(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
前記カチオン性アミノ酸配列が、RRRRRRRR、rrrrrrrr、RRRRRRRRR、およびrrrrrrrrrからなる群より選択される、請求項1に記載のペプチド。
前記ペプチドアミノ酸配列が、RSKAKNPLYRRRRRRRRR、rskaknplyrrrrrrrrr、RVKVKVVVVRRRRRRRRR、およびrvkvkvvvvrrrrrrrrr、RSKAK−RRRRRRRRR、rrrrrrrrr−ylpnkaksr、IAGQ−RSKAKNPLY−RRRRRRRRR、RSKAKNPLY−RRRRRRRRR−GPLG、RRRRRRRRR−SKAKNPLYR、RRRRRRRRR−YLPNKAKSR、RSKAKNPLY、RRRRRRRRR−HHHHH、RSKAKNPLY−RRRRRRRRR−HHHHHHHHHH、分岐<RSKAKNPLY−RRRRRRRRR−HHHHHHHHHH、RSKAKNPLY−RRRRRRRRR−HHHHHHHHHHHH、HHHHH−RSKAKNPLY−RRRRRRRRR、HHHHH−RRRRRRRRR−HHHHH−RSKAKNPLYR、RRRRRRRR−HHHHHHHHHH−RSKAKNPLYR、HHHHH−RSKAKNPLY−RRRRRRRRR−HHHHH、RSKAKNPLY−RKRKRKRKRK、RVKVKVVVV−RRRRR、RVKVKVVVV−RRRRRRRR、RRRRRRRR−RVKVKVVVV−R、RVKVKVVVV−RRRRRRRRR−HHHHHHHHHH、RVKVKVVVV−RHRHRHRHRHRHRHRH−HH、KEKLKNPLFK−RRRRRRRR−HHHHHHHHHH、RVKVKVVVV−RHRHRHRHRHRHRHRHRH、およびKEKLKNPLFK−RRRRRRRR−HHHHHHHHHHからなる群より選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のペプチド。
前記カチオン性アミノ酸配列のN末端またはC末端に結合される化合物をさらに含み、前記化合物が、少なくとも1個の脂肪酸である、請求項1〜13のいずれか1項に記載のペプチド。
前記脂肪酸が、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸(デカン酸)、およびラウリン酸(ドデカン酸)からなる群より選択される、請求項17〜22のいずれか1項に記載のペプチド。
RSKAKNPLYRRRRRRRRR、rskaknplyrrrrrrrrr、RVKVKVVVVRRRRRRRRR、およびrvkvkvvvvrrrrrrrrrからなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチド。
RSKAKNPLYRRRRRRRRR、rskaknplyrrrrrrrrr、RVKVKVVVVRRRRRRRRR、およびrvkvkvvvvrrrrrrrrrからなる群より選択されるアミノ酸配列からなるペプチド。
Lckキナーゼの活性を高める方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物とLckキナーゼを接触させることを含む、方法。
LckキナーゼのY394リン酸化を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物とLckキナーゼを接触させることを含む、方法。
細胞または細胞の集団からのIL−2分泌を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることを含む、方法。
細胞または細胞の集団のIL−2Rα(CD25)発現を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることを含む、方法。
細胞上または細胞の集団中のIL−2RB(CD122)発現を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることを含む、方法。
細胞のまたは細胞の集団でのIL−2応答性を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることを含む、方法。
細胞上または細胞の集団中のCD28発現を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることを含む、方法。
細胞または細胞の集団からのIL−12分泌を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることを含む、方法。
細胞上または細胞の集団中のIL−12R発現を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることを含む、方法。
細胞のまたは細胞の集団でのIL−12応答性を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることを含む、方法。
細胞または細胞の集団からのIL−21分泌を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることを含む、方法。
細胞または細胞の集団からのIL−15分泌を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることを含む、方法。
細胞上または細胞の集団中のIL−15R発現を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることを含む、方法。
細胞のまたは細胞の集団でのIL−15応答性を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることを含む、方法。
細胞上または細胞の集団中のIL−18R発現を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることを含む、方法。
細胞のまたは細胞の集団でのIL−18応答性を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることを含む、方法。
細胞または細胞の集団からのサイトカイン分泌を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることを含む、方法。
細胞または細胞の集団の増殖を誘導する方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることを含む、方法。
細胞の集団の増殖を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞の集団を接触させることを含む、方法。
前記細胞が、CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、または樹状細胞からなる群より選択される細胞である、または前記細胞の集団が、これらからなる群より選択される細胞を含む、請求項27〜47のいずれか1項に記載の方法。
T細胞機能を強化する方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物とT細胞またはT細胞の集団を接触させることを含む、方法。
細胞傷害性細胞機能を強化する方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞傷害性細胞または細胞傷害性細胞の集団を接触させることを含む、方法。
T細胞またはT細胞の集団の疲弊を低減させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物とT細胞またはT細胞の集団を接触させることを含む、方法。
酸化的損傷を治療する方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることを含む、方法。
細胞集団中のTreg細胞の比率を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物とTreg含有細胞集団を接触させることを含む、方法。
チェックポイント阻害剤の存在下でCD25発現を増大させる方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることを含む、方法。
請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物と細胞または細胞の集団を接触させることにより得られる細胞または細胞の集団に由来する細胞または細胞集団。
対象中のLckの活性を高める方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
対象中の免疫応答を誘導する方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
LckまたはLck活性の抑制または下方制御を特徴とする疾患または状態に関連する少なくとも1つの症状を治療するおよび/または予防する方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法。
LckまたはLck活性の抑制または下方制御を特徴とする前記疾患または状態が、病原性感染症、病原性感染症に由来する敗血症(例えば、慢性敗血症)、免疫不全障害、低下した免疫応答、減少したT細胞数、T細胞異常、T細胞疲弊、およびT細胞チェックポイント阻害からなる群より選択される、請求項62に記載の方法。
それを必要としている対象にワクチン接種する方法であって、ワクチンと同時にまたは順次に請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
それを必要としている対象において癌を治療するおよび/または予防する方法であって、チェックポイント阻害剤と同時にまたは順次に請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
対象において免疫抑制を低減する方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
対象において加齢関連免疫機能不全を治療するおよび/または予防する方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
対象においてTh1応答を誘導する方法であって、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物または請求項26に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチドを含むLckまたはLck活性の抑制または下方制御を特徴とする疾患または状態に関連する少なくとも1つの症状の治療および/または予防のための投与単位剤形。
【発明を実施するための形態】
【0074】
哺乳動物の非受容体Srcキナーゼファミリー(SKF)のメンバーは、次の8種のキナーゼ:Src、Fyn、Yes、Fgr、Lyn、Hck、Lck、およびBlkを含み、選択的Lck活性化剤は、特定されていない(Bae O−N et al,Journal of Neuroscience,2012,32(21):7278−7286)。
【0075】
本発明は、一部には、本明細書に記載の7個以上の近接カチオン性アミノ酸を含むポリカチオン性ペプチドが、Lckの活性を刺激できるという発見に関する。少なくともいくつかの実施形態では、本発明によるLck活性化剤は、SKFメンバー中でLckのみの活性化を刺激し得る。Lck活性化剤、特に特異的Lck活性化剤に対する必要性は、加齢または非加齢関連の多様な状態に直接的に関連する。
【0076】
従って、一実施形態では、本発明は、Lckを活性化するためのペプチドを提供し、このペプチドは、7個以上の近接カチオン性アミノ酸を有するLck活性化カチオン性アミノ酸配列を含む。
【0077】
本明細書で使用される場合、「活性化」という用語は、
一般に、少なくとも1つの標的タンパク質の活性を高めることを指す。キナーゼの特定の文脈では、この活性化は、少なくとも1つの標的基質または部位の増大したリン酸化をもたらす。この活性化は、限定されないが、プロテインキナーゼと、プロテインキナーゼの結合相手との間に複合体が形成される確率を増大させること、またはその標的にいったん結合したキナーゼの活性を増大させることを含む任意の手段により引き起こされ得る。このような活性化は、インビボあるいはインビトロで起こり得る。
【0078】
本明細書で使用される場合、「Lckを活性化するためのペプチド」は、「Lck活性化ポリペプチド」または「Lck活性化剤」と同義に使用される。
【0079】
Lckは、LCK癌原遺伝子、白血球C末端Srcキナーゼ;リンパ球細胞特異的タンパク質チロシンキナーゼ;タンパク質YT16;癌原遺伝子Lck;T細胞特異的タンパク質チロシンキナーゼ;およびp56−LCKとも呼ばれる。
【0080】
ヒトのLckの遺伝子およびタンパク質配列は、HUGO Gene Nomenclature Committee(HGNC)(http://www.genenames.org/)から得ることができる。ヒトのSrc(およびスプライスバリアント)のHGNC番号は、ジェンバンク受入番号および遺伝子IDと一緒に下表1に記載されている。
【表1】
【0081】
Lckは、多数の活性を有する。Lckは、その正の調節部位Tyr394で自己リン酸化し、さらにCD3受容体、CEACAM1、ZAP−70、SLP−76、IL−2受容体、レセプタータンパク質C、ITK、PLC、SHC、RasGAP、Cbl、Vav1、およびPI3Kを含む多数のタンパク質をリン酸化する。Lckは、ADAM15、CD2、CD44、CD4、COUP−TFII、DLG1、NOTCH1、PIK3CA、PTPN6、PTPRC、UNC119、SYK、UBE3A、およびZAP70と相互作用することが示されている。
【0082】
本発明者らは、本明細書で記載の活性化剤が、Y394でのLckのリン酸化、および増大したIL−2産生を含むLckの活性を高めることができることを実証した。
【0083】
従って、本明細書で使用される場合、「Lckの活性」という用語は、Y394でのLckのリン酸化、IL−2の産生、CD3受容体、CEACAM1、ZAP− 70、SLP−76、IL−2受容体、プロテインキナーゼC、ITK、PLC、SHC、RasGAP、Cbl、Vav1、および/またはPI3Kのリン酸化;ADAM15、CD2、CD44、CD4、COUP−TFII、DLG1、NOTCH1、PIK3CA、PTPN6、PTPRC、UNC119、SYK、UBE3A、および/またはZAP70との相互作用、および/またはTCRのリン酸化を含む。
【0084】
通常、ポリカチオン性ペプチドは、7〜35アミノ酸長である。従って、ポリカチオン性ペプチドは、例えば、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35アミノ酸長であり得る。通常、ポリカチオン性ペプチドは、最大約25アミノ酸長であり、より典型的には、最大約24、23、22、21、20、19、18、17、または16アミノ酸長である。
【0085】
通常、ポリカチオン性ペプチドの全てのアミノ酸は、カチオン性アミノ酸残基である。しかし、上述のように相互に近接しているカチオン性アミノ酸および1個または複数の非カチオン性アミノ酸残基を含むポリカチオン性ペプチドも、本発明により明示的に提供される。通常、このような実施形態では、ポリカチオン性ペプチドを構成するアミノ酸の、少なくとも50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上がカチオン性ペプチドである。このようなポリカチオン性ペプチドの例は、1個または複数の非カチオン性アミノ酸が介在するカチオン性アミノ酸を含んでよく、および/または、例えば、それぞれのN末端および/またはC末端非カチオン性アミノ酸またはアミノ酸配列を含んでよく、全てのこのようなポリカチオン性ペプチドは明示的に本明細書に包含される。
【0086】
本明細書に記載のポリカチオン性ペプチド(PP)は通常、少なくとも7個の近接カチオン性アミノ酸を含み、およびより一般的には、少なくとも8、9または10個の近接カチオン性アミノ酸を含む。
【0087】
特に好ましい実施形態では、ポリカチオン性ペプチドは通常、8〜16個の近接カチオン性アミノ酸、より典型的には8〜12個の近接カチオン性アミノ酸、最も典型的には、8〜10個の近接カチオン性アミノ酸を含む。
【0088】
ポリカチオン性ペプチドを構成するカチオン性アミノ酸は、アルギニン(R)、リシン(K)、およびヒスチジン(H)およびオルニチンアミノ酸残基からなる群より独立に選択され得る。
【0089】
カチオン性アミノ酸残基の種々の配列の組み合わせを用い得る。例えば、ポリカチオン性ペプチドは、ポリカチオン性ペプチドのN末端から開始されるアルギニンアミノ酸の直鎖アミノ配列(例えば、7、8、9、10、11、12個またはそれを超えるアルギニン残基)と、これに続く、非アルギニンカチオン性アミノ酸の配列(例えば、ヒスチジンまたはリシン残基)を含み得、逆もまた同じである。このような実施形態では、非アルギニンは通常、最大約16個のアミノ酸長であり(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16アミノ酸)、全てのこのようなポリカチオン性ペプチドの使用は、明示的に本明細書に包含される。
【0090】
他の実施形態では、カチオン性アミノ酸は、アルギニンおよび非アルギニンアミノ酸のカプレットまたはトリプレット(例えば、RHのカプレット)、あるいは、カプレット中のアミノ酸の位置が逆転しているカプレットまたはトリプレット(例えば、HRのカプレット)などのカチオン性ペプチドの「カプレット」またはトリプレットの交代系列で配置され得る。同様に、ポリカチオン性ペプチドは、カチオン性アミノ酸の異なるアミノ酸の一連のカプレットまたはトリプレットの組み合わせ(例えば、RHまたはHRのカプレット)と、それに続く、および/または、その前に存在するそれぞれのさらなる、通常、最大16個のアミノ酸(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16アミノ酸)のカチオン性アミノ酸またはカチオン性アミノ酸配列(例えば、ヒスチジンまたはポリヒスチジン配列)を含み得る。当然のことながら、用語の「カプレット」は、2個の連続アミノ酸を意味する。同様に、用語の「トリプレット」は、3個の連続アミノ酸を意味する。反復カチオン性アミノ酸カプレット(例えば、RHまたはHR)を有する少なくともいくつかのポリカチオン性ペプチドでは、ポリカチオン性ペプチドは、1個または複数のさらなるそれぞれのカチオン性アミノ酸残基の少なくとも1つのカプレットまたはトリプレット(例えば、HH、RR、KK、HHH、RRR、KKK、HHHH、RRRR、KKKK、など)で開始および/または終了し得る。
【0091】
本発明によるLck活性化剤のポリカチオン性ペプチドは、例えば、次の非限定的例:RRRRRRR(7Arg)、RRRRRRRR(8Arg)、RRRRRRRRR(9Arg)、RRRRRRRRRR(10Arg)、RRRRRRRRRRR(11Arg)、RRRRRRRRRRRR(12Arg)、RRRRRRRRRRRRR(13Arg)、RRRRRRRRRRRRRRR(15Arg)、RRRRRRRRRRRRRRRR(16Arg)、KKKKKK(6Lys)、RKKKKKKKKHHHHHHHHHH(R8K10His);RHHHHHHHHHH(R10His)、RRRRRRRRHHHHHHHHHH(8Arg10His)、およびRRRRRRRRRHHHHHHHHHH;(9Arg10His)RRRRRRRRRHHHHHHHHHHHHHH(9Arg14His)、RHRHRHRHRHRHRHRHRHH(9R/H−His)、HRHRHRHRHRHRHRHRHH(8H/R−2H)から選択され得る。
【0092】
またさらなる実施形態では、上で例示されたポリカチオン性ペプチド中の1個または複数のアルギニン残基は、それぞれリシン残基で置換され得る。
【0093】
前述のポリカチオン性ペプチドの逆転アミノ酸配列の使用も、明示的に本明細書に包含される。種々の他のアミノ酸配列パターンも採用可能で、全てのこのような配列パターンは、明示的に本明細書に包含される。好ましい実施形態では、本発明による方法で利用されるLck活性化剤のポリカチオン性ペプチドは、直鎖ペプチドであるが、ポリカチオン性ペプチドが分岐ペプチドである実施形態も同様に提供され得る。分岐ポリカチオン性ペプチドは、例えば、ポリカチオン性ペプチドの骨格中でアミノ酸またはアミノ酸配列をリシン残基と結合させることにより提供され得る。このような分岐ポリカチオン性ペプチドの例は、RK[8Arg]HHHHHHHHHHであり、8Arg配列(RRRRRRRR)は、リシン残基Kに結合された側鎖である。本明細書に記載の分岐ポリカチオン性ペプチドの側鎖は、最大約16個のアミノ酸長、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16アミノ酸長であり得る。通常、ポリカチオン性ペプチドの側鎖は、最大10アミノ酸長、より典型的には約9アミノ酸長、および最も典型的には最大約8アミノ酸長である。
【0094】
通常、ペプチド活性成分のカチオン性アミノ酸は、アルギニン(R)、リシン(K)、ヒスチジン(H)およびオルニチンから、最も典型的にはアルギニン(R)、リシン(K)およびヒスチジン(H)からなる群より選択される。これらの残基のうち、隣接アルギニン残基は、リシンまたはヒスチジン残基の対応する配列よりもLck活性を良好に刺激することが明らかにされた。ポリカチオン性ペプチドがアルギニンおよび非アルギニンアミノ残基(例えば、ヒスチジン)を含む場合、ポリカチオン性ペプチドは通常、約1.2以下、または約1.1以下、または約1.0以下、または約0.9以下、または約0.8以下、または約0.7以下の非アルギニンアミノ酸残基の、アルギニン残基に対する比率を有する。
【0095】
少なくともいくつかの実施形態では、ポリカチオン性ペプチドは、単一カチオン性アミノ酸残基(例えば、アルギニン)の2つ以上のカプレットまたはトリプレットを含む。カプレットまたはトリプレットは、相互に並び得る(それにより、4つまたは6つのカチオン性アミノ酸の隣接残基配列を形成する)、またはポリカチオン性ペプチドを構成する1個または複数の他の隣接カチオン性アミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個などの隣接カチオン性アミノ酸)を介して相互に配置され得る。
【0096】
通常、ポリカチオン性ペプチドの少なくとも大部分のカチオン性アミノ酸は、アルギニンアミノ酸である。最も典型的には、近接カチオン性アミノ酸は全て、アルギニンアミノ酸である。
【0097】
好ましい実施形態では、カチオン性アミノ酸配列は、RRRRRRRR、rrrrrrrr、RRRRRRRRR、およびrrrrrrrrrからなる群より選択され、ここで、小文字は、右旋性(dextrorotatory)(「右旋性(dextro)」)アミノ酸を示す。
【0098】
本発明により実施されるLck活性化剤は、ポリカチオン性ペプチドからなり得、または他の実施形態では、さらなるペプチド部分に結合されたポリカチオン性ペプチドを含み得る。さらなるペプチド部分は、例えば、ポリカチオン性ペプチドのLck刺激剤活性を強化し得る。他の実施形態では、ポリカチオン性ペプチド単独では、Lck活性を刺激せず、Lckの活性は、ポリカチオン性ペプチドがさらなるペプチド部分に結合された場合にのみ刺激される。
【0099】
便宜上、上述のように、本発明の少なくともいくつかの実施形態でポリカチオン性ペプチド(PP)が結合される強化ペプチド、または他のペプチド部分は、下の記述では、(AP/P)と呼ばれる。
【0100】
少なくともいくつかの実施形態では、強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)は、式I:
R/K’−x
1−R/K−x
2−R/K−x
3−x
4−x
5−x
6−R/K” 式I
のアミノ酸配列、またはその反転配列を含み、式中、
各R/Kは独立に、アルギニンまたはリシンアミノ酸残基であり;
R/K’は、アルギニンまたはリシンアミノ酸残基であり、存在するまたは非存在であり;
R/K”は、アルギニンまたはリシンアミノ酸残基であり、存在するまたは非存在であり;
x
1〜x
6はそれぞれ独立に、1個のアミノ酸であり;アミノ酸x
3〜x
6は、ひとまとめにして存在するまたは非存在であり、アミノ酸x
3〜x
6が存在する場合、R/K”は非存在である。
【0101】
通常、式Iの強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)では、
x
1、x
3およびx
6は独立に、アミノ酸から選択され、および
x
2、x
4、およびx
5は、それぞれ独立に疎水性アミノ酸である。
【0102】
少なくともいくつかの実施形態では、x
1、x
3およびx
6は、親水性アミノ酸であり、x
2、x
4およびx
5は、疎水性アミノ酸である。
【0103】
他の実施形態では、x
3およびx
6は、親水性アミノ酸であり、x
1、x
2、x
4およびx
5は、疎水性アミノ酸である。
【0104】
他の実施形態では、x
1およびx
3は、親水性アミノ酸であり、
x
2、x
4、x
5およびx
6は、疎水性アミノ酸である。
【0105】
さらにその他の実施形態では、アミノ酸x
1〜x
6は全て疎水性アミノ酸でありまたは少なくともアミノ酸x
1〜x
6の大部分は、疎水性アミノ酸である。
【0106】
本明細書に記載のLck活性化剤のポリカチオン性ペプチドの親水性および疎水性アミノ酸は、遺伝子コードによりコードされ得るか、または合成アミノ酸を含み得る。通常、アミノ酸は、遺伝子コードによりコードされる。ポリカチオン性ペプチドの親水性アミノ酸は、極性、塩基性、および酸性アミノ酸から独立して選択できる。
【0107】
極性アミノ酸は、例えば、セリン(S)、トレオニン(T)、チロシン(Y)、アスパラギン(N)、およびグルタミン(Q)アミノ酸残基からなる群より選択され得る。
【0108】
塩基性アミノ酸は、例えば、リシン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)およびオルニチンからなる群より選択され得る。
【0109】
酸性アミノ酸は、例えば、グルタミン酸(E)およびアスパラギン酸(D)から選択され得る。
【0110】
非極性疎水性アミノ酸は、例えば、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、システイン(C)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)およびグリシン(G)からなる群より選択され得る。通常、疎水性アミノ酸は、アラニン(A)、バリン(V)およびフェニルアラニン(F)から選択され得る。
【0111】
通常、式Iのペプチド中に、少なくとも1つのR/K’およびR/K”が存在する。
【0112】
最も典型的には、式Iのアミノ酸残基R/K’が存在する。
【0113】
通常、式Iの強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)は、下記からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む:
(a)R−x
1−K−x
2−K−x
3−x
4−x
5−x
6−R/K”;
(b)R−x
1−R−x
2−K−x
3−x
4−x
5−x
6−R/K”;および
(c)K−x
1−K−x
2−K−x
3−x
4−x
5−x
6−R/K”。
【0114】
通常、式Iaの強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)では、
x
1、x
3およびx
6は、親水性アミノ酸であり、および
x
2、x
4、およびx
5は、疎水性アミノ酸である。
【0115】
式Iaの強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)の少なくともいくつかの実施形態では、
x
1、x
3およびx
6は、極性アミノ酸であり、および
x
2、x
4、およびx
5は、非極性アミノ酸である。
【0116】
通常、式Iaのいくつかの実施形態では、
x
1はセリンであり;
x
2はアラニン、ロイシンまたはバリンであり;
x
3はアスパラギンであり;
x
4は、プロリン、バリンまたはアラニンであり;
x
5はロイシン、バリンまたはアラニンであり、および
x
6はチロシンである。
【0117】
最も典型的には、式Iaのいくつかの実施形態では、x
2はアラニン、x
4はプロリン、およびx
5はロイシンである。
【0118】
通常、式Ibの強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)では、
x
3およびx
6は、親水性アミノ酸であり、および
x
1、x
2、x
4、およびx
5は、疎水性アミノ酸である。
【0119】
式Ibの強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)の少なくともいくつかの実施形態では、
x
3およびx
6は、極性アミノ酸であり、および
x
1、x
2、x
4、およびx
5は、非極性アミノ酸である。
【0120】
通常、式Ibのいくつかの実施形態では、
x
1はアラニンまたはグルタミン酸であり;
x
2はアラニン、ロイシンまたはバリンであり;
x
3はアスパラギンであり;
x
4は、プロリン、バリンまたはアラニンであり;
x
5はロイシン、バリンまたはアラニンであり、および
x
6はチロシンである。
【0121】
最も典型的には、式Ibのいくつかの実施形態では、x
2はアラニン、x
4はプロリン、およびx
5はロイシンである。
【0122】
あるいは、式Ibの強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)の少なくともいくつかの実施形態では、
x
1、x
3およびx
6は、親水性アミノ酸であり、および
x
2、x
4、およびx
5は、疎水性アミノ酸である。
【0123】
通常、式Ibのいくつかの実施形態では、
x
1はセリンであり;
x
2はアラニン、ロイシン、またはバリンであり;
x
3はアスパラギンであり;
x
4は、プロリン、バリンまたはアラニンであり;
x
5はロイシン、バリンまたはアラニンであり、および
x
6はチロシンである。
【0124】
最も典型的には、式Ibのこのような実施形態では、x
2はアラニン、x
4はプロリン、およびx
5はロイシンである。
【0125】
式Icの強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)の少なくともいくつかの実施形態では、
x
1およびx
3は、親水性アミノ酸であり、および
x
2、x
4、x
5およびx
6は、疎水性アミノ酸である。
【0126】
通常、式Icのいくつかの実施形態では、
x
1はグルタミン酸、バリンまたはアラニンであり;
x
2はアラニン、ロイシンまたはバリンであり;
x
3はアスパラギンであり;
x
4は、プロリン、バリンまたはアラニンであり;
x
5はロイシン、バリンまたはアラニンであり、および
x
6はチロシンである。
【0127】
さらなる実施形態では、式Iの強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)は、次記を含み得る:
バリン、アラニン、グルタミン酸、およびセリンから独立に選択されるx
1;
バリン、アラニン、およびロイシンから独立に選択されるx
2;
バリン、アラニン、およびアスパラギンから独立に選択されるx
3;
バリン、アラニン、およびプロリンから独立に選択されるx
4;
バリン、アラニン、およびロイシンから独立に選択されるx
5;
バリン、アラニン、フェニルアラニンおよびチロシンから独立に選択されるx
6。
【0128】
一実施形態では、式Iのペプチド(Lck活性化ポリペプチド部分)は、カチオン性アミノ酸配列のN末端またはC末端に結合される。
【0129】
少なくともいくつかの実施形態では、式Iの強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)は、アミノ酸配列R/K’−S−R/K−A−R/K−N−P−L−Y−R/K”(例えば、R/K−SKAKNPLY−R/K”)、またはその反転配列を含む。
【0130】
他の実施形態では、強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)は、改変またはバリアント配列R/K’−x
1−R/K−x
2−R/K−x
3−x
4−x
5−x
6−R/K”を含む、またはそれからなり、式中、アミノ酸x
1〜x
6は、ペプチドR/K’−S−R/K−A−R/K−N−P−L−Y−R/K”の対応するアミノ酸と、30%を超える、より一般的には50%以上、より一般的には65%を超える、および最も一般的には80%を超える全体アミノ酸配列同一性を有する、または改変配列またはバリアント配列の反転配列を有する。このようなペプチドの例としては、KEKLKNPLFKおよびRAKAKNPLFが挙げられる。
【0131】
さらなる実施形態では、式R/K’−x
1−R/K−x
2−R/K−x
3−x
4−x
5−x
6−R/K”の強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)のアミノ酸x
1〜x
6は、アラニン(A)、バリン(V)、セリン(S)、トレオニン(T)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、およびグリシン(G)残基からなる群より独立に選択され得る。少なくともいくつかのこのような実施形態では、ペプチドは、位置x
1に、セリン(S)またはトレオニン(T)(これらの両方は、極性アミノ酸である)を有しない。通常、アミノ酸x
1〜x
6のそれぞれは、独立に非極性アミノ酸から、最も典型的には、アラニン、バリンおよびセリンから選択される。通常、この実施形態では、アミノ酸x
1〜x
6のそれぞれは、独立に、アラニン(A)およびバリン(V)から選択される。このようなペプチドの例としては、R/K’−AKAKAAAA−R/K”およびR/K’−VKVKVVVV−R/K”が挙げられる。
【0132】
通常、式Iの強化ペプチドまたは他のペプチドのアミノ酸R/K”は、存在しない。このようなペプチドの例としては、RSKAKNPLYが挙げられる。
少なくともいくつかの実施形態では、アミノ酸x
3〜x
6およびR/K”は存在しない。
少なくともいくつかの実施形態では、アミノ酸x
3〜x
6は存在し、R/K”は存在しない。
通常、R/K’は存在する。最も典型的には、R/K’はアルギニンである。
通常、各R/Kは、それぞれリシンアミノ酸である。
【0133】
少なくともいくつかの実施形態では、アミノ酸x
1〜x
6は疎水性アミノ酸である。
特に好ましい実施形態では、アミノ酸x
1〜x
6は同じである。
【0134】
さらに別の実施形態では、本明細書に記載のLck活性化剤の強化または他のペプチド部分は、以下の式I:
R/K’−x
1−R/K−x
2−R/K 式I’
のペプチド、またはその反転配列を含み、式中、
R/K’は、アルギニンまたはリシンアミノ酸残基であり;
各R/Kは独立に、アルギニンまたはリシンアミノ酸残基であり;x
1およびx
2は、上述の式Iおよびその実施形態と同様に、それぞれ独立にアミノ酸である。
【0135】
少なくともいくつかの実施形態では、式Iまたは式I’のペプチドは、R−x
1−K−x
2−Kを含む。
【0136】
特に好ましい実施形態では、式IまたはIaのペプチドのアミノ酸x
1およびx
2はそれぞれ独立に、疎水性アミノ酸(例えば、バリン(V)またはアラニン(A))であり、通常、同じである。
【0137】
従って、上記から、強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)は、式Iまたは式I’のペプチドを含む、またはそれからなり得る。従って、式IまたはI’のペプチドを含むペプチドは、式IまたはI’のペプチドと近接している1個または複数の追加のアミノ酸も同様に含むことが理解されよう。例えば、ペプチドは、ペプチドの片末端または両末端(例えば、N末端および/またはC末端)にそれぞれ結合しされる1個または複数の独立に選択されたアミノ酸を含み得る。一例として、またさらなる実施形態では、アミノ酸配列式IまたはI’を含む強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)は、アミノ酸R/K’が存在する場合、これに結合された、またはアミノ酸R/K’が存在しないいくつかの実施形態では、アミノ酸x
1に結合された、アミノ酸部分(AA)をさらに含み得る。これは、以下のように式I”で示される:
AA−R/K’−x
1−R/K−x
2−R/K−x
3−x
4−x
5−x
6−R/K’’ 式I”
式中、AAはアミノ酸またはアミノ酸配列であり、各R/K、R/K’、R/K”およびアミノ酸残基x
1〜x
6は、上記式Iと同様である。
【0138】
同様に、(AA)部分が代わりに、式I”の強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)の他の末端に結合される実施形態が提供され得る。
【0139】
通常、アミノ酸部分AAは、存在する場合、1つまたは複数の独立に選択されるカチオン性アミノ酸からなる。通常、アミノ酸は、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)、リシン(K)、およびオルニチンアミノ酸残基から独立に選択され、最も典型的には、全てがアルギニン(R)残基である。少なくともいくつかの実施形態では、AA部分は、存在する場合、最大30個のカチオン性アミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個のカチオン性アミノ酸残基)のカチオン性アミノ酸配列からなる。
【0140】
特に好ましいこのような実施形態では、AA部分は、存在する場合、少なくとも2個のカチオン性アミノ酸を含む。このようなAA部分の例としては、ポリアルギン、ポリヒスチジンおよびポリリシン配列(例えば、HH(2His)、HHH(3His)、HHHH(4His)、HHHHH(5His);RRRRRRRR(8Arg)、およびRRRRRRRRR(9Arg))が挙げられる。他の実施形態では、AA部分は、式I’の強化ペプチドのR/K’アミノ酸が存在する場合、これに結合される、またはR/K’アミノ酸残基が存在しない場合、アミノ酸残基x
1に結合される、9、8、7、6、5、4、3、2または1個のカチオン性アミノ酸で終端するペプチドを含み得る。
【0141】
強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)は、本発明によるLck活性化剤中に存在する場合、通常、最大約40アミノ酸長を有する。少なくともいくつかの実施形態では、強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)は、少なくとも5アミノ酸長である(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40アミノ酸)。少なくともいくつかの実施形態では、強化ペプチドは、約25アミノ酸以下、または約20、15、14、13、12、11、または10アミノ酸以下の長さを有する。特に好ましい実施形態では、強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)は、少なくとも9アミノ酸長を有する。同様に理解されるように、5〜例えば、40アミノ酸の全ての範囲も明示的に本明細書のために提供される。
【0142】
一実施形態では、Lck活性化ポリペプチド部分は、カチオン性アミノ酸配列のN末端またはC末端に結合される。
【0143】
本明細書で使用される場合、用語の「反転配列」は、アミノ酸配列が逆転していることを意味する。例えば、RSKAKNPLYの反転配列は、YLPNKAKSRである。従って、反転配列のアミノ酸配列は、逆順であり、それにより、元の配列のN末端は、反転配列のC末端になり、元の配列のC末端は、反転配列のN末端になる。通常、本発明の実施形態により利用されるペプチドは、少なくともそれらのカルボキシ末端でアミド化されるなどして、タンパク分解に対して保護する。しかし、タンパク分解に対し保護するための任意の好適なNまたはC末端修飾も採用できる(例えば、メチル化)。
【0144】
以下でさらに記載のように、強化ペプチドまたは他のペプチド(A/P)のアミノ酸は、L−アミノ酸および/またはD−アミノ酸であってよい。従って、反転配列のアミノ酸は、全てL−アミノ酸または全てD−アミノ酸であってよく、用語の「反転配列」は、レトロインベルソペプチドに拡張され、ここで全てのアミノ酸は、D−アミノ酸であるが、これに限定されない。
【0145】
一実施形態では、Lckを活性化するためのペプチドは、RSKAKNPLYRRRRRRRRR、rskaknplyrrrrrrrrr、RVKVKVVVVRRRRRRRRR、およびrvkvkvvvvrrrrrrrrr、RSKAK−RRRRRRRRR、rrrrrrrrr−ylpnkaksr、IAGQ−RSKAKNPLY−RRRRRRRRR、RSKAKNPLY−RRRRRRRRR−GPLG、RRRRRRRRR−SKAKNPLYR、RRRRRRRRR−YLPNKAKSR、RSKAKNPLY、RRRRRRRRR−HHHHH、RSKAKNPLY−RRRRRRRRR−HHHHHHHHHH、分岐<RSKAKNPLY−RRRRRRRRR−HHHHHHHHHH、RSKAKNPLY−RRRRRRRRR−HHHHHHHHHHHH、HHHHH−RSKAKNPLY−RRRRRRRRR、HHHHH−RRRRRRRRR−HHHHH−RSKAKNPLYR、RRRRRRRR−HHHHHHHHHH−RSKAKNPLYR、HHHHH−RSKAKNPLY−RRRRRRRRR−HHHHH、RSKAKNPLY−RKRKRKRKRK、RVKVKVVVV−RRRRR、RVKVKVVVV−RRRRRRRR、RRRRRRRR−RVKVKVVVV−R、RVKVKVVVV−RRRRRRRRR−HHHHHHHHHH、RVKVKVVVV−RHRHRHRHRHRHRHRH−HH、KEKLKNPLFK−RRRRRRRR−HHHHHHHHHH、RVKVKVVVV−RHRHRHRHRHRHRHRHRH、およびKEKLKNPLFK−RRRRRRRR−HHHHHHHHHHからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0146】
別の実施形態では、Lckを活性化するためのペプチドは、アミノ酸配列RSKAKNPLY−RRRRRまたはRSKAKNPLY−RRRRRRを含む。
【0147】
一態様では、本発明は、RSKAKNPLYRRRRRRRRR、rskaknplyrrrrrrrrr、RVKVKVVVVRRRRRRRRR、およびrvkvkvvvvrrrrrrrrrからなる群より選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを提供する。
【0148】
別の態様では、本発明は、RSKAKNPLYRRRRRRRRR、rskaknplyrrrrrrrrr、RVKVKVVVVRRRRRRRRR、およびrvkvkvvvvrrrrrrrrrからなる群より選択されるアミノ酸配列からなるペプチドを提供する。
【表2】
【0149】
本明細書で使用される場合、用語の「アミノ酸配列」は、アミノ酸からなり、通常、アミド結合で連結された分子を指す。この用語は、配列の「プロドラッグ」、配列の荷電および非荷電型、配列の薬学的に許容可能な塩、および本開示の方法および使用で機能活性を保持する、配列の骨格および/または末端に対する改変を含む配列に対する任意の他のバリアント、誘導体または改変体を含む。
【0150】
本明細書で使用される場合、用語の「配列」は、分子を形成できるアミノ酸の数の最大長を暗黙で指定するものと解釈されるべきではない。いくつかの実施形態では、最大長は10アミノ酸である。いくつかの実施形態では、最大長は9アミノ酸である。
【0151】
いくつかの実施形態では、配列は、単離されたまたは精製された配列である。
【0152】
天然にまたは組換え技術により生成された配列の「単離」および「精製」の方法は、当技術分野において、例えば、C−H Lee,A Simple Outline of Methods for Protein Isolation and Purification,Endocrinology and Metabolism;2017,March;32(1):18、により既知である。さらに、用語の「単離」または「精製」は、合成およびその他の人為的に作製された配列を含む。配列の合成方法は、当技術分野において既知である。通常、配列は、1つのアミノ酸のカルボキシル基の別のアミノ基への縮合反応により化学的に合成される。配列の化学合成は、溶液相または固相技術を用いて実施できる。合成技術は、非天然アミノ酸配列、骨格修飾およびD−異性体を組み込んだ配列の作製を可能にする。
【0153】
いくつかの実施形態では、本発明の配列は改変される。いくつかの実施形態では、改変は、配列の薬理学的特性を変える改変であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、本発明の組成物または配列の半減期を延長する。いくつかの実施形態では、改変は、配列(および/または本発明の組成物)の生物活性を高め得る。いくつかの実施形態では、改変は、本発明の配列または組成物の選択性を高める改変であり得る。
【0154】
一実施形態では、改質は保護基の付加である。保護基は、N末端保護基、C末端保護基または側鎖保護基であり得る。本発明の配列は、これらの保護基の1個または複数を有し得る。当業者は、アミノ酸をこれらの保護基と反応させるための好適な技術を知っている。これらの基は、当該技術分野において既知の作製方法により付加できる。基は配列上に残ってもよく、または使用もしくは投与前に除去されてもよい。保護基は、合成中に付加されてもよい。
【0155】
本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドのアミド化が意外にも、Lck活性レベルを高めることを実証した。従って、一実施形態では、本発明は、アミノ酸配列、またはカチオン性アミノ酸配列が、Lck活性化ポリペプチド部分のC末端でアミド化される、本明細書に記載のペプチドを提供する。
【0156】
別の実施形態では、本発明は、最遠位の脂肪酸がアミド化される、本明細書に記載のペプチドを提供する。
【0157】
本明細書でポリペプチド配列の文脈で使用される場合、「NH
2」は、ポリペプチドが、例えば、そのC末端でアミド化されることを示す。例えば、C末端アミノ酸または最遠位脂肪酸がアミド化され得る。
【0158】
別段の指示(例えば、−OHにより)がない限り、本明細書で使用される全てのペプチドは、ポリペプチド部分のC末端でアミド化される。
【0159】
別の実施形態では、本発明は、アミノ酸配列が、Lck活性化ポリペプチド部分のC末端でアミド化される、本明細書に記載のペプチドを提供する。
【0160】
いくつかの実施形態では、配列は、そのC末端でアミド化される。アミド化は、内部および端部タンパク質分解によるグリシン延長基質のN−酸化切断のプロセスを指す。アミド化配列をインビトロで作製する方法は、例えば、酵素的アミド化;組換えで作製された配列およびタンパク質のC末端の化学修飾;固相配列合成でのアミド樹脂の使用;アンモニアの存在下でカルボキシペプチダーゼの使用;および配列のC末端のメチルエステルへの変換、および低温でのアンモニアの付加などのように、当技術分野において既知である。好適な技術の本開示の例としては、DJ Merkler,C−terminal amidated sequences:production by the in vitro enzymatic amidation of glycine−extended sequences and the importance of the amide to bioactivity;Enzyme Microbial technology,1994,June;16(6):450−6およびV Cerovsky and M−R Kula C−Terminal sequences Amidation Catalyzed by Orange Flavedo sequences Amidase;Angewandte Chemie,1998,August;37(13−14):1885、が挙げられる。
【0161】
C末端のアミド化により、C末端が非電荷になり、そのため、改変配列は、より厳密に未変性タンパク質を模倣する。これは、配列の細胞中に入るための高められた能力;配列のインビボでの代謝安定性の改善;アミノペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ、およびシンテターゼによる配列のインビボ酵素分解の低減;および配列の貯蔵寿命の改善、を含む一連の利点をもたらす。
【0162】
本明細書に記載のように、本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ポリペプチドがLおよびDアミノ酸を含むことができ、かつ生物活性を有することを明らかにした。従って、一実施形態では、本発明は、Lck活性化剤を本明細書に記載のアミノ酸配列がL−アルギニン残基を含むとして記述する。別の実施形態では、本発明は、Lck活性化剤を本明細書に記載のアミノ酸配列がD−アルギニン残基を含むとして記述する。
【0163】
従来技術で公知なように、アルファアミノ酸は、α位置でキラル炭素を含む。従って、全てのアルファアミノ酸は、グリシンを除いて、2つの鏡像異性体のL−またはD−異性体のいずれかとして存在できる。一般に、L−アミノ酸のみが、哺乳動物細胞中で製造され、タンパク質中に組み込まれる。D−アミノ酸は、人為的に合成され得るか、または細菌タンパク質中で見つけられることがある。LおよびD規則は、アミノ酸の立体化学に直接言及するためには使用されず、むしろ、それはアミノ酸配置の参照に使用され、およびアミノ酸それ自体の光学活性に言及せず、むしろ、そのアミノ酸を合成し得る元の原料のグリセルアルデヒドの異性体の光学活性に言及する(D−グリセルアルデヒドは右旋性である;L−グリセルアルデヒドは左旋性である)。
【0164】
少なくともいくつかの実施形態では、本明細書に記載のLck活性化剤の強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)は、RSKAKNPLY、RSKAKNPLYR、RSRARNPLY、RARAKNPLY、KEKLKNPLF、KEKLKNPLFK、RVKVKVVVV、RAKAKAAAA、RAKAKNPLF、RSKAK、RAKAKおよびRVKVKからなる群より選択されるペプチド活性成分を含み得る、またはそれからなり得る。
【0165】
他の実施形態では、強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)は、反転配列YLPNKAKSR、RYLPNKAKSR、YLPNRARSR、YLPNKARAR、FLPNKLKEK、KFLPNKLKEK、VVVVKVKVR、AAAAKAKAR、FLPNKAKAR、KAKSR、KAKARおよびKVKVRからなる群から選択され得る。
【0166】
最も典型的には、強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)は、RSKAKNPLY、YLPNKAKSR、RSKAKまたはKAKSRを含む、またはそれらからなる。
【0167】
本発明者らは、少なくとも1つの脂肪酸の、本明細書に記載のペプチドへの結合が、意外にも、Lckを活性化する増大した能力をペプチドに付与することを実証した。
【0168】
従って、いくつかの実施形態では、Lckを活性化するためのペプチドは、1つまたは複数の結合脂肪酸部分を含む。いくつかの実施形態では、Lckの活性化剤は、4つの結合脂肪酸部分を含む。この結果は意外であり、その理由は、それら単独では、1〜4個の結合脂肪酸を含む脂肪酸部分はLckを活性化しないためである。いくつかの実施形態では、結合脂肪酸部分は、少なくとも1つのアミノドデカン酸部分を含む。いくつかの実施形態では、全ての脂肪酸部分は、アミノドデカン酸である。
【0169】
別の好ましい実施形態では、2個以上の脂肪酸が式Iのポリペプチド部分のC末端で結合される。例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個またはそれを超える脂肪酸が式Iのポリペプチド部分に結合される。
【0170】
少なくとも1個の脂肪酸は、1個の脂肪酸鎖のアミノ基置換基と、次の脂肪酸の末端カルボキシル基との間のそれぞれのアミド結合を連続的に形成することにより、一緒に脂肪酸を結合して、それにより結合脂肪酸をもたらし得る。
【0171】
従って、脂肪酸のαまたはβ炭素上のアミノ基(NH
2)置換基を有する脂肪酸は、特に結合に好適である。
【0172】
好ましい一実施形態では、本発明は、少なくとも4個の脂肪酸が、活性化剤のC末端に結合される、本明細書に記載のLckを活性化するためのペプチドを提供する。
【0173】
別の好ましい実施形態では、本発明は、最遠位の脂肪酸がアミド化される、本明細書に記載のLckを活性化するためのペプチドを提供する。
【0174】
脂肪酸の結合は、直鎖および/または分岐であり得る。一実施形態では、本発明は、少なくとも4個の脂肪酸の結合が直鎖である、本明細書に記載のLckを活性化するためのペプチドを提供する。別の実施形態では、本発明は、少なくとも4個の脂肪酸の結合が分岐である、本明細書に記載のLckを活性化するためのペプチドを提供する。
【0175】
上記で考察したように、脂肪酸部分は、任意の位置でLckを活性化するためのペプチドに結合されて、リポペプチドを形成できる。しかし、好ましい実施形態では、脂肪酸部分は、Lckを活性化するためのペプチドのC末端で結合される。アミノ酸配列に結合される脂肪酸部分は、分岐脂肪酸または直鎖脂肪酸であり得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、少なくとも1、2、3または4個の脂肪酸部分は直鎖である。例えば、少なくとも1個の脂肪酸の結合が直鎖である場合、一実施形態では、少なくとも1個の脂肪酸が、Lckを活性化するためのペプチドのC末端にアミド結合を介して結合される。
【0177】
本明細書で使用される場合、「直鎖」という用語は、脂肪酸の炭化水素鎖がLck活性化するためのペプチドの骨格中に組み込まれていることを指す。例えば、脂肪酸は、オメガ炭素の位置でアミノ基置換基を含むことができる。一実施形態では、12アミノラウリン脂肪酸アミド(例えば、12−アミノドデカン酸;「Adod」)が使用され、従ってアミド結合は、炭素12の位置のアミノ置換基と別の基(例えば、カルボキシル基)との間で形成され得る。
【0178】
従って、別の実施形態では、少なくとも1個の脂肪酸の結合が直鎖である場合、第1の脂肪酸は、アミド結合を介して、Lckを活性化するためのペプチドのC末端に結合され、さらなる脂肪酸は、脂肪酸の末端カルボキシル基とさらなる脂肪酸のアミノ基置換基(例えば、アミノドデカン酸)との間でアミド結合を形成することにより脂肪酸に結合される。別の実施形態では、第3の脂肪酸は、さらなる脂肪酸の末端カルボキシル基と第3の脂肪酸のアミノ基置換基との間でアミド結合を形成することによりさらなる酸に結合される。別の実施形態では、第4の脂肪酸は、第3の脂肪酸の末端カルボキシル基と第4の脂肪酸のアミノ基置換基との間でアミド結合を形成することにより第3の酸に結合される。
【0179】
任意の数の脂肪酸を、脂肪酸モノマーから、1個の脂肪酸の末端カルボキシル基と、Lckを活性化するためのペプチドに結合されるべき別の脂肪酸のアミノ基置換基との間でアミド結合の形成により脂肪酸の直鎖ポリマー鎖を形成することにより、Lckを活性化するためのペプチドのC末端に結合できる。
【0180】
他の実施形態では、脂肪酸の炭化水素鎖は、「直鎖」ではなく、例えば、脂肪酸の炭化水素鎖の全てまたは一部は、Lckを活性化するためのペプチドの骨格の一部ではない(例えば、Lckを活性化するためのペプチドの骨格に「垂直」である)。例えば、脂肪酸は、脂肪酸のαまたはβ炭素の位置にアミノ基置換基を含むことができる。例えば、一実施形態では、2−アミノラウリン脂肪酸アミド(例えば、2−アミノドデカン酸;「Adod」)が使用され、従って、アミド結合は、炭素2の位置のアミノ置換基と別の基(例えば、式I、またはポリカチオン性ペプチドのカルボキシル基)との間で形成され得る。
【0181】
本明細書で使用される場合、Adodという用語は、アミノドデカン酸を指し、および「2Adod」は、2−アミノドデカンを指し、;「12Adod」は、12−アミノドデカン酸を指す、等々である。2個以上の脂肪酸が結合される場合、結合される脂肪酸の数は、下付き文字で表記される。例えば、「(2Adod)
2」は、2個の2−アミノドデカン酸を意味する。従って、本明細書に記載の単一単位のポリアミド部分は、1個の2−アミノドデカン酸残基に対応する(本明細書では、「(2Adod)
1」とも表現される)。本明細書に記載の2単位のポリアミド部分は、2個の2−アミノドデカン酸残基に対応する(本明細書では、「(2Adod)
2」とも表現される)。本明細書に記載の3単位のポリアミド部分は、3個の2−アミノドデカン酸残基に対応する(本明細書では、「(2Adod)
3」とも表現される)。本明細書に記載の4単位のポリアミド部分は、4個の2−アミノドデカン酸残基に対応する(本明細書では、「(2Adod)
4」とも表現される)。
【0182】
他の実施形態では、例えば、脂肪酸は、脂肪酸の別の炭素の位置にアミノ基置換基を含むことができる。
【0183】
アミノ脂肪酸が1つのキラル中心を有し、キラルである他の実施形態では、2つの可能な鏡像異性体(例えば、RおよびS)が存在する。従って、一実施形態では、本発明のLckを活性化するためのペプチドは、アミノ脂肪酸の1つの鏡像異性体またはもう一方の鏡像異性体、または1個または複数のアミノ脂肪酸のもう一つの鏡像異性体を含むことができる。
【0184】
従って、本発明は、直鎖および/または非直鎖(例えば、分岐方式)で結合される脂肪酸を含むLckを活性化するためのペプチドを提供する。
【0185】
本明細書で使用される場合、「分岐」という用語は、Lckを活性化するためのペプチドの骨格に対し「直鎖」または「垂直」にならないように、アミノ酸残基に結合される、または最初の脂肪酸に結合される2個以上の脂肪酸を含む。
【0186】
一実施形態では、少なくとも1個の脂肪酸は、13〜21個の炭素原子を含む長鎖脂肪酸、6〜12個の炭素原子を含む中鎖脂肪酸、または6個未満の炭素原子を有する短鎖脂肪酸である。好ましい実施形態では、脂肪酸は、約6〜16炭素原子長を含む。例えば、脂肪酸は、6〜16個の炭素、8〜14個の炭素または10〜12個の炭素を含む。
【0187】
一実施形態では、脂肪酸は、6個の炭素を含み、カプロン酸またはヘキサン酸である。例えば、一実施形態では、脂肪酸はアミノヘキサン酸である。
【0188】
別の実施形態では、脂肪酸は、8個の炭素を含み、カプリル酸またはオクタン酸である。例えば、一実施形態では、脂肪酸はアミノオクタン酸である。
【0189】
別の実施形態では、脂肪酸は、10個の炭素を含み、カプリン酸またはデカン酸である。例えば、一実施形態では、脂肪酸はアミノデカン酸である。
【0190】
別の実施形態では、脂肪酸は、12個の炭素を含み、ラウリン酸またはドデカン酸である。例えば、一実施形態では、脂肪酸はアミノドデカン酸(例えば、(S)−2−アミノドデカン酸)である。脂肪酸は、飽和であっても、または1個または複数の二重結合を有する不飽和であってもよい。好ましくは、脂肪酸は飽和している。
【0191】
一実施形態では、本発明は、Lckを活性化するためのペプチドを提供し、このペプチドはさらにLck活性化ポリペプチド部分のN末端またはC末端に結合された化合物を含み、この化合物は、少なくとも1個の脂肪酸である。
【0192】
一実施形態では、本発明は、少なくとも4個の脂肪酸が、Lck活性化ポリペプチド部分のC末端に結合される、本明細書に記載のLckを活性化するためのペプチドを提供する。
【0193】
一実施形態では、本発明は、2個以上の脂肪酸の結合が直鎖である、本明細書に記載のLckを活性化するためのペプチドを提供する。
【0194】
一実施形態では、本発明は、2個以上の脂肪酸の結合が分岐である、本明細書に記載のLckを活性化するためのペプチドを提供する。
【0195】
一実施形態では、本発明は、脂肪酸が飽和している、本明細書に記載のLckを活性化するためのペプチドを提供する。
【0196】
一実施形態では、本発明は、脂肪酸がカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸(デカン酸)、およびラウリン酸(ドデカン酸)からなる群より選択される、本明細書に記載のLckを活性化するためのペプチドを提供する。
【0197】
一実施形態では、本発明は、最遠位の脂肪酸がアミド化される、本明細書に記載のLckを活性化するためのペプチドを提供する。
【0198】
一実施形態では、本発明は、アミノ酸配列が、Lck活性化ポリペプチド部分のC末端でアミド化される、本明細書に記載のLckを活性化するためのペプチドを提供する。
【0199】
特に好ましい実施形態では、細胞化合物は、飽和または不飽和脂肪族化合物、脂肪酸、ポリアミドまたは最大20原子またはそれを超える長さの、1個または複数の側鎖を有してよい他の骨格を含み得る。通常、骨格鎖は、約6〜20原子(すなわち、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20原子)の範囲の長さを有し、1個または複数のヘテロ原子(例えば、N、O、SおよびPから独立に選択される)を含み得る。分岐の場合、骨格鎖は通常、1〜5側鎖(例えば、1、2、3、4または5側鎖)を有し、これらのそれぞれは、独立に最大18原子長さ(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18原子長)である。通常、各側鎖は、独立に、飽和または不飽和脂肪族炭素鎖(例えば、C
1〜C
18鎖)である。最も典型的には、促進剤部分は、脂肪族またはポリアミド骨格を有する。
【0200】
少なくともいくつかの実施形態では、化合物は、3〜5反復単位を有するポリアミドであり、各反復単位は独立に、3〜9原子長(すなわち、3、4、5、6、7、8、9原子の長さ)であり、側鎖がないか、または単一側鎖を有する。通常、それぞれの反復単位は3〜6原子長であり、より典型的には、3〜6、3〜5、または3〜4原子長であり、最も典型的には、3原子長である。各反復単位の側鎖の長さは通常、独立に4〜18炭素原子長さ(すなわち、C
4〜C
18)、例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18炭素原子であり、より一般的には、8〜18、8〜16、8〜14、8〜12または8〜10炭素原子長である。各反復単位の側鎖は通常、独立に、反復単位のαまたはβ炭素原子から伸びる。
【0201】
通常、本発明の実施形態により結合されるべき化合物は、以下の式II:
【化2】
の化合物を含み、式中、
nは、化合物のモノマー単位の数であり、1〜5の整数であり、
各mは独立に、0〜18の整数であり、および
各R基は独立に、HまたはC
1〜C
18の側鎖である。通常、モノマー単位のR側鎖の長さは、そのモノマー単位のmの値にほぼ反比例する。通常、各Rは、18−m炭素原子長であり、式中、mは、0〜17の値を有する。例えば、mが0の場合、RはC
18側鎖であり、mが2の場合、RはC
16側鎖であり、mが4の場合、RはC
14側鎖である、等々。
【0202】
通常、式IIの化合物では、nは2〜5であり、各mは独立に0、1、2または3であり;各Rは独立に炭素鎖である。
【0203】
通常、各Rは独立に、4〜18炭素原子長の炭素鎖である。従って、少なくともいくつかの実施形態では、本発明によるLck活性化剤の化合物は、以下の式IIa:
【化3】
のポリアミド部分(PM)であり、式中、
nは、化合物のモノマー単位の数であり、3〜5の整数であり、
各mは独立に0、1、2、または3であり、および
各R基は独立に、4〜18炭素原子長の炭素鎖である。
【0204】
通常、式IIまたは式IIaの化合物では、各mは独立に、0、1または2である。より典型的には、mは0または1である。最も典型的には、mは0である。
【0205】
当然のことながら、本明細書に記載の式IIの化合物のモノマー単位は、化合物の1個または複数の他のモノマー単位とは異なり得る。
【0206】
式IIまたは式IIaの化合物/ポリアミド部分は、例えば、示されるようにアミノ基置換基を有し、かつRとmは上で記載の通りである、式R−CHNH
2−(CH
2)
m−COOHの脂肪酸を一緒に結合することにより、1個の脂肪酸鎖のアミノ基置換基と次の脂肪酸の末端カルボキシル基の間のそれぞれのアミド結合を連続的に形成することにより、それによりポリアミド骨格を生じ、そこから各脂肪酸のR基が側鎖として伸びることによりもたらされ得る。即ち、得られるポリアミド部分の各モノマー単位のR基側鎖は、それぞれの脂肪酸の残部であり、それぞれの脂肪酸からポリアミド部分の骨格が形成される。
【0207】
脂肪酸のαまたはβ炭素上にアミノ基(NH
2)置換基を有する脂肪酸は、ポリアミド部分(PM)の合成での使用に特に好適であり、それにより得られるポリアミド部分は、αまたはβポリアミド骨格を有する。最も典型的には、式IIの化合物では、各モノマー単位のmは0である。従って、ポリアミド部分は、それぞれの脂肪酸の炭素原子がアミノ基で置換される脂肪酸から形成できる。
【0208】
本発明のいくつかの実施形態では、各脂肪酸部分は、6〜16個の炭素、8〜14個の炭素または10〜12個の炭素を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの脂肪酸部分は、飽和、不飽和または多価不飽和である。好ましい実施形態では、1、2、3または4個の脂肪酸は飽和している。いくつかの実施形態では、脂肪酸は、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、カプリン酸(デカン酸)、およびラウリン酸(ドデカン酸)からなる群より選択される。好ましい実施形態では、脂肪酸は、ドデカン酸(アミノドデカン酸/adod)である。
【0209】
本発明による方法で利用されるLck活性化剤のいくつかの実施形態では、式IIの化合物の各R基の炭素鎖は、独立に直鎖または分岐鎖であり得、および飽和または1個または複数の二重結合を有する不飽和であり得る。通常、各R基は、飽和炭素鎖である。
【0210】
通常、式IIの化合物の各R基は独立に、8〜18、8〜16、より好ましくは8〜14、および最も好ましくは8〜12炭素原子長の炭素鎖である。最も典型的には、各R基は独立に、8〜10炭素原子長の炭素鎖である。
【0211】
従って、例えば、2−アミノカプリンおよびラウリン脂肪酸(それぞれ、10および12炭素原子長さである)は、本明細書に記載の式IIの化合物の提供での使用のために特に好適である。当然のことながら、カプリン酸脂肪酸の場合には、得られる式IIの化合物のモノマー単位のR基は、カプリン脂肪酸鎖の炭素1および2(α炭素)が化合物の骨格中に組み込まれることを考慮すると、8炭素原子長である。同様に、ラウリン脂肪酸の場合には、得られる化合物のモノマー単位(n=1)のR基は、10炭素原子長である。
【0212】
式IIの化合物のR基の炭素鎖の長さは独立に、化合物の1つのモノマー単位と次のモノマー単位で変わり得る。通常、式IIの化合物のR基の炭素鎖は、相互に同じ長さである。式IIの化合物の提供で2−アミノラウリン脂肪酸アミドの使用は、特に好ましい。従って、この例での化合物の各モノマー単位のR基は、10炭素原子長である。
【0213】
通常、式IIの化合物では、nは3、4または5であり、より典型的には、nは3または4であり、最も典型的には、nは4である。
【0214】
しかし、本明細書に記載のLck活性化剤の式IIの化合物の全ての違いは、明示的に包含される。
【0215】
通常、本明細書に記載のLck活性化剤の式IIaの化合物は、下記スキーム1に示すようにアミノ基(NH
2)で終端する。
【化4】
スキーム1:式IIの化合物
【0216】
他の実施形態では、水素原子またはNH
2以外の末端基で終端する式IIの化合物(スキーム1のように)も採用されてよく、本発明は明示的に、全ての好適な生理学的に許容可能なこのような化合物(生理学的に許容可能なその塩を含む)を含む治療薬の使用にまで及ぶ。
【0217】
本発明により利用される式IIの化合物は、例えば、NH
2、H、COOH、OH、ハロ(例えば、F、Cl、Br、I)、SH、アルキル、低級アルキル、アルケニル、低級アルケニル、OR、NHR’およびNR’R”から選択される末端基を有し得、低アルキル基、低級アルケニル基、OR、NHR’およびNR’R”は、任意に置換されてよく、およびR、R’およびR”は、それぞれ独立に任意に置換されてよい低級アルキルまたは低級アルケニルである。
【0218】
低級アルキル、低級アルケニル、OR、NHR’およびNR’R”基の任意の置換基は、例えば、OH、ハロ(例えば、F、Cl、Br、I)、C
1−C
3アルキル(例えば、メチル)、COOHなどから選択され得る。
【0219】
「低級アルキル」は、C
1−C
6アルキル(例えば、直鎖または分岐であってよい、メチル、エチル、またはプロピル基など)を意味する。
【0220】
同様に、「低級アルケニル」は、その最長鎖中に1個または複数の二重結合を含むC
2−C
6アルケニル基を意味する。
【0221】
しかし、通常、式IIの化合物は、NH
2またはCOOH基で終端する。
【0222】
通常、本明細書に記載のポリカチオン性ペプチド(PP)は、それ自体、本発明によるLck活性化剤であり、少なくとも6個の近接カチオン性アミノ酸を含む。同様に、6個未満の長さの近接カチオン性アミノ酸を含む本明細書に記載のポリカチオン性ペプチドが通常、式Iまたは化合物(C)または式IIの強化ペプチドもしくは他のペプチド(AP/P)に結合される。
【0223】
改変またはバリアント型の強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)と、野生型または親ペプチド(例えば、RSKAKNPLY)の間のアミノ酸差異は通常、保存的アミノ酸変化である。保存的アミノ酸置換は、あるアミノ酸残基の、類似の立体化学的特性(例えば、構造体、電荷、酸性または塩基性特性)を有する別のアミノ酸による置換を意味し、これは、構造または特徴的な生物学的機能の所望の特徴または特徴(複数)に実質的に影響しない。例えば、アスパラギン酸(D)などの酸性アミノ酸は、グルタミン酸残基(E)により置換され得、セリン(S)などの極性アミノ酸は、トレオニン(T)またはアスパラギン(N)などの別の極性アミノ酸により置換され得る、などである。
【0224】
本明細書に記載のアミノ酸配列間の配列同一性は、配列が比較のために最適に整列される場合、配列中の各位置でのアミノ酸を比較することにより決定できる。配列の整列は、任意の好適なプログラムまたはアルゴリズム、例えば、NeedlemanおよびWunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970)を用いて実施できる。コンピュータ支援配列整列は好都合に、Wisconsin Package Version 10.1(Genetics Computer Group,Madison,Wisconsin,United States)の一部であるGAPなどの標準的ソフトウェアプログラムを使用し、50のギャップ生成ペナルティ(gap creation penalty)および3のギャップ伸張ペナルティ(gap extension penalty)のデフォルトスコアマトリックスを用いて実施できる。比較のためのアミノ酸配列の他の整列方法もまたよく知られており、例えば、限定されないが、Smith and Waterman,(1981)およびPearson and Lipman(1988)のアルゴリズム、このようなアルゴリズムのコンピュータ−実装(例えば、BESTFIT、FASTAおよびBLAST)、および配列のマニュアル整列および検査である。
【0225】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、Lck活性化剤は、式IIIおよび式IVで下に示すようにポリカチオン性ペプチド(PP)のN末端またはC末端に結合された、上述の式Iの強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)を含み得る。
【0226】
他の実施形態では、式IIの化合物などの化合物は、下記式Vおよび式VIで例示されるように、ポリカチオン性ペプチド(PP)のN末端またはC末端に結合されてよい。
【0227】
式Iの強化ペプチドまたは他のペプチド、または上述の他のペプチド部分がポリカチオン性ペプチド(PP)のN末端またはC末端に結合されるさらにその他の実施形態では、式IIの化合物(C)は、式VIIおよび式VIIIで例示されるように、もう一方のポリカチオン性ペプチド(PP)のN末端またはC末端に結合されてよい。
AP/P−PP 式III
PP−AP/P 式IV
C−PP 式V
PP−C 式VI
AP/P−PP−C 式VII
C−PP−AP/P 式VIII
【0228】
成分、例えば、ポリカチオン性ペプチド(PP)、化合物(C)、および/または本明細書に記載のLck活性化剤の強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)は通常、それぞれのペプチド結合または他の好適な(例えば、共有またはイオン)結合により、場合に応じて、相互に直接結合される。他の実施形態では、ポリカチオン性ペプチド(PP)は、強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)および/または化合物(C)にリンカー基(LG)を介して結合され得る。リンカー基は、相互に同じであっても異なっていてもよい。リンカー基は、例えば、1〜10原子またはそれを超える(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10原子)の長さを含む、またはそれからなり得、その結合原子または1個または複数の原子は、例えば、N、SおよびOから選択される、非炭素原子であってよい。しかし、任意の好適な結合系を用い得る。
【0229】
上記から、本明細書に記載のLck活性化剤の少なくともいくつかの実施形態は、リポペプチドであるか、またはそれを含む。
【0230】
また、式III〜式VIIIのいずれかにおける強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)は、式Iの強化ペプチドの反転配列であり得ることも理解されよう。
【0231】
またさらなる実施形態では、本発明によるLck活性化剤は、Lck活性化剤をLck活性化剤の標的細胞へのおよび/または1つまたは複数の本明細書に記載の他のLck活性化剤への標的化送達のためのターゲティング部分に結合するためのリンカー部分(LM)に結合され得る。リンカー基は、例えば、下記で式IX〜XIに示すような式III〜VIIIのいずれかのLck活性化剤のポリカチオン性ペプチド(PP)または強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)に結合されてよい。
LM−AP/P−PP 式IX
PP−AP/PA−LM 式X
C−PP−LM 式XI
LM−PP−C 式XII
LM−AP/P−PP−C 式XIII
C−PP−AP/P−LM 式XIV
AP/P−PP−LM 式X
AP/P−PP−C−LM 式XI
【0232】
いくつかの実施形態では、リンカー部分は、ターゲティング部分に直接Lck活性化剤を結合できる。
【0233】
他の実施形態では、リンカー部分は、1対のLck活性化剤を一緒に結合するための架橋部分を含むことができ、ここでLck活性化剤は相互に同じであるまたは異なる。
【0234】
リンカー部分(LM)は、任意選択で、Lck活性化剤を放出するために標的細胞の表面でまたは標的細胞の細胞内で酵素切断されるための、下に例示するような1つまたは複数の酵素切断部位をコードするアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0235】
通常、リンカー部分は、リンカー部分のターゲティング部分への結合のために、結合部分を含む。
【0236】
結合部分は、ターゲティング部分への結合のための任意の好適なアミノ酸またはアミノ酸配列、例えば、システイン(C)アミノ酸残基(ターゲティング部分により提供される末端システイン残基とのジスルフィド架橋の形成のため)、リシン残基(K)、または例えば、リシン(K)またはシステイン(C)残基をリンカー部分の酵素切断部位(存在する場合)から隔てるためのKAA、CAAからなる群より選択されるスペーサーアミノ酸配列を含み得、ここでAはアラニン残基である。スペーサーアミノ酸配列はさらに、選択されたターゲティング部分への結合の決定のためのマーカーとして機能を果たすことができる。特に好ましい実施形態では、結合部分は、1個または複数のβアミノ酸(例えば、KAAおよびCAAの場合、アラニン残基はβアミノ酸であり得る)を含む。
【0237】
一実施形態では、結合部分はアジド部分である。
【0238】
別の実施形態では、結合部分(例えば、アジド部分)は、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)に結合される。
【0239】
リンカー部分(LM)の1つまたは複数の酵素切断部位は、カテプシン切断部位、例えば、GFLGFK(例えば、Orban et al.,Amino Acids,2011,41(2):469−483を参照)、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)切断部位で、この例としてはMMP−9およびMMP−2、例えば、GPLGIAGQ、PAGLLGCおよびGPLGLWAQ(例えば、Kratz F.et al.,Bioorg Med Chem Letters,2001,11:2001−2006を参照)、前立腺特異抗原(PSA)切断部位、例えば、KGISSQYおよびSSKYQL(Kumar SK et al.,Bioorg Med Chem,2008,16(6):2764−2768;Niemela P et al.,Clin Chem,2002,48(8):1257−1264)、およびグルタチオン−s−トランスフェラーゼなどの細胞内酵素により切断可能なジスルフィド架橋(−S−S−)からなる群から選択され得る。これらの全ての使用は明示的に本明細書に包含される。
【0240】
従って、リンカー部分(LM)は、特に、GFLGFK、KAAGFLGFK、CAAGFLGFK、GPLGIAGQ、KAAGPLGIAGQ、CAAGPLGGIAGQ、PAGLLGC、KAAPAGLLGC、CAAPAGLLGC、GPLGLWAQ、KAAGPLGLWAQおよびCAAGPLGLWAQからなる群から選択されるように、例えば、本明細書に記載の結合部分および/または酵素切断部位の種々の組み合わせを含むか、またはそれらからなる。少なくともいくつかの実施形態では、本明細書に記載のリンカー部分(LM)は、2つ以上の酵素切断部位を含み得る。
【0241】
重要なことに、本発明者らは、本明細書で記載のペプチドがMMP9により切断されないということを示した(データは示さず)。
【0242】
本明細書に記載の実施形態に従って、リンカー部分(LM)により一緒に結合される1対のLck活性化剤の例は、下記のスキームIIで示される。
【化5】
【0243】
スキームIIで示されるダイマーLck活性化剤は、架橋部分により一緒に結合されたLck活性化剤Lck1およびLck2を含む。この例では、架橋部分は、3個のグリシン(G)アミノ酸残基(Gly
3)の配列にグルタミン酸(Glu)部分を介して結合される酵素切断部位X
1およびX
2(例えば、PSAおよび/またはMMPアミノ酸切断配列)を含み、Gly
3は以下でさらに記述されるようにソルターゼA媒介ライゲーションによりターゲティング部分にLck活性化剤を結合するための結合部分を形成する。酵素切断部位X
1およびX
2は、相互に異なっていても同じでもよい。Lck1およびLck2は、例えば、それぞれ独立に上記式III〜VIIIのいずれか1つから選択されるLck活性化剤であり得、架橋部分は、例えば、ダイマーのそれぞれのLck活性化剤の、それぞれのポリカチオン性ペプチド(PP)、強化部分または他のペプチド(AP/P)、または化合物(C)の末端に結合される。
【0244】
Gly
3以外の結合部分も、本発明の実施形態で採用できる。例えば、結合部分は、3〜5グリシンアミノ酸残基、別のアミノ酸配列(例えば、3〜5アミノ酸長さ)、または他の好適なリンカー鎖の配列を含み得る。
【0245】
さらにその他の実施形態では、本明細書に記載のLck活性化剤、ダイマーまたはLck活性化剤の他のマルチマーは、デンドリマーまたは他の生理学的に許容可能な足場/フレームワークにより、1つまたは複数の他の個別のLck活性化剤またはLck活性化剤マルチマーに結合され得る。
【0246】
本明細書に記載のLck活性化剤の細胞中への侵入は、外側細胞膜を横切る核酸を介することを含む、いくつかの機序を介して起こり得、または、例えば、カテプシン酵素に富むリソソームを介することを含む、受容体媒介輸送または内部移行により起こり得る。
【0247】
本明細書に記載のLck活性化剤の標的化のためのターゲティング部分は、標的細胞の細胞表面または組織環境中で発現される受容体または他の分子に結合する、リガンド、結合ペプチド、抗体またはその結合フラグメント(FabおよびF(ab)
2フラグメントなど)、または単鎖可変フラグメント(scFv)などのターゲティング部分の使用により実現され得る。抗体ターゲティング部分の例としては、抗CD3および抗CD4抗体(例えば、TRX1,Ng CH et al,Pharmaceutical Research,2006,doi:10.1007/s11095−005−8814−3)、およびBT−061(Humblet−Baron S & Baron F,Immunology & Cell Biology,2015,doi:10.1038/icb.2014.120)が挙げられる。利用され得るターゲティング部分はまた、特に、トランスフェリン、ビオチン、葉酸、およびヒアルロン酸を含み得る。例えば、Ojima I.et al.,Future Med Chem,2012,4(1):33−50を参照。この文献の全内容は、相互参照により本明細書に組み込まれる。
【0248】
HIV(例えば、HIV−1)は、例えば、T細胞中に侵入するために、ウィルスエンベロープタンパク質gp120を介してTリンパ球上に発現されるCD4に結合する。CD4への結合後にgp120タンパク質で生じる立体構造変化は、ウィルスを、リンパ球の共受容体CCR5および/またはCXCR4に結合させ、ウィルスと細胞の融合を可能にする。CD4、CCR5およびCXCR4は、本発明により治療薬をリンパ球に送達するために、本発明の実施形態により標的化され得る細胞表面受容体の例である。本発明により標的化され得る標的細胞上の細胞表面受容体または表面発現分子の他の例としては、CD2、CD3、CD8、CD28およびCD45(例えば、CD45RA、CD45RBおよびCD45ROアイソフォーム)が挙げられる。
【0249】
本発明の実施形態により治療薬の標的細胞への送達のために標的化され得るさらなる分子の例としては、インテグリンファミリーおよびそのサブユニットのメンバー、細胞間接着分子(ICAM)ホルモン受容体、神経伝達物質受容体、受容体チロシンキナーゼ受容体、G−タンパク質結合受容体、Gタンパク質結合受容体、成長因子受容体、膜貫通型プロテアーゼ受容体、細胞表面プロテオグリカン、CD44、CD55、Fcy受容体、癌胎児抗原(CEA)、ヒアルロネート受容体、トランスフェリン受容体、葉酸受容体、前立腺特異的膜抗原、血管細胞接着分子、フィブロネクチン、コラーゲンビトロネクチンおよびラミニンなどのマトリックスタンパク質が挙げられる。
【0250】
化学療法剤イバリズマブ(以前はTNX−355)(Bruno CJ and Jacobson JM,J Antimicrobial Chemotherapy,2010,doi:10.1093/jac/dkq261)はCD4を標的とし、本発明による癌または他の疾患または状態の治療のための他の薬物のように、本発明によるLck活性化剤の標的細胞への送達のためのターゲティング部分として用いられ得る。同様に、CD4(例えば、OKT4)またはCXCR4に結合する抗体またはその抗体結合フラグメントも利用され得る。
【0251】
いくつかの実施形態では、Lck活性化剤は、治療標的抗体と一緒に別々に、または抗体−薬物複合体(ADC)のように標的化抗体に結合されて投与され得る。例えば、腫瘍特異的T細胞上に発現された、これらの受容体のT細胞活性化およびIL−2産生の抑制効果を阻害するプログラム死リガンド1(PD−1)受容体または細胞傷害性Tリンパ球結合タンパク質4(CTLA4)受容体に対する抗体、例えば、トレメリムマブ/イピリムマブ(ヤーボイ)またはMSB0010718Cは、それぞれ、このような抗体により標的化される黒色腫、腎臓癌および肺癌などの癌の治療における使用のために、本明細書で記載のLck活性化剤に結合されてADCを形成し得る(Ott PA,OncLive,published online February 21,2014)。CTLA−4受容体の、T細胞の抑制剤から活性化剤への変換はまたこれまで、Lck活性化を介してその効果を媒介する二重特異的タンデム型scFvリガンドを用いて説明されている(Madrenas J et al,J Immunol,2004,172:5948−5956およびTeft WA et al,BMC Immunology,2009;doi:10.1186/1471−2172−10−23,Teft WA et al,BMC Immunology,2009;doi:10.1186/1471−2172−10−23)。従って、本明細書に記載のLck活性化剤へのscFvの結合は、本発明の実施形態によるT細胞活性化をさらに促進し得る。さらなる例として、当業者に既知の二重特異的抗体を用いて、例えば、本明細書に記載のPEG結合Lck活性化剤を、例えば、CD28などの細胞表面受容体に対する抗体に連結させ得る。
【0252】
本発明の実施形態でターゲティング部分として使用される抗体またはその結合フラグメント(Fab、F(ab)
2およびFvフラグメントなど)は、望ましくは、選択標的分子に対し特異的であり、そのため通常、モノクローナル抗体またはその結合フラグメントを含む。モノクローナル抗体およびその結合フラグメントの産生は、よく知られている。キメラおよびヒト化モノクローナル抗体、およびその結合フラグメントが、特に好ましい。キメラ抗体は、例えば、標的分子に特異的な非ヒト抗体のFc領域を、ヒト抗体のFc領域で置換することによりもたらされ得る。ヒト化抗体は、非ヒト(例えば、マウス、ラット、ヒツジまたはヤギ)モノクローナル抗体のFabフラグメントの可変領域中の相補性決定領域(CDR)を、同様に当該技術分野で既知の組換えDNA技術を用いてヒト抗体骨格中に継ぎ合わせることにより得ることができる。
【0253】
上記のように、単鎖可変フラグメント(scFv)およびそのマルチマー型、例えば、二価scFv(例えば、タンデム型scFvおよびディアボディ)、三価scFv(トリアボディ)および四価scFv(テトラボディ)もまた、本発明の実施形態のターゲティング部分として利用し得、ディアボディの使用が特に好ましい。本発明の実施形態で有用なscFvは、2つの可能な配向V
L−AAL−V
HまたはV
H−AAL−V
Lのいずれかで、アミノ酸リンカー配列(AAL)により一緒に結合されたヒト化または天然抗体重鎖(V
H)および軽鎖(V
L)を含み得る。リンカー配列の長さは、モノマーscFv、ディアボディ、トリアボディまたはテトラボディのいずれが形成されるべきかに応じて、変わり得る。scFvのリンカー配列(AAL)は通常、約5〜約30アミノ酸の範囲の長さ、より一般的には、5〜25アミノ酸の範囲の長さである。ディアボディの形成のために、リンカー配列は通常、約5アミノ酸長であり、それにより、scFvが二量体化される。トリアボディに対しては、リンカー配列は、わずか1または2アミノ酸長さであり得る。インビボ画像処理および治療法で使用するための、ディアボディを含むscFvの設計は、例えば、Todorovska A.et al.,J Immunol Methods,2001,Feb 1;248(1−2):47−66,Worn A.and Pluckthun A.,J.Mol.Biol.,2001,305,989−1010、およびAhmed Z.A.et al.,Clinical and Developmental Immunology,Vol.2012,Article ID 980250,Hindawi Pub.Corp.に記載され、これらの全ての内容は、相互参照により本明細書に組み込まれる。
【0254】
scFvがターゲティング部分として採用される場合、本明細書に記載のそれぞれのLck活性化剤は、本明細書に記載の1つまたは複数の酵素切断部位を含むリンカー部分を介してそのV
Hおよび/またはV
L鎖の遊離末端に結合され得る。即ち、本明細書に記載の2つのLck活性化剤が、scFvに結合され得、Lck活性化剤の1つは、V
H鎖の遊離末端に結合され、もう一方は、V
L鎖の遊離末端に結合され、ここでLck活性化剤は、同じであっても、または異なっていてもよい。
【0255】
同様に、本明細書に記載のLck活性化剤は、任意の好適な方式で上述の1つまたは複数の酵素切断部位を含むリンカー部分を介して、抗体、その結合フラグメント、または他のターゲティング部分に結合されてよい。
【0256】
さらに他の実施形態では、本明細書に記載のLck活性化剤は、組換えDNA技術を利用して、ターゲティング部分それ自体(例えば、抗体、抗体結合フラグメント、またはscFv)中に組み込まれて提供され得る。このような実施形態では、Lck活性化剤は、Lck活性化剤のそれぞれの末端で、酵素切断部位(例えば、カテプシン切断部位)を含むそれぞれの結合部分によりターゲティング部分に結合されてよく、これは、各末端のLck活性化剤をターゲティング部分に連結する。このような実施形態では、Lck活性化剤は、ターゲティング部分の結合または標的化機能を損なわない、かつ使用される酵素切断部位の切断を可能にする、ターゲティング部分中の任意の好適な位置で組み込まれ得る。例えば、本明細書に記載のそれぞれのLck活性化剤は、scFvの結合または標的化機能を保持しながら上記の方式でscFvのV
HおよびV
L鎖の片方または両方に挿入され得、例えば、Lck活性化剤は、MMPおよびPSA切断配列から選択される酵素切断配列に隣接される。β6インテグリンサブユニットを特異的に標的とし、かつ他のαV結合βインテグリンサブユニットを標的にしない17マーペプチド(すなわち、VPNLRGDLQVLAQKVA)が、例えば、癌胎児抗原(CEA)と反応性のマウスscFvである、MFE−23のCDR H3ループ中に挿入されている。
【0257】
オンターゲット組織または標的細胞上の異なる部位を標的化するために、または標的細胞に免疫エフェクター細胞を動員するための手段として、2つ以上のターゲティング部分を用いる二重特異的標的化プロトコルは、本発明により明示的に包含される(例えば、二重特異的抗体標的化は、Weidle UH.et al.,Cancer Genomics & Proteomics,2013,10:1−18により最近概説された)。即ち、本明細書に記載の単一Lck活性化剤は、異なる標的分子を相互に標的とする2つの異なるターゲティング部分を組み込み得る。一例として、HER2およびCD4などの2個の異なる標的分子を標的にするための二重特異的タンデム型bi−scFvが、例えば、それぞれの対のV
HおよびV
L鎖の間の1つまたは複数の酵素(例えば、MMPおよび/またはPSA)の切断配列を用いて得られる。
【0258】
本明細書に記載のポリカチオン性ペプチドおよび任意選択で、強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)を含み、ターゲティング部分を含有または非含有で、および/または本明細書に記載の結合部分を含むキメラタンパク質(すなわち、融合タンパク質)の形のLck活性化剤は、本発明の方法でこれらの使用のように、明示的に包含される。
【0259】
例えば、細胞免疫応答が加齢と共に低下することはよく知られている。特に、リンパ球増殖は、高齢患者由来のTリンパ球中で顕著に低下すること、およびこれはLck活性の大きな低下に関連していることが示されている(Fulop T Jr et al,Experimental Gerontology,1999,34(2):197−216)。従って、特異的Lck活性化剤の予防薬投与は、年配者での消耗性感染症の発生または重症度の予防または低減において特に有益であり得る。さらに、適切なT細胞免疫応答の減少は、癌化学療法の副作用であり、複数のチロシンキナーゼを標的にする癌療法に付随する免疫抑制を克服するためのLck活性化剤コンビナトリアル使用の必要性を強調する。抗癌剤に対する薬剤耐性ならびに急性白血病および非ホジキンリンパ腫での細胞周期進行の抑制の克服におけるLck活性化の潜在的役割に加えて、Lck活性化は、多様な病原性感染(ウィルス、細菌、真菌、原生動物および寄生虫)ならびにLck欠損に関連する種々の障害の管理においても重要である。
【0260】
免疫系のTリンパ球は、胸腺で産生され、循環および皮膚、リンパ節、ならびに口内、肺気道、消化管、および膣などの粘膜組織などの特定の組織中に存在できる。上皮内T細胞は、恒常性および悪性病変からの保護で重要な役割を果たす。皮膚、消化管、肺などの上皮組織は、常時の環境暴露下にあり、微生物の侵入に対し第一線の防御を形成する。マウスでの上皮内T細胞(Lckを発現することが知られている)の非存在は、腫瘍拒絶における欠陥を生じる。特に、上皮内のこのようなT細胞の存在は、黒色腫を含む上皮悪性腫瘍の下方制御に必要である(Girardi M et al,Science,2001,294(5542):605−9;Schon MP et al,J Invest Dermatology,2003,121:951−962)。胸腺内でのこのような組織特異的T細胞の成熟は、Lck依存性であり、この細胞は、病原性感染およびそれらの病理学的影響(例えば、マラリア)からの保護に寄与する(Inoue S−I et al,PNAS USA,2012,109:12129−12134)。さらに、ガンマ−デルタ(γ/δ)T細胞は、原生動物、寄生生物、細菌およびウィルスによる感染に対する免疫応答で重要な役割を果たす。このようなT細胞の組織特異的局在化は、皮膚での免疫監視のための要件である(Jamieson JM et al,Frontiers in Bioscience,2004,9:2640−2651;Schon MP et al,J Invest Dermatology,2003,121:951−962)。
【0261】
いくつかのT細胞株で、活性化Lckタンパク質は、抗原刺激の非存在下で、T細胞活性化の証明である、インターロイキン2(IL−2)産生を刺激することが示された(Luo K,and Sefton BM,Mol Cell Biol,1992,12(10):4724−4732)。
【0262】
制御性T細胞(Treg)は、γ/δT細胞とは別のT細胞のサブセットであり、癌に対する免疫応答の抑制で重要な役割を果たす。Tregは、末梢性CD4+T細胞プールの5〜10%を構成し、IL−2Rαおよび転写因子FOXP3の構成的発現により認識される。
【0263】
腫瘍浸潤リンパ球内のFOXP3 Treg細胞の存在は、様々な種類のヒト癌での予後不良と相関し、IL−21はT細胞応答を促進するその能力により、抗腫瘍免疫を促進し免疫系に対するTreg媒介抑制性効果の影響を弱めることが知られている(Kannappan V et al,Cancer Immunol Immunother,2017,66(5):637−645)。
【0264】
本発明者らは、本発明のLck活性化ポリペプチドが、細胞からのIL−21分泌を増大させることを示した(例えば、
図28)。従って、本明細書で記載のLck活性化ポリペプチドは、エクスビボまたはインビボでTregの数を低減する潜在力を有する。実際に、本発明者らは、本明細書で記載のポリペプチドを活性化するLckがインビトロでTregを減らすことを示した。
【0265】
重要なことに、本発明者らは意外にも、本明細書で記載のLckを活性化するためのペプチドが選択的にLckを活性化し、他のSrcファミリーキナーゼを活性化しないことを実証した。例えば、
図2は、Blk、cSrc、Fgr、Fyn、Hck、LynおよびYesが、本明細書で記載のLckを活性するためのペプチドにより活性化されないことを示している。
【0266】
従って、一実施形態では、本発明は、Lckキナーゼの活性を高める方法を提供し、方法は、Lckキナーゼを、本明細書に記載のペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0267】
一実施形態では、インビボでのLckの活性を高めるために、ペプチドまたはペプチドを含む医薬組成物が対象に投与される。
【0268】
本明細書で使用される場合、「活性を高める」および「を活性化する」という用語は通常、ホスホトランスフェラーゼ活性などのキナーゼの活性の増加(例えば、LckキナーゼのY394リン酸化を増やすこと)を指す。例えば、キナーゼの酵素活性の活性化は、活性化剤の非存在下でのキナーゼ活性に比べて、活性化剤の存在下での同じキナーゼ活性の任意の増加を意味する。用語プロテインキナーゼを活性化するは、自己リン酸化の増加、活性化時に、1つの細胞内位置からベルの位置へ移動の増加、キナーゼを所定の位置に固定する1個または複数のタンパク質への結合またはそれからの解放の増加、またはプロテインキナーゼの他の活性もしくは機能の増加も含む。この増加は、限定されないが、プロテインキナーゼと、プロテインキナーゼの結合相手との間に複合体が形成される確率を増大させること、またはその標的に以前に結合したキナーゼ活性の増大を含む任意の手段により引き起こされ得る。このような活性化は、インビボあるいはインビトロのいずれかで起こり得る。
【0269】
キナーゼの酵素活性は、当業者に既知の種々の方法、例えば、Parker,Law,et al.,(2000),Development of high throughput screening assays using fluorescence polarization:nuclear receptor−ligand−binding and kinase/phosphatase assays,J.Biomolec.Screening 5(2):77−88;Bader et al.(2001),Journal of Biomolecular Screening 6(4):255−64);Liu,F.,X.H.Ma,et al.(2001).“Regulation of cyclin−dependent kinase 5 and casein kinase 1 by metabotropic glutamate receptors.” Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 98(20):11062−8;Evans,D.B.,K.B.Rank,et al.(2002).“A scintillation proximity assay for studying inhibitors of human Tau protein kinase II/Cdk5 using a 96−well format.” Journal of Biochemical & Biophysical Methods 50(2−3):151−61で開示の方法により監視できる。
【0270】
このような標準的方法を用いて、目的のキナーゼを含む試料を、放射性ATPおよびリン酸化の位置を与えるための適切な組成の合成ペプチド基質に適切な条件下で暴露する。ペプチドと新しく結合した放射性リン酸を次に、測定する。基質ペプチドに共有結合したビオチンなどの化学的部分を付加して、ストレプトアビジンコートビーズによる基質ペプチドの結合を可能にする。ビーズ結合ペプチドを単離し結合した放射能を測定できる、または好ましくは、基質ペプチドと結合した放射能を、シンチレーション近接アッセイに好適するビーズを用いて直接測定できる。
【0271】
ペプチド基質のリン酸化はまた、リン酸化部位特異的抗体の直接結合を介して、または競合リンペプチドからのリン酸化部位特異的抗体の移動を測定することにより、検出できる(例えば、Parker,Law et al.,2000,Development of high throughput screening assays using fluorescence polarization:nuclear receptor−ligand binding and kinase/phosphatase assays,J.Biomolec.Screening 5(2):77−88を参照)。蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)または蛍光偏光法(FP)などの蛍光法を使用して、特定のリンペプチド−抗体複合体を検出できる。これらの方法は、それらが、結合種の単離に依存せず、むしろ、溶液中の特異的結合のために起こる蛍光の変化に依存する「ホモジニアス」検出法を採用するという利点を有する。
【0272】
リン酸化部位特異的抗体の作製方法は、当該技術分野において周知である。一実施形態では、Bibbらにより1999年10月15日に出願された「Methods of Identifying Agents That Regulate Phosphorylation/Dephosphorylation in Dopamine Signalling」という名称の米国特許出願第09/419,379号、およびBibbらにより2000年10月13日に出願された「Methods of Identifying Agents That Regulate Phosphorylation/Dephosphorylation in Dopamine Signalling」という名称の米国特許出願第09/687,959号(これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)で開示される方法を使用して、リン酸化標的に対し特異性を有するリン酸化状態特異的抗体を作製する。
【0273】
ホスホセリン、ホスホトレオニン、またはフォスフォチロシンに対するリン酸化状態特異的抗体は、市販品として入手できる。これらの抗体は、一般にタンパク質がリン酸化されるかどうか、およびどの残基でリン酸化されるかを決定するのに有用である。このような抗体は、市販品入手源から入手できる(例えば、Santa Cruz Biotechnology Inc.,Sigma RBI,Stratagene,Upstate BiotechnologyおよびZymedを含む、市販品入手源のリストについては、The Scientist 15[4]:24,Feb.19,2001を参照)。
【0274】
蛍光共鳴エネルギー転移、またはFRETは、高分子の特異的結合を検出できるホモジニアスアッセイに広く使用されている。FRETは、放射光ではなく、励起された「ドナー」蛍光分子(フルオロフォア)が近くの「アクセプター」フルオロフォアへそれらのエネルギーを伝達する能力に依存する。従って、2つのフルオロフォアが基質標的に結合することにより空間で1つにされると、通常のドナー波長で放出される蛍光は減少し、アクセプターフルオロフォアにより放出される蛍光は増加する。ドナー蛍光の減少またはアクセプター蛍光の増加のいずれかを用いて、結合イベントを測定できる。
【0275】
キナーゼ活性を評価するための好適な方法は、Baderら(2001,A cGMP−dependent protein kinase assay for high throughput screening based on time−resolved fluorescence resonance energy transfer,Journal of Biomolecular Screening 6(4):255−64)で開示の方法を含み、例えば、ホスホジエステラーゼ、キナーゼまたはタンパク質ホスファターゼの活性を決定するために用いられる。Baderらは、時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(「FRET」)をベースにした高スループットスクリーニングのためのcGMP依存性プロテインキナーゼアッセイを開示し、これは、当業者なら分かるように、ホスホジエステラーゼまたはタンパク質ホスファターゼのアッセイに適応され得る。目的のキナーゼを含む試料が、キナーゼ特異的リン酸化部位およびアミノ末端ビオチン部分を有するATPおよび合成ペプチド基質に暴露される。リン酸化されたペプチドは、アロフィコシアニン標識ストレプトアビジン、リンペプチド特異的抗体およびユーロピウムキレート標識二次抗体を用いて検出される。リン酸化基質分子へのストレプトアビジンおよびリン酸化部位特異的抗体の同時結合は、蛍光共鳴エネルギー転移が起こるためのアロフィコシアニンフルオロフォア「アクセプター」の十分近くに二次抗体上のユーロピウムキレート「ドナー」を運び、蛍光共鳴エネルギー転移は615nm波長でのユーロピウム放射の減少として、および665nm波長でのアロフィコシアニン放射の増加として測定できる。ユーロピウム−アロフィコシアニンのドナー−アクセプター対は、励起ユーロピウムの長い蛍光寿命を利用するためによく使われ、従って、シグナルは、時間分解される。
【0276】
クマリンとフルオレセインイソチオシアネートなどの他のフルオロフォア対も使用できる。蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)に関与できるこのような分子対は、FRET対と呼ばれる。エネルギー転移が起こるためには、ドナーおよびアクセプター分子は通常、最大で70〜100Åの近接状態でなければならない(Clegg,1992,Methods Enzymol.211:353−388;Selvin,1995,Methods Enzymol.246:300−334)。エネルギー転移の効率は、ドナーとアクセプター分子の間の距離と共に急速に低下する。FRETでよく使用される分子としては、フルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン(FAM)、2’7’−ジメトキシ−4’5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、ローダミン、6−カルボキシローダミン(R6G)、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、4−(4’−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)、および5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS)が挙げられる。フルオロフォアがドナーであるかアクセプターであるかは、その励起および発光スペクトル、およびそれと対形成するフルオロフォアにより決まる。例えば、FAMは、488nmの波長の光により最も効率的に励起され、500〜650nmのスペクトルと、525nmの最大発光を有する光を放出する。FAMは、JOE、TAMRA、およびROX(これらの全ては、514nmで最大励起を有する)で使用するのに好適なドナーフルオロフォアである。
【0277】
蛍光偏光測定もまた、ホスホジエステラーゼ、プロテインキナーゼまたはホスファターゼの活性の測定に使用できる(例えば、Parker,Law et al.,2000,Development of high throughput screening assays using fluorescence polarization:nuclear receptor−ligand−binding and kinase/phosphatase assays,J.Biomolec.Screening 5(2):77−88;Turek et al.,2001,Anal.Biochem.299:45−53を参照)。
【0278】
小さい蛍光リンペプチドへの大きな特異的抗体の結合は、そのタンブリング速度を遅らせ、蛍光偏光シグナルを高める。従って、蛍光偏光は、結合した蛍光のリンペプチドの量に比例する。このアッセイは、競合モードで使用でき、このモードでは、固定濃度の蛍光のペプチドおよび抗体が生体試料に加えられ、非蛍光リン酸化タンパク質またはリンペプチドの存在が、シグナルの減少として記録される。それは、直接結合モードでも使用でき、このモードでは、リン酸付加(例えば、キナーゼによる)または除去(例えば、ホスファターゼによる)が抗体結合を、従って、偏光シグナルを調節する。特定の実施形態では、蛍光偏光アッセイは、Turekら(2001,Anal.Biochem.299:45−53)の方法を用いて実施され、この場合、生成物特異的抗リン酸化ペプチド特異的(例えば、抗リン酸化セリン)抗体が用いられる。
【0279】
キナーゼ活性を評価するための他の好適な方法としては、リン酸化のための細胞ベースアッセイが挙げられる。例えば、タンパク質リン酸化に基づくシグナル伝達は、例えば、Satoら(2002,Fluorescent indicators for imaging protein phosphorylation in single living cells,Nature Biotechnology 20(3):287−94)で開示されたものなどの方法を用いて、蛍光指示薬を使い単一生細胞中で、インビボで可視化される。このようなセンサーは、フレキシブルリンカーで分離された、2個の蛍光タンパク質分子からなる。リンカーペプチドは、リン酸化部位およびリン酸化タンパク質認識要素を含む。リンカーのリン酸化は、立体構造変化を生じ、これが、2個の蛍光タンパク質を近接距離に動かし、FRETを生じさせ、系の蛍光出力を変える。
【0280】
Lck遺伝子異常および疾患
多数のヒト疾患が、Lck座位の異常により引き起こされ、一例は、T細胞急性リンパ性白血病である(Converse PJ,2003 Sept 24.Lymphocyte−specific protein−tyrosine kinase;Lck.Online Mendelian Inheritance in Man.,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/dispomim.cgi?id=153390.in)。加えて、AML関連のほとんどのDNA変化は、誕生前に遺伝により受け継がれるのではなく、人の寿命の間に発生する。いくつかのこれらの後天性変化は、放射線または発癌化学薬品などの外的原因を有し得るが、ほとんどの事例では、それらが起こる理由は分かっていない(http://www.cancer.org/cancer/leukemia−acutemyeloidaml/detailedguide/leukemia−acute−myeloid−myelogenous−what−causes)。
【0281】
免疫応答におけるIL−2/IL−2Rα(CD25)軸
慢性感染症および癌では、T細胞は持続性抗原および/または炎症性シグナルに暴露される。このシナリオは多くの場合、細胞機能の低下:「疲弊」と呼ばれる状態に関連する(Wherry EJ & Kurachi M,Nature Reviews Immunology,2015,15:486−499)。疲弊T細胞は、強固なエフェクター機能を失い、PD−1、LAG3、CD160、または2B4などのシグナル伝達チェックポイントで複数の抑制性受容体を発現し、かつ変化した転写プログラムにより規定される。しかし、疲弊T細胞の再活性化は免疫を再活性化でき、これはHIV−1、C型肝炎ウィルス、およびなどの持続性感染症、および癌に対し、新しい治療標的を提供する(Wherry & Kurachi、前出参照)。
【0282】
初期の活性化時に、CD8+T細胞は、爆発的にIL−2を産生するが、その後、一過性の不応期に入り、その間、いくつかのエフェクター機能を維持するがIL−2を産生する能力を失う。この期間中、CD8+T細胞は、それらの増殖の継続および完全な機能的能力の回復のため、CD4+T細胞により供給される外因性IL−2に依存する(Cox MA et al,Trends Immunol,2001,32(4):180−186で概説される)。IL−2は、CD24(IL−2Rα)、CD122(IL−2Rβ)およびガンマサブユニットからなるトリマー受容体を介してシグナル伝達を行う。CD25は、構成的に発現されないが、IL−12およびIL−2それ自体などの炎症性サイトカインへの暴露後に発現上昇される。この炎症性サイトカインは、CD25発現の量と期間を調節し、これは次に、応答細胞の能力を制御してIL−2依存性シグナルを受信し、それにより、T細胞のエフェクターおよび記憶集団(memory pool)の形成に影響を与える(上記Coxらへ参照)。
【0283】
CD4+T細胞は、IL−2の生来の産生細胞であり、CD8+T細胞と協働して応答の初期拡大ならびに耐久性のある防御二次反応を誘発できる記憶細胞形成を促進する。重要なことに、CD4+T細胞によるIL−2の分泌は、CD8+T細胞に応答することによりCD25発現を上方制御し、また、CD25
+CD8+T細胞の増殖を増やすIL−2源も提供する(Cox et al,vide supra,Obar JJ et al,PNAS USA,2010,107(1):193−198)。さらに、IL−2は、外来性の刺激の非存在下でCD25陰性Tリンパ球上のIL−2受容体のアルファ鎖の用量依存性発現をもたらすことが示された(Sereti I et al,Clin Immunol,2000,97(3):266−76)。従って、CD4
+T細胞またはCD8+T細胞上のCD25発現の非存在は、病原性特異的応答の拡大期を制限する。従って、CD25などのサイトカイン受容体発現の調節は、エフェクター細胞の生成における律速段階になる可能性が高く、CD25のより高い発現により細胞がより強力なIL−2シグナルを受けることを可能にする(Cox et al、前出参照)。
【0284】
慢性敗血症および癌に対して応答するエフェクターおよび記憶細胞の調節におけるCD25発現の重要性に加えて、CD25発現CD8+T細胞はまた、老齢期の効力の高い記憶細胞であることが明らかになり、高齢者でのこれらの細胞の蓄積は、老齢期の未感作T細胞の非存在下で、インタクト免疫応答性の前提条件であるように見える(Herndler−Brandstetter D et al,J Immunology,2005,175:1566−1574)。この知見は、高齢者集団における免疫コンピテントCD8+CD25
+記憶T細胞の長期生存の支援を目的とする新規ワクチン接種手法の提案をもたらした(Herndler−Brandstetter et al、前出参照)。
【0285】
本発明者らは、本明細書で記載のペプチドが、ヒトPBMCおよびCD4+T細胞(実施例15、
図17)およびCD8+T細胞(実施例28、
図25)上のIL−12RB2発現を高めることを示した。従って、本明細書で記載のLck活性化ペプチドを、本明細書で記載のIL−12RおよびIL−12の生理学的効果を強化するために使用できる。
【0286】
従って、一実施形態では、本発明は、細胞または細胞集団からのIL−12分泌を増大させる方法を提供し、方法は、細胞または細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0287】
一実施形態では、細胞または細胞集団からのIL−12分泌のレベルは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させた細胞または細胞集団からのIL−12分泌レベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞または細胞集団(例えば、対照)からのIL−12分泌のレベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、増大される。
【0288】
別の実施形態では、本発明は、細胞上または細胞集団中のIL−12R発現を増大させる方法を提供し、方法は、細胞または細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0289】
一実施形態では、細胞または細胞集団のIL−12R発現レベルは、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させた細胞または細胞集団のIL−12R発現のレベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞または細胞集団(例えば、対照)のIL−12Rのレベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、増大される。
【0290】
一実施形態では、IL−12Rは、IL−12RB1および/またはIL−12RB2である。
【0291】
別の実施形態では、本発明は、細胞のIL−12応答性を高める方法を提供し、方法は、細胞または細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0292】
一実施形態では、IL−12に対する細胞または細胞集団の応答性のレベルは、IL−12に対する本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させた細胞または細胞集団の応答性のレベルがIL−12に対する本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞または細胞集団(例えば、対照)の応答性のレベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、増大される。
【0293】
好ましい実施形態では、細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞またはNK細胞である。
【0294】
上記で考察したように、本明細書記載の方法は、インビボで(例えば、対象中で)またはインビトロのいずれかで(例えば、エクスビボで)、細胞または細胞集団に対し実施できる。
【0295】
慢性ウィルス感染症または担癌状態中に、T細胞記憶形成および機能は、最終的に宿主保護を付与する能力に影響を及ぼす、応答抗原特異的T細胞のエフェクター機能および増殖能力の段階的障害に起因して、かなり変化するようになる(Jin H−T et al,BMB Reports,2011,44(4):217−231)。腫瘍環境では、CD8+腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)は、低レベルのCD25(IL−2Rα)発現を示し、従って、IL−2シグナル伝達に対し不応性であり、それらが増殖、エフェクターサイトカインの産生および機能的記憶細胞への分化ができないことを示す(Mumprecht S et al,Blood,2009,114:1528−1536)。例えば、CML特異的CD8+T細胞は、レトロウィルス誘導マウスCMLモデルにおけるIFNγ、TNFαおよびIL−2などのエフェクターサイトカインの産生低下を示す(Mumprecht et al、前出参照)。
【0296】
CD25発現は、NK細胞の細胞傷害活性と正に相関する。本発明者らは、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)が、ルイス肺癌マウスの脾細胞中のNK細胞上のCD25の相対発現も高めることを示した(データは示されていない)。
【0297】
従って、一態様では、本発明は、細胞傷害性細胞機能を高める方法を提供し、方法は、細胞傷害性細胞または細胞傷害性細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0298】
一実施形態では、本発明は、T細胞の疲弊を低減する方法を提供し、方法は、T細胞を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0299】
用語「疲弊」は、多くの慢性感染症および癌の間に発生する持続的TCRシグナル伝達から生じるT細胞機能不全の状態としてのT細胞疲弊を指す。これは、アネルギーが不完全なまたは欠陥シグナル伝達により生じず、持続的シグナル伝達から生ずるという点で、アネルギーとは区別される。これは、不十分なエフェクター機能、抑制性受容体の持続性発現および機能的エフェクターまたは記憶T細胞とは異なる転写状態により定義される。疲弊は、感染症および腫瘍の最適制御を妨げる。疲弊は、外因性負の調節経路(例えば、免疫調節性サイトカイン)ならびに細胞内因性負の調節(共刺激)経路(PD−1、B7−H3、B7−H4、など)の両方から生じ得る。一実施形態では、疲弊の低減のレベルは、少なくとも10%、あるいは、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%である。疲弊の測定方法は、当業者に既知である。
【0300】
一実施形態では、T細胞またはT細胞集団の疲弊のレベルは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させたT細胞またはT細胞集団のT細胞機能のレベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていないT細胞またはT細胞集団(例えば、対照のT細胞機能のレベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、減少される。
【0301】
抗原および/または炎症が除去される急性感染症の設定では、エフェクターCD8+T細胞は、二次感染症時に複数のサイトカイン(IFNγ、TNFαおよびIL−2)を産生でき強いリコール応答を開始できる、機能的記憶CD8+T細胞にさらに分化する。対照的に、慢性感染症中は、抗原および炎症はエフェクター作動相後にも持続する。感染症が継続しT細胞刺激が継続するにつれて、T細胞は、階層的にエフェクター機能を失い、疲弊状態になる。通常、IL−2産生およびサイトカイン多機能性、ならびに高増殖能力などの機能は早期に失われる。この後に、IFNγおよびTNFα産生の障害が続く。T細胞疲弊はまた、上に示した抑制性受容体の量と多様性の漸進的増大に付随して起こり、これは、それらのそれぞれのリガンドへの結合時に、機能障害性T細胞を生ずる。
【0302】
複数の抑制性受容体の同時発現がT細胞疲弊の主要な特徴であることを考慮して、これらの受容体の同時標的化は、T細胞疲弊の相乗的逆転をもたらすことが示された(Wherry & Kurachi、前出参照)。例えば、慢性LCMV感染症では、マウスにおけるIL−10およびプログラム死受容体1(PD−1)経路の同時遮断は、CD8+T細胞疲弊の相乗的逆転に繋がり、IL−2治療とPD−1経路の遮断の組み合わせを有し、ウィルス制御を強化する(上記のWherry & Kurachiを参照)。加えて、LCMVマウスモデルでは、CD25コンピテントCD8
+T細胞は、LCMVでの感染後にCD25欠損T細胞よりも5倍大きい数に増殖することが示された(Bachmann MF et al,Eur J Immunol,2007,37:1502−1512)。さらに、これらの研究者は、CD8+T細胞の誘導および維持がCD25シグナル伝達とほとんど無関係である急性/既往感染と対照的に、CD25シグナル伝達は、持続性ウィルス感染症中のウィルス特異的CD8+T細胞の維持に重要であることを示した。
【0303】
別の抑制性受容体であるCTLA−4は、慢性HIV感染症において、CD4+T細胞中で選択的に発現上昇されるが、CD8+T細胞中では発現上昇されず、これは、ウィルス抗原に応答してIL−2を産生するT細胞の能力の低下と相関し、CD4+T細胞機能不全と選択的に関連する可逆的調節経路を示している(Kaufmann DE et al,Nature Immunology,2007,8:1246−1254)。T細胞機能の階層的損失は、抗原暴露、炎症および抑制分子(PD−1、CD160、2B4)の発現増大の継続時間と関連している(Wherry J et al,Nature Immunology,2011)。さらには、CD4
+/CD8
+T細胞によるサイトカインの分泌が減少する(例えば、IL−2、TNFαおよびIFNγ)。同時に、慢性的感染HIV−1患者などの慢性敗血症の状態では、HIV特異的CD8
+T細胞の表現型は、チェックポイント分子(例えば、PD−1、CD160)の蓄積を明らかにする。
【0304】
T細胞疲弊は、慢性HIV感染症の間の病原体除去失敗の重要な因子である可能性が高く、一部には、負の調節経路により調節される(Porichis F & Kaufamm DE,Curr Opin HIV AIDS,2011,6(3):174−180で概説される)。例えば、CTLA−4抑制性免疫調節受容体ならびにプログラム細胞死受容体−1(PD−1)は、HIV感染対象においてCD4+T細胞中で発現上昇されるが、CD8+T細胞中では、発現上昇されない(Kaufmann DE et al,Nature Immunol,2007,8:1264−1254)。これは、CD4
+T細胞がウィルス抗原に応答してIL−2を産生する能力がないことと相関する。HIV患者由来のT細胞は、IL−2を産生する能力が障害され、リコール抗原に対する増殖性応答がHIV感染の早期に妨害されており、IL−2によりインビトロで回復できる(Fauer AS & Panteleo G(Eds),Immunopathogenesis of HIV infection,Springer,doi:10.1007/978−3−642−60867−4,pp 41−42)。
【0305】
従って、高レベルの抗原の場合でのHIV特異的CD4+T細胞の増殖の抑制は、ウィルス特異的CD4+T細胞の前駆細胞頻度が制限される機序によるものであり得る(McNeil AC et al,PNAS USA,2001,98:13878−3883)。さらに、PD−L1遮断抗体によるPD−1経路の遮断は、HIV特異的CD4
+T細胞増殖を増大させる(Porichis & Kaufmann、前出参照)。
【0306】
しかし、CD4+T細胞のみが疲弊し、その後の抗原刺激に対し無効力になるのではなく、CD8
+T細胞も同様である。HIV感染症では、CD4+T細胞の減少は、CD8+T細胞の疲弊の増加および疾患進行と関連し、CD8
+T細胞疲弊に対するCD4+T細胞応答における変化の影響は、大いに関連性がある(Wherry EJ & Kurachi M,Nature Reviews,2015,15:486−499)。疲弊したCD8+T細胞はまた、高発現のPD−1を有するが、一方、老化細胞は有しない(Wherry & Kurachiで概説、前出参照)。さらに、IL−2治療とPD−1媒介阻害経路の遮断の組み合わせは、疲弊したCD8+T細胞を再活性化しウィルス量を低減するための顕著な相乗効果を有することが示された(Wherry & Kurachi、前出参照)。HIV−1特異的CD8+T細胞のエクスビボ増殖は、IL−2に大きく依存する(Lichterfield M et al,JEM,2004,200:701−712)。まとめると、HIV特異的CD8+T細胞機能の低下は、HIV特異的CD4+T細胞ヘルパー機能の増強により、慢性感染症において回復され得る。
【0307】
T細胞疲弊の別の表現型マーカーは、CD8+T細胞上のTim−3発現であり、それはTim−3およびPD−1が慢性ウィルス感染症におけるCD8 T細胞機能不全を回復する最も効果的な手段である可能性があるという提案に繋がった(Jin HT et al,PNAS USA,2010,107(33):14733−8)。さらに、最近の文献は、CD8+T細胞疲弊におけるTim−3との関連でLckの潜在的重要性を強調する。例えば、Tim−3の生理学的リガンドであるガレクチン−9は、受容体ホスファターゼCD45に結合し、これは、高レベルで存在する場合には、Lck上のY394を脱リン酸化し、それにより、Lck活性を低減させる(Clayton KL et al,J Immunol,2014,192(2):782−791)。
【0308】
さらに、ガレクチン−9は、Tim−3ならびにCD3シグナル伝達ラフト内のCD45のレベルを高めることができ、シナプスでの高濃度のこのホスファターゼは、それによりLckが負に制御されTCRシグナル伝達の抑制をもたらす手段であると示唆された(Clayton KL et al,J Immunol,2014,192(2):782−791)。加えて、TCRと抗CD3/CD28のライゲーションにより活性化されたT細胞由来の細胞ライセートの分析は、Tim−3へのLckの動員をもたらし、Tim−3によるLckの隔離は細胞内Lckプールを枯渇させ、TCR鎖上のITAMモチーフのリン酸化を妨害することによりTCRの不完全な活性化を生ずることも提唱された(Tomkowicz B et al,Plos One,2015,10(10):e0140694(doi:10.1371/journal.pone.0140694)。
【0309】
癌において、今日では、腫瘍が特定の免疫チェックポイント経路を、特に、腫瘍抗原に特異的なT細胞に対する免疫耐性の主要機序として利用することが明らかであり、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA−4)およびプログラム細胞死タンパク質1(PD−1)の抗体遮断薬を用いた臨床試験は、持続性のある臨床的応答を生成する潜在力を有する強化された抗腫瘍免疫を示した(Pardoll DM,Nature Reviews Cancer,2012,12:252−264)。
【0310】
CTLA−4は活性化CD8+エフェクターT細胞により発現されるが、CTLA−4の主要な生理学的役割は、CD4+T細胞の2つの主要なサブセットに対する別々の効果:ヘルパーT細胞活性の抑制的調節および調節性T(Treg)細胞免疫抑制活性の強化、を介するものであるように思われる。(上記Pardolに評価された)しかし、癌免疫療法でのPD−1経路の遮断はまた、腫瘍内Treg細胞の数および/または抑制活性を漸減させることにより、免疫応答を高め得る(Pardoll、前出参照)。さらに、PD−1遮断は、組織中および腫瘍微小環境中のエフェクターT細胞の活性を強化するのみでなく、PD−1 B細胞に対する直接的作用を介して腫瘍中のナチュラルキラー細胞活性および抗体産生もおそらく強化する(Pardoll、前出参照)。癌では、発現される主要なPD−1リガンドは、PD−L1であり、PD−L1の高発現は、ほぼ全ての癌型で認められている(Pardoll、前出参照)。従って、1つまたは複数の抑制性チェックポイントを単独でまたは組み合わせて標的とする治療は、癌の全身制御に対する大きな可能性を有すると考えられる(Allison JP,JAMA,2015,314(11):1113−1114;Creelan BC,cancer Control,2014,21(1):80−9)。
【0311】
本発明者らは、本明細書で記載のペプチドは、
図1、2、4、5および6に示すように、Lckを活性化し、
図3および
図40に示すように、Y394でのLckリン酸化を増大させることを示した。
【0312】
従って、本明細書で記載のLck活性化ペプチドは、本明細書で記載のLckの生理学的効果を高めるために使用できる。
【0313】
一実施形態では、本発明は、Lckキナーゼの活性を高める方法を提供し、方法は、Lckキナーゼを、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。本発明はまた、LckキナーゼのY394リン酸化を増大させる方法を提供し、方法は、Lckキナーゼを、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0314】
一実施形態では、本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させたLckの活性は、本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させたLck活性レベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていないLck(例えば、対照)の活性と比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、増大される。同様に、LckキナーゼのY394リン酸化のレベルは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドと接触させたLckキナーゼのY394リン酸化レベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていないLckキナーゼ(例えば、対照)のY394リン酸化と比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触の前後のレベルを比較する場合、増大される。
【0315】
Lck活性化の下流効果を含むLckの活性は、本明細書で記載される。
【0316】
本明細書で使用される場合、「接触させること」という用語は、インビトロ系またはインビボ系中で示される部分(例えば、本明細書に記載のLck活性化ペプチドとLckキナーゼ)を一緒にすることを指す。例えば、プロテインキナーゼを本明細書に記載の活性化剤と「接触させること」は、キナーゼを有するヒトなどの個体または患者への本発明の化合物の投与、ならびに、例えば、キナーゼを含む細胞調製物または精製調製物を含む試料中に本明細書に記載の活性化剤を導入することを含む。
【0317】
本発明者らはまた、本明細書で記載のペプチドは、ヒトT細胞からのIL−2分泌を増大させることも示した(
図7、
図8、
図9、
図29、
図33、
図34、
図35、および
図37)。重要なことに、本明細書で記載のLck活性化ペプチドによる細胞の前処理は、T細胞がその後に刺激されると、IL−2分泌を増大させる(例えば、
図29参照)。
【0318】
従って、本明細書で記載のLck活性化ペプチドは、本明細書で記載のIL−2の生理学的効果を高めるために使用できる。
【0319】
一実施形態では、本発明は、細胞または細胞集団からのIL−2分泌を増大させる方法を提供し、方法は、細胞を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0320】
一実施形態では、細胞または細胞集団からのIL−2分泌のレベルは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させた細胞または細胞集団からのIL−2分泌レベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞または細胞集団(例えば、対照)からのIL−2分泌のレベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、増大される。
【0321】
一実施形態では、細胞はT細胞である。
【0322】
本発明は、細胞の増殖を誘発する方法を提供し、方法は、細胞を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0323】
本明細書で使用される場合、増殖という用語は、細胞数の増大、または細胞または細胞集団の細胞分裂数の増大を含み、増殖(expansion)と同義に使用される。一実施形態では、細胞または細胞集団の増殖レベルは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドと接触させた細胞または細胞集団の細胞増殖レベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞または細胞集団(例えば、対照)の細胞増殖レベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、増大される。
【0324】
別の実施形態では、本発明は、細胞集団の増殖を増大させる方法を提供し、方法は、細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0325】
一実施形態では、本発明は、細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、NK細胞、または樹状細胞からなる群より選択される細胞である、または細胞集団はこれらからなる群より選択される細胞を含む。
【0326】
別の実施形態では、細胞は未感作細胞である、または細胞集団は未感作細胞を含む。
【0327】
好ましい実施形態では、本方法は、インビボでまたはインビトロで細胞または細胞集団に対し実施される。別の好ましい実施形態では、本方法は、エクスビボで細胞または細胞集団に対し実施される。
【0328】
別の実施形態では、本発明は、動物の細胞または細胞集団の増殖を増大させる方法を提供し、方法は、動物に、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物を投与することを含む。
【0329】
本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物は通常、有効量で投与される。本明細書で使用される場合、用語「有効量」(例えば、「治療有効量」または「薬学的有効量」)は、Lckキナーゼ活性の活性化を可能とする、または分子または細胞応答を高めるまたは低減させる、本明細書に記載のLck活性化ペプチドの量を指す。上記「有効量」は、個々の年齢および全身状態に応じて、および治療または予防される特定の状態、治療期間、以前の治療、および状態の性質および既存期間などの因子により対象毎に変化する。
【0330】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のLck活性化ペプチドは通常、例えば、任意の年齢の健常者に、疾患または状態の症状のない対象に有効量で投与されてLckを活性化する。
【0331】
具体的には、活性化剤の有効量は、過剰のまたは許容できない毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題または合併症なしに、適度なベネフィットリスク比に見合って対象に投与できるが、本明細書全体を通して開示されるものなどの適切な技術で評価して所望の効果を与えるのに十分である、Lck活性化ペプチドの量を規定する。従って、正確な有効量を指定するのは可能ではないが、当業者なら、定型実験および背景的一般知識を用いて、任意の個々の症例に適切な「有効」量を決定できる。これに関する治療結果は、症状の根絶または軽減を含む。治療結果は状態の完全な回復(すなわち、治癒)である必要はない。
【0332】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させた細胞または細胞集団に由来する細胞または細胞集団を提供する。例えば、本明細書に記載の方法に由来する(例えば、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と細胞または細胞集団をインビボまたはインビトロで接触させた後)細胞または細胞集団に由来する、T細胞、NK細胞または樹状細胞、またはそれらの集団。別の態様では、本発明は、例えば、養子細胞移入のための、方法および本明細書で記載の細胞または細胞集団の使用を提供する。
【0333】
本発明者らはまた、本明細書で記載のLck活性化ペプチドは、T細胞株(
図10および
図12)、PBMC内のCD4+およびCD8+T細胞(
図13)、および疲弊したCD4+T細胞(
図11)上のIL−2Rα(CD25)発現を増大させることも示した。
【0334】
従って、本明細書で記載のLck活性化ペプチドは、本明細書で記載のIL−2Rの生理学的効果(例えば、IL−2に対する応答性)を高めるために使用できる。
【0335】
一実施形態では、本発明は、細胞または細胞集団のIL−2応答性を増大させる方法を提供し、方法は、細胞または細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0336】
一実施形態では、細胞または細胞集団のIL−2に対する応答性のレベルは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させた細胞または細胞集団のIL−2に対する応答性のレベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞または細胞集団(例えば、対照)のIL−2に対する応答性のレベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、増大される。
【0337】
一実施形態では、本発明は、細胞または細胞集団上のIL−2Rα(CD25)発現を増大させる方法を提供し、方法は、細胞または細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0338】
一実施形態では、本発明は、チェックポイント阻害剤の存在下でCD25発現を増大させる方法を提供し、方法は、細胞または細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0339】
一実施形態では、本発明は、細胞または細胞集団上のIL−2RB(CD122)発現を増大させる方法を提供し、方法は、細胞または細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0340】
一実施形態では、細胞または細胞集団上のIL−2RαまたはIL−2RB発現のレベルは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドと接触させた細胞または細胞集団上のIL−2RαまたはIL−2RB発現のレベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞または細胞集団(例えば、対照)上のIL−2RαまたはIL−2RB発現のレベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、増大される。
【0341】
一実施形態では、細胞は未感作細胞である、または細胞集団は未感作細胞を含む。
【0342】
一実施形態では、細胞はT細胞である。好ましい実施形態では、T細胞はCD4+T細胞またはCD8+T細胞である。
【0343】
上記で考察したように、本明細書記載の方法は、インビボ(例えば、対象中で)またはインビトロ(例えば、エクスビボで)のいずれかで、細胞または細胞集団に対し実施できる。同様に上述したように、本発明は、本明細書で記載の方法に由来する細胞および細胞集団、および本明細書で記載の細胞または細胞集団の方法および使用を提供する。
【0344】
本明細書で記載のペプチドは、CD8+T細胞(
図20、
図21、および
図27)の増殖およびCD28+CD8+T細胞(
図24)の増殖を増大させる。
【0345】
従って、本明細書で記載のLck活性化ペプチドは、本明細書で記載のCD28+T細胞の生理学的効果を高めるために使用できる。
【0346】
一実施形態では、本発明は、細胞または細胞集団上のCD28発現を増大させる方法を提供し、方法は、細胞または細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0347】
一実施形態では、細胞または細胞集団上のCD28発現のレベルは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドと接触させた細胞または細胞集団上のCD28発現のレベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞または細胞集団(例えば、対照)上のCD28発現のレベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、増大される。
【0348】
一実施形態では、本発明は、T細胞の増殖を増大させる方法を提供し、方法は、T細胞を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。好ましい実施形態では、T細胞はCD8+T細胞である。
【0349】
人口統計学的進化は、公衆衛生に対する課題を示している。世界の住民、特に先進国の住民は、高齢化しており、60歳を超える人口の比率は、1950年の8%から2050年の予測値21%に増える見込みである(Compte N et al,PLOS One,2013,doi:10.1371/journal.pone.0065325で概説されている)。免疫機能の低下は加齢の特徴であり、高齢者は、細菌およびウィルス感染症の比率および重症度の増加、癌ならびに低いワクチン応答を示す(上記Compte et sl)。
【0350】
ヒトの免疫系は年齢と共に次第に劣化し、この欠陥は、ワクチンおよび感染症に対する免疫記憶の誘導能力の低下として顕在化する。病原体および腫瘍発生からの保護は、多様なTCRレパートリーの生成と維持に依存し、高齢期にTCR多様性が顕著に低下することにより、新規病原体との戦いおよび反復感染に対する活発なリコール応答の開始が困難になる(Moro−Garcia MA et al,Front Immunol,2013,doi.org/10.3389/fimmu.2013.00107で概説される)。
【0351】
病原体に対して戦う能力およびワクチン接種に応答する能力の低下は、加齢におけるCD4+およびCD8+T細胞で観察される変化に反映され、加齢における獲得免疫反応の劣化の防止は、CD4+T細胞集団の「若返り」により実現され得ることが提案された(Moro−Garcia MA et al,Front Immunol,2013,doi.org/10.3389/fimmu.2013.00107)。
【0352】
CD28発現の減少は、加齢に伴うCD4+T細胞機能の低下の証拠である。CD28は、T細胞活性化中に、サイトカイン産生(IL−2)の誘導および細胞増殖の促進などの重要な役割を果たすので、活性化中のこの共刺激シグナルの欠如は、部分的な活性化のみ、あるいはT細胞のアネルギー性状態を生ずる(Godlove J et al,Exp Gerontol,2007,42(5):412−5)。このように、CD28陰性T細胞の蓄積は、高齢者における病原体およびワクチン剤に対する低減した全体免疫応答に関連し(Sauerwein−Teissl M et al,J Immunol,2002,168:5893−5899)、CD4+/CD28−T細胞は、65歳を超える一部の個人において総CD4+T細胞コンパートメントの最大50%を占める場合がある(Vallejo An et al,J Immunol,2000,165:6301−6307)。
【0353】
哺乳動物の加齢中に、胸腺の健全性および機能が徐々に低下し、胸腺退縮は、免疫老化の重要な因子であると考えられる(Li L et al,J Immunol.2004,172(5):2909−2916)。マウス研究は、IL−12ノックアウトマウスでの加速胸腺退縮を示し、IL−12が高齢の野生型およびIL−12ノックアウトの両方のマウスでIL−2誘導胸腺細胞増殖を増強する強力な相乗的効果をもたらすことを示した(Li et al、前出参照)。
【0354】
本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドが、CD8+CD4+T細胞上のCD28発現を高めることを示した(実施例21、
図22、
図30、および
図31)。
【0355】
別の実施形態では、本発明は、対象における加齢関連免疫機能不全の治療および/または予防方法を提供し、方法は、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む。
【0356】
一実施形態では、LckまたはLck活性の抑制または下方制御を特徴とする疾患または状態は、病原性感染症、病原性感染症に由来する敗血症(例えば、慢性敗血症)、免疫不全障害、低下した免疫応答、減少したT細胞数、T細胞異常、T細胞疲弊、およびT細胞チェックポイント阻害からなる群より選択される。
【0357】
好ましい実施形態では、疾患または障害は、癌である。
【0358】
本明細書で使用される場合、「加齢関連免疫機能不全」という用語は、上述した加齢関連免疫変化を含む。
【0359】
別の実施形態では、本発明は、LckまたはLck活性の抑制または下方制御を特徴とする疾患または状態に関連する少なくとも1つの症状を治療および/または予防する方法を提供し、方法は、本明細書に記載のペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む。
【0360】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、治療処置ならびに予防処置(障害または障害の症状の発症(加齢関連変化を含む)を完全に予防すること、または障害の症状の発生(加齢関連変化を含む)、もしくは前臨床で明らかな個別の障害の段階を遅延させることのいずれか)を含む。
【0361】
「予防」という用語は、障害または障害の症状の発症の全体的予防、または障害もしくは障害の症状の発生、または前臨床で明らかな個別の障害の段階の遅延化のいずれかを含む。これは、例えば、癌などの疾患を発症する危険のある人の予防処置を含む。「予防(prophylaxis)」は予防(prevention)のもう一つの用語である。
【0362】
加えて、高齢者における損傷IFNガンマ産生も、免疫リスク表現型の一因であり、高齢者の細菌生成物またはウィルス抗原による刺激に対して、このサイトカインを産生する能力の低下もまた、加齢に伴う疾患感受性の一因である(Ouyang Q et al,Eur Cytokine Netw,2002,13(4):392−4)。特に、加齢マウスは、一部には、低減したIL−18受容体(IL−18R)mRNA発現が原因であると考えられる、インフルエンザウィルスに対する漸減したCD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を示し、IL−12およびIL−18の両方は、加齢マウスにおけるIFNガンマ産生を顕著に増大させることができ、それにより、加齢に伴うCD8+CTL欠損を元に戻すことができる(Zhang Y et al,J Interferon & Cytokine Res,2004,doi.org/10.1089/107999001753238097)。
【0363】
本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドが、CD4+T細胞(
図18)およびCD8+T細胞(
図19)によるIFNγ産生を増大させることを示した。
【0364】
従って、本明細書で記載のLck活性化ペプチドは、本明細書で記載のIFNγの生理学的効果を高めるために使用できる。
【0365】
一実施形態では、本発明は、細胞または細胞集団からのサイトカイン分泌を増大させる方法を提供し、方法は、細胞または細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0366】
好ましい実施形態では、サイトカインはIFNγである。
【0367】
一実施形態では、細胞または細胞集団からのサイトカイン(例えば、IFNγ)分泌のレベルは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させた細胞または細胞集団からのサイトカイン(例えば、IFNγ)分泌レベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞または細胞集団(例えば、対照)から分泌されたサイトカイン(例えば、IFNγ)のレベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、増大される。
【0368】
ナチュラルキラー(NK)細胞もまた、感染症および癌に対する免疫で重要な役割を果たす。加齢関連機能的NK細胞欠損は、ヒトおよびマウスで十分に報告されており、加齢マウス中への可溶性IL−15/IL−15Rα複合体の注射は、加齢関連NK細胞欠損を完全に回復することが示された(Chiu B−C et al,J Immunol,2013,doi:10.4049/jimmunol.1301625)。さらに、IL−15は、早期感染症に対する免疫応答で重要な役割を果たし、CD4+CD28−T細胞の細胞溶解性特性を高め、それらの抗原特異的応答を強化することが示された(Alonso−Arias R et al,Aging Cell,2011,10:844−852)。
【0369】
IL−15は、NKおよびCD8+T細胞の発生、機能および生存を促進し、IL−15によるシグナル伝達は、CD215(IL−15R)受容体を介して起こる。本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドが、IL−15(
図23)分泌およびCD4+およびCD8+T細胞上のCD215発現を高めることを示した(
図23、実施例22)。従って、本明細書で記載のLck活性化ペプチドは、本明細書で記載のIL−15RおよびIL−15の生理学的効果を強化するために使用できる。
【0370】
従って、一実施形態では、本発明は、細胞または細胞集団からのIL−15分泌を増大させる方法を提供し、方法は、細胞または細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0371】
一実施形態では、細胞または細胞集団からのIL−15分泌のレベルは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させた細胞または細胞集団からのIL−15分泌レベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞または細胞集団(例えば、対照)からのIL−15分泌のレベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、増大される。
【0372】
一実施形態では、本発明は、細胞上のIL−15R(CD215)発現を増大させる方法を提供し、方法は、細胞を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0373】
一実施形態では、細胞または細胞集団上のIL−15R発現レベルは、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させた細胞または細胞集団上のIL−15R発現のレベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞または細胞集団(例えば、対照)上のIL−15Rのレベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、増大される。
【0374】
別の実施形態では、本発明は、NK細胞のIL−15応答性を高める方法を提供し、方法は、NK細胞を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0375】
一実施形態では、細胞または細胞集団のIL−15に対する応答性のレベルは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させた細胞または細胞集団のIL−15に対する応答性のレベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞または細胞集団(例えば、対照)のIL−15に対する応答性のレベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、増大される。
【0376】
好ましい実施形態では、細胞は、CD4+T細胞またはCD8+T細胞である。
【0377】
理論に束縛されることを意図するものではないが、IL−15に対する増大した応答性は、NKおよびCD8+T細胞の発生、機能および生存を調節することが予測される。
【0378】
本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドが、CD4+およびCD8+T細胞(実施例25)およびNK細胞(
図32)上のpSTAT4発現を高めることを示した。
【0379】
従って、本明細書で記載のLck活性化ペプチドは、本明細書で記載のpSTAT4の生理学的効果を強化するために使用できる。
【0380】
例えば、ヘルパーT1型(TH1)細胞発生は、シグナル伝達物質を介したインターフェロンγ(IFNγ)シグナル伝達および転写活性化剤1(STAT1)ならびにSTAT4を介したインターロイキン−12(IL−12)シグナル伝達を含む。
【0381】
従って、一実施形態では、本発明は、CD4+T細胞、CD8+T細胞またはNK細胞中のpSTAT4の発現を高める方法を提供し、方法は、CD4+T細胞、CD8+T細胞またはNK細胞を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0382】
インターロイキン−2(IL−2)は、主にヘルパーT細胞により産生され細胞免疫および体液性免疫に関与する種々の細胞の成長および機能を調節する、成長促進サイトカインである。IL−2の発現は、年齢と共に減少し、この減少は、免疫機能の加齢関連低下と平行であることが示された(Pahlavani MA & Richardson A,Mech Ageing Dev,1996,89(3):125−54)。さらに、加齢マウスへのIL−21投与は、新たに胸腺リンパ球形成を誘発することにより、それらの末梢T細胞プールを若返らせることが示された(Al−Chami E et al,Aging Cell,2016,15(2):349−60)。例えば、rIL−21治療加齢マウス由来のT細胞の刺激は、Lckキナーゼの強化された活性化を示し、これは最終的に、対照加齢マウス由来のT細胞と比較して、それらのIL−2産生、CD25発現、および増殖能力を高めた(Al−Chami et al、前出参照)。
【0383】
本発明者らはまた、本明細書で記載のLck活性化ペプチドは、T細胞株(
図10)上、CD4+T細胞(
図11)上、PBMC中のCD4+およびCD8+細胞(
図13)上のIL−2Rα(CD25)発現を増大させ、CD8+T細胞(
図20、
図21、
図27)の増殖、NK細胞(実施例20)の増殖を増大させることを示した。
【0384】
従って、本明細書で記載のLck活性化ペプチドは、本明細書で記載のIL−2Rαの生理学的効果を高めるために使用できる。
【0385】
本明細書で記載のLck活性化ペプチドは、本明細書で記載のCD8+T細胞の生理学的効果を高めるために使用できる。本明細書で記載のLck活性化ペプチドは、本明細書で記載のCD4+T細胞の生理学的効果を高めるために使用できる。本明細書で記載のLck活性化ペプチドは、本明細書で記載のNK細胞の生理学的効果を高めるために使用できる。
【0386】
一実施形態では、本発明は、T細胞上のIL−2Rα(CD25)発現を高める方法を提供し、方法は、T細胞を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。別の実施形態では、本発明は、T細胞のIL−2応答性を高める方法を提供し、方法は、T細胞を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。好ましい実施形態では、T細胞はCD4+T細胞またはCD8+T細胞である。
【0387】
別の実施形態では、本発明は、細胞の増殖を誘発する方法を提供し、方法は、細胞を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。好ましい実施形態では、細胞はCD8+T細胞またはNK細胞である。
【0388】
別の実施形態では、本発明は、細胞集団の増殖を増大させる方法を提供し、方法は、細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。好ましい実施形態では、細胞集団はCD4+T細胞、CD8+T細胞またはNK細胞の集団である。上で示したように、本方法は、インビボでまたはインビトロで細胞または細胞集団に対し実施できる。別の好ましい実施形態では、本方法は、エクスビボで細胞または細胞集団に対し実施される。
【0389】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させた細胞または細胞集団に由来する細胞集団を提供する。例えば、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させた細胞または細胞集団に由来する、T細胞、NK細胞または樹状細胞、またはそれらの集団。
【0390】
一態様では、本発明は、本明細書で記載の細胞または細胞集団の方法および使用を提供する。例えば、本明細書で記載の細胞または細胞集団は、CAR T細胞療法を含む養子免疫細胞療法のために使用できる。
【0391】
サイトカインIL−21は、狂犬病感染症に対する最適ワクチン誘導1次応答の発生に重要であり、IL−7との組み合わせで、全細胞癌ワクチンでの強力な補助剤効力を有することが示された(Dorfmeier CL et al,PLoS Negl Trop Di,2013,doi:10.1371/journal.pntd.0002129;Gu Y−Z et al,Scientific Reports,2016,doi:10.1038/srep32351)。
【0392】
本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドが、T細胞によるIL−21産生を高めることを示した(
図28)。
【0393】
従って、本明細書で記載のLck活性化ペプチドは、本明細書で記載のIL−21の生理学的効果を高めるために使用できる。
【0394】
一実施形態では、本発明は、細胞または細胞集団からのIL−21分泌を増大させる方法を提供し、方法は、細胞または細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0395】
一実施形態では、細胞または細胞集団からのIL−21分泌のレベルは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させた細胞または細胞集団からのIL−21分泌レベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞または細胞集団(例えば、対照)からのIL−21分泌のレベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、増大される。
【0396】
一実施形態では、本発明は、対象の免疫応答を誘導する方法を提供し、方法は、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む。
【0397】
一実施形態では、本発明は、それを必要としている対象にワクチン接種する方法を提供し、方法は、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物を、ワクチンと同時にまたは順次に対象に投与することを含む。本発明はまた、ワクチン(例えば、ワクチン抗原)と共に処方された、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物を提供する。
【0398】
本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ポリペプチドは、チェックポイント阻害剤PD−L1の存在下で、CD25発現をレスキューできることを示した(実施例11)。
【0399】
従って、一実施形態では、本発明は、対象の癌を治療する方法を提供し、方法は、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む。別の実施形態では、本発明は、対象の癌を治療する方法を提供し、方法は、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物をチェックポイント阻害剤と順次にまたは同時に対象に投与することを含む。
【0400】
代表的な癌は、本明細書で言及される。
【0401】
別の実施形態では、本発明は、対象の免疫応答を活性化する方法を提供し、方法は、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む。
【0402】
本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドが、Treg細胞の比率を減らすことも示した(実施例26)。
【0403】
従って、本明細書で記載のLck活性化ペプチドは、本明細書で記載のTreg細胞の比率を減らす生理学的効果を強化するために使用できる。
【0404】
一実施形態では、本発明は、細胞集団中のTreg細胞の比率を減らす方法を提供し、方法は、Treg含有細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0405】
一実施形態では、細胞集団中のTregの比率は、本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させた細胞集団中のTregの比率が本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞集団(例えば、対照)中のTregの比率と比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後で比較する場合、減少される。
【0406】
一実施形態では、本発明は、対象のTreg細胞の比率を減らす方法を提供し、方法は、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む。
【0407】
一実施形態では、Treg細胞はFoxp3+Treg細胞である。
【0408】
別の実施形態では、本発明は、対象の免疫抑制を低減させる方法を提供し、方法は、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む。
【0409】
PD−1標的療法による疲弊したCD8+T細胞のレスキューは、CD28依存性である。本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドが、CD4+およびCD8+T細胞中のCD28の発現を高めることを示した。
【0410】
従って、一実施形態では、本発明は、対象のT細胞の疲弊を減らす方法を提供し、方法は、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む。別の実施形態では、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物が、チェックポイント阻害剤と順次にまたは同時に投与される。
【0411】
癌
低減した細胞免疫は、多くの癌および高レベルのプロスタグランジンE2(PGE2)に関連する。ホジキンリンパ腫におけるCD4+細胞は、インビトロでT細胞中のPGE2による健常者とは変化した類似の遺伝子調節を示し、これはLckの不活性化およびZAP70の低減したリン酸化を含むことが示された(Chemnitz JM et al,Cancer Research,2006,66:1114)。
【0412】
ホジキンリンパ腫および他の腫瘍では、損なわれたCD4+T細胞活性化のために細胞免疫が低下し、ホジキンリンパ腫に関連する高レベルのPGE2が、Lckを抑制することによりCD4+T細胞機能を抑制することが示唆された(Chemnitz JM et al,2006,Cancer Res,66(2),<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abs tract&list_uids=16424048&query_hl=5&itool=pubmed_docsum>)。Lckはまた、薬剤耐性でも重要な役割を果たし、Lck欠損であるT細胞は抗癌剤に対し耐性であることが示された(Samraj AK et al,2006,Oncogene,25:186−197,<http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abs tract&list_uids=16116473&query_hl=18&itool=pubmed_docsum>)。
【0413】
シタラビンは、急性骨髄性白血病の治療で使用される最も効果的な化学療法剤の1つである(Frei E et al,Cancer Res,1969,29:1325−1332)。セリン/トレオニンキナーゼのp34cdc2キナーゼは、サイクリンAおよびBと複合体形成し、p34cdc2活性は、細胞分裂の開始のために必要である。従って、p34cdc2は、DNA合成の完了およびDNA損傷の存在を監視する有糸分裂チェックポイントである(Nurse P,Nature,1990,344:503−507)。しかし、DNA複製の状態は、p34cdc2のセリン/トレオニン活性に依存する一方で、これはインビボでTyr15上のp34cdc2のリン酸化により調節され(Atherton−Fessler S et al,Mol Cell Biol,1993,13:1675−1685)、p34cdc2のセリン/トレオニン活性は、p34cdc2の触媒サブユニット中のTyr15のリン酸化により抑制されることが示された(Gould K & Nurse P,Nature,1989,342:39−44)。Lckキナーゼは、p34cdc2のTyr15をリン酸化することが示され(Draetta G et al,Nature,1988,336:738−744)、白血病および他の固形癌の治療におけるLck活性化剤の潜在的役割を示唆する。
【0414】
ゾレドロン酸およびIL−2の組み合わせによる末梢血リンパ球のエクスビボまたはインビボ刺激による癌免疫療法のためのγ/δ Tリンパ球の標的化は、以前に記載され(Gomes AQ et al,Cancer Res,2010,doi:10.1158/0008−5472.CAN−10−3236;Dieli F et al,Cancer Res,2007,67(15):7450−7;Wilhelm M et al,Blood,2003,102(1):200−6)、本明細書に記載のLck活性化剤は、γ/δT細胞をエクスビボで生成するためのIL−2の使用の代替物として機能し、乳癌、前立腺癌〜リンパ系悪性腫瘍に及ぶ悪性腫瘍の患者のための治療投与への用途を有し得る(Dieli F et al,vide supra;Wilhem M et al vide supra;Capietto AH et al,J Immunol,2011,187(2):1031−8)。加えて、腫瘍細胞に対するγ/δ T細胞傷害性は、リツキシマブおよびトラスツズマブを含む組み合わせ方式で強化されることが示され(Tokuyama H et al,Int J Cancer,2008,122(11):2526−343;Capietto AH、前出参照)、本発明は、上述の抗癌剤、および/または本発明による癌または他の疾患もしくは状態のための他の薬物との併用療法での本明細書に記載のLck活性化剤の使用に及ぶ。
【0415】
本発明者らは、本発明のポリペプチドによる疲弊したCD4+細胞の治療がCD25発現を誘導することを示した(
図11)。
【0416】
従って、一実施形態では、本発明は、T細胞の疲弊を低減する方法を提供し、方法は、T細胞を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0417】
本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドが、PBMC共培養でのカルセイン−AM染色したK562細胞の特異的細胞毒性における細胞傷害性を高めることを示した(実施例44)。
【0418】
従って、一態様では、本発明は、細胞傷害性細胞機能を高める方法を提供し、方法は、細胞傷害性細胞または細胞傷害性細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させることを含む。
【0419】
一実施形態では、細胞または細胞集団の細胞傷害性細胞機能のレベルは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドと接触させた細胞または細胞集団の細胞傷害性細胞機能のレベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞または細胞集団(例えば、対照)の細胞傷害性細胞機能のレベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、高められる。
【0420】
別の実施形態では、本発明は、T細胞機能を高める方法を提供し、方法は、T細胞またはT細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0421】
本明細書で使用される場合、「T細胞機能を高めること」は、持続的または増幅された生物学的機能を有するように、または疲弊したまたは不活性T細胞を再生もしくは再活性化するために、T細胞を誘導、誘発または刺激することを意味する。T細胞機能の強化の例としては、介入前のレベルと比較した、CD8
+T細胞からのIFNγの分泌の増大、増殖の増大、抗原応答性(例えば、ウィルス、病原体、または腫瘍の除去)の増大、が挙げられる。一実施形態では、強化のレベルは、少なくとも50%、あるいは、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、200%である。この強化を測定する方法は、当業者に既知である。
【0422】
一実施形態では、細胞または細胞集団のT細胞機能のレベルは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドと接触させた細胞または細胞集団のT細胞機能のレベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞または細胞集団(例えば、対照)のT細胞機能のレベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、高められる。
【0423】
代表的な細胞傷害性細胞機能およびT細胞機能は、本明細書で考察される。
【0424】
上で考察したように、本明細書に記載の方法は、インビボ(例えば、対象中で)またはインビトロ(例えば、エクスビボで)のいずれかで、細胞または細胞の集団に対し実施できる。
【0425】
加齢
T細胞は、細胞免疫で中心的な役割を果たし、加齢随伴病の多くは、免疫系の調節不全により影響を受け、増加している。免疫応答、主にT細胞応答は、加齢で調節不全になっていることを示唆する数多くの証拠が存在する(Fulop T et al,Longevity & Healthspan,2012,1:6)。老化過程に関連するT細胞のシグナル伝達経路でのいくつかの変化が記載され、細胞膜(脂質ラフト)内のリン脂質構造体がTCRカスケードの成分を集める働きをすることが提唱されている(Fulop et al(前出参照)で概説される)。さらにLckおよびその活性化型の脂質ラフトへの動員が高齢者由来の活性化T細胞中で低減していることが示された(Larbi A et al,J Leukoc Biol,2004,75(2):373−381)。
【0426】
T細胞活性化経路での加齢に伴う変化が、実験動物モデルおよびヒトで観察されており、最も重要な変化はCD4+T細胞中で起こり、サイトカインインターロイキン2(IL−2)の産生およびクローン増殖の低減をもたらす(Fulop et al(前出参照)で概説される)。
【0427】
IL−2系では、細胞内シグナル伝達がIL−2受容体のベータ鎖により誘発され、Lckの触媒ドメインの特異的部位と、IL−2Rβ受容体の細胞質ドメインとの間の結合の結果として、IL−2Rβ受容体がリン酸化Lckによりリン酸化される(Hatakeyama M et al,Science,1991,252:152308)。Lckは、T細胞のIL−2刺激時に活性化されることが示された唯一のSrcファミリーキナーゼであり(Brockdorff J et al,Eur Cytokine Netw,2000,11(2):225−31)、活性化されたLckタンパク質は、抗原刺激の非存在下でIL−2産生を刺激することが示された(Luo K & Sefton BM,Mol Cell Biol,1992,12(10):4724−45732)。
【0428】
損なわれたT細胞活性化および増殖は、加齢中の免疫機能低下における重要な変化であり(NASA−T−cell activation in aging,Report 2016;http://www.nasa.gov/mission pagres/station/research/wexperiments/857.html)、宇宙飛行と地上操作の比較から得られた情報は、これに関与する特定の因子を理解することおよび特定することについての洞察を提供する。宇宙飛行および模擬微小重力は、早期T細胞活性化における重要な遺伝子発現の顕著な低下をもたらすことが知られており、多数の宇宙飛行任務は、インターロイキン2(IL−2)、インターロイキン2受容体アルファ(IL−2RαまたはCD25)、インターフェロンガンマ(IFNγ)および腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)の顕著な低減を示した(Martinez EM et al,Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol,2015,308:R480−R488で概説される)。
【0429】
宇宙飛行中の免疫抑制に関する懸念は、宇宙飛行関連免疫系弱体化が地球の軌道を超えた人の存在の拡大を妨げる可能性があるかどうかが疑問視されていることである(Gueguinou N et al,J Leukocyte Biology,2009,doi:10.1189/jib.0309167)。本明細書に記載のように、少なくともいくつかの実施形態では、上述のサイトカインの発現ならびにCD4+CD8+T細胞の増殖は、通常および疲弊T細胞の両方で、本明細書で記載の方法で利用される化合物により誘導され得る。従って、本発明の方法は、低および微小重力環境での使用に明示的に拡大される。
【0430】
免疫抑制
多くの新規抗癌剤の望ましくない重要な副作用は、壊滅的な敗血症に繋がる免疫抑制である。例えば、転移性腎臓癌用の薬剤であるソラフェニブは、休薬後でも10μM超の投与量で回復できないT細胞増殖性抑制を引き起こすことが報告された(Zhao W et al,Leukemia,2008,22:1226−1233)。Lck発現上昇の増大は、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤治療を受けている慢性骨髄性白血病患者の免疫応答を再刺激するための実施可能な選択肢であると提案された(Wang G et al,BioMed Research International,2014,doi.org/10.1155/2014/682010)。さらに、例えば、BCR−ABLキナーゼ抑制剤のイマチニブ(Gleevec,ST1571)は、慢性骨髄性白血病の治療で極めて効果的である。しかし、この薬物による慢性治療は、免疫抑制を誘導し、これは主に、LckおよびZAP70などのチロシンキナーゼの抑制に伴うT細胞機能不全に起因する(Wang G et al、前出参照)。加えて、グルココルチコイドは、TCR活性化に必要なシグナル伝達イベントを遮断する強力な免疫抑制剤として作用し、デキサメタゾンによるLckの抑制は、イノシトールホスフェート3下方制御し、それによりTCRシグナル強度の低下により免疫応答を抑制することが示された(Harr MW et al,JBC,2009,284:31860−31871)。急速に拡大している癌におけるチロシンキナーゼ阻害剤の開発と使用に伴い、これらの薬物の生じ得る副作用は、臨床的にかなり重要である。イマチニブに加えて、ニロチニブおよびダサチニブも、例えば、Lck抑制の原因とされる、T細胞機能を抑制すると報告された。
【0431】
従って、癌療法は、細菌スーパー抗原などの免疫強化薬物との組み合わせ治療から恩恵を受ける可能性がある。しかし、細菌スーパー抗原は、T細胞の非特異的活性化および大量のサイトカイン放出を引き起こす抗原のクラスであり毒性ショックおよび多臓器不全を含む重度の命を脅かす症状をもたらす。ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)は、抗生物質関連下痢のよくある原因であるので、臨床現場での懸念材料である。SEAが原因の潜在的疾病率にもかかわらず、LckがSEAにより活性化されること(Wang G et al,BioMed Research International,2014,2014:Article ID 682010)および選択的Lck活性化剤の事前の欠乏を考慮して、慢性骨髄性白血病のイマチニブ媒介T細胞免疫抑制防止のためにSEAを使用すべきであることが提案されてきた。
【0432】
これらの報告は、T細胞の発生および活性化および従って獲得免疫応答のためのLckの重要性を強調する(Stirnweiss A et al,2013,Sci Signal,6(263):ra13.Doi:10.1126/scisignal.2003607)。Lckの樹状細胞(DC)媒介活性化は、同族ペプチド−MHCクラスII抗原複合体に対するTCR応答の感度と大きさを劇的に高めるプロセスである、「TCRライセンシング」に繋がる(Meraner P et al,2007,J Immunol,178(4):2262−2271)。しかし、例えば、イマチニブは、Lck活性の抑制によりTCR誘導性の増殖および活性化を低減させる(Seggewiss R et al,2005,Blood,105:2473−2479)。これは、幹細胞移植後の、日和見感染および移植片対宿主または移植片対白血病反応の誘導という含意を有する(Seggewiss R et al,2005,Blood,105:2473−2479)。
【0433】
上で考察したように、本発明者らは、本明細書で記載のペプチドは、
図1、2、3、4、5および6で示すように、Lck活性を高め、および
図3および
図40で示すようにY394でのLckリン酸化を増大させ、ならびにCD8+T細胞の増殖を増大させる(例えば、
図20、
図21、
図27)ことを示した。
本発明者らはまた、本明細書で記載のLck活性化ペプチドは、
・ルイス肺癌(LCC)モデルにおいて腫瘍面積を減らすこと(
図36);
・ペプチド治療ルイス肺癌マウスから取り出した脾細胞中でCD28およびCD215を発現するCD4+およびCD8+T細胞の比率を高めること(
図30、
図31);および
・ペプチド治療ルイス肺癌マウスから取り出した脾細胞中のNK細胞上のpSTAT4の発現を高める(
図32)こと、
を示した。
【0434】
従って、一実施形態では、本発明は、対象の肺癌を治療する方法を提供し、方法は、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む。
【0435】
従って、一実施形態では、本発明は、対象の肺癌の進行を防止または遅らせる方法を提供し、方法は、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む。
【0436】
多発性骨髄腫/白血病/リンパ腫
ホジキンリンパ腫に対するIL−2およびIL−12の同時標的化は、休止NK細胞および腫瘍細胞溶解の活性化を強化する(Hombach A et al,Int J Cancer,2005,doi.org/10.1002/ijc.20829)。
【0437】
本発明者らは、本明細書で記載のペプチドが、NK細胞(
図17)およびCD4+T細胞(実施例15、実施例28)およびCD8+T細胞(実施例28、
図25)上のIL−12RB2発現を高めることを示した。
【0438】
本発明者らはまた、本明細書で記載のLck活性化ペプチドが、CD4+およびCD8+T細胞(
図8、
図9)を含むT細胞(
図7)、およびT細胞株(実施例44)によるIL−2分泌を増大させることも示した。
【0439】
急性骨髄性白血病では、診断時に乱れたT細胞機能の複数の局面が作動し、疲弊および老化が主要な過程である(Knaus HA et al,JCI Insight,2018,doi:10.1172/jci.insight.120974)。実際に、急性および慢性白血病の患者のT細胞は、PD−1またはTIM−3などの疲弊マーカーを発現し、不十分に応答性、例えば、損なわれた増殖およびIL−2およびIFNγの低減された産生、であり得る(Siska PJ et al,Blood,2014,124:4121)。
【0440】
本発明者らは、本発明のペプチドによる疲弊したCD4+細胞の処理がCD25発現を誘導すること(
図10、
図11、および
図12)、および本明細書で記載のペプチドがPBMC(実施例17)およびCD4+およびCD8+T細胞(実施例18)中でIFNγを誘導することを示した。
【0441】
本発明者らはまた、本明細書で記載のペプチドが、ヒトT細胞からのIL−2分泌を増大させることも示した(
図7、
図8、
図9、
図37)。
【0442】
多発性骨髄腫(MM)は、悪性のプラズマ細胞のクローン増殖を特徴とする進行性B系統腫瘍である。多発性骨髄腫中のT細胞もまた、腫瘍部位で疲弊および老化の特徴を示し、T細胞サブセットの数と機能は、MM患者では異常であり;例えば、CD4:CD8比率は逆転し、CD4細胞中のヘルパーT細胞1型:2型(Th1:Th2)比率は異常であり、T細胞活性化に必要なCD28発現レベルは、T細胞中で下方制御されており、MM患者からの循環する樹状細胞は機能障害性である(Sharabi A & Haran−Ghera N,Bone Marrow Res,2011,Article ID 269519で概説される)。本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドが、CD8+CD4+T細胞上のCD28発現を高めることを示した(
図22、
図30、
図31)。
【0443】
重要なことに、本明細書で記載のLck活性化ペプチドによる細胞の前処理は、その後の抗原刺激時に、ヒトT細胞からのIL−2分泌を増大させる(例えば、
図29)。
【0444】
本明細書で使用される場合、抗原刺激は、細胞または細胞集団の抗原への暴露またはそれらとの接触、またはCD3またはCD28抗体などの抗体への暴露またはそれらとの接触を含む。
【0445】
本明細書で使用される場合、未感作細胞は、抗原に暴露されていないまたはそれと接触させられていない細胞を含む。
【0446】
従って、本発明は、本明細書に記載のLck活性化ペプチドが、例えば、疾患の症状の発生前に、抗原刺激の前に、病原体への暴露の前になど、予防的に投与される、方法および使用を提供する。
【0447】
加えて、骨髄腫腫瘍部位由来のCD8+T細胞は、CD3/CD28インビトロ刺激後にIFNγを産生できず、T細胞刺激物質に応答して脱顆粒する能力の低下を示す(Zelle−Rieser C et al,J Haematology & Oncology,2016,doi.org/10.1186/s13045−016−0345−30)。MMにおける損なわれた免疫応答は、MM患者の末梢血中の機能的に活性な免疫抑制Tregの増大によりさらに強調される(Dosani T et al,Blood Cancer Journal,2015,5:e306で概説される)。
【0448】
本発明者らはまた、本明細書で記載のLck活性化ペプチドが、免疫抑制Treg細胞の比率を減らすことも示した(実施例26)。
【0449】
腫瘍浸潤リンパ球中のFoxp3+Treg細胞の存在は、様々なタイプのヒト癌での予後不良と相関する。本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドが、Foxp3+Treg細胞を減らすことを示した(実施例26)。
【0450】
従って、本発明は、細胞集団中のFop3+Treg細胞の比率を減らす方法を提供し、方法は、細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0451】
IL−21は、免疫抑制Tregを抑制する。本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ポリペプチドが、T細胞によるIL−21産生を高めることを示した(
図28)。
【0452】
養子免疫細胞療法(ACT)
難治性または進行性癌に対するワクチン接種の代用物は、養子T細胞療法(ACT)、すなわち、エクスビボ処理T細胞の投与である(Kaartinen T et al,Cytotherapy,2017,19(6):689−702)。さらに、ACTの前の、エクスビボ増殖中のT細胞のコンディショニングもまた、インビボ効力に影響を及ぼす重要なパラメーターであることも、マウス試験から明らかになった(Rubinstein MP et al,Cancer Immunol Immunother,2015,64(5):539−549)。T細胞の養子移入は、患者中で強力な抗腫瘍および抗ウィルス免疫を媒介でき、このような療法は、T細胞受容体、キメラ抗原受容体(CAR)または他のエフェクター分子を含む遺伝子情報の移入に依存し得る(Andrijauskaite K et al,Cancer Gene Ther,2015,22(7):360−367で概説される)。
【0453】
インターロイキンは、T細胞のエクスビボ増殖中に培地中に組み込まれる場合T細胞機能を強化するためにうまく用いられた。例えば、IL−12コンディショニングは、CD8+T細胞のレトロウィルス媒介形質導入効率を改善し(Andrijauskaite K et al、前出参照);IL−21の添加は、培養物中のリンパ球のより大きな増殖、およびCD8+中枢記憶T細胞の増大した収率を誘導することが示され(Zoon CK et al,Int J Mol Sci,2015,16:8744−8760);IL−21と共に培養したCAR+T細胞の養子移入は、マウスでCD19+B細胞悪性腫瘍の制御を改善することが示された(Singh H et al,Cancer Res,2011,71(10:3516−3527)。
【0454】
養子免疫療法で、IL−12およびIL−18培養腫瘍灌流リンパ節(tumour−draining lymph node)細胞(TDLN)は、IL−12またはIL−18単独生成T細胞より効率的に、肺転移を根絶することを示した(Li Q et al,Cancer Res,2005,65(3):1063−70)。これは、IL−12およびIL−18を使って、Th1表現型に対し抗体活性化TDLN細胞を相乗的に極性化させることにより、強力なCD4+およびCD8+抗腫瘍エフェクター細胞を生成できることを示す(Li et al、前出参照)。本明細書で記載のLck活性化ペプチドを用いて、強力なCD4+およびCD8+抗腫瘍エフェクター細胞を生成する。
【0455】
本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドが、IL−18Rの発現を高めることを示した。
【0456】
一実施形態では、細胞または細胞集団上のIL−18R発現レベルは、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させた細胞または細胞集団上のIL−18R発現のレベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞または細胞集団(例えば、対照)上のIL−18Rのレベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、増大される。
【0457】
別の実施形態では、本発明は、NK細胞のIL−18応答性を高める方法を提供し、方法は、NK細胞を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0458】
一実施形態では、細胞または細胞集団のIL−18に対する応答性のレベルは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させた細胞または細胞集団のIL−18に対する応答性のレベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞または細胞集団(例えば、対照)のIL−18に対する応答性のレベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後のレベルを比較する場合、増大される。
【0459】
好ましい実施形態では、T細胞は、CD4+T細胞またはCD8+T細胞である。
【0460】
上で考察したように、本明細書で記載のペプチドは、CD8+T細胞(
図20、
図21、および
図27)の増殖およびCD28+CD8+T細胞(
図24)の増殖を増大させる。従って、本明細書で記載のLck活性化ペプチドを用いて、例えば、養子免疫細胞療法のために、インビボおよびインビトロで細胞および細胞集団の増殖を誘導できる。
【0461】
IL−12受容体発現は、IL−12結合およびTh1免疫応答の誘導と相関する。本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ポリペプチドが、PBMC上のIL−12R(
図17)およびT細胞(
図25)の発現を促進することを示した。
【0462】
従って、一実施形態では、本発明は、対象においてTh1応答を誘導する方法を提供し、方法は、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む。
【0463】
T細胞は、IL−21を使って、養子免疫細胞療法のためにインビトロ/エクスビボで増殖できる。本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ポリペプチドが、IL−21の発現を促進することを示した(
図28)。
【0464】
酸化ストレス
脂質過酸化プロセスの種々の工程を遮断し、それにより免疫応答を高める薬剤の能力は、40年近くにわたり知られていた(Terrell Hoffeld J,Eur J Immunology,1981,doi.org/10.1002/eji.1830110505)。
【0465】
加えて、リン脂質ヒドロペルオキシドの除去剤は、病原性感染の存在下で活性化されたばかりのT細胞の生存と増殖に不可欠である(Matsushita M et al,JEM,2015,doi.10.1084/jem.20140857)。
【0466】
骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)などの免疫サプレッサー細胞は、加齢と共に増殖し、MDSCのこの増殖はまた、ペルオキシナイトライト(身体中で最も強力な酸化剤の1つ)を含む酸素種の生成が主な理由で、T細胞応答の抑制にも関与する(Gabrilovich DI & Nagaraj S,Nat Rev Immunol,2009,9(3):162−174;Bueno V et al,Age(Dordr),2014,36(6):9729)。
【0467】
一酸化窒素と超酸素ラジカル(ペルオキシナイトライト形成に繋がる)の間の反応は、生体膜およびリポタンパク質中に存在する多価不飽和脂肪酸の脂質過酸化を誘導し、UVB照射は高レベルのペルオキシナイトライトを生成し、これが酸化損傷および細胞死をもたらす(Radi R,PNAS,2018,doi.10.1073/pnas.1904932115;Wu S et al,Photochem Photobiol,2010,86(2):389−396;Bartesaghi S & Radi R,Redox Biol,2018,14:618−625)。
【0468】
さらに、たばこの煙誘導酸化ストレスもまた、CD40L成熟樹状細胞(DC)によるIL−12産生を抑制することが示され(Kroening PR et al,J Immunol,2008,181(2):1536)、このサイトカインは能動的Th1免疫応答に必要である。
【0469】
本発明者らは、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRRは、DCによるCD40L媒介IL−12産生を誘導するのみでなく、細胞膜中の脂質過酸化も抑制することを示した(例えば、
図39)。
【0470】
従って、一実施形態では、本発明は、酸化的損傷を治療する方法を提供し、方法は、細胞または細胞集団を、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させることを含む。好ましい実施形態では、細胞は、Treg細胞またはTreg細胞を含む細胞の集団である。
【0471】
一実施形態では、酸化的損傷のレベルは、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物と接触させた細胞または細胞集団の酸化的損傷のレベルが本明細書に記載のLck活性化ペプチドと接触させていない細胞または細胞集団(例えば、対照)の酸化的損傷のレベルと比較される場合、または本明細書で記載のLck活性化ペプチドを含む組成物との接触の前後を比較する場合、低減される。
【0472】
一実施形態では、低減のレベルは、少なくとも10%、あるいは、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%である。このような低減を測定する方法は、当業者に既知である。
【0473】
Lck活性化ポリペプチドRVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)およびRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)は、CD14陰性樹状細胞の集団を増大させる(データは示さず)。
【0474】
従って、一実施形態では、本発明は、樹状細胞または樹状細胞の集団の増殖を誘導する方法を提供し、方法は、細胞または細胞集団を、本明細書に記載のペプチドを含む組成物と接触させることを含む。別の実施形態では、本発明は、樹状細胞の集団の増殖を増大させる方法を提供し、方法は、細胞の集団を、本明細書に記載のペプチドを含む組成物と接触させることを含む。
【0475】
アルツハイマー病(AD)
アルツハイマー病は、認知症の主要な原因であり、神経の変性および消失ならびに老人斑および神経原線維濃縮体の生成を特徴とする。
【0476】
PD−1/PD−L1経路チェックポイント阻害剤は近年、脳中の単球由来マクロファージ集団においてIFNγ依存性増大を誘発し脳アミロイドの除去および認知障害の改善をもたらすことにより、遺伝子導入マウスモデルでADを回復させることが報告された(Baruch K et al,Nature Med,2016,22:135−37)。本明細書に記載のように、少なくともいくつかの実施形態では、本発明で利用される化合物は、PD−1/PD−L1相互作用により抑制された免疫応答をレスキューし得る。
【0477】
さらに、Lckは、神経突起成長の調節に関与し、臨床的報告は、AD患者の海馬中のLckの下方調節レベルについて記載した(Hata R et al,BBRC,2001,284:310−316)。実際に、ヒトLck遺伝子は、アルツハイマー病関連遺伝的結合領域1p34〜36に位置している(Blacker D et al,Hum Mol Genet,2003,12:23−32)。最近の哺乳動物脳中のLckのインビトロおよびインビボでの機能的特性評価は、Lckが、記憶の取得と維持の重要なメディエーターであり、これは、ADで最も顕著に障害されたプロセスであることをさらに示唆している(Kim E−J et al,Cell Mol Life Sci,2012,doi:10.1007/s00018−102−1168−1)。
【0478】
本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ポリペプチドは、チェックポイント阻害剤PD−L1の存在下で、T細胞株上のIL−2Rα発現をレスキューできることを示した(
図12、実施例11)。
【0479】
HIV感染症
LckはCD4とCD8の両方に結合するが、Lck活性は、CD4と結合した場合の方がより高い(Delves PJ and Roitt IM,editors.1998.Encyclopaedia of Immunology,Second Edition.San Diego:Academic Press)。HIVは、CD4+細胞の枯渇を特徴とし、Nefを欠くHIV株はAIDSに進行しない(Olszewski A et al,2004,PNAS.USA,101(39):http://www.pnas.org/cgi/content/full/101/39/14079)。HIV感染症におけるLckの重要な役割は十分に認識されている。例えば、不活性Lckを発現する細胞は、加速されたウィルス複製を示すが、一方、通常のまたは高い酵素活性を有するLckを発現する細胞は、初期の内在性Lck酵素活性に比例して、ウィルス複製の遅延を示す(Yousefi S et al,2003,Clinical & Experimental Immunology,133(1):78−90)。
【0480】
Nef遺伝子は、霊長類レンチウィルス(ヒト免疫不全1型(HIV−1)、2型(HIV−2)、およびサル免疫不全ウィルス(SIV))に特有であり、約25kdのミリストイル化膜結合タンパク質をコードする(Greenway AL et al,1999,J Virol.,73(7):6152−6158)。細胞レベルでは、Nefは、CD4、インターロイキン2受容体、MHCクラスIを含むT細胞表面受容体のレベルを低減させ、細胞内シグナル伝達を妨害し、特定のサイトカイン産生を損なう(Greenway AL et al,1999(前出参照)で概説される)。
【0481】
Nefは、T細胞拘束性Lckチロシンキナーゼ(リンパ球タンパク質チロシンキナーゼ)と直接相互作用し、インビトロおよびインタクト細胞中の両方でLckキナーゼ活性を低減させ、それにより近位および遠位Lck媒介シグナル伝達イベントの両方の障害を生ずる(Collette Y et al,1996,JBC,271:6333−6341)。LckのNefへの結合は、他のビリオンまたは細胞質タンパク質を必要としない。その理由は、Lckの触媒活性の抑制が、精製LckとHIV−1 NefまたはSIVタンパク質の間の結合により起こると示されているためであり、Nef媒介病態形成の複雑さを示している。
【0482】
具体的には、NefはLckのSH3ドメインに結合し、Lck触媒活性の抑制をもたらし(Collette Y et al,1996,JBC,271:6333−6341;Greenway A et al,1996,J Virol,70(10):6701−6708;Greenway AL et al,1999,J Virol,73(7):6152−6158)、Lckの活性化剤の開発は、抗レトロウィルス治療法の開発を補完し得る。
【0483】
Lckは、T細胞中でインターロイキン2(IL−2)刺激時に活性化される唯一のファミリーキナーゼである(Brockdorff J et al,2000,Eur Cytokine Netw.,11(2):225−231)が、以前の研究は、HIV感染症の患者でのIL−2療法は抗レトロウィルス療法単独の使用を超える臨床的便益を付加しないことを示唆し、CD4+細胞数でかなりの持続的増大が観察された(The INSIGHT−ESPRIT Study Group and SILCAAT Scientific Committee,N Eng J Med,2009,361:1548−1559)。しかし、さらに最近のデータは、HIV DNAまたはタンパク質ワクチン剤と共に、アジュバントとしてのIL−2の投与は、将来のHIVワクチン試験デザインで考慮されるべきであることを示唆し(Baden LR et al,2011,J Infect Dis,204(10):1541−1549)、IL−2は実際に、いくつかの感染細胞株においてHIV−1複製を抑制する(Raphael MO et al,2013,JBC,doi:10.1074/jbc.M113.468975)。
【0484】
これらの報告は、T細胞発生および活性化および従って獲得免疫応答のためのLckの重要性を強調する(Stirnweiss A et al,2013,Sci Signal,6(263):ra13.Doi:10.1126/scisignal.2003607)。
【0485】
一実施形態では、本発明は、対象のHIV感染症を治療する方法を提供し、方法は、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む。
【0486】
その他の病原性感染症
ウィルス、細菌、原虫および寄生生物に起因する感染症に抵抗するための適切な免疫応答は、特定のキナーゼ活性の欠如によりそこなわれ、微生物の複製および細胞への侵入を容易にし、および/または効果的な免疫応答を抑制する。
【0487】
例えば、多くの細菌性病原菌が、宿主細胞と密接に結合する。一部は、細胞表面に結合したままで残るが、他のものは、内部移行する。腸内粘膜中のγ/δ上皮内T細胞は、隣接上皮細胞とのクロストークを介して侵入細菌の存在を検出でき、腸内微生物叢と共に恒常性を維持する免疫防御の階層の不可欠な要素である(Ismail AS et al,PNAS,2011,108:8743−8748)。
【0488】
それにより細菌が浸潤後細胞内でそれらの生活環を確立できる高度に保存された進化手段は、細菌により産生されたUDP糖加水分解酵素を介する。これらは、UDP糖加水分解酵素および5−ヌクレオチダーゼ活性を有する二官能性の酵素である。例えば、大腸菌は、UDP糖加水分解酵素を産生でき、この生成物は、Lck活性を著しく抑制する(Berger SA et al,JBC,1996,271:23431−23437)。具体的には、大腸菌によるHeLa細胞の感染後に、この比較的非特異的ヌクレオチダーゼは、アデノシンの蓄積を生じ、これは、Lck抑制に直接関与する。さらに、UDP糖加水分解酵素の過剰発現は、一旦HeLa細胞内に入った細菌の生存を強化することが示された。細胞内のATPの減少は、Lck抑制の原因ではなく、むしろ、原因は、ADP、AMPおよびアデノシンの蓄積であり(Berger et al、前出参照)、他の病原体も、感染状況中にこの酵素を用い得ることが、これらの研究者により提唱された。実際に、カンジダ・アルビカンス培養物は、好中球機能を抑制する原因であると示されているアデノシンを含む(Smail EH et al,J Immunol,1992,148:3588−3595)。
【0489】
細菌性赤痢の原因物質であるフレクスナー赤痢菌もまた、インビトロで活性化CD4+T細胞に侵入し、化学誘引物質刺激に向かうT細胞遊走を抑制し、また、獲得免疫刺激部位内(すなわち、リンパ節)のインビトロT細胞動力学を低下させ、それにより、細菌に対する効率的免疫応答の誘導を妨げる(Nothelfer K et al,J Exp Med,2014,211(6):1215;Salgado−Pabon W et al,PNAS,2013,110:4458−4463、で概説されている)。さらに、細菌性赤痢マウスモデルでは、Unc119による治療は、赤痢菌感染症を抑制する(Vepachedu R et al,PLOS one,2009,doi:10.1371/journal.pone.0005211)。逆に、Unc119ノックダウンは、細菌性侵入および死亡率を高めることが示された。同様に、THP−1のウシ結核菌BCG感染症の高められた感染力がUnc119ノックダウン後に報告され、Unc119の作用は赤痢菌に特異的ではないことを示唆している(Vepachedu et al、前出参照)。Unc119の抑制効果は、そのAblファミリーキナーゼとの相互作用が原因であり、Srcファミリーキナーゼによる媒介によるものではなく、これについては研究されなかった。さらに、Unc119ノックダウンは、用いた細胞株において赤痢菌感染(double Shigella infection)を倍増させることが明らかになった。本発明までに、選択的Lck活性化剤は、以前に報告されていないと考えられる。(Bae O−N et al,J.Neuroscience,2012,32(21):7278−7286)。最近報告されたデータは、Unc119がT細胞中のLckを活性化できることを示唆するが、Unc119およびそのSH3ペプチドモチーフの両方は、Lckだけでなく、Srcキナーゼファミリー中のHck、LynおよびFynキナーゼメンバーも活性化することが示された(Cen O et al,JBC,2003,278:8837−8845;Gorska MM et al,J Exp Med,2004,199(3):369−379)。従って、本明細書に記載のLck活性化剤は、代用抗生物質として作用し、または従来の抗生物質療法に対する補完療法として機能し得、本発明は、全てのこのような使用に拡張される。
【0490】
マラリアは、肝細胞および赤血球に感染するマラリア原虫種により引き起こされる非常に蔓延している疾患である。CD4+T細胞は、慢性血液期マラリアに対し保護し、CD8+T細胞の枯渇は、寄生生物の除去を遅らせ、これらの細胞を慢性疾患に対する保護に関係づける(Wykes MN et al,Cell Reports,2013,5:1204−1213で概説されている)。さらに、プログラム細胞死1受容体(PD−1)を介するシグナル伝達がHIV特異的CD4+およびCD8+T細胞を枯渇させると考えられているのと全く同じように、PD−1は、マラリア寄生生物特異的CD8+T細胞の減少および枯渇、およびより少ない程度でCD4+T細胞の機能の低下を媒介することが示された(Wykes et al、前出参照)。重要なことに最近、CD8+T細胞により高められたIFNγ分泌は、マラリア感染に対する保護に関連付けられることがPD−1ノックアウトマウスで示され、将来のマラリアワクチン剤はCD8+T細胞の応答性を高めることを考慮すべきであるという提案に至った(Wykes MN et al,Scientific Reports,2016,6:26210)。本明細書に記載のように、少なくともいくつかの実施形態では、本発明の方法により利用される化合物は、例えば、疲弊したマウスCD4+T細胞、ヒト末梢血単核球および例えば、CD8+発現ジャーカット細胞でのIFNγ分泌を強化でき、それによりマラリアの治療における役割をさらに示し、このための本明細書に記載の化合物の使用が、明示的に包含される。
【0491】
Tリンパ球向性ウィルス、例えばヘルペスウィルスは、例えば、ヘルペスウィルスサイミリチロシンキナーゼ相互作用タンパク質(Tip)がLckと物理的に相互作用し、かつ安定に発現する細胞株中でLck活性を抑制することを考慮すると、Lck活性化剤のための、および本発明により実施される方法のための特定の標的である(Isakov N and Biesinger B,Eur J Biochem,2000,267(12):3413−21)。
【0492】
さらに、エボラウィルス属およびマールブルグウィルス属で代表されるフィロウィルスは、ヒトおよび非ヒト霊長類での致死性出血熱の原因である。このウィルスは、Bリンパ球およびTリンパ球の数を減らすことにより免疫系を攻撃する。CD4およびCD8リンパ球などのB細胞およびT細胞は、免疫制御因子としてサイトカインを産生するのに必要であり、2,3日内に死亡する患者は、アポトーシスによりB細胞およびT細胞数が減少していることが示された。T細胞は、ウィルス感染細胞の破壊のために、活性化される必要があり(Wauquier N et al,Public Library of Science,2010,4(10):837−847)、不活化エボラザイールウィルスへのヒト血液末梢単核球の暴露は、低減したIL−2産生をもたらすことが示された(Yaddanapudi K et al,The FASEB journal,2006,20:2519−2530)。本明細書に記載のLck活性化剤の使用は従って、これらの疾患に対抗して、T細胞活性化およびIL−2産生を刺激することへの用途がある。
【0493】
さらに、本明細書に記載のLck活性化剤の使用はまた、結核などの他の感染症においても役割がある。例えば、ほとんどの個体は、MTBを根絶できないにしても、結核菌(MTB)を制御するために、CD4+およびCD8+T細胞を必要とする。CD4+T細胞による認識を回避するためにMTBにより使用される分子機序は、MTB壁に最も豊富な糖脂質の1つである糖脂質ManLAMによるシグナル伝達であり、これは、Lckリン酸化を阻害することによりTCRシグナル伝達を妨害するが、Tyr505のリン酸化は阻害しない(Mahon RN et al,2012,Cell Immunol.275(1−2):98−105;Mahon RN III,PhD学位論文,2010,http://rave.ohiolink.edu/etdc/view?acc num=case1275668686)。
【0494】
IL−12RB1は、結核菌感染症に対するヒトの抵抗力にとって不可欠であることが知られている。本発明者らは、本明細書で記載のLck活性化ペプチドが、CD4+およびCD8+T細胞上のIL−12RB1発現を誘導することを示した(例えば、実施例28、
図25、実施例15、
図17)。
【0495】
従って、一実施形態では、本発明は、対象において結核菌感染症を治療する方法を提供し、方法は、本明細書に記載のLck活性化ペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む。
【0496】
Lck活性の上方制御により本発明に従って抑制または治療され得る他の感染症としては、ペストおよび肝炎ウィルスが挙げられる(例えば、B型肝炎ウィルスおよびC型肝炎ウィルス)。B型肝炎は、肝損傷および炎症などに繋がる最も蔓延しているウィルスであり、C型肝炎ウィルスは、T細胞疲弊に関連している(Ye B et al,Cell Death & Disease,2015,6,e1694)。伝染病のペスト菌病の原学的薬剤に対する重要な病原性因子は、チロシンホスファターゼYopHである。細菌は、YopHを宿主細胞に注入し、Lckは、活性YopHを含む細胞中のその正の調節部位Tyr394で脱リン酸化されることが示された。Lckを遮断することにより、YopHはそのごく最初のステップでT細胞抗原受容体シグナル伝達を遮断し、この致死性疾患に対する防御免疫応答の発生を効果的に防止する(Alonso A et al,2003,JBC,279:4922−4928)。C型肝炎では、C型肝炎ウィルスコアタンパク質がT細胞に結合し、Lck活性化を抑制し、コアタンパク質がT細胞活性化の極初期イベントを抑制することを示唆する(Yao SQ et al,2004,J Virol,78(12):6409−6419)。
【0497】
全身感染、術後感染あるいは癌再発に対するかかりやすさの観点からの輸血の危険性は、1973年以来知られており、最近のメタアナリシスは、赤血球輸血後のこの健康管理関連感染のリスクを再確認している(Rhode JM et al,JAMA,2014,311(13):1317−1326;Blumberg N et al,Transfusion,2007,47(4):573−81;Fergusson D et al,Can J Anaesth,2004,51(5):417−24)。輸血誘導免疫調節の提案された機序は不明確なままであるが、役割を果たすと見なされる実証された変化としては、低減したCD4/CD8比率および低減したIL−2分泌が挙げられる(Kirkley SA,Clinical and Diagnostic Laboratory Immunology,1999,6(5):652−657)。従って、輸血に共同したLck活性化剤の投与は、これらの状態の1つまたは複数のリスクを改善し得る。
【0498】
さらに、リンホカイン活性化キラー細胞を生成するための同系脾臓細胞のインビトロIL−2治療は、熱傷マウスモデルで敗血症に関連する死亡のIL−2防止を強化することが示され、活性化Lckは、抗原刺激の非存在下でIL−2産生を刺激することが示された(Mendez MV et al,J Surg Res,1993,54(6):565−70;Luo K and Sefton BM,Mol Cell Biol,1992,12(10):4724−4732)。さらに、プロスタグランジンE2(PGE2)は、敗血症中のT細胞抑制で重要な役割を果たすことが知られており、敗血症中のT細胞抑制の新生児スプラーグドーリーラットモデルでは、IL−2産生の低減が付随して起こることが示された。このような抑制はCOX−2阻害剤で改善され、それによりPGE2をこのプロセスに関連付ける。これを考慮して、およびT細胞のPGE2への暴露がLckの不活化およびZAP70の低減したリン酸化に繋がるので(Dallal O et al,Biol Neponate,2003,83(3):201−7;Chemnitz JM et al,Cancer Res,2006,66:1114)、本発明によるLck活性化剤による治療は、T細胞活性の刺激を介した敗血症中の免疫応答の刺激、およびIL−2産生刺激にも適用し得る。
【0499】
従って、本明細書に記載のLck活性化剤は、一連の用途で広く使用される。本明細書に記載のLck活性化剤によりおよび/または本発明により実施される方法により治療され得る疾患および状態としては、Lckの最適未満の発現またはLckの抑制またはLckもしくはLck活性の下方制御を特徴とする疾患および状態、上皮内および粘膜内常在性T細胞機能不全および/または病原性感染症(例えば、慢性感染症を含む)、病原性感染症由来の敗血症(例えば、慢性敗血症)および輸血関連敗血症、癌および皮膚性および上皮悪性腫瘍に反応したT細胞活性化に対する要求に関連する障害;リンパ腫、ホジキン病および白血病を含む癌一般(例えば、乳癌、結腸直腸癌、および前立腺癌)の予防または治療;T細胞機能を抑制する治療法(例えば、癌および非癌状態の治療法)に起因する免疫抑制;限定されないが、重症複合型免疫不全症候群(SCID)、CD4/CD8 T細胞の生存を必要とする状態および細胞数を低下させる状態または障害(例えば、肺炎、インフルエンザ、ヘルペス感染症などの感染症)を含む免疫不全障害;ウィルス、細菌、真菌および寄生生物による病原性感染症;T細胞疲弊(例えば、癌または非癌状態(病原性感染症由来の敗血症(例えば、慢性敗血症)および/または癌または非癌状態の治療に関連する))、およびT細胞中のチェックポイント阻害(例えば、癌または慢性敗血症に関連する)、およびT細胞活性化経路の加齢に伴う変化が挙げられるが、これらに限定されない。
【0500】
種々のリガンド−受容体相互作用は、チェックポイントシグナル伝達阻害に寄与することが知られており(例えば、Pardoll DM,Nature Reviews Cancer,2012,12:252−264参照)、本発明の少なくともいくつかの実施形態では、T細胞機能は、これらの相互作用の1つまたは複数を抑制することにより回復され得る(例えば、PD−1/PD−L1相互作用)。従って、少なくともいくつかの実施形態では、本発明は、疲弊T細胞におけるT細胞シグナル伝達のチェックポイント阻害/抑制を克服するための、本明細書に記載のLck活性化剤の投与に明示的に拡張される。
【0501】
病原体および病原性感染のさらなる例としては、ヘルペスウィルス、ミクソウィルス、レオウィルス、エンテロウィルス、コクサッキーウィルス、エコーウィルス、口蹄疫ウィルス、C型肝炎を引き起こすウィルス(例えば、A型肝炎ウィルス、B型肝炎ウィルスおよびC型肝炎ウィルス)、脳炎および脈絡髄膜炎、サル免疫不全ウィルス、SARS、コロナウィルス、デング熱ウィルス、インフルエンザウィルスインフルエンザウィルス、黄熱病ウィルス、ウエストナイルウィルス、アレノウィルス、水泡性口内炎ウィルス、ライノウィルス、ヒトパピローマウィルス(HPV)、呼吸器多核体ウィルス、ヒトサイトメガロウィルス、および水痘帯状疱疹ウィルス(VZV)に加えて、ポックスウィルス、その他のTリンパ球向性ウィルスなどによるウィルス感染症;結核(例えば、ハンセン病)、グラム陽性球菌およびグラム陰性球菌、およびグラム陰性桿菌および球桿菌などのグラム陽性およびグラム陰性菌により引き起こされる疾患、溶血性連鎖球菌、腸球菌、および破傷風、ジフテリア、ならびにクロストリジウムおよびボツリヌス中毒感染症などの毒素産生細菌に加えて、他のマイコバクテリア感染症などによる細菌感染症;アメーバ症、マラリア(この原因物質は、熱帯熱マラリア原虫である)、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、トキソプラズマ症およびランブル鞭毛虫症などの原生動物感染症;および腸管寄生線虫、糸状虫、条虫(サナダムシ)および包虫などによる蠕虫感染症が挙げられる。
【0502】
上記の疾患または状態の予防または治療における本明細書に記載のLck活性化剤の使用に加えて、本発明の他の実施形態では、本発明によるLck活性化剤は、幹細胞治療、胚性幹細胞自己複製、および胚性幹細胞(例えば、胚盤胞胚芽の)の多能性の維持に対してさらなる用途があり得、全てのこのような使用は、本発明により明示的に包含される。
【0503】
特に、誘導多能性細胞は、胚性幹細胞の定義特性の維持のために重要な遺伝子および因子を発現させることにより、胚性幹細胞様状態に遺伝的にリプログラミングされた成熟細胞である。成熟細胞が幹細胞になるように一旦プログラムされてしまうだけで、それらはその後、所望生殖細胞層に分化するように誘導できる。Srcファミリーチロシンキナーゼのメンバーは、ヒト胚性幹細胞の分化に不可欠であるが、Lck発現レベルは、胚性幹細胞分化の関数として劇的に低下する(Zhang X et al,Stem Cell Res,2014,13(3 Pt A):379−389)。
【0504】
白血病抑制因子(LIF)は、マウス胚性および誘導多能性幹細胞の培養と誘導のために使用される重要な外因性因子の1つであり、マウス胚性幹細胞自己複製の重要な制御因子である「シグナル伝達性転写因子3」(STAT3)を活性化する(Dang−Nguyen TQ et al,Molecular Reproduction and Development,2014,81:230)。さらには、STAT3は、系統特異的差別化プログラムの活性化を妨げることにより、中胚葉および内胚葉系統の両方への分化を抑制することが知られている(Graf U et al,Genes,2011,2(1):280−297)。従って、STAT3は、未分化胚性幹細胞表現型の維持のために不可欠である(Raz R et al,PNAS USA,1999,Cell Biology,96:2846−2851)。
【0505】
重要なことに、STAT3の活性化は、多能性の誘導のための制約要因であり、その過剰発現は、多能性を達成するための追加の因子に対する要求を排除する(Yang J et al,Cell Stem Cell,2010,7(3):319−328)。従って、STAT3シグナル伝達は、STAT3が自己複製因子の発現を推進することから、主にナイーブ多能性を指示するマスターリプログラミング因子の1つと見なされる(Li Y−Q,Cellular Reprogramming,2010,12(1):3−13)。Lckは、STAT3を直接活性化することが示され、外来性LckによるSTAT3の活性化は、Lck特異的抑制剤PP1により減弱される(Lund TC et al,Cell Signal,1999,11(11):789−796)。従って、本発明によるLck活性化剤は、Lck活性の刺激を介してSTAT3活性を上方制御する働きをし得るので、幹細胞自己複製の促進と維持への用途がある。
【0506】
さらに、本明細書に記載のLck活性化剤は、T細胞、細胞媒介免疫を含む免疫および免疫応答の増強、細胞の免疫レシュキュー、T細胞受容体シグナル伝達の上方制御、1つまたは複数のサイトカイン(例えば、IL−2、IFNγおよびTNFαから選択される)産生の上方制御、T細胞の再活性化、T細胞免疫応答の再活性化への、および補助剤としての(例えば、ワクチン組成物中で、または抗原に対する免疫応答を刺激するための個体への別々の投与のため)特定の用途がある。
【0507】
従って、個体のワクチン接種用のワクチン組成物がさらに本明細書で提供され、組成物は、薬学的に許容可能な担体と一緒に、本発明により実施される1種または複数のLck活性化剤を含む。ワクチンは、ワクチンの投与により免疫応答が生成される任意の好適な抗原、および任意選択で、その抗原に対する免疫応答を刺激するための任意の追加の補助剤を含む。
【0508】
少なくともいくつかの実施形態では、T細胞受容体(TCR)の刺激は、本明細書に記載のLck活性化剤による治療に由来するT細胞の生理学的結果(例えば、高められたIL−2サイトカイン産生、上方制御されたT細胞シグナル伝達、など)を達成するために必要であり得る。即ち、Lck活性化剤は、根本的にT細胞を活性化するのではなく、T細胞受容体刺激の生理学的結果を高めるように作用し得る。従って、本明細書で記載の方法の少なくともいくつかの実施形態では、Lck活性化剤の投与により治療されるT細胞は刺激されたT細胞である。
【0509】
本発明の1つまたは複数の実施形態によるLck活性化剤に応答するT細胞集団は、例えば、上皮内T細胞、粘膜内T細胞、γ/δT細胞、樹枝状表皮T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、細胞傷害性T細胞、制御性T細胞(Treg)、および前述の細胞集団の組み合わせからなる群より選択され得る。
【0510】
本明細書に記載のLck活性化剤またはその成分(例えば、ポリカチオン性ペプチド(PP)、強化ペプチド(AP/P)および/または式IIの化合物)は、当業者に周知の合成または組換え技術により得ることができる。さらに、本発明によるLck活性化剤の本明細書に記載のポリカチオン性ペプチドおよび/または強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)は、アミノ酸または遺伝子コードによりコードされていないアミノ酸、またはアミノ酸類似体を組み込むことができる。
【0511】
例えば、1個または複数のD−アミノ酸、ベータアミノ酸、および/またはホモアミノ酸は、L−アミノ酸の代わりに利用され得る。実際に、本明細書に記載のポリカチオン性ペプチド(PP)および/またはLck活性化剤の強化ペプチドは、部分的にまたは完全にDアミノ酸からなる、または例えば、D−アミノ酸、ベータアミノ酸、ホモアミノ酸、ベータホモアミノ酸、L−アミノ酸、およびL−またはD−ホモアミノ酸の1個または複数の組み合わせからなり得る。ベータアミノ酸の例としては、カチオン性アミノ酸のベータバリアント型を含む、ベータアラニン(NH
2−CH
2−CH
2−COOH)、ベータフェニルアラニン、ベータトリプトファン、ベータチロシン、ベータロイシンなどが挙げられる。アミノ酸のホモバリアント型の例としては、L−システインと比較して追加のCH
2基を有するホモシステインが挙げられる。従って、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリカチオン性ペプチド(PP)および/またはLck活性化剤の強化または他のペプチドは、例えば、L−アミノ酸、D−アミノ酸またはL−、D−アミノ酸および/または上述の他のアミノ酸型を含み得る。D−アミノ酸を含むペプチドの使用は、例えば、ペプチダーゼ活性(例えば、エンドペプチダーゼ)を抑制し、それによりインビボでのペプチドおよびその結果としてのLck活性化剤の安定性を高め、半減期を延長できる。
【0512】
本明細書に記載のペプチドまたは融合タンパク質は、本明細書に記載の方法で使用するために、三次元構造中で拘束され得る。例えば、それは、側鎖構造で合成され得る、あるいは既知のインビボで安定な構造を有する分子中に組み込まれ得る、または環化されてインビボで高められた剛性およびそれによる安定性を得る。環化ペプチド、融合タンパク質などのための種々の方法が既知である。ペプチドは、4種の異なる経路、すなわち、頭−尾(C末端からN末端)、頭−側鎖、側鎖−尾、または側鎖−側鎖により環化され得る。例えば、融合タンパク質のペプチドは、ペプチドまたは融合タンパク質に沿って相互に離れた2個のシステイン残基を与えられ、残基のチオール基チオール基を酸化してそれらの間にジスルフィド架橋を形成することにより環化されてよい。環化はまた、ペプチドのN末端とC末端アミノ酸または、例えば、リシン残基の側鎖上の正に帯電しているアミノ基と、グルタミン酸残基の側鎖上の負に帯電しているカルボキシル基との間で結合を形成することにより、実現し得る。環化を達成するための、アミノ酸間の直接化学結合の形成、または任意の好適なリンカーの使用もまた、十分に当業者の範囲内にある。本発明による環化を達成するために特に好ましい方法は、ラクタム基の形成を含みおよび環化型のペプチドおよび/または本明細書に記載のLck活性化剤の形成するためのラクタム化の使用は、明示的に包含される。好適なラクタム化方法を含む、環化を達成するための方法は、例えば、White CJ and Yudin AK.,Contemporary strategies for peptide macrocyclization.Nature Chemistry,June 2011,pp.509、に記載され、この文献の全内容は、相互参照により本明細書に組み込まれる。
【0513】
本明細書に記載のLck活性化剤を含む、ペプチドまたは融合タンパク質(例えば、ポリカチオン性ペプチド−強化ペプチド部分)はまた、炭水化物部分の結合またはアミノ酸残基のアルキル化またはアセチル化を生じる化学反応または化学結合の形成を伴う他の変化などの翻訳後または合成後修飾も含み得る。
【0514】
本発明によるLck活性化剤を含むペプチドのペプチド模倣体の使用も意図され、本明細書に明示的に包含される。ペプチド模倣体は、例えば、ペプチドの1個または複数のアミノ酸のアミノ酸類似体による置換を含み、ここでアミノ酸類似体は、従来の活性、細胞毒性および/または他の好適なアッセイにより評価される、親ペプチドの活性を基本的に低減させない。
【0515】
本明細書に記載のLck活性化剤およびその成分は、化学的に合成、または従来の組換え技術を用いて製造できる。融合タンパク質をコードする核酸は、例えば、平滑末端化末端およびオリゴヌクレオチドリンカーを用い、必要に応じて消化して付着末端を得て、付着末端のライゲーションにより、所望のアミノ酸配列を有するペプチドをコードする別々のcDNAフラグメントを連結することにより得られる。あるいは、後で一緒に連結できる相補的末端を有するアンプリコンを発生させるプライマーを用いて、DNAフラグメントのPCR増幅を利用できる。
【0516】
本明細書に記載のペプチドおよび融合タンパク質は、任意の好適な技術を利用して、インビトロで発現され、哺乳動物対象への投与のために、または式IIの化合物に結合されてLck活性化剤を得て、本発明により実施される方法で使用するために、細胞培養物から精製され得る。
【0517】
ペプチド成分を一緒に結合する、および/またはターゲティング部分、例えば、scFvなどに結合するなどのために、固相ペプチド合成(SPPS)、クリックケミストリーおよびブドウ球菌ソルターゼA媒介ペプチド−ペプチド融合プロトコル、または前述の組み合わせを利用して、本明細書に記載のLck活性化剤を提供し得る。このような合成法のための種々のプロトコルはよく知られており、任意の好適なこのような方法を用い得る。
【0518】
治療薬の合成のためのFmocまたはT−bocまたは保護基を用いるSPPS法は、特に好ましい。このような合成法は、よく知られ、脱保護ステップの前後で洗浄ステップを有する、結合および脱保護反復サイクルを含む。本明細書で記載の少なくともいくつかの実施形態では、治療薬の全体が、SPSSにより固体担体上で合成できる。例えば、式IIのポリアミド部分の合成では、例えば、Fmocで保護された2−アミノ基を有する疑似脂肪酸構成単位は、順次一緒に結合されて、それぞれが上述のR基側鎖を有する3〜5反復単位を有するポリアミド骨格部分を形成する。同様に、Lck活性化剤のペプチド成分はその後、ポリアミド部分(PM)に順次結合されて活性化剤をC末端からN末端方向に伸張し、その後合成されたLck活性化剤が固体担体から切り離され、収集され得る。
【0519】
ソルターゼA(Srt A)は、黄色ブドウ球菌で最初に記載された細菌性酵素であり、これは切断配列LPXTG中のトレオニンとグリシンの間で切断し、アシル酵素中間体を生成し、これはその後、N末端グリシン残基と反応して、酵素を放出し、グリシンとLPXTGタグ付き成分をペプチド結合により一緒に融合する。Levary,D.A et al.,“Protein−protein fusion catalysed by sortase A”.PLoS ONE,April 2011,Vol.6(4):1−6,e18342参照。また、例えば、Witte,M.D.,“Production of unnaturally linked chimeric proteins using a combination of sortase−catalysed transpeptidation and click chemistry”.Nat.Protoc.Sep 2013,8(9):1808−1819、およびBently ML.et al.,J.Biol Chem,2008,283:14762−14771、およびMazmanian SK.et al.,1999,Science,285:760−763も参照されたい。ソルターゼA媒介タンパク質ライゲーションを介して蛍光タグまたは毒素に連結された組換えHER1およびHER2標的化抗体が記載された。例えば、Madej MP et al.,Biotechnology and Bioengineering,2012,109:1461−1470,and Kornberger P.and Skeria A.,2014,mAbs 6(2):354−366を参照されたい。前出の全ての内容は、相互参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0520】
クリックケミストリーは、1つの成分上の末端アジド基ともう一方の成分上のアジド基との間の金属触媒(例えば、Cu(I))アジド−アルキン付加環化反応により、成分がペプチド結合ではなく1、2、3トリアゾール結合により一緒に結合されることによるなどの、本明細書に記載のLck活性化剤の提供において、一緒に成分を結合するのに好適なもう一つの高収率法である。1、2、3トリアゾール結合は、従来のペプチド結合に対し生物学的等価体として機能し、それらは加水分解に耐性であるという優位性を有する。例えば、Li et al.,Click chemistry in peptide−based drug design,Molecules,2013,18,pp:9797−9817;doi:10.3390/molecules18089797参照。ジベンゾビシクロオクチン(DBCO)などのシクロオクチンも同様に、アジドと高反応性であり、上述のアジド−アルキン環化付加に対する代替形態のクリックケミストリー反応を提供する、またはアジド−アルキン環化付加と組み合わせて使用されて、本発明により実施されるLck活性化剤を提供し得る。シクロオクチンベースクリック合成反応は、それらが銅または他の金属触媒なしで実施できるという点で優位性を有する。
【0521】
scFv、抗体または抗体フラグメントなどのターゲティング部分は、例えば、最初に2つの成分のシステイン誘導体を作製し、これを切断し、HCl塩として精製した後、溶液相中でシステインの遊離スルフヒドリルを利用する、マレイミド結合を採用してそれぞれのクリック試薬に結合させることにより、上述のLck活性化剤のリンカー部分(LM)に結合させることができる。ターゲティング部分はその後、アジドまたはアルキン(または、例えば、DBCO)試薬のいずれかで誘導体化され、リンカー部分(LM)に結合した相補性試薬を介してクリックコンジュゲーションが起こる。
【0522】
他の実施形態では、哺乳動物対象の標的細胞に、本発明による治療処置(例えば、病原性感染の予防または治療)を実施するために、宿主細胞の細胞転写エレメントおよび翻訳リボソーム複合体を利用して核酸をインビボ発現させるために、本明細書に記載の融合タンパク質(すなわち、キメラタンパク質)Lck活性化剤(例えば、ポリカチオン性ペプチド(PP)および強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)を含む)をコードする核酸を遺伝子導入し得る。
【0523】
本明細書に記載のLck活性化剤成分(例えば、ペプチド活性成分および強化ペプチド)をコードする核酸の発現のために、核酸は通常、最初にクローニングベクターに導入され、宿主細胞中で増幅され、その後、核酸が摘出され、細胞の遺伝子導入のために好適な発現ベクター中に組み込まれる。発現ベクターは、宿主細胞のゲノムDNAとは無関係に核酸挿入断片の発現のために、または宿主細胞中での核酸挿入断片のその後の発現のための宿主細胞のゲノムDNA中への部位特異的、相同的、または異種の組換えのために設計され得る。
【0524】
通常のクローニングベクター(例えば、コスミド)は、ベクターの効率的複製を可能にするための複製起点(ori)、ベクターで形質転換された宿主細胞の選択を可能にするためのレポーターまたはマーカー遺伝子、および目的の核酸配列の挿入およびその後の切除を容易にするための制限酵素切断部位を組み込む。好ましくは、クローニングベクターは、一連の制限酵素部位を組み込むポリリンカー配列を有する。マーカー遺伝子は、薬剤耐性遺伝子(例えば、アンピシリン耐性のためのAmp
r)、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β−ラクタマーゼ、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ヒグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、または、例えば、大腸菌LacZ遺伝子(LacZ’)によりコードされるβ−ガラクトシダーゼなどの酵素をコードする遺伝子であり得る。酵母レポーター遺伝子としては、イミダゾールグリセリンリン酸デヒドラターゼ(HIS3)、M−(5’−ホスホリボシル)アントラニレート異性化酵素(TRP1)およびp−イソプロピルマレート脱水素酵素(LEU2)が挙げられる。発現ベクターはまた、このようなマーカー遺伝子を組み込んでもよい。使用可能なクローニングベクターとしては、哺乳動物用クローニングベクター、酵母および昆虫細胞が挙げられる。適用可能な特定のベクターとしては、pBR322ベースベクターおよびpUC118およびpUC119などのpUCベクターが挙げられる。
【0525】
好適な発現ベクターとしては、DNA(例えば、ゲノムDNAまたはcDNA)挿入断片の発現が可能なプラスミドが挙げられる。発現ベクターは通常、挿入された核酸配列が作動可能に連結される転写調節制御配列を含む。「作動可能に連結される」は、挿入断片の読み枠のずれなしに挿入配列の転写を可能にするために、核酸挿入断片が転写調節制御配列に連結されることを意味する。このような転写調節制御配列は、転写を開始するためのRNAポリメラーゼの結合を容易にするためのプロモーター、リボソームの転写mRNAへの結合を可能にする発現制御配列、およびプロモーター活性を調節するためのエンハンサーを含む。プロモーターは、特異的細胞系統でのみ核酸挿入断片の転写を容易にし、他の細胞型では容易にしない、またはこのような他の細胞型中では相対的に低レベルでのみ容易にする、組織特異性プロモーターであり得る。発現ベクターの設計は、遺伝子導入されるべき宿主細胞、遺伝子導入方式、および核酸挿入断片の転写の所望のレベルに依存する。
【0526】
原核生物(例えば、細菌細胞)または真核生物(例えば、酵母、昆虫または哺乳動物細胞)の遺伝子導入に好適な多数の発現ベクターが当技術分野において既知である。真核細胞の遺伝子導入に好適する発現ベクターとしては、pSV2neo、pEF.PGK.puro、pTk2、pRc/CNV、pcDNAI/neo、ポリアデニル化部位および伸長因子1−αプロモーターを組み込んだ非複製アデノウィルスシャトルベクターおよび最も好ましくはサイトメガロウィルス(CMV)プロモーターを組み込むpAdEasyベース発現ベクターが挙げられる。昆虫細胞中での発現のために、バキュロウィルス発現ベクターを利用し得、この例としては、pVL1392およびpVL941などのpVLベースベクター、およびpAcUW1などのpAcUWベースベクターが挙げられる。本発明の実施形態による哺乳動物細胞中での核酸挿入断片の発現のために好ましい発現ベクターとしては、pEF.PGK.puroなどのCMVまたは伸長因子1aプロモーターを有するプラスミドが挙げられる(Huang,David C.S.et al.,Oncogene(1997)14:405−414)。pEF.PGK.puroプラスミドは、SV40起点、EF−1aプロモーター、ポリクローニング部位およびポリA領域を含み、本明細書に記載のペプチドまたはキメラタンパク質をコードする核酸挿入断片の発現に特に好ましい。
【0527】
種々の形態の発現ベクターが当技術分野において既知であり、このような任意の好適な発現構築物を意図する目的のために使用され得る。ウィルス移入方法も本明細書に記載のLck活性化剤をコードする核酸の標的細胞中へのインビトロまたはインビボでの導入を行うために使用できる。標的細胞への送達のために発現ベクターをパッケージ可能な好適なウィルスとしては、アデノウィルス、ワクシニアウィルス、トリのレトロウィルス、単純ヘルペスウィルス(HSV)およびEBVを含むマウスおよびヒト起源ヘルペスウィルス、SV40などのパポバウィルス、ならびにアデノ随伴ウィルスが挙げられる。本明細書で記載の方法で有用な特に好ましいウィルスとしては、複製能欠損型組換えアデノウィルスまたはその他のウィルスが挙げられる。組換えウィルスを、局所投与または全身投与して、ペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸の標的細胞への送達を行い得る。本明細書に記載のペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸はまた、当技術分野において既知の、従来の低温ショックまたはヒートショックまたは例えば、リン酸カルシウム共沈法電気穿孔プロトコルを用いて、細胞内にインビトロ送達され得る。
【0528】
遺伝子導入された細胞をスクリーニングして、核酸挿入断片の安定で再現可能な発現、および付随するコードされたペプチドまたは融合タンパク質の産生を示す培養物または細胞株を特定できる。種々の宿主細胞内の核酸の安定な統合および発現は当該技術分野において周知である。本明細書に記載のペプチドまたは融合タンパク質の発現に使用できる宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌、ラクチス乳酸菌、ストレプトマイセスおよびシュードモナス、ブレビバクテリウムおよび特にB.リネンス菌株などの細菌およびプロバイオティクス細菌、サッカロマイセスおよびピキアなどの酵母、昆虫細胞、鳥類細胞およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)、COS、HeLa、HaRas、WI38、SW480、およびNIH3T3細胞などの哺乳動物細胞が挙げられる。組換えタンパク質産生のための大腸菌の使用はよく知られており、このような発現系で使用するための好適なプロモーターとしては、T7、trcおよびlacUV5(Tegel H et al,FEBS Journal,2011,278:729−739)が挙げられる。宿主細胞は、標準的精製技術を使用し得る場合は、宿主細胞、および/または上清由来の発現された産物の精製の前に、導入された核酸の発現を容易にするための条件下で好適な培地中にて培養される。さらに、発現産物は、下記の標的化ミニ細胞調製物が作製される宿主細胞(例えば、大腸菌などの細菌細胞)内でのELISAによる定量化のためにヒスチジンタグを含み得る(MacDiarmid J et al,Cancer Cell,2007,11:431−445)。
【0529】
特に、ミニ細胞(例えば、De Boer PA,et al.,A division inhibitor and topological specific factor coded for by the minicell locus determine proper placement of the division septum in E.coli.Cell,56;641−649,1989)、リポソーム、ゴースト細菌細胞、caveosphere、合成ポリマー薬剤、超遠心分離ナノ粒子および他の無核ナノ粒子を、標的細胞へのカーゴの標的化送達のために、本明細書に記載のLck活性化剤、核酸または発現ベクター(例えば、プラスミド)と共に添加し得る。このようなシャトルは、注射のために、または放出のため胃の酸環境を通過する移行および小腸を介するカーゴの取り込みのための経口摂取のために、処方され得る。
【0530】
ミニ細胞は、正常細胞分裂を制御する遺伝子の変異により産生され得るナノサイズの細胞であり、細胞質を含み、従って親細胞のタンパク質発現のための細胞質成分を含むが、これは無染色体性であり、自己複製できない。細胞分裂を制御する遺伝子を抑制すること(または上方制御すること)によるミニ細胞の生成は、静脈内注射で通常使用されるよりも遙かに少ない投与量で腫瘍への薬物を送達するための解決策を提供することが示された(MacDiarmid,J.A.et al.,JC(2007),Cancer Cell;11;431−445)。本発明との関連でのミニ細胞は、遺伝子変異および/または関与する細胞成分の抑制によるなどの細胞分裂工程(例えば、二分裂)の乱れまたは障害から生ずる場合があるように、親細胞の異常細胞分裂により産生される任意の無染色体細胞であり得る。本明細書に記載の方法で使用するためのミニ細胞は、従来から既知の方法、例えば、国際公開第03/033519号および米国特許第7,183,105号、ならびにMacDiarmid,J.A.,et al.,2007に記載の方法により作製できる。これらの全ての内容は、相互参照によりその全体が明示的に本明細書に組み込まれる。細菌性ミニ細胞を生成するための細胞分裂を制御する細菌遺伝子の不活性化は、例えば、De Boer,P.A.,et al.,“A division inhibitor and a topological specificity factor coded for by the minicell locus determine placement of the division septum in E.coli”.Cell 56,1989,pp.641−649でさらに記載される。密度勾配遠心分離(例えば、オプティプレップ(登録商標)、Axis−Shield PLC,Dundee,Scotland)およびクロスフロー濾過を利用するインタクトミニ細胞の精製方法は、米国特許第7,611,885号および同第8,003,091号に記載されている。両特許の内容も、相互参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0531】
本明細書で有用なミニ細胞が誘導される細菌細胞の例としては、大腸菌(E.coli)(例えば、MinA、MinB、cya、crp、MukA1、またはMukeEに変異を有する、またはminB、minE、flsZ、sdiを過剰発現するもの)、枯草菌属菌種(例えば、minC、minD、ripXに変異を有する、またはsmc変異またはOriC欠失を有する)、ラクトバチルス属菌種、およびシュードモナス属種種などの細菌が挙げられる。細菌は、グラム陽性(例えば、リステリア・モノサイトゲネス)またはグラム陰性(例えば、緑膿菌)であり得る。外膜中にポリンを有する細菌(すなわち、通常グラム陰性菌であるが、いくつかのグラム陽性菌もポリンを有する)から分離されたミニ細胞は、標的細胞に送達されるべき核酸、発現ベクターまたは本明細書に記載のLck活性化剤のミニ細胞への添加を容易にするために特に好ましい。ミニ細胞はまた、始原細菌または真核細胞からも誘導され得る。例えば、米国特許第7,183,105号を参照されたい。しかし、通常、細菌由来のミニ細胞、すなわち、細菌性親細胞から誘導されたミニ細胞が利用される。
【0532】
本発明による治療を実施するための細胞へのミニ細胞の標的化は、任意の好適なターゲティング部分の使用により達成され得る(例えば、ミニ細胞またはリポソームなど上の二重特異性抗体、scFv標的化ペプチドなどを介して)。ターゲティング部分は、ミニ細胞の表面上で発現され得る、または、例えば、ミニ細胞は、1個または複数の選択ターゲティング部分でタグ付けまたは標識され得る。特に好ましい実施形態では、ミニ細胞の腫瘍細胞への標的化は、ミニ細胞表面リポ多糖類のO抗原成分および標的化される哺乳動物細胞に特異的な細胞表面受容体(例えば、EFGR)を認識する二重特異的抗体複合体の形のターゲティング部分を用いて達成され得、複合体の2個の抗体はプロテインA/Gを使用して、Fc領域を介して一緒に連結されている(MacDiarmid,J.A.,et al.,JC(2007),Cancer Cell;11;431−445、および国際公開第03/033519号を参照)。しかし、本発明はこれに限定されず、他のターゲティング部分も上述のように採用し得る。
【0533】
本明細書に記載のLck活性化剤は、ミニ細胞内で、またはミニ細胞上で標的細胞または組織に輸送される。例えば、Lck活性化剤は、ミニ細胞中に添加され、ミニ細胞の膜中で発現され、またはミニ細胞の膜上で、例えば、電荷会合により運搬され得る。
【0534】
ミニ細胞は、Lck活性化剤または核酸を含むインキュベーション培地中でのミニ細胞のインキュベーションを介する受動的拡散により、本明細書に記載のLck活性化剤または核酸(例えば、発現ベクター)を装填され得る。装填を支援するために、ミニ細胞はLck活性化剤または核酸に対し透過性にされ得る(例えば、ミニ細胞に穴を開けることにより)、または薬剤に対するミニ細胞の透過性を、従来から既知の技術によるなどの他の方法で増大または強化し得る。
【0535】
特に、細菌性ミニ細胞の膜を介する本明細書に記載のLck活性化剤および核酸の侵入は、種々の既知の可逆的および不可逆的方法を使用して容易にされ得る。これらは、電気穿孔(Miller L.et al,Technology in Cancer Research & Treatment,2005,4:1−7)、ジギトニン(Melo RF.et al,Cell Biochemistry and Function,1998,16:99−105)、NSAIDS(Mizushima T,Inflammation and Regeneration,2008,28:100−105)、トリトン−X100(van de Ven AL.et al,J Biomedical Optics,2009,14(2):1−10)、植物サポニン(Bachran C.et al,Mini−Reviews in Medicinal Chemistry,2008,8:575−584)、乳酸(Alakomi HL et al.,Appl Environ Microbiol,2000,66(5):2001−5)などへの暴露を含む。
【0536】
あるいは、そこからミニ細胞が産生され得る細菌または他の細胞は、本明細書に記載のLck活性化剤の発現の発現ベクターで遺伝子導入され得、産生されるとミニ細胞は、発現されたLck活性化剤を装填される。
【0537】
標的細胞中へのミニ細胞の含有物またはカーゴの侵入は、標的細胞上に発現された細胞表面受容体とのミニ細胞の相互作用から生ずる食作用による(例えば、好中球およびマクロファージによる)またはエンドサイトーシス(クラスリン媒介またはクラスリン非依存性エンドサイトーシス)によるミニ細胞の標的細胞中への移動、およびその後のミニ細胞の分解と標的細胞の細胞質中へのミニ細胞の内容物の放出(例えば、細胞内区画、例えば、エンドソームおよび/またはリソソームから)により行われる。
【0538】
ミニ細胞の装填を支援するために、本明細書に記載のLck活性化剤の実施形態のペプチド成分は、細菌由来ミニ細胞上に存在するLamBポリンを介した輸送を容易にするために、炭水化物部分、例えば、グルコース(DまたはL異性体)に連結されてよい。ポリンスーパーファミリーは、グラム陰性菌の外側細胞膜を横切る水充填細孔を形成する多数のホモトリマー膜貫通型タンパク質を含む。ほとんどのポリンは、環境変化により調節される通常の非特異的チャネルを形成する。マルトポリン(LamBポリン)は、大腸菌細胞中へのマルトースおよびマルトデキストリンの誘導拡散に関与する。特に、LamBタンパク質はまた、グルコースの拡散を容易にでき(von Meyerburg K and Nikaido H,Biochem Biophys Res.Vol.78:pp1100−1107,(1977))、グルコースは、広範囲の試験された糖類からインビトロでLamBタンパク質を横切る最速の拡散速度を有することが明らかにされた(Luckey M and Nikaido H,Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.77:pp167− 171,(1980))。本明細書に記載のLck活性化剤、融合タンパク質およびそのペプチド成分は、超音波処理または界面活性剤を用いた細胞膜の破壊、遠心分離による膜および固体断片の除去、および適用可能な場合には、親和性または免疫親和性クロマトグラフィーにより、当該技術分野において既知の方法で溶液または上清からの精製により細胞培養物から精製できる。使用可能なこのような好適な固体基材および支持体としては、限定されないが、アガロース、セファロースおよび他の商業的に入手できる支持体(例えば、ラテックス、ポリスチレン、またはデキストランなどのビーズ)が挙げられる。その後の溶出およびそれからの濃縮のために、本発明のペプチドまたは融合タンパク質を固体支持体上に固定するための抗体、その結合フラグメントまたは他の好適な結合分子を、一般に用いられるアミドまたはエステルリンカーを利用して、または吸着により、固体基材に共有結合させ得る。
【0539】
さらに、リポソーム、高分子、固体金属含有ナノ粒子などでの使用に好適なアルブミン、ゼラチン、リン脂質などのナノ粒子を、本明細書に記載のLck活性化剤の送達のために利用し得る(例えば、De Jong WH & Borm PJA,Int J Nanomedicine,2008,3(2):133−149を参照)。標的細胞の種々のリガンドまたは受容体への抗体を用いたナノ粒子の外側コーティングの技術は、十分に認められており、本発明の実施形態でも用いることができる。
【0540】
特に、本発明によるLck活性化剤の脂質送達は、リポソーム、固体脂質ナノ粒子、逆脂質ミセル、脂質微小管および脂質マイクロシリンダーによるものを含む(Swaminatham J & Ehrhardt C,Expert Opin Drug Deliv,2012,9(12):1489−1503)。ペプチドカーゴ含有リポソームは、例えば、噴霧器として経皮送達用に、鼻腔内用に、眼および頬側経路用に、および経口用に、非経口および肺性経路用に提案されてきた(Swaminatham J & Ehrhardt C,Expert Opin Drug Deliv,2012,9(12):1489−1503で概説されている)。リポソームは、薬物および遺伝子送達担体として、さらに最近は、ペプチド送達担体として広範に研究されており(Pharmagap Incより2012年8月21日出願の国際公開第2013/033838A1号、発明者:Sokoli K & Chabot JM)、ペグ化リポソーム製剤は、大抵の場合、中性脂質とアニオン性脂質の混合物を含む。
【0541】
多数の臨床的に実証されたリポソームベース薬物療法が利用でき、非標的化リポソームと比較して、標的化リポソームは、腫瘍組織中で高められた細胞内薬物送達を達成する(Kirpotin DB et al,Cancer Res,2006,66:6732)。さらに、神経膠腫の治療のための、血液脳関門を横切るリポソーム媒介遺伝子送達の成功が最近報告された(Yue P−J et al,Molecular Cancer,2014,13:191)。リポソームベース細胞標的化と、細胞内部移行手法との組み合わせは、本発明の方法によるLck活性化剤の細胞への送達に利用できる(例えば、病原体または癌細胞などに対する免疫系/免疫応答を高めるためにT細胞へ)
【0542】
標的細胞(例えば、免疫細胞)への本明細書に記載のLck活性化剤の送達を改善する方法は、CD3またはヒト化抗CD4抗体(TNX−355、現在ではイバリズマブ(TMB−355)として知られる)Zhang X−Q et al,Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2006,50(6):pp 2231−2233、により記載された)などの免疫細胞により選択的に発現された受容体を認識する標的化リガンドでのリポソームの表面の官能化を含む。イバリズマブは、HIVの一次受容体であるCD4を結合する非免疫抑制モノクローナル抗体であり、ウィルス侵入プロセスを抑制する(イバリズマブ(TMB−355):TaiMed Biologics.2009−09−09)。リポソームの外表面上のペグ化はまた、免疫細胞または癌細胞上のPEGユニットおよび受容体を同時に標的化する二重特異的抗体またはその誘導体の使用を容易にする。本明細書で記載のLck活性化ポリペプチドを切断する、MMP9/2切断配列に連結されたLck活性化剤で癌細胞を標的化することにより、腫瘍浸潤リンパ球抗癌活性を強化できる。発明者らは、MMP9/2は、本明細書で記載のLck活性化剤ポリペプチドを切断しないことを示した。従って、本明細書に記載のLck活性化剤は、標的細胞(例えば、癌細胞または免疫細胞)上に発現されたHER1、HER2、PSMA(前立腺特異的膜抗原)または別の抗原などの表面抗原を標的にするリポソーム内に封入され得る。
【0543】
本明細書に記載のLck活性化剤、ペプチド、融合タンパク質、遺伝子改変抗体および他の結合部分(例えば、scFv)は、例えば、それらの精製および/またはそれらの細胞株に対する結合能力の評価のために、当該技術分野において公知のタグ(例えば、c−mycおよびポリヒスチジンタグ)を有して宿主細胞中で発現され得る。このようなタグが利用される場合、コードされたLck活性化剤、ペプチドなどは、エンドペプチダーゼを用いてタグの除去を容易にする好適なアミノ酸配列をさらに含み得る。同様に、本明細書に記載のLck活性化剤、ペプチド、融合タンパク質などをコードする核酸は、上述の親和性クロマトグラフィーによる精製のために宿主細胞からの翻訳産物の分泌を容易にするために、シグナルペプチド配列をさらに含み得る。免疫親和性クロマトグラフィーおよび親和性クロマトグラフィープロトコル用の固体基材の作製のためのプロトコルは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology−Ausubel FM.et al,Wiley−Interscience,1988およびその後の最新情報に記載される。
【0544】
本明細書に記載のLck活性化剤、そのペプチド成分、融合タンパク質、および核酸は、単離または精製された形態で提供できる。本明細書で使用される場合、用語の「精製された」は、例えば、電気泳動および/または他の技術で評価して、80%純度超のレベル、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、またはそれを超える(例えば、99%以上)のレベルへの部分精製を包含する。
【0545】
またさらなる実施形態では、本明細書に記載のLck活性化剤のペプチド成分の遊離末端は、例えば、メチル化され、アセチル化され、または複数のエチレングリコールモノマー単位でペグ化されて、インビボでのプロテアーゼによる分解に対しそれほど耐性でなくされる、または腎臓を介するLck活性化剤の循環からの除去を抑制し得る。ポリペプチド/ペプチドのペグ化方法は、当該技術分野において周知であり、全てのこのような方法は明示的に包含される。通常、本発明により実施される方法で使用されるペグ化ペプチドは、ポリエチレングリコール(PEG)の2個以上のモノマー単位、通常、PEGの約2〜約11モノマーに結合される(すなわち、(PEG)nのnは2〜11に等しい)。通常、nは2である。さらに、本発明により実施されるLck活性化剤を含むペプチドは、環化されて剛性、およびその結果としてのインビボ安定性が高められ、種々のこのような方法は、当技術分野において既知である。
【0546】
本明細書に記載のLck活性化剤は、本発明により適用可能な疾患または状態の予防または治療のために、単一の薬物として対象に投与され得るが、少なくともいくつかの実施形態では、治療薬は、疾患または状態の治療のための1種または複数の他の薬物(すなわち、予防薬または治療薬)と組み合わせて投与され得る。チェックポイント遮断薬などの、特定の疾患または状態の治療に従来使用される任意の好適な薬物を、併用療法において本明細書に記載の治療薬と共に利用し得る。
【0547】
本発明による併用療法で使用され得る従来の抗ウィルス薬は、例えば、レトロウィルス薬物、プロテアーゼ阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、細胞進入阻害剤、およびノイラミニダーゼ阻害剤から選択され得る。
【0548】
例としては、ジドブジン(AZT)、アバカビル、ラミブジン、エムトリシタビンおよびアシクロビルなどのヌクレオシド逆転写酵素阻害剤;テノホビルなどのヌクレオチド逆転写酵素阻害剤;ネビラピンおよびエファビレンツなどの非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤;マラビロクおよびエンフビルチドなどの細胞進入阻害剤;ラルテグラビル、エルビテグラビル、およびドルテグラビルなどのインテグラーゼ阻害剤;ダルナビル、アタザナビル、インジナビル、ロピナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、およびリトナビルなどのプロテアーゼ阻害剤;ならびにザナミビルおよびオセルタミビルなどのノイラミニダーゼ阻害剤が挙げられる。
【0549】
少なくともいくつかの実施形態では、本明細書に記載のLck活性化剤は、コンビビル(ジドブジンおよびラミブジン)、トリジビル(アバカビル、ジドブジンおよびラミブジン)、カレトラ(ロピナビルおよびリトナビル)、エプジコム(アバカビルおよびラミブジン)、ツルバダ(テノホビルおよびエムトリシタビン)、アトリプラ(エファビレンツ、テノホビルおよびエムトリシタビン)、スタリビルド(エルビテグラビル、コビシスタット、テノホビルおよびエムトリシタビン)およびトリーメク(ドルテグラビル、アバカビルおよびラミブジン)からなる群から選択され得るものなどのHIVまたは他のレトロウィルス感染症の治療のための従来の併用療法剤に含まれ得る。
【0550】
本発明による併用療法で使用され得る従来の抗菌薬は、例えば、ペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム、アミノグリコシド、スルホンアミド、キノロン、およびオキサゾリジノンなどの抗生物質からなる群より選択され得る。
【0551】
本発明の方法による併用療法で使用され得る従来の抗原虫薬は、例えば、メトロニダゾール、オルニダゾール、エフロルニチン、フラゾリドン、メラルソプロール、チニダゾールおよびピリメタミンからなる群より選択され得る。
【0552】
本明細書に記載の併用療法で使用され得る従来の蠕虫駆虫薬としては、アルベンダゾール、メベンダゾール、トリクラベンダゾール、フルベンダゾール、およびフェンベンダゾールなどのベンゾイミダゾールが挙げられる。
【0553】
本明細書に記載のLck活性化剤はまた、別の疾患または状態のための従来の薬物による治療から生ずる日和見感染の治療にも使用され得る。例えば、慢性骨髄性白血病の治療によく使用される薬物グリベック(イマチニブ、ST1571)は、強力なチロシンキナーゼの阻害剤であり、Lck活性の抑制を介してTCR誘導増殖および活性化を低減させ(Seggewiss R et al,2005,Blood,105:2473−2479)、これは、日和見感染の誘導を暗示する。これはまた、イマチニブ、ニロチニブまたはダサチニブなどの他のチロシンキナーゼ阻害剤からの副作用の改善にも同様に適合する。例えば、細菌スーパー抗原(例えば、ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA))などの免疫強化薬物により生じる潜在的な病的状態にもかかわらず、LckがSEAにより活性化されること、および選択的Lck活性化剤の欠乏を考慮して、慢性骨髄性白血病におけるイマチニブ媒介T細胞免疫抑制の予防にSEAを使用すべきとの提案がなされてきた(Wang G et al,BioMed Research International,2014,Article ID 682010)。
【0554】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の病原性感染または他の疾患または状態の予防または治療のための従来の薬物は、例えば、共有結合により、電荷引力により、または好適なリンカーの使用により、本発明によるLck活性化剤と複合体形成され得る。薬物をLck活性化剤に連結するための好適なリンカーとしては、例えば、1〜10原子長のリンカー、スルフヒドリルリンカーおよび/または好ましくは、薬物の放出のための、標的細胞または組織で、またはそれら内で、1つまたは複数の酵素切断部位(例えば、MMP切断部位)を規定するアミノ酸またはアミノ酸配列が挙げられる。一例として、薬物は、上述の好適なリンカー系を用いて直接的にまたは間接的に、Lck活性化剤の化合物(例えば、式IIのポリアミド部分)に(例えば、ポリアミド部分の末端NH
2基または他の好適な末端基を介して)、または、例えば、ポリカチオン性ペプチド(PP)もしくは強化ペプチドまたは他のペプチド(AP/P)の末端に結合され得る。
【0555】
細胞に対する本明細書に記載のLck活性化剤の活性および/または細胞毒性プロファイルは、細胞形態の評価、トリパンブルー色素排除法、アポトーシスの評価、細胞増殖試験(例えば、細胞数、
3H−チミジン取り込みおよびMTTアッセイ)、キナーゼ活性アッセイ、ウェスタンブロットおよび免疫蛍光法試験の1種または複数などの種々の従来から既知のアッセイにより測定され得る。
【0556】
本明細書に記載のLck活性化剤は、本発明の方法により哺乳動物に投与でき、または細胞をインビトロでLck活性化剤と接触させることができる。同様に、本発明は、エクスビボ治療を提供し、この場合、細胞は、哺乳動物の外部でLck活性化剤により治療され、その後、哺乳動物に戻す、哺乳動物に投与する、または細胞を哺乳動物中に移植する。
【0557】
本明細書に記載のLck活性化剤、ベクター(例えば、発現ベクター)または核酸は、目的の対象への投与のために、薬学的に許容可能な希釈剤、担体および/または賦形剤を含む医薬組成物として提供できる。Lck活性化剤または核酸は、経口、鼻腔内、吸入により(例えば、エアロゾル噴霧により)、静脈内、非経口、直腸内、皮下、注入により、局所、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、脊髄内、眼内、または任意の他の適切と見なされる経路を介して、投与できる。
【0558】
直腸および/または結腸は、エナミン(フェニルアラニンおよびフェニルグリシン)、5−アミノまたは−メトキシサリチレート、キレート化剤、中鎖脂肪酸、シクロデキストリン、pH感受性高分子コート薬物、アゾポリマープロドラッグなどの、ペプチドに結合された種々の吸収促進薬を用いてペプチドの薬物吸収を高めるための経路を提供し(例えば、Tiwari G et al,International J Drug Delivery,2010,2:01−11;Kolte BP et al,Asian J Biomedical & Pharmaceutical Sciences,2012,2(14):21−28;Philip AK et al,OMJ,2010,25:70−78;およびLakshmi PJ et al.2012,Asian J Res Pharm Sci,2(4):143−149を参照)、このような投与方法および本明細書に記載のLck活性化剤の形態も本明細書に明示的に包含される。
【0559】
医薬組成物は、例えば、液体、懸濁剤、乳剤、シロップ、クリーム、摂取可能錠剤、カプセル、丸薬、坐剤、粉剤、トローチ剤、エリキシル剤、または選択投与経路に適切な他の形態であり得る。
【0560】
本発明による方法に有用な医薬組成物は、医薬水溶液を含む。注射可能な組成物は、通針性が存在する程度に流体であり、通常、製造後の貯蔵を可能にするために、所定の期間の間、常態で安定である。さらに、薬学的に許容可能な担体は、任意の好適な従来から既知の溶媒、分散媒、水、生理食塩水および等張性配合物または溶液、界面活性剤を含み得、任意の好適な薬学的に許容可能な担体(例えば、経口または局所的に許容可能な担体)が利用され得る。好適な分散媒は、例えば、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール、など)、植物油およびこれらの混合物の1種または複数を含み得る。特に、Lck活性化剤または核酸は、例えば、不活性希釈剤、同化可能な食用担体と共に処方でき、および/またはそれは、硬または軟シェルゼラチンゲル中に封入され得る。
【0561】
本明細書に記載の医薬組成物浜田、インビボおよび/または局所投与に好適な1種または複数の、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸、およびチメロサールなどの保存剤を組み込むことができる。加えて、組成物の持続的吸収は、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤組成物中で使用することにより生じさせ得る。本明細書に記載のLck活性化剤または核酸を含む錠剤、トローチ剤、丸薬、カプセル剤などはまた、1種または複数の次記を含むことができる:トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチまたはゼラチンなどの結合剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプンまたはアルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;スクロース、ラクトースまたはサッカリンなどの甘味剤;および香味料。
【0562】
医薬組成物中での上述の成分および媒体の使用は、よく知られている。任意の従来の媒体または成分が本明細書に記載のLck活性化剤と適合しない場合を除いて、本明細書に記載の治療および予防医薬組成物中でのそれらの使用が含まれる。
【0563】
本明細書で使用される場合、「併用療法」は、同じまたは異なる経路による他の薬物と同じまたは異なる配合物中の本発明によるLck活性化剤または核酸の事前の、同時のまたは逐次の投与を意味し、それによりLck活性化剤および/または核酸は、重なり合う治療濃度域中でそれらの効果を発揮する。
【0564】
投与および投与量の均一性の達成を容易にするために、非経口組成物を投薬単位形態で処方することが特に好ましい。本明細書で使用される場合、投与単位剤形は、治療すべき対象にとって単位投与量として適する物理的に別々の単位を意味し、各単位が、使われる適切な担体および/または賦形剤と共同して所望の治療または予防効果を生じるように計算された、所定量の少なくとも1種の本発明によるLck活性化剤または核酸を含む。投与単位剤形が、例えば、カプセル剤、錠剤または丸薬である場合、種々の成分は、投与単位の物理的形態を別の状態に変えるための、または対象への投与を容易にするためのコーティング(例えば、シェラック、糖類またはその両方)として使用され得る。
【0565】
医薬組成物は通常、少なくとも約1重量%の本明細書に記載のLck活性化剤を含む。パーセンテージは変わってもよく、通常は、組成物または製剤の約5重量%〜約80重量%であり得る。この場合も、本発明によるLck活性化剤または核酸の量は、提案された投与経路を考慮して、好適な有効投与量が対象に送達されるような量である。好ましい経口医薬組成物は、約0.1μg〜15gのLck活性化剤を含む。
【0566】
本発明によるLck活性化剤または核酸の投与量は、Lck活性化剤または核酸が予防的用途で投与さるのかまたは治療的用途で投与されるのか、意図される薬剤投与の疾患、状態または目的、疾患または状態の重症度、対象の年齢、ならびに対象の体重および認められた原則に従って医師または看護助手により決定され得る総体的な健康などの関連因子を含む多くの因子に依存する。例えば、低投与量が初期に投与され、これはその後、対象の応答の評価後に投与毎に増大される。同様に、投与頻度は、同様の方法で、すなわち、各投与間で対象の応答を継続的に監視し、さらに必要に応じて、投与頻度を増やす、あるいは投与頻度を減らすことにより、決定され得る。
【0567】
通常、本明細書に記載のLck活性化剤は、本発明により実施される方法に従って投与されて、最大約100mg/kgの個々の体重、より一般的には、最大約50mg/kg体重、および最も一般的には、約5mg/kg〜40mg/kg体重の範囲のLck活性化剤の投与量を与える。少なくともいくつかの実施形態では、Lck活性化剤は、約5〜25mg/kg体重の範囲、通常約5mg/kg〜約20mg/kgの範囲、および最も一般的には、約10mg/kg〜20mg/kgの範囲のLck活性化剤の投与量を与えるように投与される。経口投与される場合には、1日当たり最大約20gのLck活性化剤が投与され得る(例えば、1日当たり4経口用量で、各用量は5gのLck活性化剤を含む)。
【0568】
静脈内経路については、特に好適な経路は、Lck活性化剤または核酸の血管中への全身分布のための注射を介するもので、これは、治療されるべき組織または特定の臓器に供給する。さらに、Lck活性化剤は、任意の好適な注入または灌流技術により送達できる。Lck活性化剤または核酸(例えば、細菌由来ミニ細胞中に添加された発現ベクター)はまた、例えば、胸膜腔または腹膜腔などの腔中に送達されるか、または治療される組織中に直接注射される。
【0569】
本明細書で記載の方法で有用な好適なクローニングおよび発現ベクターおよびそれらの作製および送達のための方法は、当業者によく知られたマニュアルおよびハンドブックに記載されており、例えば、Ausubel et al.(1994)Current Protocols in Molecular Biology,USA,Vol.1 and 2,John Wiley & Sons,1992;Sambrook et al(1998)Molecular cloning:A Laboratory Manual,Second Ed.,Cold Spring Harbour Laboratory Press 1989,New York,ならびにリプリントおよびその最新情報を参照されたい。これらの内容は、相互参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。同様に、本明細書に記載の組成物で有用な好適な薬学的に許容可能な担体および配合物は、例えば、当業者に周知のハンドブックおよびテキスト、例えば、”Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Mack Publishing Co.,1995)”、ならびにその任意のリプリントおよび最新情報で見つけることができる。細胞の遺伝子導入および核酸挿入断片のインビボ発現の方法およびプロトコルは、例えば、国際公開第2006/31996号、同第2006/31689号、同第2006/29981号、同第2006/29005号、米国特許出願公開第2006/0063731号、同第2006/0063924号に記載されている。全ての前述の刊行物、上記マニュアルおよびハンドブックは、相互参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0570】
本明細書に記載のように治療される哺乳動物は、本発明により治療可能な任意の哺乳動物であり得る。例えば、哺乳動物は、ウシ、ブタ、ヒツジまたはウマファミリーのメンバー、マウス、ウサギ、モルモット、ネコまたはイヌなどの臨床試験動物、または霊長類もしくはヒトであり得る。通常、哺乳動物はヒトである。
【0571】
本発明の別の態様は、本明細書で言及される疾患および/または状態(加齢関連変化を含む)を治療するおよび/または予防することにおける使用のための薬物の製造における本明細書で記載のLck活性化ポリペプチドの使用を提供する。
【0572】
本発明の別の態様は、本明細書で言及される疾患および/または状態(加齢関連変化を含む)を治療するおよび/または予防することにおける使用のための、本明細書で記載のLck活性化ポリペプチドの使用を提供する。
【0573】
本発明は、多くの非限定的実施例により以降でさらに説明される。
【0574】
実施例
実施例1:インビトロでのポリアルギニンポリペプチドによるリンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(Lck)の活性化。
Lckを活性化する本発明のポリペプチドの能力をインビトロで調査した。Lckは、チロシンキナーゼのSrcファミリーのメンバーである。インビトロLck活性化キナーゼ試験を、ペプチド基質(KVEKIGEGTYGVVYK)および片対数用量範囲の試験ポリペプチドの存在下で、15μMの見かけのKm内のATP濃度を用いて、Eurofins Pharma Discovery Services UK Limited(Dundee Technology Park,Dundee,United Kingdom)で実施した。全ての結果は、対照(100%)に対するパーセンテージLck活性である。
【0575】
試験ポリペプチドを、1.0μMの濃度で評価した。
図1は、4、5、または6個の連続したアルギニン残基を含むポリペプチドが1μMのペプチド濃度でLckを活性化しないことを示す。
【0576】
10個の連続したヒスチジン残基(デカヒスチジンペプチド;10His)を含むペプチドを1μMの濃度で使用した場合、Lck活性の増大は観察されなかった。
【0577】
10個の連続したオルニチン残基(デカオルニチンペプチド;10Orn)を含むペプチドを1μMの濃度で使用した場合、無視できる程度のLck活性が観察された。
【0578】
しかし、意外にも、例えば、8〜20個の連続したアルギニン残基を含むポリペプチドは、Lckを活性化できる。8、9、10、12、14、20個の連続したアルギニン残基を含むポリペプチドは、1μMのペプチド濃度でLckを活性化する。
【0579】
例えば、12マーのアルギニン配列(IK01200)はLckを活性化し、対照に対して、401%のLck活性化をもたらす。
【0580】
図1はまた、10個の連続したリシン残基(デカリシンペプチド;10Lys)が1μMのペプチドの濃度でLck活性を161%増大させると見出されたことを示す。
【0581】
図1は、連続したDアルギニン残基を含むペプチドが1μMのペプチド濃度でLckを活性化することを示す。例えば、8マーのアルギニン配列(IKD00800)は、Lckを活性化し、対照に対し80%のLck活性をもたらす。14マーのアルギニン配列(IKD1400)はLckを活性化し、対照に対し228%のLck活性化をもたらす。
【0582】
図1はまた、連続したアルギニン残基および連続したヒスチジン残基を含むペプチドが1μMのペプチド濃度でLckを活性化することを示す。例えば、9マーのアルギニン配列および10マーのヒスチジン配列(IK00910)はLckを活性化し、対照に対し348%のLck活性化をもたらす。
【0583】
重要なことに、
図1はまた、アニオン性残基を含むペプチドもLckを活性化することも示す。例えば、9マーのアスパラギン酸配列(IKD9;DDDDDDDD)は、1μMのペプチド濃度でLckを活性化しない。
【0584】
このデータは、本発明のペプチドがリンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(Lck)を活性化することを示す。
【0585】
実施例2:ポリアルギニンおよびポリリシンポリペプチドによる選択的リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(Lck)活性化。
Srcファミリーキナーゼを活性化する本発明のポリペプチドの能力をインビトロで調査した。ペプチドを利用したキナーゼ活性化試験を、実施例1に記載のように実施し、全てのキナーゼ活性値を、対照に対するパーセンテージとして示す。
【0586】
図2は、Lckは、
図1のポリアルギニンLck活性化ポリペプチドにより選択的に活性化され、Lck以外のSrcファミリーキナーゼ(SFK)は、1μMのペプチド濃度でポリアルギニンおよびポリリシンペプチドにより活性化されないことを示す。実施例1および
図1と一致して、デカヒスチジンペプチド(10His)は、この濃度でLckの活性化をなんら誘導しなかった。このデータは、Lck活性化ペプチドが選択的にLckを活性化し、Blk、cSRC、Fgr、Fyn、Hck、LynまたはYesを活性化しないことを示す。
【0587】
実施例3:Lck活性化ポリアルギニンポリペプチドは、Lckリン酸化を増大させ、Lck活性化ポリアルギニンポリペプチドは、Y394でのLckリン酸化を増大させる。
LckのTyr394のリン酸化は、Lckキナーゼを活性化する高次構造開口部(conformational opening)を生じる。
【0588】
ウェスタンブロット調査を、Eurofins Pharma Discovery Services UK Limited(Dundee,United Kingdom)により実施した。簡単に説明すると、Lck(h)を、標準的KinaseProfiler(登録商標)反応条件(Eurofins Pharma Discovery Services UK Limited)および15μMのK
m内のATP濃度を用いて試験ペプチドの存在下でインキュベートした。反応を室温で40分間進行させた後、SDSサンプルバッファーの添加により停止させた。それぞれの場合で、Lck酵素を25μlの反応当たり20ngが得られるように希釈した。化合物およびペプチドの非存在下での適切な対照、ならびにLck(h)およびLck(h)活性化キナーゼ両方の未処理試料も同様に実験した。その後、得られた試料を、SDS−PAGEおよび、抗体4G10(抗リン酸化チロシン抗体)(
図3参照)および抗pY394 Lck(R&D Systems MAB7500)(
図2参照)を用いるウェスタンブロット分析に供した。二次検出抗体(抗マウスHRP)を用いて追加のブロットも実施した。膜をPonceau Sにより染色し、試料装填および効果的タンパク質転写を確認した。4G10抗体は、一般的な抗リン酸化チロシン抗体であり、Lck中にはいくつかのチロシン残基が存在するが、自己リン酸化チロシン残基がただ1個、すなわち、Y394の位置に存在する。従って、抗py394抗体は、Lckの自己リン酸化を特異的に検出する。試料は以下の通りであった(数字は、ゲルのレーンに対応する):
1.分子量マーカー
2.標準Lck
3.標準Lck+ペプチド基質+ATP(試験ペプチドなし)
4.標準Lck−ペプチド基質+ATP(試験ペプチドなし)
5.標準Lck+ATP+10Argペプチド(IK00100;1μM(ペプチド基質なし)
6.標準Lck+ATP+10Argペプチド(IK00100;10μM(ペプチド基質なし)
7.標準Lck+ATP+8Argペプチド(IK00800;1μM(ペプチド基質なし)
8.標準Lck+ATP+8Argペプチド(IK00800;10μM(ペプチド基質なし)
9.10Arg(IK00100)(10μM)(試験ペプチドのみ)
10.8Arg(IK00800)(10μM)(試験ペプチドのみ)
ウェスタンブロットプロトコルのステップは以下の通りであった:
SDS−PAGEゲル: 200Vで50分
ウェスタンブロット転写: 25Vで90分
膜: ニトロセルロースプレカットブロッティング膜
0.2μm細孔径(LC2000(Life Tech))
ポンソー染色: 5%酢酸中の0.1%ポンソーS(w/v)
膜を10mLのPBSTおよび10%BSAで1時間ブロックし、その後、一次および二次抗体を適用した。
【0589】
一次抗体:
1.PBST中の抗4G10(Millipore 05−777)1/1000、4℃で一晩インキュベーション後、4x20mLのPBSTで洗浄。
2.PBST中の抗py394Lck(R&D Systems)1/2500、4℃で一晩インキュベーション後、4x20mLのPBSTで洗浄。
【0590】
二次抗体:
PBST中の抗マウスhrp(Sigma A5278)1/5000、室温でスパイラルシェーカ上にて5時間4x20mLのPBSTで洗浄。検出をSuperSignal ELISA Pico化学発光基質−37070(Pierce)で行った。
【0591】
抗リン酸化チロシン4G10抗体による検出は、
図3Aに示すようにレーン2〜8の全レーンでバンドを得た。レーン1の標準Lckが微弱バンドをもたらしたことは、いくらかの内在性Lckリン酸化を示唆する。ATPの存在下でのインキュベーションは、自己リン酸化と一致するバンドの強度の増大をもたらしたが、インキュベーションにおけるペプチド基質KVEKIGEGTYGVVYKの存在は、自己リン酸化の程度に大きく影響するようには見えなかった(レーン3〜4参照)。試験ペプチド(8Arg:RRRRRRRR(IK00800);または10Arg:RRRRRRRRRR(IK00100))の存在下でのインキュベーションは、Lckで観察されるリン酸化のレベルの顕著な増大をもたらした。さらに、リン酸化のレベルは、試験ペプチド濃度の増大と共に増大した(レーン5〜8参照)。対応するバンドはレーン9および10(試験ペプチドのみ)では認められない。
【0592】
このデータは、Lckを選択的に活性化するポリアルギニンポリペプチドがLckの自己リン酸化を高めることを示す。このデータはまた、ポリアルギニンポリペプチドが用量依存的にLckの自己リン酸化を高めることを示す。
【0593】
図3Bでの発色したウェスタンブロットは、抗pY394抗体により検出されたY394の位置のLckの自己リン酸化に関して得られた結果を示す。図から分かるように、標準Lckレーン(レーン2)はバンドを示さず、チロシンY394位置での内在性Lckリン酸化がないことを示している。ペプチド基質KVEKIGEGTYGVVYKのある場合とない場合のATPの存在下でのインキュベーションは、バンドの強度の増大をもたらさなかった(レーン3〜4)。試験ペプチドの存在下でのインキュベーションは、Lckのアミノ酸位置Y394で検出されるリン酸化レベルの顕著な増大をもたらした。この場合も、リン酸化のレベルは、試験ペプチド濃度の増大と共に増大した(
図3Bのレーン5〜8参照)。対応するバンドはレーン9または10で認められず、試験ペプチド8Arg(IK00800)および10Arg(IK00100)との交差反応性がないことを示している。
【0594】
このデータは、Lckを選択的に活性化するポリアルギニンポリペプチドがY394でLckの自己リン酸化を高めることを示す。このデータはまた、ポリアルギニンポリペプチドが用量依存的にY394でのLckのリン酸化を高めることを示す。
【0595】
実施例4:ポリアルギニンポリペプチドによるインビトロLck活性化の増強
Lckをインビトロで活性化するリシンおよびアルギニンの両方を含むポリペプチドの能力を調査した。ペプチドを利用するLck活性化試験を、実施例1に記載のように実施し、全てのキナーゼ活性値を、対照に対するパーセンテージとして示す。
【0596】
図4は、ポリペプチドRSKAKNPLY(IK09400)およびRSKAKNPLYR(IK14000)が1μMでLckを活性化しないことを示す。同様に、このポリペプチドのより短い誘導体は、Lck活性化を示さないか、無視できる程度の活性化しか示さない。
例えば、RSKAKおよびRSKAK−RRは、対照に対しわずか5%のLckの活性化を示す。
【0597】
図4は、非Lck活性化ポリペプチドが
図1に記載のLck活性化ポリペプチドに融合されると、融合体は驚くべきことに、Lckを活性化できるのみでなく、Lck活性化の予想外の強化が観察される。例えば、非Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLYが、
図1で示す選択的にLckを活性化する9個の連続したアルギニン残基を含むポリペプチド(RRRRRRRRR;325%)に融合されると、得られたRSKAKNPLY−RRRRRRRRR融合体は、増大したLck活性化(496%)を示す。
【0598】
図4から分かるように、Lck活性化は、ペプチドRSKAK単独について、または1〜4個のアルギニン残基に結合された場合は、観察されなかったか、または無視できる程度観察された。同様に、ペプチドRSKAKNPLYまたはRSKAKNPLYR単独について、またはペプチドRSKAKNPLYが4個のアルギニン残基配列に結合された場合は、Lck活性化は観察されなかった。しかし、ペプチドRSKAKNPLYが5個の近接するポリアルギニン残基(ペプチドIK14400)に結合された場合は、中程度のレベルのLck活性化が観察された(85%)。類似の結果が、RSKAKNPLY−RRRRRR(IK14500)(82%)により得られ、および全てDアミノ酸からなるデキストロ−レベルソ(dextro−reverso)ペプチドrskaknply−rrrrrr(ID94600)の場合は、これはLck活性の60%の増大を誘導した。
【0599】
意外にも、
図4にも示すように、Lck活性のかなりの増大が、ペプチドRSKAKNPLY−RRRRRがシステインアミノ酸のペプチドの各末端への結合(すなわち、ペプチドC−RSKAKNPLY−RRRRR−C:IK4500C)(221%)により環化された場合、またはより長いポリアルギニン配列がペプチドRSKAKおよびRSKAKNPLYに結合された場合に得られた。類似のLck活性化のかなりの増大がまた、より長いポリアルギニンがレベルソまたはデキストロ−レベルソ型のペプチドRSKAKNPLYに結合された場合にも得られた。例えば、ペプチドRSKAK−RRRRRRRRR(IK50900)では531%のLck活性の増大が観察され、RRRRRRRRR−YLPNKAKSR(IK9R94Y)では630%のLck活性の増大が得られ、ならびにrskaknply−rrrrrrrrrr(IKD14800)およびrrrrrrrrr−ylpnkaksr(IKR81400)では、それぞれ、490%および616%のLck活性の増大が得られた。
【0600】
さらに、ペプチドRRRRRRRRR−SKAKNPLYR(IK9R94S)では、Lck活性の542%の大幅な増大が得られた。
図4にも示すように、Lck活性のわずかな増大が、ポリカチオン配列KKKKKKKKKまたはRHHHHHHHHHHをペプチドRSKAKNPLY(ペプチドIK94K90およびIK14010参照)(それぞれ、49%および30%)ペプチドに結合した場合に得られ、Lck活性化/刺激は、ポリリシンおよびポリヒスチジン配列よりも、ポリアルギニン配列により、より大きな程度で強化されることを示す。
【0601】
Lck活性の大幅な増大がまた、ペプチドRSKAKNPLYを2個または3個の近接しているポリカチオン配列(すなわち、それぞれ、ポリアルギンまたはポリヒスチジン配列からなる)に結合した場合、または
図4および
図5で示されるように、反復RKアミノ酸カプレットを含むポリカチオン配列に結合した場合に得られた。実際に、883%および899%のLck活性の増大が、ペプチドIK11480およびIK14810で、それぞれ得られた。Lck活性の大幅な増大はまた、分岐ペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR−HHHHHHHHHH(Br IK14810)でも保持された。
【0602】
さらに、Lck活性の大幅な増大が、
図5で認められるように、ペプチドRVKVKVVVV(IK95000)単独によりまたは5〜9個の範囲の近接アルギニンアミノ酸残基で試験したポリアルギニン配列に結合された場合に得られた。その表でまた示すように、類似のLck活性の増大がペプチドRRRRRRRR−RVKVKVVVV−R(IK80150)で得られた。
【0603】
RVKVKVVV(IK95000)がポリアルギニンおよびポリヒスチジン配列の組み合わせに結合される、または反復アルギニンおよびヒスチジン(RH)カプレットを含むポリカチオン配列に結合される場合の、ペプチドLckの刺激に対する結果も
図5に記載される。この場合も、Lck活性の大幅な増大が観察され、ペプチドRVKVK−RRRRRRRRR−HHHHHHHHHH(IK50810)の場合で、ペプチド対照の活性の778%のLck活性の増大が観察された。
【0604】
これらの結果は、意外にも、非Lck活性化ポリペプチド(例えば、RSKAKNPLY)が、1μMのLck活性化ポリアルギニンポリペプチド(例えば、RRRRRRRRR)を含む、本発明のLck活性化ポリペプチドにより、Lck活性化を強化できることを示す。
【0605】
実施例5:Lck活性化融合ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRRおよびRSKAKNPLY−RRRRRRRRR−(2Adod)
4−NH
2は、Lckを用量依存的に活性化する。
図6は、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(「IK14800」)およびRSKAKNPLY−RRRRRRRRR−(2Adod)
4−NH
2(「IK14804」)は、Lckを用量依存的に活性化することを示す。「(2Adod)
4」は、4個の2−アミノドデカン酸を意味する。
【0606】
実施例6:Lck活性化ポリペプチドは、ヒトTリンパ球(ジャーカット)細胞株でのIL−2分泌を増大させる。
IL−2分泌を変えるLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。
簡単に説明すると、野性型ジャーカット細胞(ヒトTリンパ球細胞の不死化系)を、抗CD28抗体およびアビジンの存在下で、ビオチン化抗CD3抗体への暴露により刺激した。培養期間(48時間または72時間)中、細胞を試験ポリペプチドに暴露した。細胞上清を、48時間または72時間の終わりに、上述の標準的な市販ELISAキットを用いてIL−2についてアッセイした。
【0607】
図7Aは、Lck活性化ポリペプチド「IK00900」RRRRRRRRRが、48時間の暴露後、野性型ジャーカット細胞中で対照に比較してIL−2分泌を誘導することを示す。
【0608】
図7Bは、Lck活性化ポリペプチド「IK14800」RSKAKNPLY−RRRRRRRRRが、72時間の暴露後、野性型ジャーカット細胞中で対照に比較してIL−2分泌を誘導することを示す。
【0609】
これらのデータは、本発明のLck活性化ポリペプチドは、ヒトT細胞株のIL−2分泌を誘導でき、IL−2分泌は、非刺激ジャーカット細胞中で誘導されないことを示す。
【0610】
実施例7:Lck活性化ポリペプチドは単離ヒトCD4+およびCD8+T細胞からのIL−2分泌を増大させる。
単離ヒトCD4+およびCD8+T細胞からのIL−2分泌に対するLck活性化ポリペプチドの効果を調査した。
簡単に説明すると、CD4+およびCD8+T細胞を健康なヒトPBMCから単離し免疫磁気的に分離した。IL−2のレベルを、Lck活性化融合ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRRの存在下で、48時間にわたる抗CD3および抗CD28刺激後に調査した。
【0611】
図8は、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(「IK14800」)が、単離ヒトCD4+およびCD8+T細胞中で、対照に比較してIL−2分泌を誘導することを示す。
【0612】
実施例8:Lck活性化ポリペプチドは単離ヒトCD3+T細胞からのIL−2分泌を増大させる。
単離T細胞(CD3+T細胞)からのIL−2分泌に対するLck活性化ポリペプチドの効果を調査した。
簡単に説明すると、単離T細胞(CD3+)を、抗CD3/抗CD28Dynabeads(登録商標)で刺激し、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(「IK14800」)、RVKVKVVVV−RRRRRRRRR(「IK15800」)、およびDアミノ酸のみを含むRVKVKVVVV−RRRRRRRRR(すなわち、rvkvkvvvv−rrrrrrrrr;「IKD15800」)の5種の濃度範囲+ビークル対照(0〜1.25μM)と一緒に、72時間培養し、その後、上清を集めて、ELISAによりIL−2についてアッセイした。
【0613】
図9は、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR、RVKVKVVVV−RRRRRRRRR、およびDアミノ酸のみを含む、RVKVKVVVV−RRRRRRRRR(すなわち、rvkvkvvvv−rrrrrrrrr)が、単離ヒトT細胞中で、対照と比較してIL−2分泌を誘導することを示す。
【0614】
刺激されたCD4+T細胞アッセイにおいて、CD4+T細胞からのIL−2分泌に対するLck活性化ポリペプチドの効果も調査した。簡単に説明すると、単離CD4+T細胞を、抗CD3/抗CD28Dynabeads(登録商標)で刺激し、5種の濃度範囲のLck活性化ポリペプチドRRRRRRRRR(「IK00900」)およびRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(「IK14800」)+ビークル対照(0〜1.25μM)と一緒に、24時間培養した後、上清をELISAによりIL−2およびIFN−γについて評価した。Lck活性化ポリペプチドRRRRRRRRRおよびRSKAKNPLY−RRRRRRRRRは、刺激T細胞アッセイにおいて、ヒトCD4+T細胞中で対照に比較して、IL−2分泌を誘導する(データは示さず)。これらのデータは、本発明のLck活性化ポリペプチドが、刺激ヒトCD4+T細胞からのIL−2分泌を誘導できることを示す(データは示さず)。
【0615】
実施例9:Lck活性化ポリペプチドは、ヒトTリンパ球(ジャーカット)細胞株中のIL−2Rα(CD25)発現を増大させる。
T細胞株上のIL−2Rα(CD25)発現に対するLck活性化ポリペプチドの効果を調査した。
簡単に説明すると、野性型ジャーカット細胞(1x10
6細胞)を、上記のように標準的RPMI媒体および10%胎児の仔ウシ血清中で、非刺激でまたはPMA(50ng/ml)およびイオノマイシンで刺激して、96時間にわたり培養した。細胞を
図10に記載した試験ペプチド(2.5μM濃度)に、全体で96時間の培養期間にわたり暴露し、細胞ライセート中のIL−2Rαレベルを上記の標準的な市販のELISAフォーマットを用いて測定した。
【0616】
図10は、IL−2Rα(CD25)の発現が、刺激細胞をペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(「IK14900」)、HHHHH−RSKSKNPLY−RRRRRRRRR(「IK11480」)、RSKAKNPLY−RRRRRRRRR−HHHHHHHHHHHH(「IK14820」)、特に、ペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(「IK14800」)に暴露した場合に増大したことを示す。
【0617】
これらのデータは、本発明のLck活性化ポリペプチドが、ヒトT細胞株上のIL−2Rαの発現を誘導できることを示す。
【0618】
実施例10:Lck活性化ポリペプチドは、再刺激時に、疲弊したCD4+細胞上のIL−2Rα(CD25)発現を増大させる。
T細胞疲弊は、T細胞機能の段階的および進行性消失を特徴とし、結果的に応答細胞の物理的欠損に至り得る。インターロイキン2(IL−2)産生は、失われる最初のエフェクター作用の1つであり、その後に、腫瘍壊死因子α(TNFα)産生の消失が続き、一方、インターフェロンγ(IFN−γ)を産生する能力は、不活性化に対してより高い抵抗性がある。
【0619】
1μMでLckを活性化しないペプチドIK14000(RSKAKNPLYR)、およびLck活性化融合ポリペプチドIK14800(RSKAKNPLY−RRRRRRRRR)およびIKD14800(rskaknply−rrrrrrrrr)の、IL−2Rα発現に対する効果を調査した。
【0620】
マウスモデル(Tg4 Ly5.1(MBPトラッカーマウス)、B10PlxC57BL/6)を用いるCD4+T細胞疲弊アッセイを使用して、CD4+T細胞受容体遺伝子導入T細胞を野性型ミエリン塩基性タンパク質ペプチド(WT−MBP)で刺激し、完全応答性エフェクターT細胞を産生する、または改変ペプチドリガンド−ペプチドMBP(APL−MBP)で刺激し、疲弊T細胞を産生する。これらを、IL−2中で静置しその後、調査下のいずれかの処理と共にAPC、単一用量のAPL−MBPペプチドで二次刺激する。
【0621】
細胞培養手順
上述のマウスから脾臓を取り出し、処理して脾細胞の単細胞懸濁液を生成した。MBPトラッカー脾細胞を3x10
6/mLで再懸濁し、WT−MBP(対照、非疲弊細胞)またはAPL−MBP(疲弊細胞を生成するために)で刺激した。細胞を72時間刺激した。刺激後、T細胞をフィコール密度勾配により精製し、その後、20U/mLのIL−2中で2x10
6/mLで4日間再播種した。この静置期間の終わりに、細胞を再懸濁し(4x10
5/mL、最終2x10
4/ウェル)、照射APC(B10PLxC57BL/6マウス、4x10
6/mL、最終濃度2x10
5細胞/ウェル)、単一用量のAPL−MBPペプチドおよび一連の濃度の試験ペプチドを用いて再刺激した。培養の48〜72時間後、細胞をフローサイトメトリーによりIL−2Rαおよび増殖マーカー(それぞれ、CD25およびKi−67)について評価し、上清をELISAまたは多重化イムノアッセイによるサイトカイン産生(IFN−γおよびTNF−α)の評価のために集めた。
【0622】
細胞を72時間後に、培養物中でCD25を評価するためのフローサイトメトリー用に染色した(MFI、最上段、発現および頻度のレベルを示す、最下段)。生存可能集団内から、CD4+細胞に注目するために細胞にゲートをかけ、その後、CD25+集団にゲートをかけた。
【0623】
図11は、CD25の発現が、Lck活性化融合ポリペプチドIK14800(RSKAKNPLY−RRRRRRRRR)およびIKD14800(rskaknply−rrrrrrrrr)で再刺激時に、疲弊CD4+T細胞中で増大することを示す。このデータは、Lck活性化ポリペプチドが、再刺激された疲弊T細胞における生理学的制御の結果(例えば、IL−2Rα発現)を強化できることを示している。
【0624】
実施例11:Lck活性化ポリペプチドは、チェックポイント阻害からヒトT細胞株をレスキューする。
免疫系の過剰活性化を防ぐために、プログラム死1(PD−1)経路はT細胞活性化を制御するためのチェックポイントとして機能する。リガンドPD−L1およびPD−L2がPD−1受容体に結合すると、この経路が活性化され、T細胞活性化および増殖の逆抑制であるT細胞の「疲弊」が生じる。本発明のLck活性化融合ポリペプチドの能力を、PD−L1により誘導されたチェックポイント阻害からヒトT細胞をレスキューする能力について調査した。
簡単に説明すると、ジャーカット細胞を、抗CD3抗体付着培養皿に暴露してプログラム細胞死受容体1(PD−1)の表面発現を誘導することにより活性化し、添加物の非存在下で、またはペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR−NH
2(2.5μMのIK14800)単独で、細胞中のチェックポイント阻害を誘導するために5μg組換えPD−L1(PD−1に対するリガンド)単独で、またはIK14800ペプチド+組換えPD−L1と共に、48時間培養した。IL−2Rα(CD25)を、上述の市販の標準的ELISAキットにより細胞ライセート中で測定した。
【0625】
上記で示したデータと一致して、
図12は、CD3刺激された細胞(PD−L1の非存在下で)が、本発明のLck活性化融合ポリペプチドで処理した場合、増大したレベルのCD25発現を有したことを示す。
【0626】
重要なことに、
図12は、RSKAKNPLY−RRRRRRRRR−NH
2の添加が、PD−1/PD−L1相互作用により誘導されるIL−2Rαの抑制をレスキューしたことを示す。
このデータは、本発明のLck活性化融合ポリペプチドが、PD−L1により誘導されたチェックポイント阻害からヒトT細胞をレスキューできることを示す。
【0627】
実施例12:Lck活性化ポリペプチドは、抗CD3刺激されたCD4+細胞およびCD8+細胞上のIL−2Rα(CD25)発現を増大させる。
抗CD3刺激されたPBMC由来のCD4+およびCD8+T細胞上のIL−2Rα(CD25)発現に対するLck活性化ポリペプチドの効果を調査した。新たに単離したPBMCを、示した濃度(μM)の本発明によるLck活性化ポリペプチド;RSKAKNPLY−RRRRRRRRR−NH
2(「IK14800」)の存在下で24時間、抗CD3(1μg/mL)含有または非含有(−aCD3)で刺激した。
【0628】
図13は、抗CD3で刺激されるとCD4+およびCD8+T細胞中でIL−2Rα(CD25)の発現が増大することを示す。
このデータは、Lck活性化ペプチドがCD4+およびCD8+T細胞中のIL−2Rα発現を強化することを示す。
【0629】
実施例13:Lck活性化ポリペプチドは、ヒトTリンパ球(ジャーカット)細胞株でのIL−12分泌を増大させる。
IL−12分泌を変えるLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。簡単に説明すると、野性型ジャーカット細胞(ヒトTリンパ球細胞の不死化系)を、抗CD28抗体およびアビジンの存在下で、ビオチン化抗CD3抗体への暴露により刺激した。培養期間(48時間)中、細胞を試験ポリペプチドに暴露した。細胞上清を、上述の標準的な市販ELISAキットを用いて48時間の終わりにIL−12についてアッセイした。
【0630】
図14Aは、Lck活性化融合ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRRが、48時間の暴露後に野性型ジャーカット細胞中で対照に比較してIL−12分泌を誘導することを示す。Lck活性化ポリペプチドRRRRRRRRRもまた、48時間の暴露後に野性型ジャーカット細胞中で対照に比較してIL−12分泌を誘導する(データは示さず)。このデータは、本発明のLck活性化ポリペプチドが、ヒトT細胞株でのIL−12の分泌を誘導できることを示す。
【0631】
IL−12分泌を変えるLck活性化ポリペプチドの能力におけるLckの役割も調査した。簡単に説明すると、Lck欠損ジャーカット細胞(J.Cam 1.6)を、抗CD28抗体およびアビジンの存在下で、ビオチン化抗CD3抗体への暴露により刺激した。培養期間(48時間)中、細胞を試験ポリペプチドに暴露した。細胞上清を、上述の標準的な市販ELISAキットを用いて48時間の終わりにIL−12についてアッセイした。
【0632】
図14Bは、対照と比較してジャーカット細胞でのIL−12分泌を誘導するLck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)の能力が、Lckの存在により強化されることを示す。このデータは、Lck活性化融合ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRRによるヒトT細胞株でのIL−12分泌が、Lckの存在により強化されることを示す。
【0633】
実施例14:Lck活性化ポリペプチドは、刺激されたPBMCでのIL−12分泌を増大させる。
IL−12(IL−12p70)分泌を変えるLck活性化ポリペプチドの能力をさらに調査した。簡単に説明すると、抗CD3刺激PBMCを、抗CD40L阻止抗体の存在下または非存在下で24時間、Lck活性化ポリペプチドRVKVKVVVV−RRRRRRRRR(「IK15800」)、RSKAKNPLY−RRRRRRRRR(「IK14800」)、ならびにDアミノ酸のみを含むRVKVKVVVV−RRRRRRRRRおよびにRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(それぞれ、「IKD15800」および「IKD14800」)と共に培養した。上清をELISAによりIL−12p70レベルについて評価した。
【0634】
図15は、Lck活性化ポリペプチドRVKVKVVVV−RRRRRRRRRおよびRSKAKNPLY−RRRRRRRRR、ならびにDアミノ酸のみを含むRSKAKNPLY−RRRRRRRRRおよびRVKVKVVVV−RRRRRRRRR(それぞれ、「IKD15800」および「IKD14800」)が、IL−12の産生を抑制する抗CD40L阻止抗体の存在下で抗CD3刺激PBMCに比較して抗CD3刺激PBMCのIL−12分泌を誘導することを示す。
これらのデータは、本発明のLck活性化ポリペプチドが、PBMCでIL−12p70分泌を誘導できることも示す。
【0635】
IL−12(IL−12p70)分泌を変えるLck活性化ポリペプチドの能力をペプチドなしと比較して調査した。簡単に説明すると、PBMCを24時間または72時間、抗CD3(1μg/ml)およびLck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRRまたはRVKVKVVVV−RRRRRRRRRと一緒に培養した。上清をELISAによりIL−12p70レベルについて評価した。
【0636】
図16は、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)が、24時間で(および72時間で;データは示さず)ペプチドなしと比較してIL−12p70分泌を誘導することを示す。Lck活性化ポリペプチドRVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)は、72時間でペプチドなしと比較してIL−12p70分泌を誘導した(データは示さず)。
【0637】
実施例15:Lck活性化ポリペプチドは、刺激されたPBMCでのIL−12Rβ2分泌を増大させる。
IL−12受容体サブユニットベータ2(IL−12Rβ2)発現を変えるLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。
【0638】
抗CD3刺激されたPBMCを72時間、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)+ビークル対照と共に培養した後、CD4+T細胞およびNK細胞(CD3
negCD56+細胞)をフローサイトメトリーによりIL−12Rβ2発現について評価した。
【0639】
図17は、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRRが、NK細胞集団(CD3
negCD56+細胞)中でIL−12Rβ2発現を誘導することを示す。Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRRはまた、CD4+T細胞集団中でIL−12Rβ2発現を誘導した(データは示さず)。
【0640】
実施例16:Lck活性化ポリペプチドは、刺激されたCD4+T細胞中のIL−21R発現を高めない。
刺激されたCD4+T細胞アッセイにおいて、CD4+T細胞上のIL−21R(CD360)発現に対するLck活性化ポリペプチドの効果を調査した。簡単に説明すると、単離CD4+T細胞を、抗CD3/抗CD28Dynabeads(登録商標)で刺激し、Lck活性化ポリペプチドRRRRRRRRRおよびRSKAKNPLY−RRRRRRRRRと一緒に培養した後、細胞を、フローサイトメトリーによりIL−21R発現について評価した。Lck活性化ポリペプチドRRRRRRRRR(IK00900)およびRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)は、ヒト刺激CD4+T細胞中のIL−21R発現を高めない(データは示さず)。
【0641】
実施例17:Lck活性化ポリペプチドは、IFN−γ分泌を誘導する。
ヒトPBMCによるIFN−γ分泌を変えるLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。簡単に説明すると、抗CD3刺激PBMCを48時間、Lck活性化ポリペプチドRRRRRRRRR、RVKVKVVVV−RRRRRRRRRおよびRSKAKNPLY−RRRRRRRRRと共に培養した後、上清を集め、ELISAによりIFN−γについて評価した。Lck活性化ポリペプチドRRRRRRRRR、RVKVKVVVV−RRRRRRRRRおよびRSKAKNPLY−RRRRRRRRRは、ペプチドなし対照と比較して、IFN−γ分泌を誘導する(データは示さず)。
【0642】
刺激CD4+T細胞アッセイにおいて、単離ヒトCD4+T細胞によるIFN−γ分泌を変えるLck活性化ポリペプチドの能力も調査した。簡単に説明すると、単離CD4+T細胞を、抗CD3/抗CD28Dynabeads(登録商標)で刺激し、Lck活性化ポリペプチドRRRRRRRRR(IK00900)およびRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)と一緒に、24時間培養した後、上清をELISAによりIFN−γについて評価した。
図18は、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRRが、ペプチドなし対照と比較して、IFN−γ分泌を誘導することを示す。Lck活性化ポリペプチドRRRRRRRRRは、ペプチドなし対照と比較して、IFN−γ分泌を誘導した(データは示さず)。
【0643】
刺激CD8+T細胞アッセイにおいて、単離ヒトCD8+T細胞によるIFN−γ分泌を変えるLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。簡単に説明すると、単離CD8+T細胞を、抗CD3/抗CD28Dynabeads(登録商標)で刺激し、Lck活性化ポリペプチドRRRRRRRRR(IK00900)およびRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)と一緒に、24時間培養した後、上清をELISAによりIFN−γについて評価した。Lck活性化ポリペプチドRRRRRRRRRおよびRSKAKNPLY−RRRRRRRRRは、ペプチドなし対照と比較して、IFN−γ分泌を誘導した(データは示さず)。これらのデータは、本発明のLck活性化ポリペプチドが、刺激ヒトCD8+T細胞によるIFN−γの分泌を誘導できることを示す。
【0644】
実施例18:Dアミノ酸を含むLck活性化ポリペプチドは、刺激されたヒトCD4+およびCD8+T細胞によるIFN−γ分泌を誘導する。
刺激CD8+T細胞アッセイにおいて、単離ヒトCD8+T細胞によるIFN−γ分泌を変えるDアミノ酸含有Lck活性化ポリペプチドの能力を調査した。
簡単に説明すると、単離CD8+T細胞を、抗CD3/抗CD28Dynabeads(登録商標)で刺激し、Lck活性化ポリペプチドDアミノ酸のみを含むRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IKD14800)と一緒に、24時間培養した後、上清をELISAによりIFN−γについて評価した。
図19は、Lck活性化ポリペプチドのDアミノ酸のみを含むRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IKD14800)が、ペプチドなし対照と比較して、刺激ヒトCD8+T細胞によるIFN−γ分泌を誘導することを示す。
【0645】
刺激CD4+T細胞アッセイにおいて、単離ヒトCD4+T細胞によるIFN−γ分泌を変えるDアミノ酸含有Lck活性化ポリペプチドの能力も調査した。簡単に説明すると、単離CD4+T細胞を、抗CD3/抗CD28Dynabeads(登録商標)で刺激し、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)、またはLck活性化ポリペプチドDアミノ酸のみを含むRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IKD14800)と一緒に、24時間培養した後、上清をELISAによりIFN−γについて評価した。Lck活性化ポリペプチドのDアミノ酸のみを含むRSKAKNPLY−RRRRRRRRRは、Lアミノ酸のみを含むRSKAKNPLY−RRRRRRRRRと同様に、ペプチドなし対照と比較して、刺激ヒトCD4+T細胞によるIFN−γ分泌を誘導する(データは示さず)。
【0646】
実施例19:Lck活性化ポリペプチドは、刺激されたCD8+T細胞アッセイにおいてCD8+T細胞の増殖を増大させる。
刺激CD8+T細胞アッセイにおいて、単離ヒトCD8+T細胞の増殖を誘導するLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。簡単に説明すると、単離CD8+T細胞を、抗CD3/抗CD28Dynabeadsで刺激し、Lck活性化ポリペプチドDアミノ酸のみを含むRSKAKNPLY−RRRRRRRRRと一緒に、24時間培養した後、CD8+T細胞をフローサイトメトリーによりKi67発現について評価した。Ki67は、所与の細胞集団、この場合CD8+細胞の成長画分を測定する増殖マーカーである。
図20は、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)が、ヒトCD8+T細胞の増殖集団を増大させることを示す。
【0647】
実施例20:Lck活性化ポリペプチドは、PBMC内のCD8+T細胞およびCD3
negCD56
+NK細胞の増殖を増大させる。
PBMC内の単離ヒトCD8+T細胞の増殖を誘導するLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。簡単に説明すると、抗CD3刺激PBMCを、Lck活性化ポリペプチドRRRRRRRRR(IK00900)およびRVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)と一緒に、72時間培養した後、CD8+T細胞をフローサイトメトリーによりKi67発現について評価した。Ki67は、所与の細胞集団、この場合CD8+細胞の成長画分を測定する増殖マーカーである。
図21は、Lck活性化ポリペプチドRVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)が、ヒトCD8+T細胞の増殖集団を増大させることを示す。
【0648】
PBMC内の単離ヒトCD3
negCD56
+NK細胞の増殖を誘導するLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。簡単に説明すると、抗CD3刺激PBMCを、Lck活性化ポリペプチドrvkvkvvvv−rrrrrrrrr(IKD15800)と一緒に、72時間培養した後、CD3
negCD56
+NK細胞をフローサイトメトリーによりKi67発現について評価した。Ki67は、所与の細胞集団、この場合CD3
negCD56
+NK細胞の成長画分を測定する増殖マーカーである。Lck活性化ポリペプチドrvkvkvvvv−rrrrrrrrr(IKD15800)は、ヒトCD3
negCD56
+NK細胞の増殖集団を増大させた(データは示さず)。
【0649】
Lck活性化ポリペプチドrvkvkvvvv−rrrrrrrrr(IKD15800)はまた、CD25陽性であったヒトCD3
negCD56
+NK細胞集団、CD215陽性であったヒトCD3
negCD56
+NK細胞集団、およびCD360陽性であったヒトCD3
negCD56
+NK細胞集団も増大させた(データは示さず)。
【0650】
実施例21:Lck活性化ポリペプチドは、CD8+およびCD4+T細胞中のCD28発現を高める。
CD28発現を変えるLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。簡単に説明すると、抗CD3刺激PBMCを、Lck活性化ポリペプチドRVKVKVVVV−RRRRRRRRRおよびRSKAKNPLY−RRRRRRRRRと一緒に、72時間培養した後、細胞をフローサイトメトリーによりCD28発現について評価した。
【0651】
図22Aは、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)が、ペプチドなし対照に比べて、CD8+T細胞中のCD28発現を誘導することを示す。
【0652】
図22Bは、Lck活性化ポリペプチドRVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)およびRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)が、ペプチドなし対照に比べて、CD4+T細胞中のCD28発現を誘導することを示す。
【0653】
実施例22:Lck活性化ポリペプチドは、PBMC上のIL−15R発現およびPBMCからのIL−15分泌を高める。
PBMCでのCD4+T細胞上のCD215(IL−15R)発現に対するLck活性化ポリペプチドの効果を調査した。簡単に説明すると、PBMCを、抗CD3(1μg/ml)刺激および5種の濃度範囲(0〜1.25μM)のRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)と共に、72時間培養した後、細胞をフローサイトメトリーによりCD215(IL−15R)の発現について評価した。Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRRは、ヒト刺激CD4+T細胞上のIL−15R発現を高めた(データは示さず)。
【0654】
刺激されたCD8+T細胞アッセイにおいて、CD8+T細胞上のIL−15Rの発現およびCD8+T細胞からのIL−15分泌に対するLck活性化ポリペプチドの効果も調査した。簡単に説明すると、PBMCを、5種の濃度範囲(0〜1.25μM)の、抗CD3(1μg/ml)刺激Lck活性化ポリペプチドRVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)およびRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)と共に培養した。上清を集め、ELISAによりIL−15について評価した。
図23Aは、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)が、CD8+T細胞上のIL−15R発現を高めることを示し、
図23Bは、Lck活性化ポリペプチドRVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)がCD8+T細胞からのIL−15分泌を増大させることを示す。
図23Cは、Lck活性化ポリペプチドRVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)が、ヒト刺激CD8+T細胞上のIL−15R発現も増大させることを示す。
【0655】
実施例23:Lck活性化ポリペプチドは、PBMC内のCD28+CD8+T細胞の増殖を増大させる。
PBMCの増殖を誘導するLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。簡単に説明すると、抗CD3刺激PBMCを、Lck活性化ポリペプチドRVKVKVVVV−RRRRRRRRRおよびRSKAKNPLY−RRRRRRRRRと一緒に、72時間培養した後、細胞をフローサイトメトリーによりKi67発現について評価した。Ki67は、所与の細胞集団、この場合CD28+/CD8+細胞の成長画分を測定する増殖マーカーである。
【0656】
図24は、Lck活性化ポリペプチドRVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)およびRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)が、ヒトCD28+/CD8+T細胞の増殖集団を増大させることを示す。
【0657】
実施例24:Lck活性化ポリペプチドはCD4+およびCD8+T細胞上のIL−18Rα発現を増大させる。
刺激CD4+およびCD8+T細胞アッセイにおいて、CD4+およびCD8+T細胞上のIL−18Rα発現に対するLck活性化ポリペプチドの効果を調査した。簡単に説明すると、単離CD8+T細胞を、抗CD3/抗CD28Dynabeads(登録商標)で刺激し、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR、およびDアミノ酸のみを含むRSKAKNPLY−RRRRRRRRRと一緒に、24時間培養した後、細胞をフローサイトメトリーによりIL−18Rα発現について評価した。Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)、およびDアミノ酸のみを含むRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IKD15800)は、ヒト刺激CD8+T細胞上のIL−18Rα発現を高める(データは示さず)。
【0658】
単離CD4+T細胞を、抗CD3/抗CD28Dynabeads(登録商標)で刺激し、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR、およびDアミノ酸のみを含むRSKAKNPLY−RRRRRRRRRと一緒に、24時間培養した後、細胞をフローサイトメトリーによりIL−18Rα発現について評価した。Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)、およびDアミノ酸のみを含むRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IKD15800)は、ヒト刺激CD4+T細胞上のIL−18Rα発現を高める(データは示さず)。
【0659】
実施例25:Lck活性化ポリペプチドは、CD4+およびCD8+T細胞中のpSTAT4発現を変える。
刺激T細胞アッセイにおいて、CD4+およびCD8+T細胞中の細胞内pSTAT4発現に対するLck活性化ポリペプチドの効果を調査した。簡単に説明すると、単離T細胞(CD3+)を、抗CD3/抗CD28Dynabeads(登録商標)で刺激し、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR、RVKVKVVVV−RRRRRRRRR、およびDアミノ酸のみを含むRVKVKVVVV−RRRRRRRRRの5種の濃度範囲+ビークル対照(0〜1.25μM)と一緒に、72時間培養し、その後、上清を集めて、フローサイトメトリーによりp-STAT4発現についてアッセイした。
【0660】
Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)、RVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)、およびDアミノ酸のみを含むRVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IKD15800)は、ヒト刺激CD4+T細胞上のp−STAT4発現を高める(データは示さず)。
【0661】
実施例26:Lck活性化ポリペプチドはヒトPBMC内の制御性T細胞のパーセンテージを低減する。
ヒトPBMC中の制御性T細胞に対するLck活性化ポリペプチドの効果を調査した。簡単に説明すると、抗CD3刺激PBMCを、Lck活性化ポリペプチドRVKVKVVVV−RRRRRRRRRおよびRSKAKNPLY−RRRRRRRRRと一緒に、48時間培養した後、Treg集団を、CD4+CD25+CD127
low集団中の細胞のFoxp3+比率を測定することにより決定した。Lck活性化ポリペプチドRVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)およびRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)は、Treg(Foxp3+)の比率を低減させた(データは示さず)。
【0662】
実施例27:CD40Lは、CD14
negCD11c
+樹状細胞表現型を増強する。
単離未成熟DC細胞培養物中の樹状細胞表現型(CD14発現)に対するCD40Lの効果を調査した。簡単に説明すると、未成熟単球由来DC(iMoDC)を、MoDC分化培地中で7日間培養した単離CD14+単球から誘導した。iMoDCをCD40L(5μg/mL)および抗CD3(1μg/mL)の存在下で72時間培養した。72時間後、細胞をフローサイトメトリーによりCD14およびCD11c発現について評価して、DC細胞表現型を決定した。CD40Lは、CD14negCD11c
+樹状細胞の比率を高めた(データは示さず)。
【0663】
単離未成熟DC培養物中の樹状細胞DC細胞表現型(CD14発現)に対する試験ペプチドの効果も調査した。
簡単に説明すると、未成熟単球由来DC(iMoDC)を、Mo−DC分化培地中で7日間培養した単離CD14+単球から誘導した。iMoDCを、5点濃度曲線にわたり試験ペプチドの存在下で、+ビークル(0〜1.25μM)および抗CD3(1μg/mL)で72時間培養した。72時間後、細胞をフローサイトメトリーによりCD14およびCD11c発現について評価して、DC細胞表現型を決定した。提示データは、ペプチド治療に応答したCD11c陽性集団内のそれぞれのCD14陽性または陰性細胞集団(%)の平均、±SEM、n=4を示す。データを、それぞれのペプチド濃度をビークルと比較するダネット事後検定を伴うRM2元配置分散分析により解析した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0664】
Lck活性化ポリペプチドRVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)およびRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)は、CD14陰性樹状細胞集団を増大させた(データは示さず)。
【0665】
実施例28:Lck活性化ポリペプチドは、刺激T細胞アッセイにおいてCD4+およびCD8+T細胞上のIL−12Rβ2発現を増大させる。
T細胞上のIL−12受容体サブユニットベータ2(IL−12Rβ2)発現を変えるLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。
簡単に説明すると、単離T細胞(CD3+)を、抗CD3/抗CD28Dynabeads(登録商標)で刺激し、5種の濃度範囲のRVKVKVVVV−RRRRRRRRR+ビークル対照(0〜1.25μM)と共に、72時間培養した後、CD4+およびCD8+T細胞をフローサイトメトリーによりIL−12Rβ2発現について評価した。
【0666】
図25は、Lck活性化ポリペプチドRVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)が、CD4+およびCD8+T細胞中のIL−12Rβ2発現を誘導することを示す。
【0667】
実施例29:Lck活性化ポリペプチドは、刺激PBMCアッセイにおいてNK細胞上のIL−2Rβ(CD122)発現を増大させる。
NK細胞上のIL−2受容体サブユニットベータ2(IL−2Rβ)発現を変えるLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。
簡単に説明すると、健康なドナー由来のPBMCを、試験ペプチド(0.08〜1.25μM)またはビークル対照の存在下で、抗CD3(1μg/mL)で72時間刺激した。培養期間の最後に、細胞を集め、フローサイトメトリーによりCD3
negCD56
+/dimNK細胞内のIL−2Rβ(CD122)について評価した。
【0668】
図26は、Lck活性化ポリペプチドRVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)およびRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)が、CD3
negCD56
+/dimNK細胞中でIL−2Rβ発現を誘導することを示す。
【0669】
実施例30:Lck活性化ポリペプチドは、CD8+細胞集団の増殖を誘発する。
PBMC内のCD8+細胞集団の増殖を誘発するLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。
簡単に説明すると、健康なドナー由来のPBMCまたは単離CD8+T細胞を、TCR+IL−2を介して、RVKVKVVVV−RRRRRRRRR(0.08〜1.25μM)またはビークル対照の存在下で)10日間刺激した。培養期間の最後に、細胞を集め、フローサイトメトリーによりCD8+細胞比率について評価した。
【0670】
図27は、Lck活性化ポリペプチドRVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)が、PBMC内のCD8+細胞集団の増殖を誘発することを示す。
【0671】
実施例31:Lck活性化ポリペプチドはCD4+T細胞によるIL−21産生を誘導する。
CD4+T細胞によるIL−21産生を誘導するLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。
簡単に説明すると、CD4+T細胞を単離し、抗CD3/抗CD28刺激およびRSKAKNPLY−RRRRRRRRRの存在下で24時間または48時間培養した。培養の最後に、上清をELISAでIL−21について評価した。
【0672】
図28は、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)が、CD4+T細胞によるIL−21産生を誘導することを示す。
【0673】
実施例32:抗原刺激の前に提供されるLck活性化ポリペプチドは、ヒトTリンパ球(ジャーカット)細胞株でのIL−2分泌を誘導する。
ヒトTリンパ球(ジャーカット)細胞株によるIL−2産生を誘導するLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。
簡単に説明すると、500万個の細胞をT25フラスコ中に播種し、上記表に示すように種々の濃度のRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)で1時間処理した後、細胞懸濁液を遠心分離し、新鮮培地で2回洗浄した。500μLの培地中のビオチン−抗CD3およびアビジン(5:1.25μg)の混合物を12ウェルプレートのウェルに加えた。10分後、細胞をウェル当たり100万個の濃度で播種し、細胞懸濁液を、培地を用いて2mLの体積にした。その後、試料を抗CD28(5μg/mL)でさらに刺激し、37℃で48時間インキュベートした後、上清(100μL、n=3)をELISAでIL−2含量について分析した。
【0674】
図29は、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)が、抗原刺激の前に投与される場合、その後の刺激時に、ヒトT細胞株によるIL−2産生を誘導することを示す。
【0675】
実施例33:マウスに投与されたLck活性化ポリペプチドは、ルイス肺癌マウス(転移モデル)中でCD4+CD28+T細胞を誘導する。
マウス中のCD4+CD28+T細胞を誘導するLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。
簡単に説明すると、ATCCから入手したルイス肺癌細胞をDMEM中で70%コンフルエンスに増殖し、剥離させ、PBSで洗浄した。0日目に、各マウスは、0.5x10
6個のLLC細胞を静脈内注射により尾静脈中に投与を受けた。治療(IK14800を、200μlの水中の250μgの投与量で)を週2回I.P.投与した(細胞導入後、1、4、8、および11日目)。細胞接種の15日後、マウスを安楽死させ、脾臓を取り出して、上記プロトコル(イタリック体)で詳細に記載のように単細胞懸濁液を生成した。単離脾細胞細胞懸濁液を次に、フローサイトメトリーによりCD4、CD8、NK1.1、CD28、CD215およびpSTAT4の発現について評価した。
【0676】
図30は、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)が、ルイス肺癌マウスの脾細胞中の、CD28発現CD4+T細胞のパーセンテージ、およびCD4+T細胞上のCD28の相対発現を高めることを示す。
【0677】
Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)はまた、ルイス肺癌マウスの脾細胞中のNK細胞上のCD25の相対発現を高める。
【0678】
本発明者らはまた、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)が、ヒト肺癌腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のCD25+MFIおよびCD25+CD57+MFIにより測定される、TILから単離したCD57+NK細胞中のCD25発現を誘導することを示した。簡単に説明すると、RSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)は1.25μMで治療時に、CD25発現を増大させた。
【0679】
実施例34:ルイス肺癌マウス(転移モデル)に投与されたLck活性化ポリペプチドは、脾細胞中でCD28およびCD215発現CD8+T細胞を誘導する。
マウス中のCD28およびCD215発現CD8+T細胞を誘導するLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。
【0680】
ATCCから入手したルイス肺癌細胞をDMEM中で70%コンフルエンスに増殖し、剥離させ、PBSで洗浄した。0日目に、各マウスは、0.5x10
6個のLLC細胞を静脈内注射により尾静脈中に投与を受けた。治療(IK14800を、200μlの水中の250μgの投与量で)を週2回I.P.投与した(細胞導入後、1、4、8、および11日目)。細胞接種の15日後、マウスを安楽死させ、脾臓を取り出して、上記プロトコル(イタリック体)で詳細に記載のように単細胞懸濁液を生成した。単離脾細胞細胞懸濁液を次に、フローサイトメトリーによりCD4、CD8、NK1.1、CD28、CD215およびpSTAT4の発現について評価した。
簡単に説明すると、脾細胞をRSKAKNPLY−RRRRRRRRRで治療したルイス肺癌マウスから単離し、治療したルイス肺癌マウスのCD28+CD8+細胞の比率を調査した。
【0681】
図31は、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)が、ルイス肺癌マウスの脾細胞中の、CD215(IL−15R)発現CD8+T細胞およびCD4+細胞上のCD28発現のパーセンテージを高めることを示す。
【0682】
実施例35:マウスに投与されたLck活性化ポリペプチドは、NK細胞上のpSTAT4の発現を高める。
マウスでのpSTAT4発現を誘導するLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。
【0683】
ATCCから入手したルイス肺癌細胞をDMEM中で70%コンフルエンスに増殖し、剥離させ、PBSで洗浄した。0日目に、各マウスは、0.5x10
6個のLLC細胞を静脈内注射により尾静脈中に投与を受けた。治療(IK14800を、200μlの水中の250μgの投与量で)を週2回I.P.投与した(細胞導入後、1、4、8、および11日目)。細胞接種の15日後、マウスを安楽死させ、脾臓を取り出して、上記プロトコル(イタリック体)で詳細に記載のように単細胞懸濁液を生成した。単離脾細胞懸濁液を次に、フローサイトメトリーによりCD4、CD8、NK1.1、CD28、CD215およびpSTAT4の発現について評価した。
簡単に説明すると、脾細胞をRSKAKNPLY−RRRRRRRRRで治療したルイス肺癌マウスから単離し、治療したルイス肺癌マウスのNK細胞上のpSTAT4の発現を調査した。
【0684】
図32は、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)が、ルイス肺癌マウスの脾細胞中の、NK細胞上のpSTAT4の発現を高めることを示す。
【0685】
実施例36:アニオン性残基を含むペプチドは、Lckを活性化しない。
Lckを活性化するアニオン性残基を含むペプチドの能力を調査した。
図33は、ポリペプチドDDDDDDDDDが、Lckの活性を高めないことを示す。
【0686】
実施例37:Lck活性化ポリペプチドは、ヒトTリンパ球(ジャーカット)細胞株でのIL−2分泌を増大させる。
IL−2分泌を変えるLck活性化ポリペプチドの能力におけるLckの役割も調査した。
簡単に説明すると、12ウェルプレートをPBS(200μL)中で作製した抗CD3(5μg/mL)溶液でコートし、37℃で一晩インキュベートした。翌日、抗CD3溶液を吸引し、ウェルを培地(1mL、10分)で2回穏やかに洗浄した。ジャーカット細胞(WTおよびLck欠損)をウェル当たり100万個の濃度で抗CD3コート12ウェルプレートに播種し、抗CD28(5mg/mL)でさらに刺激し、即座に、IK14800)(2.5μM)で処理した。細胞を24時間インキュベートした後、上清をELISAでIL−2について分析した。
【0687】
図34は、対照と比較してジャーカット細胞でのIL−2分泌を誘導するLck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)の能力が、Lckに依存することを示す。このデータは、Lck活性化融合ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRRによるヒトT細胞株でのIL−2分泌が、Lckに依存することを示す。
【0688】
実施例38:Lck活性化ポリペプチドは、刺激された場合にのみヒトTリンパ球(ジャーカット)細胞株でのIL−2分泌を増大させる。
刺激の存在下または非存在下で、ヒトTリンパ球(ジャーカット)細胞株によるIL−2産生を誘導するLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。
簡単に説明すると、12ウェルプレートをPBS(200μL)中で作製した抗CD3(5μg/mL)溶液でコートし、37℃で一晩インキュベートした。その後、抗CD3溶液を吸引し、ウェルを培地で2回穏やかに洗浄した(1mL、10分)。ジャーカット細胞をウェル当たり100万個の濃度で播種し、抗CD28(5μg/mL)でさらに刺激した後、即座に、RSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)(2.5μM)で処理した。細胞を72時間インキュベートした後、上清をELISAでIL−2について分析した。
【0689】
図35は、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)での処理によるIL−2産生の増大は、抗原刺激がない場合には、起こらないことを示す。
【0690】
実施例39:Lck活性化ポリペプチドによるルイス肺癌マウス(異種移植片モデル)での腫瘍量の抑制。
ルイス肺癌(LLC)マウスの腫瘍量を低減させるLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。
【0691】
ルイス肺癌細胞株を約70%集密度まで培養した後、細胞を集め、計数して、5x10
6/mLで無菌HBSS中に再懸濁させた。C57BL/6の右脇腹に1x10
6細胞(100μl)を皮下注射した。腫瘍細胞移植の5日後に、マウスを、2つの群間で平均腫瘍サイズがほぼ等しくなるように、ランダムに治療群に割り付けた。RVKVKVVVV−RRRRRRRRR(200μl中200μg)またはビークル(水)を、腫瘍細胞移植後10日目から、ビークル治療群で腫瘍の直径が平均10mmに達するまで、週2回(月曜と木曜)腹腔内(i.p)に投与した。腫瘍を、デジタルノギスを用いて週3回(月曜、水曜、および金曜)、治療群に関して知らされていない技術者により測定した。ビークル群の平均腫瘍サイズが直径10mmに達すると、マウスを頸椎脱臼により屠殺し、腫瘍および脾臓を収集した。
【0692】
腫瘍を、2mLのコラゲナーゼD(2mg/mL、Roche Lot# 28960126)およびDNアーゼI(100μg/mL、Sigma Lot# SLBV1446)を含むRPMI−1640中に入れ、機械的に消化した後、80rpmの振盪インキュベーター中、37℃で30分間インキュベートした。消化腫瘍試料を70μmのストレーナーを通し、氷冷RPMI−10で2回洗浄した。試料を遠心分離し、赤血球溶解を実施した後、洗浄し、RPMI−10に再懸濁させた。腫瘍細胞をトリパンブルー色素排除により計数し、免疫細胞マーカーCD45(AF700)について染色した。
【0693】
図36は、腹腔内に投与された場合、RVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)が、対照と比較して、腫瘍塊の平均面積を低減させることを示す。
【0694】
実施例40:脂肪酸に結合されたLck活性化ポリペプチドは、ヒトTリンパ球(ジャーカット)細胞株からのIL−2分泌を増大させる。
IL−2分泌を変える脂肪酸に結合されたLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。
簡単に説明すると、細胞をウェル(12ウェルプレート、2mL体積)当たり100万個で播種し、ビオチン−CD3、CD28、およびアビジン(5:5:1.25μg)で刺激した。細胞を次に、IK14804で処理した後、37℃で48時間インキュベートした。その後、上清(100μL、n=3)をIL−2含量について分析した。
【0695】
図37は、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR−(2Adod)
4−NH
2(IK14804)が、48時間の暴露後、野性型ジャーカット細胞中で対照に比較してIL−2分泌を誘導することを示す。
これらのデータは、本発明の脂肪酸結合Lck活性化ポリペプチドが、ヒトT細胞株のIL−2分泌を誘導できることを示す。
【0696】
実施例41:Lck活性化ポリペプチドは、ヒトTリンパ球(ジャーカット)細胞株でのIL−12分泌を増大させる。
IL−12分泌を変える脂肪酸結合Lck活性化ポリペプチドの能力を調査した。
簡単に説明すると、細胞をウェル(12ウェルプレート、2mL体積)当たり100万個で播種し、ビオチン−CD3、CD28、およびアビジン(5:5:1.25μg)で刺激した。次に、細胞をIK14800、IK15800、IK14804およびIK15804で処理した。細胞を次に、37℃で48時間インキュベートした。その後、上清(100μL、n=3)をIL−12含量について分析した。
【0697】
図38は、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)、RVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)、RSKAKNPLY−RRRRRRRRR−(2Adod)
4−NH
2(IK14804)およびRVKVKVVVV−RRRRRRRRR−(2Adod)
4−NH
2(IK15804)が、48時間の暴露後に野性型ジャーカット細胞中で対照に比較して、IL−2分泌を誘導することを示す。
【0698】
実施例42:Lck活性化ポリペプチドは、細胞膜中のUVB脂質過酸化を抑制する。
細胞膜中の脂質過酸化を変えるLck活性化ポリペプチドの能力を調査した。
【0699】
簡単に説明すると、酸化剤は、脂質構造を変えることができ、マロンジアルデヒドの形成をもたらす過酸化脂質を生じ、マロンジアルデヒドは、チオバルビツル酸反応性物質(TBARS)として測定できる。
【0700】
皮膚線維芽細胞および/またはケラチノサイトの照射または疑似照射後に、試験ペプチドを加え、90分間インキュベートした後、上清(900μL)を収集した。90μLのブチルヒドロキシトルエン(エタノール中の2%w/w)を加え、試料をTBARSアッセイまで凍結(−20℃)保持した。ペトリ皿を1mLのHBSSで2回洗浄し、細胞を600μLの水中にかき落とし、60μLの0.5%水性トリトンX100をこの溶液に加え、タンパク質測定をローリー法により実施した(Lowry OH et al,J.Biol.Chem.,1951,193:265−275)。TBARSは、記載されるように蛍光定量アッセイである(Morliere P et al,Biochim.Biophys.Acta,1991,1084:261−268)。手短に説明すると、解凍のために、試料を酸性条件にて、チオバルビツル酸の存在下で加熱し、TBARSを1−ブタノールで抽出し、蛍光定量により定量した(λexc=515nmおよびλem=550nm)。アッセイ条件でマロンジアルデヒド−チオバルビツル酸付加物を定量的に生じるテトラエトキシプロパンを、較正に使用する。マロンジアルデヒド(MDA)当量で表されるTBARS値を、各ペトリ皿の細胞タンパク質に正規化する。各TBARS測定を、3回繰り返して実施する(例えば、データポイント当たり3個のペトリ皿を用いて)。
【0701】
図39は、RSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)が、%TRSを用量依存的に低減させることを示す。
【0702】
実施例43:RSKAKNPLY−RRRRRRRRRは、Y394の位置でLckのリン酸化を増大させる。
上記で考察したように、LckのTyr394のリン酸化は、Lckキナーゼを活性化するLckの構造的開口を生じる。
【0703】
ウェスタンブロット試験を以下のように実施した。
細胞型:ジャーカット野生型
細胞数:5x10
5/ml
培地:RPMI−1640培地(Sigma、R8758)、1X ペニシリン−ストレプトマイシン(Sigma、100X、P0781)、10%FBS
ペプチド:IK14800(RSKAKNPLY−RRRRRRRRR)
ペプチド濃度:1μM
ペプチド曝露時間:2時間
細胞溶解溶液:
(100μl/ウェル/30分:氷上)
RIPAバッファー(Sigma、R0278):97μl
プロテアーゼ阻害剤カクテル(P8340):1.5μl
ホスファターゼ阻害剤カクテル2(Sigma、P5726):1.5μl
タンパク質アッセイ:Pierce(商標)BCA Protein Assay Kit(#23225)
ゲル:NuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)4〜12% Bis−Tris Gels(Life Technologies、NP0335BOX)、 20μgのタンパク質をロード
ランニングバッファー(1x):NuPAGE(登録商標)MOPS SDS Running Buffer(Life Technologies,NP0001)
転写ブロット:iBlot(登録商標)Transfer Stack、ニトロセルロース、Novex,mini(Life Technologies,IB3010−32)
ブロッキング溶液:TBS Blotto B(Santa Cruz,SCZSC−2335)
一次抗体:p−Lck(Tyr394)、ウサギポリクローナル抗体(Santa Cruz,sc−101728)、1/200希釈、4℃で一晩;抗Lck抗体[Y123]、ウサギモノクローナル抗体(Abcam、ab32149)、1/1000希釈、4℃で一晩
二次抗体:ヤギ抗ウサギIgG−HRP(sc−2004)、1/5000希釈、1時間
ECL:Amersham ECL Prime Western Blotting Detection Reagent
【0704】
図40は、RSKAKNPLY−RRRRRRRRRが、ペプチド対照のない場合に比べて、抗pY394抗体により検出されるLckのY394の位置でリン酸化を増大させるが、合計Lckのレベルは、変化しないままであることを示す。
このデータは、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRRがLckを選択的に活性化し、Lckの自己リン酸化を高めることを示す。
【0705】
実施例44:ポリペプチドRSKAKNPLYRおよびRSKAKNPLYは、ヒトTリンパ球(ジャーカット)細胞株でのIL−2分泌を増大させ、およびrskaknplyは、ヒトTリンパ球(ジャーカット)細胞株でのIL−12分泌を高めるが、RSKAKNPLYRは、IL−12分泌を高めない。
IL−2およびIL−12分泌を変えるポリペプチドRSKAKNPLYR(「14000」)、RSKAKNPLY(「IK94000」)およびrskaknply(「IKD94000」)の能力を調査した。
簡単に説明すると、野性型ジャーカット細胞(ヒトTリンパ球細胞の不死化系)を、抗CD28抗体およびアビジンの存在下で、ビオチン化抗CD3抗体への暴露により刺激した。細胞をウェル(12ウェルプレート、2mL体積)当たり100万個で播種し、ビオチン−CD3、抗CD28、およびアビジン(5:5:1.25μg)で刺激した。次に、細胞を試験ペプチドで処理した後、37℃で48時間インキュベートした。その後、上清(100μl、n=3)をIL−2およびIL−12含量について分析した。培養期間(48時間)中、細胞を試験ポリペプチドRSKAKNPLYR−(2Adod)
4−NH
2に暴露した。細胞上清を、上述の標準的な市販ELISAキットを用いて48時間の終わりにIL−2およびIL−12についてアッセイした。
【0706】
図41Aは、ポリペプチドRSKAKNPLYRおよびRSKAKNPLYが、ヒトTリンパ球(ジャーカット)細胞株でのIL−2分泌を増大させることを示す。
【0707】
図41Bは、rskaknplyは、ヒトTリンパ球(ジャーカット)細胞株でのIL−12分泌を増大させるが、RSKAKNPLYRは分泌を増大させないことを示す。
【0708】
多くの本発明の実施形態が上で説明されてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな修正および変更がなされ得ることは理解されよう。上記の実施形態は、従って、例示に過ぎず、限定するものと解釈されるべきではない。
【0709】
実施例44:Lck活性化ペプチドは、PBMC共培養でのカルセイン−AM染色K562細胞の特異的細胞毒性パーセンテージを高める。
細胞傷害性応答を誘導するLck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)、RVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)、RSKAKNPLY−RRRRRRRRR−(2Adod)
4−NH
2(IK14804)およびRVKVKVVVV−RRRRRRRRR−(2Adod)
4−NH
2(IK15804)の能力を調査した。
簡単に説明すると、PBMCを48時間インキュベートした後、ヒト組換えIFN−α2A(5ng/mL)による刺激のある場合とない場合のカルセインAM染色K562細胞と共に4時間共培養した。上清を、GloMax(登録商標)Discoverを用いてカルセイン緑蛍光強度について評価し、特異的細胞毒性パーセンテージを計算した。 示したデータは、平均特異的細胞毒性パーセンテージ±SEM、n=4を示す。データを、ビークル対照と比較して対応のあるt検定により分析した。*p<0.05。
【0710】
PBMCを48時間、Lck活性化ポリペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)、RVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)、RSKAKNPLY−RRRRRRRRR−(2Adod)
4−NH
2(IK14804)およびRVKVKVVVV−RRRRRRRRR−(2Adod)
4−NH
2(IK15804)(0.08〜1.25μM)を含んでまたは含まずに前処理し、カルセインAM染色K562細胞と5:1の比率で共培養し、さらに4時間インキュベートした。上清を、GloMax(登録商標)Discoverを用いてカルセイン緑蛍光強度について評価し、特異的細胞毒性パーセンテージを計算した。 示したデータは、平均特異的細胞毒性パーセンテージ±SEM、n=4を示す。データを、ビークル対照によるペプチド処理と比較する、ホルム−シダックの事後検定を伴う反復測定2元配置分散分析により分析した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【0711】
Lck活性化ペプチドRSKAKNPLY−RRRRRRRRR(IK14800)、RVKVKVVVV−RRRRRRRRR(IK15800)、RSKAKNPLY−RRRRRRRRR−(2Adod)
4−NH
2(IK14804)およびRVKVKVVVV−RRRRRRRRR−(2Adod)
4−NH
2(IK15804)は、IFN−α2Aで観察されたものより高いレベルに、PBMC共培養でのカルセイン−AM染色K562細胞の特異的細胞毒性パーセンテージを高めた(データは示さず)。