(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-524279(P2021-524279A)
(43)【公表日】2021年9月13日
(54)【発明の名称】遅消化性デキストリンの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 29/30 20160101AFI20210816BHJP
A23L 33/21 20160101ALI20210816BHJP
C08B 30/18 20060101ALI20210816BHJP
A61K 31/718 20060101ALI20210816BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20210816BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20210816BHJP
【FI】
A23L29/30
A23L33/21
C08B30/18
A61K31/718
A61P3/06
A61P9/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2021-507572(P2021-507572)
(86)(22)【出願日】2019年5月30日
(85)【翻訳文提出日】2021年4月2日
(86)【国際出願番号】CN2019089311
(87)【国際公開番号】WO2020034725
(87)【国際公開日】20200220
(31)【優先権主張番号】201810915843.2
(32)【優先日】2018年8月13日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】李兆豊
(72)【発明者】
【氏名】顧正彪
(72)【発明者】
【氏名】李陽
(72)【発明者】
【氏名】李才明
(72)【発明者】
【氏名】程力
(72)【発明者】
【氏名】洪雁
【テーマコード(参考)】
4B018
4B041
4C086
4C090
【Fターム(参考)】
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4C090BB38
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4C090CA42
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4C090DA27
(57)【要約】
遅消化性デキストリンの製造方法が開示され、生物学的に変性されたデンプンの分野に属する。前記方法は、Ro−GBE及びGt−GBEを用いて変性対象デンプンを協同的に変性することを含む。異なる微生物由来の2種類のデンプン枝作り酵素を用いてコーンスターチを協同的に処理し、すなわち、まず、Ro−GBEを添加して前処理し、次にGt−GBEを添加することにより、Ro−GBEで変性対象デンプンを触媒してGt−GBEの更なる利用により有利なセグメント構造を形成し、Gt−GBEの作用により細長いタイプのデンプン分子をずんぐりしたタイプのより緊密な分岐構造に変換し、変性物の遅消化性をより顕著にする。さらに、Ro−GBEの添加量、変性時間及び変性対象デンプンの状態を変化させることにより、両者間の相乗作用を促進し、アミロペクチンの分岐度を高め、遅消化及び難消化性デンプンの含有量をさらに高める。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Rhodothermus obamensi由来のデンプン枝作り酵素Ro−GBEとGeobacillus thermoglucosidans由来のデンプン枝作り酵素Gt−GBEとを用いて変性対象デンプンを協同的に変性することを含む、ことを特徴とする遅消化性デキストリンの製造方法。
【請求項2】
まず、Ro−GBEを添加して変性対象デンプンを前処理し、次に、Gt−GBEを添加して変性対象デンプンを協同的に変性することを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
まず、Ro−GBEを添加して変性対象デンプンを前処理するときに、Ro−GBEの添加量が25〜40U/g乾燥デンプンである、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
次にGt−GBEを添加して変性対象デンプンを協同的に変性するときに、Gt−GBEの添加量が20〜30U/g乾燥デンプンである、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記変性対象デンプンの状態が糊化状態であり、糊化状態で、Ro−GBEにより前記変性対象デンプンを変性する条件は、60〜65℃で2〜10hの恒温反応であり、糊化して酵素を不活性化させた後、Gt−GBEを添加して50℃で8〜12hの反応を継続する、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記変性対象デンプンの状態が粒子状態であり、粒子状態で、Ro−GBEにより前記変性対象デンプンを変性する条件は、60〜65℃で2〜12hの恒温反応であり、糊化して酵素を不活性化させた後、Gt−GBEを添加して50℃で8〜12hの反応を継続する、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記変性対象デンプンのデンプン液の濃度が20〜30%である、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記変性対象デンプンのデンプン液のpHが6.5〜7.5である、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法で製造された遅消化性デキストリン。
【請求項10】
インスリン非依存性糖尿病及び心血管疾患の予防及び遅延のための食品又は医薬品の製造における請求項9に記載の遅消化性デキストリンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遅消化性デキストリンの製造方法に関し、生物学的に変性されたデンプンの分野に属する。
【背景技術】
【0002】
デンプンは緑色植物の果実、種子、塊茎、塊根の主要成分であり、地球で最も豊富な貯蔵性多糖類である。人間や大多数の動物の主要なエネルギー源として、食品、医薬品、化学工業などの工業分野によく使われている。デンプンが人体内で消化されてブドウ糖を放出する時間の長さによって、デンプンは易消化性デンプン(Rapidly Digestible Starch、RDS)、遅消化性デンプン(Slowly Digestible Starch、SDS)、及び難消化性デンプン(Resistant Starch、RS)に分けられ、RDSとは、小腸内で迅速に消化吸収されるデンプンを指し、消化時間が20min以内であり、SDSとは、小腸で完全に消化吸収されるが、速度が遅いデンプンを指し、消化時間が20〜120min以内であり、RSとは120minでも小腸に消化吸収されないデンプンを指し、大腸で微生物発酵により利用されるしかない食物繊維と類似している。
【0003】
住民の食事の中で、デンプンの「質」と「量」は血糖の調節に直接影響するが、人々の生活水準が向上するにつれて、近年、糖尿病などの慢性疾患の発病率は年々増加しており、食用後に満腹感を維持し、エネルギーを持続的に放出し、血糖の急激な変動を回避し、またインシュリン非依存型糖尿病や心血管疾患に対して補助治療作用を有する遅消化及び難消化性デンプン変性物の研究製造が必要とされる。
【0004】
現在、物理、化学或いは生物方法を利用してデンプンの分子構造を変えることで、デンプンの天然特性を改善し、一部のRDSをSDSに転化させ、健康な飲食の需要を満たすようにすることができる。その中で、生物酵素法は主にデンプン自体の構造を変えることによってデンプンの消化性能を改善する目的を達成する。先行研究では、単一酵素でデンプンを変性処理する場合が多いが、変性デンプン中の遅消化性デンプンの含有量は低く、現在文献で報告されているいくつかの二重酵素処理方法の中でも、主な方法には、グルコシルトランスフェラーゼとβ−アミラーゼによる協同的変性(相乗的変性)、マルトースα−アミラーゼとグルコシルトランスフェラーゼによる協同的変性、デンプン枝作り酵素とアミロスクラーゼによる協同的変性などがあるが、その変性物の収率は低く、できるだけ変性物の収率を高めるために、その製造プロセスにおいて通常エタノール洗浄工程を採用し、その結果、変性物の損失量が大きくなり、変性時間が長くなるなどの問題を招く。
【発明の概要】
【0005】
遅消化性デキストリン生成物の収率が低く、変性時間が長いという従来の問題点を解決するために、本発明は、遅消化性デキストリンの製造方法を提供する。
【0006】
Rhodothermus obamensi由来のRo−GBEはグリコシド加水分解酵素ファミリー57に属し、Geobacillus thermoglucosidans由来のGt−GBEはグリコシド加水分解酵素ファミリー13に属し、いずれも3種類のグリコシル基転移反応(鎖間転移、鎖内転移、環化反応)を触媒でき、グリコーゲンとアミロペクチンを合成する重要な酵素である。デンプン分子中のα−1,4グリコシド結合を切断し、その後、グリコシル基転移作用により、切断されたセグメントをα−1,6グリコシド結合で受容体鎖に連結して新たな分岐を形成し、このように、分岐度を増加させ、デンプンの消化速度を低下させることができる。これら2つの酵素の触媒機構はいずれも遅消化性デキストリンの生成に有利である。
【0007】
本発明の第1の目的は、Rhodothermus obamensi由来のデンプン枝作り酵素Ro−GBEとGeobacillus thermoglucosidans由来のデンプン枝作り酵素Gt−GBEとを用いて、変性対象デンプンを協同的に変性することを含む、遅消化性デキストリンの製造方法を提供することにある。
【0008】
任意選択に、前記遅消化性デキストリンの製造方法は、まず、Ro−GBEを添加して変性対象デンプンを前処理し、次に、Gt−GBEを添加して変性対象デンプンを協同的に変性するステップを含む。
【0009】
任意選択に、まず、Ro−GBEを添加して変性対象デンプンを前処理するときに、Ro−GBEの添加量が25〜40U/g乾燥デンプンである。
【0010】
任意選択に、次にGt−GBEを添加して変性対象デンプンを協同的に(相乗的に)変性するときに、Gt−GBEの添加量が20〜30U/g乾燥デンプンである。
【0011】
任意選択に、前記変性対象デンプンの状態が糊化状態であり、糊化状態で、Ro−GBEにより前記変性対象デンプンを変性する条件は、60〜65℃で2〜10hの恒温反応であり、糊化して酵素を不活性化させた後、Gt−GBEを添加して50℃で8〜12hの反応を継続する。任意選択に、糊化状態で、Ro−GBEにより糊化コーンスターチを変性する条件は、60〜65℃で10hの恒温反応であり、糊化して酵素を不活性化させた後、Gt−GBEを添加して50℃で12hの反応を継続する。
【0012】
任意選択に、前記変性対象デンプンの状態が粒子状態であり、粒子状態で、Ro−GBEにより前記変性対象デンプンを変性する条件は、60〜65℃で2〜12hの恒温反応であり、糊化して酵素を不活性化させた後、Gt−GBEを添加して50℃で8〜12hの反応を継続する。
【0013】
任意選択に、粒子状態で、Ro−GBEにより粒子状コーンスターチを変性する条件は、60〜65℃で12hの恒温反応であり、糊化して酵素を不活性化させた後、Gt−GBEを添加して50℃で12hの反応を継続する。
【0014】
任意選択に、前記変性対象デンプンのデンプン液の濃度が20〜30%である。
【0015】
任意選択に、前記変性対象デンプンのデンプン液のpHが6.5〜7.5である。
【0016】
本発明の第2の目的は、上記のいずれかの方法で製造された遅消化性デキストリンを提供することにある。
【0017】
本発明の第3の目的は、一般的な人のインスリン非依存性糖尿病の予防及び糖尿病患者のインスリン非依存性糖尿病の遅延のための食品又は医薬品の製造における遅消化性デキストリンの使用を提供することにある。
【0018】
本発明の有益な効果は次の通りである。
異なる由来の2種類のデンプン枝作り酵素を用いてコーンスターチを協同的に処理し、すなわち、まず、Ro−GBEを添加して前処理し、次にGt−GBEを添加することにより、Ro−GBEで変性対象デンプンを触媒してGt−GBEの更なる利用により有利なセグメント構造を形成し、Gt−GBEの作用により細長いタイプのデンプン分子をずんぐりしたタイプのより緊密な分岐構造に変換し、変性物の遅消化性をより顕著にする。さらに、Ro−GBEの添加量、変性時間及び変性対象デンプンの状態を変化させることにより、両者間の相乗作用を促進し、アミロペクチンの分岐度を高め、遅消化・難消化性デンプンの含有量をさらに高め、消化速度を低下させ、生物変性による遅消化性デキストリンの製造に新しいコンセプトを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の目的、技術案、及び利点をより明確にするために、以下、図面を参照しながら本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
【0020】
以下の実施例では、変性対象デンプンがコーンスターチであることを例に説明し、その変性過程においてエタノール洗浄ステップを必要としない。
【0021】
以下では、まず、本出願の二重酵素協同変性法において二重酵素をそれぞれ単独で変性させる場合を説明する。
【0022】
実施例1:Gt−GBEの単独変性による変性物中の易消化性デンプンの含有量への影響
コーンスターチを水に溶解して10%デンプン液を得て、沸騰水で糊化した後にGt−GBE 25U/g乾燥デンプンを加え、50℃の恒温条件下で2、4、6、8、10h処理し、沸騰水浴で反応を停止し、凍結乾燥して変性試料を得た。Englyst in vitro模擬消化法を参照して変性デンプンの消化性能を測定したものを表1に示す。対照群は、未変性処理コーンスターチペーストの消化性能を示す。
その結果、Gt−GBE単独の作用下で、対照群と比べて、10h変性処理時、易消化性デンプンの含有量は20.8%(
)減少し、遅消化性デンプンの含有量は134%(
)増加し、難消化性デンプンの含有量は28.5%(
)増加した。Gt−GBE単独で変性した場合、遅消化性デンプンの割合が著しく増加することがわかり、考えられる原因はGt−GBEの作用により産生された高分岐構造が生成物の遅消化性能を著しく改善することである。
【0023】
実施例2:Ro−GBEの単独変性による変性物中の易消化性デンプンの含有量への影響
コーンスターチを水に溶解して25%デンプン液を得て、沸騰水で糊化した後にRo−GBE 30U/g乾燥デンプンを加え、65℃の恒温条件下で2、4、6、8、10h処理し、沸騰水浴で反応を停止し、凍結乾燥して変性試料を得た。Englyst in vitro模擬消化法を参照して変性デンプンの消化性能を測定したものを表2に示す。対照群は、未変性処理コーンスターチペーストの消化性能を示す。
その結果、Ro−GBE単独の作用下で、対照群と比べて、2h変性処理時、易消化性デンプンの含有量は12.5%(
)減少し、その後、処理時間の増加に伴い、易消化性デンプンの含有量は逆に増加し、さらに10h処理時、Ro−GBEを添加せずに変性した対照群さえ超えており、遅消化性デンプンの含有量は9.78%(
)増加し、その後、処理時間の増加に伴い、4h処理時、遅消化性デンプンの含有量は42.4%(
)増加し、引き続き処理時間が増加すると、遅消化性デンプンの含有量はかえって低下して、さらに10h処理時、遅消化性デンプンの含有量はRo−GBEを添加せずに変性した対照群よりも低く、難消化性デンプンの含有量は66.9%(
)増加し、その後処理時間の増加に伴い、難消化性デンプンの含有量は多少変動した。
実施例1と比べて、Ro−GBEの作用は比較的短時間で変性効果が良好であるが、作用時間が長くなるにつれて、易消化性デンプンの含有量は逆に再び増加した。考えられる原因は、Ro−GBEの加水分解作用が強く、変性時間が長い場合に遊離短鎖や小分子糖が多く生成され、生成物の遅消化性能に不利であることである。
以下では、本出願に採用された二重酵素協同変性方法について説明し、Ro−GBEの酵素添加量、Ro−GBEの変性時間、Ro−GBE処理粒子デンプンの二重酵素協同変性過程における変性生成物への影響についてそれぞれ詳細に説明する。
本発明のすべての実施例及び比較例における対照群は、未変性処理コーンスターチペーストの消化性能を示したが、易消化性デンプン、遅消化性デンプン、難消化性デンプンの含有量は若干異なり、誤差が許容範囲内であった。
【0024】
実施例3:Ro−GBE酵素添加量による二重酵素協同変性生成物中の易消化性デンプンの含有量への影響
コーンスターチを水に溶解して25%デンプン液を得て、沸騰水で糊化した後にRo−GBEを添加し、65℃の恒温条件下で2h処理し、沸騰水浴で反応を停止し、Gt−GBE 25U/g乾燥デンプンを添加し、50℃の恒温条件下で10h処理し、反応を停止し、凍結乾燥して変性試料を得た。Englyst in vitro模擬消化法を参照して変性デンプンの消化性能を測定したものを表3に示す。対照群は未変性処理コーンスターチペーストの消化性能であった。
その結果、実施例1に比べて、本実施例では、易消化性デンプンの含有量は最大31.6%(
)減少し、遅消化性デンプンの含有量は最高52.8%(
)増加し、難消化性デンプンの含有量は最高55.6%(
)増加した。
実施例2と比べて、易消化性デンプンの含有量は最大38.1%(
)減少し、遅消化性デンプンの含有量は最大152%(
)増加し、難消化性デンプンの含有量は最大21.2%
増加した。
二重酵素による二段階作用は単一酵素による一段階変性と比べて、効果はさらに顕著であり、易消化性デンプンの含有量は明らかに減少し、遅消化と難消化性デンプンの含有量は、程度が異なるが、すべて増加した。30U/g乾燥デンプンのRo−GBE添加量で形成された中間生成物はGt−GBEの継続作用により有利であり、高分岐、ショートクラスター状の遅消化性デキストリンを形成すると推定された。
【0025】
実施例4:Ro−GBE変性時間による二重酵素協同変性生成物中の易消化性デンプンの含有量への影響
コーンスターチを水に溶解して25%デンプン液を得て、沸騰水で糊化した後に、Ro−GBE 30U/g乾燥デンプンを添加して、65℃の恒温条件下で処理し、沸騰水浴で反応を停止し、Gt−GBE 25U/g乾燥デンプンを添加して、50℃の恒温条件下で10h処理し、反応を停止し、凍結乾燥して変性試料を得た。Englyst in vitro模擬消化法を参照して変性デンプンの消化性能を測定したものを表4に示す。対照群は未変性処理コーンスターチペーストの消化性能であった。
その結果、対照群と比べて、Ro−GBE処理時間2hの二重酵素協同変性生成物中の易消化性デンプンの含有量は46.9%(
)減少し、遅消化性デンプンの含有量は226%(
)増加し、難消化性デンプンの含有量は89.9%(
)増加した。実施例1、2中の最適変性生成物と比べて、易消化性デンプンの含有量はそれぞれ35.5%(
)、41.6%(
)減少した。異なる由来の2種類の分岐酵素の協同作用の下で、デンプンの微細構造の変化はさらにその遅消化性能の向上に有利であり、易消化性デンプンの含有量は明らかに減少し、遅消化と難消化性デンプンの割合は明らかに増加することを示した。
【0026】
実施例5:Ro−GBE処理粒子デンプンによる二重酵素協同変性生成物中の易消化性デンプンの含有量への影響
コーンスターチを水に溶解して25%デンプン液を得て、予熱後、Ro−GBEを添加して65℃の恒温条件下で処理し、沸騰水浴で反応を停止し、Gt−GBE 25U/g乾燥デンプンを添加して50℃の恒温条件下で10h処理し、反応を停止し、凍結乾燥して変性試料を得た。Englyst in vitro模擬消化法を参照して変性デンプンの消化性能を測定したものを表5に示す。
表5−1から5−4の結果によれば、Ro−GBEで粒子デンプンを処理した場合、変性時間は10hであり、酵素添加量が25U/gから30U/g(5−1と5−2参照)に増加するにつれて易消化性デンプンの含有量は10.7%減少し、35U/g、40U/gに増加し続けた場合、易消化性デンプンの含有量に有意な変化はなかった。
表5−2によれば、Ro−GBE酵素添加量が30U/gであった場合、変性時間が10hまで延長されることにつれて、易消化性デンプンの含有量は最低値41.9%まで減少し、遅消化及び難消化性デンプンの含有量はそれぞれ26.8%、31.3%まで増加した。
実施例3、実施例4と比べて、二重酵素による二段階変性過程では、Ro−GBE酵素添加量の変化傾向は同じであり、このことから、30U/g乾燥デンプンが最適添加量であることが分かり、しかし、糊化デンプンの処理の場合、2h程度が適切であり、時間が長すぎると加水分解作用を強化してかえってその易消化性デンプンの含有量を増加させて、粒子デンプンの場合、10h程度が適切であり、粒子デンプンの結晶構造による保護のため、デンプンの直鎖と分岐鎖はさらに遅くアミラーゼに攻撃されるので、優れた変性効果を達成するのに長い変性時間がかかった。
【0027】
本出願で2種類のデンプン枝作り酵素を用いて変性処理を行って得られる変性生成物では、遅消化性デキストリン生成物の収率が高く、変性時間が短いという利点をさらに証明するために、本出願が2種類のデンプン枝作り酵素(Ro−GBE及びGt−GBE)を用いて変性処理を行うことと、CGT酵素とGt−GBEの組み合わせで変性処理を行うこととを比較した。
【0028】
比較例1:CGT酵素とGt−GBE協同変性に対するRo−GBEとGt−GBE協同変性の優位性
コーンスターチを水に溶解して25%デンプン液を得て、沸騰水で糊化した後、45℃恒温条件下でシクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ(CGT酵素)3U/g乾燥デンプンを添加して、異なる時間処理し、沸騰水浴で反応を停止し、Gt−GBE 25U/g乾燥デンプンを添加し、50℃恒温条件下で10hの反応を継続して、反応を停止し、凍結乾燥して変性試料を得て、インビトロ消化性測定を表6−1に示す。
表6−1によれば、6hのCGT酵素処理に10hのGt−GBEを加えて変性処理を継続することで、生成物中の易消化性デンプンの含有量を48.6%に低下させ、難消化性デンプンの含有量を36.2%に高めることができ、このとき、遅消化性デンプンの含有量は15.2%であることが分かった。その結果、Gt−GBE反応時間が一定の場合、CGT酵素処理時間が長くなるにつれて、難消化性デンプンの含有量は増加し、易消化性デンプンの含有量は低下するが、遅消化性デンプンの含有量はわずかに低下する傾向を示した。
Ro−GBEとGt−GBEで協同的に変性処理された生成物と比べて(すなわち、本比較例のうち易消化性デンプンの含有量が最も低い1群のデータと、本出願の実施例3の表3における易消化性デンプンの含有量が最も低い1群のデータとを比較する)、その易消化性デンプンの含有量は約15%(
)高く、インビトロ消化速度はやや増加しており、遅消化デンプンの含有量は明らかに減少し(15.2%は33.0%より小さく、その遅消化デンプンの含有量の最高値17.1%も33.0%より小さい)、難消化性デンプンの含有量は明らかに増加し(36.2%は24.8%より大きい)、考えられる原因は、CGT酵素の作用により環化反応が主な役割を果たし、形成されたシクロデキストリンの含有量が増加し、シクロデキストリンは高分岐デンプン鎖とV−型錯体構造を形成することができるが、沸騰水浴により再糊化すると、V−型錯体構造が消失し、遅消化性デンプンの含有量が減少し、良好な抗消化能力のみを示すことである。
なお、CGT酵素とRo−GBE酵素は異なる酵素であるため、本出願ではそれぞれの最適な反応条件下での生成物を比較し、実施例3及び実施例4では、Ro−GBE酵素を加えて65℃の恒温条件下で処理し、本実施例では、CGT酵素を加えて45℃の恒温条件下で処理した。また、CGT酵素とRo−GBE酵素との酵素添加量も同一ではなく、本出願におけるRo−GBEとGt−GBE協同変性処理の効果がCGT酵素とGt−GBE協同変性処理の効果よりも優れていることをさらに説明するために、以下では、CGT酵素をRo−GBE酵素の酵素添加量と同一にし、比較を行う比較例2を提供した。
【0029】
比較例2
コーンスターチを水に溶解して25%デンプン液を得て、沸騰水で糊化した後に、45℃の恒温条件下でシクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ(CGT酵素)30U/g乾燥デンプンを添加して異なる時間処理し、沸騰水浴で反応を停止し、Gt−GBE 25U/g乾燥デンプンを添加し、50℃の恒温条件下で10hの反応を継続して反応を停止し、凍結乾燥して変性試料を得て、インビトロ消化性測定を表6−2に示す。
表6−2によれば、6hの30U/g乾燥デンプンのCGT酵素変性処理に加えて、8hのGt−GBE変性処理を継続すると、生成物中の易消化性デンプンの含有量を49.5%に低下させ、難消化性デンプンの含有量を38.6%に向上させ、このとき、遅消化性デンプンの含有量は11.9%であった。その結果、Gt−GBE反応時間が一定の場合、CGT酵素処理時間が長くなるにつれて、難消化性デンプンの含有量は増加し、易消化性デンプンの含有量は低下するが、遅消化性デンプンの含有量はやや低下する傾向を示し、この変性結果は上記表6−1の3U/g乾燥デンプンのCGT酵素変性物の結果と類似しているため、過剰なCGT酵素添加による改善効果は得られなかった。
以上の比較例1と比較例2のデータをまとめて、上記実施例4と比べて、本出願では、2種類のデンプン枝作り酵素(Ro−GBE及びGt−GBE)を用いて協同的変性を行うと、その変性時間が短く、変性物の収率が高く(2h処理すると、易消化性デンプンの含有量を39.8%程度に低下させ、遅消化性デンプンの含有量を30.0%程度に増加させ、難消化性デンプンの含有量を30.2%程度に増加させることができる)、一方、従来のCGT酵素とGt−GBEの協同的変性では、易消化性デンプンの含有量を48.6%程度に低下させるのに6hの処理が必要であり、このデータは2h処理する時に速消化デンプンの含有量を39.8%程度に低下させた本出願の数値より大きい。
遅消化性デンプンについては、従来のCGT酵素とGt−GBE協同的変性を用いて2h処理した時に、遅消化性デンプンの含有量はすでに比較的高値17.1%前後に増加したが(その後、処理時間の増加に伴い、遅消化性デンプンの含有量は低下する傾向を示す)、このデータは2h処理時に遅消化性デンプンの含有量が30.0%程度に増加したという本出願のデータよりはるかに小さいことが分かった。
【0030】
したがって、本出願は2種類のデンプン枝作り酵素を用いて変性処理を行うことで、変性処理時間が短く、変性物の収率が高くなる。
【0031】
生成物の構造から見ると、2種類のデンプン枝作り酵素変性物は、さらに高い安定性を有し、緩慢に消化されてエネルギーを供給する作用があり、血糖定常状態を維持する点ではより顕著な効果がある。
【0032】
上記は、本発明の好適な実施例にすぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の思想及び原理の範囲内で行われた修正、同等の置換、改良等は、すべて本発明の権利範囲内に含まれるものとする。
【国際調査報告】