性に対するAhRおよびNrf2発現の可能な要件を示唆している。WT、AhR
−/−およびNrf2
−/−マウス結腸外植片におけるCldn4およびNQO1の発現の基礎レベル比較は、AhRおよびNrf2の欠如がNQO1およびCldn4の発現を減少させたことを示唆する(
図3L)。データは、Clnd4の発現がAhR
−/−およびNrf2
−/−において減少するが、Cyp1A1ノックダウン細胞においては減少しないことを示唆する。
【0276】
タイトジャンクションタンパク質のUroA/UAS03媒介性上方制御に対するAhRおよびNrf2の可能なインビボ要件を定義するために、WT、Nrf2
−/−およびAhR
−/−マウスを利用した。これらのマウスの結腸組織におけるCldn4、NQO1の基礎レベル発現の調査は、AhRまたはNrf2の欠如がNQO1レベルを低下させたが、発現の低下の傾向があったにもかかわらず、Cldn4の低下に対する統計的有意性を示さなかったことを示唆する。(
図3Q)。マウスをUroA/UAS03(経口、20mg/kg体重)で7日間毎日処理し、バリア機能を分析した。WTマウスにおけるUroA/UAS03による処理は、Nrf2およびタイトジャンクションタンパク質(Cldn4、NQO1、Ocln、ZO1、およびTJP3)を上方制御した(
図3O〜T)。対照的に、UroA/UAS 03は、Nrf2
−/−およびAhR
−/−マウスにおいてこれらのタンパク質を誘導しないように見えた(
図3O〜T)。UroA/UAS03誘導NQO1発現は、HT29細胞においても確認された(
図3F)。全体的に、これらの結果は、AhRとNrf2の両方が、タイトジャンクションタンパク質およびNQO1のUroA/UAS03媒介性上方制御において役割を果たすことを示唆する。
【0277】
UroA/UAS03による処理は、大腸炎を軽減する
UroA/UAS03制御バリア機能の生理学的関連性を、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)誘導大腸炎モデルで試験した(ANTONIOU et al.(2016)“The TNBS−induced colitis animal model:An overview”Ann Med Surg(Lond),Vol.11,pp.9−15.)。UroA/UAS03(12時間間隔で20mg/kg)による経口治療は、TNBS誘発性体重減少(
図4A)、疾患活動性指数(DAI)スコアの低下(
図4B)、および腸透過性(
図4C)から保護した。UroA/UAS03処理は、TNBS誘発性結腸短縮(
図4D〜E)および減少した体重対長比(
図4F)から保護し、結腸炎症の減少を示唆する。UroA/UAS03処理はまた、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性(
図4G)から実証される好中球浸潤、ならびに潰瘍性大腸炎の特徴であるIL−6、TNF−α、CXCL1、およびIL−1β(
図4H)等の血清炎症マーカーを低減した。これらの所見と一致して、結腸切片のH&E分析は、より少ない組織損傷および炎症スコアを示した(
図4I)。さらに、UroA/UAS03は、これらのマウスの結腸におけるCldn4のTNBS誘発性下方制御からも保護した(
図4J)。UroA/UAS03処理の用量および頻度の効果、ならびに大腸炎の緩和におけるそれらの予防的有効性をさらに検討した。
図4K〜Pに示すように、UroA/UAS03は、TNBS誘発性大腸炎を4または20mg/kg体重での単一処理で軽減した。各時点における体重の比較は、全ての群におけるTNBS治療が体重の減少につながったことを示唆し、処理は体重の減少を減少させるように見えるが、有意性には達しなかった(
図4Q)。しかしながら、処理は、結腸の短縮からの保護、炎症性メディエーターの遮断などの他のパラメータへの影響を示した。野生型マウスをUroAまたはUAS03で補充することは、それらの体重、CBCカウント、ならびに血清ALTおよびASTレベルにおける観察された変化から立証される毒性の兆候を示さなかった(
図4R〜S)。
【0278】
UroA/UAS03は、タイトジャンクションタンパク質を上方制御することによってバリア保護活性を示したため、これらの代謝産物への定期的な曝露が大腸炎の予防において持続的な有益な効果をもたらすかどうかを調査した。UroA/UAS03の予防活性プロファイルを、TNBS誘発性大腸炎モデルにおいて検査した。WTマウスに、ビヒクルまたはUroA/UAS03を1週間毎日経口投与した後、TNBS投与して大腸炎を誘発した。これらのマウスは、さらなるUroA/UAS03を受けなかった。治療レジメンおよび体重パーセントを
図5Aおよび
図5Hに示す。前処理したマウスを、処理レジメンと同様のTNBS誘発性結腸短縮および結腸炎症(結腸長/体重)から保護した(
図5B〜D)。前処理はまた、バリア機能を増強し、TNBS誘発炎症を減少させた(
図5E〜F)。これらの結果は、UroA/UAS03が媒介する強化された腸バリア機能が、大腸炎の予防に長期的な有益な効果をもたらす可能性を示唆している。処理レジメンでは、マウスが重度の大腸炎を発症するTNBSの24時間後にUroAまたはUAS03でマウスを処理した。この設定では、UroA/UAS03による処理はまた、ビヒクル処理と比較して、結腸の短縮、腸管透過性、および炎症を低減することによって、大腸炎表現型を逆転させた。
【0279】
UroA/UAS03の治療用途を、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎モデルにおいても調査した。DSSは、上皮細胞バリアを化学的に破壊し、細菌の浸透の増加をもたらし、炎症および結腸組織損傷をもたらす。
図2N〜Oに示すように、UroA/UAS03で処理したマウスは、3%DSS誘導急性大腸炎から保護された。UroA/UAS03処理マウスは、疾患進行中に全体的にDAIスコアの低下を示した。15日目の実験終了時のビヒクル処理と比較して、UroA/UAS03処理は、結腸の短縮、腸管透過性の低下、および炎症の低減から保護した(
図5I〜M)。さらに、UroA/UAS03の治療有効性も、慢性DSSモデルにおいて調べられ、マウスに、飲料水中の2%DSSで7日間、通常の水上の各サイクルにおける14日間の間隔の4サイクルで与えた(
図6A)。腸管透過性の減少(
図6B)、結腸の短縮の減少(
図6C〜D)、結腸重量/長さ比の増加(
図6E)、炎症の減少(血清IL−6、IL−1β、TNF−α、ならびに結腸組織MPOレベル)から明らかなように、UroA/UAS03による処理は、DSS誘発性大腸炎から保護した(
図6F〜G)。これらのマウスにおけるタイトジャンクションタンパク質の分析は、UroA/UAS03による処理がCldn4の発現を増強したことも示唆する(
図6H)。これらの結果は、バリアの完全性を維持し、結腸炎症を緩和する上で、UroA/UAS03のモデル非依存的有益活性を強調する。
【0280】
大腸炎に対するUAS03/UroA媒介性保護は、AhR−Nrf2経路を使用することができる
上述の研究は、UroA/UAS03増強バリア機能におけるAhR−Nrf2経路の役割を示した。結腸炎におけるこれらの経路の関連性を調べるために、Nrf2(
図7)およびAhR(
図8)のインビボ使用を試験した。UroA/UAS03によるNrf2
−/−マウスの処理は、TNBS誘発性大腸炎によって引き起こされる体重減少を回復させないように見え(
図7A〜Bおよび
図9A)、または結腸の短縮から保護しなかった(
図7C)。UroA/UAS03処理は、ビヒクル処理と比較して、UroA/UAS03処理マウスにおける同様のFITC−デキストラン漏出から明らかであるように、Nrf2
−/−マウスにおけるバリア機能を増強しなかった(
図7D)。これらの結果は、UroA/UAS03に強化される腸関門完全性がNrf2の発現を伴うことを実証した。UroA/UAS03は、Nrf2
−/−マウスにおけるIL−6およびTNF−αレベル等の血清炎症媒介体を部分的に低下させ(
図7E)、これは、UroA/UAS03が、Nrf2非依存的様式でいくつかの抗炎症活性を媒介し得ることを示唆する。UroA/UAS03媒介性保護活性におけるAhRの役割を定義するために、TNBS誘発性大腸炎モデルを野生型マウスと共にAhR
−/−マウスで実行した(
図8A)。予想通り、AhR
−/−マウスは、急速な体重減少から明らかであるように、TNBS誘発性大腸炎モデルに対してより感受性であった(
図8Bおよび
図9B)。したがって、TNBS投与後60時間で実験を終了した(
図8A)。UroA/UAS03による処理は、野生型マウスと比較してAhR
−/−マウスで結腸長の短縮から保護しなかったように見えた(
図8C〜D)。加えて、UroA/UAS03は、インビボ透過性アッセイから明らかであるように、AhR
−/−マウスにおけるバリア機能障害を是正しなかったように見えた(
図8E)。血清炎症性メディエーターの分析は、UroA/UAS03がIL−6を減少させず、AhR
−/−マウスにおいてTNF−αをわずかに減少させたように見えたのに対し、UroA/UAS03処理は、上述のように野生型マウスにおいてIL−6およびTNF−αを減少させたことを示唆している(
図8F)。これらの結果に基づいて、UroA/UAS03は、タイトジャンクションタンパク質を誘導することによって、AhR−Nrf2依存経路を介して保護バリア機能活性を発揮することを提案する(
図8G)。
【0281】
マクロファージは、IBDにおける結腸炎症のメディエーターであり得るため、我々は、UroA/UAS03媒介性抗炎症活性が、マクロファージにおけるAhR−Nrf2経路に関与するかどうかを判定した。最初に、UroA/UAS03がマクロファージにおけるNrf2依存性経路を活性化するかどうかを調べた。結果は、UroA/UAS03による処理が、Nrf2発現を上方制御し、その核移行、ならびにマクロファージにおけるHO1発現等のNrf2標的遺伝子の上方制御を誘導したことを示した(
図9C〜G)。さらに、WT、Nrf2
−/−およびAhR
−/−マウス由来のマクロファージにおけるLPS誘導性IL−6産生のダ下方制御を媒介したUroA/UAS03の分析は、LPSがNrf2
−/−およびAhR
−/−マクロファージにおいて、WTと比較してはるかに高いレベルのIL−6を誘導することを示した(
図8H)。UroA/UAS03はまた、マクロファージにおけるAhR依存的様式でNF−κB活性化を低下させた(
図9H)。AhR
−/−BMDMは、野生型と比較して増加したNF−κB活性化ならびに増加したレベルのIL−6から明らかなように、LPS刺激に対して超応答性である(
図8Hおよび
図9I)。Nrf2
−/−マクロファージにおけるUroA/UAS03によるIL−6レベルの低下にもかかわらず、これらの低下したレベルは、WTマクロファージにおけるLPS誘導性IL−6と比較して依然として高い。比較すると、処理時の倍率低減(
図9J〜L)、インビボ(TNBSモデル)とインビトロ BMDM(LPS誘導性IL−6)の両方のNrf2非依存性抗炎症活性を示すWTと同様に、UroA/UAS03は、Nrf2
−/−におけるIL−6を低減した。対照的に、UroA/UAS03は、30μMまでのAhR
−/−マクロファージ中、ならびにTNBS誘導大腸炎モデル中のAhR
−/−マウス中でLPS誘導性IL−6産生を遮断しなかったため、UroA/UAS03がAhR依存的様式を介して抗炎症活性を媒介することが示唆された。50μM用量でのIL−6レベルのAhR
−/−BMDMのわずかな減少は、未知のAhR非依存性抗炎症活性のいくつかを示唆し得る。ここで提示する結果は、単一の微生物代謝産物が、AhR−Nrf2シグナル伝達経路を活性化することを介して上皮細胞におけるバリア機能を調節し、AhR依存性経路における抗炎症活性も調節することを強調する。
【0282】
考察
UroAおよびUAS03は、それらの抗炎症活性に加えてバリア機能を増強することによって、腸全体の健康を増加させる。UroA/UAS03は、第I相(AhR−Cyp1A1)および第II相(Nrf2−抗酸化経路)代謝経路を活性化して、タイトジャンクションタンパク質の発現を増強し、炎症を阻害する。さらに、これらの化合物での処理が予防および治療環境の両方で大腸炎を軽減したことを実証する。
【0283】
RNA−Seq分析によってこれらの代謝産物の上皮細胞機能を検索する我々のアプローチは、それらの機能と潜在的な機序についていくつかの手がかりを明らかにした。UroA/UAS03は、タイトジャンクションタンパク質(例えば、Cldn4、Ocln、およびZO1)の上方制御を媒介し、上皮単層におけるLPS誘導性漏出からの保護は、これらの代謝産物がバリア機能の調節において明らかに役割を果たしていることを示した。タイトジャンクション部は、副細胞透過性を調節し、腸バリア機能を維持するために、膜貫通タンパク質(例えば、オクルーディン、クローディン、接合接着分子、およびトリセルリン)、ならびに末梢膜タンパク質(例えば、ZO−1およびシングルリン)の両方からなる。タイトジャンクション部の破壊は、バリア機能障害をもたらし、IBDおよび他の障害に関与する。
【0284】
我々のRNA−seq研究および発現解析は、Cldn4の上方制御に加えて、UroAは、結腸上皮細胞におけるCyp1A1およびHO1の発現も誘導したことを示した。Cyp1A1およびHO1は、第I相および第II相薬物代謝経路の活性化を表すため、これらの結果は、UroA/UAS03機能の媒介におけるAhRおよびNrf−2の潜在的な関与を示唆した。AhRは、細胞特異的遺伝子調節および細胞機能をもたらす異種と内因性リガンドの両方に応答する核転写因子である。AhR活性化は、Cyp1A1等の複数のI相およびII相異種生物化学代謝酵素の誘導に関与する。我々の研究は、UroA/UAS03処理が、毒性を示さずに、AhRの発現および核移行を誘導し、XRE標的遺伝子の転写を増強し、Cyp1A1酵素活性を誘導したことを明らかにした。
【0285】
UroA/USA03は、AhRを欠く細胞またはAhR
−/−結腸外植片、ならびにAhR
−/−マウスにおいてそれらの活性を発揮しなかったように見え、UroA/UAS03活性の媒介におけるAhR経路の役割を示唆している。我々の現在の研究は、タイトジャンクションタンパク質およびバリア機能を調節するための上皮細胞におけるこの経路を強調している。
【0286】
我々のインビトロおよびインビボの両方の研究は、UroA/UAS03が、結腸上皮におけるNrf2ならびにHO1およびNQO1などのその標的遺伝子の発現を誘導したことを示唆している。さらに、我々の結果は、AhR−Cyp1A1−Nrf2経路がUroA/UAS03媒介性のタイトジャンクションタンパク質の上方制御において役割を有することも示した(
図2および3)。
【0287】
大腸炎モデルにおける当社の広範な研究は、UroA/UAS03による治療が、タイトジャンクションタンパク質を増強し、腸管透過性を低下させ、局所および全身性炎症を減少させ、大腸炎の減衰をもたらすことを明らかにした(
図4〜8)。単回用量のUroA/UAS03でさえ、TNBS誘発性大腸炎に対する治療有効性を示した。腸バリア機能および大腸炎発生の予防にUroA/UAS03の予防的利点が観察された(
図5)。TNBS投与前にUroA/UAS03で前処理したマウスは、腸管透過性を低下させ(
図5E)、これは、タイトジャンクションタンパク質の発現の増加と一致する。TNBS投与後にさらなる処理を受けなかったにもかかわらず、これらのマウスは疾患発症から保護され、バリア機能の増強を通じてこれらの化合物の予防効果が示唆された。さらに、7日間毎日補充するUroA/UAS03は、野生型マウスの結腸におけるAhR、Nrf2、およびCldn4の発現を観察可能な毒性を伴わずに誘導し(
図3T、
図1J〜K、
図3O〜S、および
図4R〜S)、これらの化合物に対する潜在的なトランスレーショナルアプリケーションを示唆している。さらに、UroA/UAS03による処理はまた、慢性と急性のDSS誘発性大腸炎の両方を緩和し、これらの代謝産物のモデル非依存的有益活性を示す(
図6および
図5I〜M)。UroA/UAS03は、DSS誘発性大腸炎の発病を抑制したBNF等の低親和性非毒性AhRアゴニストである。
【0288】
野生型マウスと比較して、Nrf2
−/−マウスにおいて炎症媒介体の基礎レベルの増加を観察し、Nrf2
−/−BMDMでも同様であった。さらに、IL−6の添加は、野生型BMDMと比較して、Nrf2
−/−BMDM中のLPS上方制御し、TNBS誘発性大腸炎モデルでも同様であった。UroA/UAS03は、Nrf2
−/−マウスにおけるTNBS誘発バリア機能障害および大腸炎の修復に失敗した(
図7)。
【0289】
UroA/UAS03が媒介するタイトジャンクションタンパク質の上方制御におけるAhRの役割は、AhR siRNA、AhR
−/−マウスからの結腸外植片、ならびにAhR
−/−マウスにおけるインビボ処理を使用して実証された。加えて、UroA/UAS03は、AhRを欠くマウスにおいてTNBS誘発性大腸炎を緩和するようには見えなかった(
図8)。UAS03は、TNBSで処理されるAhR
−/−マウスにおいて急速な体重減少に対して何らかの保護作用を有するようである。結腸長の短縮、透過性の増加、炎症性メディエーターの増加などの他のパラメータから保護されていないように見えた。
【0290】
現在の研究では、AhR−Nrf2がバリア機能障害から保護する役割を強調している。UroA/UAS03が二面性の作用機序によって大腸炎保護活性を発揮する可能性がある。これらの化合物は、LPS/細菌誘発炎症を防止すると共に、AhR−Nrf2経路を通じて抗酸化活性を示すために免疫細胞(例えば、マクロファージ)に作用するように見える。これらの代謝産物は、タイトジャンクションタンパク質を上方制御することによって、腸上皮および腸バリア機能に直接影響を及ぼす。バリア機能の強化は、腸内の細菌漏出を軽減し、全身性炎症の軽減をもたらす。抗炎症およびバリア保護活性に加えて、UroA/UAS03は、ミトコンドリア機能障害を調節することによってIBDを低減し得る。
【0291】
現在の研究では、腸バリア機能を強化し炎症を軽減することによってIBDを軽減する活性についてUroAおよびUAS03を要約している。既存のIBD治療は、炎症を低減するために抗TNF−α抗体を利用することを含む;ここで、炎症を阻害することに加えて腸バリア機能を増強することが、IBDの制御のためのより良い治療オプションを提供し得ることを示唆する。
【0292】
実施例セットC
UroAは、ヒト初代単球におけるLPSおよびEtOH誘導TNF−αを低減する。慢性アルコール依存症患者からの末梢血単球は、TNF−α、IL−6、IL−1βおよびIL−12等の増加した自発的炎症性メディエーターを産生する。この状態を模倣するために、健康な末梢血単球を1週間曝露し、UroA/UAS03がLPS誘導性TNF−αを低下させるかどうかを試験した。我々の研究は、EtOHに慢性的に曝露したヒト単球においてUroAがTNF−αを低下させたことを示唆し(
図11)、エクスビボヒト初代培養物においてその有益な抗炎症活性を認める。
【0293】
UroA/UAS03はTJタンパク質を上方制御し、LPS誘発損傷から保護する。Cldn4、ZO−1、Ocln等のTJタンパク質は、腸上皮の完全性を維持し、LPS等の外部損傷から腸を保護する役割を果たす。結腸上皮細胞、HT−29細胞、およびCaco2細胞におけるTJタンパク質調節に対するUroA/UAS03の効果を調査した。インビボとインビトロの両方の一連の実験では、UroA/UAS03による処理がTJタンパク質を上方制御し、腸バリア機能を増強することを実証した。ALDは、破壊されたTJ、透過性の増加、炎症および内毒素血症と関連付けられる。Oclnは、腸上皮において発現するタイトジャンクションタンパク質であり、腸バリア機能の維持に役割を果たす。結腸上皮細胞におけるOclnのLPS(エンドトキシン)枯渇をUroA/UAS03が保護できるかどうかを検討した。
図12に示すように、結腸上皮細胞において、LPSによる処理は、Oclnのレベルを低下させ(
図12A)、UroA/UAS03は、Oclnの枯渇から保護した(
図12B)。次に、UroAがアルコール媒介性上皮細胞損傷に対する保護を示すかどうかを試験した。この目的のために、我々は、経ウェル膜上でCaco−2単層細胞を利用し、経上皮電気抵抗(TEER)およびFITC−デキストラン透過性アッセイを行った。
【0294】
UroAは、TJタンパク質を上方制御し、EtOH誘導損傷から保護する。次に、UroAがアルコール媒介性上皮細胞損傷に対する保護を示すかどうかを試験した。この目的のために、我々は、経ウェル膜上でCaco−2単層細胞を利用し、経上皮電気抵抗(TEER)およびFITC−デキストラン透過性アッセイを行った。
図13に示すように、EtOHは、単層Caco2細胞における損傷を誘導し、時間依存的様式で漏出を誘導した(
図13A)。ウロリシン類の中で、UroAは、EtOH誘導性透過性(
図13B)から保護し、用量依存性の様式で低減する(
図13C)ためのより良好な化合物である。UroAは、EtOHまたはLPSまたはHMGB1誘導上皮透過性から保護する。内毒素血症および腸バリア機能障害は、ALDの病因と関連している。腸管バリア機能障害は、腸管透過性の上昇をもたらし、したがってエンドトキシンの循環レベルを増加させる。LPS(PAMPに代表される)およびHMGB1(DAMPに代表される)等のエンドトキシンは、いくつかの炎症性サイトカイン、ケモカイン、およびROSを誘導し、ALDの病原体を促進する全身性炎症のさらなる増強をもたらす。我々のインビトロ研究(
図13D)は、HMGB1またはLPSが、腸管上皮透過性を増加し、UroAによる処理が、EtOHまたはLPSまたはHMGB1誘導透過性から保護することを示唆する。UroAはまた、より高い用量のEtOH(400mM)誘導透過性(
図13E)および増強されたTEER値(
図13F)においても保護する。UroAによる処理は、ウェスタンブロット(
図13G)ならびに染色されたTJタンパク質、ZO−1およびOclnの共焦点画像から証明されるように、EtOH誘導されたタイトジャンクションタンパク質の損傷から保護する(
図13H)。
【0295】
我々は、UAS03が、より高い用量のEtOH(350mM)によって誘発されたCaco2単層細胞におけるバリア機能障害から保護できるかどうかを試験した。
図14に示すように、TEERの増加(
図14A)およびTJタンパク質Oclnの増加(
図14C)で裏付けられる透過性の低下(
図14B)から明らかなように、UAS03およびUroAは、EtOH誘発バリア機能障害から保護した。
【0296】
UroAによる処理は、急性および慢性のアルコール性肝疾患を緩和する。ALDにおけるUroAの治療有効性を調べるために、我々は、Gao Bのグループによって開発された急性マウスモデル(NIAAA)を採用した(BERTOLA et al.,(2013)“Mouse model of chronic and binge ethanol feeding(the NIAAA model)”Nat Protoc.Vol.8,No.3,pp.627−637)。このモデルにおけるUroAの治療有効性を試験した。
図15に示すように、UroAは、アルコール誘導(急性モデル、
図15A)透過性(FITC−デキストラン漏出、糞便アルブミンのレベル−
図15B〜C)、両方の全身炎症(血清IL−6、TNF−α、IL−1β、エンドトキシン−
図15D〜G)、循環血清ALT、ASTレベル(
図15H〜I)を低減した。UroA処理はまた、肝臓におけるTG蓄積を低減した(
図15J)。UroAはまた、腸におけるTJタンパク質(ZO−1)の破壊からも保護する(
図16)。
【0297】
UroAは、慢性低用量アルコール誘発性腸バリア機能障害および炎症から保護する。C57BL/6マウス(1群当たりn=5)をEtOH(3g/kg)で1日2回、5日間経口処理した。EtOH処理の2時間前にUroA(20mg/kg)を経口投与した。血清および肝臓における腸管透過性と炎症パラメータの両方を評価した(
図17)。
【0298】
UAS03による処理は、慢性ALDを改善する:UAS03は炎症および透過性の低減においてより高い有効性を示したため、慢性ALDマウスモデルにおける実験は、UAS03のみを原理証明として行った(
図18)。オスC57BL/6N(10週齢)をJackson Laboratoryから購入し、1週間ペア供給液体食事(Lieber DeCarli)で適応させた。適応後、動物にペア供給(n=5匹のマウス/群)およびアルコール食事(n=10匹のマウス/群)を与えた。簡潔に述べると、マウスに、タンパク質として17%のエネルギー、トウモロコシ油として40%、炭水化物として7.5%、およびアルコール(5%v/w、アルコール供給、AF)として35.5%、または等カロリー麦芽糖デキストリン(対供給、PF)のいずれかを含む食事を与えた。マウスが5%アルコールダイエットに進む前に、アルコール濃度を1.6%(3日)から3.6%(3日)に急増させ、最終的に今後4週間にわたって5%にした。UAS03群の動物は、アルコールダイエット開始後2日おきにUAS03を経口(20mg/kg/日)投与した(
図18A)。ビヒクル処理として0.25%カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を使用した。4週間後にマウスを安楽死させ、結腸長(
図18B〜C)、インビボ腸透過性(FITC−デキストランアッセイ)、血清ALT、AST、エンドトキシン、IL−6、およびTNF−α(
図18E)を測定した。肝臓組織病理学の分析は、UAS03が肝臓TGレベルおよび脂肪症を裏付ける肝臓脂肪沈着を低減することを示唆した(
図18F)。肝臓組織中のIL−6、TNF−α、MPO、およびトリグリセリド(TG)のレベルは、UAS03による処理が、これらのマウスにおける肝炎症およびTGレベルを下方制御したことを示唆する(
図18G)。UAS03は、ALDマウスにおけるUAS03処理群における腸透過性の低下を裏付ける腸内のOclnの劣化から保護した(
図18H)。
【0299】
AhRは、ALDモデルにおいてUroA媒介性保護の役割を有する:UroA媒介活性に対するAhR発現の役割に取り組むために、C57BL/6JマウスおよびAhR
−/−マウスにおいて急性ALDモデルを行った。この実験では、マウス(WT、AhR−/−マウス(n=4/群))を、0、12、および24時間でEtOH(2.5g/kg)の半量で処理した後、2、14、および26時間で経口処理Veh(0.25%CMC)またはUroA(20mg/kg)で処理した。
図19に示されるように、これらのマウスは低用量でEtOHに耐性を示し、UroA処理は、EtOH誘発性腸漏出(糞便アルブミンレベル)、血清エンドトキシン、TNF−α、ALT、ならびに肝臓ALTレベルを救済しないように見えた。UroAは、脂質代謝のAhR非依存的活性を示唆するAhR
−/−マウスにおけるTGレベルを下方制御した。
【0300】
UroA処理は、EtOH誘導結腸上皮接合タンパク質から保護する。結腸上皮細胞(T84細胞)をビヒクル(0.05%DMSO)またはUroA(50μM)で1時間処理し、続いてEtOH(40mM)で6時間処理した。膜および細胞質画分を単離し、タイトジャンクション(TJ)およびアドヘリンジャンクション(AJ)およびデスモソームについて評価した。
図20から、UroAがEtOHによって誘導された膜接合タンパク質のサイトゾールへの内部移行から保護したことが明らかである。(すなわち、EtOH処理だけでは、より多くの細胞質タンパク質を有し、EtOH+UroAは、より多くの膜画分を有する)(
図20)。
【0301】
UroAは、CaCo−2細胞におけるTNF−αおよびIFN−γ誘導透過性から保護する:経ウェル膜ウェル上の単層CaCo2細胞を、UroA(50μM)の存在下または非存在下で、TNF−α(10ng/ml)およびIFN−γ(10ng/ml)で48時間処理した。TEER値およびFITC−デキストラン透過性を、SINGH et al(2019)“Enhancement of the gut barrier integrity by a microbial metabolite through the Nrf2 pathway”Nat Commun.,Vol.10,No.1,Article 89(18 pages)によって記載されるように測定した(
図21)。
【0302】
実施例セットD
UAS03(エーテル)は敗血症の死亡率を減衰させる。C57B6/Jマウスに、敗血症用量20mg/kgのリポ多糖を腹腔内に注射した。処理した動物は、20mg/kgの腹腔内注射でウロリシン−AまたはUAS03(エーテル)のいずれかを投与した。未処理の敗血症動物は、50時間以内に100%の死亡率を示した。ウロリシンA処理された動物は20%の生存率を示したが、UAS03(エーテル)処理された動物は90%の長期生存率を示した(
図22)。
【0303】
敗血症動物におけるUAS03(エーテル)の予防および治療効果。動物に20mg/kg用量のLPSを腹腔内に注射して敗血症を誘発した。エーテル+LPS群の動物に、LPS注射の1時間前にUAS03(20mg/kg;腹腔内)を投与した。LPS+エーテル群は、LPS注射の1時間後にUAS03を投与した。敗血症未処理動物は、50時間以内に100%の死亡率を示し、UAS03で前処理した動物は70%の生存率を示し、一方、処理群は100%の生存率を示した(
図23)。
【0304】
UAS03は、Snailトランスジェニックマウスにおける強皮症関連血管透過性を減衰させる。UV分光光度計を使用して背中の皮膚から抽出されたエバンの青色色素の熱量測定。ビヒクル処理したSnail動物は、対照動物よりも3倍多い染料を示した。UAS03で処理した動物は、染料漏出の3倍を超える低減を示す(
図24)。これは、UAS03が内皮血管透過性を低減する能力を有することを示す。
【0305】
Snailトランスジェニックマウスの背部皮膚における線維症関連遺伝子の発現。コラーゲン1のmRNAレベルを、RT−qPCRを使用して背中皮膚において測定した。Snailビヒクルは、対照動物と比較して、ビヒクル処理群のオスとメスの両方において増加した発現を示した。UAS03処理群における発現は、オスとメスの両方において低下した。レベルを、ビヒクルおよび薬物処理動物におけるオスとメスで別々に評価した(
図25)。このデータは、UAS03が線維症を低減する能力を有することを示す。
【0306】
UAS03は、オートファジー誘導を示す。化合物処理後2時間のオートファジー誘導は、細胞内に赤色および緑色の斑点が存在することによって評価される。HeLa細胞を、薬物処理の48時間前にRFP−GFP−LC3プラスミドでトランスフェクトした。薬物処理2時間後、細胞を固定し、画像化する。LC3は、オートファゴソーム上で発現し、緑色の斑点として見られるタンパク質である。オートファゴソームおよびリソソーム融合体がオートリソソームを形成するとき、その内部の酸性pHはGFPタンパク質の分解を引き起こし、赤色斑点のみが見られる(
図26)。このデータは、UroAおよびUAS03がオートファジーを誘導する能力を有することを示す。
【0307】
実施例セットE
我々は、いくつかの化合物を合成し、用量依存性の様式での、それらの抗炎症活性ならびにモノアミンオキシダーゼA(MAO A)およびモノアミンオキシダーゼB(MAO B)の阻害活性を試験した。
【0308】
抗炎症活性のスクリーニング:マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)をELISAのために96ウェルプレートに播種した。抗炎症特性を評価するために、BMDMを、50ng/mL濃度のE.coli由来リポ多糖(LPS、O55:B5、Sigma)で単独で、または示された濃度の化合物と組み合わせて、4重で6時間刺激した。ELISAを介したサイトカイン産生のために、上清を収集し、4℃で10分間12,000rpmで遠心分離して任意の細胞をペレットダウンし、サイトカインを、製造業者の使用説明書に従ってIL−6およびTNF−α特異的ELISAキット(Biolegend)を使用して定量化した。LPS誘発性IL−6またはTNF−αは100%とみなした。
【0309】
抗炎症活性(
図27〜30):炎症は、炎症性腸疾患、アルコール性肝疾患、様々な種類の癌、関節炎、心臓血管疾患、神経障害、敗血症、腎臓、肺関連および加齢関連疾患を含むが、これらに限定されないいくつかの疾患の根本的な原因および促進である。ここでは、これらの類似体の抗炎症活性をスクリーニングした。このシリーズのいくつかの化合物を同定し、マウス骨髄由来マクロファージにおいて抗炎症活性を示し、LPS誘導性IL−6およびTNF−αを遮断した。提示を容易にするために、LPS誘導性IL−6またはTNF−αを100%とみなした。UroA(親化合物)と比較して、UAS03、PKL3、PKL4、およびPKL17を有効な抗炎症化合物であることを見出した。
【0310】
要約すると、いくつかの抗炎症性化合物を合成し、炎症を伴う多数の障害の潜在的な治療薬として特定した。
【0311】
化合物のモノアミンオキシダーゼA(MAO A)およびモノアミンオキシダーゼB(MAO B)阻害活性アッセイ:簡潔に述べると、5μgのMAO−AおよびMAO−Bを、それぞれ160μMおよび16μMのMAO基質と共にインキュベートした。酵素アッセイを、96ウェルホワイトプレート中のカプセル化合物の存在下で行った。対照反応は、同じ割合の溶媒を有する等量のMAO緩衝液を含む。反応プレートを37℃で60分間インキュベートした。インキュベーション期間後、反応をルシフェリン検出試薬を添加して停止させた。デプレニルをそれぞれ、MAO−AおよびMAO−Bの陽性対照として使用した。生成された発光は、マルチモードマイクロプレートリーダーで測定され、それはMAO活性に直接比例する。
【0312】
アルツハイマー病およびパーキンソン病の治療には、MAO AおよびMAO Bの阻害剤が検討された。我々は、純粋なMAO AおよびMAO B酵素を利用していくつかの化合物を試験した。我々は、複数の化合物がMAO AおよびMAO B酵素の活性を阻害していることを発見した。
図31は、100μM用量でのこれらの化合物の一次スクリーニングを示す。
【0313】
次に、潜在的な候補化合物(PKL3、4、5、12、13、14、15、16、ならびにUroA、B、C)を選択し、MAO AおよびMAO B酵素に対する用量依存性(0.1、1、10μM)阻害活性を行った(
図32)。
【0314】
図33は、抗炎症活性のスクリーニングを示す。マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)を、化合物を含んでまたは含まずに、LPS(50ng/ml)で6時間刺激した。上清中のIL−6およびTNF−αレベルを、標準的なELISA方法を使用して測定した。結果は、各濃度について3重の3つの独立した実験の代表である。
【0315】
図34は様々な化合物の存在下でのMAO酵素の活性を示す。
図35は、MAO−AおよびMAO−B活性に対して試験した化合物、ならびに同定されたIC50およびKi値を示す。
【0316】
化合物は、内皮バリア機能を増強し、内皮バリア機能障害から保護する:ヒトの研究は、軽いアルコール摂取でさえ内皮バリア機能を損なう可能性があることを示す。アルコールの急性中毒は、微小血管系の漏出を誘発する可能性があると共に、内皮への直接曝露は、内皮の完全性の破壊をもたらす。循環エンドトキシンレベル(例えば、LPS)ならびに炎症性メディエーター(例えば、IL−6およびTNF−α)のレベルの増加は、内皮バリアを損傷して血管漏出をもたらし、ALDにおける全身および組織の炎症を増強することが知られている。さらに、内皮透過性の増加は、免疫細胞の肝臓への血管外漏出を増強し、炎症の増加をもたらす。内皮細胞透過性に対するUroA/UAS03の効果を調べるために、インビボエバンスブルー透過性アッセイを利用した。簡潔に述べると、C57BL/6マウス(n=4/群)にLPS(100μg)を腹腔内投与し、その後、1時間および18時間後にUAS03またはUroA(20mg/kg)で処理した。エバンスブルー(i.v.)をマウスに投与し(LPS処理の24時間後)、30分後にマウスを安楽死させ、ホルムアミドを使用して肺および肝臓組織からエバンスブルーを抽出した。エバンスブルーのレベルを、620nmでODによって決定した。UroAまたはUAS03で処理したマウスは、エバンスブルーの組織蓄積を減少させ、LPS誘発性漏出からの保護を示す(
図36A)。UroA/UAS03処理はまた、血清および気管支肺胞洗浄液(BAL)中のLPS誘発性TNF−αレベルを低下させた(
図36B)。内皮バリア機能に対するUroAまたはUAS03の直接的影響を評価するために、インビボMilesアッセイを使用して血管透過性を試験した。血管拡張剤として血管内皮増殖因子(VEGF)を使用した。このアッセイでは、C57BL/6マウス(1群当たりn=3)にビヒクル、またはUroAもしくはUAS03(20mg/kg、経口摂取)を投与した。3時間後、エバンスブルー(100μLの1%溶液)をi.v.投与し、続いて、VEGF(2.5ng/マウス)またはPBS(対照)の真皮内投与を行った。30分後、マウスを安楽死させ、注入部位を取り囲む皮膚組織中のエバンスブルーのレベルを抽出し、前述のように推定した(
図36C)。結果は、UroA/UAS03による処理が、VEGFによって誘導される内皮バリア漏出から保護さした(エバンスブルーレベルの低下)が、増加したエバンスブルーから明らかなようにビヒクル処理によって血管漏出を誘導したことを示す(
図36C)。UroA/UAS03が媒介する内皮バリア機能の分子機構を理解するために、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)におけるこれらの化合物の効果を試験した。エンドトキシンまたは炎症性メディエーターは、バリアギャップおよび透過性の増加をもたらす細胞−細胞および細胞−マトリックス接着の減少に関与する。アドヘリンジャンクション(AJ)タンパク質であるVE−カドヘリン(CDH5)は、隣接する細胞とのホモタイプ相互作用を通じて内皮接合部の完全性を維持することができる。
図36D〜Eに示すように、UroAまたはUAS03は、CDH5の発現を増加させ、これらの代謝産物がAJの上方制御を介して内皮バリア完全性を潜在的に増強することを示唆する。さらに、インビトロ透過性アッセイ(アルブミン結合エバンスブルー)の結果もまた、UroA/UAS03がHUVECにおけるLPS(100ng/ml)誘発性バリア透過性を低減したことを示唆した(
図36F)。
【0317】
化合物は、化学療法抵抗性がんを化学療法感受性にする。5−フルオロウラシル(5FU−5−フルオロ−1H,3H−ピリミジン−2,4−ジオン)の化学療法有効性に対するUroAおよびUAS03の効果を調査した。我々のデータは、5FUとUroAまたはUAS03との組み合わせが、5FU耐性(5FUR)結腸癌細胞株の細胞生存率を低下させ、組み合わせ指標(CI)が1未満であることを示唆し、それらの相乗効果を示唆した。UAS03は、5FU処理の化学感作においてより効果的(32倍高い)である。UroAによる処理は、P−糖タンパク質(P−gp)、乳癌耐性タンパク質(BCRP)の薬物流出活性を減少させ、結腸癌細胞株におけるE−カドヘリンの発現を増強し、化学感作の潜在的な作用機構を提供する。UAS03は強力な化学感作アジュバントである:がん治療における1つの問題は、薬物治療に対する化学耐性である。結腸癌細胞を5FU処理に化学感作する際のUroAおよび他の化合物を調査した。代表的な結腸癌細胞株(SW480)の増殖アッセイの結果を
図37に示す。UroAまたはUAS03による処理は、細胞増殖に対する最小限の効果を示す。5FUでの処理は、細胞生存率を、25μMおよび3.12μMでそれぞれ63%、90%に低下させた。5FU処理にUroAまたはUAS03を添加すると、5FU処理単独と比較するとき、細胞生存率を低下させた(
図37A)(阻害が増加した、
図37B)。5FU(3.12μM)を有するUroAは、細胞生存率を90%から69%に低下させたが、UAS03は40%に低下させ、これは、5FUの3.12μMであってさえ細胞増殖の阻害の約6倍の増加を表す。5FUについて100μMを試験した最高濃度は、最大60%のがん細胞増殖のみを阻害することができた。一方、UAS03と併用すると、3.12μMの5FU濃度であっても60%まで阻害し、プラトーに達し、化合物の高効力(同様の効果に到達するための5FU薬物濃度よりも32倍以上低い)を示した。アイソボログラム)
図37C)から誘導されるChou−Talalay併用指標(CI)値(<1は相乗効果を示す)は<0.5であり、抗増殖活性におけるそれらの相乗効果を示唆している。UroAはまた、クロノジェニックアッセイから明らかなように、結腸癌細胞コロニー形成を減少させた(
図37D)。他の結腸癌細胞株(HT−29、HCT−116、Col205)においても、これらの化合物で同様の傾向を観察した(データ図示せず)。UroAおよびUAS03は、親細胞株における5FUおよび5FU耐性(5FUR)細胞株と組み合わせて、CI値<1で5FUR細胞における5FU処理に対する感受性を増強し、それらの相乗効果を示唆した(データ図示せず)。標準的な創傷治癒アッセイを利用して、UroAと5FUとの併用療法が細胞の移動および細胞増殖をブロックするかどうかを調べた。
図38に示すように、5FUと組み合わせたUroAは、個々の化合物と比較して、結腸癌細胞の細胞増殖およびスクラッチへの移行を阻害した(右隅画像)。
【0318】
UroA/UAS03は薬物トランスポーターを減少させる:がん細胞が化学耐性表現型を獲得する機序の1つは、ATP結合カセット(ABC)薬物流出トランスポータータンパク質、BCRPおよびP−ジコタンパク質(P−gp)の誘導によるものである。したがって、その活性を遮断する、および/またはBCRPの発現を下方制御することにより、P−gpは、効果を逆転させ、がん細胞を感作させることができる。UroAがBCRP活性を低下させたことを実証した(データ図示せず)。Rh123流出アッセイ(
図39)、UroA(50μM)は、Rh123の流出を遮断した(細胞内にRh123を保持した)。
【0319】
UroA/UAS03処理は、5FU耐性(5FU R)結腸癌細胞における上皮間葉転換(EMT)シグネチャを低減する:5FU感受性(親)および5FU耐性(5FUR)HCT116結腸癌細胞株におけるEMTマーカーを調べた。
図40に示すように、5FUR細胞は、親細胞株と比較して、ZO1、E−カドヘリンの発現の減少、ならびにβ−カテニンおよびSnailの発現の増加を示した。これらの分子の相互発現は、EMTシグネチャの特徴である。次に、UroA/UAS03による処理が5FUR細胞におけるこれらのパターンを逆転させることができるかどうかを調べた。
図41から、UroA/UAS03による処理は、5FUの存在下であってもZO−1、E−カドヘリンを上方制御し、スネイルおよびβ−カテニンを下方制御したことが明らかである。全体として、これらの結果は、強化された抗増殖活性に加えて、UroA/UAS03が5FUR結腸癌細胞におけるEMTシグネチャーパターンを逆転させることができることを示唆する。癌細胞が化学耐性表現型を獲得する機構の1つは、多剤耐性関連タンパク質2(MRP2)、ATP結合カセット(ABC)薬物流出トランスポータータンパク質、BCRPおよびP−ジコタンパク質(P−gp)の誘導によるものである。
【0320】
5FU−R結腸癌細胞は、より高いレベルのMRP2を発現し(
図42)、UroA/UAS03による処理は、これらのトランスポーターの発現を低下させる(
図43)。これは、細胞内薬物濃度の増加をもたらし、5FUおよびUroA/UAS03による処理の際の細胞死の増加/薬物耐性癌細胞の増殖の減少をもたらし得る。
【0321】
これらの化合物はまた、化学療法薬に対する化学抵抗性である他のタイプのがんのために、化学療法薬と組み合わせて使用され得る。加えて、これらの化合物を使用することは、より高い用量に起因する大きな副作用を伴わず同様の効果を得るために薬物の用量を低下させるのに潜在的に役立つ。
【0322】
実施例セットF
スキームF1
【化16】
[この文献は図面を表示できません]
1.(3−メトキシフェニル)臭化マグネシウム(2)の合成、
【化17】
[この文献は図面を表示できません]
触媒量のI
2(ヨウ素)の撹拌溶液に、窒素下、水冷冷却コンデンサ備える100mlの2口RBフラスコ中の100mlの無水THF中のマグネシウム2g(83.36mmol)を添加した。これに1−ブロモ−3−メトキシベンゼン15.50g(83.36mmol)を10分間にわたって滴下した。ブロモ化合物を完全に添加した後、それを室温で10分間撹拌した。しばらくすると、溶媒は還流を開始し、これは、グリニャール試薬の生成を示す。氷を使用して冷却するだけでより多くの熱が放出すると、溶媒はしばらく還流し、ゆっくりと停止する。最後に、RBフラスコ内の灰色のグリニャール試薬を観察することができる。これにより、次のステップに直接使用できるグリニャールが生成された。
【0323】
2.1,2−ビス(3−メトキシフェニル)エタン−1,2−ジオン(3)の合成、
【化18】
[この文献は図面を表示できません]
50mlの無水THF中の予め調製した(3−メトキシフェニル)臭化マグネシウムの撹拌溶液に、臭化銅10.24g(71.42mmol)、臭化リチウム6.2g(71.42mmol)を添加し、ドライアイスアセトン混合物を使用して反応混合物を−78℃で冷却した。温度が−78℃に達したら、塩化オキサリル4.53g(35.71mmol)をゆっくりと添加し、反応物を室温で一晩撹拌した。反応の完了をTLCによってモニターし、反応が完了したら、反応を0℃に冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチした。THF溶媒を減圧下で蒸発させ、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、有機層をブライン、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム下で乾燥させ、減圧下で蒸発させて、5gの1,2−ビス(3−メトキシフェニル)エタン−1,2−ジオン(26%)を得た。
【0324】
Mass;m/z:(M+H)=271.2
【0325】
1 H−NMR(DMSO−d6,600 MHz):δ 7.60−7.52(2 H,m),7.45−7.41(2 H,m),7.39−7.37(4 H,m),3.84(6 H,s);13 C−NMR(DMSO−d6,150 MHz):194.89,160.27,134.01,131.22,123.33,122.40,113.13,56.00。
【0326】
3.2,7−ジメトキシフェナントレン−9,10−ジオン(5)の合成;
【化19】
[この文献は図面を表示できません]
200mlの乾燥ジクロロメタン中の1,2−ビス(3−メトキシフェニル)エタン−1,2−ジオン5g(18.51mmol)の撹拌溶液に。反応混合物を0℃に冷却し、これに塩化Ti(IV)3.51g(18.51mmol)、塩化モリブデン(V)5.05g(18.51mmol)を添加し、反応混合物を室温で一晩撹拌する。反応の完了をTLCによってモニターした。反応混合物を0℃まで冷却し、メタノールでゆっくりクエンチし、反応混合物をセライトに通し、減圧下で蒸発させて粗製2,7−ジメトキシフェナントレン−9,10−ジオンを得た。粗生成物をヘキサンおよび酢酸エチルを溶出液として使用してカラムクロマトグラフィーによって精製して、純粋な3gの2,7−ジメトキシフェナントレン−9,10−ジオン(61%)を得た。
【0327】
Mass;m/z:(M+H)=269.2
【0328】
1 H−NMR(DMSO−d6,600 MHz):δ 8.09−8.08(2 H,m),7.42(2 H,s),7.31−7.29(2 H,m),3.86(6 H,s);13 C−NMR(DMSO−d6,150 MHz):179.41,159.61,131.92,129.34,126.32,122.80,112.67,56.04。
【0329】
4.2,7−ジヒドロキシフェナントレン−9,10−ジオン(6)の合成:
【化20】
[この文献は図面を表示できません]
100mlのクロロベンゼン中の2,7−ジメトキシフェナントレン−9,10−ジオン2g(7.46mmol)の撹拌溶液に、無水塩化アルミニウム5.97g(44.77mmol)を添加した。反応混合物を135℃で還流した。反応混合物の完了をTLCによってモニターした。反応混合物を砕いた氷に注ぎ入れ、酢酸エチルで抽出し、有機層をブライン、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で蒸発させて、粗製の2,7−ジメトキシフェナントレン−9,10−ジオンを得た。粗生成物をヘキサンおよび酢酸エチルを溶出液として使用してカラムクロマトグラフィーによって精製して、純粋な1.2gの2,7−ジメトキシフェナントレン−9,10−ジオン(67%)を得た。
【0330】
Mass;m/z:(M−H)=239.2
【0331】
1 H−NMR(DMSO−d6,600 MHz):δ 10.05(2 H,s),7.92−7.90(2 H,m),7.30(2 H,s),7.11−7.09(2 H,m);13 C−NMR(DMSO−d6,150 MHz):179.93,157.73,131.64,128.28,125.98,123.62,114.97。
【0332】
5.(9E,10E)−9,10−ビス((2−ヒドロキシエチル)イミノ)−9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジオール(7)の合成。
【化21】
[この文献は図面を表示できません]
50mlのエタノール中の2,7−ジメトキシフェナントレン−9,10−ジオン0.5g(2.08mmol)の撹拌溶液に、触媒量の酢酸、エタノールアミン0.317g、(5.20mmol)を添加した。反応混合物を110℃で一晩還流させた。反応の完了をTLCによってモニターした。反応混合物を減圧下で蒸発させ、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、酢酸エチル層をブライン、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させて、粗製(9E,10E)−9,10−ビス((2−ヒドロキシエチル)イミノ)−9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジオールを得た。粗生成物を、溶出液としてクロロホルムおよびメタノールを使用してカラムクロマトグラフィーで精製して、純粋な0.25gの(9E,10E)−9,10−ビス((2−ヒドロキシエチル)イミノ)−9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジオール(36.2%)を得た。
【0333】
Mass;m/z:(M−H)=325.2
【0334】
1 H−NMR(DMSO−d6,600 MHz):9.99(2 H,s),7.90−7.88(2 H,m),7.40(2 H,s),7.09−7.06(2 H,m),5.58−5.57(2 H,m),4.27−4.25(4 H,m),3.48−3.46(4 H,m);13 C−NMR(DMSO−d6,150 MHz):157.72,155.57,132.98,127.00,126.95,119.14,115.03,65.02,55.36。
【0335】
6.(E)−2,7−ジヒドロキシ−10−((2−ヒドロキシエチル)イミノ)フェナントレン−9(10H)−オンの合成
【化22】
[この文献は図面を表示できません]
50mlのエタノール中の2,7−ジメトキシフェナントレン−9,10−ジオン0.5g(2.08mmol)の撹拌溶液に、触媒量の酢酸、エタノールアミン0.152g(2.5mmol)を添加した。反応混合物を110℃で一晩還流させた。反応の完了をTLCによってモニターした。反応混合物を減圧下で蒸発させ、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、酢酸エチル層をブライン、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させて、粗製(E)−2,7−ジヒドロキシ−10−((2−ヒドロキシエチル)イミノ)フェナントレン−9(10H)−オンを得た。粗生成物を、溶出液としてクロロホルムおよびメタノールを使用してカラムクロマトグラフィーで精製して、純粋な0.15gの(E)−2,7−ジヒドロキシ−10−((2−ヒドロキシエチル)イミノ)フェナントレン−9(10H)−オン(26%)を得た。
【0336】
Mass;m/z:(M+H)=284.2
【0337】
1 H−NMR(DMSO−d6,600 MHz):9.51(1 H,s),9.45(1 H,s),8.39−8.28(2 H,m),7.20(1 H,s),7.11(1 H,s),6.99−6.97(1 H,m),6.86−6.84(1 H,s),5.58−5.57(2 H,m),4.27−4.25(4 H,m),3.48−3.46(4 H,m);13 C−NMR(DMSO−d6,150 MHz):157.72,155.57,132.98,127.00,126.95,119.14,115.03,65.02,55.36。
【0338】
7.2,2’−((1E,1’E)−(2,7−ジヒドロキシフェナントレン−9,10−ジイリデン)ビス(アザニルリデン))ビス(プロパン−1,3−ジオール)の合成
【化23】
[この文献は図面を表示できません]
1 H−NMR(DMSO−d6,800 MHz):9.50(1 H,s),9.44(1 H,s),8.34−8.29(2 H,m),7.78(1 H,m),7.23(1 H,s),6.99(1 H,s),6.85−6.84(1 H,s),4.60−4.58(8 H,m),3.76−3.75(2 H,m)。
【0339】
8.(E)−10−((1,3−ジヒドロキシプロパン−2−イル)イミノ)−2,7−ジヒドロキシフェナントレン−9(10H)−オンの合成
【化24】
[この文献は図面を表示できません]
1 H−NMR(DMSO−d6,800 MHz):9.50(1 H,s),9.44(1 H,s),8.34−8.29(2 H,m),7.78(1 H,m),7.23(1 H,s),6.99(1 H,s),6.85−6.84(1 H,s),4.60−4.58(8 H,m),3.76−3.75(2 H,m);13 C−NMR(DMSO−d6,200 MHz):157.72,155.57,132.98,127.00,126.95,119.14,115.03,65.02,55.36。
【0340】
9.2,2’−((1E)−(2,7−ジヒドロキシフェナントレン−9,10−ジイリデン)ビス(アザニルリデン))ビス(2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール)の合成
【化25】
[この文献は図面を表示できません]
Mass;m/z:(M−H)=445.2
【0341】
1 H−NMR(DMSO−d6,800 MHz):9.50(1 H,s),9.44(1 H,s),8.37−8.36(2 H,m),7.98(2 H,s),6.99−6.86(2 H,s),4.73(6 H,m),3.52−3.51(12 H,m);13 C−NMR(DMSO−d6,200 MHz):157.72,155.57,137.25,132.98,128.00,126.15,118.14,116.03,64.02,59.36。
【0342】
10.(E)−10−((1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−イル)イミノ)−2,7−ジヒドロキシフェナントレン−9(10H)−オンの合成
【化26】
[この文献は図面を表示できません]
Mass;m/z:(M−H)=342.2
【0343】
1 H−NMR(DMSO−d6,800 MHz):9.77(1 H,s),9.71(1 H,s),7.94−7.91(2 H,m),7.65(1 H,s),7.11(1 H,s),7.02−7.01(1 H,m),6.91−6.89(1 H,m),5.09−5.07(3 H,m),3.82−3.81(6 H,m);13 C−NMR(DMSO−d6,200 MHz):167.33,157.01,155.42,133.52,132.76,129.80,127.04,122.20,121.06,118.16,115.54,109.44,65.10,59.34。
【0344】
11.9,10−ジイミノ−9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジオールの合成
【化27】
[この文献は図面を表示できません]
Mass;m/z:(M+H)=239.2
【0345】
1 H−NMR(DMSO−d6、600 MHz):9.96(2 H、s)、8.99(2 H、s)、8.10−8.08(2 H、m)、7.95(2 H、s)、7.57(2 H、s)、7.09−7.07(2 H、m);13 C−NMR(DMSO−d6、150 MHz):162.77、158.42、157.19、126.99、126.77、125.91、120.77、112.17。
【0346】
12.ジベンゾ[f,h]キノキサリン−6,11−ジオールの合成
【化28】
[この文献は図面を表示できません]
Mass;m/z:(M−H)=261.2
【0347】
1 H−NMR(DMSO−d6、600 MHz):9.95(2 H、s)、8.99(2 H、s)、8.52−8.50(2 H、m)、8.42−8.41(2 H、s)、7.28−7.26(2 H、m);13 C−NMR(DMSO−d6、150 MHz):156.74、144.41、140.96、129.94、124.76、124.50。
【0348】
13.2−ブロモ−6H−ベンゾ[c]クロメン−3,8−ジオールの合成
【化29】
[この文献は図面を表示できません]
1 H−NMR(DMSO−d6,600 MHz):10.27(1 H,s),9.58(1 H,s),7.79(1 H,s),7.55−7.53(1 H,m),6.75−6.73(1 H,m),6.62−6.61(1 H,m),6.53(1 H,s),4.99(2 H,s);13 C−NMR(DMSO−d6,150 MHz):158.74,153.41,126.56,123.32,115.86,111.88,105.11,68.25。
【0349】
実施例セットG
スキームG1
【化30】
[この文献は図面を表示できません]
1.1−(3−メトキシフェニル)−2−フェニルエタン−1,2−ジオンの合成
【化31】
[この文献は図面を表示できません]
Mass;m/z:(M+H)=241.2
【0350】
1 H−NMR(DMSO−d6、800 MHz):δ 7.93−7.91(2 H、m)、7.80−7.79(1 H、m)、7.64−7.52(1 H、m)、7.46(1 H、s)、7.43−7.39(2 H、m)、3.85(6 H、s)、13 C−NMR(DMSO−d6、200 MHz):195.10、160.27、136.01、134.01、132.69、131.23、130.06、129.97、123.36、122.42、113.10、56.00。
【0351】
3.2−メトキシフェナントレン−9,10−ジオンの合成
【化32】
[この文献は図面を表示できません]
Mass;m/z:(M+H)=239.2
【0352】
1 H−NMR(DMSO−d6,600 MHz):δ 8.12−8.08(1 H,m),7.83−7.81(2 H,m),7.61−7.57(2 H,m),7.36−7.34(2 H,m),3.85(3 H,s);13 C−NMR(DMSO−d6,150 MHz):179.41,159.61,131.92,129.34,126.32,122.80,112.67,56.04。
【0353】
本開示で使用される見出しは、見出しに関連する全ての開示が、その見出しで始まるセクション内に見出されることを示唆することを意味するものではない。任意の対象についての開示は、明細書全体を通して見出すことができる。
【0354】
「好ましくは」、「一般的には」、および「典型的には」のような用語は、本明細書では、特許請求の範囲を限定するために、または特定の特徴が特許請求の範囲の構造もしくは機能にとって重要であることを暗示するために使用されないことに留意されたい。むしろ、これらの用語は、本発明の特定の実施形態において利用され得るか否かの代替または追加の特徴を強調することのみを意図する。
【0355】
別段の指定がない限り、本開示で使用されるとき、「a」または「an」は、1つまたは2つ以上を意味する。特許請求の範囲で使用される場合、「a」または「an」という単語と「含むこと」という単語と併せて使用されるとき、特に指定されない限り、1つまたは2つ以上を意味する。本開示または特許請求の範囲で使用されるとき、「別の」は、別段の指定がない限り、少なくとも第2またはそれ以上を意味する。本開示で使用されるとき、「など」、「例えば」、および「例えば」という語句は、用語(「など」、「例えば」、または「例えば」)の後のリストがいくつかの例を提供するが、リストが必ずしも完全に包括的なリストではないという点で、「例えば、非限定的に」を意味する。「含むこと(comprising)」という用語は、「含むこと(comprising)」という用語の後の項目が、追加の列挙されていない要素またはステップを含んでもよく、すなわち、「含むこと(comprising)」は、追加の列挙されていないステップまたは要素を除外しないことを意味する。
【0356】
別途示されない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などの特性等を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載される数値は、本明細書で開示される主題によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0357】
本明細書で使用されるとき、「約」という用語は、値、または質量、重量、時間、体積、濃度、またはパーセンテージの量を指す場合、いくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±1%、いくつかの実施形態では±0.5%、およびいくつかの実施形態では±0.1%の、指定された量からの変動を包含することを意味し、これは、そのような変動が、開示される方法を実施するのに適切であるためである。
【0358】
1つ以上の実施形態の詳細な説明は、本明細書で提供されている。しかしながら、本発明が、様々な形態で具現化され得ることを理解されたい。したがって、本明細書に開示された特定の詳細(好ましいまたは有利と指定されたとしても)は、限定として解釈されるべきではなく、特許請求の範囲の例示的な根拠として、および当業者に本発明を任意の適切な方法で用いるように教示するための代表的な根拠として使用されるべきである。実際、本明細書説明されるものに加えて、本発明の様々な改変が、上述の説明および添付の図面から当業者に明らかになるであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。