(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-524280(P2021-524280A)
(43)【公表日】2021年9月13日
(54)【発明の名称】ハウスダストダニアレルギーの処置および予防
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20210816BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20210816BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20210816BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20210816BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20210816BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20210816BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20210816BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20210816BHJP
A61K 39/385 20060101ALI20210816BHJP
A61K 39/35 20060101ALI20210816BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20210816BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20210816BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20210816BHJP
C12N 15/36 20060101ALN20210816BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20210816BHJP
C07K 14/02 20060101ALN20210816BHJP
C07K 14/435 20060101ALN20210816BHJP
【FI】
C12N15/62 ZZNA
C12N15/63 Z
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P37/08
A61K39/385
A61K39/35
A61K48/00
A61K47/64
A61K47/65
C12N15/36
C12N15/12
C07K14/02
C07K14/435
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2021-514485(P2021-514485)
(86)(22)【出願日】2019年5月17日
(85)【翻訳文提出日】2021年1月15日
(86)【国際出願番号】EP2019062800
(87)【国際公開番号】WO2019219907
(87)【国際公開日】20191121
(31)【優先権主張番号】18173258.7
(32)【優先日】2018年5月18日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520450514
【氏名又は名称】ワーグ ファーマシューティカルズ(ハンジョウ)カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンタ,ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】カリン,ミレラ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,クァン−ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】フィルタラ,スザンヌ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA26X
4B065AA90Y
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C076CC07
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB131
4C084ZB132
4C085AA17
4C085BB03
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA01
4H045CA50
4H045DA86
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、式(I):X
1−Y−X
2 (I)を有する融合タンパク質に関する
(式中、X
1およびX
2は、互いに融合したそれぞれ4〜6つのアレルゲン断片またはそれらのバリアントを含み、ここで、前記アレルゲン断片は、Dermatophagoides属の少なくとも2つのアレルゲンに由来し、Yは担体タンパク質である)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
X1−Y−X2 (I)
を有する融合タンパク質
(式中、
X1およびX2は、互いに融合したそれぞれ4〜8つのアレルゲン断片またはそれらのバリアントを含み、ここで、前記アレルゲン断片は、Dermatophagoides属の少なくとも2つのアレルゲンに由来し、
Yは担体タンパク質である)。
【請求項2】
前記少なくとも2つのアレルゲンが、Dermatophagoides pteronyssinusおよび/またはDermatophagoides farinaeのものである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記少なくとも2つのアレルゲンが、Dermatophagoides pteronyssinusのものであり、Der p 1、Der p 2、Der p 5、Der p7、Der p 21およびDer p 23からなる群から選択される、請求項1または2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記少なくとも2つのアレルゲンのアレルゲン断片が、25〜50個のアミノ酸残基、好ましくは28〜48個のアミノ酸残基、より好ましくは30〜45個のアミノ酸残基からなる、請求項1から3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
アレルゲン断片のシステイン残基のうちの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個、特にすべてが、セリン、スレオニン、グリシン、アラニンまたはロイシンで置換されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
a)Der p 1のアレルゲン断片が、
TNACSINGNAPAEIDLRQMRTVTPIRMQGGCGSCWAFSGVA(配列番号1)、ATESAYLAYRNQSLDLAEQELVDCASQHGCHGDTIPRGIEYIQ(配列番号2)、HNGVVQESYYRYVAREQSCRRPNAQRFGISN(配列番号3)、VRNSWDTNWGDNGYGYFAANIDLMMIEEYPYVVIL(配列番号4)、TNASSINGNAPAEIDLRQMRTVTPIRMQGGSGSSWAFSGVA(配列番号5)、ATESAYLAYRNQSLDLAEQELVDSASQHGSHGDTIPRGIEYIQ(配列番号6)およびHNGVVQESYYRYVAREQSSRRPNAQRFGISN(配列番号7)
からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなり、ならびに/または
b)Der p 2のアレルゲン断片が、
CHGSEPCIIHRGKPFQLEAVFEANQNSKTAK(配列番号8)、EVDVPGIDPNACHYMKCPLVKGQQYDIKYTWIVPKIAPKSEN(配列番号9)、HGSEPSIIHRGKPFQLEAVFEANQNSKTAK(配列番号10)およびEVDVPGIDPNASHYMKSPLVKGQQYDIKYTWIVPKIAPKSEN(配列番号11)
からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなり、ならびに/または
c)Der p 5のアレルゲン断片が、
DYQNEFDFLLMERIHEQIKKGELALFYLQ(配列番号12)およびEQYNLEMAKKSGDILERDLKKEEARVKKIEV(配列番号13)
からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなり、ならびに/または
d)Der p 7のアレルゲン断片が、
アミノ酸配列DPIHYDKITEEINKAVDEAVAAIEKSETFD(配列番号14)と、少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなり、ならびに/または
e)Der p 21のアレルゲン断片が、
アミノ酸配列YNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYY(配列番号15)と、少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなり、ならびに/または
f)Der p 23のアレルゲン断片が、
GYFADPKDPHKFYICSNWEAVHKDCPGNTRWNEDEETCT(配列番号16)およびGYFADPKDPHKFYISSNWEAVHKDSPGNTRWNEDEETST(配列番号17)
からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなり、ならびに/または
g)Der f 1のアレルゲン断片が、
TSACRINSVNVPSELDLRSLRTVTPIRMQGGCGSCWAFSGVA(配列番号38)、ATESAYLAYRNTSLDLSEQELVDCASQHGCHGDTIPRGIEYIQ(配列番号39)、QNGVVEERSYPYVAREQQCRRPNSQHYGISN(配列番号40)およびVRNSWDTTWGDSGYGYFQAGNNLMMIEQYPYVVIM(配列番号41)
からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなり、ならびに/または
h)Der f 2のアレルゲン断片が、
HGSDPCIIHRGKPFNLEAIFDANQNTKTAK(配列番号42)およびEVDVPGIDTNACHYIKCPLVKGQQYDAKYTWNVPKIAPKSEN(配列番号43)
からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなり、ならびに/または
i)Der f 5のアレルゲン断片が、
DYQNEFDFLLMQRIHEQMRKGEEALLHLQ(配列番号44)およびERYNVEIALKSNEILERDLKKEEQRVKKIEV(配列番号45)
からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなり、ならびに/または
j)Der f 7のアレルゲン断片が、
アミノ酸配列DPIHYDKITEEINKAIDDAIAAIEQSETID(配列番号46)と、少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなり、ならびに/または
k)Der f 21のアレルゲン断片が、
アミノ酸配列YNFETAVSTIEILVKDLAELAKKVKAVKSDD(配列番号47)と、少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなり、ならびに/または
l)Der f 23のアレルゲン断片が、
アミノ酸配列GYFADPKDPCKFYICSNWEAIHKSCPGNTRWNEKELTCT(配列番号48)と、少なくとも90%同一であるアミノ酸配列からなる、
請求項3から5のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24および/または配列番号25からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
担体タンパク質が、hepadnaviridae科のウイルスの表面ポリペプチドまたは前記表面ポリペプチドの断片である、請求項1から7のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
配列番号27のアミノ酸配列または配列番号28のアミノ酸配列を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸分子。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項12】
請求項10に記載の核酸分子または請求項11に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも1つの融合タンパク質、または請求項10に記載の少なくとも1つの核酸分子を含む医薬調製物。
【請求項14】
調製物に含まれている2つの融合タンパク質または核酸分子が、1:10〜10:1の、好ましくは1:5〜5:1の、より好ましくは2:1〜1:2の、より好ましくは1:1の重量比を有する、請求項13に記載の医薬調製物。
【請求項15】
前記調製物が、配列番号27のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および/もしくは配列番号28のアミノ酸配列を含む融合タンパク質、または、
配列番号27のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および/もしくは配列番号28のアミノ酸配列を含む融合タンパク質をコードする核酸分子
を含む、
請求項13または14に記載の医薬調製物。
【請求項16】
ハウスダストダニのアレルゲンによって引き起こされるアレルギーの処置または予防に使用するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項10に記載の核酸分子、または請求項13から15のいずれか一項に記載の医薬調製物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー、特にハウスダストダニアレルギーに罹患している患者の免疫療法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
工業先進国における人口の25%超が、IgE媒介アレルギーに罹患している。アレルギー患者は、それ自体は無害の抗原(すなわち、アレルゲン)に対してIgE抗体の産生が増加していることによって特徴付けられる。I型アレルギーの即時型症状(アレルギー性鼻炎結膜炎、喘息、皮膚炎、アナフィラキシーショック)は、肥満細胞結合IgE抗体のアレルゲン誘導性架橋および生物活性メディエーター(例えば、ヒスタミン、ロイコトリエン)の放出によって引き起こされる。
【0003】
WO2012/168487には、アレルゲン断片向けの担体タンパク質としてのhepadnaviridae科のウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス)の表面ポリペプチドの使用が記載されている。
【0004】
Banerjee Sら(J Immunol 192(2014):4867〜4875ページ)では、PreSのN末端およびC末端に融合されているDer p 23の同一の2つまたは4つのアレルゲン断片を含むタンパク質が開示されている。Banerjee Sらによれば、PreSのC末端に同一の2つのDerp 23断片を含み、PreSのN末端にその他の同一の2つのDer p 23断片を含む融合タンパク質によって、PreSの両末端に同じDer p 23断片を含む融合タンパク質と比較して、有意なIgE阻害を示すDer p 23特異的抗体の形成が誘導された。
【0005】
Curin Mら(Allergy 73(2018):1653〜1661ページ)は、ワクチンのさらなる開発に使用することができるDer p 5およびDer p 21の断片について開示している。
【0006】
EP2727934では、IgE反応性を欠き、T細胞反応性を呈するいくつかのDer pアレルゲンのアレルゲン断片が試験された。
【0007】
Huey−Jy Hら(J Immunol 196(2016):増補版1 192、5)は、とりわけ、Der p 1、Der p 2、Der p 7およびDer p 8の断片を含むポリペプチドについて記載している。
【0008】
Bussieres Lら(Int Arch Allergy Immunol 153(2010):141〜151ページ)ならびにEP1908776は、成熟Der p 1およびDer p 2を含む融合タンパク質について記載している。
【0009】
WO2009/118642は、少なくとも50個のアミノ酸残基の長さを有するDer p 1およびDer p 2の断片を含む融合ポリペプチドについて開示している。
【0010】
Chen Aら(Mol Immunol 45(2008):2486〜2498ページ)、Casset Aら(Int Arch Allergy Immunol 159(253〜262ページ)、WO2015/070925およびChen K−Wら(Allergy 67(2012):609〜621ページ)は、Der pアレルゲンの断片について開示している。これらの断片の一部は、担体タンパク質に結合することが可能である。
【0011】
ハウスダストダニ(HDM)は、世界中で最も重要なアレルゲン源の1つの代表である。人口のほぼ10%およびアレルギー患者の50%超が、ダニアレルゲンに感作される。HDMであるDermatophagoides pteronyssinus(Der p)およびDermatophagoides farina(Der f)は世界中で流行している。Der pおよびDer fのアレルゲンは、そのほとんどがこれまでに特徴付けられている30種超のタンパク質または糖タンパク質を含む。グループ1、2、および23のアレルゲン(Der p 1、Der p 2およびDer p 23、ならびにDer f 1およびDer f 2およびDer f 23)は、HDM由来の非常に重要なアレルゲンの代表であり、HDMアレルギー患者の80%超が感作されている。しかし、最近、その他のHDMアレルゲン(例えば、Der p 5、Der p 7およびDer p 21ならびにDer f 5、Der f 7およびDer f 21)が、重要なHDMアレルゲンの代表であり、HDMアレルギー患者のうち15%から40%を超える患者において感作およびアレルギー症状を引き起こすことが示された(Posaら、J Allergy Clin Immunol.2017年2月;139(2):541〜549ページ.e8)。これに関連して、現在のアレルゲン抽出物ベースのHDMワクチンは、Der p 5、Der p 7、Der p 21、およびDer p 23に対する十分な防御IgG抗体を誘導しないことがわかり、多くのHDMアレルギー患者が治療されないままになっている(Selection of house dust mite−allergic patients by molecular diagnosis may enhance success of specific immunotherapy.Chen KW、Zieglmayer P、Zieglmayer R、Lemell P、Horak F、Bunu CP、Valenta R、Vrtala S.J Allergy Clin Immunol.2019年3月;143(3):1248〜1252ページ.e12.doi:10.1016/j.jaci.2018.10.048.Epub 2018年11月14日)。したがって、Der p 1、Der p 2、Der p 5、Der p 7、Der p 21、およびDer p 23ならびに相応するDer f アレルゲンに対するブロッキング抗体を誘導することによりHDMアレルギー患者の完全な防御を可能とする、ハウスダストダニアレルギーのアレルギー免疫療法向けのワクチンを発見および開発することが重要な課題として認識された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2012/168487
【特許文献2】EP2727934
【特許文献3】WO2009/118642
【特許文献4】WO2015/070925
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Banerjee Sら、J Immunol 192(2014):4867〜4875ページ
【非特許文献2】Curin Mら、Allergy 73(2018):1653〜1661ページ
【非特許文献3】Huey−Jy Hら、J Immunol 196(2016):増補版1 192、5
【非特許文献4】Bussieres Lら、Int Arch Allergy Immunol 153(2010):141〜151ページ
【非特許文献5】Chen Aら、Mol Immunol 45(2008):2486〜2498ページ
【非特許文献6】Casset Aら、Int Arch Allergy Immunol 159(253〜262ページ)
【非特許文献7】Chen K−Wら、Allergy 67(2012):609〜621ページ
【非特許文献8】Posaら、J Allergy Clin Immunol.2017年2月;139(2):541〜549ページ.e8
【非特許文献9】Selection of house dust mite−allergic patients by molecular diagnosis may enhance success of specific immunotherapy.Chen KW、Zieglmayer P、Zieglmayer R、Lemell P、Horak F、Bunu CP、Valenta R、Vrtala S.J Allergy Clin Immunol.2019年3月;143(3):1248〜1252ページ.e12.doi:10.1016/j.jaci.2018.10.048.Epub 2018年11月14日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ハウスダストダニアレルギー向けの現在承認されている免疫療法製品は、HDMの体および糞便粒子からの抽出物に基づいている。これらの製品は、種々の濃度のDer p 1、Der p 2、Der f 1、およびDer f 2を含有する。これらの製品は、関連するHDMアレルゲンすべてを含有するわけではなく、とりわけ、Der p 23およびDer f 23の濃度は極めて低い。したがって、これらの製品では、ハウスダストダニアレルギーの患者の処置または予防に不完全な解決策をもたらすだけである(Cassetら、Int Arch Allergy Immunol.2013;161(3):287〜288ページ)。例を挙げると、ALK Abelloが市販している舌下錠は、プラセボと比較してアレルギー症状を平均して18%軽減するだけである(Demolyら、J.Allergy Clin.Immunol.2016;137:444〜451ページ)。異なるハウスダストダニアレルゲンの数が比較的多いことに起因して、強力な免疫療法には、少なくとも最も重要なハウスダストダニアレルゲンをカバーするために、異なる多くのタンパク質およびポリペプチドの投与が必要となるであろう。
【0015】
したがって、本発明の目的は、主要な6種のアレルゲンすべてによって引き起こされるハウスダストダニアレルギーの処置および/または予防に使用することができるワクチンおよびそれに含まれる各成分を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、式(I)
X
1−Y−X
2 (I)
を有する1つまたは複数の融合タンパク質によって解決される
(式中、X
1およびX
2は、互いに融合したそれぞれ4〜8つのアレルゲン断片またはそれらのバリアントを含み、ここで、前記アレルゲン断片は、Dermatophagoides属の少なくとも2つのアレルゲンに由来し、Yは担体タンパク質である)。
【0017】
本発明の別の態様は、上記の少なくとも1つの融合タンパク質を含む医薬調製物に関する。
【0018】
本発明のさらなる態様は、ハウスダストダニのアレルゲンによって引き起こされるアレルギーの処置または予防に使用するための、本発明の融合タンパク質または医薬調製物に関する。
【0019】
本発明の別の態様は、本発明による融合タンパク質をコードする核酸分子に関する。
【0020】
本発明のさらなる態様は、本発明による核酸分子を含むベクターに関する。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、本発明による核酸分子またはベクターを含む宿主細胞に関する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】構築物Der p 1−2 C3およびDer p 5 7 21 23_P6(大)の略図を示す図である。PreSは、B型肝炎ウイルスの表面抗原PreSを表す。「P」は、表Iに記載の、ハウスダストダニアレルゲンDer p 1、Der p 2、Der p 5、Der p 7、Der p 21およびDer p 23に由来するペプチドを示す。
【
図2】SDS−PAGEによって分析した精製PreS融合タンパク質を示す図である。
【
図3】イムノブロットによって決定した、Der p 1−2 C3およびDer p 5 7 21 23_P6(大)のIgE反応性アッセイの結果を示す図である。
【
図4-1】Der p 1−2 C3がアレルゲン活性を欠いていることを実証する好塩基球活性化アッセイの結果を示す図である。
【
図4-2】Der p 1−2 C3がアレルゲン活性を欠いていることを実証する好塩基球活性化アッセイの結果を示す図である。
【
図5-1】Der p 5 7 21 23_P6がアレルゲン活性を欠いていることを実証する好塩基球活性化アッセイの結果を示す図である。
【
図5-2】Der p 5 7 21 23_P6がアレルゲン活性を欠いていることを実証する好塩基球活性化アッセイの結果を示す図である。
【
図6】Der p 1−2 C3に特異的な抗血清による、Der p 1およびDer p 2への患者のIgE結合の阻害を示す図である。
【
図7】Der p 5 7 21 23_P6に特異的な抗血清による、Der p 5、Der p 7、Der p 21およびDer p 23への患者のIgE結合の阻害を示す図である。
【
図8A】ハウスダストダニアレルゲンDer p 1(
図8A)、Der p 2(
図8B)、Der p 5(
図8C)、Der p 7(
図8D)、Der p 21(
図8E)およびDer p 23(
図8F)に特異的に結合しているIgGの血清レベルであって、20μg BM35(「BM35 20」)、40μg BM35(「BM35 40」)、80μg BM35(「BM35 80」)、Tyro−SIT(「Bencard」)、Alutard SQ 503(「ALK D.pter」)、Alutard SQ 510(「ALK Dp/Df」)、ACAROID(「Allergoph.」)、PURETHAL Milbenmischung(「HAL」)、CLUSTOID Milben Injektionssuspension(「Roxal」)およびnDer p1、rDer p 2、rDer p 5、rDer p 7、rDer p 21およびrDer p 23で免疫したウサギ血清からELISAによって決定した、血清レベルを示す図である。試料は1回目の注射の38日後および66日後に回収した。
【
図8B】ハウスダストダニアレルゲンDer p 1(
図8A)、Der p 2(
図8B)、Der p 5(
図8C)、Der p 7(
図8D)、Der p 21(
図8E)およびDer p 23(
図8F)に特異的に結合しているIgGの血清レベルであって、20μg BM35(「BM35 20」)、40μg BM35(「BM35 40」)、80μg BM35(「BM35 80」)、Tyro−SIT(「Bencard」)、Alutard SQ 503(「ALK D.pter」)、Alutard SQ 510(「ALK Dp/Df」)、ACAROID(「Allergoph.」)、PURETHAL Milbenmischung(「HAL」)、CLUSTOID Milben Injektionssuspension(「Roxal」)およびnDer p1、rDer p 2、rDer p 5、rDer p 7、rDer p 21およびrDer p 23で免疫したウサギ血清からELISAによって決定した、血清レベルを示す図である。試料は1回目の注射の38日後および66日後に回収した。
【
図8C】ハウスダストダニアレルゲンDer p 1(
図8A)、Der p 2(
図8B)、Der p 5(
図8C)、Der p 7(
図8D)、Der p 21(
図8E)およびDer p 23(
図8F)に特異的に結合しているIgGの血清レベルであって、20μg BM35(「BM35 20」)、40μg BM35(「BM35 40」)、80μg BM35(「BM35 80」)、Tyro−SIT(「Bencard」)、Alutard SQ 503(「ALK D.pter」)、Alutard SQ 510(「ALK Dp/Df」)、ACAROID(「Allergoph.」)、PURETHAL Milbenmischung(「HAL」)、CLUSTOID Milben Injektionssuspension(「Roxal」)およびnDer p1、rDer p 2、rDer p 5、rDer p 7、rDer p 21およびrDer p 23で免疫したウサギ血清からELISAによって決定した、血清レベルを示す図である。試料は1回目の注射の38日後および66日後に回収した。
【
図8D】ハウスダストダニアレルゲンDer p 1(
図8A)、Der p 2(
図8B)、Der p 5(
図8C)、Der p 7(
図8D)、Der p 21(
図8E)およびDer p 23(
図8F)に特異的に結合しているIgGの血清レベルであって、20μg BM35(「BM35 20」)、40μg BM35(「BM35 40」)、80μg BM35(「BM35 80」)、Tyro−SIT(「Bencard」)、Alutard SQ 503(「ALK D.pter」)、Alutard SQ 510(「ALK Dp/Df」)、ACAROID(「Allergoph.」)、PURETHAL Milbenmischung(「HAL」)、CLUSTOID Milben Injektionssuspension(「Roxal」)およびnDer p1、rDer p 2、rDer p 5、rDer p 7、rDer p 21およびrDer p 23で免疫したウサギ血清からELISAによって決定した、血清レベルを示す図である。試料は1回目の注射の38日後および66日後に回収した。
【
図8E】ハウスダストダニアレルゲンDer p 1(
図8A)、Der p 2(
図8B)、Der p 5(
図8C)、Der p 7(
図8D)、Der p 21(
図8E)およびDer p 23(
図8F)に特異的に結合しているIgGの血清レベルであって、20μg BM35(「BM35 20」)、40μg BM35(「BM35 40」)、80μg BM35(「BM35 80」)、Tyro−SIT(「Bencard」)、Alutard SQ 503(「ALK D.pter」)、Alutard SQ 510(「ALK Dp/Df」)、ACAROID(「Allergoph.」)、PURETHAL Milbenmischung(「HAL」)、CLUSTOID Milben Injektionssuspension(「Roxal」)およびnDer p1、rDer p 2、rDer p 5、rDer p 7、rDer p 21およびrDer p 23で免疫したウサギ血清からELISAによって決定した、血清レベルを示す図である。試料は1回目の注射の38日後および66日後に回収した。
【
図8F】ハウスダストダニアレルゲンDer p 1(
図8A)、Der p 2(
図8B)、Der p 5(
図8C)、Der p 7(
図8D)、Der p 21(
図8E)およびDer p 23(
図8F)に特異的に結合しているIgGの血清レベルであって、20μg BM35(「BM35 20」)、40μg BM35(「BM35 40」)、80μg BM35(「BM35 80」)、Tyro−SIT(「Bencard」)、Alutard SQ 503(「ALK D.pter」)、Alutard SQ 510(「ALK Dp/Df」)、ACAROID(「Allergoph.」)、PURETHAL Milbenmischung(「HAL」)、CLUSTOID Milben Injektionssuspension(「Roxal」)およびnDer p1、rDer p 2、rDer p 5、rDer p 7、rDer p 21およびrDer p 23で免疫したウサギ血清からELISAによって決定した、血清レベルを示す図である。試料は1回目の注射の38日後および66日後に回収した。
【
図9-1】免疫原の1回目の注射の前、ならびに1回目の注射の38日後および66日後に回収した血清の、ハウスダストダニアレルゲンDer p 1(
図9A)、Der p 2(
図9B)、Der p 5(
図9C)、Der p 7(
図9D)、Der p 21(
図9E)およびDer p 23(
図9F)、に特異的に結合しているIgGの血清力価であって、20μg BM35(「BM35 20」)、40μg BM35(「BM35 40」)および80μg BM35(「BM35 80」)で免疫したウサギ血清からELISAによって決定した、血清力価を示す図である。対照として、それぞれのアレルゲンのIgGの血清力価を、アレルゲンnDer p 1、rDer p 2、rDer p 5、rDer p 7、rDer p 21およびrDer p 23でワクチン接種したウサギの血清試料で決定した。
【
図9-2】免疫原の1回目の注射の前、ならびに1回目の注射の38日後および66日後に回収した血清の、ハウスダストダニアレルゲンDer p 1(
図9A)、Der p 2(
図9B)、Der p 5(
図9C)、Der p 7(
図9D)、Der p 21(
図9E)およびDer p 23(
図9F)、に特異的に結合しているIgGの血清力価であって、20μg BM35(「BM35 20」)、40μg BM35(「BM35 40」)および80μg BM35(「BM35 80」)で免疫したウサギ血清からELISAによって決定した、血清力価を示す図である。対照として、それぞれのアレルゲンのIgGの血清力価を、アレルゲンnDer p 1、rDer p 2、rDer p 5、rDer p 7、rDer p 21およびrDer p 23でワクチン接種したウサギの血清試料で決定した。
【
図9-3】免疫原の1回目の注射の前、ならびに1回目の注射の38日後および66日後に回収した血清の、ハウスダストダニアレルゲンDer p 1(
図9A)、Der p 2(
図9B)、Der p 5(
図9C)、Der p 7(
図9D)、Der p 21(
図9E)およびDer p 23(
図9F)、に特異的に結合しているIgGの血清力価であって、20μg BM35(「BM35 20」)、40μg BM35(「BM35 40」)および80μg BM35(「BM35 80」)で免疫したウサギ血清からELISAによって決定した、血清力価を示す図である。対照として、それぞれのアレルゲンのIgGの血清力価を、アレルゲンnDer p 1、rDer p 2、rDer p 5、rDer p 7、rDer p 21およびrDer p 23でワクチン接種したウサギの血清試料で決定した。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、式(I)
X
1−Y−X
2 (I)
を有する1つまたは複数の融合タンパク質に関する
(式中、X
1およびX
2は、互いに融合したそれぞれ4〜8つのアレルゲン断片またはそれらのバリアントを含み、ここで、前記アレルゲン断片は、Dermatophagoides属の少なくとも2つのアレルゲンに由来し、Yは担体タンパク質である)。
【0024】
驚くべきことに、式(I)によって定義される「構成」を有する融合タンパク質が、Dermatophagoides属の少なくとも2つのアレルゲンに対する抗体のin vivo形成を誘導することがわかった。具体的には、担体タンパク質のC末端およびN末端に4〜8つのアレルゲン断片が存在することは、アレルゲン特異的IgEの、そのそれぞれのアレルゲンへの相互作用を阻害する抗体の誘導に関して有利な効果を有する。そのような抗体の形成によってアレルギー反応を軽減または予防さえすることが可能になり、その結果、Dermatophagoides属のアレルゲンによって引き起こされるアレルギーの処置がもたらされる。
【0025】
本明細書で使用する場合、「融合タンパク質」とは、2つ以上のポリペプチドおよび/またはペプチドを互いに結合させることによって作り出されたタンパク質またはポリペプチドを指す。融合タンパク質は、組換えDNA技術によってまたは化学共有結合性のコンジュゲーションによって生成することができる。
【0026】
本明細書で使用する場合、「アレルゲン断片」とは、断片化によってアレルゲンから派生させたペプチドストレッチまたはポリペプチドストレッチを指す。
【0027】
互いに融合している4〜8つ、好ましくは4〜6つのアレルゲン断片は、Dermatophagoides属の1種または複数のハウスダストダニの、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも4つのアレルゲンに、特に1つ、2つ、3つまたは4つのアレルゲンに由来する。これらのアレルゲン断片は、前記アレルゲンの、8〜100個、好ましくは8〜80個、より好ましくは8〜60個、より好ましくは10〜60個、より好ましくは10〜50個、より好ましくは15〜50個、より好ましくは20〜50個、より好ましくは25〜50個の連続するアミノ酸残基からなる。
【0028】
本発明の融合タンパク質は、同じアレルゲンに由来する2つ以上の断片を含むことができる。かかる場合、断片は、同じアレルゲンの、異なる(すなわち、隣接していない)領域に由来しても隣接領域に由来してもよい。後者の場合、断片の順序は、断片が由来するアレルゲンにおけるのとは異なってもよい。
【0029】
本発明の融合タンパク質はまた、同じまたは実質的に同じアミノ酸配列を有する1つまたは複数のアレルゲン断片を含むことができる。本明細書で使用する場合、「実質的に同じ」とは、同じアレルゲンに由来する2つ以上の配列が、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性を示すことを意味する。
【0030】
第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列との同一性の程度は、ある特定のアルゴリズムを使用して両アミノ酸配列間の直接比較によって決定することができる。そのようなアルゴリズムは、例を挙げると、種々のコンピュータプログラムまたはウェブサイト(例えば、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/)(例えば、「BLAST 2 SEQUENCES(blastp)」(Tatusovaら(1999)FEMS Microbiol.Lett.174:247〜25ページ;Corpet F、Nucl.Acids Res.(1988)16:10881〜10890ページ)に、以下のパラメータ:マトリックス BLOSUM62;オープンギャップ11およびエクステンションギャップ1のペナルティ;ギャップx_ドロップオフ50;期待値 10.0ワードサイズ3;フィルター:無し、と共に組み込まれている。
【0031】
本発明の融合タンパク質はまた、アレルゲン断片のバリアントを含むことができる。アレルゲン断片の特定の好ましいバリアントは、アレルゲン断片と比較して、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個のアミノ酸交換を含む。特に好ましいのは、アレルゲン断片中に天然に存在する少なくとも1個の、好ましくは少なくとも2個の、より好ましくは少なくとも3個のシステイン残基、特にすべてのシステイン残基の、他のアミノ酸残基、好ましくはセリン、スレオニン、グリシン、アラニン、またはロイシン残基による交換である。したがって、本発明のアレルゲン断片のバリアントは、好ましくは、システイン残基を1個も含有しない。
【0032】
本発明の融合タンパク質内のアレルゲン断片は、互いに直接融合していてもよいし、単一のアミノ酸残基または2〜30個、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個、より好ましくは2〜5個のアミノ酸残基からなるリンカーペプチドによって隔てられていてもよい。また、X
1/X
2および担体タンパク質Yは、上で定義したように、単一のアミノ酸残基またはリンカーペプチドによって隔てられていてもよい。
【0033】
本発明の融合タンパク質は、当技術分野で公知の任意の発現系において組換えで産生することができる。特に好ましい発現系には、細菌(例えば、大腸菌(E.coli))、酵母細胞(例えば、Pichia pastoris)、または、Drosophila melanogaster由来のS2細胞、Spodoptera frugiperda由来のSf9もしくはSf21細胞、またはTrichoplusia ni由来のTNi細胞などの昆虫細胞、が含まれる。
【0034】
本発明の融合タンパク質のアレルゲン断片は、任意のハウスダストダニに由来していてよい。しかし、ほとんどのヒトにアレルギー反応を引き起こすハウスダストダニ由来のアレルゲンを使用することが特に好ましい。したがって、アレルゲン断片は、Dermatophagoides pteronyssinusおよび/またはDermatophagoides farinaeのアレルゲンに由来することが好ましい。
【0035】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、上記少なくとも2つのアレルゲンは、Dermatophagoides pteronyssinusのものであり、Der p 1、Der p 2、Der p 5、Der p7、Der p 21およびDer p 23からなる群から選択される。
【0036】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、上記少なくとも2つのアレルゲンは、Dermatophagoides farinaeのものであり、Der f 1、Der f 2、Der f 5、Der f 7、Der f 21およびDer f 23からなる群から選択される。
【0037】
アレルギーのヒトは、同じ給源に由来するアレルゲンに対して異なる反応をする。Dermatophagoides pteronyssinusおよび/またはDermatophagoides farinaeによって引き起こされるハウスダストダニアレルギーに罹患しているヒトは、それぞれ、アレルゲンDer p 1およびDer p 2に対してもDer p 5、Der p 7、Der p 21およびDer p 23に対しても、ならびに、アレルゲンDer f1およびDer f 2に対してもDer f 5、Der f 7、Der f21およびDer f 23に対しても反応する。したがって、これらのアレルゲンのうちの1つまたは複数のアレルゲン断片を含む融合タンパク質を提供することが特に好ましい。
【0038】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、上記少なくとも2つのアレルゲンのアレルゲン断片は、25〜50個のアミノ酸残基、好ましくは28〜48個のアミノ酸残基、より好ましくは30〜45個のアミノ酸残基からなる。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、アレルゲン断片のシステイン残基のうちの少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個、特にすべてが、セリン、スレオニン、グリシン、アラニンまたはロイシンで置換されている。
【0040】
本発明の融合タンパク質で使用されるアレルゲン断片のうちの一部またはすべてのシステイン残基は、他のアミノ酸残基で置換されていてもよい。1個または複数のシステイン残基の置換によって、本発明の融合タンパク質の組換え体発現中またはそのプロセシング(例えば、封入体からの融合タンパク質の精製、ワクチン製剤の製造)中に形成される可能性のあるジスルフィド結合の数を減少することができる。さらに、アレルゲン断片内のシステイン残基の置換によって、融合タンパク質中の遊離硫黄基の減少または完全な排除がもたらされ、その結果、かかる基が他の化合物と反応することが可能となることを防止する。
【0041】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、Der p 1のアレルゲン断片は、TNACSINGNAPAEIDLRQMRTVTPIRMQGGCGSCWAFSGVA(配列番号1)、ATESAYLAYRNQSLDLAEQELVDCASQHGCHGDTIPRGIEYIQ(配列番号2)、HNGVVQESYYRYVAREQSCRRPNAQRFGISN(配列番号3)、VRNSWDTNWGDNGYGYFAANIDLMMIEEYPYVVIL(配列番号4)、TNASSINGNAPAEIDLRQMRTVTPIRMQGGSGSSWAFSGVA(配列番号5)、ATESAYLAYRNQSLDLAEQELVDSASQHGSHGDTIPRGIEYIQ(配列番号6)およびHNGVVQESYYRYVAREQSSRRPNAQRFGISN(配列番号7)からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも90%、好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、特に100%同一であるアミノ酸配列からなる。
【0042】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、Der p 2のアレルゲン断片は、CHGSEPCIIHRGKPFQLEAVFEANQNSKTAK(配列番号8)、EVDVPGIDPNACHYMKCPLVKGQQYDIKYTWIVPKIAPKSEN(配列番号9)、HGSEPSIIHRGKPFQLEAVFEANQNSKTAK(配列番号10)およびEVDVPGIDPNASHYMKSPLVKGQQYDIKYTWIVPKIAPKSEN(配列番号11)からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも90%、好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、特に100%同一であるアミノ酸配列からなる。
【0043】
本発明の好ましい実施形態によれば、Der p 5のアレルゲン断片は、DYQNEFDFLLMERIHEQIKKGELALFYLQ(配列番号12)およびEQYNLEMAKKSGDILERDLKKEEARVKKIEV(配列番号13)からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも90%、好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、特に100%同一であるアミノ酸配列からなる。
【0044】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、Der p 7の断片は、アミノ酸配列DPIHYDKITEEINKAVDEAVAAIEKSETFD(配列番号14)と、少なくとも90%、好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、特に100%同一であるアミノ酸配列からなる。
【0045】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、Der p 21の断片は、アミノ酸配列YNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYY(配列番号15)と、少なくとも90%、好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、特に100%同一であるアミノ酸配列からなる。
【0046】
本発明の好ましい実施形態によれば、Der p 23の断片は、GYFADPKDPHKFYICSNWEAVHKDCPGNTRWNEDEETCT(配列番号16)およびGYFADPKDPHKFYISSNWEAVHKDSPGNTRWNEDEETST(配列番号17)からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも90%、好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、特に100%同一であるアミノ酸配列からなる。
【0047】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、Der f 1のアレルゲン断片は、TSACRINSVNVPSELDLRSLRTVTPIRMQGGCGSCWAFSGVA(配列番号38)、ATESAYLAYRNTSLDLSEQELVDCASQHGCHGDTIPRGIEYIQ(配列番号39)、QNGVVEERSYPYVAREQQCRRPNSQHYGISN(配列番号40)およびVRNSWDTTWGDSGYGYFQAGNNLMMIEQYPYVVIM(配列番号41)からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも90%、好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、特に100%同一であるアミノ酸配列からなる。
【0048】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、Der f 2のアレルゲン断片は、HGSDPCIIHRGKPFNLEAIFDANQNTKTAK(配列番号42)およびEVDVPGIDTNACHYIKCPLVKGQQYDAKYTWNVPKIAPKSEN(配列番号43)からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも90%、好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、特に100%同一であるアミノ酸配列からなる。
【0049】
本発明の好ましい実施形態によれば、Der f 5のアレルゲン断片は、DYQNEFDFLLMQRIHEQMRKGEEALLHLQ(配列番号44)およびERYNVEIALKSNEILERDLKKEEQRVKKIEV(配列番号45)からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも90%、好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、特に100%同一であるアミノ酸配列からなる。
【0050】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、Der f 7の断片は、アミノ酸配列DPIHYDKITEEINKAIDDAIAAIEQSETID(配列番号46)と、少なくとも90%、好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、特に100%同一であるアミノ酸配列からなる。
【0051】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、Der f 21の断片は、アミノ酸配列YNFETAVSTIEILVKDLAELAKKVKAVKSDD(配列番号47)と、少なくとも90%、好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、特に100%同一であるアミノ酸配列からなる。
【0052】
本発明の好ましい実施形態によれば、Der f 23の断片は、GYFADPKDPCKFYICSNWEAIHKSCPGNTRWNEKELTCT(配列番号48)からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも90%、好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、特に100%同一であるアミノ酸配列からなる。
【0053】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、X
1は、Der p 1の4つのアレルゲン断片およびDer p 2の2つの断片あるいはDer p 21の3つの断片およびDer p 23の3つの断片を含む。
【0054】
驚くべきことに、これらのアレルゲン断片を任意の順序で含むまたはそれらからなるX
1が担体タンパク質のN末端に融合されていると、それぞれの天然に存在するアレルゲンのアレルゲン特異的IgEへの結合を阻害することができる抗体の形成がもたらされることがわかった。これによって、かかる融合タンパク質をワクチンとして使用して、それぞれのアレルゲンによって引き起こされるアレルギー反応を処置または予防することができる。
【0055】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、X
2は、Der p 1の2〜4つのアレルゲン断片およびDer p 2の2つの断片あるいはDer p 5の4つの断片、Der p 7の2つの断片を含む。
【0056】
担体タンパク質のC末端に融合されたX
2は、任意の順序で前述のアレルゲン断片を含むまたはそれらからなることができる。担体タンパク質のC末端上のかかるアレルゲン断片によって、それぞれの天然に存在するアレルゲンのアレルゲン特異的IgEへの結合を阻害することができる抗体の形成を誘導する融合タンパク質がもたらされることがわかった。これによって、かかる融合タンパク質をワクチンとして使用して、それぞれのアレルゲンによって引き起こされるアレルギー反応を処置または予防することができる。
【0057】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、融合タンパク質は、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24および/または配列番号25からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのポリペプチドを含む。
【0058】
配列番号18および19のアミノ酸配列からなるポリペプチドは、アレルゲンDer p 1およびDer p 2の断片を含む。
【0059】
配列番号18:
VRNSWDTNWGDNGYGYFAANIDLMMIEEYPYVVILHNGVVQESYYRYVAREQSSRRPNAQRFGISNHGSEPSIIHRGKPFQLEAVFEANQNSKTAKHGSEPSIIHRGKPFQLEAVFEANQNSKTAKVRNSWDTNWGDNGYGYFAANIDLMMIEEYPYVVILHNGVVQESYYRYVAREQSSRRPNAQRFGISN
【0060】
配列番号19:
EVDVPGIDPNASHYMKSPLVKGQQYDIKYTWIVPKIAPKSENEVDVPGIDPNASHYMKSPLVKGQQYDIKYTWIVPKIAPKSENATESAYLAYRNQSLDLAEQELVDSASQHGSHGDTIPRGIEYIQTNASSINGNAPAEIDLRQMRTVTPIRMQGGSGSSWAFSGVAATESAYLAYRNQSLDLAEQELVDSASQHGSHGDTIPRGIEYIQTNASSINGNAPAEIDLRQMRTVTPIRMQGGSGSSWAFSG
【0061】
配列番号18からなるポリペプチドは、式(I)のX
1またはX
2とすることができ、それによって、本発明の最も好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、式(I)のX
1である。
【0062】
配列番号19からなるポリペプチドは、式(I)のX
1またはX
2とすることができ、それによって、本発明の最も好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、式(I)のX
2である。
【0063】
配列番号20および21のアミノ酸配列からなるポリペプチドは、アレルゲンDer p 5、Der p 7、Der p 21およびDer p 23の断片を含む。
【0064】
配列番号20:
YNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYYYNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYYYNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYYGYFADPKDPHKFYISSNWEAVHKDSPGNTRWNEDEETSTGYFADPKDPHKFYISSNWEAVHKDSPGNTRWNEDEETSTGYFADPKDPHKFYISSNWEAVHKDSPGNTRWNEDEETST
【0065】
配列番号21:
DYQNEFDFLLMERIHEQIKKGELALFYLQDYQNEFDFLLMERIHEQIKKGELALFYLQDPIHYDKITEEINKAVDEAVAAIEKSETFDDPIHYDKITEEINKAVDEAVAAIEKSETFDEQYNLEMAKKSGDILERDLKKEEARVKKIEVEQYNLEMAKKSGDILERDLKKEEARVKKIEV
【0066】
配列番号20からなるポリペプチドは、式(I)のX
1またはX
2とすることができ、それによって、本発明の最も好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、式(I)のX
1である。
【0067】
配列番号21からなるポリペプチドは、式(I)のX
1またはX
2とすることができ、それによって、本発明の最も好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、式(I)のX
2である。
【0068】
配列番号22および23のアミノ酸配列からなるポリペプチドは、アレルゲンDer f 1およびDer f 2の断片を含む。
【0069】
配列番号22:
VRNSWDTTWGDSGYGYFQAGNNLMMIEQYPYVVIMQNGVVEERSYPYVAREQQCRRPNSQHYGISNHGSDPCIIHRGKPFNLEAIFDANQNTKTAKHGSDPCIIHRGKPFNLEAIFDANQNTKTAKVRNSWDTTWGDSGYGYFQAGNNLMMIEQYPYVVIMQNGVVEERSYPYVAREQQCRRPNSQHYGISN
【0070】
配列番号23:
EVDVPGIDTNACHYIKCPLVKGQQYDAKYTWNVPKIAPKSENEVDVPGIDTNACHYIKCPLVKGQQYDAKYTWNVPKIAPKSENATESAYLAYRNTSLDLSEQELVDCASQHGCHGDTIPRGIEYIQTSACRINSVNVPSELDLRSLRTVTPIRMQGGCGSCWAFSGVAATESAYLAYRNTSLDLSEQELVDCASQHGCHGDTIPRGIEYIQTSACRINSVNVPSELDLRSLRTVTPIRMQGGCGSCWAFSGVA
【0071】
配列番号22からなるポリペプチドは、式(I)のX
1またはX
2とすることができ、それによって、本発明の最も好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、式(I)のX
1である。
【0072】
配列番号23からなるポリペプチドは、式(I)のX
1またはX
2とすることができ、それによって、本発明の最も好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、式(I)のX
2である。
【0073】
配列番号24および25のアミノ酸配列からなるポリペプチドは、アレルゲンDer p 5、Der p 7、Der p 21およびDer p 23の断片を含む。
【0074】
配列番号24:
YNFETAVSTIEILVKDLAELAKKVKAVKSDDYNFETAVSTIEILVKDLAELAKKVKAVKSDDYNFETAVSTIEILVKDLAELAKKVKAVKSDDGYFADPKDPCKFYICSNWEAIHKSCPGNTRWNEKELTCTGYFADPKDPCKFYICSNWEAIHKSCPGNTRWNEKELTCTGYFADPKDPCKFYICSNWEAIHKSCPGNTRWNEKELTCT
【0075】
配列番号25:
DYQNEFDFLLMQRIHEQMRKGEEALLHLQDYQNEFDFLLMQRIHEQMRKGEEALLHLQDPIHYDKITEEINKAIDDAIAAIEQSETIDDPIHYDKITEEINKAIDDAIAAIEQSETIDERYNVEIALKSNEILERDLKKEEQRVKKIEVERYNVEIALKSNEILERDLKKEEQRVKKIEV
【0076】
配列番号24からなるポリペプチドは、式(I)のX
1またはX
2とすることができ、それによって、本発明の最も好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、式(I)のX
1である。
【0077】
配列番号25からなるポリペプチドは、式(I)のX
1またはX
2とすることができ、それによって、本発明の最も好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、式(I)のX
2である。
【0078】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、担体タンパク質は、hepadnaviridae科のウイルスの表面ポリペプチドまたは当該表面ポリペプチドの断片である。
【0079】
本発明の好ましい実施形態によれば、hepadnaviridae科のウイルスは、B型肝炎ウイルスである。
【0080】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、hepadnaviridae科のウイルスの表面ポリペプチドは、PreSである。
【0081】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、表面ポリペプチドの断片は、B型肝炎PreS1またはB型肝炎PreS2である。
【0082】
本発明の好ましい実施形態によれば、担体タンパク質は、配列番号26と、少なくとも90%、好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0083】
本発明で使用される担体タンパク質は、配列番号26(GenBank Acc.No.AAT28678.1)のアミノ酸配列を含むまたはそれからなることができる。
GGWSSKPRKGMGTNLSVPNPLGFFPDHQLDPAFGANSNNPDWDFNPIKDHWPAANQVGVGAFGPGLTPPHGGILGWSPQAQGILTTVSTIPPPASTNRQSGRQPTPISPPLRDSHPQAMQWNSTAFHQALQDPRVRGLYFPAGGSSSGTVNPAPNIASHISSISARTGDPVTN
【0084】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、融合タンパク質は、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32または配列番号33と、少なくとも90%、好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0085】
本発明の融合タンパク質は、担体タンパク質YとしてPreS、および担体タンパク質に隣接して位置する2つのポリペプチドX
1とX
2とをそれぞれ形成する種々のアレルゲンの断片を含むことができる(式(I)を参照されたい)。特に好ましい融合タンパク質は、アレルゲンDer p 1、Der p 2、Der p 5、Der p 7、Der p 21およびDer p 23の断片を含む。かかる融合タンパク質は、以下のアミノ酸配列を含むまたはそれらからなることができる。
【0086】
配列番号27(「Der p 1−2 C3」)
VRNSWDTNWGDNGYGYFAANIDLMMIEEYPYVVILHNGVVQESYYRYVAREQSSRRPNAQRFGISNHGSEPSIIHRGKPFQLEAVFEANQNSKTAKHGSEPSIIHRGKPFQLEAVFEANQNSKTAKVRNSWDTNWGDNGYGYFAANIDLMMIEEYPYVVILHNGVVQESYYRYVAREQSSRRPNAQRFGISNGGWSSKPRKGMGTNLSVPNPLGFFPDHQLDPAFGANSNNPDWDFNPIKDHWPAANQVGVGAFGPGLTPPHGGILGWSPQAQGILTTVSTIPPPASTNRQSGRQPTPISPPLRDSHPQAMQWNSTAFHQALQDPRVRGLYFPAGGSSSGTVNPAPNIASHISSISARTGDPVTNEVDVPGIDPNASHYMKSPLVKGQQYDIKYTWIVPKIAPKSENEVDVPGIDPNASHYMKSPLVKGQQYDIKYTWIVPKIAPKSENATESAYLAYRNQSLDLAEQELVDSASQHGSHGDTIPRGIEYIQTNASSINGNAPAEIDLRQMRTVTPIRMQGGSGSSWAFSGVAATESAYLAYRNQSLDLAEQELVDSASQHGSHGDTIPRGIEYIQTNASSINGNAPAEIDLRQMRTVTPIRMQGGSGSSWAFSG
【0087】
配列番号28(「Der p 572123_P6(大)」)
YNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYYYNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYYYNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYYGYFADPKDPHKFYISSNWEAVHKDSPGNTRWNEDEETSTGYFADPKDPHKFYISSNWEAVHKDSPGNTRWNEDEETSTGYFADPKDPHKFYISSNWEAVHKDSPGNTRWNEDEETSTGGWSSKPRKGMGTNLSVPNPLGFFPDHQLDPAFGANSNNPDWDFNPIKDHWPAANQVGVGAFGPGLTPPHGGILGWSPQAQGILTTVSTIPPPASTNRQSGRQPTPISPPLRDSHPQAMQWNSTAFHQALQDPRVRGLYFPAGGSSSGTVNPAPNIASHISSISARTGDPVTNDYQNEFDFLLMERIHEQIKKGELALFYLQDYQNEFDFLLMERIHEQIKKGELALFYLQDPIHYDKITEEINKAVDEAVAAIEKSETFDDPIHYDKITEEINKAVDEAVAAIEKSETFDEQYNLEMAKKSGDILERDLKKEEARVKKIEVEQYNLEMAKKSGDILERDLKKEEARVKKIEV
【0088】
配列番号29(「Der p 1−2 C1」)
VRNSWDTNWGDNGYGYFAANIDLMMIEEYPYVVILHNGVVQESYYRYVAREQSSRRPNAQRFGISNVRNSWDTNWGDNGYGYFAANIDLMMIEEYPYVVILHNGVVQESYYRYVAREQSSRRPNAQRFGISNHGSEPSIIHRGKPFQLEAVFEANQNSKTAKHGSEPSIIHRGKPFQLEAVFEANQNSKTAKGGWSSKPRKGMGTNLSVPNPLGFFPDHQLDPAFGANSNNPDWDFNPIKDHWPAANQVGVGAFGPGLTPPHGGILGWSPQAQGILTTVSTIPPPASTNRQSGRQPTPISPPLRDSHPQAMQWNSTAFHQALQDPRVRGLYFPAGGSSSGTVNPAPNIASHISSISARTGDPVTNEVDVPGIDPNASHYMKSPLVKGQQYDIKYTWIVPKIAPKSENEVDVPGIDPNASHYMKSPLVKGQQYDIKYTWIVPKIAPKSENATESAYLAYRNQSLDLAEQELVDSASQHGSHGDTIPRGIEYIQTNASSINGNAPAEIDLRQMRTVTPIRMQGGSGSSWAFSGVAATESAYLAYRNQSLDLAEQELVDSASQHGSHGDTIPRGIEYIQTNASSINGNAPAEIDLRQMRTVTPIRMQGGSGSSWAFSG
【0089】
配列番号30(「Der p 1−2 C2」)
VRNSWDTNWGDNGYGYFAANIDLMMIEEYPYVVILHNGVVQESYYRYVAREQSSRRPNAQRFGISNVRNSWDTNWGDNGYGYFAANIDLMMIEEYPYVVILHNGVVQESYYRYVAREQSSRRPNAQRFGISNHGSEPSIIHRGKPFQLEAVFEANQNSKTAKHGSEPSIIHRGKPFQLEAVFEANQNSKTAKGGWSSKPRKGMGTNLSVPNPLGFFPDHQLDPAFGANSNNPDWDFNPIKDHWPAANQVGVGAFGPGLTPPHGGILGWSPQAQGILTTVSTIPPPASTNRQSGRQPTPISPPLRDSHPQAMQWNSTAFHQALQDPRVRGLYFPAGGSSSGTVNPAPNIASHISSISARTGDPVTNATESAYLAYRNQSLDLAEQELVDSASQHGSHGDTIPRGIEYIQTNASSINGNAPAEIDLRQMRTVTPIRMQGGSGSSWAFSGVAEVDVPGIDPNASHYMKSPLVKGQQYDIKYTWIVPKIAPKSENEVDVPGIDPNASHYMKSPLVKGQQYDIKYTWIVPKIAPKSENATESAYLAYRNQSLDLAEQELVDSASQHGSHGDTIPRGIEYIQTNASSINGNAPAEIDLRQMRTVTPIRMQGGSGSSWAFSG
【0090】
配列番号31(「Der p 5.7.21.23_P4P5」)
YNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYYYNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYYYNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYYGYFADPKDPHKFYICSNWEAVHKDCPGNTGYFADPKDPHKFYICSNWEAVHKDCPGNTGGWSSKPRKGMGTNLSVPNPLGFFPDHQLDPAFGANSNNPDWDFNPIKDHWPAANQVGVGAFGPGLTPPHGGILGWSPQAQGILTTVSTIPPPASTNRQSGRQPTPISPPLRDSHPQAMQWNSTAFHQALQDPRVRGLYFPAGGSSSGTVNPAPNIASHISSISARTGDPVTNKFYICSNWEAVHKDCPGNTRWNEDEETCTKFYICSNWEAVHKDCPGNTRWNEDEETCTDYQNEFDFLLMERIHEQIKKGELALFYLQDYQNEFDFLLMERIHEQIKKGELALFYLQDPIHYDKITEEINKAVDEAVAAIEKSETFDDPIHYDKITEEINKAVDEAVAAIEKSETFDEQYNLEMAKKSGDILERDLKKEEARVKKIEVEQYNLEMAKKSGDILERDLKKEEARVKKIEV
【0091】
配列番号32(「Der p 5_7_21 C1」)
YNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYYYNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYYYNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYYYNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYYDPIHYDKITEEINKAVDEAVAAIEKSETFDDPIHYDKITEEINKAVDEAVAAIEKSETFDGGWSSKPRKGMGTNLSVPNPLGFFPDHQLDPAFGANSNNPDWDFNPIKDHWPAANQVGVGAFGPGLTPPHGGILGWSPQAQGILTTVSTIPPPASTNRQSGRQPTPISPPLRDSHPQAMQWNSTAFHQALQDPRVRGLYFPAGGSSSGTVNPAPNIASHISSISARTGDPVTNDYQNEFDFLLMERIHEQIKKGELALFYLQDYQNEFDFLLMERIHEQIKKGELALFYLQDPIHYDKITEEINKAVDEAVAAIEKSETFDDPIHYDKITEEINKAVDEAVAAIEKSETFDEQYNLEMAKKSGDILERDLKKEEARVKKIEVEQYNLEMAKKSGDILERDLKKEEARVKKIEV
【0092】
配列番号33(「Der p 5_7_21 C2」)
YNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYYYNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYYYNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYYYNYEFALESIKLLIKKLDELAKKVKAVNPDEYYDYQNEFDFLLMERIHEQIKKGELALFYLQDYQNEFDFLLMERIHEQIKKGELALFYLQGGWSSKPRKGMGTNLSVPNPLGFFPDHQLDPAFGANSNNPDWDFNPIKDHWPAANQVGVGAFGPGLTPPHGGILGWSPQAQGILTTVSTIPPPASTNRQSGRQPTPISPPLRDSHPQAMQWNSTAFHQALQDPRVRGLYFPAGGSSSGTVNPAPNIASHISSISARTGDPVTNDPIHYDKITEEINKAVDEAVAAIEKSETFDDPIHYDKITEEINKAVDEAVAAIEKSETFDDPIHYDKITEEINKAVDEAVAAIEKSETFDDPIHYDKITEEINKAVDEAVAAIEKSETFDEQYNLEMAKKSGDILERDLKKEEARVKKIEVEQYNLEMAKKSGDILERDLKKEEARVKKIEV
【0093】
配列番号36(「Der f 1/2 C3」)
VRNSWDTTWGDSGYGYFQAGNNLMMIEQYPYVVIMQNGVVEERSYPYVAREQQSRRPNSQHYGISNHGSDPSIIHRGKPFNLEAIFDANQNTKTAKHGSDPSIIHRGKPFNLEAIFDANQNTKTAKVRNSWDTTWGDSGYGYFQAGNNLMMIEQYPYVVIMQNGVVEERSYPYVAREQQSRRPNSQHYGISNGGWSSKPRKGMGTNLSVPNPLGFFPDHQLDPAFGANSNNPDWDFNPIKDHWPAANQVGVGAFGPGLTPPHGGILGWSPQAQGILTTVSTIPPPASTNRQSGRQPTPISPPLRDSHPQAMQWNSTAFHQALQDPRVRGLYFPAGGSSSGTVNPAPNIASHISSISARTGDPVTNEVDVPGIDTNASHYIKSPLVKGQQYDAKYTWNVPKIAPKSENEVDVPGIDTNASHYIKSPLVKGQQYDAKYTWNVPKIAPKSENATESAYLAYRNTSLDLSEQELVDSASQHGSHGDTIPRGIEYIQTSASRINSVNVPSELDLRSLRTVTPIRMQGGSGSSWAFSGVAATESAYLAYRNTSLDLSEQELVDSASQHGSHGDTIPRGIEYIQTSASRINSVNVPSELDLRSLRTVTPIRMQGGSGSSWAFSG
【0094】
配列番号37(「Der f 5 7 21 23_P6」)
YNFETAVSTIEILVKDLAELAKKVKAVKSDDYNFETAVSTIEILVKDLAELAKKVKAVKSDDYNFETAVSTIEILVKDLAELAKKVKAVKSDDGYFADPKDPSKFYISSNWEAIHKSSPGNTRWNEKELTSTGYFADPKDPSKFYISSNWEAIHKSSPGNTRWNEKELTSTGYFADPKDPSKFYISSNWEAIHKSSPGNTRWNEKELTSTGGWSSKPRKGMGTNLSVPNPLGFFPDHQLDPAFGANSNNPDWDFNPIKDHWPAANQVGVGAFGPGLTPPHGGILGWSPQAQGILTTVSTIPPPASTNRQSGRQPTPISPPLRDSHPQAMQWNSTAFHQALQDPRVRGLYFPAGGSSSGTVNPAPNIASHISSISARTGDPVTNDYQNEFDFLLMQRIHEQMRKGEEALLHLQDYQNEFDFLLMQRIHEQMRKGEEALLHLQDPIHYDKITEEINKAIDDAIAAIEQSETIDDPIHYDKITEEINKAIDDAIAAIEQSETIDERYNVEIALKSNEILERDLKKEEQRVKKIEVERYNVEIALKSNEILERDLKKEEQRVKKIEV
【0095】
本発明の別の態様は、本発明による少なくとも1つの融合タンパク質を含む医薬調製物(すなわち、ワクチン製剤)に関する。
【0096】
本発明の好ましい実施形態によれば、調製物は、配列番号27のアミノ酸配列を含む融合タンパク質および配列番号28のアミノ酸配列を含む融合タンパク質を含む。
【0097】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、前記調製物は、10ng〜1g、好ましくは100ng〜10mg、とりわけ0.5μg〜200μgの本発明の融合タンパク質または前記融合タンパク質をコードする核酸分子または前記核酸分子を含むベクターを含む。
【0098】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、本発明の融合タンパク質は、0.01pg/kg体重〜5mg/kg体重、好ましくは0.1pg/kg体重〜2mg/kg体重の量で少なくとも1回個体に投与される。
【0099】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、融合タンパク質は、体重とは無関係に(すなわち、用量は、15、20、25、30、または80μgを含むことができる)または体重1kg当たりのいずれかで、5〜100μg、好ましくは10〜80μg、より好ましくは10〜40μgの量で患者に投与される。
【0100】
賦形剤と組み合わせて単一剤形を製造することができる融合タンパク質の量は、処置されるホストおよび投与の特定様式によって変わることになる。ポリペプチド構築物の用量は、個体の病状、年齢、性別および体重、ならびに個体において所望の抗体応答を誘発する能力などの要因に応じて異なってもよい。投与計画は、最適な治療反応を提供するように調整することができる。例えば、数回に分けた用量を毎日投与してもよいし、治療状況の危急性が示す通りに用量を比例的に減少してもよい。ポリペプチド構築物の用量はまた、状況に応じて最適な予防用量応答を提供するように様々であってもよい。例を挙げると、本発明の融合タンパク質は、アレルゲン特異的なIgG誘導のレベルに常に応じて、数日、1週間もしくは2週間の間隔で、またはさらには数カ月の間隔で個体に投与してもよい。
【0101】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の融合タンパク質および医薬調製物は、2〜10回の間、好ましくは2〜7回の間、さらにより好ましくは5回まで適用される。本発明のさらに好ましい実施形態では、単一のブースターの適用は、第1の投与スケジュールに続いて3カ月〜5年の間、与えられる。こういったブースターの適用は、2〜10回の間、好ましくは2〜5回の間、最も好ましくは2〜3回の間で繰り返してもよい。特に好ましい実施形態では、続いて行うワクチン接種間の時間間隔は、2週間〜5年の間、好ましくは3週間〜3年までの間、より好ましくは3週間〜1年の間であるように選択される。本発明の融合タンパク質の反復投与により、処置の最終効果を最大限にすることができる。
【0102】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明の融合タンパク質および/または医薬調製物は、3〜6回、好ましくは5回の毎月注射を使用して適用され、これに続いて、上記のブースター注射を1〜6カ月毎に、好ましくは3〜4カ月毎に、少なくとも1年間、好ましくは少なくとも2年間、より好ましくは2から6年間、より好ましくは3から5年間、与えることができる。
【0103】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、前記調製物は、少なくとも1つのアジュバント、医薬的に許容される賦形剤および/または防腐剤をさらに含む。
【0104】
本発明の融合タンパク質および医薬調製物は、皮下、筋肉内、静脈内、粘膜等に投与することができる。剤形および投与経路に応じて、本発明のポリペプチド構築物を賦形剤、希釈剤、アジュバントおよび/または担体と組み合わせることができる。好ましいアジュバントは水酸化アルミニウムである。ワクチン製剤の製造に適したプロトコルは当業者に公知であり、例えば「Vaccine Protocols」(A.Robinson、M.P.Cranage、M.Hudson;Humana Press Inc.、米国;第2版 2003)に見いだすことができる。
【0105】
本発明の融合タンパク質はまた、ワクチンにおいて通常的に使用される他のアジュバントと共に製剤化してもよい。例を挙げると、適切なアジュバントは、MF59、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、サイトカイン(例えば、IL2、IL−12、GM−CSF)、サポニン(例えばQS21)、MDP誘導体、CpGオリゴヌクレオチド、LPS、MPL、ポリフォスファゼン、乳剤(例えば、フロイントのもの、SAF)、リポソーム、ビロソーム、イスコム、コクリエート、PLG微粒子、ポロキサマー粒子、ウイルス様粒子、易熱性エンテロトキシン(LT)、コレラ毒素(CT)、変異体毒素(例えばLTK63およびLTR72)、微粒子、および/または重合リポソームとすることができる。適切なアジュバントは市販されており、例えば、ASO1B(リポソーム製剤でのMPLおよびQS21)、ASO2A、AS15、AS−2、AS−03、およびこれらの誘導体(GlaxoSmithKline、米国);CWS(細胞壁骨格)、TDM(トレハロース−6,6’−ジミコレート)、LeIF(リーシュマニア伸長開始因子)、水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)またはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;カルシウム塩、鉄塩、または亜鉛塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁物;アシル化糖類;カチオン誘導体化またはアニオン誘導体化多糖類;ポリフォスファゼン;生分解性ミクロスフェア;モノホスホリルリピドAおよびQuil Aである。GM−CSFまたはインターロイキン−2、インターロイキン−7、もしくはインターロイキン−12などのサイトカインも、アジュバントとして使用することができる。Th1型優位の応答(predominantly Thl−type response)を誘発するのに使用するための好ましいアジュバントは、例えば、モノホスホリルリピドA、好ましくは3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)と場合によりアルミニウム塩との組合せを含む。モノホスホリルリピドAと界面活性剤とを含む水性製剤は、WO98/43670に記載されている。
【0106】
別の好ましいアジュバントは、サポニンまたはサポニンの模倣物もしくは誘導体であり、好ましくはQS21(Aquila Biopharmaceuticals Inc.)であり、これは単独で使用しても、他のアジュバントとの組合せで使用してもよい。例えば、増強システムはモノホスホリルリピドAとサポニンの誘導体との組合せ、例えば、QS21と3D−MPLとの組合せを含む。他の好ましい製剤は、水中油型乳剤およびトコフェロールを含む。特に強力なアジュバント製剤は、水中油型乳剤でのQS21、3D−MPL、およびトコフェロールである。本発明での使用のためのさらなるサポニンのアジュバントは、QS7(WO96/33739およびWO96/11711に記載)およびQS17(米国特許第5,057,540号およびEP0362279B1に記載)を含む。
【0107】
本発明の医薬調製物は、最も好ましくは、アジュバントとして水酸化アルミニウムを含む。
【0108】
本発明の別の態様は、本発明による融合タンパク質をコードする核酸分子に関する。本発明の核酸分子は、RNAまたはDNA分子とすることができる。核酸分子は、任意の種類の生物細胞にトランスフェクトまたは導入することができるベクター(例えば、タンパク質発現ベクター、組み込みベクター、クローニングベクター)の一部とすることができる。好ましい細胞には、大腸菌などの細菌細胞、Pichia pastorisまたはSaccharomyces cerevisiaeなどの酵母細胞、植物細胞、哺乳動物細胞および昆虫細胞が含まれる。かかる核酸分子、ベクターおよび細胞を得るための手段および方法は、当業者によく知られている。
【0109】
本発明による融合タンパク質をコードする核酸分子はまた、それを必要とする対象にワクチン接種するのに直接使用することができる。これらの核酸分子は、RNAおよび/またはDNA分子とすることができる。
【0110】
本発明のさらなる態様は、本発明による核酸分子を含むベクターに関する。
【0111】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記ベクターは、発現ベクターまたはクローニングベクターである。ベクターは、細菌、真菌、昆虫、ウイルスまたは哺乳動物のベクターとすることができる。
【0112】
本発明のベクターは、細菌、酵母、糸状菌、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞またはその他の任意の原核生物細胞もしくは真核生物細胞のような種々の宿主におけるクローニングおよび発現の目的で好ましくは用いることができる。したがって、前記ベクターは、本発明による融合タンパク質をコードする核酸の他にも、宿主特異的調節配列を含む。
【0113】
本発明のさらに別の態様は、本発明による核酸分子またはベクターを含む宿主細胞に関する。
【0114】
本発明のさらなる態様は、ハウスダストダニのアレルゲンによって引き起こされる、特に、Der p 1、Der p 2、Der p 5、Der p 7、Der p 21またはDer p 23によって引き起こされる、アレルギーの処置または予防に使用するための、本発明による融合タンパク質または本発明による医薬調製物に関する。
【0115】
「予防する(preventing)」および「予防(prevention)」という用語は、本明細書で使用する場合、本発明による融合タンパク質または医薬調製物の投与の結果である、対象におけるアレルギーまたはその症状の再発、発生および発症の予防または阻害を指す。一部の実施形態では、「予防する」および「予防」とは、特定のアレルゲンに対するアレルギーを発症するリスクの低減を指す。「予防する」という用語は、アレルギーの発生を予防するための措置だけでなく、アレルギーの進行を阻止し、いったん確立したアレルギーの帰結を軽減するための措置に及ぶ。
【0116】
本明細書で使用する場合、「処置」および「処置する」という用語は、アレルギーの進行および持続の軽減または阻害、アレルギーの重症度の軽減または軽快、およびその1つまたは複数の症状の軽快を指す。「処置」とは、アレルギーまたはアレルギー反応の症状の改善および/または好転も包含する。アレルギーに関連する任意のパラメータの改善を引き起こす融合タンパク質は、治療的融合タンパク質またはコンジュゲートとして同定することができる。「処置」という用語は、治療的処置と予防的措置の両方を指す。例えば、本発明の組成物および方法による処置から利益を得ることができる個体としては、アレルギーを既に有するヒトならびにアレルギーを予防する予定の個体が挙げられる。
【0117】
本発明を、以下の実施例によってさらに説明するが、それに限定されることはない。
【実施例】
【0118】
(実施例1)本発明の融合タンパク質で使用するアレルゲン断片の設計
目的のアレルゲン配列にまたがるペプチドは、ExPASYサーバーからのProtScaleバイオインフォマティクスツールによって決定したアミノ酸の表面露出の予測に基づいて同定した(http://web.expasy.org/protscale/)。ペプチドがその配列にシステイン残基を含有していない場合は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)にペプチドが結合できるようにするために、ペプチドのN末端またはC末端にシステインを付加した。ペプチドを、Applied BiosystemsペプチドシンセサイザーModel 433A(Foster City、米国)を使用して合成し、続いて、分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(Dionex、Thermofischer Scientific、米国)(Fockeら、FASEB J.2001;15(11):2042〜4ページ)によって精製した。ペプチドのサイズと同一性は、質量分析法(Bruker、オーストリア)によって確認した。
【0119】
ハウスダストダニアレルゲンである、Der p 1(TNACSINGNAPAEIDLRQMRTVTPIRMQGGCGSCWAFSGVAATESAYLAYRNQSLDLAEQELVDCASQHGCHGDTIPRGIEYIQHNGVVQESYYRYVAREQSCRRPNAQRFGISNYCQIYPPNVNKIREALAQTHSAIAVIIGIKDLDAFRHYDGRTIIQRDNGYQPNYHAVNIVGYSNAQGVDYWIVRNSWDTNWGDNGYGYFAANIDLMMIEEYPYVVIL;配列番号34)、Der p 2(DQVDVKDCANHEIKKVLVPGCHGSEPCIIHRGKPFQLEAVFEANQNSKTAKIEIKASIEGLEVDVPGIDPNACHYMKCPLVKGQQYDIKYTWIVPKIAPKSENVVVTVKVMetGDNGVLACAIATHAKIRD;配列番号35)、Der p 5(GenBank Acc.No.:X17699)、Der p 7(GenBank Acc.No.:U37044)、Der p 21(GenBank Acc.No.:DQ354124)およびDer p 23(GenBank Acc.No.:EU414751.1)に由来するアレルゲン断片を表Iに列挙するが、これらは、IgE反応性、好塩基球活性化、免疫原性、およびアレルゲン特異的IgE分子のブロッキングについて試験したものである。
【0120】
【表1】
【0121】
ペプチドのIgE反応性は、ドットブロット分析によって決定した。この目的のために、相応するアレルゲンの、各ペプチドの一定分量0.5μgおよび対照としてヒト血清アルブミン(HSA)をWhatman Protranニトロセルロース膜(GE healthcare、Little Chalfont、英国)上にドットした。ゴールドバッファ(50mMリン酸ナトリウム[pH7.4]、0.5%[v/v]Tween−20、0.5%[w/v]BSA、および0.05%[w/v]アジ化ナトリウム)で20分間、3回ブロッキングした後、HDMアレルギー患者の血清(ゴールドバッファ中1:10)でまたは非アレルギーのヒトからの血清(ゴールドバッファ中1:10)で4℃で一晩、膜をインキュベートした。結合したIgE抗体を、1:10に希釈したI125標識抗ヒトIgE Abs(Demeditec Diagnostics、Kiel、ドイツ)で検出し、オートラジオグラフィー(Kodak XOMATフィルム)によって視覚化した。
【0122】
ペプチドの免疫原性を決定するために、ウサギを、各KLH−コンジュゲートペプチド(200μg/注射)で3回(4週間後の1回目のブースター注射および7週間後の2回目のブースター注射)、ならびに、対照目的の場合、フロイントの完全アジュバント1回およびフロイントの不完全アジュバント2回(Charles River、Chatillon sur Chalaronnne、フランス)および/またはAl(OH)
3(Serva)を使用してそれぞれのアレルゲン(200μg/注射)で免疫した。ウサギの免疫応答をELISA力価測定によって解析した。特定のウサギIgG抗体を測定するために、ELISAプレートをそれぞれのアレルゲンで一晩コーティングした。ブロッキング後、プレートを、相応するウサギ抗血清、または非免疫のウサギからの血清の連続希釈(1:500、1:2,000、1:10,000および1:20,000)で一晩インキュベートした。結合したウサギIgG抗体を、1:1,000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ロバ抗ウサギIgG抗血清(Amersham Biosciences、Little Chalfont、英国)で検出した。
【0123】
ペプチドIgGのブロッキング能力を決定するために、それぞれのアレルゲン1μg/mLで一晩コーティングしたELISAプレート(Nunc、Roskilde、デンマーク)を、抗ペプチド抗血清、抗アレルゲン抗血清のそれぞれと共に、または、対照目的の場合、非免疫のウサギからの血清と共に(すべて1:50の希釈で)、24時間プレインキュベートし、次いで、洗浄した。HDMアレルギー患者からの血清(1:10に希釈)と共に一晩インキュベートした後、結合したIgE抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgE抗体(KPL、Gaithersburg、MD)で検出した。ウサギ抗血清とのプレインキュベーションによって得られたIgE結合の減少の百分率は、以下の通りに計算した:100−(ODI/ODP)×100)。ODIおよびODPは、それぞれ、ウサギ免疫血清または正常ウサギ血清とのプレインキュベーション後の光学濃度値を表す。
【0124】
ペプチドのアレルゲン活性を試験するために、ヒト高親和性IgE受容体FcεRIを発現するラット好塩基球白血病細胞(RBL)(1×l0
5/ウェル)に、HDMアレルギー患者からの血清を、対照目的の場合、1人の非アレルギーの個体からの血清を、1:10の希釈で、一晩ロードした。細胞をタイロードバッファ(Sigma、オーストリア)で3回洗浄し、アレルゲンとペプチドの連続希釈に1時間曝露した。上清を前記のようにβ−ヘキソサミニダーゼ活性について分析した。実験は3連で実施したが、結果を、1%Triton X−100の添加後に放出された総β−ヘキソサミニダーゼの平均百分率+/−平均のSE(SEM)として提示する。
【0125】
【表2】
【0126】
(実施例2)タンパク質の組換え産生
融合タンパク質Der p 1−2 C3およびDer p 5 7 21 23_P6(大)をコードする遺伝子(大腸菌発現向けにコドン最適化した)を合成し(ATG:biosynthetics、Merzhausen、ドイツおよびGenScript、Piscataway、米国)、pET−27b(Novagen、ドイツ)のNdeI/XhoI部位に挿入した。組換えタンパク質を、大腸菌株BL21−Gold(DE3)において発現させた。Der p 1−2 C3(
図1を参照されたい;配列番号27)の発現を、細菌培養物に0.5mM IPTGを添加し、37℃で3時間インキュベートすることにより、OD600が0.4で誘導した。Der p 5 7 21 23_P6(大)(
図1を参照されたい;配列番号28)を、1mM IPTGを添加し、培養物を37℃で2.5時間インキュベートすることにより、OD600が0.6で誘導した。
【0127】
回収しプロテアーゼ阻害剤を添加して、可溶性細菌タンパク質を除去するために封入体の調製を行った。部分的に精製されたDer p 1−2 C3タンパク質を含有するペレットを、6M尿素、10mM Tris PH8、4%イソプロパノールに溶解し、HiTrap DEAE Sepharose FF(GE healthcare)カラムを使用して陰イオン交換クロマトグラフィーによって引き続き精製を行った。カラムからのタンパク質の溶出を、NaCl濃度を直線的に増加させることで行った。高純度の溶出画分を一つにし、段階的透析を行って尿素と塩を除去し、タンパク質が凝集することなくリフォールディングすることを可能にした。Der p 1−2 C3タンパク質を、続いて以下の溶液で4℃で最低4〜5時間インキュベートした:1)6M尿素、154mM NaCl、10mM Tris PH8、4%イソプロパノール、2)4M尿素、103mM NaCl、2mM Hepes、PH8、3)2M尿素、50.2mM NaCl、2mM Hepes、PH8、4)1M尿素、25mM NaCl、2mM Hepes、PH8、5)0.5M尿素、12.5mM NaCl、2mM Hepes、PH8、6)2mM Hepes、PH8。
【0128】
Der p 5 7 21 23_P6(大)を含有する細胞溶解物を6M尿素、10mM Tris PH7.5、4%イソプロパノールに溶解し、HiTrap DEAE Sepharose FF(GE healthcare)カラムに適用し、カラムからのタンパク質の溶出を、NaCl濃度を直線的に増加させることで行った。純粋な画分を一つにし、以下の通りに透析した。段階的透析条件Der p 5 7 21 23_P6(大):タンパク質を、続いて以下の溶液で4℃で最低4〜5時間インキュベートした:1)6M尿素、100mM NaCl、10mM Tris PH7.5、4%イソプロパノール、2)4M尿素、100mM NaCl、2mM Hepes、PH7.5、3)2M尿素、100mM NaCl、2mM Hepes、PH7.5、4)1M尿素、100mM NaCl、2mM Hepes、PH7.5、5)0.5M尿素、100mM NaCl、2mM Hepes、PH7.5、6)100mM NaCl、2mM Hepes、PH7.5、7)50mM NaCl、2mM Hepes、PH7.5、8)25mM NaCl、2mM Hepes、PH7.5、9)12.5mM NaCl、2mM Hepes、PH7.5、10)2mM Hepes、PH7.5。
【0129】
タンパク質の純度を、SDS−PAGEおよびクマシー染色によってチェックした(
図2を参照されたい)。サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、リフォールディングしたタンパク質のオリゴマー化が生じてないことを確認した。
【0130】
(実施例3)IgE反応性の決定
実施例2の構築物のIgE反応性を、イムノブロットによって決定した(Curin Mら Sci Rep.22(2017):12135ページ)。0.5μgの精製nDer p 1(天然分離株;受託番号:PDB:3RVW_A;参照方法:Hales,B.J.ら Clin Exp Allergy.30(2000):934〜943ページ)、rDer p 2(組換えにより産生したDer p 2;Chen KWら、Allergy.67(2012):609〜21ページに公開の配列;参照方法:Chen,K.ら Mol Immunol.45(2008):2486〜2498ページ)、rDer p 5(GeneBank:X17699;参照方法:Weghofer Mら Int Arch Allergy Immunol.147(2008):101〜9ページ)、rDer p 7(GeneBank:U37044;参照方法:Resch Yら Clin Exp Allergy.41(2011):1468〜77ページ)、rDer p 21(GeneBank:DQ354124;参照方法:Weghofer Mら Allergy.63(2008):758〜67ページ)、rDer p 23(GeneBank:EU414751.1;参照方法:Weghofer Mら J Immunol.190(2013):3059〜67ページ)、Der p 1−2 C3(実施例2を参照されたい)、Der p 5 7 21 23_P6(大)(実施例2を参照されたい)を含有する一定分量を、および対照目的の場合は、BSAを、ニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell、ドイツ)上にドットした。膜をゴールドバッファ(50mMリン酸ナトリウム[pH7.4]、0.5%[v/v]Tween−20、0.5%[w/v]BSA、および0.05%[w/v]アジ化ナトリウム)で20分間、3回ブロッキングし、次いで、ハウスダストダニアレルギー患者の血清(ゴールドバッファで1:10に希釈)と、および非アレルギーのヒトからの血清(ゴールドバッファで1:10に希釈)と、4℃で一晩インキュベートした。結合したIgEを、1:10に希釈した125I標識抗ヒトIgE Abs(Demeditec Diagnostics、Kiel、ドイツ)で検出し、前記のようにオートラジオグラフィー(Kodak XOMATフィルム)によって視覚化した(Curinら Sci Rep.22(2017):12135ページ)。
【0131】
Der p 1−2 C3のIgE反応性を、ドットブロットアッセイによって、20人のHDM感作患者におけるDer p 1およびDer p 2のIgE反応性と比較した(
図3A)。アレルギー患者はDer p 1およびDer p 2と反応したが、Der p 1−2 C3と、問題となるIgE反応性を示した患者はいなかった。非アレルギーの対象(NA)からの血清では反応性は観察されず、対照タンパク質BSAもIgE反応性を示さなかった(
図3A)。次の実験では、Der p 5 7 21 23_P6(大)のIgE反応性を、Der p 5、Der p 7、Der p 21およびDer p 23に対するIgE反応性と比較した。18人のHDM感作患者がDer p 5、Der p 7、Der p 21およびDer p 23と、患者に応じた様式で反応したが、試験した患者のどちらも、Der p 5 7 21 23_P6(大)とも対照タンパク質BSAとも反応しなかった(
図3B)。
【0132】
(実施例4)IgE競合アッセイ
ブロッキング抗体がアレルギーの免疫療法において主要な役割を果たすことが示されたので、ブロッキング抗体を誘導するペプチドの能力に関する情報は重要である。
【0133】
Der p 1−2 C3およびDer p 5 7 21 23_P6(大)の哺乳動物への投与によって誘導される免疫グロブリン(特にIgG)が、ハウスダストダニアレルギーの患者のIgEのハウスダストダニアレルゲンへの結合を阻害する能力を調べるために、ELISA競合実験を行った。
【0134】
IgE ELISA競合アッセイを行って、抗Der p 1−2 C3および抗Der p 5 7 21 23_P6(大)特異的ウサギIgGによるnDer p 1、rDer p 2、rDer p 5、rDer p 7、rDer p 21、rDer p 23へのヒトIgE結合の阻害について分析した。要約すると、それぞれのアレルゲン1μg/mLで一晩コーティングしたELISAプレート(Nunc、デンマーク)を、抗Der p 1−2 C3抗血清、抗Der p 5 7 21 23_P6(大)、比較の場合、それぞれの抗アレルゲン抗血清(抗nDer p 1、抗rDer p 2、抗rDer p 5、抗rDer p 7、抗rDer p 21または抗rDer p 23の各抗血清)と共に、または、対照目的の場合、非免疫のウサギからの血清と共に、(すべて1:3に希釈)、24時間プレインキュベートし、次いで、洗浄した。HDMアレルギー患者からの血清(1:10に希釈)と一晩インキュベートした後、結合したIgE抗体を西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgE抗体(KPL、Gaithersburg、MD)で検出した。ウサギ抗血清とのプレインキュベーションによって得られたIgE結合の減少の百分率は、以下の通りに計算した:100−(ODI/ODP)×100)(
図6および7を参照されたい)。ODIおよびODPは、それぞれ、ウサギ免疫血清または正常ウサギ血清とのプレインキュベーション後の光学濃度値を表す(Curin Mら Sci Rep.22(2017):12135ページを参照されたい)。
【0135】
本実施例で使用した抗Der p 1−2 C3特異的ウサギIgGおよび抗Der p 5 7 21 23_P6(大)特異的ウサギIgGは、以下のようにして得た。ウサギ(Charles River、フランス)をDer p 1−2 C3でまたはDer p 5 7 21 23_P6(大)で3回免疫した(4週間後の1回目のブースター注射および7週間後の2回目のブースター注射)(200μg/注射)。Al(OH)
3(Serva)をアジュバントとして使用した。1タンパク質当たり2匹のウサギを免疫した。ウサギの免疫応答をELISA力価測定によって分析した。
【0136】
抗Der p 1−2 C3抗体で得られたnDer p 1への患者IgE結合の阻害は、抗nDer p 1での阻害(78%の平均阻害)に対していくぶんかより低かったが類似していた(53%および58%の平均阻害)。ウサギ抗Der p 1−2 C3抗体で得られたrDer p 2へのIgE結合の阻害(89%および85%の平均)は、ウサギ抗Der p 2で得られた阻害(平均84%)と同等であった(
図6)。抗Der p 5 7 21 23_P6(大)で得られたDer p 5への患者のIgE結合の阻害(平均阻害76%および85%)は、抗Der p 5での阻害(平均阻害88%)と同等であり、一方、Der p 21に対する阻害は、抗Der p 21(平均阻害87%)によるものよりも、Der p 5 7 21 23_P6(大)(平均阻害58%および58%)によるものの方がいくぶんか低かった。Der p 7およびDerp 23に対する阻害は、抗Der p 7(58%)および抗Der p 23(7%)によるものよりもDer p 5 7 21 23_P6(大)(Der p 7では両方のウサギで74%、Der p 23では47%および42%)によるものの方が高かった。(
図7)。
【0137】
(実施例5)好塩基球活性化アッセイによって決定したアレルゲン活性
本発明の構築物、特にDer p 1−2 C3およびDer p 5 7 21 23_P6(大)のアレルゲン活性を試験するために、ヒト高親和性IgE受容体FcεRIを発現するラット好塩基球白血病細胞(RBL)(1×10
5/ウェル)に、ハウスダストダニアレルギー患者からの血清を1:10の希釈率で一晩ロードした。細胞をタイロードバッファ(Sigma、オーストリア)で3回洗浄し、アレルゲン(それぞれ、100ng/mL、10ng/mL、および1ng/mLのnDer p 1、rDer p 2、rDer p 5、rDer p 7、rDer p 21、rDer p 23、Der p 1−2 C3およびDer p 5 7 21 23_P6(大))の連続希釈に1時間曝露した。アレルゲンを含まない血清または血清を含まないアレルゲンを陰性対照として使用した。上清を前記のようにβ−ヘキソサミニダーゼ活性について分析した(Hartlら Allergy 59(2004):65〜73ページ)。実験は3回繰返しで実施し、結果を、1%Triton X−100の添加後に放出された総β−ヘキソサミニダーゼの平均百分率+/−平均のSE(SEM)として提示する(
図4および5を参照されたい)。
【0138】
Der p 1およびDer p 2は、HDMアレルギー患者からの血清IgEをロードした好塩基球からのβ−ヘキソサミニダーゼの放出を誘導したが、一方、Der p 1−2 C3は好塩基球を活性化しなかったことがわかった(
図4)。次のセットの実験から、Der p 5、Der p 7、Der p 21、およびDer p 23が、患者に応じた様式で血清IgEをロードした好塩基球からのβ−ヘキソサミニダーゼの放出を誘導したが、一方、Der p 5 7 21 23_P6(大)は同じ患者の血清に対して好塩基球の放出を誘導しなかったことが示された(
図5)。これらのデータは、構築物Der p 1−2 C3およびDer p 5 7 21 23_P6(大)はアレルゲン活性を提示しないことを示している。
【0139】
(実施例6)市販HDMワクチンと比較した、BM35によって誘導されるアレルゲン特異的IgGの形成
2匹のニュージーランドシロウサギの群を、種々の用量のBM35(配列番号27および28のアミノ酸配列を1:1の重量比で含む融合タンパク質を含む調製物)で、および、製造業者の指示に従って市販の調製物(表IIIを参照されたい)で、それぞれ皮下免疫した。対照ウサギを、アレルゲンnDer p 1、rDer p 2、rDer p 5、rDer p 7、rDer p 21およびrDer p 23で免疫した。
【0140】
【表3】
【0141】
ハウスダストダニアレルゲン特異的抗体応答を決定する目的で、ハウスダストダニアレルゲンnDer p 1、rDer p 2、rDer p 5、rDer p 7、rDer p 21、およびrDer p 23に特異的に結合するIgGの形成をモニタリングするために、1回目の免疫の日、ならびに1回目の免疫の38日後および66日後にウサギから血清試料を採取した。アレルゲン特異的ウサギIgG応答を、血清を1:500に希釈することによって、ELISAを使用して測定した。結合したウサギIgGを、1:2000希釈ロバ抗ウサギ西洋ワサビペルオキシダーゼ結合IgG抗体(NA 934;GE Healthcare UK Limited、Chalfont St Giles、英国)で検出した。発色を、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)を用いて行った。野生型ハウスダストダニアレルゲンで免疫した後に得られた血清を、陽性対照として利用した。
【0142】
図8および9に示す結果によって、BM35が市販製品と比較してはるかにより高い力価のアレルゲン特異的IgGの形成を誘導できることが明確に示されている。特に驚くべきことは、BM35が6つのハウスダストダニアレルゲンすべてに対する抗体の形成を誘導したのに対し、一方、市販製品は、はるかにより低いアレルゲン特異的IgG力価で、しかもそれぞれのアレルゲンに対してのみという結果であったことである。このように、すべての市販製品が、BM35と比較して、非常に限られた数のアレルゲンに特異的に結合するIgGの、より弱い誘導を示した。
【国際調査報告】