(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-524037(P2021-524037A)
(43)【公表日】2021年9月9日
(54)【発明の名称】熱及び電力を発生させるイオンビームデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
G21B 3/00 20060101AFI20210813BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20210813BHJP
【FI】
G21B3/00 B
G21B3/00 A
H05H1/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2020-564670(P2020-564670)
(86)(22)【出願日】2019年5月11日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月29日
(86)【国際出願番号】AU2019050441
(87)【国際公開番号】WO2019217998
(87)【国際公開日】20191121
(31)【優先権主張番号】2018901635
(32)【優先日】2018年5月13日
(33)【優先権主張国】AU
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520443778
【氏名又は名称】クアンタム スプリング リサーチ ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM SPRING RESEARCH PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル ブレイク
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA12
2G084AA21
2G084BB23
2G084CC14
(57)【要約】
プラズマチャンバー106において低電力プラズマ107からのイオンビームの密度、焦点及び速度を制御することによって熱及び電力を発生させるデバイス及び方法であって、プラズマチャンバーからイオンビーム111が反応チャンバー103へと抽出され、任意にターゲット102が濃縮されてターゲットの水素化物となり、上記ターゲット内で熱及び任意に常温核融合反応を開始して持続させ、上記反応から熱エネルギーを回収して(105)、加熱を起こし及び/又は電力を発生させ(119)、任意に、追加の熱が必要とされない場合に、ターゲットを追加のイオン燃料で補充し、及び/又は追加のターゲット材料を堆積させ、一方で、加熱及び任意の濃縮/堆積及び常温核融合サイクルの間に、チャンバーから余剰の燃料を抽出し、必要に応じて燃料源109からの任意の燃料副生成物と再結合させた後に、燃料源として再使用する、デバイス及び方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分真空に保持された反応チャンバー(103)においてターゲット(102)内で常温核融合反応を発生させるためのコントローラー(101)を備えるデバイス(
図1)であって、プラズマチャンバーからイオンビームを供給して前記ターゲットへと衝突させることで常温核融合が発生し、前記反応からの熱は、熱交換機構(105)によって第2の一連のデバイス(104)に伝達され、場合により前記第2の一連のデバイスは前記熱を電気へと変換するものもあれば、場合により前記熱を直接使用するものもあり、ここで、改善点としては、前記反応チャンバーに接続された前記プラズマチャンバー(106)においてプラズマ(107)を生成して持続させる低電力マイクロ波(108)、前記プラズマチャンバーに燃料を供給するために前記プラズマチャンバーに接続されている燃料容器(109)、前記コントローラーが第1に常温核融合のための前記ターゲットの濃縮と第2に常温核融合の開始及び持続(401〜409)とを繰り返し交互に行う方法、並びに両方のチャンバーから未使用の燃料を抽出して再循環させて、前記燃料容器及び/又は前記プラズマチャンバーに供給される燃料として再び使用するためのデバイス(110)が含まれる、デバイス。
【請求項2】
反応チャンバー(103)においてターゲット(102)内で常温核融合反応を発生させるためのコントローラー(101)を備えるデバイス(
図1)であって、前記反応からの熱は、熱交換機構(105)によって第2の一連のデバイス(104)に伝達され、場合により前記第2の一連のデバイスは前記熱を電気へと変換するものもあれば、場合により前記熱を直接使用するものもあり、ここで、改善点としては、前記反応チャンバーにより、前記ターゲット(102)内で常温核融合を生成するイオンビーム(111)が、前記反応チャンバーに取り付けられたプラズマチャンバー(106)に取り付けられたマイクロ波デバイス(108)によって生成された低エネルギー低温プラズマ(107)から抽出されること、前記プラズマが、前記反応チャンバーに前記イオンビームを供給するために前記プラズマチャンバーに取り付けられた燃料容器(109)によって燃料供給されることが含まれ、前記反応チャンバー及びその取り付けられたプラズマチャンバーから未使用の燃料を抽出して前記燃料容器又は前記プラズマチャンバーのいずれかに再循環させて、再び燃料として使用するためのデバイス(110)を更に含む、デバイス。
【請求項3】
イオンビームが引き出される部分真空に保持されたプラズマチャンバーにおいてプラズマを発生させて、前記プラズマチャンバーに取り付けられた同様に部分真空に保持された反応チャンバー(103)においてターゲット(102)内で常温核融合反応を行うためのコントローラー(101)を備えるデバイス(
図1)であって、前記反応からの熱は、熱交換機構(105)によって第2の一連のデバイス(104)に伝達され、場合により前記第2の一連のデバイスは前記熱を電気へと変換するものもあれば、場合により前記熱を直接使用するものもあり、ここで、改善点としては、マイクロ波デバイス(108)によって生成され、燃料容器(109)によって燃料供給される低エネルギー低温プラズマ(107)が、前記取り付けられた反応チャンバーにイオンビーム(111)を供給することで、前記ターゲットと衝突されるプラズマチャンバー(106)が含まれ、前記プラズマチャンバー及びその取り付けられた反応チャンバーから未使用の燃料を抽出して前記プラズマチャンバー又は前記燃料容器のいずれかに再循環させて、再び燃料として使用するためのデバイス(110)を更に含む、デバイス。
【請求項4】
ターゲット(102)を最初に濃縮して常温核融合のために準備した後に常温核融合を開始することによって反応チャンバー(103)において常温核融合反応を開始して持続させるためのコントローラー(101)によって制御される方法であって、前記常温核融合の熱は、第2の一連のデバイス(104)によって使用され得て、場合により前記第2の一連のデバイスは前記熱を電気へと変換するものもあれば、場合により前記熱を直接使
用するものもあり、ここで、改善点としては、アイドル状態(401)で始まり、始動コマンドに応答して安全な輸送及び保管に使用された不活性ガスの排出をもたらすための状態(402)、燃料の生成を開始するための状態(403)、濃縮のために燃料流量及びイオンビームを調節するための状態(404)、前記ターゲットの濃縮されていない側面又は部分的に濃縮された側面を前記イオンビームに向けるための状態(405)、前記プラズマは保持されているが、濃縮も常温核融合も行われていないスタンバイ状態(406)、常温核融合のために前記燃料流量及び前記イオンビームを調節するための状態(407)、場合により直接使用され、場合により電気を発生させるために使用されるべき熱を積極的に生成するように常温核融合を持続させる状態(408)、並びに前記ターゲットの最低の枯渇した側面を前記イオンビームに向けて、常温核融合から熱を供給し続ける状態(409)が含まれる、方法。
【請求項5】
改善点としては、前記イオンビームを加速して集束させる追加の低電力電極(113)及び磁石(114)が含まれ、こうして常温核融合反応の必要性が低減又は排除され、前記コントローラーが、第1に常温核融合のための前記ターゲットの濃縮と第2に常温核融合の開始及び持続(401〜409)とを繰り返し交互に行う任意の方法が排除される可能性がある、請求項1に記載のデバイス及び方法。
【請求項6】
改善点としては、低電力電極(113)を使用して前記イオンビーム(111)を任意に更に加速させ、前記ビームを低電力磁石又は永久磁石(114)を用いて集束させることにより、前記イオンビームの前記ターゲットとの衝突から熱を生成することが含まれ、常温核融合反応のための必要性、及びまた任意に前記ターゲット(102)を濃縮する前記イオンビームのための必要性が低減又は排除される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項7】
改善点としては、前記イオンを加速して集束させて、前記ターゲットへと衝突させることで、前記衝突から熱を発生させる追加の低電力電極113及び磁石(114)が含まれ、常温核融合のための必要性が低減又は排除される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項8】
改善点としては、常温核融合が削減されるか又は必要とされないより単純な一連の状態(
図5)を取り入れるためにそのような方法が容易に改変されることが含まれ、それにより
図4における多くの状態(403〜405及び407〜409)の存在の必要性が低減又は排除される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
反応チャンバー(103)において熱を起こし持続させるためのコントローラー(101)によって制御される方法であって、前記熱は、第2の一連のデバイス(104)によって使用され得て、場合により前記第2の一連のデバイスは前記熱を直接使用するものもあれば、場合により前記熱を電気へと変換するものもあり、ここで、改善点としては、始動コマンドに応答するための状態であるアイドル状態(501)で始まり、前記プラズマは保持されているが、ビームは抽出されていないスタンバイ状態(502)、必要とされる前記熱の量に対して、前記イオンビームの体積及び速度が低電力電極(113)を使用して調節され、形状が低電力磁石又は永久磁石(114)を使用して調節される状態(503)、熱がイオンのターゲットとの衝突によって生成されて、場合により直接使用され、場合により電気を発生させるために使用される状態(504)が含まれ、そのような方法は、常温核融合が必要とされて、また別途前記ターゲットが、前記イオンビームによるアブレーションに対して失われた原子で補充することが必要であるモード(
図4)を取り入れるために容易に変更される、方法。
【請求項10】
常温核融合の開始を可能にするのに十分に前記ターゲットの一部が濃縮されているかどうかを前記コントローラーが決定する手段を更に含む、請求項1若しくは請求項2若しくは請求項3若しくは請求項5若しくは請求項6若しくは請求項7に記載のデバイス、又は
請求項4若しくは請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記コントローラーによって制御される幾つかの別個の任意のモード(
図4、
図5)を有することを更に含み、異なるモード(404、407、503)について相違して前記プラズマから抽出されたイオンビーム(111)の前記速度、形状、密度、及び焦点を制御するための方法及びデバイス(113、114)を含み、前記ターゲットの側面へとイオンを衝突させることにより、熱及び任意に常温核融合反応を生成させ、こうして熱を発生させるモード(408、504)を含み、前記ターゲットをイオン衝突で濃縮するモード(405)を含み、前記プラズマは損なわれずに維持されるが、イオンビームは抽出されないモード(406、502)を含み、前記プラズマが崩壊して燃料分子となり、イオンビームを抽出することができないモード(401)を含み、輸送のために前記燃料容器内に導入された不活性ガスを排出するためのモード(402)を含み、流入する燃料を低電力低温プラズマへと容易に変換することができるように前記デバイス(
図3)のために燃料を生成するためのモード(403)を含み、かつ前記ターゲットを前記イオンビームによるアブレーションのため失われたものを置き換える原子で補充することができるモードを含む、請求項1若しくは請求項2若しくは請求項3若しくは請求項5若しくは請求項6若しくは請求項7に記載のデバイス、又は請求項4若しくは請求項8若しくは請求項9に記載の方法。
【請求項12】
複数の側面(201)を有するターゲット(
図2)を回転させることができ、各側面が前記ターゲット内に吸収されたイオンで連続的に濃縮されるモード(405)を更に含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記イオンビームを前記ターゲット表面の一部に集束させて、前記ターゲットが濃縮され得るように前記ターゲットを移動させる及び/又は前記イオンビームを集束させる手段(図示せず)を更に含み、前記常温核融合反応を開始して持続させるために前記イオンビームを前記ターゲットの一部に移動及び/又は集束させる手段(113、114)を含む、請求項11又は請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
常温核融合反応を生成するための前記燃料の前記容器(109)が、該容器を燃料の最小限の損失で取り付け及び取り外すことができる手段(112)を備える、請求項1若しくは請求項2若しくは請求項3若しくは請求項5若しくは請求項6若しくは請求項7に記載のデバイス、又は請求項4若しくは請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記容器(109)内に収容される前記燃料は、ガス又は圧縮ガスの形であり、そのガスは更に部分的に圧縮されて、液体及び/又は固形になり得る、請求項1若しくは請求項2若しくは請求項3若しくは請求項5若しくは請求項6若しくは請求項7に記載のデバイス、又は請求項4若しくは請求項8若しくは請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記燃料容器(109、301)は、一連のアクティブな燃料成分及び一連のパッシブな燃料成分から構成される液体を収容し、前記一連のアクティブな成分を前記一連のパッシブな燃料成分から分離するための一連のデバイス(301〜307)及び方法を含む、請求項1若しくは請求項2若しくは請求項3若しくは請求項5若しくは請求項6若しくは請求項7に記載のデバイス、又は請求項4若しくは請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記液体が低温環境で凍結しないように前記燃料容器(301)を加熱する手段(323)を備える、請求項14又は請求項15又は請求項16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記分離チャンバー(306、307)を、輸送のために不活性ガスで充填することが
できるデバイス及び方法を更に含む、請求項16に記載のデバイス。
【請求項19】
前記分離ガスチャンバー(306、307)を始動動作の準備として脱気し、それらのそれぞれの動作構成要素で充填することができるデバイス及び方法を更に含む、請求項16に記載のデバイス。
【請求項20】
輸送中の妨害又は事故のため前記ガス抽出チャンバー(複数の場合もある)が液体燃料で充填されていることを検出するためのモニター(複数の場合もある)(315、316)を更に含み、前記検出時に前記燃料が流れるのを防ぎ、前記反応全体が前記シャットダウンモードに置かれる方法を含む、請求項16に記載のデバイス。
【請求項21】
前記ガスチャンバー(306、307)から不活性ガスが脱気され、それぞれアクティブな成分及びパッシブな成分で再充填された後にのみデバイスの動作を開始する方法を更に含む、請求項18に記載のデバイス。
【請求項22】
前記パッシブな成分(複数の場合もある)(307)を、前記コントローラー(101)の判断の下で、大気(313)に排出することができるデバイス及び方法を更に含む、請求項16に記載のデバイス。
【請求項23】
前記収集されたパッシブな成分(307)を、再結合チャンバー(310)内で、前記チャンバーから回収された前記アクティブな成分(311)と再結合させて、ポンプ(320)及び導管(321)を介して前記燃料キャニスター(描かれている)及び/又は前記プラズマチャンバー(図示せず)に再供給することができるデバイス及び方法を更に含む、請求項16に記載のデバイス。
【請求項24】
デバイス(
図2)及び方法(
図4)を更に含み、前記デバイスは、濃縮が必要で熱が必要でない期間の間に濃縮モードに切り替えられ、前記デバイスは、熱が必要である場合に、任意に前記イオンビームによるアブレーション後の前記ターゲット表面の補充の場合と同様に、熱及び任意の常温核融合モードに切り替えられる、請求項12又は請求項13に記載のデバイス。
【請求項25】
前記イオンビームによる濃縮のために提示される前記ターゲット側面が現在完全に濃縮されていない、又は任意に同様に前記ターゲット側面がアブレーションされた場合の補充のために前記ターゲット側面が提示されているように、前記ターゲット(102、201)を回転させる方法を更に含む、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
前記ターゲットが、前記イオンビームに直交しているが回転軸に平行なシャフト(202)に取り付けられており、前記ターゲットに取り付けられた前記シャフト(202)が前記ターゲット(201)に固定され、固定されたシャフト(203)と一列にスイベル(204)を使用して接続されており、こうして、前記ターゲットに取り付けられた第1のシャフト区間を、ギヤ(205)を使用して回転させ、前記ターゲットの適切な側面を前記ビームに提示することができるデバイスを更に備える、請求項12に記載のデバイス。
【請求項27】
前記シャフト(202、203)は、好ましくは熱伝導性材料でできている前記ターゲットと接触する場所を除いて断熱材料でできており、中空であり、その中を液体又はガスが流れることで、熱が前記ターゲットから加熱するためのデバイス及び/又は前記熱から電気に変換するためのデバイスへと移送されることを更に含む、請求項1若しくは請求項2若しくは請求項3若しくは請求項5若しくは請求項6若しくは請求項7に記載のデバイス、又は請求項4若しくは請求項8若しくは請求項9に記載の方法。
【請求項28】
熱交換器(105)、蒸気駆動タービン又はエンジン(118)、発電機(119)及び電気を生成するためのコンデンサー(120)を含む構成要素を更に備え、ここで、前記蒸気はペンタン又は別の炭化水素化合物又は水である、請求項27に記載のデバイス。
【請求項29】
前記ターゲットの作製を変更して、前記濃縮過程及び/又は前記熱若しくは常温核融合反応の効率を改善する方法を更に含み、ここで、前記ターゲットは3D印刷によって形成される、請求項1若しくは請求項2若しくは請求項3若しくは請求項5若しくは請求項6若しくは請求項7に記載のデバイス、又は請求項4若しくは請求項8に記載の方法。
【請求項30】
熱交換器(105)を延長して、場合により前記プラズマチャンバー(106)、前記ポンプ(115、116)、前記蒸気駆動タービン若しくはエンジン(118)及び/又は前記発電機(119)を含む前記デバイスの様々な構成要素から補助熱を得るためのデバイスを更に備えることで、常温核融合及び/又は前記イオンビームの運動エネルギーからの熱についての必要性が低減又は更には排除される、請求項1若しくは請求項2若しくは請求項3若しくは請求項5若しくは請求項6若しくは請求項7に記載のデバイス、又は請求項4若しくは請求項8若しくは請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0002】
1989年に常温核融合が発見されて以来(非特許文献1)、常温核融合は、入力エネルギーを大幅に超えて、またどの既知の化学反応をも大幅に超えて熱を発生させる能力を有すると特徴付けられている。その間の数十年の間に、この分野では何千もの科学論文だけでなく、何百もの特許出願が存在している。実験的観測を再現することが困難であり、観測に対する適切な理論的説明を欠いているため、「常温核融合」という用語に対して幾らか偏見があり、LENR(低エネルギー核反応)、LANR(格子支援核反応)又はCANR(化学支援核反応)のような湾曲表現の造語につながった。
【0003】
この現象は、電気分解実験でFleischmann及びPons(上記引用)によって最初に観察された。LiO
−イオン及びD
+イオンを形成する0.1MのLiODの300゜Kの重水(99.5%のD
2O、0.5%のH
2O)溶液において、白金陽極(正に荷電)とパラジウム陰極(負に荷電)との間に1.54Vが印加された。初期濃縮工程で、パラジウムは最初に重水素イオンをPd格子内の間隙へと吸収した。これは周期律表の第10族元素の既知の能力である。最終的に、あらゆる既知の化学的過程によって説明することができる範囲をもはるかに超える過剰熱が検出されたことから、追加の入射D
+イオンと金属格子内に事前に閉じ込められている濃縮D
+イオンとの間で核融合が行われ、ヘリウム(
4He)が得られるという結論に至った。多くの科学論文及び特許はこの範例の別形に従ったものであり、濃縮段階と常温核融合段階とを完全に分離しているものもある。このアプローチを用いた最近の代表的な特許は(特許文献1(2013年))である。このアプローチの不利点は、格子の濃縮が停止して常温核融合反応が始まる時点を正確に制御することが困難であるということである。この問題は、ターゲット格子を別個に濃縮した後に、準備されたターゲットを常温核融合の反応チャンバー内で利用することによって克服された。しかしながら、濃縮が枯渇すると、この分離自体により継続的な稼働が扱いにくいものとなる。もう1つの問題は、格子に入るイオンの速度及び方向を制御すること又は濃縮段階若しくは反応段階のいずれかの間にそれらの体積を独立して変動させることが困難であることである。このアプローチを実際に使用する上での重大な障害は、有用な量の電力を供給するのに十分な熱を発生するため、電解質自体が急速に蒸発してしまうという単純な事実である。
【0004】
別のアプローチは、ニッケル等の第10族金属又はニッケル−パラジウム合金を、時にはZrO
2と組み合わせて、ナノ粒子又は金属粒状物へと賦形して、D
2(又はH
2)ガスで取り囲んで使用することである。ナノ粒子の粒状物を作製することによって、金属合金がガスに曝される表面積が増加する。これは、ほとんどの核融合反応がターゲット合金の表面近くで起こるという実験的観察のため有利である。持続的な反応を得るために、ガスは、合金格子を濃縮して最終的に核融合事象を引き起こすのに十分にDにエネルギーを与える300℃から500℃までの(1億℃での高温核融合と比べて)中程度の温度に高められる。このアプローチを記載している最近の論文は非特許文献2である。このアプローチの使用を提案している典型的な特許は特許文献2(2013年)である。この方法の1つの利点は、常温核融合が100%再現可能であるという実施者による主張であり、それは長年求められてきた目標である。それにもかかわらず、このアプローチには、プロセスを維持するためにかなりの量の熱エネルギーを消費せねばならないという不利点を有するため、デバイスを稼働するコストを超えるのに十分な過剰熱が核融合から発生し得るかは完全に明らかにはなっていない。そのコストを超えるのに十分な核融合熱があるとして
も、より低い電力消費で稼働することができるデバイスがより効率的である。Dガス原子が粒子表面に衝突する方向又は速度を制御する方法は存在しないことから、核融合を引き起こさない非効率的な衝突が数多く起こる。ターゲット全体にわたってナノ粒子の均一な分布を維持することは困難であることから、ランダムなホットスポットがもたらされる。ターゲットとしてナノ粒子の集合物に依存すると、移動中に該粒子が揺さぶられると、予測不可能な動作がもたらされることとなる。粒子の集合物から熱を抽出することも問題がある。さらに、粒状物から濃縮されたDが枯渇すると、ナノ粒子がより多くのDを再吸収する間に装置全体をシャットダウンさせねばならないため、長期間にわたるデバイスの連続稼働は困難である。一部の粒子によるDの吸収とその他の粒子による常温核融合の生成とを交互に行う単純な方法は存在しない。
【0005】
3つ目のアプローチは、Ni−Pd−ZrO
2等の第10族合金を使用してナノ粒子から固体を作製し、この固体に重水素を注入し、その結果物をソリッド抵抗器のようなパッケージに形成し、そこに電流を流して核融合熱を発生させることである。このアプローチについての最近の論文は非特許文献3である。この種類の最近の特許は特許文献3(2015年)である。過去に提案者は、部品が「アバランシェ」故障モードを経ることに関する幾つかの問題点について言及しており、このモードでは核融合が制御不能となり、部品が溶融するが、この問題は実施者により電流を制限することによって対処される。このアプローチの1つの不利点は、この現象を実用的な量の熱又は電気を発生させることができるレベルまで拡張することが困難である可能性があることである。発明者らは、この技術でスターリングエンジン(1816年に発明された)に動力を供給すると主張しているが、比較的少ない電力しか生成されないという不利点を有するため、ディープサイクルバッテリーの充電等の低電力用途に最も適している。化石燃料エンジンの多くの実用的な用途は、スターリングエンジンによって発生され得るよりも多くの電力を必要とする。このアプローチは、格子内のD
+イオンの速度及び経路の制御が間接的かつ近似的であるという不利点がある。D
+が枯渇すると、デバイスを一新するには再構築するほかないため、このアプローチでも長期的な稼働は困難である。
【0006】
これら全ての方法が直面する問題は、陰極の表面全体がイオンの衝突による侵入を受けることである。したがって、ターゲットの一部は常温核融合反応に利用することができないが、部分的に又は完全に濃縮が枯渇した電極の別の部分は原子核で再び濃縮される又は再びターゲット材料で堆積されることから、長期稼働は問題のあるものとなる。これら全ての方法が直面する2つ目の問題は、常温核融合反応によって生成された電力がその用途にとって不十分である場合に、電力を必要なレベルまで供給するための択一的な動作モードが存在しないことである。
【0007】
非特許文献4に続く一連の論文に記載されるように、真空チャンバー内に保持されたイットリウム又はチタンでできたターゲットに衝突する陽子ビーム又は重陽子ビームを部分真空中で生成するデュオプラズマトロンデバイスを使用して、重水素を金属に負荷させることの実験が行われている。この一連の実験では、使用前に電極はペーストで被覆され、その後に乾燥されている。次いで、この組合せ物は高電力電流の印加により加熱される。プラズマを形成し、そこから負に荷電した電極でイオンビームを抽出することで、様々な金属がイオンを吸収する能力が研究される。この実験は、抽出されたイオンビームの電流の強さによって常温核融合の生成量が直接制御されることを示している。これは、入射イオンの正確な量及び速度を制御することができるため、生成される常温核融合熱の量が制御されるという点で他のアプローチの不利点を克服している。しかしながら、このアプローチは、デュオプラズマトロンのイオン源に高電力入力が必要であり、デュオプラズマトロンのペーストが侵食されるため寿命が短く、入力電力のコストを超えるのに十分な常温核融合を発生しないわずか1mAの低電流ビームしか得られないという不利点を有する。ごく最近では、200mAのより高いビーム電流を生成するデュオプラズマトロンが配備
されているが(非特許文献5)、その場合のデュオプラズマトロンは、50kWという更に高い入力電力を必要とするという不利点を有する。
【0008】
イオンを供給するための低電力低温プラズマは、例えば非特許文献6でのような線形加速器のための陽子ビームを供給するのに使用される技術である低電力マイクロ波発生器を使用して生成され得る。この技術は、これまでに常温核融合のターゲットを濃縮するためにも、熱エネルギーの発生のためにも常温核融合にも使用されていない。引用された論文では、そのビームによって生成される熱の量がグラフ化されており、この研究の目的は、ビームを磁場で拡散させることによって生成される熱を減らすことである。
【0009】
イオンビームのターゲットとの衝突を使用して、任意に埋め込まれた原子核との常温核融合によって熱が生成されたら、その熱を直接使用して、例えば水又は炭化水素を加熱し、生じる蒸気又は水蒸気を任意に電力へと変換することができる。この変換は、従来技術において幾つかの議論を受けている。例えば、特許(特許文献4)は、この目的のために水蒸気タービンを使用する制御システムを開示している。このアプローチは、発電所で一般的に使用される慣用の水蒸気発電制御システムが取り付けられるミューオン触媒核融合を使用して常温核融合を生成するという不利点を有する。ミューオン触媒核融合は1947年に最初に提案された(非特許文献7)。この形態の常温核融合は、重水素原子核を取り巻く電子がミューオンに置き換わったときに、ミューオンは原子核に近い電子軌道よりもはるかに重いため、原子核間の距離が短くなり、核融合事象の可能性が高まることで起こる。ミューオン触媒核融合は、ミューオンが生成に多くのエネルギーを費やし、非常に短い寿命でしか存続せず、核融合のヘリウム生成物に付着する傾向があるため、ミューオン自体が反応連鎖から取り除かれるという不利点を有し、一般にミューオンが生成し得るよりも多くの入力電力を必要とすると思われる。特許(特許文献5)は、融合する元素を含む水蒸気を噴射することにより水蒸気エンジンの性能を高めて、エンジン出力を増加させる方法を開示している。これは、外部の拡張可能な核融合反応の熱を電気に変換する問題に直接対処するものではない。本開示により関連性があるのは、水蒸気を動力に変換して通常の発電機を回して電力を発生させるための効率的なエンジンを開示しているGreen,
R.による特許(特許文献6)である。発電機という用語を使用することにより、同等の交流発電機も含まれる。このタイプの効率的なエンジンは、それに動力を供給するために必要な熱発生デバイスのサイズを最小限に抑えるのに役立つ。このようなデバイスの別の例は、Pritchard, E.によって特許文献7に開示されている。これらのエンジンは、熱を電気に変換するために使用される潜在的な候補であるが、継続的なメンテナンスをほとんど伴わずに寿命がかなり長い市販のタービンよりもはるかに複雑である。熱を電力に変換することに関する全ての従来技術の不利点は、イオンビームを生成する低電力プラズマ源からの熱を、発電機又は交流発電機を駆動する蒸気タービン又はエンジンを使用して電力に変換する従来技術が存在しないことである。
【0010】
一般に常温核融合における実験は、ターゲットを使用して水素又は重水素の原子核を金属格子内に閉じ込めることを必要とする。例えば、ZrO
2ナノ粒子をその形成に含めることによる格子構造の改変は、特許出願(特許文献8)でのように常温核融合反応を再現する可能性を大幅に高めるという実験的証拠がある。近年、特許文献9でのように、3D印刷を使用して金属部品を作製することができることはより一般的になってきた。本発明者らの調査は、3D印刷が印刷された構成要素の格子構造を改変し得ることを指摘している。常温核融合用のターゲットを作製するための3D印刷の使用によって、金属格子がイオンビームから熱を受け入れると同時にアブレーションに耐える能力又は金属格子が水素若しくは重水素の原子核を常温核融合のためによりしっかりと保持する能力が改善されることは、これまで提案されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2015−090312号公報
【特許文献2】カナダ登録特許第2924531号
【特許文献3】米国特許出願公開第20160329118号
【特許文献4】中国実用新案出願第206505727号
【特許文献5】独国特許出願公開第19845223号
【特許文献6】米国特許第8096787号
【特許文献7】米国特許出願公開第20060174613号
【特許文献8】米国特許出願公開第20160329118号
【特許文献9】米国特許出願公開第20150283751号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】M. Fleischmann, S. Pons and M. Hawkins, J. Electroanal. Chem., 261 (1989) 301
【非特許文献2】Kitamura, A., et. al., J. Condensed Matter Nucl. Sci. 24 (2017) 202-213
【非特許文献3】Swartz, M, et.al , J. Condensed Matter Nucl. Sci. 15 (2015) 66-80
【非特許文献4】Yuki, H., et. al., Metal. J. Phys. Soc. Japan, 1997. 64(1): p. 73-78
【非特許文献5】R. Scrivens, et. Al., Proc. IPAC2011, San Sebastian, Spain 2011 3472-4
【非特許文献6】Neri, L, et. Al. , Review of Scientific Instruments 85, 02A723 (2014)
【非特許文献7】Frank, Nature. 160 (4048): 525
【発明の概要】
【0013】
本開示は、以前の試みに対する多くの改善点を含む、任意に常温核融合を利用して熱エネルギーを生成するデバイス及び方法に関するものである。この文脈での常温核融合とは、反応原子の原子核を改変して、入力電力及び既知の成分の化学反応の両方をはるかに超える熱を生成し、上記熱の生成のためにあらゆる既知の成分の化学反応よりも少量の燃料しか消費せず、比較的低温(ターゲット材料の融点未満)で起こり、温室効果ガスも、大量の放射線又は放射性副生成物も生じない核融合反応を意味する。
【0014】
その前身のほとんどと共通して、本発明の一実施の形態は、コントローラーの監視下に反応チャンバー内で熱を発生させ、任意にターゲットにその熱を補うために常温核融合反応を発生させ、該反応からの熱を、湯沸かし又は暖房等の様々な用途の加熱のために直接使用することができる一連のデバイスに伝達するだけでなく、当業者に既知の手段によって電気を発生させる。Yukiら(上記非特許文献4)のアプローチと共通して、本発明の一実施の形態は、反応チャンバーを部分真空に保持し、Neriら(上記非特許文献6)のアプローチと共通して、取り付けられたプラズマチャンバーも部分真空に保持される。この文脈では、部分真空という用語は、イオンビームに大きく干渉しないほど十分な真空、実際には6×10
−5mbar以下の圧力を指す。
【0015】
本明細書に開示される本発明の実施の形態は、低電力低温プラズマからはるかにより強力なイオンビームを抽出しているためYukiら(上記非特許文献4)のアプローチの改良である。低電力という用語を使用するにあたり、ビームを生成して加速するための電力コストが、熱及び/又はビームを生成し得る電力と比較して低ければ、供給源は正しく低電力源として記載され得る。燃料容器は、プラズマを形成するために使用される原子の供給源であり、これはプラズマチャンバーに取り付けられている。荷電した電極のポテンシャル
電気エネルギーを使用してプラズマチャンバーから抽出されたイオンビームは、これらの電極によって加速され、電極のポテンシャルエネルギーをイオンの運動エネルギーへと変換し、次いでこのイオンが反応チャンバー内のターゲットに衝突して、イオンの運動エネルギーのため衝突時に熱を発生する。ターゲットに衝突するイオンの運動エネルギーによって生成する熱により、常温核融合反応は必要とされない。したがって、本開示の重要な特徴は、常温核融合によって生成される熱を低減又は排除するのに十分であり得る熱を運動エネルギーによって生成し得ることである。本発明の実施の形態は、コントローラーが、任意に常温核融合イオンでターゲットを濃縮すること、及び/又は任意にビームによってアブレーションされたものであり得る追加のターゲット材料を堆積させることを繰り返し交互に行い、十分な濃縮及び/又は修復が達成されるとともに、電力の需要があると、イオンビームを使用して、任意に濃縮されたターゲットに衝突させ、熱を起こし、任意に常温核融合を持続させる方法を含み得る。プラズマチャンバーに入る燃料の全てがプラズマ内に捕獲されるわけではなく、ターゲットに衝突するイオンの一部は核反応を生じないが、その代わりにターゲットに印加されているわずかな負の電荷からの電子と再結合して燃料ガスに戻るので、更なる改善は、(チャンバー内の真空レベルを維持する副生成物として)両方のチャンバーから余剰の燃料ガスを捕獲し、その燃料ガスを燃料タンク及び/又はプラズマチャンバーに再循環して、再びプラズマ用の燃料として使用することである。
【0016】
プラズマから抽出されたイオンのエネルギーは、追加の電極を使用してイオンを加速させ、より高い運動エネルギーを有するイオンをもたらすことによって高めることができる。医療及び物理学の研究用途向けのデバイスの現在の用途では、Neriら(上記非特許文献6)でのように高周波四重極(RFQ)が使用されているが、これには高い入力電力が必要とされるという不利点がある。この障害を克服するために、電極を荷電させると、非常に低コストの入力電力で高加速されたイオンビームを得ることができるCockcroft及びWaltonによって考案された独創的な線形加速器の早期の設計に立ち返ることが賢明である(Cockcroft and Walton, Nature, Feb 13, 1932)。このようなデバイスを使用することで、サイズ、重量によってのみ制限された低電力電極を使用して、イオンのターゲットとの衝突からの不所望な放射線を回避するのに十分に低くエネルギーを保って、イオンビームをあらゆる所望のレベルにまで加速させることができる。
【0017】
本発明の例示的な実施形態は、添付の図面に例として示され、図面では、同様の参照番号は同じ又は類似の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態が展開され得る例示的なデバイスの概略図である。
【
図2】濃縮、補充、及び常温核融合によって任意に補われる熱の発生のためのターゲットの択一的な側面を提示することができる例示的なデバイスの概略図である。
【
図3】アクティブな燃料成分をパッシブな燃料成分から分離し、余剰の燃料成分を再使用のために再循環させることができる例示的なデバイスの概略図である。
【
図4】任意に濃縮、熱の発生、及び任意に常温核融合のモードを制御する方法の状態遷移図の例示的な実施形態の概略図である。
【
図5】必要とされる熱がターゲットに衝突するイオンビームの運動エネルギーによって完全に供給される場合の熱及び電力の発生のモードを制御する方法の状態遷移図の例示的な実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
このセクションでは、本発明の好ましい実施形態の詳細な説明が提供され、幾つかの場合に、幾つかの用途で有用であり得る代替形態について言及する。
【0020】
好ましい実施形態は、
図1のような図表現において展開され得る。本発明の実施形態が用途に適合するように規模拡張又は規模縮小することができることは本発明の重要な特質であるため、
図1〜
図3には参照される尺度は存在しない。
【0021】
図1を参照すると、本発明の好ましい実施形態は、任意に常温核融合を利用して熱の発生を管理するためのコントローラー101を含んでいる。コントローラーは、デバイス全体に配置された様々なセンサーからの入力を受け取り、始動、シャットダウン、減圧濃縮、燃料流量、プラズマ生成、イオンビーム抽出、イオンビームの速度及び密度及び焦点、ターゲット濃縮及びターゲット内での常温核融合を制御するだけでなく、当業者に既知のパラメーターの中でも燃料として再び使用されるべき再循環、加熱用途及び発電のための未使用の燃料成分の回収を制御する。描写における複雑さを減らすために、図中には幾つかのセンサーのみが示され、コントローラーとデバイスとの間の接続(電線、光接続、又はワイヤレス接続が使用され得る)は示されておらず、これらは、当業者によって容易に提供される。好ましい実施形態では、コールドスタートからデバイスの動作を開始するために、ディープサイクルバッテリー117が任意に含まれており、動作の開始後に、コントローラーは、当業者に知られるようにその寿命を最も長く延ばし、再始動能力を与えるようにバッテリーの充電を維持する。エンジンはシャットダウン又は再始動を必要とせずに長期間連続的に動作するので、低頻度の始動のためにエンジンに持ち込まれたポータブルバッテリーから始動エネルギーを供給して、任意のディープサイクルバッテリー117を備える必要性を取り除くことが可能である。
【0022】
好ましい実施形態は、ターゲット102を保持する反応チャンバー103を含んでいる。このセクションの残りの部分での説明を簡潔にするために、「ターゲット」とは、イオンビームが衝突すると熱を発生し、任意に常温核融合を使用して追加の熱を発生するターゲットを意味する。ターゲットは負の電位に維持され、常温核融合又はターゲットとの何らかの他の反応によって消費されないイオンビーム原子核と結合する電子を提供する。常温核融合が必要とされる好ましい実施形態では、ターゲットは、通常は周期律表の第10族元素からなる群から選択される金属又は金属合金とZrO
2等の不活性分子との組み合わせであるが、背景のセクションで述べられたように、他のターゲット材料を使用することができる。常温核融合が必要とされない場合には、潜在的なターゲット材料の選択肢は広がり、イオンビームによるアブレーション及び水素イオンが使用される場合の水素脆化による考えられる劣化の影響を特に受けにくい材料又は合金を選ぶことが可能となる。好ましい実施形態では、イオンビームは、ターゲットのアブレーションを引き起こすのに十分なエネルギーに達しないが、そのようなアブレーションが起きるであろう用途は存在し得る。特定の実施形態において常温核融合が必要であるかどうか及びどれだけ必要であるかの決定は、より多くの熱を発生させるためにイオンビームのターゲットとの衝突の運動エネルギーを高めるとデバイスの寸法及び重量が高められることを認識することによってなされ、デバイスの長さは、追加の運動エネルギーがイオンビームに付与されるよう追加の低電力電極が含まれるように増やさねばならず、デバイスの高さ、幅及び重量は、接地からの追加の絶縁に対応するように高めねばならない。それというのも、より高い加速は、より高い電圧でデバイスを動作させることを必要とするからである。限定されるものではないが、プラズマチャンバー106、ポンプ115、116、タービン118及び発電機又は交流発電機119等のデバイスの動作部品によって生成される補助熱と呼ばれる追加の熱を熱交換器105に転送することで、常温核融合熱の必要性を更に減らすことができるが(転送は図示していない)、これは重量の更なる増加を伴う。したがって、常温核融合によって提供され得る熱が多いほど、デバイスはより小さく軽くなり得る。常温核融合を持続するターゲット材料の寿命、制御様式の複雑さ(下記の
図4及び
図5の議論を参照)、更には常温核融合の使用を制限する可能性のある特定の法域における規制問題等の他の考慮事項が、常温核融合を主要な熱源又は予備的な熱源として組み込むかどうかに影響を与える場合がある。本発明者らは、好ましい実施形態では、常温核融合反応が必要で
あると想定している。それというのも、常温核融合は、より小さくより軽いデバイスが所与の量の熱及び電力を発生させることを可能にするからである。好ましい実施形態では、常温核融合反応のターゲットは、例えば、3D印刷を使用してターゲットを作製することによって、及び/又はZrO
2のような格子を歪ませる分子を含む合金からターゲットを形成することによって、常温核融合の準備において濃縮燃料核子を格子の間隙内にしっかりと保持するように構築される。反応チャンバーは部分的に、ターゲットの効率的な濃縮に続くイオンビーム111による常温核融合反応を可能にするために、動作前及び動作中に連続的に脱気される。脱気は、構成要素110を介して未使用の燃料を排出及び再循環させることが可能な、場合により複数のポンプ116によって行われる。
図1には、燃料容器に戻る再循環経路のみが示されている。簡潔にするために、未使用の燃料を再循環させて直接プラズマチャンバー106に戻すための排出経路及び任意の経路は示されていないが、これらは当業者によって容易に提供され得る。
【0023】
ターゲットと衝突するイオンビームからの熱に加えて常温核融合が望まれると仮定すると、好ましい実施形態は、常温核融合のターゲットを濃縮し、常温核融合を開始して持続させるための燃料を容器109内に保持する。より複雑な実装では、イオンビーム内のイオンとの衝突によってターゲットがアブレーションされる場合に、ターゲットを補充するために、ターゲットイオンの追加の供給源を供給することができる。プラズマチャンバーへのこの追加の入力は示されていないが、燃料チャンバー109と同様のやり方で容易に工夫され、必要に応じて動作に切り替えることができる。好ましい実施形態では、燃料は、D
2ガスをプラズマチャンバーに供給するが、背景のセクションで述べられたように代替の燃料が可能である。D
2が好ましいのは、イオンビーム111からのD
+がターゲット102内で濃縮されたD
+に衝突して常温核融合反応を引き起こし、環境に悪影響を及ぼさない不活性ガスである
4Heヘリウムしか生成しないという事実に由来する。あるいは、低電力入力供給源の影響下でプラズマを形成するあらゆる燃料も、適切な実施形態をもたらし得る。特に、イオンビーム衝突が十分な熱を供給し、常温核融合が必要とされないのであれば、燃料の選択肢は、例えば、中でも
4Heヘリウム等の不活性ガスを含むように拡張される。この場合に、
4Heは常温核融合反応の生成物ではなく、ターゲットとの衝突によって熱を発生させるためのイオン源である。常温核融合が必要とされない場合に、好ましい実施形態では、ターゲット材料には純銅が使用されることとなる。それというのも、純銅は、イオンが沸騰して反応チャンバー内に戻るときに、可逆的な歪みを伴って入射イオンを吸収するからである。そのような実施形態における
4Heのような不活性ガスの利点は、それらが衝突後に完全に回収されて燃料として再使用することができることである。燃料容器は、ガス供給システムの技術分野に一般的な真空維持連結器112を用いてプラズマチャンバー106に取り付けられている。この連結器により、燃料容器を取り外して燃料補給すること又は別の満杯若しくは部分的に満杯の燃料容器と交換することが可能となる。常温核融合が必要とされず、例えば
4He等の不活性ガスが燃料として使用される実装では、ほとんど全ての不活性ガスは回収され、燃料容器を交換して燃料を補充する必要性がなくなる(少量の不活性ガスが銅の格子内に残っている場合がある)。この場合に、連結器112は、より単純でより耐久性のある形式であり得る。ポンプ115は、燃料流量を制御するコントローラー101の指令の下で、燃料をプラズマチャンバー106に移送する。
【0024】
低電力低温プラズマ107は、プラズマチャンバー内で必要とされるときにコントローラーによって維持され、好ましい実施形態では、背景のセクションで引用された線形加速器のための陽子源についての文献(Neriら)に記載されているように、プラズマチャンバーに接続された低電力マイクロ波発生器108によって生成される。この文脈では、低電力という用語は、デバイスが生成し得る電力に比べて低いことを意味する。
【0025】
イオンビームを通過させるために中央に穴があいたプラズマに面した円盤形状の前板1
13と、イオンビームを通過させるために中央に穴があいた0個以上の円盤形状の低電力及び/又は永久集束磁石114構成要素とを備えた少なくとも1つの、しかし通常は複数の電気的構成要素(電極)は、コントローラー101によって起動されて、必要に応じてターゲット濃縮、ターゲット補充、又は熱及び任意に常温核融合のためにプラズマからイオンビームが抽出される。図式を簡潔にするために、各構成要素113、114のうちの1つだけが
図1に示されているが、好ましい実施形態では、背景で引用された論文(Neriら)で論じられているように、そして当業者に知られるようにイオンビームの速度及び焦点を厳密に制御するためにそれぞれが複数存在する。好ましい実施形態では、複数の低電力電極及び永久磁石が相互に点在することで、ターゲット表面の所望の部分に衝突するための最適なビーム形状及び速度が得られる。これらの数及び強度は、イオンビームについてのエネルギー要件に依存している。好ましい実施形態では、イオンビームの定型的な抽出に加えて、追加の電極及び磁石が設置されることで、イオンビームを更に加速及び集束させて、濃縮モードの間にターゲット格子を効率的に濃縮するために必要な速度及び焦点を達成し、(もしあれば)アブレーション後にターゲットを補充し、ターゲットとの衝突によって熱を発生させ、(任意の常温核融合モードの間に)格子内の濃縮されたD
+イオンとビーム内の入射D
+イオンとの間のクーロン障壁を超える手助けとなる。好ましい実施形態では、集束磁石は、電力を取らずに集束能力を提供するために、例えばSmCo又はNeFeB合金から構成される永久リング磁石である。SmCo永久磁石は、NeFeB磁石よりも高い温度に耐えることができる。しかし、この場合でさえも、劣化を避けるために十分に低い温度を維持するために、磁石を装置の残りの部分から断熱することが重要である場合がある(絶縁は図示せず)。
【0026】
好ましい実施形態では、イオンビームのターゲットとの衝突及び任意の常温核融合反応からの熱は、熱交換器105を介して、熱を直接利用する構成要素、湯沸かしをする構成要素及び/又は例えば暖房具、及び/又は熱を電気に変換する構成要素の一連の構成要素104に移送される。好ましい実施形態では、熱交換器105はフラッシュポイントボイラー(flash point boiler)である。それというのも、本発明者らの開示は、大きな火室内での化石燃料の燃焼による熱を利用する従来の発電ボイラー又は地熱源とは全く異なる熱の集束点を有するからである。好ましい実施形態では、一連の構成要素104は、熱によって蒸気に変換される液体、例えば水、しかし好ましくはペンタン等の炭化水素を収容する熱交換器105から構成される閉鎖系である。明確にするために、「蒸気」という用語を使用する場合に、熱交換器内の材料が水である場合は水蒸気、又は材料がペンタンである場合はペンタンガス等の、熱交換器105内の材料の気体状態を指すことが述べられるべきである。好ましい実施形態では、ペンタンはより低い温度で沸騰し、液滴を形成しないため、タービン又は水蒸気エンジンの寿命を延ばすため使用される。蒸気は、蒸気駆動エンジン又はタービン118を駆動する。好ましい実施形態では、構造が単純であり、結果として長寿命であるため、蒸気駆動タービンが使用されるが、あらゆる適切な蒸気駆動エンジンで十分である。蒸気駆動タービン118は発電機又は交流発電機119を駆動して電力を生成し、その後に使用済みの蒸気は、凝縮器120内で凝縮して液体に戻される。
【0027】
好ましい実施形態では、ターゲット102及び熱交換器105は、ターゲットの部分が濃縮又は補充を待ち受け得る一方で、他の部分が常温核融合のために使用され得るように構築され、その逆もしかりである。好ましい実施形態では、102の組み合わせは、いわゆる「フィールド交換可能ユニット」であるため、ターゲットは、最小限の労力で定期的に検査及び/又は交換することができる。好ましい実施形態では、センサー(例えば、他の側面から絶縁されている実施形態では、ターゲット側面の抵抗の測定)を使用して、当業者に知られているように、ターゲットの側面が濃縮されている程度を測定することができる。代替的な実施形態は、濃縮に費やされた時間並びにターゲット側面のアブレーション及び/又は枯渇に費やされた時間を単純に追跡し、事前に測定されたターゲットの特性
を使用することで、いつ側面が補充を必要とするか又は側面が完全に若しくは部分的に濃縮されているかを決定するコントローラーに関するものである。
図2は、濃縮、アブレーションの置き換え、並びに常温核融合及び/又は動的発熱のためのターゲットの代替的な側面を提示することができる例示的なデバイスの概略図である。好ましい実施形態は、ここで立方体として示されるターゲット201に固定された中空シャフト202から構成されているが、用途に応じて、複数の側面を有する多くの幾何学的形状が可能である。ターゲットを貫通するシャフト部分は、熱膨張においてターゲットと厳密に一致した材料から構成されている。例えば、ターゲットがパラジウムである場合に、熱膨張は11.8μm/(m・K)(25℃)であり、ネーバル黄銅としても知られる銅基合金−C46400によって十分に一致している。ターゲットの外部にあるシャフト203の残りの部分は、好ましくは断熱材料から構築される。
【0028】
ターゲットに固定されたシャフトの端部は、高温耐性のスイベル204に取り付けられていることにより、コントローラーによって指令されるようにターゲットを回転させてイオンビームに向けることができる。もう一方の側のスイベルは、熱交換器105につながる固定中空シャフト203に取り付けられている。ギヤ205は、ターゲットに固定されたシャフトの部分に取り付けられ、ステッピングモーター又は当業者に既知の同様の構成要素によって駆動されるウォームギヤ(図示せず)によるシャフトの正確な回転が可能となる。
図2のデバイスとの代替又は組み合わせは、ターゲットを垂直及び/又は水平に動かすことで、任意に濃縮、任意に補充、衝突及び任意に常温核融合による熱のためにターゲットの異なる部分を提示することができる(図示せず)。任意のモードのために新しい表面を提示するためには、ターゲットをビームの直径に加えて小幅にシフトさせることだけが必要である。
【0029】
図3は、必要に応じてアクティブな燃料副生成物及びパッシブな副生成物に分離され得るパッシブな成分及びアクティブな成分から構成される液体燃料を保持することができる例示的なデバイスの概略図である。常温核融合が望まれる好ましい実施形態では、燃料容器301は、最初は主に重水として一般に知られるD
2Oの形態の燃料を含み、ここで、アクティブな燃料成分はD
2であり、パッシブな燃料成分はO
2である。代替的な実装では、プラズマ内にイオンを生成することができ、これを使用して、ターゲット内で熱を生じさせ、任意選択で常温核融合を行うことができるあらゆる燃料が使用され得る。構成要素323は、コントローラーの指令の下にあるヒーター(システムがバッテリー117によって動作していない場合及びシステムがターゲットからの熱によって動作している場合に電力が供給される)であり、容器の内容物は低温環境で液体形に保たれると想定される。代替の実施形態では、燃料容器は、場合により液体形にさえ圧縮されたD
2ガス又は同様にH
2ガス、若しくは更に常温核融合が必要とされない場合には
4He等の幾つかの他の元素を保持する。そのような容器は、
図3に示されるものより単純である。それにもかかわらず、動作温度に至るために常温核融合が必要とされる場合に、水素ガスは、空気中の酸素と高発熱化学反応で可燃性であり、輸送中又は動作中に事故が発生した場合、災害を起こす可能性があるため好ましくない。重水は可燃性でもなく、それほど毒性も高くはなく、輸送中及び保管中又は長時間の静止の間に不活性ガスが容器のガスチャンバー部分306、307を満たしているため、容器は完全に安全なままである。
【0030】
好ましい実施形態では、容器301は、アクティブな成分をパッシブな成分から分離するためのチャンバー302、304を備えている。単純な電気分解を使用すると、陰極303はD
2ガスを生成し、陽極305はO
2を生成する。D
2ガスはアクティブなチャンバー306に収集され、O
2ガスはパッシブなチャンバー307に収集される。液体が消費されると、コントローラーはセンサー324を使用して燃料レベルを読み取り、オペレーターに報告する。始動の間に、最初のセンサー315、316を読み取り、ガスチャンバー内に検知可能な液体が存在しないことを確認する。好ましい実施形態では、デバイス
は、どちらかのチャンバー内に検知可能な液体を含むと開始しないが、これは、当該デバイスがチャンバー(複数の場合もある)内にガスを維持するのに十分に水平ではないことを示している。可能な実施形態では、燃料容器301全体をスイベルに取り付けて、デバイスが実質的に垂直でない場合の動作に対応することができる。さらに、燃料容器301は、何らかの検知可能な重力場の外側での動作のために遠心分離デバイスに取り付けられていてもよい。ポンプ317、318は、輸送のために添加されている場合があるあらゆる不活性ガスをベント313、314を介してチャンバーから大気又は収集部へと排出し、その後にアクティブな燃料成分及びパッシブな燃料成分が生成される。十分な量の成分に達すると、アクティブな燃料成分D
2は、コントローラー101の指令の下で、ポンプ317によって導管308を通ってプラズマチャンバーへと送られる。
【0031】
動作中に、パッシブな燃料成分O
2は、ポンプ318によって導管309を通って再結合チャンバー310に移送される。ここでは、圧力及びその他のパラメーターが、センサー312によって監視される。プラズマ又は常温核融合反応において未使用の余剰の燃料D
2が導管311、110を通って入り、当業者に既知の手段によってO
2と化合してD
2Oに戻る。プラズマ又は熱及び任意にまた常温核融合反応において未使用の余剰の燃料D
2又は
4Heをプラズマチャンバーに直接移送することは、示されていない代替的な実施形態である。センサー312によれば十分な重水が蓄積されている場合に、ポンプ320により重水は導管321を介して、燃料容器301に移送して戻される。再結合反応後に残っているヘリウムガスは、余剰のO
2と一緒に大気に放出される、又は再循環のためにポンプ319によって導管322を通じて収集部に排出される。
【0032】
好ましい実施形態は、コントローラー101の活動を始動に導き、ターゲットを燃料イオンで濃縮し、常温核融合を開始して持続させ、常温核融合からの熱を必要としない場合にターゲット濃縮に戻り、熱が必要とされる場合に常温核融合に戻り、スタンバイ状態に入り、シャットダウンする方法を含む。
図4は、常温核融合が利用されると仮定して、これらの状態を制御する方法の状態遷移図の例示的な実施形態の概略図である。コントローラー101は、
図4に示されていない監視及び制御の追加の機能を有し、これらは当業者により容易に提供され得る。また、常温核融合が必要とされず、イオンビームのターゲットとの衝突及び/又は動作部品からの補助熱によってのみ熱が供給される場合に、当業者であれば
図4を変更することができ、
図5が例示的な結果である。同様に、ターゲットがイオンビームによるアブレーションに対して失われたターゲット原子での補充を必要とする場合に、当業者であれば、
図4を変更してこの事例に対応することもできる。ここで以下は、常温核融合を使用して熱を発生させ、プロセス中にターゲットの検知可能なアブレーションがないと仮定した、多くの改良点を取り入れることができる単純化された実施形態である。ここでの本発明者らの目的は、当業者が、当業者によって要求されるように容易に採用されるそれらの用途に適合するように任意の変更を加えて本発明を実施することを可能にする例示的な実施形態を開示することである。
【0033】
好ましい実施形態では、デバイスコントローラー101は、状態401に置かれたら、輸送のために収集チャンバー306、307内に貯蔵された不活性ガスを排出することによって始動する。不活性ガスが排出されると、幾つかの初期電気分解により、チャンバー306及び307がアクティブな燃料成分及びパッシブな燃料成分でそれぞれ満たされ、チャンバーが始動圧力まで満たされると、コントローラーはアイドル状態402に入る。任意のバッテリー117が存在する場合に、これがコントローラー、ヒーター323及び本明細書に詳述されていない任意の他の重要な構成要素に電力を供給することができることを除いて、全ての機能はこの状態でシャットダウンされる。当該技術分野で通常の始動スイッチがオンになると、デバイスは状態403に入り、そこでは電気分解が再開し、アクティブな燃料成分が再び生成される。燃料が連続的に利用可能であると、状態404に入り、そこでは燃料流及びイオンビームは、イオンによるターゲットの濃縮に向けられる
。燃料が流れている限り、チャンバーは積極的に部分真空状態に維持され、あらゆる未使用の燃料は再循環されて再使用される。イオンビームの準備ができると、最低の枯渇した完全に濃縮されていない側面が提示されて、イオンビーム405に向けられる状態に入る。ターゲット側面が枯渇について同等である場合に、イオンビームに最も近い側面が選択される等の順位決定方法が実装される。側面が濃縮されると、それは時間又はセンサーのいずれかによって測定することができるが、熱が必要とされない場合に、状態405に再び入り、最低の次の枯渇した完全に濃縮されていない側面がイオンビームに提示される。
【0034】
全ての側面が完全に濃縮され、直ちに熱が必要とされない場合に、スタンバイ状態406に入る。プラズマはアクティブな状態に保持されるが、失われたプラズマを取り替えるためにプラズマチャンバーに燃料を少しずつ流すことのみが必要とされる。必要に応じて燃料の再循環を維持することで、両方のチャンバー内で部分的な真空が保持される。長期間にわたってバッテリーを節電するために、コントローラーは、オペレーターのコマンドで、又はスタンバイ状態で或る特定の時間が経過した後に自動的にアイドル状態402に入るように構成することができる。熱が必要になると、スタンバイ状態406から状態407に入る。
【0035】
再び状態405に戻ると、側面が濃縮されて緊急に熱が必要とされる場合に、更なる濃縮は引き延ばされ、本方法は状態407に入り、そこでは常温核融合のために燃料流量及びイオンビームが調節される。イオンビームの準備ができると、常温核融合は状態408で維持される。常温核融合の間に差し当たり十分な熱が発生したことをコントローラーが検出すると、再び状態404に戻る。他方で、センサー又はタイミングのいずれかによって決定されて、現在の側面で濃縮が枯渇するまで状態408が持続する場合に、状態409に入り、最低の次の枯渇した側面がイオンビームに提示され、少なくとも1つの側面が幾らかの濃縮を保持していると仮定して、再び状態408に入る。全ての側面が枯渇した場合に、状態409を離れて再び状態404に入る。
【0036】
コントローラーは、本方法に対する広く様々な改良が可能であり、これは特定の用途において有用であり得る。一例を挙げると、状態405では、いずれかの側面が完全に濃縮される前に状態407に移行することが望ましい場合がある。これは、熱の発生を開始するための要件の緊急性、及び更なる濃縮が必要となる前に熱が必要とされる時間の長さに依存することとなる。そのような詳細の多くは、特定の用途に委ねるのが最善であり、当業者によって容易に実装される。
【0037】
図5は、ターゲットに衝突する任意に加速されたイオンビームによって熱及び電力の発生に必要とされる熱の全てが供給されるため、常温核融合が必要とされない場合のデバイスを制御する(101)方法の状態遷移図の例示的な実施形態の概略図である。これは、常温核融合反応を持続させるために必要とされ得る多くの特徴を必要としないので、明らかに
図4よりもはるかに単純な制御様式である。ターゲットに衝突するイオンの運動エネルギーによって全ての熱が生成される好ましい実施形態では、燃料は
4Heヘリウムであり、ターゲットは純銅から構成され得る。ヘリウムが選択されるのは、先に論じられた低電力マイクロ波デバイスによってイオン化され得るため、必要な入力電力を、生成された出力電力よりはるかに低く保持することができるからである。さらに、ヘリウムがターゲット又はプラズマチャンバー若しくは反応チャンバーの内壁と化学的に化合する可能性が低いことから、デバイスの寿命が延びる。しかしながら、あらゆる他のイオンを使用することもできる。同様に、熱伝達特性に優れており、融点が高く、衝突によって付与されるあらゆる歪みを戻すことができること、そして入射イオンと化合しづらいという理由から、純銅がターゲットとして選択される。しかしながら、同様の特性を有するあらゆる他のターゲット材料を使用することができる。
【0038】
ターゲットと衝突する入射イオンの運動エネルギーによって、そして任意に動作用構成要素(複数の場合もある)からの補助熱によって熱が供給されるため、常温核融合が必要とされない場合に、コントローラー101はアイドル状態501で始まる。コントローラー101は、
図5に示されていない監視及び制御の追加の機能を有し、これらは当業者によって容易に提供され得る。始動スイッチがオンになると、コントローラーは、プラズマが生成されるスタンバイ状態502に入る。熱が必要とされる場合には、状態503に入り、必要な数の電極をアクティブにすることによって、ビームを必要な熱の量に調節する。ビームが調節されたら、コントローラーは状態504に入り、そこでイオンビームがターゲットと衝突して、必要な量の熱が生成される。熱の量を調節する必要がある場合に、再び状態503に入り、もはや熱が不要になったら、再び状態502に入る。シャットダウンされると、コントローラーはアイドル状態501に戻る。
図5に追加され得る、例えば、ターゲットが入射イオンビームのためアブレーションを受けた場合に、ターゲットをターゲットイオンで補充する状態、又は常温核融合がこの用途で必要とされる場合に常温核融合に対応するために
図4の様々な要素を組み込むことといった広く様々な改良点が可能である。これらの改良点は、当業者によって特定の用途について必要に応じて加えられるよう委ねられる。
【0039】
図4及び
図5は、所与の用途で実装され得る制御様式の両極端を表す。上記のように、運動エネルギー、補助的構成要素、及び常温核融合によって供給される熱の量は、所与の実装における設計上の決定であり、実際、必要に応じて適用中に変動し得る。所与の用途において運動熱、補助熱、及び常温核融合熱の混成が望まれるのであれば、好ましい実施形態における燃料はD
2であろう。これにより、動作中にD
2と
4Heとを切り替える複雑さが回避される。
【0040】
しかしながら、これらの燃料を切り替え、更には組み合わせる実装が可能であり、特定の用途に適宜選択され得る。同様に、常温核融合熱が運動熱及び場合により補助熱と一緒に生成される場合に、好ましい実施形態では、ターゲットに第10族合金が使用され、これは上記のように常温核融合の促進の手助けとなる。しかしながら、
図2に例示されるメカニズムと同様のメカニズムを使用することで、ターゲットの配合物を使用することができ、必要に応じて動作中に材料を交換することもできる。
【0041】
特定の用途で動的イオンビーム衝突熱、補助熱、及び常温核融合熱の何らかの混成が使用される場合に、実際の制御様式は
図4及び
図5の何らかの組み合わせであり、燃料は、材料の配合物又は改変物であってもよく、ターゲットは、材料の配合物又は改変物であってもよい。これらの成分の可能な組み合わせの組は大規模であるため、全ての可能性を個別に描写することは現実的ではない。利用可能な幅広い柔軟性があることは、特定の用途を踏まえて制御様式及び材料の最良の選択を行うことができる当該技術分野に精通したあらゆる設計者には直ちに明らかであろう。本開示の明らかな利点は、幅広い設計の選択により、用途に合わせて特別に適応されたデバイスを作り出すことができることである。本開示の最も重要な属性の多くは、考えられる全ての設計に有益である。例えば、実装の全ては、ほとんどが非常に長寿命であることが知られる軸受けである可動部品が非常に少ない単純化された機械設計の利益に貢献している。
【国際調査報告】