(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
本発明は、CD3に特異的に結合する抗体に関する。本発明は、PSMAに特異的に結合する抗体に関する。本発明は、CD3及びPSMAに特異的に結合する抗体に関する。本発明は、IL1RAPに特異的に結合する抗体に関する。本発明は、CD33に特異的に結合する抗体に関する。本発明は、CD3及びIL1RAPに特異的に結合する抗体に関する。本発明は、CD3及びCD33に特異的に結合する抗体に関する。本発明は、TMEFF2に特異的に結合する抗体に関する。本発明は、CD3及びTMEFF2に特異的に結合する抗体に関する。本発明は、当該抗体の断片、当該抗体又はその断片をコードしているポリヌクレオチド、並びにそれを作製及び使用する方法に関する。
約300nM以下の結合親和性でカニクイザル(Macaca fascicularis)又はヒトのCD3d、又はCD3e、又はCD3e及びCD3dに特異的に結合する、単離組換え抗CD3抗体又はその抗原結合断片。
前記結合親和性が、フローサイトメトリー又は+25℃におけるProteon表面プラズモン共鳴アッセイProteOn XPR36システムによって測定される、請求項2又は3に記載の単離組換え抗CD3抗体又はその抗原結合断片。
それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690の前記HCDR1、前記HCDR2、前記HCDR3、前記LCDR1、前記LCDR2、及び前記LCDR3を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、抗体又はその抗原結合断片。
CD3に特異的に結合する第1のドメイン及び第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインを含む二重特異性抗体であって、前記第1のドメインが、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、二重特異性抗体。
前記第1のドメイン及び第2のドメインがIgG4アイソタイプであり、前記第1又は第2のドメインが、S228P、F234A、L235A、F405L、及びR409Kの重鎖置換を含み、前記第1又は第2のドメインの他方のドメインが、S228P、F234A、及びL235Aの重鎖置換を含み、残基の付番がEUインデックスに準拠する、請求項22に記載の二重特異性抗体。
前記第1及び/又は第2のドメインが、F405L、又はF405L及びR409K置換を含む、CH3定常ドメインにおける少なくとも1つの置換を含み、残基の付番がEUインデックスに準拠する、請求項22に記載の二重特異性抗体。
前記第1又は第2のドメインの一方が、F405Lの重鎖置換を含み、前記第1又は第2のドメインの他方が、K409Rの重鎖置換を含み、残基の付番がEUインデックスに準拠する、請求項22に記載の二重特異性抗体。
前記第1のドメイン及び第2のドメインが、IgG4アイソタイプであり、前記第1又は第2のドメインの一方が、S228Pの重鎖置換を含み、前記第1又は第2のドメインの他方が、S228P、F405L、及びR409Kの重鎖置換を含み、残基の付番がEUインデックスに準拠する、請求項22に記載の二重特異性抗体。
請求項1〜34のいずれか一項に記載の抗体を産生する方法であって、前記抗体が発現する条件で請求項37に記載の宿主細胞を培養することと、前記宿主細胞によって産生された前記抗体を回収することと、を含む、方法。
対象における癌を治療する方法であって、前記癌を治療するのに十分な時間にわたって、それを必要としている前記対象に、治療有効量の請求項1〜34のいずれか一項に記載の単離抗体を投与することを含む、方法。
前記固形腫瘍が、前立腺癌、結腸直腸癌、胃癌、腎明細胞癌、膀胱癌、肺癌、扁平上皮癌、神経膠腫、乳癌、腎臓癌、血管新生障害、腎明細胞癌(CCRCC)、膵臓癌、腎癌、尿路上皮癌、又は肝臓腺癌である、請求項40に記載の方法。
前記血液悪性腫瘍が、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、急性リンパ性白血病(ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、慢性骨髄性白血病(CML)、又は芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(DPDCN)である、請求項40に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に引用されている特許及び特許出願を含む(但しそれらに限定されない)全ての刊行物は、完全に記載されているかのように参照により、本明細書に組み込まれる。
【0025】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的でのみ使用され、限定を意図するものではないと理解すべきである。特に断らない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0026】
本明細書に記載されているものと同様又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の試験を実施するために使用することができるが、例示的な材料及び方法を本明細書に記載する。本発明を説明及び特許請求する上で以下の用語が使用される。
【0027】
本明細書及び添付の「特許請求の範囲」において使用されるとき、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば、「細胞(a cell)」という言及には、2つ以上の細胞の組み合わせ、及びこれに類するものなどが含まれる。
【0028】
「特異的結合」又は「特異的に結合する」又は「結合する」とは、抗体が抗原又はかかる抗原内部のエピトープに、他の抗原に対しより高い親和性で結合することを指す。典型的には、抗体は、約5×10
−8M以下、例えば約1×10
−9M以下、約1×10
−10M以下、約1×10
−11M以下、又は約1×10
−12M以下の平衡解離定数(K
D)で抗原又は抗原内のエピトープに結合し、非特異性抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合に関しては、典型的には、そのK
Dより少なくとも100倍小さいK
Dで結合する。解離定数は標準的手法を用いて測定することができる。しかし、抗原又は抗原内のエピトープに特異的に結合する抗体は、他の関連抗原、例えば、ヒト又はサル、例えば、Macaca fascicularis(カニクイザル、cyno)又はPan troglodytes(チンパンジー、chimp)などの他の種由来の同じ抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有する場合がある。単一特異性抗体は、1つの抗原又は1つのエピトープに特異的に結合するのに対し、二重特異性抗体は、2つの異なる抗原又は2つの異なるエピトープに特異的に結合する。
【0029】
「抗体」は、広義の意味を有し、マウス、ヒト、ヒト化及びキメラモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、抗原結合断片、二重特異性又は多重特異性抗体、ダイマー、テトラマー又は多量体(マルチマー)抗体、単鎖抗体、ドメイン抗体、並びに必要とされる特異性の抗原結合部位を含む任意の他の改変された立体配置の免疫グロブリン分子を含む、免疫グロブリン分子を含む。「完全長抗体分子」は、ジスルフィド結合によって相互に接続されている2本の重鎖(heavy chain、HC)及び2本の軽鎖(light chain、LC)、並びにこれらの多量体(例えば、IgM)から構成される。各重鎖は、重鎖可変領域(heavy chain variable region、VH)、並びに重鎖定常領域(ドメインCH1、ヒンジ、CH2、及びCH3からなる)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(light chain variable region、VL)及び軽鎖定常領域(constant region、CL)から構成される。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)が散在している、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に更に細分類され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4で配置された、3つのCDR及び4つのFRセグメントで構成される。
【0030】
「相補性決定領域(CDR)」は、抗原に結合する抗体の領域である。CDRは、Kabat(Wu et al.(1970)J Exp Med 132:211−50)(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991)、Chothia(Chothia et al.(1987)J Mol Biol 196:901−17)、IMGT(Lefranc et al.(2003)Dev Comp Immunol 27:55−77)、及びAbM(Martin and Thornton(1996)J Bmol Biol 263:800−15)などの、様々な記述を使用して定義することができる。様々な記述と、可変領域の付番との対応が記載されている(例えば、Lefranc et al.(2003)Dev Comp Immunol 27:55−77;Honegger and Pluckthun,(2001)J Mol Biol 309:657−70;International ImMunoGeneTics(IMGT)データベース;ウェブソース、http://www_imgt_orgを参照のこと)。UCL Business PLCによるabYsisなどの利用可能なプログラムを使用して、CDRを描写することができる。本明細書で使用する場合、用語「CDR」、「HCDR1」、「HCDR2」、「HCDR3」、「LCDR1」、「LCDR2」、及び「LCDR3」は、明細書で別途明示的に記載のない限り、上述したKabat、Chothia、IMGT、又はAbMの方法のいずれかにより定義されるCDRを含む。
【0031】
免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMに割り当てられ得る。IgA及びIgGは、アイソタイプのIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4として更に細分類される。どのような脊椎動物種の抗体軽鎖も、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、2つの明確に異なるタイプ、すなわち、カッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの一方に割り当てることができる。
【0032】
「抗原結合断片」とは、抗原に結合する免疫グロブリン分子の一部を意味する。抗原結合断片は合成ポリペプチド、酵素により入手可能なポリペプチド、又は遺伝子組換えされたポリペプチドであってよく、VH、VL、VH及びVL、Fab、F(ab’)2、Fd及びFv断片、1つのVHドメイン又は1つのVLドメインからなるドメイン抗体(dAb)、サメ可変性IgNARドメイン、ラクダ化VHドメイン、FR3−CDR3−FR4部分などの、抗体のCDRを再現したアミノ酸残基からなる最小の認識単位、HCDR1、HCDR2、及び/又はHCDR3、並びにLCDR1、LCDR2、及び/又はLCDR3が挙げられる。VH及びVLドメインは互いに、合成リンカーを介して連結し、様々なタイプの一本鎖抗体設計を形成することができ、VH及びVLドメインが、別々の一本鎖抗体コンストラクトにより発現される場合では、VH/VLドメインが分子内、又は分子間で対形成し、一価の抗原結合部位、例えば一本鎖Fv(single chain Fv、scFv)又はディアボディを形成することができ、これらは、例えば国際公開第1998/44001号、同第1988/01649号、同第1994/13804号、及び同第1992/01047号に記載されている。
【0033】
「モノクローナル抗体」とは、抗体分子の実質的に均質な母集団(即ち、母集団を含む個別の抗体が、抗体重鎖からC末端リジンを除去する、又は、アミノ酸異性化若しくはアミド分解、メチオニン酸化若しくはアスパラギン若しくはグルタミンアミド分解などの翻訳後修飾といった、可能な周知の変更を除いて同一である)から入手される抗体を意味する。モノクローナル抗体は典型的には、1つの抗原性エピトープに結合する。二重特異性モノクローナル抗体は、2つの異なる抗原性エピトープに結合する。モノクローナル抗体は、抗体集団内で不均一なグリコシル化を有し得る。モノクローナル抗体は、単一特異性であってよく、又は、二重特異性などの多重特異性であってよく、一価、二価、又は多価であってよい。
【0034】
「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体又は抗体断片を指す(例えば、ある抗原に特異的に結合する単離抗体は、当該抗原以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。二重特異性CD3抗体の場合、二重特異性抗体は、CD3及び第2の抗原の両方に特異的に結合する。「単離抗体」は、純度が80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の抗体など、高純度に単離された抗体を包含する。
【0035】
「ヒト化抗体」とは、少なくとも1つのCDRが非ヒト種に由来し、少なくとも1つのフレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体を意味する。ヒト化抗体は、フレームワークに置換を含むことができるため、フレームワークは、発現したヒト免疫グロブリン又はヒト免疫グロブリン生殖細胞系列遺伝子配列の厳密なコピーではない場合がある。
【0036】
「ヒト抗体」とは、ヒト対象に投与されるときに、最小の免疫応答を有するように最適化された抗体を意味する。ヒト抗体の可変領域は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体が定常領域又は定常領域の一部を含む場合、当該定常領域もヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体は、ヒト抗体の可変領域がヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られた場合、ヒト起源の配列に「由来する」重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。このような例示的な系は、ファージにディスプレイされたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリ、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を保有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばマウス又はラットを含む。「ヒト抗体」は、典型的には、ヒト抗体及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を得るために使用した系の違い、フレームワーク若しくはCDRへの体細胞変異の導入若しくは置換の意図的な導入、又はこれらの両方により、ヒトで発現した免疫グロブリンと比較したときにアミノ酸の違いを含有する。典型的には、「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされているアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列が少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。場合によっては、「ヒト抗体」は、例えば、Knappik et al.(2000)J Mol Biol 296:57−86に記載されているヒトフレームワーク配列分析から導かれたコンセンサスフレームワーク配列、又は例えば、Shi et al.(2010)J Mol Biol 397:385−96及び国際公開第2009/085462号に記載されている、ファージにディスプレイされたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリに組み込まれた合成HCDR3を含有していてもよい。
【0037】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列同一性パーセントが最大になるように、配列同一性の一部として保存的置換を全く考慮することなく、配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入した後の、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の百分率として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを求める目的のためのアライメントは、当該技術分野における技能の範囲内で様々な方法、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインメントするための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書の目的のために、配列比較コンピュータプログラムALIGN−2を使用してアミノ酸配列同一性%の値が生成される。ALIGN−2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech.Inc.により作成され、ソースコードは、米国著作権局(Washington D.C.,20559)にユーザ文書と共に提出されており、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN−2プログラムは、Genentech.Inc.(South San Francisco,Calif.)から公的に入手可能であるか、又はソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN−2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステムで使用するためにコンパイルする必要がある。全ての配列比較パラメータは、ALIGN−2プログラムによって設定され、変化しない。アミノ酸配列比較のためにALIGN−2を使用する場合、所与のアミノ酸配列Bへの、との、に対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bに、と、又はに対して同一である特定のアミノ酸配列%を有する又は含む所与のアミノ酸配列Aとも言うことができる)は、以下のように計算される:
100×割合X/Y、
(式中、Xは、A及びBの配列アライメントプログラムALIGN−2によるアラインメントにおいてそのプログラムによって完全一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%と等しくはないことが理解されるであろう。特に明記しない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%の値は、ALIGN−2コンピュータプログラムを使用して直前の段落に記載の通り得られる。
【0038】
抗原結合部位が非ヒト種に由来する抗体は、「ヒト抗体」の定義には含まれない。
【0039】
「組換え物」は、異なる供給源由来のセグメントが結合されて組換えDNA、抗体、又はタンパク質を産生するときに、組換え手段によって調製、発現、作製、又は単離されるDNA、抗体、及び他のタンパク質を指す。
【0040】
「エピトープ」とは、抗体が特異的に結合する抗原の一部分を指す。エピトープは、典型的には、アミノ酸又は多糖側鎖などの部分の化学的に活性な(極性、非極性又は疎水性など)表面基からなり、特定の三次元構造特性に加えて特定の電荷特性を有し得る。エピトープは、配座上の空間単位を形成する連続的な及び/又は不連続なアミノ酸によって構成され得る。不連続なエピトープでは、抗原の直鎖配列の異なる部分にあるアミノ酸が、タンパク質分子の折り畳みにより三次元空間でごく近接するようになる。抗体「エピトープ」は、エピトープを識別するために使用する方法論によって異なる。
【0041】
「パラトープ」は、抗原に特異的に結合する抗体の部分を指す。パラトープは、事実上線形であってもよく、又は線形の一連のアミノ酸ではなく、抗体の隣接していないアミノ酸同士の空間的な関係することによって形成される不連続なものであってもよい。「軽鎖パラトープ」及び「重鎖パラトープ」又は「軽鎖パラトープのアミノ酸残基」及び「重鎖パラトープのアミノ酸残基」はそれぞれ、抗原と接触する抗体の軽鎖残基及び重鎖残基を指し、あるいは概して「抗体パラトープ残基」は、抗原と接触するこれらの抗体アミノ酸を指す。
【0042】
「二重特異性」は、2つの異なる抗原、又は同じ抗原中の2つの異なるエピトープと特異的に結合する抗体を指す。二重特異性抗体は、他の関連抗原、例えば、ヒト又はサル、例えば、カニクイザル(cyno)又はチンパンジーなどの他の種由来の同じ抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有し得る、あるいは、2つ以上の異なる抗原間で共有されているエピトープに結合し得る。
【0043】
「多重特異性」とは、同じ抗原内の2つ以上の異なる抗原、又は2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する抗体を意味する。多重特異性抗体は、他の関連抗原、例えば、ヒト又はサル、例えば、カニクイザル(cyno)又はチンパンジーなどの他の種由来の同じ抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有し得る、あるいは、2つ以上の異なる抗原間で共有されているエピトープに結合し得る。
【0044】
「変異体」は、1つ以上の改変、例えば、1つ以上の置換、挿入、又は欠失によって参照ポリペプチド又は参照ポリヌクレオチドとは異なるポリペプチド又はポリヌクレオチドを指す。
【0045】
「ベクター」は、生体系内で複製可能な、又はそのような系間を移動することができる、ポリヌクレオチドを指す。ベクターポリヌクレオチドは、典型的には、ベクターを複製することができる生物学的要素を利用して細胞、ウイルス、動物、植物などの生体系及び再構成された生体系におけるこれらポリヌクレオチドの複製又は維持を促進する機能を有する、複製起点、プロモータ、ポリアデニル化シグナル、及び選択マーカーなどの要素を含有する。ベクターポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖のDNA若しくはRNA分子、又はこれらのハイブリッドであり得る。
【0046】
「発現ベクター」は、発現ベクター中に存在するポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドの翻訳を指令するために、生体系又は再構成された生体系において利用できるベクターを指す。
【0047】
「ポリヌクレオチド」とは、糖−リン酸骨格又は他の等価な共有結合化学によって共有結合しているヌクレオチド鎖を含む分子を指す。二本鎖及び一本鎖のDNA及びRNAが、ポリヌクレオチドの典型例である。「ポリヌクレオチド」とは、糖−リン酸骨格により共有結合した、又は他の等価な共有結合性化学反応により結合したヌクレオチド鎖を含む合成分子を指し得、cDNAは、例示的な合成ポリヌクレオチドである。
【0048】
「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、ペプチド結合によって連結されてポリペプチドを形成する少なくとも2つのアミノ酸残基を含む分子を指す。50個未満のアミノ酸からなる小分子ポリペプチドは、「ペプチド」と称され得る。
【0049】
「フローサイトメトリー」は、流体が少なくとも1つのレーザーを通過する際に当該流体中の粒子の物理的及び化学的特性を分析するために使用される技術である。細胞成分を蛍光標識し、次いで、レーザーによって励起して、様々な波長で発光させる(Adan,et al,Critical Reviews in Biotechnology(2016)1549−7801)。
【0050】
「抗イディオタイプ(抗Id)抗体」は、抗体の抗原決定基(例えば、パラトープ又はCDR)を認識する抗体である。抗イディオタイプ抗体を産生又は調製するプロセスは、当該技術分野において概ね知られている。(Lathey,J.et al Immunology 1986 57(1):29−35)。抗Id抗体は、抗原をブロッキングするものであっても、しないものであってもよい。抗原をブロッキングする抗Id抗体は、サンプル中の遊離抗体、例えばCD3を検出するために使用することができる。ブロッキングしない抗Id抗体は、サンプル中の全抗体(遊離しているもの、抗原に一部結合しているもの、又は抗原に完全に結合しているもの)を検出するために使用することができる。抗Id抗体は、抗Id抗体が調製されている抗体で動物を免疫化することによって調製することができる。本明細書に記載されるいくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体は、サンプル中の治療抗体のレベルを検出するために使用される。
【0051】
また、更に別の動物で免疫応答を誘導する免疫原として抗Id抗体を使用して、いわゆる抗−抗Id抗体を産生することもできる。抗抗Id抗体は、抗Id抗体を誘導した元のmAbとエピトープが同一であり得る。したがって、mAbのイディオタイプ決定基に対する抗体を使用することによって、同一の特異性の抗体を発現する他のクローンを同定することが可能である。抗Id抗体は様々であってよく(それにより、抗Id抗体変異体が産生される)、及び/又は抗CD3抗体に関して本明細書の他の箇所に記載されているものなどの任意の好適な技術によって誘導体化してもよい。
【0052】
PSMAは、前立腺特異性膜抗原を指す。Pan troglodytes(チンパンジー又はchimpとも称される)PSMAのアミノ酸配列を配列番号49に示す。細胞外ドメインは、配列番号49の残基44〜750にまたがり、膜貫通ドメインは、残基20〜43にまたがり、細胞質ドメインは、残基1〜19にまたがる。Macaca fascicularis(カニクイザル、マカク、又はcynoとも称される)PSMAのアミノ酸配列を配列番号50に示す。細胞外ドメインは、配列番号50の残基44〜750にまたがり、膜貫通ドメインは、残基20〜43にまたがり、細胞質ドメインは、残基1〜19にまたがる。ヒトPSMAのアミノ酸配列を配列番号51に示す。細胞外ドメインは、配列番号51の残基44〜750にまたがり、膜貫通ドメインは、残基20〜43にまたがり、細胞質ドメインは、残基1〜19にまたがる。
【0053】
本明細書全体を通して、「CD3特異的」又は「CD3に特異的に結合する」又は「抗CD3抗体」は、CD3−ε細胞外ドメイン(ECD)(配列番号636)に特異的に結合する抗体を含む、CD3−εポリペプチド(配列番号635)に特異的に結合する抗体を指す。CD3−εは、CD3−γ、−δ、及び−ζ、並びにT細胞受容体α/β及びγ/δヘテロダイマーと一緒に、T細胞受容体−CD3複合体を形成する。この複合体は、いくつかの細胞内シグナル伝達経路への抗原認識の連関において重要な役割を果たす。CD3複合体は、シグナル伝達を媒介し、その結果、T細胞が活性化され、増殖する。CD3は、免疫応答に必要である。
【0054】
配列番号635(ヒトCD3ε)
MQSGTHWRVLGLCLLSVGVWGQDGNEEMGGITQTPYKVSISGTTVILTCPQYPGSEILWQHNDKNIGGDEDDKNIGSDEDHLSLKEFSELEQSGYYVCYPRGSKPEDANFYLYLRARVCENCMEMDVMSVATIVIVDICITGGLLLLVYYWSKNRKAKAKPVTRGAGAGGRQRGQNKERPPPVPNPDYEPIRKGQRDLYSGLNQRRI
【0055】
配列番号636(ヒトCD3ε細胞外ドメイン)
DGNEEMGGITQTPYKVSISGTTVILTCPQYPGSEILWQHNDKNIGGDEDDKNIGSDEDHLSLKEFSELEQSGYYVCYPRGSKPEDANFYLYLRARVCENCMEMD
【0056】
本明細書で使用するとき、用語「インターロイキン−1受容体アクセサリータンパク質」、「IL1RAP」、及び「IL1−RAP」は、具体的には、例えば、GenBank Accession No.AAB84059、NCBI Reference Sequence:NP_002173.1、及びUniProtKB/Swiss−Prot Accession No.Q9NPH3−1に記載されているような、ヒトIL1RAPタンパク質を含む(Huang et al.,1997,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.94(24),12829−12832も参照)。IL1RAPはまた、科学文献においてIL1 R3、C3orf13、FLJ37788、IL−1 RAcP及びEG3556としても知られている。
【0057】
「CD33」は、表面抗原分類33タンパク質を指す。CD33は、67キロダルトン(kD)の1回膜貫通糖タンパク質であり、シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン(シグレック)ファミリーのメンバーである。CD33は、主に骨髄分化抗原であると考えられ、骨髄前駆細胞、好中球、及びマクロファージでは低発現し、循環単球及び樹状細胞では高発現する。ヒトCD33細胞外ドメイン(Uniprot P20138)(配列番号636)及びカニクイザルCD33(XP_005590138.1)は、本開示によるCD33特異性抗体の生成に使用するためのタンパク質の例である。
【0058】
「TMEFF2」は、EGF様ドメイン及びトモレグリン2とも呼ばれる2つのフォリスタチン様ドメイン2を含むヒト膜貫通タンパク質を指す。完全長ヒトTMEFF2のアミノ酸配列を配列番号77に示す。TMEFF2の細胞外ドメインを配列番号575に示し、完全長TMEFF2の残基40〜374にまたがる。TMEFF2細胞外ドメインは、3つの異なるサブドメイン、Kazal様1(残基85〜137)、Kazal様2(残基176〜229)、及びEGFドメイン(残基261〜301)を保有する。TMEFF2 EGFドメインを配列番号577に示す。TMEFF2「膜近位領域」は、EGFドメイン及びN−C末端リンカー領域(例えば、配列番号77の完全長ヒトTMEFF2の残基230〜320)を包含する、配列番号629のTMEFF2領域を指す。本明細書におけるタンパク質、ポリペプチド、及びタンパク質断片に対する全ての言及は、非ヒト種由来のものであると明示的に指定されない限り、それぞれのタンパク質、ポリペプチド、又はタンパク質断片のヒトバージョンを指すことを意図する。したがって、「TMEFF2」は、非ヒト種、例えば、「マウスTMEFF2」又は「サルTMEFF2」などの非ヒト種由来のものであると指定されない限り、ヒトTMEFF2を意味する。
【0059】
配列番号77(完全長ヒトTMEFF2)
MVLWESPRQCSSWTLCEGFCWLLLLPVMLLIVARPVKLAAFPTSLSDCQTPTGWNCSGYDDRENDLFLCDTNTCKFDGECLRIGDTVTCVCQFKCNNDYVPVCGSNGESYQNECYLRQAACKQQSEILVVSEGSCATDAGSGSGDGVHEGSGETSQKETSTCDICQFGAECDEDAEDVWCVCNIDCSQTNFNPLCASDGKSYDNACQIKEASCQKQEKIEVMSLGRCQDNTTTTTKSEDGHYARTDYAENANKLEESAREHHIPCPEHYNGFCMHGKCEHSINMQEPSCRCDAGYTGQHCEKKDYSVLYVVPGPVRFQYVLIAAVIGTIQIAVICVVVLCITRKCPRSNRIHRQKQNTGHYSSDNTTRASTRLI
【0060】
配列番号575(ヒトTMEFF2の細胞外ドメイン)
FPTSLSDCQTPTGWNCSGYDDRENDLFLCDTNTCKFDGECLRIGDTVTCVCQFKCNNDYVPVCGSNGESYQNECYLRQAACKQQSEILVVSEGSCATDAGSGSGDGVHEGSGETSQKETSTCDICQFGAECDEDAEDVWCVCNIDCSQTNFNPLCASDGKSYDNACQIKEASCQKQEKIEVMSLGRCQDNTTTTTKSEDGHYARTDYAENANKLEESAREHHIPCPEHYNGFCMHGKCEHSINMQEPSCRCDAGYTGQHCEKKDYSVLYVVPGPVRFQYVLIAAVIGTIQIAVICVVVLCITRKCPRSNRIHRQKQNTGHYSSDNTTRASTRLI
【0061】
TMEFF2 EGFドメイン配列番号577
HHIPCPEHYNGFCMHGKCEHSINMQEPSCRCDAGYTGQHCE
【0062】
TMEFF2膜近位領域配列番号629
NTTTTTKSEDGHYARTDYAENANKLEESAREHHIPCPEHYNGFCMHGKCEHSINMQEPSCRCDAGYTGQHCEKKDYSVLYVVPGPVRFQYV
【0063】
「TMEFF2陽性癌」は、測定可能なレベルのTMEFF2タンパク質を示す癌組織又は癌細胞を指す。TMEFF2タンパク質のレベルは、生細胞又は溶解細胞に対して周知のアッセイ、例えば、ELISA、免疫蛍光、フローサイトメトリー、又はラジオイムノアッセイを使用して測定することができる。「過剰発現」、「過剰発現した」、及び「過剰発現している」は、互換的に、参照サンプルと比較したときに測定可能に高いレベルの腫瘍抗原を有する癌細胞、悪性細胞、又は癌組織などのサンプルを指す。過剰発現は、遺伝子増幅によって、又は転写若しくは翻訳の増加によって引き起こされ得る。サンプル中のタンパク質の発現及び過剰発現は、例えば、生細胞又は溶解細胞に対して周知のアッセイ、例えば、ELISA、免疫蛍光、フローサイトメトリー、又はラジオイムノアッセイを使用して測定することができる。サンプル中のポリヌクレオチドの発現及び過剰発現は、例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション、サザンブロッティング、又はPCR技術を使用して測定することができる。サンプル中のタンパク質又はポリヌクレオチドのレベルが参照サンプルと比較したときに少なくとも1.5倍高いとき、タンパク質又はポリヌクレオチドは過剰発現している。参照サンプルの選択は周知である。
【0064】
「サンプル」は、対象から単離された類似の流体、細胞、又は組織に加えて、対象の体内に存在する流体、細胞、又は組織の収集物を指す。例示的なサンプルは、血液、血清及び漿膜液、血漿、リンパ液、尿、唾液、嚢胞液、涙液、糞便、喀痰などの体液、分泌組織及び器官の粘膜からの分泌液、膣分泌液、非固形腫瘍に関連するものなどの腹水、胸膜腔、心膜腔、腹膜腔、腹腔、及び他の体腔の流体、気管支洗浄によって回収された流体、対象又は生物供給源、例えば、細胞及び器官の培養培地(細胞又は器官の馴化培地を含む)、洗浄液などと接触した液体溶液、組織生検、穿刺吸引、又は外科的に切除された腫瘍組織である。
【0065】
本明細書で使用するとき、「癌細胞」又は「腫瘍細胞」は、インビボ、エクスビボ、又は組織培養のいずれかにおいて、自然発生的な又は導入された表現型の変化を有する癌性、前癌性、又は形質転換細胞を指す。これらの変化は、必ずしも新たな遺伝物質の取り込みを伴うものではない。形質転換は、形質転換ウイルスの感染及び新たなゲノム核酸の組み込み、又は外因性の核酸の取り込みにより生じ得るが、自然発生的に又は発癌物質に対する曝露後にも生じる場合があり、それによって内因性遺伝子が変異する。形質転換/癌は、インビトロ、インビボ、及びエクスビボにおける、形態学的変化、細胞の不死化、異常な増殖の制御、病巣の形成、増殖、悪性病変、腫瘍特異的マーカーレベルの調節、侵襲性、ヌードマウスなどの好適な動物宿主における腫瘍増殖などによって例示される(Freshney,Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique(第3版、1994年))。
【0066】
特に明記しない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などのあらゆる数値は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、数値は、典型的には、記載される値の±10%を含む。例えば、1mg/mLの濃度は0.9mg/mL〜1.1mg/mLを含む。同様に、1%〜10%(w/v)の濃度範囲は0.9%(w/v)〜11%(w/v)を含む。本明細書で使用する場合、数値範囲の使用は、文脈上そうでない旨が明確に示されない限り、その範囲内の整数及び値の分数を含む、全ての可能な部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含む。
【0067】
「エフェクター抗原」は、細胞傷害、貪食作用、抗原提示、及び/又はサイトカイン放出を刺激又は誘発することができる免疫系の細胞からの抗原である。このようなエフェクター抗原は、例えば、限定するものではないが、T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞である。エフェクター抗原の好適な特異性の例としては、T細胞についてはCD3又はCD3εなどのCD3サブユニット、及びNK細胞についてはCD16が挙げられるが、これらに限定されない。エフェクター細胞のこのような細胞表面分子は、細胞殺傷を媒介するのに好適である。エフェクター細胞は、細胞傷害、貪食作用、抗原提示、及び/又はサイトカイン放出を刺激又は誘発することができる免疫系の細胞である。このようなエフェクター細胞は、例えば、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、顆粒球、単球、マクロファージ、樹状細胞、及び抗原提示細胞であるが、これらに限定されない。エフェクター細胞の好適な特異性の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:T細胞についてはCD2、CD3及びCD3eなどのCD3サブユニット、CD5、CD28、及びT細胞受容体(TCR)の他の構成要素;NK細胞についてはCD16、CD16A、CD25、CD38、CD44、CD56、CD69、CD94、CD335(NKp46)、CD336、(NKp44)、CD337(NKp30)、NKp80、NKG2C及びNKG2D、DNAM、NCR;顆粒球についてはCD18、CD64、及びCD89;単球及びマクロファージについてはCD18、CD32、CD64、CD89、及びマンノース受容体;樹状細胞についてはCD64及びマンノース受容体;並びにCD35。本発明の特定の実施形態では、エフェクター細胞の特異性、すなわち細胞表面分子は、二重特異性又は多重特異性分子のこのような細胞表面分子への結合時に細胞殺傷を媒介し、それによって、細胞溶解又はアポトーシスを誘導するのに好適である。
【0068】
「二重特異性CD3抗体」は、CD3に特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメイン及び第2の抗原に特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメインを含む分子、例えば、CD3に特異的に結合する第1のドメイン及び第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインを含む二重特異性抗体を指す。CD3及び第2の抗原に特異的に結合するドメインは、典型的にはV
H/V
L対である。二重特異性CD3抗体は、CD3又は第2の抗原のいずれかへの結合に関して一価であってもよい。いくつかの実施形態では、第2の又は標的抗原は、免疫エフェクター細胞以外の標的細胞上で発現する細胞表面抗原である。いくつかの実施形態では、第2の抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)である。例示的なTAAは、PSMA、CD33、IL1RAP、及びTMEFF2である。
【0069】
「二重特異性PSMA×CD3抗体」、「PSMA/CD3抗体」、「二重特異性抗PSMA×CD3抗体」、又は「抗PSMA/CD3抗体」などは、PSMAに特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメインと、CD3に特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメインとを含む分子を指す。PSMA及びCD3に特異的に結合するドメインは、典型的にはV
H/V
L対である。二重特異性抗PSMA×CD3抗体は、PSMA又はCD3のいずれかへの結合に関して一価であってもよい。
【0070】
「二重特異性CD33×CD3抗体」、「CD33/CD3抗体」、「二重特異性抗CD33×CD3抗体」、又は「抗CD33/CD3抗体」などは、CD33に特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメインと、CD3に特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメインとを含む分子を指す。CD33及びCD3に特異的に結合するドメインは、典型的にはV
H/V
L対である。二重特異性抗CD33×CD3抗体は、CD33又はCD3のいずれかへの結合に関して一価であってもよい。
【0071】
「二重特異性IL1RAP×CD3抗体」、「IL1RAP/CD3抗体」、「二重特異性抗IL1RAP×CD3抗体」、又は「抗IL1RAP/CD3抗体」などは、IL1RAPに特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメインと、CD3に特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメインとを含む分子を指す。IL1RAP及びCD3に特異的に結合するドメインは、典型的にはV
H/V
L対である。二重特異性抗IL1RAP×CD3抗体は、IL1RAP又はCD3のいずれかへの結合に関して一価であってもよい。
【0072】
「二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体」、TMEFF2/CD3抗体、TMEFF2×CD3抗体などは、TMEFF2及びCD3に結合する抗体を指す。
【0073】
「価数」とは、分子中の抗原に対して特異的な結合部位が明記された数で存在することを意味する。そのため、用語「1価」、「2価」、「4価」、及び「6価」はそれぞれ、抗原に対して特異的な結合部位が分子中に1個、2個、4個、及び6個存在することを指す。「多価」とは、分子中に抗原に対して特異的な結合部位が2つ以上存在することを指す。
【0074】
「抗原特異的CD4+又はCD8+T細胞」は、特定の抗原によって活性化されるCD4+若しくはCD8+T細胞、又はその免疫刺激性エピトープを指す。
【0075】
「対象」は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」としては、例えば、哺乳類及び非哺乳類、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などの全ての脊椎動物が挙げられる。注記されている場合を除き、「患者」及び「対象」という用語は、互換的に使用される。
【0076】
本明細書全体を通して、抗体の定常領域におけるアミノ酸残基の付番は、特に明示的に指定しない限り、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)に記載されているEUインデックスに準拠する。
【0077】
【表1】
[この文献は図面を表示できません]
【0078】
物質の組成
本発明は、抗CD3抗体及びその抗原結合断片、PSMAに特異的に結合する抗体及びその抗原結合断片、CD33に特異的に結合する抗体及びその抗原結合断片、IL1RAPに特異的に結合する抗体及びその抗原結合断片、CD3に特異的に結合する第1のドメイン及び第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインを含む多重特異性抗体、並びにCD3とPSMA、CD33、IL1RAP、及びTMEFF2のうちの1つ以上とに特異的に結合する多重特異性抗体を提供する。本発明は、本発明の抗体又はその相補的核酸をコードしているポリペプチド及びポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、並びにこれらを作製する方法及び使用する方法を提供する。
【0079】
本明細書に記載される抗体の全般的な態様
本明細書に記載の抗CD3特異性抗体又は抗原結合断片は、記載される抗CD3抗体又は抗原結合断片の生物学的特性(例えば、結合親和性又は免疫エフェクター活性)を保持している、1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失、又は付加を有する変異体を含む。本発明の文脈において、下記注釈は、別途記載のない限り、変異を説明するのに使用される。i)所与の位置におけるアミノ酸の置換は、例えば、K409Rと記載される。K409Rは、409位におけるリジンのアルギニンによる置換を意味する。ii)特定の変異体について、特定の三文字又は一文字コードは、コードXaa及びXを含めて、アミノ酸残基を示すのに使用される。このため、409位におけるリジンについてのアルギニンの置換は、K409Rと指定され、又は409位におけるリジンについての任意のアミノ酸残基の置換は、K409Xと指定される。409位におけるリジンの欠失の場合には、この欠失は、K409
*により示される。当業者であれば、1つ又は複数のアミノ酸置換、欠失、又は付加を有する変異体を産生することができる。
【0080】
これらの変異体としては、(a)1つ又は2つ以上のアミノ酸残基が保存的又は非保存的アミノ酸により置換されている変異体、(b)1つ又は2つ以上のアミノ酸がポリペプチドに付加され、又は同ポリペプチドから欠失している変異体、(c)1つ又は2つ以上のアミノ酸が置換基を含む変異体、及び(d)ポリペプチドが別のペプチド又はポリペプチド、例えば、融合パートナー、タンパク質タグ、又は他の化学部分と融合した変異体、を挙げることができる。これらは、ポリペプチドに有用な特性、例えば、抗体に対するエピトープ、ポリヒスチジン配列、ビオチン部分等を付与してもよい。本明細書に記載された抗体又は抗原結合フラグメントは、保存的又は非保存的位置のいずれかにおいてある種からのアミノ酸残基が別の種における対応する残基に置換されている変異体を含んでもよい。他の実施形態では、非保存的位置におけるアミノ酸残基は、保存的又は非保存的残基により置換される。これらの変異体を得るための手法は、遺伝的(欠失、変異等)、化学的、及び酵素的手法を含めて、当業者に既知である。
【0081】
本明細書に記載の抗体又は抗原結合断片は、IgM、IgD、IgG、IgA、又はIgEアイソタイプであってよい。いくつかの実施形態では、抗体アイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4アイソタイプである。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1アイソタイプである。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG2アイソタイプである。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG3アイソタイプである。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG4アイソタイプである。抗体又はその抗原結合断片の特異性は、CDRのアミノ酸配列及び配置によって部分的に決定される。したがって、あるアイソタイプのCDRは、抗原特異性を変化させることなく、別のアイソタイプに導入することができる。したがって、このような抗体アイソタイプは、記載された抗体又は抗原結合フラグメントの範囲内にある。
【0082】
IgGクラスは、ヒトにおいて、4つのアイソタイプ:IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4に分割される。これらのアイソタイプは、CH1、CH2、及びCH3領域のアミノ酸配列において95%超の相同性を共有するが、ヒンジ領域のアミノ酸組成及び構造においては大きな差異を示す。Fc領域は、エフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)、及び補体依存性細胞傷害(CDC)を媒介する。ADCCでは、Fc領域が、免疫エフェクター細胞、例えば、ナチュラルキラー細胞及びマクロファージの表面上のFc受容体(FcγR)に結合して、標的細胞の溶解を引き起こす。CDCでは、抗体が、細胞表面における補体カスケードを誘発することにより標的細胞の殺傷を媒介する。ADCPでは、抗体が、マクロファージ又は樹状細胞などの貪食細胞による内部移行により抗体被膜標的細胞の排除を媒介する。本明細書に記載の抗体としては、Fc領域が様々なエフェクター機能を調節するように改変されている改変バージョンを含む、IgGアイソタイプのいずれかと組み合わされて可変ドメインの記載された特徴を有する抗体が挙げられる。
【0083】
治療抗体の多くの用途では、細胞枯渇による安全上のリスクを生じる可能性が潜在的にあるため、Fc媒介エフェクター機能は望ましくない。エフェクター機能の改変は、Fc領域を遺伝子操作してFcγR又は補体因子への結合を低減することにより達成され得る。活性化(FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa、及びFcγRIIIb)及び阻害性(FcγRIIb)FcγR又は補体第1成分(C1q)へのIgGの結合は、ヒンジ領域及びCH2ドメインに位置する残基に依存する。IgG1、IgG2、及びIgG4に変異を導入して、Fc媒介エフェクター機能を低下又はサイレンシングさせることができる。本明細書に記載された抗体は、これらの改変を含んでもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、抗CD3、抗PSMA、抗CD33、及び/又は抗IL1RAP抗体は、以下の特性のうちの1つ以上を有する遺伝子操作されたFc領域を含む:(a)親Fcと比較してエフェクター機能が低下している;(b)FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIb、及び/若しくはFcγRIIIaに対する親和性が低下している、(c)FcγRIに対する親和性が低下している、(d)FcγRIIaに対する親和性が低下している、(e)FcγRIIIbに対する親和性が低下している、又は(f)FcγRIIIaに対する親和性が低下している。
【0085】
いくつかの実施形態では、抗CD3、抗PSMA、抗CD33、及び/又は抗IL1RAP抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4アイソタイプである。抗体がIgG4アイソタイプを有するいくつかの実施形態では、抗体は、野生型IgG4アイソタイプと比較して、そのFc領域中にS228P、F234A、及びL235A置換を含有する。抗体がIgG1アイソタイプを有するいくつかの実施形態では、抗体は、そのFc領域中にL234A及びL235A置換を含有する。本明細書に記載された抗体は、これらの改変を含んでもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、抗CD3、抗PSMA、抗CD33、及び/又は抗IL1RAP抗体は、任意選択で重鎖置換S228Pを含むIgG4アイソタイプである。
【0087】
いくつかの実施形態では、抗CD3、抗PSMA、抗CD33、及び/又は抗IL1RAP抗体は、野生型IgG1と比較して、任意選択で重鎖置換L234A、G237A、P238S、H268A、A330S、及びP331Sを含むIgG1アイソタイプである。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗CD3、抗PSMA、抗CD33、及び/又は抗IL1RAP抗体は、野生型IgG2と比較して、任意選択で重鎖置換L234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330S、及びP331Sを含むIgG2アイソタイプである。
【0089】
野生型IgG4
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号602)
【0090】
野生型IgG1
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号601)
【0091】
野生型IgG2
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDISVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号711)
【0092】
特定の実施形態では、標識された抗CD3、抗PSMA、抗CD33、及び/又は抗IL1RAP抗体が提供される。例示的な直接検出される標識又は部分(例えば、蛍光、発色団、高電子密度、化学発光、及び放射性標識)並びに(例えば、酵素反応又は分子間相互作用を通して)間接的に検出される標識及び部分(例えば、酵素又はリガンド)。例示的な標識としては、放射性標識(例えば、
32P、
14C、
111I、
125I、
3H、
131I)、蛍光標識(DyLight(登録商標)649など)、エピトープタグ、ビオチン、発色団標識、ECL標識、又は酵素が挙げられる。より詳細には、記載された標識としては、ルテニウム、
111In−DOTA、
111In−ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、及びベータガラクトシダーゼ、ポリヒスチジン(HISタグ)、アクリジン染料、シアニン染料、フルオロン染料、オキサジン染料、フェナントリジン染料、ローダミン染料、Alexafluor(登録商標)染料などが挙げられる。
【0093】
記載される抗CD3、抗PSMA、抗CD33、及び/又は抗IL1RAP抗体、並びに抗原結合断片に加えて、記載される抗体及び抗原結合断片をコード可能なポリヌクレオチド配列も提供される。記載されるポリヌクレオチドを含むベクターも提供され、同様に、本明細書に提供される抗CD3、抗PSMA、抗CD33、及び/若しくは抗IL1RAP抗体、又は抗原結合断片を発現している細胞も提供される。また、開示されたベクターを発現可能な細胞も記載される。これらの細胞は、哺乳類細胞(例えば、293F細胞、CHO細胞)、昆虫細胞(例えば、Sf7細胞)、酵母細胞、植物細胞、又は細菌細胞(例えば、大腸菌)であってもよい。記載された抗体はまた、ハイブリドーマ細胞により産生することができる。
【0094】
単一特異性抗体の生成
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体、抗PSMA、抗CD33、抗TMEFF2、及び/又は抗IL1RAP抗体はヒトである。
【0095】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体、抗PSMA、抗CD33、抗TMEFF2、及び/又は抗IL1RAP抗体はヒト化されている。
【0096】
本明細書に記載の本発明の単一特異性抗体(例えば、抗CD3、抗PSMA、抗CD33、抗TMEFF2、及び/又は抗IL1RAP抗体)は、様々な技術を使用して生成され得る。例えば、Kohler and Milstein,Nature 256:495,1975のハイブリドーマ法を使用してモノクローナル抗体を生成することができる。ハイブリドーマ法では、マウス又は他の宿主動物、例えばハムスター、ラット、又はニワトリを、ヒト、チンパンジー、又はマカクのPSMA、CD33、IL1RAP、TMEFF2、若しくはCD3、又はPSMA、CD33、IL1RAP、TMEFF2、若しくはCD3の断片、例えば、PSMA、CD33、IL1RAP、TMEFF2、若しくはCD3の細胞外ドメインで免疫化し、続いて、標準的な方法を使用して、免疫化した動物由来の脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。1個の不死化したハイブリドーマ細胞から発生したコロニーを、結合特異性、交差反応性又はその欠如、及び抗原親和性などの所望の特性を有する抗体の産生についてスクリーニングする。
【0097】
様々な宿主動物を使用して、本明細書に記載の本発明の抗CD3、抗PSMA、抗CD33、TMEFF2、及び/又は抗IL1RAP抗体を産生することができる。例えば、Balb/cマウスを使用して、マウス抗ヒトPSMA抗体を生成することができる。Balb/cマウス及び他のヒト以外の動物において作製された抗体を、よりヒトに近い配列を生成するための様々な技術を使用してヒト化することもできる。
【0098】
ヒトアクセプターフレームワークの選択を含む例示的なヒト化技術は公知であり、CDRグラフト化(米国特許第5,225,539号)、SDRグラフト化(米国特許第6,818,749号)、リサーフェシング(Padlan(1991)Mol Immunol 28:489−499)、特異性決定残基のリサーフェシング(米国特許出願公開第2010/0261620号)、ヒトフレームワーク適応(米国特許第8,748,356)、又は超ヒト化(米国特許第7,709,226号)を含む。これらの方法では、CDRの長さの類似性若しくはカノニカル構造の同一性、又はこれらの組み合わせに基づいて、親フレームワークに対する全体的な相同性に基づき選択され得るヒトフレームワークに親抗体のCDRを導入する。
【0099】
ヒト化抗体は、国際公開第1090/007861号及び同第1992/22653号に記載されているものなどの技術によって、結合親和性を保存するように変化させたフレームワーク支持残基を組み込むことによって(復帰変異)、又はCDRのいずれかに変動を導入して、例えば抗体の親和性を改善することによって、所望の抗原に対するその選択性又は親和性を改善するように更に最適化させてもよい。
【0100】
自身のゲノムにヒト免疫グロブリン(Ig)遺伝子座を有する、マウス又はラットなどのトランスジェニック動物を使用して、標的タンパク質に対するヒト抗体を生成することができ、これらは例えば、以下に記載されている:米国特許第6,150,584号、国際公開第99/45962号、同第2002/066630号、同第2002/43478号、同第2002/043478号、及び同第1990/04036号、Lonberg et al(1994)Nature 368:856−9;Green et al(1994)Nature Genet.7:13−21;Green & Jakobovits(1998)Exp.Med.188:483−95;Lonberg and Huszar(1995)Int Rev Immunol 13:65−93;Bruggemann et al.,(1991)Eur J Immunol 21:1323− 1326;Fishwild et al.,(1996)Nat Biotechnol 14:845−851;Mendez et al.,(1997)Nat Genet 15:146−156;Green(1999)J Immunol Methods 231:11−23;Yang et al.,(1999)Cancer Res 59:1236−1243;Bruggemann and Taussig(1997)Curr Opin Biotechnol 8:455−458。このような動物の内在的な免疫グロブリン遺伝子座を破壊又は欠失させてもよく、相同又は非相同組換えを使用して、導入染色体(transchromosome)を使用して、又はミニ遺伝子を使用して、少なくとも1つの完全な又は部分的なヒト免疫グロブリン遺伝子座を動物のゲノムに挿入してもよい。Regeneron(http://_www_regeneron_com)、Harbour Antibodies(http://_www_harbourantibodies_com)、Open Monoclonal Technology,Inc.(OMT)(http://_www_omtinc_net)、KyMab(http://_www_kymab_com)、Trianni(http://_www.trianni_com)、及びAblexis(http://_www_ablexis_com)などの企業は、上記の技術を使用して、選択抗原を標的としたヒト抗体を提供するべく取り組んでいる場合がある。
【0101】
ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリから選択することができ、この場合、ファージは、ヒト免疫グロブリン又はその一部、例えば、Fab、単鎖抗体(scFv)、又は不対若しくは対合抗体の可変領域を発現するように遺伝子操作されている(Knappik et al.,(2000)J Mol Biol 296:57−86;Krebs et al.,(2001)J Immunol Meth 254:67−84;Vaughan et al.,(1996)Nature Biotechnology 14:309−314;Sheets et al.,(1998)PITAS(USA)95:6157−6162;Hoogenboom and Winter(1991)J Mol Biol 227:381;Marks et al.,(1991)J Mol Biol 222:581)。本発明の抗体は、例えば、Shi et al.,(2010)J Mol Biol 397:385−96及び国際公開第09/085462号)に記載の通り、バクテリオファージpIXコートタンパク質との融合タンパク質として抗体の重鎖及び軽鎖可変領域を発現しているファージディスプレイライブラリから単離され得る。ライブラリを、ヒト及び/又はカニクイザルのPSMA、CD33、IL1RAP、TMEFF2、又はCD3のファージ結合についてスクリーニングし、得られた陽性クローンを更に特性評価し、Fabをクローンの溶解物から単離し、完全長のIgGとして発現させることができる。ヒト抗体を単離するためのこのようなファージディスプレイ法は、例えば、米国特許第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,571,698号、同第5,427,908号、同第5,580,717号、同第5,969,108号、同第6,172,197号、同第5,885,793号、同第6,521,404号、同第6,544,731号、同第6,555,313号、同第6,582,915号、及び同第6,593,081号に記載されている。
【0102】
免疫原性抗原の調製及びモノクローナル抗体の産生は、組換えタンパク質産生などの任意の好適な技術を使用して実施することができる。免疫原性抗原は、精製タンパク質、あるいは全細胞又は細胞若しくは組織抽出物を含むタンパク質混合物の形態で動物に投与されてもよく、抗原は、当該抗原又はその一部をコードしている核酸から動物の体内でデノボ形成されてもよい。
【0103】
二重特異性及び多重特異性CD3抗体の生成及び使用
本発明は、CD3に特異的に結合する第1のドメインと、第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む二重特異性及び多重特異性抗体を提供する。第2の抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)又は病原性細胞上の抗原であってよい。
【0104】
CD3に特異的に結合する第1のドメインと第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む二重特異性抗体及び多重特異性抗体を遺伝子操作するために使用することができる例示的な抗CD3抗体としては、それぞれ表7A及び7Bに示されるV
H/V
L配列及び重鎖/軽鎖CDRを含むCD3抗体、並びに表10及び表11及び添付のテキストに記載されているその遺伝子操作された変異体が挙げられる。例えば、本明細書に記載のCD3抗体CD3B312、CD3B313、CD3B314、CD3B315、CD3B316、CD3B317、CD3B337、CD3B373、CD3B376、CD3B389、CD3B450、及びCD3B467のCDR及び/又はVH/VLドメインを使用して、CD3に特異的に結合する第1のドメインと第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む二重特異性及び多重特異性抗体を生成することができる。
【0105】
本明細書に記載の抗CD3抗体のCDR及び/又はVH/VLドメインを、CD3に特異的に結合する第1のドメインと第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む二重特異性抗体に組み込むことができる。
【0106】
本明細書に記載の抗CD3抗体のCDR及び/又はVH/VLドメインを、本明細書及び表23に記載のPSMA結合VH/VLドメインを含む二重特異性抗体に組み込むことができる。本明細書に記載の抗CD3抗体及び/又はVH/VLドメインを、本明細書及び表30に記載のIL1RAP結合VH/VLドメインを含む二重特異性抗体に組み込むことができる。本明細書に記載の抗CD3抗体のCDR及び/又はVH/VLドメインを、本明細書及び表38に記載のCD33結合VH/VLドメインを含む二重特異性抗体に組み込むことができる。例えば、本明細書に記載のPSMA抗体PSMB119、PSMB120、PSMB121、PSMB122、PSMB123、PSMB87、PSMB126、PSMB127、PSMB128、PSMB129、PSMB130、PSMB120、PSMB121、PSMB122、PSMB123、PSMB127、PSMB128、PSMB130、PSMB344、PSMB345、PSMB346、PSMB347、PSMB349、PSMB358、PSMB359、PSMB360、PSMB361、PSMB362、PSMB363、及びPSMB365のVH/VLドメインを使用して、二重特異性PSMA×CD3抗体を生成することができる。
【0107】
例示的なTAAは、PSMA、CD33、TMEFF2、及びIL1RAPである。本明細書に提供される例示的な多重特異性PSMA×CD3、CD33×CD3、TMEFF2×CD3、及びIL1RAP×CD3抗体は、CD3に特異的に結合する第1のドメインと、PSMA、CD33、TMEFF2、又はIL1RAPに特異的に結合する第2のドメインとを有する。二重特異性PSMA×CD3分子を遺伝子操作するために使用することができる例示的な抗PSMA抗体は、本明細書に記載されているものであり、これは、表23に列挙する重鎖及び軽鎖配列を含むがこれらに限定されない重鎖及び軽鎖配列を含み得る。二重特異性IL1RAP×CD3分子を遺伝子操作するために使用することができる例示的な抗IL1RAP抗体は、本明細書に記載されているものであり、これは、表35に提供される重鎖及び軽鎖可変領域配列を含むがこれらに限定されない重鎖及び軽鎖可変領域配列を含み得る。二重特異性CD33×CD3分子を遺伝子操作するために使用することができる例示的な抗CD33抗体は、本明細書に記載されているものであり、これは、表43に提供される重鎖及び軽鎖可変領域配列を含むがこれらに限定されない重鎖及び軽鎖可変領域配列を含み得る。二重特異性TMEFF2×CD3分子を遺伝子操作するために使用することができる例示的な抗TMEFF2抗体は、本明細書に記載されているものであり、これは、表59、表66〜68に提供される重鎖及び軽鎖可変領域配列を含むがこれらに限定されない重鎖及び軽鎖可変領域配列を含み得る。
【0108】
生成された二重特異性抗体は、CD3及び/若しくは第2の抗原への結合について、並びに/又は第2の抗原を発現する細胞のT細胞媒介性殺傷などの所望の機能特性について試験することができる。
【0109】
本明細書に提供される二重特異性抗体は、完全長抗体構造を有する抗体を含む。
【0110】
「Fabアーム」又は「半分子」とは、抗原に特異的に結合する1つの重鎖−軽鎖対を意味する。
【0111】
本明細書に記載の完全長二重特異性抗体は、例えば、インビトロにおける無細胞環境において又は共発現を使用してNのいずれかで異なる特異性を有する2つの抗体半分子のヘテロダイマーを形成するのに好都合になるように、各半分子における重鎖CH3界面に置換を導入することによって、2つの単一特異性二価抗体間でのFabアーム交換(又は半分子交換)を使用して生成され得る。Fabアーム交換反応は、ジスルフィド結合異性化反応及びCH3ドメインの解離−会合の結果である。親単一特異性抗体のヒンジ領域における重鎖ジスルフィド結合は減少する。親単一特異性抗体のうちの1つの得られた遊離システインは、第2の親単一特異性抗体分子のシステイン残基と重鎖内ジスルフィド結合を形成し、同時に、親抗体のCH3ドメインは、解離−会合により解放及び再形成する。FabアームのCH3ドメインは、ホモダイマー化よりヘテロダイマー化に好都合になるように改変されてもよい。得られる生成物は、各々が異なるエピトープ、すなわち、CD3上のエピトープ及び第2の抗原上のエピトープに結合する、2つのFabアーム又は半分子を有する二重特異性抗体である。
【0112】
「ホモダイマー化」とは、同一のCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖の相互作用を意味する。「ホモダイマー」とは、同一のCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖を有する抗体を意味する。
【0113】
「ヘテロダイマー化」とは、同一でないCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖の相互作用を意味する。「ヘテロダイマー」とは、同一でないCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖を有する抗体を意味する。
【0114】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、Triomab/Quadroma(Trion Pharma/Fresenius Biotech)、Knob−in−Hole(Genentech)、CrossMAb(Roche)、及び静電的一致(Chugai,Amgen,NovoNordisk,Oncomed)、LUZ−Y(Genentech)、Strand Exchange Engineered Domain body(SEEDbody)(EMD Serono)、Biclonic(Merus)、並びにDuoBody(登録商標)Technology(Genmab A/S)などの設計を含む。
【0115】
Triomab quadroma技術を使用して、本発明の抗CD3抗体のVH及びVLが組み込まれた完全長二重特異性抗体を生成することができる。Triomab技術は、2つの親キメラ抗体、IgG2aを有する1つの親mAbと、ラットIgG2b定常領域を有する第2の親mAbとの間のFabアーム交換を促進し、キメラ二重特異性抗体をもたらす。
【0116】
「ノブ−イン−ホール」戦略(例えば、国際公開第2006/028936号を参照されたい)を使用して、完全長二重特異性抗体を生成することができる。簡潔に述べると、ヒトIgGにおけるCH3ドメインの界面を形成する選択されたアミノ酸は、ヘテロダイマー形成を促進するために、CH3ドメイン相互作用に影響を及ぼす位置において変異され得る。小さな側鎖を有するアミノ酸(ホール)が、第1の抗原に特異的に結合する抗体の重鎖内に導入され、大きな側鎖を有するアミノ酸(ノブ)が、第2の抗原に特異的に結合する抗体の重鎖内に導入される。2つの抗体の共発現後に、ヘテロダイマーが、「ホール」を有する重鎖と「ノブ」を有する重鎖との優先的な相互作用の結果として形成される。ノブ及びホールを形成する例示的なCH3置換ペアは、T366Y/F405A、T366W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S、及びT366W/T366S_L368A_Y407Vである(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける修飾位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける修飾位置として表現)。
【0117】
CrossMAb技術を使用して、完全長二重特異性抗体を生成することができる。CrossMAbは、「ノブ−イン−ホール」戦略を利用してFabアーム交換を促進することに加えて、半アームのうちの1つに、得られる二重特異性抗体の正しい軽鎖対形成を保証するために交換されたCH1及びCLドメインを有する(例えば、米国特許第8,242,247号を参照されたい)。
【0118】
他の交差戦略を使用して、一方のアーム又は両方のアームのいずれかにおける、重鎖と軽鎖との間若しくは二重特異性抗体の重鎖内の、可変領域若しくは定常領域、又は両方の領域を交換することによって、完全長二重特異性抗体を生成することができる。これらの交換としては、例えば、国際公開第2009/080254号、同第2009/080251号、同第2009/018386号、及び同第2009/080252号に記載されるVH−CH1とVL−CL、VHとVL、CH3とCL、及びCH3とCH1が挙げられる。
【0119】
他の戦略、例えば、あるCH3表面における正に荷電した残基及び第2のCH3表面における負に荷電した残基を置換することによる静電的相互作用を使用する重鎖ヘテロダイマー化の促進は、米国特許出願公開第2010/0015133号、米国特許出願公開第2009/0182127号、米国特許出願公開第2010/028637号、又は米国特許出願公開第2011/0123532号に記載されるように使用することができる。他の戦略では、ヘテロダイマー化は、米国特許出願公開第2012/0149876号又は米国特許出願公開第2013/0195849号に記載されるように、下記置換:L351Y_F405A Y407V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、Y407A/T366A_K409F、又はT350V_L351Y_F405A_Y407V/T350V_T366L_K392L_T394W(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける修飾位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける修飾位置として表現)により促進されてもよい。
【0120】
LUZ−Y技術を利用して、二重特異性抗体を生成することができる。この技術では、Wranik et al.,(2012)J Biol Chem 287(52):42221−9に記載の通り、ロイシンジッパーをCH3ドメインのC末端に付加して、精製後に除去される親mAbからのヘテロダイマーアセンブリを駆動する。
【0121】
SEEDbody技術を利用して、二重特異性抗体を生成することができる。SEEDbodyは、それらの定常ドメインにおいて、米国特許出願公開第2007/0287170号に記載されるように、ヘテロダイマー化を促進するためにIgA残基で置換された選択IgG残基を有する。
【0122】
本明細書に記載の二重特異性抗体は、国際公開第2011/131746号)に記載の方法に従って、2つの単一特異性ホモダイマー抗体のCH3領域に非対称な変異を導入し、ジスルフィド結合を異性化させる還元条件下で、2つの親単一特異性ホモダイマー抗体から二重特異性ヘテロダイマー抗体を形成することによって、無細胞環境においてインビトロで生成され得る。この方法では、第1の単一特異性二価抗体(すなわち、第2の抗原に特異的に結合する抗体、例えば、抗PSMA、抗CD33、抗TMEFF2、又は抗IL1RAP抗体)及び第2の単一特異性二価抗体(例えば、抗CD3抗体)を、ヘテロダイマーの安定性を促進するCH3ドメインにおける特定の置換を有するように遺伝子操作し;これらの抗体は、ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合を異性化させるのに十分な還元条件下において共にインキュベートされ、それにより、Fabアーム交換により二重特異性抗体が生成される。インキュベート条件は、非還元条件に戻される。使用され得る例示的な還元剤は、2−メルカプトエチルアミン(2−MEA)、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、グルタチオン、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、L−システイン、及びβ−メルカプトエタノールである。例えば、少なくとも20℃の温度で、少なくとも25mMの2−MEAの存在下又は少なくとも0.5mMのジチオスレイトールの存在下で、pH5〜8、例えばpH7.0又はpH7.4で、少なくとも90分間のインキュベートを用いることができる。
【0123】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、CD3に特異的に結合する第1のドメインと第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む二重特異性抗体は、抗体のCH3定常ドメインに少なくとも1つの置換を含む。
【0124】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、抗体のCH3定常ドメインにおける少なくとも1つの置換は、K409R、F405L、又はF405L及びR409K置換であり、残基の付番はEUインデックスに準拠する。
【0125】
抗体ドメイン及び付番は、周知である。「非対称」とは、抗体内の2本の別の重鎖の2つのCH3ドメインにおける、同一でない置換を意味する。IgG1 CH3領域は通常、IgG1上の残基341〜446(残基付番はEUインデックスに従う)からなる。
【0126】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、IgG1アイソタイプであり、野生型IgG1と比較して、抗体の第1の重鎖(HC1)におけるF405L置換及び抗体の第2の重鎖(HC2)におけるK409R置換を含む。
【0127】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、IgG1アイソタイプであり、野生型IgG1と比較して、抗体の第1の重鎖(HC1)におけるK409R置換及び抗体の第2の重鎖(HC2)におけるF405L置換を含む。
【0128】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、IgG4アイソタイプであり、野生型IgG4と比較して、HC1におけるS228P置換並びにHC2におけるS228P、F405L、及びR409K置換を含む。
【0129】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、IgG4アイソタイプであり、野生型IgG4と比較して、HC1におけるS228P、F405L、及びR409K置換、並びにHC2におけるS228P置換を含む。
【0130】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、IgG4アイソタイプであり、野生型IgG4と比較して、HC1におけるS228P、F234A、及びL235A置換、並びにHC2におけるS228P、F234A、L235A、F405L、及びR409K置換を含む。
【0131】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、IgG4アイソタイプであり、野生型IgG4と比較して、HC1におけるS228P、F234A、L235A、F405L、及びR409K置換、並びにHC2におけるS228P、F234A、及びL235A置換を含む。
【0132】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、残基位置350、366、368、370、399、405、407、又は409においてHC1及びHC2における少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つの非対称置換を含み、残基の付番はEUインデックスに準拠する。
【0133】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、残基位置350、370、405、又は409においてHC1及びHC2における少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つの非対称置換を含み、残基の付番はEUインデックスに準拠する。
【0134】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、残基位置405又は409においてHC1及びHC2における少なくとも1つの非対称置換を含み、残基の付番はEUインデックスに準拠する。
【0135】
置換は、典型的には、標準方法を使用して抗体の定常ドメインなどの分子に対してDNAレベルで行われる。
【0136】
本発明の抗体は、様々な周知の抗体形態に改変されてもよい。
【0137】
いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、クロスボディである。
【0138】
いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性抗体としては、組換えIgG様二重標的分子(分子の2つの側が各々、少なくとも2つの異なる抗体のFab断片又はFab断片の一部を含有する)、IgG融合分子(完全長IgG抗体が、余分のFab断片又はFab断片の一部に融合される)、Fc融合分子(一本鎖Fv分子又は安定化された二重特異性抗体が、重鎖定常ドメイン、Fc領域、又はその一部に融合される)、Fab融合分子(異なるFab断片が1つに融合される)、ScFv及びディアボディに基づく抗体及び重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)(異なる一本鎖Fv分子又は異なる二重特異性抗体又は異なる重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)が、互いに融合するか、又は別のタンパク質若しくは担体分子に融合する)が挙げられる。
【0139】
いくつかの実施形態では、組換えIgG様二重標的化分子としては、Dual Targeting(DT)−Ig(GSK/Domantis)、Two−in−one Antibody(Genentech)、及びmAb2(F−Star)が挙げられる。
【0140】
いくつかの実施形態では、IgG融合分子としては、Dual Variable Domain(DVD)−Ig(Abbott)、Ts2Ab(MedImmune/AZ)、及びBsAb(Zymogenetics)、HERCULES(Biogen Idec)、並びにTvAb(Roche)が挙げられる。
【0141】
いくつかの実施形態では、Fc融合分子としては、ScFv/Fc Fusions(Academic Institution)、SCORPION(Emergent BioSolutions/Trubion,Zymogenetics/BMS)、及びDual Affinity Retargeting Technology(Fc−DART)(MacroGenics)が挙げられる。
【0142】
いくつかの実施形態では、Fab融合二重特異性抗体としては、F(ab)2(Medarex/AMGEN)、Dual−Action or Bis−Fab(Genentech)、Dock−and−Lock(DNL)(ImmunoMedics)、Bivalent Bispecific(Biotecnol)、及びFab−Fv(UCB−Celltech)が挙げられる。ScFv−、ディアボディに基づく抗体及びドメイン抗体としては、Bispecific T Cell Engager(BITE)(Micromet)、Tandem Diabody(Tandab)(Affimed)、Dual Affinity Retargeting Technology(DART)(MacroGenics)、Single−chain Diabody(Academic)、TCR−like Antibodies(AIT,ReceptorLogics)、Human Serum Albumin ScFv Fusion(Merrimack)、及びCOMBODY(Epigen Biotech)、二重標的ナノボディ(dual targeting nanobody)(Ablynx)、二重標的重鎖のみのドメイン抗体(dual targeting heavy chain only domain antibody)が挙げられる。様々なフォーマットの二重特異性抗体が、例えば、Chames and Baty(2009)Curr Opin Drug Disc Dev 12:276及びNunez−Prado et al.,(2015)Drug Discovery Today 20(5):588−594に記載されている。
【0143】
表2は、本発明の二重特異性抗体を生成するために使用することができる、本明細書に記載の例示的なモノクローナル抗体をまとめたものである。
【0144】
【表2】
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【0145】
二重特異性TMEFF2×CD3分子を遺伝子操作するために使用することができる例示的な抗TMEFF2抗体は、本明細書に記載されているものであり、これは、表59、表66〜68に提供される重鎖及び軽鎖可変領域配列を含むがこれらに限定されない重鎖及び軽鎖可変領域配列を含み得る。
【0146】
いくつかの実施形態では、抗CD3抗体は、多重特異性抗体、例えば、CD3に特異的に結合する第1のドメインと第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む二重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、第2の又は標的抗原は、免疫エフェクター細胞以外の標的細胞上で発現する細胞表面抗原である。いくつかの実施形態では、第2の抗原は、TAAである。例示的なTAAは、PSMA、CD33、TMEFF2、及びIL1RAPである。
【0147】
本発明は、CD3に特異的に結合する第1のドメインと、第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む二重特異性抗体を提供する。
【0148】
いくつかの実施形態では、第1のドメインは、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、第1のドメインは、それぞれ配列番号652及び661のVH及びVLを含む。いくつかの実施形態では、第1のドメインは、それぞれ配列番号640及び676のHC及びLCを含む。いくつかの実施形態では、第1のドメインは、それぞれ配列番号657及び678のVH及びVLを含む。いくつかの実施形態では、第1のドメインは、それぞれ配列番号675及び677のHC及びLCを含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、第1のドメインは、それぞれ配列番号662、663、664、773、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、第1のドメインは、それぞれ配列番号657及び678のVH及びVLを含む。いくつかの実施形態では、第1のドメインは、それぞれ配列番号675及び677のHC及びLCを含む。
【0150】
本発明は、また、治療において使用するための、本発明のCD3に特異的に結合する第1のドメインと第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む、二重特異性抗体を提供する。
【0151】
本発明は、また、細胞増殖性障害の治療において使用するための、本発明のCD3に特異的に結合する第1のドメインと第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む、二重特異性抗体を提供する。
【0152】
本発明は、また、癌の治療において使用するための、本発明のCD3に特異的に結合する第1のドメインと第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む、二重特異性抗体を提供する。
【0153】
本発明は、また、自己免疫疾患の治療において使用するための、本発明のCD3に特異的に結合する第1のドメインと第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む、二重特異性抗体を提供する。
【0154】
本発明は、また、癌を治療するための医薬の製造において使用するための、本発明のCD3に特異的に結合する第1のドメインと第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む、二重特異性抗体を提供する。
【0155】
本発明は、また、自己免疫障害を治療するための医薬の製造において使用するための、本発明のCD3に特異的に結合する第1のドメインと第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む、二重特異性抗体を提供する。
【0156】
本発明の更なる態様は、それを必要としている対象における細胞増殖性疾患又は自己免疫疾患を治療する方法であって、治療有効量の本発明の抗CD3抗体を当該対象に投与することを含む、方法である。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体、又は本発明のCD3に特異的に結合する第1のドメインと第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む二重特異性抗体は、約0.01mg/kg〜約10mg/kgの投与量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体、又は本発明のCD3に特異的に結合する第1のドメインと第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む二重特異性抗体は、約0.1mg/kg〜約10mg/kgの投与量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体、又は本発明のCD3に特異的に結合する第1のドメインと第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む二重特異性抗体は、約1mg/kgの投与量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体、又は本発明のCD3に特異的に結合する第1のドメインと第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む二重特異性抗体は、皮下に、静脈内に、筋肉内に、局所的に、経口的に、経皮的に、腹腔内に、眼窩内に、移植によって、吸入によって、髄腔内に、脳室内に、又は鼻腔内に投与される。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体、又は本発明のCD3に特異的に結合する第1のドメインと第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む二重特異性抗体は、皮下投与される。いくつかの実施形態では、抗CD3抗体、又は本発明のCD3に特異的に結合する第1のドメインと第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む二重特異性抗体は、静脈内投与される。
【0157】
前述の使用又は方法のいずれかにおいて、細胞増殖性疾患は癌である。いくつかの実施形態では、癌は、食道癌、胃癌、小腸癌、大腸癌、結腸直腸癌、乳癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、多発性骨髄腫、腎癌、前立腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、神経膠芽腫、胚中心B細胞様(GCB)DLBCL、活性化B細胞様(ABC)DLBCL、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、小リンパ性白血病(SLL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LL)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM)、中枢神経系リンパ腫(CNSL)、バーキットリンパ腫(BL)、B細胞性リンパ性白血病、脾臓辺縁帯リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、脾臓リンパ腫/白血病・分類不能型、脾臓びまん性赤色髄小細胞型B細胞リンパ腫、ヘアリー細胞白血病変異体、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖疾患、形質細胞骨髄腫、骨の孤立性形質細胞腫、骨外性形質細胞腫、粘膜関連リンパ組織の節外性辺縁帯リンパ腫(MALTリンパ腫)、節性辺縁帯リンパ腫、小児節性辺縁帯リンパ腫、小児濾胞性リンパ腫、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、CNSの原発性DLBCL、原発性皮膚DLBCL・下肢型、高齢者のEBV陽性DLBCL、慢性炎症に関連するDLBCL、リンパ腫様肉芽腫症、縦隔(胸腺)原発大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病において生じる大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫との中間の特徴を有する分類不能B細胞リンパ腫、古典的ホジキンリンパ腫、及び軽鎖アミロイドーシスからなる群から選択される。
【0158】
いくつかの実施形態では、癌は、食道癌である。いくつかの実施形態では、癌は、腺癌、例えば、転移性腺癌(例えば、結腸直腸腺癌、胃腺癌、又は膵臓腺癌)である。
【0159】
前述の使用又は方法のいずれかにおいて、自己免疫障害は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ウェゲナー病、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫班症(ITP)、血栓性血小板減少紫斑症(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発ニューロパシー、重症筋無力症、血管炎、真性糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群、糸球体腎炎、視神経脊髄炎(NMO)、及びIgGニューロパシーからなる群から選択され得る。
【0160】
別の態様では、本発明は、(a)本発明のCD3に特異的に結合する第1のドメイン及び第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインを含む、前述の抗CD3抗体又は二重特異性抗体のいずれか1つを含む組成物と、(b)細胞増殖性障害を治療又は進行を遅延させるために対象に当該組成物を投与するための指示書を含む添付文書と、を含むキットを特徴とする。用語「添付文書」は、このような治療用製品の適応症、用法、投与量、投与、併用療法、禁忌、及び/又は使用に関する警告に関する情報を含む、治療用製品の市販のパッケージに通常的に含まれている指示書を指すために使用される。
【0161】
前述の使用又は方法のいずれかにおいて、対象はヒトであってよい。
【0162】
ポリヌクレオチド、ベクター、及び宿主細胞
また、本発明の抗CD3抗体、又は本発明のCD3に特異的に結合する第1のドメインと第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインとを含む二重特異性抗体をコードしている、単離ポリヌクレオチドも開示される。本明細書で提供される可変ドメインをコード可能な単離ポリヌクレオチドは、本発明の抗体又は抗原結合断片を産生するために同一の又は異なるベクターに含まれ得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、リーダー配列をコードしているポリヌクレオチドを含む。当技術分野において既知の任意のリーダー配列を利用することができる。リーダー配列をコードしているポリヌクレオチドは、制限エンドヌクレアーゼ切断部位又は翻訳開始部位を含み得る。
【0164】
本発明のポリヌクレオチドを含むベクターも提供される。ベクターは、発現ベクターであり得る。発現ベクターは、1つ以上の追加配列を含有してもよい。この追加配列には、例えば、制御配列(例えば、プロモータ、エンハンサー)、選択マーカー、及びポリアデニル化シグナルが挙げられるが、これらに限定されない。広い各種の宿主細胞を形質転換するためのベクターは公知であり、プラスミド、ファージミド、コスミド、バキュロウイルス、バクミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、並びに、他の細菌、酵母、及びウイルスのベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
本明細書の範囲内にある組換え発現ベクターは、好適な制御エレメントに操作可能に連結することができる少なくとも1つの組換えタンパク質をコードしている合成又はcDNA由来の核酸断片を含む。このような調節エレメントとしては、転写プロモータ、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、並びに転写及び翻訳の終了を制御する配列を挙げることができる。発現ベクター、特に、哺乳類の発現ベクターはまた、1つ以上の非転写エレメント、例えば、複製の起点、発現される遺伝子に連結された好適なプロモータ及びエンハンサー、他の5’又は3’フランキング非転写配列、5’又は3’非翻訳配列(例えば、必須リボソーム結合部位)、ポリアデニル化部位、スプライスドナー及びアクセプター部位、又は転写終了配列を含んでもよい。宿主において複製する能力を付与する複製の起点もまた包含されてもよい。
【0166】
脊椎動物細胞を形質転換するのに使用される発現ベクター中の転写及び翻訳制御配列は、ウイルス資源により提供することができる。例示的なベクターは、Okayama and Berg,3 Mol.Cell.Biol.280(1983)に記載されたように構築されてもよい。Biol.280(1983)。
【0167】
いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合フラグメントのコード配列は、強力な構成的プロモータ、例えば、下記遺伝子:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ベータアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋クレアチン等のためのプロモータの制御下に置かれる。加えて、多くのウイルスプロモータが、真核細胞中で恒常的に機能し、記載された実施形態での使用に適している。このようなウイルスプロモータとしては、サイトメガロウイルス(CMV)中間初期プロモータ、SV40の初期及び後期プロモータ、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモータ、モロニー白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、及び他のレトロウイルスの長末端反復配列(LTR)、並びに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモータが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、PSMA特異性抗体又はその抗原結合断片のコード配列は、誘導性プロモータ、例えば、メタロチオネインプロモータ、テトラサイクリン誘導性プロモータ、ドキシサイクリン誘導性プロモータ、1つ以上のインターフェロン刺激応答エレメント(ISRE)、例えば、プロテインキナーゼR2’,5’−オリゴアデニレート合成酵素、Mx遺伝子、ADAR1などを含有するプロモータの制御下に置かれる。
【0168】
本明細書に記載されたベクターは、1つ以上の配列内リボソーム進入部位(IRES)を含有してもよい。IRES配列の融合ベクター内への包含は、一部のタンパク質の発現を増強させるのに有益であり得る。いくつかの実施形態では、ベクター系は、1つ又は2つ以上のポリアデニル化部位(例えば、SV40)を含むこととなる。この部位は、前述の核酸配列のうちのいずれかの上流又は下流にあってもよい。ベクターの成分は、近接して連結されてもよく、又は遺伝子産物を発現させるのに最適な間隔を提供するように(すなわち、ORF間に「スペーサー」ヌクレオチドを導入することにより)配置されてもよく、若しくは別の方法で位置付けられてもよい。調節エレメント、例えば、IRESモチーフはまた、発現に最適な間隔を提供するように配置されてもよい。
【0169】
ベクターは、当技術分野において既知の選択マーカーを含んでもよい。選択マーカーとしては、陽性及び陰性選択マーカー、例えば、抗生物質抵抗性遺伝子(例えば、ネオマイシン抵抗性遺伝子、ヒグロマイシン抵抗性遺伝子、カナマイシン抵抗性遺伝子、テトラサイクリン抵抗性遺伝子、ペニシリン抵抗性遺伝子)、グルタミン酸合成酵素遺伝子、ガンシクロビル選択用のHSV−TK、HSV−TK誘導体、又は6−メチルプリン選択用の細菌のプリンヌクレオシドホスホリラーゼ遺伝子(Gadi et al.,7 Gene Ther.1738−1743(2000))が挙げられる。(余白)選択マーカーをコードする核酸配列又はクローニング部位は、対象となるポリペプチドをコードする核酸配列又はクローニング部位の上流又は下流にあってもよい。
【0170】
本明細書に記載されたベクターを使用して、記載された抗体又は抗原結合フラグメントをコードする遺伝子により種々の細胞を形質転換することができる。例えば、ベクターは、抗CD3、抗PSMA、抗CD33、抗TMEFF2、若しくは抗IL1RAP抗体、又は抗原結合断片を産生する細胞を生成するために使用され得る。したがって、本発明は、本発明のベクターを含む、宿主細胞も提供する。
【0171】
外来遺伝子を細胞内に導入するための数多くの手法が、当技術分野において既知であり、本明細書に記載され例示された種々の実施形態に従って、記載された方法を行う目的で組換え細胞を作成するのに使用することができる。使用される手法は、異種遺伝子配列が細胞の子孫により遺伝及び発現可能であり、かつレシピエント細胞に必須の成育及び生理学的機能を損なうことのないよう、異種遺伝子配列を宿主細胞に安定して導入するものである必要がある。使用することができる手法としては、染色体導入法(例えば、細胞融合、染色体媒介性遺伝子導入、マイクロ細胞媒介性遺伝子導入)、物理的方法(例えば、トランスフェクション、スフェロプラスト融合、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソーム担体)、ウイルスベクター導入(例えば、組換えDNAウイルス、組換えRNAウイルス)等が挙げられる(Cline,29 Pharmac.Ther.69−92(1985)に記載)が、これらに限定されない。Ther.69−92(1985))。哺乳類細胞による細菌プロトプラストのリン酸カルシウム沈殿及びポリエチレングリコール(PEG)誘導融合を使用してもまた、細胞を形質転換することができる。
【0172】
本明細書に記載の抗体又は抗原結合断片の発現に使用するのに好適な細胞は、好ましくは、真核細胞、より好ましくは、植物、げっ歯類、又はヒト起源の細胞であり、例えば、特にNSO、CHO、CHOK1、perC.6、Tk−ts13、BHK、HEK293細胞、COS−7、T98G、CV−1/EBNA、L細胞、C127、3T3、HeLa、NS1、Sp2/0骨髄腫細胞、及びBHK細胞株であるが、これらに限定されない。加えて、抗体の発現は、ハイブリドーマ細胞を使用して達成されてもよい。ハイブリドーマを生成するための方法は、当該技術分野において十分確立されている。
【0173】
本発明の発現ベクターで形質転換された細胞を、本発明の抗体又は抗原結合断片の組換え発現について選択又はスクリーニングしてよい。組換え陽性細胞は、タンパク質改変又は変化させた翻訳後修飾により、所望の表現型、例えば、高レベルの発現、向上した増殖特性、又は所望の生化学的特性を有するタンパク質を生成する能力を示すサブクローンについて、増殖され、スクリーニングされる。これらの表現型は、所与のサブクローンの本来の特性又は変異によるものであり得る。変異は、化学薬品、UV波長光、照射、ウイルス、挿入変異源、DNAミスマッチ修復の阻害、又はこのような方法の組み合わせにより生じ得る。
【0174】
医薬組成物/投与
本発明は、本発明の抗体と、薬学的に許容できる担体と、を含む、医薬組成物も提供する。治療用途では、本発明の抗体は、薬学的に許容できる担体中に活性成分として有効量の抗体を含有する医薬組成物として調製することができる。「担体」は、本発明の抗体と共に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクルを指す。このようなビヒクルは、水、及び石油、動物、植物、又は合成物由来のものを含む油、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの液体であってよい。例えば、0.4%生理食塩水及び0.3%グリシンを用いてよい。これらの溶液は滅菌され、概して粒子状物質を含まない。これらは、従来周知の滅菌技術(例えば、濾過)によって滅菌することができる。組成物は、生理学的条件に近づけるために必要とされる薬学的に許容できる補助物質、例えば、pH調整剤及び緩衝剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤などを含有し得る。このような医薬製剤中の本発明の抗体の濃度は、約0.5重量%未満から通常少なくとも約1重量%まで、最大で15又は20重量%まで変動し得、また、選択される具体的な投与方法に従って、必要とされる用量、流体体積、粘度などに主に基づいて選択され得る。好適なビヒクル及び製剤(他のヒトタンパク質、例えばヒト血清アルブミンを含む)は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21stEdition,Troy,D.B.ed.,Lipincott Williams and Wilkins,Philadelphia,PA 2006,Part 5,Pharmaceutical Manufacturing pp691−1092に記載されており、特にpp.958−989を参照されたい。
【0175】
本発明の抗体を治療的に使用するための投与方法は、例えば、錠剤、カプセル剤、液剤、粉剤、ゲル、粒子の、注射器、埋め込み式装置、浸透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプに入れられた製剤を使用する非経口投与、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、又は皮下、肺内、経粘膜(経口、鼻腔内、膣内、直腸)投与;又は当該技術分野において周知の、当業者によって認識される他の手段であり得る。部位特異的投与は、例えば、腫瘍内、関節内、気管支内、腹内、関節包内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頸管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸郭内、子宮内、血管内、膀胱内、病巣内、腟内、直腸内、口腔内、舌下、鼻腔内、又は経皮送達によって達成され得る。
【0176】
本発明の抗体は、任意の好適な経路によって、例えば、静脈内(i.v.)注入若しくはボーラス注射によって非経口的に、筋肉内に、又は皮下に、又は腹腔内に、対象に投与してよい。i.v.注入は、例えば、15、30、60、90、120、180若しくは240分間、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11若しくは12時間にわたって投与され得る。
【0177】
対象に与えられる用量は、治療される疾患を緩和するか又は少なくとも部分的に停止させるのに十分(「治療有効量」)であり、時には、0.005mg〜約100mg/kg、例えば、約0.05mg〜約30mg/kg、若しくは約5mg〜約25mg/kg、又は約4mg/kg、約8mg/kg、約16mg/kg、若しくは約24mg/kg、又は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10mg/kgであってよいが、更により高い量、例えば、約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、80、90、又は100mg/kgであってもよい。
【0178】
例えば、50、100、200、500、若しくは1000mgの一定の単位用量を与えてもよく、又は用量は、患者の表面積に基づいて、例えば、500、400、300、250、200、若しくは100mg/m
2であってもよい。通常、1〜8用量(例えば、1、2、3、4、5、6、7、又は8)が患者を治療するために投与されるが、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれよりも多い用量を与えてもよい。
【0179】
本発明の抗体の投与は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、5週間、6週間、7週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月後に、又はそれ以上後に繰り返すことができる。治療過程を繰り返してもよく、長期にわたる投与も同様に可能である。繰り返し投与は、同一用量であっても異なる用量であってもよい。例えば、本明細書に記載される本発明の抗体は、静脈内注入によって、8週間にわたって1週間間隔で8mg/kg又は16mg/kgで投与し、続いて、更に16週間にわたって2週間ごとに8mg/kg又は16mg/kgで投与し、続いて、4週間ごとに8mg/kg又は16mg/kgで投与してよい。
【0180】
例えば、本明細書に記載の方法における抗体は、単回投与、又は24、12、8、6、4若しくは2時間ごとの分割投与、又はこれらの任意の組み合わせを使用して、約0.1〜100mg/kg、例えば、1日あたり0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90、又は100mg/kgの量の1日投薬量として、治療開始後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40日目のうちの少なくとも1日に、あるいは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20週目のうちの少なくとも1週に、あるいはこれらの任意の組み合わせで提供され得る。
【0181】
また、本明細書に記載の方法における抗体は、癌の発現リスクを低下させる、癌の進行における事象の発生の開始を遅延させる、及び/又は癌が寛解したときの再発リスクを低下させるために予防的に投与されてもよい。
【0182】
本明細書に提供される抗体を、保存のために凍結乾燥し、使用前に好適な担体で再構成してもよい。この技術は、従来のタンパク質調製物に関して効果的であることが示されており、周知の凍結乾燥及び再構成技術を用いることができる。
【0183】
CD3、PSMA、CD33、IL1RAP、TMEFF2、又は標的抗原及びCD3を検出する方法
サンプル中のCD3、PSMA、CD33、TMEFF2、又はIL1RAPを検出する方法であって、サンプルを得ることと、当該サンプルを本発明の抗CD3、抗PSMA、抗CD33、抗TMEFF2、又は抗IL1RAP抗体と接触させることと、当該サンプル中のCD3、PSMA、CD33、TMEFF2、又はIL1RAPに結合した抗体を検出することと、を含む、方法が本明細書に提供される。
【0184】
更に、サンプル中のCD3及び第2の抗原(例えば、PSMA、CD33、TMEFF2、又はIL1RAP)を検出する方法であって、サンプルを得ることと、当該サンプルを、CD3に特異的に結合する第1のドメイン及び第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインを含む二重特異性抗体と接触させることと、当該サンプル中のCD3及び当該第2の抗原に結合した抗体を検出することと、を含む、方法が提供される。
【0185】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、サンプルは、尿、血液、血清、血漿、唾液、腹水、循環細胞、循環腫瘍細胞、組織会合していない細胞(すなわち、遊離細胞)、組織(例えば、外科的に切除された腫瘍組織、穿刺吸引を含む生検)、組織学的調製物などに由来していてよい。
【0186】
本発明の抗体は、既知の方法を使用して検出することができる。例示的な方法としては、蛍光若しくは化学発光標識、又は放射線標識を使用して抗体を直接標識すること、あるいは本発明の抗体に、ビオチン、酵素、又はエピトープタグなどの容易に検出可能な部分を結合させることが挙げられる。例示的な標識及び部分は、ルテニウム、
111In−DOTA、
111In−ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ及びベータガラクトシダーゼ、ポリ−ヒスチジン(HISタグ)、アクリジン染料、シアニン染料、フルオロン染料、オキサジン染料、フェナントリジン染料、ローダミン染料、及びAlexafluor(登録商標)染料である。
【0187】
本明細書で提供される抗体は、サンプル中のCD3、PSMA、CD33、IL1RAP、TMEFF2、又はCD3、及び第2の抗原を検出するために、様々なアッセイで使用することができる。例示的なアッセイは、ウェスタンブロット分析、ラジオイムノアッセイ、表面プラズモン共鳴、免疫沈降、平衡透析、免疫拡散、電気化学発光(ECL)イムノアッセイ、免疫組織化学的検査、蛍光活性化細胞選別(FACS)、又はELISAアッセイである。
【0188】
抗体キット
本発明はまた、抗CD3、抗PSMA、抗CD33、抗TMEFF2、若しくは抗IL1RAP抗体、又は本発明のCD3に特異的に結合する第1のドメイン及び第2の抗原若しくはその抗原結合断片に特異的に結合する第2のドメインを含む二重特異性抗体、又はこれらの抗原結合断片のうちの1つ以上を含む、キットも提供する。記載されるキットは、抗CD3、抗PSMA、抗CD33、抗TMEFF2、若しくは抗IL1RAP抗体、又は本発明のCD3に特異的に結合する第1のドメイン及び第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインを含む二重特異性抗体を使用する方法、あるいは当業者に公知の他の方法を実行するために使用することができる。いくつかの実施形態では、記載されるキットは、本明細書に記載の抗体又は抗原結合断片と、生体サンプル中のCD3、又はPSMA、CD33、IL1RAP、TMEFF2などの第2の抗原の存在の検出において使用するための試薬とを含んでいてよい。したがって、記載されるキットは、本明細書に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、及び使用していないときに抗体若しくは断片を収容しておくための容器、抗体若しくは断片の使用説明書、固体支持体に固定された抗体若しくは断片、及び/又は本明細書に記載の抗体若しくは断片の検出可能に標識された形態のうちの1つ以上を含んでいてよい。
【0189】
本発明は、また、PSMAに特異的に結合する本明細書に記載の抗体を含む、キットも提供する。本発明は、また、CD33に特異的に結合する本明細書に記載の抗体を含む、キットも提供する。本発明は、また、IL1RAPに特異的に結合する本明細書に記載の抗体を含む、キットも提供する。本発明は、また、TMEFF2に特異的に結合する本明細書に記載の抗体を含む、キットも提供する。
【0190】
キットは、治療的使用のために、及び診断キットとして使用することができる。
【0191】
キットは、生体サンプル中のCD3、PSMA、CD33、IL1RAP、TMEFF2、及び/又は第2の抗原の存在を検出するために使用され得る。
【0192】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の本発明の抗体と、当該抗体を検出するための試薬とを含む。キットは、使用説明書;他の試薬、例えば、標識、治療薬、又はキレート化若しくは別の方法のカップリングに有用な剤、標識若しくは治療薬に対する抗体、又は放射線防護組成物;投与するために当該抗体を調製するための装置又は他の材料;薬学的に許容できる担体、及び対象に投与するためのデバイス又は他の材料を含む、1つ以上の他の構成要素を含み得る。
【0193】
いくつかの実施形態では、キットは、容器内の本発明の抗体と、キットの使用説明書とを含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、キットにおける抗体は標識されている。
【0195】
CD3特異性抗体
単離抗CD3抗体が本明細書に記載される。本発明の抗CD3抗体は、ヒトCD3及び任意選択でカニクイザルCD3に結合する。いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体及びその断片は、互いの5倍以内の親和性でヒト及びカニクイザルCD3に結合する。換言すれば、抗体結合の差は、5倍未満である。この場合、本発明の抗CD3抗体は、霊長類におけるCD3の安全性、活性、及び/又は薬物動態プロファイルの前臨床評価のため、並びに、ヒトにおいて薬物として使用することができる。換言すれば、同じCD3特異性分子を、前臨床動物試験並びにヒトにおける臨床試験において使用することができる。このヒト/カニクイザル交差反応性は、種特異的な代替分子と比較して高度に同等の結果及び動物試験の予測力の大きな増大をもたらす。いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体及びその断片は、CD3e/dサブユニットによって形成されるエピトープに結合する。CD3特異性抗体は、ヒトであっても、ヒト化されていても、又はキメラであってもよい。また、OmniRat(Open Monoclonal Technologies(「OMT」)、Palo Alto,California,USA,omniab.com)で生成されたヒト抗体も本明細書に例示される。
【0196】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、抗CD3抗体又はその断片は、以下の特性のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つを有する:
a)20nM以下の計算EC50でヒト及びカニクイザルのCD3+Tリンパ球に結合し、40nM以下の計算EC50でカニクイザルCD3発現HEK細胞に結合し、CD3+Tリンパ球への結合とカニクイザルCD3発現HEK細胞への結合との間の計算EC50の差は5倍未満であり、計算EC50は、フローサイトメトリーを使用して0℃で全細胞結合アッセイで測定される;
b)12nM以下の平衡解離定数(K
D)でヒト由来の組換えCD3d(配列番号691)に結合、又はヒト由来の組換えCD3e(配列番号636)に結合、又はカニクイザル由来の組換えCD3e(配列番号693)に結合し、K
Dは、+25℃でProteon表面プラズモン共鳴アッセイProteOn XPR36システムを使用して測定される;
c)ペプチドマッピング分析により検出したとき、メチオニンの酸化もトリプトファンの酸化も示さない、又はアスパラギンの脱アミドを示さない、又はアスパラギンの異性化を示さない;
d)X線結晶解析により決定したとき、CD3eの残基1〜6に結合する;又は
e)蛍光活性化細胞選別アッセイによって決定したとき、cOKT3又はSP34−2と同様の程度まで、T細胞を活性化するか又はCD69発現を誘導する。
【0197】
本発明の抗CD3抗体及びその断片は、フローサイトメトリーによって決定したとき、約5nM〜約1000nM、好ましくは約5nM〜約50nM、約50nM〜約100nM、約100nM〜約200nM、約200nM〜約300nM、約300nM〜約400nM、約400nM〜約500nM、約500nM〜約600nM、約600nM〜約700nM、約700nM〜約800nM、約800nM〜約900nM、及び約900nM〜約1000nM、より好ましくは約5nM〜約300nMである、ヒトCD3を発現しているヒトT細胞に対するインビトロ結合親和性(K
d)を有する。
【0198】
いくつかの態様では、本発明の抗CD3抗体及びその断片は、フローサイトメトリーによって決定したとき、約5nM〜約1000nM、好ましくは約5nM〜約50nM、約50nM〜約100nM、約100nM〜約200nM、約200nM〜約300nM、約300nM〜約400nM、約400nM〜約500nM、約500nM〜約600nM、約600nM〜約700nM、約700nM〜約800nM、約800nM〜約900nM、及び約900nM〜約1000nM、より好ましくは約5nM〜約300nM、最も好ましくは約100nMである、ヒトCD3を発現しているヒトT細胞に対するインビトロ結合親和性(K
d)を有する二価抗体である。
【0199】
いくつかの態様では、本発明の抗CD3抗体及びその断片は、フローサイトメトリーによって決定したとき、約5nM〜約1000nM、好ましくは約5nM〜約50nM、約50nM〜約100nM、約100nM〜約200nM、約200nM〜約300nM、約300nM〜約400nM、約400nM〜約500nM、約500nM〜約600nM、約600nM〜約700nM、約700nM〜約800nM、約800nM〜約900nM、及び約900nM〜約1000nM、より好ましくは約100nM〜約250nM、最も好ましくは約250nMである、ヒトCD3を発現しているヒトT細胞に対するインビトロ結合親和性(K
d)を有する一価コンストラクトである。
【0200】
一態様では、本明細書に記載の抗CD3抗体及びその断片は、フローサイトメトリーを使用して測定された初代ヒトT細胞に対してAlexaFluor488コンジュゲートSP34−2抗体を使用する競合結合アッセイによって決定したとき、CD3の結合について市販のCD3抗体SP34−2(BD Biosciences 551916)と競合する。
【0201】
一態様では、抗CD3抗体及びその断片は、ペプチドマッピングによって決定したとき、翻訳後修飾を示さず、例えば、酸化を示さず、脱アミドを示さず、及びアスパラギン酸の異性化を示さない。
【0202】
一態様では、抗CD3抗体及びその断片は、フローサイトメトリーを用いたT細胞ベースのアッセイによって決定したとき、ヒト及びカニクイザルT細胞におけるSP34−2並びにヒトT細胞におけるcOKT3と同様の程度までT細胞を活性化し、CD69発現を誘導するのに効果的である。
【0203】
一態様では、本明細書に記載の抗CD3抗体及びその断片は、約400kcal/mol以上、約410kcal/mol以上、約420kcal/mol以上、約430kcal/mol以上、約440kcal/mol以上、約45kcal/mol以上、約460kcal/mol以上、約470kcal/mol以上、約480kcal/mol以上、約490kcal/mol以上、約500kcal/mol以上、約510kcal/mol以上、約520kcal/mol以上、約530kcal/mol以上、約540kcal/mol以上、又は約550kcal/mol以上のアンフォールディングの全エンタルピーを有する。特定の態様では、本発明の抗CD3抗体及びその断片は、約418kcal/mol、545kcal/mol、約402kcal/mol、又は約406kcal/molのアンフォールディングの全エンタルピーを有し、抗CD3抗体は、それぞれ、CD3B376(IgG4 PAA)、CD3B450(IgG4 PAA)、CD3B389(IgG1σ)、及びCD3B467(IgG1σ)分子である。
【0204】
例示的なこのような抗体としては、CD3B311、CD3B312、CD3B313、CD3B314、CD3B315、CD3B316、CD3B317、CD3B334、CD3B376、CD3B389、CD3B450、並びに一価フォーマットに遺伝子操作されたCD3B467及びCD3B376及びCD3B450が挙げられる。
【0205】
本発明の抗CD3抗体又は抗原結合断片は、様々な形態で存在することができるが、表7Aに示されている抗体可変ドメインセグメント又はCDR、及びその遺伝子操作された変異体、例えば、表9及び表10、並びにそれに付随する説明に示されているか又は記載されているもののうちの1つ以上を含む。
【0206】
本発明は、また、表7Bに記載の抗体のいずれか1つのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖を含む、抗CD3抗体又はその抗原結合断片を提供する。本発明は、また、表7Bに記載の抗体のいずれか1つのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖と、表7Bに記載の抗体のいずれか1つのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖と、を含む、抗CD3抗体又はその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、表7Bに記載の抗体のいずれか1つのHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖と、表7Bに記載の抗体のいずれか1つのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖と、を含む抗体又はその抗原結合断片と、CD3に対する結合について競合する。
【0207】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、配列番号651、652、653、654、655、687、又は656の重鎖可変領域(VH)に含有されているHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、当該HCDR1、HCDR2、及びHCDR3は、Chothia、Kabat、又はIMGTによって定義される。
【0208】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、配列番号658、659、694、660、688、又は661の軽鎖可変領域(VL)に含有されているLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、当該LCDR1、LCDR2、及びLCDR3は、Chothia、Kabat、又はIMGTによって定義される。
【0209】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、以下を含む:
配列番号662、665、又は666のHCDR1;
配列番号663、689、又は695のHCDR2;
配列番号664のHCDR3。
【0210】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、以下を含む:
配列番号773、710、674又は671のLCDR1;
配列番号669又は673のLCDR2;
配列番号670のLCDR3。
【0211】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、以下を含む:
配列番号662、665、又は666のHCDR1;
配列番号663、689、又は695のHCDR2;
配列番号664のHCDR3;
配列番号773、710、674又は671のLCDR1;
配列番号669又は673のLCDR2;
配列番号670のLCDR3。
【0212】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、以下のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む:
それぞれ、配列番号662、663、及び664;
それぞれ、配列番号662、695、及び664;
それぞれ、配列番号665、663、及び664;
それぞれ、配列番号665、695、及び664;
それぞれ、配列番号662、689、及び664;
それぞれ、配列番号666、663、及び664;
それぞれ、配列番号666、695、及び664;
それぞれ、配列番号665、689、及び664;又は
それぞれ、配列番号666、689、及び664。
【0213】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、以下のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む:
それぞれ、配列番号773、669、及び670;
それぞれ、配列番号773、673、及び670;
それぞれ、配列番号710、673、及び670;
それぞれ、配列番号674、673、及び670;
それぞれ、配列番号671、673、及び690;
それぞれ、配列番号773、673、及び690;
それぞれ、配列番号671、669、及び670;又は
それぞれ、配列番号776、673、及び670。
【0214】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号662、663、664、773、669、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0215】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号662、663、664、773、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0216】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号662、663、664、671、669、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0217】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0218】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号662、695、664、773、669、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0219】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号662、695、664、773、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0220】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号662、695、664、671、669、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0221】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号662、695、664、671、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0222】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号665、663、664、773、669、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0223】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号665、663、664、773、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0224】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号665、663、664、671、669、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0225】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号665、663、664、671、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0226】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号665、695、664、773、669、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0227】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号665、695、664、773、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0228】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号665、695、664、776、669、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0229】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号665、695、664、776、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0230】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号666、663、664、773、669、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0231】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号666、663、664、773、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0232】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号666、663、664、776、669、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0233】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号666、663、664、671、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0234】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号666、695、664、773、669、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0235】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号666、695、664、773、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0236】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号666、695、664、671、669、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0237】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号666、695、664、671、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0238】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号662、689、664、671、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0239】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号662、663、664、710、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0240】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0241】
いくつかの実施形態では、本発明の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号662、663、664、773、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0242】
いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合断片の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、配列番号709、640、641、642、643、675、若しくは644の重鎖(HC)配列、及び/又は配列番号645、716、649、676、677、若しくは650の軽鎖(LC)配列を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合断片の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、配列番号709、640、641、642、643、675、又は644と少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%以上、例えば95%、96%、97%、98%、又は99%同一のポリペプチド配列を有するHC、及び配列番号645、716、649、676、677、又は650と少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%以上、例えば95%、96%、97%、98%、又は99%同一のポリペプチド配列を有するLCを含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合断片の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、配列番号709、640、641、642、643、675、又は644と少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%以上、例えば95%、96%、97%、98%、又は99%同一のポリペプチド配列を有するHC、及び配列番号645、716、649、676、677、又は650と少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%以上、例えば95%、96%、97%、98%、又は99%同一のポリペプチド配列を有するLCを含み、CDR領域に配列の変動は存在しない。
【0243】
いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合断片の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、配列番号651、652、657、653、654、655、687、若しくは656の重鎖可変領域(VH)配列、及び/又は配列番号658、659、694、660、688、678、若しくは661の軽鎖可変領域(VL)配列を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合断片の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、配列番号651、652、657、653、654、655、687、又は656と少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%以上、例えば95%、96%、97%、98%、又は99%同一のポリペプチド配列を有するVH、及び配列番号658、659、694、660、688、678、又は661と少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%以上、例えば95%、96%、97%、98%、又は99%同一のポリペプチド配列を有するVLを含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合断片の抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、配列番号651、652、657、653、654、655、687、又は656と少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%以上、例えば95%、96%、97%、98%、又は99%同一のポリペプチド配列を有するVH、及び配列番号658、659、694、660、688、678、又は661と少なくとも85%、好ましくは90%、より好ましくは95%以上、例えば95%、96%、97%、98%、又は99%同一のポリペプチド配列を有するVLを含み、CDR領域に配列の変動は存在しない。
【0244】
PSMA特異性抗体
PSMAに結合する抗体及びその断片は、チンパンジー標的抗原に結合する。一実施形態では、抗体及びその断片は、互いの5倍以内の親和性でヒト及びマカクPSMA標的抗原に結合する。換言すれば、抗体結合の差は、5倍未満である。この場合、同一抗体分子は、霊長類におけるPSMAの安全性、活性、及び/又は薬物動態プロファイルの前臨床評価のため、並びに、ヒトにおいて薬物として使用することができる。換言すれば、同じPSMA特異性分子を、前臨床動物試験並びにヒトにおける臨床試験において使用することができる。これは、種特異的な代替分子と比較して高度に同等の結果及び動物試験の予測力の大きな増大をもたらす。PSMAドメインは、種間特異的、すなわち、ヒト及びマカク抗原と反応性であるため、本発明の抗体又はその断片は、霊長類におけるこれらの結合ドメインの安全性、活性、及び/又は薬物動態プロファイルの前臨床評価のため、そして、同一形態で、ヒトにおいて薬物として使用することができる。
【0245】
本発明は、また、PSMAに特異的に結合する多重特異性抗体を提供する。本発明によれば、二重特異性、すなわち二機能性抗体を使用して、2つの異なる治療標的を会合させるか、又は2つの異なる機能を発揮させることができる。このような抗体を使用して、免疫エフェクター細胞、例えばT−又はNK−細胞を特定の標的細胞に向かって動員することができる。様々な抗体断片に基づく分子は、公知であり、例えば癌治療のために研究中である。
【0246】
本発明は、また、PSMA×「エフェクター抗原」二重特異性抗体も提供する。一実施形態では、PSMA×「エフェクター抗原」二重特異性抗体のエフェクター抗原は、CD3である。同一分子を、前臨床動物試験、並びに臨床試験、更にはヒトにおける治療において使用することができる、PSMA×CD3二重特異性抗体を生成することが可能であることが本発明で見出された。これは、それぞれヒトPSMA及びヒトCD3への結合に加えて、チンパンジー及びマカクの抗原のホモログにも結合する、PSMA×CD3二重特異性抗体の同定による。本発明のPSMA×CD3二重特異性抗体は、癌を含むがこれらに限定されない様々な疾患に対する治療剤として使用することができる。上記に鑑みて、系統学的に(ヒトから)遠い種において試験するための代替標的PSMA×CD3二重特異性抗体を構築する必要がなくなる。結果として、同一分子を、臨床試験においてヒトに投与することを意図しているような動物の前臨床試験において使用することができることに加えて、続いての市場承認及び治療薬の投与で使用することもできる。
【0247】
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、PSMAに特異的に結合する単離抗体又はその抗体断片は、以下の特性のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つを有する:
a.25nM以下の平衡解離定数(K
D)でチンパンジーPSMA細胞外ドメイン(ECD)に結合し、K
Dは、+25℃でProteOn XPR36システムを使用して測定される、
b.20nM以下の計算EC50でLNCaP細胞に結合し、40nM以下の計算EC50でカニクイザルPSMA発現HEK細胞に結合し、LNCaP細胞への結合とカニクイザルPSMA発現HEK細胞への結合との間の計算EC50の差は5倍未満であり、計算EC50は、フローサイトメトリーを使用して0℃で全細胞結合アッセイにおいて測定される、
c.12nM以下の平衡解離定数(K
D)でヒト(配列番号55)、チンパンジー(配列番号52)、及びカニクイザル(配列番号53)由来の組換えPSMA ECDに結合し、K
Dは、+25℃でProteon表面プラズモン共鳴アッセイProteOn XPR36システムを使用して測定される、
d.抗CD3抗体と二重特異性抗体において対になったときに、LNCaP細胞、C42細胞、ヒトPSMA発現HEK細胞、若しくはカニクイザルPSMA発現HEK細胞のT細胞媒介性殺傷を示し、当該T細胞媒介性殺傷は、クロム−51若しくはカスパーゼ3/7活性化アッセイによって測定される、又は
e.配座エピトープを認識し、当該エピトープは、ヒトPSMA(配列番号51)の残基I138、F235、P237、G238、D244、Y299、Y300、Q303、K304、E307、及びK324−P326で構成される
【0248】
例示的なこのような抗体又はその断片は、本明細書に記載のPSMA抗体PSMB119、PSMB120、PSMB121、PSMB122、PSMB123、PSMB87、PSMB126、PSMB127、PSMB128、PSMB129、PSMB130、PSMB120、PSMB121、PSMB122、PSMB123、PSMB127、PSMB128、PSMB130、PSMB344、PSMB345、PSMB346、PSMB347、PSMB349、PSMB358、PSMB359、PSMB360、PSMB361、PSMB362、PSMB363、及びPSMB365である。
【0249】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号56、57、58、59、60、及び61のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0250】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号62、63、64、65、60、及び66のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0251】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号67、68、69、70、71、及び72のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0252】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号73、74、75、76、60、及び61のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0253】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号78、79、80、81、82、及び83のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0254】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号84、85、86、87、60、及び88のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0255】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号89、90、91、92、93、及び94のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0256】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号95、96、97、65、60、及び66のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0257】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号84、98、99、100、82、及び101のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0258】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号89、90、102、103、104、及び105のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0259】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号89、90、106、103、104、及び105のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0260】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号107、108、109、76、60、及び88のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0261】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号78、1、80、81、82、及び83のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0262】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号78、1、80、81、82、及び83のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0263】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号78、1、80、4、82、及び686のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0264】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号78、1、80、81、792、及び686のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0265】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号78、2、80、81、82、及び83のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0266】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号78、3、80、81、82、及び5のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0267】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号78、3、80、81、82、及び83のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0268】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号78、3、80、4、82、及び686のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0269】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号78、3、80、81、792、及び686のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0270】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号78、2、81、81、82、及び5のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0271】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号78、2、80、4、792、及び686のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0272】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号78、2、80、4、792、及び686のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0273】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、それぞれ配列番号78、683、80、81、792、及び686のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0274】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、配列番号6、7、8、110、112、114、116、118、120、121、123、125、126、128、130、又は681の重鎖可変領域(VH)を含む。本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、配列番号9、111、113、115、117、119、122、124、127、129、131、又は682の軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0275】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、配列番号12、13、132、134、136、138、140、141、143、145、146、148、150、151、又は679の重鎖配列を含む。
【0276】
本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態では、本発明のPSMAに特異的に結合する抗体は、配列場号14、15、75、133、135、137、139、142、144、147、149、又は680の軽鎖配列を含む。
【0277】
CD33特異性抗体
本発明のCD33特異性抗体は、CD33及び/又はCD3に対する高親和性結合、CD33及び/又はCD3に対する高い特異性、並びに単独で又は他の抗癌療法と組み合わせて投与されたときに癌を治療又は予防する能力を含むがこれらに限定されない、1つ以上の望ましい機能特性を有する。
【0278】
特定の実施形態では、単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、CD33のC2ドメインに結合する。特定の実施形態では、単離モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、CD33のVドメインに結合する。完全長ヒトCD33は、Uniprot P20138(配列番号244)によって提供される。
【0279】
本明細書で使用するとき、「CD33に特異的に結合する」抗体とは、CD33、好ましくはヒトCD33、好ましくはCD33のC2ドメインに対し、1×10
−7M以下、好ましくは1×10
−8M以下、より好ましくは5×10
−9M以下、1×10
−9M以下、5×10
−10M以下、又は1×10
−10M以下のKDで結合する抗体を指す。
【0280】
本明細書に記載の抗体又は抗原結合断片は、様々な形態で存在し得るが、表39及び40に示される抗体CDRのうちの1つ以上を含む。
【0281】
CD33に特異的に結合する組換え抗体及び抗原結合断片が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、CD33特異性抗体又は抗原結合断片は、ヒトIgG又はその誘導体である。本明細書に例示されるCD33特異性抗体又は抗原結合断片は、ヒトであるが、例示される抗体又は抗原結合断片は、キメラ化されていてもよい。
【0282】
いくつかの実施形態では、表39に記載の抗体のいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖を含む、CD33特異性抗体又はその抗原結合断片が提供される。いくつかの実施形態では、表39に記載の抗体のいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖と、表40に記載の抗体のいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖と、を含む、CD33特異性抗体又はその抗原結合断片が提供される。
【0283】
いくつかの実施形態では、表38に示される重鎖可変領域を含むCD33特異性抗体又はその抗原結合断片が提供される。いくつかの実施形態では、表38に示される軽鎖可変領域を含むCD33特異性抗体又はその抗原結合断片が提供される。
【0284】
この項で論じられ、表38に示される抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、二重特異性コンストラクトに含めるのに好適である。例えば、CD33二重特異性抗体のいくつかの実施形態では、エフェクターアームはCD3アームである。CD33×CD3二重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD3アームは、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。CD33×CD3二重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD3アームは、それぞれ配列番号652及び661のVH及びVLを含む。CD33×CD3二重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD3アームは、それぞれ配列番号640及び676のHC及びLCを含む。
【0285】
CD33×CD3二重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD3アームは、それぞれ配列番号662、663、664、773、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。CD33×CD3二重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD3アームは、それぞれ配列番号657及び678のVH及びVLを含む。CD33×CD3二重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD3アームは、それぞれ配列番号675及び677のHC及びLCを含む含む。
【0286】
特定の実施形態では、抗CD33抗体又はその抗原結合断片は、配列番号267、260、275、270、262、258、257、281、292、291、261、269、280、259、263、264、265、266、272、277、279、284、若しくは285と少なくとも95%同一のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域、又は配列番号287、314、309、301、298、297、290、332、331、302、310、320、300、304、305、306、307、317、319、324、若しくは325と少なくとも95%同一のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域を含み、当該抗CD3抗体又はその抗原結合断片が、配列番号257若しくは258と少なくとも95%同一のポリペプチド配列を有する重鎖可変領域、又は配列番号298若しくは299と少なくとも95%同一のポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0287】
IL1RAP特異性抗体
本明細書で使用するとき、用語「インターロイキン−1受容体アクセサリータンパク質」、「IL1RAP」、及び「IL1−RAP」は、具体的には、例えば、GenBank Accession No.AAB84059、NCBI Reference Sequence:NP_002173.1、及びUniProtKB/Swiss−Prot Accession No.Q9NPH3−1に記載されているような、ヒトIL1RAPタンパク質(配列番号576)を含む(Huang et al.,1997,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.94(24),12829−12832も参照)。IL1RAPはまた、科学文献においてIL1 R3、C3orf13、FLJ37788、IL−1 RAcP及びEG3556としても知られている。
【0288】
本明細書に記載された抗体又は抗原結合断片は、様々な形態で存在し得るが、表29に示される抗体CDRのうちの1つ以上を含む。
【0289】
本明細書において、IL1RAPに特異的に結合する、組換え抗体及び抗原結合フラグメントが記載されている。いくつかの実施形態では、IL1RAP特異性抗体又は抗原結合断片は、ヒトIgG又はその誘導体である。本明細書に例示されるIL1RAP特異性抗体又は抗原結合断片は、ヒトであるが、例示される抗体又は抗原結合断片は、キメラ化されていてもよい。
【0290】
いくつかの実施形態では、表29に記載の抗体のいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖を含む、IL1RAP特異性抗体又はその抗原結合断片が提供される。いくつかの実施形態では、表29に記載の抗体のいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖と、表29に記載の抗体のいずれか1つのCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖と、を含む、IL1RAP特異性抗体又はその抗原結合断片が提供される。
【0291】
いくつかの実施形態では、表30に示される抗体のいずれか1つの重鎖可変領域を含む、IL1RAP特異性抗体又はその抗原結合断片が提供される。いくつかの実施形態では、表30に示される抗体のいずれか1つの軽鎖可変領域を含む、IL1RAP特異性抗体又はその抗原結合断片が提供される。いくつかの実施形態では、表30に示される抗体のいずれか1つの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、IL1RAP特異性抗体又はその抗原結合断片が提供される。
【0292】
この項で論じられ、表30に示される抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、標的アームが抗IL1RAPアームである二重特異性コンストラクトに含めるのに好適である。例えば、IL1RAP二重特異性抗体のいくつかの実施形態では、エフェクターアームはCD3アームである。IL1RAP×CD3二重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD3アームは、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。IL1RAP×CD3二重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD3アームは、それぞれ配列番号652及び661のVH及びVLを含む。IL1RAP×CD3二重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD3アームは、それぞれ配列番号640及び676のHC及びLCを含む。
【0293】
IL1RAP×CD3二重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD3アームは、それぞれ配列番号662、663、664、773、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。IL1RAP×CD3二重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD3アームは、それぞれ配列番号657及び678のVH及びVLを含む。IL1RAP×CD3二重特異性抗体のいくつかの実施形態では、CD3アームは、それぞれ配列番号675及び677のHC及びLCを含む。
【0294】
TMEFF2特異性抗体
本発明は、TMEFF2の配列番号629の膜近位領域に結合する、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片を提供する。TMEFF2の膜近位領域に結合する本発明の抗TMEFF2抗体は、細胞によって内部移行しない。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、内部移行しない抗TMEFF2抗体は、内部移行する抗TMEFF2抗体と比較したとき、TMEFF2の内部移行及び分解の欠如から生じる抗体エフェクター機能によって媒介される発癌作用が改善されていると予想することができる。
【0295】
「膜近位領域に結合する」とは、水素/重水素交換(H/D交換)を用いて同定された抗体エピトープ残基の90%が、TMEFF2の膜近位領域内に存在することを意味する。エピトープ残基は、H/D交換による重水素化レベルの少なくとも5%の差によって、試験抗体により保護されるものである。例示的なこのような抗体は、本明細書に記載のTMEB675、TMEB570、TMEB674、TMEB565、TMEB762、及びTMEB757である。
【0296】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片は、残基HGKCEHSINMQEPSC(配列番号592)又はDAGYTGQHCEKKDYSVL(配列番号600)内でTMEFF2の膜近位領域に結合する。残基HGKCEHSINMQEPSC(配列番号592)内で結合する例示的な抗TMEFF2抗体は、TMEB570である。残基DAGYTGQHCEKKDYSVL(配列番号600)内で結合する例示的な抗TMEFF2抗体は、TMEB675である。TNEB675変異体TMEB762及びTMEB757も、残基DAGYTGQHCEKKDYSVL(配列番号600)内でTMEFF2の膜近位領域に結合すると予想される。
【0297】
H/D交換アッセイでは、組換え的に発現させたTMEFF2 ECDを、抗体の存在又は非存在下、重水素化水中で所定の時間にわたってインキュベートし、その結果、抗体によって保護されていない交換可能な水素原子での重水素が組み込まれ、続いて、タンパク質のプロテアーゼ消化及びLC−MSを使用するペプチド断片の分析を行う。H/D交換アッセイは、公知のプロトコルを使用して行うことができる。例示的なプロトコルを実施例5に記載する。
【0298】
本発明は、また、配列番号25の重鎖可変領域(VH)及び配列番号28の軽鎖可変領域(VL)、配列番号589のVH及び配列番号29のVL、配列番号27のVH及び配列番号30のVL、配列番号589のVH及び配列番号31のVL、配列番号604のVH及び配列番号607のVL、又は配列番号612のVH及び配列番号613のVLを含む参照抗体と、TMEFF2の膜近位領域への結合について競合する、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0299】
TMEFF2の膜近位領域への試験抗体の結合についての参照抗体との競合は、周知の方法を用いてインビトロでアッセイすることができる。例えば、非標識抗体の存在下におけるMSD Sulfoタグ(商標)NHS−エステル標識試験抗体の、TMEFF2の膜近位領域への結合は、ELISA法によって評価することができるか、又はBiacore分析法若しくはフローサイトメトリーを用いて競合を実証することもできる。試験抗体がTMEFF2の膜近位領域への参照抗体の結合を85%以上、例えば、90%以上、又は95%以上阻害するとき、試験抗体はTMEFF2への結合に関して参照抗体と競合している。
【0300】
本発明は、また、以下の重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR3、軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3を含む単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片を提供する:
それぞれ、配列番号582、584、587、18、588、及び22、
それぞれ、配列番号583、585、16、19、21、及び23、
それぞれ、配列番号582、586、17、18、588、及び24、
それぞれ、配列番号583、585、16、18、588、及び22、又は
それぞれ、配列番号582、584、587、18、588、及び603。
【0301】
いくつかの実施形態では、本発明の単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片は、約0.4×10
−9M以下の平衡解離定数(K
D)でTMEFF2の膜近位領域に結合し、K
Dは、室温においてpH4.5〜5.0の酢酸バッファ中で表面プラズモン共鳴を使用して測定される。
【0302】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片は、約0.1×10
−10M〜約0.4×10
−9MのK
DでTMEFF2の膜近位領域に結合する。
【0303】
TMEFF2の膜近位領域に対する抗体の親和性は、任意の好適な方法を用いて実験により決定することができる。例示的な方法は、ProteOn XPR36、Biacore3000又はKinExA装置、ELISA、若しくは当業者に既知の競合的結合アッセイを利用する。抗体のTMEFF2に対する親和性の測定値は、異なる条件(例えば、オスモル濃度、pH)下で測定した場合に異なり得る。したがって、親和性及び他の結合パラメータ(例えば、K
D、K
on、Koff)の測定は、典型的には、標準化された条件及び本明細書に記載のバッファなどの標準化されたバッファを用いて行われる。例えばBiacore 3000又はProteOnを使用した親和性測定での内部エラー(標準偏差(SD)として測定されるもの)は典型的に、典型的な検出範囲内で測定した場合、5〜33%の範囲内であり得ることが当業者には分かるであろう。したがって、「約」という用語は、K
D値に言及する場合、アッセイにおける典型的な標準偏差を反映する。例えば、K
Dが1×10
−9Mの場合の典型的なSDは、最大±0.33×10
−9Mである。
【0304】
本発明は、また、VH3_3−23(配列番号53)又はVH1_1−69(配列番号54)に由来する重鎖可変領域(VH)フレームワークを含む、TMEFF2の膜近位領域に結合する単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0305】
本発明は、また、VKI_L11(配列番号55)又はVKIIII_A27(配列番号591)に由来する軽鎖可変領域(VL)フレームワークを含む、TMEFF2の膜近位領域に結合する単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0306】
本発明は、また、それぞれ配列番号53のVH3_3−23又は配列番号55のVKI_L11に由来するVHフレームワーク及びVLフレームワークを含む、TMEFF2の膜近位領域に結合する単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0307】
本発明は、また、それぞれ配列番号54のVH1_1−69及び配列番号591のVKIII_A27に由来するVHフレームワーク及びVLフレームワークを含む、TMEFF2の膜近位領域に結合する単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0308】
本発明は、また、それぞれ配列番号54のVH1_1−69及び配列番号55のVKI_L11に由来するVHフレームワーク及びVLフレームワークを含む、TMEFF2の膜近位領域に結合する単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0309】
特定のフレームワーク又は生殖系列配列「に由来する」重鎖又は軽鎖可変領域を含む抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子を使用する系から、例えば、本明細書で論じるトランスジェニックマウス、ラット、若しくはニワトリ、又はファージディスプレイライブラリなどから得られる抗体を指す。生殖細胞系列配列に由来する特定のフレームワークを含有する抗体は、例えば自然発生する体細胞変異又は意図的な置換が原因で、その由来となった配列と比較したときにアミノ酸の違いを含み得る。
【0310】
本発明は、また、それぞれ配列番号582、584、587、18、588、及び22のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0311】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片は、配列番号25のVH及び配列番号28のVLを含む。
【0312】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号39のポリヌクレオチドによってコードされており、VLは、配列番号42のポリヌクレオチドによってコードされている。
【0313】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片は、配列番号32のHC及び配列番号35のLCを含む。
【0314】
いくつかの実施形態では、HCは、配列番号46のポリヌクレオチドによってコードされており、VLは、配列番号49のポリヌクレオチドによってコードされている。
【0315】
本発明は、また、それぞれ配列番号583、585、16、19、21、及び23のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0316】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片は、配列番号589のVH及び配列番号29のVLを含む。
【0317】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号40のポリヌクレオチドによってコードされており、VLは、配列番号43のポリヌクレオチドによってコードされている。
【0318】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片は、配列番号33のHC及び配列番号36のLCを含む。
【0319】
いくつかの実施形態では、HCは、配列番号47のポリヌクレオチドによってコードされており、LCは、配列番号50のポリヌクレオチドによってコードされている。
【0320】
本発明は、また、それぞれ配列番号582、586、17、18、588、及び24のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0321】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片は、配列番号27のVH及び配列番号30のVLを含む。
【0322】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号41のポリヌクレオチドによってコードされており、VLは、配列番号44のポリヌクレオチドによってコードされている。
【0323】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片は、配列番号34のHC及び配列番号37のLCを含む。
【0324】
いくつかの実施形態では、HCは、配列番号48のポリヌクレオチドによってコードされており、LCは、配列番号51のポリヌクレオチドによってコードされている。
【0325】
本発明は、また、それぞれ配列番号583、585、16、18、588、及び22のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0326】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片は、配列番号589のVH及び配列番号31のVLを含む。
【0327】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号40のポリヌクレオチドによってコードされており、VLは、配列番号45のポリヌクレオチドによってコードされている。
【0328】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片は、配列番号33のHC及び配列番号38のLCを含む。
【0329】
いくつかの実施形態では、HCは、配列番号47のポリヌクレオチドによってコードされており、LCは、配列番号590のポリヌクレオチドによってコードされている。
【0330】
本発明は、また、それぞれ配列番号582、584、587、18、588、及び603のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0331】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片は、配列番号604のVH及び配列番号607のVLを含む。
【0332】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号618のポリヌクレオチドによってコードされており、VLは、配列番号619のポリヌクレオチドによってコードされている。
【0333】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片は、配列番号614のHC及び配列番号615のLCを含む。
【0334】
いくつかの実施形態では、HCは、配列番号620のポリヌクレオチドによってコードされており、LCは、配列番号621のポリヌクレオチドによってコードされている。
【0335】
本発明は、また、それぞれ配列番号582、584、587、18、588、及び603のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0336】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片は、配列番号612のVH及び配列番号613のVLを含む。
【0337】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号622のポリヌクレオチドによってコードされており、VLは、配列番号623のポリヌクレオチドによってコードされている。
【0338】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片は、配列番号616のHC及び配列番号617のLCを含む。
【0339】
いくつかの実施形態では、HCは、配列番号624のポリヌクレオチドによってコードされており、LCは、配列番号625のポリヌクレオチドによってコードされている。
【0340】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片は、多重特異性抗体である。
【0341】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2抗体又はその抗原結合断片は、二重特異性抗体である。
【0342】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、T細胞抗原に結合する。
【0343】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、CD3に結合する。
【0344】
いくつかの実施形態では、単離抗TMEFF2二重特異性抗体又はその抗原−結合断片は、CD3εに結合する。
【0345】
本発明の例示的な抗TMEFF2抗体のVH、VL、HCDR、LCDR、HC、及びLC配列を、表60〜67に示す。
【0346】
実施例で説明する実施形態は、一方が重鎖に由来し、一方が軽鎖に由来する可変ドメインの対を含むが、当業者であれば、代替的な実施形態が単一の重鎖又は軽鎖可変ドメインを含み得ることを認識するであろう。単一の可変ドメインを用いて、TMEFF2に結合することができる2ドメイン特異性抗原結合断片を形成することができる可変ドメインについてスクリーニングすることができる。スクリーニングは、例えば、国際公開第1992/01047号に開示されている階層的二重コンビナトリアルアプローチ(hierarchical dual combinatorial approach)を用いたファージディスプレイスクリーニング法によって行うことができる。このアプローチでは、VH鎖又はVL鎖のいずれかのクローンを含む個別のコロニーを用いて、他方の鎖(VL又はVH)をコードしているクローンの完全なライブラリに感染させ、得られた二本鎖特異性抗原結合ドメインを公知の方法及び本明細書に記載されるものを用いてファージディスプレイ技術に従って選択する。したがって、個別のVH及びVLポリペプチド鎖は、国際公開第1992/01047号に開示されている方法を用いて、追加の抗TMEFF2抗体を同定するのに有用である。
【0347】
二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体
本発明は、また、TMEFF2に結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む、単離二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片であって、抗体が、TMEFF2の膜近位領域に結合する、単離二重特異性抗体又はその抗原結合断片を提供する。いずれの特定の理論にも束縛されるものではないが、TMEFF2の膜近位領域に結合する二重特異性抗体は、腫瘍細胞のT細胞媒介性殺傷の媒介においてより効率的であり得る。
【0348】
本発明は、また、TMEFF2に結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む単離二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片であって、抗体が、配列番号25の重鎖可変領域(VH)及び配列番号28の軽鎖可変領域(VL)、配列番号589のVH及び配列番号29のVL、配列番号27のVH及び配列番号30のVL、配列番号589のVH及び配列番号31のVL、配列番号604のVH及び配列番号607のVL、又は配列番号612のVH及び配列番号613のVLを含む参照抗体と、TMEFF2の膜近位領域への結合について競合する、単離二重特異性抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0349】
いくつかの実施形態では、単離二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、約0.4×10
−9M以下の解離定数(K
D)でTMEFF2の膜近位領域に結合し、K
Dは、室温においてpH4.5〜5.0の酢酸バッファ中で表面プラズモン共鳴を使用して測定される。
【0350】
いくつかの実施形態では、単離二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片は、約0.1×10
−10M〜約0.4×10
−9MのK
DでTMEFF2の膜近位領域に結合する。
【0351】
本発明は、また、第1のドメインが、以下のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片を提供する:
それぞれ、配列番号582、584、587、18、588、及び22、
それぞれ、配列番号583、585、16、19、21、及び23、
それぞれ、配列番号582、586、17、18、588、及び24、o
それぞれ、配列番号583、585、16、18、588、及び22、又は
それぞれ、配列番号582、584、587、18、588、及び603。
【0352】
本発明は、また、第2のドメインが、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、単離二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0353】
本発明は、また、第1のドメインが、以下を含む、単離二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片を提供する:
配列番号25のVH及び配列番号28のVL、
配列番号589のVH及び配列番号29のVL、
配列番号27のVH及び配列番号30のVL、
配列番号589のVH及び配列番号31のVL、
配列番号604のVH及び配列番号607のVL、又は
配列番号612のVH及び配列番号613のVL。
【0354】
本発明は、また、第2のドメインが、以下を含む、単離二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片を提供する:
配列番号652のVH及び配列番号661のVL。
【0355】
いくつかの実施形態では、第2のドメインは、配列番号657のVH及び配列番号658のVLを含む。
【0356】
本発明は、また、TMEFF2に結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む、単離二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片であって、
当該第1のドメインが、それぞれ配列番号582、584、587、18、588、及び22のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む;
当該第1のドメインが、配列番号25のVH及び配列番号28のVLを含み、当該第2のドメインが、配列番号652のVH及び配列番号661のVLを含む;
当該第1のドメインが、配列番号25のVH及び配列番号28のVLを含み、当該第2のドメインが、配列番号657のVH及び配列番号678のVLを含む;
当該二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片が、配列番号32のHC1、配列番号35のLC1、配列番号640のHC2、及び配列番号676のLC2を含む;並びに/又は
当該二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片が、配列番号32のHC1、配列番号35のLC1、配列番号675のHC2、及び配列番号677のLC2を含む、単離二重特異性抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0357】
本発明は、また、TMEFF2に結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む、単離二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片であって、
当該第1のドメインが、それぞれ配列番号583、585、16、19、21、及び23のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む;
当該第1のドメインが、配列番号589のVH及び配列番号29のVLを含み、当該第2のドメインが、配列番号652のVH及び配列番号661のVLを含む;
当該第1のドメインが、配列番号589のVH及び配列番号29のVLを含み、当該第2のドメインが、配列番号657のVH及び配列番号678のVLを含む;並びに/又は
当該二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片が、配列番号33のHC1、配列番号36のLC1、配列番号640のHC2、及び配列番号676のLC2を含む;
当該二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片が、配列番号33のHC1、配列番号36のLC1、配列番号675のHC2、及び配列番号677のLC2を含む、単離二重特異性抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0358】
本発明は、また、TMEFF2に結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む、単離二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片であって、
当該第1のドメインが、それぞれ配列番号582、586、17、18、588、及び24のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む;
当該第1のドメインが、配列番号27のVH及び配列番号30のVLを含み、当該第2のドメインが、配列番号652のVH及び配列番号661のVLを含む;
当該第1のドメインが、配列番号27のVH及び配列番号30のVLを含み、当該第2のドメインが、配列番号657のVH及び配列番号678のVLを含む;並びに/又は
当該二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片が、配列番号34のHC1、配列番号37のLC1、配列番号640のHC2、及び配列番号676のLC2を含む;
当該二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片が、配列番号34のHC1、配列番号37のLC1、配列番号675のHC2、及び配列番号677のLC2を含む、単離二重特異性抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0359】
本発明は、また、TMEFF2に結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む、単離二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片であって、
当該第1のドメインが、それぞれ配列番号583、585、16、18、588、及び22のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む;
当該第1のドメインが、配列番号589のVH及び配列番号31のVLを含み、当該第2のドメインが、配列番号652のVH及び配列番号661のVLを含む;
当該第1のドメインが、配列番号589のVH及び配列番号31のVLを含み、当該第2のドメインが、配列番号657のVH及び配列番号678のVLを含む;並びに/又は
当該二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片が、配列番号33のHC1、配列番号38のLC1、配列番号640のHC2、及び配列番号676のLC2を含む;
当該二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片が、配列番号33のHC1、配列番号38のLC1、配列番号675のHC2、及び配列番号677のLC2を含む、単離二重特異性抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0360】
本発明は、また、TMEFF2に結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む、単離二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片であって、
当該第1のドメインが、それぞれ配列番号582、584、587、18、588、及び603のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む;
当該第1のドメインが、配列番号604のVH及び配列番号607のVLを含み、当該第2のドメインが、配列番号652のVH及び配列番号661のVLを含む;
当該第1のドメインが、配列番号604のVH及び配列番号607のVLを含み、当該第2のドメインが、配列番号657のVH及び配列番号678のVLを含む;並びに/又は
当該二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片が、配列番号614のHC1、配列番号615のLC1、配列番号640のHC2、及び配列番号676のLC2を含む;
当該二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片が、配列番号614のHC1、配列番号615のLC1、配列番号675のHC2、及び配列番号677のLC2を含む、単離二重特異性抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0361】
本発明は、また、TMEFF2に結合する第1のドメイン及びCD3に結合する第2のドメインを含む、単離二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片であって、
当該第1のドメインが、それぞれ配列番号582、584、587、18、588、及び603のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む;
当該第1のドメインが、配列番号612のVH及び配列番号613のVLを含み、当該第2のドメインが、配列番号652のVH及び配列番号661のVLを含む;
当該第1のドメインが、配列番号612のVH及び配列番号613のVLを含み、当該第2のドメインが、配列番号657のVH及び配列番号678のVLを含む;並びに/又は
当該二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片が、配列番号616のHC1、配列番号617のLC1、配列番号640のHC2、及び配列番号676のLC2を含む;
当該二重特異性抗TMEFF2/抗CD3抗体又はその抗原結合断片が、配列番号616のHC1、配列番号617のLC1、配列番号675のHC2、及び配列番号677のLC2を含む、単離二重特異性抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0362】
実施形態:
本発明は、以下の非限定的な実施形態を提供する。
1.単離組換え抗CD3抗体又はその抗原結合断片であって、
a)配列番号662を含む重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号663を含むHCDR2、及び配列番号664を含むHCDR3を含む重鎖、並びに配列番号671を含む軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号673を含むLCDR2、及び配列番号690を含むLCDR3を含む軽鎖;
b)配列番号652を含む重鎖可変領域及び配列番号661を含む軽鎖可変領域;
c)配列番号640を含む重鎖、及び配列番号676を含む軽鎖;
d)配列番号662を含むHCDR1、配列番号663を含むHCDR2、及び配列番号664を含むHCDR3を含む重鎖、並びに配列番号773を含むLCDR1、配列番号673を含むLCDR2、及び配列番号690を含むLCDR3を含む軽鎖;
e)配列番号657を含む重鎖可変領域及び配列番号678を含む軽鎖可変領域;あるいは
f)配列番号675を含む重鎖及び配列番号678を含む軽鎖を含む、単離組換え抗CD3抗体又はその抗原結合断片。
2.約300nM以下の結合親和性でカニクイザル(Macaca fascicularis)又はヒトのCD3d、又はCD3e、又はCD3e及びCD3dに特異的に結合する、単離組換え抗CD3抗体又はその抗原結合断片。
3.当該結合親和性が約100nM以下である、実施形態2に記載の単離組換え抗CD3抗体又はその抗原結合断片。
4.当該結合親和性が、フローサイトメトリー又は+25℃におけるProteon表面プラズモン共鳴アッセイProteOn XPR36システムによって測定される、実施形態2又は3に記載の単離組換え抗CD3抗体又はその抗原結合断片。
5.以下の特性のうちの1つ、2つ、3つ、又は4つを有する、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の単離組換え抗CD3抗体又はその抗原結合断片:
a)300nM以下の計算EC50でヒト及びカニクイザルのCD3+Tリンパ球に結合し、300nM以下の計算EC50でカニクイザルCD3発現HEK細胞に結合し、CD3+Tリンパ球への結合とカニクイザルCD3発現HEK細胞への結合との間の計算EC50の差は5倍未満であり、計算EC50は、フローサイトメトリーを使用して0℃で全細胞結合アッセイで測定される;
b)300nM以下の平衡解離定数(K
D)でヒト由来の組換えCD3d(配列番号691)に結合、又はヒト由来の組換えCD3e(配列番号636)に結合、又はカニクイザル由来の組換えCD3d(配列番号692)に結合、又はカニクイザル由来の組換えCD3e(配列番号693)に結合し、K
Dは、+25℃でProteon表面プラズモン共鳴アッセイProteOn XPR36システムを使用して測定される;
c)X線結晶解析により決定したとき、CD3eの残基1〜6に結合する;又は
d)蛍光活性化細胞選別アッセイによって決定したとき、cOKT3又はSP34−2と同様の程度まで、T細胞を活性化するか又はCD69発現を誘導する。
6.抗体定常ドメインに少なくとも1つの置換を含む、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片であって、当該少なくとも1つの置換が、
a)重鎖置換K409R、F405L、又はF405L及びR409Kを含む、
b)重鎖置換S228P、F234A、及びL235Aを含む、
c)重鎖置換L234A、G237A、P238S、H268A、A330S、及びP331Sを含み、当該抗体が、IgG1アイソタイプである、又は
d)重鎖置換S228Pを含み、当該抗体が、IgG4アイソタイプであり、
残基の付番がEUインデックスに準拠する、抗体又はその抗原結合断片。
7.それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片。
8.それぞれ配列番号652及び661の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片。
9.それぞれ配列番号640及び676の重鎖配列(HC)及び軽鎖配列(LC)を含む、実施形態1〜8のいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片。
10.それぞれ配列番号662、663、664、773、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片。
11.それぞれ配列番号657及び678のVH及びVLを含む、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片。
12.それぞれ配列番号675及び677のHC及びLCを含む、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片。
13.それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、抗体又はその抗原結合断片。
14.それぞれ配列番号652及び661のVH及びVLを含む、抗体又はその抗原結合断片。
15.それぞれ配列番号640及び676のHC及びLCを含む、抗体又はその抗原結合断片。
16.それぞれ配列番号662、663、664、773、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、抗体又はその抗原結合断片。
17.それぞれ配列番号657及び678のVH及びVLを含む、抗体又はその抗原結合断片。
18.それぞれ配列番号675及び677のHC及びLCを含む、抗体又はその抗原結合断片。
19.当該抗体が、ヒトである又はヒト化されている、実施形態1〜18のいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合断片。
20.当該抗体が、IgG4又はIgG1アイソタイプである、実施形態19に記載の抗体。
21.当該抗体のFcに1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の置換を含む、実施形態20に記載の抗体。
22.実施形態18に記載の抗体であって、
a)D43G、L49M、L50I、S62N、Q85Eの軽鎖置換、
b)D43G、V48L、L49M、L50I、S62N、Q85E、H89Yの軽鎖置換、
c)R10G、R13K、V73I、R70K、T83S、L96Vの重鎖置換、
d)軽鎖置換D43G、V48L、L49M、L50I、S62N、Q85E、又はH89Yのいずれか1つ、又は
e)重鎖置換R10G、R13K、V73I、R79K、T83S、又はL96Vのいずれか1つ、
を含み、
軽鎖置換の残基付番は、配列番号661に準拠し、重鎖置換については、配列番号652に準拠する、抗体。
23.当該抗体が、二重特異性又は多重特異性である、実施形態1〜22のいずれか1つに記載の抗体。
24.CD3に特異的に結合する第1のドメイン及び第2の抗原に特異的に結合する第2のドメインを含む二重特異性抗体であって、当該第1のドメインが、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、二重特異性抗体。
25.当該第1のドメイン及び第2のドメインがIgG4アイソタイプであり、当該第1又は第2のドメインが、S228P、F234A、L235A、F405L、及びR409Kの重鎖置換を含み、当該第1又は第2のドメインの他方のドメインが、S228P、F234A、及びL235Aの重鎖置換を含み、残基の付番はEUインデックスに従う、実施形態24に記載の二重特異性抗体。
26.当該第1及び/又は第2のドメインが、F405L、又はF405L及びR409K置換を含む、CH3定常ドメインにおける少なくとも1つの置換を含み、残基の付番はEUインデックスに準拠する、実施形態24に記載の二重特異性抗体。
27.当該第1又は第2のドメインの一方が、F405Lの重鎖置換を含み、当該第1又は第2のドメインの他方が、K409Rの重鎖置換を含み、残基の付番がEUインデックスに準拠する、実施形態24に記載の二重特異性抗体。
28.当該第1のドメイン及び第2のドメインが、IgG4アイソタイプであり、当該第1又は第2のドメインの一方が、S228Pの重鎖置換を含み、当該第1又は第2のドメインの他方が、S228P、F405L、及びR409Kの重鎖置換を含み、残基の付番がEUインデックスに準拠する、実施形態24に記載の二重特異性抗体。
29.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号652及び661のVH及びVLを含む、請求項24に記載の二重特異性抗体。
30.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号640及び676のHC及びLCを含む、請求項24に記載の二重特異性抗体。
31.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号657及び678のVH及びVLを含む、請求項24に記載の二重特異性抗体。
32.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号675及び677のHC及びLCを含む、請求項24に記載の二重特異性抗体。
33.当該第2の抗原が、免疫エフェクター細胞以外の標的細胞上で発現する細胞表面抗原である、請求項24に記載の二重特異性抗体。
34.当該細胞表面抗原が、腫瘍関連抗原である、請求項33に記載の二重特異性抗体。
35.当該第2の抗原が、CD33、IL1RAP、PSMA、又はTMEFF2である、請求項24〜34のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
36.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号78、683、80、81、792、及び686のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、実施形態35に記載の二重特異性抗体。
37.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号652及び661のVH及びVLを含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号681及び682のVH及びVLを含む、実施形態33に記載の二重特異性抗体。
38.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号640及び676のHC及びLCを含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号679及び680のHC及びLCを含む、実施形態33に記載の二重特異性抗体。
39.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号78、3、80、81、792、及び686のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、実施形態33に記載の二重特異性抗体。
40.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号652及び661のVH及びVLを含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号8及び682のVH及びVLを含む、実施形態33に記載の二重特異性抗体。(余白)。
41.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号640及び676のHC及びLCを含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号13及び680のHC及びLCを含む、実施形態33に記載の二重特異性抗体。
42.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び690のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号78、79、80、81、82、及び83のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、実施形態33に記載の二重特異性抗体。
43.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号652及び661のVH及びVLを含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号116及び117のVH及びVLを含む、実施形態33に記載の二重特異性抗体。
44.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号640及び676のHC及びLCを含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号138及び139のHC及びLCを含む、実施形態33に記載の二重特異性抗体。
45.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号164、165、166、167、168、及び169のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、実施形態31に記載の二重特異性抗体。
46.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号652及び661のVH及びVLを含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号215及び216のVH及びVLを含む、実施形態31に記載の二重特異性抗体。
47.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号349、390、341、471、513、及び555のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、実施形態31に記載の二重特異性抗体。
48.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号652及び661のVH及びVLを含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号267及び306のVH及びVLを含む、実施形態31に記載の二重特異性抗体。
49.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号662、663、664、671、673、及び670のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号363、404、445、485、527、及び569のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、実施形態31に記載の二重特異性抗体。
50.当該第1のドメインが、それぞれ配列番号652及び661のVH及びVLを含み、当該第2のドメインが、それぞれ配列番号281及び320のVH及びVLを含む、実施形態31に記載の二重特異性抗体。
51.実施形態1〜50のいずれか1つに記載の抗体と、薬学的に許容できる担体とを含む、医薬組成物。
52.実施形態1〜50のいずれか1つに記載の抗体をコードしている、ポリヌクレオチド。
53.実施形態52に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
54.実施形態53に記載のベクターを含む、宿主細胞。
55.実施形態1〜50のいずれか1つに記載の抗体を産生する方法であって、当該抗体が発現する条件で実施形態52に記載の宿主細胞を培養することと、当該宿主細胞によって産生された当該抗体を回収することと、を含む、方法。
56.対象における癌を治療する方法であって、当該癌を治療するのに十分な時間にわたって、それを必要としている当該対象に、治療有効量の実施形態1〜50のいずれか1つに記載の単離抗体を投与することを含む、方法。
57.当該癌が、固形腫瘍又は血液悪性腫瘍である、実施形態56に記載の方法。
58.当該固形腫瘍が、前立腺癌、結腸直腸癌、胃癌、腎明細胞癌、膀胱癌、肺癌、扁平上皮癌、神経膠腫、乳癌、腎臓癌、血管新生障害、腎明細胞癌(CCRCC)、膵臓癌、腎癌、尿路上皮癌、又は肝臓腺癌である、実施形態57に記載の方法。
59.当該前立腺癌が、難治性前立腺癌、前立腺上皮内腫瘍、アンドロゲン非依存性前立腺癌、又は悪性前立腺癌である、実施形態58に記載の方法。
60.当該血液悪性腫瘍が、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、急性リンパ性白血病(ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、慢性骨髄性白血病(CML)、又は芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(DPDCN)である、実施形態57に記載の方法。
61.当該抗体が、第2の治療剤と組み合わせて投与される、実施形態56〜60のいずれか1つに記載の方法。
62.治療において使用するための、実施形態1〜50のいずれか1つに記載の抗体。
63.実施形態1〜50のいずれか1つに記載の抗体に結合する抗イディオタイプ抗体。
【実施例】
【0363】
1 抗CD3mAbのデノボ生成及び機能特性評価
1−1 CD3モノクローナル抗体を生成するためのCD3抗原によるOmniRats(登録商標)の免疫化
OmniRats(登録商標)を、ヒトCD3e及びヒトCD3d;カニクイザルCD3e及びカニクイザルCD3dをコードしている特許品ベクター(Aldevron,Fargo,North Dakota,USA)で免疫化した。動物を、ヒト及びカニクイザルDNAで交互にブーストした。6回目の適用から、動物に同じインサートを有する最適化されたベクターを投与した。リンパ節由来の細胞を、Ag8骨髄腫細胞株と融合させた。融合BLW由来の細胞4000万個を、IgM枯渇後、3枚の96ウェルプレートに置いた。融合BLX由来の細胞13300万個を、IgMを枯渇させていない、9枚の96ウェルプレートに置いた。
【0364】
a)スクリーニングベクター:pOPT−CD3e−hum−epsilon−TCE.OMT+pOPT−CD3d−hum−delta.OMT、1:1(pOPT−CD3e/d−hum−mix)、及びpcDNA3.1−CD3e−cyn−delta+pcDNA3.1−CD3d−cyn−delta、1:1(pcDNA3.1−CD3e/d−cyn−mix)にクローニングしたヒト及びカニクイザルcDNAを一過的にトランスフェクトした細胞で、細胞ベースのELISA(CELISA)により、融合BLW(リンパ球の磁気ビーズ枯渇あり)及びBLX(リンパ球の磁気ビーズ枯渇なし)からのハイブリドーマ上清を分析した。ヒト及びカニクイザルcDNA配列(及び対応するアミノ酸配列)を表4に提供する。CELISA陰性対照については、トランスフェクトされていない哺乳類細胞をハイブリドーマ上清と共にインキュベートし、二次Bethyl抗体で検出した。CELISAトランスフェクション対照については、上記のコンストラクトでトランスフェクトした哺乳類細胞を、抗タグ抗体で検出した。
【0365】
ハイブリドーマ上清を、CD3陽性及びCD3陰性Jurkat細胞:Jurkat CD3+(E6−1)及びJurkat CD3−(J.RT3−T3.5)においてフローサイトメトリー(FACS)により更に分析した。FACS陰性対照については、CD3陰性Jurkat細胞(J.RT3−T3.5)を希釈バッファと共にインキュベートし、Southern抗ラットIgHRP及びBethyl抗ラットIgG1、2a、2b、2c−HRP二次抗体で検出した。
【0366】
一過的にトランスフェクトされた細胞に提示されたヒト及びカニクイザルCD3e/d複合体について、又はヒトCD3e/d複合体の場合、Jurkat CD3+(E6−1)細胞において、融合BLW及び融合BLX由来のハイブリドーマのハイブリドーマ上清中の抗体の特異性は、一過的にトランスフェクトされた細胞に対するCELISAによって、並びにJurkat細胞株に対してFACSで試験した場合に証明された(表3)。陰性対照として機能する実験サンプル中のいずれのサンプルについても有意なシグナルは検出されなかった。
【0367】
【表3】
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【0368】
【表4】
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【0369】
1−2 クローニング抗CD3抗体
OmniRats(OMT,Palo Alto,California,USA)で抗ヒトCD3抗体を生成した。これらのクローンの可変領域(「V領域」)配列をゲノム配列から抽出し、解析した。得られた全ての配列は、ヒトIgG重鎖又はλ軽鎖のいずれかであり、配列、特にLCが高い相同性を示した。配列を生殖細胞系列にアラインメントすると、フレームワークにおいていくつかの変異が示された(
図1)。V領域DNA配列を合成し、哺乳類発現ベクターに、重鎖配列をヒトIgG1ベクターに、軽鎖配列をヒトλベクターにクローニングした。配列を表6及び7に示す。7つのmAbにタンパク質識別子を割り当てた(表5A)。
【0370】
CD3B312を最も代表的なクローンとして選択し、S228P、F234A、L235A変異を有し、表5Bに示すようにタンパク質識別子を割り当てた、ヒトIgG1σ及びIgG4PAAに、重鎖配列をクローニングした。これらを使用して二重特異性抗体を生成し、細胞傷害を通してT細胞リダイレクション機能を実証した。
【0371】
【表5】
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【0372】
【表6】
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【0373】
【表7-1】
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【0374】
【表7-2】
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【0375】
【表7-3】
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【0376】
【表8】
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【0377】
【表9】
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【0378】
1−3 ヒト及びカニクイザル精製T細胞への結合についてのハイブリドーマのスクリーニング
ヒト(
図2)及びカニクイザル(
図3)の精製CD3+Tリンパ球に対する個々のラットハイブリドーマ上清の結合能力を評価するために、細胞ベースの結合アッセイを設計した。T細胞を計数し、1×10^6細胞/mLに希釈し、0.5μL/mLのLive/Dead Fixable Green Dead Cell Stain(Life Technologies、L−2301)と共にインキュベートした。次に、細胞を、100μL/ウェル(1×10^5細胞/ウェル)でU底(Falcon 353077)プレートに分注した。プレートを300gで5分間遠心分離して細胞をペレット化し、上清を除去した。プレートを短時間ボルテックスして、細胞を再懸濁させた。ハイブリドーマ上清をFACS染色バッファ(BSA、BD Biosciences 554657)で4.5μg/mLに希釈し、次いで、最低濃度が0.006μg/mLになるように1:3希釈度で6回連続希釈した。マウス抗ヒトCD3の陽性対照(SP34−2、BD Biosciences 551916)及び陰性アイソタイプ対照(マウスIgG1 BD Biosciences 556648)も4.5μg/mLに希釈した。50μLの各サンプルをT細胞に添加し、4℃で1時間インキュベートした。細胞を、染色バッファで1回洗浄し、二次AF647ヤギ抗マウスIgG(Life Technologies、A21235)又はAF647ヤギ抗ラットIgG(Life Technologies、A21247)を、適切な種(ハイブリドーマサンプルについては抗ラット、対照抗体については抗マウス)に従って、50μL中10μg/mLで添加した。プレートを4℃で45分間インキュベートし、染色バッファで2回洗浄した。細胞を、25μLのランニングバッファ(染色バッファ+1mM EDTA(Life technologies、AM9260G)+0.1%プルロニックF−68(Life Technologies 24040−032))に再懸濁させ、Intellicytシステム(Intellicyt Corp.)で読み取った。結果を
図2及び3に示す。
【0379】
他の実験では、精製ヒトT細胞を、U底プレートに1.1×10^5細胞/ウェルでプレーティングした。プレートを300gで5分間遠心分離して細胞をペレット化し、上清を除去した。プレートを短時間ボルテックスして、細胞を再懸濁させた。ハイブリドーマ上清をFACS染色バッファ(BSA、BD Biosciences 554657)で30μg/mLに希釈し、次いで、最低濃度が0.00017μg/mLになるように1:3希釈度で11回連続希釈した。50μLの各サンプルをT細胞に添加し、4Cで1時間インキュベートした。細胞を染色バッファで1回洗浄し、二次Dylight 650ヤギ抗ラットIgG(Bethyl、A110−239D5)を50μL中10μg/mLで添加した。プレートを4Cで1時間インキュベートし、染色バッファで2回洗浄した。細胞を30μLのFACSバッファに再懸濁させ、Hypercyteフローサイトメータ(Intellicyt Corp.)で読み取った。初代ヒトT細胞に結合する抗CD3クローンの代表的な用量応答曲線を
図5に示す。
【0380】
SP34−2(既知のエピトープを有し、カニクイザルCD3と交差反応性である市販の抗ヒトCD3抗体)との代表的な競合結合曲線を
図6に示す。初期スクリーニング結果を表8にまとめる。クローンのうちの6つは陽性結合を示し、また、初代ヒトT細胞への結合についてSP34−2と競合する。
【0381】
1−4 SP34−2市販CD3抗体との競合アッセイ
また、既知のエピトープを有し、カニクイザルCD3と交差反応性である、市販の抗ヒトCD3抗体SP34−2と競合する能力について、ハイブリドーマ上清を評価した。最初に、AF488蛍光標識SP34−2(BD、557705)の濃度滴定曲線で実施して、以下の競合アッセイのためにSP34−2の固定濃度を決定した。簡潔に述べると、ヒト精製T細胞を、PBSで1×10^6細胞/mLに希釈した。Fcブロック(Human TruStain Fc Block,Biolegend,422302)を5μL/100μL細胞で添加し、100μL/ウェルでU底プレートにプレーティングした。AF488 SP34−2及びAF488標識されたアイソタイプ対照(AF488マウスIgG1、BD、400129)を、1:2希釈スキームで50μg/mLから0.049μg/mLに連続希釈した。プレートを300×gで5分間遠心分離して細胞をペレット化し、上清を除去した。プレートを穏やかにボルテックスして、細胞を再懸濁させた。50μLの各AF488 SP34−2希釈液を細胞に添加し、4Cで1時間インキュベートした。プレートを染色バッファで2回、ランニングバッファ(染色バッファ+1mM EDTA(Life technologies、AM9260G)+0.1%プルロニックF−68(Life Technologies 24040−032))で1回洗浄した。細胞を、25μLのランニングバッファに再懸濁させ、HTFCスクリーニングシステム(IntelliCyt Corporation)で読み取った。用量応答曲線に基づいて、競合アッセイのために、2μg/mLのSP34−2の固定濃度を選択した。
【0382】
精製T細胞への結合が実証された7つのハイブリドーマを、ヒトT細胞に結合するSP34−2との競合についてアッセイした(
図4)。対照抗体を競合アッセイに含めた。非標識マウス抗ヒトCD3、SP34−2抗体及びマウス抗ヒトCD3、UCHT1抗体を陽性対照として使用し、ラットIgG及びマウスアイソタイプを、AF488標識SP34−2の陰性対照として使用した。精製ヒトT細胞を、PBSで1×10^6細胞/mLの濃度に希釈した。細胞100μLあたり5μLのFcブロック(Human TruStain Fc Block、Biolegend、422302)及び細胞1mLあたり0.5μLのLive/Dead Fixable Far Red Dead Cell Stain(Life Technologies L10120)を細胞に添加し、4℃で15分間インキュベートした。次に、1ウェルあたり10
5個の細胞(1×10^5細胞/ウェル)を96ウェルU底プレート(Falcon 353077)に分注した。プレートを300×gで5分間遠心分離して細胞をペレット化し、上清を除去した。プレートを穏やかにボルテックスして、細胞を再懸濁させた。ハイブリドーマ上清及び対照抗体を、FACS染色バッファ(BSA、BD Biosciences 554657)で所望の最終濃度の2倍に希釈した。35μLの2×ハイブリドーマ上清及び対照抗体を35μLの2×AF488 SP34−2(4μg/mL)と混合して、所望の1×濃度のハイブリドーマ上清、1×濃度の対照抗体、及び2μg/mLのAF488 SP34−2を得た。ハイブリドーマ上清及び対照抗体を、ある濃度範囲で7点滴定を用いてアッセイした。ハイブリドーマ上清は200μg/mLから0.08μg/mLまでアッセイし、対照抗体は100μg/mLから0.04μg/mLまでアッセイした。2μg/mLのAF488 SP34−2を含む1×ハイブリドーマ上清又は1×対照抗体50μLをT細胞に添加し、4℃で2時間インキュベートした。プレートを染色バッファで2回、ランニングバッファ(染色バッファ+1mM EDTA(Life technologies、AM9260G)+0.1%プルロニックF−68(Life Technologies 24040−032))で1回洗浄した。細胞を、25μLのランニングバッファに再懸濁させ、HTFCスクリーニングシステム(IntelliCyt Corporation)で読み取った。SP34−2(既知のエピトープを有し、カニクイザルCD3と交差反応性である、市販の抗ヒトCD3抗体)との代表的な競合結合曲線を
図4及び6に示す。初期スクリーニング結果を表8にまとめる。クローンのうちの6つは陽性結合を示し、また、初代ヒトT細胞への結合についてSP34−2と競合した。
【0383】
図4に示すように、7つの抗体は、同様の曲線でSP34−2と競合した。対照SP34−2に対する曲線の右側シフトは、弱くなる結合親和性を示す。アイソタイプ対照ラットIgGは、予想どおり、SP34−2と競合しなかった。
【0384】
【表10】
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【0385】
1−5 CD69のアップレギュレーションにより測定したときのT細胞活性化についてのハイブリドーマヒットのスクリーニング
初代ヒト及びカニクイザルT細胞ベースのアッセイを使用して、ハイブリドーマヒットのT細胞を活性化する能力を判定した。これは、TCR活性化の交差連結効果を再現するために、抗体をプレートにコーティングすることによって達成された。活性化の際、T細胞は、タンパク質、CD69の表面発現をアップレギュレートすることが知られている。未知のサンプル又は対照(陽性対照:インハウス、Okt−3 BISB264.002、BD Bioscience SP−34−2 #551916;陰性対照:抗CD20、インハウス、BISB266.004)を含む10μg/mLの抗体調製物50μLを96ウェルプレート(Costar#3361)にコーティングすることによって、実験を実施した。プレートを4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをPBSで2回洗浄した。冷凍した初代T細胞(ヒトはBiological Specialities又はHemacareから供給され;カニクイザルはWorldWide Primatesから供給された)を解凍し、生存数について計数し、RPMI 1640培地(10% HI FBS(Gibco#10062)を含むGibco #11875)中に2×10
6細胞/mLで再懸濁させた。100μLの細胞をプレートに添加し、37C、5%CO
2で一晩(約16時間)インキュベートした。翌日、プレートを1300rpmで3分間回転させて細胞をペレット化し、上清を廃棄した。細胞をPBSで1回洗浄し、既に述べた通り回転させた。PBS中Live/Dead Green Fixable Dye(Life Technologies#L23101)の2.5%溶液10μLを各ウェルに添加し、室温及び暗所で10分間インキュベートした。次に、FACSバッファ(BD Biosciences#554657)中抗CD69 AF488(Biolegend #310916ロット#B125271)の1%溶液50μLを添加し、プレートを4℃で45分間インキュベートした。既に述べた通り細胞をペレット化し、上清を廃棄し150μLのFACSバッファに再懸濁させることによって、プレートを2回洗浄した。最後の洗浄後、細胞を150μLのFACSバッファに再懸濁させ、FACS Cantoで読み取った。
図20にみられるように、抗CD69染色の測定された平均蛍光強度によって示されるように、陽性対照cOkt3及びSP34−2は、ヒトT細胞におけるCD69のアップレギュレーションを誘導した。SP34−2のみがカニクイザルT細胞でCD69発現を誘導したが、これは、サルからヒトまで保存されているCD3配列の領域に結合するためである。OKT3抗CD3クローンは、カニクイザルCD3に結合せず、CD69のアップレギュレーションを誘導しなかった。ヒト及びカニクイザルT細胞の両方における陰性対照は、T細胞で発現しない抗CD20であった。T細胞活性化について試験したハイブリドーマクローンのうちのいくつかは、陽性対照と同様の程度まで、すなわち2B4、2E6、3B4、1F8、2E9、3F4、3G8、4E5、5H7、8B4、8G8、及び1F1と同様の程度までCD69発現を誘導した。また、5H7、8B4、及び8G8を除いて、ほとんどは、カニクイザルT細胞に結合し、活性化した。
【0386】
1−6 BLW−2E6のフレームワーク遺伝子操作
クローンは、ヒト免疫グロブリン生殖細胞系列の配列と比較して高い相同性を示し、フレームワーク変異を有していた(
図1A及び1B)。クローン2E6を選択して、標準的なフレームワーク配列を適合させた。HCにおける6つの変異及びLCにおける7つの変異全てを個々に又は組み合わせてヒト生殖系列配列に復帰変異させた(表9)。変異したV領域DNA配列を合成し、その親コンストラクトと同じ哺乳類発現ベクターにクローニングした。HC及びLCコンストラクトをマトリックスフォーマットを介して対にして、個々の又は組み合わせの変異を有するタンパク質を生成し、タンパク質活性を試験した。LCにおけるV48は、生殖細胞系列に変更し戻すことができなかった。他の全ての復帰変異は、重大なものではなかったが、ある程度まで活性を低下させた。
【0387】
【表11】
[この文献は図面を表示できません]
【0388】
1つのハイブリドーマクローン、BLW−2E6に対してフレームワーク変異で遺伝子操作した結果、80個の変異体クローンが得られ、そのうちのいくつかを表10に示す。80個の変異体クローンを、初代ヒトT細胞への結合についてアッセイした(
図7及び8)。T細胞を計数し、1×10^6細胞/mLに希釈し、細胞100μLあたり5μLのFcブロック(Human TruStain Fc Block、Biolegend、422302)及び細胞100μLあたり0.5μ/mLのLive/Dead Fixable Green Dead Cell Stain(Life Technologies、L−2301)と共にインキュベートした。次に、細胞を、100μL/ウェル(1×10^5細胞/ウェル)で96ウェルU底プレート(Falcon 353077)に分注した。プレートを300×gで5分間遠心分離して細胞をペレット化し、上清を除去した。プレートを穏やかに短時間ボルテックスして、細胞を再懸濁させた。ハイブリドーマ上清をFACS染色バッファ(BSA、BD Biosciences 554657)で7.5μg/mL、1.5ug/mL、0.3μg/mL、及び0.06μg/mLに希釈した。50μLの各サンプルをT細胞に添加し、4℃で1時間インキュベートした。細胞を染色バッファで1回洗浄し、5μg/mLの二次AF647ヤギ抗ヒトIgG F(ab’)2(Jackson ImmunoResearchカタログ109−605−097)50μLを細胞に添加した。プレートを4℃で45分間インキュベートし、染色バッファで2回、ランニングバッファ(染色バッファ+1mM EDTA(Life technologies、AM9260G)+0.1%プルロニックF−68(Life Technologies 24040−032))で1回洗浄した。細胞を、25μLのランニングバッファに再懸濁させ、HTFCスクリーニングシステム(IntelliCyt Corporation)で読み取った。結果は、位置48におけるLCの変化が結合を無効にし、その結果、変異が持ち越されなかったことを示す。全ての位置が生殖系列に戻ったHC(CD3H231)では、結合のわずかな減少がみられた。
【0389】
1−7 BLW−2E6 LCのC91スキャニング
クローン2E6及びその誘導体は、発現が乏しく、タンパク質の凝集が観察された。軽鎖の1つの残基、C91は、翻訳後修飾(PTM)リスクを有すると予測され、タンパク質の安定性を改善するために他の全ての可能なアミノ酸を変異させた(表10)。変異したV領域DNA配列を合成し、その親コンストラクトと同じヒトλ発現ベクターにクローニングした。SPR結果は、位置91におけるバリン又はロイシンに対する変化が、結合親和性を劇的には変化させないことを示した。この変化は野生型配列にも組み込まれ、上記フレームワーク適応の結果、抗体CD3B376(CD3H219/CD3L150)及びCD3B450(CD3H231/CD3L197)が得られた。CD3B376及びCD3B450をIgG4PAAとしてクローニングした(S228P、F234A、L235A変異を有するIgG4)。
【0390】
CD3B376の配列情報を以下に提供する:
CD3H219 HCアミノ酸配列(配列番号640):
QVQLQQSGPRLVRPSQTLSLTCAISGDSVFNNNAAWSWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWLYDYAVSVKSRITVNPDTSRNQFTLQLNSVTPEDTALYYCARGYSSSFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFLLYSKLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
【0391】
CD3H219 HC核酸配列(配列番号712)
caggtgcagctgcagcagtctggccctagactcgtgcggccttcccagaccctgtctctgacctgtgccatctccggcgactccgtgttcaacaacaacgccgcctggtcctggatccggcagagcccttctagaggcctggaatggctgggccggacctactaccggtccaagtggctgtacgactacgccgtgtccgtgaagtcccggatcaccgtgaaccctgacacctcccggaaccagttcaccctgcagctgaactccgtgacccctgaggacaccgccctgtactactgcgccagaggctactcctcctccttcgactattggggccagggcaccctcgtgaccgtgtcctct
【0392】
CD3L150 LCアミノ酸配列(配列番号676):
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSNIGTYKFVSWYQQHPDKAPKVLLYEVSKRPSGVSSRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDQADYHCVSYAGSGTLLFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
【0393】
CD3L150 LC核酸配列(配列番号713)
cagtctgctctgacccagcctgcctccgtgtctggctctcccggccagtccatcaccatcagctgtaccggcacctcctccaacatcggcacctacaagttcgtgtcctggtatcagcagcaccccgacaaggcccccaaagtgctgctgtacgaggtgtccaagcggccctctggcgtgtcctccagattctccggctccaagtctggcaacaccgcctccctgaccatcagcggactgcaggctgaggaccaggccgactaccactgtgtgtcctacgctggctctggcaccctgctgtttggcggaggcaccaagctgaccgtgctg
【0394】
CD3H219のVHアミノ酸配列(配列番号652):
qvqlqqsgprlvrpsqtlsltcaisgdsvfnnnaawswirqspsrglewlgrtyyrskwlydyavsvksritvnpdtsrnqftlqlnsvtpedtalyycargysssfdywgqgtlvtvss
【0395】
CD3L150のVLアミノ酸配列(配列番号661):
qsaltqpasvsgspgqsitisctgtssnigtykfvswyqqhpdkapkvllyevskrpsgvssrfsgsksgntasltisglqaedqadyhcVsyagsgtllfgggtkltvl
【0396】
CD3H219のHCDR1(配列番号662):NNNAAWS
【0397】
CD3H219のHCDR2(配列番号663):RTYYRSKWLYDYAVSVKS
【0398】
CD3H219のHCDR3(配列番号664):GYSSSFDY
【0399】
CD3L150のLCDR1(配列番号671):TGTSSNIGTYKFVS
【0400】
CD3L150のLCDR2(配列番号673):EVSKRPS
【0401】
CD3L150のLCDR3(配列番号690):VSYAGSGTLL
【0402】
CD3B450の配列情報を以下に提供する:
CD3H231 HCアミノ酸配列(配列番号675):
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVFNNNAAWSWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWLYDYAVSVKSRITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARGYSSSFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFLLYSKLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
【0403】
CD3H231 HC核酸配列(配列番号714):
caggtgcagctgcagcagagcggccccggcctggtcaagcccagccagaccctgagcctgacctgcgccatcagcggcgacagcgtgttcaacaacaacgccgcctggtcctggatccgccagagccccagccgcggcctggagtggctgggccgcacctactaccgcagcaagtggctgtacgactacgccgtgtccgtgaagtcccgcatcaccatcaaccccgacaccagcaagaaccagttctccctgcagctgaacagcgtgacccccgaggacaccgccgtgtactactgcgcccgcggctacagcagcagcttcgactactggggccagggcaccctggtcaccgtgtccagc
【0404】
CD3L197 LCアミノ酸配列(配列番号677):
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSNIGTYKFVSWYQQHPGKAPKVMIYEVSKRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCVSYAGSGTLLFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
【0405】
CD3L197 LC核酸配列(配列番号715):
Cagtctgctctgacccagcctgcctccgtgtctggctctcccggccagtccatcaccatcagctgtaccggcacctcctccaacatcggcacctacaagttcgtgtcctggtatcagcagcaccccggcaaggcccccaaagtgatgatctacgaggtgtccaagcggccctccggcgtgtccaacagattctccggctccaagtccggcaacaccgcctccctgacaatcagcggactgcaggccgaggacgaggccgactactactgtgtgtcctacgccggctctggcaccctgctgtttggcggcggaacaaagctgaccgtgctg
【0406】
CD3H231のVHアミノ酸配列(配列番号657):qvqlqqsgpglvkpsqtlsltcaisgdsvfnnnaawswirqspsrglewlgrtyyrskwlydyavsvksritinpdtsknqfslqlnsvtpedtavyycargysssfdywgqgtlvtvss
【0407】
CD3L197のVLアミノ酸配列(配列番号678):
QSALTQPASVSGSPGQSITISCTGTSSNIGTYKFVSWYQQHPGKAPKVMIYEVSKRPSGVSNRFSGSKSGNTASLTISGLQAEDEADYYCVSYAGSGTLLFGGGTKLTVL
【0408】
CD3H231のHCDR1(配列番号662):NNNAAWS
【0409】
CD3H231のHCDR2(配列番号663):RTYYRSKWLYDYAVSVKS
【0410】
CD3H231のHCDR3(配列番号664):GYSSSFDY
【0411】
CD3L197のLCDR1(配列番号671):TGTSSNIGTYKFVS
【0412】
CD3L197のLCDR2(配列番号673):EVSKRPS
【0413】
CD3L197のLCDR3(配列番号690):VSYAGSGTLL
【0414】
【表12】
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【0415】
1−8 ProteOn SPRによるhCD3εコンストラクトに対するBLW−2E6 CD3mAbの結合
C末端Tencon25融合体を含む組換えヒトCD3ε(1−27)(Janssen production、hCD3ε(1−27)−Tn25と称される)に対する、軽鎖及び/又は重鎖に点変異を有するBLW−2E6抗CD3mAbの結合を、ProteOn SPR(Bio−Rad)により測定した。0.005% Tween−20を含有するPBS中流量30μL/分で、GLC Sensor Chip(Bio−Rad、カタログ番号176−5011)に垂直に配向された6つのリガンドチャネル全てにおいて、酢酸バッファ、pH5.0中30μg/mLでのアミンカップリングを介して、ヤギ抗ヒトFc IgG(Jackson Immunoresearch、カタログ番号109−005−098)を直接固定化した。固定化密度は、平均で約6000応答単位(RU)であり、異なるチャネル間の変動は5%未満であった。垂直リガンド配向で1.5μg/mL(1000〜1250RU)において抗ヒトFc IgG表面に5つの異なるmAbを捕捉し、6番目のリガンドチャネルは、リガンドなし表面対照であった。5つの濃度の3倍希釈系列中1μM濃度のhCD3ε(1−27)−Tn25をアナライトとして流して、捕捉されたmAbに水平配向で結合させた。また、捕捉されたmAbの解離及びベースラインでの安定性をモニタリングするために、6番目のバッファサンプルを注入した。hCD3ε(1−27)−Tn25の全濃度について、100μL/分の流量で30分間解離相をモニタリングした。抗原及び結合mAbを除去するために18秒パルスの0.8%リン酸を用いて、次の相互作用サイクルのために結合表面を再生した。応答データから次の2セットの基準データを減算することによって生データを処理した:1)Agと空のチップ表面との間での非特異的相互作用を補正するためのスポット間シグナル;2)経時的な捕捉されたmAb表面の解離に起因するベースラインの揺れを補正するためのバッファチャネルシグナル。各mAbについて全濃度において処理したデータを1:1の単純なラングミュア結合モデルにグローバルフィットさせて、反応速度定数(k
on、k
off)及び親和性(K
D)定数の推定値を抽出した。結果を表11に与える。
【0416】
【表13】
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N/A=該当なし
【0417】
1−9 ヒトT細胞に対する抗CD3モノクローナル抗体の結合
CD3B376及びCD3B450のヒトT細胞に対するインビトロ結合親和性を、抗原特異的標的アームとの交差後にフローサイトメトリーによって判定した。抗CD3トレーサー分子(KdT)の飽和結合定数を求めるために、ヒトT細胞に対して予備試験を実施した。次いで、滴定された濃度の試験mAbを用いる競合結合アッセイにおいて、固定濃度のトレーサー([T])を使用した。試験分子のIC50(50%阻害が達成される濃度)値を使用して、以下の式:K
d=IC50/(1+([T]/K
dT))を使用して結合親和性(K
d)を求めた。5人のヒトドナーを使用して、トレーサー、市販のAlexaFluor488 SP34−2抗CD3(BioScience#557705)の飽和結合定数(K
dT)を求めた(データは示さず)。
【0418】
トレーサーの飽和結合定数(K
dT)の決定
方法:ヒト汎T細胞を、使用するまで窒素タンク内で低温保存した。T細胞を解凍し、PBSで洗浄し、FACS染色バッファに再懸濁させ、計数し(生存率に留意して)、0.5×10^6細胞/mLで再懸濁させた。Far Red Live/Dead stain(Life Technologies、AKA Invitrogen #L34974)(バイアルに50μLのDMSO)を1×10^6細胞あたり1μLで添加し;FcRブロッカー(Miltenyi Biotec#130−059−901)(0.5×10^6あたり1:20希釈液1mL)をそれぞれ10分間にわたって細胞に添加した。細胞を50,000細胞/ウェルでプレーティングし、洗浄した。漸増濃度のAlexaFluor488 SP−34抗CD3を4℃で2時間にわたってT細胞に添加した。細胞を洗浄して非結合抗体を除去し、15分間固定し、洗浄し、1mM EDTAを含有するFACS染色バッファ中に再懸濁させた。
【0419】
iQue Intellicyte Flow Cytometerを使用して結合を測定した。T細胞集団、続いて細胞個片、続いて生細胞(FL4)について細胞をゲーティングした。各ウェルについて、染色の幾何平均(FL1)を求めた。
【0420】
得られた平均蛍光強度値を抗体分子濃度の関数としてプロットし、一部位結合分析(全結合)においてPrismソフトウェアを使用して分析した(
図9)。ソフトウェアは、質量作用の法則に従う受容体(ヒト汎T細胞上のCD3)への抗体分子の結合を説明する、対応するK
d値を計算する。式は以下の通りである:Y=(B
max×X)/(K
d+X);(式中、Bmaxは最大結合であり、K
dは、最大半量結合に達するのに必要なリガンドの濃度である)。
【0421】
結果:各ドナーについてK
d値を導出し、平均値を得た。ヒトT細胞についての飽和結合定数(K
dT)は、5.6±1.0nM(n=4)であると導出され、K
d結合親和性を求めるために既に述べた式で使用した。
【0422】
競合アッセイによる抗CD3mAbの結合親和性の決定
方法:CD3に対する二価抗体を用いて競合結合試験を行った。
・抗CD3二価:CD3B376及びCD3B450(
図10)
ヒト汎T細胞を使用して、試験mAbの結合親和性を求めた。使用したトレーサーは、市販のAlexaFluor488 SP−34抗CD3(BioScience#557705)であり、このトレーサーの飽和結合定数は上記の通りである。
【0423】
T細胞を、使用するまで窒素タンク内で低温保存した。T細胞を解凍し、PBSで洗浄し、FACS染色バッファに再懸濁させ、生存率に留意して計数し、0.5×10
6細胞/mLで再懸濁させた。Far Red Live/Dead stain(Life Technologies、AKA Invitrogen # L34974)(バイアルに50μLのDMSO)を1×10^6細胞あたり1μLで添加し;FcRブロッカー(Miltenyi Biotec#130−059−901)(0.5×10^6あたり1:20希釈液1mL)をそれぞれ10分間にわたって細胞に添加した。細胞を50,000細胞/ウェルでプレーティングし、洗浄した。
【0424】
mAb(及びアイソタイプ対照)を、出発濃度1000又は200μg/mL(2×)から1:2連続希釈し、固定濃度(5μg/mL;2×)のトレーサーを一緒に混合して、1×濃度を得た。したがって、トレーサーの最終濃度(1×)は、2.5μg/mL=16.6nMであった。混合物を4℃で2時間にわたってT細胞に添加した。次いで、細胞を洗浄して非結合抗体を除去し、15分間固定し、洗浄し、1mM EDTAを含有するFACS染色バッファ中に再懸濁させた。
【0425】
iQue Intellicyte Flow Cytometerを使用して結合を測定した。T細胞集団、続いて細胞個片、続いて生細胞(FL4)について細胞をゲーティングした。各ウェルについて、染色の幾何平均(FL1)を求めた。取得した平均蛍光強度値をlog抗体分子濃度(nMに変換)の関数としてプロットし、それからEC50/IC50値(nM)が導出されるシグモイド用量応答(可変勾配)においてPrismソフトウェアを使用して分析した。以下の式:K
d=IC50/(1+([T]/K
dT))を用いて結合親和性(K
d)を導出した。式中、K
dは、競合相手(非標識分子)の親和性であり、試験化合物のIC50はnM単位であり、[T]は、トレーサーの濃度(16.6nM)であり、K
dTは、飽和結合によって決定されるトレーサーのK
dである(ヒトについては5.6nM)。
【0426】
モノクローナル及び二重特異性抗体の産生
本発明の二重特異性CD3抗体は、Labrijn et al.,2013,PNAS,vol.110(13):5145−5150;国際公開第2011/131746号;又はLabrijn et al.,2014,Nat Protoc,9(10):2450−63に記載の通り、制御されたFabアーム交換(FAE)によって生成され得る。簡潔に述べると、このインビトロ法では、2つの完全長親二価抗体が提供され、各々がヘテロダイマー形成に好都合な抗体CH3領域における変異を含み、その結果、各々の親抗体由来の半アームを含有する二重特異性抗体が得られる。ヘテロダイマー形成に好都合になるように使用され得る変異は、IgG1抗体の場合、一方の親抗体ではF405L、他方の親抗体ではR409Kであるか、又はIgG4抗体の場合、野生型CH3を保持しながら、一方の親抗体でF405L及びK409Rである。
【0427】
単一特異性抗体を、CMVプロモータ下においてHEK細胞株中で発現させた。
【0428】
親抗体を、100mM NaAc pH3.5の溶出バッファ、並びに2M Tris pH7.5及び150mMのNaClの中和バッファを用いたプロテインAカラムを使用して精製した。PD10(Sephadex G25M)カラムを用いてmabを脱塩し、D−PBS、pH7.2バッファに透析した。
【0429】
精製後、親抗体を、75mMシステアミン−HCl中の還元条件下で混合し、31℃で4時間インキュベートした。組換え反応はモル濃度比に基づいており、設定量の標的親(例えば、10mg又は約71.8ナノモル)をCD3抗体(例えば、約67.8ナノモル)と組み合わせ、標的親抗体をCD3抗体の6%過剰で添加した。その後、組換え物をPBSに対して透析して、還元剤を除去した。組換え後に残存する未反応のCD3親抗体の量を最小化するために、過剰な標的親抗体(比)を用いて二重特異性抗体反応を行った。親mAbの部分的な減少に続いて、PBS中に一晩透析することによって還元剤を除去した。
【0430】
結果:
図10は、AlexaFluor488 SP−34抗CD3トレーサー抗体に対する結合についての競合について、二価及び一価抗CD3コンストラクト、CD3B376及びCD3B450の阻害曲線を示す。漸増濃度の試験抗CD3抗体は、AlexaFluor488トレーサー抗体の結合を減少させ、したがって、平均蛍光強度(MFI)を減少させる。IC50値を生成し、前述の式を使用して、K
d親和性を計算し、表13にまとめた。
【0431】
CD3B376結合部位は、二価及び一価の両方の形態でCD3B450よりも強固であった。
【0432】
【表14】
[この文献は図面を表示できません]
【0433】
1−10 抗CD3モノクローナル抗体の配座安定性
抗CD3抗体CD3B376、CD3B389(CD3B376のIgG1σバージョン;重鎖は配列番号729であり;軽鎖は配列番号676である)、CD3B450、及びCD3B467(CD3B450のIgG1σバージョン;重鎖は配列番号728であり;軽鎖は配列番号677である)の配座安定性を示差走査熱量測定(DSC)によって判定した。熱転移の中点Tmを、Ab候補のそれぞれの熱変性プロファイルから決定した。
図12A〜
図12Eは、PBS中の抗CD3抗体の熱変性プロファイルを示す。表14は、DSCによって決定したときの抗CD3抗体の熱的アンフォールディングについてのTm及びエンタルピー値(ΔH)のまとめを含む。
【0434】
DSC結果は、全ての抗CD3抗体CD3B376、CD3B389、CD3B450、及びCD3B467が折り畳まれたドメインを有することを示す。アンフォールディングの開始に基づいて、各抗体の相対的安定性は以下の通りであった:CD3B389<CD3B467<CD3B376<CD3B450。DSCによって試験した抗CD3分子は、その熱安定性においてある程度の差を示した。CD3B376(IgG4 PAA)分子は、59.7、62.4、及び69.2℃で3つの部分的に未分解転移を示し、アンフォールディングの全エンタルピーは417.6kcal/モルであったが、CD3B450(IgG4 PAA)分子は、62.5及び66.3℃で2つの未分解転移を示し、アンフォールディングの全エンタルピーは545.1kcal/molであった。CD3B389(IgG1σ)分子は、54.6、58.2、73.1、及び77.1℃で4つの転移を示し、アンフォールディングの全エンタルピーは401.7kcal/molであったが、CD3B467(IgG1σ)分子は、56.3、59.6、66.5、及び75.6℃で4つの転移を示し、アンフォールディングの全エンタルピーは406.2kcal/molであった。
【0435】
【表15】
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【0436】
2つのIgG1抗体は、対応するIgG4 PAA抗体と比較(同じ可変ドメインを有する分子を比較)してより低い安定性を示し、第1の転移のTmは5〜6℃低い(
図13A及び
図13B及び表14)。
【0437】
1−11 CD3eのN末端ペプチドとの複合体におけるCD3B334 Fabの結晶構造
抗CD3 mAb CD3B334(CD3H231/CD3L137)を改変して、抗体中の多数のフレームワーク残基をヒト生殖系列残基で置き換えることによって、「ヒト度」指数を増加させた。この手順により、以下の変異を有する抗体CD3B334が得られた:親VL CD3L124と比較したとき、VLにおいてD43G/L49M/L50I/S62N/Q85E/H89Y、親VH CD3H219と比較したとき、VHにおいてR10G/R13k/V73I/R79K/T83S/L96V。CD3B334のHisタグ付きFab断片を、HEK293 Expi細胞において発現させ、アフィニティクロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した。ヒトCD3eのN末端の9merペプチドを、New England Peptide(ロットV1108−19/21)で合成し、モル比10:1(ペプチド過剰)でFabと混合した。0.1M Tris、pH8.5中4Mギ酸ナトリウムを含有する溶液から蒸気拡散法により複合体を結晶化させた。結晶は、66.5×69.4×100.4Åの単位格子寸法及び非対称ユニット内の1つの複合分子を有する斜方晶空間群P212121に属する。検索モデルとしてFabの結晶構造を使用して、分子置換法により1.8Åの分解能でこの複合体の構造を決定した。
【0438】
CD3B334は、CD3eの残基1〜6に結合した。ペプチドのN末端Glnは、ピログルタミン酸塩形態であり、疎水性環境では、HCDR3のF107とLCDR3のL99との間にあった(
図18)。HCDR2からの2つのアルギニン残基R52及びR56を、CD3の酸性残基と静電相互作用で会合させた。合計で、16残基がCD3B334パラトープを形成した。LCDR2を除く全てのCDRからの残基が、CD3ペプチドと直接接触していた(4Å以内の距離)(
図19を参照)。
【0439】
2 PSMA抗体
2−1 PSMA細胞株の生成
標準的な分子生物学技術を使用して、CMVプロモータを含むインハウス発現ベクターを使用して、抗PSMAリードを評価するためのスクリーニングツールとして使用するために、完全長チンパンジーPSMA(H2Q3K5_PANTR、配列番号49)又は完全長カニクイザルPSMA(EHH56646.1、配列番号50)を提示する発現ベクターを生成した。標準的な方法を使用して、ベクターを懸濁液中のHEK293F細胞に一過的にトランスフェクションした。トランスフェクトされた293F懸濁細胞を、増殖培地+血清中にプレーティングしたところ、接着性になり、安定したプラスミドの組み込みについて選択した。単一細胞集団を連続希釈により選択し、(アイソタイプ対照としてのR−PE抗ウサギ二次抗体(カタログ番号#111−116−144,Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.)及びウサギポリクローナルIgG(カタログ番号SC−532、Santa Cruz Biotechnology)と共に、一次抗体としてPSMAL抗体(Center)親和性精製ウサギポリクローナル抗体(カタログ番号OAAB02483、Aviva Systems Biology)を使用して、PSMA表面受容体の発現をFACSにより定量した。
【0440】
完全長ヒトPSMA(FOLH1_HUMAN、配列番号51)及びPSMA陽性細胞を選択するためのピューロマイシンを含有するレンチウイルス(Genecopoeia、カタログ番号EX−G0050−Lv105−10)を使用して、ヒトPSMA発現細胞株を生成した。PSMAについて陰性であるHEK293F細胞(ATCC)に、レンチウイルス粒子を形質導入して、ヒトPSMAを過剰発現させた。形質導入後、プールされた細胞を処理することによって、PSMA及び耐性マーカーを陽性発現している細胞を選択し、DMEM+10%HI FBS(Life Technologies)中で増殖させ、様々な濃度のピューロマイシン(Life Technologies)を補給した。
【0441】
HEK生成細胞株に加えて、いくつかの市販の細胞株を、ファージパニング及び結合及び細胞傷害アッセイに使用した。LNCaPクローンFGC細胞(ATCCカタログ番号CRL−1740)は、市販のヒト前立腺癌細胞株である。C4−2B細胞は、元々MD Andersonで開発されたものであり、インビボで増殖させ、骨髄に転移したLNCaP FGCに由来する(Thalmann,et al 1994,Cancer Research 54,2577−81)。
【0442】
2−2 可溶性PSMA ECDタンパク質の生成
組換えチンパンジーPSMA細胞外ドメイン(ECD)タンパク質(Chimp PSMA ECD、配列番号52)をパニングのために生成し、標準的な分子生物学的技術を使用し、CMVプロモータを含むインハウス発現ベクターを使用して抗PSMAリードを評価した。N末端シグナル配列(配列番号594)、N末端Aviタグ(配列番号595)、及び6−Hisタグ(配列番号596)を含むチンパンジーPSMA ECD遺伝子断片(配列番号49のアミノ酸44〜750)を、標準的な分子生物学的技術を使用し、CMVプロモータを含むインハウス発現ベクターを使用してクローニングし、293Expi細胞(Invitrogen)で一過的に発現させた。遺伝子合成技術を使用してcDNAを調製した(米国特許第6,670,127号、米国特許第6,521,427号)。上清を回収し、遠心分離して清澄化した。タンパク質を、1)HisTrap HPカラム(GE Healthcare)を用いたIMAC精製、及び2)サイズ排除精製(Superdex200、Ge Healthcare)の2段階精製プロセスを用いて精製し、ここでの溶出バッファは、PSMAのダイマー化を安定させるために0.5mM ZnCl
2を含有するダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、カルシウム、マグネシウム(Thermofisher、#14040)である。対象とするタンパク質を含む画分をプールし、タンパク質濃度をA280によって測定した。この材料を、結合及び親和性の測定のために使用し、PSMG8と称する。
【0443】
チンパンジーPSMA ECDもパニングのためにビオチン化した。Aviタグを含有するタンパク質をビオチン化するために哺乳類細胞にコトランスフェクトするBirAプラスミドを、インハウスで作製した。BirAコード領域(配列番号597)を、マウスIgG重鎖(配列番号598)由来のシグナルペプチドに融合させ、ER保持シグナル(KDEL(配列番号716))をC末端に付加して、BirAプラスミド(配列番号599)を作製した。構築した遺伝子を、CMVプロモータの制御下にある発現ベクターにクローニングした。ビオチン化PSMA抗原を産生するために、PSMAプラスミドDNAを、BirAプラスミドに対して4倍過剰(w/w)でトランスフェクションミックスに添加した。
【0444】
BirA発現コンストラクトのコトランスフェクションによりAviタグを介してチンパンジーPSMA ECDタンパク質のビオチン化を実施し、得られた分泌タンパク質を、1)HisTrap HPカラム(GE Healthcare)を用いたIMAC精製、及び2)サイズ排除精製(Superdex200、Ge Healthcare)の2段階精製プロセスを用いて精製し、ここでの溶出バッファは、PSMAのダイマー化を安定させるために0.5mM ZnCl2を含有するダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、カルシウム、マグネシウム(Thermofisher,#14040)である。このタンパク質を、ファージパニング試験で使用する前に内毒素について試験した。
【0445】
N末端シグナル(配列番号594)、N末端Avi−(配列番号595)及び6His−(配列番号596)タグを含む配列番号50のアミノ酸44〜750に対応する組換えカニクイザルPSMA細胞外ドメイン(ECD)タンパク質(カニクイザルPSMA ECD、配列番号53)をクローニングし、チンパンジーPSMA ECDについて前述したように発現させた。BirA発現コンストラクトのコトランスフェクションによりAviタグを介してカニクイザルPSMA ECDタンパク質のビオチン化を実施し、得られた分泌タンパク質を、IMAC HisTrap HPカラム(GE Healthcare)及びMonoAvidinカラムを用いて2段階精製することによって精製した。このタンパク質を、ファージパニング試験で使用する前に内毒素について試験した。この材料を、結合及び親和性の測定のためにも使用し、PSMG1と称する。
【0446】
IgG1 Fc(配列番号593)を含む第2の組換えカニクイザルPSMA ECDタンパク質(カニクイザルPSMA Fc、配列番号54)をクローニングし、標準的な分子生物学的技術を用いてCMVプロモータを含むインハウス発現ベクターを用いて発現させた。Cyno PSMA Fcタンパク質を、293HEK−expi細胞で一過的に発現させた。HEK293 Expi細胞におけるPSMG3の一過的トランスフェクション物を、トランスフェクションの5日後に収集し、遠心分離(30分、6000rpm)により清澄化し、濾過した(0.2μPES膜、Corning)。標準曲線を作成するために使用済み培地(spent medium)にスパイクされた精製既知IgG(同じアイソタイプ)を使用し、Octet機器(ForteBio)でIgGの相対量を求めた。
【0447】
清澄化されたカニクイザルPSMA Fc上清を、平衡化された(PBS、pH7.2)HiTrap MabSelect Sure Protein Aカラム(GE Healthcare)に、レジン1mLあたり約30mgのタンパク質の相対濃度でロードした。ローディング後、カラムをdPBS、pH7.2で洗浄し、10カラム体積の0.1M酢酸ナトリウム、pH3.5で溶出した。ピーク画分をプールし、2M Tris、pH7で中和し、濾過した(0.2μ)。中和したタンパク質サンプルを、Ca2+、Mg2+、及び0.5mM ZnCl2、pH7.2を含有するdPBSの3つの改変物に対して、4℃で一晩透析した。翌日、サンプルを透析から取り出し、濾過し(0.2μ)、BioTek SynergyHTTM分光光度計で280nmの吸光度によってタンパク質濃度を求めた。精製したタンパク質の量を、SDS−PAGE、及び解析サイズ排除HPLC(Dionex HPLCシステム)によって評価した。LALアッセイ(Pyrotell−T、Associates of Cape Cod)を用いて内毒素レベルを測定した。精製したタンパク質を4℃で保存した。
【0448】
N末端Avi−及び6Hisタグ(配列番号596)を含む配列番号51のアミノ酸44〜750に対応する組換えヒトPSMA細胞外ドメイン(ECD)タンパク質(ヒトPSMA ECD、配列番号55)をクローニングし、チンパンジー及びカニクイザルのPSMA ECDタンパク質について前述したように、発現させ、精製した。
【0449】
2−3 抗チンパンジー及び抗ヒトPSMA Fabの同定
組換えタンパク質を用いたパニング
4つのヒトVL生殖系列遺伝子(A27、B3、L6、O12)ライブラリと対になったVH1−69、3−23、及び5−51重鎖ライブラリからなるデノボヒトFab−pIXライブラリ[Shi,L.,et al J Mol Biol,2010.397(2):p.385−396.国際公開第2009/085462号]の第1の溶液パニングを、製造元のプロトコルに従ってビオチン化チンパンジーPSMA ECDでコーティングされたストレプトアビジンビーズ(Invitrogenカタログ番号112.05D、ロット番号62992920)にファージを捕捉し、続いて、製造元のプロトコルに従ってカニクイザルPSMA−FcでコーティングされたProtGビーズ(Invitrogen、カタログ番号10003D)にファージを捕捉し、続いて、製造元のプロトコルに従ってビオチン化チンパンジーPSMA ECDでコーティングされたSera−mag Double Speed magnetic Neutravidinビーズ(Thermo、カタログ番号7815−2104−011150)にファージを捕捉する1ラウンドを含む交互パニングアプローチを使用して実施した。このパニングから、2つのヒット:PSMM18及びPSMM25を得た。
【0450】
抗PSMAFabの全細胞パニング
インプットとしての上記のチンパンジーECDパニング実験又は新たなデノボファージライブラリからの、ラウンド#1アウトプットを使用して、全細胞に対して追加のパニング実験を行った。簡潔に述べると、ヘルパーファージ感染によってファージを産生し、当該技術分野において公知の標準的なプロトコルに従ってPEG/NaCl沈殿により濃縮した。静かに揺動させながら、4℃で一晩、トランスフェクトされていない親HEK293F細胞上でファージライブラリを予め排除した(pre-cleared)。PEG/NaCl沈殿後、予め排除したライブラリを、チンパンジーPSMAを発現しているHEK293細胞又はLNCAP細胞と共に、4℃で2時間、静かに揺動させながらインキュベートした。未結合のファージの除去及びファージに結合している細胞の回収をFicoll勾配により行い、数回の洗浄段階後、結合ファージを保有する細胞を、揺動させることなく、37℃で30分間、1mLのTG−1大腸菌培養物と共にインキュベートした。得られた混合物をLB−カルベニシリン−1%グルコースプレート上にプレーティングし、37℃で一晩増殖させた。次いで、その後のパニングラウンドのためにプロセスを繰り返した。
【0451】
大腸菌上清を生成するためのファージFab−pIXのFab−Hisへの変換
得られたファージFab−pIXヒットを標準的な手順を用いてFab−Hisに変換した。プラスミドDNAをファージパニングした大腸菌(Plasmid Plus Maxi Kit、Qiagenカタログ番号12963)から単離し、NheI/SpeI制限酵素消化に供した。得られた5400及び100bpの断片を0.8%アガロースゲルで分離し、5400bpの断片をゲル精製した(MinElute PCR精製キット、Qiagenカタログ番号28006)。精製した5400bpのバンドを、T4リガーゼを使用してセルフライゲーションさせ、得られた生成物(Fab−his融合体をコードしている)を、TG−1大腸菌株に形質転換し戻し、クローン的に単離した。1mM IPTGを含む培養物を一晩誘導することによって、クローンからFab−His上清を生成した。一晩培養物を遠心分離した後、清澄化した上清は下流アッセイで使用する準備が整った。様々なFab−his上清の相対発現レベルを求めるために、連続希釈した上清に対する抗カッパ(Southern Biotechカタログ番号2061−05)ELISAを実施した。試験した全てのクローンが、同様のFab−his発現を示した(データは示さず)。
【0452】
大腸菌由来のFab−his融合体の細胞結合
大腸菌上清由来の個々のFab−his融合体のPSMA発現細胞への結合能力を評価するために、細胞ベースの結合アッセイを設計した。pIX切除後の全てのパニング実験のラウンド3のアウトプットから個々のFabクローンを単離した。Fabクローンを、チンパンジー及びカニクイザルのPSMA発現HEK細胞、並びにLNCaP細胞におけるヒトPSMAへの結合について試験した。簡潔に述べると、PSMA発現細胞を、1ウェルあたり200,000の密度でV底プレート(CoStar 3357)に分注し、氷上で1時間、Fab断片を発現している(100μL)上清と共にインキュベートした。2%FBSを含有するPBSで細胞を2回洗浄し、氷上で1時間、マウス抗ヒトカッパ−RPE抗体(Life Technologiesカタログ番号MH10514)で染色した。2%FBSを含有するPBSで細胞を2回洗浄し、100Lμの同じ洗浄バッファ中に再懸濁させた。BD FACSアレイフローサイトメーターでプレートを読み取った。前方散乱及び側方散乱を使用して細胞の健常集団をライブゲーティングし、次いで、PE染色のためにこのゲート内の細胞を分析することによって、FACSデータをFlowJoソフトウェアで分析した。平均蛍光強度(MFI)を計算し、Microsoft Excelにエクスポートした。3種全てのPSMA(カニクイザル、チンパンジー、及びヒト)に対してバックグラウンドの≧3倍の結合を示し、HEK293細胞株への結合は示さなかったFabクローンを、「予備陽性」とラベル付けした。Fabを配列決定し、再スクリーニングのために哺乳類発現ベクターにクローニングするために持ち越した。哺乳類細胞で発現したFab上清のPSMA発現細胞株への結合から、真の陽性を選択した。
【0453】
哺乳類Fabの調製
大腸菌Fabを哺乳類発現Fabに変換するために、製造元のプロトコルに従って、In−Fusion HDクローニング(ClonTechカタログ番号638918)を使用した。簡潔に述べると、一次スクリーニングを通過し、哺乳類Fabフォーマットに移されるクローンのヌクレオチド配列を、「InFu Primer Finder v1.2.3」プログラム(インハウスで開発したソフトウェア)にロードし、これによって、huKappa_muIgGSP及びhuG1 Fab発現ベクターへのIn−FusionクローニングのためのPCR断片を生成するために使用されるアイソタイプ特異的PCRプライマーのリストを生成する。これらのベクターは、pcDNA3.1に基づかないCMVプロモータを有するインハウスベクターである。In−fusionプロセスに続いて、大腸菌クローンを単離し、配列を確認し、標準的なプロトコルを用いてHEK293細胞にトランスフェクトした。5日後にトランスフェクションから20mLの上清を収集することにより、PSMA発現細胞株への結合を確認するための哺乳類PSMA Fabを調製した。
【0454】
哺乳類supフォーマットにおける全細胞パニングからのヒットの再スクリーニング
既に記載した全細胞結合アッセイを用いて、哺乳類で発現したFab上清の確認を行った。ヒトPSMA(LNCaP)、チンパンジー、及びカニクイザル細胞へのFabの結合を試験することに加えて、親HEK細胞株に結合しないことについてのカウンタースクリーニングを行った。表19は、PSMA発現細胞に結合する哺乳類Fab上清のヒットプロファイルを示す。大腸菌の上清からのヒットの多くは、哺乳類で発現したタンパク質では確認されなかった。PSMM48は、カニクイザルPSMA発現細胞への高い結合、及びチンパンジーPSMA発現細胞へのいくらかの結合を示したが、ヒトPSMAを発現するLNCaP細胞へは結合しなかった。PSMM56は同様のプロファイルを示したが、LNCaP細胞にいくらか結合した。PSMM69〜80は、LNCaP細胞に結合したが、チンパンジーPSMA発現細胞にもカニクイザルPSMA発現細胞にも結合しなかった。哺乳類Fab sup PSMM52、M56、及びM57は、3つ全ての細胞株に結合した。PSMM50、M51、及びM54は、より多くのチンパンジー又はカニクイザルへの結合を示す。M58は、わずかなチンパンジー及びカニクイザルへの結合を示した。
【0455】
【表16-1】
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【0456】
【表16-2】
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【0457】
【表16-3】
[この文献は図面を表示できません]
【0458】
【表16-4】
[この文献は図面を表示できません]
【0459】
哺乳類で発現したFabの用量応答曲線
哺乳類で発現したFabクローンが、未希釈Fab上清としてPSMA発現細胞株への陽性結合について確認されてから、上清をOctet又はタンパク質ゲルによりタンパク質濃度に対して正規化し、用量応答曲線を完成させて、前述のプロトコルを用いてPSMA結合を確認した。
図23〜
図25は、3つのPSMA発現細胞の全てに対する結合が実証されたヒットの滴定曲線を示す。
図23A、23B、23C、及び23Dは、抗PSMAパニングヒット対LNCaP細胞の滴定曲線を示す。
図24A、24B、24C、及び24Dは、抗PSMAパニングヒット対チンパンジーPSMA HEK細胞の滴定曲線を示す。
図25A、25B、25C、及び25Dは、抗PSMAパニングヒット対カニクイザルPSMA HEK細胞の滴定曲線を示す。ヒット間の結合プロファイルを、異なる種のPSMAを発現する細胞株にわたって比較した。PSMM52上清を、実験にわたって陽性対照として使用した。CDRにおけるN−結合型グリコシル化部位、PSMA陰性親HEK細胞株への結合、又はPSMA陽性細胞株への結合の欠如から、いくつかのヒットを優先から外した。11個のFabヒットが残っており、10個のヒットをヒトIgG4−PAA重鎖コンストラクトにクローニングし、PSMA×CD3二重特異性抗体を生成するために使用した。これらのヒットは、互いの3倍以内の種間結合を示し、PSMA陽性標的のT細胞リダイレクション殺傷について試験される二重特異性抗体フォーマットに移した。各ヒットについてのパニング抗原を表20に示す。
【0460】
【表17】
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【0461】
抗PSMAmAbの調製
3つ全てのPSMA発現細胞への結合が実証された合計12個のクローンを、最終的には、制限クローニングによってFc置換S228P、F234A、及びL235A(PAA)アイソタイプを有するmAb IgG4に変換した。簡潔に述べると、初期スクリーニングを通過したFabクローンに対応するコンストラクトをHindIII及びApaIで消化した。ゲル精製した断片を、完全mAb発現のためにCMV promotervDR000215、ヒトIgG4−PAA Fcを含有するCMV駆動発現ベクターを含む、発現ベクターにライゲーションした。これにより、二重特異性抗体の迅速生成が可能になった。既に記載した発現ベクターを使用して、各PSMA mabの重鎖及び軽鎖を発現させ、両方のベクターをmAbの発現のために293Expi又はCHO細胞株に一過的にコトランスフェクトした。ファージパニングから生成された種間陽性PSMA FabのCDR配列を以下の表21に示す。選択されたFabのVH及びVL配列を以下の表22に示す。Fabから生成されたmAbの重鎖及び軽鎖配列を表23に示す。
【0462】
【表18】
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【0463】
【表19-1】
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【0464】
【表19-2】
[この文献は図面を表示できません]
【0465】
【表20-1】
[この文献は図面を表示できません]
【0466】
【表20-2】
[この文献は図面を表示できません]
【0467】
【表20-3】
[この文献は図面を表示できません]
【0468】
【表20-4】
[この文献は図面を表示できません]
【0469】
配列番号130のVH及び配列番号131のVLを有するVH及びVL領域と、S228P、F234A、及びL235A置換を有するIgG4定常領域とを含む単一特異性抗PSMA抗体PSMB119を生成した。配列番号128のVH及び配列番号129のVLを有するVH及びVL領域と、S228P、F234A、及びL235A置換を有するIgG4定常領域とを含む単一特異性抗PSMA抗体PSMB120を生成した。配列番号126のVH及び配列番号127のVLを有するVH及びVL領域と、S228P、F234A、及びL235A置換を有するIgG4定常領域とを含む単一特異性抗PSMA抗体PSMB121を生成した。配列番号125のVH及び配列番号111のVLを有するVH及びVL領域と、S228P、F234A及びL235A置換を有するIgG4定常領域とを含む単一特異性抗PSMA抗体PSMB122を生成した。配列番号123のVH及び配列番号124のVLを有するVH及びVL領域と、S228P、F234A、及びL235A置換を有するIgG4定常領域とを含む単一特異性抗PSMA抗体PSMB123を生成した。配列番号121のVH及び配列番号122のVLを有するVH及びVL領域と、S228P、F234A、及びL235A置換を有するIgG4定常領域とを含む単一特異性抗PSMA抗体PSMB124を生成した。配列番号118のVH及び配列番号119のVLを有するVH及びVL領域と、S228P、F234A、及びL235A置換を有するIgG4定常領域とを含む単一特異性抗PSMA抗体PSMB126を生成した。配列番号116のVH及び配列番号117のVLを有するVH及びVL領域と、S228P、F234A、及びL235A置換を有するIgG4定常領域とを含む単一特異性抗PSMA抗体PSMB127を生成した。配列番号114のVH及び配列番号115のVLを有するVH及びVL領域と、S228P、F234A、及びL235A置換を有するIgG4定常領域とを含む単一特異性抗PSMA抗体PSMB128を生成した。配列番号110のVH及び配列番号111のVLを有するVH及びVL領域と、S228P、F234A、及びL235A置換を有するIgG4定常領域とを含む単一特異性抗PSMA抗体PSMB129を生成した。配列番号112のVH及び配列番号113のVLを有するVH及びVL領域と、S228P、F234A、及びL235A置換を有するIgG4定常領域とを含む単一特異性抗PSMA抗体PSMB130を生成した。
【0470】
2−5 抗PSMA Fab PSMB83(別名PSMM84)に結合したヒトPSMA ECDの結晶構造
PSMAは、細胞表面上で発現するホモダイマータンパク質である。PSMAは、ペプチダーゼ活性を有する大きなECDドメイン(705残基)、1回貫通TMドメイン、及び短い19残基の細胞内ドメインで構成される、1モノマーあたり750残基のII型内在性糖タンパク質である。PSMAと抗体との間の結合部位についてより深く理解するために、二重特異性抗体PS3B27の抗PSMA Fabアームに結合したヒトPSMAの細胞外領域(ECD)の結晶構造を3.15Åの分解能で決定した。
【0471】
ヒトPSMA(残基44〜750)の細胞外領域を、N末端gp67シグナルペプチド、続いて、切断可能なヘキサヒスチジンタグ(配列番号596)を含むHigh Five(商標)昆虫細胞で発現させた。最初のNi
2+−NTA親和性捕捉、TEVに媒介されるヒスチジンタグの切断、続いて、逆アフィニティクロマトグラフィー段階、及び最後のサイズ排除クロマトグラフィー段階を含む3段階手順により、上清から分泌タンパク質を精製した。精製されたPSMA−ECDを液体窒素中で急速冷凍し、10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、2mM CaCl
2、0.1mM ZnCl
2中において−80℃で保存した。
【0472】
二重特異性抗体PS3B27における親抗PSMA FabアームであるPSMB83(別名PSMM84)のFabを、ヘキサヒスチジンタグ(配列番号596)を含むHEK293 Expi細胞で発現させ、アフィニティクロマトグラフィー(HisTrap、GE Healthcare)及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC−300、Phenomenex Yarra)を用いて精製した。Fabを、50mM NaCl、20mM Tris pH7.4中において4℃で保存した。
【0473】
3段階手順によってヒトPSMA ECD/PSMB83 Fab複合体を調製した。最初に、Fabを20mM MES pH6.0、150mM NaClにバッファ交換した。次いで、Fab及びPSMAを混合し(PSMAモノマーに対して1.5モル過剰のFab)、20mM MES pH6.0に透析しながら、4℃で一晩インキュベートした。最後に、複合体を20mM MES pH6.0中でmonoS 5/50カラムに結合させ、NaCl勾配で溶出した。
【0474】
20℃におけるシッティングドロップ蒸気拡散法及びMosquito LCPロボット(TTP Labtech)を用いて、X線回折に好適な結晶を得た。マイクロシード及び最初は7.3mg/mLのPSMA/Fab複合体を用いて、18% PEG 3kDa、0.2M(NH
4)
2SO
4、0.1M Tris pH8.5から、ヒトPSMA ECDに結合したPSMB83 Fabの結晶を成長させた。最初は8.8mg/mLのFabを用いて、25% PEG 3kDa、0.2M LiCl、0.1M酢酸、pH4.5から遊離PSMB83 Fabの結晶を得た。
【0475】
Phaser(Phaser Crystallographic Software,University of Cambridge)による分子置換(MR)によって構造を解析した。PSMB83(別名PSMM84)Fab構造のMR検索モデルは、PDBコード4M6Oであった。MR検索モデルとしてPSMA(PDBコード:2C6G)及びPSMB83 Fab(1.93Å分解能の構造、データは示さない)の結晶構造を使用して、PSMA/Fab複合体構造を解析した。PHENIXにより構造を精密化し(Adams,et al,2004)、COOTを用いてモデル調整を行った(Emsley and Cowtan,2004)。他の全ての結晶学的計算をCCP4プログラムスイートで行った(Collaborative Computational Project Number 4,1994)。PyMol(PyMOL Molecular Graphics System,Version 1.4.1,Schrodinger,LLC)で全ての分子グラフィクスを作成し、相補性決定領域(CDR)をKabatの定義を用いて決定した。
【0476】
PSMA/Fab構造は、Fab軽鎖残基1〜211、Fab重鎖残基1〜224(無秩序である残基138〜146を除く)、及びPSMA残基56〜750を含み、これは、プロテアーゼ(残基56〜116及び352〜590)、アピカル(残基117〜351)及びヘリカル(残基591〜750)ドメイン、並びにPSMAダイマーサブユニットあたり10個の可能なN−結合型グリカンのうちの7個(Asn−76、−121、−140、−195、−459、−476、及び−638)に対応する。PSMA活性部位は、3つのドメイン間の界面に位置し、ヒスチジン(H377及びH553)及びグルタミン酸/アスパラギン酸(D387、触媒活性を有するE424、E425、及びD453)の残基、並びに水分子が配位している2個の亜鉛原子を含有している。結晶非対称単位は、PSMB83 Fabと同様に結合した各サブユニットを有する1つのPSMAダイマーを含有する。Fab/PSMAの結合部位は、結合残基の信頼できる位置決めを可能にする電子密度マップによってよく定義される。Fab及びPSMA分子は、
図26〜
図31で逐次付番される。
【0477】
PSMB83エピトープ、パラトープ、及び相互作用。二重特異性抗体PS3B27における親抗PSMA FabアームであるPSMB83は、PSMAのアピカルドメインにおける配座エピトープ及び不連続エピトープを認識する(
図26)。Fabに埋もれているPSMA表面積は、約700Å
2である。具体的には、PSMB83エピトープ残基は、I138、F235、P237、G238、D244、Y299、Y300、Q303、K304、E307、及びK324〜P326である。ヘリックスα7(残基Y299〜E307)はエピトープの優勢領域であり、Fab重鎖及び軽鎖CDRにわたって結合する。ヘリックスの一端において、Y299及びY300は、Fab残基Y57
H、W94
L、並びにPSMA残基F235及びP237と芳香族クラスタを形成し、一方、他のヘリックス末端におけるE307は、R91
Lとの塩架橋及び水素結合Y32
Lを形成する。
図27及び
図28は、PSMB83軽鎖及び重鎖とのPSMAの主な相互作用を示す。PSMB83エピトープ残基は、ヒトとカニクイザルとの間で保存されており(
図29)、二重特異性抗体PS3B27は、ヒト及びカニクイザルPSMAと同様の親和性で結合することが実証された。対照的に、ヒトの、マウスG238A及び特にY300Dのエピトープへの変異は、ヒトと比較してマウスPSMAに対するPSMB83結合親和性が低いと予想される。Y300D変異は、N59
Hとの水素結合接触及びW94
Lとのπスタッキング相互作用を妨害する。
【0478】
PSMB83パラトープは、CDR−L2及び−CDR−H1を除く全てのCDR由来の残基で構成されている(
図30)。具体的には、パラトープ残基は、軽鎖S30
L、Y32
L、R91
L、S92
L、W94
L、並びに重鎖G56
H〜N59
H、K65
H、G66
H、Y101
H、V107
H、及びD109
Hである。
図31は、PSMAとPSMB83との間の相互作用接触を示す。エピトープのアクセス可能な位置は、PS3B27二重特異性抗体におけるPSMB83 Fabアームの膜結合PSMAへの結合を促進し、一方、他のFabアームは、T細胞膜におけるCD3に依然として結合している。PSMB83は、抗体が活性部位から離れて結合し、酵素機能に影響を及ぼす可能性があるPSMAにおける何らかの大きな構造変化、例えば、活性部位を閉鎖するループ移動又は触媒残基の置換(Fabに結合している及び結合していない(Barinka Et al,2007)構造におけるPSMA分子のCα重ね合わせについては0.3ÅのRMSD)を引き起こさないので、PSMA酵素活性を阻害しないと予想される。
【0479】
2−6 抗PSMA親和性成熟
親PSMB127(fab ID=PSMB83、別名PSMM84)と比較して結合親和性が増加した抗体を同定するために、2つのPSMA親和性成熟ライブラリからの抗PSMA Fabファージクローンに対して親和性成熟を行った。PSMB127の親和性成熟のために2つのライブラリを生成した)。第1のライブラリにおいて、重鎖CDR1及びCDR2を表24(PH9H9L1)の設計に従ってランダム化した。H−CDR3断片をpDR000024032からPCRで増幅させ、SacII+XhoIで消化した。この断片をPH9H9L1/PH9L3ライブラリにクローニングした。これを大腸菌MC1061F’細胞に形質転換し、このFabライブラリをディスプレイするファージを生成した。第2のライブラリにおいて、軽鎖CDRを表25(PH9L3L3)の設計に従ってランダム化した。PSMB83(PSMH360)からの重鎖をPCRで増幅し、NcoI+XhoIで消化した。この断片をPH9L3L3ライブラリDNA(ELN:デノボ2010ファージライブラリSRI−021)にクローニングした。これを大腸菌MC1061F’細胞に形質転換し、このFabライブラリをディスプレイするファージを生成した。
【0480】
【表21】
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【0481】
【表22】
[この文献は図面を表示できません]
【0482】
PSMA親和性成熟Fab−pIXライブラリの溶液パニングを、3ラウンドにわたってビオチン化ヒトPSMA ECDに対して行った。ファージに結合した抗原を、製造元のプロトコルに従ってニュートラアビジンビーズ(GE HealthCare Life Scienceカタログ番号78152104011150)に捕捉し、続いて、1×PBST(tween20中0.05%)で広範に洗浄し、500倍モル過剰のビオチン化抗原中非標識PSMA ECDと共に1時間インキュベートした。このパニングにより、クローン、PSMXP46R3_59H09、PSMXP46R3_59H06、PSMXP46R3_59E03、PSMXP46R3_59C09,PSMXP46R3_59H01、PSMXP46R3_59F11、及びPSMXP46R3_59F07が得られた。
【0483】
抗PSMA fabクローンの発現レベルを決定するために、96ウェルMaxisorbプレートを、4℃で一晩抗ヒトFd IgGでコーティングし、洗浄し、3%ミルク−PBS−0.05%Tweenで1時間ブロッキングした。最後のウェルブランクを用いて、11個の希釈液についてファージ上清サンプルをブロッキングバッファで2倍連続希釈した。100μLのこれらの溶液を、コーティングされたプレート上に1時間にわたって捕捉した。プレートを洗浄し、100μLの抗F(ab’)2−HRP抗体を1時間にわたって添加した。プレートを洗浄し、100μLのペルオキシダーゼ試薬で発色させ、Envisionで発光を読み取った(
図32)。
【0484】
抗PSMA fabクローンのヒト及びカニクイザル組換えタンパク質への結合を決定するために、96ウェルMaxisorbプレートを、4℃で一晩、5μg/mLのニュートラアビジン100μLでコーティングした。プレートを洗浄し、3%ミルク−PBS−0.05%Tweenで1時間ブロッキングした。組換えビオチン化ヒト及びカニクイザルPSMAタンパク質を、室温で1時間にわたって、2.5μg/mLで捕捉した。プレートを洗浄し、2倍連続希釈したfab上清100μLを、RTで1時間にわたって捕捉した。プレートを洗浄し、次いで、PBST中0.3%ミルク200μLと共に2.5時間インキュベートして、親和性の弱いfabの一部を洗い流した。次いで、新たなPBST中の0.3%ミルク200μLと共に更に30分間インキュベートして、親和性の弱いfabを更に除去した。プレートを洗浄し、100μLの抗F(ab’)2−HRP抗体を1時間にわたって添加した。プレートを洗浄し、100μLのペルオキシダーゼ試薬で発色させ、Envisionで発光を読み取った(
図33及び34)。
【0485】
図32は、親Fab及び親和性成熟Fabのタンパク質発現が類似していることを示す。y軸の値は、希釈曲線にわたってfabタンパク質の存在量に等しい検出試薬の発光を表し、発光の読み取り値が高いほど、連続的な2倍希釈で減少させたウェル内のタンパク質がより多い。親和性成熟fabを有するウェルにはより多くのタンパク質が存在していたが、EC50値(最大応答の半分を与えるタンパク質の濃度である)によって示されるように、親に対する増加は最大で5倍である。これらのデータは、
図33におけるPSMA結合プロファイルの差を示しており、
図34は、Fab濃度の差によるものではない。
【0486】
図33は、親和性成熟Fabのヒト組換え抗原に対する結合が親抗PSMA Fab(PSMB83)よりも改善されたことを示す。ここでもまた、グラフのy軸は、発光値を表す。この場合、値が大きいほど、ヒトPSMAタンパク質に結合したFabがより多いことを意味する。これは、(x軸に沿って)Fabの濃度を増加させるにつれて高い発光値が生じる、結合の尺度である。高濃度であってもシグナルが存在しないことによって実証されるように、これらの条件下での親Fabの結合はごくわずかであった(x軸に沿った白丸)。親和性成熟fabの結合は、試験された濃度にわたって観察され、これは、ヒトPSMAタンパク質に対する結合能がより強いことと等しい。ヒトPSMAタンパク質に対する親Fab結合がゼロであることに鑑みて、EC50を生成することはできなかった。
【0487】
図34は、親和性成熟Fabのカニクイザル組換え抗原に対する結合が親抗PSMA Fab(PSMB83)よりも改善されたことを示す。ここでもまた、グラフのy軸は、発光値を表す。この場合、値が大きいほど、カニクイザルPSMAタンパク質に結合したFabがより多いことを意味する。これは、(x軸に沿って)Fabの濃度を増加させるにつれて高い発光値が生じる、結合の尺度である。高濃度であってもシグナルが存在しないことによって実証されるように、これらの条件下での親Fabの結合はごくわずかであった(x軸に沿った白丸)。親和性成熟Fabの結合は、試験された濃度にわたって観察され、これは、ヒトPSMAタンパク質に対する結合能がより強いことと等しい。ヒトPSMAタンパク質に対する親Fab結合がゼロであることに鑑みて、直接比較するためのEC50を生成することはできなかった。
【0488】
全体として、ファージのFab結合プロファイルは、ヒト及びカニクイザル組換え抗原に対する結合が親抗PSMA mAb(PSMB127)よりも改善されたことを示す。この改善は、Fab発現レベルに対して正規化された親和性成熟Fabの結合を示す
図34及び
図35によって実証されるように、Fab発現プロファイルの違いの結果ではない。ELISAスクリーニングから同定された上位5つのFab候補を、IgG4 PAAにおいてモノクローナル抗体フォーマットで産生した。表26は、後続のMab識別子を列挙し、表27及び表28は、それぞれ、その可変領域の配列並びに重鎖及び軽鎖の配列を示す。
【0489】
【表23】
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【0490】
【表24】
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【0491】
【表25-1】
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【0492】
【表25-2】
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【0493】
3つの異なるHC及び4つの異なるLCをマトリックス形式で組み合わせて、ヒットの相違を拡大した(表29)。PSMH860のCDR2におけるメチオニンが翻訳後リスクであることに鑑みて、M64Lを有する新たな配列が生成され、PSMH865として同定した。PSM865はPSML160と対になって、Mab PSMB365を生成した。
【0494】
【表26】
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【0495】
表30及び31は、それぞれ、マトリックスで組換えた可変領域の配列並びに重鎖及び軽鎖の配列を示す。
【0496】
【表27】
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【0497】
【表28-1】
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【0498】
【表28-2】
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【0499】
【表28-3】
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【0500】
表32は、全ての親和性成熟PSMAヒットについてのCDR配列を示す。
【0501】
【表29】
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【0502】
3 PSMA×CD3二重特異性抗体の調製及び機能評価
3−1 PSMA×CD3二重特異性抗体の生成
2種類の親和性成熟PSMA×CD3二重特異性抗体を生成した:高親和性CD3アームCD3B376(VH配列番号652、VL配列番号661、HC配列番号640、LC配列番号676)CD3アーム又は低親和性CD3B450(VH配列番号657、VL配列番号678、HC配列番号675、LC配列番号677)アームで組換えされた標的アーム(例えば、親和性成熟抗PSMA)に特異的なものである。
【0503】
これらの親mAbは、ターゲティング親(PSMA)が409RGenMab変異(IgG4のネイティブアミノ酸)を含有し、一方、殺傷親(CD3)はF405LGenMab変異及びR409K変異を含有する、GenMabフォーマット(Labrijn et al,2013)である。単一特異性抗CD3抗体を、そのFc領域にFc置換S228P、F234A、L235A、F405L及びR409K(CD3アーム)(EUインデックスに従って付番)を有するIgG4として発現させた。ターゲティング親(PSMA)は、Fc置換S228P、F234A、L235Aを有するヒトIgG4上にある。単一特異性抗体を、CMVプロモータ下においてHEK細胞株中で発現させた。
【0504】
親PSMA及びCD3抗体を、100mM NaAc pH3.5の溶出バッファ及び2.5M Tris pH7.2の中和バッファを用いたプロテインAカラムを使用して精製した。中和された親mAを使用して、PSMA×CD3二重特異性抗体を作製した。親mabの一部を、更に、分析測定及びアッセイのために、D−PBS、pH7.2バッファにバッファ交換した。
【0505】
精製後、制御されたFabアーム交換を行い、二重特異性抗体を作製した。親PSMA抗体を、75mM −2−MEA(2−メルカプトエチルアミン)中の還元条件下で所望の親CD3抗体と混合し、31℃で4時間又は室温で一晩インキュベートした。組換え反応は、モル比に基づくものであり、ここでは、組換え後に残存するCD3親mAbを最小化するために6%過剰のPSMA親mAを使用した。その後、組換え物を1×DPBS、pH7.2に対して透析して、還元剤を除去した。
【0506】
組換え反応で使用した親mAb(すなわち、PSMA、CD3、又はヌル)と共に、産生された最終二重特異性抗体を表33に列挙する。
【0507】
選択されたPSMAヒットを非殺傷アーム(ヌル)と対にして、試験目的のための陰性対照を作製した。対照二重特異性抗体の場合、B2M1、IgG4 PAAフォーマット(VH配列番号610、VL配列番号611)におけるRSV抗体を生成し、精製し、それぞれ、CD3アームCD3B219−F405L、R409Kのいずれかと組み合わせてCD3B288(CD3×ヌル)を、又はPSMAアームPSMB122、PSMB126、PSMB130のいずれかと組み合わせてPS3B37、PS3B39及びPS3B40(PSMA×ヌル)を生成した。これらのPSMA特異的親和性成熟Mabを(上記の方法のように)CD3B219及びCD3B376と交差させて、表32に示す二重特異性抗体を生成した。
【0508】
【表30】
[この文献は図面を表示できません]
【0509】
3−2 LNCAP細胞結合におけるPSMA×CD3親和性成熟二重特異性Abの評価
PSMA×CD3二重特異性抗体を、PSMA陽性細胞株、LNCAP、PSMA陰性細胞株、PC3への結合について試験した。PSMA二重特異性抗体の結合能を評価するために、(既に記載した通りの)細胞結合アッセイを利用した。二重特異性抗体をタンパク質濃度について正規化した後、ヒト又はカニクイザルPSMAのいずれかを発現している同じ数の細胞と共にインキュベートした。各濃度のMFIをフローサイトメトリーによって収集し、濃度の関数としてプロットした。データをlog10を介して変換し、次いでプロットした。結合曲線の非線形回帰を行って、EC50を求めた。
【0510】
これらの相対値を、標的細胞に対するPSMA結合をランク付けするために使用した。
図14〜16は、調製した全ての二重特異性抗体のLNCAP結合を示す。
図16では、コンストラクトのいずれもPSMA陰性細胞株への結合を示さなかった。
図14及び
図15では、親和性成熟ヒットは全て、親Mab、PS2B27と比較して、曲線の左側へのシフト及びcMaxの増加を通して結合親和性の増加を示した。
【0511】
組換えカニクイザルPSMA ECDとヒトPSMA ECDとの親和性成熟二重特異性抗体の相互作用を、組換えチンパンジーPSMA ECDについて既に記載した通り、ProteOn XPR36システム(BioRad)を使用して表面プラズモン共鳴(SPR)によって試験した。二重特異性抗体の全てが、実質的に同じ親和性で両標的に結合し、KDは、ヒトPSMA ECDについては0.05nM〜0.27nMの範囲であり、カニクイザルPSMA ECDについては0.05nM〜0.23nMの範囲である。
【0512】
3−3 機能性細胞殺傷アッセイにおけるPSMA×CD3親和性成熟二重特異性Abの評価
上記データ、親和性測定値、及び配列同一性に基づいて、CD3B219又はCD3B376のいずれかとの二重特異性物として、3つのPSMA抗体、PSMB347、PSMB360、及びPSMB365を、PSMA特異的なリダイレクトされたT細胞の細胞傷害を媒介する能力について更に特性評価した。活性カスパーゼ3/7による蛍光基質の切断を介して細胞殺傷を間接的に測定するカスパーゼ細胞傷害アッセイを用いて、T細胞媒介性殺傷を測定した。基質の切断により蛍光DNA色素が得られ、蛍光は細胞核に制限される。同じ座標でウェルを正確に撮像することができる電動式10倍対物レンズを使用して、アッセイの全過程を通して各ウェルにおいて繰り返し蛍光測定を行う。規定のサイズ制限に基づいて及び/又は二次標識の使用を通して、標的細胞集団を特定する。冷凍した汎CD3+T細胞(Biological Specialty Corporation,Colmar,PAから購入)を、正常健常ドナーから陰性選択によって単離した。PSMAを発現している前立腺癌細胞(LNCaP、C42)を、10% HI FBS+補給物(Life Technologiesから購入)を含むRPMI 1640中で培養した。
【0513】
T細胞及び標的細胞を、選択試薬なしで、フェノールレッド不含RPMI+10% FBS及び補給物(Life Technologies)中、3:1のエフェクター対標的比(E:T)で合わせ、製造元ガイドラインに従って細胞各1mLに対して0.6μLのNucViewカスパーゼ試薬(Essen Bioscience)を添加した。総体積0.1mLの細胞を、透明な96ウェル平底プレート(BD Falcon)の適切なウェルに添加した。PS3B27(CD3×PSMA)、CD3B288(CD3×ヌル)、又はPS3B46(PSMA×ヌル)二重特異性抗体を、上記のように調製したフェノールレッド不含RPMI中2×最終濃度で調製し、0.1mLの化合物を各ウェルに添加した。ウェルの縁部における細胞凝集を最小化するために室温で30分間インキュベートした後、プレートをZoom Incucyte機器(Essen Bioscience)に移した。Incucyte機器は、37℃、5%CO2に設定された加湿インキュベータ内に存在する。
【0514】
Incucyteにおける処理の解像度は、製造ガイドラインに従って、試験される各細胞株に対して設計した。カスパーゼシグナルにおいてプラトーが観察され、続いて、最高濃度の試験化合物を含有するウェルにおける最大シグナルから3回以上の連続的な減少が観察されるまで、6時間ごとに測定を行った。
図17のデータが示すように、PS3B80、PS3B79、PS3B89、PS3B90、PS3B63、及びPS3B72の曲線は左にシフトし、これはPS3B27に対する効力の増加を示す。ヌルアーム対照は、予想どおり細胞死を誘導しなかった。
【0515】
3−4 ヒト化NSGマウスにおけるLnCaP異種移植片の腫瘍形成予防における抗腫瘍有効性
ヒトT細胞で腹腔内(ip)ヒト化された雄NOD.Cg−Prkdc
scid Il2rg
tm1Wjl/SzJ(NSG)マウスにおける、樹立された3D LnCaP AR.TBヒト前立腺癌異種移植片において、PS3B79及びPS3B90の有効性を評価した。2.5若しくは5mg/kgのPS3B79及びPS3B90、又はヌル×CD3B376抗体対照を、合計8回、36、39、43、47、50、53、56、60、及び63日目にq3d〜q4dで投与した。1群あたり9頭の動物が残っていた試験の最後の日である腫瘍移植後53日目に、腫瘍増殖抑制(%TGI)を計算した。ヌル×CD3対照と比較して統計的に有意な腫瘍増殖阻害は、PS3B79については5mg/kgで42% TGI(Bonferroni検定を伴う二元配置分散分析、
*p≦0.0001、
図21)、並びにPS3B90については2.5及び5mg/kgでそれぞれ53%及び33% TGI(Bonferroni検定を伴う二元配置分散分析、
*p≦0.001、
図22)が観察された。したがって、CD3B376は、インビボでT細胞活性化及び細胞傷害を誘導することができ、その結果、高親和性PSMA結合アーム、PSMB360及びPSMB365を有する二重特異性フォーマットにおける腫瘍増殖阻害をもたらすことができる。
【0516】
4 IL1RAP×CD3二重特異性抗体の調製及び機能評価
本開示の二重特異性抗体に使用され、使用するのに好適なIL1RAPモノクローナル抗体は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20170121420(A1)号に記載されている。15個の単一特異性IL1RAP抗体(米国特許出願公開第20170121420(A1)号の表6を参照されたい)は、Fc置換S228P、L234A、及びL235Aを有するIgG4として発現した。CD3親mAbは、S228P、L234A、L235A、F405L、及びR409Kを有するIgG4として発現した(EUインデックスに従って付番)。配列番号92のVH及び配列番号93のVLを有するVH及びVL領域と、S228P、L234A、L235A、F405L、及びR409K置換を有するIgG4定常領域とを含む単特異性抗CD3抗体CD3B220も生成した。
【0517】
プロテインAカラムを用い、標準的な方法を用いて単一特異性抗体を精製した。溶出後、プールをpH7に中和し、1×D−PBS、pH7.2に透析した。
【0518】
(国際公開第2011/131746号に記載の通り)制御されたFabアーム交換を通して単一特異性CD3 mAb(CD3B376:配列番号652のVH及び配列番号661のVL又はCD3B450:配列番号657のVH及び配列番号678のVL)及び単一特異性IL1RAP mAbと組み合わせることにより、二重特異性IL1RAP×CD3抗体を生成した。簡潔に述べると、DPBS、pH7〜7.4中約1〜20mg/mLの、モル比1.08:1の抗IL1RAP/抗CD3抗体を75mMの2−メルカプトエタノールアミン(2−MEA)と混合し、25〜37℃において2〜6時間インキュベートし、続いて、透析、ダイアフィルトレーション、接線流濾過により2−MEAを除去して、還元剤を除去し、二重特異性抗体の形成を可能にした。
【0519】
IL1RAP×CD3二重特異性抗体の重鎖及び軽鎖を以下の表34に示す。
【0520】
【表31】
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【0521】
15個のIL1RAP mAbのVH及びVL配列を以下の表35に示す。
【0522】
【表32-1】
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【0523】
【表32-2】
[この文献は図面を表示できません]
【0524】
【表32-3】
[この文献は図面を表示できません]
【0525】
【表32-4】
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【0526】
【表32-5】
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【0527】
【表32-6】
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【0528】
【表32-7】
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【0529】
【表32-8】
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【0530】
4−1 全血T細胞傷害アッセイにおけるIL1RAP二重特異性抗体の評価
方法:腫瘍細胞株LAMA−84をDPBSで洗浄した後、10×10
6細胞/mL(CFSE)で、室温で8分間、CFSE(150μL DMSOに再懸濁し、1:10,000希釈)と共にインキュベートした。染色をHI FBSでクエンチし、培地で洗浄した後、2×10
5細胞/mLで完全培地に再懸濁させた。等体積の全血及びCFSE染色腫瘍細胞を96ウェルプレートの各ウェルにおいて合わせた。それぞれのウェルに抗体(10μLのDPBS中に再懸濁)を添加した後、全てのプレートを37℃、5%CO
2で48時間インキュベートした。未希釈のCD25−PEを全血の各ウェルに直接添加し、室温で30分間インキュベートし、光から保護した。次いで、細胞を1500rpmで5分間遠心分離し、200μLの複数種赤血球溶解バッファで溶解し、更に4回繰り返した。細胞をDPBSで1回洗浄し、Live/Dead Near−IR(DPBSで希釈)で15分間染色した(表36)。各ウェルを洗浄し、FACSバッファ中に再懸濁させた後、BD FACS CANTO IIで細胞を取得した。
【0531】
【表33】
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*NA=該当なし
【0532】
FACS CANTO II(Becton,Dickinson and Company,Franklin Lakes,NJ)での細胞取得は、1×10
4腫瘍細胞に限定された。細胞集団を特定するためのFSC及びSSC、次いで、CFSE陽性腫瘍事象、最後に、腫瘍細胞傷害を評価するためのLive/Dead Near−IRでゲーティングすることによって、腫瘍細胞死を評価した。細胞集団を特定するためのFSC及びSSC、CFSE陰性事象、生細胞を評価するためのNear−IR陰性事象、次いで、CD25陽性細胞でゲーティングすることによって、T細胞活性化を評価した。死腫瘍細胞又はCD25陽性細胞のいずれかの百分率を、GraphPad Prism 6を用いてグラフ化し、非線形曲線フィットで分析した。非線形混合効果モデルを使用して集団EC
50値を求めるために、プログラム「R」において追加の統計分析を評価した。
【0533】
結果:sIL1RAPを含有する生理学的末梢全血状態を再現するために、IC3B19(IAPB57×CD3B219)及びIC3B34(IAPB57×CD3B376)を、全血を利用するエクスビボT細胞リダイレクションアッセイにおいて評価した。外因的に添加したIL1RAP
+LAMA−84細胞株(2×10
4細胞/ウェル)を、48時間かけてIC3B19、IC3B34、及びヌルアーム対照二重特異性抗体と共に健常対照ヒト末梢全血(n=15ドナーサンプル)に添加した。
図53に示す通り、IC3B19及びIC3B34は、48時間後にエクスビボにおいてIL1RAP
+LAMA−84細胞株の同様のT細胞媒介細胞傷害を誘導した。
図53に提示されるIC3B19及びIC3B34細胞傷害のEC
50値は、それぞれ2.097及び2.762であった(表37)。同様に、
図54によって表されるIC3B19及びIC3B34によるT細胞活性化(CD25)のEC
50値は、それぞれ4.237及び7.825nMであった(表38)。ヌルアーム対照二重特異性抗体は全て、
図53及び
図54に示すように、検出可能なレベルの細胞傷害もT細胞活性化も誘導しなかった。細胞傷害及びT細胞活性化の概ねのレベルは、IC3B19及びIC3B34の両方の間で類似していた。
【0534】
【表34】
[この文献は図面を表示できません]
【0535】
【表35】
[この文献は図面を表示できません]
【0536】
4−2 24及び48時間における全血T細胞細胞傷害アッセイにおけるIL1RAP×CD3二重特異性Abによるサイトカイン放出の評価
方法:実施例4−1の24時間及び48時間のサンプルからの凍結上清を、氷上で解凍した。使用前に、プレートを4℃で5分間500gで遠心分離し、次いで、氷上に戻した。ELISAのために1:2、1:25、及び1:1000の希釈比のMSD Diluent 2を使用して、U底96ウェルプレート(Falcon)において連続希釈液を調製した。
【0537】
上清を遠心分離している間、MSDアッセイプレート(ProInflammatory Panel I V− Plex、カタログ番号K15049G−4、ロット番号K008572)を製造元のプロトコルに従って予め洗浄した。提供された較正物質を1.0mLのMSD Diluent 2で再構成することにより、標準曲線を作成した。50マイクロリットルの各サンプル又は標準を、予め洗浄したMSDプレートに直接添加した。その後のインキュベート及び洗浄は、全て製造元のプロトコルに従って実施した。MSD Sector Imagerでアッセイプレートを読み取った。
【0538】
IC3B19とIC3B34との間で応答を比較するために、2つの方法を使用した。
【0539】
混合効果を有する線形回帰
この方法では、対になったドナーを考慮した用量相互作用及びランダム効果による化合物、用量、及び化合物について固定効果を有する線形回帰モデルを構築した。次いで、各濃度でIC3B19とIC3B34との間の事後比較を行い、多重比較のためにp値を適切に調整した。
【0540】
混合効果を有する非線形(4パラメータ)回帰
それぞれの化合物の最小、最大、logEC50、及び傾きについての固定効果パラメータと、対にしたドナー効果を考慮するランダム効果項とを有する非線形回帰モデルを用いて、IC3B19及びIC3B34を一緒にモデル化した。点推定値及びその信頼区間を抽出し、これらの別個のモデルから目視比較のためにプロットした。対象となるパラメータの合同推定値を使用したモデルを構築し、次いで、そのモデルを対数尤度検定を使用して元のモデルと比較することによって、各パラメータについて有意差を検定した。精巧にするために、IC3B19の最小、IC3B19の最大、IC3B19のlogEC50、IC3B19の傾き、IC3B34の最小、IC3B34の最大、IC3B34のlogEC50、及びIC3B34の傾きのパラメータを用いたモデルが存在する。最小値が有意に異なるかどうかをチェックするために、最小について単一の共有パラメータが存在することを除いて、全て同じパラメータを有する第2のモデルを構築する。第1のモデルの対数尤度(モデルがどのくらい良好にデータにフィッティングするかの全体的な尺度)を、第2のモデルの対数尤度と比較する。それらが互いに有意には異なっていない場合、最小が互いに有意には異なっていないと結論付けることができる。同様に、対数尤度が互いに有意に異なる場合、最小が有意に異なると結論付けるであろう。
【0541】
多くの場合、2つの理由のうちの1つから、モデル又はパラメータ比較を計算できなかった:1.4パラメータロジスティック回帰自体を計算するにはデータが扱いにくかった、又は2.パラメータ推定間の差が大きすぎて、合同モデルが失敗した。第1の場合、結果は報告せず、まとめの表には「NA」と示す。第2の場合も結果は報告しないが、有意の省略表現として「Sig」とまとめの表に示す。これらのパラメータの周囲の95%信頼区間は個別に推定可能であり、重なり合わないため、これらは有意に異なるが、正確なp値は未知であると考えることができる。
【0542】
差は、0.05以下のp値で統計的に有意であると考えられる。全ての分析をR、バージョン3.3.2.で実施した。
【0543】
結果:T細胞及びIL1RAP+標的細胞株LAMA−84(内因的及び外因的に添加された腫瘍細胞)のIC3B19及びIC3B34媒介会合の結果、T細胞サイトカイン放出が生じた。IC3B19とIC3B34との間のサイトカイン放出の差を求めるために、実施例1のセクションで論じた通り、外因性LAMA−84 IL1RAP+腫瘍細胞株を添加した、全血(n=15ドナー)細胞傷害及びT細胞活性化アッセイから10個の炎症促進性サイトカインについて上清を評価した。評価した10個のサイトカインのうち、IL−8及びIL−12p70を除いて、ほとんどのサイトカインは、IC3B19及びIC3B34の両方に応答して測定可能な用量依存性放出をもたらした。表39に示すように、IL−10、IL−2、TNF−α、及びINF−γが、最も強力なEC50(nM)放出をもたらした。加えて、サイトカインの大部分及び両時点で、IC3B34分子はEC50(nM)の効力を低下させ、これは統計的に有意であった。例外は、IL−4(24時間)、IL−6(24及び48時間)、IL−8(24及び48時間)、IL−12p70(24時間及び48時間)、IL−13(24時間)、INF−γ(24時間及び48時間)、及びTNF−α(24時間)であり、IC3B19とIC3B34との間でEC50(nM)値には統計的に有意な差がなかった。
【0544】
【表36】
[この文献は図面を表示できません]
【0545】
4−3 カスパーゼ細胞傷害アッセイにおけるIL1RAP二重特異性抗体の評価
IC3B19及びIC3B34のT細胞媒介性殺傷を、第2の種類の細胞傷害アッセイを用いて測定した。カスパーゼ細胞傷害アッセイは、活性カスパーゼ3/7による蛍光基質の切断を介して細胞殺傷を間接的に測定する。基質の切断により蛍光DNA色素が得られ、蛍光は細胞核に制限される。同じ座標でウェルを正確に撮像することができる電動式10倍対物レンズを使用して、アッセイの全過程を通して各ウェルにおいて繰り返し蛍光測定を行う。規定のサイズ制限に基づいて、標的細胞集団を特定する。
【0546】
冷凍した汎CD3+T細胞(Biological Specialty Corporation,Colmar,PAから購入)を、正常健常ドナーから陰性選択によって単離した。標的細胞(NCI−H1975細胞、IL1RAPを発現しているヒト肺腺癌細胞株)を、10%熱不活化FBS、1mMピルビン酸ナトリウム、及び0.1mM非必須アミノ酸(Life Technologies)を補給したRPMI1640/Glutamax(25mM HEPESバッファ)培地中で培養した。
【0547】
標的細胞を、実験開始の16時間前に、補給物を含有するフェノールレッド不含RPMI培地50μL中20,000細胞/ウェルで、組織培養処理された透明な平底プレート(Costar)にプレーティングした。細胞を室温(RT)で20分間インキュベートして、ウェル内で細胞を均一に分布させ、次いで、細胞を37℃及び5%CO2で一晩インキュベートした。
【0548】
実験日に、T細胞を計数し、補給物を含有するフェノールレッド不含RPMI培地中1.0×10^6細胞/mLに希釈し、10μMの作用濃度についてはNuc−View TM488カスパーゼ−3/7基質(Essen Biosciences)と組み合わせた。組み合わせたT細胞及びカスパーゼ−37基質100μLを、カスパーゼ−3/7基質の最終濃度5μMで各ウェルに添加した。
【0549】
IC3B19(IAPB57×CD3B219)、IC3B34(IAPB57×CD3B376)、CD3B288(ヌル×CD3B219)、及びIAPB57×ヌル(IAPB101)二重特異性抗体を、補給物を含有するフェノールレッド不含RPMI培地中4×最終濃度で調製し、各ウェルに50μLの抗体を添加した。室温で20分間インキュベートしてウェル内の分布を均一にした後、プレートをZoom Incucyte機器(Essen Bioscience)に移した。Incucyte機器は、37℃、5%CO2に設定された加湿インキュベータ内に存在する。
【0550】
NCI−H1975細胞について、Incucyteにおける処理の解像度を設計した。この処理の解像度は、T細胞をサイズによって除外しながら、標的細胞のカスパーゼ活性を明確に特定する。測定は、T0及び120時間まで6時間ごとに行った。最大シグナルは、処理後72時間であると判定され、その時点でデータを分析した。
【0551】
アッセイが完了した後、NCCI H1975の処理解像度を用いて各プレートを分析した。蛍光生データをIncucyte Zoomソフトウェアからエクスポートし、GraphPad Prism(GraphPad Software,Inc.、La Jolla,CA)にペーストした。GraphPadにおいて各ウェルの曲線下面積(AUC)を計算することによって、カスパーゼ3/7活性を求めた。Log10nM抗体濃度の関数としてAUC値をプロットした。各濃度応答曲線のEC50(ナノモル(nM))を、非線形回帰(シグモイド用量応答、−可変の傾き)に従って報告した。各アッセイは、2つの技術的複製物を含んでおり、各技術的複製物を4回測定した。
【0552】
IC3B19及びIC3B34はいずれも、NCI−H1975細胞において標的特異的細胞傷害を誘導したが、ヌルアームを有する二重特異性抗体(IAPB57×B23B49又はB23B39×CD3B219)は誘導しなかった(
図57)。このアッセイでは、細胞傷害EC50は、IC3B19とIC3B34との間で3倍異なり、それぞれ0.018及び0.057nMの値である。
【0553】
4−4 T細胞ヒト化NSGマウスのH1975ヒトNSCLC異種移植片におけるIAPB57×CD3B376の有効性
IAPB57×CD3B376二重特異性抗体IC3B34の有効性を、ヒトT細胞でヒト化された雌NOD.Cg−Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスにおける樹立されたH1975ヒト非小細胞肺癌(NSCLC)異種移植片において評価した。0.1、0.35、若しくは1mg/kgのIAPB57×CD3B376、又はヌル×CD3抗体対照を、合計4回14、18、21、及び25日目に投与した。1群あたり10頭の動物が残っていた試験の最後の日である腫瘍移植後29日目に、腫瘍増殖抑制(%TGI)を計算した。ヌル×CD3対照と比較して統計的に有意な腫瘍増殖阻害は、0.35及び1mg/kgのIAPB57×CD3B376で観察され、それぞれ63%及び89% TGIであった(Bonferroni検定を伴う二元配置分散分析、p<0.0001、
図58)。
【0554】
5 CD33抗体
5−1 抗原の生成
免疫化及びアッセイのためにC末端で融合させたC58S変異を有するヒト血清アルブミン(HSA)の変異型モノマー形態、Uniprot P02768を有する又は有しない、ヒト及びカニクイザルのCD33タンパク質を産生した。6−ヒスチジンタグ(配列番号596)を含むCD33タンパク質抗原をコードしているcDNAを合成的に合成し、標準的な分子生物学的技術を用いて、アクチンプロモーターの下にある哺乳類分泌発現ベクターにクローニングした。
【0555】
Uniprot P20138(配列番号235)由来の完全長ヒトCD33細胞外ドメイン(ECD)(ヒトCD33 ECD)を、N末端でHSAの有り無しでシグナル配列と融合させ、続いて、C末端で6ヒスチジンタグ(配列番号596)と融合させた(HSAを含むhCD33 ECD及びhCD33 ECDのみ)。製造元のプロトコルに従ってExpifectamineを使用して、HEK293由来細胞、Expi293(Gibco/Thermo Fisher Scientific;Waltham,MA)にヒトCD33 ECD発現コンストラクトを一過的にトランスフェクトした。軌道振盪器において8%CO
2で37℃において5日間細胞をインキュベートした後、収集した。発現した細胞を遠心分離により除去し、Ni Sepharose 6 Fast Flow resin(GE Healthcare;Little Chalfont,United Kingdom)を使用する固定化金属アフィニティクロマトグラフィー、続いて、ダルッベッコリン酸生理食塩水バッファpH7.2(1×DPBS)中におけるSuperdex 200分取サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(GE Healthcare)を使用して、可溶性CD33を培地から精製した。ジスルフィド凝集体を全て除くSEC溶出画分を合わせ、滅菌濾過して、免疫化及びCD33アッセイのための最終タンパク質を得た。A280によってタンパク質濃度を求め、SDS−PAGE及び分析SEC(Phenomenex;Torrance,CA)によって精製タンパク質の品質を評価した。EndoSafe−PTS Cartridges、発色性LALアッセイ(Charles River;Wilmington,MA)を使用して、内毒素測定を実施した。
【0556】
ヒトCD33 ECDサブドメインタンパク質、hCD33 V−ドメイン−HSA、hCD33 V−ドメイン−his、hCD33 C2ドメイン−HSA、及びhCD33 C2ドメイン−Hisを同様に構築し、発現させ、完全長ヒトCD33 ECDとして精製した。
【0557】
Genbank配列XP_005590138.1に基づいて、免疫化及び交差選択性アッセイのためのカニクイザルCD33コンストラクト、カニクイザルCD33 ECD−HSA、カニクイザルCD33−Hisも生成した。カニクイザルCD33タンパク質の発現及び精製は、ヒトCD33タンパク質と同様であった。
【0558】
製造元の条件に従ってSureLink Chromagenic Biotin Labelingキット(SeraCare KPL)を使用して、50mMのリン酸ナトリウムpH7.2中でスクリーニングのためのCD33抗原をビオチン化した。簡潔に述べると、ビオチンのタンパク質に対するモル比4:1で25mMのビオチン原液をCD33タンパク質に添加し、穏やかに回転させながら室温で30分間インキュベートし、次いで、4℃に切り替えて更に2時間インキュベートした。1×DPBSへのバッファ交換によって、組み込まれていないビオチンを除去した。NanoDropを使用してA280nm及びA354nmで測定することによって、タンパク質濃度及びビオチンの組み込みを求めた。上記抗原のそれぞれの配列については表40を参照されたい。
【0559】
【表37】
[この文献は図面を表示できません]
【0560】
5−2 CD33発現同質遺伝子細胞株の生成
完全長のヒトCD33又はカニクイザルCD33とCD33陽性細胞を選択するためのピューロマイシンとを含有するレンチウイルス(Genecopoeia;Rockville,MD)を使用して、ヒト及びカニクイザルのCD33発現細胞株を生成した。CD33について陰性であるHEK293F細胞(ATCC)に、レンチウイルス粒子を形質導入して、ヒトCD33及びカニクイザルCD33を過剰発現させた。形質導入後、プールされた細胞を処理することによって、CD33及び耐性マーカーを陽性発現している細胞を選択し、DMEM+10%HI FBS(Life Technologies;Carlsbad,CA)中で増殖させ、様々な濃度のピューロマイシン(Life Technologies)を補給した。
【0561】
HEK生成細胞株に加えて、いくつかの市販の細胞株を、結合及び細胞傷害アッセイに使用した。これらはMOLM13、KG1、SH2、OCIAML3、及びMV411を含んでおり、American Type Culture Collection又はDeutsche Sammlung von Mikrooranismen und Zellkulturenのいずれかから入手し、10% FBSを含む完全RPMI培養培地中、37℃、5%CO
2で培養した。
【0562】
5−3 免疫化キャンペーン
OmniRat
ヒト免疫グロブリントランスジェニックラット系統(OmniRat(登録商標);Ligand Pharmaceuticals;San Diego,CA)を使用して、ヒトCD33モノクローナル抗体発現ハイブリドーマ細胞を開発した。OmniRat(登録商標)は、キメラヒト/ラットIgH遺伝子座(ラットC
H遺伝子座に連結された天然立体構造の22のヒトV
H、全てのヒトD及びJ
Hセグメントを含む)を完全にヒトのIgL遺伝子座(Jκ−Cκに連結された12のVκ及びJλ−Cλに連結された16のVλ)と共に含有する(例えば、Osborn,et al.(2013)J Immunol 190(4):1481−1490を参照)。したがって、このラットは、ラット免疫グロブリンの発現減少を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖及び軽鎖の導入遺伝子がクラススイッチ及び体細胞変異を受けて、完全にヒトの可変領域を有する高親和性キメラヒト/ラットIgGモノクローナル抗体が生成される。OmniRat(登録商標)の調製及び使用、並びにこのようなラットが有するゲノム改変は、Bruggemannらの国際公開第2014/093908号に記載されている。
【0563】
組換えヒト及びカニクイザルCD33(それぞれ、huCD33 ECD−HSA及びカニクイザルCD33 ECD−HSA)で免疫化したとき、このトランスジェニックラットは、ヒトCD33に対するキメラヒト−ラットIgG抗体を産生し、そのうちのいくつかはカニクイザルCD33にも結合する。
【0564】
8頭のOmniRatを、huCD33 ECD−HSA及びカニクイザルCD33 ECD−HSAのどちらかで免疫化した。46日間の免疫化レジメン後、8頭のOmniRat全てからリンパ節を摘出し、ハイブリドーマを生成するために使用した。81枚の96ウェルプレートのハイブリドーマ上清を、標準的な技術を用いて結合ELISA及びAlphaLISAを介してスクリーニングし、そのうち128個のハイブリドーマ上清を、huCD33 ECD−HSA及びカニクイザルCD33 ECD−HSAへの特異的結合について選択した。128個の上清の大部分が、huCD33又はcyCD33を過剰発現している細胞への結合についても陽性であった。
【0565】
6頭の追加のOmniRatをrhuCD33のみで免疫化した。31日間の免疫化レジメン後、6頭のOmniRat全てからリンパ節を摘出し、ハイブリドーマを生成するために使用した。30枚の96ウェルプレートのハイブリドーマ上清を、標準的な技術を用いて結合ELISAを介してスクリーニングし、そのうち94個のハイブリドーマ上清を、huCD33 ECD−HSA及びカニクイザルCD33 ECD−HSAへの特異的結合について選択した。陽性クローンからハイブリドーマ溶解物を調製し、下記v領域クローニングに進めた。
【0566】
OmniMouse
ヒト免疫グロブリントランスジェニックマウス系統(OmniMouse(登録商標);Ligand Pharmaceuticals)を使用して、ヒトCD33モノクローナル抗体発現ハイブリドーマ細胞を開発した。OmniMouse(登録商標)は、完全ヒトIgL遺伝子座と一緒にキメラヒト/ラットIgH遺伝子座を含有する。このマウスは、マウス免疫グロブリンの発現減少を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖及び軽鎖の導入遺伝子がクラススイッチ及び体細胞変異を受けて、完全にヒトの可変領域を有する高親和性キメラヒト/ラットIgGモノクローナル抗体が生成される。
【0567】
組換えヒト及びカニクイザルCD33(それぞれ、huCD33 ECD−HSA及びカニクイザルCD33 ECD−HAS)で免疫化したとき、このトランスジェニックマウスは、ヒトCD33に対するキメラヒト/ラットIgG抗体を産生し、そのうちのいくつかはカニクイザルCD33にも結合する。
【0568】
4頭のOmniMouseを、huCD33 ECD−HSA及びカニクイザルCD33 ECD−HSAのどちらかで免疫化した。53日間の免疫化レジメン後、4頭のOmniMouse全てから脾臓及びリンパ節を摘出し、ハイブリドーマを生成するために使用した。48枚の96ウェルプレートのハイブリドーマ上清を、結合ELISA及びAlphaLISAを介してスクリーニングし、そのうち8個のハイブリドーマ上清を、huCD33 ECD−HSA及びカニクイザルCD33 ECD−HSAへの特異的結合について選択した。陽性クローンからハイブリドーマ溶解物を調製し、下記v領域クローニングに進めた。
【0569】
V領域クローニング
ハイブリドーマ細胞溶解物からの全RNAを、製造元のプロトコルに従ってRNeasy 96キット(Qiagen;Hilden,Germany)を使用して精製し、得られたRNAをDrop Senseを使用して定量化し、−80℃で保存した、又はInvitrogen SuperScript III First−Strand Synthesis System for RT−PCR(Invitrogen;Carlsbad,CA)を使用してcDNAを合成した。それぞれ重鎖、κ鎖、及びλ鎖の定常領域にアニーリングされた遺伝子特異的プライマーを使用して、第1の鎖のcDNA合成を実施した。RT−PCR反応混合物は、最高3μgの精製RNA、遺伝子特異的プライマー、dNTPミックス、反応バッファ、25mM MgCl
2、DTT、RNaseOUT(商標)(40U/μL、Invitrogen)、及びSuperScript(商標)III RT(200U/μL、Invitrogenカタログ番号18080−051)で構成されており、50℃で50分間及び85℃で5分間インキュベートされる。得られた一本鎖cDNAを−20℃で保存した、又は一本鎖DNAをPCR増幅させた。PLATINUM Pfxポリメラーゼ(Invitrogen)を使用してPCR反応を行った。最適化されたPCR条件を使用して、それぞれ、リーダー配列並びに重鎖、κ及びλ鎖の定常領域に、フォワード及びリバースプライマーをアニーリングさせることによって、v領域断片を増幅させた。得られたPCR断片をゲルに流し、予め設計しておいたプライマーを使用して配列決定して、v領域配列を得た。得られたv領域配列の.abiファイルを収集し、Janssen Biologics Discoveryで作成されたSanger v領域配列解析プログラムによって分析した。回収されたv領域のAA配列を内部データベースに登録し、コドンを最適化し、所望のヒト抗体アイソタイプの適切な定常領域:IgG1 F405L及びIgG4 PAAを保有するpUnderベースの発現ベクターにクローニングした。合計76個のOMNIRat抗体及び8個のOMNIMouse抗体のクローニングに成功し、更なる特性評価に進めた。以下の表は、OMNIRatキャンペーンで同定された上位32(表41を参照されたい)及びOMNIMouseキャンペーンで同定された8(表42を参照されたい)由来の配列をまとめたものであり、OMNIRat抗体のうちのいくつかをIgG1及びIgG4 PAAにクローニングし、OMNIMouseキャンペーンからは全てをIgG1及びIgG4 PAAの両方にクローニングした。
【0570】
【表38】
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HC:重鎖、LC:軽鎖
【0571】
【表39】
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HC:重鎖、LC:軽鎖
【0572】
5−4 Expi293小規模トランスフェクション及び精製
免疫化キャンペーン及びその後の(IgG1 F405L及びIgG4 PAAへの)v領域クローニングで同定された抗体を発現させ、小さな2mLスケールを介して精製した。Expi293(商標)細胞(ThermoFisher Scientific)を、Expi293(商標)発現培地に1.25×10
5〜2.25×10
5生存細胞/mLの密度で播種し、37℃、7%CO
2のシェーカーインキュベータ(INFORS HT Multitron Pro)においてポリカーボネート製、使い捨て、滅菌、排気、バッフルなしの三角振盪フラスコ内で培養した。125mL〜2Lの振盪フラスコにおける通常的な細胞増殖の場合、振盪直径19mmの振盪器については振盪速度を130rpmに設定した。細胞を継代培養し、この場合、生存率98〜99%で、密度が3×10
6〜5×10
6生存細胞/mLで対数増殖に達した。
【0573】
トランスフェクションの日に、生存細胞密度及び生存率を求めた。細胞を、3×10
6生存細胞/mLの密度でトランスフェクトした。最適なトランスフェクションのために、TEバッファ(10mM Tris−HCl、1mM EDTA、pH8.0)中0.1mg/mLの濃度の滅菌重鎖及び軽鎖プラスミドDNAを使用する。
【0574】
製造元のトランスフェクションプロトコル(ThermoFisher Publication Number MAN0007814)に従って、Expi293(商標)細胞をトランスフェクトした。24ウェルディープウェルプレート(GE Healthcare)においてトランスフェクションを行った。簡潔に述べると、プラスミドDNAを、以下の比で0.1mLのOptiMEM(商標)培地(ThermoFisher Scientific)で希釈した:0.250μgの重鎖DNA:0.750μgの軽鎖DNA:0.5μgのpAdvantage。5μLのExpiFectamine(商標)293トランスフェクション試薬を希釈し、95μLのOptiMEM(商標)培地と穏やかに混合し、1分間インキュベートした。希釈したExpiFectamine(商標)293試薬を希釈したDNAに添加し、穏やかに混合し、ExpiFectamine(商標)293/プラスミドDNA複合体を室温で40分間インキュベートした。インキュベーション後、37℃、7%CO
2のシェーカーインキュベータにおいて一晩インキュベートした複合体に、1.8mLのExpi293(商標)細胞を添加した。
【0575】
トランスフェクション後1日目に、10μLのExpiFectamine(商標)293 Enhancer1及び100μLのExpifectamine 293(商標)Enhancer 2を添加し、プレートを更に5日間インキュベータに戻した。トランスフェクション後6日目に850×Gで15分間遠心分離することによって培養物を収集した後、精製した。
【0576】
上記で調製した1.7mLの清澄化した発現上清を、新たな2mL96ディープウェルプレートに移した。MabSelect SuRe(GE Healthcare)及びDPBS−/−スラリーの1:4混合物800μLを、96ウェルAcroprep Advance 1μmガラスフィルタープレート(Pall)の全てのウェルにピペッティングすることによって、精製プレートを調製した。200mbarの減圧をプレートに加えて過剰なPBSを除去し、その後、800μLの新鮮PBSで洗浄した。200mbarの減圧を加えて、洗浄バッファを除去した。次いで、PBSで洗浄したレジンに清澄化した上清を移し、穏やかに混合し、15分間インキュベートした。インキュベーション後、200mbarの減圧を加えて上清を除去した。洗浄と洗浄との間に200mbarの真空圧力を加えながら、MabSelect SuReをPBSで3回洗浄し、25mM酢酸ナトリウム、pH5(TEKNOVA;Hollister,CA)で1回洗浄して、過剰のバッファを除去した。0.1M酢酸ナトリウム、pH3.5を使用してレジンに結合しているmAbを溶出し、効果的に解離させるために10分間インキュベートした。フィルタープレートを96ディープウェルプレートの上に置き、1000gで2分間遠心分離することを介して溶出したmAbをボトムプレートに回収した。80μLの2.5Mトリス酢酸塩、pH7.2を添加してmAbを中和した。mAbを、96ウェルDispoDIALYZERプレート(Harvard Apparatus;Holliston,MA)においてPBSに一晩透析し、96ディープウェルプレートの上に配置された96ウェルAcroprep Advance 0.2μm Suporフィルタープレート(Pall;Port Washington,NY)に移し、デスクトップ遠心分離において1,500gで15分間遠心分離することを介してタンパク質溶液を濾過した。DropSense Instrument(Trinean)を使用して、濾液に対するA280測定により、タンパク質濃度を求めた。
【0577】
【表40-1】
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【0578】
【表40-2】
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【0579】
【表40-3】
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【0580】
【表40-4】
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【0581】
【表40-5】
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【0582】
【表41】
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【0583】
【表42】
[この文献は図面を表示できません]
【0584】
5−5 抗CD33 mAbの特性評価
免疫化を介して同定し、v領域クローニングし、続いて、発現及び精製したOMNIRat抗体を、CD33発現細胞への結合及び組換え抗原への結合について更に特性評価した。精製抗体を、ヒトCD33又はカニクイザルCD33(上記の通り生成)を発現している安定的にトランスフェクトされたHEK293F細胞への結合について、陰性対照としての親HEK293Fと共に評価した。非酵素的解離バッファ(Thermo Scientific)を使用して、細胞を組織培養フラスコから収集した。フラスコをPBSで2回すすぎ、解離バッファをフラスコに添加し、細胞が非接着性になるまでフラスコを37℃で10分間インキュベートした。細胞を300gで5分間遠心分離し、染色バッファ(Becton Dickinson;Franklin Lakes,NJ)に1.0×10
6細胞/mLで再懸濁させた。50,000細胞/ウェルの各細胞型を、丸底プレート(Becton Dickinson)における染色バッファ50μLにプレーティングした。2×濃度の試験mAb又はアイソタイプ対照50μLを3つの希釈濃度及びゼロ(120nM、12nM、及び1.2nM、並びに0nM)で添加し、得られた溶液を4℃で30分インキュベートした。各プレートの全てのウェルに100μLの染色バッファを添加し、プレートを300gで5分間回転させ、バッファを除去し、各プレートの全てのウェルに200μLの染色バッファを添加し、プレートを300gで5分間回転させ、バッファを除去した。50μLの2μg/mLヤギ抗ヒトFc AF647二次抗体(Jackson Immunoresearch;West Grove,PA)をプレートの全てのウェルに添加し、プレートを4℃で30分間インキュベートした。プレートの全てのウェルに100μLの染色バッファを添加し、プレートを300gで5分間回転させ、バッファを除去した。200μLのランニングバッファ(ランニングバッファは、染色バッファ、1mM EDTA、0.1%プルロニック酸である)をプレートの全てのウェルに添加し、プレートを300gで5分間回転させ、バッファを除去した。Sytox Green live/dead色素(ThermoFisher)を含有するランニングバッファ30μLを細胞の入った全てのウェルに添加し、プレートをiQue IntelliCytフローサイトメータで読み取った。細胞を前方対側方散乱でゲーティングして細胞片を除去し、次いで、個片、次いで、Sytox染色を除外した生細胞でゲーティングした。AF647チャネルにおける平均蛍光強度によって抗体結合を評価した。
【0585】
精製mAbの生物物理的結合特性の評価を開始するために、オフレートスクリーニングを実施した。76個のOMNIRat抗CD33mAbを、組換えヒトCD33 ECD−HSA(C33W2)及びカニクイザルCD33 ECD−HSA(C33W1)タンパク質(Janssen production)への結合について試験し、IBIS MX96 SPRiアレイプラットフォーム(Carterra;Newton,PA)によってオフレートを測定した。IBIS機器において10分間の会合時間で、CMD50mセンサチップ(Xantec、ロットCMD50m0415.a)を使用し、酢酸バッファpH4.5中100μg/mLのアミンカップリングを介して、ヤギ抗ヒトFc IgG(Jackson Immunoresearch、カタログ番号109−005−098)を直接固定化した。約9000Rusの平均GAH−Fc固定化レベルが達成された。センサチップをContinuous Flow Microspotter(CFM)ユニットに移して、10分間10μg/mLで各抗CD33mAbを捕捉した。再生なしの単一サイクルの反応速度論により、結合をIBIS SPRiで測定した。各抗原濃度系列(3倍希釈系列で3μM)を低濃度(0.46nM)から高濃度(3μM)まで逐次注入して、ランニングバッファとしてPBST(0.005%Tweenを含むPBS)を使用して、5分間の会合時間及び15分間の解離時間で、捕捉されたmAbに結合させた。生の結合データ(.trixファイルフォーマット)を参照し、SprintXソフトウェア(Wasatch、バージョン1.9.3.2)を使用して整列させた後、1:1結合反応速度分析(Wasatch、バージョン2.0.0.33)のためにScrubberソフトウェア(バージョン2.0)にエクスポート(.ibmxファイルフォーマット)して、k
off結果を抽出した。
【0586】
以下の表46は、ヒト及びカニクイザルCD33発現細胞株への結合、並びに組換え抗原に対する結合(抗原のうちの1つについて少なくとも>10e−3のオフレート)によって評価したときの上位32のクローンをまとめたものである。これらの32個のうち、4個を除いた全てが、ヒト又はカニクイザル発現細胞のいずれかへの認識可能な結合を示した。32個全てを、エピトープビニング及び全反応速度分析を介した更なる特性評価に進めた。
【0587】
【表43】
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【0588】
【表44】
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【0589】
次いで、mAbのパネルを、完全親和性分析及びエピトープビニングについて更に特性評価した。抗CD33mAbの組換えヒトCD33 ECD−HSA(C33W2)及びカニクイザルCD33 ECD−HSA(C33W1)への結合を、ProteOn SPR(Bio−Rad)によって測定した。0.005% Tween−20を含有するPBS中流量30μL/分で、GLC Sensor Chip(Bio−Rad、カタログ番号176−5011)に垂直に配向された6つのリガンドチャネル全てにおける酢酸バッファpH5.0中30μg/mLでのアミンカップリングを介して、ヤギ抗ヒトFc IgG(Jackson Immunoresearch、カタログ番号109−005−098)を直接固定化した。固定化密度は、平均で約5000応答単位(RU)であり、異なるチャネル間の変動は5%未満であった。垂直リガンド配向で0.25又は0.5μg/mL(160〜300RU)において抗ヒトFc IgG表面に異なるmAbを捕捉し、6番目のリガンドチャネルは、リガンドなし表面対照であった。5つの濃度の3倍希釈系列中0.3μM濃度のヒト及びカニクイザルCD33−HSAタンパク質をアナライトとし流して、捕捉されたmAbに水平配向で結合させた。また、捕捉されたmAbの解離及びベースラインでの安定性をモニタリングするために、6番目のチャネルにバッファサンプルを注入した。ヒト及びカニクイザルCD33−HSAの全ての濃度の解離相を、C33B782への結合については15分間、C33B912(hIgG4を有するC33B904と同一)への結合については60分間、流量100μL/分でモニタリングした後、0.85%リン酸の18秒間パルスを使用して再生して、抗原及び結合したmAbを除去した。以下から応答データを減じた後に二重参照することによって生データを処理した:1)Agと空のチップ表面との間で非特異的相互作用を補正するためのインタースポット;2)経時的な捕捉されたmAb表面の解離に起因するベースラインの揺れを補正するためのバッファチャネル。各mAbについて全抗原濃度において処理したデータを1:1の単純なラングミュア結合モデルにグローバルフィットさせて、反応速度(k
on、k
off)及び親和性(K
d)定数の推定値を抽出した。
【0590】
mAbのパネルが全て1つの個別のエピトープに結合するか、又は広いエピトープをカバーするかを判定するために、エピトープビニング実験を行った。CMD−200Mセンサプリズムチップを使用して、IBIS SPRi機器(Carterra)において、CD33mAbの競合的エピトープビニングを行った。別々のContinuous Flow Microspotter(CFM)を使用して、酢酸バッファ(pH4.5)中10μg/mLで、アミンカップリングを介してチップに各抗CD33抗体を直接固定化した。次いで、プリントされたセンサチップを、Classical又は「Sandwich」ビニングフォーマットを使用してビニング分析のためにIBIS機器に移した。50nMのヒトCD33 ECD−HSA(C33W2)を逐次注入し、続いて、133nMの溶液で競合アナライトとして抗CD33 mAbを1回注入して、抗原及び抗体の各逐次注入サイクル後に表面再生を伴って固定化された抗CD33mAに結合させることによって、ビニングを行った。
【0591】
再生前及び再生後の固定化されたmAbの活性をモニタリングするために、実験の開始時及び終了時に、競合mAbを全く含まないバッファ注入を行って、抗原のみの結合活性を測定した。バッファ(抗原のみ)結合に対する競合mAb結合の応答は、溶液中の抗体が固定化されたmAbへの抗原結合をブロック又はサンドイッチするかどうかの指標である。生のビニングデータ(.trixファイルフォーマット)を参照し、SprintXソフトウェア(Wasatch、バージョン1.9.3.2)を使用してゼロにした後、分析のためにビニングソフトウェアHtTools.exe(Wasatch、バージョン2.0.0.33)にエクスポート(.ibmxファイルフォーマット)した。20RU未満の抗原応答を有する抗体及び自己ブロックしなかった抗体を除去することにより、データを精選した。競合mAb応答を、抗原のみの結合応答に対して正規化した。正規化された応答が<0.25である抗体はブロッカーを意味し、正規化された応答が≧0.25である抗体は、非ブロッカー/サンドイッチャーを意味した。組み合わされたデンドログラムプロットにおいて高さ2.5におけるカットを使用して、異なるビンを予測した。
【0592】
以下の表は、32個の選択mAbの全反応速度分析及びエピトープビニングをまとめたものである。ヒト及びカニクイザルCD33の両方に対してナノモル濃度以下の親和性を有する抗CD33mAbは合計8個存在し、これらのmAbは3つの別個のエピトープビンに対応し、一方、より大きなパネルは、様々な親和性及び7個の別個のエピトープビンを有する。
【0593】
【表45】
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【0594】
【表46】
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【0595】
OmniMouseパネル(合計8個のmAb)を別々に生成し、細胞への結合について更に特性評価した。細胞結合を上記のように行い、以下の表にまとめた。試験した8個のmAbのうち、6個はCD33発現細胞に直接結合したが、2個はしなかった。
【0596】
【表47】
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【0597】
【表48】
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【0598】
細胞上でCD33に結合している6つのmAbを、上記の方法を使用して組換え抗原に対する全反応速度分析を介して生物物理学的に更に特性評価し、以下の表にまとめた。試験した6つのmAbのうち、1つは、ピコモル濃度の親和性でヒトCD33に(C33B912)、及び、カニクイザルCD33に対してはナノモル濃度以下で結合し、一方、1つは、ヒトCD33に対しては非常に強い親和性を有していたが、カニクイザルCD33(C33B911)に対してはわずかナノモル濃度の親和性しか有していなかった。更に2つのクローンは、ヒト及びカニクイザルCD33(C33B913及びC33B916)の両方に対してナノモル濃度以下であったが、いずれも親和性はC33B912の範囲ではなかった。
【0599】
【表49】
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【0600】
先のOMNIRatキャンペーンで既に同定されたいくつかの対照mAに加えて、OMNIMouse由来の6つの細胞結合mAbについてもエピトープビニング実験を実施した。ヒトCD33に対するそのナノモル濃度以下の親和性及び異なるエピトープビンの数に基づいて、対照mAbを選択した。ビニングソフトウェアHtToolsは、実験ごとにエピトープビン数を割り当てるので、既に定義されたエピトープビンに対するいくつかの対照を有することが、交差比較のために重要であった。2つのOMNIMouse由来のヒトCD33高親和性クローン(C33B911及びC33B912)は両方とも、上記のビン4(この実験におけるビン4)からのクローンにビニングしたが、ナノモル濃度以下のクローン(C33B916)は、C33B836(上記実験におけるビン1)と共にこの実験における2にビニングした。
【0601】
【表50】
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【0602】
CD33は、2つのIgGドメイン、膜遠位Vドメイン、及び膜近位C2ドメインで構成される。SNPrs12459419は、CD33プレmRNA転写物の選択的オルタナティブスプライシングを引き起こして、C2のみの形態を細胞上で発現させ得るので、このドメインを標的とすることにより、臨床的有益性を与えることができる。2つのドメインのうちのいずれにmAbが結合可能であったかを確認するために、結合抗原としてヒトCD33 ECD−HSA、ヒトCD33 V−HSA、及びヒトCD33 C2−HSAを使用して、4つの異なるエピトープビンをカバーする、最高結合能力を有する6つのmAbに対して上記プロトコルに従ってオフレートスクリーニングを行った。以下の表に示すように、ビン4に予め分類された2つのクローンは、両方ともhuCD33 C2ドメインに結合したが、huCD33 Vドメインには結合せず、一方、ビン2及び3のクローンは、Vドメインには結合したが、C2ドメインには結合しなかった。ビン5に分類された2つのクローンは、いずれのドメインにも結合しなかったため、その正確な結合位置は、2つのドメインにまたがっている可能性がある。3つの市販のmAbをこの実験に含めたところ(WM53(EMD Millipore;Darmstadt,Germany)、P67.7(Biolegend,San Diego,CA)、及びLSBioクローン906(LifeSpan Biosciences,Seattle,WA)))、全てVドメインへの結合は示したが、C2ドメインへの結合は示さなかった。表51のC2ドメイン結合データに関連して表42及び45のエピトープビンを見ると、ヒト完全長タンパク質に対して約25nMから約30pMの親和性の範囲でC2ドメインに潜在的に結合し得るmAbが合計15個存在する。
【0603】
【表51】
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【0604】
更にインビボ及びインビトロ試験を裏付けるために、スケールアップ及びfabアーム交換のために選択クローン(C33B836、C33B782、C33B778、C33B904、C33B806、C33B830、C33B937、C33B792、C33B760、及びC33B777)を選択して、抗CD3抗体を含む二重特異性分子を生成した。ExpiCHO−S(商標)細胞(ThermoFisher Scientific)を、1.25×10
5〜2.25×10
5生存細胞/mLでExpiCHO(商標)発現培地に播種し、37℃、7%CO
2のシェーカーインキュベータ(INFORS HT Multitron Pro)においてポリカーボネート製、使い捨て、滅菌、排気、バッフルなし三角振盪フラスコ内で培養した。125mL〜2Lの振盪フラスコにおけるルーチンな細胞増殖の場合、振盪直径19mmの振盪器については振盪速度を130rpmに設定した。細胞を継代培養し、この場合、生存率98〜99%で、密度が4×10
6〜6×10
6生存細胞/mLで対数増殖に達した。
【0605】
トランスフェクションの2日前に、必要とされる培養体積に対して1.5×10
6生存細胞/mLでExpiCHO−S(商標)細胞を播種した。トランスフェクションの日に、生存細胞密度及び生存率を求めた。細胞を、6×10
6生存細胞/mLの密度でトランスフェクトした。最適なトランスフェクションのために、TEバッファ(10mM Tris−HCl、1mM EDTA、pH8.0)中≧1mg/mL濃度の滅菌重鎖及び軽鎖プラスミドDNAを使用した。
【0606】
製造元のMax Titerトランスフェクションプロトコル(ThermoFisher Publication Number MAN0014337)に従って、ExpiCHO−S(商標)細胞をトランスフェクトした。以下に示す全ての量及び体積は、最終的なトランスフェクトされた培養体積1mLあたりであった。簡潔に述べると、プラスミドDNAを、以下の比で0.04mLの冷OptiPRO(商標)培地(ThermoFisher Scientific)で希釈した:0.125gの重鎖DNA:0.375gの軽鎖DNA:0.5gのpAdvantage。6.4μLのExpiFectamine(商標)CHOトランスフェクション試薬を希釈し、0.04mLの冷OptiPRO(商標)培地と穏やかに混合し、1分間インキュベートした。希釈したExpiFectamine(商標)CHO試薬を希釈したDNAに添加し、穏やかに混合し、ExpiFectamine(商標)CHO/プラスミドDNA複合体を室温で5分間インキュベートした。インキュベーション後、複合体をシェーカーフラスコ内のExpiCHO−S(商標)細胞に添加し、37℃、7%CO
2のシェーカーインキュベータ内で一晩インキュベートした。
【0607】
Max Titerプロトコルのために、トランスフェクション後1日目に、6μLのExpiFectamine(商標)CHO Enhancer及び160μLのExpiCHO(商標)Feedを添加し、フラスコを32℃、7%CO
2のシェーカーインキュベータに移した。トランスフェクション後5日目に、2回目の160μLのExpiCHO(商標)Feedをフラスコに添加し、振盪しながら32℃のインキュベータに戻した。トランスフェクション後12日目に培養物を収集し、5000rpmで15分間遠心分離し、0.2μm Acropak 1500フィルターカプセル(Pall)を通して清澄化した。
【0608】
MabSelect SuRe(GE Healthcare)を使用して、発現した抗体を清澄化した上清から精製した。MabSelect SuRe Protein Aカラムを、1×D−PBS、pH7.2で平衡化した後、個々の培養上清をロードした。未結合タンパク質を、1×D−PBS、pH7.2で広範囲にわたって洗浄することによって除去した。結合タンパク質を0.1Mの酢酸ナトリウム、pH3.5で溶出した。ピーク画分を2.5M Tris(pH7.2)で中和し、プールした。中和された画分プールを、アッセイ及び生物物理的特性評価のために1×dPBSに透析した、又は二重特異性アセンブリに利用した。
【0609】
各溶出プールのタンパク質濃度をOD280nmでの吸光度を測定することによって求め、アミノ酸配列に基づいて吸光度、吸光係数を用いて計算した。
【0610】
6 CD33×CD3二重特異性抗体の調製及び機能評価
6−1 精製された親mAbを使用したFabアーム交換
CD33×CD3二重特異性抗体の形成は、2つの親mAb、ターゲティングアームに特異的なもの(例えば、CD33)及びエフェクターアームに特異的なもの(例えばCD3)を必要とする。CD33mAbを高親和性(CD3B376:配列番号652のVH及び配列番号661のVL)又は低親和性CD3アーム(CD3B450:配列番号657のVH及び配列番号678のVL)アームで組換えた。これらの親mAb(CD33及びCD3アーム)は、ターゲティング親(CD33)が409R Genmab変異(IgG4のネイティブアミノ酸)を含有し、一方、殺傷親(CD3)はF405L変異及びR409Kを含有する、IgG4 PAAフォーマット(Labrijn et al,2013)である。単一特異性抗CD3抗体を、そのFc領域にFc置換S228P、F234A、L235A、F405L及びR409K(CD3アーム)(EUインデックスに従って付番)を有するIgG4として発現させた。単一特異性抗体を、上記のように発現させ、精製した。精製後、親CD33抗体を、75mM 2−MEA(2−メルカプトエチルアミン)中の還元条件下で所望の親CD3抗体と混合し、31℃で5時間又は室温で一晩インキュベートした。組換え反応は、モル濃度比に基づいており、設定量のCD33抗体(例えば、10mg又は約74.6ナノモル)をCD3抗体(例えば、約67.8ナノモル)と組み合わせ、CD33抗体をCD3抗体の6%過剰量で添加した。CD33抗体原液の濃度は、0.8〜6mg/mLで変化し、組換え反応の体積は、各対形成で変化した。その後、組換え反応物をPBSに対して一晩透析して、還元剤を除去した。組換え後に残存する未反応のCD3親抗体の量を最小化するために、過剰のCD33抗体(比)を用いてCD33×CD3二重特異性抗体反応を行った。
【0611】
組換え反応で使用した親mAb(すなわち、CD33、CD3、又はヌル)と共に、産生された最終的なCD33×CD3二重特異性抗体を表47に列挙する。
【0612】
選択されたCD33ヒットはまた、非殺傷アーム(ヌル)と対形成して、試験目的のための陰性対照が生じた。対照二重特異性抗体については、B2M1、IgG4 PAAフォーマットにおけるRSV抗体を生成し、精製し、CD3アームCD3B219又はCD3B376−F405L、R409Kのいずれかと組み合わせて、それぞれ、CD3B288(CD3×ヌル)及びCD3B510(CD3B376×ヌル)を生成した。CD33アームをB23B49と組み合わせて、表52のようにCD33×ヌルを生成した。
【0613】
【表52-1】
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【0614】
【表52-2】
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Pep:ペプチド;Nuc:ヌクレオチド;SEQ ID:配列番号
【0615】
6−2 AML一次サンプルにおけるAML芽球及びT細胞の活性化の、エクスビボにおけるCD33×CD3によって媒介される減少
CD33×CD3二重特異性抗体の細胞傷害能を更に評価するために、上位4個の抗体を使用して、AML患者全血を使用するエクスビボ細胞傷害アッセイを行った(
図62)。このアッセイは患者の血液中の自家T細胞の存在に依存するので、このアッセイでは、追加のT細胞を供給することなく48時間にわたってAML患者由来の希釈された全血に様々な二重特異性抗体(CD3アームCD3B219及びCD3B376のいずれかと対形成したCD33抗体)を添加した。48時間目に、サンプルをCD3 PerCPCy5.5、CD25 PE、CD33 FITC、及びCD38 APCで染色した(全ての抗体はBiolegend;San Diego,CAから購入した)。次いで、サンプルを1×Lyse RBC Lysis Buffer(eBioscience)で少なくとも3回洗浄した。次いで、サンプルを、LIVE/DEAD(登録商標)Fixable Near−IR Dead Cell Stainバッファ(Life Technologies)で染色した。まず、二重特異性抗体の存在下で、AML患者癌細胞の画分(CD3
−CD38
+細胞として定義)中の生CD33
+細胞を定量することによって、腫瘍細胞傷害の程度を求めた。以下の等式を使用して、PBS/未処理対照に対するパーセントとして細胞傷害を計算した:(PBS/未処理対照中のCD33
+%−処理サンプル中のCD33
+%)/(PBS/未処理対照中のCD33
+%)。CD3
+画分中のCD25
+事象のパーセントとしてT細胞活性化を計算した。
【0616】
図62に示すように、CD3アーム(CD3B376及びCD3B219)のいずれかと対形成した全てのCD33リード抗体は、48時間後、T細胞の活性化と相関する総細胞傷害の用量依存的な減少を促進した。ヌルアーム対照抗体(ヌル×CD3B219及びヌル×CD3B376)は、腫瘍細胞傷害もT細胞活性化も示さなかった。この結果も、CD33×CD3二重特異性抗体が自家状況において機能することを証明する。これらの結果は、4つの他のAMLドナーサンプルの代表的なものである(データは示さない)。表53は、CD33×CD3多重特異性抗体で生成されたEC
50値をまとめたものである。EC
50値から分かるように、C3アーム(C3CB88、C3CB189)のいずれかと対形成したC33B904、及びCD3アーム(C3CB7、C3CB97)のいずれかと対形成したC33B836が、最も強力かつ有効な抗体であった。したがって、更なる特性評価ではこれらの4つの抗体に焦点をあてた。
【0617】
【表53】
[この文献は図面を表示できません]
【0618】
6−3 CD33×CD3二重特異性抗体がCD33のC2ドメインに結合し、CD33一塩基多型(SNP)発現細胞株の細胞傷害を誘導することの証明。
CD33×CD3二重特異性抗体を用いたインビトロT細胞媒介細胞傷害アッセイ
最近の研究によって、AML集団の約50%に一塩基多型型(SNP)rs12459419が存在し、CD33のエクソン2がスキップされ、その結果、CD33のVドメインが欠失することが示された。この研究はまた、CD33のVドメインに結合するMylotargがSNPを発現する患者において有効性を有さなかったので、再発リスクが低下し、AML集団の約50%において生存率が改善されたことも示した(Lamba et al 2017,JCO,CD33 Splicing Polymorphism Determines Gemtuzumab Ozogamicin Response in De Novo Acute Myeloid Leukemia:Report From Randomized Phase III Children’s Oncology Group Trial AAML0531)。上述の研究におけるMylotargに関するデータに鑑みて、インビトロT細胞媒介性細胞傷害アッセイを行って、CD3アーム(CD3B219又はCD3B376)と対形成したCD33ヒット(V結合C33B836対C2結合C33B904)が、SNPrs12459419発現細胞株の殺傷を媒介するかどうかを評価した。簡潔に述べると、エフェクター細胞(Biological Specialityから購入した汎T細胞)を収集し、計数し、洗浄し、10%FBS(Invitrogen)を含むRPMI(Invitrogen)細胞培地中1×10
6細胞/mLになるように再懸濁させた。標的細胞(KG1、SH2、及びOCIAML3)をCFSE(Invitrogen)で標識し、10%FBSを含むRPMI中2×10
5細胞/mLになるように再懸濁させた。KG1、SH2及びOCIAML3は、それぞれ、CD33 SNPrs12459419変異の野生型、ヘテロ接合型、及びホモ接合型を表すように選択した。エフェクター細胞及びCFSE標識標的細胞を、滅菌96ウェル丸底プレートにおいてエフェクター:標的比(E:T)=5:1で混合した。10μLのFcブロック(ReoPro Fc断片)を、5μLの二重特異性抗体のアリコートと共に、様々な濃度を含有する各ウェルに添加した。培養物を、5%CO
2下、37℃で48時間インキュベートした。48時間後、LIVE/DEAD(登録商標)Fixable Near−IR Dead Cell Stainバッファ(Life technologies)をサンプルに添加し、培養物を、RTで暗所において20分間インキュベートし、洗浄し、100〜200μLのFACバッファに再懸濁させた。CANTOIIフローサイトメータ(BD Biosciences)を使用して、薬剤誘導細胞傷害を決定し、FlowJoソフトウェア又はDiveソフトウェア(BD Biosciences)により分析した。対象となる集団は、二重陽性CFSE+/live/dead+細胞である。
図63に示すように、ヌルアーム対照(ヌル×CD3B219及びヌル×CD3B376)とは異なり、V結合及びC2結合CD33×CD3多重特異性抗体は、48時間でSNPrs12459419変異細胞株KG1についてCD33+野生型のT細胞リダイレクトによる細胞傷害を誘導した。対照的に、VバインダーC33B836(C3CB97、C3CB7)とは異なり、C2結合C33B904と対になった二重特異性抗体(C3CB189、C3CB88)のみが、それぞれrs12459419 SNP変異についてヘテロ接合型又はホモ接合性であったSH2及びOCIAML3細胞株の細胞傷害を媒介した。この理由から、C33B904と対形成した二重特異性抗体(C3CB189、C3CB88)を、更なる分析及び特性評価に進めた。まとめると、これらのデータは、C33B904と対形成した二重特異性抗体などのCD33 C2結合二重特異性抗体が、V結合競合因子抗CD33抗体よりも広範なAML患者群において有効性を示す能力を有することを示唆している。
【0619】
6−4 エクスビボでCD33×CD3は、エクスビボ全血MOLM−13細胞傷害アッセイにおいてMOLM−13及び単球におけるスパイクの低減を媒介した。
MOLM−13細胞及び正常ヒト単球におけるスパイクの排除におけるCD33×CD3二重特異性抗体の細胞傷害能を評価するために、外因的に添加されたCD33
+AML細胞株MOLM−13と共に正常健常ヒト全血を使用するエクスビボ細胞傷害アッセイを利用した。このアッセイはドナーの血液中の自家T細胞の存在に依存するので、上記実験と同様に、追加のT細胞を供給することなく48時間にわたって6人の異なる正常ヒトドナー由来の希釈された全血に様々な二重特異性抗体(CD3アームCD3B219及びCD3B376のいずれかと対形成したCD33抗体)を添加した。希釈前に、各ドナーの血液中のT細胞の濃度を調べた。次いで、AML患者サンプルにおけるエフェクター:標的比を再現するためにエフェクター:標的比(E:T)が1:5になるように、血液をCFSE(Invitrogen)標識MOLM−13細胞で希釈した。48時間目に、サンプルをCD3 PerCPCy5.5、CD25 PE、CD33 FITC、及びCD14 Pacific Blueで染色した(全ての抗体はBiolegendから購入した)。次いで、サンプルを1×Lyse RBC Lysis Buffer(eBioscience)で少なくとも3回洗浄した。次いで、サンプルを、LIVE/DEAD(登録商標)Fixable Near−IR Dead Cell Stainバッファ(Life Technologies)で染色した。まず、二重特異性抗体の存在下で、CD14
+単球の画分中の生CD33
+細胞を定量することによって、腫瘍細胞傷害の程度を求めた。死CFSE
+細胞のパーセントを調べることにより、MOLM−13細胞の細胞傷害を判定した。以下の等式を使用して、PBS/未処理対照に対するパーセントとして単球の細胞傷害を計算した:(PBS/未処理対照中のCD33
+CD14
+%−処理サンプル中のCD33
+CD14
+%)/(PBS/未処理対照中のCD33
+CD14
+%)。
図64のデータは、両方のCD33×CD3二重特異性抗体(CD3アーム、CD3B376及びCD3B219のいずれかと対になった同じCD33リードC33B904)が、48時間でMOLM−13細胞及びCD33
+単球の細胞傷害を特異的に誘導することを示す。ヌルアーム対照を、陰性二重特異性抗体対照として使用した。ヌルアーム対照は、MOLM−13及びCD33
+単球の細胞傷害活性をほとんど乃至全く示さなかった。これらのデータは、6人の異なる正常ドナーの平均値を示す。MOLM−13及びCD14
+単球の細胞傷害についての平均EC
50値を表54に示す。
【0620】
【表54】
[この文献は図面を表示できません]
【0621】
6−5 カニクイザルに対するCD33×CD3二重特異性抗体の種交差反応性の証明
エクスビボにおいて、CD33×CD3は、カニクイザル全血を用いたエクスビボ細胞傷害アッセイにおいて単球の減少を媒介した
機能的交差反応性を証明し、正常カニクイザル単球の排除におけるCD33×CD3二重特異性抗体の細胞傷害能を評価するために、健常カニクイザル全血を使用したエクスビボ細胞傷害アッセイを利用した。このアッセイはドナーの血液中の自家T細胞の存在に依存するので、上記実験と同様に、追加のT細胞を供給することなく48時間にわたって6頭の異なる正常カニクイザルドナー由来の希釈された全血に様々な二重特異性抗体(CD3アームCD3B219及びCD3B376のいずれかと対形成したCD33抗体)を添加した。48時間目に、サンプルをCD3 PerCPCy5.5、CD25 PE、CD33 FITC、及びCD14 Pacific Blueで染色した(全ての抗体は、Miltenyi;Bergisch Gladbach,Germanyから購入したCD33抗体を除いてBiolegendから購入した)。次いで、1×Lyse RBC Lysis Buffer(eBioscience)でサンプルを少なくとも3回洗浄した後、LIVE/DEAD(登録商標)Fixable Near−IR Dead Cell Stainバッファ(Life Technologies)で染色した。まず、二重特異性抗体の存在下で、CD14
+単球の画分中の生CD33
+細胞を定量することによって、単球細胞傷害の程度を求めた。以下の等式を使用して、PBS/未処理対照に対するパーセントとして細胞傷害を計算した:(PBS/未処理対照中のCD33
+CD14
+%−処理サンプル中のCD33
+CD14
+%)/(PBS/未処理対照中のCD33
+CD14
+%)。CD3
+画分中のCD25
+事象のパーセントとしてT細胞活性化を計算した。
図65のデータは、両方のCD33×CD3二重特異性抗体(CD3アーム、CD3B376及びCD3B219のいずれかと対になった同じCD33リードC33B904)が、48時間でCD33
+単球の細胞傷害及びT細胞活性化を特異的に誘導したことを示す。ヌルアーム対照を、陰性二重特異性抗体対照として使用したところ、ほとんど乃至全く細胞傷害もT細胞活性も示さなかった。表55は、6頭の異なるカニクイザルドナーの平均値を示す。
【0622】
【表55】
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【0623】
6−6 T細胞ヒト化NSGマウスにおけるMOLM−13ヒトAML異種移植片におけるC3CB189及びC3CB88の有効性
2000万個のT細胞でヒト化された雌NOD.Cg−Prkdc
scid Il2rg
tm1Wjl/SzJ(NSG)マウスにおける、樹立されたルシフェラーゼでトランスフェクトされた播種性MOLM−13ヒト急性骨髄性白血病(AML)異種移植片において、C3CB189及びC3CB88の有効性を評価した。静脈内腫瘍移植後5日目にライブバイオルミネッセンスイメージング(BLI)によって、動物をn=10/群に無作為化した。0.005、0.05、及び0.5mg/kgのC3CB189及びC3CB88、又は0.5mg/kgのヌル×CD3抗体対照を、6週間にわたって3〜4日毎に腹腔内投与した。
【0624】
腫瘍移植後13日目に、1群あたり少なくとも8頭の動物が残存していた場合、バイオルミネッセンスによって決定したときの腫瘍増殖阻害(%TGI)を計算した。ヌル×CD3対照と比較して、全ての濃度のC3CB189(
図66)及びC3CB88(
図68)で統計的に有意な腫瘍増殖阻害が観察された。ヌル×CD3処理対照と比較して、0.005、0.05、及び0.5mg/kgのC3CB189は、それぞれ76%、100%、及び82%の腫瘍増殖阻害を惹起し、0.005、0.05、及び0.5mg/kgのC3CB88は、それぞれ100%、100%、及び91%の腫瘍増殖阻害を惹起した。
【0625】
C3CB189及びC3CB88による処理の結果、腫瘍量が低減し、ヌル×CD3対照群の16日中央生存期間よりも大きく寿命が延長(ILS)された。全用量にわたって、C3CB189で処理した動物は、19〜27.5日間の中央生存期間を有しており(
図67)、C3CB88で処理した動物は、26〜28.5日間の中央生存期間を有していた(
図69)。対照群と比較して、0.005、0.05、及び0.5mg/kgのC3CB189は、それぞれ19%、72%、及び50%寿命を延長させ、C3CB88は、それぞれ63%、78%及び72%の寿命延長をもたらした。
【0626】
7 TMEFF2抗体
7−1 抗原の生成
UniProtアクセッション番号Q9UIK5配列に基づいて、ヒト細胞外ドメイン(ECD)TMEFF2を産生した。C末端に6×Hisタグ(配列番号596)及びAviタグ配列を有するECDコンストラクトを設計した(コンストラクトTMEW1;配列番号578)。FS2及びEGFドメインを含有するコンストラクト(アミノ酸151〜320は、6×Hisタグ(配列番号596)及びaviタグ配列とのヒト血清アルブミン(HSA)融合体として設計した(コンストラクトTMEW7;配列番号579)。6×Hisタグ(配列番号596)を有する(コンストラクトTMEW19;配列番号580)又はHisタグを有するラットIgG1 Fcに融合している(コンストラクトTMEW20;配列番号581)TMEFF2膜近位ドメイン(残基230〜320)を含有するコンストラクトを設計した。TMEFF2の残基230〜320は、TMEFF2の残基261〜301にまたがるEGFドメインを含有する。製造元のプロトコルに従ってExpifectamineを使用して、HEK293由来細胞、Expi293(Gibco/Thermo Fisher Scientific)にヒトTMEFF2 ECD発現コンストラクトを一過的にトランスフェクトした。軌道振盪器において8%CO
2で37℃において5日間細胞をインキュベートした後、収集した。発現した細胞を遠心分離により除去し、Ni Sepharose 6 Fast Flow resin(GE Healthcare)を使用する固定化金属アフィニティクロマトグラフィー、続いて、ダルッベッコリン酸生理食塩水バッファpH7.2(1×DPBS)中におけるSuperdex 200分取サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(GE Healthcare)を使用して、hisタグを有する可溶性TMEFF2タンパク質を培地から精製した。生成された抗原のアミノ酸列を表58に示す。
【0627】
【表56】
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【0628】
7−2 抗TMEFF2抗体の生成
ヒト免疫グロブリン遺伝子座を発現しているトランスジェニックラット(OmniRat(登録商標))を用いた抗体生成。OmniRat(登録商標)は、キメラヒト/ラットIgH遺伝子座(ラットC
H遺伝子座に連結された天然立体構造の22のヒトV
H、全てのヒトD及びJ
Hセグメントを含む)を完全にヒトのIgL遺伝子座(Jκ−Cκに連結された12のVκ及びJλ−Cλに連結された16のVλ)と共に含有する(例えば、Osborn,et al.(2013)J Immunol 190(4):1481−1490を参照)。したがって、このラットは、ラット免疫グロブリンの発現減少を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖及び軽鎖の導入遺伝子がクラススイッチ及び体細胞変異を受けて、完全にヒトの可変領域を有する高親和性キメラヒト/ラットIgGモノクローナル抗体が生成される。OmniRat(登録商標)の調製及び使用、並びにこのようなラットが有しているゲノム改変は、国際公開第14/093908号に記載されている。
【0629】
OmniRatを、ヒトTMEFF2コンストラクトFS2−EGF−Tev−HSA(C34S)−His−Aviタグ(TMEW7、配列番号579)で免疫化し、コンストラクトspTMEFF2(230−320)G3S−RAIgG1Fc(TMEW20、配列番号581)でブーストした。89日間の免疫化レジメン後、ラットからリンパ節を摘出し、ハイブリドーマを生成するために使用し、ELISA及び/又はSPARCL(Spatial Proximity Analyte Reagent Capture Luminescence)によるヒトTMEFF2−FL−ECD−HIS−Aviタグ(TMEW1)タンパク質への結合についてハイブリドーマ上清をスクリーニングした。TMEFF ECD、FS2−EGF、又はEGFドメインのみのTMEFF2に対する結合の二次ELISA及びSPARCLスクリーニングのために、いくつかの上清を選択した。スクリーニング結果に基づいて、いくつかのハイブリドーマクローンを配列決定し、発現させ、機能性について特性評価した。
【0630】
ファージディスプレイライブラリからの抗体生成
Shi et al.,J Mol Biol 397:385−96,2010及び国際公開第2009/085462号)に記載の通り、2セットのデノボpIXファージディスプレイライブラリから標準的な方法を使用してTMEFF2結合Fabを選択した。簡潔に述べると、ヒトスカフォールドを多様化させることによってV3.0及びV5.0と呼ばれる2セットのライブラリを生成し、ここでは、生殖系列VH遺伝子IGHV1−69
*01、IGHV3−23
*01、及びIGHV5−51
*01を、H3ループを介してヒトIGHJ−4ミニ遺伝子で組換え(V5.0ではIGHJ−6ミニ遺伝子も用いた)、並びに、ヒト生殖系列VLカッパ遺伝子O12(IGKV1−39
*01)、L6(IGKV3−11
*01)、A27(IGKV3−20
*01)、及びB3(IGKV4−1
*01)をIGKJ−1ミニ遺伝子で組換えて、完全なVH及びVLドメインを構築した。多様化のために、タンパク質及びペプチド抗原と高頻度で接触するH1、H2、L1、L2及びL3ループ周辺の重鎖及び軽鎖可変領域内の位置を選択した。選択した位置における配列多様性は、それぞれのIGHV又はIGLV遺伝子のIGHV又はIGLV生殖系列遺伝子ファミリーにおいて各々の位置に存在する残基に制限した。H3ループにおける多様性は、V3.0ライブラリについては7〜14アミノ酸長、V5.0ライブラリについては6〜19アミノ酸長の短鎖乃至中鎖の合成ループを使用して作製した。H3におけるアミノ酸分布は、ヒト抗体において観察されるアミノ酸の変動を再現するよう設計された。ライブラリを作製するために利用したスカフォールドは、そのヒトVH及びVL生殖系列遺伝子の由来に従って命名した。V3.0及びV5.0のセットの両方について、3つの重鎖ライブラリを各々、4個の生殖系列軽鎖又は生殖系列軽鎖ライブラリと組み合わせて、選択実験に使用されるライブラリの各セットについて12の固有のVH:VLの組み合わせを作製した。
【0631】
V領域クローニング
ファージのハイブリドーマ細胞溶解物からの全RNAを、製造元のプロトコルに従ってRNeasy 96キット(Qiagen)を用いて精製した。得られたRNAを、Drop Senseを使用して定量し、−80℃で保存したか又はRT−PCR(Invitrogen)によりInvitrogen SuperScript III First−Strand Synthesis Systemを用いてcDNA合成に使用した。それぞれ重鎖、κ鎖、及びλ鎖の定常領域にアニーリングする遺伝子特異的プライマーを使用して、第1の鎖のcDNA合成を実施した。RT−PCR反応混合物は、最高3μgの精製RNA、遺伝子特異的プライマー、dNTPミックス、反応バッファ、25mM MgCl
2、DTT、RNaseOUT(商標)(40U/μL、Invitrogen)、及びSuperScript(商標)III RT(200U/L、Invitrogenカタログ番号18080−051)で構成されており、50℃で50分間及び85℃で5分間インキュベートした。得られた一本鎖cDNAを−20℃で保存した、又はPCR増幅に直接使用した。PLATINUM Pfxポリメラーゼ(Invitrogen)を使用してPCR反応を行った。最適化されたPCR条件を使用して、それぞれ、リーダー配列並びに重鎖、κ及びλ鎖の定常領域に、フォワード及びリバースプライマーをアニーリングさせることによって、v領域断片を増幅させた。得られたPCR断片を配列決定し、回収したv−領域のアミノ酸配列のコドンを最適化し、S228P、F234A、及びL235A変異を有するIgG4定常領域を有するpUnderベースの発現ベクター(IgG4PAAアイソタイプ)にクローニングした。
【0632】
Expi293小規模トランスフェクション及び精製
免疫化キャンペーン又はファージディスプレイから同定された選択抗体をクローニングし、IgG1PAAとして発現させ、小さい2mLスケールで精製した。Expi293(商標)細胞(ThermoFisher Scientific)を、Expi293(商標)発現培地に1.25×10
5〜2.25×10
5生存細胞/mLの密度で播種し、37℃、7%CO
2で125mL〜2L振盪フラスコ内において培養した。細胞を継代培養し、この場合、生存率98〜99%で、密度が3×10
6〜5×10
6生存細胞/mLで対数増殖に達した。
【0633】
トランスフェクションの日に、生存細胞密度及び生存率を求めた。製造元のトランスフェクションプロトコル(ThermoFisher Publication Number MAN0007814)に従って、3×106生存細胞/mLの密度で細胞をトランスフェクトした。トランスフェクション後6日目に850×Gで15分間遠心分離することによって培養物を収集した後、精製した。mAb Select Sure resin(GE Healthcare)を使用して清澄化した上清から抗体を精製し、PBSに透析した。DropSense Instrument(Trinean)を使用して、濾液に対するA280測定により、タンパク質濃度を求めた。
【0634】
7−3 抗TMEFF2抗体の特性評価
抗TMEFF2抗体は高親和性でTMEFF2に結合する。
TMEFF2 ECD(TMEW1:TMEFF2−FL ECD−His−Aviタグ)及び/又は膜近位領域(TMEW19:spTMEFF2(230−320)G3S−H6)への選択IgG4PAA抗TMEFF2抗体の結合を、Proteon(TMEB674、TMEB675、TMEB 565及びTMEB570)又はBiacore SPR(TMEB762及びTMEB757)を用いて評価した。選択された抗体の結合の反応速度パラメータを表59に示す。抗TMEFF2抗体は、ピコモル濃度の親和性でTMEFF2 ECD及びTMEFF2膜近位領域の両方に結合することが見出された。
【0635】
【表57】
[この文献は図面を表示できません]
【0636】
ProteOn SPR
抗TMEFF2 mAbのヒトTMEFF2のECD及び膜近位領域への結合を、ProteOn SPR(Bio−Rad)によって測定した。精製されたmAb(PBST中1μg/mLの最終濃度に希釈した)をアッセイにおいてリガンドとして使用し、Fc捕捉を介してヤギ抗ヒト(GAH)IgG Fcに固定化した。GAH IgG Fcのアミンカップリングのために、EDC(40mM)及びNHS(10mM)の1:1混合物を注入直前に混合してチップ表面を活性化し、垂直配向で注入した。次いで、酢酸バッファ(pH5.0)中GAH−Fc(30μg/mL)抗体を、垂直配向で30μL/分で300秒間表面上に流した。続いて、1Mエタノールアミン(pH8.5)を同じ配向で注入することによって、表面における残りの反応性カルボキシル基を全て不活化させた。固定化のために抗体を1μg/mLの濃度で使用した。抗体を水平方向に表面上に流した。5つの濃度の3倍希釈系列(最高濃度は100〜600nMの範囲)のヒトTMEFF2 ECD又は膜近位領域を、捕捉された分子に結合させるために垂直配向でアナライトとして流した。また、ベースラインシグナルにおける任意のドリフトをモニタリングするために、垂直方向で6番目のチャネルにバッファサンプルを注入した。全ての濃度についての会合及び解離相を、100μL/分の流速でそれぞれ3分間及び30(又は15)分間モニタリングした。結合抗原を除去するために18秒パルスの0.8%リン酸を用いて、次の相互作用サイクルのために結合表面を再生した。応答データから2セットの参照データを減じることによって生データを処理した:1)抗原と空のチップ表面との間の非特異的相互作用を補正するためのインタースポットシグナル;2)非特異的ベースラインドリフトを補正するための空のチャネルシグナル(チップ上にPBSTのみを流した場合)。
【0637】
Biacore 8K SPR
抗TMEFF2 mAbのヒトTMEFF2 ECDへの結合を、Biacore 8K SPRによって測定した。アッセイのフォーマットは、高密度抗ヒトFc表面を使用してmAを捕捉した後、単一サイクルの反応速度論による方法を用いてヒトTMEFF2濃度滴定を注入するためのものであった。HBSP(GE)バッファ中流量30μL/分でCM5 Sensor Chip(GE)において、フローセル1及び2に10mM酢酸バッファ、pH4.5中30g/mLでのアミンカップリングを介してヤギ抗ヒトFc IgG(Jackson Immunoresearch、カタログ番号109−005−098)を直接固定化した。mAbを、フローセル2において0.5μg/mL(約200〜300RU)で抗ヒトFc IgG表面上に捕捉した。次いで、ランニングバッファをHBSP+100μg/mL BSAに変更した。3倍希釈系列中の30nM濃度のTMEFF2 ECDを、単一サイクルの反応速度論による方法を用いて低濃度から高濃度まで注入した。最後、すなわち最高濃度の注入の30分後にオフレートをモニタリングし、次いで、0.8%リン酸(Bio−Rad)を用いて表面を再生した。同じmAbを捕捉し、同じサンプルランの条件を使用して、バッファブランクのランも完了した。応答データから2セットの参照データを減じることによって生データを処理した:1)サンプルフローセル2から減じた参照フローセル1、及び2)実験ランから減じたバッファブランクのラン。各mAbについて全濃度において処理したデータを1:1の単純なラングミュア結合モデルにグローバルフィットさせて、反応速度定数(kon、koff)及び親和性(KD)定数の推定値を抽出した。
【0638】
抗TMEFF2抗体の熱安定性
TMEB675は、DSC(示差走査熱量測定)により通常よりも低い熱安定性プロファイルを示し、アンフォールディング開始Tm=52℃であり、第1の熱転移(Tm1)=60.4℃であった。TMEB675の配列のより厳密な検査(実施例4を参照)は、重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域内の体細胞超変異(SHM)の存在を示した。いくつかの再遺伝子操作された変異体をサブクローニングし、発現させ、精製し、DSCによりプロファイリングした。得られたmAb TMEB762及びTMEFB757は、望ましい熱安定性プロファイルを示した(それぞれTm1=69.4℃及びTm1=69.7℃)。TMEB675と比較して、TMEB762は、重鎖において以下のアミノ酸改変:R14P、P20L、H81Qを有し、一方、TMEFB757は、重鎖において以下のアミノ酸改変:R14P及びP20Lを有していた。TMEB675と比較して、TMEB762は、軽鎖において以下のアミノ酸改変:A1D及びA91Pを有し、一方、TMEFB757は、軽鎖にA91Pを有していた。残基の付番はKabatに従う。TMEB675、TMEB762のTMEFF2 ECDへの結合の反応速度パラメータを表59に示す。
【0639】
7−4 抗TMEFF2抗体の構造特定
標準的な技術を用いて、抗体のcDNA配列及びアミノ酸翻訳物を得た。ポリペプチド配列の決定後、可変領域又は完全長抗体をコードしているいくつかの抗体cDNAを、発現をスケールアップするための標準的な方法を用いてコドンを最適化した。
【0640】
表60は、選択抗TMEFF2抗体のHCDR1及びHCDR2アミノ酸配列を示す。
【0641】
表61は、選択抗TMEFF2抗体のHCDR3のアミノ酸配列を示す。
【0642】
表62は、選択抗TMEFF2抗体のLCDR1及びLCDR2アミノ酸配列を示す。
【0643】
表63は、選択抗TMEFF2のLCDR3のアミノ酸配列を示す。
【0644】
表64は、選択抗TMEFF2のVH及びVLアミノ酸配列を示す。
【0645】
表65は、選択抗TMEFF2抗体の重鎖及び軽鎖の配列番号を示す。
【0646】
表66は、選択抗TMEFF2の重鎖アミノ酸配列を示す。
【0647】
表67は、選択抗TMEFF2の軽鎖アミノ酸配列を示す。
【0648】
表68は、様々な抗TMEFF2抗体鎖をコードしているポリヌクレオチドの配列番号を示す。
【0649】
【表58】
[この文献は図面を表示できません]
【0650】
【表59】
[この文献は図面を表示できません]
【0651】
【表60】
[この文献は図面を表示できません]
【0652】
【表61】
[この文献は図面を表示できません]
【0653】
【表62】
[この文献は図面を表示できません]
【0654】
【表63】
[この文献は図面を表示できません]
【0655】
【表64】
[この文献は図面を表示できません]
【0656】
【表65】
[この文献は図面を表示できません]
【0657】
【表66】
[この文献は図面を表示できません]
【0658】
配列番号39(TMEB675 VH cDNA)
Gaggtgcagctgctggaaagcggcggaggcctggtgcagagaggaggaagcctgagacccagctgtgccgccagcggcttcaccttcagcagctacagcatgagctgggtcaggcaggcccctggcaaaggactggagtgggtgagcgtgattagcggcagcggcggcttcaccgattacgccgacagcgtgaagggcaggttcaccatcagcagggacaatagcaagaacaccctgtacctgcacatgaacagcctgagggccgaggacaccgccgtgtactactgcgccaggatgcccctgaacagccctcacgactactggggccagggaaccctggtgaccgtgtccagc
【0659】
配列番号40(TMEB570,TMEB565 VH cDNA)
Caggtgcagctggtgcagagcggcgcggaagtgaaaaaaccgggcagcagcgtgaaagtgagctgcaaagcgagcggcggcaccttcagctcctattacattagctgggtgcgccaggcgccgggccagggcctggaatggatgggtggcattatcccaatcagtgggcgtgctaattatgcgcagaaatttcagggccgcgtgaccattaccgctgatgaaagcaccagcaccgcgtatatggaactgagcagcctgcgcagcgaagataccgcggtgtattattgcgcgcgcgacggctacagtagtggacgtagcacaacatacgcatttgactattggggccagggcaccctggtgaccgtgtcgagt
【0660】
配列番号41(TMEB674 VH cDNA)
Gaagtgcagctgctggagagcggaggaggactggtgcagcctcctggcggaagcctgagactgagctgcgccgctagcggcttcaccttcagcagctacagcatgagctgggtgagacaggctcctggcaagggcctggagtgggtgagcgtgatcagcggcggaggcagctttaccagctacgccgacagcgtgaagggcaggttcaccatcagcagggacaacagcaacaacaccctgtacctgcagatgagcagcctgagggccgaggacaccgccttctactactgcgccaggatgcccctgaacagcccccatgactgctggggacagggcaccctggtgaccgtgagcagc
【0661】
配列番号42(TMEB675 VL cDNA)
Gccatccagatgacccagagccctagcagcctgagcgctagcgtgggcgacagggtgaccatcacctgcagggccagccagggcatcagaaacgacctgggctggtaccagcagaagcccggcaaggcccccaagctgctgatctacgccgccagcagcctgcagagcggagtgcctagcaggttcagcggaagcggcagcggcaccgacttcaccctgaccatcagcagcctgcagcccgaggacttcgccacctactactgcctgcaggactacaactacgccctgacattcggcggcggcaccaaggtggagatcaag
【0662】
配列番号43(TMEB570 VL cDNA)
Gaaattgtgctgacccagagcccgggcaccctgagcctgagcccgggcgaacgcgcgaccctgagctgccgcgcgagccagagcgtttccacatactacctggcgtggtatcagcagaaaccgggccaggcgccgcgcctgctgatttacggtgcctcctatcgcgcgaccggcattccggatcgctttagcggcagcggttccggcaccgattttaccctgaccattagccgcctggaaccggaagattttgcggtgtattattgccagcagtacggtcacagcccgattacttttggccagggcaccaaagtggaaatcaaa
【0663】
配列番号44(TMEB674 VL cDNA)
Gccatccagatgacccagagccctagcagcctgagcgctagcgtgggcgacagggtgaccatcacctgcagggccagccagggcatcaggaacgacctgggctggtaccagcagaagcccggcaaggcccccaagctgctgatctacgccgccagcagcctgcagagcggagtgcctagcaggttcagcggcagcggaagcggcaccgacttcaccctgaccatctccagcctgcagcccgaggacttcgccacctactactgcctgcaggactacaactacagcctgaccttcggcggcggcaccaaggtggagatcagg
【0664】
配列番号45(TMEB565 VL cDNA)
Gaaattgtgctgacccagagcccgggcaccctgagcctgagcccgggcgaacgcgcgaccctgagctgccgcgcgagccagagcgttgccacctattatcttgcgtggtatcagcagaaaccgggccaggcgccgcgcctgctgatttacggtgcatcctcccgtgcgaccggcattccggatcgctttagcggcagcggttccggcaccgattttaccctgaccattagccgcctggaaccggaagattttgcggtgtattattgccagcagtacggctataacccaattacctttggccagggcaccaaagtggaaatcaaa
【0665】
配列番号46(TMEB675 HC cDNA)
gaggtgcagctgctggaaagcggcggaggcctggtgcagagaggaggaagcctgagacccagctgtgccgccagcggcttcaccttcagcagctacagcatgagctgggtcaggcaggcccctggcaaaggactggagtgggtgagcgtgattagcggcagcggcggcttcaccgattacgccgacagcgtgaagggcaggttcaccatcagcagggacaatagcaagaacaccctgtacctgcacatgaacagcctgagggccgaggacaccgccgtgtactactgcgccaggatgcccctgaacagccctcacgactactggggccagggaaccctggtgaccgtgtccagcgcttccaccaagggcccatccgtcttccccctggcgccctgctccaggagcacctccgagagcacagccgccctgggctgcctggtcaaggactacttccccgaaccggtgacggtgtcgtggaactcaggcgccctgaccagcggcgtgcacaccttcccggctgtcctacagtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcagcttgggcacgaaaacctacacctgcaacgtagatcacaagcccagcaacaccaaggtggacaagagagttgagtccaaatatggtcccccatgcccaccatgcccagcacctgaggccgccgggggaccatcagtcttcctgttccccccaaaacccaaggacactctcatgatctcccggacccctgaggtcacgtgcgtggtggtggacgtgagccaggaagaccccgaggtccagttcaactggtacgtggatggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccgcgggaggagcagttcaacagcacgtaccgtgtggtcagcgtcctcaccgtcctgcaccaggactggctgaacggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaaggcctcccgtcctccatcgagaaaaccatctccaaagccaaagggcagccccgagagccacaggtgtacaccctgcccccatcccaggaggagatgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctaccccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacgcctcccgtgctggactccgacggctccttcttcctctacagcaggctaaccgtggacaagagcaggtggcaggaggggaatgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacacagaagagcctctccctgtctctgggtaaa
【0666】
配列番号47(TMEB570,TMEB565 HC cDNA)
caggtgcagctggtgcagagcggcgcggaagtgaaaaaaccgggcagcagcgtgaaagtgagctgcaaagcgagcggcggcaccttcagctcctattacattagctgggtgcgccaggcgccgggccagggcctggaatggatgggtggcattatcccaatcagtgggcgtgctaattatgcgcagaaatttcagggccgcgtgaccattaccgctgatgaaagcaccagcaccgcgtatatggaactgagcagcctgcgcagcgaagataccgcggtgtattattgcgcgcgcgacggctacagtagtggacgtagcacaacatacgcatttgactattggggccagggcaccctggtgaccgtgtcgagtgcttccaccaagggcccatccgtcttccccctggcgccctgctccaggagcacctccgagagcacagccgccctgggctgcctggtcaaggactacttccccgaaccggtgacggtgtcgtggaactcaggcgccctgaccagcggcgtgcacaccttcccggctgtcctacagtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcagcttgggcacgaaaacctacacctgcaacgtagatcacaagcccagcaacaccaaggtggacaagagagttgagtccaaatatggtcccccatgcccaccatgcccagcacctgaggccgccgggggaccatcagtcttcctgttccccccaaaacccaaggacactctcatgatctcccggacccctgaggtcacgtgcgtggtggtggacgtgagccaggaagaccccgaggtccagttcaactggtacgtggatggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccgcgggaggagcagttcaacagcacgtaccgtgtggtcagcgtcctcaccgtcctgcaccaggactggctgaacggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaaggcctcccgtcctccatcgagaaaaccatctccaaagccaaagggcagccccgagagccacaggtgtacaccctgcccccatcccaggaggagatgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctaccccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacgcctcccgtgctggactccgacggctccttcttcctctacagcaggctaaccgtggacaagagcaggtggcaggaggggaatgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacacagaagagcctctccctgtctctgggtaaa
【0667】
配列番号48(TMEB674 HC cDNA)
gaagtgcagctgctggagagcggaggaggactggtgcagcctcctggcggaagcctgagactgagctgcgccgctagcggcttcaccttcagcagctacagcatgagctgggtgagacaggctcctggcaagggcctggagtgggtgagcgtgatcagcggcggaggcagctttaccagctacgccgacagcgtgaagggcaggttcaccatcagcagggacaacagcaacaacaccctgtacctgcagatgagcagcctgagggccgaggacaccgccttctactactgcgccaggatgcccctgaacagcccccatgactgctggggacagggcaccctggtgaccgtgagcagcgcttccaccaagggcccatccgtcttccccctggcgccctgctccaggagcacctccgagagcacagccgccctgggctgcctggtcaaggactacttccccgaaccggtgacggtgtcgtggaactcaggcgccctgaccagcggcgtgcacaccttcccggctgtcctacagtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcagcttgggcacgaaaacctacacctgcaacgtagatcacaagcccagcaacaccaaggtggacaagagagttgagtccaaatatggtcccccatgcccaccatgcccagcacctgaggccgccgggggaccatcagtcttcctgttccccccaaaacccaaggacactctcatgatctcccggacccctgaggtcacgtgcgtggtggtggacgtgagccaggaagaccccgaggtccagttcaactggtacgtggatggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccgcgggaggagcagttcaacagcacgtaccgtgtggtcagcgtcctcaccgtcctgcaccaggactggctgaacggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaaggcctcccgtcctccatcgagaaaaccatctccaaagccaaagggcagccccgagagccacaggtgtacaccctgcccccatcccaggaggagatgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctaccccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacgcctcccgtgctggactccgacggctccttcttcctctacagcaggctaaccgtggacaagagcaggtggcaggaggggaatgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacacagaagagcctctccctgtctctgggtaaa
【0668】
配列番号49(TMEB675 LC cDNA)
Gccatccagatgacccagagccctagcagcctgagcgctagcgtgggcgacagggtgaccatcacctgcagggccagccagggcatcagaaacgacctgggctggtaccagcagaagcccggcaaggcccccaagctgctgatctacgccgccagcagcctgcagagcggagtgcctagcaggttcagcggaagcggcagcggcaccgacttcaccctgaccatcagcagcctgcagcccgaggacttcgccacctactactgcctgcaggactacaactacgccctgacattcggcggcggcaccaaggtggagatcaagcgtacggtggctgcaccatctgtcttcatcttcccgccatctgatgagcagttgaaatctggaactgcctctgttgtgtgcctgctgaataacttctatcccagagaggccaaagtacagtggaaggtggataacgccctccaatcgggtaactcccaggagagtgtcacagagcaggacagcaaggacagcacctacagcctcagcagcaccctgacgctgagcaaagcagactacgagaaacacaaagtctacgcctgcgaagtcacccatcagggcctgagctcgcccgtcacaaagagcttcaacaggggagagtgt
【0669】
配列番号50(TMEB570 LC cDNA)
Gaaattgtgctgacccagagcccgggcaccctgagcctgagcccgggcgaacgcgcgaccctgagctgccgcgcgagccagagcgtttccacatactacctggcgtggtatcagcagaaaccgggccaggcgccgcgcctgctgatttacggtgcctcctatcgcgcgaccggcattccggatcgctttagcggcagcggttccggcaccgattttaccctgaccattagccgcctggaaccggaagattttgcggtgtattattgccagcagtacggtcacagcccgattacttttggccagggcaccaaagtggaaatcaaacgtacggtggctgcaccatctgtcttcatcttcccgccatctgatgagcagttgaaatctggaactgcctctgttgtgtgcctgctgaataacttctatcccagagaggccaaagtacagtggaaggtggataacgccctccaatcgggtaactcccaggagagtgtcacagagcaggacagcaaggacagcacctacagcctcagcagcaccctgacgctgagcaaagcagactacgagaaacacaaagtctacgcctgcgaagtcacccatcagggcctgagctcgcccgtcacaaagagcttcaacaggggagagtgt
【0670】
配列番号51(TMEB674 LC cDNA)
ccatccagatgacccagagccctagcagcctgagcgctagcgtgggcgacagggtgaccatcacctgcagggccagccagggcatcaggaacgacctgggctggtaccagcagaagcccggcaaggcccccaagctgctgatctacgccgccagcagcctgcagagcggagtgcctagcaggttcagcggcagcggaagcggcaccgacttcaccctgaccatctccagcctgcagcccgaggacttcgccacctactactgcctgcaggactacaactacagcctgaccttcggcggcggcaccaaggtggagatcaggcgtacggtggctgcaccatctgtcttcatcttcccgccatctgatgagcagttgaaatctggaactgcctctgttgtgtgcctgctgaataacttctatcccagagaggccaaagtacagtggaaggtggataacgccctccaatcgggtaactcccaggagagtgtcacagagcaggacagcaaggacagcacctacagcctcagcagcaccctgacgctgagcaaagcagactacgagaaacacaaagtctacgcctgcgaagtcacccatcagggcctgagctcgcccgtcacaaagagcttcaacaggggagagtgt
【0671】
配列番号590(TMEB565 LC cDNA)
Gaaattgtgctgacccagagcccgggcaccctgagcctgagcccgggcgaacgcgcgaccctgagctgccgcgcgagccagagcgttgccacctattatcttgcgtggtatcagcagaaaccgggccaggcgccgcgcctgctgatttacggtgcatcctcccgtgcgaccggcattccggatcgctttagcggcagcggttccggcaccgattttaccctgaccattagccgcctggaaccggaagattttgcggtgtattattgccagcagtacggctataacccaattacctttggccagggcaccaaagtggaaatcaaacgtacggtggctgcaccatctgtcttcatcttcccgccatctgatgagcagttgaaatctggaactgcctctgttgtgtgcctgctgaataacttctatcccagagaggccaaagtacagtggaaggtggataacgccctccaatcgggtaactcccaggagagtgtcacagagcaggacagcaaggacagcacctacagcctcagcagcaccctgacgctgagcaaagcagactacgagaaacacaaagtctacgcctgcgaagtcacccatcagggcctgagctcgcccgtcacaaagagcttcaacaggggagagtgt
【0672】
配列番号618(TMEB762 VH cDNA)
gaggtgcagctgctggaaagcggcggaggcctggtgcagcccggaggaagcctgagactcagctgtgccgccagcggcttcaccttcagcagctacagcatgagctgggtcaggcaggcccctggcaaaggactggagtgggtgagcgtgattagcggcagcggcggcttcaccgattacgccgacagcgtgaagggcaggttcaccatcagcagggacaatagcaagaacaccctgtacctgcagatgaacagcctgagggccgaggacaccgccgtgtactactgcgccaggatgcccctgaacagccctcacgactactggggccagggaaccctggtgaccgtgtccagc
【0673】
配列番号619(TMEB762 VL cDNA)
gacatccagatgacccagagccctagcagcctgagcgctagcgtgggcgacagggtgaccatcacctgcagggccagccagggcatcagaaacgacctgggctggtaccagcagaagcccggcaaggcccccaagctgctgatctacgccgccagcagcctgcagagcggagtgcctagcaggttcagcggaagcggcagcggcaccgacttcaccctgaccatcagcagcctgcagcccgaggacttcgccacctactactgcctgcaggactacaactaccccctgacattcggcggcggcaccaaggtggagatcaag
【0674】
配列番号620(TMEB762 HC cDNA)
gaggtgcagctgctggaaagcggcggaggcctggtgcagcccggaggaagcctgagactcagctgtgccgccagcggcttcaccttcagcagctacagcatgagctgggtcaggcaggcccctggcaaaggactggagtgggtgagcgtgattagcggcagcggcggcttcaccgattacgccgacagcgtgaagggcaggttcaccatcagcagggacaatagcaagaacaccctgtacctgcagatgaacagcctgagggccgaggacaccgccgtgtactactgcgccaggatgcccctgaacagccctcacgactactggggccagggaaccctggtgaccgtgtccagcgcttccaccaagggcccatccgtcttccccctggcgccctgctccaggagcacctccgagagcacagccgccctgggctgcctggtcaaggactacttccccgaaccggtgacggtgtcgtggaactcaggcgccctgaccagcggcgtgcacaccttcccggctgtcctacagtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcagcttgggcacgaaaacctacacttgcaacgtagatcacaagcccagcaacaccaaggtggacaagagagttgagtccaaatatggtcccccatgcccaccatgcccagcacctgaggccgccgggggaccatcagtcttcctgttccccccaaaacccaaggacactctcatgatctcccggacccctgaggtcacgtgcgtggtggtggacgtgagccaggaagaccccgaggtccagttcaactggtacgtggatggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccgcgggaggagcagttcaacagcacgtaccgtgtggtcagcgtcctcaccgtcctgcaccaggactggctgaacggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaaggcctcccgtcctccatcgagaaaaccatctccaaagccaaagggcagccccgagagccacaggtgtacaccctgcccccatcccaggaggagatgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctaccccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacgcctcccgtgctggactccgacggctccttcttcctctacagcaggctaaccgtggacaagagcagatggcaggaggggaatgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacacagaagagcctctccctgtctctgggtaaa
【0675】
配列番号621(TMEB762 LC cDNA)
gacatccagatgacccagagccctagcagcctgagcgctagcgtgggcgacagggtgaccatcacctgcagggccagccagggcatcagaaacgacctgggctggtaccagcagaagcccggcaaggcccccaagctgctgatctacgccgccagcagcctgcagagcggagtgcctagcaggttcagcggaagcggcagcggcaccgacttcaccctgaccatcagcagcctgcagcccgaggacttcgccacctactactgcctgcaggactacaactaccccctgacattcggcggcggcaccaaggtggagatcaagcgtacggtggctgcaccatctgtcttcatcttcccgccatctgatgagcagttgaaatctggaactgcctctgttgtgtgcctgctgaataacttctatcccagagaggccaaagtacagtggaaggtggataacgccctccaatcgggtaactcccaggagagtgtcacagagcaggacagcaaggacagcacctacagcctcagcagcaccctgacgctgagcaaagcagactacgagaaacacaaagtctacgcctgcgaagtcacccatcagggcctgagctcgcccgtcacaaagagcttcaacaggggagagtgttag
【0676】
配列番号622(TMEB757 VH cDNA)
gaggtgcagctgctggaaagcggcggaggcctggtgcagcccggaggaagcctgagactcagctgtgccgccagcggcttcaccttcagcagctacagcatgagctgggtcaggcaggcccctggcaaaggactggagtgggtgagcgtgattagcggcagcggcggcttcaccgattacgccgacagcgtgaagggcaggttcaccatcagcagggacaatagcaagaacaccctgtacctgcacatgaacagcctgagggccgaggacaccgccgtgtactactgcgccaggatgcccctgaacagccctcacgactactggggccagggaaccctggtgaccgtgtccagc
【0677】
配列番号623(TMEB757 VL cDNA)
gccatccagatgacccagagccctagcagcctgagcgctagcgtgggcgacagggtgaccatcacctgcagggccagccagggcatcagaaacgacctgggctggtaccagcagaagcccggcaaggcccccaagctgctgatctacgccgccagcagcctgcagagcggagtgcctagcaggttcagcggaagcggcagcggcaccgacttcaccctgaccatcagcagcctgcagcccgaggacttcgccacctactactgcctgcaggactacaactaccccctgacattcggcggcggcaccaaggtggagatcaag
【0678】
配列番号624(TMEB757 HC cDNA)
gaggtgcagctgctggaaagcggcggaggcctggtgcagcccggaggaagcctgagactcagctgtgccgccagcggcttcaccttcagcagctacagcatgagctgggtcaggcaggcccctggcaaaggactggagtgggtgagcgtgattagcggcagcggcggcttcaccgattacgccgacagcgtgaagggcaggttcaccatcagcagggacaatagcaagaacaccctgtacctgcacatgaacagcctgagggccgaggacaccgccgtgtactactgcgccaggatgcccctgaacagccctcacgactactggggccagggaaccctggtgaccgtgtccagcgcttccaccaagggcccatccgtcttccccctggcgccctgctccaggagcacctccgagagcacagccgccctgggctgcctggtcaaggactacttccccgaaccggtgacggtgtcgtggaactcaggcgccctgaccagcggcgtgcacaccttcccggctgtcctacagtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcagcttgggcacgaaaacctacacttgcaacgtagatcacaagcccagcaacaccaaggtggacaagagagttgagtccaaatatggtcccccatgcccaccatgcccagcacctgaggccgccgggggaccatcagtcttcctgttccccccaaaacccaaggacactctcatgatctcccggacccctgaggtcacgtgcgtggtggtggacgtgagccaggaagaccccgaggtccagttcaactggtacgtggatggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccgcgggaggagcagttcaacagcacgtaccgtgtggtcagcgtcctcaccgtcctgcaccaggactggctgaacggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaaggcctcccgtcctccatcgagaaaaccatctccaaagccaaagggcagccccgagagccacaggtgtacaccctgcccccatcccaggaggagatgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctaccccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacgcctcccgtgctggactccgacggctccttcttcctctacagcaggctaaccgtggacaagagcagatggcaggaggggaatgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacacagaagagcctctccctgtctctgggtaaa
【0679】
配列番号625(TMEB757 LC cDNA)
gccatccagatgacccagagccctagcagcctgagcgctagcgtgggcgacagggtgaccatcacctgcagggccagccagggcatcagaaacgacctgggctggtaccagcagaagcccggcaaggcccccaagctgctgatctacgccgccagcagcctgcagagcggagtgcctagcaggttcagcggaagcggcagcggcaccgacttcaccctgaccatcagcagcctgcagcccgaggacttcgccacctactactgcctgcaggactacaactaccccctgacattcggcggcggcaccaaggtggagatcaagcgtacggtggctgcaccatctgtcttcatcttcccgccatctgatgagcagttgaaatctggaactgcctctgttgtgtgcctgctgaataacttctatcccagagaggccaaagtacagtggaaggtggataacgccctccaatcgggtaactcccaggagagtgtcacagagcaggacagcaaggacagcacctacagcctcagcagcaccctgacgctgagcaaagcagactacgagaaacacaaagtctacgcctgcgaagtcacccatcagggcctgagctcgcccgtcacaaagagcttcaacaggggagagtgttag
【0680】
選択抗TMEFF2抗体のフレームワークを、表69に示す。
【0681】
【表67】
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【0682】
配列番号53(VH3_3−23フレームワーク)
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKWGQGTLVTVSS
【0683】
配列番号54(VH1_1−69フレームワーク)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFS SYAIS WVRQAPGQGLEWMG GIIPIFGTANYAQKFQG RVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAR
【0684】
配列番号55(VKI_L11フレームワーク)
aiqmtqspsslsasvgdrvtitcrasqgirndlgwyqqkpgkapklliyaasslqsgvpsrfsgsgsg tdftltisslqpedfatyyc lqdynyp
【0685】
配列番号591(VKIII_A27フレームワーク)
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIY GASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQYGSSP
【0686】
7−5 抗TMEFF2抗体のエピトープマッピング
H/D交換を使用して、TMEB570及びTMEB675のエピトープマッピングを行った。TMEW1(配列番号578)を、これらのアッセイにおいてTMEFF2の供給源として使用した。
【0687】
130μLの対照バッファ(50mMリン酸、100mM塩化ナトリウム、pH7.4)中10μgのTMEW1を、130μLの4M塩酸グアニジン、0.85M TCEPバッファ(最終的なpHは2.5であった)を添加し、混合物を10℃で3分間インキュベートすることによって変性させた。次いで、混合物を、インハウスでパッキングしたペプシン/プロテアーゼXIII(w/w、1:1)カラム(2.1×30mm)を使用したオンカラムペプシン/プロテアーゼXIII消化に供した。得られたペプチドを、Q ExactiveTM Hybrid Quadrupole−Orbitrap Mass Spectrometer(Thermo)に接続されたWaters Acquity UPLCで構成されるUPLC−MSシステムを使用して分析した。ペプチドを、2%→34%の溶媒B(アセトニトリル中、0.2%ギ酸)の16.5分の勾配で50mm×1mmのC8カラム上で分離した。溶媒Aは、水中0.2%ギ酸であった。注入バルブ、及びペプシン/プロテアーゼXIIIカラム、及びそれらに関連する接続チューブは、10℃で維持された冷却ボックス内で維持した。第2の切換弁、C8カラム、及びそれらに関連するステンレス鋼の接続チューブは、−6℃で維持された別の冷却循環ボックス内にあった。TMEW1配列に対するMS/MSデータをMascotで検索することを通じて、ペプチド同定を行った。プリカーサー及びプロダクトイオンに対する質量許容差は、それぞれ7ppm及び0.02Daであった。
【0688】
10μLのTMEW1(5μg)、又は10μLのTMEW1及びTMEB570又はTMEB675混合物(5μg:15μg)を、10℃で0秒、30秒、360秒、3600秒、又は14400秒、120μLの重水標識バッファ(50mMリン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウム、pH7.4)と共にインキュベートした。各時点での水素/重水素(H/D)交換を、2回で実施した。130μLの4M塩酸グアニジン、0.85M TCEPバッファ(最終的なpHは2.5であった)を添加することによって、水素/重水素交換をクエンチした。その後、クエンチしたサンプルを、上記に記載されるようにオンカラムペプシン/プロテアーゼXIII消化及びLC−MS分析に供した。質量スペクトルはMSのみのモードで記録した。
【0689】
MSの生データを、HDX WorkBench、H/D交換MSデータを分析するためのソフトウェアを使用して処理した(Pascal et al.,J.Am.Soc.Mass Spectrom.2012,23(9),1512−1521)。重水素化ペプチドとその天然形態(t0)との平均質量差を使用して、重水素レベルを算出した。タンパク質の約97〜99%を特定のペプチドにマッピングすることができた。重水素ビルドアップ曲線は、ペプチドの交換時間にわたって、傾きにおいて有意な差を示した。
【0690】
TMEB570エピトープ:TMEW1は、残基235〜249(配列番号575に従って残基付番)で重水素取り込みのわずかな減少を示し、例えば、膜近位領域内の残基HGKCEHSINMQEPSC(配列番号592)は、TMEB570への結合時にH/D交換から保護されていた。
【0691】
TMEB675エピトープ:TMEW1は、残基252〜268(配列番号575に従って残基付番)で重水素取り込みのわずかな減少を示し、例えば、膜近位領域内の残基DAGYTGQHCEKKDYSVL(配列番号600)は、TMEB675への結合時にH/D/交換から保護されていた。
【0692】
したがって、TMEB570 TMEFF2エピトープ残基は、HGKCEHSINMQEPSC(配列番号592)を包含し、TMEB675エピトープ残基は、DAGYTGQHCEKKDYSVL(配列番号600)を包含していた。両抗体は、膜近位領域内でTMEFF2に結合した。
【0693】
7−6 二重特異性TMEFF2×CD3抗体の生成
選択単一特異性抗TMEFF2及び抗CD3抗体(実施例1〜7を参照)を、IgG4/κとして発現させた。F405L及びR409K置換(EU付番)を抗CD3抗体に導入したが、抗TMEFF2抗体は野生型IgG4を有していた。位置405及び409における置換に加えて、IgG4mAbは、S228P、F234A、及びL235A置換を有するように遺伝子操作された。
【0694】
単一特異性抗体を発現させ、プロテインAカラム(HiTrap MabSelect SuReカラム)を使用する標準的な方法を使用して精製した。溶出後、プールを、D−PBS、pH7.2の中に透析した。
【0695】
国際公開第2011/131746号に記載の通り、インビトロFabアーム交換において単一特異的TMEFF2 mAbと単一特異的CD3 mAbとを組み合わせることにより、二重特異性TMEFF2×CD3抗体を生成した。簡潔に述べると、PBS、pH7〜7.4中約1〜20mg/の、モル比1:1の各抗体を75mMの2−メルカプトエタノールアミン(2−MEA)と一緒に混合し、25〜37℃において2〜6時間インキュベートし、続いて、標準的な方法を使用して透析、ダイアフィルトレーション、接線流濾過、及び/又はスピン細胞濾過により2−MEAを除去した。
【0696】
標準的な方法を用いて、残留親抗TMEFF2及び抗CD3抗体を最小化するために、疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いてインビトロFabアーム交換を行った後、二重特異性抗体を更に精製した。
【0697】
表73及び表74は、生成された二重特異性抗体を示す。
【0698】
【表68】
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【0699】
【表69】
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【0700】
7−7 二重特異性TMEFF2×CD3抗体の特性評価
分析超遠心分離(AUC)による純度分析
分析超遠心分離(AUC)によって、溶液中の巨大分子のサイズ、形状、凝集の状態、及び可逆的相互作用を決定することができる。沈降速度(SV)は、遠心分離スピンとして、サンプルホルダー(セル)の外半径に移動する巨大分子の濃度勾配を可能にするAUC技術である。これにより、分子のサイズ及び形状の要因である沈降係数の決定が可能になり、それは、各分子に固有である。Beckman Optima AUC機器をこの目的のために使用した。1.2cmのBeckmanセンターピース(50Krpmの速度に設定)及び石英窓を備える遠心セルにサンプルをロードした。細胞を集め、130lbまでトルクを与える。遠心セルを、An−50(8穴)又はAn−60(4穴)ローターに入れ、AUCチャンバ内に配置した。ランを開始する前に、チャンバ内のローターで少なくとも1時間、AUCの温度を20.5℃に平衡化した。スキャンカウント(250スキャン)、スキャン収集の頻度(90秒)、データ分解能(10μM)、280nmの波長で、mAbサンプルについて40Krpmでランを実行した。直接境界フィッティングソフトウェアSEDANALを使用してデータを分析した。二重特異性抗体TMCB150及びその親mAbの純度を測定した。TMCB150は、AUCによって決定したとき、97.1%モノマー、2.8%ダイマーモノマーを示し、凝集を示さず、更なる生物物理的特性評価のために一過的に発現させた研究材料について許容可能な基準を満たした。TMEB762は、95.5%モノマー、4.5%ダイマーを示し、凝集は示さなかったが、一方、CD3B376は、97.7%モノマー及び2.2%ダイマーを示し、凝集は示さなかった。最低2段階精製された分子の>5%の凝集体レベルは、生物活性、溶解性、安定性、及び貯蔵寿命に有意な影響を及ぼし得る。
【0701】
DSCによる抗TMEFF2/CD3二重特異性物の配座安定性
TMCB150熱アンフォールディングをDSC(示差走査熱量測定)によって決定し、これは、アンフォールディング開始Tm=52.6℃であり、61.8℃で第1の熱転移(Tm1)、67.6℃で第2の熱転移(Tm2)、及び75.5℃で第3の熱転移(Tm3)を示した。上記の通りDSCによって評価した親抗体(抗TMEFF2、TMEB762、及び抗CD3、CD3B376)の熱転移プロファイルに基づいて、TMCB150のTm1は、CD3B376 FABのアンフォールディングに対応し、TMCB150のTm3は、TMEB762 Fabのアンフォールディング転移に対応する。
【0702】
血清安定性
ヒト血清成分に対する非特異的又はオフターゲット結合についてのリード候補の特性を評価するために、血清安定性アッセイを展開する。これにより、不十分な薬物動態及び生物分布特性を予測することができる。蛍光ベースのクロマトグラフィー法を使用して、TMCB150の結合及び安定性をバッファ及びヒト血清の両方において評価する。二重特異性抗体を、Alexa Fluor488コンジュゲート(製造元の指示書に従ったInvitrogenキット)で標識し、4℃及び37℃で2日間、Hepesバッファ及びヒト血清(Sigma、カタログ番号H4522)中でインキュベートし、次いで、蛍光検出器を備えたAgilent HPLCシステムを用いてSEC−HPLCにより分析する。各ピークの曲線下面積の積分から凝集率を計算する。TMCB150は、時間ゼロにおいてHepesバッファ中で2.4%の凝集を示し、摂氏4度及び37度において2日後にそれぞれ2.0%及び1.3%の凝集を示した。ヒト血清において、TMCB150は、時間ゼロで1,7%の凝集、そして、摂氏4度及び37度の両方で2日後に1.1%の凝集を示した。
【0703】
非特異的結合
リード分子の、無関係な表面への非特異的結合を、バイオセンサー技術(Biacore 8K)によって決定する。無関係なタンパク質でコーティングされたSPR表面上に抗体を通過させる。抗体がこれらの無関係な表面に対して有意な結合を示す場合、その抗体は、インビボ特性が乏しく、製造上の問題を示すと予測される。リード分子を最終濃度1μMで試験する。無関係な表面としては、負に帯電しているタンパク質(ダイズトリプシン阻害剤)、正に帯電しているタンパク質(リゾチーム及びβ−デフェンシン)、疎水性(Rh−インテグリンa4b7)、ヒトIgG、粘着性タンパク質(Rh−CD19)が挙げられる。この実験では、適切な対照を使用する。リードを2つの表面上に流し、一方はブランクであり、他方は直接固定化された分子を有する。試験表面RUからブランクRUを減じることによって、応答単位(RU)レベルを求める。TMCB150及び親mAbのRUを以下の表に示す。応答単位≧100は、帯電/疎水性/IgG表面への非特異的結合のリスクが高いことを予測し、これは、製造中に問題を生じさせ、PK特性が不十分であると解釈される。抗体のいずれも、無関係な表面に対する非特異的結合を示さず、このことから、製造及びインビボ挙動についてのリスクが低い、乃至無いと予測される。
【0704】
【表70】
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【0705】
高濃度安定性
注入体積を減少させて皮下投与を容易にするために、多くのモノクローナル抗体は高濃度(≧100mg/mL)で製剤化される。加えて、全てのモノクローナル抗体は、精製プロセス中に一時的に高濃度(≧50mg/mL)に曝される。したがって、高濃度安定性は、これらの分子の重要な品質属性である。30kDa MWCO膜を備えた遠心限外濾過装置を用いて濃縮を行う。最初に、5.1〜5.3mgの各タンパク質を同じ出発濃度に希釈し、15分間隔で4000×gで遠心分離した。各15分間の遠心分離段階の終了時に、濃縮器を遠心分離器から取り出し、残りのサンプル体積の視覚的推定値を記録する。SoloVPE機器によって濃度を測定する。濃縮したサンプルを4C及び40Cで2週間インキュベートし、一定時間間隔でアリコートを引き出し、分析SECにより完全性を確認した。TMCB150及び親mAb(CD3B376及びTMEB762)は正常に濃縮された。TMCB150の最終濃度は99.4mg/mLであり、親mAbの濃度は52.2mg/mL(TMEB762)及び52.6mg/mL(CD3B376)であった。濃度は4C及び40Cで2週間同じままであり、これは、分子が、凝集の可能性もエッペンドルフチューブへの吸着の可能性もない、良好な内部特性を有することを示唆している。SECピークの積分から測定した種%(A:凝集体;M:モノマー;F:断片)を以下の表に提供する。高濃度では、40Cで2週間保管した後、分子はインタクトであり、凝集体は4〜5%であり、断片は≦0.3%であり、このことから良好な貯蔵寿命が予測される。
【0706】
【表71】
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【0707】
動態排除アッセイ(KinExA)による抗TMEFF2/CD3二重特異性抗体の親和性決定
KinExA 3200機器(Sapidyne Instruments,Inc.)を使用して、二重特異性mAb TMCB150及びその二価TMEFF2親TMEB762 mAbの、ヒトTMEFF2細胞外ドメイン(ECD)に対する溶液平衡親和性K
Dを測定した。10mM HEPES、150mM NaCL、0.05%界面活性剤P20、pH7.4、0.1% BSA、及び0.02% NaN3中における一定濃度の抗TMEFF2 mAbを用いて、ヒトTMEFF2細胞外ドメイン(ECD)の連続希釈物を調製した。結合相互作用が平衡に達するまで、反応混合物をRTでインキュベートした。KinExAソフトウェアシミュレーションを使用して、インキュベーションの継続時間を求めた。ビス−アクリルアミド/アズラクトンコポリマー(Pierce Biotechnology,Inc.)で構成されるプレ活性化ビーズにおけるアミンカップリングによるTMEFF2−ECDの直接共有結合性固定化によって、ビーズを調製した。インキュベーション後、混合物をTMEFF2修飾ビーズに通し、蛍光標識された二次抗体を使用して捕捉抗体を検出することによって、混合物中の遊離抗体を評価するために、サンプルをKinExA機器で実験した。KinExA Proソフトウェアを使用して、データを1:1結合モデルにフィッティングさせた。
【0708】
【表72】
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【0709】
抗TMEFF2/CD3二重特異性抗体のN末端CD3εペプチドに対する結合親和性の測定
Biacore 8K(GE Healthcare)及び抗ヒトFcバイオセンサー表面を使用して実施したSPRによって、反応速度定数を測定した。抗ヒト免疫グロブリン抗体を、CM4センサチップ(GE Healthcare)の表面に共有結合させた。対象となる抗体を抗ヒト免疫グロブリンセンサチップ上に捕捉し、続いて、0.05%界面活性剤P20(Tween(商標)20)及び100μg/mL BSAを含有するHEPES緩衝生理食塩水中に様々な濃度でN末端CD3εペプチドを注入した。100μL/分で0.8%リン酸30μLを2パルス注入して、表面を再生した。報告データは、捕捉抗体を含む流動細胞と、捕捉抗体を含まない参照細胞との間のSPRシグナルの差異である。基準−引算シグナル(reference-subtracted signal)からブランク注入のデータを引算することによって、シグナルに対する器具の追加の寄与を除去した。BIAevaluationソフトウェア(BIAcore,Inc.)を使用して全ての濃度(グローバルフィット)における会合及び解離相を1:1結合モデルにフィッティングさせることにより、データを分析した。95%CI×標準偏差/反復の数の平方根のt値によって計算される平均+95%CI(信頼間隔)として、データを報告する。
【0710】
【表73】
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【0711】
7−8 二重特異性TMEFF2×CD3抗体は、前立腺癌細胞のT細胞媒介性殺傷に効果的である。
前立腺癌細胞のT細胞媒介性殺傷
選択二重特異性TMEFF2×CD3抗体を、前立腺癌細胞のT細胞媒介性殺傷を媒介する能力について評価した。
【0712】
活性カスパーゼ3/7による蛍光基質の切断を介して細胞殺傷を間接的に測定するカスパーゼ細胞傷害アッセイを用いて、TMEFF2×CD3二重特異性抗体のT細胞媒介性殺傷を測定した。基質の切断により蛍光DNA色素が得られ、蛍光は細胞核に制限される。同じ座標でウェルを正確に撮像することができる電動式10倍対物レンズを使用して、アッセイの全過程を通して各ウェルにおいて繰り返し蛍光測定を行う。規定のサイズ制限に基づいて及び/又は二次標識の使用を通して、標的細胞集団を特定する。
【0713】
冷凍した汎CD3
+T細胞(Biological Specialty Corporation,Colmar,PA)を、正常健常ドナーから陰性選択によって単離した。TMEFF2を発現している前立腺癌細胞(LNCaP−AR)を、10% HI FBS+補給物(Life Technologies)を含むRPMI 1640中で培養した。T細胞及び標的細胞を、選択試薬なしで、フェノールレッド不含RPMI+10% FBS及び補給物(Life Technologies)中、3:1のエフェクター対標的比(E:T)で合わせ、製造元ガイドラインに従って細胞各1mLに対して0.6μLのNucViewカスパーゼ試薬(Essen Bioscience)を添加した。総体積0.1mLの細胞を、透明な96ウェル平底プレート(BD Falcon)の適切なウェルに添加した。TMEFF2×CD3二重特異性抗体を、上記のように調製したフェノールレッド不含RPMI中2×最終濃度で調製し、0.1mLの化合物を各ウェルに添加した。ウェルの縁部における細胞凝集を最小化するために室温で30分間インキュベートした後、37℃、5%CO
2で保持したZoom Incucyte機器(Essen Bioscience)にプレートを移した。
【0714】
Incucyteにおける処理の解像度は、製造ガイドラインに従って、試験される各細胞株に対して設計した。カスパーゼシグナルにおいてプラトーが観察され、続いて、最高濃度の試験化合物を含有するウェルにおける最大シグナルから3回以上の連続的な減少が観察されるまで、6時間ごとに測定を行った。
【0715】
アッセイが完了した後、適切な処理解像度を用いて各プレートを分析した。蛍光生データをIncucyte Zoomソフトウェアからエクスポートし、GraphPad Prism(GraphPad Software,Inc.、La Jolla,CA)にペーストした。GraphPadにおいて各ウェルの曲線下面積(AUC)を計算することによって、カスパーゼ3/7活性を求めた。Log10nM化合物の関数としてAUC値をプロットした。各用量曲線のEC50(ナノモル(nM))を、非線形回帰分析(4パラメータフィット、最小二乗)に従って報告した。各アッセイは、最低3つの生物学的複製物を含有しており、5人の健常ドナー由来のT細胞を使用して各細胞株を試験した。非線形回帰モデルを使用して、非臨床統計によってデータを更に分析した。
【0716】
二重特異性TMEFF2×CD3抗体は、インビボ前立腺癌腫瘍モデルにおいて効果的である。
【0717】
選択二重特異性抗体を、雄NSGマウスにおけるエクスビボLnCaP前立腺癌モデルで試験した。試験のために、0.2mL/動物の50%Cultrex中10
6個のLnCaP細胞を、0日目に皮下注射により右側腹部に投与した。腫瘍が約100〜150mm
3の体積に達したときに動物を無作為化し、15日目に20
6T細胞/マウスを腹腔内注入した。各群で10頭の動物を使用した。T細胞注射の1〜3日後に、抗体による処理を開始した。抗体を週2回腹腔内投与した。投与前に、全ての動物にIVIG+Fcブロックを投与した。腫瘍が約1200mm
3に達するまで、腫瘍体積及び体重を週2回評価した。処理群を表79に示す。これらのアッセイでは、CD3結合アームとHIV gp120に結合するヌルアームとを有するCD3×ヌル抗体を陰性対照として使用した。
【0718】
【表74】
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【0719】
表80は、腫瘍移植後の各群あたりの38日目の腫瘍増殖阻害率を示す。
【0720】
図72は、腫瘍移植後の経時的な平均腫瘍体積の減少を示す。
図73は、0.05、0.1、又は0.5mg/kgのTMEB762×CD3B376で処理した各マウスの平均腫瘍体積の減少を示す。
【0721】
【表75】
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【0722】
20e6個のT細胞でヒト化された雄NOD.Cg−Prkdc
scid Il2rg
tm1Wjl/SzJ(NSG)マウスにおける、樹立されたLNCaP異種移植片において、TMEB762×CD3B376(TMCB150)の有効性も評価した。動物を、腫瘍移植後13日目に平均腫瘍体積によって各々10頭の動物群に無作為化した。0.5、0.1、及び0.05mg/kgのTMEB762×CD3B376又は0.5mg/kgのヌル×CD3B376抗体対照を、5週間にわたって週2回IP投与した。腫瘍移植後35日目に、1群あたり少なくとも8頭の動物が残っていた場合、腫瘍体積によって決定したときの腫瘍増殖阻害(%TGI)を計算した。ヌル×CD3対照と比較して統計的に有意な腫瘍増殖阻害は、0.5及び0.1mg/kgのTMEB762×CD3B376では観察されたが、0.05mg/kgでは観察されなかった(
図73、p≦0.0001)。ヌル×CD3処理対照と比較して、0.5、0.1、及び0.05mg/kgのTMEB762×CDB376は、それぞれ110%、88%、及び25%の腫瘍増殖阻害を惹起した。TMEB762×CDB376処理の結果、それぞれ0.5及び0.1mg/kgで7及び3頭の完全奏功が得られた。皮下LNCaP腫瘍を週2回キャリパーで測定し、結果を平均腫瘍体積(mm
3)±SEM(1群あたり≧8頭のマウスが残っていた)として提示した。
【0723】
TMCB132の投与に応答したT細胞活性化
LnCaP前立腺癌細胞におけるT細胞活性化を、フローサイトメトリーによって、具体的には、TMCB132による処理の72時間後に、6人の別個の正常な健常ドナー(9642、9672、9762、9772、9832、9852)におけるCD3+/CD8+T細胞のCD25陽性を評価することによって測定した(
図74)。LnCaP前立腺癌細胞に対するTMCB132の投与に応答して、3:1エフェクター:標的比で添加されたCD3+汎T細胞の活性化が観察された。
【0724】
インビトロにおけるTMCB132のT細胞媒介細胞傷害。
T細胞媒介性細胞傷害アッセイを使用して、Incucyteプラットフォームでライブタイムラプスイメージングを使用して、インビトロにおけるTMCB132の細胞傷害能を評価した。3:1の(エフェクター:標的)エフェクター:標的比(E:T比)で、健常ドナー由来の単離汎ヒトCD3+T細胞の存在下で、TMEFF2陽性細胞株LnCaPにおいてTMCB132を試験した。96時間の期間にわたって活性カスパーゼ3/7の蛍光シグナルを測定することによって、アポトーシスによる細胞死をモニタリングした。TMCB132は、時間の経過とともに、生存LnCaP細胞の減少を用量依存的に促進した。カスパーゼ3/7活性又は蛍光シグナルの用量依存的増加は、T細胞の存在下でLnCaP細胞における細胞死を示した(
図75)。データは、TMCB132が、LnCaP腫瘍細胞においてT細胞媒介死を誘導するのに効果的であることを示唆している。
【0725】
T細胞ヒト化マウスにおける樹立されたSCヒト前立腺異種移植片におけるTMCB132の有効性。
TMCB132の抗腫瘍有効性を、20e
6個のT細胞でヒト化された雄NOD.Cg−Prkdc
scid Il2rg
tm1Wjl/SzJ(NSG,The Jackson Laboratory,Bar Harbor,ME)マウスの樹立された皮下(SC)ヒト前立腺LNCaP異種移植片において評価した。動物を、腫瘍移植後13日目に平均腫瘍体積によってそれぞれ10頭の動物群に無作為化した。0.5、0.1、及び0.05mg/kgのTMEB132又は0.5mg/kgのヌル×CD3B219抗体対照を、4週間にわたって週2回IP投与した。腫瘍移植後45日目に、1群あたり少なくとも7頭の動物が残っていた場合、腫瘍体積によって決定したときの腫瘍増殖阻害(%TGI)を計算した。ヌル×CD3対照と比較して統計的に有意な腫瘍増殖阻害は、0.5及び0.1及び0.05mg/kgのTMEB132で観察された(
図75、p≦0.0001)。ヌル×CD3処理対照と比較して、0.5、0.1、及び0.05mg/kgのTMEB132は、それぞれ102%、109%、及び47%の腫瘍増殖阻害を惹起した。TMEB132処理の結果、それぞれ0.5、0.1及び0.05mg/kgで3、2、及び1頭の完全奏功が得られた。